やよい「幸せを運ぶ壺…?」 前編

568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:50:55.48 ID:YVyH/E4n0
LHS本部 代口瞑想室前

カルプレッタ「ああどうしよう…!なんて説明すれば…!」

カルプレッタ「どちらにしろ急いで報告しないと…!」

カルプレッタ「ああ…だけど代口様が通力を使われている時に集中を乱しては…」

カルプレッタ「…落ち着け…落ち着くのよカルプレッタ…!」

ビーッ

代口『…カルプレッタ君…そこにいるか…?』

 
569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:51:23.63 ID:YVyH/E4n0
カルプレッタ「代口様!!戻られたのですね!実は急ぎ御報告すべきことが…」

代口『君以外の者はそこにはいないだろうね…』

カルプレッタ「え?は、はぁ…」

代口『…では瞑想室に入ってきたまえ…報告とやらは中で聞く…』

カルプレッタ「はい、失礼いたします!」

ガチャ…ガチャン…プシュー…

570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:52:50.01 ID:YVyH/E4n0
カルプレッタ「…!?代口様…!そのお姿は…!!」

代口「…早く閉めたまえ…ここには他の信徒の者も来るのだぞ…」

カルプレッタ「は!はいッ!!」

バシュー…

カルプレッタ「代口様…一体何が…!?」

571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:54:34.49 ID:YVyH/E4n0
代口「…もうこの姿に戻ることはないと思ったが…小娘如きと舐めてかかった結果がこの有様だ…」

代口「あの連中…通力こそ使えぬが、宿した霊力は常人のそれとは比べものにならん…アイドルという存在を侮っていたようだ…」

代口「ハイリスクだが…SoLを水瀬の屋敷に差し向ける他あるまい…」

代口「仮に高槻やよいの奪取が無理でも…せめて壺だけでも回収せねば…」

カルプレッタ「あの…実は…御報告したいのもSoLの事についてなのです…」

572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:55:06.89 ID:YVyH/E4n0
代口「全滅しただと…!?」

カルプレッタ「はい…ブリーフィング中に何者かが侵入しまして…」

カルプレッタ「全員命に別状はありませんが、とても作戦を遂行できる状態では…」

代口「その侵入者とやらは何者だ…!?ここの地下に侵入できる者などいるはずが…」

573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:55:46.39 ID:YVyH/E4n0
カルプレッタ「隊長に事情説明を求めましたが、ひどく混乱している様子で…」

カルプレッタ「隊員達の断片的な証言をまとめますと、7、80代くらいの老人に襲撃を受けたと…」

代口「老人…?た、たった一人の老いぼれに…30人からなる生え抜きの部隊がやられたというのか!?」

カルプレッタ「そのぅ…原因は不明なのですが、医療班の話では全員が断続的に『こむら返り』を起こしているそうです」

574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:56:12.55 ID:YVyH/E4n0
代口「こ…こむら返りぃ…?ふくらはぎが攣る…アレか…?」

カルプレッタ「はい、アレです」

代口「なるほどな…屋敷で感じたあの気配…やはりそうだったか…!」

代口「老人の姿というのがどうにも解せんが…そんなふざけたマネをするのは奴しかおらん…」

575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:56:49.81 ID:YVyH/E4n0
カルプレッタ「…奴と言いますと…心当たりが…?」

代口「まだ分からんのか?…戻ってきたのだ、水脈の本来の『主』が…」

カルプレッタ「…!?そんなまさか…!奴めはかつて代口様が水脈から断ち切ったはずでは…!?」

代口「無論だ。…だが、私が水脈から完全な霊力を得るためには、奴と水脈をつなぐ媒介であったあの壺が、どうしても必要だったのだ…」

576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:57:35.68 ID:YVyH/E4n0
代口「奴が水を通じて再び水脈と繋がる事が無いよう、使用の度に日光で乾燥させ、棚に保管していたのだが…」

代口「私が中庭に置き忘れたばかりに…君が持ち出して高槻やよいの手に渡ってしまった…」

代口「水瀬の屋敷で見た壺に花が挿さっていたところを見ると、水を得てわずかながら通力を取り戻したのだろう…それなら老人の姿なのも合点がいく…」

代口「私の前に直接現れずコソコソ邪魔して回っているくらいだ…その程度の力しか戻っていないと見て間違いなかろう…」

577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 23:58:29.59 ID:YVyH/E4n0
カルプレッタ「長くお仕えしてきましたが、そのような壺があるとは知りませんでした…何故私に教えてくださらなかったのですか…!それほどに重要なお品だと知っていたら…!」

代口「…カルプレッタ君…君は有能ではあるが手癖が悪い…私に拾われた時のこと、よもや忘れてはいないだろうな…?」

カルプレッタ「…えーと…代口様の隠し財宝を盗もうとした…あの時のことですか…?…あ、あれは300年も前の話ではないですか…!」

代口「フン…まだ270年しか経っていないぞ…価値あるものの前では見境が無くなっていかんから伏せていたのだ…」

代口「しかし…こんなことになるくらいなら、壺のことを話しておくべきだったな…」

578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:00:00.23 ID:UOBtWz6t0
代口「ま、最早過ぎたことだ…それより、水瀬の屋敷に潜伏させている者達からその後何か連絡はあったか…?」

カルプレッタ「定期連絡にて、サウジの経済企画大臣と通商代表団が昼食懇談会のため到着したとの報告が…」

代口「ならば、警備も相当厳しくなっているだろう…・」

カルプレッタ「代表団の中には王位継承順位の高い皇太子も複数含まれていますので…」

代口「八方塞がりか…こうなったらジタバタしても始まらん…機を待つほかあるまい」

579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:00:45.77 ID:UOBtWz6t0
代口「潜入班には引き続き情報収集を徹底させ、些細なことでもすぐに報告するよう伝えろ」

カルプレッタ「分かりました…それと、第一講堂に入信希望者やマスコミが殺到しているのですが、そちらはどのように致しましょう…」

代口「ああ…あの連中か…『やよい様』人気の凄まじいことよ…」

代口「…そうだ丁度良い…回復のための"気吸い"に使わせてもらおう…!」

代口「第二講堂も開放して、出来るだけ大勢を招き入れろ」

カルプレッタ「なるほど…ヒヒ…では、その様に…」

580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:03:04.71 ID:UOBtWz6t0
水瀬家敷地内 離れ やよいの部屋(借)

伊織「もうっ!信じられないわあのバカ!」

春香「…本当にプロデューサーさんがそんなことを…?」

千早「一体何を考えているのかしら…」

あずさ「うーん…でもほら、プロデューサーさんのことだから、きっと何か名案が浮かんだんじゃないかしら~?」

581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:03:58.03 ID:UOBtWz6t0
伊織「わざわざあいつらの本拠地にやよいを連れて行くことのどこが名案なのよ!」

やよい「でも伊織ちゃん、おじいさんもプロデューサーの言うことを信じるのが吉って言ってたし…」

伊織「ああもうっ!やよいまで!…今ここにそのじいさんが居たら小一時間問い詰めてやるんだから…!!」

美希「あーむ…むぉぅ…でほはん、ほんなひおふぉふほおふぁだひよふはいほ(でこちゃん、そんなに怒るとお肌によくないの)」

伊織「いいからあんたはそれさっさと食べちゃいなさいよ…!」

582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:04:59.18 ID:UOBtWz6t0
響「うぅ…体を乗っ取られてたなんて…」ガクブル

亜美「ひびきんめっちゃ悪役っぽかったYO!」

真美「お姫ちんの首をこうやってギリリ…!ってな感じで…」

響「えぇっ!?自分そんなコトしたのか!?本当にごめんな貴音ぇ~!!」エグエグ

貴音「わたくしは大丈夫です。それよりも、響が無事で何よりです」

583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:05:46.28 ID:UOBtWz6t0
雪歩「…え?もう調べられないって……うん…うん…」

雪歩「…わかった…うん…お父さんも気をつけてね…」ピッ

真「電話、お父さんから?」

雪歩「うん…もう教団の事を調べて回ることは出来そうにないって…」

雪歩「詳しくは分からないんだけど…『信頼できる筋から、明確な忠告があった』って…」

真「えぇ…なんだかますます危ない感じになってきたなぁ…」

584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:08:47.37 ID:UOBtWz6t0
水瀬家敷地外 南側道路

P「あの…権藤さん?伊織の家に着きましたけど…」

権藤「分かっていますよ。もうちょっと待っててください…」

P「やよいを連れて行くんですよね?俺が行けば普通に通してもらえますけど…」

権藤「Pさん、確かに私は『あくまで自然な形で』と言いましたが…」

権藤「我々は色々と面倒な状況の中にありまして…」

♪セカイジューエーガオニシィーヨオー♪ワッハッハッハ!♪

585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:09:18.59 ID:UOBtWz6t0
ピッ

権藤「私だ」

庭師『主任、やはり例の情報は間違いないようです』

権藤「確かなのか?」

庭師『俺もそんな馬鹿なと思って三度別ルートで確認しましたが、LHSの実動部隊が行動不能になったのはどうも本当のようです』

586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:10:26.99 ID:UOBtWz6t0
権藤「ふむ…部隊内部に反乱でも起きたのか…?」

庭師『医療班の人間から得た情報では、出動直前に襲撃を受けたと…ただその後の話が眉唾でして…』

権藤「いいから言ってみろ」

庭師『はぁ…なんでもその…正体不明の爺さん一人に全員がやられたとかなんとか…何かの暗喩かも知れませんが…』

587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:11:46.17 ID:UOBtWz6t0
権藤「……なるほど…ハッハッハッ…」

庭師『ほらぁ…だから言ったじゃないですか眉唾だって…』

権藤「いや篠原、今のは非常に有益な情報だ。今後は連中が出てこないことを前提に行動する」

篠原『…へ?まぁ…主任がそれでいいならいいんですけどね…』

588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:14:33.54 ID:UOBtWz6t0
権藤「で、例の女スパイはどうした?」

篠原『取りあえずふん縛ってます…鎮静剤でも持ってくりゃもうちょっとすんなりいけたんですが…』

権藤「その様子じゃ手こずったみたいだな」

篠原『ドジッ娘のくせに近接格闘術はピカイチですからねコイツ。危うく右目潰されるところでしたよ』

篠原『…これで定期連絡は途絶えますから、早いとこやよいちゃんを連れ出さないと…』

589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:15:54.01 ID:UOBtWz6t0
篠原『でも…LHSが部隊を動かせないと分かった以上『パーティー』は中止ですよね?』

篠原『どうやってサウジの連中の注意を引いておきましょうか…?』

権藤「その点は問題ない。元々LHSが部隊を動かす上でやむを得ず立案した計画だ」

権藤「その心配さえ無ければこちらには765のプロデューサーという頼もしい味方がいる」バシン!

P「…痛っ!?背中痛っ!」

篠原『正面玄関から堂々とですか…でも気をつけてくださいよ、LHSの人間が見張っているはずですから』

権藤「なんとかなるだろう。ついでに拾ってやるから、20分後に屋敷の南側にあるバンまで来い。その女も連れてな」ピッ

590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:17:08.29 ID:UOBtWz6t0
篠原「あ!主任!?ちょっ…!ったく相変わらず一方的に…!」

篠原「…マジかよ…こいつも連れて…?」チラ

メイド「ムグーッ!ムー!ムーッ!!」ジタバタジタバタ

篠原「ハァ…LHSの狂信者共とドンパチする方がいくらかマシだよ…」

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:17:39.50 ID:UOBtWz6t0
権藤「…というわけですPさん、早速ですがあなたの力をお借りしたい」

P「ふ、普通に迎えに行けばいいんですよね…?」

権藤「まぁそういう事です」

P「ちなみに、さっき言ってた計画って…?」

592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:19:02.36 ID:UOBtWz6t0
権藤「大したことじゃありません。LHSが武装した私設部隊を使ってやよいさんを奪取しようとしているとの情報が入ったので…」

P「!?」

権藤「屋敷内で予め騒ぎを起こし、サウジの警備兵とその部隊とを鉢合わせさせ、その混乱に乗じてやよいさんを救出しようと…」

P「!?!?大したことですよ!大事じゃないですか!!」

593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:20:16.00 ID:UOBtWz6t0
権藤「確実に銃撃戦になりますから、私も気乗りしない作戦だったので助かりましたよ」

権藤「…どうも、LHSの部隊を潰してくれたのが例の老人のようでして…」

P「…まさか!?160センチあるかどうかって感じの小柄な爺さんですよ?いくらなんでも武装した連中相手に…」

権藤「我々の尺度では計りきれない、異質な強さを持っているんでしょうな…実に興味深い」

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/25(水) 00:21:04.04 ID:UOBtWz6t0
P「…権藤さん、もしかして楽しんでません…?」

権藤「ハハハまさか…もっとも、痛快だとは思いますがね」

権藤「…さ、そんなことより急いでください。屋敷に潜伏していたLHSの連絡役を拘束してしまったので、発覚する前にやよいさんを連れ出す必要があります」

P「わ、わかりました…!じゃあ行ってきます!」

599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:23:47.11 ID:F+Nj7+fB0
水瀬家 南門前

P「…と言ったはいいけど…数日前に来た時と比べるとなんだか物々しい雰囲気に…」

P「新堂さんに事前に連絡入れたから大丈夫だとは思うけど…」

P(……門のところにたむろしてる顔の濃い男達は何者だ…?)ジー…

サウジ警備兵A《…オイ、貴様何を見ている!?》

サウジ警備兵B《チョットお前こっちに来い!》グイッ

P「えっ?なっ…何語?ちょっちょまっ…」

600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:24:29.24 ID:F+Nj7+fB0
守衛「ウェイトウェイト!He is a guest!」

サウジ警備兵A《…チッ…紛らわしい奴だ…》パッ

守衛「大丈夫ですか…?」

P「び…ビックリしたぁ…ありがとうございます…!」

P「あの…新堂さんに連絡した765プロダクションの者なんですが…」

601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:25:32.80 ID:F+Nj7+fB0
守衛「はい、聞いております…ただその…しばらくお待ちいただくことになるかと…」

P「そこそこ急ぎの用事なんですが…どれ位かかりますか?」

守衛「それが私にもなんとも…と言いますのも、どれくらい待つかは『彼ら』次第なので…」チラ…

P「…え?それはどういう…」

602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:26:14.58 ID:F+Nj7+fB0
水瀬家本邸

伊織「それ、どういうことなの!?」バン!

新堂「申し訳ございません伊織お嬢様…」

伊織「いいから、どういうことなのかちゃんと説明してちょうだい!」

603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:29:18.33 ID:F+Nj7+fB0
新堂「実は先程、サウジ政府代表団に対し、在日本米国大使館を通じてテロ警戒情報が伝えられまして…」

新堂「敷地内、及び周辺に危険が無いと確認できるまで、我々も行動を制限するようにとの要請が日米両政府から…」

伊織「何よそれ…!ここは私の家よ!どうしようと私の勝手でしょ!?」

新堂「…事は国家の安全保障、外交問題に関わります故、当家の一存ではとても…」

604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:30:43.20 ID:F+Nj7+fB0
新堂「この度の昼食会やパーティーも旦那様の呼びかけで実現したこととは言え、内閣府や外務省との連携の内にある催し…ここはどうか堪えていただきませんと…」

伊織「…カルト教団の次はテロリスト…この国はいつからこんな物騒になったのよ…ったく…!」

伊織「…まぁいいわ…で、プロデューサーは門のところまでは来てるんでしょ?」

新堂「はい、今は守衛室で待機していただいております」

605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:31:54.79 ID:F+Nj7+fB0
伊織「…ねぇ新堂、どうにかしてアイツをここまで連れて来られない…?」

新堂「…どうにかして、でございますか?あれだけの見張りがいては、そう易々とは…」

伊織「だ・か・ら、新堂に頼んでるんじゃない♪」

新堂「…ふむ…そうでございますなぁ…」

606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:32:56.55 ID:F+Nj7+fB0
水瀬家 南門

ワンッワンッワン!

サウジ警備兵A《ん?なんだ?犬…?》

新堂「コラコラ…ジャンバルジャン、こっちに来てはいけないと言っているだろう…」

サウジ警備兵B《ミナセの使用人か…オイ!こっちには来るなと聞いていないのか!?》

新堂《申し訳ございません、病気の犬が犬舎から逃げ出してしまいまして…》

607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:34:15.78 ID:F+Nj7+fB0
サウジ警備兵A《なんだ、我々の言葉が分かるのか…で、その犬が病気だって?》

サウジ警備兵B《それにしちゃ歯も剥き出しで、ずいぶん威勢がよさそうだが?》

新堂《…実を申しますと、この犬は狂犬病に罹っておりまして…》

サウジ警備兵A&B《…!!》

608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:36:40.05 ID:F+Nj7+fB0
新堂《保健所に引き渡すまで小屋に入れておいたのですが、金網を食い破ってこんなところにまで…》

新堂《しかしこれはまだ軽度な方で…もっと凶暴化したチベタン・マスティフ4頭も逃げ出したので、鋭意探している最中なのでございます…》

サウジ警備兵A《チベタン・マスティフ…!?あ、あんなデカいのが4頭も…!?》

ジャンバルジャン「グルルルルル…ワウッ!」バッ!

サウジ警備兵B《うわっ!?》ドタッ

609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:37:21.44 ID:F+Nj7+fB0
新堂《あ、私としたことがつい手が緩んで…》

サウジ警備兵A《お、おい!あっちの建物に入っていったぞ!》

新堂《…これはいけません…!守衛室には人が…》タッタッタッタ…

サウジ警備兵A《…おい、大丈夫か?》

サウジ警備兵B《す、すまない…あの爺さんとんでもないもん連れてきやがって…》

610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:38:14.04 ID:F+Nj7+fB0
「ぎゃぁぁぁああああっ!!」

サウジ警備兵A&B《!?》

新堂「ああ!なんと惨たらしい…!」

サウジ警備兵A《お、おい!なんだ今の悲鳴は!?》

新堂《お客様が●●を噛まれてしまいました…!》

サウジ警備兵B《ヒェッ…》 ヒュン

611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:39:23.98 ID:F+Nj7+fB0
P「あば…あばばば…」ガクガク…

サウジ警備兵B《うわ…こりゃひどい…》

新堂《早くワクチンを打ちませんと、手遅れになってしまいます…》

新堂《幸い、当家には医療設備がございます。そちらに搬送したいのですがよろしいでしょうか…?》

サウジ警備兵A《う、うーん…だが誰も通すなとの指示が…》

612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:43:22.13 ID:F+Nj7+fB0

P「ま゚か゚びけけぶぅ…」ブクブク…

サウジ警備兵A《…!?わ、わかった…だがこの事は一切他言無用で…》

新堂《もちろんでございます。当家といたしましても、狂犬病の犬が野放しになっていると知られては沽券に関わりますので…》

新堂「さ、P様参りましょう…」

P「あば…あば…」フラフラ…

613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:44:05.44 ID:F+Nj7+fB0
サウジ警備兵B《…お、おい…よかったのかよ行かせて…》

サウジ警備兵A《だってよぉ…しょうがないだろあれじゃあ…》

サウジ警備兵B《…そういや、まだ4頭狂犬病のチベタン・マスティフがどっかにいるんだよなぁ…》キョロキョロ

サウジ警備兵A《日本は平和な国だって聞いていたのに…とんでもないところに来ちまったぜ…》

614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:50:07.39 ID:F+Nj7+fB0
水瀬家本邸

P「あばあばあば…」フラフラ…

新堂「…P様、ここまでくればもう大丈夫でございますよ」

P「…ふぃー…いやぁ、いきなりだったんで驚きましたよ…」

新堂「とても即興とは思えない、迫真の演技でございました」ニコリ

615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:51:55.58 ID:F+Nj7+fB0
ジャンバルジャン「ワン!」

P「ハハハ…ジャンバルジャンの狂犬病の演技の方が鬼気迫ってましたよ…」ゴクリ…

P「今日はパーティーがあるから厳重警備と聞いてはいましたが…」

新堂「…これには少々事情がございまして…実は…」

616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:53:31.89 ID:F+Nj7+fB0
P「テロ警戒情報…?」

新堂「はい。そのため、やむを得ずこのような形でP様を邸内へお連れしたのでございます…」

伊織「そういうこと。よくやったわ新堂、上出来よ♪」

P「おお、伊織!他のみんなは?」

617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:54:51.40 ID:F+Nj7+fB0
伊織「全員本邸に移ってきてるわ、こっちよ」

新堂「…伊織お嬢様、サウジ側の警備兵がいつ巡回に来るやも知れません…重々お気を付けください」

伊織「分かってるわよ。新堂もちゃんと『準備』しておいてね」

新堂「承知いたしました…」

P(準備…?)

618: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:57:03.56 ID:F+Nj7+fB0
ガチャ

貴音「あなた様…!」

やよい「あ、プロデューサー!みんな心配してたんですよー!」

P「…おお、貴音、やよい…!それにみんなも…無事だったか…!」

伊織「ハイハイ、感動の再会は後にして、電話の話の続き、しっかり説明してもらうわよ…!」

P「ちょ…ちょっと待てって…そう睨むなよ…」

P「俺の話の前にだな、あのじいさんが現れて…ここで起きたことについて聞かせてくれないか?」

619: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/01(火) 23:58:31.03 ID:F+Nj7+fB0
真美「あ!じゃあ真美が説明すんね!まずねー、幻の獣人ヒビゴンが…」

P「ヒビゴン?」

響「ヒビゴン…そ、それってひょっとして自分のことか!?自分、幻の獣人なんかじゃないぞ!」

亜美「そうそう、亜美達が捕獲したかんね!もうただの獣人だYO!」

響「うがぁー!獣人って言うなぁー!」

やよい「響さん、じゅーじんってなんですか?」

620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 00:02:21.67 ID:CeIOT3lA0
あずさ「まず、私達がリムジンに乗ったところから~…」

春香「あずささん…それは戻りすぎじゃないかと…」

千早「みんなで四条さんの話を聞いた直後から始めたらどうかしら…?」

雪歩「つまり…い、伊織ちゃんが怖い話を始めた頃…」ガクブル

真「そ、その辺は端折っちゃっていいんじゃないかな…!ね、美希?」

美希「zzz…」

621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 00:04:01.66 ID:CeIOT3lA0
P「ダメだ、いきなりワケが分からん…!」

P「…貴音、悪いけど説明を頼む…」

貴音「はい、あなた様…」

貴音「ではまず、六十郎殿が現れた時の事を語る前に、この壺についてお話しせねばなりません…」

626: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:19:43.16 ID:BNcMAlVL0
やよい「…」

真「何だか浮かない顔だね、やよい」

やよい「え?あっ…真さん…」

真「こんなに次々と状況が変化するから無理もないけど…あ、もしかして弟や妹達の心配とか…?」

627: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:20:40.34 ID:BNcMAlVL0
やよい「あぅ…ち、違うんです…長介たちは伊織ちゃんのお家の人が面倒見てくれてますし…」

やよい「それに、プロデューサーも来てくれたから、もう不安な気持ちはないんです…」

真「…?じゃあどうして…?」

やよい「その…おじいさんのことで…ちょっと気になることが…」

真「六十郎さんのことで?」

やよい「はい…」

628: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:21:08.69 ID:BNcMAlVL0
やよい「私、『また会えますか?』っておじいさんに聞いたんです」

やよい「おじいさんは『もちろん』ってニコニコ笑って言ってくれたんですけど…その時の笑顔がなんだかその…寂しそうに見えて…」

真「寂しそう…?」

やよい「や、やっぱり変ですよね!きっと私の勘違いです!心配してくれてありがとうございます!」

真「あ…うん、大丈夫ならいいんだけどね…」

629: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:21:43.78 ID:BNcMAlVL0
貴音「…以上が、あなた様が電話をしてくる前に起こった出来事です。そこから現在までのことはあなた様も御承知の通りです」

P「じいさんは神出鬼没…敵は憑依と能力強化…とんだ人外魔境だな…」

P「すまなかったな貴音、守ってやると言ったのに、肝心な時にお前達の側に居てやれなくて…」

P「…もっとも、話を聞く限り俺が居たところで役に立ちそうにも無かったけどな…」

630: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:22:27.10 ID:BNcMAlVL0
貴音「そんなことはありません…あなた様の言葉があったからこそ、わたくしも強き心を保てたのです」

貴音「わたくし達はたとえ離れていようとも、互いに信頼の絆で結ばれた心強い仲間…そう易々と妖異の力に挫けるものではありません」

P「貴音…」

貴音「あなた様…」

631: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:23:33.19 ID:BNcMAlVL0
春香「あー、ンンッ!エッヘン!オッホン!!」ズイズイ

P「うおっ…春香、なんだよ急に…!」

春香「えーと…プロデューサーさんは、なんでやよいを教団本部に連れて行くなんて事になったのかなと…」

伊織「そうよ!いい加減そこんとこ白状してもらうわよ!」

632: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:24:32.77 ID:BNcMAlVL0
P「白状て…あーなんだその…話せば長いことに…」

『あまり悠長に構えていられては困りますな』

P「ん?え?」キョロキョロ

伊織「ちょっと…何よ今の声…?」

633: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:25:52.81 ID:BNcMAlVL0
『Pさん、左の内ポケットです。そこに小型の連絡装置が入っています』

