12.学舎の園
January Third Saturday 11:50
-第七学区・学舎の園入口-
美琴「さて、着いたわよ」
一方通行「どォしてこォなった」
美琴「はい、これ」スッ
一方通行「あン? ンだァこりゃ」
美琴「招待状よ。まあ、ちょっと簡易的なものだけど」
一方通行「コピー用紙……って簡易的にもほどがあるだろ」
美琴「しょうがないじゃない! 本当は学舎の園の中でちゃんと手続きしないと駄目なところを何とかしたんだから!」
一方通行「ハイハイそォですねェ……」
美琴「まあ、これをゲートの係員の人に見せれば難なく学舎の園に入れるわ」
一方通行「つゥかよォ、さすがにバレンだろ。見たこともねェよ、こンな声の低い女なンざ」
美琴「喋らなかったらいいんじゃない?」
一方通行「常盤台のお嬢さまは無理難題をおっしゃる」
美琴「冗談冗談。とにかく声を限界まで高くしたら?」
一方通行「だからバレるだろ(裏声)」
美琴「ぷっ、たしかにこれは……」
348: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:34:16.08 ID:ErR3kOJdo
一方通行「チッ、仕方がねェな……」ピッ
美琴「ん? 携帯なんか出してどうする気? まさかボイスチェンジャー機能でも使うんじゃないでしょうね?」
一方通行「ンなモン使ったところで逆に怪しまれるだけだ。どっかの探偵漫画みたくマスクとかに仕込まねェとな」ピッピッ
美琴「じゃあ何なのよ」
一方通行「もっと出来のイイボイスチェンジャーだ」ピッ
プルルルルル、プルルルルルピッ
打ち止め『もしもしー? どうかしたの、ってミサカはミサカは電話越しのあなたに問いかけてみたり』
一方通行「一つ頼みがある」
打ち止め『唐突だね、何? ってミサカはミサカは耳を傾けてみる』
一方通行「能力使用モードに制限をつけてくれ」
打ち止め『制限? それって体育の時間に使ってるアレのこと?』
一方通行「ああ。ただし制限するものは違う。制限するのは――」
打ち止め『……ふむふむ、了解了解。じゃあそういう風に指令出しとくね、ってミサカはミサカは言われたことを実行してみたり』
一方通行「頼む」
打ち止め『じゃあ準備ができたらまた連絡するね、ってミサカはミサカは通話終了ボタンをポチっと――ツーツー』
一方通行「……さて」
美琴「…………誰と電話してたわけ?」
一方通行「あン? ただのクソガキだ」
美琴「打ち止めのこと? 何でまた」
一方通行「ちょっとな……」
美琴「えらく言葉を濁らせるわね、まあいいけど。で、結局その声はどうするわけ?」
一方通行「こォする――」カチ
キュイーン
一方通行「――あーあー(姫神ボイス)」
美琴「えっ!? こ、声が変わった!?」
一方通行「そォいうわけだ。これならさすがにバレねェだろ(以下姫神ボイス)」
美琴「た、たしかにこれならばれないと思うけど……一体どういう仕組みよそれ」
一方通行「声ってのはよォするに声帯を動かすことで起こる空気の振動だろ?」
一方通行「だったらその空気を伝わっていく振動を弄くってやれば、声の一つや二つ変えられるだろ」
一方通行「知ってるヤツの声の質を数値化して、それに合わせればあっという間にそいつと同じ声っつゥわけだ」
一方通行「まァさすがにオリジナルと同じ声を出すってのは難しいが、知らねェヤツならまずわからねェだろ」
美琴「へ、へー相変わらず無茶苦茶な能力よねーアンタのベクトル操作」
349: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:35:17.41 ID:ErR3kOJdo
ピピピッ! ピピピッ!
一方通行「おっと電話か……」カチ
一方通行「もしもし(一方ボイス)」
打ち止め『もしもーし! ってミサカはミサカは元気に電話の挨拶をしてみたり』
一方通行「うっせェぞクソガキ。用意はできたか?」
打ち止め『うんバッチシだよ! でもね、一つ忠告しておかなきゃいけないことがあるの、ってミサカはミサカは人差し指を一本立てて言ってみる』
一方通行「立てられても見えねェよ。何だ?」
打ち止め『正直、この声のベクトル操作は結構演算が複雑で、杖なしモードに比べてかなり電力を消費しそうなの』
一方通行「制限時間が思い切り短くなるってことか」
打ち止め『そうそう。だいたい杖なしが十二時間なのに比べて、今回のはその四分の一……三時間くらいしか持続しそうにないよ、ってミサカはミサカは対比をしつつ説明してみる』
一方通行「あれ十二時間ももったのかよ」
打ち止め『何に使うか知らないけどそこんとこは気をつけてねー、ってミサカはミサカは忠告終了!』
一方通行「了解だァ。そォだ、お土産に高そうなケーキでも買ってきてやるよ」
打ち止め『えっマジでか!? ひゃっほーい!! ってミサカはミサカは突然のラッキーに胸を躍らせてみたり!』
一方通行「じゃあ切るぞ」
打ち止め『ケーキ楽しみにしてるよー、ってミサカはミサカは――』ピッ
一方通行「…………」
美琴「……電話終わったー?」
一方通行「ああ」
美琴「じゃあさっさと入るとしましょうか」
一方通行「ちょっと待て。一つ疑問があるンだけどよォ」
美琴「何?」
一方通行「鈴科百合子って何だよ? どっからこンな名前持ってきたンだァ?」
美琴「んーと、何となくよ何となく。何となく思いついたからそれを書き込んだけよ」
一方通行「オマエは何となくで鈴科って苗字が思いつくのかよ」
美琴「何よ、だったら田中花子とかいう前時代的な名前にしてあげましょうか?」
一方通行「正直名前なンざどォでもいい。こン中に入れれば問題ねェ」
美琴「なら聞かないでよ!」
一方通行「うっせェなァ、ちょっと気になっただけじゃねェか」
一方通行「つゥかこっちには時間がねェンだ。さっさと行くぞ超電磁砲(以下姫神ボイス)」カチ
美琴「ほいほーい、じゃあ私は先に行ってるわねー」タッタッタ
―――
――
―
350: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:36:21.97 ID:ErR3kOJdo
-学舎の園・入り口ゲート-
係員「――はい、次の方」
一方通行「どォも」
係員「では招待状を出してください」
一方通行「お願いしまァす」スッ
係員「ええっと……常盤台中学二年生の御坂美琴さんに招待された、鈴科百合子さんね?」
一方通行「ハイそォです」
係員「うーん、これ仮招待状なんだけどね」
一方通行(仮招待状だァ?)
係員「一応だけどIDとかの確認させてくれないかな?」
一方通行(何ィ!?)
一方通行(オイオイ聞いてねェぞIDが必要なンてよォ、どォいうことだ超電磁砲ッ!?)
一方通行(大体、鈴科百合子なンて生徒は存在しねェ。イコールIDなンて存在しねェ)
一方通行(たしかに俺はIDは持ってはいるが、それは俺自身の……一方通行としてのID……!)
一方通行(出せば通報される、確実に通報される……いろンな意味で)
係員「?」
一方通行(どォする……、いっそベクトル操作を使って逃げ――いや無理だ、今は制限されている)
一方通行(普通に逃げても逆に怪しまれるだけだ、かといってID出しても変 扱いだ)
一方通行(くそったれが、俺は上条じゃねェっつゥのに何でこんな不幸なことにィ……!?)
351: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:38:16.79 ID:ErR3kOJdo
係員「……ええと鈴科さん?」
一方通行「……は、ハイ!?」
係員「IDを出してくれないかな?」
一方通行「……え、えェと」
係員「もしかしてID忘れちゃったかな?」
一方通行「……! は、ハイ! そォなンなンすよID家に置いてきちゃって――」
一方通行(しめた……! 超電磁砲には悪りィがこれでここから脱出でき――)
係員「だったら登録番号とかわかる? 他にも携帯電話の電話番号とかでも大丈夫だけど?」
一方通行「」
一方通行(……お、終わった。俺の人生全てが終わった)
一方通行(くそったれが。俺はまだ何もできちゃいねェンだぞ? なのにこンな理不尽なことで……)
一方通行(……もォ覚悟決めるしかねェ)
一方通行「……じゃあ登録番号言います」
係員「はい――ッ!」ビクッ
一方通行「……×××――」
係員「――どうぞお通りください」
一方通行「○△□――……ハァ?」
352: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:39:16.18 ID:ErR3kOJdo
係員「失礼いたしました。どうぞお通りください」
一方通行「通ってもイイのかよ?」
係員「大丈夫です。どうぞお通りください」
一方通行「? ならそォさせてもらう」
係員「ごゆっくりどうぞ」
一方通行「…………」ガチャリガチャリ
一方通行(何だァ? 急に対応が変わりやがって、どォいうことだ)
一方通行(さっきまであンなに一生懸命身分照明を求めてきてたのによォ)
一方通行(まるで人格が変わったかのよォだったな……)
一方通行(そして一瞬だけだが感じたあの感覚は……)
一方通行「…………」
一方通行「チッ、まァイイ。俺ァ上条じゃねェからな」
一方通行「どォやら俺には幸運の女神様が味方についていたらしい」
一方通行「…………」
一方通行「チッ、くっだらねェ」ガチャリガチャリ
―――
――
―
353: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:40:16.97 ID:ErR3kOJdo
同日 12:10
-学舎の園・エントランス-
美琴「…………遅い」ブツブツ
一方通行「待たせたな」ガチャリガチャリ
美琴「遅い! たかがゲートくぐるだけでどんだけ時間かけてんのよ!」
一方通行「うるせェよ! 大体こっちはなァ、オマエのせいで危うく変質者にされかけてたンだぞ!」
美琴「? どうしたのよ」
一方通行「オマエのくれた招待状はどォやら仮だったよォでなァ、この場合IDの提示が必要って話じゃねェか!」
美琴「…………ああー、たしかそうだったわねえ、あはは」
一方通行「あはは、じゃねェよ」
美琴「ごめんごめん。じゃあお詫びにお昼奢ってあげるから、ね?」
一方通行「そンなモンで許してもらえると思ってンのか? つゥか昼飯って何だよ?」
美琴「何、ってもう十二時過ぎてんだからお昼ご飯食べるのは当たり前でしょ?」
一方通行「言ったよなァ、俺には時間がねェって」
美琴「別にいいでしょ? 髪切るのだってそんな時間かかんないし。パーマとかかけたりするんなら話は別だけど」
一方通行「つっても二時間ぐれェかかるじゃねェか!」
美琴「それじゃあどこ行く? パスタとかどうよ? それかラザニアとか」
一方通行「人の話を聞け超電磁砲っ! つゥかそれ両方パスタだろォが!」
美琴「早くしないと置いていくわよー?」タッタッタ
一方通行「何ィ? 待ちやがれクソガキが!」ガチャリガチャリ
一方通行「……ったく、あのコイツといいあのクソガキといい、どォしてこォ人の話をかねェンだよ」
一方通行「チッ、さすがは遺伝子レベルで同じ姉妹だけあるってかァ、くそったれが……」
―――
――
―
354: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:42:10.77 ID:ErR3kOJdo
-学舎の園・街頭-
美琴「……うーん、やっぱりこの時間はどこも混んでるわねー」テクテク
一方通行「……オイ」ガチャリガチャリ
美琴「何? 百合子ちゃん」
一方通行「今さらだけどよォ、ここって制服着とかねェといけねェンじゃねェのか?」
美琴「どうして?」
一方通行「さっきから目に入るヤツらのほぼ全員が制服着てンじゃねェか。そォ思ってもしょうがねェじゃねェか」
美琴「よっぽどみすぼらしい格好じゃなきゃ大丈夫よ。何のためにこの美琴様直々に洋服を選んでやったと思ってるのよ」
美琴「それにそんなんじゃ制服がない大学生とかはここに入れないってことになるでしょ? まあ、スーツ着て来いって言われたらしょうがないけど」
一方通行「まァアレだな。どちらにしろ目立って敵わねェな。ジロジロと馬鹿どもが見てきやがる」
美琴「服装もそうだけど、アンタのその頭からして目立ちまくりじゃない。それに変わった杖とか使ってるし」
一方通行「うっとォしい」
美琴「まあいいじゃない。目立つのとか慣れてるんじゃないの?」
一方通行「ンなわけねェだろ。いつも目立たねェよォに裏路地とか通ってンだよ。その代わりにクソ野郎どもによく出会うわけだがな」
美琴「あ、それ私もわかるわ。ことあるごとに絡んできやがるわよね、アイツら」
一方通行「俺とオマエじゃ絡む目的が違うだろォがな」
美琴「でもそのおかげであの馬鹿と出会えたわけなのよね……」
一方通行「相変わらず人助けに熱心な三下なこった」
美琴「あの頃のことを思い出すだけで……何だかムカついてきたわ」ビリッ
一方通行「何があった、オマエらの初遭遇時」
355: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:43:04.96 ID:ErR3kOJdo
美琴「ところで何か食べたいものの希望とかある? 大抵のものなら学舎の園の中で食べられると思うけど」
一方通行「時間のかからねェモン」
美琴「ならカップ麺でも食ってなさいよ」
一方通行「できることならそォするが」
美琴「少しは食事を楽しむということを心掛けたらどう?」
一方通行「不味くなけりゃどォでもイイわそンなモン」
美琴「はぁ……だったら空いてるところを適当に入るとしましょ」
一方通行「何ならメシ抜きでも俺は生きていける」
美琴「私はちゃんと食べたいのよ! 別に今ダイエットとかしてないし……」
一方通行「ダイエットしてるときでも食った方がイイと思うがな。栄養失調起こして倒れたりしたら元もこォもねェし」
美琴「今さっきお昼抜きでもいいって言ったヤツのセリフとは思えないわね」
一方通行「食わないといけねェものを食わねェのと、食わなくてもイイものを食わねェのは大きく違うぞ」
美琴「まあたしかにそうだけど……って、今はそういう話をしてるんじゃない!」
一方通行「ハイハイそォですねェ……っと、あそこ空いてンじゃねェか?」
美琴「ええっと……喫茶店か。ま、いっか」
一方通行「ちなみにオマエは何がよかったんだ? パスタか?」
美琴「別に何でもよかったわよ。ただ学舎の園にはおいしいパスタが食べられる店があるからどうかなって勧めてみただけよ」
一方通行「パスタが食いてェならそォ言えばイイのに」
美琴「だ・か・ら・何でもよかったって言ってるでしょう!」ビリッ
一方通行「危ねェ! 今反射使えねェンだぞ!? 殺す気か!」
美琴「だ、大丈夫よ! ちゃんと手加減はしてるから…………せいぜい五万ボルトくらいよ」ボソッ
一方通行「何だかスタンガンクラスの電圧が聞こえたのは気のせェですよねェ!?」
356: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:43:53.92 ID:ErR3kOJdo
美琴「い、いいから行くわよ!」ガシッ
一方通行「引っ張ンじゃねェ! こっちは杖付きなンだから変に引っ張ンじゃねェ、こけンだろォおあァ!?」
バタン
美琴「あっ」
一方通行「…………」ムクッ
美琴「え、ええと……ごめん」
一方通行「オマエ殺す」カチ
美琴「あ」
一方通行「って能力使えねェンだったァああああッ!?(一方ボイス)」
ざわ……ざわ……
一方通行「……あン?」
美琴「ちょ、ちょっと声戻ってるわよ!? 能力能力!(小声)」
一方通行「おっと」カチ
一方通行「あーあー(以下姫神ボイス)」
一方通行「よし、これで問題ねェ」
美琴「ふぅ、危ないところだったわね。これはボロが出る前に学舎の園を出たほうがいいかもね」
一方通行「当たり前だろォが。ここに居続けることは俺にとってリスクしかねェからな」
美琴「じゃあちょっと急ぐとしましょ」
一方通行「そォだな。つゥことでとっとと美容院に……」
美琴「お腹空いたから早く喫茶店に行きましょ!」ガシッ
一方通行「急がなきゃいけねェってわかってンなら急がせてくれませンかねェ!? あと引っ張ンじゃねェ、イイ加減学習しろゴルァ!」
―――
――
―
357: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:44:28.82 ID:ErR3kOJdo
同日 12:20
-学舎の園・とある喫茶店-
店員「ご注文をどうぞ」
美琴「サンドイッチのスタンダード一つ、あと飲み物にミルクティーをお願い」
一方通行「アイスコーヒー」
美琴「……アンタ料理のほうは?」
一方通行「いらねェ、コーヒーだけで十分だ」
美琴「お腹空いても知らないわよ?」
一方通行「いらねェ心配してンじゃねェ。必要ねェンだよ俺には」
美琴「……まあいいけど」
店員「サンドイッチのスタンダードがお一つ、ミルクティーがお一つ、アイスコーヒーがお一つでよろしいでしょうか?」
美琴「うん、大丈夫よ」
店員「かしこまりました。では少々お待ちください」ペコスタスタ
美琴「…………アンタ、ホントに食べるもの頼まなくて大丈夫なわけ?」
一方通行「しつけェな、大丈夫だっつってンだろ」
美琴「まあいいならいいんだけど。というかお詫びに昼食奢ってあげるって話だったじゃない?」
一方通行「そォいやそォだったなァ」
美琴「つまり私はアイスコーヒー一杯しか奢らないってことになるわよね?」
一方通行「そォなるな」
美琴「…………」
一方通行「…………?」
358: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:46:01.67 ID:ErR3kOJdo
美琴「……はぁ、ま、別にいいけどね」
一方通行「何言ってンだオマエは?」
店員「お待たせいたしました。ミルクティーとアイスコーヒーでございます」スッ
美琴「ありがと」
一方通行「ン」
店員「サンドイッチのほうはもう少しお待ちください」ペコスタスタ
美琴「はいストロー」スッ
一方通行「いらねェ」ズズズ
美琴「ちょ、そのまま飲むの?」
一方通行「悪りィかよ」
美琴「缶コーヒーとかコーヒーカップとかならいいけど、そのグラスで直飲みはちょっと……」
一方通行「オマエはわかってねェ。コーヒーっつゥモンはこォやって少しずつ口に含ンでゆっくりと味わっていくモンなンだよ」
美琴「聞くだけなら一流っぽい飲み方ね。でもそれならストローで飲んでも大丈夫じゃないの?」
一方通行「ストローだったら一度に口に入る量が変わるだろォが」
美琴「そんなに変わらないわよ」
一方通行「わかってねェなァ、超電磁砲……」ヤレヤレ
美琴「ぐっ、別に負けてはないのに何これムカつく……てかそういう細かいとこまで見なきゃ第一位として君臨できないわけ?」
一方通行「ンだァ? オマエ第一位にでもなりてェのか?」
美琴「別にぃ、なりたいなんて思わないわよ。私は第三位くらいでちょうどいいわ」
一方通行「そォだな。オマエはこれくらいが限界だ」
美琴「何よ? 私はこれ以上上がりませんよとでも言う気?」
一方通行「……まァな。アイツとオマエじゃ差がありすぎる」
美琴「アイツって第二位のこと?」
一方通行「そォだ」
美琴「……どんなヤツなの第二位って?」
一方通行「何つゥかアレだ。自分を最強とでも思ってるよォなナルシストクン?」
美琴「それだけ聞くと滑稽に聞こえるわね」
一方通行「だが、能力は最強クラスのチカラだろォな。応用性で言えば俺と同等……いや、俺以上かもな」
美琴「ふーん、何でもできるアンタのベクトル操作の能力より万能ねえ、想像もつかないわ」
一方通行「まァ、ソイツはオマエとは一生縁のねェところで生きているヤツだ。別にする必要もねェよ」
美琴「…………」ズズゥー
一方通行「…………」ズズズ
359: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:47:03.12 ID:ErR3kOJdo
美琴「……ねえ、一つ聞いていい?」
一方通行「何だ?」
美琴「超能力者(レベル5)に八人目って本当にいるの?」
一方通行「…………」
美琴「どうなのよ」
一方通行「……どこで聞いた」
美琴「噂好きの友達がいてね、その子からちょっと」
一方通行「そォか……で、何で俺に聞いてくる」
美琴「アンタ前私に聞いてきたじゃない。超能力者(レベル5)って何人だったか、って」
一方通行「……あァ、あの時か」
美琴「実はそのとき知ってたんじゃないの? その八人目のことを」
一方通行「…………」
美琴「で、信じられないから私に聞いてきた、違う?」
一方通行「…………」
美琴「…………」
一方通行「そォだな……」
一方通行「仮に俺が『いる』っつったらオマエはどォする気だ?」
360: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:47:59.15 ID:ErR3kOJdo
美琴「…………」
一方通行「…………」
美琴「……別にどうもしないわよ、ただちょっと気になっただけ」
一方通行「……チッ、だったらそンなことでいちいち聞いてくンじゃねェ」ズズズ
美琴「で、結局いるのいないのどっち?」
一方通行「どォでもよかったンじゃねェのかよ」
美琴「どうでもいいとは言ってないじゃない。気になるものは気になるし」
一方通行「……ったく、面倒臭せェな」
美琴「面倒臭いって何よ!」
一方通行「そのままの意味だ」
美琴「ふーん、まあアンタがそこまで隠そうとするくらいだからいるんでしょうね。その八人目さん?」
一方通行「オマエがそォ思うンならそォじゃねェか? オマエン中ではな」
美琴「まあいいわ。いたところで私には関係ない話だし」
一方通行「……そォだな」
店員「お待たせいたしました。サンドイッチのスタンダードでございます」スッ
美琴「あっ、やっときたわね。もうお腹ぺこぺこよ」
一方通行「…………」ズズズ
店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
美琴「大丈夫よ」
店員「ではごゆっくり」ペコスタスタ
361: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:48:52.86 ID:ErR3kOJdo
美琴「いただきまーす」
一方通行「さっさと食えよ。俺には時間がねェンだ」
美琴「何よ、食事くらいゆっくりさせなさいよ」モグモグ
一方通行「それは今まで急いできたヤツのセリフだ」
美琴「急いであげたじゃない。時間短縮のために空いてる店に入って……」
一方通行「オマエやっぱりパスタの店行きたかっただろ? 絶対ェ根に持ってンだろ?」
美琴「別に持ってないわよ。パスタなんていつでも食べられるし」
一方通行「ったく、うっとォしい野郎だ……」ズズズ
美琴「うっとおしいとは何よ!」
一方通行「面倒臭せェ野郎だ」
美琴「誰が面倒臭いですって!?」
一方通行「うっせェよ、オマエだオマエ。つゥかメシの時間ぐれェ静かに──」
??「──あら? もしかして御坂さんじゃありません?」
一方通行「……あァ?」
美琴「……あっ、婚后さん! それに湾内さんと泡浮さんじゃない」
婚后「こんにちは御坂さん」
泡浮「こんにちは」ニコ
湾内「今日もいい天気ですね」ニコ
一方通行(ンだァ、常盤台の制服……っつゥことは超電磁砲の連れか?)
362: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:49:41.76 ID:ErR3kOJdo
婚后「……あら? そちらの方はどなたかしら?」
美琴「ああ、私の……ええと、ちょっとした知り合いよ。今日は学舎の園の中を案内してあげてるのよ」
湾内「あら、そうでしたの。道理で見かけない方だと思いましたわ」
泡浮「お名前は何と言いますの?」
美琴「えっと、あく……じゃなくて鈴科百合子っていうの」
泡浮「鈴科さんですね。わたくし泡浮万彬と申します」
湾内「湾内絹保ですわ」
婚后「わたくしは常盤台中学二年の婚后光子です。以後お見知りおきを」
一方通行「……おォ」
美琴「婚后さんたちはここで何してたの?」
婚后「わたくしたちは今から昼食をとるためにこの辺りを歩いていましたの」
泡浮「先ほどまで少し雑事をしていたのでこの通り出遅れてしまいました」
湾内「空いているお店などを探していたら、偶然御坂様がお目にかかったので」
美琴「大変ね……そうだ! よかった一緒にどう?」
一方通行「え?」
泡浮「よろしいのですか?」
一方通行「え?」
湾内「それは助かりますね。ありがとうございます」
一方通行「え?」
婚后「ま、まあ、御坂さんがそこまで言うならやぶさかではありませんわ」
一方通行「え?」
―――
――
―
363: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:50:07.83 ID:ErR3kOJdo
店員「お待たせいたしました。ハムエッグでございます」
湾内「ありがとうございます」ニコ
婚后「……ふむ、たまにはこういう店で食べるのも悪くはありませんわね」モグモグ
美琴「雑事って何やってたの?」
泡浮「常盤台への入学試験の準備の手伝いですわ」
美琴「あー、そういえばもうそんな時期ね。大変ねー」
湾内「いえいえ、これもよい経験ですわ」
ワイワイガヤガヤ
一方通行「どォしてこォなった」
一方通行(ありのまま今起こったを話すぜ。超電磁砲が美容院に連れて行ってくれるっていうからついて行ったらいつの間にか女子会が始まってた。何を――)
湾内「ところで鈴科さん」
一方通行「…………」ブツブツ
湾内「鈴科さん?」
一方通行「あ、あァ俺か。何だ?」
婚后「俺? 変わった喋り方をするのですね貴女」
美琴「あははー、そういうヤツなのよコイツー」
美琴「(アンタ少しぐらい口調変えなさいよ! 一応女子って設定でしょうが!)」ボソ
一方通行「(うるせェよ。俺のアイデンティティであるこの口調に文句付けてンじゃねェよ)」ボソ
美琴「(自分の声を女子に変えてるヤツのセリフとは思えないわね)」
一方通行「(緊急事態だからしょうがねェだろォが)」
美琴「(だったら口調も変えなさいよ、緊急事態なんだから!)」
364: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:50:51.28 ID:ErR3kOJdo
湾内「……あ、あの」
一方通行「あ、あァ悪りィ何だ?」
湾内「鈴科さんは高校生なんでしょうか?」
一方通行「……ああ、そォだが。どォしてだ?」
湾内「いえ、女性にしては身長がお高いと思いまして」
泡浮「たしかにそうですわね。モデルさんのようですわ」
一方通行(そりゃまァ男だしなァ)
婚后「わたくしはてっきり大学生かと思いましたわ。制服ではなく私服を着ておられるので」
一方通行「あァ……制服はアレだ。クリーニングに出してンだよ」
婚后「こんな時期にですか?」
一方通行「あ、アレだアレ。ドブに落ちたンだよドブに」
美琴「ぷっ」
一方通行「何だよ」ギロ
美琴「ごめんごめん、何でもないわぷぷっ」
一方通行(あとで覚えてろよこのクソガキが)
湾内「それは災難だったですわね」
泡浮「月曜日までに間に合うといいのですが」
一方通行「オマエらが気にすることじゃねェよ」
365: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:51:34.99 ID:ErR3kOJdo
婚后「ところで鈴科さんはわざわざ学舎の園まで何をしにきたのでしょうか?」
一方通行「髪を切りにきた」
婚后「髪?」
一方通行「ああ、髪」
婚后「……それだけですか?」
一方通行「それだけだ」
湾内「わざわざここに来たのですから、どこの美容院にいくか決めておられるのですか? ここにはたくさん美容院がありますよ」
美琴「ああ、それは常盤台指定のあそこに連れて行くつもりよ」
婚后「え゛っ、あそこですか?」
一方通行「あン? 何だその反応はァ?」
湾内「ええと……あそこの店主がちょっと」
一方通行「どォいうことだ?」
泡浮「わたくしたちの行く学校指定の美容院があるのですが、そこの店主がちょっと変といいますか、油断ならないと言いますか……」
婚后「本当にあの時は危なかったですわ。危うくこの綺麗な黒髪が虹色アフロヘアーに変えられるところでしたもの」
一方通行「……オイ、超電磁砲?」
美琴「な、何よ?」
一方通行「何つーところに連れて行くつもりだったンだオマエは……!」
美琴「べ、別にいいじゃない! たしかにあの人はちょっと変かもしれないけどそれでも腕は確かよ! 店もそんなに人が多いってわけじゃないし」
一方通行「ふざけンじゃねェぞアフロなンかにされた途端、俺の人生軽く詰むぞ!」
美琴「ちゃんとしてれば問題ないわよ……たぶん」
一方通行「たぶンって言ったよなたぶンって!?」
366: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/13(土) 21:52:11.22 ID:ErR3kOJdo
一方通行「……つゥか俺には時間がねェっつゥ深刻な問題があるンだよ。早く連れてけよその美容院とやらに」
泡浮「あらそうでしたの。それならこんなところで談笑している暇はありませんわね」
美琴「そうね。じゃあ私たちはそろそろ行くわ」
一方通行「やっとかよ」
婚后「鈴科さん。決して油断しないでくださいね。少しでも油断したらその綺麗な白髪が面白おかしくなってしまいますから」
一方通行「そォか。忠告アリガトよ」
美琴「じゃあここの支払いは私がやっとくからね」
湾内「そ、そんな悪いですわ」
美琴「いいっていいって。ついでよついで」
泡浮「それじゃあお言葉に甘えさせていただきますわ」
一方通行「俺ァ先に出とくぞ超電磁砲」
美琴「りょうかーい、ちょっとだけ待っててねー」
湾内「鈴科さん。短い時間かもしれませんが学舎の園をぜひ楽しんでいってくださいね」ニコ
泡浮「またお会いできるといいですね」ニコ
婚后「今度お会いした時に髪型が急激に変化していないことをお祈りいたしますわ」
一方通行「おォ」
一方通行(まァ、もォ二度と会うことなンざねェだろォがな……)
――――
375: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:10:15.17 ID:aAe8VzjBo
13.美容院
January Third Saturday 13:00
-学舎の園・常盤台中学指定美容院-
ピヨピヨ
美琴「こんにちはー」
一方通行「……たしかにガラッとしやがるな」
美琴「あれ? あの馬鹿店主がいない……?」
一方通行「あァ?」
美琴「いつもならそこで携帯ゲームしてるんだけど、おーい坂島さーん?」
一方通行「……オイ、あそこでヘッドホンつけてパン食ってるアイツは何だ?」
美琴「ん?」
坂島「ふんふふんふふーん♪」シャカシャカ
美琴「…………おい」
坂島「ふふふーん……ん? あれ御坂ちゃんじゃーん? 来るの早くなーい?」
美琴「昼過ぎに行くってちゃんと連絡しといたじゃない」
坂島「ええー、まだ一時だよ一時ジャスト。学校とかならまだギリ昼休みっしょ?」
美琴「ここは学校じゃないでしょうが」
376: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:11:26.44 ID:aAe8VzjBo
坂島「……で、そこに立っている白髪の子が御坂ちゃんのお友達?」
美琴「うん、静かで人の少ない美容院を希望してたから連れてきたわ。客を連れてきたんだから感謝しなさい」
坂島「ウチの店けなされた上に感謝を求められるとは思いもしなかったなぁ」
一方通行「…………」
坂島「じゃあそこに座って。ええっと――」
一方通行「鈴科だ」ガチャリガチャリ
美琴「じゃ、私はそこで雑誌でも読んでるから。何かあったら呼んでね」
一方通行「何かあったら、って何があンだよ」
坂道「ほいじゃー鈴科ちゃん、本日はどういう髪型に? 個人的にはアロンジュとかいいと思うなぁ、もちろん地毛で」
一方通行「俺は音楽家になるつもりはねェよ」
坂道「あれ? 一人称俺なんだ? 君面白いねぇ。あっ、髪飾り取っとくねー」ヒョイ
一方通行「人の口癖面白がってンじゃねェ」
坂道「君の声質一見大人しそうなのに、口調は結構荒いよね」
一方通行「もォ俺の口癖の話はするなうっとォしい」
坂道「つれないなぁ、じゃあとりあえずリーゼントとか似合いそうだからリーゼントね」
一方通行「一体さっきのやり取りだけでどォしてそンな前時代の遺物みてェな髪型の名前が出てくるンですかねェ?」
坂道「一人称俺プラスドスの利いた口調。これはもうリーゼントにするっきゃないでしょ」
一方通行「どォしてそォなる。普通に切れ、全体的に短くなるよォになァ」
坂道「えー切っちゃうのぉ? もしかして失恋しちゃった?」
一方通行「してねェよ! 変な勘を働かせてンじゃねェ!」
377: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:12:14.07 ID:aAe8VzjBo
坂道「んーまあ短くするにしても、どれくらいか具体的に言ってもらわないとこっちも困っちゃうかなー?」
一方通行「……後ろ髪が肩にかからねェ程度だな」
坂道「わぉ、思い切っちゃうなぁ。もしかして心は男の子とかだったりするのかなぁ?」
一方通行「くだらねェこと聞いてンじゃねェよ。イイからとっとと切れ」
坂道「はいはーい、じゃあ切っちゃうねー」チョキチョキ
一方通行「…………」
坂道「…………」チョキチョキ
一方通行「…………」
坂道「……ところでパーマとかかけたりする? 今なら――」チョキチョキ
一方通行「だから切るだけでイイっつってンだろォが!」
坂道「ええっ、ほんと鈴科ちゃんここに何しに来たのぉ? 美容院に行って切るだけって」チョキチョキ
一方通行「別に構わねェだろォが」
坂道「それじゃあ俺がつまんないじゃん」サッサッ
一方通行「知るか」
坂道「いや、わりとマジで切るだけなら床屋とか行ったほうがいいよ? 美容院なんかより数段安いし」チョキ
一方通行「美容院の店主とは思えねェセリフだなァ」
坂道「そんな変わんないって、床屋でも切るのめっさうまい人とかいるし」チョキチョキ
一方通行「どォでもイイ」
坂道「ちなみに第七学区のはずれに一軒床屋があるんだけどさ。そこの店主がまた腕がいいんだわー」チョキチョキ
一方通行「……それってアレか? 一回千円でやってくれるってところ」
坂道「そうそう。しかしあのテクニックなら普通に万単位はとれるのに、随分と気前のいい店主だよねぇ、ほんと」チョキチョキ
一方通行「一体何なンだよその店はァ」
378: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:13:48.56 ID:aAe8VzjBo
坂道「そういえば御坂ちゃーん?」
美琴「……何?」ペラッ
坂道「御坂ちゃんは髪切っていかないのー?」ジャキジャキ
美琴「いいわよ別に。私十二月に切ったばっかだし」
坂道「あー、そーいえばそーだったね。たしかあれはクリスマスデートの前だったっけねー」パッパッ
美琴「なっ!?」ガバッ
一方通行(……あァ、あの時か)
坂道「あのときの御坂ちゃんは乙女だったねぇ、結局どうだったのクリスマスデート」サラリ
美琴「でででデートじゃないわよ馬鹿! べべ別に、ただあのときは余ったチケットを消費したに過ぎないし、だから何にもあるわけないしぃ!」
坂道「そっかー、残念だったねぇー何もなくて」チョキチョキ
美琴「だからぁ! 何もないのが普通なんだってばぁ!」
一方通行「くっだらねェ」
坂道「鈴科ちゃんは恋愛とか興味なさそーだよね、御坂ちゃんと違って」チョキチョキ
美琴「何よ! その私が興味津々みたいな言い方!」
一方通行「……たしかにそォだな。恋愛なンざ考えたこともねェ」
坂島「もったいないねぇ、こんなに美人さんなのに」チョキリ
一方通行「ハァ!?」ビク
美琴「ぷっ」
坂島「でもねー、恋愛には興味なくてももう少し髪は丁寧に扱ったほうがいいと思うよ? 一見さらさらだけど実はダメージ結構受けてるよ?」サーサー
一方通行「ンなモンどォでもイイ」
坂島「髪は女性の命だよ? いい素材持ってるんだから大事にしなきゃ駄目だよー?」チョキチョキ
一方通行「……お、おう」
美琴「ぷぷぷっ」
坂道「……ところでさあ」
一方通行「あァ?」
坂道「鈴科ちゃんはチョンマゲ希望だったっけ?」
一方通行「さっき髪を大事にしろっつったヤツのセリフじゃねェだろそれ」
―――
――
―
379: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:15:07.64 ID:aAe8VzjBo
同日 14:30
-学舎の園・街頭-
ピヨピヨ
坂道「また来てねー」ノシ
一方通行「……あァ、やっと開放された」
美琴「お疲れー、よかったわね普通に終わって」
一方通行「実際アフロとかにされたヤツいンのか?」
美琴「さあ? 私は見たことはないけど、たぶんないんじゃない?」
一方通行「あったら間違いなく問題になってるだろォしな」
美琴「何だかんだ言ってあのオッサンもプロだしね」
美琴「で、その髪型はあの時のか……」
一方通行「あァ、クソガキが見てェっつってたから仕方なくな」
美琴「ふーん、髪を切ったのは打ち止めのためだったのね」
一方通行「別にクソガキのためじゃねェよ。俺もそろそろ髪がうっとォしいと思ってたところだったンだよ」
美琴「切らなくてもいいと思ってるとか言ってなかったっけ?」
一方通行「……まァイイ。これで俺のミッションは終了だァ。あとは適当にケーキとか買ってここを出るだけだな」
美琴「打ち止めへのおみやげ? へー優しいとこあるじゃない」
一方通行「勘違いすンじゃねェよ。アイツにはこの電極のこととかで世話になってるからな。その借りを返すだけに過ぎねェよ」
美琴「ふーん、まあそれくらいなら付き合うわよ? こっちも暇だし」
一方通行「そりゃアリガテェこった。ならここから最短距離で行けるケーキ屋に連れて行ってくれ。面倒臭せェから」
美琴「何が面倒なのかわからないけど了解了解」
―――
――
―
380: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:15:55.97 ID:aAe8VzjBo
同日 14:45
-学舎の園・とあるケーキ屋-
美琴「──ありゃりゃー、結構混んじゃってるわねー」
一方通行「チッ、面倒臭せェ」
美琴「まあもう三時近いからね」
一方通行「つゥかケーキってモンはこンなに種類があるモンなのかよ」
美琴「そりゃ学舎の園だし、外のお店とは段違いよ」
一方通行「さすがお嬢様学校の巣窟だけあって、無駄に高いモンのオンパレードだなァオイ」
美琴「まあ、そうでもしないと成り立っていかないところだし」
美琴「で、打ち止めにはどういうケーキを買ってあげるの?」
一方通行「アイツの好みなンざァ知ったこっちゃねェからな。特に決めてねェよ」
美琴「何かないの? 九月くらいからずっと一緒にいたんでしょ?」
一方通行「知らねェモンは知らねェよ」
美琴「うーん、だったら私が代わりに選んであげようか?」
一方通行「ハァ? 何でオマエが」
美琴「私の妹なんだから味の趣味嗜好は似通ってるはずでしょ? 多分」
一方通行「……そォいうのは普段の食生活によって変わンじゃねェのか?」
美琴「たしかにそうかもだけど、根本的なところは一緒なんだから大丈夫でしょ」
一方通行「まァ確かにそォだな。アイツもガキだからオマエと趣味が似通ってもおかしくはねェ」
美琴「まるで私がお子様趣味だと言わんばかりのセリフね」
一方通行「違うのか?」
美琴「違うわよ!」
381: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:16:56.20 ID:aAe8VzjBo
美琴「じゃあ私が選んであげるから……というか私が奢ってあげるわよ」
一方通行「どォしてそォなる」
美琴「だってアンタお昼コーヒーしか頼んでないじゃない。何だか借りを返した気がしないのよ」
一方通行「別にオマエが気にすることじゃねェよ」
美琴「これはあくまで私の自己満足よ。大人しくアンタは奢られてなさいよ」
一方通行「……チッ、わかった、好きにしろ」
美琴「ちょっと待っててねー、すぐ選んでくるから」
一方通行「俺の電極の電池が切れる前には戻ってこいよ」
美琴「善処するわ」タッタッタ
一方通行「戻ってくる気ねェだろオマエ」
一方通行「……はァ、ケーキなンざ買ってくるなンて言わなきゃよかったかもなァ」
一方通行「まァ、それも今さらな話だがな」
一方通行「…………」
一方通行「あァ、コーヒー飲みてェなァ……」
一方通行「…………」
一方通行「……何の用だ第五位」ギロッ
食蜂「……ふふふ、あれぇ気付かれちゃってたぁ?」スッ
382: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:18:39.72 ID:aAe8VzjBo
一方通行「オマエからはよくわかンねェが気持ち悪りィモンを感じンだよ、オマエ自身気付いてねェよォだがなァ」
食蜂「もぉうなんなのよぉ、乙女に向かって気持ち悪いなんて言ったらダメなんだゾ☆」
一方通行「うっとォしいから普通に喋れ」
食蜂「私はこれが普通の喋り方よぉ、操祈ちゃんの個性なんだゾ☆」
一方通行「だからそのうっとォしい語尾をやめろっつってンだろォが!」
食蜂「アナタの言ってることがよくわかんなーい。私はフツーに喋ってるのにぃ」
一方通行「消えろクソガキ」
食蜂「ひどぉい! それが恩人に対しての態度なのかしらぁ?」
一方通行「恩人だァ?」
食蜂「アナタが学舎の園の入り口で困っていたのを助けてあげたのは、実はこの私なんだゾ☆」
一方通行「……あの不自然な態度の変わりよォ、やっぱりオマエが原因か」
食蜂「あら気付いてたのぉ?」
一方通行「言っただろォが。オマエからは気持ち悪りィモンを感じるってなァ」
食蜂「……まぁ、そういうわけで、アナタが変 扱いされるのを免れることができたのも私の洗脳力のおかげよぉ、第一位さん?」
一方通行「ッ!?」キョロキョロ
食蜂「大丈夫大丈夫、安心してちょうだい。ここにいる人たち私たちを認識することはできない、そういう風に私がしたから♪」
一方通行「胸糞悪りィ能力だな」
食蜂「自覚はしてるわぁ、でもそーいうの関係ないわよねぇ? だって私の改竄力ならその胸糞悪いという感情を快感に変えることだって簡単なんだからぁ♡」
一方通行「そォかよ」
食蜂「ま、それでも例外はいるわぁ。例えばあそこでケーキを選んでる御坂さん。彼女のまとってる電磁バリアーが邪魔で私の干渉力を受け付けないのよねぇ」
食蜂「そしてアナタもその例外の一人よぉ。『反射』という絶対的な防御力を持つ一方通行さん?」
一方通行「…………」
食蜂「でもでもぉ、今はその圧倒的なチカラは使用不可。私がこのリモコンのスイッチを押すだけでアナタは操り人形状態」
一方通行「……で?」
食蜂「ん?」
383: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:20:02.00 ID:aAe8VzjBo
一方通行「俺はどンなリアクションをとればイインだァ? 泣いて許しを請えばイイのかァ? 靴舐めて絶対服従宣言すりゃイイのかァ?」
食蜂「くすっ、それも面白いけどぉ、今はそんな気分じゃないわぁ」
一方通行「だったら何の用だ? 用がねェならとっとと失せろ」
食蜂「用がないと話しちゃいけないのかしらぁ?」
一方通行「いけねェなァ、生憎だが俺はオマエが大嫌いだからなァ」
食蜂「残念ね。私は結構アナタのこと好きなのにぃ」
一方通行「心にもねェこと言ってンじゃねェよ。精神系最強の能力を持ってンなら自分の心操ってからそォいうセリフ吐け」
食蜂「そうねぇ、次からはそうするわぁ」
一方通行「…………チッ」
食蜂「そーいえばどうしてアナタはこんなところにいるのかしらぁ? たしか甘いものは苦手じゃなかったぁ?」
一方通行「お得意の読心能力でも使ったらどォだ? オマエなら一発だろ?」
食蜂「ダメよぉ、アナタ今脳みその中空っぽにしてるでしょ? そーいうのはいくら私でも読めないわぁ」
食蜂「…………まぁでも」スッ
食蜂「私が本気を出せば表層から深層まで全ての心理を文字通り掌握することも可能よ。そんなにして欲しいならしてあげてもいいケドぉ?」
一方通行「…………」
食蜂「……ふふっ、今はやめておくわぁ」
一方通行「あン?」
食蜂「今やったら後ろにいるお姫様に怒られちゃいそうだもん☆」
美琴「……アンタぁ……!」ギリリ
384: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:21:34.92 ID:aAe8VzjBo
食蜂「こんにちは御坂さん♪ 今日もいい天気よねぇ」
美琴「ふざけんじゃないわよっ! アンタはまた私の知り合いに……!」
食蜂「別にぃ何もしてないわよぉ。そんな言いがかりを付けられても私困っちゃうんだゾ☆」
美琴「この野郎っ……」ビリッ
食蜂「あっ、あと御坂さん。今はあんまり大声とか出さないほうがいいわよぉ」
アレハミサカサマトショクホウサマ? フタリシテイッタイナニヲヤラレテイルノデショウカ? ケンカデショウカ?
