1: ロッジにて 2013/02/01(金) 12:45:15.60 ID:TExWRxmb0
シュッシュ、カキカキカキ………


咲「うんうん、最後は咲と京太郎と二人の子供の写真で……と」

咲「――――うん、できた」


咲-Saki- ――――完――――


咲「さて、咲-Saki-も書き上げたことだし……」

咲「キャンドルとプリン用意しなくちゃ」


ボワッ、ジュボッ


咲(いい香り……やっぱり、原稿が仕上がった後のキャンドルとプリンは最高だね)

咲「ふぅ…………じゃあもう行こうかな」

5: ロッジ外~崖沿いの道 2013/02/01(金) 12:47:13.50 ID:TExWRxmb0
咲(うわ、雪積もってるなぁ……ムスタングちゃん動くかな?)


ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


咲(良かった、ムスタングちゃんと……出発!!)

アゲッテンノーウォーウォーアガッテンゾーイェーイェー

咲「♪~♪~」

咲「♪~♪~……」

咲(雪、強くなってきたな……前が良く見えないや)


ガタンガタンガタンガタン


咲(道路もガタガタだし……ってうわ!?)

咲(あ、あ、滑って崖に落ちちゃう!?)

咲「きゃああああああああああああ!!!!!」


ガシャ、ドゴドガガガ、ガシャ

6: 回想 2013/02/01(金) 12:48:39.81 ID:TExWRxmb0
編集部にて

久「そのイーピン、良い味でてるじゃない」

咲「そうですか?これ、『りつべ』の頃から使ってたんですよ……あの頃は良かった」

久「『小林立』はダメなの?咲-Saki-シリーズなんて初版が100万部売れる大ベストセラーじゃない」

久「家族に家を二軒も買ってあげられるって、すごいことよ?……でもまさか京太郎と結婚エンドなんて驚きね」

咲「こんなに百合漫画として売れるなんて思ってもみなくて……」

咲「今終わらせなきゃ、他の作品を書けなくなってしまう気がするんです」

7: 車の中 2013/02/01(金) 12:49:24.56 ID:TExWRxmb0
ヒューーーーーー、ヒューーーーーー、ヒューーーーーー、ヒューーーーーー


咲(あ、あれ……なんで編集部の事……これ、走馬灯、かな……)


ガチャガチャガチャガチャ、ガタン


咲(誰か、助けに……?あ、意識が……あ……)

???「……」

???「……」


ズルッ、ズルッ……


???「……」

???「……」


ザクッザクッ

8: ???の家 2013/02/01(金) 12:50:43.21 ID:TExWRxmb0
???「私はナンバーワンのファンです……ナンバーワンの……」

咲「……ん、あ、あれ、ここは……?」

咲(ベッドの上……?私、車にいたはずじゃ……)

???「気付きましたか咲さん……ここはロッジの近くです」

咲(この人が、助けてくれたのかな?)

咲「……いつから?」

???「今日で2日目ですよ、もう大丈夫です……私は原村和といいます」

咲「ナンバーワンの、ファン……」

和「ふふっ……そうです、それに私看護婦なんですよ?……はい、お薬飲んで下さい」

咲「……ごくん」

9: 和の家 2013/02/01(金) 12:51:45.41 ID:TExWRxmb0
翌朝


和「点滴の次は……はい、お薬です咲さん」

咲「……何の薬?」

和「ノドリルという鎮痛剤です」

咲(聞いたことないけど……まぁいいか)

咲「所で……出来れば病院に行きたいんだけど……」

和「すみません、あの吹雪で運べなくて……それに電話も不通なんです」

咲「そうなんだ……い、痛っ」

和「動こうとしちゃだめですよ?死にかけたんですから」

咲「は、はい……」

10: 和の家 2013/02/01(金) 12:53:01.53 ID:TExWRxmb0



和「口を開けてください咲さん、お薬です」

咲「うん……い、痛っ」

和「少し動いただけでも痛みますか?……でもすぐ良くなりますよ」

咲「……また、歩けるようになるかな?」

和「もちろんです、腕もちゃんと治りますよ……肩も脱臼してたんですよ?」

和「両足は脛骨の複雑骨折、右足は腓骨も骨折していて……でもきちんと固定したのでご安心下さい」

和「道が開通したら病院へ行きましょう、それまではここで頑張ってください」

和「それにしても、『小林立』こと咲さんを看病できるなんて……光栄です」

11: 編集局~警察署 2013/02/01(金) 12:55:03.96 ID:TExWRxmb0
久「もしもし、ヤンガン編集部の上埜久よ……警察署長か保安官を出してくれるかしら」

京太郎「それならどっちも俺ですよ……どう言ったご用件ですか?」

久「ええ、実はうちの作家の『小林立』……本名宮永咲の行方を……」

京太郎「『小林立』?百合漫画世界一のあの咲-Saki-の作者?」

久「ええそうよ、彼女は原稿を書くときはいつも長野のロッジへ行くんだけど……」

久「先週の火曜にチェックアウトしたらしいんだけど、うちにも家族にも連絡がないのよ」

京太郎「それで行方不明だと?……一応こちらでも何かあったら連絡します」

久「助かるわ、ありがとう……じゃあ切るわね」


ガチャン、ツー、ツー、ツー、ツー


優希「昼間から電話とか珍しいじぇ」

京太郎「そうだな……優希、この前の吹雪っていつだったか覚えてるか?」

優希「確か先週の火曜だじぇ!!!それがどうかしたか?」

京太郎「先週の火曜、か……」

12: 和の家 2013/02/01(金) 12:56:15.16 ID:TExWRxmb0
ジョリジョリ、ジョリジョリ


咲(和ちゃん、ホーン整えるの上手だなぁ……)

咲「でもホント、和ちゃんが助けてくれたのは奇跡だよ」

和「そんなオカルトありえません……実は私、咲さんをつけてたんです」

咲「つけてた……?」

和「ええ、私咲さんの大ファンで……時々ロッジへ行って、部屋の灯りを見て……」

和「ああ、あそこで世界最高の百合漫画家が仕事をしているんだ、って」

咲「せ、世界最高だなんて……///」

和「動くと危ないですよ咲さん、ホーンが切れてしまいます」

和「それで事故の日もロッジへ行ったら、ちょうど咲さんが車で出る所で……」

和「嵐の予報が出てたので心配で後をつけたんです……それが正解でした」

和「死なずに、もっと百合漫画を描いてもらえる……」

和「私、咲-Saki-の大ファンで……38巻全部、初版で10冊ずつ持ってるんですよ?はい、ホーン整いました」

13: 和の家 2013/02/01(金) 12:57:03.04 ID:TExWRxmb0
咲「///……あ、そうだ和ちゃん、お姉ちゃんと編集部に連絡したいんだけど……」

