超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第5章

――――――マンション城:ペントハウス(天守)


金木「………………」

二条城「どうなさいました、あなた? そんな物憂げなお顔をなさって」

金木「いや、今日も石田少将はどこで何やってるのかなーって」

二条城「そうですわねぇ。あの御方は本当に石田治部にそっくりでございますから」

金木「うん? 確か二条城って関ヶ原の戦いの後の築城じゃ――――――」

二条城「そうですよ? でも、覚えているもんなんですよ」


二条城「それだけ、石田治部の存在は天下にとって大きかったのですから」


金木「石田少将は本当に凄い――――――けど、あの人に心休まる日が訪れることがあるのだろうか?」

二条城「…………石田治部を失ったことで大坂城の規律は緩み、それから大坂の陣の時には浪人が多く入ることになって大いに乱れていたとか」

金木「やっぱり石田治部は正しかったんだよ。――――――ただひたすらに正しかった」

金木「けれども、人間って正しいってわかっていてもそれに反発する習性を持っているから、どこまでも救われない――――――」

金木「そして、ただひたすら豊臣にとって正しいことだけしかできなかった石田治部はもっと救われない――――――」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



109: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 19:54:38.04 ID:Q97NpYj00

――――――マンション城:ペントハウス(天守)


金木「…………【兜】共めぇ」

金木「やつら、いったいどこから湧いてきやがる? さっさと潰さないと【乱】の時にまた厄介なことに――――――!」

石田”「おそらくは、唐津の時と同じく天草諸島のどこかの島に隠れているのだろうが…………」

石田”「まだわからないことは、【兜】にも戦略性――――――つまりは明確な目的意識があって襲ってきているかどうかがまだわからない」

金木「そりゃあるに決まってるんじゃないんですか?」

金木「だって、やつらはこれまでにだって各時代で暗躍して内紛を誘発してきたことだし、」

金木「これから起こるだろう【島原・天草一揆】にも絶対に関わってくる! そうでしょう?」 


石田”「しかし それなら、なぜこの時代のこの場所なのだ?」


金木「?」

石田”「やつらが行う宝蔵品の略奪にしても、ただ単に金品を巻き上げるのであれば金山や銀山をその圧倒的な武力で制圧すればいいだけのことだ」

石田”「しかし、やつらは武力で以って日本を征服しようという考えはこれっぽちも伝わってこない」

石田”「むしろ、野盗と化した浪人たちを使って情報収集や監視に終始していた。あれだけの大兵力にしては恐ろしく慎重に見えた」

石田”「そして、唐津における【兜】たちの真の狙いは、――――――名護屋城にあった」

金木「はい。今までの襲撃は俺を唐津に釘付けにしている間に名護屋城を見つけ出すことにあったようですから『してやられた』ってもんだぜ」ググッ

石田”「しかし、神集島の【兜】たちの拠点を叩いたことで唐津から【兜】を駆逐することに成功した」

金木「ええ。石田少将と佐和山城の大手柄ですよ」

石田”「だが、【兜】たちを従えている真の大将を取り逃してしまった…………」

石田”「おそらくはここしばらくは活動できないと踏んでいたが、こんなすぐ後にまた【兜】の襲撃が天草であろうとはな……」

金木「しかたがなかったことですよ! それにもしかしたら他所の【兜】の群れがたまたま襲ってきただけかもしれませんし」

金木「それよりも、今まで謎だった【兜】について知ることができて、今まで以上に対策が立てられるようになっただけでも大きな成果ですって」

金木「でも、――――――あんな無茶はもうしないでくださいよ、石田少将?」

石田”「……まあ二度目は通用しないだろうからするつもりはないがな」

金木「またそう言ってぇ…………飛龍さんの気持ちを考えたことあるの?」ヤレヤレ

石田”「…………急に何の話だ?」ジロッ

110: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 19:55:55.05 ID:Q97NpYj00

金木「聞きましたよ、石田少将がどういった軍人だったのか、それなりに(やっぱ怖えな、――――――本職の軍人ってやつは)」

石田”「………………」

金木「軍艦が擬人化したような化物に水上オートバイに乗って立ち向かってるんだって?(でも、俺は【乱】を止めるって決めたんだ! ビビってらんねえ!)」

金木「凄いよ、石田少将。ただものではないことはわかってはいたけど、――――――生身で戦うなんてさ?」

金木「俺が最初に【関ヶ原】で出会った金本提督――――――あの成金ですら、パワードスーツなんか着て戦っているのに」

金木「すげーよ、ただそれしか言えない」

石田”「………………」

金木「俺はただの貧乏苦学生で、石田少将のように人の上に立つべき器だとか軍略だとかそんなのは全然からっきしで、」

金木「ただ流されるままに【城娘】と【兜】の戦いに身を投じて、俺ではなくて【城娘】たちの頑張りで何とかしてこれただけなんだ」

金木「それなのに、石田少将は全然違う。――――――金本提督もまじめに戦おうとしてパワードスーツを自ら着込んでいるだけ凄いんだけど、」

金木「生身で頑張って、しかも敵の【深海棲艦】ってやつの理解もしようとしてさ? 俺からすれば石田少将の方が一歩も二歩も先を行ってるよ」

金木「それでいて、今度は【ここ】では謎に包まれていた【兜】の正体に迫る功績をあげたんだよ?」

金木「そんな凄い人を尊敬しないわけがないじゃないですか!」

金木「だからこそ、【こんなところ】で本来 果たすべき役目を――――――帰るべき場所を帰れずに朽ち果てるところなんて見たくないし、」

金木「純粋に、あなたの教えや生き様を少しでも近くで多く見ていたいと思えたから…………」

石田”「…………金木」

金木「俺は【城娘】と一緒に【乱世】を生き抜くって決めたんだ」

金木「だからこそ、頭脳明晰で行動力もあって一本 筋の通った強い意志の持ち主である石田少将に憧れてるっていうか…………」

金木「きっと石田少将だったら、俺とは違ってメソメソすることなく、もっとより良く【乱世】を生き抜いたことでしょうね」

石田”「………………ハア」

111: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 19:57:57.50 ID:Q97NpYj00

石田”「おい、やめろ」

金木「え」

石田”「その……、なんだ?」

石田”「確かに俺は誇りある皇国軍人としての職責を全うするためにどこであろうと力の限り生き抜くつもりではあるが、」

石田”「それでも、やはり……、――――――帰れるかどうか不安になって泣きたいと思う時だってある」

金木「え?」

石田”「それにだ。――――――そこまで褒められたものじゃないぞ」

石田”「今の俺の性格は、他でもない石田治部とそっくりな性質が全て招いたことでもあり、それを直そうともせずにいた結果が今の俺だ」

石田”「確かに俺はクズ共にはない才があったからこそ、ここまでいろんなことに手を出してことごとく成功に導くことができたが、」

石田”「それは同時に、無能ゆえの卑屈さよりも身を滅ぼす危険性が高く、質が悪い自信と紙一重の高慢さにも繋がっていて、」

石田”「気づいた時には、功績はあれども それを心から讃えてくれる友の姿はなくなっていたのだ…………」

金木「………………」

石田”「考えてもみろ」

石田”「俺は性格だけじゃなく、顔までも石田治部にそっくりと言われるぐらいなのだぞ」

石田”「そんな俺がこの【乱世】で真っ当に生きていけると思うか? 才覚はあれど天下人たる器に必要なものが最も欠けているのだ」

石田”「そういう意味では、俺は本当に幸運だよ」ポンッ

金木「え」


石田”「お前がいたからな。お前という【城主】がいたから俺は今日まで存分に力を振るうことができたのだ」


金木「えと……?」

石田”「つまり、石田治部にしても俺にしても、表でみなを導く誰かの下で裏方に徹していた方が力を発揮しやすいということだ」

石田”「特に、能力はあっても人から嫌われやすい質の人間としてはな」

金木「そんなことは――――――」


石田”「それだ」


金木「?」

石田”「金木のその卑屈さからくる謙虚さというのか、裏表のない素直なところに俺は助けられている」

石田”「俺としても相性の悪い人間と一緒に暮らしていかなければならなかったら、ここまで力を振るうことはできなかっただろう」

石田”「むしろ、もしかしたら【城主】を見限って【兜】方につくことも十分に考えられるのだからな」

金木「いいっ!?」

石田”「安心しろ。俺も人に対して言い過ぎるところはあるとは思ってはいるが、お前はそれを素直に聞き入れて感謝すらしてくれるのだから」

石田”「俺の方が歳上で しかも誇りある皇国軍人だというのに、本来なら護衛対象であるお前にはひどく安心させられてばかりだ」

金木「そ、そうだったんですか……」ハハ・・・

石田”「こういうのを“吊り橋効果”というのかは知らんが、“唯一の味方”ということもあって自然と入れ込んでいたようだ」

金木「それを言うなら俺もですよ」

金木「本当に良かったです。石田少将が頭の堅い軍人さんじゃなくて本当に…………俺としても最初は軍人ってことで怖い印象がありましたから」ホッ

金木「それに、あの金本提督の知り合いということで不思議と縁があったおかげで、共通の話題を持つこともできましたからね」

石田”「…………そうだな(金木青年が金本提督に似ている理由というのは――――――)」

112: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 19:59:07.54 ID:Q97NpYj00

金木「さて、となると【兜】には金品を巻き上げる以外の目的があって、今日もまた襲ってきたと」

石田”「おそらく【兜】には明確な狙いがあるはずなのだ」

石田”「そして それは、天敵であるはずの【城娘】にも関係してくるように思う」

金木「…………どういうことです?」

石田”「志摩守が名護屋城に関することを包み隠さず全て話した中にあっただろう?」


――――――【城娘】には実在の城郭の血脈が受け継がれていると。


金木「……確かにそんなようなことを言ってましたね」

金木「けど、確かに城といえば城だけどさ? 【城娘】は付喪神の類なのであって、実際の城に置いてある金品を取り出せるわけでもないですぜ?」

石田”「ああ。だが、やつらはどういったわけか天敵であるはずの【城娘】を【捕縛】するだろう? 生かしておくだろう?」

金木「あれはこちらから少しでも金品を巻き上げて懐を潤すためであって――――――」

石田”「なら、どうして【城娘】によって身代金の額に違いが出てくる?」

金木「え? それは……、中世ヨーロッパの貴族の捕虜交換と似たようなもんじゃ――――――?」

石田”「そうだ。【城娘】にも格付けというものがあって、【兜】の連中は狙いの【城娘】がいるからそれ以外を手放すことを厭わないのだ」

金木「!」

金木「じゃあ、少なくとも名護屋城はそれに当たる存在だと?」

石田”「ああ。確かに名護屋城は他の【城娘】とは一線を画す存在なのがわかる。ああ見えて能力はずば抜けて高いしな」

金木「そっか。となれば、名護屋城の他にも保護すべき【城娘】がいるってわけなのか」

113: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:00:09.66 ID:Q97NpYj00

石田”「そして、神集島に潜入した際の感想だが、――――――どうも【兜】の連中は金欠状態が続いているように見えた」

金木「そりゃあ、唐津では狙いの【城娘】の捜索をするための大規模な陽動だったけれども、」

金木「あれだけの【兜】を送り込んできては返り討ちに遭っちゃあ資金がいくらあっても足りないわな。略奪せざるを得ないか」

石田”「となれば、略奪した宝蔵品の使い道はただ単に蓄財として用いているわけでもないわけだ」

金木「じゃあ、あのたくさんの【兜】を生み出すために必要なコストだったってことなのかな?」

石田”「あるいは、宝蔵品から得た資金を何らかの資材に替えてから【兜】を生み出しているかだな」

石田”「残念だが、【兜】誕生の秘密まで探ることはできなかった……」

金木「そこは気にしないでくださいよ。むしろ、こうやって少しずつ考えていくのがいいんじゃありませんか?」

金木「いきなり驚愕の事実を目の当たりにして、心の準備なしじゃ受け容れる余裕がないかもしれませんよ?」

石田”「そういってもらえると助かる。確かに少しずつ理解を深めていかなければ事実を受け容れるのは難しいだろうからな」

金木「でも、カネに替えてるって言うんだったら、話は早いんじゃないんですか?」

石田”「というと?」

金木「だって、それだけの資金や資源の行き来があったということは、それだけ大規模な取引がどこかしらであったってことじゃないですか」

金木「じゃあ、あの神集島の奥深くにまでそれを行き渡せていたかというと、それも非現実的な気がするんですよ」

金木「むしろ、金銀の流通量を幕府が管理しているのに、――――――いったいどれだけの資源効率で【兜】を生み出しているかは知らないけど、」

金木「それでも、唐津に数ヶ月にも渡って【兜】を送り込んでは返り討ちなんだから、宝蔵品の取引で戦力の補充には無理があるんじゃないかと」

石田”「なるほど、貨幣の流通の面でそう考えたか。――――――盲点だったな」

金木「へへっ」

114: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:00:40.54 ID:Q97NpYj00

石田”「となると、略奪した宝蔵品には別の使い方があるのかもしれないのか」

金木「わかりませんねー」

石田”「そうだな、今は」

石田”「だが、敵に関する研究はこれで大きく前進するに至った」

石田”「宝蔵品の略奪は『したいからする』のではなく、『しなければならないからする』死活問題に直結している可能性が非常に大きい」

金木「あと、謎といえばたくさんあるけれども、今は――――――」

石田”「ああ。今日のところはこれで十分だろう」



――――――【乱世】における数々の謎の一覧


・【兜】について
1,そもそもなぜ宝蔵品の略奪をするのか
2,行く先々の時代で内紛を影で煽ってきた意味
3,なぜ天敵であるはずの【城娘】を生け捕りにするのか
4,その正体は? 【大将兜】とはどう違うのか
5,その終着点は――――――?

・【城娘】について
1,どういった条件でモデルとなる城郭から【城娘】が自然発生するのか
2,ロストした時にはどうなってしまうのか
3,なぜ変身ができるのか
4,行く先々の時代で人類とどのような関わりあいをしてきたのか
5,その生態は人間と比べてどうなのか

・【神娘】について
1,なぜ【青年】が【城主】として選ばれたのか
2,タイムスリップに関する問題をどう捉えているのか
3,なぜ【兜】に対して【城娘】なのか
4,どこまで【兜】について知っているのか
5,どこまで信用していいのか


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――


115: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:01:27.22 ID:Q97NpYj00

――――――肥前国 島原


【城娘】原城「どうか、豊後様に会わせてはいただけないでしょうか?」

【城娘】島原城「あら、持ち場を離れて何をしに来たのかと思えば、またキリシタンの助命のことかしら?」

島原城「無駄よ。豊後様は将軍様の尖兵として呂宋の攻略準備にとりかかっているんだから邪魔しないことね」

原城「それもありますが、今回は違います」

島原城「?」


原城「…………島原城殿、あなたはここしばらく豊後様にお会いしたことがおありですか?」


島原城「どういう意味?」

原城「江戸の上様の命に従ってキリシタンの弾圧を行っていることは、私は豊後様の配下として不本意ながら黙認しなければなりません」

原城「ですが、島原が4万石なのに対して島原城殿は10万石相当です!」

原城「島原城殿を養っていくために重税を課し、キリシタンでもない無辜の民まで拷問に処すのは人道に悖り、目に余ります」

島原城「お黙り! 旧・有馬の支城のお嬢ちゃまが軽々しく名を呼ぶなど図々しい! “お姫様”とお呼び!」

原城「では、“お姫様”。“お姫様”から豊後様に今一度 島原の民を安んじるように進言してください。お願いします」

島原城「いやよ! 私にお仕事させるだなんて廃城された身でありながらずいぶんと偉そうね!」

原城「………………」

島原城「そもそもなんで、とっくの昔に改易された旧・有馬の支城で、しかも私の築城のために廃城にされたっていうのに、」

島原城「どうして原城――――――あなたは私と同じ【城娘】としてこの世に存在していられるのよ?」

島原城「しかも、築城の名手である豊後様に造られた私よりもあんな断崖絶壁に建てられたボロ臭いあなたの方が臣民の間では評判よね?」ジロッ


原城「人の高ぶりはその人を低くし、心の低い人は誉れをつかむ」


島原城「はあ?」

原城「我がキリシタンの経典である聖書の言葉です」

原城「そして 私は、その経典の言葉を実践し、弱き人を慈しみ愛してまいりました」

原城「私の評判というのは望んで得たものではございません。実践の結果として得たものなのです」

原城「そして、愛とは人と人とが繋がった時にしか得られないものなのです」

原城「もし“お姫様”が臣民から愛されたいのであれば――――――、」


――――――歓ぶ人たちと共に歓び、泣く人たちと共に泣きなさい。


原城「それしか道はありません」

島原城「む」

116: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:02:00.19 ID:Q97NpYj00

島原城「………………」

原城「………………」

島原城「何か変わったわね、原城。そんなふうな智者ぶった物言いなんて一度もしたことがなかったし」

原城「――――――天命を悟っただけです」

原城「しかし、今の私にできることはこうしてお願いすることだけなのです」

原城「ですが、だからこそ私は行動を起こせたのです」

島原城「キリシタンの弾圧を行っている相手に泣きつくってこと?」

原城「いえ、偉大なる主の教えにあるとおりに『私たちの敵を愛し、私たちを虐げる者のために祈り』ます」

原城「――――――『その人にも神の寵愛がありますように』と」

原城「どうか松倉家が栄え、島原の民も栄え、世界が平和で豊かに繁栄していけるように」

島原城「…………!」

原城「これが私の想いです」

原城「『国あって民』ならば、どうか国の力で民に恵みをもたらしてください。逆に『民あって国』ならば、民が国を愛するように心を向けさせてください」

原城「今の島原領主:松倉豊後守はただの暴君です」

原城「そして、この世に悪が栄えた試しはありません」

原城「朝廷を牛耳って栄華を極めたことで有名な かの平清盛もその死後に一族が滅亡しました」

原城「たとえ豊後様が安らかに逝かれたとしても、残された一族がその咎を償わなければならなくなる時がくるです」

原城「ですから、今からでも遅くはありません」

原城「民を安んじてくださいますように豊後様に申し上げていただけませんか?」

原城「これは島原の民のためであり、豊後様のためでもあります。どうか――――――」

島原城「………………」

島原城「…………」

島原城「……」





117: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:02:33.73 ID:Q97NpYj00

――――――肥後国 天草

――――――マンション城


金木「……………………平和だなぁ」ゴロラゴロラ・・・

金木「やっぱり天草がメインターゲットじゃないせいか、唐津と比べて【兜】の襲撃がなくて本当に平和だ」

金木「【資源】も順調に溜まっていくことだし、――――――そういえば【資源】ってなんで回復してるんだぁ? まあ いいか、そんなこと」メメタァ

金木「そのおかげで余暇ができて、俺も順調に武芸を磨けるようになったし、志摩様の藩の改革の方も進んでいっているようだし、」

金木「石田少将も何だかんだ言ってちゃんと無事に帰ってきてくれるし。――――――今度、石田少将のために【探索】班を組織してもいいかなぁ?」

金木「そして、領民との交流も、最初の頃はやっぱり不信の目で見られていたけど、段々と信頼されてきたって感じだ」

金木「――――――目指せ、第2の唐津!」

金木「『平和が一番』――――――まったくもってその通り」


金木「………………………………」


金木「でも、こうしている間も島原では変心した松倉豊後守の手によって――――――『苛政は虎よりも猛し』だもんな」

金木「だからといって、俺が乗り込んでいったところでやれることなんてない」

金木「志摩様の時のように、あくまでも話し合いによる正攻法で穏便にすませられなきゃダメだ」

金木「天下無双の【城娘】軍団の武力に頼って無理やり屈服なんてさせたら、俺たちは【兜】以上の脅威と幕府に恐れられてしまうかも」

金木「そうなれば逆に、幕府に対して叛心を抱いている【乱】の首謀者たちに担ぎ上げられる可能性が出てくる」


金木「だからこそ、力の使い方には慎重にならないといけないんだな」


金木「今まで――――――【稲生】まではひたすら流され続けて降りかかった火の粉を振り払うためにがむしゃらにやって問題なかったけど、」

金木「寛永時代は“生まれながらの将軍”徳川家光による現代日本の基礎が生まれる歴史的分岐点に立っているわけだから、」

金木「ここで下手に刺激して、たとえばルソン島への侵攻への後押しなんかさせるわけにはいかないんだ」

金木「だから、――――――これからも【城娘】を従える【城主】として受身の姿勢を貫き通さないとダメ、か」

118: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:03:28.95 ID:Q97NpYj00


金木「不幸中の幸いというか、偶然が招いた奇跡というか――――――いや、今までのタイムスリップは全て【兜】との戦いに集約されていた」


金木「タイムスリップした直後にすぐに【兜】との戦いを繰り広げ――――――、」

金木「そして、その地の【兜】を駆逐した直後にまたタイムスリップ――――――なんてのを嫌というほど繰り返させられてきたんだ」

金木「今回もまた、【兜】たちが狙っている禁断の【城娘】名護屋城を守るためにこの時代にタイムスリップさせられたんだよな、きっと」

金木「だけど、唐津の【兜】を駆逐してもタイムスリップしないところを見る限り、まだまだ【この時代】には役目があるらしい」

金木「すると、その答えは意外なところからもたらされた」

金木「時代は、キリスト教徒による反乱と言われている【島原・天草一揆】が勃発した寛永時代であったのだ」

金木「そして、唐津の領主である寺沢志摩守は実は問題となってくる天草の領主でもあったのだ」


――――――この事実に運命というものを感じずにはいられないかったね。


金木「順序は違うけど、こうやって今までの出来事とわかっている範囲の事実を整理していくと、」

金木「――――――本当によくできた一筋のシナリオが成り立っていると思うよ」

金木「あのタイムトンネルとも言うべき【不気味な穴】を起こしているのが【兜】なのか、【神娘】の側なのかはわからないけれども、」

金木「何にせよ、腐っても神様の眷属である【神娘】のおかげのような――――――何て言えばわかんないけど、」

金木「とにかく運命というものを感じずにはいられなかった」

金木「だからこそ、俺は【島原・天草一揆】を止める決意を強く固めることができた。それが今回の役目だと確信できたから」

119: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:04:14.70 ID:Q97NpYj00

金木「そして、ここまで俺のことを導いてくれた――――――、」

金木「今回の唐津から始まる【島原・天草一揆】へ繋がりを示唆する重要なパズルのピースをもたらしてくれたのが、」

金木「俺と同じく平成からタイムスリップしてきた――――――いや、どうも俺の知る歴史とは似て非なる平成時代からやってきた、」


――――――誇り高き皇国軍人:石田少将であり、そんなあの人に俺は感謝の言葉を捧げたい。


金木「石田少将が来たおかげで、どうして唐津が【兜】に襲われていたのかがわかったことだし、」

金木「その上、唐津を襲う【兜】共の本拠地を来てすぐに壊滅に追いやったんだ。――――――言葉が出ないね」

金木「それから、石田少将の教えと導きによって、これから【島原・天草一揆】が起こることがわかり、この時代での役目を悟ることになったんだ」

金木「結局 俺は【城主】として、天草に移った今回のキーパーソンの志摩様と天草の防衛のために、これまで同様に大きく動けないけど、」

金木「動けない俺に代わって、情報収集や今の生活を良くする物品をもたらしてくれているから本当に大助かりだよ」

金木「でも、石田少将はこの【乱世】――――――言うなれば【異世界】において、」

金木「すんなり適応してこれだけの仕事をしてくれていることに少し俺は感心すると同時に心配もしていた」

金木「だって、俺は【神娘】や【城娘】、【その時代を生きる人たち】からの親切によって立ち直って今までやってこられたのに、」

金木「石田少将は俺とは違って、いきなりその時代を生きる人々に紛れて情報収集だとか物々交換をやってのけるんだから、」

金木「たぶん、石田少将は生きていける。――――――独りでもやっていけるぐらいの力があった」

120: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:04:39.38 ID:Q97NpYj00


金木「でも、実際はちょっと違っていた」


金木「もちろん、石田少将は卓越した才能と鋼鉄の意志の持ち主でもあった」

金木「けれども、石田少将としては俺という存在の後ろ盾があって初めてあれだけの能力を発揮できているそうで、」

金木「生まれも能力も才能もまったくもって差を付けられている俺と石田少将ではあったが、実は互恵関係としてうまいこと関係が成り立っていたのだ」

金木「そう、俺と石田少将の関係はとてもうまくいっている」

金木「石田少将が嫌がっているのでこう例えるのは失礼かもしれないけど――――――、」

金木「さながら太閤:豊臣秀吉と石田治部の関係のようにそれぞれの役割に徹して互いに益をもたらしている感じだ」

金木「本当にそう思えるのだ」

金木「志摩様が文治派としてかつて石田治部とは顔馴染みであり、その志摩様が石田少将は石田治部そっくりだと言っていたせいもあって」

金木「でも、石田治部のような無双の才覚を【異世界】でも発揮しているそんな石田少将を見ていると、何だか物悲しく思ってしまう俺がいた」

金木「どうしても石田治部に重ねて見てしまうせいでもあるんだけど――――――、」

金木「やっぱり史実で人望がなかった石田治部と同じく、人からあまり好かれそうにない性格がいたたまれなかったのだ」

金木「貧乏苦学生の素寒貧で目下の俺なんかに言えたことじゃないんだろうけど、俺はどうしてもそこが気になっていたのだ」


――――――なぜなら、一緒にタイムスリップしてきた石田少将の2人の部下に対する態度に大きな差があることに気づいたからなのだ。


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



121: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:05:05.94 ID:Q97NpYj00

――――――ある日のこと


金木「やればできるんだねぇ、さっすが俺ぇ!」ハア・・・ハア・・・

飛龍”「お疲れ様♪」

金木「へへ、やっぱり俺って男の子なんだな……(美人の教官の前だとみっともないところをできるだけ見せないようについ頑張っちゃうよ)」ドキドキ

飛龍”「?」

金木「いやいや、今日もお疲れ様でした。ありがとうございます、教官」

飛龍”「どういたしまして」

飛龍”「私も【ここ】に来てからはずっとお留守番だから、こうやって役立てることがあってよかった」

金木「…………補給の目処が立たないんですよね?(そりゃあ【艦娘】は今から300年ぐらい後の大日本帝国の軍艦が擬人化したものだし)」

飛龍”「うん。【ここ】は江戸時代だし、私たちの艤装の整備を行ってくれる妖精さんもいないから」

飛龍”「でも、万が一の時は【兜】の1体ぐらい打ち負かすぐらいの力を発揮するから安心してね。【艦載機】もまだまだ余裕があるしね」

金木「それに、海の上なら時速60kmオーバーで動けるんだっけ? それで余裕で逃げきれるしな」

飛龍”「うん。一人で逃げるだけだったら簡単なんだけど、それでも結構【燃料】を消費しちゃうからそれはあまり――――――、ね?」

飛龍”「私は【艦娘】だから、【深海棲艦】の『ヲシドリ』のように自然回復できるわけじゃないから…………」

金木「……そっか。何かごめんなさい(客観的に見て、人類の味方である【艦娘】よりも人類の敵である【深海棲艦】の方が優秀に思えるのは何か悔しいな)」

飛龍”「ううん。あくまでも万が一のことだからね?」

金木「それはそうなんだけど……」

飛龍”「だったら、そうならないように【城主】様も頑張ってね♪」

金木「はい! 全力でこの地を防衛いたします!」ビシッ

金木「(やっべえ! 今まで会ってきたどの女性よりもこの“飛龍”っていう【艦娘】が俺には物凄く魅力的に見える!)」ドクンドクン

金木「(俺、もしかしたら【城娘】よりも【艦娘】の方が好みかも――――――同じ時代の出身ってのもあるから話や波長が自然と合うのか?)」

金木「(いやいやいや、――――――『隣の芝生は青い』ってやつかもしれんぞ? 俺が単純に人間や【城娘】に見飽きているのかもしれん)」

金木「(だって、俺は【乱世】に来る前に『貧乏だから』っていう理由で好きな女の子から手酷く振られたし――――――、)」

金木「(【城娘】にしたって、そりゃあもう極上の美女が揃いも揃ってますけど、俺の代わりに化物と戦ってくれる娘に手を出すのは何かイヤ…………)」

金木「(例えるなら、正義の為に戦う美少女戦士に乱暴を行う薄い本のような感じで――――――『神聖にして侵すべからず』って感じなんだよなぁ)」

金木「(それに、やっぱり現代っ子の俺からするとちょっと【城娘】は全体的に古風って感じで堅苦しい印象があってね……)」

金木「(俺のことを【城主】として慕ってくれているけれど、元は貧乏苦学生の素寒貧なんだから不釣り合いだと思うところがあって…………)」

金木「(そんな中、この飛龍っていう娘は【城娘】と同じく 生まれながらの兵器:【艦娘】ではあるんだけれど、)」

金木「(【城娘】から感じる あの古臭さと堅苦しさを一切感じさせない同じ現代っ子らしさが強く感じられて、話していて一番 気楽な相手かもしれない)」

金木「(石田少将と話すのは師匠と弟子の関係みたいで自然と気合が入って、『ヲシドリ』との時間は歳の離れた子供とふれあう時間って感じ)」

金木「(だからかもしれないな、――――――俺が段々と飛龍さんとの時間がずっと続くことを強く望むようになっていたのも)」


122: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:06:12.48 ID:Q97NpYj00


飛龍”「――――――それでね? 私たちの鎮守府はまた花の香りに包まれることになったんだよ」

金木「へえ、そうなんだ(やっぱりカワイイな。モデル体型ってわけじゃないんだけど、女性の美しさを引き出すような丈の短い和装がスゴクイイ!)」ドクンドクン

金木「――――――また『花』か。石田少将ってやっぱりロマンチストじゃないんでしょうかね?」

飛龍”「私、提督からその時 黄色のバラをもらっちゃった」エヘヘ・・・

金木「え? ――――――『黄色のバラ』?」

飛龍”「うん。いろんな色のバラがあったんだけど、提督はその中で私の色にそっくりな黄色のバラをくれたんだよ」ニコッ

金木「…………そうなんだ」

飛龍”「どうしたの?」

金木「いや、その時 石田少将は何か言ってた?」

飛龍”「え? う~ん、確か――――――、」


石田『今の私の飛龍に対する気持ちを表すとしたらこれかと思い、このイエローを選んでみました』


飛龍”「こんなことを言ってたよ。よく憶えてる、うん」

金木「…………そうなんだ」スッ ――――――電子辞書を取り出す。

金木「(これってどうなんだ? 普通、女性にバラを贈る時って赤いバラだよな?)」

金木「(そう、赤いバラの花言葉は『あなたを愛してます』だろう? あるいは『情熱的な恋』とかだろう? ――――――これぐらい常識だよな?)」

金木「(でも、黄色のバラってあんまりよくない意味だった気がする。だって、黄色って警告色でしょう?)」

金木「(それに、バラって西洋の花ってわけだから、色に関する花言葉だって当然その文化の価値観に左右されるわけだし――――――、)」

金木「(うん。電子辞書にも『黄色は西洋では負のイメージがある』って書いてあるな)」

金木「(しかも、『黄色には『裏切り』『嫉妬』『排斥』といったネガティブなイメージがあり、ナショナルカラーに選ぶ国は少ない』ってさ!)」

金木「(石田少将、何やっちゃってくれてるわけぇ!?)」

金木「(だって、石田少将ってその花屋敷を造る前に、鎮守府に作った花屋の可愛い売り子さんと毎日のように会っていたんだよね?)」

金木「(それなのに、なんで負のイメージの黄色のバラなんて飛龍さんにわざわざ選んで渡しちゃってるわけぇ?!)」

金木「(なに? つまり、『排斥』したいわけ? まさか飛龍さんを!?)」


――――――いや、石田少将に限ってそんなことがあるはずがない!