美琴「ッ!?」
食蜂「ちょっと手が滑って能力解除しちゃった。てへぺろ☆」
一方通行「オイ超電磁砲、少しは落ち着いたらどォだ」
美琴「でも……!」
一方通行「あァいうヤツと対峙するときは冷静になることだ。じゃねェと自分の足元すくわれかねねェからな」
美琴「…………」
食蜂「さぁて、そろそろ私もお暇しちゃおうかしらぁ?」
一方通行「さっさと俺の視界から消えろ」
食蜂「また会えるときを楽しみにしてるわねぇ、鈴科さん♪」
一方通行「そン時はそのうっとォしい口調を直せ。話はそれからだ」
食蜂「そのケーキ打ち止めちゃんに喜んでもらえるといいわねぇ」
一方通行「……ッ」
食蜂「くすっ、やっと心を見せてくれたわねぇ。ばいばぁい♪」タッタッタ
一方通行「……チッ、俺もまだまだだなァ。木原のクソ野郎のよォにはいかねェか」
美琴「…………食蜂操祈。一体何のためにコイツと接触しにきたってのよ」
一方通行「帰るぞ」ガチャリガチャリ
美琴「ちょ、ちょっとアンタ待ちなさいよ! 急にどうしたのよ!」タッタッタ
ピーピーピー!!
美琴「……ん? これ何の音?」
一方通行「そォだな。言うならシンデレラの魔法が切れる鐘の音みてェなモンだな」
美琴「うわっ、似合わない言い回しね……」
一方通行「わかってンだよ、言われなくてもなァ!」
美琴「要するにその電極の時間切れの合図ってことでしょ?」
一方通行「そォいうわけだ。つゥことで今から外に出るまで喋らねェから」
美琴「わかったわ。じゃあ行きましょ、外の世界へ」
一方通行「ああ」カチ
―――
――
―
385: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:22:13.19 ID:aAe8VzjBo
同日 15:15
-第七学区・とある公園-
一方通行「……あァ、やっとクソみてェな女物の服から開放されたわ」
美琴「お疲れー、こっちからしたらまさかアンタが女装をしてくれるなんて思ってもみなかったわ」
一方通行「そォだな。俺もンなこと思ってもみなかった」
美琴「でも結構似合ってたわよー、最後の性悪女以外はみんな気付いてなかったようだし」
一方通行「嬉しくもねェよ、ンなこと褒められてもよォ」
美琴「しかし着てた服全部捨てるなんてもったいないわね。普通に持って帰ればいいのに」
一方通行「馬鹿言うな。あンなモン持って帰った瞬間、皆から軽蔑の視線を送られるのは俺なンだぞ」
美琴「……彼女のプレゼント! とかにすれば?」
一方通行「ンなモンいると思うか?」
美琴「いないんじゃない?」
一方通行「即答かよ」
美琴「だってそんなのいたら私なんかとこんなことしないでしょ?」
一方通行「そォいうモンか?」
美琴「そういうもんでしょ?」
一方通行「……ハァ、まァ俺には縁のねェ世界の話だけどな」
美琴「もしかしたらあの馬鹿と一緒で自分だけが気付いてないだけ、って可能性もあるわよ?」
一方通行「……そォかもな」
美琴「うわっ、否定しないの?」
一方通行「否定しよォがしまいが関係ねェよ。言っただろ、俺には住み着くことも許されねェ世界だってな」
美琴「…………」
386: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:22:44.36 ID:aAe8VzjBo
美琴「……じゃ、そろそろ私は帰るとするわ」
一方通行「世話になったな超電磁砲」
美琴「学び舎の園に行きたくなったらいつでも言いなさい。美琴先生がまたコーディネートしてあげるから」
一方通行「行くわけねェだろクソが」
美琴「だったら次から髪切る時はどうするわけ?」
一方通行「…………それまでに新しい店探しとく」
美琴「そ、まあぜいぜい頑張ってちょうだいね」
一方通行「ああ」
美琴「ほいじゃ……ぷぷっ、ば、ばいばーい!」ノシ
一方通行「ハァ? オイ、今何で笑った?」
タッタッタ
一方通行「…………」
一方通行「…………まァイイか」
一方通行「……さァて、俺もバッテリーが切れる前に帰るとするかァ」ガチャリガチャリ
―――
――
―
387: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:24:00.60 ID:aAe8VzjBo
同日 15:45
-黄泉川家・リビング-
ガラララ
一方通行「……戻ったぞ」ガチャリガチャリ
打ち止め「わぁーいおかえりー! ってミサカはミサカは元気にお出迎えしてみたりー!」トテチテ
一方通行「出てきてねェじゃねェか。あとうるせェから少しは黙ってろ」
結標「おかえりなさい一方通行。随分と頭がスッキリしたじゃない」
一方通行「まァな。髪の毛を切ることをオマエらに強いられていたからなァ」
芳川「もうツンデレなんてやめて、『打ち止めのために切りました(キリ』って言えばいいのに」
一方通行「そろそろ俺のためにオマエを叩き潰す必要があるかァ?」
黄泉川「んー、個人的にはもう少し短くしてもよかったじゃんよ。こうバリカンでぐいっと」
一方通行「だから坊主なンかにはしねェつってンだろォが」
打ち止め「で! で! で! おみやげのケーキはぁ? ってミサカはミサカは目をキラキラさせながら催促してみたり!」
一方通行「ほらよ」スッ
打ち止め「わー、ありがとうさぎー! ってミサカはミサカは懐かしのネタでお礼を言ってみたり!」
一方通行「オマエらの分もあるから適当に食ってろ。俺はいらねェ」
黄泉川「おっ、いいじゃん? 悪いねー」
芳川「ごちになりまーす」
結標「ありがとー……って、これって『PASTICCERIA MANICAGNI』のケーキじゃない!」
一方通行「ぱすてぃ……何だって?」
芳川「『PASTICCERIA MANICAGNI』。イタリアで有名なケーキ屋ね。日本じゃ学舎の園でしか出店してないわ」
打ち止め「そんなものどうしてあなたが持っているの? ってミサカはミサカは素朴な疑問を浮かべてみたり」
一方通行「あ、ああアレだよアレ。アレをアレなンだよ」
黄泉川「あれあれ言い過ぎて何が言いたいのか全然わからないじゃん」
芳川「ところで一方通行?」
一方通行「ンだよ」
芳川「このケーキがここにあるのと、キミの頭に付いている花形の髪飾りは何か関係があるのかしら?」
388: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/20(土) 22:24:48.06 ID:aAe8VzjBo
一方通行「……ハァ? 髪飾りィ? 何を言って――」スッ
つ『花形の髪飾り』
一方通行「」
打ち止め「わぁーかわいい髪飾りだねー、ってミサカはミサカは素直な感想を言ってみる」
一方通行「」
結標「……一方通行、まさか……?」
一方通行「」
黄泉川「?」
一方通行「」
芳川「これはどういうことかしらね?」ニヤニヤ
一方通行「…………ブツブツ」
芳川「えっ? 何だって?」
シュバァァァ!!
一方通行「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかか――ッ!!」
打ち止め「ぎゃああああああああっ! 久しぶりにキレたー!! ってミサカはミサカは本気で逃走をしてみたり!」ダッ
芳川「これは……プラズマ……!? 風の吹いていないこの室内でどうやってこんなものを……!?」
黄泉川「おおっー、何かこんなの昔漫画でみたことあるじゃん。たしかげんきだ――」
結標「そんなこと言ってる場合じゃないですよ黄泉川さん! 早く逃げましょう!」
一方通行「圧縮圧縮ッー!! 空気を圧縮ゥ!! 跡形もなく全て消し去ってやるよあぎゃはははははははははっ!!」
※暴れだした一方さんは通りすがりの科学者にフルボッコされました。
―――――
397: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:10:44.00 ID:s8pMqQrPo
14.木原家の一日
January Fourth Tuesday 09:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
数多「ふわぁー、火曜日っつーのはどうしてこう面倒臭せぇんだろうな?」
円周「何言ってるの数多おじちゃん。数多おじちゃんは年中無休で面倒臭いって言ってるよね?」
数多「そうだったか? そりゃ気付かなかったわ」
円周「もー、数多おじちゃんはおっちょこちょいだねー」
数多「こういう場合はおっちょこちょいって言わねぇんじゃねえのか?」
ピンポーン!
円周「……あっ、打ち止めちゃんだ!」タッタッタ
数多「走んじゃねぇよクソガキ! オフェスに埃が舞うだろうが」スタスタ
円周「はいはーい。今出るよー!」ガチャ
打ち止め「おっすエンシュウ! ってミサカはミサカは朝の挨拶をしてみたり!」
円周「おはよー打ち止めちゃん! 今日も相変わらず変な語尾だねー」
芳川「おはようございます木原さん」
数多「あぁどうも」
芳川「今日もこの子をよろしくおねがいしますね」
数多「はいはいわかってますよ。積まれた金の分は働きますから」
芳川「では今日は三時くらいに帰れると思うので……」
数多「了解でーす」
打ち止め「いってらっしゃいヨシカワ! ってミサカはミサカは手を振って見送ってみたり」ノシ
円周「いってらっしゃい桔梗おばちゃん!」ノシ
芳川「はいはい行ってきます。あと円周ちゃん、おばちゃんじゃなくてお姉さんよ」
398: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:12:08.40 ID:s8pMqQrPo
数多「……さぁて、今日の仕事の確認でもすっかなー」ペラッ
打ち止め「キハラー! 人生ゲームしようよー、ってミサカはミサカは箱からボードを取り出しながら誘ってみたり」
数多「お前さっきの俺の呟ききちんと聞いてたか?」
円周「そうだよ打ち止めちゃん! 数多おじちゃんだって忙しいんだよ!」
数多「さすが円周ちゃん。よぉくわかってんじゃねぇか」
打ち止め「うぅ、ごめんなさいキハラ」
数多「わかればいいわかれば。さて、とっとと仕事のかく――」
円周「数多おじちゃんコンビに行こうよコンビニー!」
数多「あれれー? お前さっき俺が忙しいって自分で説明してたよなぁ?」
円周「そんな資料とにらめっこするばかりじゃ体に悪いよ? というわけで散歩がてらにコンビニだね!」
数多「まだにらめっこ始まって十秒も経ってねぇんだけど。さらに言うなら始まってすらねぇんだけど」
打ち止め「いいねーコンビニ! 今から出ればヨシカワに追いつけるかも、ってミサカはミサカはおそらく今マンションから出たであろうヨシカワを思い浮かべながら言ってみたり」
数多「何でコンビニに行くってことになってんだよ。いい加減にしろクソガキども、こっちは仕事があんだよ仕事」
打ち止め「いっつも部下に全部任せてるくせにこういう時だけ仕事して逃げようとしてるよねキハラって、ってミサカはミサカはジト目で睨みながら言ってみたり」ジトー
円周「そうだよねーうんうんわかってるよ数多おじさん。『木原』ならこういうとき相手をジト目で見て精神を不安定にさせるんだよね」ジトー
数多「うるせぇぞテメェら! 目障りだ俺の視界から消えろ!」
打ち止め「はーい」トテチテ
円周「ムカつくから数多おじちゃんの部屋荒らしとくねー」テクテク
数多「一ミリでも物の位置がずれてたらぶち殺すぞ」
399: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:13:18.86 ID:s8pMqQrPo
数多「…………はぁ、頭痛ぇ……、バファ○ンどこやったっけか?」ゴソゴソ
ガチャ
マイク「おはようございます!」
オーソン「おはようございます!」
ヴェーラ「おはようございます!」
数多「おうこんな時間に来るたぁ中々やる気があんじゃねぇか」
<ワーワーヤッチャエヤッチャエ! <フハハハハハハッ オカシノタメナラミサカハアクニモナレルノダ ッテミサカハミサカハ
ガシャン! ガチャガチャ! ドコーン!
ヴェーラ「……何をやっているのですか?」
数多「……あー、あのクソガキどもが遊んでやがるだけだ。ほっとけ」
マイク「とりあえずオフェスの掃除を始めますね」ガチャガチャ
オーソン「自分は車の整備に行ってきます」
数多「じゃあ俺はガキどもの掃除でもしてくっかなぁっと」スタスタ
<ウワァーヤセイノアマタオジチャンガアラワレター!! <コレハマズイ ッテミサカハミサカハセンリャクテキテッタイヲ <トットトカタヅケロクソガキドモ!!
ゴチン!!
ヴェーラ「…………」
ヴェーラ「私も掃除しよ」ガチャガチャ
―――
――
―
400: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:14:13.34 ID:s8pMqQrPo
同日 10:00 ~朝礼~
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
数多「――さーて今日のテメェらのお仕事の説明をはっじめまーす!」
マイク「…………」
オーソン「…………」
ヴェーラ「…………」
数多「まずマイク。テメェはいつものババァの飼ってる犬の散歩。それが終わったら第五学区のいつもの大学にいって清掃活動な」
マイク「了解です」
数多「次にオーソン。荷物が届いてる。これを『屋台尖塔』の方に届けろ」
オーソン「はい」
数多「ヴェーラは事務だ。資料やらなんやらが溜まってっからな」
ヴェーラ「わかりました」
数多「ほいじゃ、さっさと働けクズども」
三人『イエッサー!』
401: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:15:30.17 ID:s8pMqQrPo
数多「……さて、仕事だ仕事」カタカタカタ
円周「何やってるの数多おじちゃん? こんな時間から ぃサイトでも巡回してるのー?」
数多「んなわけねぇだろうが。どう見ても仕事をしている真面目なサラリーマンだろうが」
打ち止め「顔に刺青入れてるサラリーマンなんて見たことないよ、ってミサカはミサカは指摘してみる」
数多「こまけぇこたぁいいんだよ。ガキどもは隅っこで遊んでろ」
円周「人生ゲーム飽きちゃったよ。ちょっと力の量をいじればルーレットなんて普通に調整できるし」
打ち止め「だからミサカはテレビゲーム版の人生ゲームが欲しい! ってミサカはミサカは借金まみれの経歴を隠しながら要求してみたり」
数多「ったく、そこまで遊びごときでマジになってんじゃねぇよ。わぁったわぁったいつか買ってやるから隅っこで遊んでろ」
打ち止め「わぁーい話が最初に戻っちゃったよ、ってミサカはミサカは無限ループの怖さを味わう勇者のような気持ちになってみたり」
円周「どうせだからあの隅っこの壁をぶち壊して打ち止めちゃんたちの部屋につながるトンネルを作ろうよ! そしてらいつでも遊べるよー」
数多「おいおいふざけんなよクソガキ。無茶して怒られんのは俺なんだぞ?」
打ち止め「そうだよエンシュウ! ミサカもヨミカワには怒られたくない、ってミサカはミサカは体をぶるぶると震わせてみたり」ブルブル
円周「そっかー残念だねー」
数多「……はぁ、おいヴェーラ」
ヴェーラ「何でしょうか社長」
数多「人生ゲームのテレビゲーム版を注文しといてくれ」
ヴェーラ「わかりました……ええと」カタカタカタ
ヴェーラ「……いろいろ種類がありますがどうしましょうか」
数多「あー、とりあえず一番新しいの買っとけ、面倒臭せぇ」
ヴェーラ「了解です」カチ
―――
――
―
402: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:18:28.61 ID:s8pMqQrPo
同日 12:00 ~昼休み~
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
打ち止め「――はーい! お昼の時間だよー! ってミサカはミサカは空腹を感じながら時間報告してみたり」
数多「るせぇな、適当にカップ麺でも食ってろ」
円周「……あっ、もしもし。お寿司の特上を一つお願いしまーす」
数多「おいテメェ、何勝手にいいモン頼んでんだ!」
打ち止め「じゃあミサカも特上お寿司がいいー! ってミサカはミサカは要求してみたり」
円周「うんわかってるよ……あとお子様セット一つで」
打ち止め「ちょっとちょっとエンシュウー! ミサカも特上だよ! ってミサカはミサカは訂正を求めてみたり!」
数多「お子様セットで十分だろ。つーか円周ちゃーん? ちょっとその受話器寄越してみよぉか?」
円周「うん、うん、わかってるよ数多おじさん。『木原』ならこういうときはこうするよね」ダッ
数多「おらっ円周ぅ!! 逃げ回ってんじゃねぇぞコラッ!!」ダッ
バタバタドタドタパリーンガシャーン!!
ヴェーラ「……はぁ、また掃除しなきゃいけないわね」
ガチャ
オーソン「ただいま戻りました!」
ヴェーラ「あら、おかえりなさいオーソン」
オーソン「社長は?」
ヴェーラ「ご覧の通りよ」
オーソン「……あぁ」
数多「ったく、こう何度も高級料理を頼まれたらこっちの金が全部吹っ飛ぶじゃねぇか」
円周「ちっ、あともう少しでお寿司が手に入るところだったのに」
数多「テメェは唯一の野郎に金もらってんだろうが。それで好きなもん食ってろよ」
円周「私は『木原』だからね、他人のお金で食べるメシはうまい! って感じなんだよー」
数多「いつから『木原』っつーのはこんなに小さくなっちまったんだ?」
オーソン「社長! ただいま戻りました!」
数多「おう、特に問題はねかったか?」
オーソン「大丈夫です!」
数多「だったら昼休憩だ。適当に休んでろ」
オーソン「了解です!」
数多「あとマイクの野郎が帰ってきたら休みだって伝えといてくれ」
オーソン「はい!」
403: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:20:45.62 ID:s8pMqQrPo
打ち止め「ねえねえ! エンシュウってそんなにお金持ってるの? ってミサカはミサカは好奇心を働かせてみたり」
円周「うん持ってるよ! ゲームショップに行ってゲームハードを全色全種類余裕で大人買いできるくらいは持ってるよ!」
打ち止め「おおっー! 何だかよくわからないけどすごそうだね、ってミサカはミサカはとりあえず驚いてみる」
円周「まあまあ『木原』にとってお金があるないなんて些細な問題だよねー」
打ち止め「キハラはいっつも金、金、言ってるような気がするけど、ってミサカはミサカは普段のキハラを思い出してみたり」
円周「数多おじちゃんはあれだよ、一時のテンションに身を任せてしまったから……このざまだぜ!」
打ち止め「可愛そうなキハラ……ってミサカはミサカはハンカチを取り出して嘘なきしてみたり」シクシク
円周「そうだねー可愛そうだよねー数多おじちゃん」
数多「本人のいる前で勝手に可愛そう判定すんじゃねぇよ! あと俺は身を滅ぼしてねぇ!」
打ち止め「結局ミサカの今日のお昼は何なのかな、ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
数多「寿司のお子様セット」
打ち止め「ぐわああああああっ!! まさかのお子様セットだとォおおおおおおっ!? ってミサカはミサカは床を叩きながら悔しがってみたり!」ドンドン
円周「ひどいねー数多おじちゃん。こんなイタイケな女の子のお昼ご飯をお子様セットにするなんて……児童相談所に訴えれば勝てるね」
数多「うるせぇよ、つーかそんなことで相談所は動くわけねーだろ」
円周「大丈夫だよ打ち止めちゃん。私の特上お寿司セットのガリ辺りを分けてあげるからね!」
打ち止め「わぁーい! ってミサカはミサカは喜ぶべきなのかわからないけどとりあえず喜んでみたり!」
数多「勘違いすんじゃねーぞ円周。テメェの分もお子様セットだ」
円周「まさに外道!」
404: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:22:54.49 ID:s8pMqQrPo
~三十分後~
オーソン「……社長。寿司が届きましたよ」
数多「おう、そこに置いといてくれ」
打ち止め「わーい、待ちに待った昼食だ! ってミサカはミサカは飛びついてみたり」バッ
円周「って、何だこりゃー? 数多おじちゃんのお寿司が特上……だと?」
打ち止め「おやおや、それは本当ですかなエンシュウ? ってミサカはミサカは怪しい老人風に尋ねてみたり」
数多「当たり前だろうが。お前らガキ、俺大人。わかるかなーん?」
円周「うわーこれはひどい。大人という権力を行使して自分だけ甘い汁を吸おうとしてるよ」
数多「なぁにが甘い汁だ。これは俺のポケットマネーで買ったんだぜ? つまり当然の対価を払って手に入れてるっつーわけだ」
数多「お前らみてーにただ口を開けてエサを待ってるだけの雛鳥ちゃんとは違うんだよ」
数多「だから大人しくお子様セットの付属品のおもちゃで遊びながらぜいぜい安っぽい寿司ぃ楽し――ん?」
円周「うん、うん、やっぱり大トロはおいしいねー」モグモグ
打ち止め「タマゴでさえこのおいしさだと……!? ってミサカはミサカは特上品のおいしさに絶句してみたり」モグモグ
数多「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!! 何勝手に食ってんだクソガキどもぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
405: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:23:33.52 ID:s8pMqQrPo
円周「いやー数多おじちゃんの話が長すぎて待てなかったよ。ごめんねー数多おじちゃん」モグモグ
打ち止め「キハラ。世の中は弱肉強食だよ! 早いほうが強いんだよ! ってミサカはミサカは世界の理について語ってみたり」モグモグ
ゴッ!!
円周「ばごヴぇるごぶちゃえ!?」
打ち止め「あうっ!」
数多「……さぁーて、数多おじさん怒っちゃったよぉー、面倒臭せぇーけど怒っちゃったよぉ?」
円周「……う、うん、わわわかってるよあああまたおじちゃん。きききはらならここで――」ガクガクブルブル
打ち止め「あわわわわわわ」ガクガクブルブル
数多「今さら謝っても許さねーからなぁ? みっちり教育をしてやるよクソガキども」ゴキゴキ
打ち止め「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!! ってミサカはミサカは真後ろに向かって全速前進だっ!!」ドタドタ
円周「『木原』ならここですみやかに退場ぉー!!」バタバタ
数多「悪りぃがこの木原数多を怒らせた時点でテメェらに逃げ場はねーんだよぉ!!」ダッ
バタバタドタドタパリーンガシャーン!!
ヴェーラ「……また掃除をしなきゃいけないのかしら?」
オーソン「ちょっと吉野家行ってくる」スタスタ
―――
――
―
406: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:24:53.96 ID:s8pMqQrPo
同日 13:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
数多「……さて、午後の仕事はデスクワーク。社蓄のように働けゴミども」
マイク「了解」カタカタカタ
ヴェーラ「はい、こちら『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』です。ご用件は?」
オーソン「…………」カキカキ
打ち止め「ふわぁー、この時間帯は暇な上に眠いねー、ってミサカはミサカは目をこすりながら呟いてみたり」
円周「何か眠気を吹き飛ばせるようなイベントがあればいいのになー」
打ち止め「例えば?」
円周「謎のテロリストがこの部屋に侵入してきたり?」
打ち止め「わー、あれだねー! テロリストの隙を突いて鉄砲とかを奪うんだね? ってミサカはミサカは中二的な発想をしてみたり」
円周「鉄砲を奪うのは情弱のすることだよ。情強はテロリストのアシを破壊して、逃げられなくなったところをじわじわといたぶってあげるんだよー」
打ち止め「……そもそも普通はいたぶるところができないから鉄砲を奪うんじゃないかな? ってミサカはミサカは反論してみたり」
円周「銃弾なんて余裕で避けられるよ。万が一のときはここの人たちを盾にすればオッケーだし」
打ち止め「それはどうかと思うけど……」
円周「そもそも侵入する前に叩くの理想だよねー、入り口とかに地雷とか仕掛けて」
打ち止め「……あれ? 仕掛けてないよね地雷!? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり!」
円周「はじめは仕掛けようとしたんだよー? でも数多おじちゃんに怒られちゃって」
数多「テメェは人の客を爆死させるつもりか」
407: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:25:44.20 ID:s8pMqQrPo
円周「まあそんなわけで、ここの部屋はテロリストはおろか幼稚園児でも簡単に侵入をすることができるザルセキュリティってことだよー」
打ち止め「いや、さすがに幼稚園児は無理だと思うよ、ってミサカはミサカはすかさずツッコンでみたり」
数多「あぁ? 馬鹿言ってんじゃねぇよ、ここのセキリュティ舐めんな。テロリストはおろかテメェでも容易に侵入できねーよ」
円周「ええっーそんなー。あの程度のトビラくらいちょこっと道具を使えばすぐ打ち破れるよー」
数多「それは進入じゃなくて強行突破だろーが」
円周「同じだよー。よーはここに入ってくればいいんだしねー」
打ち止め「むむむ、ミサカには難しい話しすぎてさっぱりだぜ、ってミサカはミサカは諦めてオレンジジュースを飲んで一服してみる」ゴクゴク
ピンポーン
数多「あん? 客か? 珍しい」
円周「言ってて悲しくならないの数多おじちゃん?」
数多「うるせぇよ、おいヴェーラ出てこい」
ヴェーラ「わかりました」スタスタ
打ち止め「本当に珍しいよねー。初めてじゃないかなー? ミサカがここに来るようになってから、ってミサカはミサカは今までのことを思い返してみたり」
円周「それだけこの会社が信用されてないってことだよ。現に仕事のほとんどは裏の仕事だし」
数多「余計なこと吹き込んでんじゃねぇよ円周」
<ハーイドナタデ―キャッチョットアグッ!?
ガシャン!!
408: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:27:07.43 ID:s8pMqQrPo
数多「あぁ?」
円周「ん?」
打ち止め「えっ!?」
イヌロボ達『…………』ウィーン
数多「……何だこいつら?」
打ち止め「い、犬だ! 犬型のロボットだよ! ってミサカはミサカは指差しながら報告してみたり」
円周「……五、六、全部で七体だねー」
数多「たしかこいつらって『T:GD(タイプ:グレートデーン)』とかいうヤツじゃねかったっけなぁ?」
イヌロボ1『……ふふふ、よくご存知ですね』
打ち止め「犬が喋った! ってミサカはミサカは素直に驚いてみたり」
円周「ロボットだから喋ってもおかしくないよー」
数多「んだぁ? ゾロゾロと人ン家の中に土足で上がりこみやがって、犬の散歩のコース間違えてんじゃねぇのか?」
イヌロボ1『こんにちは木原数多さん。今回僕がここにきたのはあるお願いがあるからです』
数多「お願い? いきなりじゃねぇか、そりゃ仕事っつー意味で捉えて構わねぇんだな?」
イヌロボ1『はい』
数多「なら言ってみろ。こちとら金さえ出せば何でもしてやるぜぇ?」
409: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:28:06.50 ID:s8pMqQrPo
イヌロボ1「では『最終信号(ラストオーダー)』を引き渡してください』
打ち止め「……え」
数多「あん? このガキのことかぁ?」
イヌロボ1『ええ、そうですよ』
イヌロボ1『僕たちは上層部から依頼を受けてここまで来ました。内容はただ『最終信号(ラストオーダー)を回収せよ』と書いてあるだけでした』
イヌロボ1『そういうわけで引き渡して欲しいのですが。あなたも上層部を敵に回したくはないでしょう?』
数多「……あー、つまりあれかぁ? 俺のしようとしてたことを代わりにテメェらがやるってことかぁ?」
イヌロボ1『そう考えてもらって構いません』
数多「ったく、まだ懲りてねかったのかあの野郎は……」
イヌロボ1『では引き渡してくださいますか最終信号を』
数多「残念だがこの子は大事なお客様から預かってる子でねぇ、ただっつーわけにはいかねぇんだわ」
イヌロボ1『そうですか。では報酬を払うとしましょう。こちらもそれなりに予算が下りていますからね』
数多「ほぉ……いくらだ?」
打ち止め「……き、キハラ?」
イヌロボ1『……その子を引き渡してくだされば、あなたに三億円そのままを差し上げましょう』
410: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:30:49.69 ID:s8pMqQrPo
打ち止め「さ、三億っ! ってミサカはミサカは驚愕の表情を浮かべてみたり」
数多「ぎゃはっ、サラリーマンの生涯年収分くれるってかぁ? 太っ腹だねぇお前ら」
打ち止め「えっ、キハラ……まさかミサカを売るつもりなの……?」
数多「いやいや俺だってさぁ、正直生きるのに疲れてたわけよ。残りの人生楽に過ごしてぇなんてこと思ってるわけだ」
数多「楽に過ごすってことは必然的に金が必要になる。その必要なモンがお前を向こうに差し出すだけで手に入る。利率がすげーことになるよなぁ?」
打ち止め「え、う、嘘だよね……キハラぁ、ってミサカはミサカは涙目になりながら尋ねてみる」
数多「……おい犬っころ」
イヌロボ1『何でしょう?』
数多「売ってやるよ、この視界に入るだけでうっとおしいクソガキをな」
打ち止め「!?」
イヌロボ1『懸命な判断ですよ木原数多。では最終信号を引き渡――』
数多「――ただしこいつの価格は『十億』だ」
イヌロボ1『じゅ、十億!? 何を馬鹿なこと言っているんですか!?』
数多「別に馬鹿なことは言ってねぇよ。人の命は金には換えられねぇとかクソくだらねぇこと言うつもりはねぇよ」
数多「だがあのクソガキがコイツにかけた金は十億っ! つまりこのガキはそれだけの価値があるってことだよなぁ!?」
打ち止め「……キハラぁ」グスッ
数多「あぁ泣くんじゃねぇよ。テメェを守ることが保護者様の依頼なんだからよぉ、クライアントの要望にはきちんと答えねぇとなぁ」
イヌロボ1『……交渉決裂……というわけですか?』
数多「あん? まさかテメェら『メンバー』はたった十億すら出せねぇ貧弱組織なのかぁ? 笑っちまうぜぎゃははははっ!」
イヌロボ1『……ほぅ、いつから気付いていたのですか? 僕たちが『メンバー』だと』
数多「そんな悪趣味なおもちゃ使うヤツらなんざ、あの趣味悪りぃクソジジィが率いてるテメェらぐれーだろうが」
イヌロボ1『いいでしょう。ここからは実力行使と行きましょう』
バキッ! ゴバッ!
マイク「ぐわっ!?」
オーソン「がはっ!?」
打ち止め「わっ、マイク! オーソン!」
イヌロボ1『T:GD(タイプ:グレートデーン)』七機。それに比べてあなたは一人。守りきれるかなー? そのクローンを!』
411: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:32:46.94 ID:s8pMqQrPo
数多「……あー、わかってねぇなーお前」
イヌロボ1『何がだ?』
数多「そりゃ、お前……あれだろ」
数多「お前らは一体誰を敵に回しているのか、ってことをだクソガキ」ギロ
イヌロボ1『……やれ! 『T:GD(タイプ:グレートデーン)』!!』
イヌロボ2『!!』バッ
数多「下がってろクソガキ」
打ち止め「で、でも武器は!? 素手でどうするつもりなの、ってミサカは――」
数多「武器だぁ? いらねーよこんなゴミども相手になんか」
イヌロボ『!!』ウィーン
シュバババババッ
数多「よっと」スッ
イヌロボ2『!?』
数多「ひゃはっ、ほらよっ」
ガゴン!!
イヌロボ2『ジジージージー』キュイーン
412: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:34:11.93 ID:s8pMqQrPo
イヌロボ1『な、なにぃ!? T:GDがパンチたった一発でっ!?』
数多「別に何も驚くことはねぇだろうが。外装をいくらガチガチのメタルで固めようが、中身のコンピュータはネズミでも破壊できるくれぇ脆い」
数多「だったら簡単だ。直接そのコンピュータ部分を叩けばいい」
イヌロボ1『わ、わけがわからないぞ……一体どうやってそんな……』
数多「どうやってって……そりゃ外側から殴った衝撃を、全部中身のコンピュータ部分に持っていきゃいい話だろ?」
イヌロボ1『ちょっとよくわからないです』
数多「ったく、これだから低脳相手に会話するのは疲れるんだよ。まず聞くが俺は誰だ?」
イヌロボ1『……木原数多』
数多「そういうことだ」
イヌロボ1『い、いやわけがわからないぞ!』
数多「小学校で習わなかったのかぁ? 『木原』は何でもできるスーパーマンだってなぁ」
イヌロボ1『そんなこと習うか!!』
数多「俺ぐらいの天才になるとなぁ、金槌のような打撃の力を顕微鏡クラスの精密レベルで操れんだよ」
数多「岩の上にいるカエルがいたとする。そのカエルだけ殴って下の岩だけ破壊するってことも余裕でできんだよ俺は」
イヌロボ1『そんな馬鹿な! そんな馬鹿なことがあるわけ――』
数多「まぁ、んなことどうでもいいけどよぉ、周り見てみろよ」
イヌロボ1『……えっ』
413: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:35:24.03 ID:s8pMqQrPo
ゴキャッ、バキャ、メリッ、グシャ、ガキン!!
円周「……うん、うん、わかってるよ数多おじさん。『木原』ならバレないように相手の数を減らすことなんて造作もないことだよね」ピーガガガ
イヌロボ1『い、いつの間に!? T:GDが僕以外全滅っ!?』
数多「いやぁー間抜けな話だよな。敵と仲良く談話してたらあっという間に形勢逆転。ホント愉快愉快」
イヌロボ1『くっ、出来損ないの『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』に僕が負けるなんて――』
数多「あー違う違う。今はそーいう名前じゃなくて……」
ヴェーラ「私たちはッ!!」スッ
マイク「『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』だッ!!」バッ
オーソン「覚えとけタコッ!!」ゴゥ
イヌロボ1『ッ!?』
ガシャン!!!
数多「 ……『HsLH-02』か。随分と利口なモン使えるようになったじゃねぇか」
414: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:38:43.22 ID:s8pMqQrPo
イヌロボ1『そ、そんな……』ガガガガガ
数多「ひゃはっ、まるで道路に貼り付いてるカエルの死骸みてーだなぁおい」ケラケラ
イヌロボ1『……お前は絶対後悔するぞ! 木原数多! お前を狙う刺客たちがさらに強力な戦力を持って再び襲い掛かるぞ!!』
数多「ぎゃはっ、おいクソガキ。じゃあ上のヤツラに伝えとけ」
数多「俺らを殺すんだったら第三位の『FIVE_Over(ファイブオーバー)』の百機くれぇ持って来い、ってなぁ!」スッ
ガシャン!!
