3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:34:19.12 ID:6u5FEbHpO
ー回転寿司屋ー

小野田「そうSS。サイドストーリー、ショートストーリーの略なんだけどね。主にファンによる二次創作小説を表す単語なんだ」

右京「二次創作……。原作者ではない他の人間が作り上げた小説のことですね?」

小野田「その通り。その中でもネットとかで掲載されている作品をSSと呼ぶんだけども。今それを読むのにはまっちゃってて」

右京「それはそれは」

小野田「といってもぼくが読んでいるのは二次創作じゃなくて一次創作……。つまり書き手の想像と発想で作られた小説なんだけどね」

右京「失礼ですが、その場合SSではなく普通の素人が書いた小説になるのでは?」

小野田「『"主に"ファンによる二次創作」って言ったでしょう?一次創作でもSSと呼ぶことがあるんだよ」

右京「なるほど」

小野田「それらに載っている作品を読んでたらさ、ぼくもこう、なんて言うの?創作意欲?みたいなのが湧いてきちゃってさ」

右京「その創作意欲が抑えられず、SSを書いてみたと」

小野田「そうなんだよ、杉下。そしてここからが本題だ。そのSSをお前に一読してもらいたいんだ」

右京「はいぃ?」

小野田「そしてお前に批評してほしいわけ。ここが良かったとかここがダメだったとか」

右京「用件があるからなにかと思ってきてみたら、そんなことでしたか」

小野田「そんなこととは心外だな」

右京「その書いた小説というのはもうネットに投稿されたのでしょうか?」

小野田「ああ、したよ」

右京「でしたらぼくがとやかく言わなくても、ネットの方々の貴重な意見がもらえたはずですが」

小野田「いやそうなんだけどさ。知り合いの意見とかも聞いたみたいわけよ。ぼくとしては」

右京「ご自身の部下などに読ませれば良い話では?」

小野田「そんなの恥ずかしくて読ませらんないじゃないのよ。あのさ、忘れてるかもしれないけどぼくは結構偉い人なの」

右京「無論、重々承知していますが」

小野田「そんな偉い人が小説なんて書いてるってカミングアウトしてごらんよ。なんだかぼくが仕事そっちのけで小説を書いてたみたいに取られるじゃない」

右京「実際そうなのでは?」

小野田「いやいや、ちゃんと貴重な休日を利用して書きましたよ。とにかく部下に読ませるといくら釈明しても、仕事をサボってたみたいに取られるかもしれないからお前に読ませるというわけ」

右京「なるほど。官房長の考えはわかりました」

小野田「じゃあ読んでくれる?」

右京「……。わかりました、拝読させていただきます」

小野田「それは良かった。はいこれ、ぼくのスマホ。ぼくの書いた小説がディスプレイに映ってるでしょ?」

右京「ええ、では少々お借りします」


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:35:22.82 ID:6u5FEbHpO
ー数分後ー

右京「読み終わりました」

小野田「そう。で?どうだった」

右京「一言で言えば……。中々の作品だと思います」

小野田「お前にそこまでの言葉をもらえるとは感激だね」

右京「ええ、ただ……」

小野田「ただ?」

右京「ラストに……。主人公の刑事が懲戒免職されてしまうのが」

小野田「ダメかな」

右京「ダメというわけではありませんが、どうにもここだけの部分は気にいりませんねぇ。まあこの辺は完全に好みなのでなんとも言えないでしょうが」

小野田「そうか、まあいいや。結末以外は気にいってくれたみたいだし。じゃあそろそろ混んできたし出ようか」

右京「ええ」

小野田「あ!そうだ、もし良かったらお前も書いてみたらどう?」

右京「なにをでしょう」

小野田「だからSS。お前確か、中学のときに書いた小説が大学のサークルの同人誌に載ったんだろう?その文才を生かして一筆書いてみたらと思ってさ」

右京「お言葉ですがあれは単なるまぐれみたいなものですから」

小野田「まぐれねぇ、まあそういうことにしときますか。でも、ま暇つぶしに書いてみたらどう?亀山くんとかも誘ってさ」

右京「……。考えておきます」

小野田「うん、そうか。もし書く気になってSSを完結させられたらぼくにも読ませてね」

右京「それも考えておきます」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:36:49.53 ID:6u5FEbHpO
ー翌日ー

