マミ 「・・・こ、ここは・・・?」
武蔵 「お。マミちゃん、気がついたか」
マミ 「武蔵お兄ちゃん・・・?え、わ・・・わた、し・・・?」
武蔵の腕の中で目を覚ましたマミは、未だ定まらない頭と目で状況を確認しようとした。
何とか上体を起こし、辺りを見回す。
ここは魔女の結界の中。自分は未だ、魔法少女の姿のまま。
マミ 「え・・・じゃ、じゃあ、どうしてお兄ちゃんが結界の中に?」
だんだんと頭がさえてくると同時に、幾つかの疑問が彼女の内に湧き上がってくる。
なぜ自分は武蔵の腕の中で気を失っていたのか。
そして、普通の人間に過ぎないはずの武蔵が、どうして魔女の結界の中に現れたのか。
武蔵 「お。マミちゃん、気がついたか」
マミ 「武蔵お兄ちゃん・・・?え、わ・・・わた、し・・・?」
武蔵の腕の中で目を覚ましたマミは、未だ定まらない頭と目で状況を確認しようとした。
何とか上体を起こし、辺りを見回す。
ここは魔女の結界の中。自分は未だ、魔法少女の姿のまま。
マミ 「え・・・じゃ、じゃあ、どうしてお兄ちゃんが結界の中に?」
だんだんと頭がさえてくると同時に、幾つかの疑問が彼女の内に湧き上がってくる。
なぜ自分は武蔵の腕の中で気を失っていたのか。
そして、普通の人間に過ぎないはずの武蔵が、どうして魔女の結界の中に現れたのか。
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:20:39.44 ID:5KwpK+um0
そういえば・・・
マミ 「お兄ちゃん、私を魔女から救ってくれた・・・」
あの出来事が夢でないのなら。
武蔵は魔女に食われる寸前の自分を救い、素手で魔女の突進を受け止めていた。
魔女が見えていたのだ。
自分の兄が、あの得体の知れない流竜馬とかいう男と同じように・・・
だが武蔵は
武蔵 「おう、お兄ちゃんだからな。妹の危機に駆けつけるのは当然じゃないかよ!」
マミの疑問になど意に介さず、ただにっこり笑うだけだった。
不思議な包容力と安心感を与えてくれる、そんな笑顔だった。
マミ 「お兄ちゃん、私を魔女から救ってくれた・・・」
あの出来事が夢でないのなら。
武蔵は魔女に食われる寸前の自分を救い、素手で魔女の突進を受け止めていた。
魔女が見えていたのだ。
自分の兄が、あの得体の知れない流竜馬とかいう男と同じように・・・
だが武蔵は
武蔵 「おう、お兄ちゃんだからな。妹の危機に駆けつけるのは当然じゃないかよ!」
マミの疑問になど意に介さず、ただにっこり笑うだけだった。
不思議な包容力と安心感を与えてくれる、そんな笑顔だった。
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:21:53.70 ID:5KwpK+um0
武蔵 「ところで・・・ここからはどう出たらいいんだろうな?」
マミ 「え・・・」
武蔵 「俺の仲間が化け物の相手を引き受けてくれてな。俺には安全なところまで引くように言われて来た道を戻ってきたんだけど・・・」
武蔵 「ここ、入る事はできても出る事はできないんだな。結局ここで立ち往生していたってワケだ」
マミ 「あ、それだったら・・・」
結界の主である魔女が倒れれば、自然と元の空間に戻る事ができる。
マミがそう言おうとした矢先だった。
謎の爆音が結界の奥から聞こえてきたのは。
マミ 「な、なに、あの音・・・!こっちに向かって近づいてきている!?」
マミ 「え・・・」
武蔵 「俺の仲間が化け物の相手を引き受けてくれてな。俺には安全なところまで引くように言われて来た道を戻ってきたんだけど・・・」
武蔵 「ここ、入る事はできても出る事はできないんだな。結局ここで立ち往生していたってワケだ」
マミ 「あ、それだったら・・・」
結界の主である魔女が倒れれば、自然と元の空間に戻る事ができる。
マミがそう言おうとした矢先だった。
謎の爆音が結界の奥から聞こえてきたのは。
マミ 「な、なに、あの音・・・!こっちに向かって近づいてきている!?」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:23:16.45 ID:5KwpK+um0
武蔵 「・・・おお」
マミ 「お兄ちゃん・・・?」
武蔵 「この音、この振動。忘れるわけがねぇ。やったな、やったんだな竜馬・・・!」
マミ 「竜馬って・・・あの、流竜馬・・・?そ、それよりも、この音が何か、お兄ちゃんには分かっているの?」
武蔵 「ああ、心配しなくていいぜ、マミちゃん。仲間がここにやってくるのさ」
マミ 「仲間・・・流竜馬のこと?」
武蔵 「ああ。しかも、強大な力を取り戻してな!」
マミ 「・・・」
音のする方。結界の奥へと目を向ける。
響いてくる爆音はますます大きくなり、もはやマミの鼓膜を破らんとするかのよう。
たまらず耳を塞ぐ。
そうしながらも目だけは逸らさず、見つめ続けた結界の奥から。
ついにそれは姿を現した。
マミ 「お兄ちゃん・・・?」
武蔵 「この音、この振動。忘れるわけがねぇ。やったな、やったんだな竜馬・・・!」
マミ 「竜馬って・・・あの、流竜馬・・・?そ、それよりも、この音が何か、お兄ちゃんには分かっているの?」
武蔵 「ああ、心配しなくていいぜ、マミちゃん。仲間がここにやってくるのさ」
マミ 「仲間・・・流竜馬のこと?」
武蔵 「ああ。しかも、強大な力を取り戻してな!」
マミ 「・・・」
音のする方。結界の奥へと目を向ける。
響いてくる爆音はますます大きくなり、もはやマミの鼓膜を破らんとするかのよう。
たまらず耳を塞ぐ。
そうしながらも目だけは逸らさず、見つめ続けた結界の奥から。
ついにそれは姿を現した。
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:24:15.47 ID:5KwpK+um0
猛スピードで突き進む巨体。
特徴的な突起のある頭部を持った、真紅の巨人。
マミ 「新手の魔女・・・?」
武蔵 「違う、ロボットだ!」
マミ 「ロボットって・・・」
武蔵 「ゲッターロボだっ!!」
ゲッターロボ 『うおおおおおっ、武蔵、伏せろおおおおおっ!!』
ロボットが雄叫びを上げる。
ゲッターロボ 『トマホークで結界の壁をぶち破る!!』
武蔵がマミを庇うように地に身を伏せる。
同時に彼らの頭上を飛び越えたロボットが、結界の壁に向かって手にした斧を振り下ろした!
ゲッターロボ 『ゲッターァァァアアアアア、トマホオオオオオオーーーーークッ!!!』
特徴的な突起のある頭部を持った、真紅の巨人。
マミ 「新手の魔女・・・?」
武蔵 「違う、ロボットだ!」
マミ 「ロボットって・・・」
武蔵 「ゲッターロボだっ!!」
ゲッターロボ 『うおおおおおっ、武蔵、伏せろおおおおおっ!!』
ロボットが雄叫びを上げる。
ゲッターロボ 『トマホークで結界の壁をぶち破る!!』
武蔵がマミを庇うように地に身を伏せる。
同時に彼らの頭上を飛び越えたロボットが、結界の壁に向かって手にした斧を振り下ろした!
ゲッターロボ 『ゲッターァァァアアアアア、トマホオオオオオオーーーーークッ!!!』
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:27:14.86 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
柔らかい感触。
優しく気遣うような、そんな感覚に心地よさを感じながら、私は眠りの世界から現実へと引き戻された。
うっすらと目を開けると、そこには心配そうに私を覗き込む少女の顔。
目覚めた私と視線がかち合い、パッと顔をほころばせる。
まどか 「あ・・・ほむらちゃん、気がついた!」
ほむら 「ま、まどか・・・?」
ぼんやりとする頭で状況を把握しようとする。
まどかの手が、私の頭の上に乗っかっていた。心地よい感触の正体は、これか。
・・・
柔らかい感触。
優しく気遣うような、そんな感覚に心地よさを感じながら、私は眠りの世界から現実へと引き戻された。
うっすらと目を開けると、そこには心配そうに私を覗き込む少女の顔。
目覚めた私と視線がかち合い、パッと顔をほころばせる。
まどか 「あ・・・ほむらちゃん、気がついた!」
ほむら 「ま、まどか・・・?」
ぼんやりとする頭で状況を把握しようとする。
まどかの手が、私の頭の上に乗っかっていた。心地よい感触の正体は、これか。
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:34:08.17 ID:5KwpK+um0
ほむら 「鹿目さん、手・・・」
まどか 「うぇひっ、ごめん。もしかして邪魔だったかな」
ほむら 「そうじゃなくて、どうして手、頭の上に・・・」
まどか 「あ、うん。ほむらちゃん、苦しそうにしてたから。心配で、そのね。ついつい頭、撫でちゃってたの」
ほむら 「・・・鹿目さん」
まどかの優しさに触れ感動しながらも、なぜ彼女に頭を撫でられていたのか。
思い出そうと、はっきりとしかけてきた頭に鞭打ち記憶の糸を手繰る。
まどか 「うぇひっ、ごめん。もしかして邪魔だったかな」
ほむら 「そうじゃなくて、どうして手、頭の上に・・・」
まどか 「あ、うん。ほむらちゃん、苦しそうにしてたから。心配で、そのね。ついつい頭、撫でちゃってたの」
ほむら 「・・・鹿目さん」
まどかの優しさに触れ感動しながらも、なぜ彼女に頭を撫でられていたのか。
思い出そうと、はっきりとしかけてきた頭に鞭打ち記憶の糸を手繰る。
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:35:36.97 ID:5KwpK+um0
確か私は・・・
魔女を倒そうと、お菓子の魔女の口の中に自ら飛び込んだんだった。
魔女の弱点を突き、内側から破壊するために。
ほむら 「だけれど・・・」
私を急に襲ったのは、謎の魔力消耗現象。
力が抜け、魔女の口の中から脱出する方法を失い・・・
ほむら 「っっ!!!」
はっとして、ソウルジェムを確認する。
だが、私の心配をよそに、ソウルジェムは一点の穢れも無く、美しく輝いていた。
ほむら 「どうして・・・?」
まるで狐につままれたよう。
魔女を倒そうと、お菓子の魔女の口の中に自ら飛び込んだんだった。
魔女の弱点を突き、内側から破壊するために。
ほむら 「だけれど・・・」
私を急に襲ったのは、謎の魔力消耗現象。
力が抜け、魔女の口の中から脱出する方法を失い・・・
ほむら 「っっ!!!」
はっとして、ソウルジェムを確認する。
だが、私の心配をよそに、ソウルジェムは一点の穢れも無く、美しく輝いていた。
ほむら 「どうして・・・?」
まるで狐につままれたよう。
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/11(木) 20:37:14.63 ID:5KwpK+um0
疑問に頭をひねる私に助け舟をよこす様に、まどかが語りかけてきた。
まどか 「マミさんがね、助けてくれたんだよ」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「ソウルジェム、濁っちゃうと大変なことになっちゃうんでしょ?ほむらちゃんも、危なかったみたい」
ほむら 「巴さんが、私を・・・?」
まどか 「うん、グリーフシードって言ったかな。それを使って、ほむらちゃんを助けてくれたの」
ほむら 「・・・」
改めて辺りを見回してみる。
ここは・・・
ほむら 「巴マミの寝室・・・?」
まどか 「マミさんがね、助けてくれたんだよ」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「ソウルジェム、濁っちゃうと大変なことになっちゃうんでしょ?ほむらちゃんも、危なかったみたい」
ほむら 「巴さんが、私を・・・?」
まどか 「うん、グリーフシードって言ったかな。それを使って、ほむらちゃんを助けてくれたの」
ほむら 「・・・」
改めて辺りを見回してみる。
ここは・・・
ほむら 「巴マミの寝室・・・?」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:39:03.53 ID:5KwpK+um0
まどか 「すごい、よく分かったね。そうだよ、ここはマミさんの家の寝室」
ほむら 「どうして・・・」
そう、私は巴マミの寝室のベットに寝かされて、まどかの看病を受けていたのだ。
だけれどどうして、こんな状況に・・・
ほむら 「っ!巴マミ・・・まどか、巴さんは無事!?」
まどか 「あ、うん・・・元気だよ?」
ほむら 「そ、そう・・・」
ほっと胸をなでおろす。
でも、だったらなおさら状況が分からない。
私が倒れ、巴マミも戦闘力を失い。
だけど二人とも無事で、私は助けられマミのベットの上でまどかの看病を受けている。
なぜ、こんな事が起こりえるのか。
ほむら 「どうして・・・」
そう、私は巴マミの寝室のベットに寝かされて、まどかの看病を受けていたのだ。
だけれどどうして、こんな状況に・・・
ほむら 「っ!巴マミ・・・まどか、巴さんは無事!?」
まどか 「あ、うん・・・元気だよ?」
ほむら 「そ、そう・・・」
ほっと胸をなでおろす。
でも、だったらなおさら状況が分からない。
私が倒れ、巴マミも戦闘力を失い。
だけど二人とも無事で、私は助けられマミのベットの上でまどかの看病を受けている。
なぜ、こんな事が起こりえるのか。
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:40:58.03 ID:5KwpK+um0
ほむら 「あ・・・」
思い起こしたのは、気を失う直前。
私に語りかけてきた、謎の声のことだ。
あの声は確かに言った。私が望むのなら、力を貸すと。
朦朧とした意識下で聞こえた幻聴なのでは、とも思ったが、現に私は生きてここにこうしている。
ほむら 「力を、与えてくれた・・・?」
そう、私は望んだのだ。
後戻りはできないと直感を得ながらも、力が欲しいと。
そして私は再び意識を失い、気がついたらここにこうして寝かされていた。
思い起こしたのは、気を失う直前。
私に語りかけてきた、謎の声のことだ。
あの声は確かに言った。私が望むのなら、力を貸すと。
朦朧とした意識下で聞こえた幻聴なのでは、とも思ったが、現に私は生きてここにこうしている。
ほむら 「力を、与えてくれた・・・?」
そう、私は望んだのだ。
後戻りはできないと直感を得ながらも、力が欲しいと。
そして私は再び意識を失い、気がついたらここにこうして寝かされていた。
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:43:40.24 ID:5KwpK+um0
あの後・・・
私が決断したその後で、一体何が起こったのか。
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
物思いに沈む私に、まどかが不安げな表情を浮かべた時だった。
こんこん。
部屋の外から扉が二度、叩かれたのは。
マミ (がちゃっ)「鹿目さん。暁美さんの様子はどう?・・・あら」
ほむら 「・・・」
まどか 「あ、マミさん。ほむらちゃん、さっき目が覚めたんですよ。だいじょうぶみたい。うぇひひっ」
私が決断したその後で、一体何が起こったのか。
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
物思いに沈む私に、まどかが不安げな表情を浮かべた時だった。
こんこん。
部屋の外から扉が二度、叩かれたのは。
マミ (がちゃっ)「鹿目さん。暁美さんの様子はどう?・・・あら」
ほむら 「・・・」
まどか 「あ、マミさん。ほむらちゃん、さっき目が覚めたんですよ。だいじょうぶみたい。うぇひひっ」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:47:19.97 ID:5KwpK+um0
マミ 「・・・具合はいかが?」
ほむら 「おかげさまで。まどかから聞いたわ。お世話になったようで、その・・・ありがとう」
マミ 「ううん、礼を言うのは私のほうよ。聞いたの。お兄ちゃ・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「・・・?」
マミ 「こほん・・・兄から。あなたと流君、本当に私の身を案じて、あの場に来てくれたんだって。だから・・・」
マミ 「ひどい事を言って・・・縛っちゃったりして。本当にごめんなさい。そして、ありがとう」
ほむら 「い、いいえ・・・私はただ・・・」
まどか 「うぇひひっ」にこにこ
思いもかけぬマミからの謝罪を受け、動揺しまくりの私をまどかがニコニコと見つめている。
先ほどからの友好的な様子からすると、まどかもある程度のあらましは聞いているようね・・・
ほむら 「おかげさまで。まどかから聞いたわ。お世話になったようで、その・・・ありがとう」
マミ 「ううん、礼を言うのは私のほうよ。聞いたの。お兄ちゃ・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「・・・?」
マミ 「こほん・・・兄から。あなたと流君、本当に私の身を案じて、あの場に来てくれたんだって。だから・・・」
マミ 「ひどい事を言って・・・縛っちゃったりして。本当にごめんなさい。そして、ありがとう」
ほむら 「い、いいえ・・・私はただ・・・」
まどか 「うぇひひっ」にこにこ
思いもかけぬマミからの謝罪を受け、動揺しまくりの私をまどかがニコニコと見つめている。
先ほどからの友好的な様子からすると、まどかもある程度のあらましは聞いているようね・・・
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:50:43.86 ID:5KwpK+um0
マミ 「でもね・・・」
一転、マミの声音に陰が落ちる。
マミ 「私はそれでも、あなたの事を信用しきれてはいないのよ」
まどか 「ま、マミさん・・・?」
マミ 「どんな理由があったにせよ、あなたが私の大切な友達を傷つけた。その事実に変わりはないわ」
ほむら 「・・・」
マミ 「なぜ暁美さんがキュウべぇを目の敵にするのか。それをあなた自身の口から聞かない事には、私は納得できない。それに・・・」
言いよどみ、言葉を濁すマミ。
ほむら 「なに・・・?」
マミ 「兄にも・・・魔女が見えていたようだった。あなたと一緒にいた、流君と同じように」
ほむら 「あ・・・」
マミに竜馬の名を出されて、改めて気がつく。
竜馬は今、どこに?
ほむら 「あの、巴さん。流君は今どうしているの?」
一転、マミの声音に陰が落ちる。
マミ 「私はそれでも、あなたの事を信用しきれてはいないのよ」
まどか 「ま、マミさん・・・?」
マミ 「どんな理由があったにせよ、あなたが私の大切な友達を傷つけた。その事実に変わりはないわ」
ほむら 「・・・」
マミ 「なぜ暁美さんがキュウべぇを目の敵にするのか。それをあなた自身の口から聞かない事には、私は納得できない。それに・・・」
言いよどみ、言葉を濁すマミ。
ほむら 「なに・・・?」
マミ 「兄にも・・・魔女が見えていたようだった。あなたと一緒にいた、流君と同じように」
ほむら 「あ・・・」
マミに竜馬の名を出されて、改めて気がつく。
竜馬は今、どこに?
ほむら 「あの、巴さん。流君は今どうしているの?」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:55:49.37 ID:5KwpK+um0
マミ 「居間で休んでもらっているわ」
ほむら 「彼を家に上げたの?」
意外だった。
マミ 「そこはほら、彼と兄は知り合いだったみたいだし、さ。それに、あんな事があって、流君だけ蚊帳の外になんて置けないでしょ」
ほむら 「あんなことって・・・?」
マミ 「それよりもよ。あなたはいったい何なの?キュウべぇを傷つけたと思ったら、私を助けに来たりして。一体何がしたいわけ?」
ほむら 「・・・言ったところで、あなたは納得してはくれないと思うのだけれど」
マミ 「・・・っ!」
私の一言に、マミの表情がたちまち険しくなる。
一瞬のうちに冷たく硬化してしまった部屋の空気に、おろおろしだすまどか。
まどか 「ほ、ほむらちゃんっ!ま・・・マミさん~」
マミ 「そう・・・なら好きになさい。今日の事はお互い貸し借りなし。これからの事は、互いに考えればいいことだわ」
ほむら 「・・・」
ほむら 「彼を家に上げたの?」
意外だった。
マミ 「そこはほら、彼と兄は知り合いだったみたいだし、さ。それに、あんな事があって、流君だけ蚊帳の外になんて置けないでしょ」
ほむら 「あんなことって・・・?」
マミ 「それよりもよ。あなたはいったい何なの?キュウべぇを傷つけたと思ったら、私を助けに来たりして。一体何がしたいわけ?」
ほむら 「・・・言ったところで、あなたは納得してはくれないと思うのだけれど」
マミ 「・・・っ!」
私の一言に、マミの表情がたちまち険しくなる。
一瞬のうちに冷たく硬化してしまった部屋の空気に、おろおろしだすまどか。
まどか 「ほ、ほむらちゃんっ!ま・・・マミさん~」
マミ 「そう・・・なら好きになさい。今日の事はお互い貸し借りなし。これからの事は、互いに考えればいいことだわ」
ほむら 「・・・」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 20:58:54.34 ID:5KwpK+um0
マミ 「具合が良くなったのなら、起きてらっしゃい。食事くらいご馳走するから・・・」
がちゃっ・・・
マミ 「・・・暁美さん」
部屋から出ようとしたマミが足を止め、再び顔をこちらへ向けた。
マミ 「あなたと流君が乗っていたロボット、あれはいったい何なの?」
ほむら 「・・・え?」
マミ 「あれはあなたの魔法少女としての力の一つなのかしら?正直、私にはそうは見えなかったのだけど・・・」
ほむら (・・・私がロボットに乗っていた?)
謎の声のセリフが、頭の中に蘇る。
私に力を与えると言った、竜馬をリョウと呼ぶ、誰とも知れない声。
ほむら (あの声の主・・・流君の仲間?だとしたら・・・)
マミ 「兄もあのロボットのことを知っているようだった。何だか私一人、蚊帳の外にいるみたい・・・」
ほむら (間違いない・・・)
マミ 「兄も、そのロボットの名前、知っていたのよ」
ほむら 「・・・」
マミ・ほむら 「ゲッターロボ」
がちゃっ・・・
マミ 「・・・暁美さん」
部屋から出ようとしたマミが足を止め、再び顔をこちらへ向けた。
マミ 「あなたと流君が乗っていたロボット、あれはいったい何なの?」
ほむら 「・・・え?」
マミ 「あれはあなたの魔法少女としての力の一つなのかしら?正直、私にはそうは見えなかったのだけど・・・」
ほむら (・・・私がロボットに乗っていた?)
謎の声のセリフが、頭の中に蘇る。
私に力を与えると言った、竜馬をリョウと呼ぶ、誰とも知れない声。
ほむら (あの声の主・・・流君の仲間?だとしたら・・・)
マミ 「兄もあのロボットのことを知っているようだった。何だか私一人、蚊帳の外にいるみたい・・・」
ほむら (間違いない・・・)
マミ 「兄も、そのロボットの名前、知っていたのよ」
ほむら 「・・・」
マミ・ほむら 「ゲッターロボ」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:00:42.04 ID:5KwpK+um0
マミがロボットの名を口にするのに被せ、私も声を重ねる。
図らずもはもって響いた二人の声に、まどかは目を白黒させている。
それはマミも同じ。
私もまた、自身が手に入れた力の正体に戸惑いを隠す事ができなかった。
図らずもはもって響いた二人の声に、まどかは目を白黒させている。
それはマミも同じ。
私もまた、自身が手に入れた力の正体に戸惑いを隠す事ができなかった。
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:03:05.99 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
ゲッターの話は、ひとまずここまでだった。
そのあと。
起きてきた私を待っていたのは、竜馬や武蔵。そして巴マミの手による、心づくしの料理の数々。
ほむら 「なにごと・・・」
竜馬 「暁美、もう起きてきて平気なのか?身体の具合は・・・?」
慌てたように駆け寄ってくる竜馬に、不思議な安堵感を覚える。
無事でいてくれたという気持ちと、私の側にいてくれる事への安心感。
ほむら 「・・・あ、ええ。心配かけたかしら。だったら、ごめんなさい。もうすっかり平気だから」
竜馬 「そ、そうか・・・巴マミもソウルジェムを浄化すれば心配ないとは言っていたんだが、無事な姿を見るまでは、どうもな」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「・・・」
・・・
ゲッターの話は、ひとまずここまでだった。
そのあと。
起きてきた私を待っていたのは、竜馬や武蔵。そして巴マミの手による、心づくしの料理の数々。
ほむら 「なにごと・・・」
竜馬 「暁美、もう起きてきて平気なのか?身体の具合は・・・?」
慌てたように駆け寄ってくる竜馬に、不思議な安堵感を覚える。
無事でいてくれたという気持ちと、私の側にいてくれる事への安心感。
ほむら 「・・・あ、ええ。心配かけたかしら。だったら、ごめんなさい。もうすっかり平気だから」
竜馬 「そ、そうか・・・巴マミもソウルジェムを浄化すれば心配ないとは言っていたんだが、無事な姿を見るまでは、どうもな」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「・・・」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:03:53.15 ID:5KwpK+um0
ほむら 「あ、それはそうと、流君」
竜馬 「なんだ?」
ほむら (後で話があるわ)こそっ
彼にしか聞こえない声で囁いた私に、竜馬が頷いて答える。
ほむら 「それで・・・」
改めて、辺りを見回す。
テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々。
ホカホカと、美味しそうに湯気を立てているのを見せ付けられては、私のお腹も鳴ってしまいそうだ。
そういえば、レーション以外のまともな食事なんて、退院以来このかた、満足には取っていなかったものね。
ほむら 「これは一体、何が始まろうとしているの?」
湧き上がる唾をバレないように飲み込みつつ、平静を装って側のまどかに聞いてみる。
まどか 「うぇひひっ、パーティーだよ」
ほむら 「パーティー??」
竜馬 「なんだ?」
ほむら (後で話があるわ)こそっ
彼にしか聞こえない声で囁いた私に、竜馬が頷いて答える。
ほむら 「それで・・・」
改めて、辺りを見回す。
テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々。
ホカホカと、美味しそうに湯気を立てているのを見せ付けられては、私のお腹も鳴ってしまいそうだ。
そういえば、レーション以外のまともな食事なんて、退院以来このかた、満足には取っていなかったものね。
ほむら 「これは一体、何が始まろうとしているの?」
湧き上がる唾をバレないように飲み込みつつ、平静を装って側のまどかに聞いてみる。
まどか 「うぇひひっ、パーティーだよ」
ほむら 「パーティー??」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:06:51.03 ID:5KwpK+um0
マミ 「あんな事があった後だけれど、せっかく昨日から料理の下ごしらえ頑張ったんだし、無駄にはしたくなかったから」
キッチンから、さらに追加の料理を運んできたマミが代わって答えた。
ほむら 「えっと、あの。もう少し分かるように説明してもらえると、ありがたいのだけれど・・・」
武蔵 「えへへへ・・・これは、俺の歓迎会なんだってさ」
マミは、今日はもともと帰国した武蔵の歓迎会を、まどかも交えた三人で行うつもりだったらしい。
そこに成り行き上、私と竜馬も呼ばれた形となってしまったということだった。
マミ 「暁美さん、食欲はある?この場にあなたがいるのも何かの縁、できれば兄の帰国を一緒に祝っていってもらいたいのだけど」
ほむら 「・・・私は別に、巴さんが良いと言うのなら」
キッチンから、さらに追加の料理を運んできたマミが代わって答えた。
ほむら 「えっと、あの。もう少し分かるように説明してもらえると、ありがたいのだけれど・・・」
武蔵 「えへへへ・・・これは、俺の歓迎会なんだってさ」
マミは、今日はもともと帰国した武蔵の歓迎会を、まどかも交えた三人で行うつもりだったらしい。
そこに成り行き上、私と竜馬も呼ばれた形となってしまったということだった。
マミ 「暁美さん、食欲はある?この場にあなたがいるのも何かの縁、できれば兄の帰国を一緒に祝っていってもらいたいのだけど」
ほむら 「・・・私は別に、巴さんが良いと言うのなら」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:08:18.09 ID:5KwpK+um0
まどか 「そうだよ。ほむらちゃんもご馳走になって行こう!こんなにたくさんの料理、ほむらちゃんたちもいないと食べきれないもの」
武蔵 「まぁ、俺だったら一人で全部食える自信、あるけれどな」
まどか 「うぇひひっ」
竜馬 「お前は黙ってろよ、武蔵。ていうかさ、俺も一緒にご馳走になっちまっても良いものなのか?」
マミ 「もちろんよ。あなたにも助けられたのですもの、お礼もかねて。それに、兄とは面識もあるみたいだし、遠慮は不要よ」
竜馬 「そうか。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
マミ 「もっとも、どこで兄の知己となりえたのか・・・そこははなはだ疑問なのだけれど・・・」
竜馬 「こっちの世界的には、今日が初対面って事になるんだろうがな」
マミ 「え・・・」
ほむら 「流君」
竜馬のこぼした言葉に、私は慌てて釘を刺す。
まだまだ分からない事は多いのだ。不確定な事で、巴マミを惑わせるのは得策じゃない。
武蔵 「まぁ、俺だったら一人で全部食える自信、あるけれどな」
まどか 「うぇひひっ」
竜馬 「お前は黙ってろよ、武蔵。ていうかさ、俺も一緒にご馳走になっちまっても良いものなのか?」
マミ 「もちろんよ。あなたにも助けられたのですもの、お礼もかねて。それに、兄とは面識もあるみたいだし、遠慮は不要よ」
竜馬 「そうか。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
マミ 「もっとも、どこで兄の知己となりえたのか・・・そこははなはだ疑問なのだけれど・・・」
竜馬 「こっちの世界的には、今日が初対面って事になるんだろうがな」
マミ 「え・・・」
ほむら 「流君」
竜馬のこぼした言葉に、私は慌てて釘を刺す。
まだまだ分からない事は多いのだ。不確定な事で、巴マミを惑わせるのは得策じゃない。
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:09:13.58 ID:5KwpK+um0
武蔵 「難しい話は後だぜ。マミちゃん、腹減ったよ!もう食べちゃっても良いのかい」
マミ 「あ・・・うん。暁美さん、いずれ話はきっちりさせてもらうわよ。でも今は・・・」
マミ 「頂きましょっ!」
気持ちを切り替えたとでも言うように、今までの難しい表情から一転。
マミの顔に笑顔が広がる。
兄の帰国が嬉しくてたまらない。そんな気持ちを隠そうともしない、無邪気な少女の顔。
ほむら 「巴さん・・・」
こんなマミの表情は、はじめて見たかもしれない。
マミ 「あ・・・うん。暁美さん、いずれ話はきっちりさせてもらうわよ。でも今は・・・」
マミ 「頂きましょっ!」
気持ちを切り替えたとでも言うように、今までの難しい表情から一転。
マミの顔に笑顔が広がる。
兄の帰国が嬉しくてたまらない。そんな気持ちを隠そうともしない、無邪気な少女の顔。
ほむら 「巴さん・・・」
こんなマミの表情は、はじめて見たかもしれない。
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:13:47.81 ID:5KwpK+um0
幼くして両親と死に別れ、それから彼女は一人で孤独と戦ってきた。
マミが魔女化してしまった時間軸もある。
その時間軸で彼女のソウルジェムを曇らせてしまったものは、孤独感から来る精神との葛藤の敗北だった。
ほむら (孤独は、彼女の最大の敵だった・・・)
それがこの時間軸では、武蔵という兄が存在している。
ほむら (武蔵は、巴マミの孤独を払拭しうる存在であってくれるのかしら・・・)
そうであることを願う。
マミを先輩と慕うまどかのためにも、私の目的のためにも。
そしてなにより、彼女自身のためにも・・・
マミ 「どうしたの、暁美さん。お箸、進んでないようだけれど。お口に合わなかったかしら」
ほむら 「・・・ううん、そんなことないわ。頂いています。とっても美味しい」
言いながら、手元の料理を一口二口。
口に中に広がるのは、かつては良く口にした、懐かしい味だった。
マミが魔女化してしまった時間軸もある。
その時間軸で彼女のソウルジェムを曇らせてしまったものは、孤独感から来る精神との葛藤の敗北だった。
ほむら (孤独は、彼女の最大の敵だった・・・)
それがこの時間軸では、武蔵という兄が存在している。
ほむら (武蔵は、巴マミの孤独を払拭しうる存在であってくれるのかしら・・・)
そうであることを願う。
マミを先輩と慕うまどかのためにも、私の目的のためにも。
そしてなにより、彼女自身のためにも・・・
マミ 「どうしたの、暁美さん。お箸、進んでないようだけれど。お口に合わなかったかしら」
ほむら 「・・・ううん、そんなことないわ。頂いています。とっても美味しい」
言いながら、手元の料理を一口二口。
口に中に広がるのは、かつては良く口にした、懐かしい味だった。
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:14:44.70 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
歓迎会が終わり・・・
私と竜馬。それにまどかの三人は、まどかの家への道を歩いていた。
日はとっくに暮れている。か弱いまどかを一人、家路につかせるのはあまりに心配だったから。
まどか 「何だかゴメンね。送ってもらっちゃって」
ほむら 「別に構わないわ。気にしないで」
まどか 「流君も、ありがとう」
竜馬 「おう」
まどか 「それと・・・ゴメンね」
ほむら 「・・・?どうしてそんなに、何度も謝るの?」
まどか 「えっと、ううん。これはさっきのとは違くて・・・あの・・・昨日、ね。私のこと、助けてくれたでしょ」
まどか 「それなのに私、あれからそっけない態度とっちゃって。悪かったなぁって・・・」
・・・
歓迎会が終わり・・・
私と竜馬。それにまどかの三人は、まどかの家への道を歩いていた。
日はとっくに暮れている。か弱いまどかを一人、家路につかせるのはあまりに心配だったから。
まどか 「何だかゴメンね。送ってもらっちゃって」
ほむら 「別に構わないわ。気にしないで」
まどか 「流君も、ありがとう」
竜馬 「おう」
まどか 「それと・・・ゴメンね」
ほむら 「・・・?どうしてそんなに、何度も謝るの?」
まどか 「えっと、ううん。これはさっきのとは違くて・・・あの・・・昨日、ね。私のこと、助けてくれたでしょ」
まどか 「それなのに私、あれからそっけない態度とっちゃって。悪かったなぁって・・・」
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:16:15.28 ID:5KwpK+um0
ほむら (まどか・・・)
だって、それは仕方がない。
まどかを守るためとはいえ、目の前でキュウべぇを殺そうとしたのだ。
事情を知らないまどかが警戒するのは、至極当然の事だもの。
まどか 「でもね、私。考えてたんだ。初めてほむらちゃんと喋った時、そして、さやかちゃんと話してるほむらちゃんを見て、ね」
まどか 「ほむらちゃん、本当はとっても優しい子なんだって。だからね、キュウべぇにひどい事をしたのも、何か事情があっての事なんだろうなって」
ほむら 「鹿目さん・・・」
まどか 「ねぇ、ほむらちゃん。なんで、あんな事をしたの?私、本当のことを知りたいよ。だってほむらちゃんの事、悪くなんて思いたくないもの」
・・・泣きそうになってしまう。
だけれど。
ほむら 「・・・鹿目さん。あなたは知らなくて良い事よ」
まどか 「え・・・」
だって、それは仕方がない。
まどかを守るためとはいえ、目の前でキュウべぇを殺そうとしたのだ。
事情を知らないまどかが警戒するのは、至極当然の事だもの。
まどか 「でもね、私。考えてたんだ。初めてほむらちゃんと喋った時、そして、さやかちゃんと話してるほむらちゃんを見て、ね」
まどか 「ほむらちゃん、本当はとっても優しい子なんだって。だからね、キュウべぇにひどい事をしたのも、何か事情があっての事なんだろうなって」
ほむら 「鹿目さん・・・」
まどか 「ねぇ、ほむらちゃん。なんで、あんな事をしたの?私、本当のことを知りたいよ。だってほむらちゃんの事、悪くなんて思いたくないもの」
・・・泣きそうになってしまう。
だけれど。
ほむら 「・・・鹿目さん。あなたは知らなくて良い事よ」
まどか 「え・・・」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:17:07.98 ID:5KwpK+um0
ほむら 「唯一つだけ。キュウべぇの甘言には決して惑わされないで。今日、巴マミは危うく死にかけた。魔法少女として生きるということは、こんな事が日常茶飯事に起こりえるという事よ」
まどか 「う、うん・・・あ、あの。だけれど、キュウべぇやマミさんはっ」
ほむら 「まどか」
まどか 「え・・・」
ほむら 「着いたわよ」
ずっと私の方を見ながら歩いていたので、気がつかなかったのだろう。
ここはすでに、まどかの家の前だった。
まどか 「あ・・・」
ほむら 「それじゃ、私たちはこれで。流君、行きましょ」
竜馬 「・・・ああ」
まどか 「う、うん・・・あ、あの。だけれど、キュウべぇやマミさんはっ」
ほむら 「まどか」
まどか 「え・・・」
ほむら 「着いたわよ」
ずっと私の方を見ながら歩いていたので、気がつかなかったのだろう。
ここはすでに、まどかの家の前だった。
まどか 「あ・・・」
ほむら 「それじゃ、私たちはこれで。流君、行きましょ」
竜馬 「・・・ああ」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:18:38.89 ID:5KwpK+um0
まどか 「ほ、ほむらちゃん!」
ほむら 「・・・今日は楽しかった。じゃ、鹿目さん。また明日、学校でね」
まどか 「あ・・・う・・・」
まどかの返事も待たずに、きびすを返す私。
まどかも、追いすがってまで何かを言ってくることはなかった。
しばらく歩いたのち。
まどかの家がもう見えなくなった頃、竜馬がボソッと呟いた。
竜馬 「お前も辛いな」
私は、それにも何も応えなかった。
ほむら 「・・・今日は楽しかった。じゃ、鹿目さん。また明日、学校でね」
まどか 「あ・・・う・・・」
まどかの返事も待たずに、きびすを返す私。
まどかも、追いすがってまで何かを言ってくることはなかった。
しばらく歩いたのち。
まどかの家がもう見えなくなった頃、竜馬がボソッと呟いた。
竜馬 「お前も辛いな」
私は、それにも何も応えなかった。
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:20:20.58 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
まどかを家まで送り届けたあと、竜馬と私は私の部屋へと向かった。
向かい合わせで座り、まずは安物の紅茶で唇を湿らせる。
竜馬 「やっと、ゆっくりと話せるな」
ほむら 「そうね。できれば武蔵さんにも同席して欲しかったのだけれど」
竜馬 「しかたがねぇさ。今日は、再会を喜ぶ妹から引き離すなんて、酷なマネはしたくねぇ。しかも、あんな事のあった後だしな」
ほむら 「わかっているわ」
竜馬 「ま、必要な事は後で俺から、武蔵には伝えておくさ。それに、今まで俺が知りえたことは、分かる範囲で説明もしておいた」
・・・
まどかを家まで送り届けたあと、竜馬と私は私の部屋へと向かった。
向かい合わせで座り、まずは安物の紅茶で唇を湿らせる。
竜馬 「やっと、ゆっくりと話せるな」
ほむら 「そうね。できれば武蔵さんにも同席して欲しかったのだけれど」
竜馬 「しかたがねぇさ。今日は、再会を喜ぶ妹から引き離すなんて、酷なマネはしたくねぇ。しかも、あんな事のあった後だしな」
ほむら 「わかっているわ」
竜馬 「ま、必要な事は後で俺から、武蔵には伝えておくさ。それに、今まで俺が知りえたことは、分かる範囲で説明もしておいた」
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:21:28.90 ID:5KwpK+um0
ほむら 「そう」
竜馬 「もっとも、巴マミが料理や暁美の様子見で側を離れた隙を突いてのことだ。随分と駆け足な説明になっちまったがな」
ほむら 「充分よ。疑問に思う事があれば聞いてくるでしょうし。・・・ところで」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「あなたの知っている武蔵さんに、妹や兄妹はいたの?」
竜馬 「聞いたことねぇな。あんな美人な妹がいたなら、絶対に自慢話の一つくらい聞かされていたはずさ」
ほむら 「ということは、流君と同じ、武蔵さんも。それどころか、巴マミまで・・・」
竜馬 「ああ。上手い具合にこの世界に入り込めるよう、過去が改変されているって事だな」
ほむら 「どこまでご都合主義的なのかしら」
竜馬 「もっとも、巴マミが料理や暁美の様子見で側を離れた隙を突いてのことだ。随分と駆け足な説明になっちまったがな」
ほむら 「充分よ。疑問に思う事があれば聞いてくるでしょうし。・・・ところで」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「あなたの知っている武蔵さんに、妹や兄妹はいたの?」
竜馬 「聞いたことねぇな。あんな美人な妹がいたなら、絶対に自慢話の一つくらい聞かされていたはずさ」
ほむら 「ということは、流君と同じ、武蔵さんも。それどころか、巴マミまで・・・」
竜馬 「ああ。上手い具合にこの世界に入り込めるよう、過去が改変されているって事だな」
ほむら 「どこまでご都合主義的なのかしら」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:22:13.55 ID:5KwpK+um0
竜馬 「武蔵の、こっちに来てから今までの事は、次に会った時に詳しく聞くとしようぜ。だから、今は・・・」
ほむら 「ええ。今は私たちの知りえた事のすり合わせをしてしまいましょう」
竜馬 「じゃ、まずはお前の話から聞かせて貰おうか。お前が化け物に飲み込まれてしまった後の話だ」
ほむら 「ええ」
私は頷いた。
まず竜馬に伝えねばならないのは、あの声の事だ。
ほむら 「声が・・・聞こえたのよ」
竜馬 「声?」
ほむら 「そう。魔女にわざと飲まれ内部から攻撃しようとした直後、私は例の急激な魔力の消耗に襲われた」
竜馬 「ああ。らしいな。あの白い奴もそう言っていた」
ほむら 「逃れようにも魔力が尽きてしまっては、魔法少女は万事休すよ。そんな時、私に囁きかける声がね、頭に響いてきたの」
竜馬 「そいつは、なんて?」
ほむら 「ええ。今は私たちの知りえた事のすり合わせをしてしまいましょう」
竜馬 「じゃ、まずはお前の話から聞かせて貰おうか。お前が化け物に飲み込まれてしまった後の話だ」
ほむら 「ええ」
私は頷いた。
まず竜馬に伝えねばならないのは、あの声の事だ。
ほむら 「声が・・・聞こえたのよ」
竜馬 「声?」
ほむら 「そう。魔女にわざと飲まれ内部から攻撃しようとした直後、私は例の急激な魔力の消耗に襲われた」
竜馬 「ああ。らしいな。あの白い奴もそう言っていた」
ほむら 「逃れようにも魔力が尽きてしまっては、魔法少女は万事休すよ。そんな時、私に囁きかける声がね、頭に響いてきたの」
竜馬 「そいつは、なんて?」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:23:26.79 ID:5KwpK+um0
ほむら 「私に死なれては困ると。あなたや武蔵さんをこの世界に呼び込んだ元凶だからって・・・」
竜馬 「・・・どういう事だ、それは、ちょいと聞き捨てならねぇな」
ほむら 「そいつは言った。私が望むなら力を貸すと。だから、私は望んだわ。力を・・・私はまどかを残して死ぬわけにはいかないのだから」
竜馬 「・・・」
ほむら 「そして声の主はあなたの事を、こう呼んでいたのよ。リョウって・・・」
竜馬 「・・・!!」
竜馬の顔色が変わる。
ほむら 「心当たり、ある?」
竜馬 「・・・ある。いや、わからねぇ。だが、俺をリョウと呼ぶ奴なんざ、だいぶ限られている。そいつ、まさか・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・どういう事だ、それは、ちょいと聞き捨てならねぇな」
ほむら 「そいつは言った。私が望むなら力を貸すと。だから、私は望んだわ。力を・・・私はまどかを残して死ぬわけにはいかないのだから」
竜馬 「・・・」
ほむら 「そして声の主はあなたの事を、こう呼んでいたのよ。リョウって・・・」
竜馬 「・・・!!」
竜馬の顔色が変わる。
ほむら 「心当たり、ある?」
竜馬 「・・・ある。いや、わからねぇ。だが、俺をリョウと呼ぶ奴なんざ、だいぶ限られている。そいつ、まさか・・・」
ほむら 「・・・」
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:24:13.70 ID:5KwpK+um0
竜馬 「・・・とりあえず、暁美。続けてくれ」
ほむら 「続けるも何も、そこまでよ。力を望んだ私は、再び意識を失い、気がついたら巴マミの寝室に寝かされていた」
ほむら 「だから、あの後で何が起こったのかを私は知らない。だけれど、巴さんから聞いたわ。私、ロボットに乗っていたんでしょ?」
竜馬 「ああ・・・そうだ」
ほむら 「ゲッターロボに」
竜馬 「ああ・・・」
ほむら 「わかるわ。本能が告げてくる。謎の声が私に与えた力、それこそがゲッターロボなんだって」
竜馬 「・・・」
ほむら 「もう、後戻りできないんだって・・・」
竜馬 「・・・そうか。まさかお前が後釜とはな」
ほむら 「・・・?それって・・・」
竜馬の意味深な一言に思わず口を挟んでしまうが、彼は意に介した風もなく、話を先へと進めてしまう。
竜馬 「じゃあ、次は俺の話だな。きっかけはキュウべぇだったよ」
ほむら 「え・・・?」
ほむら 「続けるも何も、そこまでよ。力を望んだ私は、再び意識を失い、気がついたら巴マミの寝室に寝かされていた」
ほむら 「だから、あの後で何が起こったのかを私は知らない。だけれど、巴さんから聞いたわ。私、ロボットに乗っていたんでしょ?」
竜馬 「ああ・・・そうだ」
ほむら 「ゲッターロボに」
竜馬 「ああ・・・」
ほむら 「わかるわ。本能が告げてくる。謎の声が私に与えた力、それこそがゲッターロボなんだって」
竜馬 「・・・」
ほむら 「もう、後戻りできないんだって・・・」
竜馬 「・・・そうか。まさかお前が後釜とはな」
ほむら 「・・・?それって・・・」
竜馬の意味深な一言に思わず口を挟んでしまうが、彼は意に介した風もなく、話を先へと進めてしまう。
竜馬 「じゃあ、次は俺の話だな。きっかけはキュウべぇだったよ」
ほむら 「え・・・?」
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:25:06.44 ID:5KwpK+um0
竜馬 「癪だがな。やつが俺にヒントを与えてくれたんだ。そして、俺も確信したぜ。ゲッターロボが今まで、どこにいたのか」
ほむら 「どこなの・・・?」
竜馬 「お前の便利なバックラーの中さ」
ほむら 「・・・」
私は驚かなかった。
今では分かる。これまでどころか、今この瞬間も。
ゲッターロボは私のバックラーの中に、その巨体を隠している事に。
竜馬 「あの時・・・」
竜馬は語りだした。
私が気を失った後、私の知りえなかった、あの空間で起こった事のあらましを。
ほむら 「どこなの・・・?」
竜馬 「お前の便利なバックラーの中さ」
ほむら 「・・・」
私は驚かなかった。
今では分かる。これまでどころか、今この瞬間も。
ゲッターロボは私のバックラーの中に、その巨体を隠している事に。
竜馬 「あの時・・・」
竜馬は語りだした。
私が気を失った後、私の知りえなかった、あの空間で起こった事のあらましを。
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:26:12.74 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
お前が化物に飲み込まれちまった後・・・
待てど暮らせど、その後の動きが何も無い。さすがに焦ったぜ。
お前を信じてはいたが、これは暁美にとって予期しない出来事が起こってるに違いないってな。
そんな時だ。どこからとも無く、あの白いのが現れたのは。
奴は明確にこそは言わなかったが、暗に俺にこう告げた。
暁美の変調は、俺とお前の共通点にあるのじゃないかってな。
ほむら 「流君との、共通点?それって・・・」
ああ、ゲッターだ。
そうとしか考えられなかった俺は、ゲッターは暁美とともにあると確信した。
今となっちゃ、考えの飛躍もはなはだしくも思う。だがな。
それで、正解だったんだよ。
・・・
お前が化物に飲み込まれちまった後・・・
待てど暮らせど、その後の動きが何も無い。さすがに焦ったぜ。
お前を信じてはいたが、これは暁美にとって予期しない出来事が起こってるに違いないってな。
そんな時だ。どこからとも無く、あの白いのが現れたのは。
奴は明確にこそは言わなかったが、暗に俺にこう告げた。
暁美の変調は、俺とお前の共通点にあるのじゃないかってな。
ほむら 「流君との、共通点?それって・・・」
ああ、ゲッターだ。
そうとしか考えられなかった俺は、ゲッターは暁美とともにあると確信した。
今となっちゃ、考えの飛躍もはなはだしくも思う。だがな。
それで、正解だったんだよ。
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:27:02.61 ID:5KwpK+um0
俺は呼びかけた。魔女の身体越しに、その中にいるお前に。
お前とともにいるであろう、ゲッターロボに。
・・・そして俺の声に応えて、ゲッターは姿を現した。
ほむら 「・・・どこから?」
魔女の身体の中からだ。
お前のバックラーに収まっていたゲッターが、魔女の中で顕現したのさ。
当然、ゲッターの巨体を化物が飲み込んでいられるはずも無い。
魔女の身体は四散し、後に残ったのはゲッターロボのみだったって訳さ。
お前とともにいるであろう、ゲッターロボに。
・・・そして俺の声に応えて、ゲッターは姿を現した。
ほむら 「・・・どこから?」
魔女の身体の中からだ。
お前のバックラーに収まっていたゲッターが、魔女の中で顕現したのさ。
当然、ゲッターの巨体を化物が飲み込んでいられるはずも無い。
魔女の身体は四散し、後に残ったのはゲッターロボのみだったって訳さ。
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:28:37.83 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
ほむら 「え・・・それじゃ、私はその時いったいどこにいたの?」
竜馬 「・・・ちゃっかり、ゲッターのコクピットに収まってたよ」
ほむら 「すでに、ゲッターのコクピット・・・操縦席に・・・」
竜馬 「ああ。前にも言ったと思うが、ゲッターロボは本来三人乗りだ」
ほむら 「ええ、聞いたわ」
竜馬 「ゲッターロボはもともと三機のロケットマシンでな。それが合体して一体のロボット、ゲッターが誕生する。つまり、ゲッターには三箇所のコクピットがあるってわけだ」
ほむら 「流君が乗るべき操縦席と、武蔵さんの席と・・・」
竜馬 「そう。そして、後一つ。お前はその中で気を失っていたんだよ、暁美」
ほむら 「ということは・・・そこって・・・」
竜馬 「ああ。もう一人の仲間・・・神隼人が乗っていた、ゲッター2の操縦席だ」
・・・
ほむら 「え・・・それじゃ、私はその時いったいどこにいたの?」
竜馬 「・・・ちゃっかり、ゲッターのコクピットに収まってたよ」
ほむら 「すでに、ゲッターのコクピット・・・操縦席に・・・」
竜馬 「ああ。前にも言ったと思うが、ゲッターロボは本来三人乗りだ」
ほむら 「ええ、聞いたわ」
竜馬 「ゲッターロボはもともと三機のロケットマシンでな。それが合体して一体のロボット、ゲッターが誕生する。つまり、ゲッターには三箇所のコクピットがあるってわけだ」
ほむら 「流君が乗るべき操縦席と、武蔵さんの席と・・・」
竜馬 「そう。そして、後一つ。お前はその中で気を失っていたんだよ、暁美」
ほむら 「ということは・・・そこって・・・」
竜馬 「ああ。もう一人の仲間・・・神隼人が乗っていた、ゲッター2の操縦席だ」
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:30:30.45 ID:5KwpK+um0
ほむら 「ジン・・・ハヤト・・・」
初めて聞く名。
それなのに、なぜかとても懐かしい響き。
神隼人・・・
ほむら 「力を望んだ私が、かつては神という人の乗っていた操縦席に座っていた・・・」
竜馬 「そうだ」
ほむら 「不思議な感じ・・・ね、流君。何となくだけれど、私は思うの。私が聞いた、謎の声って、その神っていう人なんじゃないかって」
竜馬 「ああ、俺もご同様にそう思っていたところだ。だがな・・・」
彼が次に続けようとしている言葉は、何となく分かっていた。
竜馬 「奴はとうに死んでいる」
予想通りだった。
ほむら 「さっき流君が言っていた、後釜ってそういう事ね」
竜馬 「ああ。隼人が暁美に語りかけ、自分がかつて座っていたコクピットを明け渡す。話の筋は通る」
ほむら 「でも、それが正しいとして、すでに死んでしまった人が、どうやって私に話しかけてきたのかしら」
竜馬 「・・・わからねぇ。ともかく、今は話を先に進めるぜ」
初めて聞く名。
それなのに、なぜかとても懐かしい響き。
神隼人・・・
ほむら 「力を望んだ私が、かつては神という人の乗っていた操縦席に座っていた・・・」
竜馬 「そうだ」
ほむら 「不思議な感じ・・・ね、流君。何となくだけれど、私は思うの。私が聞いた、謎の声って、その神っていう人なんじゃないかって」
竜馬 「ああ、俺もご同様にそう思っていたところだ。だがな・・・」
彼が次に続けようとしている言葉は、何となく分かっていた。
竜馬 「奴はとうに死んでいる」
予想通りだった。
ほむら 「さっき流君が言っていた、後釜ってそういう事ね」
竜馬 「ああ。隼人が暁美に語りかけ、自分がかつて座っていたコクピットを明け渡す。話の筋は通る」
ほむら 「でも、それが正しいとして、すでに死んでしまった人が、どうやって私に話しかけてきたのかしら」
竜馬 「・・・わからねぇ。ともかく、今は話を先に進めるぜ」
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:32:07.81 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
ゲッターが現れた後。
俺はゲッター2・・・ジャガー号のコクピットで気を失っているお前を発見した。
慌ててソウルジェムを確認したら、案の定だ。黒く濁りかかっている。
俺ではどうしようもない。ともかく、この場から脱出する事が先決だ。
そう考えた俺はゲッターに飛び乗り、結界の入り口まで急行したあと、入り口を破壊して現実世界へと帰還したって訳だ。
ほむら 「・・・わざわざ結界を破壊したの?」
ああ。
お前は気を失っている。巴マミも目は覚ましていたようだが、覚醒直後で本調子じゃない。
ゲッターで入り口をこじ開けるのが一番手っ取り早いと思ったんだ。
ほむら 「結界は魔女が死んだら、程なく消滅するのだけれど。一緒に魔女を倒した時、見ていなかった?」
え・・・
あ、焦ってたんだよ、あの時は。
・・・そして、結界から出るのと同時だったぜ。ゲッターが跡形もなく、消えてしまったのは。
実際は、お前のバックラーの中に戻ったんだろうがな。
どうやらこっちの世界では、ゲッターは魔女の結界の中以外では活動できないらしい。
・・・
ゲッターが現れた後。
俺はゲッター2・・・ジャガー号のコクピットで気を失っているお前を発見した。
慌ててソウルジェムを確認したら、案の定だ。黒く濁りかかっている。
俺ではどうしようもない。ともかく、この場から脱出する事が先決だ。
そう考えた俺はゲッターに飛び乗り、結界の入り口まで急行したあと、入り口を破壊して現実世界へと帰還したって訳だ。
ほむら 「・・・わざわざ結界を破壊したの?」
ああ。
お前は気を失っている。巴マミも目は覚ましていたようだが、覚醒直後で本調子じゃない。
ゲッターで入り口をこじ開けるのが一番手っ取り早いと思ったんだ。
ほむら 「結界は魔女が死んだら、程なく消滅するのだけれど。一緒に魔女を倒した時、見ていなかった?」
え・・・
あ、焦ってたんだよ、あの時は。
・・・そして、結界から出るのと同時だったぜ。ゲッターが跡形もなく、消えてしまったのは。
実際は、お前のバックラーの中に戻ったんだろうがな。
どうやらこっちの世界では、ゲッターは魔女の結界の中以外では活動できないらしい。
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:33:39.80 ID:5KwpK+um0
・・・
・・・
竜馬 「と、こんなところだな。後は、鹿目から説明を受けただろ。俺たちは外で待っていた鹿目と合流。巴マミの家へと向かった」
ほむら 「巴さんからは、グリーフシードの施しを受けた上で、ね」
竜馬 「そういう言い方はよせよ。武蔵から色々聞いたんだろうがよ、お前のことを心底心配そうにしてたんだぜ」
ほむら 「・・・うん」
竜馬 「今日接してみて思ったが、良い奴みたいだな、巴マミ。出会って間もない鹿目も、すっかり心を開いているようだし」
ほむら 「・・・そんなの、言われなくたって知っているわ」
竜馬 「そうだったな。お前、巴マミのこと、けっこう好きなんだろう」
ほむら 「な、なによ、藪から棒に」
竜馬 「明るく振舞う巴マミを見ながら、お前まで笑顔を浮かべていたぜ。気づいていたか?」
ほむら 「・・・」
・・・
竜馬 「と、こんなところだな。後は、鹿目から説明を受けただろ。俺たちは外で待っていた鹿目と合流。巴マミの家へと向かった」
