1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:39:54.58 ID:GfBJjTfU0


「ふん!きっとローゼンのことですからべラボーに理想が高いですよ。
 村一番の人気者のアリスみたいな女ですよ」

「興味あるわねぇ」

「ねぇねぇローゼンおしえてーっ」


「そうだなぁ・・・・・」




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:42:26.16 ID:GfBJjTfU0


―――――――桜田家

相変わらず、桜田ジュンは学校には行けていなかったが
少しずつ、少しずつ
自分と向き合い僅かずつだが前に進んでいた。

自分よりもはるかに小さい
少女の人形達の闘いをみて、触れて
心を動かされたのだ



とりあえず、今までの遅れを取り戻すべく
ジュンは日々勉強に励んでいた。

その後ろ

小さなティーカップを口に運び
静かに本を読んでいるのが
ローゼンメイデン第五ドール 真紅だ


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:45:15.77 ID:GfBJjTfU0
「・・・・」
「・・・・・・」

「・・・・・・・・ふぅ」

「なぁ真紅」

「何?ジュン」

「お前らお父様に会うためって、アリスゲームをしてるけど
 そのお父様がどんな人なのかは知らないんだろ?」

少しムッとした顔をして真紅が答える
「知らなくても素敵なお方だということはわかっているわ」

「案外ロリコンだったりしてな。究極の少女って・・く・・」

ジュンのニヤついた顔に真紅の平手が飛んだ

「いってぇぇぇ!!」

「口が過ぎるわジュン!!張り倒すわよ!!」

「もう張り倒してるだろ!この呪い人形!!」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:49:44.87 ID:GfBJjTfU0
そんな騒がしい様子を森に囲まれた
美しい湖の水面に映し眺めているのは
道化ウサギ、ラプラスの魔

その傍ら
大きな木の椅子に座り
うつろな表情で何もない空間をぼんやりと眺めていいる
金髪の美しい男


これは
彼の物語


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:52:25.74 ID:GfBJjTfU0
そこはとても小さな村だった
周りは山に囲まれ、小さな川が流れていた

村の自慢は大きな風車で、オレンジが名産のとてもきれいな村


その村のはずれ
小さな木の家に、若く美しい聡明な男が住んでいた
名はローゼン
本職は人形師だったが、錬金術、哲学、話術にも精通し
果てには呪術などの研究もしていた



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:55:29.05 ID:GfBJjTfU0
「・・・・ふぅ、これでよし、と」

依頼されていた人形の修理が終わり、ぐぐっと背伸びをした
依頼といっても仕事ではない、大事な友達の人形の修理だ

その人形を抱き家を出る

家の前には平野が広がっている
長い一本道が村の中心まで続いており、その脇に木の柵が埋め込んである
少し遠くを眺めればオレンジ畑だって見える



ローゼンが歩き出そうとしたとき
前方の木の柵のところ
六人の女の子が集まっているのが見えた

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 20:59:15.60 ID:GfBJjTfU0

「あ!ローゼン」
金髪の大きなピンクのリボンをつけた幼い女の子が叫ぶ

「こんにちは、ベリーベル
 お人形できたよ、お待たせ。」

「わーい!ありがとうなのー!!」

「遅いですよぅ、人を待たせるもんじゃねーですよ」
「ちょっとスィドリーム、君がベリーベルの人形を壊したんじゃないか
 そんな言い方はないだろう」

目の色が左右それぞれ違う二人の女の子が言う
ぶーぶー言っている髪の長い子が姉のスィドリーム
しっかりしたショートヘアの子が妹のレンピカ
彼女らはとても仲のいい双子だ


「ふふ・・ごめんよ、スィドリーム。こんにちはレンピカ」

「まぁ、許してやらんこともないですよ」
「スィドリーム!」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:03:01.29 ID:GfBJjTfU0
「こんにちわローゼン」

「こんにちは、ホーリエ」

青い瞳の落ち着いた雰囲気の女の子が話しかける
名前はホーリエ。

「今日はピチカートは一緒じゃないのかい?」

「ピチカートはあそこよ」

「まだ鬼ごっこが続いてると思って警戒して近寄ってこないのよー」

少し離れたところで緑の巻髪の女の子がほふく前進しているのがピチカート
頭にはハート型のレースの髪飾りをつけている

「ピチカート!こっちへおいで!鬼ごっこは終わりだってさ」

「いいのよぉ・・ほっとけば」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:06:55.36 ID:GfBJjTfU0
「メイメイ。おかえり。羽は集まったかい?」

