1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:05:39.22 ID:bcWJAsXP0
杏子(……なんだ? この結界)

杏子(壁に貼ってあるのはポスターかな。なんで魔女が告知なんかしてるんだろ?)

杏子(それに、遠くの方から聞こえるこの音色…)

杏子(聞いた事ある曲だ。どこで聞いたのかな… こんな悲しい曲を……)

 『聞いてく?』

杏子「誰だ!?」

 『もっと奥へおいでよ』

杏子「魔女なのか…? この結界を作った……」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:09:24.46 ID:bcWJAsXP0
杏子「この部屋かな」

 ギイィ……

杏子(映画館みたいな部屋だな。いや、使い魔が踊ってるから劇場か)

杏子(ここの魔女は…… おお、あそこか)

杏子(でもおとなしくしてるみたいだな。もう少し聞いていこうか)

 『ずっといてもいいよ』

杏子「なんだ、聞こえてたの?」

 『テレパシーの使い方はわかるよ』

杏子「喋る魔女なんて珍しいな」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:11:41.73 ID:bcWJAsXP0
 『わたしも前は魔法少女だったの』

杏子「ホントに!?」

 『願いから生まれた魔法少女』

 『希望が絶望に変わる時、魔法少女は魔女へと生まれ変わる……』

杏子「ほぉ~ そんなこともあるのか。知らなかったわ」

 『あんまり驚かないね』

杏子「実感わかないからさ。もしそうなら、あたしだって希望も何もないし」

 『悲しいことを言わないで』

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:14:58.20 ID:bcWJAsXP0
杏子「あんたこそ、さっきからずいぶん湿っぽい曲をかけているね」

 『この歌、知ってる?』

杏子「聞いた事あるような気がするけど、思い出せないんだ。何だっけ?」

 『外へ出て、知ってそうな子に聞いたらいい…… もう帰りなよ』

杏子「え? ああ…… そうしようかな」

 『出口はわかる?』

杏子「元来た道を帰ればいいんだよね。わかるよ」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:17:43.22 ID:bcWJAsXP0
 『……あなたは魔法少女なのに、わたしを狩らないのね』

杏子「戦う気分じゃないし、思い出せないまま殺しちゃうのも、後でひっかかるでしょ」

杏子「いい演奏だね。また聴かせてよ」

 『また来てくれる?』

杏子「この街にいるならね。ここ、一応あたしの縄張りだからさ」

 『それなら、他の魔法少女から守ってもらえるね』

杏子「代わりに人を襲うなよ。そういうのを放っとくと、よそから乗り込んできそうなのがいるからな」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:20:15.93 ID:bcWJAsXP0
 『うん。ここでおとなしくしてるから安心して』

杏子「じゃあまたね。そうだ、あたしは佐倉杏子。あんたは?」

 『わたしはもう、魔女になっちゃったから……』

杏子「魔女の名前はないの?」

 『オクタヴィア』

杏子「ずいぶん立派な名前があるんだな」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:22:04.88 ID:bcWJAsXP0



杏子(魔女オクタヴィア……)

杏子(話せる魔女なんて初めてだな)

杏子(でも、あの曲を知ってそうな子っていったってなぁ……)

QB「あの魔女を狩らないのかい?」

杏子(コイツが知ってそうにも思えないし)

杏子(ゲーセンでよく一緒になる子たちならたぶん… ダメか、結界に連れてけないね)

杏子(となると、魔法少女の知り合いしかいないか……)

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:25:49.00 ID:bcWJAsXP0
魔法少女「よぅ、久しぶり。魔女でも追ってきたの? でもこっから先は」

杏子「違うよ。ちょっと聞きたい事があってさ」

魔法少女「私に?」



魔法少女「歌う魔女か。なんだよそれ…」

杏子「なんて歌か気になるんだよ。一緒に来て、聞いていってよ」

魔法少女「やだよ、気味悪い。他の人に頼みな」

杏子「他って誰に?」

魔法少女「巴マミと仲直りするチャンスなんじゃないの?」

杏子「……冗談でも怒るよ」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:29:53.66 ID:bcWJAsXP0
マミ「あれから一週間」