和「すみません、電話がまだ復旧してないんです……番号教えてください、直り次第連絡しておきます」

咲「そっか……ありがとね和ちゃん」

和「…………」

和「………あ、あの……1つお願いが……///」

和「あのカバンの中って、最終話まで10週連続掲載の原稿ですよね?もしよければ……その……///」

咲「……咲-Saki-の原稿を一番に読ませる人は、もう決めてるんだ」

和「そう、ですか……」

咲「編集部の人、担当の人、それに……命の恩人の、和ちゃんってね」

和「あ……あ……光栄です……夢を見てるみたい……」

咲「ふふふっ、あ、痛っ……」

和「ふふふっ、ノドリル持ってきますね……」

14: ロッジ 2013/02/01(金) 12:58:34.63 ID:TExWRxmb0
オーナーワカメ「何も変わったことはなかったのう、キャンドルとプリンを買った後はチェックアウトして……」

京太郎「いつもと違うことはありませんでしたか?」

オーナーワカメ「いつもと違うことが嫌いな人だからのう……車もずっと65年型のムスタングじゃ」

オーナーワカメ「心配しなさんな、きっと今頃東京に着いとるじゃろ」

京太郎「そうですね……お邪魔しました」

オーナーワカメ「ほいほい、たまには優希も連れて来んしゃい」

15: 和の家 2013/02/01(金) 12:59:33.05 ID:TExWRxmb0
和「咲さん……あーん」

咲(和ちゃんのミネストローネ、おいしい……)

和「それで、最初の方まで読んだのですが……いえ、すみません気にしないで下さい」

咲「……言ってほしいな、和ちゃん」

和「さ、咲さんの作品を批評するなんて……畏れ多くて……」

咲「いいから言って……遠慮しないで」

和「……まず咲さんかわいい!!これはコモンセンスですけど……」

咲「ハッキリ言って?」

和「…………男とくっつき過ぎじゃないですか?それが……」

咲「それは、私の高校も共学で……あの通りだったんだよ?」

17: 和の家 2013/02/01(金) 13:00:11.04 ID:TExWRxmb0
和「そんなはずありえません!!!私がこう言ったら?『●●●からヤドカリくっせえクソみたいな悪臭放って人のカレシ  ってんじゃねえよこのxxxx!!』」

和「あのクソ男と付き合ったらこう言うんですか?『おいそこの腐れxxx!!てめえんなとこでxxxx  てないで早く  てガキ  せろよxxxxが!!』」

和「ああああああああああ!!!!!せっかく作ったスープがこぼれたじゃないですか咲さんのせいですよどうしてくれるんですかああああああああああ!!!!!」

咲「………」

和「あ……咲さん、ごめんなさい……時々我を忘れて……許してくださいね」

咲「う、うん……気にしないで」

和「愛しています、咲さん……///」

咲「え?」

和「あ、えっと……これはその、咲さんの漫画や世界をって意味で……」

和「すみません、ちょっと一人になりますね……」

咲「…………」

咲(もしかして、ちょっと危ない人なのかな……?)

18: 車で捜索中 2013/02/01(金) 13:01:58.53 ID:TExWRxmb0
ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


優希「ドライブデートなんて久しぶりだじぇ」

京太郎「……おい、どこ触ってんだ」

優希「ぶぅ……家までお預け?」

京太郎「あのなぁ……って止めろ止めろ!!!」

優希「急にどうしたんだじぇ?」

京太郎「あそこ、枝が折れてるだろ?……ちょっと見てくる」

優希「どうせ雪の重みで折れたんだじぇ……」

優希「……戻ってきた、収穫はあったか?」

京太郎「いや……でもこの雪だ、見つかってないなら恐らく……」

優希「ふーん……それじゃ帰るじぇ京太郎!!そしたら……///」

京太郎「はいはい、帰りは俺が運転するから乗った乗った」

19: 和の家 2013/02/01(金) 13:03:26.33 ID:TExWRxmb0
和「ふふふっ……さ・き・さ・ん♪見てください、咲39巻買ってきました!!」

和「いっつも本屋で一番乗りなんです、ふふふっ」

咲「……道路が開通したの?」

和「町への道だけです、病院にも電話しましたので安心してください」

咲「……電話は復旧したの?」

和「町のだけは復旧したようです、編集部にも連絡しました」

咲「お姉ちゃんにも連絡したいんだけど……」

和「編集部から連絡してるはずです」

咲「……」

和「ふふふっ、新刊の表紙を見ただけで……ふふふっ、咲さんって芸術家ですね///」

21: 和の家 2013/02/01(金) 13:05:08.27 ID:TExWRxmb0
コンコン、ガチャ


和「咲さん、咲さんの作品は素晴らしいです、傑作という言葉でも足りないくらい……」

咲「そ、そんなに?///」

和「完璧です、非の打ち所もないです……///」

和「ふふふ……」

エトペン「……」

咲「ってうわ、ペンギン!?」

和「はい、名前はエトペンといいます」

咲「エトペンって、もしかして咲-Saki-からとったの?」

和「はい、咲さんの大ファンなので……///」

咲「かわいい……ペンギンだね」

和「ふふふ、今中盤まで読み終えましたよ……完璧どころじゃありません、神の作品です」

和「アイサの涙と咲-Saki-……まさしく神の息吹を感じられる大傑作です!!!」

和「エトペン♪エトペン♪エトペン♪エトペン♪エトペン♪ふふふっ」

22: 和の家 2013/02/01(金) 13:07:04.01 ID:TExWRxmb0
和「実は私、バツイチなんです……穏乃と別れた後、すごく辛くて、変になるかと思いました」

咲「うん、よく分かるよ」

和「それで、がむしゃらに仕事に打ち込んだんです」

和「昼も夜も働いて……それでも夜勤は寂しくて、本を読み漁って……そこで咲-Saki-に出会ったんです」

和「読んでるだけで救われて……咲さんのお陰です、ありがとうございます」

咲「……どういたしまして、で、その……これを///」

和「……終わりました?」

和「私、再婚したくないわけではないんです……ただ、やっぱり特別な人という気持ちが強くて……」

咲「……」

和「ふふふっ……本当はもっとお話したいんですが続きが気になるので……ふふふっ」

24: 和の家・夜 2013/02/01(金) 13:09:22.60 ID:TExWRxmb0
咲「むにゅむにゅ……ん、あ、あれ?和ちゃん……?」

和「よくも……よくもやってくれましたね……なんてことを……咲さんと須賀が付き合うなんて!!!」

和「宮永咲が……レズじゃないなんて!!!!!」

咲「……作品当時はまだiPS技術が普及してなくて……でも宮永咲と原村和の絆は本物だよ」

和「なんでレズじゃないんですか!!!私を騙したんですか!!!なんで和じゃなくあんな男と付き合わせたんですか!!!!!」

咲「付き合わせたんじゃなくて……咲自身が選んだんだよ」

和「咲さんが選んだ?????咲さんが選んだって!!!???お前がクソ男と付き合わせたくせにいいいいいいいい!!!!!」

ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!ガシャン!!!

