2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 18:47:36.65 ID:aJliAKSC0
家、自分の部屋。

八幡「あれ……俺ってもしかして…」

八幡(これだけトラブルにトラブルが続き、女の子とフラグが立ち、クラスのトップカーストと関われるって言うのは……)

八幡「……俺は…この世界の……主人公だったのか?」

小町「なぁに言ってんのごみぃちゃん……」

八幡「ひぃ!? 小町さん!?」

小町「まーた中学の時のおにぃちゃんに戻ったの?」ジトーッ

八幡「ば、バカな事を言ってはいけない。あれはもう二度と取り戻す事のできない過去であり、決して色あせない思い出……」

小町「夜な夜な枕に向かって叫んでるのに?」

八幡「………」グスッ

小町「……ふふっ」

八幡「?」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 18:49:46.76 ID:aJliAKSC0
小町「小さい時からずっとずーーーっと、お兄ちゃんを知ってるのって小町だけなんだよね」ナデナデ

八幡「なんかオカンくさいな」

小町「こんな手のかかる子、小町嫌だなぁ」ギューッ

八幡「!?」ムニムニ

八幡(小町のささやかな胸が!!)///

小町「………///」グイグイ

八幡「な、なぁ小町、急にどうしたんだ?」

小町「さ、さぁ……? 小町はいつも通りだけど?」グイグイ///

八幡「そ、そうか……」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 18:52:57.69 ID:aJliAKSC0
翌日、教室。

八幡(あの後、お風呂も一緒に入ってしまった……。小町の様子は異常という訳ではなかったが、明らかに違和感があった)

八幡「……一体何が…」

結衣「ヒッキー」トントン

八幡「ん?」クルッ

結衣「おはよ♪」ナデナデ

八幡「お、おまっ!?」ガタッ

結衣「ん? どうしたの?」

八幡「い、いや、ここ教室だぞ」

結衣「うん、そうだね? それがどうかした?」

八幡「い、いきなり撫でてくるとか……」

彩加「そうだよ! 由比ヶ浜さん!」

結衣「さ、彩ちゃん……」

八幡「彩加もバシッと言ってくれ」


彩加「八幡の頭を独り占めとかずるいよ!」


八幡「」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 18:56:14.10 ID:aJliAKSC0
八幡「な、何言ってるのかしらん?」

彩加「僕だって八幡の頭撫でたいよね?」

八幡「い、いや、同意求められても……」

結衣「そ、そうだよね。ヒッキーの頭は皆のモノだもんね」アハハ///

八幡「いや、俺のモノだが……」

彩加「分かったら僕にも触らせて?」

結衣「う、うん!」ササッ

八幡「え、お前に許可求めるの?」

彩加「あぁ……八幡…///」ギューッ



八幡「それを撫でるとは言わない」



八幡(ベタベタする小町、スキンシップの激しい由比ヶ浜、ベタベタする彩加。やはり何かがおかしい……)

沙希「………」ゴゴゴ

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:02:10.84 ID:aJliAKSC0
屋上

八幡「何かがおかしい。言葉に表せば、やたらベタベタしてくるの一言に収まるが、それ以上の何かが……」


<バァンッ!!


八幡「ひぐっ!?」ビクッ

沙希「………」

八幡「か、かわ……」

沙希「殺す」

八幡「え?」

沙希「死ねーーーーっ!」

八幡「嘘だろ!?」

沙希「……あっ!」ツルッ

八幡「危ない!」ギュッ

沙希「……ぁ///」ドキッ

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:04:21.86 ID:aJliAKSC0
八幡「学校にナイフとか持ってくるなよな」ハイ

沙希「う、うん……」

八幡「怪我はないか?」

沙希「こ、殺そうとしてきた相手に情けをかけるの?」

八幡「いや、冗談だろ?」

沙希「じょ、冗談じゃないし!」

八幡「まぁ、何でも良いけど、俺を殺す価値なんてないと思うけどな」ハハッ

沙希「……か、勝てない…」ガクッ

八幡「は?」

沙希「……し、師匠と呼んでも良いかい?」

八幡「」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:06:38.08 ID:aJliAKSC0
教室

<ざわざわ

八幡「………」

沙希「………」

<なんで川崎さん、ヒキタニ君の前で片ひざ付いてるの?

八幡「………」

沙希「………」

<ヒキタニ君、川崎さんに何したんだろう

八幡「か、川崎さん?」

沙希「師匠、愛情をこめて沙希とお呼びください」

八幡「」

<あ、愛情!?
<師匠!?
<ヒッキー!?

八幡(これはまずい。とてもまずい)アセアセ

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:09:33.82 ID:aJliAKSC0
三浦「何あれキモっ」

葉山「演劇の練習かな?」

戸部「罰ゲームじゃね?」

沙希「………」スクッ


三人「?」


沙希「とぉ!」

戸部「ぐはっ!」ドゴォッ

沙希「たぁ!」

葉山「ぐえっ」ベシンッ

沙希「や――」ブンッ

三浦「ひっ!?」

八幡「ちょっ! 沙希!?」グイッ

沙希「師匠! 止めないでください! こいつらは師匠を見て笑った!」グググッ

八幡(いや、主にお前にだろ!)