123: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:06:39.05 ID:Q97NpYj00

金木「(お、落ち着けぇ! 石田少将はそんな陰湿なことをするはずがない。面と向かって言いにくいことを言い切っちゃう人だ、あの人は)」

金木「(それに、状況を落ち着いて整理すれば、確か飛龍さんは唯一【褒章】を渡している相手なんでしょう?)」

金木「(石田少将にしても飛龍さんが最古参だってことは理解しているはずだから、きっと思い入れがあるはずなんだよ、絶対!)」

金木「(うん。飛龍さんからの話に聞き漏らしがなければ、少なくとも提督が部下に個人的なプレゼントを贈るだなんてこと今までなかったはずだ)」

金木「(なら、普通に考えて愛情のこもったプレゼントということで間違いないはず!)」

金木「(その証拠に、飛龍さんもその黄色のバラを純粋なプレゼントだと感じ取って嬉しそうに受け取っているようだし)」


――――――じゃあなんで“黄色のバラ”なんて贈ったんだ?


金木「(普通に赤いバラを贈れば――――――いや、石田少将が飛龍さんに恋…してるわけじゃなさそう。というか、それは考えられない)」

金木「(少なくとも、俺が【城娘】を恋愛対象として見ないよう努力しているのと同じように、)」

金木「(あの石田少将が部下との色恋に現を抜かすようには思えない。ましてや“全体の勝利”なんて単語を口癖にするような人だぞ)」

金木「(じゃあ、やっぱり石田少将も相手が歓ぶものとして黄色のバラを選んだのか? そうとしか考えられない)」

金木「(なら、なんで黄色なんだ? 他に何かそれらしいものはあったはずじゃないか…………バラにしてもオレンジとかピンクとか白もあるのに)」

金木「(俺、花に詳しいわけじゃないから女性に何の花をプレゼントすればいいかなんて俺にはわかんねえよ)」

金木「(でも、確かに飛龍さんのイメージカラーは黄色だ。ましてや『嫉妬』とか『裏切り』を意味するようなネガティブなものじゃない)」

金木「(喩えるなら『太陽』――――――そう、『黄金の輝きを放つ眩しい太陽』のごとく)」

金木「(…………ん? あれ、ちょっと待てよ?)」

金木「(二次元の世界で黄色の髪の毛って言ったら金髪ってことになるよな? 薄い水色が銀髪として表現されるように)」


――――――もしかして!



124: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:07:23.19 ID:Q97NpYj00

金木「あ、飛龍さん。その黄色のバラってどんな色合いだった? ただ黄色って言われてもいろんなイメージがあるわけだけど」

飛龍”「私の着物の色にそっくりだったよ。明るい黄色って感じじゃなくてちょっと暗めなんだけどツヤがあって眩しい色って感じだった」

金木「それって、――――――まるで『黄金の太陽』のような色?」

飛龍”「あ、言われて見れば確かにそうだったかも。『太陽』を彷彿とさせる黄色だったよ」

金木「!」

飛龍”「どうしたの? そう言えば、バラの色のことを気にしていたみたいだったけど」

飛龍”「あ、もしかしてどういう基準で提督がバラを贈ってくれたのか、これでわかったの?」ドキドキ


金木「……うん。やっぱり石田少将はロマンチストだよ。間違いない」


飛龍”「え」

金木「たぶん、そのバラは “黄色のバラ”という意味じゃなくて“黄金のバラ”として渡しているものだと思う」

飛龍”「――――――『黄金のバラ』?」


金木「だから、石田少将にとって飛龍さんは“黄金の太陽のように眩しい存在”だって遠回しに言っていたんじゃないかって」


飛龍”「…………え」

金木「ほら、黄金って二次元だとどうしても直接的に再現できなくて黄色で代用するしかないじゃん?」

金木「その黄金っていうのは文字通り金の意味もあるけど『それに匹敵する価値のあるもの』――――――『昼間の太陽』ってイメージだから」

金木「そして、太陽はタロット占いだと『希望』を意味するもんだから、」


金木「つまり、石田少将にとって唯一【褒章】を与えた相手である飛龍さんは『希望』だったんだよぉおおお!」


飛龍”「ふぇ!?」

飛龍”「えええええええええええええええ!?」カアアアアアアアアアア!

金木「うん。この方がしっくりくる(あの石田少将のことだから、きっと花言葉についてもよく知っていたはずだ――――――)」

金木「他の娘に石田少将はバラを渡そうとしてた?」

飛龍”「えと、確か提督が武蔵さんに渡そうとしていたのは、――――――『一重咲きの白』って言っていたような」

飛龍”「うん。私が武蔵さんにプレゼントを贈るように言ったついでにバラをもらったから、どんなものを贈ることになったかよく憶えているよ」

金木「――――――『一重咲きの白バラ』」

金木「(石田少将、やっぱりわかってて選んでるぞ、これ! 色だけじゃなくて花の咲き具合でも花言葉を選んでる! そうに違いない!)」

金木「(というか、単純に色だけじゃなくて色の具合や咲き具合でも花言葉が変わるもんなんだな。へえ、初めて知ったよ)」

金木「(じゃあ やっぱり飛龍さんに贈ったのは“ただの黄色のバラ”じゃなくて“黄金のバラ”だったんだ!)」

金木「(――――――今日の俺、けっこう冴えてね?)」

125: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:08:11.90 ID:Q97NpYj00

飛龍”「そ、そう…だったんだ……」

飛龍”「よかった……、私、提督から嫌われていたわけじゃなかったんだ……」ドクンドクン

金木「あ…………うん、良かったね、飛龍さん」ズキン

金木「(でも、…………何だろう、この気持ち? 嬉しいような、悲しいような、そのどちらとも言い切れないような中途半端なこの感情は?)」

飛龍”「うん、ありがとう――――――え?!」ビクッ

金木「?」


飛龍”「ど、どうして【城主】様が泣いているのですか?!」アセアセ


金木「え」ポタポタ・・・

金木「あ……、俺、なんで泣いてるんだろう?」ポタポタ・・・

金木「(――――――好きになりかけていたのに、遠回しに振られたような気分になったから?)」

金木「(――――――【艦娘】にしても『やっぱり自分たちの主が一番』だって思っている事実を悟ってしまったから?)」

金木「(――――――俺よりも女心に理解のないように思えた石田少将が実は物凄く華麗なロマンチストだったから?)」

金木「(――――――こんなにも可愛いらしい娘に不器用なやり方でしか気持ちを表現できなかった石田少将に哀れみを感じたから?)」


――――――否!


金木「…………違う」グスン

飛龍”「え」

金木「……そうじゃない。そうじゃないんだよぉ」ヒッグ


――――――やっぱり【元の世界】に送り返さなくちゃならないんだ。住む世界が違うんだ、俺と石田少将は。



126: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:08:50.11 ID:Q97NpYj00

飛龍”「ど、どういうことかな、それ?」アセアセ

金木「お、俺は……、ただの貧乏苦学生の素寒貧――――――ポッと出の何の覚悟も力もなく なあなあで担ぎ上げられてきただけの主体性のない薄っぺらな人間」

金木「け、けれども……、石田少将や飛龍さんは崇高な使命の下に生きているんだ…………」

金木「…………帰りたいですよね、【元の世界】に」ヒッグ

飛龍”「それは…………」

金木「俺、いつまでも“現在”が続けばいいと漠然と思ってた」

金木「俺、こうやって飛龍さんと話している時間がいつの間にか好きになっていたから――――――」

飛龍”「え」ドキッ

金木「それと同じぐらい石田少将との時間が―――――― 一緒にでっかいことをやろうとして力の限り生きている現在に最高のワクワクを感じていたから」

金木「でも、石田少将にとって俺が望む現在っていうのは過程に過ぎなくて、石田少将には辿り着くべき未来・帰るべき場所があるから――――――」ヒッグヒッグ

金木「俺なんかが足を引っ張っちゃいけないんだよ! 少しでも力になって送り出してあげなくちゃダメなんだ……!」


――――――俺は誰かを好きになっちゃいけない人間だったんだよ。


金木「うぅ…………」ヒッグヒグゥ・・・

飛龍”「…………【城主】様」

金木「俺はいつ終わるかもわからない はてしない【兜】との時空を超えた戦いに一生を捧げる運命なんだ」

金木「だから、俺は何も残せないし、残すだけ無駄なんだ、全部……!」

飛龍”「そんなこと……!」

金木「わかった。わかったんだよ。――――――この天草での平和で穏やかな日々のおかげで!」

飛龍”「え」

金木「だって、俺は今まで【関ヶ原】【姉川】【稲生】と立て続けに、時間も場所もまったく異なる世界に飛ばされ続けて、」

金木「その度に【兜】との戦いに明け暮れて その場その場のトラブルの解決に奔走する毎日で、」

金木「その地での【兜】との決戦に勝利した途端に また他の世界に飛ばされるようなことを何度も味わわされてきたんだ」

金木「そして 今回、【稲生】での決戦に勝利した直後に、この寛永時代の肥前国 唐津に飛ばされてきたわけなんだけど、」

金木「唐津を襲う【兜】たちが駆逐されても――――――とは言っても、石田少将がやってくれたんだけど、」

金木「俺は未だに寛永時代に残されたままなんだよ?」

金木「すると、有名な【島原・天草一揆】が近々起こることを知って、ようやく俺はこの時代での真の役目ってやつを理解できた」

金木「でも、実際に【乱】が起こるにはまだまだ時間があることだし、石田少将や志摩様が全力で【乱】の発生を阻止しようとがんばってくれているから、」

金木「俺は【乱世】で初めてこんなにも暇を持て余すようになったし、こうして飛龍さんと一緒の時間を過ごせるようになったんだ…………」

飛龍”「………………」

127: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:09:30.37 ID:Q97NpYj00

金木「俺、飛龍さんとの時間が本当に楽しくてしかたなかった」

金木「最初は現代っ子の俺には苦しくてしかたがなかった訓練も、飛龍さんに『ちょっとばかりいいところ見せよう』と思ってあらん限りやれたし、」

金木「飛龍さんも俺のことを褒めてくれるし 励ましてくれるし、終わってからこうやっておしゃべりしている時が物凄く心が和んだ」

金木「何ていうか、配下の【城娘】たちも綺麗所が勢揃いなんだけど、どうしてもそういう目で見ちゃいけないような気がしてたから、」

金木「飛龍さんが適度に部外者で可愛くてフランクで現代知識があって話が合うから本当に楽しくて楽しくてしかたがなかった!」

金木「やっぱり生まれも育ちも同じ時代の人間同士だと基本的な価値観や立居振舞に共通してて本当に話が合うんだよね」

金木「俺、この【乱世】に来る前まで本当に好きな娘がいて手酷く振られちゃったんですけど、」

金木「思えば、そんな片思いの相手にさえも飛龍さんほど気楽に話せたことはなかった――――――俺は夢中だったんだ、飛龍さんと過ごす現在の時間が」

飛龍”「え、えと…………」モジモジ

金木「でも、でもぉ!」


――――――どうせ【島原・天草一揆】を解決したら全部無くなっちゃうんですよ! 俺が望む“現在”なんて!


飛龍”「…………!」

金木「今までの経験から言って、その時代に巣食う【兜】の討伐が完了すれば有無言わさず、また別の【兜】の討伐に回されてぇ!」

金木「どっちみち続かないんですよぉ!」

金木「飛龍さんには石田少将と一緒に【元の世界】に戻って本来の使命を全うして栄光を掴みとってもらいたいし、」

金木「俺は俺で【兜】との戦いが一段落したら また場所や時間を変えて転々としていかなくちゃならないし!」

金木「だったら、――――――別れるのが既定路線ならッ!」


――――――最初から好きにならなければいいじゃないですか! 虚しいだけだよ!



128: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:11:00.82 ID:Q97NpYj00

飛龍”「――――――【城主】様!」ギュッ!

金木「俺、何だか穏やかな日常を楽しめなくなっちゃったみたい」シクシク・・・

金木「――――――『どうせいつまでも“ここ”には居られない』って思うと、」

金木「そんなことに気づく間もなく、今までのように連戦に次ぐ連戦続きの毎日の方がずっと幸せだったッ!」

金木「だって、仮に現地の人と結婚して所帯持ちになったとして――――――、」

金木「俺はいつ、あの【不気味な穴】に吸い込まれて、家族を置いてどこかへ消えてしまう恐怖に怯え続けなければならないんだぞ!?」

金木「俺は【元の世界】に帰れたって別に心配してくれる家族なんて居ないから割りきっていたけど、」

金木「――――――家族を作ってしまったらもうダメだぁ、俺!」

金木「俺、もう【城主】としてやっていけなくなるかも…………」ヒッグヒッグ

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「…………ごめん、飛龍さん」

金木「迷惑だ……よな。唐突に『飛龍さんにずっとここに居て欲しい』とか『変な目で見ていました』だなんて言われて反応に困ったよね?」

金木「もういいですから、俺のことなんて」

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「だから、もうその手を放してくれてもいいんですよ……?」ググッ

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「と、というか! もう恥ずかしいから放して~!(うわっ、力 強っ!? さすが【艦娘】! 完全に押さえ込まれてるぅ!)」

飛龍”「…………ダぁメ♪」

金木「なんでぇ!? 好きでもない異性に触れさせる必要なんて――――――」

129: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:12:10.55 ID:Q97NpYj00


飛龍”「これが提督からの指令だからです」


金木「は」

飛龍”「提督は【城主】様に基礎訓練を積ませるよう指示した他に『【城主】様を全力で守れ』とも言いました」

金木「――――――『俺を守れ』?」

金木「た、たったそれだけ――――――? 本当にその一言だけ?(――――――それだけで触らせているの?)」

飛龍”「はい。提督の指令は他にはその一言だけです」

飛龍”「だから、私は私が思うように『【城主】様を全力で守っている』わけなんです」

飛龍”「……どうですか? 少しは落ち着きましたか?」モジモジ

金木「え」

飛龍”「……ダメだったかな?」

金木「その、あの……、げ、下品な言い方をすれば――――――、」オロオロ

金木「お、御御足をスリスリしている感じが最高というか、かえってドキドキするというか…………」ドックンドクン!

飛龍”「へえ、そうなんだー」フフン

飛龍”「なら、――――――えい!」ムギュウ!

金木「!?!?」


飛龍”「二航戦サンドだよ~!」 ――――――下を御御足、上を  で挟む!


金木「!?!?!?!?」ジタバタ

飛龍”「どぉよ!」ドヤァ

金木「うぎゃあああああああああ!」ガバッ

飛龍”「きゃっ」

金木「あ、すみません、飛龍さん! でも、洒落にならないのでやめてください、こんなことはもうッ!」ゼエゼエ!

金木「(ど、●●の俺には破壊力がありすぎるぅ! このまま心臓が限界突破して破裂して死ぬかと思ったぁ……)」アセダラダラ

飛龍”「うん。これっきりだからね♪」

金木「そ、そうしてください……(こ、これだから♂ってやつは♀を求めちまうんだよなぁ…………ダメだ! こんな軟弱では!)」ドクンドクン

飛龍”「あ、よかった。すっきりしたみたいだね。よかったよかった♪」ニッコリ

金木「…………俺、あなたのことは忘れませんから(忘れられるか、――――――二航戦サンドの味! ――――――男の浪漫ッッ!)」ハハハ・・・



130: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:12:41.51 ID:Q97NpYj00


金木「でもなぁ…………」ハァ

飛龍”「…………【城主】様?」

金木「石田少将って呆れるぐらい不器用というか不運な人ですよね」

金木「だって、さっきのバラの話や花屋の話もそうだし、唐津を襲う【兜】たちの本拠地を壊滅させた時の手口もそうですけど、」


金木「――――――理解がない人間からすればパッと見 最悪なやり方ばかりじゃないですか」


飛龍”「………………うん」

金木「俺だって詳しい説明や冷静な状況整理がなければ、得体の知れない要注意人物にしか思わなかっただろうし、」

金木「第一、――――――これは冗談でしたけど、進んで【兜】の側につくことも可能性としてあり得たことを自分で言ってたし」

飛龍”「…………うん」

金木「落ち着いて話を聞いて為人を総合的に判断すると、本当に皇国のために、あるいは天下万民のためを思って行動しているのがよくわかるんですよ」

金木「でも、そこには自分の栄達っていうのはもちろん、それに保身っていうか最低限の自分の安全さえも皇国のために投げ出してしまう――――――」

金木「あまりにも“自分”というものをおざなりにしすぎているきらいがあるんですよね……」

飛龍”「……うん」

金木「でも、部下のことを信頼しているのは飛龍さんの扱いを見ればわかるし、あの人は自分にも厳しい人だから――――――」

金木「レベルが高過ぎるんだよ、石田少将は。あるいは周りの人たちの程度が低すぎるせいかもしれないけれど」

飛龍”「うん」

金木「石田少将だって本当は不安でいっぱいのはず。大多数の人に真っ向から違うことや言いにくいことを言うなんて相当 勇気が要ることだから」

金木「他人を省みることがない人だったら簡単なんだろうけど、」

金木「“黄色のバラ”を“黄金のバラ”に見立てるロマンチストが人を省みることがないなんてあり得ないから!」

飛龍”「うん。私もそう思う」

金木「だから、俺はせめて石田少将にはもっと素直になれるようにしてあげたいんだ。理解されるようにしてあげたいんだ」

金木「そうすれば、もっと石田少将の良さが活きていくはずなんだから…………」

飛龍”「そうだよね。私ももっと提督の良さをわかってもらいたい」

飛龍”「――――――提督は“多聞丸”のような人だって」

金木「…………“多聞丸”かぁ」

金木「ちょっと喩えが悪すぎるというか、それってどっちみち『癖のある人』って意味だからなぁ…………」

金木「でも、少なくとも石田少将はその“多聞丸”と同じぐらい――――――いや、その由来となった楠木正成公に並ぶ忠義者なんだから、」

金木「少しでもそういった先人たちと同じふうに見てくれる人が増えていくといいよね」

飛龍”「そうだね。ホントにそう……」




131: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:13:13.53 ID:Q97NpYj00

――――――また ある時、

――――――夜


ヲ級”「ヲヲヲ~♪」

金木「いつもいつも夜間の見張り番、おつかれさん。『ヲシドリ』が頑張ってくれているから俺も安心して夜を過ごせるよ」

ヲ級”「ヲヲ!」ドヤァ

金木「こうして見ていると、【艦娘】とは全然違うところなんてないように見えるよなぁ(外見が不気味ってのはあるけど、それはそれで――――――))」

金木「………………」

ヲ級”「?」

金木「あ、そうだ」

金木「『ヲシドリ』は石田少将のこと、どう思ってるんだ?」

ヲ級”「ヲ?」

金木「ほら、『ヲシドリ』はさ、ちゃんとした身振り手振りやハンドサインで言いたいことはわかるんだけど、」

金木「そこにどれほどの感情が込められているかはやっぱりわかんないんだ」

金木「でも、文字も書けて、俺たちが喋っている内容も聴いて理解できているんだし、」

金木「せっかくだから、石田少将に向けて文を書いてみたらどう?」

ヲ級”「ヲヲ?」

金木「いまいちが意味がわかってない? とりあえず書いてみてよ、石田少将に伝えてみたい何かをさ」

金木「ほら、紙と筆はここにあるから」

ヲ級”「ヲ…………」

金木「あ、触ったことがないのか。じゃあ、俺のボールペンとノートでもいいよ。替えは利かないけど、どうせ使い切るつもりだったし」

金木「ほら。石田少将に向けて何か一言 書いてみなって」

ヲ級”「ヲ…………」カキカキ

金木「お、書き始めたな(なんか『ヲシドリ』と過ごすこの時間は本当に託児所の先生になったような気分だぜ)」

金木「う~ん(しかも、他の娘たちと遜色ないレベルでナイスプロポーションってわけだから、幼児   しているみたいでソソるっていうか……)」

132: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:14:29.17 ID:Q97NpYj00

ヲ級”「ヲ、ヲヲ!」スッ

金木「お、できたか。どれどれ?(でも、こんな【艦娘】とそう変わらない連中が人類を脅かしているんだから心が痛むよな……)」

金木「!」


――――――さびしい。さびしい。さびしい。


金木「………………」

ヲ級”「ヲ」

金木「…………『さびしい』んだ、『ヲシドリ』」

ヲ級”「ヲヲ」

金木「そうか。それもそうだよな。顔には出てないけど心は正直だな」ナデナデ

ヲ級”「ヲ……」

金木「石田少将、あれからずっと忙しく九州各地を見て回っているようだし」

金木「それどころか、九州各地で【はぐれ城娘】を見つけ出しては律儀にここまで連れて来てくれるんだよねぇ……」

金木「それでも、この天草のマンション城で一緒に過ごせる時間を待ち侘びている娘がいるんですよ。――――――俺もそうなんだけど」

金木「聞けば、『ヲシドリ』はいつも石田少将と一緒に過ごしていたようだし、」

金木「こんなにも顔を合わせない日が続くだなんて『ヲシドリ』にしてみれば、未だかつて味わったことのない時間だったのかもしれないな」

金木「あ、そうか。なるほど――――――、」


――――――毎日の夜の見張り番を張り切ってやっているのは石田少将の帰りを『まだか』『まだか』って待ち焦がれているからなのか。


金木「かぁー、泣かせてくれるじゃないの!」

金木「仕事に出ているパパの帰りを遅くまで起きて待っている娘みたいなもんじゃないか!」ナデナデ!