和「お前が!!!!!お前が!!!!!お前が!!!!!私の咲さんをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

咲「ひっ!?」


ドガァアアン、ドカバキグヤガシャン!!!


和「ふー、ふー、ふー……」

25: 和の家・夜 2013/02/01(金) 13:10:48.80 ID:TExWRxmb0
和「……いい人だと思ったのに騙されました、貴女も、みんなと同じ、汚い嘘吐きだったんですね」

和「昨日までと同じとは思わないで下さい……言っておきますけど誰も来ませんよ、ここにいるのは誰も知りません」

和「連絡したってのは嘘ですから……万が一私に何かあれば…………」



和「貴女も死ぬんですからね」



ガチャン

ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………

26: 和の家・夜~翌朝の警察署 2013/02/01(金) 13:12:16.23 ID:TExWRxmb0
咲「和ちゃん、怖かったよ……」

咲「こ、この人、危ない人だ……車でどこかに行ったみたいだし、に、逃げないと……」

咲「うう、まずはベッドから……よいしょ、あ、足、大丈夫かな……怖いけど……」


ビタン!!!


咲「~~~~っ!!!!!、~~~~っ!!!!!」

咲(い、痛い……けど、何とかベッドから出れたし……あとは這ってドアまで……)

咲「ふぅ~っ、ふぅ~っ、ふぅ~っ、ふぅ~っ」

咲「ふぅ~っ、よし、ついた…………あ、鍵……かかってる……」

咲「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


翌朝


京太郎「はい、はい、何か分かったらすぐそちらに連絡します」

優希「どうやらクレジットカードも使われてないみたいなじぇ」

京太郎「目撃情報もないし、これはちょっとやばいかもな……」

27: 和の家 2013/02/01(金) 13:14:29.20 ID:TExWRxmb0
和「咲さん、床で寝たかったんですか?……すぐベッドに戻してあげますね」

和「痛いでしょうけど、ちょっと我慢してくださいね……っと」

和「さて、ベッドに戻った所で貴女にやってもらいたい事があります」

咲「や、やってもらいたいこと……?」

和「はい……私の頭って、時々混乱するんです、裁判のときもそうでした」

和「でも大丈夫、神が言われたんです……彼女に正しい道を示しなさいって」

咲「……正しい道って?」

和「これです」

咲「……バーベキューセットに、咲の-Saki-の原稿?」

和「はい……それでは咲さん、この穢れたものを燃やしてください」

和「マッチをどうぞ、燃えやすいようにライターオイルかけておきますね」

28: 和の家 2013/02/01(金) 13:16:53.20 ID:TExWRxmb0
咲(え?え?自分の作品を、自分の手で燃やせって、言ってるの?)

和「つらいでしょうけど、それしかないんです」

咲「別に、辛くはないよ……コピーは別に保管してるし……」

和「原稿のコピーはありません、咲さんは××歳のとき、締め切りギリギリで書いた咲-Saki-がヒットしました」

和「もちろんコピーをとる暇もなったのですが……それ以来咲さんは、縁起を担いでコピーをとらなくなった」

和「××年前TVで聞きましたよ……はい、マッチです」

咲「…………じゃあこうしよう、絶対これは世に出さないから」

和「神様がそう望んでいるんですよ?賢い咲さんならわかるでしょう?人は助け合って生きねばなりません」


パシャー、パシャー、パシャー


咲(ラ、ライターオイルがベッドにかかってる……これって……)

和「私、咲さんを助けたいんです……お願いです、咲さんを助けさせて下さい」

咲(ど、どうしよう、和ちゃんが、怒ってベッドに火をつけたら……)

29: 和の家 2013/02/01(金) 13:19:59.18 ID:TExWRxmb0
ジュボ、ジジジジジジジ


和「それでいいんです、さあ火を」

咲「…………」


ポイッ、ボワアアアアアアアアアアアアア

バルバルバルバルバルバルバルバル


和「ふふふっ、燃えてますこれで……あれ?」

咲(ヘリコプター?もしかして私を探してるのかな……でも家の中じゃダメだよね……)

和「……はい咲さん、ノドリルです……じゃあ私は後片付けしてくるので」

咲「……」


ガチャ、バタン


咲「……」

咲(あんな奴の出す薬なんて、飲んでやるもんか……絶対、逃げ出してやる)

31: 和の家・翌日 2013/02/01(金) 13:22:44.00 ID:TExWRxmb0
キコキコキコキコキコキコキコキコ


和「咲さん、車椅子の乗り心地はいかがですか?」

咲「大分いいよ……原稿を焼いた甲斐があったよ」

和「もう、意地悪なんですから……あとは、はい」

咲「テーブル……?」

和「どうですか?咲さんの新しい書斎です」

咲「え?……ここで、漫画を描くの?」

和「はい、焼いたあんな漫画ではなく、素晴らしい作品を……ここで新しく傑作を描くんです」

和「そう……宮永咲と原村和の恋人生活を描いた、真の最終回を!!!」

咲「し、真の最終回!?」

和「はい、咲さんをあんなクソ男とくっつけるつもりなんか本当はなかったんですよね?」

和「私に咲と和の甘い時間を捧げてください……咲さんの命を救った、この私に……」

和「ああ、咲さん……みんなが私を羨むことでしょう……ふふふっ、傑作を期待していますよ」

32: 和の家・翌日 2013/02/01(金) 13:24:46.16 ID:TExWRxmb0
咲(そ、そんなに簡単に描けるわけないよ……)

咲「私、まだ、両足が治ってなくて肩だって脱臼したんでしょ?とても描ける状況じゃないよ……」

和「咲さんには天性の才能があるので絶対描けますよ……あ、すぐ戻るので待っててくださいね」


タッタッタッタッ……


咲(……あ、ヘアピンが落ちてる!!!でも遠くて拾えない……どうにかして時間を作らないと……!!!)

