ほむら「ゲッターロボ!」
ほむら「ゲッターロボ!」 第二話
ほむら「ゲッターロボ!」 第三話~第五話
ほむら「ゲッターロボ!」 第六話~第七話
693: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:22:20.53 ID:wwr2GWhj0
ほむら「ゲッターロボ!」 第八話
694: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:23:31.29 ID:wwr2GWhj0
あの日・・・
私は、強大な力で灰燼と帰そうとしている見滝原の街にいた。
空に浮かぶは、異形の巨大な魔女。
私たち魔法少女が「ワルプルギスの夜」と呼んで恐れる、最強最悪の魔女。
奴が災厄を見滝原にまき散らすために、やってきたのだ。
・・・戦わなければならない。
たとえ勝てなくとも。
覚悟を決めてワルプルギスへと挑もうとした、まさにその時。
希望は突如として現れたのだ。
私は、強大な力で灰燼と帰そうとしている見滝原の街にいた。
空に浮かぶは、異形の巨大な魔女。
私たち魔法少女が「ワルプルギスの夜」と呼んで恐れる、最強最悪の魔女。
奴が災厄を見滝原にまき散らすために、やってきたのだ。
・・・戦わなければならない。
たとえ勝てなくとも。
覚悟を決めてワルプルギスへと挑もうとした、まさにその時。
希望は突如として現れたのだ。
695: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:24:55.12 ID:wwr2GWhj0
それは真紅に輝く身体を持った、一体の巨人。
突然上空に現れたそれは、ワルプルギスにも引けを取らない体躯をものともせず、猛烈なスピードで魔女へと向かっていった。
やがて繰り広げられる、激しい空中戦。
私は、その時。
ただ、ただ・・・圧倒されてしまって・・・
その戦いの帰趨を、地上から見守ることしかできなかった。
ただ一つ。
分かった事があった。
あの巨人は、味方なのだと。
父が愛した、この街を守ってくれる希望なのだと。
突然上空に現れたそれは、ワルプルギスにも引けを取らない体躯をものともせず、猛烈なスピードで魔女へと向かっていった。
やがて繰り広げられる、激しい空中戦。
私は、その時。
ただ、ただ・・・圧倒されてしまって・・・
その戦いの帰趨を、地上から見守ることしかできなかった。
ただ一つ。
分かった事があった。
あの巨人は、味方なのだと。
父が愛した、この街を守ってくれる希望なのだと。
696: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:26:53.92 ID:wwr2GWhj0
そして・・・
戦いは終わった。
戦いに敗れ、その存在を抹消されたのは、ワルプルギスの夜の方だった。
助かった!救われた!
私は歓喜の叫びを上げずにはいられなかった。
あの巨人が何者なのかはわからない。
魔女の一種なのか、魔法少女の使う魔法の一つなのか。
はたまた、私の想像の及ばない、もっと他の何かなのか。
だけれど。
そんな事は、私にとっては些細なことでしかなかった。
重要なのはただ一点。
あの巨人が、見滝原を救った救世主であるということのみ。
・・・本気で、そう思っていた。
新たな脅威が、突如として現れるまでは。
戦いは終わった。
戦いに敗れ、その存在を抹消されたのは、ワルプルギスの夜の方だった。
助かった!救われた!
私は歓喜の叫びを上げずにはいられなかった。
あの巨人が何者なのかはわからない。
魔女の一種なのか、魔法少女の使う魔法の一つなのか。
はたまた、私の想像の及ばない、もっと他の何かなのか。
だけれど。
そんな事は、私にとっては些細なことでしかなかった。
重要なのはただ一点。
あの巨人が、見滝原を救った救世主であるということのみ。
・・・本気で、そう思っていた。
新たな脅威が、突如として現れるまでは。
697: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:29:03.97 ID:wwr2GWhj0
そう、その力は、そして姿は、何としても形容しがたい。
まるでワルプルギス程度、その者の前では単なる前座の役割しか与えられていなかったのだ、と。
そこまで思えてしまうほどに。
そして、再び。
・・・殺戮と破壊が始まった。
せっかくワルプルギスの災禍を免れた見滝原の街が、人が。
災いの下に形と命を失っていく。
私は叫んだ。
やめて、と。父の願いが眠るこの街を、壊さないでと。
まるでワルプルギス程度、その者の前では単なる前座の役割しか与えられていなかったのだ、と。
そこまで思えてしまうほどに。
そして、再び。
・・・殺戮と破壊が始まった。
せっかくワルプルギスの災禍を免れた見滝原の街が、人が。
災いの下に形と命を失っていく。
私は叫んだ。
やめて、と。父の願いが眠るこの街を、壊さないでと。
698: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:30:33.15 ID:wwr2GWhj0
・・・そして。
私は願った。
助けてと。
ワルプルギスを撃退したと同じように、新たな災いも排除してくださいと。
真紅の巨人に願ったわ。
だけれど・・・
私の願いは・・・
・・・
・・・届かなかった。
私は願った。
助けてと。
ワルプルギスを撃退したと同じように、新たな災いも排除してくださいと。
真紅の巨人に願ったわ。
だけれど・・・
私の願いは・・・
・・・
・・・届かなかった。
699: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:33:46.04 ID:wwr2GWhj0
・・・
・・・
織莉子 「・・・私の能力は、未来を見ること。いつもは暫定的な未来しか見えないのだけれど、この時だけはずいぶん具体的に未来を見ることができたわ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「予知の中で見た、真紅の巨人。あれがロボットでゲッターロボという名前だというのは、しばらくしてからキュウべぇから聞かされた」
竜馬 「乗っているのが、俺たちだということも、だな」
織莉子 「ええ」
竜馬 「それで、お前の願いが叶えられなかったとは?その事が、俺たちが卑怯者呼ばわりされる事に、どう関わりが?」
織莉子 「・・・逃げたのよ、あなたたち」
軽蔑の色を濃くにじませた瞳で、織莉子が私たちを睨み付けた。
逃げた・・・?
・・・
織莉子 「・・・私の能力は、未来を見ること。いつもは暫定的な未来しか見えないのだけれど、この時だけはずいぶん具体的に未来を見ることができたわ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「予知の中で見た、真紅の巨人。あれがロボットでゲッターロボという名前だというのは、しばらくしてからキュウべぇから聞かされた」
竜馬 「乗っているのが、俺たちだということも、だな」
織莉子 「ええ」
竜馬 「それで、お前の願いが叶えられなかったとは?その事が、俺たちが卑怯者呼ばわりされる事に、どう関わりが?」
織莉子 「・・・逃げたのよ、あなたたち」
軽蔑の色を濃くにじませた瞳で、織莉子が私たちを睨み付けた。
逃げた・・・?
700: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:37:28.13 ID:wwr2GWhj0
竜馬 「俺たちが、敵を目の前にして、しっぽを巻いて逃げたと?」
織莉子 「そうよ。だから、ああ呼んだのよ?あなたたちに相応しい呼び名で、卑怯者、と」
杏子 「おいおい・・・あいつの言ってること、本当なのかよ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたたちが卑怯なふるまいをした結果、見滝原は壊滅。私の喜びは、ぬか喜びに終わったと、そういうわけ」
武蔵 「馬鹿な!そんなわけないだろう!」
織莉子の言葉に、武蔵が噛みつく。
武蔵 「敵がどんなに強大であれ、マミちゃんたちが住む街を俺たちが、守るのを放棄して逃げ出すなんて、そんな事あるはずがないだろう!」
マミ 「お兄ちゃん・・・」
竜馬 「その通りだな。言ったはずだぜ、俺たちの中に卑怯者なんざいない、とな。一度敵に背を向けて逃げたら、そいつはもう一生、負け犬だ」
織莉子 「・・・」
竜馬 「そんな生きざま、俺はまっぴらごめんだぜ」
織莉子 「そうよ。だから、ああ呼んだのよ?あなたたちに相応しい呼び名で、卑怯者、と」
杏子 「おいおい・・・あいつの言ってること、本当なのかよ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたたちが卑怯なふるまいをした結果、見滝原は壊滅。私の喜びは、ぬか喜びに終わったと、そういうわけ」
武蔵 「馬鹿な!そんなわけないだろう!」
織莉子の言葉に、武蔵が噛みつく。
武蔵 「敵がどんなに強大であれ、マミちゃんたちが住む街を俺たちが、守るのを放棄して逃げ出すなんて、そんな事あるはずがないだろう!」
マミ 「お兄ちゃん・・・」
竜馬 「その通りだな。言ったはずだぜ、俺たちの中に卑怯者なんざいない、とな。一度敵に背を向けて逃げたら、そいつはもう一生、負け犬だ」
織莉子 「・・・」
竜馬 「そんな生きざま、俺はまっぴらごめんだぜ」
701: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:41:09.09 ID:wwr2GWhj0
キリカ 「なんだよ!じゃあ、織莉子が嘘を言ってるっていうのか!?」
竜馬 「そうじゃない。ただ、お前の未来予知は完ぺきではないのだろう?」
織莉子 「・・・?」
竜馬 「必ず、見た通りの未来になる。そうであったなら、お前が未来を変えようとゲッターを奪うなんてマネ、するはずがない」
織莉子 「驚いた。脳筋タイプかと思ったら、意外に頭が回るのね」
竜馬 「何とでも言え。ただ、断言してやるぜ。今回ばかりは、お前の予知は当たらない。なぜなら俺たちは、絶対に逃げないからだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だろう、暁美」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そうじゃない。ただ、お前の未来予知は完ぺきではないのだろう?」
織莉子 「・・・?」
竜馬 「必ず、見た通りの未来になる。そうであったなら、お前が未来を変えようとゲッターを奪うなんてマネ、するはずがない」
織莉子 「驚いた。脳筋タイプかと思ったら、意外に頭が回るのね」
竜馬 「何とでも言え。ただ、断言してやるぜ。今回ばかりは、お前の予知は当たらない。なぜなら俺たちは、絶対に逃げないからだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だろう、暁美」
ほむら 「・・・」
702: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:43:24.40 ID:wwr2GWhj0
・・・織莉子の見た未来の世界では、何らかの要因によってまどかは魔女化してしまったのだろう。
それを見た私が、その時間軸をあきらめ、今までと同様に時間をループさせた。
私も乗っていたはずの、ゲッターロボ、もろともに。
そんな未来を予知したのなら、ゲッターロボが逃げ出したのだと織莉子に解釈されるのも仕方がない。
・・・いや。
織莉子にとっては、紛れもない事実、か。
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・?」
それを見た私が、その時間軸をあきらめ、今までと同様に時間をループさせた。
私も乗っていたはずの、ゲッターロボ、もろともに。
そんな未来を予知したのなら、ゲッターロボが逃げ出したのだと織莉子に解釈されるのも仕方がない。
・・・いや。
織莉子にとっては、紛れもない事実、か。
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・?」
703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:45:27.45 ID:wwr2GWhj0
織莉子 「暁美さんは、否定ができないようね」
ほむら 「そうね。だけれど・・・」
それは、まどかが魔女化してしまったらという場合の話。
そんな未来、私は認めないし、現実にさせるつもりもない。
この時間軸の事を、私は絶対に諦めたくはない!
ほむら 「あなたの未来予測は外れるわ。ゲッターがワルプルギスを倒した時点で、この見滝原は救われる。その後の災いも現れやしない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「そして、それを成し遂げるのは私たちよ」
織莉子 「なぜ、そう言い切れるの?」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」
ほむら 「え・・・」
ほむら 「そうね。だけれど・・・」
それは、まどかが魔女化してしまったらという場合の話。
そんな未来、私は認めないし、現実にさせるつもりもない。
この時間軸の事を、私は絶対に諦めたくはない!
ほむら 「あなたの未来予測は外れるわ。ゲッターがワルプルギスを倒した時点で、この見滝原は救われる。その後の災いも現れやしない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「そして、それを成し遂げるのは私たちよ」
織莉子 「なぜ、そう言い切れるの?」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」
ほむら 「え・・・」
704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:48:29.07 ID:wwr2GWhj0
織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見殺しにしてきたの?」
ほむら 「そ、それは・・・」
竜馬 「・・・おい、いい加減にしろよ」
織莉子 「そのような人の、のたまい事。信用するに値しないわね。ただ、それだけの話」
仁美 「お判りでしょう、暁美さん。あなた方に美樹さんと上条君が生きるこの街を、任せることはできない。で、あるならば」
キリカ 「戦える者が、戦うための力を持つ。至極、まっとう」
ほむら 「・・・くっ」
まどかの事を織莉子たちに話せない以上、言葉で彼女たちを納得させる術がない。
ほむら 「そ、それは・・・」
竜馬 「・・・おい、いい加減にしろよ」
織莉子 「そのような人の、のたまい事。信用するに値しないわね。ただ、それだけの話」
仁美 「お判りでしょう、暁美さん。あなた方に美樹さんと上条君が生きるこの街を、任せることはできない。で、あるならば」
キリカ 「戦える者が、戦うための力を持つ。至極、まっとう」
ほむら 「・・・くっ」
まどかの事を織莉子たちに話せない以上、言葉で彼女たちを納得させる術がない。
705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:50:11.20 ID:wwr2GWhj0
どうやってこの場を切り抜けるべきか。
せめて、私の手を取っている仁美を振り切れれば、何とかできるかもしれないのに・・・
織莉子 「話はこれまで・・・」
織莉子は一方的に話を打ち切ると、スッと・・・
物音ひとつ立てずに、滑るように私の横まで歩み寄ってきた。
私を挟んで、仁美と反対側へと立つ織莉子。
ほむら 「な、なに・・・?」
織莉子 「ふふっ」
軽く笑うと、彼女は私の手を取り、そっと握った。
ほむら 「・・・?」
せめて、私の手を取っている仁美を振り切れれば、何とかできるかもしれないのに・・・
織莉子 「話はこれまで・・・」
織莉子は一方的に話を打ち切ると、スッと・・・
物音ひとつ立てずに、滑るように私の横まで歩み寄ってきた。
私を挟んで、仁美と反対側へと立つ織莉子。
ほむら 「な、なに・・・?」
織莉子 「ふふっ」
軽く笑うと、彼女は私の手を取り、そっと握った。
ほむら 「・・・?」
706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:52:32.15 ID:wwr2GWhj0
織莉子 「仁美さん、暁美さんのお目付け役、お疲れ様。交代の時間ね。さ、あなたは打ち合わせの通りに」
仁美 「心得ていますわ」
織莉子と入れ替わるように、私のそばを離れる仁美。
ほむら 「何を考えているの?」
織莉子 「ゲッターロボを出しなさい」
ほむら 「!?」
織莉子 「出さねば、巴マミのソウルジェムを砕かなくてはいけなくなる」
ほむら 「なぜ、わざわざ入れ替わって・・・志筑仁美に何をさせるつもり!?」
織莉子 「予知能力の発動を制御できない私では、不都合があったから彼女とキリカにお願いすることにしたの」
ほむら 「分かるように言って!」
織莉子 「ゲッターを渡せば、わかる」
ほむら 「・・・っ」
仁美 「心得ていますわ」
織莉子と入れ替わるように、私のそばを離れる仁美。
ほむら 「何を考えているの?」
織莉子 「ゲッターロボを出しなさい」
ほむら 「!?」
織莉子 「出さねば、巴マミのソウルジェムを砕かなくてはいけなくなる」
ほむら 「なぜ、わざわざ入れ替わって・・・志筑仁美に何をさせるつもり!?」
織莉子 「予知能力の発動を制御できない私では、不都合があったから彼女とキリカにお願いすることにしたの」
ほむら 「分かるように言って!」
織莉子 「ゲッターを渡せば、わかる」
ほむら 「・・・っ」
707: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:54:31.58 ID:wwr2GWhj0
織莉子 「流竜馬」
竜馬 「・・・なんだ?」
織莉子 「あなたもゲッターに乗ってもらうわ」
ほむら 「え・・・っ?」
杏子 「こ、こいつ・・・いったい何を考えてやがるんだ」
武蔵 「なぜわざわざ、奴らにとって危険な真似を、あえてしようとしているんだ・・・?」
竜馬 「・・・理由は?」
織莉子 「単純な話。ゲッターロボの動かし方を私たちは教わらなくてはいけない。ゲッターは三人乗りなのでしょう?だから一機には流さんに乗ってもらうわ」
キリカ 「残りには、私たちが乗らせてもらうよ」
竜馬 「・・・理にはかなっているな」
ほむら (だけれど、それだけとは思えない・・・)
竜馬 「・・・なんだ?」
織莉子 「あなたもゲッターに乗ってもらうわ」
ほむら 「え・・・っ?」
杏子 「こ、こいつ・・・いったい何を考えてやがるんだ」
武蔵 「なぜわざわざ、奴らにとって危険な真似を、あえてしようとしているんだ・・・?」
竜馬 「・・・理由は?」
織莉子 「単純な話。ゲッターロボの動かし方を私たちは教わらなくてはいけない。ゲッターは三人乗りなのでしょう?だから一機には流さんに乗ってもらうわ」
キリカ 「残りには、私たちが乗らせてもらうよ」
竜馬 「・・・理にはかなっているな」
ほむら (だけれど、それだけとは思えない・・・)
708: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:56:07.60 ID:wwr2GWhj0
織莉子 「元より、あなたに拒否権はないわ。お友達の、大切な妹を犠牲にしても良いというなら、話は別だけれど」
マミ 「ご、ごめんなさい」
武蔵 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「分かってる、分かってるさ。今はお前らに従おう。暁美、とりあえずはそれで良いな」
ほむら 「そうするしかないものね。でも、リョウ・・・それで良いの?」
ゲッターロボのパイロットであることに無上の誇りを持っている竜馬。
人質を取られているとはいえ、彼があっさり織莉子の要求を受け入れたのは意外だった。
竜馬 (並の人間に乗りこなせるほど、ゲッターロボは甘くない)
織莉子 「何か言った?」
竜馬 「いーや、別に。じゃ、とっとと始めるが、巴マミの命の保証はしてくれるんだろうな」
織莉子 「彼女の命を奪うことが目的ではないもの。ゲッターロボを受け取ったなら、きちんと解放してあげるわ」
竜馬 「・・・暁美」
竜馬が振り向いて、私にうなずいて見せる。
今は従うほかはない。
私はバックラーに念を送る。
程なくして、魔女の結界内にゲッターロボが実体化した。
マミ 「ご、ごめんなさい」
武蔵 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「分かってる、分かってるさ。今はお前らに従おう。暁美、とりあえずはそれで良いな」
ほむら 「そうするしかないものね。でも、リョウ・・・それで良いの?」
ゲッターロボのパイロットであることに無上の誇りを持っている竜馬。
人質を取られているとはいえ、彼があっさり織莉子の要求を受け入れたのは意外だった。
竜馬 (並の人間に乗りこなせるほど、ゲッターロボは甘くない)
織莉子 「何か言った?」
竜馬 「いーや、別に。じゃ、とっとと始めるが、巴マミの命の保証はしてくれるんだろうな」
織莉子 「彼女の命を奪うことが目的ではないもの。ゲッターロボを受け取ったなら、きちんと解放してあげるわ」
竜馬 「・・・暁美」
竜馬が振り向いて、私にうなずいて見せる。
今は従うほかはない。
私はバックラーに念を送る。
程なくして、魔女の結界内にゲッターロボが実体化した。
709: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:57:02.26 ID:wwr2GWhj0
キリカ 「うわっ、本当に出た!」
仁美 「なんて巨大な・・・」
A子たち 「わーわーきゃーきゃー」
織莉子の取り巻きたちが驚嘆の声を上げる中で、ただ一人。
織莉子 「・・・」
美国織莉子のみが、複雑な表情でゲッターロボを見上げていた。
どこか悲痛な、先ほど私たちを睨み付けた時とは、まるで別人のような眼差しで。
ほむら (予知の中でとはいえ、一度ゲッターを目にしている彼女なら、他の子たちと感じ方も違うのは当然か・・・)
織莉子 「では、まずは流さん。あなたから乗って下さい」
竜馬 「了解だ」
キュウべぇ 「ちょっと待ってよ」
どこから湧いて出たのか、竜馬の足元にはいつの間にやら、キュウべぇが佇んでいた。
竜馬 「お前は本当に、ボウフラのような奴だな」
キュウべぇ 「僕も竜馬と同行させてもらうよ」
竜馬 「なに言ってるんだ、お前」
キュウべぇ 「僕にも役割というものがあってね。ねぇ、織莉子」
織莉子 「そうね」
仁美 「なんて巨大な・・・」
A子たち 「わーわーきゃーきゃー」
織莉子の取り巻きたちが驚嘆の声を上げる中で、ただ一人。
織莉子 「・・・」
美国織莉子のみが、複雑な表情でゲッターロボを見上げていた。
どこか悲痛な、先ほど私たちを睨み付けた時とは、まるで別人のような眼差しで。
ほむら (予知の中でとはいえ、一度ゲッターを目にしている彼女なら、他の子たちと感じ方も違うのは当然か・・・)
織莉子 「では、まずは流さん。あなたから乗って下さい」
竜馬 「了解だ」
キュウべぇ 「ちょっと待ってよ」
どこから湧いて出たのか、竜馬の足元にはいつの間にやら、キュウべぇが佇んでいた。
竜馬 「お前は本当に、ボウフラのような奴だな」
キュウべぇ 「僕も竜馬と同行させてもらうよ」
竜馬 「なに言ってるんだ、お前」
キュウべぇ 「僕にも役割というものがあってね。ねぇ、織莉子」
織莉子 「そうね」
710: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:58:56.24 ID:wwr2GWhj0
竜馬 「美国が絡んでるなら、俺に断われるはずもない。好きにしたが良いさ」
キュウべぇ 「それじゃ、よいしょっと」
キュウべぇはひょいっと飛び上がると、竜馬の肩先に落ち着いた。
まるでアニメのマスコットキャラのように、竜馬の肩に乗っかってゲッターに乗り込むつもりのようだ。
竜馬 「なれなれしいな、お前」
キュウべぇ 「しばらくの間、よろしく頼むよ。竜馬」
竜馬 「・・・」
織莉子 「彼がゲッターロボに乗り込んだら、こちらも順次、乗り込みにかかるわよ」
キュウべぇ 「それじゃ、よいしょっと」
キュウべぇはひょいっと飛び上がると、竜馬の肩先に落ち着いた。
まるでアニメのマスコットキャラのように、竜馬の肩に乗っかってゲッターに乗り込むつもりのようだ。
竜馬 「なれなれしいな、お前」
キュウべぇ 「しばらくの間、よろしく頼むよ。竜馬」
竜馬 「・・・」
織莉子 「彼がゲッターロボに乗り込んだら、こちらも順次、乗り込みにかかるわよ」
719: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:06:35.50 ID:SYtqUjqv0
・・・
・・・
かくして・・・
竜馬に引き続いて、織莉子の指名を受けた彼女の取り巻きたちが、ゲッターロボへと乗り込んでいった。
白羽の矢をたてられたのは予想通り、織莉子の腹心ともいうべき呉キリカと志筑仁美。
そして・・・
新米魔法少女の中からも、4人が選ばれて、キリカ達とともにジャガー号とベアー号に分乗して行った。
つまり、ジャガー号とベアー号にはそれぞれ、3人づつの魔法少女が乗っていることになる。
ほむら 「一人乗りに無理やり3人も乗り込ませるなんて、人口過多も大概だわね・・・」
武蔵 「まぁ、前例が無いわけじゃない。俺が初めてゲッターに乗った時も、狭いイーグル号の中に3人がすし詰め状態だったからな」
ほむら 「リョウと武蔵さんと・・・隼人さん?」
・・・
かくして・・・
竜馬に引き続いて、織莉子の指名を受けた彼女の取り巻きたちが、ゲッターロボへと乗り込んでいった。
白羽の矢をたてられたのは予想通り、織莉子の腹心ともいうべき呉キリカと志筑仁美。
そして・・・
新米魔法少女の中からも、4人が選ばれて、キリカ達とともにジャガー号とベアー号に分乗して行った。
つまり、ジャガー号とベアー号にはそれぞれ、3人づつの魔法少女が乗っていることになる。
ほむら 「一人乗りに無理やり3人も乗り込ませるなんて、人口過多も大概だわね・・・」
武蔵 「まぁ、前例が無いわけじゃない。俺が初めてゲッターに乗った時も、狭いイーグル号の中に3人がすし詰め状態だったからな」
ほむら 「リョウと武蔵さんと・・・隼人さん?」
720: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:09:26.35 ID:SYtqUjqv0
武蔵 「いや、俺とリョウと、あとは原始人だ」
杏子 「はぁ、ナニソレ」
武蔵 「胸糞悪い事件で、あまり細かいことは話したくないんだが、とにかく図体のでかい男でも3人くらいは、無理をすれば乗れるって話だ」
ゆま 「見た目とおんなじ、中もおっきいんだね!」
武蔵 「もっとも、シートに座れるのは一人だけだ。残りの二人は、体を支えることもできず、機内を転がりまわることになるけどな」
織莉子 「心配はご無用よ。私たちは魔法少女。魔法の障壁を張って、身体を守ることくらい、なんてことはないもの」
武蔵 「そうかい」
ほむら 「だけれど、どうしてあんな無茶を?」
織莉子 「・・・ゲッターロボに乗るのにも、慣れが必要でしょう?」
ほむら 「そうね」
杏子 「はぁ、ナニソレ」
武蔵 「胸糞悪い事件で、あまり細かいことは話したくないんだが、とにかく図体のでかい男でも3人くらいは、無理をすれば乗れるって話だ」
ゆま 「見た目とおんなじ、中もおっきいんだね!」
武蔵 「もっとも、シートに座れるのは一人だけだ。残りの二人は、体を支えることもできず、機内を転がりまわることになるけどな」
織莉子 「心配はご無用よ。私たちは魔法少女。魔法の障壁を張って、身体を守ることくらい、なんてことはないもの」
武蔵 「そうかい」
ほむら 「だけれど、どうしてあんな無茶を?」
織莉子 「・・・ゲッターロボに乗るのにも、慣れが必要でしょう?」
ほむら 「そうね」
721: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:12:17.87 ID:SYtqUjqv0
織莉子 「ワルプルギス襲来まで、あと一週間。私たちには時間がない。ゲッターに慣れる事一つをとっても、効率の良い方法を選ばなければならないの」
ほむら 「それで、いっぺんに複数の仲間を、ゲッターに乗り込ませた。そういうのね」
織莉子 「ええ」
ほむら (嘘を言っている・・・)
確信はないけれど、私は織莉子の言葉の中にまやかしの色が含まれていることを感じ取っていた。
だけれど、それは何のための嘘なのか。
そこまで掴み取れるほど、私は織莉子の心の内を知り抜いているわけじゃない。
ほむら 「それで、いっぺんに複数の仲間を、ゲッターに乗り込ませた。そういうのね」
織莉子 「ええ」
ほむら (嘘を言っている・・・)
確信はないけれど、私は織莉子の言葉の中にまやかしの色が含まれていることを感じ取っていた。
だけれど、それは何のための嘘なのか。
そこまで掴み取れるほど、私は織莉子の心の内を知り抜いているわけじゃない。
722: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:15:40.15 ID:SYtqUjqv0
ただ、一つ言えることは。
A子 「良いなぁー。私もロボット乗ってみたかったよ」
B子 「順番だもの、仕方がないわ。私たちは次の機会に乗ればいいのだし。ねぇ、C子」
C子 「そうだね!」
居残って、マミのソウルジェムに三人がかりで武器を突き付けている魔法少女たち。
彼女たちも、織莉子の語った説明を、寸分うたがわずに信じている様子だという事。
ほむら (何を考えているの・・・美国織莉子)
織莉子の心の内も、そして現在のゲッターロボの中で、どんな会話が交わされているのかも。
外側にいる私には、うかがい知る事などできるはずもなかった。
A子 「良いなぁー。私もロボット乗ってみたかったよ」
B子 「順番だもの、仕方がないわ。私たちは次の機会に乗ればいいのだし。ねぇ、C子」
C子 「そうだね!」
居残って、マミのソウルジェムに三人がかりで武器を突き付けている魔法少女たち。
彼女たちも、織莉子の語った説明を、寸分うたがわずに信じている様子だという事。
ほむら (何を考えているの・・・美国織莉子)
織莉子の心の内も、そして現在のゲッターロボの中で、どんな会話が交わされているのかも。
外側にいる私には、うかがい知る事などできるはずもなかった。
723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:17:03.44 ID:SYtqUjqv0
・・・
・・・
竜馬 「おい、お前ら」
イーグル号のコクピットから、竜馬は通信機で他の二機に語りかけていた。
竜馬 「分かっていると思うが、ゲッターはどういうわけか魔法少女の魔力をエネルギーとしている。そこら辺、対策はしているんだろうな」
仁美 「問題ありませんわ」
即座にベアー号の仁美から返事があった。
仁美 「魔力補給用のグリーフシードは持って来ています。心配には及びませんわ」
竜馬 (なら、良いがよ。ゲッターの中で魔女化なんて事態だけは、まっぴらごめんだからな)
キリカ 「織莉子には全て分かっている事さ」
こちらはジャガー号に乗り込んでいる、呉キリカだ。
キリカ 「君は余計な心配なんかしないで、私たちの言うとおりにしていれば良いんだよ」
・・・
竜馬 「おい、お前ら」
イーグル号のコクピットから、竜馬は通信機で他の二機に語りかけていた。
竜馬 「分かっていると思うが、ゲッターはどういうわけか魔法少女の魔力をエネルギーとしている。そこら辺、対策はしているんだろうな」
仁美 「問題ありませんわ」
即座にベアー号の仁美から返事があった。
仁美 「魔力補給用のグリーフシードは持って来ています。心配には及びませんわ」
竜馬 (なら、良いがよ。ゲッターの中で魔女化なんて事態だけは、まっぴらごめんだからな)
キリカ 「織莉子には全て分かっている事さ」
こちらはジャガー号に乗り込んでいる、呉キリカだ。
キリカ 「君は余計な心配なんかしないで、私たちの言うとおりにしていれば良いんだよ」
724: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:19:41.67 ID:SYtqUjqv0
竜馬 「そうかよ。なら、俺はこれから何をすればいいんだ」
キリカ 「そうだね。まずは適当にこの空間内を動いてもらおうかな」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「その様子を僕が見ているよ。ゲッターの操縦法を僕が記憶して、あとで織莉子たちにビジョンとして見せる」
竜馬 「なるほど、それがお前の役割か。生きたマニュアルってわけだ」
キュウべぇ 「便利だろう?」
竜馬 「・・・」
言われたとおり、竜馬はゲッターで広場内をうろついて見せた。
巨大なゲッターで限られた空間を歩くのだ。足元のほむら達を踏みつぶさないように気を配ることも忘れない。
キリカ 「そうだね。まずは適当にこの空間内を動いてもらおうかな」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「その様子を僕が見ているよ。ゲッターの操縦法を僕が記憶して、あとで織莉子たちにビジョンとして見せる」
竜馬 「なるほど、それがお前の役割か。生きたマニュアルってわけだ」
キュウべぇ 「便利だろう?」
竜馬 「・・・」
言われたとおり、竜馬はゲッターで広場内をうろついて見せた。
巨大なゲッターで限られた空間を歩くのだ。足元のほむら達を踏みつぶさないように気を配ることも忘れない。
725: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:23:25.89 ID:SYtqUjqv0
竜馬 「これでいいのかよ?」
仁美 「・・・」
キリカ 「・・・」
竜馬 「・・・おい?」
キリカ (これは・・・けっこう来るモノがあるね)
仁美 (少し動いただけで、この魔力の喪失感。確かに織莉子さんの言っていた”方法”でもとらないと、瞬く間にジリ貧になってしまう。たとえ、その方法が・・・)
キリカ ・仁美 (外道の極みなのだとしても・・・!)
竜馬 「お前ら・・・大丈夫なのか?」
仁美 「あ、は、はい・・・平気ですわ。では流さんは引き続き、ゲッターに様々な動きをさせてください。キュウべぇ、記録はよろしくお願いしますわね」
竜馬 「分かった・・・」
キュウべぇ 「そこは任せてもらっていいよ」
仁美 「ええ」
キリカ (さて、いよいよ始まるか・・・)
仁美 「と、その前に・・・」
仁美はシート越しに、後ろから様子をうかがっていた少女たちに声をかけた。
仁美 「では、D子さん。私と交代ですわ。E子さんももう少し前に来て、ゲッターロボがどういうものなのか、計器とかをよく見ておいて下さい」
D子 「あ、う、うん・・・じゃあ・・・よいしょっと」
E子 「それよりも志筑さん・・・私たち、ちょっとソウルジェムがヤバめになってきたんだけれど」
仁美 「・・・」
仁美 「・・・」
キリカ 「・・・」
竜馬 「・・・おい?」
キリカ (これは・・・けっこう来るモノがあるね)
仁美 (少し動いただけで、この魔力の喪失感。確かに織莉子さんの言っていた”方法”でもとらないと、瞬く間にジリ貧になってしまう。たとえ、その方法が・・・)
キリカ ・仁美 (外道の極みなのだとしても・・・!)
竜馬 「お前ら・・・大丈夫なのか?」
仁美 「あ、は、はい・・・平気ですわ。では流さんは引き続き、ゲッターに様々な動きをさせてください。キュウべぇ、記録はよろしくお願いしますわね」
竜馬 「分かった・・・」
キュウべぇ 「そこは任せてもらっていいよ」
仁美 「ええ」
キリカ (さて、いよいよ始まるか・・・)
仁美 「と、その前に・・・」
仁美はシート越しに、後ろから様子をうかがっていた少女たちに声をかけた。
仁美 「では、D子さん。私と交代ですわ。E子さんももう少し前に来て、ゲッターロボがどういうものなのか、計器とかをよく見ておいて下さい」
D子 「あ、う、うん・・・じゃあ・・・よいしょっと」
E子 「それよりも志筑さん・・・私たち、ちょっとソウルジェムがヤバめになってきたんだけれど」
仁美 「・・・」
726: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:25:44.63 ID:SYtqUjqv0
E子 「そろそろグリーフシード、貰ってもいいかな」
仁美 「・・・まだ早いですわ。これから先は長いのですもの。限りある資源は節約して使わないと」
D子 「で、でもぉ・・・」
仁美 「大丈夫。今はゲッターロボに慣れる事だけに集中して」
E子 「まぁ、織莉子さんが認めたあなたがそう言うなら、従うけどさぁ・・・」
仁美 「・・・」
同じようなやり取りは、ジャガー号の中でも行われていた。
キリカは操縦席を同乗していたF子に譲って、その様子をのぞき込んでいるG子のさらに後ろへと移動していた。
そして、念を集中して、外の織莉子にだけ聞こえるように、念話を飛ばす。
キリカ (織莉子、程なくして”限界”が訪れる。いよいよ、実行のとき迫る、だよ)
仁美 「・・・まだ早いですわ。これから先は長いのですもの。限りある資源は節約して使わないと」
D子 「で、でもぉ・・・」
仁美 「大丈夫。今はゲッターロボに慣れる事だけに集中して」
E子 「まぁ、織莉子さんが認めたあなたがそう言うなら、従うけどさぁ・・・」
仁美 「・・・」
同じようなやり取りは、ジャガー号の中でも行われていた。
キリカは操縦席を同乗していたF子に譲って、その様子をのぞき込んでいるG子のさらに後ろへと移動していた。
そして、念を集中して、外の織莉子にだけ聞こえるように、念話を飛ばす。
キリカ (織莉子、程なくして”限界”が訪れる。いよいよ、実行のとき迫る、だよ)
727: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:27:34.93 ID:SYtqUjqv0
織莉子 (キリカ・・・ごめんなさいね。あなたと仁美さんにだけ手を汚させるような真似をしてしまって)
キリカ (構わない。私は織莉子の言う事にはすべて従うと、心に固く誓ってるんだ。それにそれが、織莉子の好きなこの街を守ることにつながるんだろう)
織莉子 (ええ・・・)
キリカ (だったら、全く問題なし。織莉子はこの後の事だけを考えていればいいんだよ。私は君が導いてくれないと、たちまち道に迷ってしまうのだからね)
織莉子 (キリカ、あなた・・・)
キリカ (じゃ、通信終わり!またあとでね!)