ヲ級”「ヲヲヲ……」アセアセ

金木「絶対帰ってきてよね、石田少将! この娘には絶対あなたが必要なんだからね! 死んだら承知しないぞー!」

133: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:15:09.74 ID:Q97NpYj00


石田”「俺がどうしたって?」


金木「――――――って、うおわっ!?」ビクッ

ヲ級”「ヲヲー!」バッ

石田”「おっと、どうした、『ヲシドリ』?」ニコッ

ヲ級”「ヲヲヲ……」スリスリ

金木「今回はずいぶんと遅いお帰りで」

石田”「すまないな。今回は九州を1周してきたからな」

金木「は」

石田”「だが、おかげでたくさんの情報も得られたし、具体的な日数や距離感・各国の情勢や銘産などについて知ることができた」

金木「……嘘でしょう?」

石田”「嘘ではない。久々に鈍った身体を鍛えるいい機会となった」

金木「本職の軍人ってここまで行けるもんなんだぁ……」

石田”「それで、どうした? 今日はいつも以上に甘えてくるな、『ヲシドリ』?」

金木「あ、それなんですけど――――――」スッ ――――――ノートを見せる。


――――――さびしい。さびしい。さびしい。


石田”「………………!」

金木「石田少将の帰りをずっと待ってましたよ、その娘」

石田”「……そうか。それは辛い思いをさせてしまったな」

石田”「すまない、『ヲシドリ』。でも、これは必要なことなのだ。わかってくれ」

ヲ級”「ヲヲヲ……」ギュウ

134: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:15:40.24 ID:Q97NpYj00

金木「………………」

石田”「……どうした?」

金木「いや、石田少将もパパらしいところは見せるんだなって」

石田”「――――――『パパ』だと? 茶化すな」

石田”「この娘にはこうすることが必要だから こう接しているだけに過ぎん」

石田”「こうやって人一倍 手間を掛けて世話をしなければ、敵を懐柔することなど無理難題であろう」

石田”「それが人類の敵である【深海棲艦】を【調教】するということの意味だ」

金木「へえ…………」

石田”「何だ その反応は……?」

石田”「どこへ行っても同じやり方を強いるのは阿呆のやることだ」

石田”「仮に1つのやり方を通すのであれば年月をかけて少しずつ浸透させていく他あるまい」

石田”「赤ん坊に大人としての教養や能力を求めたところで意味がないのと同じことだ」

金木「うん。それは俺もそうだと思います」

金木「でも、石田少将? 俺、思うんですけど――――――、」


金木「石田少将はこうやって『ヲシドリ』の面倒を見るのと同じように他の娘一人ひとりと話をする時間を設けたほうがいいと思いますよ」


石田”「なぜだ?」

金木「だって、石田少将って自分にはとても厳しい性格で弁解とかいちいちしないんじゃないかって思うんですよ」

石田”「…………そうかもしれんな。それで?」

金木「それで、責任をとる潔さがあるのは美徳かもしれませんけれど、自分の上司が非を抱えているとなると部下はそれだけで嫌な気分になると思うんですよ」

金木「だから、もし【元の世界】に帰れたら、――――――1日1回だけ部下の質問や要望に応える時間を作ってください」

金木「さっきも言ったように、その時だけは一人ひとり丁寧に『ヲシドリ』と同じように接してあげてください。同じ時間を共有してあげてください」

金木「それで石田少将はこれまでよりもずっとやりやすくなると思いますから」

石田”「…………非効率なやり方に思えるが、金木の言うことだけに無下にはできんか」

石田”「いいだろう。心に留めておこう――――――いや、一度は実践してみようと思う」

石田”「…………帰れたらな」

金木「はい。そうしてください」

ヲ級”「ヲヲヲー♪」スリスリ・・・


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



135: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:16:51.25 ID:Q97NpYj00

――――――そして、


金木「よし、明日の予定はこれでよしっと。それから――――――」

千狐「殿~!」

やくも「お殿さん! 大変 大変~!」

金木「どうした!? 【兜】が現れたのか!?」ガタッ

千狐「そうなの!」

金木「よし! すぐにでも出陣だ! 場所はどこだ?」


やくも「――――――霧島なの」


金木「き、――――――『霧島』? それって近くなのか?(あれ? 天草諸島にそんな名前の島なんてあったっけ?)」

千狐「そうなの! 『霧島に【兜】がいっぱい集まってる』って【探索】から帰ってきた娘たちが言ってるの!」

やくも「お殿さん! こうしちゃいられない! 早く出んと!」

金木「そう急かすな! まず霧島がどこにあってどの辺にどの程度の敵が集まっているのかを見ないとだろう!」

千狐「あ、そうなの!」

やくも「でも、ホント急がんと!」

金木「落ち着け! こういう時こそ落ち着け! 『急がば回れ』だ」

金木「何をそんなに焦っている? そこから説明してくれ。緊急性を要する案件かは【城主】である俺が判断するから、まずは落ち着け」

やくも「さっすがお殿さん! 頼りになる~」

金木「 い い か ら さ っ さ と 話 せ 」イライラ


千狐「そうなの! 【探索】に行った娘が言うには霧島には“霧島城”っていう珍しい【城娘】がいるらしいの!」


金木「!」

金木「それは確かに一大事だ! 状況はどうなっている? 人を呼び集めろ! すぐに救出作戦を立案するぞ!」

千狐「わかったの!」

やくも「ちょっとおいていかんといて~」

136: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:17:52.19 ID:Q97NpYj00


バタバタ・・・


金木「……さて、どうしたものか」

金木「確か場所は霧島――――――電子辞書に載ってるかな?」スッ


――――――なら すぐに八代海を渡っていける【水城】と船の準備をして、主力は【山城】と【平山城】にしておけ。


金木「!」

石田”「相変わらず報告・連絡・相談がなってない眷属たちだな」

金木「――――――石田少将!」

石田”「しばらく見ないうちに見違えるようになったな、【城主】様」

金木「へへ、美人のコーチがついていましたから、俺、頑張っちゃいましたよ?」

金木「でも、なんで八代海を渡って九州本土に? 霧島ってこの近くにある島じゃないんですか?」

石田”「…………説明する気にもなれん。その電子辞書で検索してみろ」ハァ

金木「えと……」ピピッ

金木「あ」


――――――霧島山:鹿児島県と宮崎県の県境にある山塊


金木「――――――山なのかよ!」

金木「じゃあ、霧島山にいる【城娘】って言うからには当然【山城】――――――」

石田”「1つ言っておくぞ」

金木「はい?」


石田”「“霧島城”なんて城は歴史上 存在しないからな」


金木「え」

金木「じゃあ、他に“霧島”ってやつに何がある――――――?」ピピッ

金木「ん」チラッ


――――――霧島(戦艦)


金木「………………あ」

石田”「わかったか?」

金木「……もしかして、石田少将の許には“霧島”っていう【艦娘】がいたんですか?」

石田”「ああ。俺の艦隊の主力だ」

金木「じゃあ――――――」

石田”「俺の艦隊の所属かはまだ断定はできないが、その可能性が非常に高い」

金木「わかりました! 全力でお助けしましょう!」

石田”「助かる」

金木「よし! 一時的に天草を離れる! 天草防衛部隊とマンション城防衛部隊、早馬部隊と主力部隊を編成しよう!」テキパキ

金木「それじゃ、部隊編成にとりかかりますのでこれで!」バッ


タッタッタッタッタ・・・・・・


石田”「最初に会った時と比べて本当に成長したものだな」

石田”「さすがは“多聞丸”に薫陶を受けた飛龍の教育だな。助かったぞ」

137: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:19:05.02 ID:Q97NpYj00





超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果ててが御守りします!- の構成について

ダラダラと続いているように感じる超番外編1は起承転結の4段落構成であり、2章 使っての前後編で1段落としている。
なぜこんなにも長いのかはクロスオーバー先のブラウザゲームのステージ構成に因むところが大きい。


序……序章:禁断の【城娘】との出会いと【乱世】の世界

起……第1章・第2章:唐津での話

承……第3章・第4章:天草での話

転……第5章・第6章:霧島での話

結……第7章・第8章:島原での話


あくまでも主人公は石田少将なのだが、同時に『【城プロ】を二次創作したらどう世界観の辻褄合わせするか?』というテーマも合わせているので、
彼と出会ったことで【乱世】を生き抜く更なる意志を固めることになった金木青年の成長物語の体裁をとることになった。
それによって、金木青年からの視点が多く描かれることになり、他者から見た石田司令の人物像も浮き彫りとなっていく。

蛇足と言えばそれまでの超番外編だが、あらかじめ筆者自身がくどいぐらい書いているので重々承知であり、
本編:物語風プレゼンPart2で提案予定の【深海棲艦運用システム -革命編-】に必要な物語中の動機や背景として必要なのでご了承ください。






138: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:19:50.13 ID:Q97NpYj00

超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第6章

――――――霧島山:宮崎県・鹿児島県 県境に広がる火山群


石田”「ここが霧島―――――かつて天孫降臨の舞台の1つとされてきた伝説の地だ」

金木「どうやら霧島っていうのは山岳群の名称であって“霧島山”という名の峰そのものは存在しないようですね」

石田”「例えるなら、メキシコの首都はメキシコシティだが、アメリカの首都はワシントンといった程度の違いだな」

金木「まあ、そうですね……(言わんとしたいことはわかるんだけどなぁ…………)」ピピッ

金木「お! へえ、ここの温泉郷にはあの坂本龍馬が日本最初の新婚旅行に来ていたそうな!」

石田”「宮崎県と鹿児島県の県境にある霧島はどちらかと言えば鹿児島県の観光資源として利用されてきているようだな」

石田”「役に立たない地図だが、無いよりマシだろう」バッ

金木「うう~ん、昔の地図ってこんなもん?(現代で見慣れている日本列島がグニャグニャと描かれているよ、これぇ……)」

金木「伊能忠敬が作った日本地図っていつの話なんですか? こんなのじゃイメージなんて――――――」

石田”「たしか1800年前後だったはずだが……」

金木「あ、本当だ。さすがです!(うげっ! 今から200年ぐらい後ってことかい!)」

金木「…………まず正確な地図がないと【城娘】たちをうまく遠隔展開できない!」

金木「俺のイメージだけで遠隔展開も一応 可能ですけど、初めて来た場所で遠隔展開するのは無理があります」

石田”「安心しろ。その辺に関してはちゃんと考えてある」

金木「へ」


山城:龍王山城「くっ、どうしてわらわがこんな荷駄持ちをやらねば……」エッサ、ホイサ・・・

ヲ級”「ヲヲヲ~♪」カキカキ ――――――輿に乗った『ヲシドリ』がスケッチをとっている。

山城:月山富田城「久々の出陣である以上は喜んで励まねばなりませんね……」エッサ、ホイサ・・・


金木「あれは――――――」

石田”「実は前々から『ヲシドリ』には鳥瞰図の作成を【調教】の一環として積ませていてな」

石田”「付け焼き刃かもしれないが、鳥瞰図があればそれなりに展開しやすくなるし、【兜】共の動きも一目瞭然だ」

金木「おお! 鳥瞰図ですか! ――――――飛行機って本当に大切なんですねぇ」

石田”「ああ。航空機は様々な用途に使える大切な戦力だ」

石田”「ただ、【兜】共の飛び道具持ちがよりにもよって航空戦力に集中しているからな」

石田”「機動力では負けはしないだろうが、あれだけの巨体を倒すのは厳しいものがある」

金木「でも、どういった【兜】が来ているかはまだわからないけど、対空戦力はきっちりと入れてあるぞ! 来るなら来い!」

139: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:21:04.41 ID:Q97NpYj00


石田”「今回の作戦目標はこうだ」


1,霧島で発見されたという【城娘】霧島城と接触する(おそらく【艦娘】霧島だと思われる)

2,霧島に集結している【兜】を駆逐する

3,現地で指揮を執っていると思われる【兜】の司令官を拿捕する


金木「はい。“霧島城”の所在を確認できたら一挙に早馬部隊で確保に向かわせるってことでいいんですよね?」

石田”「ああ。敵の狙いが【城娘】の確保にあるのならば、我々が先んじて確保すれば敵の目的達成は困難となるだろう」

石田”「後は逃げるなり、可能な限り 敵戦力の漸減を試みて、あわよくば敵の司令官を拿捕できれば大勝利だ」

金木「…………やっぱり【兜】の司令官ってやつは一人じゃないんですよね?」

石田”「……おそらくは」

金木「どうか、他から敵がやってきませんように…………」

石田”「その時はその時ですでに対策を練っているから安心しろ」

石田”「それよりも、どこに野営するのかを逸早く決めねばならんな」

金木「そうですね。さすがに1日で終わる話だとは思ってませんし、夜襲で窮地に陥らないようにしないと」







――――――天草:マンション城


飛龍”「………………」

飛龍”「間違いなく、霧島だとは思うんだけど…………」

飛龍”「提督が連れて行ったのはやっぱり『ヲシドリ』か……」

飛龍”「しかたないよね。この時代だと補給なんてまともにできないから……」

飛龍”「そういう意味では、やっぱり【深海棲艦】の方が上手だよね……」

飛龍”「……『ヲシドリ』、私の代わりに提督を守ってね」

飛龍”「私は提督とみんなの帰る場所を守っているから」

飛龍”「…………みんな、無事に帰ってきてね。待ってるから」


あさひ姫「……飛龍さん」

大宝寺城「ああ……、霧島か。行ってみたかったなぁ…………」

二条城「さて、あなたから任命された城代として、ここはどうしておきましょうかね?」フフフ・・・




140: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:22:07.18 ID:Q97NpYj00

――――――数時間後、


ドスンドスン! ガキーンガキーン! バァーンバァーン!


金木「くそっ! 【兜】の軍団もやってくれる!」

石田”「まだ“霧島城”が見つからないとあれば、先に敵を殲滅した方が楽かもしれんな」

金木「戦闘に巻き込まれるわけにはいかないから、おとなしく仮拠点にいるしかないのがもどかしい……」

金木「全体的に【山城】の練度が低いから困ったなぁ……(唐津も天草も山なんてほとんどなかったからなぁ……)」

金木「幸いなのは、ここが山岳地帯だから敵の進撃が遅いことと、敵航空戦力の対策をしてあるから野鳥狩りができていることか?」


石田”「…………部隊を分けたほうが良さそうだな」


金木「え」

石田”「お前はここで【兜】の殲滅の指揮を執れ」

石田”「その間に俺は何人か連れて先に行く」

金木「危険ですって! いくら海の上で歴戦の猛者の石田少将でもここは山の上――――――陸に上がった河童になりますって!」

石田”「しかし、【探索】班からの霧島における敵戦力の発見報告からすでに1日余りが経っている」

石田”「敵にこれ以上の優位を預けておくわけにはいかん」

金木「でも……!」

伊賀上野城「しかしながら、このままでは日が暮れてしまいます」シュタ

伊賀上野城「そうなれば、たとえ夜偵が行える我が方であっても夜間の連峰での強行軍は無理が祟ります」

伊賀上野城「すでに、我が方の戦力にも少なからぬ被害が出ており、ここは仮拠点の守りを強固にするのが先決かと存じます」

石田”「…………それもそうだな」

金木「――――――『急がば回れ』ってことか」

金木「しかたがない。ここは敵を殲滅して安全確保した後、仮拠点を移して明日からの捜索に本腰を入れよう」

伊賀上野城「聞き入れてくださいまして、感謝いたします、殿」



141: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:22:51.55 ID:Q97NpYj00

――――――夜営:えびの高原


金木「しっかし、よくもまあ霧島山まで来れたもんだなぁ………………早馬部隊で急行してここまでやってきたけど」

金木「そして、こんな辺鄙なところでも人は住んでいるんですね。おかげで物資の調達ができましたよ」

石田”「確かにな。そして、今回の“霧島城”に関する噂の信憑性についても裏付けがとれた」

石田”「情報によれば、肥後国側の 現代で言う えびの高原で“御堂を担いで歩き回っている”霧島神宮の巫女らしき女性を見たとのこと」

金木「――――――『霧島神宮』?」ピピッ

金木「ああ 薩摩国側にある天孫降臨に関する神宮か。ここからだと遠いな……」

石田”「だが、丸に十字の家紋を掲げている薩摩の人間が多くいるということはここはれっきとした薩摩領らしいな」スチャ ――――――拳銃を取り出す。

金木「うおわっ!? それって西部劇でよく見るリボルバー拳銃ですか!?」

石田”「ああ。【神娘】たちに協力してもらって、粗製ではあるが 何とか開発に成功したものだ」

石田”「リボルバー拳銃は構造が単純で信頼性に優れるからな。武士でもない俺が安全に諸国遍歴するのにはどうしても必要だった」

石田”「刀を差していいのは武士だけだが、まだ存在していない飛び道具である拳銃を禁止する法律などないからな」

金木「威力はどれくらいなんですか?」

石田”「さあな。襲ってきた野盗共に撃って全部 盲管銃創――――――つまり、銃弾が貫通しなかったから【兜】相手だと役に立たないだろうな」

石田”「せいぜい人間の急所を撃ちぬいて時間稼ぎするのにしか向かないな」

石田”「だが、これで【兜】を指揮しているだろう首領格を取り逃がすことはなくなるだろう」

石田”「――――――脚に中てればそれで人間は立てなくなるのだからな」

金木「…………そうですね」アセタラー

142: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:23:21.36 ID:Q97NpYj00

石田”「さて、このえびの高原に仮拠点を築いて明日からの捜索となるのだが――――――、」

金木「はい。少なくともこのえびの高原の一帯に“霧島城”がいると見て 間違いないですよね?」

石田”「ああ。『ヲシドリ』にはなるべく山岳地帯に艦載機を飛ばすように指示を出しておいた」

石田”「“霧島城”がもし【艦娘】霧島ならば、空母ヲ級の艦載機にすぐに気がつくはずだ」

石田”「まあ、元々『ヲシドリ』が敵である【深海棲艦】なのだから敵と誤認されて霧島に撃墜される可能性も十分にあるわけだが、それはそれだ」

金木「しかたないですね」

金木「でも それで、あれだけ小型の艦載機を撃ち落とせる精度を持った武器を搭載しているってことで――――――」

石田”「ああ。それで所在がはっきりするわけだ」

石田”「これは地元から提供してもらった地図を参考に、『ヲシドリ』が作成してくれたえびの高原一帯の地図だが、」

石田”「まず、えびの高原というのは韓国岳、蝦野岳、白鳥山、甑岳に囲まれた盆地状の高原ということだ」

金木「あ、これって“カラクニダケ”って読むのか。韓国でも見える場所なのかと思ってた」

石田”「…………いくら霧島連峰で一番高い山でもそんなのは無理に決まっている」ジロッ

金木「あ、すみません――――――つまり、この辺は平地の扱いだから【平城】でも問題ないってことか」

石田”「逆に、敵から容易に攻めこまれやすい場所でもあるがな」

金木「そこは問題ないですって。主力部隊の他に早馬部隊も控えていますから」

143: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:25:53.95 ID:Q97NpYj00

石田”「さて、ここで【艦娘】と【城娘】の違いをおさらいするが――――――、」


【城娘】は【変身】によって『具足』を展開できるのが特徴で、普段は軽装のままでいつでも戦闘態勢に移行できる。

【艦娘】は『艤装』を装着することによって軍艦時代の力をフルに発揮できるようになる。

※両者ともに、戦闘態勢の維持には莫大なエネルギー消費があり、そのために見かけ以上の大規模なエネルギー補給を必要とする。


金木「つまり、噂の“御堂を担いで霧島連峰を歩き回っている謎の怪力女”は【はぐれ城娘】である可能性は極めて低いってわけですね」

金木「【城娘】なら、歩きやすいように『具足』を解いて身軽になりますからね」

金木「そして、自分が【城娘】であることを証明するために『具足』を展開した状態で馳せ参じてきますからね」

金木「この『御堂を担いでいる』ってのがよくわかんないけど、少なくとも巫女服姿だという情報もありますから修行僧とはちょっと違いますよね」

石田”「ああ。俺も九州を1周してきた中で【はぐれ城娘】に何度か出会ってはいるが、やはり『具足』を展開して彷徨っている【はぐれ】を見たことがない」

金木「となると、やっぱり【城娘】ではない何かという可能性が非常に高いってわけですね」

石田”「ああ。飛龍の話によれば、俺が【乱世】に飛ばされる嵐の夜には霧島も駆けつけていたらしいからな。ほぼ確定だ」

金木「でも、問題なのは『どうして霧島っていう【艦娘】が人里離れたこんな場所を噂になるまで歩き回っているか』ですよね」

石田”「そうだな。霧島は基本的に要領がいい艦娘という印象だが、軍艦時代の経歴を見ると敵艦に肉薄して主砲を打ち込んだ暴れ馬のようなやつだからな」

石田”「もしかしたら案外すぐに恐慌状態に陥って、土地勘もないからどうすればいいのかもわからなかったのかもしれんな」

石田”「基本的に【艦娘】は【深海棲艦】と戦うための知識や技術しか生まれながら持ちあわせていないから、内陸での活動能力は皆無と言っていいだろう」

金木「まさしく、陸に上がった河童――――――いや、思いっきり座礁した艦じゃないですか!」

金木「でも、そうなると【艦娘】ってやっぱりいろいろと不便なんですね。【城娘】じゃ考えられないような弱点じゃないですか」

石田”「ああ、その通りだ。彼女たち【艦娘】は人間の形をしてはいるが、所詮は人間に使い捨てられるのが前提の兵器でしかない」

石田”「故に、戦場に立つ兵士としては最高級の品質ではあるが、それが人間と同等の存在であるのかと言えば『否』と言わざるを得ない」

石田”「言わば、チャイルドソルジャーと変わらない存在とも言えるな。人間未満の戦闘機械というわけだ」

金木「…………『少年兵』か。そうかもしれませんね」

石田”「だからこそ、それに頼らざるを得ない今の情勢を何とか打破したいのだ…………」ググッ

金木「…………石田少将」

144: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:26:44.98 ID:Q97NpYj00


――――――石田様。【城主】様。


石田”「!」

金木「!?」

あさひ姫「これをどうぞ」スッ


――――――差し出されたは人間の背丈を超えるような紫色の野菊の花束だった。



145: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:27:18.10 ID:Q97NpYj00

石田”「…………なぜここにいる?」ジロッ

金木「ちょ、ちょっと! 姫様はマンション城でお留守番だったはずでしょう!? それがなんでここに――――――!?」

あさひ姫「いろいろと物資や戦力が不足しているんじゃないかと思いまして、」

あさひ姫「――――――【後詰】として参らせていただきました」ニコッ

金木「誰だ、そんな勝手なことをさせたのは!?」

あさひ姫「二条城殿です。【城主】様が城代に選んだ二条城殿です」

金木「むぅ、ある程度のことまでは許してはいたけど…………そうかい。そうですか」ヤレヤレ

石田”「…………勝手にしろ。この聞かん坊め」プイッ

石田”「だが、ここに来た以上は貴様も戦力に数えさせてもらうぞ。戦力を残すほどの余裕はここには無いのだからな」

あさひ姫「元よりそのつもりでしたので、ぜひとも遣ってください」

石田”「………………」

146: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:28:07.69 ID:Q97NpYj00

金木「それで? このでっかい花束は何? こんなにもおっきい花なんてあるんだ」

石田”「…………野菊の一種だな。そして、特徴的な紫色か」

あさひ姫「はい。これはマンション城の象徴である“紫苑”の花にございます、【城主】様」


――――――【城主】様あるところに萬の紫苑あり。


あさひ姫「【城主】様の評判を聞き及んで地元の方がとってきてくださいましたので、どうかお納めください」

金木「え、あ、ああ……、どうも」

金木「(いつの間にそんな評判が出来上がっていたんだ……)」

金木「(でも、――――――言えない)」

金木「(確かに“マンション城”って“萬紫苑城”っては書くけど――――――、)」

金木「(それは『漢字にすれば世間一般からの覚えがいい』ってことだったから当て字を使っただけで、特に思い入れがあったわけじゃない)」

金木「(まあ、実際に漢字に表してみて【城主】様の居城としてそれっぽい感じがあったからいいんだけど…………)」

石田”「――――――紫苑か」

金木「どうしたんですか、石田少将?」

石田”「いや、ふと紫苑の花言葉を思い出しただけだ」

あさひ姫「――――――『花言葉』? 『花言葉』って何ですか?」

金木「うん? もしかして花言葉って日本にはないものだったのかな?」

石田”「そうだろうな。『母の日にはカーネーション』といったようなものは全て西洋由来だろう」

金木「ああ 確かに……(そう言えば、石田少将は花屋と仲良くやっていた時期があって、こう見えて花にとても詳しいんだったっけ)」

金木「まあ とりあえず、西洋ではその植物から連想させるものを文の代わりにして花を贈る習慣みたいなのがあるんだ」

金木「たとえば、バラって言ったら『情熱的な愛』って感じに」

あさひ姫「…………『バラ』? ごめんなさい、バラはわかりません」

金木「あ……(そうか、この頃はまだバラもないのか。これは何を例に挙げれば――――――)」

金木「ま、まあ、花に象徴としての具体的な言葉の意味を持たせてやりとりするっていうのがありましてね?」アセアセ

金木「それで、石田少将? 紫苑の花の花言葉って何ですか?」

石田”「ああ。紫苑の花言葉は――――――、」


――――――きみのことを忘れない。遠方にある人を思う。


金木「!」

あさひ姫「まあ! 素敵ですね」

石田”「ああ。こんな感じだったな、確か」

147: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:28:45.68 ID:Q97NpYj00

石田”「ん?」

金木「………………」ポタポタ・・・

あさひ姫「…………【城主】様?」

金木「いや、たまたま自分で名づけたものがここまで俺にぴったりな内容だとは思ってもみなくてさ…………ちょっと感激して」ポタポタ・・・

金木「そっかぁ。“萬の紫苑の城”――――――“萬紫苑城”とはよく言ったもんだよ」

石田”「…………金木」

金木「俺、ますます菊の御紋が大好きになったかもしれません」

金木「だから、『菊の御紋がたくさん入ったあの【軍刀】にふさわしいビッグな【城主】になれたら』って……」

石田”「なら、己のやるべきことを果たせ。菊の御紋に仕える人間でありたいのならばそれが第一だ」

金木「はい。必ずや探し出しましょう、霧島って人のこと!」ポタポタ・・・

石田”「ああ。頼りにしているぞ、金木」

金木「じゃあ、この紫苑の花束は大事にするから。ありがとう、姫様」

あさひ姫「いいえ。これは日頃の【城主】様の行いが評判となって贈られたものです。私はそれを届けただけです」

金木「そっか。その期待には何が何でも応えてやらないとな……!」




148: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:29:32.01 ID:Q97NpYj00

――――――翌日


ドスンドスン! ガキーンガキーン! バァーンバァーン!

金木「やっぱり懲りずにまた【兜】がやってきたか……」

石田”「昨日から朝方にかけてのこちらの展開の速さに驚いて戦力を繰り出してきたようだが、時すでに遅しだ」

石田”「こちらはすでに要所を全て押さえて効果的な布陣をしている」

石田”「更に――――――!」


夏草や兵どもが夢の跡

名護屋城「人生 夢の如し」 ――――――【人生如夢】発動!(5秒間 必殺技が発動しやすくなる/範囲:全)

手にむすぶ水に宿れる月影のあるかなきかの世にこそありけれ

名護屋城「諸行無常」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)

順逆二門無し。大道心源に徹す。

名護屋城「身をも惜しまじ 名をも惜しまじ」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)


金木「やっぱ反則級だわぁ……。発動したら最後――――――5秒で形勢が一気に逆転だよ、あれ」

石田”「運用コストは重いが、それに見合った圧倒的な戦闘力と抜群の【必殺技】によって この長丁場が楽に乗り切れそうだな」メメタァ

金木「まず、全体回復っていうのがチートですよ、チート! これでまだまだ戦えますよ、我が軍団は!」メメタァ

金木「しかも、【後詰】として来てくれたおかげで能力補正が凄いことに!」メメタァ

金木「まさに強靭・無敵・最強! 黒歴史として封印されていたのも頷ける強さだ!」

石田”「お、あれで最後か。――――――余裕の勝利だったな」

金木「姫様ヤベエエ! こんなのが敵の手に落ちていたらと思うとゾッとするよ!」

石田”「よし、周辺の安全が確認でき次第、えびの高原を囲む峰に【城娘】を向かわせるぞ!」

石田”「これで決着がつくだろう」

石田”「本当なら、モールス信号を夜通しで送り続けることができれば、こんな手間はかからずにすんだのだがな……」

金木「そうですね(これで終わるのか――――――あれ? でも、そう簡単にうまくいきそうにないように感じるのはなぜなんだろう?)」




149: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:31:40.73 ID:Q97NpYj00

――――――某所


霧島「夢なら……、夢なら今すぐにでも醒めて…………」ボロボロ・・・

霧島「さすがにもう…限界です…ね……」ゼエゼエ

霧島「提督……、私は頑張りましたよぉ…………」グゥウウウウウウウ・・・


ガラララ・・・!


霧島「あ…………」ヨロッ・・・

「おお…………、これが噂の“霧島城”というやつか……」ドクンドクン

「なるほど。確かに、霧島連峰の湖の中で最も美しい湖にふさわしい姿をしている…………」

霧島「だれ…………」

「安心しろ。俺はきみを助けに来たのだ」

霧島「え……」


兜の大将「ああ。安心するといい。すぐに楽にしてやるからな」ニヤリ



150: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:32:34.70 ID:Q97NpYj00

――――――数時間後、


石田”「くっ、あてがはずれか!? ――――――計算外だ!」ギリッ

金木「ま、まだです、石田少将! まだ【探索】から帰ってきていない【城娘】がいますから!」アセタラー

ヲ級”「ヲヲヲ…………」アセアセ

石田”「くっ」プイッ

あさひ姫「…………石田様」

金木「ここまで来ればすぐに終わると思っていただけに――――――(何かが違っているような気はしていたんだ……)」

あさひ姫「捜索は難航していますね」

あさひ姫「付近の方たちにも捜索の協力をしてもらってはいますけれど……」

金木「くそ! 目撃証言に間違いはないんだ! 問題はその“御堂を担いだ巫女”が今 どこをほっつき歩いているかがわからないということだ!」

金木「そもそもこの噂が出始めたのはごく最近のことらしいし、こういう時【変身】できない【艦娘】はいろいろと不便だな……」

あさひ姫「――――――!」

金木「捜索の範囲を拡げるしかないかもしれない(でも、闇雲にやったところで意味が無い。何か根本的なところで見落としてはいないか?)」

あさひ姫「【城主】様! 『ごく最近』というのはいつぐらいの話なんですか!?」

金木「うん? 確か1週間前後だと思うよ。だから、久々に九州本土まで【探索】に出ていた娘たちが情報を掴めたらしいし」


あさひ姫「その間、その“霧島”さんはどうやって飢えを凌いでいたのでしょうか?」


金木「え?

金木「あ!?」

あさひ姫「………………」

金木「そうだよ! すっかり忘れていたよ、そんな基本的なこと!」

金木「というか 俺、てっきり【艦娘】って重油を飲んで動いているから、おとなしくしていれば人間よりは飲まず食わずで生きていけるって――――――」

金木「馬鹿だった! 能天気だった! 人間よりも頑丈な身体をしているからって簡単には死なないって――――――」

金木「もしかしたら、意識を失って――――――うわあああああああああ!?」

金木「(そうだよ! 石田少将が今回の捜索がすぐに終わるだろうと思っていた前提条件って――――――、)」

金木「(その“霧島”って【艦娘】が『こちらの呼びかけに応じるだけの元気がある』っていう前提に立っているものじゃないか!)」

金木「(向こうから位置を知らせてくれるように呼びかけるのは確かに確実だけど、確実なだけにそうじゃない可能性を無意識に――――――!)」

金木「――――――石田少将!」バッ


やくも「お殿さん! お殿さん! 【探索】から戻ってきたけん!」


金木「…………!」

石田”「で、どうだった!?」

やくも「それが――――――」

千狐「殿、こんなのを【探索】に出てた娘が見つけてきたの!」

石田”「!!」


――――――緑色の額縁メガネ



151: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:33:03.96 ID:Q97NpYj00

金木「め、メガネ? 確か南蛮貿易でメガネが入ってきていたのは知っていたけど、これまたずいぶんと現代的な――――――しかも緑色の額縁か」

石田”「それは霧島のだ!」

金木「え!?」

石田”「おい、これをどこで見つけた?!」クワッ!