数多「ま、その程度で殺されるほど楽な生き方してねぇんだけどな。なぁ、アレイスター?」
―――
――
―
415: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/04/27(土) 11:40:18.44 ID:s8pMqQrPo
同日 15:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
ピンポーン
芳川「こんにちは――って」
ボローン
芳川「な、何!? 強盗!?」
打ち止め「おかえりヨシカワー! ってミサカはミサカはお出迎えしてみたり」トテチテ
芳川「何があったの打ち止め?」
打ち止め「うーんと、ちょっとテロリストに襲われちゃったかな? ってミサカはミサカは簡潔に説明してみたり」
芳川「て、テロリストっ!?」
数多「ああ、芳川さんこんちはーす」
芳川「テロリストが来たって本当!?」
数多「テロリスト……って言えばテロリストかぁ? まぁゴミクズが来たのは本当だな」
芳川「だ、大丈夫? 怪我とかされてないですか?」
数多「別に問題ねぇよ。まだあのクソガキを相手にしたほうが楽しめる戦いでしたわぁ」
円周「大丈夫だよー! 私たちがいれば、打ち止めちゃんには傷一つ付かないからー!」
芳川「そ、そう。よかったわ……」ホッ
数多「…………っつーわけでこれからも『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』をよろしくお願いしまーす」
――――
428: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:06:40.30 ID:ObKlSWDQo
15.奨学金
January Fourth Friday 16:00 ~放課後~
-とある高校・一年七組教室-
上条「よっしゃー! 今日は奨学金が振り込まれる日だー!」
土御門「よかったなぁカミやん。これで朝晩モヤシ生活を脱出することができるにゃー」
一方通行「バイトしててなおそンな生活を強いられるなンざァ、相変わらず元気にしてそォだな暴食シスターは」
上条「ああ本当に元気だぜ。正月の時は餅とかいろいろあったからマシだったけど」
青ピ「ほんま災難やなぁ、ウチなんて冷凍庫の奥底に謎のダークマター化した餅がゴロゴロ転がってるぐらい余ってるでー」
上条「くれっ! いらなくて捨てるくらいならくれっ!」
土御門「モヤシと餅を合わせてもおいしくはないと思うにゃー」
上条「モチを舐めんじゃねえぞ! あれの腹持ちのよさはすごいんだぜ。朝食に一つ食えば昼いらねえな」
青ピ「さすがにそれは言いすぎやろ」
上条「たしかに言い過ぎかもしれねーがあれはすげえぞ。実家から送られてきたときは泣いて喜んだな。インデックスともども」
土御門「向こうもそこまで喜んでくれるとは思わなかっただろうな」
一方通行「くっだらねェ」
429: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:08:05.68 ID:ObKlSWDQo
結標「一方通行!」テクテク
一方通行「あァ? 何だ?」
結標「帰りにコンビニ寄っていい?」
一方通行「別に構わねェが……何か用か?」
結標「ちょっとね、手持ちが少なくなってきたからお金下ろそうかなって思って」
一方通行「カードでも作ればイイだろォが」
結標「いやよ、何か怖いし」
一方通行「何が怖いのかさっぱり理解できねェンだが」
結標「私の知識が『クレジットカードは恐ろしい!』と警告しているのよ」
結標「それに最近やけにカード会社から勧誘の資料が送られてくるから余計に怖いし……」
一方通行「使い方を誤らなけりゃ何の問題もねェよ」
結標「まあそうかもしれないけど……」
一方通行「別に無理にしろとは言わねェよ。オマエがしたいよォにすればイイ」
結標「……うん、じゃあ私は現金主義を貫くわ!」
一方通行「うわっ、効率悪りィ」
結標「何で速攻否定されるのよ!」
結標「というわけで今日はこれで帰るわ。じゃあね!」ノシ
吹寄「ばいばい! また月曜日ね!」
姫神「さようなら」
上条「またなー二人ともー」
土御門「じゃあなー」
青ピ「バイビー、アクセラちょわーん!」
一方通行「おォ。あと青髪ピアスは死ね」
青ピ「何でやー!アクセラちょわーん!?」
一方通行「俺の癇に障ってンじゃねェよ、ゴミクズ野郎」
上条「大体何だよちょわーんって」
―――
――
―
430: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:09:33.76 ID:ObKlSWDQo
同日 16:30
-第七学区・とある高校付近のコンビニ-
ウィーン
店員「いらっしゃいませー!」
結標「じゃあちょっと行ってくるわねー」テクテク
一方通行「おォ、さっさと済ませろよ」
結標「わかってるわよ」タッタッ
一方通行「……はァ」
一方通行「……さァて、俺ァ缶コーヒーの補充でもすっかなァ、と」ガチャ
一方通行「…………」ガチャリガチャリ
一方通行「……おっと、そォいやここのコンビニはあの銘柄は置いてねかったっけなァ」
一方通行「しょうがねェ、前飲ンでたヤツで我慢するか」
一方通行「我慢っつっても一ヶ月前にハマってたヤツだからなァ。もしかしたらまたハマるかもしれねェ」
一方通行「世の中ポジティブにいかねェとなァ……」
一方通行「…………」
一方通行「我ながら似合わねェセリフだなァオイ」ハァ
一方通行「くっだらねェ、とっととコーヒー買うか」ガチャンガチャン
結標「――ええええええええええええええええっ!!?」
一方通行「あン?」ガチャンガチャン
431: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:11:19.19 ID:ObKlSWDQo
結標「あわわわわわわわわわわわ」
一方通行「どォした結標? キャッシュカードでも飲まれたか?」
結標「あああ一方通行……」
一方通行「あン? 声震えさせてどォしたオマエ。マジで飲まれたかァ?」
結標「な、な、何か……増えてたの……」
一方通行「増えてた? 体重がか?」
ゴッ!
結標「んなわけないでしょうが!! 何でコンビニまで来てわざわざ体重なんて測らなきゃいけないのよ!!」
一方通行「痛ってェ……! 軍用懐中電灯で殴ンじゃねェよ、普通に人を殺せるレベルの鈍器だぞそれ」
結標「貴方が失礼なこと言うからでしょ! ……たしかにお正月のときはお餅とかちょっと食べ過ぎちゃったけど……」ボソ
一方通行「やっぱり増えてンじゃねェか体重」
ゴッ!
結標「ふ、増えてないわよ!!」
一方通行「わかったから殴ンじゃねェ!」
432: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:13:30.19 ID:ObKlSWDQo
一方通行「で、何が増えたンだよ」
結標「その……わ、私はお金を引き出すために自分の口座を開いたのよ」
結標「そうしたら……増えてたのよ。残高が……!」
一方通行「…………」
結標「…………」
一方通行「…………はァ」
結標「…………?」
一方通行「当たり前だろォが!」
結標「えっ!?」ビクッ
一方通行「忘れたかァ!? 今日は奨学金が振り込まれる日だ!」
結標「わ、わかってるわよ! それを差し引いても増えすぎているのよ!」
一方通行「……どォいうことだ?」
結標「知らないわよ! 私の予想してた額の十倍は増えてる気がするわ」
一方通行「…………待てよ」
結標「何よ」
一方通行「オマエってもしかしなくてもレベル5だよなァ?」
結標「う、うん、まだ公には出てないはずだけどね」
一方通行「強度が上がったンなら奨学金の額も上がるのが自然だよな?」
結標「……まさか、私がレベル5になったからこんなにお金が増えてたってこと?」
一方通行「それ以外考えよォがねェだろォが」
結標「……しかしレベルがたった1上がっただけでこんなにも増えるものなの?」
一方通行「そりゃレベル5っつゥモンは貴重だからな。学園都市の中でオマエ含めて八人しかいねェンだから、それに大金つぎ込むのが普通だろ」
結標「まあ言われてみればそう、かな?」
一方通行「だから別に怪しい金とかじゃねェから安心しろォ。オマエが思ってるよォな詐欺とかじゃねェから」
一方通行(まァ、このレベル5ビイキ自体、怪しいっつゥレベルじゃねェけどな)
結標「……うん、わかったわ。じゃあ気にせずこのお金は使わせてもらうわ」
一方通行「しかしよォやくわかったな。やけにカード会社からの勧誘がくる理由ってのがな」
結標「どういうこと?」
一方通行「レベル5はこの学園都市の中じゃ大富豪みてェなモンだ。つまり一番高い買い物をするお客様ってことになる」
一方通行「その買い物でカード払いしたときに出てくる手数料、よォするにおこぼれがヤツらの利益だ」
一方通行「デカイ買い物をすればそれが大きくなるンだから、どの会社もそれが欲しィから我先にと契約を勧めるっつゥわけだ」
433: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:14:16.06 ID:ObKlSWDQo
結標「……つまり私がレベル5になったってことがバレてるってこと?」
一方通行「そォなるな」
結標「な、何で!? これってたしか機密事項とか何とか書いてあった気がするんだけど!?」
一方通行「そりゃあくまで俺らにとってはだろ。そンな情報裏じゃもしかしたら一般常識かもしれねェぞ?」
結標「ううっ、ってことは私の個人情報とかももしかしたら……」
一方通行「流出しまくってるかもなァ?」ニヤァ
結標「ぎゃああああああああっ!! 何かぎゃああああああああああああっ!!」
一方通行「うるせェ黙れ格下ァ、オマエの個人情報なンざせいぜい迷惑メールとかにしか使われねェよ」
結標「それはそれでヤなんだけど!」
一方通行「気にする必要はねェよ。ここに住ンでる時点で個人情報なンざあってねェモンだからな」
結標「……疑心暗鬼になりそうね」
一方通行「だから気にするなっつってンだろォが。そォそォねェぞそれが原因の事件なンてよォ」
結標「……じゃあみんなはそれを知った上で生活してるわけ?」
一方通行「大半は知らねェだろォな」
結標「……聞かなきゃよかった……」
一方通行「また一つ賢くなったって考えりゃイイ、レベル5としてな」
一方通行「わかったらとっとと金下ろしとけェ。俺はレジで会計済ませてくる」ドサッ
結標「相変わらずのコーヒーの山ね」
―――
――
―
434: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:16:34.50 ID:ObKlSWDQo
同日 16:45
-第七学区・街頭-
結標「…………うーん」テクテク
一方通行「なァに一人歩きながら唸ってンだオマエ? もしかしてべん――」ガチャリガチャリ
シュバッ!!
一方通行「おわっ!? 危ねェじゃねェかゴルァ!」
結標「あらごめんなさい。貴方が何だか失礼なことを言おうとしているように思えたから」
一方通行「チッ、で何一人難しい顔してンだよ」
結標「いやー、何だか一気に大金が手に入ったから変な気分になっちゃって」
一方通行「ああアレか。貧乏人が宝くじとかで百万くれェ当たっちまって戸惑ってる感じか」
結標「わからないけどたぶんそんな感じね」
一方通行「ンなことで戸惑ってたらこの先確実に壊れていくぞ? 金銭感覚っつゥのがなァ」
結標「……たしかにそうよね。よくよく考えたら毎月あんな大金が入ってくるってわけだしね」
一方通行「さらに言うなら、自主的に実験とかに協力すりゃ一年もありゃあっという間に億万長者だ」
結標「実験?」
一方通行「ああ。学校でするよォな能力開発をもっと突き詰めたよォなモンだ」
結標「へー、そんなものがあるのね」
一方通行「個人的にはお勧めしねェがな」
結標「どうしてよ?」
435: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:18:40.91 ID:ObKlSWDQo
一方通行「そンな大金が入るよォな実験なンてロクなモンじゃねェよ。蛆虫どもに食いつぶされて、最終的には棄てられるだけだからな」
結標「……ねえ一方通行?」
一方通行「あァ?」
結標「ずっと前から思ってたのだけど、貴方って何でそんなに裏事情、みたいなことに詳しいのよ?」
一方通行「…………」
結標「何でよ?」
一方通行「…………はァ、そりゃまァいろいろあったからな」
一方通行「俺はガキの頃からクソみてェな世界を生きてきた」
一方通行「裏切り、強奪、虐待……場合によっちゃ人殺しなンてザラにあったかもしれねェな」
結標「…………」
一方通行「俺はそれを何とも思わずただ眺めていた。慣れてきちまったンだろォな」
一方通行「そンな生活を続けりゃ自然と最悪な人格破綻者、怪物扱いされるよォなクソ野郎になる。当然だろォな」
一方通行「…………そして、最終的に俺ァ…………」
結標「俺は……?」
一方通行「…………いや、何でもねェ。これ以上は知らねェ方がイイ、お互いにとってな」
結標「…………」
一方通行「まァ、実験に参加するにしろしないにしろ、よく考えて動け」
一方通行「向こう側の研究員の口から出てくる言葉に対しては全て疑ってかかれ。どォすりゃイイのかわからなくなったら俺に聞けばイイ」
一方通行「……もし、どォしよォもねェ事態に堕ちいったっつゥなら……、俺が全力でそれを叩き潰してやる」
結標「…………」
一方通行「まァ、ンなモンに参加しねェのが最良の判断なンだけどなァ」
結標「……うん、わかったわ。絶対にそんな実験ってやつには参加しないわ」
一方通行「ほォ、金はいらねェと」
結標「奨学金の時点でもう十分なんだから、普通に考えていらないでしょこれ以上は」
一方通行「……そォだよな。それが普通の人間の判断だ」
結標「それに……私はそんなことしてるほど暇じゃないしね」
一方通行「あァ? 帰宅部所属バイト無し絶賛ニート中の結標クンが暇じゃないってェ?」
結標「それは貴方も同じじゃない」
一方通行「うるせェよ。で、どォいう意味だよその言葉はァ?」
結標「……まあ、私にはやることがあるってことよ!」
一方通行「やることだァ?」
結標「そっ」
一方通行「何だそりゃ?」
結標「んーと、秘密?」
一方通行「ハァ?」
436: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:20:45.79 ID:ObKlSWDQo
結標「女の子にはいろいろあるってことよ」
一方通行「女の子()」
ゴッ!
結標「じゃ、一方通行! たくさんお金入ったからどうせだから何か買い食いでもしない? 今なら奢ってあげるわよ?」
一方通行「……オマエ誰に向かってその口利いてンだ? 俺の総資金はオマエの何千倍もあるンだぜェ?」
結標「いいじゃない……そうだ! たしかここの近くの公園にクレープ屋さんがあったわよね? 行かない?」
一方通行「行くかよ。知ってンだろォが俺が甘いモン食わねェことぐれェよォ」
結標「大丈夫よ。たぶん苦いコーヒー味とかがあると思うし」
一方通行「わかってねェなァ、ああいうモンは女子供に売るために作られてンだ。絶対ェ甘めェに決まってンだろォが」
結標「食べてみないとまだわからないじゃない」
一方通行「イイや。コーヒーメインとかほざきながら生クリームとか入れるなアイツらは」
結標「……もう! つべこべ言わずに行きましょ?」ガシッ
一方通行「オイ、俺の手ェ握ってどォするつもりだ?」
結標「私の能力はご存知?」
一方通行「…………チクショウ」
結標「じゃ、無限の彼方へさー行くぞー!」
一方通行「こンな時に使うセリフじゃねェだろそれェ!?」
シュン
―――
――
―
437: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:21:20.38 ID:ObKlSWDQo
同日 同時
-第七学区・とある路地裏-
ピュン! ピュン! ピュン!
スキルアウトA「あべし!」
スキルアウトB「ひでぶ!」
スキルアウトC「たわば!」
土御門「……これで片付いたか」ガチャリ
カッ!
スキルアウトD「うわらば!」
ピーリィー、グバシャッ!!
海原「そうですね……」
438: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/04(土) 17:24:21.32 ID:ObKlSWDQo
海原「どうやら彼らは行ったようですよ」
土御門「ったく、まさかここまで連中の動きが早いとはな。少し甘く見ていたか……」
海原「まさか結標さんを直接狙ってくるとは……愚作にもほどがあるでしょうけど」
土御門「だが結標の心に傷をつけるには十分すぎる策だ」
海原「はい。しかし、今はまだこのスキルアウトたちが使われているだけマシでしょうね。向こうが本腰を入れればあっという間にことが進むでしょう」
土御門「……チッ、とりあえず一度隠れ家に戻るとしよう。お姫様たちが待ってることだろう」
海原「お姫様? ふふっ、冗談はよしてください。そんな柄じゃないでしょ彼女たちは」
土御門「何を言っている? お姫様扱いしているじゃないか。少なくとも片方一人には」
海原「自分としてはそんなつもりはないのですが……」
土御門「もしあれが無意識の内の行動ならお前はパシリの才能があるな」
海原「そんな不名誉な才能があっても嬉しくはないですよ」
プップー!
海原「……おや、どうやら迎えが来たようですね」
土御門「そのようだな。じゃあさっさと帰って終わらせるとしようぜ、このくだらない仕事をな」
海原「そうですね……ああ、そういえば」
土御門「どうかしたか?」
海原「たしかあそこの隠れ家はお菓子のストックが少なかったはず……すみませんが一度コンビニによってもらっても構わないでしょうか?」
土御門「やっぱりお前はパシリの素質があるな」ガタン
海原「そんな素質もいらないですよ」ガタン
ブルルルー!
――――
446: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:24:39.81 ID:8tTqqgXOo
16.グループ
January Fourth Friday 17:00
-第七学区・とあるホテルの一室(グループの隠れ家)-
ガチャリ
土御門「おっまたせー! みんなのリーダー土御門さんが帰ってきたぜい!」
シーン
海原「……誰もいませんね」
土御門「にゃー、無視されるとさすがの土御門さんも傷つくぜい」
海原「心にもないことを言わないでください」ガチャ
海原「ふむ、やはり予想通りストックはありませんでしたね」ガサガサ
土御門「どーでもいいけどあんまりグループの予算を菓子で食いつぶすなよ。こちとら余計な食費に割く金なんてあまりないんだからな」
海原「役にもたたない開発部門にお金を回すからですよ。グループを結成してから一度でもまともなものを作りましたか?」
土御門「…………義手?」
海原「あんな悪趣味なものを作る予算があるなら、まだ彼女のためのお菓子やストラップを買ってあげたほうがいいとは思いませんか?」
土御門「残念ながら俺は戦力増強のほうが重要だと思うバトル脳だからにゃー。その意見には同意しかねるぜい」
ガチャリ
????「……あっれれー? 二人とも来てたんだー?」
447: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:25:14.81 ID:8tTqqgXOo
土御門「……お前こそいたのかにゃー『番外個体(ミサカワースト)』」
番外個体「ミサカは最初からここに引きこもってたよー、ヒッキーはヒッキーらしくさー」
海原「……ッ!? ちょっ、何て格好をしているんですか貴女は!」
番外個体「あっ、ごめんごめん。ちょっとシャワー浴びててさー、着替えとか全部こっちに忘れてきちゃってたわけよ」
海原「何で貴女はこう……!」
番外個体「あれれー? 海原ァ? 顔赤くしちゃってー、照れちゃってんのー? もしかして ちゃったー?」
土御門「ほらっ、バスタオルだ」バサッ
番外個体「おっ、サンキュー、リーダーさん」ファサッ
海原「……というか早く服のほうを着てください! 狂か何かですか貴女は!」
番外個体「マイルームでそんなことを強要されるとは思いもしなかったなー」
海原「ここはグループの隠れ家の一つです。たしかに住居を目的として作られてはいますが、決して貴女の所有物ではありませんよ」
番外個体「ナ、ナンダッテー」
海原「わざとらしいリアクションはいいですから早く着替えてください!」
番外個体「はーい、じゃあタンスから着るもの適当にとってよ。そっちまで行くのダルいから」
海原「……まったく」ガサゴソ
番外個体「あっ、 着とかはそっちの引き出しだから。あなたのお好みなのをとっていいよー?」
海原「…………はい、どうぞ」スッ
番外個体「……ふーん、思春期真っ盛りよの海原クンはアダルトチックな黒色の 着が好みなのかにゃーん?」
海原「そういうわけではありませんよ。貴女に言われた通り適当にとっただけです」
番外個体「ま、そだよねー。海原の好きそうなタイプのミサカは持ってないよねー、例えばおこ──」
土御門「海原弄りをしているところ悪いが、もう一人はどうしたんだ番外個体?」
448: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:25:40.74 ID:8tTqqgXOo
番外個体「んー? そういえば見当たらないね。どこ行ったのかなーあのコ」
海原「彼女のことですから、またどこかへ遊びにでも行っているのでしょう。招集時間のことを忘れて」
番外個体「ほほぉー、不良少女のミサカでさえここに来てるってのに遅刻してるワルっ娘が一人いるのかー」
土御門「何か知らないのか?」
番外個体「知らなーい。さっきも言ったけどミサカはアジトの警備員してたからねー。誰か来てたらわかるよ」
土御門「さっきのように気付いていないパターンがあるんじゃないかにゃー? 第一声が『二人とも来てたんだー』だったからな」
番外個体「そりゃないよ。ミサカだって多少ながら電磁波レーダー使えるんだから、誰かが入ってきてたらわかるよ」
土御門「精度はあまり期待できそうにないレーダーだがな」
番外個体「ま、そんなことは置いといて……今日のおやつは何かなー?」ガチャ
海原「あまり食べ過ぎないようにしてくださいよ。……太りますよ?」
番外個体「いいじゃん別にー、今までまともな食事なんて取らされなかったんだからさぁ。こういうときくらい自由を噛み締めさせて欲しいね」
海原「別に止めようとは思っていません。それについては同意見ですから」
番外個体「止められたところでミサカは止まらないけどねー。おっ、コンソメあるじゃんいただき」バリッ
ピンポーン
土御門「おっ? どうやら最後の一人が来たらしいぜい」
海原「……どなたでしょうか?」ピッ
449: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:26:34.76 ID:8tTqqgXOo
??『──ふざけてんじゃねえよ。何勝手にカギ閉めてんだ、とっとと開けろ海原ァ』
海原「ここは仮にも暗部組織グループの隠れ家ですよ? 開けたまま放置する方がおかしいでしょう?」
土御門「というかグループ全員にカードキー渡してるはずだぜい? それを使って入ってくるといいにゃー」
『い、いや……アレだよアレ、カギをそん中に置いたままにしちまったんだよ』
番外個体「……おっ、ホントだ。テーブルの上に置いてある」ボリボリ
海原「あまりベッドの上に食べカスを落とさないでくださいよ」
番外個体「いいじゃん、どうせ掃除するのは下部組織の連中だし」
??『……つーかよぉ、いい加減開けてくれよ。遅れてきたのは悪かったからさぁ』
海原「駄目です。貴女は毎回毎回……、何回同じことを言うつもりなんですか? 遅刻した数なんて数え切れないんじゃないですか」
??『……って、オイ! 遅刻した回数&カードキー忘れた回数は番外個体もたいして変わんねーだろ!?』
??『それなのに番外個体に対してはいつもお前はおくすることなく笑顔のままロック解除してたじゃねーか!』
海原「彼女の場合能力で電子ロックをハッキングして入ることができます。それが原因で壊されたら困りますから」
??『ふざけんじゃねえっ! どう見ても贔屓じゃねーか、甘やかしてんじゃねーか!』
海原「関係ありませんよ。少しは外で反省したらどうですか? この機器の集音性なら十分話し合いに参加できるでしょう?」
番外個体「ぎゃはははっ、リアル廊下に立ってろ! ってヤツじゃんこれ! どうせなら水を満タンまで入れたバケツでも持ってこようか? もちろん二つ」
??『…………あァ、もォ面倒臭せェ』
土御門「……おおっと、お前ら一応扉から下がった方が良さそうだぜい?」
海原「ッ!?」
番外個体「?」ボリボリ
ドッゴォォォォォオオオッ!!
土御門「……あーらら、対能力者用に作られてる防護扉でもやっぱ大能力者(レベル4)クラスのチカラには耐え切れないかにゃー?」
海原「…………」
番外個体「あーあ、こりゃもうしばらくここ使えないねー」モグモグ
450: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:27:03.93 ID:8tTqqgXOo
黒夜「ったくよォ、いつまでこの黒夜海鳥様を廊下に立たせるつもりだァー? ついブチッときちまって扉ァブッ飛ばしちまったじゃねェか」
海原「……そもそも貴女が遅刻してきたのが悪いのではないですか?」
黒夜「遅刻してねーよ。一度この部屋に入ってたっつーの」
土御門「入ってた? どういうことだ?」
黒夜「お前らがここに来る前にはすでにこの部屋に入ってたんだよ。ちょろーと小腹が空いたから腹ごしらえに行くためにな」
海原「あまりにもバレバレな嘘はつかないほうがいいですよ? 自らの品格を下げてしまうだけですから」
黒夜「嘘じゃねーよ。その証拠に……ほらっ、そこのベッドの枕の横に置いてあるだろうが。私のいつも持ち歩いてる『秘密兵器』がな」
番外個体「……おおっほんとだ! いつもクロにゃんが持ち歩いてるイルカの人形じゃん! あまりに背景に溶け込んでるからてっきりこの部屋の備え付け品かと思ったよ」
土御門「……ところで番外個体。お前は自分以外誰も入ってきてなかったと言っていなかったかにゃー?」
海原「そうですよ。レーダー使えるとか言っていたじゃないですか」
番外個体「…………あー、そういえばミサカも飲み物欲しくて外の自販機まで買いに行ってたの忘れてた」
土御門「…………」
海原「…………」
黒夜「ま、これで私の無実は証明されただろ? つーわけで土下座して詫びろ海原クゥン?」
海原「……ふっ、何を言っているのですか? 初めから来ていようが来ていまいが、集合時間にここに居なかった時点で遅刻は遅刻ですよ」
黒夜「ハァ? 馬鹿言ってンじゃねェよオマエ。あンま調子乗ってるとそのムカつくニヤケ顔ごと頭吹っ飛ばすぞゴルァ」
海原「できますかね? 正直掌から窒素を噴出するしかできないガキに自分を倒せるとは思えないんですが」ニコッ
451: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:28:13.53 ID:8tTqqgXOo
黒夜「……上等だ。そンな舐めた口ィ利かしちまったことを地獄の底で後悔させて続けてやるよ」ゴゥウ
海原「いいでしょう。貴女のカラダ、どれが生身でどれが機械かわからないくらいバラバラに解体してさしあげますよ」スッ
ビリリリッ!
黒夜「ッ!? カラダがァ!?」
番外個体「ダメダメ、ダメだよクロにゃーん? あんまりおイタが過ぎちゃうとカラダの制御奪ったまま、全裸にしてから公園のトイレに四つん這いで放置しちゃうよ☆」
黒夜「番外個体ォ! ふざけてンじゃねェぞオマエ! 離しやがれゴルァ!!」
番外個体「海原はミサカの大事なパシリだからねー。クロにゃんなんかに殺されるとは思わないけど、一応ね」ビリビリ
黒夜「あばばばばばばばばばば、やめえええええええええええてえええええええええええ」ガクガク
海原「…………」
土御門「そーいうわけだ。だからその黒曜石のナイフはしまっておけ」
海原「はい。どうやら自分も少しばかり熱くなりすぎてしまったようですね」
番外個体「そーだよ海原。ミサカのおもちゃを勝手に壊しちゃいけないよ」
海原「……善処します」
土御門「さーて、人も集まったところで場所を変えるか」
黒夜「あン? 人がせっかく来てやったってのに場所を変えるだァ? 舐めてンのか潰すぞ」ギロ
土御門「そんな馬鹿っぽいセクシーポーズで言われても怖くないぜい」
黒夜「番外個体ォ! だから私のカラダで遊んでんじゃねェーよォ!!」
土御門「ま、それはそれでいいと思うぜい。ロリが少し背伸びしてセクシーポーズ……何かこうグッとくるものがあるにゃー」
黒夜「手をわきわきさせるな、こっちへ来るな、そンな目で私を見るな! つゥかイイ加減にしろ番外個体ィ!!」
番外個体「ええっー? じゃあミサカはどーすればいいのさー?」
黒夜「黙って私を開放しろ!」
番外個体「やだよーだ」ビリビリ
黒夜「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! スンマセン、マジでかんべんしてててててててててえええ」ガクガク
海原「黒夜にこの扉を壊されたおかげで、おそらくここの隠れ家はもう使い物になりませんね」
土御門「ああ。この物音につられて野次馬が来てもおかしくない時間帯だ」
海原「ではひとまず他の隠れ家へ移動しましょう。ここの代わりについてはあとでいいでしょう」
番外個体「りょーかーい。さあ行くよんクロにゃん28号、進め」ビビビ
黒夜「覚えてろよ番外個体おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」テクテク
―――
――
―
452: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:29:24.69 ID:8tTqqgXOo
同日 17:40
-第七学区・とあるカラオケボックスの一室(グループの隠れ家)-
土御門「……さて、今日の議題だが――」
番外個体「クロにゃーん? どうせだから何か歌う? ミサカ的にはクロにゃんは猫っぽいから『はっぴぃ にゅう にゃあ』とかいいと思うんだけど」
黒夜「何だよその危ねェ臭いしかしねェ曲はよォ!? 私に一体何を歌わせるつもりだァ!?」
番外個体「一時期ミサカネットワークで流行ってた曲らしいよ? まあ、ミサカはネットワークに参加できないから詳しくは知らないけどね」
黒夜「ンなこたァどォでもイイ! それよりさっさと私のカラダを自由にさせろ!」
番外個体「ええっと……あったあった『はっぴぃ にゅう にゃあ』。海原ー、そこのパーティグッズから猫耳とって」
海原「了解しました」スッ
黒夜「オイイイイイイイイイイ!! 何つゥモン取り出してンだオマエらァ!!」
番外個体「それクロにゃんの頭に装着させてあげて」
海原「了解しました」ニコ
黒夜「やめろ海原ァ!! それだけは勘弁してくれェ!! さっきのこと謝るからマジでェ!!」
海原「黒夜……、貴女に謝れても正直自分は困るのですが」ニコ
黒夜「ぎゃあああああああああああああああああああっ!! やめてェえええええええええええええええええええっ!!」
ガチャン!!←猫耳装着音
黒夜「…………ぐすン」
番外個体「…………これでよし。はいクロにゃん、マイク」スッ
黒夜『あァ? 何だこりゃ』
番外個体「レッツシング!」
黒夜『は?』
『はっぴぃ にゅう にゃあ/芹沢文乃(伊藤かな恵)&梅ノ森千世(井口裕香)&霧谷希(竹達彩奈)』
黒夜『って何だこりゃァ!? どォみても暗部の人間が関わっちゃいけねェモンだろこれェ!?』
番外個体「レッツシング!」
黒夜『外道がァ!』
タータタタンタータタタタンタ♪ タータータータータタタタタタタタタン♪
黒夜『――――』スゥ
土御門「って、おい!!」ドン
黒夜『にゃあっ!?』
番外個体「ん?」
海原「…………」
453: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:30:20.70 ID:8tTqqgXOo
土御門「お前ら何で普通にカラオケボックスに遊びにきたみたいな感じになっているんだ!? 遊びにきたわけじゃないんだぞ!」
番外個体「ええっー、カラオケボックスにきて歌わないとか、一体ここ何しにきたの?」
土御門「たまたまあのホテルから一番近い隠れ家がここだっただけだ! カラオケにきたわけじゃない!」
海原「そうですよ番外個体さん。あくまでここは話し合いの場として選ばれただけです。黒夜で遊ぶならそれが終わってからにしてください」
黒夜『オイふざけンな! 勝手に私を人柱にしよォとすンじゃねェ!』
海原「……黒夜。目的を達成するためには何かを犠牲にする必要があるのですよ」
黒夜『…………』
海原「…………」ニコッ
黒夜『チクショォオオオオオオオオオっ!!』
番外個体「クロにゃーん? 何だか口調がおかしいままだよ、もっと肩の力抜いたほうがいいんじゃないかにゃーん」
黒夜『誰のせェだ誰のォ!』
土御門「……いいからお前らは真面目に話を聞け。黒夜、お前はマイクを置いて頭についてる猫耳を外せ」
黒夜『ハァ? ンなモンできりゃあそォしてるよ! 早くこのビリビリ馬鹿にカラダの制御止めさせろ!』
番外個体「えっ? ミサカもうそんなことしてないよ」
黒夜『…………は?』
番外個体「さすがに制御奪われたままじゃ歌えないでしょ? だからマイクを渡した時点でクロにゃんは自由の身だったのにゃーん」
黒夜「…………」スッ
黒夜「あ、ほんとだ」
番外個体「つまりクロにゃんは自分の意思でレッツシングしようとしたわけってことだよ」ニヤニヤ
黒夜「は、ハァ!? べ、別に歌おォとか思ってねェし! 何か空気がそんな感じだっただけだしィ! 半ば矯正だったしィ!」
海原「後半の言い訳が歌おうとしたことに対してのものなんですけどそれは……」
黒夜「馬鹿なこと言ってンじゃねェ海原ァ! ミンチにされてェのかオマエはァ!?」
番外個体「実はこーいうの好きなんじゃないのかにゃーん? ク・ロ・にゃん?」
黒夜「好きなわけねェェだろォォがァァあああああああああああああああああああああああッ!!」
土御門「…………はぁ、いつになったら静かになってくれるんだろうなコイツらは……」
454: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:31:07.24 ID:8tTqqgXOo
~しばらくして~
土御門「……さて、いいかげんに始めるぞ。無駄な時間を過ごしすぎた」
海原「まったくですね。おかげで御坂さんを見守るという自分の至福の時間が奪われてしまいました」
番外個体「ん? 呼んだ?」モグモグ
海原「いえ、貴女のことではありません」
黒夜「つーかさぁ、この遅延が全て私が悪いみてーな感じになってるみたいだけど大体このビリビリ女のせいだよな?」
海原「何を言っているんですか黒夜は? そもそも貴女が集合時間に遅れて……いえ、貴女が自分のカラダをサイボーグなんかにしなかったらこんなことにならなかったのでは?」
黒夜「散々弄ばれたうえに存在自体を否定されるなんてな。あァーマジでコロシタイ」
番外個体「で、リーダー。結局今日はミサカたちは何のために呼ばれたの? 別に仕事ってわけじゃないよね?」
土御門「ああ。これからのグループの方針について話し合うためだ」
黒夜「方針なんて勝手に決めてくれりゃいいのに、わざわざ私を巻き込んでんじゃねーよ」
海原「ならこれからの雑用を全て黒夜に任せる方針でいきましょう」
黒夜「ってオイ! 何勝手に決めてくれてンですかオマエはァ!?」
海原「貴女が勝手に決めてくれと言ったのでは?」
黒夜「私に実害が出ねェ範囲でだ! どォしてわざわざ私が下部組織の連中と肩を並べて雑用しなきゃいけねェンだよ!」
海原「肩なんて並べることはありませんよ。全ての雑用は貴女一人に一任しますから」ニコ
黒夜「随分ととンでもねェ方針を提案しやがるな海原クゥン!?」
番外個体「もーいいよ。これからはクロにゃんは一生ミサカの奴隷でーす。そーいう方針に決まりましたー☆」
黒夜「今までと変わらねェじゃねェか!」
番外個体「あれ? 自分が奴隷ってこと自覚してたんだ?」
黒夜「ッ!? 誰が奴隷だゴルァ!!」ゴウゥ
番外個体「はいはい大人しくしましょうねー」ビリビリ
黒夜「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
455: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:31:36.64 ID:8tTqqgXOo
土御門「……話が逸れているから戻すぞ」
海原「これからのグループの方針ですよね? それなら今までと変わらずで構わないのでは?」
番外個体「今までのグループの方針って何だったの? 雑用一生懸命頑張ります! とか?」
土御門「違うな。俺たちは今日までこれから起こるであろう暗部間の抗争を起こさせないように行動してきた」
番外個体「へー、あんなまさしく後始末! みたいな仕事をしているだけで防げちゃうような抗争なんだ。軽いね」
海原「いえ。あれもたしかにその一環ではありますが、重要部分のことは自分と土御門さんが処理しています」
黒夜「けっ、何のためにこんなつまらねーことしてんだお前らは?」
土御門「……どういう意味だ黒夜?」
黒夜「こンなツマンネー雑用してるよりはよォ、みンなで楽しくコロシアイしたほうが楽しィだろォが」
土御門「…………」
黒夜「あっ、もしかしてびびってンのかなァー土御門クン? まァそォだよなァ。周りの暗部組織には超能力者(レベル5)とかいうリーサルウェポンがいやがるわけだし」
黒夜「だがよォ、ンなこと関係ねェだろ。超能力者(レベル5)だろォが同じ人間、脳天に銃弾ブチ込めば即死しちまうよォな安っぽい命だ」
黒夜「その程度のこともわかンねェよォだったらグループのリーダー失格だぞ土御門ォ」
海原「…………」
黒夜「大体よォ。何でオマエがリーダーなわけ? 無能力者(レベル0)でロクなチカラも持たねェゴミクズみてェなヤツのクセによォ」
黒夜「そンなカス野郎より私の方がよっぽどマシなリーダーになれるぜェ? 私に任せてくれりゃあ、スクールだがアイテムだが知ンねェが全部叩き潰してやるよォ」
黒夜「それだけの力と知識は植え付けられてあンだよ私にはなァ……」
456: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:32:15.03 ID:8tTqqgXOo
土御門「…………ふふっ」
黒夜「なっ、何がおかしい!?」
土御門「そんな格好して大口叩かれたらもう笑うしかないだろ?」
黒夜「はっ、何言って……」ギョロ
黒夜「って何だこりゃあっ!? いつの間にか私のカラダが勝手にコマネチのポーズとってンだけどォ!?」
番外個体「あはははははっ! だってクロにゃんがいきなり調子に乗り出すんだもん。ついついちょっかいかけちゃった☆」
黒夜「番外個体ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
番外個体「だいたいミサカにまったく歯が立たないクロにゃんがリーダーなんかになってもさー。間抜けなだけだよねー」
海原「ですね」クスッ
黒夜「笑ってンじゃねェ海原ァ!!」
番外個体「ま、クロにゃんの言いたいこともわかるよ。このいつまでも続く退屈な日々にもうミサカも飽き飽きしてきたところだしねー」
番外個体「ねえねえリーダーさん?」
土御門「何だ?」
番外個体「いつになったらミサカの本当の任務が始まるの?」
海原「…………」
土御門「……何のことだ?」
番外個体「またまたー、そんなはぐらかしちゃってー。そもそもミサカたちは別の用途で作られたものだよね」
番外個体「ミサカは第一位の殺害。クロにゃんは暗部組織が全て解体したときのバックアップ」
番外個体「こんな明らかに別ベクトルのミサカたちが、グループみたいなところに所属される時点でちょっとおかしいよね」
土御門「……今さらそんなことを言われても困るんだがな」
番外個体「ここに入って早四ヶ月くらいは経って、まあこんな生活も悪くないなーなんて思ってたけどやっぱ違うんだよねー。ミサカはそーいう風に作られてないから」
海原「番外個体さん……」
番外個体「ってことで、これからあの第一位殺しに行っていい?」
土御門「……ふっ、好きにすればいい……が」
土御門「俺はここでお前を殺してでも止めるぞ? それを乗り越えて行く覚悟がお前にあればの話だがな」
番外個体「…………」
土御門「…………」
海原「…………」ゴクリ
457: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:32:41.33 ID:8tTqqgXOo
番外個体「ふふふっ。あはははははははははははっ! なーにマジになっちゃってんの? 冗談に決まってるじゃん」
土御門「…………」
番外個体「いくら不良のミサカでもさすがに上からの指示はちゃんと聞くよ。知ってるよ、まだ時期じゃないんだよねー」
黒夜「けっ、つまんね。てっきりここで楽しい殺戮ショーでも見れると思ったんだけどなー」
番外個体「それに、ここでミサカがグループ出て行っちゃったらクロにゃんが悲しむもんねー」
黒夜「ハァ!? 何でそーなるんだよ!?」
番外個体「ミサカのビリビリを受けすぎてクロにゃんはミサカなしでは生きていけないカラダに……」
黒夜「んなわけねーだろ。逆にアンタの電撃受けすぎて故障しちまう可能性の方が高いだろうが」
番外個体「相変わらずクロにゃんはツンデレさんだにゃーん」
黒夜「ツンデレじゃねーよ! 一度でも私がデレたことなんてあったか? あるわけねーよな常識的に考えて」
番外個体「またまたー、そんなこと言っちゃってー。悪い子にはおしおきだぜー」ビリビリ
黒夜「ひぐっ!? な、な、お、オマっ、な、何しやがった……」ビクッ
番外個体「少しいつもと違った趣向のビリビリをしてみました! ミサカじゃないと感じないカラダにし・て・あ・げ・る♪」ビリビリ
黒夜「ひぐぅぅっ、あ、あ、ふぁ、ひゃっ、ひゃめ///」
海原「…………」
土御門「まるでゴミ見るかのような目だな」
海原「まあゴミを見ていますからね」
土御門「ひどい言いようだにゃー」
458: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/11(土) 11:33:33.05 ID:8tTqqgXOo
ピピピピッ! ピピピピッ!
