結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」 前編
結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」 中編
670: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:53:00.04 ID:u/ieRukjo
同日 20:15
-第七学区・街頭-
風斬「…………私のこと、知っていたんですか?」
一方通行「……ああ。話だけならだいぶ前から聞いたことがあった。昔、実験関係で霧ヶ丘女学院へ通っていたときがあって、その時にな」
一方通行「オマエと初めて会って名前を聞いた瞬間から、俺はこの噂を思い出していた」
一方通行「『虚数学区・五行機関』を知る鍵。それがオマエだってことをな」
風斬「…………」
一方通行「一般人から見たらオマエはただの人間かもしれねェ。だが、あらゆるベクトルを観測し操る俺の目から見れば、オマエがただの人間じゃねェことはわかる」
一方通行「能力者が無意識に発生させるAIM拡散力場。それによって構築されてるいわば全身異能の人間だ」
一方通行「上条当麻の右手から逃げるような立ち回りも、アレに触れたら即消滅させられるからだろ?」
風斬「……やっぱり、あなたには隠し通すことができないようですね」
一方通行「俺を誰だと思ってやがる」
風斬「じゃあ私に何かと気をかけていたのは、単に私の動向を探っていたから、ということですか?」
一方通行「否定はしねェよ」
風斬「…………」
一方通行「……チッ、まァ安心しろォ。オマエに敵意がねェっつゥことはすぐにわかったからな」
風斬「そう、ですか。それはよかったです」
一方通行「だが残念ながら今は違う。場合によりゃあこの首筋に付いている電極のスイッチを押すことになる」コンコン
風斬「……、さっき言った結標さんの件ですか?」
一方通行「ああ」
風斬「……だったらあなたは、何で私が彼女をを超能力者(レベル5)にしたと思ったんですか?」
一方通行「……そォだな。アイツがレベル5になったきっかけはスキー旅行のときの雪合戦だ」
一方通行「電極の充電が切れて絶体絶命になった俺をアイツは自分自身をテレポートさせることで救った」
一方通行「はたから見れば自分自身でトラウマを乗り越えて、壁を打ち破った女。そォいう風にしか見えねェだろォ」
一方通行「だが俺は感じたンだよ。演算補助を受けていなくて何が起こっているのか理解できねェ状態でも、アイツの周りから何か異質なチカラの動きがあったことをな」
一方通行「で、そのチカラの感じが何となくオマエから発せられるモンと似ていた。それがオマエがアイツにチカラを与えたと考える理由だ」
風斬「……単純に勘違いじゃないんですか? 演算補助を受けていない状態だからいろいろパニックのようなものに陥っていただけじゃ……?」
一方通行「いや、それはありえねェよ。ハッキリ言うがこの感じてるモンっつゥのは俺の能力とはまた別のモン、よォするに直感だ」
一方通行「俺自身のカラダが……言わば本能が感じとったモンだ。これこそ現実味のねェ曖昧な答えかもしれねェ。だが俺は俺自身を信じてる」
風斬「……そうですか。たしかに自分を信じることは大事かもしれません。けれど、それで私を犯人みたいに言われるのは……いやです」
一方通行「そォだな。オマエの言うとおり何の確証もねェただの憶測だ。だが俺を今キチンと確証を持ってオマエの前に立ってンだよ」
風斬「どういうことですか?」
一方通行「じゃあ仮にだ。オマエはアイツのトラウマ克服に手助けしてねェとしよォ」
風斬「……はい」
671: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:54:37.42 ID:u/ieRukjo
一方通行「だったら何でオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知ってンだ?」
風斬「!? そ、それはあ、あなたが――」
一方通行「俺がアイツが超能力者(レベル5)になった、って言ったからか? 悪りィが俺ァオマエの前じゃそンなこと一言も言ってねェぞ」
風斬「うっ……」
一方通行「さらに言うならこのことは重大な機密、っつゥことに一応なっている。だから俺らの間じゃこれは正式に発表されるときまで秘密にする約束をしている」
一方通行「オマエが一番関わりがあるヤツら、上条、インデックスの中でこれを知ってるのは上条だけだ」
一方通行「上条はこういうことをべらべら言いふらすような三下みてェなことをするヤツじゃねェ」
一方通行「だからオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知る手段はほぼねェっつゥことになる」
風斬「…………、…………」
一方通行「答えてもらうぞ風斬。どォいうつもりでアイツにこンな超能力者(レベル5)なンつゥ過酷な道に引きずりこンだのかを……」
風斬「…………」
一方通行「…………」
風斬「…………です」ボソッ
一方通行「あァ?」
風斬「…………、あの子を、あの子の取巻く環境を……守りたかったから……です」
一方通行「あの子……ソイツはインデックスのことか?」
風斬「……はい」
一方通行「どォしてインデックスの話になりやがンだ? それが結標の手助けをした理由にどォ繋がるンだよ」
風斬「…………もし、あのまま結標さんを助けずに、そのまま雪合戦を続けたとします。おそらくあなたは今をここに立っていないかもしれません」
一方通行「……俺が垣根に殺されてたっつゥことか?」
風斬「…………」
一方通行「……チッ」
風斬「……もし、そんなことになったら絶対にあの子は悲しみます。もしかしたら、まったく関係ないのに、自分のせいだと自分を責めてしまうかもしれません……」
一方通行「……それはありえねェ話だろ。俺みてェなクズが死ンだところでインデックスにはまったく関係のねェはずだろォが。ヤツと俺はまったくの他人なンだからよォ」
風斬「それは間違ってますよ。あの子はあなたの思ってる以上にあなたのことを信頼してますから」
一方通行「……わけがわからねェ、ありえねェよそンなこと」
風斬「……さっき、あなたはあの子に噛みつかれましたよね?」
一方通行「それがどォかしたか?」
風斬「あれって、あの子が本当に信頼してる人にしかやらないんですよ?」
一方通行「ハァ? そンなわけ……いや待てよ」
一方通行(たしかにアイツの噛みつき攻撃を食らってるヤツは基本的に上条だ)
一方通行(だけどスキー旅行ンときに、インデックスのヤツおちょくった回数が上条より圧倒的に多かったアホ二人、土御門と青髪ピアスがいる)
一方通行(けどソイツらがアイツの怒りの牙を食らったところなンざまったく見たことねェ。つゥか上条の方に全部行っていた……)
一方通行(……つまり、上条に噛付くことでしか鬱憤を晴らすことができない。それができるのは決してそのせいで繋がりが断ち切られることがねェって信じてるから……?)
672: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:55:42.78 ID:u/ieRukjo
一方通行「…………」
風斬「……思い当たるところがあったみたいですね」
一方通行「……ああ。……いや、やっぱりおかしいだろォが」
風斬「何がですか?」
一方通行「俺がアイツに一体何をしてやったンだと言うンだ? ただで食いモン食わせてやったことかァ? 一緒にゲームで遊ンでやったことかァ?」
一方通行「アイツがどォいう経緯で上条と一緒にいるのか知らねェが、俺は上条みてェなヒーローじゃねェっつゥことは周知の事実だろォが!」
風斬「……それは私にもわかりません。でもあなたにはあの子が信頼するに足る何かがあることは間違いないです」
一方通行「信じられるわけねェだろォが。インデックスが俺を信頼してるなンていうクソみてェな妄言はよォ」
風斬「……たしかに、この話はあなたの言うように妄言かもしれません。けど……」
風斬「あの子があなたに向けている笑顔は全部、あなたの言うようにまったく信頼されてない人に向けられているような笑顔ですか?」
一方通行「……笑顔なンざどォとでも作れる。外じゃ誰にでも満面の笑みを見せられるヤツなンざクソみてェにいるぜ? 全部目先の利益のためのな」
風斬「あなたにはあの子の笑顔がそういう風に見えるんですか?」
一方通行「……ああ」
風斬「なら、何であなたはあの子と一緒にいられるんですか?」
一方通行「…………ッ」
風斬「何でわざわざゲームで対戦をして遊んであげたりしたんですか? 何でお腹を空かせたあの子に食べ物を食べさせてあげたんですか? 何でお互い憎まれ口をたたき合うような意味もない会話をしてあげたんですか?」
風斬「あの子があなたの言うような笑顔をするような子だったら、あなたはここまでのことをしてあげないんではないですか?」
風斬「あなたも本当はわかってるんじゃないですか? あの子がそんなことを目先の利益なんてものを考えるような子じゃないってことを」
一方通行「…………」
風斬「インデックスは優しいですよ。私のことを『化け物』だと知ってても、何の曇りもない笑顔で私のことを『友達』と呼んでくれます」
風斬「そんな子だから、私は一人じゃないんです。私はここに存在できるんです」
風斬「だから、私は悲しませたくないんです……! 私に、生きる意味を与えてくれた友達を……!」
一方通行「…………オマエがどれだけアイツのことを想っているのかはわかった」
風斬「…………」
一方通行「だけどよォ、こっちからしたらだからどォしたっつゥ話になっちまうンだけどよォ? なァ?」
風斬「…………、そうです、ね。たしかに彼女には、結標さんにはひどいことをしてしまったのかもしれません。あなたの言いたいこともわかります」
一方通行「だったらこれからどォいう展開が繰り広げられるのか、っつゥのもわかってンだろ?」
風斬「はい……どうぞ、その電極のスイッチを入れてください」
風斬「私がそれだけのことをしたってことは、わかっていますから……それ相応の罰を受けなきゃいけないことも」
風斬「あなたに消されるのだったら、それも本望なのかもしれませんから……」
一方通行「…………そォか」
風斬「…………」
一方通行「…………」スッ
風斬「!」ビクッ
一方通行「…………はァ、ったくうざってェンだよ」
風斬「……え」
673: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:57:26.73 ID:u/ieRukjo
一方通行「ハナっからわかってンだよ。オマエが善人だってことは、アレに悪意なンてなくて純粋な善意しかねェってことはなァ……」
一方通行「ただ確認したかっただけだ。ロクなことにしか働かねェカンが外れてることを祈ってな」
風斬「……え、えっと」オロオロ
一方通行「そもそもこンな事体を引き起こしたのは全部俺のせいだ。俺が垣根なンざ速攻で潰せるくれェ強かったら、さらに言うならアイツを巻き込ンじまったりしなかったら……」
一方通行「俺がこンなにも無様だから、グループに、木原に、そしてオマエに力を借りなきゃいけなくなっちまったンだよ」
一方通行「だから別にオマエが気に病む必要もねェ。これは全部俺の責任だ」
風斬「え、そ、そんなことは……」オロオロ
一方通行「……ケッ、オイオイどォしたオマエ? さっきまでベラベラ喋ってたくせによォ、急に吃りだしてンじゃねェよ」
風斬「ご、ごめんなさい。さっきは……あの……その、必死でしたから」
一方通行「だろォな。まるで別人のよォに雰囲気が違ったな」
風斬「ううっ……」
一方通行「…………オイ」
風斬「……は、はい?」
一方通行「オマエさっき自分で自分のことを『化け物』って言ってただろ? アレもォやめろ」
風斬「な、何でですか……? だって私はばけ――」
一方通行「…………」カチッ
風斬「えっ」ビクッ
一方通行「『化け物』っつゥのよォ――」コツン
ドグッシャアアアッ!!
一方通行「――俺みてェなヤツのことを言うンだよ」カチ
風斬「…………」
一方通行「オマエみてェなただ人とちょっとカラダの造りが違うだけじゃ、何の話にもならねェよ。残念だったな」
風斬「…………」
一方通行「…………」
風斬「…………ふふっ」
一方通行「……あン? 何がおかしい?」
風斬「え、えっとあの……やっぱりあの子の言ったとおりだ、って思ってつい……」
一方通行「ハァ? あのクソシスターは一体何を言ってやがってンだ?」
風斬「あなたのことを『表には絶対に出さないけど、本当は優しくて思いやりのある人』。そう言ってました」
一方通行「……オイオイ何言ってンだあのクソ野郎が。頭に蛆でも湧いてンじゃねェか?」
風斬「そうですか? 私もそう思いますよ?」
一方通行「ここにも脳内お花畑野郎がいたか」
風斬「はい。だって私はあなたたち能力者の発するAIM拡散力場が集まってできているんですよ? だから、別に脳内お花畑でもおかしくはないですよね?」ニコッ
一方通行「…………チッ、うっとォしい」
風斬「ふふっ……」
674: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:58:00.07 ID:u/ieRukjo
一方通行「……つゥかよォ、一つ気になることがあるンだけどイイか?」
風斬「何ですか?」
一方通行「問いただした俺が言うのも何だけどよォ、何でこのことをオマエは俺に話したンだ?」
一方通行「霧ヶ丘で聞いたあの話も所詮は噂にしか過ぎねェし、風斬氷華っつゥ名前も偶然と言い張っちまえばどォにでもなる」
一方通行「隠そうとすればいくらでも隠せたンじゃねェのか? このことも、オマエのカラダのことも……」
風斬「……ふふっ、そもそも隠してもバレるんじゃないんですか? あなたさっき自分で言ってたじゃないですか、私が異質なことがわかるって」
一方通行「それはあくまで俺個人が勝手に言っているだけのことだ。大した証拠にもならねェよ」
一方通行「オマエぐれェの頭の良さだったら、本気で隠そうと思えばこォいうところを使ってこの場を逃れることもできただろ」
風斬「買い被り過ぎですよ。そんな私は頭良くないです。……まあ、たしかにさっきからあなたが言ってることには気付いてましたけど」
一方通行「だったら尚更気になってくンじゃねェか。一体どォして俺にこのことを話したのかをな」
風斬「そう……ですね、何と言えば良いのかわかりません。けどあえて言うなら……あなたのことを信じてたから、でしょうか」
一方通行「信じてた? まさかクソシスターが言ってた戯言をか?」
風斬「ええっと、それも少しはあります。けどその前に、あなたはこのことを知ってもなお、今までどおり変わらず接してくれるって思ってたから……」
一方通行「一体俺のどこにそォいうことを思える要素があるってンだよ?」
風斬「一方的な思い込みだからそんなに気にしないで欲しいんですけど、あなたは何となくあの人と似てると思ったので」
一方通行「あの人……誰のことだ?」
風斬「主義主張、性格、見た目、立場、そういうところは全然違うんですけど、根本的な部分はあなたたちはまったく同じように見えるんですよ」
風斬「だから、あなたもあの人と同じように接してくれる、そう思ったから話したんです」
一方通行「それこそ買い被り過ぎだ。俺はオマエの言うよォな人間じゃねェ」
風斬「はい、所詮は私が勝手にそういうことを思い込んでいたにすぎませんよ」
風斬「でも現にあなたは、今までと変わらないいつも通りのあなたを私に見せてくれてるでしょ?」
一方通行「……内心俺がオマエのことをどォ思ってるかなンてわかンねェンだぞ?」
風斬「はい!」ニコッ
一方通行「…………」
風斬「…………」ニコニコ
一方通行「……チッ、くっだらねェ」ガチャリ
675: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:58:30.21 ID:u/ieRukjo
一方通行「……さて、そろそろお開きとしよォぜ。引き止めて悪かったな」
風斬「いえ、これぐらい大丈夫です」
一方通行「つゥかオマエ、本当にここらで別れて大丈夫なのか? 時間的には結構遅せェだろ」
風斬「はい、大丈夫ですよ。というか、私の正体を知ってるんですから、別にそんなこと聞かなくてもいいんじゃ……」
一方通行「ケッ、ハイハイそォですねェ。つゥか急にデフォルトを饒舌に変えてンじゃねェようっとォしい」
風斬「え、ええっと、その、ご、ごめんなさい」
一方通行「戻してンじゃねェよ。逆にそれはそれでウゼェだろォが」
風斬「ふふふっ」
一方通行「チッ、じゃあな……」ガチャリガチャリ
風斬「……あっ、そうだ。最後にいいでしょうか?」
一方通行「あァ?」
風斬「さっき、あなたは私はただカラダの造りが違うからって『化け物』を名乗るな、って言いましたよね?」
一方通行「ああ、それがどォかしたか?」
風斬「……実は、私――」ヒュン
一方通行「ッ!?」カチッ
バチィ!! バチィ!!
風斬「あなたが思ってる以上に『化け物』かもしれませんよ?」
バチバチィ!! バチィ!!
一方通行「…………き、消えた……?」カチ
一方通行(な、何だよありゃあ。今までいろいろな能力を見てきたが、あンなモン初めて見る……)
一方通行(……一体何者だ? 風斬氷華……)
一方通行(そして、上条やインデックス、アイツらはこれを全部知ってたっていうのかよ?)
