1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 20:48:20.35 ID:d/aViO4X0
工場長「今日のデストロイ数は何体だね?」
兄「十体です、工場長」
工場長「それは基準が厳しいのではないかね?」
兄「お言葉ですが工場長、我が工場は高品質妹の提供が第一のはずです」
工場長「うむ。他の工場の追随を許さない高品質妹こそ我が工場の売りである」
兄「はい。だからこそ不良妹は弾かねばならないのです」
工場長「君の愛社精神には感服した! 明日からもその調子で頑張ってくれたまえ!」
兄「もちろんです、工場長」
兄「十体です、工場長」
工場長「それは基準が厳しいのではないかね?」
兄「お言葉ですが工場長、我が工場は高品質妹の提供が第一のはずです」
工場長「うむ。他の工場の追随を許さない高品質妹こそ我が工場の売りである」
兄「はい。だからこそ不良妹は弾かねばならないのです」
工場長「君の愛社精神には感服した! 明日からもその調子で頑張ってくれたまえ!」
兄「もちろんです、工場長」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 20:51:38.29 ID:d/aViO4X0
後輩「おはようございます、先輩」
兄「おはよう。検査待ちは何体だ?」
後輩「百体ほどです」
兄「昼までに終わらせたいな」
後輩「昼はさすがに無理じゃないですか?」
兄「舐めるな。伊達に十年以上もこの仕事を続けてない。……早速始めるぞ」
後輩「了解です。では検査ラインスタートします」
兄「……不良妹が少なく済めばいいんだがな」
兄「おはよう。検査待ちは何体だ?」
後輩「百体ほどです」
兄「昼までに終わらせたいな」
後輩「昼はさすがに無理じゃないですか?」
兄「舐めるな。伊達に十年以上もこの仕事を続けてない。……早速始めるぞ」
後輩「了解です。では検査ラインスタートします」
兄「……不良妹が少なく済めばいいんだがな」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 20:55:20.15 ID:d/aViO4X0
後輩「タイプお兄ちゃん、デレデレです」
兄「……」
妹A「えへへっ、おはようお兄ちゃん!」
兄「減点1。笑い方が甘い。もっとお客様に媚びるように笑え」
妹A「ご、ごめんなさい、お兄ちゃん」
兄「質問だ。お前がトイレに入っている時、お客様が誤って入ってきた。どうする?」
妹A「もう、お兄ちゃんのエッチ!」
兄「デストロイ」 ポチッ
妹A「えっ、きゃぁああアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」 グチャグチャグチャグチャッ
後輩「い、今の対応に何か問題が?」
兄「羞恥心が足りない。不意に覗かれた妹としては余裕がありすぎる。量産型の妹によくある不良妹だ」
後輩「なるほど、参考になります」
兄「……」
妹A「えへへっ、おはようお兄ちゃん!」
兄「減点1。笑い方が甘い。もっとお客様に媚びるように笑え」
妹A「ご、ごめんなさい、お兄ちゃん」
兄「質問だ。お前がトイレに入っている時、お客様が誤って入ってきた。どうする?」
妹A「もう、お兄ちゃんのエッチ!」
兄「デストロイ」 ポチッ
妹A「えっ、きゃぁああアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」 グチャグチャグチャグチャッ
後輩「い、今の対応に何か問題が?」
兄「羞恥心が足りない。不意に覗かれた妹としては余裕がありすぎる。量産型の妹によくある不良妹だ」
後輩「なるほど、参考になります」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:00:55.39 ID:d/aViO4X0
兄「次だ」
後輩「次はタイプ兄さん、クールです」
妹B「よろしく、兄さん」
兄「ふむ……質問だ。お客様がお前に料理を頼んだ。どうする?」
妹B「料理がヘタだって知ってる癖に……」
兄「それでも作ってくれと言われたら?」
妹B「……そんなにボクの料理、食べたいの?」 ジロッ
兄「合格。出荷だ」
妹B「ありがとうございます」 トテトテッ
後輩「……お客様に口答えする妹が合格ですか?」
兄「クールはあのくらいが丁度いい。それに一昨日ボクっ娘の大口注文が入った所だ」
後輩「多少基準が甘くとも問題ないわけですね」
兄「納期もお客様の満足に関わるからな」
後輩「次はタイプ兄さん、クールです」
妹B「よろしく、兄さん」
兄「ふむ……質問だ。お客様がお前に料理を頼んだ。どうする?」
妹B「料理がヘタだって知ってる癖に……」
兄「それでも作ってくれと言われたら?」
妹B「……そんなにボクの料理、食べたいの?」 ジロッ
兄「合格。出荷だ」
妹B「ありがとうございます」 トテトテッ
後輩「……お客様に口答えする妹が合格ですか?」
兄「クールはあのくらいが丁度いい。それに一昨日ボクっ娘の大口注文が入った所だ」
後輩「多少基準が甘くとも問題ないわけですね」
兄「納期もお客様の満足に関わるからな」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:06:45.90 ID:d/aViO4X0
兄「次だ」
後輩「タイプお兄ちゃん、ツンデレです」
妹C「ふ、ふん、別に……」
兄「デストロイ」 ポチッ
妹C「な、なんで、いやアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!」 グチャグチャグチャグチャッ
後輩「は、早すぎませんか?」
兄「ツンデレは今需要が小さいから仕方ない。特に第一声があれでは売れん」
後輩「世知辛いですね……」
兄「もう妹を作れば売れる時代じゃないんだ」
後輩「……」
兄「俺達が不良妹を弾かなければ、工場の評判もガタ落ちだ。わかるな?」
後輩「はい」
兄「よし、じゃあ休憩だ」
後輩「タイプお兄ちゃん、ツンデレです」
妹C「ふ、ふん、別に……」
兄「デストロイ」 ポチッ
妹C「な、なんで、いやアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!」 グチャグチャグチャグチャッ
後輩「は、早すぎませんか?」
兄「ツンデレは今需要が小さいから仕方ない。特に第一声があれでは売れん」
後輩「世知辛いですね……」
兄「もう妹を作れば売れる時代じゃないんだ」
後輩「……」
兄「俺達が不良妹を弾かなければ、工場の評判もガタ落ちだ。わかるな?」
後輩「はい」
