ほむら「ゲッターロボ!」
ほむら「ゲッターロボ!」 第二話
ほむら「ゲッターロボ!」 第三話~第五話
444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:08:51.30 ID:CmL6rb/G0
ほむら「ゲッターロボ!」 第六話
445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:09:23.07 ID:CmL6rb/G0
ふ・・・と、目を覚ましたマミは、自分がソファーに寝かされていたのに気がつく。
かたわらに目をやれば、付きっ切りで自分を看ていたらしい武蔵が、うつらうつらと舟を漕いでいた。
・・・あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
ほむらや武蔵たちから、過酷な現実を突きつけられた、あの時から・・・
マミ (・・・夢、だったんじゃないのかしら)
そうであれば、どれ程に気が楽な事だろう。
だけれど、テーブルに残されたままになっている物を目にしては、そんなささやかな願いも無残に砕かれてしまう。
マミ (暁美さんと作ったカレー・・・)
武蔵を起こさないように、そっと身体を起こす。
かたわらに目をやれば、付きっ切りで自分を看ていたらしい武蔵が、うつらうつらと舟を漕いでいた。
・・・あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
ほむらや武蔵たちから、過酷な現実を突きつけられた、あの時から・・・
マミ (・・・夢、だったんじゃないのかしら)
そうであれば、どれ程に気が楽な事だろう。
だけれど、テーブルに残されたままになっている物を目にしては、そんなささやかな願いも無残に砕かれてしまう。
マミ (暁美さんと作ったカレー・・・)
武蔵を起こさないように、そっと身体を起こす。
446: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:10:49.60 ID:CmL6rb/G0
ふわり、彼女にかけられていた物が、音も無く床に滑り落ちた。
マミ 「・・・?」
拾い上げると、それは薄い毛布。
マミを気遣った武蔵が、かけてくれたのだろう。
マミ (・・・お兄ちゃん)
兄であるのに兄ではない。
武蔵に告げられた言葉を思い出すと、胸が張り裂けそうになる。叫びそうになってしまう。
そんな欲求を懸命にこらえながら、武蔵の肩に毛布をそっとかける。
そうしてから、足音を殺しながらシンクへと向かうマミ。
喉が渇いた。無性に水が呑みたかった。
マミ 「・・・?」
拾い上げると、それは薄い毛布。
マミを気遣った武蔵が、かけてくれたのだろう。
マミ (・・・お兄ちゃん)
兄であるのに兄ではない。
武蔵に告げられた言葉を思い出すと、胸が張り裂けそうになる。叫びそうになってしまう。
そんな欲求を懸命にこらえながら、武蔵の肩に毛布をそっとかける。
そうしてから、足音を殺しながらシンクへと向かうマミ。
喉が渇いた。無性に水が呑みたかった。
447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:11:41.11 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
マミ 「んっんっ・・・はぁっ・・・」
コップで二杯。流し込むように水を飲んだ。
渇いた身体が潤されてゆく感覚とともに、心も幾分か落ち着いてくる。
と、同時に。
別の動揺がマミの胸の中で頭をもたげてきた。
冷静になると同時に思い返される、自分の言動。そして、思考。
マミ 「わ、私・・・」
マミの背を一筋、冷たい汗が伝う。
マミ 「私はなんて、恐ろしいことを・・・」
・・・
マミ 「んっんっ・・・はぁっ・・・」
コップで二杯。流し込むように水を飲んだ。
渇いた身体が潤されてゆく感覚とともに、心も幾分か落ち着いてくる。
と、同時に。
別の動揺がマミの胸の中で頭をもたげてきた。
冷静になると同時に思い返される、自分の言動。そして、思考。
マミ 「わ、私・・・」
マミの背を一筋、冷たい汗が伝う。
マミ 「私はなんて、恐ろしいことを・・・」
448: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:12:34.10 ID:CmL6rb/G0
あの時。
武蔵にとって自分は実の妹ではなく、さらに自分たち魔法少女の身に降りかかる運命の結末を知った、あの瞬間。
動揺し、焦燥し、押し寄せる孤独感に心を壊されそうになりながらも。
どこかでマミは冷静で、これから自分が成すべきことを頭の片隅で計算していた。
マミ 「わ、私・・・暁美さんたちを・・・」
殺そうとしていた。
いずれ魔法少女は魔女になる運命を負わされていると、ほむらは言った。
無二の友と信じ、信頼もしていたキュウべぇに騙されていると。
そしてその事を、他ならない武蔵が肯定している。
マミにほむらの話を疑う理由は、もはや無かった。
・・・と、なれば。
武蔵にとって自分は実の妹ではなく、さらに自分たち魔法少女の身に降りかかる運命の結末を知った、あの瞬間。
動揺し、焦燥し、押し寄せる孤独感に心を壊されそうになりながらも。
どこかでマミは冷静で、これから自分が成すべきことを頭の片隅で計算していた。
マミ 「わ、私・・・暁美さんたちを・・・」
殺そうとしていた。
いずれ魔法少女は魔女になる運命を負わされていると、ほむらは言った。
無二の友と信じ、信頼もしていたキュウべぇに騙されていると。
そしてその事を、他ならない武蔵が肯定している。
マミにほむらの話を疑う理由は、もはや無かった。
・・・と、なれば。
449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:13:19.08 ID:CmL6rb/G0
人に危害を及ぼす存在となる前に、自分を抹消しなければならない。
同じ立場にある、ほむらや杏子ももろ共に。
マミ 「・・・」
あの時、マミは計算していたのだ。
ほむらと杏子、どちらを先に殺すのがベストなのかを。
相手の不意をついて手強い方を先に殺し、返す刀でもう一人を屠る。
そうしてから自分も命を絶てば、少なくとも将来の魔女が3匹は減ると。
マミ 「ああっ・・・」
もしあの時。
あの場に武蔵という存在がいなかったなら・・・
マミ 「きっと私は、ためらいも無く二人を殺していた・・・」
かつてはともに戦った友達を。
わざわざ敵であった自分の所へ料理を習いに来た、クールを気取りながらもどこか憎めない、あの少女を・・・
同じ立場にある、ほむらや杏子ももろ共に。
マミ 「・・・」
あの時、マミは計算していたのだ。
ほむらと杏子、どちらを先に殺すのがベストなのかを。
相手の不意をついて手強い方を先に殺し、返す刀でもう一人を屠る。
そうしてから自分も命を絶てば、少なくとも将来の魔女が3匹は減ると。
マミ 「ああっ・・・」
もしあの時。
あの場に武蔵という存在がいなかったなら・・・
マミ 「きっと私は、ためらいも無く二人を殺していた・・・」
かつてはともに戦った友達を。
わざわざ敵であった自分の所へ料理を習いに来た、クールを気取りながらもどこか憎めない、あの少女を・・・
450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:15:01.62 ID:CmL6rb/G0
マミ 「私、どうしたら・・・」
涙が頬を伝い、雫となってシンクへと落ちる。
とめどなく、とめどなく。
マミ 「私、もう魔女なのかもしれない」
人の姿はしていても。
友達を平気で殺そうとする、自分の事を人だとは思えなかった。
マミ 「魔女になった私は、これからどうしたら良いの・・・っ!」
? 「死ねば良い」
背後からかけられた声にギクリとして、振り返るマミ。
そこで彼女が見たものは、厳しい顔で自分を睨みすえる兄、武蔵の姿だった。
マミ 「お、お兄ちゃん・・・」
武蔵 「・・・」
涙が頬を伝い、雫となってシンクへと落ちる。
とめどなく、とめどなく。
マミ 「私、もう魔女なのかもしれない」
人の姿はしていても。
友達を平気で殺そうとする、自分の事を人だとは思えなかった。
マミ 「魔女になった私は、これからどうしたら良いの・・・っ!」
? 「死ねば良い」
背後からかけられた声にギクリとして、振り返るマミ。
そこで彼女が見たものは、厳しい顔で自分を睨みすえる兄、武蔵の姿だった。
マミ 「お、お兄ちゃん・・・」
武蔵 「・・・」
451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:15:48.28 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
同時刻
ほむホーム
ほむら 「私、弱くなったのかしら」
常と変わらない竜馬の表情と、彼が煎れてくれた紅茶が、こわばった私の感情を暖かくほぐしてゆく。
竜馬 「と、言うと?」
竜馬も自分の紅茶をすすりながら、言葉少なに問い返してくる。
先ほどからの竜馬は、まるで波の穏やかな水面のようだった。
身体を預ければ、優しく包み込み全てを受け入れてくれる。そんな包容力を今の彼からは感じられる。
普段は火のように激しい竜馬の、意外な一面を見せ付けられた気分。
ほむら 「私、あなたのことがまだまだ理解しきれていなかったようだわ・・・」
・・・
同時刻
ほむホーム
ほむら 「私、弱くなったのかしら」
常と変わらない竜馬の表情と、彼が煎れてくれた紅茶が、こわばった私の感情を暖かくほぐしてゆく。
竜馬 「と、言うと?」
竜馬も自分の紅茶をすすりながら、言葉少なに問い返してくる。
先ほどからの竜馬は、まるで波の穏やかな水面のようだった。
身体を預ければ、優しく包み込み全てを受け入れてくれる。そんな包容力を今の彼からは感じられる。
普段は火のように激しい竜馬の、意外な一面を見せ付けられた気分。
ほむら 「私、あなたのことがまだまだ理解しきれていなかったようだわ・・・」
452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:16:30.25 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「そりゃぁな。何だかんだで、出会ってから日が浅いんだ。そんな簡単に理解できるほど、簡単なもんじゃないだろうぜ」
ほむら 「流君のことが?」
竜馬 「人それぞれがって事さ」
ほむら 「かもね・・・だけど今、私はあなたに自分のことを理解して欲しいと、切に思っているわ」
竜馬 「ああ」
ほむら 「だけれど、理解してもらえる自信が無い。だって、私は私のことが自分でも分からなくなってしまっている・・・」
竜馬 「何がお前を、そこまで惑わしている?」
ほむら 「・・・」
多少逡巡して・・・
だけれども、意を決すると私は口を開いた。
彼に感じた包容力を、私の感覚を信じる事にした。
信じたいと、頼りたいと、思ったから。
ほむら 「流君のことが?」
竜馬 「人それぞれがって事さ」
ほむら 「かもね・・・だけど今、私はあなたに自分のことを理解して欲しいと、切に思っているわ」
竜馬 「ああ」
ほむら 「だけれど、理解してもらえる自信が無い。だって、私は私のことが自分でも分からなくなってしまっている・・・」
竜馬 「何がお前を、そこまで惑わしている?」
ほむら 「・・・」
多少逡巡して・・・
だけれども、意を決すると私は口を開いた。
彼に感じた包容力を、私の感覚を信じる事にした。
信じたいと、頼りたいと、思ったから。
453: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:17:53.08 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「今までの時間軸で、私は色々とひどい事をしてきた」
竜馬 「・・・」
ほむら 「まどかを守るため。私の目的を果たすためだったら、多少の罪悪感と引き換えに、どんな非情な事だってやってこられたわ・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「それでも、ソウルジェムを汚す事は無かった。自分のやっている事が私にとって正しい事だと信じていたから。心を強く保つ事ができたから」
竜馬 「・・・暁美、ソウルジェムを見せてみろ」
言われるままに、私は己のソウルジェムをさらす。
手を伸ばし受け取った竜馬は、一目見るなり、うっと小さく驚きの声を漏らした。
前の戦闘後にきれいに浄化したはずのソウルジェム・・・
それが、新たな戦闘を得ずして、すでに黒く濁りかけていたのだから、驚くのだって無理もない。
竜馬 「・・・お前」
ほむら 「今は、どうしてなのかしら・・・巴マミの悲しみ、佐倉杏子の苦悩を思うと、私の魂も醜く淀んでしまうの」
竜馬 「・・・」
ほむら 「まどかを守るため。私の目的を果たすためだったら、多少の罪悪感と引き換えに、どんな非情な事だってやってこられたわ・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「それでも、ソウルジェムを汚す事は無かった。自分のやっている事が私にとって正しい事だと信じていたから。心を強く保つ事ができたから」
竜馬 「・・・暁美、ソウルジェムを見せてみろ」
言われるままに、私は己のソウルジェムをさらす。
手を伸ばし受け取った竜馬は、一目見るなり、うっと小さく驚きの声を漏らした。
前の戦闘後にきれいに浄化したはずのソウルジェム・・・
それが、新たな戦闘を得ずして、すでに黒く濁りかけていたのだから、驚くのだって無理もない。
竜馬 「・・・お前」
ほむら 「今は、どうしてなのかしら・・・巴マミの悲しみ、佐倉杏子の苦悩を思うと、私の魂も醜く淀んでしまうの」
454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:19:09.29 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「暁美、とりえあず佐倉から預かっているグリーフシードで浄化しよう」
竜馬がグリーフシードを取りに席を立ったけれど、私は構わずに話を続ける。
ほむら 「私は弱い・・・こんな事じゃ、まどかを守る事だってままなりはしないわ・・・」
竜馬 「別にお前は、弱くないと思うがな」
部屋の向こうからは、竜馬の声だけが返って来る。
ほむら 「気休めはよしてよ」
竜馬 「俺が詭弁を弄するほど器用じゃないのは、知ってるだろう」
ほむら 「だったら・・・どうして私のこと、弱くないなんて思えるのよ・・・」
竜馬 「思うに・・・俺はお前の視野が広がったのが、暁美の心を曇らせている原因じゃないのかと、そう思うんだがな」
ほむら 「視野って。それ、どういうこと・・・?」
竜馬がグリーフシードを取りに席を立ったけれど、私は構わずに話を続ける。
ほむら 「私は弱い・・・こんな事じゃ、まどかを守る事だってままなりはしないわ・・・」
竜馬 「別にお前は、弱くないと思うがな」
部屋の向こうからは、竜馬の声だけが返って来る。
ほむら 「気休めはよしてよ」
竜馬 「俺が詭弁を弄するほど器用じゃないのは、知ってるだろう」
ほむら 「だったら・・・どうして私のこと、弱くないなんて思えるのよ・・・」
竜馬 「思うに・・・俺はお前の視野が広がったのが、暁美の心を曇らせている原因じゃないのかと、そう思うんだがな」
ほむら 「視野って。それ、どういうこと・・・?」
455: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:23:25.14 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「お前、自分でも言っていたし、分かってるんだろうが、今までは、鹿目以外のものが目に入っていなかったんだろう」
ほむら 「・・・そう。だって私にとって、まどかは私の全てだったんだもの」
自分で言いながらも、私は胸の内に奇妙な感情の訪れを感じていた。
竜馬 「そう言い切れるのって、凄いよな。誇るに足るに充分な資格がある」
ほむら 「何を言っているのよ・・・」
竜馬 「十代もそこそこで、そこまで想うことができる相手を得られるというのは、並大抵の事じゃない。俺は、そんなお前を羨ましいとさえ思うぜ」
ほむら 「・・・ばか」
竜馬 「だが、それは今でもか?」
意外な問いかけに、私は目を丸くする。
ほむら 「そんなの、当然じゃない。今までも今も、これからもずっと、変わるわけがないわ」
言い返そうとした途端、先ほど抱いた感情が再び胸の奥、むくむくと頭をもたげてきた。
なんなんだろう、このモヤモヤした感情は。
ほむら 「変わるわけ、ないもの・・・」
自然、私の言葉も尻すぼみに、勢いが削がれてしまう。
ほむら 「・・・そう。だって私にとって、まどかは私の全てだったんだもの」
自分で言いながらも、私は胸の内に奇妙な感情の訪れを感じていた。
竜馬 「そう言い切れるのって、凄いよな。誇るに足るに充分な資格がある」
ほむら 「何を言っているのよ・・・」
竜馬 「十代もそこそこで、そこまで想うことができる相手を得られるというのは、並大抵の事じゃない。俺は、そんなお前を羨ましいとさえ思うぜ」
ほむら 「・・・ばか」
竜馬 「だが、それは今でもか?」
意外な問いかけに、私は目を丸くする。
ほむら 「そんなの、当然じゃない。今までも今も、これからもずっと、変わるわけがないわ」
言い返そうとした途端、先ほど抱いた感情が再び胸の奥、むくむくと頭をもたげてきた。
なんなんだろう、このモヤモヤした感情は。
ほむら 「変わるわけ、ないもの・・・」
自然、私の言葉も尻すぼみに、勢いが削がれてしまう。
456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:24:35.61 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「お前が鹿目の事を大切に思っていることは分かっているさ。だけれど、それだけか?」
ほむら 「・・・」
竜馬 「さっきお前は言ったな。俺に自分のことを理解して欲しいと、そう望んだな」
ほむら 「え、ええ・・・」
竜馬 「欲求は、自らを写す鏡だって言うぜ」
ほむら 「意味が分からない。もっと、分かるように言ってくれるかしら・・・」
竜馬 「お前も理解したいと、思っているはずだ。今では、な」
ほむら 「理解したいって、いったい何を・・・」
竜馬 「巴マミの事、佐倉杏子の事、美樹さやかの事・・・理解したいと、その心に寄り添おうと、そう考え始めているはずだ」
ほむら 「あっ・・・」
竜馬 「だから、あいつらの心の痛みが理解できる。我が事のように心を痛めることができる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「仲間として、大切に考えているからだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「さっきお前は言ったな。俺に自分のことを理解して欲しいと、そう望んだな」
ほむら 「え、ええ・・・」
竜馬 「欲求は、自らを写す鏡だって言うぜ」
ほむら 「意味が分からない。もっと、分かるように言ってくれるかしら・・・」
竜馬 「お前も理解したいと、思っているはずだ。今では、な」
ほむら 「理解したいって、いったい何を・・・」
竜馬 「巴マミの事、佐倉杏子の事、美樹さやかの事・・・理解したいと、その心に寄り添おうと、そう考え始めているはずだ」
ほむら 「あっ・・・」
竜馬 「だから、あいつらの心の痛みが理解できる。我が事のように心を痛めることができる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「仲間として、大切に考えているからだ」
457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:25:22.01 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「何でそんなこと、あなたに分かるの・・・よ・・・」
弱弱しく反論しながらも、私の心は彼の言うことをすでに肯定していた。
そう、先ほどから抱いていた感情の正体は、違和感。
竜馬の言うことが事実だと、私の心が証明してしまっていたのだ。
竜馬 「仲間を想う気持ちは、誰よりも理解できているつもりだぜ」
戻ってきた竜馬が、再び私の向かい側に腰を下ろす。
手には浄化を済ませた、ソウルジェム。
ほむら 「だけれど・・・私はまどかが一番大切で・・・それは唯一無二であるわけで・・・そうでなければ・・・」
今までの私の歩んできた道と、犠牲にしてきた全ての命を否定してしまう事になる。
だけれど竜馬は、そんな私の葛藤を笑い飛ばすように言い切った。
竜馬 「大切な物が一つだけだなんて、誰が決めたんだ?」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「大切な鹿目と、大切な仲間。それで良いじゃねぇか」
ほむら 「あ・・・」
目から鱗とは、まさのこの事だった。
弱弱しく反論しながらも、私の心は彼の言うことをすでに肯定していた。
そう、先ほどから抱いていた感情の正体は、違和感。
竜馬の言うことが事実だと、私の心が証明してしまっていたのだ。
竜馬 「仲間を想う気持ちは、誰よりも理解できているつもりだぜ」
戻ってきた竜馬が、再び私の向かい側に腰を下ろす。
手には浄化を済ませた、ソウルジェム。
ほむら 「だけれど・・・私はまどかが一番大切で・・・それは唯一無二であるわけで・・・そうでなければ・・・」
今までの私の歩んできた道と、犠牲にしてきた全ての命を否定してしまう事になる。
だけれど竜馬は、そんな私の葛藤を笑い飛ばすように言い切った。
竜馬 「大切な物が一つだけだなんて、誰が決めたんだ?」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「大切な鹿目と、大切な仲間。それで良いじゃねぇか」
ほむら 「あ・・・」
目から鱗とは、まさのこの事だった。
458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:29:28.88 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「流君、わたし・・・」
青天の霹靂。
竜馬の言葉に、目の前の霧が晴れていくような感覚を覚える。
竜馬 「だから暁美。自分には、何も無いなんて言うなよ。お前は弱くなったわけじゃない」
ほむら 「・・・」
竜馬 「仲間を意識した者は強い。3台のゲットマシンが寄り添い、無敵のゲッターロボとなるようにな」
ほむら 「・・・」
竜馬 「今はまだ、自分の気持ちの変化に、心が戸惑ってしまっているんだろうが・・・暁美?」
ほむら 「あなたは・・・何を例えるのにも、ゲッターロボなのね」
竜馬 「お前の言葉じゃないが、俺にとってゲッターは唯一無二の存在だからな。・・・ほら」
竜馬が身を乗り出して、テーブル越しにソウルジェムを差し出してきた。
青天の霹靂。
竜馬の言葉に、目の前の霧が晴れていくような感覚を覚える。
竜馬 「だから暁美。自分には、何も無いなんて言うなよ。お前は弱くなったわけじゃない」
ほむら 「・・・」
竜馬 「仲間を意識した者は強い。3台のゲットマシンが寄り添い、無敵のゲッターロボとなるようにな」
ほむら 「・・・」
竜馬 「今はまだ、自分の気持ちの変化に、心が戸惑ってしまっているんだろうが・・・暁美?」
ほむら 「あなたは・・・何を例えるのにも、ゲッターロボなのね」
竜馬 「お前の言葉じゃないが、俺にとってゲッターは唯一無二の存在だからな。・・・ほら」
竜馬が身を乗り出して、テーブル越しにソウルジェムを差し出してきた。
459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:30:09.24 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「ありがとう」
私の手の平にポンと納まったソウルジェムは、先ほどのくすんだ様相とはまるで別物の様に、眩い光を放っている。
何となくホッとした気持ちで眺めていると、私の頭に、そっと包み込むような感触が。
ほむら 「・・・?」
何だろうと目線をあげてみると、私の頭を包んでいたのは、竜馬の広くて大きな手の平だった。
ほむら 「え・・・」
竜馬 「・・・」
そのまま、くしゃくしゃっと無造作に、頭をこねくり回される。
ほむら 「ちょっ・・・なにっ?!」
竜馬 「お前も少し、俺の事を理解してくれよな」
ほむら 「なんのことよ!」
私の手の平にポンと納まったソウルジェムは、先ほどのくすんだ様相とはまるで別物の様に、眩い光を放っている。
何となくホッとした気持ちで眺めていると、私の頭に、そっと包み込むような感触が。
ほむら 「・・・?」
何だろうと目線をあげてみると、私の頭を包んでいたのは、竜馬の広くて大きな手の平だった。
ほむら 「え・・・」
竜馬 「・・・」
そのまま、くしゃくしゃっと無造作に、頭をこねくり回される。
ほむら 「ちょっ・・・なにっ?!」
竜馬 「お前も少し、俺の事を理解してくれよな」
ほむら 「なんのことよ!」
460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:31:21.49 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「俺にこんな役、やらせるんじゃねぇよ」
ほむら 「さっきから何を言って・・・」
その間も、私の頭はグルングルンと回され続けたまま。
うう、さすがに目が回ってきた・・・
もう我慢がならないと、竜馬の手を振り払おうとした、その時。
ポタリ、と。
テーブルの上に一滴、雫が落ちたのだ。
ほむら 「え・・・」
雫は、最初の一滴の後を追うように、二つ三つと滴り続け・・・
瞬く間にテーブルの上には、小さな水溜りがいくつも出来あがった。
ほむら 「どこから・・・??」
雫の出所を探って、私はすぐに気がつく。
頬を伝い、顎から零れ落ちる、その雫の正体に。
ほむら 「私、泣いて、たの・・・?」
ほむら 「さっきから何を言って・・・」
その間も、私の頭はグルングルンと回され続けたまま。
うう、さすがに目が回ってきた・・・
もう我慢がならないと、竜馬の手を振り払おうとした、その時。
ポタリ、と。
テーブルの上に一滴、雫が落ちたのだ。
ほむら 「え・・・」
雫は、最初の一滴の後を追うように、二つ三つと滴り続け・・・
瞬く間にテーブルの上には、小さな水溜りがいくつも出来あがった。
ほむら 「どこから・・・??」
雫の出所を探って、私はすぐに気がつく。
頬を伝い、顎から零れ落ちる、その雫の正体に。
ほむら 「私、泣いて、たの・・・?」
461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:33:52.55 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「らしくねぇから、メソメソしてんなよ」
ほむら 「流君、あなた・・・」
私を、慰めようとしてくれている・・・?
ということは、この”グルングルン”は、もしかして私のこと、撫でているつもりなの?
そうと気がついて、改めて竜馬の顔を視線を戻すと。
どこか照れた風で、なんとも言えない表情で私を見ている。
ふだんはいかつい竜馬の、そんな様子が妙に滑稽で。
ほむら 「ぷっ、ふふっ・・・」
思わず私の口から、笑いが零れ落ちた。
ほむら 「流君、あなた・・・」
私を、慰めようとしてくれている・・・?
ということは、この”グルングルン”は、もしかして私のこと、撫でているつもりなの?
そうと気がついて、改めて竜馬の顔を視線を戻すと。
どこか照れた風で、なんとも言えない表情で私を見ている。
ふだんはいかつい竜馬の、そんな様子が妙に滑稽で。
ほむら 「ぷっ、ふふっ・・・」
思わず私の口から、笑いが零れ落ちた。
462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:35:12.87 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「・・・泣くのか笑うのか、どっちかにしといたが良いぜ」
ほむら 「だって、おかしいんだもの」
言いながら私は、彼の腕を払いのけるために振り上げかけた手で、今はそっと竜馬の腕を掴む。
大きくて無骨で、だけれど私を慰めようとしてくれた、優しい竜馬の手。
ほむら 「もう平気。それに、この涙は悲しくて流したものじゃないから」
竜馬 「・・・そうか」
そう。私自身忘れかけていたけれど。
涙って、悲しいときや辛い時にばかり、流れるものじゃない。
自分が気づいていない自分自身のことを、竜馬は私に気づかせてくれた。
それはとりもなおさず、彼が私を理解してくれているという事だ。
ほむら (・・・初めてだわ)
誰も私を理解してくれなかった。私の言うことを、信じてくれる人はいなかった。
それは、ともに戦った、仲間だと信じていた人たちだけではなく。
私が誰よりも大切に思っている、まどかですらも・・・
ほむら 「だって、おかしいんだもの」
言いながら私は、彼の腕を払いのけるために振り上げかけた手で、今はそっと竜馬の腕を掴む。
大きくて無骨で、だけれど私を慰めようとしてくれた、優しい竜馬の手。
ほむら 「もう平気。それに、この涙は悲しくて流したものじゃないから」
竜馬 「・・・そうか」
そう。私自身忘れかけていたけれど。
涙って、悲しいときや辛い時にばかり、流れるものじゃない。
自分が気づいていない自分自身のことを、竜馬は私に気づかせてくれた。
それはとりもなおさず、彼が私を理解してくれているという事だ。
ほむら (・・・初めてだわ)
誰も私を理解してくれなかった。私の言うことを、信じてくれる人はいなかった。
それは、ともに戦った、仲間だと信じていた人たちだけではなく。
私が誰よりも大切に思っている、まどかですらも・・・
463: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:36:10.98 ID:CmL6rb/G0
ほむら (それが、今)
ほむら 「流君・・・」
竜馬 「ん?」
私のすぐ側に。
私を理解してくれる人が、こうしていてくれる事が、とても。
嬉しくてたまらなかった。
涙くらい、頬を伝って落ちるのも当然というものだ。
ほむら 「ううん、リョウ・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「ありがとう」
竜馬 「おう」
ほむら 「流君・・・」
竜馬 「ん?」
私のすぐ側に。
私を理解してくれる人が、こうしていてくれる事が、とても。
嬉しくてたまらなかった。
涙くらい、頬を伝って落ちるのも当然というものだ。
ほむら 「ううん、リョウ・・・」
竜馬 「・・・」
ほむら 「ありがとう」
竜馬 「おう」
464: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:44:30.15 ID:CmL6rb/G0
私は言葉少なに、だけれど万感を込めた気持ちを竜馬に述べた。
初めて、彼の事を愛称で呼びながら。
彼ならそれで、私の気持ちを全て酌んでくれる事だろう。
そして、思う。
いつかマミや杏子たちとも、竜馬としたように、心を交感させることができたら良いなと。
そう、切に願える。
願える自分に、竜馬が気づかせてくれたのだ。
初めて、彼の事を愛称で呼びながら。
彼ならそれで、私の気持ちを全て酌んでくれる事だろう。
そして、思う。
いつかマミや杏子たちとも、竜馬としたように、心を交感させることができたら良いなと。
そう、切に願える。
願える自分に、竜馬が気づかせてくれたのだ。
465: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:45:23.65 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
翌朝。
学校に行くために、玄関から一歩を踏み出した私に。
? 「・・・よう」
不意にかけられた声。
そちらの方に顔を向けると、壁にもたれかかるようにして手を振っている人影が目に入った。
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「よ、朝っぱらから悪いな」
ほむら 「別に良いけれど、どうかしたの?」
杏子 「ああ、どうもこうもない、一大事だぜ。部屋に上げて欲しいんだけど、良いかい?」
ほむら 「私、これから学校に行くのだけれど・・・」
杏子 「そんなのんきな事、言ってる場合じゃない」
そう言う杏子の目は真剣だった。
・・・
翌朝。
学校に行くために、玄関から一歩を踏み出した私に。
? 「・・・よう」
不意にかけられた声。
そちらの方に顔を向けると、壁にもたれかかるようにして手を振っている人影が目に入った。
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「よ、朝っぱらから悪いな」
ほむら 「別に良いけれど、どうかしたの?」
杏子 「ああ、どうもこうもない、一大事だぜ。部屋に上げて欲しいんだけど、良いかい?」
ほむら 「私、これから学校に行くのだけれど・・・」
杏子 「そんなのんきな事、言ってる場合じゃない」
そう言う杏子の目は真剣だった。
466: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:46:42.71 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「・・・良いわ、上がって」
杏子 「それと、流にも聞いて貰いたいんだけど、すぐ連絡を取ってくれるか?」
ほむら 「ああ、リョウだったら・・・」
竜馬 「呼んだか?」
私が名前を呼ぶのとほぼ同時に、竜馬がひょっこりと玄関先から顔を出した。
それをみた杏子の目が、なぜか点になっている・・・
杏子 「・・・え」
竜馬 「あれ、佐倉じゃねぇか。どうしたんだ、こんな朝っぱらから」
杏子 「・・・」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「あは、あははは・・・そっか、そういう事か、いや、こりゃ参ったなぁ・・・」
ほむら 「え、え?佐倉さん??」
杏子 「それと、流にも聞いて貰いたいんだけど、すぐ連絡を取ってくれるか?」
ほむら 「ああ、リョウだったら・・・」
竜馬 「呼んだか?」
私が名前を呼ぶのとほぼ同時に、竜馬がひょっこりと玄関先から顔を出した。
それをみた杏子の目が、なぜか点になっている・・・
杏子 「・・・え」
竜馬 「あれ、佐倉じゃねぇか。どうしたんだ、こんな朝っぱらから」
杏子 「・・・」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「あは、あははは・・・そっか、そういう事か、いや、こりゃ参ったなぁ・・・」
ほむら 「え、え?佐倉さん??」
467: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:47:20.54 ID:CmL6rb/G0
杏子 「マミのあんなざまを目にした昨日の今日で、イチャコラよろしくやってたってわけかい・・・」
竜馬 「・・・?お前、なに言ってるんだ?」
杏子 「まぁ、あたしの知ったことじゃねぇさ。蓼食う虫も好き好きっていうもんな」
ほむら 「・・・何気にかなり失礼な事を言われてる気がするけれど、佐倉さん。何か誤解してない?」
杏子 「誤解もくそも、あんたらが何しようと、そっちの勝手だよ。好きにするが良いさ」
ほむら 「・・・」
杏子 「だがな、時と場合くらいは考えてくれ。ともに戦おうって、あたしやマミを巻き込んだのはそっちだって事、忘れるんじゃねぇぞ」
ほむら 「佐倉さん、ちょっと私の話も聞いて・・・」
竜馬 「まずは上がれ、佐倉。こんな玄関先じゃ、お前の用件だって腰をすえて話せないだろう」
杏子 「・・・ちっ」
竜馬 「・・・?お前、なに言ってるんだ?」
杏子 「まぁ、あたしの知ったことじゃねぇさ。蓼食う虫も好き好きっていうもんな」
ほむら 「・・・何気にかなり失礼な事を言われてる気がするけれど、佐倉さん。何か誤解してない?」
杏子 「誤解もくそも、あんたらが何しようと、そっちの勝手だよ。好きにするが良いさ」
ほむら 「・・・」
杏子 「だがな、時と場合くらいは考えてくれ。ともに戦おうって、あたしやマミを巻き込んだのはそっちだって事、忘れるんじゃねぇぞ」
ほむら 「佐倉さん、ちょっと私の話も聞いて・・・」
竜馬 「まずは上がれ、佐倉。こんな玄関先じゃ、お前の用件だって腰をすえて話せないだろう」
杏子 「・・・ちっ」
468: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:49:28.78 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
ほむら 「というわけで、昨夜は遅くなっちゃったし、リョウには泊まっていってもらっただけなの」
杏子 「・・・」
ほむら 「もちろん部屋は別々。そもそも、小さい子がいる前で、間違いなんて起こすはずがないじゃない」
ゆま 「ほえ??間違いってなーに??」
杏子 「まじ?」
竜馬 「まじだ」
杏子 「な、なーんだ、そうか。ちぇっ、まったく紛らわしい事してるんじゃねぇよ」
ほむら 「悪かったわね、期待に沿う事ができなくて」
杏子 「本当だぜ」
ゆま 「ねぇねぇ、なんの話ー?」
杏子 「ゆまは分からなくっていーの」
ゆま 「ふーん」
・・・
ほむら 「というわけで、昨夜は遅くなっちゃったし、リョウには泊まっていってもらっただけなの」
杏子 「・・・」
ほむら 「もちろん部屋は別々。そもそも、小さい子がいる前で、間違いなんて起こすはずがないじゃない」
ゆま 「ほえ??間違いってなーに??」
杏子 「まじ?」
竜馬 「まじだ」
杏子 「な、なーんだ、そうか。ちぇっ、まったく紛らわしい事してるんじゃねぇよ」
ほむら 「悪かったわね、期待に沿う事ができなくて」
杏子 「本当だぜ」
ゆま 「ねぇねぇ、なんの話ー?」
杏子 「ゆまは分からなくっていーの」
ゆま 「ふーん」
469: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:51:03.00 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「ま、そう見られる分には、俺はまんざらでもねぇけどな」
ほむら 「何を言っているのよ」
杏子 「・・・」
竜馬の軽口に釘をさしている私を、杏子がなにやらジト目で見ている。
ほむら 「なにか言いたげだけど?」
杏子 「お宅らさ、昨日と雰囲気違ってるようなんですけど、ほんとのほんとに何にも無かったわけ?」
ほむら 「ええ、無いわ」
杏子 「・・・そっかぁ?」
まだ何か言いたげな素振りは残しながらも、杏子はここまでの話を切り上げるとペコリと一つ、頭を下げた。
杏子 「こっちの勘違いで不快な思いをさせちまったな。悪かったよ」
ほむら 「あ、うん・・・」
意外にも素直に非を認め頭を下げる杏子に、私は少々面食らってしまう。
ほむら 「何を言っているのよ」
杏子 「・・・」
竜馬の軽口に釘をさしている私を、杏子がなにやらジト目で見ている。
ほむら 「なにか言いたげだけど?」
杏子 「お宅らさ、昨日と雰囲気違ってるようなんですけど、ほんとのほんとに何にも無かったわけ?」
ほむら 「ええ、無いわ」
杏子 「・・・そっかぁ?」
まだ何か言いたげな素振りは残しながらも、杏子はここまでの話を切り上げるとペコリと一つ、頭を下げた。
杏子 「こっちの勘違いで不快な思いをさせちまったな。悪かったよ」
ほむら 「あ、うん・・・」
意外にも素直に非を認め頭を下げる杏子に、私は少々面食らってしまう。
470: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:55:29.03 ID:CmL6rb/G0
それは竜馬も同じようで・・・
竜馬 「一人で怒って一人で謝って、なんともあわただしい奴だな、お前は」
呆れた口調を隠しもしない。
だが、言われた杏子は涼しい顔だ。
杏子 「悪いと思ったら、すぐ謝っちまうんだよ。後に引いたら謝りづらくなるし、引け目にもなっちまうからな」
竜馬 「なるほど、だな。そういう考え、好ましいと思うぜ」
杏子 「おだてんなよ・・・さて、一区切りがついたところで、本題に行きたいんだが・・・良いかい?」
話題を切り替えた杏子の顔が、再び。
先ほど玄関前に現れた時のように、真剣な面構えへと変わる。
よほどの事が起こった。そのくらいは読み取る事ができる表情だった。
ほむら 「・・・わかった、話を聞くわ」
竜馬 「一人で怒って一人で謝って、なんともあわただしい奴だな、お前は」
呆れた口調を隠しもしない。
だが、言われた杏子は涼しい顔だ。
杏子 「悪いと思ったら、すぐ謝っちまうんだよ。後に引いたら謝りづらくなるし、引け目にもなっちまうからな」
竜馬 「なるほど、だな。そういう考え、好ましいと思うぜ」
杏子 「おだてんなよ・・・さて、一区切りがついたところで、本題に行きたいんだが・・・良いかい?」
話題を切り替えた杏子の顔が、再び。
先ほど玄関前に現れた時のように、真剣な面構えへと変わる。
よほどの事が起こった。そのくらいは読み取る事ができる表情だった。
ほむら 「・・・わかった、話を聞くわ」
471: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 21:56:38.96 ID:CmL6rb/G0
杏子 「ああ。と、その前に。先に一つ確認しておきたい事があるんだけれど、お前らさ」
竜馬 「・・・?」
杏子 「あたしら同盟を結んだもの以外で、ゲッターロボの事を誰かに話したか?」
ほむら 「え・・・?」
質問の真意がつかめず、私と竜馬は思わず顔を見合わせてしまう。
そして互いに首を振る。どちらも誰にも、ゲッターの事なんか話していない。
ゆま 「ゆまだって、誰にも話してないよ」
杏子 「そっか。じゃあ、もう一つ。美国織莉子という名前に聞き覚えは?」
ほむら 「・・・っ!」
杏子 「こっちは心当たり、あるんだな」
ほむら 「どこで、その名前を?」
杏子 「会ったんだよ。昨日、直にな。お前と別れた後で、探し当てた魔女結界の中で・・・」
ほむら 「・・・」
美国織莉子・・・
私は確かに、その名前に覚えがある。
竜馬 「・・・?」
杏子 「あたしら同盟を結んだもの以外で、ゲッターロボの事を誰かに話したか?」
ほむら 「え・・・?」
質問の真意がつかめず、私と竜馬は思わず顔を見合わせてしまう。
そして互いに首を振る。どちらも誰にも、ゲッターの事なんか話していない。
ゆま 「ゆまだって、誰にも話してないよ」
杏子 「そっか。じゃあ、もう一つ。美国織莉子という名前に聞き覚えは?」
ほむら 「・・・っ!」
杏子 「こっちは心当たり、あるんだな」
ほむら 「どこで、その名前を?」
杏子 「会ったんだよ。昨日、直にな。お前と別れた後で、探し当てた魔女結界の中で・・・」
ほむら 「・・・」
美国織莉子・・・
私は確かに、その名前に覚えがある。
472: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:00:29.16 ID:CmL6rb/G0
心に底知れない闇を抱え込み、それとは対照的な純白のドレスに身を纏った魔法少女。
彼女と遭遇した時間軸は決して多くは無かったけれど・・・
ほむら 「と、言うことは、彼女が口にしたのね。ゲッターロボの名を」
杏子 「ああ。実際の所、名前以上に、どれだけの事を知ってるのかまでは分からなかったけれどな」
ほむら 「厄介だわ・・・」
竜馬 「何者なんだ、その美国織莉子とか言うのは。お前とも面識がある奴なのか?」
ほむら 「ええ。ただし、別の時間軸での事だけれど」
竜馬 「どんな奴なんだ?」
ほむら 「敵よ」
杏子 「・・・やっぱりな」
自分と同じ魔法少女を敵と言われても、杏子はさも当然な事を聞いたかのように、表情を動かさなかった。
感覚の鋭敏な杏子の事、織莉子と実際に会ったのなら、感じ取る何かがあったのだろう。
ほむら 「佐倉さん、あなたは彼女と遭遇して、よく無事で済んだわね」
彼女と遭遇した時間軸は決して多くは無かったけれど・・・
ほむら 「と、言うことは、彼女が口にしたのね。ゲッターロボの名を」
杏子 「ああ。実際の所、名前以上に、どれだけの事を知ってるのかまでは分からなかったけれどな」
ほむら 「厄介だわ・・・」
竜馬 「何者なんだ、その美国織莉子とか言うのは。お前とも面識がある奴なのか?」
ほむら 「ええ。ただし、別の時間軸での事だけれど」
竜馬 「どんな奴なんだ?」
ほむら 「敵よ」
杏子 「・・・やっぱりな」
自分と同じ魔法少女を敵と言われても、杏子はさも当然な事を聞いたかのように、表情を動かさなかった。
感覚の鋭敏な杏子の事、織莉子と実際に会ったのなら、感じ取る何かがあったのだろう。
ほむら 「佐倉さん、あなたは彼女と遭遇して、よく無事で済んだわね」
473: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:01:13.36 ID:CmL6rb/G0
杏子 「ああ、あたしたちと事を構える気は無いようだぜ。今のところはな」
竜馬 「やがては敵対すると、そう言うのか?」
杏子 「はっきりとは言ってなかったけれどな。分かるんだよ、こっちに対する敵意がプンプン臭ってきやがった」
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美、かつての時間軸で出会った美国織莉子ってのは、どんな奴だったんだ?」
ほむら 「・・・一言で言えば、目的のためには手段を選ばない。そんな魔法少女だったわ」
そう、どこか私と似ている。
己の信念のためなら、大の虫を生かすために小の虫を殺す事をためらわない。
それは、例え自分の仲間であったとしても変わらなかった。
だから、始末におえないし、心底おそろしい。
ほむら 「・・・私が殺したけれど」
杏子 「・・・へぇ」
竜馬 「やがては敵対すると、そう言うのか?」
杏子 「はっきりとは言ってなかったけれどな。分かるんだよ、こっちに対する敵意がプンプン臭ってきやがった」
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美、かつての時間軸で出会った美国織莉子ってのは、どんな奴だったんだ?」
ほむら 「・・・一言で言えば、目的のためには手段を選ばない。そんな魔法少女だったわ」
そう、どこか私と似ている。
己の信念のためなら、大の虫を生かすために小の虫を殺す事をためらわない。
それは、例え自分の仲間であったとしても変わらなかった。
だから、始末におえないし、心底おそろしい。
ほむら 「・・・私が殺したけれど」
杏子 「・・・へぇ」
474: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:02:02.73 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「仕方がなかった。彼女は目的の為に見滝原中学を魔女の結界に引きずり込んでまで、私の守るべき人を殺そうとしたのだから」
竜馬 (鹿目の事か・・・?)