和「はい、これ紙にインク、ペン、トーン……ふふふっ、咲さんのために買ってきたんですよ」

咲(どうにかして……)

咲「ありがとう、和ちゃん…………でも、この紙はダメだよ、すぐ滲んじゃうんだ」

和「え?」

咲「出来るなら……町でロンロクセンヨンヒャク・イーピンを買ってきてほしいな」

和「どうして滲むんですか?……一番高価な紙なんですよ?」

咲「見ててね……ほら」


シュッシュ、カキカキカキ………コスコス

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/01(金) 13:26:53.35 ID:TExWRxmb0
和「本当、線が滲んでますね……驚きです」

咲「でしょ?私、和ちゃんにも参加してほしいんだ……それこそ、書き上げる過程からね」

和「……心遣い、感謝します」

和「それで、他に何が必要ですか?漫画家先生に必要なものは?ペンが足りない?観葉植物でも買ってきましょうか?」

咲「いや、その……紙だけでいいよ」

和「何でしたら店を買い占めてきましょうか?」

咲「の、和ちゃん、落ち着いて……」

和「落ち着いて?これほど尽くしているのに?」

和「ご飯を作って、食べさせて、身体を拭き、着替えさせて、」

和「挙句の果てには『こんな紙じゃあ仕事が出来ない』ですって?」

和「もう少し感謝の気持ちを持ったらどうなんですか咲さん!!!!!」

咲「ひっ!!!!!」

34: 和の家・翌日 2013/02/01(金) 13:29:10.05 ID:TExWRxmb0
ガチャン

ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


咲「こ、怖かった……でも、これで時間を稼げたよね」

咲(よし、じゃあヘアピンを……取れた!!!次は、ドアの前に行って……)

咲(ヘアピンを鍵穴に……お願い、開いて……)


ガチャガチャ、ガチャガチャ


咲「漫画なら開くもん……お願い……!!!」


ガチャガチャ、カチャリ


咲(あ、開いた!!!本当に開いた!!!逃げよう、逃げよう!!!車椅子なら何とか……)

咲(玄関は……ダメだ、鍵穴が小さすぎる……どこかに裏口は……あ!!!)

咲(リビングに電話がある!!!これで外に……って、え?これ……

咲「電話線が、切ってある……何なの……おかしいよ……」

咲(裏口を探そう…………うわっ)

35: 和の家 2013/02/01(金) 13:31:28.62 ID:TExWRxmb0
カシャン、パシッ


咲「あ、危なかった……」

咲(ペンギンの置物、落とすところだったよ……元の場所に戻してっと)

咲(陶器製っぽいから落とさなくて良かった……)

咲(ていうか、この部屋何……)

咲(咲-Saki-グッズが沢山……それに、私の写真が沢山置いてある……)

咲「ほ、他の部屋を見よう…………」


ガチャ


咲「この部屋は洗面室?いや、台所かな………あ、ノドリルがある」

咲(鎮痛剤……うん、これを使えばもしかして……)

咲「少し隠し持っておこう、うん…………もうちょっと奥も見よう…………あ!!!」

咲(あそこ、もしかして出口!?鍵が開いてれば…………)

37: 和の家 2013/02/01(金) 13:33:44.28 ID:TExWRxmb0
ガチャガチャ

ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


咲(やっぱり開いてない、か………ん?この音って)

咲(!!!和ちゃんが帰ってきたんだ、い、急いで戻らなくちゃ!!!)


・・・・・・・・・


和「ただいま戻りました咲さん……何かありましたか?息が上がってるようですが……」

咲「あ、あはは……ちょっと、久しぶりにベッドから離れて疲れたみたい……」

咲(な、何とか間に合った……ば、ばれてないよね……?)

和「……それではしばらくベッドで休みましょう」

咲「う、うん…………」

和「私、運転している間考えていたんです……私の癇癪について」

和「だから私は、人に好かれないと思うんです……きっと咲さんもそう思ってますよね」

咲「気にしてないよ、だ、誰にでもあることだと思うし……」

38: 和の家 2013/02/01(金) 13:35:57.88 ID:TExWRxmb0
和「そう言って貰えると気が楽です……そうだ、メモ帳も買ってきたんです」

和「これでベッドにいる間も構想を書き留められますよ、咲さん」

咲「きっと、何も思い浮かばないよ……」

和「咲さんなら大丈夫です……是非、私から着想を得てくださいね」

咲(和ちゃんから着想を?ど、どういうこと?)

和「期待してますよ……ダーリン♪ん……ちゅ♪」


ガチャン


咲(……だ、だーりん?それに、投げキッス?)

咲(和ちゃん、本当に同性愛者なんだ……た、助けてお姉ちゃん……)

41: 捜索中のヘリ~取材対応 2013/02/01(金) 13:38:44.49 ID:TExWRxmb0
バルバルバルバルバルバルバルバル


京太郎「ヘリでの今日で二日目だ、いい加減見つかってくれよ……」

優希「!!!京太郎、あそこ……ムスタングがひっくり返ってるじぇ!!!」

京太郎「今まで雪に埋もれてたのか……」


・・・・・・・・・


警察ワカメ「えー、『小林立』はおそらく死亡しとる……自力で車から出たようじゃが、まだ遺体は見つかっとらん」

警察ワカメ「誰かが発見しとるなら病院に運ぶかずだからのう……つまり、偉大な漫画家はこの雪の下に眠って……」


・・・・・・・・・


優希「何してるんだじぇ京太郎」

京太郎「見てみろ優希、車のドアの所……外からこじ開けた跡がある」

優希「つまり……誰かが助けて、どこかでまだ生きてると?」

京太郎「ああ、まぁ考えすぎかもしれないけどな」

42: 和の家 2013/02/01(金) 13:39:47.36 ID:TExWRxmb0
咲(ノドリルを貯めて……あ、一応味も確かめなくちゃ)

咲(うん大丈夫、味はしない…………さて、と……一段落したし、原稿書きますか)

咲(気が進まないけど、ね)


シュッシュ、カキカキカキ………


咲(和咲は描きやすいなぁ、もう3週分の原稿描き終ったよ……)