P「その声…も、もしかして権藤さん?盗聴してたんですか…!?」

権藤『黙っていて申し訳ありません』

権藤『あくまで状況の把握のためです。こればかりは私の性分でして…』

634: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:26:40.80 ID:BNcMAlVL0
権藤『こちらに全く伝わっていなかったテロ警戒情報とやらが妙なので照会してみました』

権藤『どうも、かつてコロラドの教団施設を襲撃した機関が噛んでいるようです。あくまで間接的に、ですが…』

P「その連中がテロを起こす気なんですか!?」

権藤『そうではありません。テロ予告はブラフ、つまり偽情報を流したんです。やよいさんをここに足止めするためにね』

635: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:27:39.62 ID:BNcMAlVL0
P「そんな…!だってその機関って教団を潰そうとしたんですよね?敵の敵は味方のはずじゃ…」

権藤『そう単純にいけば楽なんですが…彼らは消えたブツについて説明を付けられず、虚偽の報告を行ったようでして…』

権藤『その詳細までは流石に私も知りません。…ですが、ブツが今さら日本で発見されては困るような内容だったんでしょうな』

権藤『テロを未然に防ぐという目的のため、莫大な予算を食いつぶし、連邦法違反を見逃されているような連中ですので…」

権藤『虚偽の報告だったと露見すれば、組織の見直しを迫られかねない…実際のところは分かりませんが、少なくとも彼らはそれを恐れているようです』

636: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:28:37.75 ID:BNcMAlVL0
伊織「ちょっと!誰なのさっきからコソコソと…!」

P「ぐおっ…!?ちょ…伊織そんな引っ張るなって…!」

権藤『水瀬家のご令嬢、伊織さんですね?警視庁公安部の権藤と申します』

伊織「警視庁…?あんたまさか…ついに警察のお世話に…!」

P「なんでそうなる!?ついにって何だついにって!」

637: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:29:31.53 ID:BNcMAlVL0
権藤『Pさんにはこの度の教団の一件について、警察にご協力いただいているんですよ』

権藤『やよいさんを教団本部へお連れするというのも、あくまで我々が安全対策を取った上で行っていただきますので、ご心配には及びません』

権藤『捜査への協力が済み次第、765プロと教団が無関係であることなど、やよいさんをはじめ皆さんの身の潔白を証明することになっています』

P「そそ、そゆことそゆこと…」

伊織「なんだそうだったの…それならそうと早く言いなさいよね!」

P(え?何この信用度の差は…)

638: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:30:20.91 ID:BNcMAlVL0
P「…しかし困りましたね…教団相手でも手一杯だってのに今度はアメリカまで…どうすりゃいいんですか?」

権藤『情報攪乱を仕掛けてきたということは、逆に言えばそれくらいしか手が打てないのですよ』

権藤『彼らは本来、入念な情報精査と前準備を旨とする情報機関。根回しもろくにしないやり方の荒さから見ても、相当焦っている』

権藤『とにかく、Pさんはやよいさんを連れ出して来てください。彼らへの対応は私の部下が行いますので…』

権藤『こちらからの音声は一旦切りますが、引き続きそちらの音声は聞こえている状態ですので、何かあれば呼びかけてください』プッ

639: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:32:10.57 ID:BNcMAlVL0
P「…と言っても、入るのもやっとだったのにやよいを連れて出るなんて…」

伊織「大丈夫よ、ちゃーんと手は打ってあるんだから♪」

P「なんだ?急に乗り気だな…」

伊織「理由が分からないまま連れ出すのに納得がいかなかっただけよ。警察に協力して、私たちの汚名を雪ぐのなら話は別だもの」

伊織「…それで新堂、準備は出来てる?」

640: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:33:11.60 ID:BNcMAlVL0
新堂「はい、手筈は整えてございます」

P「どうするつもりなんですか…?」

新堂「本邸の物置に、オランジェリーの果実を収穫するための電動運搬車がございます」

新堂「それにお乗り頂きまして、現在は使われていない古い裏門までご案内いたします」

新堂「裏門の先は暗渠に繋がっておりまして、そのまま中を進めば当家とゆかりのある神社の境内裏手に出られるはずでございます」

641: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:34:18.47 ID:BNcMAlVL0
P「電動運搬車ですか…余計に目立ちませんかね…?」

新堂「『警備上不安があるため、外部からの青果搬入を避け、オランジェリーのものを使用したい』と…サウジの警備隊にはその様にお伝えしてございます」

新堂「空の木箱の中に隠れて頂き、オランジェリーに入りましたら、左手奥の戸から裏門までは約30メートル…」

新堂「無事を見届けましたら、私めは木箱に果実を詰め、何食わぬ顔で本邸へ戻ればよいのです」

P「なるほど…」

642: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:35:09.35 ID:BNcMAlVL0
新堂「それから…あまりにも大きな木箱ですと怪しまれてしまいますので…お乗り頂けるのは3名が限界かと…」

P「まぁ、俺とやよいさえ出られればそれで…」

亜美「エーッ!?兄ちゃんとやよいっちだけなんてずっこいYO!」

真美「真美達も連れてけー!!」

643: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:35:55.46 ID:BNcMAlVL0
P「無茶を言うな無茶を!」

亜美「だってだって!やよいっちが敵のアジトに行くっていうのに、兄ちゃんだけじゃチョ→心配じゃん!」

真美「それにぃ…せまい箱の中でやよいっちと兄ちゃんが二人っきりぃ…やよいっちが余計に危険だYO!」

やよい「…?」

P「お前らなぁ…いい加減に…!」

644: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:36:29.79 ID:BNcMAlVL0
真「…でも、亜美と真美の言うことも一理あるんじゃないかな?」

P「ま、真まで…」

真「だってプロデューサー、敵は人に憑依して操れるような連中ですよ?その本部に乗り込むんですから、どんな危険が待っているか…」

真「そう…たとえばッ!」シュバッ!!

P「!?」

ピタ…

645: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:37:10.27 ID:BNcMAlVL0
P「まま…真さん…?一体何を…」

真「…もしボクが拳を振り抜いていたら、確実にプロデューサーの顔面を抉ってましたよ」

P「つ…つまりなんだ…俺じゃ頼りないってことか…?」

真「そうじゃなくて…もしも、プロデューサーが憑依されたとしたら、その時やよいは今のプロデューサーの立場に置かれるってことです」

P「ハッ…そ、そうか…確かに…!」

646: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:37:59.56 ID:BNcMAlVL0
真「それに、敵が響に憑依していた時、ナイフで響の体を傷つけようともしました…」

真「だから、プロデューサーが止めることが出来て、尚且つプロデューサーを止めることも出来る、そんな人選が必要じゃないかな、と…」

真「まぁ、そういう意味で言うと、ボクは真っ先に外れるんでしょうけど…」ポリポリ…

雪歩「私も無理ですぅ…」

千早「と言うか、腕力ではほぼみんなプロデューサーには太刀打ちできないのでは…?」

647: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:38:59.24 ID:BNcMAlVL0
響「自分はプロデューサーに負けない自信あるぞ!…だけど、取り憑かれやすいみたいだから遠慮するさー…」

美希「ミキもそういうのめんどくさそうだし…ハニーに殴られるのも殴るのもヤ、なの」

春香「うーん…律子さんがいたら適任な感じなんだけど…」

P「確かに止めてもらえそうだけど、俺ははたして律子を止められるのか…?」

648: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:40:10.89 ID:BNcMAlVL0
伊織「仕方がないわね…それじゃあ私が…」

新堂「発覚を遅らせるためにも、お嬢様には予定通りレセプションパーティーにご出席頂く必要がございます」

伊織「うぐっ…わ、分かってるわよ!ちょっと言ってみただけよ…」

真美「むむー、いおりん気は強いけど、別に腕っぷしが強いわけじゃないしねー…」

亜美「そこはきっと金持ちぱぅわーでカバーすんだよ!例えばそう…ショットガンとか!」

P「俺死んじゃうだろそれ…」

649: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:40:57.92 ID:BNcMAlVL0
スッ…

貴音「あなた様…わたくしが…お供致します…」

P「貴音…!」

貴音「…此度のこと、やよいのみならず、六十郎殿とのやり取りを通してわたくしも深く関わってまいりました」

貴音「斯様な大事になるとは思いもよりませんでしたが…やよいを守ろうと誓ったわたくしの決意は、いささかも揺らいではおりません」

貴音「お役に立てるか分かりませんが…どうか…わたくしの同行をお許しください…」

650: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:42:05.53 ID:BNcMAlVL0
P「許すも何も、相手が相手だし、俺としては貴音が一緒なら心強いよ!やよいもそう思うよな?」

やよい「はい!もちろんですー!」

伊織「ま、納得の人選ね。貴音ならそもそも憑依されなさそうだし…」

亜美「お姫ちんなら逆に憑依できちゃったりして…」

貴音「ふふ…試してみますか、亜美?」

亜美「うぇ…じょ、ジョークだよぉ…」

651: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:42:52.68 ID:BNcMAlVL0
P「新堂さん、俺とやよいと貴音の3人で行きます。案内をお願いします」

新堂「かしこまりました。どうぞこちらへ…」

春香「あのっ…プロデューサーさん…!」

P「ん?」

652: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:44:09.69 ID:BNcMAlVL0
春香「私達は待ってることしかできませんけど…二人をよろしくお願いします…!」

春香「プロデューサーさんも必ず…ぜ、絶対無事に戻ってきてくださいね…!」

P「…心配するな春香、またいつもの通りの765プロに戻して見せるさ…!」

P「敵がまたこっちに戻ってくるかも知れないからな、お前達も十分気を付けるんだぞ」

春香「…はい!」

653: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:46:43.17 ID:BNcMAlVL0
真美「あーあ、行っちったね…」

真「もどかしいけど、ここで待ってるほかないよ」

亜美「じゃあじゃあ、待ってる間持ってきたお菓子みんなで食べようYO!」

雪歩「じゃあ私お茶煎れるね。この前すごく良いお茶っぱが手に入って…」

654: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:47:25.99 ID:BNcMAlVL0
雪歩「…あれ?…ひぃふぅみぃ…」

真「どうしたの雪歩?」

雪歩「真ちゃん…あずささんは…?」

真「へ?」

655: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:48:17.44 ID:BNcMAlVL0
あずさ「…みんなどこに行ったのかしら~…」キョロキョロ

あずさ「途中まで一緒に歩いてたはずなのに、おかしいわねぇ…」

サウジ警備兵C《…ん?オイそこのお前、ここで何をしている?》

あずさ「え?えーと…もしかして私に言ってるのかしら…?」

サウジ警備兵D《日本側のゲストか?今出歩かれては困るんだ、今すぐ部屋に戻れ》

656: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:48:45.08 ID:BNcMAlVL0
あずさ「困ったわぁ~…なんて言ってるのかしら…」

サウジ警備兵C《おいどうする?全然通じてないみたいだが…》

サウジ警備兵D《とりあえず連れて行くしかあるまい》グイッ

あずさ「え!?あ…困ります…私、みんなのところに戻らないと…」

657: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:49:22.84 ID:BNcMAlVL0
サウジ警備兵D《いいから来い、一時的に保護するだけだから心配はない》

あずさ「あのぉ~…どなたか日本語の分かる方はいらっしゃらないんでしょうか…?私本当に戻らないと…」

サウジ警備兵D《たくっ…あまり手間取らせないでくれ!こっちも暇じゃないんだ!》

サウジ警備兵C《お…おい…殿下がいらっしゃったぞ…!》

658: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:50:21.75 ID:BNcMAlVL0
サウジ政府高官《一体どうしたんだ騒々しい…》

サウジ警備兵D《も…申し訳ありません!ゲストの女性が指示に従わず抵抗したもので…》

サウジ政府高官《ふぅむ…なぁキミ、悪いが通訳を頼めるか?》

?《構いませんよ。むしろこちらからお願いしようと思っていたところです》

659: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:51:23.11 ID:BNcMAlVL0
?「お久しぶりデース…怖がらせてしまい申し訳ありまセン。今彼らは少々気が立っていまして…」

あずさ「日本語…!よかったわぁ~やっと言葉が通じる人が…」

あずさ「あら?でも『お久しぶり』って…?」

?「ああ、ゴトラを被っていたら分かりにくいデスネ…」スルッ

あずさ「あ…あなたは…!」

660: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:53:00.88 ID:BNcMAlVL0
水瀬家本邸 物置

新堂「…如何でしょう?狭くはございませんか?」

やよい「うっうー!プロデューサーに抱っこしてもらってるので平気ですぅー!」

貴音「申し訳ありませんあなた様…どうしても胸が当たってしまう様です…苦しくはありませんか?」

P「ここが…ここが極楽浄土か…」フラッ…

661: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:54:23.44 ID:BNcMAlVL0
やよい「だ、大丈夫ですか!?プロデューサー!?」

貴音「あなた様…!?お気を確かに!」

P「あ、すまん…大丈夫だから気にせずに…」

新堂「では出発いたしますが、くれぐれも大声や物音などを出さぬようお気をつけください…」

P「わかりました。よろしくお願いします」

662: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:56:13.96 ID:BNcMAlVL0
ウィイイイイイン…

P(結構デカイ音で動くもんなんだな…これならバレずにたどり着けそうだ)

ガタンッ

やよい「…あれ?止まっちゃいました…」

貴音「もう着いたのでしょうか?」

P「いや、1分も経ってないぞ。いくらなんでも…」

664: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:57:24.15 ID:BNcMAlVL0
新堂「…皆様、警備兵が近づいております。絶対に物音を立てませんように…!」

P(なッ…!?)

サウジ警備兵A《…おやおや、さっきの使用人じゃないか。そんなでかい箱をどこに運ぶつもりだ…?》

サウジ警備兵B《大方、『犬』でも入ってるんじゃないか~?》ニヤニヤ

サウジ警備兵A《…この屋敷ではチベタン・マスティフなんざ飼っていないそうじゃないか?まったく人騒がせな…》

665: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 06:59:28.37 ID:BNcMAlVL0
新堂《…デザートにお出しする果実を収穫するため、オランジェリーに行く途中でございますので…失礼いたします…》

サウジ警備兵A《フーン…なぁオイ、そんな話聞いてるか?》

サウジ警備兵B《さぁ?何の連絡もなかったぜ…たとえ聞いていたとしても、こんなデカい箱じゃ検分せんわけにもいかんだろ》ガシッ

新堂《!?何をなさるのですか…!》

P(な、なんだなんだ!?)

666: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:01:44.14 ID:BNcMAlVL0
サウジ警備兵B《検分を妨害すれば、ミナセの使用人と言えど容赦はしないぞ!》

サウジ警備兵A《それとも、この箱の中に見られちゃ困るものでも入ってるのか?え!?》ガンッ!ガンッ!

やよい「あたっ!」

P(うぉおおおい…!?)

667: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:02:19.91 ID:BNcMAlVL0
サウジ警備兵A《ん?こいつぁどうも…当たりを引いたみたいだな…」

サウジ警備兵B《オトナシクデテキテクダサーイ♪》コンコン

やよい「……っ!」ムググ

P(クソッ…これまでか…!)

668: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:03:31.87 ID:BNcMAlVL0
?《君たち、何をしているんだい?》

サウジ警備兵B《何をって怪しい箱の検分を……あっ…!?》

サウジ警備兵A《どうして貴方がここに…!危険ですので邸内にお戻りください…!》

?《殿下が水瀬家自慢の果実をご所望でね。取りに行くよう命じたのにまだ戻ってこないのかと、大変ご立腹だ》

?《しかしまさかなぁ…配下の者が妨害していたと知ったら、殿下はなんと仰られるか…》

670: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:04:34.68 ID:BNcMAlVL0
サウジ警備兵A《ぼぼぼぼぼ…妨害だなんて滅相もございません!!》

サウジ警備兵B《た、たった今も安全を確保するためにちょっとしたアドバイスをしていただけでして…その…!》

サウジ警備兵A&B《しっ…失礼します…!!》ビュゥン‼

?《…やれやれ、殿下の名を出しただけであの恐れ様とはな…》

671: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:05:07.41 ID:BNcMAlVL0
?「大丈夫デスカ…?あの者達の行いをどうかお許しクダサイ」

新堂「いえ…元はと言えば私にも責任がございますので…それよりも貴方様は…」

石油王「申し遅れました…『石油王』デース」

新堂「…貴方様があの…!」

672: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:07:22.95 ID:BNcMAlVL0
石油王「Pサン、箱の中にいることは知っていますので安心してクダサーイ」

ガパ…

P「お、お久しぶりです…!サウジアラビアの方だったんですか…?」
※アニメ版(赤羽根P)とは別人ですが、ほぼ同様の成り行きで石油王と会ったことがあるパラレルな世界とお考え下さい。

石油王「いえ、私の友人でビジネスパートナーでもあるサウジアラビア政府の高官に誘われまして、日本語通訳も兼ねてオブザーバーとして参加していマス」

石油王「事情はあずささんから伺いマシタ…無事に脱出できたか様子を見に来マシタガ、見に来て正解だった様デスネ」

673: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:08:29.06 ID:BNcMAlVL0
石油王「殿下には内々に許可を頂きマシタ。ここから先は警備の者に止められることはアリマセン」

P「本当に助かりました…!恩に着ます!!」

やよい「せきゅーおうさん!ありがとうございますー!」ガルーン

貴音「わたくしからもお礼申し上げます…」

石油王「トンデモアリマセン…もっとお手伝いできればいいのデスガ…」

674: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:10:22.77 ID:BNcMAlVL0
石油王「そうだ…!代わりと言っては何デスガ、これをお貸ししマス…」

P「…なんですかコレ?短剣…?」

石油王「交易商人だった高祖父の、そのまた高祖父の代からの御守りデース」

石油王「なんでも、先祖が魔術師に呪いをかけられた時に、さる高名な賢者がその短剣を用いて呪いを破ったそうで、以来、わが一族の家宝なのデス」

P「そ、そんな大事な物をお借りするわけには…!」

675: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:11:11.52 ID:BNcMAlVL0
石油王「いえ、是非受け取ってクダサイ。父も祖父も曾祖父も、友人が困っている時にはこの短剣を御守りとして預けたそうデス」

石油王「そして返ってきた時には、短剣は次の代に受け継がれマス」

貴音「次の代…ということは…」

石油王「…ハイ、もうすぐ私と妻の子供が…」

やよい「赤ちゃんが生まれるんですかー!?うっうー!おめでとうございます!」

676: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:12:05.87 ID:BNcMAlVL0
石油王「アリガトウ…!…幼い頃から祖父や父に『来るべき時に短剣を渡す相手が必ず現れる』と繰り返し聞かされていましたが、正直半信半疑デシタ…」

石油王「でも、私と妻の恩人であるあずささんに再会し、皆さんの事情を聞いて、今がその時なのだと確信シマシタ」

石油王「あずささんもとても心配してマス…この短剣と共に、無事に帰ってきてクダサイ」

P「…わかりました…必ず戻ってきてお返しします…!」

石油王「さ、行ってクダサイ。皆さんの幸運を祈っていマス…」

677: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:13:15.46 ID:BNcMAlVL0
やよい「良かったですねプロデューサー!せきゅーおうさんのおかげで上手くいきそうで!」

P「もうダメかと思った時にまさかの石油王さんだからなぁ…御守りまで預かっちゃったし…いやぁ、偶然ってあるんだな…」

貴音「ふふ…あなた様…これはただの偶然などではありません…」

P「え?」

678: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:16:42.43 ID:BNcMAlVL0
貴音「…国を異にする男女があずさの導きで夫婦(めおと)となり、稚児(ややこ)を授かり、その恩義からわたくし達を助けて下さったわけですが…」

貴音「あなた様が765プロにやって来なければ、そもそもあずさと石油王殿との縁も生まれず、日本人の奥方との婚姻も成らなかったでしょう…」

貴音「わたくし達が短剣を返すべき新たな命は、言うなればあなた様の紡いだ人の縁そのもの…だから守るのは運命だと…そう言っております」

P「言ってって…誰が?」

貴音「…この短剣が、わたくしにそう教えてくれたのです」

679: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:17:32.40 ID:BNcMAlVL0
P「こ…この短剣が…?(貴音は最近人間離れが著しいな…)」

やよい「貴音さんすごいです…!!他には何か言ってませんかー?」

貴音「…柄の装飾が外れそうなので、腕の立つ彫金職人に直させろと…あと鞘の先のあたりが痒いから掻いてくれと言ってますね」

P「えぇぇ…」

貴音「…手に持っていないでべるとにしっかりと挿すように…あと早く鞘の先を掻け、痒くてたまらん…と、そう言っております」

P(なんかめんどくさいのが増えちゃったなぁ…)

680: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:19:35.63 ID:BNcMAlVL0
水瀬家敷地外 水瀬神社前

篠原「…中々来ませんねぇ…このままだと定期連絡が入らないことに奴さん達気づいちゃいますよ…!」

権藤「そう焦るな篠原。ここから教団本部まではまだ十分間に合う距離だ」

篠原「しかしですねぇ…高槻やよいを連れ出せたとしても、我々が絡んでいる事を知られたらまたブツを隠されるかも…」

権藤「この時を10年以上待ったんだ…30分や1時間程度ならいくらでも待ってやるさ」

681: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:20:20.58 ID:BNcMAlVL0
メイド「…う…ん…?」

篠原「あーあ…起きちゃったよ…」

メイド「…何ここ?…車の中?」

権藤「どうも初めまして、女スパイさん」

682: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:22:16.33 ID:BNcMAlVL0
メイド「…!そうだ!あんたっ…この裏切者ッ!!」ガタガタ

篠原「はぁ…裏切るも何も、俺は最初から教団側の人間じゃないんだよ…」

メイド「通りでおかしいと思ったわよ…!あんたみたいな不信心者がなんで潜入班に選ばれたのかって…!!」

篠原「あのねぇ、この潜入に信仰心は関係ないの。半年以上、場所によっては数年の潜入だぜ?とても信仰心だけじゃ務まらない」

篠原「教団は純粋にスパイとしてのスキルを求めていた。俺は破壊工作と潜入のプロ、お前は近接格闘術が使える多言語話者…」

篠原「水瀬家に訪れる海外の政府高官や企業経営者の会話を聞き、情報を教団に提供できるスキルの持ち主…選ばれた理由はそれだけさ」

683: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:22:47.32 ID:BNcMAlVL0
メイド「…そうよ…だけどカルプレッタ様は、私に信仰の尊さを教えてくれたわ…!今の私にはラダークの尊い使命がある!!」

篠原「だからそれは…」

権藤「…それは、心身ともにボロボロだったあなたを、彼らが再教育した結果ですよ」

メイド「黙れッ…!!これ以上の侮辱は許さないわ!!」

684: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:23:22.19 ID:BNcMAlVL0
篠原「…だから言ったじゃないですか主任…連れてこない方がよかったって…」

権藤「女スパイ…いや、ルクサーナさん…」

ルクサーナ「…ッ!?…なんでその名前を…!?」

権藤「私は知らないことがあると落ち着かない性格でして…あなたの経歴も興味深く読ませていただきましたよ」

685: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:24:13.32 ID:BNcMAlVL0
権藤「出身はアフガニスタン北部、バルフ州の州都マザーリシャリーフ…そこの郊外に家が"あった"そうですね」

ルクサーナ「…内戦でメチャクチャになったって聞いたわ…子供の頃のことはよく憶えてない…」

篠原「この女がアフガン人…?ちょっと濃い目の日本人だと思ってましたよ…」

権藤「モンゴロイド系統の入ったハザーラ人なんだよ、彼女は」

686: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:25:38.64 ID:BNcMAlVL0
権藤「で…97年にご両親は欧州の民間団体にあなたを預けた後、翌年に起きた虐殺に巻き込まれ死亡。その後行く先を転々として9.11直前に米国へ…皮肉なもんですな」

権藤「ここで一度あなたの足跡が途絶え、次に現れるのが2010年のイラク。『新しい夜明け作戦』の開始後に、『現地通訳』の肩書で米国の特殊部隊に随行していますね」

ルクサーナ「…あんたが何者か知らないし、何を聞き出そうとしているのかも分からないけど無駄よ。話すことなんて何もないもの…」

権藤「…私にはあるんですよ。イラクであなたが随行した部隊は、かつて米国にあった教団施設を襲撃したのと同じ部隊ですからね…」

権藤「あなたはある機関のエージェントだったはずだ。近接格闘術も、多言語話者としての能力も、そこで教わったものでしょう?」

687: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:27:28.13 ID:BNcMAlVL0
ルクサーナ「……」

篠原「…でもマジでドジッ娘ですよコイツ?ガチのスパイなんて無理ですよ」

ルクサーナ「…あのねぇ…アンタの…そういうとこがムカつくのよッ!今そういう空気じゃないでしょ!?」

権藤「まぁまぁ…ご存じでしょうが、こういう奴でして…」

ルクサーナ「ああもう!…とにかく、私はラダークの教義に殉じる覚悟なの!煮るなり焼くなり好きにすれば!?

