おまけ 超豪華! 多国籍艦隊を結成せよ! -鎮守府の家計 防衛戦-


朗利「艦娘ってさ、兵器だからさ、実はさ、――――――重油を飲んだ方がすっごくイキイキするのん」

朗利「だってさ、艦娘って軍艦が擬人化したものだからさ、元々の鋼鉄の巨体を動かすには莫大なエネルギーが必要ってわけだからさ、」

朗利「当然さ、そんな重油をたらふく飲んで動くようなのが人間の姿で艦船時代の性能そのままに行動するんだからさ、」

朗利「それ相応にさ、カロリー補給っていうのが必要になるってことじゃん」

朗利「だからさ、一番効率がいいのはさ、当然さ、【燃料】を飲ませ続けることなんだけどさ、」

朗利「それをやるにはさ、【燃料】だって毎日の営みの中で使える量も限られてるんだから毎日たくさん出すわけにもいかないじゃん」

朗利「そんなわけでさ、貧乏な鎮守府はさ、出撃前や帰投後ぐらいにしかさ、【燃料】を飲ませないようにしてるのん」

朗利「するとさ、 他の手段でさ、【燃料】の代わりとなるものでさ、カロリーを補給しないといけないってことになるじゃん」

朗利「だからさ、艦娘の食事ってさ、足りないカロリーをさ、補うためにさ、見掛けよりもたくさん食べるってことになっちゃうのん」

朗利「でもさ、【燃料】の代わりとは言ってもさ、カロリー効率がすこぶる悪いもんだからさ、たまに【燃料】を飲ませとかないと力が抜けちゃうのん」

朗利「別にさ、それでさ、『あれだけ食っといて死ぬんかい』と思うんだけどさ、どうも違うらしくてさ、――――――もちろん死にはしないけど」

朗利「艦娘ってやつはさ、【燃料】を消化・分解してさ、それをエネルギーに還元できているらしいからさ、」

朗利「普段からさ、カロリー効率のずば抜けたさ、【燃料】にさ、飲み慣れているとさ、食事から得られるカロリーはそれに比べて微々たるものだからさ、」

朗利「人間よりもさ、普段から得られるさ、カロリー摂取量の最大幅がさ、桁違いだからさ、」

朗利「力がみなぎっている時とさ、エネルギーが空になった時のさ、ギャップが激しいからさ、」

朗利「物凄い虚脱感や空腹感、疲労感っていうのをさ、艦娘は敏感に感じやすいのん」

朗利「俺たち人間だってさ、低カロリーでヘルシーなおからとかヨーグルトとかきのこをさ、」

朗利「米やパンの代わりに食っていたらさ、いつもより力が全然出ないのと同じことだと思うのん」

朗利「たとえば人間が1~100までの力を出せるとしたらさ、艦娘は1~1000000ぐらいの出力が出るわけだからさ、」

朗利「そんなわけで艦娘たちからすればさ、【燃料】以外の食事っていうのはさ、超ヘルシーで低カロリーなんだけどさ、それだけじゃ生きていけないのん」

朗利「だから、艦娘って大食いになっちゃうのん。食事以外の方法で【燃料】を飲むってことの代わりができない身体だからしかたないのん」

朗利「それにさ、食糧はさ、【燃料】と比べてさ、ずっと安いからさ、嫌でも大食いを黙認せざるを得なくてさ、」

朗利「つまりさ、――――――何が言いたいかって言えばさ、」


朗利「くっそぉおおお! よりにもよって【戦艦】がこんなにも増えたから食費が馬鹿にならねえ!」ウガーーーーーッ!


朗利「艦娘にとっての食事っていうのが【補給】で貰えるあのドロドロの【燃料】を飲み干すことであり、」

朗利「人間にとっての1日3食の食事が艦娘にとっての間食――――――おやつの扱いなんだよぉおおお!」

朗利「長年の謎だった『サイヤ人はあれだけ大食いなのに太らないのはなぜか?』という疑問の答えが解けたのはいい! 別に解けてもちっとも嬉しくない」

674: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 08:58:28.10 ID:1x8KI/b90

朗利「艦娘は激しい運動――――――つまり艦隊行動させなければ【燃料】を適量飲むだけで人間よりずっと長く飲まず食わずでも生きていけるらしいけど、」

朗利「それでも、人間に極めて近い身体をしているからか、趣味嗜好や食欲から毎日 飲まず食わずには要られない!」

朗利「それは別にいい。戦場においては食事が唯一の楽しみであるというのを昔 本で読んだことがあるから。腹を満たす以外に味を楽しむのもいい」

朗利「けれど、それにしたって平時の大型艦の間食の多さは異常だろう! お前ら、普段の新陳代謝でどれくらいカロリー放出してんのぉ!?」


――――――味はいいが量が足らないねえ。


朗利「――――――なんて時間を掛けて丹精込めた作った菓子を味わいもせずに一瞬で食われたら大型艦が嫌いになるわい!」

朗利「いえ、すみません。こうなったのも全部“一航戦の誇り”とかいう盗み食い野郎のせいです。あの食っちゃ寝空母が全て悪いんです」

朗利「証拠に、長門やビスマルクのような大型艦を迎えるようになっても、あのツマミ食いの常習犯ほど食事のことで腹を立てたことがありませんので」

朗利「しかし、――――――状況は一転するッ!」

朗利「お国柄の特色なのか、アメリカ版大和のモンタナは図体がデカイからそれ相応に喰うのは納得だが、それ以上に大食いの気が強い!」

朗利「また、世にも奇妙な氷山空母:ハバククは食費がというより、仕様で冷え続ける身体を温める暖の工面で今までになかった形の苦労を強いる!」

朗利「これ、クリスマスパーティのごちそう……、足りるのかな? ――――――足りねえよな」アセダラダラ

675: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 08:59:54.18 ID:1x8KI/b90

朗利「これさ、戦争が終わったらホントに艦娘たちはどうなっちまうんだろうな? ――――――こんな大飯食らいをいつまでも国が養えるのだろうか?」

朗利「でも、1つの実験として、【燃料】を飲ませずに食事だけでカロリー補給させ続けていたら慣れてくれるのだろうか?」

朗利「そしたら、艤装や艦娘としての能力にも何かしらの影響が出るのだろうか?」

朗利「もし日常生活を普通に送れる程度までのリスクで済むんだったら、戦後の艦娘たちの居場所も生まれるんだけどな……」

朗利「でも、そう考えると【ケッコンカッコカリ】【ユウジョウカッコカリ】で燃費が安くなるのはどういうことなんだ?」

朗利「あの【指輪】や【褒章】をつけることで、よくあるゲルマニウムみたいな艦娘に優しいパワーが流れて燃費が安くなるということなのか?」

朗利「けど、それで【燃料】の消費が減るにしても、【弾薬】の消費まで減るのが理解できない」メメタァ

朗利「あ、いや、――――――違うか! これってまさかそういうこと?」


朗利「もしかして【ケッコンカッコカリ】や【ユウジョウカッコカリ】の燃費が安くなるのは艦娘たちの戦後の食費を考えての新発明だったのかな?」


朗利「あり得る! 【弾薬】は艤装に装填されるだけのものだから日常生活ではまったく使う必要がないからいいけど――――――、」

朗利「あれ? でも、ゲルマニウムパワーみたいなのが本当に存在するのならば――――――、」

朗利「【弾薬】を削減しても同等の威力が出せるような見えざるパワーか何かが付与されているとも考えられるのか?」

朗利「となれば、【指輪】や【褒章】には何か国家機密レベルの繊細な霊妙なる秘術が込められていて、」

朗利「そのパワーは艦娘にのみ作用して1度きりのものという推測が某所で議論されているのも頷けるのか……」

676: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:01:15.82 ID:1x8KI/b90

朗利「――――――これはつい最近 鎮守府の広報活動で懇意になっていた軍関係者が噂話として話してくれたことだが、」


朗利「あるドケチの提督が燃費をとにかく安くしようと考えて、【ケッコン指輪】を大型艦の間で使い回すことによって資源の節約を図ったという」

朗利「しかしながら、その目論見は失敗に終わった」

朗利「最初に【ケッコンカッコカリ】をした艦娘に燃費向上の効果がいつまでも残り続け、」

朗利「他に【指輪】を試した艦娘にはまったく何の効果が見られなかったという」

朗利「ドケチな提督は激昂して【指輪】を徹底分析してその過程で【指輪】を解体してしまった後、まったく同じものを造り上げたというが、」

朗利「そのハンドメイドの複製品を艦娘に試しても望んだ通りの結果は得られなかったという」

朗利「そして、【指輪】を失って久しいものの、依然として最初に【ケッコンカッコカリ】をした艦娘の燃費は良いままという結果に――――――」

朗利「きまりが悪いので、そのケッコン相手には取り上げた【指輪】の代わりに自分が作ったオリジナルそっくりの複製品を渡して丸く収まったとか」


朗利「――――――これは単なる噂話として言われていることらしいのだが、これを聞いた時 俺は『確かに変だな』という疑問を抱くことになった」

朗利「そもそも、なぜ【ケッコンカッコカリ】という体裁をとる必要があったのか――――――、」

朗利「燃費を安くする技術があるのならば、なぜそれをもっと広めようとしないのか――――――、」

朗利「そうした疑問を踏まえて、最後にその軍関係者はこう推論を出して話を切り上げた――――――」


朗利「つまり、【ケッコンカッコカリ】というのは全くの方便であり、実際は艦娘の燃費改良技術の実験台として利用しているものなのだと」


朗利「その時、俺にはその事の意味が理解できなかったが、――――――今はどうだろう? 少しは見えてきた気がする」

朗利「おそらく、戦後の肥大化した軍組織を軍縮するにあたって最も削減されるであろう艦娘の将来を見越して、」

朗利「艦娘の将来的な保護という目的に合致する方便として【ケッコンカッコカリ】という形をとって大々的な運用試験を諸提督にやらせている――――――」

朗利「実際に軍縮が実行されても、人間と極めて近い存在である艦娘たちを【解体】するのはさまざまな方面からの反対の声が上がるだろうから、」

朗利「そのために民間に売り払ってでも一時は矛先を交わしたとしても、」

朗利「一般人に艦娘を維持するのに必要な【燃料】や【鋼材】などの負担ができるわけがなく、」

朗利「結局、艦娘たちを【解体】せざるを得なくなる戦後処理を見越して――――――なのか?」

朗利「となれば、俺たち『司令部』の面々に渡された【ユウジョウカッコカリ】もその技術を広めるための新たな名目として用意されたもの――――――」

朗利「そう考えを推し進めると、【ケッコンカッコカリ】の実装は現在の実用面においても、将来的な問題の解決のためにも役に立っているのかも…………」


677: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:01:55.95 ID:1x8KI/b90

朗利「考えれば考えるほど不思議だなぁ、艦娘の生態って」

朗利「今の大戦が始まって四半世紀ぐらいにもなるけど、そういったことの解明が全然進んでないよなぁ…………どうなってるんだろう?」

朗利「でも、この理論を突き進めていけば、最終的には【燃料】【弾薬】をゼロに近づけることも可能ってところかな?」

朗利「どこまで行くかな? 安くなればもしかして間食をつい食いたくなるような空腹感も和らいだりするのかな?」


清霜「ねぇ司令官? 何、何してんの? ねぇ何してんの? 何、何、何、ねぇ?」


朗利「おや、清霜ちゃんか」

朗利「ちょっとね? 『戦艦がいっぱい居すぎてどうすべきかな』って考えてたの。その、食費が――――――」

清霜「司令官! この鎮守府は戦艦がいっぱいいてすっごくいい!」キラキラ

朗利「おお そうかそうか! 戦艦っていいよな。カッコイイし、男のロマンさ!」パァ ――――――熱い掌返し!

清霜「それでね、司令官? 何かいろんな戦艦がいて清霜はどういうのに憧れればいいのかなって……」

朗利「なるほどね。清霜ちゃんにぴったりなタイプの戦艦のお姉さんを紹介すればいいんだね」

朗利「よーし! お兄さんも最近は鎮守府の運営の立て直しをがんばっていたからあんまり新入りの戦艦と話す機会がなかったからね」

朗利「それじゃ、これから一緒にお兄さんと聞きに行こうか? 清霜ちゃんが来なくてもお兄さんは行くけど」

清霜「うん、行く行く! 戦艦になるための秘訣を教わるんだ」ニッコリ

朗利「そうかそうか(可哀想だけど、成長の概念がない艦娘がそれ以上の何かに変われるってことなんかないんだけどな)」ニコニコ



見よ! これが拓自鎮守府が誇る世界に類を見ない多国籍艦隊なり!


1,所属している主力艦たち

 国籍 |    艦名    |         艦型        | 

 日本 |    長門    |      長門型戦艦1番艦   |

ドイツ  |  ビスマルク  |   ビスマルク級戦艦1番艦   |【海外艦】

アメリカ |   モンタナ  |    モンタナ級戦艦1番艦    |【伝承艦】

イギリス|インコンパラブル|    (ワンオフ巡洋戦艦)    |【伝承艦】

イタリア|   インペロ   |ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦3番艦|【海外艦】

フランス|  クレマンソー |   リシュリュー級戦艦3番艦  |【海外艦】


2,所属している主力艦たちの艦型の基本能力

長門型戦艦  ………………… 1920年、32,720トン:  41cm連装砲4基、26.5ノット

ビスマルク級戦艦 …………… 1940年、41,700トン: 38.1cm連装砲4基、30.8ノット

モンタナ級戦艦 ………………未成艦、60,500トン: 40.6cm砲連装4基、28ノット

インコンパラブル …………… 未成艦、46,000トン: 50.8cm連装砲3基、35ノット ← 計画における能力なのでどうとでも

ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦 … 1940年、41,000トン: 38.1cm3連装砲3基、31.50ノット

リシュリュー級戦艦 ………… 1940年、35,000トン:  38cm4連装砲2基、32ノット

※参考
大和型戦艦 ………………… 1941年、63,980トン:   46cm3連装砲3基、27ノット
ヴァンガード ……・………… 1946年、44,500トン:  38.1cm連装砲4基、31.57ノット
アイオワ級 ………………… 1943年、45,000トン: 40.6cm3連装砲3基、33ノット


※資料によって基準排水量の揺れはありますが、絶対的な大小の差がついているのでとりあえず規模の大小に関しては間違いはありません。



678: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:03:36.16 ID:1x8KI/b90

――――――長門とビスマルク:実装艦について、

――――――外部から取り寄せた世界中の軍艦の資料を読み漁りながら、


朗利「長門とビスマルクについてなら清霜もよく知っているだろう」

清霜「うん。どっちもカッコイイよね!」キラキラ

朗利「しかし、こうして見ると長門とビスマルクの性能は大したことがないんだな――――――」

朗利「いや、この性能でありながら型落ちの長門は長寿艦として最後まで生き残ったし、ビスマルクは欧州最強の戦艦って評価だもんな……」

朗利「モンタナやインコンパラブルのように、性能は確かだったけれど世に生まれ出なかった艦の評価なんて歴史家や一般人には関係ないもんな」

朗利「それに、史実通りに長門とビスマルクは歴戦の武勲艦としてこの鎮守府を引っ張っていってくれているし、」

朗利「何だかんだ言って、――――――性格はともかく、根は純真な娘たちだからどうしても甘やかしたくなるんだよねぇ……」

朗利「それに、やる時はやって 決める時は決めて 戦場では気高く 国の象徴として威風堂々たる佇まいがあって頼りがいがある」

清霜「うんうん」

――――――
「………………!?」ドキッ

「――――――!」ドクン
――――――


679: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:04:16.22 ID:1x8KI/b90

朗利「やっぱり、起工すらしていない書類上の存在ってだけの【伝承艦】とは違って、この世に生を受けたことの充実感があるって感じだ」

清霜「でも、インコンパラブルさんの次に長門先輩の砲塔はおっきいよ?」

朗利「あ、ホントだ。インコンパラブルは実際に存在しなかった【伝承艦】だからこれは無しってことで除けば、」

朗利「当時 最新鋭のリシュリュー級やヴィットリオ・ヴェネト級のやつよりも遥かに大きいじゃないか」

朗利「これより大きいのは次級の大和型戦艦――――――史上最大の戦艦ってことになるから砲火力に関しては旧式ながら長門もやるもんじゃないか」

清霜「ビスマルク先輩には? ねえねえ、何かないの~?」

朗利「うん? ビスマルクか、そうだな……、」

朗利「ビスマルクもビスマルクで、【艦これ】初の改三実装艦だし、【改装設計図】を2枚を要求するというワガママっぷりには困っちゃうな~」メメタァ

朗利「今でこそ【改装設計図】の問題はどこからかやって来た【闇魔改造妖精】の気まぐれや他の候補の育てづらさで解決したんだけれど、」ハハハハ・・・

朗利「最初に出会った時からビスマルクにはホントもう手を焼かされてきたもんだよ」フフッ

朗利「実力は確かなんだけど、あのワガママ娘っぷりにはもう、ね?」

朗利「…………なんか、長門とビスマルクにはそれぞれ違った思い入れと思い出がいっぱいあるな」

清霜「司令官は長門先輩もビスマルク先輩のこと、どっちも大好きなんだね!」

朗利「うん。でも、『もうちょっと慎みを持って欲しかった』というのが俺の日頃の感想でね」

朗利「まあ、言うつもりはないんだけどね、もう慣れたことだし」


――――――それにそれが二人の良さなんだし、俺はそこが大好きなんだ。


清霜「ふぅん」

清霜「なら、清霜も! 司令官から『大好き』って言われるような戦艦になるから見てて!」キラキラ

朗利「はははは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか、清霜。このこの」ナデナデ

清霜「えへへへ」テレテレ

680: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:04:44.76 ID:1x8KI/b90

ガタッ

朗利「ん?」

清霜「あ」


長門「ほ、ほう…………、て、てて提督。ぐ、偶然だな…………」テレテレ

ビスマルク「…………アドミラール」ドキドキ


朗利「噂をすれば何とやら――――――」

清霜「ねえねえ、先輩 先輩!」ニコニコ

長門「お、おお、清霜。な、何だ……?」ニコニコー


清霜「清霜も先輩たちに負けないくらい司令官から『大好き』って言ってもらえる戦艦になるから!」


長門「…………!?」アセタラー

ビスマルク「…………そ、そう。が、頑張りなさいよ」アセタラー

清霜「うん!」ニッコリ

朗利「清霜は良い娘だなぁ~」ニコニコ

長門「そ、そうだなー。こ、これは将来 有望そうじゃないか……」アセタラー

ビスマルク「…………アドミラール」モジモジ

朗利「そういえば、最近 二人で一緒にいるところをよく見るような気がするけど――――――」

ビスマルク「あ、それは――――――」

清霜「あ、いいなぁ! いつか清霜も立派な戦艦になったら混ぜてね」

長門「ああ。待っているからな」ニッコリ

ビスマルク「……そうね。あなたとはまだ一緒に組んだことはないけれども、」

ビスマルク「このビスマルクと一緒に戦場を駆けると言うのなら、――――――覚悟してなさい! 私は長門ほど優しくはないから!」

ビスマルク「やるなら絶対にみんなで勝利を掴んで生きてアドミラールに報告するのよ! 戦場の中で命を散らすような未熟者だったら承知しないわよ!」

清霜「あ、――――――はい! 清霜、頑張ります!」ビシッ

朗利「…………ビスマルク」ニコッ

長門「ビスマルクも言うようになったじゃないか」フフッ

ビスマルク「さあ、アドミラール。せっかく私が来てあげたんだから何かちょうだい」チラッチラッ

朗利「………………感動を返せ、こいつぅ!(ま、そういうところを含めて俺は大好きなんだけどね)」

ビスマルク「Danke, アドミラール(――――――『大好き』、――――――『大好き』か)」ニコニコ


――――――今度は面と向かって その言葉と笑顔をください。



681: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:05:13.57 ID:1x8KI/b90

――――――モンタナとインコンパラブル:【伝承艦】について、


朗利「【伝承艦】について調べてみたけれど――――――、」

清霜「うん」

朗利「――――――大和って本当に凄かったんだな」ホッ

朗利「太平洋戦争開戦によってすでに大艦巨砲主義は時代遅れになってしまったけれども、」

朗利「それでも、未だに大和型戦艦を超える規模の戦艦はついに登場することはなかった――――――」

朗利「これによって、皇国の海軍力の高さは永遠の記録として歴史に残されていくんだなぁ……」

朗利「見なよ、清霜」

朗利「列強海軍 最後の戦艦の大きさなんていうのは、みんな大和型に並ぶものは一切 出てこなかったんだぜ」

朗利「もちろん、モンタナ級の性能は大和型には厳密には劣るけど、これぐらいの差ならほぼ匹敵すると言ってもいいぐらいの性能だ」

朗利「むしろ、艦体のでかさで言えば大和型より20mは大きい――――――」

朗利「その同型艦を5隻も造る工業力がアメリカにはあったから、もしこれが実現していたら大和型戦艦はそこまで評価はされなかったんだろうな……」

朗利「大和型戦艦が史上最大の戦艦である名誉を守った――――――というか、モンタナ級戦艦が建造中止になった理由ってのが、」

朗利「この資料によれば、航空母艦と潜水艦が跋扈する戦場に護衛艦の大量建造を優先したっていう戦略的な判断でね」

朗利「戦艦1つよりも数を優先する時代に移り変わっていったせいなんだ」

清霜「ふぅん」

朗利「だからなのか、――――――かつての敵国の生まれ…なのか? いや、生まれてなかったせいか、」

朗利「あのモンタナってやつは、けっこう気さくに接してきてくれるんだよねぇ……」

朗利「何と言うか、あの気質は戦艦:大和と武蔵に通じる何かがある気がしたんだよなぁ……」

朗利「(大和になら清原提督が慰問に来てくれた時に会っているし、武蔵なら『司令部』で開催された舞踏会であの石田提督の相手を――――――プッ)」

朗利「何だろう? 大食いなのはネックだが、あれだけの大きさの戦艦ともなると自分の燃費の悪さを弁えて節度を持つようになっているからなのかな?」

清霜「うぅん……、よくわかんない」

朗利「あ、ごめんごめん」

朗利「それじゃ、勉強はこの辺にして会いに行ってみようか」

清霜「うん」



682: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:06:03.99 ID:1x8KI/b90


モンタナ「おお、提督! そろそろ私を使ってくれる気になったかい?」

清霜「わあ……、やっぱりおっきい……」ジー

朗利「それを言うなら、燃費の悪さを気にしてくれよ。お前の他にだって戦艦がいっぱいいるんだからさ」

朗利「それこそ、インコンパラブルのような【火力】全振りの超速【巡洋戦艦】だっているんだし」

朗利「俺の鎮守府には戦艦がいっぱいいすぎて【演習】だけでも資源がヤバイってのに、実戦投入なんてできそうもないって」

モンタナ「そうだったなぁ、私は大和型戦艦よりは背は高いけれど、主砲の大きさまでは勝てなかったってのに、」

モンタナ「まさか、私以上の背丈で、大和型以上の主砲を持っている【巡洋戦艦】がいただなんてよぉ……」


日米英 最大の主力艦の比較
大和型戦艦:263.0m、63,980トン、46cm3連装砲3基、27ノット
モンタナ級戦艦:280.9m、60,500トン、40.6cm砲連装4基、28ノット
インコンパラブル:304.8m、46,000トン、50.8cm連装砲3基、35ノット


朗利「まったくだよ。いくら【伝承艦】が計画書に存在が確認されていたからって計画段階の能力そのままに【建造】されるとかさ、」メメタァ

朗利「――――――こんな無茶な設計 残したもん勝ちじゃないか!」

モンタナ「そうだな、提督。いったい誰なんだ、こんな頭がオカシイ性能の【巡洋戦艦】のデータを残したやつはよぉ!」

朗利「そう考えると、本当に【世界建造妖精】って“妖精界の生ける神”って崇められているのも頷けるな……」


ドレッドノート「それもわらわだが?」


清霜「あ、ドレッドノート様だぁ」

モンタナ「は」

朗利「え?! ――――――って、女王陛下!? ええええええ!?」

ドレッドノート「正確には、わらわの生みの親であるジョン・アーバスノット・フィッシャー第一海軍卿が計画したのだがな」

ドレッドノート「入っておいで、インコンパラブル」

インコンパラブル「は、はい……」

清霜「うわぁ、モンタナさんよりももっとおっきい…………」

モンタナ「何か悔しい……、大和よりも大きいのはこのモンタナ級戦艦以外存在しないはずなのにぃ……」

683: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:07:06.29 ID:1x8KI/b90

朗利「そう言えば、最初にインコンパラブル自身が言っていたような気がするけど、気が動転していて聞き流していたか……」

朗利「で、またその名を聞きましたね、――――――『フィッシャー第一海軍卿』」

ドレッドノート「まあな。通称“ジャッキー・フィッシャー”の第一海軍卿――――――つまり、日本で言うところの海軍軍令部長になったのは、」

ドレッドノート「1905年からであり、わらわの起工が始まったのも就任と同じ年なのだからな」

朗利「そ、それは凄いことですね……(それが本当ならとんでもない辣腕だな――――――1つの時代を生み出した天才とはこのことか)」

ドレッドノート「わらわは“ジャッキー・フィッシャー”などと呼ばれるのはあまり好かんから、“アーバスノット”と呼ぶが、」


ドレッドノート「つまり、わらわは“アーバスノットの化身”とも言える存在なのだ」


ドレッドノート「そして、アーバスノットの第一海軍卿時代は1915年の第一次世界大戦におけるガリポリ上陸戦における責任問題を巡って、」

ドレッドノート「時の海軍大臣:ウィンストン・チャーチルとの間で苦々しい論争を繰り広げた末に辞任して終わりを告げた」

朗利「――――――『チャーチル』!?(第一次世界大戦当時から海軍大臣だったんだ……)」

ドレッドノート「そして、アーバスノットは次なる軍拡の時代を前にして1920年に癌でなくなり、わらわも後を追うようにスクラップ処分となった」

朗利「………………」

ドレッドノート「さて、そのアーバスノットが生み出したこやつだが――――――、言っておくがハバククは違うからな? 勘違いするでないぞ?」

朗利「いや、どっちにしろ、イギリスって国はインコンパラブルにしろハバククにしろぶっ飛んだものが稀によく出てきますね」

モンタナ「ホントだよ! ――――――勝負しろ、インコンパラブル! 『比類なきもの』の名の通りかどうか試させてもらおう!」

インコンパラブル「や、やめてください……、実戦なんて無理ですから…………」

モンタナ「何だ何だ? 私よりもでかいくせに気が小さいようだな」

ドレッドノート「まあ 落ち着け、アメリカの田舎娘」

モンタナ「ん? 今 何て言ったかな、おばあちゃん?」ジロッ

ドレッドノート「何て言ったかな? こういうやつを『大男 総身に知恵が回りかね』って言うんじゃなかったっけ、朗利?」

朗利「まあまあまあ! 子供が見てますから! 子供の憧れの【戦艦】同士で喧嘩しないで!」

モンタナ「あ」

清霜「………………」オドオド

モンタナ「大丈夫。大丈夫だからそんな泣きそうな顔をしないで、ほら」ニコッ

清霜「うん」ニコッ

684: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:08:09.14 ID:1x8KI/b90

朗利「でも、普通に考えて主砲の大きさに合わせてから艦体を造るもんですよね?」

朗利「確かに、インコンパラブルは【50.8cm砲】を扱えるように300mを超えた巨体にはなってますけど、」

朗利「基準排水量が4万トン超程度じゃ安定性に不備があるように思えますけどねぇ……(だって、大和型は6万4000トンなんだからさ?)」

モンタナ「なんだって? それじゃまともに砲撃なんてできるわけないない。過ぎたる武器を背負わされてかわいそうだこと」

朗利「“オーバードウェポン”と呼ぶべき浪漫兵器となっているなぁ……(これもまた世に出ていたら大和型戦艦の人気が落ちていたろうな……)」

インコンパラブル「…………うぅ」

清霜「???」

ドレッドノート「まあ、そういうことさね。アーバスノットが自ら提唱した【弩級戦艦】の他にも提唱した【巡洋戦艦】の究極みたいな艦娘よなぁ」

朗利「――――――【巡洋戦艦】ねぇ(【巡洋戦艦】ってそもそも何だ? 【戦艦】の1種なのかな?)」

清霜「…………【巡洋戦艦】って何?」←【巡洋戦艦】を知らない世代


ドレッドノート「自分が搭載している砲塔の直撃に耐えられるのが【戦艦】、耐えられないのが【巡洋戦艦】とでも考えておけばいいさ」


清霜「へえ。そうなんだ。何か弱そう」

インコンパラブル「つまり、防御力=回避力として速力を追求しつつ、【戦艦】並みの【火力】を持たせたのが【巡洋戦艦】なんです」

モンタナ「なんだそりゃ? 私は28ノットだけど、アイオワ級戦艦なら30ノット超えているのにそんなひ弱でいいのかい?」

ドレッドノート「そこは時代の流れ、技術の進歩向上だろうねぇ、――――――小娘?」

モンタナ「…………ん」ピクッ

朗利「な、なるほど、【巡洋戦艦】ってそういうものだったんだ……(なんで女王陛下はモンタナのことが気に食わないんだろう……)」アセアセ

ドレッドノート「まあ、アーバスノットが失脚する原因にガリポリの戦いでの失敗もあったけれども、」

ドレッドノート「ユトランド沖海戦を想定してきたアーバスノットの【巡洋戦艦】の理論が机上の空論であったことが証明されてしまったからねぇ」

インコンパラブル「………………」

685: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:08:38.23 ID:1x8KI/b90

朗利「でも、当たればデカイんだろう?」

インコンパラブル「え、ええ。そりゃあ まあ……」

朗利「なら、これからよろしく頼むよ、インコンパラブル」

朗利「近日23日、新入りのお前たちで“多国籍艦隊”を組んでみんなにお披露目するつもりだから、堂々としていてくれよ」

インコンパラブル「え、え、ええ……?」

朗利「心配するなって。世の中には『火力だけが自慢の旧式戦艦』だって頑張ってるんだからさ」

朗利「1発 撃って敵一人を大破に追い込んでくれればそれでいいから」

朗利「先制攻撃の1発を確実に中てるのがお前のこれからの仕事だからな。これぐらいなら頑張れるだろう?」

朗利「インコンパラブルは無理に頑張る必要はないからな(――――――さもなければ、俺の鎮守府経営がヤバイ!)」

インコンパラブル「……ありがとうございます、提督」ホッ

ドレッドノート「フッ」

モンタナ「なあ、提督。さっきの話、本当か? お披露目ってことは、――――――戦わせてくれるんだよな、晴れ舞台で?」ワクワク

朗利「ああ。【演習】を頼もうと思ってる。好きに暴れていいぞ(――――――経費は全部『司令部』が持ってくれるから!)」

モンタナ「やった! 楽しみだぜ! 待ちに待った艦隊決戦! 長門型だろうが大和型だろうが何が来たって勝ってみせるさ!」

朗利「…………その、仲良くな? 競うのはいいけれど【演習】だからな?」

モンタナ「わかってるって、提督。強いやつと戦って勝つっていう栄光も強いやつがいてこそだもんな!」

朗利「は、はははは…………(これまた変わった娘が入ってきたもんだなぁ…………でも、悪い娘じゃないのはよく伝わるからきっと大丈夫だろう)」

清霜「なるほど~」

ドレッドノート「あれからずいぶんと変わった娘たちが入ってきたもんだねぇ。これも時代ってこと…………すまないねぇ、朗利にはいつも苦労を掛けさせる」




686: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:09:17.10 ID:1x8KI/b90

――――――インペロとクレマンソー:未成艦について、


朗利「今のところ、育成に関して一番の問題を抱えているのはこの娘たちなんだよなぁ……」

清霜「あ、クレマンソーちゃん!」

クレマンソー「あ、司令官に清霜ちゃん……」 ← あまりにも制服が粗末すぎたので他の艦娘の私服のお下がりを着ている

酒匂「あ、司令!」パァ

インペロ「あ、提督…………」ドクンドクン ← 制服がビキニだけのトンデモ仕様だったのでジャージを着せている

朗利「おお、酒匂もいたのか。インペロもちょうどよく近くにいたか」

朗利「どうだ? 一緒に外に出てみない? 冬まっただ中だし、けっこう寒いけど見せたいものがあるんだ」

クレマンソー「…………わかりました、司令官。司令官がそう言うのなら」

酒匂「わ~い! 司令、大好き~!」

インペロ「そ、そうなの。なら、満足させてよね。この私がついていってあげるんだから、ね?」チラッ

朗利「よし。艤装は外して温かい服装で俺の部屋に集合!」

朗利「あ、これ。ここにいるみんなだけの秘密だから、くれぐれも他のみんなには内緒だぞ?」ニコッ

清霜「もう、司令官ったら! ……うん、お姉様たちにも内緒よ? みんなもいい?」

クレマンソー「う、うん……」

インペロ「あら、困ったわ~! こんな時に外出するのに着ていく服がないじゃない」チラッチラッ

朗利「ああ。さすがにジャージ姿で外出させるのはどうかと思うし、1着しかないけど何とか使えそうなのをレンタルしてきたからそれで我慢してくれ」

インペロ「?」

清霜「え、何、何? 司令官、何、何、何、ねぇ?」



687: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:10:29.35 ID:1x8KI/b90

――――――市街


朗利「よし、着いたぞ」 ← トヨタ・エスティマ(乗車定員:8人)を私用に使っている

朗利「清霜、みんなを降ろしてやってくれ。他のみんなは初めてなんだから」

清霜「うん」

インペロ「現代のクルマってこんなにも乗り心地がいいものなのね……」(トヨタ・エスティマのスーパーリラックスモードを堪能)

酒匂「お外ってこんな感じなんだー」

クレマンソー「………………」

清霜「大丈夫、クレマンソーちゃん? 車酔いとかしなかった?」

クレマンソー「あ、大丈夫。何ともないから」

清霜「それじゃ、降りてねー」

クレマンソー「わかった……」

朗利「…………クルマの運転なんてここしばらくやってなかったな」

朗利「(『司令部』に入る前は頻繁に艦娘を連れて農家や牧場のおっちゃんたちに広報活動と称して買い付けに来ていたんだけどな)」

朗利「(ま、クルマの運転技術が錆びついてなくてよかったよ)」

朗利「(やっぱりエスティマはいいな。こうやって艦娘たちと買い出しに行く分には車載がピッタリなんだもん)」

朗利「さて、――――――降りましょうか、インペロ?」スッ ――――――手を差し出す。

インペロ「え、ええ……」 ――――――その手を掴み、おそるおそるクルマから降りる。

朗利「うん。不慣れだろうけれど、今は勘弁してくれよな。インペロと同じサイズの娘がいなくて格安でレンタルしたものだけど」


インペロ「へ、変なところはないわよね?」ドキドキ(それはヴィーナスの肌の艶のような淡い色の着物)