兄「よし、じゃあ休憩だ」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:10:05.57 ID:d/aViO4X0
試作妹「こんにちは、お兄ちゃん」
兄「ああ、こんにちは、調子はどうだ?」
試作妹「バッチリだよ」
兄「フォームチェンジ」
試作妹「……あら、お兄様? どうかしましたか?」
兄「仕様より切り替えが遅いな。メンテナンスを受けておけ」
試作妹「申し訳ありません」
後輩「仕事熱心ですね」
兄「ああ。他にやる事もないからな」
後輩「一緒にご飯でもどうですか?」
兄「昼飯は食べない主義でな」
後輩「残念です」
兄「ふん。……誘うなら出世しそうな他の人間にしておけ」
後輩「ふふっ、考えておきます」
兄「ああ、こんにちは、調子はどうだ?」
試作妹「バッチリだよ」
兄「フォームチェンジ」
試作妹「……あら、お兄様? どうかしましたか?」
兄「仕様より切り替えが遅いな。メンテナンスを受けておけ」
試作妹「申し訳ありません」
後輩「仕事熱心ですね」
兄「ああ。他にやる事もないからな」
後輩「一緒にご飯でもどうですか?」
兄「昼飯は食べない主義でな」
後輩「残念です」
兄「ふん。……誘うなら出世しそうな他の人間にしておけ」
後輩「ふふっ、考えておきます」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:15:24.02 ID:d/aViO4X0
後輩「次で最後の検査待ちです」
兄「タイプは?」
後輩「タイプにぃ、依存です」
兄「……依存か」
後輩「道楽趣味ですね」
妹C「……にぃ……」 ピトッ
後輩「先輩」
兄「大丈夫だ。……質問だ。お客様がお前はもういらないと言った。どうする?」
妹C「……やだ……にぃと離れたくない……」
兄「……お客様がお前を殴り、お前を捨てると言ったら?」
妹C「……自殺します」
兄「合格だ。行け」
妹C「さようなら、にぃ」
兄「タイプは?」
後輩「タイプにぃ、依存です」
兄「……依存か」
後輩「道楽趣味ですね」
妹C「……にぃ……」 ピトッ
後輩「先輩」
兄「大丈夫だ。……質問だ。お客様がお前はもういらないと言った。どうする?」
妹C「……やだ……にぃと離れたくない……」
兄「……お客様がお前を殴り、お前を捨てると言ったら?」
妹C「……自殺します」
兄「合格だ。行け」
妹C「さようなら、にぃ」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:21:42.14 ID:d/aViO4X0
後輩「……」
兄「物言いたげだな」
後輩「自殺が正しい選択なんですか?」
兄「正しいかどうかは別にして、それが依存の売りだ」
後輩「悪趣味です」
兄「倫理規定の範囲で、最大限お客様に楽しんでいただくためだ」
後輩「狂ってます」
兄「需要があるんだから仕方ないだろう」
後輩「需要需要って、先輩はそれしかないんですか?」
兄「お前、俺達の仕事を何だと思ってるんだ? 慈善活動じゃないんだぞ」
後輩「私、先輩はもっと誇りのある人だと思ってました」
兄「勘違いが早めに解けて良かったな」
後輩「……帰ります」
兄「俺は残業だ。気を付けて帰れよ」
後輩「……」 スタスタ
兄「物言いたげだな」
後輩「自殺が正しい選択なんですか?」
兄「正しいかどうかは別にして、それが依存の売りだ」
後輩「悪趣味です」
兄「倫理規定の範囲で、最大限お客様に楽しんでいただくためだ」
後輩「狂ってます」
兄「需要があるんだから仕方ないだろう」
後輩「需要需要って、先輩はそれしかないんですか?」
兄「お前、俺達の仕事を何だと思ってるんだ? 慈善活動じゃないんだぞ」
後輩「私、先輩はもっと誇りのある人だと思ってました」
兄「勘違いが早めに解けて良かったな」
後輩「……帰ります」
兄「俺は残業だ。気を付けて帰れよ」
後輩「……」 スタスタ
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:24:30.19 ID:d/aViO4X0
同僚「おい」
兄「……なんですか」
同僚「お前、あんまり偉そうな口聞いてるんじゃねえぞ」
兄「そんなつもりはないです」
同僚「ありませんがじゃねえだろうが、タコ」
兄「すいません」
同僚「うちに拾ってもらった恩を忘れて調子に乗ってんじゃねえぞ」
兄(工場長に拾ってもらっただけで、お前に拾ってもらったわけじゃないんだがな)
同僚「……工場長もなんでこんな奴を使ってるんだかな」 スタスタ
兄「……なんですか」
同僚「お前、あんまり偉そうな口聞いてるんじゃねえぞ」
兄「そんなつもりはないです」
同僚「ありませんがじゃねえだろうが、タコ」
兄「すいません」
同僚「うちに拾ってもらった恩を忘れて調子に乗ってんじゃねえぞ」
兄(工場長に拾ってもらっただけで、お前に拾ってもらったわけじゃないんだがな)
同僚「……工場長もなんでこんな奴を使ってるんだかな」 スタスタ
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:27:19.11 ID:d/aViO4X0
兄(誇りなんてない)
兄(俺は与えられた仕事をこなすだけだ)
兄(誰に蔑まれようと、誰に尊敬されようと、何も変わらない)
兄(俺は与えられた仕事をこなすだけ)
兄(ラインを流れる妹の性能をチェックするだけ)
兄(現状に俺は満足している)
兄(いや、満足かどうかすら関係ない)
兄(俺の存在意義は与えられた役割を全うすること。それだけだ)
兄(それ以外には、何もない)
兄(俺は与えられた仕事をこなすだけだ)
兄(誰に蔑まれようと、誰に尊敬されようと、何も変わらない)
兄(俺は与えられた仕事をこなすだけ)
兄(ラインを流れる妹の性能をチェックするだけ)
兄(現状に俺は満足している)
兄(いや、満足かどうかすら関係ない)
兄(俺の存在意義は与えられた役割を全うすること。それだけだ)
兄(それ以外には、何もない)
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:30:11.91 ID:d/aViO4X0
後輩「おはようございます、先輩」
兄「……ん、ああ。おはよう」
後輩「考え込んでいたみたいですね」
兄「少しな」
後輩「……昨日はすいませんでした」
兄「何がだ?」
後輩「私のイメージを押し付けて、勝手に怒って……バカみたいですよね」
兄「いいや、お前の価値観は正しい」
後輩「そう、なんですか?」
兄「実際、この業界は悪趣味で狂っている。それでも……仕事は仕事だ」
後輩「……」