千狐「ちょ、ちょっとこ、怖いの……、石田さん」

やくも「白紫池の北の辺り――――――」

石田”「よし、ならその辺を重点的に――――――!」

金木「待った! 石田少将!」

石田”「!」

金木「石田少将、これだけは今 確かめておきたいのですが――――――、」

石田”「何だ?」


――――――【艦娘】って飲まず食わずで何日 平気でいられますか?


石田”「…………あ」

金木「どうなんですか?(よかった! これで根本的な間違いに気づけたようだ……! でも、これから何をどうすれば――――――?)」

石田”「しまった! 俺としたことが――――――!」ギリッ

石田”「軍艦と同じだ! 出力の高い行動をすれば それだけカロリーが消耗される!」

石田”「つまり、人間にはとても背負いきれないような艤装を装着しているだけでも尋常ではないエネルギーを消耗してしまう」

石田”「だが、人間よりもカロリー効率のいい【燃料】を飲んでいるから普段は人間の何十倍もタフだが、」

石田”「補給が十分ではなくなると、次第に人間よりも強い空腹感と飢餓感に襲われて電池の切れた人形のように無気力な存在となる!」

石田”「ましてや、【艦娘】にとっては不慣れな陸地で、しかも大変な労力を強いられる山岳地帯を何日も彷徨い続けていたとするなら――――――!」ググッ

あさひ姫「どこかで力尽きている可能性も――――――!」

石田”「どうすればいい! どうすればいいのだ!?」

石田”「21世紀になっても山での遭難は生還が絶望的なものとされているのに!」

石田”「俺はみすみす貴重な戦力をここでロストさせてしまうのか!?」

金木「石田少将…………何か、何か手はないのか?」

金木「むむむ……(――――――考えろ! 少しでも可能性に繋がるものを絞りだすんだよ!)」ウーム

金木「手掛かりとなるのはこのメガネだけ――――――(う~ん、この野外に放置されてこびりついた臭い――――――)」スッ

金木「……あれ、待てよ?」


――――――霧島のメガネは少し土臭かった。



152: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:34:01.09 ID:Q97NpYj00

金木「そうだ! ――――――伊賀忍!」パンパン!

伊賀上野城「ここに」シュタ

石田”「?」

金木「お前、忍者なら微かな臭いを辿って追跡なんて朝飯前なんじゃないか?」

伊賀上野城「可能といえば可能でございます」

金木「なら、命じる! 今すぐこのメガネが落ちていた場所から痕跡を辿って“霧島”を見つけ出してきてくれ」

石田”「!」

金木「俺、【艦娘】のことなんて全然知らないから何とも言えないけど、」

金木「少なくとも重たい『艤装』を担いで慣れない山道を覚束ない足取りで進んでいったに違いないから、絶対に連続した痕跡が残っているはずなんだ!」

金木「ましてや、ここはまだまだ未開拓の鬱蒼とした森が生い茂っているわけなんだし、噂も1週間ぐらい前に出たから痕跡も新しいはず!」

金木「これだけ言えば、伊賀忍なら行ける気がするだろう?」

金木「だから、――――――行って来い!」

伊賀上野城「御意」シュッ!

金木「よし!」

千狐「殿! さすがなの!」

やくも「うんうん。いつ見ても惚れ惚れするような采配振り!」

金木「千狐、やくも! すぐにその【探索】班を向かわせて!」

金木「こうなったら徹底的にやろうじゃないの!」

あさひ姫「…………!」


金木「石田少将、行ってください!」


石田”「なに?」

金木「俺はここで待ってますから。提督が“霧島”さんを迎えに行ってきてあげてください」

石田”「!」

金木「俺がどっしりと構えているから、石田少将は安心して出ることができるんでしょう?」

金木「いつものことじゃないですか」


金木「だったら、俺はここで待ってますから。石田少将はこれで思う存分 力を発揮してくださいよ!!」


石田”「…………金木」

石田”「――――――恩に着る」フッ

金木「いえいえ。これぐらいの甲斐性を見せなかったら【城主】として名折れだ」

金木「それじゃ、必要な人員を選んでください。もちろん、ここの防衛に必要なだけの戦力も残してくださいね」



153: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:34:53.42 ID:Q97NpYj00

――――――そして、


伊賀上野城「こちらです」シュッシュッ

石田”「この方角だと、白紫池から東の方角をひたすらに進んで――――――」

大宝寺城「わ、私、山ガールじゃないって言ってるんだけどなぁ…………」ゼエゼエ ――――――羅針盤を持たされている。

石田”「なら、どうして【平城】のお前はついてきたのだ? 【後詰】として仮拠点の防衛についていればいいものを」

大宝寺城「だって私、すないスケ様のことを少しでも知りたくて…………」ゼエゼエ

大宝寺城「そんな すないスケ様のお付の人とは逸早く会って仲良くなりたいんだ……」エヘヘ・・・

石田”「残念だが、山の上での行動は苦手だから一緒に山にこもっての修行はできないだろうな」

大宝寺城「……だとしてもだよ、すないスケ様?」

大宝寺城「私は少しでも知りたい。出羽三山から九州に飛ばされて【城主】様の他に すないスケ様にも出会えたことの意味を…………」

石田”「…………意味などあるのか?」

大宝寺城「わかんない。でも、験の修行って『求め続けることが大事なこと』だって教わっているから」

大宝寺城「だから、気になったことの答えを求め続けているんだ」

石田”「……そうか」

石田”「――――――伊賀上野城」

伊賀上野城「ここに」シュタ

石田”「どう思う? このまま東に進めばその先には――――――」

伊賀上野城「なるほど。では、そこに行き着くと――――――?」

石田”「確か【水城】属性の脇本城がいたな。そいつを先に行かせて付近の捜索をやらせろ」

伊賀上野城「承知。では、こちらは引き続き追跡を行います」

伊賀上野城「すないスケ様も十分にお気をつけになってください」シュッ

石田”「よし、俺たちも行くぞ」

大宝寺城「へ、変身――――――」ゼエゼエ

石田”「ダメだ。山伏ならこのぐらいの山道は平然と越えて行け」

大宝寺城「そんな……、さすがにバテちゃったよ~」ゼエゼエ

佐和山城「そこにいたか、石田少将」

石田”「……何ですか」ムッ

佐和山城「相変わらず、愛想の無いやつだな(――――――だが、それがいい)」

佐和山城「だが、喜べ。すでに当たりをつけることができたから、二人共 私に乗るのだ」

石田”「なに?!」

大宝寺城「え、本当……?」

佐和山城「ああ。追跡はその道の達人にまかせて、私は先に目星をつけていたのだ」

佐和山城「ここにな」ドヤァ

石田”「…………さすがだな。仕事が速い。褒めてやる」プイッ

佐和山城「素直になれ。そんな態度は損でしかないぞ」

石田”「貴様に言われたくはない」ムスッ

大宝寺城「まあまあ……、それより早く…………」フゥ

佐和山城「そうであったな」

佐和山城「では、――――――変身!」ピカァーーーン!



154: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:35:55.90 ID:Q97NpYj00

――――――六観音御池


石田”「これが六観音御池か。コバルトブルーの美しい火山湖――――――まさしく絶景だな」

石田”「このどこかに霧島が……(思わず 来た目的も忘れて、唐津の虹の松原の時のように息を呑んでしまったな)」

石田”「霧島ーーー!」

佐和山城「さて、この辺りから足跡が急に途絶えている」

佐和山城「まさかとは思うが、この湖にそのまま直進して沈んでしまった可能性も無くはないが、」

佐和山城「聞けば、“霧島”とやらは飛龍や『ヲシドリ』の仲間――――――水面を浮くことができるらしい」

佐和山城「そうなれば、このまま対岸まで渡っていった可能性もあるが、ここは丁寧に見て回ろう」

佐和山城「大宝寺城はここから左に回って足跡を探れ。私は右側から痕跡を探ろう」

大宝寺城「うん。わかったよ」

脇本城「あ、みなさん、すでにこちらにいらしてましたか」

石田”「む、確か脇本城だったな(――――――脇本城はメガネだったな。それだけに霧島と似たものを感じるな)」

脇本城「はい。伊賀上野城殿からの言伝でここに来ましたが、すでに佐和山城殿が目星をつけていましたか」

石田”「しかし、どう捜索したものか――――――仮に霧島がこの周辺に倒れていると仮定するなら、どこかに休めそうな施設があるはずだが」

脇本城「それならありますよ!」

石田”「それは本当か?」

脇本城「はい。地元の方たちの情報によれば、この六観音御池のほとりにその名の由来となった六観音を祀る仏堂があるとか」

石田”「それはどの方角だ?」

脇本城「北の方角だそうです」

石田”「…………可能性はあるのか?(この六観音御池は白紫池よりも北よりの分布で、ちょうど俺たちは六観音御池の西側の真ん中辺りにいる)」

石田”「(それはつまり、佐和山城が見つけた痕跡が本当に霧島のものだとするのならば、どうやっても北の六観音堂に意識が向くはずがない)」

石田”「(ましてや、メガネを失って彷徨う霧島がそこ めがけて突き進めるようには到底 思えないが――――――)」

石田”「だが、賭けてみる他ないか」

石田”「そこに連れて行ってくれないか、脇本城? 北の方角はあっちだな」 ――――――羅針盤と太陽の位置を確認しながら。

脇本城「わかりました。――――――再び、斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!

石田”「うむ(しかし――――――、)」


――――――なぜ霧島がその名の由来となった霧島連峰のまっただ中に現れたのかが皆目検討がつかない。どういうことなのだ?



155: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:38:05.59 ID:Q97NpYj00

――――――六観音堂


ガララ・・・

石田”「!」

脇本城「どうでしたか!?」

石田”「…………霧島、お前はそこまでがんばってくれたのだな」


脇本城「誰も居ませんね」キョロキョロ


脇本城「ですが、何やら見慣れない物が置いてあります。――――――何かの祭具でしょうか?」

石田”「いや、間違いなく霧島はここにいたんだ」

脇本城「そうなんですか?」

石田”「脇本城が祭具だと思ったこれは――――――、」


――――――これは俺が開発した【特殊小型船舶】水上オートバイだ。


脇本城「――――――『水上オートバイ』?」

石田”「そして、この水上オートバイは俺の指紋認証でエンジンがかかる仕組みとなっている!」

石田”「…………!」カチッ


ガチャ、ブルルルル・・・・・・


脇本城「おお!」

石田”「更に、海難に備えたサバイバルマニュアルや位置情報システムを搭載した携帯情報端末も付属している……」ピピッ

石田”「そうか、“御堂を担いで歩き回っている”霧島神宮の巫女というのはこういうことだったのか」

石田”「『艤装』だけじゃなく、余分にこんなものを必死に担いで人知らず山奥を彷徨い続けていたというのか…………」

石田”「そして、この場に霧島がいないということは――――――!」ガクリ

脇本城「すないスケ様!」

大宝寺城「あ、すないスケ様だ。やっと追いついた――――――あ」

156: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:39:02.53 ID:Q97NpYj00


石田”「間に合わなかったんだ、俺たちは…………霧島!」orz


脇本城「そんな…………」

大宝寺城「すないスケ様…………そっか」





トボトボ・・・





大宝寺城「…………辺りにはもう痕跡がないよ」

大宝寺城「どうしよう? やっぱり間に合わなかったのかな……?」

大宝寺城「はあ……、もっと私に力があれば――――――」チラッ

大宝寺城「あ」


――――――ふと、大宝寺城は六観音御池に1羽の白鳥が優雅に泳いでいるのを見かけた。

               クグイ
大宝寺城「――――――鵠だ」

大宝寺城「そういえば、私の出身の出羽三山って崇峻天皇の皇子:蜂子皇子が3本足の霊鳥に導かれて羽黒山・月山・湯殿山を開いたのが始まりだっけ」

大宝寺城「そして、羽黒山の本地仏は正観音様――――――」

大宝寺城「お願い、観音様! ここの観音様は十一面観音様だけど、どうか すないスケ様をお助けください!」ググッ

157: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:40:02.83 ID:Q97NpYj00

大宝寺城「くぅううううう! むぅうううううううう!」

大宝寺城「んんんんんんんんんん!」

大宝寺城「………………!」
















大宝寺城「はあっ!!」カッ





バタバタバタ・・・!

大宝寺城「あ」

大宝寺城「…………行っちゃった。まだまだ修行不足だよね」

大宝寺城「あーあ……、これからどうしよう――――――」


脇本城「ここにいましたか、大宝寺城殿!」


大宝寺城「え、どうしたの?」

脇本城「対岸を見てください!」

大宝寺城「え」



佐和山城「――――――!」 ――――――変身して槍を大きく振って『こちらに来い!』『手掛かりを発見した』のサインを送っている!



大宝寺城「何か見つかったんだ!」パァ

脇本城「はい。ですから、【平城】の大宝寺城殿は六観音堂で待機して、羅針盤と水上オートバイを見ていて欲しいとのことです」

脇本城「他にも六観音御池に後れてやってくる人たちに今の状況をお伝えしてください」

脇本城「私は すないスケ様を乗せて対岸へと渡っていきますので、この場はお任せします!」

大宝寺城「よ、よかった…………」

脇本城「大丈夫ですか? これから六観音堂に向かってください。連絡役として後から来た人たちに状況をお伝えしてください」

大宝寺城「うん! わかったよ! 私、そこで必死に観音様にお祈りしているから行ってきて!」

脇本城「では、私はここで、――――――斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!

158: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:40:56.44 ID:Q97NpYj00

大宝寺城「よかった……。祈りが通じたんだ…………」

大宝寺城「ありがとう、鵠さん。こういう時こそ祈らなくちゃ!」

大宝寺城「そういえば鵠って、ヤマトタケルノミコトのことでもあるんだよね」

大宝寺城「でも、まさか――――――そんなことないか」

大宝寺城「よし、行こう!」





ここ 六観音御池の名は、村上天皇の御代での出来事に由来している。

性空上人がこの霧島連峰の火山湖の1つの湖畔で法華経を読誦していると白髪の老翁が現れたという。

「我はヤマトタケルノミコトである。白鳥と化してこの峰に住むこと久し。今、師の読誦苦行の徳に感応して身を現すものなり」 

この因縁によって、上人は湖畔の出現場所に堂宇を建て、中に手彫りの六観音を安置したとされ、

それが霧島連峰で最も美しいコバルトブルーの火山湖:六観音御池の名の由来と伝えられている。



159: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:42:00.77 ID:Q97NpYj00

――――――仮拠点:えびの高原


金木「………………」ピピッ

金木「――――――霧島神宮」

金木「欽明天皇の時代に慶胤に命じて高千穂峰と火常峰の間に社殿が造られたのが始まり――――――」

金木「うん? 『欽明天皇』――――――どこかで聞いたような」

あさひ姫「どうしたんです?」

金木「あ! そっか、欽明天皇ってあれだ! 敷島の人か! そうか、そうか!」 >>73

あさひ姫「はい?」

金木「いえ、暇だからちょっと地元の人と話してたら霧島神宮の話になってちょっと調べてたんですよ」

金木「【城娘】を従える天の御遣いである【城主】には是非とも霧島神宮に来てもらいたいって地図までもらってさ」

あさひ姫「そうだったんですか。確か、霧島神宮は地元の島津家にとっては縁ある場所でしたね」

金木「それで――――――、」

金木「火山の麓にあるという立地のために度々 炎上しては再建を繰り返している――――――」

あさひ姫「まあ」

金木「そっか。霧島連峰は火山地帯だもんな――――――っていうか、日本の山々はみんなマグマでできているから当然か」

金木「天暦においては性空上人により、現在の高千穂河原に遷されるが、ここも度々 噴火の巻き添えで炎上している」

金木「現在の社殿は、正徳5年(1715年)に島津吉貴の奉納により再建したものである」

金木「ふ~ん」

160: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:42:33.72 ID:Q97NpYj00

金木「霧島って割りと噴火しまくってんだな…………こんな危なっかしい場所が天孫降臨の舞台なのか」

金木「…………何か石田少将が迎えに行っている(【あちら側】の)【艦娘】霧島の戦歴と重なるところがあるって感じだな」

金木「やっぱり何か縁があるのかな?」

あさひ姫「どういうことです?」

金木「【艦娘】って今から300年ぐらい後の軍艦が擬人化したもんなんだけど、」

金木「艦内神社っていうのが必ずあったらしくてさ。軍艦の命名は山や川、旧国名がつけられるのが規則で、」

金木「たとえば、戦艦:伊勢は伊勢神宮の末社を艦内神社にしていたことだし、巡洋戦艦:榛名は榛名神社って感じで」

あさひ姫「へえ、そうだったんですか」

あさひ姫「それなら確かに、霧島さんが名の由来となったこの霧島連峰と何らかの縁があって喚ばれたという推測も無理がないことですね」

金木「…………うん。だからどうしたって話なんだけどさ」

金木「でも、何となく『名前が同じものって似たような傾向を持つ』って感じることが時々あるんだよな……」

あさひ姫「確かに、私も“ナゴヤジョウ”ですが同じ那古野城さんとは何か感じるものがありました」

金木「それはたぶん――――――何でもない」

あさひ姫「どうしました?」

金木「何か思いついた気がしたんだけど、パッと忘れちゃった」テヘッ

あさひ姫「そうですか。何か思い出したら教えてくださいね」

金木「うん。そうする」

金木「(実は那古野城と名護屋城の共通点を思い浮かべたら、どっちも最終的に徳川家康に下克上された織田家と豊臣家の城ってことを――――――)」




161: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:43:32.14 ID:Q97NpYj00




















――――――某所


大将「どうすりゃあいいんだ!?」オロオロ

又左「と、言われましても……」


霧島”「ぁぁ…………」


大将「あんなにも弱り切っているのに俺はただ見ていることしかできないのか!?」

赤鬼「御大将の女癖の悪さには呆れてしまいます」

又左「今は社の者に任せておきましょうか」

大将「…………ぬぅ」

大将「わかった」

162: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:44:51.60 ID:Q97NpYj00


スタスタスタ・・・


大将「ところで、本当にこの麗しき“霧島城”は【城娘】だったのか?」

又左「…………少なくとも人間ではないのは確かです」

大将「だよな。俺に持てないようなあれだけ巨大な祭具を背負った巫女だなんて見たことがないぞ」

大将「俺が知ってる限りだと、仏閣の【城娘】はいても神社の【城娘】なんてのは見たことがない」

赤鬼「そうなると、南蛮から来たという可能性は?」

大将「その可能性はあるのか? 確かに背負った祭具らしきものは国崩し砲に似たものではあるが…………」

又左「しかし、それが事実だとするならば、いろいろと辻褄が合わない特徴を持っていることに……」

大将「そうか。南蛮貿易の歴史が100年にもならないこの時代に存在の欠片すら感じられない“霧島城”と巷で噂のこの人間ではない何か――――――」

大将「それが南蛮からきた【城娘】である可能性は限りなく低い気がしてきたぞ」

又左「はい。国崩し砲に相当するものを持つ【城娘】ならば、なぜその存在が今まで明らかではなかったのか――――――」

大将「そうだそうだ。話はそこからなんだよ」

赤鬼「なるほど、推測では天孫降臨の時代に築かれた歴史から消えた古代の城郭が【城娘】となったものだとばかり――――――」

赤鬼「城址や遺構すら残っていないのも、ここ 霧島神宮と同じく、霧島連峰による火山噴火で消失した――――――」

大将「…………もしかしたら本当に“天女”だったりして」

又左「……あり得なくはない話ですね」

赤鬼「だとしたら、どうするおつもりなのですか、御大将?」


大将「当然 娶る! 俺の正室に迎えたい」


赤鬼「ダメだ、ダメ過ぎる、御大将……」ゲンナリ

赤鬼「こんなんだから、神集島でいきなり戦わされて手傷を負わされる羽目になったというわけですか」ハア

又左「滅多なことを言うもんじゃない、新参者」ジロッ

又左「敵の一人、討ち取れないとはなんと情けない」

赤鬼「誰のおかげで一人で戦わなくちゃいけなくなったんでしょうかね?」

大将「やめろ、二人共!」

又左「しかし――――――!」


大将「とにかく、“手掛かり”は掴めたか?」


又左「…………やはり【城娘】ではないようなので」

又左「前に佐和山城から得られた新参者のようにはいかないですね」

大将「やっぱり天女なんだよ!」キラキラ

赤鬼「まだ言いますか、この御大将は……」

大将「とりあえず、神宮まで連れてきてはみたけれども…………早く元気になって欲しいもんだぜ」

163: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:46:41.48 ID:Q97NpYj00

――――――ここは、霧島神宮(西御所霧島権現)


ドドドドド・・・

大将「!」

赤鬼「…………たくさんの足音! それにこの気配は!」

又左「まさか、すでに我々の動向が――――――!?」

大将「おおっと! だったら、すぐにトンズラだ! 最後に勝てばいい!」ダダッ

又左「くっ、一度ならず二度までも!」ダダッ

赤鬼「御大将は早く逃げて!」

大将「おう! 花嫁を連れてな――――――!」


タッタッタッタッタ・・・!


大将「すまねえ! すぐに行かなくちゃならなくなった――――――なっ!?」

又左「き、貴様は!?」


石田”「また会ったな(こんにちは、死ね)」パチン!


艦攻妖精×4「撃てええええええ!」シュバババババ!

大将「うおおおおおっ!? なんでこいつがあああああああああ!?(死ぬ! 死ぬうううううううううう!)」

又左「くっ、舐めるな!」バッ


164: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:48:05.23 ID:Q97NpYj00


ガキンガキンガキーン!


艦攻妖精×4「ちっ」

大将「……さ、さすがは“又左”だぜ! そんな子供騙しは通じないぞ!」アセダラダラ

石田”「ああ」\勅命/ スッ

石田”「そうだと思ってた」¶ バチン!

大将「!」

大将「気をつけろ! こいつはまた何か――――――!(――――――“勅命”の扇! それが攻撃の正体か!)」

又左「きゃあああああああああああああああ!」ビリビリビリビリィ・・・・・・!

又左「あ…………」バタン!

又左「」

大将「…………嘘だろう?」

石田”「やはりな。『具足』を展開していない状態なら【大将兜】でもその程度というわけだな」

大将「…………!」アセタラー

大将「いったいどうしてここがわかった!?」

石田”「冷静に考えて――――――、」

石田”「だらしのない貴様ならば巷で噂の“霧島城”を、しかも瀕死状態なら尚更、名を同じくするこの神宮に連れてくるのではないかと思っていた」

大将「………………!」ドキッ

石田”「実際にその通りだっただろう?」

大将「ハッ」

大将「――――――じゃなくて、前提がおかしいだろう!」アセアセ

大将「どうして六観音御池の堂宇にいたことに気づいたんだよ! 霧島神宮までだってあんなに距離があるのになんで諦めないんだよ!」

石田”「答える義理はない(どうやらこいつは俺の【特殊小型船舶】を六観音堂の祭具か何かと勘違いしていたようだな)」

石田”「その程度の知恵で【乱世】を生き残れると思ったら片腹痛いな」

大将「……こ、殺すのか、俺を?」

石田”「ああ。生かしておく理由がないことは最初に会った時にわかっていたことだからな」

165: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:49:22.55 ID:Q97NpYj00


ドゴーン!


大将「…………!」

石田”「あっちの方でも決着がついたようだな」

大将「う、嘘だ! 一騎当千の【大将兜】がこうも簡単に――――――」

石田”「一騎当千の鉄則は、自分の行動が絶対に妨げられないことだ」

石田”「貴様は場当たり的に戦力を投入しているだけの能無しだ(野盗共をカネで釣ったとはいえ、配下に置いていただけの器量はあるようだが)」

石田”「たとえ、【城娘】を凌駕する力があっても多勢に無勢の数的不利を知れ!」ジャキ! ――――――ホルスターの拳銃を抜く!

バァーーーン!

大将「ぐあっ!?(あ、脚が、脚がぁ…………!)」グラッ

石田”「ふん!」シュッ

大将「あ」

石田”「てやっ!」ズゴオン! ――――――鳩尾に深々と突き刺さる渾身の一撃!

大将「あ、お、あ…………」モガモガ

大将「」バタン

石田”「ふん。唐津の時は取り逃したが、今度は逃がさんぞ。貴様には訊くことが山ほどあるのだからな」

艦攻妖精「やりましたね」ニヤリ

石田”「ああ。だが、【大将兜】の身体能力を見ただろう。厳重に縛り上げるか、この場で始末しなければならんな」

又左「」

艦攻妖精「そうですね」

艦攻妖精「いやぁ~、斉射を防がれた時、冷や汗が止まりませんでしたよ」

艦攻妖精「俺たちの愛機は固定機銃扱いで、反撃されたら間違いなく全員 串刺しにされていたでしょうし」

艦攻妖精「この狭い境内で飛び回るのが難しいからこうせざるを得なかったってのはわかってはいたんですけどね……」

石田”「よくやってくれた」

石田”「4方向からの斉射ならば、確実に【大将兜】を釘付けにできる確信があった」

石田”「敵の主従の絆というのは確かなものだったが、それを俺にはっきりと見せつけていたのが後々の災難に繋がったな」

艦攻妖精「主君を守ることに全力を尽くすように動くのが見え見えでしたからな」

艦攻妖精「だからこそ、待ち伏せと生け捕りが両立できたわけですな」

艦攻妖精「もう少し戦力を残しておけば、こんなふうにはならなかったのに……」

艦攻妖精「ま、唐津や霧島連峰で数だけが取り柄の力押しばかりじゃ、大将の力量が知れてたし」

石田”「そういうことだ。いくらでも敵指揮官の素質を測る判断材料はあった」

石田”「戦いというのはこうやって相手の力量を見極めて行うものなのだ。つまりは分析力と観察力がものをいう」

石田”「今回はまさに手の内を見せすぎたことによる自滅だな。無防備すぎたな」


――――――幕切れなどこんなものだ。敗者は惨めに、勝者は意気揚々にその勝敗を明らかにするのだ。



166: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:50:34.84 ID:Q97NpYj00



石田”「…………どうですか?」

神官「お持ちいただいた“妙薬”の甲斐あって、だいぶ落ち着いてきたようです」

石田”「連れの者の介抱してくださいまして、ありがとうございます」

神官「……先程の方たちとはいったいどういった関係で?」

石田”「名は明かせませんが、彼の者は放蕩児でございまして、それを連れ戻しにきたのが第一です」← 嘘は言っていない

神官「……そうですか」

石田”「それでは、いつまでもお社のご厄介になるのも悪いので、これで――――――」

神官「お待ちなされ」

石田”「?」


神官「もしや、貴方様は石田治部と縁のある御仁ではないのでしょうか?」


石田”「…………またか」ハア

石田”「お言葉ですが、確かに氏は同じ“石田”ですが、私は石田治部とは無縁の人間なのです」

神官「いやなに、あれから30年近く経ちますが、幼き日に石田治部にお会いしたことがありまして」

神官「あまりにも似ているものですから、つい――――――あ」

石田”「御用はそれだけですか? 我々は天草に戻らなければならないので――――――(………………不快だな)」

神官「しばし! しばしお待ちくだされ! その間に支度をしていてかまいませんから、見送りだけは必ず!」

石田”「…………?」

石田”「ああ……」

神官「では!」


タッタッタッタッタ・・・!



167: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:52:19.41 ID:Q97NpYj00

霧島”「う、うぅん…………うん?」

石田”「私がわかりますか、霧島?」

霧島”「え? もしかして、その声――――――司令?」

石田”「はい」スチャ

霧島”「あ」 ――――――霧島のメガネをかける。

霧島”「あ、ああ…………!」 ――――――視力が矯正されてはっきりと見えるようになった。

霧島”「司令ぃいいいいいいいいいいいいいい!」ギュッ

石田”「…………よくやった。それでこそ我が艦隊の要だ」

霧島”「はい……!」ヒッグ

石田”「………………」


――――――
佐和山城「なるほどな。あれが噂の“霧島城”というやつか…………似ているな」チラッ

脇本城「そうですね。何だか話が合いそうな気がしてきました。これからお話するのが楽しみです」

伊賀上野城「しかし、今回の作戦目標の全てを満たすことができましたが――――――、」


今回の霧島における作戦目標

1,霧島で発見されたという【城娘】霧島城と接触する(おそらく【艦娘】霧島だと思われる)――――――達成!

2,霧島に集結している【兜】を駆逐する ――――――達成!

3,現地で指揮を執っていると思われる【兜】の司令官を拿捕する ――――――達成!