念話を切り上げると、キリカは再び視線を自分の前にいる、二人の魔法少女へと向けた。
未知の存在であるゲッターに、わき上がる興味を隠しもせず、無邪気に語り合っている二人の少女。
キリカ (ごめんね)
今度は誰にも届かないように。
キリカは心の内でだけ、そっとそうつぶやいた。
キリカ (構わない。私は織莉子の言う事にはすべて従うと、心に固く誓ってるんだ。それにそれが、織莉子の好きなこの街を守ることにつながるんだろう)
織莉子 (ええ・・・)
キリカ (だったら、全く問題なし。織莉子はこの後の事だけを考えていればいいんだよ。私は君が導いてくれないと、たちまち道に迷ってしまうのだからね)
織莉子 (キリカ、あなた・・・)
キリカ (じゃ、通信終わり!またあとでね!)
念話を切り上げると、キリカは再び視線を自分の前にいる、二人の魔法少女へと向けた。
未知の存在であるゲッターに、わき上がる興味を隠しもせず、無邪気に語り合っている二人の少女。
キリカ (ごめんね)
今度は誰にも届かないように。
キリカは心の内でだけ、そっとそうつぶやいた。
728: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:30:04.42 ID:SYtqUjqv0
・・・
・・・
キリカ達に言われるまま、ゲッターを操縦し続ける竜馬。
キュウべぇは竜馬の肩の上から、彼が操る操縦桿をじっと見つめていた。
その様子はキュウべぇたち共有のデータバンクに逐一送られ、必要な時にはいつでも取り出すことができる。
キュウべぇ (間もなくだ・・・このプランが確立されれば、僕たちのエネルギー回収のノルマは飛躍的に達成に近づける)
個人的な感情を持ち合わせない彼だったが、種全体としての喜びが体の奥から湧き上がってくることは抑えようがなかった。
それは、本能からくる喜びだった。
キュウべぇ (さて・・・)
この男、流竜馬にだけは本当の事を、今。
ここで話しておかなければならないなと、キュウべぇは思った。
キュウべぇ (どのみち今回の事が終わった後には、ほむら達にもすべてが知られてしまうことになるだろうけれど・・・)
この全てにおいて規格外の男が、いざとなったら何をしでかすのか。
悠久の歴史の中で様々な人間を観察してきたキュウべぇにも、測りかねるものがある。
そんな不測の事態が起こる前に、憂いの芽は摘んでおかなければならない。
・・・
キリカ達に言われるまま、ゲッターを操縦し続ける竜馬。
キュウべぇは竜馬の肩の上から、彼が操る操縦桿をじっと見つめていた。
その様子はキュウべぇたち共有のデータバンクに逐一送られ、必要な時にはいつでも取り出すことができる。
キュウべぇ (間もなくだ・・・このプランが確立されれば、僕たちのエネルギー回収のノルマは飛躍的に達成に近づける)
個人的な感情を持ち合わせない彼だったが、種全体としての喜びが体の奥から湧き上がってくることは抑えようがなかった。
それは、本能からくる喜びだった。
キュウべぇ (さて・・・)
この男、流竜馬にだけは本当の事を、今。
ここで話しておかなければならないなと、キュウべぇは思った。
キュウべぇ (どのみち今回の事が終わった後には、ほむら達にもすべてが知られてしまうことになるだろうけれど・・・)
この全てにおいて規格外の男が、いざとなったら何をしでかすのか。
悠久の歴史の中で様々な人間を観察してきたキュウべぇにも、測りかねるものがある。
そんな不測の事態が起こる前に、憂いの芽は摘んでおかなければならない。
729: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:33:34.56 ID:SYtqUjqv0
キュウべぇ 「竜馬」
竜馬 「なんだよ」
キュウべぇ 「操縦を続けたままで良いから、聞いてほしい事があるんだ」
竜馬 「改まって、気持ちが悪いな」
キュウべぇ 「この先、何が起こっても、君には取り乱さずに、そのまま操縦に専念していてほしい。その事を念押ししておこうと思ってね」
竜馬 「お前らが今更、なにを企もうが驚くほどの事なんざねぇだろうがよ」
キュウべぇ 「それを聞いて安心したよ」
竜馬 「・・・で?その、念押しの具体的な内容を聞いておこうじゃないか」
キュウべぇ 「では・・・」
キュウべぇ 「 」
竜馬 「なんだよ」
キュウべぇ 「操縦を続けたままで良いから、聞いてほしい事があるんだ」
竜馬 「改まって、気持ちが悪いな」
キュウべぇ 「この先、何が起こっても、君には取り乱さずに、そのまま操縦に専念していてほしい。その事を念押ししておこうと思ってね」
竜馬 「お前らが今更、なにを企もうが驚くほどの事なんざねぇだろうがよ」
キュウべぇ 「それを聞いて安心したよ」
竜馬 「・・・で?その、念押しの具体的な内容を聞いておこうじゃないか」
キュウべぇ 「では・・・」
キュウべぇ 「 」
730: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:35:28.06 ID:SYtqUjqv0
竜馬 「な、なんだと・・・!」
驚く事はない。
そう断言していた竜馬だったが、キュウべぇの話を聞き終えるや、彼の顔から血の気がみるみる引いていった。
信じられないモノを見るような目で、肩の上のキュウべぇを凝視する。
竜馬 「お前ら、正気か・・・いや、お前は分かる。人を人とも思っていない、お前なら・・・」
キュウべぇ 「ひどい言われようだね」
竜馬 「だが・・・美国織莉子・・・あいつ、そんな事を考え付くなんて・・・人か?人を捨てるつもりなのか?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする正義のためだからね。それが彼女の望みなんだ。仕方がない」
竜馬 「そんなの、ただのエゴだろうが!」
キュウべぇ 「僕は長い歴史の中で様々な人間を見て来たけれど・・・エゴの絡まない望みを持った人間なんて、数えるくらいしか出会ったことがなかったよ」
竜馬 「だからと言って、やって良い事と悪い事があるだろうが!!」
キュウべぇ 「・・・やはり君には事前に話しておいて良かった。このまま”コト”が起こったら、何をされるか分かったものじゃなかったからね」
驚く事はない。
そう断言していた竜馬だったが、キュウべぇの話を聞き終えるや、彼の顔から血の気がみるみる引いていった。
信じられないモノを見るような目で、肩の上のキュウべぇを凝視する。
竜馬 「お前ら、正気か・・・いや、お前は分かる。人を人とも思っていない、お前なら・・・」
キュウべぇ 「ひどい言われようだね」
竜馬 「だが・・・美国織莉子・・・あいつ、そんな事を考え付くなんて・・・人か?人を捨てるつもりなのか?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする正義のためだからね。それが彼女の望みなんだ。仕方がない」
竜馬 「そんなの、ただのエゴだろうが!」
キュウべぇ 「僕は長い歴史の中で様々な人間を見て来たけれど・・・エゴの絡まない望みを持った人間なんて、数えるくらいしか出会ったことがなかったよ」
竜馬 「だからと言って、やって良い事と悪い事があるだろうが!!」
キュウべぇ 「・・・やはり君には事前に話しておいて良かった。このまま”コト”が起こったら、何をされるか分かったものじゃなかったからね」
731: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:37:08.27 ID:SYtqUjqv0
竜馬 「・・・くっ!」
竜馬がコンソール上の通信機に手を伸ばそうとする。
警告しなければ。キリカや仁美と同乗している、名も知らぬ魔法少女たちに。
・・・だが。
キュウべぇ 「待ちなよ」
それを、抑揚のないキュウべぇの声が制した。
キュウべぇ 「言ったはずだ、君はこのまま操縦を続けるように、と」
竜馬 「だまれっ、てめぇの指図は受けねぇ!」
キュウべぇ 「君がこちらの指示に従わない場合、僕は即座にその事を、外の織莉子に念話で告げる」
竜馬 「・・・っ」
キュウべぇ 「巴マミ・・・彼女の身にもしもの事があれば、巴武蔵は君の事をどう思うだろうね」
竜馬 「てめぇ・・・!」
キュウべぇ 「もちろん、暁美ほむらや他の子たちも無事では済まないだろう。君が止めようとする行為は、仲間の命より尊い事なのかい?」
竜馬 「・・・くっ、くそっ!」
キュウべぇ 「さぁ、ここで成り行きを見守ろうじゃないか。上手くいくかは結果を御覧じろ・・・だけれどね」
竜馬 (くそ、俺にはどうすることもできないのか・・・!?)
竜馬がコンソール上の通信機に手を伸ばそうとする。
警告しなければ。キリカや仁美と同乗している、名も知らぬ魔法少女たちに。
・・・だが。
キュウべぇ 「待ちなよ」
それを、抑揚のないキュウべぇの声が制した。
キュウべぇ 「言ったはずだ、君はこのまま操縦を続けるように、と」
竜馬 「だまれっ、てめぇの指図は受けねぇ!」
キュウべぇ 「君がこちらの指示に従わない場合、僕は即座にその事を、外の織莉子に念話で告げる」
竜馬 「・・・っ」
キュウべぇ 「巴マミ・・・彼女の身にもしもの事があれば、巴武蔵は君の事をどう思うだろうね」
竜馬 「てめぇ・・・!」
キュウべぇ 「もちろん、暁美ほむらや他の子たちも無事では済まないだろう。君が止めようとする行為は、仲間の命より尊い事なのかい?」
竜馬 「・・・くっ、くそっ!」
キュウべぇ 「さぁ、ここで成り行きを見守ろうじゃないか。上手くいくかは結果を御覧じろ・・・だけれどね」
竜馬 (くそ、俺にはどうすることもできないのか・・・!?)
732: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:40:16.52 ID:SYtqUjqv0
・・・
・・・
ジャガー号
内部
F子 「え・・・え・・・どういうこと、呉さん・・・」
G子 「ど、どうして・・・」
キリカは抜きはらった武器を、仲間であるはずの二人の魔法少女に突き付けていた。
微塵でも動けば切り刻む。
キリカの彼女たちを睨む目が、言外にそう告げていた。
キリカ 「良いから、そのまま。大人しく座っていて。そうすれば、手荒な真似はしないからさ」
F子 「だ、だけど、このままじゃ私たち、ソウルジェムが・・・ソウルジェムが!」
G子 「もう限界なんだよ!は、早くグリーフシードをちょうだい!」
キリカ 「黙りなよっ!」
F子・G子 「ひぃっ!!」
キリカ 「君たちのソウルジェムには、このまま黒く濁りきってもらうよ」
F子 「な、なんで!?なんでよぉ・・・!」
・・・
ジャガー号
内部
F子 「え・・・え・・・どういうこと、呉さん・・・」
G子 「ど、どうして・・・」
キリカは抜きはらった武器を、仲間であるはずの二人の魔法少女に突き付けていた。
微塵でも動けば切り刻む。
キリカの彼女たちを睨む目が、言外にそう告げていた。
キリカ 「良いから、そのまま。大人しく座っていて。そうすれば、手荒な真似はしないからさ」
F子 「だ、だけど、このままじゃ私たち、ソウルジェムが・・・ソウルジェムが!」
G子 「もう限界なんだよ!は、早くグリーフシードをちょうだい!」
キリカ 「黙りなよっ!」
F子・G子 「ひぃっ!!」
キリカ 「君たちのソウルジェムには、このまま黒く濁りきってもらうよ」
F子 「な、なんで!?なんでよぉ・・・!」
733: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:42:27.26 ID:SYtqUjqv0
キリカ 「そうすれば、ソウルジェムは砕けて、グリーフシードとなって生まれ変わる」
G子 「え・・・」
キリカ 「君たちは、魔女になるんだよ」
F子 「な、なに言ってるの・・・?」
キリカ 「言葉の通りさ。やがて魔女になる運命なのさ、魔法少女は。君たちも、私も」
G子 「・・・う、うそだ・・・ぁ・・・」
キリカ 「本当だよ。だけれど、魔女にならずにすむ方法が、たった一つだけある。知りたい・・・?」
F子 「え?え?」
キリカ 「それは、ね・・・」
G子 「え・・・」
キリカ 「君たちは、魔女になるんだよ」
F子 「な、なに言ってるの・・・?」
キリカ 「言葉の通りさ。やがて魔女になる運命なのさ、魔法少女は。君たちも、私も」
G子 「・・・う、うそだ・・・ぁ・・・」
キリカ 「本当だよ。だけれど、魔女にならずにすむ方法が、たった一つだけある。知りたい・・・?」
F子 「え?え?」
キリカ 「それは、ね・・・」
734: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:43:55.50 ID:SYtqUjqv0
・・・
・・・
ベアー号
内部
仁美 「それは、魔女となる前に死んでしまう事・・・」
D子 「は、はい・・・?」
E子 「あんた、何を言って・・・うぐっ!い、良いから早く、あんたが手に持ってるグリーフシードをよこしなさいよぉ!」
仁美 「動くなぁっ!!」
仁美が、今まで見せたこともない顔と声音で、飛びかかろうとするE子を叱りつけた。
ビリビリとコクピット内の空気が震えるほどに、それは激しい叱責だった。
取り乱していた二人の魔法少女の動きが、押さえつけられたかのようにピタリと静まる。
仁美 「そう、それで良いのです。あなたがたはただ、運命を受け入れれば、それで良い・・・」
D子 「な、なによぉ・・・志筑さん、あなたいったい何なのよぉ・・・」
E子 「私たちに、死ねというの・・・?」
仁美 「ええ」
絶望に震えた声での問いかけにも、仁美は平然とうなずいて見せた。
・・・
ベアー号
内部
仁美 「それは、魔女となる前に死んでしまう事・・・」
D子 「は、はい・・・?」
E子 「あんた、何を言って・・・うぐっ!い、良いから早く、あんたが手に持ってるグリーフシードをよこしなさいよぉ!」
仁美 「動くなぁっ!!」
仁美が、今まで見せたこともない顔と声音で、飛びかかろうとするE子を叱りつけた。
ビリビリとコクピット内の空気が震えるほどに、それは激しい叱責だった。
取り乱していた二人の魔法少女の動きが、押さえつけられたかのようにピタリと静まる。
仁美 「そう、それで良いのです。あなたがたはただ、運命を受け入れれば、それで良い・・・」
D子 「な、なによぉ・・・志筑さん、あなたいったい何なのよぉ・・・」
E子 「私たちに、死ねというの・・・?」
仁美 「ええ」
絶望に震えた声での問いかけにも、仁美は平然とうなずいて見せた。
735: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:45:22.06 ID:SYtqUjqv0
E子 「いったい、何のために!」
仁美 「この、見滝原を守るために・・・」
D子 「わけわかんない!やだよ、死にたくないよ!なんでこんなことするのよ!助けてよぉ!」
仁美 「どのみち、私たちは遠からず、人としての生を摘み取られるべき存在。それが、分を超えた望みを持った私たちの償い・・・」
E子 「・・・なに、言ってるのさ」
仁美 「死ぬ時期が、多少違うというだけ。私も近いうちにあなたたちの所へ行くことになる。だから、ねぇ・・・?」
D子 「・・・」
仁美 「今は、おとなしくソウルジェムを黒く染め上げて下さいな」
D子 「そんなの嫌だよ、助けてよ!う・・・うぐっ!?」
E子 「う・・・う、ぁ・・・」
そして・・・
その時が、訪れた。
仁美 「この、見滝原を守るために・・・」
D子 「わけわかんない!やだよ、死にたくないよ!なんでこんなことするのよ!助けてよぉ!」
仁美 「どのみち、私たちは遠からず、人としての生を摘み取られるべき存在。それが、分を超えた望みを持った私たちの償い・・・」
E子 「・・・なに、言ってるのさ」
仁美 「死ぬ時期が、多少違うというだけ。私も近いうちにあなたたちの所へ行くことになる。だから、ねぇ・・・?」
D子 「・・・」
仁美 「今は、おとなしくソウルジェムを黒く染め上げて下さいな」
D子 「そんなの嫌だよ、助けてよ!う・・・うぐっ!?」
E子 「う・・・う、ぁ・・・」
そして・・・
その時が、訪れた。
743: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:20:19.81 ID:Wp6ot+820
E子 「う、うう・・・ああ・・・」
D子 「ああああああああっ!!」
ゲッターに魔力を吸い取られ続けた二人の少女のソウルジェムに、限界が来たのだ。
ぴしっ・・・と。
亀裂が走る音が、コクピット内に響く。
それは、ソウルジェムが形を失い、グリーフシードへ生まれ変わる為の産声。
仁美 「失敗は許されない。間髪入れず終わらせる・・・」
仁美は狭いコクピットの中、得物である剣を中段に構え、二人の少女に狙いを定める。
そして、待った。
ソウルジェムが砕ける、その瞬間を。
D子 「ああああああああっ!!」
ゲッターに魔力を吸い取られ続けた二人の少女のソウルジェムに、限界が来たのだ。
ぴしっ・・・と。
亀裂が走る音が、コクピット内に響く。
それは、ソウルジェムが形を失い、グリーフシードへ生まれ変わる為の産声。
仁美 「失敗は許されない。間髪入れず終わらせる・・・」
仁美は狭いコクピットの中、得物である剣を中段に構え、二人の少女に狙いを定める。
そして、待った。
ソウルジェムが砕ける、その瞬間を。
744: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:23:45.30 ID:Wp6ot+820
少女たちの断末魔の絶叫が、コクピット内を悲惨の色で染め上げる。
だけれど仁美の心は、穏やかな水面のごとくに静謐だった。
成すべき事のため、大切な人の住む世界を守るために。
仁美 (そのために、私は人であることを捨てたのだもの)
そして。
パリンっという破裂音とともに、E子とD子のソウルジェムがほぼ同時に砕けた。
代わりに姿を現したのは、新たなグリーフシード。
そう、魔女が誕生しようとしているのだ。
仁美 「いまっ!」
仁美は鋭い掛け声とともに、渾身の力を込めて剣を薙いだ。
だけれど仁美の心は、穏やかな水面のごとくに静謐だった。
成すべき事のため、大切な人の住む世界を守るために。
仁美 (そのために、私は人であることを捨てたのだもの)
そして。
パリンっという破裂音とともに、E子とD子のソウルジェムがほぼ同時に砕けた。
代わりに姿を現したのは、新たなグリーフシード。
そう、魔女が誕生しようとしているのだ。
仁美 「いまっ!」
仁美は鋭い掛け声とともに、渾身の力を込めて剣を薙いだ。
745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:25:30.81 ID:Wp6ot+820
・・・
・・・
竜馬 「なんてこった・・・」
竜馬はその様子をモニター越しに、全て見ていた。
竜馬 「これが、お前の企みなのか」
キュウべぇ 「そうだよ、竜馬。本当はこの役、君にやってもらえれば、ゲッターを強奪するなんて回りくどいことをせずに済んだのだけれどね」
竜馬 「・・・どういうことか説明しやがれ」
キュウべぇ 「発想の転換だよ」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「僕の目的が、魔法少女が魔女になる際に放出されるエネルギーを回収することだとは、君も知っているよね」
竜馬 「ああ」
キュウべぇ 「そのエネルギーというのは、正確にはソウルジェムが砕けた瞬間に放出されるのだけれどね。つまり、別に魔女化自体は僕にとってはどうでもいいことなのさ」
竜馬 「・・・」
・・・
竜馬 「なんてこった・・・」
竜馬はその様子をモニター越しに、全て見ていた。
竜馬 「これが、お前の企みなのか」
キュウべぇ 「そうだよ、竜馬。本当はこの役、君にやってもらえれば、ゲッターを強奪するなんて回りくどいことをせずに済んだのだけれどね」
竜馬 「・・・どういうことか説明しやがれ」
キュウべぇ 「発想の転換だよ」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「僕の目的が、魔法少女が魔女になる際に放出されるエネルギーを回収することだとは、君も知っているよね」
竜馬 「ああ」
キュウべぇ 「そのエネルギーというのは、正確にはソウルジェムが砕けた瞬間に放出されるのだけれどね。つまり、別に魔女化自体は僕にとってはどうでもいいことなのさ」
竜馬 「・・・」
746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:27:19.22 ID:Wp6ot+820
キュウべぇ 「そして織莉子たちの目的は、ゲッターロボを運用するために必要な、グリーフシードの確保。この両者を両立させるためには、さてどうするか」
竜馬 「ま、まさか・・・だから美国は魔法少女を仲間に集め、志筑たちはあんなまねをしたと?」
キュウべぇ 「相変わらず君は察しがいい。もう分かったよね」
竜馬 「ゲッターにエネルギーを吸い取らせ、ソウルジェムをグリーフシード化させ・・・」
キュウべぇ 「そこから魔女となる寸隙をついて、人の姿をしている内に魔法少女を殺してしまう。そうすれば僕はエネルギーを回収でき、織莉子たちは戦わずにグリーフシードを手に入れられる」
竜馬 「人間の考える事じゃねぇぞ・・・!」
キュウべぇ 「それはそうさ。だって僕が提案した策なのだから」
竜馬 「ど外道がっ!!」
竜馬 「ま、まさか・・・だから美国は魔法少女を仲間に集め、志筑たちはあんなまねをしたと?」
キュウべぇ 「相変わらず君は察しがいい。もう分かったよね」
竜馬 「ゲッターにエネルギーを吸い取らせ、ソウルジェムをグリーフシード化させ・・・」
キュウべぇ 「そこから魔女となる寸隙をついて、人の姿をしている内に魔法少女を殺してしまう。そうすれば僕はエネルギーを回収でき、織莉子たちは戦わずにグリーフシードを手に入れられる」
竜馬 「人間の考える事じゃねぇぞ・・・!」
キュウべぇ 「それはそうさ。だって僕が提案した策なのだから」
竜馬 「ど外道がっ!!」
747: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:30:54.59 ID:Wp6ot+820
キュウべぇ 「僕に人間の世界での罵倒は意味がないよ。にしても、この方法。正直、少し賭けの部分があったんだ。魔法少女の命を絶つタイミングが、けっこうシビアだからね」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「でもまぁ、呉キリカと志筑仁美は上手くやってくれたよ。おかげで確立された。これから僕は、この方法でどんどんエネルギーを回収できる。ノルマの達成も早まるというものだよ」
竜馬 「俺たちのゲッターをそんな事のために・・・」
キュウべぇ 「魔法少女による、エネルギーの永久機関さ。資質の高い魔法少女を探して回るより、よほど効率的だとは思わないかい?」
竜馬 「てめえっ、絶対に許せねぇ・・・!!」
竜馬が怒りのあまり、顔を朱に染めた、その時。
? (リョウ・・・)
唐突に。
どこからか、彼を呼ぶ声が聞こえたのだ。
竜馬 「え・・・?」
どこか、聞き覚えのある、懐かしい男の声。
この空間にいるのは自分とキュウべぇだけだが、当然そのどちらの声でもない。
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「でもまぁ、呉キリカと志筑仁美は上手くやってくれたよ。おかげで確立された。これから僕は、この方法でどんどんエネルギーを回収できる。ノルマの達成も早まるというものだよ」
竜馬 「俺たちのゲッターをそんな事のために・・・」
キュウべぇ 「魔法少女による、エネルギーの永久機関さ。資質の高い魔法少女を探して回るより、よほど効率的だとは思わないかい?」
竜馬 「てめえっ、絶対に許せねぇ・・・!!」
竜馬が怒りのあまり、顔を朱に染めた、その時。
? (リョウ・・・)
唐突に。
どこからか、彼を呼ぶ声が聞こえたのだ。
竜馬 「え・・・?」
どこか、聞き覚えのある、懐かしい男の声。
この空間にいるのは自分とキュウべぇだけだが、当然そのどちらの声でもない。
748: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:34:10.52 ID:Wp6ot+820
? (リョウ)
今度は、先ほどよりさらに強く。
再び謎の声が、竜馬を呼んだ。
その声は、すぐ近くで聞こえたようでいて、裏腹にはるか遠くの、どこか他の世界から囁かれている様にも聞こえた。
耳からじゃない・・・
まるで頭の中に直接語りかけてくる様な、不思議な響きを持った声。
キュウべぇ 「・・・竜馬。君ではないよね、この声は・・・いったいどこから聞こえてくるのだろう?」
竜馬 「・・・お前にも聞こえているのか」
キュウべぇ 「これは空気を振動させて伝わってくる、いわゆる”声”とは別の物のようだね。むしろ僕や魔法少女が使う念話に近い・・・」
竜馬 「この声がどこから聞こえてくるか、分からねぇ、が・・・」
だが。
竜馬 「声の主には心当たりがある」
今度は、先ほどよりさらに強く。
再び謎の声が、竜馬を呼んだ。
その声は、すぐ近くで聞こえたようでいて、裏腹にはるか遠くの、どこか他の世界から囁かれている様にも聞こえた。
耳からじゃない・・・
まるで頭の中に直接語りかけてくる様な、不思議な響きを持った声。
キュウべぇ 「・・・竜馬。君ではないよね、この声は・・・いったいどこから聞こえてくるのだろう?」
竜馬 「・・・お前にも聞こえているのか」
キュウべぇ 「これは空気を振動させて伝わってくる、いわゆる”声”とは別の物のようだね。むしろ僕や魔法少女が使う念話に近い・・・」
竜馬 「この声がどこから聞こえてくるか、分からねぇ、が・・・」
だが。
竜馬 「声の主には心当たりがある」
749: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:35:54.28 ID:Wp6ot+820
以前。
ほむらは謎の声に導かれ、ゲッターを呼び出しパイロットとして認められた。
その声の主。ゲッターに宿る、その謎の人物こそが、今。
自分に語りかけてきてきているのだろう。
そして、その声の正体とは・・・
竜馬 「お前か・・・?」
? (リョウ)
竜馬 「お前なのか、隼人!!」
ほむらは謎の声に導かれ、ゲッターを呼び出しパイロットとして認められた。
その声の主。ゲッターに宿る、その謎の人物こそが、今。
自分に語りかけてきてきているのだろう。
そして、その声の正体とは・・・
竜馬 「お前か・・・?」
? (リョウ)
竜馬 「お前なのか、隼人!!」
750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:38:25.34 ID:Wp6ot+820
・・・
・・・
ジャガー号。
内部。
キリカ 「はぁはぁ・・・」
キリカは乱れた息を整えつつ、自分の武器を見つめていた。
爪に似た形状の得物。それには血がべっとりとこびり付いていた。
それは今、彼女が手にかけた二人の少女の生血。
キリカ 「・・・」
キリカの足元には、先ほどまで己の運命も知らず、コクピット内をもの珍しそうに眺めていた少女たちが倒れていた。
今はもう、何を見ることも語ることもできない。
キリカが、殺してしまったのだから。
・・・
ジャガー号。
内部。
キリカ 「はぁはぁ・・・」
キリカは乱れた息を整えつつ、自分の武器を見つめていた。
爪に似た形状の得物。それには血がべっとりとこびり付いていた。
それは今、彼女が手にかけた二人の少女の生血。
キリカ 「・・・」
キリカの足元には、先ほどまで己の運命も知らず、コクピット内をもの珍しそうに眺めていた少女たちが倒れていた。
今はもう、何を見ることも語ることもできない。
キリカが、殺してしまったのだから。
751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:40:51.34 ID:Wp6ot+820
キリカ 「う、うう・・・」
コクピット内に充満する血の臭いにむせながらも、彼女は死体からある物を回収する。
それは、魔法少女たちの生まれ変わりともいうべき、二個のグリーフシード。
キリカ 「やった・・・織莉子、やったよ!うまくいったよ・・・!」
その時、ジャガー号内のモニターに灯がともり、仁美の顔が映し出された。
仁美 「呉さん、首尾はどうですの?」
画面の中の仁美が、キリカとは対照的な澄ました顔で言った。
キリカ 「上々さ。ほら、これ」
仁美 「グリーグシード・・・ふふっ、これで実証されましたわね。織莉子さんが示された方法は、やはり正しかったのだと」
コクピット内に充満する血の臭いにむせながらも、彼女は死体からある物を回収する。
それは、魔法少女たちの生まれ変わりともいうべき、二個のグリーフシード。
キリカ 「やった・・・織莉子、やったよ!うまくいったよ・・・!」
その時、ジャガー号内のモニターに灯がともり、仁美の顔が映し出された。
仁美 「呉さん、首尾はどうですの?」
画面の中の仁美が、キリカとは対照的な澄ました顔で言った。
キリカ 「上々さ。ほら、これ」
仁美 「グリーグシード・・・ふふっ、これで実証されましたわね。織莉子さんが示された方法は、やはり正しかったのだと」
752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:41:53.34 ID:Wp6ot+820
キリカ 「・・・」
仁美 「どうかしました?」
キリカ 「いや・・・」
仁美 「変な人。まぁ、良いですわ。さて、次に考えなくてはならないのは、更なる効率化をいかに進めるか、ですわね」
キリカ 「どういうこと?」
仁美 「今回、得られたグリーフシードは4個。ですが、私とキリカさんは魔力維持のため、二つのグリーフシードを使っていますわ。結果、黒字となったのはたった二つのみ。これでは効率が悪い・・・」
キリカ 「え、と、言うことは・・・」
仁美 「一度に処理できる魔法少女の数を増やす必要がありますわね。とはいえ、魔女化する瞬間を狙って殺さなければならないのですから。いたずらに増やすだけでは、手が回らなくなってしまう」
キリカ 「処理って、あんた・・・」
仁美 「瞬時にして何人を屠れるか。私たちは知っておかなければなりませんわ」
キリカ 「・・・驚いたよ。虫も殺さないような顔をしておいて、ずいぶんとえげつない事を考えるんだね、仁美は」
仁美 「あら・・・」
モニターの中の仁美が、意外なものを見るように、目をまん丸く見開いた。
仁美 「もしかして、呉さん・・・罪悪感、お持ちですの?」
仁美 「どうかしました?」
キリカ 「いや・・・」
仁美 「変な人。まぁ、良いですわ。さて、次に考えなくてはならないのは、更なる効率化をいかに進めるか、ですわね」
キリカ 「どういうこと?」
仁美 「今回、得られたグリーフシードは4個。ですが、私とキリカさんは魔力維持のため、二つのグリーフシードを使っていますわ。結果、黒字となったのはたった二つのみ。これでは効率が悪い・・・」
キリカ 「え、と、言うことは・・・」
仁美 「一度に処理できる魔法少女の数を増やす必要がありますわね。とはいえ、魔女化する瞬間を狙って殺さなければならないのですから。いたずらに増やすだけでは、手が回らなくなってしまう」
キリカ 「処理って、あんた・・・」
仁美 「瞬時にして何人を屠れるか。私たちは知っておかなければなりませんわ」
キリカ 「・・・驚いたよ。虫も殺さないような顔をしておいて、ずいぶんとえげつない事を考えるんだね、仁美は」
仁美 「あら・・・」
モニターの中の仁美が、意外なものを見るように、目をまん丸く見開いた。
仁美 「もしかして、呉さん・・・罪悪感、お持ちですの?」
753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:44:29.53 ID:Wp6ot+820
キリカ 「そうじゃないよ。だけれど、私は今、自分と同じ魔法少女の命を摘み取ったんだ。仁美みたく平然としてられる気分でもないよ」
仁美 「意外と・・・肝がお小さいですこと」
キリカ 「なんだと!だったら仁美は、いま何も感じてないっていうのか!?」
仁美 「ええ、感じてませんわ。当然でしょ?」
キリカ 「なっ・・・」
仁美 「これくらいの事で動揺する程度であるなら、最初から魔法少女になどなっていませんわ。私は私の守るべきもののために願いを望み、代償として人であることを捨てたのです」
キリカ 「仁美、おまえ・・・」
仁美 「この期に及んで人間らしい感情なんて、紙に包んでゴミ箱にポポイ、ですわ」
キリカ 「・・・はっきりと、確信したよ」
仁美 「なにをですの?」
キリカ 「私、お前の事、大嫌いだ」
仁美 「奇遇ですわね。私も、あなたとは気が合わないと思っていましたのよ」
キリカ 「・・・」
仁美 「意外と・・・肝がお小さいですこと」
キリカ 「なんだと!だったら仁美は、いま何も感じてないっていうのか!?」
仁美 「ええ、感じてませんわ。当然でしょ?」
キリカ 「なっ・・・」
仁美 「これくらいの事で動揺する程度であるなら、最初から魔法少女になどなっていませんわ。私は私の守るべきもののために願いを望み、代償として人であることを捨てたのです」
キリカ 「仁美、おまえ・・・」
仁美 「この期に及んで人間らしい感情なんて、紙に包んでゴミ箱にポポイ、ですわ」
キリカ 「・・・はっきりと、確信したよ」
仁美 「なにをですの?」
キリカ 「私、お前の事、大嫌いだ」
仁美 「奇遇ですわね。私も、あなたとは気が合わないと思っていましたのよ」
キリカ 「・・・」
754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:46:59.65 ID:Wp6ot+820
仁美 「・・・何はともあれ、今回の結果を織莉子さんに伝えなければ。念話、飛ばしますわね」
キリカ 「・・・うん」
瞼を閉じ、念を集中し始める仁美。
だがすぐに、怪訝な顔で目を開く。
仁美 「え・・・」
キリカ 「どうかしたの?」
仁美 「おかしい。念話が、送れませんわ」
キリカ 「えっ・・・」
キリカ 「・・・うん」
瞼を閉じ、念を集中し始める仁美。
だがすぐに、怪訝な顔で目を開く。
仁美 「え・・・」
キリカ 「どうかしたの?」
仁美 「おかしい。念話が、送れませんわ」
キリカ 「えっ・・・」
755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:49:20.77 ID:Wp6ot+820
仁美 「もう一度、やってみます」
再び目を閉じ、集中する仁美。
だが、すぐに目を開き首を振る。
仁美 「だめ・・・」
キリカ 「どうして?だって私は、さっき織莉子と念話で話したばかりだ。よし、じゃあ私がもう一度やってみる」
だが、結果はキリカも同じだった。
確かに飛ばしたはずの念話が、なにか厚い壁にさえぎられて、跳ね返されてしまう。
そんな感覚だった。
それは、今までにない経験。
キリカ 「そんな馬鹿な、ありえない」
仁美 「仕方がありませんわね。原因の追及は後です。今はまず織莉子さんへの報告を優先しなければ。いったん外に降りましょう。じかに話せばいいのです」
キリカ 「そうだね・・・じゃあ、ハッチを開いて、と」
ハッチに手を伸ばし、扉開閉のスイッチを探す。
再び目を閉じ、集中する仁美。
だが、すぐに目を開き首を振る。
仁美 「だめ・・・」
キリカ 「どうして?だって私は、さっき織莉子と念話で話したばかりだ。よし、じゃあ私がもう一度やってみる」
だが、結果はキリカも同じだった。
確かに飛ばしたはずの念話が、なにか厚い壁にさえぎられて、跳ね返されてしまう。
そんな感覚だった。
それは、今までにない経験。
キリカ 「そんな馬鹿な、ありえない」
仁美 「仕方がありませんわね。原因の追及は後です。今はまず織莉子さんへの報告を優先しなければ。いったん外に降りましょう。じかに話せばいいのです」
キリカ 「そうだね・・・じゃあ、ハッチを開いて、と」
ハッチに手を伸ばし、扉開閉のスイッチを探す。
756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:51:51.78 ID:Wp6ot+820
だが・・・
キリカ 「あれ・・・」
キリカは愕然とする。
乗り込んだ時に確認し、確かにあったはずのスイッチが、まるで削ぎ落とされたかのように消え失せていたのだ。
キリカ 「ばかな・・・仁美!」
仁美 「呉さん、スイッチがありませんわ」
キリカ 「そっちも・・・?」
いったい何がどうなっているのか。
仁美 「・・・流君に聞いてみましょう。流君・・・流君っ!・・・え?」
キリカ 「仁美・・・?」
仁美 「イーグル号との通信が繋がりません、わ・・・」
キリカ 「!?」
キリカ 「あれ・・・」
キリカは愕然とする。
乗り込んだ時に確認し、確かにあったはずのスイッチが、まるで削ぎ落とされたかのように消え失せていたのだ。
キリカ 「ばかな・・・仁美!」
仁美 「呉さん、スイッチがありませんわ」
キリカ 「そっちも・・・?」
いったい何がどうなっているのか。
仁美 「・・・流君に聞いてみましょう。流君・・・流君っ!・・・え?」
キリカ 「仁美・・・?」
仁美 「イーグル号との通信が繋がりません、わ・・・」
キリカ 「!?」
757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 01:55:11.83 ID:Wp6ot+820
外との念話が遮られてしまう。
機外に出るためのスイッチが消えてしまった。
そして、ゲッターの事を熟知している竜馬との通信もできない。
仁美 「これは・・・」
めったなことでは動じない仁美の心に、焦りと戸惑いの波が押し寄せてきた。
仁美 「呉さん、私たち・・・」
キリカ 「ど、どうなってるんだよ、どんな状況だよ、これ・・・」
仁美 「閉じ込められてしまった・・・?」
機外に出るためのスイッチが消えてしまった。
そして、ゲッターの事を熟知している竜馬との通信もできない。
仁美 「これは・・・」
めったなことでは動じない仁美の心に、焦りと戸惑いの波が押し寄せてきた。
仁美 「呉さん、私たち・・・」
キリカ 「ど、どうなってるんだよ、どんな状況だよ、これ・・・」
仁美 「閉じ込められてしまった・・・?」
771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:26:24.67 ID:O+vq1ZcH0
・・・
・・・
ほむら (・・・?)