688: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:29:04.85 ID:BNcMAlVL0
権藤「…実に勿体ない…」

ルクサーナ「勿体ない…?」

権藤「私はね、ルクサーナさん。あなたの能力を高く買っているんですよ」

権藤「あなたは20か国以上の言語といくつかの少数民族の言語をネイティブスピーカー並みの発音で話せるとか…そんな人材はそうはいませんからね」

権藤「どうです?私の下で働いてみる気はありませんか?給料は奮発しますよ?」

689: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:30:06.84 ID:BNcMAlVL0
篠原「あちゃー…まーた始まったよ…連れて来いって言われた時からそんな予感はしてたけど…」

ルクサーナ「…はぁ?気は確かなの…?」

権藤「大まじめですよ。あなたを連れてこさせたのは勧誘のためと、もう一つ、あなたの信仰するLHSの実態をその目で見てもらうためでもあるんです」

ルクサーナ「…何を言い出すのかと思えば…ねぇ、アンタの上司ちょっと頭おかしいんじゃないの??」

篠原「ん…まー変わった人ではあるな…」

690: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:31:39.67 ID:BNcMAlVL0
権藤「ちなみに、この篠原も昔私が勧誘したんですよ。こんな軽い奴ですが、中南米最大の反政府武装組織にいまして…」

ルクサーナ「…コロンビア革命軍…!?」

篠原「ちょ…やめてくださいよぉ…俺的にあれは黒歴史なんですから…」

権藤「…まぁそういうわけで、今日は終日我々に同行してもらいますのでそのつもりで」

691: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:33:49.25 ID:BNcMAlVL0
篠原「…主任、来ましたよ…!」

ガチャ!ガーッ!

P「すいません!遅くなりました!!」

権藤「お待ちしてましたよ。さ、早く乗ってください」

692: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:34:18.95 ID:BNcMAlVL0
やよい「よっ…よいしょっと…」

ルクサーナ「や…やよい様ッ!?」

やよい「はわっ!?…び、びっくりしたぁ…」

貴音「あなたは…今朝のめいど殿…?」

P「な、なんでこの人縛られてるんですか…?」

693: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:35:04.07 ID:BNcMAlVL0
権藤「彼女も教団の人間です。やよいさんの居所を突き止めたのも彼女なんですよ」

P「それじゃあ…もう権藤さん達のこともバレちゃったんですか…?」

権藤「そうなる前に、そこの篠原が身柄を確保しました。事務所にいた時私に電話をしてきたのも彼です」

P「そうでしたか…!」

694: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:35:50.75 ID:BNcMAlVL0
ガーッ!バタン!

権藤「さてと…これで役者は揃ったわけですな…例の老人を除いて…」

やよい「おじいさんのことも知ってるんですか?えーと…」

権藤「権藤です。やよいちゃんの方がよく知っているようだから、おじさんに後で話を聞かせてくれないかい?」

やよい「はい!わかりました!とっても優しいおじいさんなんですよ!」

695: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:36:54.09 ID:BNcMAlVL0
権藤「それと、四条貴音さん…ですね?あなたの経歴の謎の多さには参りましたよ…」

貴音「警察の方と言えども…人の過去を無暗に詮索するのは、あまり関心致しませんね…」

権藤「こういう仕事でしてね、申し訳ない。もっとも、あなたについては何もわからないも同然でしたがね…」

権藤「…ところでPさん、ベルトに挿したそれ、先程石油王氏から預かったという短剣ですよね?少し調べさせてもらっても…」

696: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:37:52.94 ID:BNcMAlVL0
篠原「主任、悪い癖が出てますよ…それより今は…」

権藤「…分かってるよ…でもお前だって気になるだろ篠原?」

篠原「とりあえず出発してくださいよ…時間ないんスから…」

権藤「…では皆さん、今から教団本部に向かいます。少し飛ばしますからしっかり掴まっていてください」

697: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/11(月) 07:39:08.76 ID:BNcMAlVL0
P(ここまで来てしまったが…やよいや貴音は権藤さんの目的を知らないまま…本当にこれでいいんだろうか…?)

貴音(…大きな気の乱れが…事務所の方角から徐々に広がっている…これは一体…?)

やよい(…おじいさん…もし家族や765プロのみんなが危ない目にあったら、その時はどうか助けてあげてください…)

ルクサーナ(偉大なるラダーク…ゲネゲの邪を討ち払い、やよい様をお救いするため、どうか力をお貸しください…!)

篠原(…あー…腹減ったなぁ…カツ丼食いてぇ…マジで…)

ブロォオオオオオン……

705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:08:43.72 ID:sGsxF3zg0
LHS本部 第二講堂

ザワザワ… ザワザワ…

マスコミA「ったく…重要な発表とやらは一体何時になったら始まるんだよ…」

マスコミB「まぁまぁ、空調がきいてる分、765プロの前で詰めているよりはマシじゃないか」

マスコミA「でもなぁ…この連中と一緒じゃあ…」チラ…

706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:09:26.61 ID:sGsxF3zg0
入信希望者A「ヤヨイサマ…ヤヨイサマ…」

入信希望者B「ああ…早く私にも救いを…」

マスコミA「ずっとこの調子じゃ気が滅入るよ…」

マスコミC「でも意外ッスね!新興宗教団体ってもっとヤバそうなのの集まりかと思ったら、結構カワイイ娘とかいるんスもん…!」

707: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:10:01.06 ID:sGsxF3zg0
マスコミA「…お前、仕事は半端なくせにそーゆーとこはしっかり見てんのな…」ハァ…

マスコミB「ああいう可愛い系の娘が勧誘とかするんだけどな。お前も気をつけないと変な壺とか売りつけられるぞ」

マスコミC「ちょ、勘弁してくださいよ~w」

マスコミA「…なんでもいいから俺は早く帰りたいよ…」

708: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:10:30.44 ID:sGsxF3zg0
第二講堂 二階 調整室

カルプレッタ「どうでしょう代口様…?上手くいきそうですか…?」

代口「ああ…悪くない感じだ…下の様子はどうだ…?」

カルプレッタ「…まだ特に変化は見られませんが…」

代口「ならばもう少しペースを上げてみるか…」

709: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:11:15.36 ID:sGsxF3zg0
マスコミA「ハァ…なんかドッと疲れが来たなぁ…眩暈がしてきた…」

マスコミB「ここんところ上からケツ叩かれっぱなしだからな…ってアレ?なんか俺も…」

マスコミC「……グゥ…」

マスコミA「…は?お前何寝てやが…ウッ…!」フラ…

マスコミB「体に力が入らない…周りの様子もおかしい…ぞ…」ガクッ…

入信希望者A「ハァハァ…ヤヨ…ヤヨイ…サマ…」ドタッ…

入信希望者B「意識が…これが救いの奇跡…!」バタッ…

710: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:11:50.69 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「…気吸いが上手くいっているようです…次々と気を失って倒れていきます…」

代口「なんということだ…!!」

カルプレッタ「……代口様?如何なされたのですか?」

代口「これだけ大勢の気を吸ったというのに一向に止まる気配すらない…気が絶え間なく流れ込んでくるぞ…!」

カルプレッタ「この第二講堂だけでも400人近い人間がいるはずですが…!」

711: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:12:51.57 ID:sGsxF3zg0
代口「…それだけではない、外にいる人間の気まで吸い上げているようだ…!」

カルプレッタ「まさかそんな…!?」

代口「そのまさかだ」ヒタッ

カルプレッタ「…あの…なぜ私のおでこに手を…?」

代口「千里眼で見た外の様子を見せてやる。目を瞑るがいい…」

712: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:13:19.28 ID:sGsxF3zg0

『なんだ…?力が抜けていく…』

『誰か…誰か救急車を呼んで…』

『動けない…助けて…』

『ママ!起きてよママ…マ…マ…』

713: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:15:17.45 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「ま、街中の人間から気を吸い上げているのですか…!?」

代口「…よもやここまで霊力の器が大きくなっていたとは…私自身気が付かなかったがな…」

代口「おそらく長い間水脈の霊力を取り込んだ影響だろう…それが古い気を出し尽くして覚醒したのだ…喜ばしい誤算だ」

カルプレッタ「しかし代口様、これ以上外部に影響が及んでは徒に騒ぎが大きくなるだけかと…ここは一旦…」

714: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:15:58.81 ID:sGsxF3zg0
代口「フフフ…カルプレッタ君…いや、カルプレッタ、今更何を怖気づいている」

代口「壺なしでこれだけの範囲を影響下に置けるのだ…壺が戻りさえすれば完全な結界を張ることも容易いだろう」

カルプレッタ「では…あの計画を実行するおつもりですか…!?」

代口「そうだ…予定よりだいぶ早いがこの機を逃す手はない」

代口「だが…結界を張る前に壺と高槻やよいをこちら側に入れなければ…」

715: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:17:13.00 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「壺さえあれば高槻やよいはもうよいのでは…?計画が実現すれば、金などそれこそ沸いて出る様に…」ヒヒヒ…

代口「金の問題ではない。この計画には高槻やよいのようなシンボルが必要なのだ…世の注目を浴びているこのタイミングも申し分ない…」

代口「それにだ、水脈の主が戻ったのだとすれば、何を仕掛けてくるかわかったものではない…」

代口「奴が高槻やよいに肩入れしているなら、こちらもそれを利用するまでよ…」

716: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:18:10.12 ID:sGsxF3zg0
代口(さて…壺と高槻やよいは今どこに…)

代口(む…水瀬の屋敷から外に出たな…)

代口(この速度は…車か…どこへ向かっている…)

代口(さぁ、その心中を私に見せてみよ…!)

717: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:19:17.98 ID:sGsxF3zg0
キンッ!

やよい「ッ!?」ゾクッ

貴音「面妖なッ…!!」

P「ふ、2人ともどうした急に…?」

718: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:19:49.33 ID:sGsxF3zg0
やよい「ぷ、プロデューサー…今誰かに…」

貴音「見られた気配がありました…!」

P「見られた…?」

権藤「もしや、例の老人ですか?」

719: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:21:04.53 ID:sGsxF3zg0
やよい「違うと思います…もっと怖そうで…ぎゅーって締めつける感じで…」

貴音「憑依された響がわたくしに襲いかかった時に似ていました…あれよりも数段強く、より禍々しいものですが…」

P「じゃあ教団の…!もしかして警察に協力していることも気づかれたか…!?」

貴音「いえ、その心配はありません…それが早速役に立ったようです…」

P「え…?」

720: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:22:20.32 ID:sGsxF3zg0
代口「ぬ…ぐぬぅッ…!!」ガクッ

カルプレッタ「だ、代口様…!?」

代口「何かに…高槻やよいの傍にある『何か』に弾かれた…!何かは分からぬが…」

カルプレッタ「では憑依なさってみては…」

代口「同じことだ…!奴め、765プロの連中に神器の類を渡したに違いない…!」

721: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:23:21.19 ID:sGsxF3zg0
代口「…だがこちらの方角に向かって来てはいるようだ…事務所に行くつもりかも知れん…」

代口「微かにだが、四条貴音が壺を持っている姿も見えた…上手くすればどちらも我が手に…」

カルプレッタ「しかし、先程憑依はできないと…」

代口「その通り…だから直接出向いて奪うのだ、お前がな」ガシッ

カルプレッタ「ぅぶっ…!!な゛…何を゛ッ…!?」

722: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:25:15.57 ID:sGsxF3zg0
代口「私は結界を張る準備で忙しい。その間に、お前が高槻やよいと壺を奪ってくるのだ」コォォォォォォ…

カルプレッタ「がッ…アグッ…だいこ…さま…!!」ゴキ…ゴキ…グキ…

代口「案ずるなカルプレッタ…有り余った私の通力を分けてやるだけだ…少し苦しかろうが我慢しろ」

代口「お前から通力を奪って270余年…どうだ?久々の感覚であろう?」

代口「お前が戻り次第、結界を完全に閉じる。それで我らの念願成就というわけだ…!」

723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:26:39.39 ID:sGsxF3zg0
権藤「弱りましたな…」

P「全然進まないんですか?」

権藤「事故か規制か…いずれにしても微動だにしないのでは、ただの渋滞というわけではなさそうだ」

P「俺はなんだか嫌な予感がしてきましたよ…」

724: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:27:27.53 ID:sGsxF3zg0
権藤「ただ待っていても埒が明かない。幸いにして765プロ事務所まで数百メートルの距離です。必要な機材を運び込んで拠点を構築させてください」

P「構いませんが、事務所前にはマスコミが…」

権藤「それはここにいる篠原が何とかします」

篠原「聞いてないんスけど…」

725: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:28:05.95 ID:sGsxF3zg0
権藤「あの手合いはひと騒ぎすれば頼みもしないのにカメラを向けてくる…とにかく連中の興味を引いてこい」

篠原「相変わらず指示がむちゃくちゃなんだよなぁ…」

権藤「終わったら一杯おごってやる」

篠原「俺が酒弱いの知ってるでしょうが…まぁ何とかしてきます」バタム!

726: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:29:11.21 ID:sGsxF3zg0
P「律子や音無さんには、教団の連中が化け物じみている事はあらためて説明しないとな…信じてくれるかな?」

貴音「律子嬢や小鳥嬢には、わたくしからも説明を…」

やよい「…あれ?プロデューサー、篠原さんもう戻って来ましたよ?」

P「仕事早いな~…」

権藤「いや、どうも様子がおかしいですな…」

727: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:29:54.37 ID:sGsxF3zg0
ガーッ!バタン!

篠原「主任!化学兵器が使用された可能性があります!」

権藤「……車内浄化装置を作動させた。測定器をすぐに調べろ」

P「化学兵器…!?」

728: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:30:56.04 ID:sGsxF3zg0
権藤「篠原、何を見た?」

篠原「…車外に出てちょっと行った先で何人も歩道に倒れていて…俺も強烈な倦怠感に襲われて何とかここまで戻ってきたんです…!」

篠原「戻る時に渋滞の列を見ましたが、車内の人達も軒並み意識を失っているようで…」

篠原「…測定器では特に何も検出されませんが…細菌かウイルスって線も…」

729: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:31:42.83 ID:sGsxF3zg0
権藤「篠原、その強烈な倦怠感とやらはまだ続いているか?」

篠原「え?いや…そういえばすっかり元の感じに…」

権藤「車内にいる人間も意識を失っていたらしいが、このバンに影響が及んでいないのはなぜだ?浄化装置はさっき作動したばかりだ」

篠原「そういや…そうスね…」

貴音「権藤殿、よろしいでしょうか…?」

730: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:32:47.02 ID:sGsxF3zg0
権藤「私の方から聞こうと思っていたところです。あなたならその短剣にこの状況について聞けるでしょうしね」

貴音「はい…わたくしにも詳しくは分かりませんが、短剣…いえ、短剣殿が言うには、人々は何かに精気を吸い取られていると…」

貴音「ここに向かっている間、事務所の方角で大きな気の乱れを感じましたが…恐らくはこれが原因かと…」

権藤「人の精気を吸い取るときたか…しかもここ一帯全ての人間となると相当な規模だ」

篠原「このバンの中は短剣に守られていたから平気で、俺はバンから離れた途端に気を吸われたってことか…」

731: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:33:28.02 ID:sGsxF3zg0
やよい「じゃあ、私達ここから出られないってことですか…?」

貴音「いえ、短剣殿から離れなければ心配ありません」

P「つまり、常に全員一団となって移動すればいいわけか…」

篠原「…だそうだ。逃げんなよ」

ルクサーナ「逃げないわよ…!今の話が本当なら、逃げたところでどうせ気絶するんでしょ?」

ルクサーナ(フンッ…何が精気を吸い取るよ…教団が…ラダークがそんなことするはずないじゃない…)

732: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:34:23.56 ID:sGsxF3zg0
たるき亭前

ルクサーナ「何よこれ…どうなってるの一体…!?」

篠原「見ての通りだよ」

P「昼夜通して張り込んでいたマスコミ連中もみんな気を失っているとは……って…これ、本当に気絶してるだけですよね?」

権藤「……かなり呼吸は浅いですが、死んではいませんね」

権藤「しかし…これだけ大規模となると、効果範囲の中に病院や高齢者介護施設も含まれるでしょうから、この状況が長引けば死者が出る可能性も…」

733: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:35:24.04 ID:sGsxF3zg0
ルクサーナ「…!!」

やよい「そんな…誰か死んじゃうかもしれないんですか…?」

権藤「この力がどういうものかはっきりしないので、あくまで可能性の話ですが…とにかく急ぐに越したことはない」

やよい「わ、わかりました!プロデューサー!ほら、急ぎましょう!!」

P「ちょ…待ってやよい…この荷物60キロくらいあるから急ぐのはムリ…」

734: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:36:02.53 ID:sGsxF3zg0
765プロ事務所

P「ゼェ…ゼェ…エレベーターが…壊れているのを…これほど憎らしく…思ったことはない…」ハァハァ

やよい「あ!律子さん!小鳥さん!」ダッ

律子(zzz…)

小鳥「グゥ…」

735: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:36:54.58 ID:sGsxF3zg0
貴音「大丈夫ですやよい。二人とも仮眠の最中に事が起きたようです」

P「吸い取るような精気なんかほとんど残ってなかったろうに…!」

やよい「でもよかったですぅ…二人が死んじゃってたらって…私…」グス…

ルクサーナ(………)

736: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:39:46.71 ID:sGsxF3zg0
権藤「このテレビをモニターとして使うか。篠原、ここにセッティングしてくれ」

篠原「了解」

権藤「それと…やよいちゃん、これをつけてもらえるかな?」

やよい「う…?…わぁ!イルカのペンダント!」

権藤「これには小型カメラと位置情報の発信機能がついているんだ。やよいちゃん、これから私が説明することをよく覚えてほしい」

737: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:41:04.65 ID:sGsxF3zg0
権藤「君は教団の最高位を与えられている…教団本部には君や代口しか入れない『聖域』とされている場所がある」

権藤「…実際のところ、代口がその権限を本当に与えているかどうか疑わしくもある…」

権藤「だが少なくとも、代口に近づける可能性が最も高いのはやよいちゃん、君だ。そこで…」

権藤「もしやよいちゃん自身が聖域に入れない場合は、代口の衣服や持ち物にこのペンダントを忍ばせて欲しいんだ」

権藤「上手いことやよいちゃんが入ることができた場合は、その場にこのペンダントを置いてくるだけでいい」

738: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:43:08.69 ID:sGsxF3zg0
やよい「あぅぅ…ちょ、ちょっとむずかしいかも…」

権藤「出発する時にシールタイプの超小型トランシーバーを渡すから心配はいらないよ」

やよい「分かりました!えと…あっちでちょっと復習してきますね!」タタタ…

篠原「…話には聞いてましたけど、ほんと絵に描いたような良い子ですね、彼女」

権藤「情けない話だよ…各組織が策謀めぐらしたこの十余年の決着を、あんな十代の少女に負わせようというんだからな…」

739: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:44:05.93 ID:sGsxF3zg0
P「…あれ?権藤さん、もしかしてやよいに説明したんですか?」

権藤「何を探しているかについては伏せてますがね」

P「何をって…「大量の兵器」ってだけで俺も具体的には聞いてませんでしたね…」

権藤「そうですね…教団が形振り構わぬ攻勢に出ている今、我々が懸念している事態についてあなたにもお話して…」

740: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:45:27.74 ID:sGsxF3zg0
ガッシャァァァアアン!!!

やよい「きゃああッ!!は…放してっ…!!」

P「やよいッ!?」

権藤「しまった…!!」

741: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:46:38.98 ID:sGsxF3zg0
?「ヒヒッ…わざわざそっちから出向いてくれて感謝するよ…!」

篠原「なんだありゃあ…!?」ジャカッ

?「おっと!物騒なモノはしまいな!この子に当たるよ!」グイッ

やよい「あうっ…」

篠原「チッ…!」チャキ…

742: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:47:30.55 ID:sGsxF3zg0
貴音「何奴ッ!?」

?「名乗る必要があるのかい?あんたみたいな小娘ごときに…」ヒヒヒ…

ルクサーナ「…まさかそんな…その声…カルプレッタ様…?」

カルプレッタ「ん…?もしかしてルクサーナかい?連絡がないと思ったら捕まっていたとは情けないね…」

743: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:50:11.56 ID:sGsxF3zg0
権藤「カルプレッタ…?この狐の化物があの女だというのか?」

カルプレッタ「どこの馬の骨か知らないが礼儀というものがなっていないね…これがアタシの本来の姿さ」

P(狐…なのか?こいつ立ち上がったら3メートルくらいはあるんじゃ…!)

貴音「やよいを解放なさいっ!」キッ

カルプレッタ「おお怖や怖や…!余りの気迫に足が竦んで動かぬわ…おまけに手も震えて、うっかり力が入り過ぎてしまう…」ギリ…

やよい「あぅっ!いっ…!」ギチギチ…

744: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:51:13.72 ID:sGsxF3zg0
P「や、止めろ!要求は何だ!?」

カルプレッタ「要求?立場が分かっていないようだねぇ…お前達はアタシの命令に従うしか道はないんだよ。そうでなければまとめて八つ裂きさ」キヒヒ…

貴音「痴れ者がっ…!」

P「よせ貴音…!下手に刺激するな…」

745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:52:20.86 ID:sGsxF3zg0
ルクサーナ「か、カルプレッタ様!なぜやよい様を傷つけるのですか!やよい様はラダークの…」

カルプレッタ「あぁ…信心深い哀れで孤独なルクサーナよ、よぉくお聞き…ラダークはね…」

ルクサーナ「は、はい…」

カルプレッタ「…ぜぇーんぶ作り話!嘘!デタラメ!はい、残 念 で し た ー!」ヒャヒャヒャ…

ルクサーナ「……え?」

746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:55:16.84 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「聞こえなかったかい?ラダークなんてこの世には存在しないんだよ。もちろんあの世にだっていやしないだろうさ」

ルクサーナ「だ…だって…重度のPTSDで廃人同然だった私を…ラダークの奇跡で治してくださったではないですか…!」

カルプレッタ「あぁ~…あれはね、代口様が通力でお前の記憶を弄ってやったのさ」

カルプレッタ「原因は幼少期の体験だって医者の話を元にね…その証拠に、子供の頃の事はほとんど思い出せないだろう?」

ルクサーナ「……!!そんな……!」

747: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:56:12.46 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「記録まで改竄するのは大変だったよ…お前は本当は虐殺の場にいて見ていたのさ。両親や兄弟が殺されるのをその目でね…」

ルクサーナ「…やめてッ!」

カルプレッタ「そうだ、アタシの通力で記憶を戻してやろう。ラダークがいない悲しみなど、廃人になれば気にもならないだろうしね」ヒヒヒ…

ルクサーナ「…お願い…もう…」

やよい「やめてください!!」

ルクサーナ「…やよい様!」

748: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:57:47.43 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「あん?」ギロリ

やよい「ルクサーナさん、嫌がってるじゃないですか!やめてあげてください!」

カルプレッタ「おやおやおや…やよい様の御高説、お耳が痛いですわ。思わず手にも力が入るほどに…!」ギリギリ…

やよい「ぐっ…あぅっ…わ…たし…こんなの…へいちゃらです…!!」メキ…

P「よすんだやよい!!殺されちまう!!」

749: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/18(木) 23:59:44.98 ID:sGsxF3zg0
カルプレッタ「全く往生際の悪い連中だね!…まぁいい、壺の場所を言えば命を取るのだけは勘弁しておいてやろう」

権藤(…篠原、まだ動くな…奴の目的は壺だ…機会を待て)

篠原(アイサー…)

貴音「壺はここにあります…!」ドン!

篠原(…ってオイ…!)

750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:03:11.59 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「ヒヒッ…そうそう…従順なのが一番さ…」

カルプレッタ「さ、こっちに持ってきな小娘!妙な真似をすればアタシの爪がこの子の柔肌にザックリいくよ」スリ…

やよい「う…」ビクッ

P「やよい…!」

貴音(あなた様…短剣をいつでも抜けるように準備を…)ヒソ…

P(え…?こんなリーチが短い武器で戦うのは無謀だろ…!)ヒソヒソ…

貴音(いいからその時に備えてくださいませ。すぐにわかります…)ヒソ…

751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:04:34.08 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「何をコソコソ喋っている!さっさと壺をよこしなッ!!」

貴音「そう焦らずとも…すぐに参ります…」スッ…

P(…ん?貴音のスカート妙に膨らんでないか…?)

貴音「さぁ、ご所望の壺です。やよいを解放なさい…!」

カルプレッタ「ああ、いいともさ…」ガシ…

カルプレッタ「…キヒッ…なぁんて言うと思ったかい?やよいも壺も全部アタシのものだよ!お前らは用済みさ!!」クワッ!

752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:05:24.24 ID:eYhwdHU70
貴音「…『そう』言うと思っておりました。今です!六十郎殿!!」

ブワッ

六十郎「ほいきた」

カルプレッタ「!?」

P「…爺さん!?」

権藤「あれが…!」

753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:07:03.26 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「ギィィッ!!」シュバッ

六十郎「ふむ…図体の割に中々素早いのぉ」フワッ…

カルプレッタ「…やはりキミツミノヌシか!邪魔立てすれば今度こそ完全に滅ぼしてくれるぞ!!」

六十郎「ほ、面白い。やってみたらどうじゃ?もっとも、お主らが欲しがっとる壺の力も失われるがの」カッカッカ

カルプレッタ「ぐぅっ…!キィィ…!!」ザッ!

ドガァッ!!