佐和山城「そうだな。こうして“霧島城”と接触できたし、霧島に投入された敵の大半を撃滅できたことだろう」

佐和山城「しかし、敵の頭を押さえることはできたが、あの“赤鬼”の【大将兜】だけは逃げられてしまった……」

伊賀上野城「さすがに捜索班だけで敵の急所に突撃するのは無理と判断して、地元の方に薩摩から至急 援軍を出すよう依頼したまではよかったのですが……」

脇本城「事実、【大将兜】が護衛についていましたから、あさひ姫様を欠いた状態で決戦を挑むのは分が悪すぎました」

佐和山城「悔しいことだが、あの“赤鬼”にはハッタリを効かせて退いてもらうしか対処する手段はなかった」

脇本城「幸い、あちらは足止めに徹していたので、こちらの被害も極力抑えられてはいましたが、」

脇本城「薩摩の援軍が来るとはいえ、“赤鬼”がすぐに退いてくれなかったら、すないスケ様も危なかったです……」

佐和山城「まったく、石田少将ともあろう者が、土壇場でこんな博打に出るとはな」ヤレヤレ

佐和山城「(けれども、その土壇場での賭けに勝つだけの天運を持っているのだから、少しばかり我が事のように嬉しくなってしまうな)」

佐和山城「(そう、関ヶ原の決戦も結果は天運によるもの――――――それを掴めなかっただけなのだ、石田治部は)」

168: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:53:16.73 ID:Q97NpYj00

脇本城「しかし、まさか霧島連峰を越えて薩摩領にまで入るとは思いませんでした」

佐和山城「そうだな。九州征伐のことを思い出す」

脇本城「『鬼』と言えば、――――――この薩摩の国には“トシドン”という鬼がいるそうです」

伊賀上野城「――――――『鬼』ですか」

伊賀上野城「『鬼』と言えば、薩摩の鬼と言えば鬼島津、織田の鬼と言えば鬼柴田、そして 伊賀の鬼と言えば鬼半蔵ですね」

佐和山城「――――――『鬼』か(あの“赤鬼”と私の間に何らかの因縁があったように感じられたな)」
――――――


石田”「…………」スッ ――――――椀に注がれた“妙薬”を木の箆で掬って食べさせている。

霧島”「…………ゴクン」

霧島”「もっと、ください、司令……(司令とのこんなひととき、怪我の功名――――――これはいいものですね)」ドクンドクン

石田”「そうか。苦肉の策だったが、確保してきて正解でした(それこそ旧大戦末期の惨状を偲ばせる資源ではあったが――――――、)」

         テレビン
――――――松精油


霧島”「司令のおかげで、ようやく力を取り戻せたって感じです」ニコッ

石田”「そこまで動けるようになったのなら、もういいでしょう」コトッ ――――――椀と箆を霧島の前に置いた。

霧島”「え……」

石田”「水筒に入っている残りの松精油は全て霧島にあげます。それで体力を回復してください」

石田”「それと、それだけでは味気ないでしょうから、長崎の洋菓子もあります」

霧島”「あ、長崎の――――――」←長崎造船所の生まれ

石田”「では、今日中には【ここ】での本拠地である天草に帰還します」

石田”「それまではゆっくりと――――――」スッ

パシッ

石田”「む」

霧島”「あ、えと……」

石田”「……どうしました?」

霧島”「…………もう少しだけ司令が食べさせてくれませんか?」モジモジ

石田”「………………」


金木『石田少将はこうやって『ヲシドリ』の面倒を見るのと同じように他の娘一人ひとりと話をする時間を設けたほうがいいと思いますよ』


石田”「わかりました」

霧島”「!」パァ

石田”「帰りの準備とは言っても【城娘】に乗って帰るだけですから。あちらの準備がすむまでは動けません」

石田”「それと、その……」

霧島”「?」


――――――話でもしませんか? こういった時に必要なのはコミュニケーションだと思ってますから。



169: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:54:06.28 ID:Q97NpYj00

――――――お見送り前の様子


M:鹿児島城「【城主】様~、えびの高原まで我々 薩摩の軍勢がお供いたしますのでどうかご安心なさってくださ~い」

石田”「いや、私は【城主】様ではないのだが…………よくて名代だから間違えないで欲しい」

M:鹿児島城「いいではありませんか、いいではありませんか~」

石田”「…………自分で喚んでおいて難だが、」

石田”「――――――どうしてこうなった? すぐに帰れる予定がなぜこんな大仰なものになった?」

佐和山城「人民に仇なす【兜】を追い払う【城娘】を数多く従える天下無双の【城主】とはぜひとも覚えを良くしてもらいたいからだ。決まっている」

佐和山城「唐津に居た時もたびたび遠方より大名からの寄進があったぐらいなのだぞ」

佐和山城「薩摩としてもこの機会を逃して、天の御遣いである【城主】の一向に粗相を働いたと見られたくもないだろうからな」

佐和山城「しかし、今回はそんな薩摩の人間に全面的に助けられてきたのだからな。恩義を感じるのならばこれぐらいのことには付き合ってやらねばな」

石田”「……そうだな」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



170: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:56:27.31 ID:Q97NpYj00

――――――遡ること、六観音御池にて


ピカァーーン! ジャブンジャブン!

佐和山城「む、あれは脇本城か? 石田少将を乗せて――――――」

佐和山城「なるほど、そういえば脇本城は現地の聞き込みに熱心だったな」

佐和山城「となると、六観音御池に何かあることを掴んでいたのか」

佐和山城「…………無駄骨かもしれないが、用心には用心を重ねてこちらはこちらでやるべきことをやっておくか」

佐和山城「恐ろしいのは先に“霧島城”が確保されたという可能性――――――」

佐和山城「そうなった場合、どの方面に向かったかが特に重要となるが…………」

佐和山城「(少なくとも、唐津のある北や天草のある西の方面はまずないはずだ)」

佐和山城「(となると、南の薩摩や東の日向の方面か? 昨日今日の敵の流れからいってもそう見える)」

佐和山城「(だが、敵に鳥型がいる以上は、六観音御池で痕跡が途絶えたのはその偽装のために選んだ可能性もある)」

佐和山城「むぅ……、そうだとしたらもはや打つ手なしだな…………」


ガサガサ・・・


佐和山城「むっ、何奴!」ピクッ

修行僧「おお、やっと辿り着いた」

佐和山城「む、行脚している修行僧でしたか。これは失礼いたしました」

修行僧「いえいえ。泰平の世となっても、道中 そういった誤解はつきものですからお気になさらず」

修行僧「おお! これが六観音御池ですか。これは確かに美しい湖ですね」

修行僧「霧島神宮を見てから霧島連峰に入ることにしたのですが、今日は実に運が良かったです」

佐和山城「む?(――――――霧島神宮、薩摩の方面から来たのか)」

佐和山城「少し話を聴かせてはくれぬだろうか?(何か手掛かりとなるものがあれば良いのだが…………)」

修行僧「わかりました。拙僧としても神宮での吉事を見て逸る気持ちを抑えきれずここまできたものですから――――――」

171: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 20:59:20.24 ID:Q97NpYj00

修行僧「実は、今日 薩摩に来れたということで神宮に参りましたら――――――、」

佐和山城「うむ」


修行僧「御池の六観音堂で天女が行き倒れていたらしく、」


佐和山城「!?」

修行僧「それを神宮にお連れなさったということで、今日は大変 賑わっていましてね」

修行僧「そして、御池の方面から白鳥が飛んできたという吉事も見受けられまして、」

修行僧「かつて、この湖の畔で性空上人が法華経を読経したことによって、鵠となって御池にいらしていた日本武尊様が現れたという逸話もあって、」

修行僧「これは是非とも参らねばならんと思いまして、一目散に駆けつけてきた次第なのです」

佐和山城「ま、まさか――――――!」









――――――同じ頃、対岸の大宝寺城は六観音御池に1羽の白鳥が優雅に泳いでいるのを見かけた。

               クグイ
大宝寺城「――――――鵠だ」

大宝寺城「そういえば、私の出身の出羽三山って崇峻天皇の皇子:蜂子皇子が3本足の霊鳥に導かれて羽黒山・月山・湯殿山を開いたのが始まりだっけ」

大宝寺城「そして、羽黒山の本地仏は正観音様――――――」

大宝寺城「お願い、観音様! ここの観音様は十一面観音様だけど、どうか すないスケ様をお助けください!」ググッ

172: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:00:41.98 ID:Q97NpYj00

大宝寺城「くぅううううう! むぅうううううううう!」

大宝寺城「んんんんんんんんんん!」

大宝寺城「………………!」















大宝寺城「はあっ!!」カッ





バタバタバタ・・・!

大宝寺城「あ」

大宝寺城「…………行っちゃった。まだまだ修行不足だよね」

大宝寺城「あーあ……、これからどうしよう――――――」


脇本城「ここにいましたか、大宝寺城殿!」


大宝寺城「え、どうしたの?」

脇本城「対岸を見てください!」

大宝寺城「え」



佐和山城「――――――!」 ――――――変身して槍を大きく振って『こちらに来い!』『手掛かりを発見した』のサインを送っている!



大宝寺城「何か見つかったんだ!」パァ

脇本城「はい。ですから、【平城】の大宝寺城殿は六観音堂で待機して、羅針盤と水上オートバイを見ていて欲しいとのことです」

脇本城「他にも六観音御池に後れてやってくる人たちに今の状況をお伝えしてください」

脇本城「私は すないスケ様を乗せて対岸へと渡っていきますので、この場はお任せします!」

大宝寺城「よ、よかった…………」

脇本城「大丈夫ですか? これから六観音堂に向かってください。連絡役として後から来た人たちに状況をお伝えしてください」

大宝寺城「うん! わかったよ! 私、そこで必死に観音様にお祈りしているから行ってきて!」

脇本城「では、私はここで、――――――斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!

173: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:02:51.44 ID:Q97NpYj00



修行僧「…………驚きましたな」

修行僧「本当に湖に鵠が居て、神宮の方面に飛んでいきましたぞ」

修行僧「そして、貴方様があの天の御遣い様に仕えておられる【城娘】でございましたか」

佐和山城「どうやら、この天孫降臨の地において神仏が我らにお味方してくださったようだ」

修行僧「今日は何という吉日でございましょう。これはひとえに信仰の道にひたむきに生き続けた証と言えましょう」

修行僧「では、これにて拙僧は、この御池の畔に性空上人が建てられたという堂宇で読経しておきたく存じます」

修行僧「どうか、かつて日本武尊様のように天の御遣いである【城主】様にこれからも神仏の加護があらんことを」

佐和山城「そちらも修行が成就いたしますようお祈り申し上げる」


スタスタスタ・・・・・・


佐和山城「思わぬところからの一報であったな」

佐和山城「はたして『天女』が“霧島城”であるか確証はない」

佐和山城「だが、不思議とそこへと導かれているような気がしてならない」


石田”「佐和山城!」


佐和山城「そして、私と石田少将の因縁にも何らかの意味がこれで――――――」

佐和山城「ここから聞こえるか、石田少将! 神宮に向かうぞ!」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



174: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:04:40.06 ID:Q97NpYj00

――――――そして、見送り


神官「では、石田様。どうかこれをお納めくださいませ」スッ ――――――厳かな封がなされた何かを渡す。

石田”「――――――神剣ですか?」 ――――――封の上からの重量や大きさでそう感じ取った。

周囲「おお……」ザワ・・・ザワ・・・

石田”「これを【城主】様に?」

神官「いいえ。これは『石田様に』お渡しするのです」

佐和山城「なんと!?」

石田”「……何かの間違いだと思いますが、お渡しするというのであれば、この場で検めさせてもらいます」

石田”「どういったものなのか見なければ、持ち運びや保管の方法が検討できませんので」

神官「かまいません」

石田”「…………胡散臭い」スッスッバサッ・・・

M:鹿児島城「まさか神宮の秘蔵品をお目にかかることができるだなんて!」

脇本城「本当ですね。いったいどういったものなのか興味があります」

霧島”「よ、よくはわかりませんが、ここが私の名の由来となった霧島山の神宮で、」

霧島”「その神宮で司令宛ての秘蔵品が渡されていると――――――?」

石田”「む」


――――――封を解くと、打刀と見紛うようなズシリと重たい金属物が更に封紙に包まれていた。



175: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:06:45.89 ID:Q97NpYj00


そして、封紙を解いてその中身を露にさせると、それは巨大な――――――


石田”「なんだ、これは? 鞘に収まっていない神剣だと思っていたが、この角ばって分厚いものは――――――?」

神官「――――――『志那都神扇』」ボソッ  ――――――封紙にはそう書かれていた。

石田”「何ですって?」

神官「石田様。どうやらこれは扇のようです。――――――それもとても巨大な」

石田”「…………扇」バサバサ

石田”「ふん!」\ ◎ / バッ

一同「おお!」

神官「これは見事な!」

霧島「…………綺麗」

M:鹿児島城「――――――黄金の九曜紋ですよ~!」

脇本城「そして、見事なまでの瑠璃の装飾です!」

佐和山城「これはとてつもない贈呈品だ……(大海に浮かぶ太陽のような眩いばかりの輝きが伝わってくる!)」ゴクリ

石田”「――――――『志那都神扇』」


石田少将は告げられたその扇の名を呟いてみた。

“志那都”というと伊勢神宮 外宮に祀られている、元寇において神風を吹かせたという風神:級長津彦命の名がすぐに連想させられた。

おそらくその解釈であっているはずである。――――――そう直感が告げる。

ここ 霧島神宮は瓊々杵尊を主祭神とし、天孫降臨の地とされる霧島連峰にあるのだから、自然と国家第一の宗廟:伊勢神宮との関連も頷けた。
                                     ウルトラマリン
そして、打刀の刃を何枚も束ねたようなその巨大な扇を開くと、群青地の眩い黄金の九曜紋が光を放っていたのである。

また、これは後に知ることとなるのだが、【艦娘】霧島が辿り着いた六観音御池の六観音堂は明治時代の神仏分離令によって豊受神社となっており、

豊受神社ということは豊受大神であり、すなわち伊勢神宮 外宮こと豊受大神宮にも通じていたのだ。



176: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:07:20.35 ID:Q97NpYj00

ここで九曜紋について説明を挟んでおこう。

九曜紋とは、中央に大きな円があり、その周囲8方に小さな円が取り囲んでいる構図である。“9つの円”=“九曜”であるから九曜紋というわけだが、

この“曜”とは“光り輝く”という意味で通常は説明されているが、実際には日偏の漢字であることから“天上で輝く星”を意味する。

それは具体的には何か? ――――――それは七曜日に見られる地球にとって非常に身近な天体のことである。

すなわち、木火土金水・太陰(=月)・太陽(=日)のことを指して“七曜”と呼んでいるわけである。

しかしながら、これは九曜紋であり、“七曜”が“九曜”の内に入るのは自然と理解されるであろうが、

では、――――――残り2つの“曜”とは何を指しているのだろうか?

天王星や海王星を加えて九曜なのか? いや、それらは近世ヨーロッパの天体観測技術が発達するまでは存在すら確認されていなかったものである。

――――――実はあるのだ。古来から観測されてきた もう2つの天体……というより 天体現象が。


それは、――――――“日蝕”と“月蝕”であった。


正確には、羅喉星(月の昇交点)と計都星(月の降交点)の古代インドで信じられてきた実際には存在しない2つの天体のことである。

しかしながら、日蝕とは月と太陽が同じ交点にいる時に起こり、月蝕は月と太陽が互いに正反対の交点にいる時に起こるので、

単純に1つの惑星に擬えて日蝕と月蝕を説明するのは科学的に不適当であることが証明されている。


以上のことから、九曜紋とは『太陽系――――――森羅万象・宇宙の全てを象った紋章』ということ意味となり、

古来、日本に入ってきてから神仏習合の時代にそれぞれの曜に仏=神をあてはめて深く信仰されてきたシンボルなのである。

特に、近代国家創設を目指した明治政府によって神仏分離令が出される以前は、神社仏閣を1つにした神宮寺など当たり前のように存在し、

現に石田少将が辿り着いた ここ 霧島神宮も神仏習合まっただ中の時代においては西御所霧島権現と称し、本地堂:十一面観音となっているのだ。

そもそも“権現”というのは、本地垂迹思想で“一時の権限を得て仮に現れた”日本の神々につけられた神号なので、

各地で“権現”と名のつく仏の数を数えてみれば、いかに日本古来の神々がそのまま神仏習合の時代でも信仰されてきたかが理解できると思われる。

それ故に「星紋」の図案として大変 人気であり、かのタイ捨流や、伊達家や細川家などの大大名の家紋にも採用されているのだ。



177: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:07:55.23 ID:Q97NpYj00

――――――翌日

――――――帰路、その途上の港


ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー

金木「さあさ! 天草への土産物はちゃんと積み終わったか? 船はまだ出せない? 急いでくれよ」

佐和山城「殿、もう間もなく出港の準備は完了いたします」

金木「おう、そうか。いつもありがとな、佐和山城。仕事が早くて助かるよ」

佐和山城「…………それほどでも」フフッ

金木「いやはや! 今回の遠征は実に充実した戦果だった! 大勝利だな!」イヤッホホーイ!

金木「ああ わざわざ えびの高原までお見送りに来てくれた鹿児島城どん、いつかお招きしたいでごわす~。今回は薩摩隼人に感謝! 感謝でごわす!」

佐和山城「まったくだな。さすがは天下に名立たる武勇を示してきた鬼島津だが、元が鎌倉時代からの名門なだけあり、礼儀を弁えているな」

金木「え、そんなに古い名家だったの!? それはそれは…………うへへへ」ニヤニヤ

佐和山城「……それに比べ、我らが殿は知性や教養というものを感じられんな」ハア

金木「うるさい! 時代が追いついてないだけだい!(しかし、お美しい容貌でなぜに【ガトリング砲】なぞ持っているのだ、鹿児島城どん!?)」

金木「でも、今回もいろいろあったな。――――――1週間も経ってない遠征だったんだけど」

佐和山城「そうであるな、――――――本当に、いろいろ」チラッ


――――――彼ら彼女らが振り向いた先には、天孫降臨の地と伝えられる峰々が雄々しく聳え立っていた。



178: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:08:21.59 ID:Q97NpYj00

金木「…………霧島か。俺も今度はちゃんと神宮にお参りしないとな」

金木「でも、俺としては、今回の遠征で一番驚いたのは天孫降臨の地に建てられた霧島神宮での奇跡よりも――――――、」チラッ


鶴ヶ岡城「殿、修行を重ねて、霧島山から神秘の力を得ました。これで殿の行方に安寧をもたらしたいと思っています」


金木「誰ですか、あなた?」

佐和山城「わからん。おそらく石田少将が新たに見つけてきた【はぐれ城娘】ではないのか?」

鶴ヶ岡城「ええ!? そんな~!?」

鶴ヶ岡城「私ですよ、殿! 大宝寺城! すないスケ様と一緒に殿の許に来た大宝寺城!」

鶴ヶ岡城「殿のために袈裟と錫杖だって用意してあげた大宝寺城です!」

金木「え」

佐和山城「それは真か? 少し見ない間にずいぶんと見違えたものだな……」


鶴ヶ岡城 ← 大宝寺城「うぅ……、せっかく六観音堂で悟りを得て【近代改築】にまで至ったっていうのに…………」ブゥーブゥー


金木「いや、悪かった。悪かったってば」

金木「あんなにもボーイッシュで可愛らしかった大宝寺城がこんなにも綺麗なお姉さんに早変わりしただなんて、」

金木「お兄さん、感激のあまり言葉が出ないよ……」ハハハ・・・

金木「なんていうか もう、気軽にナデナデしてあげるのも悪いかなって思うぐらいでさ? そう思うと、少し寂しい気もするな……」

金木「(うぅむ! なんて贅沢な悩みだ! どっちも捨て難い魅力があるのだが、こうして以前の良さが別なものに変わったことが少し惜しいというか……)」

鶴ヶ岡城「え」ドキッ

佐和山城「……私は出港の最終準備に取り掛かるぞ、殿」ヤレヤレ

金木「あ、ああ……(やべ、また佐和山城に呆れられたな――――――あれ? ずいぶん親しげに『殿』って呼んでくれるようになった気がするな)」

鶴ヶ岡城「……と、殿? その、もう私にはしてくれないんですか?」モジモジ

金木「あ。なんだ、そういうところは変わらないんだな」ハハッ

金木「ほら」ナデナデ

鶴ヶ岡城「あ…………」ホッ

金木「また来ような、霧島に」

鶴ヶ岡城「はい!」ニッコリ

179: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:09:01.85 ID:Q97NpYj00

金木「あれ? そういえば、錫杖、大きくなったんだね」

鶴ヶ岡城「あ、これは六観音御池の鵠さんからにもらったんですよ」

鶴ヶ岡城「豪華な錫杖でしょう? 験力が強くなったので、自分へのご褒美として貰ったんです。似合うかしら……?」

金木「似合う似合う。――――――で、こっちのは?(鵠から武器をもらったことに驚かない自分が恐ろしい)」

鶴ヶ岡城「これは【交結搆鉄扇】―――――― 一緒に六観音堂で修行を共にしてくださった旅の方からいただきました」\  /

金木「わお! メタリックで綺麗だな! 上半分が清々しい青い空の色で、下半分が地平線から顔を覗かせる太陽の光みたいな!」

鶴ヶ岡城「そうなんですよ! これで私の必殺技【出羽の悟り】の験力も大幅に上がったんですよ」メメタァ

金木「おお! それは心強い!」

金木「そういえば、石田少将が霧島神宮で贈呈されたっていう扇はこれの何倍も大きかったな」

鶴ヶ岡城「え! それは本当ですか!?」

金木「今度 見せてもらいなよ。思えば、配色も金色と青色で似通っていたな」

鶴ヶ岡城「はあ…………」ワクワク

金木「どうした?」

鶴ヶ岡城「いえ、私、【平城】なのに無理に【後詰】としてここまでついていったわけなのですが――――――」

金木「そうだったな。まあ、『可愛い子には旅させろ』っていうことだし、大宝寺城としても得るものが大なりで良かったじゃないか」

鶴ヶ岡城「はい。苦労して天孫降臨の地まで来た甲斐がありまして、晴れて【近代改築】を霧島に鎮まれる神様にしていただきました」

鶴ヶ岡城「でも、それとは別に私としては『すないスケ様に少しでも近づきたい』と思いがありまして」

鶴ヶ岡城「何だか今回のことで確かな証がいただけたみたいで凄く嬉しいです」ニッコリ

金木「……そういえば、大宝寺城は石田少将に興味津々だったっけな(懐かしいな。唐津:二里松原にいた頃の【照明弾】騒ぎ――――――)」

180: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:09:49.86 ID:Q97NpYj00

金木「いやはや! 何にせよ、今回は本当に霧島の奇跡だけじゃなく、そこに住まう薩摩の人たちに感謝しないとな!」

鶴ヶ岡城「え」

鶴ヶ岡城「あ、はい。そうですね……」

金木「…………どうしたんだ?」

鶴ヶ岡城「いえ、少し……」

金木「何だ? はっきり言ってみなって。――――――らしくない」

鶴ヶ岡城「殿。それでは――――――これは杞憂であればいいのですが、」

鶴ヶ岡城「鹿児島城さんが、なんか私のことを嫌ってる気がするんです。気のせいだと良いのですが……」

金木「気のせいだよ、そんなの(そういうしかないな、こりゃ。俺もよく知らないけど)」

鶴ヶ岡城「そうであれば良いのですが……。大宝寺城だった頃から、私、どうも嫌っている人が多いような気がして……」

金木「…………まあ、【城娘】だもん。史実の恨み辛みを引きずっていたってしかたないよな」ボソッ


――――――話題を変えよう!


金木「でも、やたら【城郭】に“鶴”の名をつけたがるもんなんだな」

鶴ヶ岡城「……確かにそうですね」

金木「唐津城は“舞鶴城”だったし、鹿児島城に至っては“鶴丸城”だったもんな(その他、美称を含めて“鶴”の名を戴く城郭が多数!)」

鶴ヶ岡城「そうだったんですか。道理で鶴の羽が生やしていたわけなのですね」

金木「そういえば、“鶴翼の陣”“折り鶴”“鶴の恩返し”“鶴岡八幡宮”もあるし、――――――【乱世】の人たち、ホント 鶴が大好きだなっ!」

鶴ヶ岡城「――――――『鶴の恩返し』か(“鵠の恩返し”っていうのもあるかな? ――――――また会えるかな、鵠さんに)」フフッ



181: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:11:14.69 ID:Q97NpYj00


――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。


石田”「…………『関東にあれます太閤の島』」

石田”「いったいどういう意味だ?」\ ◎ /

あさひ姫「石田様」

石田”「どう思う?」

あさひ姫「霧島神宮で受け取られた神託ですか?」

石田”「ああ。封紙以外に“神扇”を包んでいた袋を裏返してみたら、そんなことが書かれていたのだ」

石田”「その他にも、宮司が俺に“神扇”を渡した理由も気味が悪いぐらいでな」


石田”「――――――『“六観音御池の天女を癒やす者”が訪れたら渡せ』という言い伝えによるものだと言う」


あさひ姫「…………やはり、石田様も【この時代】で何か大切なことを成すために喚ばれたのでしょうか?」

石田”「迷惑千万!」

石田”「こうしている間にも、【俺の世界】での皇国が緩やかな滅亡の一途を辿っていっているのだ」

石田”「俺は何が何でも【俺の時代】――――――【俺のいるべき場所】に帰る! それが俺の忠義だ!」

あさひ姫「石田様……」

石田”「……だが、その手立てが皆目見当もつかない以上は、このくだらない宝探しに付き合う他ないのだがな」ハァ

182: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:12:10.95 ID:Q97NpYj00

あさひ姫「――――――『関東にあれます太閤の島』とはいったいどういう意味なのでしょう?」

あさひ姫「『太閤』といいますと、――――――世の人はかつての天下人の名を思い浮かべることでしょう」

石田”「そこがわからない。豊臣秀吉と関東の繋がりというと、実質的な天下統一が果たされた小田原征伐のことしか思い浮かばない」

あさひ姫「あ、確かにそうですね(そういう意味では私にも関係があるような気がしてならない――――――)」

石田”「残念だが、俺は戦略戦史家として数々の戦乱や反乱の研究はしてきたが、特定分野の歴史家ではないから小田原征伐の経過や詳細については知らぬ」

あさひ姫「私も天下人の天下統一が果たされた後に生まれましたから、それ以前のことは漠然とした事実としてしか知る由がありません」

あさひ姫「そして、すでに小田原征伐から数十年が経ち、天下分け目の関ヶ原の戦いや戦国の終焉である大坂の陣で戦った者たちのほとんどがこの世を去り、」

あさひ姫「将軍様以前の天下人について口にすることも憚れる世となりました故――――――」

石田”「…………いるではないか、まだ」

あさひ姫「……はい」


石田”「このことを、寺沢志摩守に訊いてみることにしよう」


あさひ姫「あるいは、関東の【城娘】たちから情報を集めてみるのがいいかもしれません」

石田”「それも1つの手だな」

石田”「ともかく、このことについては本城に帰還してからだな」

あさひ姫「はい、石田様」ニッコリ





ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー





「くっ、御大将……! 必ずや お助け致さん!」ジャキ!