兄「お前はまだ若い。仕事を変える手もあると俺は思う」
後輩「いいえ。私、頑張ります!」
兄「そうか……それじゃ、今日も検査を始めるぞ」
後輩「はい!」
兄「……ん、ああ。おはよう」
後輩「考え込んでいたみたいですね」
兄「少しな」
後輩「……昨日はすいませんでした」
兄「何がだ?」
後輩「私のイメージを押し付けて、勝手に怒って……バカみたいですよね」
兄「いいや、お前の価値観は正しい」
後輩「そう、なんですか?」
兄「実際、この業界は悪趣味で狂っている。それでも……仕事は仕事だ」
後輩「……」
兄「お前はまだ若い。仕事を変える手もあると俺は思う」
後輩「いいえ。私、頑張ります!」
兄「そうか……それじゃ、今日も検査を始めるぞ」
後輩「はい!」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:35:17.63 ID:d/aViO4X0
妹D「……?」
後輩「タイプ兄、無口です」
兄「……」
妹D「……」
兄「質問だ。お客様がお前にキスした。どうする?」
妹D「……っ」 カァァァァ
兄「合格だ。行け」
妹D「……」 ペコリ
後輩「無口のままで、どれだけの感情表現ができるかが試されたわけですね」
兄「お前もわかってきたな」
後輩「先輩の指導のおかげです!」
兄「指導らしい指導もした覚えはないけどな」
後輩「いいえ! 側で先輩の選別眼を体感して、私にも段々分かってきました!」
兄「……そうだな。お前、少し代われ」
後輩「えっ、ええっ!?」
後輩「タイプ兄、無口です」
兄「……」
妹D「……」
兄「質問だ。お客様がお前にキスした。どうする?」
妹D「……っ」 カァァァァ
兄「合格だ。行け」
妹D「……」 ペコリ
後輩「無口のままで、どれだけの感情表現ができるかが試されたわけですね」
兄「お前もわかってきたな」
後輩「先輩の指導のおかげです!」
兄「指導らしい指導もした覚えはないけどな」
後輩「いいえ! 側で先輩の選別眼を体感して、私にも段々分かってきました!」
兄「……そうだな。お前、少し代われ」
後輩「えっ、ええっ!?」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:40:26.96 ID:d/aViO4X0
妹E「よろしくお願いしますね、後輩さん」
後輩「えっ、う、うん」
兄「堂々としてろ。……まずは質問だ」
後輩「え、ええと、あなたは義妹型なわけだけど……もしお客様から告白された場合はどうしますか?」
妹E「……後輩さんの気持ちは嬉しいですけど、でも……私、他に好きな方がいるんです」
後輩「……で、ですと」
兄「合格だ。行け」
妹E「ありがとうございます」 スタスタ
後輩「あ、あれでいいんですか?」
兄「あれはそういう目的で使うお客様向けなんだよ」
後輩「そういう目的?」
兄「……後で取扱説明書を読んでおけ」
後輩「えっ、う、うん」
兄「堂々としてろ。……まずは質問だ」
後輩「え、ええと、あなたは義妹型なわけだけど……もしお客様から告白された場合はどうしますか?」
妹E「……後輩さんの気持ちは嬉しいですけど、でも……私、他に好きな方がいるんです」
後輩「……で、ですと」
兄「合格だ。行け」
妹E「ありがとうございます」 スタスタ
後輩「あ、あれでいいんですか?」
兄「あれはそういう目的で使うお客様向けなんだよ」
後輩「そういう目的?」
兄「……後で取扱説明書を読んでおけ」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:45:05.65 ID:d/aViO4X0
後輩「先輩……世の中、色々な人がいるんですね」
兄「読んだか」
後輩「はい……ちょっと私には理解できないです」
兄「何もかも分かる必要もない。お前はお前でいい」
後輩「そ、そんな簡単に口説かれる女じゃありませんから、私」
兄「口説いた覚えもない」
同僚「おっ、後輩ちゃん!」
後輩「あ……どうも、同僚さん」
同僚「一緒にランチ行かない?」
後輩「ええと、あの……私、先輩と一緒に食べる予定なので……」
同僚「……こいつと?」
兄「……」
後輩「すいません」
同僚「……ああ、いいよいいよ。それじゃ、また今度ね」
兄「読んだか」
後輩「はい……ちょっと私には理解できないです」
兄「何もかも分かる必要もない。お前はお前でいい」
後輩「そ、そんな簡単に口説かれる女じゃありませんから、私」
兄「口説いた覚えもない」
同僚「おっ、後輩ちゃん!」
後輩「あ……どうも、同僚さん」
同僚「一緒にランチ行かない?」
後輩「ええと、あの……私、先輩と一緒に食べる予定なので……」
同僚「……こいつと?」
兄「……」
後輩「すいません」
同僚「……ああ、いいよいいよ。それじゃ、また今度ね」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:50:10.02 ID:d/aViO4X0
後輩「……ごめんなさい、先輩」
兄「食堂でいいか?」
後輩「えっ?」
兄「ランチに行くってお前が言ったんだろう」
後輩「で、でも先輩、昼食は食べない主義なんじゃ」
兄「別に食べられないわけじゃない」
後輩「……」
兄「行かないのか?」
後輩「行きます!」
兄「言っておくが、奢らないぞ」
後輩「私、そんなセコい女じゃありませんから」
兄「食堂でいいか?」
後輩「えっ?」
兄「ランチに行くってお前が言ったんだろう」
後輩「で、でも先輩、昼食は食べない主義なんじゃ」
兄「別に食べられないわけじゃない」
後輩「……」
兄「行かないのか?」
後輩「行きます!」
兄「言っておくが、奢らないぞ」
後輩「私、そんなセコい女じゃありませんから」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:53:16.07 ID:d/aViO4X0
後輩「うどん、好きなんですか?」
兄「消化が楽だからな」
後輩「先輩って変ですよね」
兄「ああ。変だな」
後輩「……そういう所が変ですよね」
兄「……」 ズルズルッ
後輩「……あの」
兄「ん?」
後輩「また誘っていいですか?」
兄「勝手にしろ」
後輩「はい。勝手にします」
兄「消化が楽だからな」
後輩「先輩って変ですよね」
兄「ああ。変だな」
後輩「……そういう所が変ですよね」
兄「……」 ズルズルッ
後輩「……あの」
兄「ん?」
後輩「また誘っていいですか?」
兄「勝手にしろ」
後輩「はい。勝手にします」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 21:58:55.75 ID:d/aViO4X0