銀髪の、他のみんなより少し背の高い美しい女の子が
ちょっぴり照れたように真っ黒な羽を差し出す
ローゼンと暮らしているメイメイという子だ

「ありがとう。メイメイ。これでいい人形が作れるよ」
ローゼンの笑顔に銀髪の顔が赤くなる

「何を赤くなっているのメイメイ
 勘違いしないで頂戴ね」

「・・・何よホーリエ。やるのぉ?」

「なんですって?」

「こらこら、喧嘩しない」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:09:50.90 ID:GfBJjTfU0
ほとんど毎日、この子達はローゼンを慕って遊びにくる

メイメイは戦争孤児だった。まだ若かったが人形師としてそれなりに名のあった
ローゼンが引き取り一緒に暮らしていた

ベリーベルが遊びにくるようになり

その付き添いでホーリエが

噂を聞きつけてスィドリームとレンピカが

最初は物陰に隠れていたピチカートが

みんな裕福ではなかったが
とても、とても毎日が楽しかった

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:12:36.92 ID:GfBJjTfU0
この村は山に囲まれているせいか日が落ちるのが早い
もう山際には太陽が沈みかけている

まだまだ元気に走り回るベリーベルとピチカートがオレンジ色に染まっている
レンピカとスィドリームは花で何か作っているようだ

それをホーリエ、ローゼン、メイメイが木の柵にもたれかかってみている


「ねぇ?ローゼン?」

「ん?」

「今年もお祭りで人形劇やってくれるのよね?」
青い瞳のホーリエがたずねる

「・・・どうかな。噂だと近くまで軍隊が近づいてきているらしいから・・
 お祭り自体ないのかもしれないね。」

「そんな・・・戦争になってしまうの?」

「・・・かもしれない。」

「・・・」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:16:12.63 ID:GfBJjTfU0
ここのところ、貴族の領土争いでこの村の近くでも度々戦闘がおこることがあった。
この村のすべての人にとってこれは不安の種であった

少し重苦しくなった空気を感じてか、走り回っていた二人も、お花摘みをしていた二人も
駆け寄ってきた。


「どうしたのかしらー?」

「うゆ・・・?」

心配そうな顔をするみんなを見てローゼンはにっこり笑った

「心配ないさ。きっと大丈夫!」

「でも~・・・

「それじゃあ、兵隊さんたちが来る前にみんなでお引越ししちゃおうか?
 どこか遠く。湖があるところがいいな。とてもきれいな」


「お引越し!?ほんとに!?やったーーー!!」
「そ・・・そこまで言うならついていってやらんこともないですよ!!」

反応はそれぞれだったがみんなうれしそうだった



この子たちはみんな親がいない

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:19:36.65 ID:GfBJjTfU0
メイメイは戦争孤児

ピチカートは両親を早くに亡くし、この村にいる叔父に引き取られたが
仲は好くない、朝から夜までローゼンのところにいるのはそのせいだった

レンピカ、スィドリームは幼いときに重い病気にかかり、両親はその治療をあきらめ二人を捨てた。
奇跡的に回復したもののそれぞれ片目ずつ視力が落ち、瞳の色はその時かわった
今は二人でがんばって暮らしている

ホーリエ、ベリーベルはこの村の酒場に捨てられていた。
今ではその容姿から二人とも看板娘的存在だが、正直二人は
店の客と話すのが大嫌いだった。




皆、大好きなローゼンと
大嫌いなこの場所から離れられると聞いて喜ばないはずがなかった


29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:23:44.40 ID:GfBJjTfU0

「私は思い切って大都会に行きたいですぅ!」

「私はおいしい紅茶のある所ならどこでもいいわ」

「ローゼンは湖があるところがいいって言ってるじゃないか」

「私はお菓子の国がいいかしらー!」

「ふふふ。それなら素敵なドレスがいるね。皆どんなのがいい?」

「ピンクいのがいいのー!」

「ローゼン!真っ赤なドレスがいいのだわ!」

「ふふ・・あなたが着るとちんちくりんになりそうねぇ」

「なんですって?」



そんな微笑ましい会話をにこにこ笑いながらローゼンは聞いていた
こんな日々がずっと続けばいいと

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:27:15.77 ID:GfBJjTfU0

「それにしてもアリスはざまぁみろって感じねぇ」
村一番の美少女アリスをメイメイはフフンと笑った

「? どういうことかしら?」

「あの子、今年のお祭りの劇でお姫様役だったのよ
 でもお祭りがないんじゃしかたないわよねぇ・・・」

くすくすと笑いながらメイメイが言う

「そんなこと言うものではないわ」
じろっとメイメイを睨みホーリエが言う

「確かにアリスはいけすかんですぅ!ちょっと可愛いからって調子に乗ってやがるです!」

「あー私しってるのよー。それ ちっと ていうのよー」

「嫉妬、だよベリーベル」

「なんですってぇー!!このチビチビー!!」

「きゃーなのー!」

「確かにアリスは綺麗だね。いつか彼女に似合うドレスも作ってみたいな」

「なーーッ!?許さんです!ローゼン!!」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:30:40.20 ID:GfBJjTfU0
何か思いついたようにホーリエがローゼンを見た