「今に見ておれ、【城娘】共が!」

「受けた屈辱は倍にして返さん!」



183: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:13:25.58 ID:Q97NpYj00

――――――八代海:船上


ザー、ザー、ザー

能島城(変身)「殿? 今日の揺れはどんな感じだ~?」ジャブンジャブン! ――――――船を巨大な身体で牽引している。

――――――
金木「まあ、帰りはゆっくりしていいから快適かな?」

金木「来る時は本当に辛かったからな――――――強行軍なんかするもんじゃないぜ」ゾゾゾ・・・

金木「船酔いってやつはもうご勘弁――――――いや、巨大化した【城娘】に乗って移動している時もかなりキッツイっす……」

石田”「だが、その甲斐あって霧島を無事に連れて帰ることもできたし、薩摩や後れて熊本とも繋がりを得ることができたから、」

石田”「【乱】が起きた時に、快く力を貸してくれることだろう」

金木「そうですね。本当にいろんな収穫がありましたよ」

金木「これから“萬の紫苑の城”に帰り着く瞬間が楽しみでなりません」


――――――きみのことを忘れない。遠方にある人を思う。


金木「あそこが今の俺たちにとって帰る場所なんだ」

石田”「そうだな」

金木「…………【乱】についてはこれからどうなるのかはわかりません」

金木「元々の発端である、五条の名君から島原の暴君へと変貌した松倉豊後守の悪政をどうにかしない限りは――――――」

石田”「ああ。【乱】が飛び火した天草の方は、キリシタン弾圧は幕命として続けられることにはなってはいる――――――」

石田”「そのために【乱】が起きた際には天草のキリシタンが蜂起する可能性がまだ残されたわけだが、」

石田”「天草での乱そのものは史実のものと比べて小さなものに振り替えられているものだと信じたい」

金木「でも、【乱】を無事 未然に防いだとしても、あるいは史実通りに蜂起が起きたとしても、」

金木「たぶん、江戸時代最大の反乱であり、最後の戦国とも言われる【島原の乱】は【城主】である俺が片を付けることになるんだろうから、」

金木「そうなったら、【城主】としての【この時代】における役割を完全に終えたことになるんだろうなぁ」

金木「……その時が本当の別れになるかもしれません」

石田”「…………どうなるかな」
――――――

184: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:14:11.03 ID:Q97NpYj00

ザー、ザー、ザー

能島城「へへへ、海賊なのに乗り込んで活躍はできなかったけど、殿が霧島で何だかいっぱい宝をもらってきたみたいだし、楽しみだぜ」

能島城「もっと世界の大海原を支配してみたいなぁ」

能島城「――――――『殿とアタシの前に敵は無し!』だぜ!」

――――――
石田”「………………」

金木「どうしたんです?」

石田”「いや、【俺の時代】に世界の海を支配している憎き敵のことを思い出してな」

石田”「今まで、この【乱世】を全力で生き抜くことばかりを考えていたものだから、」

石田”「瀬戸内海を支配していた村上水軍の【城娘】の言葉でハッと我に返ったのだ」

金木「…………そうですか」

金木「でも、今から200年・300年後に今以上に海が世界を支配する時代が到来するだなんて、わからないものですよね」

石田”「確かにな。深海棲艦が登場する以前の戦後でさえも、アフリカ大陸では海賊行為が頻発しているぐらいなのだ」

石田”「かつて、魚雷の発達によって脅威となった水雷艇を駆逐するために投入された新戦力:水雷駆逐艦が、」

石田”「当時の最高戦力であった戦艦や巡洋艦よりも主力艦として扱われる時代になるとは、」

石田”「【俺の世界】で勃発した太平洋戦争当時の人間たちは想像もつかなかっただろうな。――――――余談だがな」

金木「でも、わかるような気がします」

金木「【乱世】を終焉に導いた3英傑たちがとった軍略というものはことごとく、」

金木「個人のマンパワーよりも組織のマンパワーを重視した結果、戦国の常識や気風をことごとく過去のものにしてきましたから」

金木「織田信長は長篠の戦いでの鉄砲の大量導入で戦国最強の武田騎馬軍団を無慈悲に討ち滅ぼし、」

金木「豊臣秀吉は硬軟織り交ぜた圧倒的な戦略と器量で諸大名たちを従えてきたわけだし、」

金木「徳川家康は難攻不落と言われた大坂城を国崩し砲を使って完全攻略して泰平の世への確固たる基盤を創りあげたわけですし」

金木「結局は時代の最先端をいく効率化をどれだけできたかで決まってくるよなもんですよね」

石田”「そういうことだな。時代のニーズ――――――人々がどれだけ戦争を求めるか・忌み嫌うかで軍隊や軍略の質も大きく変わってくるわけだ」

石田”「そして、その時代のニーズの少し先を行く――――――後の時代の常識となるものを編み出した者が勝利者となるのは歴史から見て必然の流れなのだ」

金木「そうですね。鳥羽・伏見の戦いから始まる戊辰戦争や士族の反乱となる西南戦争もまったくそうだった――――――」


――――――『機先を制すれば、則ち 人を制する』ってことですね。


――――――

185: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:15:05.29 ID:Q97NpYj00



ザー、ザー、ザー

能島城「!」ピクッ

能島城「――――――敵だぜ!」ジャキ

――――――――――――
ヲ級”「ヲヲヲヲ!」バッバッバッ! ――――――見張り台からの旗信号!
――――――――――――
石田”「敵戦力――――――海老に蟹か! 海産物【兜】が来るぞ!」

金木「ちぃ! こんな時に――――――まだ天草にはつかないか!」 ――――――台の上には地図が広げられ、その上を粘土の駒が自動で動いている。

金木「あまり揺らすなよ、能島城! 盤面がひっくり返ったら遠隔展開がとんでもないことになるから!」

脇本城「殿! ここは私におまかせください! 交渉事以外でも役に立つ安東水軍の力をお見せいたしましょう!」

金木「頼む! けど、【攻撃】はずば抜けて高くても【耐久】は低いんだから無茶はするなよ!」メメタァ

金木「(あれ? こうして見ると、【艦娘】霧島とまったく同じ傾向だな、インテリメガネってやつは…………)」

金木「だが、海老めぇ! ――――――車海老なんてのがいるぐらいに機動力や物量を誇るから何とか手数を増やさないと!」アセアセ

金木「松前城も頼む!(うぅくそっ! 俺の手持ちの戦力じゃ【鉄砲】持ちの水城・海城ばかりだから海老の機動力に押し込まれる!)」

金木「(かと言って、ここは海上――――――陸の【城娘】では展開できない! できたとしてもその能力を存分に活かすことは到底望めない……)」

石田”「くっ、圧倒的なまでの海上での展開力不足だな……(――――――しかたあるまい。出し惜しみしている余裕などない!)」

186: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:15:51.32 ID:Q97NpYj00

千狐「殿! 殿!」

金木「ハッ」

やくも「なにこれ!? 一匹だけものすごい勢いで突っ込んでくる――――――!?」


――――――見ると、八代海の地図の上で自動生成される盤面の中にただ1つ別方向から凄まじい勢いで突っ込んでくる駒が1つ!


金木「何だこの機動力は――――――!?(――――――新手の【兜】!?)」
――――――――――――
ヲ級”「ヲヲヲヲヲーーーーー!」 ――――――見張り台からの焦りの声!
――――――――――――
石田”「このままでは船に激突されるぞ!?」

金木「そうは言ったって、海上で展開できて、なおかつ乱戦にも対応しながら迎撃できる技量の【城娘】はこの部隊に――――――!」アセダラダラ


あさひ姫「殿、私をお使いください!」スッ ――――――自分の姿を象った駒を電光石火で拾い渡す!


金木「あ」

石田”「そうか! そうだったな! ――――――金木!」

金木「うわああああ、頼んだあああああああ!」ドン! ――――――【城娘】名護屋城の駒を盤面の船の脇に力強く置く!

あさひ姫「では、行って参ります!」ピカァーーン!
――――――――――――


ズバアアアアアアアアアアアアアン!


名護屋城「――――――!」アセタラー

新手の兜/烏賊形兜「!!?!?!!」スパン・・・ポチャン

名護屋城「…………フゥ」

名護屋城「ハッ」ジャキ

名護屋城「やぁ!」ズバン!

海老形兜29「!?!?!?」スパン・・・ポチャン

松前城「な、なんですの~……」パァオン!

能島城「後ろから――――――って、何だ姫様かよ! 少しだけビビっちまったぜ」パンパン!

脇本城「瀬戸内海の水軍はずいぶんと視野が狭いんですね?」ガキンガキンガキン!

能島城「はぁ? アタシは海賊王になるんだぜ? 後ろから来られてたって自慢の焙烙火矢を喰らわせてたっての!」← 村上水軍

脇本城「私は海外に行ったことがあります! 瀬戸内海の狭い海で威張り散らしている娘よりもできるということをお見せします!」← 安東水軍

松前城「うぅ……、か、『海外』? ろ、ロシア艦隊は居ませんよね?」← 幕府水軍

名護屋城「みなさん、私が前に出ます! 船の安全と航路の確保をどうかお願い致します!」← 日本水軍

能島城「姫様だけに活躍の場を与えるつもりはないぜ! なんてったって海賊王――――――天下の村上水軍なんだからさ!」

脇本城「くっ、さすがにこの数を捌くのはキツイですが、私が抜けたら前衛は姫様だけに――――――!」

松前城「撃って、撃って! この、この、このぉ~!」

名護屋城「よし、これなら――――――!(けれど、何か胸騒ぎが――――――)」



バシャンバシャン! ドゴォンドゴォン! ガキンガキンガキン!



187: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:16:38.96 ID:Q97NpYj00

――――――――――――
金木「……何とか凌げたようだが」フゥ

石田”「…………」スチャ ――――――リボルバーを取り出す。

金木「え?」

石田”「――――――嫌な予感がする」

石田”「敵が単騎突撃してくる場合は、たいてい2つの場合しかない」

石田”「捨て身の特攻か、捨て身の陽動か、――――――いや、そのどちらもありか」

金木「!」ゾクッ


「――――――!」


千狐「あ」ピクッ

やくも「殿さん、危ない――――――!」

金木「ハッ」


ドンガラガッシャアアアアアアアアアアアアアン!


金木「うわぁ!?」

石田”「ちぃ!」

やくも「あ、あわわわわ!」

佐和山城「何事――――――なっ!?」


赤鬼大将兜「――――――」


佐和山城「また会ったな……! 最初は神集島で、次は霧島神宮! 今度は八代海の海上でか!」ジャキ!

金木「ヤバイ! こんなところで【大将兜】に暴れられたら船なんてあっという間に吹っ飛ぶぞ!?」アセダラダラ

赤鬼「――――――!」ジロッ

金木「あ……」ゾクッ

金木「(ヤバイヤバイヤバイ! ――――――殺される! この凄み! やべえ、赤鬼ってだけにマジで殺される寸前って感じなんだけど!)」ブルブル・・・

188: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:17:12.63 ID:Q97NpYj00

千狐「殿!」

赤鬼大将兜「――――――!」ブン!

佐和山城「あ……(――――――速い!?)」

金木「うわっあ!(キタキタキターーーーーーーーー!)」

石田”「――――――!」ジャキ、バンバン! 

赤鬼大将兜「――――――!」ガキンガキン!

赤鬼大将兜「――――――!」ジロッ

石田”「――――――ッ!」チラッ

金木「あ、――――――石田少将!(今、俺の方を見た――――――)」

赤鬼大将兜「――――――!」ブン!

石田”「―――――― 一か八か!」\勅命/

赤鬼大将兜「?!」

金木「こ、これは――――――!?」

金木「あ、そうだ!(――――――間に合ええええ!)」



ピカァーーーーーーーーーーーーーーーン!



能島城「え!? 今度は後ろで何――――――?」

脇本城「わかりませんが、敵が驚いている隙に――――――!」ザクザク!

松前城「…………え? って、そんなこと気にしている余裕はなくってよ!」

松前城「今はただ目の前の敵に集中――――――って、あれぇ?!」



霧島連峰への大遠征を大勝利を収めて悠々と今の本拠地である天草へと帰還するために八代海を横断している途上での出来事――――――。

唐津や霧島で遭遇した【兜】の残党に海上で襲われ、【城娘】が戦うにはあまりにも小さな1艘の船を防衛するために戦端が開かれる。

しかしながら、1ページにあっさり収まってしまうほどの淡々とした結果に終わることになった。事実関係だけ見れば、残党を難なく返り討ちにしただけである。

だが、この戦果はある特殊な要因によって成立したということを忘れてはならなかった。


なぜなら、この小さな防衛戦において船の内外で活躍したのは本来 存在しないはずの二人の英傑だったのだから。



189: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:17:55.29 ID:Q97NpYj00


ズバン! ・・・・・・ビチャ!


石田”「がっ」ゴトン!

赤鬼大将兜「!!!?!?」

名護屋城「――――――!」ギリッ


――――――石田少将の\勅命/に収められた最後の【照明弾】によって新たに照らし出された光景!


赤鬼大将兜「うぅ、ああ…………」 ――――――大破!

名護屋城「…………くっ!(――――――石田様!)」 ――――――真正面から【大将兜】を斬りつけた。

石田”「くぅあぁ…………」 ――――――\勅命/を掲げた右腕と右肩を【大将兜】に鋭く斬りつけられ、血がどくどくと溢れ出る。

金木「そんな!? あ、ああ……、ああ?! 石田少将ぉおお!」 ――――――盤面の置かれていた名護屋城の駒を取り外して急いで名護屋城を呼び寄せた。

佐和山城「なさけない! 【城娘】でありながら、このざまとは…………!」 ――――――そう言いつつも負傷した石田少将の許に駆け寄り、敵に刃を向ける。

赤鬼大将兜「…………く、ふはははは」ボロ・・・  ――――――名護屋城の真正面からの兜割りによって鎧の下の姿が顕になる。

佐和山城「な、何が可笑しい!?」ジロッ

赤鬼「ま、またしても……、御大将が求めていた【城娘】一人のためにあえなく敗北するとはな…………」モガモガ

赤鬼「ダメだ、ダメすぎるな、私も御大将も……」フラフラ・・・

赤鬼「武人としての誇りも投げ捨てて、御大将が残していた兵力を全て投じての最後の突撃も、【城娘】――――――しかもただの【城娘】ではなく、」

赤鬼「そのただ一刀の下に崩れ去るか…………申し訳ございません。残った兵も勝手に投じておきながら一矢報いるぐらいしかできませんでした」

名護屋城「………………」


――――――夏草や兵どもが夢の跡


赤鬼「は、はは……、変わった歌だな。下の句はどう続くのだろうな…………?」

赤鬼「けど、何となくだけどそんなもんだって思えるのが不思議なぐらい…………」ハア・・・ハア・・・

名護屋城「そう、――――――夢なのです。全ては泡沫の夢です」

赤鬼「そうなのか……。これは悪い夢――――――いや、良い夢だったかもしれない、な」バタン

名護屋城「…………佐和山城との繋がりはそういうことだったのですね(ですが、皮肉にも――――――)」


組織の長をおさえられたことにより組織が瓦解して残された残党にできる軍略など、もはや組織的な抵抗は望めず、無謀にも等しい特攻しかできることはなかった。

しかしながら、相手はこんな結果に終わってしまったが、【城娘】の何倍もの強さを誇る【大将兜】であり、

それが船に乗り込んできたというのだから、普通は海戦を得意としない【城娘】たちは為す術もなく屠られる可能性すらあったのだが、

そんな【大将兜】ですらも一瞬の閃光の内に返り討ちにしてしまうほどに、――――――彼ら彼女らは実際に強大だったということである。



190: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:19:06.51 ID:Q97NpYj00


あの閃光の一瞬――――――その前後に何が起こったのかを余談程度に語らせてもらうとこういうことである。


1,突撃性能に優れる新手の【兜】烏賊形兜に乗って赤鬼大将兜が特攻! >>186
→【城娘】の中で海戦適正がある個体は少なく、前もって機動力の高い海老形兜と攻守に優れる蟹形兜を差し向けている。
→ 水/海属性の【城娘】を総動員して迎撃せざるを得ない(陸の上に造られる【城郭】がモデルの【城娘】では希少な個体なので数が少ない)。
→ よって、船に突撃する隙は十分にあった。


2,突撃艇代わりにしていた烏賊形兜を名護屋城にたたっ斬られてしまうが、本人は巨大化していないので容易に見つからずに船に飛び乗ることに成功! >>
→ 監視台には『ヲシドリ』がいたが、飛び上がった烏賊形兜の裏に大将兜が張り付いていたので視認できなかった。


3,甲板や通路には誰もいなかったので監視台を抜けてやすやすと船室に侵入――――――そして、突撃! >>187
→ 基本的に海戦適正がない【城娘】は甲板付近にいると戦闘による海面の揺れで船から振り落とされて溺れる可能性があるので所定の位置で待機させていた。
→ パニックなって巨大化が連続して行われると挟まれて圧殺される可能性があるので意外とパニック対策として欠かせないものである。
→ しかし、今回はそれが裏目に出ることになった(海上戦での消極策は船を対岸へ逸早く渡りつかせることを行動目標にしていたため)。


4,突撃した赤鬼大将兜は早速 仇敵である【城娘】たちを束ねる【城主】金木青年に襲いかかる! >>188

恐るべき一撃が伸びて、訓練は積んではいるがただの現代人を容赦なく刺し貫こうとしたが、

しかし、そこにすかさずお手製リボルバー銃を放った石田司令の存在を認め、異形の道具を操る様と【城主】との反応の差から、

ここまで自分たちを追い詰めたのは誰なのか――――――本当の仇が誰なのかを悟り、理解した瞬間に全力で槍を伸ばしていた!

だが、石田司令はこの直前に金木青年に目配せしていた!


――――――その場にいた誰もが次なる行動が決まり、その実現のために全力を傾けることになった瞬間であった。


5,金木青年を守るために敵の注意を自ら引いた石田司令は“勅命”と描かれた扇を真正面に掲げるのだった! >>188



そして、扇から外で戦っている【城娘】たちにもわかるぐらいの太陽のように眩しい閃光が船体の内より外へと貫いていったのである!



――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



191: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:19:42.85 ID:Q97NpYj00


―――――― 一か八か!


石田司令はこれから起こる閃光の一瞬の後に来るかもしれない死を覚悟していた。

\勅命/を掲げることによって船を内側から完全に包み込むほどの光が迸る――――――それ自体に数瞬もしないうちに身に刺し届く凶刃を防ぐ力はないからだ。

そう、これは圧倒的なまでの白兵戦能力を持つ【大将兜】を一刻も早く無力化するために状況把握によって咄嗟に思いついた最後の一手であった。

だが、この策を実際に移すとなれば、自身に迫る豪槍に為す術もなく刺し貫かれて顔に穴が開くだろうという未来予想があった。

しかしながら、その是非を問うか問わないかも無しに、数瞬も早い一瞬の時間の間の内に策を実行に移し、


――――――人生数度目の全てを乗せた賭けに競り勝ったのである。


よく読んでくれている記憶の良い読者ならば、狭い船室の1室で石田司令が選ぶことができた逆転の一手が何なのか、すでに結果と共にご理解しているだろう。

そうでない読者でも、直前になってそれなりに前振りはしておいたし、結果もすでにお見せしているのでこれで納得がいくものだと思う。

つまり、石田司令が土壇場になってやってみせた返り討ちの方法というのは――――――、


――――――外で戦っている黒歴史に封印されてきた最強の【城娘】名護屋城を呼び戻して一瞬の隙を突かせることにあったのだ。



ズバン! ・・・・・・ビチャ!


石田”「がっ」ゴトン!

赤鬼大将兜「!!!?!?」

名護屋城「――――――!」ギリッ


それが石田少将の\勅命/に収められた最後の【照明弾】によって新たに照らし出された光景の意味であった。


結果として、石田司令の意図を察した【城主】金木青年はすぐに盤面の名護屋城の駒を突き飛ばし、

船を内側から貫く閃光の一瞬よりも早くに帰還した名護屋城が赤鬼大将兜の目の前に現れて必殺の兜割りをお見舞いしていたのである。

まさに、――――――石田司令の目論見通りの結果となったのだ。一瞬で思いついた策を一瞬で実現させてしまったのだ。

しかしながら、数瞬よりも早くに咄嗟に思いついた策を一瞬で伝えられて、一瞬で理解して、一瞬で実行に移した金木青年――――――。

そして、それより更に遅れた一瞬の内に帰還して、一瞬の内に得物を振り上げて、一瞬の内に敵を斬り伏せた名護屋城――――――。

3者3様の卓越した実行力と以心伝心はまさしく驚嘆に値するものであり、元々がイレギュラーな存在であったことを考慮に入れても、

最強の敵である【大将兜】を秒殺したという事実に変わりはなく、これには“赤鬼”も何が起きたのか理解できず、ただ敗けを認める他なかったのだ。


しかしながら――――――、


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



192: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:20:31.05 ID:Q97NpYj00

石田”「うぅぁ…………」ハア・・・ハア・・・

やくも「石田さん! しっかりしてぇ!」

千狐「い、今のうちに包帯とってくるのー!」タッタッタッタッタ・・・!

佐和山城「しっかりするのだ、石田少将!(――――――解除!)」ピカァーーン!

佐和山城(お嬢)「ええい! 死ぬな! 絶対に死んではならん!」ヌギッ!

金木「うおっ、――――――佐和山城!?」ドキッ

佐和山城(半裸)「あなたにはまだやるべきことが残されているだろうに!」 ――――――自分の衣類を包帯代わりにして止血しようと必死である!

佐和山城(半裸)「腕は上がるか? 手は? 指先は――――――?!」

石田”「………………わかっている、そんなことぉ!」ゼエ・・・ゼエ・・・!

石田”「少し……、怪我をしただけのことだ……! 騒ぐな……! それで人々の盾となり、矛となって戦場に死する兵か!」

石田”「あうぅ……」クラッ

佐和山城(半裸)「ここはダメだ。人目も多いし、潮風にあたる。部屋へ移るぞ、さあ!」

石田”「す、すまん…………」ヨロヨロ・・・

名護屋城「…………石田様」

名護屋城「ハッ」

金木「石田少将……、あなたという人は本当に………………」ポタポタ・・・

名護屋城「…………【城主】様」

名護屋城「あ」

名護屋城「これは、石田様の――――――」\勅命/


――――――時間にして1時間にもならない光に包まれて一瞬のような出来事の続き。



193: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:21:03.10 ID:Q97NpYj00

そう、【大将兜】を逸早く無力化して大勢の安全の確保には成功したものの――――――、

元々は【大将兜】相手に己を囮にして隙を創りだして敵を倒させ、その結果 大勢の安全を図るという無謀極まりないやり方の代償として、

石田司令は最悪の結果である“死”――――――より最悪の結果である“無駄死”を免れることができたものの、

人間など遥かに及ばない【大将兜】が繰り出す一撃を受けきることなど到底不可能であり、

【大将兜】ですら目が眩むほどの至近距離からの【照明弾】で手元が狂った一撃をもらってしまった。

その結果、【大将兜】の奇襲で荒れた狭い船室には石田司令の鮮血が舞い散り、石田司令は蹲って船室の床に自分の血で顔を汚すことになったのだ。

それでも幸いなのか、\勅命/を突き出した右腕から右肩にかかる一直線を抉られたものの、神経までを斬られたわけではなく、

激痛に堪えながらも【城娘】の人外の握力に頼ってすぐに患部の止血に成功し、脂汗が零れ落ちる苦悶の表情を浮かべながらも決して表情を緩ませなかった。

むしろ、『こんなところで死んでたまるものか』という気概で己を奮い立たせ、その瞳に灯った炎は轟々と燃え広がっているのが伝わる。


しかしながら、その様子にはどこか憐れみさえ覚える――――――金木青年は全てが終わってそのことで涙ぐんで立ち竦んでいた。


現代っ子の元現役大学生でしかなかった金木青年にとってはショッキング極まりない光景であったのは確かであろう。

狭い船室で船体を破壊し尽くすような化物に襲われて一瞬で昇天しかけたことを後れてから恐れ慄き、言葉に詰まりながらも身体は今も小刻みに震えていた。

そして、自分の身代わりになって狭い船室に赤々としたものがこびりつくことになった状況と結果に対する理不尽なまでの罪悪感――――――。

しかしながら、金木青年が立ち尽くしていた原因はそんなことではないのだ。


――――――『人が死ぬのは当たり前のこと』とどこか達観した、【乱世】における人生の儚さをすでに受け入れていた金木青年にとって。



それから間もなく、彼ら彼女らは無事に八代海を渡りきり、帰るべき場所へと帰り着くのであった。




194: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:21:57.39 ID:Q97NpYj00

――――――それから、本拠地:萬紫苑城


飛龍”「それじゃ、提督? 明日も安静にしていてくださいよ」

飛龍”「でないと、『めっ』だからね」

石田”「…………わかっている」 ――――――竹細工のロッキングチェアに揺られて養生している。

飛龍”「……ホントにホントなんだからね?」

石田”「……あんなこと、頼まれても二度とするつもりはないから安心しろ」

飛龍”「ホント?」ジー

石田”「…………すまない。努力する」

飛龍”「そう。わかってるならいいんだ」

飛龍”「ねえ、提督」

石田”「……何だ?」


飛龍”「たまには――――――そう、たまには、戦いを忘れてもいいよね?」


飛龍”「提督? これからは私やみんなの笑顔を見ていて。ずっと一人で頑張ってきた提督へのご褒美だからね」ニッコリ

石田”「………………」

飛龍”「それじゃ、今日はおやすみなさい、提督」

石田”「……ああ」


スッ、・・・パタン


石田”「………………」

石田”「………………フゥ」

石田”「…………戦うことをとりあげられた軍人に生きる道はない」スッ ――――――右腕を窓の外へと伸ばす。

石田”「!」ズキン

石田”「……だが、平和が訪れた時に最後に残された火種というのが戦いことしかできない軍人である以上、」ズキズキ

石田”「軍人には戦う以外の生きる道を知る義務がある」

石田”「それを理解できない者たちは反逆者として泰平の最後の礎となって消えていくのだ…………」


コンコン!