754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:08:07.76 ID:eYhwdHU70
貴音「くっ…!」

P「うおっ!?壁が…!」

篠原「クソッ…!」ガシャ

権藤「まだだ篠原!」

755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:09:50.00 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「…ハハッ!口ほどにもない!あの時のアタシとはわけが違うのさ!!」

六十郎「…わしに埃をつける程度には上達したようじゃな…」パッパッ…

カルプレッタ「!?……ぬぐぐ…!!」

六十郎「さて…お主の攻撃なんぞ屁でもないが、困ったことにわしにもこれといった攻め手がなくての…」

六十郎「そこで、プロデーサーさんの出番ちうわけじゃ」チラ…

756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:14:41.54 ID:eYhwdHU70
貴音「さ、今ですあなた様!」

P「えっ!?このタイミングで!?隙を突くとかでなくて!?」

カルプレッタ「…はっ!何を言い出すかと思えば…この青びょうたんに何ができるってんだい?」ヒャヒャヒャ…

P「青びょうたんて…ああもう!こうなりゃヤケだ!やってやる!」スラッ

チャキ…

P(…短ッ!?想像以上に短ぇッ…!?)

カルプレッタ「プフーッ…!そんな短い刀でこのアタシに挑もうってのかい?…こりゃ傑作だ!キッヒッヒ…!」

757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:16:00.71 ID:eYhwdHU70
六十郎「…コサテクイ…キミツミノヌシ…ヒムノコノテ…」ブツブツ…

P「…あのちょっと…こっからどうすりゃいいn」ビュン!!

ズバーッ!!

カルプレッタ「ヒッヒッ…ヒ……?」ズルリ…

758: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:17:21.72 ID:eYhwdHU70
やよい「あわっ…!」グラ…

ルクサーナ「危ない!やよい様っ!」ガシッ!

ドサドサッ!

カルプレッタ「ひ…ぎ…」ガクガク…

759: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:19:16.47 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「ひぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!ア、アタシの腕ぇぇぇぇぇええええ!!!!」

貴音「…るくさーな殿、ありがとうございます。やよい、もう大丈夫ですよ」

六十郎「悪いがのぉ化け狐、壺も返してもらうぞい」ヒョイ

P「はわ…はわわわわ…」カチャカチャ…

760: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:20:46.87 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「が…が……おのれぇ…青びょうたん…!!噛み殺してくれる!!」グガァ!

篠原「主任!」

権藤「ぶち込んでやれ」

篠原「遠慮なく!」ガチャン!

ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンッ!

カルプレッタ「ひっ!ぎっ!ひぎっ!?ぎぁっ!?ギャッ!」ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!

761: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:22:05.12 ID:eYhwdHU70
篠原「ダメ押しだ!」ガシャン!

ドバンッ!ガシャ!ドバンッ!ガシャ!ドバンッ!

カルプレッタ「ギャッ…!ぐがッ…!アガッ…!ギギャアアアア!!!」

ガッシャァァァアアン!!!

篠原「あっ待て…チッ…仕留めそこなったか…!」ガシャ!

762: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:24:42.80 ID:eYhwdHU70
六十郎「こりゃ頼もしいお仲間じゃの。あの女狐もこれで懲りたじゃろうて…」

権藤「やっとお会いできましたね。警視庁公安部の権藤と言います。こちらは篠原です」

P「あ、あの…お話し中悪いんですけど…どなたかこの『長剣』を外してくれませんか…?手が強張っちゃって…」

六十郎「おお、すまんすまん、術を解くのを忘れておったわい」パンパン

シュシュシュ…

P「た…短剣に戻った…」ハァ…

763: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:27:58.99 ID:eYhwdHU70
ルクサーナ「ごめんなさい…あなた達が正しかった…」

篠原「洗脳どころか人様の頭ん中直接弄るなんて、あいつらひでぇことしやがる…!」

ルクサーナ「皮肉なことだけど、代口…あの男がそうやって記憶を消してくれたおかげで、悲しまずに済んでるのも事実よ…」

ルクサーナ「たとえ記憶が戻ったとしても悲しんでいる暇なんかないわ…私はやよい様を御守りすると決めたのだもの…」

篠原「…次の教祖を見つけたわけか?」

ルクサーナ「嫌味な言い方するのね…そんなんじゃないわよ」

764: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:29:18.32 ID:eYhwdHU70
権藤「六十郎さん、是非あなたのお力をお借りしたいのです。カルプレッタは手負いながらもこの事を代口に報告するでしょう」

権藤「そうなると我々が探しているものを隠される可能性が…いや、最悪使用される恐れすらあります」

六十郎「お前さん方の探し物じゃが、十中八九わしが行こうとしとる場所に隠されておるじゃろうて」

権藤「それはどこですか…!」

六十郎「それはじゃな…」

765: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:30:04.88 ID:eYhwdHU70
シュルシュルシュル…グイッ!

やよい「え…?」ズルッ!

六十郎「なんじゃと…!?」

P&貴「やよい!」

カルプレッタ「…ガフッ…!やったぞ…!迂闊だったなキミツミノヌシ!」ギヒヒ…

766: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:31:25.08 ID:eYhwdHU70
やよい「あ…あうぅ…」ギリギリ…

篠原「し…尻尾で…!?」

権藤「壁に開いた穴から忍ばせていたのか…なんてしぶとさだ…!」

カルプレッタ「グフッ…これ以上お前らの相手などしていられん…!この子の命が惜しくば教団本部へ壺を持ってこい!」

カルプレッタ「30分以内に持ってこなければ、高槻やよいは死ぬ!腕と足を引きちぎって…八つ裂きにして殺す!」

P「…っ!!」

767: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:32:08.64 ID:eYhwdHU70
カルプレッタ「30分以内だ!!忘れるなぁっ!!」

ザザザザッ…!

P「…くそっ!!」

貴音「六十郎殿…このままではやよいは…!」

六十郎「わしとしたことが…些か無用心じゃったわ…」

六十郎「…じゃが、行く先は変わっとらん。やよいちゃんを隠すじゃろう場所も決まっておるわい…」

768: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:33:14.28 ID:eYhwdHU70
権藤「先程言っていた場所ですね?どこなんです?」

六十郎「古い祠があるはずなんじゃ…教団本部の地下にな…」

P「地下にあるはずって…ハッキリとしたルートは分からないんですか?」

六十郎「特別な場所でな…わし一人ではそこに近づくことすらできんのじゃ…建物の他の場所はくまなく探ったでの、もうそこしか残っとらん」

769: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:33:54.38 ID:eYhwdHU70
篠原「いくらなんでも漠然とし過ぎて…」

権藤「…篠原、テレビをつけろ」

篠原「え?こんな時にテレビなんか見てる場合じゃ…あ!そうか!」ダダダ…ピッ

権藤「ブロックノイズがひどいな…調整できるか?」

篠原「何とか…これで…………どうです?」

770: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:36:05.89 ID:eYhwdHU70

『は…放してください!』

『いい加減黙りな!黙らないならその喉笛噛み千切ってやるよ!!』

『私、笛なんか持ってません!』

『…ぎぃぃぃ!!こんなアホのせいで腕を失ったかと思うと、自分が情けなくなるよ…!』

771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:37:39.71 ID:eYhwdHU70
P「これは…!」

権藤「先程やよいさんに渡したペンダント型カメラからの受信映像です。あと2時間は映像と現在地の信号を送り続けてくれます」

『……』チラ

貴音「…やよいも、こちらが見ていることに気がついているようですね」

権藤「こんなことなら先にトランシーバーも渡しておくべきでしたが…とにかくこれでやよいさんの足取りを追うことはできます」

権藤「六十郎氏が言うように…やよいさんが地下の祠とやらに連れていかれるのなら…我々の探し物もあるいはそこに…」

772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/19(金) 00:38:51.53 ID:eYhwdHU70
P「六十郎さん…!もう出たり消えたりしないであんたの力を直接貸してくれ!頼む!」

六十郎「さっきも言うたが、わしは祠に近づけないんじゃ…やよいちゃん探しではかえって足手まといじゃよ」

P「そんなこと言ったって…さっきみたいな術なしに、あんな化物共と戦えるわけないでしょうが…!」

六十郎「まぁまぁ落ち着きなされ。何も全く打つ手がないと言うてるのではないわい」

六十郎「わしが直接出向くことができん代わりに、お前さんがわしの力をその身に宿せばいいんじゃ」

P「あんたの力を…?」

779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:38:34.72 ID:2FWYeuqG0
水瀬家本邸

亜美「ズズズ…ぷはぁ~…やはり茶の湯はたまりませんなぁ、真美殿」

真美「まさにわびさびですなぁ…」ズズー

伊織「エインズレイのティーカップのどのへんにわびさびがあんのよ…」

真「むむむ…」カタカタカタ…

780: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:39:27.09 ID:2FWYeuqG0
真美「…まこちん殿、貧乏ゆすりはお行儀が悪いですぞ」

亜美「ですぞー」

真「ふ、二人ともなんでそんなに落ち着いていられるのさ!」

真美「…真美達は今茶道ごっこでちょ→リラックスしてるかんね。ささ、まこちんも一杯…」

亜美「えらい人は言いました『茶の道はヘビー』だと…」

真「ソレを言うなら蛇の道は蛇…ってお茶と全然関係ないじゃないか…」ハァ…

781: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:40:16.67 ID:2FWYeuqG0
伊織「同調するわけじゃないけど、ここでジタバタしたってしょうがないじゃない?」

真「そりゃまぁ…もうボクらに出来ることはないけどさ…分かってても落ち着かないよ…!」

美希「カンタンだよ真君…こうやって一口啜って…フゥ…これだけなの」

真「それにしたってみんな落ち着き過ぎじゃない…?ゆ、雪歩…このお茶なんか入ってるの…?」

雪歩「え?確かにリラックス効果はあるけど…あ、怪しい葉っぱなんか入ってないよぉ…ホントだよ…!」

真「いや、怪しい葉っぱとは言ってないけど…」

782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:40:49.78 ID:2FWYeuqG0
亜美「でも真美ぃ、茶の湯もちょっと飽きてきたYO…」

真美「よっしゃ!じゃあはるるんのケータイでワンセグ観よーじぇー!」バタバタ

亜美「はるるーん!スマホ貸してスマホー!」

春香「え?亜美と真美も持ってるでしょ?」

真美「だってぇ、真美達のはワンセグついてないんだもーん!」

亜美「お願ぁいはるる~ん☆」

783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:42:11.03 ID:2FWYeuqG0
春香「もぉ…しょうがないなぁ…はい、余計なとこさわっちゃ駄目だからね?」

真美「ダイジョブダイジョブ!はるるんの秘密の日記アプリは『もう』開かないから!」

春香「ちょっ!?」

亜美「はるるん、今時パスワードに誕生日はないっしょ」

春香「あ、あはは…ナンノコトヤラ…(変えとかなきゃ…)」

784: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:43:46.57 ID:2FWYeuqG0
真美「さてさてー、なんか面白い番組はっと………んん?」

亜美「どったの真美?」

真美「んー…なんかどこのチャンネルもおんなじニュースばっかやってるっぽい」

亜美「えー!?そんなのつまんないよー!テレ東は?最後の良心テレ東なら…」

『見てください!この大きな蟹!』

亜美&真美「通販番組かぁ…」ビミョー

785: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:49:42.61 ID:2FWYeuqG0
千早「…待って真美、そのニュース…ちょっと見せてもらえる?」

真美「うん、いーよー」

『…繰り返しお伝えします。現在警察や消防により懸命な救助活動が…』

真「救助活動?何か大きな事故でも起きたのかな?」

786: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:52:55.64 ID:2FWYeuqG0
『しかし、規制線の内側で意識を失う警察官や消防隊員が続出しており、救助は難航しているとのことです』

『この現象の原因は未だ不明とされていますが、複数の外国メディアがテロ攻撃の可能性について伝えています』

『内閣府は主要閣僚を招集し対応を協議中で、政府関係者の話では自衛隊の防衛出動も視野に…』

『……え?あ…これ?はい…はい…映像出る?出ない?このまま?』

響「ん…?どうしたんだ?」

春香「きっとなんか急なニュースが入ったんだよ。ほら、原稿渡してる」

787: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:54:50.85 ID:2FWYeuqG0
『…今入ったニュースです。○○東京都知事は先程、□□防衛大臣に対して自衛隊の『国民保護等派遣』を要請し、承認されました』

『えー…この『国民保護等派遣』は我が国に対する武力攻撃事態、もしくはそれが切迫している場合に都道府県知事などの要請に基づき発令されるもので、この制

度が出来て以降、初めての発令となります』

『これに関連して、防衛省は在日米軍と自衛隊が共同で規制線の封鎖を開始したとの異例の発表を行いました。米軍との連携は大規模テロの可能性を考慮に入れた

措置と思われ…』

響「…な、なんか…凄いことになってるぞ…」

788: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:55:58.25 ID:2FWYeuqG0
千早「これってプロデューサーの言っていた事とは…関係ないわよね…?」

『映像は今現在の規制線付近の様子です。自衛隊車両の他に、米軍のものと思われる装甲車が何台も…』

真「だと思うけど…まるで戦争でも始まりそうな雰囲気だよこれ…」

あずさ「…あら?これ、地図のここだけ赤いのは何かしら?」

789: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:56:56.92 ID:2FWYeuqG0
雪歩「えと…たぶんこれが立ち入り禁止の範囲を示してるんじゃないでしょうか……あれ?ここってもしかして…」

響「こ、これ、765プロのビルも赤い範囲に入ってるぞ!」

伊織「…あのインチキ教団の建物もね…じゃあこの騒ぎも…!」

美希「ハニー達大丈夫かなぁ…」

790: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:57:30.99 ID:2FWYeuqG0
真美「ねーねー!真美にももっかい見せてYO!」

亜美「亜美も!亜美も!」

ヴィィィィ!ヴィィィィ!

春香「ま、待って二人とも、プロデューサーさんから電話が…!」 

ピッ

791: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:58:27.74 ID:2FWYeuqG0
春香「もしもs…」

P『春香!いきなりで済まないが時間がない!響はそこにいるか!?』

春香「は、はい!響ちゃんならいますけど…」

響「え?自分に用か?」

P『他のみんなもいるな!?』

春香「ええ、みんなもここに…」

P『よし!…いいか、今から俺が言うことをよく聞いてくれ…!』

792: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 00:59:53.16 ID:2FWYeuqG0
―数十分前―

P「あんたの力を…?」

六十郎「然様。使えるのはごく短い間に限られるがの…」

P「教団が使ったっていう"憑依"みたいなもんですか?」

六十郎「あんな無粋なもんと一緒にしてもらっては困るのう。あくまで力を宿すだけじゃ。どう使うかはお前さん次第じゃよ」

793: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:02:33.08 ID:2FWYeuqG0
P「俺にそんな力を使いこなせるかどうか…」

六十郎「心配は御無用、この中ではお前さんが一番向いておるわい」

P「…も、もしかしてあれですか?俺には秘められた素質があるとか…!!」

六十郎「逆じゃよ。お前さんに通力の才はこれっぽっちもないわい」キッパリ

P「……」ショボン

六十郎「ま、そう落ち込みなさるな」

794: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:05:56.33 ID:2FWYeuqG0
六十郎「『わしら』のような者はの、万物に宿る陰と陽の気を練ったものを『通力』と呼んでいるんじゃが…」

六十郎「この陰気と陽気は相反しながらも、それでいて双方なくてはならん…これを『陰陽互根』と言う」

六十郎「当然お前さんも陰と陽の気で出来とるよ。ただ、これを練って高めるまでに至っていないちうだけの話じゃ。ほとんどの生き物はそれが普通だからの」

P「それなら、貴音の方が適任かも知れませんよ…実際不思議な力を使えていますし」

六十郎「確かに力の使い方は貴音さんの方が向いとるじゃろう…だが一つ問題があっての…」

795: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:08:15.60 ID:2FWYeuqG0
六十郎「通力を扱える者に別の通力を流し込むと気の流れが乱れてな、修練を積んだ者でなければ心身の釣合いが取れんようになってしまう」

六十郎「お前さん達もあの化け狐を見たじゃろう?昔は人を化かして銭をスリ取る程度だったんじゃが…」

権藤「あの女をご存じなので?すると代口の事も…」

六十郎「もう随分と昔の話じゃがの…あの女狐、代口とか名乗っているあの男に、余程強い通力を流し込まれたとみえる」

六十郎「…ともかくアレと違ってな、お前さんの気は澄みと濁りがきれいに別れとる状態じゃ…わしの力を流し込むにはそちらの方が都合がいいんじゃよ」

796: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:09:27.69 ID:2FWYeuqG0
貴音「…もうあまり時間がありません…あなた様…!」

P「…腹括るしかないか…!六十郎さん、やよいのためだ!やってください!」

六十郎「承知した。多少気分が悪くなるやもしれんが、我慢するんじゃぞ…」パァァァ…

P「おふっ…!なんか体の中身がぐるぐる混ぜられてるような…!」

六十郎「お前さんが通力を使える時間は、そうさのぉ…向こうに着いてから精々十五分がいいとこじゃろう」

797: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:10:11.95 ID:2FWYeuqG0
篠原「主任、カルプレッタが建物内に入りました」

P「ふぐっ…ま、まだその場所は…分からないんですか…?」

権藤「別々に行動できれば私が残ってトランシーバーでお伝えできるんですが…今はその腰に差さっている短剣が頼りですので…」

六十郎「要は、お前さんだけこの場に留まれればいいんじゃな?」

権藤「何か方法が…?」

798: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:13:12.22 ID:2FWYeuqG0
六十郎「そうじゃな…んー…これでいいじゃろ。ほれPさんや、早速力試しじゃ」ポン

P「…?このクマのぬいぐるみがどうかしましたか…?」

六十郎「このぬいぐるみにな、短剣と同じ力を与えてやるんじゃよ」

P「えぇっ!?そんなこと言われても…」

六十郎「心の乱れを静めて通力に素直に従ってみることじゃ。方法は通力そのものが知っておる」

799: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:14:38.08 ID:2FWYeuqG0
P(どうすりゃいいんだ…と、とにかく落ち着いてみるか…うぷっ…)

P(……)

P(…あれ?俺できるなコレ…)

P「…アシノメノ…キミツミノヌシ…ハシノコロモ…」ブツブツ…

P「…権藤さん、たぶんこれで大丈夫なはずです…」

800: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:15:34.90 ID:2FWYeuqG0
権藤「…これが短剣の代わりに?」

篠原(本当かよ…)

P「自分でも不思議ですけど…妙な確信があります」

P「六十郎さん…突然色々なことが分かってきたんですけど…これも通力の影響ですか?」

801: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:17:06.22 ID:2FWYeuqG0
六十郎「そういうことじゃ。お前さん自身に才がない分、通力を素直に受け入れたようじゃの」

P「じゃあ、やっぱりこの短剣は…」

六十郎「如何にも、その昔わしが拵えたもんじゃ」

篠原「は!?」

権藤「…確か石油王氏が高祖父の更に高祖父の代からの家宝だと…」

802: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:18:24.32 ID:2FWYeuqG0
六十郎「その話は後回しじゃ。ほれ、さっきのトランなんちゃらを…」

権藤「篠原、Pさんと貴音さんにもこれを。現場での援護は任せたぞ」

貴音「これがいやふぉんで…こちらの薄い膜状の物は…?」

篠原「それがマイクです。顎の下の…そう、喉のその辺に貼ってください」

803: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:19:10.29 ID:2FWYeuqG0
ルクサーナ「私も行くわ…!建物内は入り組んでるし、案内はいた方がいいでしょ?」

篠原「…主任?こう言ってますけど…」

権藤「彼女は必ず役に立つ。連れて行ってやれ」

篠原「はぁ…」

権藤「その代わり、無事戻れたら雇用の件、答えを聞かせてもらいますよ」

ルクサーナ「…前向きに検討しておくわ、ちょうど無職になったところだし…」

804: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:20:52.12 ID:2FWYeuqG0
六十郎「…祠の周りには必ず結界が張られておるはずじゃ。破るにはその短剣で直に断ち切る他はないが…」

六十郎「くれぐれも、あの男と正面切って対決しようなどとは思わんことじゃ…」

六十郎「結界がなくなりさえすればそれでよい。後はわしがケリをつけてやるわい…」

P「…分かりました…!」

篠原「さ、急いで…!」

805: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:21:54.63 ID:2FWYeuqG0
ガチャ…バタン…

P「教団本部が近いとは聞いているけど…具体的にここからどれくらいの距離なんです?」

篠原「走っていけば7、8分ってところで…」

ルクサーナ「もっといい道を知ってる…3分とかからないわよ」

篠原「ウソだろ!?いくらなんでもそんなに早く…」

806: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:23:00.07 ID:2FWYeuqG0
教団本部 第二講堂裏口

篠原「本当に3分で着いちゃったよ…」

ルクサーナ「正面ゲートに回り込もうとすると遠いけど、公園を突っ切ってこの裏口に至るルートが最短なの」

権藤『篠原、早速役立っているようじゃないか、彼女』

篠原「ハイハイ認めますよ…」

807: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:23:45.32 ID:2FWYeuqG0
権藤『カルプレッタは正面ゲートから第一講堂を抜けた…本部棟には入らず、そのまま中庭へ向かっているようだ』

篠原「中庭?代口の瞑想室じゃなくてですか?」

権藤『…どうやら我々は、施設内部に気を取られて見当違いなところばかり探していたようだな…』

ルクサーナ「中庭か…かえって遠回りになっちゃったわね…こっちから行った方が近いわ」

808: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:27:33.09 ID:2FWYeuqG0
P「ハァハァ…寝不足で走るのは辛い…」ゼェゼェ

P「…そういえば、さっきのゴタゴタで聞きそびれちゃいましたけど、教団が隠している兵器と、権藤さんが懸念している事態って…」

権藤『…我々が懸念しているのは、教団が秘匿している兵器の存在を公表して使用を仄めかす、あるいは実際に使用する可能性についてです』

権藤『これまで、秘匿が事実としても実際に使用する可能性は低いものと仮定していました…しかしこの現状です、最早何が起きてもおかしくはない』

P「そんなに凄い兵器なんですか?いざとなれば自衛隊に…それに米軍だっているじゃないですか…まぁそんなドンパチやられたら困りますけど」

809: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 01:31:20.02 ID:2FWYeuqG0
権藤『厄介なのはそこです。米軍の存在はかえって事を荒立てる可能性すらあります』

権藤『先程部下から連絡が入りました。正式な閣議決定はまだですが、この街を自衛隊と米軍が包囲する動きに出ているそうです。恐らく例の機関も噛んでいます』

P「そこまで必死になるなんて…一体教団はどんな代物を隠しているんです?昔もありましたけど、またサリンとか毒ガス系ですか?」

権藤「教団が隠しているのは熱核兵器…つまり水爆です」

P「……………へ?」

818: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/30(土) 23:59:41.46 ID:VcRpDHYy0
ルクサーナ「ちょっと待って…水爆ってどういうこと!?」

貴音「すいばく…?」

P「き…聞き間違いかな…?まさかいくらなんでも水素爆弾なんて…」

権藤『水素爆弾で間違いありません。正確には、ICBMに搭載するための熱核弾頭ですが…とにかく、今は立ち止まらずに耳だけ傾けてください』

P「わ、分かりました…!」

819: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:06:05.92 ID:Fw3a749J0
権藤『…ルクサーナさん…『W53』という名前に聞き覚えは?』

篠原「主任、彼女は教団の機密事項は知らないはずで…」

ルクサーナ「いいえ…知っているわ…」

権藤『篠原、これは彼女が教団に関わる前の話なんだ…』

権藤『…例の機関のエージェントとしてあなたがイラクに赴いた目的は、イラク戦争時に発見されなかった大量破壊兵器の捜索と、それを秘密裏に無力化することだった…』

820: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:09:42.69 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「…確かにその通りよ…予備知識としてあらゆる核兵器の構造や運用についても学んだわ…それはもうウンザリするほどにね…」

権藤『しかし、作戦行動中に市街地で自爆攻撃に巻き込まれたあなたは、極度のPTSDを発症して廃人同様となり、いつしか機関からも見捨てられてしまった…』

ルクサーナ「…その後の事は、あの女が話した通り…」

権藤『機関が擁する部隊派遣の名目は、開戦根拠の一つともなった大量破壊兵器の捜索でしたが…実際に探していたのは教団が盗んだ熱核弾頭だったんですよ』

権藤『当然ながら、彼の地にはありませんでした…』

P「なんでまたその…機関…は、イラクにあると思ったんです?」

権藤『彼らは教団をブラックマーケットにおける兵器ディーラーと位置付けていました。宗教団体というのは隠れ蓑で、アルカイダ系テロリストとの繋がりを疑っていたわけです』

821: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:11:51.88 ID:Fw3a749J0
権藤『…彼らの教団に対する監視は常にその方向で進められていた…しかし、実際は教団自らが秘匿していた…』

権藤『ごく最近になって、コロラドの一件に関する当時の私の報告や現在の捜査動向を、彼らが調べたと思われる痕跡が見つかりました』

権藤『ルクサーナさんが教団の信徒になったことも同時期に知ったようです。恐らくそこで初めて、自分達の長年の過ちに気づいたのでしょう』

P「過ち…ですか?」

822: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:17:28.80 ID:Fw3a749J0
権藤『ここからは想像の域を出ませんが…代口がルクサーナさんを取り込んだ最大の理由は、W53に関する知識と技術の確保にあったと考えられます』