右京「…………」タッタッタッタッ

亀山「おはよーございます!」

右京「おはようございます」

右京「…………」タッタッタッタッ

亀山「……。さっきからなに必死にスマホをいじってるんッスか?」

右京「いえ、少し小説……。もといSSを書いていましてね」

亀山「小説!?え、え、なんですか。物書きにでも転職するんですか右京さん?」

右京「そういうわけではありません。単に暇だから書いているだけですよ。それに小説ではなくSSです」

亀山「SS……。すみません。初めて聞く言葉です」

右京「謝る必要はありませんよ。ぼくも昨日までは知らなかったんですから」

亀山「そうなんですか?それでSSっていうのはいったい……」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:38:04.84 ID:6u5FEbHpO
米沢「それについてはわたしから説明させていただきます」

亀山「うぉ!おどろいた!米沢さん、急に後ろから耳元で声を出さないでくださいよ。ビックリするじゃないですか。なにか用でも?」

米沢「これは失礼。いえ、角田課長に用事があったので来てみたのですが、まだ登庁されてないようなので帰ろうとしたところ、なにやらssという興味をそそられる単語を耳にしたものですので、つい寄ってしまいました」

亀山「はあ。それで米沢さん。SSってのは……」

米沢「簡単に説明しますとですな……」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:40:14.99 ID:6u5FEbHpO
ー数分後ー

亀山「うーん、なるほど。なんとなく把握しました」

米沢「それはなによりです。それでそのまさか杉下警部がSSを書いてらっしゃるという……」

亀山「ええ、今絶賛執筆中ってところらしいですよ」

右京「…………」タッタッタッタッ

米沢「それはすごい。ネットとかに投稿する予定はあるのですか?」

右京「暇つぶしで書いているものなので、今のところそうするつもりはありませんよ」

米沢「もったいない!杉下警部ほどのお方が書かれた小説なんて、ぜひとも公の場に見せるべきです」

右京「おおげさですよ。そんなたいそうなものではありませんし」

米沢「そうですか………。残念ですなぁ。いやしかしSSとは懐かしいですなぁ」

亀山「懐かしいって米沢さんSSになにか思い入れでもあるんですか?」

米沢「ええ、まあ。こう見えて私も昔はSSを書いていましたから」

亀山「マジッスか!?」

米沢「マジです。思い出しますなぁ。初めて書いたSSを意気揚々と投稿して、散々酷評されたあの夏の日」

亀山「あんま良い記憶じゃないみたいですね……」

米沢「でもいくつか作品を書いていくうちに、だんだん好意的な意見も増えてきて嬉しかった記憶もあります」

亀山「はぁ、酸いも甘いも知ったってわけですか」

米沢「そんなところです。それよりどうしてまた警部どのはSSなんかを?」

右京「実は昨日、官房長の口からSSを書いているという告白を受けましてね」

亀山「え!官房長がですか?」

米沢「それはまた意外な人物が意外なことをしてますなぁ」

右京「それでお前もやってみないかと誘われまして」

亀山「なるほど。そういうわけでしたか」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:41:08.97 ID:6u5FEbHpO
米沢「それでその官房長はそのSSをどこかに投稿なんかを」

右京「ええ、されてましたよ。昨日ぼくも読みました」

米沢「それはそれは。ぜひとも一度目を通しておきたいものですな」

右京「そうそう言い忘れてましたが、このことはくれぐれもご内密に。官房長がSSを書いていると警視庁内で話題になれば、彼もいろいろと大変でしょうから」

亀山「あ、わかりました」

米沢「了解しました。それでその官房長の書いたSSのスレタイ、そうスレタイは……。今すぐ検索ワードに打ち込まないと」

亀山「米沢さん落ち着いてくださいよ。慌てなくてもSSは逃げたりしませんから」

米沢「そ、そうですよね。すみません。年甲斐もなく興奮してしまいまして」

亀山「ハハハ、それじゃあ右京さん。スレタイを教えてもらえませんか」

右京「ええスレタイは……」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:43:22.16 ID:6u5FEbHpO
ー数分後ー