「どうかしたかい?ホーリエ?」


「ねぇ、ローゼン。貴方にとって究極の少女ってどんなもの?」

「は?」
急な質問に少し意味がわからなかった

「え・・と・・好みのタイプってことかい?ホーリエ?」

「まぁ、そういうことね。」

「ふん!きっとローゼンのことですからべラボーに理想が高いですよ。
 村一番の人気者のアリスみたいな女ですよ」

「興味あるわねぇ」

「ねぇねぇローゼンおしえてーっ」


「そうだなぁ・・・・・」



「・・・・・ずっと一緒にいてくれるひとかなぁ」

「・・・・・・はぁ?」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:33:31.41 ID:GfBJjTfU0
「僕は・・・「・・・・わ・・・私が・・い・・一緒にいてあげてもいいわよ!?」

「なっ・・何を言うですかホーリエ!!それならスィドリームが・・・っ!?」

「ふーん?」

「何ですかレンピカ!?私は何もいってねぇーです!!」

「ベリーベルも一緒なのよー!」

「ピチカートもかしらっ!」

「ちょっとちょっとぉ・・・何を言ってるのよ貴方たちぃ・・」


全員が一斉に話し出したため
後に続いたローゼンの言葉を聴いた者はいなかったが

ローゼンは嬉しそうにその様子を見つめていた



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:40:45.67 ID:GfBJjTfU0
空が真っ黒になるころ皆は家路に着いた
一人方向の違うピチカートにはいつもローゼンの見送りがついている

ピチカートの足取りは重い


「ピチカート?大丈夫かい?」

「・・・・・・」

「・・・ねぇローゼン?」

「なんだい?」

「遠くに連れて行ってくれるって本当?」

「あぁ。ほんとうだよ。皆で一緒に暮らそう」

少し悲しそうな表情が残っているようにも見えたが
ピチカートはニッと歯を見せて笑った

「楽しみにしてるかしらっ!バイバイ!ローゼン」

「あぁ。気をつけてね」

走っていくピチカートの背中を見送り、ローゼンも帰路に着いた

もう少し耐えれば・・・と
振り返ってしまわないように、ローゼンに心配をかけぬように
唇を噛んで、苦しみの待つ家まで、ピチカートは走った

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:43:30.64 ID:GfBJjTfU0
小さな木の家のドアを開けると、メイメイがご飯を作って待っていてくれた。
メイメイの作るご飯はおいしい


「ローゼン」

「ん?」
二人向き合った食卓で、メイメイが声を発した

「黒い羽なんか集めてどうするの?あなた黒いお人形なんてつくらないでしょう?」

「・・・どうしても知りたいかい?」

「? ええ?」

「・・・・じゃん!」

「まぁ・・・!」

真っ黒なドレス。まだ作りかけだがもうこの時点で素晴らしいと言えるものになっていた。

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:47:22.87 ID:GfBJjTfU0
「メイメイ、黒いドレスを着てみたいって言ってただろう?
 いつもおいしいご飯を作ってくれるお礼に、と思ってね」

「ありがとう・・・」
下を向き少し涙声になっている、ローゼンは少しあせった

「い・・いやでもまだこの翼にボリュームが足りないんだ
 黒い羽なんてなかなか集まらなくてね・・・・メイメイはいつもいったいどこで集めてるんだい?」


戦争で親を亡くし、一人っきりだった自分をローゼンは救ってくれた
こんな自分に優しくしてくれる、大事な人
メイメイはローゼンを愛していた


グスッと鼻を鳴らしメイメイは顔を上げた

「秘密よぉ」

フフン、と得意気に笑みを浮かべ一言
クス・・・とローゼンは笑う

「いつか教えてくれよ?」

「やぁよ」


メイメイとの最後の団欒だった

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:53:54.37 ID:GfBJjTfU0
「ここが秘密の場所なのよねぇ」