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:11:58.45 ID:aJliAKSC0
説得の末。

沙希「頭を冷やしてきます」タタタッ

八幡「………」ホッ

戸部「悪かったよ」

葉山「俺も」

三浦「………」

八幡「いや、とんだ災難だったな」

三浦「ほんとよ!」

葉山「優美子?」

八幡「そりゃ悪かったよ」

三浦「謝って済む問題じゃない!」

八幡「ど、どうすればいいんだよ」

三浦「あんな風にあーしを助けて、


この胸の高鳴りの責任をあんたがとってよ!」


八幡「」

葉山「」

戸部「」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:15:28.39 ID:aJliAKSC0
放課後 奉仕部

八幡「……そう言うことか」

結衣「ヒッキー?」

沙希「師匠?」

雪乃「なぜ川崎さんがいるのかしら?」

八幡「俺は昨日、自分がラノベの主人公である事に気がついた」

結衣「どういう事?」

八幡「たび重なるトラブル、めまぐるしく変化する人間関係、そして乱立するフラグ。


これはどう考えてもラノベの主人公にされたからとしか思えない!」


雪乃「あり得ない事じゃないわね」

結衣「ゆきのん?」

雪乃「考えたら、愚図で独りよがりで無計画な比企谷君が私達と何カ月も共に過ごせてる事自体が奇跡なのよ」

八幡「お……おう…」

結衣「よしよし」ナデナデ

沙希「師匠、あ、あたしがついてるからっ///」カァ

雪乃「………」イラッ

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:18:48.05 ID:aJliAKSC0
雪乃「それで、それがどうしたのかしら?」

八幡「ああ、恐らくこれは調整がかかったんだ」

結衣「調整?」

八幡「今までの俺は世界に自分が必要となどされていないスタンスの下、真正面から卑屈に戦ってきた」

雪乃「誇れることじゃないわね」

八幡「だが、ラノベの主人公と気づいてしまった以上、卑屈にやるわけにはいかない」

結衣「何で?」

八幡「自分がラノベの主人公だと気づいてるラノベの主人公なんて、今までで一番の俺TUEEE!系主人公じゃねぇか!」

雪乃「自分が何をしたって許される立ち場にあるのだからね」

八幡「だから、調整だ」

結衣「どう調整したの?」

八幡「……ハーレムラノベだ」

三人「!」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:22:28.73 ID:aJliAKSC0
八幡「ハーレムラノベはハーレムである事がメインだ。主人公の立場や能力、世界観なんておまけに過ぎない」

結衣「だからヒッキーは、この世界で数人しかいない魔法使いなの?」

八幡「初耳すぎる」

雪乃「神に近い存在になった比企谷君を、主人公でありながらおまけの立ち場にする事でバランスを保とうとしてるのね」

八幡「ああ、だから由比ヶ浜がやたらベタベタしてくるのも、川崎が刺客キャラなのも、小町がお兄ちゃん大好き妹キャラなのも、三浦がツンデレキャラなのも、戸部と葉山が空気レベルのモブなのも……全部……」



八幡「俺のせいだ……」



三人「………」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:24:52.09 ID:aJliAKSC0
八幡「……皆、すまん」

雪乃「………」

結衣「……それってさ…」ボソッ

八幡「?」

結衣「証拠……ないよね?」

八幡「……ああ、証明はできない」

八幡(あくまで俺達のいる世界の外の話だからな)

結衣「だったらそれ、思いこみだよ」

八幡「!!」

結衣「あたしは前からヒッキーとこんな感じだし、サキサキは急に目覚めたんだよ」

沙希「あ、ああ、うん」コクコク

八幡「……そ、それが俺のせいだったら……」

結衣「ううん」ギュッ

八幡「……ゆい…がはま?」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:28:16.08 ID:aJliAKSC0
結衣「あたしはずっとずっとずーっと前からヒッキーの事が好きだったから、そんな訳ないんだよ」ギューッ

八幡「………」カァ///

沙希「あ、あたしだってこの気持ちは本物だから!」ギュッ///

八幡「沙希……」

雪乃「シュレディンガーの箱の誤用みたいなものと考えれば良いんじゃないかしら?」

八幡「?」

雪乃「あなたは現実とラノベが同時に存在する箱を開いてしまった。そこはラノベの世界だった。


一度開けてしまったらもう二度と戻す事はできないし、それが現実となる」


八幡「………」

結衣「そうだよヒッキー!」

沙希「あの時の師匠はもっと男らしかった!」

八幡「そう……だな。うん、そうに違いない!」


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:31:53.80 ID:aJliAKSC0
 
 こうして俺は、ラノベの主人公である事を自覚しながら毎日を生きる事となった。

 正直、精神的には辛い事の方が多い。

 なぜなら、身の回り……いや、世界中で起きる事が“俺を引きたてる為だけ”に存在しているのだから。

 ヨーロッパで始まった魔法宗教戦争や、アフリカで起きたゾンビパニック。

 アメリカで見つかった宇宙人のメッセージなど、その全てが俺の為だけに起きたのだ。

 俺が小説の主人公だったら、屑みたいな性格のまま、女に溺れ、戦争の記憶と折り合いをつけながら毎日堕落の階段を一歩また一歩と降りて行くだけの小さな生き方で済んだかもしれない。

 だが、そんな事は今更悔やんでももう遅いし、俺がラノベの主人公である事実は変わらないのだ。


八幡「待てよ……じゃあ雪ノ下は?」



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 19:33:36.08 ID:aJliAKSC0
雪乃の部屋


雪乃「ふふふ……八幡の写真をおかずに食べるご飯は美味しいわぁ」パクパク///

雪乃(どんな世界になろうと八幡の事を一番理解し愛してるのは私、私なのよ)

雪乃「だから八幡、これからもよろしくね」フフフ///



第一部 完




引用元: 八幡「自分がラノベの主人公であると気づいた」