朗利「変なところはないない。――――――あるとすれば、クリスマスを前にしたこの時期に着物ってところだけだよ」

朗利「綺麗だよ。自分でもそう思わなかった?」

インペロ「そ、そうね。私の美的センスに狂いは無いんだもの。誰が見ても綺麗なはずよね……」ホッ

清霜「いいなー! 清霜も戦艦になれたらインペロさんのように着物を着こなせるようになれるかな?」キラキラ

朗利「うん、なれるさ」

688: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:10:55.46 ID:1x8KI/b90

酒匂「………………」キョロキョロ

クレマンソー「………………」

朗利「――――――酒匂? ――――――クレマンソー? ――――――二人共?」

酒匂「ぴゃあっ!?」ビクッ

クレマンソー「…………司令官」

朗利「こうやって人がたくさんいるところへの外出は初めてだろう? はぐれないように気をつけてくれよ?」

酒匂「うん、わかったよ~」

クレマンソー「うん。気をつける」

朗利「よし」

朗利「でも、やっぱり二人共いつになく楽しそうだな。落ち着きが無いように見えるぞ」

酒匂「うん。生まれるのが遅すぎたかな、あまりお外にはいけなかったから」

クレマンソー「…………私はずっと同じ空を見上げることしかできなかったから」

インペロ「あなたたちもそうだったの…………」

朗利「……そうか」

朗利「それじゃ、これからみんなに見せようと思っているものはこの世の中で最も綺羅びやかで綺麗なものだからね」ニコッ

クレマンソー「?」

清霜「え? 何々?」

酒匂「ぴゃん♪」

インペロ「――――――私よりも?」ボソッ

朗利「それは比べられないなー。料理を楽しむのとおやつが大好きなのと同じぐらい甲乙つけがたい問題だし」

インペロ「そ、そう。なら、少しは期待してもいいのよね?」ドキドキ

朗利「ああ。それじゃ、くれぐれもはぐれないようにね?」

清霜「楽しみだな~。何を見せてくれるのかな~?」

朗利「それはね――――――?」



689: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:11:21.48 ID:1x8KI/b90


――――――クリスマスシーズンの光のページェント


酒匂「わ~!」ドキドキ

クレマンソー「………………!」ドキドキ

清霜「すご~い!」ドキドキ

インペロ「これはなんていう――――――」ドキドキ

朗利「どうだい? 初めて見るだろう? この冬枯れした並木道にかけられたイルミネーションが織りなす幻想的な光景は」

クレマンソー「…………うん」ドキドキ

インペロ「ちょっと冷えるけれども、異国の地でこういった景色が見られたのは本当に宝のようなものね」ドキドキ

インペロ「…………ありがとう、提督」

酒匂「お外ってすご~い!」

清霜「うん! すご~い!」

朗利「ひぃやっぱり冷え込むな~。それに久々の人混みに威圧されてる俺がいる……」ハハハ・・・

朗利「それじゃ、みんな? まずはクレマンソーとインペロの服を買おう。それからあちこちの店を見て回ろう」

艦娘たち「ワーイ!」

朗利「よし、それじゃ行こうか」

朗利「(カネそのものは食費以外 予算が有り余ってるから、こうやって艦娘たちのために注ぎ込む余裕があるのが幸いだな)」

朗利「(資源ばかりはカネがあってもどうしようもないものだからね。こればかりは日々の【遠征】でコツコツと稼いでいくしかない)」

朗利「(それに、『司令部』からの多額の追加報酬も出ていることだし、こういう時に使って罰は当たらないだろう)」



690: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:11:52.85 ID:1x8KI/b90


朗利「じゃあ、支払いは拓自鎮守府宛てにお願いしますねー」

インペロ「…………」ドキドキ ← 服を買ってもらえたけど、やっぱりレンタルの着物のままにしておいた

クレマンソー「…………これが私の服」ニコッ ← 服を買ってもらえた

酒匂「酒匂も買ってもらった! ぴゅう」

清霜「インペロさんのと同じのが良かったなぁ……」


ザワザワ、ジロジロ、ヒソヒソ・・・


クレマンソー「………………」ギュッ

朗利「……クレマンソー?」

クレマンソー「何かあっちの人たち……、怖い」

朗利「…………大丈夫だぞ」

クレマンソー「………………」

清霜「ねえねえ、司令官 司令官! これからどのお店から行くの?」

酒匂「酒匂、すごく楽しみ~!」

朗利「そうかそうか」

朗利「で、インペロ? 本当に着物のままでいいのか?」

インペロ「いいわよ。――――――今日の記念に、ね? KIMONOって意外と悪くないものね」

朗利「そうか。それはよかった」

朗利「………………」

朗利「…………やっぱり視線が痛いかな」ドクンドクン

                           シセン      ヨワ
――――――思わず逃げ帰りたくなる、外の空気と俺の小心さ。



691: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:12:29.42 ID:1x8KI/b90

朗利「(街に出かける際は暇な陸軍が憲兵を増員してとにかく目を光らせているために――――――、)」

朗利「(あるいは、現在の皇国を支えている艦娘が人間そっくりな存在であることから事案に発展しやすいというその取扱には数々の問題を抱えていた)」

朗利「(それらを回避するために、あえて制服のままで街中を出歩かせるか、俺がやっているように腕章をつけて所属を明らかにするぐらいしかなかった)」

朗利「(しかしながら、そうしたとしても周囲一般からすれば提督である俺はうら若き童女をたくさん侍らせているようにしか見えないために、)」

朗利「(提督という海軍の花形である職業には憧れと同時にそれ以上の羨望や嫉妬が向けられることも多々あった)」

朗利「(中には、艦娘に対して平然と猥褻行為や暴言暴力を行う命知らずが出たために、艦娘が市街に出かけることはかなりリスクが伴う行為であった)」

朗利「(一応、そういったことに即座に対応する取り組みとして、市街に出る提督にはものさし棒のように伸びるフラッシュライトが渡されており、)」

朗利「(何か人混みの中で問題があった際にはこれを伸ばしてフラッシュを焚くことで憲兵が即座に駆けつけられるようになっており、)」

朗利「(この陸海合同の取り組みによって、艦娘への犯罪の減少やそれ以外の全体的な街の治安維持に大きく貢献することになった)」

朗利「(そんなわけで、昔ほど艦娘を街に連れ歩くリスクはなくなったものの――――――、)」


――――――それでもなくならないのが提督である俺への羨望や嫉妬の眼差しであった。


朗利「(正直に言えば、俺は街に出ることに一種のトラウマを抱えていた)」

朗利「(俺は弱い。頭もいいわけでもない――――――国民の憧れである提督に奇跡的になれたからといって正の側面を享受できるわけではなかったのだ)」

朗利「(清原提督のように皇国軍人の規範と内外から高い評価を受けるような高尚さを俺は持ち合わせてないし、)」

朗利「(金本提督のような資金力や圧倒的な戦績があるわけじゃない。俺は本当に世間一般からすれば人から羨まれるほどのものを何も持っていなかった……)」

朗利「(そして、艦娘に“弔花”を自前で用意させるほどのブラック冷血漢ほどに俺はいつも優柔不断であった……)」

朗利「(外に出れば、同期たちの活躍の報とそれを迎える街の聴衆たちの歓声があがるのに、俺に向けられるのは――――――)」


『元気ないわねー、そんなんじゃ駄目よぉ! 司令官、私がいるじゃない!』



692: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:13:49.18 ID:1x8KI/b90

朗利「(一般的に、鎮守府と俗世間の交流は隔絶されていることが多く、基地開放日のイベントぐらいでしか艦娘と接点がないのが普通であった)」

朗利「(艦娘などの国家機密を取り扱っている以上 一般との接点が限られているのは当然といえば当然だが、)」

朗利「(艦娘も年頃の女の子の姿をしているだけに狭い鎮守府に閉じ込めておくのも多大なストレスとなるために街への外出を認めざるを得なかった)」

朗利「(その時、顔を隠せない有名人のように街中を歩いている時に艦娘の機嫌が良ければ初めて遭遇できる存在でもあった)」

朗利「(探せば割りと居る存在なので、国の宝である美姫が勢揃いの艦娘に対して何らかのアクションを実行に移す人間が出ることは当然であった)」

朗利「(仮に街で見かけたとしても、下手すればすぐに憲兵の御用になりかねないので、それ故に触れないのが暗黙の了解となっていたのだが、)」

朗利「(世の中が便利になってくるとインターネットの匿名サイトを利用した晒し上げなどが横行するようになり、)」

朗利「(俺たち提督はあの視線の中に混じっているだろう盗撮に最も用心しなければならなくなったのである)」

朗利「(そういった理由もあって、戦術指揮がド下手な俺が取れる貴重な点数稼ぎと実益を兼ねた広報活動にこれまで力を入れてきたわけなのだが、)」

朗利「(その行き先は全て、街から遠く離れた人気があまりないような秘境にある農家や零細牧場が主だった)」

朗利「(当然ながら、そういった問題が顕著となってくれば厳罰化せざるを得なくなり、盗撮に対する密告制度の是非も真剣に議論されるようになっている)」

朗利「(おそらく、インペロの存在は今回の買い出しを機に世に多く広まったことだろう)」

朗利「(なにせ、クリスマス前に着物姿で出歩いているだけでも人目を引くのに、ビスマルクとも違った未確認の海外艦であることも明白だったからだ)」

朗利「(となれば、次に来るのは俺に対する各鎮守府からの羨望と嫉妬だろう……。今度は仲間内でもそんなふうになってくるのだ)」

朗利「(ただでさえ俺はビスマルクを擁しているだけで妬まれているのに、更に油に火を注ぐ結果になるのは時間の問題となってしまったか……)」

朗利「(だからこそ、こうしてインペロやクレマンソーを連れて街に出ることには実は大きな覚悟が必要だったんだ……)」

朗利「(怖い……。どうして守るべき存在に怯えなくちゃいけないの? 俺だって好きで『司令部』に選ばれたわけじゃないのに…………)」

朗利「(『運だけの男』だとか言われるのは別にいい! けれど、俺だって一生懸命やっていた時期だってあるのに――――――!)」


『司令官、貴方は大丈夫。だって、私が傍にいるんだから!』



693: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:14:25.77 ID:1x8KI/b90

――――――それから、


朗利「さ、今日は特別 食べ放題だぞ。たくさん食べていいぞ(バイキングって安上がりでホントいいわぁ!)」← 感覚麻痺

清霜「いいの!? やったー! いっぱい食べて戦艦になるね!」

酒匂「ヒュゥ! やったぁ♪」

クレマンソー「…………こんなにもたくさん ごちそうが並んでる」ドキドキ ← お下がりではない自分用の私服を買ってもらえた

インペロ「これ、全部 食べていいの?」ゴクリ・・・ ← あまりにもナイスバディなので合うトップスがなかなか見つからなかったが何とか確保できた

朗利「…………艦娘としての節度を持てよ? あっちの家族連れの目の前でバカ食いしたらみっともないからな?」

インペロ「わ、わかってるわよ! 馬鹿にしないで! ふん!」ワクワク

朗利「……何だあれ? ビスマルクのやつとは違った華やかな雰囲気の持ち主だけれど根はそっくりだな」

朗利「ま、そうもなるのかな……(だって、ホントにザンネンな扱いで爆破着底の後の解体に至るまでの過程すらもアレなんだもんな……)」

朗利「でも、成長株としては期待できるかな? 五十鈴のような青背景のコモン艦が最高の対潜能力を得ることだってあるんだし」メメタァ

朗利「あ」

朗利「…………愛月提督はうまくやってくれているだろうか?」

朗利「鎮守府に帰ってきた時にあのじゃじゃ馬娘たちに睨まれないことを祈りたい……(まあ 比較的 俺も広報活動してきたからそれなりに有名人だけどさ)」

朗利「――――――いや、何を恥ずべきことがある!(今日は『インペロとクレマンソーの服を買いに来た』という大切な目的があるじゃないか!)」

朗利「さて、俺も久々の食べ放題で腹を満たすとするか(いやぁ安い安い! 1日の食費と比べたらなんて良心的なんだぁあああ!!)」


けれど、外で食べる料理はいつもより美味しくは感じられなかった…………。



694: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:14:58.72 ID:1x8KI/b90

「――――――ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦3番艦:インペロ」

「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の基本性能は先に調べあげたように、ヘタリアの印象に反してかなり高く、リシュリュー級と同等の性能である」

「主砲は38.1cmと控えめだが50口径、高初速とし、威力は【40.6cm砲(=16inch砲)】に劣らなかったという」

「更には速力:30ノットを超える数少ない高速戦艦に数えられており、基本性能を見ればイタリアの工業力の高さは十分に高いことはわかるはず」

「だから、このヴィットリオ・ヴェネト級がヨーロッパ戦線における名艦となることは誰が見てもそう見えたはずなのだが――――――、」

「ここで発揮されるのがあの伝説的なまでのヘタリアっぷりであり、」

「燃料不足や上層部の戦意不足により消極的な運用に終始した結果、さしたる活躍もせずに例外なく全艦が軍艦としてはアレすぎる最期を遂げたのだ」

「他にも列強戦艦と比べてヘタリアっぷりを発揮している軟弱設計のおかげで、もう説明するのが面倒なくらい欠点がいっぱい挙がるのだが、」

「しかしながら、唯一【艦これ】においては欠点が長所になった最大の特徴があった」メメタァ

「それは、活動範囲が地中海方面限定にしたことに由来する4000海里以下の他の列強戦艦ではぶっちぎりの最下位の航続距離である」

「航続距離というのは低速であるほど伸びるものであり、一般的に公開されている航続距離は運用するにあたって基準となる速度のものが示されている」

「ヴィットリオ・ヴェネト級の3,920海里/20ノットは仮想敵のリシュリュー級の7,750海里/20ノットの半分程度しかないのだから本当にどうしようもない」

「実際に、イタリア降伏後に連合国からはその高速性を活かそうとしたものの、航続距離の無さからくる外洋性の無さによって、」

「まさかの旧式:カイオ・ドゥイリオ級弩級戦艦よりも先に廃艦となり、あるいは賠償艦として連合国に引き渡されてしまったぐらいなのだ」

「しかし、ヴィットリオ・ヴェネト級の性能は設計段階で燃料タンク自体の大きさを小さくして浮いた重量を武装や防御に回した結果であることから、」

「なんとヴィットリオ・ヴェネト級の【燃料】は数ある【戦艦】の中では断トツで安く、しかも性能はリシュリュー級並みなので戦闘は普通に強い!」

「なので、【艦これ】的には【燃料】が凄まじく安い 経済的な【戦艦】であるという『弱点が長所に置き換わった』独特な強みを見せつけるのだ」メメタァ

「酷い表現をすれば、――――――“世界一豪華な海防艦”とみなせば割りと使えるのだ、このイタリア戦艦」

「かつて燃料不足で活躍の場がなかったのに、一般的に欠点とされる航続距離の無さからくる【燃料】の安さが売りの【戦艦】になるとは皮肉である」メメタァ

695: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:16:19.09 ID:1x8KI/b90

「――――――リシュリュー級戦艦3番艦:クレマンソー」

「イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級と同じくらいに数奇な運命をたどっている艦型であり、」

「それもこれも、ヒトラーの仕掛けた電撃戦によるパリ陥落によるナチスドイツの傀儡政権であるヴィシー政権の成立が全ての始まりである」

「電撃戦によってあっという間に首都機能を奪われたフランスではあったものの、その支配がフランス全土に浸透するにはまだ時間があった」

「このままナチスドイツの手先となってしまうのか、それとも傀儡政権に対して反旗を翻すかで統制がとれない地方のフランス軍ではあったものの、」

「メルセルケビール海戦による連合国の早まったフランス軍戦力の撃滅作戦が行われ、一時期 フランス全体の連合国への不信を高めることになった」

「なお、イタリアも連合国に降伏した際にヴィットリオ・ヴェネト級が引き渡されるのを阻止すべくドイツ軍による空襲を見舞われて轟沈させられている」

「さて、有力な指導者がいなければフランスはヴィシー政権のヴィシーフランスの下に併呑される運命にあったが、」

「そこに登場したのがシャルル・ド・ゴール率いる自由フランス軍であり、現在のフランスはこの自由フランス政府が旧フランスを継承した形となる」

「そんなこんなで一口に【フランス艦】とは言っても、枢軸国戦力と認定されてイギリス艦隊やアメリカ艦隊と交戦を繰り返すことになり、」

「まともな艦隊決戦の結果、フランスが誇る戦艦であるダンケルク級もリシュリュー級も全ての艦が大きな痛手を負うことになり、」

「イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級と同様に、状況に翻弄され続けてまともな戦果を上げることなくそのまま歴史の表舞台から降りている」

「性能そのものは堅実で高水準なだけに、まともな活躍の場が与えられなかったのは非常に残念なことである」

「そのことを考えると、日本の戦艦たちはあれだけ悲惨な戦況の中の非業の死の連続であったが、ずっと1つの信念のもとに忠義を貫けただけ本望である」

696: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:16:59.32 ID:1x8KI/b90

「こうしてインペロとクレマンソーについて性能や背景を調べあげて比較してみるといろいろと共通項があることがわかるのではないだろうか」

「まず、どちらも改良3番艦を目指された末の未成艦であり、本来の役割を果たせないままに海に沈んでいった点」

「つまりは、潜在能力は凄まじく高いのだが、不幸艦であることが避けられないザンネンで残念な生い立ち――――――」

「そして、どちらも国のトップが安定せず、まともな戦果を姉妹艦の誰一人として残すことができずに終えた点」

「一応 連合国の認識のフランスと一応 枢軸国の認識のイタリアという第二次世界大戦において影の薄い国らしいひっそりとした最期とも言える」

「両者の性能も【艦これ】的にほぼ互角と言っていいほどの性能であり、運用面においては【燃料】が驚異的に安いインペロが扱いやすいが、」メメタァ

「負け戦ばかりだがその1つ1つの戦いの中で設計の手堅さを見せてきたフランス戦艦としての補正でクレマンソーの方が全体的に能力が少し高い」メメタァ

「また、ドイツ軍に接収されているので【ドイツ艦】でもあり、【ドイツ艦】から【建造】される可能性があり、」メメタァ

「あまり国情を考えれば褒められたものではないものの、【ドイツ艦】経由で比較的入手しやすいのも大きな特徴だろう」メメタァ

「しかしながら、状態に関しては正反対と言わざるを得ず、インペロに関してはほとんど完成していたにも関わらず【標的艦】となり、」

「クレマンソーの場合はほとんど完成していなかったが、ドックを空けるために浮き砲台にされる始末(適当な艦種がないので分類は【戦艦】のまま)」メメタァ

「それが反映されて、インペロは成熟した身体でありながらほぼ全裸の姿であり、クレマンソーはみすぼらしい駆逐艦のような姿となっている」

「この状態から改善するためには【改装設計図】は不可欠となっており、もはや海外戦艦の【改造】には【改装設計図】が必需品となりつつある」メメタァ

「強さで言えば、大和 ≧ モンタナ >> クレマンソー ≧ インペロ ≧ ビスマルク なのだが、いかんせん未成艦なので【改造ボーナス】が比較的小さく、」メメタァ

「最初から【戦艦】として完成されていた姉妹艦たちと比べると初期値は【標的艦】と【戦艦(浮き砲台)】なので圧倒的なまでの性能差があるものの、」メメタァ

「改良3番艦にまで【改造】が進むと最終ステータスが姉たちを完全に上回るものにまで上がるようなので最後まで愛情を注いでやろう」メメタァ

697: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:17:34.76 ID:1x8KI/b90

――――――展望台から見渡す街の夜景


酒匂「ぴゃあああ! 何これぇ!」

インペロ「………………綺麗、とっても」

クレマンソー「…………夜ってただ真っ暗で怖いだけじゃなかったんだ」

朗利「ここからだと拓自鎮守府はあっちの方面だったかな?(懐かしいな、この夜景も。たった1年前の話なのに、何だか遠い昔のように感じられる)」

清霜「ねえねえ、司令官 司令官! この夜景のこと、みんなには内緒なんだよね! そうなんだよね!」

朗利「ああ。――――――みんなには内緒さ(そう、この夜景を誰と一緒に眺めているのか、来年 誰と見ているのかの差でそう感じるんだ)」ニコッ

朗利「(1年前 新米だった俺には見えなかったものや感じられなかったものがいくつもこの夜景の中で見えてくる…………)」

朗利「(――――――『成長できた』ってことでいいんだよな? 俺はこの夜景の中にいくつも守るべきものが浮かんでくる)」

朗利「(1年前のあの頃はまだ、あの妖怪:食っちゃ寝と一緒に初期艦:電と頑張っていた頃だったかな?)」

朗利「(それが今では、“一航戦の誇り(笑)”よりも凄まじい食いっぷりの【海外艦】たちを擁してこの場に立っているのだから)」

朗利「(さて、どうしたものかな? 他にはないこれだけ恵まれた【海外艦】たちを駆使したいところだけれど、燃費がなぁ――――――)」

朗利「(そうだ……、もし燃費改良技術が進んでいったらそこからは大型艦の独壇場になるんじゃないのか? そうなれば――――――)」


――――――待てよ? はたしてそれは本当に歓迎すべきことなのか?


朗利「(もし戦艦クラスが駆逐艦と同程度の燃費にまでなったら、駆逐艦のみんなは――――――いや、他の艦種のほとんどが不要になるのでは?)」

朗利「(だからこそ、性能が劣ってはいても低燃費であることから鎮守府の運営を支える縁の下の力持ちという地位を得た艦娘だっているのに…………)」

朗利「(これじゃ天龍や龍田たちの居場所が――――――もしかして、低燃費化が進んだ先にあるのってやっぱり力こそが全てになっちゃうの?)」

朗利「(…………どうなるの、戦後の未来は?)」

朗利「(燃費改良技術が進まなければ、――――――戦後の軍縮であらゆる艦娘の解体ラッシュ!)」

朗利「(かといって、燃費改良技術が進んでいけば――――――!)」

朗利「(この二つに一つでしかない俺たち人間と艦娘との未来は――――――?)」


――――――いや、その時が来た時に俺はあの娘たちを最後まで守れるのか?



698: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:18:07.43 ID:1x8KI/b90

朗利「………………」

インペロ「どうしたの、提督?」

朗利「あ」

清霜「司令官?」

酒匂「…………司令?」

朗利「…………みんな、どうした? そろそろ見飽きたか?」

清霜「ううん、そうじゃないけど…………」

酒匂「司令が凄く悲しそうな顔してたから……」

朗利「え」

インペロ「自覚がなかったの?」

クレマンソー「………………」ジー

朗利「………………」

朗利「…………なあ? 訊いていいかな?」


――――――俺なんかがみんなの提督で良かったのかな? 


艦娘たち「………………」

朗利「1年前 この場所で駆け出しだった頃の俺と一緒に夜景を見ていたのは別な娘だったんだ」

朗利「だから、たった1年であれからずいぶんと変わってしまったことに、何と言うか“怖さ”ってやつを感じて…………」

朗利「1年先のことですら見通せないのに『こんな俺に命を預けてもらって大丈夫なのか』って不安になってさ……」


朗利「――――――未来を、みんなと一緒にいられる明るい未来をこのままずっと想像していられるのかなって」



699: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:18:41.19 ID:1x8KI/b90

清霜「できるよー! ねー?」

朗利「え」

酒匂「うんうん。酒匂、司令と一緒! ずっと!」ニコニコ

朗利「え、ええ……?」

クレマンソー「………………」ギュゥウ!

朗利「……クレマンソー?」
               ・ ・ ・ ・ ・ ・
クレマンソー「……やだ。そうじゃない未来なんて想像したくない」ブルブル・・・

クレマンソー「やっと得られた……、大好きなみんなとの日々が続いていく夢だけを見続けていたい……」

クレマンソー「今年のクリスマスはサンタさんから今度こそ“幸せ”っていうプレゼントをもらうって決めていたんだから……」グスン

朗利「……ごめんな! 変な質問なんかして(――――――何やってるんだ、俺は? この娘たちの前でこんな弱音を吐くだなんてさ)」アセアセ

インペロ「そうよ、あなたには私と一緒の日々をずっと続けていく義務があるんだからね!」

朗利「い、インペロ……」

インペロ「私に初めて服を着せてくれたのは他でもないあなたなのよ!」

インペロ「上品な衣装じゃなかったのが残念だったけど、あなたの上着に包まれた時 本当に暖かったんだから……」モジモジ

インペロ「だから、私と一緒に作っていきましょうよ、」


――――――明るい未来ってやつを!


インペロ「そう! 『最大の喜びはいつも私が----する人とわかちあうこと』なんだからぁ!」ドックンドックン

朗利「はは……、ありがとう(何て言ったんだ? 『何する人とわかちあう』だって? まあ、信頼されてるようだし悪い意味じゃないだろう)」ニコッ

清霜「清霜を仲間外れにしないでー、インペロさん!」

酒匂「酒匂も司令のことが大好きだから、一緒 一緒ぉ~!」

インペロ「そ、そうね……、そうだった」


インペロ「――――――『みんなと』ね」フフッ



700: ◆G4SP/HSOik 2015/02/04(水) 09:20:38.93 ID:1x8KI/b90

クレマンソー「………………」オドオド

クレマンソー「………………」ウズウズ

朗利「どうしたの、クレマンソー?」

クレマンソー「…………司令官」モジモジ

朗利「うん。言ってごらん」

クレマンソー「司令官。お願い、だから――――――、」グスン


――――――私たちを見捨てないで。


朗利「!!」

朗利「………………」

艦娘たち「………………」

朗利「……………………」

朗利「(そう、これは女王陛下との問答の中でも言われたこと)」

朗利「(人間が艦娘を求める以上に艦娘は提督である人間を強く求めている――――――)」

朗利「(なら、そんな艦娘たちに俺がすべきこと・貫くべきことが何なのか――――――)」

朗利「――――――」ニコッ

艦娘たち「――――――!」パァ

朗利「――――――、」


――――――帰ろう、みんなのところへ。


拓自鎮守府が擁する多国籍艦隊 一人ひとりの強み(最終的な戦闘力について)

長門 ………………新戦艦からすれば旧式“ビッグ7”でありながら【戦艦】屈指の【運】による特殊攻撃発生率を誇る

ビスマルク ………唯一の艦娘改三にして【戦艦】初実装の【雷装】による屈指の夜戦火力

モンタナ …………アメリカ版大和としての安定した能力が売り。大和に比べると【火力】は劣るが耐久性に優れる

インコンパラブル…ハイパー【巡洋戦艦】。【装甲】は薄いものの300m超えのデカさによる【耐久】と一撃必殺レベルの【火力】

インペロ …………新戦艦の中では世界一安い【燃料】でかつリシュリュー級と同等の戦闘力を持つエコノミー【戦艦】

クレマンソー ……ビスマルク以上 大和以下の性能の使い勝手のいい【高速戦艦】でかつ【対空】の高さが光る


――――――第7話Z 到来  -アドベント- 完

       Next:第8話  12月23日 -三笠公園にて- に今度こそ続く!



701: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 08:59:12.54 ID:vjaZff0t0

第7話W 鎮守府の守護神   -侵食される鎮守府- 

――――――12月某日


――――――
ブクブクブク・・・・・・
――――――

石田「…………ついにできたぞ、左近提督」

左近「……こいつはとんでもないですよ、殿」アセタラー

石田「そうだとも。こいつが活躍しない道理はない」

左近「そうは言いますがねぇ……」

左近「問題は、その力をこちらに完全に益するように制御しなけりゃならんってことですよ?」

左近「殿自身が運用を誤ればすぐにダメになりますし、部下たちとの連携もうまくいかないと成り立ちませんね」

左近「そして、何よりも部外者である他所の提督や艦娘、ひいてはお偉方を味方につける努力をしないと全ては画餅ですな」

石田「わかっている、そんなことは」

石田「そのために数々の鎮守府に協力を仰いで用心に用心を重ねてここまでこぎつけたのだ」

左近「…………その全てがブラック鎮守府であり、例外なく鎮守府司令官が名誉の戦死を遂げておられますな」

石田「知ったことではない、そんなクズ共のことなど」

石田「俺はちゃんと深海棲艦を御し得たのだのに、やつらはできなかった――――――ただそれだけのことだ」

左近「…………“司令部”も大変ですな」

左近「(まあ、大本営がブラック鎮守府の再度の取り締まりを計画していたこともあって、殿はその計画に便乗したわけなんですがね……)」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


これから語られる話の数々は、12月某日までに趣里鎮守府司令官:石田元提督の暗躍および暗闘の記録である。



702: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 08:59:54.83 ID:vjaZff0t0

――――――とあるブラック鎮守府にて


石田司令「どうだろう? 貴官の更なる栄達のために深海棲艦の力を利用したくはありませんか?」

赤座提督「ほう?」

石田「この計画は大本営からも認められているのですが――――――、」

石田「まだ具体的な活動をしているのが私しかおらず、深海棲艦の利用や生態の研究は遅々として進みません」

石田「そこで、深海棲艦の運用データをとってくれる協力者を探していたわけなんです」

石田「まだまだノウハウは不十分かもしれませんが、現在のところはちゃんと反抗されずに戦力として活躍してくれています」

石田「詳しいことはこちらの資料に全て書いてあります」

石田「少なくともこの通りに処置を施していれば、深海棲艦を掌握することが可能だということが証明されています」

石田「しかし、絶対数が少ないために信憑性が薄く、こうして信頼できる一人一人に協力をお願いしている次第なのです」

石田「謝礼も『新戦略研究局』から出しますので、どうか協力してはいただけませんか?」

赤座「御託はいい。それよりもヲ級とレ級はいるのか?」

石田「はい」

赤座「……そうか」ニヤリ

石田「しかし、赤座提督? 深海棲艦を運用するのには細心の注意が要ります」

石田「まずは、どちらか片方を運用してノウハウを掴んでから、それから追加したほうが安全だと思いますが」

赤座「うるさい。協力してやるんだからさっさと連れて来い!」

石田「それでは、明後日に深海棲艦を【 教】するのに必要な設備をお持ちしますので、それまで私が作った手引書と契約書の確認をしてください」

赤座「ちっ、ほらよ。――――――明後日だな? 必ず連れて来いよ」カキカキ

石田「…………こういうのも難ですが、もう後戻りはできませんよ?」

赤座「ああ? この俺を誰だと思ってるんだ? 泣く子も黙る赤座提督だぞ」

石田「そうですね。赤座提督の勇名は海軍随一です」

赤座「そうだろそうだろう! ふっはっはっはっはっは!」

石田「………………クズが(――――――この程度で誇れるやつの気がしれんな)」ボソッ


703: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:00:25.60 ID:vjaZff0t0

――――――明後日


石田「では再度――――――、しっかりと契約書の内容をお読みになってくれましたか?」

赤座「ああ」

石田「それでは、設備もちゃんと動いたのを確認したので深海棲艦の空母ヲ級と戦艦レ級を引き渡します」

赤座「おお!」

ヲ級「………………」

レ級「………………」

石田「安全のために必ず艦娘の監視をおつけになってください」

石田「それと、深海棲艦は艦娘とは根本的に違いますので、運用方法もずいぶんと違います」

石田「何か新しい発見や疑問に思うことがありましたら、ぜひ新戦略研究局にご連絡ください」

石田「それでは、何か他に質問はございませんか?」

赤座「ないない。とっとと失せろ」

石田「…………そうですか」

石田「くれぐれも細心の注意を払ってください」

石田「その深海棲艦はあくまでもあなたの部下として扱われるので、何かしら問題が起きた時はあなたの管理能力が問われてきますから」

赤座「おうおう。失せろ失せろ」

石田「では」


ガチャ、バタン


石田「…………死ぬな、あのクズは」ボソッ

704: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:01:46.71 ID:vjaZff0t0

M:榛名「あ、あの……」オドオド

石田「確か、赤座提督のお気に入りの――――――」

M:榛名「は、榛名です……」オドオド

石田「どうした?(怯えきった目。落ち着かない視線。動悸が収まらない身体――――――懐かしいな、この感じ)」

M:榛名「い、今、提督の部屋に入っていったのは……、は、榛名の見間違いでなければ――――――」ゴクリ

M:榛名「……空母ヲ級と戦艦レ級だったのでは?」アセタラー

石田「その通りだ」

M:榛名「ええ!?」ビクッ

石田「心配するな。別に赤座提督が初めて深海棲艦の管理運用をするわけじゃない。私が得たノウハウとエッセンスを伝授しておいた」

石田「私がやったその通りに扱っていれば、深海棲艦と言えども【 教】されて戦力に組み込むことが可能となった」

M:榛名「………………」

石田「――――――『信じられない』という表情だな」

M:榛名「あ、いえ! は、榛名はだ、大丈夫です……」ビクッ

石田「…………では、これだけは言っておこう」

石田「あの提督はあまり私の言ったことを聞いてないようだから、秘書艦である榛名が代わりに私が作成した書類を読んでおくのだ」

M:榛名「え」

石田「自分たちの提督が何をしているのかを把握しておくのも部下であるあなたたちの勤めだろう」

M:榛名「は、はい……」

石田「でなければ――――――」


――――――死ぬぞ、あなたたちの提督は。


M:榛名「え…………」

石田「あんな提督でも忠誠心が欠片ほどでもあるのなら――――――、生きていてもらいたいのなら――――――、」

石田「今 言ったことを自分たちの提督に成り代わり『自分が守ってやるのだ』と思って実行してくれ」

石田「ではな」

M:榛名「………………!」

M:榛名「は、榛名は…………」アセダラダラ

M:榛名「それでも、榛名は…………」











――――――その1週間後、赤座提督は名誉の戦死を遂げた。



705: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:02:17.67 ID:vjaZff0t0

死因は、最近になって頻発している深海棲艦による鎮守府の強襲と思われる。

鎮守府は壊滅し、赤座提督が防衛戦の最中に名誉の戦死を遂げたことによって指揮系統に乱れが生じ、

司令官である提督を喪い、何をすべきか右も左も分からない艦娘たちは深海棲艦の強襲部隊によって次々と轟沈させられていったようである。

所属していた艦娘の正確な数は鎮守府への攻撃によって記録が消失し、戦線離脱あるいは轟沈したかの消息調査は今後も継続される予定。

そして、大本営が派遣した“とある新設の専門調査機関”の調査報告によれば、強襲部隊の主戦力が戦艦レ級であることが判明する。

これにより、戦艦レ級の進出に多くの軍関係者が震撼することになり、より一層の鎮守府防衛の議論が盛んになるのであった。

赤座提督が名誉の戦死を遂げた後に残された艦娘たちは【解体】か【転属】を迫られ、残った全員が競って【転属】を選んだという。

否、仕えるべき提督の後追いを選んで【解体】を自ら志願した艦娘がただ一人いたことも報告されている。


706: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:03:05.31 ID:vjaZff0t0


カーンカーンカーン


石田「…………愚かだな」

解体妖精「――――――【解体】が完了しました」
           ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
石田「……これが榛名だったものか」

石田「――――――人間と同じだな。死ねば誰もが灰となって、粉となって、塵となって消えいく」

石田「だが これは、身を粉にして尽くすこととはまた違った話だ」

石田「全体の勝利に貢献しないクズ提督に尽くしたお前もまた ただ愚かなだけの存在なのだ」

石田「俺は違う。こんなクズとは。俺は…………」ブルブル・・・
              ・ ・ ・ ・ ・ ・
解体妖精「石田司令、獲得した資材はどちらへ運べば?」

石田「これは『新戦略研究局』の資料として持ち帰る。趣里鎮守府宛てに送っておいてくれ」

解体妖精「わかりました」ゴロゴロ・・・
           ・ ・ ・ ・ ・
石田「…………こんなものを集めて俺は何をしようとしているのだ?」
  
             ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
石田「――――――艦娘だったもので何を期待している?」バッ  ――――――扇を取り出す


石田「……………」\勅命/

707: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:03:47.83 ID:vjaZff0t0

M:扶桑「あ」

石田「む」スッ ――――――素早く扇をしまう

M:扶桑「あ、あの……」
                             ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
石田「どうしました? 赤座提督の後追いをした榛名だったものでも見に来たんですか?(――――――改二でもないただの【航空戦艦】)」

石田「残念ながらすでに資材として有効活用するために配送されましたよ(練度はそこそこだが、すでに艦娘としての尊厳もない故障品か)」ジー

M:扶桑「え」

石田「それとも、あなたも赤座提督の後追いをしたいと?」

M:扶桑「そんなことは…………」

石田「相変わらず、ブラック鎮守府にはよくお似合いの艦娘が揃っているものだな……」ボソッ

M:扶桑「………………」

石田「それで、どうしたんですか? 用がないのならば新たな配属先が決まるまでおとなしく待っていてください」

石田「私もここでの用事はすみました。それでは」

コツコツコツ・・・・・・

M:扶桑「…………待ってください」

石田「………………」コツコツコツ・・・・・・


M:扶桑「――――――趣里鎮守府の石田提督ですよね?」


石田「………………」ピタッ

石田「そうですが? 用があるのなら簡潔かつ明瞭にお願いします」

M:扶桑「…………榛名から全て聞きました」

石田「………………」

708: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:04:39.78 ID:vjaZff0t0


M:扶桑「石田提督、あなたが私たちの鎮守府をメチャクチャにしたんですよね?」ブルブル・・・


石田「……それは筋違いですね」

石田「鎮守府が壊滅したのは全て赤座提督の能力の無さが招いたことです」

M:扶桑「本気で言って――――――」ジロッ

石田「それに、私が直々に調査に来てみれば、――――――何たる怠慢か」

石田「気に入った艦娘を監禁して艦娘の尊厳を踏み躙るような行為を行い続け、更には敷地内で違法大麻の栽培にも手を出していた――――――」

M:扶桑「――――――っ!?」ピタッ

石田「外部の人間との交流が極端に少ない鎮守府で違法大麻の栽培とはよく思いついたものだ」

石田「だが逆に、その外部の人間との交流が極端に増えていたからこそ、何かしらの違法行為の目星はついていたのだ」

石田「彼も最初こそはまっとうな提督業に励んではいたようですが、最初の轟沈を経験して以来 戦績は悪化の一途を辿って行き、」

石田「自暴自棄になっていたところに暴力団との繋がりを持ってしまったようですね」

石田「更に調査を進めていった結果、違法大麻の濫用を艦娘たちにも行っていたことが明らかになりましたよ、」


石田「――――――扶桑型戦艦だったもの」ジロッ


M:扶桑「………………!」ビクッ

石田「あなたもまた麻薬常用者として本来ならば国の名誉のために【解体】を命じたいところでしたが、」

石田「大本営は国の宝である艦娘には絶対の正義の味方であって欲しいから、適当な名目をつけて処分できるまでは放置する腹づもりのようですよ」

M:扶桑「そ、そんな…………」

M:扶桑「ハッ」

M:扶桑「違います! 私はそんなんじゃ――――――」

石田「クズに飼われた艦娘もまたクズに成り下がるわけか。人間とまったく変わらない」

石田「だが、だからこそ この非人道的な実験の貴重なデータを残してくれた功績を評して、赤座提督を称えなければなりませんね」

石田「本当に国のために尽くしてくれましたよ、あなたたちのクズ提督は」フッ

M:扶桑「………………へっ!?」ゾクッ

709: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:05:56.81 ID:vjaZff0t0

石田「艦娘にも違法麻薬の効果が十分にあるようですね」

石田「人間と比べてどれだけ反応の差があるのかはまだわかりませんが、これからの進捗が楽しみです」

石田「一時の多幸感のために、人間としての尊厳を投げ捨てるものに同じく手を出した艦娘がどうなるのか――――――」

石田「特に、禁断症状が出た時に艦娘がどんなふうにのた打ち回るのか、その報告が上がるのが今からとても楽しみですよ」

M:扶桑「…………!」ゾゾゾ・・・

M:扶桑「た、助けてください……」

M:扶桑「あれは私じゃないんです。提督が無理やり――――――」

石田「記録によれば、あなたは赤座提督の所属艦としてはずいぶん長生きしている2代目扶桑のようですね」

石田「3代目や4代目は捨て艦されたことが数々の記録や証言からうかがえますが、」

石田「つい生前の赤座提督のお気に入りではなく、戦力としても完全に忘れ去られ、長らく放置されてきていたようですね」

M:扶桑「…………!」

石田「それなのに、麻薬常用者でありながら今日まで禁断症状に苦しめられずにいられたわけは――――――」シュッ

M:扶桑「あ――――――」

ガシッ、ユサユサ、ポロッ

石田「――――――やはり隠し持っていましたか」ジトー

M:扶桑「ち、違う、違うんです、これは…………」アセアセ

石田「そう言えば――――――、」


石田「重度の禁断症状に苦しめられて放置されていた艦娘は『鎮守府が壊滅した時に轟沈した』という扱いになってあります」


M:扶桑「や、やっぱり……、山城や最上たちがいなくなっていたのは――――――!」ジロッ

石田「『今まで禁断症状に苦しめられていたみんなのことをこれまで一生懸命 介護してきたのに!』とでも言いたげだな、クズが」ジロッ

M:扶桑「…………『クズ』ですって!?」ギリッ

石田「そうだ。自分の保身のためにしか生きてこなかった艦娘のクズめ! 国賊め! 仲間を売った悪魔め!」

M:扶桑「――――――あ、『悪魔』? 私が?」

石田「ずる賢い貴様は榛名だったものから今回の鎮守府襲撃事件の真相をそれとなく知って、」

石田「あんな提督やこんな仲間たちの仇として俺のことを糾弾しようと思っていたようだが、」

石田「俺としても禁断症状が軽ければ手を下すつもりはなかったんだ!」

石田「なのに、貴様だけはのうのうと麻薬を盗んできては健常者の扶桑を装って麻薬中毒者たちの介護のフリをして!」

M:扶桑「……!?」ゾクッ

M:扶桑「違う、違うんです! 私は本当に――――――」ポタポタ・・・

石田「麻薬中毒で苦しんでいる仲間たちを救う名目で堂々と麻薬を盗んではそのほとんどを自分の懐に納めといて、」

石田「そうして残り少ない麻薬をみんなに渡して恩を着せて一人 救世主として崇められる自分に悦に入っていた!」

石田「みんなのために一生懸命に悪の提督から大麻を盗んで介護に勤しむ地獄の中で唯一の善人を演出してきたのが貴様なのだ!」

石田「麻薬が足りなくてのた打ち回るみんなを横目に自分だけは満足いく量の麻薬を吸って知らん顔することを幾度となく繰り返してきただろう!」

石田「これを偽善と言わずに何という! 天使の顔をした悪魔と言わずして何という!」

710: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:06:26.40 ID:vjaZff0t0

石田「まず 貴様がすべきだったのは、現状を外部に報告して然るべき審判が赤座提督に下るようにするべきではなかったのか!」

石田「麻薬の誘惑に負けて、みんなをダシに使って一番 甘い汁を吸ってきたのがクズの貴様であり、」

石田「そして、お前が救った気でいたみんなは少量でも長い間 麻薬を服用させられ続けて苦汁をなめさせられることになったのだ!」

M:扶桑「違う、違うんです! 私は、私は、私は…………」ポタポタ・・・

石田「違わない! 少なくとも軍規に定められている違法大麻の存在について理解していたはずなのだからな」ビシッ

石田「貴様だけが知らないなんて言い訳は通用しないぞ。生き残ったほとんどが違法大麻の存在を証言しているのだからな」

M:扶桑「う、うぅうう…………」

石田「ふん、これは没収だ。これまで相当量の違法大麻を濫用してきているのだから、禁断症状が出た時どれだけのた打ち回るか見物だな」

M:扶桑「い、いやあああああああああ! か、返してえええええ!」バッ


――――――扶桑だったものが違法大麻を取り上げられるのを阻止しようと飛びかかった瞬間!


石田「鬱陶しいな!」\勅命/

M:扶桑「!?」


――――――石田元提督は\勅命/の文字が入った扇を素早く振りぬく!


カチッ

M:扶桑「あ……(――――――何か踏んだ)」

石田「終わりだ」

バチバチバチィイイイイイイ!

M:扶桑「きゃああああああああああああああ!?」バチバチバチ・・・ ――――――大破!