ほむら 「そのため私たちは敵対して戦ったわ。辛くも勝利はできたけれど、あそこでもし情けをかけて逃がしていたら・・・」
竜馬 (待てよ・・・そいつはなぜ、人畜無害を絵に描いたような鹿目を殺そうと・・・?)
ほむら 「いずれ痛手を治した彼女は、再び目的を果たすために襲い掛かってきたに違いない。間違いなく、ね。だから・・・」
杏子 「中学校を結界にって、随分と無茶な話だな。死んだんだろ、かなりさ」
ほむら 「ええ、何十人規模での死者が出たはず」
杏子 「はず・・・?」
ほむら 「戦いの後、結局私は守りたい人を守りきれず、あの時間軸を捨てたのよ。だから、戦いの後のことは詳しく知らないの」
杏子 「その守りたい人って、誰の事だっけ?あたし、聞いてないよな?」
竜馬 (鹿目の事か・・・?)
ほむら 「そのため私たちは敵対して戦ったわ。辛くも勝利はできたけれど、あそこでもし情けをかけて逃がしていたら・・・」
竜馬 (待てよ・・・そいつはなぜ、人畜無害を絵に描いたような鹿目を殺そうと・・・?)
ほむら 「いずれ痛手を治した彼女は、再び目的を果たすために襲い掛かってきたに違いない。間違いなく、ね。だから・・・」
杏子 「中学校を結界にって、随分と無茶な話だな。死んだんだろ、かなりさ」
ほむら 「ええ、何十人規模での死者が出たはず」
杏子 「はず・・・?」
ほむら 「戦いの後、結局私は守りたい人を守りきれず、あの時間軸を捨てたのよ。だから、戦いの後のことは詳しく知らないの」
杏子 「その守りたい人って、誰の事だっけ?あたし、聞いてないよな?」
475: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:02:38.64 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「・・・」
これは、杏子を仲間に誘ったときに、わざとぼかしていた事だった。
この事を突き詰めて説明していけば、最後はまどかがどうなるか。その事も余さず語らねばなくなるから。
それを知った時、杏子がはたしてどのような行動に出るか。
場合によっては、仲間から脱名されるばかりか、敵にさえ回ってしまうかも、と。
そんな懸念が払えなかったからだ。
だけれど、今は・・・
ほむら 「クラスメイトの鹿目まどかという少女。私は彼女を守るために、時間軸を遡行し続けている・・・」
竜馬 「暁美・・・」
良いのか?と、目で問いかけてくる竜馬に、私は微笑みながら頷きを一つ。
ほむら 「私の最も大切な人、まどかを守るため。私は戦い続けているの」
476: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:03:40.14 ID:CmL6rb/G0
杏子 「ふーん・・・人のため、か。好きじゃないけどな、そういう考え方。けっきょくは、身を滅ぼす種になるだけだと思うぜ」
ほむら 「ありがとう。だけれど、まどかを守るのは私のため。まどかのいない人生なんて、そんなの私が私でなくなってしまうもの」
杏子 「そこまで言いきるのかよ。いったい何者なんだい、その鹿目まどかっていう奴は」
ほむら 「いずれ・・・」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「いずれ、最強最悪の魔女となって、見滝原はおろか、この世界を滅亡へと追いやる事になる存在・・・」
竜馬 「・・・え?」
杏子 「はぁっ!?」
竜馬 「なんだよ、それ。これは俺も初耳だぞ」
ほむら 「ごめんね、リョウ。言い難かったのよ。あのまどかがやがて、恐ろしい化け物になってしまうなんて、私以外に知る者なんて作りたくはなかった」
ほむら 「ありがとう。だけれど、まどかを守るのは私のため。まどかのいない人生なんて、そんなの私が私でなくなってしまうもの」
杏子 「そこまで言いきるのかよ。いったい何者なんだい、その鹿目まどかっていう奴は」
ほむら 「いずれ・・・」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「いずれ、最強最悪の魔女となって、見滝原はおろか、この世界を滅亡へと追いやる事になる存在・・・」
竜馬 「・・・え?」
杏子 「はぁっ!?」
竜馬 「なんだよ、それ。これは俺も初耳だぞ」
ほむら 「ごめんね、リョウ。言い難かったのよ。あのまどかがやがて、恐ろしい化け物になってしまうなんて、私以外に知る者なんて作りたくはなかった」
477: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:05:30.37 ID:CmL6rb/G0
竜馬 「最強最悪って・・・あの鹿目が、か。想像もつかないが・・・」
ほむら 「あなたはもう見ている」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「リョウたちがこっちの世界に飛ばされた時、一番最初に巨大な化け物を目にしたはずよ」
竜馬 「あれって、ワルプルギスの夜とか言う奴じゃなかったのか!?」
ほむら 「違うわ。ワルプルギスは確かに強大な魔女。だけれど、魔女化したまどかには、足元にも及ばない」
竜馬 「あれが・・・あのでかい化け物が、鹿目だっていうのか・・・」
とても信じられないという表情で、口をつぐんでしまう竜馬。
今現在の、人としてのまどかを知るものなら、当然の反応だと思う。
杏子 「魔女になるって言うことは、その鹿目ってやつ、魔法少女なんだよな?」
ほむら 「いいえ、この時間軸ではまだ、ただの女の子に過ぎないわ。私の目的は、まどかをキュウべぇと契約させない事でもあるの」
杏子 「じゃあ、あんたが私に言っていた、ワルプルギスを倒したいって話は・・・」
ほむら 「多くの時間軸で、ワルプルギスの襲来はまどかがキュウべぇと契約する契機となってしまった。その芽を潰しておきたいのと・・・」
杏子 「・・・」
ほむら 「まどかが生まれ育ち、大切な人々とともに生きている見滝原を、私は守りたいと思っているから」
ほむら 「あなたはもう見ている」
竜馬 「・・・?」
ほむら 「リョウたちがこっちの世界に飛ばされた時、一番最初に巨大な化け物を目にしたはずよ」
竜馬 「あれって、ワルプルギスの夜とか言う奴じゃなかったのか!?」
ほむら 「違うわ。ワルプルギスは確かに強大な魔女。だけれど、魔女化したまどかには、足元にも及ばない」
竜馬 「あれが・・・あのでかい化け物が、鹿目だっていうのか・・・」
とても信じられないという表情で、口をつぐんでしまう竜馬。
今現在の、人としてのまどかを知るものなら、当然の反応だと思う。
杏子 「魔女になるって言うことは、その鹿目ってやつ、魔法少女なんだよな?」
ほむら 「いいえ、この時間軸ではまだ、ただの女の子に過ぎないわ。私の目的は、まどかをキュウべぇと契約させない事でもあるの」
杏子 「じゃあ、あんたが私に言っていた、ワルプルギスを倒したいって話は・・・」
ほむら 「多くの時間軸で、ワルプルギスの襲来はまどかがキュウべぇと契約する契機となってしまった。その芽を潰しておきたいのと・・・」
杏子 「・・・」
ほむら 「まどかが生まれ育ち、大切な人々とともに生きている見滝原を、私は守りたいと思っているから」
478: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:06:41.52 ID:CmL6rb/G0
杏子 「そっか」
ほむら 「黙っていてごめんなさい。リョウも・・・」
竜馬 「いやまぁ、言い難かったってのは理解できる。そこは気にしないで良い。だけれど、よくこの事、話す気になったな」
ほむら 「それは、もう・・・隠し事とか、しておきたくなかったから・・・」
仲間、だから。
杏子 「だけどさ、美国織莉子はどうして、まどかって奴が強大な魔女になるって知ってたんだ?さっきの話じゃ、過去の時間軸でも魔女化する前にまどかは殺されてしまったんだろ?」
ほむら 「それは・・・」
竜馬 「未来予知、か?」
ほむら 「・・・リョウ。冴えてるのね、どうして分かったの?」
竜馬 「鹿目の魔女化という未発生の事態を知っているとすれば、可能性は二つ。暁美のような時間遡行者であるのか、それとも未来を予め知ることができる者か・・・」
ほむら 「そうね」
竜馬 「美国織莉子は目的を果たす前に、暁美に殺されたんだろ。もし時間遡行が可能なら、目的失敗と判断した時点で、別の時間軸へ飛んで、再び活動すれば良い」
杏子 「そうか。そうしなかったのは、先のことは分かっても、時間を戻す術は持たないからだってことか・・・!」
ほむら 「黙っていてごめんなさい。リョウも・・・」
竜馬 「いやまぁ、言い難かったってのは理解できる。そこは気にしないで良い。だけれど、よくこの事、話す気になったな」
ほむら 「それは、もう・・・隠し事とか、しておきたくなかったから・・・」
仲間、だから。
杏子 「だけどさ、美国織莉子はどうして、まどかって奴が強大な魔女になるって知ってたんだ?さっきの話じゃ、過去の時間軸でも魔女化する前にまどかは殺されてしまったんだろ?」
ほむら 「それは・・・」
竜馬 「未来予知、か?」
ほむら 「・・・リョウ。冴えてるのね、どうして分かったの?」
竜馬 「鹿目の魔女化という未発生の事態を知っているとすれば、可能性は二つ。暁美のような時間遡行者であるのか、それとも未来を予め知ることができる者か・・・」
ほむら 「そうね」
竜馬 「美国織莉子は目的を果たす前に、暁美に殺されたんだろ。もし時間遡行が可能なら、目的失敗と判断した時点で、別の時間軸へ飛んで、再び活動すれば良い」
杏子 「そうか。そうしなかったのは、先のことは分かっても、時間を戻す術は持たないからだってことか・・・!」
479: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:07:34.95 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「明察よ。美国織莉子は未来を見る力を持っている。かなり、限定的ではあるようだけれどね」
杏子 「だからあいつ、ワルプルギスの事も知っていたのか。すごいな、流。あんた、見た目以上に頭が切れる奴なんだな」
竜馬 「褒め言葉ととっておくぜ」
杏子 「そう思ってくれて良いよ。てことは、だ。今回も美国織莉子は、鹿目まどかの命を狙って動いている、と・・・?」
ほむら 「それは分からない・・・」
あいまいに答えながらも、私は内心でその可能性は低いと考えていた。
もし、かつての時間軸と同様に、まどかが最悪の魔女となる事を予知していたのなら・・・
あの時と同様、まどかの協力者を消すために、魔法少女狩りを行っていなければおかしいと考えたからだ。
それが、杏子を目の前にして、戦いを挑んでこなかったという。
そこから導き出せる答えは、ワルプルギスがもたらす惨禍までしか予知できていない、としか思えない。
・・・もちろん、確証は持てないけれど。
杏子 「だからあいつ、ワルプルギスの事も知っていたのか。すごいな、流。あんた、見た目以上に頭が切れる奴なんだな」
竜馬 「褒め言葉ととっておくぜ」
杏子 「そう思ってくれて良いよ。てことは、だ。今回も美国織莉子は、鹿目まどかの命を狙って動いている、と・・・?」
ほむら 「それは分からない・・・」
あいまいに答えながらも、私は内心でその可能性は低いと考えていた。
もし、かつての時間軸と同様に、まどかが最悪の魔女となる事を予知していたのなら・・・
あの時と同様、まどかの協力者を消すために、魔法少女狩りを行っていなければおかしいと考えたからだ。
それが、杏子を目の前にして、戦いを挑んでこなかったという。
そこから導き出せる答えは、ワルプルギスがもたらす惨禍までしか予知できていない、としか思えない。
・・・もちろん、確証は持てないけれど。
480: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:09:03.31 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「・・・ただ、彼女がゲッターのことを知っていたとなると」
杏子 「そうか、ゲッターロボに関して、何かを予知したのかもしれないな」
ほむら 「問題は、予知で見たロボットの名前を、誰が具体的に教えたか、だけれど・・・」
先ほども言ったけれど、美国織莉子の未来予知はきわめて限定的で、予測できる範疇は美国織莉子本人ですら、コントロールしきれてはいなかったはず。
そんな彼女が、ゲッターロボという具体的な固有名詞を口にした。
・・・誰かが織莉子に教えたとしか、考えられない。
竜馬 「ここにいる、俺たちじゃない」
杏子 「マミや武蔵だとも考えられない」
ほむら 「となると、結論は一つ・・・」
私は部屋の隅。
日陰となって、朝の陽も当たらない暗がりを見つめる。
ほむら 「ねぇ・・・」
そこへ向かって、声をかける。
暗がりからは、先ほどまでは感じられなかった気配が一つ。
無機質で感情の感じられない、まるで置物のような気が発せられていた。
481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:10:49.64 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「お前ね?」
私は、その気配に向かって言う。
視線を向けたそこ、部屋の片隅の暗がりには。
まるで、光の当たらない闇から、白い影が浮き出てきたように・・・
あの忌まわしい生物が、こちらにあの赤いビードロような目を向けていたのだ。
竜馬 「こいつ、いつの間に入り込みやがった?」
ほむら 「キュウべぇ・・・」
キュウべぇ 「やぁ、みんな。久しぶりだね」
悪びれもせず、ぬけぬけと言いながら、トコトコと・・・
そいつは、私たちの方へと歩いてきた。
私は、その気配に向かって言う。
視線を向けたそこ、部屋の片隅の暗がりには。
まるで、光の当たらない闇から、白い影が浮き出てきたように・・・
あの忌まわしい生物が、こちらにあの赤いビードロような目を向けていたのだ。
竜馬 「こいつ、いつの間に入り込みやがった?」
ほむら 「キュウべぇ・・・」
キュウべぇ 「やぁ、みんな。久しぶりだね」
悪びれもせず、ぬけぬけと言いながら、トコトコと・・・
そいつは、私たちの方へと歩いてきた。
482: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:14:01.61 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
死ねば良い。
優しく、誰よりも慕う兄からかけられたのは、耳を疑うような非情な言葉だった。
マミ 「・・・え」
信じられない物を見る目で、マミは武蔵を見つめた。
だが、見据えられた武蔵は表情一つ崩すことなく、もう一度。
ゆっくりと、はっきりと。
聞き間違えなど起こりようもないほど、よく通る明瞭な声音で。
武蔵 「死ねば良い、マミちゃん」
残酷な言葉を再び、マミへと突きつけたのだった。
・・・
死ねば良い。
優しく、誰よりも慕う兄からかけられたのは、耳を疑うような非情な言葉だった。
マミ 「・・・え」
信じられない物を見る目で、マミは武蔵を見つめた。
だが、見据えられた武蔵は表情一つ崩すことなく、もう一度。
ゆっくりと、はっきりと。
聞き間違えなど起こりようもないほど、よく通る明瞭な声音で。
武蔵 「死ねば良い、マミちゃん」
残酷な言葉を再び、マミへと突きつけたのだった。
483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:15:20.15 ID:CmL6rb/G0
マミ 「ど、どうして・・・」
ショックのあまり、足に力が入らない。
マミはへたへたと、その場に腰をついてしまう。
手に持ったカップが床に転がり落ち、床に小さな水溜りを作る。
だが、今は武蔵もマミも、カップの事になど気にも留めない。
ただ、言葉もなく、互いに見つめ合うのみ。
マミ 「あ、あ・・・」
一度は冷静になりかけた理性が、再び崩壊して行く。
マミは言葉など知らない子供のように、意味の無いうめきを漏らしながら、今はただ。
惨めに震える以外になす術が無かった。
ショックのあまり、足に力が入らない。
マミはへたへたと、その場に腰をついてしまう。
手に持ったカップが床に転がり落ち、床に小さな水溜りを作る。
だが、今は武蔵もマミも、カップの事になど気にも留めない。
ただ、言葉もなく、互いに見つめ合うのみ。
マミ 「あ、あ・・・」
一度は冷静になりかけた理性が、再び崩壊して行く。
マミは言葉など知らない子供のように、意味の無いうめきを漏らしながら、今はただ。
惨めに震える以外になす術が無かった。
484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:16:12.76 ID:CmL6rb/G0
武蔵 「・・・」
武蔵はそんなマミに近寄ると、自身も腰を落としてマミと同じ目線となった。
じっと見つめる武蔵。震えるマミの両肩に、手をかける。
マミの混乱と恐怖と絶望と、が。
震えとともに武蔵の心にまで伝わってくるようだ。
武蔵 「マミちゃん」
だが、武蔵はつとめて語調を強め、マミに語りかけた。
武蔵 「もし君が、まだ人間である友達を殺すというのなら、マミちゃんは自分が言うとおり、人の姿を借りた魔女に他ならない」
マミ 「・・・」
武蔵 「人には、取り返しがつかない事、してはいけない事というものが、確かにある」
マミ 「しては、いけない、事・・・」
武蔵 「君の心をいっとき支配した衝動は、実行に移したなら、まさしく取り返しがつかないことだった。分かるかい?」
マミ 「・・・あ、ぅ」
問われるまでもなかった。
武蔵はそんなマミに近寄ると、自身も腰を落としてマミと同じ目線となった。
じっと見つめる武蔵。震えるマミの両肩に、手をかける。
マミの混乱と恐怖と絶望と、が。
震えとともに武蔵の心にまで伝わってくるようだ。
武蔵 「マミちゃん」
だが、武蔵はつとめて語調を強め、マミに語りかけた。
武蔵 「もし君が、まだ人間である友達を殺すというのなら、マミちゃんは自分が言うとおり、人の姿を借りた魔女に他ならない」
マミ 「・・・」
武蔵 「人には、取り返しがつかない事、してはいけない事というものが、確かにある」
マミ 「しては、いけない、事・・・」
武蔵 「君の心をいっとき支配した衝動は、実行に移したなら、まさしく取り返しがつかないことだった。分かるかい?」
マミ 「・・・あ、ぅ」
問われるまでもなかった。
485: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:16:48.24 ID:CmL6rb/G0
だけれど、マミは同時に思うのだ。
マミ 「だけれど、もし・・・もし、みんながこの先、魔女になってしまったら・・・人々に害をなす存在になってしまうのなら・・・」
今ここで、殺してしまった方が。
人として死ねた方が、本人のためにも、どれだけ幸せかもしれない、と。
そんなことを考える自分に衝撃を受けたのも事実だが、だからと言って、この考え方自体を全否定する事もマミにはできなかった。
マミ 「だって・・・」
何故なら・・・
マミ 「だって私が魔女になってしまったら、お兄ちゃんは私から離れていってしまうでしょ?嫌いになってしまうでしょ?」
そんな思いと恐怖が、マミの胸を締め付けて、離さなかったから。
だが、武蔵はかぶりを振って言う。
武蔵 「俺は、どんな事が起こったって、マミちゃんを嫌いになるはずがない。離れられるはずがないじゃないか」
マミ 「だって、本当に・・・?」
マミ 「だけれど、もし・・・もし、みんながこの先、魔女になってしまったら・・・人々に害をなす存在になってしまうのなら・・・」
今ここで、殺してしまった方が。
人として死ねた方が、本人のためにも、どれだけ幸せかもしれない、と。
そんなことを考える自分に衝撃を受けたのも事実だが、だからと言って、この考え方自体を全否定する事もマミにはできなかった。
マミ 「だって・・・」
何故なら・・・
マミ 「だって私が魔女になってしまったら、お兄ちゃんは私から離れていってしまうでしょ?嫌いになってしまうでしょ?」
そんな思いと恐怖が、マミの胸を締め付けて、離さなかったから。
だが、武蔵はかぶりを振って言う。
武蔵 「俺は、どんな事が起こったって、マミちゃんを嫌いになるはずがない。離れられるはずがないじゃないか」
マミ 「だって、本当に・・・?」
486: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:32:57.27 ID:CmL6rb/G0
武蔵 「お袋と親父が死んだ時、俺が両親に代わって君を守ると。そう、約束したじゃないか」
マミ 「え・・・、だって、それは・・・」
武蔵 「君の心が、もしくは存在そのものが魔女となってしまったなら、その時は君は死ぬべきだ」
マミ 「・・・」
武蔵 「引導は、俺が渡してあげる。妹を殺すんだ。その時は、俺だって人ではいられない」
マミ 「お、お兄ちゃん・・・」
武蔵 「君が堕ちるなら、俺もともに堕ちよう。どこまでもどこまでも・・・俺はマミちゃんと共にあるよ」
マミ 「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ・・・」
武蔵 「だから、それまでは生きるんだ。人として、巴マミとして。若い命を、真っ赤に燃やし尽くして生きるんだ!」
マミ 「あああ、うああああああっ!」
武蔵にしがみつき、声を限りに泣きじゃくるマミ。
武蔵はマミをそっと抱きしめ、あとはかける言葉もなく、ただ優しく彼女の背をさすり続けていた。
そして思う。心の中で詫びる。
友に。命と背中を預けあった戦友に。
武蔵 (リョウ、すまん。俺はもう、こっちの世界の人間になりつつあるようだ・・・)
マミ 「え・・・、だって、それは・・・」
武蔵 「君の心が、もしくは存在そのものが魔女となってしまったなら、その時は君は死ぬべきだ」
マミ 「・・・」
武蔵 「引導は、俺が渡してあげる。妹を殺すんだ。その時は、俺だって人ではいられない」
マミ 「お、お兄ちゃん・・・」
武蔵 「君が堕ちるなら、俺もともに堕ちよう。どこまでもどこまでも・・・俺はマミちゃんと共にあるよ」
マミ 「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ・・・」
武蔵 「だから、それまでは生きるんだ。人として、巴マミとして。若い命を、真っ赤に燃やし尽くして生きるんだ!」
マミ 「あああ、うああああああっ!」
武蔵にしがみつき、声を限りに泣きじゃくるマミ。
武蔵はマミをそっと抱きしめ、あとはかける言葉もなく、ただ優しく彼女の背をさすり続けていた。
そして思う。心の中で詫びる。
友に。命と背中を預けあった戦友に。
武蔵 (リョウ、すまん。俺はもう、こっちの世界の人間になりつつあるようだ・・・)
487: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:38:55.79 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
ほむら 「お前が美国織莉子にゲッターロボの事を教えたのね」
キュウべぇ 「そうだよ」
ヤツは悪びれる風もなく、肯定して見せた。
まったく普段と変わらない態度、声音。感情が無いのだから、それは当たり前なのだけれど。
どこかのほほんとしているようにも見えて、こちらの心を無駄に逆立てる。
ほむら 「・・・よくも、ぬけぬけと」
いったい何を目的に・・・
そんな疑問を口に出そうとした時、不意に私の横を赤い影が横切った。
杏子 「キュウべぇ、てめぇ!」
赤い陰・・・杏子はキュウべぇに掴みかかると、奴を乱暴に壁へと叩き付けた。
キュウべぇ 「きゅっぷい」
杏子 「てめぇ、よくもあたしたちを・・・マミを騙し続けてくれたな!!」
・・・
ほむら 「お前が美国織莉子にゲッターロボの事を教えたのね」
キュウべぇ 「そうだよ」
ヤツは悪びれる風もなく、肯定して見せた。
まったく普段と変わらない態度、声音。感情が無いのだから、それは当たり前なのだけれど。
どこかのほほんとしているようにも見えて、こちらの心を無駄に逆立てる。
ほむら 「・・・よくも、ぬけぬけと」
いったい何を目的に・・・
そんな疑問を口に出そうとした時、不意に私の横を赤い影が横切った。
杏子 「キュウべぇ、てめぇ!」
赤い陰・・・杏子はキュウべぇに掴みかかると、奴を乱暴に壁へと叩き付けた。
キュウべぇ 「きゅっぷい」
杏子 「てめぇ、よくもあたしたちを・・・マミを騙し続けてくれたな!!」
488: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:41:53.49 ID:CmL6rb/G0
キュウべぇ 「何の事だい・・・?僕は何も嘘なんて・・・」
杏子 「うるせぇ!」
キュウべぇの喉元を掴んで壁に押し付けていた杏子が叫ぶ。
彼女の手に力が込められ、キュウべぇの首が締め付けられる。
キュウべぇ 「ぐ・・・君はいった、い、何を怒って、いるんだい・・・?まったく意味が・・・」
杏子 「わからねぇのか、そうかい。だったら、無理に分からなくてもいいぜ!」
キュウべぇ 「ぐ・・・ふっ・・・」
杏子 「このまま、首の骨をへし折ってやる!死んじまえ!」
杏子の顔が怒りに歪む。
彼女がここまで感情をあらわにするなんて、かつての時間軸でもそう見られたことはなかった。
それだけ強かったんだろう・・・
自分が思い描いていた、巴マミの偶像。
それをぶち壊す原因を作った、キュウべぇへの怒りが。
なにはともあれ・・・
ほむら 「佐倉さん」
私は立ち上がると、キュウべぇを締め付けている杏子の手を取った。
ほむら 「こいつに個の概念は無い。殺しても、別のキュウべぇが現れるだけ。何も響かないわ」
杏子 「そうかよ。だがな、せめて目の前のこいつだけでもひねり殺さにゃ、あたしの気がおさまらねぇんだよ!」
杏子 「うるせぇ!」
キュウべぇの喉元を掴んで壁に押し付けていた杏子が叫ぶ。
彼女の手に力が込められ、キュウべぇの首が締め付けられる。
キュウべぇ 「ぐ・・・君はいった、い、何を怒って、いるんだい・・・?まったく意味が・・・」
杏子 「わからねぇのか、そうかい。だったら、無理に分からなくてもいいぜ!」
キュウべぇ 「ぐ・・・ふっ・・・」
杏子 「このまま、首の骨をへし折ってやる!死んじまえ!」
杏子の顔が怒りに歪む。
彼女がここまで感情をあらわにするなんて、かつての時間軸でもそう見られたことはなかった。
それだけ強かったんだろう・・・
自分が思い描いていた、巴マミの偶像。
それをぶち壊す原因を作った、キュウべぇへの怒りが。
なにはともあれ・・・
ほむら 「佐倉さん」
私は立ち上がると、キュウべぇを締め付けている杏子の手を取った。
ほむら 「こいつに個の概念は無い。殺しても、別のキュウべぇが現れるだけ。何も響かないわ」
杏子 「そうかよ。だがな、せめて目の前のこいつだけでもひねり殺さにゃ、あたしの気がおさまらねぇんだよ!」
489: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:42:39.44 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「意味が無いといっているの。それに・・・」
視線で杏子に示す。
つられて杏子が顔を向けたそこでは・・・
ゆま 「・・・」
いきなりの杏子の剣幕に怯えたゆまが、竜馬にしがみつきながら必死に泣くのを堪えていた。
杏子 「あ・・・っ」
竜馬 「そこまでにしておけ。それに、そいつには聞かなきゃならない事だって、あるだろう」
杏子 「・・・ちっ」
舌打ちをしながらも、杏子は私や竜馬の言う事に従ってくれた。
自由の身となったキュウべぇは、何事も無かったかのようにヒラっと床へと舞い降りる。
キュウべぇ 「やれやれ、いきなりでビックリしたよ」
と、感情のこもっていない声で、平然と喋るキュウべぇ。
いったい、どこをどうビックリしたのだろうか、問いただしたい話し方だった。
杏子 「・・・こいつ」
視線で杏子に示す。
つられて杏子が顔を向けたそこでは・・・
ゆま 「・・・」
いきなりの杏子の剣幕に怯えたゆまが、竜馬にしがみつきながら必死に泣くのを堪えていた。
杏子 「あ・・・っ」
竜馬 「そこまでにしておけ。それに、そいつには聞かなきゃならない事だって、あるだろう」
杏子 「・・・ちっ」
舌打ちをしながらも、杏子は私や竜馬の言う事に従ってくれた。
自由の身となったキュウべぇは、何事も無かったかのようにヒラっと床へと舞い降りる。
キュウべぇ 「やれやれ、いきなりでビックリしたよ」
と、感情のこもっていない声で、平然と喋るキュウべぇ。
いったい、どこをどうビックリしたのだろうか、問いただしたい話し方だった。
杏子 「・・・こいつ」
490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:44:13.80 ID:CmL6rb/G0
ほむら 「佐倉さん、落ち着いて。お前も、これ以上人を挑発するような真似はしないで」
キュウべぇ 「そんなつもりは、無かったんだけれどね。気に障ったのなら謝るよ」
ほむら 「それで・・・」
キュウべぇの不遜な態度は、いつもの事。いちいち腹を立てたって、時間の無駄でしかない。
私は本題の話を再開した。
ほむら 「いったい、何のために、美国織莉子にゲッターロボの事を話したの?」
キュウべぇ 「取引さ。僕と織莉子たちとの、利害が一致したからね」
ほむら 「取引・・・?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする事に、ゲッターロボは非常に有益な力となってくれるのでね、僕はその情報を提供したって訳だよ」
ほむら 「それでお前は、その見返りに何を得たというの?」
キュウべぇ 「さぁ・・・」
思わせぶりに、奴が話の腰を折る。
ほむら 「教えなさい」
キュウべぇ 「教える義理は無いと思うな。僕は最初、取引相手には竜馬を選んだんだけれどね」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「そんなつもりは、無かったんだけれどね。気に障ったのなら謝るよ」
ほむら 「それで・・・」
キュウべぇの不遜な態度は、いつもの事。いちいち腹を立てたって、時間の無駄でしかない。
私は本題の話を再開した。
ほむら 「いったい、何のために、美国織莉子にゲッターロボの事を話したの?」
キュウべぇ 「取引さ。僕と織莉子たちとの、利害が一致したからね」
ほむら 「取引・・・?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする事に、ゲッターロボは非常に有益な力となってくれるのでね、僕はその情報を提供したって訳だよ」
ほむら 「それでお前は、その見返りに何を得たというの?」
キュウべぇ 「さぁ・・・」
思わせぶりに、奴が話の腰を折る。
ほむら 「教えなさい」
キュウべぇ 「教える義理は無いと思うな。僕は最初、取引相手には竜馬を選んだんだけれどね」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「・・・」
491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:45:10.30 ID:CmL6rb/G0
キュウべぇ 「すげなく断られてしまったんだよ。だから、替わりとして織莉子を選んだ。そうである以上、君たちに必要以上の事を教えてあげる謂れは無いんだよね」
ほむら 「取引って、どんな?」
竜馬 「知らん。だが、こいつが言うことだ。どうせ、ろくな事じゃないだろうぜ」
キュウべぇ 「ご想像にお任せするするさ。さて、他に話がないのなら、僕はそろそろ失礼させてもらうよ」
ほむら 「・・・」
これ以上、キュウべぇから何かを聞きだすことは不可能だろう。
そう思って私は、奴が去るのに任せるつもりでいたのだけれど。
杏子 「待てよ」
きびすを返し、暗がりへと戻ってゆくキュウべぇを呼び止めたのは、佐倉杏子だった。
キュウべぇ 「なんだい?」
杏子 「これだけは聞いておきたい」
キュウべぇ 「答えられる事だったら」
杏子 「お前、むやみやたらと魔法少女と契約をしているだろ」
ほむら 「え・・・?」
杏子 「風見野で、何人か。ろくに戦う事もできなかった魔法少女の死体を見せられたぜ。ありゃ、何のつもりだ?」
キュウべぇ 「何のつもりも何も、僕は命をかけるに値する望みを持つ少女に、夢を叶える力を与えただけだよ。君たちの時と同じさ」
杏子 「美国織莉子は、そんな”バーゲン品”の魔法少女に用があるようだったぜ。お前ら、つるんで何を画策してやがるんだ?」
ほむら 「取引って、どんな?」
竜馬 「知らん。だが、こいつが言うことだ。どうせ、ろくな事じゃないだろうぜ」
キュウべぇ 「ご想像にお任せするするさ。さて、他に話がないのなら、僕はそろそろ失礼させてもらうよ」
ほむら 「・・・」
これ以上、キュウべぇから何かを聞きだすことは不可能だろう。
そう思って私は、奴が去るのに任せるつもりでいたのだけれど。
杏子 「待てよ」
きびすを返し、暗がりへと戻ってゆくキュウべぇを呼び止めたのは、佐倉杏子だった。
キュウべぇ 「なんだい?」
杏子 「これだけは聞いておきたい」
キュウべぇ 「答えられる事だったら」
杏子 「お前、むやみやたらと魔法少女と契約をしているだろ」
ほむら 「え・・・?」
杏子 「風見野で、何人か。ろくに戦う事もできなかった魔法少女の死体を見せられたぜ。ありゃ、何のつもりだ?」
キュウべぇ 「何のつもりも何も、僕は命をかけるに値する望みを持つ少女に、夢を叶える力を与えただけだよ。君たちの時と同じさ」
杏子 「美国織莉子は、そんな”バーゲン品”の魔法少女に用があるようだったぜ。お前ら、つるんで何を画策してやがるんだ?」
492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:45:55.33 ID:CmL6rb/G0
キュウべぇ 「言ったろう?応える義理はないと」
それだけ言うとキュウべぇは、今度こそ暗がりの中へと帰ってしまった。
たちまち消えうせる奴の気配。陰から湧き出したように現れて、影の中に掻き消える。
本当に薄気味の悪い奴・・・
杏子 「ちっ・・・」
ほむら 「ねぇ、佐倉さん。今の話、どういうことなの?」
杏子 「どうもこうも、聞いた通りさ。キュウべぇの奴、むやみやたらと魔法少女を増やしてやがるぜ」
・・・そういえば。
佐倉杏子を仲間に誘ったあの時・・・
(杏子 「なぁ・・・見滝原で最近、見慣れない魔法少女とか・・・遭遇した事があるか?」 )
確か、そんな事を聞かれたっけ。
杏子 「ゆまと初めて会った時も、側に魔法少女の死体が転がってた。たまたま一緒になっただけで、知り合いでもなんでもないって聞いてるけど、な?」
ゆま 「う、うん・・・」
それだけ言うとキュウべぇは、今度こそ暗がりの中へと帰ってしまった。
たちまち消えうせる奴の気配。陰から湧き出したように現れて、影の中に掻き消える。
本当に薄気味の悪い奴・・・
杏子 「ちっ・・・」
ほむら 「ねぇ、佐倉さん。今の話、どういうことなの?」
杏子 「どうもこうも、聞いた通りさ。キュウべぇの奴、むやみやたらと魔法少女を増やしてやがるぜ」
・・・そういえば。
佐倉杏子を仲間に誘ったあの時・・・
(杏子 「なぁ・・・見滝原で最近、見慣れない魔法少女とか・・・遭遇した事があるか?」 )
確か、そんな事を聞かれたっけ。
杏子 「ゆまと初めて会った時も、側に魔法少女の死体が転がってた。たまたま一緒になっただけで、知り合いでもなんでもないって聞いてるけど、な?」
ゆま 「う、うん・・・」
493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:46:38.21 ID:CmL6rb/G0
杏子 「そして、どうやら織莉子は、そんな急ごしらえの魔法少女たちに用があるらしい。何のためかは、分からなかったけれど・・・」
ほむら 「美国織莉子が、魔法少女を集めている・・・?」
あの、魔法少女狩りをやっていた、美国織莉子が?
・・・そんな、間逆なマネを?
竜馬 「どうやら、俺たちに明かされていない闇は、想像以上に深いようだな」
私の言葉を受けて呟いた竜馬の脇で。
いまだ怯えたままのゆまが、彼の足にしがみつきながら、ふるふる静かに震えていた。
ほむら 「美国織莉子が、魔法少女を集めている・・・?」
あの、魔法少女狩りをやっていた、美国織莉子が?
・・・そんな、間逆なマネを?
竜馬 「どうやら、俺たちに明かされていない闇は、想像以上に深いようだな」
私の言葉を受けて呟いた竜馬の脇で。
いまだ怯えたままのゆまが、彼の足にしがみつきながら、ふるふる静かに震えていた。
494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:48:05.83 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
疑問と不安を胸に抱きつつも。
ワルプルギスの夜襲来の日は、刻一刻と迫ってくる。
時は待ってくれない。今は、成すべき事を成さなければならないのだ。
私たちはかねての決め事にしたがって、活動を開始した。
魔力をなるべく温存しながら、一個でも多くのグリーフシードを集めなければならない。
来るべき、決戦の日に備えて。
美国織莉子やキュウべぇの暗躍は気になるけれど、私たちは私たちの今日を必死に生きなければならない。
私の望み、友達の未来、そして、まどかの全てを守るために。
・・・
疑問と不安を胸に抱きつつも。
ワルプルギスの夜襲来の日は、刻一刻と迫ってくる。
時は待ってくれない。今は、成すべき事を成さなければならないのだ。
私たちはかねての決め事にしたがって、活動を開始した。
魔力をなるべく温存しながら、一個でも多くのグリーフシードを集めなければならない。
来るべき、決戦の日に備えて。
美国織莉子やキュウべぇの暗躍は気になるけれど、私たちは私たちの今日を必死に生きなければならない。
私の望み、友達の未来、そして、まどかの全てを守るために。
495: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:51:05.98 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
見滝原中学
2年の教室
ほむら (ワルプルギスの夜が来るまで、あと一週間。良い感じでグリーフシードも集まってきたし、順調だわ)
ほむら (美国織莉子の行動が、未だに掴めていないのが気になるけれど・・・このまま、何もなく終るはずもないし・・・)
気だるい雰囲気が支配する、朝の教室。
登校してから授業が始まるまでの、つかの間の時間。
自分の席に着席して考え事をしていた私の肩を、不意にポンと叩かれた。
少し驚いて顔を上げた私の前に立っていたのは、ひきつった笑顔の美樹さやか。
さやか 「お、おはよー」
ほむら 「おはよう、美樹さん」
彼女と会話を交わすのは、一緒に上条恭介の病室に行った時以来。
あの日さやかと仲違いをして以来、気まずくって・・・どちらからともなく、互いを避けるようにしていたから。
そんな彼女が、むこうから声をかけてきた。
・・・なにかあったのかしら?
ほむら 「私に何か用?」
・・・
見滝原中学
2年の教室
ほむら (ワルプルギスの夜が来るまで、あと一週間。良い感じでグリーフシードも集まってきたし、順調だわ)
ほむら (美国織莉子の行動が、未だに掴めていないのが気になるけれど・・・このまま、何もなく終るはずもないし・・・)
気だるい雰囲気が支配する、朝の教室。
登校してから授業が始まるまでの、つかの間の時間。
自分の席に着席して考え事をしていた私の肩を、不意にポンと叩かれた。
少し驚いて顔を上げた私の前に立っていたのは、ひきつった笑顔の美樹さやか。
さやか 「お、おはよー」
ほむら 「おはよう、美樹さん」
彼女と会話を交わすのは、一緒に上条恭介の病室に行った時以来。
あの日さやかと仲違いをして以来、気まずくって・・・どちらからともなく、互いを避けるようにしていたから。
そんな彼女が、むこうから声をかけてきた。
・・・なにかあったのかしら?