まだ霧のかかっている朝早く、家を抜け出してメイメイは山の中に来ていた
巣が近くにあるのか、カラスの羽がたくさん落ちているのだ

フンフンと鼻歌を歌いながら、羽を集めるメイメイ
「ローゼンびっくりするかしらねぇ」

びっくりするローゼンを思い浮かべにやりと笑い、家に帰るのが楽しみになった



「お、おい。女だぜ」

「あ?まだ子供じゃねぇか」

「!!」

鎧を着た男が二人茂みから出てきた

「かんけぇねぇよ。女なら誰でもいいさ。4日歩きっぱなしなんだぜ
 偵察ってのも楽じゃないぜ」

「ま、そうだな。殺しちまえばバレはしねぇか。」


恐怖で声が出ない
銀髪が震える

「ローゼン・・・」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 21:58:25.43 ID:GfBJjTfU0
帰りが遅い。
朝からメイメイが出かけているが、一向に帰ってこない
しっかりした子だ、きっと大丈夫だと、自分に言い聞かせるように
ローゼンはメイメイの帰りを待った。


コンコン。とドアがなる
ホッとして、ドアを開けるが、期待とは違った
中年の男性。見たことがある、この村の猟師だ。

「どうかなさいましたか?」

「・・・銀髪の女の子はこの家の子ですよね?」

「!!はい・・・」

「来てください」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:05:17.43 ID:GfBJjTfU0

「ちがう・・・」

「え?」

「僕のせいなんだ・・・・」

ローゼンは後悔した
なぜドレスにあんな羽の細工を施す必要があったのか
なぜあんなドレスを作ったりなんかしたのか
なぜもっと早く起きていなかったのか
なぜメイメイを止められなかったのか

今までの人生の中でもっとも多くの時間をすごした
大事な人だったのに

「・・・・あ・・・うああああああああああああああああああああああ!!!!」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:09:28.51 ID:GfBJjTfU0


「ちがう・・・」

「え?」

「僕のせいなんだ・・・・」

ローゼンは後悔した
なぜドレスにあんな羽の細工を施す必要があったのか
なぜあんなドレスを作ったりなんかしたのか
なぜもっと早く起きていなかったのか
なぜメイメイを止められなかったのか

今までの人生の中でもっとも多くの時間をすごした
大事な人だったのに

「・・・・あ・・・うああああああああああああああああああああああ!!!!」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:14:06.09 ID:GfBJjTfU0
次の日村の教会でメイメイの葬儀が行われた。

薄暗い教会にほんの少し光が差し込んでいる
見上げたところには十字架が威圧的にたっていた

人数は少なかった、もともとメイメイは人との関わり合いを好むタイプではなかったし
メイメイを襲ったのが軍の兵士だという噂が広まり、皆避難準備に追われているのだ

「・・・・・なんでローゼンは来てないですか・・」
目と、鼻を真っ赤にしてスィドリームが言う

「・・・ピチカートもよ」

ホーリエは決してメイメイと仲がよかったわけではないが
メイメイのつくる料理はおいしかったし、素直ではないが彼女は優しかった
ホーリエは彼女を尊敬していた


ホーリエ、スィドリーム、レンピカ、ベリーベルは人の少ない
静かな教会の中、真っ暗になるまで 泣いた

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:19:53.50 ID:GfBJjTfU0
 

小さな木の家
そのドアにもたれかかり酔いつぶれたローゼンがぶつぶつと独り言を言う
酒はのまないのだが、何もしないでいることに耐えられなくなったのだ
涙、は昨日から一度も止まっていない

「・・・・涙が止まったら・・死のう・・」

止まらないことなど知っているのに
自嘲気味に笑い、ローゼンは目を閉じた

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:24:11.61 ID:GfBJjTfU0

目を開けると真っ暗だった
死ねたと思ったが、夜だということにすぐ気がついた

ランプをつける。

目の前に一冊の本が落ちていた
「『死者蘇生術』?」

さまざまな学問に通じるローゼンの家には多くの本がある
その内のひとつ

呪術の研究をしていたときに読んだ覚えがある
蘇生のしかたが興味深かった気がする
確か・・・・人形に魂を・・・・


「・・・・・!!!!」


希望の光でも何でもなかったのかも知れない
だがローゼンにはもうそれしか見えていなかった

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:29:09.69 ID:GfBJjTfU0




ピチカートの宝物はローゼンに作ってもらったハート型の髪飾りだった
何よりもそれを大事にしていたし、ローゼンもそのことを喜んでくれていた

二日前の夜
ローゼンと別れ、家に帰ったとき
いつものように乱暴な叔父はテーブルで酒を飲んでいた

叔父の気に障らないように、静かに静かに二階の自室へ戻ろうとしたとき

「きゃぁ!!」
グラスを投げつけられ、びっくりしてうずくまる

「おい!ただいまも無しか!?
 誰が育ててやってるとおもってるんだ!?」

いつもこんな感じなのだ
もう少し耐えればローゼンが遠くに連れて行ってくれる
もう少し・・・・

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:35:06.81 ID:GfBJjTfU0
ばしんっと頭を叩かれたのと同時に髪飾りが落ちる