石田”「入れ」


195: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:23:00.66 ID:Q97NpYj00

金木「石田少将、今 いいかな?」

あさひ姫「…………石田様」

石田”「……お前たちか。構わないぞ」

金木「そうだ」

金木「はい、石田少将、これ。――――――大切なもの」スッ


       \勅命/


石田”「…………そうか。お前たちが拾ってくれていたのか」

石田”「恩に着る」フフッ

あさひ姫「石田様、気をつけてくださいね」ニコッ

石田”「……ああ。気をつける」パシッ

あさひ姫「………………」

金木「それ、どういったものなんです? ただの扇ではないっていうのははっきりとわかりましたし、」

金木「菊の御紋入りの“勅命”の字――――――もしかして、皇国軍人としての誉れとしてもらった記念品なんですか?」

金木「よくありますよね、父親の形見として渡された脇差しを肌身離さず持っている武士の逸話ってよく聞きますし」

金木「(でも、あの中に【照明弾】が入っているってどういう構造――――――いや、【あちら】だと実用化されている未知なる技術の結晶なのかな?)」


――――――
飛龍”「提督、もうおやすみになってるかな?」

飛龍”「どうしよう……(けど、何だろう? 夜中に提督の寝床に向かうって何だか凄くドキドキしてくる――――――)」

飛龍”「…………あれ? 部屋から明かりが漏れてる?」

飛龍”「やだ、ちゃんと閉めなかった――――――」

飛龍”「あ」ジー
――――――


石田”「――――――『記念品』といえばそうかもしれないが、これは非公式の自作だ」


金木「え? うん、それは凄いですね……(でもそれなら、皇国軍人が自分で“勅命”の字を書くって畏れ多いことことなんじゃ――――――)」

あさひ姫「………………」

石田”「これは元々は――――――、」


――――――これは【艦娘】の一部を加工して造ったものだ。


金木「え」

あさひ姫「…………あ」
――――――――――――
飛龍”「……え」ジー
――――――――――――

196: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:24:45.77 ID:Q97NpYj00
金木「や、やだな~、石田少将!」

金木「――――――『【艦娘】の一部』ってあれでしょう? 【艦娘】の装備の『艤装』のことなんでしょう?」

金木「そんな勘違いさせるような表現は変えたほうがいいですって。普通に『艤装』って言ってくださいよ~」

あさひ姫「………………やはり、そういうものだったんですね、石田様」アセタラー

金木「あれ? 姫様? どうしてそんな驚いた表情なんかして――――――」アセタラー

石田”「解釈の違いだろうが、『艤装』=“艦娘の命”と考えていい」

金木「は」


石田”「【解体】して【資源】となった【艦娘】を素材にして造られているのがこの扇だ」


金木「え」

あさひ姫「…………そうですか。やはりそうだったんですね」
――――――――――――
飛龍”「………………」ジー
――――――――――――
金木「……いや、その小さい扇のいったいどこに【資源】なんて使ってるんですか、石田少将?」アセタラー

金木「俺、扇なんて高尚なもの 持ったことなかったけど、高級品って感じがするだけのそれ以上でもそれ以下でもない扇じゃないですか」

金木「確か『【艦娘】って【弾薬】【燃料】【鋼材】【ボーキサイト】から【建造】される』ってことでしたよね? 【城娘】と同じ感じに」

金木「『艤装』の一部を使わせてもらってるだけなんでしょう? 姫様も何をそんなシリアスな雰囲気なんて出してさ――――――?」アセアセ

あさひ姫「…………【城主】様」ジー

金木「な、何……?」

あさひ姫「これまでの日々の中で、【城娘】である私は【艦娘】とふれあうことによって様々なことを知りました」

金木「う、うん。それで?」

あさひ姫「そして、わかったことがあります」


あさひ姫「【城娘】も【艦娘】も人々の矛となり盾となって戦う――――――そのために生まれた 戦いを本分とする存在なのだと」


金木「……そうかもね」

あさひ姫「では、戦うために生まれた存在にとって『生まれ持った装備』がどういった意味を持つのか、理解できますか?」

金木「え?」

金木「…………考えたことがないというか、ただの武器や防具じゃないのか?」

197: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:25:16.54 ID:Q97NpYj00

あさひ姫「いえ、それは違うんです――――――」

金木「というか、【艦娘】――――――飛龍さんや霧島さんは自由に取り外してるし、【城娘】は変身している時じゃないと触れることすらないじゃないか」


石田”「ああ 違うぞ。はっきり言って違うぞ」


金木「え」

石田”「【艦娘】にとって『艤装』というのは唯一無二のものなのだ」

石田”「『これ』があって初めてそのモデルとなった軍艦と同等以上の性能を人の姿で発揮することが可能となる――――――」

石田”「言わば、“兵装を兼ね備えた安全解除装置”でもあるのだ」

金木「……なるほど」

石田”「つまり、『艤装』がなければ【艦娘】は所詮は腕っ節が異常に強いだけの精神年齢は外見相応の小娘のままというわけだ」

金木「ああ……、やっぱり 素の基本能力は一般人よりも上なのは仕様なのね」

石田”「そうだな。それと、人間よりもずっと頑丈という点も見逃せないな」

金木「それで? それは【城娘】も同じことだって」

金木「――――――それで見かけ以上によく食べるところなんかも」

石田”「そうだな」

198: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:25:50.10 ID:Q97NpYj00


石田”「そして、より正確に言えば、『艤装』の中でも『代替が利かない部位』こそが【艦娘】に本来の力を与える源となっているのだ」


金木「????」

あさひ姫「……そうでしょうね」
――――――――――――
飛龍”「………………」ジー
――――――――――――
石田”「身近でわかりやすい例で言えば、――――――飛龍の飛行甲板が『それ』に当たる」

金木「ああ、【航空母艦】だもんね。飛行甲板はイメージとしても大事だから、それはわかる」メメタァ

金木「けど、どういう意味です? ――――――『代替が利かない』? 修理や交換はできないんですか?」

石田”「修理はできる――――――欠片さえ残っていれば妖精がそこから完全修復してくれる」

石田”「そして、ほぼ物理的な手段での破壊は不可能と言っていい」

金木「え?」

石田”「飛行甲板の中でも『核となる部分』は、たとえ深海棲艦からの砲撃を受けても、」

石田”「『核』に圧縮されている蓄えられた高エネルギーによる反発で破損することがないのだ」

石田”「考えてもみろ。人の姿をしながら軍艦と同等の能力を発揮するためのエネルギーがこの米粒程度の破片に込められているのだぞ」ピッ

金木「――――――『米粒程度の破片』」 ――――――石田司令が夕飯に零して衣服にくっついていた米粒が台の上に載せられるのを見た。

石田”「ああ。それぐらいの大きさならば、この扇にいかようにも取り入れることが可能なのは実感できただろう」\勅命/

石田”「その『核』を人間の思念で反応できるほどの数を仕込んであるのがこの“勅命”の扇の正体ということだ」

石田”「だが、誰でも使えるというわけではなく、元々が【航空母艦】の『核』を使っているためにそれに準じた念のコントロールが必要になってくる」

金木「…………そうだったんですか」

石田”「これは度重なる研究によって判明した極一部だけが知っている機密事項だ」

石田”「もっとも、【艦娘】の管理は【妖精】に委任している。人間は運用だけをしているおかげで、その事実に触れられた者は本当にごくわずかだ」

あさひ姫「では、【艦娘】たちは自覚の有る無しに関わらず、この『核』だけは絶対に死守するように戦場では立ちまわっているのですね」

石田”「その通り。何が何でも『その核となる部分』だけは紛失しないように気を配るのが【艦娘】の戦いの鉄則となっている」

石田”「なにせ、【艦娘】の戦いの舞台はだだっ広い海の上なのだからな。しかも、米粒程度の大きさが普通だ」

石田”「それでも、『生まれ持った装備』とは見えない線で結ばれているのか、飛び散ってもすぐに見つけられるようだがな」

金木「へえ、よくできてるんだなぁ」

199: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:26:25.39 ID:Q97NpYj00


石田”「だが、その『核』を【解体】された場合は永久に復元できなくなる」


金木「あ」

あさひ姫「…………」

石田”「そして、たとえ他の自分の飛行甲板を装備しても【艦娘】としての力は永久に失われたままなのだ」

石田”「おそらく同じ姿形をした【艦娘】でも一人ひとりにシリアルナンバーのようなその個体固有の情報因子が存在するのだろう」

石田”「人間では実用化できなかった【艦娘】のマイナンバー制度も、【妖精】たちがその情報因子の存在を把握していたからできたものだと思われる」

金木「ええ!?」

金木「それじゃ、『艤装の中でも最も重要な部位』を【解体】しちゃったら――――――!」アセタラー

あさひ姫「はい。本来 備わった戦うための力を失い、ただの小娘としてしか生きられなくなるはずです」

あさひ姫「そうなれば、人々のために戦うというその使命のために生まれてきた意味を失います」

あさひ姫「それは【城娘】とて同じことです」

あさひ姫「ただ、【艦娘】とは違って【変身】した時だけ『具足』が展開されるので紛失や破損の危険性はずっと低いのですけれど……」


200: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:27:05.47 ID:Q97NpYj00

石田”「つまり、この扇は“艦娘の命”とも言える『艤装の核』を材料にして造られたものなのだ」


石田”「だから、人間である俺にも本物には格段に劣るが【艦娘】の真似事ができるようになっている」

石田”「おかげで、これまでこの扇には何度も助けられてきた」\勅命/

金木「………………」

あさひ姫「………………」
――――――――――――
飛龍”「…………提督」ジー
――――――――――――

石田”「説明はこれぐらいでいいか?」

金木「……じゃあ、石田少将?」

金木「――――――『艤装』を失った【艦娘】はどうしてきたんですか?」


石田”「――――――研究機関に譲り渡した」


あさひ姫「…………!」
――――――
飛龍”「――――――!?」ゾクッ
――――――
金木「ど、どういった研究機関なんですか……?」アセタラー

石田”「正確な実態は知らん」

石田”「――――――が、」

石田”「大本営の粛清に遭ったのか、何にせよ、ブラック鎮守府取り締まり後の組織再編で跡形も無く消滅したのは確かだが」

金木「え」

石田”「そうだった、――――――逆だったな」

金木「へ……」

石田”「研究機関に先に【艦娘】を譲り渡した後しばらくして『核』を受け取ったんだ」

石田”「偶然にも発見された『核』の存在の立証のためにな」
――――――――――――
飛龍”「!?!!」
――――――――――――
金木「ちょっと待って! それってつまり、預けた【艦娘】は――――――」アセタラー

あさひ姫「…………石田様」
――――――――――――
飛龍”「あ…………」
――――――――――――


201: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:27:55.16 ID:Q97NpYj00


石田”「………………………………」


金木「なんで黙るんですか、そこで!?」

石田”「知らん。預けた【艦娘】のことは俺の管轄外だ」

金木「いや、『管轄外』って――――――」


石田”「――――――もういいだろう」


金木「はぁ?」

石田”「これを届けに来てくれたのだろう? 用が済んだのだから、部屋に戻れ」\勅命/

金木「待ってよ、石田少将――――――」


石田”「同じことを何度も言わせるな。鬱陶しいぞ」


金木「…………!」

あさひ姫「…………石田様」
――――――――――――
飛龍”「………………」
――――――――――――
石田”「ではな。届けてくれたことに感謝する」

金木「はい、そうですか――――――石田少将」ジロッ

あさひ姫「あ、【城主】様――――――?」

金木「最後に――――――最後に1つだけいいですか?」

石田”「ん? まだ何かあるのか? これ以上の話は時間の無駄――――――」チラッ

金木「!」ギラッ

石田”「!?」

あさひ姫「――――――!?」


金木「もういいかげんにしろおおおお!」バギィン! ――――――唐突に裏拳が繰り出された!


石田”「ガッ!?」ドタンバタン!

あさひ姫「――――――石田様!? ――――――【城主】様!?」

飛龍”「へ、何――――――提督!?」バッ


金木「さっきから事実を淡々と話しているんだろうけど、もうちょっと言い方ってのがあるでしょうがッ!」ググッ



202: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:28:23.75 ID:Q97NpYj00

石田”「くぅ…………」ズキズキ

あさひ姫「石田様、大丈夫ですか?!」

石田”「これぐらい、大事ない…………」ヨロヨロ・・・

金木「もっとさぁ、こう――――――石田少将は本当にみんなのために一生懸命だったんでしょう?」

金木「どうして言うべきことを言わないんですか!?」

石田”「――――――『言うべきこと』?」


金木「その時の心境を語ってくださいよ! そうせざるを得なかったんでしょう? 苦しい選択だったんでしょう!?」ジロッ


飛龍”「あ」ビクッ

金木「そうだよ、飛龍さんに本当のことを言ってあげてくださいよッ!」ドン!

金木「石田少将にとって最古参なんでしょう? ずっと一緒にやってきた仲なんでしょう!」

金木「話してくれましたよ! 飛龍さんはずっと見ていてくれたんですよ!」

金木「石田少将が亡き戦友たちを弔うために基地に花屋を作ったことも、そのために一人 海に出ていったことも!」

石田”「――――――なに?」チラッ

飛龍”「あ」

飛龍”「……【城主】様、いいんです、私のことは! 喧嘩はやめてください!」

あさひ姫「…………飛龍さん」

金木「どうしてそれをやってくれないんですか……! それさえしてくれれば石田少将はもっとぉ――――――!」ポロポロ・・・

飛龍”「【城主】様…………(どうしよう? ねえ、私はどうすればいいの、多聞丸?)」

203: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:29:03.78 ID:Q97NpYj00

石田”「…………感傷に浸るなど公人にあるまじきことだろう」ヨロヨロ・・・

石田”「軍人に求められているのは結果だ。結果が全てだ。俺はそのために必要だと思ってきたことをやってきただけに過ぎん」


石田”「――――――今までも! これからもだ!」


石田”「それに、【艦娘】は“兵器”だ――――――いや、人間と同等の知的生命体である以上は“兵士”とした方が適切かもしれないが、」

石田”「戦いとは無縁の似非人道主義者共は【艦娘】の保護運動や解放運動に熱心――――――だが、俺としてはどっちだろうとかまわん」

石田”「――――――皇国の勝利の栄光のためにその身を捧げるのが宿命なのだからな」

石田”「言わば、【艦娘】は使い捨てられるべき存在なのだ。“兵士”なのだから」

石田”「そして、それは“兵士”であるこの俺やその他の将兵も同じこと――――――」

石田”「死して全体の勝利に貢献できるのなら喜んで身を捧げよう!」

石田”「それがあるべき公人――――――軍人の在り方だ!」

飛龍”「…………提督(だから、提督は身体を張って――――――)」

あさひ姫「――――――『目的を同じくするものはみな同志』というわけなんですね」

石田”「なら、なぜ生まれながらの完全な兵士や兵器である【艦娘】に改めて配慮する必要がある!」

金木「いや、石田少将! あんたのその理屈は理解できるけど、」

金木「だったら、周囲の人間に正しく自分を理解させる努力もしないで何が『公人』だ!」

石田”「なんだと?」ムッ

204: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:29:35.89 ID:Q97NpYj00

金木「俺、ずっと石田少将の完璧なまでの正しさってやつに違和感を覚え続けていたよ」

金木「それは俺が石田少将のような天才には及ばない凡人だからなんだって思っていたけど、やっぱり石田少将の方がおかしいってわかったよ」

飛龍”「え!?」

金木「だって、石田少将。俺の前で本音を明かしてくれたじゃないですか!」

金木「本当はこの【乱世】でやっていけるのか不安だったけど『俺の存在に助けられてきた』って物凄く優しい声で語ってくれたじゃないですか!」

石田”「なっ」

飛龍”「え」

あさひ姫「…………石田様」

金木「だから、俺は知ってる! ――――――石田少将の人間らしいところをさ! 弱いところだって、不安になるところだって!」

金木「それに、石田少将が終始一貫したやり方を今も昔もしているってことも飛龍さんからの話でよくわかった」

金木「でも、その正しさの割には石田少将はよく人から誤解されてよく損をしているって感じがすっごくてね? なぜなんだろうって」

金木「それは『生粋の軍人だから』って思っていたんだけど、俺の知る大東亜共栄圏の英雄たちは誰一人として石田少将のように孤高の人なんていないんだ」

金木「それで、俺は思いついたんだ」


――――――実は逆なんだって。


石田”「――――――『逆』だと?」

飛龍”「どういうこと?」

あさひ姫「………………」

金木「簡単だよ、簡単」

金木「みんな、石田少将のことを理解してあげようとしているからあまり悪く思わなくなっていたのかもしれなけど、」


――――――本当は石田少将は『正しいことしか見えてない』んじゃないの?!



205: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:30:17.55 ID:Q97NpYj00

飛龍”「――――――『正しいことしか見えてない』?」

金木「いや、『正しいことしか見ようとしない』のかな?」

石田”「…………続けろ」

金木「俺さ、石田少将が前に唐津を襲っていた【兜】の本拠地を突き止めたやり口に最初『なんてことしやがるんだ、この野郎!』って思ったもん!」

飛龍”「あ」

石田”「………………」

あさひ姫「………………」

金木「だって、人の【城娘】である佐和山城のことをみんなの前で泣かせた上に、」

金木「石田少将の作戦とはいえ【兜】の手先の野盗共に襲わせて生け捕らせたんでしょう?」

金木「しかも、飛龍さんや姫様が神集島に逸早く駆けつけてくれなかったら、新手の【大将兜】に佐和山城が討ち取られていたかもしれないって?」

飛龍”「そ、そうだったんだ……」アセタラー

金木「一応、石田少将も【兜】の秘密について命懸けで掴んできてくれたし、おかげで唐津への脅威を取り除いて今日に繋がっているんだけどさ」

金木「というか、こうして生きていられるのも全部 石田少将のおかげ――――――」

金木「そのことを思えば『やっぱり石田少将ってすげー!』だけど、――――――第一印象は『ふざけんなよ、この野郎!』だよ」

石田”「………………」

金木「これでわかりましたか? ――――――俺がさっき言った言葉の意味が」


――――――石田少将は責任逃れしてるんだ、言い訳してるんだ! 『正しいことさえしていればいい』って甘えてるんだ!


石田”「!?」ピクッ

飛龍”「え」

あさひ姫「なるほど! だから、石田治部は…………」

金木「『正しいことが常にその場のベストだなんて限らない』ことを石田少将は感じたことない?」

金木「特に石田少将の偏屈とも言えるそのやり方を貫いてきて、大多数の人たちから心からの賛同や理解をされたことなんてないんでしょう、一度も」

石田”「……わかったふうなことを言うな!」ムッ

金木「いや、言わせてもらいますよ、今日という今日は!」ギロッ

石田”「…………金木?」

飛龍”「【城主】様……(凄い。多聞丸にはまだまだ及ばないけどそれに近いものを感じるよ、今の【城主】様からは!)」

206: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:30:51.18 ID:Q97NpYj00

金木「それに『【艦娘】に配慮する必要がない』と言うのなら――――――、」


金木「なんで命の危険を犯してまで自ら海に出て【艦娘】の弔いなんてやってきてるんですか!」


金木「本当に気にしてないのなら、そんなことする必要ないじゃないですか! それこそ非効率ですよ!」

金木「それで敵に遭遇して帰らぬ人になったとして、それで『死して全体の勝利に貢献』できると思ってるんですか!?」


金木「――――――あなたは自分に嘘を吐いている! それは許されないことなんだ! 自分の忠を裏切っている不忠者め!」


石田”「!」ガビーン!

石田”「あぁ……」アセダラダラ

石田”「お、俺は………………」ブルブル・・・

飛龍”「【城主】様!」

金木「飛龍さん! あんたも石田少将のことをそこまでわかっていたのなら、なんで今日に至るまで何も言わずにいたんですか!」ゴゴゴゴゴ!

飛龍”「え、私!?」ビクッ

飛龍”「だ、だって、私は…………」イジイジ

金木「俺だって石田少将より立場は下だよ、目下だよ!」

金木「でも、俺は石田少将に長生きしてもらいたいから勇気を出してこの場で言ってやってるんだ!」ムキィ!

あさひ姫「……【城主】様」フフッ

207: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:31:35.35 ID:Q97NpYj00

金木「ああもう! ヤキモキするなぁ!」

金木「本当はお互いにずっと言いたかったことがあるんでしょう!?」

金木「それをイジイジと揃いも揃って、――――――『草葉の陰からあなたを見守ってます』って?」

金木「アホか! 人間ってのは感情の生き物なんだぞ! 面と向かって放たれた言葉や態度、仕草に心ってのを感じるもんなんだぞ!」

石田”「………………」

飛龍”「………………」

金木「なんで付き合いの短い――――――【乱世】に来るちょっと前に好きだった子に手酷く振られて失恋したような俺なんかが、」

金木「二人の仲人みたいなことをやらなけりゃならんのですか!?」

飛龍”「な、『仲人』……!?」ドキッ

金木「そうだよ! 俺はこれから【島原・天草一揆】を止めるんだぜ?」

金木「目の前の恩人2人の仲直りもできなくて、どうやって人々の幸せをもたらすって言うんだい!」

石田”「…………金木」

金木「結局、言葉なんだよ! 自分の感情を素直に表現して相手に届けられるかどうかの結果だろう、人間の好き嫌いなんて」

金木「だから、はっきり言ってよ! 見てるだけじゃなくて、行動で示すだけじゃなくて、言葉もあって初めて人と人のコミュニケーションは成り立つんだからさ」

金木「これって意外と重要なことなんだぜ? ――――――『面と向かって言う』ってのはさ」

金木「俺は石田少将や飛龍さんとのそれぞれの時間を過ごしてみてそれがよくわかったよ」

金木「だからこそ、『見守る』んじゃなくて『言葉を交わす』べきなんだよ、尚更! 『いつか』じゃなくて『今ここ』でやるべきなんだ!」

金木「二人の間に足りないのは間違いなくそれ! 互いに命を預け合う仲をなあなあですませていい話じゃない!」

飛龍”「で、でも……、私、提督に何て言ってあげたらいいか――――――」

金木「そんなの簡単じゃん! 何 言ってんだよ!?」

石田”「……簡単なのか?」

金木「この唐変木! 自分の気持ちにも気づかないツンデレ! 逃げるな!」ギロッ

石田”「…………『逃げるな』か」シュン

飛龍”「え、えと……」アセアセ

あさひ姫「飛龍さん。一言だけでいいんです。石田様が求めているのは――――――」ゴニョゴニョ

飛龍”「え」

飛龍”「あ……」

あさひ姫「わかりましたか?」

飛龍”「……うん。ありがとうございます、姫様」

石田”「む」

飛龍”「提督……」


飛龍”「――――――――――――!」


石田”「!!」ドクン!

石田”「お、俺は…………」ジワッ

208: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:32:02.54 ID:Q97NpYj00

金木「…………これで一件落着かな。ようやく俺の腹の虫が収まるか?」ヤレヤレ

あさひ姫「見事な裁きでございました、【城主】様」ニッコリ

金木「……不思議だ。どうしてこんなことが言えたんだろう? というか、なんでここまでのことが自然と言えたんだろう?」ハハッ

あさひ姫「それこそ簡単なことじゃないですか」フフッ

金木「――――――そういう姫様はどうなんですか?」

あさひ姫「私は見たいんです。――――――石田様の良さが多くの人に伝わって愛されるお姿を」

あさひ姫「だって、私も【城主】様も飛龍さんも、みんな、石田様のことが――――――」

金木「……うん。そうだよな」ハハハ・・・

金木「――――――『本気になる』ってこういうことなんだろうな」

金木「俺、本気で失恋してよかったと思ってるよ、今では…………」

金木「だから、よくわかるんだ。――――――こんな言葉の意味が(ま、ちょっと意味が違ってくるんだけど、不可分のものなんだし、別にいいだろう?)」


――――――相手の話に耳を傾ける。これが愛の第一義務だ。   パウル・ティリッヒ



209: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:32:33.16 ID:Q97NpYj00

石田”「な、なぜだ? なぜそんなことが言えるのだ……?」ポタポタ・・・

石田”「俺は、逃げてきたのに……、そう、正しいことだけをして他を省みるということを蔑ろにしてきたというのに…………」

石田”「そして、なぜ俺はその言葉を聞いて動じてしまうのだ……?」

石田”「欲しいと思っていなかったはずなのに――――――、言われることなどあり得ないと思っていたのに――――――」

飛龍”「私もちょっと驚いてる。『言葉にする』って頭で簡単に思えても、いざ口にしてみるとこんなにも込み上げてくるものがあるんだね……」ドクンドクン

飛龍”「でも、ようやく伝わったんだよね?」

飛龍”「私、やっと本当の意味で『提督の艦隊の最古参になれた』ってことなんだよね?」

石田”「――――――『最古参』」
                     ・ ・ ・ ・                ・ ・ ・ ・
石田”「そうか。だから、俺はずっとその言葉が欲しかったのか……。その誰かに言ってもらいたかったのか、本当は…………」ポタポタ・・・

石田”「だから、だから俺はぁ…………!」グスングスン

飛龍”「…………提督」ギュッ

石田”「俺はどうしようもない男だな……」ヒッグゥウウウ・・・

飛龍”「大丈夫。わかってるよ、私は」ナデナデ

飛龍”「私の方こそごめんね。ただ提督の側に居続ければきっと提督は――――――なんて甘いことをずっと考えてた」

飛龍”「やっぱり言葉にしなくちゃダメなんだよね? 本当にごめんね、提督……」ポタポタ・・・

石田”「いや、そもそも俺が自分の感情を押し殺してきたことが全ての発端だ。非があるのは俺の方だぞ、飛龍……」

石田”「これは艦隊司令官たる俺の不徳といたすところだ…………」

飛龍”「別にいいと思うよ。だって、人間だもの――――――完璧になんかなれっこないよ」

飛龍”「それに提督はむしろ完璧すぎてダメだったんだから、少し完璧じゃないくらいがちょうどいいって」

石田”「今更 許されるのか、そんなことが?」

飛龍”「信じて。私と提督は熱いユウジョウで結ばれているんだよ? 提督が選んだ艦娘の私をもっと信じて」

飛龍”「たとえ世界の全てが提督の敵になったとしても、私は最後まで提督の側を離れないから。――――――多聞丸のように」

石田”「…………そうか」フフッ

210: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:33:03.20 ID:Q97NpYj00

石田”「だが、こんな簡単なことを求め続けてきた日々というのは はたしてどれだけの価値があったのだ……」

飛龍”「提督? そんなこと言っちゃ『めっ』ですよ」

飛龍”「ほら、提督」

石田”「?」


ヲ級”「ヲヲヲヲ~!」トタトタトタ・・・


石田”「…………『ヲシドリ』」

ヲ級”「ヲ? ヲヲヲ?」

石田”「いや、これは、だな――――――」

飛龍”「提督ったら」クスッ

石田”「む」

飛龍”「『ヲシドリ』、ほら、こっち来て」

ヲ級”「ヲ?」

飛龍”「はい♪ 提督のことを慰めてあげてね~」ニッコリ

ヲ級”「ヲヲヲ!」

ヲ級”「ヲ~ヲ~♪」ナデナデ

石田”「………………下手だな」フフッ

飛龍”「それなら今度から提督が練習台になってあげて♪」

飛龍”「それと、今度からは一緒に花を供えに行こう。――――――約束だからね」

石田”「……それもそうだな、」チラッ

金木「――――――」ニッコリ

あさひ姫「――――――」ニコニコ



――――――ありがとう、センユウ。



211: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:33:35.75 ID:Q97NpYj00



筆者のモチベーションが下がって3月をノロノロしている間に、すでに新年度を迎えてしまったことに深くお詫び申し上げます。
【-艦これ-】も終わったと思いきや、なんと【城プロ】が長期メンテナンス――――――ではなく、
リニューアルのために4月27日から今秋まででサービスを一旦終了となったことに、また驚くことに…………。、


参考までに今回のリニューアルにおけるアカウント管理がどのような処置となるのかを一部抜粋(蔑称:βテスト移行)
・引継がない項目
「城娘」「装備」のパラメータ  ※レベルや経験値を含みます。


とりあえず、獲得した「城娘」「装備」はレベルリセットによる初期化はなされるものの、【近代改築】まではリセットされないので一先ず安心か?
その他のアイテムなどが引き継がれるかは未明だが、おそらくは全てロストとなってシンプルに「城娘」「装備」だけが持ち越しとなるのではないかと予想。

そして、これによってプレゼンターの【城プロ】に対する提案も無意味なものとなり、掲載予定の内容も基準の失われたただのラクガキとなってしまいました。
しかしながら、この状況を逆に考えれば、【城プロ】のリニューアルの内容を好きに想像してもいいのではないかと思い、
開き直って思い切った提案をさせていただくことにしてもらいました。ご容赦ください。



212: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:34:02.52 ID:Q97NpYj00

柳川城(舞鶴城) 出身:筑後(福岡県) 武器:鉄砲 城属性:平城/水

コンセプト:剛勇鎮西一・西国無双・西の柳川城

必殺技:他家の3倍(速度を大きく上昇させる/範囲:自身)

蒲池治久により築城された城郭で、城下町は現在の福岡県柳川市の元になるほどの完成されたものであった。
唐津城と同じく、“舞鶴城”の雅号をいただく美しい城であったという。
掘割に包まれた天然の要害と城下に敷かれた無数の堀により、「柳川三年 肥後三月、肥前、筑前朝飯前」と当時 敵対していた大友氏で謳われ、
実際に大友が誇る“雷神”立花道雪や“肥前の熊”龍造寺隆信と鍋島直茂の義兄弟の猛攻に見事に耐え抜き、九州屈指の難攻不落の城とされた。
しかしながら、蒲池家の本城として整備し、蒲池家を筑後筆頭大名に押し上げた蒲池宗雪が大友氏が島津氏に大敗する耳川の戦いで討ち死にしたことで、
蒲池家は大友氏から離反して龍造寺隆信と結ぶが、龍造寺が柳川を狙っていたために騙し討に遭い、柳川の蒲池一族は滅亡することになる。
その後、柳川城を獲得した龍造寺隆信も島津氏との決戦で敗死し、その島津氏も豊臣秀吉の九州征伐で仕置きされることになった。
さて、この九州征伐の後に城主として入城したのが、かの有名な“西国無双”こと立花宗茂であり、
関ヶ原の戦いの後に改易されていながら旧領復帰を果たした唯一の大名として抜群の才覚の持ち主であった。
更に、立花宗茂が旧領復帰するまでの間、柳川だけではなく筑後国全体を治めていたのは田中吉政であり、
このように、柳川城は非常に優れた城主に恵まれ、明治維新後も増改築を繰り返すことになり、廃城後も明治当時の西洋館や日本庭園が今も現存している。

ステータス:コストパフォーマンスに優れた高水準の超優良鉄砲城娘

【耐久】……… 高め。九州随一の難攻不落の城。
【攻撃】……… 高め。
【対空】……… 高め。
【速度】……… 【鉄砲】持ちの城娘としては十分速いほうだが、【必殺技】で【刀(対地)】以上の【速度】を得るので殲滅力が桁違い。
【範囲】……… やや高め。【城属性:平山/水】なので【山】におくと範囲が狭まるのが難点か。
【防御】……… やや高め。
【会心】……… 高め。
【後詰】……… やや高め。
【しんがり】… やや高め。
【運】………… トップレベル。城主である立花宗茂が唯一 旧領復帰を果たした大名であり、明治維新後も増改築が続いた。
【技能】……… トップレベル。【鉄砲】の発動効果は『雑魚敵 即死』なのでかなり強力。
【属性】………【人知】系のみの対応だが、【技能】が凄まじく高いために即死効果連発でそこまで気にならない。

おそらく、有名所なので――――――しかし、それ以上の有名所の実装がまだまだ残っているので、本実装はまだ遠いだろうことから勝手に提案。
そして、新機軸の【必殺技】まで導入しているので、この能力で本実装はあり得ないだろうというインチキ性能に仕上げてみた。
本当に“西国無双”さまさまです。また特に目立った失政もなく、明治維新後も使ってもらえたという城主に恵まれた城であった。
【必殺技/他家の3倍】の由来は、朝鮮出兵において小早川隆景の「立花の3千の兵は、他家の1万に匹敵する」という賞賛と、
関ヶ原の役における大津城の戦いにおいて塹壕を掘って早合という弾薬包(=カートリッジ)の導入で3倍速で鉄砲攻撃を繰り出したことから。
一人の武士としては東の本多忠勝が日本最強だろうが、戦術家や陪臣大名として間違いなく日本最強なのが西の立花宗茂なのである。

ちなみに、立花宗茂は【島原・天草一揆】の時にも幕府側の総大将である松平信綱を補佐しており、“武神再来”として老いてもその才覚を激賞されている。


宮永殿(ぼた餅様) 出身:筑後(福岡県) 武器:刀 城属性:平城

コンセプト:西国最恐のネタ枠:雷神の化身

必殺技:雷切(敵に超ダメージ/範囲:全)

ステータス:そもそも城じゃないんだから強くなくて当然なのだが、コスト激安の超絶威力の【必殺技】ボム!