ほむら 「私に何か用?」
496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:51:45.13 ID:CmL6rb/G0
さやか 「う、うーん・・・」
言いよどむさやかの背後から、小さく「ほら、ほら」と急き立てるような声がする。
ほむら 「・・・?」
立ち上がり、さやかの背後を覗き込んでみると・・・
まどか 「あっ」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひひ・・・見つかっちゃった」
さやかの背中に隠れるように、小さく身を屈めたまどかと目があったのだ。
ほむら 「鹿目さん・・・何をやっているの?」
まどか 「あ、いやぁ~・・・特に何をと言うわけじゃ~・・・」
ほむら 「・・・?」
さやか 「その、じつはさ・・・まどかに急かされちゃって。今すぐ行けって、背中を押されちゃったって訳でさ・・・」
ほむら 「よく分からないわ」
さやか 「そのね、あの、ねぇ・・・」
まどか 「さやかちゃん、ファイト!」
隠れるのを止めたまどかが、さやかの隣に立って何やら応援している。
さやかの方は、顔が真っ赤だ。
・・・これは、このシチュエーションはもしかして・・・っ!?
さやか 「あのね、暁美さん!」
ほむら 「ま、待って!」
私は慌てて、さやかの言葉をさえぎる。
ここから先を、彼女に言わせるわけにはいかない。
言いよどむさやかの背後から、小さく「ほら、ほら」と急き立てるような声がする。
ほむら 「・・・?」
立ち上がり、さやかの背後を覗き込んでみると・・・
まどか 「あっ」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひひ・・・見つかっちゃった」
さやかの背中に隠れるように、小さく身を屈めたまどかと目があったのだ。
ほむら 「鹿目さん・・・何をやっているの?」
まどか 「あ、いやぁ~・・・特に何をと言うわけじゃ~・・・」
ほむら 「・・・?」
さやか 「その、じつはさ・・・まどかに急かされちゃって。今すぐ行けって、背中を押されちゃったって訳でさ・・・」
ほむら 「よく分からないわ」
さやか 「そのね、あの、ねぇ・・・」
まどか 「さやかちゃん、ファイト!」
隠れるのを止めたまどかが、さやかの隣に立って何やら応援している。
さやかの方は、顔が真っ赤だ。
・・・これは、このシチュエーションはもしかして・・・っ!?
さやか 「あのね、暁美さん!」
ほむら 「ま、待って!」
私は慌てて、さやかの言葉をさえぎる。
ここから先を、彼女に言わせるわけにはいかない。
497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:53:42.37 ID:CmL6rb/G0
さやか 「っ、な、なによ!人がせっかく決心して言おうとしてたのに!」
ほむら 「気持ちは嬉しい。だけれど私、あなたの想いに応えることはできないの」
まどか 「え、ほむらちゃん、そんな・・・」
さやか 「・・・」
ほむら 「だから、ごめんなさい」
さやか 「そ、そっかぁ。そうだよね・・・」
さやかが悲しそうに、ションボリと肩を落とし、床を見つめながら言う。
いつもの元気なさやかの姿を知ってる分、このように落胆されると、こちらも罪悪感を感じてしまう・・・
だけれど、まどかの前でいい加減なごまかしなんて、言えるわけない。
ほむら 「私には、心に決めた人がいるから・・・それにそれは、あなたも同じだったはず」
さやか 「へ・・・?」
まどか 「・・・うぇひ?」
さやかとまどか、なぜか目が点。
あれ、予想外の反応・・・
そして。
さやか 「暁美さん、なに言ってるのさ・・・」
まどか 「ほむらちゃん、まじめなお話してるのに、そういうボケはいけないと思うよ」
さやかには心底あきれた目で見られ、まどかにはお説教を喰らってしまった。
え、私・・・なにかボケちゃってたかしら?
ほむら 「気持ちは嬉しい。だけれど私、あなたの想いに応えることはできないの」
まどか 「え、ほむらちゃん、そんな・・・」
さやか 「・・・」
ほむら 「だから、ごめんなさい」
さやか 「そ、そっかぁ。そうだよね・・・」
さやかが悲しそうに、ションボリと肩を落とし、床を見つめながら言う。
いつもの元気なさやかの姿を知ってる分、このように落胆されると、こちらも罪悪感を感じてしまう・・・
だけれど、まどかの前でいい加減なごまかしなんて、言えるわけない。
ほむら 「私には、心に決めた人がいるから・・・それにそれは、あなたも同じだったはず」
さやか 「へ・・・?」
まどか 「・・・うぇひ?」
さやかとまどか、なぜか目が点。
あれ、予想外の反応・・・
そして。
さやか 「暁美さん、なに言ってるのさ・・・」
まどか 「ほむらちゃん、まじめなお話してるのに、そういうボケはいけないと思うよ」
さやかには心底あきれた目で見られ、まどかにはお説教を喰らってしまった。
え、私・・・なにかボケちゃってたかしら?
498: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:54:12.36 ID:CmL6rb/G0
さやか 「私は、この前の病院での事を謝って、仲直りができたらなって思ってさ。こうして、言いに来ただけなんだけれど・・・」
まどか 「さやかちゃん、あれからずっと悩んでて。でも、なかなか謝るきっかけが見つけられないって言うから、こうして私がついて来たのに・・・」
ほむら 「え・・・あれ・・・?」
さやか 「て言うか、今、あっさり言えちゃったわ。もしかして暁美さん、私が言い出しやすいように、わざとボケてくれたの?」
ほむら 「あ、いや・・・」
まどか 「あれ、そうだったんだ!そうとはしらず、怒っちゃってごめんね、ほむらちゃん!」
ほむら 「う、ううん、気にしないで・・・」
今度は逆に感心されてしまった。
私はただ、どうしようもない勘違いをしただけなんだけれど・・・
竜馬 「詰めの甘さは天下一品だな」
私たちの様子を席から見ていた竜馬が漏らした一言を、私はあえて聞き逃す。
そして、まどかたちに一言、告げたのだった。
ほむら 「う、嘘も方便というでしょ」
まどか 「さやかちゃん、あれからずっと悩んでて。でも、なかなか謝るきっかけが見つけられないって言うから、こうして私がついて来たのに・・・」
ほむら 「え・・・あれ・・・?」
さやか 「て言うか、今、あっさり言えちゃったわ。もしかして暁美さん、私が言い出しやすいように、わざとボケてくれたの?」
ほむら 「あ、いや・・・」
まどか 「あれ、そうだったんだ!そうとはしらず、怒っちゃってごめんね、ほむらちゃん!」
ほむら 「う、ううん、気にしないで・・・」
今度は逆に感心されてしまった。
私はただ、どうしようもない勘違いをしただけなんだけれど・・・
竜馬 「詰めの甘さは天下一品だな」
私たちの様子を席から見ていた竜馬が漏らした一言を、私はあえて聞き逃す。
そして、まどかたちに一言、告げたのだった。
ほむら 「う、嘘も方便というでしょ」
499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 22:56:49.68 ID:CmL6rb/G0
・・・
・・・
教室
お昼休み
楽しいお昼時。
教室のみんなは銘銘、学食に行ったり、仲の良いもの同士が集まったりとしながら、食事の準備に余念のない様子。
私はといえば、机を移動させて、一群の集まりに合流していた。
そのメンバーは、まどか、さやか、そして志筑仁美の三人。
そこに私を交えた四人でテーブルを囲み、食事をとることになってしまったのだ。
ほむら (なぜかといえば、朝にさやかが謝りに来てくれた時・・・)
けっきょく私のボケ(という事にしておこう)が原因で、満足に話ができない内に朝礼の時間になってしまったから。
だから話の続きは持ち越しという事で、お昼を一緒にとりながら・・・と、いう流れになってしまったというわけ。
ほむら (こうして、友達と学校で食事するなんて、いつ以来かしら・・・)
思い出せないくらい、昔の事になってしまった。
・・・
教室
お昼休み
楽しいお昼時。
教室のみんなは銘銘、学食に行ったり、仲の良いもの同士が集まったりとしながら、食事の準備に余念のない様子。
私はといえば、机を移動させて、一群の集まりに合流していた。
そのメンバーは、まどか、さやか、そして志筑仁美の三人。
そこに私を交えた四人でテーブルを囲み、食事をとることになってしまったのだ。
ほむら (なぜかといえば、朝にさやかが謝りに来てくれた時・・・)
けっきょく私のボケ(という事にしておこう)が原因で、満足に話ができない内に朝礼の時間になってしまったから。
だから話の続きは持ち越しという事で、お昼を一緒にとりながら・・・と、いう流れになってしまったというわけ。
ほむら (こうして、友達と学校で食事するなんて、いつ以来かしら・・・)
思い出せないくらい、昔の事になってしまった。
500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 23:03:59.66 ID:CmL6rb/G0
もう、誰にも頼らない。そう思いつめてから、私は人との接触を必要最低限以上は取らないように心がけていたから。
だから、こういう場は本当に馴れない。成り行きで参加してしまったけれど、魔女との戦いよりよほど緊張してしまう。
まどか 「ほむらちゃん、こうして一緒にご飯食べるの、初めてだよね」
ほむら 「そ、そうね」
仁美 「あら・・・暁美さんのお弁当箱、可愛いですね。黒ネコさんのイラストがチャームポイントになっていて」
仁美が私のお弁当箱を指して、にっこり笑う。
ほむら 「あ、これは・・・知り合いの子供が選んでくれたの」
私の部屋には、余分な食器が用意していなかった。
だから先日、ゆまと一緒に必要な雑貨を買いに、街まで買い物に行ってきたのだ。
お弁当箱はその時、ゆまが見繕ってくれた。
ほむら 「何となく、この黒猫が私に似ているからと」
まどか 「へぇーぇ」
それに合わせて、今までは購買のパンで済ませていた昼食も、自分で作るように生活を切り替えた。
けっきょく、頼りにしていたマミからはカレーしか教わる事ができなかったけれど、野菜の切り方やご飯の炊き方などは、あの時に教わっていたし。
それ以外はネットなどを駆使して、自炊するようにしたのだ。
だから、こういう場は本当に馴れない。成り行きで参加してしまったけれど、魔女との戦いよりよほど緊張してしまう。
まどか 「ほむらちゃん、こうして一緒にご飯食べるの、初めてだよね」
ほむら 「そ、そうね」
仁美 「あら・・・暁美さんのお弁当箱、可愛いですね。黒ネコさんのイラストがチャームポイントになっていて」
仁美が私のお弁当箱を指して、にっこり笑う。
ほむら 「あ、これは・・・知り合いの子供が選んでくれたの」
私の部屋には、余分な食器が用意していなかった。
だから先日、ゆまと一緒に必要な雑貨を買いに、街まで買い物に行ってきたのだ。
お弁当箱はその時、ゆまが見繕ってくれた。
ほむら 「何となく、この黒猫が私に似ているからと」
まどか 「へぇーぇ」
それに合わせて、今までは購買のパンで済ませていた昼食も、自分で作るように生活を切り替えた。
けっきょく、頼りにしていたマミからはカレーしか教わる事ができなかったけれど、野菜の切り方やご飯の炊き方などは、あの時に教わっていたし。
それ以外はネットなどを駆使して、自炊するようにしたのだ。
501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/26(木) 23:06:18.11 ID:CmL6rb/G0
やってみると、意外と楽しい。ゆまも喜んで食べてくれるし、お手伝いも率先してやってくれる。
今まで使命感だけで生きてきて、ほかの事に目が届いていなかった分、新たに開かれた世界は新鮮で、そして・・・
まどか 「そう言うのって、何だか良いねっ」
ほむら 「ええ、本当に・・・本当に素晴らしいものだと思えるわ」
まどか 「そっかぁ。じゃあ、私からも素晴らしいものを一つ。はいこれ。食べてねっ」
まどかが自分のお弁当箱から私のお弁当箱へと、卵焼きを一つ入れてくれた。
ほむら 「え、これって・・・?」
まどか 「初めて一緒にお昼を食べる記念のプレゼントだよっ」
ほむら 「あ、ありがとう・・・」
仁美 「ふふっ、あらあら」
さやか 「あ~~っ!」
それを目ざとく見つけて、身を乗り出してくるさやか。
さやか 「ちょっと!いいな~。まどかのパパさんの卵焼き絶品じゃん!さやかちゃんにも一つ、よこしなさいよ!」
まどか 「うぇひひ、だめだよー。私だって大好きなんだから、残りは私が食べちゃうの」
さやか 「むー、良いな良いな、暁美さん羨ましいな!」
仁美 「さやかさん、大人気ないですよ・・・」
さやか 「わかったわよ・・・暁美さん、私の代わりに絶品卵焼き、良く味わって食べるのよ!」
ほむら 「分かったわ・・・鹿目さん、ありがとう」
まどか 「うぇひひ、どういたしましてっ」
緊張するけれど・・・
こういうの、嫌いじゃないなって思った。
今まで使命感だけで生きてきて、ほかの事に目が届いていなかった分、新たに開かれた世界は新鮮で、そして・・・
まどか 「そう言うのって、何だか良いねっ」
ほむら 「ええ、本当に・・・本当に素晴らしいものだと思えるわ」
まどか 「そっかぁ。じゃあ、私からも素晴らしいものを一つ。はいこれ。食べてねっ」
まどかが自分のお弁当箱から私のお弁当箱へと、卵焼きを一つ入れてくれた。
ほむら 「え、これって・・・?」
まどか 「初めて一緒にお昼を食べる記念のプレゼントだよっ」
ほむら 「あ、ありがとう・・・」
仁美 「ふふっ、あらあら」
さやか 「あ~~っ!」
それを目ざとく見つけて、身を乗り出してくるさやか。
さやか 「ちょっと!いいな~。まどかのパパさんの卵焼き絶品じゃん!さやかちゃんにも一つ、よこしなさいよ!」
まどか 「うぇひひ、だめだよー。私だって大好きなんだから、残りは私が食べちゃうの」
さやか 「むー、良いな良いな、暁美さん羨ましいな!」
仁美 「さやかさん、大人気ないですよ・・・」
さやか 「わかったわよ・・・暁美さん、私の代わりに絶品卵焼き、良く味わって食べるのよ!」
ほむら 「分かったわ・・・鹿目さん、ありがとう」
まどか 「うぇひひ、どういたしましてっ」
緊張するけれど・・・
こういうの、嫌いじゃないなって思った。
510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:17:52.37 ID:6V7QUEZr0
・・・
・・・
ご飯を食べながら聞いたさやかの話では、上条恭介は現在、精力的にリハビリに精を出しているそうだ。
一時期は自暴自棄になりかけていた彼も、今ではすっかりと「本来の恭介(さやか曰く)」に戻って頑張っているのだという。
まどか 「それで、あの・・・これって、聞いちゃって良いのかな?」
さやか 「恭介の怪我の事だよね。足の方はともかく、腕の方はやっぱり厳しいみたいだよ」
まどか 「そ、そうなんだ・・・」
仁美 「・・・」
さやか 「だけどね、頑張ってる恭介を見ていると、私は思うし信じられるんだ」
ほむら 「なにを・・・?」
さやか 「奇跡も、魔法もあるんだって」
・・・
ご飯を食べながら聞いたさやかの話では、上条恭介は現在、精力的にリハビリに精を出しているそうだ。
一時期は自暴自棄になりかけていた彼も、今ではすっかりと「本来の恭介(さやか曰く)」に戻って頑張っているのだという。
まどか 「それで、あの・・・これって、聞いちゃって良いのかな?」
さやか 「恭介の怪我の事だよね。足の方はともかく、腕の方はやっぱり厳しいみたいだよ」
まどか 「そ、そうなんだ・・・」
仁美 「・・・」
さやか 「だけどね、頑張ってる恭介を見ていると、私は思うし信じられるんだ」
ほむら 「なにを・・・?」
さやか 「奇跡も、魔法もあるんだって」
511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:19:18.79 ID:6V7QUEZr0
ほむら 「え・・・」
驚いて、おもわずさやかを凝視してしまう私。
魔法少女の存在を知っているまどかも、目をまん丸にしてさやかを見つめている。
そんな視線に気がついて、彼女は頭をかきながら、苦笑まじりに言った。
さやか 「やだなー、何、その顔」
まどか 「だってさやかちゃん、今、魔法って・・・」
さやか 「なになにー、まどかまで。さやかちゃんが柄にもなくメルヘンな事を言ったからって、その反応はあんまりじゃない?」
ほむら 「じゃあ、魔法っていうのは・・・?」
さやか 「例えよ、物の例え。だけれどね、恭介はあんなに頑張ってるんだもん。奇跡だってなんだって、起こせるんじゃないかなって。私には、そう思えるんだ」
ほむら 「そう、そうだったの・・・」
安堵のため息を漏らしながら、私は平静を装って、さやかの言葉に相づちで応えた。
そう、この時間軸でのさやかにとって、キュウべぇとの契約がもたらす願いなんて、もはや何の意味もない。
その事は理解していても、やはり彼女の口から”魔法”の二文字が出ると、ドキリとしてしまう。
驚いて、おもわずさやかを凝視してしまう私。
魔法少女の存在を知っているまどかも、目をまん丸にしてさやかを見つめている。
そんな視線に気がついて、彼女は頭をかきながら、苦笑まじりに言った。
さやか 「やだなー、何、その顔」
まどか 「だってさやかちゃん、今、魔法って・・・」
さやか 「なになにー、まどかまで。さやかちゃんが柄にもなくメルヘンな事を言ったからって、その反応はあんまりじゃない?」
ほむら 「じゃあ、魔法っていうのは・・・?」
さやか 「例えよ、物の例え。だけれどね、恭介はあんなに頑張ってるんだもん。奇跡だってなんだって、起こせるんじゃないかなって。私には、そう思えるんだ」
ほむら 「そう、そうだったの・・・」
安堵のため息を漏らしながら、私は平静を装って、さやかの言葉に相づちで応えた。
そう、この時間軸でのさやかにとって、キュウべぇとの契約がもたらす願いなんて、もはや何の意味もない。
その事は理解していても、やはり彼女の口から”魔法”の二文字が出ると、ドキリとしてしまう。
512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:20:41.84 ID:6V7QUEZr0
ほむら 「やはりあなたは、美樹さやかなのね」
状況や立場が違っていても、彼女の本質は何も変わりはなしない。
さやか 「意味深なこと言うのね。どういう意味?」
ほむら 「あなたらしいって、そう思っただけ」
さやか 「?」
ひたむきなまでに一途で、普段は活発さに隠れて見えにくいけれど、本当はどこまでも女性的な優しさを持つ人。
それが悪い方に現れて、苦しめられた時間軸もあったけれど・・・
やっぱりさやかの本質を私は嫌いになれない。むしろ、好ましいとさえ思えてしまう。
状況や立場が違っていても、彼女の本質は何も変わりはなしない。
さやか 「意味深なこと言うのね。どういう意味?」
ほむら 「あなたらしいって、そう思っただけ」
さやか 「?」
ひたむきなまでに一途で、普段は活発さに隠れて見えにくいけれど、本当はどこまでも女性的な優しさを持つ人。
それが悪い方に現れて、苦しめられた時間軸もあったけれど・・・
やっぱりさやかの本質を私は嫌いになれない。むしろ、好ましいとさえ思えてしまう。
513: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:22:40.30 ID:6V7QUEZr0
ほむら (さやかと上条恭介がこれからも行き続けていく見滝原の街・・・)
ふ、と仁美のほうを見ると、彼女は一連の会話に口を挟むこともなく、もくもくと食事を続けていた。
私は知っている。仁美も上条恭介の事を、以前から慕っていたという事を。
しかし、今さらさやかと恭介の間に割り込むことは不可能と知って、自分の想いを外に出さないように必死なのだろう。
さやか 「ん、どしたの、仁美。黙りこくっちゃってさ」
仁美 「あ、別に何でも。込み入った話でしたので、立ち入るのもどうかと思って・・・」
さやか 「そんなこと、気にしないで良いのに。お、仁美のお弁当は今日も豪勢だね。それ、おいしそうだなー」
仁美 「さやかさんったら、相変わらずですのね。ふふっ、よろしければ、お一つどうぞ?」
そして、今までと変わらない態度で、さやかと接している。
彼女も辛いだろうな。
だけれど、どうにもならない事を態度に表して、周りを困惑させることは仁美の美意識に反する事なんだろう。
だから、いつも通りの自分を演じている。立派だと思う。
ほむら (そして志筑仁美が新しい望みを見出し、育んでいくはずの街・・・)
友達のためにも。この見滝原を守り通したい。
いや、まどか共々、この街も必ず守ってみせる。
まどかたちが食事を取る姿を眺めながら、私は決意も新たに、己に誓ったのだった。
ふ、と仁美のほうを見ると、彼女は一連の会話に口を挟むこともなく、もくもくと食事を続けていた。
私は知っている。仁美も上条恭介の事を、以前から慕っていたという事を。
しかし、今さらさやかと恭介の間に割り込むことは不可能と知って、自分の想いを外に出さないように必死なのだろう。
さやか 「ん、どしたの、仁美。黙りこくっちゃってさ」
仁美 「あ、別に何でも。込み入った話でしたので、立ち入るのもどうかと思って・・・」
さやか 「そんなこと、気にしないで良いのに。お、仁美のお弁当は今日も豪勢だね。それ、おいしそうだなー」
仁美 「さやかさんったら、相変わらずですのね。ふふっ、よろしければ、お一つどうぞ?」
そして、今までと変わらない態度で、さやかと接している。
彼女も辛いだろうな。
だけれど、どうにもならない事を態度に表して、周りを困惑させることは仁美の美意識に反する事なんだろう。
だから、いつも通りの自分を演じている。立派だと思う。
ほむら (そして志筑仁美が新しい望みを見出し、育んでいくはずの街・・・)
友達のためにも。この見滝原を守り通したい。
いや、まどか共々、この街も必ず守ってみせる。
まどかたちが食事を取る姿を眺めながら、私は決意も新たに、己に誓ったのだった。
514: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:23:44.62 ID:6V7QUEZr0
・・・
・・・
仁美 「浅ましい・・・」
学校からの帰り道。
今日も習い事があるからと嘘をついて、志筑仁美は独り。
まどかやさやかと別れて、自宅の近所にある公園のベンチでひとりごちていた。
仁美 「私ったら、どうしてあのような事を・・・」
考えてしまったのだろう・・・
いや、それは今でも。
考えまい考えまいと心に強く命じるほどに、嫌な思いが胸の内を黒く染める事に抗うことができない。
だからこその、自己嫌悪。
浅ましくて愚かしくて、消えて無くなってしまいたくなる。
515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:25:59.61 ID:6V7QUEZr0
仁美 「ああ・・・」
落ち込んで、視線を足元に落とす。
すると、今までどうして気がつかなかったのだろう。
仁美の足元には、一匹の白い小動物が寄り添う様にたたずんでいた。
仁美 「あら・・・」
少し驚いたが、愛らしい動物が側によって来てくれた事は、生き物好きの仁美には素直に嬉しい出来事だった。
ささくれ立った心が慰められるようで、その事もありがたい。
だけれど・・・
仁美 「あなた・・・猫・・・とは、少し違うようだけれど・・・ウサギ・・・?とも、違うようだし」
まじまじ観察してみるが、その動物は仁美が知っているどの動物とも違って見えた。
実際に見たことはもちろん、図鑑やテレビでも見た記憶がない。
仁美 「まぁ、いいですわ」
深くは考えない事にして、仁美は動物をひょいと抱え上げ、自分の膝の上に載せる。
動物は嫌がるそぶりも見せず、仁美のなすがままに任されてくれた。
落ち込んで、視線を足元に落とす。
すると、今までどうして気がつかなかったのだろう。
仁美の足元には、一匹の白い小動物が寄り添う様にたたずんでいた。
仁美 「あら・・・」
少し驚いたが、愛らしい動物が側によって来てくれた事は、生き物好きの仁美には素直に嬉しい出来事だった。
ささくれ立った心が慰められるようで、その事もありがたい。
だけれど・・・
仁美 「あなた・・・猫・・・とは、少し違うようだけれど・・・ウサギ・・・?とも、違うようだし」
まじまじ観察してみるが、その動物は仁美が知っているどの動物とも違って見えた。
実際に見たことはもちろん、図鑑やテレビでも見た記憶がない。
仁美 「まぁ、いいですわ」
深くは考えない事にして、仁美は動物をひょいと抱え上げ、自分の膝の上に載せる。
動物は嫌がるそぶりも見せず、仁美のなすがままに任されてくれた。
516: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:28:04.01 ID:6V7QUEZr0
仁美 「ふふ、大人しいですのね。ねぇ、あなた。私のことを慰めて下さってるの?」
答えを期待しない問いかけをしながら、優しく頭を撫でてやる。
動物は鳴き声一つあげずに、仁美の顔をじっと見つめている。
まるで、彼女の次の言葉を促しているかのように。
仁美 「・・・あのね、聞いてくださる?」
仁美は、ポツリポツリと、今の心境を語って聞かせた。
自分にはずっと昔から、慕っている男性がいたという事。
その人の側には、彼の幼馴染が寄り添っていて、今さら自分が立ち入る隙間などないという事。
それでも今までだったら、彼が幼馴染を女性として意識していなかった事が見て取れていた。
だから、いつかは自分にも彼の心をつかむ機会が訪れるのではないか。そんな淡い期待を持ち続けていたという事。
そして・・・今となってはその期待も、砂上の楼閣のように脆くも崩れ去ってしまったという事。
答えを期待しない問いかけをしながら、優しく頭を撫でてやる。
動物は鳴き声一つあげずに、仁美の顔をじっと見つめている。
まるで、彼女の次の言葉を促しているかのように。
仁美 「・・・あのね、聞いてくださる?」
仁美は、ポツリポツリと、今の心境を語って聞かせた。
自分にはずっと昔から、慕っている男性がいたという事。
その人の側には、彼の幼馴染が寄り添っていて、今さら自分が立ち入る隙間などないという事。
それでも今までだったら、彼が幼馴染を女性として意識していなかった事が見て取れていた。
だから、いつかは自分にも彼の心をつかむ機会が訪れるのではないか。そんな淡い期待を持ち続けていたという事。
そして・・・今となってはその期待も、砂上の楼閣のように脆くも崩れ去ってしまったという事。
517: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:31:00.81 ID:6V7QUEZr0
仁美 「・・・今にして思えば」
想い人と幼馴染。
恭介のことを仁美が知るよりずっと前から見続け、密かな想いを胸に秘めつつ側にいたさやか。
そんな、さやかが抱く想いの大切さに気がついた恭介。
上条恭介と美樹さやかは、遠回りをしながらも、今。あるべき形に辿り着いただけなのに違いない。
仁美 「さやかさんは大切なお友達。人の心を思いやれる、とても素晴らしい女の子ですわ。だから・・・」
恭介にとって、これがベストな事なのだと。
そう、理性では分かっていた。
分かっていたはずなのに。
仁美 「私、最低ですわ・・・」
付け入る隙を、二人の破局を望んでしまう自分が確かにいた。
そうすれば、今のさやかのポジションに自分が入り込む自信がある。
そんな浅ましい事を考えてしまう自分に、仁美は大きなショックを受けていたのだ。
想い人と幼馴染。
恭介のことを仁美が知るよりずっと前から見続け、密かな想いを胸に秘めつつ側にいたさやか。
そんな、さやかが抱く想いの大切さに気がついた恭介。
上条恭介と美樹さやかは、遠回りをしながらも、今。あるべき形に辿り着いただけなのに違いない。
仁美 「さやかさんは大切なお友達。人の心を思いやれる、とても素晴らしい女の子ですわ。だから・・・」
恭介にとって、これがベストな事なのだと。
そう、理性では分かっていた。
分かっていたはずなのに。
仁美 「私、最低ですわ・・・」
付け入る隙を、二人の破局を望んでしまう自分が確かにいた。
そうすれば、今のさやかのポジションに自分が入り込む自信がある。
そんな浅ましい事を考えてしまう自分に、仁美は大きなショックを受けていたのだ。
518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:32:19.60 ID:6V7QUEZr0
仁美 「大切な人なのにっ、大好きなお友達なのにっ!二人の幸せを素直に受け入れてあげられないなんて・・・っ!」
? 「人は二面性を持つ生き物よ。そして、綺麗ごとだけでは生きて行けない」
仁美 「えっ!?」
一瞬、膝の上の小動物が喋ったのかと思った。
だけれど、そうではなく。
声は仁美の隣から、穏やかな風に乗って流れてきたのだ。
顔を上げて、隣に視線を向けると、そこにはいつからいたのか・・・
自分と同じ年頃の、目を奪われるように美しい少女が一人、腰を下ろしていた。
仁美 「え・・・あ、あなた、は・・・?」
? 「こんにちわ」
仁美 「こんにちわ・・・」
? 「人は二面性を持つ生き物よ。そして、綺麗ごとだけでは生きて行けない」
仁美 「えっ!?」
一瞬、膝の上の小動物が喋ったのかと思った。
だけれど、そうではなく。
声は仁美の隣から、穏やかな風に乗って流れてきたのだ。
顔を上げて、隣に視線を向けると、そこにはいつからいたのか・・・
自分と同じ年頃の、目を奪われるように美しい少女が一人、腰を下ろしていた。
仁美 「え・・・あ、あなた、は・・・?」
? 「こんにちわ」
仁美 「こんにちわ・・・」
519: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:33:58.56 ID:6V7QUEZr0
? 「盗み聞きするつもりはなかったのだけれど・・・聞こえてしまったの。あなたの胸のうち、あなたの苦悩が」
仁美 「あっ・・・」
顔を赤くして俯く仁美。
はからずも、膝もとの動物と目が合ってしまう。
? 「ここで会ったのも、何かの縁。自己紹介をしましょう。私は美国織莉子・・・」
仁美 「美国さん・・・?」
織莉子 「織莉子で良いわ。私もあなたのことを名前で呼ばせていただくから」
仁美 「・・・」
織莉子 「志筑仁美さん?」
仁美 「っわ、私の名前を・・・!?」
織莉子 「ふふ、驚かせてしまったら、ごめんなさいね。私、少し前から、あなたの事を見ていたの」
仁美 「少し前って・・・」
織莉子 「数日前から。お友達になりたくって」
仁美 「・・・お友達に?私と?」
織莉子 「ええ。そして、見ていたから分かる。仁美さん、悩んでいるのね」
仁美 「・・・え、ええ」
仁美 「あっ・・・」
顔を赤くして俯く仁美。
はからずも、膝もとの動物と目が合ってしまう。
? 「ここで会ったのも、何かの縁。自己紹介をしましょう。私は美国織莉子・・・」
仁美 「美国さん・・・?」
織莉子 「織莉子で良いわ。私もあなたのことを名前で呼ばせていただくから」
仁美 「・・・」
織莉子 「志筑仁美さん?」
仁美 「っわ、私の名前を・・・!?」
織莉子 「ふふ、驚かせてしまったら、ごめんなさいね。私、少し前から、あなたの事を見ていたの」
仁美 「少し前って・・・」
織莉子 「数日前から。お友達になりたくって」
仁美 「・・・お友達に?私と?」
織莉子 「ええ。そして、見ていたから分かる。仁美さん、悩んでいるのね」
仁美 「・・・え、ええ」
520: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:34:55.97 ID:6V7QUEZr0
今、初めて会話を交わした相手。
無遠慮に踏み込んでくる態度に、普段の仁美であったら腹を立てて、この場を去っていただろう。
だけれど、疑心と自己嫌悪で心が弱っていた仁美には、優しい笑みを浮かべて自分に話しかけてくる、この少女・・・
美国織莉子の質問を振り切って、立ち上がる気持ちには、どうしてもなれなかった。
仁美 (不思議な人・・・人を惹きつけてやまない魅力のようなものがある・・・美国、織莉子さん・・・)
どうせ、まどかやさやかの誘いを断って、今日は暇なのだ。
なら、この人に思いの丈をぶつけてみるのも悪くない。仁美はそう思った。
仁美 「わ、私・・・」
誰かに聞いてもらいたかった。
もし、それで不愉快な思いをしたなら、その時はこの場を去り、それっきりにすれば何も問題はないのだから。
無遠慮に踏み込んでくる態度に、普段の仁美であったら腹を立てて、この場を去っていただろう。
だけれど、疑心と自己嫌悪で心が弱っていた仁美には、優しい笑みを浮かべて自分に話しかけてくる、この少女・・・
美国織莉子の質問を振り切って、立ち上がる気持ちには、どうしてもなれなかった。
仁美 (不思議な人・・・人を惹きつけてやまない魅力のようなものがある・・・美国、織莉子さん・・・)
どうせ、まどかやさやかの誘いを断って、今日は暇なのだ。
なら、この人に思いの丈をぶつけてみるのも悪くない。仁美はそう思った。
仁美 「わ、私・・・」
誰かに聞いてもらいたかった。
もし、それで不愉快な思いをしたなら、その時はこの場を去り、それっきりにすれば何も問題はないのだから。
521: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:41:57.90 ID:6V7QUEZr0
・・・
・・・
織莉子 「そう・・・」
仁美 「・・・」
この人は、私の話を聞いて、どう思っただろう。
全てを語り終わった仁美は、織莉子が自分をどういう表情で見ているのか。
そのことを知るのが怖くて、膝上の動物から視線を外せずにいた。
・・・嫉妬と羨望に満ちた浅ましい心根を、さぞ卑しいと感じたのではないだろうか。
だけれど。
ふわっ
柔らかい感触が、身体を包む。
いつの間にか立ち上がった織莉子から、背中越しに抱きしめられたのだ。
仁美 「・・・っ!」
・・・
織莉子 「そう・・・」
仁美 「・・・」
この人は、私の話を聞いて、どう思っただろう。
全てを語り終わった仁美は、織莉子が自分をどういう表情で見ているのか。
そのことを知るのが怖くて、膝上の動物から視線を外せずにいた。
・・・嫉妬と羨望に満ちた浅ましい心根を、さぞ卑しいと感じたのではないだろうか。
だけれど。
ふわっ
柔らかい感触が、身体を包む。
いつの間にか立ち上がった織莉子から、背中越しに抱きしめられたのだ。
仁美 「・・・っ!」
522: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/28(土) 23:49:54.71 ID:6V7QUEZr0
織莉子 「辛かったのね」
仁美 「わた、私・・・」
織莉子 「誰にも言えず、誰にも語れず。心の痛みを表情にも出せず。大海に漕ぎ出した小船のように頼る術もなく、心細く・・・」
仁美 「・・・う、うぅ~~~」
織莉子 「泣きたい時は、泣いても良いの。辛い時は苦しみを隠すべきではないの」
仁美 「う・・・う・・・うぁ・・・」
織莉子 「そして、望んだものがあれば・・・それは自分に正直に望むべきなのよ」
仁美 「あああーーーーんっ」
人肌の温かみに心がほだされ、決壊した瞳からは涙が際限なくあふれて来る。
こらえ続けていた嗚咽は、心の膿を搾り出すように、胸の奥からいつまでも湧き上がってきた。
そんな仁美を、後は何も言わず。
織莉子は優しく抱きしめ続ける。
その様子を心底理解できないといった目で、膝もとの動物が見ているのを仁美は気がつかなかった。
キュウべぇ (まったく人というのは何世代を得ても、考えることは一緒なんだよね。 理解に苦しむよ・・・)
仁美 「わた、私・・・」
織莉子 「誰にも言えず、誰にも語れず。心の痛みを表情にも出せず。大海に漕ぎ出した小船のように頼る術もなく、心細く・・・」
仁美 「・・・う、うぅ~~~」
織莉子 「泣きたい時は、泣いても良いの。辛い時は苦しみを隠すべきではないの」
仁美 「う・・・う・・・うぁ・・・」
織莉子 「そして、望んだものがあれば・・・それは自分に正直に望むべきなのよ」
仁美 「あああーーーーんっ」
人肌の温かみに心がほだされ、決壊した瞳からは涙が際限なくあふれて来る。
こらえ続けていた嗚咽は、心の膿を搾り出すように、胸の奥からいつまでも湧き上がってきた。
そんな仁美を、後は何も言わず。
織莉子は優しく抱きしめ続ける。
その様子を心底理解できないといった目で、膝もとの動物が見ているのを仁美は気がつかなかった。
キュウべぇ (まったく人というのは何世代を得ても、考えることは一緒なんだよね。 理解に苦しむよ・・・)
529: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:00:00.79 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
翌日 朝
教室
志筑仁美が、学校を休んだ。
まどかやさやかと一緒に登校するための、いつもの待ち合わせ場所に現れなかったというのだ。
さやか 「仁美、どうしたんだろうね。風邪でもひいちゃったのかな」
まどか 「昨日はいつもと変わりなかったのにね。心配だよ」
なぜか私の席の前で、さやかとまどかが語り合っている。
一応私も、彼女たちの仲間として認められているという事だろうか。
ならばと、私も会話に加わってみた。
ほむら 「志筑さんから、何も連絡はなかったの?」
私の問いかけに、まどかが小首を傾げる。
まどか 「うん、なにも。仁美ちゃんが前に休んだ時は、メールで教えてくれたのに」
さやか 「だからよけいに心配なのよ。メールもできないくらいに具合が悪いとかさ」
・・・
翌日 朝
教室
志筑仁美が、学校を休んだ。
まどかやさやかと一緒に登校するための、いつもの待ち合わせ場所に現れなかったというのだ。
さやか 「仁美、どうしたんだろうね。風邪でもひいちゃったのかな」
まどか 「昨日はいつもと変わりなかったのにね。心配だよ」
なぜか私の席の前で、さやかとまどかが語り合っている。
一応私も、彼女たちの仲間として認められているという事だろうか。
ならばと、私も会話に加わってみた。
ほむら 「志筑さんから、何も連絡はなかったの?」
私の問いかけに、まどかが小首を傾げる。
まどか 「うん、なにも。仁美ちゃんが前に休んだ時は、メールで教えてくれたのに」
さやか 「だからよけいに心配なのよ。メールもできないくらいに具合が悪いとかさ」
530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:00:50.20 ID:UO5ovpxT0
ほむら 「・・・」
私と仁美は、それほど親しかったわけではない。
かつての時間軸でも、必要以上の接触をしたことはなかった。
それでも、彼女の真面目でマメな性格は、傍から見ていてもよく伝わってきていた。
自分に何かがあって、友人が心配するのがわかっていて、連絡をおざなりにするような人ではなかったはず。
ほむら 「心配ね・・・」
まどか 「ほむらちゃんも心配だよね。どうしよう!電話、してみようかな」
さやか 「まぁ、待ちなって。本当に具合が悪いなら、寝ていてメールどころじゃないのかもしれないし」
ほむら 「そうね。まもなく先生も来るわ。休むのなら学校に連絡を入れているだろうし、少し待ちましょう」
まどか 「う、うん~・・・」
ほむら 「ほら、そろそろ予鈴が鳴るわ。二人とも、席に戻った方がいいわよ」
私に促され、二人はそれぞれの席へと戻っていった。
私と仁美は、それほど親しかったわけではない。
かつての時間軸でも、必要以上の接触をしたことはなかった。
それでも、彼女の真面目でマメな性格は、傍から見ていてもよく伝わってきていた。
自分に何かがあって、友人が心配するのがわかっていて、連絡をおざなりにするような人ではなかったはず。
ほむら 「心配ね・・・」
まどか 「ほむらちゃんも心配だよね。どうしよう!電話、してみようかな」
さやか 「まぁ、待ちなって。本当に具合が悪いなら、寝ていてメールどころじゃないのかもしれないし」
ほむら 「そうね。まもなく先生も来るわ。休むのなら学校に連絡を入れているだろうし、少し待ちましょう」
まどか 「う、うん~・・・」
ほむら 「ほら、そろそろ予鈴が鳴るわ。二人とも、席に戻った方がいいわよ」
私に促され、二人はそれぞれの席へと戻っていった。
531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:03:52.04 ID:UO5ovpxT0
それにしても、志筑仁美。彼女に一体何があったのか。
ほむら (単なる風邪なら良いのだけれど・・・)
・・・妙な胸騒ぎがするのは、どうしてだろう。
竜馬 「嫌な予感がするな」
まどか達が去った後、隣の席の竜馬が、声を落としながら話しかけてきた。
ほむら 「なにか、思い当る事でも?」
竜馬 「あるわけないだろ。志筑仁美とはほとんど話したこともないんだ。だがな、こういう時には臭ってきやがるんだよ」
ほむら 「臭い・・・?」
竜馬 「ああ、戦いの中で身に着けた嗅覚がな、嗅ぎつけやがるのさ。嫌な事件特有の臭いってやつを、さ」
ほむら (不安になるようなこと、言ってくれるわ)
だけれど、同じような思いを抱いてしまっている私には、竜馬の言う事を思い過ごしと聞き流すことはできなかった。
ほむら (単なる風邪なら良いのだけれど・・・)
・・・妙な胸騒ぎがするのは、どうしてだろう。
竜馬 「嫌な予感がするな」
まどか達が去った後、隣の席の竜馬が、声を落としながら話しかけてきた。
ほむら 「なにか、思い当る事でも?」
竜馬 「あるわけないだろ。志筑仁美とはほとんど話したこともないんだ。だがな、こういう時には臭ってきやがるんだよ」
ほむら 「臭い・・・?」
竜馬 「ああ、戦いの中で身に着けた嗅覚がな、嗅ぎつけやがるのさ。嫌な事件特有の臭いってやつを、さ」
ほむら (不安になるようなこと、言ってくれるわ)
だけれど、同じような思いを抱いてしまっている私には、竜馬の言う事を思い過ごしと聞き流すことはできなかった。
532: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:05:46.86 ID:UO5ovpxT0
・・・やがて。
朝のHR開始を告げるチャイムが、スピーカーから流れてきた。
だけれど、変ね。いつもならすぐにやって来るはずの先生が、今朝はなぜだか教室に姿を現さない。
中沢 「先生、遅いよな…?」
数分たって。
普段何かと和子先生の無茶な質問につき合わされている中沢君が、疑問の声を上げた。
それを皮切りに、静まり返っていた教室の中が、にわかに騒めきだす。
それから、さらに数分がたち、教室のざわめきが最高潮に達したころ。。
やっと先生が、教室へと姿を現した。
のだが・・・
和子 「皆さん、お早うございます」
教壇に立った先生の表情が、どことなく固い。
朝のHR開始を告げるチャイムが、スピーカーから流れてきた。
だけれど、変ね。いつもならすぐにやって来るはずの先生が、今朝はなぜだか教室に姿を現さない。
中沢 「先生、遅いよな…?」
数分たって。
普段何かと和子先生の無茶な質問につき合わされている中沢君が、疑問の声を上げた。
それを皮切りに、静まり返っていた教室の中が、にわかに騒めきだす。
それから、さらに数分がたち、教室のざわめきが最高潮に達したころ。。
やっと先生が、教室へと姿を現した。
のだが・・・
和子 「皆さん、お早うございます」
教壇に立った先生の表情が、どことなく固い。
533: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:06:43.85 ID:UO5ovpxT0
和子 「遅くなってすみません。それと、もうこんな時間なので、朝のホームルームは中止にします。あと・・・」
先生が生徒たちの席に目を走らせる。見つめているのは・・・
ほむら (まどかと、さやか・・・?)