咲(京太郎に振られた咲を和が慰めて……安易な展開だけどまぁいいよね)

和「失礼します咲さん……悪いですがこの内容ではいけません、全部描き直してください」

咲「え?結構いいと思うんだけど……」

和「咲さんと和が指ちゅぱするシーンだけは残してくださいね」

咲「えっと、も、もう少し出来てからでも……」

和「ダメです、咲さんの処女性が失われているじゃあありませんか」

咲「処女性?」

43: 和の家 2013/02/01(金) 13:43:52.31 ID:TExWRxmb0
和「ええ…………私が子供の頃の一番の楽しみは、日曜の朝に見るアニメでした」

咲「プ○キュア?」

和「ギャラクシ○エンジェルです!!!どこかの主将と一緒にしないで下さい!!!」

和「私が見始めたのはZからなんですが……GAはオムニバス形式のアニメなんですよ、エンジェル隊に属する5人の女の子がロストテクノロジーというトンでもアイテムを回収するという内容で……」

和「それで、出てくるレギュラーの男キャラは死に損ないのウェルコットと悪役の3人だけ、まあbimboな蘭花がいたため男のゲストキャラは多かったんですけどね……」

和「ただZはすぐ終わってしまって……ぴたテンもよかったのですが、主人公が男で……でも半年後にA・AAとして3期が始まったんです!!!そしたら……」

和「そしたら、エンジェル隊は解散していて、まあよくあることだったのでそこは気にしていなかったんですけど」

和「…………変なガキ二人がライバルとして追加されて、しかも2話の後半は丸々そいつらの話だったんです!!!ココモとマリブ?ココとアルモと若干名前とキャラ被ってる癖に何出しゃばってるんですか?そんなの不快極まりません誰も望んでません!!!」

和「なのに後半は出番は殆ど無し4期のXでも出番は殆ど無しじゃあ何で出したんです?だったら最初から出さなければよかったのに!!!よくも!!!男なんか!!!あんなクソガキを追加して!!!ギャラクシ○エンジェルの処女性を!!!台無しじゃないですか!!!」

和「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ」

咲「……ゲーム版は、男女ものの恋愛ゲームだけど……」

和「でも、咲は-Saki-はそうじゃいけません……咲には京太郎への恋愛感情はあってはいけません」

和「咲が和に告白する……そういうシーンをちゃんと描いてくださいね」

咲「は、はい……」

44: 和の家 2013/02/01(金) 13:46:10.07 ID:TExWRxmb0
しばらくして


和「……ふむふむ……ふむふむ」

咲「どうかな?気に入ってくれた?」

和「もちろんです!!!咲さんが京太郎に告白したのは、隙をついて刺し殺す為だったんですね!!!」

和「私は最初から咲さんが同性愛者だって信じてました……!!!咲さん、1ページ描き終わるごとに読ませてください!!」

咲「う、うん」

和「それで、咲さんの告白に和はどうやって応えるんですか?///」

咲「秘密♪」

和「穏乃と照との関係はどうなるんですか?///」

咲「それも秘密♪」

和「ひ、ヒントだけでも……///」

咲「……秘密♪」

和「きゃ~~~~~~//////続きが物凄く気になります//////咲さんが、咲さんが同性愛者に治った!!!//////」

46: 和の家~警察署 2013/02/01(金) 13:48:54.07 ID:TExWRxmb0
咲(……うん、ここで)

咲「ねぇ、和ちゃん……今日は一緒にディナーしない?宮永咲の同性愛記念として」

和「え……//////」

咲「私、間違ってた……全部和ちゃんのお陰だよ」

和「ああ、咲さん……こ、光栄です///」


・・・・・・・・・


京太郎「ふう、帰ってきたぞ優希」

優希「見回りお疲れ様だじぇ……なんだその袋?タコスか!?」

京太郎「違うよ……ほら咲-Saki-だ、小林立が見つからないから、せめて本だけでも、ってね」

優希「ふ~ん……あ、この2巻の表紙の顔、どこかで見たことが……」

京太郎「そういえば……まぁ、何かわかるかも知れないし読んでみるよ」

47: 和の家・ディナー 2013/02/01(金) 13:50:10.26 ID:TExWRxmb0
和「お、お待たせしました咲さん///どうですか、この服?///」

咲「うん、綺麗だよ……和ちゃんも、ね」

和「ふふふっ、嬉しいです咲さん///じゃあ、食べましょう?///」

咲「その前に、乾杯しない?……はい、私が注ぐね」

和「あ、ありがとうございます///それでは……乾杯♪」

咲「ちょっと待って、キャンドルはあるかな?私キャンドルが好きで……」

和「知ってますよ///少し待っててください、持ってきますね」


タッタッタッタッ……


咲(よし、この隙に……ノドリルを和ちゃんのワインに盛らなくちゃ!!!)

咲(これだけ入れれば、きっと効果あるよね……よし、できた!!!)

48: 和の家・ディナー 2013/02/01(金) 13:51:31.66 ID:TExWRxmb0
タッタッタッタッ……


和「はい咲さん、キャンドル持ってきました……ふふふ、あの『小林立』と、キャンドルディナーできるなんて、夢見たいです」

和「はい、できました……いい香りでしょう?それでは――」

咲「うん、宮永咲と……その命の恩人、原村和に――乾杯!!」

和「乾杯!!!」

咲「あ、和ちゃん、キャンドル倒しちゃ……」


コトン、カシャン


和「きゃ、あ、す、すみません咲さん……折角のディナーなのに、慌ててワインまで溢してしまうなんて……」

咲(せ、折角、ノドリンを盛るのには成功したのに……あははは)

和「咲さん、ごめんなさい……もしかして機嫌を損ねてしまったんじゃ……」

咲「…………あ、ううんそんな事ないよ、気にしないで和ちゃん……あはは」

咲(はぁ……失敗、かぁ……みじめだ)

49: 雨の日の和の家 2013/02/01(金) 13:53:50.22 ID:TExWRxmb0
ザーーーーーーザーーーーーーザーーーーーーザーーーーーー


咲(恋人生活だけで結構描けるものなんだなぁ……でももうそろそろ卒業させないと……)

和「失礼します…………薬です…………では」

咲(……あれ、和ちゃん元気がないのかな)

咲「どうかしたの、和ちゃん?体調悪い?」

和「…………雨って気が滅入るんです」

和「咲さんが来たときは……漫画家の部分だけに惹かれていました」

和「でも今は、咲さんの全てを愛しているんです」

咲「…………」

和「咲さんは、私の事なんか…………分かってるんです、貴女は洗練された、才能豊かな有名人」

和「私は、綺麗でも何でもない…………咲さんには、愛する人を失う気持ちなんて、分からないですよね」

咲「……失うって、なんでそう思うの?」

51: 雨の日の和の家 2013/02/01(金) 13:55:16.04 ID:TExWRxmb0
和「咲-Saki-は、じきに完結しますし、咲さんの足も良くなってきてます」

和「咲さんは、ここを出て行く」

咲「で、出てなんか行かないよ!!私、ここが気に入って……」

和「そう言っていただけるのは嬉しいですが……それは、本心ではありません」

和「それならいっそ、この銃で……」

咲(じゅ、銃?何で銃なんか持ってるの!?)