ほむら 「巴さんからは、グリーフシードの施しを受けた上で、ね」
竜馬 「そういう言い方はよせよ。武蔵から色々聞いたんだろうがよ、お前のことを心底心配そうにしてたんだぜ」
ほむら 「・・・うん」
竜馬 「今日接してみて思ったが、良い奴みたいだな、巴マミ。出会って間もない鹿目も、すっかり心を開いているようだし」
ほむら 「・・・そんなの、言われなくたって知っているわ」
竜馬 「そうだったな。お前、巴マミのこと、けっこう好きなんだろう」
ほむら 「な、なによ、藪から棒に」
竜馬 「明るく振舞う巴マミを見ながら、お前まで笑顔を浮かべていたぜ。気づいていたか?」
ほむら 「・・・」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:34:30.79 ID:5KwpK+um0
竜馬 「暁美、お前も思ったよりは、良い奴だったんだな」
ほむら 「なによそれ、褒めてるの?けなしてるの?」
竜馬 「褒めてるんだよ。言葉は素直に受け取るもんだ。さて、それはともかくとして、だ」
ほむら 「なによ」
竜馬 「巴マミ・・・なんとか助力を得られるような運びに、話をもって行けないもんかなってな」
ほむら 「・・・そうね」
ある時は孤独に苛まされ。
またある時は、突きつけられた現実を受け入れられずに、暴走してしまう巴マミ。
なまじ実力があるだけに、そうなってしまっては非常に厄介な彼女だったけれど。
味方になってくれれば、これほど心強い相手はいないだろう。
そう、もしかしたら、この時間軸では・・・
竜馬 「暁美?」
ほむら 「この件については、後で考えをまとめておくわ」
竜馬 「ああ。じゃあ、残る懸念点は・・・」
ほむら 「私の、謎の魔力消耗現象、ね」
ほむら 「なによそれ、褒めてるの?けなしてるの?」
竜馬 「褒めてるんだよ。言葉は素直に受け取るもんだ。さて、それはともかくとして、だ」
ほむら 「なによ」
竜馬 「巴マミ・・・なんとか助力を得られるような運びに、話をもって行けないもんかなってな」
ほむら 「・・・そうね」
ある時は孤独に苛まされ。
またある時は、突きつけられた現実を受け入れられずに、暴走してしまう巴マミ。
なまじ実力があるだけに、そうなってしまっては非常に厄介な彼女だったけれど。
味方になってくれれば、これほど心強い相手はいないだろう。
そう、もしかしたら、この時間軸では・・・
竜馬 「暁美?」
ほむら 「この件については、後で考えをまとめておくわ」
竜馬 「ああ。じゃあ、残る懸念点は・・・」
ほむら 「私の、謎の魔力消耗現象、ね」
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 21:35:51.52 ID:5KwpK+um0
竜馬 「そうだな。そいつのせいで、お前は満足に戦えないどころか、常に魔女化の危険にさらされ続けているって訳だからな」
ほむら 「たまったものではないわ。戦えない魔法少女なんて、いったいどんな存在意義があるっていうのよ・・・」
竜馬 「・・・解決策はともかく、原因はもしかしたら掴めたかも知れないぜ」
ほむら 「え・・・」
竜馬の意外な一言に、私の目が丸くなる。
当の本人でも見当のつかない事が、魔法少女ですらない竜馬に解明できるなんて、とても思えないのだけれど・・・
ほむら 「どういうことなの?詳しく話してくれないかしら」
竜馬 「それなんだが、武蔵も交えて明日にでも仕切りなおさないか。武蔵の今までのことも、聞いてみたいだろ?」
ほむら 「それは、まぁ・・・」
竜馬 「あくまでも仮説だ。あまり期待されすぎても困るが、まぁ・・・良い線ついてるとは思うぜ」
ほむら 「分かったわ。あなたの言うとおりにしましょう」
頷くと、竜馬は残った紅茶を一気に喉に流し込んで、立ち上がった。
竜馬 「じゃ、明日な」
そう言って出て行く竜馬を、私は後ろ髪を引かれる思いで見送ったのだった。
ほむら 「たまったものではないわ。戦えない魔法少女なんて、いったいどんな存在意義があるっていうのよ・・・」
竜馬 「・・・解決策はともかく、原因はもしかしたら掴めたかも知れないぜ」
ほむら 「え・・・」
竜馬の意外な一言に、私の目が丸くなる。
当の本人でも見当のつかない事が、魔法少女ですらない竜馬に解明できるなんて、とても思えないのだけれど・・・
ほむら 「どういうことなの?詳しく話してくれないかしら」
竜馬 「それなんだが、武蔵も交えて明日にでも仕切りなおさないか。武蔵の今までのことも、聞いてみたいだろ?」
ほむら 「それは、まぁ・・・」
竜馬 「あくまでも仮説だ。あまり期待されすぎても困るが、まぁ・・・良い線ついてるとは思うぜ」
ほむら 「分かったわ。あなたの言うとおりにしましょう」
頷くと、竜馬は残った紅茶を一気に喉に流し込んで、立ち上がった。
竜馬 「じゃ、明日な」
そう言って出て行く竜馬を、私は後ろ髪を引かれる思いで見送ったのだった。
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/12(金) 21:03:31.67 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
翌日。
校門を潜った辺りで、登校してきたまどかとさやかと鉢合わせた。
爽やかな陽光に照らされて、一層映えるまどかの笑顔。
朝一番から素晴らしい物が見られたお陰で、何だか今日は良い事でも起こりそうな予感。
まどか 「おはよう、ほむらちゃん!」
手を振って駆けて来るまどか。今朝も元気ね。そんな無邪気な仕草もたまらない。
それとは対照的に、何だか美樹さやかの顔には生気が足りないよう。
さやか 「おはよ、暁美さん」
ほむら 「おはよう・・・」
にっこりと挨拶をしてくれたさやかだけれど、無理して作った笑顔である事は一目瞭然だ。
・・・
翌日。
校門を潜った辺りで、登校してきたまどかとさやかと鉢合わせた。
爽やかな陽光に照らされて、一層映えるまどかの笑顔。
朝一番から素晴らしい物が見られたお陰で、何だか今日は良い事でも起こりそうな予感。
まどか 「おはよう、ほむらちゃん!」
手を振って駆けて来るまどか。今朝も元気ね。そんな無邪気な仕草もたまらない。
それとは対照的に、何だか美樹さやかの顔には生気が足りないよう。
さやか 「おはよ、暁美さん」
ほむら 「おはよう・・・」
にっこりと挨拶をしてくれたさやかだけれど、無理して作った笑顔である事は一目瞭然だ。
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/12(金) 21:05:44.08 ID:9yblXWnv0
彼女の作り笑いは、普段が元気なさやかなだけに、見ていて非常に痛々しい。
さやかが元気を失う原因といえば、大体は見当がつくのだけれど。
私は一応、まどかに探りを入れてみる。
ほむら 「鹿目さん、美樹さんはどうかしたの」(こそっ)
まどか 「あ・・・うん。やっぱりほむらちゃんにも分かっちゃう?」
ほむら 「ええ、お芝居下手よね。無理して普段通りにしようとしているのが、見え見えだわ」
まどか 「そっかぁ・・・うん、えっとね。さやかちゃん、私にも何も言ってくれないんだけれど、たぶん上条君の事だと思うんだ」
・・・やっぱり。
さやかが元気を失う原因といえば、大体は見当がつくのだけれど。
私は一応、まどかに探りを入れてみる。
ほむら 「鹿目さん、美樹さんはどうかしたの」(こそっ)
まどか 「あ・・・うん。やっぱりほむらちゃんにも分かっちゃう?」
ほむら 「ええ、お芝居下手よね。無理して普段通りにしようとしているのが、見え見えだわ」
まどか 「そっかぁ・・・うん、えっとね。さやかちゃん、私にも何も言ってくれないんだけれど、たぶん上条君の事だと思うんだ」
・・・やっぱり。
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:08:34.26 ID:9yblXWnv0
まどか 「あ、上条君っていうのはね、今は入院してるんだけれど、さやかちゃんの幼馴染の男の子で・・・」
上条恭介。
さやかが魔法少女となる場合、彼女が望む願いは上条恭介の怪我の快癒、ただそれのみだった。
時間軸によって願いの内容が変わるまどかとは対照的で、それだけさやかの上条恭介に対する思いの深さがうかがえる。
将来を嘱望されたバイオリニストであり、美樹さやかの幼馴染にして想い人・・・
そして・・・
まどか 「・・・昨日の放課後も、さやかちゃん。お見舞いに行ったみたいなんだけど・・・」
人の恋路に口を出すほど野暮でもないし、暇でもないけれど・・・
まどか 「えっと、ほむらちゃん。聞いてる?」
ほむら 「あ、ええ・・・」
上条恭介。
さやかが魔法少女となる場合、彼女が望む願いは上条恭介の怪我の快癒、ただそれのみだった。
時間軸によって願いの内容が変わるまどかとは対照的で、それだけさやかの上条恭介に対する思いの深さがうかがえる。
将来を嘱望されたバイオリニストであり、美樹さやかの幼馴染にして想い人・・・
そして・・・
まどか 「・・・昨日の放課後も、さやかちゃん。お見舞いに行ったみたいなんだけど・・・」
人の恋路に口を出すほど野暮でもないし、暇でもないけれど・・・
まどか 「えっと、ほむらちゃん。聞いてる?」
ほむら 「あ、ええ・・・」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:10:46.45 ID:9yblXWnv0
さやか 「なになにー。なに二人でコソコソ話してるのよ。これは妖しい関係の匂いがしますなぁ」
まどか 「やだ、そんなんじゃないよ。うぇひひ」
彼女の様子からすると、昨日上条恭介の見舞いに行った場で、彼から何か言われたのだろう。
何を言われたのかは・・・大体想像がつく。
・・・私は上条恭介という男が、正直好きではなかった。
さやか 「どうしたのよ、難しい顔して」
ほむら 「いえ、べつに」
さやか 「お腹でも痛い?それとも何か、心配事でもあるの?」
ほむら 「まぁ・・・」
後者ね。とは、口に出しては言わなかったけれど。
さやかが上条恭介の事で思い悩んでいる時は、彼女から目を離せない。
なぜなら、ヤツがさやかの弱った心の隙を突きにやってくる可能性が高いのだから。
まどか 「やだ、そんなんじゃないよ。うぇひひ」
彼女の様子からすると、昨日上条恭介の見舞いに行った場で、彼から何か言われたのだろう。
何を言われたのかは・・・大体想像がつく。
・・・私は上条恭介という男が、正直好きではなかった。
さやか 「どうしたのよ、難しい顔して」
ほむら 「いえ、べつに」
さやか 「お腹でも痛い?それとも何か、心配事でもあるの?」
ほむら 「まぁ・・・」
後者ね。とは、口に出しては言わなかったけれど。
さやかが上条恭介の事で思い悩んでいる時は、彼女から目を離せない。
なぜなら、ヤツがさやかの弱った心の隙を突きにやってくる可能性が高いのだから。
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:17:52.98 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
教室。
二時間目も終ろうという頃になって、やっと竜馬が登校してきた。
遅刻をしておきながら、悠々と自分の席へと向かう姿は、さすが大物の風格だ。
・・・その面の皮、少しは分けて貰いたいくらい。
そして、時間は進んで昼休み。
何食わぬ顔で、彼は私に話しかけてくる。
・・・まったく。
竜馬 「よ」
ほむら 「今日はどうしたの?また、魔女の結界を探していたのかしら」
竜馬 「いや、魔女退治は少し休んだ方がいいだろう。戦う度に魔力が枯渇されたんじゃ、お互いたまったものではないしな」
ほむら 「そうね。じゃあ、今日はどうして遅れたの?悪目立ちはよしてって、言ってあったはずなのに」
竜馬 「そう言うなって。こっそり武蔵と会ってきたんだからよ」
ほむら 「あら・・・」
・・・
教室。
二時間目も終ろうという頃になって、やっと竜馬が登校してきた。
遅刻をしておきながら、悠々と自分の席へと向かう姿は、さすが大物の風格だ。
・・・その面の皮、少しは分けて貰いたいくらい。
そして、時間は進んで昼休み。
何食わぬ顔で、彼は私に話しかけてくる。
・・・まったく。
竜馬 「よ」
ほむら 「今日はどうしたの?また、魔女の結界を探していたのかしら」
竜馬 「いや、魔女退治は少し休んだ方がいいだろう。戦う度に魔力が枯渇されたんじゃ、お互いたまったものではないしな」
ほむら 「そうね。じゃあ、今日はどうして遅れたの?悪目立ちはよしてって、言ってあったはずなのに」
竜馬 「そう言うなって。こっそり武蔵と会ってきたんだからよ」
ほむら 「あら・・・」
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:19:51.77 ID:9yblXWnv0
竜馬 「巴マミのいない場で話したかったからな。今日の話し合いの段取りとかをさ。で、今晩。またお前の部屋でって事で詰めてきたんだが、問題ないよな?」
ほむら 「ええ、巴マミがあっさり外出を許してくれれば良いのだけれどね」
竜馬 「そこはそれだ。俺たちと会うってんじゃ警戒されるだろうからな。上手くごまかして来るように、念を押しておいたぜ」
ほむら 「さすが、ぬかりがないわね。じゃ、頃合を見て私の部屋へ。武蔵さんは流君が案内してきてくれるんでしょう?」
竜馬 「そりゃ構わないが、なんでわざわざ別行動なんだ?一緒に行けばいいじゃねぇか」
ほむら 「うん・・・」
わたしはちらりと、視線を動かす。
その先には、まどかと談笑する美樹さやか。
表面上は明るくふるまってはいる様だけれど・・・
竜馬 「鹿目がどうかしたか?」
ほむら 「いえ・・・まどかと一緒にいる子の方よ」
ほむら 「ええ、巴マミがあっさり外出を許してくれれば良いのだけれどね」
竜馬 「そこはそれだ。俺たちと会うってんじゃ警戒されるだろうからな。上手くごまかして来るように、念を押しておいたぜ」
ほむら 「さすが、ぬかりがないわね。じゃ、頃合を見て私の部屋へ。武蔵さんは流君が案内してきてくれるんでしょう?」
竜馬 「そりゃ構わないが、なんでわざわざ別行動なんだ?一緒に行けばいいじゃねぇか」
ほむら 「うん・・・」
わたしはちらりと、視線を動かす。
その先には、まどかと談笑する美樹さやか。
表面上は明るくふるまってはいる様だけれど・・・
竜馬 「鹿目がどうかしたか?」
ほむら 「いえ・・・まどかと一緒にいる子の方よ」
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:24:09.56 ID:9yblXWnv0
竜馬 「えっと・・・なんつったかな。み・・・みき・・・?」
ほむら 「美樹さやか。まどかの親友よ。覚えてあげてね」
竜馬 「へぇへぇ」
ほむら 「かつて、私とともに魔女と戦った、魔法少女のひとりなんだから」
竜馬 「・・・!」
ほむら 「別の時間軸での話だけれどね。今はまだキュウべぇとも接触していないようだし、魔女の存在も知らない普通の女の子でしかないわ」
竜馬 「今はまだ・・・か」
ほむら 「ええ。彼女の心は今、おそらく不安定な状態にある。キュウべぇの甘言に取り込まれる危険性が高いの」
竜馬 「おそらくって、どういうことだ?確信を持てるわけじゃないって事か?」
ほむら 「美樹さやか。まどかの親友よ。覚えてあげてね」
竜馬 「へぇへぇ」
ほむら 「かつて、私とともに魔女と戦った、魔法少女のひとりなんだから」
竜馬 「・・・!」
ほむら 「別の時間軸での話だけれどね。今はまだキュウべぇとも接触していないようだし、魔女の存在も知らない普通の女の子でしかないわ」
竜馬 「今はまだ・・・か」
ほむら 「ええ。彼女の心は今、おそらく不安定な状態にある。キュウべぇの甘言に取り込まれる危険性が高いの」
竜馬 「おそらくって、どういうことだ?確信を持てるわけじゃないって事か?」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/12(金) 21:29:26.41 ID:9yblXWnv0
ほむら 「今までの時間軸での経験則よ。美樹さやかはおそらく、放課後に病院へ向かうはず。入院している幼馴染の男の子を見舞いにね」
竜馬 「ふ・・・ん」
何かを察したのか、竜馬が幾分声を落とす。
竜馬 「・・・後でもつけるか?」
ほむら 「まさか。だって、クラスメイトなのよ」
軽く竜馬に笑って見せると、私は席を立ち、美樹さやかの元へと向かった。
まどかと話していたさやかが、私の気配に気がつき、顔をこちらへと向ける。
にこりと微笑んで迎えてくれたが、その笑顔に張り付いたわざとらしさが、私には不憫に感じられてならない。
さやか 「おや、暁美さんじゃないですか。私たちに何かご用ですかな」
ほむら 「ええ。美樹さんって、たしか上条恭介君の幼馴染だったわよね」
さやか 「え・・・そ、そうだけど、なんであんたが恭介の事を・・・」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:31:02.46 ID:9yblXWnv0
ほむら 「深い意味はないの。鹿目さんから聞いたのよ。あなたと上条君は仲が良いって・・・ね?」
まどか 「うぇひっ!?」
さやか 「そうなの、まどか?」
まどか 「う・・・うぇひひひ・・・え、ええと・・・うん・・・」
ほむら 「入院しているって、聞いたわ」
さやか 「うん、まぁ・・・ちょっと事故でね・・・」
ほむら 「それでね、このクラスで顔を合わせてないのは上条君だけだし、挨拶もかねて、一度お見舞いでも・・・と、思ったのよ」
さやか 「暁美さんが?恭介のお見舞いに?なんで・・・!?」
ほむら 「クラスメイトだもの、心配するのは当然でしょう。いけないかしら」
さやか 「いや、いけないとか、いけなくないとか、私からはそういうの、なんとも言えないけどさ・・・」
ほむら 「じゃ、良いのね。では、今日にでも早速。放課後、ご一緒させてもらうわね」
さやか 「・・・え、今日!?早速!?」
ほむら 「今日もお見舞い、行くんでしょ?鹿目さんから聞いたわよ」
まどか 「う・・・うぇひひひ・・・」(ひくひく)
まどか 「うぇひっ!?」
さやか 「そうなの、まどか?」
まどか 「う・・・うぇひひひ・・・え、ええと・・・うん・・・」
ほむら 「入院しているって、聞いたわ」
さやか 「うん、まぁ・・・ちょっと事故でね・・・」
ほむら 「それでね、このクラスで顔を合わせてないのは上条君だけだし、挨拶もかねて、一度お見舞いでも・・・と、思ったのよ」
さやか 「暁美さんが?恭介のお見舞いに?なんで・・・!?」
ほむら 「クラスメイトだもの、心配するのは当然でしょう。いけないかしら」
さやか 「いや、いけないとか、いけなくないとか、私からはそういうの、なんとも言えないけどさ・・・」
ほむら 「じゃ、良いのね。では、今日にでも早速。放課後、ご一緒させてもらうわね」
さやか 「・・・え、今日!?早速!?」
ほむら 「今日もお見舞い、行くんでしょ?鹿目さんから聞いたわよ」
まどか 「う・・・うぇひひひ・・・」(ひくひく)
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:33:01.17 ID:9yblXWnv0
さやか 「まどか~・・・あんた、言わなくてもいい事を、人にぺらぺらと、まったく勘弁してよね」
まどか 「ご、ごめん」
さやか 「まぁ、いいわ。行きましょ、二人で」
ほむら 「ええ」
竜馬 「三人で、にしちゃくれねぇかな」
不意に後ろから声がかかる。
いつの間に側まで来ていたのか、竜馬が出し抜けに会話に加わってきたのだ。
ほむら 「ちょ・・・いきなりなに?」
さやか 「いやいや、あんたが言うな」
思わず本音の出た私に、さやかの冷静な突込みが入る。
正論過ぎて、ぐうの音も出ない・・・
竜馬 「俺が転校してきた時には、上条って奴はすでに入院していたからな。顔通しって事なら、俺が行かない理由はないだろ」
さやか 「そうね・・・分かったわ。じゃ、三人で行こうか。ただ、ちょっとなんて言うか・・・恭介ね、今はナーバスなの」
まどか 「ご、ごめん」
さやか 「まぁ、いいわ。行きましょ、二人で」
ほむら 「ええ」
竜馬 「三人で、にしちゃくれねぇかな」
不意に後ろから声がかかる。
いつの間に側まで来ていたのか、竜馬が出し抜けに会話に加わってきたのだ。
ほむら 「ちょ・・・いきなりなに?」
さやか 「いやいや、あんたが言うな」
思わず本音の出た私に、さやかの冷静な突込みが入る。
正論過ぎて、ぐうの音も出ない・・・
竜馬 「俺が転校してきた時には、上条って奴はすでに入院していたからな。顔通しって事なら、俺が行かない理由はないだろ」
さやか 「そうね・・・分かったわ。じゃ、三人で行こうか。ただ、ちょっとなんて言うか・・・恭介ね、今はナーバスなの」
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:35:16.44 ID:9yblXWnv0
さやか 「だから、今日はホント顔通しだけね。私も、すぐに帰るつもりだったし・・・」
竜馬 「了解だ。じゃ、放課後にな」
ほむら 「あ、流君・・・美樹さん、それじゃ後で。鹿目さんも、また」
用件だけ済むとさっさと自分の席に引き上げてしまった竜馬を、私も慌てて追う。
席に戻るなり机に突っ伏し、居眠りを決め込む彼に、私はため息を一つ。
まったく、どこまでフリーダムなのかしら。
ほむら 「流君、どういうつもり?」
竜馬 「なんだよ、暁美。昼飯後は眠くなっちまうんだ。ちょいと放っておいちゃくれねぇかな」
ほむら 「・・・できれば病院には、流君には来て欲しくないのだけれど」
竜馬 「なんでだよ」
突っ伏していた竜馬が、顔を上げて私を見た。
気性の激しさを現す、鋭い目。気の弱いものなら、彼に本気で睨まれたなら、それだけで腰を抜かしてしまうだろう。
そして私は知っている。
流竜馬という人間が、彼の放つ眼光そのままの男であるという事を。
ほむら 「会わせたくないのよ、上条恭介とあなたを」
竜馬 「了解だ。じゃ、放課後にな」
ほむら 「あ、流君・・・美樹さん、それじゃ後で。鹿目さんも、また」
用件だけ済むとさっさと自分の席に引き上げてしまった竜馬を、私も慌てて追う。
席に戻るなり机に突っ伏し、居眠りを決め込む彼に、私はため息を一つ。
まったく、どこまでフリーダムなのかしら。
ほむら 「流君、どういうつもり?」
竜馬 「なんだよ、暁美。昼飯後は眠くなっちまうんだ。ちょいと放っておいちゃくれねぇかな」
ほむら 「・・・できれば病院には、流君には来て欲しくないのだけれど」
竜馬 「なんでだよ」
突っ伏していた竜馬が、顔を上げて私を見た。
気性の激しさを現す、鋭い目。気の弱いものなら、彼に本気で睨まれたなら、それだけで腰を抜かしてしまうだろう。
そして私は知っている。
流竜馬という人間が、彼の放つ眼光そのままの男であるという事を。
ほむら 「会わせたくないのよ、上条恭介とあなたを」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:38:09.96 ID:9yblXWnv0
竜馬 「・・・言ってる意味がわからねぇ」
ほむら 「できれば今日は、夜まで別行動にしてもらえないかしら」
竜馬 「・・・上条恭介ってのが、美樹さやかが魔法少女化する上での、キーパーソンなんだろう。それくらい話の流れで、俺でもわかる」
ほむら 「ええ・・・」
竜馬 「上条と美樹に何らかのやり取りがあって、そこでできた弱みをキュウべぇに突かれる。暁美の心配事は、そんなところじゃねぇのか」
ほむら 「その通りよ」
竜馬 「・・・キュウべぇを美樹に近づけないためにも、人手は多いに越した事がないんじゃないのか?」
ほむら 「ええ・・・そうね、流君の言うとおりだわ・・・分かった、一緒に行きましょう。だけれど、一つだけ約束して」
竜馬 「改まって、なんなんだよ?」
ほむら 「流君は大人しくしていて。決して事を荒立てないように」
ほむら 「できれば今日は、夜まで別行動にしてもらえないかしら」
竜馬 「・・・上条恭介ってのが、美樹さやかが魔法少女化する上での、キーパーソンなんだろう。それくらい話の流れで、俺でもわかる」
ほむら 「ええ・・・」
竜馬 「上条と美樹に何らかのやり取りがあって、そこでできた弱みをキュウべぇに突かれる。暁美の心配事は、そんなところじゃねぇのか」
ほむら 「その通りよ」
竜馬 「・・・キュウべぇを美樹に近づけないためにも、人手は多いに越した事がないんじゃないのか?」
ほむら 「ええ・・・そうね、流君の言うとおりだわ・・・分かった、一緒に行きましょう。だけれど、一つだけ約束して」
竜馬 「改まって、なんなんだよ?」
ほむら 「流君は大人しくしていて。決して事を荒立てないように」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:39:53.12 ID:9yblXWnv0
竜馬 「・・・お前な。病院なんだろ、大人しくしているさ。俺を何だと思っているんだ」
再び机に突っ伏す竜馬。あとはもう、話しかけても返って来るのは寝息のみ。
はぁ・・・と小さな溜息一つを残し、私も自分の席へと戻る事にした。
腰を下ろした後、改めて隣の席の竜馬に目を向ける。
乱暴で口が悪くて、そして我が強い。
だけれど、一途で自分の信念には、ひたすらにまっすぐな男。
・・・
そんな彼から上条恭介は、一体どう見えるのだろう。
再び机に突っ伏す竜馬。あとはもう、話しかけても返って来るのは寝息のみ。
はぁ・・・と小さな溜息一つを残し、私も自分の席へと戻る事にした。
腰を下ろした後、改めて隣の席の竜馬に目を向ける。
乱暴で口が悪くて、そして我が強い。
だけれど、一途で自分の信念には、ひたすらにまっすぐな男。
・・・
そんな彼から上条恭介は、一体どう見えるのだろう。
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:43:11.22 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
放課後。
結局、午後の授業も居眠りし通しだった竜馬の耳を引っ張り、引きずる様に私は教室を出た。
さやかはお手洗いを済ませてくるとの事なので、先に校門前で待つことにしたのだ。
まどか 「ほむらちゃん!」
外履きに履き替えて玄関を出たところで、後ろからまどかに呼び止められた。
ちょっと怒っている様で、柔らかな頬をぷくっと膨らませながら、私を睨みつけている。
ほむら 「・・・怒った顔も可愛いのね、まどか(ほむぅ)」
まどか 「うぇひっ!?」
竜馬 「・・・おい、心の声が表に出てるぞ」
ほむら 「はっ・・・こ、こほん。な、何か用かしら、鹿目さん」
・・・
放課後。
結局、午後の授業も居眠りし通しだった竜馬の耳を引っ張り、引きずる様に私は教室を出た。
さやかはお手洗いを済ませてくるとの事なので、先に校門前で待つことにしたのだ。
まどか 「ほむらちゃん!」
外履きに履き替えて玄関を出たところで、後ろからまどかに呼び止められた。
ちょっと怒っている様で、柔らかな頬をぷくっと膨らませながら、私を睨みつけている。
ほむら 「・・・怒った顔も可愛いのね、まどか(ほむぅ)」
まどか 「うぇひっ!?」
竜馬 「・・・おい、心の声が表に出てるぞ」
ほむら 「はっ・・・こ、こほん。な、何か用かしら、鹿目さん」
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:46:10.98 ID:9yblXWnv0
まどか 「あ、うん・・・!さっきのあれ、ひどいよー!おかげで私、さやかちゃんに怒られちゃったんだからね!」
ほむら 「上条君のこと?事実を言っただけだけれど。まどかから聞いたって」
まどか 「そうだけど、さやかちゃんに直接言わなくったって・・・」
ほむら 「不愉快な思いをさせてしまったのなら、謝るわ。だけれど・・・」
まどか 「?」
ほむら 「私は目的のためなら、手段は選ばない・・・!」ふぁさっ!
まどか 「あ・・・あう・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら (今の私、ちょっとかっこよかったんじゃないかしら)
竜馬 「・・・と、とりあえず、歩きながら話そうぜ、鹿目」
まどか 「う、うん」
ほむら 「・・・」
二人は私を置き去りに、校門の方へと連れ立って行ってしまった。
ほむら 「・・・あれ?」
ほむら 「上条君のこと?事実を言っただけだけれど。まどかから聞いたって」
まどか 「そうだけど、さやかちゃんに直接言わなくったって・・・」
ほむら 「不愉快な思いをさせてしまったのなら、謝るわ。だけれど・・・」
まどか 「?」
ほむら 「私は目的のためなら、手段は選ばない・・・!」ふぁさっ!
まどか 「あ・・・あう・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら (今の私、ちょっとかっこよかったんじゃないかしら)
竜馬 「・・・と、とりあえず、歩きながら話そうぜ、鹿目」
まどか 「う、うん」
ほむら 「・・・」
二人は私を置き去りに、校門の方へと連れ立って行ってしまった。
ほむら 「・・・あれ?」
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:47:08.28 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
校門前。
まどか 「え・・・さやかちゃんの所にキュウべぇが・・・?」
ほむら 「今はまだ現れていないけれど、程なく彼女の前に姿を現す。その可能性が高いわ」
まどか 「え・・・て、いう事は・・・」
ほむら 「そう。あなたが知っているとおり、美樹さんは上条君のことで悩んでいる。そして・・・」
竜馬 「美樹さやかは魔法少女になる素養がある・・・らしいぜ」
まどか 「ほ、本当に?」
ほむら 「ええ、事実よ」
まどか 「ど、どうしてほむらちゃんに、そんな事が分かるの?」
ほむら 「・・・キュウべぇが美樹さんと接触するとしたら、上条君と会った直後、一番心が病んでいる時を狙ってくるはず」
まどか 「上条君と会って、心が病む・・・?なんで・・・?」
ほむら 「だから私たちは病院に行くの。そして、キュウべぇが美樹さんに近づこうとするなら、それを阻む」
まどかの疑問には敢えて答えず、私は事実のみ淡々と告げる。
疑問に対する答えを話した所で、今のまどかに信じてもらう事は、しょせん叶わないのだから。
ほむら 「そういう訳だから。利用するような真似して、悪かったわ」
・・・
校門前。
まどか 「え・・・さやかちゃんの所にキュウべぇが・・・?」
ほむら 「今はまだ現れていないけれど、程なく彼女の前に姿を現す。その可能性が高いわ」
まどか 「え・・・て、いう事は・・・」
ほむら 「そう。あなたが知っているとおり、美樹さんは上条君のことで悩んでいる。そして・・・」
竜馬 「美樹さやかは魔法少女になる素養がある・・・らしいぜ」
まどか 「ほ、本当に?」
ほむら 「ええ、事実よ」
まどか 「ど、どうしてほむらちゃんに、そんな事が分かるの?」
ほむら 「・・・キュウべぇが美樹さんと接触するとしたら、上条君と会った直後、一番心が病んでいる時を狙ってくるはず」
まどか 「上条君と会って、心が病む・・・?なんで・・・?」
ほむら 「だから私たちは病院に行くの。そして、キュウべぇが美樹さんに近づこうとするなら、それを阻む」
まどかの疑問には敢えて答えず、私は事実のみ淡々と告げる。
疑問に対する答えを話した所で、今のまどかに信じてもらう事は、しょせん叶わないのだから。
ほむら 「そういう訳だから。利用するような真似して、悪かったわ」
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:50:33.35 ID:9yblXWnv0
まどか 「・・・」
ほむら 「納得がいってないって顔ね」
まどか 「ねぇ・・・ほむらちゃん」
ほむら 「なに?」
まどか 「魔法少女になるのって、ほむらちゃんにとっては、そんなにいけないことなの?」
ほむら 「・・・」
まどか 「たしかに、危険な事だって言うのは分かるよ。マミさんだって、毎日命がけで戦ってる。昨日だって危なかったの聞いてるもん」
まどか 「だけどね、それはこの街のみんなを悪い魔女から守るためなんだよね?戦う事で、救われてる人がいるんだよね?」
ほむら 「・・・そうね」
力ないただの少女だった頃の私も、確かに救われたのだ。
他でもない、魔法少女となったまどかに。
まどか 「本当に叶えたい願いがあって、それで魔法少女になれば、マミさんも仲間が増えて、それだけ危険じゃなくなるって事だよね」
まどか 「・・・ねぇ、それってそんなにいけない事なのかな」
当然の疑問だった。
魔法少女を待ち受ける終末の真実さえ知らなければ、だれだってまどかと同じように考えるだろう。
ほむら 「納得がいってないって顔ね」
まどか 「ねぇ・・・ほむらちゃん」
ほむら 「なに?」
まどか 「魔法少女になるのって、ほむらちゃんにとっては、そんなにいけないことなの?」
ほむら 「・・・」
まどか 「たしかに、危険な事だって言うのは分かるよ。マミさんだって、毎日命がけで戦ってる。昨日だって危なかったの聞いてるもん」
まどか 「だけどね、それはこの街のみんなを悪い魔女から守るためなんだよね?戦う事で、救われてる人がいるんだよね?」
ほむら 「・・・そうね」
力ないただの少女だった頃の私も、確かに救われたのだ。
他でもない、魔法少女となったまどかに。
まどか 「本当に叶えたい願いがあって、それで魔法少女になれば、マミさんも仲間が増えて、それだけ危険じゃなくなるって事だよね」
まどか 「・・・ねぇ、それってそんなにいけない事なのかな」
当然の疑問だった。
魔法少女を待ち受ける終末の真実さえ知らなければ、だれだってまどかと同じように考えるだろう。
68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:54:14.01 ID:9yblXWnv0
さて、何と言えばまどかは納得してくれるのか。
ほむら 「それは・・・」
私が考えを巡らせ、ほんの少しだけ逡巡していた時だった。
竜馬 「鹿目は、魔法少女になりたいのか?」
その間隙を突いてきたかの様に、竜馬が話に割り込んできたのは。
まどか 「え・・・う、うん。マミさんは素敵な人だし、こんな私でも力になれるなら、それはとても嬉しいなって」
竜馬 「じゃあ、それと引き換えに、どうしても叶えたい願いってのが、お前にはあるんだな?」
まどか 「え・・・」
戸惑いの表情を浮かべて、竜馬を見上げるまどか。
次の句が継げないのか、言葉を途切れさせたまま、口だけパクパクしている。
まるで・・・
竜馬 「まるで、自分の願いなんか、考えてもいなかったって顔してるぜ」
竜馬が私の考えを代弁するかのように、まどかに告げる。
ほむら 「それは・・・」
私が考えを巡らせ、ほんの少しだけ逡巡していた時だった。
竜馬 「鹿目は、魔法少女になりたいのか?」
その間隙を突いてきたかの様に、竜馬が話に割り込んできたのは。
まどか 「え・・・う、うん。マミさんは素敵な人だし、こんな私でも力になれるなら、それはとても嬉しいなって」
竜馬 「じゃあ、それと引き換えに、どうしても叶えたい願いってのが、お前にはあるんだな?」
まどか 「え・・・」
戸惑いの表情を浮かべて、竜馬を見上げるまどか。
次の句が継げないのか、言葉を途切れさせたまま、口だけパクパクしている。
まるで・・・
竜馬 「まるで、自分の願いなんか、考えてもいなかったって顔してるぜ」
竜馬が私の考えを代弁するかのように、まどかに告げる。
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:56:25.72 ID:9yblXWnv0
図星だったようで、まどかはうぐっと小さくうめいて、俯いてしまった。
まったく、自分の欲求に無頓着な所は、とってもまどからしいと言えるのだけれど。
まどか 「うぇひひ・・・、そこら辺は、あまり深く考えてなかったよ」
竜馬 「鷹揚と言うかなんと言うか、大物だと思うぜ、鹿目は」
まどか 「う、うぇひひひ・・・」
人を疑う事を知らないまどかは、竜馬の言うことを素直に受け取って、顔を赤めながら頭なんか掻いている。
それ、褒められた訳じゃないと思うわよ。
竜馬 「だがな・・・命がけって部分は、もっと深く考えた方が良い」
まどか 「え・・・」
竜馬 「実感として湧かないのは仕方がないがな、命がけで賭けた命は、賭けに負けりゃ二度と手元に戻ってくる事はねぇんだ。分かるよな?」
まどか 「え・・・う、うん」
竜馬 「お前が命を失って、残されて悲しむ奴はいないのか?」
まどか 「・・・え」
竜馬 「お前が真に望む事、お前の未来が絶たれ、残された者が泣き、それ等と引き換えにしてまで望む事があったのなら、俺から言う事は何もない」
まったく、自分の欲求に無頓着な所は、とってもまどからしいと言えるのだけれど。
まどか 「うぇひひ・・・、そこら辺は、あまり深く考えてなかったよ」
竜馬 「鷹揚と言うかなんと言うか、大物だと思うぜ、鹿目は」
まどか 「う、うぇひひひ・・・」
人を疑う事を知らないまどかは、竜馬の言うことを素直に受け取って、顔を赤めながら頭なんか掻いている。
それ、褒められた訳じゃないと思うわよ。
竜馬 「だがな・・・命がけって部分は、もっと深く考えた方が良い」
まどか 「え・・・」
竜馬 「実感として湧かないのは仕方がないがな、命がけで賭けた命は、賭けに負けりゃ二度と手元に戻ってくる事はねぇんだ。分かるよな?」
まどか 「え・・・う、うん」
竜馬 「お前が命を失って、残されて悲しむ奴はいないのか?」
まどか 「・・・え」
竜馬 「お前が真に望む事、お前の未来が絶たれ、残された者が泣き、それ等と引き換えにしてまで望む事があったのなら、俺から言う事は何もない」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 21:58:30.05 ID:9yblXWnv0
竜馬 「覚悟を決めた人間を引き止める言葉を、あいにく俺は知らないからな。だが、そうじゃないなら・・・」
竜馬が、ちらりと私へ視線を走らせる。が、すぐにまたまどかへと視線を戻すと、彼は言葉を続けた。
竜馬 「命がけって言葉を、軽々しく使うべきじゃない。お前を大切に思っている人のためにもな」
まどか 「う・・・」
大切な人を失いながらも、まさしく命がけで戦ってきたであろう竜馬の言葉は重たかった。
経験をともなった言葉の重さに、まどかは圧倒されて二の句もつけない。
そしてそれは、ともに聞いていた私も同様だった。
まどか 「・・・あぅ」
さやか 「やー、遅くなってゴメン。途中で仁美に捕まっちゃって、ちょっと話してきちゃった!」
まどか 「あ、さやかちゃん・・・」
竜馬・ほむら 「・・・」
さやか 「・・・どうしたのさ?なんだかおもたーい雰囲気なっちゃってるけど」
ほむら 「何でもないわ。さ、遅くなる前に行きましょう」
さやか 「う、うん・・・」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬が、ちらりと私へ視線を走らせる。が、すぐにまたまどかへと視線を戻すと、彼は言葉を続けた。
竜馬 「命がけって言葉を、軽々しく使うべきじゃない。お前を大切に思っている人のためにもな」
まどか 「う・・・」
大切な人を失いながらも、まさしく命がけで戦ってきたであろう竜馬の言葉は重たかった。
経験をともなった言葉の重さに、まどかは圧倒されて二の句もつけない。
そしてそれは、ともに聞いていた私も同様だった。
まどか 「・・・あぅ」
さやか 「やー、遅くなってゴメン。途中で仁美に捕まっちゃって、ちょっと話してきちゃった!」
まどか 「あ、さやかちゃん・・・」
竜馬・ほむら 「・・・」
さやか 「・・・どうしたのさ?なんだかおもたーい雰囲気なっちゃってるけど」
ほむら 「何でもないわ。さ、遅くなる前に行きましょう」
さやか 「う、うん・・・」
キュウべぇ 「・・・」
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:00:50.48 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
病院。
私は竜馬の袖を引っ張り、まっすぐに上条恭介の病室へと向かおうとするさやかに背を向けた。
さやか 「あ、あれ・・・どこいくの、二人とも」
ほむら 「手ぶらで来ちゃったから。売店で何か買ってから行くわ」
さやか 「別に気を使わなくっても良いと思うけど」
ほむら 「そういうわけにもいかないでしょ。病室は聞いてるし、美樹さんは先に行ってて」
さやか 「あれ?私、恭介の病室がどこだか、教えてたっけ?」
ほむら 「鹿目さんから」
さやか 「ああ・・・」
まどか 「うぇひひひ・・・」
さやかからジト目で睨まれて、まどかの口から引きつった笑いが空しくこぼれる。
そう、まどかもさやかがキュウべぇと接触する可能性を聞き、心配して一緒について来ていたのだった。
さやか 「じゃ、まどか。私らは先に行ってよう?」
・・・
病院。
私は竜馬の袖を引っ張り、まっすぐに上条恭介の病室へと向かおうとするさやかに背を向けた。
さやか 「あ、あれ・・・どこいくの、二人とも」
ほむら 「手ぶらで来ちゃったから。売店で何か買ってから行くわ」
さやか 「別に気を使わなくっても良いと思うけど」
ほむら 「そういうわけにもいかないでしょ。病室は聞いてるし、美樹さんは先に行ってて」
さやか 「あれ?私、恭介の病室がどこだか、教えてたっけ?」
ほむら 「鹿目さんから」
さやか 「ああ・・・」
まどか 「うぇひひひ・・・」
さやかからジト目で睨まれて、まどかの口から引きつった笑いが空しくこぼれる。
そう、まどかもさやかがキュウべぇと接触する可能性を聞き、心配して一緒について来ていたのだった。
さやか 「じゃ、まどか。私らは先に行ってよう?」
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:02:49.13 ID:9yblXWnv0
ほむら 「二人とも、後でね。流君、行きましょ」
竜馬 「おう」
私たちは、まどかたちとは反対の方へと歩き始める。
竜馬 「で、これからどうするんだ?身を隠して、キュウべぇをとっ捕まえる算段でも図るのか?」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「え??」
ほむら 「話、聞いてなかったの?売店に行って、病室に差し入れる物を買うのよ」
竜馬 「はぁ・・・!?俺はまたてっきり、二人と離れたのも考えがあっての事だとばかり・・・」
ほむら 「キュウべぇから身を隠したって意味は無いわ。さやかの側にいるのが、彼女を守るのには一番確実よ」
竜馬 「じゃあ、何のために差し入れなんて・・・」
ほむら 「いや、礼儀というか、常識として・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私、何か変な事を言ったかしら」
竜馬 「俺さ、お前の事クールな二枚目ポジションだと思ってたんだけどさ」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「かなり天然、入ってるのな」
ほむら 「そうかしら。自分じゃ分からないけれど・・・」
竜馬 「そりゃそうだろうぜ」
ほむら 「あ・・・売店があったわ。ちょっと買ってくるわね」
竜馬 「はいはい」
竜馬 「おう」
私たちは、まどかたちとは反対の方へと歩き始める。
竜馬 「で、これからどうするんだ?身を隠して、キュウべぇをとっ捕まえる算段でも図るのか?」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「え??」
ほむら 「話、聞いてなかったの?売店に行って、病室に差し入れる物を買うのよ」
竜馬 「はぁ・・・!?俺はまたてっきり、二人と離れたのも考えがあっての事だとばかり・・・」
ほむら 「キュウべぇから身を隠したって意味は無いわ。さやかの側にいるのが、彼女を守るのには一番確実よ」
竜馬 「じゃあ、何のために差し入れなんて・・・」
ほむら 「いや、礼儀というか、常識として・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私、何か変な事を言ったかしら」
竜馬 「俺さ、お前の事クールな二枚目ポジションだと思ってたんだけどさ」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「かなり天然、入ってるのな」
ほむら 「そうかしら。自分じゃ分からないけれど・・・」
竜馬 「そりゃそうだろうぜ」
ほむら 「あ・・・売店があったわ。ちょっと買ってくるわね」
竜馬 「はいはい」
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:04:21.25 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
上条恭介の病室前。
手に見舞い用の花束を抱え病室の前までやってくると、廊下でまどかがオロオロしていた。
室内に入るには入れないといった感じで、時々病室を覗き込んだりしながら、廊下をウロウロしている。
竜馬 「鹿目、ありゃ、なにやってるんだ?」
ほむら 「・・・だいたい、想像できるけれど・・・鹿目さん」
まどか 「あ・・・ほむらちゃん~~~」
まどかが、ホッとした顔で駆け寄ってきた。
竜馬 「どうしたんだ、お前。外で俺たちを待っててくれた・・・て様子じゃねぇよな」
まどか 「う、うん。じ、実は中でさやかちゃんと上条君が言い争いを・・・ていうか、上条君が一方的に・・・」
ほむら 「・・・まどかが一緒にいるのに?」
まどか 「うん・・・さやかちゃんに外で少し待っててって言われて。でも、心配だよ。あんな顔のさやかちゃん、見たことないもの」
・・・
上条恭介の病室前。
手に見舞い用の花束を抱え病室の前までやってくると、廊下でまどかがオロオロしていた。
室内に入るには入れないといった感じで、時々病室を覗き込んだりしながら、廊下をウロウロしている。
竜馬 「鹿目、ありゃ、なにやってるんだ?」
ほむら 「・・・だいたい、想像できるけれど・・・鹿目さん」
まどか 「あ・・・ほむらちゃん~~~」
まどかが、ホッとした顔で駆け寄ってきた。
竜馬 「どうしたんだ、お前。外で俺たちを待っててくれた・・・て様子じゃねぇよな」
まどか 「う、うん。じ、実は中でさやかちゃんと上条君が言い争いを・・・ていうか、上条君が一方的に・・・」
ほむら 「・・・まどかが一緒にいるのに?」
まどか 「うん・・・さやかちゃんに外で少し待っててって言われて。でも、心配だよ。あんな顔のさやかちゃん、見たことないもの」
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:08:43.50 ID:9yblXWnv0
ほむら 「・・・上条恭介」
恥も外聞も既に捨てているのか。さやか以外の者の前でも醜態を晒すなんて。
・・・それだけ精神的に追い詰められているって事なんだろうけれど。
だけれど・・・
竜馬 「上条は美樹になんて言ったんだ?」
まどか 「それは・・・えっと・・・」
竜馬 「大丈夫だから、言ってみろ」
まどか 「えとその・・・今日は友達まで連れてきて、皆で僕を笑いに来たのかって・・・上条君、そんな事言う人じゃなかったのに・・・」
竜馬 「・・・」
竜馬の目つきが代わる。
恥も外聞も既に捨てているのか。さやか以外の者の前でも醜態を晒すなんて。
・・・それだけ精神的に追い詰められているって事なんだろうけれど。
だけれど・・・
竜馬 「上条は美樹になんて言ったんだ?」
まどか 「それは・・・えっと・・・」
竜馬 「大丈夫だから、言ってみろ」
まどか 「えとその・・・今日は友達まで連れてきて、皆で僕を笑いに来たのかって・・・上条君、そんな事言う人じゃなかったのに・・・」
竜馬 「・・・」
竜馬の目つきが代わる。
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:10:47.69 ID:9yblXWnv0
ギロリと病室の扉をねめつける。
なんて目力。扉ごときは容易く眼力だけで破壊してしまいそうな迫力。
あの目つき。さすがの私も、全身が総毛立つのを抑えられない。
ああ、怖い。だから、ここには彼を連れてきたくなかったのだ・・・
まどか 「・・・っ」
普段はノンビリしているまどかも、さすがに様子の一変した竜馬に気がつき、思わず息を呑んでいる。
彼女まで怯えさせてどうするのよ。まどか、すっかり固まってしまっているじゃない。
ほむら 「ちょっと、流君」
私は慌てて、引き止めるように竜馬の腕を掴んだ。
なんて目力。扉ごときは容易く眼力だけで破壊してしまいそうな迫力。
あの目つき。さすがの私も、全身が総毛立つのを抑えられない。
ああ、怖い。だから、ここには彼を連れてきたくなかったのだ・・・
まどか 「・・・っ」
普段はノンビリしているまどかも、さすがに様子の一変した竜馬に気がつき、思わず息を呑んでいる。
彼女まで怯えさせてどうするのよ。まどか、すっかり固まってしまっているじゃない。
ほむら 「ちょっと、流君」
私は慌てて、引き止めるように竜馬の腕を掴んだ。
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:11:56.35 ID:9yblXWnv0
だが竜馬は、私の存在など意に介さぬかのように、視線を扉に据えたままで、こちらをチラリとも見ようとしない。
竜馬 「自分を笑いに来たと、そう美樹に言ったのか」
まどか 「う、うん・・・」
竜馬 「自分を本気で心配している奴に、そんな事を言ったのか」
ぎりっ・・・
竜馬の奥歯をかみ締める音が、私の耳にも届く。
怒りと憤り。その両者が寸分も隠れることなく、竜馬の顔を染め上げていた。
ほむら 「落ち着いて。顔、怖いから」
竜馬 「上条・・・男じゃねぇぜ」
竜馬が病室に向かって歩き出す。
バカ力の竜馬を生身の私が止められるわけもない。みっともなくズルズルと引きずられるままの私。
ほむら 「だからっ・・・(ずるずる)、今日は大人しくっ・・・(ずるずる)、しててって・・・(ずるずる)あぅ、最初に言ったでしょう!?」
竜馬 「自分を笑いに来たと、そう美樹に言ったのか」
まどか 「う、うん・・・」
竜馬 「自分を本気で心配している奴に、そんな事を言ったのか」
ぎりっ・・・
竜馬の奥歯をかみ締める音が、私の耳にも届く。
怒りと憤り。その両者が寸分も隠れることなく、竜馬の顔を染め上げていた。
ほむら 「落ち着いて。顔、怖いから」
竜馬 「上条・・・男じゃねぇぜ」
竜馬が病室に向かって歩き出す。
バカ力の竜馬を生身の私が止められるわけもない。みっともなくズルズルと引きずられるままの私。
ほむら 「だからっ・・・(ずるずる)、今日は大人しくっ・・・(ずるずる)、しててって・・・(ずるずる)あぅ、最初に言ったでしょう!?」
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:13:49.53 ID:9yblXWnv0
竜馬 「挨拶してくるだけだ」
ほむら 「挨拶しようって顔じゃないじゃない!」
思い切り踏ん張って抗ってみても、竜馬の手が扉の取っ手を掴むのを引き止める事が叶わない。
竜馬 「邪魔するぜ」
ほむら 「ああ、もうっ」
私の奮戦むなしく、竜馬は上条の病室の中へと消えて行ったのだった。
引きずられたまま成す術のない、非力な私もろとも、まどか一人だけを廊下に残して・・・
まどか 「あわわ・・・」
ほむら 「挨拶しようって顔じゃないじゃない!」
思い切り踏ん張って抗ってみても、竜馬の手が扉の取っ手を掴むのを引き止める事が叶わない。
竜馬 「邪魔するぜ」
ほむら 「ああ、もうっ」
私の奮戦むなしく、竜馬は上条の病室の中へと消えて行ったのだった。
引きずられたまま成す術のない、非力な私もろとも、まどか一人だけを廊下に残して・・・
まどか 「あわわ・・・」
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:15:18.77 ID:9yblXWnv0
・・・
・・・
まどか 「・・・え、えっと。私はこのまま、ここにいて良いのかなぁ」(ぽつーん)
まどか 「流君、すごく怒ってた様だけど、まさか乱暴な事しないよね・・・」
まどか 「ほむらちゃんだっているし・・・」
まどか 「・・・」
まどか 「・・・」
まどか 「うぇひぃ・・・やっぱり心配だよ・・・」
まどか 「・・・よしっ!ここはやっぱり、私も中に入っt
キュウべぇ 「まぁ、待ちなよ、まどか」
まどか 「うぇひっ?!び、びっくりしたぁ・・・キュウべぇ、いつからいたの??」
キュウべぇ 「ずっと側にいたよ。ただ、竜馬とほむらはどう言った訳か、僕の事を快く思っていないからね。身を潜めていたってワケさ」
まどか 「そ、そうなの・・・でも、そうしてここにいるの?」
キュウべぇ 「うん、君の友達の美樹さやかに用があってね」
まどか 「さやかちゃんに・・・え・・・そ、それって、まさか・・・」
・・・
まどか 「・・・え、えっと。私はこのまま、ここにいて良いのかなぁ」(ぽつーん)
まどか 「流君、すごく怒ってた様だけど、まさか乱暴な事しないよね・・・」
まどか 「ほむらちゃんだっているし・・・」
まどか 「・・・」
まどか 「・・・」
まどか 「うぇひぃ・・・やっぱり心配だよ・・・」
まどか 「・・・よしっ!ここはやっぱり、私も中に入っt
キュウべぇ 「まぁ、待ちなよ、まどか」
まどか 「うぇひっ?!び、びっくりしたぁ・・・キュウべぇ、いつからいたの??」
キュウべぇ 「ずっと側にいたよ。ただ、竜馬とほむらはどう言った訳か、僕の事を快く思っていないからね。身を潜めていたってワケさ」
まどか 「そ、そうなの・・・でも、そうしてここにいるの?」
キュウべぇ 「うん、君の友達の美樹さやかに用があってね」
まどか 「さやかちゃんに・・・え・・・そ、それって、まさか・・・」
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/12(金) 22:16:15.26 ID:9yblXWnv0
キュウべぇ 「そうだよ、まどか。僕はさやかに魔法少女になって欲しいってお願いしに来たんだ」
まどか 「さ、さやかちゃんが、魔法少女に・・・」
キュウべぇ 「彼女にはその素質と資格があるからね。そしてどうやら、命と引き換えにしても叶えたい願いが、今の彼女にはあるようだ」
まどか 「もしかして、上条君のこと・・・?」
キュウべぇ 「まぁ、実際の所は彼女と話してみないと始まらないけれどね。今は取り込んでるようだし・・・」
まどか 「・・・」
キュウべぇ 「今はこうして、様子を見ておくことにしよう。まどかはどうするんだい?」
まどか 「・・・」
キュウべぇ 「・・・まどか?」
まどか 「う、うぇひっ?」
キュウべぇ 「どうかしたのかい、まどか。なにか考え事でも?」
まどか 「う、うん・・・」
まどか 「さ、さやかちゃんが、魔法少女に・・・」
キュウべぇ 「彼女にはその素質と資格があるからね。そしてどうやら、命と引き換えにしても叶えたい願いが、今の彼女にはあるようだ」
まどか 「もしかして、上条君のこと・・・?」
キュウべぇ 「まぁ、実際の所は彼女と話してみないと始まらないけれどね。今は取り込んでるようだし・・・」
まどか 「・・・」
キュウべぇ 「今はこうして、様子を見ておくことにしよう。まどかはどうするんだい?」
まどか 「・・・」
キュウべぇ 「・・・まどか?」
まどか 「う、うぇひっ?」
キュウべぇ 「どうかしたのかい、まどか。なにか考え事でも?」
まどか 「う、うん・・・」
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/14(日) 00:11:50.53 ID:sELL/rGP0
・・・
・・・
竜馬 「邪魔するぜ」
いきなり扉を開け放って、鼻息荒く踏み込んできた厳つい男の姿を見て。
上条恭介は驚愕の表情を浮かべたまま、固まってしまった。
当然といえば当然の反応。
恭介 「な、何だ君は・・・」
やっと搾り出した、ちょっと間抜けな問いかけなど無視して、竜馬はズカズカとベットに迫る。
その上に臥している上条恭介を一点に見据えながら。
さやか 「え、なに?いったい何なの?」
ただならぬ竜馬の雰囲気を察したさやかが、慌てて竜馬とベットの間に割って入った。
その両の頬を、今しがたまで流されていたであろう涙で塗らしたまま、両手を広げて立ちふさがる。
その姿が、何と言うか・・・惨めでもあり、いじらしくもあって。
竜馬 「どけよ、美樹。挨拶ができないじゃねぇか」
さやか 「挨拶って・・・とても、そんな穏やかな雰囲気じゃないんですけど!?」
・・・
竜馬 「邪魔するぜ」
いきなり扉を開け放って、鼻息荒く踏み込んできた厳つい男の姿を見て。
上条恭介は驚愕の表情を浮かべたまま、固まってしまった。
当然といえば当然の反応。
恭介 「な、何だ君は・・・」
やっと搾り出した、ちょっと間抜けな問いかけなど無視して、竜馬はズカズカとベットに迫る。
その上に臥している上条恭介を一点に見据えながら。
さやか 「え、なに?いったい何なの?」
ただならぬ竜馬の雰囲気を察したさやかが、慌てて竜馬とベットの間に割って入った。
その両の頬を、今しがたまで流されていたであろう涙で塗らしたまま、両手を広げて立ちふさがる。
その姿が、何と言うか・・・惨めでもあり、いじらしくもあって。
竜馬 「どけよ、美樹。挨拶ができないじゃねぇか」
さやか 「挨拶って・・・とても、そんな穏やかな雰囲気じゃないんですけど!?」
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:14:08.78 ID:sELL/rGP0
恭介 「挨拶って、どういうこと?あ・・・見滝原の制服・・・?という事は・・・」
竜馬 「よう、お初にお目にかかるぜ、色男。俺は流竜馬。お前さんが入院してから転校してきた、ま、クラスメイトって奴だ」
大柄な竜馬が、さやかの頭越しに上条に声をかける。これじゃ、さやかの決死の通せんぼもまったく意味を成さないわね。
恭介 「転校生?じゃ、君も?」
上条の視線が、今度は竜馬の脇に向けられる。
そこには、いまだ竜馬の腕を掴んで、大樹の蝉よろしくへばり付いていたままの私がいたのだ。
ほむら 「・・・っあ」
そういえば、ずっと竜馬の腕を掴んでいたままだった。
うかつだったわ・・・!
何だかこれじゃ、場もわきまえずに、病室に腕組んで入ってきたバカップルみたいじゃないの。
竜馬 「よう、お初にお目にかかるぜ、色男。俺は流竜馬。お前さんが入院してから転校してきた、ま、クラスメイトって奴だ」
大柄な竜馬が、さやかの頭越しに上条に声をかける。これじゃ、さやかの決死の通せんぼもまったく意味を成さないわね。
恭介 「転校生?じゃ、君も?」
上条の視線が、今度は竜馬の脇に向けられる。
そこには、いまだ竜馬の腕を掴んで、大樹の蝉よろしくへばり付いていたままの私がいたのだ。
ほむら 「・・・っあ」
そういえば、ずっと竜馬の腕を掴んでいたままだった。
うかつだったわ・・・!