まどか「そろそろ、クラスの皆も気付いてます。もう普通の状態じゃないって」

ほむら「美樹さやかの抜け殻を維持していくのは大して重荷にならないわ」

ほむら「だけどこのまま、彼女を元に戻せると思い込み続けるのは、あなたたちに負担をかける」

まどか「でも、さやかちゃんが……」

ほむら「辛いかもしれないけど、私はあなたまで失いたくないの」

マミ「暁美さんの言うことも一理あるわ。それに、この子は何度もこの戦いを経験しているのよ」

マミ「元に戻す方法なんていうのがあるのなら、とっくに知っているでしょう」

まどか「ほむらちゃんも知らないことなんだもんね… きっとないんだよね……」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:32:47.30 ID:bcWJAsXP0
マミ「だからハッキリ伝えておかないといけないわね」

マミ「美樹さんから生まれた魔女は、必ず私と暁美さんの手で殺す」

まどか「うん… お願い。さやかちゃんを止められるのは、マミさんたちだけだから」

ほむら「でも問題はあの魔女の居場所ね」

マミ「なかなか見つからないわね」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:33:19.20 ID:bcWJAsXP0
まどか「どこかよそへ行っちゃったとかは?」

マミ「考えられるわね。でも…」

ほむら「もうなりふり構ってられない。明日、佐倉杏子に協力を要請してくるわ。それでいい?」

マミ「……おとなしく協力してくれるかしら」

ほむら「何度か実現しているわ。あの子の扱い方は心得ているつもりよ」

マミ「だといいけど」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:35:58.17 ID:bcWJAsXP0
——翌日——

マミ「本当に来るの?」

ほむら「彼女はよくここで遊んでいたのよ」

ほむら「いきなり結界で会うと、私たちの時みたいに警戒しちゃうでしょう」

マミ「あの時は…」

ほむら「もう気にしないで。接触するなら肩の力抜ける場所がいいでしょう」

まどか「でも来ないね」

ほむら「おかしいわね。いつもなら来るはずなのに…」

マミ「もうしばらく待ってましょうか」

まどか「時間もったないし、探そうよ」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:40:35.97 ID:bcWJAsXP0
ほむら「どうやって?」

まどか「杏子ちゃんって、どんなゲームやってたの?」

ほむら「あの曲に合わせて踊るやつね」

まどか「どれどれ…」ヒョイ

マミ「何? そのノート」

まどか「こういうとこには置いてあるんだよ」

まどか「ゲームやる人が書き置きしていくの。掲示板みたいに使うんだよ」

マミ「そんなものがあったのね…」

ほむら「あんまり来た事ないから、知らなかったわ…」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:43:37.34 ID:bcWJAsXP0
まどか「最近の書き込みから順に見ていくと…… あ、あったよ!」

まどか「ほら名前書いてある。この『杏子』って、探してる杏子ちゃんじゃない?」

ほむら「意外とイラストうまいのね」

マミ「確かにこんなの描いてたような気がするわ…」

ほむら「でも、それがわかったからってどう探すの?」

マミ「また来るというのはわかったから、私たちが書き込んでおけばいいんじゃないかしら」

まどか「見て、今やってる人。あれけっこういいスコアなんだよ」

マミ「ちょうど終わった所みたいね」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:46:40.45 ID:bcWJAsXP0
まどか「ねぇ、このゲーム好きなの?」

マミほむ(!!?)

ほむら(いきなり話しかけた!? 知り合いだったの?)

マミ(わからないわ…… でもよその学校の子みたいね)

少女「けっこうやりこんでるからね」

まどか「わたしたち、この『杏子』を探してるの。知らない?」

少女「知ってるよ。でもごめんね、連絡先とかわからないんだ。あの子携帯持ってないからさ」

まどか「やっぱり?」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:48:18.63 ID:bcWJAsXP0
少女「今度会ったら、あなたたちが探してたって伝えとこうか」

まどか「ありがとう。でも杏子ちゃんはわたしのこと知らないから…」

マミ「巴マミが探してたってお願い」

少女「わかった。あの子もよく来るから、会いたいならまたおいでよ」

まどか「そうしよっかな。じゃあまたね」

少女「はいよ~」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:52:12.79 ID:bcWJAsXP0
——帰り道——