「あっ!!」

「あん?なんだぁ?」
ひょいっと髪飾りを取り上げられる

「かえして!!」

「あんだとぉ?どうせこんなもんあのローゼンとか言う若造から
 貰ったんだろう?捨てちまえ!!」

ぶちっとハートが割れる

「いやああああああ!!」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:40:45.23 ID:GfBJjTfU0

「ったく・・ぴーぴーうるせぇなぁ・・」
酒盛りを続けようとする叔父をピチカートはギロッとにらみつけた

「あ・・?何だその目は?」

どんっと重い衝撃がお腹に走る

「あ・・・うぅ!」

「このガキ・・なめやがって」




もう少し耐えれば・・・と
ローゼンの笑顔を思い浮かべたところでピチカートの意識は消えた

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:44:20.73 ID:GfBJjTfU0


「おーい!!来てやったですよ!開けやがれですぅ!!」

「スィドリーム、よしなよ」

あれ以来一向に姿を見せないローゼンを心配して双子が家を訪れた、が
鍵がかかっている

「うるさいですぅ!!うじうじしていたってあいつは帰ってこないですよ!」

レンピカは注意を続けようとしたが、スィドリームの両目にたまった涙をみて
言葉が見つからなくなった


「おい!!ローゼン!でてこい・・で・・う・・あれ?・・」
そう言うとふらつき、その場にしりもちをついてしまった

「! どうしたの!?スィドリーム!」
そういっている自分もめまいがしていることに気づく

「レンピカ・・・」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:47:12.09 ID:GfBJjTfU0

・・・・わかっていたことだった
自分たちの病気は治っていない
少しずつ少しずつ進行していた


大事な人を失い傷ついているローゼンに余計な心配はかけたくない、と
レンピカはスィドリームの肩を担ぎ一本道を歩いた

 

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:50:46.36 ID:GfBJjTfU0
レンピカたちと入れ違いでローゼンの家にホーリエとベリーベルがやってきた

「ローゼン・・・聞いて頂戴」

「・・・・・・」

中からかすかに音が聞こえる。何か作業をしているのだろうか

「ローゼン・・・ピチカートが死んだわ」

「・・・・・・・・・」

ガチャ・・・っとゆっくりドアが開く
信じられないという風に目を見開いたローゼンが顔を出した

ずいぶんとやつれた

ベリーベルは肩を揺らし、嗚咽をもらしている
ホーリエの目は真っ赤だった

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:54:02.37 ID:GfBJjTfU0

「どういう・・ことだ?」

「ピチカートの叔父は捕まったわ。彼が彼女を殺したのよ
 今までもずっと・・・・あの子耐えていたのね・・・・」

「え・・・・・・」
仲が悪いとは聞いていた。だけど、暴力を受けているなんて

「ピチカートは強い子ね・・・いつも気丈に振舞っていたなんて」


ピチカートを送った夜、彼女と約束をした
必ず遠くに連れて行く、と

また・・・自分は無力だった・・・・


メイメイの時と違ったのは、湧き上がった思いが
『死のう』ではなく『自分が必ず生き返らせる』だったことである

「ホーリエ、ピチカートのところへ案内してくれるかい?」

「え・・ええ」

閉まりかけのドアの向こうに銀髪の人形が見えた気がした
 

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 22:56:16.35 ID:GfBJjTfU0

静かに、眠っているようだった。
大事にしてくれていた髪飾りもとれてしまっている

「うっ・・・・うう・・・」
硬くなってしまった体を抱きしめる

(必ず・・・・僕が生き返らせる・・
 遠くへ行こう、皆で暮らすんだ・・・)

ピチカートの顔を、髪を、手を足を
決して忘れぬように。ローゼンはしっかりと目に焼き付けた

ホーリエとベリーベルは何も言えず
ただ立ち尽くしてローゼンを見つめていた

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:00:08.79 ID:GfBJjTfU0

「よし・・・」

げっそりと痩せたローゼンが一人つぶやいた
作業に一区切りがついたのだ

前にスィドリームとレンピカが訪ねてきてくれたのを無視してしまった
それが気がかりだった

謝らなくては、許してもらえるだろうか、と
ふらふらになりながらも、二人の住む小屋に急いだ
 

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:00:55.20 ID:GfBJjTfU0

そこにはホーリエとベリーベルがいた。
双子はベッドの上でピクリとも動かない

「ロー・・・ゼン・・」
ベリーベルが顔をくしゃくしゃにして泣いている
ホーリエは肩を震わせ、下を向いたまま動かない

「ス・・スィドリーム?レンピカ?」

「・・・・・・・あ・・・ロー・・・・ゼン」
レンピカが応える

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:03:55.48 ID:GfBJjTfU0
スィドリームは微かに目を開けているがもう言葉を発することはできないようだ