どうしたのだろう。
織莉子の顔に、焦りの色が浮かんでいる。
ゲッターの中で、何かがあったのだろうか。
先ほどからゲッター内にいる仁美たちへと念話を飛ばしているようなのだけれど・・・
ほむら (私に向けられていない念話では、何を話しているのか分からないわね)
かといって、私が念話を飛ばしたところで、あの二人が応えてくれるとも思えない。
今は大人しく、推移を見守る他はないようだわ。
・・・
ほむら (・・・?)
どうしたのだろう。
織莉子の顔に、焦りの色が浮かんでいる。
ゲッターの中で、何かがあったのだろうか。
先ほどからゲッター内にいる仁美たちへと念話を飛ばしているようなのだけれど・・・
ほむら (私に向けられていない念話では、何を話しているのか分からないわね)
かといって、私が念話を飛ばしたところで、あの二人が応えてくれるとも思えない。
今は大人しく、推移を見守る他はないようだわ。
772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:30:01.97 ID:O+vq1ZcH0
ほむら (に、しても・・・)
のしのしと動き回っていたゲッターも今は歩みを止め、不気味な静寂を結界内にもたらしていた。
ほむら (ゲッターが止まってから、もう数分。いくらなんでも動きが無さすぎる。中で何かが起こっているのかしら)
織莉子 「暁美さん・・・」
不意に織莉子が話しかけてきた。
どことなく心細そうな、頼りなげな声音。
まるで先程までの、泰然としていた彼女とは別人のようだ。
ほむら 「え・・・な、なに?」
織莉子 「あなた、中の流さんにコンタクトをとることはできる?」
のしのしと動き回っていたゲッターも今は歩みを止め、不気味な静寂を結界内にもたらしていた。
ほむら (ゲッターが止まってから、もう数分。いくらなんでも動きが無さすぎる。中で何かが起こっているのかしら)
織莉子 「暁美さん・・・」
不意に織莉子が話しかけてきた。
どことなく心細そうな、頼りなげな声音。
まるで先程までの、泰然としていた彼女とは別人のようだ。
ほむら 「え・・・な、なに?」
織莉子 「あなた、中の流さんにコンタクトをとることはできる?」
773: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:33:18.03 ID:O+vq1ZcH0
彼女の質問の意図を計りかね、私は首をかしげる。
ほむら 「え、無理よ、そんなの。私は通信機を持ってないし、リョウは魔法少女ではないから、念で話もできないもの」
織莉子 「そうよね・・・」
ほむら 「ていうか、なぜ私にそんなことを聞くの?中の様子が知りたいなら、仲間の二人に応えてもらえばいいじゃない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「・・・?」
そのまま織莉子は押し黙ってしまった。
やむを得ず、私も再び視線をゲッターに戻す。
・・・ふりをしながら、周囲の状況を再確認。
ほむら 「え、無理よ、そんなの。私は通信機を持ってないし、リョウは魔法少女ではないから、念で話もできないもの」
織莉子 「そうよね・・・」
ほむら 「ていうか、なぜ私にそんなことを聞くの?中の様子が知りたいなら、仲間の二人に応えてもらえばいいじゃない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「・・・?」
そのまま織莉子は押し黙ってしまった。
やむを得ず、私も再び視線をゲッターに戻す。
・・・ふりをしながら、周囲の状況を再確認。
774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:35:40.82 ID:O+vq1ZcH0
ほむら (マミに武器を突き付けている3人は、まったく隙がないわね。こちらが変な動きをしようものなら、瞬く間にマミのソウルジェムは砕かれてしまうに違いない・・・)
よく飼いならされているものだ。織莉子の統率力には感心する。
ゆまは不安げに武蔵の足にぴったりと抱き着いたまま、オロオロしている。幼い彼女の事だ、状況に対応できなくても仕方がない。
その、ゆまに頼られている武蔵も、最愛の妹を人質に取られては、どうにも動きが取れない。そんな無念さをにじませた表情でマミたちを注視している。
杏子 「・・・」
問題は杏子だ。
杏子のあの目・・・これまでの時間軸で、嫌というほど見てきた。
あの赤い目が不敵な輝きを灯す時。
あれは何かを企んでいる、そんな瞳だ。
ほむら (・・・今は、彼女が頼りかも)
きっと何か事が起これば、杏子はただちに何らかの行動を起こすだろう。
そこに、今のこの状況を切り抜けるチャンスが潜んでいるに違いない。
よく飼いならされているものだ。織莉子の統率力には感心する。
ゆまは不安げに武蔵の足にぴったりと抱き着いたまま、オロオロしている。幼い彼女の事だ、状況に対応できなくても仕方がない。
その、ゆまに頼られている武蔵も、最愛の妹を人質に取られては、どうにも動きが取れない。そんな無念さをにじませた表情でマミたちを注視している。
杏子 「・・・」
問題は杏子だ。
杏子のあの目・・・これまでの時間軸で、嫌というほど見てきた。
あの赤い目が不敵な輝きを灯す時。
あれは何かを企んでいる、そんな瞳だ。
ほむら (・・・今は、彼女が頼りかも)
きっと何か事が起これば、杏子はただちに何らかの行動を起こすだろう。
そこに、今のこの状況を切り抜けるチャンスが潜んでいるに違いない。
775: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:38:03.09 ID:O+vq1ZcH0
ほむら (問題は、その不測の事態が起こるのか否か・・・なのだけれど・・・)
今の織莉子の様子。ただ事ではない。
きっと中では何かが起こっている。そこに私たちが付け入るスキが生じるはずなのだ。
ほむら 「・・・あ」
その機会は、案外早く訪れたのかもしれない。
織莉子 「え、なに?」
ほむら 「ゲッターの足元のハッチが・・・」
そこは、ゲッターロボの各機コクピットと通じている、共通のハッチだった。
そこが今、唐突に開いたのだ。
今の織莉子の様子。ただ事ではない。
きっと中では何かが起こっている。そこに私たちが付け入るスキが生じるはずなのだ。
ほむら 「・・・あ」
その機会は、案外早く訪れたのかもしれない。
織莉子 「え、なに?」
ほむら 「ゲッターの足元のハッチが・・・」
そこは、ゲッターロボの各機コクピットと通じている、共通のハッチだった。
そこが今、唐突に開いたのだ。
776: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:40:12.63 ID:O+vq1ZcH0
そして・・・
竜馬 「・・・」
出てきたのは、竜馬ただ一人。
ほむら 「リョウ・・・」
織莉子 「え、どうしたと言うの。誰がゲッターから降りて良いと?」
竜馬 「・・・」
織莉子 「キリカと仁美さんは?答えなさい!」
竜馬 「・・・」
切りつけるような織莉子の叱責にも動じず、竜馬が無言で、地べたに何かを叩き付けた。
無様に地面を転がり、みじめな姿をさらしたモノは・・・
ほむら 「・・・っ!?」
・・・キュウべぇ?
竜馬 「・・・」
出てきたのは、竜馬ただ一人。
ほむら 「リョウ・・・」
織莉子 「え、どうしたと言うの。誰がゲッターから降りて良いと?」
竜馬 「・・・」
織莉子 「キリカと仁美さんは?答えなさい!」
竜馬 「・・・」
切りつけるような織莉子の叱責にも動じず、竜馬が無言で、地べたに何かを叩き付けた。
無様に地面を転がり、みじめな姿をさらしたモノは・・・
ほむら 「・・・っ!?」
・・・キュウべぇ?
777: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:43:44.97 ID:O+vq1ZcH0
織莉子 「な、どういうこと・・・きゅ、キュウべぇ・・・?」
しかし、問いかけられたキュウべぇは一言も発しないどころか、身じろぎ一つすることはなかった。
気を失っているのか、あるいは・・・
だけれど、そんな思索も織莉子の詰問の声の前では、かき消されてしまう。
織莉子 「キリカは!?」
悲鳴のような織莉子の声が、結界内に響く。
織莉子 「キリカはどうしたの?あなたが、何かをしたの!?」
竜馬 「俺は何もしていない」
言いながら、竜馬は織莉子と私の方へと歩み寄ってきた。
無言で一回。
静かに私にうなづいて見せると、竜馬は織莉子に向かって手を差し出した。
しかし、問いかけられたキュウべぇは一言も発しないどころか、身じろぎ一つすることはなかった。
気を失っているのか、あるいは・・・
だけれど、そんな思索も織莉子の詰問の声の前では、かき消されてしまう。
織莉子 「キリカは!?」
悲鳴のような織莉子の声が、結界内に響く。
織莉子 「キリカはどうしたの?あなたが、何かをしたの!?」
竜馬 「俺は何もしていない」
言いながら、竜馬は織莉子と私の方へと歩み寄ってきた。
無言で一回。
静かに私にうなづいて見せると、竜馬は織莉子に向かって手を差し出した。
778: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:45:12.91 ID:O+vq1ZcH0
織莉子 「・・・え?」
握られたままの拳。
何かを持っているようだ。
竜馬 「受け取れ」
織莉子 「なんだというの・・・」
警戒しながらも、空いた方の手を竜馬に差し出す織莉子。
その掌の上に、ポン、と。
竜馬が何かを置いた。
握られたままの拳。
何かを持っているようだ。
竜馬 「受け取れ」
織莉子 「なんだというの・・・」
警戒しながらも、空いた方の手を竜馬に差し出す織莉子。
その掌の上に、ポン、と。
竜馬が何かを置いた。
779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:47:15.42 ID:O+vq1ZcH0
織莉子 「これって・・・グリーフシード?」
竜馬 「呉キリカだ」
織莉子 「・・・っ!?」
ほむら 「なっ・・・?!」
驚愕の色を隠しもせず、手渡されたグリーフシードを織莉子は凝視していた。
そして、驚かされたのは私たちも同じ。
マミ 「ど、どうして・・・」
ゆま 「・・・あ・・・ぅ」
杏子 「・・・」
武蔵 「な、中で何があったってんだ!?おい、リョウ!」
だが、竜馬は浴びせられる問いかけには一切答えず、今度は私に向かって手を差し出す。
まさか、この流れは・・・
竜馬 「呉キリカだ」
織莉子 「・・・っ!?」
ほむら 「なっ・・・?!」
驚愕の色を隠しもせず、手渡されたグリーフシードを織莉子は凝視していた。
そして、驚かされたのは私たちも同じ。
マミ 「ど、どうして・・・」
ゆま 「・・・あ・・・ぅ」
杏子 「・・・」
武蔵 「な、中で何があったってんだ!?おい、リョウ!」
だが、竜馬は浴びせられる問いかけには一切答えず、今度は私に向かって手を差し出す。
まさか、この流れは・・・
780: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:49:29.73 ID:O+vq1ZcH0
ほむら 「も、もしかして・・・」
言いながら、私も空いた方の手をリョウに向ける。
その上に、織莉子としたのと同じように、彼は一つのグリーフシードを乗せた。
ほむら 「これって・・・」
竜馬 「志筑仁美だ・・・」
ほむら 「ーーーーーっ!」
予想はしていた。
だけれど、面と向かって放たれた竜馬の言葉に、私の心がついていけない。
仁美が・・・死んだ?
ほむら 「こ、これが・・・」
今、手のひらの上にある無機質で冷たい物体が。
つい先ほどまで言葉を交わしていた、学校では笑顔を交し合った志筑仁美だと竜馬は言うのだ。
信じられない。いや、信じたくなかった。
言いながら、私も空いた方の手をリョウに向ける。
その上に、織莉子としたのと同じように、彼は一つのグリーフシードを乗せた。
ほむら 「これって・・・」
竜馬 「志筑仁美だ・・・」
ほむら 「ーーーーーっ!」
予想はしていた。
だけれど、面と向かって放たれた竜馬の言葉に、私の心がついていけない。
仁美が・・・死んだ?
ほむら 「こ、これが・・・」
今、手のひらの上にある無機質で冷たい物体が。
つい先ほどまで言葉を交わしていた、学校では笑顔を交し合った志筑仁美だと竜馬は言うのだ。
信じられない。いや、信じたくなかった。
781: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:51:01.90 ID:O+vq1ZcH0
ほむら 「うっ・・・」
ゾクっと。
私の背筋を悪寒が走りぬける。
私たち魔法少女にとって、グリーフシードは同胞の死体にも等しい存在。
今、私の手の中には・・・
友達の死体が、すっぽりと収まっているのだ。
ほむら 「りょ、リョウ・・・聞かせて、いったい中で何が・・・」
竜馬 「・・・」
織莉子 「そうよ!言いなさい、流竜馬!」
織莉子が今までになく声を荒げた。
織莉子 「事と次第によっては、巴マミを殺すわ!」
ゾクっと。
私の背筋を悪寒が走りぬける。
私たち魔法少女にとって、グリーフシードは同胞の死体にも等しい存在。
今、私の手の中には・・・
友達の死体が、すっぽりと収まっているのだ。
ほむら 「りょ、リョウ・・・聞かせて、いったい中で何が・・・」
竜馬 「・・・」
織莉子 「そうよ!言いなさい、流竜馬!」
織莉子が今までになく声を荒げた。
織莉子 「事と次第によっては、巴マミを殺すわ!」
782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:52:39.81 ID:O+vq1ZcH0
だが・・・
マミを人質にとっている3人の魔法少女たちも、私たちほどではないにしろ、動揺に心を奪われていた。
A子 「え・・・え・・・キリカちゃんと仁美さんがグリーフシードになっちゃったって・・・」
B子 「どういうこと?グリーフシードって、魔女の卵じゃなかったの?」
C子 「ていうか、二人とも死んじゃったってこと・・・ちょっと・・・あのロボットってやばいんじゃないの・・・?」
こそこそと囁きあっている。
織莉子 「何をしゃべっているの、あなたたち!きちんと人質に集中していて!」
A子 「あ、う、うん。ごめん、織莉子ちゃん・・・」
織莉子は自分の取り巻きたちを厳しい口調で叱責すると、再び竜馬を睨み付けるように視線を戻した。
織莉子 「さぁ・・・」
竜馬 「分かってる。だが、俺だって混乱しているんだ。あまり、せかさないでくれ・・・」
竜馬にしては弱気な言葉を吐いたものの、それでも彼はポツリポツリと思い出すように語り始めた。
マミを人質にとっている3人の魔法少女たちも、私たちほどではないにしろ、動揺に心を奪われていた。
A子 「え・・・え・・・キリカちゃんと仁美さんがグリーフシードになっちゃったって・・・」
B子 「どういうこと?グリーフシードって、魔女の卵じゃなかったの?」
C子 「ていうか、二人とも死んじゃったってこと・・・ちょっと・・・あのロボットってやばいんじゃないの・・・?」
こそこそと囁きあっている。
織莉子 「何をしゃべっているの、あなたたち!きちんと人質に集中していて!」
A子 「あ、う、うん。ごめん、織莉子ちゃん・・・」
織莉子は自分の取り巻きたちを厳しい口調で叱責すると、再び竜馬を睨み付けるように視線を戻した。
織莉子 「さぁ・・・」
竜馬 「分かってる。だが、俺だって混乱しているんだ。あまり、せかさないでくれ・・・」
竜馬にしては弱気な言葉を吐いたものの、それでも彼はポツリポツリと思い出すように語り始めた。
783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/12(金) 01:53:52.42 ID:O+vq1ZcH0
竜馬 「どこから話すべきか・・・そうだな・・・」
ほむら 「・・・」
私も今は。
黙って竜馬の話に耳を傾けるほか、なすべき事が無かった。
掌の中のグリーフシード。
これが本当に仁美なのか。そうであるなら、どうしてこのような姿に成り果ててしまったのか。
私は・・・友達として知らなければならないから。
杏子 「・・・」
ほむら 「・・・」
私も今は。
黙って竜馬の話に耳を傾けるほか、なすべき事が無かった。
掌の中のグリーフシード。
これが本当に仁美なのか。そうであるなら、どうしてこのような姿に成り果ててしまったのか。
私は・・・友達として知らなければならないから。
杏子 「・・・」
795: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:15:53.09 ID:1s2X/w+60
・・・
・・・
竜馬は不可思議な空間にいた。
身体はイーグル号のコクピットに座って、モニターで仁美たちの様子を見ている。
それは間違いがない。
だが、意識はもっと別のところにいた。
高い所から、全てを見下ろしているような・・・
まるで魂だけが体を抜け出し、ふわふわと浮かんでいるような胡乱な感覚。
竜馬 「こ、これは・・・」
形容しがたい状況に置かれ、竜馬の心に不安の波が押し寄せてくる。
いったい、何が起こっているのか。
・・・
竜馬は不可思議な空間にいた。
身体はイーグル号のコクピットに座って、モニターで仁美たちの様子を見ている。
それは間違いがない。
だが、意識はもっと別のところにいた。
高い所から、全てを見下ろしているような・・・
まるで魂だけが体を抜け出し、ふわふわと浮かんでいるような胡乱な感覚。
竜馬 「こ、これは・・・」
形容しがたい状況に置かれ、竜馬の心に不安の波が押し寄せてくる。
いったい、何が起こっているのか。
796: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:17:26.61 ID:1s2X/w+60
? (リョウ・・・心を静かに保て)
謎の声が、再び竜馬に語りかけてきた。
だが、先程までとは違って、今度の声は竜馬のすぐ前から。
普通に会話を持ちかけられたように、ごく自然に聞こえてきた。
竜馬 「あ・・・」
竜馬がそちらへと視線を向ける。
そこには・・・
? 「リョウ」
懐かしい友の姿が・・・
竜馬 「あ、ああ・・・」
自分と相対するように浮かんでいたのだ。
謎の声が、再び竜馬に語りかけてきた。
だが、先程までとは違って、今度の声は竜馬のすぐ前から。
普通に会話を持ちかけられたように、ごく自然に聞こえてきた。
竜馬 「あ・・・」
竜馬がそちらへと視線を向ける。
そこには・・・
? 「リョウ」
懐かしい友の姿が・・・
竜馬 「あ、ああ・・・」
自分と相対するように浮かんでいたのだ。
797: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:20:00.54 ID:1s2X/w+60
竜馬 「は、隼人!」
そう、そこにいたのは。
自分と共にゲッターに命をささげ、そして散って逝ったかけがえの無い友。
神 隼人。その人であったのだ。
竜馬 「やはりお前だったのか・・・隼人」
隼人 「この姿で会うのは、久しぶりだな。リョウよ」
竜馬 「・・・この姿、で?」
隼人 「俺はずっとお前と共にいたよ。ここで、この場所から、常にお前と共にあった」
竜馬 「この中って・・・お前は死んだ後も、ゲッターの中にずっといたと言うのか?」
隼人 「俺は死んではいないさ」
竜馬 「・・・死んだろう?俺はお前の最期を看取ったんだ。お前は死んだ。俺の腕の中で、確かに・・・眠るように・・・」
そう、そこにいたのは。
自分と共にゲッターに命をささげ、そして散って逝ったかけがえの無い友。
神 隼人。その人であったのだ。
竜馬 「やはりお前だったのか・・・隼人」
隼人 「この姿で会うのは、久しぶりだな。リョウよ」
竜馬 「・・・この姿、で?」
隼人 「俺はずっとお前と共にいたよ。ここで、この場所から、常にお前と共にあった」
竜馬 「この中って・・・お前は死んだ後も、ゲッターの中にずっといたと言うのか?」
隼人 「俺は死んではいないさ」
竜馬 「・・・死んだろう?俺はお前の最期を看取ったんだ。お前は死んだ。俺の腕の中で、確かに・・・眠るように・・・」
798: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:22:13.93 ID:1s2X/w+60
隼人 「リョウ・・・目に見える事象が世界の全てではない。その事を心に深く刻んでおくんだ」
竜馬 「・・・お前、本当に隼人、なのか?」
隼人 「そうでもあるし、違うとも言える」
竜馬 「・・・わからねぇよ」
隼人 「リョウ、個は全で、全は個だ。今の俺の姿も、お前に馴染みのふかい姿を取っているに過ぎない」
竜馬 「隼人・・・」
キュウべぇ 「禅問答は、後にしてくれないかな」
不意に竜馬の肩に乗っていたキュウべぇが、二人の会話に割り込んできた。
竜馬 「・・・お前、本当に隼人、なのか?」
隼人 「そうでもあるし、違うとも言える」
竜馬 「・・・わからねぇよ」
隼人 「リョウ、個は全で、全は個だ。今の俺の姿も、お前に馴染みのふかい姿を取っているに過ぎない」
竜馬 「隼人・・・」
キュウべぇ 「禅問答は、後にしてくれないかな」
不意に竜馬の肩に乗っていたキュウべぇが、二人の会話に割り込んできた。
799: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:26:06.83 ID:1s2X/w+60
竜馬 「お前も、ここに来ていたのか」
キュウべぇ 「込み入って話していたようなので、黙っていたけれどね。それにしても・・・」
キュウべぇがキョロキョロと辺りを見回す。
キュウべぇ 「ここは不思議な場所だね。いや、場所と言える物ではないのかな。僕たちの精神だけが、特殊な空間に飛ばされているとでも言うべきか」
竜馬 「分かるのか?」
キュウべぇ 「状況から予測しているに過ぎないけれどね。僕もこのような”場所”にくるのは初めてだ」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「ねぇ、君はいったい誰なんだい?こんな芸当ができる者が、僕たちや魔法少女のほかにもいるなんて驚きなんだけれど」
隼人 「さえずるなよ、インキュベーター」
竜馬 「いんきゅ・・・なんだって?」
キュウべぇ 「・・・僕の正式な名前さ。それを言い当てるとは、神隼人といったかい?君は、今を生きている人間ではないね」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「込み入って話していたようなので、黙っていたけれどね。それにしても・・・」
キュウべぇがキョロキョロと辺りを見回す。
キュウべぇ 「ここは不思議な場所だね。いや、場所と言える物ではないのかな。僕たちの精神だけが、特殊な空間に飛ばされているとでも言うべきか」
竜馬 「分かるのか?」
キュウべぇ 「状況から予測しているに過ぎないけれどね。僕もこのような”場所”にくるのは初めてだ」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「ねぇ、君はいったい誰なんだい?こんな芸当ができる者が、僕たちや魔法少女のほかにもいるなんて驚きなんだけれど」
隼人 「さえずるなよ、インキュベーター」
竜馬 「いんきゅ・・・なんだって?」
キュウべぇ 「・・・僕の正式な名前さ。それを言い当てるとは、神隼人といったかい?君は、今を生きている人間ではないね」
隼人 「・・・」
800: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:30:02.03 ID:1s2X/w+60
キュウべぇ 「僕の予想だと、君はこのロボットに取り憑いている残存思念の類じゃないかと思うのだけれど、当たるとも遠からずじゃないかな」
隼人 「・・・お前の浅い知恵と乏しい経験則で、俺の何を図るつもりだ」
キュウべぇ 「悠久の歴史を紡いできた僕の経験を、乏しいと言い捨てるとはね」
隼人 「お前の企み、しかと聞いたぜ。さすが、進化の枠組みから自ら抜け出した連中の考えそうなことだ。底がな、あまりに浅いんだよ」
キュウべぇ 「進化から抜け出した・・・?僕たちが?いったい何のことだい・・・?」
隼人 「おこがましいんだよ、貴様。ゲッターを思い通りに扱えるとは、思い上がりも甚だしい」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「待てよ。じゃあやはり、お前が呉キリカと志筑仁美を外部から遮断しているのか。いったい、何のために・・・」
隼人 「インキュベーターの薄汚い企てに乗った連中には、ふさわしい報いを受けてもらう」
竜馬 「なに、それってどういう意味だ・・・?」
隼人 「それが進化の流れの反逆者に加担した者の末路だ」
隼人 「・・・お前の浅い知恵と乏しい経験則で、俺の何を図るつもりだ」
キュウべぇ 「悠久の歴史を紡いできた僕の経験を、乏しいと言い捨てるとはね」
隼人 「お前の企み、しかと聞いたぜ。さすが、進化の枠組みから自ら抜け出した連中の考えそうなことだ。底がな、あまりに浅いんだよ」
キュウべぇ 「進化から抜け出した・・・?僕たちが?いったい何のことだい・・・?」
隼人 「おこがましいんだよ、貴様。ゲッターを思い通りに扱えるとは、思い上がりも甚だしい」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「待てよ。じゃあやはり、お前が呉キリカと志筑仁美を外部から遮断しているのか。いったい、何のために・・・」
隼人 「インキュベーターの薄汚い企てに乗った連中には、ふさわしい報いを受けてもらう」
竜馬 「なに、それってどういう意味だ・・・?」
隼人 「それが進化の流れの反逆者に加担した者の末路だ」
801: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:31:22.92 ID:1s2X/w+60
竜馬 「ま、待て!あいつらをどうするつもりだ!」
思わず隼人に詰め寄ろうとする竜馬。
だが、すぐ近くにいるはずの隼人なのに、なぜか竜馬には指先一つの距離さえ縮める事が出来ない。
竜馬 「は、隼人・・・!」
隼人に向かって伸ばした腕も、むなしく虚空を掴むのみ。
竜馬 「・・・っ」
もはや竜馬には、目の前の隼人を見つめる以外になす術がなかった。
思わず隼人に詰め寄ろうとする竜馬。
だが、すぐ近くにいるはずの隼人なのに、なぜか竜馬には指先一つの距離さえ縮める事が出来ない。
竜馬 「は、隼人・・・!」
隼人に向かって伸ばした腕も、むなしく虚空を掴むのみ。
竜馬 「・・・っ」
もはや竜馬には、目の前の隼人を見つめる以外になす術がなかった。
802: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:34:11.95 ID:1s2X/w+60
・・・
・・・
ベアー号内
仁美 「あ、ああああっ!!」
それは突然だった。
ゲッターが魔力を吸い上げる量が、急激に増加したのだ。
現在ゲッターは動きを止めている。過度なエネルギーの吸収は行われないはずだというのに。
なのに現実として、仁美のソウルジェムは瞬く間に輝きを吸い取られて行っている。
仁美 「これは一体、何が起こっているんですの!?」
だが、その問いに応える者はいない。
代わりにスピーカーから漏れ聞こえてくるのは、キリカの切なげな呻き声のみだった。
仁美 (ジャガー号でも、同じことが起こっている!?)
・・・
ベアー号内
仁美 「あ、ああああっ!!」
それは突然だった。
ゲッターが魔力を吸い上げる量が、急激に増加したのだ。
現在ゲッターは動きを止めている。過度なエネルギーの吸収は行われないはずだというのに。
なのに現実として、仁美のソウルジェムは瞬く間に輝きを吸い取られて行っている。
仁美 「これは一体、何が起こっているんですの!?」
だが、その問いに応える者はいない。
代わりにスピーカーから漏れ聞こえてくるのは、キリカの切なげな呻き声のみだった。
仁美 (ジャガー号でも、同じことが起こっている!?)
803: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:37:26.73 ID:1s2X/w+60
ともかく、今は現状をどうにか切り抜けなければならない。
このままでは数分を待たず、自分は魔力を吸い尽くされ魔女化してしまう。
仁美は先ほど回収したばかりのグリーフシードを懐から取り出し、魔力を吸収しようとした。
仁美 (大切なグリーフシードだけれど、背に腹は代えられませんわ!)
しかし・・・
仁美 「えっ・・・!?」
仁美は愕然とした。
先ほど誕生したばかりのグリーフシード。魔力は満タンのはずだったのに。
仁美 「二つとも・・・魔力が・・・からっぽっ!?」
このままでは数分を待たず、自分は魔力を吸い尽くされ魔女化してしまう。
仁美は先ほど回収したばかりのグリーフシードを懐から取り出し、魔力を吸収しようとした。
仁美 (大切なグリーフシードだけれど、背に腹は代えられませんわ!)