まどか「見つかりそうで良かったね」

ほむら「それにしても驚いたわ。いきなりあんな、友達みたいに」

マミ(これがコミュ力というやつかしら……)

まどか「これで杏子ちゃんと会えたら、みんなで探せるかな」

マミ「手伝ってもらえるとは限らないけど」

ほむら「彼女の縄張りで探すのを黙認してもらえるだけで、だいぶ範囲が広がるでしょう」

まどか「さやかちゃん、見つかるよね」

マミ「勿論見つけるわ」

マミ(見つけて、私が殺さないと……)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:54:10.10 ID:bcWJAsXP0
杏子「また同じ曲聴いてるんだな」

オクタヴィア「これが好きだったの。前から何度も聴いてた……」

杏子「前は魔法少女だったんだよね。どこかよその街から来たの?」

オクタヴィア「すぐ近くだよ」

杏子「…どんな子だったの? 武器とか、戦い方とか……」

オクタヴィア「あの頃から剣を使ってた、かな」

杏子(…訊けなかった……)

オクタヴィア「夢中で戦ってたよ。あんまり考えないで、すぐ突っ込んでいっちゃってた」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:56:15.47 ID:bcWJAsXP0
杏子(コイツがマミだったかもしれないって考えた時、思わず武器の話題を振った)

杏子(ストレートに訊くのを、避けてたのか? まさかね……)

オクタヴィア「……」

杏子「あ、ゴメン。辛いこと思い出させちゃったかな」

オクタヴィア「違うの。むしろ反対… きっとね、あの頃は楽しかったんだと思う」

杏子「なによ、『思う』って」

オクタヴィア「魔女になってから、だんだん前のこと忘れてるみたいなの……」

オクタヴィア「でも、あの頃の楽しかった思い出が、どこかに残ってる」

オクタヴィア「わたしの脚、魚みたいでしょ?」

杏子「そうだね。人魚みたいだ」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06(水) 23:59:26.91 ID:bcWJAsXP0
オクタヴィア「わたしは人魚の魔女。人間だった頃の、楽しかった思い出を提げて泳ぐ、人魚の魔女」

オクタヴィア「荷物が重くて、どんどん底のほうへ沈んでいくのに、手放す勇気もない……」

杏子「持ってたらいいだろ… 大事なものなんだから…」

オクタヴィア「ありがとう」

オクアヴィア「あなたも同じようなのを持ってるけど、まだ沈むには早いみたいね」

杏子「そうかもな。こんなもん、大して中身入ってないんだから、重りどころか浮き輪代わりになるよ」

オクタヴィア「今日はもう帰りなよ。あなたに会いたいっていう人がいるから」

杏子「いないよ」

オクタヴィア「じゃあ、あなたが会いたがってる人」

杏子「……それもいない」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:01:54.54 ID:Lu52np6j0
まどか「杏子ちゃん、来てない?」

少女「見かけないね。今日は一人?」

まどか「うん。あとの二人は用事があるから、あんまり来られないの」

まどか(ワルプルギスの夜のために罠を仕掛けてるんだけどね)

少女「そっか。携帯の番号教えてよ。杏子見つけたら連絡するから」

まどか「いいよ~」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:04:27.95 ID:Lu52np6j0
少女「鹿目まどか、ね… これからヒマ? 時間あるなら遊んでこうよ」

まどか「いいけど、わたしあんまり上手くないんだよね」

少女「教えてあげる。うまくいけば面白いよ」

杏子「なんだい、新しい友達?」

少女「おお噂をすれば」

まどか「あなたが杏子ちゃん?」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:07:03.20 ID:Lu52np6j0
杏子「知ってるのかい」

まどか「わたし、鹿目まどか。杏子ちゃんに会いたかったの!」

杏子「あたしに? なんで?」

杏子(……会いたかった人なら、いる)

まどか「マミさんも探してるの。あなたのことを」

杏子「アイツか……」

杏子(会いたくなかった人もいる)

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:09:46.42 ID:Lu52np6j0
——マミ部屋——