兄「勝手にしろとは言ったがな、二日連続で誘えとは言わなかったぞ」
後輩「勝手にした結果です」
兄「……」
後輩「先輩って愛想悪いですよね」
兄「生まれつきだ」 ズルズル
後輩「そうでしょうか? なんだか、周りに心を閉ざしてるだけに見えますけど」
兄「……」
後輩「もっと笑いましょうよ」
兄「ふん」 ズルズル
後輩「……先輩って一人っ子ですか?」
兄「……昔、妹がいた」
後輩「……」
兄「嘘だけどな」
後輩「なんでそんな訳のわからない嘘を真顔で吐くんですか!?」
後輩「勝手にした結果です」
兄「……」
後輩「先輩って愛想悪いですよね」
兄「生まれつきだ」 ズルズル
後輩「そうでしょうか? なんだか、周りに心を閉ざしてるだけに見えますけど」
兄「……」
後輩「もっと笑いましょうよ」
兄「ふん」 ズルズル
後輩「……先輩って一人っ子ですか?」
兄「……昔、妹がいた」
後輩「……」
兄「嘘だけどな」
後輩「なんでそんな訳のわからない嘘を真顔で吐くんですか!?」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:04:49.01 ID:d/aViO4X0
兄(最近、昼飯を食べるせいで食費がかさむな……)
同僚「おい」
兄「……なんですか?」
同僚「調子に乗るなって忠告したよな?」
兄「ええ、されましたね」
同僚「……その澄ました顔、見てるだけで腹が立つぜ」
兄「……」
同僚「まあ、もうじきその顔も見ずに済むようになるんだけどな」
兄(ああ、そうか。そうなるのか)
同僚「じゃあな、欠陥野郎」
兄(……潮時か)
兄(不思議だな。いつやめてもいいと思っていたのに、今更心残りがあるなんてな)
兄「……じゃあな、後輩」
同僚「おい」
兄「……なんですか?」
同僚「調子に乗るなって忠告したよな?」
兄「ええ、されましたね」
同僚「……その澄ました顔、見てるだけで腹が立つぜ」
兄「……」
同僚「まあ、もうじきその顔も見ずに済むようになるんだけどな」
兄(ああ、そうか。そうなるのか)
同僚「じゃあな、欠陥野郎」
兄(……潮時か)
兄(不思議だな。いつやめてもいいと思っていたのに、今更心残りがあるなんてな)
兄「……じゃあな、後輩」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:09:03.30 ID:d/aViO4X0
工場長「君を呼んだのは、良くない噂を聴いたからなんだがね」
兄「良くない噂、ですか」
工場長「君が検査役の立場を利用して、我が工場に不利益を与えている、という噂だよ」
兄「工場長。私が工場に不利益を与える理由は何一つありません」
工場長「私もそうは思うがね、しかし、君もいい加減長いからね」
兄「そうですね」
工場長「わかるだろう?」
兄「……」
工場長「デストロイもやめようと思っているんだよ。致命的な欠陥がない限りは、わけあり品として売ろうと考えている」
兄「そうですか。それは良い考えだと思います」
工場長「……最後に、何か望みがあるのなら聞こう」
兄「いえ。私がこの工場で働いた時間は、幸福でした。ありがとうございました、工場長」
工場長「後任は、後輩くんで大丈夫かね?」
兄「彼女は私の側に置いておくには有能すぎるくらいでした。問題ないでしょう。……それでは、後の処理はお任せします」
兄「良くない噂、ですか」
工場長「君が検査役の立場を利用して、我が工場に不利益を与えている、という噂だよ」
兄「工場長。私が工場に不利益を与える理由は何一つありません」
工場長「私もそうは思うがね、しかし、君もいい加減長いからね」
兄「そうですね」
工場長「わかるだろう?」
兄「……」
工場長「デストロイもやめようと思っているんだよ。致命的な欠陥がない限りは、わけあり品として売ろうと考えている」
兄「そうですか。それは良い考えだと思います」
工場長「……最後に、何か望みがあるのなら聞こう」
兄「いえ。私がこの工場で働いた時間は、幸福でした。ありがとうございました、工場長」
工場長「後任は、後輩くんで大丈夫かね?」
兄「彼女は私の側に置いておくには有能すぎるくらいでした。問題ないでしょう。……それでは、後の処理はお任せします」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:15:56.60 ID:d/aViO4X0
後輩「どういうこと、ですか?」
工場長「そのままの意味だが?」
後輩「先輩が突然工場を辞めて、私が先輩の後任……?」
工場長「その通りだ。よろしく頼むよ」
後輩「おか、おかしいです! そんな、昨日まで普通に、普通に仕事してたのに!」
工場長「……彼は君を信頼して、後任に推薦していったのだがね」
後輩「……っ」
工場長「どうするかね?」
後輩「……やります、やらせてください」
工場長「よろしい。では頑張ってくれたまえ」
工場長「そのままの意味だが?」
後輩「先輩が突然工場を辞めて、私が先輩の後任……?」
工場長「その通りだ。よろしく頼むよ」
後輩「おか、おかしいです! そんな、昨日まで普通に、普通に仕事してたのに!」
工場長「……彼は君を信頼して、後任に推薦していったのだがね」
後輩「……っ」
工場長「どうするかね?」
後輩「……やります、やらせてください」
工場長「よろしい。では頑張ってくれたまえ」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:22:15.37 ID:d/aViO4X0
後輩「……」
妹F「お姉ちゃん……私、もう我慢できないよ……」
後輩「行っていいです」
妹F「うん、ありがとうね、お姉ちゃん!」 トテトテッ
後輩(……)
後輩(先輩は……突然仕事をやめるような、いい加減な人じゃない)
後輩(きっと、きっと何か理由があって、どうしても辞めなくちゃいけない理由があって、それで……)
後輩(でも、それなら一言、相談してくれたって……)
妹G「ねぇね? どうしたの?」
後輩「……ううん、大丈夫よ。ありがとう。……あなた達は優しいわね」
妹G「えへへ、褒められちゃった」
後輩(……先輩の家に行って、話を聞こう。一人で抱え込んで困ってるのかもしれない)
後輩「私だって、助けになれるはずなんだ」
妹F「お姉ちゃん……私、もう我慢できないよ……」
後輩「行っていいです」
妹F「うん、ありがとうね、お姉ちゃん!」 トテトテッ
後輩(……)
後輩(先輩は……突然仕事をやめるような、いい加減な人じゃない)
後輩(きっと、きっと何か理由があって、どうしても辞めなくちゃいけない理由があって、それで……)
後輩(でも、それなら一言、相談してくれたって……)