和子 「鹿目さん、それと美樹さん」
まどか 「は、はい」
和子 「二人には悪いのだけど、授業に使うプリントを運ぶお手伝いをして欲しいの。いいかしら」
さやか 「え、まぁ、そりゃ構わないですけど、なんで私ら・・・?」
和子 「ほかの皆さんは、先生が戻るまで自習をしていて下さい。以上」
先生は早々に話を切り上げると、まどか達を従えて、さっさと教室を出て行ってしまった。
それと同時に、再び喧騒に包まれる教室内。
先生が生徒たちの席に目を走らせる。見つめているのは・・・
ほむら (まどかと、さやか・・・?)
和子 「鹿目さん、それと美樹さん」
まどか 「は、はい」
和子 「二人には悪いのだけど、授業に使うプリントを運ぶお手伝いをして欲しいの。いいかしら」
さやか 「え、まぁ、そりゃ構わないですけど、なんで私ら・・・?」
和子 「ほかの皆さんは、先生が戻るまで自習をしていて下さい。以上」
先生は早々に話を切り上げると、まどか達を従えて、さっさと教室を出て行ってしまった。
それと同時に、再び喧騒に包まれる教室内。
534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:10:31.52 ID:UO5ovpxT0
誰だって分かる。あまりにも不自然な、先生のあの態度。
竜馬 「何かがあったな」
ほむら 「ええ・・・」
ほむら (ということは、志筑仁美の身に何か?だから、仁美と親しい二人を連れだして、話を聞こうと・・・?)
いくら疑問に思っても、今は仮説をたてる以外になす術がない。
私には喧噪のなか、まどか達の帰りを待つ事しかできなかった。
竜馬 「何かがあったな」
ほむら 「ええ・・・」
ほむら (ということは、志筑仁美の身に何か?だから、仁美と親しい二人を連れだして、話を聞こうと・・・?)
いくら疑問に思っても、今は仮説をたてる以外になす術がない。
私には喧噪のなか、まどか達の帰りを待つ事しかできなかった。
535: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:14:54.65 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
まどか 「仁美ちゃん、昨日から家に帰ってないんだって・・・」
一時間目も終わろうという時間になって戻って来た、まどかとさやか。
休憩時間になって事情を聴こうと、トイレに誘うふりをしてまどかを連れ出した私。
トイレまでの道すがら、人気が無い場所でまどかがコソリと話してくれた。
ほむら 「昨日から・・・?」
まどか 「うん。お家の人もなにも聞いないんだって・・・」
ほむら 「それで、まどか達が呼び出されたの?」
まどか 「うん。いつも私やさやかちゃんと一緒に帰ってるからって。だけど昨日は、仁美ちゃんとは別々に帰っちゃったし・・・」
語りながらも、まどかは今にも泣きだしてしまいそうだ。
・・・
まどか 「仁美ちゃん、昨日から家に帰ってないんだって・・・」
一時間目も終わろうという時間になって戻って来た、まどかとさやか。
休憩時間になって事情を聴こうと、トイレに誘うふりをしてまどかを連れ出した私。
トイレまでの道すがら、人気が無い場所でまどかがコソリと話してくれた。
ほむら 「昨日から・・・?」
まどか 「うん。お家の人もなにも聞いないんだって・・・」
ほむら 「それで、まどか達が呼び出されたの?」
まどか 「うん。いつも私やさやかちゃんと一緒に帰ってるからって。だけど昨日は、仁美ちゃんとは別々に帰っちゃったし・・・」
語りながらも、まどかは今にも泣きだしてしまいそうだ。
536: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:17:03.35 ID:UO5ovpxT0
まどか 「仁美ちゃん、何かあったのかなぁ。昨日も一緒に帰っていたら、こんな事にならなかったのかなぁ」
ほむら 「まどか、自責の念に囚われているのなら、自分をあまり追い詰めないで」
まどか 「だって・・・」
ほむら 「友達だからって、いつだって一緒にいられるわけじゃない。彼女に何かがあったとしても、それはまどかのせいじゃないのだから」
まどか 「なにか・・・なにかって・・・」
ほむら 「もちろん、何もないことを私も祈ってはいるけれど・・・」
そうは言いながらも、あのしっかりとした志筑仁美が、家に何の連絡も入れずに行方知れずになるなんて、何事もないはずもない。
私は、そうも考えていた。
となれば、可能性としては・・・
ほむら (何らかの事件に巻き込まれたか・・・あるいは・・・)
魔女の結界に囚われたか・・・
ほむら 「まどか、自責の念に囚われているのなら、自分をあまり追い詰めないで」
まどか 「だって・・・」
ほむら 「友達だからって、いつだって一緒にいられるわけじゃない。彼女に何かがあったとしても、それはまどかのせいじゃないのだから」
まどか 「なにか・・・なにかって・・・」
ほむら 「もちろん、何もないことを私も祈ってはいるけれど・・・」
そうは言いながらも、あのしっかりとした志筑仁美が、家に何の連絡も入れずに行方知れずになるなんて、何事もないはずもない。
私は、そうも考えていた。
となれば、可能性としては・・・
ほむら (何らかの事件に巻き込まれたか・・・あるいは・・・)
魔女の結界に囚われたか・・・
537: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:19:38.32 ID:UO5ovpxT0
事実、こことは別の時間軸で、仁美は魔女に魅了され、危うく命を落としかけたことがあった。
その時は、間一髪のところをまどかと、魔法少女となったさやかに救われたのだけれど。
この時間軸でも、同じような出来事に遭遇していないとも限らないのだ。
まどか 「仁美ちゃん・・・仁美ちゃん・・・」ぐすぐす
ほむら (何にしても、放ってはおけないわね。もし志筑仁美の身に何かがあれば、まどかの心が持たない)
その弱みにキュウべぇが付け込んで来るかもしれない。
あいつに隙を見せるようなマネは、絶対に避けなければならないのだ。
ほむら 「まどか、心配しないで。志筑さんの事は、私も探してみるから」
まどか 「ほ、本当!?ほむらちゃん!」
ほむら 「ええ。だからあなたは普段通りに。だって彼女は、私にとっても大切な友人なのだから」
そう、今の私は、本心から思っているから。
その時は、間一髪のところをまどかと、魔法少女となったさやかに救われたのだけれど。
この時間軸でも、同じような出来事に遭遇していないとも限らないのだ。
まどか 「仁美ちゃん・・・仁美ちゃん・・・」ぐすぐす
ほむら (何にしても、放ってはおけないわね。もし志筑仁美の身に何かがあれば、まどかの心が持たない)
その弱みにキュウべぇが付け込んで来るかもしれない。
あいつに隙を見せるようなマネは、絶対に避けなければならないのだ。
ほむら 「まどか、心配しないで。志筑さんの事は、私も探してみるから」
まどか 「ほ、本当!?ほむらちゃん!」
ほむら 「ええ。だからあなたは普段通りに。だって彼女は、私にとっても大切な友人なのだから」
そう、今の私は、本心から思っているから。
538: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:21:35.09 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
放課後。
私と竜馬は、学校から少し離れた公園へと向かった。
そこで杏子と合流し、魔女狩りに向かう手筈となっていたのだ。
ほむら 「ねぇ・・・」
竜馬 「ん・・・?」
ほむら 「志筑仁美の事、まどかから聞いたのだけれど・・・」
道すがら、私は竜馬に、まどかから聞いた一部始終を話して聞かせた。
竜馬 「家族に連絡も入れず、家に帰っていない、か。ちゃちな火遊びするようなタイプには見えなかったがな」
ほむら 「当然よ。彼女がそんないい加減な人なら、まどかが友人として認めるはずがない」
・・・
放課後。
私と竜馬は、学校から少し離れた公園へと向かった。
そこで杏子と合流し、魔女狩りに向かう手筈となっていたのだ。
ほむら 「ねぇ・・・」
竜馬 「ん・・・?」
ほむら 「志筑仁美の事、まどかから聞いたのだけれど・・・」
道すがら、私は竜馬に、まどかから聞いた一部始終を話して聞かせた。
竜馬 「家族に連絡も入れず、家に帰っていない、か。ちゃちな火遊びするようなタイプには見えなかったがな」
ほむら 「当然よ。彼女がそんないい加減な人なら、まどかが友人として認めるはずがない」
539: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:23:53.42 ID:UO5ovpxT0
竜馬 「てことは、だ。俺が嗅ぎ当てた悪い予感は、的中しちまったって、考えても良さそうだな」
ほむら 「ええ、あとは手遅れではない事を祈るだけだけれど・・・」
魔女の結界に囚われてしまったのなら、普通の人間にそこから抜け出す事は、まず不可能だ。
願うらくは、結界の中で身をひそめ、何とか命の火を繋いでいて欲しい。
ほむら 「私たちが、当たりの結界を引くまで、なんとか、なんとしても・・・」
竜馬 「・・・片端から結界を潰していかなくてはならないな」
魔女の結界か、使い魔のそれかを選り好みしている余裕はないという事だ。
竜馬 「魔力の温存を図ってきた俺たちには、少しばかり不利な事態だがな」
ほむら 「仕方がないわ。仁美に何かがあったら、不安定となったまどかの心に、あいつがつけ入ってくる危険がある」
まどかを守り通す最善の方法をとるための、魔力の温存だったのだ。
優先順位が変われば、採るべき方策が変わるのも当然と考えなくてはならない。
竜馬 「まぁ、可能な限り戦闘は俺が行う。お前は必要以上には魔力を使おうとするなよ」
ほむら 「ありがとう、リョウ。頼りにしているわ」
ほむら 「ええ、あとは手遅れではない事を祈るだけだけれど・・・」
魔女の結界に囚われてしまったのなら、普通の人間にそこから抜け出す事は、まず不可能だ。
願うらくは、結界の中で身をひそめ、何とか命の火を繋いでいて欲しい。
ほむら 「私たちが、当たりの結界を引くまで、なんとか、なんとしても・・・」
竜馬 「・・・片端から結界を潰していかなくてはならないな」
魔女の結界か、使い魔のそれかを選り好みしている余裕はないという事だ。
竜馬 「魔力の温存を図ってきた俺たちには、少しばかり不利な事態だがな」
ほむら 「仕方がないわ。仁美に何かがあったら、不安定となったまどかの心に、あいつがつけ入ってくる危険がある」
まどかを守り通す最善の方法をとるための、魔力の温存だったのだ。
優先順位が変われば、採るべき方策が変わるのも当然と考えなくてはならない。
竜馬 「まぁ、可能な限り戦闘は俺が行う。お前は必要以上には魔力を使おうとするなよ」
ほむら 「ありがとう、リョウ。頼りにしているわ」
540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:27:31.10 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
ほむら 「・・・」
私はとある建物の前で立ち止まった。
竜馬 「どうした?」
ほむら 「この奥。そこの路地の間から、気配がする」
竜馬 「魔女の気配か?」
ほむら 「ええ、それともう一つ・・・」
竜馬 「魔法少女・・・?」
ほむら 「仲間以外の、ね」
竜馬 「・・・」
同じ魔法少女同士。なじみ深い仲間の気配なら、感じ間違うはずもない。
この奥から漂ってくるのは、今まで接したことのない気配。
それは、かつての時間軸で敵として渡り合った、美国織莉子や呉キリカの物とも明らかに異なる。
ほむら (そういえば、佐倉さんが言っていたわね・・・)
(杏子 「どうもこうも、聞いた通りさ。キュウべぇの奴、むやみやたらと魔法少女を増やしてやがるぜ」)
では、この先にいるのは、いまだ私が遭遇したことのない。
この時間軸特有の、新たな魔法少女というモノなのだろうか。
・・・
ほむら 「・・・」
私はとある建物の前で立ち止まった。
竜馬 「どうした?」
ほむら 「この奥。そこの路地の間から、気配がする」
竜馬 「魔女の気配か?」
ほむら 「ええ、それともう一つ・・・」
竜馬 「魔法少女・・・?」
ほむら 「仲間以外の、ね」
竜馬 「・・・」
同じ魔法少女同士。なじみ深い仲間の気配なら、感じ間違うはずもない。
この奥から漂ってくるのは、今まで接したことのない気配。
それは、かつての時間軸で敵として渡り合った、美国織莉子や呉キリカの物とも明らかに異なる。
ほむら (そういえば、佐倉さんが言っていたわね・・・)
(杏子 「どうもこうも、聞いた通りさ。キュウべぇの奴、むやみやたらと魔法少女を増やしてやがるぜ」)
では、この先にいるのは、いまだ私が遭遇したことのない。
この時間軸特有の、新たな魔法少女というモノなのだろうか。
541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:28:47.91 ID:UO5ovpxT0
竜馬 「で、どうするんだ?」
ほむら 「どうもこうも。美国織莉子の動きが気になる。ここにいる魔法少女が例の”バーゲン品”である可能性もあるわけだしね」
竜馬 「そうであれば、美国織莉子とやらと遭遇する機会が得られるかもしれない、か」
ほむら 「ええ」
竜馬 「奴が何者であれ、ゲッターのことを嗅ぎまわっているなら、捨て置くことはできない。何を目論んでいるのか、聞き出す必要があるだろう」
ほむら 「それに志筑仁美の件もあるわ。魔女の結界がそこにあるのに、見て見ぬふりはできない。行きましょう」
竜馬 「おう」
私たちは道を外れ、路地の中へと入っていった。
公園では杏子が待っているはずだけれど、仕方がない。
まずは、目の前の事象から対処する。
戦いの基本だもの。
ほむら 「どうもこうも。美国織莉子の動きが気になる。ここにいる魔法少女が例の”バーゲン品”である可能性もあるわけだしね」
竜馬 「そうであれば、美国織莉子とやらと遭遇する機会が得られるかもしれない、か」
ほむら 「ええ」
竜馬 「奴が何者であれ、ゲッターのことを嗅ぎまわっているなら、捨て置くことはできない。何を目論んでいるのか、聞き出す必要があるだろう」
ほむら 「それに志筑仁美の件もあるわ。魔女の結界がそこにあるのに、見て見ぬふりはできない。行きましょう」
竜馬 「おう」
私たちは道を外れ、路地の中へと入っていった。
公園では杏子が待っているはずだけれど、仕方がない。
まずは、目の前の事象から対処する。
戦いの基本だもの。
542: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:29:38.38 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
結界内
竜馬 「こりゃあ・・・」
結界に踏み込んでの、竜馬の第一声がそれだった。
あたりを見回すと、そこかしこに散乱しているのは使い魔たちの残骸の山。
竜馬 「派手にやってくれたもんだな。その、魔法少女さんとやらは」
ほむら 「ええ」
どうやら、よほどの手練れらしい。
杏子の話では、彼女が遭遇した”バーゲン品”は、戦う術もほとんど持たないような非力な子ばかりだったという事だけれど。
ここにいる魔法少女は、それとは別格の存在のようだ。
・・・
結界内
竜馬 「こりゃあ・・・」
結界に踏み込んでの、竜馬の第一声がそれだった。
あたりを見回すと、そこかしこに散乱しているのは使い魔たちの残骸の山。
竜馬 「派手にやってくれたもんだな。その、魔法少女さんとやらは」
ほむら 「ええ」
どうやら、よほどの手練れらしい。
杏子の話では、彼女が遭遇した”バーゲン品”は、戦う術もほとんど持たないような非力な子ばかりだったという事だけれど。
ここにいる魔法少女は、それとは別格の存在のようだ。
543: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:31:01.22 ID:UO5ovpxT0
竜馬 「だが・・・」
竜馬が使い魔の死骸が折り重なった周囲を眺めながらつぶやく。
竜馬 「力はあるようだが、お前のように”慣れた”戦いをするやつではないようだな」
ほむら 「ええ、そうね」
同感だった。
むやみやたらと、手当たり次第に使い魔を殺しつくす、この戦い方。
きっと魔力の消耗具合は尋常ではないだろう。
このような戦い方を続けていては、ソウルジェムが持つはずがない。
と、すれば・・・
ほむら 「資質の高い、新人の魔法少女・・・」
竜馬 「危ういな」
この奥からは、魔女の気配。
新人がいきなり、魔女の相手をするのはリスクが高すぎる。
いくら見知らぬ相手とはいえ、すぐそこに救える命があるのなら、見捨てるわけにはいかなかった。
ほむら 「・・・先を急ぎましょう」
竜馬 「応!」
私たちは頷きあうと、使い魔の死体を踏み砕きながら結界の奥へと駈け出した。
竜馬が使い魔の死骸が折り重なった周囲を眺めながらつぶやく。
竜馬 「力はあるようだが、お前のように”慣れた”戦いをするやつではないようだな」
ほむら 「ええ、そうね」
同感だった。
むやみやたらと、手当たり次第に使い魔を殺しつくす、この戦い方。
きっと魔力の消耗具合は尋常ではないだろう。
このような戦い方を続けていては、ソウルジェムが持つはずがない。
と、すれば・・・
ほむら 「資質の高い、新人の魔法少女・・・」
竜馬 「危ういな」
この奥からは、魔女の気配。
新人がいきなり、魔女の相手をするのはリスクが高すぎる。
いくら見知らぬ相手とはいえ、すぐそこに救える命があるのなら、見捨てるわけにはいかなかった。
ほむら 「・・・先を急ぎましょう」
竜馬 「応!」
私たちは頷きあうと、使い魔の死体を踏み砕きながら結界の奥へと駈け出した。
544: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:38:19.75 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
結界を進むにつれ、強まっていく。
魔女の気配と、そして魔法少女の気配。
ほむら 「・・・?」
私は、かすかな違和感を得ていた。
魔法少女の、この気配。確かに初めて感じるものに違いない。
だけれど、どこかで接した事もあるような、そんな不思議な感覚。
これはいったい、どういうことなのだろう?
だが、ほどなくして私の疑問は解決される。
目の前に、明確な答えが示されたからだ。
・・・
結界を進むにつれ、強まっていく。
魔女の気配と、そして魔法少女の気配。
ほむら 「・・・?」
私は、かすかな違和感を得ていた。
魔法少女の、この気配。確かに初めて感じるものに違いない。
だけれど、どこかで接した事もあるような、そんな不思議な感覚。
これはいったい、どういうことなのだろう?
だが、ほどなくして私の疑問は解決される。
目の前に、明確な答えが示されたからだ。
545: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:39:09.06 ID:UO5ovpxT0
結界の最奥。
魔女の住処。
そこでは今まさに。
一人の魔法少女が、魔女に最後の一撃を繰り出したところだった。
魔女は住処いっぱいに断末魔の叫びを響かせると、その巨体を力なく横たえ息絶えた。
ほどなくその体は光の結晶となって四散し、後に残されたのはグリーフシード一つ。
? 「おもったより、手間取りましたわ・・・」
言いながら、ひょいっとグリーフシードを拾い上げたのは、先ほど魔女を倒した魔法少女だった。
手間取ったとは言いながら、声も表情にも疲れの色ひとつ表していない。
涼しい顔で、さっそくソウルジェムを浄化させている。
そんな彼女の姿を見て、私も竜馬も声を失っていた。
魔女の住処。
そこでは今まさに。
一人の魔法少女が、魔女に最後の一撃を繰り出したところだった。
魔女は住処いっぱいに断末魔の叫びを響かせると、その巨体を力なく横たえ息絶えた。
ほどなくその体は光の結晶となって四散し、後に残されたのはグリーフシード一つ。
? 「おもったより、手間取りましたわ・・・」
言いながら、ひょいっとグリーフシードを拾い上げたのは、先ほど魔女を倒した魔法少女だった。
手間取ったとは言いながら、声も表情にも疲れの色ひとつ表していない。
涼しい顔で、さっそくソウルジェムを浄化させている。
そんな彼女の姿を見て、私も竜馬も声を失っていた。
546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:40:08.50 ID:UO5ovpxT0
? 「・・・あら?」
やがて。
ソウルジェムを浄化し終わった彼女が、こちらに顔を向けた。
怪訝な顔でこちらを見つめている魔法少女。
私は彼女の顔に、見覚えがあった。
ほむら 「な、なぜあなたが・・・」
私が、その一言だけを絞り出すように言うと、彼女も驚きの色を隠せないと言った声音で呟いた。
? 「暁美さんと・・・流さん・・・?なぜ、あなたたちがこのような所に・・・」
ほむら 「それは、それはこちらのセリフよ・・・!」
私は混乱していた。
なぜ、彼女が?理解ができなかった。
やがて。
ソウルジェムを浄化し終わった彼女が、こちらに顔を向けた。
怪訝な顔でこちらを見つめている魔法少女。
私は彼女の顔に、見覚えがあった。
ほむら 「な、なぜあなたが・・・」
私が、その一言だけを絞り出すように言うと、彼女も驚きの色を隠せないと言った声音で呟いた。
? 「暁美さんと・・・流さん・・・?なぜ、あなたたちがこのような所に・・・」
ほむら 「それは、それはこちらのセリフよ・・・!」
私は混乱していた。
なぜ、彼女が?理解ができなかった。
547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:41:13.41 ID:UO5ovpxT0
確かに彼女の存在は、どの時間軸においても重要なポジションを占めてはいた。
だけれどそれは、あくまでまどかやさやかの友人としてのそれであり、魔法少女の資質とは別のところにあったはず。
それなのに、今こうして、現に。
彼女は魔法少女として、私たちの目の前に立っている。
そして、混乱しながらも、納得したことも一つ。
先ほどから心を支配していた違和感。
・・・なるほど、こういう事だったのね。
”魔法少女”としては、初めて感じる気配。
だけれど、同時にどこかで見知ったような、親近感をも抱かされていた。
その理由は、とっても単純。
私は魔法少女になる以前の、この気配の持ち主の事を、良く知っていたからだったのだ。
だけれどそれは、あくまでまどかやさやかの友人としてのそれであり、魔法少女の資質とは別のところにあったはず。
それなのに、今こうして、現に。
彼女は魔法少女として、私たちの目の前に立っている。
そして、混乱しながらも、納得したことも一つ。
先ほどから心を支配していた違和感。
・・・なるほど、こういう事だったのね。
”魔法少女”としては、初めて感じる気配。
だけれど、同時にどこかで見知ったような、親近感をも抱かされていた。
その理由は、とっても単純。
私は魔法少女になる以前の、この気配の持ち主の事を、良く知っていたからだったのだ。
548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:43:47.75 ID:UO5ovpxT0
ほむら 「なぜ、あなたがその姿で、ここにいるの!?」
? 「・・・」
私は、昨日も教室で話を交わしたばかりの。
あくまでも、私にとっては友人の一人という立ち位置に過ぎなかったはずの。
そんな、彼女の名を叫ぶ。
ほむら 「・・・志筑仁美!!」
仁美 「・・・」
? 「・・・」
私は、昨日も教室で話を交わしたばかりの。
あくまでも、私にとっては友人の一人という立ち位置に過ぎなかったはずの。
そんな、彼女の名を叫ぶ。
ほむら 「・・・志筑仁美!!」
仁美 「・・・」
549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:46:21.02 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
キュウべぇ 「志筑仁美。君の願いを叶えるのと引き換えに、君には魔法少女として魔女と戦ってもらうことになるけれど、それで良いんだね?」
仁美 「ええ。説明は織莉子さんからも聞きましたし、承知しましたわ」
キュウべぇ 「では、君はどんな願いで、その魂を輝かすのかい?」
仁美 「私の願いは・・・」
仁美 「 」
織莉子 「・・・え?」
キュウべぇ 「・・・僕は、願いの内容に関しては干渉しない事にしているんだ。何を望むかは、君たち自身の問題なのだからね」
仁美 「・・・」
キュウべぇ 「だけれど、願いの強さは魔法少女の力量にも直接かかわってくる以上、敢えてもう一度だけ、聞かせてもらうよ」
仁美 「ええ」
キュウべぇ 「本当に、その望みが君の命を懸けるにふさわしい願い、なんだね?」
仁美 「間違いありまぜんわ。これは私が私らしくあるために、何よりふさわしい願い」
織莉子 「仁美さん、あなた・・・」
仁美 「この願いが叶うなら、私はこの命が尽きるとも、本望なのですわ」
550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:48:56.99 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
仁美 「なぜって・・・それは・・・暁美さん」
ほむら 「・・・」
仁美 「あなたも魔法少女だったと知って、今は驚いていますけれど、でも、だからこそ、あなたも分かっているんでしょう?」
ほむら 「なにを言ってるの・・・?」
仁美 「私が魔法少女として、なぜここにいるか。その理由なんて、とっても単純にして、明快」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
仁美 「私が、私として、私らしくあるために、ですわ!」
・・・
仁美 「なぜって・・・それは・・・暁美さん」
ほむら 「・・・」
仁美 「あなたも魔法少女だったと知って、今は驚いていますけれど、でも、だからこそ、あなたも分かっているんでしょう?」
ほむら 「なにを言ってるの・・・?」
仁美 「私が魔法少女として、なぜここにいるか。その理由なんて、とっても単純にして、明快」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
仁美 「私が、私として、私らしくあるために、ですわ!」
551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/06(金) 21:55:07.34 ID:UO5ovpxT0
・・・
・・・
次回予告
魔法少女として、ほむらの前に姿を現した志筑仁美。
その背後には、彼女の運命の糸を操ろうとする、美国織莉子の影が見え隠れしていた。
一方そのころ、自宅療養中のマミと、見舞いに訪れたまどかへと忍び寄る、一つの影があった。
いよいよ満を持し、活動を開始した織莉子一党。
彼女たちがゲッターロボに向ける想いとは、いったい如何なる事なのか。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第七話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
魔法少女として、ほむらの前に姿を現した志筑仁美。
その背後には、彼女の運命の糸を操ろうとする、美国織莉子の影が見え隠れしていた。
一方そのころ、自宅療養中のマミと、見舞いに訪れたまどかへと忍び寄る、一つの影があった。
いよいよ満を持し、活動を開始した織莉子一党。
彼女たちがゲッターロボに向ける想いとは、いったい如何なる事なのか。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第七話にテレビスイッチオン!
561: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:39:01.49 ID:CXmdU8Od0
ほむら「ゲッターロボ!」 第七話
562: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:39:53.99 ID:CXmdU8Od0
まどかは途方にくれながら、夕暮れに沈む街を一人、とぼとぼと歩いていた。
大切な友達が行方知れずなのに、じっとなんてしていられない。
そんな思いに突き動かされ、まどかは街へと繰り出していた。
向うは、仁美とよく立ち寄った場所の数々。
まどか 「仁美ちゃん・・・仁美ちゃんっ・・・!」
一緒にポテトをつつき合ったファーストフード店。
お気に入りのアクセサリーを探して回った、雑貨屋。
学校帰り、別れるのが惜しくて、暗くなるまでおしゃべりに花を咲かせた小さな公園。
まどかは思いつく限りの場所へと、足を運んだ。
そして、探す。なじみの深い、見慣れた、あの優しい笑顔の友人を。
大切な友達が行方知れずなのに、じっとなんてしていられない。
そんな思いに突き動かされ、まどかは街へと繰り出していた。
向うは、仁美とよく立ち寄った場所の数々。
まどか 「仁美ちゃん・・・仁美ちゃんっ・・・!」
一緒にポテトをつつき合ったファーストフード店。
お気に入りのアクセサリーを探して回った、雑貨屋。
学校帰り、別れるのが惜しくて、暗くなるまでおしゃべりに花を咲かせた小さな公園。
まどかは思いつく限りの場所へと、足を運んだ。
そして、探す。なじみの深い、見慣れた、あの優しい笑顔の友人を。
563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:41:12.93 ID:CXmdU8Od0
だけれど・・・
まどか 「仁美ちゃん・・・」
毎日、学校に行きさえすれば見る事のできた、あの笑顔が。
今日は、どこを探しても見つけることができない。
まどか 「いったい、どこに行っちゃったの・・・」
まもなく日も落ちる。
まどかには、これ以上の心当たりは思いつかなかった。
まどか 「仁美ちゃん・・・」
毎日、学校に行きさえすれば見る事のできた、あの笑顔が。
今日は、どこを探しても見つけることができない。
まどか 「いったい、どこに行っちゃったの・・・」
まもなく日も落ちる。
まどかには、これ以上の心当たりは思いつかなかった。
564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:42:01.28 ID:CXmdU8Od0
まどか 「・・・」
次第に闇色に染められつつある空を見ていると、考えたくもないのに嫌な方へ嫌な方へと、心が支配されそうになってしまう。
思い浮かぶのは、最悪の可能性の事ばかり。
まどか 「仁美ちゃんに限って、家出なんて考えられないし。仁美ちゃんしっかりしてるから、何かがあったらすぐにお家に連絡入れるだろうし・・・」
それができない状況に、巻き込まれている・・・?
まどか 「まさか・・・」
まどかの心が恐怖に震える。
まどか 「仁美ちゃん、もしかして魔女に・・・」
考えたくはなかった。が、そうだとすれば・・・
連絡が取れないのも、行方が分からないのも、すべての辻褄があってしまう。
次第に闇色に染められつつある空を見ていると、考えたくもないのに嫌な方へ嫌な方へと、心が支配されそうになってしまう。
思い浮かぶのは、最悪の可能性の事ばかり。
まどか 「仁美ちゃんに限って、家出なんて考えられないし。仁美ちゃんしっかりしてるから、何かがあったらすぐにお家に連絡入れるだろうし・・・」
それができない状況に、巻き込まれている・・・?
まどか 「まさか・・・」
まどかの心が恐怖に震える。
まどか 「仁美ちゃん、もしかして魔女に・・・」
考えたくはなかった。が、そうだとすれば・・・
連絡が取れないのも、行方が分からないのも、すべての辻褄があってしまう。
565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:43:54.81 ID:CXmdU8Od0
まどか 「・・・っ!」
たまらず、まどかは駆け出した。
なんとか、なんとかしないと!
だけれど、そのなんとかが分からない。
ほむらは言っていた。まどかは普段通りにしていろと。
だけれど、大切な友達の安否が定かでないのに、安穏としていられるようなまどかではなかった。
まどか 「・・・あっ!」
ふ、と。
まどかの脳裏に、ある人の姿が思い浮かぶ。
あの人なら、あの人だったら力を貸してくれる。そうに違いない!
まどか 「うんっ・・・!」
自分が次になすべきこと。
そのことを見据えたまどかは、一路、思い浮かべた人が住む場所へと、行き先を定めたのだった。
たまらず、まどかは駆け出した。
なんとか、なんとかしないと!
だけれど、そのなんとかが分からない。
ほむらは言っていた。まどかは普段通りにしていろと。
だけれど、大切な友達の安否が定かでないのに、安穏としていられるようなまどかではなかった。
まどか 「・・・あっ!」
ふ、と。
まどかの脳裏に、ある人の姿が思い浮かぶ。
あの人なら、あの人だったら力を貸してくれる。そうに違いない!
まどか 「うんっ・・・!」
自分が次になすべきこと。
そのことを見据えたまどかは、一路、思い浮かべた人が住む場所へと、行き先を定めたのだった。
566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:48:31.37 ID:CXmdU8Od0
まどか 「マミさん・・・!」
巴マミ。
まどか 「マミさん、マミさんっ・・・!」
彼女はここ一週間ほど、学校を欠席していた。
たちの悪い風邪にかかった。
まどかは、そう聞かされていた。
そんなマミから、数日前にメールが来ていたのだ。
「間もなく登校できそうです。学校で会ったら、よろしくね」
まどか (マミさん・・・!)
マミなら、話を聞いてくれる。
もし本当に仁美が魔女がらみの事件に巻き込まれているのなら、きっと力を貸してくれる。
仁美を助けてくれるだろう。
そんなマミに対する絶対的な信頼が、まどかの足を彼女の元へと向かわせてたのだ。
まどか (マミさん、マミさん助けて!)
? 「・・・」
巴マミ。
まどか 「マミさん、マミさんっ・・・!」
彼女はここ一週間ほど、学校を欠席していた。
たちの悪い風邪にかかった。
まどかは、そう聞かされていた。
そんなマミから、数日前にメールが来ていたのだ。
「間もなく登校できそうです。学校で会ったら、よろしくね」
まどか (マミさん・・・!)
マミなら、話を聞いてくれる。
もし本当に仁美が魔女がらみの事件に巻き込まれているのなら、きっと力を貸してくれる。
仁美を助けてくれるだろう。
そんなマミに対する絶対的な信頼が、まどかの足を彼女の元へと向かわせてたのだ。
まどか (マミさん、マミさん助けて!)
? 「・・・」
567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:50:14.29 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
魔女の結界の中で。
私と竜馬は、一人の少女と対峙していた。
まどかとさやかのクラスメイト。
私の新しい友人。
昨日の下校時間に行方不明となった、話題の渦中にある人。
そんな彼女が、思いもかけない姿で私たちの前に姿を現したのだ。
ほむら 「志筑、さん・・・あなた・・・」
仁美 「・・・」
予想だにできなかった。
理解なんか、尚の事できなかった。
ほむら 「なぜ、あなたがその姿で、ここにいるの!?」
私は、今の私の疑問をそのまま、言葉に乗せて投げつける。
意味が解らなかった。
・・・
魔女の結界の中で。
私と竜馬は、一人の少女と対峙していた。
まどかとさやかのクラスメイト。
私の新しい友人。
昨日の下校時間に行方不明となった、話題の渦中にある人。
そんな彼女が、思いもかけない姿で私たちの前に姿を現したのだ。
ほむら 「志筑、さん・・・あなた・・・」
仁美 「・・・」
予想だにできなかった。
理解なんか、尚の事できなかった。
ほむら 「なぜ、あなたがその姿で、ここにいるの!?」
私は、今の私の疑問をそのまま、言葉に乗せて投げつける。
意味が解らなかった。
568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:51:17.76 ID:CXmdU8Od0
仁美 「なぜって・・・決まっているでしょう」
ほむら 「・・・」
仁美 「私が、私として、私らしくあるために、ですわ!」
ほむら 「志筑さん・・・」
仁美の決然とした言い切りに、私は次の句を失ってしまう。
今の彼女からは、それ以上の問いかけを許さない。
そんな凄味が滲み出していたのだ。
・・・程なくして。
主をなくした魔女の結界は崩壊をはじめ、私たち3人は通常の空間へと吐き出された。
場所は、元の路地裏。
仁美 「暁美さん、変身を解いたらいかがです?いくら人通りが少ない路地とはいえ、誰かに見られたら目立ちますわよ」
いつの間にか普段の制服姿に戻っていた仁美が、涼しい顔で忠告してきた。
ほむら 「・・・」
私は言われたとおり変身を解くと、次から次へと湧き上がる疑問をひとまず心のうちにしまうことにした。
まずは優先するべきことがある。他の事は、それが済んでからだ。
ほむら 「・・・」
仁美 「私が、私として、私らしくあるために、ですわ!」
ほむら 「志筑さん・・・」
仁美の決然とした言い切りに、私は次の句を失ってしまう。
今の彼女からは、それ以上の問いかけを許さない。
そんな凄味が滲み出していたのだ。
・・・程なくして。
主をなくした魔女の結界は崩壊をはじめ、私たち3人は通常の空間へと吐き出された。
場所は、元の路地裏。
仁美 「暁美さん、変身を解いたらいかがです?いくら人通りが少ない路地とはいえ、誰かに見られたら目立ちますわよ」
いつの間にか普段の制服姿に戻っていた仁美が、涼しい顔で忠告してきた。
ほむら 「・・・」
私は言われたとおり変身を解くと、次から次へと湧き上がる疑問をひとまず心のうちにしまうことにした。
まずは優先するべきことがある。他の事は、それが済んでからだ。
569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:53:20.75 ID:CXmdU8Od0
ほむら 「志筑さん。ひとまず、お家の方と学校に連絡を。無事な姿を見せてあげて。みんな、心配してるわ」
そう、まどかが心配している。
先のことはどうあれ、ひとまず今は仁美が無事であったこと。
その事を一刻も早く知らせ、彼女を安心させてあげたかった。
だけれど・・・
仁美 「それなのですけど・・・」
私の気持ちなどお構いなしに、仁美がもったいぶりながら言う。
仁美 「私、これから忙しくなりますの。いま連絡をしたところで、引き続き心配させてしまうだけだと思いますし・・・」
ほむら 「・・・え?」
仁美 「するべきことが終わったら、後始末は然るべく行いますわ。ですから、暁美さん。口出しは無用です」
ほむら 「なっ・・・」
なに、その言い方は・・・!
まるで他人事な言い様に、私は全身の血が逆流するのを感じた。
そう、まどかが心配している。
先のことはどうあれ、ひとまず今は仁美が無事であったこと。
その事を一刻も早く知らせ、彼女を安心させてあげたかった。
だけれど・・・
仁美 「それなのですけど・・・」
私の気持ちなどお構いなしに、仁美がもったいぶりながら言う。
仁美 「私、これから忙しくなりますの。いま連絡をしたところで、引き続き心配させてしまうだけだと思いますし・・・」
ほむら 「・・・え?」
仁美 「するべきことが終わったら、後始末は然るべく行いますわ。ですから、暁美さん。口出しは無用です」
ほむら 「なっ・・・」
なに、その言い方は・・・!
まるで他人事な言い様に、私は全身の血が逆流するのを感じた。
570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:55:20.19 ID:CXmdU8Od0
口出しは無用ですって?ふざけたことを!
ほむら 「あなたがいなくなって、いったいどれだけの人に心配をかけているのか、わかっているの!?」
まどかの心を、どれほど痛めつけているのかを!
ほむら 「あなたが今、優先するべきなのは!心配している人たちを安心させることよっ!」
仁美 「・・・」
だけれど、私の叫びにも、仁美は表情を崩さない。
仁美 「・・・これ以上の問答は無駄。言ったでしょう、私は忙しいと」
ほむら 「あなたはっ」
仁美を想い、その瞳いっぱいに涙を浮かべながら、顔を曇らせていたまどかの姿が、私の脳裏に蘇る。
まどかを・・・私の大切な人を、あそこまで心配させておいて、どうして涼しい顔をしていられるのか!
ほむら 「志筑仁美っ!」
ほむら 「あなたがいなくなって、いったいどれだけの人に心配をかけているのか、わかっているの!?」
まどかの心を、どれほど痛めつけているのかを!
ほむら 「あなたが今、優先するべきなのは!心配している人たちを安心させることよっ!」
仁美 「・・・」
だけれど、私の叫びにも、仁美は表情を崩さない。
仁美 「・・・これ以上の問答は無駄。言ったでしょう、私は忙しいと」
ほむら 「あなたはっ」
仁美を想い、その瞳いっぱいに涙を浮かべながら、顔を曇らせていたまどかの姿が、私の脳裏に蘇る。
まどかを・・・私の大切な人を、あそこまで心配させておいて、どうして涼しい顔をしていられるのか!