亀山「…………」

米沢「…………」

右京「…………」タッタッタッタッタッ

亀山「右京さん……。読み終わりました」

米沢「私もです」

右京「そうですか。それでどうでしたか」

亀山「いや官房長には失礼なんですけど、なんかもう全体的に暗い雰囲気だったのがどうにも俺の感性に合わなかったです……」

米沢「私もこれほど重めのSSを読むのは久々ですな。面白かったことは面白かったのですが。それになんと言うかこの主人公……」

亀山「あ、米沢さんも気づきました?」

米沢「ええ。この主役の刑事、なんだか杉下警部に似ていませんか?」

右京「はいぃ?」

亀山「そうなんですよ。なにがあろうと犯罪をおかした犯人は多少強引な手を使ってでも逮捕するという信条のもと、捜査をしているところなんて、もろ右京さんですし」

米沢「その信条ゆえ警察組織にうとまれ、最終的に無理矢理クビになってしまったシーンは思わず鳥肌が立ってしまいました」

右京「そんなに似てますかねぇ」

亀山「ええ、すごく」

右京「そうですか……」

亀山「右京さん?」

右京「そうそう。官房長は亀山くんにもSSを書くのを誘ってみたらどうだと言ってましたねぇ」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:44:38.23 ID:6u5FEbHpO
亀山「え?おれッスか」

右京「どうですか?書いてみませんか。無論強制はしませんが」

亀山「そうッスねぇ……」

米沢「書いてみてはいかがです。なにごとも経験してみるのは良いことだと思いますよ」

亀山「うーん、じゃあ一本だけ書いてみようかな」

米沢「それは良かった」

亀山「それじゃあまあ今ちょうど暇だし、さっそくなにを書くか考えるとしますか」

米沢「ああ、もうこんな時間ですな。ずいぶん長居をしてしまいました。では私はこれにて失礼いたします。お二人ともSS創作頑張ってくださいね」

亀山「はい」

右京「ええ」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:45:55.95 ID:6u5FEbHpO
ー数分後ー

角田「暇か?」

亀山「暇じゃないッスよ……」

角田「いや、暇だろお前。スマホいじってんだもん。なに?奥さんに愛のメールでも送ってるのか?」

亀山「小説……。じゃなかった。SSを書いてるんです」

角田「なんだ、それ。まあいいや。コーヒーもらうよ」

亀山「どうぞー。うーん、どうにも上手くまとまらないな」

角田「いったいさっきからスマホとにらめっこして、なにをやってるんだ」

亀山「ええと実はですね……」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:46:49.92 ID:6u5FEbHpO
角田「はーん、ショートストーリー略してSSねぇ。そんなの書こうとしてんだ」

亀山「ええまあ」

角田「で?どういうストーリーにするかは決まったのかい?」

亀山「一応、虫が主役の話にしようとは思うんですけどね。ほらおれ虫好きだから。でもそこからさきがどうにも……」

角田「ふーん、大変そうだな。まあ頑張ってよ。しっかしまさか警部どのまでそのSSを書こうとしてるとは。これじゃあ特命係じゃなくて文芸係だな。ハハハ……」スッ

亀山「言いたいことだけ言って帰ちゃった。まあいっか。そんなことよりSSの構想を練らなくちゃ……」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:48:05.50 ID:6u5FEbHpO
ー数日後ー

亀山「出来たー!」

右京「おやおや、完成しましたか」

亀山「はい!よーしさっそく掲示板に投稿を……」

米沢「お待ちください」

亀山「うお!なんッスか、米沢さん。止めないでくださいよ」

米沢「ネットに投稿する前に一度私に読ませてもらえませんか?」

亀山「米沢さんにですか。まあ別に良いッスけど……。はいおれのスマホです」

米沢「拝読させてもらいます。うーん……。ふーむ……。ほー。そうきましたか……」

亀山「…………」

米沢「…………」

亀山(やばい、なんかすごく緊張してきた……)

米沢「読み終えました」

亀山「ど、どうでしたか?」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:49:05.46 ID:6u5FEbHpO
米沢「初めて書いたにしては内容は面白かったです」

亀山「本当ッスか!?」

米沢「ただそのなんと言いましょうか。文章が全体的にその……」

亀山「なんですか?」

米沢「稚拙と言いましょうか。いえ、これはこれで味があって良いのかもしれない……。うーんなんとも言えませんなぁ」

亀山「結局良いのか悪いのかどっちなんですか」

米沢「話が面白かったので総合的には良かったと思います」

亀山「じゃ、投稿しても良いんですよね?」

米沢「ええ、どうぞ」

亀山「よーし、じゃあまずはこっからここまでを投稿してっと……」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:50:05.28 ID:6u5FEbHpO
ー数十分後ー