一方通行「…………クソッたれ、帰るか」ガチャリガチャリ
―――
――
―
676: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/15(月) 23:59:12.21 ID:u/ieRukjo
同日 20:40
-黄泉川家・キッチン-
吹寄「……い、いよいよ最後よ」ゴクリ
結標「え、ええ……」
姫神「最後は。この丸めたチョコレートにの周りにチョコを塗って。それにココアパウダーをまぶすだけ……」
吹寄「む、結標さん。間違えちゃダメよ? 周りに塗るのはチョコレートを溶かしたものであって、それ以外のものはこの際全部なしよ?」
結標「わ、わかったわ。チョコレートね、チョコレート……」ブツブツ
姫神「……ところで。肝心なココアパウダーはどこ?」
吹寄「ココアパウダーは、ええっと……あれ? そういえばパウダー買ったっけ?」
姫神「そういえば。籠の中に入れた覚えがまったくない」
吹寄「……結標さん? ココアパウダーはちゃんと買ったの?」
結標「…………」
姫神「…………」
吹寄「…………」
結標「…………」ニヤァ
結標「もちろん買ってません!」ニコ
吹寄「」ガクッ
姫神「やっぱり。そんな気はしてた」
結標「い、いやだってそんなこっちは作り方知らなかったわけだし。だから必要な材料もわからなかったわけだし」
吹寄「大まかだけど作り方も説明したし、材料とかもちゃんと教えたわよ?」
結標「あ、あれー? そ、そうだったかしら?」
姫神「……まあ。私たちも忘れてたからしょうがない」
吹寄「たしかにそうね。今はこの危機をどう乗り越えるかが先決よ」
姫神「うん。ところで結標さん。この家にはココアパウダーはある?」
結標「え、ええっと、うん。たしかあったはずよ」
姫神「ならそれを使おう。今すぐ持ってきて」
結標「りょ、了解! えっと確かこの辺に……」ガサゴソ
打ち止め「……ふぅ、やっぱり体が冷えてる時のココアはすっごく美味しいぜ、ってミサカはミサカはコップを片手に酔いしれてみたり」フゥ
結標「……打ち止めちゃん?」
打ち止め「ん? 何アワキお姉ちゃん?」
結標「今貴女が飲んでるそれは何かしら?」
打ち止め「えっ、何ってただのココアだよ! ってミサカはミサカはコップの中を見せながら答えてみたり!」スッ
結標「…………えっと、じゃあそれを作るために必要なココアパウダーはどこかしら?」
打ち止め「ま、まさかアワキお姉ちゃんもココア飲みたかったの!? そ、そのココアパウダーは……」
ココアの空ビン『』
677: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:00:02.30 ID:wBv7Ieywo
結標「」
打ち止め「え、えへへごめんね? アワキお姉ちゃんどっちかと言ったらコーヒー飲んでるから、まさかココアが飲みたいなんて突発的に言ってくるとは思わなくて……」
結標「い、いいのよ別に。打ち止めちゃんは何も悪くないわ」
打ち止め「で、でも……」
結標「大丈夫よ! ココアなんてなくても私は戦い抜いてみせるわ! 絶対に!」
打ち止め「? 何だかよくわかんないけど頑張ってね、ってミサカはミサカはエールを送ってみたり」
結標「……というわけでココアパウダーはなかったわ」
吹寄「そ、そう……それは残念だったね」
姫神「何か代用品でも使うか。それかもうこれを完成品とするか……」
吹寄「代用品って?」
姫神「例えば粉系ではなくソース系を使うとか」
吹寄「ホワイトチョコとかフルーツを使ったソース?」
結標「でもそれを作ってる時間はあるの?」
姫神「正直無理。ホワイトチョコは私が使うからって買ってはあるけど。そんなソースに出来るほど残ってはない」
吹寄「買いに行くとしても今の時間帯、大体閉める準備をしてるから買うのは困難ってことか……」
結標「…………」
姫神「…………やっぱり」
吹寄「そうね。もう、これで完成ってことにするしか……」
結標「……! そうだ!」ピコン
吹寄「な、何かいい案でも思いついた?」
結標「うん! 代用品ならちゃんとあるわ! この家の中に!」
吹寄「ほ、ほんと?」
結標「嘘はつかないわ!」
姫神「それが本当なら。ちゃんとしたトリュフを作ることができる」
結標「よし! じゃあ持ってくるわね」テクテク
678: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:00:53.92 ID:wBv7Ieywo
~1分後~
結標「持ってきたわ! これが私が思いついた代用品よ!」バッ
吹寄「…………えっ?」
姫神「…………」
結標「あ、あれ? 我ながらいい案だと思ったのに微妙な反応ね」
吹寄「え、ええっと、何というか……」
姫神「思ったより結構まともなものが出てきてびっくりしてる」
吹寄「で、でもこれって正直微妙かもね」
結標「え、そうなの?」
吹寄「貴女が買ったチョコレートとそれを合わせたら、何だかすごいことになりそうよ。いろいろな意味で」
姫神「でも。一応こういうものも存在するから問題ない」
吹寄「たしかに存在はするけど……やっぱり果てしなく微妙なのになりそうよ?」
結標「二人が一体どういう会話をしてるのかわからないけど、とりあえずこれでオッケーってこと?」
吹寄「うーん、まあ結標さんがいいと思うならいいと思うけど……」
姫神「ただし必ずいいものができるとは保証はできない」
結標「……大丈夫よ! 何となくだけど、これでいいような気がするから!」
吹寄「……わかったわ! じゃあこれで作るとしましょう!」
姫神「早速作業に取り掛かるとしよう」
~十分後~
結標「――最後に綺麗に配置して」コソコソ
吹寄「…………」ゴクリ
姫神「…………」
結標「……これで、終わりっと」スッ
吹寄「……ってことは?」
姫神「うん」
結標「か、完成したの……?」
吹寄「や、やったわね結標さん!」
結標「私が、まともな料理を、完成させたの?」
姫神「うん。おかしなものは一つも入ってない。あなたが作った正真正銘のチョコレートだよ」
結標「…………や」ウルッ
結標「やったああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
679: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:02:37.41 ID:wBv7Ieywo
黄泉川「じゃ、帰り支度は済んだじゃん?」
吹寄「大丈夫です」
姫神「同じく」
結標「二人とも。こんな時間まで付き合わせちゃってごめんなさいね」
吹寄「いいよ別に。だってあたしたち友達じゃない!」
姫神「そう。お互い助け合うのは当たり前のこと」
吹寄「だから、そこはごめんじゃなくてありがとうって言ってほしいわ」
結標「う、うん、ありがとね! 吹寄さん姫神さん!」
吹寄「あ、あと言っとくけどバレンタインはチョコを完成させてゴールじゃないわよ? むしろやっとスタートラインに立てたと言っても過言じゃないわ」
結標「わかってるわ。渡してやっとゴールよね」
吹寄「それがゴールになるかスタートになるかは結標さん次第だけどね」
結標「えっ? それってどういう……?」
吹寄「とにかく頑張れってことよ!」
結標「が、頑張ります……」
黄泉川「ほいじゃあ、そろそろ出発するじゃん?」
吹寄「そうですね。じゃあ結標さん、また明日ね!」
姫神「また明日」
結標「うん、また明日!」ノシ
ガチャ
―――
――
―
680: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:03:28.37 ID:wBv7Ieywo
同日 21:00
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
ガチャ
一方通行「…………」ガチャリガチャリ
上条「おっ、一方通行おかえり」
一方通行「おォ……」
上条「? 何か元気がねえぞ? どうかしたか?」
一方通行「イイや何でもねェよ。オマエが知る必要もねェことだ」
上条「?」
禁書「あっ、あくせられーたおかえり!」←パジャマ姿
一方通行「…………誰だオマエ?」
禁書「ええっ!? 何で少し会わない間に私忘れられているの!? インデックスだよインデックス!」
一方通行「インデックスゥ? ……ああ、オマエインデックスか」
禁書「もう! もしかしてあくせられーたって忘れっぽい人かな?」
一方通行「ンなわけねェだろォが。大体オマエの特徴の九割を占めてる修道服を着てねかったから誰だかわからなかっただけだ」
禁書「あれ? 私ってそんなに特徴ないの? 修道服以外に?」
一方通行「ちなみに残り一割は外国人ってところだけだ。なお、イギリスとかに行ったらその特徴も潰される模様」
禁書「ううっ、何だかショックなんだよ……」
一方通行「あっ、そォいやまだ食欲っつゥ特徴があったな」
禁書「フォローにならないこと思い出してくれてありがとなんだよ……」
上条「ま、まあ気にすんなよインデックス。こいつがあまりに特徴的過ぎるだけだ。何なら俺なんてただ男子高校生だぜ? 特徴のとの字もねえくらい特徴ねえよ」
一方通行「自分で言ってて悲しくならねェか?」
上条「うるせえ。大体普通に生きてくならいらねえだろそんな特徴なんて」
一方通行「まァな。その無駄に特徴を持ったまま生きた結果が俺だからな」
上条「だったらそれは無駄じゃねえだろ。それがなかったらお前はここにいないわけだからな」
一方通行「チッ、くだらねェ」
681: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:04:04.04 ID:wBv7Ieywo
上条「あ、そうだ。お前さっさと風呂入っちまえよ。着替えは中に置いてあるから」
一方通行「あァ? 別に風呂なンざ入らねェでもイイと思ってたンだがな。体表面の汚れは全部反射すれば終わりな話だし」
上条「たしかにそうかもだけど、風呂に入る入らねえだったら気分的に結構違うだろ」
一方通行「そォか?」
上条「そうだろ。だってさっぱりするんだぞ?」
一方通行「反射でもさっぱりすンぞ?」
上条「何つーかなー、その反射ってのをしたことねーからわかんねーけど、やっぱ風呂ってのはいいもんだぜ?」
一方通行「面倒臭せェなァ」
上条「……てか、お前まさか毎日風呂入ってねえのか?」
一方通行「いや、普通に入ってる」
上条「だったらその流れで普通に入れよ」
一方通行「何つゥか、他人の家の風呂に入るなンざ面倒臭せェ気持ちしか湧かねェよ」
上条「まあその気持ちわからないことはないけど」
禁書「そうかな? 私よくせんとうとか行くけど、別にそんな面倒臭いなんてことはないんだよ」
一方通行「銭湯はまた別だろ。まァどちらにしろ俺ァそォいうモンは嫌いだがな」
上条「文句言ってる暇があったら行ってきたらどうだ? あとがつかえてんだからさ」
一方通行「あァ? オマエまだ入ってねかったのかよ。つゥかオマエが先に入ればイイじゃねェか面倒臭せェ」
上条「いや、正直俺が最後に入ったほうがいろいろ都合が良いんだよ」
一方通行「一体どォいう都合だ」
上条「まあいいから先行けよ。ほらほらっ」
一方通行「わかったから押すンじゃねェ三下ァ! こっちは杖突いてンだから歩きにくいだろォが!」ガッチャガッチャ
上条「あっ、そうだ。中にあるシャンプーとかは適当に使っていいからな。でもあんま使いすぎんなよ!」
一方通行「ヘイヘイわかりましたよォと」ガチャリガチャリ
禁書「いってらっしゃい!」
一方通行「面倒臭せェ」
―――
――
―
682: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:05:01.77 ID:wBv7Ieywo
同日 21:20
-黄泉川家・浴室-
ザッパーン!
結標「…………はぁ、疲れたぁ」チャプン
結標「まさかチョコレート一つ作るのにこんなに時間がかかるなんて思わなかったわ……」
結標「まあ……全部私のせい、ってことよね……はぁ」
結標「二人ともやることだっていっぱいあったのだろうし、それなのにこんな時間まで付き合わせて……」
結標「どうしてこう常識的な発想ができないのかなー私って」
結標「もし常識的な……普通で何の面白味のない考えを持ててたら、こんなことにはならなかったはずよね」
結標「…………」
結標「……やっぱり私も超能力者(レベル5)……人格破綻者なのかな、ははっ」
結標「…………」チャポン
結標「……とにかく、明日はバレンタインデー本番。明日の頑張りっぷりでスタートかゴールが決まるのよね」
結標「しかしバレンタインってどうやって頑張ればいいのかしら? ただチョコレートを渡すだけじゃいけないのかしらね」
結標「バレンタインなんてイベントは漫画とかでしか知らないけど、だいたいそういうのってうやむやになって終わるのよねー」
結標「……このままじゃ私もうやむやのまま終わってしまいそうね」
結標「んー、かといってバレンタインにかこつけて告白する勇気もないのよねー」
結標「でもこういうイベントごとで行かないと一生できるような気もしないわ」
結標「…………もし」
結標「もし告白したとして、一方通行は私のことを受け入れてくれるのだろうか……」
結標「普段があんなのだから、絶対に受け入れてくれない気がする……」
結標「そしたらそのあとずっと気まずい雰囲気のまま同じ家に住んで、同じ学校に通って、同じクラスで授業を受けないといけなくなるかもしれないわね」
結標「……だから、そうならないために明日のバレンタインがあるのか……」
結標「…………ふぅ」ジャポン
結標「……青髪ピアス君がよくやってるゲームみたいに、アイツの好感度がパラメーターみたいになって見えればいいのにな」
結標「そうすれば……いや、もしかしたら嫌われてる可能性もあるから逆にへこんでしまうかもれないわ……」
結標「…………」
結標「……そろそろ上がろ」
ジャバーン!
―――
――
―
683: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:06:13.63 ID:wBv7Ieywo
同日 21:30
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
ガチャ
一方通行「……上がったぞ」ホカホカ
上条「了解。じゃあ俺も入るかなーと」テクテク
一方通行「……はァ、やっぱ他人の家の風呂は使い勝手がわからなくて面倒だわ」ガチャ
上条「そうか? 普通の風呂場だと思うけど」
一方通行「普通だろォと普通じゃなかろォと使いにくいのは変わらねェだろォが」ガチャリガチャリ
ガチャ
一方通行「…………はァ、面倒臭せェ」カチャ
禁書「……あなたっていつも面倒臭いって言ってるよね」
一方通行「そォか?」
禁書「うん、さっきの一連の流れだけでも二回は言ったよ?」
一方通行「……まァ、アレだ。何かと面倒臭せェと言うのは俺のアイデンティティだっつゥことで」
禁書「いやなアイデンティティだね……」
一方通行「…………」ズズズ
一方通行「……あァ、風呂上りのコーヒーうめェ」
禁書「……うっ」
一方通行「……どォした?」
禁書「……いや、何でもないんだよ」ジュルルル
禁書「ふぅ、やっぱりいちご牛乳は甘くて美味しいんだよ!」
一方通行「…………オマエ、俺の缶コーヒー勝手に飲ンだだろ」
禁書「えっ? な、何のことやらさっぱりなんだよ……」
一方通行「証拠第一。なぜだか冷蔵庫にある缶コーヒーの数が一つ減っていた」
禁書「と、とうまが飲んだんじゃないかな?」
一方通行「証拠第二。流し台が軽くだがコーヒー色に染まっていた。何者かがあそこにコーヒーを流した跡だと思われる」
禁書「ちゃ、ちゃんと掃除ができてなかっただけじゃないかな?」
一方通行「証拠第三。流し台にコーヒーを捨てたイコール自分には苦すぎた。その口直しといわンばかりに甘めェモンを摂取してる」
禁書「な、何を言ってるのかな? 私は単純にいちご牛乳が好きで飲んでるだけなんだよ」
一方通行「そしてこれが決定的な証拠だ。オマエ口の周りにコーヒーが付いてるぞ」
禁書「えっ、そんな!? ちゃんと拭いたはずじゃ……はっ」
684: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:06:41.05 ID:wBv7Ieywo
一方通行「……ほォ、何でコーヒー飲ンでねェヤツがそンな口の周りに付いたコーヒーなンざ気にするンだ?」
禁書「えっえっと、それは……」
一方通行「キチンと白状すりゃ、罰を軽くしてやらねェこともねェ」
禁書「私が飲みました! ごめんなさいなんだよ!」
一方通行「有罪」ビシッ
禁書「あたっ、ううっ……ひどいんだよあくせられーた」
一方通行「何がひどいだ。勝手に缶コーヒー飲ンだあげくほとンど排水溝にぶち込みやがったヤツよりはマシだろ」
禁書「うっ、ま、まあそうだけど……」
一方通行「つゥかよォ、オマエは何で人のコーヒー勝手に飲みやがったンだ? やっぱりあの夕食じゃあ足りねかったのか?」
禁書「そ、そんなんじゃないんだよ! …………たしかにちょっとおなかは空いてるけど」ボソッ
一方通行「最後の呟きでますます言い訳の信憑性がなくなりそォだな」
禁書「え、えっと、今まで飲めなかったけど、もしかしたら今なら飲めるかなーと思って試しに飲みました」
一方通行「へー」
禁書「まあ言うならば、大人の階段を上ろうとした結果かも!」
一方通行「で、上れたのか大人の階段」
禁書「まだ私には早すぎるんだよ」
一方通行「だろォな。そもそもブラックコーヒーごときで大人の階段を上れると思ってる時点で、一生その階段を上りきることはねェだろォな」
禁書「いいもん! 私にはこの甘い甘いストロベリーミルクがあるからいいもん!」ジュルルル
一方通行「はァ……くっだらねェ」つリモコン
テレビ『――続いてのニュースです。今日はバレンタインデー前日だということがあり、各地のお菓子――』
一方通行「…………」
禁書「…………」ジュルルルル
一方通行「……なァ?」
禁書「何かな?」
一方通行「オマエは明日何の日か知ってるか?」
禁書「バレンタインデーでしょ? さっきテレビで言ってたとおり」
一方通行「そォだな。で、オマエは何か贈り物でもしよォとでも思ってンのか?」
禁書「うーんと、別にそんなことは考えてないよ」
一方通行「へェ、そりゃまた意外だな」
禁書「そうかな? まあでも日頃お世話になってる人に感謝の気持ちは伝えるつもりなんだよ。贈り物とかはお金を持ってないからさすがに無理かも」
一方通行「……やっぱオマエら外国人から見れば、日本のバレンタインデーは異質なのか?」
禁書「うーん、そうだね。違和感がないと言ったら嘘になるけど、文化っていうのは国によって違うから」
一方通行「そォか。俺からしちゃ違和感しかねェけどな」
禁書「あれ? あなたって日本の人じゃないの?」
一方通行「イイや日本人だ。ただそォいう環境にいなかっただけだ」
禁書「ふーん」ジュルルルル
685: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:07:44.64 ID:wBv7Ieywo
一方通行「……まァでも」ゴロン
一方通行「そォいうことで騒げるよォな居場所にいれるっつゥだけで、それは幸せっつゥことになるンだろォな」
禁書「…………」
一方通行「……って、あァ? どォした?」
禁書「……ねえあくせあれーた。何か変なものでも食べた? 何か変だよあくせあれーた」
一方通行「安物の肉を食った」
禁書「へー、安物のお肉にそんな効果があったんだ……」
一方通行「真に受けてンじゃねェよ。……まァ、たしかにオマエの言うとおりちょっと頭がおかしくなってたよォだ」
禁書「まあそれでも何もない日常の中に幸せがあるってことに気付けたって事は、それはいいことだと私は思うんだよ」
一方通行「…………」
禁書「…………」ドヤ
一方通行「ケッ、くっだらねェ。寝る」ゴロン
禁書「あっ、あくせあれーた! コタツで寝ると風邪ひいちゃうよ!」
一方通行「俺には反射がある。つまり風邪ひかねェ」
禁書「んーと、それってその首に付いてるぼたんを押さないとできないんじゃなかったかな?」
一方通行「こまけェこたァイインだよ」
禁書「……んーたしかのそうだね。よーし」ゴロン
一方通行「あン?」
禁書「私もコタツで寝ようっと」
一方通行「風邪ひくぞ?」
禁書「ふふん。こう見えても私体は結構強い方なんだよ」
一方通行「とてもそォには見えねェンだけどなァ、まァどォでもイイけど」
スフィンクス「Zzz」
禁書「あれ? そういえば見ないと思ったらこんなところにいたんだねスフィンクス!」
686: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:08:23.16 ID:wBv7Ieywo
禁書「ねえあくせられーた! スフィンクスがコタツの中で丸くなってるんだよ!」
一方通行「…………」
禁書「……? あくせられーた?」
一方通行「……Zzz」
禁書「って早っ! もう寝ちゃったの!?」
一方通行「Zzz」
禁書「…………ふふっ、じゃおやすみなさいスフィンクス。あくせられーた」ゴロリ
~数十分後~
ガラッ
上条「――ああ、いいお湯だった……ん?」
一方通行「…………」Zzz
禁書「……すぅ、すぅ……」Zzz
スフィンクス「……にゃぉ」Zzz
上条「…………どういう状況だ? これ?」
上条「まあでも、仲よさそうで何よりだ」
―――
――
―
687: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/16(火) 00:09:27.08 ID:wBv7Ieywo
同日 23:00
-黄泉川家・結標淡希の部屋-
ボフン!
結標「ふー、宿題終わった終わった」
結標「……というかアイツ宿題ちゃんとやってるのかしら」
結標「上条君の家で遊び倒してなきゃいいけど……」
結標「…………」
結標「……とにかく、明日は絶対頑張ろう」
結標「うまくいくかいかないかなんて全然わかんないけど、とにかく頑張ろう」
結標「せっかくのバレンタインデーなんだから楽しまないとね」フフッ
結標「…………」
結標「よし、じゃあ明日に備えて早く寝るとしますか」
結標「おやすみなさい……一方通行……」
こうして夜は過ぎていく。様々な人の様々な思いを抱いたまま。
そして彼ら彼女らは迎えることになる。ある人にとっては、もしかしたら人生のターニングポイントになるかもしれないこの日を……。
February 14,Thursday 00:00 ~バレンタインデー~
――――
726: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:42:34.98 ID:29cPYilCo
21.バレンタインデー
February 14,Thursday 07:00
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
チュンチュン
一方通行「…………朝か」
一方通行「…………」キョロキョロ
一方通行「…………」ボー
一方通行「…………」
一方通行「……どこだここは?」
禁書「……すぅ……すぅ……」
一方通行「…………」
禁書「……ん、……むにゃ……」
一方通行「……あァ、そォいや上条の部屋に泊まってたンだっけか」
一方通行「…………朝のコーヒー」ムクリ
ガチャ
一方通行「…………」カチャ
一方通行「…………」ズズズ
一方通行「……つゥか上条どこ行った?」
一方通行(見たところベッドの中はもぬけの殻。コタツの中にはシスター一人だけ)
一方通行(こンな時間にどっかに出かけるなンつゥことは恐らくねェだろ)
一方通行「……だったらどこに行きやがったンだァ? 三下様よォ」
禁書「……んっ、……あ、さ……?」
一方通行「……起きたか」
禁書「……あれ、あくせられーた……?」
一方通行「あン?」
禁書「……何でここにあくせられーたが ?」
一方通行「寝ぼけてンじゃねェよ。キチンと完全記憶能力活用しろコラ」
禁書「……そういえばここに泊まっていたんだっけ?」
一方通行「聞かなくてもわかンだろこの状況ォみりゃ」
禁書「…………」
一方通行「…………」
禁書「……おはようあくせられーた」
一方通行「……おォ」
727: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:43:32.72 ID:29cPYilCo
禁書「ところで今何時かな?」
一方通行「あァ? 大体七時くれェだな」
ぐー
禁書「…………」
一方通行「…………」
禁書「おなか空いたんだよ」
一方通行「今度はキャラ崩壊しねェのかよ」
一方通行「……つゥかよォ、上条の野郎はどこに消えやがったンだ? シスターの暴食に耐えかねて、ついに夜逃げでもしたかァ?」
禁書「そ、そんなことないんだよ……たぶん」ボソッ
一方通行「ほォ、じゃあンなことねェっつゥ理由を言ってみやがれ」
禁書「んんと、たぶんとうまはここにいるから……」ガラッ
一方通行「……ハァ? 風呂場?」
禁書「とうまー! 朝だよー! 起きてー!」
一方通行「……何やってンだコイツ」
禁書「おなか空いたんだよー! だから朝ごはん作って欲しいかもー! とうまー!」
一方通行「ったく、こンなとこに三下がいるわけ──」
ガチャ
上条「……はいはい、わかったから静かにしてくれインデックス」
一方通行「」
上条「……ああ、一方通行。お前も起きてたのか」
一方通行「」
禁書「とうまー、おなか空いたー!」
上条「へいへい、何か残ってたっけなぁ……?」
一方通行「……オイ」
上条「ん?」
一方通行「何でオマエ風呂から出てきてンだ……?」
上条「何でって……風呂で寝てたからに決まってんだろ?」
一方通行「…………は? 今何つった?」
上条「だから風呂で寝てたっつったんだよ」
一方通行「風呂でってアレか? 浴槽の中で無様に毛布に包まってガタガタ震えながら寝てたっつゥことか?」
上条「言い方はムカつくがそういうことだな」
一方通行「…………」
上条「?」
一方通行「は?」
―――
――
―
728: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:44:06.93 ID:29cPYilCo
同日 07:20
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
禁書「――いっただきまーす!」
スフィンクス「にゃー」モグモグ
一方通行「……いただきまァす」
上条「おう、どんどん食えよ」
一方通行「…………」
上条「……どうした? 食わねえのか?」
一方通行「…………」
サラダ『盛られるぜー超盛られるぜー!』
一方通行(何で朝っぱらからグリーンマウンテンが出てきてンだよクソが)
禁書「とうまードレッシングー」
上条「ちょっと待ってろ……ほらっ、あんま使いすぎんなよ、特売じゃなかったら高いんだから」スッ
禁書「わかってるんだよ」ギュッ
ブパパパァ!!