しかし・・・
仁美 「えっ・・・!?」
仁美は愕然とした。
先ほど誕生したばかりのグリーフシード。魔力は満タンのはずだったのに。
仁美 「二つとも・・・魔力が・・・からっぽっ!?」
804: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:40:16.27 ID:1s2X/w+60
ありえない事態に、仁美が息をのむ。
どうして・・・と考えて、思いつく可能性は一つだけ。
仁美 「まさか、ゲッターがグリーフシードのエネルギーを、じかに吸収してしまった!?」
そんなことが起こり得るのか?だけれど、可能性としては、それしか考えられなかった。
しかし、それでは。
外へ出るどころか、連絡の手段すら奪われた自分の行く末は窮まってしまったという事になる。
仁美は絶望に身を震わせた。
それはこのまま、このコクピットで魔女となるのを待つ他ないという現実。
突き付けられたのは、目前に迫った”死”。
どうして・・・と考えて、思いつく可能性は一つだけ。
仁美 「まさか、ゲッターがグリーフシードのエネルギーを、じかに吸収してしまった!?」
そんなことが起こり得るのか?だけれど、可能性としては、それしか考えられなかった。
しかし、それでは。
外へ出るどころか、連絡の手段すら奪われた自分の行く末は窮まってしまったという事になる。
仁美は絶望に身を震わせた。
それはこのまま、このコクピットで魔女となるのを待つ他ないという現実。
突き付けられたのは、目前に迫った”死”。
805: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:42:00.50 ID:1s2X/w+60
仁美 「ま、まだ・・・まだ死ねない」
死は覚悟していた。
いずれ訪れるであろう自分の運命も受け入れていた。
だけれど、それは今ではない。
彼女にはまだ、遣り残している事があるのだ。
仁美 「さ、さやかさん・・・」
仁美は恋敵でもある一番の親友の名を呼びながら、開かないハッチを幾度も叩いた。
しかし、鉄の扉は無情にも、冷たい沈黙を守ったままで、びくとも動かない。
仁美 「上条君・・・」
愛おしい男性の名を呼びながら、目の前のコンソールをまさぐる。
この現状から脱する手がかりを求めて。
だが、彼女の希望に沿うようなものは、まったく見出す事が出来なかった。
死は覚悟していた。
いずれ訪れるであろう自分の運命も受け入れていた。
だけれど、それは今ではない。
彼女にはまだ、遣り残している事があるのだ。
仁美 「さ、さやかさん・・・」
仁美は恋敵でもある一番の親友の名を呼びながら、開かないハッチを幾度も叩いた。
しかし、鉄の扉は無情にも、冷たい沈黙を守ったままで、びくとも動かない。
仁美 「上条君・・・」
愛おしい男性の名を呼びながら、目の前のコンソールをまさぐる。
この現状から脱する手がかりを求めて。
だが、彼女の希望に沿うようなものは、まったく見出す事が出来なかった。
806: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:43:18.90 ID:1s2X/w+60
仁美 「あ、ああ・・・」
そうしている間にも、仁美のソウルジェムの輝きは、刻一刻と失われつつあった。
仁美 「まだ、なにも・・・何もなし得ていませんわ」
藁にもすがろうと、仁美の手が虚空を掴む。
仁美 「上条君へのお別れも、さやかさんに上条君を託す一言も、私はまだ言っていない・・・」
その手の動きも、だんだんと緩慢になってくる。
吸われ続ける魔翌力とともに、仁美の思考も徐々に明瞭さを失っていった。
仁美 「上条君・・・」
そうしている間にも、仁美のソウルジェムの輝きは、刻一刻と失われつつあった。
仁美 「まだ、なにも・・・何もなし得ていませんわ」
藁にもすがろうと、仁美の手が虚空を掴む。
仁美 「上条君へのお別れも、さやかさんに上条君を託す一言も、私はまだ言っていない・・・」
その手の動きも、だんだんと緩慢になってくる。
吸われ続ける魔翌力とともに、仁美の思考も徐々に明瞭さを失っていった。
仁美 「上条君・・・」
807: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:50:10.61 ID:1s2X/w+60
・・・
・・・
竜馬 「隼人、やめろ!」
竜馬には、この瞬間にゲッター内で起こっている事が、モニターを通さずとも全てが見えていた。
感覚が、全てを掴みとる。
目に見えないはずの、仁美やキリカの心情ですらも、文章化されたように心の中へと流れ込んでくるようだ。
心が痛かった。二人が感じている絶望や恐怖が、我が事のように竜馬の心を締め付ける。
竜馬 「魔法少女は魔力が尽きると、魔女となってしまうんだ!このままでは、志筑と呉は魔女となってしまう!」
キュウべぇ 「しかも、今度は先ほど殺された子たちと違い、魔女化を食い止める者はいない。ゲッターの中に二つも、魔女の結界が誕生してしまう事になるね」
竜馬 「冗談じゃない!隼人、あいつらを追い詰めているのがお前なら、すぐにやめてくれ!」
隼人 「すべての存在には分際というものがある。それを弁えなかった者には、相応の報いがあって当然だろう」
竜馬 「だが、それでは・・・」
隼人 「リョウ、彼女たちは魔女にはならない」
竜馬 「・・・え?」
・・・
竜馬 「隼人、やめろ!」
竜馬には、この瞬間にゲッター内で起こっている事が、モニターを通さずとも全てが見えていた。
感覚が、全てを掴みとる。
目に見えないはずの、仁美やキリカの心情ですらも、文章化されたように心の中へと流れ込んでくるようだ。
心が痛かった。二人が感じている絶望や恐怖が、我が事のように竜馬の心を締め付ける。
竜馬 「魔法少女は魔力が尽きると、魔女となってしまうんだ!このままでは、志筑と呉は魔女となってしまう!」
キュウべぇ 「しかも、今度は先ほど殺された子たちと違い、魔女化を食い止める者はいない。ゲッターの中に二つも、魔女の結界が誕生してしまう事になるね」
竜馬 「冗談じゃない!隼人、あいつらを追い詰めているのがお前なら、すぐにやめてくれ!」
隼人 「すべての存在には分際というものがある。それを弁えなかった者には、相応の報いがあって当然だろう」
竜馬 「だが、それでは・・・」
隼人 「リョウ、彼女たちは魔女にはならない」
竜馬 「・・・え?」
808: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/18(木) 01:51:37.55 ID:1s2X/w+60
隼人 「なぜなら、彼女たちは絶望しないからだ」
竜馬 「それって・・・どういう意味だ?」
キュウべぇ 「ばかな、ありえないよ」
隼人 「見ていればわかる」
それきり。
隼人は竜馬が何を話しかけても、再び口を開こうとはしなかった。
ただ黙って、事の成り行きを見守れと言うように、不思議な深みのある目で竜馬を見つめるのみ。
竜馬 「・・・隼人」
竜馬も今は。
隼人に従って、事の推移を見守る以外に為すべき術は残されていなかった。
竜馬 「それって・・・どういう意味だ?」
キュウべぇ 「ばかな、ありえないよ」
隼人 「見ていればわかる」
それきり。
隼人は竜馬が何を話しかけても、再び口を開こうとはしなかった。
ただ黙って、事の成り行きを見守れと言うように、不思議な深みのある目で竜馬を見つめるのみ。
竜馬 「・・・隼人」
竜馬も今は。
隼人に従って、事の推移を見守る以外に為すべき術は残されていなかった。
823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:28:55.59 ID:Tnexwrnf0
・・・
・・・
キリカ 「織莉子・・・」
もはやつぶやく程度の力しか残されていない。
何が起こったのかは分からない。が、これから先。自分がどうなるかは、呉キリカにも分かっていた。
キリカ 「報い、なのかな・・・」
視線を移すと、そこには二人の少女が横たわっていた。
さきほど自分が手にかけた、今は物言わぬ二つの骸。
キリカ 「・・・君たちにだって、やりたい事はたくさんあったはずだよね。だから願いをかなえて魔法少女になったのだもの。だけれど、私がその望みを、全て摘み取ってしまった」
そのこと自体に、悔いはない。自分が最も大切に思っている、織莉子の願いを叶えるためだったのだから。
そして、それこそが、自分の願いでもあったのだから。
だけれど・・・
・・・
キリカ 「織莉子・・・」
もはやつぶやく程度の力しか残されていない。
何が起こったのかは分からない。が、これから先。自分がどうなるかは、呉キリカにも分かっていた。
キリカ 「報い、なのかな・・・」
視線を移すと、そこには二人の少女が横たわっていた。
さきほど自分が手にかけた、今は物言わぬ二つの骸。
キリカ 「・・・君たちにだって、やりたい事はたくさんあったはずだよね。だから願いをかなえて魔法少女になったのだもの。だけれど、私がその望みを、全て摘み取ってしまった」
そのこと自体に、悔いはない。自分が最も大切に思っている、織莉子の願いを叶えるためだったのだから。
そして、それこそが、自分の願いでもあったのだから。
だけれど・・・
824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:30:35.70 ID:Tnexwrnf0
キリカ 「人の願いを潰しておいて、自分だけ悲願を達成するなんて、虫のいい話があるはずなんてないか」
キリカは自嘲を込めて笑った。
キリカ 「ふふ、だったら良いよ。私も君たちの所に行く。だから・・・」
織莉子が願いを叶えることだけは、許してあげて欲しい。
それだけを切に思った。
そうしておいて、あとは流れに身をゆだねるつもりで、そっと目を閉じる。
黙っていれば、長くてもあと数分で魔力が底をついてしまうだろう。
それは、呉キリカとしての生の終焉を意味する。
キリカ 「織莉子・・・」
目を閉じれば、瞼に浮かぶのは愛おしい彼女の顔ばかりだった。
キリカは自嘲を込めて笑った。
キリカ 「ふふ、だったら良いよ。私も君たちの所に行く。だから・・・」
織莉子が願いを叶えることだけは、許してあげて欲しい。
それだけを切に思った。
そうしておいて、あとは流れに身をゆだねるつもりで、そっと目を閉じる。
黙っていれば、長くてもあと数分で魔力が底をついてしまうだろう。
それは、呉キリカとしての生の終焉を意味する。
キリカ 「織莉子・・・」
目を閉じれば、瞼に浮かぶのは愛おしい彼女の顔ばかりだった。
825: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:32:45.49 ID:Tnexwrnf0
自分がいなくなった後、織莉子はどうなるのだろう。
彼女は自分を欠いて、それでも願いを叶えることができるのだろうか。
キリカ 「織莉子、織莉子・・・」
キリカの心に、不安と孤独感が激流となって押し寄せてきた。
織莉子をおいて死ぬことの恐怖。
二度と織莉子と会えないことへの恐怖。
二つの恐怖がないまぜとなって、キリカの心を不安の色で染め上げようとする。
キリカ 「・・・っ!!」
間もなく恐怖は最大の絶望となって、わが身と心を覆ってしまうだろう。
そうなってしまう前に・・・
キリカ 「終わらせなきゃ・・・!」
彼女は自分を欠いて、それでも願いを叶えることができるのだろうか。
キリカ 「織莉子、織莉子・・・」
キリカの心に、不安と孤独感が激流となって押し寄せてきた。
織莉子をおいて死ぬことの恐怖。
二度と織莉子と会えないことへの恐怖。
二つの恐怖がないまぜとなって、キリカの心を不安の色で染め上げようとする。
キリカ 「・・・っ!!」
間もなく恐怖は最大の絶望となって、わが身と心を覆ってしまうだろう。
そうなってしまう前に・・・
キリカ 「終わらせなきゃ・・・!」
826: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:35:01.99 ID:Tnexwrnf0
織莉子の願いを繋ぐゲッターの中で、自分が魔女の結界を発生させてしまうなんて事態は、なんとしても避けなければならない。
だから。
自分自身の手で、呉キリカの人生に終止符を打たなければならない。
キリカ 「よし・・・し、死ぬぞ!」
キリカは最後の力を振り絞り、己の武器の切っ先を自分のソウルジェムへと向けた。
一撃を振り下ろせば、虫ほどの力しか残されていないキリカでも、たやすく死ねるはずだ。
キリカ 「織莉子の願いを妨げない。そのためなら、死ぬ程度の事、どうってことない・・・っ!!」
覚悟を定め、キリカは武器を振り下ろした。
だが・・・
その切っ先がソウルジェムに届くことはなかった。
なぜなら・・・
キリカ 「え・・・!?」
・・・武器を手にした腕を、何者かにそっと握られたから。
だから。
自分自身の手で、呉キリカの人生に終止符を打たなければならない。
キリカ 「よし・・・し、死ぬぞ!」
キリカは最後の力を振り絞り、己の武器の切っ先を自分のソウルジェムへと向けた。
一撃を振り下ろせば、虫ほどの力しか残されていないキリカでも、たやすく死ねるはずだ。
キリカ 「織莉子の願いを妨げない。そのためなら、死ぬ程度の事、どうってことない・・・っ!!」
覚悟を定め、キリカは武器を振り下ろした。
だが・・・
その切っ先がソウルジェムに届くことはなかった。
なぜなら・・・
キリカ 「え・・・!?」
・・・武器を手にした腕を、何者かにそっと握られたから。
827: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:36:44.31 ID:Tnexwrnf0
キリカ 「だ、だれ・・・!?」
自分しか、動く者のいないはずのコクピット。
それなのに、キリカの自害を押しとどめた者がいる。
驚きつつも、キリカは力の入らない首を必死に巡らした。
その何者かがいる方へと。
そして見た姿に、キリカはさらに驚愕させられる。
キリカ 「な、なんで君たちが・・・」
キリカは、やっとの思いでそう一言。
そう問いかけるだけで精いっぱいだった。
なぜなら、そこにいた者は・・・
先ほど自分が手にかけたはずの。
いや・・・
現に今も、コクピットの床に、冷たくなった体を横たえているはずの、F子とG子の姿だったからだ。
自分しか、動く者のいないはずのコクピット。
それなのに、キリカの自害を押しとどめた者がいる。
驚きつつも、キリカは力の入らない首を必死に巡らした。
その何者かがいる方へと。
そして見た姿に、キリカはさらに驚愕させられる。
キリカ 「な、なんで君たちが・・・」
キリカは、やっとの思いでそう一言。
そう問いかけるだけで精いっぱいだった。
なぜなら、そこにいた者は・・・
先ほど自分が手にかけたはずの。
いや・・・
現に今も、コクピットの床に、冷たくなった体を横たえているはずの、F子とG子の姿だったからだ。
828: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:39:58.57 ID:Tnexwrnf0
・・・
・・・
ベアー号の中でも、同様の事が起こっていた。
仁美が手にかけた少女が二人、生前と同様の姿で現れ、そして今。
仁美の傍らに立って、静かに彼女を見下ろしているのだ。
仁美 「私を・・・迎えに来たんですの?」
仁美 「恨んでいるでしょうね。憎んでおいででしょう。今や瀕死の私に、とどめを刺しに参ったのですね・・・」
仁美 「・・・」
仁美 「え、違う・・・?でも、だって・・・」
仁美 「憎んでない・・・?どうして・・・だって私は、あなたたちを騙して、殺してしまったのですよ?」
仁美 「・・・」
仁美 「なるべくして、なるようになった・・・そうおっしゃるの?え、それは私も・・・?」
・・・
ベアー号の中でも、同様の事が起こっていた。
仁美が手にかけた少女が二人、生前と同様の姿で現れ、そして今。
仁美の傍らに立って、静かに彼女を見下ろしているのだ。
仁美 「私を・・・迎えに来たんですの?」
仁美 「恨んでいるでしょうね。憎んでおいででしょう。今や瀕死の私に、とどめを刺しに参ったのですね・・・」
仁美 「・・・」
仁美 「え、違う・・・?でも、だって・・・」
仁美 「憎んでない・・・?どうして・・・だって私は、あなたたちを騙して、殺してしまったのですよ?」
仁美 「・・・」
仁美 「なるべくして、なるようになった・・・そうおっしゃるの?え、それは私も・・・?」
829: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:42:22.57 ID:Tnexwrnf0
仁美 「あなた達と一つになる?でも、私はまだ、遣り残したことが・・・」
仁美 「え・・・遣り残したことも、今の現状も、全ては定められていた事?それって・・・」
仁美 「・・・あなたたちの死も、ですの?」
仁美 「・・・」
仁美 「そう、そういう事でしたか。ああ、私にも見えてきましたわ・・・」
仁美 「ゲッターが私に流れ込んでくる・・・いいえ、私と交わる。一つになる・・・」
仁美 「あなたたちとも、いずれは上条君やさやかさんとも・・・」
D子とE子がそっと。
仁美に向かって、手を差し伸べる。
瞳もそれに応え、二人の手を静かに取った。
仁美 「ともに・・・」
受け入れの言葉とともに。
仁美 「え・・・遣り残したことも、今の現状も、全ては定められていた事?それって・・・」
仁美 「・・・あなたたちの死も、ですの?」
仁美 「・・・」
仁美 「そう、そういう事でしたか。ああ、私にも見えてきましたわ・・・」
仁美 「ゲッターが私に流れ込んでくる・・・いいえ、私と交わる。一つになる・・・」
仁美 「あなたたちとも、いずれは上条君やさやかさんとも・・・」
D子とE子がそっと。
仁美に向かって、手を差し伸べる。
瞳もそれに応え、二人の手を静かに取った。
仁美 「ともに・・・」
受け入れの言葉とともに。
830: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:45:50.23 ID:Tnexwrnf0
・・・
・・・
竜馬 「志筑・・・呉・・・」
キュウべぇ 「まさか死んだ人間が、揃いも揃って姿を現すとはね」
竜馬 「どういうカラクリなんだよ・・・」
隼人 「あれは、俺と同じ存在だ」
竜馬 「キュウべぇの言っていた、残存思念とか言うやつなの、か・・・」
隼人 「志筑仁美が濁りはじめたソウルジェムを浄化しようとした時の事を思い出せ」
竜馬 「・・・え?」
キュウべぇ 「満タンであって然るべき、新しいグリーフシードの魔力がカラだったよね」
竜馬 「志筑はグリーフシードから、直にゲッターが魔力を吸い取ったと考えたようだが・・・」
隼人 「そうじゃない。あれは、元から空っぽだったのさ」
キュウべぇ 「・・・意味が分からないよ。そんな事があるはずがない」
隼人 「だから言ったのさ。浅はかな存在のてめぇ如きに、ゲッターは理解できないとな」
キュウべぇ 「・・・」
・・・
竜馬 「志筑・・・呉・・・」
キュウべぇ 「まさか死んだ人間が、揃いも揃って姿を現すとはね」
竜馬 「どういうカラクリなんだよ・・・」
隼人 「あれは、俺と同じ存在だ」
竜馬 「キュウべぇの言っていた、残存思念とか言うやつなの、か・・・」
隼人 「志筑仁美が濁りはじめたソウルジェムを浄化しようとした時の事を思い出せ」
竜馬 「・・・え?」
キュウべぇ 「満タンであって然るべき、新しいグリーフシードの魔力がカラだったよね」
竜馬 「志筑はグリーフシードから、直にゲッターが魔力を吸い取ったと考えたようだが・・・」
隼人 「そうじゃない。あれは、元から空っぽだったのさ」
キュウべぇ 「・・・意味が分からないよ。そんな事があるはずがない」
隼人 「だから言ったのさ。浅はかな存在のてめぇ如きに、ゲッターは理解できないとな」
キュウべぇ 「・・・」
831: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:48:29.11 ID:Tnexwrnf0
竜馬 「待てよ。じゃあ、元から空だったというなら、その中身はどこに行っちまったんだ。それにそれと、今の出来事のどこに関わり合いが・・・」
疑問を言いかけた竜馬が、はっとして口をつぐんだ。
キュウべぇ 「・・・竜馬?」
竜馬 「隼人・・・あの二人、お前と同じ存在だと言ったな」
隼人 「ああ」
竜馬 「確かに死んだはずのお前が、今はこうして。俺の前に姿を現している。そして、あの二人の少女たちも。これは・・・」
隼人 「・・・」
竜馬 「理屈は分からねぇ。だから、これは俺のゲッター乗りとしての本能が告げる、単なる予想に過ぎない」
隼人 「リョウ。お前は今、真実の扉を開けようとしている」
竜馬 「お前も死んだ魔法少女たちも・・・ゲッターに取り込まれた・・・」
隼人 「違う。だが、近い」
竜馬 「いや・・・ゲッターと一つに交わった、のか!」
疑問を言いかけた竜馬が、はっとして口をつぐんだ。
キュウべぇ 「・・・竜馬?」
竜馬 「隼人・・・あの二人、お前と同じ存在だと言ったな」
隼人 「ああ」
竜馬 「確かに死んだはずのお前が、今はこうして。俺の前に姿を現している。そして、あの二人の少女たちも。これは・・・」
隼人 「・・・」
竜馬 「理屈は分からねぇ。だから、これは俺のゲッター乗りとしての本能が告げる、単なる予想に過ぎない」
隼人 「リョウ。お前は今、真実の扉を開けようとしている」
竜馬 「お前も死んだ魔法少女たちも・・・ゲッターに取り込まれた・・・」
隼人 「違う。だが、近い」
竜馬 「いや・・・ゲッターと一つに交わった、のか!」
832: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:49:52.56 ID:Tnexwrnf0
人 「そうだ、リョウ。故に彼女たちは絶望に陥らない。人としての生を終える直前に、すべてを悟ったのだからな」
キュウべぇ 「では、魔力はどこに・・・」
隼人 「グリーフシードの持つ魔力は、元となった魔法少女の生命力そのものだ。彼女たちが自らゲッターと同化することを望んだのだから、あとに残されたグリーフシードは単なる抜け殻以外の何物でもない」
キュウべぇ 「馬鹿な・・・」
隼人 「感情を捨てたお前でも、驚きを隠せないか」
キュウべぇ 「だったらこれから先、どれだけゲッターを使って魔法少女の魔力を吸い取っても、僕はエネルギーを回収できないってことになるじゃないか!」
隼人 「く・・・くくく・・・やっと結論にたどり着いたのか、進化を放棄したものよ。そうだ、お前の言うとおりだ。魔力を吸われた少女たちは、”俺”と同化するのだからな」
キュウべぇ 「計画を練り直さなくては・・・そうとなれば、もうゲッターなんて用済みだ。僕は失礼させてもらうよ」
竜馬 「あ、おい・・・!」
キュウべぇがテレポートの体勢を取ろうとした、その瞬間。
隼人 「逃さねぇ」
隼人が静かに一言を発した。
まるでそれが合図でもあったかのように、キュウべぇはビクンと激しく一度痙攣して、竜馬の肩の上で意識を失ってしまった。
キュウべぇ 「では、魔力はどこに・・・」
隼人 「グリーフシードの持つ魔力は、元となった魔法少女の生命力そのものだ。彼女たちが自らゲッターと同化することを望んだのだから、あとに残されたグリーフシードは単なる抜け殻以外の何物でもない」
キュウべぇ 「馬鹿な・・・」
隼人 「感情を捨てたお前でも、驚きを隠せないか」
キュウべぇ 「だったらこれから先、どれだけゲッターを使って魔法少女の魔力を吸い取っても、僕はエネルギーを回収できないってことになるじゃないか!」
隼人 「く・・・くくく・・・やっと結論にたどり着いたのか、進化を放棄したものよ。そうだ、お前の言うとおりだ。魔力を吸われた少女たちは、”俺”と同化するのだからな」
キュウべぇ 「計画を練り直さなくては・・・そうとなれば、もうゲッターなんて用済みだ。僕は失礼させてもらうよ」
竜馬 「あ、おい・・・!」
キュウべぇがテレポートの体勢を取ろうとした、その瞬間。
隼人 「逃さねぇ」
隼人が静かに一言を発した。
まるでそれが合図でもあったかのように、キュウべぇはビクンと激しく一度痙攣して、竜馬の肩の上で意識を失ってしまった。
833: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 00:52:20.00 ID:Tnexwrnf0
竜馬 「隼人・・・お前、殺したのか?」
隼人 「殺す価値もないさ、こんなやつ」
竜馬 「では・・・」
隼人 「言ったはずだ、奴には報いを受けてもらう、とな。もっともこいつの代わりはいくらでもいるようだが・・・」
竜馬 「・・・何をしたんだ」
隼人 「インキュベーターを代表して、この個体に役に立ってもらおうと思ってな。悪いようにはしないから、こいつは連れて帰れ」
竜馬 「・・・志筑と呉は?」
隼人 「彼女たちは、すでにゲッターと共にあることを選んでいる」
竜馬 「・・・っ」
竜馬は再び、ジャガー号とベアー号に意識を向けた。
だが、そこにはもう、キリカも仁美の姿もなく・・・
ただポツン、とむなしく。
座席の上にグリーフシードだけが、残されているのみだった。
隼人 「殺す価値もないさ、こんなやつ」
竜馬 「では・・・」
隼人 「言ったはずだ、奴には報いを受けてもらう、とな。もっともこいつの代わりはいくらでもいるようだが・・・」
竜馬 「・・・何をしたんだ」
隼人 「インキュベーターを代表して、この個体に役に立ってもらおうと思ってな。悪いようにはしないから、こいつは連れて帰れ」
竜馬 「・・・志筑と呉は?」
隼人 「彼女たちは、すでにゲッターと共にあることを選んでいる」
竜馬 「・・・っ」
竜馬は再び、ジャガー号とベアー号に意識を向けた。
だが、そこにはもう、キリカも仁美の姿もなく・・・
ただポツン、とむなしく。
座席の上にグリーフシードだけが、残されているのみだった。
834: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:01:44.83 ID:Tnexwrnf0
・・・
・・・
竜馬 「・・・しばらくして、俺は通常の空間に戻された。その時にはもう、隼人の姿もなく・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・いや、隼人だけじゃない。ゲッターの中で生きていたのは、俺とこいつだけになっていたのさ」
言いながら、こつんと軽く。
竜馬が地べたに横たわっているキュウべぇを蹴飛ばした。
だけれどそれでも、キュウべぇはピクリとも動かない。本当に生きているんだろうか・・・
竜馬 「これが・・・俺がゲッターに乗り込んでから降りるまでの、顛末のすべてだ」
そう言って、竜馬は話を終えた。
先ほどまで生きていた6人の少女たちが、今はもういない。
しかも、その死が明らかにしたのは、ゲッターロボの、私たちの理解が及ばない恐ろしい一面。
しょせん子供でしかない私たちが受け止めるには、それはあまりに重い現実。
衝撃を受けないはずがない。私たちは、誰もが語るべき言葉を失っていた。
・・・
竜馬 「・・・しばらくして、俺は通常の空間に戻された。その時にはもう、隼人の姿もなく・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・いや、隼人だけじゃない。ゲッターの中で生きていたのは、俺とこいつだけになっていたのさ」
言いながら、こつんと軽く。
竜馬が地べたに横たわっているキュウべぇを蹴飛ばした。
だけれどそれでも、キュウべぇはピクリとも動かない。本当に生きているんだろうか・・・
竜馬 「これが・・・俺がゲッターに乗り込んでから降りるまでの、顛末のすべてだ」
そう言って、竜馬は話を終えた。
先ほどまで生きていた6人の少女たちが、今はもういない。
しかも、その死が明らかにしたのは、ゲッターロボの、私たちの理解が及ばない恐ろしい一面。
しょせん子供でしかない私たちが受け止めるには、それはあまりに重い現実。
衝撃を受けないはずがない。私たちは、誰もが語るべき言葉を失っていた。
835: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:05:01.78 ID:Tnexwrnf0
そんな中。
沈黙を最初に破ったのは、動揺の色を隠せないままの織莉子だった。
織莉子 「そんな馬鹿な。じゃあ、私たちの計画は・・・?だったら私は、何のために罪のない少女たちを魔法少女に仕立て上げたの・・・」
ほむら 「・・・」
織莉子 「キリカは、何のためにこんな姿になったというの・・・」
グリーフシードと変わり果てた友を呆然と見つめ、誰に言うとでも無くつぶやいている。
だけれど、動揺しているのは織莉子ばかりじゃない。
私も仁美という友人の最期を聞いて、心がざわめくのを留められないでいた。
でも、それ以上に・・・
A子 「え・・・え・・・私たち・・・殺されるために集められたって事なの?」
B子 「そんな・・・それに、いずれは魔女になっちゃうって、どういうことなのよ!」
C子 「聞いてない!これじゃ、せっかく願いが叶ったって、意味ないよ!」
心酔していた人に裏切らていたことを知り、事実上の死刑宣告まで受けた織莉子の取り巻きたち。
彼女たちの取り乱しようは、私たちの比ではなかった。
・・・そんな混乱のるつぼにあって、ただ一人。
状況を冷静に見通していた者がいた。
杏子だ。
沈黙を最初に破ったのは、動揺の色を隠せないままの織莉子だった。
織莉子 「そんな馬鹿な。じゃあ、私たちの計画は・・・?だったら私は、何のために罪のない少女たちを魔法少女に仕立て上げたの・・・」
ほむら 「・・・」
織莉子 「キリカは、何のためにこんな姿になったというの・・・」
グリーフシードと変わり果てた友を呆然と見つめ、誰に言うとでも無くつぶやいている。
だけれど、動揺しているのは織莉子ばかりじゃない。
私も仁美という友人の最期を聞いて、心がざわめくのを留められないでいた。
でも、それ以上に・・・
A子 「え・・・え・・・私たち・・・殺されるために集められたって事なの?」
B子 「そんな・・・それに、いずれは魔女になっちゃうって、どういうことなのよ!」
C子 「聞いてない!これじゃ、せっかく願いが叶ったって、意味ないよ!」
心酔していた人に裏切らていたことを知り、事実上の死刑宣告まで受けた織莉子の取り巻きたち。
彼女たちの取り乱しようは、私たちの比ではなかった。
・・・そんな混乱のるつぼにあって、ただ一人。
状況を冷静に見通していた者がいた。
杏子だ。
836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:11:48.73 ID:Tnexwrnf0
杏子 「・・・武蔵っ!」
それは突然だった。
杏子が叫ぶのと同時に、風を裂くように駆け出したのだ。
彼女が駆ける先には、マミに武器を突き付けたまま狼狽えている、三人の魔法少女たちがいた。
・・・そして。
杏子に呼ばれた武蔵も、瞬時に状況を理解すると、彼もまた巨体に似合わぬ俊敏さで行動に出た。
杏子 「ロッソ・ファンタズマぁっ!!」
技名を叫ぶのと同時に三人に分身した杏子が、各々の獲物に向かって武器を振りかざす。
杏子 「やぁあっ!!」
気合の声もろとも突き出された槍の穂先は、それぞれ狙いたがわず少女たちの体を貫き、切り裂いていた。
突然の惨劇に見舞われ、鮮血を上げながら、悲痛な叫びをあげるA子たち。
それは突然だった。
杏子が叫ぶのと同時に、風を裂くように駆け出したのだ。
彼女が駆ける先には、マミに武器を突き付けたまま狼狽えている、三人の魔法少女たちがいた。
・・・そして。
杏子に呼ばれた武蔵も、瞬時に状況を理解すると、彼もまた巨体に似合わぬ俊敏さで行動に出た。
杏子 「ロッソ・ファンタズマぁっ!!」
技名を叫ぶのと同時に三人に分身した杏子が、各々の獲物に向かって武器を振りかざす。
杏子 「やぁあっ!!」
気合の声もろとも突き出された槍の穂先は、それぞれ狙いたがわず少女たちの体を貫き、切り裂いていた。
突然の惨劇に見舞われ、鮮血を上げながら、悲痛な叫びをあげるA子たち。
837: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:13:59.94 ID:Tnexwrnf0
織莉子 「・・・え!?」
突然の成り行きにやっと我に返った織莉子だったが、時すでに遅しだった。
武蔵 「ほむらちゃん!!」
ほむら 「!」
武蔵がこちらに突進してくる。
私は強引に織莉子の手を振りほどく。と、同時に、ステップを踏むように一歩、後ろへと飛びのいた。
織莉子 「しまっ・・・」
武蔵 「女だからって、容赦しないぜ!」
そこに飛び込んできた武蔵が織莉子に躍りかかると、彼女の襟と腕をつかみ・・・
武蔵 「そらぁっ!!」
目にもとまらぬ速さで一本背負いを決めていた。
突然の成り行きにやっと我に返った織莉子だったが、時すでに遅しだった。
武蔵 「ほむらちゃん!!」
ほむら 「!」
武蔵がこちらに突進してくる。
私は強引に織莉子の手を振りほどく。と、同時に、ステップを踏むように一歩、後ろへと飛びのいた。
織莉子 「しまっ・・・」
武蔵 「女だからって、容赦しないぜ!」
そこに飛び込んできた武蔵が織莉子に躍りかかると、彼女の襟と腕をつかみ・・・
武蔵 「そらぁっ!!」
目にもとまらぬ速さで一本背負いを決めていた。
838: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:27:44.71 ID:Tnexwrnf0
織莉子 「あ、ああ・・・っ!」
宙高く投げ出され、受け身も取れないまま地面にたたきつけられる織莉子。
織莉子 「くあっ!!あ、ううう」
ほむら 「・・・」
声にならないうめきを上げながら身もだえている。
私はバックラーへと手を差し入れながら、そんな織莉子へと近づいて行った。
中から取り出したのは、一丁の小銃。
安全装置を外し、引き金に指を駆けると、織莉子へと向かって銃口を突き付ける。
ほむら 「やっと形勢逆転ね・・・」
宙高く投げ出され、受け身も取れないまま地面にたたきつけられる織莉子。
織莉子 「くあっ!!あ、ううう」
ほむら 「・・・」
声にならないうめきを上げながら身もだえている。
私はバックラーへと手を差し入れながら、そんな織莉子へと近づいて行った。
中から取り出したのは、一丁の小銃。
安全装置を外し、引き金に指を駆けると、織莉子へと向かって銃口を突き付ける。
ほむら 「やっと形勢逆転ね・・・」
839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:29:19.29 ID:Tnexwrnf0
織莉子 「くぅ・・・」
杏子 「へ・・・この時を待ってたんだよ。こいつの気がそれて、取り巻きまで気が回らなくなる、その時をな」
分身を解いた杏子もやって来て、織莉子の顔を覗き込みながらニヤリと笑った。
ほむら 「あの子たち、殺したの?」
杏子 「殺すかよ、後味が悪い。身体は切り刻んでやったが、ソウルジェムには傷一つ付けてないぜ」
織莉子に注意を向けたまま、ちらりとそちらを確認する。
確かに杏子にやられた少女たちは、血の海に横たわりながらも、切なげな呻き声を上げ続けていた。
間違いなく、生きている。私はホッと、息を吐いた。
・・・敵だったとはいえ、今はもう、誰の死も目にしたくない。
ほむら 「そう・・・ありがとう」
杏子 「へ・・・この時を待ってたんだよ。こいつの気がそれて、取り巻きまで気が回らなくなる、その時をな」
分身を解いた杏子もやって来て、織莉子の顔を覗き込みながらニヤリと笑った。
ほむら 「あの子たち、殺したの?」
杏子 「殺すかよ、後味が悪い。身体は切り刻んでやったが、ソウルジェムには傷一つ付けてないぜ」
織莉子に注意を向けたまま、ちらりとそちらを確認する。
確かに杏子にやられた少女たちは、血の海に横たわりながらも、切なげな呻き声を上げ続けていた。
間違いなく、生きている。私はホッと、息を吐いた。
・・・敵だったとはいえ、今はもう、誰の死も目にしたくない。
ほむら 「そう・・・ありがとう」
840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:37:30.96 ID:Tnexwrnf0
杏子 「な、なんだよ、気持ち悪いな」
ほむら 「この状況、打開できるとしたら、あなたが鍵だと思っていたから。その通りになったわ、だから」
杏子 「まぁ、な。こいつ、予知ができる割には、すごい動揺しまくってたからさ。ていう事は、今のこの瞬間の予知は出来てないんじゃないかって、そう思ったんだよ」
ほむら 「さすが、ベテランね。ビンゴよ。感の冴えは一流だわ」
杏子 「よせよ、褒めたって何も出ねぇよ。それよりも、だ」
ほむら 「そうね・・・」
私は屈みこむと、織莉子の顔を覗き込んだ。
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
ほむら 「この状況、打開できるとしたら、あなたが鍵だと思っていたから。その通りになったわ、だから」
杏子 「まぁ、な。こいつ、予知ができる割には、すごい動揺しまくってたからさ。ていう事は、今のこの瞬間の予知は出来てないんじゃないかって、そう思ったんだよ」
ほむら 「さすが、ベテランね。ビンゴよ。感の冴えは一流だわ」
杏子 「よせよ、褒めたって何も出ねぇよ。それよりも、だ」
ほむら 「そうね・・・」
私は屈みこむと、織莉子の顔を覗き込んだ。
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/22(月) 01:39:13.92 ID:Tnexwrnf0
・・・
・・・
次回予告
美国織莉子たちの脅威は去り、再びグリーフシード集めに奔走するほむら達。
全ては一週間後に迫った、ワルプルギスの夜を乗り越えるため。
そんな中、かりそめの日常を送るほむらだったが、彼女はまどかにひとつの真実を告げる決意をする。
それがまどかを悲しみの底に突き落とす事となると知りながらも・・・
すべてはまどかのために。その想いの元に・・・
そしてついに、運命の日が訪れる!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第九話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
美国織莉子たちの脅威は去り、再びグリーフシード集めに奔走するほむら達。
全ては一週間後に迫った、ワルプルギスの夜を乗り越えるため。
そんな中、かりそめの日常を送るほむらだったが、彼女はまどかにひとつの真実を告げる決意をする。
それがまどかを悲しみの底に突き落とす事となると知りながらも・・・
すべてはまどかのために。その想いの元に・・・
そしてついに、運命の日が訪れる!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第九話にテレビスイッチオン!