石田「――――――電光地雷」

石田「踏んだ瞬間に処刑用の電気椅子と同じだけ――――――それ以上の電圧が瞬時に流れる」

石田「人間とは内部の構造が異なる艦娘と言えども、それでも人間と極めて近い身体である以上 この電光地雷には抗えん」

石田「所詮、陸に上がった艦など座礁しているも同然なのだ」

M:扶桑「あああ………………」プスプス・・・

M:扶桑「私は…………    」ガクッ

石田「………………」ギュッ

M:扶桑「」


石田「…………………すまない」



711: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:07:00.35 ID:vjaZff0t0

パチパチパチ・・・

石田「…………!」

中将「すばらしいものを見せてもらった」

石田「――――――黒田中将」


黒田中将「やはり卿にはこれからの栄光ある皇国海軍の運営を取り仕切るにふさわしい才覚がある」


黒田「これからも皇国のために存分に力を尽くしてくれ」

石田「黒田中将、『新戦略研究局』としてはこれ以上のことはできません」

石田「(現在の大本営の暗部を司る重鎮であり、徹底したマキャベリズムと数々の権謀術数の手腕から“鬼の手”と恐れられている皇国の闇軍師……)」

石田「私が新設を具申した『新戦略研究局』はあくまでも深海棲艦との大戦を勝利するための戦略の研究を行うための新部署であり、」

石田「電光地雷などといった妖精科学を応用した新兵器の開発や、ブラック鎮守府の艦娘の更生保護などといったことは本来 管轄外のことです」

黒田「わかっている。後のことは私に任せておくといい」

黒田「だが、これからの卿は『新戦略研究局』という実績のない新部署の長に収まらないことだろう」

黒田「いずれ、今の仮初めの平和は破られ、戦局が悪化するに連れて卿が取り組んでいる研究が認められていくことだろう」

黒田「その時、卿は“護国の英雄”として返り咲くやもしれん」

石田「名誉などどうでもいいですが、そうであって欲しいと願うばかりです」

黒田「安心せよ。そうなるまで、卿が率いる『新戦略研究局』はもちろん、『司令部』の行動の自由は保障されよう」

石田「………………」

712: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:07:35.16 ID:vjaZff0t0

黒田「『司令部』のβテスターたちは【艦これ】ユーザーたちの典型的なタイプ分けからその代表として選出されているわけだが、」メメタァ

黒田「実は、もう1つ条件があったのだ」

黒田「それは――――――、」


黒田「共通して非凡なリアルラックを持っていること。それが認められたからこそ卿を含めて彼らは『司令部』に喚ばれたのだ」メメタァ


黒田「リアルラックこそ【艦これ】を制するのに必要不可欠なものであることが歴然としている以上、」メメタァ

黒田「我々はそれを備えた提督たちをあらゆる方法や手段によって統計を集め調べあげた」

黒田「今年の夏イベントである【AL/MI作戦】の過酷な進軍命令はその統計調査の一環で行われたものだ」メメタァ

黒田「そうした結果を踏まえて、まるで勝利の女神に愛されているかのごとき、絶 の実現成就力を持った提督たちを見出すに至った」メメタァ

黒田「つまり、『司令部』とはそう言った 極めて恵まれたリアルラックを持った提督たちを集め、競わせ、優劣を付けさせることを目的としていたのだ」メメタァ

黒田「だからこそ、最初のテストケースとなる4人には互いの信条が相反するものを選び出して競争させていたのだ」

黒田「最終的には、そうして真に勝利の女神に愛された提督たちを重要ポストに据えていくことによって、」


黒田「――――――絶対の豪運を活かした史上最強の実現成就力を持った組織を築き上げるのが我らが大計なり」


黒田「そして、我々が求めている天運の持ち主たちを“アンガウル”という暗号名で呼び習わしている」

石田「迂遠なものですね。4人ずつ面倒を見るのが決まりならば、複数の『司令部』を設ければより多くのデータが早く集まったでしょうに」

黒田「だが、実際に【艦隊これくしょん】というソーシャルゲームは課金要素を極力排したことにより、」メメタァ

黒田「ユーザーのリアルラックがモノを言う極めて平等な運ゲーとなり、どれだけの実現成就力を内に秘めているかの能力勝負となっている」メメタァ

黒田「そして、卿たち『司令部』に最初に選ばれた4提督は、それぞれ独自の画期的な新戦略を考案し、それを実行に移そうとしている」

黒田「結果こそまだ出てはいないが、まさしく“アンガウル”の由来となった舩坂 弘のような創造性と発展性に先見の明を見せているではないか」

黒田「これだけでも『司令部』を設立したことの成果があったと言える」

黒田「それ故に、我々は卿ら“アンガウル候補生”のこれからの活躍に期待しているのだ」

石田「…………わかりました。微力を尽くします」

石田「それと、この扶桑だったものについてなんですが――――――」

黒田「わかっている。更生保護に関しては卿が求めている深海棲艦との比較研究のデータがとりやすい環境を設けて人道的に行うことにしている」

黒田「それに、卿が【開発】した【対深海棲艦用捕獲装備】があるのだからな。万一、暴動を起こしても安全に鎮圧できるようになった」

石田「…………では、お願いします」

黒田「うむ」

M:扶桑「」




713: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:08:06.45 ID:vjaZff0t0

――――――趣里鎮守府

――――――新戦略研究局


加藤提督「………………」

小西提督「どうしました、加藤提督? 【渾作戦】が終わって以来 そんな感じだったように思えますけど」

福島提督「そうだぜ、加藤提督? 【渾作戦】は俺らの完全勝利だったんだし、言うことなしじゃん!」

福島「最高の気分で年を越せそうだぜ! なぁ?」

加藤「うるさい、馬鹿」ジロッ

福島「あ、ああ…………?」

加藤「………………」

小西「これは珍しい。そこまで加藤提督が思いつめることがあるとは」

加藤「…………当然だろう」

加藤「お前たちは聞いたことがないのか?」


――――――鎮守府内部に出没する深海棲艦による襲撃のことを。


福島「そいつは…………」

加藤「【渾作戦】の成功の裏には、俺たちが最初にここで遭遇したあの深海棲艦の鎮守府襲撃が起き続け、いくつもの鎮守府が壊滅してきているんだ」

加藤「しかしどうも、名誉の戦死を遂げた鎮守府司令官たちはいずれもブラックと評判の連中ばかりであり――――――」

小西「――――――『それは噂でしかない』と大本営からも報じられているし、」

小西「対応が遅い大本営にしては割と早くに専門の調査機関を設置したじゃありませんか」

小西「そう、例えるならば、この『新戦略研究局』のような――――――」

加藤「…………やはりそうなんだろうな」

小西「?」

福島「おい? 本当にどうしちまったんだよ、加藤提督よぉ?」

加藤「気にするな。すぐに俺の疑問に答えてくれる人間が現れる」

福島「え、まさか、頭でっかちが――――――?」

714: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:08:40.62 ID:vjaZff0t0

ガララ・・・

加藤「…………!」


石田「それで? 俺に訊きたいこととは何だ、加藤提督?」


小西「久しぶりだな、石田司令――――――いや、提督業に復帰したから“石田提督”でもいいかな」

石田「ああ。よく来てくれた。――――――もうどっちでもかまわない」

福島「頭でっかち……」

加藤「よし、なら石田提督、ズバリ訊こう」


――――――近頃 取り沙汰となっている深海棲艦の襲撃による数々の鎮守府壊滅にお前が一枚噛んでるんじゃないのか?


福島「え!?」

小西「何を言って――――――」

加藤「どうなんだ?」ジー

加藤「俺は別にお前が敵である深海棲艦の連中と通じているとはこれっぽっちも思わないが、」

加藤「以前のような深海棲艦による鎮守府襲撃が起きるようになった今の状況を利用して、」

加藤「お前が『新戦略』と称して推進する【深海棲艦の自軍戦力化】の実験台にしてきたんじゃないかって疑っている」

加藤「…………どうなんだ?」

福島「はぁ? そりゃどういうことなんだよー!? わかりやすく説明してくれぇ!」

小西「つまり、加藤提督の疑念というのは――――――、」

小西「我々が遭遇した深海棲艦の鎮守府襲撃の事例に見せかけて、【深海棲艦の利用】の失敗を隠蔽してきたものがあったのではないかという――――――」

福島「んだとぉー!? おい、頭でっかち! お前、人としてやっちゃいけないことをぉおお!」ガタッ

加藤「静かにしていろ、この馬鹿!」ギロッ

福島「うっ」

福島「で、でもよぉ、もしそれが事実だったとしたら――――――」

加藤「…………それを今 確かめようとしているんだ」

加藤「で、どうなんだ? ……答えてくれ」

福島「…………加藤提督」

小西「さて…………」チラッ

715: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:09:09.83 ID:vjaZff0t0


石田「厳密には違うな」


加藤「!?」

福島「はぁ?! 何だよ、『厳密には違う』って!? マジわかんねーよ! Yesか Noか で答えやがれ、頭でっかち! カッコつけやがって!」

小西「なるほど。それもそうか」

福島「おい! 小西提督は頭でっかちの言ってることがわかるってのか?」

小西「察しが悪いもんだな。そんなお前のためにわかりやすく言ってやろう」

小西「要するにだ――――――」


小西「大本営がこれから公式アニメを放映する前段階として皇国のイメージアップとして計画していたブラック鎮守府の草刈りに便乗したのだろう」


石田「そのとおりだ」

加藤「…………!」

福島「え、ええ!?」

福島「つ、つまり、大本営によって味方の鎮守府が壊滅に追いやられて、それで――――――」

石田「これがお望みの今回の草刈りリストだ」バサッ

加藤「こ、これは…………」

石田「【艦これ】を運営するためのサーバも有限なのだ」メメタァ

石田「それでいて、来年からは一般向けの公式アニメも放映されてより一層 鎮守府への着任を希望する人間が多く集まることだろう」メメタァ

石田「サーバの増設はこれからも行われていくが、限りあるサーバのリソースを今以上に有効利用しなければならん時期に入っているのだ」メメタァ

石田「故に、全体の勝利に貢献しない、それどころか栄光ある我が皇国軍人の評判を落とすようなクズ共を付加価値をつけて粛清させてもらった」

加藤「やはり、お前は――――――」アセタラー

小西「そして どうやら、素晴らしい研究結果が手に入ったようで」

石田「ああ。『おかげで充実した粛清であった』と大本営からお褒めの言葉をいただいた」

福島「うえぇ!? ま、マジで味方を――――――!?」ゾクッ

石田「では、問おう」

石田「今回の粛清に選ばれたクズ共を見て、その専横を看過しているのが正義だとでも言うつもりなのか?」

福島「え、それは――――――わかんねえよ! てめえの価値基準だけで草刈りされちまった連中のことなんかよぉ!」

716: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:09:44.30 ID:vjaZff0t0

加藤「………………」ジー

小西「どれどれ」パッ

加藤「む」

小西「ほう、これはこれは――――――、前回の取り締まりの後で天下に悪名を轟かせてきた名立たるブラック鎮守府の連中が揃いも揃って…………」

小西「確かにこんな連中を生かしておくだけでも、皇国に仇なしていることに変わりないな」

小西「凄いな。今の御時世で捨て艦戦法をここまでやるような鎮守府が未だにあるとはね」

福島「いぃ!?」

小西「いいことじゃないか。こんなのは軍隊だけに限った話じゃない」

小西「企業にしたって、企業のポリシーや生存、利益に反する存在を駆逐して組織の健全さを保とうとするのは当然の働き」

小西「ましてや、我々が属しているのは他ならない皇国という1つの世界企業なのだよ?」

加藤「だが、それでも、他にやりかたはあっただろうに……」

小西「ふははは、言うに事欠いてそんなことしか言えないんだな、加藤提督?」

加藤「!」

小西「そんな無責任な――――――自分の手を汚したくないから周りで起こっている罪科を見逃そうって言うんだろう?」

加藤「そんなわけあるか!」ガタッ

小西「建設的意見なんてこれっぽっちも思いつかない分際で、文句ばかりはいっちょまえだよな、お前? それでいつも偉そうにしてさ?」

小西「生意気なんだよ! “愛しの間宮さん”とずっと一緒に補給部隊にいりゃいいんだよ、マザコンが! キモいんだよ!」

加藤「!!」プッツン

加藤「小西提督……! 先輩と言えどもこれ以上は――――――!」ググッ

福島「ちょ、ちょっと待ってくれよ、二人共! どうして二人が喧嘩してんだよ!?」オロオロ

石田「まったくだな。喧嘩なら他所でやって欲しいものだな」

福島「って、この頭でっかち! 元はと言えば、てめえが――――――」ギリリッ

717: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:10:37.43 ID:vjaZff0t0


黒田中将「静まれぃ」バァアアアアアン!


一同「!」

加藤「く、黒田中将――――――(――――――皇国の闇軍師?!)」

福島「え、ええええええ!?」

小西「な、なるほど。全てはそういうわけか……」

石田「……どうしてこちらに?」

黒田「卿らのことが心配でな」

黒田「それで、心配になって来てみれば、――――――案の定、卿らはかつての井上と南雲の論争のごとく相争うことになったな」

加藤「………………」

石田「………………」

黒田「卿らは【艦これ】のサービスが始まって間もなくからの歴戦の強者であり 能力も申し分ないが、」メメタァ

黒田「所詮、能力があるだけの愚か者の集まりにしか過ぎなかったというわけだったな」

黒田「かつて、尊皇攘夷を盛り上げて世界に冠たる明治維新を遂行してきた志士たちも、新政府での立場や方針を巡ってやがては相争うことになる」

黒田「卿らのような能力があるだけの存在こそが天下を乱す火種であると知れ」

福島「………………」

小西「………………」

黒田「卿らは『皇国のために』と念仏のように唱えてはいるものの、結局は皇国よりも自分の感情や都合を優先しているだけに過ぎん」

黒田「卿らの正しさなど、上っ面のものでしかないのだ」

加藤「違います! 俺たちは――――――」

黒田「なぜ違う? 何が違う?」

黒田「卿らは夫婦仲が悪いことは良くないとは思わぬのか? 子が親のことを憎むのは別にかまわないと思うのか?」

福島「そ、それは普通はダメだけど…………」

黒田「なら、仲良くされよ」

黒田「組織の人間同士が信頼を欠いた状態であることを見せつけること自体が敵につけいる隙を晒しているとは思わぬのか?」

黒田「自分が仲良くないのは正当な理由があるから自分だけは許されるとでも思っているのか、卿らは?」

小西「………………」

加藤「ですが――――――!」

黒田「では、問おう」


――――――人の心とは何だ?


福島「え」

加藤「…………?」

黒田「人間同士の下らぬ情こそが、――――――家を、――――――国を、――――――天下を乱す」

黒田「今の卿らの下らぬ啀み合いがいい例だろう」

718: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:11:13.75 ID:vjaZff0t0

黒田「加藤提督、卿は石田司令のように必死に知恵を絞り出して現状を打破しようと強く思ったことがあるのか?」

黒田「常に自分の価値観や倫理観を基準においた その批判的な態度が先程のような小西提督からの反感を招いていた」

黒田「それを直そうともせず、組織内の不和を助長させたことこそ私は火種を生み出す大きな罪のように思っているが?」

加藤「くっ」

黒田「次に、小西提督。卿は怜悧で飄々とはしてはいるものの実に嫉妬深く、後輩である加藤提督の成功を妬み続けていたな」

黒田「だからこそ、今のような啀み合いへと発展する温床になったのだ。私が止めなければ卿は加藤提督に対して何をしていたのだろうな?」

黒田「なぜ素直に味方の成功を称えられぬ? 皇国全体にとっての利益を素直に喜べぬ輩は最も信用できぬ」

小西「………………わかってますよ、そんなことは自分でもね」

黒田「福島提督、卿もまた、義侠心が先立つのは美徳ではあるが、あまりにも直情的すぎて物事の本質を見失うきらいがある」

黒田「卿は実に獣である。人間以下の獣だ――――――否、艦娘以下の存在だ。獣は己の感情の赴くままに何かを為すことしか知らぬ」

黒田「そんなんでは、これから激しさを増していく深海棲艦との戦いにおいて真っ先に脱落するであろうな」

福島「うぅ……、反省します」

黒田「そして、石田司令。卿の才覚は間違いなくここにいる者たちの中で随一ではあるが、」

黒田「卿は他者への配慮を知らなすぎる。まるで自分を中心に世界が回っているかのような傲慢な態度は国をも傾かせる恐れがある」

黒田「これから卿は、卿自身が捕獲した深海棲艦にしてあげているように他者を慈しむ対応の仕方を学ぶことが急務である」

石田「…………わかりました、黒田中将」

719: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:11:48.27 ID:vjaZff0t0

提督たち「………………」

黒田「最後に、これから卿らが己の主義主張で道を違わぬように明確な真理を告げておこう」

加藤「?」

黒田「今回の粛清の対象となったブラック鎮守府への裁量の基準だが、卿らはどういった基準で我々が裁いたかわかるか?」

福島「えと、あれですよね? ――――――『国家の帰属物である艦娘を粗末に扱った』とか?」

加藤「…………『皇国のためではなく、艦娘を私物化した』こと?」

黒田「確かにそうでもあるが、浅いな」

黒田「相変わらず馬鹿の1つ覚えのように『皇国のため』とは言うが、具体的にどういったことが『皇国のため』なのかが見えてこないな」

石田「私が答えます」

黒田「石田司令はいい。この中では卿が最も『皇国のため』に尽くしているからな。卿は今は、外に対して無愛想な態度を直すことを考えよ」

石田「……わかりました」

黒田「小西提督はわかったか?」

小西「簡単ですよ。――――――『艦娘を十二分に使って国威を示す』ことです」

黒田「違うな。そんなことではない。これは至極 簡単な答えだ」

小西「え」

黒田「どうやら卿らはとんでもない思い違いをしていることがこれではっきりとしたな」

福島「ええ……?」

加藤「では、石田司令にできて俺たちにできていないこととはいったい――――――?」

720: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:13:01.74 ID:vjaZff0t0


黒田「――――――『結果を出し続ける』それだけの話だ」


福島「え」

黒田「わからんか? たとえ捨て艦戦法を使ってどれだけの艦娘の犠牲が出し続けても『結果を出し続ける』こと、ただそれだけが評価されるのだ」

黒田「石田司令はそれを見事にやり続けているから一番高く評価しているのだ」

加藤「!」

小西「確かに……、石田元提督はかつてはブラック鎮守府に名を連ねるほどの非人道的な戦法を厭わなかったが、それでも結果を出し続けていた……」

石田「………………」

加藤「黒田中将! では あなたは、大本営はインモラルプレイを推奨していると言うのですか!?」メメタァ

黒田「ふふふ、実に浅はかな物の見方だな。それで『皇国のため』と言いふらしているとは恐れ入る」

加藤「…………?」

黒田「私は、『結果を出し続ける』ことが評価に値するといったのであって、」

黒田「たとえ捨て艦戦法を使ってその時 勝利に貢献したとしても、」

黒田「次の戦い、そのまた次の戦い、それ以降の戦いでも勝利に貢献できなければ意味がなかろうて」

黒田「はたして、捨て艦戦法に頼り続ける輩がこれからも戦力を維持し続けてこれからも勝利し続けるということが卿には可能だと思えるか?」

黒田「【MI/AL作戦】以来、必要とされる艦娘や戦術が多様化していく中で、」メメタァ

黒田「捨て艦戦法しかできないような無能がこれからのイベント海域を攻略していけると思うのか?」メメタァ

加藤「あ」

黒田「勝敗は兵家の常――――――、だが、たとえ緒戦で勝利し続けたとしても一度の敗北で盤面がひっくり返されることすらある」


黒田「しかし、現在 我々が深海棲艦に対して退くことが許されぬ以上、常に勝ち続けなければならないのだ。『結果を出し続ける』義務があるのだ!」ドン!


提督たち「…………!」

黒田「勝つべき時に勝たずして皇国が滅亡する――――――それを前提に考えれば、艦娘の犠牲など大した問題ではない」

福島「ぬぁ!?」

小西「え…………」

黒田「やはり大きな思い違いをしていたな、この者たちは。なあ、石田司令よ?」

石田「…………はい」

721: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:13:47.39 ID:vjaZff0t0

黒田「よいか? 艦娘は兵器である。兵器である以上は人間に使われて人類の勝利のためにあらゆる任務をこなす義務があるのだ」

黒田「卿らとて、艦娘たちと同様に『皇国のため』なら手と足となり 命を賭する覚悟があるのではなかったのかね?」

黒田「それとも、やはり口だけの中身の無い言葉だったのかね?」

加藤「そ、それは…………」

小西「つまり、艦娘の人格などあってないようなものだと言うんですか……?」

黒田「そうだ」

小西「そ、そんな馬鹿な…………」

黒田「だが、そもそも――――――、」

小西「?」


黒田「卿ら提督は艦娘たちを一定の能力を持った駒とみなしてこれまで作戦を立てて来たのではないのかね?」


黒田「駆逐艦でありながら非常にやる気に満ちた艦娘もいることだが、それを主力にして戦艦や空母に真正面から立ち向かわせようとは思うまい?」

小西「あ…………確かにそうでした。全ては能力に見合った作戦行動でした」

福島「た、確かにそれはそうなんだけどよぉ……」

黒田「となれば、『艦娘に心があるのかどうか』『人間として扱うべきかどうか』といった下らぬ議論はもうこれで必要あるまい」


黒田「むしろ、艦娘 以上に己を殺して それこそ兵器のごとく『皇国のため』に働かなければならないのは卿ら提督たちの方なのだぞ?」


提督たち「…………!」

石田「………………」

黒田「みなが下らぬ情を持たずにただ黙々と『皇国のため』に尽くす兵器のような心でなければ、国はまとまらぬ。泰平はいつまでも続かぬ」

黒田「特に、艦娘たちは絶対服従の因子によって提督の命令にはまず逆らえぬ。これほど理想的な兵士は存在しない」

黒田「だが、それを使う提督が不心得で力不足であるからこそ、結果を出し続けられぬし、自暴自棄やインモラルプレイにも走ることになる」

加藤「た、確かにそうかもしれない……」

722: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:15:14.58 ID:vjaZff0t0

黒田「よって、大本営が卿ら提督たちに求めているのは『結果を出し続ける』ことであり、」

黒田「その責務を果たし続けるためにはまず『己を律し、己を殺し、己を磨く』姿勢が何よりも大切であり、」

黒田「今回の粛清は『己を律し、己を殺し、己を磨く』姿勢の欠けた取るに足りない火種を消し止めただけに過ぎん」

黒田「こう言えば、卿らもこの粛清に異論を挟むことはできまい?」

黒田「ましてや、石田司令の頑張りにケチをつけることもできんだろう」

加藤「………………」

福島「………………」

小西「………………」

黒田「――――――『臣下の臣下は臣下にあらず』」

黒田「では、『君主から見た臣下の臣下』とはいかなる存在か――――――」


黒田「それは、『臣下の刀であり、勲章であり、衣服であり、手足』――――――『君主からの命を果たすために存在する装備』でしかない」


黒田「卿らが部下をどう扱おうと――――――装備として所有している兵器をどう使って命を果たすかは我々にとっては取るに足りない問題なのだ」

黒田「ましてや、末端の兵の一人一人について考慮する余裕も義務もない。そんなのは非効率なだけでそれぞれの部隊長の管理の問題だ」

黒田「そして、戦いの最中に装備が消耗するのはごく当たり前のこと。そんなのは確率的に必然の道理であり、戦いに犠牲はつきもの――――――」

黒田「それ故に、艦娘が轟沈したことに関して特に責めるつもりは毛頭ない」

黒田「それで勝利したのなら、我々は卿らに与えた任務の成功を称えて褒美と賞賛を与え、お望みならば 犠牲者の葬儀も国費で盛大に行ってやろう」

黒田「だが、国より命じられたなすべきことを果たせなければ、――――――その時は覚悟してもらおう」

提督たち「………………」

黒田「全てはそういうことだ。極めてシンプルな答えであろう?」

黒田「だが、石田司令を含めて卿らにはそれぞれ克服すべき課題がある」

黒田「しかし同時に、卿らの能力は我々は高く評価している」

黒田「『結果を出し続ける』ために『己を律し、己を殺し、己を磨く』ことを欠かさなければ更なる栄達が望めよう」

黒田「――――――長話が過ぎたが、言うべきことはこれで以上だ。私はこれで帰るとしよう」

石田「…………」スッ

加藤「…………」

福島「…………」

小西「…………」


提督たち「………………」ビシッ


黒田「今後も『結果を出し続ける』ことを楽しみにしているぞ」ビシッ

黒田「ではな。くれぐれも『皇国のため』にあってくれ」


スタスタスタ・・・・・・



723: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:15:54.93 ID:vjaZff0t0

石田「…………フゥ」

加藤「………………」

福島「疲れたー」

小西「そうだな」

加藤「――――――『結果を出し続ける』ことができるのは『己を律し、己を殺し、己を磨く』ことができる人間だから、か」

加藤「石田司令」

石田「む」

加藤「すぐにでも今日の報告を見せてくれないか」

石田「ああ。わかった。これが今回の調査結果だ」スッ

加藤「よし。――――――ほら」スッ

福島「あ、おお。ありがとな」

小西「これはどうも……」

石田「………………」

石田「少し疲れただろう」

石田「待っていろ、今 茶を用意させる」ピピッ

石田「――――――石田司令だ。今 休憩に入る。茶と茶菓子を用意してやってくれ」


一同「……………………」


石田「まあ、その、……何だ?」

石田「黒田中将が直々に訓示をくださったのだ」

石田「俺としても、その、やはり一緒にやっていくのなら同志として苦楽を共にしていきたい」

石田「改めて、この『新戦略研究局』の一員として、これからよろしく頼む……」

加藤「あ、ああ……、俺の方こそよろしく頼む……」

福島「お、おう……。こ、これでみんな『ダチになった』ってことでいいんだよな? な?」

小西「そういうことにしておきましょう……。でなければ、あの闇軍師の粛清に遭うことも考えられますから…………」

石田「…………ホッ」

加藤「………………丸め込まれた感じがしないわけではないが、これが現状におけるベストな判断なのだろう」



724: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:17:09.93 ID:vjaZff0t0





石田「――――――というわけだ。説明は以上だ」

加藤「なるほど。【 教済み深海棲艦】とは言え、【 教】も完璧ではなく、時間が経つに連れて効果がなくなるのか」

福島「そんで逃げられる(=ロスト)だって? それってガチでヤベぇことじゃん! せっかく【捕獲】したのに逃げられちまったらさぁ!」メメタァ

小西「まあ、【入渠】という体裁で提督自身が【深海棲艦の 教】を執り行うものなのだから、日課として欠かさなければ問題ないだろう」メメタァ

小西「俺としては、周囲の艦娘に与える影響の方がネックだと思う」

加藤「そうだな。この統計データによって、【 教済み】であろうとやはり敵だったものが近くにいるだけで艦娘たちにストレスになって、」

加藤「【艦娘たちの疲労】がどっと増えることが判明している以上、通常の運用は厳しいものがあるな」メメタァ

福島「でも、深海棲艦が喋れない以上は少なくとも旗艦にはできないからさぁ、いやでも艦娘と一緒に運用しないとダメじゃん」メメタァ

小西「まあ、ピンポイントに運用する分には問題ないって感じなのかな? 深海棲艦は自然回復するようだしな」メメタァ

石田「だが、こちらからの修理・補給を受け付けないが故に、レベリングが一向に進まん」メメタァ

加藤「なるほどな。そういった苦労もあるのか」

加藤「となれば、できるだけ強力な深海棲艦を【捕獲】して運用した方が効率がいいように思えるな」

小西「そうなるな。戦艦レ級を大量に【捕獲】してそれを特攻させれば敵の戦力をごっそり奪った上でこちらの損害は一切ないからな」

福島「でも、それだけ強力なやつを【捕獲】しようとすれば、その過程で数えきれない犠牲が出るかもしんねえぞ?」

小西「それは本気で轟沈させるつもりでたまたま生き残った死に損ないを【捕獲】するのがちょうどいいんじゃないか?」

小西「レ級クラスなら、本気で殺っても生き残る可能性も高いからな」

福島「ええ……? それでもし大破状態に追い込んだにしてもかなり危ないんじゃねえのか?」

石田「さっきから福島提督は不安ばかり口にしているな」

福島「わ、悪いかよ、頭でっかち! 俺はマジで心配して言ってやってるってのによぉ」

石田「いや、こちらとしても深海棲艦の自軍運用に関して素人目線からのそういった不安の声を払拭させる必要があるから、」

石田「そういった声には誠実に対応しようと思っている」

福島「お、そうなのか? だったら、これから遠慮無く言わせてもらうからな」

福島「間違ってもビビってるわけじゃねえから、そこんとこ よろしく!」

小西「……相変わらず能天気なやつだな」

加藤「…………まあな。だが、それだけに直球だ」

725: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:17:44.06 ID:vjaZff0t0

小西「しかし、思ったよりも使いづらくて困ったものだな」

小西「【 教】に関しては元々 敵である存在をこちらに引き込むために必要な過程として納得できるが、」

小西「なぜにこちらの修理・補給に対応していないのか――――――自然回復ができるのはいいが、かなり時間が掛かるようでもあるぞ」

加藤「落ち着いて考えてみると、――――――それで良かったんじゃないのか?」

小西「どうして? 修理・補給がすぐに終わらないということは容易に練度を上げられず、数に劣る我々が不利になるんだぞ」

加藤「いや そもそも、この『新戦略』というのは強い深海棲艦を【捕獲】して自軍戦力化すると同時に敵戦力の削減が狙いだ」

加藤「そう簡単に敵の練度が上がるようなら、逆に我々が練度を上げて圧倒する戦法が使えなくなって歯が立たなくなるぞ」

小西「…………!」アセタラー

加藤「それに、修理・補給の問題にしても――――――そもそも艦娘の管理全般を行っているのはあくまでも妖精たちだ」

加藤「となれば、妖精たちが深海棲艦を御し得ない以上は手の施しようがないことになる」


加藤「むしろ、妖精科学でもどうしようもできなかった深海棲艦を人類科学で克服できる足がかりをつかめただけこれは大躍進じゃないか」


小西「な、なるほど……、そう言われてみればそうだな」

石田「そう言われると、……助かる」

加藤「……まあ、これも『皇国のため』だ」

726: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:18:32.83 ID:vjaZff0t0

福島「じゃあ、深海棲艦はいったいどこからどうやって砲弾やら艦載機やらを作って補給してるんだよ?」

加藤「それは…………」

石田「いや、それは至極簡単な答えだ」


――――――深海棲艦は無から生まれているのだから。


福島「はぁ? んなわけあるか! パスツールの実験ってやつを知らないのかよ、頭でっかち!」

石田「そういう福島提督こそ、深海棲艦がこの世の法則に則った存在だと未だに思っているのか?」

福島「え? それは……、わからねえよ…………」

加藤「そうだな。深海棲艦をこの世の存在だと位置づけるには我々はあまりにも超常を見過ぎている」

小西「まあ、その証明をするとなれば――――――、」

小西「これまであれだけ撃滅してきた深海棲艦だが、一向に減るどころか数を増しつつあるからな」

小西「どう考えても、あの無尽蔵にも思える、いくら倒しても切りがない手応えの無さは異常だ」

福島「そりゃそうだけど…………」

加藤「だが、それを認めてしまったら、――――――俺たちの戦いは何だったんだ? ただの無駄骨、負けを認めるしかないというのか?」

石田「いや、実はそうでもない」

加藤「なに?」


石田「俺は以前に輸送ワ級の【捕獲】に成功し、ついにその分析結果がようやく出たのだ」


福島「おお!」

小西「それは本当か!」

加藤「で、どうだったんだ?」

石田「だが その前に――――――、」スッ

727: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:18:59.81 ID:vjaZff0t0


――――――【深海棲艦のサンプル】


福島「な、何だよ、これぇ?」ゾゾゾ・・・

加藤「この禍々しさは――――――」アセタラー

石田「…………【深海棲艦のサンプル】だ」

小西「馬鹿な! 深海棲艦は倒した途端に人魚姫のように海に溶けて消えてしまうのに――――――」

石田「それが現にこうして物体として形を残している――――――ということは だ」

福島「――――――ということは、その【サンプル】ってやつで研究が進んだってことなんだな!」

石田「そういうことだ」

石田「すでに大本営にはこの【サンプル】の存在を報告して、【深海棲艦研究班】に大半を研究素材として送りつけてある」

石田「これによって、これまで実現しなかった深海棲艦の多角的な研究ができるようになり、その研究報告がすでにここに届いている」

福島「なんだよ、もったいぶって! 早く言ってくれればいいのによ! な、加藤提督!」

加藤「……まあ、順を追って説明を受ける必要があったことだし、これはこれでよかったんじゃないか?」

小西「それで、何がわかったんだ?」

石田「それはだな――――――」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



728: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:19:32.04 ID:vjaZff0t0

――――――時は12月某日に戻り、


W:妙高「ふぅ」

足柄「妙高姉さん。今日もお疲れ」

W:妙高「ありがとう、足柄」

那智「いよいよ、23日は【深海棲艦】のお披露目となるわけだが…………」

羽黒「だ、大丈夫でしょうか? や、やっぱり、少し不安です……」

W:妙高「大丈夫よ、みんな。何があっても大丈夫なようにするのが私の任務だから」


W:妙高「私たちの提督と提督の理想は何があっても守り通してみせるから」


足柄「ま、妙高姉さんがこう言ってるんだし、当日は報告会の成功を願ってカツサンドを作っとくからね」

那智「そうだな。どうやら戦いは我々がどれだけ知恵を絞ったところで辿り着けないような次元に移っているようだしな」

那智「前回の秋イベントではあまり活躍の場もなかったし、中部海域も攻略した後では時間を持て余し気味だ」メメタァ

那智「しかしながら、久々に秋イベントで艦隊司令官として指揮を執ってくれたわけだが、」

那智「相変わらず私たちの提督の戦術行動、戦術判断は惚れ惚れするような采配であったな」

足柄「そうよね! 左近提督の“前進制圧”と比べると“約束された勝利”って感じで素敵よね!」

羽黒「でも、昔に比べると優しくなったって感じが強くなったよね」

那智「そうだな。そのことに私も違和感を覚えたが、戦いに支障がなかったのだからいいではないか」

足柄「う~ん、私は昔の方が『何が何でも完璧に勝利してやる!』って気迫が感じられたから前の方が良かったかも」

W:妙高「そうね。昔ほど檄を飛ばすことがなくなったのは確かね」

W:妙高「これもやはり、『ヲシドリ』たちのお世話――――――いえ、【 教】を司令自らが行うようになったからかしらね?」


那智「…………足柄としてはどう思っているのだ?」

足柄「え、何が?」

那智「――――――【 教済み深海棲艦】についてだ」

足柄「ああ それねぇ……」

足柄「私は特に何か言うつもりはないわよ」

足柄「だって、私たちの提督の奥底にある勝利へのこだわりは私たちがよくわかってるじゃない」

足柄「そして、その提督の側には妙高姉さんがいるんだもん」

足柄「これで敗北なんて絶対ありえないわよ! 100% 完璧勝利 間違いなしよ!」

W:妙高「身内とはいえ、そこまで断言されると照れくさいものがあるわね……」フフッ

那智「それもそうだったな。私たちの提督はただの前線指揮官に収まるような人物じゃない!」

羽黒「な、なんだか私たちの司令官さんが遠くへ行った感じがしていたけれど、これで安心……かな?」



729: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:20:07.46 ID:vjaZff0t0

武蔵「本当に23日の報告会は大丈夫なんだろな?」

W:長良「大丈夫ですよ、武蔵さん。心配しすぎですって」

武蔵「しかし、23日の報告会で行う【演習】ではお前と妙高と日向の3人で行うのだろう?」

武蔵「お前の実力は私たちの提督が認めたのだから侮っているつもりはないが、それでも――――――!」

W:長良「落ち着いて、武蔵さん」

W:長良「私も、相手は深海棲艦だし あっちも嫌そうな顔してたから、最初は仲良くするだなんてできそうもないって思っていたんですけど、」

W:長良「司令官が私と一緒に走りこみしてくれたおかげで、あの子たちも物凄く足が遅かったけど一緒に走ってくれたんです」

W:長良「そこで気づいたんですけど、深海棲艦も陸の上で走れば息が上がっちゃったり、足が笑っちゃったりするんだって初めて知りました」

W:長良「それでね? 司令官が言うんだけど、『艦娘も深海棲艦も違いなんて大した違いなんてない』んだって」

武蔵「なんだと? 我々があのおぞましい化け物たちと変わらないだと?」

W:長良「私も司令官が何を言ってるのか全然わかんなかったんだけど、司令官が率先して深海棲艦とたわむれてるところを見ていく中で、」

W:長良「司令官の前でいろんな表情を浮かべて いろんなことに初挑戦して頑張る姿にちょっと感動したっていうか、」


W:長良「――――――変ですよね? 敵なのに、化け物なのに、その頑張ってる姿を見て感動しちゃうだなんて」


武蔵「………………」

W:長良「でも、どうしてそう思ってしまったのか、私にはそれを表現する言葉なんてなくて……」

W:長良「だから、司令官が言ったことは本当なんじゃないかって思うしかなかった」

W:長良「でも、やっぱり納得できなくて――――――」

W:長良「だから、こうなったらもう! 凄く勇気を出して空母ヲ級――――――『ヲシドリ』ちゃんと一緒になってみたんです」

武蔵「…………!」

W:長良「そしたら、『ヲシドリ』ちゃんは喋ることはできないんだけど、ちゃんとこっちの言ってることを理解して反応を返してくれるんですよ!」

W:長良「司令官と一緒にトランプしたり、かけっこしたり、部屋の掃除をしたり――――――」

W:長良「司令官の【 教】の成果なんだろうけれども、喋れないけどちゃんと文字に表して受け答えして、ハンドサインで簡単な意思表示だってできるんです!」

W:長良「もう『これは信じるしかない』って実感したから、私は【深海棲艦】と一緒にいるのは怖くないんですよ」

730: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:20:45.01 ID:vjaZff0t0

武蔵「だが、いつ裏切るとも知れない存在に背中を預けることに怖さを感じないのか?」

W:長良「…………確かに、怖いです」

W:長良「でも、やっぱり今まで私たちを勝利に導いてくれた司令官のやることを嫌がったら何かがダメになっちゃう気がするんです」

武蔵「?」

W:長良「私たちの司令官は本当に非の打ち所がない優秀な指揮官でしたけれど、あまり私たちとのふれあいを持とうとはしてくれませんでした」

W:長良「大規模作戦の成功や勝利に湧き起こる私たちからはいつもいつも距離を置いて一人だったんです、司令官」

武蔵「…………!」

W:長良「だから、今回の【深海棲艦の 教】に関してあそこまで司令官が一生懸命に深海棲艦を理解しようとしていて、」

W:長良「そのために、今まで関わろうとしてこなかった私たちと一緒の時間を過ごしてくれるようになったことが凄く嬉しかったです」

W:長良「昔より司令官は本当に笑うようになってくれましたし、本当に楽しそうにしているんです」

W:長良「だから、そんな 今まで私たちの勝利のために頑張ってくれた司令官に何かお返しがしたくて――――――」

武蔵「……もういい。お前の気持ちはわかったから」

W:長良「武蔵さん?」

武蔵「まかせるぞ」

W:長良「はい!」ニッコリ


スタスタスタ・・・・・・


武蔵「…………くっ」

武蔵「………………提督よ」


731: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:21:52.79 ID:vjaZff0t0

飛龍「………………ハア」

W:日向「また、私たちの提督のことか?」ニュッ

飛龍「きゃあ?!」ビクッ

W:日向「っと、すまない。そこまで驚かせるつもりはなかったんだが……」

飛龍「あ、大丈夫です……」

W:日向「…………寂しいか?」

飛龍「え」

W:日向「悩みを言い当ててやろうか?」


W:日向「23日の『司令部』における報告会で行われる予定の【演習】や日頃の【捕獲】のメンバーにどうして自分が選ばれないのか――――――」


飛龍「…………!」

W:日向「……まあ、そうなるな」

W:日向「――――――理由は明白だろう」


W:日向「飛龍、きみがまぎれもない趣里鎮守府の主戦力だからだ。提督が認める優秀な戦力だからだ」


W:日向「あくまで私たちの提督がしている【深海棲艦の捕獲】なんていうのは、私のような予備戦力で行われていることだ」

W:日向「それに生け捕りにした方が確実だからこそ、なるべく【火力】が低めの編成で出撃してもいる」

W:日向「そして、日常業務を滞らせないために左近提督を招いて【海軍総隊】を結成しているわけだ」

732: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:22:44.75 ID:vjaZff0t0

飛龍「提督のやることの全てが皇国の勝利を願ったものだっていうのはよくわかってるよ」

飛龍「でも、いったい何度【捕獲】を敢行して死にかけたことか――――――」

飛龍「そう、この前の夜間出撃の時だって、海面に現れた“不気味な穴”に吸い込まれて――――――あれ?」

W:日向「……何の話だ、飛龍? この前の無断出撃のことか?」

飛龍「あ……、うん」

W:日向「そうか。あの時は大荒れして提督だけじゃなく飛龍と霧島もあやうく転覆しかけたから、」

W:日向「どうやらその辺の記憶が曖昧になっているようだな……」

飛龍「………………」

W:日向「あれは実に貴重な経験になったな。もしかしたら第四艦隊事件の再来になっていたやもしれない」

飛龍「あ、うん……」

W:日向「まあ、心配するな。私もこの【深海棲艦運用システム】に早い段階から関わっていたことだし、」

W:日向「今も忌避感が少しあるが、『レイ』や『ヨウスイ』たちの管理は行き届いている」

W:日向「おかげで、実際の敵の行動パターンや性質がわかってきたから、戦闘にも少しずつだがその成果が反映されてきている」

飛龍「………………………………」

W:日向「?」

W:日向「さっきから元気がないというよりは、白昼夢でも見ているかのようだな。夕食前だが今日は早めに寝ておいた方がいいんじゃないか?」

飛龍「あ、ごめん。最近ちょっと不思議な夢を見てそのことが頭が離れなくて……」

W:日向「――――――『夢』?」

飛龍「うん」


飛龍「私と提督が一緒に逃げ切るために提督の…大切な人が亡くなっちゃって、それでも提督は涙を流さなかった――――――」


飛龍「――――――っていう悲しい夢」

W:日向「………………」

飛龍「ごめんね。わざわざ日向が声を掛けてきてくれるぐらい今日の私 どうかしてたってことなんだよね?」

W:日向「まあ、そうなるな」

W:日向「だが――――――」フフッ

飛龍「?」

W:日向「いや、何でもない」

飛龍「それじゃ、提督のこと 呼んでくるね」

W:日向「うん」


スタスタスタ・・・


W:日向「――――――『夢の中でも提督と一緒』ってところがいじらしいな」フフッ




733: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:23:21.51 ID:vjaZff0t0

コツコツコツ・・・

W:日向「ん」

伊勢「よっ、日向。今日もお疲れさん」

蒼龍「【深海棲艦】たちとはうまくやれてる?」

W:日向「ああ。問題ない。少なくともいい子にしてくれているぞ」

W:日向「それよりも問題があるとしたら――――――いや、何でもない」

伊勢「まぁた日向のところの提督が無断出撃しないかって話でしょう?」

W:日向「さすがにバレたか」フフッ

W:日向「けど、23日の報告会に向けてこれ以上の無理はできないだろう」

W:日向「それに、何やらあの無断出撃の後はあれで懲りたのか、おとなしく研究に没頭しているようだしな」

蒼龍「それならいいんだけどなぁ」

蒼龍「あの提督、少しは飛龍の気持ちを考えてくれると嬉しいなぁ」

伊勢「でも、見てくれも根っからの仕事人間って感じだし、軍人よりも役人の方が似合ってるって感じじゃん」

伊勢「ここまでこの鎮守府が発展してきたのも恋愛事に脇目も振らずに遮二無二にやってきたからなのがありありと感じられるよねぇ」

W:日向「まあ、【深海棲艦】とのコミュニケーション――――――【 教】する過程で私たち艦娘とのコミュニケーションもだいぶ増えてきたことだし、」

W:日向「そこは今後の提督の成長に期待しようではないか」

W:日向「(しかし、――――――偶然だろうか?)」

W:日向「(確かにあの無断出撃の後、提督の態度が急に変わったような印象が拭えない。明らかに人が変わったかのような――――――)」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


734: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:24:17.39 ID:vjaZff0t0

――――――深夜


石田「――――――よし、出るぞ」(最新の防水防弾服)

ヲ級「ヲヲヲ!」


ブゥウウウウウウウウウウウン! ザァアアアアアアアアアアア!