禁書「……あ」
上条「あのーインデックスさん? 使いすぎんなって言ったそばから何盛大にぶちかましてくれちゃってんですか?」
禁書「ちょっと力加減を間違えたかも」
上条「不幸だ……」
一方通行「……オイ、さっさとこっちにもドレッシング寄越せ。かけまくってやらねェと食い切る自信がねェ」
禁書「はい」スッ
一方通行「って空っぽじゃねェかクソ野郎がァ!」
禁書「反省はしてるんだよ」
729: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:45:16.98 ID:29cPYilCo
一方通行「……チッ、今はとにかく主食のパンだな」ガジッ
上条「ありゃ? ジャム塗らねえのか?」
一方通行「甘ったるいのは嫌いだ」
禁書「ええっー? こんなに美味しいのに……。人生の二割ぐらい損してるんだよ」
一方通行「ガキが人生語ってンじゃねェよ。まァ、俺はコーヒーがありゃ人生に不自由はねェ」
禁書「コーヒーじゃおなかは膨れないかも」
一方通行「コーヒーは空腹を凌ぐモンじゃねェよ。嗜好品だ嗜好品」
上条「……じゃあ結局お前はパンにジャム付けねえのか?」
一方通行「ああ」
上条「そうか。まあ上条さんもそっちの方が助かるけど……」
禁書「じゃあ私が代わりにあくせられーたの分二重に塗るんだよ!」ベチャベチャ
上条「無駄遣いしてんじゃねえよ! もったいないだろ!」
禁書「ええっー、もともと減る予定だったんだからいいと思うんだよ!」
上条「一方通行がいらないって言った時点でその予定はねえことになんだよ!」
一方通行「朝っぱらからうるせェンだよ。静かに食事もできねェのか馬鹿ども」ズズズ
上条「あ、すまねえ」
禁書「ご、ごめんなさい」
一方通行「チッ、わかりゃイインだよ。それじゃあ俺ァもォ食い終わったからごちそうさまさせてもらうぜ」ガタッ
上条「……一方通行」
一方通行「あン?」
上条「まだサラダ食ってねえじゃねえか」
一方通行「」
―――
――
―
730: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:45:57.19 ID:29cPYilCo
同日 07:35
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
禁書「――ごちそうさま!」
一方通行「……おェっぷ、死ぬ……うェ……」
上条「大丈夫か?」
一方通行「大丈夫なわけ、ねェだろォが……。調味料なしサラダ……ぐはっ」
上条「どんだけ野菜嫌いなんだよお前。今までよく生きてこられたな」
一方通行「ウチには何かしら調味料っつゥモンがある、多種類な。それをかけすぎることによってことで何とか凌いできたわけだ」
上条「あんまかけすぎんのは身体によくないぞ? 塩分とか取りすぎて」
一方通行「うるせェよ。そォいうわけで何もかけられてねェクソ野菜どもには耐性がねェンだよまったく」
禁書「好き嫌いはだめだと思うんだよ」
一方通行「大体オマエがドレッシングを全部ブチ込ンだのが元凶だろォが!」
禁書「野菜が嫌いなのは自分のせいだと思うんだよ」
上条「どうでもいいけどさっさと学校行く準備しろよ? せっかく早く起きれたんだから遅刻なんてしたくねえからな」
一方通行「……あァ、もォそンな時間か」
上条「まだ時間的には余裕があるけど、もしものことがあるからな」
一方通行「能力使えば関係ねェからゆっくりするわ」
上条「おのれレベル5め!」
一方通行「……まァ何つゥか面倒臭せェな」
上条「何がだ?」
一方通行「こォ朝起きると別のヤツの家でしたっつゥ状況だと学校とか行く気なくなる」
上条「うるせえよ、とっとと準備しやがれ」
一方通行「チッ、面倒臭せェ」
731: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:46:25.59 ID:29cPYilCo
~身支度終了~
上条「……よし、じゃあそろそろ行くとしようぜ」
一方通行「面倒臭せェ」
禁書「とうま! 今日はあるばいとはあるのかな?」
上条「ああ。まあ一度ここには帰ってくる予定だから晩メシは心配しなくていいぞ?」
禁書「うん。わかった」
一方通行「今日の晩はバイトか。こンな平日までご苦労なこった」
上条「まあやらねえと生活していけねえからな」
一方通行「何つゥ人生ハードモードだ」
上条「別にそうでもねえだろ。この程度でハード言ってたら本当につらいヤツらに怒られちまうよ」
一方通行「ケッ……まァそォだな」
上条「ほいじゃインデックス。行ってくるよ」
禁書「いってらっしゃいとうま! あくせられーた!」
一方通行「俺は帰ってこねェがな」
上条「そうだ。昼メシは冷蔵庫にチャーハン置いてあるから、レンジで温めて食ってくれ」
禁書「了解なんだよ!」
一方通行「チャーハンを作れるだけの財力がオマエにあったのか」
上条「失礼な。それくらい上条さんのひもじいお財布の中身でも作ることできますよ……まあ、具はネギと卵だけだけどな……」
一方通行「悲しいチャーハンだな」
ガチャ
上条「あっ、もし出かけることがあったら、ちゃんと戸締りしとけよ」
禁書「もうとうま! そんなこと毎日毎日言われなくてもわかってるかも」
上条「わかった上で忘れそうだからこう何回も言ってんじゃねえか」
一方通行「まるで役に立たねェ完全記憶能力だな」
―――
――
―
732: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:46:59.86 ID:29cPYilCo
同日 07:45
-とある高校学生寮・一年七組教室-
結標「…………」
シーン
結標(な、何か早く来過ぎちゃった……!?)
結標(い、いや、別にそんなに早すぎるってわけじゃないわよね? ぽつぽつと来てる人たちがいるもの)
結標(でもこのクラスの人たちは誰一人とも来てないわね……)
結標「…………とにかく。昨日の夜吹寄さんたちと考えた作戦を絶対に成功させなきゃいけないわね」
結標「一応、確認のために復習しておこうかしら。……ええっと――」
~回想~
ガチャ
結標「……ふぅ、さっぱりした。この短時間でお風呂に二回も入るとは思わなかったわ」
結標「まあ、お風呂入るの好きだからいいけど」
結標「ドライヤー、ドライヤーっと……」カチッ
ゴアアアアアアッ!!
結標「~~♪」
タラララララン♪ タラララララン♪
結標「? 電話? いや違うわ、チャットね」ピッ
吹寄『やっほー結標さん!』
姫神『……やっほ』
733: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:47:37.00 ID:29cPYilCo
結標「どうしたの二人して?」
吹寄『ちょっと明日の打ち合わせをしたいと思ってね』
結標「明日の打ち合わせ?」
吹寄『そうそう。明日のバレンタインデーでチョコレートをどうやって渡すかの』
結標「……別に普通に渡せばいいんじゃないかしら?」
姫神『それは私も思った』
吹寄『普通って言うけどじゃあ例えば教室でみんながいる中で正々堂々正面から渡すの?』
結標「別にそれでも構わないけど」
姫神『同じく』
吹寄『……そんなんで向こうに想いが通じるとでも?』
姫神『どういうこと?』
吹寄『そういう渡し方だったら義理だと思われてもしょうがないってことよ?』
結標「なん……ですって?」
吹寄『そりゃそうでしょ。『あっ、バレンタインだからあげるー』みたいな風に捉えられてもおかしくなわよ』
姫神『……となると。一対一にどうにか持ち込むしかない』
結標「たしかにそうなるわね……」
吹寄『まあその一対一にする方法のは置いとくとして、あたしにちょっとした作戦があるんだけど』
結標「結構重要な方法を置いとくね……」
姫神『その作戦というものは何?』
吹寄「ちょっとしたドッキリみたいなものよ――」
~
結標「……たしか吹寄さんの義理クッキーを私たち三人からのプレゼントとして渡す」
結標「今年のバレンタインプレゼントはこれだけか、と油断させてからの本命の私たちのプレゼントをあとから渡す、だったかしらね?」
結標「……何というか、上条君には通じるかもしれないけどアイツには通じる気がしない作戦よね」
結標「まあ、何もせずにそのまま直接渡すよりはマシかもだけど……」
結標「…………」
734: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/07/28(日) 23:48:24.46 ID:29cPYilCo
ガララララッ
結標「!」
吹寄「おはよー! ……っと、早いわね結標さん」
姫神「おはよう」
結標「二人ともおはよう! 何か緊張しすぎて居ても立ってもいられなくて……」
吹寄「別にそこまで緊張する必要はないと思うけど? 必ず成功させなきゃいけないってわけじゃないし」
結標「そうは言われても、緊張するものはするわよ……」
吹寄「ま、でもそれだけ本気になれてるってことだからいいんじゃないかしら?」
姫神「うん。今は緊張してない私より遥かにマシ」
結標「えっ、緊張してないの姫神さん!?」
姫神「今はまだ。でも渡すときになったらどうなるかわからない」
結標「私渡すときになったら心臓爆破してるような気がするわ」
姫神「わかる」
吹寄「……はぁ、まあ緊張しとくのもいいけどどうやって一対一に持ち込むかも考えといた方がいいわよ? 昨日言ったように」
結標「うっ、すっかり忘れてたわ……」
姫神「…………」
吹寄「簡単な方法で行くなら呼び出しよね。ベタなところを言うなら校舎裏とか屋上とかにね」
結標「正直それができれば苦労しない、って言いたいわね」
吹寄「あはははっ、まあまだ時間はあるんだしじっくり作戦を練ればいいと思うわ」
結標「そうね。よし、じゃあ授業中にじっくり考え――」
吹寄「授業は真面目に聞いときなさい」
―――
――
―
744: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:12:04.33 ID:rXGMadHpo
同日 07:50
-第七学区・通学路-
一方通行「…………はァ」
上条「どうした? そんなため息ついて」
一方通行「あァ? ああ、何か木曜日って異様にダルいなァって思ってな」
上条「あー、それ何となくわかるわ。まあでもあと今日明日と行けば休みじゃねえか」
一方通行「そォだな……」
上条「つーか、土御門のヤツどうしたんだろうな? いつもならこの時間はまだ部屋にいるはずなんだけど……」
一方通行「オマエがあまりに遅刻ばっかするから巻き込まれたくねェから先に出たンじゃねェか?」
上条「何つう薄情なヤツだ」
一方通行「とりあえず遅刻するからしないかの境界線をうろうろするのをやめろ」
上条「違うんですよ、いつも決まって目覚ましがセットされてなかったり、携帯のマナーモード切るの忘れてたりという不幸が……」
一方通行「ただの不注意だろォが。何でもかンでも右手のせいにしてンじゃねェ」
上条「うっ、いや俺だってそれくらいわかってるって……」
一方通行「つゥかよォ、オマエンとこには居候が一人いンじゃねェか。インデックスの野郎に起こしてもらやイイじゃねェか」
上条「うーん、たしかにそれを考えてたこともあったけどさ、あいつも別にそんなに起きるの早くねえからな」
一方通行「アイツは本当にシスターなのか?」
上条「まあ俺よりは余裕で早いけどな」
一方通行「残念ながらフォローになってねェ」
上条「というかお前って実は早起きだったんだな。正直びっくりしたよ」
一方通行「寝付きが悪かっただけだ。たまたまだたまたま」
上条「お前が起きてくれたおかげで俺は今日こうやって余裕を持って登校できるわけだしな」
一方通行「そォいや起こしに行った時思ったンだけどよォ、何で風呂場で寝てたンだオマエ?」
上条「えっ? いや、まあ何つうか……なあ?」
一方通行「…………ああ、そォか。思春期真っ盛りの上条クンは、インデックスと一緒に寝ると色々な意味で大変なことになるから、わざわざ風呂場なンかで寝てンのか」
上条「ま、まあそういうことだな」
一方通行「つまり上条クンは コンということですねわかります」
上条「はあっ!? おまっ、何言ってんだよ!?」
一方通行「だってそォいうことだろ? あンなガキと一緒の部屋で寝るだけでム ム きて寝られねェくれェだからな」
上条「いやお前ガキとか言ってるけどあいつも俺たちとあんま歳離れてない女の子だぞ? 逆に一緒にいて意識しねえヤツいんのかよ?」
一方通行「何も同じベッドで仲良く寝るわけじゃねェンだからよォ。別に余裕だろ」
上条「それは単にお前が異常なだけだろ」
一方通行「これが超能力者(レベル5)と無能力者(レベル0)の違いっつゥことだな」
上条「関係ねえだろそれ」
745: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:12:32.24 ID:rXGMadHpo
一方通行「……はァ、歩くの面倒臭せェ」ガチャリガチャリ
上条「やっぱ杖付きって大変なのか?」
一方通行「もォ慣れた。まァ面倒なのは変わりねェけどな」
上条「俺も松葉杖とかよく使ってたから何となくだけどわかる気がするなぁ……」
一方通行「ンなことわかられてもこっちが困ンだけどよォ」
上条「松葉杖突いてる時に料理するのって結構大変なんだぜ? 片方の手が使いにくいからな」
一方通行「知るか。何なら俺は杖で片腕奪われた上に能力なしで料理したことあるけどな」
上条「へー、器用なんだなー」
一方通行「いや、残念ながらその料理は悲惨な結果で終わっちまった。どっかの馬鹿のおかげでな」
上条「……ははっ、そいつが誰だかは聞かねえでおくよ」
一方通行「聞くまでもねェってヤツだ」
上条「そういや器用って言えば、清掃用のドラム型ロボットを乗りこなして移動をする器用な知り合いがいるんだぜ」
一方通行「は? 何だそりゃ? ンなヤツいンのかよ?」
上条「おうすげえぞ。この前人ごみの中を華麗に通り抜けていったのを見たけど、あれはマジでヤバかった」
一方通行「……オマエの周りにはどォしてそンな変なヤツばっか湧いてンだよ?」
上条「そうか? 別にそんな変じゃねえだろ」
一方通行「周りに変人が集まりすぎて感覚が麻痺しちまってンだろォな。学校じゃシスコン野郎とただの変 」
一方通行「学校から出りゃ暴食シスターに 狂の女や自販機荒らし、そして今回のドラムロボ乗り」
上条「……言われてみればたしかに変だな。つーか 狂って誰だよ?」
一方通行「冬休み明けの週にオマエが公園で一緒に歩いてたヤツだよ。ほら、ジーンズの裾が片足だけねェとかいう面白い格好してた女」
上条「……もしかしてそれ神裂のことか? まあたしかに変な格好だよなあいつ」
一方通行「変なことに首ばっか突っ込ンでるからンな変なヤツらに付きまとわれることになンじゃねェか?」
上条「そうかもしれねえな。でも俺はそいつらと出会えてよかったと思うよ。何だかんだあったけどお前ともな」
一方通行「……チッ、くだらねェ」
上条「そういやさっき言ったドラム型ロボの乗ってるヤツなんだけどさ」
一方通行「あン? そいつがどォかしたか?」
上条「そいつ、実はつちみ――」
??「あっ、いたいた。うーい、上条当麻ー」ウイーン
746: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:13:11.22 ID:rXGMadHpo
一方通行「…………は?」
上条「おお、舞夏じゃねえか。よーっす」
舞夏「おはよー、今日は珍しく早起きなんだなー」ウイーン
一方通行(な、何モンだコイツ? 本当に掃除ロボを操ってやがる……どォいう仕組みだ?)
上条「おう、こいつのおかげでな」
舞夏「んー? おおー? おおおー?」ウイーン
一方通行「……ンだよ?」
舞夏「あなたはもしかして一方通行ではないかー?」
一方通行「何で俺の名前を知ってンだ?」
舞夏「兄貴からいろいろ聞いてるからなー。『クラスに白髪で赤目で杖を突いた面白いヤツが転校してきた』ってなー」
一方通行「兄貴だと? コイツは一体誰だ……?」
上条「ああこいつ、土御門舞夏っていうんだよ」
一方通行「土御門……オイ、何だかものスゲェ聞き覚えのある苗字なンだけどよォ……まさか」
上条「そう、そのまさかだ。土御門の妹、もとい義妹がこいつだよ」
舞夏「兄貴がお世話になってるぞー、いつも馬鹿に付き合ってくれてありがとなー」
一方通行「……あのクソ野郎の妹とは思えねェほどしっかりしてやがる。いや、たしかに血は繋がってはねェけどよ」
上条「ところで俺に何か用か? ただ挨拶しに来たってだけじゃなさそうだし」
舞夏「ふふふっ、バレンタインデーに女子が男子に話しかける用なんて一つしかないんじゃないかー?」ニヤッ
上条「ん? 別に一つではない気がするんだけど……ってバレンタイン?」
舞夏「じゃじゃーん、チョコレートだぞー」バッ
上条「へっ?」
舞夏「ありがたく受け取るといいと思うぞー」
上条「…………くれんの? それ?」
舞夏「あげなきゃ何のために私はこれを差し出したんだー? ほい、ちゃっちゃ受け取りなー」グイグイ
上条「お、おう。……な、何つうかありがとな」
一方通行(……シスターといい超電磁砲といい、さらに今回は土御門の義妹。……コイツは一体どこまで手を広げてやがンだ?)ジロ
上条「……あのー一方通行さん? 何でしょうかそのゴミを見るような目は?」
一方通行「別に何でもねェよ。単純にオマエの手がどこまで及んでンのか興味が湧いただけだ」
上条「?」
747: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:13:43.37 ID:rXGMadHpo
舞夏「あははー、残念ながら私は兄貴一筋なんだぞー。というわけでほい」スッ
一方通行「…………何だそりゃ?」
舞夏「何ってさっきの流れ見てるからわかるだろー。チョコレートだぞー」
一方通行「何でそれを初対面の俺に渡してきやがるンだ? そォいうモンはいつも世話になってるよォなヤツに渡すモンだろ」
舞夏「兄貴といつも遊んでもらってるからなー、そのお礼だと思ってくれ。お歳暮みたいなもんだなー」
一方通行「……そォかよ。まァ、ありがたくねェけど受け取ってやるよ」スッ
上条「おまっ、せっかくものくれたんだから礼くらい言っとけよ」
一方通行「俺は甘ったるいモンが嫌いなンだよ。それにこンな大層なモンもらえるほどアイツとつるンでねェよ」
舞夏「おおっー、兄貴の言ったとおり本当にツンデレだー」
一方通行「は? 何言ってやがンだこのガキは」
舞夏「じゃあじゃあ私はもう行くぞー。勉強頑張れよー」ウイーン
一方通行「なっ、待ちやがれ! 俺はツンデレなンかじゃねェぞゴルァ!」
舞夏「ああ、そのチョコレート感想とか聞かせてもらえると嬉しいぞー」ウイーン
上条「おう、じゃあな舞夏ー」ノシ
一方通行「…………」
上条「…………」
一方通行「チッ、やっぱガキっつゥのはうっとォしくて敵わねェ」
上条「まあ別にいいじゃねえかあれくらい」
一方通行「とりあえず土御門はあとでシめる。ブチ殺し確定だあの野郎」
上条「つーかあれだな。不幸の塊の上条さんがチョコレートをこんな朝早くもらえるなんて、未だに信じられねえラッキーだ」
一方通行「……ちなみにその不幸な上条さンは去年はいくつもらったんだ?」
上条「えっ、去年? え、えーと……あんま覚えてねえなー、あはは」
一方通行「なるほど。数え切れねェほどもらったっつゥことか」
上条「い、いやそういうわけじゃねえけど」
一方通行「ケッ、まァ俺には関係のねェ話だな。行くぞ」ガチャリガチャリ
上条「お、おう……」
―――
――
―
748: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:14:15.63 ID:rXGMadHpo
同日 08:10
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
禁書「……むむむ」
スフィンクス「にゃー」トコトコ
禁書「……むむむむむ」
スフィンクス「にゃー?」
禁書「むむむー、やっぱり退屈なんだよ!」
スフィンクス「!?」ビクッ
禁書「お留守番歴は長いけどやっぱりこの退屈なのは慣れないんだよ」
禁書「ゲームもあらかたやったから飽きちゃったし、まんがも一回通り読んじゃったから全部一言一句覚えてるし」
スフィンクス「にゃー」
禁書「ああー! 暇なんだよスフィンクスー!」ゴロゴロ
スフィンクス「……にゃー」トテトテ
禁書「……うう、スフィンクスにまで見捨てられちゃった」
禁書「…………」グー
禁書「……何か暇過ぎておなかがすいた気がするんだよ」
ピンポーン!