何だかこれじゃ、場もわきまえずに、病室に腕組んで入ってきたバカップルみたいじゃないの。
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:16:47.20 ID:sELL/rGP0
ほむら (すすすっ・・・)
私はあくまで自然な動きで竜馬から距離をとると、努めて常と代わらない態度で上条へと言葉を返した。
ほむら 「流君と同じ、転校生の暁美ほむらよ。よろしくね」(ふぁさーっ)
恭介 「あ、よ・・・よろしく」
まどか (あ・・・取り繕った)
キュウべぇ (取り繕ったね)
ほむら (誤魔化せた。完璧だわ)ほむぅっ
さやか 「え、ええと・・・」
私の完璧な自己紹介のおかげで場が和んだためか、張り詰めていたさやかの気持ちも多少は解れたよう。
私はあくまで自然な動きで竜馬から距離をとると、努めて常と代わらない態度で上条へと言葉を返した。
ほむら 「流君と同じ、転校生の暁美ほむらよ。よろしくね」(ふぁさーっ)
恭介 「あ、よ・・・よろしく」
まどか (あ・・・取り繕った)
キュウべぇ (取り繕ったね)
ほむら (誤魔化せた。完璧だわ)ほむぅっ
さやか 「え、ええと・・・」
私の完璧な自己紹介のおかげで場が和んだためか、張り詰めていたさやかの気持ちも多少は解れたよう。
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:18:03.79 ID:sELL/rGP0
そんな彼女の肩に、優しく手を置く竜馬。そっと、さやかを脇へと追いやる。
竜馬 「何を心配してるのか知らないが、さっきも言った通り自己紹介に来ただけだ。あと、暁美」
ほむら 「なに?」
竜馬 「せっかく買ってきた花、萎びる前に活けて来い。美樹、水場を案内してやってはくれないか」
さやか 「え・・・」
ほむら 「だけど、流君・・・」
竜馬 「外にいる鹿目も連れてな。それと・・・」
竜馬が声を落とし、私にだけ聞こえる声でボソッと言う。
竜馬 (美樹を便所にでも連れて行って、顔を洗わせてやれ。涙に濡れた女の顔なんざ、見たくねぇからな)
ほむら (柄でもない事を言うのね。私は、あなたたちを二人にはしたくないのだけれど)
竜馬 (俺がこいつに手を出すとでも?馬鹿を言え。俺が殴ったら、一撃であの世に送っちまう。そんなマネ、するかよ)
ほむら (・・・)
ほむら 「美樹さん、案内、お願いできるかしら」
さやか 「だけど、恭介が」
ほむら 「大丈夫だから」
私はさやかの手を取ると、部屋の外のまどかにも声をかけ病室を後にした。
竜馬 「何を心配してるのか知らないが、さっきも言った通り自己紹介に来ただけだ。あと、暁美」
ほむら 「なに?」
竜馬 「せっかく買ってきた花、萎びる前に活けて来い。美樹、水場を案内してやってはくれないか」
さやか 「え・・・」
ほむら 「だけど、流君・・・」
竜馬 「外にいる鹿目も連れてな。それと・・・」
竜馬が声を落とし、私にだけ聞こえる声でボソッと言う。
竜馬 (美樹を便所にでも連れて行って、顔を洗わせてやれ。涙に濡れた女の顔なんざ、見たくねぇからな)
ほむら (柄でもない事を言うのね。私は、あなたたちを二人にはしたくないのだけれど)
竜馬 (俺がこいつに手を出すとでも?馬鹿を言え。俺が殴ったら、一撃であの世に送っちまう。そんなマネ、するかよ)
ほむら (・・・)
ほむら 「美樹さん、案内、お願いできるかしら」
さやか 「だけど、恭介が」
ほむら 「大丈夫だから」
私はさやかの手を取ると、部屋の外のまどかにも声をかけ病室を後にした。
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:20:44.15 ID:sELL/rGP0
・・・
・・・
花を活ける前にトイレによって、さやかに顔を洗わせる。
さやかは自分が泣いていた事にも気がついていなかったようで、困ったような笑顔を浮かべながら洗面台へと向かった。
蛇口をひねりながらも、眠かっただの、あくびをたくさんし過ぎただのと、彼女の言い訳は途切れない。
側にいる者に、なにより親友のまどかに心配をかけたくないのだろう。その心根がいじましい。
そんな、優しいさやかに涙を流させた張本人・・・
まどか (きょろきょろ)
ほむら 「鹿目さん、どうかしたの?」
まどか 「あ、ううん。なんでもないよ。うぇひひ・・・」
ほむら 「そう・・・」
まどか (キュウべぇ、どこに行っちゃったんだろ。ほむらちゃん達が出てきたら、とたんにどこかへ消えちゃった・・・)
・・・上条恭介。
繰り返すようだが、私は彼の事が好きではない。
・・・
花を活ける前にトイレによって、さやかに顔を洗わせる。
さやかは自分が泣いていた事にも気がついていなかったようで、困ったような笑顔を浮かべながら洗面台へと向かった。
蛇口をひねりながらも、眠かっただの、あくびをたくさんし過ぎただのと、彼女の言い訳は途切れない。
側にいる者に、なにより親友のまどかに心配をかけたくないのだろう。その心根がいじましい。
そんな、優しいさやかに涙を流させた張本人・・・
まどか (きょろきょろ)
ほむら 「鹿目さん、どうかしたの?」
まどか 「あ、ううん。なんでもないよ。うぇひひ・・・」
ほむら 「そう・・・」
まどか (キュウべぇ、どこに行っちゃったんだろ。ほむらちゃん達が出てきたら、とたんにどこかへ消えちゃった・・・)
・・・上条恭介。
繰り返すようだが、私は彼の事が好きではない。
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:22:44.47 ID:sELL/rGP0
さやかが魔法少女となった理由であり、その結果まどかを苦しめた遠因。
自分を想う少女の心につけ込んで、苦しさを発散させる捌け口とした男。
己の辛さにばかり敏感で、他人の心にはどこまでも鈍感で・・・
好感を持てる要素が、まったく見つけられない。
それが、私にとっての上条恭介だった。
ほむら 「惰弱な・・・」
さやか 「へ、なんか言った?」
ほむら 「いいえ、なにも」
夢が絶たれた。絶望の淵にいる。
そんな彼が投げやりになって、気心の知れた幼馴染に八つ当たりをしてしまう。
その程度の事、誰にだってあることじゃないのか。
はじめの内は、私だってそう思おうとしていた。
だけれど、さやかの願いによって復調した後の上条恭介は、怪我で打ちひしがれていた頃の彼と、なんら変わってはいなかった。
どこまでも人の心に鈍感で。見えているのは自分の望みと、自分に接してくる人の上っ面の薄っぺらい部分だけ。
・・・人のことを過剰に気にかけるまどかとは、まったく真逆の存在。
自分を想う少女の心につけ込んで、苦しさを発散させる捌け口とした男。
己の辛さにばかり敏感で、他人の心にはどこまでも鈍感で・・・
好感を持てる要素が、まったく見つけられない。
それが、私にとっての上条恭介だった。
ほむら 「惰弱な・・・」
さやか 「へ、なんか言った?」
ほむら 「いいえ、なにも」
夢が絶たれた。絶望の淵にいる。
そんな彼が投げやりになって、気心の知れた幼馴染に八つ当たりをしてしまう。
その程度の事、誰にだってあることじゃないのか。
はじめの内は、私だってそう思おうとしていた。
だけれど、さやかの願いによって復調した後の上条恭介は、怪我で打ちひしがれていた頃の彼と、なんら変わってはいなかった。
どこまでも人の心に鈍感で。見えているのは自分の望みと、自分に接してくる人の上っ面の薄っぺらい部分だけ。
・・・人のことを過剰に気にかけるまどかとは、まったく真逆の存在。
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:23:57.67 ID:sELL/rGP0
ほむら 「・・・」
まどか 「さやかちゃん、はい、ハンカチ。ねぇ、もう平気?大丈夫なのかな?」
さやか 「んー、なにが?」
まどか 「なにがって・・・えっと・・・」
さやか 「あはっ、ありがとね。でも、ホントただ眠たかっただけだから。さやかちゃんはいつだって元気なのですよ!」
まどか 「・・・うん」
さやか 「お待たせ、暁美さん。そんじゃ、花を活けに行こっか」
ほむら 「どうして・・・」
さやか 「ん??」
ほむら 「なぜ、そこまであの男に入れ込んで・・・放っておけば、あなたはこれ以上悩む必要も無くなるというのに・・・」
さやか 「なっ!?」
まどか 「ほ、ほむらちゃん!?」
まどか 「さやかちゃん、はい、ハンカチ。ねぇ、もう平気?大丈夫なのかな?」
さやか 「んー、なにが?」
まどか 「なにがって・・・えっと・・・」
さやか 「あはっ、ありがとね。でも、ホントただ眠たかっただけだから。さやかちゃんはいつだって元気なのですよ!」
まどか 「・・・うん」
さやか 「お待たせ、暁美さん。そんじゃ、花を活けに行こっか」
ほむら 「どうして・・・」
さやか 「ん??」
ほむら 「なぜ、そこまであの男に入れ込んで・・・放っておけば、あなたはこれ以上悩む必要も無くなるというのに・・・」
さやか 「なっ!?」
まどか 「ほ、ほむらちゃん!?」
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:27:40.83 ID:sELL/rGP0
さやか 「な、なにそれ・・・あんた、なに言っちゃってくれてるわけ?」
ほむら 「言葉の通りよ。上条恭介・・・美樹さんがそこまで入れ込むに値する男なのかしら」
さやか 「・・・???」
ほむら 「献身して悩んで、だけれど想いは届かずに気持ちばかり空回りさせて・・・美樹さんの気持ちを察する事もできない、あんな男のためになんて・・・」
さやか 「ちょっと!!」
ほむら 「あうっ、かはっ」
さやかに胸倉をつかまれ、壁に叩きつけられた。
したたかに背を打ち付けられ、込み上げてきた咳が呼吸を圧迫する。
さやか 「あんた、なんなの!?初対面のあんたに、恭介のなにが分かるっていうのよ!」
ほむら 「けほ・・・分かるのよ、私には。そしてこのままだと、あなたがどういう目にあうのかも・・・」
さやか 「なによそれ!!」
ほむら 「言葉の通りよ。上条恭介・・・美樹さんがそこまで入れ込むに値する男なのかしら」
さやか 「・・・???」
ほむら 「献身して悩んで、だけれど想いは届かずに気持ちばかり空回りさせて・・・美樹さんの気持ちを察する事もできない、あんな男のためになんて・・・」
さやか 「ちょっと!!」
ほむら 「あうっ、かはっ」
さやかに胸倉をつかまれ、壁に叩きつけられた。
したたかに背を打ち付けられ、込み上げてきた咳が呼吸を圧迫する。
さやか 「あんた、なんなの!?初対面のあんたに、恭介のなにが分かるっていうのよ!」
ほむら 「けほ・・・分かるのよ、私には。そしてこのままだと、あなたがどういう目にあうのかも・・・」
さやか 「なによそれ!!」
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:31:20.22 ID:sELL/rGP0
まどか 「あわわ・・・ちょっと、さやかちゃんやめて、手を離して!ほむらちゃんも、何でそんなこと言うの~~~!!??」
ほむら 「美樹さん、これから何が起こって、どんな決断をする事になったとしても、あなたの心は彼には届かない・・・それどころか・・・」
さやか 「まだ言うかっ!!」
ぎりっ・・・
さやかの手に力がこもる。喉が締め付けられ、ますます息が苦しい・・・
だけど、私の口は止まらなかった。
ほむら 「う・・・ぐ・・・美樹さ、ん。あなただって薄々は感づいているんでしょう・・・?上条恭介が、どんな風にあなたを見ているのかを・・・」
さやか 「う、うるさいうるさい!」
ほむら 「見たくないのよ・・・あなたが苦しむ姿を・・・」
まどか 「さやかちゃん、やめて!ほむらちゃん、死んじゃうよ!」
さやか 「転校生!なんだってのよ!仮にあんたの言う通りだとして、私のことなんて、あんたの知ったことじゃないじゃない!!」
ほむら 「・・・」
そう、知った事ではない。
ほむら 「美樹さん、これから何が起こって、どんな決断をする事になったとしても、あなたの心は彼には届かない・・・それどころか・・・」
さやか 「まだ言うかっ!!」
ぎりっ・・・
さやかの手に力がこもる。喉が締め付けられ、ますます息が苦しい・・・
だけど、私の口は止まらなかった。
ほむら 「う・・・ぐ・・・美樹さ、ん。あなただって薄々は感づいているんでしょう・・・?上条恭介が、どんな風にあなたを見ているのかを・・・」
さやか 「う、うるさいうるさい!」
ほむら 「見たくないのよ・・・あなたが苦しむ姿を・・・」
まどか 「さやかちゃん、やめて!ほむらちゃん、死んじゃうよ!」
さやか 「転校生!なんだってのよ!仮にあんたの言う通りだとして、私のことなんて、あんたの知ったことじゃないじゃない!!」
ほむら 「・・・」
そう、知った事ではない。
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:33:55.33 ID:sELL/rGP0
さやかはまどかが魔法少女化する際の重要なファクターで、それが故に守る必要があった。
さやかの去就や生き死にが、まどかのメンタルにも大きな影響を及ぼす。だから、さやかから目を離せなかった。
それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけのはずだった。
なのに・・・
ほむら 「仲間・・・”だった”・・・から・・・」
さやか 「え・・・?」
かつての時間軸においての。
気弱な私を気遣ってくれた。
手を差し伸べても届かない、思い人との事で悩んでいた。
自分の描く理想と、本心が望む願いとのギャップに、心を苛まれていった。
・・・最終的には魔女となって、かつての仲間に討たれて果てた。
そんな、様々なさやかの姿が、私の脳裏を駆け抜けていく。
さやか 「あんた、なに言ってるの・・・?」
ほむら 「う、ぐ・・・」
さやかの去就や生き死にが、まどかのメンタルにも大きな影響を及ぼす。だから、さやかから目を離せなかった。
それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけのはずだった。
なのに・・・
ほむら 「仲間・・・”だった”・・・から・・・」
さやか 「え・・・?」
かつての時間軸においての。
気弱な私を気遣ってくれた。
手を差し伸べても届かない、思い人との事で悩んでいた。
自分の描く理想と、本心が望む願いとのギャップに、心を苛まれていった。
・・・最終的には魔女となって、かつての仲間に討たれて果てた。
そんな、様々なさやかの姿が、私の脳裏を駆け抜けていく。
さやか 「あんた、なに言ってるの・・・?」
ほむら 「う、ぐ・・・」
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:36:35.70 ID:sELL/rGP0
まどかの事が一番だということは、今も昔も変わりがない。
だけれど。
それでも最初のうちは、さやかの事も救いたいと思っていた。ともに笑いあえる日が来ればよいと・・・
友達だったのだから。
共に戦った、仲間だったのだから。
ほむら 「いつからだったかしら・・・誰も未来を受け止められない・・・だから、私も誰にも頼らない・・・そう決めて・・・」
さやか 「・・・」
ほむら 「たった一人の、友達だけ、守る、事ができたら、それで、いいと・・・だけ、ど・・・」
さやか 「ワケのわからないことをっ!」
まどか 「さやかちゃん、いい加減にして!」
さやか 「ま、まどか・・・」
まどか 「手を離して、さやかちゃん!本当に殺しちゃう気!?」
さやか 「あ・・・ち、違う・・・私・・・」
さやかの腕から力が抜ける。
途端に肺腑の奥に流れ込んでくる新鮮な空気に耐え切れず、私は膝を折ると、その場で盛大に咳き込んでしまった。
だけれど。
それでも最初のうちは、さやかの事も救いたいと思っていた。ともに笑いあえる日が来ればよいと・・・
友達だったのだから。
共に戦った、仲間だったのだから。
ほむら 「いつからだったかしら・・・誰も未来を受け止められない・・・だから、私も誰にも頼らない・・・そう決めて・・・」
さやか 「・・・」
ほむら 「たった一人の、友達だけ、守る、事ができたら、それで、いいと・・・だけ、ど・・・」
さやか 「ワケのわからないことをっ!」
まどか 「さやかちゃん、いい加減にして!」
さやか 「ま、まどか・・・」
まどか 「手を離して、さやかちゃん!本当に殺しちゃう気!?」
さやか 「あ・・・ち、違う・・・私・・・」
さやかの腕から力が抜ける。
途端に肺腑の奥に流れ込んでくる新鮮な空気に耐え切れず、私は膝を折ると、その場で盛大に咳き込んでしまった。
96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:38:08.68 ID:sELL/rGP0
慌ててまどかが、私の背をさすりながら顔を覗きこんでくる。
まどか 「大丈夫、ほむらちゃん!」
ほむら 「こほっ・・・こほっ・・・へ、平気よ・・・」
まどか 「よ、良かった~~~」
心底ホッとした表情で、私の背をさすり続けてくれるまどか。
まどか 「だけど、ほむらちゃんもいけないんだよ。なんだってあんな、さやかちゃんが怒るようなことを言ったの?」
ほむら 「そ、それは・・・」
まどかに問われて、脳裏に浮かんだのは、あの男の顔。
流竜馬。
私の話を聞き、信じて、そして仲間と認めてくれた男。
そして、失った事もある故に、仲間の大切さを誰よりも知っている男。
そんな彼に・・・
流竜馬という男に、私は感化されてしまったんだろうか。
さやか 「ごめん・・・やりすぎた・・・」
ほむら 「美樹さん・・・」
まどか 「大丈夫、ほむらちゃん!」
ほむら 「こほっ・・・こほっ・・・へ、平気よ・・・」
まどか 「よ、良かった~~~」
心底ホッとした表情で、私の背をさすり続けてくれるまどか。
まどか 「だけど、ほむらちゃんもいけないんだよ。なんだってあんな、さやかちゃんが怒るようなことを言ったの?」
ほむら 「そ、それは・・・」
まどかに問われて、脳裏に浮かんだのは、あの男の顔。
流竜馬。
私の話を聞き、信じて、そして仲間と認めてくれた男。
そして、失った事もある故に、仲間の大切さを誰よりも知っている男。
そんな彼に・・・
流竜馬という男に、私は感化されてしまったんだろうか。
さやか 「ごめん・・・やりすぎた・・・」
ほむら 「美樹さん・・・」
97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:39:26.46 ID:sELL/rGP0
さやか 「暁美さんさ、あいつの事、恭介と会った事があるの?」
ほむら 「・・・ええ」
この時間軸では、今日が初対面だけれど。
さやか 「そっか・・・あえて、どこでとは聞かないよ。でも、さ。だとしても、私と恭介の事に関しては、横から口を挟まないで貰いたいな」
ほむら 「・・・」
さやか 「たしかにあんたの言うとおり、今の恭介は私にちょっと当りが強いけどさ、それも幼馴染の気安さから来ていることだと思うし」
ほむら 「だけど、それは・・・」
さやか 「あいつ、自分の夢が絶たれて、本当に辛い時なんだよ。私に鬱憤をぶつける事で、ちょっとでも楽になってくれるなら、私は役に立てて嬉しいんだ」
ほむら 「・・・」
さやか 「暁美さん、私のこと心配してくれたんでしょ。ありがとう。そして、ごめんね」
まどか 「さやかちゃん・・・」
ほむら 「・・・ええ」
この時間軸では、今日が初対面だけれど。
さやか 「そっか・・・あえて、どこでとは聞かないよ。でも、さ。だとしても、私と恭介の事に関しては、横から口を挟まないで貰いたいな」
ほむら 「・・・」
さやか 「たしかにあんたの言うとおり、今の恭介は私にちょっと当りが強いけどさ、それも幼馴染の気安さから来ていることだと思うし」
ほむら 「だけど、それは・・・」
さやか 「あいつ、自分の夢が絶たれて、本当に辛い時なんだよ。私に鬱憤をぶつける事で、ちょっとでも楽になってくれるなら、私は役に立てて嬉しいんだ」
ほむら 「・・・」
さやか 「暁美さん、私のこと心配してくれたんでしょ。ありがとう。そして、ごめんね」
まどか 「さやかちゃん・・・」
98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:41:28.56 ID:sELL/rGP0
さやか 「さてと、この話はこれでおしまい。そろそろ病室もどろ?いい加減、遅すぎだって二人とも心配しているかも」
ほむら 「・・・ええ」
救いたいと思った。
だけれど、けっきょく私の言葉など、これまでと同様に美樹さやかの心には届かないのか・・・
このままでは、必ず。その追い詰められた心の隙間に、ヤツが忍び込もうと迫ってくる。
そして美樹さやかは100%、キュウべぇの甘言を受け入れて魔法少女になってしまうだろう。
ほむら (だけれど、彼女に対して私のできる事なんて、今までの時間軸通り、やっぱり何もないんだ・・・)
無力感に押し潰されそうになる。
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「・・・ええ」
救いたいと思った。
だけれど、けっきょく私の言葉など、これまでと同様に美樹さやかの心には届かないのか・・・
このままでは、必ず。その追い詰められた心の隙間に、ヤツが忍び込もうと迫ってくる。
そして美樹さやかは100%、キュウべぇの甘言を受け入れて魔法少女になってしまうだろう。
ほむら (だけれど、彼女に対して私のできる事なんて、今までの時間軸通り、やっぱり何もないんだ・・・)
無力感に押し潰されそうになる。
キュウべぇ 「・・・」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:47:53.72 ID:sELL/rGP0
・・・
・・・
時間は少し逆戻り、ほむら達が出て行った直後の病室。
竜馬 「さてと、改めましてこんにちわ。転校生の流竜馬だ。て、そりゃさっき言ったか」
恭介 「う、うん、聞いたよ。僕は上条恭介。よ、よろしく・・・」
竜馬 「おう」
恭介 「・・・」
竜馬 「青っ白い顔してるな。飯、食えてるのか」
恭介 「最近はあまり食欲が無くてね。でも、さやかにうるさく言われてるし、最低限は一応、ね」
竜馬 「美樹にねぇ。そんな頻繁に見舞いに来てるのか、あいつ」
恭介 「・・・」
竜馬 「良いヤツだよな。あの年でそこまで甲斐甲斐しくできるなんて、そうできる事じゃないぜ」
恭介 「おかしなことを言うよね。同い年相手に・・・」
・・・
時間は少し逆戻り、ほむら達が出て行った直後の病室。
竜馬 「さてと、改めましてこんにちわ。転校生の流竜馬だ。て、そりゃさっき言ったか」
恭介 「う、うん、聞いたよ。僕は上条恭介。よ、よろしく・・・」
竜馬 「おう」
恭介 「・・・」
竜馬 「青っ白い顔してるな。飯、食えてるのか」
恭介 「最近はあまり食欲が無くてね。でも、さやかにうるさく言われてるし、最低限は一応、ね」
竜馬 「美樹にねぇ。そんな頻繁に見舞いに来てるのか、あいつ」
恭介 「・・・」
竜馬 「良いヤツだよな。あの年でそこまで甲斐甲斐しくできるなんて、そうできる事じゃないぜ」
恭介 「おかしなことを言うよね。同い年相手に・・・」
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:51:28.94 ID:sELL/rGP0
竜馬 「おかしい?もしお前と美樹が逆の立場だとして、それを踏まえた上でなお、おかしいと言い切れるのか?」
恭介 「え・・・」
竜馬 「気にかけてもらって当然・・・心配されて当たり前」
恭介 「・・・」
竜馬 「一度そう思っちまうと、凄さってのはなかなか見えてこなくなるもんだからなぁ・・・」
恭介 「僕はそんな・・・あれはさやかが勝手にやってる事で・・・」
竜馬 「そうかい?だったらなおの事、気を利かせて世話を焼きに来てる女を泣かすようなマネなんざ止めときな」
恭介 「・・・っ」
竜馬 「男を下げるぜ」
恭介 「え・・・」
竜馬 「気にかけてもらって当然・・・心配されて当たり前」
恭介 「・・・」
竜馬 「一度そう思っちまうと、凄さってのはなかなか見えてこなくなるもんだからなぁ・・・」
恭介 「僕はそんな・・・あれはさやかが勝手にやってる事で・・・」
竜馬 「そうかい?だったらなおの事、気を利かせて世話を焼きに来てる女を泣かすようなマネなんざ止めときな」
恭介 「・・・っ」
竜馬 「男を下げるぜ」
101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:53:23.84 ID:sELL/rGP0
恭介 「な、何で君にそんな事を言われなきゃっ・・・!」
竜馬 「大切なものを、失ったんだってな」
恭介 「え、あ・・・う、うん」
竜馬 「俺もさ、掛け替えの無い者を無くした事があるんだ。それも、自分のミスでな」
恭介 「え・・・き、君も?」
竜馬 「おう、そりゃ荒れたぜ。暴れた暴れた。物にも当たったし、人にも当たった。あんまり度が過ぎたんで、投げ飛ばされちまってな」
恭介 「投げ飛ばされた!?」
竜馬 「仲間に柔道の強いのがいるんだがな。おもっくそブン投げられた。俺じゃなけりゃ、死んでたかもな、あれは」
恭介 「は、はは・・・まさか」
竜馬 「大げさに言ってるんじゃねぇぞ?まぁ、それだけされる位、あの時の俺は手がつけられない馬鹿になってたってことだ。そんでな?」
恭介 「・・・」
竜馬 「体中痛くって、ぶっ倒れてるほか成す術無しって段になって、初めて色々考える余裕ができてさ・・・惨めだったぜ」
恭介 「惨めって、なにが・・・?」
竜馬 「大切なものを、失ったんだってな」
恭介 「え、あ・・・う、うん」
竜馬 「俺もさ、掛け替えの無い者を無くした事があるんだ。それも、自分のミスでな」
恭介 「え・・・き、君も?」
竜馬 「おう、そりゃ荒れたぜ。暴れた暴れた。物にも当たったし、人にも当たった。あんまり度が過ぎたんで、投げ飛ばされちまってな」
恭介 「投げ飛ばされた!?」
竜馬 「仲間に柔道の強いのがいるんだがな。おもっくそブン投げられた。俺じゃなけりゃ、死んでたかもな、あれは」
恭介 「は、はは・・・まさか」
竜馬 「大げさに言ってるんじゃねぇぞ?まぁ、それだけされる位、あの時の俺は手がつけられない馬鹿になってたってことだ。そんでな?」
恭介 「・・・」
竜馬 「体中痛くって、ぶっ倒れてるほか成す術無しって段になって、初めて色々考える余裕ができてさ・・・惨めだったぜ」
恭介 「惨めって、なにが・・・?」
102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:54:45.43 ID:sELL/rGP0
竜馬 「やり場の無い憤りを周りにぶつけてる時、俺はそんな負の感情を発散させているつもりだったんだ。だが、そんなの全然違うってな。分かったんだよ」
恭介 「・・・」
竜馬 「結局憤りは心の底に澱のように沈んだまま。暴れる以外にやりきれない、俺の弱さを周囲に見せつけただけだってことにな」
恭介 (どきっ)
竜馬 「荒れようが暴れようが、あいつはもう帰ってこねぇのにな・・・」
恭介 「え・・・あ、あの・・・もしかして、君が無くしたのって、まさか・・・」
竜馬 「友達だよ。掛け替えのない、な」
恭介 「・・・」
竜馬 「お前の腕、もう治らないのか?」
恭介 「うん・・・そう医者に言われたんだ。諦めろって」
竜馬 「辛いな」
恭介 「・・・」
竜馬 「結局憤りは心の底に澱のように沈んだまま。暴れる以外にやりきれない、俺の弱さを周囲に見せつけただけだってことにな」
恭介 (どきっ)
竜馬 「荒れようが暴れようが、あいつはもう帰ってこねぇのにな・・・」
恭介 「え・・・あ、あの・・・もしかして、君が無くしたのって、まさか・・・」
竜馬 「友達だよ。掛け替えのない、な」
恭介 「・・・」
竜馬 「お前の腕、もう治らないのか?」
恭介 「うん・・・そう医者に言われたんだ。諦めろって」
竜馬 「辛いな」
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 00:56:16.95 ID:sELL/rGP0
恭介 「僕の大切なものも、もう戻らないんだ・・・」
竜馬 「だとしても、今以上に自分を落とすなよ。自分から自分を惨めにする必要はねぇ」
恭介 「・・・え」
竜馬 「分かるぜ。お前、昨日はあまり眠れなかったんだろう?」
恭介 「・・・なんでそれを」
竜馬 「真っ暗な部屋の中で天井を見つめていると、色々と考えちまうんだよな。自分の言った事。それで傷つけた人の事。思い返して、あまりに惨めで死にたくなる」
恭介 「・・・っ」
竜馬 「お前が無くした大切な物、失って一緒に悲しんでくれる女の事、少しは気にかけてやれ」
恭介 「う、うう・・・」
竜馬 「邪険にするんじゃなく、頼ってやれ。お前も美樹も、二人とも惨めにならないために」
恭介 「う・・・うあああああああ・・・」
竜馬 「だとしても、今以上に自分を落とすなよ。自分から自分を惨めにする必要はねぇ」
恭介 「・・・え」
竜馬 「分かるぜ。お前、昨日はあまり眠れなかったんだろう?」
恭介 「・・・なんでそれを」
竜馬 「真っ暗な部屋の中で天井を見つめていると、色々と考えちまうんだよな。自分の言った事。それで傷つけた人の事。思い返して、あまりに惨めで死にたくなる」
恭介 「・・・っ」
竜馬 「お前が無くした大切な物、失って一緒に悲しんでくれる女の事、少しは気にかけてやれ」
恭介 「う、うう・・・」
竜馬 「邪険にするんじゃなく、頼ってやれ。お前も美樹も、二人とも惨めにならないために」
恭介 「う・・・うあああああああ・・・」
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 01:01:47.94 ID:sELL/rGP0
・・・
・・・
花を活けた花瓶を胸に抱え、私は病室の前まで戻ってきた。
並んで歩くさやかとまどかとは、トイレを出た後から会話一つ無い。
・・・空気が重い。
結局、私がやったのは、無駄にさやかを怒らせた事だけ。
ほむら (さやかの気持ちを上条恭介から逸らすことができたら、ヤツが付け入る隙を奪う事ができたのに・・・)
足取りも重く、病室の中へ入ろうとする。
・・・と。
さやか 「あれ??」
まどか 「どうかしたの、さやかちゃん」
さやか 「いやさ、なんか中から笑い声が・・・」
・・・
花を活けた花瓶を胸に抱え、私は病室の前まで戻ってきた。
並んで歩くさやかとまどかとは、トイレを出た後から会話一つ無い。
・・・空気が重い。
結局、私がやったのは、無駄にさやかを怒らせた事だけ。
ほむら (さやかの気持ちを上条恭介から逸らすことができたら、ヤツが付け入る隙を奪う事ができたのに・・・)
足取りも重く、病室の中へ入ろうとする。
・・・と。
さやか 「あれ??」
まどか 「どうかしたの、さやかちゃん」
さやか 「いやさ、なんか中から笑い声が・・・」
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 01:03:37.93 ID:sELL/rGP0
ほむら 「え・・・そんなバカな」
竜馬を病院へ連れてきたくなかった理由。
それは竜馬の性格からして、上条恭介という男の事が絶対に受け入れがたいと考えたからだ。
二人を引き合わせれば、無用のトラブルを引き起こしかねない。
そんな懸念を捨てきれなかった。
だから本当は、一室に二人きりにさせるのも抵抗があったのだけれど・・・
ほむら (流君が手は出さないと言明したし、私はさやかと話がしたかったから、敢えて上条の事は彼に任せたのだけれど・・・)
まさか、その二人が談笑してるなんて・・・?
信じがたい気持ちを抑え、私は中から聞こえる声に耳を澄ませる。
恭介 「へぇ、流君は空手の達人なんだね!」
竜馬 「達人というか、まぁ、そこそこはいけるつもりだがな」
恭介 「空手って、面白いのかい?」
竜馬 「そうだな。身体は丈夫になるし、合法的に相手をぶっ飛ばせるし、面白いぜ」
恭介 「あははっ」
竜馬を病院へ連れてきたくなかった理由。
それは竜馬の性格からして、上条恭介という男の事が絶対に受け入れがたいと考えたからだ。
二人を引き合わせれば、無用のトラブルを引き起こしかねない。
そんな懸念を捨てきれなかった。
だから本当は、一室に二人きりにさせるのも抵抗があったのだけれど・・・
ほむら (流君が手は出さないと言明したし、私はさやかと話がしたかったから、敢えて上条の事は彼に任せたのだけれど・・・)
まさか、その二人が談笑してるなんて・・・?
信じがたい気持ちを抑え、私は中から聞こえる声に耳を澄ませる。
恭介 「へぇ、流君は空手の達人なんだね!」
竜馬 「達人というか、まぁ、そこそこはいけるつもりだがな」
恭介 「空手って、面白いのかい?」
竜馬 「そうだな。身体は丈夫になるし、合法的に相手をぶっ飛ばせるし、面白いぜ」
恭介 「あははっ」
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 01:07:59.91 ID:sELL/rGP0
竜馬 「武道の真髄は心技体を鍛える事だ。俺は好きで始めた空手ではなかったが、今ではやっておいて良かったと思ってるぜ」
恭介 「心技体か・・・うん。流君を見てると、とても納得できるよ」
竜馬 「そうか?」
恭介 「うん・・・僕も空手、できるかな。あ、でも、片手じゃやっぱり無理かなぁ・・・」
竜馬 「やる気があれば、ハンデがあろうが関係ないさ。実際に片腕の空手家ってのも、それなりにはいるしな」
恭介 「そうなんだ・・・なんか、すごいね」
まどか 「・・・」
ほむら 「・・・」
さやか 「・・・恭介が、笑ってる・・・」
さやかを先頭に病室に入る。
と、中では外から聞こえた声そのままの穏やかな雰囲気で、竜馬と上条が会話を楽しんでいた。
病室を出た時とは打って変わった様子に、一様に目が点の私たち。
一体、留守にしている間に、彼らに何が・・・??
さやか 「恭介・・・?」
恭介 「さやか。あ、みんなも・・・花、活けて来てくれたんだね。どうもありがとう」
恭介 「心技体か・・・うん。流君を見てると、とても納得できるよ」
竜馬 「そうか?」
恭介 「うん・・・僕も空手、できるかな。あ、でも、片手じゃやっぱり無理かなぁ・・・」
竜馬 「やる気があれば、ハンデがあろうが関係ないさ。実際に片腕の空手家ってのも、それなりにはいるしな」
恭介 「そうなんだ・・・なんか、すごいね」
まどか 「・・・」
ほむら 「・・・」
さやか 「・・・恭介が、笑ってる・・・」
さやかを先頭に病室に入る。
と、中では外から聞こえた声そのままの穏やかな雰囲気で、竜馬と上条が会話を楽しんでいた。
病室を出た時とは打って変わった様子に、一様に目が点の私たち。
一体、留守にしている間に、彼らに何が・・・??
さやか 「恭介・・・?」
恭介 「さやか。あ、みんなも・・・花、活けて来てくれたんだね。どうもありがとう」
107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 01:09:21.58 ID:sELL/rGP0
ほむら 「い、いいえ・・・これ、ここに置いておくわね」
竜馬 「よぉ、遅かったな。広い病院だし、迷子にでもなったか?」
ほむら 「そんなところかも。それより、ねぇ。これって一体・・・」
竜馬 「お、もうこんな時間か。けっこう話し込んじまったな。長居しすぎても悪いし、俺たちはそろそろ帰るか」
ほむら 「え、いや、ちょっと・・・」
竜馬 「鹿目も行こうぜ」
まどか 「うぇひっ?で、でも・・・」
竜馬 「大丈夫だから」
まどか 「・・・流君?う、うん」
さやか 「え、まどか達、もう行っちゃうの・・・?」
ワケが分からないと、不安を色濃くのぞかせた、困り顔のさやか。
すがる様にまどかを見ている。
竜馬 「よぉ、遅かったな。広い病院だし、迷子にでもなったか?」
ほむら 「そんなところかも。それより、ねぇ。これって一体・・・」
竜馬 「お、もうこんな時間か。けっこう話し込んじまったな。長居しすぎても悪いし、俺たちはそろそろ帰るか」
ほむら 「え、いや、ちょっと・・・」
竜馬 「鹿目も行こうぜ」
まどか 「うぇひっ?で、でも・・・」
竜馬 「大丈夫だから」
まどか 「・・・流君?う、うん」
さやか 「え、まどか達、もう行っちゃうの・・・?」
ワケが分からないと、不安を色濃くのぞかせた、困り顔のさやか。
すがる様にまどかを見ている。
108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/14(日) 01:11:17.80 ID:sELL/rGP0
だが、そこはさすがの竜馬だ。さやかの様子になど、まったく頓着しない。
竜馬 「じゃーな、上条。今日は邪魔したな」
恭介 「ううん。空手の話、面白かったよ。また、聞かせにきてくれるかい?」
竜馬 「おう、それまでにたくさん食って、元気になっておけよ」
それだけ言うと、さっさと廊下へと消えてしまう竜馬。
放っておくわけにもいかず、私、そしてまどかも、追いかけるように後に続いた。
後に残されたのは、上条とさやかのふたりっきり。
竜馬 「じゃーな、上条。今日は邪魔したな」
恭介 「ううん。空手の話、面白かったよ。また、聞かせにきてくれるかい?」
竜馬 「おう、それまでにたくさん食って、元気になっておけよ」
それだけ言うと、さっさと廊下へと消えてしまう竜馬。
放っておくわけにもいかず、私、そしてまどかも、追いかけるように後に続いた。
後に残されたのは、上条とさやかのふたりっきり。
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/16(火) 01:06:13.90 ID:uUFicj1R0
・・・
・・・
さやか 「・・・」
恭介 「・・・」
さやか 「あ、あはは・・・あいつら、何しに来たんだろうね。特に暁美さんとか。ほとんど、恭介と話してないじゃんねー」
恭介 「うん・・・」
さやか 「はは、は・・・はは」
恭介 「・・・」
さやか 「・・・恭介。流君と何を話してたの?すごく楽しそうだったけど」
恭介 「うん、彼がやっている空手の話とかね。僕には未知の世界だから、すごく新鮮な気持ちで聞くことができたよ」
さやか 「へ、へぇー・・・そっかぁ・・・な、なんかさ、なんかだよ・・・恭介が笑顔で人と話してるのって、すっごく久々に見た気がする・・・」
恭介 「そうかな・・・」
・・・
さやか 「・・・」
恭介 「・・・」
さやか 「あ、あはは・・・あいつら、何しに来たんだろうね。特に暁美さんとか。ほとんど、恭介と話してないじゃんねー」
恭介 「うん・・・」
さやか 「はは、は・・・はは」
恭介 「・・・」
さやか 「・・・恭介。流君と何を話してたの?すごく楽しそうだったけど」
恭介 「うん、彼がやっている空手の話とかね。僕には未知の世界だから、すごく新鮮な気持ちで聞くことができたよ」
さやか 「へ、へぇー・・・そっかぁ・・・な、なんかさ、なんかだよ・・・恭介が笑顔で人と話してるのって、すっごく久々に見た気がする・・・」
恭介 「そうかな・・・」
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:07:07.34 ID:uUFicj1R0
さやか 「うん。恭介が楽しそうにしてると、私も嬉しい」
恭介 「さやか・・・」
さやか 「私じゃ、恭介をそんな笑顔になんて、してあげられないと思うから・・・」
恭介 「・・・っ」
さやか 「あはは、私、なに言ってるんだろ。さて、と。私も今日は帰るね。また来るかr
恭介 「さやかっ!」
さやか 「うぁ、びっくりした!どうしたのよ、急に大声なんか上げたりして」
恭介 「ごめん・・・でも、さやか。帰らないで、もう少し一緒にいて欲しいんだ」
さやか 「・・・え」
恭介 「さやかに、話したい事があるんだ。だ、だから・・・」
さやか 「恭介・・・?」
キュウべぇ 「・・・」
恭介 「さやか・・・」
さやか 「私じゃ、恭介をそんな笑顔になんて、してあげられないと思うから・・・」
恭介 「・・・っ」
さやか 「あはは、私、なに言ってるんだろ。さて、と。私も今日は帰るね。また来るかr
恭介 「さやかっ!」
さやか 「うぁ、びっくりした!どうしたのよ、急に大声なんか上げたりして」
恭介 「ごめん・・・でも、さやか。帰らないで、もう少し一緒にいて欲しいんだ」
さやか 「・・・え」
恭介 「さやかに、話したい事があるんだ。だ、だから・・・」
さやか 「恭介・・・?」
キュウべぇ 「・・・」
120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:08:20.72 ID:uUFicj1R0
・・・
・・・
病院から出て、しばらく歩いた所で。
聞きたくも無い、あの声に呼び止められた私たち。
キュウべぇ 「やぁ、みんな」
・・・インキュベーター。
ほむら 「何か用?こちらはお前には、話したいことなど無いのだけれど」
キュウべぇ 「あいかわらず、ほむらはつれないね。それはともかくとして、だ。・・・流竜馬」
竜馬 「あん?」
キュウべぇ 「君にはしてやられたよ。こうなってはもう、美樹さやかに魔法少女になってもらうのは、まず望みが無いだろうからね」
およそキュウべぇらしからぬ言葉に、私は耳を疑う。
ほむら 「え・・・それってどういう意味・・・?流君・・・?」
竜馬 「俺はただ、上条を放っておけなかっただけだ」
ほむら 「・・・?」
キュウべぇ 「君が何を考えての上での行動だったか。そんなのはどうでも良いんだよ。重要なのは、その結果だ」
・・・
病院から出て、しばらく歩いた所で。
聞きたくも無い、あの声に呼び止められた私たち。
キュウべぇ 「やぁ、みんな」
・・・インキュベーター。
ほむら 「何か用?こちらはお前には、話したいことなど無いのだけれど」
キュウべぇ 「あいかわらず、ほむらはつれないね。それはともかくとして、だ。・・・流竜馬」
竜馬 「あん?」
キュウべぇ 「君にはしてやられたよ。こうなってはもう、美樹さやかに魔法少女になってもらうのは、まず望みが無いだろうからね」
およそキュウべぇらしからぬ言葉に、私は耳を疑う。
ほむら 「え・・・それってどういう意味・・・?流君・・・?」
竜馬 「俺はただ、上条を放っておけなかっただけだ」
ほむら 「・・・?」
キュウべぇ 「君が何を考えての上での行動だったか。そんなのはどうでも良いんだよ。重要なのは、その結果だ」
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:09:18.77 ID:uUFicj1R0
まどか 「さやかちゃんに魔法少女になるようにって、言えなかったの?」
キュウべぇ 「そうだよ、まどか。もう、彼女に話をを持ちかけた所で、意味が無くなっちゃったからね」
ほむら 「・・・分かるように説明しなさい」
キュウべぇ 「人というのは単純な生き物だよね。まったく理解に苦しむよ。あんなに悩んでいた上条恭介が、竜馬との会話ですっかり心を前向きに持ち直してしまった」
ほむら 「・・・!」
思わず竜馬に目が行く。
だが、当の竜馬は面白くなさそうに口を結んだまま、憮然とキュウべぇを見据えているのみ。
キュウべぇ 「恭介はさやかに言うだろう。これからも自分の側にいて、支えて欲しいと。こんな虫の良い提案こそ、今のさやかが最も望む願いに他ならない。ワケが分からないけれどね」
ほむら 「え、それって、美樹さんにとっての・・・」
キュウべぇ 「そうだよ。魔法少女の契約も無しに、さやかは最大の願いを叶えてしまった。こうなってはお手上げさ。彼女からは手を引かざるを得ない」
ほむら 「・・・!」
キュウべぇ 「そうだよ、まどか。もう、彼女に話をを持ちかけた所で、意味が無くなっちゃったからね」
ほむら 「・・・分かるように説明しなさい」
キュウべぇ 「人というのは単純な生き物だよね。まったく理解に苦しむよ。あんなに悩んでいた上条恭介が、竜馬との会話ですっかり心を前向きに持ち直してしまった」
ほむら 「・・・!」
思わず竜馬に目が行く。
だが、当の竜馬は面白くなさそうに口を結んだまま、憮然とキュウべぇを見据えているのみ。
キュウべぇ 「恭介はさやかに言うだろう。これからも自分の側にいて、支えて欲しいと。こんな虫の良い提案こそ、今のさやかが最も望む願いに他ならない。ワケが分からないけれどね」
ほむら 「え、それって、美樹さんにとっての・・・」
キュウべぇ 「そうだよ。魔法少女の契約も無しに、さやかは最大の願いを叶えてしまった。こうなってはお手上げさ。彼女からは手を引かざるを得ない」
ほむら 「・・・!」
122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:10:45.31 ID:uUFicj1R0
キュウべぇ 「さやかの事は、諦めるとするよ」
幾多の時間軸を渡り歩いた私にとっても、これは初めてのパターンだった。
さやかの報われぬ思いの終止符は、さやかの魔女化か戦死、あるいは失恋。いずれも彼女の望まない形でしか訪れなかったというのに。
それがこんな形で、さやかの心と命の両方を救う結果を向かえる事ができるだなんて・・・
ほむら 「流君、あなた・・・」
私は・・・
さやかに上条恭介との関わりを絶たせ、恋心を諦めさせる代わりに彼女の命を救いたいと思った。
そして、結果は失敗。ただ単にさやかの心象を悪くしただけに終ってしまった。
それなのに竜馬は、その両方を諦めさせる事なく、なおかつ上条恭介の心まで救って見せたのだ。
竜馬 「言ったろう?俺はヤツが放っておけなかった。かつての俺自身を見せ付けられているようでな」
そう言った竜馬の顔に一瞬だけ浮かんだのは、さっき病室の前で見せられた、あの凄まじいほどの怒気。
ああ・・・、そうだったんだ。
あの怒りは、上条恭介ではなく、彼に重ね合わせた過去の竜馬自身にこそ向けられたものだったんだ・・・
幾多の時間軸を渡り歩いた私にとっても、これは初めてのパターンだった。
さやかの報われぬ思いの終止符は、さやかの魔女化か戦死、あるいは失恋。いずれも彼女の望まない形でしか訪れなかったというのに。
それがこんな形で、さやかの心と命の両方を救う結果を向かえる事ができるだなんて・・・
ほむら 「流君、あなた・・・」
私は・・・
さやかに上条恭介との関わりを絶たせ、恋心を諦めさせる代わりに彼女の命を救いたいと思った。
そして、結果は失敗。ただ単にさやかの心象を悪くしただけに終ってしまった。
それなのに竜馬は、その両方を諦めさせる事なく、なおかつ上条恭介の心まで救って見せたのだ。
竜馬 「言ったろう?俺はヤツが放っておけなかった。かつての俺自身を見せ付けられているようでな」
そう言った竜馬の顔に一瞬だけ浮かんだのは、さっき病室の前で見せられた、あの凄まじいほどの怒気。
ああ・・・、そうだったんだ。
あの怒りは、上条恭介ではなく、彼に重ね合わせた過去の竜馬自身にこそ向けられたものだったんだ・・・
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:11:40.83 ID:uUFicj1R0
竜馬 「だから自分の気の向くまま、やりたいようにやっただけさ」
ほむら 「・・・うん」
それなのに、私ときたら・・・
仲間とか言いながら、彼の心一つ斟酌してあげることができていなかっただなんて・・・
竜馬 「後はあいつら自身の問題だ。良い方向に舵が切れたと言うなら、それは上条や美樹自身の力だろうさ」
ほむら 「・・・」
敵わない。
それが今、この瞬間。私が竜馬に抱いた、偽らない気持ちだった。
ほむら 「・・・うん」
それなのに、私ときたら・・・
仲間とか言いながら、彼の心一つ斟酌してあげることができていなかっただなんて・・・
竜馬 「後はあいつら自身の問題だ。良い方向に舵が切れたと言うなら、それは上条や美樹自身の力だろうさ」
ほむら 「・・・」
敵わない。
それが今、この瞬間。私が竜馬に抱いた、偽らない気持ちだった。
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:12:29.32 ID:uUFicj1R0
キュウべぇ 「さて・・・さやかはこんな事になっちゃったけれど、まどかは願いが決まったのかい?」
まどか 「・・・っ?」
不意にキュウべぇに矛先を向けられ、戸惑うまどか。
私の意識も、内省から一気に現実へと引き戻される。
まどか 「わ、私は」
ほむら 「インキュベーター!!」(ちゃきっ!)
キュウべぇ 「おっと、こんな所で銃なんか発砲しない方がいいよ。誰かに聞きつけられたら、君だって厄介ごとは背負い込みたくないだろう?」
ほむら 「・・・分かってるわ。だけど、まどかは契約させない。よけいな事は言わないで!」
キュウべぇ 「・・・分かったよ。僕もここで余計な時間を食ってる暇は無いのでね」
ほむら (・・・余計な、時間?)
キュウべぇ 「今日はこれで失礼するとするよ。じゃあね、まどか」
別れの挨拶を言い終わるやヤツは、まるで空間に溶け込むように、どこへともなく消えてしまった。
まどか 「・・・っ?」
不意にキュウべぇに矛先を向けられ、戸惑うまどか。
私の意識も、内省から一気に現実へと引き戻される。
まどか 「わ、私は」
ほむら 「インキュベーター!!」(ちゃきっ!)
キュウべぇ 「おっと、こんな所で銃なんか発砲しない方がいいよ。誰かに聞きつけられたら、君だって厄介ごとは背負い込みたくないだろう?」
ほむら 「・・・分かってるわ。だけど、まどかは契約させない。よけいな事は言わないで!」
キュウべぇ 「・・・分かったよ。僕もここで余計な時間を食ってる暇は無いのでね」
ほむら (・・・余計な、時間?)
キュウべぇ 「今日はこれで失礼するとするよ。じゃあね、まどか」
別れの挨拶を言い終わるやヤツは、まるで空間に溶け込むように、どこへともなく消えてしまった。
125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:13:15.31 ID:uUFicj1R0
どこからともなく現れて、いずこへかと消えてゆく。
まったく、神出鬼没とは良く言ったものだわ。
だけど、今日のあいつ・・・何だか不可解だ。
だって・・・
ほむら (さやかの事、あまりに引き際が良すぎる・・・余計な時間、と言ってたわね。およそ、あいつらしくもないセリフ)
だって、魔法少女の契約は、キュウべぇにとっては至上の命題なはず。
だというのに、こんなにもあっさり、さやかの前から姿を消すと宣言するとは。
騙そうとしているのか?
それとも、あいつ。なにか良からぬ悪巧みでもしているのかも知れない・・・
まったく、神出鬼没とは良く言ったものだわ。
だけど、今日のあいつ・・・何だか不可解だ。
だって・・・
ほむら (さやかの事、あまりに引き際が良すぎる・・・余計な時間、と言ってたわね。およそ、あいつらしくもないセリフ)
だって、魔法少女の契約は、キュウべぇにとっては至上の命題なはず。
だというのに、こんなにもあっさり、さやかの前から姿を消すと宣言するとは。
騙そうとしているのか?
それとも、あいつ。なにか良からぬ悪巧みでもしているのかも知れない・・・
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:13:49.31 ID:uUFicj1R0
茜色に染まった、夕餉れ時の空の下。
疑問を抱えたまま、私たちは再び歩き出す。
ふ、と。隣を歩くまどかを見る。
夕日を受けたまどかの顔は、ほんのり赤く照らされて、血色の良い肌が一層美しく映えていた。
まどか 「・・・ん?」
私の視線に気がついて、小首をかしげてこちらを見る。そんなしぐさも愛らしい。
この愛らしさを曇らせる要因の一つを、取り除く事ができた。
少しホッとする反面、釈然としない気持ちも残る。
なぜって・・・
ほむら (結局私は、さやかの事では何もできなかった・・・から・・・)
悔しいと思った。
疑問を抱えたまま、私たちは再び歩き出す。
ふ、と。隣を歩くまどかを見る。
夕日を受けたまどかの顔は、ほんのり赤く照らされて、血色の良い肌が一層美しく映えていた。
まどか 「・・・ん?」
私の視線に気がついて、小首をかしげてこちらを見る。そんなしぐさも愛らしい。
この愛らしさを曇らせる要因の一つを、取り除く事ができた。
少しホッとする反面、釈然としない気持ちも残る。
なぜって・・・
ほむら (結局私は、さやかの事では何もできなかった・・・から・・・)
悔しいと思った。
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:18:25.94 ID:uUFicj1R0
・・・
・・・
その日の夜。
竜馬に連れられて、武蔵が私の部屋へとやって来た。
一歩足を踏み入れて、ギョッとする武蔵。竜馬の時と似たような反応ね。
武蔵 「随分とへん・・・個性的な部屋に住んでるんだなぁ」
ほむら 「気を使ってくれなくても、自覚はしてるので。居住性よりも機能美を優先した結果よ」
武蔵 「そういうものなのか・・・」
素直に感心してくれる武蔵。
ひとまず二人を座らせて、私は定番となった安物の紅茶を出す。
マミの家とは違って、お茶請けは何もないけれど。
そう言うと、武蔵はニコニコしながら手持ちの鞄の中身をテーブルにぶちまけた。
中から出てきたのは、原色バリバリの袋に入った外国のお菓子の山。
竜馬 「なんだこりゃ・・・」
武蔵 「一応な、お土産にと思って。帰国する時に持ち帰った、ニューヨークで買ったお菓子だ!」
・・・
その日の夜。
竜馬に連れられて、武蔵が私の部屋へとやって来た。
一歩足を踏み入れて、ギョッとする武蔵。竜馬の時と似たような反応ね。
武蔵 「随分とへん・・・個性的な部屋に住んでるんだなぁ」
ほむら 「気を使ってくれなくても、自覚はしてるので。居住性よりも機能美を優先した結果よ」
武蔵 「そういうものなのか・・・」
素直に感心してくれる武蔵。
ひとまず二人を座らせて、私は定番となった安物の紅茶を出す。
マミの家とは違って、お茶請けは何もないけれど。
そう言うと、武蔵はニコニコしながら手持ちの鞄の中身をテーブルにぶちまけた。
中から出てきたのは、原色バリバリの袋に入った外国のお菓子の山。
竜馬 「なんだこりゃ・・・」
武蔵 「一応な、お土産にと思って。帰国する時に持ち帰った、ニューヨークで買ったお菓子だ!」
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:19:17.67 ID:uUFicj1R0
ほむら 「たくさんあるのね。頂いて良いの?」
武蔵 「家にもたくさんあるからな、遠慮しないでいいぜ。これ食いながら、話を進めようか」
竜馬 「あいかわらず食い意地張ってるな。ていうか・・・ニューヨークか。お前、なんでそんなところにいたんだ?」
武蔵 「交換留学生制度って言う奴らしい。俺はニューヨークの高校に柔道の腕を見込まれて、一年を期限に渡米してたんだとさ」
竜馬 「と、言う事は・・・?」
武蔵 「ああ。気がついたら、そういう事になっていた。すでに帰国の段取りまで済んだ状態でな。しかも・・・」
武蔵が懐からスマホを出して、一枚の写真を表示させた。
そこに写ってるのは・・・
ほむら 「武蔵さんと・・・巴マミ・・・小さい頃の・・・」
両親と思われる男女の間に挟まって、笑顔で寄り添ってる仲睦まじい兄妹の姿であった。
武蔵 「可愛い妹つきで、だ」
武蔵 「家にもたくさんあるからな、遠慮しないでいいぜ。これ食いながら、話を進めようか」
竜馬 「あいかわらず食い意地張ってるな。ていうか・・・ニューヨークか。お前、なんでそんなところにいたんだ?」
武蔵 「交換留学生制度って言う奴らしい。俺はニューヨークの高校に柔道の腕を見込まれて、一年を期限に渡米してたんだとさ」
竜馬 「と、言う事は・・・?」
武蔵 「ああ。気がついたら、そういう事になっていた。すでに帰国の段取りまで済んだ状態でな。しかも・・・」
武蔵が懐からスマホを出して、一枚の写真を表示させた。
そこに写ってるのは・・・
ほむら 「武蔵さんと・・・巴マミ・・・小さい頃の・・・」
両親と思われる男女の間に挟まって、笑顔で寄り添ってる仲睦まじい兄妹の姿であった。
武蔵 「可愛い妹つきで、だ」
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:20:06.23 ID:uUFicj1R0
竜馬 「その写真は・・・?」
武蔵 「昨日、マミちゃんのアルバムから複写させてもらった。ガキの頃の俺も、一緒にバッチリ写っていたぜ」
ほむら 「・・・やっぱり武蔵さんも、この時間軸特有の立ち居地と役割を与えられていたのね」
武蔵 「昨日竜馬から、今いる世界が俺たちが元いた場所とは別の世界らしいって聞いてな。不思議なもんだぜ」
竜馬 「ああ、不可思議だ。なんせこっちの世界にはゲッターも恐竜帝国も存在しないんだからな。そんな所に何だって俺たちが・・・」
武蔵 「いや、そういう事じゃなくってさ」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「・・・?」
武蔵 「昨日初めてマミちゃんに会った時、初めて見る顔のはずなのに、俺は確かに感じたんだよ」
竜馬 「感じたって、何をだよ?」
武蔵 「なんつったら良いのかな・・・家族に対する情?みたいなものを、さ」
ほむら 「え・・・」
武蔵 「昨日、マミちゃんのアルバムから複写させてもらった。ガキの頃の俺も、一緒にバッチリ写っていたぜ」
ほむら 「・・・やっぱり武蔵さんも、この時間軸特有の立ち居地と役割を与えられていたのね」
武蔵 「昨日竜馬から、今いる世界が俺たちが元いた場所とは別の世界らしいって聞いてな。不思議なもんだぜ」
竜馬 「ああ、不可思議だ。なんせこっちの世界にはゲッターも恐竜帝国も存在しないんだからな。そんな所に何だって俺たちが・・・」
武蔵 「いや、そういう事じゃなくってさ」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「・・・?」
武蔵 「昨日初めてマミちゃんに会った時、初めて見る顔のはずなのに、俺は確かに感じたんだよ」
竜馬 「感じたって、何をだよ?」
武蔵 「なんつったら良いのかな・・・家族に対する情?みたいなものを、さ」
ほむら 「え・・・」
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:21:28.87 ID:uUFicj1R0
竜馬 「・・・武蔵、お前」
武蔵 「この子は確かに俺の妹だ、家族なんだって・・・記憶じゃなくって、もっと深い心の底の方で確信するような・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「竜馬にはないのか?例えば、今一緒に住んでる家族に対して、そんな風に湧き上がった感情が心の奥から・・・」
竜馬 「ねぇな」
ぴしゃりと竜馬は言い捨てた。
武蔵 「そ、そうか。な、なぁ・・・竜馬」
竜馬 「なんだ?」
武蔵 「俺、妹なんかいなかったよな?マミなんて子、お前は知らないよな」
竜馬 「しらねぇな」
武蔵 「だ、だよなぁ・・・」
武蔵 「この子は確かに俺の妹だ、家族なんだって・・・記憶じゃなくって、もっと深い心の底の方で確信するような・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「竜馬にはないのか?例えば、今一緒に住んでる家族に対して、そんな風に湧き上がった感情が心の奥から・・・」
竜馬 「ねぇな」
ぴしゃりと竜馬は言い捨てた。
武蔵 「そ、そうか。な、なぁ・・・竜馬」
竜馬 「なんだ?」
武蔵 「俺、妹なんかいなかったよな?マミなんて子、お前は知らないよな」
竜馬 「しらねぇな」
武蔵 「だ、だよなぁ・・・」
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:27:03.27 ID:uUFicj1R0
竜馬 「武蔵。お前、こっちの世界に取り込まれ始めてるんじゃないのか?」
武蔵 「取り込まれるって、なんだよ・・・」
竜馬 「元からお前は順応性が高かったからな。ワケの分からない状況の中に置かれて、自分の心を守るために世界に順応しようとしてもおかしくはねぇ」
ほむら 「どういうこと?」
竜馬 「武蔵は昔から適応能力が抜群に高かったんだ。ゲッターロボのパイロットになった時だって、俺や隼人が無理やり乗せられたのに対して、武蔵は自ら望んで乗り込み、あっさり馴染んで見せたくらいだ」
ほむら 「そうだったのね」
武蔵 「人を単純みたいに言うなよ」
竜馬 「そうは言っちゃいねぇ。ただ、俺とお前は対極だって事を、今更ながら再認識させられたって事さ」
武蔵 「そうだったな。お前は出会った時から、常に何かに抵抗していた。反骨精神が服を着て歩いてるような奴だったからな」
竜馬 「のべつ幕なく抵抗してるわけじゃねぇぞ。だが、納得がいかない事にはとことん抗ってやるさ」
ほむら 「流君にとって、私たちの世界は納得がいかない場所だって事ね・・・」
武蔵 「取り込まれるって、なんだよ・・・」
竜馬 「元からお前は順応性が高かったからな。ワケの分からない状況の中に置かれて、自分の心を守るために世界に順応しようとしてもおかしくはねぇ」
ほむら 「どういうこと?」
竜馬 「武蔵は昔から適応能力が抜群に高かったんだ。ゲッターロボのパイロットになった時だって、俺や隼人が無理やり乗せられたのに対して、武蔵は自ら望んで乗り込み、あっさり馴染んで見せたくらいだ」
ほむら 「そうだったのね」
武蔵 「人を単純みたいに言うなよ」
竜馬 「そうは言っちゃいねぇ。ただ、俺とお前は対極だって事を、今更ながら再認識させられたって事さ」
武蔵 「そうだったな。お前は出会った時から、常に何かに抵抗していた。反骨精神が服を着て歩いてるような奴だったからな」
竜馬 「のべつ幕なく抵抗してるわけじゃねぇぞ。だが、納得がいかない事にはとことん抗ってやるさ」
ほむら 「流君にとって、私たちの世界は納得がいかない場所だって事ね・・・」
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 01:30:58.42 ID:uUFicj1R0
竜馬 「ゲッターもねぇ。恐竜帝国もいねぇ。そんな世界が、俺の居場所なはずはねぇ」
武蔵 「そういう反抗心が一切なくなった時、俺たちはこの世界の一部として定着してしまうのかもな」
竜馬 「冗談じゃねぇぜ。俺は必ず元の場所に帰る。その方法を必ず見つけ出してやる。俺には俺の世界で、やるべき事があるんだ」
ほむら 「・・・」
私だって紛れもなく、この世界の一部なのに。
竜馬に世界ごと、私も含めて否定されたように感じられて・・・
私の心に、言いようのない孤独感が押し寄せてくるのを抑えられない。
竜馬にとってこの世界は異質で、元の世界に返りたがっているというのは初めから分かっていた事の筈なのに・・・
それが、今になってどうして。
竜馬 「どうしかしたか?」
ほむら 「・・・別に何も」
竜馬 「・・・そうか?」
この感じ、あの時に似ている。
仲間と信じていた人たちに真実を話しても、受け入れてもらえず孤立してしまった。
あの時に抱いた、寂寥感に・・・
武蔵 「そういう反抗心が一切なくなった時、俺たちはこの世界の一部として定着してしまうのかもな」
竜馬 「冗談じゃねぇぜ。俺は必ず元の場所に帰る。その方法を必ず見つけ出してやる。俺には俺の世界で、やるべき事があるんだ」
ほむら 「・・・」
私だって紛れもなく、この世界の一部なのに。
竜馬に世界ごと、私も含めて否定されたように感じられて・・・
私の心に、言いようのない孤独感が押し寄せてくるのを抑えられない。
竜馬にとってこの世界は異質で、元の世界に返りたがっているというのは初めから分かっていた事の筈なのに・・・
それが、今になってどうして。
竜馬 「どうしかしたか?」
ほむら 「・・・別に何も」
竜馬 「・・・そうか?」
この感じ、あの時に似ている。
仲間と信じていた人たちに真実を話しても、受け入れてもらえず孤立してしまった。
あの時に抱いた、寂寥感に・・・
138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/21(日) 12:48:49.36 ID:STRY2IPh0
おお、復活してる。
再開します。
再開します。
139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/21(日) 12:50:08.15 ID:STRY2IPh0
武蔵 「しかし・・・元の世界に戻るにしても、俺たちをこんな目に合わせたのは、一体なんなんだろうな」
竜馬 「さぁな。この世界の裏の裏まで知ってそうな事情通にとっても、こと俺たちに関しちゃ寝耳に水の異常事態だったようだしな」
武蔵 「誰だ、その事情通ってのは・・・」
ほむら 「巴マミの家で会わなかった?キュウべぇという、見た目だけは可愛らしい小動物なのだけど」
武蔵 「さぁ・・・?昨晩は俺とマミちゃんの二人きりだったけど」
・・・キュウべぇが巴マミの元へ戻っていない?
てっきりパーティーの時は、私や竜馬がいるから行方を眩ませていたと思っていたんだけれど・・・
先刻の口ぶりといい、あいつの事だ。
なにか良からぬ事を企んでいそうで気にかかる・・・
・・・それに。
キュウべぇだけじゃない。
・・・例の謎の声。
竜馬 「さぁな。この世界の裏の裏まで知ってそうな事情通にとっても、こと俺たちに関しちゃ寝耳に水の異常事態だったようだしな」
武蔵 「誰だ、その事情通ってのは・・・」
ほむら 「巴マミの家で会わなかった?キュウべぇという、見た目だけは可愛らしい小動物なのだけど」
武蔵 「さぁ・・・?昨晩は俺とマミちゃんの二人きりだったけど」
・・・キュウべぇが巴マミの元へ戻っていない?
てっきりパーティーの時は、私や竜馬がいるから行方を眩ませていたと思っていたんだけれど・・・
先刻の口ぶりといい、あいつの事だ。
なにか良からぬ事を企んでいそうで気にかかる・・・
・・・それに。
キュウべぇだけじゃない。
・・・例の謎の声。
140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 12:52:01.42 ID:STRY2IPh0
私の窮地を救い、ゲッターという力を与えてくれた”彼”も、あれから一度も私に語りかけてこようとしない。
あの声の主・・・神隼人と思われる彼には、いくらでも聞きたいことがあるというのに。
特に、私こそ竜馬たちがこちらへ飛ばされた元凶だと語った、その事の真意を。
武蔵 「・・・それでこれから俺たち、どうしたら良いんだ?」
竜馬 「当座は暁美の活動に協力しようと思っている。魔女という化け物を倒しつつ、暁美の友達をも守るって具合にな」
武蔵 「ああ、その魔女とかいうの!俺みたいな普通の人間には、見えないのが本当なんだってな。随分とマミちゃんに聞かれたぜ」
竜馬 「普通の人間じゃなかったんだろ。お前も、俺もさ」
武蔵 「そういう事なのかなぁ。何で見えると聞かれても、皆目見当もつかないし、どうにも答えようがなくって弱ったよ」(ショボン)
竜馬 「・・・そんなことでションボリするなよ」
ほむら 「人が良いのね」
竜馬 「それだけが取り柄だな」
あの声の主・・・神隼人と思われる彼には、いくらでも聞きたいことがあるというのに。
特に、私こそ竜馬たちがこちらへ飛ばされた元凶だと語った、その事の真意を。
武蔵 「・・・それでこれから俺たち、どうしたら良いんだ?」
竜馬 「当座は暁美の活動に協力しようと思っている。魔女という化け物を倒しつつ、暁美の友達をも守るって具合にな」
武蔵 「ああ、その魔女とかいうの!俺みたいな普通の人間には、見えないのが本当なんだってな。随分とマミちゃんに聞かれたぜ」
竜馬 「普通の人間じゃなかったんだろ。お前も、俺もさ」
武蔵 「そういう事なのかなぁ。何で見えると聞かれても、皆目見当もつかないし、どうにも答えようがなくって弱ったよ」(ショボン)
竜馬 「・・・そんなことでションボリするなよ」
ほむら 「人が良いのね」
竜馬 「それだけが取り柄だな」
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 12:55:19.48 ID:STRY2IPh0
武蔵 「聞こえてるんだよ。それで、ほむらちゃんが守りたい友達って?」
竜馬 「昨日の騒動でも逢っているだろ。鹿目まどかっていう俺たちのクラスメイトだ」
武蔵 「ああ、あのおっとりしてそうな子か。なるほど、守りたくなっちゃうタイプだな、確かに」
竜馬 「ゲッターロボが暁美の元にあった事から分かるように、暁美は俺たちが元の世界に戻るためのキーパーソン足り得るだろう。だから・・・」
武蔵 「魔女を倒し、鹿目って子を守りつつ、ほむらちゃんを中心に据えて、帰る方法を探るって寸法だな。了解だぜ」
ほむら 「え・・・」
図らずも、驚きの声が漏れてしまった。
武蔵 「ん?どうかしたかい?」
ほむら 「だって、そんなあっさり。私がまどかを守りたい理由とかも聞いていないでしょう?なのに、安請け合いをしてしまっても良いの・・・?」
武蔵 「安くはないさ。言ったろ?竜馬が認めた子なら、俺にとっても仲間だって。仲間だったら、つべこべ言わずに信じるんだよ」
そう言って、右手を差し出す武蔵。
竜馬 「昨日の騒動でも逢っているだろ。鹿目まどかっていう俺たちのクラスメイトだ」
武蔵 「ああ、あのおっとりしてそうな子か。なるほど、守りたくなっちゃうタイプだな、確かに」
竜馬 「ゲッターロボが暁美の元にあった事から分かるように、暁美は俺たちが元の世界に戻るためのキーパーソン足り得るだろう。だから・・・」
武蔵 「魔女を倒し、鹿目って子を守りつつ、ほむらちゃんを中心に据えて、帰る方法を探るって寸法だな。了解だぜ」
ほむら 「え・・・」
図らずも、驚きの声が漏れてしまった。
武蔵 「ん?どうかしたかい?」
ほむら 「だって、そんなあっさり。私がまどかを守りたい理由とかも聞いていないでしょう?なのに、安請け合いをしてしまっても良いの・・・?」
武蔵 「安くはないさ。言ったろ?竜馬が認めた子なら、俺にとっても仲間だって。仲間だったら、つべこべ言わずに信じるんだよ」
そう言って、右手を差し出す武蔵。
142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/21(日) 12:57:40.31 ID:STRY2IPh0
まっすぐに私に向かって突き出された彼の太い腕は、そのまま私へ向けられた信頼の現れとも取れてしまい・・・
思わずうろたえてしまう。
すがる様に竜馬に目を向けるが・・・
竜馬 「握ってやれ。武蔵は自分が認めた相手の為なら、命さえ惜しまない男だ。必ず力になってくれる」
そう言って、にやりと笑われただけ。
対する武蔵は、竜馬とは打って変わり、目を細めて人の良さそうな笑みでこちらを見ている。
同じ笑顔でこうも違うものかと、驚かされるほどに対照的な二人・・・
武蔵 「俺は難しい事を考えるのは苦手だから、仲間が歩む道を共に進むのが一番確実なのさ」
ほむら 「は、はぁ・・・」
武蔵 「聞きたいことができたら、その都度聞くし。だからほむらちゃんも気にせず、気楽に頼ってくれていいぜ!」
思わずうろたえてしまう。
すがる様に竜馬に目を向けるが・・・
竜馬 「握ってやれ。武蔵は自分が認めた相手の為なら、命さえ惜しまない男だ。必ず力になってくれる」
そう言って、にやりと笑われただけ。
対する武蔵は、竜馬とは打って変わり、目を細めて人の良さそうな笑みでこちらを見ている。
同じ笑顔でこうも違うものかと、驚かされるほどに対照的な二人・・・
武蔵 「俺は難しい事を考えるのは苦手だから、仲間が歩む道を共に進むのが一番確実なのさ」
ほむら 「は、はぁ・・・」
武蔵 「聞きたいことができたら、その都度聞くし。だからほむらちゃんも気にせず、気楽に頼ってくれていいぜ!」
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 12:58:32.90 ID:STRY2IPh0
ほむら 「・・・」
差し出された手を取りながら思う。
竜馬と武蔵。確かに対照的な二人だ。
だけど、根本のところでは二人は同質の存在なのだろう。
きっと、彼らの行動基準は、理屈じゃないんだ。
信じたいから信じる。放っておけないから放っておかない。
自分の心に、どこまでも正直に。
羨ましいと思った。
差し出された手を取りながら思う。
竜馬と武蔵。確かに対照的な二人だ。
だけど、根本のところでは二人は同質の存在なのだろう。
きっと、彼らの行動基準は、理屈じゃないんだ。
信じたいから信じる。放っておけないから放っておかない。
自分の心に、どこまでも正直に。
羨ましいと思った。
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 12:59:53.24 ID:STRY2IPh0
二人に対して、私はどうだろうと考えさせられる。
まどかを守りたい。その一心で、私は数多の時間軸を渡り歩いてきた。
その一事だけは、誰にはばかることなく断言できる。私のまごう事なき真実の望みだと。
だけど、その他の事は?
私は真の望みのために、他の全てを偽って生きているんじゃないのか。
それは、そう。自分の心ですらも・・・
偽った心で発した言葉が、人の琴線に触れるはずがない。
だから、私の言葉はいつもさやかに届かなかったのだろう。
上条の心を開いた竜馬とは、まるで正反対に・・・
ほむら 「さやかを救いたいと思った心も、偽った気持ちだったのかしら・・・」
武蔵 「・・・え?」
まどかを守りたい。その一心で、私は数多の時間軸を渡り歩いてきた。
その一事だけは、誰にはばかることなく断言できる。私のまごう事なき真実の望みだと。
だけど、その他の事は?
私は真の望みのために、他の全てを偽って生きているんじゃないのか。
それは、そう。自分の心ですらも・・・
偽った心で発した言葉が、人の琴線に触れるはずがない。
だから、私の言葉はいつもさやかに届かなかったのだろう。
上条の心を開いた竜馬とは、まるで正反対に・・・
ほむら 「さやかを救いたいと思った心も、偽った気持ちだったのかしら・・・」
武蔵 「・・・え?」
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 13:01:00.70 ID:STRY2IPh0
ほむら 「なんでもない。よろしくね、武蔵さん。私も、あなた達の力になれることがあれば、なんだって協力するわ」
武蔵 「ああ、期待してるからな!なんてったって、俺たちは仲間なんだから!」
仲間・・・
私も彼等と共に歩めたなら、もっと自分の心に正直に、物事を良い方向に進める事ができる様になれるだろうか?
もうずっと昔に諦めてしまった、かつての私がやろうとしていた事を。
再び掴もうと足掻いても、許されるだろうか。
ほむら 「・・・ええ、仲間だわ」
私は武蔵と、その横の竜馬に頷いて見せた。
そう、仲間。
それが例え、異なる世界から来た、一時だけのかりそめなのだとしても。
武蔵 「ああ、期待してるからな!なんてったって、俺たちは仲間なんだから!」
仲間・・・
私も彼等と共に歩めたなら、もっと自分の心に正直に、物事を良い方向に進める事ができる様になれるだろうか?
もうずっと昔に諦めてしまった、かつての私がやろうとしていた事を。
再び掴もうと足掻いても、許されるだろうか。
ほむら 「・・・ええ、仲間だわ」
私は武蔵と、その横の竜馬に頷いて見せた。
そう、仲間。
それが例え、異なる世界から来た、一時だけのかりそめなのだとしても。
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/21(日) 13:01:56.89 ID:STRY2IPh0
・・・
・・・
次回予告
竜馬や武蔵に触発されたほむらは、大切な友達「鹿目まどか」と共に、かつての仲間をも救おうと決意する。
だがその前に、彼女には解決しなければいけない問題があった。
謎の魔力消耗現象。
その正体が、竜馬の口からついに明かされる。
そして、見滝原周辺に続々と現れる、謎の魔法少女たち。
キュウべぇの暗躍は、ほむらの戦いに新たな混迷をもたらすのだった。
はたしてキュウべぇの目論見はいかに!?
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第四話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
竜馬や武蔵に触発されたほむらは、大切な友達「鹿目まどか」と共に、かつての仲間をも救おうと決意する。
だがその前に、彼女には解決しなければいけない問題があった。
謎の魔力消耗現象。
その正体が、竜馬の口からついに明かされる。
そして、見滝原周辺に続々と現れる、謎の魔法少女たち。
キュウべぇの暗躍は、ほむらの戦いに新たな混迷をもたらすのだった。
はたしてキュウべぇの目論見はいかに!?
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第四話にテレビスイッチオン!