権藤『911以降、核関連技術者…とりわけ核兵器の専門家や運用する軍人に対する国家の監視は厳重なものとなっていました。たとえ接触できたとしても、いずれは網に引っかかることになる…』

権藤『教団としては弾頭の秘匿を察知されるわけにはいかなかった…そこで、教団は探したのです。十分な知識と技術を有していながら、監視対象となっていない人物をね…』

ルクサーナ『それが…私だと…?』

権藤『私はそう考えています。機関は敵に知識と技術を丸々渡した様なものだ…あなたを始末するでも無くただ見捨てたのは、彼らにとって大失敗だったわけです…』

823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:20:40.52 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ『あの女が言ったように頭の中を弄れるなら、知識だけを抜き出すことも出来たんじゃないの…?』

権藤『記憶を弄った際にあなたの能力を利用できると考えたか…あるいは実際にあなたにW53の運用もさせるつもりだったか…そこはなんとも言えません』

P「で…そのW53?ってのは…弾頭だけでは使えないんじゃないですか?…門外漢なんで詳しいことは分かりませんけど…」

権藤『そうとも言い切れません。攻撃目標に対する運搬手段、即ちミサイルや航空機などを教団が持っていないとは断言できませんからね…』

権藤『あるいは、過去のカルトに見られるような集団自殺に用いるつもりならば、ただ地上で起爆すればいいわけです。それこそ跡形もなく消滅できるでしょう』

権藤『…もっとも、あのような超常の力を実際に持っている連中が集団自殺を、それもわざわざ核兵器を用いて行う理由はどこにも見当たりませんがね…』

824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:23:04.93 ID:Fw3a749J0
P「どっちにしても…奴らがその気になればこの辺一帯は火の海になるわけですか…!」

権藤『そんな生易しいものではありません。仮に、爆発効果が最大限発揮される高度へ弾頭を運搬する手段を、教団が持っていたとしましょう…』

権藤『東京23区の中心で爆発すれば、半径2キロは高熱の火球に呑み込まれ、23区はほぼ全域が強烈な爆風に曝され壊滅します』

権藤『熱放射に至っては千葉市、さいたま市、横浜市などの隣県都市部にまで及び…』

権藤『死者は500万人以上、負傷者は1000万人を超えると予想されます』

825: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:35:11.46 ID:Fw3a749J0
P「ごっ…500万!?そんな威力がっ!?」

貴音「すいばくとは…それほどまでに恐ろしいものなのですか…!」

権藤『この試算はあくまで予測に過ぎませんが、純粋な爆発の威力だけで見ても、W53の核出力は9メガトンです。これは広島型原爆の約600倍にも上ります』

貴音「広島…原爆…それならわたくしも知っています…一瞬にして大勢の人々が亡くなったとじいやに聞きました…」

貴音「その様な惨たらしいものが使われようとしているのなら、断じて止めねばなりません…!」

権藤『我々も思いは同じです。その為に、この十数年を費やしてきました』

826: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:38:40.86 ID:Fw3a749J0
P「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか…!」

権藤『「宗教団体が隠し持っている水爆を発見したいので、おとり捜査に協力してくれ」…どうです、協力する気になりますか?』

P「…な…なるほど…」

権藤『それに、本来W53はずっと以前に全量処分されたことになっていたはずの代物です…』

権藤『それがこの様な形で表沙汰になれば、日米の安全保障問題のみならず、核の削減や不拡散を旨とする核保有大国の建前が崩れることになる…その影響は計り知れません』

権藤『我々としては、発見の糸口が掴めさえすれば後は引き継ぐつもりでした…しかし、この様な状況は私の想定にもありませんでしたよ…』

827: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:39:39.49 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「…止まって…中庭に着いたわ…」

P「気配を悟られない様、通力を使っています…そのはずです…たぶん…」

篠原「頼りになるんだかならないんだか…」

権藤『…代口の銅像が映っている…どうも台座に何らかの仕掛けがあるようだ…』

828: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:42:05.35 ID:Fw3a749J0
カルプレッタ「…さ、この台座の隅に一つだけ色の違うタイルがあるだろ?そこを押しな…!こっちはお前を尾で掴むので『手一杯』なんだ」

やよい「……あ、あの…その前に私お手洗いに…」

カルプレッタ「ハッ!馬鹿も休み休み言いな!!時間稼ぎのつもりか知らないけど、無駄なことさ。奴らが追いついてきたところで結果は変わりゃしないよ」

カルプレッタ「…それとも何かい?目の前であの青びょうたんが噛み殺されるのがそんなに見たいのかい?」キヒヒ…

829: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:45:58.40 ID:Fw3a749J0
やよい「…!ちっ…違います!!プロデューサーはそんなに弱っちくありません!あ、あんたなんか…こ…こてんぱんにたおしちゃうんだから!!」

カルプレッタ「ハンッ…あんな若造ごとき、キミツミさえ出てこなけりゃ、真っ先に頭を噛み砕いてやったものを…!」

やよい「キミツミ…?」

カルプレッタ「お前達が六十郎とか呼んでるあの老いぼれのことさ。昔はそりゃ滅法強かったよ…それもああなっちゃねぇ…代口様には敵いっこないさ」

やよい(なんだろう…どこかで聞いたことあるような…)

830: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:49:13.69 ID:Fw3a749J0
カルプレッタ「…って、そんな無駄話はしてられないんだよ…早くタイルを押しな!」

やよい「い…嫌です!ぜったい押しません!!」

カルプレッタ「たくっ…何から何まで手の焼ける小娘だ…!」キィン!

やよい「あうっ…!」ガクッ

P(や、やよい…!)

カルプレッタ「…ッハァ…ハァ…通力を出し惜しみせずに…初めからこうしておけばよかったよ…」シュルシュル…

カチリ…ゴゴゴゴゴゴ…

831: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:50:45.50 ID:Fw3a749J0
権藤『やはりそこが入り口のようだ……ん?ええ、どうぞ構いません。ここに話しかけてください』

六十郎『…これで聞こえてるかの?さっきも言うたが、絶対にあの男と直に対決してはいかんぞ…』

P「忠告には出来る限り従いますけど…やよいの身が危なければどうなるかは保証できません…!」

貴音「わたくしも同様です」

六十郎『やれやれ…とにかく真っ先に結界を探すんじゃ…』

六十郎『最早千里眼でお前さん達の姿を見ることすらできん…これ程強力な結界ともなれば、目立つ作りのはずじゃ』

832: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:53:01.35 ID:Fw3a749J0
権藤『たった今、ペンダントからの映像や音声も入らなくなりました。あの下は電波を遮断する構造になっている…十中八九、あそこが連中の心臓部でしょう』

権藤『幸いにして、連中が信徒らの精気まで吸い取ったお陰で妨害もなく来られましたが…その穴から先は特に気をつけてください。篠原、先導しろ』

篠原「了解。行きます…!」

貴音「篠原殿、暫しお待ちください」

篠原「とっとと…な、なんスか?」

833: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:56:35.97 ID:Fw3a749J0
貴音「あなた様…お気づきになりましたか…?」

P「ああ…いつの間にか大勢の気配が…わざと手薄に見せかけて誘い込んだのか…!」

貴音「…後方と前方に数十人…いえ、壁の向こうにも…数百人はいるでしょうか…皆操られています」

篠原「…帰り道を塞がれて唯一の行き先が敵の罠とは…国軍に包囲された時の方がいくらかマシだぞこりゃ…!」

ルクサーナ「どっちにしても退くって選択肢はないでしょ?愚痴ってないで行くわよ!」ダッ!

834: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 00:59:11.25 ID:Fw3a749J0
LHS中庭地下

代口「…どうだカルプレッタ、新しい腕の調子は?」

カルプレッタ「ありがとうございます…!それはもう前よりも数段は素晴らしい出来で…」

カルプレッタ「それはそうと…彼奴等の処置は如何が致しましょうか?もしお許し頂けるのならば私めが八つ裂きに…!」

代口「まぁ待て…丁度よいではないか、彼らを『見物客』として歓迎してやろう」

835: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:02:41.86 ID:Fw3a749J0
代口「彼らに関わったからこそ計画が実現するんだ。新世界の幕開けをその目で見てもらおう…」

代口「…その後はまぁ…適切に処理すればいいだろう」

カルプレッタ「あの青びょうたん…765のプロデューサーの処理は是非とも私めに…!」

代口「それはお前の好きにすればいい…それよりも早速のお出ましだ…お前は『アレ』を準備しておけ」

836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:05:18.26 ID:Fw3a749J0
篠原「…暗くて下の様子が分かりにくいな…階段どころか梯子すらないときたか…」

ルクサーナ「ロープを調達している時間はないわよ…!」

篠原「待て待て、この石で大体の深さをだな……」ポイッ

ヒューーーーーーーーーー---……………‥‥

篠原「……」

篠原「いや~…ムリだわこれ…」

837: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:06:32.10 ID:Fw3a749J0
P「えっと…ちょっと待ってください…」ブツブツ…

篠原「?」

P「…今、全員を見えない鎧で包みました。そのまま飛び降りても大丈夫なはずです!」

篠原「いやいや…音もはね返ってこないほど深いんスよ?確実に死ぬでしょ…」

P「やよいの身が危ないんだ!とにかく今は信じてください!」

838: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:08:13.94 ID:Fw3a749J0
P「俺が先に行きますから、後に続いてきてください!」バッ

篠原「え?ちょっとマジで…」

貴音「さ、急ぎましょう」バッ

篠原「ちょっ!?」

ルクサーナ「あの子達に置いて行かれるわよ」バッ

篠原「あっ……南無三!」バッ

839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:09:26.76 ID:Fw3a749J0
篠原(くそっ…今度という今度は死んだな…)

ドサッ!

篠原「へぶっ!?」

貴音「篠原殿、お怪我はありませんか?」

篠原「あたた…大丈夫だけど…こんなすぐ底に着くわけが…」

840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:11:24.28 ID:Fw3a749J0
貴音「どうやら、ここは外からひどく歪んだ場所に在る様です…実際にはそれほど深くはありません」

篠原「薄暗いけど…地下にしては明るいな…照明があるわけでもないのに…」

ルクサーナ「…これ見て、すごい大木…何本も生えてるわ。下草は全部枯れてるみたいだけど、この木はまだ生きてる…こんな地下にどうして地上の植物が…?」

P「つい最近まで…たぶん何年か前までは地上にあった場所なのでは…」

パチパチパチ…

一同「!」

841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:14:24.86 ID:Fw3a749J0
「…御名答!君が言った通り、元々この場所は地上にあったのだよ…」

P「お前が代口か…姿を見せろ!」

スゥ…

代口「…信徒達はそう呼んでいる…私にとっては、思い入れのない名だがね…」

P(…社長並に黒いとは聞いていたが…薄暗くて姿がよく分からないな…)

842: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:18:08.86 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「…よくも長い間、散々騙してくれたわね…!」

代口「こんな形で袂を分かつのは実に残念だよ…君にはもう少し役立って欲しかったんだが…カルプレッタは少しおしゃべりが過ぎたようだ」

代口「それに…君の相方の人選もカルプレッタのミスだったな。まんまと鼠の侵入を許すとは…」

篠原「この女の相方?冗談言うなよ。俺はこいつと違って信仰心ってやつが希薄でね、あんたをボコれるこの日を待ちわびてたよ」

代口「フン…口だけは達者だな…」

843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:19:23.60 ID:Fw3a749J0
貴音「壺は持って参りました…やよいには危害を加えない約束のはずです…」

代口「無論だ。そもそも私は最初から彼女に危害を加える気はない…カルプレッタは腕を失い冷静さを欠いていたのだ。あれの発言は忘れてくれ」

P「なら話は早い…さっさとやよいを返してくれ!」

代口「…悪いがそうもいかないのだ。彼女には今後も重要な働きをしてもらわなきゃならんのでね」

代口「君らにも是非とも見てもらいたい…この先、如何にして世界が変わるのかを…」

844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:23:16.75 ID:Fw3a749J0
篠原「宗教パンフのキャッチコピーはそこまでだ…」ジャカッ

篠原「あの化け狐には銃が効いた。いくら化物じみていても生物に変わりはないってことだ。それはお前だって同じはずだろ」

代口「正直に言えば、私も鉛弾は御免被りたい…だが、別の理由で銃はおすすめ出来ないな…」

代口「君は通力の鎧で守られているから気づいていないようだが、ここは一面に可燃性の液体が撒かれている…」

篠原「…なんだと?」

845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:24:24.66 ID:Fw3a749J0
代口「揮発性も頗る高い…そんな場所で発砲して火の粉が散ってみろ…どうなるかは説明するまでもなかろう…」

代口「君らは助かるかもな。だが高槻やよいはどうなる?仮に火の手から逃れられても、酸欠で命を落とすことになるぞ…」

篠原「…Pさん、可燃性の液体ってのは本当ですか…?」

P「…どうも嘘で脅しているわけではないみたいです…」

篠原「…残念、コレの出番はなしか…」チャキ…

846: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:26:47.49 ID:Fw3a749J0
代口「…それで?君らは我々の何を、どこまで知っているのかね?」

P「えらい物騒な核弾頭を隠していることについては知ってるよ。お前らが何者かなんてことは、俺にとっちゃどうでもいいけどな…」

代口「ほぉ…これは驚いたな!弾頭のことを知っているとは…とすれば米国の手先か…?」

篠原「残念ながらハズレだ。あいつらきっと今頃てんてこ舞いだろうぜ」

代口「ハッハッハ…それは何ともいい気味だな。しかし、他にも我々の核心に迫っていた組織があったとは…それもキミツミノヌシまで味方に付けて…」

847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:28:29.79 ID:Fw3a749J0
貴音「キミツミノヌシとは…六十郎殿のことですね…」

代口「そうだ四条貴音…君ら765のアイドルには驚かされてばかりだったが…キミツミが手助けしたとなれば全て納得がいく」

代口「特に我那覇響には一番驚かされたよ…彼女のせいで、こんな姿を晒す羽目になったのだからな…」

ドスンッ!

P「…いっ!?」

ルクサーナ「…っ!?」

篠原「…勘弁してくれよ…!」

848: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:36:55.48 ID:Fw3a749J0
貴音「それが…あなたの偽りなき姿ですか…!」

代口「そうとも…数多の妖を配下に従え、かつては武蔵国一円にその名を知られた、五郎右衛門狸とは私のことだ…!」

代口「尤も…人界に身を置かねば生きていけぬ世となってからは、その名を知る者もだいぶ減ったがな…」

篠原「化け狐の親玉は化け狸かよ…次はなんだ?  袋で空でも飛ぶのか…?」

代口「…残念ながらそういう芸は持ち合わせていないな…君の●●にぶら下がっているその小汚い を引き千切ることなら出来るがね…」

篠原「…遠慮しておく……」

849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:39:32.28 ID:Fw3a749J0
P(対決するなってのはこういうことか…!通力のプレッシャーが桁違いだ…とても敵いそうにない…!)

代口「こちらも出来る限り礼節を持って迎えている。君らにもそれ相応の態度を示して欲しいものだ…」

貴音「では…五郎右衛門殿。先程やよいに重要な働きをしてもらうと言っていましたね…一体彼女に何をさせようというのですか?」

代口「実に良い質問だ。それを今から君らに見せようとしていたところだ…おいカルプレッタ!準備はまだか?」

カルプレッタ「た、ただ今!…くっ…重っ…!」ガラ…ガラガラ…

代口「軽く2tはあるんだ。もっと気張って運ばんか」

やよい「……」

850: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:41:50.97 ID:Fw3a749J0
P&貴音「やよい…!」

ルクサーナ「やよい様…それにあれは…!」

篠原「…本当に在ったんだな…!」

カルプレッタ「ハァハァ…これ…この通り…お前達の探し物が…ハァ…ちゃあんと『二つ』揃っているよ…」ゼェゼェ…

代口「どうかね?冷戦が産み落とした愚かしい人間の遺物と、輝かしい未来の象徴の組み合わせは?」

代口「ただ縛り付けているだけじゃないぞ…彼女の精神は今、この核弾頭に繋がっている…正真正銘の運命共同体というわけだ」

851: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:43:26.35 ID:Fw3a749J0
P「ふざけるなっ…!!やよいを今すぐそこから下ろせ!!」

代口「そう熱り立つこともあるまい…彼女は君らが思う以上に安全な場所に居るんだ…」

篠原「核弾頭に縛り付けて安全とは、聞いて呆れるぜ…」

代口「すぐには理解できんだろうが…なぁに安心したまえ、君らにも分かりやすく説明してやろう」パチンッ

サァァー…

一同「!?」

852: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:46:43.58 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「な、何?急に空が…!?」

貴音「突然地上に出たようですね…しかしこの荒涼とした様は一体…」

P「ま、まさかもう核攻撃を…!?」

篠原「だったら俺らも平気じゃないはずですし…この焼け落ちた建物、爆風に曝された感じじゃないッスよ…それにこの臭いは…」

ルクサーナ「腐臭と肉の焦げた臭い…理由は分からないけど、何処かの戦場みたいね…でなけりゃ災害地か…」

P「…よく見たら和風の木造建築ばかりだ…じゃあ少なくとも東京の都市部じゃないわけか…」

853: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:51:22.46 ID:Fw3a749J0
代口《かつての京…御所の近くだ…》

篠原「代口か?てかなんだこの響くような声…」

P「これが京都…?いくら何でも古風過ぎるだろ…もしかして過去の姿なのか?」

貴音「京の都がこれ程荒廃しているとは…一体何時頃なのです?」

代口《細かい年数など忘れてしまったが…応仁の乱の頃だ》

代口《この頃、私と家族はある寺に住み着いていたが、都がこの通り戦場となり焼け出された。その際に父は死に、母や兄姉ともはぐれてしまった…》

代口《見ろ、そこの水溜まりで血や泥に汚れ、ボロ雑巾のようになっているのが、幼い頃の私だ…》

854: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:52:46.24 ID:Fw3a749J0
篠原「じゃあ…これはお前の記憶なのか?」

代口《そうとも言えるが…正確には水の記憶だ。だからこそ第三者の視点で像を結んでいる》

ルクサーナ「待って、向こうから人が…」

代口《人ではない、人の形をしているだけだ…》

貴音「あれはもしや…!」

855: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:56:46.81 ID:Fw3a749J0
青年「其処な子狸よ、如何いたした?」

子狸「!?……フーッ!!」ブルブル…

青年「これこれ、我は人に非ず…」

代口《もう少しわかりやすくしてやろう…》パチンッ!

856: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 01:59:25.18 ID:Fw3a749J0
青年「…私は人ではない。この戦とも無関係だ。御主と言葉を交わせるのが何よりの証拠であろう」

青年「御主の様子はただ事ではないぞ…まずは火傷の手当てをせねばなるまい…」ポゥ…

子狸「…!もう痛くねぇ…!」

青年「腹も減っていようが、生憎食べ物は持ち合わせておらんのだ…そちらは暫し我慢してくれ」

子狸「なんでオイラにかまうんだ…?あんた誰なんだ…?」

857: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:01:30.16 ID:Fw3a749J0
青年「我が名はキミツミ…西で大きな合戦があると聞き及んで一応来てみたのだが…なんともまぁ惨いものだ…」

子狸「人じゃねぇってことは…神さんか…?父ちゃんが言ってたぞ…神さんっていう偉い方々がいるって…」

キミツミ「まぁそんなところだ…私自身、気づいた時にはそう呼ばれていただけで、実を言えばよく分からんのだがな…」ポリポリ…

キミツミ「見聞を広めればいずれ分かるのではないかと旅して回っておるが…このところは目に見えて戦が増えた…」

858: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:04:51.42 ID:Fw3a749J0
貴音「あなた様…あの若者、六十郎殿なのでは…」

P「あれが!?見た目すごい若いぞ…20歳くらいか?」

篠原「…応仁の乱の頃から生きてるのかよあの爺さん…!」

代口《この出会いが縁で、私は奴に師事することになった…これがもう少し後の様子だ》

サァァー…

859: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:07:37.60 ID:Fw3a749J0
キミツミ「ほぉ…明智めやりおったわ…派手に燃えておる…」

五郎右衛門「キミツミ様…この戦、一体いつになったら終わるのでしょう…」

キミツミ「そうさなぁ…織田が頭領を失った今、天下はまた割れることになるだろう…当分は戦続きだ」

五郎右衛門「このままでは民は苦しむばかりです…いっそ…我らが通力をもってして、戦狂いの武者共に目にもの見せて…!」

キミツミ「言ったはずだ五郎右衛門、それは罷り成らんとな…」

五郎右衛門「何故なのですか!?我らが力を合わせれば恐れるものなど…」

860: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:12:06.87 ID:Fw3a749J0
キミツミ「通力は戦の道具ではない。たとえ一人二人を相手にできても、大勢の兵の前には無力に等しい」

五郎右衛門「憑依の術があるではありませんか!あれで兵を操り、手勢を増やせば…」

キミツミ「それと人界の戦の何が違う?田畑は荒らされ、村々は焼かれ、女子供が殺されることに変わりはないぞ…」

五郎右衛門「…!しっ…しかし…しかしっ…!!」

キミツミ「戦は悲惨だし私も好きではない…だがな、民を統べる者が出てこなければ止まらぬものだ。今は見守る他はないのだ五郎右衛門…」

五郎右衛門「ぐっ…」

代口《私は奴の言い分に納得がいかなかった…言いつけに背いてでも戦を引っかき回してやろうと通力を使ったが、これが大失敗だった…》

サァァー…

861: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:23:06.17 ID:Fw3a749J0
兵「いいぞ!そっちに追い込め!」

兵2「物ノ怪め!まんまと引っかかりおったわ!!」

五郎右衛門「はぁ…はぁ…」ガサガサ…

使番「お伝え申す!大狸めは矢で手傷を負い、こちらに向かっております!鉄砲で仕留めよと、本陣より御下命が…」

鉄砲大将「相分かった!必ずや仕留めて御館様に献上いたすと、左様にお伝え願いたい!」

使番「はっ!」

862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:26:18.91 ID:Fw3a749J0
五郎右衛門「はぁ…はぁ…」ガサガサ…

鉄砲大将「…あそこか…鉄砲衆!火蓋切れ!おう、待て待て焦るでない…!もちっと引きつけるのじゃ!」

鉄砲大将「今じゃ…!…放てぃっ!!」

カチカチ…カチン…カチン…

鉄砲大将「…どうした!何故撃たぬ!?」

鉄砲足軽「そ、それが…急に火薬が湿って…」

鉄砲足軽2「こ、こっちもだ…こりゃきっと物ノ怪の祟りだぁ…!」

鉄砲大将「ええい!何をしておる!…化物めが逃げてしまうではないか!!」

863: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:29:03.07 ID:Fw3a749J0
五郎右衛門「…ゲホッ…何故助けたのです…あなたの言いつけを破ったのに…」

キミツミ「…見殺しにする理由にもなるまい…それにな、私は種子島の火薬の臭いが苦手なのだ…」

五郎右衛門「キミツミ様の仰った通りでした…十人ばかり殺めたところで、次から次へと兵が湧いて出て、為す術もありませんでした…」

キミツミ「その殺めた者達にも親がいて、子もあろう…その親や子は御主を恨み、討とうとするかも知れん…それの繰り返しが戦というものだ…」

五郎右衛門「私は愚かでした…これでは戦を止めるどころか、種をまいたようなものですね…」

キミツミ「…どんな芽が出るかは私にも分からんがな…。ほれ、しっかりせんか…もう少しで御堂に着くぞ…」

サァァー…

864: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:33:54.39 ID:Fw3a749J0
代口《それからは大人しく奴に従っていた…やがて世は天下太平の時を迎え、その頃になると私も奴の考えが正しいと信じるようになっていた…》

代口《江戸開府の少し前、私達は上方を離れ、奴の故郷だというこの地に来て、住むようになった…》

代口《奴は私に通力の扱い方を教えつつ、童子の姿に変化しては村の子供と遊び、のんびりと過ごしていた…》

キミツミ「…ん?五郎右衛門、どうしたその女狐は?」

五郎右衛門「此奴、私が山賊共から奪った銭を盗もうとした不届き者で…!仕置きとして通力を奪ってやりました」

女狐「ひぃ!どうか…どうかお命ばかりは…!」

865: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:35:06.48 ID:Fw3a749J0
代口《あれがカルプレッタだ》

カルプレッタ《だ、代口様…!ここは飛ばせませんかねぇ…?》

篠原「プークスクス…」

カルプレッタ《ぐぬぬ…》

866: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:36:17.40 ID:Fw3a749J0
キミツミ「ふむ…命は取らぬから安心いたせ…それよりも通力の使い方をどこで習った?」