妹G「ねぇね? どうしたの?」
後輩「……ううん、大丈夫よ。ありがとう。……あなた達は優しいわね」
妹G「えへへ、褒められちゃった」
後輩(……先輩の家に行って、話を聞こう。一人で抱え込んで困ってるのかもしれない)
後輩「私だって、助けになれるはずなんだ」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:27:23.63 ID:d/aViO4X0
同僚「後輩ちゃん、どうだい、この後空いているかい? 良い店見つけたんだよ」
後輩「同僚さん。先輩の家って知ってますか?」
同僚「……なんであいつの名前が出てくるのかな」
後輩「気になるんです。先輩が仕事を辞めた理由が、どうしても」
同僚「知らないね」
後輩「知ってる人は知りませんか?」
同僚「……」
後輩「お願いします、教えてください」
同僚「あんなポンコツのどこがいいんだ?」
後輩「えっ?」
同僚「工場長の野郎も、あいつを散々庇いやがって……むかつくんだよ、どいつもこいつも」
後輩「ま、待ってください、どういうことですか?」
同僚「どういうことも何もあるかよ、ちくしょう……人をバカにしやがって!」 ドスドスッ
後輩「同僚さん。先輩の家って知ってますか?」
同僚「……なんであいつの名前が出てくるのかな」
後輩「気になるんです。先輩が仕事を辞めた理由が、どうしても」
同僚「知らないね」
後輩「知ってる人は知りませんか?」
同僚「……」
後輩「お願いします、教えてください」
同僚「あんなポンコツのどこがいいんだ?」
後輩「えっ?」
同僚「工場長の野郎も、あいつを散々庇いやがって……むかつくんだよ、どいつもこいつも」
後輩「ま、待ってください、どういうことですか?」
同僚「どういうことも何もあるかよ、ちくしょう……人をバカにしやがって!」 ドスドスッ
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:31:19.89 ID:d/aViO4X0
工場長「……以前知り合いの工場が欠陥商品を販売してしまってね」
工場長「その商品の事はニュースや新聞で知っていたし、販売禁止に回収処分のくだった在庫を持て余していると言う」
工場長「私は是非にとその在庫の一部を引き取った。その欠陥が丁度役に立ちそうだったからね」
工場長「欠陥とは、つまり情動エミュレーターが高性能すぎたことだ」
工場長「相手の感情に同調し、精密に読み取り、また自分自身も豊かに感情を発露させる」
工場長「あまりに人間的すぎたその商品は、様々な異常動作が見られ、欠陥商品と認定されたわけだが」
工場長「その欠陥商品、兄型の機能は、不良妹の発見に最適だった」
工場長「とはいえ、欠陥商品にすべて任せる事には反対もあり、形式上人間の補佐役を一人付けることにした」
工場長「……さて、製品には寿命がある。十年以上働き続けていた彼は、もう休むべきだと私は判断した」
工場長「兄くんは寿命だったんだよ、後輩くん」
工場長「その商品の事はニュースや新聞で知っていたし、販売禁止に回収処分のくだった在庫を持て余していると言う」
工場長「私は是非にとその在庫の一部を引き取った。その欠陥が丁度役に立ちそうだったからね」
工場長「欠陥とは、つまり情動エミュレーターが高性能すぎたことだ」
工場長「相手の感情に同調し、精密に読み取り、また自分自身も豊かに感情を発露させる」
工場長「あまりに人間的すぎたその商品は、様々な異常動作が見られ、欠陥商品と認定されたわけだが」
工場長「その欠陥商品、兄型の機能は、不良妹の発見に最適だった」
工場長「とはいえ、欠陥商品にすべて任せる事には反対もあり、形式上人間の補佐役を一人付けることにした」
工場長「……さて、製品には寿命がある。十年以上働き続けていた彼は、もう休むべきだと私は判断した」
工場長「兄くんは寿命だったんだよ、後輩くん」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:35:41.50 ID:d/aViO4X0
後輩「……」
工場長「できればね、私は兄くんに人間らしく過ごして欲しかった。だから君には何も告げなかった」
後輩「先輩は、人間じゃなかったんですか?」
工場長「そうだね。彼は人間ではない」
後輩「だから、こんな風にあっさり切り捨てられて、消えてしまったんですか?」
工場長「否定はせんよ。私も経営者だからね」
後輩「……酷すぎます」
工場長「……」
後輩「先輩は毎日、妹をデストロイしてきました。どんな気分だったと思いますか?」
工場長「さてね。私にはわかりかねるよ」
後輩「あなたが、工場長がもし、人間を、女の子を殺し続ける仕事を任されたら、どうですか?」
工場長「……」
後輩「あなたがした事は、先輩にさせてきた事は、そういうことじゃないんですか?」
工場長「できればね、私は兄くんに人間らしく過ごして欲しかった。だから君には何も告げなかった」
後輩「先輩は、人間じゃなかったんですか?」
工場長「そうだね。彼は人間ではない」
後輩「だから、こんな風にあっさり切り捨てられて、消えてしまったんですか?」
工場長「否定はせんよ。私も経営者だからね」
後輩「……酷すぎます」
工場長「……」
後輩「先輩は毎日、妹をデストロイしてきました。どんな気分だったと思いますか?」
工場長「さてね。私にはわかりかねるよ」
後輩「あなたが、工場長がもし、人間を、女の子を殺し続ける仕事を任されたら、どうですか?」
工場長「……」
後輩「あなたがした事は、先輩にさせてきた事は、そういうことじゃないんですか?」
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:40:33.20 ID:d/aViO4X0
工場長「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。今となってはわからない事だ」
後輩「あまりにも、勝手すぎます」
工場長「それが私達の仕事だ。どうするね? やめるかね?」
後輩「……少し、考えさせてください」
工場長「そうか。検査は適当な代理にやらせよう。しばらく休むといい」
後輩「失礼します」 スタスタ
工場長「……私も、この業界に慣れ過ぎていたのかもしれんな」
後輩「あまりにも、勝手すぎます」
工場長「それが私達の仕事だ。どうするね? やめるかね?」
後輩「……少し、考えさせてください」
工場長「そうか。検査は適当な代理にやらせよう。しばらく休むといい」
後輩「失礼します」 スタスタ