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:14:57.42 ID:D7gCJ1Lr0
ほむら「ゲッターロボ!」 第四話
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:15:37.04 ID:D7gCJ1Lr0
風見野市
某所
魔法少女 佐倉杏子は、今日も日課である魔女退治を行うため、縄張りとしている風見野氏を徘徊していた。
その手に握るは、彼女のソウルジェム。魔女の住処である結界の反応を光で示してくれる。
・・・と。
ソウルジェムにわずかな変化が現れた。些細ながらも確かな、光の揺らぎ。
杏子 「へっ」
杏子はその変化を見逃さない。
杏子 「この先から、結界の反応がある。さて、今夜のメインディッシュはどんなお味かな・・・と」
某所
魔法少女 佐倉杏子は、今日も日課である魔女退治を行うため、縄張りとしている風見野氏を徘徊していた。
その手に握るは、彼女のソウルジェム。魔女の住処である結界の反応を光で示してくれる。
・・・と。
ソウルジェムにわずかな変化が現れた。些細ながらも確かな、光の揺らぎ。
杏子 「へっ」
杏子はその変化を見逃さない。
杏子 「この先から、結界の反応がある。さて、今夜のメインディッシュはどんなお味かな・・・と」
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:18:11.47 ID:D7gCJ1Lr0
言うが早いか、杏子は駆け出した。
ソウルジェムの示す方へ、獲物のいる結界へと向かって。
自分が到着する前に、魔女が結界を閉じてしまっては元も子もない。
初動に遅れて、獲物を逃すようなへまを犯すような彼女ではないのだ。
だが・・・
杏子 「・・・」
導かれて到着した場所で杏子は肩を落とす。そこで見たものが、期待したものとは違っていたのだ。
杏子を落胆させたもの、それは・・・使い魔の結界。
ソウルジェムの示す方へ、獲物のいる結界へと向かって。
自分が到着する前に、魔女が結界を閉じてしまっては元も子もない。
初動に遅れて、獲物を逃すようなへまを犯すような彼女ではないのだ。
だが・・・
杏子 「・・・」
導かれて到着した場所で杏子は肩を落とす。そこで見たものが、期待したものとは違っていたのだ。
杏子を落胆させたもの、それは・・・使い魔の結界。
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:20:32.86 ID:D7gCJ1Lr0
いわゆる”はずれ”。
この中に魔女はいない。戦っても、グリーフシードは手に入らないのだ。
杏子 「なんだよ、期待させやがって。とんだ無駄足だったじゃないか」
こればかりは、目の前で実物を確かめるまでは分からない。
残念だが、そうと分かれば長居は無用だ。
杏子 「こんな所で貴重な魔力を無駄使いしても仕方がねぇ~。もう遅いし、今夜は退散するとします・・・か・・・」
杏子 「・・・ん?」
きびすを返し、建物の陰へ回った所で、杏子の視界の端を何かが横切った。
杏子 「あれは・・・」
物陰から顔を半分だけ出し、立ち去ったばかりの使い魔の結界の方を伺う。
この中に魔女はいない。戦っても、グリーフシードは手に入らないのだ。
杏子 「なんだよ、期待させやがって。とんだ無駄足だったじゃないか」
こればかりは、目の前で実物を確かめるまでは分からない。
残念だが、そうと分かれば長居は無用だ。
杏子 「こんな所で貴重な魔力を無駄使いしても仕方がねぇ~。もう遅いし、今夜は退散するとします・・・か・・・」
杏子 「・・・ん?」
きびすを返し、建物の陰へ回った所で、杏子の視界の端を何かが横切った。
杏子 「あれは・・・」
物陰から顔を半分だけ出し、立ち去ったばかりの使い魔の結界の方を伺う。
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:22:55.46 ID:D7gCJ1Lr0
するとそこには、杏子と入れ違いにやってきた、何者かの姿が。
? 「・・・」
その姿を目で追い、杏子は確信する。あの格好、間違いない・・・
杏子 「・・・魔法少女」
杏子が驚いている間に人影は、結界に吸い込まれるように、彼女の視界から姿を消していた。
使い魔の結界の中へと、入っていったのだ。
杏子 「あいつっ・・・ここはあたしのテリトリーだって言うのに!」
杏子 「どこかから流れてきたハグレの魔法少女か、それともルーキーか・・・」
杏子 「なんにしても、好き好んで使い魔の結界なんかに入っていくなんて、気に入らないな。まるで・・・」
杏子 「・・・」
杏子 「ええーい、そんなことはどうでも良いんだよ。とりあえず、後でもつけてみるか」
杏子 「あいつが使い魔を倒してホッとした所で、お灸を据えてやろうじゃないの」
杏子 「思い知らせてやる。この街の獲物は、全てあたしの物だって事を、さ」
? 「・・・」
その姿を目で追い、杏子は確信する。あの格好、間違いない・・・
杏子 「・・・魔法少女」
杏子が驚いている間に人影は、結界に吸い込まれるように、彼女の視界から姿を消していた。
使い魔の結界の中へと、入っていったのだ。
杏子 「あいつっ・・・ここはあたしのテリトリーだって言うのに!」
杏子 「どこかから流れてきたハグレの魔法少女か、それともルーキーか・・・」
杏子 「なんにしても、好き好んで使い魔の結界なんかに入っていくなんて、気に入らないな。まるで・・・」
杏子 「・・・」
杏子 「ええーい、そんなことはどうでも良いんだよ。とりあえず、後でもつけてみるか」
杏子 「あいつが使い魔を倒してホッとした所で、お灸を据えてやろうじゃないの」
杏子 「思い知らせてやる。この街の獲物は、全てあたしの物だって事を、さ」
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:25:57.07 ID:D7gCJ1Lr0
・・・
・・・
使い魔の結界内
杏子 「さて、さっきの奴はどこへ行った・・・?こっちか・・・?」
杏子 「・・・」きょろきょろ
杏子 「・・・いた」
結界内を探索し、程なく杏子はあっさりと目的の魔法少女を発見する。
場所は、入り口からそれほど遠くない、まだ結界の序盤といった所。
そこで例の魔法少女はまさに今、一匹の使い魔と対峙している所であった。
使い魔 「きしゃーっ!」
? 「う、うわわっ、きゃ、きゃあっ、うああああああっ!!」
杏子 「お、ちょうど使い魔との戦闘中か。どれ、お手並み拝見といこうじゃないか」
? 「あわわわ・・・こ、来ないで!来るなこっち来るなぁ!あ、ああああっ!!」
襲い掛かる使い魔に、抵抗しようとする魔法少女。
・・・
使い魔の結界内
杏子 「さて、さっきの奴はどこへ行った・・・?こっちか・・・?」
杏子 「・・・」きょろきょろ
杏子 「・・・いた」
結界内を探索し、程なく杏子はあっさりと目的の魔法少女を発見する。
場所は、入り口からそれほど遠くない、まだ結界の序盤といった所。
そこで例の魔法少女はまさに今、一匹の使い魔と対峙している所であった。
使い魔 「きしゃーっ!」
? 「う、うわわっ、きゃ、きゃあっ、うああああああっ!!」
杏子 「お、ちょうど使い魔との戦闘中か。どれ、お手並み拝見といこうじゃないか」
? 「あわわわ・・・こ、来ないで!来るなこっち来るなぁ!あ、ああああっ!!」
襲い掛かる使い魔に、抵抗しようとする魔法少女。
170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:28:19.02 ID:D7gCJ1Lr0
しかし彼女の武器は、何も無い空間を空回りするばかりで、まったく使い魔にダメージを与える事ができていない。
あまりにも不慣れで無様な戦いぶりに、杏子はただただ呆れるばかりだ。
杏子 「・・・なんだ、あの戦い方・・・まるでなってねぇ。ルーキーもルーキー・・・魔法少女に成り立てホヤホヤッって感じだな」
杏子 「まぁ、いくらなんでも使い魔の一匹くらい、どうってことないだろ」
そう思い、傍観を決め込んでいた杏子であったが・・・
使い魔 「きしゃしゃー!!」
? 「っうう!!うわあああああ、ぎゃっ!!!!」
使い魔 「がぶっちょ」
杏子 「・・・え」
あまりにも不慣れで無様な戦いぶりに、杏子はただただ呆れるばかりだ。
杏子 「・・・なんだ、あの戦い方・・・まるでなってねぇ。ルーキーもルーキー・・・魔法少女に成り立てホヤホヤッって感じだな」
杏子 「まぁ、いくらなんでも使い魔の一匹くらい、どうってことないだろ」
そう思い、傍観を決め込んでいた杏子であったが・・・
使い魔 「きしゃしゃー!!」
? 「っうう!!うわあああああ、ぎゃっ!!!!」
使い魔 「がぶっちょ」
杏子 「・・・え」
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:31:20.56 ID:D7gCJ1Lr0
使い魔 「がりっ!ばりばり・・・」
? 「い、痛い!!いやぁ、いやああ!やめて!離れて!」
杏子 「お、おいおい・・・」
使い魔 「ばりんごりん、ばりぼり・・・」
一端喰らい付いた使い魔は、魔法少女がどんなに暴れようと、その牙を抜くことはなく。
より一層、深くえぐるように。
彼女の柔肌に食い込んでゆく。
やがて・・・
魔法少女の悲鳴も、そして抵抗も、力を失いか細くなっていった。
命の灯火が、立ち消えようとしているのだ。
? 「い、いやあああ・・・ああ・・・あ、ああ・・・」
杏子 「う、嘘だろ」
? 「い、痛い!!いやぁ、いやああ!やめて!離れて!」
杏子 「お、おいおい・・・」
使い魔 「ばりんごりん、ばりぼり・・・」
一端喰らい付いた使い魔は、魔法少女がどんなに暴れようと、その牙を抜くことはなく。
より一層、深くえぐるように。
彼女の柔肌に食い込んでゆく。
やがて・・・
魔法少女の悲鳴も、そして抵抗も、力を失いか細くなっていった。
命の灯火が、立ち消えようとしているのだ。
? 「い、いやあああ・・・ああ・・・あ、ああ・・・」
杏子 「う、嘘だろ」
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:42:03.74 ID:D7gCJ1Lr0
使い魔 「ばりばりばりぼりぼりぼり」
? 「・・・」
杏子 「はっ・・・!く、くそ!」
予想を裏切るあまりの出来事に呆然としていた杏子だったが、やっと我を取り戻すと俄然地を蹴って飛び出した。
使い魔の元へと。
得物の槍を振りかざしながら!
杏子 「この使い魔野郎!どけ、そこをどけえぇ!!」
使い魔 「?」
ザシュッ!!
槍が使い魔を貫く。
耳障りな悲鳴を後に残し、文字通り霧散して消えうせる使い魔。
? 「・・・」
杏子 「はっ・・・!く、くそ!」
予想を裏切るあまりの出来事に呆然としていた杏子だったが、やっと我を取り戻すと俄然地を蹴って飛び出した。
使い魔の元へと。
得物の槍を振りかざしながら!
杏子 「この使い魔野郎!どけ、そこをどけえぇ!!」
使い魔 「?」
ザシュッ!!
槍が使い魔を貫く。
耳障りな悲鳴を後に残し、文字通り霧散して消えうせる使い魔。
173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:43:44.09 ID:D7gCJ1Lr0
いつも通りの、何の手ごたえも無い、ただのつまらない雑魚でしかなかった。
なのに・・・
杏子 「お、おい!大丈夫か!?」
慌てて、ピクリとも動かない魔法少女を抱き上げ呼びかけるが・・・
? 「」
杏子 「・・・くっ」
杏子が抱き起こした”それ”は、身体の大部分を損傷し、ソウルジェムまで砕かれた、ただの物言わぬ骸へと成り果てていた。
杏子 「どういうことだよ・・・いくらルーキーたって、こんなチンケな使い魔一匹に、まともに反撃もできずにやられちまうなんて・・・」
杏子 「・・・くそぅ・・・胸糞悪い。嫌なモン、見せ付けやがって・・・」
なんともいえない後味の悪さが、杏子の胸に染みる。
なのに・・・
杏子 「お、おい!大丈夫か!?」
慌てて、ピクリとも動かない魔法少女を抱き上げ呼びかけるが・・・
? 「」
杏子 「・・・くっ」
杏子が抱き起こした”それ”は、身体の大部分を損傷し、ソウルジェムまで砕かれた、ただの物言わぬ骸へと成り果てていた。
杏子 「どういうことだよ・・・いくらルーキーたって、こんなチンケな使い魔一匹に、まともに反撃もできずにやられちまうなんて・・・」
杏子 「・・・くそぅ・・・胸糞悪い。嫌なモン、見せ付けやがって・・・」
なんともいえない後味の悪さが、杏子の胸に染みる。
174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:45:22.87 ID:D7gCJ1Lr0
あの時様子を見るなんて悠長な事なんかせずに、すぐに飛び出していたなら・・・
自分が直にぶん殴って、この弱っちい魔法少女に”身の程”という物を、存分に思い知らせてやれただろうに。
杏子 「なぁ・・・」
杏子は骸に語りかける。
杏子 「あんた、一体どんな願いを叶えて、魔法少女になったんだい?どんな願いをすれば、こんなにもろく・・・」
当然、それに応える者など、いようはずもなかった。
自分が直にぶん殴って、この弱っちい魔法少女に”身の程”という物を、存分に思い知らせてやれただろうに。
杏子 「なぁ・・・」
杏子は骸に語りかける。
杏子 「あんた、一体どんな願いを叶えて、魔法少女になったんだい?どんな願いをすれば、こんなにもろく・・・」
当然、それに応える者など、いようはずもなかった。
175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:47:56.53 ID:D7gCJ1Lr0
・・・
・・・
同時刻 ほむホーム
ほむら 「それで・・・」
私は最大の懸念点にして、最も切実な問題についての話を切り出した。
ほむら 「私の魔力消耗の件についてなのだけれど・・・」
竜馬 「ああ」
ほむら 「流君には心当たりがある、そう言っていたわね」
竜馬 「推測さ。だが、当たらずとも遠からず程度の自信はあるぜ」
ほむら 「聞かせて欲しいわ。この問題が解決しない事には、まどかを守るための行動すら、満足に行う事ができないもの」
武蔵 「何の話だっけ?」
竜馬 「暁美の魔力がな、意味も分からずに消耗する現象についての考察さ」
・・・
同時刻 ほむホーム
ほむら 「それで・・・」
私は最大の懸念点にして、最も切実な問題についての話を切り出した。
ほむら 「私の魔力消耗の件についてなのだけれど・・・」
竜馬 「ああ」
ほむら 「流君には心当たりがある、そう言っていたわね」
竜馬 「推測さ。だが、当たらずとも遠からず程度の自信はあるぜ」
ほむら 「聞かせて欲しいわ。この問題が解決しない事には、まどかを守るための行動すら、満足に行う事ができないもの」
武蔵 「何の話だっけ?」
竜馬 「暁美の魔力がな、意味も分からずに消耗する現象についての考察さ」
176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:49:27.45 ID:D7gCJ1Lr0
ほむら 「魔力が尽きれば私たち魔法少女は戦えないし、人としての生にも終止符が打たれる・・・」
武蔵 「え・・・、それってどういう意味だよ」
竜馬 「あのな」
竜馬がかいつまんで、私たち魔法少女と魔女の関係を武蔵に説明する。
体育会系の竜馬の直情的な解説は、同じく体育系の武蔵にはピッタリとはまったようだ。
さほど時間を得ずして、武蔵はことの深刻さを十二分に理解してくれた。
武蔵 「つ、つまり魔力ってのはほむらちゃんにとって、エネルギーであると同時に、人間として生きるのに必要な飯みたいな物だってのか」
竜馬 「だな。ちょっと語弊があるが、まぁ、そんなところだ」
武蔵 「え、あれ・・・?待てよ?てことはつまり、マミちゃんも魔力が尽きたり、絶望してしまったりしたら・・・」
ほむら 「魔女になるわ。事実、そういう結末の時間軸も存在したし」
武蔵 「え・・・、それってどういう意味だよ」
竜馬 「あのな」
竜馬がかいつまんで、私たち魔法少女と魔女の関係を武蔵に説明する。
体育会系の竜馬の直情的な解説は、同じく体育系の武蔵にはピッタリとはまったようだ。
さほど時間を得ずして、武蔵はことの深刻さを十二分に理解してくれた。
武蔵 「つ、つまり魔力ってのはほむらちゃんにとって、エネルギーであると同時に、人間として生きるのに必要な飯みたいな物だってのか」
竜馬 「だな。ちょっと語弊があるが、まぁ、そんなところだ」
武蔵 「え、あれ・・・?待てよ?てことはつまり、マミちゃんも魔力が尽きたり、絶望してしまったりしたら・・・」
ほむら 「魔女になるわ。事実、そういう結末の時間軸も存在したし」
177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:50:49.40 ID:D7gCJ1Lr0
武蔵 「そ、そんな・・・なんでだよ、何でそんな酷い・・・」
武蔵、絶句。
竜馬 「おい、武蔵・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「お前、泣いてるのか?」
ほむら 「え・・・」
武蔵 「だ、だってさ・・・あんまり可哀想で・・・」
目に大粒の涙を湛え、しゃくりあげながら何とか言葉を続ける武蔵。
武蔵 「魔法少女って、自分の願いを叶えたくてなるものなんだろ?マミちゃんにいたっては、ただ命が助かりたかった、それだけの理由で」
ほむら 「・・・」
武蔵 「そんな当たり前のことを望んだだけなのに、なんで悲惨な目に遭わなきゃならないんだ?なぁ、ほむらちゃん、君は納得できてるのか?」
ほむら 「私は・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「納得、できるわ」
武蔵 「え・・・」
武蔵、絶句。
竜馬 「おい、武蔵・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「お前、泣いてるのか?」
ほむら 「え・・・」
武蔵 「だ、だってさ・・・あんまり可哀想で・・・」
目に大粒の涙を湛え、しゃくりあげながら何とか言葉を続ける武蔵。
武蔵 「魔法少女って、自分の願いを叶えたくてなるものなんだろ?マミちゃんにいたっては、ただ命が助かりたかった、それだけの理由で」
ほむら 「・・・」
武蔵 「そんな当たり前のことを望んだだけなのに、なんで悲惨な目に遭わなきゃならないんだ?なぁ、ほむらちゃん、君は納得できてるのか?」
ほむら 「私は・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「納得、できるわ」
武蔵 「え・・・」
178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:53:10.81 ID:D7gCJ1Lr0
ほむら 「世の条理に反する願いを叶えれば、その歪みがわが身に振り返ってくるのは当然だもの」
そう、だから人は、自分の分を過ぎた願いなんか、叶えようとしてはダメなんだ。
ほむら 「だからこそ、許せないのよ。人を甘言で惑わして、本来叶わないはずの願いで運命を狂わせる、あいつのやり方と存在そのものが・・・」
武蔵 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「私も巴マミも、こうなってしまった以上は行きつく場所は一緒。願ってしまった以上は、それは仕方がない。その事自体に納得はいくわ。だけれど・・・」
一人の少女が、私の脳裏で微笑む。
無垢な笑顔。優しい眼差し。
そんな彼女の顔を、苦しみで曇らせることは絶対に許されない。
ほむら 「私やマミのような人間がこれ以上増える必要もない。だから、そのために・・・」
まどかのために・・・
ほむら 「私は、何度も同じ時間を繰り返しているの。できれば今回が、その長い旅の終わりになれば良い。いつもそう思っているわ」
武蔵 「そうか・・・」
そう呟いたきり、武蔵はもう何も言わなかった。
そう、だから人は、自分の分を過ぎた願いなんか、叶えようとしてはダメなんだ。
ほむら 「だからこそ、許せないのよ。人を甘言で惑わして、本来叶わないはずの願いで運命を狂わせる、あいつのやり方と存在そのものが・・・」
武蔵 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「私も巴マミも、こうなってしまった以上は行きつく場所は一緒。願ってしまった以上は、それは仕方がない。その事自体に納得はいくわ。だけれど・・・」
一人の少女が、私の脳裏で微笑む。
無垢な笑顔。優しい眼差し。
そんな彼女の顔を、苦しみで曇らせることは絶対に許されない。
ほむら 「私やマミのような人間がこれ以上増える必要もない。だから、そのために・・・」
まどかのために・・・
ほむら 「私は、何度も同じ時間を繰り返しているの。できれば今回が、その長い旅の終わりになれば良い。いつもそう思っているわ」
武蔵 「そうか・・・」
そう呟いたきり、武蔵はもう何も言わなかった。
179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:55:25.44 ID:D7gCJ1Lr0
だが、彼の表情は、とても私の言葉を肯定したようには見えなかった。
人の良い彼にとって、理不尽な魔法少女の境遇なんて、どうあっても納得できる事柄ではないのだろう。
だけれど、当事者の私がこう言う以上、継ぐべき言葉が見つからない。そんな風だった。
竜馬 「・・・武蔵。思えば俺たちの境遇だって、充分に理不尽だったじゃねぇか。だが、そんな境遇に折り合いをつけ、意義を見出し、これまで戦ってきた」
武蔵 「ああ」
竜馬 「暁美も、今は同じ気持ちなんだろう。与えられた境遇に意味を見出さなければ、俺たちは生きて行けやしない。武蔵にだって分かるはずだ」
武蔵 「・・・」
竜馬 「そして、俺たちが力無き人の盾となって恐竜帝国と戦っているように、暁美もまた大切な人を自分と同じ境遇に落ち込ませないよう、それが為に戦っている」
武蔵 「ほむらちゃん・・・君も、俺たちと同じなんだな」
ほむら 「あなた達みたく、全ての人の為になんて、大仰なことは考えていないけれど・・・」
武蔵 「守りたい人がいる。その気持ちは一緒だ・・・」
そう言ってもらえる事は、何と言うか・・・素直に嬉しい。
武蔵 「だけれど、俺は・・・」
言いながらスマホを見つめる武蔵。
人の良い彼にとって、理不尽な魔法少女の境遇なんて、どうあっても納得できる事柄ではないのだろう。
だけれど、当事者の私がこう言う以上、継ぐべき言葉が見つからない。そんな風だった。
竜馬 「・・・武蔵。思えば俺たちの境遇だって、充分に理不尽だったじゃねぇか。だが、そんな境遇に折り合いをつけ、意義を見出し、これまで戦ってきた」
武蔵 「ああ」
竜馬 「暁美も、今は同じ気持ちなんだろう。与えられた境遇に意味を見出さなければ、俺たちは生きて行けやしない。武蔵にだって分かるはずだ」
武蔵 「・・・」
竜馬 「そして、俺たちが力無き人の盾となって恐竜帝国と戦っているように、暁美もまた大切な人を自分と同じ境遇に落ち込ませないよう、それが為に戦っている」
武蔵 「ほむらちゃん・・・君も、俺たちと同じなんだな」
ほむら 「あなた達みたく、全ての人の為になんて、大仰なことは考えていないけれど・・・」
武蔵 「守りたい人がいる。その気持ちは一緒だ・・・」
そう言ってもらえる事は、何と言うか・・・素直に嬉しい。
武蔵 「だけれど、俺は・・・」
言いながらスマホを見つめる武蔵。
180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:57:34.16 ID:D7gCJ1Lr0
画面あるのは、私たちも先ほど見せて貰った、幼いマミと武蔵の姿。
武蔵 「・・・」
竜馬 「考え込むな。柄でもないだろう。それにその写真や感覚はまやかしだ。俺たちが本来歩いてきた人生じゃねぇ」
武蔵 「分かってるさ・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「話が横道に逸れちまったな。本筋に戻そうぜ。いいな、暁美」
ほむら 「ええ・・・」
その存在は公にされず、誰に知られることもなく戦い、死んでいく運命。それが魔法少女。
悲しまれもせず、ただ忘れ去られてゆくのみの私たちの運命に、今は本気で哀れんでくれる人が目の前にいる。
同じゲッターチームの仲間同士なのに、こうも竜馬とは感じ方が違うものなのかと驚かされもしたが・・・
武蔵の優しさは、確かに私の胸に沁みた。
嬉しかった。
武蔵 「・・・」
竜馬 「考え込むな。柄でもないだろう。それにその写真や感覚はまやかしだ。俺たちが本来歩いてきた人生じゃねぇ」
武蔵 「分かってるさ・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「話が横道に逸れちまったな。本筋に戻そうぜ。いいな、暁美」
ほむら 「ええ・・・」
その存在は公にされず、誰に知られることもなく戦い、死んでいく運命。それが魔法少女。
悲しまれもせず、ただ忘れ去られてゆくのみの私たちの運命に、今は本気で哀れんでくれる人が目の前にいる。
同じゲッターチームの仲間同士なのに、こうも竜馬とは感じ方が違うものなのかと驚かされもしたが・・・
武蔵の優しさは、確かに私の胸に沁みた。
嬉しかった。
181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 12:59:45.10 ID:D7gCJ1Lr0
・・・
・・・
竜馬 「この世界には、ゲッター線が存在しない」
私の魔力消耗減少の件で話し出したはずの竜馬が、まず口にしたのがこれだった。
まったく意味が分からない私と裏腹に、武蔵は大口を開けて驚いている。
武蔵 「は・・・どういうことだよ、そりゃ」
竜馬 「どうもこうもねぇ。例の魔女の結界でゲッターと再会し、乗り込んで分かった。ゲッター炉が機能していないんだ」
武蔵 「だって、お前。あの時ゲッターは動いていたじゃないかよ」
竜馬 「確かにな」
武蔵 「ゲッター線が無くてゲッター炉が動かないというなら、ゲッターだって活動できないはずじゃないかよ?それに・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ゲッター線も無しで、この世界の人類は、どうやって人に進化したって言うんだ?」
ほむら 「ちょ、ちょっと待って」
さすがに話題の飛躍が大きすぎる。
ついて行けない私は、思わず口を挟んでいた。
ほむら 「ゲッター線とか炉とか、はては人の進化とか・・・それが私の魔力消耗とどう関係があるの?分かるよう説明してもらえないかしら」
・・・
竜馬 「この世界には、ゲッター線が存在しない」
私の魔力消耗減少の件で話し出したはずの竜馬が、まず口にしたのがこれだった。
まったく意味が分からない私と裏腹に、武蔵は大口を開けて驚いている。
武蔵 「は・・・どういうことだよ、そりゃ」
竜馬 「どうもこうもねぇ。例の魔女の結界でゲッターと再会し、乗り込んで分かった。ゲッター炉が機能していないんだ」
武蔵 「だって、お前。あの時ゲッターは動いていたじゃないかよ」
竜馬 「確かにな」
武蔵 「ゲッター線が無くてゲッター炉が動かないというなら、ゲッターだって活動できないはずじゃないかよ?それに・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ゲッター線も無しで、この世界の人類は、どうやって人に進化したって言うんだ?」
ほむら 「ちょ、ちょっと待って」
さすがに話題の飛躍が大きすぎる。
ついて行けない私は、思わず口を挟んでいた。
ほむら 「ゲッター線とか炉とか、はては人の進化とか・・・それが私の魔力消耗とどう関係があるの?分かるよう説明してもらえないかしら」
182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:00:42.93 ID:D7gCJ1Lr0
竜馬 「ああ、すまねぇ。そうだな。まずは暁美には、ゲッター線というものがどういったものか説明しとかないとな」
そう前置きして竜馬が説明してくれたゲッター線とは、次のような物らしい。
彼らの世界で、地表に降り注いでいる宇宙線。それがゲッター線。
ゲッターロボは、内蔵しているゲッター炉でゲッター線を取り込み、稼動するためのエネルギーとしている。
ゲッターロボの名前の由来も、この宇宙線に因んでいるそう。
しかもこのゲッター線、ただエネルギーに変換できる、便利な物というだけでは済まないらしい。
今を去る太古の昔・・・まだ恐竜が闊歩していたころ。
そのころ降り注ぎ始めたゲッター線は、恐竜を死滅せしめ、代わりに地を這う下等な生物だった哺乳類に劇的な進化をもたらす。
そして生まれたのが、現生の人類だったというのだ。
武蔵 「つまり、俺たちの世界ではゲッター線の存在無しでは、人間の存在自体もありえないのさ」
そう前置きして竜馬が説明してくれたゲッター線とは、次のような物らしい。
彼らの世界で、地表に降り注いでいる宇宙線。それがゲッター線。
ゲッターロボは、内蔵しているゲッター炉でゲッター線を取り込み、稼動するためのエネルギーとしている。
ゲッターロボの名前の由来も、この宇宙線に因んでいるそう。
しかもこのゲッター線、ただエネルギーに変換できる、便利な物というだけでは済まないらしい。
今を去る太古の昔・・・まだ恐竜が闊歩していたころ。
そのころ降り注ぎ始めたゲッター線は、恐竜を死滅せしめ、代わりに地を這う下等な生物だった哺乳類に劇的な進化をもたらす。
そして生まれたのが、現生の人類だったというのだ。
武蔵 「つまり、俺たちの世界ではゲッター線の存在無しでは、人間の存在自体もありえないのさ」
183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:03:43.82 ID:D7gCJ1Lr0
竜馬 「もっとも、その時地の底に逃れた恐竜の末裔が、今になって俺たち人類を絶滅の淵に追いやっているんだから、皮肉な話だがな」
ほむら 「じゃあ、あなた達が戦っているとい恐竜帝国って・・・」
竜馬 「ああ」
ほむら 「・・・」
なんてスケールの大きな話なんだろう。
竜馬の語った人類の創世史に、私はたまらず言葉を失ってしまう。
武蔵 「だから、疑問に思ったんだ。こっちの人類はどうやって誕生したんだろうってね」
ほむら 「普通に猿から進化したとしか。学校でもそう習ったし・・・」
武蔵 「それは、俺たちの世界でも一緒だったよ。ゲッター線云々の話は、俺達みたいにゲッターに深く関わっている者以外には、あまり知られていないはずだ」
ほむら 「つまり、私たちも知らない真実が、私たちの世界にも隠されているかもしれない。そういう事ね」
竜馬 「魔女や魔法少女の存在こそが、まさにそれだろうな。一部の者以外には知られていない、しかし厳然と存在する真実・・・他に何があったっておかしくはない」
ほむら 「・・・」
竜馬 「まぁ、過ぎ去った過去の話よりも、重要なのは今現在の直面している問題だ。で、ここからが俺の仮説なんだが・・・」
ほむら 「あ、う、うん」
ほむら 「じゃあ、あなた達が戦っているとい恐竜帝国って・・・」
竜馬 「ああ」
ほむら 「・・・」
なんてスケールの大きな話なんだろう。
竜馬の語った人類の創世史に、私はたまらず言葉を失ってしまう。
武蔵 「だから、疑問に思ったんだ。こっちの人類はどうやって誕生したんだろうってね」
ほむら 「普通に猿から進化したとしか。学校でもそう習ったし・・・」
武蔵 「それは、俺たちの世界でも一緒だったよ。ゲッター線云々の話は、俺達みたいにゲッターに深く関わっている者以外には、あまり知られていないはずだ」
ほむら 「つまり、私たちも知らない真実が、私たちの世界にも隠されているかもしれない。そういう事ね」
竜馬 「魔女や魔法少女の存在こそが、まさにそれだろうな。一部の者以外には知られていない、しかし厳然と存在する真実・・・他に何があったっておかしくはない」
ほむら 「・・・」
竜馬 「まぁ、過ぎ去った過去の話よりも、重要なのは今現在の直面している問題だ。で、ここからが俺の仮説なんだが・・・」
ほむら 「あ、う、うん」
184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:06:39.30 ID:D7gCJ1Lr0
竜馬 「ゲッターは失ったエネルギーの補充を、暁美の魔力で補っているんじゃないかと思うんだ。そうすりゃ、色々と辻褄が合う」
ほむら 「え・・・でも・・・」
武蔵 「竜馬、そりゃおかしな話だぜ。俺だって分かる。ゲッター線と魔力ってのは、別のエネルギーなんだろ。代用なんか利きっこないじゃないか」
私が抱いた当然の疑問を代弁する形で、武蔵が竜馬に問いかけた。
それはそう。電池で動く機械にガソリンをぶちまけたって、動くはずがない道理・・・
だけど、竜馬はキッパリと返す。
竜馬 「両者が同じ性質のものだったとしたら、どうだ」
ほむら 「・・・!」
武蔵 「どういう意味だよ、それって」
竜馬 「俺たちには魔女や使い魔の姿が見える。本来であれば、魔法少女やその素質のある者にしか見えないはずの物が、だ。これは一体、どうしてだ?」
武蔵 「どうしてって・・・」
ほむら 「まさか・・・」
竜馬 「そうだ。ゲッター線と魔力が同じ物なら説明がつく。俺と武蔵はゲッターに選ばれたものなんだからな」
確かに、竜馬の言うとおりなら合点がいく。
魔力消耗に悩まされるようになったのは、この時間軸に来てからの事。
そして、ゲッターロボは、それと同時に私のバックラーに入り込んでいたのだ。
あんな巨大なロボットが、その巨体に見合ったエネルギーを私の魔力から補充しようとしているなら、際限なく魔力を吸い上げられていくのにも納得できる。
ほむら 「え・・・でも・・・」
武蔵 「竜馬、そりゃおかしな話だぜ。俺だって分かる。ゲッター線と魔力ってのは、別のエネルギーなんだろ。代用なんか利きっこないじゃないか」
私が抱いた当然の疑問を代弁する形で、武蔵が竜馬に問いかけた。
それはそう。電池で動く機械にガソリンをぶちまけたって、動くはずがない道理・・・
だけど、竜馬はキッパリと返す。
竜馬 「両者が同じ性質のものだったとしたら、どうだ」
ほむら 「・・・!」
武蔵 「どういう意味だよ、それって」
竜馬 「俺たちには魔女や使い魔の姿が見える。本来であれば、魔法少女やその素質のある者にしか見えないはずの物が、だ。これは一体、どうしてだ?」
武蔵 「どうしてって・・・」
ほむら 「まさか・・・」
竜馬 「そうだ。ゲッター線と魔力が同じ物なら説明がつく。俺と武蔵はゲッターに選ばれたものなんだからな」
確かに、竜馬の言うとおりなら合点がいく。
魔力消耗に悩まされるようになったのは、この時間軸に来てからの事。
そして、ゲッターロボは、それと同時に私のバックラーに入り込んでいたのだ。
あんな巨大なロボットが、その巨体に見合ったエネルギーを私の魔力から補充しようとしているなら、際限なく魔力を吸い上げられていくのにも納得できる。
185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:09:32.65 ID:D7gCJ1Lr0
ほむら 「あ・・・」
ふ、と。
私の記憶が呼び戻される。
あれは前の時間軸。初めてゲッターロボを目の当たりにした時の事だ。
私の側で共にゲッターを見ていたあいつが、確かにこう言ったのだ。
(キュウべぇ 「・・・あのロボット、あれはもしかして、同じ・・・」)
(キュウべぇ 「感じるんだ、あのロボットから。あれは・・・僕たちと同じ・・・」)
あいつはあの時、なにが自分と同じと言おうとしたのだろう。
私には分からなかった。キュウべぇが全ての言葉を吐き終る前に、私は今の時間軸へと遡行してしまったから。
だけれど、今の竜馬の話を聞いて、私の中で竜馬の説とキュウべぇの言葉が、どこかで繋がりそうな気がするのだ。
ほむら 「・・・」
だけれど、あと一歩が届かない。
ふ、と。
私の記憶が呼び戻される。
あれは前の時間軸。初めてゲッターロボを目の当たりにした時の事だ。
私の側で共にゲッターを見ていたあいつが、確かにこう言ったのだ。
(キュウべぇ 「・・・あのロボット、あれはもしかして、同じ・・・」)
(キュウべぇ 「感じるんだ、あのロボットから。あれは・・・僕たちと同じ・・・」)
あいつはあの時、なにが自分と同じと言おうとしたのだろう。
私には分からなかった。キュウべぇが全ての言葉を吐き終る前に、私は今の時間軸へと遡行してしまったから。
だけれど、今の竜馬の話を聞いて、私の中で竜馬の説とキュウべぇの言葉が、どこかで繋がりそうな気がするのだ。
ほむら 「・・・」
だけれど、あと一歩が届かない。
186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:24:31.96 ID:D7gCJ1Lr0
武蔵 「それにしても、驚いたぜ」
竜馬 「何がだよ」
武蔵 「お前だよ、リョウ。よく、そこまで考えられたな。お前はもっと脳筋派で、考察なんて退屈なことはブン投げちまうヤツだと思ってたのによ」
竜馬 「なんだ、その言い草は。褒めてるのか貶してるのか、どっちだ」
武蔵 「褒めてるんだよ。素直に感心しているの」
竜馬 「まぁ・・・な。そっち専門の奴がいなくなっちまったんだ。誰かが代わりを務めるしかないじゃねぇか」
武蔵 「だとしても、たいしたもんだ。俺には、やろうとしたってできる事じゃないもんな」
竜馬 「やれる奴がやれる事をすりゃ良いのさ。そんだけのこった」
ほむら 「・・・」
竜馬 「どうした、暁美」
ほむら 「考えていたのよ。あなた達が来た世界とは、人類の成り立ちからして違うんだなって」
竜馬 「ああ」
竜馬 「何がだよ」
武蔵 「お前だよ、リョウ。よく、そこまで考えられたな。お前はもっと脳筋派で、考察なんて退屈なことはブン投げちまうヤツだと思ってたのによ」
竜馬 「なんだ、その言い草は。褒めてるのか貶してるのか、どっちだ」
武蔵 「褒めてるんだよ。素直に感心しているの」
竜馬 「まぁ・・・な。そっち専門の奴がいなくなっちまったんだ。誰かが代わりを務めるしかないじゃねぇか」
武蔵 「だとしても、たいしたもんだ。俺には、やろうとしたってできる事じゃないもんな」
竜馬 「やれる奴がやれる事をすりゃ良いのさ。そんだけのこった」
ほむら 「・・・」
竜馬 「どうした、暁美」
ほむら 「考えていたのよ。あなた達が来た世界とは、人類の成り立ちからして違うんだなって」
竜馬 「ああ」
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:27:15.59 ID:D7gCJ1Lr0
ほむら 「私と流君・・・思った以上に遠い存在なのかもね」
竜馬 「・・・暁美?」
ほむら 「・・・」
竜馬 「成り立ちはどうだろうが、今は近くにいて仲間と認め合った仲だ。なんの遠い事がある?」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「よし、当座の事を考えようぜ。ゲッターロボの稼動には暁美の魔力が必要だ。俺や武蔵が暁美の力になるためには、ゲッターロボの存在はどうあっても必要」
武蔵 「だな。生身であの魔女に対抗するのは、どうあっても限界がある」
竜馬 「グリーフシードの確保・・・が最優先だな。それも大量に」
武蔵 「だとすれば、たくさんの魔女をやっつけて回るって方法しかないわけだよな」
竜馬 「ああ・・・だが、暁美の魔力が尽きてしまっては意味がない。要するに、ゲッターロボは使えない」
武蔵 「・・・俺たち、足手まといにしかならないんじゃないか」
竜馬 「そうなんだよな・・・卵が先かヒヨコが先か・・・よくある例え話だが、今の俺たちはまさにそんな状況だ」
ほむら 「・・・一つ、宛てがあるわ」
竜馬 「・・・暁美?」
ほむら 「・・・」
竜馬 「成り立ちはどうだろうが、今は近くにいて仲間と認め合った仲だ。なんの遠い事がある?」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「よし、当座の事を考えようぜ。ゲッターロボの稼動には暁美の魔力が必要だ。俺や武蔵が暁美の力になるためには、ゲッターロボの存在はどうあっても必要」
武蔵 「だな。生身であの魔女に対抗するのは、どうあっても限界がある」
竜馬 「グリーフシードの確保・・・が最優先だな。それも大量に」
武蔵 「だとすれば、たくさんの魔女をやっつけて回るって方法しかないわけだよな」
竜馬 「ああ・・・だが、暁美の魔力が尽きてしまっては意味がない。要するに、ゲッターロボは使えない」
武蔵 「・・・俺たち、足手まといにしかならないんじゃないか」
竜馬 「そうなんだよな・・・卵が先かヒヨコが先か・・・よくある例え話だが、今の俺たちはまさにそんな状況だ」
ほむら 「・・・一つ、宛てがあるわ」
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/14(金) 13:29:57.09 ID:D7gCJ1Lr0
竜馬 「大量にグリーフシードを落としてくれる魔女の心当たりでもあるのか?」
ほむら 「そんな都合の良い魔女なんていないわよ。でも、大量のグリーフシードは確保できるかもしれないし・・・」
武蔵 「し・・・?」
ほむら 「上手くいけば、仲間の数を増やせるかもしれない」
竜馬 「・・・へぇ、一石二鳥って訳か」
ほむら 「そうすれば、今度こそ・・・ワルプルギスの夜を越えられるかもしれない。いいえ、超えて見せる」
武蔵 「わるぷ、ぎ・・・?」
竜馬 「俺たちがこの世界に来て、はじめて見た、あの巨大な化け物の事だな」
ほむら 「・・・ええ」
実際は違う。
竜馬たちが見た魔女こそ、ワルプルギスをも超える最凶最悪の魔女。
私が守ろうとしている、鹿目まどかが化身した姿に他ならなかった。
だけれど・・・
ほむら 「そう、私が目指しているのは、あの魔女を倒した先に訪れる、平穏な日々・・・」
あえて事実を私は伏せた。
知られたくなかったのだ。仲間と認めた二人に、私の大切な人の成れの果ての姿を。
どのみち、ワルプルギスを倒せなければ、この時間軸での数々の試みも失敗に終る。
その後に訪れるのは、形はどうあれ、避けられない鹿目まどかの死という現実。それは揺るがない。
私にとってはワルプルギスも魔女となったまどかも、抗わなければならない存在だと言うことに変わりはないのだ。
ほむら 「とりあえず私は、明日学校を休むわね。ちょっと、隣の街まで行ってみるわ。それと武蔵さん」
武蔵 「なんだい?」
ほむら 「あなたには同道してもらいたいのだけれど。良いかしら」
ほむら 「そんな都合の良い魔女なんていないわよ。でも、大量のグリーフシードは確保できるかもしれないし・・・」
武蔵 「し・・・?」
ほむら 「上手くいけば、仲間の数を増やせるかもしれない」
竜馬 「・・・へぇ、一石二鳥って訳か」
ほむら 「そうすれば、今度こそ・・・ワルプルギスの夜を越えられるかもしれない。いいえ、超えて見せる」
武蔵 「わるぷ、ぎ・・・?」
竜馬 「俺たちがこの世界に来て、はじめて見た、あの巨大な化け物の事だな」
ほむら 「・・・ええ」
実際は違う。
竜馬たちが見た魔女こそ、ワルプルギスをも超える最凶最悪の魔女。
私が守ろうとしている、鹿目まどかが化身した姿に他ならなかった。
だけれど・・・
ほむら 「そう、私が目指しているのは、あの魔女を倒した先に訪れる、平穏な日々・・・」
あえて事実を私は伏せた。
知られたくなかったのだ。仲間と認めた二人に、私の大切な人の成れの果ての姿を。
どのみち、ワルプルギスを倒せなければ、この時間軸での数々の試みも失敗に終る。
その後に訪れるのは、形はどうあれ、避けられない鹿目まどかの死という現実。それは揺るがない。
私にとってはワルプルギスも魔女となったまどかも、抗わなければならない存在だと言うことに変わりはないのだ。
ほむら 「とりあえず私は、明日学校を休むわね。ちょっと、隣の街まで行ってみるわ。それと武蔵さん」
武蔵 「なんだい?」
ほむら 「あなたには同道してもらいたいのだけれど。良いかしら」
197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 12:59:26.95 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
翌日 早朝
風見野市 廃墟となった教会内
見る影もなく荒れ果ててしまった”元・実家”で、杏子は目を覚ました。
普段はあまり寄り付く事もない場所。ここには杏子にとっての、嫌な思い出があまりにも多すぎたから。
そんな杏子が昨晩、深夜まであてど無くブラブラ歩き回った後で、自然と足が向いたのが、何故かこの場所だった。
教会の入り口を潜るなり、床に倒れ付して眠りについた杏子。
そのまま、泥のように眠る・・・つもりだったのだが。
杏子 「・・・くそ、結局あまり眠れやしなかった」
ほぼ日の出と同時に、杏子は夢の世界から呼び戻されてしまった。
杏子 「あたしには関係ないとはいえさ、魔法少女のあんな死に方を見せ付けられちゃぁな・・・」
夢身が悪くて、良く眠れやしない。
杏子 「・・・ちっ」
杏子 「むしゃくしゃする。魔女でもぼこって気を晴らさないと、どうにも腹の虫がおさまらねぇ」
杏子 「行くか・・・昨日の使い魔の親玉が、たぶん近くにいるはずだ。見つけ出して、あたしの魔力の足しになってもらうぜ」
・・・
翌日 早朝
風見野市 廃墟となった教会内
見る影もなく荒れ果ててしまった”元・実家”で、杏子は目を覚ました。
普段はあまり寄り付く事もない場所。ここには杏子にとっての、嫌な思い出があまりにも多すぎたから。
そんな杏子が昨晩、深夜まであてど無くブラブラ歩き回った後で、自然と足が向いたのが、何故かこの場所だった。
教会の入り口を潜るなり、床に倒れ付して眠りについた杏子。
そのまま、泥のように眠る・・・つもりだったのだが。
杏子 「・・・くそ、結局あまり眠れやしなかった」
ほぼ日の出と同時に、杏子は夢の世界から呼び戻されてしまった。
杏子 「あたしには関係ないとはいえさ、魔法少女のあんな死に方を見せ付けられちゃぁな・・・」
夢身が悪くて、良く眠れやしない。
杏子 「・・・ちっ」
杏子 「むしゃくしゃする。魔女でもぼこって気を晴らさないと、どうにも腹の虫がおさまらねぇ」
杏子 「行くか・・・昨日の使い魔の親玉が、たぶん近くにいるはずだ。見つけ出して、あたしの魔力の足しになってもらうぜ」
198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:03:20.66 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
風見野市
街中 某所
杏子 「・・・」
杏子 「・・・お、早速ソウルジェムに反応。くく、待ってろよ。すぐにグリーフシードに変えて、あたしのコレクションに加えてやるからな」
ソウルジェムの光に導かれるまま、杏子は駆ける。
やがて、辿り着いた先で目にしたもの、それは・・・
杏子 「ビンゴ、当たりだ!」
魔女の結界。杏子が目的としていた物に違いなかった。
この中に、昨日の使い魔の親玉である魔女が居座っているはず。
そう思うと、否が応にも彼女の闘志は燃え上がる。
杏子 「昨日の名も知らないあんた、死に様を見届けたのも何かの縁だ。柄でもないが、敵くらいは討ってやるよ」
・・・
風見野市
街中 某所
杏子 「・・・」
杏子 「・・・お、早速ソウルジェムに反応。くく、待ってろよ。すぐにグリーフシードに変えて、あたしのコレクションに加えてやるからな」
ソウルジェムの光に導かれるまま、杏子は駆ける。
やがて、辿り着いた先で目にしたもの、それは・・・
杏子 「ビンゴ、当たりだ!」
魔女の結界。杏子が目的としていた物に違いなかった。
この中に、昨日の使い魔の親玉である魔女が居座っているはず。
そう思うと、否が応にも彼女の闘志は燃え上がる。
杏子 「昨日の名も知らないあんた、死に様を見届けたのも何かの縁だ。柄でもないが、敵くらいは討ってやるよ」
199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:05:38.35 ID:LCAOlXWc0
杏子 「よーし、そんじゃぁ、いく・・・ぜ・・・」
杏子 「・・・」
だが、杏子は気がつく。
この結界の中から感じる気配が、魔女のそれだけではない事に。
杏子 「この気配・・・まさか、またなのかよ」
間違いない。
この中にいるのだ。
自分と同じ、魔法少女が。
杏子 「・・・」
だが、杏子は気がつく。
この結界の中から感じる気配が、魔女のそれだけではない事に。
杏子 「この気配・・・まさか、またなのかよ」
間違いない。
この中にいるのだ。
自分と同じ、魔法少女が。
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:06:48.94 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
魔女の結界内
杏子 「・・・ん?」
結界のごく浅い場所で、杏子はある物を発見する。
それは無残に食い荒らされ、原形すらとどめていない・・・
まごうことない、人間の死体。
杏子 「これは・・・食い散らかされて良く分からないが、大人のようだな。男女二人分・・・」
杏子 「結界が顕現する時にでも巻き込まれちまったのか、なんにしても不運な事だ。ま、これもあんたらの運が無かったためだ。気の毒だけどね」
だが、ここにあったのはあくまで普通の人間の死体。
杏子が気配を感じ取った、魔法少女の物ではない。
ということは・・・
杏子 「さ、て、と・・・」
(きょろきょろ)
杏子 「思ったとおりだ。こっちには、この二人を食った奴らしい使い魔どもの死骸が転がっている」
・・・
魔女の結界内
杏子 「・・・ん?」
結界のごく浅い場所で、杏子はある物を発見する。
それは無残に食い荒らされ、原形すらとどめていない・・・
まごうことない、人間の死体。
杏子 「これは・・・食い散らかされて良く分からないが、大人のようだな。男女二人分・・・」
杏子 「結界が顕現する時にでも巻き込まれちまったのか、なんにしても不運な事だ。ま、これもあんたらの運が無かったためだ。気の毒だけどね」
だが、ここにあったのはあくまで普通の人間の死体。
杏子が気配を感じ取った、魔法少女の物ではない。
ということは・・・
杏子 「さ、て、と・・・」
(きょろきょろ)
杏子 「思ったとおりだ。こっちには、この二人を食った奴らしい使い魔どもの死骸が転がっている」
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:09:00.86 ID:LCAOlXWc0
杏子 「やはり私より先にここに入った奴がいるようだ。それも今回は、多少は戦える奴がな」
杏子 「へっ。まったく、やれやれだ・・・」
杏子 「・・・って!」
杏子 「な、なにホッとしてんの、あたし!違うから!今のは、絶対違うから!」
杏子 「えーい、くそ!ともかく早く見つけ出して、ギタギタにしてやる!この街の獲物は、全部あたしのだって身体で教えてやるんだ!」
杏子 「逃げずに待ってろよーっ!!」(たたたたっ)
杏子 「へっ。まったく、やれやれだ・・・」
杏子 「・・・って!」
杏子 「な、なにホッとしてんの、あたし!違うから!今のは、絶対違うから!」
杏子 「えーい、くそ!ともかく早く見つけ出して、ギタギタにしてやる!この街の獲物は、全部あたしのだって身体で教えてやるんだ!」
杏子 「逃げずに待ってろよーっ!!」(たたたたっ)
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:12:54.16 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
結界内 深部
だが。
自分に無断で風見野で魔女を狩ろうとする魔法少女に灸を据える。
そんな杏子の望みは、あっさりと絶たれる事となってしまう。
杏子 「・・・結局、こうなっちまうのかよ」
そこで彼女が見た物は、魔法少女の死体。
周りには使い魔の死体も転がっている。奮戦むなしく、相打ちして果てたのだろう。
杏子 「・・・ここまで来て、魔女にたどり着けなかったなんてな。あんたも、因果な死に方したモンだよな」
杏子は舌打ちをする。
これで仇を討たねばならない魔法少女が二人になってしまった。
・・・
結界内 深部
だが。
自分に無断で風見野で魔女を狩ろうとする魔法少女に灸を据える。
そんな杏子の望みは、あっさりと絶たれる事となってしまう。
杏子 「・・・結局、こうなっちまうのかよ」
そこで彼女が見た物は、魔法少女の死体。
周りには使い魔の死体も転がっている。奮戦むなしく、相打ちして果てたのだろう。
杏子 「・・・ここまで来て、魔女にたどり着けなかったなんてな。あんたも、因果な死に方したモンだよな」
杏子は舌打ちをする。
これで仇を討たねばならない魔法少女が二人になってしまった。
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/16(日) 13:16:07.84 ID:LCAOlXWc0
杏子 「・・・?」
だが、視線を死体から逸らしたところで、杏子はあることに気がつく。
結界の奥に向かって、さらに続いている”小さな”足跡があるのだ。
杏子 「死体はここにあるって言うのに、足跡が他にも・・・?」
杏子 「てことは、魔法少女は一人じゃなかったって事か・・・!?」
? 「きゃあああっ!!」
杏子の予想を肯定するように、結界内に響き渡る少女の悲鳴。
杏子 「!!」
杏子 「んなろっ、待ってろ!あたしの縄張りで、勝手に死ぬなんて絶対に許さねぇ!!」
杏子 「あたしが一発ぶん殴るまで、くたばるんじゃねぇぞ!!」
だが、視線を死体から逸らしたところで、杏子はあることに気がつく。
結界の奥に向かって、さらに続いている”小さな”足跡があるのだ。
杏子 「死体はここにあるって言うのに、足跡が他にも・・・?」
杏子 「てことは、魔法少女は一人じゃなかったって事か・・・!?」
? 「きゃあああっ!!」
杏子の予想を肯定するように、結界内に響き渡る少女の悲鳴。
杏子 「!!」
杏子 「んなろっ、待ってろ!あたしの縄張りで、勝手に死ぬなんて絶対に許さねぇ!!」
杏子 「あたしが一発ぶん殴るまで、くたばるんじゃねぇぞ!!」
205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:19:14.01 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
同日 正午
風見野市
私はバスを降りると、記憶の糸をたどりながら、ある場所へと向かって歩を進め始めた。
少し遅れて、後ろを歩くのは巴武蔵。
はじめて見る街並みを物珍しそうに眺めながら、私の後を付いて来る。
武蔵 「なぁ、ほむらちゃん」
ほむら 「なに?」
武蔵 「なんで、俺を連れてきたんだ?」
当然の疑問だ。
ほむら 「これから会う人と、あなたを引き合わせたかったのよ」
武蔵 「なんでまた」
ほむら 「彼女は、私の知る魔法少女の中でも、一番のリアリスト。だから、賭けてみようと思うの」
武蔵 「・・・??」
ほむら 「本当のことを言ってみる。私の目的、あなた達の来歴。そして・・・」
魔法少女の逃れられない運命までも。
・・・
同日 正午
風見野市
私はバスを降りると、記憶の糸をたどりながら、ある場所へと向かって歩を進め始めた。
少し遅れて、後ろを歩くのは巴武蔵。
はじめて見る街並みを物珍しそうに眺めながら、私の後を付いて来る。
武蔵 「なぁ、ほむらちゃん」
ほむら 「なに?」
武蔵 「なんで、俺を連れてきたんだ?」
当然の疑問だ。
ほむら 「これから会う人と、あなたを引き合わせたかったのよ」
武蔵 「なんでまた」
ほむら 「彼女は、私の知る魔法少女の中でも、一番のリアリスト。だから、賭けてみようと思うの」
武蔵 「・・・??」
ほむら 「本当のことを言ってみる。私の目的、あなた達の来歴。そして・・・」
魔法少女の逃れられない運命までも。
206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:21:56.76 ID:LCAOlXWc0
かつての時間軸でも、私は彼女に同じことを話したことがある。
そしてその結果は、言わずもがな。一笑に付されて、まったく信用してもらえなかった。
だけれど、あの時と今では、多少状況が違う。
その状況の違いに、賭けてみたいと思ったのだ。
ほむら 「彼女を説得するのに、私だけでは役不足だと思ったのよ。男の身でありながら、魔女を認識できるあなたが一緒にいれば、説得力も増すと考えたわけ」
武蔵 「そっか。いや、俺が聞きたいのはそこじゃなくって、なんでリョウじゃなく、俺だったのかって事だよ」
ほむら 「ああ、特に特別な理由はないの。ただね、最近流君は授業をサボりがちだったから、これ以上目立って欲しくなかったのよ」
武蔵 「ああ、それでか」
ほむら 「それに私は、何だかんだで彼と一緒にいることが多いし、一緒に学校を休んだりして、変な噂でも立てられたりしたら、それはとっても困るのよ」
武蔵 「ははは、なるほど。そりゃぁちょっと、女の子らしい理由だなぁ」
ほむら 「ほむぅ」
武蔵 「うん、事情は了解したぜ。それで、俺たちがこれから会うって子は、どんな子なんだい?」
ほむら 「マミに次ぐベテランの魔法少女よ。仲間にできれば、とても心強い存在となってくれる・・・」
武蔵 「名前は?」
ほむら 「杏子・・・佐倉杏子・・・」
そしてその結果は、言わずもがな。一笑に付されて、まったく信用してもらえなかった。
だけれど、あの時と今では、多少状況が違う。
その状況の違いに、賭けてみたいと思ったのだ。
ほむら 「彼女を説得するのに、私だけでは役不足だと思ったのよ。男の身でありながら、魔女を認識できるあなたが一緒にいれば、説得力も増すと考えたわけ」
武蔵 「そっか。いや、俺が聞きたいのはそこじゃなくって、なんでリョウじゃなく、俺だったのかって事だよ」
ほむら 「ああ、特に特別な理由はないの。ただね、最近流君は授業をサボりがちだったから、これ以上目立って欲しくなかったのよ」
武蔵 「ああ、それでか」
ほむら 「それに私は、何だかんだで彼と一緒にいることが多いし、一緒に学校を休んだりして、変な噂でも立てられたりしたら、それはとっても困るのよ」
武蔵 「ははは、なるほど。そりゃぁちょっと、女の子らしい理由だなぁ」
ほむら 「ほむぅ」
武蔵 「うん、事情は了解したぜ。それで、俺たちがこれから会うって子は、どんな子なんだい?」
ほむら 「マミに次ぐベテランの魔法少女よ。仲間にできれば、とても心強い存在となってくれる・・・」
武蔵 「名前は?」
ほむら 「杏子・・・佐倉杏子・・・」
207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:23:20.77 ID:LCAOlXWc0
・・・
・・・
教会前
ほむら 「ついたわ」
崩れかけた外壁を見上げながら呟く私に、武蔵はいぶかしげに問いかける。
武蔵 「ついたって・・・どう見たってここ・・・」
ほむら 「ええ、廃墟よ」
そう、ここは廃墟と化した教会の前。
多くの信者を迎えたであろう信仰の場は、今やかつての面影は微塵も残されていない。
幾年もの風雨に野晒しにされ、壁は苔むし、荘厳であったろうステンドグラスは割れるに任されたまま。
敷地は手を入れる者がいないため、うっそうとした雑草で覆われ、蒸せる様な草いきれが顔を覆う。
・・・見るも無残な有様だった。
武蔵 「ここにいるのかい?その、佐倉杏子っていう子は・・・」
・・・
教会前
ほむら 「ついたわ」
崩れかけた外壁を見上げながら呟く私に、武蔵はいぶかしげに問いかける。
武蔵 「ついたって・・・どう見たってここ・・・」
ほむら 「ええ、廃墟よ」
そう、ここは廃墟と化した教会の前。
多くの信者を迎えたであろう信仰の場は、今やかつての面影は微塵も残されていない。
幾年もの風雨に野晒しにされ、壁は苔むし、荘厳であったろうステンドグラスは割れるに任されたまま。
敷地は手を入れる者がいないため、うっそうとした雑草で覆われ、蒸せる様な草いきれが顔を覆う。
・・・見るも無残な有様だった。
武蔵 「ここにいるのかい?その、佐倉杏子っていう子は・・・」
208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:25:02.64 ID:LCAOlXWc0
ほむら 「・・・」
正直分からなかった。
杏子はねぐらを転々とし、定まった住居など持ってはいなかったのだから。
ある時は野宿をし、またある時はホテルに部屋を取り・・・
だから、杏子に会うためにここにきたのも、これまた一つの賭けだったのだ。
杏子の居場所についての、唯一の手がかり。
それは、彼女が生まれ育った、この教会以外には無かったのだから。
ほむら 「ともかく、入ってみましょう」
武蔵を促し、入り口へと向かう。
正直分からなかった。
杏子はねぐらを転々とし、定まった住居など持ってはいなかったのだから。
ある時は野宿をし、またある時はホテルに部屋を取り・・・
だから、杏子に会うためにここにきたのも、これまた一つの賭けだったのだ。
杏子の居場所についての、唯一の手がかり。
それは、彼女が生まれ育った、この教会以外には無かったのだから。
ほむら 「ともかく、入ってみましょう」
武蔵を促し、入り口へと向かう。
209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:26:24.40 ID:LCAOlXWc0
・・・と。
朽ちかけた扉を開こうとして、私は中に人の気配を感じ取った。
ほむら 「いる・・・」
武蔵 「分かるのかい?」
ほむら 「ええ」
確かに感じる。
この特有の気配は、紛う事ない・・・
魔法少女特有のものだ。
それも・・・
ほむら 「二人、いる・・・」
朽ちかけた扉を開こうとして、私は中に人の気配を感じ取った。
ほむら 「いる・・・」
武蔵 「分かるのかい?」
ほむら 「ええ」
確かに感じる。
この特有の気配は、紛う事ない・・・
魔法少女特有のものだ。
それも・・・
ほむら 「二人、いる・・・」
210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:27:28.13 ID:LCAOlXWc0
武蔵 「それも、想定内の出来事なのかい?」
ほむら 「いいえ」
一人の気配は、間違いなく佐倉杏子のものだろう。
だけど、もう一人は・・・?
あまりに微弱で、その正体まで掴む事ができない。
それとも、もともと私が知らない誰かなのか。
ほむら 「予想外の出来事よ・・・」
武蔵 「危険は無いのか?いったん出直したほうが・・・」
ほむら 「ううん、それは平気だと思う」
杏子の闘気は感じられない。
ほむら 「いいえ」
一人の気配は、間違いなく佐倉杏子のものだろう。
だけど、もう一人は・・・?