――――――
左近「やれやれ、相変わらず殿にも困ったもんですなぁ……」

左近「まさか同じ【艦載艇】を俺に黙って【開発】していただなんて……」

左近「いくら鎮守府近海とはいえ、今夜は海が荒れそうだってのに…………無許可の夜間狩猟なんてお戯れが過ぎますぜ?」

左近「すみませんが、川内さん、長良さん、――――――他に起きているのはっと、霧島さん、飛龍さん、殿の護衛についてください」

左近「潜水艦で尾行させるのがベストなんでしょうけど、本当に時化てきた時に殿を助けるには力不足ですからな」

左近「海が荒れる前に夜間偵察機で安全確認してくださいよ? 移動母艦も無しじゃホントに危険ですから」
――――――


735: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:25:08.54 ID:vjaZff0t0

石田「………………見つからないか?」

ヲ級「ヲヲ…………」

石田「そうか。そんな日もあるだろう」

石田「しかし、これからの研究で少しでも【深海棲艦のサンプル】が必要となってきた以上は、」

石田「駆逐イ級でもいいからそれを【捕獲】して次から次へと【解体】しないと研究が進まない」

石田「――――――俺の研究にしても、大本営の【研究班】にしてもだ」

ヲ級「ヲヲ………………」

石田「大丈夫だ。お前はいい子だから【解体】なんてしないぞ」ニコッ

ヲ級「ヲヲ」スリスリ

石田「…………フッ」

石田「あ」

石田「しまった。駆逐イ級なら水雷系なのに、空母系【捕獲装備】の【電撃銃】を持ってきてしまった…………俺としたことが」

石田「(あれから更に改良が加わったこいつを試し撃ちしたいが、なかなか機会がな……)」ジャキ ――――――【電撃銃・紫電】!

石田「――――――っと」ヨロッ

石田「さすがに荒れてきたか」

石田「よし、撤収しようか」

ヲ級「ヲヲ!」 ――――――ハンドサイン「後方に味方6人!」

石田「…………やはり左近提督の目をごまかすことはできないか」

石田「よし、鎮守府に帰投する!」グルン



ブゥウウウウウウウウウウウン! ザァアアアアアアアアアアア!



石田「………………?」

石田「何だ? 前に進んでいない?(それどころか、こちらに向けている【探照灯】の光から逆に遠ざかっている!?)」

石田「ハッ」

石田「――――――『ヲシドリ』!?」クルッ

ヲ級「ヲヲヲォオオオオオオオ!」

石田「!?」


石田司令の目の前に見えたのは、夜の暗闇にぽっかりと空いた“不気味な穴”であった! 目を疑った!

“不気味な穴”は海面のうずしおのようではあったのだが、これはうずしお以上に吸引力が強力であり、

それが何もないところに設置されたバキュームのように辺りに存在する全てを吸い込もうとしていたのである!


736: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:25:41.64 ID:vjaZff0t0

石田「な、何なのだ、あの“穴”は…………!?」

石田「ありえない、なんなのだ、これは!?」

石田「ぐぅうう、こちらも吸い込まれ――――――(いや、今からフルスロットルで行けば脱出できる可能性がある!)」

ヲ級「ヲヲヲォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

石田「『ヲシドリ』ィイイ!(ダメだ! 失ってなるものか、『ヲシドリ』を!)」

石田「なら、これに賭けるしかない!(――――――今日 初めて使う新品のマリンジェットだが、フルスロットルで行く!)」グルン1


ザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


石田「『ヲシドリ』、捕まれええええええええ!」

ヲ級「ヲヲヲヲォオオ!」

石田「――――――っ!」パシッ


この時、石田司令が咄嗟に思いついたのは、“穴”の吸引力と【特殊小型船舶】の高速性を合わせた離脱であった。

“穴”に向かって突撃することによって、“穴”の吸引力を受けて【特殊小型船舶】本来の出力を超えたスピードで『ヲシドリ』を救助した後、

そのままの勢いで急転回して“穴”の脇に逸れてギリギリで通り越そうと目論んだのであった…………。



737: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:26:26.81 ID:vjaZff0t0



川内「あれ? 提督、どうして引き返したの? ねえ、どうなってるの?」

――――――
夜偵妖精「ここからではよくわかりません。だいぶ風も吹いてきたので近づくのはこれ以上は――――――」
――――――

川内「えー?」

霧島「機械の故障でしょうか?」

W:長良「そんなわけないじゃありませんか、霧島さん! 故障していたのなら、牽引できるような設計に――――――あ」

W:長良「『ヲシドリ』ちゃんは? こういう時、索敵範囲が広くて夜間戦闘もできる『ヲシドリ』ちゃんを連れていかないはずがないよ!」

飛龍「――――――!」ザァアアアアアア!

川内「あ、飛龍さん!」

霧島「危険です! 臨時とはいえ、夜間戦闘に対応していない【正規空母】では万が一があった時にただの的ですよ!」ザァアアアアアア!

――――――
夜偵妖精「ん? あれ、どういうことだ? どこに行った――――――?」キョロキョロ
――――――

川内「どうしたの?」

――――――
夜偵妖精「き、消えた? いや、そんなわけが――――――わっ」ビュウウウウウウウウ!

夜偵妖精「も、もうこれ以上は限界です! 早めに撤収してください!」

夜偵妖精「うわわわ……」
――――――

川内「大変! 早く提督を連れ戻さないと!」

W:長良「『ヲシドリ』ちゃんはどこ?」

霧島「二人はここで待機していてください!」

川内「え」

霧島「重量の軽い【軽巡】では荒波に呑み込まれてしまうわ!」

川内「で、でも――――――」

霧島「【照明弾】をありったけ! お願い! それから応援を!」

川内「わ、わかった!」

W:長良「…………それじゃ、頼みます!」

霧島「今こそ、【高速戦艦】の本領発揮よ!」ザァアアアアアア!


飛龍「提督、提督ぅ…………!」ザァアアアアアア!


――――――
左近「!」ピィイイイイイイイ!

左近「発信機の反応が――――――」

左近「……殿?」

左近「返事をしてくださいよ、ねえ殿?」

左近「殿……、殿おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――――――

738: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:26:56.49 ID:vjaZff0t0










ピュウウウウウウウウ! ザァー、ザァー、ザァー! ゴロゴロ・・・ピカーーーーーン!






飛龍「あれ? ――――――真っ暗!?」

霧島「い、いきなり嵐!?」

ヲ級「ヲヲ…………」ポロポロ・・・

石田「俺は、俺は、俺はあああ!」グスン

石田「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」



739: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:27:48.19 ID:vjaZff0t0

――――――2日後、

――――――病棟


左近「殿? さすがに今回のことで俺も――――――」

石田「わかっている」


石田「すまなかった。もう二度と無断出撃はしない」


左近「…………!」

左近「そ、そうですかい、殿。それなら俺も安心です(――――――ちゃんと目を見て 言ってくれた)」

石田「今までさんざん苦労をかけたな」

左近「いえいえ、全てはこの瞬間のためにあったのですから」

石田「俺には過ぎたるものだな、本当に」

左近「ど、どうしたんですぅ? まるで人が変わったように見えますよぅ?」


石田「…………そうか。【こちら】ではたった一晩の出来事になっているのか」ボソッ


石田「いや、大事を取って1日 入院させられて いろいろなことを考えているうちにな?」

石田「――――――『俺と同じ“氏”で有名な男』のことをふと思い出していてな」

左近「――――――『同じ“氏”』?」

左近「……ああ 確かに『あの御仁』は殿に似ているのかもしれませんね」

石田「俺は昔から『そいつに似ている』とよく言われてきた」

左近「…………殿」

石田「だが、やつはただの歴史の敗者だ。俺はそんなやつのようにはならない、そいつ以上にうまくやれると思っていたのだが、」

石田「どうやら俺とやつは時代が違うだけで、もし俺がやつの時代に、やつが俺の時代に生まれていたのなら互いに同じ道を選んでいただろう」

左近「そ、それは……、何と言うか、凄いことですな……」

石田「すまない。突然の変節のようで戸惑うだろうが、」

石田「俺はもっと内を省みてこの鎮守府のみなのことを大切にすべきと思っただけだ」

石田「だからこそ、我が身をもっと大切にしておくべきなのだと、――――――そう思っただけだ」

左近「……そうですか。俺は嬉しいですよ、殿」

左近「1つ言わせてもらえば――――――、」


左近「俺はたとえ殿が『あの御仁』とどれだけ似ていようとも、今の殿なら『あの御仁』を超えていると確信していますよ」


石田「そうか。…………嬉しいものだな」テレテレ

左近「俺も嬉しいですよ、殿」ニッコリ

740: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:28:40.90 ID:vjaZff0t0

左近「ところで、殿?」

石田「なんだ?」


左近「どうして、殿は扇の製作なんてしているんですか? それもたくさん――――――」


石田「ああ これか」

石田「――――――俺の趣味だ」サラサラ
                                       \        大         /
左近「お、これは――――――――――――“大一大万大吉”」  \       一       /
                                          \     大 大     /
石田「よし!」コトッ                                 \   万 吉   /

左近「殿。確かこれって、殿が嫌っている『あの御仁』の――――――」

石田「時同じくしていた薩摩の島津義久が自室に極悪人たちの人物画を飾って寝ていたのと同じことだ」

石田「これをみなに配ろうと思う。――――――もちろん自費で勝手にやっていることだ。配るだけ配ったら後は知らん」

左近「そうですか、それだけの意気込みでやっていたのですか!」

左近「殿、あらためてこの左近めは感服いたしました!」

石田「大袈裟だな。反面教師にしているだけだろうに」

左近「いえいえ、殿は無自覚かもしれませんが、」

左近「これは自分が嫌っているものを受け入れ、それを乗り越えようと努力しようとしていることの現れ!」

左近「なかなかできることじゃありませんよ、これは!」

左近「そして、歴史の敗者の旗印でしかなかった“大一大万大吉”を殿の手で新たな意味に塗り替えられるよう、一層 励んでいただきましょう」

石田「………………」

石田「そうか、俺は“お前”のおかげで変われたのか――――――、」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――


741: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:29:30.40 ID:vjaZff0t0

――――――そして、今に至る


――――――
ブクブクブク・・・・・・
――――――

石田「…………わかるか? 俺が」

ヲ級「ヲヲヲ!」

石田「――――――そうだ。ここが【俺の居るべき世界】なんだ」

石田「お前が最期に作ってくれた、この“神遊扇”に全ての答えが込められていたな」

石田「もうすぐだな。もうすぐお前の身体が【この世界】に定着してまた一緒に居られるようになるぞ、」


――――――『No.58』。


――――――
ブクブクブク・・・・・・  ――――――石田司令と深海棲艦が見つめ続ける培養槽は絶え間なく泡を出し続けている。
――――――


飛龍「提督――――――あ」

石田「………………飛龍、か」

――――――
ブクブクブク・・・・・・
――――――

飛龍「――――――やっぱり、夢じゃなかったんですね」

石田「ああ。あれは決しては夢などではなかった…………」

飛龍「あ……」

石田「?」

飛龍「い、いえ……、何でも…………(――――――提督の私に対する口調が変わってる。夢だけど夢じゃなかった。夢は続いていた!)」

742: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:30:06.82 ID:vjaZff0t0

石田「………………」

ヲ級「………………」

飛龍「………………」

飛龍「…………提督。そろそろお夕飯ですよ?」

石田「ああ。わかってる」


飛龍「…………好きだったんですか? あの人のことが」


石田「……それはどういう意味だ?」

飛龍「あ……、ごめんなさい……」

石田「質問に答えるのならば、――――――そういうわけじゃない」


――――――ただ約束しただけ。


飛龍「――――――『約束』」

石田「そうだ。余計なことをしてくれたお返しをするためだ」フフッ

飛龍「――――――『お返し』」ホッ

石田「では、これぐらいにしておくか」

石田「行こうか、――――――『ヲシドリ』、――――――飛龍」クルッ

ヲ級「ヲヲヲ!」

飛龍「はい!」


スタスタスタ・・・・・・


――――――

ブクブクブクブク・・・・・・


????「――――――」ブクブク・・・!

????「――………………」パチッ

????「………………!」ジー

――――――


石田「――――――」

ヲ級「――――――」

飛龍「――――――」


――――――
????「マタ……アエタ…………提督…………」ニコッ
――――――



――――――それは“鎮守府の守護神”が目を覚ました瞬間であった。



――――――第7話W 鎮守府の守護神   -侵食される鎮守府- 完

       Next:第8話  12月23日 -三笠公園にて- に続く!


754: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:37:53.24 ID:vjaZff0t0

超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 序章

――――――12月某日より遡ること数日

――――――深夜


石田「――――――よし、出るぞ」(最新の防水防弾服)

ヲ級「ヲヲヲ!」


ブゥウウウウウウウウウウウン! ザァアアアアアアアアアアア!


――――――
左近「やれやれ、相変わらず殿にも困ったもんですなぁ……」

左近「まさか同じ【艦載艇】を俺に黙って【開発】していただなんて……」

左近「いくら鎮守府近海とはいえ、今夜は海が荒れそうだってのに…………無許可の夜間狩猟なんてお戯れが過ぎますぜ?」

左近「すみませんが、川内さん、長良さん、――――――他に起きているのはっと、霧島さん、飛龍さん、殿の護衛についてください」

左近「潜水艦で尾行させるのがベストなんでしょうけど、本当に時化てきた時に殿を助けるには力不足ですからな」

左近「海が荒れる前に夜間偵察機で安全確認してくださいよ? 移動母艦も無しじゃホントに危険ですから」
――――――

755: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:38:55.69 ID:vjaZff0t0

石田「………………見つからないか?」

ヲ級「ヲヲ…………」

石田「そうか。そんな日もあるだろう」

石田「しかし、これからの研究で少しでも【深海棲艦のサンプル】が必要となってきた以上は、」

石田「駆逐イ級でもいいからそれを【捕獲】して次から次へと【解体】しないと研究が進まない」

石田「――――――俺の研究にしても、大本営の【研究班】にしてもだ」

ヲ級「ヲヲ………………」

石田「大丈夫だ。お前はいい子だから【解体】なんてしないぞ」ニコッ

ヲ級「ヲヲ」スリスリ

石田「…………フッ」

石田「あ」

石田「しまった。駆逐イ級なら水雷系なのに、空母系【捕獲装備】の【電撃銃】を持ってきてしまった…………俺としたことが」

石田「(あれから更に改良が加わったこいつを試し撃ちしたいが、なかなか機会がな……)」ジャキ ――――――【電撃銃・紫電】!

石田「――――――っと」ヨロッ

石田「さすがに荒れてきたか」

石田「よし、撤収しようか」

ヲ級「ヲヲ!」 ――――――ハンドサイン「後方に味方6人!」

石田「…………やはり左近提督の目をごまかすことはできないか」

石田「よし、鎮守府に帰投する!」グルン



ブゥウウウウウウウウウウウン! ザァアアアアアアアアアアア!



石田「………………?」

石田「何だ? 前に進んでいない?(それどころか、こちらに向けている【探照灯】の光から逆に遠ざかっている!?)」

石田「ハッ」

石田「――――――『ヲシドリ』!?」クルッ

ヲ級「ヲヲヲォオオオオオオオ!」

石田「!?」


石田司令の目の前に見えたのは、夜の暗闇にぽっかりと空いた“不気味な穴”であった! 目を疑った!

“不気味な穴”は海面のうずしおのようではあったのだが、これはうずしお以上に吸引力が強力であり、

それが何もないところに設置されたバキュームのように辺りに存在する全てを吸い込もうとしていたのである!



756: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:39:26.98 ID:vjaZff0t0

石田「な、何なのだ、あの“穴”は…………!?」

石田「ありえない、なんなのだ、これは!?」

石田「ぐぅうう、こちらも吸い込まれ――――――(いや、今からフルスロットルで行けば脱出できる可能性がある!)」

ヲ級「ヲヲヲォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

石田「『ヲシドリ』ィイイ!(ダメだ! 失ってなるものか、『ヲシドリ』を!)」

石田「なら、これに賭けるしかない!(――――――今日 初めて使う新品のマリンジェットだが、フルスロットルで行く!)」グルン1


ザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


石田「『ヲシドリ』、捕まれええええええええ!」

ヲ級「ヲヲヲヲォオオ!」

石田「――――――っ!」パシッ


この時、石田司令が咄嗟に思いついたのは、“穴”の吸引力と【特殊小型船舶】の高速性を合わせた離脱であった。

“穴”に向かって突撃することによって、“穴”の吸引力を受けて【特殊小型船舶】本来の出力を超えたスピードで『ヲシドリ』を救助した後、

そのままの勢いで急転回して“穴”の脇に逸れてギリギリで通り越そうと目論んだのであった…………。



――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


757: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:40:01.77 ID:vjaZff0t0


ザー、ザー、ザー・・・


石田”「………………う、ぅうん」(最新の防水防弾服)

石田”「お、俺は――――――」ヨロヨロ

石田”「は、浜辺か……」パラパラパラ・・・

石田”「…………くぅうううう」キョロキョロ

石田”「何が、いったい、どうなったのだ……? くっ、頭が回らない…………」ズキズキ・・・

石田”「近くの島に漂着したのか? 趣里鎮守府近辺にこんな風景の浜辺はなかったはずだが…………」キョロキョロ

女性「あ」

石田”「…………どうやら無人島ではないらしい」ヨロヨロ

女性「大丈夫ですか? 難破船の水夫でしょうか?」

石田”「――――――『難破船』」

石田”「……ああ。似たようなものだ(マリンジェットは【艦載艇:特殊小型船舶】だから立派な船だからな)」

石田”「しかし――――――」ジー


女性「このままでは風邪を引きます。家まで来てください。温まりますよ」


石田”「(この女性――――――、ずいぶんと古臭い木綿の服なんて着ているのだな)」

石田”「(時代劇の庶民が着ているような、なんてみすぼらしい服だ)」

石田”「(…………ということは、大河ドラマの撮影が近くで行われているのか、テーマパークが近くにあるのか?)」

石田”「(ともかく、これで一安心といったところか)」

758: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:40:52.75 ID:vjaZff0t0


スタスタスタ・・・


石田”「世話を掛けるな。名は何というのだ? 鎮守府に無事 戻れた時に礼がしたい」

女性「え!? ――――――『鎮守府』ですか?!」

石田”「ああ そうだ(お、どうやらちゃんと俺が海軍の人間であることを認識してくれたようだな)」

女性「………………奥州から来たのでしょうか?」ボソッ

石田”「それで、名は何と? そうだ、私の名前は石田だ」

女性「………………」

石田”「…………どうした? いや、答えたくないのなら別にかまわないが」

女性「いえ、私は――――――」ビシッ











――――――ナゴヤジョウです。










石田”「は?」

女性「ですから、ナゴヤジョウです」

石田”「………………」

石田”「(これはどういう意味だ? 俺は名を尋ねたのにどうして地名が出てくるのだ? 匿名希望ということか?)」

石田”「(しかし、今の言葉からすると、――――――“名古屋城”在住ってことになるのか?)」

石田”「(まさかここが名古屋なわけがない。事実だとするなら伊勢湾まで流されてきたことになるのだぞ)」

石田”「(あるいは、ここが愛知県の片田舎であり、近くの日本3大都市の名を挙げることで大まかな地理感を与えようとしていたのか……)」

石田”「(まあいい。少し落ち着いてから状況の整理を行うとするか)」

石田”「(――――――【電撃銃・紫電】もちゃんと動くな?)」

石田”「(しかし、【マリンジェット】はまた造ればいいが、『ヲシドリ』や飛龍たちはどうなったのだ?)」

石田”「(早く趣里鎮守府と連絡をとらなければ…………)」

女性「………………やっぱり信じてはもらえませんよね。それもよし」ボソッ



759: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:41:33.37 ID:vjaZff0t0

――――――女性の屋敷


パチパチ・・・コトコトコト・・・


石田”「失礼する」← ダイバースーツみたいな防弾防水服を脱いでアンダーを露わにする

女性「はい(うん。確かこんな味付けで良かったはず)」ゴクッ 

石田”「…………ずいぶん年季の入った古屋だな(今時 囲炉裏を囲んで食事なんてしているところが皇国にはあったのか)」

女性「はい。どうぞ」 ――――――女性が事前に下ごしらえしていたアツアツの雑炊

石田”「感謝する」

石田”「ん」ゴクッ

石田”「(この風味は関西風とも名古屋風とも違う気がするな。何と言うか関東風とはまた違った味の濃さがある気がするな)」

女性「どうでしたか?(確かこの人は奥州からわざわざ南までやってきていた人だから味付けはこれでよかったはず)」

石田”「悪くないな。美味しくいただかせてもらう」

女性「そうですか」ホッ

女性「………………」チラッ

女性「………………」ジー

石田”「――――――さすがに気になるか?」

女性「あ、すみません」

女性「あまりにも見慣れないものでして……、変わった鉄砲に、変わった衣服をまとってますよね?」

石田”「まあ、そうだろうな。これはまだ試験段階の装備で、世間には知られていないものだ」

女性「………………」

760: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:42:13.66 ID:vjaZff0t0

石田”「ごちそうになった。感謝する」コトッ

女性「お粗末さまです」ニコッ

石田”「さて、電話はないか? 公衆電話は近くにないか?」

女性「え? ――――――『でんわ』ですか?」キョトーン

石田”「そうだ。私は一刻も早く鎮守府に戻らねばならない」

石田”「だがその前に、鎮守府と直接 連絡をとってみなを安心させておきたいのだ」

女性「そうですか。鎮守府に連絡をいれるのでしたら、街までいくしかありませんね」

石田”「何? ここは未だに電話が通じてない地域なのか?(いや、よく見たら電灯すらないぞ? まさか本当に――――――?)」

女性「それに、石田様は一国の大命を帯びておられるのですよね?」

石田”「ああ。そうだ。私には背負うものがある(皇国の勝利のためにこんなところでのんびりしている暇はないのだ!)」

女性「わかりました。舞鶴まで行きましょう。そこを治めておられる方に援助を頼んでみます」

石田”「――――――『舞鶴』!?」

女性「はい。舞鶴ですよ。私は今はこんな身形なんですけど、そこを治めている方から日頃からよくしてもらっているんです」

石田”「…………いや、そうではない、そうでは」

石田”「(確かに、この匿名希望のみすぼらしい生活をしている女性が舞鶴鎮守府の司令官か何かに口が利けるだけの何かだったことに驚いたが、)」

石田”「(同じ街に行くにしても、――――――普通に名古屋まで行けば話だろう? 公衆電話に使うための小銭ならちゃんとあるのに……)」

石田”「(舞鶴は京都府だから日本海側――――――ここは太平洋側の名古屋近辺の田舎のはずだが、どういうことなのだ?)」

石田”「(……まあ好意的な解釈をすれば、この女性は自分が持てる全てを持って俺を助けようとしてくれているのだろうな。それは伝わってくる)」

石田”「(しかし、舞鶴の関係者と繋がりがある女性がどうしてこんなところで生活をしているのか――――――?)」

石田”「(いや、考えていてもしかたがない。早く連絡をとって『ヲシドリ』の安否を確認しなければ!)」

石田”「(友軍から誤射されて轟沈なんてしていなければいいのだが……)」

女性「…………そういえば『石田様』? どこかで聞いたことがあるような懐かしい名前?」




761: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:42:42.88 ID:vjaZff0t0


ザーザーザーザー、ピュウウウウウウウウウウウウ! ゴロゴロ・・・ピカーーーン!


石田”「遅れてやってきた大嵐か、これは…………(『ヲシドリ』、無事でいてくれ…………)」

石田”「なんてことだ。ここはバスすらも近くを通っていないのか…………明日は久々の遠足だな。いつ以来だろうな」

石田”「しかし、とんだ好き者だな、あの女性は………………ここまで質素な生活を送っているだなんて」

石田”「しかも電灯すらなく、夜の明かりが行灯なのだからな(久々だな、こんな風に畳の上で布団を敷いて寝るだなんて)」

石田”「(しかし、ところどころ質素ではあるものの、純和風の高級日用品が揃っていることだし、この布団にしても――――――)」

石田”「(何なのだ? 都市生活に疲れた愛娘の心を癒やすために田舎暮らしを支援させているって感じなのか?)」

石田”「(それとも、御落胤か何か、ここに隠れてないといけない事情を背負っているから、匿名希望だったのか――――――)」

石田”「(考えていてもしかたがないか。今回 お世話になるのは舞鶴鎮守府の関係者の誰かということになるから――――――)」

スッ・・・

石田”「…………ん?(――――――人の気配)」ギュッ ――――――護身用の扇を固く握りしめる。

女性「………………」ワクワク ――――――何食わぬ顔で石田司令の隣に布団を敷く。

石田”「……何をしているのだ、あなたは?」ヤレヤレ

女性「きゃっ」

女性「お、起きてましたかぁ……」テレテレ

石田”「年頃の女性が妄りに男の寝床に入ってくるもんじゃない」

女性「でも、私はここでいつも寝ていますけど……」

石田”「…………くっ、わかった。囲炉裏の側で寝かせてもらおう」ガバッ

女性「え、なんでですか? 一緒に寝ましょうよ」

石田”「………………!」イラッ

石田”「(本当に何なのだ、これはぁ!? さっきからおかしいと思っていたが、この世間知らずっぷりは…………)」

女性「――――――!」ギュッ

石田”「鬱陶しいのだよ」

女性「お願い、今日だけでも、一緒に…………」ブルブル

石田”「………………」ピタッ


女性「こんなところにずっと暮らしてなきゃいけなかったから、初めて他の人と居られるのが嬉しくて嬉しくて…………」


女性「だから、明日にはもう舞鶴まで連れて行かなくちゃいけないから、今日だけ、今日だけでも――――――」

石田”「…………鬱陶しいのだよ」


――――――なぜこうなった? 俺にも計算外のことがあるのか!?



762: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:43:38.45 ID:vjaZff0t0

――――――翌朝、


女性「おはようございます、石田様」

石田”「………………これだからガキの相手は嫌だというのだ」プイッ

石田”「――――――って!」

女性「あ、これって……」ヒョイ ――――――石田司令の扇を開こうとする。

石田”「返せっ」バッ

女性「あ……」

石田”「あ、…………すまない」

女性「いえ、私の方こそはしゃぎ過ぎちゃいました……」

石田”「ま、まあ、昨日今日 助けていただいた御恩がある以上は、もう責めんよ」ニコッ

女性「ありがとうございます!」ニコッ

女性「それでは、朝食の支度を致しますね」

石田”「…………ああ」

タッタッタッタッタ・・・・・・

石田”「………………」\勅命/

石田”「あ」

石田”「俺としたことが……」

石田”「最初から【機】を飛ばせばすぐに救援を呼べたろうに…………」

石田”「いや、あの女性のことを秘密にしておかなければならない以上は、街に出るまでは使わないのがベストか」



763: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:44:30.12 ID:vjaZff0t0


ザッザッザッザッザ・・・・・・


石田”「どれくらいの頻度で街まで行っているのだ?」

女性「そうですねぇ。自給自足が基本ですけど、米ばかりは作れませんので米を買い足す時や舞鶴のお殿様に呼ばれた時には街まで参りますね」

石田”「………………『お殿様』?(いや、俺も一応“殿”と左近提督から呼ばれていることだしな)」

女性「あの、大丈夫ですか? 昨日は大雨でしたから道が泥濘んでますよ」

石田”「これぐらい余裕だ。私は軍人だからな。基礎体力はこれぐらいあって当然だ」

女性「そうですよね。奥州からわざわざ九州まで来るぐらいなんですから……(奥州と行ったら伊達政宗――――――)」ボソッ

女性「しかし、本当に見たこともないような履物ですね」

石田”「これは特注の防水ブーツだからな。こういった不整地を踏破するためにさまざまな工夫が凝らされているが、特に滑り止めに力を入れている」

女性「それに、こっちの鉄砲も私が知っているものとは全然 違います」

石田”「これは軍事機密だから口外はできない」 ――――――【電撃銃・紫電】!

女性「あ、ごめんなさい」

石田”「いや、いい。本来 予定になかった手間暇をかけさせたのだ。申し訳ないのはこちらの方だ」

石田”「それに…何だ? このまま黙々と歩き続けるのは互いにとって気を遣わせるだけだから、好きに話してくれていいぞ」

女性「本当ですか! それじゃ、石田様の鎮守府について教えてくれませんか?」

石田”「……まあいいだろう」

764: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:45:09.24 ID:vjaZff0t0


そうして、石田司令は久々となる遠足をこの女性と楽しむことになったのだが――――――、


石田”「ずいぶんと歩くものだな。女性ながらタフなものだな」

女性「でも、基本的には沿岸沿いに進んでいるだけですから」

石田”「そうか」

女性「それよりも、太陽が南中していますからそろそろお昼時ですね。この辺りで休憩にしましょう」

石田”「そうだな。そうさせてもらおう」

女性「どうぞ。おにぎりです」スッ

石田”「うむ」

石田”「(――――――おかしい!)」

石田”「(確かに沿岸沿いには進んではいるのだろうが、それにしては海が静かすぎる!)」

石田”「(四半世紀前から始まった深海棲艦との大戦に伴い、これまでの海上戦力を凝縮した艦娘の登場によって、)」

石田”「(旧来の鎮守府以外の学校施設程度の小規模の海軍基地が沿岸沿いにたくさん造られているはずなのだ)」

石田”「(そのうちのいくつかが深海棲艦の襲撃で壊滅したようだが、少なくとも本州における被害は少なかったはずだが…………)」

石田”「(それに、俺が目の前にしているのは太平洋のはずだ。もっと言えば、名古屋近辺なのだから伊勢湾のはずだが――――――、)」

石田”「(太陽の向きがまずおかしい! あれが太平洋ならばなぜ反対方向に太陽が昇っているのだ?)」

石田”「(――――――名古屋だろう? 俺たちが目指しているのは名古屋だろう? ここが名古屋近辺のはずなのだから!)」

石田”「(まさか、いつの間にか舞鶴まで来ていたのか?! しかし、名古屋から舞鶴を目指すにしろ、なぜこうも海が広がる!?)」

765: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:45:50.31 ID:vjaZff0t0

女性「ハッ」ピクッ

女性「石田様! 静かに!」シー

石田”「…………?」

石田”「…………わかった(突然 何だというのだ? しかし、ここは従っておくのが吉か?)」

女性「………………」ジー

石田”「(海の方を睨んでいるな。何があるというのだ?)」ヒョイ

石田”「――――――!?」


――――――石田司令は目を疑った!

石田司令と女性が見据えると、海一面を怒涛の勢いで巨大な何かが水平線と見まごう長蛇の列となって通りすぎようとしていたのだ!

目を凝らしてみると、それは巨大な海老であり、蟹のようなメカメカしい鋼鉄の何かだったのである!