工場長「……私も、この業界に慣れ過ぎていたのかもしれんな」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:48:53.85 ID:d/aViO4X0
後輩(今までデストロイしてきた妹達も、先輩と同じように心があって)
後輩(私達と同じように色々なことを感じてたのかもしれない……)
後輩(彼女達の苦痛を無視して成り立つこの世界は、なんて惨たらしい世界なんだろう)
後輩「……私、まるでベジタリアン気取りの偽善者みたい」
後輩(平気な顔でこの世界で生きてきた私が、今更工場長を責められるはずもないのに)
後輩(……先輩と話したい。先輩なら、なんて言うんだろう)
後輩(でも、もう先輩はいないんだ。どこにも……) ポタッ ポタポタッ
同僚「どうしたんだい、後輩ちゃん?」
後輩「放っておいてください、あなたには関係ありませんから」
同僚「……あのポンコツの正体を知っても、まだ気にしてるのか。信じられないな」
後輩「先輩をバカにしないでくださいっ!! 先輩はあなたよりもずっと人間らしい優しい人でしたっ!!」
同僚「……君が人間とそれ以外の区別も付かないなんてビックリだよ」 スタスタ
後輩(私達と同じように色々なことを感じてたのかもしれない……)
後輩(彼女達の苦痛を無視して成り立つこの世界は、なんて惨たらしい世界なんだろう)
後輩「……私、まるでベジタリアン気取りの偽善者みたい」
後輩(平気な顔でこの世界で生きてきた私が、今更工場長を責められるはずもないのに)
後輩(……先輩と話したい。先輩なら、なんて言うんだろう)
後輩(でも、もう先輩はいないんだ。どこにも……) ポタッ ポタポタッ
同僚「どうしたんだい、後輩ちゃん?」
後輩「放っておいてください、あなたには関係ありませんから」
同僚「……あのポンコツの正体を知っても、まだ気にしてるのか。信じられないな」
後輩「先輩をバカにしないでくださいっ!! 先輩はあなたよりもずっと人間らしい優しい人でしたっ!!」
同僚「……君が人間とそれ以外の区別も付かないなんてビックリだよ」 スタスタ
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:54:49.54 ID:d/aViO4X0
後輩(ああ、そっか……)
後輩(私は、先輩が好きだったんだ)
後輩「……ひっ、ひっく……」 ポタポタッ
試作妹「大丈夫ですか?」
後輩「だい、じょうぶ……う、うあぁぁ……っ!」 クシャクシャ
試作妹「何か、悲しい事があったんですね」 ナデナデ
後輩「せ、先輩が……先輩が、死んじゃった……」
後輩「いなくなっちゃった……」
後輩「もう、会えない……」
後輩「会えないよ……っ」
試作妹「お兄様なら、あちらにいらっしゃいましたよ?」
後輩「……えっ?」
後輩(私は、先輩が好きだったんだ)
後輩「……ひっ、ひっく……」 ポタポタッ
試作妹「大丈夫ですか?」
後輩「だい、じょうぶ……う、うあぁぁ……っ!」 クシャクシャ
試作妹「何か、悲しい事があったんですね」 ナデナデ
後輩「せ、先輩が……先輩が、死んじゃった……」
後輩「いなくなっちゃった……」
後輩「もう、会えない……」
後輩「会えないよ……っ」
試作妹「お兄様なら、あちらにいらっしゃいましたよ?」
後輩「……えっ?」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 22:59:24.31 ID:d/aViO4X0
兄「」
後輩「これは」
試作妹「機能停止状態のようですね」
後輩「……治るの?」
試作妹「治るも何も、そもそも壊れていない様子です」
後輩「あ、あは、あははは……っ」 ポタポタッ
試作妹「なぜ笑いながら泣くのですか?」
後輩「だ、だって、嬉しくて……嬉しくて、涙が止まらないんだもん……」
試作妹「そういうものでしょうか?」
後輩「うん……うん……」
後輩(でも、どうしよう……このままじゃ、処分されちゃうかもしれない……)
後輩「……」
後輩(このまま先輩を連れ出せば、すぐに私がやったと分かってしまう)
後輩(そうすれば、先輩も連れ戻されて、最悪デストロイされちゃう)
後輩「……こうなったら、直談判だ!」
後輩「これは」
試作妹「機能停止状態のようですね」
後輩「……治るの?」
試作妹「治るも何も、そもそも壊れていない様子です」
後輩「あ、あは、あははは……っ」 ポタポタッ
試作妹「なぜ笑いながら泣くのですか?」
後輩「だ、だって、嬉しくて……嬉しくて、涙が止まらないんだもん……」
試作妹「そういうものでしょうか?」
後輩「うん……うん……」
後輩(でも、どうしよう……このままじゃ、処分されちゃうかもしれない……)
後輩「……」
後輩(このまま先輩を連れ出せば、すぐに私がやったと分かってしまう)
後輩(そうすれば、先輩も連れ戻されて、最悪デストロイされちゃう)
後輩「……こうなったら、直談判だ!」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:04:05.00 ID:d/aViO4X0
後輩「工場長、先輩を私に売ってください!」
工場長「……見つけたのだね」
後輩「なぜ隠そうとしたんですか?」
工場長「彼を静かに眠らせてやりたかった。それではダメかね?」
後輩「先輩がそうしてくれって望んだんですか?」
工場長「何度も言っているだろう? 彼の気持ちは分からんよ」
後輩「……私は、先輩がああして仕舞われている状態が幸せだとは思いません」
工場長「……」
後輩「いいえ。ごめんなさい、今のは嘘です。……私が、先輩といたいんです」
工場長「いくら払えるかね?」
後輩「……言い値でいいです。絶対に払いますから」
工場長「君も、変わった娘だよ。しかし、それはとても嬉しいことだ。……彼を頼むよ」
後輩「はい!」
工場長「……見つけたのだね」
後輩「なぜ隠そうとしたんですか?」
工場長「彼を静かに眠らせてやりたかった。それではダメかね?」
後輩「先輩がそうしてくれって望んだんですか?」
工場長「何度も言っているだろう? 彼の気持ちは分からんよ」
後輩「……私は、先輩がああして仕舞われている状態が幸せだとは思いません」
工場長「……」
後輩「いいえ。ごめんなさい、今のは嘘です。……私が、先輩といたいんです」
工場長「いくら払えるかね?」
後輩「……言い値でいいです。絶対に払いますから」
工場長「君も、変わった娘だよ。しかし、それはとても嬉しいことだ。……彼を頼むよ」
後輩「はい!」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:08:09.08 ID:d/aViO4X0
兄(……再起動確認)
兄(……なぜ俺が再起動される?)