和「…………すみません、少し出かけてきます」


ガチャン

ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


咲「ど、どうしよう、銃だなんて……ぶ、武器を探さなくちゃ……あ、そうだ台所!!!」

52: 京太郎自宅 2013/02/01(金) 13:56:06.94 ID:TExWRxmb0
京太郎「ふむふむ……なかなかのおもちで……」

優希「むむむ、私じゃ不満なのか!!!」

京太郎「不満と言うか、流石にレベルが違うというか……」

優希「何をー!!!なら明日にはナイスバディーになって見せるじぇ!!!」

京太郎「ははは、そんなオカルトありえないって」

優希「……喧嘩なら買ってやるじぇ!!!覚悟!!!」

京太郎「いやいやいや、咲-Saki-でちょうどそういう台詞があってさ……怒ったなら謝るよ」

優希「あ、謝るくらいなら、お詫びとして明日、デートに……///」

京太郎「はいはい、わかったわかった」

54: 和の家・リビング 2013/02/01(金) 13:56:46.26 ID:TExWRxmb0
咲(2回目だから今回は結構スムーズに……一本くらいばれないよね)

咲(何か他には……あれ?アルバムが開きっぱなしだ)


パラッ


"小林立、生存は絶望的"

咲「……もしかして、私の新聞記事でも集めてるのかな」


パラッ


咲(……和ちゃんの子供の頃の写真もあるし、違うみたい)


パラッ


"原村弁護士、転落死"

咲(は、原村……?)

55: 和の家・リビング 2013/02/01(金) 13:58:03.61 ID:TExWRxmb0
咲(このスクラップ帳……もしかして)


パラッ


"看護学校の優等生、転落死"


パラッ


"原村和、首席で卒業"


パラッ


"救急病棟の看護婦長に昇進"


パラッ


"小児科部長が急死"

"産科病棟に新看護婦長"

56: 和の家・リビング 2013/02/01(金) 13:59:09.25 ID:TExWRxmb0
パラッ


"生後5週間の乳児、病院で死亡"


パラッ


"病院で2人目の乳児死亡"


パラッ


"看護婦、事情聴取を受ける"


パラッ


"乳児の死因は看護婦に"


パラッ


"疑惑の原村和看護婦、ついに逮捕される"

"曰く「そんなオカルトありえません」"

57: 和の家・リビング 2013/02/01(金) 14:01:22.59 ID:TExWRxmb0
咲(和ちゃん、裁判とかいってたけど、離婚調停とかじゃなかったんだ……)

咲(……)

咲(これって、殺人……だよね)

咲(……)

咲(部屋に、戻ろう…………和ちゃんが帰ってくる前に)

咲(包丁……すぐ出せるようにしておこう)

58: 和の家・翌日の朝 2013/02/01(金) 14:03:16.03 ID:TExWRxmb0
チュンチュン、チュンチュン


和「咲さん、起きて下さい咲さん」

咲「むにゅむにゅ……ど、どうしたの……和ちゃん……?」

和「咲さん、部屋から出ましたね?ペンギンの置物はいつも南向きなんですよ?」

咲「え、な、何の話……?って、な、何で私、ベッドに、縛られ、て……」

咲(ほ、包丁!!!ベッドの下に隠しておいて……あれ?)

和「この包丁探しているんですか?ふふふっ、咲さんは2回も部屋から出たんですね」

和「どうやったか不思議でしたが……ヘアピンを使ったんですね、もちろん回収しました……それにアルバムもみましたね?」

和「私の事、どう思ってるかは分かります……でも大丈夫です」

和「時間をかければ必ず分かってもらえるはずですから」

和「ここから逃げられないことを」

咲「…………」

59: ベッドの上 2013/02/01(金) 14:05:08.12 ID:TExWRxmb0
和「所で咲さん、南アフリカのダイヤモンド鉱山の話は知っていますか?

和「ダイヤを盗むとどうなったか」

和「殺しはしなかったんです」

和「代わりに、まだ働けるけれど、逃げ出せない状態にしました」

和「『足潰しの刑』です」


ズルッ……ズルッ……


咲「の、和ちゃん……その、ハンマー……一体何を考えて……い、いや……」

和「私を信じて下さい、咲さん」

咲「お願いだから……いや、いや、やめて……」

和「仕方がないんです……ふっ」

60: ベッドの上 2013/02/01(金) 14:06:49.12 ID:TExWRxmb0
ブンッ

――ボキッ


咲「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」

和「我慢してくださいね、もう一本ありますから……ふっ」


ブンッ

――ボキッ


咲「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」

和「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」





「――――愛しています、咲さん」

62: 警察署前~資料室 2013/02/01(金) 14:08:55.62 ID:TExWRxmb0
京太郎「結局進展は無しか……ん?あの車危なっかしいな、ちょっと様子を見るか」

和「どこ見て走ってるんですかこのワカメ!!!」

車ワカメ「乱暴な運転しとるのはどっちじゃ全く!!!」

京太郎(ああ、原村さんか……そうだ!!!咲-Saki-の2巻の表紙、誰かに似てると思ったら彼女か!!!)