海原「……電話ですか?」
土御門「いいや。合図だな」
番外個体「んん? どーかしたの? 仕事?」
土御門「ああ。例のスキルアウトどもが動き出した。後始末の指令だ」
番外個体「はいはーい。ミサカたちも出なきゃいけないねー、じゃあクロにゃん行くよー」
黒夜「……ひょ、ひょっとま、って……こ、こしが」
海原「何を遊んでいるんですか黒夜? 早く立ってください」
黒夜「う、る、ひゃい……、こっち、うごけ、な」
番外個体「あー、動けないんだねー、じゃあミサカが操作してあげるよー」ビリビリ
黒夜「はぐぅぅっ!?」
番外個体「あっ、出力間違えちゃった」
海原「使い物にならないサイボーグですね、ほんと」
土御門「……仕方がない。今回は三人で行くぞ」
番外個体「ええっー? クロにゃんがいないとつまんないじゃん!」
海原「大丈夫ですよ番外個体さん。早く仕事を終わらせてからあとでじっくりと黒夜で遊べばいいんですよ」ニコ
番外個体「そだね。じゃあ張り切ってカスどもの殲滅に向かうとするぜー!」
黒夜「…………お、ぼえ、うなば」
海原「まあせいぜいゆっくり休んでおいてください黒夜」ニコニコ
土御門「さて、グループ出陣だぜーい!」
――――
469: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:09:18.07 ID:t4WfFdxeo
17.調理実習
January Fifth Thursday 10:40 ~三時間目・家庭科~
-とある高校学生寮・調理室-
キーンコーンカーンコーン
一方通行「……さァて、こっからは地獄の始まりっつゥことかァ」
結標「……ええ」ゴクリ
一方通行「お互い生きて帰れるとイイな」
結標「……そうね」
一方通行「……何だかンだ言って楽しかったぜ。オマエと過ごした日々はよォ」
結標「私もよ。人生の中で貴方と過ごした時間が一番楽しかったわ……記憶なくて半年くらいの人生だけど」
一方通行「……よし、行くぞ結標ェ。戦場に、な?」
結標「うん!」キッ
吹寄「何やってるのよ二人とも? 早く行くわよー」
結標「あ、うん、了解吹寄さん!」タッタッタ
一方通行「あァークソ。面倒臭せェなァオイ」ガチャリガチャリ
―――
――
―
470: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:10:18.24 ID:t4WfFdxeo
~一週間前家庭科の授業・回想~
家庭科教師「――というわけで、来週の家庭科の時間は調理実習を行います」
<おおっー!! <調理実習キタコレ! <ふふふ、ついに私の料理テクニックを見せ付ける時がきたのね <俺味見専門な!
家庭科教師「調理室に調理台は六つあるので、一グループ六、七人で六つのグループに分かれてもらいます」
家庭科教師「メンバーは各々自由に決めてもらっても構いません。よいチームワークを発揮できるかどうか、期待していますよ」
土御門「調理実習かー。夏休み前に一回やったきりだったかにゃー?」
青ピ「せやな。あの時はチャーハン作ったんやったっけ。なぁカミやん」
上条「お、おう……(記憶がないからわからないでござる)」
青ピ「あのときは大変やったなー、カミやんが盛大にずっこけて卵全滅させたからなー」
土御門「卵なしのチャーハンは結構寂しかった気がするぜい」
青ピ「今回は何をしでかしてくれるんかなぁカミやんは」
上条「何もしねーよ! あ、あのときの上条さんとは違うんですよ! 俺だった日々成長して……」
土御門「これと言って変わってないように見えるのは気のせいかにゃー?」
上条「うるせぇ!」
ワイワイガヤガヤ
吹寄「……ったく、授業中なのにうるさい連中ね」
471: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:10:56.11 ID:t4WfFdxeo
姫神「調理実習……ふふ。いつもなら影の薄い私でも活躍できる唯一のイベント……!」
吹寄「何だか燃えてるわね姫神さん。そういえば姫神さんは二学期から転入してきたから調理実習初めてよね?」
姫神「私料理得意だから。すごく楽しみ」
吹寄「ふふっ、だったらおいしい料理を期待できそうね……そういえば結標さんたちも初めてよね?」
一方通行「何……だと……?」
結標「嘘……でしょ……?」
吹寄「……どうしたのよ二人とも」
姫神「まるで絶望の淵にでも立たされたような表情」
結標「……ちょ、調理実習ってあれよね? 料理とかしちゃうアレよね?」
吹寄「え、ええ、それ以外ないと思うけど」
一方通行「……俺来週仮病で病欠するわ」
姫神「それ。ただのズル休み」
吹寄「ってどうしたのよいきなり! 何かあったのアクセラ?」
一方通行「料理ってオマ……下手したら死人が出るぞ?」
姫神「死人?」
一方通行「ああ……そこのテレポーターが料理ができねェのは知ってるよな?」
吹寄「う、うんまあ……」
姫神「切りにくい鶏肉を柔軟剤で柔らかくしようとしたあれ?」
結標「ううっ、あまり蒸し返して欲しくはない黒歴史なんだけど……」
一方通行「コイツはドが付くほどの料理音痴だ。野菜炒めの材料からダークマターを製造できるぐれェのなァ」
一方通行「つまり来週のこの時間は……、地獄を見ることになるぞ……?」
―――
――
―
472: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:12:25.93 ID:t4WfFdxeo
~そして現在に至る~
吹寄「……さて、今回我らFグループが作る料理を改めて確認するわ!」
吹寄「親子丼! 味噌汁! 以上よ!」
一方通行「確認するまでもねェ品数だなァ」
青ピ「それにどのグループも同じもん作るしなー」
上条「親子丼かー、まだ簡単な方で助かったな」
青ピ「卵を使う時点で難易度急上昇やないか? カミやんにとって」
土御門「親子丼がただの鳥飯にならないようにしないといけないにゃー」
上条「わかってるよそれくらい。大体上条さんは毎日自炊しているんですよ? それもこれといった失敗もなく」
上条「だから同じ料理なら上条さんに失敗はないのですよっ! 絶対にっ!」
一方通行「絶対=フラグ、これマメな」
姫神「マメ。じゃなくて常識」
結標「上条君は卵から離したほうがいいんじゃないかしら?」
一方通行「オマエは食材から離れたほォがイイと思うが」
結標「ひどい! べ、別にいいじゃない。いくら私でももうさすがに致命的なミスはしないわよ! ……たぶん」
一方通行「たぶンじゃねェンだよ、絶対じゃねェといけねェンだよ」
吹寄「はいはいみんな落ち着いてー!」
473: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:13:35.75 ID:t4WfFdxeo
吹寄「とりあえず役割を決めましょ。どんなことにも役割分担して効率よく勧めていくことが大事よ」
上条「具体的にどう分けるんだ?」
吹寄「そうね。大まかに分けると親子丼チームと味噌汁チームね」
青ピ「じゃあボクは味見チームがいいでーす!」
土御門「俺も俺もー!」
吹寄「そんなチームはないわよ馬鹿ども! これは授業よ! サボリは許さないわよ!」
姫神「働かざるもの食うべからず」
一方通行「結標。オマエはどのチームがイインだ?」
結標「どのチームって聞き方はおかしくないかしら。たしか選択肢は二つのはずよ?」
一方通行「みンなが安心して料理できる味見チームを忘れてンじゃねェよ」
結標「どうあっても貴方は私に料理をさせたくないみたいね……」
一方通行「命には代えられねェ」
吹寄「じゃあ質問だけど、料理が人並みくらいにはできるって人はどれくらいいる?」
上条「まあ、人並みくらいには」ノ
姫神「毎日お弁当を作るくらいには得意」ノ
吹寄「……うん、あたしを含めて三人か」
一方通行「……青髪ピアス。オマエ料理できねェのかよパン屋に住ンでるクセによォ」
青ピ「いやいやその理屈はおかしいでぇ。ボクは下宿先がパン屋なだけで別にパン作りの修行をしとるわけやないでー。太陽の手とか持ってへんでぇ!」
土御門「だいたいパンが作れたからって料理ができるとは限らないんじゃないかにゃー?」
姫神「パン作りのほうが難易度が上のような気が……」
上条「それより一方通行が料理できないってのが意外だったな。何でも卒なくこなせそうなイメージがあるし」
一方通行「得意料理はカップ麺と冷凍食品でェす」ドヤ
結標「ドヤ顔するほどのものではないと思うけど。それにその程度なら私だって作れるわよ」
土御門「それって料理するって言わないんじゃないかにゃー、ってツッコミはいるー?」
474: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:14:53.80 ID:t4WfFdxeo
吹寄「……よし。じゃあ三つのグループに分けるわ」
上条「三つ? 二つじゃなくてか?」
吹寄「この四十五分間という短い授業時間の間に作る、食べる、片付け、これを全て終えないといけないわ」
土御門「にゃー、たしかに前よりはキツイかもしれないな」
吹寄「だから親子丼チーム、味噌汁チーム、サポートチームの三つに分けるわ」
吹寄「まず親子丼チームはあたしと土御門でいくわ」
土御門「了解だにゃー」
吹寄「次に味噌汁チームは姫神さんと青髪ピアス」
姫神「わかった」
青ピ「わっほーいヒメやんとの初めての共同作業やなー!」
姫神「別に初めてではない。あとそんなつもりもない」ジトー
青ピ「おうふっ、ヒメやんの冷たい視線がっ! ンギモヂィィィ!!」
ゴッ!
吹寄「……はい。じゃあ最後のサポートチームが上条、アクセラ、結標さんでお願い」
上条「おう」
一方通行「妥当な判断だな」
結標「そうね。やっぱり料理はまず見て覚えないとね」
一方通行「オマエはそれ以前の問題だけどな」
上条「ところでサポートチームって何をすればいいんだ?」
吹寄「基本的には他のチームの手伝いよ。あと空いた時間があったら器具とかを洗ってちょうだい」
結標「まかせて! 洗い物は得意よ!」
一方通行「得意もクソもねェよ」
吹寄「……じゃあちょっと時間短くなってるからテキパキ動いてちょうだいね。ミッションスタート!」
475: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:17:03.56 ID:t4WfFdxeo
~親子丼チーム~
吹寄「さて土御門。さすがに包丁は使えるわよね?」
土御門「ふっ、侮るなよ。俺の包丁捌きは、斬られた相手が斬られたと気付かずに死んでいくほどなんだぜい」
一方通行「元から生きてねェだろ食材どもは」
吹寄「あたしは割り下を先に作っておくから、あなたたちは食材を切っておいて」ガチャ
結標「割り下って何?」
土御門「簡単に言うなら親子丼の汁だにゃー。醤油をいろいろな調味料で割って下地を作る。略して割り下」
結標「へー、物知りなのねー」
土御門「まあな」
一方通行「そンなことを知ってても料理はできねェのかよ」
土御門「知識があるからそれが実行できるとは限らないんだぜい」
一方通行「オマエが本気を出したらこれくらい余裕で出来ンだろォよ」
土御門「その言葉そのままお前に返しておくぞ一方通行」
一方通行「チッ」
土御門「さて、あんまりお喋りしてたら吹寄に怒られちゃうぜい。作業に取り掛かるにゃー」
結標「了解。さあ頑張るわよ!」シャキーン
土御門「俺は玉ねぎと三つ葉やっとくから姉さんたちは鶏肉を頼む」
結標「と、鶏肉……忌まわしき宿敵であるあの鶏肉……?」
一方通行「鶏肉切りにくい(審議拒否)でお馴染みの鶏肉かァ。……ふっ」
結標「……今の私なら一瞬で貴方の頭に直接包丁をテレポートさせられるような気がするわ」
一方通行「それより早く俺が電極のスイッチを押すがな」
吹寄「ちょっと上条!」
上条「何でせう?」
吹寄「貴様は先にご飯を炊いといてちょうだい。二十分くらいで炊けるから早炊きでお願いね」
上条「おう、任せとけ」
吹寄「終わったら姫神さんたちのほうを手伝ってちょうだいね」
上条「了解了解。わかりましたよーと」テクテク
吹寄「…………上条当麻」
上条「まだ何かあんのか?」
吹寄「しくじるんじゃないわよ? これは絶対よ?」ギロ
上条「……わ、わかってますよ吹寄さん。あははー」テクテク
476: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:18:10.27 ID:t4WfFdxeo
~味噌汁チーム~
姫神「材料は豆腐とわかめとネギ。つまりいたってシンプルな味噌汁」
青ピ「揚げがないやん!」
姫神「文句は先生に言って」
青ピ「じゃがいもないやん!」
姫神「なぜそこでじゃがいも?」
青ピ「あさりないやん!」
姫神「下ごしらえが面倒。というか時間が普通に足りないと思う」
青ピ「ヒメやんの腕なら余裕やと思うけどなぁ」
姫神「……そんなこと言ってもここにはあさりなんてない」
青ピ「せやな。ほな、ぼちぼち始めましょーかー」
姫神「うん」
青ピ「で、役割分担はどーすん?」
姫神「役割分担?」
青ピ「汁作るほうと具材切るほうとかあるやろ。向こうの親子丼チームみたいに」
姫神「……例えばだけど」
青ピ「うん?」
姫神「青髪君の言うとおりに役割分担をしたとしよう。豆腐は味噌汁が出来上がった最後の段階で切る。わかめはそのまま入れる。つまり……」
青ピ「切るもんネギしかないやん」
姫神「そういうこと。わざわざ分担する必要がないと思う」
青ピ「ほなヒメやん一人で十分っつーわけかいな?」
姫神「そう」
青ピ「ボクいらないやん!」ガーン
姫神「……まあとりあえずネギを刻んどいて。私は湯を沸かしたりして味噌汁を作っておくから」
青ピ「了解や」シャキーン
477: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:19:02.99 ID:t4WfFdxeo
~サポートチーム~
上条「……ええっと、Fグループの炊飯器はーと」キョロキョロ
上条「あったあった。これか……」カパッ
上条「まず釜を取り出して軽く水洗いしてっと」ジャー
上条「そしてこの『すぐ炊ける、すぐ食べられる、すぐおいしい! 学園都市産特製無洗米』を水の入った釜に投入!」ザー
上条「たしか早炊きでよかったよな。時間的に……」ピッピッピ
上条「ほい完了!」ピッ
上条「あとは炊き上がるのを待つだけだな」
上条「さーて、姫神たちの方を手伝いに行きますか」テクテク
炊飯器『』シュゴーシュゴー
ピーピー!
炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止します』
ピー!
478: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:20:13.67 ID:t4WfFdxeo
~親子丼チーム~
ギチッ……ギチッ……!
結標「……くっ、相変わらず切りにくいわねーこれ」ギチギチ
一方通行「まだ終わらねェのかよ」
結標「そういう貴方は終わったのかしら?」
一方通行「そりゃまァ、こンな肉塊俺にかかれば一瞬で細切れだしィ」
結標「おのれ! 能力を使いやがったわね!」
一方通行「使えるモンは使う。それが俺の主義だ」
結標「くっ、こうなったら秘密兵器を使うしかないようね……」
一方通行「まさかまた柔軟剤ぶち込むとかほざきやがるンじゃねェだろォなァ?」
結標「馬鹿ねぇ、私がそんな何度も何度も同じようなミスをするわけないじゃない」アハハ
一方通行「……じゃあ何なンだよ、その秘密兵器とやらは?」
結標「てってれー♪ 塩酸ー!」スッ
一方通行「…………ハァ?」
結標「この塩酸を使って鶏肉の繊維を溶かしてしまえば、包丁でもらくらく切り刻めることが出来るわ!」
一方通行「どっからそンなモン持ってきた?」
結標「ちょっと理科室から拝借してきたわ」
一方通行「…………」
結標「…………」ドヤ
一方通行「ドヤじゃねェンだよクソ野郎がァ!!」ドン
結標「ひっ、な、何よ?」
一方通行「塩酸なンて料理で使えるわけねェだろォがッ! 常識的に考えてッ!」
結標「そ、そうかしら? いいアイデアだと思ったのだけど……」
一方通行「とりあえずそれはしまえ。そしてあとでそれはもと合った場所に返して来い!」
結標「わ、わかったわよ……」スッ
一方通行「ったく」
土御門「おーい、こっちは終わったぜい」ジュズズ
479: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:22:24.71 ID:t4WfFdxeo
一方通行「……オイオイ何涙垂らしてンですか土御門ォ。あまりの結標の無様さに号泣してンですかオマエはァ?」
結標「誰が無様ですって……?」
土御門「いやー、玉ねぎを切るなんて小学生のときの調理実習以来だからにゃー。涙がポロポロだぜい」
一方通行「グラサンでガードしろォ」
土御門「あれは匂いから来るもんだからな。よくアニメとかで見るゴーグルあるから安全みたいなのは間違っているんだぜい」
一方通行「どちらにしろ俺には反射があるから無問題だな」
土御門「で、結標の姉さんはまだ終わらないのかにゃー?」
結標「ごめんね。思いのほか手こずっちゃって」ギチギチ
一方通行「もォ諦めて能力使っちまえよ」
結標「……いや、ここで諦めてしまったら一生料理なんてできないような気がするわ」ギチギチ
一方通行「安心しろ。どっちに転がろうがオマエの作る野菜炒めはダークマターだ」
結標「うっさいわね!」ギチギチ
土御門「……ちょいといいかい姉さん?」
結標「ん? 何かしら?」
土御門「包丁ってのは押さえつけて切るもんじゃないぜい。手前に引いて使うものだにゃー」
結標「えっ、そうなの?」シュッ
結標「おおっ! 簡単に切れた!」
土御門「そうそう、うまいうまい」
結標「ありがとう土御門君! 貴方のおかげで料理スキル会得への道が開けたわ!」
一方通行「次は料理に入れていいものと入れちゃいけねェものの区別を教えてもらえばどォだ? 料理スキル会得までぐっと距離が近づくぞ?」
結標「い、いやさすがにその分別くらいわかるわよ! フライパンに入れる油はサンオイルとか灯油とかじゃなくてサラダ油よね?」
土御門(サンオイル……!? 灯油……!?)
一方通行「じゃあ甘口の卵焼きを作りたいです。さて調味料は何を入れればイイでしょォか?」
結標「卵焼きを甘くするのよね……甘くする……甘くする……」
土御門「…………」
一方通行「…………」
480: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:23:18.97 ID:t4WfFdxeo
結標「……! そうだわかった! 青酸カリね!」
土御門「どうしてそうなる!!」
結標「えっ? だってこれ結構甘酸っぱい香りがするのよ? それに某小学生探偵がよくペロって……」
土御門「それはコラだ! 偽者の情報だ!」
一方通行「大体青酸カリは毒だろォが」
結標「あ、そっか」
土御門「なぜ無難に砂糖と真っ先にいえない……?」
結標「おおー、砂糖かー。その手があったわね」
一方通行「オマエの思考回路は一体どォなってやがンだ。つゥか何だよさっきからこの薬物縛り」
吹寄「材料切るの終わったー?」
結標「うん、言われたものは全部切ったわ」
吹寄「じゃああとはこっちでするから使わない器具とかの片付けやっておいて」
結標「了解!」
土御門「アクセラちゃーん、面倒だから能力使ってぱぱーと一気に洗ってくれー」
一方通行「面倒臭せェ。自分で洗え」
結標「使えるものは使うんじゃなかったの?」
一方通行「使う必要のねェモンは使わねェ。それが俺の主義だ」
結標「コロコロ変わりすぎでしょ貴方の主義」
481: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:24:32.05 ID:t4WfFdxeo
~味噌汁チーム~
姫神「…………」
グツグツ
青ピ「……おぉーふ、ええ香りやなぁーお腹空いてくるでー」
上条「ほんとだよなー。今日朝メシろくに食ってねーから余計に腹が減るぜ」グー
姫神「…………!」キッ
姫神「豆腐!」
青ピ「はい、豆腐やで」スッ
姫神「…………」シャキーン
ズバッズバッズバッ
姫神「…………」ボトボト
上条青ピ『おおっー!』パチパチ
姫神「一分ほど煮たあとにわかめを入れる」
上条「さすが姫神だな。手つきが鮮やかだ」
姫神「伊達に毎日料理していない」
青ピ「ほんまやなぁ。正直ボクらおらんでも十分作れたんちゃうかなー?」
姫神「うん」
上条「つーか、そもそもこれくらいのレシピでこんな大人数いらねーよな?」
姫神「人数の関係上しょうがない」
青ピ「一クラスの人数多いわりに部屋は狭いってなー」
482: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:25:19.40 ID:t4WfFdxeo
グツグツ
上条「……おっ、そろそろいいんじゃないか姫神?」
姫神「そうだね。青髪君」
青ピ「ほいきた! わかめ爆弾投下ぁ!」ボトボト
上条「……何かわかめ多くねーか?」
青ピ「せやで。ただでさえ量少ないんやから、この『学園都市製超増えーるわかめ』を大量投入しないとやってられんで」
上条「どっから持って来やがった、その危険臭しかしない名前のわかめ!」
モリモリ
姫神「……ものすごい勢いでわかめが増えてる」
上条「ぎゃああああっ! 味噌汁がわかめを味噌で煮たものになってるぅううう!」
吹寄「ちょっと上条!」
上条「はい? 何でせうか吹寄さん?」
吹寄「そろそろご飯が炊けた時間じゃないかしら? 確認してきてちょうだい!」
上条「はいはーい、ほいじゃ言ってきますよーと」テクテク
483: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:25:47.67 ID:t4WfFdxeo
上条「さてさてー、本日の主役親子丼に欠かせないお米ちゃーんはちゃんと炊けてるかなー?」テクテク
上条「ええっと、Fグループの炊飯器は……ん?」
炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』
上条「…………んん?」
炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』
上条「…………は? エラー……? 停止……?」
炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』
上条「……何度見てもエラー……だと?」
吹寄「――ちょっと上条当麻! 一体何をやって……え?」
炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』
吹寄「…………ちょっと上条? これはどういうことかしら?」ギロ
上条「……ははっ、おかしーなー? ボクはちゃんとボタンを押したはずなんだけどなー」
吹寄「……上条。とにかく何か言うことがあるんじゃないかしら?」
上条「……不幸だー?」
吹寄「謝れ馬鹿者!」
ゴッ!
上条「ふがっ!?」
485: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:28:29.74 ID:t4WfFdxeo
~親子丼コーナー~
土御門「……そろそろ食べときじゃないかにゃー?」
結標「そうね。あとは卵を乗せるだけね。レシピ通りでいけば」
一方通行「その前にご飯が来るのを待たねェといけねェだろ。卵が無駄に固まっちまうぞ」
結標「貴方がそういうこと言うのって何か変よね。『異の中に入ったら同じだろォが』って言った方がお似合いよ?」
一方通行「うるせェ、レシピに書いてあンだよ」
吹寄「――まったく……これから……どうする……?」ブツブツ
結標「あっ、吹寄さんが帰ってきたわ」
土御門「吹寄ー。お米ちゃんはどーしたんだ?」
吹寄「大変よ! 上条がまたやらかしたわ!」
上条「あれは俺のせいじゃねえよ! なぜだか停止していた炊飯器が悪りぃんだよ!」
吹寄「確認を怠っていた貴様のせいでもあるでしょうが!」
上条「理不尽だ!」
結標「どうしたのよ一体?」
吹寄「率直に言うわ。ご飯がまだ炊けてないのよ!」
一方通行「ンだと?」
吹寄「どうやら今の今までエラーで停止しているのに気付かずに、ずっと放置してたわけよ」
土御門「そりゃ一大事だにゃー。このままじゃ親子丼がただの家なし親子になっちまうぜい」
結標「今から炊きなおしたら間に合わないの?」
吹寄「間に合わないこともないけど、その場合後片付けの時間含めて五分くらいしか残らないわ」
土御門「五分かー、食えないことはないが片付けのほうはキツイかにゃー」
一方通行「…………」
結標「……一体どうすればいいの……?」
上条「……すまねえみんな。全部俺のせいだ。俺がちゃんと炊飯器の起動確認までしていれば……」
吹寄「いや、そういうところまで見てなかったあたしの責任でもあるわ。ごめんなさい……」
結標「…………」
一方通行「……あァ面倒臭せェなァくそったれが」ガチャリガチャリ
結標「! どこに行くのよ一方通行」
一方通行「ちょっと米炊いてくる」
吹寄「何を言ってるのアクセラ。ハッキリ言ってもう時間には……」
一方通行「……ハァ、オマエらわかってねェ、全然わかってねェよ。俺を誰だと思ってやがる」
上条「……学園都市第一位の超能力者(レベル5)……?」
一方通行「そォだ。全てのベクトルを操る、よォするに最強の能力者である俺によォ――」
一方通行「たかが米粒、炊けねェわけねェだろォが……ぎゃはっ」カチ
486: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:31:21.01 ID:t4WfFdxeo
カパッ
一方通行「よっと」ジャポッ
結標「お米の中に手を突っ込んだ?」
上条「何をするつもりだよ」
一方通行「熱っつゥのはアレだ、分子や固体の中の原子が熱振動することで起こるモンだろォが。つまり――」
ゴポポッ!
吹寄「!? 水が沸騰した!?」
一方通行「俺のベクトルを操るチカラで無理やり水の中にある原子を高速で振動させれば、すぐさま水を沸騰させて水温を上げることなンざ他愛もねェだろ」
結標「……でもいくらすぐに沸騰させることができても、ふたが開いてるから蒸気とかが逃げちゃうんじゃ……?」
一方通行「その点も問題ねェ」
シュゴー
吹寄「……蒸気が炊飯器の入り口をまるで透明な蓋でもあるかのように中に戻っていってる……?」
一方通行「左手で水を操り、右手で蒸気を操る。そォすりゃ釜一つありゃ人間炊飯器が可能っつゥわけだ」
一方通行「それに学園都市製の最新の炊飯器の性能の高さって知ってるかァ?」
結標「……そういえば最近黄泉川さんがまた買ってたわね。たしかあれって五分もあれば炊き上がるんでしょ?」
上条「ご、五分!? すごすぎんだろそれ!」
一方通行「機械にそれが実現できるっつゥンなら、この俺に再現できねェわけがねェ」
ゴポポッ!
一方通行「こンなこともあろうかと、昨日の晩あらかじめあの炊飯器の仕組みを調べておいた」
一方通行「つまりこの米はあと五分もしねェうちに炊き上がるわけだ。蒸し時間だって余裕で確保できるぜェ?」
結標「……それじゃあ……!」
土御門「ああ。きちんと時間内に親子丼が食べられるにゃー!」
上条「よっしゃー! 助かったー!」
一方通行「チッ、うっせェンだよオマエら。気が散るだろォが」
吹寄「……アクセラ」
一方通行「あァ?」
吹寄「何というか……ありがとね」
一方通行「ンなこたァどォでもイイから他のモンの準備をしろォ。米が炊き上がり次第メシの時間だくそったれが」
―――
――
―
487: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/18(土) 18:32:40.75 ID:t4WfFdxeo
吹寄「――最後にご飯の上に盛り付けて……と」サッ
全員『完成ーッ!』
青ピ「うおーっし! ようやく食べもんにありつけられるでー!」
土御門「いやー長かったにゃー。とてつもなく長かったにゃー」
上条「何言ってんだよ。時間がやばくて焦ってただろ?」
一方通行「誰のせェだ誰の」
上条「か、上条さんだっていつも気をつけているんですよ不幸ってやつがいつ起こってもいいように! でも無理なんですー回避不可なんですースピードスターなんですー!」
一方通行「知らねェよ」
姫神「……はい。味噌汁」ゴト
上条「おおー、いい香りだなー。サンキュー姫神」
結標「はい一方通行」ゴト
一方通行「おォ、アリガトよ。一応聞いておくがナニも余計なモン入れてねェよな?」
結標「なっ!? さ、さすがの私も完成されたものに手をくわえるなんて無粋なことはしないわよ!」
青ピ「信用されてへんなー姉さん。こりゃ料理をきちんと学んでもアクセラちゃんには一生警戒されそーやな」
上条「いや、さすがに一生はねえだろ」
土御門「すでにトラウマを植えつけられてるってことかにゃー?」
結標「……なぜだか私がフルボッコされる展開に……?」
一方通行「オイオマエらそろそろイイ加減にしとけ。レベル5様がお怒りになられるぞ」
結標「貴方もレベル5でしょうが!」
吹寄「はいはい落ち着いて結標さん。食べて片付けるまでが調理実習よ。早く食べなきゃ」
結標「あ、う、うん。そうね」アセ
姫神「……お茶汲んできた」テクテク
青ピ「この騒ぎの中でいつの間に……?」
土御門「この俺が察知できなかっただと……?」
姫神「何を言っているのかわからないけど。すごく馬鹿にされているような気が……」
上条「無視しとけ無視」
吹寄「はい、じゃあ――」
『いただきまーす!!』
――――
498: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:11:36.32 ID:rulaMS95o
18.節分
February First Sunday 10:00 ~節分~
-黄泉川家・リビング-
打ち止め「おにはーそと!」バッ
一方通行「あン?」
パラパラパラー!
一方通行「ッ!? 何しやがるクソガ──」
打ち止め「ふくはーうちー!」バッ
パラパラパラー!
一方通行「ぐっ、痛ッ、オイやめろ――」
打ち止め「おにはーそとー!」
パラパラパラー!
一方通行「だからやめろっつってンだろォが! このクソガキがァ!」カチ
キュイーン、パラパラパラー!
打ち止め「ぎゃあああああああっ! 投げた豆が全部反射されてきたー! ってミサカはミサカは全速力でこうた──痛っ! 痛い痛い豆痛い!」ビシッビシッ
499: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:13:04.81 ID:rulaMS95o
打ち止め「……ううっ、体中に豆の当たった痕ができて痛いよー、ってミサカはミサカは涙を浮かべながら嘆いてみたり」
一方通行「自分がやられて嫌なことは他の人にやっちゃいけませン、って習わなかったのかオマエ」カチ
芳川「逆に聞くけど、キミはそんなこと習ったのかしら?」
一方通行「ンなこと教えてくれるヤツなンざいるわけねェだろ。ちなみに俺ァ『どうせやられたら倍返しにするんだから、やられる前に倍返ししとけ』って習った」
芳川「何それ怖い」
結標「一体貴方はどんな先生の下で育ってきたのよ」
一方通行「先生なンて高尚なモンじゃねェよ。ただのゴミクズだ」
結標「ひどい言いようね……」
一方通行「つゥか、どォしてこのクソガキは俺に大豆なンざぶつけてきやがったンだァ? またくだらねェ反抗期ごっこでもしてンのか? 十年以上早ェ」
打ち止め「ち、違うよ! ていうか早いってどういうこと! ってミサカはミサカはあなたの言葉に食いついてみたり!」
芳川「今日が何の日か知ってるかしら?」
一方通行「たしか今日は二月三日だろ? 何かあったか?」
結標「カレンダー見なさいよ。節分って書いてあるでしょ?」
一方通行「節分? そォいやそンなモンあったな」
結標「ほんと貴方ってそういうものに無関心よね」
一方通行「興味ねェンだからしょうがねェ。で、どォして俺はコイツに豆ェぶつけられねェといけねェンだ?」
芳川「節分には豆撒きっていう摩滅のために行う儀式みたいなものがあるのよ。鬼に豆をぶつけることによって邪気を追い払う、って感じにね」
結標「それで掛け声が『鬼は外! 福は内!』って感じになるらしいわ」
芳川「まあ地域によっては『鬼は内!』になっていることもあるけど、キミにとっては些細な問題でしょ?」
500: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:14:27.60 ID:rulaMS95o
一方通行「……つまり何だァ? このクソガキは俺を鬼に見立てて豆を投げつけてたっつゥことか?」
打ち止め「イエス! ってミサカはミサカは指を二本立てて肯定してみたり」
一方通行「何で俺がそンな三下みてェな役割をしなきゃいけねェンだよ?」
芳川「いや、だって……ねえ」
結標「うん……まあ、そうね」
一方通行「何で目を逸らせてやがンだこのアマどもは……」
打ち止め「それはあなたが鬼役にピッタリだからだよ! ってミサカはミサカは簡潔に答えてみたり」
一方通行「ハァ? どこがピッタリだってンだよ」
芳川「そりゃ顔が怖いからに決まってるわよ……ぷぷっ」
一方通行「オイオイ、そンなクソみてェ理由で俺ァ豆を投げつけられねェといけねェのかァ?」
結標「まあこの家で貴方が唯一の男なわけだし、こういう役を買って出るのが普通じゃないかしら?」
一方通行「普通じゃねェよ。大体そンな男なら少々痛い思いをしてもイイみてェな風潮やめろよ。俺から見たらオマエらの方がよっぽど鬼だっつゥの」
芳川「そういうことをこの環境で言ったところで何だ、って話にならないかしら?」
一方通行「つゥか黄泉川はどこいったァ!? アイツこそまさしく鬼役にピッタリだろォが!」
結標「黄泉川さんならアンチスキルの仕事で出てるわよ。昼までには帰ってくるらしいけど」
一方通行「クソが! てか、そもそもこの儀式とやらはやらなきゃいけねェことなのかァ? 魔除けなンざオカルトをこの科学の街学園都市で」
結標「まあ一種のイベントのようなものだからいいんじゃない? 初詣みたいなものよ」
打ち止め「そうそう! イベントなんだから楽しまなきゃいけないんだよ! ってミサカはミサカ目を輝かせながら熱弁してみたり」
一方通行「オマエはとりあえず豆を投げつけてェだけだろォがクソガキが!」
芳川「もうキミのツンデレ展開は見飽きたからはい」スッ
一方通行「ツンデレじゃねェっつってンだろ。……って、何だこりゃ?」
芳川「鬼のお面よ」
一方通行「…………」
501: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:16:09.58 ID:rulaMS95o
一方通行「…………わかった。鬼だろォが悪魔だろォと何でもやってやるよ」←鬼のお面装着
打ち止め「おおっ! 珍しくあなたが乗り気だね、ってミサカはミサカはあなたの成長ぶりに感心してみたり」
一方通行「うるせェよ。何でクソガキに感心されなきゃいけねェンだ」
結標「貴方のことだからさっさと終わらせて昼寝でもしようって魂胆でしょ?」
一方通行「当たり前だろ。せっかくの休日を寝て過ごさねェわけにはいかねェだろ」
芳川「普通の学生たちはみんなで集まって街で遊んでいると思うのだけど」
一方通行「普通ってのは他人が決めることじゃねェ。俺自身が決めることだ」
芳川「こうして自己中心的な考えしか持てないコミュ障が生まれるわけね」
一方通行「今すぐ『芳川は外』って言いながら、音速の三倍で豆投げつけてやろォか?」
芳川「いやね冗談よ。だいたい鬼役の人が豆を持っちゃダメじゃない」
打ち止め「じゃー気を取り直して再開しよう! ってミサカはミサカは再び豆を手にとって見たり」スッ
結標「そうね。一方通行も早く終わらせて欲しいようだし、こっちもできるだけ早く終わらせてあげないとね」スッ
芳川「ふふっ、久しぶりね。大豆をこんなに手に取るなんて」スッ
一方通行「……クソガキだけじゃなくオマエらも投げンのかよ」
結標「ま、どうせだしやってみようかなって」
一方通行「チッ、この『イベントならとりあえず参加しとこ脳』め……」
打ち止め「じゃー行くよー! せーの――」
打止結標芳川『おにはーそとー!』バッ
パラパラパラー!
一方通行「反射」カチ
キュイーン、パラパラパラー!
打ち止め「ぎゃあああああああああっ! なんでえええええええええっ!」ビシビシ
芳川「痛っ! 久しぶりに痛いっ!」ビシビシ
504: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:21:04.53 ID:rulaMS95o
一方通行「鬼っつゥのは力の象徴みてェなモンだろ? よォするに学園都市最強のチカラを持つ俺はまさしく鬼っつゥわけだ」
一方通行「それを豆粒ごときで追い出そォなンざ考えが甘ェンじゃねェのかァ? あァン?」
シュン!
結標「随分と大人気ない鬼さんね」シュタ
一方通行「テレポートして逃げてやがったか。さすがだな」
打ち止め「ぶーぶー! ちゃんと鬼役してよー! ミサカたちに追い出されてよー! ってミサカはミサカは文句をたれてみたり!」
芳川「そうよ。ネタをネタだと思えない人には社会を生きていくのは難しいわよ」
一方通行「あぎゃはっ! だったらその豆粒で倒してみろよォ! この俺、一方通行をよォ!」
芳川「ぐぬぬ……まさか反射を本気で使ってくるなんて思わなかったわ」
打ち止め「こうなったら……ミサカが演算をストップさせて――」
一方通行「あ、そォしたら俺ぐれて寝るわ」
結標「汚っ!? 学園都市第一位が姑息な手を取り出したわ!」
芳川「このままではなすすべがないわ……」
一方通行「ぎゃははははははっ!! オラオラァ! どォしたかかってこ――」
数多「はい、おにはーそとー」スチャ
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
一方通行「ご、はっ……!?」
結標「一方通行ぁ!?」
505: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:24:08.97 ID:rulaMS95o
数多「ったくよぉ、ザコの癖に調子に乗ってんじゃねぇよクソガキが」
打ち止め「あっ、キハラだ! 何その手に持ってるものは何? ってミサカはミサカは興味を示してみたり」
数多「ああこれかぁ? これはあれだ、大豆を弾丸として発射することが出来るアサルトライフル」
結標「あ、アサルトライフル!?」
数多「安心しろ、殺傷能力はねぇよ。まぁ、殺せねぇことはねーけどな」
芳川「……ところで何で大豆でアサルトライフルを? 節分だからかしら?」
数多「それもあるけどよぉ、実は最近FPSのゲームにはまっててさぁ」
打ち止め「FPS?」
数多「ファーストパーソン・シューティングゲーム。ようするに銃で相手を射殺するゲームのことだ」
数多「そのゲームでアサルトライフル使って遊んでてふと思ったんだよ。弾丸を別のものに換えたら面白くねーか、ってな」
結標「いや、わけがわかりませんよ」
数多「そこでたまたまテレビに映ってた大豆を弾にしてみよーと決めて」
数多「そこらへんに落ちてたアサルトライフル拾って撃てるように改造してみたっつーわけだ」
結標「……落ちてるの? アサルトライフル」
打ち止め「んーとね、よく武器みたいなものは置いてあったりするよ、ってミサカはミサカは思い出してみる」
一方通行「……木ィィ原クゥン」ヨロッ
数多「おーおーふらっふらじゃねーか。たかがあれだけの銃撃で根ぇ上げてんじゃねぇよクソガキ」
一方通行「上げてねェよ! つゥか何だよそれはァ! どォして俺の反射を通り抜けやがンだよ!」
数多「あぁ? そんなもんもわからねーのかテメェは」
一方通行「……まさかその弾丸は反射が発動する寸前に引き返す仕組みになってるとか言わねェだろォな?」
数多「んなわけねーだろ。そんな面倒臭せぇもん俺が作るわけねーじゃん。もっと簡単なもんだよ」
一方通行「……! この感覚……」
数多「やっとわかったか。このアサルトライフルにはお前専用のAIMジャマーが搭載されてんだよ」
数多「引き金を引いた瞬間、周囲二十メートル内の特定の数値を持つAIM拡散力場を乱すっつー仕組みだ」
アクセラレータ
数多「ようするにこれは対節分の鬼役用アサルトライフルっつーわけだ。わかったか?」
一方通行「変なモン作ってンじゃねェよ木原ァ!!」
数多「そゆわけで、せーの――」スチャ
一方通行「あン?」
数多打止結標芳川『おにはーそとー!』
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
―――
――
―
506: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:25:37.21 ID:rulaMS95o
一方通行「」プスプス
数多「……あー、スッキリした。やっぱストレス溜まってるときはリアル銃撃戦だな」スチャ
打ち止め「床がすごいことに……ってミサカはミサカは一面に広がる大豆たちを眺めながら呟いてみたり」
結標「これは片付けるのに手間がかかりそうですね」
芳川「大丈夫よ。彼のベクトル操作を使えば一瞬で大豆が一箇所に集まるわ」
結標「その彼ですが今伸びますよ?」
一方通行「」プスプス
芳川「あら、少しやりすぎちゃったかしらね」
数多「チッ、しょうがねぇなぁ」スッ
プルルルルル、プルルルルルガチャ
マイク『はい! こちら従犬部隊です』
数多「出るの遅せぇんだよマイク。ワンコールで出ろビジネスの常識だぞテメェ」
マイク『しゃ、社長!? 一体どうして電話なんか……』
数多「お前ら社員全員、今すぐ掃除道具持ってこっちに来い。十秒以内な」
マイク『…………は? ちょっとおっしゃってることの意味が……』
数多「はい、じゅー」
マイク『!?』
数多「きゅー」
マイク『い、今すぐ参ります!』ガチャ
数多「はーち、ななろくごぉよんさんにぃ――」
ガラララ!!