ほむら 「志筑仁美っ!」
571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:56:37.52 ID:CXmdU8Od0
竜馬 「待て、暁美」
今にも飛びかからん勢いの私を制するように、竜馬が一歩、前へ出る。
志筑 「流さん・・・」
竜馬 「志筑、お前、その口ぶり・・・言いくるめられているな」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「誰に、何を吹き込まれた?」
仁美 「吹き込まれたとは、人聞きの悪い。私は自分の判断で、良かれと思ったことを行動していますのよ」
ほむら 「それって、まさか・・・美国織莉子・・・?」
仁美 「あら・・・」
意外といった風に、私を見る仁美。
その表情だけで、答えは明白だった。
ほむら 「どうして・・・」
仁美 「・・・ごきげんよう」
これ以上、ここにいても益が無いとふんだのか。
仁美はきびすを返すと、路地の奥へと歩み去ろうと、その場を歩き去った。
ほむら 「あ、待って!」
慌てて引き留めようと、後を追う私たち。
だけれど・・・
仁美の後に続いて路地の角を曲がった私の目の前には、一枚の壁が行方を塞いでいるのみ。
ほむら 「行き止まり・・・」
撒かれてしまったのだ。
今にも飛びかからん勢いの私を制するように、竜馬が一歩、前へ出る。
志筑 「流さん・・・」
竜馬 「志筑、お前、その口ぶり・・・言いくるめられているな」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「誰に、何を吹き込まれた?」
仁美 「吹き込まれたとは、人聞きの悪い。私は自分の判断で、良かれと思ったことを行動していますのよ」
ほむら 「それって、まさか・・・美国織莉子・・・?」
仁美 「あら・・・」
意外といった風に、私を見る仁美。
その表情だけで、答えは明白だった。
ほむら 「どうして・・・」
仁美 「・・・ごきげんよう」
これ以上、ここにいても益が無いとふんだのか。
仁美はきびすを返すと、路地の奥へと歩み去ろうと、その場を歩き去った。
ほむら 「あ、待って!」
慌てて引き留めようと、後を追う私たち。
だけれど・・・
仁美の後に続いて路地の角を曲がった私の目の前には、一枚の壁が行方を塞いでいるのみ。
ほむら 「行き止まり・・・」
撒かれてしまったのだ。
572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 19:59:55.95 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
路地を抜けた私たちは、仕方がなく当初の目的地だった公園へと足を向けた。
今ごろ公園では、連絡もなく待ちぼうけを食らわされている杏子が、イライラしながら私たちの訪れを待っていることだろう。
だけれど今は、杏子の苛立ちにまで気を配ってあげるほどの余裕はない。
仁美はなぜ、魔法少女になろうとしたのだろう。
美国織莉子とは、どのように知り合ったのか。
なにより、なぜ仁美が魔法少女になることができたのか・・・
次々と湧き上がる疑問に、思考を塞がれてしまっていたから。
竜馬 「おい」
そんな私の思索を断ち切るような無遠慮さで、隣を歩く竜馬が声をかけてきた。
・・・
路地を抜けた私たちは、仕方がなく当初の目的地だった公園へと足を向けた。
今ごろ公園では、連絡もなく待ちぼうけを食らわされている杏子が、イライラしながら私たちの訪れを待っていることだろう。
だけれど今は、杏子の苛立ちにまで気を配ってあげるほどの余裕はない。
仁美はなぜ、魔法少女になろうとしたのだろう。
美国織莉子とは、どのように知り合ったのか。
なにより、なぜ仁美が魔法少女になることができたのか・・・
次々と湧き上がる疑問に、思考を塞がれてしまっていたから。
竜馬 「おい」
そんな私の思索を断ち切るような無遠慮さで、隣を歩く竜馬が声をかけてきた。
573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:00:41.29 ID:CXmdU8Od0
ほむら 「なに?」
竜馬 「暁美・・・どうして、志筑から目を離していた?」
ほむら 「え、どういうこと?」
竜馬 「鹿目のためにもと、美樹にはあれほど気を配っていたお前が、なぜ志筑の事はノーマークだったんだ?」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「なぜ、教えてくれなかったんだ。あいつも魔法少女になる恐れがあるという事を」
そういうこと・・・
確かに、この時間軸での志筑仁美しか知らない竜馬にとっては、それはもっともな疑問だった。
だけれどこの件に関しては、私だって竜馬と、そう立場は変わらない。
だから、私はかぶりを振って答える。
ほむら 「そうじゃないの、リョウ・・・彼女は、志筑仁美は・・・」
竜馬 「・・・?」
竜馬 「暁美・・・どうして、志筑から目を離していた?」
ほむら 「え、どういうこと?」
竜馬 「鹿目のためにもと、美樹にはあれほど気を配っていたお前が、なぜ志筑の事はノーマークだったんだ?」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「なぜ、教えてくれなかったんだ。あいつも魔法少女になる恐れがあるという事を」
そういうこと・・・
確かに、この時間軸での志筑仁美しか知らない竜馬にとっては、それはもっともな疑問だった。
だけれどこの件に関しては、私だって竜馬と、そう立場は変わらない。
だから、私はかぶりを振って答える。
ほむら 「そうじゃないの、リョウ・・・彼女は、志筑仁美は・・・」
竜馬 「・・・?」
574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:03:05.39 ID:CXmdU8Od0
・・・志筑仁美。
関わり合いこそ少なかったものの、私はあまたの時間軸で彼女を間近で見てきた。
それは仁美が、私が守るべき人、鹿目まどかと近しい友人であったから。
ゆえに、知っている。
ほむら 「私の知っている志筑仁美には、魔法少女としての適性なんて、ありはしなかった」
その事実を。
竜馬 「なに・・・?」
そう、それは間違いがない。
だって、まどかに付きまとっていたキュウべぇが側にいた時にだって、仁美には奴の姿が見えてはいなかったのだ。
魔法少女の適性を測る、一番のバロメーターはキュウべぇその物。
適性の無い者には、キュウべぇの存在を感じることができないのだから。
関わり合いこそ少なかったものの、私はあまたの時間軸で彼女を間近で見てきた。
それは仁美が、私が守るべき人、鹿目まどかと近しい友人であったから。
ゆえに、知っている。
ほむら 「私の知っている志筑仁美には、魔法少女としての適性なんて、ありはしなかった」
その事実を。
竜馬 「なに・・・?」
そう、それは間違いがない。
だって、まどかに付きまとっていたキュウべぇが側にいた時にだって、仁美には奴の姿が見えてはいなかったのだ。
魔法少女の適性を測る、一番のバロメーターはキュウべぇその物。
適性の無い者には、キュウべぇの存在を感じることができないのだから。
575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:04:06.00 ID:CXmdU8Od0
竜馬 「しかし現に、志筑は魔法少女として俺たちの前に現れた・・・お前の言う事が真実なら、これはいったいどういう事なんだ?」
ほむら 「分からない、私が聞きたいくらいよ」
竜馬 「そうか・・・だったら、聞いてみればいいんじゃねぇか」
ほむら 「そうね」
私たちは後ろを振り返る。
・・・こいつは、いつだって、どこにだって存在する。
”いる”と思って視線を向けた先には、たいてい奴が、なにくわぬ顔で佇んでいたりするのだ。
今だって。
奴はいつからそうしていたのか、さも当り前な顔をして、私たちの後を歩いていた。
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「やぁ、ほむら。こんな所で会うとは奇遇だね」
私と目があったキュウべぇが、白々しい言葉をさらに白々しい口調で吐く。
いちいち癇に障るやつだけど、今はそんなことを気にしている時じゃない。
ほむら 「聞きたいことがある。杏子も交えて話がしたいわ。このままついて来て」
ほむら 「分からない、私が聞きたいくらいよ」
竜馬 「そうか・・・だったら、聞いてみればいいんじゃねぇか」
ほむら 「そうね」
私たちは後ろを振り返る。
・・・こいつは、いつだって、どこにだって存在する。
”いる”と思って視線を向けた先には、たいてい奴が、なにくわぬ顔で佇んでいたりするのだ。
今だって。
奴はいつからそうしていたのか、さも当り前な顔をして、私たちの後を歩いていた。
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「やぁ、ほむら。こんな所で会うとは奇遇だね」
私と目があったキュウべぇが、白々しい言葉をさらに白々しい口調で吐く。
いちいち癇に障るやつだけど、今はそんなことを気にしている時じゃない。
ほむら 「聞きたいことがある。杏子も交えて話がしたいわ。このままついて来て」
576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:06:18.43 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
マミ兄妹が住むマンションの部屋の前。
チャイムを鳴らしたまどかの前に姿を現したのは、兄である武蔵だった。
武蔵 「あれ、君は確か・・・」
まどか 「こ、こんばんわっ」
まどかがぴょこんと、頭を下げる。
扉を開けて、意外な訪問者を笑顔で迎えた武蔵だったが・・・
まどか 「鹿目まどかです。こんな時間に、突然すみません」
顔を上げたまどかを見て、その表情からすぐに、何事かが起こったであろうことを察したのだった。
武蔵 「どうしたんだい、まどかちゃん」
まどか 「じつは、マミさんにお話というか・・・お願いがあって。あの、マミさんのお風邪って、もう治ったんですか?」
武蔵 「・・・」
まどか 「?」
・・・
マミ兄妹が住むマンションの部屋の前。
チャイムを鳴らしたまどかの前に姿を現したのは、兄である武蔵だった。
武蔵 「あれ、君は確か・・・」
まどか 「こ、こんばんわっ」
まどかがぴょこんと、頭を下げる。
扉を開けて、意外な訪問者を笑顔で迎えた武蔵だったが・・・
まどか 「鹿目まどかです。こんな時間に、突然すみません」
顔を上げたまどかを見て、その表情からすぐに、何事かが起こったであろうことを察したのだった。
武蔵 「どうしたんだい、まどかちゃん」
まどか 「じつは、マミさんにお話というか・・・お願いがあって。あの、マミさんのお風邪って、もう治ったんですか?」
武蔵 「・・・」
まどか 「?」
577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:07:51.21 ID:CXmdU8Od0
武蔵 「少し、玄関で待っていてくれるかな。マミちゃんが起きてるかどうか、見てくるから」
まどか 「あ、はい。お願いします」
再び頭を下げたまどかを残し、武蔵は部屋の奥へと消えていった。
まどか 「マミさん、寝てたのか・・・やっぱりお風邪、治りきっていないのかな」
不安げに呟くまどか。あくまで独り言だったのだが・・・
? 「そうか。それは心配だよね」
予期せぬ返事があって、彼女は飛び上がらんばかりに驚いた。
慌てて声のした背後を振り返ると、そこには・・・
? 「やぁ、こんばんわ」
いつから、そこにいたのだろう。
見知らぬ少女が一人、自分と一緒に玄関の内に立っていたのだ。
まどか 「あ、はい。お願いします」
再び頭を下げたまどかを残し、武蔵は部屋の奥へと消えていった。
まどか 「マミさん、寝てたのか・・・やっぱりお風邪、治りきっていないのかな」
不安げに呟くまどか。あくまで独り言だったのだが・・・
? 「そうか。それは心配だよね」
予期せぬ返事があって、彼女は飛び上がらんばかりに驚いた。
慌てて声のした背後を振り返ると、そこには・・・
? 「やぁ、こんばんわ」
いつから、そこにいたのだろう。
見知らぬ少女が一人、自分と一緒に玄関の内に立っていたのだ。
578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:09:15.89 ID:CXmdU8Od0
まどか 「え、え・・・いつの間に・・・ていうか、だ、誰・・・!?」
? 「ああ、ごめんごめん。驚かせたみたいだね。私は呉キリカ。君は?」
まどか 「あのっ、か、鹿目・・・鹿目まどか・・・です・・・」
キリカ 「まどかか。良い名前だね。まぁ、私が知っている、もっとも良い名前の人には、若干かなわないけれど」
まどか 「・・・」
キリカ 「私は巴マミの知り合いだよ。今日はちょっと用事があって、ここまで来たんだよね」
まどか 「あ、あー・・・そうだったんですか。びっくりしたぁ」
疑うことを知らないまどかは、キリカの一言で納得して笑顔を浮かべた。
キリカ (ま。知り合いって言うのは”未来形”だけれどね)
キリカが呟いた一言は、まどかの耳にまでは届かなかった。
まどか 「今、マミさんのお兄さんが、マミさんが起きてるかどうか見に行ってますよ」
キリカ 「うん、じゃあ、一緒に待とうか」
まどか 「はい・・・えっと、あの・・・、一つ聞いても良いですか?」
キリカ 「なにかな」
まどか 「どうして真冬でもないのに、コート着てるんですか?暑くないのかな・・・」
キリカ 「あー・・・単なるファッションだから、気にしないで良いよ。それに、見た目ほど暑くないしね」
まどか 「そうなんですかぁ」
キリカ (くふふ・・・素直な子だなぁ)
? 「ああ、ごめんごめん。驚かせたみたいだね。私は呉キリカ。君は?」
まどか 「あのっ、か、鹿目・・・鹿目まどか・・・です・・・」
キリカ 「まどかか。良い名前だね。まぁ、私が知っている、もっとも良い名前の人には、若干かなわないけれど」
まどか 「・・・」
キリカ 「私は巴マミの知り合いだよ。今日はちょっと用事があって、ここまで来たんだよね」
まどか 「あ、あー・・・そうだったんですか。びっくりしたぁ」
疑うことを知らないまどかは、キリカの一言で納得して笑顔を浮かべた。
キリカ (ま。知り合いって言うのは”未来形”だけれどね)
キリカが呟いた一言は、まどかの耳にまでは届かなかった。
まどか 「今、マミさんのお兄さんが、マミさんが起きてるかどうか見に行ってますよ」
キリカ 「うん、じゃあ、一緒に待とうか」
まどか 「はい・・・えっと、あの・・・、一つ聞いても良いですか?」
キリカ 「なにかな」
まどか 「どうして真冬でもないのに、コート着てるんですか?暑くないのかな・・・」
キリカ 「あー・・・単なるファッションだから、気にしないで良いよ。それに、見た目ほど暑くないしね」
まどか 「そうなんですかぁ」
キリカ (くふふ・・・素直な子だなぁ)
579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:13:10.02 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
マミの部屋
マミ 「え、鹿目さんが?」
武蔵からまどかの訪れを聞いたマミが、笑顔で顔を輝かせる。
武蔵 「会うかい?なにか、思い悩んでいる雰囲気だったけれど」
マミ 「もちろんよ。せっかく訪ねて来てくれた後輩を、追い返す事なんてできないでしょ」
言い切って、にっこりとほほ笑むマミ。
・・・長かったな。
マミの笑顔を感慨深げに見ながら、武蔵は思う。
長いといっても、実際の時間にしたら一週間程度でしかなかった。
だけれど武蔵には、現実以上の時間が、自分たち兄弟の間で流れていたことを実感していた。
・・・
マミの部屋
マミ 「え、鹿目さんが?」
武蔵からまどかの訪れを聞いたマミが、笑顔で顔を輝かせる。
武蔵 「会うかい?なにか、思い悩んでいる雰囲気だったけれど」
マミ 「もちろんよ。せっかく訪ねて来てくれた後輩を、追い返す事なんてできないでしょ」
言い切って、にっこりとほほ笑むマミ。
・・・長かったな。
マミの笑顔を感慨深げに見ながら、武蔵は思う。
長いといっても、実際の時間にしたら一週間程度でしかなかった。
だけれど武蔵には、現実以上の時間が、自分たち兄弟の間で流れていたことを実感していた。
580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:18:52.93 ID:CXmdU8Od0
あの日。
マミがほむら達から真実を聞かされて、自暴自棄となった時から。
自分の運命を聞かされたマミが、今まで信じてきた生き方を突き崩されたのと同じように。
武蔵もまた。
新たな生き方。いまの自分が本当に守るべき物は何なのか、を悟らされた。
その事を噛みしめ、肯定し、受け入れる。
その事のみに費やした、とても密度の濃い一週間だったのだ。
武蔵 「じゃ、まどかちゃんを呼んでくるよ」
マミ 「ううん、いいわ。私が出迎える。だって可愛い、後輩なんだもの」
にっこり笑ったマミが、武蔵の前に立って部屋を出ていった。
マミの後姿を見て、武蔵は確信する。
俺たち兄妹は、もう大丈夫だ。この世界で、しっかりと生きていける、と。
ただ唯一、気がかりなこともある。
彼の戦友にして、背中を預けあってきた仲間に、自分の決意をどう説明するのか・・・
武蔵 (明日にでも、リョウに全てを話に行こう)
武蔵は心に決めた。
そして、確信する。
あいつだったら、俺の心を理解してくれるに違いない、と。
マミがほむら達から真実を聞かされて、自暴自棄となった時から。
自分の運命を聞かされたマミが、今まで信じてきた生き方を突き崩されたのと同じように。
武蔵もまた。
新たな生き方。いまの自分が本当に守るべき物は何なのか、を悟らされた。
その事を噛みしめ、肯定し、受け入れる。
その事のみに費やした、とても密度の濃い一週間だったのだ。
武蔵 「じゃ、まどかちゃんを呼んでくるよ」
マミ 「ううん、いいわ。私が出迎える。だって可愛い、後輩なんだもの」
にっこり笑ったマミが、武蔵の前に立って部屋を出ていった。
マミの後姿を見て、武蔵は確信する。
俺たち兄妹は、もう大丈夫だ。この世界で、しっかりと生きていける、と。
ただ唯一、気がかりなこともある。
彼の戦友にして、背中を預けあってきた仲間に、自分の決意をどう説明するのか・・・
武蔵 (明日にでも、リョウに全てを話に行こう)
武蔵は心に決めた。
そして、確信する。
あいつだったら、俺の心を理解してくれるに違いない、と。
581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:20:40.95 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
公園
杏子 「あ、やっと来やがった!」
ベンチに腰を下ろしていた杏子が、私たちの姿を見つけて、眠気を押し殺した顔で食ってかかってきた。
杏子 「お前らな、いったいあたし等をどれだけ待たせれば気がすむのさ!」
そういう杏子の膝の上には、スヤスヤと寝息を立てている、ゆまの姿があった。
中学校からこの公園まで直接くる予定だった私たちに代わって、杏子が連れて来てくれていたのだ。
杏子 「見ろ。ゆまも待ちくたびれて、すっかり熟睡モードだ。邪魔くさいったら、ありゃしないぜ」
邪険に扱うそぶりを見せながらも、杏子はゆまの面倒を何くれとなく見てくれている。
口ではどうこう言ってはいても、やはり幼いゆまの事が気になって、捨ててはおけないのだろう。
杏子のこういう面倒見の良さは、どれだけの時間軸を隔てようとも、変わることはなかった。
・・・
公園
杏子 「あ、やっと来やがった!」
ベンチに腰を下ろしていた杏子が、私たちの姿を見つけて、眠気を押し殺した顔で食ってかかってきた。
杏子 「お前らな、いったいあたし等をどれだけ待たせれば気がすむのさ!」
そういう杏子の膝の上には、スヤスヤと寝息を立てている、ゆまの姿があった。
中学校からこの公園まで直接くる予定だった私たちに代わって、杏子が連れて来てくれていたのだ。
杏子 「見ろ。ゆまも待ちくたびれて、すっかり熟睡モードだ。邪魔くさいったら、ありゃしないぜ」
邪険に扱うそぶりを見せながらも、杏子はゆまの面倒を何くれとなく見てくれている。
口ではどうこう言ってはいても、やはり幼いゆまの事が気になって、捨ててはおけないのだろう。
杏子のこういう面倒見の良さは、どれだけの時間軸を隔てようとも、変わることはなかった。
582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:21:54.52 ID:CXmdU8Od0
ほむら 「ごめんなさいね、佐倉さん。だけれど、それどころじゃなかったのよ」
杏子 「それどころじゃないって、いったい・・・あ」
ここで初めて、杏子は私たちの後をヒョコヒョコついて来た、あいつの存在に気が付いたのだった。
キュウべぇ 「やぁ、杏子」
杏子 「キュウべぇ・・・て、おい。いったい何があったんだ?」
この組み合わせに、ただならないものを感じ取った杏子が、詰め寄るように訪ねてくる。
ほむら 「・・・新しい魔法少女と会ったわ」
杏子 「・・・へぇ、そうかい」
杏子がギロリと鋭い目で、キュウべぇをにらみつける。
杏子 「それどころじゃないって、いったい・・・あ」
ここで初めて、杏子は私たちの後をヒョコヒョコついて来た、あいつの存在に気が付いたのだった。
キュウべぇ 「やぁ、杏子」
杏子 「キュウべぇ・・・て、おい。いったい何があったんだ?」
この組み合わせに、ただならないものを感じ取った杏子が、詰め寄るように訪ねてくる。
ほむら 「・・・新しい魔法少女と会ったわ」
杏子 「・・・へぇ、そうかい」
杏子がギロリと鋭い目で、キュウべぇをにらみつける。
583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:22:45.79 ID:CXmdU8Od0
もっとも、どんな視線もどこ吹く風のキュウべぇは、まったく意に介さずノホホンほほんとした態度を崩さないけれど。
キュウべぇ 「なんだい、杏子」
杏子 「やっぱり見滝原でも、何やら企んでるようだな、お前。風見野でみたいに、ここをバーゲン品で溢れさせるつもりかよ」
キュウべぇ 「僕にも考えがあってやってることなんでね、企むとか人聞きが悪い言い方はやめてほしいな」
杏子 「ほざくなよ。お前は聞かれたことだけ答えりゃいいんだよ」
キュウべぇ 「まぁ・・・今日、ほむら達が会った魔法少女は、バーゲン品なんかじゃなかったけれどね」
杏子 「あん?」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「予想もしなかったんだよ。あの子があそこまで有能だったなんてね。バーゲン品の山から見つけ出された、そうだね、言うなれば・・・」
キュウべぇ 「彼女の事は掘り出し物、と呼ぶべきだよね」
ほむら 「・・・っ!!」
私の友人を、物みたいに!
思わず銃を引き抜き、奴の脳天に風穴を開けてやりたい衝動に襲われる。
キュウべぇ 「なんだい、杏子」
杏子 「やっぱり見滝原でも、何やら企んでるようだな、お前。風見野でみたいに、ここをバーゲン品で溢れさせるつもりかよ」
キュウべぇ 「僕にも考えがあってやってることなんでね、企むとか人聞きが悪い言い方はやめてほしいな」
杏子 「ほざくなよ。お前は聞かれたことだけ答えりゃいいんだよ」
キュウべぇ 「まぁ・・・今日、ほむら達が会った魔法少女は、バーゲン品なんかじゃなかったけれどね」
杏子 「あん?」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「予想もしなかったんだよ。あの子があそこまで有能だったなんてね。バーゲン品の山から見つけ出された、そうだね、言うなれば・・・」
キュウべぇ 「彼女の事は掘り出し物、と呼ぶべきだよね」
ほむら 「・・・っ!!」
私の友人を、物みたいに!
思わず銃を引き抜き、奴の脳天に風穴を開けてやりたい衝動に襲われる。
584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:23:45.77 ID:CXmdU8Od0
だけれど・・・
竜馬 「落ち着け」
ほむら 「わ、わかってるわ、リョウ・・・」
竜馬に制されるまでもなく、分かってはいる。
ここでこいつ一匹殺したところで、まったく意味がないなんてことくらい。
杏子 「掘り出し物って、どういう意味だよ」
ほむら 「さっき会った魔法少女の名前は、志筑仁美・・・」
杏子 「え・・・?」
ほむら 「私やまどかのクラスメイトよ」
杏子 「な・・・」
一瞬絶句した後、疑問に満ちたまなざしを私に向けてくる杏子。
なにを言いたいのかは、手に取るようにわかった。
だって、少し前の竜馬と同じ顔をしているのだもの。
だから私も、竜馬にしたのと同じ説明を繰り返し、杏子に聞かせる。
竜馬 「落ち着け」
ほむら 「わ、わかってるわ、リョウ・・・」
竜馬に制されるまでもなく、分かってはいる。
ここでこいつ一匹殺したところで、まったく意味がないなんてことくらい。
杏子 「掘り出し物って、どういう意味だよ」
ほむら 「さっき会った魔法少女の名前は、志筑仁美・・・」
杏子 「え・・・?」
ほむら 「私やまどかのクラスメイトよ」
杏子 「な・・・」
一瞬絶句した後、疑問に満ちたまなざしを私に向けてくる杏子。
なにを言いたいのかは、手に取るようにわかった。
だって、少し前の竜馬と同じ顔をしているのだもの。
だから私も、竜馬にしたのと同じ説明を繰り返し、杏子に聞かせる。
585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:25:42.13 ID:CXmdU8Od0
杏子 「適性がなかったのに、魔法少女に?そんなことがあり得るのか?」
ほむら 「ありえないから、驚いているのよ。それで、こいつに納得のいく答えを聞かせてもらおうと思って、ね」
竜馬 「ここまで連れてきたってわけだ」
三人の視線が一つに交わり、キュウべぇへと注がれる。
キュウべぇ 「ああ・・・、どうして志筑仁美に適性がないと言い切るのかと思ったら、暁美ほむら。君は・・・」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「この時間軸の人間ではなかったんだね」
ほむら 「・・・白々しい」
私は今回の時間軸では、仲間たちに別の時間軸から来たことを秘密にしていない。
で、あれば。
どこにでも存在できるキュウべぇが、私たちの会話を通して、この事を知らないはずなどないのだ。
ほむら 「ありえないから、驚いているのよ。それで、こいつに納得のいく答えを聞かせてもらおうと思って、ね」
竜馬 「ここまで連れてきたってわけだ」
三人の視線が一つに交わり、キュウべぇへと注がれる。
キュウべぇ 「ああ・・・、どうして志筑仁美に適性がないと言い切るのかと思ったら、暁美ほむら。君は・・・」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「この時間軸の人間ではなかったんだね」
ほむら 「・・・白々しい」
私は今回の時間軸では、仲間たちに別の時間軸から来たことを秘密にしていない。
で、あれば。
どこにでも存在できるキュウべぇが、私たちの会話を通して、この事を知らないはずなどないのだ。
586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:26:34.99 ID:CXmdU8Od0
キュウべぇ 「で、君がどれほどの時間を遡行してきたのかは知らないけれど、いずれの時間軸においても、志筑仁美が魔法少女となることはなかった。そう言うんだね」
ほむら 「それだけじゃない。さっきも言ったけれど、志筑仁美はお前を認識できていなかった。それはつまり、適性を持たないことの何よりの証拠」
だから、仁美のことはノーチェックだったのだ。
キュウべぇ 「・・・なるほどねぇ。ところでほむら」
ほむら 「・・・なに?」
キュウべぇ 「魔法少女の適性って、どうやって決まっていると思うかい?」
ほむら 「・・・え?」
キュウべぇ 「今までの時間軸において、君が見てきた志筑仁美には適性がなかった。その観察眼は正しいよ。僕も従来通りであるなら、彼女に声などかけはしなかっただろうから」
ほむら 「ど、どういうこと?」
キュウべぇ 「僕はね、今。この星に来て初めて、計画の立て直しに迫られているんだよ。僕の目的も、暁美ほむら。君は知っているんだろう?」
ほむら 「私たち魔法少女が絶望し、魔女になる際に発せられるエネルギーを回収すること・・・」
キュウべぇ 「そう・・・」
奴の話は続く・・・
ほむら 「それだけじゃない。さっきも言ったけれど、志筑仁美はお前を認識できていなかった。それはつまり、適性を持たないことの何よりの証拠」
だから、仁美のことはノーチェックだったのだ。
キュウべぇ 「・・・なるほどねぇ。ところでほむら」
ほむら 「・・・なに?」
キュウべぇ 「魔法少女の適性って、どうやって決まっていると思うかい?」
ほむら 「・・・え?」
キュウべぇ 「今までの時間軸において、君が見てきた志筑仁美には適性がなかった。その観察眼は正しいよ。僕も従来通りであるなら、彼女に声などかけはしなかっただろうから」
ほむら 「ど、どういうこと?」
キュウべぇ 「僕はね、今。この星に来て初めて、計画の立て直しに迫られているんだよ。僕の目的も、暁美ほむら。君は知っているんだろう?」
ほむら 「私たち魔法少女が絶望し、魔女になる際に発せられるエネルギーを回収すること・・・」
キュウべぇ 「そう・・・」
奴の話は続く・・・
587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:28:20.21 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
この宇宙を存続させるためのエネルギーを入手すること。それこそが、僕たちの唯一にして最大の目的だ。
だから、そのためにエネルギーの元となる魔法少女には、それなりに素質がある子を選ばなくては、効率が悪い。
なぜなら、せっかく魔法少女になってくれても、魔女となる前に戦死されてしまっては、エネルギーを回収し損ねてしまう事になるからね。
君たち魔法少女には、程よく成長してもらって・・・
そして、程よく絶望してもらわなければ困るんだよ。
と、なると。
魔法少女となるべき人材は限られてくるよね。
実際、君たちや鹿目まどか、美樹さやかほどの素質を持った少女は、なかなかレアな存在なんだ。
誇って良いことだよ。
・・・
この宇宙を存続させるためのエネルギーを入手すること。それこそが、僕たちの唯一にして最大の目的だ。
だから、そのためにエネルギーの元となる魔法少女には、それなりに素質がある子を選ばなくては、効率が悪い。
なぜなら、せっかく魔法少女になってくれても、魔女となる前に戦死されてしまっては、エネルギーを回収し損ねてしまう事になるからね。
君たち魔法少女には、程よく成長してもらって・・・
そして、程よく絶望してもらわなければ困るんだよ。
と、なると。
魔法少女となるべき人材は限られてくるよね。
実際、君たちや鹿目まどか、美樹さやかほどの素質を持った少女は、なかなかレアな存在なんだ。
誇って良いことだよ。
588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:29:33.55 ID:CXmdU8Od0
・・・
・・・
杏子 「まだるっこしいな。イライラしてくる・・・」
ほむら 「まったくだわ。ねぇ、お前。いったい、何が言いたいの?」
キュウべぇ 「分からないかな」
キュウべぇが、やれやれとでも言うように首を振った。
キュウべぇ 「つまり、資質にさほど拘らなければ、魔法少女のなりては幾らでもいるという事だよ」
ほむら 「え・・・」
投げつけられたのは、予想外の言葉だった。
どういうこと?
理解ができない。
ほむら 「それって、どういう・・・意味・・・?」
キュウべぇ 「どうしたんだい、暁美ほむら。やけに察しが悪いじゃないか。君はもっと、頭の良い子だと思っていたんだけれど・・・」
おそらく・・・
私も本当は、奴の言うことを理解している。
だけれど、拒むのだ。
私の心が。
キュウべぇの言うことを認められない、信じたくない、と。
・・・
杏子 「まだるっこしいな。イライラしてくる・・・」
ほむら 「まったくだわ。ねぇ、お前。いったい、何が言いたいの?」
キュウべぇ 「分からないかな」
キュウべぇが、やれやれとでも言うように首を振った。
キュウべぇ 「つまり、資質にさほど拘らなければ、魔法少女のなりては幾らでもいるという事だよ」
ほむら 「え・・・」
投げつけられたのは、予想外の言葉だった。
どういうこと?
理解ができない。
ほむら 「それって、どういう・・・意味・・・?」
キュウべぇ 「どうしたんだい、暁美ほむら。やけに察しが悪いじゃないか。君はもっと、頭の良い子だと思っていたんだけれど・・・」
おそらく・・・
私も本当は、奴の言うことを理解している。
だけれど、拒むのだ。
私の心が。
キュウべぇの言うことを認められない、信じたくない、と。
589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/13(月) 20:30:59.07 ID:CXmdU8Od0
しかし・・・
竜馬 「なるほど、質より量・・・て、わけか」
キュウべぇ 「一歩引いた立場の君は、さすがに冷静だね。そう、竜馬の言う通りだよ」
ほむら 「・・・っ!」
竜馬の言葉が、私の心に、受け入れがたい事柄が事実であることを認めさせてしまった。
キュウべぇ 「僕はね、計画を立て直すにあたって、今までの方針を転換させることにしたんだ」
それは、キュウべぇのさじ加減ひとつで、魔法少女になれるもなれないも決まってしまうという・・・
キュウべぇ 「今の僕にとって重要なのは、魔法少女の絶対数を増やすこと。それこそが、もっとも効率の良い方法へと変わったんでね」
厳然たる事実・・・!
キュウべぇ 「引き下げたんだよ、基準を。志筑仁美程度の資質でも、僕の存在を感じ取れるようにね」
ほむら 「こ、こいつ・・・!」
竜馬 「なるほど、質より量・・・て、わけか」
キュウべぇ 「一歩引いた立場の君は、さすがに冷静だね。そう、竜馬の言う通りだよ」
ほむら 「・・・っ!」
竜馬の言葉が、私の心に、受け入れがたい事柄が事実であることを認めさせてしまった。
キュウべぇ 「僕はね、計画を立て直すにあたって、今までの方針を転換させることにしたんだ」
それは、キュウべぇのさじ加減ひとつで、魔法少女になれるもなれないも決まってしまうという・・・
キュウべぇ 「今の僕にとって重要なのは、魔法少女の絶対数を増やすこと。それこそが、もっとも効率の良い方法へと変わったんでね」
厳然たる事実・・・!
キュウべぇ 「引き下げたんだよ、基準を。志筑仁美程度の資質でも、僕の存在を感じ取れるようにね」
ほむら 「こ、こいつ・・・!」
594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:30:35.67 ID:8DiIMnPJ0
・・・私は、見てきたのだ。
たくさんの少女たちが、魔法少女となって人生を狂わせた、そのなれの果てを。
その陰では、どれほどの涙が流されてきたのかも、私は知っていた。
だけれどそれは、資質を持った者がキュウべぇの甘言に踊らされた結果でもある、と。
あくまでも、自業自得であると。
そう思えればこそ、冷徹に自分を保つこともできていたのに・・・!
ほむら 「お前はいったい、どこまで私たちの命を弄べば気が済むの!?」
キュウべぇ 「・・・ほむら。君は何を怒っているのかい?まったく意味が分からないよ」
たくさんの少女たちが、魔法少女となって人生を狂わせた、そのなれの果てを。
その陰では、どれほどの涙が流されてきたのかも、私は知っていた。
だけれどそれは、資質を持った者がキュウべぇの甘言に踊らされた結果でもある、と。
あくまでも、自業自得であると。
そう思えればこそ、冷徹に自分を保つこともできていたのに・・・!
ほむら 「お前はいったい、どこまで私たちの命を弄べば気が済むの!?」
キュウべぇ 「・・・ほむら。君は何を怒っているのかい?まったく意味が分からないよ」
595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:31:46.68 ID:8DiIMnPJ0
ほむら 「けっきょく、魔法少女になるもならないも、全部がお前の手の平の上だったって、そういうわけね!?」
キュウべぇ 「それは責任転嫁が過ぎるんじゃないかな。僕は一度だって、強制的に契約を結んだことなんてないよ」
ほむら 「結ぶように、事を運んできたんじゃない!いま聞いた、資質の事だって・・・」
キュウべぇ 「選択の幅を広げただけさ」
ほむら 「・・・っ」ぎりっ
抑えがたい口惜しさから、私は無意識に唇を噛んでいた。
たちまち口の中に、生暖かい鉄の味が広がる。
キュウべぇ 「もっとも、さっきも言ったけれど、志筑仁美は嬉しい誤算だった」
口に入りきらなかった血は滴となって、足元にポタリポタリと滴り落ちていった。
だけれどキュウべぇは、私の様子などには、お構いなしに話しを続けている。
奴にとっては、私の憤りも、腸が煮えくり返るほどの怒りも、その他のどんな感情も・・・
キュウべぇ 「知っての通り、魔法少女の強さは、もともとの資質プラス、どのような願いでソウルジェムを輝かしたのか。その二点で決まる・・・」
指先ほどの興味も持ってはいないのだろう。
キュウべぇ 「それは責任転嫁が過ぎるんじゃないかな。僕は一度だって、強制的に契約を結んだことなんてないよ」
ほむら 「結ぶように、事を運んできたんじゃない!いま聞いた、資質の事だって・・・」
キュウべぇ 「選択の幅を広げただけさ」
ほむら 「・・・っ」ぎりっ
抑えがたい口惜しさから、私は無意識に唇を噛んでいた。
たちまち口の中に、生暖かい鉄の味が広がる。
キュウべぇ 「もっとも、さっきも言ったけれど、志筑仁美は嬉しい誤算だった」
口に入りきらなかった血は滴となって、足元にポタリポタリと滴り落ちていった。
だけれどキュウべぇは、私の様子などには、お構いなしに話しを続けている。
奴にとっては、私の憤りも、腸が煮えくり返るほどの怒りも、その他のどんな感情も・・・
キュウべぇ 「知っての通り、魔法少女の強さは、もともとの資質プラス、どのような願いでソウルジェムを輝かしたのか。その二点で決まる・・・」
指先ほどの興味も持ってはいないのだろう。
596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:33:03.12 ID:8DiIMnPJ0
キュウべぇ 「よほど想いが深かったのだろうね。資質面では大きく劣る仁美だけれど、想いの力だけで君たちにも迫る力を持つに至った」
ほむら (こいつ、殺してやろうか・・・)
胸に湧き上がってきた、先ほどとは比べ物にならないほどの、純粋な殺意。
目の前のこいつを殺したところで、何の意味もない。
そんな、理性では十分に理解している事実を、私の感情が否定する。
理屈なんか、どうでも良かった。今はただ、キュウべぇを血の海に沈めてやりたい。
刹那的な衝動に突き動かされるように、奴に向かって一歩を踏み出そうとした、その時。
ポン・・・と。
不意に肩を叩かれ、私はすんでのところで我に戻された。
ほむら (こいつ、殺してやろうか・・・)
胸に湧き上がってきた、先ほどとは比べ物にならないほどの、純粋な殺意。
目の前のこいつを殺したところで、何の意味もない。
そんな、理性では十分に理解している事実を、私の感情が否定する。
理屈なんか、どうでも良かった。今はただ、キュウべぇを血の海に沈めてやりたい。
刹那的な衝動に突き動かされるように、奴に向かって一歩を踏み出そうとした、その時。
ポン・・・と。
不意に肩を叩かれ、私はすんでのところで我に戻された。
597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:34:44.52 ID:8DiIMnPJ0
叩かれた肩越しに後ろを向くと、そこはいつの間にやってきたのだろう。
杏子が、複雑な表情で私を見ていた。
ほむら 「あ・・・」
呟く私に、杏子はただ首を横に振るのみ。
ゆま 「え・・・あれ・・・」
ベンチでは、いきなり膝枕を失ったゆまが、目覚めたばかりの寝ぼけ眼で、こちらを見ている。
ゆま 「きょーこ・・・あれ・・・あれぇ、どうしたの・・・?」
杏子 「なんでもねぇ。お前はそこで、少しおとなしく待ってろ」
ゆま 「う、うん・・・」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子が、複雑な表情で私を見ていた。
ほむら 「あ・・・」
呟く私に、杏子はただ首を横に振るのみ。
ゆま 「え・・・あれ・・・」
ベンチでは、いきなり膝枕を失ったゆまが、目覚めたばかりの寝ぼけ眼で、こちらを見ている。
ゆま 「きょーこ・・・あれ・・・あれぇ、どうしたの・・・?」
杏子 「なんでもねぇ。お前はそこで、少しおとなしく待ってろ」
ゆま 「う、うん・・・」
ほむら 「佐倉さん・・・」
598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:35:49.73 ID:8DiIMnPJ0
杏子 「ゆまの前で無茶をするなと、あたしを諭したあんたが、我を忘れてどうするのさ」
ちょっと、キュウべぇと話をさせろ。
そう言った杏子は、私の前に出てキュウべぇと対峙する形となった。
杏子 「今日、ずっと考えていた疑問が一つ解けたぜ。おかげで多少、すっきりした」
キュウべぇ 「へぇ、それはどんなことを考えていたんだい?」
杏子 「あたしは風見野で、何人かの魔法少女の死にざまを見せられた。その中には、ちんけな使い魔に、なすすべなくやられちゃった奴もいてさ」
キュウべぇ 「・・・」
杏子 「ろくな資質もないやつを、何のサポートもなしに魔女の巣穴に放り込めば、ああなるのも当然だ。お前も酷なことをするよな」
キュウべぇ 「その頃は、まだ僕の計画の”実行者”が決まっていなかったのでね。増やした魔法少女を糾合できなかったのさ。やむを得ないよ」
竜馬 「その実行者とやらを、俺にやらせようとしたんだな。で、断った俺の代わりにお鉢が回ったのが、美国織莉子だった・・・」
キュウべぇ 「さぁ・・・」
ちょっと、キュウべぇと話をさせろ。
そう言った杏子は、私の前に出てキュウべぇと対峙する形となった。
杏子 「今日、ずっと考えていた疑問が一つ解けたぜ。おかげで多少、すっきりした」
キュウべぇ 「へぇ、それはどんなことを考えていたんだい?」
杏子 「あたしは風見野で、何人かの魔法少女の死にざまを見せられた。その中には、ちんけな使い魔に、なすすべなくやられちゃった奴もいてさ」
キュウべぇ 「・・・」
杏子 「ろくな資質もないやつを、何のサポートもなしに魔女の巣穴に放り込めば、ああなるのも当然だ。お前も酷なことをするよな」
キュウべぇ 「その頃は、まだ僕の計画の”実行者”が決まっていなかったのでね。増やした魔法少女を糾合できなかったのさ。やむを得ないよ」
竜馬 「その実行者とやらを、俺にやらせようとしたんだな。で、断った俺の代わりにお鉢が回ったのが、美国織莉子だった・・・」
キュウべぇ 「さぁ・・・」
599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:36:39.83 ID:8DiIMnPJ0
杏子 「まぁ、良い。それで志筑って奴だけれど。想いの力だけで、私たちに迫る力を身に着けた・・・そう言ったな」
キュウべぇ 「そうだよ、杏子」
杏子 「だから言ったのかい、彼女は掘り出し物だったと、さ」
キュウべぇ 「そうさ。仁美は、そこいらのバーゲン品とはわけが違う」
杏子 「だったらさ、一つ聞きたい。いったいどんな願いを叶えれば、そんな力が得られるって言うんだ?」
キュウべぇ 「そこはプライバシーの問題があるから、本来は教えられないのだけれど・・・」
杏子 「もったいぶってるんじゃねーよ。お前にとって、あたしたちのプライバシーなんか、知ったこっちゃないんだろう?」
キュウべぇ 「そういうわけでもないけれどね。だけれど、ま、良いか。特にほむらは仁美を本気で心配しているようだしね」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「仁美と契約を交わしたのは、昨日のこと・・・」
キュウべぇ 「そうだよ、杏子」
杏子 「だから言ったのかい、彼女は掘り出し物だったと、さ」
キュウべぇ 「そうさ。仁美は、そこいらのバーゲン品とはわけが違う」
杏子 「だったらさ、一つ聞きたい。いったいどんな願いを叶えれば、そんな力が得られるって言うんだ?」
キュウべぇ 「そこはプライバシーの問題があるから、本来は教えられないのだけれど・・・」
杏子 「もったいぶってるんじゃねーよ。お前にとって、あたしたちのプライバシーなんか、知ったこっちゃないんだろう?」
キュウべぇ 「そういうわけでもないけれどね。だけれど、ま、良いか。特にほむらは仁美を本気で心配しているようだしね」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「仁美と契約を交わしたのは、昨日のこと・・・」
600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:38:12.14 ID:8DiIMnPJ0
・・・
・・・
キュウべぇ 「志筑仁美。君の願いを叶えるのと引き換えに、君には魔法少女として魔女と戦ってもらうことになるけれど、それで良いんだね?」
仁美 「ええ。説明は織莉子さんからも聞きましたし、承知しましたわ」
キュウべぇ 「では、君はどんな願いで、その魂を輝かすのかい?」
仁美 「私の願いは・・・」
仁美 「私のお友達、美樹さやかさんと上条恭介くんが、この先も末永くお付き合いを続け、いつまでも二人で幸せに過ごしていくこと・・・」 」
織莉子 「・・・え?」
仁美 「ですわ」
織莉子 「仁美さん、あなた・・・」
キュウべぇ 「・・・僕は、願いの内容に関しては干渉しない事にしているんだ。何を望むかは、君たち自身の問題なのだからね」
仁美 「・・・」
キュウべぇ 「だけれど、願いの強さは魔法少女の力量にも直接かかわってくる以上、敢えてもう一度だけ、聞かせてもらうよ」
仁美 「ええ」
キュウべぇ 「本当に、その望みが君の命を懸けるにふさわしい願い、なんだね?」
仁美 「間違いありまぜんわ」
・・・
キュウべぇ 「志筑仁美。君の願いを叶えるのと引き換えに、君には魔法少女として魔女と戦ってもらうことになるけれど、それで良いんだね?」
仁美 「ええ。説明は織莉子さんからも聞きましたし、承知しましたわ」
キュウべぇ 「では、君はどんな願いで、その魂を輝かすのかい?」
仁美 「私の願いは・・・」
仁美 「私のお友達、美樹さやかさんと上条恭介くんが、この先も末永くお付き合いを続け、いつまでも二人で幸せに過ごしていくこと・・・」 」
織莉子 「・・・え?」
仁美 「ですわ」
織莉子 「仁美さん、あなた・・・」
キュウべぇ 「・・・僕は、願いの内容に関しては干渉しない事にしているんだ。何を望むかは、君たち自身の問題なのだからね」
仁美 「・・・」
キュウべぇ 「だけれど、願いの強さは魔法少女の力量にも直接かかわってくる以上、敢えてもう一度だけ、聞かせてもらうよ」
仁美 「ええ」
キュウべぇ 「本当に、その望みが君の命を懸けるにふさわしい願い、なんだね?」
仁美 「間違いありまぜんわ」
601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:39:36.77 ID:8DiIMnPJ0
キュウべぇ 「もし君が望むのなら、君自身が上条恭介と添い遂げることも可能なんだよ?」
仁美 「そんなことを望んで、いったい何の意義がありますの?」
織莉子 「自分の恋情よりも、友情を取ろうというのかしら?その気持ち、とても美しいとは思うけれど、でも・・・」
仁美 「そうじゃありませんわ」
織莉子 「では、どういった意味なの?」
仁美 「・・・さやかさんが上条君の心の隙間を埋めて差し上げた。その時点で、私の失恋は確定なんです。それを魔法の力で覆そうなんて、そんなの私の美意識が許しませんわ」
織莉子 「・・・」
仁美 「だけれど・・・!」
織莉子 「・・・っ!?」
仁美 「そんなことを望んで、いったい何の意義がありますの?」
織莉子 「自分の恋情よりも、友情を取ろうというのかしら?その気持ち、とても美しいとは思うけれど、でも・・・」
仁美 「そうじゃありませんわ」
織莉子 「では、どういった意味なの?」
仁美 「・・・さやかさんが上条君の心の隙間を埋めて差し上げた。その時点で、私の失恋は確定なんです。それを魔法の力で覆そうなんて、そんなの私の美意識が許しませんわ」
織莉子 「・・・」
仁美 「だけれど・・・!」
織莉子 「・・・っ!?」
602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:40:32.70 ID:8DiIMnPJ0
だけれど、この先。もし、もしも!