京太郎(そういえば、確か彼女は逮捕歴があったっけ……ちょっと調べて見るか)

・・・・・・・・・

京太郎(あったあった、えっと……これか、可愛い顔してなかなかエグい事件だよなぁ)


"乳児の死因は看護婦に"


パラッ


"疑惑の原村和看護婦、ついに逮捕される"

"曰く「そんなオカルトありえません」"


京太郎「……?この台詞、たしか……さっき彼女が行ったのは本屋だよな……」

63: 本屋 2013/02/01(金) 14:10:04.12 ID:TExWRxmb0
店主ワカメ「いらっしゃい、今日はどの新聞じゃ?」

京太郎「いや、今日はちょっと聞きたいことが……咲-saki-の最新刊は入荷しましたよね?」

店主ワカメ「もちろんじゃ、あいにくもう売り切れじゃが……」

京太郎「原村和も買いました?」

店主ワカメ「そりゃもういっつも予約して、この店で一番に買っとるよ」

京太郎「最近、変わったものを買ってました?」

店主ワカメ「特には……ただ、インクやらトーンやら紙やらを買って、すぐに今度は違う紙を買ってきたことがあったのう」

京太郎「……なるほど、どってことないですね……ありがとうございました」

店主ワカメ「ほいほい、じゃあまたの」

京太郎(分かった…………家まで行ってみるか)

64: 和の家 2013/02/01(金) 14:11:08.87 ID:TExWRxmb0
ブロ、ブロロロロロ……ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………


咲(……ん?車がこの家に向かってきてる!!!助けを……)

和「…………」


プスッ


咲「ちゅ、注射……?わ、和ちゃん……な、にを、あ、ね、むく……」

和「すみません咲さん、少し物置に隠れていてくださいね」


ピンポーン、ガチャ


和「まあ保安官さん、今日は一体どうされたんですか?」

京太郎「どうも原村さん、今日はちょっとお聞きことがありまして……『小林立』をご存知で?」

和「ええ、もちろん!!!東京都目黒区駒場出身で……」

京太郎「いえ、そういったことではなく……彼女が行方不明なの知ってますよね?」

和「はい、私、ずっと心配で……あらすみません、外は寒いですよね……中に入りますか?」

京太郎「ありがとうございます、少し拝見させていただきます」

65: 和の家 2013/02/01(金) 14:12:51.17 ID:TExWRxmb0
和「確か車の事故でしたよね?話を聞いて、私も死ぬほどショックで……神に祈るほどにです」

京太郎(すごい咲-Saki-グッズの量だ……)

和「こんな事を話すと笑われるかもしれませんが……祈っていたら、神の声が聞こえたんです」

京太郎(額縁付きの小林立の写真まで……)

和「『後を継げ』と、彼女は人々に喜びを与えた……最近の世の中喜びが欠けていませんか?」

京太郎「……そうかもしれないですね」

和「『お前は彼女のナンバーワンのファンだ』『彼女の後を継いで百合漫画を描け』と」

京太郎(台所は……特に何もないか)

和「それで本屋で漫画を描く為の道具一式を買って客間を書斎に変えたんです、ご覧になりますか?」

京太郎「いいんですか?ではぜひ」

和「彼女の絵柄や物語の進め方は把握しています、彼女が行方不明になってからずっと、彼女に似せて描こうと……」

京太郎(ここも怪しい所はないか……)

和「でも難しいですね、彼女と同じように描いても、何かが違うんです」

66: 和の家の外~和の家の中 2013/02/01(金) 14:14:13.77 ID:TExWRxmb0
京太郎「すぐには無理ですよ」

和「そうかも知れません……原稿読みますか?出来れば意見も……」

京太郎「俺なんかじゃあ、意見なんてとてもじゃないけど出来ませんよ」

和「それもそうですね……あ、すみません飲み物も出さないで……ココアで構いませんか?」

京太郎「いえお構いなく……お邪魔しました、もうそろそろ帰らないと……」

和「そうですか、またいつでもどうぞ」


バタン


京太郎(大体の部屋は見たけど異常はなかったな、あとは家の周りを……)

・・・・・・・・・


咲(……ん、あれ、ここ、どこ……あ、痛っ、何かぶつかっちゃった……)


カラン、ガシャンガシャン


京太郎「!!!原村さん?大丈夫ですか!!??」

67: 和の家・物置 2013/02/01(金) 14:16:12.81 ID:TExWRxmb0
ガチャ、バタン


咲(!!!誰か人がいる!!!)

咲「ここです!!!ここです!!!ここにいます助けて!!!」

京太郎(物置にいたのか!!!)


バタン!!!


京太郎「小林立さんですか!!??」

咲「……!!!はい、そうです!!!早く助け……」


――――パァン!!!!!


京太郎「――え、あ……じゅ、銃?な、なんで……こ、こん、な……」


ガクッ、ドサッ

68: 和の家・物置 2013/02/01(金) 14:18:48.43 ID:TExWRxmb0
和「これだから、男は…………ねぇ、咲さん」

和「これは運命なんです」

和「私が選ばれて、貴女を助けた」

和「永遠に結ばれる運命なんです」

和「この世に別れを告げることによって」

和「心配しないで下さい、準備は整っていますから」

和「銃弾を、貴女と私で、一発ずつ」

和「美しい死を迎えられます……今、麻酔を持ってきますね」


コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


咲(どうしようどうしよう、何か何か考えなくちゃ……)

咲(……ライターオイルが落ちてる、さっき倒したのはバーベキューセットだったんだ)

咲(そうだ、これを使えば……うん、それしかない……背中に隠してっと)

69: 和の家・物置 2013/02/01(金) 14:21:31.25 ID:TExWRxmb0
和「お待たせしました……」

和「咲さん、愛しています」

咲「……私も愛してるよ、和ちゃん

咲「……和ちゃんの言うとおり結ばれる運命なんだよ……二人で死のう?」

和「はい……!!!はい……!!!」

咲「でも、その前に――――咲-Saki-を描きあげなくちゃ」

咲「私達と同じように、咲と和も、永遠に、結ばれる運命だから」

和「…………」

和「でも」

和「でも、咲さん、急がないと、また、誰かが、邪魔しに、来ます」

咲「もう少しで完成するんだ……夜明けとともに、」

咲「咲と和は永遠に結ばれる……私達と共に、ね?」

和「…………」

和「…………食事、作りますね」

70: 和の家 2013/02/01(金) 14:23:45.52 ID:TExWRxmb0
シュッシュ、カキカキカキ………

シュッシュ、カキカキカキ………

シュッシュ、カキカキカキ………

ガチャ


和「ああ、咲さん、教えてください」

和「和は淡の魔の手から咲を守ることが出来るんですか?」

咲「すぐ分かるよ、もうすぐ最終話だから……もうじき、完成するから、だから」

咲「儀式の準備を頼むよ……3つものを、知ってるでしょ?」

和「…………」

和「……はい!!!いつもはダイエットしてるけど、原稿を書き上げたときだけはプリンを食べる、それとマッチと百合の香りのキャンドル」

和「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっ」

73: 和の家 2013/02/01(金) 14:25:38.13 ID:TExWRxmb0
シュッシュ、カキカキカキ………

シュッシュ、カキカキカキ………

シュッシュ、カキカキカキ………


咲「……うん、よし」

咲「和ちゃん、和ちゃん!!!」

和「はいっ、何の御用ですか咲さん」

咲「今……」

咲「今、描き終えるよ…………」

和「ああ……咲さん、咲は、和と照の、どちらを受け入れるんですか?なんて言葉で、どんな風に!!!」

咲「もうじき分かるよ……さぁ和ちゃん、プリンとキャンドルを」

和「はい……!!!はい……!!!」

咲(…………)