マイク「それ十秒じゃないです!!」ゼェゼェ
507: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:26:38.94 ID:rulaMS95o
数多「うるせぇよ。生き物ってのは体感時間がそれぞれ違うだろうが。ヒトにとっての一秒と虫けらにとっての一秒が違うようによぉ」
オーソン「社長はたしかヒトでしたよね!?」
ナンシー「ところでなぜ私たちは掃除道具などを持ってこんなところへ呼ばれたのでしょうか?」
数多「テメェらこれを見てみろ」
床『ダイズーン』
ロッド「うわっ、床が大豆だらけに!?」
オーソン「これってたしか昨日社長が作ってた改造アサルトライフルの弾じゃ……」
数多「さぁ、さっさとお前ら掃除しろ。今すぐ」
マイク「えっ、ちょ、これをたった四人でですか……?」
数多「十分すぎんだろ」
ナンシー「いや、箒と塵取り一個ずつしか持ってきていないんですが……?」
数多「掃除機持ってこないテメェらが悪りぃ」
ロッド「そもそもこれって社長が――」
ズドドドドドドドドドドドドッ!!
数多「いいからやれカスども」
社員達『はい』
結標(さらに散らかった……)
―――
――
―
508: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:28:16.98 ID:rulaMS95o
同日 11:00
-黄泉川家・リビング-
一方通行「…………」ムクリ
一方通行「俺は一体何をしていたンだ……?」
打ち止め「あっ、おはよう! ってミサカはミサカはさっきまで気絶してたあなたに挨拶してみる!」
一方通行「気絶だァ? 一体何が……って、木原クゥゥン!!」ガバッ
結標「木原さんなら掃除が終わるなり帰ったわよ」
一方通行「あの野郎あとで絶対ェ殺してやる! つゥか今すぐ肉塊に変えに行ってやろォか!?」
黄泉川「そんなことよりおつかいに行って欲しいじゃん一方通行」
一方通行「……帰ってたのか黄泉川」
打ち止め「あなたが気絶している間にね、ってミサカはミサカは説明してみる」
一方通行「つゥか何で俺がおつかいになンざ行かなきゃならねェンだ?」
黄泉川「休みの日に部屋に引きこもってるのは体に悪いぞ? たまには外に出て新鮮な空気でも吸ってくるといいじゃん」
一方通行「芳川クゥン!? 出番ですよォ!?」
結標「芳川さんなら部屋に引きこもったわよ」
一方通行「クソが、またかよ!」
一方通行「……てか、学校のある日は外に出てンだから問題ねェだろ。そもそも外の空気なンてそンな綺麗なモンじゃねェし」
黄泉川「ごちゃごちゃ言ってないでとっととこのメモに書いてあるものを買ってくるじゃん」スッ
一方通行「……チッ、わかったよ。行ってくりゃイインだろ行ってくりゃ」パシッ
打ち止め「おおっ! 珍しくすぐに折れたね、ってミサカはミサカは少し驚いてみたり」
一方通行「粘ったところで行かされるのが目に見えてる。時間の浪費はしたくねェ」
結標「いつも昼寝して時間の浪費をしている人のセリフとは思えないわね」
一方通行「うるせェよ。だいたい睡眠っつゥのは人間に必要不可欠なモンだろォが。無駄な睡眠なンてねェ」
結標「貴方のは確実に惰眠を貪るタイプの無駄な睡眠よね」
一方通行「……まァイイ。じゃあ行ってくる」ガチャリガチャリ
打ち止め「わーい! ミサカも行くー! ってミサカはミサカは──」
一方通行「面倒臭せェから付いてくンな!」
打ち止め「ぶーぶー!」
───
──
─
509: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:30:46.82 ID:rulaMS95o
同日 11:10
-第七学区・街頭-
一方通行「……さて、メモに書かれてるモンはお酢と巻き寿司用の海苔か」ガチャリガチャリ
一方通行「酢はコンビニに行きゃあ売ってるだろォが海苔の方はわかンねェなァ……」
一方通行「だいたい何で巻き寿司? よりにもよって今日なンだァ?」
一方通行「……まァイイ、スーパーにでも行きゃあンだろ。面倒臭せェがな……」ガチャリガチャリ
ワイワイガヤガヤ
一方通行「あン?」
女子高生A「…………」モグモグ
女子高生B「…………」モシャモシャ
女子高生C「…………」マグマグ
一方通行「……んだァ? 同じ方向を向いて巻き寿司を頬張ってやがる……? 何だこの異様な光景はァ、儀式か何かか?」
ハァハァ
一方通行「あァ?」
510: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:32:28.08 ID:rulaMS95o
青ピ「巻き寿司を咥えとる娘がたくさんおるぅ! これは素晴らしい! 絶景や──」
一方通行「…………」
青ピ「はぁ、はぁ、なるほど、なるほ――」
ドパァー!!
一方通行「あァもしもしジャッジメントですかァ? 第七学区のカフェが並んでる辺りのところに変 が一匹いやがるンですがァ」カチ
青ピ「ちょっアクセラちゃん! やめてぇ! やめたげてぇ! 通報だけはせーへんといてー!」ボロッ
一方通行「こンなところで何してやがる変質者がァ」
青ピ「いやーちょっと恵方巻ウォッチングを少々……」
一方通行「恵方巻だァ? 何だそりゃ?」
青ピ「えっ、アクセラちゃん恵方巻も知らへんの? おっくれって──」
ゴッ
青ピ「ぎゃあああああああっ! 膝がああああああああっ! 膝の皿が割れたあああああああっ!」ゴロンゴロン
一方通行「で、一体何なンだァその恵方巻とやらはァ?」カチ
青ピ「膝の皿割れた言うとんのに平然と話しかけてくるなぁキミぃ」スタッ
一方通行「本当に割れたヤツは割れたなンて口では言わねェよ」
青ピ「せやろか?」
511: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:35:20.41 ID:rulaMS95o
一方通行「うるせェよ。現にオマエは直立してンだから膝の皿は割れてねェだろォが。結局、恵方巻っつゥモンは何なンだよ一体ィ」
青ピ「恵方巻っていうのは節分の日に巻き寿司を食べると縁起がいい、って感じの風習やで」
一方通行「へェ、そンなモンがあったのか」
青ピ「マジで知らへんかったん? これ常識やで常識」
一方通行「そォいう環境で育ってねかったンだからしょうがねェだろ」
青ピ「環境云々言うてるけどなぁ、普通にこの時期ならコンビニとかに行ってたら見るやろ恵方巻くらい」
一方通行「……そォいえばあったよォな気がする」
青ピ「せやろ。つまり一見常識知らずに見えるアクセラちゃんやけど、実は結構知ってたりするんやで」
一方通行「いやその理屈はおかしい。つゥか知っていると常識があるはまた別の話だろ」
青ピ「まぁそうやけどな。現実は厳しいでー」
一方通行「そォいや忘れてたがオマエはどォして路上で発 してやがったンだァ?」
青ピ「そりゃ決まっとるやろ!! だって女の子が巻き寿司を口に咥えているんやで!!」
一方通行「わけがわからねェよ。オマエは食事中の女眺めてても興奮できるよォなどォしよォもねェ変 だったのか?」
青ピ「いやそれでも余裕で るけど違うで!!」
一方通行「 るのかよ」
青ピ「だってアクセラちゃん!? 女の子が、大きくてぶっとい黒光りしたものを口に咥えているんやで!?」
一方通行「…………そォか。そォいうことか」
青ピ「おおっやっと気付いたかアクセラちゃん。ほんま鈍いねキミぃ、カミやんもビックリやでー」
512: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:37:32.94 ID:rulaMS95o
一方通行「で、それがどォかしたのか?」
青ピ「なんやねんキミ! 興奮するやろ! あんなもん とるところ見たら!」
一方通行「しねェよ。生憎だが俺はオマエみてェな変 野郎じゃねェからな」
青ピ「……もしかしてアクセラちゃん、もう が枯れ果てて……」
一方通行「枯れ果ててねェよ!」
青ピ「……はっ! まさかホ――」
一方通行「それ以上言うとオマエの急所にベクトルパンチブチ込むぞコラ」
青ピ「そういえばアクセラちゃんはこんなところで何してん? 趣味は家に引きこもってニートするじゃなかったっけ?」
一方通行「誰がニートだ。面倒臭せェけど買いモンだよ買いモン」
青ピ「買い物? おつかいでも頼まれたんかいな」
一方通行「まァそンなところだ。酢と海苔……よォするにその恵方巻とやらの材料を買いに行かされているっつゥわけだ」
青ピ「…………ほほぉ、つまりアクセラちゃんの家ではこれから恵方巻パーチーが行われるってことでええんやな?」
一方通行「だろォな」
青ピ「なあなあアクセラちゃん。ちょっと頼みがあるんやけどなー」
一方通行「あン?」
青ピ「ボクもそのパーチーに連れて行ってくれへん?」
一方通行「断る」
青ピ「何でやっ! 頼む! 一生のお願いやから!」
一方通行「一生のお願いっつゥのはなァ、コイツならいつでもお願いを受け入れてくれるってヤツにしか使わねェンだよ」
青ピ「……? どゆこと?」
一方通行「つまり断る」
青ピ「何でやねん!」
513: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:39:12.76 ID:rulaMS95o
一方通行「何でそンなに必死なンだよオマエ。巻き寿司ぐれェコンビニにでも行って買ってこいよ」
青ピ「それじゃあダメやねん!」
一方通行「ハァ? どォいうことだ」
青ピ「実はなぁボク、軽くホームシックになってしもうたんや」
一方通行「ホームシックだァ? 似合わねェこと言ってンじゃねェよ」
青ピ「似合わないことはわかっとる! でもなってしもうたんやからしゃーないやん!」
青ピ「アクセラちゃんはこれから家に帰っても温かく迎えてくれる人たちがおる。でもボクは違うんや」
青ピ「家に帰っても一人。誰もいない静寂だけが広がる空間。それはボクの心に空しさと寂しさを与えるだけやった……」
青ピ「だからなぁアクセラちゃん! ボクはただ温もりが欲しいだけなんや! それ以上のモンは望まん!」
一方通行「本当は?」
青ピ「黄泉川先生とか芳川さんとか結標の姉さんとか打ち止めちゃんとかが巻き寿司を咥えている姿が見たいですハァハァ」
一方通行「…………」
青ピ「…………あ」
一方通行「青髪ピアスクン?」
青ピ「はい」
一方通行「こっから先は一方通行だ大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて無様に元の居場所へ引き返しやがれ」カチ
ガァン!!
青ピ「えべぐりょ!?」
ヒューン、キラン
一方通行「…………さて、悪は潰えた」カチ
一方通行「とっととスーパーに行ってブツを買いに行くか」ガチャリガチャリ
―――
――
―
514: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:41:38.12 ID:rulaMS95o
同日 12:00
-黄泉川家・リビング-
ガラッ
一方通行「帰ったぞ」
黄泉川「おかえりじゃん。お昼できてるから手洗ってくるじゃん」
打ち止め「今日のお昼はちゃんぽん麺イン炊飯ジャーだよ、ってミサカはミサカは両手に箸を一本ずつ持ちながら待ち焦がれてみたり」wktk
一方通行「ほらっ、これでイインだろ?」スッ
黄泉川「おお、ありがとじゃん」
一方通行「チッ、面倒臭せェから二度と頼むンじゃねェぞ」
芳川「はいはい、これからは毎回おつかいを頼んで欲しいらしいわよ愛穂」ボリボリ
黄泉川「おっ、そうじゃん? だったら次からも頼もうかな?」
一方通行「オイ、何勝手なこと言ってンだオマエら。……つゥか、何ボリボリ食ってやがンだ芳川」
芳川「何って豆について決まっているじゃない」
一方通行「豆……?」
芳川「そう。節分の日に豆を歳の数だけ食べれば縁起がいい、っていう風習があるのよ」
結標「例えば私は十七歳だから十七粒って感じね」
一方通行「そォいえばオマエ十七歳だったっけなァ、同級生なのに」
結標「ううっ、あまりツッコンで欲しくないんだけど……」
芳川「そういうわけでキミも十六粒食べてみてはどうかしら?」スッ
一方通行「チッ、元担ぎなンざくだらねェ」
打ち止め「わーい! だったらその分はミサカがいただくぜー! ってミサカはミサカは大豆の強奪を試みてみたり」ダッ
一方通行「まだ一歳にも満たねェガキが何言ってンだ?」
打ち止め「ぜ、ゼロ歳でも四捨五入すれば一歳だし! お豆一つ分くらい生きてるはずだし! ってミサカはミサカは必死に反論してみる!」
一方通行「今年で二十歳の十九歳のヤツは酒を飲ンじゃいけねェ。あとはわかるな?」
打ち止め「ぐぬぬ、妙に説得力があるのが悔しい、ってミサカはミサカは歯噛みしてみる」
黄泉川「お前らー、豆を食べるのはいいけどこれからメシの時間なのを忘れるなよー」
芳川「わかっているわよ。子供じゃあるまいし、豆を食べ過ぎてご飯が食べられないなんてことあるわけないじゃない」ポリポリ
芳川「それにもう出してる分はもう残り少な──」
一方通行「オイ、オマエにしては豆の量が少なくねェか? 俺が増やしてやるよ」
パラパラパラー
芳川「…………」
一方通行「…………」
芳川「……これどういう意味よ」
一方通行「…………」ニヤァ
515: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:43:02.25 ID:rulaMS95o
芳川「……ふふふっ、どうやらキミは私に喧嘩を売っているようね」ゴゴゴゴ
結標「お、落ち着いてください芳川さん!」
一方通行「あはっ、ぎゃはっ、笑いが止まらねェくれェ無様じゃねェか芳川ァ!」
芳川「幼女に豆を投げられるしか能のない煽り耐性ゼロの コン野郎が面白いこと言うわね……!」
一方通行「あァン!? 誰が煽り耐性ゼロだってェ!? つゥか俺ァ コンじゃねェ!」
結標「いや、どう見ても煽り耐性ゼロじゃない」
一方通行「うるせェぞ結標ェ! ……どォやらオマエはここで片付けておかねェといけねェよォだなァ」
芳川「そうね。私もキミに言いたいことが山ほどあるわ」
一方通行「…………」
芳川「…………」
一方通行「都合の悪りィ時だけ引きこもってンじゃねェよニート野郎がァ!!」バッ
芳川「私はバイトしてるからニートじゃないって言ってるでしょうが、この引きこもり白髪モヤシウルトラマン!!」バッ
黄泉川「うるさい」
ガツン!!
黄泉川「これから昼メシだってのに暴れてんじゃないじゃん」
一方芳川『……すみません』
───
──
─
516: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:45:28.01 ID:rulaMS95o
同日 18:00
-黄泉川家・キッチン-
打ち止め「──というわけで、何だかんだあって今から恵方巻をみんなで作りまーす、ってミサカはミサカはこれからの予定を簡単に説明してみたり」
黄泉川「一体誰に向かって説明しているじゃん?」
一方通行「つまり俺の昼寝の時間っつゥわけか」
結標「そんなわけないじゃない。というかもはや昼寝っていえる時間帯じゃないわよね?」
一方通行「つまりよい子が寝る時間っつゥことか。じゃあ俺も寝ねェとな」
結標「それにしても早すぎるわよ。まだ夕食の時間かどうかも怪しい時間帯だし」
芳川「そもそもキミはよい子じゃないわよね?」
一方通行「……つゥかよォ、どォしてこンなモンわざわざ俺が作らなきゃいけねェンだ?」
黄泉川「働かざるもの食うべからず、って言葉知ってるじゃん?」
一方通行「ああ。じゃあ俺食わなくてイイから働かねェ」
黄泉川「きちん三食食べなきゃダメじゃん」
一方通行「いや、だからいら──」
黄泉川「ダメじゃん♪」ニコッ
一方通行「お、おォ……」
芳川「何という笑顔の圧力」
結標「さすが黄泉川さんですね」
黄泉川「本日の恵方巻に入れる具材は無難にかんぴょう、キュウリ・シイタケ煮、卵、アナゴ、おぼろの七種類じゃん」
芳川「無難ね。ウィキペディアの概要辺りに載ってそうなくらい」
一方通行「何を言ってンだオマエは?」
結標「別にいいんじゃないですか無難で。奇抜な発想で不味くするよりは遥かに」
一方通行「奇抜過ぎる発想で料理をするオマエのセリフとは思えねェよな」
結標「ば、馬鹿にしないでちょうだい! 私はもう包丁で鶏肉をすんなり切ることができるくらい料理スキルが上がっているのよ! そんなことを言われる筋合いはないわ!」
一方通行「その程度でスキルが上がったとは言わねェよ。初歩の段階だ初歩の」
一方通行「それにオマエはもォ少し常識のスキルを身に付けたほうが遥かにイイと思うがな」
打ち止め「それについてはあなたも大概だと思うけどね、ってミサカはミサカは小さい声で呟いてみたり」ボソッ
一方通行「あァ? 誰が常識がないってェ?」ギロ
打ち止め「げっ、最近流行りの難聴スキルを持っていると思ってたけど別にそんなことはなかったぜ、ってミサカはミサカは顔を引きつらせながら後ずさりしてみたり」
芳川「まあ、事実だから仕方がないけど」
一方通行「灰にされてェのか芳川クン?」
結標「いい加減煽り耐性上げなさいよ」
打ち止め「そうだよ! そろそろ大人にならなきゃ、ってミサカはミサカはあなたの肩を叩こうと思ったけどやっぱり背が足りない」ヒョイヒョイ
一方通行「…………」
打ち止め「…………」ヒョイヒョイ
一方通行「……チッ、うっとォしい」
芳川「やはり幼女には勝てないようね」
一方通行「オマエあとでスクラップな」
517: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:46:43.95 ID:rulaMS95o
黄泉川「はいじゃあ早速巻き寿司を作るとするじゃん」
芳川「まあ作ると言ってもただ巻くだけだけど」
一方通行「そォなのか?」
黄泉川「まあな」
一方通行「だったら俺いらねェだろ。何のために呼ばれたのかさっぱり検討もつかねェぞ?」
黄泉川「巻き寿司は準備さえできてれば作るのが本当に簡単じゃん。だから家族団欒で楽しめる優秀な料理じゃん」
一方通行「既に楽しめてねェヤツがいンだが……」
結標「楽しむ以前に何もやってないじゃない貴方」
一方通行「思い込みのチカラってのはすげェンだぜ?」
打ち止め「思い込みのチカラって? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
一方通行「そォだな。例えばどンな安っぽい肉で作られたステーキでも、高級レストランのシェフみてェな信用度の高いヤツが『高級和牛』とか言えば馬鹿は騙されるンだよ」
結標「…………つまりどういうことよ?」
一方通行「俺が楽しくねェと思い込ンでるうちは何をやろォが面白くねェ」
結標「だったら早くこれは『楽しいこと』と思い込みなさいよ」
芳川「これだから中二病は……」
一方通行「くそったれが、黄泉川ァ! やるならとっととやれェ! コイツらがうっとォしくて敵わねェ!」
芳川「素直に巻き寿司作りたいって言えばいいのに」クス
黄泉川「おう、じゃあまずは私がお手本を見せてやるじゃんよ」スッ
黄泉川「まずは巻き寿司用のすだれの上に海苔を乗せる」スッ
黄泉川「んで、その上に酢飯を乗せるんだけどここであまり乗せすぎないようにするのがポイントじゃん」
打ち止め「何で? いっぱい乗せたほうが量が多くなるんじゃないの? ってミサカはミサカは少し疑問に思ってみたり」
芳川「単純に入れすぎると巻けないからじゃないかしら? ただ固めるだけのおにぎりとは違って、綺麗に巻いてこそ巻き寿司だから」
黄泉川「そうじゃん。あと少なめの量からスタートすれば調整もしやすいじゃんよ」
黄泉川「それにあらかじめこういう風に小分けにして乗せとけば均等に海苔の上に広げることができるじゃん」
結標「へー、勉強になりますね」
一方通行「本当かよ?」
結標「……何よ? 言いたいことがあるなら言ってみなさいよ」
一方通行「別に何でもねェよ」
黄泉川「で、あらかじめ下準備を済ませておいた具を上に乗せるじゃん」パッパッ
黄泉川「ここで真ん中より下の方に乗せておくと綺麗に巻きやすいじゃん」
打ち止め「おおっー、どんどん具が乗せられていく、ってミサカはミサカはすだれの上の状況を実況してみたり」
芳川「さすが愛穂ね。手際がいいわ」
黄泉川「褒めても何も出ないじゃんよ。そいじゃあここから巻きに入るじゃん」
黄泉川「具を抑えながらこうぐいーと」グイー
518: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:48:00.13 ID:rulaMS95o
黄泉川「最後に形を整えて完成! ね、簡単でしょ?」
結標「……見てる分には簡単に見えますけど」
打ち止め「こーいうのは実際やってみると思ったようにいかないことが多いよねー、ってミサカはミサカは一つあるあるを言ってみたり」
黄泉川「まあ初めは誰だってうまくいかないもんじゃん。失敗を恐れずチャレンジしていくことが大事じゃん!」
芳川「そうね。チャレンジ精神を持つことはいいことよ」グイー
打ち止め「ってあれ? ヨシカワいつの間に……?」
結標「よ、芳川さん上手ですね……」
芳川「まあ学生の頃愛穂と一緒に作ってたしね。私はコンビニとかのでいいって言ってのだけど」
一方通行「えっ、オマエらの学生時代ってコンビニある――」
ゴッ! ガッ!
芳川「ハッキリ言って巻き寿司なんて卵焼き作るより簡単よ? よっぽどなことしない限り不味くならないわけだし」
黄泉川「そうそう。それに材料もたくさんあるし、レッツチャレンジ!」
結標「……よし! いざ尋常に――」
打ち止め「勝負! ってミサカはミサカは強敵と相対する気分で巻き寿司作りに挑んでみたり!」
一方通行「……面倒臭せェ」ズキズキ
―――
――
―
519: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:49:14.86 ID:rulaMS95o
ボローン
打ち止め「うーん、やっぱりうまくいかないねー、ってミサカはミサカは腕を組んで考える素振りを見せてみたり」
結標「うまく形が整えられないわね。木工用ボンドでも使って固定させてみようかしら?」
一方通行「オマエ木工用ボンドの注意書きを読んでみろよ。出来れば二十回くらい」
黄泉川「頑張れー、今日の晩メシはそのまま自分が作ったものになるからー」
芳川「あんまり作りすぎるとすごい量の夕食になりそうね」
一方通行「地獄絵図になりそォだな」
結標「ところで貴方は巻き寿司作らないの? 何もしてないように見えるけど」
一方通行「あァ? 逆にこンなモン何個も作るモンじゃねェだろ」
打ち止め「? どういうこと?」
一方通行「一個作れば十分ってことだ」スッ
結標「なっ、その完璧な巻き寿司貴方が作ったの!?」
打ち止め「す、すごい! ヨミカワたちに引けをとらないくらいの完成度だ! ってミサカはミサカは驚愕してみたり」
一方通行「やり方を一回見れば余裕で作れンだろォが」
芳川「さすがは第一位のレベル5なだけあるわね。キミって本気を出せば大抵のことはできるよね? 面倒だから本気を出さないだけで」
一方通行「そりゃそォだ。俺を誰だと思ってやがる」
打ち止め「おおっー! ってミサカはミサカは賛美の拍手を送ってみたり!」パチパチパチ
結標「……ねえ一方通行?」
一方通行「あァ?」
結標「貴方能力使ったでしょ?」
一方通行「…………何を証拠にそンなこと言ってやがンだ?」
結標「だって貴方能力使わないとまともに両手使えないでしょ?」
一方通行「…………」
結標「…………」
一方通行「たいした推理だ結標名探偵」
結標「そんなことだろうとは思ってたわよ」
―――
――
―
520: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:50:59.49 ID:rulaMS95o
同日 19:00
-黄泉川家・食卓-
打ち止め「よっしゃー! やっと綺麗に巻けたぜー! ってミサカはミサカは完成品を掲げながら喜びに浸ってみたり!」
結標「やったわ! ボンドがなくても固まったわ!」
黄泉川「よし、二人ともが完成したし、時間もいい頃だからメシの時間とするじゃん」
芳川「ようやく終わったのね。あまりに暇すぎてマインスイーパーの上級を三回もクリアしてしまったわ」カチカチ
一方通行「…………Zzz」
芳川「この子にいたっては昼寝をしているわね」
結標「下手すれば本眠に入ってしまいそうな時間ですよね」
打ち止め「おおーい! 晩ご飯の時間だよー! ってミサカはミサカは耳元に呼びかけてみたり」
一方通行「…………おォ、やっと終わったか。ふわァ……」
結標「……珍しくすぐに起きたわね」
芳川「まだ眠りが浅かったのでしょ」
黄泉川「じゃあ一方通行も起きたことだし、さっそく恵方巻といこうじゃん!」
結標「恵方巻って決まった方向に向かって食べるんですよね、たしか?」
黄泉川「そうじゃん。ちなみに今年は南南東じゃん」
一方通行「南南東…………あァ、あの異様な儀式はそォいうことだったのか」
打ち止め「どうかしたの? ってミサカはミサカは小首を傾げてみる」
一方通行「何でもねェ」
521: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/05/25(土) 17:52:22.33 ID:rulaMS95o
黄泉川「ちなみに恵方巻は一口で、それも無言で願いを思い浮かべながら食べるじゃん」
打ち止め「ひっ、一口……、ミサカにはちょっときついかも、ってミサカはミサカは巨大な恵方巻を前に愕然としてみたり」
芳川「間違ってるわよ愛穂。あくまでお願い事をしているときだけ咥えていればいいだけで、別に一口で食べろってわけじゃないわ」
黄泉川「ありゃ? そーだったけ?」
芳川「そうよ。だから極端に言えば一口かじったら、あとは輪切りにして食べたところで誰も怒らないわ」
一方通行「そもそもよォ、この科学の街学園都市で縁起がいいとか言ってる時点でおかしいだろ」
結標「別にいいじゃない。おみくじや占いみたいなものでしょ?」
一方通行「面倒臭せェ、こンなモン胃に入っちまえば全部一緒だろォが、ン」ガジッ
打ち止め「あー、すぐにかじっちゃった。願い事をしないなんてもったいないねー、ってミサカはミサカは哀れみの視線を送ってみたり」
一方通行「どォでもイイだろォがそンなモン」モグモグ
芳川「でもちゃっかり南南東には向いているツンデレ一方通行でした」
一方通行「……たまたまだ」
黄泉川「じゃあ私らもいただくとするじゃん、ん」パク
芳川「そうね」パク
結標「いただきまーす」パク
打ち止め「やっぱり結構おっきいかも、ってミサカはミサカははむっ」パク
一方通行「…………」モグモグ
青ピ『女の子が、大きくてぶっとい黒光りしたものを口に咥えているんやで!?』
一方通行「…………」
黄泉川「…………」ガジガジ
芳川「…………」マグマグ
結標「…………」パクパク
打ち止め「…………」ハムハム
一方通行「…………ハァ、くっだらねェ」ガジッ
――――
534: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:08:50.66 ID:qApZSdNAo
19.学内ラジオ
February First Tuesday 12:29
-とある高校・放送室-
部員『──放送開始前三十秒前でーす!』
一方通行「…………」
部長「そんなに緊張しなくてもいいよー、肩の力抜いてリラックスリラックスー」
一方通行「……あ、あァ」
部員「十秒前でーす!」
一方通行(…………どォして)
部長「じゃ、マイクスイッチ入れて」カチ
一方通行(……どォして)
部員「5、4、3……」
部長「…………」スゥ
部長『とある高校の放送局ー!』
タッタッタララー♪
一方通行(どォしてこォなった……)
───
──
─
535: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:10:19.01 ID:qApZSdNAo
~一週間前の昼休み・回想~
部長『──はい、『とある高校の放送局』。どうやら終わりの時間が近付いてきたようです』
部長『本日はお忙しい中ありがとうございました雲川先輩』
雲川『こちらこそ。大変貴重な時間だったよ。お昼休みをゆっくり過ごせないのは難点だったけど』
青ピ「はい! ストレートキター!」
土御門「ふっ、甘いぜ! こっちはフルハウスだにゃー」
青ピ「な、何やて!? また土御門君の勝ちかいな」
土御門「まだカミやんがいるからわからないぜい。まぁ、でも……」
上条「…………」
青ピ「聞かなくてもわかるんやけどなー」
上条「……や、やった……!」
土御門「何?」
青ピ「ま、まさかつっちーより強い手札が……!」
上条「や、やっとカードが揃った!」
土御門「…………は?」
上条「見ろよこれ! 近年稀に見る2のワンペアだぞ!?」
青ピ「……たしかに見事なワンペアやなぁ、カミやんが揃えてるの初めて見るでー」
土御門「にゃー、カミやんがブタ以外なんて信じられないにゃー」
姫神「逆にこれまでカードが一枚も揃わない方が。確率的には難しい」
536: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:12:31.69 ID:qApZSdNAo
部長『では次回のゲストなのですが、雲川先輩お願いします!』
雲川『たしか友人や知り合いに電話をかければよかったか?』
部長『はい! その相手が次回のゲストとなります!』
一方通行「……ずっと疑問に思ってたンだけどよォ」
結標「何?」
一方通行「このラジオまがいの電話相手がゲストっつゥのはどォして成立できてンだろォな」
結標「どうして、って……別におかしくはないんじゃない?」
一方通行「こォいうのに出たがらねェヤツだっていンだろォが。電話先のヤツがそォいうヤツだったらどォすンだよ?」
結標「言われてみれば……」
吹寄「それなら問題ないわよ」
一方通行「どォいうことだ?」
吹寄「一応呼ぶのは基本友達とかになるから、事前に許可とかは取ってると思うわ」
結標「たしかにそうよね。ゲストとして出るのがわかってるのだから、あらかじめ『次はお前に電話かけるわ』みたいな会話があってもおかしくはないわ」
一方通行「ちなみにイタズラ目的でまったく聞かされてねェヤツがゲストになった場合は?」
吹寄「さあ? そんな話聞いたことないからわからないわ。まあでも、一度呼ばれたからにはたぶん強制参加よ」
一方通行「当人からしたら、迷惑極まりねェ話だなァ」
雲川『……ならば私は彼に次のゲストをお願いしようと思うのだけど』
部長『はい! では、お電話をお願いします!』
一方通行「大体、何でこの学校はこンなよくわかンねェラジオ紛いの放送を毎週やってンだァ?」
結標「たしかこの学校ってスタンダードを極めるのが方針だったわよね? パンフに書いてあったわ」
吹寄「よく知らないけど、そのスタンダードっていうのが嫌な学生たちが始めたことらしいわ。ラジオを放送する学校なんて珍しいでしょ?」
一方通行「初めからこの学校に入るなよ、そのラジオ創設者ども」
吹寄「まあそれなりに好評らしいし、先生たちついで連絡用に使えるから便利に思っているらしいし」
結標「そういえばよく最後あたりに連絡があるわね。避難訓練とかの」
一方通行「チッ、まァ今さら俺には関係ねェことだがな。ラジオなンざくだら――」
ピピピピッ! ピピピピッ!
一方通行「あン?」
吹寄「電話の着信音? 誰の?」
一方通行「俺のだ」スッ
結標「相変わらず味気のない着信音ね」
一方通行「うっせェよ……あァ? 非通知だァ?」
結標「非通知? どうしてそんな……」
一方通行「知るかよ。……もしもし?」ピッ
??『……やあ一方通行君。初めましてかな?』
一方通行「(女の声……?)誰だ?」
537: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:13:51.85 ID:qApZSdNAo
??『そう身構えなくてもいいと思うけど。私は君が思っているようなものではないよ』
一方通行「自分の名前も名乗らねェヤツからの非通知電話だ。怪しまねェわけねェだろォが」
??『私が誰、かという疑問はすぐに君の中から消え去ると思うけど……本当にすぐ、にな?』
一方通行「……一体何を――」
結標「ちょ、ちょっと一方通行ぁ!」
一方通行「あァ? 何だよ、今通話中だ――」
結標「あ、貴方の声が……」
一方通行「ハァ? 俺の声がどォ――」
一方通行(ラジオ)『――したァ?』
一方通行「ッ!?」
??『そろそろわかった? 君の電話相手が誰なのかを』
一方通行「…………雲川、 芹亜」
雲川『そう。私は泣く子も黙る雲川先輩だけど』
一方通行「……何の用かな雲川クゥン? わざわざこンなふざけた電話かけてきやがって……」
雲川『さっき言ったように私は君にとっての先輩、上級生なのだけど。その呼び方は少しイラつくものがあるな』
一方通行「チッ、何の用ですかァ? 雲川センパイ」
雲川『私が今君に電話をするということ、それは一体どういう意味なのか。君ならすぐにわかると思うけど』
一方通行「…………まさか」
雲川『そう、そのまさかだ……ではな』
一方通行「ちょ、待っ――」
部長『もしもし一方通行君? どうもこんにちはー!』
一方通行「…………」
部長『というわけで、来週のゲストは君に選ばれました! おめでとー!』
一方通行「いや、ちょ、俺ちょっと用事があるンでェ……」
部長『ちなみに拒否権はありません! じゃあ来週来てくれるかなー?』
一方通行「…………」
一方通行「つゥか、強制ならその質問意味ねェじゃねェかァああああああああああああああああああああッ!!」
───
──
─
538: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:15:25.10 ID:qApZSdNAo
同日 同時
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「……そろそろ始まる時間ね」
結標「うん。というか大丈夫かしらアイツ」
吹寄「まあ何とかなるんじゃない? たかが二十分のラジオだし」
結標「その二十分が長いと思うわ。彼にとって……」
姫神「たしかに初対面の人と一対一の会話は。かなりつらいものがある」
青ピ「たっだいまー!」
土御門「ふー、何とか間に合ったぜい」
上条「五百円玉落とした……不幸だ……」
結標「おかえりなさい三人とも」
吹寄「また上条はご飯を買えなかったたわけ?」
上条「いや、何とか焼きそばパン一つは買えたんだ。でも勘定のときに財布から……五百玉が……こう、人混みの方へと……」
姫神「ご愁傷様」
土御門「まあいつものことだけどにゃー」
青ピ「それより今ご愁傷様って言ってやらんといかんのはアクセラちゃんのほうやろ」
吹寄「少し疑問に思ったんだけど、雲川先輩とアクセラは一体どんな関係なんだろ?」
姫神「会話の内容を聞く限り。アクセラ君はこのことを知らないみたいだった」
上条「このことってラジオのこと出演のことか?」
姫神「そう」
結標「そう言えば一方通行が携帯に非通知で電話がかかってきた、って言ってたわ」
青ピ「ちゅーことは雲川先輩が一方的にアクセラちゃんの番号知っとったってことになるんかな?」
吹寄「あの反応ならそうかも知れないわね。何でここで電話がかかってくるんだ、って感じだったし」
結標「一体何者なの? その雲川先輩っていう人」
青ピ「さあ? 美人で巨 で黒髪ロングが似合うクールでミステリアスな先輩、ってことは知っとるけど……」
上条「そーいや俺、よくあの人と話したりするんだけどクラスだとか学年だとか、そういうこと一切知らねーんだよな」
青ピ「ほぉ、さすがカミやんやな。クラスの女子だけでなく巨 センパイまで手を広げていたなんて……あー憎らしい」
上条「何言ってんだお前は?」
キンコンカンコーン♪
土御門「おっ、どうやら始まったみたいだぜい。例のラジオが」
539: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:17:02.67 ID:qApZSdNAo
部長『とある高校の放送局ー!』
タッタッタララー♪
部長『どうもみなさんこんにちは! 今週も始まりましたとある高校の放送局!』
部長『本日もパーソナリティを勤めさせていただくのは、放送部部長、二年○組の××です!』
結標「まあとにかく、一方通行が放送部部長さんに変なこと言わないか心配だわ」
青ピ「むしろボクはガチガチに緊張して何も言えへんみたいな展開にならんか心配やけどな」
上条「緊張? あの一方通行がか? 想像できねーな」
結標「初対面の人との一対一の会話ができなくて、逃げ出したくなって私にテレポート要請してきたヤツよ? むしろ想像しやすいと思うけど」
姫神「そういえばそんなこともあった。一月くらい前のことだけど懐かしく感じる」
吹寄「たしか風斬さんと一緒の車だったのよね。隣同士で」
青ピ「たしかにあーいうタイプの娘との会話はキツイわなー。ボクでもちょっと手こずると思うでぇ」
上条「そうか? 別に普通に話せると思うけど……」
土御門「そりゃカミやんはそれなりに付き合いがあるからだろ? 初対面ってことを忘れちゃいけないぜい」
吹寄「まあでも、部長さんはラジオのパーソナリティをやっているのだからいわゆる話のプロ」
吹寄「初対面の人でも色々聞き出して会話に発展させていくのは容易だとは思うわ」
結標「でもそれってあくまで普通の人が相手に限る話よね?」
結標(人とのコミュニケーションが苦手な上に口が悪いし、問題をしでかさない可能性のほうが遥かに低いわよね……心配だわ)ハァ
部長『――さて、では早速本日のゲストを紹介しましょう!』
部長『七人しかいない超能力者(レベル5)の中でなんと第一位の高位能力者!』
部長『一年七組所属の一方通行君です!』
一方通行『…………』
部長『…………』
一方通行『…………』
部長『(…………ちょっと一方通行君! 挨拶挨拶!)』ボソ
一方通行『……あ、ど、どォも。い、一年七組の一方通行です』
青ピ「あはははっ、放送事故かと思うたやん~~! 面白っ~~!」
結標「…………はぁ、やっぱり」
上条「随分と緊張してるみてーだな」
吹寄「そういえばアクセラって、転入してきたときの自己紹介も下手糞だったっけね」
土御門「あー、姉さんに言われるまでずっと黙ってたもんな」
540: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:18:57.07 ID:qApZSdNAo
部長『今日はゲストの一方通行君と一緒にやっていきたいと思います』
一方通行『…………』
部長『よろしくお願いしますね、一方通行君』
一方通行『…………』
部長『…………』
一方通行『…………』
部長『ではとある高校の放送局。始まり始まりー!』
タララララー♪
青ピ「普段は二人組で仲良くやってるラジオにゲストで来たラジオ慣れしていない人並みに喋らへんやん」
上条「下手したらそれ以上だろ」
吹寄「問題なのはこれが一対一のラジオってところなのよね」
結標「アイツにとって長い二十分間になりそうね……」
部長『改めてこんにちは! ××です!』
一方通行『……一方通行です』
部長『まず最初に一方通行君の紹介から』
部長『現在一年七組に所属している十六歳!』
部長『先ほど言ったように学園都市の中で七人しかいない超能力者(レベル5)の中のなんと第一位!』
部長『能力名はええと……お名前と同じ一方通行(アクセラレータ)です!』
部長『たしか一方通行君は去年の十一月ぐらいに転入してきた転入生でしたよね?』
一方通行『……あ、あァ』
部長『ズバリ聞きます! 高位能力者である君がわざわざこんな平々凡々な学校へ転入してきた理由は!?』
一方通行『……別に大した理由なンてねェよ。家から近かったから、と同レベルの理由だ』
部長『ということは別に理由はないということですか?』
一方通行『いや理由がねェわけじゃねェよ。ただ話すまでもねェだけだ』
部長『?』
姫神「やっとまともに会話した」
土御門「会話かどうか怪しいけどにゃー」
吹寄「あれじゃあ弾む会話も弾まないわね」
青ピ「てか、ほんま姉さんらはどーしてウチに転入してきたん? ずっと疑問に思ってたんやけど」
上条「たしかにそうだよな。お前らならもっと上の学校に行けるだろうに」
結標「一方通行の言ったとおり別にこれといった面白い理由なんてないわよ。ただ面倒見てくれてる黄泉川さんが勤務してる学校だから、って感じに……」
結標(まあ本当はいつの間にか勝手に入れられてたんだけど、そんなこと言うわけにもいかないわよね)
吹寄「へー、中途半端な転入にはそんなわけがあったのね」
姫神「それを言えばいいのに。なぜアクセラ君はあんなにことはを濁しているのだろう?」
結標「彼のことだから、単純に面倒臭いだけじゃないかしら?」
姫神「納得」
541: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:20:51.99 ID:qApZSdNAo
部長『──では軽くゲストの紹介が終わったところでメールを紹介しましょう!』
部長『『ハンドルネーム:小萌先生に罵られたい』さんですね。ありがとうございます!』
一方通行(コイツ青髪ピアスじゃね?)