856: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:20:27.35 ID:OiZWHItK0
ほむら「ゲッターロボ!」 第九話
857: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:21:35.13 ID:OiZWHItK0
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、私は彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
マミ 「・・・」
その様子を複雑な表情をしながら、解放されたマミが見守っている。
美国織莉子。
この危険な魔法少女をどうするか、どうするべきなのか。
織莉子が何を成そうとしていたのか。その目的のためには、非常な手段も厭わない冷徹な心の持ち主なのか。
分かってしまったからこそ、このまま野放しにはできない。
だけれど・・・
言いながら、私は彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
マミ 「・・・」
その様子を複雑な表情をしながら、解放されたマミが見守っている。
美国織莉子。
この危険な魔法少女をどうするか、どうするべきなのか。
織莉子が何を成そうとしていたのか。その目的のためには、非常な手段も厭わない冷徹な心の持ち主なのか。
分かってしまったからこそ、このまま野放しにはできない。
だけれど・・・
858: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:23:19.77 ID:OiZWHItK0
優しいマミには、私に引き金を引くように促す事もできない。
そんなジレンマで頭を悩ませているというのが、ありありと見て取れる顔だった。
そしてそれは、最愛の妹を危険な目にあわされた武蔵も同様のようで・・・
ほむら (本当に似たもの兄妹なのね・・・)
その中にあって、ただ一人。
杏子だけが怒りをあらわに気炎を上げていた。
杏子 「・・・ほむら、何やってるんだよ。はやく殺っちまえよ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「こいつは生かしておいちゃダメな奴だ。おまえにだって、そんなの分かってるんだろ」
そんなジレンマで頭を悩ませているというのが、ありありと見て取れる顔だった。
そしてそれは、最愛の妹を危険な目にあわされた武蔵も同様のようで・・・
ほむら (本当に似たもの兄妹なのね・・・)
その中にあって、ただ一人。
杏子だけが怒りをあらわに気炎を上げていた。
杏子 「・・・ほむら、何やってるんだよ。はやく殺っちまえよ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「こいつは生かしておいちゃダメな奴だ。おまえにだって、そんなの分かってるんだろ」
859: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:24:47.27 ID:OiZWHItK0
ほむら 「ええ・・・」
分かっている。
美国織莉子は賢い娘だ。
万策尽きたといっても、時を得ればどのように新たな企みを企てるか。
私には、皆目見当もつかなかった。
・・・それに。
ほむら (野放しにしておけば、いずれまどかの行く末を予知してしまうかも知れない)
そうなれば、呉キリカというパートナーを欠いたとはいえ、かつての時間軸での惨劇が繰り返されないとも限らないのだ。
ほむら (逃してはいけない)
そう思ったから、それが分かっていたから、こそ。
かつての時間軸では、私はためらう事無く、彼女の命を奪う事ができたのだ。
・・・だけれど。
分かっている。
美国織莉子は賢い娘だ。
万策尽きたといっても、時を得ればどのように新たな企みを企てるか。
私には、皆目見当もつかなかった。
・・・それに。
ほむら (野放しにしておけば、いずれまどかの行く末を予知してしまうかも知れない)
そうなれば、呉キリカというパートナーを欠いたとはいえ、かつての時間軸での惨劇が繰り返されないとも限らないのだ。
ほむら (逃してはいけない)
そう思ったから、それが分かっていたから、こそ。
かつての時間軸では、私はためらう事無く、彼女の命を奪う事ができたのだ。
・・・だけれど。
860: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:27:42.51 ID:OiZWHItK0
杏子 「・・・お前がやらないなら、あたしがやるぞ」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「こいつは許せない。そっちの雑魚たちとは違う。あたしはこいつを殺したって、心が痛まない自信があるね」
杏子が顎をしゃくって示したのは、いまだ呻き声を上げながら倒れている織莉子の取り巻きたち。
と、そこへ。
ととと・・・と、駆けてゆく小さな影があった。
それは・・・
ほむら 「え・・・ゆま?」
杏子 「ちょっ、ゆま、待てよ!?」
慌てて駆けだした杏子が、ゆまの前に立ちふさがって、叱るような口調で問いただす。
杏子 「お前、何やってるんだ。どこに行こうとしてるんだ?」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「こいつは許せない。そっちの雑魚たちとは違う。あたしはこいつを殺したって、心が痛まない自信があるね」
杏子が顎をしゃくって示したのは、いまだ呻き声を上げながら倒れている織莉子の取り巻きたち。
と、そこへ。
ととと・・・と、駆けてゆく小さな影があった。
それは・・・
ほむら 「え・・・ゆま?」
杏子 「ちょっ、ゆま、待てよ!?」
慌てて駆けだした杏子が、ゆまの前に立ちふさがって、叱るような口調で問いただす。
杏子 「お前、何やってるんだ。どこに行こうとしてるんだ?」
861: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:41:27.19 ID:OiZWHItK0
ゆま 「どいて、きょーこ。あのお姉ちゃんたち、助けてあげなきゃ」
杏子 「助けるって・・・織莉子の取り巻きたちをか」
ゆま 「うん」
ゆまが悪びれる様子もなく、こくんとうなづいた。
杏子 「ば、バカか、お前。放っておけよ。だいたい、ソウルジェムには傷一つ付けてないんだ。あとはてめーらで体でも何でも、修復するだろうさ」
ゆま 「でも痛がってる。かわいそうだよ」
杏子 「だから・・・」
マミ 「佐倉さん」
二人の押し問答に、マミが割って入った。
マミ 「この子たちのソウルジェムを見て」
杏子 「マミ・・・何だってんだよ」
文句を言いながらも、マミに促されて少女たちのソウルジェムに目をやる杏子。
杏子の軽く息をのむ音が、私の所まで聞こえてきた。
杏子 「助けるって・・・織莉子の取り巻きたちをか」
ゆま 「うん」
ゆまが悪びれる様子もなく、こくんとうなづいた。
杏子 「ば、バカか、お前。放っておけよ。だいたい、ソウルジェムには傷一つ付けてないんだ。あとはてめーらで体でも何でも、修復するだろうさ」
ゆま 「でも痛がってる。かわいそうだよ」
杏子 「だから・・・」
マミ 「佐倉さん」
二人の押し問答に、マミが割って入った。
マミ 「この子たちのソウルジェムを見て」
杏子 「マミ・・・何だってんだよ」
文句を言いながらも、マミに促されて少女たちのソウルジェムに目をやる杏子。
杏子の軽く息をのむ音が、私の所まで聞こえてきた。
862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:43:55.55 ID:OiZWHItK0
杏子 「・・・限界だな」
マミ 「ええ。この上でさらに魔力なんて使わせたら、この子たちまで魔女化してしまいかねないわ」
ほむら (なるほど、それは・・・そうなるわよね・・・)
信じていた人に裏切られ、自分たちの末路を知り、そのうえ身体を切り刻まれる。
それだけされれば、誰だってソウルジェムの輝きを曇らせるだろう。
ましてや彼女たちは、キュウべぇに大量生産された”バーゲン品”なのだ。
こんな事態になって、耐えられるほど強いはずもない。
杏子 「だから、だからってなんだよ。そんなの自業自得じゃないか。マミはこいつらに、何されたのか、もう忘れたのか!」
マミ 「この子たちは、そっちの子にただ従っていただけだもの。この子たちに対する遺恨なんて、私にはないわ」
マミ 「ええ。この上でさらに魔力なんて使わせたら、この子たちまで魔女化してしまいかねないわ」
ほむら (なるほど、それは・・・そうなるわよね・・・)
信じていた人に裏切られ、自分たちの末路を知り、そのうえ身体を切り刻まれる。
それだけされれば、誰だってソウルジェムの輝きを曇らせるだろう。
ましてや彼女たちは、キュウべぇに大量生産された”バーゲン品”なのだ。
こんな事態になって、耐えられるほど強いはずもない。
杏子 「だから、だからってなんだよ。そんなの自業自得じゃないか。マミはこいつらに、何されたのか、もう忘れたのか!」
マミ 「この子たちは、そっちの子にただ従っていただけだもの。この子たちに対する遺恨なんて、私にはないわ」
863: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:46:03.61 ID:OiZWHItK0
杏子 「ちっ、良い子ぶりやがって、そんな所が昔から気に食わなかったんだ」
マミ 「そう言うあなたも相変わらずね」
杏子 「・・・それにさ。どのみち、さ。早いか、遅いかの差なんだろ」
マミ 「え・・・」
杏子 「そいつらも、あたし達も。結局行きつく先は同じなんだろ。だったら、変な情けをかけてやるだけ無駄ってもんじゃないのか」
マミ 「そ、それは・・・」
マミが言葉に詰まり、あたりに一瞬の静寂が訪れる。
竜馬がポツリ、正論だな、とつぶやいた。
だけれど。
ゆま 「じゃましないなら、どいて」
そんな二人のやり取りなんか目に入らないかのように。
ゆまが杏子とマミの脇を、すたすたと通り過ぎようとする。
マミ 「そう言うあなたも相変わらずね」
杏子 「・・・それにさ。どのみち、さ。早いか、遅いかの差なんだろ」
マミ 「え・・・」
杏子 「そいつらも、あたし達も。結局行きつく先は同じなんだろ。だったら、変な情けをかけてやるだけ無駄ってもんじゃないのか」
マミ 「そ、それは・・・」
マミが言葉に詰まり、あたりに一瞬の静寂が訪れる。
竜馬がポツリ、正論だな、とつぶやいた。
だけれど。
ゆま 「じゃましないなら、どいて」
そんな二人のやり取りなんか目に入らないかのように。
ゆまが杏子とマミの脇を、すたすたと通り過ぎようとする。
864: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 23:56:30.19 ID:OiZWHItK0
杏子 「おい、今のあたしの話、聞いてなかったのかよ!」
ゆま 「ゆまたち、死ぬんだよね」
杏子 「あ・・・え・・・?」
ゆま 「きょーこもほむらお姉ちゃんも、ここにいる魔法少女たちもみんな、死んじゃうんだよね」
杏子 「そ、そうだよ!だからさ!」
ゆま 「じゃあ、きょーこは今日死ぬの?みんな今日死んじゃうの?」
杏子 「・・・う?!」
ゆまがゆっくりと杏子を見上げ、そしてにこりと笑った。
ゆま 「・・・死ぬのは、今日じゃないよ」
どこかさみしげで、これまでのゆまには似つかわしくない。
どこか達観した雰囲気の笑顔・・・
ゆま 「ゆまたち、死ぬんだよね」
杏子 「あ・・・え・・・?」
ゆま 「きょーこもほむらお姉ちゃんも、ここにいる魔法少女たちもみんな、死んじゃうんだよね」
杏子 「そ、そうだよ!だからさ!」
ゆま 「じゃあ、きょーこは今日死ぬの?みんな今日死んじゃうの?」
杏子 「・・・う?!」
ゆまがゆっくりと杏子を見上げ、そしてにこりと笑った。
ゆま 「・・・死ぬのは、今日じゃないよ」
どこかさみしげで、これまでのゆまには似つかわしくない。
どこか達観した雰囲気の笑顔・・・
865: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:02:05.06 ID:cr5Nuc8F0
ほむら 「・・・あっ」
そして、私は気づかされる。
他に手いっぱいで、ゆまの事にまで気が回らなかった自分の迂闊さに。
ほむら 「さ、佐倉さん・・・私、私たち・・・まだ教えてない・・・」
杏子 「ああ?」
ほむら 「ゆまに、魔法少女がいずれ、魔女となる定めにあるという事・・・」
杏子 「あ・・・ああっ・・・!」
ゆま 「・・・」
そう、ゆまも織莉子の取り巻きたちと同じ。
今日知ったのだ。
やがては魔女となり、この世から消え去らねばならないという、自分の残酷すぎる運命に。
杏子 「ゆま、お前・・・」
ゆま 「・・・」
866: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:03:11.40 ID:cr5Nuc8F0
あとはゆまは何も話さなかったし、誰もゆまの行動を阻もうとしなかった。
いや、できなかった。
そんな私たちを尻目に、ゆまは傷ついた魔法少女たちを得意の治癒魔法で癒し始めた。
マミ 「暁美さん、佐倉さん。こちらの事は、私に任せて」
マミが武器を構えながら、ゆまの傍らにそっと寄り添う。
傷を癒した魔法少女たちが逆襲に出ないよう、見張りを買って出てくれたのだ。
ちょうど、先ほどまでの立場が逆転した形。
もっとも。
ほむら (今さら、あの子たちが織莉子に義理立てして、私たちには向かってくるとも思えないけれど・・・)
いや、できなかった。
そんな私たちを尻目に、ゆまは傷ついた魔法少女たちを得意の治癒魔法で癒し始めた。
マミ 「暁美さん、佐倉さん。こちらの事は、私に任せて」
マミが武器を構えながら、ゆまの傍らにそっと寄り添う。
傷を癒した魔法少女たちが逆襲に出ないよう、見張りを買って出てくれたのだ。
ちょうど、先ほどまでの立場が逆転した形。
もっとも。
ほむら (今さら、あの子たちが織莉子に義理立てして、私たちには向かってくるとも思えないけれど・・・)
867: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:04:25.95 ID:cr5Nuc8F0
何にしても、千歳ゆま・・・
魔法少女の真実に触れても、泣くことも取り乱すこともなかった。
幼い彼女の事を気遣い、事実を隠ぺいしようとした私たちの気づかいは、けっきょく気の回しすぎだったという事なのだろうか。
それとも・・・
ほむら (ううん・・・考え込むのは後だ。今はそれより)
美国織莉子の処置を考えなくてはいけない。
佐倉杏子は織莉子を殺せと言う。その意見は正しい。かつての私もそう思ったからこそ、躊躇なく引き金を引けたのだ。
だけれど・・・
織莉子 「撃たないの?」
かつてと同じように。
自嘲とも諦観とも取れない微笑を浮かべながら、織莉子が言った。
ほむら 「撃つわ」
対する私も、かつて自分が織莉子に言ったのと同じセリフを、再び彼女に投げつけた。
だけれど、言葉と心は裏腹だと証明するように、引き金にかけた私の指が、こわばって動かない。
魔法少女の真実に触れても、泣くことも取り乱すこともなかった。
幼い彼女の事を気遣い、事実を隠ぺいしようとした私たちの気づかいは、けっきょく気の回しすぎだったという事なのだろうか。
それとも・・・
ほむら (ううん・・・考え込むのは後だ。今はそれより)
美国織莉子の処置を考えなくてはいけない。
佐倉杏子は織莉子を殺せと言う。その意見は正しい。かつての私もそう思ったからこそ、躊躇なく引き金を引けたのだ。
だけれど・・・
織莉子 「撃たないの?」
かつてと同じように。
自嘲とも諦観とも取れない微笑を浮かべながら、織莉子が言った。
ほむら 「撃つわ」
対する私も、かつて自分が織莉子に言ったのと同じセリフを、再び彼女に投げつけた。
だけれど、言葉と心は裏腹だと証明するように、引き金にかけた私の指が、こわばって動かない。
868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:10:17.84 ID:cr5Nuc8F0
ほむら 「・・・っ」
私の心の内に。
先ほど織莉子から指摘された言葉が蘇る。
(織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」 )
(織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見殺しにしてきたの?)
織莉子の言う通り、私は自分の目的のため、直接的・間接的を問わず、たくさんの人を見殺しにしてきた。
織莉子と私は、目的や手段が違うだけで、本質的には同質の存在でしかないのだ。
もちろん、まどかを危険な目にあわせ、仁美を結果的に死に追いやった彼女の事を許すことはできない。
だけれど・・・
ほむら (それを、同じ事をしてきた私が、織莉子を断罪する資格なんてあるはずがない・・・)
私の心の内に。
先ほど織莉子から指摘された言葉が蘇る。
(織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」 )
(織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見殺しにしてきたの?)
織莉子の言う通り、私は自分の目的のため、直接的・間接的を問わず、たくさんの人を見殺しにしてきた。
織莉子と私は、目的や手段が違うだけで、本質的には同質の存在でしかないのだ。
もちろん、まどかを危険な目にあわせ、仁美を結果的に死に追いやった彼女の事を許すことはできない。
だけれど・・・
ほむら (それを、同じ事をしてきた私が、織莉子を断罪する資格なんてあるはずがない・・・)
869: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:13:02.16 ID:cr5Nuc8F0
どうして良いのか分からない。
私は救いを求めるように、傍らに立つ竜馬に視線を向けた。
ほむら 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「・・・暁美」
だが、振り仰いだ竜馬の口から出たのは、私の期待した答えとは別の言葉だった。
竜馬 「ここはもう限界のようだぜ」
ほむら 「え・・・」
言われた私も 竜馬に倣って周囲を見渡す。
そして、気がつかされた。
ほむら 「結界の、崩壊が・・・始まってる?」
竜馬 「首の皮一枚で生かされていた魔女が、とうとう力尽きたらしいな」
ほむら 「じゃあ、私たちはもうすぐ、通常に空間に・・・」
戻されることになる。
そんな会話を交わしているそばから、結界の崩壊は加速度的に進んでゆく。
織莉子の処遇をどうするのか。その事を決める間もないほどに。
ほむら (彼女の事は、結界内で片を付けておきたかったのだけれど・・・)
と、その時だった。
私は救いを求めるように、傍らに立つ竜馬に視線を向けた。
ほむら 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「・・・暁美」
だが、振り仰いだ竜馬の口から出たのは、私の期待した答えとは別の言葉だった。
竜馬 「ここはもう限界のようだぜ」
ほむら 「え・・・」
言われた私も 竜馬に倣って周囲を見渡す。
そして、気がつかされた。
ほむら 「結界の、崩壊が・・・始まってる?」
竜馬 「首の皮一枚で生かされていた魔女が、とうとう力尽きたらしいな」
ほむら 「じゃあ、私たちはもうすぐ、通常に空間に・・・」
戻されることになる。
そんな会話を交わしているそばから、結界の崩壊は加速度的に進んでゆく。
織莉子の処遇をどうするのか。その事を決める間もないほどに。
ほむら (彼女の事は、結界内で片を付けておきたかったのだけれど・・・)
と、その時だった。
870: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:15:37.37 ID:cr5Nuc8F0
織莉子 「・・・っ!!!」
結界の崩壊に気を取られ、皆の注意が織莉子からそれた、その一瞬。
彼女が不意に立ち上がり、私に当身を喰らわせて来たのだ。
ほむら 「・・・っ!」
突然の事に、身をかわすだけでやっとの私。
だけれど、当身を避けられた織莉子は二撃目を繰り出すでもなく、そのまま私の脇をすり抜けてしまう。
竜馬 「待て、美国!」
杏子 「野郎!」
織莉子の本来の目的は、私にダメージを受けさせることにあったのではなく、この場からの逃走にあったのだ。
さすがに場馴れしている竜馬と杏子の行動は素早く、とっさに織莉子を捕まえるべく駆けだそうとしたが、その瞬間。
パリンッ、と・・・
耳障りな亀裂音が響き渡り、まるでガラスが砕けたかのように結界を包む壁面が雪崩のように崩れ始めた。
結界の崩壊に気を取られ、皆の注意が織莉子からそれた、その一瞬。
彼女が不意に立ち上がり、私に当身を喰らわせて来たのだ。
ほむら 「・・・っ!」
突然の事に、身をかわすだけでやっとの私。
だけれど、当身を避けられた織莉子は二撃目を繰り出すでもなく、そのまま私の脇をすり抜けてしまう。
竜馬 「待て、美国!」
杏子 「野郎!」
織莉子の本来の目的は、私にダメージを受けさせることにあったのではなく、この場からの逃走にあったのだ。
さすがに場馴れしている竜馬と杏子の行動は素早く、とっさに織莉子を捕まえるべく駆けだそうとしたが、その瞬間。
パリンッ、と・・・
耳障りな亀裂音が響き渡り、まるでガラスが砕けたかのように結界を包む壁面が雪崩のように崩れ始めた。
871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 00:16:48.53 ID:cr5Nuc8F0
ほむら 「織莉子っ!!」
天井も崩壊し、私たちの頭へとガラガラ音を立てながら、降り注いでくる。
残骸が視界を塞ぎ、私たちは逃げ去る織莉子の背中を見失ってしまった。
ほむら 「美国織莉子っ!!」
・・・そして、静寂が訪れ。
私たちは全員、元の廃工場跡へと放り出されていた。
美国織莉子、一人を除いて。
杏子 「お前、何やってるんだよ・・・」
呆れ顔で私を見つめる杏子の視線が痛かった。
返す言葉もない・・・
天井も崩壊し、私たちの頭へとガラガラ音を立てながら、降り注いでくる。
残骸が視界を塞ぎ、私たちは逃げ去る織莉子の背中を見失ってしまった。
ほむら 「美国織莉子っ!!」
・・・そして、静寂が訪れ。
私たちは全員、元の廃工場跡へと放り出されていた。
美国織莉子、一人を除いて。
杏子 「お前、何やってるんだよ・・・」
呆れ顔で私を見つめる杏子の視線が痛かった。
返す言葉もない・・・
878: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:09:57.83 ID:WOH5zeAJ0
・・・
・・・
その後。
ゆまによる治療を終えた三人の魔法少女たちは、おとがめなしで解放された。
織莉子に騙されていたと知った今、これ以上あの子たちが私たちと敵対するはずがないと判断したからだ。
もっとも、手向かってきたところで、ブレーンのいない彼女たちが、私たちと渡り合えるはずもない。
マミ 「あの子たち・・・」
めいめいに去ってゆく三人の背中を見つめながら、マミが悲しそうにつぶやく。
マミ 「・・・きっと、長くないわね」
杏子 「そりゃそうだろう。戦う力も気力もない。遠からず魔女に食われるか、てめーが魔女になっちまうか」
マミ 「かわいそうね・・・」
杏子 「自業自得だろ。いっそ、あの場で見捨ててやった方が、苦しみが短くって済んだのかもしれないぜ」
ゆま 「・・・」
・・・
その後。
ゆまによる治療を終えた三人の魔法少女たちは、おとがめなしで解放された。
織莉子に騙されていたと知った今、これ以上あの子たちが私たちと敵対するはずがないと判断したからだ。
もっとも、手向かってきたところで、ブレーンのいない彼女たちが、私たちと渡り合えるはずもない。
マミ 「あの子たち・・・」
めいめいに去ってゆく三人の背中を見つめながら、マミが悲しそうにつぶやく。
マミ 「・・・きっと、長くないわね」
杏子 「そりゃそうだろう。戦う力も気力もない。遠からず魔女に食われるか、てめーが魔女になっちまうか」
マミ 「かわいそうね・・・」
杏子 「自業自得だろ。いっそ、あの場で見捨ててやった方が、苦しみが短くって済んだのかもしれないぜ」
ゆま 「・・・」
879: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:11:56.17 ID:WOH5zeAJ0
武蔵 「おい、そういう言い方はないだろう」
杏子 「うるせーな。あたしが何か、間違ったことを言ったか?」
武蔵 「ゆまちゃんに当て付けるような物言いはよせと言ってるんだ。目の前で人が死にかけていたら、助けてやりたいって思うのが人情だろうが」
杏子 「綺麗ごとは要らないんだよ。どーせあいつらは、将来のあたしたちの姿なんだ」
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしらもああなるんだよ。その時、誰かが憐れんだり、同情してくれるっていうのかよ!」
ほむら (そうね・・・)
私はポケットに忍ばせている”志筑仁美”を、そっと撫でた。
杏子 「うるせーな。あたしが何か、間違ったことを言ったか?」
武蔵 「ゆまちゃんに当て付けるような物言いはよせと言ってるんだ。目の前で人が死にかけていたら、助けてやりたいって思うのが人情だろうが」
杏子 「綺麗ごとは要らないんだよ。どーせあいつらは、将来のあたしたちの姿なんだ」
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしらもああなるんだよ。その時、誰かが憐れんだり、同情してくれるっていうのかよ!」
ほむら (そうね・・・)
私はポケットに忍ばせている”志筑仁美”を、そっと撫でた。
880: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:14:03.93 ID:WOH5zeAJ0
仁美の死の真相を知っているのは、魔女の結界の中にいた限られた者たちだけ。
仁美の家族もクラスメイトも・・・
彼女と関わりの深かった者は、誰も仁美が死んだことを知る術がない。
やがて仁美の存在は、人々の記憶の底へと埋没して消えてしまうのだろう。
そしてそれは、明日の我が身の姿だと、そう杏子は言っているのだ。
だけれど、今は・・・
ほむら 「やめましょう、仲間内で言い争いなんて」
杏子の正論を正論だと認めたくない、私がいた。
だから、不毛な議論を私が遮る。
ほむら 「疲れた・・・今はただ、疲れたわ。今日はもう、帰りましょう」
仁美の家族もクラスメイトも・・・
彼女と関わりの深かった者は、誰も仁美が死んだことを知る術がない。
やがて仁美の存在は、人々の記憶の底へと埋没して消えてしまうのだろう。
そしてそれは、明日の我が身の姿だと、そう杏子は言っているのだ。
だけれど、今は・・・
ほむら 「やめましょう、仲間内で言い争いなんて」
杏子の正論を正論だと認めたくない、私がいた。
だから、不毛な議論を私が遮る。
ほむら 「疲れた・・・今はただ、疲れたわ。今日はもう、帰りましょう」
881: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:16:00.33 ID:WOH5zeAJ0
時計を確認すると、日付はすでに変わっていた。
もう深夜なのだ。
竜馬 「そうだな。考えなきゃならないことはいくらでもあるが、今日は色々ありすぎた。みんな混乱してるだろうし、そんな頭で、何を話し合ったところで意味がない」
一晩寝て、頭と心をすっきりさせるのが先だ。
そう言って、竜馬が場をしめてくれた。
杏子 「ち、分かったよ、分かりました。それじゃ、これで解散だな」
マミ 「そうね。じゃあ私たち、帰らせてもらうわね・・・」
ほむら 「ええ」
マミ 「その・・・今日は迷惑をかけて、本当にごめんなさい。でも、おかげで助かったわ」
武蔵 「ありがとうな、みんな」
杏子 「・・・」
マミ 「・・・?どうしたの、佐倉さん。私の顔をじっと見ちゃって」
もう深夜なのだ。
竜馬 「そうだな。考えなきゃならないことはいくらでもあるが、今日は色々ありすぎた。みんな混乱してるだろうし、そんな頭で、何を話し合ったところで意味がない」
一晩寝て、頭と心をすっきりさせるのが先だ。
そう言って、竜馬が場をしめてくれた。
杏子 「ち、分かったよ、分かりました。それじゃ、これで解散だな」
マミ 「そうね。じゃあ私たち、帰らせてもらうわね・・・」
ほむら 「ええ」
マミ 「その・・・今日は迷惑をかけて、本当にごめんなさい。でも、おかげで助かったわ」
武蔵 「ありがとうな、みんな」
杏子 「・・・」
マミ 「・・・?どうしたの、佐倉さん。私の顔をじっと見ちゃって」
882: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:18:45.43 ID:WOH5zeAJ0
杏子 「いやさ・・・マミ。もう平気なのか?その、今日の事だけじゃなくって。ええと、色々と、さ」
マミ 「あ、うん・・・佐倉さんにも心配させちゃったよね。ごめんなさい。そして、ありがとう」
杏子 「別にあたしは心配なんてしてないぞ!ただ、これからの事を考えると、足を引っ張られたくないだけというか・・・」
マミ 「そうね。もう平気よ。お兄ちゃんとも色々話し合ったし、私もこれからどう生きていくか、覚悟も定まったから」
杏子 「そ、そうか・・・」
杏子・・・ほっとした表情をしている。
嬉しいんだろうな。
こんなことを指摘しても、彼女は絶対に認めたりはしないだろうけれど。
やっぱり杏子にとって、マミは特別な人なんだなと、今更ながらに思わせてくれる顔だ。
マミ 「あ、うん・・・佐倉さんにも心配させちゃったよね。ごめんなさい。そして、ありがとう」
杏子 「別にあたしは心配なんてしてないぞ!ただ、これからの事を考えると、足を引っ張られたくないだけというか・・・」
マミ 「そうね。もう平気よ。お兄ちゃんとも色々話し合ったし、私もこれからどう生きていくか、覚悟も定まったから」
杏子 「そ、そうか・・・」
杏子・・・ほっとした表情をしている。
嬉しいんだろうな。
こんなことを指摘しても、彼女は絶対に認めたりはしないだろうけれど。
やっぱり杏子にとって、マミは特別な人なんだなと、今更ながらに思わせてくれる顔だ。
883: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:20:03.24 ID:WOH5zeAJ0
マミ 「その節はごめんね。見苦しいところをたくさん見せちゃった・・・暁美さんも、ね?」
杏子 「よせよ、さっきから何回謝るつもりさ。律儀なのも度が過ぎると、鬱陶しいだけだぜ」
マミ 「そうね、うん、分かった」
ほむら 「巴マミ。もし、今日の事を借りだと思ってくれているなら、これからの事、きちんと話がしたいわ」
マミ 「ええ、もちろんよ」
ほむら 「その返事だけで、十分よ」
おそらく、武蔵と二人きりで過ごした数日間の間に、彼女の心の中で何かが一皮むけたに違いない。
心の迷いから解放された巴マミは、この上なく心強い仲間となってくれるはずだ。
ほむら (それが分かった事が、今日の辛い一日の中での、唯一の収穫だわ)
杏子 「よせよ、さっきから何回謝るつもりさ。律儀なのも度が過ぎると、鬱陶しいだけだぜ」
マミ 「そうね、うん、分かった」
ほむら 「巴マミ。もし、今日の事を借りだと思ってくれているなら、これからの事、きちんと話がしたいわ」
マミ 「ええ、もちろんよ」
ほむら 「その返事だけで、十分よ」
おそらく、武蔵と二人きりで過ごした数日間の間に、彼女の心の中で何かが一皮むけたに違いない。
心の迷いから解放された巴マミは、この上なく心強い仲間となってくれるはずだ。
ほむら (それが分かった事が、今日の辛い一日の中での、唯一の収穫だわ)
884: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:22:33.68 ID:WOH5zeAJ0
武蔵 「よし、それじゃあ、マミちゃん。帰ろうぜ」
マミ 「ええ。ところで佐倉さん、あなたはどうするの?」
杏子 「いつも通りさ。適当に寝床を探して、適当に飯を食って寝るだけだよ」
マミ 「だったら、今晩はうちに泊まらない?良いでしょ、お兄ちゃん」
武蔵 「まぁ、歓迎するぜ」
杏子 「うーん・・・まぁ、今からどこで寝るか決めるのも億劫だし・・・お邪魔するか」
マミ 「決まりね。じゃ、行きましょ。では、暁美さん。また明日、ね」
ほむら 「ええ、明日」
竜馬 「巴マミ」
去りかけたマミを、不意に竜馬が呼び止めた。
マミ 「ええ。ところで佐倉さん、あなたはどうするの?」
杏子 「いつも通りさ。適当に寝床を探して、適当に飯を食って寝るだけだよ」
マミ 「だったら、今晩はうちに泊まらない?良いでしょ、お兄ちゃん」
武蔵 「まぁ、歓迎するぜ」
杏子 「うーん・・・まぁ、今からどこで寝るか決めるのも億劫だし・・・お邪魔するか」
マミ 「決まりね。じゃ、行きましょ。では、暁美さん。また明日、ね」
ほむら 「ええ、明日」
竜馬 「巴マミ」
去りかけたマミを、不意に竜馬が呼び止めた。
885: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:23:42.07 ID:WOH5zeAJ0
マミ 「なぁに?」
竜馬 「こいつ、俺が連れ帰ってもいいんだよな?」
言いながら竜馬が目線を走らせた先には、今だ気を失ったまま身動き一つしないキュウべぇの姿があった。
結界崩壊時に私たちと一緒に、外に放り出されていたのだ。
マミ 「・・・どうして私に許可を取るの」
竜馬 「お前さんがこいつとは一番付き合いが長いからさ。生かすも殺すも、まずは巴マミにお伺いを立ててからと思ってな」
マミ 「わ、私は・・・」
武蔵 「好きにしてくれ」
思わず口ごもるマミに代わって、武蔵が答える。
キュウべぇに騙された事を知った今となっても、情の深いマミはキュウべぇを見捨てるような言葉は、口から出しにくいのだと思う。
だから・・・武蔵はナイスサポート。さすが、お兄さんだわ。
武蔵 「良いな、マミちゃん」
そして、有無を言わせぬ口調でマミに同意を迫る。
この辺り、ただの甘いお兄さんという訳ではなさそうだ。
竜馬 「こいつ、俺が連れ帰ってもいいんだよな?」
言いながら竜馬が目線を走らせた先には、今だ気を失ったまま身動き一つしないキュウべぇの姿があった。
結界崩壊時に私たちと一緒に、外に放り出されていたのだ。
マミ 「・・・どうして私に許可を取るの」
竜馬 「お前さんがこいつとは一番付き合いが長いからさ。生かすも殺すも、まずは巴マミにお伺いを立ててからと思ってな」
マミ 「わ、私は・・・」
武蔵 「好きにしてくれ」
思わず口ごもるマミに代わって、武蔵が答える。
キュウべぇに騙された事を知った今となっても、情の深いマミはキュウべぇを見捨てるような言葉は、口から出しにくいのだと思う。
だから・・・武蔵はナイスサポート。さすが、お兄さんだわ。
武蔵 「良いな、マミちゃん」
そして、有無を言わせぬ口調でマミに同意を迫る。
この辺り、ただの甘いお兄さんという訳ではなさそうだ。
886: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:25:50.68 ID:WOH5zeAJ0
マミ 「え、ええ・・・」
竜馬 「よし、了解だ」
そして。
手を振りながら、今度こそマミたちは帰って行った。
やがて三人の人影は、夜の帳に溶け込むように消えて。
あとに残されたのは、私とリョウとゆまの三人。
ほむら 「そいつ、捨てて帰ってもいいと思うのだけど・・・」
竜馬 「俺もそうは思うんだが、隼人の言った一言が、どうにも気になってな」
悪いようにはしないから、キュウべぇを連れ帰るように。
ゲッターの中で、隼人は竜馬にそう告げたという。
ほむら 「いったい、どういう意味なのかしらね・・・」
竜馬 「皆目見当もつかないが・・・意味のない事を言うはずもない。あの隼人が・・・いや」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「ゲッターが、な」
ほむら 「そうね・・・」
竜馬 「よし、了解だ」
そして。
手を振りながら、今度こそマミたちは帰って行った。
やがて三人の人影は、夜の帳に溶け込むように消えて。
あとに残されたのは、私とリョウとゆまの三人。
ほむら 「そいつ、捨てて帰ってもいいと思うのだけど・・・」
竜馬 「俺もそうは思うんだが、隼人の言った一言が、どうにも気になってな」
悪いようにはしないから、キュウべぇを連れ帰るように。
ゲッターの中で、隼人は竜馬にそう告げたという。
ほむら 「いったい、どういう意味なのかしらね・・・」
竜馬 「皆目見当もつかないが・・・意味のない事を言うはずもない。あの隼人が・・・いや」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「ゲッターが、な」
ほむら 「そうね・・・」
887: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:30:35.22 ID:WOH5zeAJ0
確かに、そうかも知れない。
連れ帰れという言葉の真意は、きっとキュウべぇが目を覚ました時に、明らかになるのだろう。
だからこの件は、ひとまず竜馬に任せることに決めた。
ほむら 「それじゃ、キュウべぇの事は任せたわ。そ、それと・・・リョウ・・・」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「・・・ありがとう、ね?」
竜馬 「なんだよ、藪から棒に」
ほむら 「あの場をうまく収めてくれて。私は人をまとめるの、得意じゃないから」
竜馬 「俺だってそうさ。それに、俺は自分が思ったことを口にしただけだぜ」
ほむら 「・・・え」
竜馬 「言ったろ、今日は色々ありすぎた、と。俺も混乱してるんだよ。隼人が・・・いや、ゲッターが何を考えているのか」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「俺に何をさせようとしているのか、皆目見当がつかない。だが、考え込むには、俺は疲れすぎている」
ほむら 「・・・ねぇ」
竜馬 「?」
疲れている。そういった竜馬に追い打ちをかけるようで後ろめたかったけれど。