マミ「ありがとう。よく来てくれたわね」

杏子「ずるいぞ。普通の子をけしかけるなんて」

ほむら「無用な衝突を避けるため、あなたに話しておきたいことがあったのよ」

杏子「来る途中、まどかに聞いたよ。この街の魔女が、こっちへ来たかもしれないんだって?」

マミ「そうよ。しかもただの魔女じゃない」

杏子「元は魔法少女だった、とか?」

ほむら「知っているの?」

杏子「そいつに会ったよ。剣を持ってて、脚が魚みたいなヤツだろ?」

マミ「それだわ!」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:11:43.30 ID:Lu52np6j0
まどか「…さやかちゃん、いたんだ……」

杏子「さやか? それが魔法少女だった頃の名前か」

マミ「あの魔女は私たちが殺さなくてはいけない。ワルプルギスの夜も来るし、早めに済ませたいのよ」

まどか「お願い、マミさんたちをその魔女の所へ連れて行って」

杏子「やだよ」

マミ「どうして?」

杏子「アイツは人を襲わない。狩っておかなきゃいけないってものでもないだろう」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:12:28.32 ID:Lu52np6j0
ほむら「でもグリーフシードは手に入る。美樹さやかと関係ないあなたにとって、悪い話ではないと思うけど」

杏子「じゃもう一つ、気が乗らないわけを話しとこうか」

杏子「今のマミの言う事、あんまり聞きたくない」

マミ「昔の事を引きずってる場合じゃないのよ」

杏子「わかってるよ。『今の』って言ったろ」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:15:37.07 ID:Lu52np6j0
杏子「この間話したよね。あんまり暴れると、よそから乗り込んできそうなのがいるって」

オクタヴィア「言ってたね。でも私はずっとここでおとなしくしてたよ」

杏子「そいつに会ってきたんだ」

オクタヴィア「友達だったの?」

杏子「前は仲良くしてくれた。いつまでだって一緒にいたかった…… でも今は違うな」

オクタヴィア「その子のこと、好きならそう言ったらいいよ」

杏子「どっちかというと嫌いな方に入るんだけど」

オクタヴィア「どうして嫌いなの?」

杏子「……好きだったからさ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:17:08.35 ID:Lu52np6j0
オクタヴィア「ならもう一度話しておいで」

杏子「またあの演奏… いつもの曲か…」

オクタヴィア「この曲、何か思い出せた?」

杏子「AKBの『会いたかった』でしょ。こんなに暗くアレンジするから、なかなか気付かなかったよ」

オクタヴィア『やっぱり知ってたんだ』

杏子「知ってるよ。聞いた事ある。本物はもっと元気な感じだよね」

オクタヴィア『わたしにはこう聞こえるの。魔法少女だった頃から、ずっと聞こえていたように思う……』

オクタヴィア『この歌を聞いていると胸が痛むよう…… その痛みをいつまでも忘れられない』

杏子「……あれのどこに、痛みを見つけたんだよ」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:22:02.41 ID:Lu52np6j0
オクタヴィア「これはね。好きな人のところへ行って、素直になっちゃおうっていう歌」

オクタヴィア『正直に気持ちを伝える勇気が、伝えられなかった哀しみを描き出す……』

杏子「ああ…… あるわ…」

オクタヴィア『わたしはもう泣く事もないのに、これを聞いている時だけ、涙がこぼれそうになるよ』

杏子「……好きな人とか、いたの?」

オクタヴィア『うん。そうだと思う』

オクタヴィア『だからきっと、なくしたはずの『痛み』を懐かしく感じるんだね……』

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:23:08.64 ID:Lu52np6j0
杏子「…やめなよ」

オクタヴィア「?」

杏子「あたしさ、学校行ってた頃も男の子たちと遊んだ事とか、あんまりないし、その……」

杏子「……恋とか? そういうのもしたことないから、あんまり口出しできないかもしれないけどさ…」

杏子「昔の痛みを大事に抱えてるなんて、もうやめなよ」

オクタヴィア『フラフラしてるようで、杏子も案外お節介だね』

杏子「うるさいなぁもう」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:26:47.28 ID:Lu52np6j0
ほむら「マミはもう限界近いわ…」