女狐「…郷里では皆この力を使っていました…アタシは唐人船に忍び込み、海を越えてここに辿り着いたんです…」

キミツミ「ほぉ…興味深いのぉ…その話、もう少し詳しく聞かせてくれぬか?」

五郎右衛門「この女は抜け目がありません。偽りを述べて逃げる機会を窺っているだけです!」

キミツミ「そんなに心配なら、御主が目付役になれば良かろう。…うむ、そうしよう!」

五郎右衛門「全く…あなたは何もかも甘すぎる…」ハァ…

サァァー…

867: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:43:56.17 ID:Fw3a749J0
代口《吉宗の治世の折、洋書輸入の禁制が一部解かれ、奴は蘭学者達と親しくするようになった…》

代口《やがてこの国の外に自らのルーツを見つけ出そうと、諸外国を見て回る計画を立てた》

五郎右衛門「…どうしても行かれるというのですか?」

キミツミ「日の本は散々見て回った…私と同じような力を持つ者は幾らかおったが、私が生まれるはるか以前のことを知る者は遂におらんかった…」

キミツミ「戦国の頃も南蛮人達が世界図を持ってきおったが、この前オランダ通詞から貰ったこの地図は、もっと子細に描かれておる」

キミツミ「ほれ、エウロッパやアフリカを見てみろ五郎右衛門…その間にあるこの地中海という海の周りには、古き国が多いと聞く…もしかすると…」

五郎右衛門「…残される民はどうするのです。皆あなたを敬い慕っております」

キミツミ「なぁに、私がいなくともここは水脈に守られておる。都にいた頃とそうは変わらんよ…」

868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:45:55.30 ID:Fw3a749J0
五郎右衛門「都に行くのとオランダ船に乗り込むのとではまるで話が違います!何より、水脈の霊力はそこまで届きはしないはずです!あなたはどうなるのですか!」

キミツミ「その為にこの壺を拵えたのだ。これがある限り繋がりは保たれる。それにな五郎右衛門、私は御主がいれば何も心配はないと思うておる…」

五郎右衛門「…?」

キミツミ「御主はもう十分に私から学んだ。土地の神として、ここを守るだけの力を持っておる」

五郎右衛門「わ…私が…!?そんなご冗談を…」

キミツミ「冗談などではない。私が留守の間、この土地の神は御主が務めるのだ、五郎右衛門…」

サァァー…

869: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:49:49.17 ID:Fw3a749J0
代口《この旅が間違いの元だった…なんとしてでも止めるべきだったのだ…》

P「話が見えてこないな…この過去の話がどう今と繋がるって言うんだ…!」

代口《奴は…キミツミはかつて私に言った忠告を自ら破ったのだ…この国を出るやいなや、人界の営みに介入し始めたのだ…!》

ルクサーナ「何でそんなことが分かるのよ…!」

代口《通力が使われた事は水脈の変化を見れば一目瞭然だ…!奴はこの国にいた時より、遥かに大きな力を使っていた…!》

870: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:51:44.60 ID:Fw3a749J0
代口《…その頃からだ…目に見えて人間は工業力を高めていった…》

代口《兵器はより強力に、軍隊はより大規模に、戦争は凄惨さの限りを尽くした…!》

代口《私は奴が何をしていたのかまでは知らない…全てが奴のせいとも言わない…だが確実に無関係ではないのだ…!》

代口《やがてこの国も否応なく大きな戦争に足を踏み入れていった…その時になっても私はまだ師の行動に意味があるものと信じ、沈黙を守っていた…》

サァァー…プツン…

871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:53:48.71 ID:Fw3a749J0
代口「だがそれも長くは続かなかった…大きな街が悉く焼かれ、二つの原爆が落とされたすぐ後、私は奴との決別を決めた…!》

代口「…かつての師を捨て、より正しく師の『教え』を守ろうと誓ったのだ」

代口「数では人間に劣る…通力は戦の道具ではない…統べる者が出てこなければ戦は止まらぬ…」

P「…その答えが核武装だって言うのか…!?」

872: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:58:17.79 ID:Fw3a749J0
代口「そうだとも…人間達は結局核の報復合戦を恐れて使いこなせなかった…だが私には通力がある…」

代口「通力は戦の道具ではない…だが、水脈の膨大な霊力を使って大結界を張れば、物理的な攻撃の一切を防ぐことが出来る」

代口「これは人間には逆立ちしても出来ぬ所業だ…つまり大結界の内側は、報復を恐れることなく核兵器を使用できる、世界唯一の『聖域』となる…」

代口「核の均衡などではない絶対的な核の支配によって、戦争は遂に過去のものとなる…!」

873: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 02:59:21.16 ID:Fw3a749J0
代口「君らには感謝しているよ…私自身、この計画の実現にはあと半世紀はかかると見込んでいた…」

代口「すでに核も壺も水脈もあったが…大結界を張るための、私自身の通力の器が全く足りなかったのだ…」

代口「だが偶然君らの手に壺が渡ったお陰で、私自身の力が大きく飛躍することになったのは、まさに不幸中の幸いと言うべきだろう」

篠原「…自説を披瀝しているところ悪いんだが、たった一発の核で世界を制しようなんざ誇大妄想もいいとこだ…テロリストすらもう少し現実的だぜ」

874: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:00:14.88 ID:Fw3a749J0
代口「誰がいつ、一発だけだと言ったのかね…?」ニヤリ…

篠原「他にもあるってか?はったりもいい加減に…」

代口「はったりかどうか、その目で確かめてみると良い」

サァァー……

875: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:04:09.43 ID:Fw3a749J0
ズォォォォォ…

篠原「…ちょっと待て…!これが全部ミサイルだっていうのか…!?」

ルクサーナ「これは…たしか旧ソ連の…30基以上はあるわ…!」

P「…!!」

代口《これらの購入には大変苦労したよ…LHSも資金調達の為に立ち上げた団体だ》

代口《ま、ソヴィエト崩壊後だったから物は格安ではあったがね…運び込むのに倍以上の金がかかったよ…》

篠原「一体どうやってこんなもの持ち込みやがった…!これは何処の映像なんだ!」

876: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:06:13.36 ID:Fw3a749J0
代口《君らの足下だ。この真下に発射設備がある》

篠原「なっ…!」

代口《これらが実質的な戦力だ。W53はあくまで絶対的な破壊力の象徴に過ぎない。さしずめ、雷霆を振り上げたゼウス像といったところか…》

代口《だが神としては無機質かつ無骨に過ぎる…。現代の人々に畏怖の念を抱かせるためには、その性質と相反する姿こそが相応しい…》

サァァー……プツン…

代口「高槻やよいは、人々の恐怖を呼び覚ます偶像(アイドル)となるのだ…」

877: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:08:13.70 ID:Fw3a749J0
貴音「…皆が笑顔になることを誰よりも強く望んでいるやよいを…そのような下劣極まる目的に利用しようなどと…!」キッ!

貴音「やよいだけではありません…我々アイドルに対する、許し難い冒涜です!!」

代口「…だったらどうする?四条貴音…通力の才があるとは言え、気配を捉える程度の力では私とは戦えないぞ」

代口「大人しく引き下がれ…命が惜しくばな…」キンッ!

ドクンッ!

貴音「かはっ…!?」フラッ…

貴音「こ…!この胸の痛みは…!?」

878: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:09:55.21 ID:Fw3a749J0
P「な、なんだ…!?貴音に何をしたっ!?」

代口「大結界は未だ不完全だが、君らは既にその中枢にいる…それが何を意味するか、理解してもらおうと思ってね…」

代口「言うなれば、君らは私の掌中で這い回る蟻のようなものだ。手指を動かすだけでどうとでも出来る…」

代口「なに、今のはちょっと心臓の管をひねってやっただけだ…この程度で死ぬことはないから安心しろ」

879: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:11:00.24 ID:Fw3a749J0
貴音「…はぁ…はぁ…くっ…やよい…」チラ…

やよい「……」

貴音(やよい…貴女を守るとの誓い…果たせそうにありません…でもプロデューサーが必ず…)

貴音「あなた様…せめてこの壺だけでもッ…!」

880: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:13:11.44 ID:Fw3a749J0
代口「全く…往生際の悪い…」ググ…

貴音「…ふっ…くっ…!!」ブンッ!

…ガクリ

P「貴音っ!!…とっとっと…」ガシッ…

代口「やれやれ…諦めの悪さだけは流石と言うべきか…」

881: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:13:51.16 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ(…ねぇ、やるんでしょ…?)

篠原(ああ…こうなりゃ引火を心配してる場合じゃない…一か八か…ありったけぶち込んでやる…!)ジャカッ

代口「おっと、そうはいかんぞ」キンッ

ビシッ

篠原「ぐっ…!くそっ…体が…!?」

ルクサーナ「そんなっ…手も足も…出ないなんて…!」

代口「心配するな…裏切り者は別メニューでじっくり料理してやる…」

882: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:15:52.56 ID:Fw3a749J0
P(ダメだ…やっぱり強すぎる…!)

P(…そうだ結界だ…!祠の結界を破れば六十郎さんが…!)

P(…ってどこにあるんだそんなもん!目立つどころかそれらしいものなんて何一つ…何も…)

P(……)

P(もしかして…あれがそうなのか…?)

P(可能性はあるが…確かめなきゃ…)

883: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:19:13.22 ID:Fw3a749J0
代口「…余興はこれでお開きだ…大人しく壺を渡してもらおう…今日の内に、日本政府に自分達が置かれている状況を理解させねばならんのでな…」

代口「これから世界中の人間が高槻やよいの姿を見ることになる…水爆と一体の死の天使…その記念すべき晴れ舞台をな…」

P「やよいの命は助けてくれるんだよな?お前のことは信用できないが…誓ってくれるなら…」

篠原「…!ダメだ!あんただけでも壺を持って逃げむぐッ!?ムー!!」

代口「黙っていろ小僧…」キィィン…

884: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:20:19.04 ID:Fw3a749J0
P「…誓ってくれるなら…この壺を渡す…それともう一つ…教えて欲しいことがある…」

代口「…高槻やよいの命は保証しよう。私にとっても必要だからな…で、何を教えて欲しいんだ?言ってみたまえ」

P「六十郎さん…キミツミノヌシに初めて会った時、あの人がこう言ってたんだ…」

P「この教団の建物がある場所には『わしの住んどった家があった』ってな…それは本当なのか?」

885: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:21:51.22 ID:Fw3a749J0
代口「何が知りたいのかと思えば、そんなことか…」

代口「…以前この辺りはほとんどが畑だった。他にあるものと言えば古い井戸と、その隣に小さな祠が一つだけ…」

代口「その祠に祀られていたのが、井戸の水脈を守る神『吉水津海主神(きみつみのぬし)』というわけだ…」

代口「本部を建てる前に祠は埋めてしまったよ。しかし『家』とはな…キミツミめ、余程未練があるらしい…いい気味だ…」

886: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:23:52.22 ID:Fw3a749J0
P「ありがとうよ…これ以上ないってくらい参考になったよ…」スラッ…

代口「…ふん…やはり退くつもりはないか…」

P「おあいこだろ?そっちだって約束を破ったんだからな…!」

シャキンッ!

代口「それが自在に伸び縮みする剣か…面白いが、はたして刃がここまで届くかな…?」キンッ!

P「…ぐっ…!!」ガクッ…

887: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:26:56.18 ID:Fw3a749J0
代口「心臓を握りつぶしてやってもいいが…彼女が君に大層お熱でね…カルプレッタ、後は好きにしていいぞ」

カルプレッタ「キヒヒ…では遠慮なくっ…!!」!

P「…ッ!」ダッ!

カルプレッタ「げっ!?」

ズバッ!!

888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:28:03.79 ID:Fw3a749J0
カルプレッタ「ぎ…!!!」

カルプレッタ「ぎぃぃやぁぁぁあああああッ!!!目がぁっ!目がぁぁぁッ!!!」ジタバタ

代口「なっ…!?」

カルプレッタ「ひぎぃ…代口様ッ!何故奴を抑えてくださらなかったのですかぁッ!?あぁぁ…目がぁぁ…」

代口「そんな馬鹿な…!?…まさか貴様!キミツミの通力を…!?」

889: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:29:06.88 ID:Fw3a749J0
P「そういうことだ。だがそれでもお前には到底刃が立ちそうにない…だから別のものを斬ることにした」スッ…

カルプレッタ「ひぃっ!ひぃぃっ…!!」

代口「なっ…!止せっ!止めろぉっ!!!」ガァッ!

P「後は頼んだぜ!六十郎さん!!」

ザンッ!!

890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:30:02.80 ID:Fw3a749J0
代口「ガァッ!!」ズサァッー!

代口「はぁッ…はぁッ…大丈夫かカルプレッタ!?」

カルプレッタ「だ、代口様…アタシの目が…!」

代口「治してやるが暫くものは見えんぞ…足手まといだ、お前は下がって…………!」

カルプレッタ「……代口様?なんです?どうしたのですか…!?ねぇ…」

891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:34:21.19 ID:Fw3a749J0
代口「………そうか………狙いはそっちか…」

P「ああ…だけど意外だったよ。仲間が斬り殺されると勘違いして庇うくらいの情は持ってるんだな…」

代口「…この女は私の理想のため、長い年月よく尽くしてくれている…金には意地汚いが、私にとっては唯一の同志だ」

代口「だが…それによって判断を誤った非は、認めざるを得んな…」ギリ…!


ズズ…

メキメキメキ…バキバキバキ…

ドズゥン…!

892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:35:49.03 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「…さっきの大木…あれが結界だったの…!?」

篠原「…道理で木だけ枯れてなかったわけだ…!…お!喋れる!」

P「…祠の結界は破られた。じきに六十郎さんがここに来る…!」

代口「…それがどうした!水脈の力を失った老いぼれが、今さらのこのこ現れて、それが何だと言うのだ!」

ルクサーナ「…祠に結界まで張ってたのはあんたの方じゃない!本当は恐れていたくせに!!」

篠原「そーだそーだ!」

893: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:38:36.92 ID:Fw3a749J0
代口「…黙れぃッ!!奴が来る前に大結界を張れば済む事だ!」バリバリッ!

篠原「うぉぉ…!?すげー爪…」

代口「この爪で八つ裂きにするのはお前達か…それとも…」ドシドシ…

代口「…高槻やよいの方かな…?」ミチリ…

やよい「…う……」

P「なっ!?止せ!」

894: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:41:17.61 ID:Fw3a749J0
代口「ならばさっさと壺を…」

やよい「…追い詰められるとやることなすこと矛盾だらけ…御主は昔からそうじゃったのぉ…」

代口「!?」バッ!

P「や、やよい…!?」

代口「おのれ…幻か…!」ゴシゴシ…

895: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:43:23.43 ID:Fw3a749J0
シュゥゥゥ…

六十郎「そういうことじゃ…御主が取り乱していなければ、簡単に気がついたはずじゃ…」

P「六十郎さん!やよいは…」

六十郎「向こうの木の陰じゃよ。まだ弾頭とはくっついたままじゃがな…五郎右衛門の方は暫くは動けまい…」

P「良かった……そうだ…貴音…!」ダッ!

896: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:44:27.79 ID:Fw3a749J0
P「大丈夫か貴音…!」

六十郎「…怖い思いをしたじゃろう…貴音さんや…」

貴音「あなた様…六十郎殿もここに居るということは…結界を解いたのですね…」

P「ああ…!なんとか切り札の役目を果たせたよ」

897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:46:31.50 ID:Fw3a749J0
貴音「ふふふ…やはりあなた様は…わたくしの…」クタリ…

P「貴音…?貴音っ!?」

六十郎「安心せい、眠っただけじゃよ。無理もないわい、気の張りすぎじゃ…」スッ…

六十郎「プロデーサーさんや…この壺、今少し預かっておいてくれるかの?」

P「はっ、はい、分かりました…」

898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:48:14.59 ID:Fw3a749J0
六十郎「……久しいのう五郎右衛門…祠を封じられた時以来…十年ぶりじゃな…」

代口「くっ…私の邪魔をするのか…自分の犯した罪を認めようともせず…!」

六十郎「さてそこよ、わしがわからんのは…一体どんな罪を犯したと言うんじゃ?」

代口「まだ言うか…!」

カルプレッタ「あ、あんたは代口様への言いつけを、自分で破ったじゃぁないか!」

899: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:50:07.36 ID:Fw3a749J0

六十郎「…はて、何の話かの?」

代口「しらばっくれるか…!人界への深入りを禁じたはずのお前が…この国を出て以降、通力を用いて一体何をしたのか!!」

代口「水脈を見ていたぞ…お前が大きな通力を使い続けたことは明白だ!それ以降の人間社会の変わり様はどうだ!申し開き出来ぬだろう!」

代口「自分達で制御できぬほどの大きな戦で、一体何千万の命が奪われた!?お前がこの国を出て行きさえしなければ、こんなことには…!」

六十郎「…なるほどのぅ…つまり、わしが通力を使って人の世を操っておると…そう思うたのじゃな?」

代口「図星であろうが!!」

900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:51:00.65 ID:Fw3a749J0
六十郎「やっと得心がいったわい…十年前に言うてくれれば、ここまで大事にせずに済んだものを…」

六十郎「五郎右衛門よ…わしが諸国を回っておる時に通力を使った相手はな…人ではないんじゃよ…」

代口「…人じゃないだと…!?」

P(どういうことだ…?)

901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:52:13.51 ID:Fw3a749J0
六十郎「御主は…ここ数百年ばかりの進歩は、人ならざる者の介入によって為されたと…そう思うておるようじゃが…」

六十郎「人間はな…通力を使える者こそごく限られておるが…通力でも敵わん大きな『うねり』となって、自分達以外の全てを呑み込まんとする力を持っておる…」

六十郎「人以外のもの…草木や土、川や海、鳥や獣、虫や魚…もっと小さな生き物に至るまで…森羅万象がその対象となってきた…」

六十郎「それはな、かつての神々やその眷属も、例外ではなかったんじゃよ…」

902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 03:55:59.98 ID:Fw3a749J0
六十郎「…わしは世界のあちこちで、同じような力を持つ者達に出会ってきたが…その多くが力のほとんどを失っておった。実際に目の前で消えてしまう者すらおったわい…」

六十郎「人の寿命はわしらよりもずっと短い…太古には聖域とされていた土地や建物も、時が経てば忘れられ…人の手が容赦なくそれらを消し去った…」

六十郎「太古の神々は人以上の力を持っていたかも知れん。だがそれでも『うねり』は止められなかったんじゃ…五郎右衛門…」

代口「…だっ…黙れ!人の力が通力のそれに勝るのだとすれば、何故に人界に深入りするななどと…!!」

六十郎「人界に過度に関わってはならぬとの教えはな…通力が人の世を変えてしまうためではない…わしらが人の力に呑み込まれぬ様、自分達を守るためだったんじゃ…」

六十郎「わし自身、この国を発って初めて気がついた事じゃがな…」

903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:07:25.59 ID:Fw3a749J0
六十郎「わしは出来る限り、弱った神々に力を分けて回ったんじゃ…大きな力を使ったのは、それだけ『器』が大きいからじゃよ」

六十郎「じゃが、人の営みは留まるところを知らん。今日森や川を守ってみたところで、いずれは消えるか変わるかの定めにある…ほとんどは徒労に終わったわい…」

代口「み…認めんぞ…まやかしだッ…!!人間自ら、たった数百年で機械文明をここまで発展させ、自分達を滅ぼし得るまでになったと抜かすか!」

六十郎「その通りじゃ。むしろ神々がほとんど滅んだことで、人の歯止めが利かなくなったせいだとわしは見ておる」

六十郎「共通の宗教が世界中に拡大したことも大いに関係しておるじゃろう…造物主なる者がいるかどうかはわしも知らんが、『宗教』はみな人が作った仕組みに過ぎんからの」

六十郎「…御主も真似たからよく分かるじゃろう?祠を埋めて、古き神の力は封じられた…人間は多くの場所で、同様のことを続けてきたんじゃよ…」

代口「…仮にだ…お前の言い分が正しいのなら…今後ますます人間は増長し、多くの犠牲を生み出すことになる…!ならば、今こそ私の力が必要ではないか…!」

904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:10:18.16 ID:Fw3a749J0
六十郎「わしに言わせれば、御主は既に人のうねりの中で藻掻いておる子狸に過ぎんわい…」

代口「…何だとッ!?」

六十郎「預言者を騙った宗教で銭を集め、人の手で作られた兵器を買ってきて、やろうとしとるのは数え切れん程の独裁者が挫折した世界征服…」

六十郎「どれもこれも人間の真似事じゃろ?たとえ御主の計画が実現しても、いずれ人間は御主を憎み、遂には滅ぼすじゃろう…」

代口「何故お前が私の計画を知っているのだ…!」

六十郎「壺を介して、プロデーサーさんに宿しておった通力をわしに戻したんじゃよ。その間の記憶と共にな…」

905: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:11:44.35 ID:Fw3a749J0
P「そうか…だから持ってろって…」

六十郎「…プロデーサーさんや、その壺はもう捨ててしもうても構わん…」

代口「!?」

P「え!?だってこれは…」

六十郎「元々わしが遠地に赴くために拵えた道具じゃが…このままでは悪用されてしまうでな、祠の結界がなくなった今、水脈の繋がりを"元に"戻した…」

代口「くそっ…!!この老いぼれがぁッ!!!」グワッ!

906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:12:56.33 ID:Fw3a749J0
パァァァァァァ…

P「うおっまぶしっ」

代口「ぬぅっ!?」

六十郎「…誰が老いぼれだって?五郎右衛門よ…」

ルクサーナ「…あれは、さっきの映像で見た…!」

篠原「若返りやがった…!」

907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:18:48.00 ID:Fw3a749J0
カルプレッタ「あぁぁ…これまでか…」

六十郎「…御主に最早勝ち目はないぞ…よく分かっておろう」

代口「ああ…その為に祠を封じたんだからな…それがこんな幕切れとは…!」

六十郎「随分と遠回りをしてしもうたが、まだ遅くはない…権藤さんというお人がな、この先の身の振り方を…」

代口「七十年以上、この日のために費やしたのだ…!ここまで来て、おいそれと引き下がれるかぁッ!!」グワッ!

カルプレッタ「代口様!」

P「六十郎さん!!」

ブワァアアアッ!!

908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:19:34.67 ID:Fw3a749J0
篠原「あっちち…!なんだこの炎の渦…!って、引火するんじゃないかオイ!?」

カルプレッタ「これは通力の炎だよ…燃料は燃えやしないさ…」

ルクサーナ「あれ?あんた人間の姿に戻ってるじゃない…!」

P「何が起こってるんだ!?」

カルプレッタ「通力を直にぶつけ合ってるのさ…私に分けてくださった通力も戻してね…それでも、水脈から霊力を汲み上げるキミツミが勝つだろうね…」

909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:21:13.77 ID:Fw3a749J0
ゴォォォォオオオ!!

代口「……グブッ…!」ガクッ…

六十郎「五郎右衛門…御主は誰よりも民のことを思うておった…家族を失う悲しみを知っていたからこそ、戦を憎んでおる…」

六十郎「じゃが、真っ直ぐに走りすぎじゃ。休んだり、曲がってみたり、御主は昔からそういう事が苦手じゃったのぉ…」

代口「そんなことは…私自身が…誰よりも知っている!それでも私は…やらねばならぬ…!」

六十郎「その使命感こそまやかしじゃよ。わしらはただ静かに見守り、童子と遊んでやる…それくらいで十分なんじゃ…人の世は勝手に回るわい」

910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:22:57.03 ID:Fw3a749J0
代口「私が兵共に追われたあの日のように…またお前が正しかったというのか…!ならば私は…私がやったことは…!」

代口「いや…違うな…どちらが正しいかなどもうどうでもいい…この犠牲がせめて人間への警鐘となれば…それで十分だ…」

六十郎「何をブツブツ言っておるんじゃ…?」

代口「お前が私を追い詰めたのだ…もうお前でも止めることは出来ない…精々後悔するんだな…!」…ドサァッ!

六十郎「…!?」

911: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:24:47.17 ID:Fw3a749J0
シュゥゥゥゥゥ…

ルクサーナ「炎が消えていく…」

カルプレッタ「代口様!!嗚呼…お労しや…」ガバッ…

篠原「これで一件落着だな…下のミサイルの後処理を考えると頭が痛いけど…」

P「…どうしたんですか?勝てたのに浮かない顔して…」

912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:26:31.15 ID:Fw3a749J0
六十郎「…どうも妙じゃ…五郎右衛門は自分から通力を止めおった…」

P「きっと諦めたんでしょう。それより、核弾頭からやよいを外すの手伝ってくださいよ」

六十郎「…やよいちゃん……それじゃっ!」ヴンッ!