石田”「何だあの大きさの【鎧の化け物】は!? ――――――50m…とまではいかないがそれでも圧倒的な存在感!」

石田”「まさか、――――――新種の深海棲艦か!?」アセタラー

女性「また【兜】の群れが舞鶴を襲いに来たのですね」

女性「石田様。おそらくあの【兜】の群れはこれから先に向かう舞鶴を襲いに行っていると思いますが、どうしますか?」

石田”「――――――か、【兜】?」

女性「もしかしたら、明日には【兜】の討伐が完了しているものだと思いますけれど、」

女性「今日、無理をおして舞鶴に行こうとすれば、【兜】の残党が辺りの村を襲っているところに出食わしてしまうかもしれません」

石田”「………………どういう意味だ? まるで意味がわからんぞ」

女性「え?」

石田”「む?」

石田”「……少し落ち着いて話をする時間はとれるか?」

女性「はい。急いで舞鶴に行こうとしなければ安全だと思います」

石田”「よし わかった。ここは互いの意思疎通を図ろうではないか」

766: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:47:21.00 ID:vjaZff0t0


石田”「あれは新種の深海棲艦ではないのか?」


女性「――――――『しんかいせいかん』? って何ですか?」

石田”「知らないのか?! 知らないはずがないだろう、舞鶴の関係者ならば!」ザァザァ ――――――地面に『深海棲艦』と書く。

女性「ごめんなさい。奥州の方ではそういった新種の【兜】が見つかっていたのかもしれませんけれど、なにぶん世事に疎いものでして」

石田”「――――――『奥州』? なぜそこで奥州なのだ?(しかも、そんな古風な言い方――――――)」

女性「え? 石田様は鎮守府よりお越しになったと――――――陸奥の国よりお越しになったのですよね?」

石田”「……なんだと?」アセタラー

女性「え? あの……」

石田”「………………………………なんてことだ」

女性「石田様?」


石田”「…………お前が言う『舞鶴』というのは、京都の舞鶴鎮守府のことではないのか?」


女性「――――――京都に鎮守府!? 京都所司代の間違いでは?!」

石田”「」

女性「あ、石田様!?」

石田”「くっ、――――――計算外だ! こんなこと想定できるか!」

石田”「ハッ」

石田”「……では、ここはどこの国なのだ? 舞鶴というのは地名か? それとも通称か?」

女性「あ、それなら――――――」


女性「ここは肥前国、寺沢志摩守の所領とする唐津の辺りです。その居城を舞鶴城と呼んでおります」


石田”「あぁやはり――――――いや、肥前国!? 九州だと!?」

石田”「ということは、佐賀県の辺りなのか、ここは?!」

石田”「なら、佐世保の方が近い――――――って何を言っているのだ、俺はっ!」ペタァン

石田”「くぅううう…………何かの冗談であってくれぇ」orz

767: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:48:17.64 ID:vjaZff0t0


石田”「…………なら、ならば“名古屋”というのは何だったのだ?」


女性「……石田様?」オロオロ

石田”「すまないが、『名古屋』といったか? 少しその辺に俺がやったようにその名を書いてみてくれないか? もしかしたら――――――」

女性「わ、わかりました。では――――――」ザァザァ

石田”「!?」

石田”「………………」

石田”「………………これが『ナゴヤ』だったのか!?」


――――――『名護屋』


女性「はい。そうです、これが私の――――――」

石田”「――――――俺は壮絶なる勘違いをしていたのか」orz

石田”「だが、だが……、だとしたら俺はこれから先 いったいどうすれば………………」ガタガタ

女性「………………」

女性「石田様? 今日は帰りましょうか? 石田様もあの【兜】の群れをご覧になったでしょう?」

女性「今日 舞鶴に参るのは非常に危険ですから――――――」

石田”「……いや、一刻も惜しい!」ギラッ

石田”「舞鶴城にまで案内してくれ」

女性「ですが――――――」

石田”「いいから!」

女性「…………わかりました。万が一のことがあれば私が石田様を【兜】からお守りいたします」

石田”「ふざけたことを言うな!」

石田”「相手は海の彼方でもはっきり見えるぐらい巨大なんだぞ!」

石田”「艦娘の攻撃なら何とかなるだろうが、あの巨体から繰り出される勢いと数の前では斉射でも隙が大きすぎる! 呑み込まれる!」


女性「石田様、信じてください!」


石田”「何をだ?!」

女性「石田様と一泊できた御恩は必ずこの身を以ってお返しいたします!」

女性「ですから、石田様を必ずや鎮守府に送り届けるように力を尽くしますので、どうか私を信じてください!」

石田”「世間知らずの生娘に俺の何がわかる!」

女性「 わ か り ま す !」

石田”「…………!」

768: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:48:47.65 ID:vjaZff0t0

女性「私は昔、石田様のように誰よりも誠実で それでいて本当に不器用で それでも気高き人のことを覚えてますから」

女性「石田様はその方にそっくりなんです。それどころか“氏”まで同じなんですから何か数奇なものを感じざるを得ませんでした」

石田”「――――――『“氏”まで同じ』だと?」

石田”「(俺が一番嫌いな敗者のことだな。俺はそいつよりうまくやれるつもりでいたが…………そんなのと一緒にされたくはない)」ヤレヤレ

石田”「だが、メタ的な要素だが、よくもまあこんなめぐりあわせがあったものだ(そうか、やっぱりそうなんだな…………)」メメタァ

女性「…………石田様」

石田”「わかった…………確認するが、今の年号は何なのだ? 『慶長』ではあるまい?」

女性「――――――『寛永』です」ザァザァ

石田”「……『寛永』か。【島原の乱】が起きていた頃か」

石田”「わかった。やれるだけのことはしておこう」

石田”「舞鶴城まで連れて行ってくれ」

女性「はい」ニッコリ




769: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:49:25.47 ID:vjaZff0t0

――――――陽が傾きかけた頃、


石田”「…………やはり江戸時代にタイムスリップしたというわけか、俺は」

石田”「あの【不気味な穴】――――――あれが全ての原因か」

女性「……そうですか。石田様は今から400年も後の未来からいらっしゃったのですね」

石田”「今の時代よりも遥かに進んだ良い時代だ。多くのことは語れないがこうやって出会ったのも何かの縁なのだろうな」

石田”「そして――――――、」


石田”「――――――豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、前線基地として栄えてきたのが“名護屋城”か」


石田”「どのような城だったのだろうな(そして、なぜそんな跡地近くでひっそりと暮らしているのか――――――)」

女性「築城は天正19年に行われ、それから天下人:豊臣秀吉が没する慶長3年に廃城になるまで人口10万人以上の城下町が築かれたんです」

女性「あの頃は本当に華やかで素晴らしいものでした。あの天下に名立たる大坂城に次ぐ規模にまで発展したんです」

女性「全国の大名が一堂に会して世界を制する大いなる戦いへと赴くのを見送るのが本当に好きでした」

石田”「…………鎖国以来 あくまで防衛戦争に徹してきた皇国軍人としては朝鮮出兵のことは思い出したくはないのだがな」

女性「けれど――――――、」


女性「――――――『浪速のことも夢のまた夢』でした。その栄華も天下人の死と共に移ろいでいったのです」


石田”「…………『浪速』か(大阪の古地名のことではあるが、40kt以上で浪をきる海軍軍人としては響くものがあるな)」

石田”「そうだな。天正19年は確か1591年で、慶長3年は1598年のことだからな(そう、深海棲艦との戦いに勝ったとして艦娘たちは――――――)」

石田”「わずか10年にもならない時の中であの天下の名城:大坂城に次ぐ規模か。想像もできない――――――」

770: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:50:09.90 ID:vjaZff0t0

石田”「ん?」

女性「どうしましたか、石田様?」

石田”「…………気のせいか?」

石田”「まるで、お前自身が“名護屋城”であるかのような――――――」


女性「石田様!!」バッ


石田”「がっ!?」ドサッ

ヒューーン! ストッ!

石田”「うわっ――――――弓矢!?(『今よりも昔の時代の方が良かった』という愚かな声はよく聞くが――――――、)」

女性「…………迂闊!」アセタラー


野盗A「ふへへへへ」

野盗B「やっと見つけたぁ」

野盗C「何だアイツぁ? 何か珍しい身形をしているぞ?!」

野盗D「野郎は身包み剥いでぶっ殺して金品をカネにしてやろうぜぇ!?」

野盗E「ひぃへへへへ」


石田”「…………野盗か!(――――――こんな野盗どもがのさばっている【乱世】を生きてみたいと思うのか!)」アセタラー

石田”「くっ」ググッ ――――――扇を構える!

野盗A「おう? あの綺麗な顔してるあんちゃん、扇なんて取り出して何をするのかねぇ?」

野盗B「こっちは弓矢だってあるってのになぁ?」

石田”「ちぃ……(相手は5人か。いくら俺でも3人までが限度だ…………どうする? すでに【電撃銃】を構える余裕はない!)」アセタラー

石田”「(電光地雷を使うか? それとも【流星改】を出して蜂の巣にするか? しかし、弓矢を咄嗟に躱すのは――――――)」

女性「くっ、この人たち――――――、この気配は操られている!」

女性「(ということは、私を探しに来たという【兜の大将】が近くにいるってことなの?)」

女性「(となれば、ここを凌いだとしても舞鶴まで参るのにはもう時間がないのかもしれません)」

女性「(――――――とあれば、私は石田様を何が何でもお守りいたすことを誓いました!)」

女性「(ごめんなさい、志摩様。今まで本当にありがとうございました。戒めを解かせてもらいます――――――)」

771: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:50:41.19 ID:vjaZff0t0

女性「石田様! どうか私の手を握ってください!」

石田”「なに?! くっ、――――――頼んだぞ!(――――――『逃げる』というのか? 弓矢を背にして逃げ切れればいいが!)」ギュッ

女性「――――――!」ググッ

女性「へぇんし――――――」


バララララララ・・・!


一同「!!??」

野盗C「な、何の音――――――!」

女性「え、何――――――あ」グイッ

石田”「走れ!」バッ

女性「はい!」バッダッダッダッダッダ・・・!

野盗B「あ、逃げやがった!」

野盗C「おい、それよりも何か空から――――――」

ヒューーーーーーーーーン! チュドオオオオオオオオオン!

野盗D「ぎゃああああああああああああ!」

野盗E「天罰かああああああ!?」


チュドンチュドーーーン!






野盗A「う、うぅ…………お、おい? 生きてるかぁ?」

スッ

野盗A「あ? 何だ、お前は――――――?」

「ヲ!」”ペチン!

野盗A「がぁ……  」ガクッ

「よくやったよ、『ヲシドリ』」”ニッコリ

「ヲヲヲ!」”ニッコリ

「おお! それも修業の賜物なんだよね? 破魔矢を鋼鉄の鳥に変化させて更に火の糞まで落とさせるなんてすごーい! どこの山で修行してきたの?」

「ごめん、そんなことよりも今は――――――!」”バッ

「ヲヲヲ!」”ダッダッダッダッダ・・・!

「そうだったね。今は二人の人探しが最優先だもんね! 行っくよー!」

「あ、その前にこんなものは、――――――えーい!!」”バキッボキッ

「おお! 弓矢や刀がまるで棒切れのように――――――」

「ヲヲヲ!」”

「あ、ごめんごめん! 今 行くからー!」”




772: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:52:00.06 ID:vjaZff0t0










石田”「…………何とか撒けたのか?」ゼエゼエ

女性「……そのようです」ゼエゼエ

石田”「思わず駆け出してしまったが、ここはどこなんだ? 舞鶴城まで今日中に辿り着けるのだろうか?」ゼエゼエ

女性「ちょっと、難しいかもしれませんねぇ……」ゼエゼエ

石田”「すまない。おとなしく今日は帰っていればよかったな……」ゼエゼエ

女性「いいえ、こちらこそありがとうございました……」ゼエゼエ

石田”「それで、何だが…………」ゼエゼエ

女性「?」

石田”「いつまで手を握っているのだ…………汗ばんできて鬱陶しいのだよ」ゼエゼエ

女性「あ、ごめんなさい……」ゼエゼエ



石田”「………………ハア」

女性「………………フゥ」



石田”「さて、そろそろ行くか?」

女性「はい。野盗たちがいたことも気にかかりますが、ここはこのまま一気に――――――」


ドスン・・・ドスン・・・ドスン・・・ドスン・・・!


石田”「何だ、この地響きは!?」ドクンドクン

女性「…………何てこと!? どうしてこうも不運が重なるの!?」

773: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:52:54.71 ID:vjaZff0t0


金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!」


石田”「馬鹿な?! 何だあの巨人は――――――!? デイダラボッチとかいうやつか?!」

石田”「最初に見た【蟹】や【海老】どころではない! 本当に50m近くはあるんじゃないのか、これは!?」アセダラダラ

女性「石田様!」

石田”「見たところ、鎧に覆われているようだが、深海棲艦と同じく組成は極めて有機的な実体を持っているんじゃないのか!?」

石田”「なら、ここは電光地雷で少しでも足を止める――――――!」\勅命/

女性「――――――『勅命』」

石田”「よし、逃げるぞ!」

女性「はい!」

ドスン・・・ドスン・・・ドスン・・・ドスン・・・! プチッ、ビビビ・・・・・・・ドスン! ドスンドスンドスンドスン!

石田”「…………逆効果だったか!」

女性「石田様、お逃げください! ここは私が何とかしますから!」

石田”「何を言っている!」

女性「あの【兜】の狙いは私なんです! 私が宝の在り処について知っているから、私はずっとあそこで一人で――――――」

石田”「たとえそうだとしても、ここで道案内を投げ出されて一人 路頭に迷って惨めにくたばるぐらいなら――――――!」

石田”「俺は皇国の軍人として最期ぐらい徒花を咲かせるぐらいの大望と覇気で挑んでやる!」ジャキ ――――――【電撃銃・紫電】!

女性「石田様! いけません! 相手は万夫不当の【大将兜】なんですよ!?」

石田”「だったら! 何とか知恵を絞って俺を約束通り 舞鶴城まで連れて行ける算段を考えろ!」

女性「…………!」

女性「はい!」

石田”「(覚悟を決めろ! どうせ帰れるかどうかなんてわからなかったんだ!)」

石田”「(だったら、最期に俺は俺が思ったようにやってやる! ――――――死ぬ気はさらさらないがな)」

石田”「(だが、どうする? デカブツの武器は手に持つ巨大な長柄武器―――――― 一見すると動きがぎこちなく見えるが、)」

石田”「(そんなのはスケールを見失った人間の錯覚だ! 速いぞ、かなりあの動きは――――――!)」

774: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:54:03.80 ID:vjaZff0t0

女性「石田様! さっき扇から出したものはまだありますか!?」

石田”「電光地雷なら、あと3つは…………」

女性「あっちの方に昨日の大雨で泥濘んだ窪地がありますよね?」

石田”「!」

石田”「なるほど! それなら時間稼ぎになるかもしれない!」


ドスン・・・ドスン・・・ドスン・・・! ダッダッダッダッダ・・・!


石田”「くっ、デカブツめ! 総身に知恵が回りかね――――――夕暮れになったのもあるが背が高すぎて森の中の我々をすぐに見失ったな!」

女性「ですが、今日の敵はそれでもしつこく追い回してきます!」

石田”「そのようだな!」

石田”「よし!」\勅命/

女性「石田様! 早くこちらへ――――――」

ドスンドスンドスン・・・!

石田”「くっ、船酔いこそは慣れたものだが、この地響きには耐えられんな……!」

ダッダッダッダッダ・・・!

石田”「これでいけるのか?」

女性「大丈夫です。いざとなったら入れ違いに舞鶴城まで一気に駆け抜けますから」

石田”「なに?」

石田”「(そういえば、この時代の住人――――――いや、明らかに過去とは思えないような世界観だが、)」

石田”「(最初に見かけた【海老】や【蟹】はまだ深海棲艦の原型か何か――――――、)」

石田”「(中世の絵巻に描かれていた大地震を起こす大ナマズに通じる何かだと信じていたかったが、)」

石田”「(あんな【鎧の巨人のようなの】が跋扈する世界でどうやってここまで時代が発展してきたんだ?)」

石田”「(それとも、ああいった存在は最近に出没した――――――にしては、1日で殲滅できて、日常茶飯事のようにも感じられた)」

石田”「(そして、彼女の何とかなるという絶対の自信――――――)」

石田”「(いったいどういうことなのだ? まだ俺には見えていないものがある――――――)」

ドスンドスンドスンドスン・・・!

石田”「うまくいけっ!」

女性「うまくいきます!」

775: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:54:30.85 ID:vjaZff0t0


ドスンドスン! ヌルッ・・・

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!!?!」グラッ

ビビビ・・・、バキバキバキ、ドッシャーーーーーーン! ゴゴゴゴゴゴ!


石田”「うまくいった!(しかし、あれだけの巨体が倒れこむだけで、この大地の振動と、これだけの怖気が走るものなのだな…………)」ドクンドクン

女性「これであの【兜】は泥濘に嵌って起き上がるまで時間が更に掛かるようになりました!」

女性「ですが、私の存在が知られた以上は後に退くことはできません」

女性「なので、あとは、これで――――――」

石田”「『これで』どうするつもりなのだ?」

女性「私があの【兜】にとどめを刺してきます。少し揺れますからジッとしていてください」

石田”「…………わかった」

石田”(なんとなくだが、かつて【戦艦】が現代の核兵器に相当する時代があったように、城もまたそうであったことをふと思い出していた)」


女性「戒めを解きます! ――――――名護屋城、変身!」ピカァーーーーン!


石田"「…………!?」

石田”「ま、眩しぃ…………あ!」パチパチ・・・

石田”「――――――光の柱」


一瞬 目が眩むかと思った強烈な光はすぐに和らいでいくのが感じられた。

そして、瞬きしながら何が起きたのかを確かめようとすると、夕暮れの赤く照らされた薄暗い森に一筋の柔らかな光の柱が立っていたのが理解できた。

その光の柱の高さは目測50m以上――――――できるだけわかりやすいイメージを示すのであれば、

アメリカ合衆国の象徴である自由の女神像そのものが46.05mであり(台座を含めてだと93m)、

その自由の女神像に匹敵する光の柱が夕闇の森を貫き、辺りを優しく照らすと、光の柱は炎のように天へと光の粉を散らばせて消えていく。

そして、光の柱から50m以上の巨体に絢爛豪華の威風堂々たる戦装束をまとった戦乙女の背姿を見上げることになったのである。



名護屋城「…………参ります」ジャキ ――――――抜刀!



石田”「これは驚いたな……、ある程度は予想がついてはいたことだが…………」

石田”「どうやら【俺の知る世界】とは根本的に違うようだが、1つの抑止力として健全に機能している」

石田”「【俺たちの世界】で超常への抑止力を【艦娘】と言い習わすなら、」

石田”「【この世界】における【兜】とか言う超常に対する抑止力を【城娘】と呼べばいいのだろうな」


※【御城プロジェクト】は開発:DMMゲームです。【艦隊これくしょん】開発:角川ゲームスとはまったく関係ありません。
→ ただし、【艦これ】を雛形にして生まれたのは疑いようがないので二次創作としては楽しく使わせてもらいます。



776: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:55:14.30 ID:vjaZff0t0

名護屋城「せめて、この一太刀で夢から覚ましてあげましょう」ブン!

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!?」ズバーーーン!

名護屋城「………………」


石田”「やったか?」


名護屋城「はい、石田様」クルッ

名護屋城「石田様、この大きさのまま一気に舞鶴まで参ります!」

名護屋城「お手に掴まりください」ソー・・・ ――――――50m以上もある巨体が膝を折って慎重に手を伸ばす。

石田”「お、おお…………(これは別な意味で緊張するな…………釈迦の掌の孫悟空になった気分だな)」オソルオソル

石田”「よ、よし! どこをどうすればいいかわからないがちゃんと乗ったぞ?」

名護屋城「あ、ちょっとくすぐったいかもしれませんね……」テレテレ

石田”「…………フゥ」

石田”「ハッ」


バキバキバキ・・・ゴオオオオオオオオ!


金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!」ゴゴゴゴゴゴ!

名護屋城「!」

石田”「後ろだ! まだやつは生きているぞ!」ビクッ

名護屋城「――――――しまった!?(ダメ! 今、利き手には石田様が――――――)」ゾクッ

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!!」


――――――【大将兜】が手にした大身鎗を鋭く突き出そうとする! 次の瞬間には巨大な名護屋城の心臓が貫かれると思いきや!


「変化! 巨大化! 錫杖は当たると結構痛いよ?」ブン!

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!?!?」ボガーーン!

石田”「!」

名護屋城「………………!」

石田”「――――――まさか別の【城娘】が駆けつけてきてくれた?」


間一髪で【大将兜】に向けて真横から全力で鈍器で突き飛ばして、もう一人の【城娘】がこの窮状を救ってくれたのだ。



777: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:55:50.55 ID:vjaZff0t0

名護屋城「あ、あなたは――――――?」

大宝寺城「私は大宝寺城。本当は出羽三山で験力を得るため、毎日 山の奥で修験道に励んでいたんだけど、」

大宝寺城「これも験力が出たおかげか、こんなところに飛ばされちゃってね?」

大宝寺城「けど、自己紹介はこの辺にしよ? 今はあの【大将兜】を打ち破らないと!」

名護屋城「はい!」

名護屋城「では、すみませんが、石田様――――――」

石田”「わかっている。思いっきりやってこい」

名護屋城「はい!」

石田”「っと」 ――――――名護屋城の手から降りる。

ズンズンズンズン・・・・・・

石田”「――――――そういえば、あれだけの巨体から声を発しているというのに、なぜかちょうどいい声の大きさだったな」

石田”「鼓膜が破れそうになるほどの振動は【兜】が立てる地響きや巨大な武器を振り回した時の衝撃ぐらい――――――」

石田”「やはり、【城娘】というのも【艦娘】と同じく霊的な――――――」


「提督ぅうううう!」”

「ヲヲヲーー!」”


石田”「ハッ」

飛龍”「提督ぅううううう、良かった! 無事だった!」ポロポロ・・・

ヲ級”「ヲヲヲヲ!」

石田”「飛龍! 『ヲシドリ』! どうしてここに!?」

飛龍”「だって、提督がまた『ヲシドリ』を連れて無断出撃した際に、左近提督が心配だから他に4人ぐらい護衛を出撃させて――――――」ポロポロ・・・

石田”「もういい。無理して喋る必要はない(そうか。『ヲシドリ』だけじゃなくお前まで巻き込んでしまったのか……)」

石田”「…………すまなかった。俺の思い上がりでお前たちをこんなことに巻き込んでしまったな」ギュッ

飛龍”「いいんです! 提督が無事ならそれで…………よかった、本当に良かった」ポロポロ・・・

ヲ級”「ヲヲヲヲ!」

石田”「お前もよく頑張ったな。ここまで歩いてくるのは大変だったろう? よく頑張ったな」ナデナデ

ヲ級”「ヲヲ……」スリスリ

石田”「これで少しは生きる希望が湧いてきたかもしれないな……」

778: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:58:18.70 ID:vjaZff0t0

大宝寺城「出羽の悟り!」 ――――――【出羽の悟り】発動!(攻撃力を超アップ/範囲:遠)

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!」ガキーン1

大宝寺城「やっぱり強い……。山よ、力を貸して!」ビリビリ・・・

名護屋城「てええええええええええい!」ブン!

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!」ズバン!

名護屋城「一度 急所を入れて、これでも倒れないの……?(違う、私が実戦慣れしていないだけ! よく見れば、相手も相当息が上がっている!)」


ガキンガキーン! ドスンドスン! バキバキバキ・・・


石田”「どうやら【城娘】と言えども、【ボス級深海棲艦】に相当する【大将兜】相手に少数では太刀打ちできないか」

石田”「なら、ここは【支援攻撃】しなければな!」

石田”「――――――『ヲシドリ』! あの【鎧の化け物】の砕けた鎧の中身に思い切り艦載機で機銃掃射しろ!」

ヲ級”「ヲヲヲ!」 ――――――艦載機 発進!

飛龍”「提督、ここは私も――――――」

石田”「ここに来るまで【艦載機】を何度 発艦させた?」

飛龍”「…………!」

石田”「【この世界】で補給は望み薄だぞ。そのことを踏まえて、ここは自然回復ができる『ヲシドリ』に任せろ」

飛龍”「うん。わかった、提督」


ヒュウウウウウウン! ズババババババ!


金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!!!!」ズキズキ・・・

名護屋城「え、何、これ……? ――――――石田様?」

大宝寺城「やった! またあの鋼鉄の鳥だ! これは心強いよ!」

名護屋城「けど、これなら! ――――――いきます」ブン!

大宝寺城「えええええええい!!」ブン!

金箔押熨斗烏帽子形兜「――――――!!?!?!」

ズバズババーーーーーーン!

金箔押熨斗烏帽子形兜「!!!!…………    」バタァン・・・



779: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:58:51.50 ID:vjaZff0t0

石田”「き、消えた……」

飛龍”「深海棲艦と同じように力尽きて――――――?」

飛龍”「けど、何か違うような気が――――――」

ヲ級”「…………ヲ」

石田”「どうした?」

ヲ級”「ヲヲヲヲヲヲ、ヲヲヲヲヲ!」ブンブン! ――――――身振り手振りで何かを伝えようとしている。

石田”「何? ――――――『鎧の下には【城娘】と似て非なる何かを持った身体が入っていた』だと?」

ヲ級”「ヲヲ!」

飛龍”「…………提督とのコミュニケーションがここまで進んでいたんだ」

石田”「まさか、さっきの【大将兜】とかいうのも【城娘】に類する何かだったのか?」

石田”「だが今は――――――」


大宝寺城「ありがとー、飛龍ちゃん! 『ヲシドリ』ちゃん!」

名護屋城「本当にありがとうございました、石田様」


石田”「これから始まっていくことになるのだ」

石田”「江戸時代――――――俺たちが知るそれとは似て非なる寛永において、帰れるかどうかもわからない、」


――――――【城娘】と【兜】の戦いに明け暮れる【乱世】での日々が。



780: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 09:59:23.26 ID:vjaZff0t0


というわけで、まさかの【御城プロジェクト】とのクロスオーバーです。

※【御城プロジェクト】は開発:DMMゲームです。【艦隊これくしょん】開発:角川ゲームスとはまったく関係ありません。
→ ただし、【艦これ】を雛形にして生まれたのは疑いようがないので二次創作としては楽しく使わせてもらいます。

そして、なんでこんな三次創作をわざわざ無駄なレスを増やしてまで組み入れているのかと言えば、
本編の物語風プレゼンの二次創作のストーリーに還元させるための処置であり、本編中に別作品のキャラを明確に含ませないためである。
モデルが存在するキャラならば物語風プレゼンに公然と登場してはいるものの、直接 別作品のキャラを物語中に存在させるのは憚りがあったからである。
なので、わざわざ但し書きをしてこうやって三次創作をしていることを宣言しているわけなのです。

次いでに、プレゼンターとしても【御城プロジェクト】にちょっとばかり提案したいものがあったので、関係をこじつけて物語風プレゼンさせてもらいます。
また、プレゼンターなりの【城娘】と【兜】に関する考察、【城プロ】がどういった世界構造なのかについても描いてみようと思っているので、
飽きたらスクロールして飛ばして、それでも構わない人はこのままどうぞお読みになってくださいませ。

プレゼンターからすると、【城プロ】は元々がタワーディフェンスゲームという【艦これ】とは別ジャンルのものなので、
あまりゲームシステムにいじれるところがないように思っているので、ここはキャラゲーとして順調に【城娘】と【兜】を増やしていって欲しいので、
今回のこの【城プロ】に対する提案はおそらく禁断のオリジナル城娘の提案ぐらいとなります。



781: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:00:31.04 ID:vjaZff0t0

超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第1章

――――――時は【城娘】と【兜】が争う【乱世】

――――――寛永時代

――――――肥前国 唐津藩、舞鶴城(唐津城)


名護屋城「出迎え、ご苦労でした」

志摩守「おお、何事かと思いましたぞ、姫様。どうしてこちらに? 今日も【兜】たちが来襲したばかりなのですぞ」

名護屋城「この者たちを【城主】様とお引き会わせください」

志摩守「…………!」


石田”「………………」

飛龍”「………………」

ヲ級”「………………」

大宝寺城「………………」


志摩守「――――――唐津城!」

唐津城「ここに」スッ

石田”「(『唐津城』――――――あれも【城娘】なのか)」

志摩守「この者たちをどう思う?」

唐津城「…………大丈夫です。姫姉様がお導きになった渡来人ですから」

唐津城「そして、そちらの男性は【城主】様と似たような空気を感じます」

志摩守「なるほど。そうか」

志摩守「では、面を上げられよ」

石田”「…………………」

志摩守「!」

志摩守「――――――あなたは治部か!?」ガタッ

志摩守「馬鹿な、生きているはずがない! まさか化けて出てきた――――――」ガタガタ

飛龍”「え?」

大宝寺城「あれ、どうしたんだろう?」

ヲ級「ヲ……?」

唐津城「落ち着いてください、志摩様」

名護屋城「そうです。石田様は治部ではありません」

志摩守「――――――『石田』!? 氏まで同じとは何という……」ギョッ

石田”「………………」

782: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:00:59.51 ID:vjaZff0t0

名護屋城「申し訳ありません、石田様」

石田”「いや、実害がないなら どう思われようが一向にかまわん」

志摩守「喋り方までそっくり!?」ハラハラ

石田”「………………」

唐津城「志摩様、これ以上の粗相は渡来人の方々だけじゃなく、【城主】様からも顰蹙を買うことになります」

志摩守「あ、ああ……、取り乱してしまってすまなかった」

志摩守「冷静に考えれば、石田治部が仮に生きていたとしても、儂と石田治部は歳の差3つだからジジイの形よ」

志摩守「しかし、本当に若い時の治部にそっくりであるな……」

志摩守「そして、その者を姫様が連れてきたというのであれば――――――」

志摩守「ご客人として丁重にもてなさければな」

石田”「感謝申し上げます」

志摩守「うん。やはり【城主】様と似た口調であるな。それに見たこともないような身形に鉄砲といい――――――」

名護屋城「あの、志摩様……」

志摩守「どうなされた、姫様」


名護屋城「戒めを解いてしまったことをお詫び申し上げます」


志摩守「!」

志摩守「――――――見たのか、そなたたちは!」

石田”「おそらくは(――――――『名護屋城が【城娘】であるということ』をだろう)」

志摩守「………………」

唐津城「志摩様、他でもないこの唐津に【兜】が多く押し寄せてきている以上、」

唐津城「姫姉様の所在が敵に見つかるのは時間の問題――――――そう、ご理解していたではありませんか」

唐津城「むしろ、無事に舞鶴城までやってこれただけ幸いだったと思います」

志摩守「…………それもそうだな」

志摩守「わかった。後は儂にまかせるといい」

志摩守「ご客人の方々。今日はもう遅いので、【城主】様には明日お引き合わせいたします」

志摩守「どうか、今日のところはお休みになってくださいませ」

石田”「ありがとうございます」



783: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:01:25.32 ID:vjaZff0t0

――――――就寝


名護屋城「本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

石田”「なぜ、お前が謝る必要がある?」

名護屋城「だって、私がもっとうまく戦っていれば、石田様を危険な目に遭わせることはなかったのです……」

石田”「安心しろ。俺も【深海棲艦の捕獲】なんかやって死ぬような思いは散々経験しているから慣れている」

名護屋城「でも――――――」

石田”「今日はもう遅い。いつまでもここにいたら お前の 操が疑われる。――――――そういう時代なんだろう?」

名護屋城「………………」

石田”「ではな」

名護屋城「……はい」

スッ、パタン

名護屋城「………………」

スッ

名護屋城「!」

石田”「あ」

名護屋城「…………石田様?」

石田”「…………その、何だ?」

石田”「お前が、俺のために精一杯 力を尽くしてくれていることには……、感謝している。しかも1日会っただけの間柄で、だ」

石田”「十分な謝礼ができるかどうかはわからないが、せめて言葉だけでも伝えようと思ってな……」

名護屋城「……石田様」

石田”「……そういうわけだ。お前は“姫様”らしく、とっとと帰って寝ろ。――――――以上だ」

パタン

名護屋城「はい、石田様」フフッ



唐津城「…………姫姉様。やはりあの男に情を持っていましたか。これはどうするべきか」



784: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:01:56.88 ID:vjaZff0t0

――――――翌日、

――――――舞鶴城の城下:松浦川河口部


コツコツコツ・・・・・・

志摩守「【城主】様はあちらにお住まいとなります。どうかついてきてください」

大宝寺城「綺麗な海だね!」ウキウキ

飛龍”「うん。本当だね」ワイワイ

ヲ級”「ヲヲ!」キャッキャッ

石田”「…………あの3人、ずいぶんと仲が良いな(確か、昨日は一緒の寝床だったか?)」

唐津城「あれは姉妹じゃないんですか?」

名護屋城「私もそうじゃないかと思っていたんですけど、飛龍さんは【城娘】ではないんですよね?」

石田”「ああ、特に繋がりはない」

石田”「ただ、大宝寺城と飛龍はイメージカラーが眩しい黄色だから遠目に見ればそう見えなくもないか」フフッ

名護屋城「やっぱりそうですよね。こうして見ると仲の良い姉妹のように見えちゃいます」フフッ

石田”「冗談はよせ。飛龍に妹がいたらうるさくてかなわん。うるさいのが増えるとこっちの苦労も増える」ヤレヤレ

名護屋城「それじゃ、あっちの黒い娘は…………南蛮人から買い取った娘ですか?」

石田”「…………!」ムッ

名護屋城「あ」

石田”「いや、違う。『ヲシドリ』は奴隷なんかじゃない」

石田”「あれは――――――、あれは、あれは………………」

名護屋城「つまり、――――――私と同じ?」

石田”「……そうかもしれないな。その通りだ」フフッ

名護屋城「そうなんですか。何だか親近感が湧きます」ニッコリ

唐津城「………………」


785: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:02:30.90 ID:vjaZff0t0

志摩守「さて、【城主】様には我が所領における新田開発の一環として行われた防風・防砂林の天領に居を構えるようにしていただきました」

志摩守「どうですか? この美しい海を前にして広がる白砂青松は?」

石田”「おお! これは見事なものだ」

唐津城「世間では“二里松原”として評判となっております」

石田”「――――――『二里松原』か(ちょっと待て? 佐賀県の辺りでこれほどまでに見事な松原のことを聞いたことがあるな)」


石田”「そうか、これが日本三大松原『虹の松原』か!」


名護屋城「え? そうなんですか?」

志摩守「ほう、もうそんな名声が得られていたとはこれは少し驚きですな」

石田”「はい。私も見るのは初めてですが、本当に見事な名勝ですね」

志摩守「はっはっはっ、【城主】様にも褒められ、すないスケ様にもお褒めいただけるとは恐悦至極ですな」

飛龍”「――――――『すないスケ』?」

唐津城「正五位:近衛少将のことです」

名護屋城「『スケ』というのは大将の次官である中将のことで、それに対して“少ないスケ”ということなんです」

飛龍”「へえ、そうなんだ」

志摩守「同じ面で同じ氏でも、石田治部が従五位下なのに比べて、すないスケ様は立派でございますな」

石田”「いや、確かに私は少将だがこれは官位のことではないのだがな…………」

786: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:03:08.39 ID:vjaZff0t0

志摩守「さて、そろそろ見えてきますよ」

唐津城「さすがは神より遣われし【城主】様の居城なだけあり、それはそれは摩訶不思議で壮観なものですよ」

石田”「ほう……」

飛龍”「そういえば、【城主】様ってどういった方なんですか?」

大宝寺城「そうだったね。これから私の殿になる人かもしれないし、それはちょっと気になる」

志摩守「そうでしたねぇ……」

唐津城「大変お若い方です。すないスケ様よりもお若いですね。儂のせがれと同じくらい、いや それ以上かな?」

大宝寺城「へぇ」

ヲ級「ヲ……」ゼエゼエ

石田”「さすがに疲れたか、『ヲシドリ』? あともうちょっとだからな」

名護屋城「変身すればすぐに着くんですがね……」

石田”「いや、乗り心地が最悪だったから緊急時以外はご遠慮願おう……」

名護屋城「本当にごめんなさい……」

名護屋城「あ、見えてきましたよ、――――――ほら、あそこ!」

石田”「――――――ん?」

飛龍”「ええ?!」

ヲ級”「ヲヲ」

大宝寺城「これが【城主】様の居城――――――」

志摩守「いつ見ても、神の御業としか思えない建築っぷりですなぁ……」

唐津城「到着です」


唐津藩の天領である虹の松原に建築された【城主】様の居城とは――――――!?



787: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:03:35.92 ID:vjaZff0t0

石田”「マンションじゃないか! ペントハウス付きの! まるっきり現代建築!(申し訳程度にペントハウスが天守なのだな)」

飛龍”「し、しかも、何やら隣の方ではブルーシートで建築中…………」

唐津城「…………『まんしょん』? 『ぺんとはうす』?」

志摩守「おお、やはりおわかりですか、あれがどういったものなのか」

石田”「――――――間違いない。俺と同じく平成時代から来た人間だ」

名護屋城「よかったですね。もしかしたら力になってくれるかもしれませんよ」

石田”「そうだな」

ヲ級”「ヲヲ!」ビシッ ――――――ペントハウスを指さす!

――――――
青年「――――――」
――――――

石田”「む、ペントハウスから誰かがこちらを見下ろしている」

唐津城「あ、あれが【城主】様ですよ」

名護屋城「初めてお目にしました」

志摩守「ふむ、本当なら【城主】様にも姫様の存在は隠し通して、この唐津を襲う【兜】たちの討伐を遂行してもらいたかったが…………やむを得ん」



788: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:04:03.12 ID:vjaZff0t0

――――――【城主】様の居城:ペントハウス付きマンション(隣で【城娘】絶賛築城中)