禁書「! お客さん!? もしかしてひょうかが遊びに来てくれたのかな!?」ガバッ
禁書「はいはーい! 今出るんだよ!」タッタッ
ガチャ
舞夏「おはよー」
禁書「あっ、まいかだ! おはようなんだよ!」
舞夏「んー? どうしたんだ? 何だかいつもよりテンション高くないかー?」
禁書「さっきまでものすごっく暇だったんだよ! だからまいかが遊びに来てくれて嬉しいんだよ!」
舞夏「へー、別に遊びにきたわけじゃないけどそこまで喜んでくれるのなら嬉しいぞ」
禁書「遊びに来てくれたんじゃないの? 何か違う用事かな? ちなみにとうまはもう学校行っちゃったよ?」
舞夏「上条当麻ならさっき会ったから知ってる。私がようがあるのはお前だぞインデックス」
禁書「うん? 私?」
749: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:14:42.79 ID:rXGMadHpo
舞夏「はいこれ」スッ
禁書「おおっ! 何その高級感あふれる箱は!」ガシッ
舞夏「バレンタインチョコだぞー。お歳暮感覚でもらってくれー」
禁書「おせーぼ? 何それ?」
舞夏「いわゆるプレゼントだなー」
禁書「おおっー! これはあれだよね! 『ともちょこ』ってやつだね!」
舞夏「お歳暮知らないのにそういう文化は知ってるんだなー」
禁書「てれびで見たんだよ!」
舞夏「まあそういうことだから遠慮せず食べてくれー」
禁書「じゃあいただきます」バリッ
禁書「はぐっ」パクッ
禁書「もぐもぐ」
禁書「おいしいんだよ!」ペカー
舞夏「まさか玄関で接客しながら、しかもこんな時間に食べ出すとは思わなかったなー。でもおいしいって言ってもらえて何よりだぞー」
禁書「さっきから暇過ぎておなかが減っていたんだよ!」
舞夏「時間的にはさっき朝食を食べたばかりじゃないかー?」
禁書「細かいことはいいんだよ! それよりこのチョコほんとおいしいね! これは一体どこで売ってるのかな? 今度とうまに買ってきてもらうんだよ」
舞夏「ふふふっ、実は私が研究に研究を重ねたお手製の品なんだぞー、つまり非売品だなー」
禁書「ふーんまいかが作ったんだ。まいかは料理が上手だからおいしくて当然かも」モグモグ
舞夏「真のメイドさんはバレンタインチョコを美味しく作ることなんて造作もないんだぞー」
禁書「あれ? さっきけんきゅーにけんきゅーを重ねてとか言ってなかったっけ?」
舞夏「私はまだまだヒヨっ子メイドだからなー」
禁書「しかしほんとおいしいんだよこれ!」モグモグ
舞夏「全然話聞いてないなー、別にいいけど」
禁書「……ふぅ、ごちそうさま! そしておかわり!」
舞夏「お前にやるチョコレートはもう残ってないぞー。残念だったなー」
禁書「ううっ、ほんとに残念な気持ちを味わってる気分かも」
750: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:15:25.86 ID:rXGMadHpo
舞夏「そーいえばお前は上条当麻に何かあげたのかー?」
禁書「何かって何かな?」
舞夏「何ってバレンタインプレゼントに決まってるだろー」
禁書「あげてないよ。というかそんなものを用意するお金がないかも」ドヤッ
舞夏「ドヤ顔言うようなことじゃないと思うぞー」
禁書「うーん、やっぱり何かあげたほうがいいのかな? 一応感謝の気持ちを伝える気ではいるんだけど」
舞夏「そうだなー、男ってのは形あるものがほしいもんだろうしなー」
禁書「そうなの?」
舞夏「放課後ぐらいの時間になったら外に出てみるといいぞー。目をギョロつかせてる男がたくさんいるからなー」
禁書「へー、よっぽどバレンタインのプレゼントが欲しいんだねー」
舞夏「上条当麻も一人の男だからなー、きっと同じくそういうのが欲しいと思うぞー」
舞夏(まあさっき渡した時のリアクションはちょっと微妙だった気がするけどなー)
禁書「ぐぬぬぬ、無一文には辛い話なんだよ」
舞夏「まあでも日頃の感謝を伝えるってのはいいことだと思うぞー」
禁書「むーどうしようかな……」
舞夏「じゃあ私はこれで帰るとするぞー。そろそろ時間だしなー」
禁書「えっ、帰っちゃうのまいか?」
舞夏「私はこれから研修だからなー。メイド見習いはいろいろ忙しいのだー」
禁書「そうなんだ。頑張ってねまいかー」
舞夏「それじゃーあでゅー」ウイーン
禁書「ばいばーい!」ノシ
ガチャ
禁書「…………はっ!」
禁書「また暇になっちゃったんだよ……」
スフィンクス「にゃおー」ゴロゴロ
禁書「しかしプレゼントかー。どうしようかなー? ねえスフィンクスー」ゴロゴロ
スフィンクス「にゃあ」ゴロゴロ
―――
――
―
751: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:15:53.57 ID:rXGMadHpo
同日 08:20
-とある高校・昇降口-
ワイワイガヤガヤ
上条「……いやー何ごともなく無事学校にたどり着くことができたなーよかったよかった」
一方通行「嵐の前の静けさってヤツだな。これからどォなるかわかったモンじゃねェ」
上条「不吉なこと言うんじゃねえよ」
一方通行「用心しとけっつゥことだ」
上条「別にそこまでする必要はねえんじゃねえのか?」
一方通行「そォだな、俺もそォ思う。だが何が起こるかなンてわかンねェンだからよォ。ましてやオマエならな」
上条「まあそりゃそうだけどよ」
一方通行「ま、オマエがどォなろうと俺には関係ねェがな」
上条「さりげにひどいなお前」
一方通行「今さら何言ってンだこの三下は?」
上条「そういやバレンタインといえば」
一方通行「あァ? 唐突に話を変えやがるなァ、何だ?」
上条「漫画とかだったらサッカー部のエースのイケメン先輩とかの靴箱の中にはチョコレートがたくさん入ってた! っつーネタとかよくあるよな」
一方通行「あンま漫画読まねェから知らねェが、それがどォしたか?」
上条「実際にそんなことってあんのかな? 俺は見たことねえけど」
一方通行「知るか。そォいうモンはまともな学校生活を送ってきたヤツに聞け」
上条「学園都市第一位のレベル5っていわゆるそういうポジションだろ? そういうことなかったのかよ?」
一方通行「あるわけねェだろ。いつも言ってンだろォが俺はそンなモンに関われる環境になかったってな」
上条「でも今は違うだろ?」
一方通行「チッ。……で、その漫画のベタな展開がどォかしたのか?」
上条「いや、別にないならないでいいんだけどよ。たぶんそういうのはリアルじゃありえないってことだろうし」
一方通行「……つまりそォいうフリってことか?」
上条「? 何のことだ?」
一方通行「自分の靴箱には大量のチョコレートが眠っていますっつゥ」
上条「は? そんなわけねえだろ。残念ながら俺はサッカー部のエースでなければ誰もが憧れるような学校一のイケメンでもないんだぜ?」
一方通行「自分で言って悲しくねェのか?」
上条「…………言うな」
752: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:16:42.65 ID:rXGMadHpo
一方通行「ケッ、くだらねェ」
上条「まあでも、男ならやっぱり少しは期待しちまうよな。そういう夢のような展開。なあ?」スッ
一方通行「俺にそォいう同意を求めるな。つゥか残念ながらそンな面白れェ展開あるわけねェだろォが」
一方通行(でも、コイツの場合そォいう展開がありそォなのが困るよなァ、本気で)
上条「そーだよな。ま、期待はしないで開けてみるよ」
一方通行「靴箱開けるだけでどンだけ時間かけてンだよ」ガチャ
上条「いざオープン!」ガチャ
上条「…………」
上条の靴箱『中に誰もいませんよ』
上条「……はぁ。やっぱお前の言う通りだな。そんな面白い展開あるわけねえよな」
一方通行「……そォだな」
上条「じゃ、さっさと教室行こうぜ? みんないるだろうし」
一方通行「……そォだな」
上条「……どうした一方通行? 何靴箱の前で立ち尽くしてんだよ」
一方通行「……なァ上条」
上条「ん?」
一方通行「さっき俺はこンな面白れェ展開ねェっつったよな」
上条「おう、それがどうかしたか?」
一方通行「……これ見てみろよ」
上条「あ、ああ…………いいっ!?」
一方通行の靴箱『異物感がしゅごいよぉぉぉっ!!』
一方通行「…………」
上条「す、すげえ……漫画ほどじゃないけど結構入ってるぞ、これ」
一方通行「……さっき面白れェ展開っつったけど訂正させてもうぞ」
一方通行「何一つ面白くもねェよ、このクソ展開」
―――
――
―
753: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:17:37.58 ID:rXGMadHpo
同日 08:25
-とある高校・一年七組教室-
結標「…………遅いわね。上条君と一方通行」
吹寄「まさか上条の馬鹿に巻き込まれていまだにベッドの中、とかないわよね?」
姫神「それがありえるから困る」
結標「アイツも起こさない限り絶対起きない時あるから心配だわ……」
吹寄「まあ学校に来ないなんてことはさすがにないでしょ。普通の人なら起きるでしょうし」
結標「それで起きない可能性があるのが一方通行なんだけどね……あはは」
姫神「たぶん。いや絶対。学校には来るから大丈夫。心配はしないでいい」
結標「遅刻しないことは保証しないのね……」
吹寄「……しかし」
男子生徒A「…………」ギロッギロッ
男子生徒B「…………」ソワソワ
男子生徒C「…………」フンッフンッ
吹寄「……やっぱりこの日は男子どもの目の色が見てわかるくらい変わるわね」
姫神「それはしょうがない」
結標「これがリアルバレンタインの空気ってやつね。漫画でしか見たことないから初めてで新鮮ね」
吹寄「いつも馬鹿やってる人が今日に限って大人しかったりするのよね。反対にいつもよりテンションが高い人とかもいるし」
結標「何というかすごいわね」
吹寄「見てみなさい。あれがその中で一番バレンタインマジックの影響を受けてる馬鹿よ!」ビシッ
男子生徒D「ちっ、バレンタインとかくだらないぜ。なあ?」
男子生徒E「そうだな。バレンタインとか別に興味ねーし、チョコレートとかいらんし」
男子生徒F「お前もそう思うだろ? 青髪ピアス」
青ピ「~~♪ ん? 何か言った?」フッ
754: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:18:43.91 ID:rXGMadHpo
吹寄「…………あれ? 何か予想と違う」
姫神「そわそわしてるというか。どちらかというと余裕があるように見える」
結標「そうね。まるで勝ち組のような表情をしてるわ」
吹寄「……まさかとは思うけど、もうすでに誰かにチョコもらっとかないわよね?」
姫神「そんなこと。果たしてありえるのか……」
結標「あはは、そうね……」
男子生徒E「おいおいどうした同士青髪ピアスよ? 何でそんな余裕綽々って感じの顔してんだ?」
男子生徒D「…………お前まさか」
青ピ「ふふふっ、せやで! ボクはすでにチョコレートをもらってるんやでぇ! 勝者の切符をこの手に収めてるんやでぇ!」ドヤァ
男子生徒F「何だとっ!? このッ……裏切りもんがあああああああああああああああああああああああああっ!!」
男子生徒D「おい青髪のゴミ野郎がチョコをゲットしやがったぞ!」
男子生徒B「ぶっ殺す!!」
青ピ「ふふははははははははははははっ!! 神ならぬ身にて天上の意思に辿り着いたボクに、キミらみたいな凡人が勝てるわけないやろ!!」
男子生徒A「容赦すんな殺っちまえ!!」
男子生徒F「死ね!」
男子生徒C「ついに一子相伝の暗殺拳を使う時が来たようだな……」
結標「……どうやらすでに誰かにもらっていたようね」
姫神「すごい調子の乗り様。あっ。一発でノックアウトされた」
吹寄「というかあの馬鹿にチョコレートあげたの誰よ? 下宿先のパン屋の店員さん?」
姫神「その辺りが妥当」
吹寄「しかしあの馬鹿者がもらう信じられないわね。実はコンビニとかで自分で買ったやつじゃないの?」
結標「ひどい言われようね彼。てかそれ悲しすぎるでしょ」
吹寄「……ん? もう一人機嫌の良さそうなやつがいるわよ」
土御門「――舞夏は俺の嫁、いや俺の女神か? いや違うな。舞夏は……まさしく俺の人生ッ!!」
755: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:19:27.69 ID:rXGMadHpo
姫神「聞かなくても。あれは舞夏ちゃんからもらってる」
吹寄「うん、口走ってる戯言を聞けばわかるわ」
結標「……土御門君、ちょっといいかしら?」
土御門「うん? 何だ結標?」
結標「上条君がまだ来てないようなんだけど知らない?」
土御門「あー、カミやんな。最近はどうせ寝坊するだろうと思って勝手に学校行ってるから知らないにゃー」
結標「そう」
吹寄「それくらい待っときなさいよ。というか起こしなさいよ隣人なんだから」
土御門「いやー正直メンドイですたい。……というか姉さんはいるけど、アクセラちゃんが見かけないにゃー。どうかしたのか?」
結標「実はアイツ昨日上条君の家に泊まってたのよ」
土御門「な、何だってい!? まさか隣の部屋がそんなにオイシイことになってるとは知らんかったぜよ。くそう、からかいに行けばよかったにゃー」
吹寄「ま、そーいうわけで上条が来ないとアクセラも来ないってことになるわけ」
青ピ「…………何やー、エラく楽しそうに話しとるやん。ボクも混ぜてえや」ボロッ
結標「随分とボコボコにされたわね」
青ピ「いやーチョコレートもらったことが嬉しゅうてなぁ、つい」
土御門「へー、ピアスくんチョコレートもらったのかにゃー? よかったな」
青ピ「……まあでも、カミやん辺りが大量のチョコレートをカバンに詰め込んでおはようしてくる未来を想像すると、おちおち喜んではいられへんけどなー」
ガラララッ
上条「おし、余裕で間に合ったぜ」
土御門「おっ、噂をすればカミやんだぜい」
吹寄「余裕じゃないわよ。ギリギリよギリギリ」
結標「おはよー上条君!」
姫神「おはよう」
上条「おっす、どうしたんだみんなして集まって?」
吹寄「別に、いつもどおりの雑談よ」
青ピ「あれ? というかカミやん大量のチョコレートはどこなん?」
上条「んなもんあるわけねえだろうが。漫画じゃねえんだぞ」
土御門「まさかカミやんが全然もらえてないなんてな。今日は雪でも降るんじゃないかにゃー?」
姫神「別に季節的に降ってもおかしくはない」
756: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/04(日) 22:19:58.43 ID:rXGMadHpo
結標「で、上条君。一方通行はどこかしら?」キョロキョロ
上条「……あー、あいつちょっといろいろ苦戦してっからな。もう少しで来ると思うぞ」
吹寄「苦戦って……一体に何に対して苦戦してるのよ」
姫神「もしかして。上条君の不幸に巻き込まれてしまった?」
上条「そりゃないよ姫神さん。いくら何でも傷つきますよ上条さんでも」
上条「まあ一目見りゃすぐわかると思うぞ」
ガチャリ、ガチャリ。
結標「ん? この変な杖の音は……」
吹寄「どうやら来たようね」
青ピ「おっはよおおおう!! アクセラちゃ……ん?」
一方通行「クソがッ。鞄に全部入り切らねェじゃねェかクソったれ」←たくさんの箱を持ってる
土御門「は?」
姫神「え?」
吹寄「なっ?」
結標「」
上条「ははっ、すげえだろこれ?」
一方通行「チッ、……あァ? ンだァその幽霊でも見てるよォな目はァ?」
青ピ「…………な」
「「「何じゃそりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」
―――
――
―
772: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:36:51.60 ID:gQYViCn7o
同日 08:50 ~一時間目・能力開発~
-とある高校・多目的教室-
男子生徒A「ぬおおおおおおおおおおおっ!!」グググ
男子生徒B「たあありゃああああああああっ!!」グググ
男子生徒C「まっがーれ」クイ
女教師「じゃあこのカードは?」スッ
女子生徒A「ええっと……〇ね!」
女子生徒B「ふふふっ、違うわ。これは……見えたっ! ☆ね!」
女教師「残念。□でした」
吹寄「……ふぅ、相変わらず能力なんて目覚める気配なんてないわね」
姫神「お疲れさま」
吹寄「あっ、そっちも終わったの?」
姫神「うん。相変わらず成果はない」
吹寄「あはは、しかし結標さんたちはすごいわよね。高位の能力者だから個別指導なんて」
姫神「私たちと違って。どんな能力かハッキリわかっているから」
吹寄「……ま、今はそんなどうでもいい話題は置いといて」
姫神「……」コクリ
吹寄「アクセラがあたしたちの予想以上にチョコレートをもらっていたことよね」
姫神「うん。まったく考えもしなかった」
吹寄「よくよく考えればレベル5の第一位でお金持ちでそこそこ顔がいいんだからおかしくはないわよね……ちょっと性格面がアレだけど」
姫神「でもほかのクラスや学年の人たちは。そういうところを全く知らない」
吹寄「つまりいわゆる白馬の王子様的な感じに見られてるって感じか……」
青ピ「せやなー、ほんま羨ましいでー」ウンウン
吹寄「ふん」ゴッ
青ピ「あいたっ!? 何やねんいきなり!」
吹寄「馬鹿がいきなり現れたらとりあえず迎撃するでしょ?」
青ピ「横暴やで! 暴力反対!」
姫神「無断で女子の中に割って入る。青髪君が悪いと思う」
青ピ「ええやん。ボクも混ぜてえや女子トーク」
吹寄「お前が混ざるだけで女子トークじゃなくなるでしょうが」
773: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:37:37.35 ID:gQYViCn7o
姫神「……そういえば青髪君。さっきチョコもらったって言ってたよね?」
青ピ「そうなんよぉ、いやーボクもついに勝ち組になったんやでえ!」
吹寄「何だかすごくムカつくわね……で、誰にもらったのよそれ?」
青ピ「舞夏ちゃんやでえ」
吹寄「舞夏ちゃん……って土御門の妹の舞夏ちゃん?」
青ピ「せやでー、まさか通学路で待ち伏せまでしてくれてたなんて思わへんかったわ。いやーモテる男はつら――」
ガシッ
土御門「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……切れちまったよ……」
青ピ「ちょ、土御門君……? この学校屋上開いてたっけ? いやまっ、やめっヘルプミー!!」ズザザザ
吹寄「……行っちゃったわね」
姫神「ご愁傷様」
吹寄「まあ舞夏ちゃんの本命は兄だろうから。青髪が哀れでしょうがないわね」
姫神「うん。そういうポジションだからしょうがない」
吹寄「しかしクラスメイトの目線から見ると、アクセラがあんなにチョコレートもらってるのに違和感があるわね」
姫神「どうして?」
吹寄「たしかに第一位だから人気あるのかもしれないわ。でもそれに反したマイナス点も結構知れ渡ってるはずよね」
姫神「……ああ。学内ラジオ」
吹寄「会話が全然いいようにできてなかったし、さらに言うなら授業中は大体寝てるっていうだらしない部分もアピールしちゃったわけだし」
姫神「……それはさほど問題ないのだと思う」
吹寄「えっ、何で?」
姫神「恋は盲目。という言葉があるぐらいだから。そういう部分は目に入らないのかも」
姫神「それに多少は欠点があったほうがいいのかもしれない。完璧超人には近寄り難いみたいに」
吹寄「うーん、そうなのかな? あたしは嫌よ、授業中に寝てるような馬鹿者は」
姫神「趣味嗜好は人それぞれ」
吹寄「……そうね。じゃあこれは許容したとしてもまだ疑問点があるのよね」
姫神「言ってみて」
吹寄「去年やったマラソン大会あるじゃない。その時にアクセラは結標さんをお姫様だっこをしながらゴールという、ものすごく恥ずかしいことがあったわよね?」
姫神「うん。あった。学校新聞にもでかでかと載ってた」
吹寄「あれって傍から見たら二人はそういう関係なんだなぁ、って見えるんじゃないかしら? 普通」
姫神「……うん。言われてみればそう」
吹寄「だったら普通はチョコレート渡したりなんかしないんじゃ……?」
土御門「にゃー、そいつは間違ってるぜい吹寄」
774: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:38:05.27 ID:gQYViCn7o
吹寄「終わったのねおかえり」
姫神「青髪君は?」
土御門「あの勘違いクソ野郎にはアスファルトの染みになってもらったにゃー」
吹寄「ふーん。で、何が間違ってるっていうの?」
青ピ「ちょっとおおおおおおおおおおおおっ!! 何かリアクション薄ぅないいい!?」
吹寄「あっ、いたの青髪ピアス」
姫神「気付かなかった」
青ピ「酷いでみんなぁ! ボクの存在は永久に不滅なんやでえ!」
吹寄「……で、何が間違ってるっていうのよ土御門」
土御門「そうだにゃー、例えばだな」
青ピ「ちょ、スルーはやめてっ!」
姫神「青髪君。ちょっとうるさい」
青ピ「……あい」
土御門「まず一つ言っとくが、二人がそういう関係じゃないっていうのは結構知られてると思うぜい」
吹寄「どういうこと?」
土御門「お前らがさっき話してたラジオのことを思い出してみるんだな」
吹寄「ラジオ……って学内ラジオのことよね?」
姫神「アクセラ君が。望んでかは知らないけど。イメージダウンに努めていたあれ」
吹寄「あのラジオでそんな話してたっけ……?」
土御門「……よーく思い出してみるんだな。あのラジオのエンディングトークの会話の内容をな」
姫神「……ああ」
吹寄「それって……まさか……?」
部長『ところで一方通行君はバレンタインデーにチョコをもらう予定はあるのかなー?』
一方通行『……! ン、ンなモンねェ……と思う、そォ信じたい……』
土御門「そう。この返答でアクセラちゃんと結標はそういう関係じゃないって認識になるんじゃないかにゃー?」
吹寄「い、言われてみれば……」
775: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:39:17.16 ID:gQYViCn7o
姫神「……でも。仮にだけど二人が付き合っていて。そういうのを隠していたとしたら。こういう嘘もつくんじゃないの?」
土御門「ま、そうだな。少しでも頭が回るヤツならそう考えるだろう。でも残念ながらバレンタインデーが近くて浮き足立ってる時期だぜい?」
吹寄「正常な判断ができない、ってこと?」
土御門「ああ。まあでも、気付いてても略奪愛上等みたいな考えを持ってるヤツには関係ない話だけどにゃー」
姫神「略奪愛……」
吹寄「何だか急にドロドロした話になったわね」
土御門「そういうわけで、アクセラちゃんにチョコ渡したヤツらは脳内お花畑のヤツらかxxx趣味のヤツらの二パターンだろうな」
吹寄「……もしかした純粋な気持ちで渡した人もいるかもしれないのにひどいこと言うわね」
土御門「で、いろいろ話を統合した結果、つまり何が言いたいかというと――」
青ピ「アクセラちゃん爆発しろ!」
土御門「というわけだにゃー」
吹寄「あー、そう」
青ピ「何か今日の吹寄さんいつもより冷たい気がするんやけど……」
吹寄「そう? いつもどおりでしょ」
姫神「……! そういえば。上条君へのチョコレートが少なかったのは。まさかのアクセラ君効果?」
土御門「それもあるだろうけど……まあでもカミやんも人気もんだからにゃー」
青ピ「みんなタイミングを計ってんやろうなー。だから靴箱なんていうベタなところに置かないんやろ」
土御門「姫神もカミやんに渡すんだったらよーく考えてから動いたほうがいいぜい。どうせ本命だろ?」
姫神「……う。うん」
青ピ「チッ、死ねカミやん」
吹寄「……で、その上条当麻が見えないようだけど、どこに行ったわけ?」
青ピ「ああカミやんなら別室に連れて行かれたで」
土御門「ある意味アクセラちゃんたちと同じ特別扱いだにゃー」
吹寄「こんな日まで大変ねほんと……」
―――
――
―
776: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:40:36.88 ID:gQYViCn7o
同日 09:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
ガチャ
数多「あー、仕事するのだっる……」
ヴェーラ「おはようございます社長!」
ナンシー「おはようございます!」
数多「……あん? 何だお前らもう来てたのか。ついに仕事熱心な社畜になっちまったかぁ」
マイク「おはようございます!!」
デニス「おはようございますっ!!」
オーソン「はぁざいまっす!!」
数多「んだぁ? 今日はやけに集まるの早ぇなあ、何かあったか今日?」
円周「何って今日はバレンタインだよ数多おじちゃん」
数多「バレンタイン? あー、そーいやそんなもんあったわ。で、それがどーかしたかっつー話だけどな」
円周「相変わらずどうでもいいことにはとことん興味がないよね数多おじちゃん」
数多「しょうがねえだろ興味がねえんだからよ。もうもらえるかもらえないかドキドキワクワクしてる歳じゃねえんだからな」
ヴェーラ「社長! 少しよろしいでしょうか!」
数多「あぁ? 何だ」?」
ナンシー「あのぉ……これ! 受け取ってもらいたいんですが!」スッ
数多「……何だこりゃ?」スッ
ヴェーラ「今日がバレンタインというわけなのでチョコレートです。私とナンシーで作りました」
ナンシー「猟犬部隊が解体して路頭に迷った私たちを拾ってくださった社長への感謝の気持ちです!」
ヴェーラ「ちっぽけなものだと思いますが是非受け取ってください!」
数多「…………」
円周「よかったねー数多おじちゃん。今年のバレンタインチョコがお母さんだけ、って感じの悲惨な思いをせずに済んで」
数多「うるせえぞクソガキ。……まぁ、何つーか……ありがとよ」
ヴェーラ「ほかの皆さんの分もありますのでどうぞもらってやってください」
<っしゃああああああああああああああああああああああっ!! <いええええええええええええええええええい!! <キタコレ!!