P「消えたっ!?六十郎さんっ!?」

913: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:27:36.50 ID:Fw3a749J0
六十郎「一足遅かったか…!!」

P「ど、どうしたんですかそんなに慌てて…」タッタッタ…

六十郎「五郎右衛門め…最後の足掻きに、やよいちゃんと合一しおったわ…!」

P「合一…?」

914: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:31:39.49 ID:Fw3a749J0
六十郎「憑依術の一種じゃ…合一は互いの精神のより根深いところまで浸透して行うものでな…術者が己を失うこともある、大変危険な術じゃ…」

P「や、やよいは大丈夫なんですか!?」

六十郎「術者の側は危険じゃが…やよいちゃんは大丈夫じゃろう。問題は、危険を冒してまで五郎右衛門が何をしようとしているかじゃよ…」

ルクサーナ「二人ともどうしたのよ急に…貴音さんも起き抜けに妙なことを言うし…」

P「あれ?篠原さんは?」

ルクサーナ「アイツはカルプレッタと代口を見張ってるわ…あの様子だともう戦意喪失しているようだけど…」

貴音「六十郎殿…一体何なのでしょう…この禍々しい気配は…」

P(若返ってることには突っ込まないのか…)

915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:33:46.20 ID:Fw3a749J0
六十郎「お前さんの感じとる気配は、恐らくこいつじゃろう…」コンコン…

P「この核弾頭ですか?気配なんてないでしょう、生き物でもないのに…」

六十郎「付喪神と言うてな…物とて年月を経れば、それに見合った精霊が宿るもんじゃ…ほれ、丁度今お前さんが腰に着けておるその短剣のように…」

P「あ、そう言えばそうか…」

六十郎「この核弾頭も作られてからそこそこ経っておるからな、その『芽』のようなものはすでに出来ておる…」

六十郎「そして…どうやったのかわしにも原理は分からんが…やよいちゃんの精神がその芽を補って、一つの精霊のように振る舞っておる…それが禍々しい気の正体じゃ」

916: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:35:30.75 ID:Fw3a749J0
やよい「……あれ…プロデューサー…貴音さん…」

P「…やよい!気がついたか!」

貴音「よく無事で…」ホロリ…

やよい「…えーと…あなたは…」

六十郎「この美男子の顔を忘れるとはのぉ…ほれ、六十郎じゃよ」イケボ

917: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:37:48.70 ID:Fw3a749J0
やよい「…あぁ…おじいさんだったんですね…そっかぁ…」

やよい「……ふえ゙え゙ぇっ!?お、おじいさん、すごーく若くなってます!!若いです!!」ガチャガチャ…

やよい「あ…あれ?なんで私縛られてるんですか?」ガチャ…

六十郎「詳しいことは後回しじゃ。やよいちゃんや…寝ている間に何か、夢を見はしなかったかの…?」

やよい「夢…はい、見ました…!と~っても変な夢!」

918: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:39:38.03 ID:Fw3a749J0
やよい「…なんだかよく分からない夢なんですけど、私『早く爆発したいなー』って思ってて…」

やよい「でも、そんなことしたらみんなも巻き込まれちゃうからダメだよ!って…おかしいですよね、自分で自分を叱ってる夢なんて…」

やよい「そしたら…あの"だいこー"の人が来て…うぅ~…その後は思い出せないです…」

六十郎「…五郎右衛門め…苦し紛れになんちゅう事を…」

P「何なんですか一体?」

六十郎「…やよいちゃんが、この核弾頭の起爆装置そのものじゃ」

P&貴「!?」

919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:42:11.68 ID:Fw3a749J0
ルクサーナ「…どういう事?この縛られている鎖に何か仕掛けでも…?」

六十郎「そうではない。文字通り、やよいちゃんそのもの…やよいちゃんの心がこの弾頭を制御しておる」

ルクサーナ「そんな話聞いたことないわ…!60年代に…いえ、現代でもそんな技術は…」

六十郎「もちろんありゃせんだろう…通力を併用して初めて成せる技じゃ。五郎右衛門は絡繰りの類には詳しかったからの…」

P「何とかなりませんかルクサーナさん…!無力化について教わったんでしょう?」

ルクサーナ「それが…私が知っている物とは随分違うの…色々と改造の痕跡があるし…ほら見てよ、ここなんかロシア語が書いてある…それに工具もないんじゃ…」

920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:45:05.93 ID:Fw3a749J0
六十郎「工具があったところで無駄じゃよ。そいつは意識を持っておる。無理に止めようとすれば爆発するじゃろう…」

六十郎「…いや、どちらにしても五郎右衛門は爆発させるつもりじゃ。やよいちゃんと合一したということは、核弾頭とも合一したということに他ならん…」

P「それじゃ、爆発するのをただ待ってろって言うんですかっ!?」

貴音「六十郎殿の通力を使えば、憑依して止められるのではないですか?」

六十郎「出来るとしても表面的な憑依までじゃ…合一は通力をも混ぜ合わせてしまうでな、今のまま行えば、やよいちゃんの心は壊れてしまうじゃろう…」

六十郎「夢の話から察するに、やよいちゃんは核弾頭を止める役を担っておる…その枷が外れれば、五郎右衛門が手を下さずとも爆発は免れまい…」

P「そんな…!」

921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:46:04.70 ID:Fw3a749J0
篠原「おい!どこに行く気だっ!?」

カルプレッタ「はっ…離せっ!!キミツミ"様"の助けが要るんだ…!!」

六十郎「…なんじゃ、まだ懲りておらんのか?」

カルプレッタ「滅相も!!この通り猛省しております!!」ドゲザー

P(変わり身早いなぁ…)

922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:49:20.58 ID:Fw3a749J0
カルプレッタ「キミツミ様の仰った事が真実ならば…罪を犯したのは私達の方で御座います…」

六十郎「見上げた心がけ…と、言いたいところじゃが…御主がそうやってわしに謝るのは何度目だったかのぅ…」

カルプレッタ「私めは如何様な処罰も受けましょう…ですからどうか代口様…いえ、五郎右衛門様をお救いください…!」

カルプレッタ「…五郎右衛門様は御自分の精神を核弾頭に移してしまいました…このままでは肉体を逃がしても、精神は爆発と共に消滅してしまいます…」

貴音「…何と身勝手な…!やよいやわたくし達…いえ、もっと大勢の人々を苦しめてきた貴女が、この期に及んで慈悲を請うのですか…!」

カルプレッタ「御免なさい…本当に御免なさい…!」

923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:51:21.22 ID:Fw3a749J0
六十郎「済まぬがな、こうなった以上やよいちゃん優先じゃ。何とかやよいちゃんを切り離した後、圧縮した大結界で爆弾を包む他あるまい」

六十郎「爆発が大結界の外に漏れることはない…五郎右衛門は残念じゃが…」

カルプレッタ「そんな…!五郎右衛門様が死んでしまったら、アタシはどうすれば…!!」

やよい「……」

924: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:52:56.70 ID:Fw3a749J0
やよい「…か…カルプレッタさん。五郎右衛門さんは…大事な人なんですか?」

カルプレッタ「それはもう…!郷里を追われ…悪事に手を染めていたアタシを拾って下さった大恩人ですとも…!!」

篠原「それでまた悪事に手を染めてどうすんだよ…人間を憎んで核兵器まで集めて…」

カルプレッタ「うっ…た、確かに権力者や金持ち、宗教にハマる人間はお嫌いでしたけど…本当はあの方は…!」

やよい「…おじいさん…何とかなりませんか?」

925: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 04:57:43.53 ID:Fw3a749J0
P「やよい…!」

貴音「あなたを利用した張本人達を、許すというのですか…?」

やよい「私だって…怒ってますよ…事務所のみんなや家族まで巻き込んで…いっぱいいっぱい…すっごく!怒ってますっ!たぶん貴音さんより、もーっと!ずーっと!怒ってますっ!!」ガチャガチャ!

カルプレッタ「ひぃっ!」

貴音「…あ…申し訳ありません…その…わたくしはただ…」アセアセ

六十郎「…やよいちゃんは…大切な人を失う者が出るのが嫌なんじゃろう?…それが誰であれな…」

やよい「……」コクリ…

カルプレッタ「な、何と慈悲深い…!それなのにアタシは…あんな酷い仕打ちを…!」

926: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:00:14.07 ID:Fw3a749J0
貴音「やよい…」

六十郎「わしには血肉を分けた家族というものはおらんが…家族や友を失い悲しむ者達の姿は、誰よりも多く見てきたと思うておる…」

六十郎「悪人が裁きを受ける姿もな…その死を悲しむ者がいる場合…それがやむを得ん事だったとしても、決して気持ちのいいもんではなかったわい…」

六十郎「しかしな…全てを丸く収めるのは容易くはないぞ…わしが力を貸してプロデーサーさんが合一するという手も無くはないが…」

六十郎「わしらのような者から人と合一するのと違ってな、人からの働きかけで合一しようとしても、深く繋がれるかどうか…心の造りが違う故、難しいじゃろう…」

六十郎「あるいは…五郎右衛門自ら諦めれば肉体に戻ることも出来よう…じゃがこの様子では望み薄じゃ…」

カルプレッタ「そんな!?そこをなんとか…!お願いします!」

927: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:03:19.99 ID:Fw3a749J0
篠原「あの爺さんが手詰まりじゃ、俺達が考えてももう無理ッスよ…やよいちゃんには悪いけどやっぱり…」

貴音「…五郎右衛門…ごろーえもん…もしや…!」

貴音「六十郎殿、もしかすると合一とやら、出来るかも知れません…!」

六十郎「ん?それはどういうことかの?」

貴音「実は、伊織の屋敷にて…」

928: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:07:12.07 ID:Fw3a749J0
P「…響が?」

貴音「はい、響は憑依が解けてから"ごろーえもん"という名を口にしました…夢の中でごろーえもんという幼い子供に出会ったと…」

六十郎「どういう場所だったかは言っておったか?」

貴音「はい、どこまでも真っ白で…とにかく寂しいところだったと…」

六十郎「…こいつは驚きじゃわい…!響ちゃんは、恐らく尸童(よりまし)の血筋じゃ」

P「ヨリマシ…?」

929: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:09:55.84 ID:Fw3a749J0
六十郎「神下ろしをする巫(かんなぎ)の事じゃよ…壺を持たぬ五郎右衛門があれ程離れた場所から憑依できたのも、響ちゃんが尸童の血を持っていたからじゃろう」

六十郎「とすればじゃ…手が無いこともないのぅ…」

カルプレッタ「ほ、本当で御座いますか!!」

六十郎「うむ…ルクサーナさんや、弾頭の注意を引く様、解体しようとする"フリ"をしてもらえるかの?貴音さんは疲れておるところ申し訳ないが、もう少しわしを手伝ってくれんか…」

ルクサーナ「そんなことでよければ…」

貴音「わたくしなら大丈夫です。出来る限りお手伝いいたします」

930: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:16:37.28 ID:Fw3a749J0
六十郎「やよいちゃん、もう少しの辛抱じゃ…もしまた『爆発したい』と思うたら、それはダメだと叱りつけるんじゃ…後は皆を守りたいと強く念じれば、それで良い」

やよい「はい!わかりました!」

篠原「あのー…俺は…」

六十郎「お前さんはそのまま、五郎右衛門の体を見張っていればよい。戻った後に逃げられでもしたら元も子もないからの」

六十郎「…さて、プロデーサーさんには『切り札』として、もう一働きしてもらいたんじゃが…」

P「任せてください!…で、一体何を…?」

931: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:20:16.03 ID:Fw3a749J0
―現在―


P『…というわけだ!響の精神をここまで飛ばすには、出来るだけ大勢の力が要る!』

春香「で…でも私達超能力があるわけでもないし…一体どうすれば…!」

六十郎『わしは一緒に行くことは出来ん。その代わり、通力を持たないお前さん達が踏ん張れるようにな、手助けはしてやれるわい』

P『だからとにかく強く念じるんだ!響の背中に手を置いて、魂をこっちまでぶっ飛ばすつもりでとにかく念じればいい!』

響「そ、それって自分は大丈夫なのか!?そのままあの世に行ったりなんかしたら、プロデューサーの枕元に化けて出るからね!」

932: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:23:15.05 ID:Fw3a749J0
亜美「やるしかないっしょーひびきん!」

真美「ひびきん隊員、地球のピンチをお助け隊の出撃だYO!」

響「隊員自分だけなのか!?」

美希「ミキ達はぁ、後方支援なの!」

真「任せてよ響、ボク達の拳でひとっ飛びさ!」ブンッ!

雪歩「あの…真ちゃん…説明ちゃんと聞いてた…?」

933: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:25:16.30 ID:Fw3a749J0
伊織「いいから、そこ座りなさいよ!」ムンズ

響「うわぁっ!」ボスン!

千早「あのプロデューサー…その核爆弾ってどの位の威力なんでしょうか?」

P『東京都市圏は壊滅だそうだ。そこも間違いなく吹き飛ぶ…!』

春香「じゃあ、私の実家も…!?」

P『春香の実家辺りはどの程度の被害になるかは分からん…だが少なくともただじゃ済まないだろうな…』

934: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:26:40.94 ID:Fw3a749J0
ポン…

響「…ん?あずささん…!」

あずさ「…これから生まれてくる石油王さんのお子さんが、お父さんに会えないなんてことになったら悲し過ぎるでしょ…?」

あずさ「今この街にいる人のほとんどは、私達にとっては顔も知らない他人だけれど…それぞれの人に家族や友達…それに恋人が居て…死んでしまったら悲しむ人がいるわ…」

あずさ「もちろん私達にもそういう大切な人達がいる…その爆弾を止めることが出来るなら…私、何だってやるわ…!」

935: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:28:56.90 ID:Fw3a749J0
ポン…

春香「…あずささんの言う通りだよね…私達が止めなきゃ…!」

ポンポンポン…ポンポン…

千早「当然ね…」

美希「早く終わらせておにぎり食べるの!」

真「ボクが響の代わりに乗り込みたいくらいだよ…!」

雪歩「手を置くのってここでいいのかな…それとももうちょっと下の方がいいのかな…?」

伊織「どこだっていいわよそんなの…背中は背中よ!もうちゃっちゃとやっちゃいましょ?」

936: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:35:28.83 ID:Fw3a749J0
チョン…

ハム蔵「ヂュ!」

響「おおっ!ハム蔵もやる気満々だぞーっ!」

春香「みんな!強く念じて!プロデューサーさんの所まで、響ちゃんを送れるように…!」

一同「ムムム………」

ハム蔵「ヂュヂュ…」

響(ドキドキ…)

響(ドキドキ…)

響(……何にも起きないなぁ…本当に精神を飛ばすなんて出来るのか?みんなの手の暖かさしか伝わってこないぞ…)

937: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:37:37.39 ID:Fw3a749J0
響(あれ…?そう言えばなんか忘れてるような…)

ダダダダダッ…バッ!!

亜美「ひびきん号発進!!」グオォォォ!

真美「承☆認!!」ブワァァァ!

バッチィィィィンンン!!!

響「…っ!?!?」

響「アガァァァァァァアアアッ!!!!」

938: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:41:24.76 ID:Fw3a749J0
響「…うがぁ!!いっ…痛いじゃないかぁっ!何すんだ二人とも!!手は置くだけって…」

響「…あれ?みんなは…って、いつの間にか宙に浮いてるぞっ!?」ジタバタ

六十郎「響ちゃんじゃな?」ヌッ

響「うわぁ!お兄さん誰だ!?」

六十郎「ちぃと若返ったが、わしが六十郎じゃ」

響「え!?じゃあ自分…もう体から抜け出してるのか!?」

六十郎「そういうことじゃ。ここから目的の場所までたどり着けるかどうかは、あの娘達にかかっておる…では行くとしよう」スィー…

響「わっ!ま、待ってよー!」フヨフヨ…

939: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:44:55.74 ID:Fw3a749J0
六十郎「上達が早いのぅ…これならなんとか行けそうじゃわい…」

響「うわぁ…鳥みたいに空を飛んでみたいって願いが叶ったさー!」スィー…

ガクン…

響「え?あ、あれ…?」

六十郎「いかん…!」

940: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:45:58.79 ID:Fw3a749J0
P「…え?今なんて…」

六十郎「……お前さん達の事務所の辺りで止まってしもうた…」

P「そんな…!俺達の分の気も使ってるんですよね?」

六十郎「勿論じゃ…その為に貴音さんが頑張っておる…」

貴音「はぁ…はぁ…もうあまり長くは持ちそうにありません…」

六十郎「じゃが…あと何人かおらん事には、とてもここまでは運べんわい…」

P「そんな無い物ねだりしたって…!」

942: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:49:17.42 ID:Fw3a749J0
『その役目、我々が引き受けましょう』

P「え!?その声もしかして…!権藤さん!!」

権藤『申し訳ない…受信は再開していたんですが…こちらからの発信の回復に手間取りましてね…』

権藤『律子さんや小鳥さんも協力してくれるそうです』

律子『その代わり、事の顛末を後できっちり説明して貰いますからね、プロデューサー!』

小鳥『私、こういうサイキックバトル物に憧れてたんですよねぇ♪』

権藤『…六十郎さん、ここにあるクマのぬいぐるみ…これを媒介にそちらに念を送ることが出来るんじゃありませんか?』

六十郎「なるほど、御主冴えとるのぅ…!やれるかも知れん…!」

943: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:51:33.33 ID:Fw3a749J0
響「ぬぅー!!うがぁ!全然前に進めないぞ!」

六十郎「…響ちゃんや、次の一押しが来るでな、そうしたら一気にやよいちゃんと合一して、そのまま五郎右衛門のところまで行けるじゃろう」

響「本当か!?ゴローエモン…あの子供のゴローエモンもそこに居るのか?」

六十郎「恐らくは居るじゃろう…なんとか大人の方の五郎右衛門を宥めて、元の体に引き戻すんじゃ…やよいちゃんと二人だけでな…」

響「わ…分かったぞ…!」

六十郎「そりゃ…来たぞい…!」

ブワッ!

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944: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:55:17.76 ID:Fw3a749J0



響「……」

やよい「……」

響「…なぁ、やよい」

やよい「…なんですか、響さん?」

響「やっぱり怖いよね…失敗したらみんな死んじゃうし…」

やよい「はい…響さんも怖いんですよね…分かります…」

945: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:56:37.84 ID:Fw3a749J0
響「……」

やよい「……」

響「…確かに二人いるのに、心は混ざり合ってて…何だか不思議な感じだぞ…」

やよい「本当ですね…響さんの気持ちなのか、自分の気持ちなのか、もうよく分かりません…」

スン…スン…

やよい「これ、ゴローエモンさんの泣き声ですよね?」

響「うん、あっちにいるみたいだ。行ってみよう」タッタッタ…

946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 05:59:47.52 ID:Fw3a749J0
<おんつぁん…止めなよぅ…なんでこんなことしなきゃなんねんだ…!>グスッ…

≪ええい!離せ!何時までも私の心に居座り追って…!ウジウジと泣いて縋り付くだけの意気地無しめが!≫ゲシ!

<あっ!>ドタッ

≪お前がいなければ…!私はもっと非情になれたのだ…事がここまで拗れたのも、半分はお前のせいだぞ!≫

やよい「もう止めてください…五郎右衛門さん…!」

≪高槻やよい!?ばっ…馬鹿な!どうやってここに…!?≫

響「みんなの助けを借りて、自分が連れてきたんだぞ!」

<あっ!ねぇちゃん…!>

947: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:22:35.03 ID:Fw3a749J0
≪我那覇響…!そうか…そうだったな…!≫

≪だがもう遅いぞ…!弾頭の意思は爆発することに決した!私は負けたが、お前達も負けるのだ!≫

やよい「…弾頭さん、本当ですか?」

スゥゥゥ…

(ごめんなさい、やよいちゃん…だって私は…届く限りの全てを壊すために作られたから…)

やよい「でも、爆発するのは良くないですよ…」

(…爆発しちゃいけないなら、私は一体、何のために生まれたんですか…?)

やよい「…それは…私にもわからないです…本当に…大人の人達は、どうしてあなたをそんな風に作っちゃったんでしょうね…」

やよい「でも…あなたが爆発したら、たくさんの人や生き物が死んじゃって、もっとたくさんの人達が悲しむんです…」

(それは…私も嫌な気持ちになります…でも、この爆発したいって気持ちはどうしたらいいんですか?私は核弾頭です。やよいちゃんみたいにはなれません…)

948: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:26:12.75 ID:Fw3a749J0
≪そうだ…こいつは破壊のために生み出された!その本懐を遂げさせてやることの何が悪い!≫

響「ちょっと黙ってて!!」ズイッ!

≪…この小娘がぁっ!私が黙って見ているとでも思ったかっ!!≫グイッ!

ドカッ!

響「えっ!?」

≪ぐっ…!お前っ…!?≫

<はぁ…はぁ…ねぇちゃんに…手出しはさせねぇ!…おんつぁん…オイラ…オイラ本気だからなッ!>グズッ

949: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:34:30.67 ID:Fw3a749J0
やよい「あの…弾頭さん…もし良かったら…私と一緒に来ませんか?」

(…え!?やよいちゃんと…?)

≪なぁっ!?おぉ…お前は何を言っているんだっ!?気でも狂ったかっ!高槻やよいっ!!≫

やよい「私の心とあなたの心を、それを一つにするんです…私の心を元にしてるなら、たぶん出来ると思うから…」

(でも…私は核弾頭…もうずーっと前から核弾頭です…今さらここから出ていくなんて…そんなこと…)

やよい「…私にもどうなるかは分かりません。でも、それもこれから一緒に考えていけばいいんじゃないかなーって…」

やよい「弾頭さんは、本当は良い人のはずです…誰かを悲しませたくないって気持ちがあるから…」

(私が…やよいちゃんと…一つに…!)

950: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:41:30.20 ID:Fw3a749J0
≪しょ…正気とは思えん…!か…核兵器の心が人と共に歩むなど…そんなっ…そんな馬鹿げたこと出来るはずが無い!騙されるな!≫

やよい「私と一緒にトップアイドルを目指すのも、爆発するのと同じくらい、きっと楽しいですよ?」

(アイドル…やよいちゃんと一緒に…私も…アイドルになれるの…?他のアイドルのみんなや…長介達にも会えるの…?)

(それから…プロデューサーにも…!)

やよい「はい、もちろんですっ!」ニコッ

やよい「…だから…一緒に行きましょ?ね?」スッ…

(うん…私も…みんなと一緒に…アイドルになりたい…!)スッ…

≪よ…よせっ!!やめろぉぉぉぉおおおおっ!!!≫

951: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:43:34.70 ID:Fw3a749J0

「せー…」

(のー…)

「(ハイ、ターッチ!)」パチン!


…ゴゴゴゴゴゴゴ…

952: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:45:25.29 ID:Fw3a749J0
≪……あ…あり得ん…こんな事…こんなはずは…私は認めん!認めんぞぉ!!!うぁぁぁあああ!!≫シュゥゥゥゥゥ…

ガラガラガラガラ…

響「わわっ…!白い壁が崩れてく…!」

<おんつぁんが諦めたんだ…あんなこと言ってたけど、もう無理だっておんつぁんが一番分かってんだ…>

<…ねぇちゃんありがとう…オイラ、何時までもメソメソすんのやめるよ…ねぇちゃんみたいに、たくさん友達作りてぇから…>

響「偉いぞゴローエモン!…もう会えないかも知れないけど…自分…自分がっ!友達第一号だからなっ!絶対忘れちゃダメだぞっ!」グスッ…ニカ!