ご存知“西国無双”こと立花宗茂の正室でかつ先代立花家当主でもあった立花誾千代――――――その人の別居地であり、
誾千代は九州征伐によって柳川城に移った立花宗茂とはその時点で別れて暮らすほど仲が悪かったという話である。
しかし、関ヶ原の役においては西軍首脳と合流して柳川城を留守にしていた夫に代わってしっかりと城を預かり、
更には、宗茂が帰還後の柳川城の戦いにおいては制圧に向かう加藤清正の軍勢が宮永殿に差し掛かったところ、
誾千代や立花家を慕う領民たちからの抵抗に遭うのを恐れて進路を変更したという逸話があるほどの父親譲りの武人肌であった。
また、朝鮮出兵においてあの天下人にも一泡吹かせたという逸話も残っており、気性の激しい烈女だったことがうかがえる。
宗茂が改易されて江戸に向かっている間は加藤清正の庇護下にあったようであるが、夫が旧領復帰する前に他界しており、
険悪だったとされている夫婦ではあったが、旧領復帰の折に宗茂は柳川城の築城主である蒲池家の一族の僧を招いて妻を弔う寺を建てている。

【城娘】柳川城とセットで思いついたキャラであり、元ネタがハッタリにも似た逸話しか残っていないので【城娘】としての能力は決して高くないが、
それだけにコストが安く、それでいてシューティングゲームにおけるボムとしての役割をもたせた超絶威力の全体攻撃の【必殺技】特化キャラである。
最初に安全地帯に出して【ゲージ】を溜めて、中盤以降の敵の猛攻に耐えかねた時に発動させるのがベスト。そして、打ったら即撤退――――――。
というか、どんなに頑張っても“一夜城”墨俣城以下の戦闘力なのでそういう使い方しかできず、清々しいまでの一芸特化である。
仕様上、【必殺技】が連発できる禁断の城娘:名護屋城の【必殺技/人生如夢】とは相性抜群であり、丸亀城と組ませればたいていの軍勢が壊滅する破壊力を見せる。



213: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:34:33.31 ID:Q97NpYj00


唐津城(舞鶴城) 出身:肥前(佐賀県) 武器:鉄砲 城属性:平山/水

コンセプト:九州版 小さな名護屋城 参照 >>71

必殺技:九州の底力(攻撃力を超絶アップ/範囲:全)

ステータス:規模相応の劣化名護屋城(コスト相応の高ステータス鉄砲なので差別化可能)

天下人の死と共に終わった朝鮮出兵の後に廃城となった名護屋城。その廃材を流用して築城された存在なので、名護屋城の姪みたいな存在。
築城にあたって九州の大名の助力を得たことから、柳川堀・佐賀堀・肥後堀・薩摩堀などの堀が名として残されている。
別名の舞鶴城とは、唐津城の立地である満島山を中心に鶴が翼を広げたように見えることから呼ばれた。京都の舞鶴とは違うし、他の城にもこの雅号が使われている。

それ故に、“九州版 小さな名護屋城”という立ち位置にし、場所が唐津湾に面した満島山なので武器は飛び道具とした。海城とも呼ばれる。
偶然にもかつての君主である豊臣秀吉の逸話に逃げ出した鶴の逸話があることからも、天下人の化身である名護屋城の血脈が感じられるところがある。
城主である寺沢広高は元々 尾張出身であり、豊臣秀吉に古くから仕えて成り上がった人物である(【島原・天草一揆】の前後で親子揃って他界して絶家となったが)。

以上の経緯から名護屋城のことを“姫姉様”と呼び慕い、九州の城娘たちには非常に好意的な反応を見せるが、
【島原・天草一揆】の火付け役になった島原城(=松倉重政・勝家)のことが嫌いであり、その影響からか外部の人間に対しては警戒心が強い。


富岡城(臥龍城) 出身:肥後(熊本県) 武器:鎗 城属性:平山/水

コンセプト:自ら武器を収める有徳者(戦国の気風の最後を弔う者)

必殺技:泰平への祈り(耐久を大回復させる/範囲:全)

ステータス:防御よりのステータスでかつ必殺技が回復系なので意外とコストの割にはしぶとい――――というより、能力に対してコストがかなり安い。

【島原・天草一揆】に大きく関わった城であり、実際に一揆軍と交戦し、城代の三宅藤兵衛が城から出て玉砕している。
しかしながら、陸繋島に築かれた天然の要害に守られた城は城代を失っても一揆軍の猛攻に耐えぬいて一揆軍を撤退させている。
その結果、それからの一揆軍は島原の一揆勢と合流して、原城に立て篭もり、幕府の本格的な攻勢によって全滅している。
ただし、主君である寺沢氏は【乱】の責任を問われ、天草領を取り上げられ、結果としてお家断絶となり、改易となった。
【乱】の後に天領となり、やがて三河国の田原城より戸田忠昌が富岡城に入城し、富岡藩として立藩した際に、
この城の維持管理のために天草の領民を苦しめていることを悟り、三の丸:富岡陣屋だけ残して廃城となっている。
これが「戸田の破城」と呼ばれ、更には天草を永久天領にすることでようやく搾取や圧政から解放され、良策として後世に評価されることになった。

この経緯から、太平の世でありながら【乱】に散っていった一揆勢やかつての主君や城代たちを弔うために邁進する尼のような性格になっている。
天草の民を苦しめ、天下に大乱をもたらしてしまった主君の過ちを償うために…………。ただし、キリシタンは許さん!
また、【島原・天草一揆】が実質的に戦国時代の生き残り最後の晴れ舞台となり、
国内での動乱はそれ以降は黒船来航まで散発はしたものの、200年余りの泰平の世が続いたので【必殺技】もそれを象徴したものとなっている。




214: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:35:23.12 ID:Q97NpYj00














































215: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:35:57.72 ID:Q97NpYj00

番外編 2014年から2015年へ

5,2015年 フィリピン シブヤン海にて

――――――3月2日未明

――――――洞庭鎮守府


清原「…………そうか」ペラッ

鳳翔「どうなさいました、あなた?」


清原「約70年の時を経て、大和型戦艦2番艦:武蔵の遺構が海底で発見されたそうだ」


鳳翔「まあ!」

清原「3月13日にその様子がインターネットで生中継されるそうだ」

清原「これは海軍軍人なら必ず視聴するようにお達しが届いた」

鳳翔「わかりました、提督。この事を早速 お報せいたしますね」

清原「頼む」


スタスタスタ・・・バタン


清原「更に、これを記念して、戦艦:武蔵の建造確率上昇キャンペーンが開催されるようだな」メメタァ

清原「こういった記念企画もなかなかにおもしろい展開だな」

清原「よし、ここで1つ、武蔵を狙ってみるか。それぐらいしか もう【大型艦建造】する意味が無くなったからな」

清原「そもそも【異界艦】の調査に追われる毎日で、しかもそれで戦力も十分に充実してきたから――――――ねぇ?」


大和型戦艦2番艦:武蔵 
1938/03/29 マル3計画により長崎にて起工
1940/11/01 進水。この際に「武蔵」と正式命名
1942/08/05 就役。横須賀鎮守府に編入
1944/10/24 レイテ沖海戦にて戦没
  :
2015/03/02 フィリピン シブヤン海にて遺構が発見される
2015/03/13 沈没の様子が全世界にインターネット配信される



216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/11(土) 21:36:26.43 ID:Q97NpYj00

――――――3月13日当日

――――――洞庭鎮守府


りう「へえ、これが沈没した武蔵の遺構が――――――」

長門β「…………少し物悲しいものがあるな」

りう「うん、そうだね」

長門β「【私の世界】では大艦巨砲主義の目眩ましとして建造されてそれっきりだった――――――」

長門β「それでも、【この世界】における戦艦:ティルピッツのような抑止力として睨みを利かせてくれたがな」

りう「【こっち】だと超大和型戦艦が登場しているから、そこまで重要でもないんだよねぇ…………」

りう「そして――――――、」

長門β「…………ああ」


――――――【この世界】だと皇国は唯一 敗戦している。


長門β「味方で沈む艦などほとんどなく完全勝利してきた【β世界線】から来た者としては胸に刺さるものがあるな……」

りう「【こっち】もパンデミックで戦争どころじゃなくなって、人類が誇った武力が死臭漂う鉄屑に変わったから…………」

りう「でも、この戦艦:武蔵の建造確率上昇キャンペーンはありがたいな」メメタァ

りう「【この世界】の艦娘は特化してない分 それ相応にバランスがいいから【火力】と【対空】が両立している艦娘はぜひとも欲しかった」メメタァ

長門β「私は逆に【火力】を捨てて味方の援護能力に特化した魔改造艦だから、せめて【火力】も両立したバランス調整であって欲しかったな……」ハア

りう「何 言ってるの? 父さんが丹精込めてしてくれた【(異界艦)改造】のおかげで加賀型戦艦並みの【火力】を確保しているのに?」メメタァ

長門β「それはそうだがな。それには感謝しているが、過去だけはどうしても変えられないからな、つい」

217: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:36:59.17 ID:Q97NpYj00


x:摩耶改二「よっ! 生まれ変わったこの摩耶様の実力、見ていてくれよな!」←【対空】100超え 暫定2位


りう「うん。頼りにしているよ、摩耶ちゃん」ニコッ

x:摩耶「!?」カア

x:摩耶「その呼び方 止めろって言ってるだろう!?」ドクンドクン

りう「どうして?」キョトーン

x:摩耶「だ、だって、あたしはそういうガラじゃ――――――」モジモジ

長門β「おお。最新の【改造】実装で“ハリネズミ”になった防空巡洋艦か(私もそれぐらいのバランスと性能が欲しかったなぁ……)」メメタァ

りう「うん。そうだよ」

りう「いやぁ、まさか【この世界】でまともな防空巡洋艦――――――しかも【火力】も兼ね備えた娘と巡り会えるだなんて最高だね!」キラキラ

りう「こういう娘が欲しかったんだよ、オレ! 良かったぁ、【対空】が高いから選んだ摩耶ちゃんがオレが求めていた艦娘で!」

りう「(それでも【対空】は【オレたちの世界】の防空巡洋艦と比べてずっと低いけど僚艦もつけるから問題なし! 【火力】も十分だよ!)」

x:摩耶「そ、そうかよ……。な、なら! もっとあたしを活躍させてくれよな、提督!」

りう「うん! ぜひともオレと一緒に【未来】を救って欲しい!」(切実)

x:摩耶「まかせろ!」(即答)

長門β「頼りになるな。これからも“この子”を支えてあげてくれ」

x:木曾改二「おっと、俺たちのことを忘れてもらっちゃ困るぜ、提督」←【雷装】100超え 暫定2位

x:五十鈴改二「提督の嫌いな潜水艦の相手はこの五十鈴にまかせて」←【対潜】90超え 暫定1位 【対空】80超え 軽巡トップ

長門β「フッ、そうだったな。【この世界】の猛者たちはまだまだいたな」




218: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:37:28.46 ID:Q97NpYj00

――――――斎庭鎮守府


剛田「ちょっといいか?」

金本「どうした? 今日の戦艦:武蔵 発見の報を受けて、陸軍を代表して何か言いたいことでもあるのか?」

剛田「いや、今日のことについては、我が皇国国民を大いに鼓舞するものであり、陸軍としても敬意を払うものである」

剛田「俺が言いたいのはそんなことじゃない」


――――――戦艦:武蔵 建造確率上昇キャンペーンについてだ。


金本「ああ。今回の記念にやってるやつか」

剛田「これ、どうして“戦艦:武蔵ドロップキャンペーン”にしてくれなかったんだ?」

金本「ん、どういうことだ?」

剛田「知らないのか? ――――――いや、資源王は『出るまで回す』歴戦の課金兵だから【建造】結果は気にもしないのだろうが、」メメタァ

剛田「これ、こんなことが書いてあるんだぜ」


次回メンテナンス時まで、大型建造時の「武蔵」建造確率が少し上昇します。 (通常戦艦率が少し下がります)


剛田「――――――『(通常戦艦率が少し下がります)』ってな」

金本「まあ、そうなるだろうな」

剛田「DMM――――――どうせ みんな 武蔵になる」

剛田「【大型艦建造】の8時間枠は大和型戦艦の2隻なのに、武蔵の比率が高くなって武蔵 持っているのに大和 持っていない提督が血涙を浮かべてたぞ」

金本「贅沢な悩みだな~。大和型戦艦ならどっちか片方居れば十分じゃん」

剛田「お前のように興味の無いやつからすればそうだろうが、欲しがってるやつからすれば死活問題だろうが!」

金本「アホらしっ! 持ってないやつはそれまで――――――それが【艦これ】世界の絶対の法則だってのによ」メメタァ

金本「【建造】に資源を溶かして泣きべそ かくなら、イベント報酬のやつを頑張って手に入れるんだな」メメタァ

金本「【建造】に無駄な資源を溶かすぐらいなら、イベントに全てを注ぎ込んだ方がよっぽど健全だろうに。そう思わないか?」メメタァ

剛田「……俺も【大型艦建造】をイベント前にやって資源を溶かす愚か者の戯言は聞き飽きているから、その辺は同意せざるを得ないな」

金本「だいたい、この前の【桃の節句】イベントも、冬イベント終了後の資源を消耗した状態に更に追い打ちをかけるものだってのに……」メメタァ


金本「――――――いや、違う?」ピクッ


剛田「え?」

金本「すまん。気のせいだ」

剛田「そうか」

金本「まあ何にせよ、この先は本当の意味で、先を見通す才能のないあまったれが生き残れない領域になってくるのかもねぇ?」

剛田「ああ。今回のキャンペーンでまた資源を溶かす愚か者たちの悲鳴が輪唱して陸軍にも響き渡るわけだ……。勘弁してくれよな、なさけない!」

剛田「これから陸海合作が進んで本格的に提携していくんだから、鎮守府にふんぞり返って馬鹿なことを繰り返す醜態はこれっきりにしてくれ!」

金本「俺に言われてもね」

剛田「なら、任務報酬で得られる艦娘を増やせい! その方がまだ名目がある分には健全だわい!」

金本「………………大本営も躍起になってるようだな」


――――――このイベントは“アンガウル”の発掘のために大本営が仕込んだものではないのか?



219: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:38:01.36 ID:Q97NpYj00

――――――拓自鎮守府


朗利「――――――『戦艦:武蔵』だと?」

朗利「知るか! そんなことよりもホワイトデーだ!」クワッ!

朗利「さあて、今回の期間限定ボイスは誰と誰と誰かな~?」メメタァ

朗利「む」カチカチッ

朗利「今回は駆逐艦は少なめというか第六駆逐隊が――――――いつも思うけど睦月と如月はほぼ毎回のようにいる気がするなぁ」メメタァ

朗利「これもアニメ補正ってやつなのかな? そう――――――、」メメタァ

             ヒド         ムゴ
朗利「………………酷い内容というか酷い内容だったな、【公式アニメ】」メメタァ


朗利「何ていうか筋が通ってないって感じだよね(俺はまだ一度も見てない――――――愛月提督からの報告書でしか内容を知らないが)」

朗利「やるんだったら1つの作風を徹底して欲しいよね――――――現実のリアルと作品のリアルの区別ができてないんじゃないの、あれ?」メメタァ

朗利「いや、そもそも現実のリアルですらまともに見えてないとしか思えない、人を人と思ってないような摩訶不思議な展開の連続だよ、まったく……」

朗利「そして、如月ちゃんをワンパン轟沈させたのは絶対に許さねぇ……!」ゴゴゴゴゴ!

朗利「別に、これは“劇”なんだよ! 物語の流れの中で大切な何かを伝えるために必要だった配役だったら文句は言わない!」

朗利「俺は自分の娘が主役になれないからといって怒鳴りこむモンスターペアレントじゃない! それぐらいは悔しいけどあってしかるべきなんだ!」

朗利「けど、嘘だろう!? あれ、【応急修理女神】で奇跡の復活をする流れじゃなかったのかよおおお!」グスン

朗利「加えて、第4話の葬式から続く大艦隊の鎮守府とは思えないような倫理的・軍事的奇行や流れの数々――――――」

朗利「しかも、声も姿も感じられない名前だけの存在である“提督”の野郎がやりやがった今 明かされた衝撃の真実ぅ――――――!」

朗利「いくら俺がガチ    コンの紳士でも『それはない』と思う。艦娘が提督に対して絶対服従だからってそんな身勝手、絶対にあり得ない!」

朗利「少なくとも、公共の電波に流して評価されるようなものだったとは思えない! 内輪ネタで終わる話じゃないんだぞ、テレビ放送ってのは!」


朗利「【艦これ】を知らない人間にとっては【このアニメ】で【艦これ】の値打ちが決まるんだからさ!?」メメタァ


朗利「そうなんだよ! 【このアニメ】、姿すら映されていない“提督”の所業にイライラさせられるんだよな、その『提督』の一人である俺としてはね!」

朗利「俺はまだ見たことはないけど、報告書には『“提督”は登場させないようになっている』とあるのに、」

朗利「それがどうして、画面上に登場していない要素に周りが翻弄されなくちゃいけないんだよ!」

朗利「“提督”を出さないのなら一切 物語に関わらない方向で徹底しろよ! それで艦娘同士の和気藹々とした日常を描けばよかったじゃないか!」メメタァ

朗利「元々 これは【艦これ】――――――ひいては艦娘の世間へのプラスの認知を高めるためのアニメだったんだろう?」メメタァ

朗利「なら、なんでこんな報告書だけ見てもはっきりとわかるクソアニメになってるんだよぉおおおおおおおお!」メメタァ

朗利「気楽に楽しめる“動くオリジナル”を追求すればよかったのにぃいい!」

朗利「責任を負う立場の提督が雲隠れしながら場を掻き乱しているという演出が特に気に食わない!」

220: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:38:32.33 ID:Q97NpYj00

朗利「けど、言わんとしたいことはわかる」

朗利「吹雪が【艦これ】の顔として主人公として扱いたいのならそれでいい。物語のコンセプトは最初に来るべきものだから」

朗利「でも、それならさ? 普通にさ、吹雪とのケッコンを題材にしたかったら、」


朗利「本ゲームの流れに沿ってあるあるネタを絡めながら苦楽の日々を共にした上で――――――でいいじゃん」


朗利「その方が提督も吹雪も未熟なことにも納得がいくし、如月ちゃんが生贄になったとしても胸に刻まれるじゃん? 名場面に活かしやすいじゃん?」

朗利「視聴者に含まれる【~艦これ~】ユーザーからだって共感してもらえるし、そうじゃない人たちからも【~艦これ~】の概要がよくわかるじゃん?」

朗利「だって、原作ゲームのあるあるネタを絡めた『ポケモン THE ORIGIN』って原作完全リスペクトの傑作アニメあるじゃん!」

朗利「あれを手本にして、一人の提督と一人の艦娘の成長物語にして『俺たちの戦いはこれからだ!』で締めれば公報アニメとして完璧じゃん!」

朗利「なぜそうしなかった? 思い出の積み重ねも正当な理由も無しに『夢で結婚したから』なんていう電波系がまともに評価されるわけがない!」

朗利「そして、最初からアニメ鎮守府を大艦隊の大御所にする必要はなかったように思うぞ」

朗利「もし最初の訓練や鎮守府の活気に満ちた風景が描きたいのなら、プロローグとして新任の提督や初期艦が他所の鎮守府で見た光景にするか、」

朗利「あるいは、大物提督の許で一人前になるための研修期間での光景としても良かったんじゃないの?」

朗利「もしくは、2つの鎮守府の様子を行き来しながら描写するっていうやり方もありだぞ? そうすれば【演習】もうまいこと描写できるし」


221: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:39:08.36 ID:Q97NpYj00

朗利「ま、今更 こんなことを言っても後の祭り――――――」

朗利「大本営はこんな酷いアニメに仕立てあげたやつをどうするか楽しみだよ」

朗利「ま、俺は第2期がまっとうな王道アニメになることを期待するよ」

朗利「…………アニメ【-艦これ-】は、原作【~艦これ~】ユーザーから黒歴史認定 確定だろうな」

朗利「――――――っと、いけない いけない」

朗利「【アニメ】なんていうファンに向けられていない公式二次創作がどうなろうと知ったことじゃないよ」

朗利「俺は原作の【~艦これ~】を今日も目いっぱい楽しむんだ! 原作 サイコーッ!」パァ

朗利「さあ、ホワイトデーだ! ホワイトデーを楽しむぞおおおお!」ヒヤッホーーーーー!



222: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:39:46.52 ID:Q97NpYj00

――――――趣里鎮守府

――――――武蔵の部屋にて、例の生中継映像を見終わり、


石田「終わりましたね」

武蔵「あ、ああ…………」 ――――――ケッコン指輪が鈍く光る。

石田「大和よりも更に深い場所に眠っているか……。引き揚げるのは難しいだろうな」

石田「さて、私はこれで帰ります――――――ん?」

武蔵「…………!」ドン!

石田「ガッ」ドタッ ――――――唐突に武蔵に押し飛ばされる!

武蔵「………………」バッ ――――――そこへすかさず武蔵が迫る!

石田「…………な、何のつもりだ、武蔵?」ジロッ


武蔵「提督が悪いのだからな!」ドクンドクン


石田「……なに?」

武蔵「提督、憶えているか? ――――――私がこの鎮守府に来た当時のことを」

武蔵「私は建造ドックから出ると眩いばかりの歓迎の眼差しと綺羅びやかな装飾が凝らされたパーティ会場の中にいたのだ」

武蔵「驚いたよ、あの時は本当に。【建造】したてで頭が追いつかなかったせいもあったが、少なくともこれからここが私の居場所なのだと理解できた」

武蔵「そして、提督――――――私はその中で力強く手を引いてくれたあなたに期待していた」

武蔵「事実、提督は私の願いを叶えてくれた。生前には叶わなかった この自慢の主砲で存分に撃ち合う大海戦と大勝利の数々を私にくださったのだ」

武蔵「気づけば、あっという間に【改造】が終わっていたぐらいだった」

石田「それが上官である私を押し倒すことと何の関係が――――――」

武蔵「それから提督は、こんな武骨者で浅黒肌の 大和に比べたら女っ気のないこんな私を舞踏会に連れて行ってくれたよな?」モジモジ

石田「…………言うな(左近提督にはめられて、あんなものを着させられた記憶など粉微塵にしてしまいたい…………!)」プイッ

武蔵「わ、私も、お、思い出すだけでも恥ずかしいのだが……、」モジモジ

武蔵「それでも、提督の力強い手に身体を委ねる感覚は何とも甘美なものであった…………」ドクンドクン

223: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:40:20.03 ID:Q97NpYj00

石田「……それで?」

武蔵「だが! それから私は提督から遠ざけられてしまった……!」

武蔵「私は提督の見事な運用によってあっという間にケッコンカッコカリまでできる練度にまでに達し、」

武蔵「提督からすぐに【ケッコン指輪】を渡されるものだとばかり――――――」

石田「……それの何が不満だというのですか?」

武蔵「不満など…ない」

石田「なら、わざわざそのことについて言う必要がありません」

石田「それとも、かえって迷惑でしたか?」

武蔵「 そ ん な わ け あ る か !」

石田「…………!」

武蔵「強くなってより強大な敵に打ち勝てるようになるのは武人としての誉れだ」

武蔵「そ、それに……、ここまで短期間に無理なく鍛え上げてくれた提督には感謝の言葉が尽きない」

石田「……要領を得ないですね」

224: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:41:01.50 ID:Q97NpYj00

石田「結局 何が言いたいんです?」ジトー

武蔵「…………!」ゾクッ

武蔵「………………」

武蔵「…………提督よ」

石田「はい」


武蔵「提督も男なら……、――――――いいんだぞ?」ポッ


石田「む?」ジトー

武蔵「あ」

武蔵「いや! 提督も我慢などしなくていい! さあ、思う存分に甘えるといい」ドヤカ

石田「………………武蔵?」ジトー

武蔵「――――――これでもダメだと言うのか」ボソッ

武蔵「ええい!」

武蔵「提督よ!」

石田「…………何ですか?」


武蔵「私は提督にとって何なのだ!?」


石田「――――――質問はもっと具体的にお願いします」

武蔵「……むっ」

225: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:41:29.08 ID:Q97NpYj00

石田「もういいですか? まだ仕事が残っているので」

武蔵「それは【深海棲艦】と一緒にアニメを見ることか!」

石田「そうですが? 改めて訊くような話でもないと思いますが」

武蔵「………………!」ギリッ

武蔵「なぜだ? なぜなのだ、提督よ……!」

武蔵「どうして提督は敵である深海棲艦にそこまで拘る!? 前の冬イベントでも最終戦は私ではなく【捕獲】したレ級を投入した!」

石田「………………なるほど、そのことに不満があったか(そういえば武蔵はこの鎮守府の面々からすると新入りの部類で、以前にも――――――)」

武蔵「私はいつか提督が味方に引き込んだつもりの【深海棲艦】に殺されるのではないかと気が気ではないのだぞ…………」ポタポタ・・・

石田「なら、言ってあげましょう」

石田「その心配は無用です。他はどうかは知りませんが私はうまくやっていますので、心配なさらないでください」

武蔵「――――――尚更 信じられるか!」

石田「………………鬱陶しいな」ムッ

武蔵「くぅ、どうすれば伝わるというのだ……」グスン・・・

石田「なら、後日 改めて話を聴きますから、それまでに要点をまとめておいてください」スッ

武蔵「あ」

石田「それでは」スタスタスタ・・・

武蔵「提督、提督!」


バタン!


武蔵「…………私はどうしようもない女だな」ポタポタ・・・

武蔵「言葉で言ってどうにもならない相手である以上は身体でわからせるつもりでいたのに、」

武蔵「提督のあの冷めた視線を浴びただけで意志が鈍ってしまった…………」

武蔵「提督にとって私は何なのだ? 私は提督の考える最高戦力ではなかったのか……?」

武蔵「わ、私はケッコン相手ではないのか? 提督にとっての一番ではなかったのか……?」

武蔵「うぅうう……、提督よぉ…………」ヒッグゥウ・・・


226: ◆G4SP/HSOik 2015/04/11(土) 21:42:04.43 ID:Q97NpYj00


――――――“鬼武蔵”


石田「…………嫌でもその名を思い出してしまう」ムスッ

石田「『名は体を表す』とは言うが、【艦娘】武蔵には何の罪もないのに、自然と関わるのを避けてしまう自分の狭量さが腹ただしい……」ギリッ

石田「そして、今日もどこかの歴史の裏側でやつらが――――――」


コツコツコツ・・・・・・


石田「む」

左近「殿? 今日はちゃんと武蔵さんとお話できましたか?」

石田「いや、何か言いたかったようだが、要領を得ないので後日 改めて話を聴くつもりだ」

左近「あちゃー、せっかくの記念日が台無しですな……」

石田「何の話だ?」

左近「いえ、大本営も何を考えて【ケッコンカッコカリ】という名でレベルキャップ解放システムを導入したのですかなって」メメタァ

石田「……確かにな。燃費や能力が良くなる点は評価するがな」

左近「殿? 曲がりなりにも武蔵さんとごケッコンなさったんですから、もう少し配慮が必要なんじゃありませんか?」

石田「何を言う。いつでも決戦の先陣は武蔵にまかせてきたし、論功行賞で彼女を外したことは一度もないぞ」

左近「…………そうは言いますがねぇ(――――――やれやれ、似た者同士 不器用で困った御仁たちだ)」

左近「(以前から問題でしたけれども、いい機会ですからそろそろ何とかしてあげましょうかね、この左近が)」

左近「(ただ、俺は殿の味方である以上は、その部下である武蔵さんにはある程度 泣きを見て――――――もう見てもらっていると思うんですけどね)」

左近「(絶対服従の因子があるとはいえ、これ以上の擦れ違いは士気にも影響しかねませんのでね。しっかりと意思疎通を図ってもらいますよぅ?)」

左近「(それが凡人たる俺の役目ですからね。殿の偉業を阻む些細なもつれは早い内に解決させてもらいましょう)」


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引用元: 【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】