城主「いったいこれはどうしたんですか、志摩様?」

城主「あ、こっちの人たちは――――――」

志摩守「頼みたいことがあるのだ。こちらの数名を引き取ってもらいたい」

城主「え」

城主「……まあ、いいですけど。部屋も十分に空いてることですし」

志摩守「そうか。よろしく頼むぞ」

城主「ああ…………」チラッ


石田”「よろしく頼む。石田海軍少将だ。――――――平成時代のな」


城主「!」

城主「本当ですか、それ!」

石田”「ああ。俺もどうしたわけかこんな時代に飛ばされてな」

城主「そ、そうだったんですか……」


城主/金木「あ、俺、――――――金木です。ただの貧乏苦学生で今はこんなところに」


石田”「…………ん?」ジー

金木「…………?」

石田”「…………いや、何でもない」

金木「は、はあ……」

金木「まあ、立ち話もなんですし、客間に案内します」

志摩守「うん」

金木「こっちです」

スタスタスタ・・・・・・

石田”「………………」

ヲ級”「ヲヲ」

石田”「あ、『ヲシドリ』か」

石田”「いや、あの金木とかいう男、誰かに似ていると思ったのだが、…………気のせいか?」



789: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:04:41.50 ID:vjaZff0t0

――――――客間


金木「――――――そうですか」

金木「それじゃ、大宝寺城だったな? お前は俺の許に来て戦ってくれるのか?」

大宝寺城「うん。まだそんなに力は強くないけど、いつか殿もびっくりするような力を身につけるから、楽しみにしていてね」

金木「そうか。確か、刀(対空)だったからこいつは助かる!」メメタァ

金木「で、こっちの――――――」

名護屋城「あ」

唐津城「――――――姫様は“姫様”だ。くれぐれも粗相がないように頼むぞ、【城主】様?」ジロッ

志摩守「すないスケ様と同じく、遇してもらいたい」ジロッ

金木「わ、わかりましたよ(まあ、わかってたよ。きっとこの人も【城娘】なんだろうけど、)」アセタラー

金木「(【稲生】の那古野城と同じく、仲間になってくれないやつなんだな。唐津城も来てくれなさそうだし、わかってた)」メメタァ

金木「(でも、せめてレシピぐらい教えてくれたっていいんじゃない?)」メメタァ

金木「えと、そして、こっちは――――――」

飛龍”「……私?」

ヲ級”「ヲ?」

石田”「その二人は私の部下だ」

金木「ああ そうなんですか(ふぅん。二人共 見ない顔だし、明らかに人間って感じじゃない。あとで築城レシピ教えてもらおう)」メメタァ

金木「じゃあ、これで全員のことを訊きましよね?」

金木「それじゃ、さっそく部屋の準備をするので、適当にくつろいでいてください」

志摩守「そうか。それじゃ、儂らはこのへんにして帰らせてもらうぞ」

唐津城「くれぐれも姫様には粗相がないように。部屋も当然 一番良いものを」

唐津城「それから、姫様のために食糧や調度品などをこれから運び入れるようにするから、くれぐれも――――――!」ギロッ

金木「わ、わかってるって! もうちょっと信用してくれたっていいんじゃないですか?」

唐津城「確かに【城主】様は我が唐津の防衛に協力し、数々の勲功はありますが、こと姫様に関しては別問題です」

金木「…………わかりました。肝に銘じておきます」

名護屋城「そこまでいう必要は――――――」

唐津城「姫様。姫様も会って間もない人物に全幅の信頼を置くのはいけません」

名護屋城「!」

石田”「………………」

飛龍”「?」

唐津城「本当ならば舞鶴城に居てもらいたいのですが、【兜】の襲撃のことを考えるとここに置いておいたほうが安全ということでしかたなくです」

唐津城「近々、お世話人を姫様のところに遣わしますので、どうか貞淑であってください」

唐津城「では、舞鶴城に戻ります。また【兜】の動きがあればその時はまたお願いします」

金木「ああ。任せてくれ!」


スタスタスタ・・・・・・



790: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:05:18.16 ID:vjaZff0t0

金木「…………フゥ」

金木「あ」

金木「――――――千狐、やくも! 誰か居ないか!」

やくも「殿さん、【築城】終わったから、早く新しい娘を迎えてあげて」

金木「おお、そうか」

金木「それよりも、新しい【城娘】とお客人がこれだけ入ったから部屋を用意してくれ」

石田”「――――――【妖精】か?」

金木「いや、――――――【神娘】っていう、こんなんでも神様のご眷属らしいよ」

石田”「なるほど……(――――――『神から遣わされた』というのはそういうことか。確かにどことなくそういった雰囲気があるな)」

金木「…………あんまり驚かないんですね」

石田”「こういった手合には俺も慣れてるからな」

金木「!」

金木「石田少将! 少々お待ちになっていてください! 【築城】したばかりの新しい娘を連れてきますから!」ビシッ

金木「それから、じっくりとお話しましょう!」

石田”「ああ。――――――1つ言っておくが、それは陸軍の敬礼だ。手の平は見せるな。肘を前に出して手の甲を向けろ」スッ

金木「はい!」ビシッ


タッタッタッタッタ・・・


やくも「えっと、この【城娘】さんにはこの部屋が――――――っと」

やくも「それで、殿さん以外で初めての男の人の入居者――――――どうしよ?」ウーム

石田”「…………フゥ」

飛龍”「これで少し安心できましたね、提督」ニコッ

石田”「そうだな。話が通じる相手でよかった……」

名護屋城「………………」ドキドキ

石田”「どうした、姫様?」

名護屋城「なんだか夢みたいです」

名護屋城「一昨日まで城跡で一人暮らしをしていたのに、それが【城主】様のところで石田様とも一緒に暮らせるようになるなんて」

石田”「…………そうだな」フフッ

飛龍”「………………」


――――――それから、唐津藩 虹の松原における神の使いとされる【城主】と【城娘】たちとのマンション生活が始まるのであった。



791: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:05:50.63 ID:vjaZff0t0

――――――個室


石田”「さすがに外見は現代建築でも、内装までは再現できていないか」

石田”「フローリングは塗装してないせいで、人の往来で細かい木片が散らばっているな、この辺は」

金木「できるだけ、今はもう遠い【現代】のことを想って、床面を教室のあれみたいにもしてみたんですけどね……」

金木「塗装って言ったら漆が思いついたから、それを少しずつ買ってきて塗ってはいるんですけどねぇ……」

金木「部屋はこんな感じです」ガチャ

石田”「おお」

金木「二里松原から見える唐津湾の景勝がよく見えるようにしてみたんです」

石田”「まるでリゾートホテルだな。家具も畳や竹細工がハワイアンな雰囲気と和のテイストを演出している」

金木「これでもこの【乱世】に流れ着いて、早数ヶ月――――――ケータイを見る限りだとそれぐらい経っていて、」

石田”「(ずいぶんと古臭いガラケーだな。スマートフォンは使ってないのか――――――ああ 貧乏苦学生と言っていたか)」

金木「こうやって衣食住は【城主】様と崇められることで恵んでもらえてるから、生きてく分には困りはしなかったけど、」

金木「――――――【現代】の刺激が足りなくてっさ?」

金木「まさか電子辞書が暇潰しの必携アイテムになるとは思いもしませんでしたよ!」

金木「もう娯楽に飢えて飢えて死にそうになったところで、こういうコーディネートに手を付けてみる気になったんです」

石田”「そうか。よくぞ、今日まで生き抜いてきたものだな」

金木「石田海軍少将は【ここ】に来て何日です?」

石田”「今日で3日目だ。漂着していたところを姫様に助けてもらえたのが幸いだった」

金木「そうだったんですか。俺はいくつかの時代を巡ってきて この【寛永】の唐津に流れ着いたんですけどね」

石田”「なに?」

金木「それはもう大変でしたよ。起きたことをケータイ日記に記録することを覚えてから振り返るだけであの時の苦労がありありと…………」

金木「ホント、ソーラーチャージャー充電器には助けられてきた。ケータイが死んだら俺、ホントに死んでたかもしれない!」

石田”「そうだな(俺の装備も【この時代】で補給など望めない以上は使い所を見極めなければならないな……)」

金木「はあ……、やっと奨学金を得て大学まで進学できたってのに、なんでこんなことになっちまったんだよぉ……」

金木「おかげで、持ってこれたものなんてこれぐらいしかなくって、――――――あとは自分で作る他なくってさ」

石田”「よくわかるぞ、その気持ち。俺も自分で物事を組み立てねばならない人間だったから」

金木「ははは、石田少将が良い人でよかった……」ポロ・・・

石田”「泣くな。――――――世界に冠たる皇国男子だろう?」

金木「はい!」ビシッ

石田”「うん。海軍式はそういうやり方だ」



792: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:06:38.88 ID:vjaZff0t0

――――――天守:ペントハウス


金木「それじゃ、ここが屋上の天守です」

石田”「このとってつけたような天守建築はいったい何なのだ?」

金木「一応、――――――雰囲気? TPOってやつ?」

金木「こんなふうな飾りを一応はつけておかないと侮られるんですよ。だから 不格好だけれどもつけていて」

石田”「わかったわかった。苦労したのだな」

金木「で、俺はここで唐津を守るために見張りをやって、ここから地図を見ながら【城娘】たちが戦いやすいように配置するんですよ」

石田”「どういうことだ? 確かに見晴らしはいいだろうが、それでも見える範囲には限界があるだろう」

金木「それがそうでもないんですよ」

金木「これ、作戦の時に使う唐津周辺の地図なんですけど――――――、」

金木「ここに【城娘】一人一人の人形があるじゃないですか」

石田”「ああ(ずいぶんとデフォルメされた人形だが、――――――なるほど、ここに所属する【城娘】にはこういうのがいるのか)」

金木「そうだな、非番の娘――――――そうだ、早速だから大宝寺城に行ってもらおうか」

石田”「?」

金木「いいですか? この大宝寺城の人形を――――――、石田少将、ここに置いてくれません?」

石田”「……こうか?」コトッ

金木「………………」

石田”「………………」

金木「………………」

石田”「何も起きないようだが」

金木「ああ やっぱり…………俺じゃないとダメなんだ」

金木「じゃあ、今度は同じことを俺がしますね。大宝寺城の人形をここに置くとペントハウスの目の前に――――――」


大宝寺城「ふぇぇん」


石田”「なに!?」ビクッ

金木「こうなるんだよね」

金木「それで、地図から人形を離せば――――――」


大宝寺城「」パッ


石田”「おお…………」

金木「どうです? こんな感じでこのペントハウスに居ながら戦力の配置や確認ができるんですよ?」

金木「他にも、損傷を受ければ人形が同じように傷つきますし、戦意がみなぎっていたり、疲労していたりなんかも人形からわかるんですよ」

石田”「便利なものだな。【現代】の司令室よりも直接的な命令や管理ができる点では圧倒的に優れているな」

793: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:07:11.54 ID:vjaZff0t0

石田”「では、戦場で力尽きた時は――――――?」

金木「死ぬってわけじゃないらしくて、人形が地図の上から黒ひげ危機一発みたいに吹き飛ぶんですよ! あれは最初に見た時 驚いたぁ!」

金木「それで、その【城娘】は負傷した状態で元いた場所にうずくまっているから、急いで【修繕】させることになるんです」

金木「だから、【合戦】の時はできるだけ出陣させる【城娘】たちを近くにおいてすぐに【修繕】に運べるようにしておく工夫が必要で」

石田”「なに、ロストしないのか!?」

金木「『ロスト』――――――今のところはないですね。致命傷を負う前に自動的に人形が盤面から緊急離脱するので」

金木「けれど、敗戦した時は【しんがり】を選んで【撤退戦】をするんですけど、その時 敵に捕縛されてしまった時があって――――――」

石田”「!」

石田”「……どうなったのだ!?」

金木「その時は、何とか【身代金】を支払って解放してもらえましたけど…………約束の刻限を過ぎていたらどうなってたんだろう?」

石田”「…………乱暴とかはされてないよな?」アセタラー

金木「わからない。聞きたくもないし、知りたくもありませんよ、そんなこと」

金木「ただ、俺の采配ミスで辱めを受けて、それでも俺を【殿】と呼び慕ってくれる彼女たちの健気さを踏み躙ることはできない…………」

石田”「――――――『殿』か(――――――それは【提督】と呼ばれている俺にしても同じことか)」

794: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:08:35.00 ID:vjaZff0t0

金木「……と、すみません。こんな話なんてして」

石田”「いや、俺としてはこれから宿主である【城主】を支えてその日の糧を得たいから、そういった情報はできるだけ共有したい」

金木「おお! 作戦指揮とかできるんですか?」

石田”「俺は艦隊司令官の提督だ。陸の戦いについては専門ではないが、役に立つものがあるはずだ」

金木「ありがとうございます! これで少しは楽になっかな――――――ん、『提督』?」

石田”「どうしたのだ?」


金木「…………もしかして、金本提督って人を知ってますか?」


石田”「!?」

石田”「どの金本提督かは知らないが、俺は斎庭鎮守府の金本提督ならよく知っている」

金木「『斎庭鎮守府』の人かはわかんないけど、何か偉く貫禄があってさ、俺とは違って腕っ節が強くて成金って感じで、」

金木「【城娘】でもないのに【兜】を生身で担いた大砲で撃ち倒す幸薄そうな怪力女性を連れていましたよ」

石田”「それはもしや――――――」

金木「そうそう! 今 思い出したんだけど、ケータイで写真 撮ってある! これこれ!」

石田”「!」


――――――そこに写っていたのは石田司令がよく知る資源王と欠陥戦艦の姉妹の姿であった。ついでにもう一人の男性の姿もわずかばかり見える。


石田”「どういうことだ、これは……?!」

石田”「(金木提督も俺と同じようにタイムスリップしていたというのか?!)」

石田”「(となれば、帰れる方法があったということか!)」

石田”「(しかし、金本提督と山城が装着しているのは何だ? パワードスーツと見たこともないドレスのようなものだな……)」

石田”「これはいつ撮った写真なのだ?」

金木「えっと、ケータイの日付はあてになんないから、ケータイ日記をちょっと遡らせてもらいます」

石田”「ああ……」

金木「………………」ピピッピピッピピッ

金木「あ、これは――――――」ピタッ

石田”「どうなのだ?」

金木「そうだ。これ、【関ヶ原】――――――最初にタイムスリップした先でのことだ!」

石田”「――――――『関ヶ原』!? 天下分け目の戦いに介入したというのか!?」

金木「いや、別に東軍と西軍が激突した時期じゃなくて、どうもそれよりずっと前の時代っぽかったけど……」

金木「ホント、関ヶ原の古戦場なんて見たことなかったけど『ずいぶんと手狭なところだったんだぁー』っていうのが感想かな?」

石田”「それで……?」

795: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:09:01.48 ID:vjaZff0t0

金木「まあ、わけもわからず【現代】で歴史的価値ある宝蔵品を夜な夜な盗んでいく【兜】を追撃するように千狐とやくもに言われて、」

金木「流されるままに、がむしゃらに【兜】の化物たちを【城娘】を差し向けて戦わせていたんだけど…………」

金木「でも、突然【現代】から中世のその――――――俗に【乱世】っていう時代に飛ばされて右も左も分からず…………」

金木「だから、その頃の俺は【殿】としての自覚もなくて、千狐ややくも、【城娘】に対してはひどくあたっていて……」

金木「そんな時に、どこからか4人の男女が現れて、その出会いを通じて俺は今日まで生きてこれたんだ」

石田”「――――――『4人の男女』か」

金木「その時に、俺はその金本提督っていう俺の苗字にそっくりで 俺が欲しいって思っていたものを全部持っていたような成金に、」

金木「この【結婚指輪】と【軍刀】をもらったんです」

石田”「こ、これは――――――!?」


――――――金木青年が金本提督からもらったという品はまぎれもなく【ケッコン指輪】と【下賜品/軍刀】であった。


金木「…………やっぱり知り合いってことで?」

石田”「ああ。間違いない。これは間違いなく金本提督だな(まず、これらを他人に気前よく渡す度量は資源王以外あり得ない!)」

石田”「しかし、金本提督が帰れたのにお前は帰れてないのだな」

金木「…………それでもいいです。『住めば都』っていうし、俺は今の生活に充実感を持つようになってきたから」

金木「どうせ俺は元々 素寒貧の貧乏苦学生で、好きだった女の子の心もカネが無くて射止められなかったわけだし、」


金木「何よりも! 【城娘】という美女に囲まれて、【城主】様と崇められて日々の生活にも困らないのだ!」フゥハハハハ!


金木「【現代】への執着をなくして、【城娘】たちと【兜】の討伐に人生を懸ければ、ずっといい暮らしができて男として最高だね!」

石田”「まさかとは思うが…………いや そうだとしたらタイムパラドックスが起きるはずだが」ブツブツ・・・

金木「ま、そんなわけで俺としてはもうこの宿命を受け入れました」

金木「でも、石田少将には【現代】でやるべきことがあるんですよね?」

石田”「ああ。深海棲艦との戦いがある。俺はその戦いに終止符を打つために新たなる戦略を打ち立てようとしていた時だったのだ」

金木「――――――『しんかいせいかん』?」

金木「ま、まあ。少将にもなれば責任重大だし、俺のような しがない一大学生よりも待ってくれてる人はいっぱいいるだろうからさ?」

金木「石田少将が【現代】に帰れる方法がないか、俺の方で【神娘】たちに訊いてみるから」

金木「だから、それまでよろしくお願いします」

石田”「ああ。こちらこそ、よろしく頼むぞ」




796: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:09:33.93 ID:vjaZff0t0



石田”「それから、俺は金木青年を通じて【城娘】と【兜型生命体】との戦いの日々というものを学んでいくことになった」

石田”「生活自体は確かに生命活動を維持するための衣食住は足りていたが、【現代】の便利な生活に慣れていると物足りなく感じるところが多く、」

石田”「金木青年が俺という同じ時代の二十代の男性との同居を大いに喜んだ情緒が今ならよくわかる」

石田”「確かに【城娘】や【神娘】、【その時代を生きる人たち】との交流は盛んだったが、」

石田”「望郷の念をわかちあえる相手が誰もいない――――――本当の意味での話し相手がおらず、真に孤独であったということがうかがえる」

石田”「俺としてもそれは同じであり、金木青年が俺の顔見知りによく似ていることもあって自然と優しく接することが多かった」

石田”「しかしながら、俺は今まで【城娘】と【兜】の戦いというのは【艦娘】と【深海棲艦】の戦いの構図に当てはめて考えていたのだが、」

石田”「実はこの両者の戦いは本質的にまったく異なるものだということに気づく」


石田”「まず、【艦娘】と【深海棲艦】の戦いには交渉の余地が無い完全なる全面戦争ということだ」


石田”「【深海棲艦】が旧大戦を主とする海に沈んでいった船員たち、あるいは艦艇自体に宿った恨み辛みが実体化したという説をとるならば、」

石田”「相手はすでに失うものなどなく、『ただ恨みを晴らす』その一念だけで襲いかかってくるので和平など結びようがない」

石田”「しかし一方で、この【兜型生命体】という謎の存在について言うのならば、」


石田”「――――――【捕虜の返還】などを持ちかけてくる辺り、【深海棲艦】とはまるで違う存在である」


石田”「ただ わからないのは、なぜ怨敵あるいは天敵であるはずの【城娘】を捕虜にしておきながら【捕虜の返還】に応じるのか――――――」

石田”「普通に考えれば、兵力も完全に【兜】が上回っているのだから【城娘】という天敵はすぐに始末するべきであろう」

石田”「しかしながら、敵はそれをしない――――――それどころか、拍子抜けするぐらい安い身代金で解放することもあるという」

石田”「となれば、考えられることは2つある」


1つは【城娘】の中でも優先順位というものがあり、それが低い【城娘】に関しては取るに足りない存在として放逐するのか――――――。

もう1つは【兜】の主な活動が宝蔵品の略奪であることから、少しでも金品を巻き上げようとして【捕虜の返還】を持ち掛けてくるのか――――――。


石田”「これが【深海棲艦】とはまるで違う点であり――――――、」

石田”「【深海棲艦】との戦いにおいては“生還”か“名誉の戦死”かの実にシンプルな両極端な結果しか残らないのに対し、」

石田”「こと【兜】たちとの戦いにおいては“生還”か“捕虜となって敵にその身を委ねてしまう”という非常に高度な判断が必要な場面が入ってくる」

石田”「【捕虜の返還】に関しては完全に【兜】の側が主導権を握っているようでもあり、」

石田”「この点から見ても、【兜】がただの怨霊や遠方から現れる巨大な害獣ではないことは明白である」

石田”「俺の見立てでは、これだけの戦略を徹底させることができる そこそこの力量と知性を併せ持った親玉が指揮を執っているに違いなかった」

石田”「一方で、【兜】の唐津襲撃も、名護屋城がこちらに移ってきてから激化してきたようだが、」

石田”「戦略はできても学ばない馬鹿のようなので、着実に戦力の増強と練成を積んだ【城娘】軍団の敵ではなかった」

石田”「しかし、状況はその【捕虜の返還】が求められるようになって初めて動き出すのであった」




797: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:10:49.81 ID:vjaZff0t0

――――――数日が経って、


石田”「ワックス塗りはこれぐらいでいいだろう」フゥ (この時代の衣服を支給してもらって着替えている)

金木「ホント助かりましたよ。ワックス――――――つまり蝋になるものって意外と近くにあったんですね」アセフキフキ

石田”「ああ。島原にな(そう、――――――島原に)」

金木「いやあ、島原が伝統的なJapan Waxの名産地だったなんて知らなかったな。漆ってこのJapan Waxの元となる櫨の近縁種だったんだ」

石田”「その果実の果肉や種子に含まれている融点の高い脂肪分を圧搾したものが木蝋だからな」

石田”「他にもサトウキビやクジラ油もワックスだから、九州ならばこの時代ではどこも専売制で割高だが入手経路は豊富だ」

石田”「そういう意味では、化学工業が発達していなくても手に入る点で実に有意義だったな」

金木「さすがにマンション全体を塗布する分を確保できなくても、エントランスやリビング、メイン階段までは塗れましたからね!」

金木「いやあ、ホント綺麗だな~。徹底的に掃除して、床板を張り替えたかいがあったぜ!」

金木「いまだかつてないってほど感激! 小学校以来だぜ、ワックスを塗るなんて! 貧乏苦学生の俺じゃ縁がないと思ってたけど!」

金木「いやはや、このモップもどうやって作ったんです? ホント、石田少将は手先が器用ですね」

石田”「ところで、金木」

金木「何です?」

石田”「――――――【寛永時代】に何があったか知っているか?」

金木「え? …………『寛永』? ああ 確か今の年号でしたよね」

金木「…………わからないです」


――――――【島原・天草一揆】があった頃だ。


金木「!?」

石田”「安心しろ。まだ一揆は起こらない」

石田”「だが、この唐津も実はその【島原・天草一揆】――――――【島原の乱】とは無関係ではなくてな」

金木「え」

石田”「実は、ここの領主:寺沢志摩守は唐津だけじゃなく、飛び地としてその天草も領有しているのだ」

金木「!!」

石田”「関ヶ原の役において九州で加藤清正と対決した小西行長の旧領を受け取って得た飛び地が天草なのだ」

石田”「もちろん、この唐津城こと舞鶴城の他に、天草に富岡城 別名:臥龍城を建ててそこに城代を派遣して治めさせているのだがな」

石田”「確か【島原の乱】は1637年だったか。起こるとしたら10年以内だ」

金木「………………」

石田”「――――――どうする?」

金木「『どうする』って……?」

石田”「このまま行けば、寺沢家は【乱】の勃発の責任を取らされて改易させられるぞ」

金木「ええ!?」

798: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:11:24.31 ID:vjaZff0t0

金木「…………で、でもさ? 歴史って変えていいものなのかな?」

金木「だって、こういうタイムスリップものだと定番じゃん? タイムパラドックスとの葛藤ってやつがさ」


石田”「帰れる見込みもないのにそんなのを気にしてどうする? 未来が変わったことなんて誰がわかるんだ?」


金木「え?」

石田”「俺たちにとって今現在は命など軽い夢幻なのか? それとも、正しい歴史とやらのためにひっそりと死にゆく覚悟があるのか?」

金木「…………!」

石田”「俺はこんなところで死ぬつもりはない。いつだって俺が生まれ育った時代の皇国への帰還を願っている」

石田”「俺にとって真に帰るべき場所であり安息というのはただそれだけだ」

金木「………………」

石田”「お前はどうなのだ?」

石田”「本来 存在しないはずの平成時代の人間がこうして江戸時代に存在して、【城主】様として唐津の藩政に深く関わっているではないか」

石田”「今 このマンションが立っている場所は虹の松原の天領なのだぞ」

金木「あ」

石田”「これだけでも十分に唐津の歴史に干渉しているのではないのか?」

石田”「そもそも、他の時代も遍歴してきたのだろう? 否が応でも与えてきてしまった影響のことについて考えたことはないのか?」

金木「………………!」

799: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:12:28.60 ID:vjaZff0t0

石田”「………………」ジー

金木「…………【乱】の原因は何なんです?」

金木「やっぱりキリスト教の弾圧が原因――――――?」

石田”「いや、キリスト教は豊臣時代から禁止されているものだ。それでいて、徳川時代に再び禁止になったのをあえて禁を破った輩は裁かれて当然だ」

金木「……ずいぶんと厳しいんですね」

石田”「俺は大航海時代にキリスト教が奴隷貿易を推進してきた原動力になっていることを知っているからな」

金木「………………」

石田”「さて、【乱】の原因だが――――――、」

石田”「簡単な話だ。島原でも天草でも重税を課したから百姓一揆が起こった――――――ただそれだけの話だ」

石田”「『百姓一揆』だからな? 士農工商の全部が苛政に耐えかねて起こした一揆だ。キリスト教徒なんていうのはその一部に過ぎない」

金木「…………!」

石田”「余談だが、天草といえば小西行長の旧領ではあるが、その【乱】の指導者となった天草四郎はその家臣の子孫だと言われているな」

石田”「さて、なぜ島原と天草で百姓一揆が起きたのか、【乱】が勃発するほどの重税を課したのかといえば――――――、」

石田”「島原藩主:松倉重政が島原城の建築における労働力や出費を補おうとして苛政を敷いた結果が【島原の乱】だ」

石田”「その後、藩主になった嫡男:勝家はその後の仕置で斬首を言い渡されているようだ。これは大罪人の扱いとして処刑されたことを意味する」

石田”「この松倉勝家は島原城建築による苛政の非を認めたくがないために、島原が伝統的にキリスト教圏だったことに目をつけて、」

石田”「【島原・天草一揆】を“キリスト教徒による反乱”と仕立てあげたらしい。まあ、斬首されたところをみれば嘘だと見破られていたようだが」

金木「………………」

石田”「幕府としても鎖国政策を進めるプロパガンダとして【島原・天草一揆】を利用した結果、単なる百姓一揆が歴史にそう記録されたという話だ」

石田”「一方で、【天草一揆】の原因となる重税の原因は、あの志摩守が天草の石高を過大算定したことが大元の原因らしい」

金木「え!?」

石田”「詳しいことはわからないが、実際に天草でとれた石高の2倍近くの年貢になっていたらしく、根本的な税制が誤っていたことになる」

石田”「それは【乱】の後に天草の代官となった鈴木重成によって明らかになっている」

金木「…………!」


石田”「どうする、【城主】様? 救える命は間違いなくここにあるぞ?」


金木「……俺に『それを選択しろ』って言うんですか?」

石田”「ああ。俺では志摩守を説得できそうもないからな。警戒されている」

石田”「それに、確か志摩守は【乱】の前に病死して、俺たちと同年代の嫡男が仕切ることになる」

石田”「そうなってしまっては、藩政の改革は到底 間に合わない」

石田”「志摩守はもう70なのだぞ。人間五十年の時代に徳川家康ですら70ぐらいで亡くなっているのだからな」

金木「…………そうか。やっぱりそうするしかないんだよな」

石田”「ただ、訴状を出すにはまだ証拠不十分だ。検地をやり直す他ないのだが…………」

金木「だったら、さっさと検地をやればいいじゃないか!」

石田”「この時代は『綸言 汗の如し』だ。君主が一度 公言したことは訂正や取り消しが効きにくい面目の時代だ」

石田”「だからこそ、我が国は伝統を守り抜いて鎖国に成功したのだ」

石田”「早々に変えることができないのはわかっている。その伝統精神のせいで大東亜戦争に敗北してしまったのだからな……」

金木「え?!」

石田”「うん?」

800: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:13:04.40 ID:vjaZff0t0

金木「は? 今 何て言いました?」

石田”「『綸言 汗の如し』だから、志摩守を動かすにはそれ相応の準備が必要――――――」

金木「違いますよ! 今、本職の軍人なのにとんでもない言い間違えをしましたよね!?」


――――――『大東亜戦争に敗北した』って。


石田”「…………何を言っている?」

金木「いやいや、勝ったじゃないですか! それで、欧米の帝国主義の植民地支配を打倒して大東亜共栄圏を実現したじゃないですか!」

金木「あれ? もしかして――――――、石田少将って本当に平成の人間なんですか? ホントは戦時中の人間じゃ?」ジトー

石田”「なんだと? なら――――――、くっ、身分証明となるものがない! そっちの身分証明をしてもらおうか!」

金木「いいですよ! ほら、こっちは学生証だって何だってありますよーだ!」

石田”「ほう、どれどれ(待て。落ち着いて考えてみたら、こんな証明書を見ただけで何かわかるわけが――――――)」

石田”「――――――!」

金木「どうですか? 俺はれっきとした平成の人間だってことがわかりましたか?」

石田”「………………………………」

金木「あ、あれ? 石田少将? ねえ、ねえねえ?」

石田”「――――――!」ジロッ

金木「……びっくりした!」ドキッ


石田”「金木、平成元年って西暦に直すといくつだ?」


金木「はあ? そんなの常識――――――じゃないからそんなこと訊くんだぁ?」

金木「ちょっと待っててください。電子辞書にちゃんと載ってますから」ピピッ

金木「ほら。平成元年は、――――――19XX年ですよ」パッ

石田”「………………」ジー

金木「……大丈夫ですか、頭の方? 時間感覚 狂ってません?」

金木「まあ、今日のワックスがけでも力になってくれたことだし、そんなんで石田少将のことを軽く見るつもりは――――――」


石田”「――――――1989年だ」


金木「え?」

石田”「俺の知っている平成元年は1989年だ」

金木「は…………」

石田”「もう一度言う。俺の知る平成元年は1989年からだった」

金木「…………冗談、だよね? そんな三文の得にもならないような嘘なんて吐いて何になるのさ?」

石田”「いや、【俺の世界】では日本は広島と長崎に原爆を落とされて戦争に負けている」

金木「は!? そんな馬鹿な話が――――――」

石田”「やはりな。そこからして違っているのか」

金木「え?」

石田”「これでわかったことがいくつかある」


――――――タイムパラドックスなんて存在しないということだ。



801: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:13:36.63 ID:vjaZff0t0

金木「えと……、じゃあ、別々のパラレルワールドからこの【乱世】に来たってことになるんですか、俺たちは?」

石田”「そうとしか考えられない(そして、この青年が金本提督と雰囲気そっくりな理由も何となくわかってきたぞ)」

金木「はぁ…………」ペターン

石田”「む?」

金木「いや、冷静に考えて一応『同じ平成時代から来た』っていう事実には慰められているんだけれど、」

金木「結局、別世界の住人だったってことなのか……」

金木「ううん、こんなのは大した問題じゃないっていうのに…………どうして厳密には違うってわかっただけでこんなにも力が抜けたんだろう?」

石田”「…………金木?」

金木「……ごめん、石田少将」

金木「俺、ちょっと一人になりたい。思ったよりも 俺、打たれ弱かったんだな…………」

石田”「………………わかった」


スタスタスタ・・・・・・スッ、パタン

――――――

石田”「………………」

――――――
「うぅわああああああああああああああ!」
――――――

石田”「!」

石田”「………………」

石田”「…………そんなつもりはなかったのだがな」

石田”「俺はただ、現状の事実を伝えただけなのだが…………」

石田”「くっ、なぜなのだ? こうやって俺の言うことが受け容れられなかった時なんてゴマンとあるじゃないか」ブルブル

石田”「それなのに、――――――なぜ俺まで泣きそうになっているのだ?」グスン


――――――怖いのか? 独りだという事実が!? 大志を果たせずにかがり火と共に消え逝くような我が身が!!



802: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:14:11.72 ID:vjaZff0t0

大宝寺城「ねえねえ、飛龍ちゃん! 飛龍ちゃんは誰にその験を鍛えてもらったの? そろそろ教えてよぉー」

飛龍”「え? そう言われても、大宝寺城ちゃんは絶対に知らない人だと思うんだけどなぁ(だって、――――――時代が違うもんね?)」アハハ・・・

大宝寺城「いいから いいから! もしかしたら知っているかもしれないよ?」

飛龍”「う、うん……、それじゃ」

飛龍”「私を鍛えてくれた人は多聞丸って言って――――――」

大宝寺城「――――――た、『多聞丸』!?」ガタッ

飛龍”「え?」

大宝寺城「そ、それは、まあ、凄い……」

飛龍”「え?」

大宝寺城「そうか、それなら納得かも!」

大宝寺城「もしかして、飛龍ちゃんって楠一族の関係者なのかな?」

飛龍”「え、え? く、『楠一族』?」

大宝寺城「またまた惚けちゃって!」


大宝寺城「『多聞丸』って言ったら、“大楠公”楠木正成のことじゃない!」


大宝寺城「そんな立派な人から教えを受けていたんだぁ」

大宝寺城「確かに考えてみれば、飛龍ちゃんが【城娘】じゃないとしたら【神娘】の一人と考えたほうが合点がいくもんね」

大宝寺城「なんてったって、名前もそう、“飛龍”なんだもんね!」キラキラ

飛龍”「え、ええ…………(何だか物凄い勘違いをされてるぅ……)」

803: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:14:46.40 ID:vjaZff0t0


石田”「………………ハア」トボトボ


飛龍”「あ、提督――――――?」

大宝寺城「あ、すないスケ様だ!」

石田”「ん? ああ 飛龍に大宝寺城ですか……」

大宝寺城「ねえねえ、すないスケ様も飛龍ちゃんみたいに験が使えるって聞いたんだけど本当?」

石田”「――――――『験』? 修験道などやっていないが」

大宝寺城「ええ? でも、それらしいものを感じるよ?」

大宝寺城「ほら!」スッ

石田”「!」ビクッ

飛龍”「あ!」

大宝寺城「うん? ――――――扇? 力を感じるのはこれからだよね?」

石田”「か、返せえええええ!」

飛龍”「大宝寺城ちゃん、止めて――――――!」

大宝寺城「えい!」\勅命/


ピカァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


石田”「うああああああああああああああああああ!」

飛龍”「きゃあああああああああああああああああああ!?」

大宝寺城「な、何これぇ!? 目っ! 目がっ! 目がああああああああああああ!」


大宝寺城が石田司令の扇を不用意に扱った瞬間、夕暮れに染まった虹の松原の天領は朝の太陽に照らされたかのごとく強烈に輝いていたという。



804: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:15:20.42 ID:vjaZff0t0

唐津城「さ、先程、天領に不可解な輝きがあったと報告を受けて参上しました!」ダダッ!

唐津城「いったい何があったというのですか?!」

大宝寺城「うぅ…………」バタンキュー

飛龍”「多聞丸、光の闇に包まれて何も見えないよぉ……」フラフラ

石田”「うぅ…………貴重な【照明弾】が1つ無駄になってしまったぁ」ギリギリ・・・

唐津城「大丈夫ですか、すないスケ様?!」

石田”「だ、大丈夫だ。実害はない。ただしばらく目がぼやけて見えない…………失明は回避できたか」

石田”「それよりも、そこにある扇を取り返してくれ。あれは私のだ」

唐津城「は、はあ…………」

唐津城「――――――!」

        \勅命/

唐津城「――――――『勅命』」

石田”「早く……」

唐津城「…………はい」スッ

石田”「……まったくこれだから好奇心旺盛の娘は困る。少しは慎みと落ち着きを持ちたまえ」スッ ――――――懐に扇を収める。

大宝寺城「ご、ごめんなさい……」

飛龍”「今度こんなことをしたら『めっ』だからね」

大宝寺城「はぁい……」

石田”「まったく……」ヤレヤレ

805: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:15:55.63 ID:vjaZff0t0

金木「だ、大丈夫か!? 何か外の方で騒がしくなっていたみたいだけど!」ダッダッダッダ!

石田”「…………何ともない」

金木「で、でも!」

石田”「大宝寺城のやつが貴重な【照明弾】を無駄撃ちしたせいでここを中心に太陽がもう一度 昇ったかのような光が溢れたそうだ……」

金木「そ、そうですか……(――――――照明弾なんてどこに持っていたんだ!?)」

名護屋城「何事ですか?」

石田”「…………また説明するのは面倒だ」

石田”「唐津城、今 話した内容を書面にまとめて写してくれ。そのうちの1枚をここの連中の説明に使う」

唐津城「わかりました、すないスケ様。こういったことは憶測が広まる前に早急に手を打つに限りますね」

名護屋城「大丈夫ですか、石田様」

石田”「……大丈夫だ。しばらく目がぼやけているだけで時間をおけば元通りになる」

唐津城「姫様っ!」

名護屋城「!」

唐津城「姫様ともあろうものが、妄りに他人と接してはなりません!」

名護屋城「…………!」イラッ

名護屋城「だったら、言葉じゃなくて力尽くでやってみせたらどう?」ジロッ

唐津城「ひ、姫様……?」


名護屋城「だって、つまらないんだもの! あんなところに一人にさせておいて、今度はみんなと一緒に楽しく暮らせると思っていたのに!」


名護屋城「そんなに私の面倒を見るのがいやなら、さっさと江戸城の前に突き出せばいいじゃない!」

唐津城「な、なりません、姫様!」

名護屋城「あなただって、私の何万分の1の力を受け継いでいるのですし、私がいなくてもやっていけますでしょう」

唐津城「…………これは志摩様のご意思なのです」

名護屋城「なら、いつまでこんな生活をさせ続けるつもりなの、志摩様は?」ギロッ

名護屋城「あれから30年も経って、志摩様も大変老いてしまわれました」

名護屋城「なら、志摩様が亡くなった後は好きにしてもよろしいですね?」

名護屋城「志摩様のお若い嫡子様にはまだ嗣子がありませんし、志摩様がお亡くなりになった暁には江戸へ参らないといけませんし、」

名護屋城「そうなれば、あなたも一度は江戸に参らねばなりませんから、唐津の金銀財宝をどこに隠すのかを今からでも考えたほうがいいのでは?」

唐津城「そ、それは…………」

石田”「………………」チラッ

金木「…………!?」

飛龍”「あ………………」

大宝寺城「何か気まずいって感じだね……」

一同「………………」

806: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:18:19.14 ID:vjaZff0t0


金木「っと、こういう時はみんなで話し合ぁう!」ビシッ


一同「!」

金木「さっきから黙って聴いていりゃ、――――――人様のところで喧嘩はやめてもらおうか!」

金木「さもなければ、出てけ! それが嫌なら、ここは俺が仲裁人として取り持ってやるから互いの事情に包み隠さず話すこと! それで 仲直りするぅ!」

金木「ここは妥協点を見つけて合意しておかないと、いつか本当に志摩様が亡くなった時に全てが綻びますよ!」

唐津城「し、しかし――――――」

金木「うるさい! お前、さっきから志摩様と姫様のどっちが大切なんだ!」

唐津城「うっ」

金木「そんなわけで、明日ここに志摩様をお呼びしろ! そして、姫様に関する全てを話せ! でなければ、俺たちはこの天領から引き払うからな!」

唐津城「な、何ですって!?」

金木「俺は神の使いである天下の【城主】様だからな! どこに城を構えようが幕府や朝廷だって認めてくれる!」

金木「困るのは、そっちじゃないのか? 【兜】の大軍に狙われるほどの何かを隠し持っているわけだしさ」

金木「俺たち抜きでちゃんとお宝を守りきれるか風のうわさを楽しみにしているぜ」

唐津城「…………わかりました。確かに志摩様のお子は【城主】様よりもずっと世事に疎いので将来が心配です」

唐津城「そろそろ、決断の時なのかもしれません」

唐津城「では、また明日……」


スタスタスタ・・・・・・


金木「………………ホッ」

名護屋城「あ、ありがとうございました」

金木「……別に姫様のためにやったわけじゃないんです。礼なんて言わないでください」

石田”「大したものだな。その歳であれだけ強気な交渉と仲裁を買って出る姿勢には才能を感じる」

金木「…………これぐらい強気で頼りがいがあるように見せないと、志摩様の考えを改めさせるなんてどだい不可能な話でしょう?」

石田”「ということは?」フッ

金木「俺、何のために【この時代】に喚ばれたのか、少しわかったような気がする」


金木「俺、島原と天草の人たちを救うよ。そして、【乱】に巻き込まれることになる幕府の人たちもみんな」


金木「戦いさえ起きなければ、きっとこれからも生きていけるだろうからさ」

石田”「それでも、いずれはキリシタンの弾圧も限界を迎えるかもしれないがな」

金木「いいさ。どうせ島原も天草も隠れキリシタンの古巣だし、取り締まってもそれしか救いがないと思う人たちの心まで縛ることはできないよ」

金木「武力で訴えてくるっていうんだったら、こっちには【城娘】だっているし、菊の御紋の入った【軍刀】まであるんだ」

金木「【稲生】でも兄弟喧嘩の仲裁をやらされたんだから、ここでその経験を存分に活かしても罰は当たらないよな?」

石田”「思ったよりも経験と度胸があったものだな」

金木「だって、他にやることなんてないんだし、俺にしかやれないことを極めていくのも楽しいかなって」

石田”「そうか。なら、力を貸そう。帰れるかどうかもわからない以上は俺自身の良心に従って忠義が曇らないようにして生きていくだけだ」

金木「改めて、これからよろしく頼みます、石田海軍少将」

石田”「ああ。奇妙な共闘関係だが、今は存分に頼らせてもらうぞ」


――――――証の握手。

807: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:18:51.77 ID:vjaZff0t0

飛龍”「あ、提督…………(自分からあんなふうに歩み寄るなんて――――――)」

名護屋城「………………」

大宝寺城「よ、よくわからないけど、これで一段落ってことでいいんだよね?」

金木「まあ、いいんじゃないか? 明日の会見に備えてやっておかないといけないことができたけどさ」

名護屋城「やるべきことですか?」

石田”「そうだ。全てを話すんだ。それで今までのしがらみの全てから解放されるぞ」

名護屋城「!」

名護屋城「い、いいんですか? 全部 話しちゃっても?」

石田”「大切なのは志摩守が何を願ってお前をこういうふうにしていたかだ」

石田”「だが、その真意をお前はきっと知らない。だから、こんなふうに吐き出すものがあったのだろう?」

名護屋城「…………はい」

金木「そ、そうそう、そういうこと! 俺としてもこの数日間どう接すればいいかわからなかったことだし、」

金木「これからこのマンションで共同生活していく上で助け合いは必要だし、【城娘】なら戦力に数えたいからな」

金木「そんなわけで、まずはコミュニケーションの一環として質問したいことがあれば何でも訊いてくれ」

金木「俺なんて数多いる【城娘】たちとの付き合いも長いことだし、経験豊富よ?」

金木「だから、これから少しずつ姫様が俺たちの仲間になれるようにしておきたい」

名護屋城「…………う、うん」

名護屋城「じゃ、それじゃ――――――」

金木「何かな?」


名護屋城「――――――『提督』って何ですか?」


金木「え?」

飛龍”「あ」

金木「『提督』って言ったら、あれだ! 三国志でいう水軍都督のことだ。これならわかるだろう!」

名護屋城「つまり、水軍の司令官といったところでしょうか?」

石田”「それでかまわない」

石田”「元々は清王朝における緑営という漢民族で構成された部隊の水軍司令官の『水師提督』に由来している」

石田”「そして、初めて使われたのが黒船来航――――――マシュー・ペリーが浦賀に来た時に初めて使われた用語だ」

石田”「記録にも『水師提督マツテウセベルリ』とあって、これが略されて艦隊司令官のことを『提督』となったようだ」

金木「え、そうなんだ! さっすが海軍将校! そういったところの知識は完璧だ!」

大宝寺城「――――――『清王朝』? そんな王朝あったっけ?」

名護屋城「………………」

石田”「そういえば、清王朝の成立は1636年だったな。大陸統一はしていないが独立を宣言したのはその年だったな」

金木「!」

金木「割りとすぐじゃないか!(へえ、【寛永】って清王朝が樹立した時代なんだ)」

大宝寺城「???」

大宝寺城「うぅ、さすがは多聞丸様から験を教わっているだけあって、話についていけないよぉ~」

飛龍”「大丈夫。私もあまりわかってないから」

名護屋城「…………何だろう? 楽しいな」ニコッ


808: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:19:26.05 ID:vjaZff0t0

陣営紹介:萬紫苑城(=マンション城)  紫苑の花言葉:「きみのことを忘れない」「遠方にある人を想う」

金木青年/城主
【城プロ】の主人公である【青年】であり、将棋に少しばかり嗜みのあった貧乏苦学生の大学生。
本来ならば、ユーザーの分身であることから顔の存在しない【城主】の一人でしかないが、物語風プレゼンのために設定が特別につけられた。