「この子達・・・私たちに心配をかけまいと・・・」
声を震わし、ホーリエが言った

「・・・・・・す・・」

「! スィドリーム?」

スィドリームが微かに声を発した

顔を近づけると腕を首に回された
細い。枯れ木のようになっていた。
一方でレンピカがありったけの力で左手を握った


「・・・・・・っ・・・で・・・」

「??スィドリーム・・・ッ・・聞こえないよ・・・」
また、涙があふれた
その雫がスィドリームの頬に落ちる

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:11:23.94 ID:GfBJjTfU0

「だ・・・い・・好き・・ですよ・・・ロー・・・・ゼ・・ン」

「・・・・・・・ッ!!!ダメだ・・・・ッ!行くな・・」

左手にぎゅっと力が入った

レンピカがふるふると首をふってゆっくり、笑った

ホーリエとベリーベルはずっと大声で泣いている

「・・・・・・ダメだッ・・・・・レンピカ!!」


そして
二人は静かに目を閉じた

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:12:08.42 ID:GfBJjTfU0



軍の進行は村の一歩手前で止まったと聞いた
別の軍と何故か鉢合わせになり行軍が困難になったかららしい

おかげで村の毎年恒例のお祭りは予定通り行われることになった
アリスも予定通り

どんな花より気高く
どんな宝石よりも無垢な
一点の穢れもない小さなお姫様の役をやることになった


そんな中

村ではローゼンは気が狂った人形師だ、と言われ始めていた

もう何日も外に出ていない
人形は4体完成し、文句なしに今までの最高傑作だった

でもわからない、魂が作れない

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:16:51.66 ID:GfBJjTfU0

日に一度は必ずホーリエとベリーベルが来てくれるが、もう以前のように
会話してやることができなくなった。もう涙も流れない
呪術ってこういうことかなと、心の中で思い
また自嘲気味に笑った

それでも
4人を生き返らせればまた前のように戻れると信じて
ローゼンは手を動かし続けた

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:17:41.88 ID:GfBJjTfU0
暗い部屋に光が差し込む

ドアを開けてホーリエとベリーベルが入ってきたのだ

逝ってしまった4人そっくりの人形をはじめて見たときは驚いたが
ローゼンに対しては何も言えなかった

彼が遠くに行ってしまった彼女らを想い何をしているのかはわからない
でも、止めさせることなどできるはずがないのだ

彼は何も話してくれなくなったが、傍にいて、見守ることが正しいと
そう信じて二人は毎日ローゼンの家に通っていた

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:19:25.95 ID:GfBJjTfU0
「ローゼーン!こんにちわーなのー」

「ローゼン。クッキーを焼いたの。少しいびつな形になってしまったけど
 味には自信が・・・・ローゼン!?」

ローゼンの指は血だらけ、真っ赤になっていた
目の下には濃くクマができ、顔色は生きている人間とは思えないほどだった

(・・・私は・・・本当に見守るだけでいいの?)
「ローゼン・・・」

「・・・・違う、これでもない・・・・」

「・・・・・・・・・・・ッ!!もう・・・・・やめて・・・」
(いいはずがないわ!)

「・・奇跡の・・・・命の結晶・・・・・ローザミスティカ?・・・・・・これは・・」

「ローゼンッ!!」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:21:47.07 ID:GfBJjTfU0
ホーリエは叫ぶと同時に後ろからローゼンを抱きしめた
細い。以前のローゼンとは違う

「もう・・・やめて・・?貴方はよくやったわ」

「・・・・・・・・」
ローゼンの目は焦点が合っていない。

ホーリエの震えが伝わってくる

「ローゼン・・」
ベリーベルの小さな手がローゼンの血まみれの手を握る

「貴方の気持ちはよくわかるわ・・・あの子達は私にとっても・・ベリーベルにとっても
 かけがえのない存在だった・・・・まるで本当の姉妹のような・・・」

「でも・・生きている私たちはどうなるの?」

「遠くへ連れて行ってくれるのではなかったの?」

「貴方までいなくなったら私たちはどうすればいいの・・・・?」
 

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:24:45.22 ID:GfBJjTfU0

「・・・・・・・・・・・・・・」
命のない空っぽの人形を眺め、ローゼンは涙を流した
(もう・・・いいかな・・・?僕・・・・・がんばったよ・・・・)

「ごめん・・・・ね・・ホーリエ・・・・ベリーベル」
枯れたと思っていた涙が、再び流れた

(ごめんね・・メイメイ、ピチカート、スィドリーム、レンピカ・・・・)