部長『××さん、ゲストの一方通行さんこんにちは! はいこんにちはー!』
一方通行『…………』
部長『……今日のゲストの一方通行さんはレベル5の中でも第一位というわけですが』
部長『少し汚い話になるんですけど……ぶっちゃけ月の奨学金はどれだけもらっているんですか?』
部長『差しさわりのない程度に教えてください! 以上、雀の涙くらいしかもらえないレベル0からでした!』
部長『……はい、ということで月の奨学金ですね。どうですか一方通行君?』
一方通行『そンなモン気にしたことねェよ』
部長『ほほぉ? お金がありすぎてどうでもいいということでしょうか?』
一方通行『金なンてあってもたいした使い道がねェしな』
部長『その発言。おそらく全校生徒を敵に回す発言だと思うよ?』
一方通行『どォでもイイ……そォだ。どいつかは言えねェが他のレベル5の奨学金の額は知ってる』
部長『ホントですか! プライバシーに関わりますから、大体で教えてくれませんか?』
一方通行『そォだな……サラリーマンの年収を鼻で笑えるくれェにはもらってるな』
部長『金持ち爆発しろ!』
結標「…………」
姫神「もらってるの? 鼻で笑えるくらい」
結標「あ、あははー何を言ってるのかしら吹寄さん。別にあれ私のことを言っているとは限らな――」
吹寄「でも結標さんのくらいしか、アクセラは知りようがないんじゃない?」
結標「…………」
青ピ「姉さん姉さん! ボク今度出るアニメのブルーレイボックスがほちぃ!」
土御門「義妹へプレゼントするコスプレ衣装の制作費がほちぃ!」
吹寄「自分でバイトして買え!」ゴゥ
バキッ!
542: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:21:48.30 ID:qApZSdNAo
部長『続きまして『ハンドルネーム:カナミンちゃんは俺の嫁』さんからです、ありがとうございます!』
一方通行(コイツ青髪ピアスじゃね?)
部長『××さん、一方通行さんこんにちは! はいこんにちは!』
一方通行『…………』
部長『……一方通行さんはレベル5なのでテストとかでも結構高得点を取れるくらい勉強できそうですが』
部長『一方通行さんにとって、苦手な教科はありますか? よかったら教えてください』
部長『というわけで、苦手な教科はありますか?』
一方通行『……そォだな。国語とか英語はなぜだか知らねェが満点が取れねェ。そォいう意味ではその系統が苦手だな』
部長『文系の問題が苦手ってことですね? ということは理数系の問題は?』
一方通行『ここの学校レベルなら解き終わるのに十分もかからねェ。一瞬で満点だ』
部長『ほほぉ、すごいですねー。私も一度くらいは満点を取ってみたいですよ』
一方通行『ハァ? オマエ取ったことねェのか?』
部長『ええまあ、八十点くらいならありますけど……』
一方通行『あの程度の問題でそれくらいしか取れねェのかよ』
部長『……もしかして君ってこの学校の生徒たちに喧嘩を売りにここまで来てる?』
一方通行『来たくて来てるわけじゃねェからな』
青ピ「全校生徒に堂々と喧嘩を売る……さすがアクセラちゃんやで!」
土御門「生徒どころか教員にも思いっきり売ってるぜい!」
結標「この学校の中アイツの好感度だだ下がりしてそうね」
上条「このラジオに出て、ここまでイメージダウンを謀るヤツ始めてみた気がする」
土御門「もともとのイメージがどんなもんか知らないけどにゃー」
543: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:24:10.09 ID:qApZSdNAo
部長『……ではふつおたが終わったところで次のコーナーに行きましょう!』
部長『第一火曜日はこのコーナー!』
部長『能力判定検査いたしますっ(非公式)ー!』
一方通行『非公式って何だよ非公式って』
部長『学園都市では能力開発によって生まれるチカラ、要するに超能力が重要視されています』
部長『超能力とは時には手から火を出したり、時にはある場所からある場所までテレポートしたり、時には身体能力を高めたり、と様々です!』
部長『なのでどんなチカラが超能力として判定されるのかわかりません』
部長『ですから『あれ? これ実は超能力なんじゃね?』と思った特技などをリスナーさんにメールで送ってもらい』
部長『それを私たちが無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)までの六段階で勝手に査定し、それに名前を付けちゃうのがこのコーナー!』
一方通行『ちょっと何言ってンのかわからねェ』
部長『別に難しく考えなくてもいいですよ。ただのネタコーナーですし』
一方通行『…………』
部長『まずは前回の能力をおさらいしてみましょう!』
部長『『ハンドルネーム:ボブ・サック』さんの『速攻の虹色忍者』大能力者(レベル4)!』
一方通行『は?』
部長『『ハンドルネーム:トンコツラーメン』さんの『十秒の壁が厚い!!』異能力者(レベル2)!』
一方通行『何だって?』
部長『以上の二つが前回紹介した能力です!』
一方通行『これ能力名だったのかよ。一体何をどォしたらこンなクソみてェな名前が生まれンだよ』
部長『ちなみにどんな能力だったかはさっぱり覚えていません! 一ヶ月前だからしょうがないよね』
一方通行『オイふざけンな気になって授業中もおちおち寝られねェじゃねェか』
吹寄「……たしか一つ目のは折り紙で鶴を速く折れる能力だったっけ?」
姫神「違う。たしか手裏剣」
結標「ああ、だから名前に忍者って付いてるのね」
吹寄「二つ目のが全然思い出せないわ」
青ピ「名前からして百メートルを十秒で走ることができる能力やないかな?」
上条「たしかにすげーけど、この街じゃ微妙じゃね」
土御門「まあそーいう特技を募集するのがこのコーナーだしな」
吹寄「でもそんな能力じゃなかったような気がするのだけど」
結標「思い出せやすい能力名付いたことないわよねこのコーナー」
544: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:25:47.42 ID:qApZSdNAo
部長『ところで一方通行君は何か能力はありますか?』
一方通行『ハァ? 何言ってンだオマエ? 超能力者(レベル5)なンだから能力がねェとおかしいだろ』
部長『そういうわけじゃなくて特技です特技』
一方通行『特技だァ? ンなモン考えたこともねェよ』
部長『何かないんですか? 例えば体が柔らかいとか……』
一方通行『ねェよ、そンなクソみてェ特技』
部長『……何かつまんないですねー』ハァ
一方通行『それがゲストに対する態度かクソパーソナリティー』
部長『やれやれ、しょうがないですねー。じゃあ君の持っている能力とかで構いませんよ。一方通行(アクセラレータ)って一体どんなチカラなんですか?』
一方通行『どォして特技がねェだけでこンな扱いを受けなきゃいけねェンですかねェ』ピキピキ
部長『まあまあ落ち着いてください。別に特技なんてなくても大丈夫ですって。だからそんなに自分を責めないで』
一方通行『俺がムカついてンのはオマエという存在そのものについてなンだけどよォ』
部長『……じゃあ時間も押してますしコーナーを進めましょう! まずは『ハンドルネーム:イケメガネ』さんです、ありがとうございます!』
一方通行『華麗にスルーしてくれてンじゃねェぞゴルァ』
部長『私の能力は授業中に暇な時にやるペン回しです! 最初は何気なくやってみてたのですが、今は何か神がかってます!』
部長『クラスメイトたちに見せると『お前の手、どうなってんの?』とドン引きされるほどです! こんな能力ですが能力判定おねがいします!』
部長『と、こんな感じですね。どー思いますか一方通行君?』
一方通行『……チッ、どォでもイイ』
部長『ペン回しですかー、私も結構やりますよ下手糞ですけど。よく床に落っことして先生に怒られますよあはは』
一方通行『真面目に授業受けろよ。俺が言うことじゃねェだろォがな』
部長『ちなみに一方通行君はこのペン回しみたいな授業中とかによくやることはありますか?』
一方通行『あァ? ああ、授業中は基本仮眠を取ってるか、寝てるかのどっちかだ』
部長『……ん? 仮眠を取ってると寝てる……ですか? 一体どう違うんでしょうか?』
一方通行『仮眠はわずかに意識は残して寝る。だから一応は教師の話を聞いてることになるわけだ。反対に寝るっつゥのは本格的に寝てる』
部長『え、そんなこと可能なんですか?』
一方通行『俺を誰だと思ってやがる? 学園都市最強のレベル5だぞ?』
部長『……さすがレベル5ですね! パネェです!』
結標「……そういえば寝てるわね、結構な頻度で」
姫神「小萌先生がよく涙目になってる」
青ピ「涙目の小萌センセかあいい!」
上条「俺も授業は結構寝ちまうなー」
土御門「授業中はメイドさん本を読むのに限るぜい!」
吹寄「どうでもいいけど、きちんと授業受けなさいよ貴様ら」
545: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:28:12.95 ID:qApZSdNAo
部長『ところでこのイケメガネさんに能力名とレベルを付けて上げなきゃなんですけど』
一方通行『あァ? 何で俺のほうを見やがるンだ?』
部長『まずは名前を付けましょう。何かいい案ありませんか?』
一方通行『ハァ? ンなモン俺に聞いてどォする?』
部長『一方通行君こういうの考えるの得意そうじゃないですか! だって『一方通行(アクセラレータ)』なんてかっこいい能力名を自分でつけてるくらいですから!』
一方通行『ッ!? オマエ、どォしてそれを知っていやがる……?』
部長『だってこういうあまり聞かないような能力名って自分で決めてるやつなんでしょ? 先生から聞いたことありますよ』
一方通行『ぐっ……ふざけやがって……』
部長『ほらほら、じゃあちゃっちゃと名前付けちゃってくださいよ。一方通行みたいなかっこいい名前を』ニヤニヤ
一方通行(このクソアマァ、人ォおちょくって楽しンでやがるな……)
一方通行『……そォいうオマエは何かイイ案ねェのかよ? オマエのほうが名前を付けた経験あンだろォが』
部長『えっ、私ですか? そーですねー、んー…………あっ!』
一方通行『何か思い浮かンだのか?』
部長『『くるくるペンシル』ってどうでしょうか!?』
一方通行『ハァ?』
部長『我ながらいい名前だと思うんですが……!』ドヤ
一方通行(だ、ダセェ……、そのままな上にものすごくダセェ……)
一方通行(そもそも読み方に擬音入れてる時点でヤベェって気付けよ。どォしてコイツはこンなにドヤ顔でいられンだ?)
一方通行(コイツ……もしかしなくても馬鹿か……? こンなのがよくラジオのパーソナリティーなンて務めることが出来るなァ……)
部長『ん? 黙りこくっちゃってどうかしました?』
一方通行『……いや、あまり素晴らしい名前だったモンでなァ。感動的過ぎて絶句しちまった』
部長『本当ですか! ならこのイケメガネさんの能力名はくるくるペンシルで決定ですね!』
部長『じゃあ何かペン回しが神がかってるようなのでレベルは超能力者(レベル5)にしましょう!』
一方通行『は?』
部長『じゃあイケメガネさんの能力は、『くるくるペンシル』超能力者(レベル5)に決定です! おめでとうございます!』ドンドンパフパフ
一方通行(何か知らねェが超能力者(レベル5)また一人増えた……)
吹寄「……相変わらずこの部長さんのネーミングセンスは壊滅的ね」
姫神「ゲストが名前を考えられる人じゃないと。必ずひどい名前になる」
上条「……能力名といえば結標? お前の『座標移動(ムーブポイント)』は自分で付けた名前なのか?」
結標「えっ? さ、さあ……記憶がないからわからないわ」
青ピ「そーいや姉さんの能力名って変わってるよなー、普通は『空間移動能力者(テレポーター)』やし」
土御門「カミやんも変わってるよなー、無能力者なのに『幻想殺し(イマジンブレイカー)』って能力名あるし」
上条「えっ、いや、そりゃちゃんと俺の右手にチカラあるし……」
青ピ「ん? あれ? もしかしてカミやんって無能力者じゃあらへんのちゃうん?」
吹寄「言われてみればそうね。能力を消す能力なんてよくよく考えたら普通に能力だし」
土御門「それなのに何で無能力者(レベル0)のままなんだろうなー?」ニヤニヤ
上条「……んなもんこっちが聞きてえよ! つーか誰か俺の右手を能力と認めてくれよ! せめて低能力者(レベル1)判定ぐらいちょうだいよ! 奨学金増額してくれよ!」ブワッ
姫神(……実は私も無能力者(レベル0)の能力持ちだけど。言ったら面倒臭いことになりそうだから黙ってよう)
546: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:30:36.80 ID:qApZSdNAo
部長『――さあて、お次の方は……へっ? 時間がないから切り上げろ? ええー、そんなー! まだ一つしかお便り読めてませんよー!』
一方通行(助かった……よォやくこのクソみてェなラジオからおさらばできる)
部長『……まあ、しょうがないですね。能力判定検査いたしますっ(非公式)のコーナーでした!』
一方通行『だから非公式って何だよ』
部長『ではお知らせです!』
部長『来週の水曜日からテスト週間が始まります。ですので部活動はお休みとなります』
部長『ちなみにこのラジオはテスト週間中でも流れますので心配しないでください。えっ? お前らちゃんと勉強しろって? テストなど知らんなぁ!』
部長『まあテストも大事ですが、来週は一大イベント、バレンタインデーがあります!』
部長『それについて生活指導の先生から一言もらっています。『お菓子を持ってくるのはいいが、学校で食い散らかすのはやめてくれ』だそうです』
部長『みなさんお菓子もらってはしゃいでも、食べるのは帰宅してからにしてくださいね』
部長『以上、お知らせでした』
部長『――はい、『とある高校の放送局』。そろそろ終わりの時間ですね!』
部長『さて、本日はありがとうございました一方通行君。初ラジオはどうでしたでしょうか?』
一方通行『…………』
部長『……あれ? 一方通行君?』
一方通行『…………Zzz』
部長『ちょっと一方通行君!? 何で放送中に寝てるの!? 別にお知らせそんなに長くなったよねーおい!』
一方通行『……あァ? ンだよオマエ?』
部長『それはこっちのセリフだこの野郎。ラジオこれで終わりますので感想聞いてんですよ』
一方通行『感想だァ? そォだな……面倒臭かったです』
部長『そーでしたかー! 楽しめてもらえて何よりです!』
一方通行『オイお前の耳腐ってンじゃねェか?』
部長『いやー本当に楽しかったですよこっちは。また来てくださいね一方通行君』
一方通行『来ねェよ。つゥか、もォ二度と呼ぶンじゃねェぞ』
部長『それは保証できませんねー、ゲストを決めるのはその日のゲストであって私じゃありませんから』
一方通行『チッ……』
部長『そういえば、先ほどお知らせでもあったように来週はバレンタイデーですね!』
一方通行『……は? 今何つった?』
部長『何って……バレンタインデーって言ったんですけど……?』
一方通行『バレンタイン……だと……?』
部長『ところで一方通行君はバレンタインデーにチョコをもらう予定はあるのかなー?』
一方通行『……! ン、ンなモンねェ……と思う、そォ信じたい……』
部長『? もしかしてあげる予定とかもあったりするのかなー?』
一方通行『何で男の俺がチョコなンざやらなきゃなンねェンだよ』
部長『いやー今逆チョコとか流行ってるみたいですし……』
一方通行『そンなくだらねェ流行になンて俺が乗るわけねェだろォが』
部長『ないのかー、ちぇーつまんないのー』
一方通行『ぶっ殺すぞオマエ』
547: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:31:37.09 ID:qApZSdNAo
部長『それじゃあ恒例のお次のゲストを電話で呼んでください!』
一方通行『ゲスト?』
部長『はい。携帯電話でお友達にTEL! その電話相手が来週のゲストです!』
一方通行(あ、ヤベェ、誰に電話するか決めンの忘れてた)
部長『……一方通行君?』
一方通行『お、おォ待ってろ』ピッ
一方通行(……ま、面倒だからコイツでいいか)ピッピッ
プルルルルルルル、プルルルルルル
吹寄「……一体アクセラは誰をゲストとして呼ぶんだろ……?」
姫神「もし呼ばれたら……嫌だな」
青ピ「あーどーしよー! ほんま呼ばれたら困っちゃうなーマジで」
結標「とか言いながら呼んで欲しそうね貴方」
土御門「ま、呼ぶとしたらこの中の六人以外いないんじゃないかにゃー?」
上条「ま、無難に吹寄辺りじゃねえか? 一番こういうのに慣れてそうだし」
吹寄「な、何を言っているのよ貴様! 何であたしが慣れてるって決め付けているのよ!」
上条「い、いや吹寄って大覇星祭の実行委員とかやってたし……」
吹寄「そんなの関係ないわよ! 勝手に決め付けてないで欲しいわ!」
上条「……何でそんなに怒ってらっしゃるのかわかりませんがすみません」
土御門「ま、ここで何を言ってもゲストを決めるのはアクセラちゃんだぜい。大人しく受け入れるにゃー」
姫神「ちなみに土御門君は出たいの? ラジオ」
土御門「正直面倒臭いにゃー! 昼休みくらいゆっくりしたいぜよ」
上条「俺もゆっくりしてーよ。ただでさえ昼休みの購買での死闘のあとだしな」
上条「ラジオなんて出てたらまともに休めねーよ。そんなのは絶対ごめんだぜ」
青ピ「あ、それフラ――」
ブーブー、ブーブー!
上条「ん、電話? 一体誰だ?」ピッ
結標「あ」
548: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/02(日) 17:32:49.23 ID:qApZSdNAo
上条「もしもし?」
一方通行『よォ三下ァ?』
上条「」
ゲスト
一方通行『つゥわけで来週の犠牲者はオマエだ。よかったな』
上条「」
一方通行『じゃあ電話代わるぞ?』
上条「」
部長『もしもし上条君? こんにちはー!』
上条「」
部長『というわけで、来週のゲストは君に選ばれました! おめでとー!』
上条「」
部長『じゃ、来週は来てくれるかなー?』
上条「……ふ、不幸だァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
吹寄「うるさい!」
土御門「……やっぱりこういう展開になっちゃったかにゃー」
姫神「まあ。なんとなくは読めてた」
青ピ「よし! 次はボクが出演させてもらえるようにカミやんに頼んでおこう!」
結標「やっぱり青髪君は出たかったのね、あはは」
結標(…………まあ、それより)
結標(……バレンタイン、か……)
――――
563: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:45:30.65 ID:/LxwAGo5o
20.バレンタイン前日
February 13,Wednesday 15:00 ~放課後~
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「……さて、いよいよ明日はバレンタインデーよ」
姫神「…………」
結標「…………」ゴクリ
吹寄「バレンタインデーは恋愛成就させるためには持ってこいのイベント!」
吹寄「ここで一気に距離を縮められれば……恋が実るなんてことがあれば御の字よ!」
吹寄「でもそのためにはそれ相応の準備が必要なのよ!」
結標「何だかえらく張り切っているわね吹寄さん」
吹寄「そりゃまあサポートするって決めたんだから、成功するまで全力でサポートするに決まってるじゃない」
姫神「……吹寄さん。私は……?」
吹寄「大丈夫よ! 倍率は高いかもしれないけど、 何だかんだ言ってクラスで一番あいつと交流してるのは姫神さんだもの!」
姫神(……吹寄さん。インデックスのこと絶対に忘れてると思う)
結標「で、私たちは一体どうすればいいのかしら?」
吹寄「ターゲットに渡すチョコレートを用意しましょう!」
結標「そうね。それがないと話ならないわよね、バレンタインなのだから」
吹寄「別にチョコレートじゃなくてもいいけど、まあシンプルイズベスト、無難でいいと思うわ」
結標「それじゃあ早速デパートにでも行って良さそうなものでも探しに行きましょうか?」
吹寄「ん? 何でデパート?」
結標「いや、デパートならちょっと高級な感じのチョコレート売ってそうでしょ?」
吹寄「……まさか既製品で済ますつもりじゃないでしょうね?」
結標「えっ、駄目なの?」
姫神「…………」
吹寄「……はぁ、まあ駄目じゃあないけど……ただ」
564: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:47:03.19 ID:/LxwAGo5o
吹寄「たぶんだけど、相手にそのまま既製品を渡したところで気持ちは伝わりにくいと思うわ」
結標「……って、ことは?」
姫神「必然的に。手作りが好ましいことになる」
吹寄「というわけで今から作りましょう! アクセラに渡す手作りチョコレートを!」
結標「」
吹寄「どうかした結標さん?」
結標「……や」
姫神「矢?」
結標「やっぱりこういう展開かあああああああああああああああああああっ!!」
姫神「!?」ビク
吹寄「む、結標さん!?」
デビルコック
結標「て、手作りなんて駄目よ! だって私は野菜を炒めるだけで未元物質を生み出すことができる死の生産者なのよ!?」
姫神「うん。知ってる」
結標「ぐはっ、こ、こう当たり前のように返されたら結構傷付くわ……」
吹寄「大丈夫! そこまで自分を卑下する必要はないわ。結標さんはあくまで基本がわかってないだけよ! 決して料理音痴ってわけじゃないわ!」
結標「吹寄さん……」
吹寄「というわけで、早速材料を買い出しに行きましょ! バレンタインまで時間がないわ!」
結標「わ、わかったわ!」
姫神「……あの。吹寄さん」
吹寄「何かしら?」
姫神「今から結標さんに作り方を教えながら明日のチョコレートを作る。ってことでいい?」
吹寄「そうだけど、それがどうかした?」
姫神「わざわざ前日に教えなくても。もっと前から準備に取りかかっててもよかったんじゃ……?」
吹寄「…………」
結標「…………」
姫神「…………」
吹寄「……姫神さん」
姫神「何?」
565: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:48:09.36 ID:/LxwAGo5o
吹寄「人間っていうのはギリギリになればなるほど大きな力を発揮できるのよ!」
姫神「今まで忘れていたのならそう言えばいい」
吹寄「しょ、しょうがないのよ! なぜだかわからないけど今の今まで忘れていたのだから!」
姫神「大宇宙の意志的な何かを感じる」
結標「な、何だかよくわからないけどすごそうね……!」
吹寄「面目ない……」
結標「だ、大丈夫よ吹寄さん。チョコレートなんて作るのそんなに時間はかからないでしょ……たぶん」
姫神「作るものによって違ってくる。まあ簡単に作れるものを選べばいい」
結標「そうね。簡単な方がこっちも大助かりだし」
姫神「でも時間がないのは事実。動くのは早い方がいい」
結標「じゃあ今すぐ出ましょ? 材料の買い出しに」
吹寄「……わかったわ。いつまでも失敗を引きずっててもしょがないものね!」
姫神「そう。そもそも大宇宙の意志的な何かなのだからしょうがない」
結標「で、材料はどこに買いに行けばいいのかしら? やっぱりスーパーとか?」
吹寄「スーパーでも別に構わないけど、正直良いものを作ろうと思ったら専門店とかに行った方がいいわよ?」
結標「うーむ、だったらスーパーとかでいいかもしれないわね。こんな壊滅的な料理センスで高級品だなんて猫に小判のレベルを超えてるわ」
姫神「やはり練習するのだから。業務用のものを買って。たくさん練習した方がいいと思う」
結標「うん、私もそれが良いと思う。その方が安くつきそうだし」
吹寄「だったらここから少し歩いたところにあるスーパーにでも行きましょう。あそこは結構安いから」
結標「わかったわ」
566: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:50:04.12 ID:/LxwAGo5o
吹寄「あっ、でも飾り付けとかするのならやっぱり専門店とか行ったほうがいいかも」
結標「飾り付けか……その発想はなかったわ」
吹寄「別に業務用のチョコレートくらいなら、少し割高にはなるけど専門店のほうでも売ってるだろうし……どうする?」
結標「うーん……」
姫神「そこまで難しく考えることはない。単純にチョコレートを溶かして固めるだけなら。そういう店にわざわざ出向く必要もない」
結標「反対にいろいろデコレーションするのなら専門店とかに行った方がいいってわけね」
吹寄「まあ、あくまで作るものが決まっていたらの話だけどね」
姫神「何を作るか決めてる?」
結標「んー、正直どれが作れて、どれが作れないものなのかわからないのよね」
姫神「つまり。とくに何を作るかは決めてないってこと?」
結標「まあ……」
吹寄「だったら専門店とかに行った方が良いと思う。そこなら詳しいレシピ本とか売ってると思うわ」
吹寄「それにもしスーパーとかに行って本格的な飾りが必要になったら、結局そういう店に行かないといけないわけだし」
結標「……そうね。だったら専門店に行きましょ! 猫に小判とか言ってる場合じゃないわ」
姫神「通学路の少し遠回りに行ったところに一軒あるはず。そう時間はかからない」
吹寄「よし! じゃあ出発しましょ!」
姫神「うん」
結標(……ふー、て、手作りチョコレートか……なんか緊張するなぁ)
姫神「……そういえば」
吹寄「どうかした姫神さん?」
姫神「結標さんって……」
結標「……私がどうかした?」
姫神「今さらだけど。結標さんはサラリーマンの年収を鼻で笑えるくらいお金持っているのだから。別に安いとか考えなくても良いんじゃ……?」
結標「…………」
吹寄「…………」
姫神「…………」
結標「い、いやーまだレベル4の時の感覚が残ってて……」
吹寄「それでも十分お金持ちじゃない」
───
──
─
567: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:52:06.60 ID:/LxwAGo5o
同日 15:20
-第七学区・とある公園-
一方通行「…………」
ピッ、ガチャコン!
一方通行「…………」スッ
一方通行「…………」ガチャリガチャリ
一方通行「…………」ストッ←ベンチに座る
一方通行「…………はァ」
一方通行「……バレンタイン、か」
一方通行(節分という風習を知らなかった俺でも、さすがにバレンタインぐらいはわかった)
一方通行(昔、十字教のとある司祭が死刑された日であり、向こうじゃ恋人やら親しい人やらに贈り物をする日)
一方通行(日本じゃ女が好きな異性にチョコレートを送るっつゥことになっている)
一方通行(正直馬鹿どもいくらハシャいだところで俺には関係ねェ、何も変わらねェただの平日だと、以前までの俺はそォ思ってた)
一方通行(だが今は違う。ある一つの懸念材料が俺の目の前に現れたからだ)
一方通行(結標淡希。八人目の超能力者(レベル5)であり、俺と同じ家に居候している同居人)
一方通行(同じところに住ンでいるせいか、俺のことをやけに気にかけやがる口うるせェ野郎だ)
一方通行(……おそらくアイツは明日、確実に俺へチョコレートを渡すだろう)
一方通行(別にアイツが俺に好意を抱いているなンて勘違いも華々しい妄言を吐くつもりはさらさらねェ)
一方通行(だがアイツが確実にこのバレンタインの波に乗る、そォ思える心当たりが俺にはあった)
一方通行(結標淡希は……『イベントならとりあえず参加しとこ脳』だ)
一方通行(アイツには今記憶喪失で思い出というものがあまりない)
一方通行(だからかヤツは思い出作りに対しては積極的に、熱心に行動するよォになった)
一方通行(まァ、半分俺のせいみてェなモンだけどな……)
一方通行(つまり、そンなヤツがこのバレンタインデーという一年間の中でも恐らくトップクラスに騒がれるイベントに参加しないわけがない)
一方通行(物事には熱心に取り組むンだから、必然的には用意されるチョコレートなどの菓子類は確実に手作りだろう)
一方通行(殺人級の料理を平然と行うヤツが作ったモンだ。確実に象一頭は容易に潰すくれェの兵器になってるに違いねェ)
一方通行(そンなモン食ったら、いくら学園都市最強の超能力者(レベル5)の俺でも瀕死、最悪死ぬ)
一方通行(今の内に遺言と遺産分配やっといた方がイイか? 俺の財産はクソガキにこれから必要になるだろォ金に全部充てる、みてェに)
一方通行(…………)
一方通行(馬鹿馬鹿しい。何で俺がンなことしなきゃいけねェンだ?)
一方通行(あァクソ、何だか面倒臭くなってきた……)
一方通行「……もォどォにでもなれってンだ」ゴロン
―――
――
―
568: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:54:04.17 ID:/LxwAGo5o
同日 15:30
-第七学区・とあるチョコレート専門店-
ワイワイガヤガヤ
吹寄「やっぱり日が日だから混んでるわね」
結標「……何かみんな既製品の高そうなチョコ買ってるように見えるんだけど」
姫神「ほんとだ」
吹寄「あれはたぶん義理とかそういう類のものよ。さすがに義理を手作りとかは、本命の余り物とか以外そんなないと思うし」
吹寄「まあ、料理とかができない人は、既製品の値段を上げて本命の相手にアピールするんじゃないかしら?」
姫神「そもそも本命の人の分は。手作りする人ならもうとっくに作ってるだろうし」
結標「……や、やっぱり私も既製品にした方がいいかしら?」
吹寄「駄目よ! ここまで来たらもう材料買って手作りするしかないわ!」
結標「ええっー!? まだ余裕で引き返せると思うんだけど!?」
姫神「初めに吹寄さんが言ったように。手作りの方が既製品よりは心に伝わりやすい」
結標「……今さらだけどそういうの気にするヤツじゃないわよアイツ」
吹寄「まだわからないわよ! 外っ面はあんなでも内面はもっと純粋かも……!」
結標「うん、ないわね」
姫神「ない」
吹寄「やっぱり? まあでも、このバレンタインで少しでも料理を勉強できるいい機会じゃない」
結標「うっ、ま、まあそうかもしれないけど……でも」
姫神「でも?」
結標「仮に作れたとしてもそれがアイツにとって不味かったりしたら、『何で既製品にしなかったンだテメェ!』って怒り狂うに決まってるわ」
姫神「……そんなに厳しいの? アクセラ君」
結標「厳しいというか……、私の料理自体に拒否反応を示しているというか……」
吹寄「何があったのよあなたたちの間に……」
姫神「その場合。味を見てもらう前に口に入れてもらえないんじゃあ?」
結標「……なおさら既製品の方がよく感じてきたわ」
吹寄「ま、でも何とかなると思うわよ?」
結標「えっ?」
569: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:55:53.95 ID:/LxwAGo5o
吹寄「だって別に結標さんが一人でチョコレートを作るわけじゃないじゃない」
吹寄「ちゃんとあたしが一から作り方教えるし、間違ったことはちゃんと指摘するし、絶対にあなたの言うようなことには絶対にさせないわ」
姫神「……もちろん私も協力する。料理は得意だから」
結標「…………」
吹寄「だから精一杯あたしたちを頼ってちょうだい! 絶対に力になってみせるから!」
姫神「…………」コクリ
結標「……ありがとう、二人とも。よし! 私頑張って、絶対に一方通行においしいって言わせてやるわ!」
吹寄「その意気よ結標さん! じゃあまず何を作るかを決めましょ?」
結標「どんなものがあるのかしら?」
姫神「ここにサンプルとかが置いてある」
吹寄「生チョコ、クッキー、ガトーショコラ、ブラウニー……、いろいろあるわね」
結標「ぐぬぬ、どれも難しそうなオーラをガンガン放っているわね……」
姫神「大丈夫。そういうオーラを放っていたとしてもそれは大体思い込み。いざやってみれば簡単だということもある」
結標「とは言っても……うーん、どれにしようか……」
吹寄「無難にクッキーとかどう? 簡単だし余程なことがない限りミスはないわ」
姫神「生チョコとかどうだろう? チョコを溶かして生クリームとかバターを混ぜて固めるだけ。簡単」
結標「うーん、どれもぱっとしないわね……ん?」
吹寄「どうかしたの?」
結標「この粉がいっぱい付いた丸っこいヤツって何?」
吹寄「ああこれ? これはトリュフよ」
結標「トリュフか……」
吹寄「気になる?」
結標「うん、まあ……これって作るの難しい?」
姫神「基本的に生チョコと作り方は変わらない。丸めるかどうかの違い」
結標「そう。だったら私でもできるかな?」
姫神「大丈夫。トリュフは結構基本的なお菓子だから」
吹寄「トリュフにするの?」
結標「…………うん! 私これを作りたいわ!」
吹寄「決定ね! 姫神さんは何を作るつもりなの?」
姫神「シンプルイズベスト。いろいろな味のチョコレートを溶かして加工したのにしようかと」
結標「加工……ってどうするの? ガスバーナーとかでばがぁーってやるの? チェーンソーでぎゅいーんってやるの?」
姫神「ガスバーナーは使わないけど。溶かしてから形を整えてから固める」
結標「へー、そんなことができるのねえ……」
吹寄「というか何でそんな実験道具や工具が話に出てくるのよ……」
570: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:57:34.34 ID:/LxwAGo5o
吹寄「……うん。まあ姫神さんは作る段階では問題なさそうね」
姫神「問題ない」
吹寄「じゃあ早速材料を探しに行きましょ!」テクテク
姫神「うん」テクテク
結標「……そういえば吹寄さん?」
吹寄「何?」
結標「吹寄さんは誰かにチョコレート渡さないの?」
吹寄「…………えっ?」
姫神「……おお。たしかに気にはなっていた」
吹寄「な、何でそんなことが気になっているのかしら姫神さん?」
姫神「もし渡す人がいたのなら。人のサポートばかりで自分のことをしてないことになる。大丈夫?」
吹寄「あ、ああそーいうことなら大丈夫大丈夫。別にあたしは渡そうと思ってるやつなんていないから」
結標「ってことは義理も何もなしってこと?」
吹寄「え、ええまあ……」
結標「ええー、何かつまんないわねえ、私たちばっか」
姫神「うん。つまらない」
吹寄「別にあたしはつまらなくていいわよ? 今は二人の方が大事だし」
結標「せっかくだし吹寄さんも誰かに渡したら?」
吹寄「は? いやいやいいわよそんなの!」
姫神「どうしてそんなに拒否反応を示すのか」
結標「別に誰でも渡すだけなら誰でもいいんじゃないの? それなら土御門君とか青髪ピアス君とか……」
吹寄「ないないないないないないないないないないない。何であたしがそんな馬鹿どもにチョコレートなんて渡さなきゃいけないのよ」
結標「でも義理チョコってあれでしょ? 普段からお世話になってる人に送るものなんでしょ? あそこのポップに書いてるみたいに」
吹寄「ま、まあそうだけど、別にヤツらに世話になっているわけじゃないわよ」
結標「たしかに世話にはなってはいないかもしれないけど、学校だったら結構一緒にいるんだからそういう義理があってもいいんじゃないかしら?」
吹寄「い、いや別にそんなことは……」
姫神「私もそう思う」
吹寄「姫神さん!?」
571: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:58:38.53 ID:/LxwAGo5o
姫神「打ち上げやスキー旅行にこの前の調理実習。何かとそういう縁があるのは事実」
吹寄「ぐぐっ……でも……」
結標「……うーん、まあ吹寄さんがそこまで嫌なら無理強いするのはかわいそうよね」
吹寄「へっ?」
姫神「うん。たしかに強いられるのはかわいそう」
吹寄「えっ?」
結標「私たちのバレンタインがあるように、吹寄さんにも私たちをサポートするというバレンタインがあるのよね」
姫神「そう。自分は表舞台には立たずに裏方に徹する。非常に残念なバレンタイン」
吹寄「……あああっもう! わかったわよ! 渡せばいいんでしょ渡せばっ!」
結標「さすが吹寄さん!」
姫神「必ず乗ってくれると信じてた」
吹寄「ただしこっちにも条件があるわ」
結標「条件?」
吹寄「たしかにヤツらにも世話になっているのかもしれないけど、それは上条やアクセラも一緒」
吹寄「だから渡すのはその二人を含めて四人よ!」
結標「…………ってことは?」
吹寄「もしあたしが作ったものより不味かったら、決して思い人にいい印象を与えない残念なバレンタインデーになるわね」ニヤッ
結標「そ、それは勘弁願いたいわね……」
姫神「大丈夫。負けるつもりはない」
吹寄「ということで結標さん。手作りのハードルがどんどん上がっていくわよ?」
結標「……今から既製品を買ってきてもいいでしょうか?」
吹寄「ダメです♪」ニコ
結標「あははー、ですよねー」
―――
――
―
572: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/10(月) 23:59:34.13 ID:/LxwAGo5o
同日 16:00
-第七学区・とあるチョコレート専門店前-
結標「……ふぅ、たくさん買ったわね」ドサッ
姫神「これだけ買えば。いくらでも作り直すことは可能」
結標「でもそれって逆に言えば一発で作っちゃうと、ものすごくチョコレートが余ってしまうってことよね?」
姫神「それはない。なぜなら一発で作れないから」
結標「ぐっ、否定できない自分が悔しい……」
吹寄「……というか本当にそのチョコでよかったの?」
結標「何が?」
吹寄「いや、だってそのチョコって……」
結標「……もしかしてこれじゃあトリュフ作れない……!?」
姫神「大丈夫。作るのには問題ない」
吹寄「でもそれでおいしくトリュフを作るのは正直難しいと思うわよ?」
結標「うーん、まあ何とかなるんじゃないかしら?」
吹寄「……まあ結標さんがいいのならいいけど」
姫神「嫌な予感しかしない……」
結標「あ、そういうのやめて姫神さん」
吹寄「さて、じゃあ部屋に戻って制作に取り掛かるとしましょ」
姫神「……待って」
吹寄「何姫神さん?」
姫神「戻るってどこの部屋に?」
吹寄「どこって……とりあえずあたしの部屋かな?」
姫神「吹寄さんの部屋のキッチンは三人で調理できるぐらいの設備がある?」
吹寄「えっと……ギリギリいけるんじゃないかしら?」
573: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/11(火) 00:00:49.09 ID:8KAQP11no
姫神「じゃあ器具は一通りある? 三人同時に作業をしても滞りなく勧められるくらいには」
吹寄「べ、別に三人同時に作るわけじゃないでしょ?」
姫神「私たちはそれぞれ違うものを作る。だからいろいろな材料を使う。つまり器具はたくさん必要」
吹寄「あ、洗えば問題ないんじゃない?」
姫神「洗う時間も入れれば余計な時間を取ってしまう。結標さんの練習時間が減る可能性もある」
吹寄「じゃ、じゃあ姫神さんの部屋から道具を取ってくれば……」
姫神「そんなにたくさんの道具を使えるスペースはあるの?」
吹寄「えっと……ないわ、わね」
姫神「だからこれからどうするかを考えたほうがいい。最悪三人バラバラになることも必要」
吹寄「それは色々と不味いわね……」
姫神「…………」
結標「あ、あの……」
吹寄「何かしら?」
結標「何だかよくわからないけど、ウチの部屋使えばいいんじゃないかなーって」
吹寄「結標さんの部屋、ってことは黄泉川先生の部屋ってことよね?」
結標「うん。ウチは結構広いし、そういう特殊な器具とかもたくさん備え付けられてるし。まあ埃は被ってるけど」
吹寄「……たしかに好条件ではあるけど」
結標「何か問題があるの?」
姫神「結標さんの部屋ということは。同時にアクセラ君の部屋ということにもなる」
結標「あ、そっか」
吹寄「一応、こういうのは男子には見られたくないものだし」
結標「……だったら一方通行がチョコ作ってる間ウチに帰ってこなきゃいいのよね?」
吹寄「うん、まあそういうことにはなるけど……」
結標「だったらたぶん大丈夫よ。私に任せて……!」スッ
姫神「?」
―――
――
―
574: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/11(火) 00:02:45.39 ID:8KAQP11no
同日 16:10
-第七学区・とある公園-
一方通行「Zzz――おァ?」ムクッ
一方通行「…………」ボー
一方通行「…………」キョロキョロ
一方通行(……いつの間にか寝ちまってたよォだな。二月の寒空だっつゥのにアホか俺ァ)
一方通行「…………ハァ」
一方通行(まァ、バレンタインとかいう面倒臭せェモンはもォほっとくか)
一方通行(俺がどォ行動しよォがおそらく未来は決まってンだ)
一方通行(ヤツの手作りチョコレートを食わされて……、おェ)
一方通行「…………帰るか」
上条「――おお! 一方通行じゃねえか!」
一方通行「……あン? 何だ上条か」
上条「何だとは何だ。こんなところで座って何やってんだよ?」
一方通行「公園のベンチに座ってすることなンざァ、営業サボるか休憩ぐれェしかねェだろォが」ズズズ
上条「あー、のんきに公園でコーヒーブレイクっつーことか」
一方通行「で、そォいうオマエは何をやってンだ三下ァ?」
上条「俺か? これからスーパーまで買出しに行こうと思ってな」
一方通行「そいつは大変だな。まァ保護者とかいううっとォしいヤツがいる俺には関係ねェ話だがな」
上条「つまり帰ったら温かいご飯が待ってるわけか……いいなぁ」
一方通行「ンだァ? もしかしてホームシックにでもなったかァ?」
上条「そういうわけじゃねえよ。ただウチに帰ったら料理が並んである、ってのは一人暮らしとかが長いと憧れてしまうんですよ」
一方通行「だったらオマエン家に住ンでるシスターに料理を教えてやればイイ。その憧れを実現することができるぞ?」
上条「……いや、やめとく」
一方通行「どォしてだ?」
上条「インデックスが料理を覚えたら、冷蔵庫の中身が常にゼロっていう無間地獄に陥りそうで怖い」
一方通行「随分と信用されてねェシスターだこった……」
575: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/11(火) 00:04:28.14 ID:8KAQP11no
ピピピピッ! ピピピピッ!