777: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:41:29.55 ID:gQYViCn7o
数多「……ちっ、んなことでいちいちはしゃいでんじゃねーよ馬鹿どもが」
円周「もーそんなこと言ってー。いい歳いったおじちゃんがテレてるなんて面白い話だよねー」ニヤニヤ
打ち止め「そうだよねー、ってミサカはミサカは同意してみたり」ニヤニヤ
数多「……おい打ち止め。いつからここにいやがったんだ?」
打ち止め「ついさっきだよ。鍵が開いてたからいつでもウェルカム! ってことだと思って勝手に入ってきました! ってミサカはミサカは経緯を簡潔に説明してみたり」
円周「打ち止めちゃんが早めに来ることを見越してロックを解除しときました」ビシッ
ゴッ
打ち止め「そんなことより、はいキハラ!」スッ
数多「あん? ……何だぁ? またチョコレートかよクソッタレが」
打ち止め「ヨミカワとヨシカワからだよ。いつもお世話になってますー、って感じで渡してくれって言われましたー!」
数多「だったらいつもお世話になってますーって感じに渡せよ」
円周「おおっー、数多おじちゃんモテモテだねー」
数多「ちっ、くだらねえこと言ってねえで早くどっか行けクソガキども! 仕事の邪魔だ」
円周・打止『はーい!!』タッタッタ
数多「…………はぁ、面倒臭せぇ……ん?」
数多「そーいやあのガキども何でキッチンに行きやがったんだ?」
数多「何かロクでもねぇこと考えてんじゃねえだろうな?」スタスタ
数多「…………」スッ|д゚)
円周「――ふふふふふっ、いよいよ長年温めてきた計画を実行するときが来たよーだね」
打ち止め「実際は一週間前だけどここはツッコマないでおこう、ってミサカはミサカは口をチャックしてみたり」
円周「じゃあ始めようか打ち止めちゃん?」
打ち止め「うん!」
円周「これより『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』を!!」
打ち止め「開始する!! ってミサカはミサカは高らかに宣言してみたり!」
数多「…………すっげえ不安なんだが」
―――
――
―
778: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:42:19.83 ID:gQYViCn7o
同日 09:35 ~二時間目前休み時間~
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「……さて、どうやら全員集合したようね」
上条「何だよ? 一時間目が終わってから全員集合って?」
一方通行(嫌な予感しかしねェ……)
青ピ「次も移動教室やから早めに頼むでー」
一方通行「オマエが言う台詞じゃねェだろそれ。クソ似合わねェよ」
青ピ「いつもはおちゃらけてるキャラが急に真面目になるとポイント高くなるんやでー」
上条「テメェが真面目になっても気味悪りぃだけだよ」
青ピ「ひどい!」
吹寄「………………」ピキピキ
結標「ふ、吹寄さん! 落ち着いて!」
姫神「冷静さを欠いたら負ける」
結標「何に!?」
土御門「……で、結局何の用だにゃー?」
吹寄「ええっと、今集まってもらったのはこれを渡すためよ」スッ
青ピ「えっ? 何それ?」
土御門「一見可愛くラッピングされたクッキーが入った小袋のように見えるんだが……?」
吹寄「見えるも何もその通りよ」
上条「は? 何でそんなもんを吹寄が俺たちに渡してくんだよ?」
吹寄「何でって、今日はバレンタインデーだからに決まってるじゃない」
土御門「……へー」
吹寄「……何よその目は?」
青ピ「どう見ますかつっちーさん」
土御門「これは何かのトラップだと推測しますぜカミやんさん」
上条「そ、そうだよな。あの吹寄がそんなバレンタインプレゼントなんて女子らしいもん渡してくるわけ――」
ゴッ! ガッ! バキッ!
779: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:43:04.89 ID:gQYViCn7o
吹寄「貴様らの中であたしは一体どういう位置付けなのよ!!」
土御門「にゃー! これは罠にかかろうがかからまいが結果は一緒! すでに俺たちは吹寄の手の中で踊らされていたんだぜい!」
上条「くそっ! 俺たちはハメられたってのかよ!」
青ピ「吹寄制理……恐ろしい娘……!」
吹寄「ったく、バカのこと言ってないでさっさと受け取りなさいよ」スッ
上条「お、おう」
青ピ「あ、あざーす」
土御門「ごちになりまーす」
吹寄「あっ、ちなみにこれはあたしたち三人からよ? そこんとこ勘違いしないでちょうだいね」
パキッ!
青ピ「ん?」
一方通行「…………」ガタガタブルブル
青ピ「どーしたんやアクセラちゃん? そない固まったままクッキー握りしめてぇ。あんなにチョコもらったのにそんなに嬉しいんかいな?」
一方通行「い、いや、そォいうわけじゃねェよ……」
一方通行(こ、これかァあああああああああああッ!? 昨日俺を家から追い出してまで作り上げた化学兵器はァああああああああああああああああッ!?)
土御門「さて、小腹も空いたことだしちょっぴりいただくとするぜい」シュルル
一方通行「なっ!?」
青ピ「せやな。ボク今日朝メシ食べてへんかったからなぁ、いただくとしましょ」シュルル
一方通行「ちょまっ!?」
上条「おっ、何か食べる流れっぽいな。じゃあ俺も」シュルル
一方通行「ばっ!」
上条土御門青ピ『いただきまーす!』パクッ
780: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:43:56.57 ID:gQYViCn7o
一方通行「あ…………」
上条「…………」モグモグ
青ピ「……うん、うん、美味美味」モグモグ
土御門「なかなかのお手前だにゃー」モグモグ
吹寄「…………ほっ」
一方通行「…………は? どォいうことだ?」パクッ
一方通行「…………」モグモグ
一方通行「……普通だ」
土御門「相変わらずアクセラちゃんは素直じゃないにゃー」
青ピ「恒例のツンデレレータさんやでー」
一方通行(普通過ぎるだろ!? 塩の配分が少し多めで甘さ控えめになっててむしろ好感を持てるぐらいにな!)
一方通行(見たところ他のクッキーも全部普通だ。オイオイおかしいだろ、結標が武力介入して無事に完成される食いモンなンざ存在しねェはずだろォが)
一方通行(いや、逆に考えろ。吹寄と姫神がいろいろサポートしてこれを完成させたとする、とするとアレだ。つまり、バレンタインの恐怖はもォ去ったということになる)
一方通行(こればかりはあの二人に感謝すべきだな……)パクッ
一方通行(…………いや、待てよ?)バッ
結標(……さすが吹寄さんね)
姫神(吹寄さんが美味しいものを作ってくることはわかってた。だけど私も負けない)
一方通行(……コイツらがまだチョコレートを隠し持ってるっつゥことはねェか?)モグモグ
一方通行(姫神は料理の腕に自信を持ってる。そンなヤツが他のヤツと合作クッキーを作って満足するか? しねェだろ)パクッ
一方通行(そォ考えると必然的に結標もチョコレートを用意してるだろォ。つゥか、じゃねェと俺が外泊した意味がまったくねェ)モグモグ
一方通行(クソっ、まだ恐怖は始まったばかりっつゥことかよクソったれが……)パクッ
上条「……いつまで食ってんだ一方通行? とっとと次の授業の教室行くぞ?」
一方通行「あ、あァ、済まねェすぐ行く」モグモグ
―――
――
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781: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:44:29.76 ID:gQYViCn7o
同日 10:00
-第七学区・とあるアパート-
浜面「……ごがぁ、すぴぃ……」Zzz
ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!
浜面「ふがっ!?」バサッ
ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!
浜面「何だぁ!? 電話ぁ!? こんな朝っぱらから誰だ?」スッ
『麦野沈利』
浜面「…………えー、何かすげえ嫌な予感がすんだけど」
ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!
浜面「とりあえず出るか……」ピッ
浜面「もしもし?」
麦野『はーまーづーらー、電話に出るのがちょろーっと遅すぎるんじゃないかしらーん?』
浜面「はぁ? 別にいいだろ」
麦野『何言ってんだテメェ? 電話っつーのは2コール以内に出るのが常識でしょうが』
浜面「何でそんな会社のルールみたいなのをプライベートでもしなきゃいけねえんだよ」
麦野『社会人の常識よ? 仕事もプライベートも関係ないわ』
浜面「俺は一応学生だっつーの。学校には全然行ってねえけどな……」
麦野『中卒で働いてるヤツらは社会人だろ? つまりそーゆーこと』
浜面「へいへいわかりましたよ。で、何の用だよ? こっちは寝起きの頭だからあんまり難しいのは勘弁して欲しい」
麦野『もともとテメェの頭のスペックは低いでしょうが……へー、こんな時間までグースカ寝てるなんざいいご身分じゃないか』
浜面「昨日……つーか今日帰ったの朝の五時だぞ? 寝てなきゃやってらんねーよ」
782: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:45:02.19 ID:gQYViCn7o
麦野『ま、んなことどーでもいいわ。おい浜面。今日昼の十二時にいつものファミレス集合な』
浜面「は? 今何て言った?」
麦野『だから今日の昼十二時にいつものファミレス集合って言ったのよ』
浜面「……ええと、今日ってたしか仕事はなかったんじゃねかったか? まさかまた急に仕事でも入ったのかよ?」
麦野『いーや、今日のアイテムは休業よ。つーか、もし今日あの女から電話きたらソッコー拒否するから』
浜面「だったら休ませてくれよ。久しぶりの休みなんだからゆっくりさせてくれ」
麦野『うん、それ無理』
浜面「何でだよ」
麦野『だってアンタはアイテムの下部組織、いわば私たちの手足同然の下っ端でしょ?』
浜面「……そうだけど」
麦野『そんなヤツに拒否権なんて初めから存在するわけないじゃない。違う?』
浜面「…………はぁ。わかったわかったよわかりました。行きゃいいんだろ行きゃあ」
麦野『遅刻なんてしたら拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された粒機波形高速砲をひたすら避け続ける、リアル弾幕ゲーをしてもらうことになるから』
浜面「ははっ、初弾で蜂の巣になってる自信があるな……」
麦野『だいじょーぶ、もしものために漫画雑誌懐にしまわさせてやるから』
浜面「たしかに防弾チョッキの代わりになる展開よく見るけど、お前のビームの前じゃ何の意味もねえよ!」
麦野『そう? 友情、努力、勝利のパワーで案外どうにかなるかもよ?』
浜面「なるわけねーだろ。しかもそれジャンプ限定のパワーじゃねえか。マガジンとかじゃダメなパターンじゃねえか」
麦野『つまり何が言いたいかというと、きちんと遅れずに来いってことよ? わかった?』
浜面「はいはい」
麦野『じゃねー――ピッ』
浜面「……はぁ、くそっ、貴重な休日が……」
浜面「まあいいや。つーか今何時だ?」
浜面「……十時過ぎか。だったら少し仮眠の時間が取れるな」ゴロン
浜面「…………ごがぁ」Zzz
―――
――
―
783: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:45:39.57 ID:gQYViCn7o
同日 10:30 ~三時間目前休み時間~
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「……さて、あたしはもう渡したわけだから次はあなたたちの番ね」
姫神「うん。まかせて」
結標「……うう、何というか緊張するわね」
吹寄「まだ緊張するのは早いんじゃないかしら? というか二人は渡す手段考えた?」
姫神「だいたいは」
結標「私は、その……まだかな?」
吹寄「まあ、そんなに焦る必要はないけどそんなんじゃあっという間にバレンタイン終わっちゃうわよ?」
結標「それはわかってるけど、何というかこういう作戦を考える、みたいなのが苦手なのよね」
姫神「でも。だからと言って何も考えないと。取り返しのつかないことになってしまうかも」
結標「えっ? そ、そんな大げさな……」
吹寄「たしかにそうね。上条並に……というか現時点では上条よりモテるとわかった以上放置するのは危険そうね」
結標「くっ、というかチョコ渡してる人から見たらあんな変人のどこがいいのかしら?」
姫神「結標さん。それブーメラン」
吹寄「ま、見たところアクセラはクラス内では人気はないようね。やっぱりどういう人か知ってるからか。……まあその代わり」
青ピ「でさぁ、そのロボット娘の喋り方が可愛くてなぁ」
上条「へー」
女子生徒A「ねえねえ上条君?」
上条「はい?」
女子生徒A「この前は委員会の仕事手伝ってくれてありがとね。はいチョコあげる」
上条「お、おう。サンキューな」
女子生徒A「じゃねっ」タッタッタ
上条「……はぁ、別にいいのになお礼なんて。なあ?」
青ピ「青髪グレートスペシャルアームストロング腹パンッ!!」ゴッ
上条「ごふっ!! な、何しやがる!?」
青ピ「とりあえず死んどけカミやん。それが世界のためや」
上条「何でだよ!」
女子生徒B「あのー上条君?」
上条「あ、はい。何だ?」
女子生徒B「この前備品の買い出し付き合ってくれてありがとね。はいチョコどーぞ!」
青ピ「がああああああああああああああああああああああああああッ!! この世は理不尽やあああああああああああああああああああああああああッ!!」
784: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:46:36.83 ID:gQYViCn7o
吹寄「…………こんな感じにクラス人気は上条の方があるようね」
結標「たしかこれで八個目だっけ? 吹寄さんの分を抜くと」
土御門「いーや、九個だぜい」
吹寄「ふん!」バッ
土御門「おっと危ない」サッ
吹寄「ちっ、青髪ピアスの馬鹿のようにはいかないか……」
土御門「にゃー、いきなり攻撃なんてひどいぜ吹寄ー」
吹寄「お前が唐突に現れるからでしょうが!」
姫神「……土御門君。九個目とはどういうこと?」
土御門「ここに来る前に舞夏が渡したらしい。さすが舞夏近所付き合いができるいい妹だにゃー」
吹寄「随分と余裕そうね。てっきりまたキレてるのかと思ったけど」
土御門「いやーよくよく考えたら俺と舞夏は絶対的な絆で結ばれてるからにゃー。いくらカミやんでもこれはどうしようもないぜよ」
姫神「それ。何てフラグ?」
結標「あ、でもそれじゃあもしかして……」
土御門「どうかしたかい姉さん」
結標「……一方通行も舞夏ちゃんにもらったんじゃないかしら?」
土御門「ふむ、言われてみればそうだな。今朝はカミやんと一緒に登校して来たみたいだし、心優しい女神舞夏が渡していてもおかしくはないな」
姫神「ライバルがふえるよ。やったね二人とも」
土御門「おいやめろ」
吹寄「絶対的な絆はどこいったのよ」
結標「ま、まあ大丈夫じゃない? た、たぶん二人とも初対面だろうし、か、上条君にも渡してるみたいだから義理だろうし」
吹寄「声が震えてるわよ」
土御門「だ、大丈夫だ! 俺と舞夏の愛のベクトルは! あの第一位のベクトル操作でも操ることはできないぜい!!」
結標「そ、そうよね! 頑張って土御門君!」
吹寄「土御門を応援する前にまず自分が頑張りなさいよ」
結標「……ううっ。ま、まだ刻が来てないのよ」
吹寄「そんな中二的なこと言われても」
姫神「……あ。そんなこと言ってる間に。アクセラ君に忍び寄る影が」
結標「えっ」
785: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:47:23.01 ID:gQYViCn7o
一方通行(……クソっ、油断するンじゃねェぞ俺ェ。いつあの野郎が仕掛けてくるかわからねェ)
一方通行(いや、しかしもしアイツが渡してきたとして俺は断れるのか?)
一方通行(『そンな生ゴミを渡してきてンじゃねェ』っつって一蹴することが出来ンのか?)
一方通行(…………)
一方通行「…………だったら」ボソッ
女子生徒D「えっ? 何?」
一方通行「…………」
女子生徒D「…………」
一方通行「いや、逆にオマエが何だよ」
女子生徒D「え、ええっと、急に喋りだすから……その」
一方通行「あン? ……つゥかオマエ」
女子生徒D「な、何?」
一方通行「どっかで見たことある顔かと思えば、前ドッジボールしたときに敵チームにいた念動使いじゃねェか。同じクラスだったのかよ」
女子生徒D「体育って同じクラスでしか滅多にやらないよね!? というか私はクラスメイトとすら認識されてなかったの!?」
一方通行「で、何だよ念動使い。演算の簡略化はイイ加減やめたのか?」
女子生徒D「あっ、それについてなんだけどちゃんとやめて今はきっちり演算してるわよ」
一方通行「そォか。そりゃ何よりだ」
女子生徒D「おかげさまで最近は結構能力の調子がいいのよね。こりゃ二年生になる頃には異能力者(レベル2)になっちゃうかもね」
一方通行「そいつはよかったな」
女子生徒D「…………、それで何だけどね。私がここまで成長できたのはいわばアクセラ君のおかげってわけよ」
一方通行「ンなこたァねェよ。成長できたのはオマエの努力のおかげだ。俺はきっかけを与えたに過ぎねェ」
女子生徒D「でもそのきっかけがないと私は成長できなかったかもしれないわ」
一方通行「チッ……」
女子生徒D「だからそのお礼、って言ったらおかしいかもしれないけど、これを受け取って欲しいのよ」スッ
一方通行「……俺はこンなモンもらうために助言したわけじゃねェぞ」
女子生徒D「うん知ってるわ。別にそれいらなかったら捨ててくれても構わないわ」
一方通行「…………」
女子生徒D「じゃ、ありがとね」タッタッタ
一方通行「…………」
一方通行「チッ、くっだらねェ」
786: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/11(日) 21:48:42.43 ID:gQYViCn7o
結標「」
吹寄「な、何か漫画のヒロインからチョコをもらう主人公みたいだったわね……リアルで」
姫神「これは思わぬ伏兵。結標さんピンチ」
結標「ぎゃー! わ、わ、私も何かそういうシチュエーション考えたほうがいいのかしら!?」
吹寄「落ち着いて結標さん。大事なのは自分らしさよ!」
姫神「そんなこと言ったら。余計にハードルが上がるような気がするのは私だけ?」
キーンコーンカーンコーン
ガラララッ
家庭科教師「ちっ……。はーいみなさーん! 授業始めるから席着いてくださいねー!」
男子生徒A「(……おーおー家庭科の先生機嫌が悪そうだなー)」ボソッ
男子生徒B「(そりゃあれだろ。そろそろ行き遅れそうだからこういうきゃっきゃうふふしてるイベントにイラついてんだろうなー)」ボソッ
家庭科教師「そこっ! うるさいわよ! 私はまだまだ行き遅れないわようえーん!!」タッタッタ
ガララララッ!!