亀山「…………。うーん」

米沢「どうですか?」

亀山「一応感想はもらえましたけどね。見てください」

米沢「はい。どれどれ……『文章が中学生レベルだったけど面白かった』褒められるじゃないですか」

亀山「ええー。これ褒めてるッスか?」

米沢「面白かったって評価されてるわけですから普通に褒め言葉でしょう。私が初めて書いたSSなんて面白いの一言ももらえず、それはもうものすごいバッシングで……うう……」

亀山(悪いことしちゃったかな)「わかりました、わかりました。おれは褒められたんですね」

米沢「ええ、そうです」

右京「…………」タッタッタッタッ

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:51:08.39 ID:6u5FEbHpO
伊丹「SS作家の亀山!」

亀山「かー、これはこれはお耳が早いですねぇ。捜査一課の伊丹さんよぉ」

芹沢「先輩お久しぶりです」

亀山「おう。三浦さんもしばらく振りッスね」

三浦「ああ」

亀山「それで三人揃ってなんのご用件でしょうか?」

伊丹「ふん、角田課長から聞いたんだ。なんでもお前、ssってやつを書き始めたんだってな?」

亀山「それがどうかしたのかよ」

伊丹「実はな。俺も今一本SSを完結させたところなんだ」

亀山「なに?」

三浦「伊丹のやつ亀山がSSを書いてると知った途端『亀のくせに小説を書くなんて生意気だー!』って対抗心燃やしまくってよ」

芹沢「そっから仕事の合間をぬって必死にssの構想を練ちゃってまったく子供なんだから……」

伊丹「余計なこと言ってんじゃねぇ」バシッ!

芹沢「痛っ!」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:52:11.18 ID:6u5FEbHpO
亀山「ハッ!それでなんだい。おれと同じ土俵に入ったつもりか?いっとくがこっちは書き込みの大半が称賛の声なんだぜ」

米沢「大半ってまだ書き込みが一件しかない……」

亀山「しー!」

伊丹「上等だ。こっちのSSにもそろそろ感想が書き込まれたころだろう。芹沢!」

芹沢「はい!」

伊丹「おれのスマホだ。ほれ」

芹沢「あ、どうも」

伊丹「どうだ感想の書き込みはあるか?」

芹沢「えっとちょっと待ってくださいね……。あ、ありますね」

伊丹「よし!読んでやれ!」

芹沢「え?良いんッスか?」

伊丹「構わねえ。やっちまえ」

芹沢「ええとそれじゃあ……。『小学生レベルの文章。だけど内容は良かったよ』です……」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:53:21.61 ID:6u5FEbHpO
亀山「ぶふー!え?なに?なんだって?小学生レベルだって!ハハハ!今年一番笑わせてもらったぜ伊丹!」

伊丹「てめぇこのやろー……」

芹沢「ええ、こっち睨むのやめてくださいよ。先輩が読めっていうから……」

伊丹「クッソ!だったらおめえはどんな感想もらってるんだ!」バシッ!

亀山「あ!こら返せ泥棒!」

伊丹「うるせえ。ちょっと借りるだけだ!ええとなになに……。ぶぶぶぶ!中学生レベルって書かれてるじゃねえか!ハハハハハ!こいつはお笑いだぜ!」

亀山「はん!なに言ってやがる。小学生レベルと書かれたお前とは天と地ほどの差があるんだよ」

米沢「いえ、正直どちらも五十歩百歩な気がしますが……」

芹沢「ええ、まさしくどんぐりの背比べです」

亀山「なんだと芹沢?」

伊丹「あーん、芹沢ぁ。もういっぺん言ってみろおらー!」

芹沢「うわぁ、こっちに被害がきたぁ!」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:54:24.90 ID:6u5FEbHpO
右京「ふー」

伊丹「ん?」

亀山「右京さん?」

右京「…………」ズズズズズズ

三浦「なんだ?警部どの。深い息をついたかと思えば紅茶を飲み始めたぞ」

芹沢「ええ、まるで一仕事終えたような表情で……」

亀山「!もしかして右京さん」

右京「ええ、SSが完成しました」

亀山「おお!」

米沢「おめでとうございます。杉下警部!」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:55:45.20 ID:6u5FEbHpO
ー回転寿司屋ー