万が一、お二人が破局して・・・
上条君が他の方と、お付き合いするようなことにでもなったら・・・
それだけは、絶対に認められませんわ!
私が負けを認めたのは、さやかさんだけ。
上条君が、他の方と契るような事でもあれば、私は二重に負けてしまうことになる。
認められない、そんなの認められるわけがない!
だから、お二人には終生まで添い遂げてもらわなければならないのです。
故に。
これは友情からくる願いなんかでは、決してありません。
どこまでも自分のための、利己的で身勝手な願い、なのですわ。
万が一、お二人が破局して・・・
上条君が他の方と、お付き合いするようなことにでもなったら・・・
それだけは、絶対に認められませんわ!
私が負けを認めたのは、さやかさんだけ。
上条君が、他の方と契るような事でもあれば、私は二重に負けてしまうことになる。
認められない、そんなの認められるわけがない!
だから、お二人には終生まで添い遂げてもらわなければならないのです。
故に。
これは友情からくる願いなんかでは、決してありません。
どこまでも自分のための、利己的で身勝手な願い、なのですわ。
603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:41:32.54 ID:8DiIMnPJ0
織莉子 「あ、あなたは・・・」
仁美 「そ・れ・に・・・」
織莉子 「・・・?」
それに、近い将来。
お二人が正式にお付き合いを続ければ、ほどなく男女の関係となるでしょう?
その先に迎えるであろう、結婚。さらには出産、子育て・・・最終的には、神の御許に召されるまで。
仁美 「お二人の幸せな人生のイベントの節目には、私の願いが必ず介在することとなる・・・うふふっ」
織莉子 (ぞくっ)
仁美 「もし私が死んでしまったとしても、私の想いは永久に消えず、お二人の人生とともに生き続けるんですのよ。素晴らしい、これはとても素晴らしいことなのですわ」
キュウべぇ 「・・・」
仁美 「ね、あなた方も、そう思うでしょう?こんな素晴らしい願い事、他にはありませんわ」
キュウべぇ 「・・・君の気持ちはわかったよ。では、その願いで、君のソウルジェムを輝かせるとしよう」
仁美 「ええ。これが私が私らしくあるために、何よりふさわしい願いなのですから・・・!」
仁美 「そ・れ・に・・・」
織莉子 「・・・?」
それに、近い将来。
お二人が正式にお付き合いを続ければ、ほどなく男女の関係となるでしょう?
その先に迎えるであろう、結婚。さらには出産、子育て・・・最終的には、神の御許に召されるまで。
仁美 「お二人の幸せな人生のイベントの節目には、私の願いが必ず介在することとなる・・・うふふっ」
織莉子 (ぞくっ)
仁美 「もし私が死んでしまったとしても、私の想いは永久に消えず、お二人の人生とともに生き続けるんですのよ。素晴らしい、これはとても素晴らしいことなのですわ」
キュウべぇ 「・・・」
仁美 「ね、あなた方も、そう思うでしょう?こんな素晴らしい願い事、他にはありませんわ」
キュウべぇ 「・・・君の気持ちはわかったよ。では、その願いで、君のソウルジェムを輝かせるとしよう」
仁美 「ええ。これが私が私らしくあるために、何よりふさわしい願いなのですから・・・!」
604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:42:52.10 ID:8DiIMnPJ0
・・・
・・・
キュウべぇ 「これが仁美が望んだ願いさ。まったくもって、僕には理解できない内容だけれどね」
ほむら 「・・・」
キュウべぇの話を聞き終えた私は、言葉を失ってしまった。
あの子がまどかやさやか達の前で見せる笑顔の影で、そこまで懊悩していただなんて。
私、全然気が付いてあげられなかった。
キュウべぇ 「この時、そばにはもう一人、魔法少女がいたんだけれど・・・」
杏子 「美国織莉子だな」
キュウべぇ 「そう。この時ばかりは、珍しく彼女とも意見が合ってね。織莉子にも、仁美の願いは理解の範疇に収まらなかったらしい」
杏子 「へぇ、織莉子はなんて言っていたんだ?」
キュウべぇ 「女の執念は恐ろしいって」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「そういうものなのかい?」
杏子 「知るかよ。あたしは分かってやれるほど、人を好きになったことがねぇ」
・・・
キュウべぇ 「これが仁美が望んだ願いさ。まったくもって、僕には理解できない内容だけれどね」
ほむら 「・・・」
キュウべぇの話を聞き終えた私は、言葉を失ってしまった。
あの子がまどかやさやか達の前で見せる笑顔の影で、そこまで懊悩していただなんて。
私、全然気が付いてあげられなかった。
キュウべぇ 「この時、そばにはもう一人、魔法少女がいたんだけれど・・・」
杏子 「美国織莉子だな」
キュウべぇ 「そう。この時ばかりは、珍しく彼女とも意見が合ってね。織莉子にも、仁美の願いは理解の範疇に収まらなかったらしい」
杏子 「へぇ、織莉子はなんて言っていたんだ?」
キュウべぇ 「女の執念は恐ろしいって」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「そういうものなのかい?」
杏子 「知るかよ。あたしは分かってやれるほど、人を好きになったことがねぇ」
605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:43:52.67 ID:8DiIMnPJ0
キュウべぇ 「では、君はどうだい?暁美ほむら」
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・大丈夫か?」
ほむら 「リョ、リョウ・・・」
私には分かる。
分かってあげられる。
仁美たちの立場を私とまどかに置き換えれば、簡単なことだった。
なのに、なのに私は・・・
ほむら 「また、また・・・また、私は理解してあげられなかった・・・」
私はどこまで、鈍感で人の心を見ることができないのだろう。
竜馬 「・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・大丈夫か?」
ほむら 「リョ、リョウ・・・」
私には分かる。
分かってあげられる。
仁美たちの立場を私とまどかに置き換えれば、簡単なことだった。
なのに、なのに私は・・・
ほむら 「また、また・・・また、私は理解してあげられなかった・・・」
私はどこまで、鈍感で人の心を見ることができないのだろう。
竜馬 「・・・」
606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:45:55.59 ID:8DiIMnPJ0
・・・
・・・
その後。
もう、魔女退治なんて心境ではなかった。
今日はもう、引き上げよう。
そう決まった私たちは、キュウべぇをその場に残して帰路へと就いた。
この後は、解散するのか、どうするのか。
そこは何も決めていなかったけれど、何とはなしに。
みんなの足は、自然と私の部屋へと向いていた。
特に話すことはない。これからの方針といっても、やることは変わらない。
明日からはまた、ワルプルギス戦に向けてグリーフシード集めに精を出すだけだ。
だけれど、一つだけ。
私の心を重くする問題があった。
志筑仁美の事だ。
607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:46:54.59 ID:8DiIMnPJ0
ほむら 「志筑さんの事だけれど・・・」
横を歩くリョウに問いかける。
ほむら 「まどかに、なんて言ったらいいのかしら」
竜馬 「・・・そうだな」
言ったきり、竜馬も口をつぐんでしまう。
すぐに答えがはじき出せるような問題ではない。当然のことだった。
ほむら 「まどか、きっと今もすごく心配してる。志筑さんが無事だったと、一刻も早く教えてあげたい・・・けれど・・・」
でも、彼女が魔法少女となってしまった事実は、どう話せばいいのか。
仁美とまどかは親しい友達だ。当然、何を願ってキュウべぇと契約したのか、まどかは知りたがるだろう。
それを知った時、まどかはさやかと上条恭介に、どんな感情を抱くのだろうか。
ほむら 「きっと、まどかは悲しむだろうと思うの」
あらゆることで。
そして私と同様。いえ、私以上に仁美と親しかったまどかだもの。
友達の苦しみに気が付いてあげられなかった、自分を責めてしまうのではないだろうか。
横を歩くリョウに問いかける。
ほむら 「まどかに、なんて言ったらいいのかしら」
竜馬 「・・・そうだな」
言ったきり、竜馬も口をつぐんでしまう。
すぐに答えがはじき出せるような問題ではない。当然のことだった。
ほむら 「まどか、きっと今もすごく心配してる。志筑さんが無事だったと、一刻も早く教えてあげたい・・・けれど・・・」
でも、彼女が魔法少女となってしまった事実は、どう話せばいいのか。
仁美とまどかは親しい友達だ。当然、何を願ってキュウべぇと契約したのか、まどかは知りたがるだろう。
それを知った時、まどかはさやかと上条恭介に、どんな感情を抱くのだろうか。
ほむら 「きっと、まどかは悲しむだろうと思うの」
あらゆることで。
そして私と同様。いえ、私以上に仁美と親しかったまどかだもの。
友達の苦しみに気が付いてあげられなかった、自分を責めてしまうのではないだろうか。
608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:47:44.97 ID:8DiIMnPJ0
ほむら 「そんな想い、まどかにはして欲しくないの」
杏子 「正直に、言っちまえよ」
私の後ろをゆまと並んで歩いていた杏子が、私たちの会話に割り込んできた。
杏子 「志筑仁美とまどかは友達同士なんだろ。黙っていて、いざばれてしまったら、却ってまどかを悲しませるんじゃないか」
ほむら 「それは・・・そうかもしれない、けど」
正論だけれど、そんな簡単な問題じゃない。
竜馬 「佐倉の言う通りだが、問題は伝え方だな」
ほむら 「そうよね・・・」
答えなんか、出るわけもなかった。
杏子 「正直に、言っちまえよ」
私の後ろをゆまと並んで歩いていた杏子が、私たちの会話に割り込んできた。
杏子 「志筑仁美とまどかは友達同士なんだろ。黙っていて、いざばれてしまったら、却ってまどかを悲しませるんじゃないか」
ほむら 「それは・・・そうかもしれない、けど」
正論だけれど、そんな簡単な問題じゃない。
竜馬 「佐倉の言う通りだが、問題は伝え方だな」
ほむら 「そうよね・・・」
答えなんか、出るわけもなかった。
609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:49:16.18 ID:8DiIMnPJ0
沈んだ空気が、私たち一行の足取りをいっそう重くする。
けれども、歩みを止めなければ、いずれは目的地に着いてしまうもの。
気が付けば、私のマンションは、もうすぐ目の前に迫っていた。
ゆま 「あれ?」
今まで私たちの空気を読んで、ずっと静かにしていたゆまが、久しぶりに口を開いた。
何かに気が付いたのか、キョトンとした顔で、ある一点を指さしている。
杏子 「ゆま、どうした?」
ゆま 「お部屋の前に、だれかいるよ?」
ほむら 「え・・・?」
ゆまが指をさす方、私の住む部屋の玄関に・・・
確かに人影が一つ。ぽつねんと立っていた。
けれども、歩みを止めなければ、いずれは目的地に着いてしまうもの。
気が付けば、私のマンションは、もうすぐ目の前に迫っていた。
ゆま 「あれ?」
今まで私たちの空気を読んで、ずっと静かにしていたゆまが、久しぶりに口を開いた。
何かに気が付いたのか、キョトンとした顔で、ある一点を指さしている。
杏子 「ゆま、どうした?」
ゆま 「お部屋の前に、だれかいるよ?」
ほむら 「え・・・?」
ゆまが指をさす方、私の住む部屋の玄関に・・・
確かに人影が一つ。ぽつねんと立っていた。
610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:51:09.33 ID:8DiIMnPJ0
あの影、見間違うはずもない。
ほむら 「え、まどか・・・!?」
私の声が届いたのだろう。人影は顔を上げて私たちを見ると、慌てたように駆け寄ってきた。
まどか 「ほ、ほむらちゃん!」
そのまま、まろぶように私の胸へと飛び込んでくる。
まどか 「ほむらちゃん、助けて・・・!私、私!」
ほむら 「お、落ち着いて、鹿目さん。いったい何が・・・」
言いかけて、思わず言葉を飲み込む私。
私にすがり付き、子犬のように小刻みに体を震わせているまどか。
こちらを見つめる瞳は、真っ赤に充血しているし、まぶたも腫れぼったい。
間違いない、泣きはらした後の顔・・・
ほむら 「え、まどか・・・!?」
私の声が届いたのだろう。人影は顔を上げて私たちを見ると、慌てたように駆け寄ってきた。
まどか 「ほ、ほむらちゃん!」
そのまま、まろぶように私の胸へと飛び込んでくる。
まどか 「ほむらちゃん、助けて・・・!私、私!」
ほむら 「お、落ち着いて、鹿目さん。いったい何が・・・」
言いかけて、思わず言葉を飲み込む私。
私にすがり付き、子犬のように小刻みに体を震わせているまどか。
こちらを見つめる瞳は、真っ赤に充血しているし、まぶたも腫れぼったい。
間違いない、泣きはらした後の顔・・・
611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:51:44.37 ID:8DiIMnPJ0
ほむら (ただ事じゃない・・・)
杏子 「おー、こいつがまどかかー・・・」
ゆま 「まどかかぁー」
もの珍しそうに、初めて見るまどかに無遠慮な視線を注ぐ杏子と、そのマネをするゆま。
だけれど、今はそんな二人にかまっている場合じゃない。
ほむら 「鹿目さん、助けてって?いったい、何があったの」
まどか 「ほむらちゃん、どうしよう・・・私の、私のせいで・・・っ!」
まどか 「マミさんがっ!!」
杏子 「おー、こいつがまどかかー・・・」
ゆま 「まどかかぁー」
もの珍しそうに、初めて見るまどかに無遠慮な視線を注ぐ杏子と、そのマネをするゆま。
だけれど、今はそんな二人にかまっている場合じゃない。
ほむら 「鹿目さん、助けてって?いったい、何があったの」
まどか 「ほむらちゃん、どうしよう・・・私の、私のせいで・・・っ!」
まどか 「マミさんがっ!!」
612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:54:51.09 ID:8DiIMnPJ0
・・・
・・・
数時間前
マミのマンション
玄関内
マミ 「鹿目さん、お待たせ。久しぶりね、心配かけちゃってたかし・・・ら・・・」
まどか 「ま、マミさん!実は相談が、というか。助けていただきたいことがあって!」
マミ 「落ち着いて。えっと、その・・・」
キリカ 「・・・」
マミ 「?」
マミは後ろへ振り向くと、後からついてきた武蔵に小声で尋ねた。
マミ 「お兄ちゃん。訪ねてきたのは、鹿目さんだけじゃなかったの?後ろに、コート姿の変な子がいるのだけれど・・・」
武蔵 「・・・いや、俺が、マミちゃんを呼びに戻った時には、確かにここにいたのは、まどかちゃん一人だったぜ」
マミ 「・・・」
マミが再びまどかたちの方へ向き直る。
怪訝な顔で見つめていると、それに気が付いたキリカが、にっこりと笑いながら、ひらひらと手を振ってきた。
キリカ 「こんばんわ」
マミ 「こんばんわ・・・あなた、どなた?」
まどか 「え・・・!?」
・・・
数時間前
マミのマンション
玄関内
マミ 「鹿目さん、お待たせ。久しぶりね、心配かけちゃってたかし・・・ら・・・」
まどか 「ま、マミさん!実は相談が、というか。助けていただきたいことがあって!」
マミ 「落ち着いて。えっと、その・・・」
キリカ 「・・・」
マミ 「?」
マミは後ろへ振り向くと、後からついてきた武蔵に小声で尋ねた。
マミ 「お兄ちゃん。訪ねてきたのは、鹿目さんだけじゃなかったの?後ろに、コート姿の変な子がいるのだけれど・・・」
武蔵 「・・・いや、俺が、マミちゃんを呼びに戻った時には、確かにここにいたのは、まどかちゃん一人だったぜ」
マミ 「・・・」
マミが再びまどかたちの方へ向き直る。
怪訝な顔で見つめていると、それに気が付いたキリカが、にっこりと笑いながら、ひらひらと手を振ってきた。
キリカ 「こんばんわ」
マミ 「こんばんわ・・・あなた、どなた?」
まどか 「え・・・!?」
613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 22:58:34.30 ID:8DiIMnPJ0
マミ 「見ない顔だけれど、鹿目さんのお友達かしら?」
まどか 「え・・・え・・・?この人、マミさんの知り合いじゃないんですか?だって、さっき、私にそう言って・・・」
キリカ 「知り合いだよ。たった今、現在進行形で、ね」
まどか 「・・・!」
不意にキリカが動いた。
羽織っていたコートが宙に舞う。
その中から現れた姿は・・・
まどか 「え・・・」
マミ 「ま、魔法少女!?」
武蔵 「なっ!!」
それは一瞬の出来事だった。
まどか 「え・・・え・・・?この人、マミさんの知り合いじゃないんですか?だって、さっき、私にそう言って・・・」
キリカ 「知り合いだよ。たった今、現在進行形で、ね」
まどか 「・・・!」
不意にキリカが動いた。
羽織っていたコートが宙に舞う。
その中から現れた姿は・・・
まどか 「え・・・」
マミ 「ま、魔法少女!?」
武蔵 「なっ!!」
それは一瞬の出来事だった。
614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:00:13.24 ID:8DiIMnPJ0
まどか 「っ?!」
キリカ 「おーと・・・動かないでもらおうか」
鞭のように伸びたキリカのしなやかな腕が、しなるようにまどかの首へと絡みついている。
まさに刹那的に、まどかはキリカに捕えられていたのだ。
まどか 「え?な、な、なんなの・・・!?」
突然の出来事に、事態が把握できないまどか。
まどか 「は、離して・・・」
なんとか身をよじって戒めから逃れようとするが、非力な彼女があらがえる相手ではない。
むしろ、身をよじればよじるほど、絡みついた腕は、まどかの首へと深く食い込んでゆくのだ。
まどか 「ん、あぁ・・・」
気管を圧迫され、息を吸い込むことすら、ままならない。
キリカ 「ほっそい首。簡単にちぎれちゃいそう」
まどか 「くる、し・・・」
キリカ 「おーと・・・動かないでもらおうか」
鞭のように伸びたキリカのしなやかな腕が、しなるようにまどかの首へと絡みついている。
まさに刹那的に、まどかはキリカに捕えられていたのだ。
まどか 「え?な、な、なんなの・・・!?」
突然の出来事に、事態が把握できないまどか。
まどか 「は、離して・・・」
なんとか身をよじって戒めから逃れようとするが、非力な彼女があらがえる相手ではない。
むしろ、身をよじればよじるほど、絡みついた腕は、まどかの首へと深く食い込んでゆくのだ。
まどか 「ん、あぁ・・・」
気管を圧迫され、息を吸い込むことすら、ままならない。
キリカ 「ほっそい首。簡単にちぎれちゃいそう」
まどか 「くる、し・・・」
615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:01:52.80 ID:8DiIMnPJ0
マミ 「ちょっと、なにをやってるの!その手を放して!」
武蔵 「こいつ・・・っ!」
キリカ 「おっと、動かないでもらうよ」
(ぎりぎり・・・ぎり・・・)
まどか 「うぁああ・・・あっ・・・」
キリカ 「巴マミも、そっちのお兄さんもね。じゃないと、力の加減が狂って、本当にこの子、くびちょんぱになっちゃうかもよ」
言いながらもキリカは、腕に込めた力を一切抜かない。
呼吸と血流をせき止められ、苦痛に喘ぐまどかの顔が、みるみると鬱血してゆく。
まどか 「あ・・・あ・・・」
マミ 「やめてっ!動かないから、だから止めて!鹿目さんが死んでしまう!」
マミの悲鳴にも似た声が、玄関内に響き渡った。
それを聞いたキリカが、やっと少しだけ。
まどかを締め上げていた腕から力を抜いた。
とたんに流れ込んでくる新鮮な空気の波に、肺が耐え切れずに盛大に急き込んでしまうまどか。
まどか 「うっ、かはっ!!こほこほっ、こほっ・・・!!」
武蔵 「こいつ・・・っ!」
キリカ 「おっと、動かないでもらうよ」
(ぎりぎり・・・ぎり・・・)
まどか 「うぁああ・・・あっ・・・」
キリカ 「巴マミも、そっちのお兄さんもね。じゃないと、力の加減が狂って、本当にこの子、くびちょんぱになっちゃうかもよ」
言いながらもキリカは、腕に込めた力を一切抜かない。
呼吸と血流をせき止められ、苦痛に喘ぐまどかの顔が、みるみると鬱血してゆく。
まどか 「あ・・・あ・・・」
マミ 「やめてっ!動かないから、だから止めて!鹿目さんが死んでしまう!」
マミの悲鳴にも似た声が、玄関内に響き渡った。
それを聞いたキリカが、やっと少しだけ。
まどかを締め上げていた腕から力を抜いた。
とたんに流れ込んでくる新鮮な空気の波に、肺が耐え切れずに盛大に急き込んでしまうまどか。
まどか 「うっ、かはっ!!こほこほっ、こほっ・・・!!」
616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:02:50.95 ID:8DiIMnPJ0
キリカ 「動かない?ほんとだよ?私、約束を破る人は嫌いだからね」
マミ 「分かったから、鹿目さんから離れて!」
キリカ 「それはまだ、できない相談だよ」
マミ 「くっ・・・!私の名前を呼んだわね!という事は、私に用があるんでしょう!?」
キリカ 「ご名答」
マミ 「だったら、鹿目さんには用は無いはずよ!どうしてそんな、ひどいことをするのよ!」
キリカ 「だって、巴マミ。君は強い魔法少女なんだろ?」
マミ 「・・・!?」
キリカ 「私はそれ以上に強い魔法少女だけどさ。コトは可能なだけ、スムーズに運ばせる方が良いからってさ、私の大事な人が言っていたんだ」
マミ 「な、何が言いたいの・・・?」
キリカ 「要は、おとなしくついて来て欲しいんだよ。君に」
マミ 「そ、そのために鹿目さんを・・・」
キリカ 「拒んだり抵抗したりするの、大いに結構!ただし、その時はこの子がどうなるか。分かってると思うけど、試してみるかい!?」
まどか 「ま、まみさぁん・・・」
マミ 「分かったから、鹿目さんから離れて!」
キリカ 「それはまだ、できない相談だよ」
マミ 「くっ・・・!私の名前を呼んだわね!という事は、私に用があるんでしょう!?」
キリカ 「ご名答」
マミ 「だったら、鹿目さんには用は無いはずよ!どうしてそんな、ひどいことをするのよ!」
キリカ 「だって、巴マミ。君は強い魔法少女なんだろ?」
マミ 「・・・!?」
キリカ 「私はそれ以上に強い魔法少女だけどさ。コトは可能なだけ、スムーズに運ばせる方が良いからってさ、私の大事な人が言っていたんだ」
マミ 「な、何が言いたいの・・・?」
キリカ 「要は、おとなしくついて来て欲しいんだよ。君に」
マミ 「そ、そのために鹿目さんを・・・」
キリカ 「拒んだり抵抗したりするの、大いに結構!ただし、その時はこの子がどうなるか。分かってると思うけど、試してみるかい!?」
まどか 「ま、まみさぁん・・・」
617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:03:52.35 ID:8DiIMnPJ0
マミ 「あなたについて、どこへ行けばいいの・・・?」
キリカ 「来れば分かるよ」
マミ 「言う通りにするから、まずは鹿目さんを解放して」
キリカ 「だから、それはできないって。人質がいなくても、君が言うことを聞いてくれるって保証はないんだからね」
マミ 「---------っ!!!」
マミは混乱していた。
冷静に物事を考えることが、できなくなっていたのだ。
今はただ、まどかを。
かわいらしくて明るくて、無邪気なまでに自分を慕ってくれる。
そんな後輩を助けなくてはいけない。
呉キリカと名乗った魔法少女の目的が、どこにあるのか。
自分が付いていった先に、いったい何が待ち受けているのか。
普段のマミであったなら、冷静に見すえることができるであろう、物後の先の先。
今は、最重要なそれらの事も、思考の外でしかなかった。
武蔵 (危険だな・・・)
兄である武蔵には、マミが現在どのような心境におかれているのかが、手に取るようにわかっていた。
キリカ 「来れば分かるよ」
マミ 「言う通りにするから、まずは鹿目さんを解放して」
キリカ 「だから、それはできないって。人質がいなくても、君が言うことを聞いてくれるって保証はないんだからね」
マミ 「---------っ!!!」
マミは混乱していた。
冷静に物事を考えることが、できなくなっていたのだ。
今はただ、まどかを。
かわいらしくて明るくて、無邪気なまでに自分を慕ってくれる。
そんな後輩を助けなくてはいけない。
呉キリカと名乗った魔法少女の目的が、どこにあるのか。
自分が付いていった先に、いったい何が待ち受けているのか。
普段のマミであったなら、冷静に見すえることができるであろう、物後の先の先。
今は、最重要なそれらの事も、思考の外でしかなかった。
武蔵 (危険だな・・・)
兄である武蔵には、マミが現在どのような心境におかれているのかが、手に取るようにわかっていた。
618: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:05:05.60 ID:8DiIMnPJ0
武蔵 (マミちゃん、まどかちゃんを助けたい一心で、周りが見えなくなっている。このままでは・・・)
意を決した武蔵が、一歩。
キリカの前へと足を踏み出した。
キリカ 「動くなって、言ってあったんだけどな」
武蔵 「俺が代わる」
キリカ 「?」
武蔵 「要は、魔法少女以外が人質となれば良いんだろ?俺はマミちゃんの兄だ。充分に人質の用は満たすはずだぜ」
まどか 「む、むさし、さん・・・・」
キリカ 「ふーん・・・」
武蔵 「・・・」
武蔵が、横に立つマミをちらりと見る。
マミも、若干ほっとした表情で武蔵を見返し、軽くうなづいた。
兄妹の間でのやり取りは、これだけで十分だった。
意を決した武蔵が、一歩。
キリカの前へと足を踏み出した。
キリカ 「動くなって、言ってあったんだけどな」
武蔵 「俺が代わる」
キリカ 「?」
武蔵 「要は、魔法少女以外が人質となれば良いんだろ?俺はマミちゃんの兄だ。充分に人質の用は満たすはずだぜ」
まどか 「む、むさし、さん・・・・」
キリカ 「ふーん・・・」
武蔵 「・・・」
武蔵が、横に立つマミをちらりと見る。
マミも、若干ほっとした表情で武蔵を見返し、軽くうなづいた。
兄妹の間でのやり取りは、これだけで十分だった。
619: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:06:05.36 ID:8DiIMnPJ0
キリカ 「ま、良いけれど。だけれど、変な気は起こさないことだね。ほんと、どうなっても知らないから」
武蔵 「分かってるさ」
キリカ 「巴マミにも、言ってるんだけれど?」
マミ 「ええ」
そして。
武蔵はまどかと入れ違いにキリカへ囚われる形となる。
武蔵 「あまり、良い気分じゃないな、こりゃ」
キリカ 「お互い様だよ。可愛い女の子の代わりが、こんな太ったお兄ちゃんじゃ、ね」
武蔵 「がっしりしていると言ってほしいもんだな」
キリカ 「はいはいっと。そんじゃ、そろそろ行こうか」
キリカがマミに外へ出るように促す。
おとなしく、それに従うマミ。キリカと囚われの武蔵も、後に続く。
残されるのは、解放されたまどかのみ。
まどか 「ま、マミさんっ!武蔵さんっ!!」
キリカ 「あ、そうそう。この事、ダレかに言っても良いよ。それで」
キリカは懐から一枚の紙を取り出すと、それをヒラリとまどかの足もとに放ってよこした。
キリカ 「そのダレかに、それ。見せてあげてよ。それで、君の役目はおしまい」
まどか 「え・・・」
武蔵 「分かってるさ」
キリカ 「巴マミにも、言ってるんだけれど?」
マミ 「ええ」
そして。
武蔵はまどかと入れ違いにキリカへ囚われる形となる。
武蔵 「あまり、良い気分じゃないな、こりゃ」
キリカ 「お互い様だよ。可愛い女の子の代わりが、こんな太ったお兄ちゃんじゃ、ね」
武蔵 「がっしりしていると言ってほしいもんだな」
キリカ 「はいはいっと。そんじゃ、そろそろ行こうか」
キリカがマミに外へ出るように促す。
おとなしく、それに従うマミ。キリカと囚われの武蔵も、後に続く。
残されるのは、解放されたまどかのみ。
まどか 「ま、マミさんっ!武蔵さんっ!!」
キリカ 「あ、そうそう。この事、ダレかに言っても良いよ。それで」
キリカは懐から一枚の紙を取り出すと、それをヒラリとまどかの足もとに放ってよこした。
キリカ 「そのダレかに、それ。見せてあげてよ。それで、君の役目はおしまい」
まどか 「え・・・」
620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/14(火) 23:07:07.44 ID:8DiIMnPJ0
マミ 「・・・どういうつもり?」
キリカ 「そこから先は、私の大切な人から、全部話すよ。じゃあ、行こう」
まどか 「待ってっ!!」
立ち去ろうとする一行に、追いすがろうとするまどかだったが・・・
マミ 「鹿目さん。この子の言う通り、この事を暁美さんに・・・」
マミに制止され、その場に残される以外に成す術がなかった。
泣き出したい気持ちを懸命におさえ、足元の紙を拾い上げるまどか。
畳まれたそれを開いてみるとそこには・・・
「廃工場跡の魔女結界で待つ ゲッターロボへ」
それだけが書かれていた。
まどか 「ゲッターロボ・・・!?」
メモから顔を上げた時には、すでに。
まどかの前から三人の姿が、きれいに消え去った後だった。
キリカ 「そこから先は、私の大切な人から、全部話すよ。じゃあ、行こう」
まどか 「待ってっ!!」
立ち去ろうとする一行に、追いすがろうとするまどかだったが・・・
マミ 「鹿目さん。この子の言う通り、この事を暁美さんに・・・」
マミに制止され、その場に残される以外に成す術がなかった。
泣き出したい気持ちを懸命におさえ、足元の紙を拾い上げるまどか。
畳まれたそれを開いてみるとそこには・・・
「廃工場跡の魔女結界で待つ ゲッターロボへ」
それだけが書かれていた。
まどか 「ゲッターロボ・・・!?」
メモから顔を上げた時には、すでに。
まどかの前から三人の姿が、きれいに消え去った後だった。
627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:42:06.93 ID:hdVtNSX/0
・・・
・・・
話を聞き終えた私は、たまらずまどかへと駆け寄った。
首元を確認すると、そこにはくっきりと赤く、キリカの腕の跡が残されていた。
苦しかったろうに、怖かっただろうに・・・
だけれど・・・
ほむら 「まどか・・・っ」
まどか 「っ」
ほむら 「無事で、無事で・・・本当によかった・・・!」
安堵から湧き上ってくる感情を抑えられず、私は思わずまどかに抱き付いていた。
まどか 「うぇひっ、ほむらちゃん!?」
たちまち全身を通して伝わってくる、暖かなまどかの温もり。
この暖かさが最悪の場合、呉キリカによって奪われていたかもしれなかったのだ。
・・・
話を聞き終えた私は、たまらずまどかへと駆け寄った。
首元を確認すると、そこにはくっきりと赤く、キリカの腕の跡が残されていた。
苦しかったろうに、怖かっただろうに・・・
だけれど・・・
ほむら 「まどか・・・っ」
まどか 「っ」
ほむら 「無事で、無事で・・・本当によかった・・・!」
安堵から湧き上ってくる感情を抑えられず、私は思わずまどかに抱き付いていた。
まどか 「うぇひっ、ほむらちゃん!?」
たちまち全身を通して伝わってくる、暖かなまどかの温もり。
この暖かさが最悪の場合、呉キリカによって奪われていたかもしれなかったのだ。
628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:44:26.75 ID:hdVtNSX/0
ほむら 「・・・」
私の体の表面が暖かな温もりで満たされるのと打って変わり、心の奥底からは怜悧な感情が湧き上がってくる。
それは例えようもない、怒り・・・だった。
まどかを怖がらせ、苦痛を与え、巴マミに言う事を聞かせるための道具として利用しようとした。
絶対に。絶対に、許されることじゃない!
呉キリカも、キリカの糸を操っている美国織莉子も。
絶対に許されない・・・!
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「・・・」
怒りに震える私の様子に気が付いたのか。
まどかがそっと、私の腰へと手をまわしてきた。
そのままキュッと、私の事を抱きしめる。
ほむら 「ほむっ!?」
私の体の表面が暖かな温もりで満たされるのと打って変わり、心の奥底からは怜悧な感情が湧き上がってくる。
それは例えようもない、怒り・・・だった。
まどかを怖がらせ、苦痛を与え、巴マミに言う事を聞かせるための道具として利用しようとした。
絶対に。絶対に、許されることじゃない!
呉キリカも、キリカの糸を操っている美国織莉子も。
絶対に許されない・・・!