まどか「朝も見かけたよ。なんだかヨタヨタしてた」

ほむら「夜は見滝原の魔女狩りの他に、杏子の言ってた魔女を探しに行ってるのよ」

まどか「どうしてそこまでするの? 相手はさやかちゃんだったのに」

ほむら「だからこそでしょう。あの美樹さやかだもの……」

まどか「そうなんだよねぇ… さやかちゃん、マミさん大好きだったもんね」

マミ「…二人とも、ちょっといいかしら」

まどか「マミさん!? やつれてるよ」

ほむら「今日はもういいから、休んでなさい」

マミ「そんなヒマはないわ… ついにあの魔女を見つけたのよ」

まどか「ほんとに?」

マミ「ええ、昨夜ね。今夜二人がかりで狩りに行くわよ」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:29:01.35 ID:Lu52np6j0
杏子「…なんだ…… 地震か?」

オクタヴィア『揺れた?』

杏子「浮いてるからわからなかったか。ちょっと揺れたような」

オクタヴィア『違う! 遠くで音がするよ!』

杏子「誰か来たの? ……マミか!」

オクタヴィア『この間言ってた子? わたし、何もしてないのに…』

杏子「止めに行ってくる。ここで待ってな」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:32:01.82 ID:Lu52np6j0
マミ「ふぅ……」

ほむら「飛ばしすぎよ。少しは抑えないと、最深部へ着くまでもたないわ」

マミ「いいのよ。使い魔だって一体も逃さず殲滅する」

ほむら「あなたが倒れたら、私たちも困るのよ」

ほむら(…まどか、聞こえる?)

まどか(うん、いざとなったら、わたしがマミさんを止めるんだね)

ほむら(お願いね。わたしの言葉は届かなくても、あなたの言う事なら、可能性はある)

ほむら(ごめんなさい。無理をさせて……)

まどか(そんなの気にしなくていいんだよ。むしろ嬉しいんだから、ほむらちゃんに頼ってもらえるのが)

ほむら(……そういうことは、今度じっくり聞かせてもらうわ)

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:34:30.93 ID:Lu52np6j0
杏子「やっぱりお前らか」

まどか「杏子ちゃん!」

杏子「しかもまどかまで巻き込んだりして」

マミ「もうあなたに用はないわ。奥にいる魔女を渡しなさい」

杏子「オクタヴィアはやらせないよ!」

マミ「その恰好、どうやら私と戦う気みたいね」

杏子「戦わずに止められるとは思ってない」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:35:56.42 ID:Lu52np6j0
マミ「わかってるじゃない!」ザッ

 ドジュウウゥッ!!!

まどか「ちょっと、マミさん!」

マミ「この程度でやれる相手じゃないわ!」

杏子「その通り!」

 ブンッ!!    カッ

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:36:45.91 ID:Lu52np6j0
マミ「腕を落とせば殺さずに止められると思ったかしら?」

杏子(ウソだろ? 喰い込んでる!)

マミ「残念だったわね!」

杏子(やばい、このまま近くにいたら…!)

 ズッ

マミ「槍を抜いたわね。この距離なら!」

杏子「しまった!!」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:38:33.96 ID:Lu52np6j0
まどか「…杏子ちゃんは……」

マミ「消滅したわ」

まどか「なにも、殺さなくたって…… 杏子ちゃんだって、そこまでしようとしてなかったのに」

マミ「魔女をかばっていたわ。使い魔と同じ、魔女の仲間と見て間違いないわ」

ほむら「その魔女も元をたどれば、私たち魔法少女…」

マミ「……行くわよ。一刻も早く、ここの魔女をたおさないと」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:41:23.86 ID:Lu52np6j0



オクタヴィア『杏子?』

杏子「…逃げろ…… ここにいたら、殺されるぞ…」

オクタヴィア『ケガをしたの? 痛い?』

杏子「大丈夫… 久しぶりに分身を出して、ちょっと疲れただけさ……」

オクタヴィア『そんなの使えたんだ』

杏子「使えないはずだった…… でも、まだあったんだな… 魔法の力で守りたいものが……」

オクタヴィア『それって、わたしのこと?』

杏子「わかったらさっさと逃げな。マミの戦い方はよくわかってるんだ。足止めくらいしてみせる」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:44:25.39 ID:Lu52np6j0
オクタヴィア『…行かない。杏子が一緒に来てくれないなら、わたしも戦うよ!』

杏子「バカ言ってないで、早く……」

 ドォッ!!