あまりに微弱で、その正体まで掴む事ができない。
それとも、もともと私が知らない誰かなのか。
ほむら 「予想外の出来事よ・・・」
武蔵 「危険は無いのか?いったん出直したほうが・・・」
ほむら 「ううん、それは平気だと思う」
杏子の闘気は感じられない。
211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:28:41.89 ID:LCAOlXWc0
微弱な気配、もう一人の魔法少女が衰弱している理由は、おそらく佐倉杏子との戦いが原因ではないはず。
危険な状況とは思えなかった。
ほむら 「もっとも、何が起こるのか分からないのが私たちの日常だけれど。ともかく、入ってみましょう」
武蔵 「ま、俺はほむらちゃんに付いて行くだけさ」
武蔵の返事を待って、扉の取っ手に手をかける。
重苦しい音を立てながら、軋むように開く扉。
一歩踏み込むと、そこに広がるのは、外から見る以上に惨憺たる光景。
武蔵 「うわ、こりゃ酷いな」
危険な状況とは思えなかった。
ほむら 「もっとも、何が起こるのか分からないのが私たちの日常だけれど。ともかく、入ってみましょう」
武蔵 「ま、俺はほむらちゃんに付いて行くだけさ」
武蔵の返事を待って、扉の取っ手に手をかける。
重苦しい音を立てながら、軋むように開く扉。
一歩踏み込むと、そこに広がるのは、外から見る以上に惨憺たる光景。
武蔵 「うわ、こりゃ酷いな」
212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:33:21.86 ID:LCAOlXWc0
ほむら 「火事で全焼したのだから。悲惨なのは当然よ」
武蔵 「そうなのか・・・」
? 「おい」
教会の奥から、不意に声をかけられた。
教会の最奥。そこはかつて、立派な教壇があったであろう、一段高い場所。
そこから一人の少女が、私たちを見下ろしている。
仁王立ちで、スマートな身体をすっくと伸ばし。
燃えるような真紅の瞳で、射るように鋭い視線を飛ばして来る彼女こそが・・・
ほむら (佐倉、杏子・・・)
武蔵 「そうなのか・・・」
? 「おい」
教会の奥から、不意に声をかけられた。
教会の最奥。そこはかつて、立派な教壇があったであろう、一段高い場所。
そこから一人の少女が、私たちを見下ろしている。
仁王立ちで、スマートな身体をすっくと伸ばし。
燃えるような真紅の瞳で、射るように鋭い視線を飛ばして来る彼女こそが・・・
ほむら (佐倉、杏子・・・)
213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:35:16.83 ID:LCAOlXWc0
杏子 「なんだ、あんたら。神様を拝みに来たなら、ここにはもういないぜ。よそをあたりな」
ほむら 「・・・」
杏子 「・・・違うな。あんた、魔法少女か」
ほむら 「ええ」
杏子 「はっ、一体どうなってるんだか。今日び、魔法少女の特売セールでも開催中なのかね」
ほむら 「・・・どういうこと?」
杏子 「こっちの話だ。用件はなんだい?まさか、偶然ここに迷い込んだって訳でもないんだろ?」
ほむら 「話が早くて助かるわ。あなたに用があって来たのよ」
杏子 「・・・」
ほむら 「佐倉杏子」
杏子 「っ!?あんた、どこかで会ったことがあったか・・・?」
ほむら 「ええ。あなたは覚えていないでしょうけれど、私はあなたと会ったことがある。何度も、何度もね」
杏子 「・・・なにを言ってやがる?」
ほむら 「・・・」
杏子 「・・・違うな。あんた、魔法少女か」
ほむら 「ええ」
杏子 「はっ、一体どうなってるんだか。今日び、魔法少女の特売セールでも開催中なのかね」
ほむら 「・・・どういうこと?」
杏子 「こっちの話だ。用件はなんだい?まさか、偶然ここに迷い込んだって訳でもないんだろ?」
ほむら 「話が早くて助かるわ。あなたに用があって来たのよ」
杏子 「・・・」
ほむら 「佐倉杏子」
杏子 「っ!?あんた、どこかで会ったことがあったか・・・?」
ほむら 「ええ。あなたは覚えていないでしょうけれど、私はあなたと会ったことがある。何度も、何度もね」
杏子 「・・・なにを言ってやがる?」
214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:36:25.30 ID:LCAOlXWc0
ほむら 「単刀直入に言うわ。あなたと取引に来たのよ」
杏子 「取引だぁ?」
ほむら 「あなたにとって、絶対に損にならない話よ。聞く気はある?」
杏子 「面白いな、あんた。とりあえず、敵対する気はないと取っていいのか」
ほむら 「ええ。あなたと戦う気はないわ。縄張りを奪う気もない・・・」
杏子 「へぇ・・・」
ほむら 「用件を言ってもいいかしら」
杏子 「あんたとどこで会ったのか、用件はなんなのか。気になることは幾らでもあるが、聞いてやる義理があるわけでもない」
ほむら 「・・・」
杏子 「あいにく、信用できないヤツの持ちかける話に乗ってやるほど、私はお人好しじゃないよ。戦う気が無いと言うなら、私の前から消えてくれ。それと・・・」
武蔵 「あんな事言ってるけど・・・」
ほむら 「まぁ、最初からスムーズに話し合いを進めるとは思っていなかったから」
杏子 「あんただ、あんた」
武蔵 「あ・・・俺?」
杏子 「そうだよ。なんでシレっと魔法少女同士の話に立ち会ってるんだ?どう見たってあんた、魔法少女には見えないけれどな」
杏子 「取引だぁ?」
ほむら 「あなたにとって、絶対に損にならない話よ。聞く気はある?」
杏子 「面白いな、あんた。とりあえず、敵対する気はないと取っていいのか」
ほむら 「ええ。あなたと戦う気はないわ。縄張りを奪う気もない・・・」
杏子 「へぇ・・・」
ほむら 「用件を言ってもいいかしら」
杏子 「あんたとどこで会ったのか、用件はなんなのか。気になることは幾らでもあるが、聞いてやる義理があるわけでもない」
ほむら 「・・・」
杏子 「あいにく、信用できないヤツの持ちかける話に乗ってやるほど、私はお人好しじゃないよ。戦う気が無いと言うなら、私の前から消えてくれ。それと・・・」
武蔵 「あんな事言ってるけど・・・」
ほむら 「まぁ、最初からスムーズに話し合いを進めるとは思っていなかったから」
杏子 「あんただ、あんた」
武蔵 「あ・・・俺?」
杏子 「そうだよ。なんでシレっと魔法少女同士の話に立ち会ってるんだ?どう見たってあんた、魔法少女には見えないけれどな」
215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:44:01.07 ID:LCAOlXWc0
武蔵 「確かに魔法少女ではないな。でも、魔法少女が何なのかは知ってるし、シレっと話に立ち会っていたわけでもないぜ」
杏子 「魔法少女でもないのに、魔法少女を知るあんたは、何者なんだい?」
武蔵 「俺は、この子の仲間だ」
杏子 「仲間、だぁ・・・?」
警戒の色は隠さないまでも、どこか飄々としていた杏子の声音が武蔵の一言で変わった。
不快な言葉を聞かされた。
そんな苛立ちを寸分も隠すことなく言葉に乗せ、私たちに投げつけてきたのだ。
杏子 「仲良しごっこで、お気楽なこったな。不愉快だ。とっととここを出ていきな」
武蔵 「気楽なんかじゃないぜ。こっちはこっちで、色々と大変なんだよ。俺も、この子もな。大変な者同士、助け合おうってだけの話さ。これのどこが仲良しごっこなんだい?」
杏子 「・・・何がどう大変だってんだよ」
杏子 「魔法少女でもないのに、魔法少女を知るあんたは、何者なんだい?」
武蔵 「俺は、この子の仲間だ」
杏子 「仲間、だぁ・・・?」
警戒の色は隠さないまでも、どこか飄々としていた杏子の声音が武蔵の一言で変わった。
不快な言葉を聞かされた。
そんな苛立ちを寸分も隠すことなく言葉に乗せ、私たちに投げつけてきたのだ。
杏子 「仲良しごっこで、お気楽なこったな。不愉快だ。とっととここを出ていきな」
武蔵 「気楽なんかじゃないぜ。こっちはこっちで、色々と大変なんだよ。俺も、この子もな。大変な者同士、助け合おうってだけの話さ。これのどこが仲良しごっこなんだい?」
杏子 「・・・何がどう大変だってんだよ」
216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:45:44.45 ID:LCAOlXWc0
武蔵 「それはさ」
ほむら 「待って」
武蔵 「・・・?」
ほむら 「佐倉杏子」
杏子 「あん?」
ほむら 「こちらの事情、教えてあげる義理は無いわ」
杏子の口上をそっくり頂いて、きり返してみる。
杏子 「・・・てめぇ」
ほむら 「だけれど、取引の話。大人しく聞いてくれるなら、こっちの事情を話さないでもない。だって、両者は密接に関わっている事柄だから」
杏子 「・・・」
ほむら 「気にならない?この人がなぜどうやって、魔法少女に関わっているのか。そして、その事に関わる取引の内容・・・」
ほむら 「待って」
武蔵 「・・・?」
ほむら 「佐倉杏子」
杏子 「あん?」
ほむら 「こちらの事情、教えてあげる義理は無いわ」
杏子の口上をそっくり頂いて、きり返してみる。
杏子 「・・・てめぇ」
ほむら 「だけれど、取引の話。大人しく聞いてくれるなら、こっちの事情を話さないでもない。だって、両者は密接に関わっている事柄だから」
杏子 「・・・」
ほむら 「気にならない?この人がなぜどうやって、魔法少女に関わっているのか。そして、その事に関わる取引の内容・・・」
217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:50:49.41 ID:LCAOlXWc0
杏子 「言ったろうが!気にはなるが、聞いてやる義理はねぇと!これ以上ゴタゴタぬかすと、二度と無駄口たたけなくなるまで、ぶちのめしてやるぞ!!」
ほむら 「・・・」
だめか。
上手いこと杏子の好奇心に火をつけ、こちらのペースに巻き込めればと思ったのだけれど・・・
さやかの時と同じ。結局は相手を怒らせてしまうに終った。
あの時の竜馬のように、上手く事が運べない。やっぱり私には、相手の心の機微を推し量るという能力が、絶対的に欠けているようだ。
武蔵 「あの子、怒っちゃったぞ・・・」
ほむら 「・・・」
仕方がない。
杏子が頭を冷やすまで、ここは引き下がるべきか。
ほむら 「・・・」
だめか。
上手いこと杏子の好奇心に火をつけ、こちらのペースに巻き込めればと思ったのだけれど・・・
さやかの時と同じ。結局は相手を怒らせてしまうに終った。
あの時の竜馬のように、上手く事が運べない。やっぱり私には、相手の心の機微を推し量るという能力が、絶対的に欠けているようだ。
武蔵 「あの子、怒っちゃったぞ・・・」
ほむら 「・・・」
仕方がない。
杏子が頭を冷やすまで、ここは引き下がるべきか。
218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:52:34.51 ID:LCAOlXWc0
そう、武蔵に告げようとした時だった。
? 「きょ・・・きょーこ・・・?」
教会の奥から、か細い声が聞こえてきたのは。
声のした方に目を向けると、朽ちた装飾品の陰に身体を隠すように・・・
小さな人影がこちらの様子を伺っているのが目に入った。
? 「ケンカしてるの、きょーこ・・・?」
物陰を出た人影は、おずおずとこちらへと近づいてくる。
? 「だ、だいじょうぶ、きょーこ・・・」
武蔵 「小さな女の子・・・?」
杏子 「・・・なんだ、目が覚めたのか。こっちくんなよ、奥に引っ込んでいろ」
? 「だ、だって・・・きょーこが心配で・・・」
杏子 「ちっ」
? 「きょ・・・きょーこ・・・?」
教会の奥から、か細い声が聞こえてきたのは。
声のした方に目を向けると、朽ちた装飾品の陰に身体を隠すように・・・
小さな人影がこちらの様子を伺っているのが目に入った。
? 「ケンカしてるの、きょーこ・・・?」
物陰を出た人影は、おずおずとこちらへと近づいてくる。
? 「だ、だいじょうぶ、きょーこ・・・」
武蔵 「小さな女の子・・・?」
杏子 「・・・なんだ、目が覚めたのか。こっちくんなよ、奥に引っ込んでいろ」
? 「だ、だって・・・きょーこが心配で・・・」
杏子 「ちっ」
219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:54:11.89 ID:LCAOlXWc0
ほむら 「この子は・・・」
私はこの子に見覚えがあった。
知り合いというには、関わりあいはあまりに希薄なものではあったけれど・・・
確かに彼女とは、いつだったかの時間軸で顔を合わせたことがある。
そう、彼女の名前は確か・・・
ほむら 「ゆま・・・?」
? 「え、お姉さん、ゆまの名前、知ってるの・・・?」
ほむら 「ええ、千歳ゆまね」
杏子 「なっ・・・!?」
ゆま 「お姉さん、ゆまとどこかで会ったことがあるの?」
ほむら 「ええ。あなたは覚えていないでしょうけれど、何度かね」
ゆま 「・・・?」
私はこの子に見覚えがあった。
知り合いというには、関わりあいはあまりに希薄なものではあったけれど・・・
確かに彼女とは、いつだったかの時間軸で顔を合わせたことがある。
そう、彼女の名前は確か・・・
ほむら 「ゆま・・・?」
? 「え、お姉さん、ゆまの名前、知ってるの・・・?」
ほむら 「ええ、千歳ゆまね」
杏子 「なっ・・・!?」
ゆま 「お姉さん、ゆまとどこかで会ったことがあるの?」
ほむら 「ええ。あなたは覚えていないでしょうけれど、何度かね」
ゆま 「・・・?」
220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 13:56:04.46 ID:LCAOlXWc0
杏子 「こいつが魔法少女になったのは、つい昨日だったはずだぜ。それが何で、お前なんかと面識があるんだ」
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしの名前も知っていた・・・何者だよ、お前」
ほむら 「話、聞いてくれる気になったかしら」
杏子 「・・・いいだろう。だけど、取引の話は後だ。物には順序ってもんがあるだろ?」
武蔵 「正論だな」
ほむら 「良いわ。まずは自己紹介から行きましょう。互いにね」
千歳ゆま。
思いがけない場所での再会ではあったけれど、彼女の予想外の登場に救われた形となった。
後は何とか、杏子の気を引きつつ、私たちの仲間にできたなら・・・
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしの名前も知っていた・・・何者だよ、お前」
ほむら 「話、聞いてくれる気になったかしら」
杏子 「・・・いいだろう。だけど、取引の話は後だ。物には順序ってもんがあるだろ?」
武蔵 「正論だな」
ほむら 「良いわ。まずは自己紹介から行きましょう。互いにね」
千歳ゆま。
思いがけない場所での再会ではあったけれど、彼女の予想外の登場に救われた形となった。
後は何とか、杏子の気を引きつつ、私たちの仲間にできたなら・・・
225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:13:47.09 ID:jq3cZNnm0
杏子 「互いにったって、そっちはあたし等のことは知ってるんだろ?」
ほむら 「千歳ゆまに関しては、それほど情報は持ち合わせていないわ。それに、こちらの武蔵さんは、あなたの事も元より知らない」
武蔵 「俺とは正真正銘、初対面って事だ!」
杏子 「しらねぇよ。なんにしても、尋ねてきたのはそっちだ。まずはそっちから自己紹介するのが筋じゃないのかい」
武蔵 「まぁ、違いない。んじゃあ、まずは俺から。俺の名前は巴武蔵。訳あって、ほむらちゃんと行動を共にしている」
杏子 「巴・・・巴って、あんたまさか」
ほむら 「佐倉杏子は、かつて巴マミとコンビを組んでた事があるのよ」
武蔵 「あ、それはそれは。妹がお世話になったようで」
杏子 「あんた、マミの兄貴かよ。話に聞いてはいたが、まったく似てないな」
武蔵 「えー?双子のようにそっくりだろ」
杏子 「どこがだよ」
武蔵 「肉感的なボディとか」
杏子 「アホかよ」
容赦の無い突込みが、間髪いれずに飛ぶ様は、ある意味心地よくすら感じられる。
・・・突っ込まれた当の本人には悪いけれど。あ、ほら。武蔵が少ししょげてしまった。
杏子 「ていうか、そっちのあんた。あたしとマミの過去についてまで、随分と詳しいようだな」
ほむら 「千歳ゆまに関しては、それほど情報は持ち合わせていないわ。それに、こちらの武蔵さんは、あなたの事も元より知らない」
武蔵 「俺とは正真正銘、初対面って事だ!」
杏子 「しらねぇよ。なんにしても、尋ねてきたのはそっちだ。まずはそっちから自己紹介するのが筋じゃないのかい」
武蔵 「まぁ、違いない。んじゃあ、まずは俺から。俺の名前は巴武蔵。訳あって、ほむらちゃんと行動を共にしている」
杏子 「巴・・・巴って、あんたまさか」
ほむら 「佐倉杏子は、かつて巴マミとコンビを組んでた事があるのよ」
武蔵 「あ、それはそれは。妹がお世話になったようで」
杏子 「あんた、マミの兄貴かよ。話に聞いてはいたが、まったく似てないな」
武蔵 「えー?双子のようにそっくりだろ」
杏子 「どこがだよ」
武蔵 「肉感的なボディとか」
杏子 「アホかよ」
容赦の無い突込みが、間髪いれずに飛ぶ様は、ある意味心地よくすら感じられる。
・・・突っ込まれた当の本人には悪いけれど。あ、ほら。武蔵が少ししょげてしまった。
杏子 「ていうか、そっちのあんた。あたしとマミの過去についてまで、随分と詳しいようだな」
226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:16:42.12 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「・・・私は暁美ほむら。あなたと同じ、魔法少女」
杏子 「涼しい顔して、なんでもお見通しよってか。あんた、面白くねぇ奴だな」
ほむら 「そんな万能なものじゃないわ。さてと、次はそちらが名乗る番だけれど」
杏子 「・・・佐倉杏子。風見野を縄張りに適当にやってる」
武蔵 「そんだけ?」
杏子 「他に何を言えって言うんだよ」
武蔵 「ま、良いか。えーと、それじゃあ、次は君の番だけれど。お名前は?」
武蔵がゆまに向かい、人懐っこい笑顔を浮かべながら尋ねる。
腰を屈め、目線まで幼い少女に合わせて。
・・・随分と、子供の扱いに慣れているようだ。
ゆま 「え・・・えっと・・・」
武蔵 「ん・・・?」
ゆま 「あ・・・あわ・・」
杏子 「涼しい顔して、なんでもお見通しよってか。あんた、面白くねぇ奴だな」
ほむら 「そんな万能なものじゃないわ。さてと、次はそちらが名乗る番だけれど」
杏子 「・・・佐倉杏子。風見野を縄張りに適当にやってる」
武蔵 「そんだけ?」
杏子 「他に何を言えって言うんだよ」
武蔵 「ま、良いか。えーと、それじゃあ、次は君の番だけれど。お名前は?」
武蔵がゆまに向かい、人懐っこい笑顔を浮かべながら尋ねる。
腰を屈め、目線まで幼い少女に合わせて。
・・・随分と、子供の扱いに慣れているようだ。
ゆま 「え・・・えっと・・・」
武蔵 「ん・・・?」
ゆま 「あ・・・あわ・・」
227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:22:32.33 ID:jq3cZNnm0
武蔵 「緊張してるのかな?あ、そうだ、いいものがある!」
武蔵がゴソゴソと懐をさぐり・・・
取り出したのは、昨日私の部屋で食べたのと同じ、外国のお菓子だった。
ほむら 「持ってきていたの・・・」
武蔵 「いつ、何があるか分からないしな。非常食の備蓄は、いざという時の為に大切な準備なんだぞ」
ほむら 「はぁ・・・」
武蔵 「さぁ、お菓子をどうぞ。お兄ちゃんが外国で買ってきたものだけれど。ほら、美味しいよ」
武蔵がゴソゴソと懐をさぐり・・・
取り出したのは、昨日私の部屋で食べたのと同じ、外国のお菓子だった。
ほむら 「持ってきていたの・・・」
武蔵 「いつ、何があるか分からないしな。非常食の備蓄は、いざという時の為に大切な準備なんだぞ」
ほむら 「はぁ・・・」
武蔵 「さぁ、お菓子をどうぞ。お兄ちゃんが外国で買ってきたものだけれど。ほら、美味しいよ」
228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:31:19.98 ID:jq3cZNnm0
ゆま 「え・・・いいの・・・?」おずおず
遠慮がちに、武蔵とお菓子を交互に見つめるゆま。
・・・どうやら、自分に向けられた好意に戸惑いを受けるような、そんな育ち方をしてしまったようね。
だけれど、武蔵はそんな事を意にも介さぬように、手に持ったお菓子をゆまの視界いっぱいになるように近づける。
顔を庇うように、反射的にお菓子を手にとってしまう千歳ゆま。
後はもう、武蔵の思う壺だった。
武蔵 「ほら、お食べよ」
ゆま 「・・・」
おずおずと包み紙を開いて、お菓子を口へと運ぶ。
子供の味覚は正直だ。
一回二回と噛みしめているうちに、ゆまの顔にみるみる笑顔が広がっていく。
武蔵 「おいしい?」
ゆま 「うん!」
遠慮がちに、武蔵とお菓子を交互に見つめるゆま。
・・・どうやら、自分に向けられた好意に戸惑いを受けるような、そんな育ち方をしてしまったようね。
だけれど、武蔵はそんな事を意にも介さぬように、手に持ったお菓子をゆまの視界いっぱいになるように近づける。
顔を庇うように、反射的にお菓子を手にとってしまう千歳ゆま。
後はもう、武蔵の思う壺だった。
武蔵 「ほら、お食べよ」
ゆま 「・・・」
おずおずと包み紙を開いて、お菓子を口へと運ぶ。
子供の味覚は正直だ。
一回二回と噛みしめているうちに、ゆまの顔にみるみる笑顔が広がっていく。
武蔵 「おいしい?」
ゆま 「うん!」
229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:33:18.18 ID:jq3cZNnm0
上手いものだわ。
やはり武蔵をつれてきて正解だった。私は子供の扱いなんてどうして良いか分からないし、柄の悪い竜馬だと無駄に怖がらせるだけだったろうから。
武蔵 「まだあるから、後でもっとあげるからね。でも、その前に、まずは君のことを教えてもらいたいなぁ」
ゆま 「う、うん。ゆまは千歳ゆまって言うの。昨日、キュウべぇから言われて、魔法少女になったんだ」
ほむら 「どうして、佐倉杏子と一緒にいたの?」
ゆま 「それは・・・」
杏子 「あたしから説明するよ。今朝、魔女の結界の中で拾ったのさ。あたしが、こいつを」
ほむら 「拾った?」
杏子 「ああ」
ここで杏子は、ゆまと出会った経緯をかいつまんで説明してくれた。
杏子の言によると、二人が出会ったのは今日の朝はやく。
杏子が見つけた魔女の結界に先に入り込んでいたゆまは、魔女に襲われ対抗しきれず、気を失っていたらしい。
あわやと言うところで駆けつけた杏子に救われたわけだ。
杏子 「で、とりあえず連れて帰って傷の手当をしてやったのさ。いくらあたしでも、こんなガキを見捨ててきたんじゃ、あとあと夢身が悪いからな」
ほむら 「では、二人も出会ってまだ、間がないというわけね」
杏子 「そういうこった。さ、自己紹介はもういいだろ。そろそろ説明してもらおうか。あんたが私たちのことを、なぜ知っているのかを」
やはり武蔵をつれてきて正解だった。私は子供の扱いなんてどうして良いか分からないし、柄の悪い竜馬だと無駄に怖がらせるだけだったろうから。
武蔵 「まだあるから、後でもっとあげるからね。でも、その前に、まずは君のことを教えてもらいたいなぁ」
ゆま 「う、うん。ゆまは千歳ゆまって言うの。昨日、キュウべぇから言われて、魔法少女になったんだ」
ほむら 「どうして、佐倉杏子と一緒にいたの?」
ゆま 「それは・・・」
杏子 「あたしから説明するよ。今朝、魔女の結界の中で拾ったのさ。あたしが、こいつを」
ほむら 「拾った?」
杏子 「ああ」
ここで杏子は、ゆまと出会った経緯をかいつまんで説明してくれた。
杏子の言によると、二人が出会ったのは今日の朝はやく。
杏子が見つけた魔女の結界に先に入り込んでいたゆまは、魔女に襲われ対抗しきれず、気を失っていたらしい。
あわやと言うところで駆けつけた杏子に救われたわけだ。
杏子 「で、とりあえず連れて帰って傷の手当をしてやったのさ。いくらあたしでも、こんなガキを見捨ててきたんじゃ、あとあと夢身が悪いからな」
ほむら 「では、二人も出会ってまだ、間がないというわけね」
杏子 「そういうこった。さ、自己紹介はもういいだろ。そろそろ説明してもらおうか。あんたが私たちのことを、なぜ知っているのかを」
230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:34:59.69 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「・・・いいわ」
ここからは賭けだ。
かつての時間軸で、私は全ての真実を杏子をはじめ、まどかやみんなに話した事がある。
そして、誰一人として、真実を受け入れてくれる人はいなかった。
結果、私は誰のことも信用するのを止めた。結局、自分の心の内を受け止められるのは、自分自身以外にいないのだと諦めて。
だけれど。
竜馬が美樹さやかの運命を変えたのを目の当たりにし、私ももう一度運命に立ち向かってみたいと、切に思った。
私では竜馬のようには行かない。それは重々承知の上で、それでも明らかに、この時間軸は流れが今までと異なっている。
まどかを救いたい。
いつもと変わらない想い。ただ今回は、まどかを救った後で、ともに笑いあえる皆がいてほしい。
そう思うのだ。
かつての友達と。全てが終った後で。
頑張ったねと、共に喜びを分かち合いたいのだ。
私は告げる。
真実を。これから起こる事を。
目の前に佐倉杏子に。
ここからは賭けだ。
かつての時間軸で、私は全ての真実を杏子をはじめ、まどかやみんなに話した事がある。
そして、誰一人として、真実を受け入れてくれる人はいなかった。
結果、私は誰のことも信用するのを止めた。結局、自分の心の内を受け止められるのは、自分自身以外にいないのだと諦めて。
だけれど。
竜馬が美樹さやかの運命を変えたのを目の当たりにし、私ももう一度運命に立ち向かってみたいと、切に思った。
私では竜馬のようには行かない。それは重々承知の上で、それでも明らかに、この時間軸は流れが今までと異なっている。
まどかを救いたい。
いつもと変わらない想い。ただ今回は、まどかを救った後で、ともに笑いあえる皆がいてほしい。
そう思うのだ。
かつての友達と。全てが終った後で。
頑張ったねと、共に喜びを分かち合いたいのだ。
私は告げる。
真実を。これから起こる事を。
目の前に佐倉杏子に。
231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:37:35.54 ID:jq3cZNnm0
・・・
・・・
杏子 「ワルプルギスの夜って、あの最強の魔女だって言われる、あのワルプルギスの夜の事かよ!?」
ほむら 「ええ、あなたも話には聞いたことがあるでしょ。それが、間もなく見滝原で顕現する」
杏子 「まじかよ・・・」
ほむら 「そこで取引よ。佐倉杏子。どうか私の仲間になって、ともにワルプルギスの夜と戦ってくれないかしら」
杏子 「仲間・・・」
仲間という二文字を耳にした途端、杏子の眉間に深い皺が刻まれた。
よっぽど、この言葉が嫌いなのだと見える。
ほむら 「仲間という間柄に引っ掛かりがあるなら、一時的な同盟関係ということでどうかしら」
名目なんか、どうでも良かった。
ただ、佐倉杏子が共に戦ってくれる。そのこと自体が重要なのだ。
杏子 「・・・まぁ、良い。取引云々以前に、まずは確認しておきたい事がある。なんであんたに、そんな先のことが分かるんだ」
ほむら 「・・・」
・・・
杏子 「ワルプルギスの夜って、あの最強の魔女だって言われる、あのワルプルギスの夜の事かよ!?」
ほむら 「ええ、あなたも話には聞いたことがあるでしょ。それが、間もなく見滝原で顕現する」
杏子 「まじかよ・・・」
ほむら 「そこで取引よ。佐倉杏子。どうか私の仲間になって、ともにワルプルギスの夜と戦ってくれないかしら」
杏子 「仲間・・・」
仲間という二文字を耳にした途端、杏子の眉間に深い皺が刻まれた。
よっぽど、この言葉が嫌いなのだと見える。
ほむら 「仲間という間柄に引っ掛かりがあるなら、一時的な同盟関係ということでどうかしら」
名目なんか、どうでも良かった。
ただ、佐倉杏子が共に戦ってくれる。そのこと自体が重要なのだ。
杏子 「・・・まぁ、良い。取引云々以前に、まずは確認しておきたい事がある。なんであんたに、そんな先のことが分かるんだ」
ほむら 「・・・」
232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:38:38.44 ID:jq3cZNnm0
杏子 「教えろよ。じゃなけりゃ、取引も何も答えようがないだろう」
ほむら 「・・・てきたからよ」
杏子 「ああ・・・?」
ほむら 「私はもう何度も、ワルプルギスと戦ってきたからよ。そのたびに敗れ、時間を遡行し、奴に挑み続けているの」
杏子 「・・・何を言ってるんだよ、訳わからねぇ」
ほむら 「私の能力は、時間を超える力。佐倉杏子、そして千歳ゆま。あなたたちの事を知っていたのも、かつての時間軸で出会っていたからよ」
ゆま 「???」
杏子 「つまりあんた、未来から来たって事なのか?」
さすが、佐倉杏子は察しが良い。私の言葉少なな説明で、充分に理解してくれたようだ。
勘の良さは、私の知る魔法少女の中では、飛びぬけている彼女だ。
ほむら 「ええ、そう。と言っても、たった一ヶ月ほどの時間を行き来しているだけだけれど」
杏子 「・・・で、何度も行き来している時間の中で、私やこのガキとも出会ってたって、そういうことか?」
ほむら 「信じられない?」
ほむら 「・・・てきたからよ」
杏子 「ああ・・・?」
ほむら 「私はもう何度も、ワルプルギスと戦ってきたからよ。そのたびに敗れ、時間を遡行し、奴に挑み続けているの」
杏子 「・・・何を言ってるんだよ、訳わからねぇ」
ほむら 「私の能力は、時間を超える力。佐倉杏子、そして千歳ゆま。あなたたちの事を知っていたのも、かつての時間軸で出会っていたからよ」
ゆま 「???」
杏子 「つまりあんた、未来から来たって事なのか?」
さすが、佐倉杏子は察しが良い。私の言葉少なな説明で、充分に理解してくれたようだ。
勘の良さは、私の知る魔法少女の中では、飛びぬけている彼女だ。
ほむら 「ええ、そう。と言っても、たった一ヶ月ほどの時間を行き来しているだけだけれど」
杏子 「・・・で、何度も行き来している時間の中で、私やこのガキとも出会ってたって、そういうことか?」
ほむら 「信じられない?」
233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:40:55.79 ID:jq3cZNnm0
杏子 「魔法少女は条理を覆す存在だって、キュウべぇも言っていたな。だとしたら、あんたの言う能力が存在していても、不思議ではない・・・か」
ほむら 「私たち、そのキュウべぇに騙されていたのよ」
杏子 「・・・?」
ほむら 「・・・」
私は無言で武蔵に目配せをする。
いくらなんでも、これから始める話。あんなに幼い少女に告げるには酷過ぎる。
武蔵は私の意を理解してくれると、コクリと一度うなづいた。
武蔵 「ゆまちゃん、ちょっとお兄ちゃんと外で遊んでこようか」
ゆま 「え・・・でも・・・」
杏子 「・・・行って来いよ。目が覚めてから、あまり動いてないだろ。少し身体をほぐして来い」
ゆま 「うん・・・」
武蔵 「さ、行こうか」
武蔵に促され、ゆまは後ろ髪を引かれるようにしながらも、教会から出て行ってくれた。
残ったのは、私と杏子の二人のみ。
ほむら 「ご協力に感謝するわ」
杏子 「・・・良いから、早く先を続けてくれ」
ほむら 「私たち、そのキュウべぇに騙されていたのよ」
杏子 「・・・?」
ほむら 「・・・」
私は無言で武蔵に目配せをする。
いくらなんでも、これから始める話。あんなに幼い少女に告げるには酷過ぎる。
武蔵は私の意を理解してくれると、コクリと一度うなづいた。
武蔵 「ゆまちゃん、ちょっとお兄ちゃんと外で遊んでこようか」
ゆま 「え・・・でも・・・」
杏子 「・・・行って来いよ。目が覚めてから、あまり動いてないだろ。少し身体をほぐして来い」
ゆま 「うん・・・」
武蔵 「さ、行こうか」
武蔵に促され、ゆまは後ろ髪を引かれるようにしながらも、教会から出て行ってくれた。
残ったのは、私と杏子の二人のみ。
ほむら 「ご協力に感謝するわ」
杏子 「・・・良いから、早く先を続けてくれ」
234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:47:09.93 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「ええ・・・佐倉杏子。あなたは魔法少女の行き着く先というのを、考えた事がある?」
杏子 「ねぇよ。今を楽しく生きられれば良い。あたしはそう思うことに決めてるんだ。先のことなんか、知ったことじゃないよ」
知っていた。
杏子の過酷すぎる過去が、彼女を刹那的な考え方の持ち主へと導いたのだ。
だけれど、そんな考えでは魔法少女の本質へと辿り着ける事は、決して無い。
ほむら 「では・・・もし、魔力が尽きたら。あるいは、絶望に心を苛まれ、ソウルジェムが黒く染まりきったらどうなるのか。考えた事はある?」
だから、私が彼女の思考を真実へと導く。
杏子 「・・・ねぇっていってるだろう」
ほむら 「・・・マミ以上のベテランの魔法少女の存在、噂だけでも聞いたことがある?例えば、そうね。二十歳を過ぎた元・魔法少女とか」
杏子 「なにが言いたいんだよ、それのどこにキュウべぇが関係して来るってんだ。抽象的過ぎて、意図がさっぱり伝わってこねぇぞ」
杏子 「ねぇよ。今を楽しく生きられれば良い。あたしはそう思うことに決めてるんだ。先のことなんか、知ったことじゃないよ」
知っていた。
杏子の過酷すぎる過去が、彼女を刹那的な考え方の持ち主へと導いたのだ。
だけれど、そんな考えでは魔法少女の本質へと辿り着ける事は、決して無い。
ほむら 「では・・・もし、魔力が尽きたら。あるいは、絶望に心を苛まれ、ソウルジェムが黒く染まりきったらどうなるのか。考えた事はある?」
だから、私が彼女の思考を真実へと導く。
杏子 「・・・ねぇっていってるだろう」
ほむら 「・・・マミ以上のベテランの魔法少女の存在、噂だけでも聞いたことがある?例えば、そうね。二十歳を過ぎた元・魔法少女とか」
杏子 「なにが言いたいんだよ、それのどこにキュウべぇが関係して来るってんだ。抽象的過ぎて、意図がさっぱり伝わってこねぇぞ」
235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:48:30.56 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「私たちの願いは、世の条理を覆し得られたもの。その結果生まれた歪みは、確実にわが身へと返って来る・・・」
杏子がピクリと体を震わせる。
彼女にとっては、痛いほど身に染みた事だったはず。
ほむら 「私たちの行きつく先は決まっている。そう遠からずに、生じた歪みに心を苛まれ、ソウルジェムを黒く染め上げるのよ」
杏子 「はっ、何を言って・・・」
ほむら 「誰もその歪みに耐えられない。だから、年を取った”元・魔法少女”なんていうのも存在しないの」
杏子 「えっ・・・?」
ほむら 「皆、消えていくのだから・・・」
杏子 「消えていくって、どういうことだよ、おい・・・」
ほむら 「ソウルジェムは黒く染まりきると、グリーフシードとなる・・・」
杏子 「え・・・」
ほむら 「聡いあなたなら分かるでしょう。グリーフシードは魔女が落とす物。つまり・・・」
杏子 「えっと、ちょい待てよ。じゃあ、あたしたちが普段倒してる魔女って、あれって元々は・・・まさ、か・・・」
ほむら 「ええ、そのまさかよ」
杏子がピクリと体を震わせる。
彼女にとっては、痛いほど身に染みた事だったはず。
ほむら 「私たちの行きつく先は決まっている。そう遠からずに、生じた歪みに心を苛まれ、ソウルジェムを黒く染め上げるのよ」
杏子 「はっ、何を言って・・・」
ほむら 「誰もその歪みに耐えられない。だから、年を取った”元・魔法少女”なんていうのも存在しないの」
杏子 「えっ・・・?」
ほむら 「皆、消えていくのだから・・・」
杏子 「消えていくって、どういうことだよ、おい・・・」
ほむら 「ソウルジェムは黒く染まりきると、グリーフシードとなる・・・」
杏子 「え・・・」
ほむら 「聡いあなたなら分かるでしょう。グリーフシードは魔女が落とす物。つまり・・・」
杏子 「えっと、ちょい待てよ。じゃあ、あたしたちが普段倒してる魔女って、あれって元々は・・・まさ、か・・・」
ほむら 「ええ、そのまさかよ」
236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:50:18.21 ID:jq3cZNnm0
杏子 「は、はははっ・・・、そんな馬鹿な話、あってたまるもんかよ。戯言であたしを惑わして、どうしようってんだ・・・?」
そう、それは受け入れがたい事実。
だけど、厳然たる真実だ。
かつての時間軸では、杏子本人が身をもって実証した事だってある。
だから、受け入れてもらう。
真実を見つめ、心の中に向かい入れ、さらには過酷な運命に立ち向かってもらおう。
私と同じように。
ほむら 「私は嘘は言っていないわ」
杏子 「・・・だっ、だけどっ!キュウべぇはそんなこと、一言もあたしには・・・あっ!」
ほむら 「そう、言っていない。誰も聞かなかったから」
杏子 「・・・っ」
そう、それは受け入れがたい事実。
だけど、厳然たる真実だ。
かつての時間軸では、杏子本人が身をもって実証した事だってある。
だから、受け入れてもらう。
真実を見つめ、心の中に向かい入れ、さらには過酷な運命に立ち向かってもらおう。
私と同じように。
ほむら 「私は嘘は言っていないわ」
杏子 「・・・だっ、だけどっ!キュウべぇはそんなこと、一言もあたしには・・・あっ!」
ほむら 「そう、言っていない。誰も聞かなかったから」
杏子 「・・・っ」
237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:53:25.79 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「分かった?あいつは確かに嘘は言っていないかもしれない。だけれど、意図的に告げるべき事実を選択して、私たちをミスリードしているのよ」
杏子 「それが本当だってんなら・・・」
ほむら 「ええ、私たちはいずれ、魔女となる。それは避けられない運命。あなたも私も、あの千歳ゆまも・・・」
杏子 「・・・だけれど、それならキュウべぇの目的ってのは、一体なんなんだよ!?そんな事して、奴に何の得があるって言うんだ!?」
ほむら 「私たちが絶望し、ソウルジェムがグリーフシードへと生まれ変わる瞬間に、莫大なエネルギーが生み出されるらしいわ。奴の目的は、そのエネルギーを回収する事・・・」
杏子 「エネルギー・・・だぁ・・・?」
ほむら 「この宇宙に存在する数多の文明が費やすエネルギー。それを補うだけの量を私たちは生み出す事ができるらしいわ」
杏子 「はは・・・意味わからねぇ。話がでかすぎて、笑いしか出やしねぇよ・・・」
ほむら 「実感がわかない内は、そうでしょうね。やがて、大切な人や自分自身が魔女となる危険に迫られた時、その笑いは怒りに変わるのよ」
杏子 「・・・じゃあ、あたしたちは、奴に家畜のように扱われてるって、あんたはそう言うのかよ」
ほむら 「そう。羊が羊毛を刈られ、豚や牛が肉に加工されるのと同様にね」
杏子 「・・・そして、あたし等は魔力を刈られて魔女になる、と」
杏子 「それが本当だってんなら・・・」
ほむら 「ええ、私たちはいずれ、魔女となる。それは避けられない運命。あなたも私も、あの千歳ゆまも・・・」
杏子 「・・・だけれど、それならキュウべぇの目的ってのは、一体なんなんだよ!?そんな事して、奴に何の得があるって言うんだ!?」
ほむら 「私たちが絶望し、ソウルジェムがグリーフシードへと生まれ変わる瞬間に、莫大なエネルギーが生み出されるらしいわ。奴の目的は、そのエネルギーを回収する事・・・」
杏子 「エネルギー・・・だぁ・・・?」
ほむら 「この宇宙に存在する数多の文明が費やすエネルギー。それを補うだけの量を私たちは生み出す事ができるらしいわ」
杏子 「はは・・・意味わからねぇ。話がでかすぎて、笑いしか出やしねぇよ・・・」
ほむら 「実感がわかない内は、そうでしょうね。やがて、大切な人や自分自身が魔女となる危険に迫られた時、その笑いは怒りに変わるのよ」
杏子 「・・・じゃあ、あたしたちは、奴に家畜のように扱われてるって、あんたはそう言うのかよ」
ほむら 「そう。羊が羊毛を刈られ、豚や牛が肉に加工されるのと同様にね」
杏子 「・・・そして、あたし等は魔力を刈られて魔女になる、と」
238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:57:21.33 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「逃れ得ない運命よ。だけれど、そうなるのを少しでも遅らせたいと思うのも人情でしょう」
杏子 「そりゃそうだ。与えられただけの運命に、はいそうですかと乗っかるだけの結末なんて、まっぴらゴメンだぜ」
ほむら 「そう思うわよね。だけれど、このままだとあなたは・・・」
杏子 「なんだよ、どうなるってんだ?」
ほむら 「私が見てきた時間軸では、あなたがワルプルギス戦を乗り越えたことは一度も無いわ。そこで戦死するか、それ以前に戦線離脱するか」
杏子 「だから、取引って事か?共に戦えって。だけれど、一緒に戦ったって、ワルプルギスに勝てたことは一度も無いんだろ?」
ほむら 「今まではね。だけれど、今回は事情が違う」
杏子 「?」
ほむら 「さっきの武蔵さんね、別の世界から来たのよ」
杏子 「・・・はぁ?」
ほむら 「そこで彼はロボットに乗って、敵と戦っていた。今、そのロボットは事情があって私が預かっている状態なの」
杏子 「別の世界?は?ロボットぉ・・・?」
杏子 「そりゃそうだ。与えられただけの運命に、はいそうですかと乗っかるだけの結末なんて、まっぴらゴメンだぜ」
ほむら 「そう思うわよね。だけれど、このままだとあなたは・・・」
杏子 「なんだよ、どうなるってんだ?」
ほむら 「私が見てきた時間軸では、あなたがワルプルギス戦を乗り越えたことは一度も無いわ。そこで戦死するか、それ以前に戦線離脱するか」
杏子 「だから、取引って事か?共に戦えって。だけれど、一緒に戦ったって、ワルプルギスに勝てたことは一度も無いんだろ?」
ほむら 「今まではね。だけれど、今回は事情が違う」
杏子 「?」
ほむら 「さっきの武蔵さんね、別の世界から来たのよ」
杏子 「・・・はぁ?」
ほむら 「そこで彼はロボットに乗って、敵と戦っていた。今、そのロボットは事情があって私が預かっている状態なの」
杏子 「別の世界?は?ロボットぉ・・・?」
239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/18(火) 21:03:15.85 ID:jq3cZNnm0
ほむら 「彼らが私たちの闘いに手を貸してくれる。だけれど、そのロボットが動力源としているエネルギーが、こちらの世界には存在していないらしくて」
杏子 「・・・」
ほむら 「私の魔力を代用に動かしているの。だから、私の魔力は常に枯渇状態。いつ、魔女になってしまってもおかしくない状況に置かれているというわけ」
杏子 「ちょっと待てよ。いきなりロボットとか言われても、子供のマンガじゃあるまいし、なに言っちゃってんのって感じなんだけどさ」
ほむら 「魔女がいて魔法少女がいて、喋る小動物までいる。ロボットが存在する世界があったとしても、それはそんなに驚くほどの事?」
杏子 「・・・分かったよ、話を続けてくれ」
ほむら 「強大な力を秘めたロボットらしいわ。その力を遺憾なく発揮できれば、あるいはワルプルギスの夜だって・・・」
杏子 「はん、読めたぜ、あんたの言う取引って奴が」
ほむら 「そう、佐倉杏子。あなたが大量のグリーフシードを溜め込んでいるのは知っている。それを私に提供して欲しいの」
杏子 「やっぱりな。けどさ、そんなことをして、私に何のメリットがあるんだよ」
ほむら 「ワルプルギスの夜を乗り越えられるかもしれない。それだけじゃ不足?」
杏子 「あたしがグリーフシードを溜め込むのに、どれだけの苦労をしてきたと思ってんだよ、ええ?」
この返答は想定内だった。
杏子 「・・・」
ほむら 「私の魔力を代用に動かしているの。だから、私の魔力は常に枯渇状態。いつ、魔女になってしまってもおかしくない状況に置かれているというわけ」
杏子 「ちょっと待てよ。いきなりロボットとか言われても、子供のマンガじゃあるまいし、なに言っちゃってんのって感じなんだけどさ」
ほむら 「魔女がいて魔法少女がいて、喋る小動物までいる。ロボットが存在する世界があったとしても、それはそんなに驚くほどの事?」
杏子 「・・・分かったよ、話を続けてくれ」
ほむら 「強大な力を秘めたロボットらしいわ。その力を遺憾なく発揮できれば、あるいはワルプルギスの夜だって・・・」
杏子 「はん、読めたぜ、あんたの言う取引って奴が」
ほむら 「そう、佐倉杏子。あなたが大量のグリーフシードを溜め込んでいるのは知っている。それを私に提供して欲しいの」
杏子 「やっぱりな。けどさ、そんなことをして、私に何のメリットがあるんだよ」
ほむら 「ワルプルギスの夜を乗り越えられるかもしれない。それだけじゃ不足?」
杏子 「あたしがグリーフシードを溜め込むのに、どれだけの苦労をしてきたと思ってんだよ、ええ?」
この返答は想定内だった。
240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:06:04.58 ID:jq3cZNnm0
だから、私は用意しておいた答えを彼女に投げつけてやる。
ほむら 「では、ワルプルギスの夜のグリーフシードをあなたにあげるわ」
杏子 「はぁ?」
ほむら 「あれだけ強大な魔女のグリーフシードよ。どれだけ巨大な物を落とすのか、想像もつかないわね。それをあなたに提供する。それでどう?」
杏子 「・・・」
ほむら 「巨大なグリーフシードがあれば、少なくとも魔力の枯渇から魔女化する危険性を先延ばしにできる。悪くない提案でしょ」
杏子 「ははっ、そういうの取らぬ狸のなんとやらって言うんだぜ。確実にワルプルギスが倒せるって確証でもないかぎりな」
ほむら 「そんなのあるわけないわ」
杏子 「話になりゃしねぇn
ほむら 「だけれど、ワルプルギスを超えられなければ、どのみちあなたも死ぬ事になる」
杏子 「・・・」
ほむら 「・・・」
ほむら 「では、ワルプルギスの夜のグリーフシードをあなたにあげるわ」
杏子 「はぁ?」
ほむら 「あれだけ強大な魔女のグリーフシードよ。どれだけ巨大な物を落とすのか、想像もつかないわね。それをあなたに提供する。それでどう?」
杏子 「・・・」
ほむら 「巨大なグリーフシードがあれば、少なくとも魔力の枯渇から魔女化する危険性を先延ばしにできる。悪くない提案でしょ」
杏子 「ははっ、そういうの取らぬ狸のなんとやらって言うんだぜ。確実にワルプルギスが倒せるって確証でもないかぎりな」
ほむら 「そんなのあるわけないわ」
杏子 「話になりゃしねぇn
ほむら 「だけれど、ワルプルギスを超えられなければ、どのみちあなたも死ぬ事になる」
杏子 「・・・」
ほむら 「・・・」
241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:11:35.13 ID:jq3cZNnm0
杏子 「・・・私がワルプルギスに関わらなければ済む話だろ?」
ほむら 「一度顕現したワルプルギスが、見滝原を壊滅させた後で、風見野に矛先を向けないと、あなたは言い切れるのかしら」
杏子 「・・・へぇ、そう来るか」
ほむら 「・・・」
告げるべきことは告げた。
後は彼女の心次第だ。
私の言うことを事実と受け取ってくれるのか。それとも、かつての時間軸と同様に、ただの戯言と切って捨てられるのか。
・・・これは勝率の分からない、ギャンブルなのだ。
ほむら 「一度顕現したワルプルギスが、見滝原を壊滅させた後で、風見野に矛先を向けないと、あなたは言い切れるのかしら」
杏子 「・・・へぇ、そう来るか」
ほむら 「・・・」
告げるべきことは告げた。
後は彼女の心次第だ。
私の言うことを事実と受け取ってくれるのか。それとも、かつての時間軸と同様に、ただの戯言と切って捨てられるのか。
・・・これは勝率の分からない、ギャンブルなのだ。
242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:16:29.89 ID:jq3cZNnm0
・・・
・・・
教会の外。かつての中庭。
雑草に埋もれている何かを見つけ、ゆまが嬉しそうに駆けて行った。
その様子を、武蔵が目を細めながら見守っている。
武蔵 (小さい子を見てると、元気ちゃんのこと、思いだすなぁ)
ややあって、ゆまがその手に何かを握りながら戻ってきた。
武蔵 (元気ちゃん、元気にしてるかなぁ・・・俺もリョウも隼人もいなくなって、寂しい想いしてるんだろうな・・・)
ゆま 「お兄ちゃん・・・?」
武蔵 「おっと、なんだい?」
ゆま 「へへ・・・はいっ」
武蔵 「お、なんだろう??」
ゆま 「四葉のクローバー、あそこに咲いてたから持ってきたの。幸運のお守りなんだって」
武蔵 「へぇ、よく見つけたね。俺にくれるのかい?」
ゆま 「うん、お菓子のお礼!」
武蔵 「そっかぁ、そりゃ嬉しいなぁ。ありがとね、大事にするから」
言うと武蔵はゆまの手からクローバーを受け取り、懐に大事にしまった。
・・・
教会の外。かつての中庭。
雑草に埋もれている何かを見つけ、ゆまが嬉しそうに駆けて行った。
その様子を、武蔵が目を細めながら見守っている。
武蔵 (小さい子を見てると、元気ちゃんのこと、思いだすなぁ)
ややあって、ゆまがその手に何かを握りながら戻ってきた。
武蔵 (元気ちゃん、元気にしてるかなぁ・・・俺もリョウも隼人もいなくなって、寂しい想いしてるんだろうな・・・)
ゆま 「お兄ちゃん・・・?」
武蔵 「おっと、なんだい?」
ゆま 「へへ・・・はいっ」
武蔵 「お、なんだろう??」
ゆま 「四葉のクローバー、あそこに咲いてたから持ってきたの。幸運のお守りなんだって」
武蔵 「へぇ、よく見つけたね。俺にくれるのかい?」
ゆま 「うん、お菓子のお礼!」
武蔵 「そっかぁ、そりゃ嬉しいなぁ。ありがとね、大事にするから」
言うと武蔵はゆまの手からクローバーを受け取り、懐に大事にしまった。
243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:19:20.00 ID:jq3cZNnm0
優しく、無垢な少女。
こんな少女がどうして、魔法少女となる事を望んでしまったのか。
ほむらから魔法少女の結末がどうなるかを聞いていた武蔵。
これからゆまを待ち受けるであろう運命を思うと、気が重くなるのを抑える事ができない。
武蔵 「ねぇ、ゆまちゃん」
ゆま 「なぁに?」
武蔵 「君はどうして、魔法少女になろうって思ったんだい?」
ゆま 「・・・」
武蔵 「あ、言いたくないなら良いんだよ。だけど、ちょっとお兄ちゃん、気になちゃってさ」
ゆま 「いいの・・・あのね・・・ゆま、悪い子なんだ」
武蔵 「え・・・ゆまちゃんが?俺にはそう思えないけど、どうしてそう思うんだい?」
こんな少女がどうして、魔法少女となる事を望んでしまったのか。
ほむらから魔法少女の結末がどうなるかを聞いていた武蔵。
これからゆまを待ち受けるであろう運命を思うと、気が重くなるのを抑える事ができない。
武蔵 「ねぇ、ゆまちゃん」
ゆま 「なぁに?」
武蔵 「君はどうして、魔法少女になろうって思ったんだい?」
ゆま 「・・・」
武蔵 「あ、言いたくないなら良いんだよ。だけど、ちょっとお兄ちゃん、気になちゃってさ」
ゆま 「いいの・・・あのね・・・ゆま、悪い子なんだ」
武蔵 「え・・・ゆまちゃんが?俺にはそう思えないけど、どうしてそう思うんだい?」
244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:21:30.71 ID:jq3cZNnm0
ゆま 「いっつもお母さんがゆまの事ぶつから・・・きっとゆまが悪い子だから、お母さん、怒ってばかりなの・・・」
武蔵 「・・・っ」
ふと、気がつく。
武蔵はゆまの頭を撫でるふりを装い、そっと彼女の前髪を掻き分けてみた。
そこにあったのは、巧妙に隠れるようにして額に焼き付けられた、タバコの跡。
武蔵 (この子、親に・・・)
ゆま 「だからね・・・ゆま、キュウべぇにお願いしたんだ。ゆまは良い子になれるように頑張るから、その代わりに・・・」
武蔵 「・・・」
ゆま 「もう、お母さんがゆまをぶたなくなりますようにって」
武蔵 「・・・っ」
武蔵 (なんだ、いま強烈に嫌な感覚が波のように押し寄せてきやがった・・・この子の願い、まさか・・・まさか、な・・・)
武蔵 「・・・っ」
ふと、気がつく。
武蔵はゆまの頭を撫でるふりを装い、そっと彼女の前髪を掻き分けてみた。
そこにあったのは、巧妙に隠れるようにして額に焼き付けられた、タバコの跡。
武蔵 (この子、親に・・・)
ゆま 「だからね・・・ゆま、キュウべぇにお願いしたんだ。ゆまは良い子になれるように頑張るから、その代わりに・・・」
武蔵 「・・・」
ゆま 「もう、お母さんがゆまをぶたなくなりますようにって」
武蔵 「・・・っ」
武蔵 (なんだ、いま強烈に嫌な感覚が波のように押し寄せてきやがった・・・この子の願い、まさか・・・まさか、な・・・)
245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:24:55.96 ID:jq3cZNnm0
・・・
・・・
同時刻
見滝原中学校 2年生の教室
昼食も終わり、昼休みの残された時間。
ほむらもいなく、特に話す相手もいない教室で、流竜馬は退屈な時間を過ごしていた。
机に突っ伏して一眠りとも思ったが、どうにも目が冴えて睡魔を引き寄せる事ができない。
彼にしては珍しい事だった。
竜馬 (やはり、暁美のことが心配なのかな、俺。会いに行った奴の素性も俺は知らないし、まぁ・・・武蔵が一緒なんだから案ずる事は何も無いはずなんだが・・・)
? 「流くんっ」
不意に声をかけられ、思案の世界から現実へと引き戻される竜馬。
顔を上げると、そこには自分を覗き込む、物憂げなまどかの顔があった。
竜馬 「よう、鹿目。どうした?」
まどか 「うぇひ・・・起こしちゃってごめんね、流君。寝てたんでしょ?」
・・・
同時刻
見滝原中学校 2年生の教室
昼食も終わり、昼休みの残された時間。
ほむらもいなく、特に話す相手もいない教室で、流竜馬は退屈な時間を過ごしていた。
机に突っ伏して一眠りとも思ったが、どうにも目が冴えて睡魔を引き寄せる事ができない。
彼にしては珍しい事だった。
竜馬 (やはり、暁美のことが心配なのかな、俺。会いに行った奴の素性も俺は知らないし、まぁ・・・武蔵が一緒なんだから案ずる事は何も無いはずなんだが・・・)
? 「流くんっ」
不意に声をかけられ、思案の世界から現実へと引き戻される竜馬。
顔を上げると、そこには自分を覗き込む、物憂げなまどかの顔があった。
竜馬 「よう、鹿目。どうした?」
まどか 「うぇひ・・・起こしちゃってごめんね、流君。寝てたんでしょ?」
246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:33:29.49 ID:jq3cZNnm0
竜馬 「いいや、別に。ちょっと気だるくって目を瞑ってただけさ。で、何か用か?」
まどか 「うん~・・・ほむらちゃん、風邪なんでしょ。だいじょうぶなのかなって」
竜馬 「ああ・・・」
今日、ほむらは病気を理由に学校を欠席していた。
竜馬のように、無断で学校を休むようなことはしない。彼女は基本的に優等生なのだ。
・・・仮病という点では、竜馬と五十歩百歩なのだけれど。
竜馬 「鹿目な、あいつの事は心配しなくていいぜ。病気ってのは、あれ嘘だから」
まどか 「うぇひっ!?」
竜馬 「内緒だぜ」
まどか 「うん~・・・ほむらちゃん、風邪なんでしょ。だいじょうぶなのかなって」
竜馬 「ああ・・・」
今日、ほむらは病気を理由に学校を欠席していた。
竜馬のように、無断で学校を休むようなことはしない。彼女は基本的に優等生なのだ。
・・・仮病という点では、竜馬と五十歩百歩なのだけれど。
竜馬 「鹿目な、あいつの事は心配しなくていいぜ。病気ってのは、あれ嘘だから」
まどか 「うぇひっ!?」
竜馬 「内緒だぜ」
247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:35:55.60 ID:jq3cZNnm0
まどか 「だ、だけどほむらちゃんったら、どうしてそんな嘘を言ったんだろ・・・まさか、不良になっちゃった!?」
竜馬 「ぷっ!」
不良だったら学校くらい、何も言わずにふけるだろうさ。
竜馬は、まどかのあまりのまっすぐな素直さに、思わず噴出してしまうのを堪えられなかった。
まどか 「???」
竜馬 「いや、悪い。お前がそれだけ暁美の事を心配してると知ったら、あいつも喜ぶだろうなって思ってな」
まどか 「うぇひ・・・なんだか、馬鹿にされてる??」
竜馬 「んなこたねぇさ」
馬鹿になどしていない。ただ、微笑ましかったのだ。
色々と嫌な物を見すぎて、年齢以上に擦れてしまった自分や、そしてほむらにも。
まどかの様に素直な角度で物事を眺めることは、もうできそうに無かったから。
竜馬 「むしろ、褒めてやりたいくらいだぜ」
まどか 「むぅ~・・・」
竜馬 「ぷっ!」
不良だったら学校くらい、何も言わずにふけるだろうさ。
竜馬は、まどかのあまりのまっすぐな素直さに、思わず噴出してしまうのを堪えられなかった。
まどか 「???」
竜馬 「いや、悪い。お前がそれだけ暁美の事を心配してると知ったら、あいつも喜ぶだろうなって思ってな」
まどか 「うぇひ・・・なんだか、馬鹿にされてる??」
竜馬 「んなこたねぇさ」
馬鹿になどしていない。ただ、微笑ましかったのだ。
色々と嫌な物を見すぎて、年齢以上に擦れてしまった自分や、そしてほむらにも。
まどかの様に素直な角度で物事を眺めることは、もうできそうに無かったから。
竜馬 「むしろ、褒めてやりたいくらいだぜ」
まどか 「むぅ~・・・」
248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:43:37.29 ID:jq3cZNnm0
竜馬 「暁美な、隣街の魔法少女に会いに行ってるんだよ。それで今日は、学校を休んだって訳さ」
まどか 「えっ、隣街って言ったら風見野市だよね!風見野にもいるんだ、魔法少女!マミさんみたいな人なのかな!?」
竜馬 「さぁ、俺は知らないが。だが実際、魔法少女ってのはあちこちにいるらしいぜ。俺たちが知らないだけでさ」
まどか 「そうなんだ~」
竜馬 「・・・」
まどか 「へぇ~」
竜馬 「・・・一応言っておくが」
まどか 「うぇひっ?」
竜馬 「魔法少女に変な親近感を抱くなよ。この前も言ったが、お前を大切な想う人を、悲しませるようなマネはするんじゃねぇぞ」
まどか 「う、うん・・・」
竜馬に釘を刺され、しゅんとしながらも、ほむらが病気ではないと分かって安堵の表情を浮かべると、まどかは自分の席へと戻っていった。
そんなまどかを見送りながら、竜馬は思う。
ほむらが会いに行った魔法少女は、一体どんな理由があって、自分の運命を戦いの日々の中に投げ入れたのだろう。
(竜馬・・・)
竜馬 「!?」
まどか 「えっ、隣街って言ったら風見野市だよね!風見野にもいるんだ、魔法少女!マミさんみたいな人なのかな!?」
竜馬 「さぁ、俺は知らないが。だが実際、魔法少女ってのはあちこちにいるらしいぜ。俺たちが知らないだけでさ」
まどか 「そうなんだ~」
竜馬 「・・・」
まどか 「へぇ~」
竜馬 「・・・一応言っておくが」
まどか 「うぇひっ?」
竜馬 「魔法少女に変な親近感を抱くなよ。この前も言ったが、お前を大切な想う人を、悲しませるようなマネはするんじゃねぇぞ」
まどか 「う、うん・・・」
竜馬に釘を刺され、しゅんとしながらも、ほむらが病気ではないと分かって安堵の表情を浮かべると、まどかは自分の席へと戻っていった。
そんなまどかを見送りながら、竜馬は思う。
ほむらが会いに行った魔法少女は、一体どんな理由があって、自分の運命を戦いの日々の中に投げ入れたのだろう。
(竜馬・・・)
竜馬 「!?」
249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:52:47.87 ID:jq3cZNnm0
(竜馬、聞こえるかい?)