「ローゼン・・・」
ホーリエとベリーベルが安堵の表情を見せたとき

ボッと小さな木の家に火が着いた

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:26:32.51 ID:GfBJjTfU0



「軍の連中が他の軍と鉢合わせになったのはこの村のものが告げ口してきたからだと言いおった」
「密告者を差し出すか、殺すかしないとこの村がつぶされてしまうんだもの・・・
 誰かが犠牲にならなければ・・・仕方がないわ」
「まぁ・・もともと気味の悪い男だったし、かまうまい」

村人たちは岩を入り口に積み、火を放った





105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:29:39.24 ID:GfBJjTfU0



火の回りが速い
入り口は何かで押さえられているようだ

自分の力ではどうにもならない・・・・
自分が炎に焼かれるのは構わない。これは自分の業だ。
でもこの子達は関係ない・・・・
どうにか・・・・ホーリエとベリーベルを助けてあげたい


きゅっと
ローゼンの服をベリーベルがつかんだ

「大丈夫なのよ。私ローゼンと一緒なら寂しくないわ」
あどけない、幼い笑み

「ダメだ・・・ベリーベル・・絶対に死なせない・・」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:34:18.48 ID:GfBJjTfU0
「ローゼン」

ホーリエが抱きつき、首に顔をうずめる

「今までありがとう。あなたにあえてよかった」

屈託のない笑顔
ベリーベルとホーリエはこんな自分に笑いかけてくれた

(ありがとうは僕の台詞だ・・・・)

「ホーリ・・・っ」

柔らかな、小さな唇がそっと触れる


瞬間


木の家は崩れた。 

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:36:39.39 ID:GfBJjTfU0




――――・・・・まぶしい
あれは知ってる、太陽だ
ものすごく久しぶりに見た気がする



平野に伸びる一本道。その果てで黒煙があがっている


「ホーリエ、ベリーベル?
メイメイ?ピチカート、スィドリーム、レンピカ?」

目が覚めたら皆がそばにいる気がした
でも
周りにあるのは黒くこげた木だけだった

「・・・・うあ・・・・あああああああああ・・・ああ
 どうして・・・どうして僕だけ・・・・ッ!!」

ローゼンの慟哭が平野に響いた
神様は僕が・・・あの子達がそんなに嫌いなのか、と

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:39:30.91 ID:GfBJjTfU0

当てもなく握り締めたそこに
真っ黒な羽のついたドレスがあった

・・・・奇跡・・・いや、きっと、もともとこうなる運命だったのだろう
人形は4対すべて無事だったのだ


「ははは・・・は・・」
神様が続けろと言っているのか
いや、言っていようがいまいが関係ない

神などいらない
あの子達が、僕には必要だ・・・

「・・・・・皆・・・生き返らせる・・・・必ず」

ローゼンは最後にみたあの言葉を忘れてはいなかった




『ローザミスティカ』・・・

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:44:19.81 ID:GfBJjTfU0







あれから何十年たっただろう
土地を変え、名を変え、人の目を避け錬金術に没頭した

そして
ローゼンは奇跡の結晶ローザミスティカの精製に成功した

ローゼンはそれを8つに分け
それぞれの人形にそれをいれた

「メイメイ・・・ピチカート、スィドリーム、レンピカ・・・ホーリエ、ベリーベル・・
 長い間待たせてゴメンよ・・・・」

まばゆい光があたりを包む
「美しい・・・・」

そうつぶやいたとき
ローゼンの足元には大きな暗い暗い穴ぐらが広がっていた

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:48:54.51 ID:GfBJjTfU0
闇の中、光り輝く結晶から帽子をかぶったすましたウサギが現れた
そのウサギは帽子を取り、頭を下げ話し始めた

「ごきげんよう、お 父 様
 私はラプラス。貴方の真っ暗な心から生まれました
 それにしても命を作り出すとは、
 いやはやこれは神の所業か悪魔の所業か・・・」

「どちらにせよ、私とこの空間・・・『nのフィールド』と名付けましょう
 これらは貴方の手によって作られた」

「有であり無である、無であり有であるこの空間。
 時という呪縛から解き放たれた貴方の世界です!」

『・・・皆は・・・メイメイは・・・ホーリエは・・・?』

「ご心配ありません。彼女らも別の次元でちゃんと命を与えられました。」

『皆に会わせてくれ・・・・あの子たちに謝らなくては』

「トリビァル!どうかお急ぎになられぬよう・・・ゲームは始まったばかり
 ・・おっと!お時間です。お父様。貴方もどうぞ悠久の時をごゆるりと・・」

『ゲーム?何を言っている?』


ふわりと肩にとまった蝶に飲み込まれる

「くくくくく・・・ごゆっくり・・・」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:51:58.46 ID:GfBJjTfU0