<ヘヘヘ…うん…ねぇちゃんも達者でな…>

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953: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 06:46:55.06 ID:Fw3a749J0




-----半年後-----




955: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 09:51:22.82 ID:Fw3a749J0
やよい「お疲れ様でしたー!!」

チーフD「お疲れちゃ~ん!やよいちゃん、すごく良かったよ~!!やっぱやよいちゃんサイコー!」

やよい「うっうー!ありがとうございますー!!」ガルーン

P「やよい、先に楽屋に戻って帰り支度しておいてくれ。俺はちょっと監督さんと話があるから…」

やよい「分かりましたー!」タッタッタ…

956: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 09:54:07.29 ID:Fw3a749J0
P「…この度は本当に有り難うございます…!復帰のために上に直談判までして頂いたそうで…解雇寸前までいったとか…」

チーフD「あはは…Pちゃんその話しちゃう?参ったなぁ…」ポリポリ…

チーフD「あの騒動の最中は確かにそんな感じだったヨ…俺も頭キタから役員会議に乗り込んじゃってね…そしたら自宅謹慎だって言うから、その場で辞表叩きつけてやったよ!」

P「本当にすいませんでした…!!」

チーフD「良いんだよ良いんだよ、俺がそうしたかっただけだもん…いやぁ、スーッとしたねアレは!良い体験だった…」

チーフD「でもね…これには続きがあって…あの『警察発表』の後が最高に笑えてね…!」ククク…

957: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 09:56:31.05 ID:Fw3a749J0
チーフD「幹部連中が血相変えてさ、やよいちゃんの復帰番組作りを担当してくれって、俺の自宅玄関前で土下座だよ土下座?初めて見たよ本物の土下座!」

P「ど、土下座ですか…」

チーフD「俺も色々知ってるよん…俺を復帰させなけりゃ二度と○○テレビの番組ではやよいちゃんを出演させないって…局のお偉いさんの目の前で啖呵切ったらしいじゃないの…?」

P「いやぁ…監督さんが解雇されたって話聞いたら、つい頭に血が上って…」

チーフD「あの局に務めている友達が言ってたよ。その時の凄み様は半端じゃなくて、向こうの偉いさん、顔面蒼白だったとか…!ホント!765プロはこれだから好きなんだよ!」

P「重ねて有り難うございます!どうか今後とも末永くお付き合いを…」

チーフD「モチのロンダヨ!Pちゃん相変わらず硬いねぇ!そこがまた良いんだけどね!」

チーフD「…そうそう、良いと言えばやよいちゃん!以前にも増してパワフルというかこう…なんて言うの?『爆発的魅力』があるね!あーいうやよいちゃんも新鮮ですごく良いヨ!!」

P「あ、あはは…やよいが聞いたらきっと喜びますよ…」

958: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 09:58:34.83 ID:Fw3a749J0
やよい「…あ、プロデューサー!お話終わったんですか?」

P「ああ。じゃあ事務所戻ろうか」

やよい「はい!あ、帰りにみんなにお土産買って帰りましょー!」

P「お、倹約家のやよいが珍しいなぁ…よし、俺のおごりだ!なんか美味しいお菓子でも買って帰るか!」

やよい「うっうー!プロデューサーふとっぱらですー!」

959: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 10:15:41.86 ID:Fw3a749J0


…人知れず俺達の戦いが終わった後、間髪入れずに自衛隊と在日米軍の共同部隊が警告領域一帯に展開し、『避難民』を領域外へと誘導した。
警察は主に領域周辺の警備任務につき、消防のレスキュー隊は領域内から領域外の病院へ、患者を移送する任に当たった。
政府の主導によって、近隣の公共施設、公営住宅、宿泊施設などを中心にいくつもの避難所が設営され、着の身着のままの避難民を次々と収容していった。
『警察発表』が行われたのは、各地の避難所の運営も軌道に乗り始めた、ちょうど一週間後の事である。

それは、宗教法人「ラダーク・ハピネス・ソサエティ」が、化学兵器と音波兵器によるテロを計画し、都内において実行したというものだった。
しかし、彼らの製造した化学兵器は不完全な物で、目眩や気絶を起こす程度の効果しか得られなかった。
対NBC装備で臨んだ自衛隊や在日米軍すら近づけなかったのは、主に音波兵器の効果によるものだったが、発振装置の不具合によりこれも長くは続かなかった。
地下鉄サリン事件以来のカルト教団による大規模テロは勿論注目に値したが、何より世間の人々を驚かせたのは、動画流出騒動でLHS信者だと見られていた
765プロのアイドル・高槻やよいが、実は警察の協力者だったという衝撃の事実であった。

960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 10:22:34.22 ID:Fw3a749J0
もちろん、これは所属事務所である765プロも了承済みであり、捜査に係る秘密保持の必要性から、協力者である旨は硬く口止めされていたのだ。
これを察知した教団は前倒しでテロを実行に移したものの、準備不足と些細なミスによって、全てが中途半端に終わったと見られている。
警察はテロを未然に防ぐことは出来なかったが、結果的に最悪の事態は免れた形だ。
記者会見では、死者を出さずに早期解決出来たのはやよいの尽力があってこそだと再三に渡って強調され、流出騒動後も警察のために弁解する事ができ
なかった765プロ関係者及びやよい本人とそのご家族に陳謝したいとして、警察庁長官を始めとした、警察幹部のそうそうたる顔ぶれが深く頭を垂れる映像は、
連日テレビニュースやワイドショーで繰り返し放送された。
メディアはやよいに対する自分達の過去の報道などすっかり忘れたかの様に、危険を顧みないやよいの行為を賞賛し英雄と称える一方、LHS元信者の内情
告白を元にした過剰演出気味な再現ドラマコーナーに時間を割き、辛口コメンテーターは警察の捜査態勢を悪し様に批判した。

一方、流出騒動後最も批判的な意見が渦巻いていたインターネット上はと言うと、大方の予想通り掌返しのオンパレード。正真正銘のお祭り騒ぎであった。
警察やメディアは徹底的に叩かれたが、弁解もせず口を閉ざしていたやよいと765プロに対しては、一部の批判がかすむほどの圧倒的同情意見が大勢を占めた。
余談だが、この月にYoutubeとニコニコ動画で最も再生数を稼いだ動画は、警察の陳謝動画の顔を全て猫に挿げ替えた、シュールなMAD動画であった…。

961: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 10:25:03.18 ID:Fw3a749J0
やよい「みなさーん!ただ今戻りましたー!プロデューサーからお菓子のお土産でーすっ!」

春香「あ!このお店知ってる!駅前に新しくオープンしたところですよね?でも確か結構お高いところだったはず…」

真美「うっひょー!!見た目からしてセレブのかほりがプンプンしますぞー!」

亜美「兄ちゃん太っ腹ー!…最近ホントに太っ腹気味だけどw」ゲラゲラw

真美「ブフッwwそれなww真美も思ったww」ゲラゲラw

P「…お前ら2人の分はボッシュートかな?」

962: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 10:28:56.35 ID:Fw3a749J0
亜美「ねぇねぇ真美ぃ!最近兄ちゃんイケメン気味じゃなぁい?じゃなぁい?」

真美「それなー!真美も思ったYO!ディーン・フジオカも裸足で逃げ出すね!」

P「空々しすぎるだろ…ほら、もういいから好きなの選べよ…(泣)」

真美「じゃあじゃあ!真美、このメッチャふんわりしたなんか白いやつもーらいっ!」パクッ

亜美「あ゙↑!!それ亜美が狙ってた奴だYO゙!!(怒)」

P「コラコラっ!こっちの箱にも同じの入ってるから喧嘩すんなって…!」

やよい「もー!2人とも仲良く食べないとダメだよ!」

963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 11:05:20.25 ID:Fw3a749J0
…あの直後、俺達は重武装の在日米軍に身柄を保護され、そのままヘリで何処か基地の様な施設に運ばれた。夜中だったので正確な場所までは分からない。
権藤さんに促されるまま、何枚かの書類にサインをさせられ、米軍や日本政府の役人に再三質問攻めにあい、その度に小難しい書類にサインを強いられた。
それを3日ほど繰り返した後、やっとのことで解放された。
…目隠ししたまま何時間も車に揺られ、東京駅八重洲口に放り出されたので、とても気分爽快とは言えたもんじゃなかったが…。

あれから権藤さん達の姿は見ていない。代口…五郎右衛門とカルプレッタもだ…それに、六十郎さんも…。
警察に問い合わせてみたものの、警視庁公安部員の情報など教えてくれるはずもなく、出向いてみても当然ながら門前払いを食らった。

…彼らは何処へ行ったのだろう?今でもその事を考える度に、まるで白昼夢を見ている様な感覚に襲われる。最近はそれがなんとなく嫌で、あまり考えない様にしている。
LHSの本部があった場所は、3ヶ月ほど在日米軍の施政下にあった。これは特措法による例外中の例外である。
お決まりの様に左派活動家や国粋保守団体が反対運動を行おうとしたが、何故かどれもが活動を自粛するなど、何か『見えない力』が働いている様でもあった。
この特措法制定の根拠は、教団地下施設に保管されていた大量のシアン化物や、武装蜂起に用いるためと見られる膨大な数の銃器類の他、生物兵器に関連した設備や
盗難された低濃縮ウラン燃料、またそれを用いたダーティー・ボム(汚い爆弾)の試作品など、自衛隊だけでは手に負えない複合的な危険要素が目白押しなため、日本政府
が米軍に処理を委託し、その完了まで一切の権限を委譲するための必要な措置、というものだった。

964: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 11:11:54.13 ID:Fw3a749J0
…勿論、俺はその話が嘘だということを知っている。

いや、実際のところ一部の話は本当だ。だが肝心のものを隠している。
過去に処分されたことになっている9メガトンの熱核弾頭と、同じく解体されたはずのソ連製の核ミサイル数十基…これらは米軍の管理下で、秘密裏に搬出されたのだろう…。
最初の3日間、権藤さんはその事について少しだけ俺に話してくれていた。
権藤さんが言うには、日米政府間では互いの利害についてすでに話し合いがもたれ、近い内に妥結する見通しらしい…とのことだった。

最初の期限通りに処理を終えた米軍は、建物も発破で吹っ飛ばして、すっかり地均ししてから出て行った。
土壌汚染は確認されなかった事、教団元信者の再結集を恐れる近隣住民が新規施設の建造に反対したこと、偶然『発掘』された地下水源の存在などの要素を考慮して、既存
の公園を拡張した、流水環境を持つビオトープ公園としての再整備が、異例のスピードで決まった。
本来であれば、建設工事に伴う埋蔵文化財発掘調査が行われるが、米軍施政下の間に一旦地下30メートルも掘り下げられており、今さら調査しても無意味であるとして、既に
建設工事が始まっていた。
受注企業は水瀬グループに属する準大手ゼネコンで、下請けには萩原組の名もある。
…たぶん偶然では無いんだろう…。

965: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 11:17:14.41 ID:Fw3a749J0
…言い忘れていたが、地下水源の近くからもう一つ出てきたものがある。
それは一個の堆積岩から造られた、古い時代の祠だった。
ただ、表面装飾があったと思しき箇所は後代にそのほぼ全てが削り取られており、写真撮影と一部拓本を取っただけで、文化財的な実地調査は終了した。
祠としては大した大きさではないが、一個の岩としてはそこそこ巨大なため、運搬すれば破損の危険性が伴い、どう処理するべきか議論が交わされたものの、結論は先送りされた。
少し後に、拓本の分析からかつてこの地下水源の神として「吉水津海主神」という神が祀られていたことが判明した。
この「吉水津海主神」なる神は、「古事記」「日本書紀」にも登場しておらず、未発見の神、或いは既知の神の別命(亦の名)では無いかと推察されたが、史料に乏しく、これ以上の調査は
不可能とされた。
郷土史料などから、かつてこの地域の村落において「キミツ様」なる土地神信仰があった事は分かっているものの、それと「吉水津海主神」を結びつける要素は、今のところ発見されていない。

実は面白いのはここからで、発掘現場近くに放置された「吉水津海主神の祠」には、いつ、誰がそうし始めたのか、賽銭や菓子などのお供え物が置かれる様になったのだ。
その内に、お供えして拝んだら恋愛が成就した、資格試験に合格した、再就職できた、子供が出来た、毛が生えた背が伸びた水虫が治った宝くじが当たったエトセトラエトセトラ…。
何にでも御利益があると大評判になり、それまでは工事区域ということもあってこっそりとお供えしていたものが、堂々と長蛇の列を作る様になり、工事関係者や自治体、警察を悩ませることになった。
侵入防止の塀を設置したらしたで希少性が余計に高まり、塀を乗り越え参拝実況する者や、撮影用ドローンを改造してお供えする者など、短期間の間に『参拝客』と警察のイタチごっこは過熱の一途を辿った。
困った末に出された結論は、元々祠が発掘された場所である水源の隣に祠を再設置し、その部分だけを先行オープンという形で開放するというもので、どうにかこの参拝合戦は一応の決着を見たのだった。
飽くなき欲望を容赦なくぶつけてくる人間達を、六十郎さんは苦笑いしながら見つめているのだろうか…。

966: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 11:20:58.81 ID:Fw3a749J0
P「…だけどなぁ…一言挨拶くらいしてくれたって罰は当たんないよなぁ…あ、あの人は罰を当てる方か…」 

やよい「…プロデューサー?独り言ですかぁ…?」

P「ん…独り言っていうか…まぁしょうもない愚痴だな…」

やよい「ほらほら!そんな風にソファーにダラーってしてるから愚痴なんかこぼしちゃうんですよ!散歩に行きましょう!」

P「散歩…?あれ…今日の予定って…」

やよい「今日は私オフですよ!あ、もしかして忘れてたんですかー?」

P「ああそうか…今日だったっけか…どれ、じゃあ行きますか…」

967: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:20:12.38 ID:Fw3a749J0
例の『警察発表』の直後、我が765プロは 蜂の巣に爆竹を突っ込んで火を放ったような大騒ぎになった。
まず鳴り止まない電話。激励の電話や得意先の平謝りなど…大半の内容は応援か謝罪だった。
変わったものでは、インドの映画会社が契約関係にある日本のプロモーターを通じて、やよいに新作映画への出演交渉をしてきたものや、やよいを信仰する「やよいの会」なる団体の設立イベントに来てくれという
妙な依頼などがあった。言うまでもないが、どちらも丁重にお断りした。

先日までのメディアカルテルの如きハブりっぷりが嘘の様に、新規の仕事依頼も殺到した。
当然やよいへのオファーだと思われるだろうが、不思議なことに他のアイドル達への依頼も、結構な割合で含まれていた。
だが、いきなりそんな大量の仕事を依頼されても捌けるはずもなく、ほとんどの新規依頼は断ることになった。
その代わり、これまでのレギュラー番組への復帰やライブの再調整に注力し、多くの場合それまでよりもギャラや待遇面で好条件を獲得することが出来た。
中には番組自体が終了してしまったものもあったが、その空きに比較的条件の良い新規の仕事を入れることで、765プロは順調に新体制に移行しつつあった。
特に貴音は、横文字も苦手なのにNetflixから北米で配信されるオリジナルドラマへの出演オファーが舞い込むという珍事があった。
日本未配信作品で、出演シーンは短くセリフも簡単なものだったが、その回が配信されるや「銀髪のあの娘は誰だ!?」と話題になり、一部でカルト的人気を誇っているらしい。
これを切っ掛けにハリウッド銀幕デビューも…なんていうのは気が早過ぎるか…。

968: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:22:27.03 ID:Fw3a749J0
…そうそう、イギリスで足止めを食らっていた社長については、決裁が必要な書類が出てくるまで、俺もすっかり忘れていた。俺だけじゃなく、律子も音無さんも忘れていた。
泊まっていたはずのホテルに問い合わせたら、すでに何日も前にチェックアウトしたらしい。だが航空便は未だ全面復旧していないらしく、日本への便も飛んでいないとのことだった。
その日は結局消息を掴めないままだったが、結果的に翌日社長は帰ってきた。シベリア鉄道経由で。BBCのドキュメンタリー撮影班を伴って。
…ざっと説明すると、船便を勧めるBBCに対して、すぐにでも帰らねばならない、大切なアイドル達が苦しんでいる時に悠長に船旅などやってられるかと力説したところ、たまたまギャラを受け取りに来ていた
戦場カメラマンとネイチャーフォトグラファーのおっさん2人が、社長の漢気に感動しその場で意気投合。
「どうせ俺ら金もらってしばらく遊ぶつもりだったから、陸路でモスクワまで行ってシベリア鉄道で行こうぜ!」という事になった。
「ニッポンのアイドル事務所の社長がシベリア鉄道で旅する?何それ面白ぇな。ついでに画撮ってきてよ。旅費は出すから」とBBC側から提案され、トントン拍子に社長のドキュメンタリー第二弾が決定した…。
その旅の内容についてだが…来年日本国内でもBDが発売されるらしいので、そちらを視聴して欲しい…。

969: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:26:09.79 ID:Fw3a749J0
やよい「あ、やっぱりいっぱい人が来てますね!」

P「あ~…テレビカメラも来てるなぁ…やよい、帽子をもっと深くかぶっておけよ…半年経ってもここ周辺では人気がすごいんだから…」

やよい「うぅ…髪の毛クシャクシャになっちゃいますよぅ…」ギュッ…

P「この辺の人達みんな、LHSには困ってたんだとさ…やよいはそれを追い出したヒーローってわけさ」

やよい「…何だか複雑な気分です…みんなに嘘ついてるんですよね、私達…」

P「細かいところは気にすんな。やよいは間違いなくヒーローだよ」

P「六十郎さんも目ぇまん丸にして驚いてたよなぁ…まさかやよいが核弾頭の心を受け入れてくるとは思ってなかったって…」

やよい「その後大笑いしてましたよね!」

P(…思えばあの時だな…六十郎さん、何かを悟ったような表情してたの…)

970: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:31:13.76 ID:Fw3a749J0
P「…そういえば、その後どうなんだ?『やよいの中のやよい』は?」

やよい「今でも時々感じますよ…!いつも食べてるものが初めて食べたみたいに美味しく感じたり、いつも通ってる道の風景がとっても綺麗で泣いちゃったり…」

やよい「…少し怖い夢も見ます…ずっと暗い穴の中で、ただじっと待ってるんです…いつまでも…いつまでも…」

やよい「でも…最初の頃よりずっとわかり合えてる様な気がします…私の中に友達がいるみたいで…ステージにいる時も、とっても心強いんです…!」

P「そうか…じゃあ、その感激屋の友達に伝えてくれよ」

やよい「…え?」

P「俺達『3人』で、トップアイドル目指して頑張ろうぜってな…!」

P(…ちょっとキザっぽかったかな…)


やよい「は…は…」

P「ん?どした…?」

やよい「…びゃぁぁぁぁああああっ!!」ダー

P「えぇぇぇぇっ!?」

やよい「ぷ…ぷろりゅーひゃあー…!ひぐっ!う゛ぁ…う゛ぁりがとーござーまふーっ!!(号泣)」

971: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:33:58.53 ID:Fw3a749J0
参拝客1「…あれ?なぁ守夫…あそこで泣いてんのやよいちゃんじゃね…!?」

参拝客2「タハーッ!w冗談きついでござるよ鈴木氏~ウハウハw 大天使アイドルやよいちゃんが、こんな昼日中の路上で、人目も憚らず汁塗れで号泣なんてするわけが…」チラッ…

参拝客2「おーっととととーっ!!?拙者w!自分の不明を詫びるでござるよーっ!ウハハwwあそこにおわすわ正真正銘!やよいちゃんに候ーっ!!」ワキワキ

エ?ヤヨイチャン…?

ドコドコ…?

アレカ?…ナンカスゲーナイテルケド…

イッショニイルオトコノヒト アレ、ゲイノウジン?ゲイノウジンカナ?

P「や…ヤバい…!カメラに気づかれる前に一旦離れよう…!」ダッ…!

やよい「ずびばぜん…ずびばぜん…!」ダッ…

973: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:26:49.99 ID:Fw3a749J0
P「はぁ…はぁ…この辺まで来れば大丈夫だろう…ヒュー…」

やよい「グズ…すみませんプロデューサー…たまにこんな感じになっちゃって…」ズビ…

P「いいさいいさ…少しずつ慣れていこう…」

やよい「…結局…おじいさんの祠にお参りできませんでしたね…」

P「まー、消えてなくなるわけじゃないし、もう少しブームが落ち着いてからでも遅くはないさ」

P「よし…じゃあ事務所に戻ろうか…!」

やよい「あ、プロデューサー!帰りに寄って行きたいお店があるんですけど…」

974: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:28:32.46 ID:Fw3a749J0
ガチャリ

やよい「ただ今戻りましたー!」

P「右に同じー」

小鳥「お帰りなさい!やよいちゃん、プロデューサーさん」

貴音「やよい…?今日はオフなのでは?」

やよい「あ!貴音さん丁度よかったです!お仕事お疲れ様でした!」ガルーン

貴音「ありがとうございます…それで、今日はどうしたのですか…?」

975: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:29:58.67 ID:Fw3a749J0
やよい「えーと…本当はみんながいる時に渡したかったんですけど…みんな予定がバラバラだったから…」モジモジ…

貴音「…?」

やよい「貴音さん!ラーメン探訪映画化決定(仮)、おめでとうございますー!」パンッ!パラパラ…

貴音「し、知っていたのですか…!?」

やよい「えへへ…実は私が出てる番組のチーフDさんが、こっそり教えてくれました…!」

貴音「…まだ正式に決定したわけではない故、皆には黙っていようと思ったのですが…ふふふ…」

やよい「?」

貴音「いえ…やはり祝われるというのは、嬉しいものですね…」

976: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:30:59.48 ID:Fw3a749J0
やよい「お祝いはまだまだこれからですよー!これをどーぞ!」ガサ…

貴音「これは…!」

やよい「貴音さんの好きなお花、杜若です!」

やよい「時期が違うのでお花屋さんに売ってなかったんですけど…特別に取り寄せてもらって…」

貴音「…半年前にも頂きましたが…あの時よりもずっと…ずっと美しく見えます…」ホロリ…

やよい「あっ…貴音さん泣かないでください…私も…泣きそうに…」ホロホロ…

P「…なんか慣れるとこれはこれで面白いかもな…メモっておこう…」メモメモ

やよい「あうぅ…も…もうっ!私は全然面白くないですよぅ!」ポカポカ

977: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:34:16.49 ID:Fw3a749J0
小鳥「フフーン…お楽しみはこれからよー…なんと!4人しかいないのにケーキワンホール買っちゃいましたー!」ジャジャーン!

貴音「では、四等分していただきましょう…」

小鳥「貴音ちゃん…あなたには別に…ワンホール準備しましたー!」ドジャーン!

貴音「小鳥嬢…わたくしは…今…猛烈に感動しております…!!」グッ!

P「よし、じゃあケーキ食う前にささやかながら記念撮影をば…」ピピ!ウィーン…

やよい「あ!ちょっと待っててください!」タタタ…

ジャー…キュッキュ…

やよい「貴音さん!お花をこれに…」

貴音「ええ、そうですね…!」

978: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:35:51.50 ID:Fw3a749J0
P「ハーイ…もうちょっと真ん中寄ってー…そうそう…」

P「タイマーにして…よしっ!」タタタ…

P「笑ってー…」ニィー…

貴音「あなた様…これを持って頂けますか…?」

P「ん?杜若の花?……あー!これまだ持ってたのか…!」

979: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:45:55.39 ID:Fw3a749J0


…おじいさんは捨ててもいいって言ってたけど…やっぱり捨てられませんでした…

これを手にしたあの日から…とっても大変な思いもしたし…大勢の人に迷惑もかけちゃった…

でも、おじいさんにも出会えたし…もうひとりの私とも出会えました…

…もし、幸せがどこからか運ばれてくるのなら、それを運んでいる人もきっといますよね…

幸せが運ばれてくるのを待つより、幸せを運ぶ人に私はなりたいです

私はこれからもこの壺に…幸せな思い出をいっぱい詰め込んで、歩いていきたいと思います!


「ハイ!」

「チーズッ!!」

パシャッ!






やよい「幸せを運ぶ壺…?」


-----完-----



980: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:49:23.39 ID:Fw3a749J0

参拝客1「…あーあ…お前が大騒ぎするから、やよいちゃん逃げちゃったじゃん…かわいそうに…」

参拝客2「拙者猛省ターイム!!切腹!切腹!」ドスッ!ドスッ!

参拝客1「自分で腹パンすんのやめろよ恥ずかしいなぁ…はぁ…なんで俺お前と連んでんだっけ…?」

参拝客2「タハーッ!wそれは禁句でござるよー!w」ブンブン!

バシッ!

参拝客3「痛っ!?」

参拝客1「あ!すんませんこのバカが暴れたせいで…ほら謝れよっ!」

参拝客2「………スイマセン…デシタ」

参拝客3「いやまぁ…大したことないから別にいいスよ…」

参拝客2「…鈴木氏ー!w拙者許されたでござるよー!!御免状!w御免状!w」ダダダダー!

参拝客3「…あの…大変ッスね…」

参拝客1「いえ、自分慣れてるんで大丈夫っす!じゃあ、アイツ捕まえに行かないといけないんでこれで失礼します!ホントすんませんでした!」タッタッタ…

981: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:51:41.98 ID:Fw3a749J0

参拝客3「フーッ…」

参拝客3「…もうちょっと困ってるかと思ったんだけどなぁ…案外元気そうじゃん…まぁそれはそれで良いのか…」

♪セカイジューエーガオニシィーヨオー♪ワッハッハッハ!♪

参拝客3「えぇ…なに部下の携帯の着信音勝手に設定してんだあの人…自分のだけにしてくれよホント…」ピッ

参拝客3「…ハイ、なんスか主任?」

982: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:53:02.46 ID:Fw3a749J0
権藤「篠原…765プロの様子はどんな感じだった?」

篠原『印象は極めて順風満帆…事件の影響を引きずるどころか、逆にブースト掛かっちゃってますね…ありゃ逆境に強い事務所ッスよ…』

権藤「そうか…やよいさんの様子はどうだ?異常は見られるか?」

篠原『感情のコントロールにまだ難があるみたいなんで異常といえば異常ッスけど…主に『感動』とか『喜び』の方向にパラメーター振ってるみたいんで、まぁ大丈夫じゃないかと…』

権藤「そうか…機関がまだ妙な動きを見せている…引き続き監視を継続する様、他の者にも伝えておけ…」

篠原『了解です…ところで主任、今日は早上がりだったんじゃないですか?まだ本部にいるんスか?』

983: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:57:21.51 ID:Fw3a749J0
権藤「ん?なぜ本部だと?」

篠原『音ですよ音…主任のデスクの上の換気口、ダクトに歪みがあって音が独特なもんで…』

権藤「………」 …ゴゥゴゥゴゥ…

権藤「…なるほど、よく気がついたな…場所を特定されるような要素は危険だ…以降気をつけよう」

権藤「…実は今日は珍しく来客があってな、もうしばらくはここに居るつもりだ」

篠原『お、誰か良いひとですか?』

権藤「…だったら本部で会うわけなかろう…もう切るぞ」ピッ

985: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 17:00:26.30 ID:Fw3a749J0
権藤「…お待たせして申し訳ない…部下の報告では、765プロ及びやよいさんには深刻な問題は生じていないとのことです…」パラパラパラ…

権藤「これが、ここ半年の追跡記録の概要です…もっとも、あなたならすでにご存知のことばかりでしょうがね…」

権藤「…それと、今後はどうお呼びしたらいいんでしょう?昔の名前の方がいいですか?それとも…」

六十郎「…六十郎…それで構わんよ…今はこっちがしっくり来ておる」


-To be continued...?-

引用元: やよい「幸せを運ぶ壺…?」