青ピ「あっ、せんせーどっか行ってしもーた」
土御門「……あーりゃりゃ。こりゃ今日の授業は中止かにゃー?」
吹寄「そういうわけにはいかないわ。ほらっ委員長。早く追いかけなさい」
青ピ「えっ、ボクッ?」
吹寄「お前以外に誰がいるのよ?」
青ピ「で、でも女子の方の委員長とかい――」
吹寄「いいから行きなさい」ゴキゴキ
青ピ「はい喜んでー! ちょっとフラグ立ててきますわー!」
ガラララッ
上条「相変わらず能天気だな」
一方通行「……はァ、そォだな」
上条「どうした一方通行? 元気がねえな」
一方通行「何でもねェよ面倒臭せェ」
上条「?」
―――
――
―
810: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 17:53:15.58 ID:5BE/152Uo
同日 10:45
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
ヴェーラ「はい、こちら従犬部隊です」
マイク「そいじゃあ、第八学区の方へ配送の仕事に行ってきます!」
ナンシー「いってらっしゃいマイク!」
数多「…………暇だ」
数多「何か退屈だなぁと思ったら、そーいやガキどもがキッチンに引きこもってっからか」
数多「いつもは周りではしゃぎまわってやがるからな。ま、別にどーでもいいけどよ」
ピンポーン
数多「あ? 客か?」
ナンシー「私が出てきましょうか?」
数多「おお。頼んだぞ」
ナンシー「わかりました。ではいってきます」スタスタ
数多「…………しかし、客がわざわざ直接出向くなんざ珍しいな。犬っころが散歩しに来た時以来か」
数多「まあまたあんな鉄クズが出向いてくるとは思えねぇけど、まあどうでもいいわ」
ナンシー「社長!」スタスタ
数多「どうしたナンシー」
ナンシー「いえ、お呼びですよ社長。マンションのエントランスからです」
数多「はあ? お客様は誰だったんだ?」
ナンシー「女性だったんですけど……ちょっとわかりませんでした」
数多「特徴は?」
ナンシー「ええと、つばの広い帽子を目深にかぶってて顔はよくわかりませんでしたが、服装は何というかパジャマみたいな服でしたね」
数多「パジャマ……?」
ナンシー「はい。あとカメラの角度的に車椅子か何かを使ってる方というのはわかりましたよ」
数多「…………」
ナンシー「知り合いですか?」
数多「さあな。ま、とにかく行ってくらぁ」スタスタ
ナンシー「いってらっしゃいませ」
811: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 17:55:35.29 ID:5BE/152Uo
数多「…………」ピッ
数多「あー、ただいま代わりました。社長の木原です」
女性『……あらあらすみません。わざわざ呼び出してしまって』
数多「いえいえ、大丈夫ですよ。何の御用でしょうか?」
女性『はい。実は私少し道に迷ってしまって……』
数多「たしかにこの辺りはちょっと道が複雑ですからねー。で、どこへ行きたいんですか?」
女性『ええと、第七学区の病院なんですけど』
数多「ああ、あのデカイ病院ですね? 大丈夫ですよ、すぐ部下に送らせます」
女性『あっ、その前に少しよろしいでしょうか?』
数多「はい?」
女性『私実はそこの病院に入院してて、病院から散歩感覚で街に出ていたら迷ってしまったんですよ』
女性『なので少しばかり疲れてしまったので……よかったら中で休ませていただけないでしょうか?』
数多「おーおー、そりゃ大変でしたでしょうなー。ここからだったら往復すりゃ軽くジョギングのコースになりますからなぁ」
女性『午前中なので寒さもあるので早く入れて欲しいです』
数多「はいはーい」
女性『…………』
数多「…………」
女性『……あの、早く玄関のロックを開けてもらえないでしょうか?』
数多「えっ? 何で?」
女性『あの、先ほど行った通り疲れているので少し休憩したいと……』
数多「あーそう」
女性『あーそう、って何ですか?』
数多「何つーか、正直に言わせてもらうが、俺は信用できねー人間をここに入れるほどお人好しじゃねーんだよ」
女性『信用出来ない? 私がでしょうか』
数多「ああ。テメェには不明瞭なところが腐るほどあるからな」
女性『そんなこと言われましても困ります。私のどの辺りが信用出来ないと?』
数多「そうだな。わかりやすいので言やあ何でこの会社に来たのかっつーことだな」
数多「普通に道に迷ったんならジャッジメントとかアンチスキルの詰め所に行きゃいいだろうが。こんなクソみてぇなところに来ずによ」
女性『あら? そうでしたか?』
数多「そりゃそうだろ。無償で丁寧に案内してくれる善人と端金をせびるゴミクズ、どっちを選ぶかなんて考えなくてもわかるよなぁ?」
女性『私はたまたまこの会社の看板を見かけたのでここに来ただけですよ。とくに意味なんてものはないんですよ』
数多「ほぉ、そりゃありがてえこったな」
女性『というわけで早く入れ――』
数多「断る」
812: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 17:56:43.14 ID:5BE/152Uo
女性『……まだ信用をいただいていないということですね』
数多「当たり前だろうが。言っただろ? 腐るほど信用ならねー点があるってな」
女性『何でしょうか?』
数多「テメェがここに来るのは早すぎんだよ」
女性『……何を言ってるのかわからないですね』
数多「病院からここまでの距離、最短距離で動いても片道一時間弱かかる。ましてやそんな車椅子じゃあな」
女性『今は十一時前ですよ。あの病院の外出許可時間が九時からなので別におかしくはないでしょう』
数多「ああ、普通なおかしくはねえなぁ」
女性『それにこの車椅子は電動ですよ。普通に歩くよりはよっぽど速度がでます』
数多「そうか。そんな面白いモン持ってたらさぞ生活するのに苦労はしなさそうだな」
女性『楽しすぎない程度には調整していますよ。それよりいい加減入れてもらえないでしょうか?』
数多「いや待て。あれれー? おっかしいなー?」
女性『何を突然言い出しているのですか? おかしいところはないと思いますけど』
数多「そーいや、たしか今日は午後から医者の大半は外に出る日じゃねかったっけなー? だから検診は午前中に行うから実質自由時間は十時からとかじゃねかったかー?」
女性『あらあ?』
数多「こっちは何でも屋やってんだよ。学園都市内の病院のスケジュールや入院患者、全部把握ししとかなきゃいけねえよなぁ?」
女性『あらあら』
数多「あの病院にテメェみてえな野郎が入院してるなんざ情報一つもねえんだよ。だからとっとと帰れカス」
女性『…………ふふっ』
数多『あぁ?』
女性『ば・れ・て・し・ま・っ・て・は、仕方がありませーん!!』ギュイン
ピ――――ガチャン!
813: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 17:58:10.63 ID:5BE/152Uo
数多「……電子キーをハッキングして開きがったか」
女性『と、いうわけで数多クーン! 私もここに入れてもらうことを『諦め』るので、あなたも私を追い返すことを『諦め』てくださーい!』
数多「はぁ、まあそう来るとは最初から思ってたけどな」
女性『おや? もしかして私が誰だかわかってましたかー?』
数多「そりゃそうだろ。だいたいこんなクソ寒い中パジャマだけで動きまわってるアホはテメェだけだろうが、木原病理」
病理『まあそんなことはどうでもいいんですよ。私にはまるで関係のない話ですからねー』
数多「帰れ」
病理『ではお邪魔しまーす!』
ギュイーン!!
数多「チッ、面倒臭せぇ……オイ円周!!」
ガラララ
円周「なにー? 今私は忙しいんだけど数多おじちゃん」
数多「お前アレだぁ、アレェ持ってこい!!」
円周「りょーかーい。ちょっくら取ってくるねー」テクテク
数多「…………」
円周「持ってきたよー」テクテク
数多「おお、それを今すぐ玄関前に仕掛けてこい。全部だ」
円周「はいはーい」テクテク
数多「…………」
ヴェーラ「あ、あのー社長?」
数多「何だ?」
ヴェーラ「私の目がおかしくなければアレって『地雷』ですよね?」
数多「そうだけど」
ヴェーラ「……あんなものこんな場所に仕掛けちゃ駄目じゃないですか」
数多「構わねーよ。建物自体に影響でねーように調整はしてる。この俺がな」
円周「数多おじちゃーん、五個全部仕掛けてきたよー。『木原』らしく踏んだ人は確実に木っ端微塵になるように配置したよー」ピーガガガ
数多「お疲れーぃ。もうキッチン戻ってもいいぞ」
円周「ところで何で突然地雷なんか仕掛けたの? 馬鹿なテロリストちゃんがまた懲りずに侵入しちゃった?」
数多「あー、テロリストちゃんだったらどれだけ楽だっただろうなー?」
円周「?」
ドガガガガガアアアアアアン!!
814: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 17:59:11.60 ID:5BE/152Uo
ヴェーラ「!?」ビクッ
ナンシー「えっ、何っ!?」
円周「あっ、獲物が引っかかったみたいだよ」
数多「そうみてーだな」
ピンポーン、ピンポーン!
円周「あれれー? 何か生き残っちゃってるねー、あれれー?」
数多「チッ、やっぱあの程度じゃ死なねーか」
円周「誰なの?」
数多「ゴキブリ並みにうっとおしいクソ野郎だ」
打ち止め「エンシュウエンシュウ!!」ドタドタ
円周「どーしたの打ち止めちゃん? そんなに慌てちゃって」
打ち止め「さっきの爆発音は何!? ってミサカはミサカは突然の出来事に慌てふためいてみたり」
円周「ゴキブリ並みにうっとおしいクソ野郎がウチに来たらしーよ」
打ち止め「ゴキっ!?」
ピピピピピンポーン! ピピピピピンポーン!
数多「急にリズム刻み始めやがってんじゃねえよ、ムカつく野郎だぜ」
円周「何なら私が行ってこーか? 扉を開けた瞬間ゴキブリの解体ショーを開いてあげるよ」
打ち止め「うぇー気持ち悪ぅー、ってミサカはミサカはバラバラのGを想像して気分を悪くしてみたり」
数多「だったら想像すんなよ。つーかやめとけ円周。テメェが行っても解体ショーどころかテメェが活造りにされるだけだ」スタスタ
円周「あれ? 数多おじちゃん行くの? 活造りにされちゃうんじゃないの?」
数多「俺がそんなアホみてーな格好になるわけねえだろ」スタスタ
ピポッポッポポーン! ピポッポッポポーン!
数多「ったくうっせーんだよ! 今出るっつってんだろうが! つか、それどうやって鳴らしてんだよそれ」ガチャ
キュイ――――――――ン!
病理「それって『フリ』というやつですよねー?」カチカチ
815: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:00:36.07 ID:5BE/152Uo
数多「あん?」
円周「あっ、病理おばさんだ!」
打ち止め「ぎゃあああああああっ!! 何かでっかい回転ノコギリが車椅子から生えてるぅぅぅ!?」
ナンシー「このままじゃ『社/長』にぃぃぃ!!」
ヴェーラ「社長逃げてええええええ!!」
病理「そんなに活造りになりたいのなら、お望み通り三枚におろして差し上げましょう!」カチ
キュイ――ガギッ、ガギギギギギギギギギ!!
病理「あらら? 動かない?」カチカチカチ
数多「知ってっか? 真剣白刃取りって別に両手使わなくたって出来るんだぜ?」
打ち止め「ノコギリを人差し指と親指でつまんで止めたっ!? ってミサカはミサカはまさかの光景に驚愕してみたり!」
円周「ふむふむ、マイクロマニュピレーターにはこーゆー使い方があるんだねぇ……」
ナンシー「さすが社長! 私たちにできない事を平然とやってのけるッ!」
ヴェーラ「別にそこにシビれたり、あこがれたりはしないけどね」
病理「……さすが数多クンですね。腐っても『木原』ですか」
数多「何の用だ病理? 用がねぇならさっさと帰りやがれ、この俺にぶっ潰される前にな」
円周「何か小物臭いよ数多おじちゃん」
数多「うるせぇよ!」
病理「久し振りですね円周ちゃん。相変わらずお元気そうで何よりです」
円周「うん! 久しぶり病理おばさん! 相変わらず滅茶苦茶だねー。その『Made_in_KIHARA.』の車椅子」
病理「『木原』は日々進化しているんですよー! そろそろこれにガトリングレールガンでも搭載してみましょうか?」
円周「それすごいね。きっとカッコよくなるよ!」
ナンシー「(……誰?)」ボソッ
ヴェーラ「(さあ? 社長や円周ちゃんと仲がいいみたいだからやっぱり『木原一族』の方じゃないかしら?)」ボソッ
ナンシー「(円周ちゃんはともかく、社長とは友好的には見えないんだけど……)」
816: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:01:31.12 ID:5BE/152Uo
打ち止め「…………」
円周「あれ? どーしたの打ち止めちゃん? そんな黙りこくっちゃって珍しいね」
打ち止め「えっ? ええっと、あの、その」アセッ
病理「あらあら、こんなところに『最終信号』がいるとは。いつでも例の計画を遂行できるようにするための準備でしょうか?」
打ち止め(計画……!?)ビクッ
数多「んなわけねーだろ。何でも屋の仕事の一環として保育園の代わりやってるようなもんだ」
病理「ですよねー。どのみち彼女は自分でチカラを目覚めさせたらしいですし、今となればまったくもって必要のない計画ですし」
数多「どうでもいい。俺には関係のねえ話だ」
病理「まーそうですよね。上からのオーダーに答えられずに、こんなところまで左遷させられた数多クンには関係のない話ですよ」
数多「何だテメェ、喧嘩でも売りに来てんのか?」
病理「いえいえ、そんなつもりはありません。というかあなたに売るよりどっかの無能研究員に売ったほうが高く買ってくれますよ」
円周「……ところで病理おばさんは何しにここに来たの? ただ遊びに来たってわけじゃないよね」
病理「はい。……実はあるものを届けるためにここへ来たのですよ」
数多「あるものだぁ? 何だそりゃあ?」
病理「これですよ」スッ
数多「…………は? 何だよそれ?」
病理「何と言われましても困りますね。今日はバレンタインデー。つまりバレンタインチョコということになりまーす」
数多「……いや、だから何だよこれ?」
病理「だからバレンタインチョコレートですよ、聞こえませんでしたか? 難聴キャラを演じるような柄ではないとは思いますが」
数多「そーいうわけじゃねえよ。何でこんなもん渡してきやがるんだって聞いてんだよクソ野郎が」
病理「日本には親しい友人などに義理チョコを渡すという文化が浸透していまーす。つまりそういうことです」
数多「別に親しくねえだろ俺らぁ」
病理「同じ木原一族仲良くしましょー」
数多「木原一族はそういう集まりじゃーだろうが!」
円周「数多おじちゃんはやっぱりモテモテだねー。いやーめでたいめでたい!」
ゴッ!
数多「で、本当の狙いは何だ? つーかこん中に何が入ってやがる?」
病理「開けてみるとわかるかもしれませんね」
817: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:02:33.40 ID:5BE/152Uo
数多「チッ……、あん?」ビリビリ
円周「おおっ、何という真っ白なチョコレート、まさしくホワイトチョコレートだね」
病理「頑張って作ってみました。思う存分味わってくださーい」
数多「食うわけね―だろ! てか、食いもんで遊んでんじゃねーよ! 何チョコレートに未元物質(ダークマター)混入させてやがんだよテメェ!」
病理「失礼ですね、混入などさせていませんよ。100%純粋な未元物質で出来たチョコレートですよ」
数多「第二位のチカラをそんなくだらねえもんに使ってんじゃねえ!」
円周「さすが病理おばさんだね。うんうん、『木原』はこうやってバレンタインチョコレートを作るんだね」ピーガガガ
数多「変なもん学習してんじゃねえよ円周ッ!」
病理「どうぞめ・し・あ・が・れ♡」
数多「語尾にハートマーク付けてんじゃねえ! 似合わねえんだよクソ気持ち悪りぃんだよ!」
病理「ひどい言われようですね。まぁしょうがないですかね。私も『諦め』のプロですから……」
病理「そのチョコレートを食べないという選択肢を選ぶことを諦めてもらいましょーか!」ガチャン
数多「うっせぇよ! 俺の全戦力投入してでもこのチョコを食うことを諦めさせてもらうぞゴルァ! つーかマジいらねそれ!」バキッボキッ
ゴキン! グァキン! ドドドドッ!! ズガァン!!
円周「うーむ、さすが『木原』同士の戦い。勉強になるなあ」
ナンシー「きゃあああああっ! オフィスがあああああああっ!」
ヴェーラ(これの後始末は全部私たちがやらされるんだろうな……)ハァ
打ち止め「…………」
~十分後~
病理「……さすが数多クン、やりますね。まさか私の搭載兵器全て破壊してしまうとは」
数多「チッ、当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」
ヴェーラ「しゃ、社長……」
数多「何だ?」
ボロボローン
ナンシー「これ、どうしましょうか?」
数多「あん? ああ、テメェらで適当にやっとけ」
ナンシー「は、はい……」
ヴェーラ(やっぱり……)ハァ
818: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:03:28.67 ID:5BE/152Uo
病理「さて、私もそれなりに多忙なのでさっさと帰るとしましょうか」
円周「そうなの?」
病理「はい。最近第二位のチカラが著しく向上していっているので、それの研究に大忙しなのですよ。ちなみにこのチョコもそれによって生まれた副産物です」
数多「一体第二位の小僧はどこへ向かってやがんだ? メルヘンルートに向かってんですかお菓子の国でも収書すんのかよ?」
病理「でも着実にチカラは付けていっていますよ。あなたの大好きな一方通行を圧倒できるくらいには」ニヤリ
数多「だろうな。あのクソガキはウキウキワクワクのスクールライフっつー、温すぎて笑える生活送ってっからな」
病理「そうですねー、表の世界を生かされてる者と裏の世界を生きる者、どうやっても埋められない差というものがありますから」
数多「……何か勘違いしてねえかテメェ?」
病理「はい?」
数多「たしかに圧倒されるかもしれねーよあのクソガキじゃあなぁ……まぁでも最後に勝つのはあのガキだぜ? いやーマジでムカつくけどなぁ」ニヤァ
病理「…………ほう、なかなか面白いことを言いますね数多クンは」ニヤリ
数多「…………」ゴゴゴゴゴ
病理「…………」ゴゴゴゴゴ
ナンシー(……な、何かすごいプレッシャーを感じる)
ヴェーラ(き、気不味い……)
円周「うーん、まぁつまり何が言いたいかというと、数多おじちゃんはツン痛いっ!」ゴキン
数多「誰がツンデレだ。ブチ殺すぞクソガキが」
円周「えっー? だって普段は嫌ってるくせに『最後に勝つのはあのガキだぜ(キリ』とか言ってるんだよー? 百人が百人ツンデレ判定するよねー」
数多「よぉーし、今からお前はウサギのぬいぐるみだ。壁に打ち付けて動けなくしてから俺のストレス解消グッズにしてやるよ」ゴキゴキ
円周「『木原』的にはウサギは嫌だから逃げるぜい!」ダッ
数多「チッ、後で覚えとけよクソガキが」
病理「ふふふ、では私はお暇させていただきますね」ギュイン
数多「おう、さっさと消えろ。そして二度と俺の視界に入ってくんじゃねえ」
病理「あっ、あとあのチョコレートの感想絶対にくださいね? でないとこのマンションにミサイル撃ち込みますから」
数多「オイヴェーラ、アレ持ってこい! 先手必勝が正論だっつーことをここで証明させてやる!」
ヴェーラ「え、ええとアレとは携行型対戦車ミサイルでよろしいのでしょうか?」
数多「ったりめーだろうが! んなこともわからねえのか!」
ヴェーラ「た、ただいま!」ダッ
病理「ではではー、私はこれでー」
ギュイーン!!
819: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:04:03.99 ID:5BE/152Uo
ヴェーラ「も、持ってきました!」ガチャ
数多「……おいおい遅せーんだよウスノロ! 射程から消えちまったじゃねえか!」
ヴェーラ「も、申し訳ありません!」
数多「チッ、だったらヴェーラ、ナンシー! 今から屋上に狙撃銃持って行ってあのゴミ狙撃してこい!」
ナンシー「え、ええっ!?」
ヴェーラ「無理です!」
数多「あぁ? つべこべ言わずさっさと行け! 言及すんぞコラ」
ナンシー「は、はいぃぃ!」ガチャリ
ヴェーラ「行ってまいります!」ガチャリ
円周「……そんなこと命令しちゃっていいの? もし本当に狙撃なんかしたらあの人たち確実に病理おばさんに殺されちゃうよ」
数多「その前にヤツを殺せば問題ねえ」
円周「無茶苦茶言うねー。まぁあの人たちが死んだところで私の『木原』的にはどうでもいいけど」
数多「チッ……」
円周「うーん、やっぱり数多おじちゃんは他の『木原』が来ると面白いよねー。ねぇ打ち止めちゃん」
打ち止め「…………」
円周「……打ち止めちゃん?」
打ち止め「え、あ、う、うんそだね」アセ
円周「どうしたの? 何だか病理おばさんが来た辺りから調子悪そうだね。もしかして病理おばさん嫌い?」
打ち止め「べ、別にそういうわけじゃないんだけど……でも」
円周「でも?」
打ち止め「何というか、あの人の雰囲気が何だか苦手かも。まるで初めてキハラと会ったときみたい萎縮しちゃった、ってミサカはミサカは正直に答えてみる」
円周「そりゃ『木原』だからしょうがないよねー。でもそれじゃあ数多おじちゃんが舐められてるってことになるねー、可哀想なおじちゃん」
数多「誰が可愛そうだって、可愛いうさぎちゃん?」ゴキゴキ
円周「おっふ……あ、数多おじちゃん……」
―――
――
―
820: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:04:55.81 ID:5BE/152Uo
同日 11:30
-常盤台中学・とあるクラスの教室-
常盤台生A「御坂様、ぜひこれ受け取ってください!」
常盤台生B「御坂様のために心を込めて作りましたわ」
常盤台生C「これがわたくしの気持ちですわ!」
ワイワイガヤガヤ
美琴「あ、あはは、ありがとねー。あっ、じゃあこれ私からお返しよ」
常盤台生A「ありがとうございます御坂様!」
常盤台生B「ま、まさか御坂様からもらえるなんて……うれしいですわ」
常盤台生C「我が家の宝にしますわ!!」
キャーキャー
美琴(つ、疲れた……あとこのやり取りを何回すればいいのよ?)