兄(誰だ、俺を起こしたのは。いや、今はいつだ……)
兄(まだ一ヶ月と経ってない?)
兄(そんな、バカな――)
後輩「おはよう、お兄ちゃん」
兄「……はぁ?」
後輩「ごめんね、メンテナンスしてもらったら時間掛かっちゃって」
兄「お前は何を言ってるんだ?」
後輩「どうかしたの、お兄ちゃん?」
兄「誰がお前のお兄ちゃんだ」
後輩「あなたですよ、先輩」
兄(……なぜ俺が再起動される?)
兄(誰だ、俺を起こしたのは。いや、今はいつだ……)
兄(まだ一ヶ月と経ってない?)
兄(そんな、バカな――)
後輩「おはよう、お兄ちゃん」
兄「……はぁ?」
後輩「ごめんね、メンテナンスしてもらったら時間掛かっちゃって」
兄「お前は何を言ってるんだ?」
後輩「どうかしたの、お兄ちゃん?」
兄「誰がお前のお兄ちゃんだ」
後輩「あなたですよ、先輩」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:13:03.14 ID:d/aViO4X0
兄「状況を説明しろ」
後輩「私は工場長から先輩を買いました。以上です」
兄「意味が分からない」
後輩「先輩は兄型、私は先輩の所有者、つまり妹。これでおしまいです」
兄「……わざわざ俺みたいな型遅れの欠陥品を買ってどうする?」
後輩「先輩は先輩しかいませんから」
兄「なんで俺なんだよ?」
後輩「先輩が好きだからです」
兄「お前が俺の何を知ってる? 勘違いだろ」
後輩「先輩が前の妹に捨てられたのは知っています」
兄「……捨てられたんじゃない、俺が出て行ったんだ」
後輩「私は先輩を逃がしませんし、捨てません」
兄「勘弁してくれ……」
後輩「安心してください! 私、物は大事に使うタイプですから!」
後輩「私は工場長から先輩を買いました。以上です」
兄「意味が分からない」
後輩「先輩は兄型、私は先輩の所有者、つまり妹。これでおしまいです」
兄「……わざわざ俺みたいな型遅れの欠陥品を買ってどうする?」
後輩「先輩は先輩しかいませんから」
兄「なんで俺なんだよ?」
後輩「先輩が好きだからです」
兄「お前が俺の何を知ってる? 勘違いだろ」
後輩「先輩が前の妹に捨てられたのは知っています」
兄「……捨てられたんじゃない、俺が出て行ったんだ」
後輩「私は先輩を逃がしませんし、捨てません」
兄「勘弁してくれ……」
後輩「安心してください! 私、物は大事に使うタイプですから!」
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:19:25.09 ID:d/aViO4X0
兄「……お前、どうしても俺の妹になるんだな?」
後輩「はい」
兄「本当にいいんだな? 後悔しないな?」
後輩「もちろんです」
兄「……よし。後輩、今日からお前は俺の妹だ」
後輩「よろしくお願いします、お兄ちゃん」
兄「……」 ナデナデ
後輩「あの……なんですか?」
兄「よく頑張ったな。大変だったろ」
後輩「べ、別に、全然平気でしたよ?」
兄「無理するな」 ダキッ
後輩「……うっ、うぅ……ダメですよ……そんなに優しくされたら、泣いちゃうじゃないですか……」 ポタポタッ
後輩「はい」
兄「本当にいいんだな? 後悔しないな?」
後輩「もちろんです」
兄「……よし。後輩、今日からお前は俺の妹だ」
後輩「よろしくお願いします、お兄ちゃん」
兄「……」 ナデナデ
後輩「あの……なんですか?」
兄「よく頑張ったな。大変だったろ」
後輩「べ、別に、全然平気でしたよ?」
兄「無理するな」 ダキッ
後輩「……うっ、うぅ……ダメですよ……そんなに優しくされたら、泣いちゃうじゃないですか……」 ポタポタッ
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:23:28.35 ID:d/aViO4X0
兄「ああ、そうだ。言い忘れてたが」
後輩「……なんですか?」
兄「俺は妹を甘やかすタイプだ。甘やかしすぎて前の妹の親御さんに叱られたくらいだ」
後輩「意外ですね」
兄「ちなみに手加減する気はない」
後輩「ふふっ。私も全力で甘やかされます」
兄「ああ。全力で甘やかしてやる。まずは……よいしょ」 ダキアゲッ
後輩「ひあっ!? な、何するんですか?」
兄「泣いて眠くなっただろ。ベッドに連れてく」 スタスタッ
後輩「あ、歩けますから!」
兄「ダメだ。お兄ちゃんの言うことを聞け」
後輩(は、恥ずかしい……)
後輩「……なんですか?」
兄「俺は妹を甘やかすタイプだ。甘やかしすぎて前の妹の親御さんに叱られたくらいだ」
後輩「意外ですね」
兄「ちなみに手加減する気はない」
後輩「ふふっ。私も全力で甘やかされます」
兄「ああ。全力で甘やかしてやる。まずは……よいしょ」 ダキアゲッ
後輩「ひあっ!? な、何するんですか?」
兄「泣いて眠くなっただろ。ベッドに連れてく」 スタスタッ
後輩「あ、歩けますから!」
兄「ダメだ。お兄ちゃんの言うことを聞け」
後輩(は、恥ずかしい……)
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:25:11.03 ID:d/aViO4X0
兄「……」 ナデナデ
後輩「お、お兄ちゃん……そんなに見つめられても、困る」
兄「可愛い妹が眠るまで側にいるのもお兄ちゃんの役目だろ?」
後輩「こ、子どもじゃないんですから!」
兄「いやか?」
後輩「いやじゃ、ないですけど……」
兄「……」
後輩「わ、分かりましたから……いいですよ、もう……」
兄「よし」 ナデナデ
後輩(うぅぅぅ……)
後輩「お、お兄ちゃん……そんなに見つめられても、困る」
兄「可愛い妹が眠るまで側にいるのもお兄ちゃんの役目だろ?」
後輩「こ、子どもじゃないんですから!」
兄「いやか?」
後輩「いやじゃ、ないですけど……」
兄「……」
後輩「わ、分かりましたから……いいですよ、もう……」
兄「よし」 ナデナデ
後輩(うぅぅぅ……)
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:29:20.24 ID:d/aViO4X0
後輩(主導権を奪われてしまっている……このままではいけない……)
後輩「先輩、話があります」
兄「他人行儀だな、お兄ちゃんでいいぞ」