私は先ほどから抱いていた懸念を、竜馬に聞いてもらいたいと思った。
連れ帰れという言葉の真意は、きっとキュウべぇが目を覚ました時に、明らかになるのだろう。
だからこの件は、ひとまず竜馬に任せることに決めた。
ほむら 「それじゃ、キュウべぇの事は任せたわ。そ、それと・・・リョウ・・・」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「・・・ありがとう、ね?」
竜馬 「なんだよ、藪から棒に」
ほむら 「あの場をうまく収めてくれて。私は人をまとめるの、得意じゃないから」
竜馬 「俺だってそうさ。それに、俺は自分が思ったことを口にしただけだぜ」
ほむら 「・・・え」
竜馬 「言ったろ、今日は色々ありすぎた、と。俺も混乱してるんだよ。隼人が・・・いや、ゲッターが何を考えているのか」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「俺に何をさせようとしているのか、皆目見当がつかない。だが、考え込むには、俺は疲れすぎている」
ほむら 「・・・ねぇ」
竜馬 「?」
疲れている。そういった竜馬に追い打ちをかけるようで後ろめたかったけれど。
私は先ほどから抱いていた懸念を、竜馬に聞いてもらいたいと思った。
888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:35:58.14 ID:WOH5zeAJ0
ほむら 「・・・私も、ゲッターはあなた以上に分からない。いえ、知らない」
竜馬 「暁美・・・?」
ほむら 「だから思うの。私もいずれ、仁美たちみたいに、ゲッターにすべてを取り込まれてしまうのじゃないかしらって」
懸念というより、それは恐怖と言った方が良い感情だったかもしれない。
死は恐れない。そんな覚悟は、とっくに定まっている。
まどかのためだったら、私はどんな運命だって受け入れる。
だけれど・・・
ほむら 「得体の知れない物に、納得がいかないまま死を下されるのだけは、絶対に嫌なの」
竜馬 「暁美・・・すまないが、俺がその答えを出してやることはできない。言ったろ、俺もゲッターが何をやろうとしているのか、分からないんだ」
ほむら 「うん、知ってる。ただ、聞いてもらいたかっただけ。ごめんね」
明確な答えを期待したわけじゃない。
一人で抱え込むのが、あまりに重い感情だったから。
仲間に・・・竜馬に共有してほしいというだけの、私のわがまま。
竜馬 「だがな」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「暁美・・・?」
ほむら 「だから思うの。私もいずれ、仁美たちみたいに、ゲッターにすべてを取り込まれてしまうのじゃないかしらって」
懸念というより、それは恐怖と言った方が良い感情だったかもしれない。
死は恐れない。そんな覚悟は、とっくに定まっている。
まどかのためだったら、私はどんな運命だって受け入れる。
だけれど・・・
ほむら 「得体の知れない物に、納得がいかないまま死を下されるのだけは、絶対に嫌なの」
竜馬 「暁美・・・すまないが、俺がその答えを出してやることはできない。言ったろ、俺もゲッターが何をやろうとしているのか、分からないんだ」
ほむら 「うん、知ってる。ただ、聞いてもらいたかっただけ。ごめんね」
明確な答えを期待したわけじゃない。
一人で抱え込むのが、あまりに重い感情だったから。
仲間に・・・竜馬に共有してほしいというだけの、私のわがまま。
竜馬 「だがな」
ほむら 「え・・・?」
889: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:38:24.23 ID:WOH5zeAJ0
竜馬 「隼人はお前を後継者と認めたんだし、敵とは認識していない。だったら、志筑や呉みたいな事にはならないはずだと、俺は思うがな」
ほむら 「そうかしら」
竜馬 「ああ。それに、仮にお前に何かしようってんなら、ぶん殴ってでも俺が隼人を止めてやる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「あいつとは何度も殴り合った仲だが、けっきょく決着はつけられなかったままだからな。良い機会かもしれない」
ほむら 「・・・ふふ、ありがとう、リョウ。少し気持ちが軽くなったわ」
竜馬 「なによりだ。それじゃ、俺たちも帰るとしようか。部屋まで送るぜ」
ほむら 「・・・ありがとう。じゃあ、いきましょう、ゆま」
ゆま 「うん」
私たちは三人並んで、私の部屋への帰路を歩き始めた。
ほむら 「そうかしら」
竜馬 「ああ。それに、仮にお前に何かしようってんなら、ぶん殴ってでも俺が隼人を止めてやる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「あいつとは何度も殴り合った仲だが、けっきょく決着はつけられなかったままだからな。良い機会かもしれない」
ほむら 「・・・ふふ、ありがとう、リョウ。少し気持ちが軽くなったわ」
竜馬 「なによりだ。それじゃ、俺たちも帰るとしようか。部屋まで送るぜ」
ほむら 「・・・ありがとう。じゃあ、いきましょう、ゆま」
ゆま 「うん」
私たちは三人並んで、私の部屋への帰路を歩き始めた。
890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:39:51.04 ID:WOH5zeAJ0
・・・
・・・
私たちは、ほとんど無言のままで歩を進めていた。
疲れすぎていたせいもあるけれど、それ以上に。
私も竜馬も、ゆまにどう声をかけたら良いのか。
判断がつきかねていたからだ。
ほむら (ゆま・・・魔法少女の真実を知っても、取り乱すところか、泣き言ひとつ言おうとしない)
平気なはずがない。自分が魔女になる運命から逃れ得ないと知れば、あの時のマミのように正体を失ってもおかしくはないのだ。
ほむら (いえ、むしろそれが正常なんだと思う)
それも幼い少女なのだ。受け止めきれるはずがない。
なのに・・・
私の横を歩くゆまは、眠気と疲労でふらふらしてはいても、別段ショックを受けているようには見えなかった。
・・・
私たちは、ほとんど無言のままで歩を進めていた。
疲れすぎていたせいもあるけれど、それ以上に。
私も竜馬も、ゆまにどう声をかけたら良いのか。
判断がつきかねていたからだ。
ほむら (ゆま・・・魔法少女の真実を知っても、取り乱すところか、泣き言ひとつ言おうとしない)
平気なはずがない。自分が魔女になる運命から逃れ得ないと知れば、あの時のマミのように正体を失ってもおかしくはないのだ。
ほむら (いえ、むしろそれが正常なんだと思う)
それも幼い少女なのだ。受け止めきれるはずがない。
なのに・・・
私の横を歩くゆまは、眠気と疲労でふらふらしてはいても、別段ショックを受けているようには見えなかった。
891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:41:56.94 ID:WOH5zeAJ0
強がり・・・を通せるほど、器用な子とも思えないし。
では・・・
ゆま 「ゆまの事ね、心配してくれてるんでしょ。ありがとう、ほむらお姉ちゃん」
ほむら 「え、あ・・・ううん、そういうわけじゃ・・・」
心を見透かされたように不意に話しかけられ、とっさの返事に詰まる私。
ゆま 「だけど平気だよ。ゆま、だいじょうぶだから」
私を見上げながら、柔らかく笑うゆま。
その笑顔はあまりに自然で、無理をしている様子は微塵も感じられなかった。
竜馬 「ガキのくせに、見かけ以上に強いやつなんだな、お前は」
竜馬がくしゃくしゃと、ゆまの頭を撫でる。
くすぐったそうにしながらも、えへへと笑いながら竜馬の愛 を受け入れていたゆまだったけど。
ゆま 「・・・」
急に真顔に戻ると、うつむいてしまった。
では・・・
ゆま 「ゆまの事ね、心配してくれてるんでしょ。ありがとう、ほむらお姉ちゃん」
ほむら 「え、あ・・・ううん、そういうわけじゃ・・・」
心を見透かされたように不意に話しかけられ、とっさの返事に詰まる私。
ゆま 「だけど平気だよ。ゆま、だいじょうぶだから」
私を見上げながら、柔らかく笑うゆま。
その笑顔はあまりに自然で、無理をしている様子は微塵も感じられなかった。
竜馬 「ガキのくせに、見かけ以上に強いやつなんだな、お前は」
竜馬がくしゃくしゃと、ゆまの頭を撫でる。
くすぐったそうにしながらも、えへへと笑いながら竜馬の愛 を受け入れていたゆまだったけど。
ゆま 「・・・」
急に真顔に戻ると、うつむいてしまった。
892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:43:34.53 ID:WOH5zeAJ0
何かを言いたげで、だけれど言っても良いのか分からない。
そんな迷いを、地面を見つめるゆまの表情が語っているように、私には感じられた。
ほむら 「ゆま、どうかしたの?」
ゆま 「うん・・・」
ほむら 「言いたいことがあったら、言っちゃって良いのよ。スッキリするから」
ゆま 「そうだね。あのね・・・」
ゆまは、うつむいた顔を上げないままで。
ぽつりぽつりと話し始めた。
ゆま 「リョウお兄さんはゆまのコト強いって言ってくれたけど、違うよ。ゆまね、強くなんかない。ただ、知ってるだけ」
竜馬 「知ってる?何を・・・?」
ゆま 「良い事があったらね、良くない事もいっしょに起こるって、それを知ってるだけ」
ほむら 「・・・え?」
そんな迷いを、地面を見つめるゆまの表情が語っているように、私には感じられた。
ほむら 「ゆま、どうかしたの?」
ゆま 「うん・・・」
ほむら 「言いたいことがあったら、言っちゃって良いのよ。スッキリするから」
ゆま 「そうだね。あのね・・・」
ゆまは、うつむいた顔を上げないままで。
ぽつりぽつりと話し始めた。
ゆま 「リョウお兄さんはゆまのコト強いって言ってくれたけど、違うよ。ゆまね、強くなんかない。ただ、知ってるだけ」
竜馬 「知ってる?何を・・・?」
ゆま 「良い事があったらね、良くない事もいっしょに起こるって、それを知ってるだけ」
ほむら 「・・・え?」
893: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:46:07.76 ID:WOH5zeAJ0
ゆま 「魔法少女になった時もそうだったよ。ゆまね、怒られたくなたったの」
ほむら 「怒られる・・・?だれに?」
私も竜馬も、ゆまが何を願い、何を望んで魔法少女になったのかを知らない。
武蔵だけはそれとなく聞いていたようだったけれど、彼もゆま本人も私たちには教えようとはしなかった。
デリケートな問題だから、言いにくい事もあるのだろう。
そう思って、こちらから話題にすることは避けていたのだけれど・・・
ゆま 「パパとママに。だからね、キュウべぇにお願いしたの。もう、怒られるようなことが起こりませんように、って」
ほむら 「そ、それで・・・?」
ゆま 「叶ったよ。もう、ゆまは怒られない。二度と・・・」
ほむら 「それって・・・」
竜馬 「お前の親父さんたちは、それからどうなったんだ?」
ゆま 「いまなら、ゆまの事を”怒られない良い子にして下さい”って祈ればよかったのなって、そう思うけど。もしかしたら、ゆまはあの時・・・」
ほむら 「・・・」
ゆま 「あの時、心のどこかで怒りんぼのパパやママなんか、いなくなってしまえって。考えちゃってたのかもしれないなって」
竜馬 「ま、まさか・・・」
ほむら 「怒られる・・・?だれに?」
私も竜馬も、ゆまが何を願い、何を望んで魔法少女になったのかを知らない。
武蔵だけはそれとなく聞いていたようだったけれど、彼もゆま本人も私たちには教えようとはしなかった。
デリケートな問題だから、言いにくい事もあるのだろう。
そう思って、こちらから話題にすることは避けていたのだけれど・・・
ゆま 「パパとママに。だからね、キュウべぇにお願いしたの。もう、怒られるようなことが起こりませんように、って」
ほむら 「そ、それで・・・?」
ゆま 「叶ったよ。もう、ゆまは怒られない。二度と・・・」
ほむら 「それって・・・」
竜馬 「お前の親父さんたちは、それからどうなったんだ?」
ゆま 「いまなら、ゆまの事を”怒られない良い子にして下さい”って祈ればよかったのなって、そう思うけど。もしかしたら、ゆまはあの時・・・」
ほむら 「・・・」
ゆま 「あの時、心のどこかで怒りんぼのパパやママなんか、いなくなってしまえって。考えちゃってたのかもしれないなって」
竜馬 「ま、まさか・・・」
894: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:50:25.88 ID:WOH5zeAJ0
ゆま 「パパもママも、食べられちゃった。ゆまの見てる前で魔女に」
ほむら・竜馬 「・・・っ!」
ゆま 「もう怒られない。でも、パパもママもいなくなっちゃった。良い事の後にはきっと、悪い事が起きるんだよ」
竜馬 「なんてこった・・・」
ゆま 「でもね」
ほむら 「・・・?」
ゆま 「ゆまは一人になっちゃったから、だからきょーこに拾ってもらえたの。ほむらお姉ちゃん達にも出会えて、優しくしてもらえたんだよ」
ほむら 「ゆま・・・私は・・・」
ゆまが時折見せるさみしそうな表情の裏で・・・
そのような事を考えていたなんて。
私は全然気がつけなかった。
ゆま 「だからね、そろそろじゃないかなって思ってたんだ。次は悪い事が起こる番。魔女になっちゃうなんて、そこまでは考えていなかったけど」
今の生活が、程なく壊れてしまうに違いない。
そんな不安と諦めの中で、弱音一つ吐かずに、彼女は私たちに笑顔を見せ続けてきたのだ。
幼いゆまにとって、それはどれほど辛い事だったのだろう。
ほむら・竜馬 「・・・っ!」
ゆま 「もう怒られない。でも、パパもママもいなくなっちゃった。良い事の後にはきっと、悪い事が起きるんだよ」
竜馬 「なんてこった・・・」
ゆま 「でもね」
ほむら 「・・・?」
ゆま 「ゆまは一人になっちゃったから、だからきょーこに拾ってもらえたの。ほむらお姉ちゃん達にも出会えて、優しくしてもらえたんだよ」
ほむら 「ゆま・・・私は・・・」
ゆまが時折見せるさみしそうな表情の裏で・・・
そのような事を考えていたなんて。
私は全然気がつけなかった。
ゆま 「だからね、そろそろじゃないかなって思ってたんだ。次は悪い事が起こる番。魔女になっちゃうなんて、そこまでは考えていなかったけど」
今の生活が、程なく壊れてしまうに違いない。
そんな不安と諦めの中で、弱音一つ吐かずに、彼女は私たちに笑顔を見せ続けてきたのだ。
幼いゆまにとって、それはどれほど辛い事だったのだろう。
895: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:54:32.07 ID:WOH5zeAJ0
ゆま 「へへ・・・っ」
ゆまが顔を上げ、再び私を見上げた。
いつもと同じ、誰もが癒されるような、ヒマワリのように明るい笑顔を浮かべて。
ゆま 「だからね、ゆまは平気なの」
ほむら 「・・・あっ」
その笑顔に対し、私は二の句が継げなかった。
何と答えて良いのか分からない。
竜馬 「ならねぇよ」
そんな私に代わって、ゆまの話を受けてくれたのは竜馬だった。
竜馬 「魔女になんか、なりゃしねぇよ」
再びゆまの頭を撫でながら、竜馬が言う。
ゆまが顔を上げ、再び私を見上げた。
いつもと同じ、誰もが癒されるような、ヒマワリのように明るい笑顔を浮かべて。
ゆま 「だからね、ゆまは平気なの」
ほむら 「・・・あっ」
その笑顔に対し、私は二の句が継げなかった。
何と答えて良いのか分からない。
竜馬 「ならねぇよ」
そんな私に代わって、ゆまの話を受けてくれたのは竜馬だった。
竜馬 「魔女になんか、なりゃしねぇよ」
再びゆまの頭を撫でながら、竜馬が言う。
896: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 21:57:03.02 ID:WOH5zeAJ0
竜馬 「絶望しなけりゃいいんだ。楽しい事を見つけろ。やりたい事を探せ。生きる意義を考えろ」
ゆま 「え・・・え・・・?」
竜馬 「悲しかった過去は後ろに置いて行け。前だけ見つめて歩き続けりゃ、人はそうそう絶望するもんじゃない」
ゆま 「だけど、そんな事・・・ゆまは弱いし、悲しかったことを忘れるなんて、できないし・・・」
竜馬 「できる。暁美が実証している」
ほむら 「・・・えっ」
竜馬 「暁美は守りたい者のために、今を生きている。その目的がある限り、暁美は絶望せずに前だけを向いて生きていけるんだ」
ほむら 「ちょ、ちょっと・・・」
不意に持ち上げられて、慌ててしまう私。
私はそんなに立派なものじゃない。じゅうぶん後ろ向きだし、心の均衡を保っているのも実はギリギリの綱渡りだ。
だけれど・・・
竜馬 「そうだろ、暁美」
確かに・・・
それでも絶望せずにいられるのは、まどかを守り通すという望みがあるため。
生きる目標があるからこそ、私は絶望の淵に身を沈めることなく、今日までやってこられたのだ。
ほむら 「そうね」
それに今は・・・
ゆま 「え・・・え・・・?」
竜馬 「悲しかった過去は後ろに置いて行け。前だけ見つめて歩き続けりゃ、人はそうそう絶望するもんじゃない」
ゆま 「だけど、そんな事・・・ゆまは弱いし、悲しかったことを忘れるなんて、できないし・・・」
竜馬 「できる。暁美が実証している」
ほむら 「・・・えっ」
竜馬 「暁美は守りたい者のために、今を生きている。その目的がある限り、暁美は絶望せずに前だけを向いて生きていけるんだ」
ほむら 「ちょ、ちょっと・・・」
不意に持ち上げられて、慌ててしまう私。
私はそんなに立派なものじゃない。じゅうぶん後ろ向きだし、心の均衡を保っているのも実はギリギリの綱渡りだ。
だけれど・・・
竜馬 「そうだろ、暁美」
確かに・・・
それでも絶望せずにいられるのは、まどかを守り通すという望みがあるため。
生きる目標があるからこそ、私は絶望の淵に身を沈めることなく、今日までやってこられたのだ。
ほむら 「そうね」
それに今は・・・
897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:02:33.62 ID:WOH5zeAJ0
ほむら 「リョウの言っていた事と、もう一つ。ともにいてくれる仲間が・・・友達がいれば。だから、ゆま」
ゆま 「はうっ」
竜馬の手の上から、私もゆまの頭へと手を添える。
ふんわりと。
竜馬の手を通して、ゆまの柔らかい髪の毛の感触と、そして。
彼女の体温が、じんわりと優しく伝わってきた。
ゆま 「・・・」
ほむら 「あなたが私の支えとなってくれているように、私やリョウがあなたの支えとなれたら、とっても嬉しい」
リョウのおかげで、仲間を信じる強さというものを、得る事ができた私だから。
ゆまにもそうあって欲しいと、切に思う。
ゆま 「良いの?ゆま、お姉ちゃん達のお友達でいて、本当にいいの?」
竜馬 「当然だ。佐倉や武蔵、巴マミだって同じ事を言うだろうぜ」
ゆま 「そっか・・・そっか・・・へへ・・・なんだか不思議」
ほむら 「なにが?」
ゆま 「良い事の後に、また良い事が起っちゃったよ。こんなの初めて」
ほむら 「ゆま・・・」
ゆま 「はうっ」
竜馬の手の上から、私もゆまの頭へと手を添える。
ふんわりと。
竜馬の手を通して、ゆまの柔らかい髪の毛の感触と、そして。
彼女の体温が、じんわりと優しく伝わってきた。
ゆま 「・・・」
ほむら 「あなたが私の支えとなってくれているように、私やリョウがあなたの支えとなれたら、とっても嬉しい」
リョウのおかげで、仲間を信じる強さというものを、得る事ができた私だから。
ゆまにもそうあって欲しいと、切に思う。
ゆま 「良いの?ゆま、お姉ちゃん達のお友達でいて、本当にいいの?」
竜馬 「当然だ。佐倉や武蔵、巴マミだって同じ事を言うだろうぜ」
ゆま 「そっか・・・そっか・・・へへ・・・なんだか不思議」
ほむら 「なにが?」
ゆま 「良い事の後に、また良い事が起っちゃったよ。こんなの初めて」
ほむら 「ゆま・・・」
898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 22:05:39.99 ID:WOH5zeAJ0
竜馬 「だったら、次も良い事が起こるだろうぜ。二度あることは三度あるって言うしな」
ゆま 「うん、えへへ」
照れくさそうにはにかむ、そんなゆまの笑顔を見ながら。
私はもう片方の手で、ポケットの中のグリーフシードを、そっと握っていた。
ほむら (もう、たくさんだ)
かつての時間軸で多くの仲間を失い、この時間軸でも友人を失った。
もうたくさんなのだ、あんな想いを味わうのは。
だから、これ以上はもう、絶対。
ほむら (誰の笑顔も、欠けさせてはいけない)
皆でワルプルギスの夜を乗り切り、私もまだ知らない未来を友達全員で生きるんだ。
左右の掌が触れている、それぞれの物に、大切な友人に。
私はそう誓ったのだった。
ゆま 「うん、えへへ」
照れくさそうにはにかむ、そんなゆまの笑顔を見ながら。
私はもう片方の手で、ポケットの中のグリーフシードを、そっと握っていた。
ほむら (もう、たくさんだ)
かつての時間軸で多くの仲間を失い、この時間軸でも友人を失った。
もうたくさんなのだ、あんな想いを味わうのは。
だから、これ以上はもう、絶対。
ほむら (誰の笑顔も、欠けさせてはいけない)
皆でワルプルギスの夜を乗り切り、私もまだ知らない未来を友達全員で生きるんだ。
左右の掌が触れている、それぞれの物に、大切な友人に。
私はそう誓ったのだった。
907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 19:55:55.66 ID:bAZriduZ0
・・・
・・・
まどか 「ほ、ほむらちゃーん!」
思いがけない出迎えに驚かされたのは、私の部屋にたどり着く直前の事だった。
私たちを見送ったあと、ずっと帰りを待っていたまどかが、まろぶように駆けてきたのだ。
ほむら 「ま、まどか・・・」
面喰ってしまった私にお構いなく、まどかが質問の嵐をまくし立てる。
まどか 「ほむらちゃん、マミさんは!?マミさんとお兄さんは無事なの!?あれからどうなったの!?ねぇ、ほむらちゃん!」
ほむら 「ちょ、お・・・落ち着いて・・・」
まどか 「ほむらちゃんー・・・」
私の両肩をがしっと掴んで、今にも泣くき出しそうな顔をグイグイと寄せてくる。
うあ・・・ち、近い・・・
908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:00:44.29 ID:bAZriduZ0
竜馬 「まぁまぁ、落ち着け、鹿目」
見かねた竜馬が間に入ってくれる。
まどか 「あ、流君・・・」
竜馬 「お前、ずっとここで俺たちの帰りを待っていたのか?」
まどか 「うん・・・ていうか、流君が持ってる白いのって、キュウべぇ・・・?」
竜馬 「あー、こいつの事は気にするな。寝ぼけて起きないから、俺の家に連れて帰るのさ」
まどか 「そ、そう・・・えと、そ、それでね。私、家でじっとなんてしてられなかったの。私のせいでマミさんがあんな事になっちゃったのに・・・」
竜馬 「お前のせいじゃないさ。鹿目はたまたま、あの場にいただけ、巻き込まれたのはお前の方だろう」
まどか 「うん・・・それでも・・・」
ほむら 「まどか・・・」
見かねた竜馬が間に入ってくれる。
まどか 「あ、流君・・・」
竜馬 「お前、ずっとここで俺たちの帰りを待っていたのか?」
まどか 「うん・・・ていうか、流君が持ってる白いのって、キュウべぇ・・・?」
竜馬 「あー、こいつの事は気にするな。寝ぼけて起きないから、俺の家に連れて帰るのさ」
まどか 「そ、そう・・・えと、そ、それでね。私、家でじっとなんてしてられなかったの。私のせいでマミさんがあんな事になっちゃったのに・・・」
竜馬 「お前のせいじゃないさ。鹿目はたまたま、あの場にいただけ、巻き込まれたのはお前の方だろう」
まどか 「うん・・・それでも・・・」
ほむら 「まどか・・・」
909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:05:53.38 ID:bAZriduZ0
竜馬 「それでも、お前の気持ちは分かるぜ、鹿目。だが、それはそれとして、こんな時間まで外にいて、家の人は心配してないのか?」
まどか 「う、うん、それは平気。ママには友達の家に泊まるって電話しておいたから」
竜馬 「電話一本で許してくれたのか。けっこう放任主義なのか、鹿目の親御さんは」
ほむら 「そうじゃない。信用されてるのよ」
なんにしても、まどかも無茶をする。
日付も変わってしまった深夜になるまで、若い女の子が一人で、こんな屋外で何時間も。
すでに季節は春とはいっても、日が落ちた後はまだまだ冷える。
そんな中を、いつ帰るかもわからない私たちを外で一人で何時間も待っているなんて・・・
さぞかし、心細かったことだろう。
まどか 「う、うん、それは平気。ママには友達の家に泊まるって電話しておいたから」
竜馬 「電話一本で許してくれたのか。けっこう放任主義なのか、鹿目の親御さんは」
ほむら 「そうじゃない。信用されてるのよ」
なんにしても、まどかも無茶をする。
日付も変わってしまった深夜になるまで、若い女の子が一人で、こんな屋外で何時間も。
すでに季節は春とはいっても、日が落ちた後はまだまだ冷える。
そんな中を、いつ帰るかもわからない私たちを外で一人で何時間も待っているなんて・・・
さぞかし、心細かったことだろう。
910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:12:04.13 ID:bAZriduZ0
ほむら 「なら、鹿目さん。本当にうちに泊まっていけば良いわ。泊まると断っている以上、今から帰っても却って心配させるだけでしょう」
まどか 「うぇひぃ・・・い、良いのかな。というより、それよりもマミさんの事を・・・」
ほむら 「その話もするわ。なんにしても、こんな所でたむろしていては、近所迷惑になるだけだから」
まどか 「あ・・・そ、そっか・・・ごめんね」
そんなやり取りの間に、気を利かせてくれたゆまが、ドアのカギを開けてくれた。
ゆま 「お姉ちゃん、どうぞ」
まどか 「あ、ありがとう。えっと、あなたは・・・」
ゆま 「千歳ゆまです!」
ほむら 「先日、お昼に言ったでしょ。私のお弁当箱を選んでくれた、知り合いの子の話。この子がそうよ」
まどか 「あ、そっかぁ・・・えっと、初めまして、鹿目まどかです」
ほむら 「私と同じ、魔法少女なんだけれどね」
まどか 「え・・・」
まどか 「うぇひぃ・・・い、良いのかな。というより、それよりもマミさんの事を・・・」
ほむら 「その話もするわ。なんにしても、こんな所でたむろしていては、近所迷惑になるだけだから」
まどか 「あ・・・そ、そっか・・・ごめんね」
そんなやり取りの間に、気を利かせてくれたゆまが、ドアのカギを開けてくれた。
ゆま 「お姉ちゃん、どうぞ」
まどか 「あ、ありがとう。えっと、あなたは・・・」
ゆま 「千歳ゆまです!」
ほむら 「先日、お昼に言ったでしょ。私のお弁当箱を選んでくれた、知り合いの子の話。この子がそうよ」
まどか 「あ、そっかぁ・・・えっと、初めまして、鹿目まどかです」
ほむら 「私と同じ、魔法少女なんだけれどね」
まどか 「え・・・」
911: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:13:46.22 ID:bAZriduZ0
ほむら 「今は事情があって、一緒に住んでいるの」
ゆま 「えへへー」
まどか 「・・・」
まどかの表情が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。
無理もない。敵対する魔法少女の存在を目の当たりにしたばかりなのだ。
今のまどかにとって、魔法少女という存在は、あこがれの対象とはまた違った意味を持ち始めているのだろう。
ほむら (それはいい傾向だわ。魔法少女に対する淡い幻想なんて、打ち砕かれてしまった方が良い)
ただ、ゆまに対する警戒感だけは解いておきたい。
ゆまの事、できればまどかにも好きになって欲しいから。
まどか 「そっか、魔法少女なんだ・・・」
ゆま 「・・・?」
ほむら 「良い子よ。本当の妹みたいに、思えるほどに」
ゆま 「えー///」
まどか 「そう・・・そっか。そうだよね、ほむらちゃんと一緒にいるんだもんね」
ゆま 「えへへー」
まどか 「・・・」
まどかの表情が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。
無理もない。敵対する魔法少女の存在を目の当たりにしたばかりなのだ。
今のまどかにとって、魔法少女という存在は、あこがれの対象とはまた違った意味を持ち始めているのだろう。
ほむら (それはいい傾向だわ。魔法少女に対する淡い幻想なんて、打ち砕かれてしまった方が良い)
ただ、ゆまに対する警戒感だけは解いておきたい。
ゆまの事、できればまどかにも好きになって欲しいから。
まどか 「そっか、魔法少女なんだ・・・」
ゆま 「・・・?」
ほむら 「良い子よ。本当の妹みたいに、思えるほどに」
ゆま 「えー///」
まどか 「そう・・・そっか。そうだよね、ほむらちゃんと一緒にいるんだもんね」
912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:20:58.83 ID:bAZriduZ0
ほむら 「・・・さぁ鹿目さん、上がって。えっと・・・リョウは」
竜馬 「俺は帰るぜ。それでな、暁美」
ほむら 「え・・・?」
竜馬が顔を近づけ、私の耳元で一言。
竜馬 「志筑の件、鹿目には黙っておいた方が良いんじゃないか」
ほむら 「・・・」
それだけを言うと、竜馬は手を振りつつ、スタスタとその場から去っていった。
志筑仁美の件、言うべきではない。竜馬がそう言うのは分かるし、私だって言いたくはない。
言えば、どれだけまどかが悲しむか。そんなの想像するまでもない事だもの。
だけれど、真実に蓋をして、まどかを騙すようなことをして、それで本当に正解と言えるのだろうか。
・・・私には、すぐに答えを出す事なんてできない。
まどか 「ほむらちゃん、どうかしたの?」
ほむら 「え、ううん・・・なんでも。さぁ、入って。鹿目さん、お腹がすいたでしょう?」
私は思索を打ち切って、まどかを部屋へと招き入れた。
まずはお腹に何かを入れよう。まどかだけじゃない。ゆまにも何か食べさせてあげなくてはいけないし、私だってお腹がぺこぺこだ。
ほむら (こんな状況なのに、お腹はきちんと減るものなのね)
竜馬 「俺は帰るぜ。それでな、暁美」
ほむら 「え・・・?」
竜馬が顔を近づけ、私の耳元で一言。
竜馬 「志筑の件、鹿目には黙っておいた方が良いんじゃないか」
ほむら 「・・・」
それだけを言うと、竜馬は手を振りつつ、スタスタとその場から去っていった。
志筑仁美の件、言うべきではない。竜馬がそう言うのは分かるし、私だって言いたくはない。
言えば、どれだけまどかが悲しむか。そんなの想像するまでもない事だもの。
だけれど、真実に蓋をして、まどかを騙すようなことをして、それで本当に正解と言えるのだろうか。
・・・私には、すぐに答えを出す事なんてできない。
まどか 「ほむらちゃん、どうかしたの?」
ほむら 「え、ううん・・・なんでも。さぁ、入って。鹿目さん、お腹がすいたでしょう?」
私は思索を打ち切って、まどかを部屋へと招き入れた。
まずはお腹に何かを入れよう。まどかだけじゃない。ゆまにも何か食べさせてあげなくてはいけないし、私だってお腹がぺこぺこだ。
ほむら (こんな状況なのに、お腹はきちんと減るものなのね)
913: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:27:31.37 ID:bAZriduZ0
・・・
・・・
さすがに今からでは、料理をする気にはなれない。
私は久々に、買い置きの出来合いを食卓に並べることにした。
ゆまが慣れた手つきで、食器を並べたり湯を沸かしてくれたりと、てきぱきと手伝ってくれる。
そして出来上がった食事を口にしながら、私はマミ救出の顛末を語ることにした。
ほむら (食べながら話した方が、深刻な感じにならなくて話しやすそうだから・・・)
私はできるだけ簡潔に、まどかと別れた後の出来事を語って聞かせた。
そう、簡潔に・・・省略できることは省いて。
敵対した魔法少女たちの中に仁美がいたという事と、仁美を含めた数人が死んでしまった事。
それらの事にはわざと触れずに、あくまでマミを無事救出できたことのみを強調し、最後に敵の親玉には逃げられてしまった事。
それだけを付け加えて、私は話を終えた。
・・・
さすがに今からでは、料理をする気にはなれない。
私は久々に、買い置きの出来合いを食卓に並べることにした。
ゆまが慣れた手つきで、食器を並べたり湯を沸かしてくれたりと、てきぱきと手伝ってくれる。
そして出来上がった食事を口にしながら、私はマミ救出の顛末を語ることにした。
ほむら (食べながら話した方が、深刻な感じにならなくて話しやすそうだから・・・)
私はできるだけ簡潔に、まどかと別れた後の出来事を語って聞かせた。
そう、簡潔に・・・省略できることは省いて。
敵対した魔法少女たちの中に仁美がいたという事と、仁美を含めた数人が死んでしまった事。
それらの事にはわざと触れずに、あくまでマミを無事救出できたことのみを強調し、最後に敵の親玉には逃げられてしまった事。
それだけを付け加えて、私は話を終えた。
914: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:29:26.90 ID:bAZriduZ0
ほむら (仁美の事、いつまで黙っているべきなのかは分からない。分からないけど、今は・・・)
マミの事で焦燥し、今にも泣きだしそうな顔で賭けよって来た時のまどかの顔を思い浮かべると・・・
とても今、この場で話す事なんて、私にはできなかった。
だって・・・
まどか 「ほんと!?よかった・・・良かったぁー!マミさんにもしもの事があったら、私どうしようかと・・・」
マミの無事を知り、うれし涙を流さんばかりに喜んでいるまどかの顔を、悲嘆の涙で曇らせる真似なんて、私には・・・
まどか 「今からメールしたんじゃ、迷惑かな。マミさん、明日学校に来るよね。朝一番で、教室に会いに行かなきゃ!」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひっ、ごめんね、ほむらちゃん。私一人ではしゃいじゃって」
ほむら 「・・・ううん、良いのよ。さ、ご飯が終わったら、もう休みましょ。すっかり遅くなってしまったわ」
まどか 「うん、朝寝坊しないようにしないとだね。えへへ・・・」
ほむら 「そうね・・・」
・・・言えるはず、ないじゃないか。
マミの事で焦燥し、今にも泣きだしそうな顔で賭けよって来た時のまどかの顔を思い浮かべると・・・
とても今、この場で話す事なんて、私にはできなかった。
だって・・・
まどか 「ほんと!?よかった・・・良かったぁー!マミさんにもしもの事があったら、私どうしようかと・・・」
マミの無事を知り、うれし涙を流さんばかりに喜んでいるまどかの顔を、悲嘆の涙で曇らせる真似なんて、私には・・・
まどか 「今からメールしたんじゃ、迷惑かな。マミさん、明日学校に来るよね。朝一番で、教室に会いに行かなきゃ!」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひっ、ごめんね、ほむらちゃん。私一人ではしゃいじゃって」
ほむら 「・・・ううん、良いのよ。さ、ご飯が終わったら、もう休みましょ。すっかり遅くなってしまったわ」
まどか 「うん、朝寝坊しないようにしないとだね。えへへ・・・」
ほむら 「そうね・・・」
・・・言えるはず、ないじゃないか。
915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:34:49.57 ID:bAZriduZ0
・・・
・・・
竜馬の家への帰路。
キュウべぇ 「・・・」ぶるぶるっ
キュウべぇが竜馬の肩の上で、身体を大きく震わせた。
竜馬 「・・・お、気がついたか」
キュウべぇ 「こ、ここは・・・?」
竜馬 「俺の家へ帰る途中さ。お前にはしばらく、俺と付き合ってもらうぜ」
キュウべぇ 「な、なぜ・・・?」
竜馬 「隼人がお前を連れて帰るように促したのさ。悪いようにはしないと」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「それで、これから僕をどうするつもりだい?・・・僕を殺すの?」
竜馬 (なんだ、こいつ・・・なんだか様子・・・というか、雰囲気が変だ)
・・・
竜馬の家への帰路。
キュウべぇ 「・・・」ぶるぶるっ
キュウべぇが竜馬の肩の上で、身体を大きく震わせた。
竜馬 「・・・お、気がついたか」
キュウべぇ 「こ、ここは・・・?」
竜馬 「俺の家へ帰る途中さ。お前にはしばらく、俺と付き合ってもらうぜ」
キュウべぇ 「な、なぜ・・・?」
竜馬 「隼人がお前を連れて帰るように促したのさ。悪いようにはしないと」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「それで、これから僕をどうするつもりだい?・・・僕を殺すの?」
竜馬 (なんだ、こいつ・・・なんだか様子・・・というか、雰囲気が変だ)
916: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:39:28.41 ID:bAZriduZ0
竜馬 「お前をどうするかは、まだ考えていないが・・・殺すつもりなら、わざわざ連れて帰ったりなんざしねぇよ」
キュウべぇ 「そ、そう・・・」
竜馬 (こいつ・・・殺されないと聞いて、”ホッと”したのか?感情の無いはずの、キュウべぇが?)
竜馬 「・・・」じー・・・
キュウべぇ 「な、なんだい・・・?僕をそんな、じっと見たりして・・・」
竜馬 「やっぱり、お前」
キュウべぇ 「え・・・?」
竜馬 「怯えているのか?」
キュウべぇ 「・・・!?」
竜馬 「さっきから、態度がおおよそお前らしくねぇ。いったいどうしたってんだ?」
キュウべぇ 「ぼ、僕が怯えている・・・?そんな馬鹿な・・・え、でも、今僕は狼狽えて・・・」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「そ、そう・・・」
竜馬 (こいつ・・・殺されないと聞いて、”ホッと”したのか?感情の無いはずの、キュウべぇが?)