杏子「来た!」

マミ「あら、生きてたのね」

杏子「いいか、あの金髪がマミ、長いストレートのがほむら、結わいてるのがまどかだ」

オクタヴィア『うん、覚えた』

杏子「まどかには絶対に手を出すなよ。魔法少女じゃないんだから」

オクタヴィア『マミって子を抑えればいいんだね!』

杏子「その通り。行くぞ!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:46:05.50 ID:Lu52np6j0
マミ「あなたに用はないと言ったでしょう!」ドジュゥ!!

杏子「ぐわぁっ!」

マミ「久しぶりね美樹さんんっ!!」

オクタヴィア『そんな子、知らない!』

 ブンッ!

マミ「ぐっ…! でもこの程度で、今日の私は止められないわ!」

オクタヴィア『ひっ!』

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:48:22.03 ID:Lu52np6j0
杏子「そうはいくかよ!」ゴッ

マミ「まだ生きていたの?」

杏子「散弾でなければやられていたさ…」

 ガシガシガシッ!!

マミ「結界の魔法…? それで私を抑えたつもり?」

杏子「説得する時間を稼げればいい」

杏子「なぁマミ… 一体どうしたんだよ? コイツが何をしたんだ? どうしてそこまで拘るんだよ……」

マミ「……その魔女の前の名前は美樹さやか」ガッ!

マミ「案外カタいのね」

マミ「とてもいい子だったわ…… 魔法少女になって、街のみんなを守りたいって」

杏子「今でもそうだよ… いい子だから苦しむんだ……」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:50:33.93 ID:Lu52np6j0
マミ「だから一緒に戦ってこられた!」

 ドゴッ!!

マミ「それなのに、最後は魔女になるなんて……」

 ピキッ…

杏子「壁がもたない!」

マミ「あの子だったらそんなのイヤだったはずよ!」

杏子(やるしかないのか… オクタヴィア!)

杏子(マミが壁を破ると同時に叩き込むぞ! タイミングをあわせられるな?)

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:53:33.41 ID:Lu52np6j0
オクタヴィア『いい。一人でやるから』

 ドガッ

杏子「おい…… どうしたんだよ、オクタヴィア……」

まどか「床が崩れてくよ!」

ほむら「私に捕まって! 杏子、あなたも!」

杏子「放せよ!」

ほむら「最悪、結界ごと崩れるわ! あなたまで死にたいの?」

杏子「『まで』とか言うな! まだ二人とも…」

オクタヴィア『早く行って。平気だよ。私も死なないから』

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:55:53.65 ID:Lu52np6j0
杏子「無茶するな! 今のマミは手加減しないぞ!」

オクタヴィア『この子はただの魔法少女。きっと誰かを救いたかっただけ……』

オクタヴィア『それより杏子、歌ってよ。わたしの好きだった歌を。知ってるんでしょ?』

杏子「そんなことやってる場合か!」ダッ

ほむら「待って! そっちは危険よ!」

マミ「来たわね… よほどトドメをさされたいようね!」

杏子「もうよせよ! コイツは人を襲うような魔女じゃないんだってば!」

マミ「だとしても、美樹さんの変わり果てた姿なのよ!」

 ドゥッ!!

マミ「私と一緒に戦ってくれて… 私を見て、魔法少女に憧れたの……」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 00:58:38.58 ID:Lu52np6j0
マミ「そんな子が絶望に堕ちてしまったんだから! 私が止めてあげなきゃいけないのよ!」

 ジュウウウッ!!!!

杏子「うっ…! ぐあああっ!!!」

オクタヴィア『杏子!』

マミ「会いに来たわよ、美樹さん!」ドギュウウゥッ!!!!