美琴(私がレベル5だからっていちいち律儀にこんなもの渡してこなくてもいいのに、これだからお嬢様学校ってヤツは……)
美琴(別にもらえてうれしくないってわけじゃないからいいけど……)
美琴(……ま、そんなことより、どうやってチョコレート渡そうかなー、アイツに……)
ザワザワザワザワ
美琴「ん? 何か騒がしいわね、何かあったのかしら?」
食蜂「みぃーさぁーかぁーさぁーん♪」タッタッタ
美琴(げっ、今日一番エンカウントしたくないヤツとこんな早い時間帯から遭遇しちゃった! てか、向こうからエンカウントしに来やがった!)
821: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:06:12.34 ID:5BE/152Uo
食蜂「んー? 何ぃー? その『今日一番エンカウントしたくないヤツと遭遇しちゃった!』みたいな顔はぁ?」
美琴「何で私の心読んでんのよ! アンタの能力って私には通用しなかったんじゃなかったっけ!?」
食蜂「通じないわよぉ、でも御坂さんの表情って結構わかりやすいからぁ、そういうの余裕でわかっちゃうんだゾ☆」
美琴「くっ、……で、わざわざ私のクラスまで来て何の用よ? まさかアンタまでチョコ渡しに来たとか言うんじゃないでしょうね?」
食蜂「あらぁ御坂さん、もしかして私のチョコレートが欲しいのぉ?」
美琴「いるか!」
食蜂「もぉーこれだからツンデレ力マックスの御坂さんはぁ、素直じゃないんだからぁ」
美琴「誰がツンデレよ! アンタいい加減にしないとそのムカつく顔電撃でぶっ飛ばすわよ!」
食蜂「いやぁー御坂さんがいじめてくるぅー、こわぁーい」
ざわ……ざわ……ざわ……ざわ
美琴「ッ!」
食蜂「うふふふ」ニヤニヤ
美琴「……じゃあバレンタイン関係の用じゃないのなら何の用なのよ?」
食蜂「あ、一応バレンタイン関係よ。世間話程度じゃ御坂さんにいつもみたいに邪険にされるだけだしぃ」
美琴「何だかそれだけ聞くと私がいつもは嫌なヤツ、って聞こえんだけど」
食蜂「事実じゃないのぉ?」
美琴「大体アンタのせいでしょうが!」
食蜂「責任転嫁はよくないと思うんだけどぉ」
美琴「アンタが元からそんなじゃなかったら、こっちもそれなりの対応するっつーの。勝手に責任転嫁とか言うな」
食蜂「ええっー? 私の人格全否定ぇー? ひっどぉーい!」プンスカ
美琴(う、うざい……! すっごく殴りたい……!)プルプル
食蜂「まぁ、そーゆーのは置いといて、本題に入りましょーか」
美琴「そうね。一刻も早く用を終わらせて、アンタに私の目の前から消えて欲しいし」
食蜂「ふふふっ、まだ休み時間は始まったばかりよ。のんびり行きましょ?」スッ
美琴「平然と私の席の前に座んじゃないわよ!」
食蜂「ところでぇ、今日はバレンタインじゃない?」
美琴「……唐突ね。それがどうかしたの?」
食蜂「バレンタインって今は友チョコやら逆チョコやらいろいろあるけどぉ、女性から男性に渡すってのが一般的じゃない?」
美琴「うーん、まあそうよね。ここにいたらそういうの忘れそうになるけど」
食蜂「嘘はダメよぉ御坂さん? さっきから乙女力全開の表情で窓の外眺めてたクセにぃ」
美琴「は、はあ!? 何を言ってんのよ、わけわかんないんだけど」アセ
食蜂「別に隠さなくてもいいのにぃ、可愛らしいラッピングよねぇこれ」ヒョイ
美琴「なっ、それ私のチョコレート! って何勝手に抜き出してんだお前はぁ!!」パシッ
食蜂「大切なモノなんだからちゃんと保管しとかないと駄目なんだゾ☆ 例えば金庫とか」
美琴「どこの世界に手作りチョコレートを金庫に隠す女子中学生がいるってのよ?」
食蜂「へー、これ手作りなんだぁー。へー」ニヤニヤ
美琴「ぐっ」
822: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:07:25.64 ID:5BE/152Uo
食蜂「でぇでぇ、そのチョコは一体誰に渡すのぉ? 気になるから教えてぇ?」
美琴「嫌に決まってるじゃない! 何でアンタなんかに教えなきゃいけないのよ!」
食蜂「えぇー教えてよぉー、私たち友達でしょー?」
美琴「アンタと友達になった覚えこれっぽっちもないんだけど」
食蜂「おーしーえーてーよぉー、一体誰条さんなのぉ?」グイグイ
美琴「ちょ、ちょっとスカート引っ張んないでよ! ってアンタ絶対誰かわかってるでしょ!」
食蜂「さぁ? 何のことかしらぁ?」
美琴「とぼけんなコラァ! どこでその情報引っ張ってきやがった!」
食蜂「私の能力を使えばぁ、噂程度の手軽さで国家機密を知ることができるわけだしぃ」
美琴「アンタってヤツは……!」
食蜂「てゆーかぁ、そんなことしなくてもわかるわよぉ。大覇星祭のときのあの御坂さんの乙女顔を見れば……ってあら?」
美琴「アーンーターはぁー」バチバチ
食蜂「……というわけで頑張ってね御坂さぁ――ってにぎゃっ!? ちょ、そんな上条さん感覚で電撃撃たないで死んじゃう!」ドタドタ
美琴「うっさい死ねぇ!!」
バチィン!! バリリリッ!! ズガァン!!
教師「コラァ!! 何やっとるか御坂ぁ!!」
~その頃一年生のとある教室~
<バチィン!! バリリリッ!! ズガァン!! <コラァ!! <キャーキャー
湾内「あら? 何だか二年生方の教室のほうが騒がしいですわ」
泡浮「何かトラブルでしょうか? 婚后さんが巻き込まれていなければ良いのですが……」
黒子(……絶対お姉さまですわ)
―――
――
―
823: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:08:11.84 ID:5BE/152Uo
同日 11:50
-第七学区・街頭-
キキィィィィ!! ギュオオオオオオオオオオン!!
浜面「だぁああああああああっ!! くそう!! 寝坊しちまったっ!!」
浜面「まぁ一時間くらい仮眠すりゃいいだろ、って思ったらこれだよ! どうしてあそこで寝てしまったんだ俺ぇ!」
浜面「チクショー! この時間ならまだ間に合うはずだ! とっとと車(盗難)をかっ飛ばして間に合わせなきゃ俺の命が……ッ!?」
信号:赤
浜面「どぉォォォしてだァあああああああああああああああああああああああああッ!!」ガンガン
浜面「どぉしてそこで赤くなるんだ!! もっと青くなれよォ!!」
浜面「このままじゃ間に合うもんも間に合わなくなるじゃねえか!! ふざけんなっ!! マジでふざけんなっ!!」
浜面「あぁぁぁもうどうすんだよこれぇ!! あーあ間に合ってたのにぃーこのまま行ってたら間に合ってたのにぃー」
浜面「……かくなる上は信号無視を――はっ!?」
警備員A「はぁ、今日はいろいろと問題が多い日ですなぁ」テクテク
警備員B「いやーほんとですよねぇ、私本来今日は休日のはずだったんですけどなぁ、はははっ」テクテク
浜面「アンチスキルゥうううううう!! 何で今登場しちゃうの!? 何でこんなに間が悪いの!? もしかして俺ハメられてんの、みんな打ち合わせ済みなのぉ!?」
浜面「ぐぐぐぐっ、このままじゃ、このままじゃ……!」
麦野『遅刻なんてしたら拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された粒機波形高速砲をひたすら避け続ける、リアル弾幕ゲーをしてもらうことになるから』
浜面「」ゾクッ
浜面「ヤバイよヤバイよヤバイよ! 俺の人生マジでジエンドじゃねえか! 俺の残機は一しかねえんだよクソッタレが!」
浜面「……はぁ、もうだめだぁ……おしまいだぁ……。俺の人生、これといって何もせずに終わっていくのかなぁ……ははっ」
信号:青(パッ
浜面「ってこんなことしてる場合じゃねえ!! このままじゃマジで麦野のディバイダー地獄だ!!」
浜面「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 間に合えぇ!! 間に合えええええええええええええええっ!!」
ブルルオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
―――
――
―
824: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:08:58.37 ID:5BE/152Uo
同日 同時
-第七学区・とあるファミレス-
ワイワイガヤガヤ
絹旗「時間が時間ですので超混み始めてきましたね」
フレンダ「フツーは学校とかで授業受けてる時間なんだけどねー」
絹旗「いるのは大学生や研究者、あとあからさまなヤツらくらいですね」
フレンダ「ま、こっちからしたら学校なんてまったく関係ない訳だけどね」
絹旗「大学生というのは超ラクそうで羨ましい限りです」
フレンダ「学校にも行かずに暗部生活をエンジョイしてる絹旗のセリフとは思えないねー」
絹旗「別にエンジョイなんてしてませんよ。私も彼、彼女らみたいに映画ばっか気楽に見まくれる生活を送ってみたいです」
フレンダ「それだけ聞くと大学生はいつも映画ばっか見てるアホのように聞こえるんだけど……」
滝壺「ただいまー」テクテク
麦野「この麦野様が直々に注いできてやったソフトドリンクよ。ありがたく飲みなさーい?」
フレンダ「ジャンケンで負けたクセに何でそんな偉そうなのさー」
麦野「あん? たしかアンタってオレンジジュース顔面ぶっかけコース希望だったかしら?」スッ
フレンダ「すみません、ありがたく飲まさせていただきます」ハハァー
滝壺「二人は何の話してたの?」
絹旗「大学生が超羨ましいって話をしてました」
麦野「何をどう持っていけばそんな話になるのよ?」
フレンダ「アレだよほら、平日のこの時間帯のファミレスのお客さんってだいたい大学生じゃん」
麦野「まあそうだろうな。高校以下は基本校内でメシ食うのが決まりだろうし」
滝壺「それで何できぬはたは羨ましいなんて思ったの?」
絹旗「気楽に映画鑑賞ができる生活に超憧れます!」キラキラ
麦野「それは大学生が羨ましいんじゃなくてニートが羨ましいの間違いだろ」
絹旗「そうなんですか? 大学生っていつも超遊んでるようなイメージがありますけど」
滝壺「きぬはた。大学生も学生、学生の本分は勉強だよ。別に遊びに行くためにいくところじゃないよ」
絹旗「へー、じゃあ何でこんな平日の昼間から遊んでる大学生を超よく見るのでしょうか? 彼らはいつ勉強してるのでしょうか?」
滝壺「……さあ? 私はまだ大学生じゃないからあまり詳しいことは知らない。たぶん、それぞれ勉強する時間が違うんじゃないかな?」
絹旗「ふーん、そうなんですか麦野?」
麦野「は? 何でそこで私に話を振るわけ?」
絹旗「えっ? だって麦野って大学生……ですよね?」
麦野「私はまだ一応高校生なんだけど」
825: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:10:55.69 ID:5BE/152Uo
絹旗「へっ?」
フレンダ「ええっ!?」
滝壺「…………」
麦野「あぁ!? 何だテメェらそのリアクションはぁ!?」
絹旗「あ、いえ、すみません。麦野は正直もっと上かと超思ってました。こう……裏でタバコをすぱすぱ吸ってる感じな」
フレンダ「いやー格好とかマジ大人っぽいというか何というか……ドレスとか着てワイングラス片手にパーティーとか行ってるイメージだった訳よ」
麦野「テメェら人を何だと思ってやがんだ。今本気で殺意が芽生えてんだけど……」プルプル
フレンダ「ぎゃあーっ! ゴメン麦野許してー!」ガタガタ
滝壺「大丈夫だよむぎの。私はわかってたから、麦野がまだ高校生ってこと」
絹旗「本当ですか? 実は内心大学生とかもっと上とか超思ってたんじゃないんですか滝壺さん?」
滝壺「…………思ってないよ」スー
絹旗「何ですかさっきの間はっ! あと目を超逸らさないでください!」
滝壺「……逸してないよ」スー
絹旗「だったらちゃんと私の目を見てくださいよ目を!」
麦野「テ・メ・ェ・ら」
三人『』ビクッ
麦野「そろそろオシオキ確定、する?」ニコッ
三人『』ガクガクブルブル
麦野「…………」ニコニコ
フレンダ「……そ、そうだ! は、浜面のヤツ何か遅くない?」
絹旗「た、たしかにそうですね。あの野郎こっちが超早く来てるってのに」
麦野「チッ、あんのバカ面が。予想してた通りやっぱり二度寝しやがったか」
滝壺「休日だからしょうがない」
フレンダ(な、何とか話がそれた……)ホッ
絹旗(助かりました……今だけは浜面に超感謝ですね)
フレンダ「結局、下っ端にやる休日なんてない訳よ」
麦野「……今時間は『11:59』か。こりゃシリコンバーン用意しとかなきゃいけないかな?」スッ
フレンダ「麦野。それやるとファミレス出禁ところの騒ぎじゃなくなるよ」
滝壺「……北北西から信号がきてる」
826: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:11:37.47 ID:5BE/152Uo
<キキィィィィィ!! <ブオンブオンブオォォォン!!
絹旗「ん? 何ですかこの超うるさい音は? 車……?」
フレンダ「だんだん音がこっちに近づいてくる……ってことは」
麦野「アホ面か!」
<ギュイイイイイイン!! <キキィィィィィ!! <ガチャン
フレンダ「うわっ、すごっ。結構大型のワゴンなのに綺麗にドリフト駐車した!」
絹旗「そして素早く車から飛び出してこちらへ超走って向かってきてますね」
滝壺「時間は?」
麦野「…………」
<ピンポーン <イラッシャイマセオキャクサマ…ッテチョットオキャクサマッ!?
タタタタタタタタタキキィィ!!
浜面「よっしゃあああああああああっ!! こりゃギリギリセーフだろっ!?」
麦野「…………」
フレンダ「…………」
絹旗「…………」
滝壺「…………」
浜面「…………」
麦野「…………」ニコ
麦野「二十三秒遅刻だ。オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・よ♪」
827: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:12:37.39 ID:5BE/152Uo
浜面「ちょっと待て麦野ォ! たかが二十三秒だろ? 大目に見てくれもいいだろ!」
麦野「浜面ァ、十二時までに来いっつったよなぁ? それを過ぎてるっつーのにそれで許してくれって面白いことを言うじゃない?」
浜面「いや、本当は間に合う予定だったんだぜ? 何つーか途中信号とかアンチスキルに邪魔されてさぁ」
麦野「言い訳するヤツほど見苦しいもんはねえよな?」
浜面「……そうだよな。わかってるよそれくらい……よし! ほいじゃあ男浜面! 潔くどんなバツでも受けてやるぜ!」
麦野「はいはーい」つシリコンバーン
浜面「スミマセン、やっぱ弾幕ゲーはやめてくれませんか」ドゲザ
絹旗「さっきの超男の宣言はどこにいったんですか?」
フレンダ「だっさ……さすが浜面って訳よ」
浜面「うるせぇぞお前ら! 正直俺はまだ死にたくねえんだよ! こんな特に何もなかった人生のまま幕を下ろしたくないんだよ!」
滝壺「大丈夫だよはまづら。そんな命乞いに必死なはまづらを私は応援する」
浜面「なんとでも言えっ! 俺は生きるッ!!」
麦野「ふーん、何浜面クン? 許して欲しいわけ?」
浜面「当たり前だろ! 俺はそんな死にたがり野郎じゃねえ! まだまだやりたいこととかいっぱいあるんだよ!」
麦野「……だったら許してあげないこともないわよ?」
浜面「本当かっ!? サンキューむぎ――」
滝壺(…………ん?)