竜馬 「・・・」じー・・・
キュウべぇ 「な、なんだい・・・?僕をそんな、じっと見たりして・・・」
竜馬 「やっぱり、お前」
キュウべぇ 「え・・・?」
竜馬 「怯えているのか?」
キュウべぇ 「・・・!?」
竜馬 「さっきから、態度がおおよそお前らしくねぇ。いったいどうしたってんだ?」
キュウべぇ 「ぼ、僕が怯えている・・・?そんな馬鹿な・・・え、でも、今僕は狼狽えて・・・」
竜馬 「・・・」
917: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:48:20.40 ID:bAZriduZ0
それきりだった。
これ以後のキュウべぇは、竜馬が何かを話しかけてもブツブツと一人で呟いているだけで、一切反応をしなくなってしまった。
やむなく竜馬は、キュウべぇを肩にぞんざいに乗せたまま、再び家路をたどり始める。
そして、間もなく家の明かりが見える間際となって。
キュウべぇ 「竜馬・・・」
やっとキュウべぇが、独り言以外の言葉を発した。
竜馬 「なんだ?」
キュウべぇ 「君に頼みがある」
竜馬 「頼み?お前が、俺に?ろくでもない事を抜かしたら、ぶん殴るぜ」
キュウべぇ 「そうじゃない。切実な願いなんだ。竜馬、どうか僕を」
竜馬 「・・・お前を?」
キュウべぇ 「僕を助けてほしい・・・!!」
これ以後のキュウべぇは、竜馬が何かを話しかけてもブツブツと一人で呟いているだけで、一切反応をしなくなってしまった。
やむなく竜馬は、キュウべぇを肩にぞんざいに乗せたまま、再び家路をたどり始める。
そして、間もなく家の明かりが見える間際となって。
キュウべぇ 「竜馬・・・」
やっとキュウべぇが、独り言以外の言葉を発した。
竜馬 「なんだ?」
キュウべぇ 「君に頼みがある」
竜馬 「頼み?お前が、俺に?ろくでもない事を抜かしたら、ぶん殴るぜ」
キュウべぇ 「そうじゃない。切実な願いなんだ。竜馬、どうか僕を」
竜馬 「・・・お前を?」
キュウべぇ 「僕を助けてほしい・・・!!」
918: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:54:17.64 ID:bAZriduZ0
・・・
・・・
心も体も。
疲れ切っているはずなのに、どうしてなのか眠れない。
明かりを消した部屋の中で、私は天井を見つめながら、とめどない思索の旅を繰り返していた。
私の隣では、まどかが静かな寝息を立てている。
私もまどかも、床に布団を敷いての雑魚寝だ。ベッドはゆまに明け渡してしまった。
お客さんを床で寝かせるのが心苦しかったので、ゆまとまどかの二人でベッドを使うように勧めたのだけれど。
律儀なまどかは、私と一緒に床で寝ることを望んでくれた。
ほむら (どんな時でも、自分の事は二の次なのね)
それでこそ、まどからしいと言えるのだけれど。
そんな彼女が、仁美の事を知ったら、いったいどうなるのだろうか。
取り留めもなく、そんな事を考えていたら、すっかり寝そびれてしまった。
・・・
心も体も。
疲れ切っているはずなのに、どうしてなのか眠れない。
明かりを消した部屋の中で、私は天井を見つめながら、とめどない思索の旅を繰り返していた。
私の隣では、まどかが静かな寝息を立てている。
私もまどかも、床に布団を敷いての雑魚寝だ。ベッドはゆまに明け渡してしまった。
お客さんを床で寝かせるのが心苦しかったので、ゆまとまどかの二人でベッドを使うように勧めたのだけれど。
律儀なまどかは、私と一緒に床で寝ることを望んでくれた。
ほむら (どんな時でも、自分の事は二の次なのね)
それでこそ、まどからしいと言えるのだけれど。
そんな彼女が、仁美の事を知ったら、いったいどうなるのだろうか。
取り留めもなく、そんな事を考えていたら、すっかり寝そびれてしまった。
919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 20:58:47.48 ID:bAZriduZ0
ほむら (仁美は死んでしまったけれど、死体は永久に見つからない)
身体は消滅してしてしまったから。
だから、仁美は未来永劫行方不明のまま。生きているのか死んでいるのか、普通の人には分からない。
ほむら (だけれど・・・)
まどかは仁美が魔法少女になったことを知らない。
でも、魔法少女と魔女の存在は知っている。そして、仁美は魔女に囚われたのではという疑いを抱いているのだ。
ほむら (・・・いずれ、真相にたどり着くかもしれない)
・・・時間を於けば於くほどに。
真実に触れた時の衝撃は、激しいものになるだろう。
だったら、なるべく早く、本当の事を知らせた方が良いのではないか。
ほむら (リョウは、黙っていた方が良いと言っていたけれど・・・)
それが本当に、まどかのためになるのだろうか。
なにが、まどかのために最善なのか。
私は答えにたどり着けない。
身体は消滅してしてしまったから。
だから、仁美は未来永劫行方不明のまま。生きているのか死んでいるのか、普通の人には分からない。
ほむら (だけれど・・・)
まどかは仁美が魔法少女になったことを知らない。
でも、魔法少女と魔女の存在は知っている。そして、仁美は魔女に囚われたのではという疑いを抱いているのだ。
ほむら (・・・いずれ、真相にたどり着くかもしれない)
・・・時間を於けば於くほどに。
真実に触れた時の衝撃は、激しいものになるだろう。
だったら、なるべく早く、本当の事を知らせた方が良いのではないか。
ほむら (リョウは、黙っていた方が良いと言っていたけれど・・・)
それが本当に、まどかのためになるのだろうか。
なにが、まどかのために最善なのか。
私は答えにたどり着けない。
920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:05:29.95 ID:bAZriduZ0
ほむら (何にしても、事実を告げるのは今でない事だけは確かだわ)
仁美の件に続き、マミが囚わるような事件が起こってしまい・・・
しかもそれは自分のせいだと、マミの無事が分かるまでまどかは懊悩し続けていたに違いない。
今、マミの無事を知り、まどかは心から安堵しているのに、再び奈落の底に落とすようなこと・・・
私の隣で安らかな寝息を立てている、そんなまどかにそんなひどいことを・・・
ほむら (私にできるはず、ないじゃない)
いずれ言うべき時が来るのかも知れない。
いま言わないことが、単なる問題の先送りでしかないのかもしれない。
それでも・・・
ほむら (明日・・・その事をリョウに相談してみよう)
どうするかは、それから先の話だわ。
そう心に決めると、私は毛布を頭からすっぽりとかぶった。
明日も学校。
無理にでも寝てしまわなくては。
色々ありすぎた”今日”という日を過去に置いて行くためにも、一日を終わらせてしまう必要があるのだから。
仁美の件に続き、マミが囚わるような事件が起こってしまい・・・
しかもそれは自分のせいだと、マミの無事が分かるまでまどかは懊悩し続けていたに違いない。
今、マミの無事を知り、まどかは心から安堵しているのに、再び奈落の底に落とすようなこと・・・
私の隣で安らかな寝息を立てている、そんなまどかにそんなひどいことを・・・
ほむら (私にできるはず、ないじゃない)
いずれ言うべき時が来るのかも知れない。
いま言わないことが、単なる問題の先送りでしかないのかもしれない。
それでも・・・
ほむら (明日・・・その事をリョウに相談してみよう)
どうするかは、それから先の話だわ。
そう心に決めると、私は毛布を頭からすっぽりとかぶった。
明日も学校。
無理にでも寝てしまわなくては。
色々ありすぎた”今日”という日を過去に置いて行くためにも、一日を終わらせてしまう必要があるのだから。
921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:10:39.43 ID:bAZriduZ0
・・・
・・・
翌朝。
ゆまに留守番を託し、私はまどかと連れ立って部屋を出た。
まどか 「ゆまちゃん、学校に行かないの?遅れちゃうよ?」
ほむら 「・・・今は事情があって、学校はお休みしているの。昼前には知人が彼女を迎えに来るから」
口では厳しい事を言いながら、杏子は何くれとなくゆまの面倒を見てくれていた。
今日も昼頃にゆまを迎えに来て、一緒に魔女探しをする事になっている。
日課なのだ。
まどか 「そう・・・ところで・・・」
ほむら 「なに?」
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
やはり来たか。
・・・
翌朝。
ゆまに留守番を託し、私はまどかと連れ立って部屋を出た。
まどか 「ゆまちゃん、学校に行かないの?遅れちゃうよ?」
ほむら 「・・・今は事情があって、学校はお休みしているの。昼前には知人が彼女を迎えに来るから」
口では厳しい事を言いながら、杏子は何くれとなくゆまの面倒を見てくれていた。
今日も昼頃にゆまを迎えに来て、一緒に魔女探しをする事になっている。
日課なのだ。
まどか 「そう・・・ところで・・・」
ほむら 「なに?」
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
やはり来たか。
922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:12:02.83 ID:bAZriduZ0
昨日は巴マミの事でいっぱいいっぱいだったまどかは、マミの無事を知った後も仁美の話を切り出すことはなかった。
彼女のキャパが許容範囲を超えていたせいだと思う。
だけれど一晩寝て、頭を整理させてスッキリすれば。
ほむら (当然、次に出てくるのは仁美の話題になるわよね)
まどか 「えっと、ほむらちゃん。私、お願いごとばかりしてしまって、ホント悪いなって思うんだけど・・・」
ほむら 「分かってるわ・・・」
分かってるとは答えながらも、今の私はこの話題、どうお茶を濁そうかと、そればかりを考えていた。
今は誤魔化す。
まどかに仁美の事をどう告げるにしても、まずは竜馬に相談してからだ。
ほむら 「ひとまず急ぎましょう。遅刻してしまってはいけないわ」
まどか 「う、うん」
釈然としない顔をしながらも、まどかは頷いてくれた。
彼女のキャパが許容範囲を超えていたせいだと思う。
だけれど一晩寝て、頭を整理させてスッキリすれば。
ほむら (当然、次に出てくるのは仁美の話題になるわよね)
まどか 「えっと、ほむらちゃん。私、お願いごとばかりしてしまって、ホント悪いなって思うんだけど・・・」
ほむら 「分かってるわ・・・」
分かってるとは答えながらも、今の私はこの話題、どうお茶を濁そうかと、そればかりを考えていた。
今は誤魔化す。
まどかに仁美の事をどう告げるにしても、まずは竜馬に相談してからだ。
ほむら 「ひとまず急ぎましょう。遅刻してしまってはいけないわ」
まどか 「う、うん」
釈然としない顔をしながらも、まどかは頷いてくれた。
923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:18:24.27 ID:bAZriduZ0
後は二人、ほぼ無言で学校への道を早歩きに歩く。
・・・と、その時だった。
ほむら 「・・・」
私は立ち止まって、周囲を見渡す。
目につくところには、なにも変わりはない。
・・・けど。
まどか 「うぇひっ?ほむらちゃん、急に立ち止まっちゃって、どうしたの?」
ほむら 「ううん・・・」
・・・気のせい?なわけがない。
確かに感じたのだ。
まとわり付くような、ジメジメとした・・・
まるで梅雨時の湿っぽさのような、鬱陶しい視線を。
・・・と、その時だった。
ほむら 「・・・」
私は立ち止まって、周囲を見渡す。
目につくところには、なにも変わりはない。
・・・けど。
まどか 「うぇひっ?ほむらちゃん、急に立ち止まっちゃって、どうしたの?」
ほむら 「ううん・・・」
・・・気のせい?なわけがない。
確かに感じたのだ。
まとわり付くような、ジメジメとした・・・
まるで梅雨時の湿っぽさのような、鬱陶しい視線を。
924: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/04(火) 21:18:59.22 ID:bAZriduZ0
ほむら (間違いない・・・キュウべぇだ・・・)
キュウべぇが監視している。
対象は私ではなく、間違いなくまどかの方だろう。
ほむら (あいつ、今度は何を企んでいるのかしら・・・)
程なくして、奴の視線が発していたプレッシャーが、霧に溶け込むように掻き消えた。
少なくとも、今この場で何かをしようというつもりはないらしい。
それとも、邪魔な私がまどかの側にいるせいか・・・
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「何でもない、行きましょう」
・・・そういえば、竜馬に預けた”キュウべぇ”は、あれからどうなったのだろう。
キュウべぇが監視している。
対象は私ではなく、間違いなくまどかの方だろう。
ほむら (あいつ、今度は何を企んでいるのかしら・・・)
程なくして、奴の視線が発していたプレッシャーが、霧に溶け込むように掻き消えた。
少なくとも、今この場で何かをしようというつもりはないらしい。
それとも、邪魔な私がまどかの側にいるせいか・・・
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「何でもない、行きましょう」
・・・そういえば、竜馬に預けた”キュウべぇ”は、あれからどうなったのだろう。
932: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:26:51.81 ID:ccYpi4c/0
・・・
・・・
朝。ホームルーム前の教室。
ざわめき続けるクラスメイト達。無理もない。行方不明となっている志筑仁美の続報が、何一つないのだ。
ただただ心配する声。
幼いなりの推理で、仁美の現況を想像する声。
心配のあまり、こらえきれない嗚咽を漏らす子も。
いつもは賑やかなさやかは一人、机に突っ伏している。
寝ているわけではないだろう。
人一倍感受性の強い彼女の事だ。皆の輪に加わったら最後、誰よりも激しく取り乱してしまうに違いない。
それが自分で分かっているから、一人静かに机だけに今の疲れた表情を見せているのだと思う。
・・・
朝。ホームルーム前の教室。
ざわめき続けるクラスメイト達。無理もない。行方不明となっている志筑仁美の続報が、何一つないのだ。
ただただ心配する声。
幼いなりの推理で、仁美の現況を想像する声。
心配のあまり、こらえきれない嗚咽を漏らす子も。
いつもは賑やかなさやかは一人、机に突っ伏している。
寝ているわけではないだろう。
人一倍感受性の強い彼女の事だ。皆の輪に加わったら最後、誰よりも激しく取り乱してしまうに違いない。
それが自分で分かっているから、一人静かに机だけに今の疲れた表情を見せているのだと思う。
933: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:32:14.44 ID:ccYpi4c/0
ほむら (・・・)
まどかも・・・
私という頼る先がある分、他のみんなよりは冷静でいられるようだけれど・・・
ほむら (教室の喧騒に呑まれつつあるようだわ。まどかだって長くはもたない・・・黙ったままでなんて・・・)
そんな中、喧噪の波を裂いて、彼の声が私の耳に飛び込んできた。
竜馬 「暁美」
ほむら 「リョウ・・・」
他のみんなに気を取られすぎて、彼がすぐ側まで来ていたことに気がつかなかったのだ。
でも、ちょうど良かった。彼には伝えたい事がある。
ほむら 「リョウ、あのね」
ほむら・竜馬 「話がある(わ)」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
ほぼ同時に同じ言葉を発しあって、私たちはしばし見つめ合ってしまった。
まどかも・・・
私という頼る先がある分、他のみんなよりは冷静でいられるようだけれど・・・
ほむら (教室の喧騒に呑まれつつあるようだわ。まどかだって長くはもたない・・・黙ったままでなんて・・・)
そんな中、喧噪の波を裂いて、彼の声が私の耳に飛び込んできた。
竜馬 「暁美」
ほむら 「リョウ・・・」
他のみんなに気を取られすぎて、彼がすぐ側まで来ていたことに気がつかなかったのだ。
でも、ちょうど良かった。彼には伝えたい事がある。
ほむら 「リョウ、あのね」
ほむら・竜馬 「話がある(わ)」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
ほぼ同時に同じ言葉を発しあって、私たちはしばし見つめ合ってしまった。
934: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:35:08.31 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「・・・急いで相談したい事が。できれば次の昼休みにでも」
竜馬 「奇遇だな。俺も一刻も早くお前に伝えたい事がある。それと、あいつもな・・・」
ほむら 「え・・・?」
竜馬の視線に促されて。
私が顔を向けた先は、教室の窓。
そこには・・・
キュウべぇ 「やあ」
外から中を覗き込む、キュウべぇの姿があった。
竜馬 「奇遇だな。俺も一刻も早くお前に伝えたい事がある。それと、あいつもな・・・」
ほむら 「え・・・?」
竜馬の視線に促されて。
私が顔を向けた先は、教室の窓。
そこには・・・
キュウべぇ 「やあ」
外から中を覗き込む、キュウべぇの姿があった。
935: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:41:40.79 ID:ccYpi4c/0
・・・
・・・
お昼休みの屋上。
キュウべぇ 「鹿目まどかが危ないよ」
屋上に他の生徒の姿がないことを確認して、ベンチに腰掛けて弁当箱を開く私と竜馬。
急に誰かがやって来た場合に備えて、あくまでも見た目は、普通に昼食をとっている体でいなくてはいけない。
そんな私たちに開口一番、キュウべぇがそう言ったのだ。
ほむら 「なんなの、藪から棒に」
キュウべぇ 「言葉通りさ。ゲッターを用いたエネルギー回収案は失敗してしまった。となれば、僕たちの計画は当然白紙へと戻る」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「つまり、資質の高い少女への接触へと、回帰するわけだね。これは当然のプロセスだ」
ほむら 「だから、今朝はやけにお前たちの気配を感じたというわけね。まどかと接触するために・・・」
奴の言う事は理に適っている。
最も効率の良い方法が失敗したのだ。当然、次善の策を用いようとするだろう。
それは、キュウべぇたちの矛先がまどかへ再び向けられることを意味する。
・・・
お昼休みの屋上。
キュウべぇ 「鹿目まどかが危ないよ」
屋上に他の生徒の姿がないことを確認して、ベンチに腰掛けて弁当箱を開く私と竜馬。
急に誰かがやって来た場合に備えて、あくまでも見た目は、普通に昼食をとっている体でいなくてはいけない。
そんな私たちに開口一番、キュウべぇがそう言ったのだ。
ほむら 「なんなの、藪から棒に」
キュウべぇ 「言葉通りさ。ゲッターを用いたエネルギー回収案は失敗してしまった。となれば、僕たちの計画は当然白紙へと戻る」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「つまり、資質の高い少女への接触へと、回帰するわけだね。これは当然のプロセスだ」
ほむら 「だから、今朝はやけにお前たちの気配を感じたというわけね。まどかと接触するために・・・」
奴の言う事は理に適っている。
最も効率の良い方法が失敗したのだ。当然、次善の策を用いようとするだろう。
それは、キュウべぇたちの矛先がまどかへ再び向けられることを意味する。
936: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:42:59.82 ID:ccYpi4c/0
・・・しかし。
ほむら 「それをなぜ私に?」
教える必要があるのだろう。奴の言葉を借りれば”意味が分からない”だわ。
キュウべぇ 「僕はもう、群れには戻れないからね」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「リョウ、あなたもどうして、わざわざこいつと私の仲立ちをするような真似をするの?」
竜馬 「俺がキュウべぇと、取引をしたからだ」
ほむら 「えっ!?」
私は、信じられない物を見る目で竜馬を見つめた。
私の仲間が、キュウべぇと取引を・・・!?
ほむら 「あなた、正気?!自分が何を言っているのか分かっているの?」
ほむら 「それをなぜ私に?」
教える必要があるのだろう。奴の言葉を借りれば”意味が分からない”だわ。
キュウべぇ 「僕はもう、群れには戻れないからね」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「リョウ、あなたもどうして、わざわざこいつと私の仲立ちをするような真似をするの?」
竜馬 「俺がキュウべぇと、取引をしたからだ」
ほむら 「えっ!?」
私は、信じられない物を見る目で竜馬を見つめた。
私の仲間が、キュウべぇと取引を・・・!?
ほむら 「あなた、正気?!自分が何を言っているのか分かっているの?」
937: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:44:04.31 ID:ccYpi4c/0
竜馬 「正気だ。暁美、まずは俺の話を聞け」
ほむら 「き、聞くけど・・・でも・・・」
竜馬 「思い出せ、暁美。俺は昨日話したはずだ。こいつを連れて帰るようにと、隼人から言われたことを」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「隼人が・・・ゲッターが意味のない事を俺に勧めるはずがない。そしてその意味がな、こいつと話していて分かったんだよ」
ほむら 「なんなの、その意味っていうのは・・・」
竜馬 「・・・暁美。お前、こいつの事をどう思ってる?」
ほむら 「どうって・・・」
いきなり、何を言い出すのか。
そう思いながらも、私はキュウべぇを見る。
私がこいつをどう思うか?
そんなの決まっている・・・
ほむら 「殺してやりたいわ。たとえそれが意味のない行為だとは分かっていても。多くの人の人生を弄び、狂わせたこいつの事を」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私がキュウべぇに抱いている気持は、掛け値なしの憎しみよ」
ほむら 「き、聞くけど・・・でも・・・」
竜馬 「思い出せ、暁美。俺は昨日話したはずだ。こいつを連れて帰るようにと、隼人から言われたことを」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「隼人が・・・ゲッターが意味のない事を俺に勧めるはずがない。そしてその意味がな、こいつと話していて分かったんだよ」
ほむら 「なんなの、その意味っていうのは・・・」
竜馬 「・・・暁美。お前、こいつの事をどう思ってる?」
ほむら 「どうって・・・」
いきなり、何を言い出すのか。
そう思いながらも、私はキュウべぇを見る。
私がこいつをどう思うか?
そんなの決まっている・・・
ほむら 「殺してやりたいわ。たとえそれが意味のない行為だとは分かっていても。多くの人の人生を弄び、狂わせたこいつの事を」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私がキュウべぇに抱いている気持は、掛け値なしの憎しみよ」
938: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:55:37.58 ID:ccYpi4c/0
言いながら、知らず知らずのうちに奴を見る目が険しくなっていく。
普段は理性で押さえつけている感情が、むき出しの殺意となって私の胸の奥から溢れ出してゆく。
キュウべぇ 「・・・ひぃっ」
え・・・?
今、キュウべぇが短くだけれど。
悲鳴なような声を上げなかった?
キュウべぇ 「・・・暁美ほむら。お願いだから、そんな目で僕を見ないでほしい」
まさか・・・
ほむら 「お前、震えているの?」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「怯えてる・・・の?」
私の殺気に、感情の無いキュウべぇが怯えている・・・?
そんな馬鹿な。
ほむら 「リョウ!?」
普段は理性で押さえつけている感情が、むき出しの殺意となって私の胸の奥から溢れ出してゆく。
キュウべぇ 「・・・ひぃっ」
え・・・?
今、キュウべぇが短くだけれど。
悲鳴なような声を上げなかった?
キュウべぇ 「・・・暁美ほむら。お願いだから、そんな目で僕を見ないでほしい」
まさか・・・
ほむら 「お前、震えているの?」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「怯えてる・・・の?」
私の殺気に、感情の無いキュウべぇが怯えている・・・?
そんな馬鹿な。
ほむら 「リョウ!?」
939: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 21:58:52.92 ID:ccYpi4c/0
竜馬 「隼人の奴、こいつに何か細工をしたらしい」
ほむら 「それって、つまり・・・」
キュウべぇ 「今の僕には、君の眼差しが心底恐ろしい・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「芽生えたらしいぜ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「感情って奴が、な」
キュウべぇに感情が?ゲッターが奴に細工を?どうして、そんな真似を・・・
だけれど、確かに・・・
私の殺気を恐れるキュウべぇには、一見して感情が湧いて出たように見えないこともない。
だけれど、私は知っている。
私やまどか達がキュウべぇの本性を知る以前。
奴は私たちの前で、まるで感情があるかのようにふるまっていたことを。
ほむら (今度も演技かも知れない。だとしたら・・・)
ほむら 「それって、つまり・・・」
キュウべぇ 「今の僕には、君の眼差しが心底恐ろしい・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「芽生えたらしいぜ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「感情って奴が、な」
キュウべぇに感情が?ゲッターが奴に細工を?どうして、そんな真似を・・・
だけれど、確かに・・・
私の殺気を恐れるキュウべぇには、一見して感情が湧いて出たように見えないこともない。
だけれど、私は知っている。
私やまどか達がキュウべぇの本性を知る以前。
奴は私たちの前で、まるで感情があるかのようにふるまっていたことを。
ほむら (今度も演技かも知れない。だとしたら・・・)
940: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:02:39.02 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「こいつに感情が生まれたとして、リョウはどんな取引に応じたというの?」
竜馬 「とりあえず、こいつの命を守ってやる」
ほむら 「命・・・?狙われているの?いったい、誰から?」
キュウべぇ 「他のキュウべぇたちからだよ、暁美ほむら」
ほむら 「・・・どういう事?」
キュウべぇの話を要約すると・・・
このキュウべぇは、キュウべぇ全体を繋ぐ統合意識から追い出されたのだという。
理由は彼が感情という、”精神疾患”を負ってしまったため。
キュウべぇの統合意識は、疾患が種全体の意識へと拡散することを防ぐため、些末な一個体を切り捨てたのだ。
そして、その次の手段として。
キュウべぇ 「僕は、他のキュウべぇから殺されることになる」
ほむら 「だから、それはどうしてなの?」
キュウべぇ 「簡単さ。僕は色んな事を知りすぎている。全体として制御できなくなった僕は、殺される以外にない」
ほむら 「そう・・・」
道理は通っている。
だけれど・・・
竜馬 「とりあえず、こいつの命を守ってやる」
ほむら 「命・・・?狙われているの?いったい、誰から?」
キュウべぇ 「他のキュウべぇたちからだよ、暁美ほむら」
ほむら 「・・・どういう事?」
キュウべぇの話を要約すると・・・
このキュウべぇは、キュウべぇ全体を繋ぐ統合意識から追い出されたのだという。
理由は彼が感情という、”精神疾患”を負ってしまったため。
キュウべぇの統合意識は、疾患が種全体の意識へと拡散することを防ぐため、些末な一個体を切り捨てたのだ。
そして、その次の手段として。
キュウべぇ 「僕は、他のキュウべぇから殺されることになる」
ほむら 「だから、それはどうしてなの?」
キュウべぇ 「簡単さ。僕は色んな事を知りすぎている。全体として制御できなくなった僕は、殺される以外にない」
ほむら 「そう・・・」
道理は通っている。
だけれど・・・
941: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:06:06.06 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「虫の良い話ね。今まで散々少女たちを食い物にしてきておいて、自分が危なくなったら庇護を求める。それも敵である私たちに・・・」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「無様ったら、ありゃしないわ」
竜馬 「暁美。それでも、こいつには利用価値がある。俺たちが知りたい情報をこいつから聞き出せるかもしれないんだ」
ほむら 「それが命を守ってやることへの代償という訳?・・・そうね、だけど」
私は懐に手を突っ込むと、あらかじめ仕込んでおいた銃を引き抜いてキュウべぇへと向けた。
竜馬 「お前、制服の下になんて物を隠してんだよ!」
ほむら 「織莉子の件もあったし、護身用に・・・ね?さっそく役に立つ時が来て嬉しいわ」
キュウべぇ 「・・・ぼ、僕を撃つつもりかい?」
ほむら 「ええ。あのね、今までどうして私が、必要以上にお前を殺さないできたか、分かっている?」
キュウべぇ 「・・・意味がないからだろう?僕の代わりは、いくらでもいるから」
ほむら 「ご名答。それで、ね。今のお前には、感情があるわけよね?」
キュウべぇ 「そ、そうだよ・・・」
ほむら 「殺されたら、嫌なわけよね。死にたくないって事よね。痛いの、怖いわけよね・・・?」
キュウべぇ 「・・・っ!」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「無様ったら、ありゃしないわ」
竜馬 「暁美。それでも、こいつには利用価値がある。俺たちが知りたい情報をこいつから聞き出せるかもしれないんだ」
ほむら 「それが命を守ってやることへの代償という訳?・・・そうね、だけど」
私は懐に手を突っ込むと、あらかじめ仕込んでおいた銃を引き抜いてキュウべぇへと向けた。
竜馬 「お前、制服の下になんて物を隠してんだよ!」
ほむら 「織莉子の件もあったし、護身用に・・・ね?さっそく役に立つ時が来て嬉しいわ」
キュウべぇ 「・・・ぼ、僕を撃つつもりかい?」
ほむら 「ええ。あのね、今までどうして私が、必要以上にお前を殺さないできたか、分かっている?」
キュウべぇ 「・・・意味がないからだろう?僕の代わりは、いくらでもいるから」
ほむら 「ご名答。それで、ね。今のお前には、感情があるわけよね?」
キュウべぇ 「そ、そうだよ・・・」
ほむら 「殺されたら、嫌なわけよね。死にたくないって事よね。痛いの、怖いわけよね・・・?」
キュウべぇ 「・・・っ!」
942: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:08:59.33 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「だったら、私にはお前を殺す理由があるって事になる。なにせ、お前に犠牲にされた少女たちの気持ちを、思い知らせる事ができるって訳なのだから」
キュウべぇ 「あ、あう・・・」
ほむら 「お得意の跳躍で、逃げても良いのよ?今は逃しても、私はお前を必ず追い詰め、鉛の弾をぶち込んでやるから」
キュウべぇ 「逃げるって・・・そんな、僕には・・・」
ほむら 「そうよね。私たちの元から離れたら、今度は他のキュウべぇたちから狙われる。殺される相手が、変わるだけだもの。逃げ場なんて、無いわよね」
キュウべぇ (がたがた・・・がた・・・)
竜馬 「暁美・・・よせっ!」
ほむら 「全ての時間軸で死んでいった、さやかや杏子、マミ・・・他の名も知れない魔法少女たち・・・」
キュウべぇ 「た、たすけ・・・たすけて・・・」
ほむら 「まどかの悲しみ。まどかを守れなかった私の無念。全ての恨みを、一発の銃弾に込めるわ。思い知れ!」
竜馬 「暁美っ!!」
キュウべぇ 「あ、あう・・・」
ほむら 「お得意の跳躍で、逃げても良いのよ?今は逃しても、私はお前を必ず追い詰め、鉛の弾をぶち込んでやるから」
キュウべぇ 「逃げるって・・・そんな、僕には・・・」
ほむら 「そうよね。私たちの元から離れたら、今度は他のキュウべぇたちから狙われる。殺される相手が、変わるだけだもの。逃げ場なんて、無いわよね」
キュウべぇ (がたがた・・・がた・・・)
竜馬 「暁美・・・よせっ!」
ほむら 「全ての時間軸で死んでいった、さやかや杏子、マミ・・・他の名も知れない魔法少女たち・・・」
キュウべぇ 「た、たすけ・・・たすけて・・・」
ほむら 「まどかの悲しみ。まどかを守れなかった私の無念。全ての恨みを、一発の銃弾に込めるわ。思い知れ!」
竜馬 「暁美っ!!」
943: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:14:33.80 ID:ccYpi4c/0
キュウべぇ 「・・・ひっ!!!」
キュウべぇが、目前の死への恐怖に、固く目を閉じてうずくまる。
だけれど・・・
ほむら 「・・・」
銃声はいつまでたっても轟くことは無かった。
当然・・・私には撃つつもりが、無かったのだもの。
キュウべぇ 「・・・?」がたがた
ほむら 「本当に撃つと思ったの?ここは学校よ、大問題になっちゃう」
竜馬 「お、お前・・・驚かすなよ」
ほむら 「ごめんね。だけれど、確信できたわ。こいつ、嘘は言っていないと思う」
言いながら見下した先のキュウべぇは、無様に腰を抜かした格好で、不格好に震えていた。
感情が無ければ、ここまで愚かしい取り乱しようなんて、こいつにはできないだろう。
キュウべぇが、目前の死への恐怖に、固く目を閉じてうずくまる。
だけれど・・・
ほむら 「・・・」
銃声はいつまでたっても轟くことは無かった。
当然・・・私には撃つつもりが、無かったのだもの。
キュウべぇ 「・・・?」がたがた
ほむら 「本当に撃つと思ったの?ここは学校よ、大問題になっちゃう」
竜馬 「お、お前・・・驚かすなよ」
ほむら 「ごめんね。だけれど、確信できたわ。こいつ、嘘は言っていないと思う」
言いながら見下した先のキュウべぇは、無様に腰を抜かした格好で、不格好に震えていた。
感情が無ければ、ここまで愚かしい取り乱しようなんて、こいつにはできないだろう。
944: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:15:24.14 ID:ccYpi4c/0
ほむら (確かにかつて、キュウべぇは感情のあるふりをして私たちに近づいてきたけれど・・・)
喜びや悲しみ、驚きや痛みなど。
感情の表面を撫でるくらいの演技しか、奴は私たちに見せたことは無かったのだ。
それも当然、そもそも感情の本質がどんなものか、キュウべぇには理解できていなかったのだから。
それが今、迫る死を目前にして、奴は見苦しいほどに狼狽して見せた。
・・・死の恐れを知らなければ、とてもできない芸当だ。
キュウべぇ 「ぼ、ぼぼ、僕を騙したのかい・・・暁美ほむら」
ほむら 「それがどうしたの?お前は今まで、どれだけの魔法少女たちを騙してきたと思っているの?殺されずに済んでいるだけでも、ありがたいと思う事ね」
キュウべぇ 「・・・」
明らかにむっとした顔で、私を睨むキュウべぇ。
こいつ、こんな顔もできたのか。
喜びや悲しみ、驚きや痛みなど。
感情の表面を撫でるくらいの演技しか、奴は私たちに見せたことは無かったのだ。
それも当然、そもそも感情の本質がどんなものか、キュウべぇには理解できていなかったのだから。
それが今、迫る死を目前にして、奴は見苦しいほどに狼狽して見せた。
・・・死の恐れを知らなければ、とてもできない芸当だ。
キュウべぇ 「ぼ、ぼぼ、僕を騙したのかい・・・暁美ほむら」
ほむら 「それがどうしたの?お前は今まで、どれだけの魔法少女たちを騙してきたと思っているの?殺されずに済んでいるだけでも、ありがたいと思う事ね」
キュウべぇ 「・・・」
明らかにむっとした顔で、私を睨むキュウべぇ。
こいつ、こんな顔もできたのか。
945: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:19:57.50 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「まぁ、良いわ。話を先に勧めましょう」
竜馬 「お、おう・・・」
ほむら 「リョウの話というのは、キュウべぇのこの事?」
竜馬 「ああ」
ほむら 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらいましょ。聞き出したい事は、いくらでもある・・・」
だけれど、それも今は、いったん後回しだ。
竜馬 「そうだな。それで、お前の方の話ってのは?」
ほむら 「うん、ちょっとリョウに相談に乗って欲しい事があったんだけれど・・・」
竜馬 「なんだよ、歯切れが悪いな」
ほむら 「事情が変わったから。ねぇ、リョウ。今日は先に帰ってもらっていい?」
竜馬 「そりゃ構わないが、魔女探しはどうするんだよ」
ほむら 「一日だけ休みをもらう。ちょっと、まどかと話したい事があるから」
竜馬 「・・・おまえ、まさか。志筑の事を・・・」
ほむら 「言ったでしょ、事情が変わったと。まどかに話すわ。全てを。そして・・・」
ほむら 「まどかの、魔法少女への幻想を叩き割るわ。粉々にね」
腹立たしいけれど、キュウべぇの情報は、さっそく役に立ってくれたのだ。
竜馬 「お、おう・・・」
ほむら 「リョウの話というのは、キュウべぇのこの事?」
竜馬 「ああ」
ほむら 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらいましょ。聞き出したい事は、いくらでもある・・・」
だけれど、それも今は、いったん後回しだ。
竜馬 「そうだな。それで、お前の方の話ってのは?」
ほむら 「うん、ちょっとリョウに相談に乗って欲しい事があったんだけれど・・・」
竜馬 「なんだよ、歯切れが悪いな」
ほむら 「事情が変わったから。ねぇ、リョウ。今日は先に帰ってもらっていい?」
竜馬 「そりゃ構わないが、魔女探しはどうするんだよ」
ほむら 「一日だけ休みをもらう。ちょっと、まどかと話したい事があるから」
竜馬 「・・・おまえ、まさか。志筑の事を・・・」