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「・・・」
怒りに震える私の様子に気が付いたのか。
まどかがそっと、私の腰へと手をまわしてきた。
そのままキュッと、私の事を抱きしめる。
ほむら 「ほむっ!?」
629: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:46:19.02 ID:hdVtNSX/0
まどか 「ありがとね。私は大丈夫だよ」
ほむら 「ま、まどか・・・」
まどか 「だから、そんなに怖い顔をしないで?」
・・・やっぱり、まどかはすごい。
たったそれだけの事なのに。
沸き立った私の心には、凪いだ水面のような穏やかさが戻ってきた。
ほむら 「・・・うん」
まどか 「それで、これ・・・」
私から離れると、まどかは一枚の紙片を取り出した。
開いて、みんなに見えるように掲げる。
竜馬 「ゲッターロボ・・・」
まどか 「私には何のことか分からないけど、お願い!マミさんを助けて!」
まどかが、懇願するように私たちを見つめまわす。
ほむら 「ま、まどか・・・」
まどか 「だから、そんなに怖い顔をしないで?」
・・・やっぱり、まどかはすごい。
たったそれだけの事なのに。
沸き立った私の心には、凪いだ水面のような穏やかさが戻ってきた。
ほむら 「・・・うん」
まどか 「それで、これ・・・」
私から離れると、まどかは一枚の紙片を取り出した。
開いて、みんなに見えるように掲げる。
竜馬 「ゲッターロボ・・・」
まどか 「私には何のことか分からないけど、お願い!マミさんを助けて!」
まどかが、懇願するように私たちを見つめまわす。
630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:47:33.24 ID:hdVtNSX/0
まどか 「マミさんも心配だし、マミさんのお兄さんが、私の身代わりに・・・もし、お兄さんに何かあったら、私」
竜馬 「大丈夫だ、鹿目」
竜馬がまどかの肩をポンッと一回、軽く叩いた。
竜馬 「巴マミは心配だが、武蔵の事は気にするな。俺たちにとっちゃ、この程度の修羅場なんざ慣れっこだ」
まどか 「流君・・・」
竜馬 「あいつは自分から鹿目の身代わりを買って出たんだろう?だったらお前が責任を感じる必要はない」
まどか 「え、でも・・・」
竜馬 「大丈夫なんだ。理屈抜きで、俺には分かる。絶対に平気だ。自分の身も、妹の事だって、武蔵は平然と守って見せる。奴はそんな男だ」
まどか 「う、うん、うん・・・!」
力押しの慰めだけれど、竜馬の理屈抜きの仲間に対する信頼感は、事情を知らないまどかをも納得させる説得力があった。
まどか 「お願い、流君・・・!」
竜馬 「任されたぜ」
杏子 「おい、早く行こうぜ。こうしている間にも、マミは・・・」
ほむら 「分かってる。鹿目さん、あなたは家に帰って」
まどか 「・・・」こくり
無言で一つ、頷いて見せるまどか。
竜馬 「大丈夫だ、鹿目」
竜馬がまどかの肩をポンッと一回、軽く叩いた。
竜馬 「巴マミは心配だが、武蔵の事は気にするな。俺たちにとっちゃ、この程度の修羅場なんざ慣れっこだ」
まどか 「流君・・・」
竜馬 「あいつは自分から鹿目の身代わりを買って出たんだろう?だったらお前が責任を感じる必要はない」
まどか 「え、でも・・・」
竜馬 「大丈夫なんだ。理屈抜きで、俺には分かる。絶対に平気だ。自分の身も、妹の事だって、武蔵は平然と守って見せる。奴はそんな男だ」
まどか 「う、うん、うん・・・!」
力押しの慰めだけれど、竜馬の理屈抜きの仲間に対する信頼感は、事情を知らないまどかをも納得させる説得力があった。
まどか 「お願い、流君・・・!」
竜馬 「任されたぜ」
杏子 「おい、早く行こうぜ。こうしている間にも、マミは・・・」
ほむら 「分かってる。鹿目さん、あなたは家に帰って」
まどか 「・・・」こくり
無言で一つ、頷いて見せるまどか。
631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:48:48.29 ID:hdVtNSX/0
・・・よし。
美国織莉子。
この時間軸での彼女が、何を考え、何を狙って活動しているのかは知らないけれど。
このような強攻策をとってきた以上、私たちとの決着を今夜、つけるつもりなのだろう。
ほむら (のってやろうじゃないの)
私たちには目的のため、成すべき事がある。
織莉子たちに割く時間なんて、本当は無いのだ。
今夜、この時間軸での織莉子との関わりをすべて、終わらせてやろう。
まどか 「ほむらちゃん」
指定された場所に向かおうとする私を、まどかが遠慮気味に呼び止める。
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
ほむら 「巴マミの事は必ず私たちが助けるから、安心して」
まどか 「あ・・・うん」
まどかの問いをあえて無視して、私たちはその場を後にした。
おそらくこれから向かう場所には、志筑仁美も現れるに違いない。
その結果がどうなるのか、今の私には分からない。
だけれど・・・
ほむら (敵にまわるというのなら、打ち砕くのみだわ・・・)
それがたとえ、まどかの大切な・・・
そして、私が得た、新しい友達だっととしても。
美国織莉子。
この時間軸での彼女が、何を考え、何を狙って活動しているのかは知らないけれど。
このような強攻策をとってきた以上、私たちとの決着を今夜、つけるつもりなのだろう。
ほむら (のってやろうじゃないの)
私たちには目的のため、成すべき事がある。
織莉子たちに割く時間なんて、本当は無いのだ。
今夜、この時間軸での織莉子との関わりをすべて、終わらせてやろう。
まどか 「ほむらちゃん」
指定された場所に向かおうとする私を、まどかが遠慮気味に呼び止める。
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
ほむら 「巴マミの事は必ず私たちが助けるから、安心して」
まどか 「あ・・・うん」
まどかの問いをあえて無視して、私たちはその場を後にした。
おそらくこれから向かう場所には、志筑仁美も現れるに違いない。
その結果がどうなるのか、今の私には分からない。
だけれど・・・
ほむら (敵にまわるというのなら、打ち砕くのみだわ・・・)
それがたとえ、まどかの大切な・・・
そして、私が得た、新しい友達だっととしても。
632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:52:03.54 ID:hdVtNSX/0
・・・
・・・
指定された廃工場に向かいながら、私は考えていた。
呉キリカが、最初に人質にしたのはまどかだった。
では、どうしてまどかは無事に解放されたのだろう。
殺そうと思えば、赤子の手をひねるよりも簡単に、まどかは血の海へと沈められていたはずだ。
だけれど、キリカはそうはせず、あっさりと武蔵との人質交換に応じたという。
ほむら (やっぱりだわ)
おそらくそうだろうとは踏んではいたが、今回の出来事が一つの仮定を確信させてくれた。
この時間軸での美国織莉子の未来予知は、まどかの正体にまでは届いていない。
・・・
指定された廃工場に向かいながら、私は考えていた。
呉キリカが、最初に人質にしたのはまどかだった。
では、どうしてまどかは無事に解放されたのだろう。
殺そうと思えば、赤子の手をひねるよりも簡単に、まどかは血の海へと沈められていたはずだ。
だけれど、キリカはそうはせず、あっさりと武蔵との人質交換に応じたという。
ほむら (やっぱりだわ)
おそらくそうだろうとは踏んではいたが、今回の出来事が一つの仮定を確信させてくれた。
この時間軸での美国織莉子の未来予知は、まどかの正体にまでは届いていない。
633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:52:57.60 ID:hdVtNSX/0
ほむら (考えようによっては、今夜は好機だ)
今は届いていなくても、この先いつか、織莉子の予知がまどかの正体を暴いてしまうとも限らない。
いや、きっと。おそらく遠からずの内に、その日はやって来るに違いないのだ。
だとしたら私は、まどかの身に危険が及ぶ事態となる、その前に。
不安の芽を摘んでしまわなければならない。
それは、つまり・・・
ほむら 「・・・」
杏子 「くそ、マミの野郎・・・」
思索に沈んでいた私の意識が、杏子のつぶやきで現実へと戻された。
杏子 「くそっ、くそ・・・」
吐き捨てるように、それだけを繰り返し続ける杏子。
今は届いていなくても、この先いつか、織莉子の予知がまどかの正体を暴いてしまうとも限らない。
いや、きっと。おそらく遠からずの内に、その日はやって来るに違いないのだ。
だとしたら私は、まどかの身に危険が及ぶ事態となる、その前に。
不安の芽を摘んでしまわなければならない。
それは、つまり・・・
ほむら 「・・・」
杏子 「くそ、マミの野郎・・・」
思索に沈んでいた私の意識が、杏子のつぶやきで現実へと戻された。
杏子 「くそっ、くそ・・・」
吐き捨てるように、それだけを繰り返し続ける杏子。
634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 22:57:54.93 ID:hdVtNSX/0
ほむら 「佐倉さん」
杏子 「マミの奴・・・あれから一週間もたつってのに、きっとまだ、腑抜けてやがったんだ。でなけりゃ、誰が相手だろうと、やすやすと言いなりになんて・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そうとも言えんだろう」
杏子 「なんだよ。その場にいなかったお前に、何が分かるってんだ」
竜馬 「まぁ、分からんが・・・」
杏子 「だったら、よけいな口、はさんでくるんじゃねぇよ」
ほむら 「ちょっと、佐倉さん。リョウにそんなこと言ったって、仕方がないでしょう」
杏子 「・・・ちっ」
竜馬 「巴マミの事は分からないが、兄貴の事だったら、誰よりもよく知っているつもりだぜ」
杏子 「あん?」
竜馬 「武蔵の奴、おそらくはただ単に、鹿目の身代わりになっただけ・・・なんてことはないと思うんだがな」
ほむら 「それって、もしかして武蔵さんはわざと敵の手の内に乗ったって、そういう事?」
竜馬 「何の力もない女の子ひとり救えるんだ。悪い手じゃないだろう?」
ほむら 「ええ、おかげでまどかは助かった。だけれど・・・」
竜馬 「だが、武蔵だって馬鹿じゃない」
杏子 「?」
竜馬 「何の勝算もなく、ただ身代わりになんて手、仮に妹が腑抜ていたのなら、絶対にとらないはずさ」
杏子 「あ・・・」
竜馬 「敵さんは、武蔵という男の人となりを、何も理解していねぇ。そういうこった」
杏子 「マミの奴・・・あれから一週間もたつってのに、きっとまだ、腑抜けてやがったんだ。でなけりゃ、誰が相手だろうと、やすやすと言いなりになんて・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そうとも言えんだろう」
杏子 「なんだよ。その場にいなかったお前に、何が分かるってんだ」
竜馬 「まぁ、分からんが・・・」
杏子 「だったら、よけいな口、はさんでくるんじゃねぇよ」
ほむら 「ちょっと、佐倉さん。リョウにそんなこと言ったって、仕方がないでしょう」
杏子 「・・・ちっ」
竜馬 「巴マミの事は分からないが、兄貴の事だったら、誰よりもよく知っているつもりだぜ」
杏子 「あん?」
竜馬 「武蔵の奴、おそらくはただ単に、鹿目の身代わりになっただけ・・・なんてことはないと思うんだがな」
ほむら 「それって、もしかして武蔵さんはわざと敵の手の内に乗ったって、そういう事?」
竜馬 「何の力もない女の子ひとり救えるんだ。悪い手じゃないだろう?」
ほむら 「ええ、おかげでまどかは助かった。だけれど・・・」
竜馬 「だが、武蔵だって馬鹿じゃない」
杏子 「?」
竜馬 「何の勝算もなく、ただ身代わりになんて手、仮に妹が腑抜ていたのなら、絶対にとらないはずさ」
杏子 「あ・・・」
竜馬 「敵さんは、武蔵という男の人となりを、何も理解していねぇ。そういうこった」
635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:02:26.89 ID:hdVtNSX/0
・・・
・・・
廃工場跡
魔女の結界前。
キリカに自由と生殺与奪権を握られた武蔵は、大人しく指示に従って、この場所へとたどり着いた。
少し離れて、後ろからはマミも付いて来ている。
少しでもおかしな動きを見せたら、武蔵の命はない。
そう釘を刺されている以上、今のマミには唯々諾々とキリカの言うことに従う以外に成す術がなかった。
しかし、実のところマミは、そう現状を悲観してはいなかった。
むしろ、武蔵の機転によって、まどかを危険な目に会わせずに済んだことに心からホッとしていたほどだ。
マミ (お兄ちゃん・・・)
マミは武蔵を無条件に信頼していた。
・・・
廃工場跡
魔女の結界前。
キリカに自由と生殺与奪権を握られた武蔵は、大人しく指示に従って、この場所へとたどり着いた。
少し離れて、後ろからはマミも付いて来ている。
少しでもおかしな動きを見せたら、武蔵の命はない。
そう釘を刺されている以上、今のマミには唯々諾々とキリカの言うことに従う以外に成す術がなかった。
しかし、実のところマミは、そう現状を悲観してはいなかった。
むしろ、武蔵の機転によって、まどかを危険な目に会わせずに済んだことに心からホッとしていたほどだ。
マミ (お兄ちゃん・・・)
マミは武蔵を無条件に信頼していた。
636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:04:42.82 ID:hdVtNSX/0
目の前の少女が仮にどれほどの手練れであろうと、自分と武蔵が揃っている以上、後れをとる事などありえないと確信していたのだ。
では、どうして反撃もせず、こんな人気のない場所まで、言いなりとなってついてきたのか。
マミ (この子を動かしている、頭となる者がいる)
キリカが言っていた”私の大切な人”。
その者こそが、人質をとってまで自分をこのような場所まで連れ出すように指示を出した、張本人に違いない。
マミ (その人を叩いてしまわない事には、問題は解決しないわ)
去り際にキリカが落していった紙切れ。
何が書いてあったのか窺い知ることはできなかったけれど、今ごろはそれを持って、まどかがほむら達の所へと走っているはずだった。
マミ (間もなく暁美さんたちが来てくれるに違いない。それまでに、何とかしてこの人たちの目的を探らないと・・・)
そんな事を考えている間も、新たな指示がキリカから飛ぶ。
キリカ 「さー、着いた着いた。さ、これから結界の中に入るよ」
では、どうして反撃もせず、こんな人気のない場所まで、言いなりとなってついてきたのか。
マミ (この子を動かしている、頭となる者がいる)
キリカが言っていた”私の大切な人”。
その者こそが、人質をとってまで自分をこのような場所まで連れ出すように指示を出した、張本人に違いない。
マミ (その人を叩いてしまわない事には、問題は解決しないわ)
去り際にキリカが落していった紙切れ。
何が書いてあったのか窺い知ることはできなかったけれど、今ごろはそれを持って、まどかがほむら達の所へと走っているはずだった。
マミ (間もなく暁美さんたちが来てくれるに違いない。それまでに、何とかしてこの人たちの目的を探らないと・・・)
そんな事を考えている間も、新たな指示がキリカから飛ぶ。
キリカ 「さー、着いた着いた。さ、これから結界の中に入るよ」
637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:08:27.04 ID:hdVtNSX/0
マミ 「・・・魔女退治でもするつもり?」
キリカ 「そうなるね。もっとも、魔女を倒すのは私たちじゃないけれど」
マミ 「・・・?」
キリカ 「それも含めて、答えはこの結界の中にある。私たちの目的、君たちに何をさせたいのか。知りたかったら、ほら。ちゃっちゃと入る」
マミ 「・・・」
武蔵 「今は、従おうぜ」
行こう、マミちゃん。この子の糸を操っている奴の面、拝ませてもらいに、さ。
そこで、目にもの見せてやろうぜ。
振り返った武蔵の目が、そう語りかけていた。
マミは頷く。
今の兄妹に、言葉など必要ではなかった。
キリカ 「そうなるね。もっとも、魔女を倒すのは私たちじゃないけれど」
マミ 「・・・?」
キリカ 「それも含めて、答えはこの結界の中にある。私たちの目的、君たちに何をさせたいのか。知りたかったら、ほら。ちゃっちゃと入る」
マミ 「・・・」
武蔵 「今は、従おうぜ」
行こう、マミちゃん。この子の糸を操っている奴の面、拝ませてもらいに、さ。
そこで、目にもの見せてやろうぜ。
振り返った武蔵の目が、そう語りかけていた。
マミは頷く。
今の兄妹に、言葉など必要ではなかった。
638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:12:42.78 ID:hdVtNSX/0
・・・
・・・
魔女結界の中。
キリカにせっつかれ、今は従うしかないマミたち兄妹は、ただ黙って奥へ奥へと足を運んでいた。
だが、マミはすぐにある違和感に気がつく。
マミ (おかしいわ・・・)
魔女の支配する結界内に無数に存在するはずの、使い魔の姿が一体も見当たらないのだ。
だが、目を凝らしてよく見ると、そこかしこに、何やらの残骸が散らばっているのにも気がつく。
マミは即座に、その残骸の正体を見抜いた。
マミ (・・・使い魔の・・・残骸)
それも、広範囲にわたって、おびただしい数が散乱している。
マミ (まさか、ここの使い魔って、もしかして・・・)
すべて、倒されてしまっている?
マミは自分が導き出した仮定に、背筋が凍りつくのを感じていた。
・・・
魔女結界の中。
キリカにせっつかれ、今は従うしかないマミたち兄妹は、ただ黙って奥へ奥へと足を運んでいた。
だが、マミはすぐにある違和感に気がつく。
マミ (おかしいわ・・・)
魔女の支配する結界内に無数に存在するはずの、使い魔の姿が一体も見当たらないのだ。
だが、目を凝らしてよく見ると、そこかしこに、何やらの残骸が散らばっているのにも気がつく。
マミは即座に、その残骸の正体を見抜いた。
マミ (・・・使い魔の・・・残骸)
それも、広範囲にわたって、おびただしい数が散乱している。
マミ (まさか、ここの使い魔って、もしかして・・・)
すべて、倒されてしまっている?
マミは自分が導き出した仮定に、背筋が凍りつくのを感じていた。
639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:14:37.73 ID:hdVtNSX/0
その仮定が正しいのだとしたら、この結界に先に入り込んでいるであろう人物・・・
キリカの糸を操る人物とは、どれほどの手練れなのだろうか。
マミ (想像するだけで、恐ろしくなってしまうわね)
そのような人が、自分にどのような用があるというのだろう・・・
だけれど、そのことに関しては、いくら考えても答えなど出るはずもない。当人に確かめるほかに、知る術はないのだ。
マミ 「・・・」
マミの思索が五里霧中に迷い込んでいる間にも、一行の足取りはどんどんと結界の奥へと進んでゆく。
・・・やがて。
開けた場所へとたどり着く、マミたち一行。
どうやらここが、結界の主である魔女の住処のようだった。
だというのに・・・
キリカの糸を操る人物とは、どれほどの手練れなのだろうか。
マミ (想像するだけで、恐ろしくなってしまうわね)
そのような人が、自分にどのような用があるというのだろう・・・
だけれど、そのことに関しては、いくら考えても答えなど出るはずもない。当人に確かめるほかに、知る術はないのだ。
マミ 「・・・」
マミの思索が五里霧中に迷い込んでいる間にも、一行の足取りはどんどんと結界の奥へと進んでゆく。
・・・やがて。
開けた場所へとたどり着く、マミたち一行。
どうやらここが、結界の主である魔女の住処のようだった。
だというのに・・・
640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:20:47.93 ID:hdVtNSX/0
マミ 「・・・えっと」
武蔵 「どうした、マミちゃん」
マミ 「ここが、結界の最奥。魔女の住処だと思うんだけれど、いないのよ。肝心の住人が」
武蔵 「気配は?」
マミ 「気配は・・・感じる、けど。とっても微弱・・・と言うか、か細い・・・」
魔女の気配を探りながら話していたマミは、自分のセリフをヒントにして、あることに気がついた。
マミ 「死にかけてる・・・」
武蔵 「だ、誰がだ!?」
マミ 「魔女よ・・・」
武蔵 「っ!?」
武蔵 「どうした、マミちゃん」
マミ 「ここが、結界の最奥。魔女の住処だと思うんだけれど、いないのよ。肝心の住人が」
武蔵 「気配は?」
マミ 「気配は・・・感じる、けど。とっても微弱・・・と言うか、か細い・・・」
魔女の気配を探りながら話していたマミは、自分のセリフをヒントにして、あることに気がついた。
マミ 「死にかけてる・・・」
武蔵 「だ、誰がだ!?」
マミ 「魔女よ・・・」
武蔵 「っ!?」
641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:34:25.84 ID:hdVtNSX/0
マミ 「だから、襲いかかってこないんだわ」
キリカ 「正解。やはり君は目ざといよね」
だまって兄妹の会話を聞いていたキリカが、最後に答えを投げてよこした。
キリカ 「今は魔女ではなく、魔女の結界が必要なんだよ。殺してしまったら、結界も消滅してしまうからね。死なない程度に、死にかけてもらったのさ」
そう言って、ある場所を指さす。
そこにいたのは、一人の少女。
ドレスのような丈の長い服をまとい、優雅なたたずまいでこちらを見ている。
そして、少女の後ろには・・・
マミ 「魔女・・・」
重傷を負い、すでに抵抗力をなくした魔女が、静かに身を震わせながら横たわっていた。
放っておけば、ほどなく息絶えてしまうであろう魔女を、とどめも刺さずに首の皮一枚で生かしておいているのだ。
武蔵 「なんてことを・・・」
マミ 「いくら相手が魔女だからって、むごい・・・」
キリカ 「正解。やはり君は目ざといよね」
だまって兄妹の会話を聞いていたキリカが、最後に答えを投げてよこした。
キリカ 「今は魔女ではなく、魔女の結界が必要なんだよ。殺してしまったら、結界も消滅してしまうからね。死なない程度に、死にかけてもらったのさ」
そう言って、ある場所を指さす。
そこにいたのは、一人の少女。
ドレスのような丈の長い服をまとい、優雅なたたずまいでこちらを見ている。
そして、少女の後ろには・・・
マミ 「魔女・・・」
重傷を負い、すでに抵抗力をなくした魔女が、静かに身を震わせながら横たわっていた。
放っておけば、ほどなく息絶えてしまうであろう魔女を、とどめも刺さずに首の皮一枚で生かしておいているのだ。
武蔵 「なんてことを・・・」
マミ 「いくら相手が魔女だからって、むごい・・・」
642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:37:11.53 ID:hdVtNSX/0
キリカ 「へぇ、魔女を狩って生きている魔法少女のくせに、魔女に同情なんかしちゃうんだ?」
マミ 「無駄に苦しませるような、趣味の悪い遊びをして、喜んだりした覚えはないわよ」
キリカ 「別に遊んでるわけではないけどさ。意味があってやっていることだと、さっきも言っただろう。・・・あ、そうか」
マミ 「・・・?」
キリカ 「君は、あれだ。魔女の正体を知っているんだ。だから、そういう風に憐みの目で魔女を見られるんだね」
マミ 「・・・っ!」
武蔵 「お前!」
キリカ 「さて、これ以上の話の続きは、織莉子としてよ。もともと私は、織莉子いがいと話をするの、好きではないんだ」
激高したマミと武蔵をよそに、キリカは一方的に話を打ち切ると、向こうに立つ少女・・・織莉子に向かって手を振った。
キリカ 「織莉子!巴マミ、連れてきたよ!」
織莉子 「・・・」
キリカの呼びかけを合図に、織莉子がこちらへと歩を進めてきた。
しずしずと。穏やかな歩調で。
しかし、見た目の立ち振る舞いとは裏腹に、彼女が近づくにつれて感じられるのは、織莉子と呼ばれた少女から発せられる、ある種の圧力。
まるで重力が意志をもって、マミたちの上から圧し掛かってくるかのよう・・・
マミ 「無駄に苦しませるような、趣味の悪い遊びをして、喜んだりした覚えはないわよ」
キリカ 「別に遊んでるわけではないけどさ。意味があってやっていることだと、さっきも言っただろう。・・・あ、そうか」
マミ 「・・・?」
キリカ 「君は、あれだ。魔女の正体を知っているんだ。だから、そういう風に憐みの目で魔女を見られるんだね」
マミ 「・・・っ!」
武蔵 「お前!」
キリカ 「さて、これ以上の話の続きは、織莉子としてよ。もともと私は、織莉子いがいと話をするの、好きではないんだ」
激高したマミと武蔵をよそに、キリカは一方的に話を打ち切ると、向こうに立つ少女・・・織莉子に向かって手を振った。
キリカ 「織莉子!巴マミ、連れてきたよ!」
織莉子 「・・・」
キリカの呼びかけを合図に、織莉子がこちらへと歩を進めてきた。
しずしずと。穏やかな歩調で。
しかし、見た目の立ち振る舞いとは裏腹に、彼女が近づくにつれて感じられるのは、織莉子と呼ばれた少女から発せられる、ある種の圧力。
まるで重力が意志をもって、マミたちの上から圧し掛かってくるかのよう・・・
643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:40:18.04 ID:hdVtNSX/0
武蔵 「ただものじゃないな・・・」
マミ 「ええ・・・」
武蔵 「あの子が、キリカ。君のボスっていうワケか」
キリカ 「違うよ。友達さ。私の大切な、ね」
武蔵 「そうかい」
武蔵がマミを後ろ目に、チラリと見る。
合図だ。
敵の親玉が出てきた。ここでこれまでの形勢を逆転させてもらおう。
武蔵の無言の問いかけを、マミは正確にキャッチしていた。
頷いて、武蔵が動くのを待つ。
マミ 「・・・」
武蔵 「今だっ!!」
武蔵が身を沈ませたのは、掛け声を発するのと同時だった。
マミ 「ええ・・・」
武蔵 「あの子が、キリカ。君のボスっていうワケか」
キリカ 「違うよ。友達さ。私の大切な、ね」
武蔵 「そうかい」
武蔵がマミを後ろ目に、チラリと見る。
合図だ。
敵の親玉が出てきた。ここでこれまでの形勢を逆転させてもらおう。
武蔵の無言の問いかけを、マミは正確にキャッチしていた。
頷いて、武蔵が動くのを待つ。
マミ 「・・・」
武蔵 「今だっ!!」
武蔵が身を沈ませたのは、掛け声を発するのと同時だった。
644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/17(金) 23:45:00.55 ID:hdVtNSX/0
その幅の広い体躯からは想像もできない素早さでキリカの腕から逃れると、その腕をつかんでクルンと体を回転させる。
とたんに、ふわりと宙に放り投げられるキリカの身体。
キリカ 「え・・・!?」
何が起こったかを把握する前に、キリカはしたたかに地面に叩きつけられていた。
キリカ 「かはっ」
いきなりの事で、受け身をとる暇すらなかった。
叩きつけられたショックが背骨を軋ませ、呼吸をすることすらままならない。
キリカ 「くふっ、ど、どうして・・・」
武蔵 「俺をデブだと思って侮っていたんだろうが、東葉高校柔道部主将、巴武蔵をなめるなよ!」
キリカ 「こんなデブに・・・スピードで、私が、後れをとる、なんて・・・」
武蔵 「俺はあいにく、動けるデブなんだよ!」
キリカ 「反則だよ、それ・・・」
武蔵 「何とでも言え!さぁ、ここからは反撃の時間だ!」
652: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 22:51:55.73 ID:92sOFC4L0
マミ 「お兄ちゃん、その子を押さえつけておいて!」
武蔵 「任せろ!力押しならなおの事、俺はだれにも後れをとらないぜ!」
マミ 「良かった、これで・・・」
心おきなく、変身できる!
マミはソウルジェムに意識を集中させると、魔法少女へと変身を遂げた。
すかさずマスケット銃を召還すると、その銃口を一点へと向ける。
標準の先にいるのは、仲間が倒されたにもかかわらず、平然とこちらへと歩み寄って来る美国織莉子。
マミ 「動かないで」
織莉子 「・・・」
マミ 「手荒な真似はしたくない。だけれど、あなたが言うことを聞いてくれなくては、この子に怪我をしてもらわなくちゃならなくなるかも知れないわ」
武蔵 「任せろ!力押しならなおの事、俺はだれにも後れをとらないぜ!」
マミ 「良かった、これで・・・」
心おきなく、変身できる!
マミはソウルジェムに意識を集中させると、魔法少女へと変身を遂げた。
すかさずマスケット銃を召還すると、その銃口を一点へと向ける。
標準の先にいるのは、仲間が倒されたにもかかわらず、平然とこちらへと歩み寄って来る美国織莉子。
マミ 「動かないで」
織莉子 「・・・」
マミ 「手荒な真似はしたくない。だけれど、あなたが言うことを聞いてくれなくては、この子に怪我をしてもらわなくちゃならなくなるかも知れないわ」
653: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 22:53:53.50 ID:92sOFC4L0
織莉子 「あら、意外」
口ぶりとは裏腹に、まったく何の感情も表さない声で織莉子が言う。
織莉子 「あなたは人質をとるような卑劣な真似、嫌いなタイプだと思っていたのに」
マミ 「それをあなたが言うわけ?」
織莉子 「まぁ、それもそうね」
マミ 「私だって、好きなはずないじゃない。だけれど、私はここであなたたちに良いようにされる訳にはいかないの」
織莉子 「・・・」
マミ 「何がしたいのか、教えてもらいましょうか。そのためだったら私は、なんだってやって見せる」
織莉子 「一皮むけたみたいね、巴マミ。今まで通りの甘いあなたでいてくれた方が、こちらとしては組しやすかったのだけれど・・
話しながらも、織莉子の歩みは止まらない。
口ぶりとは裏腹に、まったく何の感情も表さない声で織莉子が言う。
織莉子 「あなたは人質をとるような卑劣な真似、嫌いなタイプだと思っていたのに」
マミ 「それをあなたが言うわけ?」
織莉子 「まぁ、それもそうね」
マミ 「私だって、好きなはずないじゃない。だけれど、私はここであなたたちに良いようにされる訳にはいかないの」
織莉子 「・・・」
マミ 「何がしたいのか、教えてもらいましょうか。そのためだったら私は、なんだってやって見せる」
織莉子 「一皮むけたみたいね、巴マミ。今まで通りの甘いあなたでいてくれた方が、こちらとしては組しやすかったのだけれど・・
話しながらも、織莉子の歩みは止まらない。
654: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 22:55:15.69 ID:92sOFC4L0
マミ 「動かないでと言っているのに!」
マミは、一発。銃弾を放った。
狙うは織莉子の足もと。いきなり本人に命中させるつもりはない。
まずは威嚇を行うつもりだった。
織莉子 「・・・」
だけれど。
自分の足もとが銃痕にえぐられても、織莉子は平然としたまま、足を止めようともしない。
マミ 「え・・・」
織莉子 「あなたの弾は当たらない」
マミは、一発。銃弾を放った。
狙うは織莉子の足もと。いきなり本人に命中させるつもりはない。
まずは威嚇を行うつもりだった。
織莉子 「・・・」
だけれど。
自分の足もとが銃痕にえぐられても、織莉子は平然としたまま、足を止めようともしない。
マミ 「え・・・」
織莉子 「あなたの弾は当たらない」
655: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 22:57:19.14 ID:92sOFC4L0
マミ 「お、脅しじゃないのよ!」
もう一発、足もとに向けて撃つ。
だが、それに対しても織莉子は顔色一つ、変える事すらしなかった。
織莉子 「だから、言ってるでしょう。あなたの銃弾は、私には当たらない」
マミ 「ど、どうして・・・」
織莉子 「威嚇射撃は、もういいわ。さぁ、当てる気があるなら、本気でいらっしゃい」
マミ 「・・・っ!!」」
挑発に乗せられるように、マミは照準を織莉子の顔に定めた。
すでに両者の距離は指呼の間に迫っている。
狙って撃てば、絶対に外すはずがなかった。
もう一発、足もとに向けて撃つ。
だが、それに対しても織莉子は顔色一つ、変える事すらしなかった。
織莉子 「だから、言ってるでしょう。あなたの銃弾は、私には当たらない」
マミ 「ど、どうして・・・」
織莉子 「威嚇射撃は、もういいわ。さぁ、当てる気があるなら、本気でいらっしゃい」
マミ 「・・・っ!!」」
挑発に乗せられるように、マミは照準を織莉子の顔に定めた。
すでに両者の距離は指呼の間に迫っている。
狙って撃てば、絶対に外すはずがなかった。
656: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 22:59:13.55 ID:92sOFC4L0
だが・・・
マミ 「っ!!」
静寂に包まれた結界内に、再び。銃声が響き渡る。
しかし・・・
マミの放った銃弾は、織莉子の頬すれすれをかすめただけで、彼女に顔に傷一つ付けることはなかった。
マミ 「・・・」
マミが愕然としている間にも距離を縮め続けた織莉子は、ついにマミの目の前までたどり着いてしまった。
その様子をキリカを抑え込みながらも見ていた武蔵が、あきれたような口調で言う。
武蔵 「あんた、死ぬのが怖くないのか」
織莉子 「何度も言ったでしょう。巴マミの銃弾は、私には当たらない」
武蔵 「なぜ、そうと言いきれる?」
織莉子 「見えていたから。あらかじめ、ね」
武蔵 「・・・どういう意味d
織莉子 「それに・・・」
武蔵 「・・・?」
マミ 「っ!!」
静寂に包まれた結界内に、再び。銃声が響き渡る。
しかし・・・
マミの放った銃弾は、織莉子の頬すれすれをかすめただけで、彼女に顔に傷一つ付けることはなかった。
マミ 「・・・」
マミが愕然としている間にも距離を縮め続けた織莉子は、ついにマミの目の前までたどり着いてしまった。
その様子をキリカを抑え込みながらも見ていた武蔵が、あきれたような口調で言う。
武蔵 「あんた、死ぬのが怖くないのか」
織莉子 「何度も言ったでしょう。巴マミの銃弾は、私には当たらない」
武蔵 「なぜ、そうと言いきれる?」
織莉子 「見えていたから。あらかじめ、ね」
武蔵 「・・・どういう意味d
織莉子 「それに・・・」
武蔵 「・・・?」
657: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:00:44.11 ID:92sOFC4L0
武蔵 「・・・?」
織莉子 「同じ魔法少女を撃つのに、冷徹になり切れない。甘さを捨てても、優しさまでは捨てられない。巴マミはそんな人だと、分かっていたから」
武蔵 「あんたさ、本当に、何者なんだよ」
織莉子 「さあ・・・?」
武蔵 「まぁ、良いよ。マミちゃんがどうあれ、俺の手元に人質がいることは、依然変わりがないんだ。言う事は聞いてもらうぜ。俺は妹と違って、マミちゃんを守るためだったら何だってやれる男だ」
織莉子 「・・・」
キリカ 「くふっ・・・くふふっ」
数分続いた呼吸困難から解放されたキリカが、武蔵の下からこもった笑い声をあげた。
キリカ 「まさか、人質として連れてきたお兄さんが、ここまで戦えちゃうなんてね。人質交換は失敗だったかな。ふふふ」
武蔵 「何がおかしい・・・?」
キリカ 「妹が大切なら、さ。今すぐ私を放して、おとなしくしておいた方が身のためだと思うよ」
武蔵 「こいつ、まだそんな減らず口を・・・」
キリカ 「ねぇ、二人とも。君たちは、私たちに気をとられすぎて、注意力が、さ・・・さ・・・えーと、なんだっけ」
織莉子 「散漫」
キリカ 「そう、サンマンになりすぎちゃってたようだね」
織莉子 「同じ魔法少女を撃つのに、冷徹になり切れない。甘さを捨てても、優しさまでは捨てられない。巴マミはそんな人だと、分かっていたから」
武蔵 「あんたさ、本当に、何者なんだよ」
織莉子 「さあ・・・?」
武蔵 「まぁ、良いよ。マミちゃんがどうあれ、俺の手元に人質がいることは、依然変わりがないんだ。言う事は聞いてもらうぜ。俺は妹と違って、マミちゃんを守るためだったら何だってやれる男だ」
織莉子 「・・・」
キリカ 「くふっ・・・くふふっ」
数分続いた呼吸困難から解放されたキリカが、武蔵の下からこもった笑い声をあげた。
キリカ 「まさか、人質として連れてきたお兄さんが、ここまで戦えちゃうなんてね。人質交換は失敗だったかな。ふふふ」
武蔵 「何がおかしい・・・?」
キリカ 「妹が大切なら、さ。今すぐ私を放して、おとなしくしておいた方が身のためだと思うよ」
武蔵 「こいつ、まだそんな減らず口を・・・」
キリカ 「ねぇ、二人とも。君たちは、私たちに気をとられすぎて、注意力が、さ・・・さ・・・えーと、なんだっけ」
織莉子 「散漫」
キリカ 「そう、サンマンになりすぎちゃってたようだね」
658: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:08:42.12 ID:92sOFC4L0
マミ 「え、ど・・・どういうこと!?」
キリカ 「周りに目を巡らせて、よく見てみるといいよ」
マミ 「え・・・?」
慌ててマミは、意識と視線を四方へと巡らす。
そして、あることに気がついて愕然としてしまった。
なぜ・・・なぜ今まで気がつかなかったのだろう。
マミ 「・・・お兄ちゃん。その子、放してあげて」
武蔵 「・・・理由は?」
マミ 「囲まれてる」
武蔵 「なんだって・・・?」
武蔵も顔を上げ、マミに倣って周囲を見回した。
そして、彼も気がつく。
結界内に散乱する遮蔽物の影という影から、こちらに狙いを定める幾つもの気配に。
キリカ 「君たちを狙う、多数の魔法少女。一斉攻撃の洗礼を無事乗り切る自信があるのなら、試してみるのも良いかもだけどさ」
武蔵 「参ったな」
武蔵にはお手上げというように両手を上げて、押さえ込んでいたキリカを解放するよりほかに、打てる手はなかった。
キリカ 「周りに目を巡らせて、よく見てみるといいよ」
マミ 「え・・・?」
慌ててマミは、意識と視線を四方へと巡らす。
そして、あることに気がついて愕然としてしまった。
なぜ・・・なぜ今まで気がつかなかったのだろう。
マミ 「・・・お兄ちゃん。その子、放してあげて」
武蔵 「・・・理由は?」
マミ 「囲まれてる」
武蔵 「なんだって・・・?」
武蔵も顔を上げ、マミに倣って周囲を見回した。
そして、彼も気がつく。
結界内に散乱する遮蔽物の影という影から、こちらに狙いを定める幾つもの気配に。
キリカ 「君たちを狙う、多数の魔法少女。一斉攻撃の洗礼を無事乗り切る自信があるのなら、試してみるのも良いかもだけどさ」
武蔵 「参ったな」
武蔵にはお手上げというように両手を上げて、押さえ込んでいたキリカを解放するよりほかに、打てる手はなかった。
659: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:10:45.80 ID:92sOFC4L0
・・・
・・・
指定された廃工場跡。
確かにそこに、魔女結界の入り口はあった。
杏子 「この中に、マミ達がいるんだな。よし、とっとと入ろうぜ」
ほむら 「待って」
杏子 「なんだよ、早いとこ行かないとマミが・・・」
ほむら 「冷静になって、少し落ち着いて。見て、入り口を」
杏子 「なんだってんだ・・・ん・・・?」
ゆま 「あー、誰かいるね・・・?」
ほむら 「ええ。さしずめ、私たちを導くための案内役といったところじゃないかしら」
竜馬 「敵も粋なことをしやがるな。しかも、あいつは・・・」
ほむら 「・・・ええ」
竜馬 「志筑仁美か・・・」
・・・
指定された廃工場跡。
確かにそこに、魔女結界の入り口はあった。
杏子 「この中に、マミ達がいるんだな。よし、とっとと入ろうぜ」
ほむら 「待って」
杏子 「なんだよ、早いとこ行かないとマミが・・・」
ほむら 「冷静になって、少し落ち着いて。見て、入り口を」
杏子 「なんだってんだ・・・ん・・・?」
ゆま 「あー、誰かいるね・・・?」
ほむら 「ええ。さしずめ、私たちを導くための案内役といったところじゃないかしら」
竜馬 「敵も粋なことをしやがるな。しかも、あいつは・・・」
ほむら 「・・・ええ」
竜馬 「志筑仁美か・・・」
660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:13:02.24 ID:92sOFC4L0
杏子 「へぇ・・・あそこにいるのが、例の掘出し物って奴か」
ほむら 「その言い方はやめて。聞いていて、気分のいいものじゃない」
杏子 「知るかよ。お前のクラスメイトであれ、今はマミを誘らった奴の仲間なんだろう?敵に気をかけてやる言われはねぇよ」
ほむら 「・・・」
杏子の言い分も、もっともだ。
だから私は問答を切り上げ、皆の先頭に立って仁美へと、結界の入り口がある方へと向かうことにした。
あちらも、すでに私たちがやって来た事に気がついている。
声が届く範囲まで距離が縮まると、仁美は普段と変わらない柔らかい笑みを浮かべながら、ぺこりと一つ頭を下げた。
仁美 「お待ちしていましたわ、皆さん。暁美さん、流君。先ほどぶりですわね」
ほむら 「・・・」
普段と違う所があるとすれば、それは彼女が魔法少女の装いに身を包んでいるという、一点のみ。
その一点の違いが、とてつもなく大きいのだけれど・・・
ほむら 「その言い方はやめて。聞いていて、気分のいいものじゃない」
杏子 「知るかよ。お前のクラスメイトであれ、今はマミを誘らった奴の仲間なんだろう?敵に気をかけてやる言われはねぇよ」
ほむら 「・・・」
杏子の言い分も、もっともだ。
だから私は問答を切り上げ、皆の先頭に立って仁美へと、結界の入り口がある方へと向かうことにした。
あちらも、すでに私たちがやって来た事に気がついている。
声が届く範囲まで距離が縮まると、仁美は普段と変わらない柔らかい笑みを浮かべながら、ぺこりと一つ頭を下げた。
仁美 「お待ちしていましたわ、皆さん。暁美さん、流君。先ほどぶりですわね」
ほむら 「・・・」
普段と違う所があるとすれば、それは彼女が魔法少女の装いに身を包んでいるという、一点のみ。
その一点の違いが、とてつもなく大きいのだけれど・・・
661: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:15:31.23 ID:92sOFC4L0