麦野「ただし、一つ条件があるわ」
滝壺(これって……まさか……)
浜面「何だよ条件って」
滝壺「! しまっ」
麦野「浜面クンは今日一日私の奴隷な? それならこの遅刻は許してやるよ」
浜面「えっ、そんなことでいいの? よっしゃ、それぐらいなら別に構わないぜ」
麦野「はいそれじゃあけってー! つーわけで浜面、さっさとドリンクバー行って茶ぁ汲んで来い」
浜面「お、おう了解!」タッタッタ
麦野「…………滝壺」
滝壺「何?」
麦野「…………」フフン
滝壺「…………くっ」
絹旗「(……何か早くも超争奪戦が開催されてますね)」
フレンダ「(そだねー、しかし何で二人ともよりによって浜面なんだろうねー? あんなののどこがいいんだか)」
絹旗「(だいたいこういうのは自分でも超わかってないものですよ)」
フレンダ「(ふーん)」
麦野「…………」ゴゴゴゴゴ
滝壺「…………」ゴゴゴゴゴ
―――
――
―
828: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:13:20.24 ID:5BE/152Uo
同日 12:20 ~昼休み~
-とある高校・一年七組教室-
キーンコーンカーンコーン
<よっしゃーメシだメシだー! <あー腹減ったー <今日は学食全品百円引きらしいぜー! <行こー行こー
一方通行「Zzz……おァ? いつの間にか昼休みか」
一方通行「さて、昼メシはどォすっかな……」
一方通行「…………」
一方通行「よし、面倒だ。寝よォ」ゴロン
青ピ「アっクセラちゃーん! ボクらぁと一緒に食堂行こーや!」
一方通行「あァ? うっとォしい、消えろ」
土御門「これが勝者の余裕ってヤツだろうにゃー。『負け組のテメェらとは一緒にメシも食いたくねェ』っつーことだろうぜい」
一方通行「ハァ? ワケのわからねェこと言ってンじゃねェ。大体本命一つもらってるオマエのほうがどちらかと言ったら勝ち組だろォが」
青ピ「ほぉ、それは俺も本命チョコ欲しいぃぃっ!! という意味で受け取っても構わないということですねわかります」
一方通行「どォしてそォなる。いらねェよそンなモン、興味ねェっつゥの」
青ピ「で、でたー! 自分はバレンタインなんて興味がねェって言ってるけどそれが逆に意識しちゃってるって意味してることをわかってないや――」
一方通行「長ェ」ゴッ
上条「なぁなぁ、そんなことより早く食堂行こうぜ? 早く行かねーと席埋まっちまうよ」
土御門「ふっ、これが勝者の余裕ってヤツだろうにゃ-。『チョコ食い過ぎてちょっと口がヤバイわー。早く安くなった学食で塩分摂りたいわー』っつーことだろうぜい」
上条「さっきと同じネタやってんじゃねえよ! つーかそんなこと一つも思ってねえし、チョコに飽きてもねえし!」
青ピ「ほぉ、カミやんはまだまだ女の子からのチョコをもらうことを望むと? 死ね」
上条「思ってねえよ! てか、ゴチャゴチャ言ってねえでさっさと行くぞ。ほら一方通行も」
一方通行「行かねェっつってンだろ。話ィちゃンと聞いとけよカスども」
―――
――
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829: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:14:21.73 ID:5BE/152Uo
同日 12:30
-とある高校・食堂-
ワイワイガヤガヤ
土御門「おーおー案の定いつもより1.5倍(当社比)ぐらいの人だかりだにゃー」
上条「くそっ、やっぱり出遅れてたか!」
土御門「百円引きの効果恐るべし、ってところだな」
青ピ「もうね、アホかと。馬鹿かと。お前らな、100円引き如きで普段来てない食堂に来てんじゃねーよ、ボケが」
上条「いや、それお前にも言えることだろ」
青ピ「お前らな、100円やるからその席空けろと。食堂ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ」
上条「どんだけ食堂で食いてんだよお前。別に食堂そんな殺伐としてねえし、あとそのキモい口調どうにかしろ」
青ピ「カミやんひどい!」
土御門「んー、こりゃおとなしく食堂じゃなくて購買のパンとかにしといたほうが無難かもしれないぜい」
青ピ「ええっー、今日はオムライスの気分で来たのにー! いつもならラーメンとかの気分なのにあえてオムライスの気分で来たのにー!」
上条「テメェはいっつもパンだろうが」
青ピ「いやー食堂って言ったらラーメンやろ? あの安っぽい麺つこうとるヤツ」
上条「知らねえよ。しかしどーしよーかなー、俺も百円引きの学食の予定だったから財布の中身も百円引きだったからなー」
土御門「もういっそのことカミやん、今までもらったバレンタインチョコ食べればいいんじゃないかにゃー。言うなら全部タダってわけだし」
上条「アホか。何が悲しくて昼メシにチョコレートなんて食わなきゃいけねえんだよ。まあたしかにチョコはサバイバルとかでも使えるくらいいいってのは聞いたことあるけど……」
青ピ「でもそんなことしたら見せつけられてる、って思われてクラスのみんなにボッコボコにされるわけやけどなー」
上条「その一言で余計に食いたくなくなったな」
土御門「ま、正直俺はパンでも何でもいいぜい。よぉーするに百円引き効果で手薄になってるから、購買へ仕掛けるほうが得策だってことにゃー!」ダッ
青ピ「そうか! 今ならあのジャイアントコロッケパンとかも売れ残ってる可能性が微粒子レベルで……!? よし、ボクも行くでえ!!」ダッ
上条「テメェはオムライスの気分じゃなかったのかよ! せめてタマゴ系のパンねらえよ!」
ワーワーギャーギャー
831: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:15:53.32 ID:5BE/152Uo
上条「…………はあ」
上条「どうすかっかなー? 俺も購買で安いパンでも買って今日をしのぐかなー?」
トントン
上条「ん?」クル
雲川「ふふっ、こんにちは」
上条「あっ、雲川先輩こんちわっす」
雲川「こんなところで会うなんて珍しいけど。お前も百円引きに釣られた口か?」
上条「まあそんなとこっすね。先輩もですか?」
雲川「私がそんな安っぽい奴に見えるか?」
上条「見えないな。どちらかと言ったら百円引きに釣られた庶民どもを笑いに来た、ってところじゃないですかね?」
雲川「あながち間違いでもないけど。で、お前はその庶民どもと一緒に食券求めて行列を並ばないのかな?」
上条「最初はそのつもりだったけどこの通り出遅れちまったっつーわけですよ。そういうわけで今はガラ空きの購買狙いってわけだ」
雲川「懸命な判断だな。今並んだところでお前なら、自分の番になったとたん全品売り切れオア料理を買った瞬間昼休み終了のチャイムが鳴るなんて不幸は目に見えてるけど」
上条「そうっすねー、つーわけで俺そろそろ行くよ。このままじゃこの不幸でパンまで売り切れちまうかもしれませんから」
雲川「まぁ待ってくれ」
上条「何ですか? 俺に何か用でもあるんすか?」
雲川「そりゃ普通用がない人に話しかけたりはしないよ。……でもお前は別なんだけど」
上条「……つまり用があるのかないのかどっちだよ?」
雲川「今日は用があって話しかけたんだけど。まぁ長くはならないと思うから是非とも付き合って欲しい」
上条「いいっすよ。で、どんな用件ですか? 用具室に備品を運ぶの手伝ってくれとか言いやがったら、速攻購買へ逃げますよ」
雲川「私はそんなことは頼まないし、頼まれもしないよ。……そうだな、用というのはまあたぶんお前も察しているとは思うけど」
上条「?」
雲川「前言撤回。そういえばキミは上条当麻だったな。あまりの緊張にすっかり忘れてたけど」
上条「俺に用があんのに俺のことを忘れるってどんだけ緊張してんすか。つーか緊張するようなこと頼む気なのかアンタは!」
雲川「何しろこういう経験が皆無なのでな。知識はあっても経験がない、これほど歯痒いものもないんだけど」
上条「?」
雲川「い、いや待て。経験がない言っても全くというわけではないけど。ただそのときとは状況や思い入れが違うわけだ」
上条「……えっと」
雲川「そもそも相手がどうでもいいおっさんや親族だけだという時点で経験しようにも出来ないけど」
832: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/08/29(木) 18:17:47.20 ID:5BE/152Uo
上条「……ちょっと何言ってんのかわからないんだけど。要するに先輩は俺にどういう用なんだ?」
雲川「そ、そうだな。よくわからない言い訳をグダグダ言うより、さっさと実行したほうがお互いのためということになるけど」
上条「んと、まあそうですね。俺もそろそろパン買いたいし」
雲川「……それじゃあこれを受け取って欲しいんだけど。は、はい」スッ
上条「これって……もしかしてバレンタインの……?」
雲川「…………」コクリ
上条「あ、ありがとうございます。というか何で俺なんかに?」
雲川「こんなに日にこんなに心臓をフル稼働させてこんな手作りのチョコを渡す理由なんてそうはないだろ?」
上条「え、えっと……それってつまり――」
雲川「……おっと、今日はこれまでのようだけど。これ以上はキミに被害が出る」
上条「へっ?」
雲川「ま、と言ってもどの段階でここを立ち去ってもキミに及ぶ被害は対して変わらないようだけど」クスッ
青ピ「なーにやっとるかなーカーミやーん」ゴゴゴゴゴ
土御門「俺たちが目を離してる隙に随分とラッキーなイベントに巻き込まれてるじゃないかにゃー」ゴゴゴゴゴ
上条「げっ、青髪ピアスに土御門! いや、これは何つーかその……!」
土御門「あっ、制裁の前にカミやんに一つ言っとかないといけないことがあるんだけどさぁ」
上条「な、何でせうか?」
土御門「購買のパンなぜだか全部売り切れたぜい、コッペパンすら」
上条「……は?」
青ピ「おもろいこともあったもんやなー、というわけでカミやん? 覚悟はいい?」
上条「ふっ、不幸だァああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
雲川「……ふふっ、やっぱりこの学校は刺激に溢れて面白いところだけど」
―――
――
―
847: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:07:10.08 ID:sg/9aVlvo
同日 12:40
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「……さて、そろそろ半日が経つわけだけど……いい加減渡す算段は出来たかしら?」
結標「ううっ、じ、実はまだ一つも考えてないです、はい」
姫神「私はバッチリ出来た。あとは時を待つだけ」
吹寄「というわけで結標さん、いい加減覚悟決めなさい。いつ考えるにしても渡すの今日だということは変わりないんだから」
結標「そ、そうだけど、何というか……その、渡すシチュエーションを想像するだけで頭の中がグチャグチャになるっていうか……」
吹寄「どんだけ想像力豊かなのよ……」
姫神「たぶん。例の完璧なシーンを見てしまったせいだと思う。自分の中で勝手にハードルを上げてしまっているのかも」
吹寄「別に気にしなくてもいいのに……さっきも言った通り大事なのは自分らしさよ?」
結標「自分らしさって言われても……正直何が自分らしいかなんてわかんないわ」
姫神「自分らしさというのは。たぶんだけど。自然体っていう意味だと思う」
吹寄「そうよ。いつもどおり行けば大丈夫よ」
結標「いつもどおり……じゃあこんな感じかしら!?」
結標「へいへーいアクセラちゃーん! ちょろーっと私のチョコレート食べてみなーい?」アセアセ
結標「どうかしら!?」
吹寄「果てしなくキャラが違うんだけど! あなたはいつもそんなじゃないでしょ!?」
姫神「駄目。悩みすぎて頭がおかしなことになってる」
結標「違うのか……それなら」
結標「私のチョコを食えぇー!!」アセアセ
吹寄「だからキャラが違う! てかテンパり過ぎでしょいくらなんでも!」
姫神「これはひどい」
848: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:07:35.61 ID:sg/9aVlvo
ワイワイガヤガヤ
一方通行「Zzz……あン? 何だか騒がしいな」ムクッ
結標「このチョコレート、普通なら980円のところ、私の愛と一緒にを付けまして……ゼロ円! ゼロ円です!」アセアセ
吹寄「お金取るつもりだったの!?」
姫神「自分らしさを見つける話から。だんだんボケてツッコミいれるコントみたくなってきてる気がする」
一方通行「…………何やってンだアイツら?」
青ピ「ただいまぁー! アクセラちゃーん!」
土御門「今日の昼メシは焼きそばパンだにゃー!」
上条「……不幸だ」ボロッ
一方通行「あァ? 何だァオマエら食堂でメシ食うとか言ってねかったか?」
土御門「にゃっはー、ちょっと出遅れちまって並ぶの面倒だったから購買で買ってきたにゃー」
青ピ「カミやんは安定の買えないという不幸で今日の昼食はなしなんやけどなー」
一方通行「コイツの不幸はそれだけじゃなさそォだな。その様子からすると」
青ピ「不幸? はっ! あんな美人の先輩にチョコもらうのが不幸とは面白すぎる冗談やでえ」
一方通行「美人の先輩? 誰だそりゃ?」
土御門「雲川先輩だにゃー、美人で巨 で黒髪ロングが似合うクールでミステリアスな」
一方通行(雲川か……一体どォいうつもりだ?)
青ピ「で、アクセラちゃんはどーやったん?」
一方通行「どォって何がだ?」
青ピ「ボクらがおらん間新しいチョコは手に入ったんか? 死ね」
一方通行「オマエらが帰ってくるまで寝てたからンなモンもらってねェよ。オマエが死ね」
土御門「ま、つまり昼休みでの勝ち組はカミやんオンリーってことだにゃー」
上条「いや、そんなことより俺の昼メシをどうするかを話し合わねえか? マジで腹減ってきたんだけど」
一方通行「雲川からもらったチョコレートでも食ってろ」
―――
――
―
849: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:08:03.59 ID:sg/9aVlvo
同日 13:30
-第七学区・とあるホテルの一室-
黒夜「……すぅ……すぅ」Zzz
カチッ、カチッ、カチッ
黒夜「…………むにゃ」Zzz
カチッ、カチッ、ピピピッ! ピピピッ!
目覚まし時計『クロにゃーん! 朝だよおき――』
ゴパァ!! ガシャン!!
黒夜「うっぜェ、誰だこンなところに騒音グッズ置きやがったヤツ」
黒夜「…………朝、いや昼か……」ムクリ
黒夜「…………」ボー
黒夜「……とりあえず、適当にコンビニにでも行って昼メシとするかねーと」スタッ
-第七学区・とあるコンビニ-
黒夜「さーて、何食べようかな……ん?」
『今日はバレンタインデー! 日頃の感謝を伝えよう!』
黒夜「……そーいや今日バレンタインだっけか」
黒夜「バレンタインなんざくっだらねー。何が楽しくて他人にチョコレートなんて渡さなきゃならねーんだ?」
黒夜「そもそもバレンタインなんていうお菓子会社の陰謀に乗るヤツなんて馬鹿しかいねーよ」
黒夜「…………」
黒夜「なぁに私は独り言呟いてんだアホ臭っ。今日は鶏肉の気分だからフライドチキンにしよ……って売り切れだとッ!? ふざけンな!」
黒夜「…………まぁ、たまにはフランクフルトでもいいか。フランクフルト一本」
<アリガトウゴザイマシター
黒夜「さて、適当にブラつきながら食いますかー」テクテク
ウイーン
850: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:08:41.86 ID:sg/9aVlvo
-第七学区・街頭-
黒夜「あー、しっかし暇だなー」パクッ
黒夜「…………」モグモグゴクン
黒夜「何か知んねーけど今日はグループの仕事ないからなー」パクッ
黒夜「…………」モグモグゴクン
黒夜「……ま、別にその分私がラクできるからいいけ――」パクリ
番外個体「クーローにゃん♪」ガシッ
黒夜「もがっ!?」バチィ
番外個体「おっーと抵抗しても無駄だぜー? 既にクロにゃんのカラダのコントロールはミサカがいただいた! まぁ、もともとクロにゃんはミサカのモノだけどねー」バチバチ
黒夜「あがっ、ふぁっ、むがっー!」モガモガ
番外個体「んー? 何かなクロにゃ……っておおっー! 何かクロにゃんの口に い がッ!」
黒夜「あふっ、ふっ、ああぅ!」フガフガ
番外個体「コイツは いぜゴクリ……写真撮ってモザイク加工してネットに流出させるべきだね、うん」
黒夜「ふがぁー! ぐがぁー! ふぁえー!」
番外個体「えっ? なんだって? ミサカちゃんと日本語で喋ってくれないとわかんなーい」
黒夜「んんんんんんっ!! んんんんんんんんんんっ!!」
番外個体「もーちゃんと喋られないことぐらいわかってるからそんな怒んないでよー……って何でそんな涙目になってるわけさ?」
黒夜「…………」ブワッ
番外個体「えっ、まさかのマジ泣き!? どーしたのクロにゃん何があったの!? まさかどっかの コン豚野郎に れっちゃったの!? うまく歩けなくなってるの!?」
黒夜「うっ…‥うえっ……」
番外個体「と、とにかく一度公園のベンチ辺りで休もう! そうだとりあえずクロにゃんのカラダ解放しないと……!」ビリビリ
黒夜「…………!」
黒夜「おえええええええええッ!! 辛っええええええええええええええええええええええええええッ!!」ジタバタ
番外個体「…………え?」
851: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:09:52.11 ID:sg/9aVlvo
-第七学区・とある公園-
番外個体「――ふむふむなるほどよーするに、フランクフルトに付いてたマスタードがずっとミサカのせいで固定された舌に当たってて涙目になってたわけかー」
黒夜「チッ、そういうわけだ。つまりアンタがいなきゃこんなことにはならなかったってことだな、詫びろ番外個体ォ」
番外個体「メンゴメンゴ、まさかこんな面白いことになるなんて思わなかったからさー、今度からはちゃんと確認してからカラダの制御奪うね☆」
黒夜「謝る気も反省する気も改める気もねーな。うっとおしいヤツ」
番外個体「ミサカは悪い子だからね。しょうがないしょうがない」
黒夜「しょうがなくねェよ! ぶっ殺すぞテメェ!!」
番外個体「そーいえばクロにゃん、たしか暇人だったよね? ミサカも暇だからちょっと遊ぼーよ」
黒夜「華麗にスルーしてくれてンじゃねェよ! てか誰が暇人だゴルァ!!」
番外個体「ええっー? だってこんな時間に野外で えてる人が暇じゃないわけがないじゃん」
黒夜「言い方もう少し考えろ! 何かそれじゃあ私が昼間っから発 してる 豚みてえじゃねーか!」
番外個体「じゃあ にゃんは暇じゃないってこと?」
黒夜「誰が にゃんだ! と・に・か・く、私は暇じゃない! アンタみたいなのと遊ぶ暇なんてないよ」
ボイスレコーダー『あー、しっかし暇だなー。何か知んねーけど今日はグループの仕事ないからなー』
黒夜「…………」
番外個体「…………」ニヤニヤ
黒夜「何が目的だテメェ」
番外個体「ミサカはクロにゃんと仲良くしたいだけだよ?」
黒夜「……チッ、わかったわかったよ。面倒臭せェけどアンタに付き合ってやるよ」
番外個体「わーい、まあもともとクロにゃんには選択肢なんてないんだけどわーい」
黒夜「で、何して遊ぶんだよ? 愉快に楽しく殺し合うか?」
番外個体「えー、そんなことしても面白くないじゃん。レベル99の勇者でスライムぷちぷち捻り潰すくらい」
黒夜「どォいう意味だ……それ?」イラッ
番外個体「そーいうわけでクロにゃんと戯れるのはまた別の機会にするよ」
黒夜「だったら何するつもりなんだよ? 面白くねェ提案だったら私はアジトに帰るぞ?」
番外個体「うーんそだねー、海原にイ・タ・ズ・ラ・するのはどう?」
黒夜「……ほう、ソイツは実に面白そうな提案じゃねーか」ニヤッ
番外個体「でしょ?」ニヤニヤ
黒夜「内容はどうする? ゴキブリの大群でも頭からぶっかけるかぁ? それともアイツの持ち物の中に猫の死体でも入れるかぁ?」
番外個体「……………」ゴッ
黒夜「痛っ! 何しやがる!」
番外個体「別にぃー、何か無性に腹が立ったから殴っただけだよ」
黒夜「何つー理不尽な……」
番外個体「まぁそのイタズラの内容についてはもう考えてあるよ。せっかくだし今しかできないことをやろう」
黒夜「今しかできないこと? それはつまりどういうことだ?」
番外個体「もぉークロにゃんは鈍いなー。今日は二月十四日。つまりバレンタインデーを利用したイタズラにしようぜ!」
黒夜「ば、バレンタインデーだァ!? 何でここでそンな言葉が出てきやがンだ!?」
番外個体「一年に一回のイベントなわけだし、どーせだからいろいろこじつけたイタズラがいいじゃん」
852: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:10:25.11 ID:sg/9aVlvo
黒夜「ケッ、だいたいバレンタインを利用してどんなことができるってんだよ。プレゼントの中に爆弾でも仕掛けんのか?」
番外個体「そーだ! ここはクロにゃんが一肌脱いで『私をタ・ベ・テ・♪』的なドッキリを……!」
黒夜「断る。得するのはその滑稽な光景を見て笑うアンタだけな上に、身を削るのは私だけだ」
番外個体「ほほぅ、つまりミサカも脱げばクロにゃんも脱ぐ、と?」
黒夜「そういう話をしてんじゃねえよ! つーか脱がねえよ!? どんな状況になってもな!」
番外個体「ちっ、じゃあクロにゃんがバレンタインにかこつけて海原に告白するというドッキリで――」
黒夜「だから何で私が必ず犠牲になってンだよ! ふざけンじゃねェぞ番外個体ォ!」
番外個体「クロにゃん。何かを得るためには何かを犠牲にしなきゃいけないんだよ」
黒夜「私は何も得られてねェンだけどォ!? オマエしか得してねェンだけどォ!?」
番外個体「もう、クロにゃんはわがままだにゃーん。何でもかんでも文句言ってー」
黒夜「アンタの言うことは全部私に被害がいってんだよ! 拒否して当たり前だろ!」
番外個体「しょうがないなー、だったら各自勝手にチョコ作って海原に渡そうぜ。それならクロにゃん損ないでしょ?」
黒夜「は、ハァ!? 何をどこでどォ妥協すればそォいう答えが出るンだ!?」
番外個体「んー、誰も犠牲ならないイタズラがお望みなんでしょクロにゃん的には」
黒夜「い、いやそれはそォだろォけど……やっぱオマエの考えがよくわかンねェよ」
番外個体「ま、そういうことだから。時間がないからこれからお別れだね。また時間は連絡するからそれまでに作っといてねー」
黒夜「は? や、だから何で作らなきゃいけね――」
番外個体「作ってなかったらオ・シ・オ・キ・だからねー。ほいじゃー、バイビー」タッタッタ
黒夜「オイふざけンな!! 待ちやがれ番外個体ォおおおおおおおおおおッ!! っていねえどこいったアイツゥ!!」
黒夜「……どうしよう、これってアレだよな? この私が海原なんつーナヨナヨ野郎なんかにバレンタインのチョコ渡さなきゃいけねえってことだよな?」
黒夜「…………面倒だからコンビニで適当にポッキーでも買って渡しゃいいだろ。ってそもそも買ってやる義理もねえんだけどさ」
黒夜「だいたいこれのどこがイタズラなんだ? まったくアイツの考えてることはわからないな」
ピピピピッ! ピピピピッ!
黒夜「あん? メール? 誰からだ……」ピッ
From:番外個体
Sub :そーいえば言い忘れてたけど
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コンビニとかで適当にポッキーとか買ってもダメだよ?
もしそんなことしたらクロにゃんの体中の という に
ポッキーぶっ刺しちゃうよ♪
だ・か・ら、手作り限定そいじゃーよろしくー(^^ゞ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
黒夜「」
―――
――
―
853: ◆ZS3MUpa49nlt 2013/09/29(日) 22:11:12.40 ID:sg/9aVlvo
同日 14:40 ~七時間目前休み時間~
-とある高校・一年七組教室-
結標「決めたわっ! 私のチョコレートを渡すシチュエーション!!」バッ
吹寄「うん、と言ってももう七時間目よ? 後半戦の中でも終盤よ? 遅くないかしら?」
姫神「考えたと言っても。だんだんと選択肢が少なくなってきたから。仕方がなしに決めた感じがする」
結標「まだ何一つ発表していないのにひどい言われようね……」
吹寄「じゃあどういうシチュで渡すの? やっぱり無難に校舎裏とかそういう感じ?」
結標「いや違うわ。私がそんな安直な考えをするわけないじゃない」
吹寄「すごい自信ね。さっきの数学の授業で当てられてどこの問題を答えればいいのかわからなくて、開いてたページの問題をわざわざ全回答したかいはあったようね」
姫神「実は次のページのことを聞かれてて。結局怒られていたんだけどね」
結標「いやー、あははー」
吹寄「では、数学を犠牲に生み出した自信満々の作戦をどうぞ!」
結標「放課後の通学路で渡します!!」バン
吹寄「……あ、うん」
姫神「…………」
結標「あれ? 何この薄いリアクション!」
吹寄「いや、本当に苦肉の策で来るとは思わなくて……」
結標「く、苦肉じゃないわよ! 放課後の帰り道って結構いいと個人的に思うんだけど! 最初から最後まで同じ道だから事実上二人きりになりやすいだろうし!」
姫神「まあ。でも。普通の作戦には変わりない。私も人のことは言えないけど」
吹寄「ちなみに姫神さんはどうするの?」
姫神「放課後呼び出す→二人きり→渡す→終わり」
結標「何よ。姫神さんも私とあんま変わらないじゃない」
姫神「ふふっ。甘い。私は早い段階でこの作戦を立てていた。つまり何度もシミュレーションを脳内でしたということ……!」
結標「な、何だってー!?」
姫神「今さら決めたようなあなたとは経験の差が違いすぎる」フフン
結標「ぐぬぬ……言い返す言葉がないわ」
吹寄「いや、経験の差って両方まだ経験してないじゃない。差も何もあったもんじゃないわよ」
姫神「まあ。何回シミュレーターションしても。本番になったらあまり意味ないんだけどね……」ズーン
結標「それに関しては同意するわ……」ハァ
吹寄「……まあ、ここから先は頑張ってとしか言いようが無いわね」
―――
――
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