ほむら 「言ったでしょ、事情が変わったと。まどかに話すわ。全てを。そして・・・」
ほむら 「まどかの、魔法少女への幻想を叩き割るわ。粉々にね」
腹立たしいけれど、キュウべぇの情報は、さっそく役に立ってくれたのだ。
946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:22:18.87 ID:ccYpi4c/0
・・・
・・・
その日の放課後。
誰もいない私の部屋に、まどかを招き入れる。
まどか 「へへ・・・朝はほむらちゃんの部屋から登校して、またここに戻ってきちゃった。ただいまって言うべきなのかな」
ほむら 「・・・」
まどか 「う・・・うぇひっ・・・そ、それでほむらちゃん、話っていうのは・・・?」
ほむら 「ええ・・・」
まどか 「もしかして、仁美ちゃんの事・・・?」
ほむら 「そう。見つかったから。一番にまどかに知らせようと思って」
まどか 「ほ、ほんとっ!!?」
花が咲いたように、まどかの顔が喜びの色でこぼれそうになる。
私はこれから・・・この顔を悲しみに歪ませなくてはならないのだ。
全てはまどかのため・・・やらなければいけない事、だから。
・・・
その日の放課後。
誰もいない私の部屋に、まどかを招き入れる。
まどか 「へへ・・・朝はほむらちゃんの部屋から登校して、またここに戻ってきちゃった。ただいまって言うべきなのかな」
ほむら 「・・・」
まどか 「う・・・うぇひっ・・・そ、それでほむらちゃん、話っていうのは・・・?」
ほむら 「ええ・・・」
まどか 「もしかして、仁美ちゃんの事・・・?」
ほむら 「そう。見つかったから。一番にまどかに知らせようと思って」
まどか 「ほ、ほんとっ!!?」
花が咲いたように、まどかの顔が喜びの色でこぼれそうになる。
私はこれから・・・この顔を悲しみに歪ませなくてはならないのだ。
全てはまどかのため・・・やらなければいけない事、だから。
947: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:23:22.03 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「・・・」
まどか 「ほむらちゃ・・・っ!?まさかっ!!」
私のただならない雰囲気に、まどかが最悪の事態を察してしまう。
まどか 「仁美ちゃんの身に何かあったの?!ねぇっ!」
ほむら 「慌てないで・・・すぐに会わせてあげるから」
まどか 「え・・・」
私は・・・
通学カバンに手を突っ込むと、ずっとそこに入れていた”ある物”を取り出して、まどかに渡した。
まどか 「え、なにコレ」
ほむら 「グリーフシード。魔法少女がソウルジェムを浄化するために使う、大切なものよ」
まどか 「あ・・・マミさんが使ってるの見たことある。あれかぁ・・・でも、少し形が違うような・・・」
ほむら 「形はそれぞれなのよ。個性がね、目に見える姿で形作られるから」
まどか 「ほむらちゃ・・・っ!?まさかっ!!」
私のただならない雰囲気に、まどかが最悪の事態を察してしまう。
まどか 「仁美ちゃんの身に何かあったの?!ねぇっ!」
ほむら 「慌てないで・・・すぐに会わせてあげるから」
まどか 「え・・・」
私は・・・
通学カバンに手を突っ込むと、ずっとそこに入れていた”ある物”を取り出して、まどかに渡した。
まどか 「え、なにコレ」
ほむら 「グリーフシード。魔法少女がソウルジェムを浄化するために使う、大切なものよ」
まどか 「あ・・・マミさんが使ってるの見たことある。あれかぁ・・・でも、少し形が違うような・・・」
ほむら 「形はそれぞれなのよ。個性がね、目に見える姿で形作られるから」
948: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:24:16.80 ID:ccYpi4c/0
まどか 「個性・・・?」
ほむら 「生前の性格が、形に現れると言っているの」
まどか 「生前・・・え・・・?」
まどかの表情が、徐々に曇ってゆく。
断片的な情報から、何か不吉なものを感じ取ったよう。
まどか 「ほむらちゃん、何を言ってるの・・・?」
ほむら 「グリーフシードはね、元々は魔女の卵なのよ。それを私たちはエネルギー源にしている」
まどか 「ま、魔女!?」
ほむら 「心配しないで。今のそれは、もう安全だから。なにせ、その持ち主は、すでに死んでいるのだから」
まどか 「・・・」
ほむら 「ねぇ、まどか。どうして魔法少女が、魔女の卵から魔力をもらえると思う?」
まどか 「・・・そんなの・・・分からないよ・・・」
ほむら 「根っこがね、一緒だからよ」
まどか 「だから・・・意味が分からない・・・」
ほむら 「根っこ。つまり、魔法少女も魔女も、元は人間だったという事よ」
まどか 「・・・っ!!」
ほむら 「生前の性格が、形に現れると言っているの」
まどか 「生前・・・え・・・?」
まどかの表情が、徐々に曇ってゆく。
断片的な情報から、何か不吉なものを感じ取ったよう。
まどか 「ほむらちゃん、何を言ってるの・・・?」
ほむら 「グリーフシードはね、元々は魔女の卵なのよ。それを私たちはエネルギー源にしている」
まどか 「ま、魔女!?」
ほむら 「心配しないで。今のそれは、もう安全だから。なにせ、その持ち主は、すでに死んでいるのだから」
まどか 「・・・」
ほむら 「ねぇ、まどか。どうして魔法少女が、魔女の卵から魔力をもらえると思う?」
まどか 「・・・そんなの・・・分からないよ・・・」
ほむら 「根っこがね、一緒だからよ」
まどか 「だから・・・意味が分からない・・・」
ほむら 「根っこ。つまり、魔法少女も魔女も、元は人間だったという事よ」
まどか 「・・・っ!!」
949: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:26:02.59 ID:ccYpi4c/0
愕然とした顔で、私と手の中のグリーフシードを交互に見るまどか。
情報の断片から導き出した答えに、口元がわなわなと震えている。
まどか 「ま、まさか・・・まさか・・・まさか・・・」
ほむら 「志筑仁美よ・・・」
まどか 「・・・っ!!」
ショックのあまり、まどかの体が激しく震えた。
彼女の手元から零れ落ちたグリーフシードが、乾いた音を立てながら、むなしく床の上に落ちて転がる。
まどか 「嘘だ・・・」
ほむら 「本当よ」
まどか 「嘘だ嘘だ!ほむらちゃん、私を驚かせようって、そんな嘘を・・・」
ほむら 「真実なの。魔法少女はね、早かれ遅かれ、いずれはその姿になってしまう。宿命なの」
まどか 「え・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「それって・・・マミさんも?」
ほむら 「ええ」
まどか 「ほむらちゃんも、そうなの・・・?!」
ほむら 「・・・」
情報の断片から導き出した答えに、口元がわなわなと震えている。
まどか 「ま、まさか・・・まさか・・・まさか・・・」
ほむら 「志筑仁美よ・・・」
まどか 「・・・っ!!」
ショックのあまり、まどかの体が激しく震えた。
彼女の手元から零れ落ちたグリーフシードが、乾いた音を立てながら、むなしく床の上に落ちて転がる。
まどか 「嘘だ・・・」
ほむら 「本当よ」
まどか 「嘘だ嘘だ!ほむらちゃん、私を驚かせようって、そんな嘘を・・・」
ほむら 「真実なの。魔法少女はね、早かれ遅かれ、いずれはその姿になってしまう。宿命なの」
まどか 「え・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「それって・・・マミさんも?」
ほむら 「ええ」
まどか 「ほむらちゃんも、そうなの・・・?!」
ほむら 「・・・」
950: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:27:04.33 ID:ccYpi4c/0
腰が抜けてしまったのだろう。
ぺたり、床に膝をついてしまったまどか。
フルフルと震えながら、目をまん丸に見開いてこちらを見ている。
・・・胸が痛い。
だけれど、言わなくてはいけない。
まどかを守るため。それでもし、まどかに嫌われてしまっても、私にとって、それは本望なのだ・・・
ほむら 「・・・まどか。お父さんやお母さんは好き?家族の事を愛している?」
まどか 「うん・・・愛しているよ・・・」
ほむら 「では、言っておくわね。まどか、あなたには魔法少女としての、計り知れない資質が眠っている」
まどか 「それ・・・キュウべぇも言ってたよ・・・」
ぺたり、床に膝をついてしまったまどか。
フルフルと震えながら、目をまん丸に見開いてこちらを見ている。
・・・胸が痛い。
だけれど、言わなくてはいけない。
まどかを守るため。それでもし、まどかに嫌われてしまっても、私にとって、それは本望なのだ・・・
ほむら 「・・・まどか。お父さんやお母さんは好き?家族の事を愛している?」
まどか 「うん・・・愛しているよ・・・」
ほむら 「では、言っておくわね。まどか、あなたには魔法少女としての、計り知れない資質が眠っている」
まどか 「それ・・・キュウべぇも言ってたよ・・・」
951: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:28:14.55 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「あなたの力をもってすれば、あるいは志筑仁美一人くらい、元の姿に戻すのも容易いのかもしれない」
まどか 「え・・・っ!?」
事実、他の時間軸では魔女化してしまったさやかを、救った事だってあったのだ。
単なる想像じゃない。間違いなく、まどかになら可能だろう。
だからこそ、私の口で釘を刺しておかなければならないのだ。
ほむら 「だけど」
まどか 「・・・」
ほむら 「まどか。あなたがキュウべぇと契約を結んでしまったら、最後よ。そのグリーフシードは、将来のあなたの姿の鏡となってしまう」
まどか 「あ・・・で、でも・・・」
ほむら 「まどかを愛してくれているご両親を、かわいい弟を・・・あなたは裏切ってしまう事になる。それで良いの?」
まどか 「だけど、それで仁美ちゃんが助かるなら!」
ほむら 「あなたが死んだら、お父さんもお母さんも、きっと無事には生きていけなくなる!」
まどか 「・・・っ!」
まどか 「え・・・っ!?」
事実、他の時間軸では魔女化してしまったさやかを、救った事だってあったのだ。
単なる想像じゃない。間違いなく、まどかになら可能だろう。
だからこそ、私の口で釘を刺しておかなければならないのだ。
ほむら 「だけど」
まどか 「・・・」
ほむら 「まどか。あなたがキュウべぇと契約を結んでしまったら、最後よ。そのグリーフシードは、将来のあなたの姿の鏡となってしまう」
まどか 「あ・・・で、でも・・・」
ほむら 「まどかを愛してくれているご両親を、かわいい弟を・・・あなたは裏切ってしまう事になる。それで良いの?」
まどか 「だけど、それで仁美ちゃんが助かるなら!」
ほむら 「あなたが死んだら、お父さんもお母さんも、きっと無事には生きていけなくなる!」
まどか 「・・・っ!」
952: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:29:03.07 ID:ccYpi4c/0
ほむら 「最愛の娘を亡くして、あなたのご両親がそのままでいられると、まどかは本当に思っているの!?」
まどか 「それは・・・だけど・・・っ!」
ほむら 「親だけじゃない。あなたがいなくなることで、間違いなく弟さんの人生も歪む。家族が消えるって、そういう事よ!」
まどか 「た、たっくんの・・・人生も・・・?」
ほむら 「それに、家族だけじゃない。あなたを愛しているのは、家族だけでなんか、決してない!」
まどか 「え・・・?」
ほむら 「マミもさやかも、あなたの友達は、みんなあなたを愛している!それに、わ・・・私も・・・っ」
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
ほむら 「う・・・ぐっ、なんでも・・・何でもないわ」
自分の気持ちを、高ぶった胸の内をすべてぶつけてしまいたい。
そんなこみあげてきた欲求を、私はすんでの所で噛み潰す。
私の気持ちなんて、今は関係ないのだから・・・
まどか 「それは・・・だけど・・・っ!」
ほむら 「親だけじゃない。あなたがいなくなることで、間違いなく弟さんの人生も歪む。家族が消えるって、そういう事よ!」
まどか 「た、たっくんの・・・人生も・・・?」
ほむら 「それに、家族だけじゃない。あなたを愛しているのは、家族だけでなんか、決してない!」
まどか 「え・・・?」
ほむら 「マミもさやかも、あなたの友達は、みんなあなたを愛している!それに、わ・・・私も・・・っ」
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
ほむら 「う・・・ぐっ、なんでも・・・何でもないわ」
自分の気持ちを、高ぶった胸の内をすべてぶつけてしまいたい。
そんなこみあげてきた欲求を、私はすんでの所で噛み潰す。
私の気持ちなんて、今は関係ないのだから・・・
953: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/08(土) 22:29:48.74 ID:ccYpi4c/0
ほむら (とにかく、言うべきことは全て言った)
魔法少女が辿る運命と、それに翻弄されることになる家族の行く末を語って聞かせて・・・
キュウべぇの甘言なんかに惑わされないように。
そして、まどかが魔法少女になるという未来の芽を摘むことによって、織莉子がまどかに辿り着けないようにするため。
そのために、今日ここに、私はまどかを連れてきたのだ。
ほむら 「分かって。友人を亡くして辛い気持ちは、私にだって分かるわ」
そう、だれよりも。
ほむら 「だけれど、もしあなたが短慮を起こしてしまったら、今のあなたと同じように・・・ううん、それ以上に、もっともっと多くの人を悲しませる事になる」
まどか 「わ、私・・・」
ほむら 「自分を大切にして。あなたが周りの人を大切だと思うのなら、お願い・・・」
まどか 「ほむらちゃん・・・どうして・・・」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「どうして、私をそこまで気にかけてくれるの・・・?」
ほむら 「そ、それは・・・」
魔法少女が辿る運命と、それに翻弄されることになる家族の行く末を語って聞かせて・・・
キュウべぇの甘言なんかに惑わされないように。
そして、まどかが魔法少女になるという未来の芽を摘むことによって、織莉子がまどかに辿り着けないようにするため。
そのために、今日ここに、私はまどかを連れてきたのだ。
ほむら 「分かって。友人を亡くして辛い気持ちは、私にだって分かるわ」
そう、だれよりも。
ほむら 「だけれど、もしあなたが短慮を起こしてしまったら、今のあなたと同じように・・・ううん、それ以上に、もっともっと多くの人を悲しませる事になる」
まどか 「わ、私・・・」
ほむら 「自分を大切にして。あなたが周りの人を大切だと思うのなら、お願い・・・」
まどか 「ほむらちゃん・・・どうして・・・」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「どうして、私をそこまで気にかけてくれるの・・・?」
ほむら 「そ、それは・・・」
960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:46:43.47 ID:j84NileQ0
・・・
・・・
川辺。
夕暮れの日を映し、赤く染まりながら滔々と流れ続ける川を、竜馬は眺めていた。
川辺の草原に腰を下ろし、何をするでもなく、ただ茫洋と。
? 「リョウ」
背後からかけられた馴染みのある声に、彼は顔を上げた。
竜馬 「来たか、武蔵」
武蔵 「ああ、呼び出して悪かったな」
竜馬 「なに、暁美にも用事ができたし、ちょうど良かったさ」
そうか、と笑いながら、武蔵も竜馬の隣へと腰を下ろす。
・・・
川辺。
夕暮れの日を映し、赤く染まりながら滔々と流れ続ける川を、竜馬は眺めていた。
川辺の草原に腰を下ろし、何をするでもなく、ただ茫洋と。
? 「リョウ」
背後からかけられた馴染みのある声に、彼は顔を上げた。
竜馬 「来たか、武蔵」
武蔵 「ああ、呼び出して悪かったな」
竜馬 「なに、暁美にも用事ができたし、ちょうど良かったさ」
そうか、と笑いながら、武蔵も竜馬の隣へと腰を下ろす。
961: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:47:42.53 ID:j84NileQ0
武蔵 「川を見ていたのか」
竜馬 「ああ。まったく見知らぬ場所に来てしまったが、水の流れる姿はどこでも一緒だな、なんて思ってな」
武蔵 「いつになく、感傷的だな」
武蔵 「こちらに来てから、もうかなり経つ。これからどうなるかも分からないんだ、感傷的にもなるさ」
武蔵 「そうか・・・」
言いながら、武蔵も竜馬に倣って川の流れへと目を移した。
武蔵 「リョウ・・・この川な。幼いころ両親に連れられて、よくマミちゃんと一緒に泳ぎに来てたんだ」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ちょうど小学校の帰り道にもあたっててさ。親に黙って遊んでて、危うく溺れかけたこともあったりしてな」
竜馬 「・・・そうか。まぁ、ガキならありがちなことだな」
武蔵 「あとでこっぴどく叱られてなぁ・・・」
竜馬 「・・・」
竜馬 「ああ。まったく見知らぬ場所に来てしまったが、水の流れる姿はどこでも一緒だな、なんて思ってな」
武蔵 「いつになく、感傷的だな」
武蔵 「こちらに来てから、もうかなり経つ。これからどうなるかも分からないんだ、感傷的にもなるさ」
武蔵 「そうか・・・」
言いながら、武蔵も竜馬に倣って川の流れへと目を移した。
武蔵 「リョウ・・・この川な。幼いころ両親に連れられて、よくマミちゃんと一緒に泳ぎに来てたんだ」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ちょうど小学校の帰り道にもあたっててさ。親に黙って遊んでて、危うく溺れかけたこともあったりしてな」
竜馬 「・・・そうか。まぁ、ガキならありがちなことだな」
武蔵 「あとでこっぴどく叱られてなぁ・・・」
竜馬 「・・・」
962: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:49:53.97 ID:j84NileQ0
武蔵 「・・・リョウ」
竜馬 「ああ」
武蔵 「すまん」
竜馬 「ま・・・うすうす、こうなるんじゃないかって思っていたぜ」
武蔵 「もう既に、この街で過ごした日々は、俺の記憶に深く刻まれてしまった。俺はもう、こっちの世界の人間に・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「マミちゃんを置いて、俺だけ”あっち”の世界に戻るなんて・・・とてもできやしない。リョウ、俺を殴ってくれ」
言って、武蔵は目を閉じた。
どうなじられても良い。こっぴどく殴られたって、文句は言えない。
そう覚悟して、歯を食いしばりながら。
だけれど、いくら待っても拳どころか、文句の一つすら返っては来なかった。
武蔵 「リョウ・・・お前・・・」
恐る恐る開けた武蔵の目に映ったものは、そんな彼を優しげに見つめる竜馬の笑顔だった。
武蔵 「なんで・・・笑ってるんだよ」
竜馬 「ああ」
武蔵 「すまん」
竜馬 「ま・・・うすうす、こうなるんじゃないかって思っていたぜ」
武蔵 「もう既に、この街で過ごした日々は、俺の記憶に深く刻まれてしまった。俺はもう、こっちの世界の人間に・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「マミちゃんを置いて、俺だけ”あっち”の世界に戻るなんて・・・とてもできやしない。リョウ、俺を殴ってくれ」
言って、武蔵は目を閉じた。
どうなじられても良い。こっぴどく殴られたって、文句は言えない。
そう覚悟して、歯を食いしばりながら。
だけれど、いくら待っても拳どころか、文句の一つすら返っては来なかった。
武蔵 「リョウ・・・お前・・・」
恐る恐る開けた武蔵の目に映ったものは、そんな彼を優しげに見つめる竜馬の笑顔だった。
武蔵 「なんで・・・笑ってるんだよ」
963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:52:05.69 ID:j84NileQ0
竜馬 「分かってたからだよ。守りたい人ができたから・・・だから、こちら側の自分を肯定しないわけにはいかなくなった。そういう事だろう」
武蔵 「お、俺・・・」
竜馬 「それでこそ、武蔵だ。俺のダチ公だぜ」
武蔵 「だが、俺は恐竜帝国との戦いを、お前だけに任せて降りてしまう事になる。隼人だって、もういないってのに・・・」
竜馬 「まぁ、そっちの事は俺に任せておけ。何とでもしてやるよ。俺は絶対に負けはしない。安心しろ。そのかわり」
武蔵 「・・・ああ」
竜馬 「お前は、お前の成そうと決めた事を、必ず成し遂げろ。我が身を捨ててでも守り通せよ、大切な妹を」
武蔵 「分かってる。約束する・・・!」
友の真情を心に刻み、あふれ出る涙を留め得ず。
武蔵は男泣きに泣きながら、何度も何度も頷いて見せた。
頷きの数だけ、友への感謝と、そして信念を貫いて見せるとの誓いを込めながら。
武蔵 「お、俺・・・」
竜馬 「それでこそ、武蔵だ。俺のダチ公だぜ」
武蔵 「だが、俺は恐竜帝国との戦いを、お前だけに任せて降りてしまう事になる。隼人だって、もういないってのに・・・」
竜馬 「まぁ、そっちの事は俺に任せておけ。何とでもしてやるよ。俺は絶対に負けはしない。安心しろ。そのかわり」
武蔵 「・・・ああ」
竜馬 「お前は、お前の成そうと決めた事を、必ず成し遂げろ。我が身を捨ててでも守り通せよ、大切な妹を」
武蔵 「分かってる。約束する・・・!」
友の真情を心に刻み、あふれ出る涙を留め得ず。
武蔵は男泣きに泣きながら、何度も何度も頷いて見せた。
頷きの数だけ、友への感謝と、そして信念を貫いて見せるとの誓いを込めながら。
964: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:54:08.00 ID:j84NileQ0
竜馬 「さて、じゃあ、あとは俺がどうやって、元の世界へ戻るか・・・だがな」
武蔵 「そ、そうだな。リョウ、なにか、心当たりでも見つかったのか?」
竜馬 「まぁな。これ以上無いっていう事情通が、こっちに転がり込んで来てくれたよ。・・・ゲッターのおかげでな」
武蔵 「・・・?どういう意味だ?」
竜馬はキュウべぇとの取引の経緯を語って聞かせた。
武蔵 「・・・あのキュウべぇに感情が?にわかには信じがたいが」
竜馬 「まぁ、お前も実物を見てみればわかるさ。で、とりあえず今夜からでも、キュウべぇから色々聞き出すとするよ。もっとも・・・」
武蔵 「?」
竜馬 「今までの話からすると、俺たちがこちらに飛ばされた事自体には、キュウべぇは関わってはいなかったようだ。はてさて、有益な話が聞ければもっけもんなんだがな」
武蔵 「それなんだがな・・・」
竜馬 「どうした?」
武蔵 「お前をもとの世界に戻す事。それだけなら、何とかなるかも知れない」
武蔵 「そ、そうだな。リョウ、なにか、心当たりでも見つかったのか?」
竜馬 「まぁな。これ以上無いっていう事情通が、こっちに転がり込んで来てくれたよ。・・・ゲッターのおかげでな」
武蔵 「・・・?どういう意味だ?」
竜馬はキュウべぇとの取引の経緯を語って聞かせた。
武蔵 「・・・あのキュウべぇに感情が?にわかには信じがたいが」
竜馬 「まぁ、お前も実物を見てみればわかるさ。で、とりあえず今夜からでも、キュウべぇから色々聞き出すとするよ。もっとも・・・」
武蔵 「?」
竜馬 「今までの話からすると、俺たちがこちらに飛ばされた事自体には、キュウべぇは関わってはいなかったようだ。はてさて、有益な話が聞ければもっけもんなんだがな」
武蔵 「それなんだがな・・・」
竜馬 「どうした?」
武蔵 「お前をもとの世界に戻す事。それだけなら、何とかなるかも知れない」
965: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:57:23.34 ID:j84NileQ0
竜馬 「・・・なんだと!?武蔵、お前・・・何か知っているのか?!」
武蔵の意外な一言に、竜馬の顔色が変わる。
武蔵 「知らないよ、お前以上に、何もな。だが、一つな・・・俺に考えがあるんだ」
竜馬 「もったいぶるなよ。なんだ、その考えってのは」
武蔵 「まぁ、待て。確実ってわけでもないし、俺も不確かな事は言いたくない。その時が来たら話すから、今は俺にも一案がある程度に、覚えておいてくれ」
竜馬 「・・・早まったマネ、するつもりじゃねぇだろうな」
武蔵 「マミちゃんを泣かすようなことだけはしないと、胸を張って誓えるぜ」
竜馬 「・・・なら、良いがよ」
武蔵は何を言わんとしたのか。
知りたいと思う心が後を引きながらも、友が進んで話そうとしない以上は、竜馬もそれ以上詮索するつもりはなかった。
それよりも今は、キュウべぇから情報を引き出す方が先だ。
竜馬 「武蔵、今夜は暁美の部屋に俺とともに来い」
武蔵 「分かったぜ」
武蔵の意外な一言に、竜馬の顔色が変わる。
武蔵 「知らないよ、お前以上に、何もな。だが、一つな・・・俺に考えがあるんだ」
竜馬 「もったいぶるなよ。なんだ、その考えってのは」
武蔵 「まぁ、待て。確実ってわけでもないし、俺も不確かな事は言いたくない。その時が来たら話すから、今は俺にも一案がある程度に、覚えておいてくれ」
竜馬 「・・・早まったマネ、するつもりじゃねぇだろうな」
武蔵 「マミちゃんを泣かすようなことだけはしないと、胸を張って誓えるぜ」
竜馬 「・・・なら、良いがよ」
武蔵は何を言わんとしたのか。
知りたいと思う心が後を引きながらも、友が進んで話そうとしない以上は、竜馬もそれ以上詮索するつもりはなかった。
それよりも今は、キュウべぇから情報を引き出す方が先だ。
竜馬 「武蔵、今夜は暁美の部屋に俺とともに来い」
武蔵 「分かったぜ」
966: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 07:58:55.96 ID:j84NileQ0
・・・
・・・
同時刻。
見滝原市の某所。
杏子とゆまは、日課である魔女退治を首尾よく成し遂げ、帰途に就こうとしていた。
ほむらやマミとは違い、魔法少女の活動自体を生業としている杏子の、魔女結界を嗅ぎ付ける能力は抜群だった。
もはや、天性の才覚とさえいえる。
今回も短時間のうちに二か所も結界を発見、目的のグリーフシードを手に入れていた。
杏子 「へへっ、大量大量」
ホクホク顔の杏子に反して、ゆまは少し浮かない顔だ。
杏子 「・・・なんだよ、辛気臭い顔して。グリーフシードが手に入ったんだ、もっと嬉しそうな顔をしろよ」
ゆま 「でも、それ・・・元はソウルジェムだったんだよね?それなのに、喜んでちゃ悪いなって思って」
杏子 「悪いって、魔女の元になった魔法少女にか?」
ゆま 「うん」
・・・
同時刻。
見滝原市の某所。
杏子とゆまは、日課である魔女退治を首尾よく成し遂げ、帰途に就こうとしていた。
ほむらやマミとは違い、魔法少女の活動自体を生業としている杏子の、魔女結界を嗅ぎ付ける能力は抜群だった。
もはや、天性の才覚とさえいえる。
今回も短時間のうちに二か所も結界を発見、目的のグリーフシードを手に入れていた。
杏子 「へへっ、大量大量」
ホクホク顔の杏子に反して、ゆまは少し浮かない顔だ。
杏子 「・・・なんだよ、辛気臭い顔して。グリーフシードが手に入ったんだ、もっと嬉しそうな顔をしろよ」
ゆま 「でも、それ・・・元はソウルジェムだったんだよね?それなのに、喜んでちゃ悪いなって思って」
杏子 「悪いって、魔女の元になった魔法少女にか?」
ゆま 「うん」
967: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:01:29.16 ID:j84NileQ0
杏子 「・・・はぁー」
杏子は大げさにため息をつくと、軽くゆまの脳天にチョップを食らわす。
ぽこんと小気味のいい音が、ゆまの頭から飛び出した。
ゆま 「あいたっ」
杏子 「お、いい音」
ゆま 「もー、きょーこ!なんで叩くの!」
杏子 「下らねぇことで、ウジウジ言ってったからだよ。さっきの魔女が、元は何だったとしても、あたし達はそいつらを狩らなきゃ生きていけないんだろうが」
ゆま 「そーだけど・・・」
杏子 「魔女がかわいそうだからと、遠慮してたらさ。あたし達が魔女になってしまうんだ。そうなったらさ・・・」
ゆま 「・・・?」
杏子 「魔女が増えて、けっきょく力のない人間が、よけいに犠牲になるだけだろ」
ゆま 「あ・・・うん、そうだよね・・・」
杏子 「だから、あたし達は良い事をしてるの!はい、これでこの話は終わりだ!分かったら笑え!」
杏子は大げさにため息をつくと、軽くゆまの脳天にチョップを食らわす。
ぽこんと小気味のいい音が、ゆまの頭から飛び出した。
ゆま 「あいたっ」
杏子 「お、いい音」
ゆま 「もー、きょーこ!なんで叩くの!」
杏子 「下らねぇことで、ウジウジ言ってったからだよ。さっきの魔女が、元は何だったとしても、あたし達はそいつらを狩らなきゃ生きていけないんだろうが」
ゆま 「そーだけど・・・」
杏子 「魔女がかわいそうだからと、遠慮してたらさ。あたし達が魔女になってしまうんだ。そうなったらさ・・・」
ゆま 「・・・?」
杏子 「魔女が増えて、けっきょく力のない人間が、よけいに犠牲になるだけだろ」
ゆま 「あ・・・うん、そうだよね・・・」
杏子 「だから、あたし達は良い事をしてるの!はい、これでこの話は終わりだ!分かったら笑え!」
968: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:04:06.75 ID:j84NileQ0
ゆま 「・・・」
杏子 「なんだよ、納得してないって顔だな」
ゆま 「ちがうよ、そうじゃないよ」
杏子 「だったらなんだよ。言えよ」
ゆま 「・・・きょーこって優しいよね」
杏子 「は、はぁっ!?」
突然ゆまの口から告いで出た予想外の言葉に、思わず上ずった声を上げてしまう杏子。
杏子 「お、おまえ、いきなりなに言っちゃってくれてんの!?」
ゆま 「きょーこは・・・口は悪いけど、ゆまの事をいつも心配してくれるよね。気にしてくれてるよね」
杏子 「バカか、いつも言ってるだろ。あたしは、誰かに足を引っ張られたくないだけで、それ以上の事は何も・・・」
ゆま 「ゆま、きょーこと一緒にいたいな・・・」
ゆまが上目づかいに、杏子をちらりと見上げる。
杏子 「なんだよ、納得してないって顔だな」
ゆま 「ちがうよ、そうじゃないよ」
杏子 「だったらなんだよ。言えよ」
ゆま 「・・・きょーこって優しいよね」
杏子 「は、はぁっ!?」
突然ゆまの口から告いで出た予想外の言葉に、思わず上ずった声を上げてしまう杏子。
杏子 「お、おまえ、いきなりなに言っちゃってくれてんの!?」
ゆま 「きょーこは・・・口は悪いけど、ゆまの事をいつも心配してくれるよね。気にしてくれてるよね」
杏子 「バカか、いつも言ってるだろ。あたしは、誰かに足を引っ張られたくないだけで、それ以上の事は何も・・・」
ゆま 「ゆま、きょーこと一緒にいたいな・・・」
ゆまが上目づかいに、杏子をちらりと見上げる。
969: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:06:05.80 ID:j84NileQ0
杏子 「・・・一緒にいるじゃないか」
ゆま 「ううん、そうじゃなくって。わるぷるぎすのよるをやっつけた後・・・きょーこ、風見野に帰っちゃうんでしょ」
杏子 「そりゃぁ、あそこがあたしのテリトリーなんだからな。いつまでも留守にするわけには・・・て、まさか・・・」
ゆま 「ついてく」
杏子 「だめだ!」
ゆま 「どーして?」
杏子 「どうしてもだっ!」
ゆま 「・・・」
強い口調で拒絶され、さすがに落胆してうつむいてしまったゆま。
杏子 「だいたいさ・・・なんだってあたしに着いてきたいなんて言うんだよ。お前、ほむら達とはうまくやれてるんだろ?」
ゆま 「うん、優しくしてくれるよ」
杏子 「だったら、このまま見滝原にいろよ。あたしはほむらみたいに優しくはしてやれねぇぞ」
ゆま 「・・・そしたら、きょーこが一人になっちゃう」
杏子 「・・・はぁ?」
ゆま 「ほむらお姉ちゃんには、見滝原にお友達がいるから。だけど杏子は・・・」
杏子 「お前・・・あたしを寂しい奴みたいに言うのはやめろよ・・・」
ゆま 「ううん、そうじゃなくって。わるぷるぎすのよるをやっつけた後・・・きょーこ、風見野に帰っちゃうんでしょ」
杏子 「そりゃぁ、あそこがあたしのテリトリーなんだからな。いつまでも留守にするわけには・・・て、まさか・・・」
ゆま 「ついてく」
杏子 「だめだ!」
ゆま 「どーして?」
杏子 「どうしてもだっ!」
ゆま 「・・・」
強い口調で拒絶され、さすがに落胆してうつむいてしまったゆま。
杏子 「だいたいさ・・・なんだってあたしに着いてきたいなんて言うんだよ。お前、ほむら達とはうまくやれてるんだろ?」
ゆま 「うん、優しくしてくれるよ」
杏子 「だったら、このまま見滝原にいろよ。あたしはほむらみたいに優しくはしてやれねぇぞ」
ゆま 「・・・そしたら、きょーこが一人になっちゃう」
杏子 「・・・はぁ?」
ゆま 「ほむらお姉ちゃんには、見滝原にお友達がいるから。だけど杏子は・・・」
杏子 「お前・・・あたしを寂しい奴みたいに言うのはやめろよ・・・」
970: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:09:21.62 ID:j84NileQ0
ゆま 「それに・・・ゆまをいちばん最初に助けてくれたの、きょーこだから。だから、今度はゆまが助けてあげたいって・・・」
杏子 「・・・」
ゆま 「そう・・・おもうから・・・」
杏子 「ゆま、お前・・・」
そして、二人は口をつぐむ。
ゆまは言いたい事を全て言ってしまったから。
そして、杏子は。
杏子 「はぁ・・・」
杏子はこの日、二度目かの溜息を再び漏らした。
杏子 「だから、嫌だったんだよ。仲間とか友達とか、家族とかさ・・・」
ゆま 「きょーこ・・・?」
杏子 「愛着がわいたらわいた分だけ、いざ別れる時に悲しい思いをする。辛くなる、から・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「そんな思いをするくらいだったら、ずっと一人でいたほうが気楽だと、あたしは”あの時”に思ったんだ」
ゆま 「あの時・・・?」
杏子 「・・・」
ゆま 「そう・・・おもうから・・・」
杏子 「ゆま、お前・・・」
そして、二人は口をつぐむ。
ゆまは言いたい事を全て言ってしまったから。
そして、杏子は。
杏子 「はぁ・・・」
杏子はこの日、二度目かの溜息を再び漏らした。
杏子 「だから、嫌だったんだよ。仲間とか友達とか、家族とかさ・・・」
ゆま 「きょーこ・・・?」
杏子 「愛着がわいたらわいた分だけ、いざ別れる時に悲しい思いをする。辛くなる、から・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「そんな思いをするくらいだったら、ずっと一人でいたほうが気楽だと、あたしは”あの時”に思ったんだ」
ゆま 「あの時・・・?」
971: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:12:47.20 ID:j84NileQ0
杏子 「おい、ゆま」
ゆま 「はいっ!」
杏子は膝を折ると、目線をゆまの高さへと合わせた。
初めて、対等の相手としてゆまと接したのだ。
杏子 「良いか、あたしを助けると言ったんだ。一度言った事は、絶対守り抜けよ」
ゆま 「あ、え、えっと・・・」
杏子 「一緒に行くからには、絶対にあたしのそばを離れるな。絶対に、絶対に・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「あたしより先に逝くんじゃねぇぞ・・・」
ゆま 「・・・うん」
ゆまがそっと。
杏子の首に手を回して、抱き着いてきた。
杏子もそれに応え、ゆまの背へと腕を回す。
ゆま 「はいっ!」
杏子は膝を折ると、目線をゆまの高さへと合わせた。
初めて、対等の相手としてゆまと接したのだ。
杏子 「良いか、あたしを助けると言ったんだ。一度言った事は、絶対守り抜けよ」
ゆま 「あ、え、えっと・・・」
杏子 「一緒に行くからには、絶対にあたしのそばを離れるな。絶対に、絶対に・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「あたしより先に逝くんじゃねぇぞ・・・」
ゆま 「・・・うん」
ゆまがそっと。
杏子の首に手を回して、抱き着いてきた。
杏子もそれに応え、ゆまの背へと腕を回す。
972: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:19:06.30 ID:j84NileQ0
距離が縮まり、杏子の鼻腔へふんわりと、くすぐるように・・・
子供特有の、甘い香りが流れてきた。
杏子 (この香り・・・モモ・・・)
胸に、懐かしいものがこみあげてくる。
杏子 (神様も幽霊も信じないけれどさ・・・モモ・・・見ていたら、こいつの事を守ってやってくれよな)
杏子は妹を失ってから・・・”あの時”から始めて、心の内で亡き妹へと語りかけていた。
子供特有の、甘い香りが流れてきた。
杏子 (この香り・・・モモ・・・)
胸に、懐かしいものがこみあげてくる。
杏子 (神様も幽霊も信じないけれどさ・・・モモ・・・見ていたら、こいつの事を守ってやってくれよな)
杏子は妹を失ってから・・・”あの時”から始めて、心の内で亡き妹へと語りかけていた。
973: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 08:27:33.16 ID:j84NileQ0
・・・
・・・
次回予告
来るべき日に備え、日常の中の非日常を生きる魔法少女と竜馬たち。
それぞれの成すべき事と想いを胸に、少しづつ歩みを未来へと進めてゆく。
そんな中にあって、一人。
真実を知りながらも蚊帳の外に置かれ、まどかは懊悩していた。
その弱った心を穿つように、あの白い影が、不気味な静けさで忍び寄る。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第十話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
来るべき日に備え、日常の中の非日常を生きる魔法少女と竜馬たち。
それぞれの成すべき事と想いを胸に、少しづつ歩みを未来へと進めてゆく。
そんな中にあって、一人。
真実を知りながらも蚊帳の外に置かれ、まどかは懊悩していた。
その弱った心を穿つように、あの白い影が、不気味な静けさで忍び寄る。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第十話にテレビスイッチオン!
引用元: ・ほむら「ゲッターロボ!」 第三話
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