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:00:44.30 ID:Lu52np6j0
 ガシッ
杏子「だったらさ、マミ……」ヨロッ

ほむら「さがりなさい、杏子!」

まどか「あのケガじゃあ… 杏子ちゃんまで死んじゃうよ…」

杏子「さやかに会いに来たなら……」

 ホロリ

杏子「どうしてもっと早く来てくれなかったんだよぉっ!」

 ボロッ…

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:02:47.55 ID:Lu52np6j0
マミ「なによ、急に……」

杏子「あの時最後まで引き止めてくれて… そのうち追いかけてくると思ってた……」

杏子「久しぶりに会ったらコレだ…… 友達が魔女になって、自分もそうなるのが怖かったんだろ?」

杏子「そんなんでキリキリしてるマミに会って、さやかは喜ぶのかよ!」

マミ「そうよ… だってあの子、私みたいになりたいって、言ってくれたの……」

杏子「あたしだってなりたかったよ! だからずっと会いたかった!」

杏子「あの頃見た、『憧れのマミさん』にもう一度会いたかったんだよ!」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:06:18.68 ID:Lu52np6j0



まどか「……終わったのかな? マミさんが止まったよ……」

ほむら「帰りましょう」

まどか「でも、マミさんと杏子ちゃんは?」

ほむら「私たちが見てはいけないわ。二人きりにしておきましょう」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:07:24.31 ID:Lu52np6j0
ほむら「オクタヴィア、あなたもこっちへおいで」

オクタヴィア『うん……』

まどか「放っといていいの? 床が割れてるから、池に落ちちゃうよ」

オクタヴィア『いいんだよ、落ちたって』

オクタヴィア『杏子は浮き輪を持ってきてるから』

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:10:31.20 ID:Lu52np6j0
——マミ部屋——

マミ「……やっと落ち着いたわ」パタン

まどか「杏子ちゃんは?」

マミ「泣き疲れて寝ちゃったわ。寝室にいるから、静かにしててね」

まどか「マミさんも一緒に寝てきたら? 疲れたでしょ」

マミ「もうしばらくは我慢するわ。見逃せないもの」

ほむら「それじゃあ、マミが力つきる前に始めましょうか」コトン

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:11:55.44 ID:Lu52np6j0
マミ「グリーフシードに戻して持って帰ってきた魔女……」

まどか「さやかちゃん、気分はどう?」

オクタヴィア『そんな名前じゃないのに… でも、なんだか緊張してきたな』

ほむら「QBによると前例はないそうよ。できそう?」

オクタヴィア『杏子とマミに希望のパワーを分けてもらったからね』

オクタヴィア『あの二人の分なら、できないワケないでしょう!』

まどか「早くもさやかちゃんらしくなってきたよ!」

オクタヴィア『だからさ、今はまださやかじゃないんだって』

オクタヴィア『……でもありがとう、まどか』

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:15:17.09 ID:Lu52np6j0
——それから数日後——

杏子「相手はあのワルプルギスの夜。いざって時に備えて、心残りをなくすってのはわかるけどさ」

杏子「なにも前日に行くことはないだろ……」

さやか「うっさいなぁ。これでも予定より遅れたんだよ」

杏子「せっかく戻れたのに、これまで明日の練習で大変だったからね」

杏子「で、どうだったの?」

さやか「……あんた、知ってて言ってるでしょ」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:17:08.84 ID:Lu52np6j0
杏子「ゴメン…… でもさ、仁美だっけ? まどかたちとゲーセンへ連れてきたことあったじゃない?」

杏子「あの時しか会った事ないけど、かわいかったし、いい子そうだしさ…」

さやか「うん、それは知ってる。恭介にはもったいないくらいだわ」

さやか「だから正直言うと、悔しい気持ちもないことはないんだけどさ」

さやか「スッキリして気分爽快な方が上回ってるかな」

杏子「……もう一つゴメン、先に謝っとくから怒んないでよ」

さやか「言ってみなさい」

杏子「今、ちょっと『いいな』って思った」

さやか「お、言ったな~!」

杏子「だからゴメンって!」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/07(木) 01:21:12.34 ID:Lu52np6j0
杏子「……あたしも、そのうち好きな人とかできるのかな」

さやか「できるよ。きっと、いい人が来てくれる」

杏子「ドキドキするかな。そしたらさ、さやかみたいにちゃんと告白するの」

杏子「相手がどんな人かわからないけど、たぶんフラれるだろうね… 女の子っぽくないし」

さやか「どうかな~ まだ先の話になりそうだよ」

杏子「でもいいよね、それもまた」

さやか「よくわかってるじゃない」

さやか「いいもんだよ」

引用元: 杏子「会いたかった」