小野田「そう、思ったより早く出来たんだ。良かったね」

右京「ええ」

小野田「それじゃあさっそく読ませてもらおうかな」

右京「その前に一つ確認させてもらってもよろしいですか?」

小野田「ん?」

右京「官房長が書かれたSSをぼくに読ませた理由はなんです」

小野田「え?なに忘れちゃった?お前らしくもない。読ませたときに言ったと思うけど知り合いの意見も聞いておきたかったから……」

右京「それでしたら奥様やほかの友人なんかに読ませればいいだけです。
わざわざぼくに読ませたのには、なにかそれなりの理由があるのではないかと思い始めましてね」

小野田「考えすぎだよ。長年事件の捜査をするあまり、疑り深い性格になちゃってるみたいだね。こわいこわい」

右京「お言葉ですが疑り深い性格なのは生まれつきです」

小野田「あ、そう」

右京「まずぼくが疑い始めた理由は亀山くんと米沢さんの言葉です」

小野田「あの二人なんか言ったの?」

右京「ええ。実はあの二人も官房長のSSを読みましてね。それの感想が全体的に暗かったと」

小野田「まあそう言うだろうね」

右京「そしてこうも言ってました。主役の刑事がこのぼく、杉下右京に似ていると」

小野田「ふーん」

右京「二人いわく、強引な手を使ってでも犯罪者を絶対に逮捕するという信条の部分が類似しているとのことです」

小野田「ああ、言われてみればそうかもね」

右京「ここで疑問に思ったのが当然、なぜ主役の刑事がぼくに似ているのかというところです。たまたま似てしまったのか、それとも単なる二人の思い違いか、もしくは--意図的にぼくに似せた主人公を創り上げたのか」

小野田「…………」

右京「もし意図的にぼくに似せたんだとしたら、いったいその目的はなにか。なにが狙いでそんなことをしたのか。そう考えたとき、一つの答えが浮かびました」

小野田「どんな答え?」

右京「それは忠告です」

小野田「忠告?誰に対する?」

右京「当然、官房長からぼくからへの忠告ですよ。このままの調子で犯罪者を逮捕し続けていくと、お前はいずれ警察から去らねばならないという--」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:56:53.05 ID:6u5FEbHpO
小野田「ふー……。やっぱり見抜いちゃったか」

右京「当たっていますか」

小野田「うん、そう。大正解」

右京「それは良かったです」

小野田「良くないよ。本当にこのssの主人公みたいになったらお前どうするの?」

右京「あいにく、これは官房長の創作物です。創作はしょせん創作。現実ではありません」

小野田「事実は小説よりも奇なりって言うでしょ。もしかしたら逆に懲戒免職じゃ済まないレベルになるかもしれないよ」

右京「仮にそうなるとしてもぼくは、決して自分の信念を曲げたりはしません」

小野田「はぁ。まあこんなSSで、お前が心変わりするとは思ってなかったけどさ。ここまで強情だともうぼく泣きますよ」

右京「一応忠告されたことは覚えておきます」

小野田「覚えてるだけじゃダメなんだけどなぁ」ガシャ

右京「これまで何度も申し上げてますが、皿は戻さないようお願いします」スッ

小野田「ああ、すみませんねぇ」

右京「それよりあのSSが忠告だとぼくが気づかなかった場合は、どうするつもりだったのでしょうか?」

小野田「ん?まあそのときはそのときで、また別のプランを考えるつもりでしたよ」

右京「なるほど」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/15(火) 09:58:16.92 ID:6u5FEbHpO
小野田「さてそれじゃあそろそろお前の書いたSSを読ませてもらえるかな」

右京「わかりました。その変わり官房長のスマホをお借り出来ませんかねぇ」

小野田「え?良いけどなにに使うつもり」

右京「亀山くんの書いたSSを読んでみようと思いましてね。掲示板に投稿してあるので官房長のスマホから閲覧しようかと」

小野田「なるほど。ぼくがお前のSSを読んでいる間に、お前は亀山くんのSSを読むというわけか」

右京「そういうわけです」

小野田「もし良かったらどっちがさきに読み終えるか競争してみない?」

右京「ええ、ぼくは一向に構いませんよ」

小野田「よしそれじゃあ行くぞ。よーいドン!」


END

引用元: 右京「SSですか?」