一方通行「……あン? 電話だァ?」スッ
一方通行「もしもし?」
結標『もしもし一方通行?』
一方通行「……何か用か? 帰りにコンビニ寄ってガキの菓子買ってこいっつったら切るぞ」
結標『あー、大丈夫そういう話をするために電話したわけじゃないわ』
一方通行「じゃあ何の用だよ?」
結標『ちょっとね、しばらく家に帰ってきて欲しくないのよ』
一方通行「……ハァ? 何だって?」
結標『だからしばらくの間家には帰ってきて欲しくないのよ』
一方通行「理由は?」
結標『え、ええっと……それはちょっと……』
一方通行「言えねェよォな理由か。一体何をやらかしたンだオマエは?」
結標『別になにもやらかしてはいないわよ!』
一方通行「だったら何なンだよ。俺がしばらく帰宅できねェ理由とやらはよォ」
結標『そ、その……と、とにかく! こっちが良いって言うまで絶対に帰ってこないでね! じゃ』
一方通行「ハァ? オイ、どォいうことだ結標。オイ!」
プー、プー!
576: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/11(火) 00:05:48.01 ID:8KAQP11no
一方通行「……チッ、うっとォしいヤツ」スッ
上条「何の電話だったんだ?」
一方通行「結標からだ。しばらく家には帰ってくるなとさ」
上条「ケンカでもしてんのかよ」
一方通行「別にそンなモンじゃねェよ。オマエには関係ねェ話だ」
上条「ふーん」
一方通行「……まァ、家を追い出された理由はどォでもイイが、許可が出るまでどォするかが問題だなァ」
一方通行(久しぶりにゲーセンでも行くかァ? いや面倒だからイイや)
一方通行(ビジネスホテルでも借りて、連絡が来るまで寝ておくか? いや手続きが面倒だからイイや)
一方通行(あえてここでまた寝る……、いやまたここで寝たら確実に風邪をひく自信がある)
一方通行「…………はァ、面倒臭せェ」
上条「……何だかよくわからねーけど、要するに結標から帰ってきていいって言われるまでの暇つぶしを考えてんのか?」
一方通行「あァ? まァそォいうことにはなるな」
上条「つまり、お前は今暇っつーことか?」
一方通行「ああ」
上条「…………」
一方通行「…………?」
上条「…………」ニヤ
一方通行「…………!? な、何だよ?」
上条「お前……暇ならさ――」
上条「連絡くるまで俺んち来るか?」
一方通行「…………ハァ?」
―――
――
―
586: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:45:27.72 ID:JRUIOP3Go
同日 16:30
-第七学区・とあるスーパー-
ワイワイガヤガヤ!
上条「くっ、やっぱり大勢集まってたか……!」
一方通行「…………なァ?」
上条「こうなったら覚悟決めるしかねえかもしれねえな……」
一方通行「オイ三下?」
上条「……よし! 行くぞ一方通行ぁ! うおおおおおおおおおおおっ!!」ダッ
一方通行「オラァ!」カチ
ゴッ!
上条「痛てっ!? 何すんだよ一方通行!?」
一方通行「行くぞじゃねェンだよ、うおおおじゃねェンだよ。人の呼びかけ無視すンじゃねェぞこの三下がァ」カチ
上条「何か用か? 大した用じゃねえならあとにしてくれ、今忙しいから」
一方通行「あァ? もォ一発いっとくかァ?」カチ
上条「すんません話聞きますゆるしてくださいおねがいします」
一方通行「チッ、たったら質問だァ。たしか俺はオマエの部屋に来ねェか、って誘われたンだよなァ?」カチ
上条「ああ」
一方通行「だったら何で俺は今スーパーの精肉売場の前に立ってンだよ?」
上条「そりゃ、俺の買い物がまだ終わってなかったからな」
一方通行「だったら誘うンじゃねェよ。わざわざ一緒に仲良くショッピングする意味ねェじゃねェか」
上条「いやいや、意味ならちゃんとあるぞ?」
一方通行「あン?」
上条「今日の特売はステーキ用の牛肉が200グラムがお一人様限定で十円だ」
一方通行「ほォ、一体どンないわく付き牛肉なのか疑いたくなるくれェには安いな」
上条「おいやめろ」
一方通行「で、そのクソみてェな安物牛肉がどォかしたのか?」
上条「ふふふ、つまりだ。今俺は二十円でステーキ肉を400グラム買うことができるわけだ」
一方通行「……はァ、つまりアレかァ? 俺も無様に安肉を掴んでレジへ並べ、っつゥことかァ?」
上条「そういうことだ」ニヤッ
一方通行「そンなくだらねェことしねェといけねェくれェ、オマエは貧相な生活してるっつゥことかよ」
上条「うっせぇ! 貧乏人舐めんな! この金持ち野郎が!」
一方通行「チッ、まァイイ。だったらとっとと目的のモン買って、ここを出るぞ?」
上条「いやー、そうしたいのはやまやまなんだが……」
一方通行「……何だよ?」
587: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:46:29.09 ID:JRUIOP3Go
上条「それを買うにはあれを突破しなきゃいけねえんだよ」
ワイワイガヤガヤドッガシャーン!!
モブA「おらっ! この肉は俺のもんだぁ!!」ゴッ
モブB「何言ってんのよ! これはあたしのよっ!!」ドガッ
モブC「ひゃっはっー! どけどけどけええええっ!!」グパァ
ワイワイガヤガヤグガガガーン!!
一方通行「……何やってンだこの馬鹿どもは……?」
上条「見ての通り限られた特売品の奪い合いだ。安い肉っつっても数には限りがあるからな」
一方通行「にしたってやりすぎだろこれ。軽く乱闘になってンぞ?」
上条「まあこれが特売のときの恒例行事みてーなもんだしな。店側も店内の商品に被害を出さない限り容認してるらしいし」
一方通行「チッ、どンだけステーキ食いてェンだよコイツら」
上条「そういうわけだから、そろそろ俺も参戦するとするぜ! 早くしねーと全部売り切れちまうからな!」ダッ
一方通行「あ、オイ」
上条「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」バッ
モブD「あん? また来やがったなウニ頭ぁ!!」
モブE「返り討ちにしてやるよ小僧!!」
上条「今晩、勝利のステーキを食べるのは、俺たちだあああああああああああああああああああああああああああッ!!」
ゴッ、バギッ、ゴバッ、ガゴッ、ドグシャ!!
上条「…………ふ、ふこ……うだ」バタッ
一方通行「なァに一人で正面から突っ込んで返り討ちにあってンですかオマエはァ?」
上条「あ、あはは、やっぱ今日は激しいわ。くそう……ちくわの特売のときはこうじゃなかったのに……」
一方通行「まァ、肉に比べれば倍率低そォだよな。ちくわ」
上条「む、無念……」ガクッ
588: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:48:54.01 ID:JRUIOP3Go
一方通行「…………」
上条「…………」
一方通行「オラッ」ゲシッ
上条「ぐえっ! な、何しやがる!」
一方通行「いや、あまりにも滑稽で蹴りやすそォなモンが転がっていたモンで……」
上条「そんなわけのわからねえ理由で俺は蹴られたのかよ!」
一方通行「ンなことよりよォ、さっさと買いモン終わらせよォぜ面倒臭せェ」
上条「い、いや、だからあそこのステーキ肉を……」
一方通行「他に買うモンあるンじゃねェのか? 野菜とか飲みモンとか」
上条「そりゃあるけど……何でそんなこと今聞くんだ?」
一方通行「今からそれを買ってこい。肉は俺が手に入れる」
上条「お前……まさか能力を使う気か?」
一方通行「まァな。俺の場合使わねェとまともに行動できねェし。……まァ安心しろ殺しはしねェ」
上条「いや、それは当たり前だろ」
一方通行「ただ、そォだな……」カチッ
一方通行「静かに買いモンもできねェ馬鹿どもにマナーの教育ぐれェはしてやるよ」ニヤァ
~10分後~
一方通行「ほらっ、約束の牛肉二パックだ」スッ
上条「お、おう……」チラッ
モブA「はーい、欲しい方は二列で並んでくださーい」
モブB「そこっ! 勝手に列を外れてんじゃないわよ!!」
モブC「残り十パックでーす、押さないでくださーい!」
上条(……あの荒くれどもがすげえ丸くなってる……?)
上条「お前一体何をやったんだ?」
一方通行「あァ? 別に大したことはやってねェよ。まァ、そォだな。強いて言えば……」
一方通行「アイツらにちょっとした恐怖を与えてやったくれェだな」ニヤリ
上条「いいっ」ゾクッ
一方通行「まァ、教育すンのに一番便利なのは恐怖だって話なだけだ。ちょっと軽く演出してやっただけで全員ビビッて萎縮しやがって。面白れェ」
上条「たかが買い物にどんだけ無茶をしたんだよ」
一方通行「向こうが本気で殺りに来てンだから、こっちもそれ相応の対応を取らせてもらうのは当然のことだろ?」
上条(コイツを本気で怒らせたら俺は確実に死ぬ。いろいろな意味で……)
一方通行「おっ、コイツは今ハマってる缶コーヒーじゃねェか。オイ、あとで金払うから買っといてくれ」ガチャンガチャン
上条(俺はただただそう思っていたのだった……)
―――
――
―
589: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:49:35.77 ID:JRUIOP3Go
同日 16:50
-黄泉川家・リビング-
ガラッ
結標「ただいまー!」
打ち止め「おかえりアワキお姉ちゃん! ってミサカはミサカはお決まりの挨拶を交わしてみたり……おっ?」
吹寄「……お、おじゃましまーす」
姫神「おじゃまします」
打ち止め「セイリお姉ちゃんにアイサお姉ちゃんだ! いらっしゃい、ってミサカはミサカは来客に歓迎の言葉を送ってみたり!」
吹寄「相変わらず元気そうね打ち止めちゃん」
打ち止め「うん! 相も変わらず元気だよ! ってミサカはミサカは飛び跳ねながら元気アピールをしてみたり!」ピョンピョン
姫神(……かわいい)
結標「ええっと……芳川さんは?」
打ち止め「ヨシカワなら今自分の部屋に篭ってネットしてると思うよ? ってミサカはミサカは現状報告してみる」
結標「うん、まあわかってたけどね」
打ち止め「ところでお二人さんは一体どうしたの? わざわざここまで来るのは珍しいよね、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
吹寄「ああ、明日バレンタインデーでしょ? それの準備をするためにここに来たのよ」
打ち止め「おおっそうだったんだ! ってことは手作りチョコレートとか作るの? ってミサカはミサカは目をキラキラと輝かせてみたり」キラキラ
吹寄「一体どうやって輝かせてるのよそれ? まあ、そういうことになるわね」
打ち止め「おおっー!!」キラキラ
結標「ま、そういうことだからちょっと台所がカカオ臭くなるかもよ?」
590: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:50:51.42 ID:JRUIOP3Go
打ち止め「……ええと、もしかしてアワキお姉ちゃんも作るの? チョコレート……」
結標「ええ、まあ……」
打ち止め「え……大丈夫なの……アワキお姉ちゃん? だって」
結標「ああー、言わなくてもわかるから言わないで」
吹寄「そんな心配しなくてもいいわよ打ち止めちゃん。結標さんには私たちが付いているのだから」
姫神「大船に乗ったつもりでいるといい」
結標「……ほんとごめんね」
吹寄「別に謝らなくてもいいわよ。迷惑なんて思ってないし」
姫神「友達は。お互い助け合うもの」
打ち止め「いい話だなー、ってミサカはミサカはほろりと涙を浮かべてみたり」ポロッ
結標「あ、語尾では隠せてるようだけど相変わらず目薬差してるのはバレバレよ?」
打ち止め「バレちったかーてへぺろ! ってミサカはミサカはあざといドジっ子アピールをしてみたり!」テヘッ
結標「自分であざといって言ってどうするのよ」
吹寄「それじゃあ時間もあまりないし、ちゃっちゃと準備して始めましょうか?」スッ
結標「う、うん」スッ
姫神「段取りはどうする? まずは最初に結標さんに基本を教える?」ドサッ
打ち止め「おおっ! ものすごい量のチョコレートだ! すげえっ、ってミサカはミサカは夢のような光景を目の前にテンションアップを抑えきれなかったり!」
結標「あっ、晩ご飯の時間近いから食べちゃダメよ?」
打ち止め「ちぇー、別にチョコレートの一つや二つ、食べたところで影響はないと思うのに……」
結標「ゴミ箱にポテチの袋が入っているのだけど? あれ、打ち止めちゃんが食べたんじゃないかしら?」
打ち止め「おうふっ、バレたか、ってミサカはミサカはチョコレート天国を諦めてイスに座ってみたり」
591: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:52:13.47 ID:JRUIOP3Go
吹寄「よし。まずは湯銭のかけかたからね」
結標「ゆせん? 何それ?」
姫神「ボウルとかの容器に刻んだチョコレートを入れて。それを温めて溶かすこと」
結標「何でそんなまどろっこしいことするのよ? 普通にフライパンで焼けばすぐ溶けるじゃない」
姫神「それは溶けるを通り越して焼けると思う」
吹寄「とりあえずチョコレートを溶かすときはそういう方法を使うってことは覚えてて」
結標「うん、わかったわ」
吹寄「じゃあまずチョコレートを溶かしやすくするために刻んで小さくしましょうか」
結標「刻むのね? 了解!」スッ
吹寄「こういう風に包丁で叩くように刻んでいって――」
ギコギコ
吹寄「ん? 何の音?」
結標「……よっと。鶏肉よりは切りやすいわね」つノコギリ
ギーコギーコ
吹寄「」
592: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:53:35.26 ID:JRUIOP3Go
姫神「結標さん。わざわざそんなものを持ち出す必要はない」
結標「えっ、でも刻めるわよ? 普通に」
姫神「そういう問題ではなく。単純に危ない」
結標「包丁も十分危ないと思うのだけど?」
姫神「そもそも用途が違う」
結標「えー、切りやすいのになーこれ」つノコギリ
姫神「いや。というかどこから持ってきたのそれ?」
結標「こんなこともあろうかとあらかじめホームセンターで買って準備しておきました!」
姫神「どんなことを想定していたの? もしかして料理?」
結標「うん」
打ち止め「さすがアワキお姉ちゃん! 期待を裏切らないぜ!」
姫神「……頭痛い」
結標「?」
吹寄「え、ええっと、とりあえずそれしまってくれない?」
結標「えっ? 何で?」
吹寄「例えばテレビでやってる料理番組とかで、ノコギリなんてものを使っているシェフを見たことある?」
結標「うーん、まったくないけど……」
吹寄「つまり、普通はそういうものは使わないってことよ。わかった?」
結標「……でも普通じゃないからって全部否定することは私間違っていると思う」
吹寄「えっ?」
結標「例えば天動説が普通だった時代に地動説を唱えたガリレオ=ガリレイ!」
結標「はたから見たら常識知らずの普通からかけ離れた変人だったかもしれないわ!」
結標「でも実際は地球自体が動いてた。変人扱いされてたガリレオが正しかったわ! 違う?」
吹寄「た、たしかにそうだけど……」
結標「だから! 私はそういう常識に囚われない料理法! つまり、このノコギリを――」
姫神「それとこれとは話が違う」
結標「はい」
―――
――
―
594: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:54:35.90 ID:JRUIOP3Go
同日 17:00
-第七学区・とある高校男子寮-
カッ、カッ。
上条「……はぁ、まさかエレベーターが調整中だなんて……不幸だ」
一方通行「たしか七階だったかオマエの部屋は?」
上条「ああ。階層が高いって結構不便だよな。登校時間はエレベーター混むし」
一方通行「まァ、ウチの十三階にある部屋よりは遥かにマシだろ。階段なンか使ったら一瞬で筋肉痛だ」
上条「うわっ、スゲェな。さすが高級マンション」
一方通行「オマエじゃ一生住むことができねェ場所だろォな」
上条「くそう、おのれ金持ちめ!」
一方通行「……しかし、俺はいつになったら帰れンだァ? 面倒臭せェ」
上条「しかしケンカじゃないなら一体何があったんだ? お前を家に入れたくない何かでもあんのか?」
一方通行「……ヒント。明日」
上条「明日? ええっと……今日が二月十三日だから……バレンタイン?」
一方通行「そォいうことだ。今ごろアイツは義理チョコという名の化学兵器を製造してるところだろォ」
上条「ひでえ言いようだな」
一方通行「事実だからしょうがねェ」
上条「まあでも、バレンタインにチョコをもらえる予定があるっていうのは羨ましい限りだなぁ……はぁ」
一方通行「化学兵器だぞ?」
上条「それでもだよ。よく言うじゃねえか、味が重要なんじゃない、大事なのは込められた気持ちだって」
一方通行「その気持ちでカバーしきれねェから兵器って言われてンだよ」
上条「……はぁ、誰かくれねーかなー。義理でもいいからくれねーかなー」
一方通行「安心しろ。俺の中でももらえるアテが五人くれェいるからよォ」
上条「は? んなもんいるわけねーだろアホか」
一方通行「オーケーオーケー。今から手すりの外へぶっ飛ばしてやるから覚悟しろォ」カチ
上条「ぎゃああああああああああああッ!! スンマセン!! 何で怒っておられるのかわかりませんがスンマセン!!」
一方通行「……チッ、まァつまり、もらえねェなンてこと絶対ェねェから安心しろっつゥことだ」
上条「……本当かよ? 不幸の塊上条さんだぞ? どう考えても青髪ピアス辺りに偽チョコ&偽ラブレターというドッキリを仕組まれる未来しか見えねえんだけど」
一方通行「どちらかと言えばオマエが集団暴行を受ける未来しか俺には見えねェがな」
上条「どちらにしろ不幸じゃねえかくそぅ」
一方通行「ま、こンな感じにくだらねェ世間話をしてる間に、あっという間に七階っつゥわけだ」
上条「帰ったらまずメシ作らねーとな。あっ、お前晩メシどうすんだ? 何なら作るけど?」
一方通行「いらねェよ。いつ帰宅命令が下るかわからねェからな」
上条「じゃあとりあえずお前の分も作っとくよ。もしいらなくなってもインデックスのヤツが食べるだろうし」
一方通行「チッ、余計なことしよォとしてンじゃねェよ三下が」
上条「ははは、別に遠慮しなくてもいいのに」ガチャ
一方通行「してねェよ殺すぞ」
595: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:55:38.28 ID:JRUIOP3Go
-とある高校学生寮男子寮・上条当麻の部屋-
ガチャ
上条「ただいま帰りましたよーと」
一方通行「…………あン?」
上条「どうかしたか?」
一方通行「……あのシスター、ローファーなンか履くのか?」
上条「ローファー? いや、履かねえけど。つーかそんなもん買う金ねえよ」
一方通行「じゃあこれ誰の靴だよ」
上条「えっ、……ああ、どうやらお前以外にも客がいたようだぜ」
一方通行「ハァ?」
上条「おいーす、帰ったぞインデックスー!」テクテク
禁書「あっ、おかえりとうま」
スフィンクス「にゃー」トコトコ
一方通行「お邪魔しまァす」ガチャリガチャリ
禁書「……ってあれ? あくせられーた?」
一方通行「よォ」
禁書「どうしたの? あなたがこんなところに来るなんて珍しいね」
一方通行「いろいろあって今家に帰れねェからな。で、偶然上条と会って、スーパーを経由してここまで至ったわけだ」
禁書「ふーん、何かあったの? 家の人とけんかでもした?」
一方通行「してねェよ。何でオマエらは揃いも揃ってそっちの発想しかできねェンだよ」
上条「いや、普通はそう思うだろ」
??「……、え、えっと……その」
596: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/15(土) 22:56:14.30 ID:JRUIOP3Go
上条「あっ、やっぱりあの靴はお前だったか風斬」
風斬「その、えっと、お、おじゃましてます」ペコ
上条「おう、まあゆっくりしていけよ」
風斬「は、はい……あの」チラッ
一方通行「あン?」ギロッ
風斬「ひっ……!」ビクッ
禁書「あくせられーた! ひょうかは繊細なんだからそんな目で睨んじゃだめかも!」
一方通行「睨ンでねェよ。ただ目ェ合わせただけだろォが」
禁書「もっと表情を柔らかくした方がいいと思うんだよ。それじゃあみんな怖がって近寄ってくれなくなるかも」
上条「たしかにそうだよな。俺たちはいいけど、未だに一方通行のこと警戒してるクラスメイトとか結構いるしな」
一方通行「チッ、どォでもイインだよ。別に関わらなくても問題はねェだろォが」
禁書「人との繋がりがあるってことは大事なことなんだよ」
一方通行「うるせェよクソシスターが」
禁書「もう。またそんな威圧的な言葉遣いをして」
一方通行「ほっとけ」
風斬「…………、え、えっと」オロオロ
一方通行「……まァ、イイ。オイ」
風斬「!? あ、はい!」
一方通行「久しぶりじゃねェか……風斬」
風斬「…………、はい!」
―――
――
―
607: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:19:03.78 ID:xeJ/Hl25o
同日 17:20
-黄泉川家・キッチン-
吹寄「…………」
結標「…………」
姫神「…………」
グツグツ
吹寄「……えっと、結標さん?」
結標「何かしら?」
グツグツ
吹寄「これ……たしかチョコレートよね?」
結標「うん、そうだけど」
グツグツ
吹寄「だったらさ、何で……」
結標「?」
チョコレートだったもの『俺は最強の業務用チョコレートだ! そう思ってた時期が僕にもありました』
吹寄「何でこんな緑色の物体が出来てるのよっ!?」
608: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:20:37.01 ID:xeJ/Hl25o
結標「いやー、気がついたらこうなってたわ、あはは」
吹寄「あはは、じゃないわよ。くっ、こっちが少し目を離してた間に一体何があったの……?」
結標「何があったって……普通に言われた通りに調理したつもりよ?」
吹寄「言われた通りにやったらこうにはならないわよ普通」
結標「ええっー? あれー? おかしいわねー?」
姫神「何か変わったものでも入れた?」
結標「えっ? 別にそんな変わったものは入れてないと思うけど……」
姫神「とにかく何を入れたか言ってみて」
結標「ええと……ゴーヤジュースの粉、ワカメ、ビタミン剤、その他諸々」
吹寄「あれ? 結標さんは今何を作っているんだったっけ!?」
結標「? 何ってチョコレートだけど?」
吹寄「そんな『何言ってんのコイツ』的や顔されても困るんだけど!」
姫神「……とにかく。今度は私たちがちゃんと見ながら教えるから。きっちり丁寧にやっていこう」
結標「わ、わかったわ!」
姫神「じゃあ。このチョコレートだったものは廃棄しよう。万が一誰かの口に入ったら一大事」ポイッ
結標「ああっ! 私の手作りチョコレートが……!」
打ち止め「…………」
~回想~
一方通行『超能力者(レベル5)っつゥのはなァ、必ずどっか頭のネジが数十本吹っ飛ンでる人格破綻者だ』
一方通行『まァ、よォするに変人の集まりってことだな。学園都市の上位能力者っつゥのはよォ』
打ち止め『うーん、あなたが言うとすごい説得力かも、ってミサカはミサカは静かにうなずいてみたり』ウンウン
一方通行『…………』ビシッ
打ち止め『痛っ!? ええっ!? 何でミサカ叩かれたの!? ってミサカはミサカは理不尽な暴力に糾弾してみたり!』
一方通行『うっせェ、俺の癇に障ったからだ』
打ち止め『むむっ、じゃあじゃあ、前も話したけどお姉様はどの辺りが破綻してるの? ってミサカはミサカは首を傾げながら尋ねてみたり』
一方通行『あァ? ああ、そォだな……あっ、そォ言えば』
打ち止め『なになにー?』
一方通行『アイツ平然と自販機蹴り飛ばして飲みモンタダ飲みしてたな』
打ち止め『……ああ、そういえばそんなこともあったね、ってミサカはミサカはしみじみ思い出してみたり』
一方通行『真似すンなよクソガキ』
打ち止め『し、しないよ! ってミサカはミサカは失礼なことを言うあなたに徹底反論してみたり!』
~
609: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:21:50.65 ID:xeJ/Hl25o
打ち止め「…………」ジー
姫神「さて。じゃあまたチョコレートを刻む作業から始めよう」
結標「うん、わかったわ。よし、切って切って切りまくるわよー!」つノコギリ
吹寄「……いい加減包丁を使うことを覚えたほうがいいわよ」
姫神「時間はあまり多く残されてない。早く刻み終えてしまおう」トントン
結標「や、やっぱり速いわね姫神さん……よーし、負けないわよ」ギコギコ
吹寄「あー、やっぱりこっちで刻んじゃうかー……ん? 何この臭い?」クンクン
姫神「……香辛料の香り?」クンクン
吹寄「んー、でもそんなもの使ってないわよね? というか普通使わないし」
姫神「うん。そうだけど……」
吹寄「…………」チラッ
結標「おりゃー」ゴリゴリゴリゴリ
吹寄「……結標さん」
結標「何かしら?」
吹寄「あなたは一体何を切り刻んでるのかしら?」
結標「何って……ただのチョコレートだけど?」
カレールー『板チョコちゃんだと思った? 残念カレールーちゃんでした!』
姫神「……どう見てもただのカレールーなんだけど?」
結標「えっ、本当? あっ、本当だ! 何か辛い臭いがすると思ったら……」
吹寄「というか何で今の今まで気付かなかったのか……」
結標「まあいいわ。似てるからこれで大丈夫でしょう」ゴリゴリ
吹寄「って、そのまま続けないで!! たしかにそれを間違うのは鉄板ネタだけどそのまま続行する人は見たことないわ!!」
結標「大丈夫よ。これちゃんと甘口のカレールーだから」ギーギー
吹寄「そういう問題じゃない!」
打ち止め「……なるほど! たしかに超能力者(レベル5)だ、ってミサカはミサカは勝手に納得してみたり!」
───
──
─
610: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:23:25.22 ID:xeJ/Hl25o
同日 17:30
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
ピコピコ、キラーン!
禁書「ぐっ、この、あっ!」ポチポチ
一方通行「オイオイ構築が甘めェンだよクソシスターが」カチッカチッ
禁書「く、クソシスターじゃないんだよ! ……あっ、しま──」ポチポチ
一方通行「そんなンじゃ、俺には到底勝つことは不可能だ……ぜッ」ピッ
チャラララーン!
テレビ『1P:LOSE 2P:WIN』
禁書「ああ……負けちゃった」
一方通行「当然の結果だなァ。オマエの残念な脳みそと俺の最強の脳みそじゃ比べるまでもねェだろ」
禁書「私の脳みそは残念じゃないんだよ!」
一方通行「知ってるかァ? そォいうことを言うヤツは大抵自覚してねェンだよ」
禁書「ふふん。だったら私は関係ないかも」
一方通行「オマエ人の話聞いてたか?」
スフィンクス「にゃーごー! しゃー!」ピョンピョン
風斬「……ふふふっ」つ猫じゃらし
スフィンクス「ヒョオ────シャオッッ!」ザクッ
風斬「!?」ビクッ
611: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:25:06.48 ID:xeJ/Hl25o
禁書「しかしあくせられーた、てとりす強いね」
一方通行「そォか? 単純にオマエが弱いだけじゃねェのか? 俺これ初めてやったからな」
禁書「えっ、嘘っ!? それなのにあんなに軽快にボタンを押せるの!?」
一方通行「だから言ってンじゃねェか。頭の出来が違うってな」
禁書「ぐぬぬ、ひょうかとやったら負けなしだったのに……」
一方通行「ハァ? オマエそれマジで言ってンのか?」
禁書「うん。ねえひょうか」
風斬「……えっ? ええと、うん……」
一方通行「…………」
禁書「じゃあひょうかやろう!」
風斬「うん、いいよ」ニコ
~五分後~
チャラララーン!
テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』
禁書「わーい! 私の勝ちかも!」
風斬「あはは、負けちゃった」
一方通行「…………」
禁書「ほらっ、私だっててとりす上手なんだよ」ドヤッ
一方通行「……いや、殴りたくなるほどムカつくドヤ顔してるところ悪りィけどよォ」
禁書「何かな?」フフン
一方通行「誰がどォ見ても風斬が手加減してンじゃねェか」
風斬「えっ」
禁書「手加減?」
一方通行「ああ」
風斬「……べ、別にそんなことは……ないですよ」
一方通行「嘘ついてンじゃねェよ。わざとらしい操作ミスをしている上に、インデックスの画面の方へ異常な頻度で視線を移してだろ?」
風斬「!? どうしてそれを……?」
禁書「?」キョトン
一方通行「レベル5の観察力を舐めてンじゃねェよ。まァ、それ以前によォ」
一方通行「このクソみてェな機械音痴が、ゲームの対人戦で全勝なンて偉業成し遂げられるわけねェだろォが」
612: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:26:10.65 ID:xeJ/Hl25o
禁書「き、機械音痴じゃないんだよ! てれびのリモコンとえあこんのリモコンの区別がちゃんとつくもん!」
一方通行「ンなこと言ってる間は一生機械音痴だ」
風斬「え、えっと……」オロオロ
禁書「でも信じられないんだよ。ひょうかがわざと負けてるなんて」
一方通行「何なら俺とやってみるか風斬? 手加減とかなしでだ」
風斬「えっ?」
一方通行「そォすりゃコイツもいかに井の中の蛙だったかよくわかるだろ。あ、それ以前に俺に負けてるからこの言葉は使えねェか……」
禁書「……そんなこと言ってあくせられーた。ひょうかをいじめるつもりなのかな?」
一方通行「ンなわけねェだろォが。ただゲームで対戦して遊ぶだけだ」
風斬「……あ、あの」
一方通行「つゥわけでコントローラーを持て風斬。俺相手に手加減なンて馬鹿みてェな真似しやがったらブン殴るぞ?」
風斬「…………は、はい」スッ
~五分後~
ピコピコピコ、キラキラーン、チャーン!
一方通行「…………」カチッカチッ
風斬「…………」カチカチ
ピコピコ、チャラリン! ドーン!
禁書「す、すごい……早すぎて何が何だかわからないんだよ……」
上条「何やってんだお前ら?」テクテク
禁書「見て見てとうま! 何かすごいんだよ二人とも!」
上条「ああ、テトリスやってたのか。……たしかにすげえな、俺じゃこんなの無理だな」
613: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:28:21.92 ID:xeJ/Hl25o
一方通行「……チッ、予想以上にやるじゃねェか」カチッカチ
風斬「い、いえ、そんな……」カチカチ
一方通行「ンなこと言いながら俺の攻撃平然とやり過ごしてンじゃねェよ」カチッ
風斬「…………」カチカチ
一方通行「……まァ、普通に考えたらうめェンだろォが……」カチッカチッカチッ
風斬「…………ッ」カチカチカチ
一方通行「だけど相手が悪かったな、これで詰みだ」カチッカチッ
チャラリン! チャラリン! ドーン! ドーン!
チャラララーン!
テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』
一方通行「……ケッ、クソが。無駄に頭ァ使っちまったな」ボリボリ
上条「お疲れー。ほらよ、缶コーヒー」スッ
一方通行「ほォ、気が利く三下じゃねェか。アリガトよ」カチッ
上条「しかしさすがレベル5だな。やっぱゲームも上手いんだな」
一方通行「まァ、ものにもよるけどな。あまりに専門的なモンだとモノにするのに二、三十分かかる」
上条「レベル5パネェ……」
風斬「…………ふぅ」
禁書「ひょうか!」
風斬「! な、何?」
禁書「ひょうかって実はすごかったんだね! 知らなかったんだよ!」
風斬「……べ、別にそんなことないよ」
禁書「でも私とやるときは手加減してたのはちょっと許せないんだよ」
風斬「……ごめんなさい」
禁書「だから次からはちゃんと真面目にやって欲しいんだよ!」
風斬「…………うん!」
一方通行「まァ、その場合オマエが勝てる可能性はゼロになるっつゥわけだがな」
禁書「ううっ、それは言わないで欲しいかも……」
―――
――
―
614: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:29:31.75 ID:xeJ/Hl25o
同日 17:50
-黄泉川家・キッチン-
パァン!!
結標「ぎゃあああああああああっ! チョコレートが爆発したぁ!!」ベトッー
吹寄「何があったの……ってわっ!? 一面がチョコレートだらけじゃない!?」
結標「ううっ、制服がベトベトだわ……こんなことなら着替えてからすればよかった……」
吹寄「エプロン付けてても防ぎきれない爆発って、一体何をどうすればこうなるのよ?」
姫神「ほんの少し。ほんの少し目を離しただけだった。どうしてこうなった?」
結標「私は普通にしてるつもりなのにー!」
姫神「そんなことより早く着替えてきたほうがいい。今からなら洗えばまだ間に合うかもしれない」
吹寄「洗うって……今からクリーニングに出すつもり?」
姫神「さっきチラッと洗濯機が見えたけど。あれは超高性能の値段の高いやつだった。あれならたぶん制服とかでも一晩でいける」
吹寄「そういえばここ高級マンションだったわね」
結標「じゃあちょっと着替えてくるわね、ってにぎゃぁ!! チョコレート踏んだぁ!!」ネチャッ
吹寄「スリッパも新しいの持ってくるわね」テクテク
姫神「私はキッチンを掃除しておく」
打ち止め「ミサカも手伝うよー! ってミサカはミサカは華麗に参上してみたり――ってぎゃあっ!! ミサカもチョコレート踏んだぁ!!」ヌチャ
姫神「あまり不用意に動かないほうがいい。ここは戦場と同等の危険度」
ガラララ
黄泉川「ただいまー! おっ? 何か甘い香りがするぞー?」
打ち止め「あっ、ヨミカワおかえりー! ってミサカはミサカは……ぎゃうっ! またチョコレート踏んだぁ!」ネチャ
姫神「……お邪魔してます」フキフキ
結標『ぎゃー! 髪の毛もチョコレートだらけだぁ!!』
吹寄『一回シャワー浴びといたらどう? 下準備はあたしたちがやっとくから、というかまだ結標さんは下準備すらろくに終えてないわけだし』
結標『う、ご、ごめんねーホント』
黄泉川「…………どういう状況じゃん?」
―――
――
―
615: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:30:30.92 ID:xeJ/Hl25o
同日 18:10
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ
禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」
一方通行「あァ、よっと」カチッ
カラカラカラカラカラー、タラン!
一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」
禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」
一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ
カラカラカラカラカラー、タラン!
一方通行「あ、シスターのところで止まった」
禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」
一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」
禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」
一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」
禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」
616: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:32:14.05 ID:xeJ/Hl25o
ジュー
上条「…………ぐふふふ、久しぶりの肉だぜ」
風斬「……あの」
上条「どうかしたか風斬?」
風斬「何か手伝うことありますか?」
上条「うーん、別にこれと言ってはねえけど……何でだ?」
風斬「いえ、いつもお世話になっているので……」
上条「別に気にする必要ねーのに。逆にインデックスのヤツの相手してもらってんだからこっちがお礼を言いたいくらいだぞ?」
風斬「わ、私はそんな……」
上条「そうだ。どうせだからお前もメシ食っていけよ。今までのお礼っつーことで」
風斬「で、でもそれって大事なお肉なんじゃ……?」
上条「大丈夫だって。一方通行のおかげで全部で四百グラムあるんだ、一人百グラムで十分足りるだろ。インデックスは……うん」
風斬「……あはは」
上条「つーわけで食っていくだろ? 晩メシ」
風斬「…………じゃ、じゃあごちそうになります」
上条「おう、じゃあ向こうで待っててくれ。すぐにできると思うからよ」
風斬「はい!」
一方通行「……オイ」
618: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:32:59.61 ID:xeJ/Hl25o
風斬「!?」ビクッ
上条「どうかしたか一方通行?」
一方通行「缶コーヒーが欲しいンだがよォ、後ろ通してもらえねェか?」
風斬「ご、ごめんなさい!」ササッ
一方通行「おォ」ガチャリガチャリ
上条「で、結標から連絡は来たのか?」
一方通行「イイや、これっぽっちも来ねェよ。何やってやがンだアイツァ?」
上条「こっちからかけてみればいいんじゃねえか? 電話するの忘れてるだけかもしれねえし」
一方通行「アイツが忘れるよォなヤツとは思えねェけどな」
上条「一応だよ一応。それに進捗度のほうも聞いてみればどれくらいで帰れるかもわかるし」
一方通行「オマエ……それ本気で言ってンのか?」
上条「?」
一方通行「はァ……ま、とりあえず電話はかけてみるか」ピッピッ
上条「……ええと、俺なんか変なこと言ったか?」キョトン
風斬「え、その、あの、ええっと……」オロオロ
一方通行「オイ、肉焦げてンぞ」プルルルルル
上条「へっ?」
ジュー
上条「おわっ、マジだ! クソッ、不幸だっ!」
一方通行「くっだらねェ」ガチャリガチャリ
―――
――
―
619: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:34:15.92 ID:xeJ/Hl25o
同日 18:20
-黄泉川家・結標淡希の部屋-
結標「あー、さっぱりした」←シャワー浴びたあと
結標「くんくん、うっ、あんなにシャンプー使って洗ったのにまだチョコの臭いが残ってるような気がするわ……」
結標「……ふぅ、しかしひどい目にあったわね……」
結標「まさかチョコレート作っててこんなことになるなんて思わなかったわね」
結標「これが手作りという名の戦いなのね、油断ならないわ」
結標「これからは一層気合を入れて挑まないとっ」グッ
結標「……というか今何時かしら?」キョロ
結標「って、えっ!? もうこんな時間!? 完全下校時刻余裕で過ぎてるじゃない!」
結標「ま、不味いわね。まさかチョコレート作りにこんなに時間を使うとは思わなかったわ」
結標「これ以上は吹寄さんや姫神さんに悪いわね。次で決めないと……」
タラララーン♪ タラララーン♪
結標「あっ、私の携帯! 誰かしら……?」カチャ
『一方通行』
結標「あ、一方通行? 何で電話なんか……って、あっ!」
結標「そういえばこっちが連絡するまで帰ってくるな、って言ってたの忘れてたわ」
結標「あわわわっ、今頃遅すぎって怒ってるんじゃないかしら……」アセ
結標「と、とにかく出ないと――もしもし?」ピッ
620: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/06/22(土) 21:35:40.55 ID:xeJ/Hl25o
一方通行『……よォ結標クゥン? 俺に言えねェ用事とやら終わったのかなァ?』
結標「……ご、ごめんなさい。実はまだ終わってないのよ」
一方通行『……はァ、ンなことだろォとは思ってたがな』
結標「えっ、何で?」
一方通行『どォでもイイだろそンなことはよォ。それよりあとどれくらいで終わりそォだ?』
結標「え、ええっと……わかんない」
一方通行『つまり未だに迷走中っつゥことか。状況はよォくわかった』
結標「だ、大丈夫よ! すぐに終わらせてみせるから!」
一方通行『……とりあえず言っとくが、あンま頑張ンじゃねェぞ?』
結標「どういうことよそれ?」
一方通行『そのままの意味だ。無駄なベクトルの頑張りは意味がねェっつゥことだ』
結標「?」
一方通行『まァ、そォいうわけだ。また七時くれェにかけ直すから、それまでには終わらせとけよ』
結標「が、頑張るわ!」
一方通行『……チッ、じゃあな』ピッ
結標「うん、またあとでね」ピッ
結標「…………ふぅ」
結標「やっぱり迷惑だったかしらね? まあ突然だからしょうがないわよね」
結標「このお詫びのためにもちゃんとしたおいしいチョコレートを私が作らなきゃ」
結標「しかし一方通行の言ってることはさっぱりだったわね……何で私が頑張っちゃいけないのかしら?」
結標「まあとにかく、みんなのためにアイツのために早くこの戦いを終わらせないとね!」
結標「よし、いざ戦場へ!」テクテク
ガチャ
―――
――
―
635: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:44:28.58 ID:Rt3NtiTNo
同日 18:10
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ
禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」
一方通行「あァ、よっと」カチッ
カラカラカラカラカラー、タラン!