仁美 「そして、お初にお目にかかる方には、初めまして。志筑仁美と申します」
ゆま 「はわわ・・・千歳ゆまです」
杏子 「こらっ、なにやってんだ、ゆま!」
つられて頭を下げたゆまを、杏子が叱りつける。
杏子 「なに、相手のペースに呑まれてるんだよ。あいつは敵だ。名乗ってやる必要なんざねぇっての!」
ゆま 「きょーこ・・・ご、ごめんなさい」
竜馬 「お前たち、ゲッターを使って何をしようとしている・・・?と、聞いても、志筑は答えてはくれないんだろうな」
仁美 「・・・ふふ」
竜馬 「だったら、とっとと行こうぜ。お前についていった先に、俺の問いに答えられる奴が待っているんだろう」
仁美 「察しが早くて、助かりますわ。それにしても、びっくりしましたわ。あの方が言っていたロボットに関わっているのが、まさか私のクラスメイトだっただなんて」
ほむら 「こっちだってビックリよ。あなたともあろう人が、あんな手段を択ばないような女の仲間になっているだなんて」
仁美 「選べる手段が限られているのなら、もっとも効果的な方法を選択する。それのどこがいけない事ですの?」
ゆま 「はわわ・・・千歳ゆまです」
杏子 「こらっ、なにやってんだ、ゆま!」
つられて頭を下げたゆまを、杏子が叱りつける。
杏子 「なに、相手のペースに呑まれてるんだよ。あいつは敵だ。名乗ってやる必要なんざねぇっての!」
ゆま 「きょーこ・・・ご、ごめんなさい」
竜馬 「お前たち、ゲッターを使って何をしようとしている・・・?と、聞いても、志筑は答えてはくれないんだろうな」
仁美 「・・・ふふ」
竜馬 「だったら、とっとと行こうぜ。お前についていった先に、俺の問いに答えられる奴が待っているんだろう」
仁美 「察しが早くて、助かりますわ。それにしても、びっくりしましたわ。あの方が言っていたロボットに関わっているのが、まさか私のクラスメイトだっただなんて」
ほむら 「こっちだってビックリよ。あなたともあろう人が、あんな手段を択ばないような女の仲間になっているだなんて」
仁美 「選べる手段が限られているのなら、もっとも効果的な方法を選択する。それのどこがいけない事ですの?」
662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:23:01.52 ID:92sOFC4L0
ほむら 「・・・美国織莉子がやろうとしていること、あなたはもう知っているのね?」
仁美 「ええ。私は私の大切な人が生きてゆく世界を、是が非でも守らなければならない。織莉子さんは、その指針を示してくれた、大切な人です」
ほむら 「・・・美樹さんや上条君の生きていく世界、ね」
仁美 「はい」
ほむら 「では、その中に鹿目さんは入っているの?」
仁美 「・・・なぜ、そこでまどかさんが出てくるんですの?」
ほむら 「答えて」
仁美 「まどかさんは大切なお友達。当然はいっているに決まっていますわ」
ほむら 「・・・」
あなたが盲信する美国織莉子がやろうとしている事は、最終的にはまどかの抹殺だというのに。
仁美 「ええ。私は私の大切な人が生きてゆく世界を、是が非でも守らなければならない。織莉子さんは、その指針を示してくれた、大切な人です」
ほむら 「・・・美樹さんや上条君の生きていく世界、ね」
仁美 「はい」
ほむら 「では、その中に鹿目さんは入っているの?」
仁美 「・・・なぜ、そこでまどかさんが出てくるんですの?」
ほむら 「答えて」
仁美 「まどかさんは大切なお友達。当然はいっているに決まっていますわ」
ほむら 「・・・」
あなたが盲信する美国織莉子がやろうとしている事は、最終的にはまどかの抹殺だというのに。
663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/21(火) 23:24:34.53 ID:92sOFC4L0
真実を伝え、仁美の目を覚まさせてやりたい。
だけれど、現時点で織莉子とつるんでいる彼女に伝えられるはずもなく、そんなジレンマが狂おしいほどにじれったかった。
杏子 「グダグダ言ってるなよ。私はお前の能書きにつきあう気はねぇ!とっととマミの所へ連れていきやがれ!」
仁美 「分かりましたわ。では、ご案内します。さ、こちらへ」
仁美はきびすを返すと、すたすたと結界の中へとその姿を消してしまった。
私たちも、その後を追う。
仁美の背中の向こう・・・
その先にいるであろう、決着をつけるべき相手の元へと向かうために。
だけれど、現時点で織莉子とつるんでいる彼女に伝えられるはずもなく、そんなジレンマが狂おしいほどにじれったかった。
杏子 「グダグダ言ってるなよ。私はお前の能書きにつきあう気はねぇ!とっととマミの所へ連れていきやがれ!」
仁美 「分かりましたわ。では、ご案内します。さ、こちらへ」
仁美はきびすを返すと、すたすたと結界の中へとその姿を消してしまった。
私たちも、その後を追う。
仁美の背中の向こう・・・
その先にいるであろう、決着をつけるべき相手の元へと向かうために。
669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:15:37.23 ID:BT+H8fEn0
・・・
・・・
仁美に導かれるままに、使い魔の残骸が散らばっている通路を進む私たち。
仁美 「あ、そうそう」
道半ばで、何かを思い出したようにつぶやいた仁美が、おもむろに私に向かって左手を差し出してきた。
ほむら 「?」
仁美 「暁美さん、手をつなぎましょう」
ほむら 「・・・」
竜馬 「へぇ・・・こっちのことは、全部リサーチ済みってわけか」
仁美 「ふふ、私と暁美さんはお友達同士ですもの。手をつなぐくらい、普通のことでしょう」
ほむら 「・・・そうね」
人質をとられている以上、従うほかにない。
私は言われるままに、その手を取る。
・・・これで私は、手持ちのカードを一枚、失ってしまった。
・・・
仁美に導かれるままに、使い魔の残骸が散らばっている通路を進む私たち。
仁美 「あ、そうそう」
道半ばで、何かを思い出したようにつぶやいた仁美が、おもむろに私に向かって左手を差し出してきた。
ほむら 「?」
仁美 「暁美さん、手をつなぎましょう」
ほむら 「・・・」
竜馬 「へぇ・・・こっちのことは、全部リサーチ済みってわけか」
仁美 「ふふ、私と暁美さんはお友達同士ですもの。手をつなぐくらい、普通のことでしょう」
ほむら 「・・・そうね」
人質をとられている以上、従うほかにない。
私は言われるままに、その手を取る。
・・・これで私は、手持ちのカードを一枚、失ってしまった。
670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:16:39.33 ID:BT+H8fEn0
仁美 「では、行きましょう」
再び歩き始める仁美に、手を引かれ並んで歩く私。
その様子を後ろから眺めていた杏子が、呆れたような声を上げた。
杏子 「はぁーん・・・?あいつら、何やってるんだ?仲良しごっこかよ」
竜馬 「そうじゃない。敵に先手を取られたのさ」
杏子 「あ、どういう意味だよ、それ」
竜馬 「暁美の強みである時間停止の魔法だがな、暁美が触れている相手の時間は止めることができないんだよ」
杏子 「・・・は?」
竜馬 「敵さん、こちらの手の内は、知り抜いているらしいぜ。もっとも、情報の提供先は分かりきっているけれどな」
杏子 「・・・キュウべぇの野郎」
竜馬 「なんにせよ、これで時間を止めて敵を倒すなり、巴マミを救うなりといった、もっとも簡単な手は封じられてしまった事になる。歯がゆいがな」
杏子 「・・・構わないさ。どのみち、マミのことは私が助け出すつもりだったんだ」
かつて助けられた借りは、ツケを付けて返す。
小さくつぶやいた杏子の声は、私や仁美の元までは届かなかった。
再び歩き始める仁美に、手を引かれ並んで歩く私。
その様子を後ろから眺めていた杏子が、呆れたような声を上げた。
杏子 「はぁーん・・・?あいつら、何やってるんだ?仲良しごっこかよ」
竜馬 「そうじゃない。敵に先手を取られたのさ」
杏子 「あ、どういう意味だよ、それ」
竜馬 「暁美の強みである時間停止の魔法だがな、暁美が触れている相手の時間は止めることができないんだよ」
杏子 「・・・は?」
竜馬 「敵さん、こちらの手の内は、知り抜いているらしいぜ。もっとも、情報の提供先は分かりきっているけれどな」
杏子 「・・・キュウべぇの野郎」
竜馬 「なんにせよ、これで時間を止めて敵を倒すなり、巴マミを救うなりといった、もっとも簡単な手は封じられてしまった事になる。歯がゆいがな」
杏子 「・・・構わないさ。どのみち、マミのことは私が助け出すつもりだったんだ」
かつて助けられた借りは、ツケを付けて返す。
小さくつぶやいた杏子の声は、私や仁美の元までは届かなかった。
671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:19:48.72 ID:BT+H8fEn0
・・・
・・・
ほどなくして私たちがたどり着いたのは、大きく開けた空間だった。
そこは結界の最奥。ここの主である魔女が住みかとしている空間だ。
本来ならば・・・という但し書きが、今は付け足されるのだろうけれど。
ゆま 「あ、あれ・・・」
震えた声で、一点を指さすゆま。
彼女が示したのは、魔女の住処のさらに一番奥。
そこで、静かに巨体を横たえている者だった。
その者こそ・・・
ほむら 「この結界の・・・魔女・・・」
・・・
ほどなくして私たちがたどり着いたのは、大きく開けた空間だった。
そこは結界の最奥。ここの主である魔女が住みかとしている空間だ。
本来ならば・・・という但し書きが、今は付け足されるのだろうけれど。
ゆま 「あ、あれ・・・」
震えた声で、一点を指さすゆま。
彼女が示したのは、魔女の住処のさらに一番奥。
そこで、静かに巨体を横たえている者だった。
その者こそ・・・
ほむら 「この結界の・・・魔女・・・」
672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:20:38.21 ID:BT+H8fEn0
ゆま 「し、死んでるの?」
ほむら 「いいえ、魔女が死んでしまっては、この結界が存在できない。生きているわ」
かろうじて・・・と、最後に付け足すことを忘れない。
杏子 「痙攣してやがる。虫の息だな、ありゃ。おい、ずいぶんえげつない真似をするじゃないか」
仁美 「意味があってしていることです。とやかく言われる筋合いではありませんわ」
杏子 「なんだと!」
竜馬 「やめておけ」
今にも仁美に飛びかかりそうな杏子を、竜馬が制する。
竜馬 「それよりも今は、巴マミの安否を確認するほうが先だろう。おい、志筑。巴マミはどこにいる?」
仁美 「慌てなくても・・・」
にっこりと微笑んだ仁美が、横たわる魔女のほうを指さす。
先ほどは、魔女の陰に隠れていて気が付かなかったけれど。
そこには確かに、複数の人影がうごめいていた。
ほむら 「いいえ、魔女が死んでしまっては、この結界が存在できない。生きているわ」
かろうじて・・・と、最後に付け足すことを忘れない。
杏子 「痙攣してやがる。虫の息だな、ありゃ。おい、ずいぶんえげつない真似をするじゃないか」
仁美 「意味があってしていることです。とやかく言われる筋合いではありませんわ」
杏子 「なんだと!」
竜馬 「やめておけ」
今にも仁美に飛びかかりそうな杏子を、竜馬が制する。
竜馬 「それよりも今は、巴マミの安否を確認するほうが先だろう。おい、志筑。巴マミはどこにいる?」
仁美 「慌てなくても・・・」
にっこりと微笑んだ仁美が、横たわる魔女のほうを指さす。
先ほどは、魔女の陰に隠れていて気が付かなかったけれど。
そこには確かに、複数の人影がうごめいていた。
673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:24:06.94 ID:BT+H8fEn0
そう、複数・・・
距離が遠くてまだはっきりとはしないけれど、かなりの人数がいるようだった。
ほむら 「あれは・・・」
その一群の人影も私たちの到来に気がついたようで、こちらへと向かって歩き始めていた。
やがて。
距離が縮まるにつれ、はっきりとしてくる一人一人のシルエット。
その先頭を歩かされている者こそ・・・
ゆま 「武蔵おにいちゃん!」
いち早く気が付いたゆまが叫んだとおり、間違いない。巴武蔵その人だ。
そして、その横には、兄に寄り添うように歩く、マミの姿も。
ほむら 「・・・っ!?」
そして、何より私を驚かせたものは。
武蔵とマミの背後。
巴兄妹に武器を突き付けながら、同じくこちらへと歩いてくる少女たちの姿だった。
距離が遠くてまだはっきりとはしないけれど、かなりの人数がいるようだった。
ほむら 「あれは・・・」
その一群の人影も私たちの到来に気がついたようで、こちらへと向かって歩き始めていた。
やがて。
距離が縮まるにつれ、はっきりとしてくる一人一人のシルエット。
その先頭を歩かされている者こそ・・・
ゆま 「武蔵おにいちゃん!」
いち早く気が付いたゆまが叫んだとおり、間違いない。巴武蔵その人だ。
そして、その横には、兄に寄り添うように歩く、マミの姿も。
ほむら 「・・・っ!?」
そして、何より私を驚かせたものは。
武蔵とマミの背後。
巴兄妹に武器を突き付けながら、同じくこちらへと歩いてくる少女たちの姿だった。
674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:29:59.66 ID:BT+H8fEn0
ほむら 「魔法少女・・・」
竜馬 「あれ、全てがか。ざっと10人ほどはいるようだぞ」
ほむら 「間違いない。彼女たちの中央にいるのが、美国織莉子と呉キリカ・・・」
竜馬 「他は・・・?」
ほむら 「あとは分からない。初めて見る顔ばかりだわ。あれが、彼女たちが・・・」
杏子 「キュウべぇが急ごしらえした”バーゲン品”ってわけか」
ほむら 「織莉子が魔法少女を集めていることは聞いていたけど、こんなにたくさん集めていたなんて・・・」
仁美 「あら、ここにいるのは、ほんの一部ですのよ」
ほむら 「なんですって・・・!?」
仁美 「あまり大ぜいで来ても、邪魔になるだけですもの。必要なだけ、選りすぐって招集されたんですのよ」
ほむら 「あなたたち、本当に何を企んでいるの・・・?」
仁美 「それは織莉子さんから聞いてくださいな」
そうこうしている間に、魔法少女の一群は、会話のできる距離まで近づいていた。
竜馬 「あれ、全てがか。ざっと10人ほどはいるようだぞ」
ほむら 「間違いない。彼女たちの中央にいるのが、美国織莉子と呉キリカ・・・」
竜馬 「他は・・・?」
ほむら 「あとは分からない。初めて見る顔ばかりだわ。あれが、彼女たちが・・・」
杏子 「キュウべぇが急ごしらえした”バーゲン品”ってわけか」
ほむら 「織莉子が魔法少女を集めていることは聞いていたけど、こんなにたくさん集めていたなんて・・・」
仁美 「あら、ここにいるのは、ほんの一部ですのよ」
ほむら 「なんですって・・・!?」
仁美 「あまり大ぜいで来ても、邪魔になるだけですもの。必要なだけ、選りすぐって招集されたんですのよ」
ほむら 「あなたたち、本当に何を企んでいるの・・・?」
仁美 「それは織莉子さんから聞いてくださいな」
そうこうしている間に、魔法少女の一群は、会話のできる距離まで近づいていた。
675: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:34:55.30 ID:BT+H8fEn0
彼女たちが足を止めるのを待って、まず口を開いたのは竜馬だ。
竜馬 「武蔵、お前は何をやっとるか」
武蔵 「すまない、リョウ。みんなも。まさか向こうさんが、こんなに大勢だとは思いもよらなかったんだよ」
竜馬 「言い訳なんざ、聞きたくもない。お前ならどんな状況でも、巴マミを守りながら、どうにかしてくれるもんだと期待していたんだがな」
武蔵 「まったくもって面目ない」
杏子 「お前もだぜ、マミ。巴マミともあろう奴が、こんなペーペー共に、なに後れを取ってやがるんだ」
マミ 「ご、ごめんなさい」
竜馬に続いて、マミに文句を投げかける杏子。
それぞれ旧知の間柄の人に叱られて、かわいそうに巴兄妹はそろって肩を落としてしまった。
ほむら 「リョウも佐倉さんも言い過ぎよ。いくら相手が新人の集まりでも、これだけの魔法少女に武器を突き付けられては、言うことを聞く以外にはないもの。それに・・・」
織莉子 「・・・」
ほむら 「的確な指示を出すブレーン役がいるのだもの。組織立って襲い掛かられたら、少数のこちらが不利なのは仕方のないことだわ」
言いながら、美国織莉子をにらみつける。
竜馬 「武蔵、お前は何をやっとるか」
武蔵 「すまない、リョウ。みんなも。まさか向こうさんが、こんなに大勢だとは思いもよらなかったんだよ」
竜馬 「言い訳なんざ、聞きたくもない。お前ならどんな状況でも、巴マミを守りながら、どうにかしてくれるもんだと期待していたんだがな」
武蔵 「まったくもって面目ない」
杏子 「お前もだぜ、マミ。巴マミともあろう奴が、こんなペーペー共に、なに後れを取ってやがるんだ」
マミ 「ご、ごめんなさい」
竜馬に続いて、マミに文句を投げかける杏子。
それぞれ旧知の間柄の人に叱られて、かわいそうに巴兄妹はそろって肩を落としてしまった。
ほむら 「リョウも佐倉さんも言い過ぎよ。いくら相手が新人の集まりでも、これだけの魔法少女に武器を突き付けられては、言うことを聞く以外にはないもの。それに・・・」
織莉子 「・・・」
ほむら 「的確な指示を出すブレーン役がいるのだもの。組織立って襲い掛かられたら、少数のこちらが不利なのは仕方のないことだわ」
言いながら、美国織莉子をにらみつける。
676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:37:50.11 ID:BT+H8fEn0
だけれど彼女は涼しい顔。私の刺すような視線なんか、微笑でもって受け流してしまう。
織莉子 「ふふ、状況を的確に掴んでいるようね。はじめまして、暁美ほむらさん」
ほむら 「ええ、はじめまして。美国織莉子」
織莉子 「私のことをご存じなのね。過去の時間軸で、私と会ったことがあるのかしら」
ほむら 「・・・ええ」
織莉子 「では、私が何をしようとしているのかも、ご存じ?」
ほむら 「いいえ。私の知っている美国織莉子は、こんな風に徒党を組むようなやり方を好む人ではなかったわ」
織莉子 「そう・・・では、その時間軸では少数で動くことこそが、最も効率の良い方法だったのでしょうね」
ほむら 「・・・」
織莉子 「いいわ。私がやろうとしている事は、すぐに分かります」
織莉子が言うのと同時に、キリカがすっと動く。
マミの横まで来ると、彼女の喉元に長い爪のような武器を突き付けた。
マミ 「・・・っ」
織莉子 「ふふ、状況を的確に掴んでいるようね。はじめまして、暁美ほむらさん」
ほむら 「ええ、はじめまして。美国織莉子」
織莉子 「私のことをご存じなのね。過去の時間軸で、私と会ったことがあるのかしら」
ほむら 「・・・ええ」
織莉子 「では、私が何をしようとしているのかも、ご存じ?」
ほむら 「いいえ。私の知っている美国織莉子は、こんな風に徒党を組むようなやり方を好む人ではなかったわ」
織莉子 「そう・・・では、その時間軸では少数で動くことこそが、最も効率の良い方法だったのでしょうね」
ほむら 「・・・」
織莉子 「いいわ。私がやろうとしている事は、すぐに分かります」
織莉子が言うのと同時に、キリカがすっと動く。
マミの横まで来ると、彼女の喉元に長い爪のような武器を突き付けた。
マミ 「・・・っ」
677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:39:40.57 ID:BT+H8fEn0
キリカ 「動かないでね。マミも、そっちのみんなも」
杏子 「マ、マミ!」
キリカ 「動くなと言ったよ。なんだったら、三枚おろしにされた彼女を見せられるのがご希望かな?」
武蔵 「よ、よせ!!やるなら、俺をやればいいだろう!」
キリカ 「言われなくても、巴マミの次に手を下されるのは、君だよ。太ったお兄さん」
杏子 「てめぇ・・・!ぶっ殺してやる!!」
ほむら 「落ち着いて、佐倉さん!相手をあまり刺激しないで!」
杏子 「く、くそ!くそぉ!!」
キリカ 「大人しくしてくれてたら、別に危害は加えないよ。今のところは、だけれどね」
ほむら 「くっ・・・、織莉子!美国織莉子っ!そちらの狙いは何なの!?人質を取るような卑怯な真似なんかしないで、とっとと要件を言えばいいじゃない!」
織莉子 「人質・・・そう、人質。分かっているじゃない、暁美ほむらさん」
ほむら 「・・・え?」
織莉子 「そう、この二人は人質。二人の安全と引き換えに、あなたたちからある物を譲り受けたくて、ここまでこうしてお連れしたのよ」
ほむら 「ある物・・・それって、まさか」
杏子 「マ、マミ!」
キリカ 「動くなと言ったよ。なんだったら、三枚おろしにされた彼女を見せられるのがご希望かな?」
武蔵 「よ、よせ!!やるなら、俺をやればいいだろう!」
キリカ 「言われなくても、巴マミの次に手を下されるのは、君だよ。太ったお兄さん」
杏子 「てめぇ・・・!ぶっ殺してやる!!」
ほむら 「落ち着いて、佐倉さん!相手をあまり刺激しないで!」
杏子 「く、くそ!くそぉ!!」
キリカ 「大人しくしてくれてたら、別に危害は加えないよ。今のところは、だけれどね」
ほむら 「くっ・・・、織莉子!美国織莉子っ!そちらの狙いは何なの!?人質を取るような卑怯な真似なんかしないで、とっとと要件を言えばいいじゃない!」
織莉子 「人質・・・そう、人質。分かっているじゃない、暁美ほむらさん」
ほむら 「・・・え?」
織莉子 「そう、この二人は人質。二人の安全と引き換えに、あなたたちからある物を譲り受けたくて、ここまでこうしてお連れしたのよ」
ほむら 「ある物・・・それって、まさか」
678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:41:13.95 ID:BT+H8fEn0
竜馬 「・・・ゲッターか」
思わずリョウと顔を見合わせてしまう。
これまでの話の流れ。まどかに託されたメモ。
それらから類推される答えは、ただ一つ。
竜馬 「・・・ゲッターロボを手に入れて、お前は何を成そうというんだ?」
キリカ 「それはこっちの問題。面倒くさいなぁ。君たちは言われたとおりに、こっちに従っておけば良いんだよ」
織莉子 「・・・いいえ、本来のゲッターの所有者である彼女たちには、知っておくべき権利と義務があるわ」
挑発的にこちらの疑問を封じようとするキリカを制して、織莉子が静かに首を振る。
織莉子 「私には、未来が見える・・・」
動作と合わせるような静かな口調の織莉子。
自信や覚悟の現れなのか。私たちや呉キリカとは異質の落ち着き払った態度は、静謐なる圧力となって、私たちの頭上から覆いかぶさってくるようだ。
重く息苦しい空気が場を支配する。
織莉子 「そして垣間見た未来の見滝原は、地獄へと変わり果てていた」
ほむら 「・・・」
織莉子 「災厄をもたらしたのは、ワルプルギスの夜。最大規模の破壊をもたらす、魔女」
思わずリョウと顔を見合わせてしまう。
これまでの話の流れ。まどかに託されたメモ。
それらから類推される答えは、ただ一つ。
竜馬 「・・・ゲッターロボを手に入れて、お前は何を成そうというんだ?」
キリカ 「それはこっちの問題。面倒くさいなぁ。君たちは言われたとおりに、こっちに従っておけば良いんだよ」
織莉子 「・・・いいえ、本来のゲッターの所有者である彼女たちには、知っておくべき権利と義務があるわ」
挑発的にこちらの疑問を封じようとするキリカを制して、織莉子が静かに首を振る。
織莉子 「私には、未来が見える・・・」
動作と合わせるような静かな口調の織莉子。
自信や覚悟の現れなのか。私たちや呉キリカとは異質の落ち着き払った態度は、静謐なる圧力となって、私たちの頭上から覆いかぶさってくるようだ。
重く息苦しい空気が場を支配する。
織莉子 「そして垣間見た未来の見滝原は、地獄へと変わり果てていた」
ほむら 「・・・」
織莉子 「災厄をもたらしたのは、ワルプルギスの夜。最大規模の破壊をもたらす、魔女」
679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:50:29.49 ID:BT+H8fEn0
ほむら 「知っているわ。だから私たちは、その悲劇を回避するために行動している」
織莉子 「そうね。ワルプルギスの夜の惨劇は回避できる。見滝原を壊滅の淵から救い上げたものは、一体の巨大なロボット・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「・・・」
織莉子 「ゲッターロボ」
ほむら 「見たの?見たのね、ゲッターがワルプルギスの夜を倒すのを」
織莉子 「ええ」
ほむら 「そ、そう・・・」
倒せる。ゲッターはワルプルギスに勝つことができるのだ。
未来を予知できる美国織莉子が、そう断言しているのだから。
だとするのなら、見滝原の街を・・・まどかを今度こそ守り通せるかもしれない。
幾度も繰り返した時のはざまで、いくら成し得ようとしても成し得なかった宿願が、この時間軸で叶うかも知れないのだ。
・・・こんな状況じゃなかったら、飛び上がって喜びたいほどの情報を得ることができた。
だけれど、その宿願も希望も、このままでは織莉子たちに摘み取られてしまうかもしれない。
ほむら 「だったら・・・」
今はまだ、喜びに身を任せる時間ではないのだ。
ほむら 「どうしてこんな真似を?あなたたちがゲッターを求めなくても、ワルプルギスの夜は私たちが倒す。あなたが見た未来は、そのビジョンよ」
織莉子 「そうね。ワルプルギスの夜の惨劇は回避できる。見滝原を壊滅の淵から救い上げたものは、一体の巨大なロボット・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「・・・」
織莉子 「ゲッターロボ」
ほむら 「見たの?見たのね、ゲッターがワルプルギスの夜を倒すのを」
織莉子 「ええ」
ほむら 「そ、そう・・・」
倒せる。ゲッターはワルプルギスに勝つことができるのだ。
未来を予知できる美国織莉子が、そう断言しているのだから。
だとするのなら、見滝原の街を・・・まどかを今度こそ守り通せるかもしれない。
幾度も繰り返した時のはざまで、いくら成し得ようとしても成し得なかった宿願が、この時間軸で叶うかも知れないのだ。
・・・こんな状況じゃなかったら、飛び上がって喜びたいほどの情報を得ることができた。
だけれど、その宿願も希望も、このままでは織莉子たちに摘み取られてしまうかもしれない。
ほむら 「だったら・・・」
今はまだ、喜びに身を任せる時間ではないのだ。
ほむら 「どうしてこんな真似を?あなたたちがゲッターを求めなくても、ワルプルギスの夜は私たちが倒す。あなたが見た未来は、そのビジョンよ」
680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:52:24.90 ID:BT+H8fEn0
織莉子 「そうかも知れない。だからこそ、今のうちのゲッターロボを譲り受けておかなければならないのよ」
ほむら 「・・・?」
・・・意味が分からない。
ゲッターが見滝原を救う未来を見て、それに乗っているのは私たちだということも、美国織莉子は認めている。
だったら、なぜ彼女はゲッターを欲する必要があるというのだろう。
織莉子 「私が見た未来のビジョンには、続きがあるわ」
続いて語られる織莉子の言葉が、その答えを提示してくれた。
織莉子 「ワルプルギスの消滅とともに、救われたかに見えた見滝原。だけれど・・・」
ほむら 「だけれど・・・?」
織莉子 「それは、本当の惨劇の始まりに過ぎなかったのよ・・・!」
ほむら 「・・・!」
杏子 「な、なんだよ、そのサンゲキって奴はさ・・・」
織莉子 「・・・ワルプルギスの脅威が去った直後・・・この見滝原は更なる脅威に曝されることになるわ。ワルプルギス程度、所詮は主賓の前の前座に過ぎなかったと思えるほどの、ね」
杏子 (ん・・・おいおい待てよ。それって、もしかして・・・)
竜馬 (暁美が言っていた、魔女となった鹿目のことを言っているのか?)
マミ 「え、なにそれ・・・私、そんなの知らない」
武蔵 「俺もだ。ほむらちゃんは、ワルプルギスから大切な人を守りたいがために、戦ってるんじゃなかったのか?」
このままキュウべぇの好きにさせていたら、まどかはどうなるか。
その説明を受けていない巴兄妹は、困惑した顔色を隠しもせずに、私を見ている。
ほむら 「・・・?」
・・・意味が分からない。
ゲッターが見滝原を救う未来を見て、それに乗っているのは私たちだということも、美国織莉子は認めている。
だったら、なぜ彼女はゲッターを欲する必要があるというのだろう。
織莉子 「私が見た未来のビジョンには、続きがあるわ」
続いて語られる織莉子の言葉が、その答えを提示してくれた。
織莉子 「ワルプルギスの消滅とともに、救われたかに見えた見滝原。だけれど・・・」
ほむら 「だけれど・・・?」
織莉子 「それは、本当の惨劇の始まりに過ぎなかったのよ・・・!」
ほむら 「・・・!」
杏子 「な、なんだよ、そのサンゲキって奴はさ・・・」
織莉子 「・・・ワルプルギスの脅威が去った直後・・・この見滝原は更なる脅威に曝されることになるわ。ワルプルギス程度、所詮は主賓の前の前座に過ぎなかったと思えるほどの、ね」
杏子 (ん・・・おいおい待てよ。それって、もしかして・・・)
竜馬 (暁美が言っていた、魔女となった鹿目のことを言っているのか?)
マミ 「え、なにそれ・・・私、そんなの知らない」
武蔵 「俺もだ。ほむらちゃんは、ワルプルギスから大切な人を守りたいがために、戦ってるんじゃなかったのか?」
このままキュウべぇの好きにさせていたら、まどかはどうなるか。
その説明を受けていない巴兄妹は、困惑した顔色を隠しもせずに、私を見ている。
681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:54:41.68 ID:BT+H8fEn0
この場を切り抜けたら、二人にも真実を知ってもらわなくてはいけない。
けれど、それは後の話だ。
今は美国織莉子たちの前。そのことを話すわけにはいかない。
織莉子 「暁美さんは知っていたんじゃないの?いくつもの時間軸を渡り歩いてきた、あなただったら・・・」
ほむら 「いえ、知らないわ。私が守りたい人を守り切れなかった時点で、私は今までの時間軸を切り捨てて来たのだから」
そう、私が”知っている”ということを、悟らせてはいけない。
織莉子 「・・・ふーん、そう」
竜馬 「なんにしても、だ。ワルプルギス以上の脅威が現れるのなら、そいつも俺たちがゲッターで倒してしまえば良い。お前たちがゲッターを欲しがる理由にはならないな」
仁美 「それがですね、そういうわけにもいかないそうですのよ」
ほむら 「どういう意味・・・?」
織莉子 「・・・あなたが無責任なのかしら、暁美ほむらさん。それとも、一緒にゲッターロボに乗り込んでいた、流竜馬さん。あなたの意思・・・?」
ほむら 「何を言っているの・・・?」
竜馬 「抽象的な語り方をするんじゃねぇよ。分かるように話したらどうだ」
織莉子 「では・・・はっきりと言います」
織莉子はそこで、いったん言葉を切った。
少しうつむき加減となって、目をうっすらと閉じる。
その仕草は、何かを思い返しているかのようだった。
けれど、それは後の話だ。
今は美国織莉子たちの前。そのことを話すわけにはいかない。
織莉子 「暁美さんは知っていたんじゃないの?いくつもの時間軸を渡り歩いてきた、あなただったら・・・」
ほむら 「いえ、知らないわ。私が守りたい人を守り切れなかった時点で、私は今までの時間軸を切り捨てて来たのだから」
そう、私が”知っている”ということを、悟らせてはいけない。
織莉子 「・・・ふーん、そう」
竜馬 「なんにしても、だ。ワルプルギス以上の脅威が現れるのなら、そいつも俺たちがゲッターで倒してしまえば良い。お前たちがゲッターを欲しがる理由にはならないな」
仁美 「それがですね、そういうわけにもいかないそうですのよ」
ほむら 「どういう意味・・・?」
織莉子 「・・・あなたが無責任なのかしら、暁美ほむらさん。それとも、一緒にゲッターロボに乗り込んでいた、流竜馬さん。あなたの意思・・・?」
ほむら 「何を言っているの・・・?」
竜馬 「抽象的な語り方をするんじゃねぇよ。分かるように話したらどうだ」
織莉子 「では・・・はっきりと言います」
織莉子はそこで、いったん言葉を切った。
少しうつむき加減となって、目をうっすらと閉じる。
その仕草は、何かを思い返しているかのようだった。
682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/29(水) 23:58:42.00 ID:BT+H8fEn0
織莉子 「・・・」
この間、ほんの数秒に過ぎない。
だけれど。
再び顔を上げた時、織莉子のまとう雰囲気は、それまでとは明らかに一変していた。
織莉子 「卑怯者」
抑揚なく、底冷えするような声で彼女は言った。
ゾクっと・・・
冬でもないのに、私の全身が寒気に覆われ、総毛だつのを感じる。
ほむら 「な、なんのことよ、一体・・・」
いきなりのあまりな言われように、私は何とか一言を返そうとしたのだけれど・・・
途中で言葉が、まるで形のある塊のように喉につかえてしまって、それ以上の声を発することができなくなってしまう。
ほむら 「うぐっ・・・」
違う・・・さっき感じたのは寒気なんかじゃない。
この間、ほんの数秒に過ぎない。
だけれど。
再び顔を上げた時、織莉子のまとう雰囲気は、それまでとは明らかに一変していた。
織莉子 「卑怯者」
抑揚なく、底冷えするような声で彼女は言った。
ゾクっと・・・
冬でもないのに、私の全身が寒気に覆われ、総毛だつのを感じる。
ほむら 「な、なんのことよ、一体・・・」
いきなりのあまりな言われように、私は何とか一言を返そうとしたのだけれど・・・
途中で言葉が、まるで形のある塊のように喉につかえてしまって、それ以上の声を発することができなくなってしまう。
ほむら 「うぐっ・・・」
違う・・・さっき感じたのは寒気なんかじゃない。
683: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/30(木) 00:06:12.34 ID:/ka2l99B0
私の本能が、織莉子の発する気配は危険なものだと教えてくれているのだ。
そして、そう感じているのは、私だけではないようで・・・
杏子 「・・・」
マミ 「あ・・・ぅ・・・」
ゆま 「う・・・うぐっ、うぇぇぇ・・・」
私の仲間たちは一様に、言葉を失い顔色を青ざめさせて、為す術もなく織莉子を見つめていた。
幼いゆまなどは、得体の知れない恐怖に耐えられずに、今にも声を上げて泣き出してしまいそうだ。
ほむら 「な、なんなの・・・私の心をここまで委縮させてしまうなんて、いったい織莉子は心の内に、何を抱えているというの・・・」
仁美 「・・・なぜ、彼女がゲッターロボを欲しがるのか。その理由を聞けば、暁美さんにも理解ができるはずですわ」
ほむら 「志筑さん・・・」
仁美 「彼女があなた方に抱いている感情は、怒り・・・いいえ、怒りでは生ぬるい。そう、その心に名前を付けるのなら、怒りよりももっと激しく、そして狂おしい・・・」
ほむら 「・・・」
仁美 「憤怒・・・とでも、呼ぶべきでしょうか」
そして、そう感じているのは、私だけではないようで・・・
杏子 「・・・」
マミ 「あ・・・ぅ・・・」
ゆま 「う・・・うぐっ、うぇぇぇ・・・」
私の仲間たちは一様に、言葉を失い顔色を青ざめさせて、為す術もなく織莉子を見つめていた。
幼いゆまなどは、得体の知れない恐怖に耐えられずに、今にも声を上げて泣き出してしまいそうだ。
ほむら 「な、なんなの・・・私の心をここまで委縮させてしまうなんて、いったい織莉子は心の内に、何を抱えているというの・・・」
仁美 「・・・なぜ、彼女がゲッターロボを欲しがるのか。その理由を聞けば、暁美さんにも理解ができるはずですわ」
ほむら 「志筑さん・・・」
仁美 「彼女があなた方に抱いている感情は、怒り・・・いいえ、怒りでは生ぬるい。そう、その心に名前を付けるのなら、怒りよりももっと激しく、そして狂おしい・・・」
ほむら 「・・・」
仁美 「憤怒・・・とでも、呼ぶべきでしょうか」
684: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/30(木) 00:09:47.97 ID:/ka2l99B0
・・・憤怒。
なぜ、私たちにそのような激しい感情をぶつけてくるのか。
ぶつけられなければいけないのか。
疑問が頭の中で渦を巻いて、誰もが押し黙って織莉子の次の一言を待つしかない中で・・・
竜馬 「おい」
唐突に。
竜馬の臆する気配を見せない声が、静まり返った結界の中に反響した。
織莉子 「なに・・・?」
竜馬が一歩、織莉子の前へと進み出る。
そんな彼を織莉子は、まるで刃の切っ先のような鋭い眼差しでにらみつけた。
見つめられただけで、気の弱いものなら卒倒しそうな、人の心に深くえぐり込んでくるような視線。
だけれど、竜馬は全く意に介していないようで、普段と変わらない口調で、織莉子に話しかける。
685: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/30(木) 00:20:04.37 ID:/ka2l99B0
竜馬 「納得がいかねぇ」
織莉子 「・・・なにがかしら?」
竜馬 「俺は確かに人から褒められるような生き方をしてきたつもりはねぇ。数えきれない人をぶん殴ってきたし、戦いの中で人命を奪ってしまったことだってある」
織莉子 「・・・」
竜馬 「だがな、誓って言うが、ただ一点。人から卑怯者と後ろ指をさされるような真似だけは、決してしてこなかった。胸を張って断言させてもらうぜ」
織莉子 「ずいぶんな自信ね」
竜馬 「ああ。それにそれは俺だけじゃねぇ。武蔵や死んだ隼人。ゲッターチーム全体の話だ。俺や仲間の中に、卑怯者なんざ存在しないのさ」
武蔵 「リョウ・・・」
竜馬 「何より、人質を取って俺たちのゲッターロボを力づくで奪い取ろうとしている連中の親玉に、卑怯者呼ばわりされるなんざ、道理が通らねぇだろうが」
キリカ 「おい、織莉子にあまりひどいこと言うなよ。私の堪忍袋の緒は、とびきり脆いんだぞ!」
織莉子 「・・・卑怯者を相手にするのに、こちらも卑怯な手を使う。理に適っているのではなくて?」
竜馬 「だったら聞かせろよ。俺たちを卑怯者と呼ぶ、その意味をな」
織莉子 「・・・」
仁美 「聞かせてあげたら良い。それを聞いて憤ったからこそ、私も織莉子さんたちに協力しようと決めたのです。他の皆さんだってそうでしょう?」
A子 「そうね」
B子 「言ってやりなよ、織莉子さん!」
C子 「そーだそーだ」
仁美の言葉に雷同するように、織莉子の取り巻きたちが一斉に声を上げる。
どうやら彼女たちにとって、私たちが卑怯者だということは、共通の認識のようだ。
そんな周囲の喧々囂々が鳴りやむのを待って・・・
織莉子が再び口を開いた。
どこか勿体つけたような、格下の者に教えを諭すような、そんな口調で。
織莉子 「ならば・・・教えて差し上げましょう。あなたたちがこれからなす事を。この街と、そこに住まう全ての人に対して、どれだけの許されざる所業を犯す事になるのかを、ね」
織莉子 「・・・なにがかしら?」
竜馬 「俺は確かに人から褒められるような生き方をしてきたつもりはねぇ。数えきれない人をぶん殴ってきたし、戦いの中で人命を奪ってしまったことだってある」
織莉子 「・・・」
竜馬 「だがな、誓って言うが、ただ一点。人から卑怯者と後ろ指をさされるような真似だけは、決してしてこなかった。胸を張って断言させてもらうぜ」
織莉子 「ずいぶんな自信ね」
竜馬 「ああ。それにそれは俺だけじゃねぇ。武蔵や死んだ隼人。ゲッターチーム全体の話だ。俺や仲間の中に、卑怯者なんざ存在しないのさ」
武蔵 「リョウ・・・」
竜馬 「何より、人質を取って俺たちのゲッターロボを力づくで奪い取ろうとしている連中の親玉に、卑怯者呼ばわりされるなんざ、道理が通らねぇだろうが」
キリカ 「おい、織莉子にあまりひどいこと言うなよ。私の堪忍袋の緒は、とびきり脆いんだぞ!」
織莉子 「・・・卑怯者を相手にするのに、こちらも卑怯な手を使う。理に適っているのではなくて?」
竜馬 「だったら聞かせろよ。俺たちを卑怯者と呼ぶ、その意味をな」
織莉子 「・・・」
仁美 「聞かせてあげたら良い。それを聞いて憤ったからこそ、私も織莉子さんたちに協力しようと決めたのです。他の皆さんだってそうでしょう?」
A子 「そうね」
B子 「言ってやりなよ、織莉子さん!」
C子 「そーだそーだ」
仁美の言葉に雷同するように、織莉子の取り巻きたちが一斉に声を上げる。
どうやら彼女たちにとって、私たちが卑怯者だということは、共通の認識のようだ。
そんな周囲の喧々囂々が鳴りやむのを待って・・・
織莉子が再び口を開いた。
どこか勿体つけたような、格下の者に教えを諭すような、そんな口調で。
織莉子 「ならば・・・教えて差し上げましょう。あなたたちがこれからなす事を。この街と、そこに住まう全ての人に対して、どれだけの許されざる所業を犯す事になるのかを、ね」
686: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/30(木) 00:22:42.16 ID:/ka2l99B0
・・・
・・・
次回予告
ほむら達のことを卑怯者と悪しざまに見下す美国織莉子。
彼女が垣間見た未来の世界で、いったいほむら達はどのような罪を犯したというのだろうか。
そして、織莉子に手を貸し、ほむら達と敵対したキュウべぇの真の目的とはいったい何か。
崩壊間近の魔女結界の中で、いくつもの謎が今、解き明かされようとしていた!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第八話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
ほむら達のことを卑怯者と悪しざまに見下す美国織莉子。
彼女が垣間見た未来の世界で、いったいほむら達はどのような罪を犯したというのだろうか。
そして、織莉子に手を貸し、ほむら達と敵対したキュウべぇの真の目的とはいったい何か。
崩壊間近の魔女結界の中で、いくつもの謎が今、解き明かされようとしていた!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第八話にテレビスイッチオン!
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