性格は貧乏くさいところが滲み出ているものの、それだけに資源1つ1つの大切さが身に沁みており、
【城娘】たちを指揮する【城主】としては堅実な戦い方ができており、歴戦の【城主】として安定した戦いぶりを見せている。
貧乏性から貯金や収集が趣味なところがあり、【城娘】を運用するための資源を潤沢に集める小遣い稼ぎが得意技。
しかしながら、貧乏であったことを理由に好きだった女の子に手ひどくふられて失恋したことがあり、
その気まずく苦い経験から、人並みに欲求はあるものの、【城娘】に対しては生き死にを共にした仲間として手を出さないようにしている。
あくまでも自分で稼いだカネにしか人がついてこない(=悪銭 身につかず)と考えており、
【城主】様として崇められることで貰える黄金などには手を付けないようにし、あくまでも自分の身の丈にあった幸せを追求している。
そういった意味では、その若さで貧乏人でかつ欲求も旺盛な歳ながら、しっかりとした精神性を持っていると言える。

今回、石田司令と出会う以前に、最初の【関ヶ原】において金本提督らと会って【乱世】で生き抜く決意を固めることとなり、
その証として金本提督から【ケッコン指輪】と【下賜品/軍刀】を受け取り、初心を忘れないように大切に保管している。
しかしながら、金本提督に対する印象そのものは最悪であり、『自分が欲しいと思うものを全部持っている』ように見えたという。

この物語風プレゼンの中での二次創作――――――三次創作の中だけの存在だが、実はとある人物と多くの共通点が見られる。


【神娘】千狐&やくも

出羽:大宝寺城
ゲーム的には【ドロップ】したばかりの【城娘】だが、かなり高いレベルで加入しており、近々【近代改築】に手が届くぐらい。
『“多聞丸”から修験道を教わった』と勘違いして以来、いろんな意味で石田司令と飛龍とは絡むことになる。
性格は山ガールの元気っ娘でイメージカラーが黄色でまぶしく愛らしく、どこか二航戦と似たような雰囲気があるように思ったのは筆者だけだろうか?
また、九州で【ドロップ】した理由を『修験道の成果』とできた意味でも、シナリオ構成する上では選出に困らなかった逸材であった。

尾張:那古野城
【稲生】で遭遇した【城娘】。一度は別れたものの、【島原】において割と早く合流している。早く名古屋城にしたい。

近江:佐和山城
越前:福居城
山城:二条城

※名が上がっている【城娘】は全て含みをもたせた人選となっています。



この【城プロ】の二次創作においては――――――

基本的に【城プロ】にはシナリオというものが存在しており、筆者はその流れに忠実に従って二次創作をしているつもりである。
つまり、書かれていない部分に関しては好きに書くし、あくまで“流れ”に忠実なのであって厳密にテキストまで再現するつもりはない。
【不気味な穴】によって各時代へと一方的に飛ばされているために、【元いた時代(=一度クリアしたステージ)】には戻れない仕様となっており、
物語風プレゼンなのにメタ的な描写がなかなかに取り入れられない、一度のミスも許されない深刻な雰囲気が漂い続けることになった。

また、【城プロ】には【艦これ】における【演習】に相当する要素がなく、他の【城主】とのやりとりすら感じられないために、
プロローグでいきなり二日前に現れたという【兜】との戦いに巻き込まれて有無いわさず異なる時代に飛ばされて、
常に未来人としての孤独と向き合わなければならない【城主】の厳しい現実が映し出されてしまった(筆者にはそういう風にしか描けなかった)。

【城娘】は不特定多数 同時に存在することができるのは【艦娘】と同様の認識である。
【城娘】は「武装化」と「巨大化」の2つの変身を使い分けることができる設定であり、
プリキュアみたいに別に「巨大化」しなくても「武装化」だけで人並み外れた白兵戦能力を発揮できるが、
「巨大化」して【兜型生命体】を蹴散らすように戦っているために戦術や立ち回りに関しては大味なところがある。
【城娘】は実際に存在する城の付喪神に近い扱いで信仰を受けており、現存する状態で【城娘】が生まれた場合は城主にとって一種のステータスとなる。
一方で、廃城になっても人々の記憶から消えない限りはどこかしらで存在し続け、立地に縛られず彷徨いだす。これと遭遇して【ドロップ】になる。
しかしながら、時代に先んじて【近代改築】したり、依代を用意してその場に召喚させる【築城】、【城娘】の遠隔展開などができたりするのは、
【神娘】に見出された【城主】だけであり、そのために【兜】に対抗するために【城主】を歓待する風潮が根付くことになった。
しかしながら、【城娘】との日常にはとある仕掛けが施されており、それに関してはとあるソーシャルゲームと似通ったものとなっている。



809: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:20:26.97 ID:vjaZff0t0

超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第2章


名護屋城「――――――これで、一通り話したと思います」

金木「……そうか。姫様も“ナゴヤ城”だったのか」

石田”「ああ。そればかりか唐津城が“舞鶴城”と呼ばれていたばかりに、俺はここを愛知県の名古屋近辺だと勘違いしてな」

金木「いや、誰だって『ナゴヤ』って言われたら金鯱の方を思い浮かべますって!」

佐和山城「愚かな。“舞鶴城”など雅称に過ぎないのだから、他にもたくさん“舞鶴城”と呼ばれている城はあるぞ」

石田”「そうなのか(妙に引っかかる言い方をする――――――それ以上の何かを感じたような気がするがどうでもいいか)」ムッ

金木「うう~ん、でもなぁ~、同じ『ナゴヤ』かー」チラッ


尾張:那古野城「?」 ← 傾奇者スタイルの超薄着のまな板

肥前:名護屋城「あの……」 ←みすぼらしい木綿の服だが胸の膨らみが見て取れる


金木「うん、あれから全然育ってないな」ニッコリ

那古野城「――――――!」ジャキ!

金木「うわっと!?」ゾクッ

那古野城「何やらわたしのことを嘲笑ううつけがいたようだが、その減らず口から舌を今から圧し切ってやろうか?」ジロッ

金木「悪かった悪かった! 今度、コンペイトウ 買ってあげるから! カステラでもいいぞ!」アセアセ

金木「和やかに和やかにな!(――――――“ナゴヤ”だけに、なんちゃって)」ヘヘ・・・

那古野城「うん。それならよし!」キラキラ

石田”「そっちの那古野城は特徴的な金鯱はつけてないのだな。それに、思ったよりも小さい」

那古野城「…………さっきから圧し切ってもらいたい?」イラッ

那古野城「わたしだって、もっともっと大きくなりたいんだぞ!」プンプン!

金木「ああ それは歴史的に言えば、関ヶ原の戦いの後の天下普請ってやつの後らしいから。実物にはもう付いてるんだけどねぇ…………」

金木「北ノ庄城も天下普請によって福居城に【近代改築】できたんだけどなぁ…………レベルがまだまだ足りないようだなぁ」メメタァ

福居城「うむ。天下普請で皆に協力してもらってとてもすばらしい御城となったのだ」

飛龍”「す、凄い艤装ですね……」

ヲ級”「ヲヲヲヲ!」キラキラ

福居城「――――――『ギソウ』? ああ、これのことか」

金木「幽波紋だよ、幽波紋! こいつの城主だった結城秀康の魂が乗っているんだよ!」

金木「北ノ庄城だった時は柴田勝家の幽波紋だったし」

石田”「そうなのか」

石田”「では【城娘】とは、城主の性格や戦績によってその能力が左右されてくるとみて間違いないか?」メメタァ

金木「ああ。名将の城や実績のある城っていうのはたいてい強い」

金木「たぶん、その城を“その城”ならしめた要因が凝縮されているのが【城娘】なんだろうな」

石田”「やはりか」

石田”「(となると、その理論が正しければ【艦娘】ほどダイレクトに実物の能力を反映しているわけでもないのか)」

石田”「(そうだな。弓矢による自動機銃がついているわけでもないし、得物は思い思いの武器を1種類ずつしか持てない時代遅れな弱さがある)」

石田”「(おそらく、【兜】同様に【艦娘】でも立ち回り次第で巨大化した【城娘】相手に十分なダメージを与えられるはずだ)」

石田”「(いくら巨体とはいえ、所詮は近代工業が発達する以前の木造建築――――――容易く打ち破れるだろう)」

石田”「(だが、あの【兜】たちの群れを捌き切る巨体とは思えない身のこなしが最も脅威的だといえるだろう)」

810: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:21:03.65 ID:vjaZff0t0

金木「しかも、――――――見てよ、この得物! 名刀:石田正宗にっ!」

石田”「…………『石田正宗』?」ピクッ

金木「天下三名槍の1つ、――――――御手杵だよ? 数多の【城娘】たちが小さく見えるほどのビッグスピア!」キラキラ

福居城「…………あまりそういうことは言わないでくれ。少しばかり恥ずかしいだろう?」テレテレ

福居城「それに、これは結城城に貰ったもので、こちらの石田正宗も佐和山城から貰った家宝だ。絶対に触れるなよ」

佐和山城「……ふん」

石田”「…………佐和山城(そうか、あれが――――――)」チラッ

金木「まあまあ、【稲生】であの馬鹿兄弟の仲裁をした頃からの付き合いなんだし、少しぐらい――――――」

福居城「殿、死にたいのならかかってこい!」ジャキ

金木「ちくしょう……」ズーン

佐和山城「そもそも殿には【あの変な拵えの名刀】があるだろう?」

金木「【あれ】は実戦向きじゃないんだよ! それに『変な』言うな! 菊の御紋入りなんだぞ!」

石田”「そうだな。儀礼用だからな。帝国海軍の儀礼刀は元々は海外の儀礼杖を日本風に取り入れたものだからな」

金木「へえ。そういう意味があったんだ。じゃあ、実戦向けじゃなくて当然だな」ドヤァ

佐和山城「威張るところでもないだろうに――――――うん?」チラッ

石田”「……何ですか?」ムッ

佐和山城「もしや、石田治部――――――」


石田”「人違いです。二度とそのような馬鹿なことを言わないようにこの場でしっかりと目に焼き付けていただこう」


佐和山城「なに?」カチン

佐和山城「少しは言い方というものがあるのではないか、ご客人?」

佐和山城「そもそも、人が話している時はちゃんと眼を見るようにしたらどうだ? この礼儀知らずめ」

石田”「元から聞く耳など持たぬから従う道理などないな」

石田”「それよりも、話の続きを――――――」

佐和山城「ふざけるな!」バン!

一同「…………!」

811: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:21:51.60 ID:vjaZff0t0

石田”「ふん」

金木「ちょ、ちょっと石田少将? どうして佐和山城にそう冷たくするのかな?」

石田”「どうしても何も――――――なら、ズバリ言おう」


石田”「俺は“大一大万大吉”を掲げて関ヶ原の戦いで見事に敗死した負け犬が嫌いだ」


佐和山城「!?」

石田”「俺はそいつとは同じ氏だが、肝腎の大坂城からも見捨てられているような中身の無い愚か者と一緒にされたくはない」

一同「!?」

佐和山城「…………!」ドクンッ!

ヲ級”「ヲヲ? ヲヲヲ」

飛龍”「ごめん。私も大昔の戦いのことは…………」

金木「え、それってマジなのかよ?!」

石田”「ああ。関ヶ原の戦いの後の仕置で、淀殿は徳川家康のことを“忠義者”と褒め称えたのだからな」

石田”「この様子だと、石田治部とやらの忠義も当の大坂城からは迷惑極まりないものだったのだろうな」

石田”「元々、石田治部の挙兵に対しては西軍の総大将であった毛利輝元に『石田治部の謀反を止めさせるように』と大坂城からの文も届いてもいた」

石田”「いい厄介払いができたと思っていたことだろうな、大坂城としても」

佐和山城「………………」ジワッ

バッ

佐和山城「――――――!」

ダッダッダッダッダッダ!

金木「あ」

福居城「――――――佐和山城!」

那古野城「何様のつもりだ、この大うつけ!」ジャキ

飛龍”「提督! ここは謝っておこうよ!」アセアセ

石田”「関係ない話をし始めたあの【城娘】が悪い」プイッ

ヲ級”「…………」オロオロ

名護屋城「石田様」

石田”「何ですか?」ムスッ


名護屋城「ごめんなさい」


石田”「?!」

金木「え? ええ? どうしてここであなたが謝るのが――――――?」

一同「!!??」

名護屋城「私が悪いんです、全部……」

名護屋城「私が居たから佐和山城も石田治部も、その忠義が報われないまま果てていくことに――――――」

一同「………………」

812: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:22:37.76 ID:vjaZff0t0

金木「確か、あなたは朝鮮出兵の時に生まれた城って言いましたっけ」

名護屋城「はい。あの頃はまだ天下も人臣も1つにまとまっておりました」

名護屋城「しかしながら、天下泰平を迎えるに連れて武断派と文治派の対立はいよいよ深刻化してきたのです」

名護屋城「中央集権化による官僚制度の発達によって、主君との垣根は官僚機構によって阻まれ、」

名護屋城「これまで主君の命のために奉公していた者たちがバラバラに切り離され、その間を取り持つ人間こそが力を持つようになりました」

名護屋城「――――――『中 満つる』わけです」

名護屋城「しかしながら、それでも私が生まれ落ちるまでの8ヶ月――――――、」

名護屋城「武断派の筆頭である加藤肥後守の優れた築城術と文治派の筆頭の石田治部の優れた後方支援の抜群の連携で事は成ったのです」

名護屋城「それでも武断派と文治派の対立は子飼いの彼らの協調によって保たれてきたのですが――――――」

金木「そこからは言わなくたっていい」

金木「――――――戦線拡大か和平かで見事に意見が割れたんだろう?」

名護屋城「はい」

名護屋城「でも、石田治部のいうことは常に正しかったのです」

名護屋城「石田治部が戦下手と罵られることになった忍城攻めの時だって、石田治部はあの作戦には反対していたのですから」

名護屋城「石田治部の才覚は無双であると専らの評判でしたのに…………」

一同「………………」

813: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:23:13.96 ID:vjaZff0t0


石田”「そんなことはどうでもよいではないか」


飛龍”「提督!」

石田”「やつは敗けた――――――誰からもその死を惜しまれることなく、ただ歴史の敗者として名を残しただけの佞臣にすぎない」

金木「い、いくら何でもそれを姫様の前でいうもんじゃ――――――」

石田”「…………不愉快なのだよ」


石田”「たまたま同じ氏で、たまたま顔が似ているだけで、そんなやつに常に比べられる惨めさが貴様らにわかるか!」スッ


金木「…………石田少将」

那古野城「席を立つつもりか?」

石田”「ああ。必要な情報は共有できた。もうこれ以上は時間の無駄だ」

石田”「明日は志摩守との会談もある。そこで【城主】様にはやってもらわなければならないことがある」

金木「あ」

石田”「忘れたとは言わさんぞ。絶対にやってもらう」

石田”「乱が起これば、大勢の人が死ぬ。【ここ】での生活も間違いなく脅かされることになる」

石田”「今日このマンションに塗りたくった木蝋は島原のものだ。その島原で乱が起きれば木蝋が手に入るのはもうこれっきりかもしれんぞ」

石田”「俺のことを恨んでもかまわないが、これから起こる大乱を未然に防ぐ好機をみすみす逃すような間抜けならば俺はここを去る」

石田”「その後で、夜討ちでも何でもすればいい。そうすれば、気兼ねなく事を運べるだろう」

一同「………………」

飛龍”「提督! どうしてわざわざそんなことを――――――」

ヲ級”「ヲヲヲ!」

石田”「失礼する」


スタスタスタ・・・・・・




814: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:23:39.27 ID:vjaZff0t0

――――――街外れ


佐和山城「…………ぅう」グスン

佐和山城「皆の為、規則に従い 判断を下すのみ―――――― 一人は皆の為、皆は一人の為に」

佐和山城「しかし、私は皆に好かれてはいなかった……」

佐和山城「そして、まさか大坂城殿からもそのように思われていた、だなんて…………」ヒッグヒッグ

佐和山城「だ、だが……、自分を曲げてまで誤った行為を看過することなんてできるはずがない…………」



石田”「――――――【城娘】の巨大化には限界というものがある」

石田”「まず、巨大化するためには膨大なエネルギーが必要となり、それ故に出陣する度に資源の消費を強いられる」

石田”「そして、巨大化を解除した後にまた巨大化するには時間を置く必要があり、少なくともその時の合戦への再出撃はできなくなる」

石田”「つまり、【艦娘】とは違って【城娘】は巨大化を支えるためにはその時間の分だけ平時の能力は抑えられており、」

石田”「普段から巨大化している【城娘】が存在しないことを鑑みても、巨大化していられる時間にも制限がある」

石田”「それ故に、巨大化するタイミングを常に計らないといけないリスクが【城娘】には課せられている」

石田”「ちょうど今の俺のように、この時代ではオーパーツとなる武器弾薬をいつ どこで どのように使えばいいのかで悩むのと同じこと」

石田”「だが、それだけに生身の状態ならば波状攻撃には弱いということだ」


佐和山城「――――――!」

野盗P「おお!? こんなところにお嬢さんが一人で何をしているのかな~?」ニタニタ

野盗Q「ここは危ないから俺たちのところに来なよ~」ニタニタ

野盗R「うへへへ……」

佐和山城「この唐津近辺にこのような賊が潜んでいただと? ――――――許せん!」

                                   ・
石田”「さて、お手並み拝見だ。――――――かわいいお城さん?」



815: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:24:14.58 ID:vjaZff0t0










佐和山城「でやあああああああ!」ブン!(武装状態)

野盗「ぐわあああああああああああ」

バタバタッバタッ・・・

佐和山城「…………これで40人ぐらいか。これだけの規模、いったいどこに潜んでいた?」ゼエゼエ

佐和山城「たかが人間相手とはいえ、波状攻撃とは姑息な…………」ゼエゼエ

佐和山城「もう、これでいいだろう。夜が更ける前に戻って志摩守に取り締まりの強化をお願いしなければ…………」ゼエゼエ

石田”「――――――」シュッ

佐和山城「…………!(――――――背後に感!?)」ビクッ

石田”「――――――!」ググッ

佐和山城「あ…!?(く、首が――――――)」

石田”「………………」ギュウウウウウウウ! ――――――絞め落とし!

佐和山城「あぅううううぅううぅう…………    」バタバタ・・・、ガクッ

佐和山城「」

石田”「やはり【城娘】と言えども、巨大化しなければ単独での戦闘力もこの程度だな。――――――頼れる味方がいてこその実力か」 

石田”「むしろ、巨大化して【兜】と戦うことに慣れすぎて、こういった状況で人間と戦う方法についての理解が浅かったな」

石田”「確か、あと10人は野盗が控えていたはずだ」チラッ

若い野盗「」

石田”「それまでに――――――」ガサゴソ



816: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:24:41.83 ID:vjaZff0t0

―――――― 一方、その頃、


飛龍”「提督ー! 佐和山城さーん!」

ヲ級”「ヲヲヲヲー!」

大宝寺城「まだ見つからない?」

ヲ級”「ヲヲ…………」

飛龍”「いくら夜間で艦載機が発進できる『ヲシドリ』でも、ここは何もない海のどまんなかってわけじゃないから、」

飛龍”「こう木々が生い茂っているような中で探し出すのはいくら技術が進歩しても難しいことなんだよ……」

大宝寺城「くぅー、私の験の力がもっとあれば…………」

名護屋城「…………石田様もどちらへ行ってしまったのでしょう?」

飛龍”「うん」

飛龍”「それに、どうしてわざわざあんなことを…………」

ヲ級”「ヲ…………」


名護屋城「……何かお考えがあってのことだと思います」


飛龍”「え」

大宝寺城「そうなの?」

名護屋城「はい。――――――みなさんは石田様まで城を出たことに疑問を感じませんか?」

大宝寺城「あ、確かにそうかも」

飛龍”「え、佐和山城さんに謝りに行ったんじゃ――――――?」

名護屋城「そんな無駄なことをするぐらいなら、最初から相手にせず無視し続けるように私は思います、石田様なら」

名護屋城「でも、飛龍さんの言うように『謝りにいくついで』としてかもしれません」

名護屋城「だって、――――――石田様はお優しい方ですから」ニッコリ

飛龍”「…………うん。きっとそうだよね」



817: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:25:12.45 ID:vjaZff0t0

――――――天守:ペントハウス


やくも「お殿さん……!」

金木「…………ダメだ、人形を使って召喚したところで意味が無い。解除した途端に元の場所に戻される!」

金木「それに、根城が捕まった時のように人形に触れても温かみが感じられない…………唐津近辺にはもういないのか!?」

金木「――――――まさか、あれで出奔してしまったと言うのか?!」

千狐「殿、元気 出してなの! きっと佐和山城ちゃんは帰ってくるの!」

二条城「そうよ、あなた」

二条城「明日は志摩守との大事な会見なのでしょう?」

二条城「ここは私たちにまかせて、殿はもうおやすみなさい」

金木「…………二条城」

二条城「はい」ニッコリ


金木「なら、なんでこの天守に 何この……ダブルサイズの高級布団なんて出しているんですか?」アセタラー


二条城「布団、温めておきましたから」ポッ

金木「ひぃいいいいいいい!」

千狐「殿、ダメなの ダメなの!」

やくも「ちょっと二条城さん、あからさますぎ!」

二条城「さあさあ、心置きなくとおやすみなさいませ」ニコニコ

金木「安心して眠れるものか! 逆に興奮して寝るに寝られなくなるだろうが!」ドクンドクン

二条城「あら、それじゃ今夜は寝かせて――――――」

金木「お前、本当に協力する気があるのか!?」

818: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:25:46.34 ID:vjaZff0t0

金木「ええい! 【探索】に出た部隊からは何か連絡はないか?」

やくも「今のところは何も……」

金木「あれから4時間――――――時刻は丑三つ時を回る頃か」

金木「この時代だと明かりが貴重だから、朝日が昇るのと同時に目覚めて夕日が沈むのと同時に眠るのが当たり前――――――」

金木「バッテリーの充電も慎重に行わないといけないからな……(日当たりのいい天守のおかげで充電は安心して行えるのはいいんだけど)」

キィーーーーーーーン!

金木「ハウリング!」

やくも「お、お殿さん、こ、これは――――――!」

二条城「あら、天の声――――――」

金木「…………嫌な天の声だぜ。心臓に悪い」

千狐「殿! 殿! これって――――――」

――――――
佐和山城「殿を裏切るくらいなら、私はここで果てる」
――――――

二条城「………………!」

金木「嘘だろう……。たった4時間の間に捕まるだなんて…………」アセダラダラ

やくも「石田さんは? 石田さんについては?」

金木「くそっ、これは一方通行でしかないからな! 指定された場所に赴いて身代金を出すしかないのか?」

千狐「殿、どうしようなの!?」

二条城「殿、猶予時間があります。佐和山城の所在が明らかになったことを安心なさって、これからの志摩守との会見に臨むべきかと」ビシッ

金木「んなことできるか! 気が気でなくなるんだから、――――――すぐにでも解放だ!」

金木「くそっ、石田少将め! こんな時にどこへ行っちゃったんだよ! ――――――責任とれ!」

819: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:26:16.79 ID:vjaZff0t0

――――――
ドンガラガッシャーン!

佐和山城「きゃっ?! な、――――――何の光!?」

ドタバタガタガタワーワー!
――――――

金木「な、何だ、様子がおかしいぞ」

伊賀上野城「殿」シュッ

金木「――――――伊賀忍?(うわっ、    が現れた!?)」

伊賀上野城「たった今、物見をしましたところ、おそらく神集島の方向で何やら怪しげな光が確認されました」

金木「――――――『怪しげな光』だって?」

伊賀上野城「はい。遠いので微かにしか見えませんでしたが、まるで小さな太陽が低き空に現れたかのごとく」

金木「!」

金木「まさか――――――」

金木「ハッ」

金木「待てよ、神集島と行ったらこの唐津から北にあるそこそこ遠い離島だったな――――――」

千狐「これは、もしかしてなの!」

やくも「今まで【兜】は北からやってきた!」


金木「――――――遠征だ! 皆の者、出陣の用意だ!」


二条城「殿、それでは志摩守との会見の時間に間に合わない可能性が――――――」

金木「何を言っている! これまで唐津を襲ってきた敵の本拠地を叩けるのだぞ! ここで叩いておけば志摩様にも良い顔ができる!」

金木「今までは本拠地を探しに出て【海老】の別働隊に唐津を襲われて守りに徹していたけど、そろそろこっちが攻める番だ! 鬱憤を晴らす!」

金木「二条城、城の守りは頼むぞ! 志摩様が来ても何とかしてくれ!」

二条城「御意」



820: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:26:46.09 ID:vjaZff0t0

――――――神集島:鬼塚古墳群


野盗「火だ、火だああああああああああああ!」

野盗「裏切り者がいるぞおおおおおおおおお!」

野盗「助けてくれええええええええええええ!」


石田”「…………やってみるとなかなかうまくいくものだな。学のないクズ共を寄せ集めたところで所詮はこの程度ということだな」

佐和山城「ど、どうして貴様がここに――――――もしや賊と通じていたか!」ギリッ

石田”「――――――『敵を欺くなら 先ず味方から』『虎穴に入らずんば虎児を得ず』というのを知らないのか」ジョキジョキ

佐和山城「…………!」パッ

石田”「よし、後は頼む。ここで【兜】たちに暴れられる前に仕留めておいてくれ」ポイッ

佐和山城「………………」パシッ ――――――得物の鎗を受け取る。

佐和山城「…………あれは全て演技だったというのか」

石田”「違うな。半分正解で半分ハズレだ」

石田”「俺は志摩守を説得するのに必要な交渉材料として、唐津を襲う【兜】共を根絶する機会をうかがっていたのだ」

石田”「これで恩を売ると同時に、心置きなく唐津から離れることができるようにもしたかったのでな」

石田”「そしたら、偶然にも俺が嫌いな【城娘】がいたから、恨みもこめて思わず逃げ出すぐらいの悪口を言ってやったのだ」

佐和山城「………………」

石田”「――――――全てはそういうことだ。それがたまたま今夜になっただけのこと」

石田”「許せとはいわん。お前一人の命で大勢の命が助かると見込んだから迷わず利用したというだけのことだ」

佐和山城「…………やはり似ているな」クスッ

石田”「…………やはり不愉快だな。助けられる命とはいえな」ムッ

佐和山城「では、せいぜい巻き込まれないことだな、――――――石田少将?」


――――――近江の山城、変身する!


石田”「――――――!」

石田”「…………光の柱(だが、名護屋城のものと比べたらずっと小さいし、本当にただ眩しいだけのものだった)」



821: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:27:25.84 ID:vjaZff0t0


ドスンドスン! ガラガラドゴーン!


石田”「さて、表で佐和山城が暴れている隙に俺は――――――」タッタッタッタッタ!

??「待てよ!」バッ

石田”「…………貴様は?」


大将「やっぱりな。この状況、どうにもできすぎていると思っていたら――――――」


石田”「貴様が主犯格か(何だコイツは? 明らかに不潔臭漂う野盗の棟梁という風格ではないな。もっとこう――――――)」

大将「――――――『主犯格』とは言いがかりだな」

石田”「貴様らの狙いは何だ? 盗んだ宝蔵品をカネに替えて、そのカネで野盗共を配下に加えて情報収集を行っていたようだが」

大将「あちゃー! そうか、どうしてここまでやられることになったのかと思ったら、逆に買収されていたからか!」

石田”「おとなしく捕まるか、ここで死ぬか――――――、どちらか選ばせてやる!」ジャキ ――――――奪いとった打刀を向ける!

大将「あんた、確か奇妙な武器をどこからともなく取り出して“又左”を追い詰めたって話だったよね?」

大将「やらせはしないよ! 俺だって背負っているものがあるんだよ」

石田”「その使命のために各時代で宝蔵品を略奪するというのであれば、――――――俺は迷わず貴様を討つ」

大将「けっ、ふざけたことを抜かすなよ!」

大将「誰のせいで宝蔵品を奪わなけりゃならなくなったと思っていやがるんだ」

石田”「そうか。それならこれ以上 話をする必要はない」

石田”「貴様を始末してこの馬鹿げた代理戦争を終わらせるだけだ」

大将「――――――俺は死ぬわけはいかねえ! ここまで追い詰められたのは初めてだがよぉ!」ザッ

石田”「…………!」

大将「――――――“又左”!」

822: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:27:53.28 ID:vjaZff0t0


又左「御意」シュッ


石田”「女。そして この鎗――――――やはりそういうことか!」アセタラー

又左「あなたを殺すなんて槍の一突きで一瞬ですみますよ?」

石田”「……それはどうかな? 俺を殺しても表で暴れている【城娘】に負ければ同じことだと思うが」アセタラー

又左「その心配はご無用。すでに新たな【大将兜】が生まれ、【城娘】の一人や二人 赤子の手を捻るよりも容易い」

又左「そして、人間相手ならばそれよりもっと簡単――――――!」グッ

大将「待て、“又左”! やつを見くびるな! 忘れたのか!」

又左「…………あのカミナリ雲のような撒菱かっ!」アセタラー

大将「ここは逃げるんだよー! あの光る狼煙のせいで場所が割れた可能性があるからには!」

又左「し、しかし、それではあの【城娘】を捕らえるために耐え忍んできたここでの日々の全てが――――――!」

大将「うるせえ! ここで負けても次があればいいんだよ! 俺たちの戦いは次を繋ぎ続けるものなんだぞ! 忘れたか!」

又左「あ」

石田”「――――――!」バッ

大将「けど、来るなら来てみろ。“又左”の槍を抜けられるのならな! 俺は逃げるがね! ――――――カネを持って!」

又左「…………!」ジャキ

石田”「ちぃっ」

又左「今度会ったら主君のために必ず貴様の首を獲る! 首を洗って待っていろ!」


タッタッタッタッタ・・・!


石田”「さすがに白兵戦に特化している【兜】に挑むのは無謀すぎるか」アセダラダラ

石田”「【城娘】とはまた違った存在だが、――――――あれが【大将兜】ということか」

ドスンドスン! メラメラメラ・・・

石田”「そろそろ、ここも危ないか。火の手も上がってきている」

石田”「だが、外ではいったいどうなっている? 【照明弾】に気づいてくれていればいいのだが……」




823: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:28:38.10 ID:vjaZff0t0






佐和山城「…………次、かかってこい!」ゼエゼエ ――――――【大一大万大吉】発動中(攻撃力を中アップ/範囲:近)

佐和山城「(最初の混乱のうちに【兜】共をある程度は先制攻撃で仕留められたが、)」

佐和山城「(さすがに敵の本拠地なだけあって、元より数に勝る敵勢に圧されつつあるか……)」

佐和山城「(幸いなのはいつもの防衛戦とは違って田畑を荒らし、家を踏みつぶす心配がない――――――)」

佐和山城「(こちらは心置きなく思い思いに立ち回れるの対し、相手は自分たちの土地を自分たちで荒らす心配でうまく立ち回れなくなっている!)」

佐和山城「(寡兵でここまでやれたのは私としても初めてのことだ)」

佐和山城「(普段から土地の荒廃を気にして、できるだけその場で迎え撃つやり方を徹底していたが、自由に戦えればここまでやれるものなのか!)」

大将兜「――――――!」ブン!

佐和山城「――――――!」

ガキーン!

佐和山城「うっあぁ……(手が、手が痺れる…………)」ビリビリ

佐和山城「あ、新しい【大将兜】――――――!?」

大将兜「――――――」

佐和山城「…………!」ゾクッ

佐和山城「(明かりとなるのは天からの星の光と地を焼く炎しかなく、昼間のようにはその姿を見ることは叶わなかったが、)」

佐和山城「(――――――あれを目にした時、瞬間的に手が痺れた以上に身体が痺れて汗が吹き出すのが感じられた)」


――――――あれは赤鬼!?


2本角の赤鬼大将兜「――――――!」ブン!

佐和山城「くっ……」

大将兜「――――――!」ブンブン!

佐和山城「……つ、強い!」

佐和山城「けど、負けられない! 敗けたとしても諦めない!」

佐和山城「(そう、石田少将が殿のためにここまでしてくださった――――――その主役をまかせられたのは武人の誇り!)」

佐和山城「(ここで果てるとも、できるだけ多くを道連れをして――――――!)」


―――――― 一人は皆の為、皆は一人の為!


佐和山城「えええい!」ブン!

大将兜「――――――!」スカッ

佐和山城「あ」

大将兜「――――――!」ブン!

佐和山城「あ――――――(殿、それと大坂城殿、今までありがとう――――――)」


――――――錫杖は当たると結構痛いよ?


大将兜「――――――!?」ボガーン!

佐和山城「あ…………」ドクンドクン

824: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:29:26.82 ID:vjaZff0t0

大宝寺城「なんとか間に合ったね!」

名護屋城「ここは私たちにまかせてください!」

佐和山城「確か、新入りの大宝寺城と、姫様――――――?」

佐和山城「ど、どうしてここに? 唐津から離れて――――――え?」

名護屋城「そんなことはどうでもいいじゃありませんか」

大宝寺城「そうそう。ここは私たちが何とかするから佐和山城さんは退いて」

佐和山城「し、しかし――――――」

大将兜「――――――!」ヨロヨロ・・・

大宝寺城「早く!」

名護屋城「…………しかたありません」


――――――夏草や兵どもが夢の跡


名護屋城「人生 夢の如し」 ――――――【人生如夢】発動!(5秒間 必殺技が発動しやすくなる/範囲:全)

佐和山城「え、何……?」

大宝寺城「悟ったぁあああ!」ブンブン! ――――――【出羽の悟り】発動!(攻撃力を超アップ/範囲:遠)

大将兜「――――――!?」ジリジリ・・・

名護屋城「はあああああああ!」ブンブン!  ――――――2回攻撃!

大将兜「――――――!!」ガキンガキーン!

佐和山城「これはいったい――――――?(何だろう? この感覚は――――――)」

名護屋城「そして――――――、」


――――――手にむすぶ水に宿れる月影のあるかなきかの世にこそありけれ


名護屋城「諸行無常」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)

佐和山城「何だろう? まだやれる気がしてきた……」

825: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:30:05.65 ID:vjaZff0t0

佐和山城「えええええええい!」ブン!

大将兜「――――――!?」

ザシュ!

佐和山城「………………くっ、これでもまだ倒れないか!」

大将兜「――――――!」ジタバタ

佐和山城「くっ、こ、この……!」


――――――順逆二門無し。大道心源に徹す。


名護屋城「身をも惜しまじ名をも惜しまじ」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)

名護屋城「5秒…………これで私の奥の手は終わりです」

佐和山城「まだやれる!」

大将兜「――――――!」ジリジリ・・・・・・

名護屋城「夢が覚めても、また夢を見続けることを諦めない」

名護屋城「――――――ただそれだけの差です」ブン!

スパァアアアアアアアアン!