一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」
禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」
一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ
カラカラカラカラカラー、タラン!
一方通行「あっ、シスターのところで止まった」
禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」
一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」
禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」
一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」
禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」
636: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:46:20.69 ID:Rt3NtiTNo
すみません↑はミスです
同日 18:25
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
一方通行「…………はァ」ピッ
上条「どうだったんだ?」
一方通行「まだまだかかりそォな感じだな。どォやら苦戦してるよォだ」
上条「そうか。頑張ってんだな結標」
一方通行「そォだな。その頑張りで一体何を生み出してるのかわかったモンじゃねェけど」
上条「じゃあそろそろメシできるから、一方通行も向こうで待っててくれ」
一方通行「随分とメシの時間が早ェな。まだ六時半だぞ?」
上条「そうか? 別に普通だろ。あんまり遅くしてもアレだし」
一方通行「まァ、俺はいつだろォと構わねェけどな」ガチャリガチャリ
禁書「あっ、やっときた! 早くルーレットを回して欲しいかも」
一方通行「そろそろメシの時間だァ。あとルーレットニ、三十回分ぐらいありそォな人生をそれまで終わらせるのは不可能だろ?」
禁書「そういえばいい匂いがしてきたんだよ!」
グー
禁書「……いい匂いを嗅いだらおなかが鳴っちゃったんだよ///」カァ
一方通行「勝手にキャラ崩壊させてンなよ暴食シスター」
禁書「なっ、きゃ、キャラ崩壊って何かな!? 私だって一人の女の子であるわけで――」
一方通行「どこの世界に牛一頭食べられる女の子がいンだよ」
禁書「」ピキッ
禁書「……あくせられーた?」
一方通行「あン?」
禁書「普段は温厚で優しい聖女マリアのような広い心を持った私でも、今のはさすがにいらっときたんだよ」
一方通行「ハァ? 誰が聖女マリアだァ? ガキが何言ってンだか」
禁書「…………」プルプル
一方通行「…………」ズズズ
風斬「……え、えっと、その……」オロオロ
スフィンクス「にゃおー?」
637: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:48:41.67 ID:Rt3NtiTNo
禁書「がうっ!!」バッ
ガキン!!
一方通行「よっと」スッ
禁書「なっ、避けられたっ……!?」
一方通行「ぎゃはっ、三下なら無様に噛み付かさせてくれンだろォが、残念ながら俺を噛み付くなンざ不可能なンだよ!」ケラケラ
禁書「ぐぬぬぬぬっ、だったらもう一度――!」
一方通行「やめとけやめとけ。たとえその犬歯が俺の頭部に命中しよォが、皮膚に突き刺さる前に俺の『反射』っつゥ絶対的なチカラが働く」
一方通行「この歳で入れ歯を使いたくねかったら、大人しく下唇でも噛んでるンだな、ぎゃはっ」
禁書「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」
上条「……一方通行」
一方通行「あァ? 何だよ上条」
上条「…………」ポン
一方通行「…………は?」
上条「…………」
一方通行「……お、オイオイ何の冗談だヒーロー? その右手で触られたら能力が使えねェじゃねェか」
上条「…………」
. キラーバイト
一方通行「こ、これじゃあシスターの頭蓋粉砕を避けられねェ――」
上条「……一方通行」
一方通行「……ハァ!?」
上条「一度食らってみろって。すっげぇ痛てえから」ニコッ
一方通行「」
禁書「ふふふふっ、覚悟するんだよあくせられーた」キラン
一方通行「…………ふっ」
ガブリッ!!
―――
――
―
638: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:49:16.38 ID:Rt3NtiTNo
同日 18:30
-黄泉川家・キッチン-
ガララララ
結標「……さて、頑張らないとっ!」グッ
黄泉川「よぉ淡希」
結標「あっ、黄泉川さんおかえりなさい。帰ってたんですね」
黄泉川「話は聞かせてもらったじゃん。どうやら明日のバレンタインに向けて手作りチョコレートを作ってたようじゃんね」
結標「すみません、勝手にキッチン使っちゃって」
黄泉川「別にいいじゃん。明日は大事な日なんだろうからゆっくりじっくりやるといいじゃん」
結標「あ、ありがとうございます黄泉川さん!」
打ち止め「でもヨミカワー! それじゃあキッチンが使えないから晩ご飯作れなくなるんじゃないのー? ってミサカはミサカは空腹を感じながら尋ねてみたり」
黄泉川「んーたしかにそうじゃんね。だったら久しぶりに出前とか頼むか?」
打ち止め「おおっー! いいねいいねえー! 何頼むの!? お寿司!? ラーメン!?」
黄泉川「まあそれはおいおい決めればいいじゃん」
結標「……なんかすみません、ほんと」
黄泉川「そう何度も謝ることじゃないじゃん。子供は我が侭を言う権利があるんだからさ」
吹寄「結標さーん! こっちは準備できたわよー!」
姫神「ここまでやれば絶対に失敗はない。……たぶん」
黄泉川「ほら、友達が呼んでるじゃん!」
結標「は、はい!」テクテク
ワイワイガヤガヤ
黄泉川「……ふふっ、やっぱり青春ってのはいいじゃんね」
打ち止め「ヨミカワ! やっぱりミサカはお寿司がいい! それも特上!! ってミサカはミサカはお子様セットじゃないアピールをしてみたり!」
黄泉川「別にお子様セットでいいだろ」
打ち止め「やっぱり駄目かくそう、ってミサカはミサカは床を叩きながら悔しさを現してみたり」ドンドン
―――
――
―
639: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:50:33.03 ID:Rt3NtiTNo
同日 18:40
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
一方通行「痛っつ、少しは手加減しやがれクソシスターが……」ズキズキ
禁書「ふんだ! 少しは自分のやったことを悔い改めた方がいいと思うんだよ」
一方通行「へェへェスンマセンでしたワタクシめが悪ゥごさいましたよシスター様ァ」
禁書「ふふん。私は心が広いから許してあげるんだよ」
一方通行(ちょろっ……)
禁書「それじゃあ人生ゲームの続きしよ! あくせられーたの番からなんだよ」
一方通行「オマエさっきの話聞いてたか? これから晩メシだって言ってンだろォが」
禁書「そういえばそうだったんだよ。じゃあ一時せーぶっと……」ピッピッ
一方通行「まだこの出来レースを続けるつもりなのかオマエは?」
禁書「ところでとうまー! 今日のごはんは何かな?」
上条「……ふふっ、喜べインデックス! 今夜の晩メシは──」
ドン!
上条「──何とステーキだっ!!」
禁書「おおおおっー!! お肉だお肉ー!!」
一方通行「ただし、極めて安く、限りなく怪しいステーキ肉だがなァ」
上条「おいやめろ」
一方通行「事実を言ったまでだ」
スフィンクス「にゃーん」
上条「はいはいわかってますってスフィンクスさん。はい、いつものキャットフード」コトッ
スフィンクス「…………」
上条「……? どうしたスフィンクス?」
スフィンクス「……しゃおっー!! しゃー!!」
上条「ッ!? な、何だよ何怒ってんだよスフィンクス!?」
スフィンクス『俺様にも肉を寄越しやがれよこの三下ァ!!』
一方通行(とか言ってンだろォか……)
640: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:51:17.49 ID:Rt3NtiTNo
風斬「……えっと、お茶碗にご飯の盛りつけ終わりましたよ」コトッ
上条「あっ、悪りぃ風斬。お客さんなのに準備させちまって」
風斬「い、いえそんな……」
一方通行「お客様が甲斐甲斐しく働いてるっつゥのに、何もやってねェシスターさンがいるってのは面白れェ話だよな」
禁書「ぐっ、な、何もせずにこたつの中でぬくぬくしているあなたには言われたくないんだよ!」
一方通行「勘違いすンな俺は客だ。つゥかコタツでくつろいでンのはオマエも同じだろォが」
禁書「むむっ、そんなに言うんだったら私も準備するんだよ! とうま! 何か私にも手伝えることはあるかな?」
上条「別にいいって、下手に動かれて食器とか割られても困るし」
禁書「……とうま? それはどういうことかな?」キラン
上条「ま、待てインデックス、そこで歯を光らせるのはおかしいだろ!? 今までお前がドジで物壊しまくってきたことは事実だろ!?」
禁書「ドジじゃないんだよ! あれはたまたま運が悪くて転んだだけだもん!」
上条「そういうのをドジって言うんだよ!」
ワーワーギャーギャー!!
一方通行「…………うるせェ」
風斬「……ど、どうぞサラダです」コトッ
一方通行「おォ、すまねェな……って、えっ? サラダ?」
風斬「は、はい。そうですけど……?」
一方通行「何でサラダなンてモンが盛り付けられた皿が、俺の目の前に置かれてンだ?」
風斬「えっと、キッチンに置いてあったので……」
一方通行「いやそォじゃなくてよォ、何で一人一つずつサラダの入った皿が置かれてンだ? しかも一人分とは思えねェほど山盛り」
641: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:51:49.72 ID:Rt3NtiTNo
上条「ふっふっふ、解説しよう一方通行」ダラダラ
禁書「ふーっ、ふーっ」ガジガジ
一方通行「どォいうことだ三下ァ? あと頭からスゲェ量の赤い液体が流れてるけど大丈夫か?」
上条「一見、腹の足しにもなりそうもない野菜たちだが、実はその認識は間違っているのだ!」
上条「シャキシャキとした触感と程よい固さのおかげで食べるのに結構顎を使わなければならない」
上条「しかぁし! これは逆に満腹中枢を刺激してくれるので、結果的に腹いっぱいになるのを助けてくれるのだ!」
上条「キャベツやキュウリなどの緑黄色野菜はもちろん、安くて量多いことに定評のあるモヤシは我々貧乏人の味方なのだ!!」
一方通行「果てしなくどォでもイイ熱弁アリガトウ。つまりアレかァ、空腹をしのぐ悪あがきとしてこンなモン用意されてるっつゥわけか?」
上条「それだけじゃないぞ。普通に栄養もあるし、いろいろな料理に使えるし……」
一方通行「ンなこたァどォでもイイ。オマエこの量の雑草どもは野菜嫌いの俺に対しての当て付けかコラ」
禁書「あくせられーた! 好き嫌いをしちゃ駄目なんだよ!」
一方通行「うるせェよ、別に好き嫌いとかしねェし。食べる必要性が見いだせねェだけだし」
上条「さっき自分で野菜嫌いって言ったじゃねえか」
一方通行「……とにかく俺は野菜なンざ絶対ェ食わねェ」
上条「へー、まあそんなに言うなら許してやらねえこともねえか」
一方通行「ケッ、さすが三下だ。懸命な判断だな」
上条「…………何て言うと思ったか三下ぁ!」バッ
一方通行「何ィ!?」
上条「悪りぃがこのサラダは葉っぱ一枚たりとも残させはしねえよ! この野菜を作ってくださった農家の人の気持ち考えろコラァ!」
一方通行「機械のオートメーションで生まれてきたもん並べて何を言ってンだオマエはァ?」
上条「そういうことは関係ねえんだよ。『お残しは許しまへんで』っていう有名な偉人の言葉を知らねえのか?」
一方通行「それ言ったヤツが偉人かどォかは置いといて、よォするに作ってくれたヤツに感謝の気持ちを持てっつゥことだろ?」
上条「ま、まあそうだけど…… 」
一方通行「作ってくれてアリガトウ。だからサラダとかいう食の反逆者を残させてくれ」
上条「お願いの仕方の問題じゃねえだろ! つーか絶対感謝してねえだろテメェ!」
つんつん
上条「ん?」
風斬「……あ、あの」
上条「何だ風斬?」
風斬「早く食べた方が良いんじゃないでしょうか? せっかくの料理が冷めてしまいますし……」
上条「あ、ああそうだな。悪りぃ」
風斬「それに……」チラッ
上条「?」
禁書「──うん、うん、やっぱりお肉は美味しいんだよ!」パクパク
風斬「……もう食べ始めてるし」
642: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:53:04.95 ID:Rt3NtiTNo
上条「なっ、何勝手に食ってんだテメェは!」
一方通行「気のせいだと思うンだけどよォ、何か俺の分の肉が減ってるよォな気がすンだが!? つゥか気のせいじゃねェだろ暴食シスターがッ!」
禁書「それは気のせいなんだよ。あなたの勘違いなんだよ」
一方通行「ほォ、ステーキっつゥのは作る過程で自然と噛み千切られた跡が出来るモンなのかゴルァ」
上条「まあまあ落ち着け一方通行。少しぐらいいいだろ?」
一方通行「オマエの分にいたっては五割持っていかれてるからな」
上条「おいこらインデックス」
禁書「世の中には早いもの勝ちという言葉があるんだよ」
上条「それはある一定のルールが設けられてから適用される言葉だ!」
一方通行「……まァ、もォどォでもイイや。俺も食う」パクッ
上条「なっ」
一方通行「…………やっすい肉の味だなァ」モグモグ
禁書「そう? 普通においしいんだよ」グモグモ
一方通行「誰も不味いとは言ってねェ。及第点には達してる」ズズズ
禁書「相変わらず素直じゃないね、はむっ。……あともう少し量が欲しいんだよ」マグマグ
一方通行「人の肉奪ったヤツのセリフじゃねェよな」パクッ
禁書「奪ってないんだよ。気付いたら口に入ってたんだよ」
一方通行「やっぱりオマエが俺の肉食ったンだな」
上条「っておいいいいいいいいいいいいい!!」
禁書「!?」ビクッ
一方通行「あァ?」
上条「まだいただきますの挨拶してねえだろうがっ! 勝手に食い始めてんじゃねえよテメェら!」
一方通行「オマエのキレるところがいまいちわかンねェよ。肉奪われた方に怒りの比重を増やせよ」
上条「うるせえ。とにかく一度挨拶しとこうぜ? これ以上収拾がつかなくなる前に」
一方通行「真面目だねェ上条クン。小学校じゃねェンだからどォでもイイと思うけどなァ」
上条「けじめってのは必要だろ。何をするにしてもな」
一方通行「さすがはヒーロー様だ。言うことが違う違う」
上条「そんな大したヤツじゃねえよ俺は」
禁書「とうまー! するなら早く済ませちゃおうよ。早く食べたいかも」
一方通行「つゥかよォ、オマエは十字教のシスターさンだろォが。食前のお祈りはどォしたお祈りはァ?」
禁書「わ、私は修行中の身だから完全なる聖人の振る舞いができないから忘れてただけで、決して神に感謝の気持ちを持っていないわけじゃないんだよ!」
一方通行「ちゃンと修行しろエセシスターが」
上条「あーもううるせえ! メシが冷める前にとっとと食っちまうぞ! ほいじゃー」
『いただきます!!』
―――
――
―
643: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:54:24.13 ID:Rt3NtiTNo
同日 19:00
-黄泉川家・リビング-
芳川「……ところでこれはどういう状況かしら?」
打ち止め「見ての通りだよ、ってミサカはミサカはタマゴのお寿司を食べながら説明してみたり」モグモグ
芳川「…………」
吹寄「──そう。ここでチョコレートを一口大になるように切るのよ」
結標「てやっ!」バッ
ドグシャ!
吹寄「って、何でそこで包丁を叩きつけるのよ! 普通に切ればいいでしょ普通に!」
結標「ふ、吹寄さん怖い……」ガクブル
姫神「チョコレートが飛び散った。無残」
吹寄「はぁ、また作り直しか……」
結標「ごめんなさい……」
姫神「吹寄さん。これはなりふり構ってはいられない。スプーンですくってラクラク配分作戦を進言する」
吹寄「そうね。じゃあ今冷蔵庫に入ってるヤツが固まったらそれで行きましょう」
芳川「……つまり、明日のバレンタインに備えて手作りチョコレートを作っているのだけど、思った以上に苦戦している、ってことかしらね?」
打ち止め「おお、さすがヨシカワ! 的確な分析力だね、ってミサカはミサカは褒め称えてみたり」
芳川「ふふっ、ありがと。で、彼女たちがキッチンを使っているから今日の夕食はお寿司の出前ってわけね」
黄泉川「そうじゃん。ほい、これが桔梗の分」スッ
芳川「お寿司ならパソコン使いながらでも食べられ──」
黄泉川「ここで食べるじゃん」ニコッ
芳川「いや、今ちょっとネットが盛り上が──」
黄泉川「…………」ニコニコ
芳川「はい」
644: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:55:49.97 ID:Rt3NtiTNo
黄泉川「おーい、チョコレートばっか作るのもいいけどそろそろ何か食べたほうがいいじゃん!」
結標「はーい」
黄泉川「ほらっ、吹寄に姫神も」
吹寄「えっ、あたしたちもいいんですか?」
黄泉川「おう、別に遠慮する必要ないじゃん。というかもうお前らの買っちゃったから食べてくれないと逆に困る」
吹寄「すみません、ありがとうございます」
姫神「その分のお代払います」
黄泉川「別にそんな変な気使わなくてもいいじゃん。子供なんだから大人からの好意は素直に受け取るもんじゃん」
吹寄「は、はい、じゃあお言葉に甘えて……」
姫神「いただきます」
結標「……! ……!」モグモグ
打ち止め「どうしたのアワキお姉ちゃん? 何か食べるペース早いね、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
結標「もがもがまがまが」
芳川「……淡希、ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。何言っているのかわからないし、何より下品よ」
結標「……ごくん。す、すみません」
打ち止め「結局、どうしてそんなに急いでるの? ってミサカはミサカはは同じ質問を問いかけてみたり」
結標「うん、私いまだにチョコレート完成してないから、早く再開したほうがいいかなっ思って」
黄泉川「あんまり焦ってもいいものができるとは思えないけどな。ゆっくりじっくり作ればいいと思うじゃん」
姫神「黄泉川先生の言うとおり。トリュフは作るのにそんなに時間がかかるものじゃない」
芳川「かと言って、あんまり遅いと困るんじゃないかしら? 吹寄さんや姫神にとっては」
吹寄「……そうですね。たしかに完全下校時刻もう余裕で過ぎてますし」
黄泉川「何なら私が車で送ってやるじゃん。あんま遅くなるのは許さないけど」
吹寄「いいんですか?」
黄泉川「おう」
芳川「でも愛穂? そんなこと言っちゃったらこの子たちが帰るまで貴女の生きる活力が飲めないわよ?」
黄泉川「ぐっ、い、いや大丈夫じゃん。生徒をきちんと自宅まで送り届けるまでが先生の仕事。仕事中に酒を飲んだりするわけにはいかないじゃん!」
芳川「……そういうわけで三人とも。今日愛穂が至福の時間を迎えることができるかどうかは貴女たちの手にかかっているわ。せいぜい頑張ってちょうだい」
結標「な、何か一気にプレッシャーがかかりましたね」
吹寄「結標さん。次こそ成功させましょう、ね?」
姫神「大丈夫。結標さんは頭がいいから絶対にできる。ただそのおかしな思考回路をどうにかすればいい話」
結標「褒めてるのか貶しているのかどっちかにして欲しいわね」
打ち止め「ひどい言われようだね、ってミサカはミサカは少し同情してみたり」
645: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:56:58.09 ID:Rt3NtiTNo
結標「…………!」モグモグゴクン
結標「よし食べ終わったわ。ご馳走様でした!」ガタッ
吹寄「なっ、食べるの早っ!?」
結標「悪いけど必ず成功するという確証がない以上、こんなところで時間を食うわけにはいかないわ」
姫神「何も知らずにこのセリフだけ聞いたら。料理の話なんてしてるとは思わない」
結標「そういうわけで先に行ってるわね。吹寄さんたちはゆっくりしてていいわよ」
吹寄「えっ、ちょ、結標さん!」
結標「大丈夫よ! 冷蔵庫の中のチョコレートはもう冷えてるはずだからすぐにでも作業に取り掛かれるわ!」
吹寄「いやそうじゃなくて、あたしたちがいないとまた何をしでかすかわかったもんじゃ――」
結標「わかってるわ、ちゃんとレシピ通り作ればいいのよね?」
吹寄「た、たしかにそうだけど」
結標「作戦は一刻を争うわ、今度こそ成功させてみせる!」ダッ
吹寄「あっ……」
姫神「…………」
吹寄「過ちは、繰り返させないっ!! ご馳走様でした!」バッ
姫神「……ご馳走様でした」バッ
黄泉川「はいはーい、頑張るじゃんよー」
打ち止め「しかし人の話を聞かないねーアワキお姉ちゃん。自分が料理音痴だって自覚はしてるはずなのに」
芳川「たぶんあれじゃない? 一つ一つできることが増えていくたびに変に自信を付けちゃって暴走、って感じ」
黄泉川「まだまだ若いんだから、今の内に失敗をするのはいいことじゃん」
芳川「彼女の場合成功の元になる失敗かはわからないけどね」
打ち止め「ふぅ、これじゃあいつになったらチョコレートができるのかわからないね、ってミサカはミサカは呆れながら首を振ってみたり」ヤレヤレ
芳川「……で、そういう貴女はバレンタインチョコは作ったりしないのかしら打ち止め?」
打ち止め「ふっふっふ、その点はアワキお姉ちゃんとは違って抜かりないよ、ってミサカはミサカは自信満々の表情を浮かべてみたり」
黄泉川「おっ、意外じゃん。てっきり何も考えてないかと思った」
打ち止め「明日のことはすでに今日、エンシュウと打ち合わせ済みなのだ! ってミサカはミサカは声を大にして発表してみる」
芳川「……何だか嫌な予感しかしないわね」
―――
――
―
646: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:58:09.01 ID:Rt3NtiTNo
同日 19:40
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
タッタラタッタッター♪
禁書「……おおっ! 何か騙されて買わされた宝くじが当たったんだよ!」
一方通行「おォおォスゲェスゲェ。上条クンには絶対ェ無理な芸当だなァ」
禁書「これで三千万円ゲット! もしかしたらあくせられーたに追いつけるかも」
一方通行「あァ? オマエ借金っつゥモン知ってっか?」
禁書「うっ、せっかくそんなの忘れてポジティブにゲームしてたのに……」
一方通行「借金っつゥのは忘れて許されるよォな甘めェモンじゃねェンだよ」
ジャバババババ!!
上条「……くっ、やっぱり肉の油汚れはしぶといな。一個十八円で売ってた超安物洗剤じゃ厳しいぜ」ゴシゴシ
風斬「……、……あの」ゴシゴシ
上条「何だ?」ゴシゴシ
風斬「これ……、本当に洗剤ですか?」
上条「ああ、歴としたスーパーで買った洗剤だぞ? 安物だけど」ゴシゴシ
風斬「……いくら安物といっても汚れ落ちなさすぎじゃ?」
上条「そうだよな。全然汚れ落ちる気しねーもん」ゴシゴシ
風斬「はい……」
上条「あ、そろそろ洗剤が少なくなってきたな。足さなきゃな……」カポッ
風斬「えっ」
ジャボボボボボボボッ!
上条「……これでよし」キュッキュッ
風斬「……もしかしていつも水で洗剤をかさ増ししてるんですか?」
上条「まあな。少しでも長く使いたいからな。上条さん物を大切にする主義ですから」
風斬「……それじゃあ落ちる汚れも落ちないじゃないですか。シャンプーじゃないんですよ?」
上条「な、何でシャンプーもかさ増ししてるってわかったんだ!?」
風斬「……、何となくです」
647: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:58:44.36 ID:Rt3NtiTNo
上条「……しかし困ったな。今まで肉の油汚れなんてなかったから、ここまで洗剤が弱体化してるとは思わなかったぜ」
風斬「わ、私が買ってきましょうか? ……洗剤」
上条「いや、そこまでしてくれなくてもいいよ。……うーん、ほんとどうしよ……」
一方通行「あァー、コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ
上条「あっ、一方通行」
一方通行「あン? 何いかにも三下だっつゥ顔でこっち見てきてンだよ?」
上条「い、いや別に……。そういや一方通行。お前の能力って何でもできる万能能力だよな?」
一方通行「何でもっても限度があるけどな。で、それがどォかしたか?」
上条「それがさあ、今この油で汚れまくった皿を洗ってんだけど洗剤が弱すぎてなかなか汚れが落ちねえんだよ」
一方通行「……何となく察した。よォするにこの俺に皿洗いをしろって言いてェンだな?」
上条「おう。お前のベクトル操作なら楽勝だろ?」
一方通行「まァたしかに俺からしちゃ楽勝だがよォ、正直能力使用モードになってまでンなことしたくねェンだよな」
上条「頼む! そこを何とか一方通行様!」
風斬「…………」
一方通行「……チッ、しょうがねェな。こっちとしてもどっかのシスターみてェにタダ飯食らいなンて言われたくねェからな」
上条「さすが一方通行! そこの流しに置いてあるヤツだ、よろしく頼むぜ!」
一方通行「……オイオイ何だァ? 学園都市製の洗剤で落ちねェ汚れって聞いてどンな重油クラスの油汚れかと思えば、ただの安肉からあふれ出てきた汚ねェ油汚れっつゥいかにもな三下じゃねェか」
上条「いや、一般的な家庭に重油で汚れた皿なんてあるわけねえだろ」
一方通行「ったく、こンなモンで俺を使うなンざオマエ、万札で額の汗拭うくれェの贅沢してンぞ?」
上条「それはたしかに贅沢だな! もしやってるヤツ見かけたらぶん殴りたくなるほど贅沢だな!」
一方通行「まァイイ、とっとと終わらせて缶コーヒーにあり付くとするかァ」カチ
風斬「あ、あの……これ、スポンジ」スッ
一方通行「あァ? いらねェよそンなゴミ。俺にはこの手とチカラがあれば十分だ」スッ
一方通行「さァて、お片付けの時間だァ。一瞬で終わらせてやる」
シュバババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!
一方通行「……ほらっ、終わったぞ」カチ
上条「お、おう……」
一方通行「? 何だよ」
上条「い、いや、何が起こったのかさっぱり理解できなかったら驚いてんだよ」
一方通行「原理はシャワーと同じだ。水を圧縮して皿に向けて高速で噴射して汚れを落としただけだ」ガチャ
上条「へー、でもそういうのって水流操作系のヤツらの専売特許じゃねえのか?」
一方通行「そりゃそォだろ。アイツらほど器用に水を操ることなンざ俺には出来ねェよ。俺はただ力の向きを操作してるだけだ」
上条「? よくわかんねえけどサンキューな。おかげさまで洗い物が終わったよ」
一方通行「ケッ、次からはンなこと頼むンじゃねェぞ、面倒臭せェから」ガチャリガチャリ
上条「ありがとなー」
風斬「…………」
648: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 22:59:22.72 ID:Rt3NtiTNo
一方通行「……チッ、くっだらねェ」ズズズ
禁書「どうしたの? 何かすごい音がしてたけど」
一方通行「俺が働いてやっただけだ。何もせず遊んでるだけのオマエと違ってな」
禁書「むぅ、またそんなこと言って。もしかしてあなたは私が嫌いなのかな?」
一方通行「さァな。少なくとも野菜よりかは嫌いじゃあねェ」
禁書「何だか微妙な立ち位置な気がするんだよ……」
一方通行「果てしなくてどォでもイイ」ズズズ
禁書「……ところであなたは会うたびいつもコーヒー飲んでるよね。好きなの?」
一方通行「好きじゃねェと飲まねェだろ」
禁書「おいしいの?」
一方通行「……ンだァ? あまりの空腹に俺のコーヒーにでも集る気になったかァ?」
禁書「そ、そんなことないんだよ! というか何でもかんでもそっちの方面に話を持っていってほしくないかも!」
一方通行「まずは普段の行動を見直すことから始めろ。そォすりゃ少しは俺のレスポンスも変わるかもな」
禁書「ううっ、ただ私はかんコーヒーって飲んだことないから少しどんなのか気になっただけなのに……」
一方通行「結局は自分の欲望に沿って動いてンじゃねェか」
禁書「で、でも私から食欲を奪ったら何も残らないと思うんだよ。つまりこの食欲こそが私の唯一のアピールポイントなんだよ」
一方通行「自分で悲しいこと言ってンなよ。つゥかアピールポイントなら完全記憶能力があンじゃねェか」
禁書「たしかにそうかもだけど、日常生活で活かせた覚えがこれっぽっちもないんだよ」
一方通行「豚に真珠とはまさしくこのことだな」
上条「何話してんだよお前ら」テクテク
風斬「…………」テクテク
一方通行「あァ? コイツの存在意義について話し合ってただけだ」
禁書「あれ? いつの間にそんな話題になったの?」
一方通行「自分で言い出したことだろォが。今こそ完全記憶能力を活かすときだ」
禁書「…………、あっ、ほんとだ」
上条「一体どんな会話が繰り広げられてたんだよ」
一方通行「他愛もねェ世間話だよ」
禁書「あっ、そういえばあくせられーたの番でずっと止まってたんだよ。早くルーレット回してほしいかも」
一方通行「まだやるつもりかよ面倒臭せェ。大企業の社長とフリーターじゃあスペック差がありすぎて面白くねェンだよ」
上条「つーかインデックス。ゲームばっかしてるのもいいけど、さっさと風呂入っちまえよ? そろそろお湯溜まってると思うから」
禁書「うん、わかったんだよ。一時せーぶっと……」ピッピッ
一方通行「まだやるつもりなのかよオマエ……」
上条「そういえば一方通行。結標から連絡は来たのか?」
一方通行「……あ、そォいや七時にかけ直すっつったのにかけ直すの忘れてた」
上条「今からでもかけてみれば?」
一方通行「そォする」ピッ
プルルルルルルル、プルルルルルル
649: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 23:00:38.30 ID:Rt3NtiTNo
ピッ
結標『……も、もしもし?』
一方通行「調子はどォかな結標クゥン?」
結標『あ、あはは、ま、まずまずかな?』
一方通行「で、用事とやらは終わったのか? まァ、その様子じゃ聞くまでもねェか」
結標『……ごめんなさい』
一方通行「つゥかよォ、俺は今上条の家で世話になってる最中なンだけどさァ」
結標『えっ、今上条君の家にいるの?』
一方通行「そォだ。だからイイ加減出て行かねェとここにいる人に迷惑にかけちまうンだわ」
結標『そ、そうね。もうこんな時間だし迷惑になるわよね』
一方通行「そォいうことだ。だからオマエが居間何をしてンのか知ンねェけどよォ、俺ァ今からそっちへ戻るぞ」
結標『えっ!? ちょ、ちょっとそれはタンマ! 待ってもうちょっと待って!』
一方通行「待てねェな。さっきから言ってるが上条に迷惑がかかるわけだし、何より俺が早く寝たい」
結標『そ、そこを何とか一方通行様ぁ! 第一位様ぁ!』
一方通行「無理」
上条「……なぁ一方通行?」
一方通行「あァ?」
上条「別に帰らなくても泊まって行きゃいいじゃねえか」
一方通行「……ハァ?」
上条「お前がよかったらの話だけどな」
一方通行「…………待て待て。一体どォしてそォいう話になったンだァ?」
上条「何でって、まだ結標の用事は終わってねえんだろ? だったらその邪魔をしてやるのは悪いと思って」
一方通行「オマエはそれでイイのかよ? こンなただでさえ狭っ苦しい上にインデックスとかいう居候を住まわせてる部屋に、俺みてェなヤツを止まらせることァできンのかよ?」
上条「別に今さら一人増えたところで変わんねえだろ。何とかなるって」
一方通行「…………チッ」スッ
一方通行「もしもし結標クン? どォやらここの家主のご好意で俺はここの部屋に一泊させてくれるらしい」
結標『えっ、ほんとなのそれ?』
一方通行「あァ。そォいうわけでその用事とやらをゆっくり終わらせることができるっつゥわけだ。よかったな」
結標『……で、でも何か悪いわ。ただでさえいろいろ迷惑かけちゃってそうなのに』
一方通行「そォ思ってンならその用事とやらを確実に終わらせろォ。その迷惑っつゥのを覆せられるくれェの完成度でなァ」
結標『……わかったわ』
一方通行「じゃ、切るぞ? せいぜい足掻くこったな」
結標『了解! じゃあね』ピッ
650: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 23:01:11.02 ID:Rt3NtiTNo
一方通行「…………」スッ
上条「で、どうすんだ?」
一方通行「そォだな。お言葉に甘えさせてもらうとするわ」
上条「そうか。じゃあ着替えとか用意しとかないとなー」
一方通行「チッ……、ってかいつの間にかコーヒーなくなってンじゃねェか。コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ
風斬「…………、あ、あの」
上条「何だ風斬?」
風斬「私、そろそろ帰ろうと思います」
上条「おう。何つーかいろいろありがとな」
風斬「い、いえ。私は別に何も……」
上条「おおーいインデックスー! 風斬が帰るってよー!」
禁書『うんわかったー!! またねひょうかー!!』
風斬「う、うんまたね……!」
上条「じゃ、途中まで送ってくよ」
一方通行「待て上条」
上条「ん? どうかしたか?」
一方通行「俺が代わりに行く」
風斬「…………!」
上条「どういう風の吹き回しだ? お前らしくねえこと言って」
一方通行「缶コーヒーのストックが切れた。それを買いに行くついでだ」
上条「あー、そういうことか……って、あの大量の缶コーヒーもう尽きたのかよ!」
一方通行「そォいうわけだ。つゥわけだ、行くぞ風斬」ガチャリガチャリ
風斬「は、はい……」タッタッ
上条「夜道には気をつけろよー」
一方通行「あァ? 誰に向かってンなこと言ってンのかわかってンのかオマエ?」
上条「ははっ、まあそうだよな」
風斬「お、お邪魔しました……」
上条「また来いよー」
ガチャリ
―――
――
―
651: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 23:03:14.81 ID:Rt3NtiTNo
同日 20:00
-黄泉川家・キッチン-
結標「…………ふぅ」ピッ
吹寄「電話どうだったの?」
結標「上条君のおかげでなんとかなったわ」
姫神「上条君? 何で上条君の名前が?」
結標「何か今上条君の家にいるらしくて、あまりに遅いからって泊まらせてもらえるようになったらしいわ」
吹寄「へー、そんなことがあったのね」
結標「まあこれで私のタイムリミットが少し延びたってことになるわね」
吹寄「そうね。じゃあせっかく上条が時間を稼いでくれたんだから、それを無駄にしないためにもさっき失敗したトリュフの元を作り直さないとね」
結標「……はい」
姫神「吹寄さん」
吹寄「何?」
姫神「たしかにタイムリミットは延びたかもだけど。あまりにも遅すぎると明日に支障が出るかもしれない」
結標「そ、そうよね。九時や十時まで付き合わせるわけにはいかわないわよね」
吹寄「別にそんなのあまり気にしなくてもいいのに。あたしたちの分はもうできてるわけだから、あとは帰って身支度してから寝るだけだし」
結標「それでもいつもより遅くなるのは確実だわ」
吹寄「まあそういう心配をしてくれるなら、ちゃんとあたしたちの言うこと聞いて早くチョコレートを無事完成させてほしいわ」
姫神「うん」
結標「…………次からは気をつけます」
吹寄「じゃあまず役割を分けましょ。最初はまずみんなでひたすらチョコレートを刻んでいって、あらかた終わったらあたしたちで湯銭をするわ」
吹寄「だから結標さんはそのままひたすらチョコレートを刻む作業に取り掛かってちょうだい」
吹寄「そのあと湯銭を終えた大量のチョコレートを一気に冷やして、そのあと総力戦にかかるわ。わかった?」
結標「りょ、了解!」
姫神「把握した」
吹寄「よし! じゃあまずは包丁で刻むわよ」シャキーン
結標「わかったわ」つノコギリ
吹寄「はいそこ! 言ったそばからこっちが言ったことを無視しない!」
結標「で、でも、私これのほうが使いやすい……」
吹寄「いいから包丁持ちなさい包丁を」
結標「……はい」
姫神「果たしてチョコレートは完成するのか。ものすごく不安になってきた」トントントン
吹寄「それは思っても口に出すのはやめたほうがいいわよ」トントントン
結標「ううっ」ドンッドンッ
吹寄「はい包丁を思い切り叩き付けない!」トントントン
―――
――
―
652: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 23:04:32.93 ID:Rt3NtiTNo
同日 20:10
-第七学区・街頭-
<ありがとうございましたー!!
一方通行「さァて、こンだけ買やァさすがに足りンだろ」ガチャガチャ
風斬「…………、それ、全部飲むんですか?」
一方通行「そりゃそォだろ。そのつもりで全部買ったンだからよォ」
風斬「……今日中にですか?」
一方通行「いや、そりゃねェだろ。さすがの俺でもこれを今日中に飲み切るなンざ無理だ。つゥか、そもそもそンな急いで飲む意味がねェよ」
風斬「た、たしかにそうですけど……」
一方通行「コーヒー、っつゥのはじっくり味わって飲むモンだ。缶コーヒーだろォが、キチンと豆から作られたコーヒーだろォがな」
風斬「そ、それであのペースで飲むんですか?」
一方通行「ああ」
風斬「……味わってるんですか?」
一方通行「ああ」
風斬「…………、そうですか」
一方通行「?」
風斬「…………
一方通行「…………」
風斬「…………」
一方通行「……つゥか、オマエってどこに住んでンだ? この学区内か?」
風斬「えっ?」
一方通行「今何となく道を歩いてっけどよォ、正直オマエがどこに住ンでるか知らねェからな」
一方通行「一応見送りっつゥことで歩いてる以上、どの辺りまで送ればイイか把握しときてェからな」
風斬「そ、そうですか。えっと……、い、一応この学区内です……、はい」
一方通行「……そォか」
風斬「は、はい……」
一方通行「…………」
風斬「…………」
653: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/07(日) 23:06:29.76 ID:Rt3NtiTNo
風斬「あ、あの……」
一方通行「何だ?」
風斬「こ、この辺りまででいいですよ? もうここまで来ればすぐに帰れますから」
一方通行「本当か? もし俺に気ィなンてモン使ってやがったらブン殴るぞ」
風斬「い、いえ、そんなことない、です」
一方通行「そォか。なら別にイイけどよォ」
風斬「で、ではこれで――」
一方通行「…………いや、待て」
風斬「……? は、はい」
一方通行「オマエに話しておきてェことがある。少し時間イイか?」
風斬「話……、ですか……?」
一方通行「ああ」
風斬「……別にいいですよ、な、何でしょうか?」
一方通行「話しておきてェ……つゥか、実際は聞きてかったことだ。上条の家でオマエと再会したときからな」
風斬「…………」
一方通行「率直に聞くぞ」
風斬「は、はい」
一方通行「結標にトラウマの壁を乗り越えさせ、チカラを与えたのはオマエか?」
風斬「…………!」
一方通行「…………風斬氷華……いや、『正体不明(カウンターストップ)』、っつった方がイイか?」
風斬「…………」
―――
――
―
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。