竜馬 「頭の中に直接声が・・・この声、キュウべぇか!?」
キュウべぇ (やはり思ったとおり、君とは思念上での会話が可能のようだね。さすがは男性にして、魔法少女となる資格を持つ者だ)
竜馬 「相変わらず手品のような真似を弄してくる奴だな、てめぇは。今更いちいちおどろかねぇが、俺に何の用がある?」
キュウべぇ (実は君と一つ取引がしたいと思ってね)
竜馬 「取引・・・だぁ・・・?」
キュウべぇ (話だけでも聞いてみないかい?もちろん無理強いはしないし、気が乗らないなら断ってくれても良い)
竜馬 「・・・」
風見野で一つの取引がなされている中、図らずもここ見滝原において、別の取引が開始されようとしていた。
竜馬 「頭の中に直接声が・・・この声、キュウべぇか!?」
キュウべぇ (やはり思ったとおり、君とは思念上での会話が可能のようだね。さすがは男性にして、魔法少女となる資格を持つ者だ)
竜馬 「相変わらず手品のような真似を弄してくる奴だな、てめぇは。今更いちいちおどろかねぇが、俺に何の用がある?」
キュウべぇ (実は君と一つ取引がしたいと思ってね)
竜馬 「取引・・・だぁ・・・?」
キュウべぇ (話だけでも聞いてみないかい?もちろん無理強いはしないし、気が乗らないなら断ってくれても良い)
竜馬 「・・・」
風見野で一つの取引がなされている中、図らずもここ見滝原において、別の取引が開始されようとしていた。
250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:55:50.71 ID:jq3cZNnm0
・・・
・・・
見滝原中学
屋上
キュウべぇに呼ばれた竜馬は、教室を抜け出して一人、屋上へとやってきた。
昼休みも終わり、他に生徒の姿はない。
ただ一匹、ベンチで丸くなっている小動物の姿があるだけだ。
竜馬 「キュウべぇ」
キュウべぇ 「やぁ、竜馬。きてくれたね」
竜馬 「お前と無駄話をするつもりはない。とっとと用件を話してもらおうか」
キュウべぇ 「僕もそのつもりだよ。君は他の魔法少女達と違って、まどろっこしい事を抜きに話ができるから助かる」
竜馬 「で、話ってのは・・・?」
キュウべぇ 「竜馬・・・君は元の世界へと戻りたがっている。その方法を探して、暁美ほむらと行動を共にしている。そうだよね」
竜馬 「聞かれるまでもねぇ。俺には俺のやるべき事がある。そのためにも、元いた場所に戻らなきゃならねぇからな」
キュウべぇ 「でも、その方法は依然として謎のまま。この先、ほむらと一緒にいても、解明できるのかどうかは分からない」
・・・
見滝原中学
屋上
キュウべぇに呼ばれた竜馬は、教室を抜け出して一人、屋上へとやってきた。
昼休みも終わり、他に生徒の姿はない。
ただ一匹、ベンチで丸くなっている小動物の姿があるだけだ。
竜馬 「キュウべぇ」
キュウべぇ 「やぁ、竜馬。きてくれたね」
竜馬 「お前と無駄話をするつもりはない。とっとと用件を話してもらおうか」
キュウべぇ 「僕もそのつもりだよ。君は他の魔法少女達と違って、まどろっこしい事を抜きに話ができるから助かる」
竜馬 「で、話ってのは・・・?」
キュウべぇ 「竜馬・・・君は元の世界へと戻りたがっている。その方法を探して、暁美ほむらと行動を共にしている。そうだよね」
竜馬 「聞かれるまでもねぇ。俺には俺のやるべき事がある。そのためにも、元いた場所に戻らなきゃならねぇからな」
キュウべぇ 「でも、その方法は依然として謎のまま。この先、ほむらと一緒にいても、解明できるのかどうかは分からない」
251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:00:50.66 ID:jq3cZNnm0
竜馬 「・・・無駄話をするつもりはないと言ったぞ」
キュウべぇ 「僕が、君が元の場所に戻る手伝いをしよう。そう提案しようと思ってね」
竜馬 「・・・!?」
キュウべぇ 「もちろん、さっきも言ったとおり、これは取引だよ。君も僕のお願いを聞き入れてくれればという条件つきの話だけれどね」
竜馬 「お前・・・俺や武蔵が元の世界に戻る方法を知っているって言うのか?」
キュウべぇ 「知らないよ」
竜馬 「・・・は?」
キュウべぇ 「言っただろう?君はとびきりのイレギュラーだって。僕達が有する膨大なデータバンクにも、君のような存在への対処法は記憶されていない」
竜馬 「お前、俺を馬鹿にしてるのか」
キュウべぇ 「慌てる乞食は貰いが少ない。これは君たち人間の諺だよね。そう、結論を急ぐものじゃないよ」
竜馬 「だったらお前もはっきり言ったらどうなんだ。一体お前は、俺になにが言いたい?」
キュウべぇ 「僕自身は君の知りたい情報を持ち合わせてはいない。でもね、推論ではあるけれど、君が元の世界へ戻る。そのヒントは提示できると思うんだ」
竜馬 「なんだってんだよ、それは」
キュウべぇ 「ここからが取引だ。僕からの願い、君が呑んでくれたら、そのヒントを君に教えてあげる。これは単純な交換条件という奴だよ」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「現状、八方ふさがりの君が取るべき道の、指針ともなるはずの重要なヒントだ。この取引、決して君の損にはならないと断言できるけれど、どうかな」
竜馬 「それで、お前は俺に何をさせようとしている」
キュウべぇ 「それはまず、僕との取引を成立させてからじゃないと教えられないよ。話だけ聞いて、やっぱり止めますじゃ、僕のこれからの活動にも影響を及ぼす事柄だからね」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「さぁ、答えを。君の立場を思えば、考えるまでもないと、僕は思うけれど・・・」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「僕が、君が元の場所に戻る手伝いをしよう。そう提案しようと思ってね」
竜馬 「・・・!?」
キュウべぇ 「もちろん、さっきも言ったとおり、これは取引だよ。君も僕のお願いを聞き入れてくれればという条件つきの話だけれどね」
竜馬 「お前・・・俺や武蔵が元の世界に戻る方法を知っているって言うのか?」
キュウべぇ 「知らないよ」
竜馬 「・・・は?」
キュウべぇ 「言っただろう?君はとびきりのイレギュラーだって。僕達が有する膨大なデータバンクにも、君のような存在への対処法は記憶されていない」
竜馬 「お前、俺を馬鹿にしてるのか」
キュウべぇ 「慌てる乞食は貰いが少ない。これは君たち人間の諺だよね。そう、結論を急ぐものじゃないよ」
竜馬 「だったらお前もはっきり言ったらどうなんだ。一体お前は、俺になにが言いたい?」
キュウべぇ 「僕自身は君の知りたい情報を持ち合わせてはいない。でもね、推論ではあるけれど、君が元の世界へ戻る。そのヒントは提示できると思うんだ」
竜馬 「なんだってんだよ、それは」
キュウべぇ 「ここからが取引だ。僕からの願い、君が呑んでくれたら、そのヒントを君に教えてあげる。これは単純な交換条件という奴だよ」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「現状、八方ふさがりの君が取るべき道の、指針ともなるはずの重要なヒントだ。この取引、決して君の損にはならないと断言できるけれど、どうかな」
竜馬 「それで、お前は俺に何をさせようとしている」
キュウべぇ 「それはまず、僕との取引を成立させてからじゃないと教えられないよ。話だけ聞いて、やっぱり止めますじゃ、僕のこれからの活動にも影響を及ぼす事柄だからね」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「さぁ、答えを。君の立場を思えば、考えるまでもないと、僕は思うけれど・・・」
竜馬 「・・・」
256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 12:51:24.04 ID:byY+0dvw0
・・・
・・・
ほむら 「どう、私の話、信じてもらえるかしら」
杏子 「突拍子も無さ過ぎて、疑う気も失せるよ」
ほむら 「言ってる自分でも、そう思うわ」
杏子 「魔女となる運命のあたし達に、異世界から来たロボット乗りときた。騙す気で来たなら、もう少しましな嘘をつくだろうさ」
ほむら 「それじゃ・・・」
杏子 「だけれど、だからと言って即信用できるほど、私は早計でもお人好しでもない。まずは、事実である証を示してもらおうか」
ほむら 「何を見れば、証と取ってもらえるのかしら」
杏子 「まずはお試しってことで、お前とその仲間とやらの戦いに同行させてもらう。直に見せて貰おうじゃねぇか、そのロボットとやらをよ」
ほむら 「良いわ。私のもう一人の仲間は見滝原にいる。あなたにも見滝原に来てもらっても・・・?」
杏子 「構わないぜ。どの道あたしは住所不定、気楽な根無し草みたいなもんだからな。どこへ行こうと気ままなものさ」
ほむら 「話は決まったわね。それじゃ、さっそく見滝原に・・・」
杏子 「あ、ちょっと」
ほむら 「?」
・・・
ほむら 「どう、私の話、信じてもらえるかしら」
杏子 「突拍子も無さ過ぎて、疑う気も失せるよ」
ほむら 「言ってる自分でも、そう思うわ」
杏子 「魔女となる運命のあたし達に、異世界から来たロボット乗りときた。騙す気で来たなら、もう少しましな嘘をつくだろうさ」
ほむら 「それじゃ・・・」
杏子 「だけれど、だからと言って即信用できるほど、私は早計でもお人好しでもない。まずは、事実である証を示してもらおうか」
ほむら 「何を見れば、証と取ってもらえるのかしら」
杏子 「まずはお試しってことで、お前とその仲間とやらの戦いに同行させてもらう。直に見せて貰おうじゃねぇか、そのロボットとやらをよ」
ほむら 「良いわ。私のもう一人の仲間は見滝原にいる。あなたにも見滝原に来てもらっても・・・?」
杏子 「構わないぜ。どの道あたしは住所不定、気楽な根無し草みたいなもんだからな。どこへ行こうと気ままなものさ」
ほむら 「話は決まったわね。それじゃ、さっそく見滝原に・・・」
杏子 「あ、ちょっと」
ほむら 「?」
257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 12:54:00.61 ID:byY+0dvw0
杏子 「あたしからも一つ、聞きたいことがあったんだ」
ほむら 「なに?」
杏子 「なぁ・・・見滝原で最近、見慣れない魔法少女とか・・・遭遇した事があるか?」
ほむら 「・・・?見滝原にいる魔法少女は、私と巴さんだけだけれど・・・言っている意味が分からないわね」
杏子 「なら良い。つまらない事を言っちゃったね」
ほむら 「??」
最後、杏子が何を言いたかったのかは気になる所だけれど・・・
それはともかく。
まずはお試しでも何でも、杏子の協力を取り付けることができた。
後は実際にゲッターロボを見てもらうだけ。魔女の結界さえ発生してくれれば、これは簡単に済ませる事ができる。
杏子がグリーフシードを提供してくれれば、ゲッターロボを安定して運用できるようになるし、魔女との戦いも安全に進める事ができる。
なによりも、ワルプルギスの夜を上回る力を得られたのなら、今度こそまどかを救えるかもしれないのだ。
しかも、さやかやマミ、そして杏子といった仲間達の誰一人も欠けさせる事のないままに・・・
ほむら 「なに?」
杏子 「なぁ・・・見滝原で最近、見慣れない魔法少女とか・・・遭遇した事があるか?」
ほむら 「・・・?見滝原にいる魔法少女は、私と巴さんだけだけれど・・・言っている意味が分からないわね」
杏子 「なら良い。つまらない事を言っちゃったね」
ほむら 「??」
最後、杏子が何を言いたかったのかは気になる所だけれど・・・
それはともかく。
まずはお試しでも何でも、杏子の協力を取り付けることができた。
後は実際にゲッターロボを見てもらうだけ。魔女の結界さえ発生してくれれば、これは簡単に済ませる事ができる。
杏子がグリーフシードを提供してくれれば、ゲッターロボを安定して運用できるようになるし、魔女との戦いも安全に進める事ができる。
なによりも、ワルプルギスの夜を上回る力を得られたのなら、今度こそまどかを救えるかもしれないのだ。
しかも、さやかやマミ、そして杏子といった仲間達の誰一人も欠けさせる事のないままに・・・
258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 12:55:10.48 ID:byY+0dvw0
杏子 「それじゃ、行こうか」
私が物思いにふけっている間に身支度を終えたらしい杏子が、私の前に立って教会の出口へと歩いてゆく。
背中には無造作に背負ったリュックが一つ。その中身は、おそらく大量のグリーフシードに違いない。
身支度がたったそれだけなのが、フットワークの軽い杏子らしいといえば杏子らしいのだけれど。
ほむら 「・・・ええ、行きましょう」
私も杏子を追って、出口の扉を潜った
外で待っていた武蔵が、私の姿を認め、駆け寄ってくる。
その傍らには寄り添うようにピタリくっついている、千歳ゆまの姿。
この短い時間のうちに、随分と懐かれてしまったようね。
武蔵 「話は済んだのかい?」
ほむら 「ええ、これから見滝原へ戻るわ。彼女も一緒に」
私が物思いにふけっている間に身支度を終えたらしい杏子が、私の前に立って教会の出口へと歩いてゆく。
背中には無造作に背負ったリュックが一つ。その中身は、おそらく大量のグリーフシードに違いない。
身支度がたったそれだけなのが、フットワークの軽い杏子らしいといえば杏子らしいのだけれど。
ほむら 「・・・ええ、行きましょう」
私も杏子を追って、出口の扉を潜った
外で待っていた武蔵が、私の姿を認め、駆け寄ってくる。
その傍らには寄り添うようにピタリくっついている、千歳ゆまの姿。
この短い時間のうちに、随分と懐かれてしまったようね。
武蔵 「話は済んだのかい?」
ほむら 「ええ、これから見滝原へ戻るわ。彼女も一緒に」
259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 12:59:23.39 ID:byY+0dvw0
杏子 「一応、よろしくな」
武蔵 「ああ、こちらこそ!」
笑顔で握手を求める武蔵を無視し、杏子はゆまの方へと顔を向ける。
杏子 「・・・そんじゃ、これでお別れだな」
ゆま 「・・・え」
杏子 「行きがかり上助けはしたが、あんたとあたしは赤の他人だ。怪我は治してやったし、これ以上一緒にいる意味も無いだろ?」
ゆま 「で、でも・・・」
杏子 「分かったら家へ帰りな」
武蔵 「ちょっと待ってくれ」
いきなり、武蔵が二人の間に割って入る。
ほむら 「武蔵さん・・・?」
杏子 「なんだよあんた、関係ないだろ。いきなり割り込んでくるんじねーよ」
武蔵 「ああ、こちらこそ!」
笑顔で握手を求める武蔵を無視し、杏子はゆまの方へと顔を向ける。
杏子 「・・・そんじゃ、これでお別れだな」
ゆま 「・・・え」
杏子 「行きがかり上助けはしたが、あんたとあたしは赤の他人だ。怪我は治してやったし、これ以上一緒にいる意味も無いだろ?」
ゆま 「で、でも・・・」
杏子 「分かったら家へ帰りな」
武蔵 「ちょっと待ってくれ」
いきなり、武蔵が二人の間に割って入る。
ほむら 「武蔵さん・・・?」
杏子 「なんだよあんた、関係ないだろ。いきなり割り込んでくるんじねーよ」
260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:07:41.75 ID:byY+0dvw0
武蔵 「俺、この子を連れて帰るよ」
ほむら 「え・・・は、はぁ!?」
武蔵 「今日から俺が面倒を見る。さっき話して、そう決めたんだ。な?」
ゆま 「うんっ」
にっこり微笑みながら頷きあう武蔵とゆま。
なんだか場と不釣合いなホンワカムードが二人を覆っているけれど・・・
武蔵 「てことで、今日から俺はゆまちゃんのお兄ちゃんだ!」
杏子 「んなっ・・・!?」
杏子も呆れて物が言えないといった顔で、あんぐりと口を開けて固まっている。
なんて間の抜けた顔。普段の彼女からは想像もできない表情ね・・・
でも、それは私だって同じ。
武蔵の真意が分からず、私の顔も呆け気味。
ほむら 「ちょ、ちょっと待って・・・武蔵さん、自分で何を言ってるか分かっているの?」
ほむら 「え・・・は、はぁ!?」
武蔵 「今日から俺が面倒を見る。さっき話して、そう決めたんだ。な?」
ゆま 「うんっ」
にっこり微笑みながら頷きあう武蔵とゆま。
なんだか場と不釣合いなホンワカムードが二人を覆っているけれど・・・
武蔵 「てことで、今日から俺はゆまちゃんのお兄ちゃんだ!」
杏子 「んなっ・・・!?」
杏子も呆れて物が言えないといった顔で、あんぐりと口を開けて固まっている。
なんて間の抜けた顔。普段の彼女からは想像もできない表情ね・・・
でも、それは私だって同じ。
武蔵の真意が分からず、私の顔も呆け気味。
ほむら 「ちょ、ちょっと待って・・・武蔵さん、自分で何を言ってるか分かっているの?」
261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:09:21.93 ID:byY+0dvw0
武蔵 「この子さ、両親を亡くしたばかりなんだ」
ほむら 「え・・・」
武蔵 「だからさ、家に帰しても誰もいないんだよ。こんな小さい子、一人にはできないだろ」
杏子 「亡くしたばかりだって?」
武蔵 「ああ、だから・・・」
杏子 「じゃあ、あの結界で死んでた二人って、もしかして・・・」
ゆま 「・・・」
ゆまは何も答えない。
それを杏子は無言の肯定と受け取ったようだった。
杏子 「親が死んだそぶりなんて、あたしには微塵も見せなかったね、あんた。たいしたタマだぜ」
もしくは、その程度の親だったと言うことかしら。
親といっても所詮は同じ人間。無条件に愛し、尊敬できる相手とは限らない。
その事を杏子は、身をもって知らされていた。
だから特段、ゆまが天涯孤独の身となった所で、杏子にはそれほど同情してやる気にはなれないのだろう。
杏子 「話は分かったけど、武蔵だっけ?あんた、物事を簡単に考えすぎてないか」
武蔵 「どういう意味だよ」
ほむら 「え・・・」
武蔵 「だからさ、家に帰しても誰もいないんだよ。こんな小さい子、一人にはできないだろ」
杏子 「亡くしたばかりだって?」
武蔵 「ああ、だから・・・」
杏子 「じゃあ、あの結界で死んでた二人って、もしかして・・・」
ゆま 「・・・」
ゆまは何も答えない。
それを杏子は無言の肯定と受け取ったようだった。
杏子 「親が死んだそぶりなんて、あたしには微塵も見せなかったね、あんた。たいしたタマだぜ」
もしくは、その程度の親だったと言うことかしら。
親といっても所詮は同じ人間。無条件に愛し、尊敬できる相手とは限らない。
その事を杏子は、身をもって知らされていた。
だから特段、ゆまが天涯孤独の身となった所で、杏子にはそれほど同情してやる気にはなれないのだろう。
杏子 「話は分かったけど、武蔵だっけ?あんた、物事を簡単に考えすぎてないか」
武蔵 「どういう意味だよ」
262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:11:18.99 ID:byY+0dvw0
杏子 「連れていくったって、犬や猫を拾うのとは訳が違うんだ。第一、こいつの事、どこに住まわすつもりなんだ」
武蔵 「そりゃ、俺と一緒に・・・」
ほむら 「いきなり妹が増えましたと言って、マミが承諾するかしら」
武蔵 「あ、そ、そうか!確かに・・・!」
ほむら 「はぁ・・・」
やはり、深くは考えていなかったようだ。
人のいい武蔵はあれこれ考えるより先に、哀れな少女を思う同情心から言葉を発していたのだろう。
人の立場や境遇を思いやる事ができる。それは武蔵の持つ美点には違いないのだろうけれど。
だけれど。
ほむら 「甘すぎるわね」
武蔵 「・・・」
武蔵は意気消沈。とたんに勢いがなくなってしまう。
武蔵 「そりゃ、俺と一緒に・・・」
ほむら 「いきなり妹が増えましたと言って、マミが承諾するかしら」
武蔵 「あ、そ、そうか!確かに・・・!」
ほむら 「はぁ・・・」
やはり、深くは考えていなかったようだ。
人のいい武蔵はあれこれ考えるより先に、哀れな少女を思う同情心から言葉を発していたのだろう。
人の立場や境遇を思いやる事ができる。それは武蔵の持つ美点には違いないのだろうけれど。
だけれど。
ほむら 「甘すぎるわね」
武蔵 「・・・」
武蔵は意気消沈。とたんに勢いがなくなってしまう。
263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:13:21.37 ID:byY+0dvw0
雲行きが怪しくなってきたのを、幼いながらも敏感に察知したゆまが、不安げに武蔵の袖を引く。
ゆま 「お、おにいちゃん・・・」
武蔵 「ゆまちゃん、俺・・・」
杏子 「宛てが外れて残念だったね。でも、現実なんてこんなもんさ。せめて、命があっただけでも幸運だったって思うこったな」
突き放すように言い捨てると、杏子はくるりと皆に背を向ける。
そのままスタスタと、教会の敷地外へと歩き出してしまう杏子。
おそらく魔法少女となる前の千歳ゆまと出会っていたなら、杏子も多少はゆまの身の振り方などに気を回そうとしたのかも知れない。
だけれど、魔法少女はしょせん一匹狼。
徹頭徹尾、魔法は自分自身の為に使い、刹那的に日々を過ごす事を旨とする”現在”の杏子にとって、ゆまはすでに心を配ってあげる対象ではなくなっていたのだ。
ほむら 「・・・佐倉杏子の言うとおりだわ」
武蔵 「ほむらちゃん・・・」
ゆま 「お、おにいちゃん・・・」
武蔵 「ゆまちゃん、俺・・・」
杏子 「宛てが外れて残念だったね。でも、現実なんてこんなもんさ。せめて、命があっただけでも幸運だったって思うこったな」
突き放すように言い捨てると、杏子はくるりと皆に背を向ける。
そのままスタスタと、教会の敷地外へと歩き出してしまう杏子。
おそらく魔法少女となる前の千歳ゆまと出会っていたなら、杏子も多少はゆまの身の振り方などに気を回そうとしたのかも知れない。
だけれど、魔法少女はしょせん一匹狼。
徹頭徹尾、魔法は自分自身の為に使い、刹那的に日々を過ごす事を旨とする”現在”の杏子にとって、ゆまはすでに心を配ってあげる対象ではなくなっていたのだ。
ほむら 「・・・佐倉杏子の言うとおりだわ」
武蔵 「ほむらちゃん・・・」
264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:15:39.17 ID:byY+0dvw0
ゆま 「・・・あぅ」
ゆまが心細げに武蔵を見上げる。
すがる様な瞳が、武蔵を一点に捉えて離さない。
だけど、頼られた武蔵も、この儚げな幼い少女の期待にどう応えて良いのか分からないのだろう。
なにせ彼自身が、この世界や魔法少女の事に対して、まだまだ不案内なのだから。
ほむら 「・・・」
だから、私が武蔵に替わって決断しなくてはならない。
ゆまに言うべき言葉、ゆまに告げるべき処遇。
私は口を開く。
生半可な同情なんて、却ってこの子のためになりはしないのだから。
ゆまが心細げに武蔵を見上げる。
すがる様な瞳が、武蔵を一点に捉えて離さない。
だけど、頼られた武蔵も、この儚げな幼い少女の期待にどう応えて良いのか分からないのだろう。
なにせ彼自身が、この世界や魔法少女の事に対して、まだまだ不案内なのだから。
ほむら 「・・・」
だから、私が武蔵に替わって決断しなくてはならない。
ゆまに言うべき言葉、ゆまに告げるべき処遇。
私は口を開く。
生半可な同情なんて、却ってこの子のためになりはしないのだから。
265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:17:28.29 ID:byY+0dvw0
・・・
・・・
竜馬 「言いたいことはそれだけか?」
キュウべぇ 「概ねはね」
竜馬 「だったら、とっとと俺の前から姿を消しな。正直、お前の姿は目障りなんだよ」
キュウべぇ 「・・・驚いたな。これは予想外の回答だ。君は、自分のいた世界に戻る事、それこそが至上の目的ではなかったのかい」
竜馬 「そうだぜ」
キュウべぇ 「だったらなぜ、僕の差し出す手を取ろうとしないんだい?」
竜馬 「お前が信用ならないからだ」
キュウべぇ 「・・・短絡的だね。確かに僕と君の間に信頼関係は存在しない。だけれど、そんな僕を利用するだけの度量が君にはあると思ったんだけれどな」
竜馬 「真に信用のおける奴は、そんなセリフは吐かないもんだぜ」
キュウべぇ 「訳が分からないよ」
竜馬 「わからねぇなら、お前は人間ってもんをまったく理解できてねぇ」
キュウべぇ 「・・・」
・・・
竜馬 「言いたいことはそれだけか?」
キュウべぇ 「概ねはね」
竜馬 「だったら、とっとと俺の前から姿を消しな。正直、お前の姿は目障りなんだよ」
キュウべぇ 「・・・驚いたな。これは予想外の回答だ。君は、自分のいた世界に戻る事、それこそが至上の目的ではなかったのかい」
竜馬 「そうだぜ」
キュウべぇ 「だったらなぜ、僕の差し出す手を取ろうとしないんだい?」
竜馬 「お前が信用ならないからだ」
キュウべぇ 「・・・短絡的だね。確かに僕と君の間に信頼関係は存在しない。だけれど、そんな僕を利用するだけの度量が君にはあると思ったんだけれどな」
竜馬 「真に信用のおける奴は、そんなセリフは吐かないもんだぜ」
キュウべぇ 「訳が分からないよ」
竜馬 「わからねぇなら、お前は人間ってもんをまったく理解できてねぇ」
キュウべぇ 「・・・」
266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 13:25:47.72 ID:byY+0dvw0
竜馬 「俺は暁美と約束した。互いの目的の為に協力し合うとな。仲間と誓ったんだ、そこにお前の立ち入る隙間はねぇのさ」
キュウべぇ 「愚かだね。そんな目に見えない絆とやらにすがって、元の世界に帰れなくなったら元も子もないだろうに」
竜馬 「すがる相手をお前にしなくとも、俺は元の世界に帰れると確信しているぜ」
キュウべぇ 「どういう意味だい?」
竜馬 「俺がこっちに飛ばされて来た現象に、お前は絡んでいなかった。だったら、お前抜きでだって帰る事ができる。何か間違ったこと言っているか?」
キュウべぇ 「へぇ・・・呆れたよ。どこまで楽天的なんだ、君は」
竜馬 「お前みたいに、暁美の留守を狙ってこそこそ画策するほど、腹黒じゃねぇって事さ」
キュウべぇ 「その決断、後悔する事がないよう祈るよ。自分で自分の取る道を狭めてしまった事に・・・」
竜馬 「道なんてもんはな、俺の歩いた後にできるもんだ。お前の敷いた獣道を歩くつもりなんざ、さらさらねぇんだよ」
キュウべぇ 「・・・」
音もなく、姿を消すキュウべぇ。
それを黙って見送った後で、竜馬は一言呟いていた。
竜馬 「あいつでも、捨て台詞っての吐くんだな・・・」
キュウべぇ 「愚かだね。そんな目に見えない絆とやらにすがって、元の世界に帰れなくなったら元も子もないだろうに」
竜馬 「すがる相手をお前にしなくとも、俺は元の世界に帰れると確信しているぜ」
キュウべぇ 「どういう意味だい?」
竜馬 「俺がこっちに飛ばされて来た現象に、お前は絡んでいなかった。だったら、お前抜きでだって帰る事ができる。何か間違ったこと言っているか?」
キュウべぇ 「へぇ・・・呆れたよ。どこまで楽天的なんだ、君は」
竜馬 「お前みたいに、暁美の留守を狙ってこそこそ画策するほど、腹黒じゃねぇって事さ」
キュウべぇ 「その決断、後悔する事がないよう祈るよ。自分で自分の取る道を狭めてしまった事に・・・」
竜馬 「道なんてもんはな、俺の歩いた後にできるもんだ。お前の敷いた獣道を歩くつもりなんざ、さらさらねぇんだよ」
キュウべぇ 「・・・」
音もなく、姿を消すキュウべぇ。
それを黙って見送った後で、竜馬は一言呟いていた。
竜馬 「あいつでも、捨て台詞っての吐くんだな・・・」
272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:13:09.30 ID:mDAG5eOh0
・・・
・・・
同日 夕刻
ほむホーム
顔合わせのために、私たちは一堂に会した。
場所は私の部屋。
集まった面々は、私。
お試しではあるけれど、とりあえず行動を共にすることで話が決まった、佐倉杏子。
竜馬と武蔵のゲッターチーム。
そして・・・
杏子 「おい」
杏子が不機嫌さのにじみ出た顔で、私ににじり寄ってきた。
ほむら 「なにかしら」
杏子 「何でこいつが、ここにいる」
言いながら、一転を指差す杏子。
・・・
同日 夕刻
ほむホーム
顔合わせのために、私たちは一堂に会した。
場所は私の部屋。
集まった面々は、私。
お試しではあるけれど、とりあえず行動を共にすることで話が決まった、佐倉杏子。
竜馬と武蔵のゲッターチーム。
そして・・・
杏子 「おい」
杏子が不機嫌さのにじみ出た顔で、私ににじり寄ってきた。
ほむら 「なにかしら」
杏子 「何でこいつが、ここにいる」
言いながら、一転を指差す杏子。
273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:15:38.32 ID:mDAG5eOh0
そこには座っている武蔵。そして、その武蔵に寄り添うようにしている一人の少女。
千歳ゆまの姿があった。
ほむら 「ああ・・・この子、ね。しばらくここで暮らす事になったから」
杏子 「は、はぁ?」
ほむら 「仲間に加えたのよ。一緒に戦ってもらうわ」
杏子 「お、お前・・・本気で言ってるのかよ」
ほむら 「本気よ」
武蔵 「良かったなぁ、ゆまちゃん」
ゆま 「うんっ」
杏子 「ちょっt
竜馬 「ちょっと待てよ」
何か言いたげな杏子を制して、代わりに口を開いたのは竜馬だった。
竜馬 「見たところ、随分と幼いようだが、こんなんで本当に戦えるのか?悪いが、足を引っ張られるのはゴメンだぜ」
千歳ゆまの姿があった。
ほむら 「ああ・・・この子、ね。しばらくここで暮らす事になったから」
杏子 「は、はぁ?」
ほむら 「仲間に加えたのよ。一緒に戦ってもらうわ」
杏子 「お、お前・・・本気で言ってるのかよ」
ほむら 「本気よ」
武蔵 「良かったなぁ、ゆまちゃん」
ゆま 「うんっ」
杏子 「ちょっt
竜馬 「ちょっと待てよ」
何か言いたげな杏子を制して、代わりに口を開いたのは竜馬だった。
竜馬 「見たところ、随分と幼いようだが、こんなんで本当に戦えるのか?悪いが、足を引っ張られるのはゴメンだぜ」
274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:17:31.79 ID:mDAG5eOh0
ほむら 「その点なら心配ないわ。この子が得意とするのは、回復魔法。私や杏子では攻撃しかできない。誰かが傷ついた時、この子の力はきっと必要になる」
杏子 「初耳だぞ、そんなの。おい、ゆま。それ、本当なのか?」
ゆま 「え、えっと・・・たぶん、そんな気がする・・・」
杏子 「そんな気ってなんだよ、はっきりしないな」
ゆま 「だって、まだ使った事、ないから」
杏子 「・・・本人にもハッキリしない事を、あんたは随分と詳しく知っているんだな」
ほむら 「言ったでしょ、私は未来から来たと。以前の時間軸で見たことがあるのよ」
杏子 「なるほどね・・・」
ほむら 「流君も納得してくれた?」
竜馬 「暁美が見込んだんなら、役には立ってくれるんだろうさ。だが、本人はキチンと理解してるのか?俺たちの戦いのことに付いて・・・」
ほむら 「ええ」
その事は、すでにゆまには説明してある。
杏子 「初耳だぞ、そんなの。おい、ゆま。それ、本当なのか?」
ゆま 「え、えっと・・・たぶん、そんな気がする・・・」
杏子 「そんな気ってなんだよ、はっきりしないな」
ゆま 「だって、まだ使った事、ないから」
杏子 「・・・本人にもハッキリしない事を、あんたは随分と詳しく知っているんだな」
ほむら 「言ったでしょ、私は未来から来たと。以前の時間軸で見たことがあるのよ」
杏子 「なるほどね・・・」
ほむら 「流君も納得してくれた?」
竜馬 「暁美が見込んだんなら、役には立ってくれるんだろうさ。だが、本人はキチンと理解してるのか?俺たちの戦いのことに付いて・・・」
ほむら 「ええ」
その事は、すでにゆまには説明してある。
275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:20:04.95 ID:mDAG5eOh0
竜馬の言うとおり幼い彼女の事だ、どこまで正確に理解してくれたかは分からないけれど。
だけどゆまは私の話を聞き、その小さな頭で考え決断し、今ここにいる事を自ら望んでくれた。
ただ一点、魔法少女と魔女の繋がりについてだけは伏せさせてもらったけれど。
隠し事をするようで後ろめたくはあったけれど、この酷すぎる運命、今のゆまでは受け止められるはずもない。
でもいずれ・・・
ワルプルギス戦を乗り越え、その時には彼女の心が成長してくれていたなら、その時には・・・
ほむら 「生半可な同情は彼女のためにならない。だから、私は全てを話して、住む場所の提供をする代わりに助力を願ったのよ」
激しい戦いの渦中に飛び込む以上、回復の力を持った者の存在は非常に心強い。
かつての時間軸では美樹さやかが担っていた事もあるポジションだが、今回彼女は普通の少女でいる道を掴み取る事ができた。
さやかに代わる治癒魔法の使い手と出会えたのは、嬉しい誤算だったのだ。
だけどゆまは私の話を聞き、その小さな頭で考え決断し、今ここにいる事を自ら望んでくれた。
ただ一点、魔法少女と魔女の繋がりについてだけは伏せさせてもらったけれど。
隠し事をするようで後ろめたくはあったけれど、この酷すぎる運命、今のゆまでは受け止められるはずもない。
でもいずれ・・・
ワルプルギス戦を乗り越え、その時には彼女の心が成長してくれていたなら、その時には・・・
ほむら 「生半可な同情は彼女のためにならない。だから、私は全てを話して、住む場所の提供をする代わりに助力を願ったのよ」
激しい戦いの渦中に飛び込む以上、回復の力を持った者の存在は非常に心強い。
かつての時間軸では美樹さやかが担っていた事もあるポジションだが、今回彼女は普通の少女でいる道を掴み取る事ができた。
さやかに代わる治癒魔法の使い手と出会えたのは、嬉しい誤算だったのだ。
276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:24:48.06 ID:mDAG5eOh0
竜馬 「だったら納得だ。よろしくな、俺は流竜馬だ」
ゆま 「うぇ・・・っと・・・」
武蔵 「このお兄ちゃんは俺の友達だ。顔は怖いが、食べられたりしないから安心して良いよ」
竜馬 「顔の怖さでは、お前にとやかく言われる筋合いはねぇ」
ゆま 「・・・千歳ゆまです。よ、よろしく」
竜馬 「ああ」
杏子 「なんだよ、随分とあっさり受け入れやがったな。どんだけ間口が広いんだよ、ガキが相手だぞ」
竜馬 「そうは言っても、暁美もお前にしても、まだ中学生だろ。この子とそう変わるもんでもないんじゃないか」
杏子 「けっ。潜ってきた修羅場が違うんだよ。しらけるけど、まぁいいや・・・あたしは佐倉杏子」
竜馬 「ああ、よろしくな」
杏子 「言っとくけど、よろしくするかどうかは、まだ決めてないからな」
竜馬 「ふーん・・・暁美?」
ほむら 「まだ杏子は、私の話した事柄を信用していないの。まずはゲッターロボを実際に見せろって」
ゆま 「うぇ・・・っと・・・」
武蔵 「このお兄ちゃんは俺の友達だ。顔は怖いが、食べられたりしないから安心して良いよ」
竜馬 「顔の怖さでは、お前にとやかく言われる筋合いはねぇ」
ゆま 「・・・千歳ゆまです。よ、よろしく」
竜馬 「ああ」
杏子 「なんだよ、随分とあっさり受け入れやがったな。どんだけ間口が広いんだよ、ガキが相手だぞ」
竜馬 「そうは言っても、暁美もお前にしても、まだ中学生だろ。この子とそう変わるもんでもないんじゃないか」
杏子 「けっ。潜ってきた修羅場が違うんだよ。しらけるけど、まぁいいや・・・あたしは佐倉杏子」
竜馬 「ああ、よろしくな」
杏子 「言っとくけど、よろしくするかどうかは、まだ決めてないからな」
竜馬 「ふーん・・・暁美?」
ほむら 「まだ杏子は、私の話した事柄を信用していないの。まずはゲッターロボを実際に見せろって」
277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:28:38.96 ID:mDAG5eOh0
竜馬 「ま、もっともだな。そんじゃ行くか」
竜馬は一人で勝手に納得すると、おもむろに席から立ちあがった。
ほむら 「流君・・・?」
竜馬 「善は急げだ。さっそく魔女の結界を探しに行こうぜ」
ほむら 「今から?」
呆れて問い返す私に、竜馬はにやりと笑って見せた。
竜馬 「早ければ早いほど良い。存分に知ってもらうのさ。ゲッターの強さと、恐ろしさを、な」
竜馬は一人で勝手に納得すると、おもむろに席から立ちあがった。
ほむら 「流君・・・?」
竜馬 「善は急げだ。さっそく魔女の結界を探しに行こうぜ」
ほむら 「今から?」
呆れて問い返す私に、竜馬はにやりと笑って見せた。
竜馬 「早ければ早いほど良い。存分に知ってもらうのさ。ゲッターの強さと、恐ろしさを、な」
278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:31:07.62 ID:mDAG5eOh0
・・・
・・・
キュウべぇ 「取引は不首尾に終ったか。できれば、穏当に行きたかったんだけれどね。お互いのためにも」
キュウべぇ 「まぁ、いいや。すでに準備は始めているし、舵はどうとでも切ることができる」
キュウべぇ 「・・・」
キュウべぇ 「ゲッターロボ・・・暁美ほむらの魔力の消耗・・・僕の予想に間違いはないだろう」
キュウべぇ 「とすれば、僕は何としても手に入れなければならない。あの力を・・・」
キュウべぇ 「さて、そのための方法だけれど・・・」
キュウべぇ 「うん、彼女達に役に立ってもらおうかな」
キュウべぇ 「さて、そのためには彼女達を納得させるに足る”餌”を用意しなくちゃいけないのだけど」
キュウべぇ 「・・・」
キュウべぇ 「切るか、鹿目まどかを・・・」
・・・
キュウべぇ 「取引は不首尾に終ったか。できれば、穏当に行きたかったんだけれどね。お互いのためにも」
キュウべぇ 「まぁ、いいや。すでに準備は始めているし、舵はどうとでも切ることができる」
キュウべぇ 「・・・」
キュウべぇ 「ゲッターロボ・・・暁美ほむらの魔力の消耗・・・僕の予想に間違いはないだろう」
キュウべぇ 「とすれば、僕は何としても手に入れなければならない。あの力を・・・」
キュウべぇ 「さて、そのための方法だけれど・・・」
キュウべぇ 「うん、彼女達に役に立ってもらおうかな」
キュウべぇ 「さて、そのためには彼女達を納得させるに足る”餌”を用意しなくちゃいけないのだけど」
キュウべぇ 「・・・」
キュウべぇ 「切るか、鹿目まどかを・・・」
279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/21(金) 21:37:16.36 ID:mDAG5eOh0
・・・
・・・
次回予告
連綿と長きに渡り続けてきた、己の計画の立て直しを図るキュウべぇ。
そのために彼は、二人の魔法少女に接近する。
キュウべぇの思惑を策略と知りながらも、敢えてそれに乗る彼女達の思惑は!?
そして、敵となり牙をむく魔法少女に抗したほむらの運命には、新たな悲劇の幕が切って落とされるのだった!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第五話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
連綿と長きに渡り続けてきた、己の計画の立て直しを図るキュウべぇ。
そのために彼は、二人の魔法少女に接近する。
キュウべぇの思惑を策略と知りながらも、敢えてそれに乗る彼女達の思惑は!?
そして、敵となり牙をむく魔法少女に抗したほむらの運命には、新たな悲劇の幕が切って落とされるのだった!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第五話にテレビスイッチオン!
287: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:40:16.38 ID:MQv8Ixce0
・・・某所
キュウべぇ 「助かったよ。君が僕の提案を呑んでくれて」
? 「・・・」
キュウべぇ 「正直言うと、宛てが外れてね。最も期待していた人物からの協力が得られないと分かって、難儀していたんだ」
? 「利害が一致しただけ。あまり気安く話しかけないで」
キュウべぇ 「・・・まぁ、僕としては、君が僕をどのように思ってくれていても構わない」
? 「・・・」
キュウべぇ 「成すべきことが成されるか否か。それだけが重要だ」
? 「それには同意するわ。で・・・お膳立てはどの程度、済んでいるのかしら」
キュウべぇ 「この街と、隣の風見野で、かなりの少女達との契約を済ませているよ。適応者が見つかれば、これからもドンドン契約していくからね」
? 「・・・そう」
キュウべぇ 「助かったよ。君が僕の提案を呑んでくれて」
? 「・・・」
キュウべぇ 「正直言うと、宛てが外れてね。最も期待していた人物からの協力が得られないと分かって、難儀していたんだ」
? 「利害が一致しただけ。あまり気安く話しかけないで」
キュウべぇ 「・・・まぁ、僕としては、君が僕をどのように思ってくれていても構わない」
? 「・・・」
キュウべぇ 「成すべきことが成されるか否か。それだけが重要だ」
? 「それには同意するわ。で・・・お膳立てはどの程度、済んでいるのかしら」
キュウべぇ 「この街と、隣の風見野で、かなりの少女達との契約を済ませているよ。適応者が見つかれば、これからもドンドン契約していくからね」
? 「・・・そう」
288: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:41:10.76 ID:MQv8Ixce0
キュウべぇ 「もっとも、そのほとんどは一人じゃ使い魔にも勝てない程度の力しか持っていない」
? 「では・・・早いうちにこちらに引き込む必要があるわね」
キュウべぇ 「すでに何人か、初戦で斃れてしまっているしね。急いだ方が良いと思うよ。もっとも・・・」
? 「・・・」
キュウべぇ 「あの程度の素質で済むなら、そこら辺にいくらでも代わりは歩いているけれどね」
? 「黙りなさい。余計なことは言わないで。潰すわよ」
キュウべぇ 「おっと、僕の代わりだっていくらでもいるけど、無意味に殺されてはたまらない」
? 「ねぇ」
キュウべぇ 「なんだい?」
? 「なぜ、あなたは私のやる事に力を貸してくれるの?」
キュウべぇ 「君の予知した災いで、魔法少女や人間達が滅んでしまったら、僕だって困るからね。当然の事じゃないか」
? 「・・・」
キュウべぇ 「・・・」
? 「・・・いいわ。どの道、他に術が無いもの。なんにしても時間がない。今はすぐにでも行動を起こさなければいけない時」
キュウべぇ 「期待しているよ、織莉子」
? 「では・・・早いうちにこちらに引き込む必要があるわね」
キュウべぇ 「すでに何人か、初戦で斃れてしまっているしね。急いだ方が良いと思うよ。もっとも・・・」
? 「・・・」
キュウべぇ 「あの程度の素質で済むなら、そこら辺にいくらでも代わりは歩いているけれどね」
? 「黙りなさい。余計なことは言わないで。潰すわよ」
キュウべぇ 「おっと、僕の代わりだっていくらでもいるけど、無意味に殺されてはたまらない」
? 「ねぇ」
キュウべぇ 「なんだい?」
? 「なぜ、あなたは私のやる事に力を貸してくれるの?」
キュウべぇ 「君の予知した災いで、魔法少女や人間達が滅んでしまったら、僕だって困るからね。当然の事じゃないか」
? 「・・・」
キュウべぇ 「・・・」
? 「・・・いいわ。どの道、他に術が無いもの。なんにしても時間がない。今はすぐにでも行動を起こさなければいけない時」
キュウべぇ 「期待しているよ、織莉子」
289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:42:27.04 ID:MQv8Ixce0
・・・
・・・
とある魔女結界の中。
私たちは群がる使い魔を蹴散らしつつ、その最奥まで辿り着こうとしていた。
今、私たちの目の前には木目調の扉が一つ。
扉を開けて中に踏み込めば、そこでは魔女が待ち構えているはずだった。
ほむら 「じゃあ・・・」
扉の前に整列した一同を前に、私は言う。
ほむら 「ゲッターロボを呼ぶわ」
自然と、口調が厳かになってしまう自分が、多少こっけいではあったけれど。
・・・
とある魔女結界の中。
私たちは群がる使い魔を蹴散らしつつ、その最奥まで辿り着こうとしていた。
今、私たちの目の前には木目調の扉が一つ。
扉を開けて中に踏み込めば、そこでは魔女が待ち構えているはずだった。
ほむら 「じゃあ・・・」
扉の前に整列した一同を前に、私は言う。
ほむら 「ゲッターロボを呼ぶわ」
自然と、口調が厳かになってしまう自分が、多少こっけいではあったけれど。
290: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:43:57.32 ID:MQv8Ixce0
すみません。
ほむら「ゲッターロボ!」 第五話
↑入れ忘れました。
ほむら「ゲッターロボ!」 第五話
↑入れ忘れました。
291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:44:46.55 ID:MQv8Ixce0
ごくり・・・
誰かが唾を飲み込んだ音が、辺りに響いた。
音の主は竜馬か武蔵か。
緊張してしまうのも無理はない。それにそれは私だって同じ。
何せ、自分の意志でゲッターロボを呼び寄せるのは、今回が初めてなのだから。
武蔵 「いよいよだな・・・」
竜馬 「ああ。それより佐倉・・・」
杏子 「分かってるよ、ほら」
杏子が無造作に、いくつかのグリーフシードを投げてよこした。
ほむら 「ありがとう」
誰かが唾を飲み込んだ音が、辺りに響いた。
音の主は竜馬か武蔵か。
緊張してしまうのも無理はない。それにそれは私だって同じ。
何せ、自分の意志でゲッターロボを呼び寄せるのは、今回が初めてなのだから。
武蔵 「いよいよだな・・・」
竜馬 「ああ。それより佐倉・・・」
杏子 「分かってるよ、ほら」
杏子が無造作に、いくつかのグリーフシードを投げてよこした。
ほむら 「ありがとう」
292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:46:03.03 ID:MQv8Ixce0
杏子 「まだ、やると決めたわけじゃねぇ。ゲッターとやらが出て来なかったら、それは返してもらうからな」
ほむら 「分かっているわ」
これで、魔力を全て吸い取られて魔女になってしまう危険は、ひとまず無くなったわけだ。
ほむら 「では・・・皆、私から離れて」
皆を下がらせて、準備は全て整った。
今こそ・・・
ゲッターを呼ぶ!!
ほむら 「分かっているわ」
これで、魔力を全て吸い取られて魔女になってしまう危険は、ひとまず無くなったわけだ。
ほむら 「では・・・皆、私から離れて」
皆を下がらせて、準備は全て整った。
今こそ・・・
ゲッターを呼ぶ!!
293: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:47:54.11 ID:MQv8Ixce0
竜馬 「・・・」
武蔵 「・・・」
杏子 「・・・?」
ゆま 「ねー、まだー??」
ほむら 「・・・えっと」
竜馬 「どうした、暁美。何か問題でも?」
ほむら 「あの、ね。ちょっと、言いにくいんだけれど・・・」
竜馬 「どうしたってんだ?」
ほむら 「ゲッターって、どうやって呼んだら良いのか、分からない・・・」
竜馬 「・・・え」
武蔵 「・・・」
ゆま 「あははっ、変なのー!」
杏子 「笑い事じゃないだろ。なんだよ、それ。さんざん期待させといて、そんな落ちは求めちゃいねーぞ」
武蔵 「・・・」
杏子 「・・・?」
ゆま 「ねー、まだー??」
ほむら 「・・・えっと」
竜馬 「どうした、暁美。何か問題でも?」
ほむら 「あの、ね。ちょっと、言いにくいんだけれど・・・」
竜馬 「どうしたってんだ?」
ほむら 「ゲッターって、どうやって呼んだら良いのか、分からない・・・」
竜馬 「・・・え」
武蔵 「・・・」
ゆま 「あははっ、変なのー!」
杏子 「笑い事じゃないだろ。なんだよ、それ。さんざん期待させといて、そんな落ちは求めちゃいねーぞ」
294: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:49:15.37 ID:MQv8Ixce0
ほむら 「だって仕方がないじゃない。自分で呼んだ事、無いんだもの」
そう、前にゲッターに乗った時は、謎の声に言われるがままだったのだ。
しかも、乗った後のことは、気を失っていて覚えてすらいない。
杏子 「いや、仕方がないって言われたってさぁ」
杏子が呆れるのも分かるけれど、こっちだって困っているのだ。
ふだん普通にバックラーの中から武器を取り出したりしてるから、今の今まで気にもしなかったけれど。
あんな大きな物、どうやって取り出せば良いのか、まったく見当がつかなかった。
ほむら 「どーしよ・・・」ほむぅ
竜馬 「呼んでみたらいいんじゃねーか」
ほむら 「え、それって・・・?」
そう、前にゲッターに乗った時は、謎の声に言われるがままだったのだ。
しかも、乗った後のことは、気を失っていて覚えてすらいない。
杏子 「いや、仕方がないって言われたってさぁ」
杏子が呆れるのも分かるけれど、こっちだって困っているのだ。
ふだん普通にバックラーの中から武器を取り出したりしてるから、今の今まで気にもしなかったけれど。
あんな大きな物、どうやって取り出せば良いのか、まったく見当がつかなかった。
ほむら 「どーしよ・・・」ほむぅ
竜馬 「呼んでみたらいいんじゃねーか」
ほむら 「え、それって・・・?」
295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:50:55.20 ID:MQv8Ixce0
竜馬 「叫ぶんだよ。心で、魂でな。ゲッターと俺たちは強い絆で結ばれていた。隼人の跡を継いだお前だって、それは変わらないはずだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だったら、ゲッターはお前の声に応えてくれる。必ずだ」
杏子 「はは、そんなアニメじゃあるまいし」
ほむら 「いいえ」
笑い飛ばそうとする杏子を私は制した。
他に手がないなら、なんだって試してみるより他に無い。
ほむら 「それに」
私には何故か、竜馬の言葉が真実だと思えたから。
ほむら 「やってみるわ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だったら、ゲッターはお前の声に応えてくれる。必ずだ」
杏子 「はは、そんなアニメじゃあるまいし」
ほむら 「いいえ」
笑い飛ばそうとする杏子を私は制した。
他に手がないなら、なんだって試してみるより他に無い。
ほむら 「それに」
私には何故か、竜馬の言葉が真実だと思えたから。
ほむら 「やってみるわ」
296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:52:38.08 ID:MQv8Ixce0
杏子 「えー、マジかよ・・・」
明らかに引いている杏子をよそに、私は目を閉じる。
意識をバックラーの中へと。その中で眠っているであろう、ゲッターロボへと向ける。
程なくして・・・
ほむら 「・・・いた」
私の意識は、異次元のなかで漂う”それ”を認識した。
熱く、強く脈打つ、巨大な力の塊。
紛れもない。
あれこそが・・・ゲッターロボ!
明らかに引いている杏子をよそに、私は目を閉じる。
意識をバックラーの中へと。その中で眠っているであろう、ゲッターロボへと向ける。
程なくして・・・
ほむら 「・・・いた」
私の意識は、異次元のなかで漂う”それ”を認識した。
熱く、強く脈打つ、巨大な力の塊。
紛れもない。
あれこそが・・・ゲッターロボ!
297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:53:45.16 ID:MQv8Ixce0
(呼べっ!)
私がゲッターを見つけるのと同時に、頭の中で何者かが命令する声が響く。
(叫べっ!)
私は深く頷くと、その声に従った。
バックラーの中へと。その中に広がる異次元へと。心の中へと。魂の奥へと。
私を構成する全てに響き渡れといわんばかりに、私は声を限りに叫ぶ!
ほむら 「出ろぉっ!ゲッタァーーーー!!!」
私がゲッターを見つけるのと同時に、頭の中で何者かが命令する声が響く。
(叫べっ!)
私は深く頷くと、その声に従った。
バックラーの中へと。その中に広がる異次元へと。心の中へと。魂の奥へと。
私を構成する全てに響き渡れといわんばかりに、私は声を限りに叫ぶ!
ほむら 「出ろぉっ!ゲッタァーーーー!!!」
298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:55:40.08 ID:MQv8Ixce0
・・・
・・・
次に目を開いた時、私は見覚えのない場所に座っていた。
目の前には数々の計器と、無骨な操縦桿らしきもの。
私は直感で悟る。
ここが、ゲッターロボの操縦席なのだ、と。
竜馬 「暁美」
竜馬の声が聞こえる。
そちらに目を向けると、モニターに移る竜馬と仲間達の姿。声はモニターと一体化しているスピーカーから聞こえてきていた。
竜馬がゲッターを・・・いえ、私を見上げている。
どこか誇らしげな、普段の不敵さを感じさせるのとは、また違った笑みを浮かべながら。
竜馬 「やったな」
ほむら 「・・・うん」
・・・
次に目を開いた時、私は見覚えのない場所に座っていた。
目の前には数々の計器と、無骨な操縦桿らしきもの。
私は直感で悟る。
ここが、ゲッターロボの操縦席なのだ、と。
竜馬 「暁美」
竜馬の声が聞こえる。
そちらに目を向けると、モニターに移る竜馬と仲間達の姿。声はモニターと一体化しているスピーカーから聞こえてきていた。
竜馬がゲッターを・・・いえ、私を見上げている。
どこか誇らしげな、普段の不敵さを感じさせるのとは、また違った笑みを浮かべながら。
竜馬 「やったな」
ほむら 「・・・うん」
299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:56:21.68 ID:MQv8Ixce0
竜馬の後ろでは、杏子が呆けた顔で突っ立っていた。
杏子 「ほ、本当に出やがった・・・」
ゆま 「かっこいーっ!!」
武蔵 「おっと、二人とも。驚くのも感激するのも、ちょっと気が早いってもんだぜ。本番はこれからなんだ」
竜馬 「そういうことだな。待ってろ、暁美。今、俺と武蔵も乗り込む。今回は操縦は慣れた俺達に任せるんだ」
ほむら 「ええ、乗って。だけれど、操縦は・・・」
操縦桿が手に馴染む。
計器が私に語りかける意味が分かる。
次に何をすれば良いのか、私には理解ができる。
ほむら 「操縦は私がする。魔女を倒す」
竜馬 「・・・暁美」
ほむら 「私が、このゲッターで」
そう、私はゲッターを動かす事ができる。
杏子 「ほ、本当に出やがった・・・」
ゆま 「かっこいーっ!!」
武蔵 「おっと、二人とも。驚くのも感激するのも、ちょっと気が早いってもんだぜ。本番はこれからなんだ」
竜馬 「そういうことだな。待ってろ、暁美。今、俺と武蔵も乗り込む。今回は操縦は慣れた俺達に任せるんだ」
ほむら 「ええ、乗って。だけれど、操縦は・・・」
操縦桿が手に馴染む。
計器が私に語りかける意味が分かる。
次に何をすれば良いのか、私には理解ができる。
ほむら 「操縦は私がする。魔女を倒す」
竜馬 「・・・暁美」
ほむら 「私が、このゲッターで」
そう、私はゲッターを動かす事ができる。
300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:57:08.01 ID:MQv8Ixce0
・・・
・・・
二人が乗り込むのを待って、私はゲッターを動かす。
現在のゲッターは、私の乗っているジャガー号がトップとなる”ゲッター2”の状態。
つまり今のメインパイロットは、この私。
まさにおあつらえ向きな状況。これってやっぱり・・・
ほむら 「私を試そうとしているのかしら」
だったら、お望み通り試されてやろう。
私がゲッターのパイロットとして相応しいか、どうか。
あれ以来音沙汰のない神隼人に見せ付けてやる。
・・・
二人が乗り込むのを待って、私はゲッターを動かす。
現在のゲッターは、私の乗っているジャガー号がトップとなる”ゲッター2”の状態。
つまり今のメインパイロットは、この私。
まさにおあつらえ向きな状況。これってやっぱり・・・
ほむら 「私を試そうとしているのかしら」
だったら、お望み通り試されてやろう。
私がゲッターのパイロットとして相応しいか、どうか。
あれ以来音沙汰のない神隼人に見せ付けてやる。
301: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:57:55.57 ID:MQv8Ixce0
ほむら 「行くわ」
竜馬 「応っ」
武蔵 「行こうぜ」
二人の返事を受けて、私はゲッターの左手のドリルで、魔女の住処の壁を扉ごと破壊する。
ほむら 「さぁ、ここの魔女。まずはあなたを最初の獲物とさせてもらうわ」
これからの戦いを占う、大事な一戦。その生贄となる栄光に感謝なさい。
私は進む。魔女の住処の奥に向かって。
そこに巣くう魔女へと向かって。
ほむら 「さぁ、とくと思い知ってもらうわよ。ゲッターの、私の恐ろしさを!」
今の私は、ゲッターを操縦できる悦びに満たされていた。
感激が言葉となって、口から継いで出るのを留めることができない。
そう、私が。
私こそが、ゲッターなのだから!
竜馬 「応っ」
武蔵 「行こうぜ」
二人の返事を受けて、私はゲッターの左手のドリルで、魔女の住処の壁を扉ごと破壊する。
ほむら 「さぁ、ここの魔女。まずはあなたを最初の獲物とさせてもらうわ」
これからの戦いを占う、大事な一戦。その生贄となる栄光に感謝なさい。
私は進む。魔女の住処の奥に向かって。
そこに巣くう魔女へと向かって。
ほむら 「さぁ、とくと思い知ってもらうわよ。ゲッターの、私の恐ろしさを!」
今の私は、ゲッターを操縦できる悦びに満たされていた。
感激が言葉となって、口から継いで出るのを留めることができない。
そう、私が。
私こそが、ゲッターなのだから!