大将兜「!!!!…………    」バタァン・・・

名護屋城「………………」

佐和山城「…………消えた」ゼエゼエ

大宝寺城「……やったんだよね?」

名護屋城「はい。やりましたよ」

名護屋城「それでは、すぐに石田様と合流いたしましょう」

佐和山城「あ」

佐和山城「うん…………」



826: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:30:31.70 ID:vjaZff0t0

――――――それから数時間後、


金木「えええええええええ!?」

石田”「どうした? 鳩が豆鉄砲を食らったような顔して」

金木「だって、こっちは急いでやってきたっていうのに――――――、」

金木「こんなあっさりと【兜】共の本拠地を制圧しちゃうだなんて……」

石田”「まあ 本当ならば、佐和山城一人で何とかしなければならない非常に苦しい状況だったところに、」

石田”「逸早くなごや……姫様と大宝寺城、それに私の部下が駆けつけてきたからな」

石田”「それで、佐和山城と大宝寺城と姫様の三人掛かりで【大将兜】を圧倒できたからな。ずいぶんと優秀な【城娘】たちだ」

金木「は? ちょっと待ってよ。それでなんで我が軍最速の水賊【城娘】よりも速くつけるわけ?」

金木「いくら行動が早くても、気づいたのは同じくあの【照明弾】なんでしょう?」

石田”「まあ、最大速力:34.5ノット――――――つまり時速63.9kmの飛龍だからな」

石田”「それでなくても、7680海里/18ノットもするからな。唐津から――――――ここがどこだか知らんが、近場の島にすぐに着くなど当然だ」

金木「え? え? ええ?」

石田”「海里は地球上の緯度1分に相当する長さで、1海里=1.8520kmだから、時速2kmと覚えておけばおおむね認識が追いつくんじゃないか?」

石田”「どうやら敵は、日頃の戦力の逐次投入の愚と、未だ経験したことのない防衛戦で戦力を無駄に消耗した」

石田”「おかげで、佐和山城の粘りも効いてたった3人の【城娘】だけで制圧できたわけだ」

石田”「さて、この戦いのMVPは誰になるのだろうな?」

石田”「それと、とっとと ここの番を務めるものを選んで、志摩守との会見に備えたほうがいいのではないか?」

金木「あ、そうだったよ! 志摩守を連れてくるように俺が言ったことだし………………けど 面倒だなぁ」ハァ

金木「せっかく島の奥深くまで来て すぐに引き返すのか…………まあ これで唐津を襲う【兜】共がいなくなれば万々歳だけれども」

金木「それじゃ、ここの【探索】を頼んでおこうか。誰にしておくかな、帰りのことも考えて――――――」ウーム

石田”「…………フゥ」



827: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:31:44.80 ID:vjaZff0t0

佐和山城「…………フゥ」

名護屋城「よくお休みになられましたか?」

佐和山城「…………たった数時間前の話だというのに、【兜】共の居城が壊滅するとは自分がやったとはいえ今でも信じられん」

佐和山城「あの石田少将に罵られ、一人 外に飛び出したところを野盗共に襲われて、それで不覚にも敵の虜になったかと思えば、」

佐和山城「謎の光の後にどこからともなく石田少将が現れて【兜】の基地を混乱に陥れて、それで私を助けだして、」

佐和山城「そこから私はひたすら汚名返上に【兜】を倒し続けて、ついに【大将兜】との一騎討ちになって、最期を迎えるのかと思いきや、」

佐和山城「姫様たちに助けられ、こうして朝日を拝むことができたのだからな」

飛龍”「あ、あの……、先日は本当に提督があのようなことを言って申し訳ありませんでした……」

ヲ級”「ヲ」

佐和山城「そうだな。まんまと一杯食わされたぞ、私も皆も(…………この『ヲシドリ』とか言うのはいったい何なのだろうな?)」

佐和山城「だが、不思議と悪い気はしなかった」

佐和山城「堪え切れずに無断で外に出たのは私だし、賊に後れを取ったのも私の責任だ」

佐和山城「そこを石田少将が便乗したとはいえ、これまで唐津を襲い続けてきた【兜】共の本拠を壊滅させることができたのだ」

佐和山城「もう、怒りや恨みを通り越して惚れ惚れする他なかったな」


―――――― 一人でここまで事を運んでしまったのだからな。


飛龍”「………………」

名護屋城「どうしました、飛龍さん?」

飛龍”「また提督は一人で無茶をやって………………いつもいつも提督は一人になろうとする」

ヲ級”「ヲヲ」

佐和山城「…………そういうことか」

名護屋城「確かに、石田様は人と群れることには苦手なようにお見受けします」

名護屋城「ですが、それは『他人よりもできることが多い』がゆえの孤立のように思えます」

名護屋城「石田様は、その、石田治部と比べられることが本当にお嫌いなので、比べて評するのは気が引けますが、」

名護屋城「石田治部と並ぶ“無双の才覚”の持ち主たったからこそ――――――、」

名護屋城「しかしながら、石田治部とは違って仕えるべき主君の違いによって、」

名護屋城「他人からの理解を求めることを諦め、孤独を愛するようになったように思います」

飛龍”「え……」

828: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:32:40.43 ID:vjaZff0t0

佐和山城「――――――『仕えるべき主君の違い』?」

名護屋城「はい。石田治部は人に――――――豊臣秀吉公に全てを捧げました」

名護屋城「一方で、石田様は国に――――――皇国の繁栄に全てを捧げているように思います」

佐和山城「…………『国』? 了見が狭いようにしか見えないが」

佐和山城「天下人たる秀吉公に全てを捧げずして、1国の都合だけで動く者の方がよっぽど――――――」

名護屋城「違いますよ」

佐和山城「…………!」

名護屋城「石田様にとっての国とは『日ノ本』のことですから。豊臣だけじゃなく日ノ本の全ての人たちのためを思って動いておられるのです」

佐和山城「それこそみなが豊臣のために尽くしていれば――――――」

名護屋城「天下人となった後の秀吉公が行った数々の蛮行についてはどう思っているのですか?」

名護屋城「それで、本当にこれからの天下は収まっていくと思っているのですか? これからの日ノ本のことを本当に託せるとお思いですか?」

名護屋城「だからこそ、豊臣政権において次席の徳川家康の謀反に多くの大名が同調したのではありませんか?」

佐和山城「………………」


名護屋城「豊臣秀吉公の最大の過ちの象徴である私が言うのです」


名護屋城「佐和山城? 私のことをただ“姫様”としか認識していなかったようですよね?」スッ

佐和山城「?」

ヲ級”「ヲ?」

飛龍”「あ、髪を――――――」

佐和山城「あ……、ああ!? そのお顔は――――――もしや、あなたは大坂城殿の!?」

佐和山城「なぜ私はそのことにすぐに気づかなかったのだ。どうして何とも思わずにいたのか…………」ポタポタ・・・

名護屋城「私がきっと大坂城の負の部分だからなのでしょう」

名護屋城「だからこそ、私はあの場所で一人ひっそりと暮らし続けることになった。誰からも惜しまれることなく――――――」

名護屋城「あ、そうでした。だから 私は石田様に………………」

飛龍”「…………姫様」

829: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:33:14.30 ID:vjaZff0t0


石田”「ここにいたのか、みんな」


名護屋城「あ、石田様……」

飛龍”「て、提督……!」

ヲ級”「ヲヲヲー」スリスリ

佐和山城「…………石田少将」

石田”「今回のことは【城主】様も大変褒めておいでだ」

石田”「だが、すぐに志摩守との会見がある。――――――唐津に急いで戻るぞ」

石田”「佐和山城は特に【修繕】の必要があることだしな」

佐和山城「我ながら今回はよく頑張ったほうだと思ってはいたが、【修繕】が必要となる程とはやはり――――――、」

佐和山城「ここまでの手傷を負うとは不甲斐なく思う」

石田”「大宝寺城はどうした?」

飛龍”「彼女ならあそこで寝ているよ」

大宝寺城「スヤスヤー」

石田”「そうか。『急いで戻る』とは言っても、【城娘】が牽引する船に乗るだけだから楽にしろ」



830: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:34:22.39 ID:vjaZff0t0


スタスタスタ・・・・・・


大宝寺城「スヤスヤー」

石田”「さすがに人一人の重さの方が武装より重いか……」(寝こけている大宝寺城をおんぶしている)

佐和山城「石田少将、ところでだ」

石田”「どうした?」

佐和山城「どうやってここまで来れたのだ、あの短時間で」

飛龍”「確かに。私たちは私と『ヲシドリ』でなご…姫様と大宝寺城を背負って全速力で来ましたけど」

名護屋城「そうですね! 馬よりもずっと速くて感動でした!」

佐和山城「なに? 普通、逆ではないのか? 二人は【城娘】ではないのだろう?」

飛龍”「え? 私たちは――――――」チラッ

ヲ級”「ヲヲ」

飛龍”「――――――【艦娘】ですけど?(うん、そうなんだよ、きっと)」

佐和山城「え?」

831: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:35:26.64 ID:vjaZff0t0

石田”「これは今回わかったことなのだが、――――――【蟹】や【海老】に乗って海上を移動することになった」

一同「え」 ――――――【海老】や【蟹】の上に乗る石田司令の姿を思い浮かべる。

石田”「どうやら、そういうことらしい」

石田”「情報収集や我々の監視はもちろん、はぐれ【城娘】の拿捕にも積極的だったようだ」

佐和山城「そうか! だから、あれだけの賊が唐津近郊に潜んでいたわけなのか!」

佐和山城「敵は【兜】だけではないのは重々承知ではあったが、――――――そうか、その手先となる人間にも気をつけねばな」

石田”「貴様が捕まったおかげで敵の手の内を多く知ることができた」

石田”「これは勲章ものだな。【城主】様もきっとお喜びになることだろう」

佐和山城「………………」

飛龍”「て、提督……」

石田”「ん? どうしたのだ、飛龍?」

佐和山城「…………そうか。私はこういう感じなのか、石田少将」

石田”「やけに物静かだな? 事実を述べただけなのだから、もっと喜んだらどうだ?」

佐和山城「一応、感謝するぞ、――――――石田治部の影法師」ニヤリ

石田”「くっ、気に食わんな」ムスッ

名護屋城「あははは……」

飛龍”「あ、あははは……」

石田”「…………二人にまで笑われるとはな」ヤレヤレ

ヲ級”「ヲヲ」

石田”「おっと。そうだったな。寝ている娘を担いでいるのだ。少しは静かにせねばな」

大宝寺城「スヤスヤー」

石田”「よし、そろそろ浜に到着だ――――――」

名護屋城「石田様……(石田様も影なんですね。やっぱり何だか似ていますよね、私たちって)」ニコッ

飛龍”「提督……(あんなにも表情豊かに話しているところなんて久しぶりです。それに何だか微笑ましくて……)」



はたして、帰れるかどうかもわからない。

だが、俺がなすべきことは今も変わらない。どこであろうと、いつであろうとも。

全ては全体の勝利のために――――――ただそれだけのために力を尽くしていくだけだ。


――――――超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 続く

      Next:第7話W 鎮守府の守護神   -侵食される鎮守府- に続く!



835: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:38:02.82 ID:vjaZff0t0

おまけ 真に優れたものとは? -艦娘と深海棲艦の優劣-

――――――趣里鎮守府

――――――新戦略研究局


福島「…………事後承諾みたいであんまりいい気分じゃねえけどよ」

加藤「……そうだな」


福島「てめえ自身が出撃して深海棲艦を捕まえてくるってのはどうなんだよ!」


福島「おい、頭でっかち! てめえ、大将としての自覚がねえのかよ! それで死んじまったら――――――」

小西「――――――理に適ったやり方だと思うが?」

福島「…………!」

小西「深海棲艦が艦娘を優先的に攻撃する習性があるのならば、艦娘ではない何かで捕まえれば確実性は上がるという単純な話だろう」

加藤「だが それはつまりは、名誉の戦死を遂げた瞬間に『新戦略』が破綻することを意味するんだぞ、石田司令」

石田「安心しろ。それについて【捕獲した深海棲艦】を利用して様々な訓練や実験を行っている」

石田「確かに、俺が死ねばそれで終わってしまう話だが、」

石田「俺はきちんと行った訓練や実験のデータを全て残して統計分析しているから、俺が死んだとしてもその資料から後継者が生まれるはずだ」


石田「全てはそれでいい。全ては自分のためにやっていることじゃない。皇国のためにやっていることなのだからな」


石田「むしろ、艦娘を盾にして血と汗を流さなくなった代償としてはあまりにも軽すぎるとは思わないか?」

福島「あ、頭でっかち……、お前……、そこまでの覚悟で…………」

加藤「……そうか。あまり声高には言えないが、確かに軍が再編されても平和ボケが抜け切らない現状を思えばゲームみたいな戦争だよな」メメタァ

小西「…………そこまでいけたらまさしく本物だな」

石田「それに、すでに【捕獲】は十分に行き届いて、お前たちが心配するような命の駆け引きをする段階はもう終わっている」

石田「では、【捕獲】すべき深海棲艦の選定について議論しようか」

福島「お、おう……」

加藤「…………そうだな」

小西「さて――――――」



836: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:39:28.42 ID:vjaZff0t0


石田「よし、議論の結果をひとまずまとめるとこうなるか?」カキカキ

――――――――――――

【捕獲】が推奨される深海棲艦の一覧

戦艦レ級……もはや言うまでもない提督たちの共通の畏怖の象徴である超万能戦艦。elite級から開幕先制雷撃までしてくる。
空母ヲ級……flagship級以上で夜戦で航空攻撃ができる【正規空母】。弱点は【射程:超短】ということ。

潜水カ級…
潜水ヨ級……艦娘以上の【雷装】と頑丈さを誇る【潜水艦】であり、明らかに艦娘より強い。弱点はelite級以上から開幕先制雷撃ができる点。
潜水ソ級…

――――――――――――

石田「やはりこんなところか。――――――艦娘より強い深海棲艦が狙い目だな」

加藤「だな。前提として【調教済み深海棲艦】にはこちらからの修理・補給ができず、自然回復を待つしかない以上はこうなる他ない」

小西「そして、実質的に【深海棲艦】の運用コストがタダである以上は、戦艦タ級やル級よりも手数の多いレ級を使った方が断然 効率がいいからな」

福島「そんで、大破した時が一番【捕獲】しやすいってんだから、手加減なしで轟沈しないぐらいの大物の方がかえって狙い目ってことなんだよな?」

石田「ああ。そういうことになるな」

小西「しかし、こうやって【捕獲】すべき深海棲艦の選別をしていると――――――」


加藤「ああ。いかに深海棲艦が我が軍の急所を狙える戦力を整えているかがよくわかるな」


福島「ガチでヤベぇよ、これぇ! 【戦艦】はレ級に真向勝負できるやつがいないし、【空母】も【潜水艦】も完全に負けてんじゃねえかよぉ!」

加藤「【重巡】や【軽巡】、【駆逐艦】などの性能ならば我が軍が優勢なんだがな……」


石田「まるで旧大戦における両軍の戦力配分をそのまま反映させたかのような感じだな」メメタァ


小西「ほう、やはりそう思いましたか、石田司令も」

小西「そう、中途半端な艦隊決戦主義を突き進んだ結果、【重巡】や【駆逐艦】の性能は連合国よりも優れてはいましたが、」

小西「逆にこれからの主力とすべき【空母】や【潜水艦】の配備や対応が完全に出遅れていたのですからね」

加藤「……そう言われてみれば、確かにそうかもしれない」

加藤「となると、このままの状態だと、戦略的に最も重要な【戦艦】【空母】【潜水艦】の全てが敵に劣っているわけだから、」

加藤「正面対決の総力戦を挑んだら間違いなく我が軍の敗北は必至だ…………だから ジリ貧に陥っているわけなんだ」

福島「ま、マジかよ、それぇ!」

837: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:40:39.69 ID:vjaZff0t0

石田「まあ、だからこそ、戦術でその戦力的不利を覆す他ないのだがな」

福島「おっと! それはそうだったぜ! なんだ、心配して損したぜ!」

小西「こいつはどこまで能天気なんだ…………さすがに心配になってきたぞ」

加藤「ああ。戦略の段階で戦術の基礎となる艦隊戦力の質と量に差が出ているからどうしようもないって話なのにな……」

加藤「だが、今のジリ貧でしかない現状を打ち破って、真に勝利を望める新たな戦略を打ち立てようとしているのが『ここ』だ」

加藤「そして、その『新戦略』というのが【深海棲艦の捕獲】だと言うのなら、【それ】をやるしかないな」

小西「しかし、だからといって【ボス級深海棲艦】の存在も忘れてはならないな」

加藤「そうだな。【ボス級深海棲艦】はあの戦艦レ級ですら単体では太刀打ちできないぐらいに戦闘力に差が付いている」

小西「すると、連続的な出撃を重ねて戦術的に短期的に追い詰めなくてはならなくなるわけだが、」

小西「修理・補給が受けられない【深海棲艦】では【ボス級深海棲艦】には絶対に対抗できないということになるのか……」

小西「だからこそ、深海棲艦を束ねる風格があるというわけか…………」

加藤「しかし、それを打ち破ってきているのが過去の我々同胞たちなのだからな――――――お!」


加藤「そうか! 艦娘の真の強みというのはこの粘り強さと戦術にあったのか! そうとしか言えない!」


加藤「そして、深海棲艦の真の弱点というのは、数で補わないと戦線を維持できず、群れているのに修理・補給が望めない孤立状態であるということ!」

小西「…………その弱点は単体で見た場合の話だろう?」

小西「結局、損傷を与えた深海棲艦の代わりに無傷の深海棲艦が投入されてまた我々の前に立ちはだかるのだから、そんなのは弱点とは言えない」

小西「それに、その『粘り強さと戦術』というのは つまるところ、それぞれの鎮守府司令官・提督の手腕に依存するところが大きい」

小西「となれば、――――――それを徹底させるための教育指導が必要になってくるな」

加藤「そうだな。ぜひともこの強みが活かせるように周りを啓蒙しなくてはならないかもしれんな」

加藤「お、――――――これも『新戦略』になっているのかも!」

小西「そうか、軍政としてドクトリンを改めるのも『新戦略』のうちかもな」

加藤「よし、――――――聞いてくれ、石田司令!(提督だったり、司令だったりまどろっこしいな……)」

小西「…………なかなかいいところまで行けそうな気がしてきたな」フッ


838: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:41:18.96 ID:vjaZff0t0

小西「しかし――――――、」


黒田『――――――『臣下の臣下は臣下にあらず』』

黒田『では、『君主から見た臣下の臣下』とはいかなる存在か――――――』

黒田『それは、『臣下の刀であり、勲章であり、衣服であり、手足』――――――『君主からの命を果たすために存在する装備』でしかない』

黒田『卿らが部下をどう扱おうと――――――装備として所有している兵器をどう使って命を果たすかは我々にとっては取るに足りない問題なのだ』

黒田『ましてや、末端の兵の一人一人について考慮する余裕も義務もない。そんなのは非効率なだけでそれぞれの部隊長の管理の問題だ』


小西「…………ぐうの音も出ない」ハア

小西「そして、兵器である艦娘に対して兵器としての任を全うさせる以上に――――――、」


黒田『むしろ、艦娘 以上に己を殺して それこそ兵器のごとく『皇国のため』に働かなければならないのは卿ら提督たちの方なのだぞ?』

黒田『みなが下らぬ情を持たずにただ黙々と『皇国のため』に尽くす兵器のような心でなければ、国はまとまらぬ。泰平はいつまでも続かぬ』

黒田『特に、艦娘たちは絶対服従の因子によって提督の命令にはまず逆らえぬ。これほど理想的な兵士は存在しない』

黒田『だが、それを使う提督が不心得で力不足であるからこそ、結果を出し続けられぬし、自暴自棄やインモラルプレイにも走ることになる』


小西「――――――『兵器であるべきは上の人間』というわけか」

小西「そう、艦娘は提督には絶対に逆らえない存在なのだから、――――――全ては提督の力量次第」

小西「あれから有志による轟沈条件の解明や、“軽巡以下”の重巡の大幅強化、弾着観測射撃や潜水艦の実装だので、」メメタァ

小西「サービス開始当初に比べたらずっとバランスがとれていて、先人たちのノウハウもこれでもかというぐらいに集積されてきているんだ」メメタァ

小西「――――――『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』」

小西「結局は、そういうことか」

小西「どれだけハイテク化されて便利になっても、学ばない馬鹿や上っ面のことしか教えられないクズがのさばるんだから――――――」

小西「――――――『学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し』」

小西「どうしてこんな簡単なことに気づけないんだろう……」


839: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:41:55.97 ID:vjaZff0t0



小西「俺は確かに功名心が過ぎるところがあった」

小西「そのために武勲艦である艦娘ばかりを使い込んで、実際のステータスよりも経歴を重視するプレイスタイルになっていたのは事実だった」メメタァ

小西「けど、史実で活躍した艦は間違いなく性能面でも優遇されているし、使っていても気分がいい」メメタァ

小西「そうは思わないか? 俺は艦娘への研究としてどういう経歴でそういった性格付けなのかを調べているわけだが、」

小西「その中には当然ながら、名誉がある艦が存在するのだから、武勲に恵まれなかった不名誉な艦という線引が確実に存在している」

小西「だが、旧大戦において本当の意味で敗北の責任を負うべき艦は確かに存在する一方で、責任のなすりつけの被害に遭った艦も存在する」

小西「そういった不名誉の烙印を押された経緯を知るだけで、当時の帝国海軍の腐れ具合に反吐が出そうになるし、哀れみの目しか向けられないだろう?」

小西「武勲艦として栄達していった潮と、敗北の責任を唯一の生存艦だから押し付けられた曙のことを思い出してみろ!」

小西「間抜けにも敵に対して自身の存在を明らかにしたり、索敵に失敗して主力部隊を壊滅させたりしたようなやつらとはわけが違う!」

小西「俺は曙のようなやつを見ていると怒りやら恥ずかしさやらで胸がいっぱいになる!」

小西「だからこそ、俺は【深海棲艦】を歓迎してしまうところがあったのかもしれない」

小西「冷静に考えたら、これまで交渉の余地なしの完全な敵と思われていたのだから即刻排斥すべきはずなのに、」

小西「巷で囁かれている『深海棲艦 怨霊説』に共感し、石田提督がやろうとしている盛大な供養の必要性をどこかしらで求めていた」

小西「馬鹿げだ話だと思うだろう? そんなことやって何の効果が見込める? ――――――これが企画書なら即ゴミ箱行きだな」

小西「だが、目に見える効果を期待するのであれば先祖供養なんていう生活費を圧迫するだけの無駄なものなどやるべきではないだろう?」

小西「けど、人々は科学的な根拠もないのに“ただ何となくやらないといけない気がするから”やっている」

小西「それと同じで、少しでもやらないといけないような気がするから――――――今の状況を少しでも変えたいがために、」

小西「俺は石田提督のこの『新戦略』に真っ先に協力を表明することになった」

840: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:42:23.48 ID:vjaZff0t0

小西「けれども、こうして考えてみると――――――、」

小西「やはり艦娘にしろ、深海棲艦にしろ、どちらにも運用する上でそれぞれの長所と短所があるということが明らかになってきた」

小西「もちろん、戦力的には圧倒的な兵力差と能力差で深海棲艦側が有利ではあるものの、」

小西「やつらは基本的に統率された行動がとれない ただ群れているだけで戦力配置にムラがあるということが何よりの勝機だと気づけた」

小西「――――――『勝負は時の運』とは言うが、まさしくそのとおりだと思う」

小西「織田信長の桶狭間の奇襲戦の奇跡的勝利もそうだろうし、」

小西「別な例を挙げれば、元寇や日露戦争だって軍事的要素以外のものによって最終的な勝利に至っていた」

小西「そう考えれば、その勝機を掴める者こそが本当に優れた資質を持った存在なのではないだろうか?」

小西「だが、その前提には大きな誤解がある――――――そこがクズと凡才と天才の違いのように思える」

小西「言葉が悪いか。では、――――――三流と二流と一流の違いだと思える」

小西「三流と言うのは、――――――勝てる戦にも勝てない不勉強の怠慢者のことだ」

小西「二流と言うのは、――――――実力はあるが、ここ一番で実力以上の結果を出せない“もたざる”者のこと」

小西「そして、一流というのが、――――――ここ一番で実力以上の大勝利を掴み取れる存在のことだと俺は考える」

小西「俺たちの戦いは常に実力以上の要素――――――リアルラックに左右されている。しかも、そこで戦っているのは俺たちじゃなくて艦娘だ」メメタァ

小西「となれば、俺たちが考えるべきなのは、三流の人間が二流になれるような教育と啓蒙をいかに広めるかに尽きると思う」

小西「二流の人間は多いに越したことはないし、そのレベルも高ければ一流の人間が必要になるような危機的状況も避けられるだろうからだ」

小西「しかしながら、やはりどうあがいても勝ち目がほとんどないような戦いに挑まざるを得ない者たちを先導できる一流の人間が必要になる――――――!」




841: ◆G4SP/HSOik 2015/02/17(火) 10:43:08.32 ID:vjaZff0t0


石田「なるほどな。教育もまた重要な要素だったな」

加藤「ああ。“最後の海軍大将”井上成美もそのことをよく理解していた」

福島「当然じゃん、そんなことよぉ?」

石田「だが、教育もまた経験と実践の積み重ねで体系化されてきたものである以上、実験や試行錯誤は避けては通れない道だ」

石田「だからこそ、俺は深海棲艦の研究に力を入れているわけだ」

福島「けど、死に急ぐのはよくないぜ?」

加藤「ああ」

石田「これは誰かがやらなければならないことだ。どんなことにも『初めて』がある以上はな」

小西「なら、石田提督」スッ

石田「どうした?」


小西「俺に【深海棲艦の捕獲】をやらせてくれ」


加藤「!?」

福島「うえっ!?」

石田「…………小西提督?」

小西「俺が【捕獲】を担当して石田提督が【調教】や研究に没頭することができれば、この『新戦略』は大きくて進展するはずだ」

小西「この『新戦略』の発案者であり、責任者である石田提督には永く生き延びてもらったほうが、『皇国のため』になると思ってな」

石田「――――――死ぬぞ?」

小西「死なないね。石田提督にやれたんだから俺にだってできるはずだ。――――――それが『新戦略』の前提だろう?」

小西「ただ俺は、石田提督ほど艦娘たちを悲しませるつもりはないから、ずっと慎重に行うけどな」

小西「どうだ? これで少しは楽になるだろう? 【捕獲】の一切は俺が引き受けてやる」

小西「石田提督は、俺にできて俺にできないことをやって皇国の足りない部分を補った方がいいんじゃないのか?」

石田「…………小西提督」

加藤「………………」

福島「えぇ…………」

小西「(そう、真に優れたものというのはこういうことなんじゃないのか?)」

小西「(全てに優れる必要はない。オールマイティーなのは別に構わないが、一度の場面にその全てを発揮できるとは夢にも思わない)」

小西「(これは艦娘の運用だって同じだ。オールマイティーだけを求めるのなら【水上機母艦】だが能力不足も甚だしいだろう)」メメタァ

小西「(【戦艦】にしろ【正規空母】にしろ、それだけじゃ戦略も戦術も成り立たないからこそ艦隊編成で頭を悩ませることも必要になっているのだから)」

小西「(そう、真に優れたものというのは――――――、)」

             ヲ
――――――1+1=10にする役割分担とチームワークができることじゃないのか?


小西「(だからこそ、石田提督の『新戦略』に加担している一人として、石田提督をこういった形で支えていくべきではないのかと――――――)」

小西「(使える駒が不足しているのならば、それを補って敵に勝つ最善の方法を新たに導き出すことこそが――――――、)」


――――――これこそが真に『皇国のため』ということではないだろうか?


――――――第7話W 鎮守府の守護神   -侵食される鎮守府- 完

       Next:第8話  12月23日 -三笠公園にて- に今度こそ続く!



846: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:20:02.42 ID:XCu0XW8V0


各話リスト:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】

第1話 ユウジョウカッコカリ
第2話 お守り
第3話 御旗と共に
第4話 愛の力
 ↓
第5話 艦娘、派遣します
 ↓
第6話X 幻の八八艦隊「天城」 -新時代の礎になった「天城」と盛衰に生きた妹たち-
第6話Y 提督、出撃す      -船娘の進撃・陸軍の意地・男の浪漫-
第6話Z 海上封鎖を突破せよ  -世界は1つの大洋で繋がっている-
第6話W 深海棲艦捕獲指令   -全ては暁の水平線に勝利を刻むために-
 ↓
第7話X 孤高のビッグ3         -もう1つの“もう1つの世界”-
第7話Y 一大反攻作戦第一号・序章 -離島要塞化計画-  
第7話Z 到来               -アドベント-
第7話W 鎮守府の守護神        -侵食される鎮守府-
 |
 ↓
第8話 12月23日    -三笠公園にて- ← 今回
 |
 ↓
第?話 大本営の野望  -艦娘 対 超艦娘-
 ・
 ・(以下、内容が追加されるかも)
 ・
最終話 -北緯11度35分 東経165度23分-


第6話と第7話の各章の“物語開始時”の時系列はUターン構造(物語の途中経過で話数に関わらず時期が交錯している描写がある)。

第6話W → Z ――――――→ Y → X →   9~10月
                          ↓
第7話W ← Z ← 秋イベント ← Y ← X ←  10~12月
 ↓
12月23日
余談2:4提督のそれぞれの戦いの形 >>462-479
第8話 12月23日 -三笠公園にて- ← 今回



847: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:20:46.83 ID:XCu0XW8V0

第8話 12月23日 -三笠公園にて-

――――――神奈川県横須賀市稲岡町82


清原「さ、着いたぞ。見えるだろう、あの軍艦の姿が」

X:長門β「おお! これが三笠公園か!」

X:長門β「――――――確かに小さい!」

あまぎ「確かにそうなるわね。三笠は131.7mで、あなたは224.94mですものね」

清原「そうだな、100mもの差だもんな。その偉容の差は大きいだろうな」

清原「ところで、じゃあ【β世界線】の三笠はどこへ行ったんだ?」

X:長門β「普通に解体だが? 一部が日露戦争記念館や帝国海軍軍艦ミュージアムの展示品として残されているな」

清原「そうなるか、やっぱり」

あまぎ「………………」

清原「どうした、“あまぎ”?」

あまぎ「あら? そう、【この世界】の『私』もこの近くにいるのね。『あなた』も三笠と同じく――――――」

清原「え」

X:長門β「提督、横須賀基地の見学はダメか?」

清原「ああ、司令部から見学の許可証を受け取っているし、見に行くか?」

あまぎ「ええ。お願いします」



848: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:22:08.56 ID:XCu0XW8V0

金本「懐かしい場所だな。海軍の人間なら誰もが足を運ぶ場所――――――」

剛田「ここが今の皇国にとっての靖国神社とも言える神聖不可侵の聖域なのだ」

剛田「宇品の陸軍船舶司令部とは違って、ちゃんと小奇麗に整理されて練度の高い艦娘があちこちを警備していやがる」

剛田「しかも、ここばかりは憲兵の所轄じゃなくて、海軍の管轄で珍しく海軍の人間がうようよしていやがる」

剛田「おかげで、陸軍の俺は浮きまくりだぜ!」←カーキ色の陸軍制服(夏服だけどイメージ重視)

金本「着替えればいいじゃないか、将校さんよ」← 白色の海軍制服(夏服だけどイメージ重視)

剛田「いや、俺は“陸軍の期待の星”だ。陸海合作の指導者として堂々としなければ」

剛田「で、これが東郷平八郎元帥の像か」

金本「ああ」


男共「………………」


剛田「俺とお前で“日露戦争の再現”といこうぜ、共犯者?」

金本「ああ。この手で栄光を掴まないと気が済まないからな」

剛田「――――――互いに引き際を弁えてな?」

剛田「さもなければ、このじいさんのように晩節を汚すことになるからな」

金本「そういう陸軍のお前らも、海に出ちまったら もう歩いて祖国に帰ることはできないんだからな?」

金本「――――――“死”か、それとも“栄光”か、だ」

剛田「ハッ、【魔界】での合同軍事演習の後に【乱世】で一緒に大暴れしてきたんだぜ?」

剛田「ここまで来たら一緒に生き残ろうぜ、戦友!」



849: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:25:31.43 ID:XCu0XW8V0

Z:ルイージ「凄いです! 本物の軍艦ですよ!」キラキラ

Z:ドレッドノート「…………これがあの三笠かい」ジー

Z:クレマンソー「………………昔の戦艦」

朗利「どうだ、乗ってみるか? 司令部から許可証をもらってるぞ」

Z:ルイージ「お願いします!」キラキラ

Z:ドレッドノート「お願いね」

Z:クレマンソー「…………」ドクンドクン

朗利「クレマンソーもこんなふうに大きくて立派な感じになるはずだったんだけどな……」

Z:クレマンソー「…………私、頑張ったら三笠のようになれるかな?」

朗利「なれるさ! 少なくとも俺はクレマンソーのことをちゃんと見てるからな」ナデナデ


――――――見捨てないからな、絶対に。


Z:クレマンソー「……司令官」ニコッ

Z:ドレッドノート「おお、懐かしいぞぉ、この前弩級戦艦:マジェスティック級の艦体――――――!」

Z:ドレッドノート「まったく、わらわという者がありながら――――――、」

Z:ドレッドノート「我がロイヤルネイビーはマジェスティック級からロード・ネルソン級に至るまでの守銭奴の無駄ながらくたの買いだめをまあ…………」

Z:ドレッドノート「ま、わらわもそのがらくた共と一緒に第一次世界大戦の終了と共に除籍されたわけなのだがな」

Z:ドレッドノート「しかし、いやはや、懐かしいもんだねぇ…………そう、【戦艦】っていうのは大昔はこうだったんだよねぇ」

Z:ルイージ「おっきぃ~! でも、そういうのも何だか不思議な感じですね」

朗利「そうだな。元がこんな大っきなものだっただなんて艦娘を見ているとつい忘れてしまうよ」フフッ



850: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:26:41.61 ID:XCu0XW8V0

石田「古臭いだけの遺跡だと思っていたが、今だと何だか違って見えるな」

W:ヲ級「ヲヲヲ!」

W:レ級「!」

W:ヨ級「…………!」

石田「思い出すものがあるんじゃないか?」

W:レ級「!!」

石田「そうだな。お前たちもこうなりたかったんだよな――――――海の藻屑になってずっと冷たい海の底に取り残されて誰からも忘れ去られることなく」

石田「確かにお前たちはそのために生まれてきたんだ」

石田「けれども、最後に求めてきたものとは“これ”なんだ。それを夢見て勇ましく荒海へと漕ぎ出し――――――」

石田「よくやったな、お前たち。よく頑張ったな」

W:ヲ級「ヲヲヲ!」ニッコリ

W:レ級「!」テレテレ

W:ヨ級「…………!」モジモジ

石田「よしよし、いい子だ」


ポツポツ・・・・・・


石田「ん? ――――――雨か」

石田「そうだったな。今日は積乱雲が発達していて雷が落ちてくる」

石田「明日は晴れるようだが、今夜は激しくなりそうだ」

石田「よし、早めに帰るとしようか」

W:ヲ級「ヲヲ!」

石田「ああ」ニッコリ



851: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:29:20.27 ID:XCu0XW8V0
                    ポンツーン
――――――とある航空母艦の浮き桟橋にて、


清原「わざわざ出迎えていただき、ありがとうございました」

士官「いえいえ、こちらこそ兼愛交利の清原提督にお越しいただけて光栄です」

清原「出撃することはほとんど叶わないでしょうが、人間を救うのはやはり人間しかいないです」

清原「どうかこれからも務めを果たして行って欲しい」

士官「ありがたきお言葉!」

清原「さて、――――――満足したか?」

X:長門β「ああ。戦後の軍艦とはこのようなものなのだな。人の身体を得てこうして直に見て回ることができて良かったぞ」

あまぎ「でも、なかなかに面白いものよね、――――――この航空母艦の名前」

X:長門β「そうだな。まさか彼女が選ばれるとはな」

清原「“事故の産物”――――――いや、元々 改装計画はあったんだ。おかしくはないだろう」

あまぎ「ところで、提督、長門?」

清原「ん? どうした?」

あまぎ「私たちが今 立っている場所が何なのかわかりますか?」

X:長門β「何だ藪から棒に?」

清原「――――――浮き桟橋だろう?」


あまぎ「正解は、――――――『私』です」


あまぎ「驚きました?」ニコッ

清原「え」

X:長門β「なにっ!?」

あまぎ「【この世界】の『私』はあの大震災の時に身を捧げました」

あまぎ「皇国の神は『私』の献身をお認めになって、100分の1にもなりませんが『私』を存在させてくださったのです」

清原「妙に大きい浮き桟橋だと思っていたが、――――――これが?」

X:長門β「こういう形でしぶとく現代まで生き続けているというのか。――――――つくづく食えないやつだよ、お前は」

X:長門β「やはり、どこの世界でもただでは死なないのだな」フフッ

あまぎ「さながら、星座になった気分ですね」ニッコリ

852: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:31:17.44 ID:XCu0XW8V0

清原「…………『星座』か」

清原「確かに星座というのはギリシャ神話において神々の王に認められた存在が天に召された結果だったな」

清原「その多くが己の忠を尽くして壮絶な最期を遂げたものであり、しっかりとした講話にできれば美談として十分に語り継がれるものだな」

あまぎ「そうです。いつの世も人間として大切なものは不変不滅であり、永遠に語り継がれるものなのです」

あまぎ「なぜなら、人間はその神々の系譜を受け継ぐ唯一の子孫なのですから」

あまぎ「艦娘も同じです。人間と同じ姿をしているということは神様がお認めになったことなのです」

あまぎ「その証拠に、私は大神たちのご意思に感応して【この世界】に来ることができたのですから」

清原「………………そ、そうか」

X:長門β「昔から「天城」が言うことはどこまで信じていいのかわからないことだらけだったが、いつも妙な説得力が在り続ける」

あまぎ「あ、――――――今、聞こえました。『私』から私へ?」

清原「?」


あまぎ「――――――提督、来年は必ず荒れます」


清原「…………!」

あまぎ「それと同時に、大躍進の時でもあるようです」

あまぎ「来年が正念場です。【艦隊これくしょん】がアニメ化やゲーム化によって一気に世間の認知度やプレイ人口が増えますが、」メメタア

あまぎ「それで1つのピークを迎えてしまう可能性が大きいです」

あまぎ「果たして、【艦隊これくしょん】が大和改二を実装して5スロット目の開放するまで存続できるか――――――、」メメタア

あまぎ「数々の長寿オンラインゲームと肩を並べてこれからもやっていけるか――――――、」メメタア

あまぎ「あるいは【艦隊これくしょん】を原点とする新たに生まれ来る数々の擬人化ゲームに追い越されずにいられるか――――――、」メメタア

あまぎ「少なくともメディアミックス戦略で2年は大丈夫のようですが、閉塞感に満ちていくに連れて提督離れは進んでいくことでしょう」メメタア

あまぎ「これを回避するためには――――――」


清原「発展性と拡がりを見せ続けなければダメというわけだな。――――――『精進努力を絶やさず』だな」


あまぎ「はい。この世は弱肉強食であり、諸行無常でもあります。すぐに移ろいゆくものなのです」

あまぎ「それが神様がお定めになった大自然の厳しい掟でもあり、望みでもありますから、――――――留まることは許されません」

あまぎ「いえ、もし人間が天意に背いて留まることができたのなら、現在のような高度な文明が築かれることは決してなかったのです」

あまぎ「創意工夫と発展の努力による文化の足跡こそが人が人たる所以――――――神様の叡智を受け継ぐ天孫の証なのです」

清原「…………出来る限りのことを尽くそう」

あまぎ「はい。そうしてください。皇国の大神は見ておられます」

X:長門β「…………“あまぎ”」

X:長門β「そうだな。それが私が【この世界】で人間の身体を与えられた意味なのだからな」

853: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:32:39.03 ID:XCu0XW8V0

清原「よし、では行くぞ! これからが厳しい戦いとなってくるぞ!」

清原「我々は【未来】も救わなくてはならないし、当然【この世界】のことも救わなくてはならない」

清原「だが、そのために必要なことは何一つ見えてこない――――――それでも勝利を信じて進むしかないんだ!」

X:長門β「たとえそうだとしても――――――、」

X:長門β「皇国のため、平和のため、みなのために戦う使命を持って生まれた我々は恐れず提督と共に戦おう!」

あまぎ「皇国の神はいつも我々のことをご覧になっております」

あまぎ「神々の叡智を受け継ぐ万物の霊長としての誇りを胸に!」

清原「いで軍艦に乗組みて 我は護らん 海の国」



――――――我々の戦いは始まったばかりなんだ!



――――――第8話 12月23日 -三笠公園にて- 完  

      Next:番外編 2014年から2015年へ に続く!



854: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:33:23.17 ID:XCu0XW8V0


各話リスト:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】

第1話 ユウジョウカッコカリ
第2話 お守り
第3話 御旗と共に
第4話 愛の力
 ↓
第5話 艦娘、派遣します
 ↓
第6話X 幻の八八艦隊「天城」 -新時代の礎になった「天城」と盛衰に生きた妹たち-
第6話Y 提督、出撃す      -船娘の進撃・陸軍の意地・男の浪漫-
第6話Z 海上封鎖を突破せよ  -世界は1つの大洋で繋がっている-
第6話W 深海棲艦捕獲指令   -全ては暁の水平線に勝利を刻むために-
 ↓
第7話X 孤高のビッグ3         -もう1つの“もう1つの世界”-
第7話Y 一大反攻作戦第一号・序章 -離島要塞化計画-  
第7話Z 到来               -アドベント-
第7話W 鎮守府の守護神        -侵食される鎮守府-
 |
 ↓
第8話 12月23日    -三笠公園にて- ← 今回
 |
 ↓
第9話 海軍総隊を結成せよ! ← 次回
 :
 :
 ↓
第?話 大本営の野望  -艦娘 対 超艦娘-
 :
 :
 ↓
最終話 -北緯11度35分 東経165度23分-



855: ◆G4SP/HSOik 2015/02/25(水) 09:33:55.54 ID:XCu0XW8V0

――――――そして、もう1つ!


ザーザー! ザーザー! ザーザー!

ピュゥウウウウウウウウウウ! ピュゥウウウウウウウウウウ!

ゴロゴロ・・・、ピカァーーーーーン!



????「――――――グハッ!」ドタッ

????「………………ウウゥ」ヨロヨロ

????「………………こ、ここは? 甲板?」キョロキョロ

????「…………この感じ、そうか、ついに!」

????「ふ、ふふふふははははは!」

????「そうか、俺はついに【ここ】に――――――!」


――――――待たせたな、三笠。


????「駆逐してやる! この世から完全に! やつらを! 存在の欠片1つ残らないほどに!」

????「ふははははははは! やってやる、やってやるぞ! 俺はぁあああ!」



????「……クシュン」



????「うっうぅ」ブルッ

????「さ、さすがに雨に打たれ続けているのも身体に良くないか……」ブルブル

????「そもそもいつなんだ? まだ深海棲艦との大戦が終わってない頃なのは確かなはずだが……」

????「と、とりあえず、ここが三笠の上ってことで横須賀なんだから深夜でも営業しているところがあるはず…………そこで温まろう」

????「く、くっそぉ、こんなしょうもないところでへこたれてなるものか!」

????「ぶっ殺すんだ! 【俺たちの世界】を奪った連中を! のうのうと陸の上を我が物顔で生きやがった豚共を!」

????「お前らの行き着く先は暗い海の底なんて生温い! 血の池地獄に沈んでしまえ! はぁーはっはっはっはっは!」


ザーザーザー! タッタッタッタッタッタ・・・、ゴロゴロ・・・、バシャバシャバシャ・・・・・・ピカァーーーーーン!


――――――【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】 完

      Next:【艦これ】提督たち「海軍総隊を結成せよ!」【物語風プレゼンPart2】 に続く!



引用元: 【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】