後輩「……先輩、話があります」
兄「……なんだよ、せっかくお前を甘やかそうとしてるのに」
後輩「これじゃ私が先輩に所有されてるみたいじゃないですか!」
兄「どっちでもいいだろ、そんなの」
後輩「よくないですよ! なんか私だけすごい恥ずかしいじゃないですか!」
兄「慣れろ」
後輩「慣れません!」
兄「俺にどうしろと?」
後輩「……節度ある距離をお願いします」
兄「兄妹なのに?」
後輩「兄妹でもです」
後輩「先輩、話があります」
兄「他人行儀だな、お兄ちゃんでいいぞ」
後輩「……先輩、話があります」
兄「……なんだよ、せっかくお前を甘やかそうとしてるのに」
後輩「これじゃ私が先輩に所有されてるみたいじゃないですか!」
兄「どっちでもいいだろ、そんなの」
後輩「よくないですよ! なんか私だけすごい恥ずかしいじゃないですか!」
兄「慣れろ」
後輩「慣れません!」
兄「俺にどうしろと?」
後輩「……節度ある距離をお願いします」
兄「兄妹なのに?」
後輩「兄妹でもです」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:33:42.54 ID:d/aViO4X0
後輩「というかですね、キャラ違うじゃないですか!」
兄「いや、だって妹だし」
後輩「私は私です! 妹でも私です!」
兄「……?」
後輩「不思議そうな顔しないでください!」
兄「そう言われてもな、俺は俺だし、お前を甘やかす俺も俺なわけで」
後輩「……」
兄「そう幻滅するなよ、仕方ないだろう」
後輩「なんかすごいへこんできました」
兄「やっぱり俺が好きだっていうのは勘違いだったんじゃないのか?」
後輩「否定しきれません……」
兄「人生色々ある。頑張れよ」 ナデナデ
後輩「うぅ……」
兄「いや、だって妹だし」
後輩「私は私です! 妹でも私です!」
兄「……?」
後輩「不思議そうな顔しないでください!」
兄「そう言われてもな、俺は俺だし、お前を甘やかす俺も俺なわけで」
後輩「……」
兄「そう幻滅するなよ、仕方ないだろう」
後輩「なんかすごいへこんできました」
兄「やっぱり俺が好きだっていうのは勘違いだったんじゃないのか?」
後輩「否定しきれません……」
兄「人生色々ある。頑張れよ」 ナデナデ
後輩「うぅ……」
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:39:31.13 ID:d/aViO4X0
後輩(そうして先輩の甘やかしに抵抗していたのは最初だけで、気付けば私はダメ女になっていた……)
後輩「はふぅ……」 ムズムズ
兄「動くな。……よし、次は左耳だ」
後輩「んっ」 ゴロン
兄「……」 イジイジ
後輩「んぅ……」 ムズムズ
兄「ふっ」
後輩「ひゃぅ」
兄「終わりだ」
後輩「んー……このままお兄ちゃんの膝で寝る……」
兄「風邪引くぞ」
後輩「ふふふっ、お兄ちゃんに看病してもらうからいいもんね」
後輩(……私、本当にこれでいいのか?)
後輩「はふぅ……」 ムズムズ
兄「動くな。……よし、次は左耳だ」
後輩「んっ」 ゴロン
兄「……」 イジイジ
後輩「んぅ……」 ムズムズ
兄「ふっ」
後輩「ひゃぅ」
兄「終わりだ」
後輩「んー……このままお兄ちゃんの膝で寝る……」
兄「風邪引くぞ」
後輩「ふふふっ、お兄ちゃんに看病してもらうからいいもんね」
後輩(……私、本当にこれでいいのか?)
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:42:11.74 ID:d/aViO4X0
工場長「後輩くんは欠勤続き、か……」
工場長「予想通りとはいえ、申し訳ない事をしたな」
工場長(人の心が読めすぎる彼らが起こした問題の一つが、これだ)
工場長(すべてを先回りして妹を甘やかし、何もできない社会不適合者にしてしまう)
工場長「まあ、兄くんも後輩くんも幸福なのだろうが……」
工場長(結果的には二人も社員がいなくなり、私に残るは痛手だけか)
試作妹「工場長、お兄様です」
兄「お久しぶりです、工場長」
工場長「おや、何の用だね?」
兄「えー……実は……」
後輩「……」 ペコリッ
工場長「言わんでもよろしい。兄くんを検査役として再雇用、二人揃って働きなさい」
兄「すいません」
後輩「えへへっ」
工場長「……これだ!」
工場長「予想通りとはいえ、申し訳ない事をしたな」
工場長(人の心が読めすぎる彼らが起こした問題の一つが、これだ)
工場長(すべてを先回りして妹を甘やかし、何もできない社会不適合者にしてしまう)
工場長「まあ、兄くんも後輩くんも幸福なのだろうが……」
工場長(結果的には二人も社員がいなくなり、私に残るは痛手だけか)
試作妹「工場長、お兄様です」
兄「お久しぶりです、工場長」
工場長「おや、何の用だね?」
兄「えー……実は……」
後輩「……」 ペコリッ
工場長「言わんでもよろしい。兄くんを検査役として再雇用、二人揃って働きなさい」
兄「すいません」
後輩「えへへっ」
工場長「……これだ!」
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:46:59.01 ID:d/aViO4X0
工場長の閃きにより開発されたリアル志向の新型妹は記録的なヒットを飛ばした。
しかし、その新型妹が実在の人物を元に製作された事は知られていない。
後輩「またこのタイプ!?」
後輩モデル「お兄ちゃん!」
兄「合格。行ってよし」
後輩モデルA「ありがとう、お兄ちゃん!」
後輩「ちゃんと検査してよ!」
後輩モデルB「お、お兄ちゃん……」
兄「合格!」
後輩「ちょっとっ!」
その品質にバラつきがあることもまた、このモデルの特徴であったと言う。
しかし、その新型妹が実在の人物を元に製作された事は知られていない。
後輩「またこのタイプ!?」
後輩モデル「お兄ちゃん!」
兄「合格。行ってよし」
後輩モデルA「ありがとう、お兄ちゃん!」
後輩「ちゃんと検査してよ!」
後輩モデルB「お、お兄ちゃん……」
兄「合格!」
後輩「ちょっとっ!」
その品質にバラつきがあることもまた、このモデルの特徴であったと言う。
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