302: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:58:40.31 ID:MQv8Ixce0
・・・
・・・
一時間後
ほむホーム
武蔵 「いやぁ・・・」
再び、私の家に会する一同。
テーブルを囲い、それぞれの前にはおなじみの安物の紅茶。
武蔵 「瞬殺だったなぁ・・・」
紅茶に一口つけた後で、武蔵がぽつり。感慨深げに呟いた。
武蔵 「ほむらちゃん、躊躇せずに突っ込んで行っちゃうんだもんな。あっという間にドリルで魔女を貫いちゃってるし」
ゆま 「強かったね、ロボット。かっこよかったー!」
竜馬 「ああ。正直、相手がどんな魔女だったかすら、見ている暇がなかったくらいだ」
ほむら 「まぁ・・・湧き上がる闘志が抑えられなかったってところかしら」
竜馬 「だろうな」にやにや
ほむら 「なによ」
・・・
一時間後
ほむホーム
武蔵 「いやぁ・・・」
再び、私の家に会する一同。
テーブルを囲い、それぞれの前にはおなじみの安物の紅茶。
武蔵 「瞬殺だったなぁ・・・」
紅茶に一口つけた後で、武蔵がぽつり。感慨深げに呟いた。
武蔵 「ほむらちゃん、躊躇せずに突っ込んで行っちゃうんだもんな。あっという間にドリルで魔女を貫いちゃってるし」
ゆま 「強かったね、ロボット。かっこよかったー!」
竜馬 「ああ。正直、相手がどんな魔女だったかすら、見ている暇がなかったくらいだ」
ほむら 「まぁ・・・湧き上がる闘志が抑えられなかったってところかしら」
竜馬 「だろうな」にやにや
ほむら 「なによ」
303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 11:59:33.47 ID:MQv8Ixce0
竜馬 「いやな、魔女に挑む直前のお前のセリフ、まさにゲッター乗りって感じだったなって感心してたところさ」
ほむら 「・・・あれは何と言うか、自然に口から出ちゃって」(ほむぅ)
竜馬 「照れる事ねーよ。古くからの仲間と一緒に戦ってたみたいで、俺は嬉しいんだ」
ほむら 「流君・・・」
杏子 「お話中、悪いんだけどさ」
ほむら 「・・・佐倉さん。あなたには礼を言わなくちゃね。ありがとう」
私は頭を下げながら、懐からあるものを取り出しテーブルの上へと置いた。
杏子 「空になったグリーフシードか・・・」
ほむら 「ええ、たったあれだけの稼動でグリーフシードを一個、使い切ってしまった。あなたが提供してくれた分が無ければ、持たなかったわ。だから・・・」
ほむら 「・・・あれは何と言うか、自然に口から出ちゃって」(ほむぅ)
竜馬 「照れる事ねーよ。古くからの仲間と一緒に戦ってたみたいで、俺は嬉しいんだ」
ほむら 「流君・・・」
杏子 「お話中、悪いんだけどさ」
ほむら 「・・・佐倉さん。あなたには礼を言わなくちゃね。ありがとう」
私は頭を下げながら、懐からあるものを取り出しテーブルの上へと置いた。
杏子 「空になったグリーフシードか・・・」
ほむら 「ええ、たったあれだけの稼動でグリーフシードを一個、使い切ってしまった。あなたが提供してくれた分が無ければ、持たなかったわ。だから・・・」
304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 12:00:24.82 ID:MQv8Ixce0
杏子 「礼は良いよ。そういう約束だったんだ」
ほむら 「じゃあ・・・」
杏子 「約束は守るよ。ロボットの実物も見せてもらったし、あんたらの言うことを信用する事にする。一緒に戦うよ」
竜馬 「じゃ、今度はよろしくって言っても、問題ないな」
杏子 「ああ・・・だけど・・・」
ほむら 「なに?」
杏子 「さっきから疑問だったんだけど、ここにはなんでマミの姿がないんだ?」
武蔵 「あ・・・」
ほむら 「・・・」
ほむら 「じゃあ・・・」
杏子 「約束は守るよ。ロボットの実物も見せてもらったし、あんたらの言うことを信用する事にする。一緒に戦うよ」
竜馬 「じゃ、今度はよろしくって言っても、問題ないな」
杏子 「ああ・・・だけど・・・」
ほむら 「なに?」
杏子 「さっきから疑問だったんだけど、ここにはなんでマミの姿がないんだ?」
武蔵 「あ・・・」
ほむら 「・・・」
305: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 12:01:20.35 ID:MQv8Ixce0
杏子 「見滝原をずっと守ってきたのはマミだし、ここにはその兄貴までいるってのに、どうしてマミ本人がいない?」
ほむら 「それは・・・」
杏子 「今日は何か、出て来れない用事でもあったのかい?」
ほむら 「いえ、そうではなくて・・・」
ちらり・・・私は、武蔵の膝の上にチョコンと乗っかり、ご機嫌なゆまに視線を向ける。
ゆま 「・・・ん、なぁに?」
ほむら 「ううん、なんでも」
・・・私がマミに本当のことを話すのを躊躇している理由。
それを今、ゆまの前で説明するわけにはいかない。
ほむら 「それは・・・」
杏子 「今日は何か、出て来れない用事でもあったのかい?」
ほむら 「いえ、そうではなくて・・・」
ちらり・・・私は、武蔵の膝の上にチョコンと乗っかり、ご機嫌なゆまに視線を向ける。
ゆま 「・・・ん、なぁに?」
ほむら 「ううん、なんでも」
・・・私がマミに本当のことを話すのを躊躇している理由。
それを今、ゆまの前で説明するわけにはいかない。
306: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 12:02:05.13 ID:MQv8Ixce0
ほむら 「流君、お願いしても良いかしら」
竜馬 「・・・任されたぜ」
杏子 「ふーん・・・」
杏子も訳ありな雰囲気を察してくれ、この場ではこれ以上深く追求してくることは無かった。
こういう空気を読んでくれる杏子の性質は、相変わらず私みたいな人間には好ましい限りね。
杏子 「さ・て・と。じゃあ、あたしはこれで失礼させてもらうよ」
ほむら 「泊まる宛はあるの?」
杏子 「どうとでもなるさ。今までだってそうやって生きてきたんだ。心配は要らないよ」
ゆま 「・・・きょーこ、行っちゃうの?」
杏子 「お前らと馴れ合うつもりは無いって言ったろ。約束は守るが、それ以外の干渉はお互いに無しにしようぜ。それじゃーな」
ゆま 「うん・・・」
竜馬 「・・・任されたぜ」
杏子 「ふーん・・・」
杏子も訳ありな雰囲気を察してくれ、この場ではこれ以上深く追求してくることは無かった。
こういう空気を読んでくれる杏子の性質は、相変わらず私みたいな人間には好ましい限りね。
杏子 「さ・て・と。じゃあ、あたしはこれで失礼させてもらうよ」
ほむら 「泊まる宛はあるの?」
杏子 「どうとでもなるさ。今までだってそうやって生きてきたんだ。心配は要らないよ」
ゆま 「・・・きょーこ、行っちゃうの?」
杏子 「お前らと馴れ合うつもりは無いって言ったろ。約束は守るが、それ以外の干渉はお互いに無しにしようぜ。それじゃーな」
ゆま 「うん・・・」
307: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 12:02:38.18 ID:MQv8Ixce0
竜馬 「佐倉、待て。俺も帰るから、そこまで一緒に行こう」
杏子 「ああ」
ゆまの寂しそうな眼差しなど意に介さず、杏子は竜馬と連れ立って部屋を出て行ってしまった。
そんなゆまの頭を、武蔵の大きな手が優しく撫でる。
武蔵 「ゆまちゃんは、杏子お姉ちゃんが大好きなんだなぁ」
ゆま 「・・・」
ほむら 「あんなにぞんざいに扱われているのに・・・」
ゆま 「助けてくれたから・・・」
ほむら 「え・・・」
ゆま 「助けてくれたし、怪我も治してくれたから。ゆまが痛いって泣いていた時、ずっと励ましてくれたから」
武蔵 「ゆまちゃん・・・」
杏子 「ああ」
ゆまの寂しそうな眼差しなど意に介さず、杏子は竜馬と連れ立って部屋を出て行ってしまった。
そんなゆまの頭を、武蔵の大きな手が優しく撫でる。
武蔵 「ゆまちゃんは、杏子お姉ちゃんが大好きなんだなぁ」
ゆま 「・・・」
ほむら 「あんなにぞんざいに扱われているのに・・・」
ゆま 「助けてくれたから・・・」
ほむら 「え・・・」
ゆま 「助けてくれたし、怪我も治してくれたから。ゆまが痛いって泣いていた時、ずっと励ましてくれたから」
武蔵 「ゆまちゃん・・・」
308: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 12:04:22.01 ID:MQv8Ixce0
ゆま 「その時、ゆまのことを心配そうな目で見てくれたから、だからゆま・・・」
この子は・・・
出会ってから一日に満たない短い時間で、佐倉杏子の冷厳な仮面の下に隠れた本質を見抜いていたのかも知れない。
辛い経験から世間を斜めに見、他人に興味なさそうにふるまう杏子の、本当の素顔というものに・・・
武蔵 「きっと、杏子ちゃんから向けられた親切が、この子にとって初めて人から与えられた真心だったのかもしれないな」
ほむら 「・・・」
ゆま 「ゆま、きょーことも仲良くなりたいよ。いろいろ、お話したい・・・」
ほむら 「・・・大丈夫」
ゆま 「ほむらおねえちゃん?」
ほむら 「あの子は、口下手だし意地っ張りだから、あなたとどう接していいのか分からないの」
ゆま 「ほんとう?じゃあ、ゆま。これからきょーことも仲良くなれるかな?」
ほむら 「なれるわ。だって私は、あなた達が仲間になれる事を知っているもの」
もちろん、確証は無い。そういう時間軸もあった。ただそれだけの話。
だけれどゆまは、そんな私の気休めに過ぎない言葉にも、愛らしい顔を嬉しそうにほころばせてくれた。
ゆま 「・・・うん。ゆま、がんばるよ!」
この子は・・・
出会ってから一日に満たない短い時間で、佐倉杏子の冷厳な仮面の下に隠れた本質を見抜いていたのかも知れない。
辛い経験から世間を斜めに見、他人に興味なさそうにふるまう杏子の、本当の素顔というものに・・・
武蔵 「きっと、杏子ちゃんから向けられた親切が、この子にとって初めて人から与えられた真心だったのかもしれないな」
ほむら 「・・・」
ゆま 「ゆま、きょーことも仲良くなりたいよ。いろいろ、お話したい・・・」
ほむら 「・・・大丈夫」
ゆま 「ほむらおねえちゃん?」
ほむら 「あの子は、口下手だし意地っ張りだから、あなたとどう接していいのか分からないの」
ゆま 「ほんとう?じゃあ、ゆま。これからきょーことも仲良くなれるかな?」
ほむら 「なれるわ。だって私は、あなた達が仲間になれる事を知っているもの」
もちろん、確証は無い。そういう時間軸もあった。ただそれだけの話。
だけれどゆまは、そんな私の気休めに過ぎない言葉にも、愛らしい顔を嬉しそうにほころばせてくれた。
ゆま 「・・・うん。ゆま、がんばるよ!」
314: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:37:24.97 ID:Hwe04l0B0
・・・
・・・
ほむホームからの帰り道
路上
夜の街。街灯がアスファルトを冷たく照らす中、竜馬と杏子は連れ立って歩いていた。
杏子に行くべき宛てなどない。今は黙って、竜馬の後をおとなしく歩くのみだった。
もとより世間話に花を咲かせるような間柄でも性格でもない、この二人。
今はただ、無言で歩を進めるだけ。
竜馬 「・・・」
杏子 「・・・」
しばらくして。
もうすでにほむらの家から大分離れた頃合。
先に口を開いたのは、杏子の方であった。
杏子 「もう良いだろ」
・・・
ほむホームからの帰り道
路上
夜の街。街灯がアスファルトを冷たく照らす中、竜馬と杏子は連れ立って歩いていた。
杏子に行くべき宛てなどない。今は黙って、竜馬の後をおとなしく歩くのみだった。
もとより世間話に花を咲かせるような間柄でも性格でもない、この二人。
今はただ、無言で歩を進めるだけ。
竜馬 「・・・」
杏子 「・・・」
しばらくして。
もうすでにほむらの家から大分離れた頃合。
先に口を開いたのは、杏子の方であった。
杏子 「もう良いだろ」
315: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:43:11.17 ID:Hwe04l0B0
竜馬 「そうだな」
杏子 「聞かせてもらおうか。なぜあの場にマミがいなかったのか。その理由とやらをさ」
竜馬 「単純なことさ。巴マミには、俺たちが集って共に戦おうという企てを話していない」
杏子 「・・・見滝原は元々がマミのテリトリーだ。それって、筋が通ってないんじゃないの?」
竜馬 「そういうの、気にするんだな」
杏子 「自分の気分が悪くなるのさ。あたしだったら、自分の縄張りを荒らす奴は絶対に許さねぇ」
竜馬 「お前は良い奴だな。暁美が仲間に引き込もうとしただけの事はある」
杏子 「その仲間ってのはよせよ。あたしはそう言う、ねちょねちょした関係は大嫌いなんだ」
竜馬 「分かったよ。じゃ、とっとと本題に行くが、巴マミを誘わなかった理由・・・」
杏子 「・・・」
竜馬 「・・・それは、巴マミが真実を知った時、その重さに耐えられないから、だそうだ」
杏子 「聞かせてもらおうか。なぜあの場にマミがいなかったのか。その理由とやらをさ」
竜馬 「単純なことさ。巴マミには、俺たちが集って共に戦おうという企てを話していない」
杏子 「・・・見滝原は元々がマミのテリトリーだ。それって、筋が通ってないんじゃないの?」
竜馬 「そういうの、気にするんだな」
杏子 「自分の気分が悪くなるのさ。あたしだったら、自分の縄張りを荒らす奴は絶対に許さねぇ」
竜馬 「お前は良い奴だな。暁美が仲間に引き込もうとしただけの事はある」
杏子 「その仲間ってのはよせよ。あたしはそう言う、ねちょねちょした関係は大嫌いなんだ」
竜馬 「分かったよ。じゃ、とっとと本題に行くが、巴マミを誘わなかった理由・・・」
杏子 「・・・」
竜馬 「・・・それは、巴マミが真実を知った時、その重さに耐えられないから、だそうだ」
316: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:44:43.18 ID:Hwe04l0B0
杏子 「あたしらが魔女になるって言う、あれか」
竜馬 「暁美は言っていたな。巴マミは強い人を演じている。それは繊細すぎて、傷つきやすい人だからなんだと」
杏子 「・・・」
竜馬 「暁美はかつての時間軸で、お前を含めた仲間達に全てを打ち明けたことがあったらしいぜ。だが、誰も真実を受け入れる事ができなかった」
杏子 「・・・だろうな。今のあたしだって、あんなロボットを見せ付けられなけりゃ、とても信じる気に離れなかったと思う」
竜馬 「その口ぶりからしたら、今は信用してくれているように取れるが?」
杏子 「ゲッターロボが現実にあることを証明できたなら共闘する。それが前提だったからな」
竜馬 「そうか。だが、巴マミは、正気を保てずに暴走してしまった。なまじ実力のある彼女のことだ。手が付けられなかったってよ」
杏子 「マミが暴走・・・?ははっ、まさか」
竜馬 「信じられないか?まぁ、俺だって自分で見てきたわけじゃない。信じる信じないは、お前の裁量に任せるしかないわけだがな」
竜馬 「暁美は言っていたな。巴マミは強い人を演じている。それは繊細すぎて、傷つきやすい人だからなんだと」
杏子 「・・・」
竜馬 「暁美はかつての時間軸で、お前を含めた仲間達に全てを打ち明けたことがあったらしいぜ。だが、誰も真実を受け入れる事ができなかった」
杏子 「・・・だろうな。今のあたしだって、あんなロボットを見せ付けられなけりゃ、とても信じる気に離れなかったと思う」
竜馬 「その口ぶりからしたら、今は信用してくれているように取れるが?」
杏子 「ゲッターロボが現実にあることを証明できたなら共闘する。それが前提だったからな」
竜馬 「そうか。だが、巴マミは、正気を保てずに暴走してしまった。なまじ実力のある彼女のことだ。手が付けられなかったってよ」
杏子 「マミが暴走・・・?ははっ、まさか」
竜馬 「信じられないか?まぁ、俺だって自分で見てきたわけじゃない。信じる信じないは、お前の裁量に任せるしかないわけだがな」
317: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:46:57.38 ID:Hwe04l0B0
杏子 「・・・マミは・・・あいつは、確かに糞がつくほど真面目で融通が利かないところがある。ある、けどな・・・」
竜馬 「それだけ、余裕が無いとも言うな」
杏子 「だってそれは・・・仕方がないだろ。そういう奴なんだよ、あいつは。だけれど、だからってマミはそんな柔な奴じゃない」
竜馬 「・・・」
杏子 「あたしはそれを・・・知ってるんだ」
竜馬 「なんにせよだ。そういった理由から、暁美は巴マミに言い出せないんだとさ。暁美は決して引く事ができない願いを持って戦っている」
杏子 「・・・」
竜馬 「マミが暴走して暁美の前に立ちふさがったなら、その時はかつての仲間だろうと先輩だろうと、殺すしかない」
杏子 「それは、分かるよ・・・」
竜馬 「もちろん、そんなことは暁美の望むことじゃない。だから、言えない、と」
竜馬 「それだけ、余裕が無いとも言うな」
杏子 「だってそれは・・・仕方がないだろ。そういう奴なんだよ、あいつは。だけれど、だからってマミはそんな柔な奴じゃない」
竜馬 「・・・」
杏子 「あたしはそれを・・・知ってるんだ」
竜馬 「なんにせよだ。そういった理由から、暁美は巴マミに言い出せないんだとさ。暁美は決して引く事ができない願いを持って戦っている」
杏子 「・・・」
竜馬 「マミが暴走して暁美の前に立ちふさがったなら、その時はかつての仲間だろうと先輩だろうと、殺すしかない」
杏子 「それは、分かるよ・・・」
竜馬 「もちろん、そんなことは暁美の望むことじゃない。だから、言えない、と」
318: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:49:10.39 ID:Hwe04l0B0
杏子 「だけど、だからって、納得できることじゃない・・・」
竜馬 「どうやら、お前と暁美の中での巴マミ像には、決定的な違いがあるらしいな」
杏子 「・・・いずれにしたってさ」
竜馬 「?」
杏子 「実際問題、マミも活動してる見滝原で、あたし達が徒党を組んで魔女退治。そんなん、マミにばれないはず無いだろ?」
竜馬 「そりゃま、そうだろう」
杏子 「だまってて、いざばれちまったら、それこそいらないイザコザが起きるんじゃないのかなって。そう思うんだよ、あたしは」
竜馬 「・・・」
杏子が本当に言いたい事は言葉とは別の所にあるのを感じつつ、しかし、いま述べた杏子の意見もまた正鵠を射ていた。
だから竜馬は、敢えて抱いた疑問には触れず、彼女の表に現した言葉に対する答えだけを告げることにした。
竜馬 「お前の懸念ももっともだ。だが、その事は少し暁美に時間を与えてやってはくれないか」
杏子 「え、あいつ、マミのことで、何か考えがあるの??」
竜馬 「どうやら、お前と暁美の中での巴マミ像には、決定的な違いがあるらしいな」
杏子 「・・・いずれにしたってさ」
竜馬 「?」
杏子 「実際問題、マミも活動してる見滝原で、あたし達が徒党を組んで魔女退治。そんなん、マミにばれないはず無いだろ?」
竜馬 「そりゃま、そうだろう」
杏子 「だまってて、いざばれちまったら、それこそいらないイザコザが起きるんじゃないのかなって。そう思うんだよ、あたしは」
竜馬 「・・・」
杏子が本当に言いたい事は言葉とは別の所にあるのを感じつつ、しかし、いま述べた杏子の意見もまた正鵠を射ていた。
だから竜馬は、敢えて抱いた疑問には触れず、彼女の表に現した言葉に対する答えだけを告げることにした。
竜馬 「お前の懸念ももっともだ。だが、その事は少し暁美に時間を与えてやってはくれないか」
杏子 「え、あいつ、マミのことで、何か考えがあるの??」
319: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:51:37.53 ID:Hwe04l0B0
竜馬 「ああ、らしいぜ。その考えとやらは俺も聞いてはいないがな。まぁ、暁美なら上手くやるさ」
杏子 「ずいぶんと、あいつの事を信頼しちゃってるのな」
竜馬 「仲間、だからな」
杏子 「またそれか・・・」
仲間という言葉に、過剰に拒否反応を示す杏子。
だが、そんな態度の裏側に、杏子のもう一つ別の顔が潜んでいるように、竜馬には感じられた。
それがどんな感情かまでは、推し量れなかったが・・・
竜馬 「・・・お前は暁美と、どこか似ているな」
杏子 「はぁ・・・!?よせよ、あんなすかした奴とあたしを一緒にするな!」
竜馬 「いや、似ているよ」
自分の感情を押し殺し、今ある自分を演じようとしている辺り。
そして、演じきれずに所々で素の自分をさらけ出してしまい、だけれど自分では、そんな事に気がついてもいない所とか。
杏子 「ずいぶんと、あいつの事を信頼しちゃってるのな」
竜馬 「仲間、だからな」
杏子 「またそれか・・・」
仲間という言葉に、過剰に拒否反応を示す杏子。
だが、そんな態度の裏側に、杏子のもう一つ別の顔が潜んでいるように、竜馬には感じられた。
それがどんな感情かまでは、推し量れなかったが・・・
竜馬 「・・・お前は暁美と、どこか似ているな」
杏子 「はぁ・・・!?よせよ、あんなすかした奴とあたしを一緒にするな!」
竜馬 「いや、似ているよ」
自分の感情を押し殺し、今ある自分を演じようとしている辺り。
そして、演じきれずに所々で素の自分をさらけ出してしまい、だけれど自分では、そんな事に気がついてもいない所とか。
320: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:55:11.31 ID:Hwe04l0B0
竜馬 「お前と暁美、良い友達になれるんじゃねぇのかなぁ・・・と」
杏子 「んなっ・・・!?」
竜馬 「俺は思うんだがなぁ」
杏子 「んなわけないだろっ、ばっ馬鹿じゃねぇの。つーか、馬鹿だろ、お前!ばーか、ばーか!」
竜馬 「・・・そりゃまぁ、頭は良い方ではないとは思うが」
杏子 「うっせー、バーカ!バーカバーカッ!ちねっ!」
杏子は竜馬に「バカ」をたたみかけるように浴びせると、クルリと背を向けて駆け出してしまった。
竜馬 「え、おい・・・!」
慌てて追おうとするが、とんでもない速さで走り出した杏子は、瞬く間に夜の街の中へと消えてしまう。
あとには、むなしく取り残されてしまった、竜馬がぽつんとただ一人。
竜馬 「なんだよ、あいつは・・・ふっ」
杏子の消えた方角を眺めながら、思わず噴出してしまうのを竜馬はこらえる事ができなかった。
竜馬 「面白い奴だな、佐倉杏子」
杏子 「んなっ・・・!?」
竜馬 「俺は思うんだがなぁ」
杏子 「んなわけないだろっ、ばっ馬鹿じゃねぇの。つーか、馬鹿だろ、お前!ばーか、ばーか!」
竜馬 「・・・そりゃまぁ、頭は良い方ではないとは思うが」
杏子 「うっせー、バーカ!バーカバーカッ!ちねっ!」
杏子は竜馬に「バカ」をたたみかけるように浴びせると、クルリと背を向けて駆け出してしまった。
竜馬 「え、おい・・・!」
慌てて追おうとするが、とんでもない速さで走り出した杏子は、瞬く間に夜の街の中へと消えてしまう。
あとには、むなしく取り残されてしまった、竜馬がぽつんとただ一人。
竜馬 「なんだよ、あいつは・・・ふっ」
杏子の消えた方角を眺めながら、思わず噴出してしまうのを竜馬はこらえる事ができなかった。
竜馬 「面白い奴だな、佐倉杏子」
321: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 22:57:12.64 ID:Hwe04l0B0
・・・
・・・
ほむホーム
杏子と竜馬が去り、武蔵もマミの待つ部屋へと帰っていった、今。
この部屋には私と千歳ゆまの二人だけが残されていた。
これから、少なくともワルプルギス戦が訪れるまでの数日の間、私はこの良く知らない娘と共同生活を営まねばならなくなった。
・・・まぁ、勢いとはいえ、私から言い出した事ではあるのだけれど。
ほむら 「・・・」
ゆま 「・・・」
テレビも無い。雑誌も無い。当然ゲーム機なんて無用なものは置いていない。
だから、とりあえずの話題も無い。その結果として、私たち二人の間には会話が無い。
・・・気まずくも重い雰囲気が今、私の部屋を満たしていた。
・・・
ほむホーム
杏子と竜馬が去り、武蔵もマミの待つ部屋へと帰っていった、今。
この部屋には私と千歳ゆまの二人だけが残されていた。
これから、少なくともワルプルギス戦が訪れるまでの数日の間、私はこの良く知らない娘と共同生活を営まねばならなくなった。
・・・まぁ、勢いとはいえ、私から言い出した事ではあるのだけれど。
ほむら 「・・・」
ゆま 「・・・」
テレビも無い。雑誌も無い。当然ゲーム機なんて無用なものは置いていない。
だから、とりあえずの話題も無い。その結果として、私たち二人の間には会話が無い。
・・・気まずくも重い雰囲気が今、私の部屋を満たしていた。
322: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:01:28.70 ID:Hwe04l0B0
ほむら (困ったわ。子供って、どう扱えば良いのかしら)
武蔵がどうゆまと接していたか。見てはいたし覚えてもいるが、自分でできるかどうかはまた別の問題だ。
と、私が思い悩んでいた、その時。
きゅるる~っと、静寂に包まれていた部屋に鳴り響く、可愛い音。
ゆま 「///」
ほむら 「お腹、空いたの?」
ゆま 「ご、ごめんなさい」
ほむら 「そんな、謝らなくて良いのよ」
そういえば、やる事や話す事が多すぎて、食べる事をすっかり忘れていた。
幼いゆまが、我慢できなくなるのは当然だ。
ほむら 「私こそ、ごめんなさい。遅くなったけれど、夕食にしましょう」
ゆま 「うん!」
とたんにゆまの顔に笑顔の花が咲く。
武蔵がどうゆまと接していたか。見てはいたし覚えてもいるが、自分でできるかどうかはまた別の問題だ。
と、私が思い悩んでいた、その時。
きゅるる~っと、静寂に包まれていた部屋に鳴り響く、可愛い音。
ゆま 「///」
ほむら 「お腹、空いたの?」
ゆま 「ご、ごめんなさい」
ほむら 「そんな、謝らなくて良いのよ」
そういえば、やる事や話す事が多すぎて、食べる事をすっかり忘れていた。
幼いゆまが、我慢できなくなるのは当然だ。
ほむら 「私こそ、ごめんなさい。遅くなったけれど、夕食にしましょう」
ゆま 「うん!」
とたんにゆまの顔に笑顔の花が咲く。
323: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:04:00.90 ID:Hwe04l0B0
こういう自分の欲求に素直でいられるのも、子供の利点・・・いや、美点なのだろう。
少し、羨ましくもある。
ほむら 「待って。今、持ってくるから」
ゆま 「あ、あの、お手伝いする事があったら、ゆまもするよ」
ほむら 「・・・?持ってくるだけだから、あなたはそこで座ってて」
ゆま 「え??」
私は”食料”を放り込んでいる収納へ向かうと、いくつかを無造作に選んで、ゆまの元へ戻った。
持ってきたものを、これまた無造作にテーブルに並べる。ゆまがその様子を、興味深げに見ている。
ゆま 「なぁに、それ・・・」
ほむら 「缶詰、某栄養調整食品、パン、カップ麺、レトルトのカレーと温めるだけで食べられるご飯。お好きなのをどうぞ」
ゆま 「・・・」
ほむら 「・・・?」
少し、羨ましくもある。
ほむら 「待って。今、持ってくるから」
ゆま 「あ、あの、お手伝いする事があったら、ゆまもするよ」
ほむら 「・・・?持ってくるだけだから、あなたはそこで座ってて」
ゆま 「え??」
私は”食料”を放り込んでいる収納へ向かうと、いくつかを無造作に選んで、ゆまの元へ戻った。
持ってきたものを、これまた無造作にテーブルに並べる。ゆまがその様子を、興味深げに見ている。
ゆま 「なぁに、それ・・・」
ほむら 「缶詰、某栄養調整食品、パン、カップ麺、レトルトのカレーと温めるだけで食べられるご飯。お好きなのをどうぞ」
ゆま 「・・・」
ほむら 「・・・?」
324: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:04:48.86 ID:Hwe04l0B0
ゆま 「ほむらお姉ちゃん、お料理しないの?」
ほむら 「しないわ。しなくても、ご飯は食べられるもの」
料理に費やす時間があったら、身体を休めたり、ワルプルギス戦の作戦を考えたり、まどかの事を(ぴー)たり・・・
他に有益な時間の使い方が、幾らでもある。
しなくても良い事をしていられるほど、私には時間の余裕など無いのだ。
ゆま 「でも、こんなのばかり食べてたら、身体を壊しちゃうよ」
ほむら 「良いのよ。私はワルプルギスの夜が来るまでの健康が維持できたのなら・・・」
言いかけて、はっとする。
そうだ、この子はこの世界で、ワルプルギスの夜が去った後も生きていかねばならないのだ。
成り行きとはいえ、人ひとりを預かった以上、いい加減な食事を与えて病気にでもさせてしまったら・・・
ほむら 「とはいえ、私には料理のスキルなんかないし・・・どうしよう」
こんな事なら、簡単なおかずの作り方くらい覚えておけば良かった。
ほむら 「しないわ。しなくても、ご飯は食べられるもの」
料理に費やす時間があったら、身体を休めたり、ワルプルギス戦の作戦を考えたり、まどかの事を(ぴー)たり・・・
他に有益な時間の使い方が、幾らでもある。
しなくても良い事をしていられるほど、私には時間の余裕など無いのだ。
ゆま 「でも、こんなのばかり食べてたら、身体を壊しちゃうよ」
ほむら 「良いのよ。私はワルプルギスの夜が来るまでの健康が維持できたのなら・・・」
言いかけて、はっとする。
そうだ、この子はこの世界で、ワルプルギスの夜が去った後も生きていかねばならないのだ。
成り行きとはいえ、人ひとりを預かった以上、いい加減な食事を与えて病気にでもさせてしまったら・・・
ほむら 「とはいえ、私には料理のスキルなんかないし・・・どうしよう」
こんな事なら、簡単なおかずの作り方くらい覚えておけば良かった。
325: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:07:44.87 ID:Hwe04l0B0
ほむら 「・・・ん?」
料理、といえば。
私の周辺には、料理の先生としてうってつけの人が一人いたじゃないか。
ゆま 「・・・ほむらお姉ちゃん?」
ほむら 「ごめんなさいね、ゆま。今日はここにあるので我慢してくれる?近いうちに必ず、きちんとしたものを食べさせてあげるから」
ゆま 「うん」
素直に頷くと、ゆまはどれを食べようかと目の前の食料郡に目を移した。
あれこれ手にとって選んでいる姿を、何とはなしに眺めながら思う。
明日にでも彼女と接触してみよう。どの道、彼女とは話しをしなければならなかったのだ。
その良いきっかけが、ゆまのお陰で得られる事ができたと考えれば、これも僥倖だ。
料理、といえば。
私の周辺には、料理の先生としてうってつけの人が一人いたじゃないか。
ゆま 「・・・ほむらお姉ちゃん?」
ほむら 「ごめんなさいね、ゆま。今日はここにあるので我慢してくれる?近いうちに必ず、きちんとしたものを食べさせてあげるから」
ゆま 「うん」
素直に頷くと、ゆまはどれを食べようかと目の前の食料郡に目を移した。
あれこれ手にとって選んでいる姿を、何とはなしに眺めながら思う。
明日にでも彼女と接触してみよう。どの道、彼女とは話しをしなければならなかったのだ。
その良いきっかけが、ゆまのお陰で得られる事ができたと考えれば、これも僥倖だ。
326: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:10:09.56 ID:Hwe04l0B0
ゆま 「えっと、なぁに?ゆまの顔、じっと見て」
ほむら 「なんでもないわ。選び終わった?」
ゆま 「うん、これ!」
ゆまがいてくれたお陰で、佐倉杏子との話し合いもスムーズに進める事ができた。
そして、あの人との話にも・・・
もしかして千歳ゆまは、これからの戦いを占う上で、私たちを良い方向へと導いてくれる天使ともなってくれる存在なのかもしれない。
ほむら 「じゃあ、私も同じ物にしようかな。ちょっと待ってね、お湯を持ってくるから」
ゆま 「えへへー、うんっ」
明日、さっそく彼女と接触してみよう。
そして、告げる。これから起こる事を。真実を。
だけれど、もう同じ過ちは繰り返さない。
巴マミ・・・
必ず私たちの仲間にして見せるわ。
ほむら 「なんでもないわ。選び終わった?」
ゆま 「うん、これ!」
ゆまがいてくれたお陰で、佐倉杏子との話し合いもスムーズに進める事ができた。
そして、あの人との話にも・・・
もしかして千歳ゆまは、これからの戦いを占う上で、私たちを良い方向へと導いてくれる天使ともなってくれる存在なのかもしれない。
ほむら 「じゃあ、私も同じ物にしようかな。ちょっと待ってね、お湯を持ってくるから」
ゆま 「えへへー、うんっ」
明日、さっそく彼女と接触してみよう。
そして、告げる。これから起こる事を。真実を。
だけれど、もう同じ過ちは繰り返さない。
巴マミ・・・
必ず私たちの仲間にして見せるわ。
327: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:15:36.13 ID:Hwe04l0B0
・・・
・・・
翌日
見滝原中学校
昼休み。
私は巴マミと接触するべく、三年生の教室へと向かった。
教室の入り口にさしかかると、折りよく巴マミがお弁当を片手に、廊下へと出てくる所に行き当たる。
・・・幸先がいいわ。
マミ 「・・・あら」
だけれどマミは、私の顔を認めるやいなや、表情に険しい陰を刻んでしまう。
それはそうか。
成り行きで食事を共にした事はあるとはいえ、私たちは依然として敵のままなのだ。
マミ 「暁美さん・・・三年の教室に何か用?」
ほむら 「巴さん、どこかへ行くの?」
マミ 「屋上へ。お昼は鹿目さんと食べる約束をしていたから」
・・・
翌日
見滝原中学校
昼休み。
私は巴マミと接触するべく、三年生の教室へと向かった。
教室の入り口にさしかかると、折りよく巴マミがお弁当を片手に、廊下へと出てくる所に行き当たる。
・・・幸先がいいわ。
マミ 「・・・あら」
だけれどマミは、私の顔を認めるやいなや、表情に険しい陰を刻んでしまう。
それはそうか。
成り行きで食事を共にした事はあるとはいえ、私たちは依然として敵のままなのだ。
マミ 「暁美さん・・・三年の教室に何か用?」
ほむら 「巴さん、どこかへ行くの?」
マミ 「屋上へ。お昼は鹿目さんと食べる約束をしていたから」
328: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:17:55.58 ID:Hwe04l0B0
ほむら 「そう。私は、あなたに話しがあってきたのよ」
マミ 「・・・用事は話だけかしら?」
ほむら 「ここは学校。事を荒立てるつもりは無い。歩きながらで良いわ。私の話を聞いてくれるかしら」
マミ 「・・・良いわ」
警戒の色を残しながらも、マミは頷くと屋上への道を歩き始めた。
私もその後を追う。
ほむら 「何もしないわ。そんなに警戒しなくても・・・」
マミ 「なんのことかしら」
ほむら 「まるで背中に目があるよう。私の気配を間断なく把握しようとしている。いつ襲い掛かられても良いように・・・」
マミ 「当然の処置だわ。あなたと私は、敵同士なんだから。そうでしょう?」
ほむら 「少なくとも、私にとっては違うわ」
マミ 「・・・」
マミ 「・・・用事は話だけかしら?」
ほむら 「ここは学校。事を荒立てるつもりは無い。歩きながらで良いわ。私の話を聞いてくれるかしら」
マミ 「・・・良いわ」
警戒の色を残しながらも、マミは頷くと屋上への道を歩き始めた。
私もその後を追う。
ほむら 「何もしないわ。そんなに警戒しなくても・・・」
マミ 「なんのことかしら」
ほむら 「まるで背中に目があるよう。私の気配を間断なく把握しようとしている。いつ襲い掛かられても良いように・・・」
マミ 「当然の処置だわ。あなたと私は、敵同士なんだから。そうでしょう?」
ほむら 「少なくとも、私にとっては違うわ」
マミ 「・・・」
329: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:19:41.38 ID:Hwe04l0B0
ほむら 「巴マミ。あなたにお願いがあるの」
マミ 「驚いた。暁美さんが私にお願いとはね。それで?私の持っているグリーフシードでも分けて貰いたいの?」
ほむら 「いいえ」
マミ 「では、見滝原のテリトリーを譲ってくれって事かしら?」
ほむら 「そんなこと、思ったこともない」
マミ 「・・・じゃあ、いったい何なの?」
ほむら 「巴さん。私、今ね。事情があって小さい子供を預かっているの」
マミ 「・・・はい?」
歩を止めたマミが、こちらへクルリと振り向いた。
マミ 「あなたが、子供、を・・・?」
私の話の意図がつかめないと言った顔で、じっとこちら見る巴マミ。
まぁ、無理もないけれど。
ほむら 「ええ。昨日からなんだけれどね」
マミ 「驚いた。暁美さんが私にお願いとはね。それで?私の持っているグリーフシードでも分けて貰いたいの?」
ほむら 「いいえ」
マミ 「では、見滝原のテリトリーを譲ってくれって事かしら?」
ほむら 「そんなこと、思ったこともない」
マミ 「・・・じゃあ、いったい何なの?」
ほむら 「巴さん。私、今ね。事情があって小さい子供を預かっているの」
マミ 「・・・はい?」
歩を止めたマミが、こちらへクルリと振り向いた。
マミ 「あなたが、子供、を・・・?」
私の話の意図がつかめないと言った顔で、じっとこちら見る巴マミ。
まぁ、無理もないけれど。
ほむら 「ええ。昨日からなんだけれどね」
330: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:21:15.88 ID:Hwe04l0B0
マミ 「そ、そう、大変ね・・・それで、ええと、それと私とどんな関わりが・・・?」
ほむら 「料理、教えて下さい」
言いながら、ぺこりと頭を下げる。
マミ 「・・・」
ほむら 「・・・」
マミ 「は・・・い??」
ほむら 「私、料理ができません。その子に食べさせてあげるものを作れないんです」
マミ 「???」
ほむら 「だからって、子供にでき合いばかり食べさせるわけにもいかないじゃないですか。そう思いません、巴さん?」
マミ 「それは、そうね・・・成長に良くないものね・・・」
ほむら 「だからと言って、悠長に料理を練習している暇は無いんです。分かりますか、巴さん?」
マミ 「まぁ、今まさに料理が必要なんだしね・・・」
ほむら 「料理、教えて下さい」
言いながら、ぺこりと頭を下げる。
マミ 「・・・」
ほむら 「・・・」
マミ 「は・・・い??」
ほむら 「私、料理ができません。その子に食べさせてあげるものを作れないんです」
マミ 「???」
ほむら 「だからって、子供にでき合いばかり食べさせるわけにもいかないじゃないですか。そう思いません、巴さん?」
マミ 「それは、そうね・・・成長に良くないものね・・・」
ほむら 「だからと言って、悠長に料理を練習している暇は無いんです。分かりますか、巴さん?」
マミ 「まぁ、今まさに料理が必要なんだしね・・・」
331: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:24:34.33 ID:Hwe04l0B0
ほむら 「そうなんです。だから、誰かに直に教えてもらえたら、手っ取り早いなと。だとしたら、巴さん。それには、あなた以上の適役はいないわ」
マミ 「え・・・あ、ありがとう・・・んん??」
ほむら 「私の言っている事に賛同してもらえますか、巴さん?」
マミ 「え、ええ?えっと、まぁ・・・うん・・・あれ??」
ほむら 「ありがとうございます。では、今日の放課後にでもさっそく。私、授業が終ったら校門前で待ってますので」
マミ 「えっ!?ちょ、ちょっと、暁美さん!?」
ほむら 「必要な材料から教えて下さい。買い物をして、それから巴さんの部屋へ行きましょう。じゃ、そういうことで」
マミ 「暁美さん!?私、教えるなんて一言も・・・ちょっと、暁美さんったら!」
私はマミの制止を振り切って、足早にその場を立ち去る。
呼び止めて、断る。そんな隙を彼女には、絶対に与えたりなんかしない。
一方的にでもなんでも、約束事を取り交わせば、律儀な彼女はそれを反故にすることなんて、決してしたりはしないだろう。
つまり、この場でマミをまいてしまえば、私の思う壺。勝ち、なのだ。
マミ 「え・・・あ、ありがとう・・・んん??」
ほむら 「私の言っている事に賛同してもらえますか、巴さん?」
マミ 「え、ええ?えっと、まぁ・・・うん・・・あれ??」
ほむら 「ありがとうございます。では、今日の放課後にでもさっそく。私、授業が終ったら校門前で待ってますので」
マミ 「えっ!?ちょ、ちょっと、暁美さん!?」
ほむら 「必要な材料から教えて下さい。買い物をして、それから巴さんの部屋へ行きましょう。じゃ、そういうことで」
マミ 「暁美さん!?私、教えるなんて一言も・・・ちょっと、暁美さんったら!」
私はマミの制止を振り切って、足早にその場を立ち去る。
呼び止めて、断る。そんな隙を彼女には、絶対に与えたりなんかしない。
一方的にでもなんでも、約束事を取り交わせば、律儀な彼女はそれを反故にすることなんて、決してしたりはしないだろう。
つまり、この場でマミをまいてしまえば、私の思う壺。勝ち、なのだ。
332: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:26:54.56 ID:Hwe04l0B0
マミ 「暁美さんたら、ちょっと~~~!」
追いかけようにも、そんな事をしていたらまどかとの約束の時間が過ぎてしまう。
この場で巴マミは、しつこく私を追うことはしないだろう。
そんな、私の読みは当たった。
すでに私たちの間の距離は、かなり開いてしまっている。
姿すら見えなくなった巴マミの、私を呼ぶ声だけがか細く遠くから聞こえてくるのみ。
ほむら 「ふっ、勝った」ふぁさっ
相手の性格や状況から、二手三手先を読み、自分の都合の良いように事を進める。
これこそが、戦術というものだ。
追いかけようにも、そんな事をしていたらまどかとの約束の時間が過ぎてしまう。
この場で巴マミは、しつこく私を追うことはしないだろう。
そんな、私の読みは当たった。
すでに私たちの間の距離は、かなり開いてしまっている。
姿すら見えなくなった巴マミの、私を呼ぶ声だけがか細く遠くから聞こえてくるのみ。
ほむら 「ふっ、勝った」ふぁさっ
相手の性格や状況から、二手三手先を読み、自分の都合の良いように事を進める。
これこそが、戦術というものだ。
333: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 23:29:39.95 ID:Hwe04l0B0
竜馬 「お前、えげつないな」
隠れて様子を見ていた竜馬が出てきて、呆れ顔で呟いたけれど気にしない。
そんなことより、重要な事を私は竜馬に確かめる。
ほむら 「武蔵さんに話は通しておいてくれた?」
竜馬 「ああ、巴マミのお料理教室の場に、あいつも居合わせるように。ちゃんと言い含めておいたぜ」
ほむら 「ありがとう」
竜馬 「・・・本当に大丈夫なんだろうな。もし失敗でもしたら、武蔵の恨みまで買ってしまいかねないんだぞ」
ほむら 「もちろん確約はできない。だけど、きっと大丈夫。この時間軸はいつもと違う。なにより、巴さんには心の支えとなってくれる人が側にいてくれる・・・」
そう、巴マミの最大の敵。
それは魔女でも敵対する魔法少女でもない。
孤独に抗う事のできない、繊細な心だ。
心のより所とするものが無かったからこそ、かつての時間軸でのマミは悲惨な真実に抵抗できず、その心を内側から瓦解させてしまったのだ。
だけれど、今回は・・・
ほむら 「いずれにせよ、魔法少女がたどる運命は一つ。知るのが先か後かの差があるだけ。それに、あなたも以前に言っていたはずよ」
竜馬 「そうだな。真実を知らねば、身の振り方を決める事も出来ない。それは、本人のためにもならない・・・」
ほむら 「とにかく、この件は任せてもらうわ。あなたは今日は、私が帰るまでゆまの相手でもしていて」
隠れて様子を見ていた竜馬が出てきて、呆れ顔で呟いたけれど気にしない。
そんなことより、重要な事を私は竜馬に確かめる。
ほむら 「武蔵さんに話は通しておいてくれた?」
竜馬 「ああ、巴マミのお料理教室の場に、あいつも居合わせるように。ちゃんと言い含めておいたぜ」
ほむら 「ありがとう」
竜馬 「・・・本当に大丈夫なんだろうな。もし失敗でもしたら、武蔵の恨みまで買ってしまいかねないんだぞ」
ほむら 「もちろん確約はできない。だけど、きっと大丈夫。この時間軸はいつもと違う。なにより、巴さんには心の支えとなってくれる人が側にいてくれる・・・」
そう、巴マミの最大の敵。
それは魔女でも敵対する魔法少女でもない。
孤独に抗う事のできない、繊細な心だ。
心のより所とするものが無かったからこそ、かつての時間軸でのマミは悲惨な真実に抵抗できず、その心を内側から瓦解させてしまったのだ。
だけれど、今回は・・・
ほむら 「いずれにせよ、魔法少女がたどる運命は一つ。知るのが先か後かの差があるだけ。それに、あなたも以前に言っていたはずよ」
竜馬 「そうだな。真実を知らねば、身の振り方を決める事も出来ない。それは、本人のためにもならない・・・」
ほむら 「とにかく、この件は任せてもらうわ。あなたは今日は、私が帰るまでゆまの相手でもしていて」
341: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:07:54.73 ID:+hO80t+B0
・・・
・・・
放課後。
律儀なマミは約束を守って、一人校門前でたたずんでいる私の前に現れた。
計算通り・・・!
ため息をつきつき、気乗りのしない表情を隠しもしないところは、この際大目に見ることにしよう。
マミ 「それで買い物からだっけ。いったい、何を作ってあげたいの?」
ほむら 「美味しい食事を」
マミ 「だから、その種類の事を・・・」
ほむら 「え・・・」
マミ 「・・・」
ほむら 「???」
マミ 「・・・その子、どんな食べ物が好きなのかしら?」
ほむら 「さぁ・・・」
マミ 「さぁって、何も聞いてないの?」
ほむら 「はい」
・・・
放課後。
律儀なマミは約束を守って、一人校門前でたたずんでいる私の前に現れた。
計算通り・・・!
ため息をつきつき、気乗りのしない表情を隠しもしないところは、この際大目に見ることにしよう。
マミ 「それで買い物からだっけ。いったい、何を作ってあげたいの?」
ほむら 「美味しい食事を」
マミ 「だから、その種類の事を・・・」
ほむら 「え・・・」
マミ 「・・・」
ほむら 「???」
マミ 「・・・その子、どんな食べ物が好きなのかしら?」
ほむら 「さぁ・・・」
マミ 「さぁって、何も聞いてないの?」
ほむら 「はい」
342: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:08:51.91 ID:+hO80t+B0
マミ 「・・・あっきれた。普通、人に何かをお願いするなら、そういう下調べはしておくものでしょう!?」
ほむら 「・・・すみません」
美味しい料理。それだけしか頭に無くって、具体的な事なんか思いつきもしなかった。
これではマミが気を悪くするのも当然だ。だから私は、素直に頭を下げた。
マミ 「・・・良いわ。じゃ、オーソドックスに考えましょう。大抵の子供が好きで、あなたにも簡単に作れる美味しいもの・・・」
ほむら 「・・・」
そう言われても私にはカップ麺しか思い浮かばなかったので、黙っている事にする。
マミ 「カレーとか、どうかしらね」
ほむら 「あ、良いですね」
カレーなら、確かに嫌いな人はまずいないだろう。
それに野菜やお肉も入っているので、栄養的にも良さそうだ。
ほむら 「・・・すみません」
美味しい料理。それだけしか頭に無くって、具体的な事なんか思いつきもしなかった。
これではマミが気を悪くするのも当然だ。だから私は、素直に頭を下げた。
マミ 「・・・良いわ。じゃ、オーソドックスに考えましょう。大抵の子供が好きで、あなたにも簡単に作れる美味しいもの・・・」
ほむら 「・・・」
そう言われても私にはカップ麺しか思い浮かばなかったので、黙っている事にする。
マミ 「カレーとか、どうかしらね」
ほむら 「あ、良いですね」
カレーなら、確かに嫌いな人はまずいないだろう。
それに野菜やお肉も入っているので、栄養的にも良さそうだ。
343: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:15:07.01 ID:+hO80t+B0
マミ 「それなら材料は家にあるものだけで作れるから、買い物は不要ね。このまま帰りましょ」
ほむら 「あ、でしたら材料費を・・・」
慌ててお金を渡そうとする私をマミは制した。
マミ 「必要ないわ。たくさん作れば、家の夕食にもなるんだから。さぁ、行きましょ」
ほむら 「あ、でも・・・」
やはり材料費すら出さないのは気が引ける。
そう思って再びお金を渡そうとする私に構わず、マミはスタスタと前に立って歩き出してしまう。
こうなっては、やむをえない。
今は私も、マミに従うように後ろに続く以外になす術は無かった。
ほむら 「・・・」
私の目の前にはマミの背中。
その背中を追うように、後ろを歩く私。
・・・何だか、昔を思い出すようだ。
ほむら 「あ、でしたら材料費を・・・」
慌ててお金を渡そうとする私をマミは制した。
マミ 「必要ないわ。たくさん作れば、家の夕食にもなるんだから。さぁ、行きましょ」
ほむら 「あ、でも・・・」
やはり材料費すら出さないのは気が引ける。
そう思って再びお金を渡そうとする私に構わず、マミはスタスタと前に立って歩き出してしまう。
こうなっては、やむをえない。
今は私も、マミに従うように後ろに続く以外になす術は無かった。
ほむら 「・・・」
私の目の前にはマミの背中。
その背中を追うように、後ろを歩く私。
・・・何だか、昔を思い出すようだ。
344: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:16:03.92 ID:+hO80t+B0
マミ 「えっと、なに?」
私の視線に気がついたマミが振り向いて、怪訝な表情を見せる。
マミ 「じっと私の背中なんか見て、もしかして、何かついてる?」
ほむら 「ううん、別に何も」
マミ 「・・・そう?」
ちょっと首をかしげた後、彼女は前を向き直り、再び歩き始めた。
ほむら (背中・・・)
再び、私の目の前に現れるマミの背中。
私の視線に気がついたマミが振り向いて、怪訝な表情を見せる。
マミ 「じっと私の背中なんか見て、もしかして、何かついてる?」
ほむら 「ううん、別に何も」
マミ 「・・・そう?」
ちょっと首をかしげた後、彼女は前を向き直り、再び歩き始めた。
ほむら (背中・・・)
再び、私の目の前に現れるマミの背中。
345: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:19:04.53 ID:+hO80t+B0
あの頃・・・
魔法少女になりたての、右も左も分からなかった私。
そんな私の目の前には、常にマミの背中があった。
いつか、あの背中に並べるだろうか。
努力を重ねれば、超える事ができるのだろうか。
当時の私は、華麗なマミの戦い方を見せ付けられるたび、そう夢想せずにはいられなかった。
そう。彼女のように強くあらねば、まどかを守る事なんて夢のまた夢だと。
そんなふうに、思っていたから。
ほむら (巴マミは・・・私の進むべき道を照らす月明かりであり・・・目標だった)
だけれど。
幾度も繰り返された時間遡行は、私とマミの距離を大きく隔ててしまう。
魔法少女になりたての、右も左も分からなかった私。
そんな私の目の前には、常にマミの背中があった。
いつか、あの背中に並べるだろうか。
努力を重ねれば、超える事ができるのだろうか。
当時の私は、華麗なマミの戦い方を見せ付けられるたび、そう夢想せずにはいられなかった。
そう。彼女のように強くあらねば、まどかを守る事なんて夢のまた夢だと。
そんなふうに、思っていたから。
ほむら (巴マミは・・・私の進むべき道を照らす月明かりであり・・・目標だった)
だけれど。
幾度も繰り返された時間遡行は、私とマミの距離を大きく隔ててしまう。
346: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:20:23.57 ID:+hO80t+B0
いつしか、マミの背中は憧れの対象から、私の行く手をはばむ大きな壁へと変わってしまった。
ほむら (戦う目的そのものが根本から違うのだもの。無理もないことだわ)
敵に回せば、これほどやりにくい相手はいない。
何度も厄介な目にも遭わされてきた。
でも・・・
憎めない。嫌いなんてなれない。
マミ 「ついたわよ」
ほむら 「え・・・」
はっとして顔を上げると、そこは見慣れたマンションの入り口だった。
考え事をしながら足を運んでいるうちに、目的の場所についてしまったらしい。
マミ 「ここが私のマンション・・・と言っても、暁美さんは前に一度来たことがあるから知っているわよね」
ほむら 「ええ」
本当は一度どころか、もう何度も来たことがあるのだけれど。
私はマミに促されるまま、マンションの入り口を潜った。
杏子 「・・・」
ほむら (戦う目的そのものが根本から違うのだもの。無理もないことだわ)
敵に回せば、これほどやりにくい相手はいない。
何度も厄介な目にも遭わされてきた。
でも・・・
憎めない。嫌いなんてなれない。
マミ 「ついたわよ」
ほむら 「え・・・」
はっとして顔を上げると、そこは見慣れたマンションの入り口だった。
考え事をしながら足を運んでいるうちに、目的の場所についてしまったらしい。
マミ 「ここが私のマンション・・・と言っても、暁美さんは前に一度来たことがあるから知っているわよね」
ほむら 「ええ」
本当は一度どころか、もう何度も来たことがあるのだけれど。
私はマミに促されるまま、マンションの入り口を潜った。
杏子 「・・・」
347: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:24:01.34 ID:+hO80t+B0
・・・
・・・
マミの部屋。
そこでは竜馬のお膳立て通り、武蔵が私たちが来るのを待っていた。
今日の私の計画をつつがなく成功させるためには、何としても彼の協力が不可欠だ。
この役目、他の人に代わりはできない。
武蔵 「よう、ほむらちゃん。いらっしゃい」
声をかけてきた武蔵の顔が、若干緊張で引きつっている。
竜馬から今日の私の計画を聞いているはず。だから、無理もない。
武蔵は、巴マミのことを実の妹として大切に思っているのだから。
マミ 「ただいま、お兄さん。これからこの子にお料理をレクチャーするから」
ほむら (ふだん通り”お兄ちゃん”って呼べば良いのに)ぽそっ
マミ 「なにか?」
ほむら 「いいえ、今日はよろしくお願いします」
・・・
マミの部屋。
そこでは竜馬のお膳立て通り、武蔵が私たちが来るのを待っていた。
今日の私の計画をつつがなく成功させるためには、何としても彼の協力が不可欠だ。
この役目、他の人に代わりはできない。
武蔵 「よう、ほむらちゃん。いらっしゃい」
声をかけてきた武蔵の顔が、若干緊張で引きつっている。
竜馬から今日の私の計画を聞いているはず。だから、無理もない。
武蔵は、巴マミのことを実の妹として大切に思っているのだから。
マミ 「ただいま、お兄さん。これからこの子にお料理をレクチャーするから」
ほむら (ふだん通り”お兄ちゃん”って呼べば良いのに)ぽそっ
マミ 「なにか?」
ほむら 「いいえ、今日はよろしくお願いします」
348: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:25:22.84 ID:+hO80t+B0
マミ 「はい。じゃ、さっそくキッチンへ行きましょ」
ほむら 「ええ」
マミの後を追ってキッチンへ向かおうとする私の袖を、武蔵が掴んだ。
武蔵 「・・・ほむらちゃん」
ほむら 「・・・大丈夫。ここには、あなたがいるんだから」
武蔵 「君のことは信用している。だが、やはり俺は心配だよ」
ほむら 「・・・」
武蔵 「俺はもう、大切な人を失いたくない」
ほむら 「向き合わなくてはいけないのよ。誰もが自分の運命と・・・」
武蔵 「そうだよな。それは分かってるんだけど・・・」
ほむら 「武蔵さん、頼りにしているから」
武蔵 「・・・」
マミ 「暁美さん?早くこっちへいらっしゃい」
ほむら 「あ、はい」
キッチンから呼びかけるマミに返事をして、わたしもそちらへと向かう。
目配せすると、武蔵は頷いてリビングへと戻っていった。
・・・よし、気持ちを切り替えよう。まずは料理だ。
マミが教えてくれるのだから、私も気合を入れてしっかりと学ばなければならない。
そして、それが終ったら・・・
今度は私がマミに”教える”番だ。
ほむら 「ええ」
マミの後を追ってキッチンへ向かおうとする私の袖を、武蔵が掴んだ。
武蔵 「・・・ほむらちゃん」
ほむら 「・・・大丈夫。ここには、あなたがいるんだから」
武蔵 「君のことは信用している。だが、やはり俺は心配だよ」
ほむら 「・・・」
武蔵 「俺はもう、大切な人を失いたくない」
ほむら 「向き合わなくてはいけないのよ。誰もが自分の運命と・・・」
武蔵 「そうだよな。それは分かってるんだけど・・・」
ほむら 「武蔵さん、頼りにしているから」
武蔵 「・・・」
マミ 「暁美さん?早くこっちへいらっしゃい」
ほむら 「あ、はい」
キッチンから呼びかけるマミに返事をして、わたしもそちらへと向かう。
目配せすると、武蔵は頷いてリビングへと戻っていった。
・・・よし、気持ちを切り替えよう。まずは料理だ。
マミが教えてくれるのだから、私も気合を入れてしっかりと学ばなければならない。
そして、それが終ったら・・・
今度は私がマミに”教える”番だ。
349: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:26:20.81 ID:+hO80t+B0
・・・
・・・
案の定、と言うべきか。
私の指は切り傷だらけとなっていた。
ほむら 「野菜の皮むきが、あんなに難しかったとは・・・」
愕然とした。
爆弾なんかも自作していたし、私はもう少し自分のことを器用な人間だと思っていたのだけれど・・・
マミ 「まぁ・・・初めてなら仕方がないじゃない。これから徐々に慣れていけば良いのよ」
ほむら 「はい・・・」
マミは慰めてくれたけれど、これは重大な課題だ。
カレーを作るのに必要な工程は頭で覚える事ができても、実際の作業は身体で習得するしかないのだから。
・・・
案の定、と言うべきか。
私の指は切り傷だらけとなっていた。
ほむら 「野菜の皮むきが、あんなに難しかったとは・・・」
愕然とした。
爆弾なんかも自作していたし、私はもう少し自分のことを器用な人間だと思っていたのだけれど・・・
マミ 「まぁ・・・初めてなら仕方がないじゃない。これから徐々に慣れていけば良いのよ」
ほむら 「はい・・・」
マミは慰めてくれたけれど、これは重大な課題だ。
カレーを作るのに必要な工程は頭で覚える事ができても、実際の作業は身体で習得するしかないのだから。
350: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:26:56.25 ID:+hO80t+B0
野菜か・・・思わぬ伏兵だったわね。
なにせ、ジャガイモの皮をむこうとすると、包丁がイモの上でツルツル滑って、切れていたのは皮ではなく私の肉だったって言う始末。
じわじわと私を傷つけ、身体ばかりか精神にまでダメージを与えてくるとは、この野菜という存在・・・
ほむら 「・・・もしかしたら魔女並みに厄介な敵なのかも知れないわ」
マミ 「なに言ってるの。さぁ、せっかく完成したんだから、さっそく試食してみましょ」
付き合っていられないと言った口調のマミ。
たった今出来上がったばかりのカレーを、彼女がお皿に盛り付けてくれている。
マミ 「さ、リビングに運ぶの手伝って。兄にも食べてもらって、感想聞いてみましょうね」
なにせ、ジャガイモの皮をむこうとすると、包丁がイモの上でツルツル滑って、切れていたのは皮ではなく私の肉だったって言う始末。
じわじわと私を傷つけ、身体ばかりか精神にまでダメージを与えてくるとは、この野菜という存在・・・
ほむら 「・・・もしかしたら魔女並みに厄介な敵なのかも知れないわ」
マミ 「なに言ってるの。さぁ、せっかく完成したんだから、さっそく試食してみましょ」
付き合っていられないと言った口調のマミ。
たった今出来上がったばかりのカレーを、彼女がお皿に盛り付けてくれている。
マミ 「さ、リビングに運ぶの手伝って。兄にも食べてもらって、感想聞いてみましょうね」
351: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:28:33.29 ID:+hO80t+B0
・・・
・・・
完成したカレーの味は上々だった。
見た目不恰好な、私が切った野菜たちも、口の中に入れてしまえば味は同じ。
マミの手ほどき通りに作ったルーと口の中で混ざり合い、まさに絶妙な味のコントラストを舌の上に彩ってくれる。
ほむら 「・・・美味しい」
武蔵 「うんっ、こりゃ飯が進む。お代り、何杯でもいけちゃいそうだな!」
マミ 「暁美さん、頑張ったものね」
ほむら 「私は巴さんの指示通りに、手を動かしただけです」
マミ 「でも、次からは一人でも作れるでしょ。一応レシピはメモにして、後で渡すから参考にしてね」
ほむら 「何から何まで、ありがとうございます」
マミ 「一度引き受けた以上は、中途半端はしたくないもの」
頭を下げた私に、いかにもマミらしい返事がかえって来た。
・・・
完成したカレーの味は上々だった。
見た目不恰好な、私が切った野菜たちも、口の中に入れてしまえば味は同じ。
マミの手ほどき通りに作ったルーと口の中で混ざり合い、まさに絶妙な味のコントラストを舌の上に彩ってくれる。
ほむら 「・・・美味しい」
武蔵 「うんっ、こりゃ飯が進む。お代り、何杯でもいけちゃいそうだな!」
マミ 「暁美さん、頑張ったものね」
ほむら 「私は巴さんの指示通りに、手を動かしただけです」
マミ 「でも、次からは一人でも作れるでしょ。一応レシピはメモにして、後で渡すから参考にしてね」
ほむら 「何から何まで、ありがとうございます」
マミ 「一度引き受けた以上は、中途半端はしたくないもの」
頭を下げた私に、いかにもマミらしい返事がかえって来た。
352: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:30:32.02 ID:+hO80t+B0
武蔵 「しっかし、本当に美味いな、このカレー。なにか、特別な材料でも使ったのかい?」
マミ 「ううん、普通の市販のルーよ。ただね、ほんの少し工夫を加えるだけで、味って見違えちゃうものなの」
武蔵 「へぇ~、なんにしてもたいしたものだ」
杏子 「美味いけど、あたしはもう少し辛い方が好みかな」
ほむら 「それは・・・小さな子に食べさせるのが前提だから、敢えて甘めに教えてもらったのよ」
杏子 「そっか。ま、これはこれでイケるけどさ。あ、お代りもらえる?」
武蔵 「杏子ちゃんさ、もう少しきちんと噛んで食べた方が良いぞ。カレーは逃げたりしないんだから、慌てて食べなくて良いんだぜ」
杏子 「慌ててるつもりは無いんだけど・・・つうか、説教は良いから、早くお代り」
マミ 「はいはい・・・ちょっと待ってね」
ほむら 「・・・」
武蔵 「・・・」
マミ 「・・・佐倉さん?」
杏子 「はえ?」
マミ 「あなた、ものすごく自然にカレーを食べてるけど、どうしてここにいるの?」
マミ 「ううん、普通の市販のルーよ。ただね、ほんの少し工夫を加えるだけで、味って見違えちゃうものなの」
武蔵 「へぇ~、なんにしてもたいしたものだ」
杏子 「美味いけど、あたしはもう少し辛い方が好みかな」
ほむら 「それは・・・小さな子に食べさせるのが前提だから、敢えて甘めに教えてもらったのよ」
杏子 「そっか。ま、これはこれでイケるけどさ。あ、お代りもらえる?」
武蔵 「杏子ちゃんさ、もう少しきちんと噛んで食べた方が良いぞ。カレーは逃げたりしないんだから、慌てて食べなくて良いんだぜ」
杏子 「慌ててるつもりは無いんだけど・・・つうか、説教は良いから、早くお代り」
マミ 「はいはい・・・ちょっと待ってね」
ほむら 「・・・」
武蔵 「・・・」
マミ 「・・・佐倉さん?」
杏子 「はえ?」
マミ 「あなた、ものすごく自然にカレーを食べてるけど、どうしてここにいるの?」
353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:32:50.35 ID:+hO80t+B0
杏子 「や、普通にチャイム鳴らして、玄関から入ってきたけど」
武蔵 「俺が上げたんだけど、いけなかったかな?」
マミ 「・・・いけないとか、そうじゃなくって・・・ていうかお兄ちゃん、彼女の事を名前で呼んでたわよね?」
武蔵 「まぁ・・・すでに顔見知りだしなぁ」
マミ 「え・・・」
ほむら 「・・・私からも聞きたいわ、佐倉杏子。あなたがなぜここにいるの?」
マミ 「暁美さんとも、知り合いだったの・・・?」
ほむら 「ええ」
杏子 「ほむらとマミが連れ立って歩いてるの見かけてさ。珍しい取り合わせで面白そうだったから、ついて来てみたんだよ」
ほむら 「・・・」
杏子 「それに、ほむらと打ち合わせておきたいこともあってさ。ま、ついでだよ、ついで」
ほむら 「打ち合わせ・・・?」
杏子 「ああ。互いの連絡手段をどうするか、まだ決めてなかっただろ。魔女を見つけた時どう動くか、とかさ、色々」
マミ 「え・・・それ・・・どういうこと・・・?」
武蔵 「俺が上げたんだけど、いけなかったかな?」
マミ 「・・・いけないとか、そうじゃなくって・・・ていうかお兄ちゃん、彼女の事を名前で呼んでたわよね?」
武蔵 「まぁ・・・すでに顔見知りだしなぁ」
マミ 「え・・・」
ほむら 「・・・私からも聞きたいわ、佐倉杏子。あなたがなぜここにいるの?」
マミ 「暁美さんとも、知り合いだったの・・・?」
ほむら 「ええ」
杏子 「ほむらとマミが連れ立って歩いてるの見かけてさ。珍しい取り合わせで面白そうだったから、ついて来てみたんだよ」
ほむら 「・・・」
杏子 「それに、ほむらと打ち合わせておきたいこともあってさ。ま、ついでだよ、ついで」
ほむら 「打ち合わせ・・・?」
杏子 「ああ。互いの連絡手段をどうするか、まだ決めてなかっただろ。魔女を見つけた時どう動くか、とかさ、色々」
マミ 「え・・・それ・・・どういうこと・・・?」
354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:34:12.72 ID:+hO80t+B0
杏子 「共闘する事になったんだよ。あたしとほむらと、魔女の見える流や武蔵たちとさ」
マミ 「・・・」
マミの目が、驚きに丸く見開かれる。
そのまま固まってしまうマミ。いくぶん顔も青ざめて見える。
ほむら (・・・まずい)
順を追ってマミに状況を説明して、仲間にも加わってもらうつもりだったのに。
想定外の杏子の乱入で、段取りが狂ってしまった。
お陰でマミは、心中じぶんがのけ者にされているのではと訝っているに違いない。
それも、私たちだけじゃない。最も頼りとする兄も含めて、だ。
今、彼女の心の中では、最も厄介な敵がグルグルと渦巻くようにマミの心臓を締め付けているはず。
そう、孤独というマミにとって最強最悪の敵が。
杏子 「てことで、あたしも見滝原でしばらく活動する事になったから。一応、ここはマミのテリトリーだからな」
マミ 「・・・」
杏子 「一言いっておかないと、筋が通らないだろ。で、いい機会だから、お邪魔させてもらったって訳さ」
ほむら 「佐倉さん、ちょっと黙って」
杏子 「あん?」
マミ 「・・・」
マミの目が、驚きに丸く見開かれる。
そのまま固まってしまうマミ。いくぶん顔も青ざめて見える。
ほむら (・・・まずい)
順を追ってマミに状況を説明して、仲間にも加わってもらうつもりだったのに。
想定外の杏子の乱入で、段取りが狂ってしまった。
お陰でマミは、心中じぶんがのけ者にされているのではと訝っているに違いない。
それも、私たちだけじゃない。最も頼りとする兄も含めて、だ。
今、彼女の心の中では、最も厄介な敵がグルグルと渦巻くようにマミの心臓を締め付けているはず。
そう、孤独というマミにとって最強最悪の敵が。
杏子 「てことで、あたしも見滝原でしばらく活動する事になったから。一応、ここはマミのテリトリーだからな」
マミ 「・・・」
杏子 「一言いっておかないと、筋が通らないだろ。で、いい機会だから、お邪魔させてもらったって訳さ」
ほむら 「佐倉さん、ちょっと黙って」
杏子 「あん?」
355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:37:01.36 ID:+hO80t+B0
ほむら 「・・・言いたい事が済んだのなら、とっとと退散してくれないかしら」
杏子 「なんだよ、ずいぶんと棘のある言い方をするよな、あんた」
当然だ。
お陰で予定が狂ってしまった。マミにだって、いらない心痛をかける結果となって、頭に来ないはずがない。
ほむら 「どういうつもりなの。あなた、流君から何も聞いていないの?」
杏子 「聞いたぜ。あんたにはあんたの考えがあるってな」
ほむら 「だったら、どうして・・・」
武蔵 「そうだぜ、杏子ちゃん。どういうつもりか知らないが、場をかき回すんだったら、今はここから外してくれよ」
杏子 「あんたは、平気なのか、優しい優しいお兄ちゃんよ」
武蔵 「・・・なにがだよ?」
杏子 「ほむらや流は、あんたの大切な妹の事を、脆い奴だって言ってるんだぜ?」
マミ 「え・・・?」
武蔵 「おいっ!」
ほむら 「佐倉さん!」
杏子 「なんだよ、ずいぶんと棘のある言い方をするよな、あんた」
当然だ。
お陰で予定が狂ってしまった。マミにだって、いらない心痛をかける結果となって、頭に来ないはずがない。
ほむら 「どういうつもりなの。あなた、流君から何も聞いていないの?」
杏子 「聞いたぜ。あんたにはあんたの考えがあるってな」
ほむら 「だったら、どうして・・・」
武蔵 「そうだぜ、杏子ちゃん。どういうつもりか知らないが、場をかき回すんだったら、今はここから外してくれよ」
杏子 「あんたは、平気なのか、優しい優しいお兄ちゃんよ」
武蔵 「・・・なにがだよ?」
杏子 「ほむらや流は、あんたの大切な妹の事を、脆い奴だって言ってるんだぜ?」
マミ 「え・・・?」
武蔵 「おいっ!」
ほむら 「佐倉さん!」
356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:37:51.98 ID:+hO80t+B0
杏子 「・・・あたしは、見届けに来ただけさ」
ほむら 「え・・・?」
杏子 「あんた、今日は”例の話”をマミにするために、ここに来たんだろ。だったら、あたしも見届けるって、そう言ってんだよ」
ほむら 「あ・・・」
マミ 「・・・暁美さん、どういうこと?」
ほむら 「えっと・・・」
マミ 「あなた、今日は私に料理を教わりたくて、ここに来たんじゃないの?預かっている子に食べさせたいって」
杏子 「千歳ゆまだろ。そいつも魔法少女だから」
マミ 「・・・っ!?」
杏子 「一応、”お仲間”って事になってるよ、そのガキもさ」
マミ 「暁美さん、私に嘘を言って、この部屋に上がりこんだというの?」
ほむら 「ち、違うっ・・・ゆまにきちんとした料理を食べさせたいというのは、本当の事よ」
ほむら 「え・・・?」
杏子 「あんた、今日は”例の話”をマミにするために、ここに来たんだろ。だったら、あたしも見届けるって、そう言ってんだよ」
ほむら 「あ・・・」
マミ 「・・・暁美さん、どういうこと?」
ほむら 「えっと・・・」
マミ 「あなた、今日は私に料理を教わりたくて、ここに来たんじゃないの?預かっている子に食べさせたいって」
杏子 「千歳ゆまだろ。そいつも魔法少女だから」
マミ 「・・・っ!?」
杏子 「一応、”お仲間”って事になってるよ、そのガキもさ」
マミ 「暁美さん、私に嘘を言って、この部屋に上がりこんだというの?」
ほむら 「ち、違うっ・・・ゆまにきちんとした料理を食べさせたいというのは、本当の事よ」
357: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:39:14.98 ID:+hO80t+B0
・・・
もうすでに、話の順逆を選んでいる段階では無いだろう。
なぜって、マミは私に疑念に満ちた目を向けているのだから。
もともとこの時間軸でも、私とマミの関係は良好ではなかった。そこに新たないざこざの材料が投下されては、もう悠長な話し合いなど無理だし無意味。
・・・できれば、この料理を通した時間をもって、彼女との関係の修復に当てられれば、後の話し合いも穏当に進められると期待していたのだけど。
ほむら 「・・・分かったわ、巴さん」
杏子に良いように、事の運びを仕向けられたような気がする。
なぜ彼女がそんなことを企んだのか、理由は分からないけれど・・・
もう、ごまかしは効かない。
ほむら 「全て話すから、まずは私の話を聞いてくれるかしら」
もうすでに、話の順逆を選んでいる段階では無いだろう。
なぜって、マミは私に疑念に満ちた目を向けているのだから。
もともとこの時間軸でも、私とマミの関係は良好ではなかった。そこに新たないざこざの材料が投下されては、もう悠長な話し合いなど無理だし無意味。
・・・できれば、この料理を通した時間をもって、彼女との関係の修復に当てられれば、後の話し合いも穏当に進められると期待していたのだけど。
ほむら 「・・・分かったわ、巴さん」
杏子に良いように、事の運びを仕向けられたような気がする。
なぜ彼女がそんなことを企んだのか、理由は分からないけれど・・・
もう、ごまかしは効かない。
ほむら 「全て話すから、まずは私の話を聞いてくれるかしら」
362: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:20:53.44 ID:lcaR+YGE0
・・・
・・・
見滝原某所
一人の少女が今、苦難と試練の道へと踏む込もうとしていた。
キュウべぇ 「悩みや、望んでいる事があるなら、この僕が力になれるよ」
少女 「本当?!じゃあ、私の夢!アイドルになりたいって言う夢が叶うのかな!」
キュウべぇ 「そんなこと、造作も無いことだよ」
少女 「だけれど・・・そのためには魔女っていうのと、戦わなくっちゃいけないんでしょ。私、そんなの不安だよ。怖いよ」
キュウべぇ 「何かを得ようとすれば、リスクを負うのは当然のことじゃないかな」
少女 「それはそうかもだけど・・・やっぱり、怖い。死んじゃったら、夢も希望もなくなっちゃうもん」
キュウべぇ 「もちろん、僕としても無理強いはできない。君の気が進まないなら、この話はここまでだけれど・・・」
少女 「う~~~」
? 「決心がつかないようね」
少女 「・・・だれ?」
・・・
見滝原某所
一人の少女が今、苦難と試練の道へと踏む込もうとしていた。
キュウべぇ 「悩みや、望んでいる事があるなら、この僕が力になれるよ」
少女 「本当?!じゃあ、私の夢!アイドルになりたいって言う夢が叶うのかな!」
キュウべぇ 「そんなこと、造作も無いことだよ」
少女 「だけれど・・・そのためには魔女っていうのと、戦わなくっちゃいけないんでしょ。私、そんなの不安だよ。怖いよ」
キュウべぇ 「何かを得ようとすれば、リスクを負うのは当然のことじゃないかな」
少女 「それはそうかもだけど・・・やっぱり、怖い。死んじゃったら、夢も希望もなくなっちゃうもん」
キュウべぇ 「もちろん、僕としても無理強いはできない。君の気が進まないなら、この話はここまでだけれど・・・」
少女 「う~~~」
? 「決心がつかないようね」
少女 「・・・だれ?」
363: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:26:33.08 ID:lcaR+YGE0
キュウべぇ 「来たのかい、織莉子」
キュウべぇが目を向けた先に、一人の魔法少女がいた。
魔法少女・・・美国織莉子は、キュウべぇの事など見えていないかのように無視し、怪訝な顔の少女の前で立ち止まる。
織莉子 「・・・はじめまして。私は美国織莉子。キュウべぇと契約した、魔法少女よ」
少女 「え・・・あなたも・・・」
キュウべぇ 「そう、君が僕と契約をしてくれれば、織莉子は君の先輩になるわけだね」
少女 「センパイ・・・」
織莉子 「ええ」
織莉子は少女の手を、そっと包み込むように握った。
キュウべぇの提案と、突如として訪れた非日常への誘いに緊張気味だった少女だったが、織莉子の暖かい体温に包まれる事で、不思議と体のこわばりも解かれてゆく。
少女 「わわっ」
織莉子 「あのね」
織莉子は言う。
少女の手を包んだと同じような、温もりに満ちた優しい表情で。
織莉子 「あなたが不安なのだったら、私がずっと一緒にいてあげるわ」
キュウべぇが目を向けた先に、一人の魔法少女がいた。
魔法少女・・・美国織莉子は、キュウべぇの事など見えていないかのように無視し、怪訝な顔の少女の前で立ち止まる。
織莉子 「・・・はじめまして。私は美国織莉子。キュウべぇと契約した、魔法少女よ」
少女 「え・・・あなたも・・・」
キュウべぇ 「そう、君が僕と契約をしてくれれば、織莉子は君の先輩になるわけだね」
少女 「センパイ・・・」
織莉子 「ええ」
織莉子は少女の手を、そっと包み込むように握った。
キュウべぇの提案と、突如として訪れた非日常への誘いに緊張気味だった少女だったが、織莉子の暖かい体温に包まれる事で、不思議と体のこわばりも解かれてゆく。
少女 「わわっ」
織莉子 「あのね」
織莉子は言う。
少女の手を包んだと同じような、温もりに満ちた優しい表情で。
織莉子 「あなたが不安なのだったら、私がずっと一緒にいてあげるわ」
364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:29:03.19 ID:lcaR+YGE0
少女 「え・・・?」
織莉子 「魔女との戦いも、私がサポートしてあげる。あなたは一人じゃない。だから、何も怖がる必要は無いの」
少女 「でも、だって、どうして・・・??」
織莉子 「なにか、納得いかない?」
少女 「見ず知らずの私に、どうしてそんな風に、優しくしてくれるんですか?」
織莉子 「ああ、そんなこと」
織莉子が柔らかく、くすりと笑う。
織莉子 「魔女は強大な敵よ。私だって、一人で戦うのは怖いものよ」
少女 「・・・」
織莉子 「仲間がね、一緒に戦うお友達が欲しかったの」
少女 「お友達、ですか」
織莉子 「そうよ。あなたも私のお友達になってくれないかしら。そうすれば、私だけじゃない。他のお友達にも紹介してあげられるわ」
少女 「えっ、魔法少女って、そんなにたくさんいるんですか!」
織莉子 「ええ、そうよ。そして、みんなで力を合わせて、魔女と戦っていくの。ね、そうすれば、何も危ない事なんて無いでしょう?」
少女 「たっ・・・確かにっ・・・」
織莉子 「私、あなたとお友達になりたいわ」
少女 「えっと・・・う~~~///」
キュウべぇ 「・・・」
織莉子 「魔女との戦いも、私がサポートしてあげる。あなたは一人じゃない。だから、何も怖がる必要は無いの」
少女 「でも、だって、どうして・・・??」
織莉子 「なにか、納得いかない?」
少女 「見ず知らずの私に、どうしてそんな風に、優しくしてくれるんですか?」
織莉子 「ああ、そんなこと」
織莉子が柔らかく、くすりと笑う。
織莉子 「魔女は強大な敵よ。私だって、一人で戦うのは怖いものよ」
少女 「・・・」
織莉子 「仲間がね、一緒に戦うお友達が欲しかったの」
少女 「お友達、ですか」
織莉子 「そうよ。あなたも私のお友達になってくれないかしら。そうすれば、私だけじゃない。他のお友達にも紹介してあげられるわ」
少女 「えっ、魔法少女って、そんなにたくさんいるんですか!」
織莉子 「ええ、そうよ。そして、みんなで力を合わせて、魔女と戦っていくの。ね、そうすれば、何も危ない事なんて無いでしょう?」
少女 「たっ・・・確かにっ・・・」
織莉子 「私、あなたとお友達になりたいわ」
少女 「えっと・・・う~~~///」
キュウべぇ 「・・・」
365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:31:20.19 ID:lcaR+YGE0
・・・
・・・
少女 「それじゃ織莉子さん、これからよろしくお願いしまーす!」
織莉子 「ええ。魔女が現れたら、すぐに連絡するわね」
少女 「はーい!」
先ほどまでの迷いやためらいはどこへやら。
織莉子の優しさにすっかりほだされた少女は、キュウべぇとの契約を済ませると、足取りも軽く家へと帰っていった。
夢が叶うことへの喜び。
人知を超えた力を手に入れた高ぶり。
それらが、彼女が夢と引き換えに大切な物を手放してしまったという事実を覆い隠してしまっていた。
今の少女には何も見えていない。
だが、心の高ぶりが晴れて目の前の霧が払われた時。
すべての事は手遅れなのだと、少女は思い知らされる、そんな日は確実にやってくるのだ。
織莉子 「・・・」
・・・
少女 「それじゃ織莉子さん、これからよろしくお願いしまーす!」
織莉子 「ええ。魔女が現れたら、すぐに連絡するわね」
少女 「はーい!」
先ほどまでの迷いやためらいはどこへやら。
織莉子の優しさにすっかりほだされた少女は、キュウべぇとの契約を済ませると、足取りも軽く家へと帰っていった。
夢が叶うことへの喜び。
人知を超えた力を手に入れた高ぶり。
それらが、彼女が夢と引き換えに大切な物を手放してしまったという事実を覆い隠してしまっていた。
今の少女には何も見えていない。
だが、心の高ぶりが晴れて目の前の霧が払われた時。
すべての事は手遅れなのだと、少女は思い知らされる、そんな日は確実にやってくるのだ。
織莉子 「・・・」
366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:33:01.62 ID:lcaR+YGE0
キュウべぇ 「表情が暗いね。どうかしたのかい」
織莉子 「・・・いいえ、別に」
自分の胸を締め付ける、この痛み。
これは間違いなく罪悪感というものなのだろう。
その事が、織莉子には理解できる。
人ひとりの人生を終らせてしまった。その罪が、軽いはずが無いのだ。
だけれど・・・
織莉子 「どうもしない。私は、手段は選ばないと、そう決めたのだから」
キュウべぇ 「・・・」
いずれ自分は裁きを受ける事になるだろう。
だけれど、その前に成すべき事は成し遂げなければならない。
でなければ・・・
? 「終ったのかい」
織莉子 「・・・いいえ、別に」
自分の胸を締め付ける、この痛み。
これは間違いなく罪悪感というものなのだろう。
その事が、織莉子には理解できる。
人ひとりの人生を終らせてしまった。その罪が、軽いはずが無いのだ。
だけれど・・・
織莉子 「どうもしない。私は、手段は選ばないと、そう決めたのだから」
キュウべぇ 「・・・」
いずれ自分は裁きを受ける事になるだろう。
だけれど、その前に成すべき事は成し遂げなければならない。
でなければ・・・
? 「終ったのかい」
367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:34:11.48 ID:lcaR+YGE0
織莉子 「・・・キリカ。今までどこにいたの?」
キリカ 「ん、そこら辺を散歩?っていうか、四歩五歩と。適当にうろついていたよ」
織莉子 「一緒にいればよかったのに。新しい仲間、あなたにも紹介ができたのに」
キリカ 「必要ないよ。会う理由が無い」
織莉子 「キリカ」
キリカ 「織莉子が言うことには従うよ。だけれど、私には友達なんて必要ない。私には、織莉子がいればそれだけで良いんだ」
織莉子 「・・・キリカったら、仕方がないんだから」
キリカ 「それにだよ」
織莉子 「?」
キリカ 「私にはこの世に、決してこの瞳に映したくない物があるんだ」
キュウべぇ 「それはなんだい?僕も興味があるな」
キリカ 「・・・織莉子の、今していたような表情さ」
織莉子 「・・・」
キリカ 「ん、そこら辺を散歩?っていうか、四歩五歩と。適当にうろついていたよ」
織莉子 「一緒にいればよかったのに。新しい仲間、あなたにも紹介ができたのに」
キリカ 「必要ないよ。会う理由が無い」
織莉子 「キリカ」
キリカ 「織莉子が言うことには従うよ。だけれど、私には友達なんて必要ない。私には、織莉子がいればそれだけで良いんだ」
織莉子 「・・・キリカったら、仕方がないんだから」
キリカ 「それにだよ」
織莉子 「?」
キリカ 「私にはこの世に、決してこの瞳に映したくない物があるんだ」
キュウべぇ 「それはなんだい?僕も興味があるな」
キリカ 「・・・織莉子の、今していたような表情さ」
織莉子 「・・・」
368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:36:09.24 ID:lcaR+YGE0
キリカ 「しろまるが言っていた計画は、本当に織莉子を悲しませてまで実行する価値があるものなんだろうね?」
キュウべぇ 「それは織莉子が自分で決める事さ」
キリカ 「では、もし織莉子を無駄に悲しませる結果となった時は、しろまる・・・」
キュウべぇ 「・・・」
キリカ 「お前を切って千切ってこねって潰すぞ」
キュウべぇ 「おぼえておくよ」
織莉子 「キリカ、ありがとう。でも、心配は無用だわ。だって、私は」
この街を、父が愛した見滝原を。
守るためなら、茨の道をも厭わないと、そう決めたのだから。
織莉子 「さ、行きましょう。残された時間は少ない。もっともっと、私たちは”仲間”を得なければいけないのだから」
キリカ 「・・・了解」
キュウべぇ 「そう、野に放たれた魔法少女たちは、まだまだいる。糾合するんだ、君が守りたい物を守るために」
キュウべぇ 「それは織莉子が自分で決める事さ」
キリカ 「では、もし織莉子を無駄に悲しませる結果となった時は、しろまる・・・」
キュウべぇ 「・・・」
キリカ 「お前を切って千切ってこねって潰すぞ」
キュウべぇ 「おぼえておくよ」
織莉子 「キリカ、ありがとう。でも、心配は無用だわ。だって、私は」
この街を、父が愛した見滝原を。
守るためなら、茨の道をも厭わないと、そう決めたのだから。
織莉子 「さ、行きましょう。残された時間は少ない。もっともっと、私たちは”仲間”を得なければいけないのだから」
キリカ 「・・・了解」
キュウべぇ 「そう、野に放たれた魔法少女たちは、まだまだいる。糾合するんだ、君が守りたい物を守るために」
369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:38:59.83 ID:lcaR+YGE0
・・・
・・・
マミ 「・・・」
彼女の顔面は、蒼白だった。
私は私の知る真実を全て、包み隠さずにマミに告げた。
まずは、あなたの兄である巴武蔵には、こちらの事情は全て話してあるという事。
それから、魔法少女の行く末。
キュウべぇの目論見。
私が時間軸をループしているという事。
その理由が、まどかを魔女とさせないためだということ。
そして、流竜馬と巴武蔵が別の世界からやってきた、異邦人であるという事も。
マミ 「お兄ちゃん・・・」
私が真実を一つ言うたびに、マミは兄の表情を伺うように、武蔵に視線を向けた。
その視線に、武蔵は無言で頷いて答える。肯定して見せたのだ。
マミ 「・・・」
・・・
マミ 「・・・」
彼女の顔面は、蒼白だった。
私は私の知る真実を全て、包み隠さずにマミに告げた。
まずは、あなたの兄である巴武蔵には、こちらの事情は全て話してあるという事。
それから、魔法少女の行く末。
キュウべぇの目論見。
私が時間軸をループしているという事。
その理由が、まどかを魔女とさせないためだということ。
そして、流竜馬と巴武蔵が別の世界からやってきた、異邦人であるという事も。
マミ 「お兄ちゃん・・・」
私が真実を一つ言うたびに、マミは兄の表情を伺うように、武蔵に視線を向けた。
その視線に、武蔵は無言で頷いて答える。肯定して見せたのだ。
マミ 「・・・」
370: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:40:09.45 ID:lcaR+YGE0
ほむら 「信じてもらえるかしら。信じられたならあなたには、私とともに戦う仲間となって欲しい」
マミ 「まって、そんないきなり、突拍子が無さ過ぎて・・・」
ほむら 「でも事実よ。私はあなたに嘘は言わない」
マミ 「だって、そんな・・・キュウべぇが私を騙していたなんて。それに・・・私が魔女に・・・さ、佐倉さん」
杏子 「ん?」
マミ 「佐倉さんは、この話、信じたの?受け入れられたの?」
杏子 「まぁ・・・魔女になるって下りはまだピンと来てはいないんだけど、ロボットに関しちゃ実物を見ちゃってるしな」
マミ 「・・・」
杏子 「それに、こいつらがあたしに嘘を言う理由が無いんだよね。あたしにとっちゃ、表情も読み取れないキュウべぇなんかより、よほど真実を言ってるように聞こえてさ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「だ、だからって、完全に信頼してるわけじゃない。勘違いするなよっ」
マミ 「まって、そんないきなり、突拍子が無さ過ぎて・・・」
ほむら 「でも事実よ。私はあなたに嘘は言わない」
マミ 「だって、そんな・・・キュウべぇが私を騙していたなんて。それに・・・私が魔女に・・・さ、佐倉さん」
杏子 「ん?」
マミ 「佐倉さんは、この話、信じたの?受け入れられたの?」
杏子 「まぁ・・・魔女になるって下りはまだピンと来てはいないんだけど、ロボットに関しちゃ実物を見ちゃってるしな」
マミ 「・・・」
杏子 「それに、こいつらがあたしに嘘を言う理由が無いんだよね。あたしにとっちゃ、表情も読み取れないキュウべぇなんかより、よほど真実を言ってるように聞こえてさ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「だ、だからって、完全に信頼してるわけじゃない。勘違いするなよっ」
371: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:41:28.25 ID:lcaR+YGE0
マミ 「・・・お兄ちゃんは」
武蔵 「うん・・・俺が別の世界から来たってのも、ゲッターロボに乗って戦っているというのも事実だ。それに、ほむらちゃんが言うことも信用している」
武蔵は言った。
俺は確かに、ほむらちゃんが言う”魔法少女が魔女になる”瞬間を見たわけじゃない。
だけど、ほむらちゃんはまどかちゃんを救うという一念だけで、身も心も削ってまで何度も時間軸をループしてきた。
そこまでするには、それに見合った理由が無いとありえない・・・と。
武蔵 「ほむらちゃんの事は仲間だから掛け値なしに信用しているけれど、理詰めで考えても彼女の言うことは真実としか思えないんだよ」
マミ 「でも、だって!暁美さんの言うことが本当なら、お兄ちゃんは私の本当のお兄ちゃんじゃないって事になるじゃない!」
ほむら 「それは違うわ。この時間軸の人間であるあなたにとって、巴武蔵はあなたの本当の兄である事に違いはないのよ」
マミ 「違う!私にとってなんて、そんなのどうでも良い!お兄ちゃんにとっての私が、本当の妹かどうかが問題なのよ!」
武蔵 「マミちゃん・・・」
マミは席を立つと、武蔵のそばへと駆け寄った。
すがる様に懇願するように、武蔵の手を取ってにじり寄る。
マミ 「お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんよね・・・?」
武蔵 「うん・・・俺が別の世界から来たってのも、ゲッターロボに乗って戦っているというのも事実だ。それに、ほむらちゃんが言うことも信用している」
武蔵は言った。
俺は確かに、ほむらちゃんが言う”魔法少女が魔女になる”瞬間を見たわけじゃない。
だけど、ほむらちゃんはまどかちゃんを救うという一念だけで、身も心も削ってまで何度も時間軸をループしてきた。
そこまでするには、それに見合った理由が無いとありえない・・・と。
武蔵 「ほむらちゃんの事は仲間だから掛け値なしに信用しているけれど、理詰めで考えても彼女の言うことは真実としか思えないんだよ」
マミ 「でも、だって!暁美さんの言うことが本当なら、お兄ちゃんは私の本当のお兄ちゃんじゃないって事になるじゃない!」
ほむら 「それは違うわ。この時間軸の人間であるあなたにとって、巴武蔵はあなたの本当の兄である事に違いはないのよ」
マミ 「違う!私にとってなんて、そんなのどうでも良い!お兄ちゃんにとっての私が、本当の妹かどうかが問題なのよ!」
武蔵 「マミちゃん・・・」
マミは席を立つと、武蔵のそばへと駆け寄った。
すがる様に懇願するように、武蔵の手を取ってにじり寄る。
マミ 「お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんよね・・・?」
372: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:43:40.00 ID:lcaR+YGE0
武蔵 「・・・ほむらちゃんの言うことは、全て事実だ」
マミ 「・・・っ」
だが、マミに告げられたのは、厳然とした真実だった。
武蔵からすれば、大切に思っているマミに嘘などつけない。そんな真心からの言葉だったはず。
だけど・・・受け取った当のマミは・・・
マミ 「嘘・・・嘘だ・・・」
武蔵 「だけど、それでも今は、本当の妹のように思っt
マミ 「嘘だあああああああああっ」
ほむら・杏子 「・・・!?」
マミ 「・・・っ」
だが、マミに告げられたのは、厳然とした真実だった。
武蔵からすれば、大切に思っているマミに嘘などつけない。そんな真心からの言葉だったはず。
だけど・・・受け取った当のマミは・・・
マミ 「嘘・・・嘘だ・・・」
武蔵 「だけど、それでも今は、本当の妹のように思っt
マミ 「嘘だあああああああああっ」
ほむら・杏子 「・・・!?」
373: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:46:12.51 ID:lcaR+YGE0
突然立ち上がり、まるで人が変わってしまったかのように絶叫するマミ。
次々と突きつけられる真実を押し流そうとでも言うように、声の限りに咆哮している。
そんな風に、私には感じられた。
マミ 「嘘だ、嘘よ嘘・・・嘘だ嘘だ嘘だ」
杏子 「ちょっ、マミ、落ち着けって!」
マミ 「触るなぁっ!」
落ち着かせようと差し出された杏子の手を、マミが乱暴に払い除ける。
マミ 「だってお兄ちゃん、七五三の時、一緒にお祝いしたじゃない。小学校に入った時も、笑って、これでマミも小学生だねって」
武蔵 「マミちゃん、どうしたんだ!?しっかりしろ!」
マミ 「パパやママが死んじゃった時だって、一晩中私に寄り添ってくれて、俺がいるから寂しくないって言ってくれて・・・」
武蔵 「マミちゃんっ!」
ほむら 「巴・・・マミ・・・」
・・・私、また、失敗した?