74: 和の家 2013/02/01(金) 14:27:37.94 ID:TExWRxmb0
和「はい咲さん……これでいいですか?」

咲「うん、完璧だよ…………ただ」

和「……ただ?」

咲「今日はプリンが二ついるんだ」

和「…………」

和「まぁ……、咲さん……///」


コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


咲(うん、この隙に……ライターオイル……)


ドサッ

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ

クシャクシャクシャ

75: 和の家 2013/02/01(金) 14:29:08.26 ID:TExWRxmb0
コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


和「……咲さん、何を、してるんですか?オイルの、臭いが……」

和「それに、何で、原稿を、床に置いて……何で、マッチなんか、持って……」

咲「咲が誰の告白を受け入れるのか……咲は小鍛治健夜にどうやって勝つのか……読みたい?」

咲「咲は和と結ばれるのか……読みたい?」

和「あ、あ、そ、そんな……や、やめて!!!」

咲「和ちゃんも同じ事をしたでしょう?」


バチィ

ジュボ、ジジジジジジジ

ボワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


和「あああああああ!!!!!やめてえええええ!!!!!私の咲さんがあああああああああ!!!!!」

和「咲さんがああああ!!!!!咲さんがああああ!!!!!咲さんがああああ!!!!!咲さんがああああ!!!!!」

76: 和の家 2013/02/01(金) 14:31:05.26 ID:TExWRxmb0
グサッ、ブシュ


和「きゃあああああああ!!!!!目が、目が、目がああああああ!!!!!い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」

和「あああああああああ!!!!!コおおおロおしてやるうううううううこのおおおおクソやろおおおおおおおおおお!!!!!」

咲「うおおおおおおお、うああああああああ!!!!!」

ガコン、ドサッ、ゴロン

和「よくもおおおおおおおおおお!!!!!しねえええええええええ!!!!!」

咲「あげぇ、うぐぁ、ひぎゅ、ぐごぉ、あ、あ、ああああああああああ、うぉおおおおおおおお!!!!!」


グサッ、ブシュ


和「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぎゃああああああ!!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

咲「どうだっ!!!どうだっ!!!どうだっ!!!このおっ!!!このおっ!!!このおっ!!!」


ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ

79: 和の家 2013/02/01(金) 14:34:10.50 ID:TExWRxmb0
和「あ、あ、がっぎゃ、あ、あびぎぃ、が、あ、ぐぇ、あ、が、ああ、あひゅ、あ、はぐぇ、あ、ぁ」


ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ


咲「どうだっ!!!どうだっ!!!このおっ!!!このおっ!!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」


ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ


和「……………………………………………………」

咲「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………ふぅ」

咲「ふぅ……………あ、あはは、は…………」

80: 一年半後 2013/02/01(金) 14:38:02.49 ID:TExWRxmb0
久「刷り上ったわよ、『FATALIZER-2ND』……新聞各社からも大絶賛らしいわよ?」

咲「へぇ、そうなんですか」

久「聞く所によると、ノーベノレ文学賞も視野に入ってるらしいって……とんでもない話ね」

咲「…………」

久「ありゃりゃ」

久「なーんか嬉しくなさそうじゃない、咲?」

咲「読者や評論家にうけるのも良いけど……これは、好きなもの好きなままを描いたからで」

咲「こういう風に描けたのも、今思うと……和ちゃんとの、あの経験の…………お陰かもねって思っちゃうんです」

久「……その話が出たから思い切って言うけど……あの体験を本にして出版したらどう?」

咲「ははは……お金の為にあの体験を再現しろって言うんですか?」

咲「それは無理ですね」


チラッ

81: 一年半後 2013/02/01(金) 14:40:46.18 ID:TExWRxmb0
――コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


「後遺症でもあるの?」

「うん、一生かかっても忘れられないよ」


――コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


確かに、和ちゃんは死んだけど――


――コツッ、コツッ、コツッ、コツッ


「記憶に、こびりついてるんだ」



「あの、もしかして宮永咲さんですか?マホ、あなたのナンバーワンのファンなんです!!!」




THE END

84: 打ち上げ 2013/02/01(金) 14:45:36.68 ID:TExWRxmb0
久「それでは――――乾杯!!!」

全員「かんぱーーーーーい!!!!!」


ワイワイワイワイガヤガヤガヤガヤ


久「いやぁ、文化祭の出し物レベルとはいえ、少人数でも映画って出来るものなのねぇ」

まこ「何言っとるんじゃ、わしが一体何役したと……」

和「パロディなので人員は最小限でも何とかなっただけではないでしょうか」

咲「龍門渕さんにも機材とか色々援助してもらったしね……そういえば京ちゃんは?」

優希「京太郎なら一人で後片付けしてるじぇ、タコスうまー♪」

マホ「マホもお手伝いできてよかったです、しかもラストで大活躍です!!!」

裕子(マホはお手伝いしないのがお手伝い、だなんて言えないもんなぁ……)

91: 打ち上げ 2013/02/01(金) 15:24:47.04 ID:TExWRxmb0
久「ま、まぁとにかく、映画自体は完成したことだし……無礼講よ!!!!!……っと」

久「ごめーん、ちょっとみんなは先に始めててね……ちょっと電話が来ちゃって」

全員「はーい!!!!」

久「っと、もしもし?誰かしら?登録してない番号みたいだけど……」

???「ふふふっ……うえのさん……あなたのナンバーワンのファンです……ふふふっ」

久「えっ……えっ……?」


ブツッ


久「お、思わず切ってしまった…………大丈夫よね?」

うえのさん……うえのさん……ふふふっ
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん
うえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさんうえのさん


カン!!!
 

引用元: 咲「ミザリー?」