次々と突きつけられる真実を押し流そうとでも言うように、声の限りに咆哮している。
そんな風に、私には感じられた。
マミ 「嘘だ、嘘よ嘘・・・嘘だ嘘だ嘘だ」
杏子 「ちょっ、マミ、落ち着けって!」
マミ 「触るなぁっ!」
落ち着かせようと差し出された杏子の手を、マミが乱暴に払い除ける。
マミ 「だってお兄ちゃん、七五三の時、一緒にお祝いしたじゃない。小学校に入った時も、笑って、これでマミも小学生だねって」
武蔵 「マミちゃん、どうしたんだ!?しっかりしろ!」
マミ 「パパやママが死んじゃった時だって、一晩中私に寄り添ってくれて、俺がいるから寂しくないって言ってくれて・・・」
武蔵 「マミちゃんっ!」
ほむら 「巴・・・マミ・・・」
・・・私、また、失敗した?
374: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:49:26.70 ID:lcaR+YGE0
マミ 「嘘嘘嘘嘘嘘嘘だぁ・・・っ」
武蔵 「マミちゃん!」
杏子 「おい、マミ!」
武蔵がいるから、平気だと思っていた。
心のより所のあるマミだったら、きっと辛い真実とも向き合ってくれるだろうと。
だけど今、目の前に突きつけられた現実は・・・
杏子 「・・・!?おい、マミ!ちょっとソウルジェムよこせ!・・・くっ、濁ってやがる」
マミ 「いやだ、いやだぁっ・・・」
杏子 「とりあえず、浄化させないと・・・うっ!?なんてこったよ、浄化した先から濁ってきやがる・・・」
武蔵 「・・・マミ・・・ちゃん」
ほむら 「・・・」
・・・また、間違ってしまった。
誰よりも信頼していた武蔵が、過酷な現実を肯定する事によって・・・
より重く、より痛く。
マミの心を押し潰す結果になってしまうとは・・・
マミ 「ああああああああ・・・っ」
杏子 「マミ、お前・・・嘘だろ。お前、こんな、こんな弱かったのかよ。こんなに脆かったってのかよ・・・」
うずくまり号泣を始めたマミと、何とかそれを落ち着かせようと必死な武蔵。
そんな二人を愕然とした表情で眺めながら呟いた杏子の一言が、私の耳にかすかに届く。
テーブルの上の、もはや誰も手を付ける者がいなくなったカレーからは、未だに暖かそうな湯気が、むなしくも立ち上り続けていた。
武蔵 「マミちゃん!」
杏子 「おい、マミ!」
武蔵がいるから、平気だと思っていた。
心のより所のあるマミだったら、きっと辛い真実とも向き合ってくれるだろうと。
だけど今、目の前に突きつけられた現実は・・・
杏子 「・・・!?おい、マミ!ちょっとソウルジェムよこせ!・・・くっ、濁ってやがる」
マミ 「いやだ、いやだぁっ・・・」
杏子 「とりあえず、浄化させないと・・・うっ!?なんてこったよ、浄化した先から濁ってきやがる・・・」
武蔵 「・・・マミ・・・ちゃん」
ほむら 「・・・」
・・・また、間違ってしまった。
誰よりも信頼していた武蔵が、過酷な現実を肯定する事によって・・・
より重く、より痛く。
マミの心を押し潰す結果になってしまうとは・・・
マミ 「ああああああああ・・・っ」
杏子 「マミ、お前・・・嘘だろ。お前、こんな、こんな弱かったのかよ。こんなに脆かったってのかよ・・・」
うずくまり号泣を始めたマミと、何とかそれを落ち着かせようと必死な武蔵。
そんな二人を愕然とした表情で眺めながら呟いた杏子の一言が、私の耳にかすかに届く。
テーブルの上の、もはや誰も手を付ける者がいなくなったカレーからは、未だに暖かそうな湯気が、むなしくも立ち上り続けていた。
375: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:51:31.14 ID:lcaR+YGE0
・・・
・・・
泣き疲れたマミをやっとベットに寝かしつけ、私は杏子をともなって彼女の部屋を後にした。
武蔵にはマミから目を離さないように頼み、再びソウルジェムが濁った時の対処用に幾分かのグリーフシードも託してきた。
ほむら 「・・・」
私の考えは完全に裏目に出た。
マミの脆さは身に染みてわかっていたと思っていたけれど、それは私の予想を遥かに上回っていた。
ほむら 「・・・違う」
そうじゃない。ごまかしたって、仕方がない。
上回っていたんじゃなく・・・
マミの脆い部分を、私は履き違えていたのだ。
彼女の心の支えと頼んだ武蔵こそが、最大の弱点だったなんて。
思いもしなかった・・・
・・・
泣き疲れたマミをやっとベットに寝かしつけ、私は杏子をともなって彼女の部屋を後にした。
武蔵にはマミから目を離さないように頼み、再びソウルジェムが濁った時の対処用に幾分かのグリーフシードも託してきた。
ほむら 「・・・」
私の考えは完全に裏目に出た。
マミの脆さは身に染みてわかっていたと思っていたけれど、それは私の予想を遥かに上回っていた。
ほむら 「・・・違う」
そうじゃない。ごまかしたって、仕方がない。
上回っていたんじゃなく・・・
マミの脆い部分を、私は履き違えていたのだ。
彼女の心の支えと頼んだ武蔵こそが、最大の弱点だったなんて。
思いもしなかった・・・
376: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:53:34.19 ID:lcaR+YGE0
ほむら 「私、巴マミのことを何も分かっていなかった」
心の内だけで悔やんでいる事に堪えられなくなって、私は隣を歩く杏子に言うともなしに話しかけた。
杏子 「あたしもさ。悪かったな、ほむら」
返って来たのは、意外な言葉。
ほむら 「・・・佐倉さん?」
杏子 「気に食わなかったんだ。お前や流がマミのことをまるで弱っちいみたく言うのがさ」
ほむら 「それは・・・」
杏子 「お前が他の時間軸とやらで何を見てきたのかは関係ない。あたしの知ってるマミはそんな柔な奴じゃない。もっと強い奴なんだって、そう思ってたから・・・」
ほむら 「・・・」
杏子 「袂を別ったとは言え、マミはあたしに戦いのイロハを叩き込んでくれたベテランだ。あいつの強さに対する信頼ってのは、今だって変わっちゃいない・・・」
ほむら 「佐倉さん、もしかして今日、巴さんの部屋に来たのって・・・」
杏子 「ああ、下手な誤魔化しなんかさせない。お前にあたしの知っているマミを見せてやる。そう思って、お前らの話に割り込ませてもらったんだ」
ほむら 「そう、だったのね・・・」
そうか、そうだったんだ。
杏子の行動には、マミを想う彼女なりの心情が働いていたと。
そういう事だったんだ。
心の内だけで悔やんでいる事に堪えられなくなって、私は隣を歩く杏子に言うともなしに話しかけた。
杏子 「あたしもさ。悪かったな、ほむら」
返って来たのは、意外な言葉。
ほむら 「・・・佐倉さん?」
杏子 「気に食わなかったんだ。お前や流がマミのことをまるで弱っちいみたく言うのがさ」
ほむら 「それは・・・」
杏子 「お前が他の時間軸とやらで何を見てきたのかは関係ない。あたしの知ってるマミはそんな柔な奴じゃない。もっと強い奴なんだって、そう思ってたから・・・」
ほむら 「・・・」
杏子 「袂を別ったとは言え、マミはあたしに戦いのイロハを叩き込んでくれたベテランだ。あいつの強さに対する信頼ってのは、今だって変わっちゃいない・・・」
ほむら 「佐倉さん、もしかして今日、巴さんの部屋に来たのって・・・」
杏子 「ああ、下手な誤魔化しなんかさせない。お前にあたしの知っているマミを見せてやる。そう思って、お前らの話に割り込ませてもらったんだ」
ほむら 「そう、だったのね・・・」
そうか、そうだったんだ。
杏子の行動には、マミを想う彼女なりの心情が働いていたと。
そういう事だったんだ。
377: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:55:21.83 ID:lcaR+YGE0
杏子 「結局、お前らのほうが正しかったって証明しちまっただけだったけどな。ごめん、あたしが掻き乱したばっかりに・・・」
ほむら 「それは違うわ」
杏子 「なんだよ、こんな時に変なフォロー入れたりすんじゃねーよ。よけいに惨めなだけだろ」
ほむら 「そうじゃない、そうじゃないのよ」
この時間軸においての、マミの精神の均衡を保っているのは、”巴武蔵”という男の存在だった。
私がキーパーソンと捉えていた男の存在は、その程度では済まされない、まさに”巴マミの心”そのものだったのだ。
その事を私が見抜けていなかった以上、どのように話を進めていたとしても、行き着く結果は同じだったろう。
杏子の行動がもたらした結果なんて、はっきり言って誤差の範囲だ。
それよりも・・・
ほむら 「あなたが巴さんのことを、そこまで大切に想っていたなんて・・・」
杏子 「んなっ!?」
ほむら 「それは違うわ」
杏子 「なんだよ、こんな時に変なフォロー入れたりすんじゃねーよ。よけいに惨めなだけだろ」
ほむら 「そうじゃない、そうじゃないのよ」
この時間軸においての、マミの精神の均衡を保っているのは、”巴武蔵”という男の存在だった。
私がキーパーソンと捉えていた男の存在は、その程度では済まされない、まさに”巴マミの心”そのものだったのだ。
その事を私が見抜けていなかった以上、どのように話を進めていたとしても、行き着く結果は同じだったろう。
杏子の行動がもたらした結果なんて、はっきり言って誤差の範囲だ。
それよりも・・・
ほむら 「あなたが巴さんのことを、そこまで大切に想っていたなんて・・・」
杏子 「んなっ!?」
378: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 09:57:34.29 ID:lcaR+YGE0
ほむら 「知らなかったし、気がつかなかった・・・」
杏子 「ち、違う!そういう意味で言ったんじゃねー!あ、あたしはただ・・・」
ほむら 「言い訳しないで。”よけいに惨めなだけ”よ」
杏子 「む、むぐぅ」
そう、杏子のこの気持ちにも、気がついてあげることができていなかった。
私は・・・
何度も時間軸をループして、マミや杏子たちと出会いと別れを繰り返し・・・
普通の人より何倍も彼女達と接する時間を持っていたのにも関わらず・・・
ほむら 「私は・・・私はいったい、何を見ていたんだろう・・・」
今度の呟きに、答えてくれる人はいなかった。
杏子 「ち、違う!そういう意味で言ったんじゃねー!あ、あたしはただ・・・」
ほむら 「言い訳しないで。”よけいに惨めなだけ”よ」
杏子 「む、むぐぅ」
そう、杏子のこの気持ちにも、気がついてあげることができていなかった。
私は・・・
何度も時間軸をループして、マミや杏子たちと出会いと別れを繰り返し・・・
普通の人より何倍も彼女達と接する時間を持っていたのにも関わらず・・・
ほむら 「私は・・・私はいったい、何を見ていたんだろう・・・」
今度の呟きに、答えてくれる人はいなかった。
404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:00:01.61 ID:RtVUuQGN0
・・・
・・・
その後。
私の部屋で竜馬やゆまと合流し、今日あったこと、そしてこれからの事を簡単に話し合った。
まずはいくつかの取り決め。
来るべきワルプルギス戦でゲッターロボの力を遺憾なく使えるよう、グリーフシードを節約する事。
そのためにも魔法少女は、極力魔法力を抑えた戦いをするよう心がける事。
具体的には、雑魚の使い魔は竜馬が片付け、対魔女戦にのみ魔法少女は力を振るう。
そして、少しでも多くのグリーフシードを確保するため、魔女の結界を見つけたら連絡を取り合い、即時殲滅する事。
などなど・・・
そして、もう一つ。
ほむら 「武蔵さんには、巴マミが落ち着くまで、戦いからは遠ざかっていてもらおうと思う。今、巴さんから目を離すことはできないから」
竜馬 「そうだな」
ほむら 「戦力を削られるのは痛いし、流君には負担をかけてしまうと思うけれど・・・」
竜馬 「どの道、そんな事があった後じゃ、妹の事が気になって武蔵は使い物にならないだろう。あいつは、情が深すぎるところがあるからな」
・・・
その後。
私の部屋で竜馬やゆまと合流し、今日あったこと、そしてこれからの事を簡単に話し合った。
まずはいくつかの取り決め。
来るべきワルプルギス戦でゲッターロボの力を遺憾なく使えるよう、グリーフシードを節約する事。
そのためにも魔法少女は、極力魔法力を抑えた戦いをするよう心がける事。
具体的には、雑魚の使い魔は竜馬が片付け、対魔女戦にのみ魔法少女は力を振るう。
そして、少しでも多くのグリーフシードを確保するため、魔女の結界を見つけたら連絡を取り合い、即時殲滅する事。
などなど・・・
そして、もう一つ。
ほむら 「武蔵さんには、巴マミが落ち着くまで、戦いからは遠ざかっていてもらおうと思う。今、巴さんから目を離すことはできないから」
竜馬 「そうだな」
ほむら 「戦力を削られるのは痛いし、流君には負担をかけてしまうと思うけれど・・・」
竜馬 「どの道、そんな事があった後じゃ、妹の事が気になって武蔵は使い物にならないだろう。あいつは、情が深すぎるところがあるからな」
405: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:02:05.45 ID:RtVUuQGN0
ほむら 「ごめんね・・・」
竜馬 「らしくねぇな。佐倉、お前もいま話し合ったことで、異論は無いな?」
杏子 「ああ。それじゃ、あたしはもう帰るぜ。邪魔したな」
ゆま 「きょーこ、もう帰っちゃうの?」
杏子 「お前も、良い子にしていろよ」
ゆま 「・・・うん」
力なくゆまの頭をポンポンと叩くと、杏子は静かに私の部屋から出て行った。
竜馬 「・・・かなり堪えてるようだな。お前も佐倉も」
ほむら 「・・・」
ゆま 「お腹が空いてるの?ご飯食べる?」
ほむら 「私は巴さんの家で食べてきたから・・・ごめんね、あなたのご飯、いま用意するからね」
ゆま 「あ、ううん」
私が立ち上がろうとするのを抑えて、ふるふると頭を振るゆま。
竜馬 「らしくねぇな。佐倉、お前もいま話し合ったことで、異論は無いな?」
杏子 「ああ。それじゃ、あたしはもう帰るぜ。邪魔したな」
ゆま 「きょーこ、もう帰っちゃうの?」
杏子 「お前も、良い子にしていろよ」
ゆま 「・・・うん」
力なくゆまの頭をポンポンと叩くと、杏子は静かに私の部屋から出て行った。
竜馬 「・・・かなり堪えてるようだな。お前も佐倉も」
ほむら 「・・・」
ゆま 「お腹が空いてるの?ご飯食べる?」
ほむら 「私は巴さんの家で食べてきたから・・・ごめんね、あなたのご飯、いま用意するからね」
ゆま 「あ、ううん」
私が立ち上がろうとするのを抑えて、ふるふると頭を振るゆま。
406: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:03:31.51 ID:RtVUuQGN0
ふ、と気がつく。
ほのかに部屋の中に漂う、この香りは・・・
ほむら 「料理、したの?」
ゆま 「お兄ちゃんが作ってくれたよ」
ほむら 「流君が?」
竜馬 「ああ、簡単なもんで悪かったけれどな。まぁ、食えれば良いってだけの男の料理ってやつさ」
ゆま 「そんなことないよ。美味しかったもん」
竜馬 「そう思ってもらえるなら、何よりだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「まだ、少し残ってるからな。お前も後で腹が減ったら、食うと良いぜ」
ほむら 「あなたは・・・」
竜馬 「ん?」
ほむら 「私にできないことを、何でもこなしてしまえるのね」
竜馬 「・・・」
ほのかに部屋の中に漂う、この香りは・・・
ほむら 「料理、したの?」
ゆま 「お兄ちゃんが作ってくれたよ」
ほむら 「流君が?」
竜馬 「ああ、簡単なもんで悪かったけれどな。まぁ、食えれば良いってだけの男の料理ってやつさ」
ゆま 「そんなことないよ。美味しかったもん」
竜馬 「そう思ってもらえるなら、何よりだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「まだ、少し残ってるからな。お前も後で腹が減ったら、食うと良いぜ」
ほむら 「あなたは・・・」
竜馬 「ん?」
ほむら 「私にできないことを、何でもこなしてしまえるのね」
竜馬 「・・・」
407: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:15:19.96 ID:RtVUuQGN0
ほむら 「それに引き換え、私は・・・ずっと一緒にいた人たちの事を何も理解していない。簡単な料理一つ、作る事ができない・・・」
ゆま 「お姉ちゃん・・・?」
ほむら 「何もできない・・・なのにあなたは・・・私に無いもの、全部を持っている・・・惨めだわ、私は・・・」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「私には、何も無い・・・」
弱音が・・・
どうしてだろう。
今まで溜め込んでいた弱い心が、まるで濁流のように。
ほむら 「私には、何も無い・・・」
私の心の堰を切って、次から次へと言葉となってあふれ出すのを止められない。
ゆま 「お姉ちゃん・・・?」
ほむら 「何もできない・・・なのにあなたは・・・私に無いもの、全部を持っている・・・惨めだわ、私は・・・」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「私には、何も無い・・・」
弱音が・・・
どうしてだろう。
今まで溜め込んでいた弱い心が、まるで濁流のように。
ほむら 「私には、何も無い・・・」
私の心の堰を切って、次から次へと言葉となってあふれ出すのを止められない。
408: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:19:48.22 ID:RtVUuQGN0
ゆま 「そんなことないよ!」
不意にゆまが大きな声で私の弱音をさえぎった。
ゆな 「そんなことない!そんな風に言っちゃダメだよ!」
ほむら 「ゆま・・・?」
かぶりを振りながら急に大きな声を出すゆまに、私は面食らってしまう。
この子には、大声で何かを主張するというイメージが、今の今までなかったから。
竜馬 「なにが、そんなことないんだ?」
ゆま 「だって、ほむらお姉ちゃん、ゆまと一緒に住もうって言ってくれたよ!」
ほむら 「だって、それは・・・」
あくまで、ゆまの治癒魔法に期待したからで、役に立ってくれるはずと、放置するのがもったいないと思っただけのことで・・・
ゆま 「それに、ゆまと一緒にご飯食べてくれたよ。ゆまの食べたいもの、選ばせてくれた!」
ほむら 「・・・そんなの、一緒の部屋にいたなら当然の」
言いかけて、気がついた。
この子は、そんな些細な事でも特別なんだと思える人生を歩んできただろう事に。
ほむら 「ゆま・・・」
不意にゆまが大きな声で私の弱音をさえぎった。
ゆな 「そんなことない!そんな風に言っちゃダメだよ!」
ほむら 「ゆま・・・?」
かぶりを振りながら急に大きな声を出すゆまに、私は面食らってしまう。
この子には、大声で何かを主張するというイメージが、今の今までなかったから。
竜馬 「なにが、そんなことないんだ?」
ゆま 「だって、ほむらお姉ちゃん、ゆまと一緒に住もうって言ってくれたよ!」
ほむら 「だって、それは・・・」
あくまで、ゆまの治癒魔法に期待したからで、役に立ってくれるはずと、放置するのがもったいないと思っただけのことで・・・
ゆま 「それに、ゆまと一緒にご飯食べてくれたよ。ゆまの食べたいもの、選ばせてくれた!」
ほむら 「・・・そんなの、一緒の部屋にいたなら当然の」
言いかけて、気がついた。
この子は、そんな些細な事でも特別なんだと思える人生を歩んできただろう事に。
ほむら 「ゆま・・・」
409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:21:32.09 ID:RtVUuQGN0
ゆま 「何も無いなんて無いよ!ほむらお姉ちゃんには、”優しい”があるよ!」
ほむら 「や、やめてよ・・・」
竜馬 「子供ってのには、ごまかしが利かないって言うぜ。物を見る目は下手な大人より、ずっとシビアだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そんな子供が感じ取れる物がお前にはある。何も無いなんて言うなよ、ゆまに失礼だろうが」
ほむら 「やめてったら!」
利己的に動いてきた自分を肯定されることは、余計に惨めだった。
私は声を荒げて、竜馬の言葉をさえぎる。何も聞きたくなかった。
ゆま 「・・・お、お姉ちゃん」
私の剣幕に驚いたのだろう、ゆまも眼を丸くして、これ以上は何も言おうとしなくなった。
竜馬は・・・竜馬はいま、私をどういう目で見ているのだろうか。
惨めで、怖くて・・・
私は彼の顔を正視することができなかった。
ほむら 「や、やめてよ・・・」
竜馬 「子供ってのには、ごまかしが利かないって言うぜ。物を見る目は下手な大人より、ずっとシビアだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そんな子供が感じ取れる物がお前にはある。何も無いなんて言うなよ、ゆまに失礼だろうが」
ほむら 「やめてったら!」
利己的に動いてきた自分を肯定されることは、余計に惨めだった。
私は声を荒げて、竜馬の言葉をさえぎる。何も聞きたくなかった。
ゆま 「・・・お、お姉ちゃん」
私の剣幕に驚いたのだろう、ゆまも眼を丸くして、これ以上は何も言おうとしなくなった。
竜馬は・・・竜馬はいま、私をどういう目で見ているのだろうか。
惨めで、怖くて・・・
私は彼の顔を正視することができなかった。
410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:27:17.65 ID:RtVUuQGN0
・・・
・・・
佐倉杏子は、夜の見滝原をあてど無くさまよっていた。
むしゃくしゃとする胸のうちをぶつけるように、乱暴にアスファルトを踏み叩きながら闊歩する。
杏子 「くそっ、マミの野郎」
知らず知らず、感情が言葉となってこぼれ落ちる。
だが、その怒りの矛先は言葉とは裏腹に、自分へと向けられている事に杏子は気がついていた。
マミのことなら、なんだって分かっていると思っていた。
ほむらの言うような、事実に心を押し潰されてしまうような、弱いマミなはずがない。
そんな確信めいた想いが、まったくの幻想であった事を思い知らされてしまったのだ。
自分の認識の甘さに、腹が立つのを抑えられずとも無理はなかった。
・・・
佐倉杏子は、夜の見滝原をあてど無くさまよっていた。
むしゃくしゃとする胸のうちをぶつけるように、乱暴にアスファルトを踏み叩きながら闊歩する。
杏子 「くそっ、マミの野郎」
知らず知らず、感情が言葉となってこぼれ落ちる。
だが、その怒りの矛先は言葉とは裏腹に、自分へと向けられている事に杏子は気がついていた。
マミのことなら、なんだって分かっていると思っていた。
ほむらの言うような、事実に心を押し潰されてしまうような、弱いマミなはずがない。
そんな確信めいた想いが、まったくの幻想であった事を思い知らされてしまったのだ。
自分の認識の甘さに、腹が立つのを抑えられずとも無理はなかった。
411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:28:36.48 ID:RtVUuQGN0
杏子 (しばらく離れていた間に、あいつの事を良いように思い込んでいたのかもな・・・)
・・・これが思い出補正って奴か、と。
自己分析をしてみて、そんな甘い結論に導かれてしまう事にも腹が立つ。
杏子 (腹が立つ腹が立つ・・・)
いくら腹を立てても、自分を殴るわけにもいかない。
杏子 「このままじゃ、いつまでたったって眠れそうにもねぇ。そうだな・・・魔女でも狩るか」
魔女がいなければ、今日ばかりは使い魔でも良い。
とにかく、今は怒りのぶつけ先が欲しかった。つい先ほど、グリーフシードを節約すると取り決めた事さえ、今の杏子にはどうでも良い事だった。
ソウルジェムを取り出し、周囲の気配を探る。
反応は、あっけないほどすぐ現れた。
杏子 「ついてるな。結界は・・・こっちか。期待して待ってろ、化け物。今日はいつもの十割り増しで、槍の味を堪能させてやるぜ」
・・・これが思い出補正って奴か、と。
自己分析をしてみて、そんな甘い結論に導かれてしまう事にも腹が立つ。
杏子 (腹が立つ腹が立つ・・・)
いくら腹を立てても、自分を殴るわけにもいかない。
杏子 「このままじゃ、いつまでたったって眠れそうにもねぇ。そうだな・・・魔女でも狩るか」
魔女がいなければ、今日ばかりは使い魔でも良い。
とにかく、今は怒りのぶつけ先が欲しかった。つい先ほど、グリーフシードを節約すると取り決めた事さえ、今の杏子にはどうでも良い事だった。
ソウルジェムを取り出し、周囲の気配を探る。
反応は、あっけないほどすぐ現れた。
杏子 「ついてるな。結界は・・・こっちか。期待して待ってろ、化け物。今日はいつもの十割り増しで、槍の味を堪能させてやるぜ」
412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:30:22.37 ID:RtVUuQGN0
・・・
・・・
襲い来る使い魔を、無双の勢いで血祭りにあげ続ける杏子。
結界内には、使い魔どもの断末魔が間断なく響き続けていた。
やがて・・・
無限とも思える使い魔の襲撃も、徐々に勢いが失われてゆき・・・
杏子 「けっ、敵さん、弾切れかよ!」
最後の一匹を槍で貫いた杏子が、吐き捨てるように言った。
先ほどまでの喧騒が嘘のように、静まり返った結界内。
彼女の足元には、数え切れないほどの使い魔の死骸が山となしている。
杏子 「物足りねぇが、仕方がない。そんじゃ、親玉に挨拶に行きますか」
槍をふるって穂先についた血のりを飛ばすと、杏子は結界の奥へと向かって歩を進めようとした。
・・・
襲い来る使い魔を、無双の勢いで血祭りにあげ続ける杏子。
結界内には、使い魔どもの断末魔が間断なく響き続けていた。
やがて・・・
無限とも思える使い魔の襲撃も、徐々に勢いが失われてゆき・・・
杏子 「けっ、敵さん、弾切れかよ!」
最後の一匹を槍で貫いた杏子が、吐き捨てるように言った。
先ほどまでの喧騒が嘘のように、静まり返った結界内。
彼女の足元には、数え切れないほどの使い魔の死骸が山となしている。
杏子 「物足りねぇが、仕方がない。そんじゃ、親玉に挨拶に行きますか」
槍をふるって穂先についた血のりを飛ばすと、杏子は結界の奥へと向かって歩を進めようとした。
413: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:30:53.86 ID:RtVUuQGN0
が、ピタリと足を止める。
背後から、自分を見つめる気配が一つ・・・
杏子 「・・・だれだ?」
言いながら振り返ると、いつからいたのか・・・
一人の魔法少女の姿が、そこにはあった。
純白のドレスとも見紛う、優美な衣装に身を包みし魔法少女。
杏子には見知らぬ顔だった。
杏子 「・・・ふうん、やっぱり見滝原でも行われてるらしいな」
背後から、自分を見つめる気配が一つ・・・
杏子 「・・・だれだ?」
言いながら振り返ると、いつからいたのか・・・
一人の魔法少女の姿が、そこにはあった。
純白のドレスとも見紛う、優美な衣装に身を包みし魔法少女。
杏子には見知らぬ顔だった。
杏子 「・・・ふうん、やっぱり見滝原でも行われてるらしいな」
414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:33:35.21 ID:RtVUuQGN0
? 「なにがかしら・・・?」
独り言のように呟いた杏子の一言に、落ち着き払って返答する魔法少女。
杏子 「魔法少女のバーゲンセールさ。だけれど、あんたはあたしが今まで見てきた連中とは、少し違うようだな」
? 「そうね。そしてあなたも、私が求めていたバーゲン品とは違うようだわ・・・」
杏子 「ふーん・・・で・・・」
槍の穂先を白い魔法少女の胸元に突きつける。
杏子 「あんたは、あたしの敵か?」
? 「どうかしら・・・」
杏子 「見たとこ、昨日今日魔法少女をはじめたルーキーって訳じゃないんだろ?だったら、あたしらのルールはわかってるはずだ」
? 「・・・」
独り言のように呟いた杏子の一言に、落ち着き払って返答する魔法少女。
杏子 「魔法少女のバーゲンセールさ。だけれど、あんたはあたしが今まで見てきた連中とは、少し違うようだな」
? 「そうね。そしてあなたも、私が求めていたバーゲン品とは違うようだわ・・・」
杏子 「ふーん・・・で・・・」
槍の穂先を白い魔法少女の胸元に突きつける。
杏子 「あんたは、あたしの敵か?」
? 「どうかしら・・・」
杏子 「見たとこ、昨日今日魔法少女をはじめたルーキーって訳じゃないんだろ?だったら、あたしらのルールはわかってるはずだ」
? 「・・・」
415: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:36:11.05 ID:RtVUuQGN0
杏子 「互いのテリトリーは侵すべからず。それが破られる時は、殺りあう時だってさ」
? 「・・・小さい」
白い魔法少女が呟く。
何の感情もこもっていない声と表情で、ただ吐き捨てるように。
杏子 「ああ?!」
? 「矮小だといったのよ。あなたの事じゃないわ。しがらみに縛られている、全ての魔法少女に対しての、率直な感想を言ったまでのこと」
杏子 「・・・何様だ、おまえ」
? 「私に、そんなルールは関係ない。私は、もっと大きな事のために戦っているの」
杏子 「・・・」
? 「何様だって聞いたわね。私は美国織莉子。キュウべぇと契約し、だけれどキュウべぇに縛られる事を拒んだ魔法少女・・・」
杏子 「キュウべぇを拒むって、あんたまさか・・・魔法少女がたどる運命の事を知っているのか・・・?」
織莉子 「・・・あなたも知ってるのね。私たちがいずれ、魔女となる運命を負わされている事に」
杏子 「・・・」
? 「・・・小さい」
白い魔法少女が呟く。
何の感情もこもっていない声と表情で、ただ吐き捨てるように。
杏子 「ああ?!」
? 「矮小だといったのよ。あなたの事じゃないわ。しがらみに縛られている、全ての魔法少女に対しての、率直な感想を言ったまでのこと」
杏子 「・・・何様だ、おまえ」
? 「私に、そんなルールは関係ない。私は、もっと大きな事のために戦っているの」
杏子 「・・・」
? 「何様だって聞いたわね。私は美国織莉子。キュウべぇと契約し、だけれどキュウべぇに縛られる事を拒んだ魔法少女・・・」
杏子 「キュウべぇを拒むって、あんたまさか・・・魔法少女がたどる運命の事を知っているのか・・・?」
織莉子 「・・・あなたも知ってるのね。私たちがいずれ、魔女となる運命を負わされている事に」
杏子 「・・・」
416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:38:36.62 ID:RtVUuQGN0
織莉子 「だったら、ルールだなんだという前に、終局の淵に落ち込む前にやるべき事をやるべきなんじゃないのかしら。私も、あなたも」
杏子 「・・・」
織莉子 「あなた、お名前は?」
杏子 「佐倉杏子・・・」
織莉子 「佐倉さん、ゲッターロボって知っているかしら?」
杏子 「!?」
織莉子 「その顔、ご存知のようね」
杏子 「お前の口からなんで、ゲッターロボの名前が出て来るんだよ!?」
織莉子 「ふふ・・・」
初めて織莉子が表情を崩した。
その笑いは杏子の狼狽がおかしかったのか、それとも別の所に理由があったのか・・・
杏子には判別する術がなかった。
杏子 「何がおかしいんだ」
織莉子 「ここの魔女、あなたにあげるわ」
杏子 「なにっ!?」
織莉子 「私、これでも色々忙しいの。私自身が魔女になる前に、そして、ワルプルギスの夜が来襲する前に、やらなければならない事が山盛りなのよ」
杏子 「ワルプルギスが来る事まで・・・あんた、いったい何者だよ」
杏子 「・・・」
織莉子 「あなた、お名前は?」
杏子 「佐倉杏子・・・」
織莉子 「佐倉さん、ゲッターロボって知っているかしら?」
杏子 「!?」
織莉子 「その顔、ご存知のようね」
杏子 「お前の口からなんで、ゲッターロボの名前が出て来るんだよ!?」
織莉子 「ふふ・・・」
初めて織莉子が表情を崩した。
その笑いは杏子の狼狽がおかしかったのか、それとも別の所に理由があったのか・・・
杏子には判別する術がなかった。
杏子 「何がおかしいんだ」
織莉子 「ここの魔女、あなたにあげるわ」
杏子 「なにっ!?」
織莉子 「私、これでも色々忙しいの。私自身が魔女になる前に、そして、ワルプルギスの夜が来襲する前に、やらなければならない事が山盛りなのよ」
杏子 「ワルプルギスが来る事まで・・・あんた、いったい何者だよ」
417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 13:40:41.71 ID:RtVUuQGN0
織莉子 「私が会いたかった人ではなかったけれど、佐倉さん。今日はあなたと会えて、とても嬉しかったわ」
杏子 「おい、私の質問に答えr
織莉子 「慌てなくても、また会うことになるでしょう。あなたがゲッターロボと関わっているのなら・・・」
杏子の言葉をさえぎってそれだけ言うと、織莉子はきびすを返して結界の出口の方へと歩き出してしまった。
杏子 「おい、私の質問に答えr
織莉子 「慌てなくても、また会うことになるでしょう。あなたがゲッターロボと関わっているのなら・・・」
杏子の言葉をさえぎってそれだけ言うと、織莉子はきびすを返して結界の出口の方へと歩き出してしまった。
424: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 00:59:05.97 ID:SwZgCOiL0
杏子 「おい、待て!」
奴には聞きたいことがある。ここで逃げられてたまるか。
杏子も慌てて、織莉子を逃さじと後を追おうとする。
だけれど・・・
杏子 「・・・!?」
おかしい。
織莉子は別段いそいでいる風でもないのに、どうしてだろう。
追いつく事ができない。
必死に走って追いかけるが、歩いている織莉子との距離が一向に縮まる気配が無いのだ。
奴には聞きたいことがある。ここで逃げられてたまるか。
杏子も慌てて、織莉子を逃さじと後を追おうとする。
だけれど・・・
杏子 「・・・!?」
おかしい。
織莉子は別段いそいでいる風でもないのに、どうしてだろう。
追いつく事ができない。
必死に走って追いかけるが、歩いている織莉子との距離が一向に縮まる気配が無いのだ。
425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:01:21.12 ID:SwZgCOiL0
刹那。
杏子は再び何者かの気配を感じて、慌てて振り返った。
今度は織莉子の時とは違う。明確な敵意をはらんだ気配。
その突然現れた大きすぎる殺意に、杏子の全身は一時に総毛だった。
杏子 「っ!?」
? 「おいつけないよ、私がいる限りね」
そこにいたのは、先ほどの織莉子とは対を成すように漆黒の服に身を包んだ、一人の魔法少女。
杏子 「いつの間に、いつからそこにっ・・・!?」
? 「君は織莉子に追いつけない。よしんば追いつけたとして、どうするつもりなんだい?」
杏子 「・・・」
? 「織莉子に害をなすようだったら、もう絶対に許されない。死ぬしかないよ、君は」
杏子は再び何者かの気配を感じて、慌てて振り返った。
今度は織莉子の時とは違う。明確な敵意をはらんだ気配。
その突然現れた大きすぎる殺意に、杏子の全身は一時に総毛だった。
杏子 「っ!?」
? 「おいつけないよ、私がいる限りね」
そこにいたのは、先ほどの織莉子とは対を成すように漆黒の服に身を包んだ、一人の魔法少女。
杏子 「いつの間に、いつからそこにっ・・・!?」
? 「君は織莉子に追いつけない。よしんば追いつけたとして、どうするつもりなんだい?」
杏子 「・・・」
? 「織莉子に害をなすようだったら、もう絶対に許されない。死ぬしかないよ、君は」
426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:05:40.38 ID:SwZgCOiL0
織莉子 「キリカ」
先を歩いていた織莉子が振り返りつつ、漆黒の魔法少女を呼ぶ。
織莉子 「今はまだ、戦う時じゃないわ。決戦の時の為に魔法力は温存しておくようにと、あれほど言ったじゃない」
キリカ 「でもだって、こいつは」
織莉子 「キリカ」
キリカ 「わ、わかったから、怒らないでよ。織莉子に嫌われたら、私はしぼんで朽ちて消え去るしかないんだから」
杏子に接していた時とは別人のように、怒られた子犬みたくうなだれて、織莉子の後を追おうとするキリカ。
まるで、すぐ傍らの杏子の事など、すでに眼中にも無いとでも言うように。
杏子 「お、おい待て、お前らっ!!」
このまま無視されたままで終ってたまるものか。
杏子は、去り際のキリカの肩に手を伸ばした。
先を歩いていた織莉子が振り返りつつ、漆黒の魔法少女を呼ぶ。
織莉子 「今はまだ、戦う時じゃないわ。決戦の時の為に魔法力は温存しておくようにと、あれほど言ったじゃない」
キリカ 「でもだって、こいつは」
織莉子 「キリカ」
キリカ 「わ、わかったから、怒らないでよ。織莉子に嫌われたら、私はしぼんで朽ちて消え去るしかないんだから」
杏子に接していた時とは別人のように、怒られた子犬みたくうなだれて、織莉子の後を追おうとするキリカ。
まるで、すぐ傍らの杏子の事など、すでに眼中にも無いとでも言うように。
杏子 「お、おい待て、お前らっ!!」
このまま無視されたままで終ってたまるものか。
杏子は、去り際のキリカの肩に手を伸ばした。
427: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:15:16.44 ID:SwZgCOiL0
だが、しかし。
確かに目測では確実にキリカを捕まえたはずだった。
なのに・・・
杏子 「え・・・っ!?」
いったい何が起こったのか、その手がむなしく、空を切る。
杏子はまったく、見当外れの所に手を伸ばしていたのだ。
杏子 「ど、どうなってやがる・・・!?」
いまやキリカは、杏子の遥か先を歩いていた。
キリカ 「だからー、捕まえられないって。それじゃね、また逢う日まで」
いったん足を止めたキリカは、それだけ言い捨てると、再び駆け出した。
杏子 「な・・・な・・・」
もはや、どうあがいても追いつけない
やがて二人の魔法少女が視界から消え、辺りが静寂へと戻るまで。
杏子はただ、呆然として見送るほかになす術が無かった。
確かに目測では確実にキリカを捕まえたはずだった。
なのに・・・
杏子 「え・・・っ!?」
いったい何が起こったのか、その手がむなしく、空を切る。
杏子はまったく、見当外れの所に手を伸ばしていたのだ。
杏子 「ど、どうなってやがる・・・!?」
いまやキリカは、杏子の遥か先を歩いていた。
キリカ 「だからー、捕まえられないって。それじゃね、また逢う日まで」
いったん足を止めたキリカは、それだけ言い捨てると、再び駆け出した。
杏子 「な・・・な・・・」
もはや、どうあがいても追いつけない
やがて二人の魔法少女が視界から消え、辺りが静寂へと戻るまで。
杏子はただ、呆然として見送るほかになす術が無かった。
428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:16:28.48 ID:SwZgCOiL0
・・・
・・・
数時間後。
すでに深更。
夜の帳が街を覆い、草木すら眠っているだろうこの時間にあって、私の部屋の明かりは未だ灯されたまま。
そこには、とても眠る気にはなれない私と、そして・・・
何をするでも語りかけてくるでもない。
ただ、だまって私の側にいてくれる、竜馬の姿もあった。
だけれど私は、そんな彼の顔を、今はまともに見ることもできない。
ほむら (取り乱しすぎた・・・)
私の醜態を目の当たりにし、そんな私を彼が今、どんな目で見ているのか。
知ってしまうのが、とても、とても怖かったから。
・・・
数時間後。
すでに深更。
夜の帳が街を覆い、草木すら眠っているだろうこの時間にあって、私の部屋の明かりは未だ灯されたまま。
そこには、とても眠る気にはなれない私と、そして・・・
何をするでも語りかけてくるでもない。
ただ、だまって私の側にいてくれる、竜馬の姿もあった。
だけれど私は、そんな彼の顔を、今はまともに見ることもできない。
ほむら (取り乱しすぎた・・・)
私の醜態を目の当たりにし、そんな私を彼が今、どんな目で見ているのか。
知ってしまうのが、とても、とても怖かったから。
429: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:17:10.48 ID:SwZgCOiL0
ゆま 「すー・・・すー・・・」
奥の部屋からは、穏やかなゆまの寝息がかすかに聞こえてくる。
私を心配して、さっきまで無理して側にいてくれたゆま。
おしよせる睡魔に効しえず、とうとう音落ちしてしまったのだ。
ほむら (あんな子供にまで心配かけて、気まで使わせて・・・)
ああ、自己嫌悪。
奥の部屋からは、穏やかなゆまの寝息がかすかに聞こえてくる。
私を心配して、さっきまで無理して側にいてくれたゆま。
おしよせる睡魔に効しえず、とうとう音落ちしてしまったのだ。
ほむら (あんな子供にまで心配かけて、気まで使わせて・・・)
ああ、自己嫌悪。
430: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:18:53.23 ID:SwZgCOiL0
思えばかつての私も、自己嫌悪の塊だった。
自分になんの価値も見出せず、考える事といったら後悔する事ばかり。
そんな、まどかと出会う前の、何の力も持っていなかった頃の私。
ほむら (それは・・・基本的に今だって変わっていない)
ただ、魔法少女となって、まどかを守ると決めた時から。
過去を振り返っている暇なんか、無くなってしまったというだけ。
不器用な私が不器用なりに目的を果たすためには、後ろなんて振り向いている時間などなかったのだ。
・・・だけれど。
自分になんの価値も見出せず、考える事といったら後悔する事ばかり。
そんな、まどかと出会う前の、何の力も持っていなかった頃の私。
ほむら (それは・・・基本的に今だって変わっていない)
ただ、魔法少女となって、まどかを守ると決めた時から。
過去を振り返っている暇なんか、無くなってしまったというだけ。
不器用な私が不器用なりに目的を果たすためには、後ろなんて振り向いている時間などなかったのだ。
・・・だけれど。
431: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:19:44.75 ID:SwZgCOiL0
ほむら (じゃあ、今は何で後悔なんて?)
マミとの接し方を間違ってしまった事。
杏子の本心に気づいてあげられなかった事。
それはつまり、今までの時間軸で私は、かつての仲間達とまともに向き合っていなかった事実の証明。
その事に対する後悔。
そして、たった今の竜馬に見せてしまった自分の弱さの事。
以前の私だったら、こんなことでここまで悔悟の念に責められることも、気を落とす事もなかったに違いない。
そう、誰にも頼らないと思いつめていた頃の私だったら。
竜馬 「・・・」
竜馬が席から立ち上がる気配がした。
そのまま、この部屋から出て行ってしまう。
ほむら (帰るのかしら。当然よね。もう時間も遅いし、なによりこんな私と一緒にいても、気が滅入るだけだもの)
マミとの接し方を間違ってしまった事。
杏子の本心に気づいてあげられなかった事。
それはつまり、今までの時間軸で私は、かつての仲間達とまともに向き合っていなかった事実の証明。
その事に対する後悔。
そして、たった今の竜馬に見せてしまった自分の弱さの事。
以前の私だったら、こんなことでここまで悔悟の念に責められることも、気を落とす事もなかったに違いない。
そう、誰にも頼らないと思いつめていた頃の私だったら。
竜馬 「・・・」
竜馬が席から立ち上がる気配がした。
そのまま、この部屋から出て行ってしまう。
ほむら (帰るのかしら。当然よね。もう時間も遅いし、なによりこんな私と一緒にいても、気が滅入るだけだもの)
432: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:21:02.27 ID:SwZgCOiL0
だけれど、玄関のドアを開ける音が、いつまでたっても聞こえてこない。
代わりに聞こえてくるのは、キッチンで湯を沸かす音。
ほむら 「・・・?」
しばらくして竜馬が部屋に戻ってきた。
その手に二つのティーカップを持って。
ほむら 「流君・・・?」
竜馬 「勝手に使わせてもらったが、紅茶を入れてきてやったぜ。少し喉を潤せ。落ち着くから」
言いながら彼は、私の前に無造作にカップを置く。
ほむら 「あ、ありがとう・・・」
礼を言いながら顔を上げると、私を覗き込むように見つめる竜馬と目があってしまった。
ほむら 「・・・あ」
竜馬 「おう、目はまだ死んでいないな」
にっと笑いながら、彼は再び私の向かい側へと腰を下ろす。
竜馬はいつもと変わらない顔で、私を見ていた。
代わりに聞こえてくるのは、キッチンで湯を沸かす音。
ほむら 「・・・?」
しばらくして竜馬が部屋に戻ってきた。
その手に二つのティーカップを持って。
ほむら 「流君・・・?」
竜馬 「勝手に使わせてもらったが、紅茶を入れてきてやったぜ。少し喉を潤せ。落ち着くから」
言いながら彼は、私の前に無造作にカップを置く。
ほむら 「あ、ありがとう・・・」
礼を言いながら顔を上げると、私を覗き込むように見つめる竜馬と目があってしまった。
ほむら 「・・・あ」
竜馬 「おう、目はまだ死んでいないな」
にっと笑いながら、彼は再び私の向かい側へと腰を下ろす。
竜馬はいつもと変わらない顔で、私を見ていた。
433: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:22:21.67 ID:SwZgCOiL0
・・・
・・・
次回予告
見滝原と風見野において、乱造される魔法少女たち。
彼女らを糾合し、ほむらたちの前へと姿を現す美国織莉子。
いったい彼女の思惑は?そして、織莉子が見せるゲッターへの執着の真意はどこにあるのか。
ふたつの魔法少女の勢力がぶつかる時、裏で糸を引くキュウべぇの瞳が妖しい赤を湛えて光る!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第六話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
見滝原と風見野において、乱造される魔法少女たち。
彼女らを糾合し、ほむらたちの前へと姿を現す美国織莉子。
いったい彼女の思惑は?そして、織莉子が見せるゲッターへの執着の真意はどこにあるのか。
ふたつの魔法少女の勢力がぶつかる時、裏で糸を引くキュウべぇの瞳が妖しい赤を湛えて光る!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第六話にテレビスイッチオン!
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