目が覚めるといろいろな世界にいた

きらびやかな世界・・・・
名を聞かれてはサンジェルマンと答えた
『ローゼン』と呼んでいいのはあの子達だけだ、と

教えに縛られた世界
名を聞かれてはカリオストロと答えた
『ローゼン』と呼んでいいのはあの子達だけだ、と

教えに縛られた世界で神に楯突くのは重罪だった

牢獄の中、あの子達を思い人形を作った
何もない空間に、手遊びをするように必死になって


想いは、残ったローザミスティカとひとつになり
隻眼の人形が生まれた



「違う・・・・・・あの子達じゃない・・」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:53:28.44 ID:GfBJjTfU0



永い永い時の中
ローゼンは迷子になった
自分は何をこんなに求めているのだろう

わからなくなった



大きな風車と・・遠くにはオレンジ畑
小さな木の家の前の一本道・・・・
木の柵に座って・・・・・

美しい景色と
楽しそうに遊ぶ六つの影が
ずっとずっと
まぶたの裏で輝いてた

http://rozeen.rdy.jp/up/vipww28164.jpg

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/27(金) 23:56:42.87 ID:GfBJjTfU0


―――――――――――――……


「・・・・・・・・ここは?」

「まずは五番目のお嬢さんがお目覚めになられましたか」

「・・・ウサギ?・・・」

「う・・ゅ・・・」

「うーん・・・」

「おや、皆様お目覚めのようで・・・
 はじめまして、私はラプラスの魔」

「あなた方は・・・あなた方のお父様の命によりゲームをしてもらいます」

「うゅ・・・ゲーム?」

「そう!楽しい楽しいゲームでございます・・・くくく」


「お父様に会えるのはこの中のただ一人・・・」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:02:47.83 ID:IV+hZ5ac0
お父様・・・・?・・・わからない・・・です・・」

「ええ・・・でも・・・・会いたいのだわ・・とても」


「あ!と・・・それからこの子達を・・・・人工精霊
 『メイメイ』『ピチカート』『スィドリーム』『レンピカ』『ホーリエ』『ベリーベル』
 にございます。きっとあなた方の力となるでしょう・・・くくく」

「ゲームは次にあなた方が目覚めたときに始まります。
 それまでどうかごゆるりと・・・・・」

「『アリスゲーム』が始まるその時まで・・・・・・・・」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:03:46.01 ID:IV+hZ5ac0







――――――――――


「ふぅ!疲れたわジュン。紅茶を運んで頂戴。」

「この・・・自分で暴れておいて・・・」

「早くしなさい。」

「はいはーい」

「はいは一回と言っているでしょう!」

「・・・・・・・・・・・」

「ジュン?」

「僕さ・・・・ローゼンも迷子なんじゃないかと思うんだ」

「?」

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:06:13.40 ID:IV+hZ5ac0

「きっと残った一人だけに会う・・・だなんて嘘だよ
 ・・・ローゼンだってきっと皆に会いたいはずだ」

「・・・・」

「だから・・・このままでいいと思う。戦わないままで。
 お前らは7人でアリスなんだ」

「・・・・うるさい下僕ね。言われなくてもわかっているわ
 早く紅茶を持ってきなさい。」

「・・・・・・・・・・・・・この・・・」

「何事ですかぁーーー真紅ぅーー!」
「ちょっと翠星石っ迷惑だよ・・」
「なのーーーーーーーーーっ!」

「あぁああああああもうっ!!」

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:07:32.63 ID:IV+hZ5ac0



金糸雀には大切なものが3つある
ひとつが現ミーディアム草笛みつ
ひとつがピチカート
ひとつがハートの髪飾り

どんなことがあってもこれだけは無くさないと
誓いを立てているものだ

ハートの髪飾りをちょんっとさわり金糸雀はさけんだ
「さぁ!いくかしらーピチカート!!今日こそ潜入するかしらーっ!!」

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:09:34.28 ID:IV+hZ5ac0



病院の屋上
水銀燈は黒い翼をひらひらはためかせる
忌み嫌われる、禍々しい翼

でもこの翼はお父様のためのものなんだ、と
水銀燈は思うようにしていた

「お父様・・・」

「う~ん・・なぁんかちがうのよねぇ、しっくりこないっていうか
 ・・・・ローゼン・・?・・なんちゃってぇ。失礼よねぇ呼び捨てなんて」



「・・・ローゼン・・かぁ・・・ふふっ・・」



140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:12:23.59 ID:IV+hZ5ac0



森の中の綺麗な湖
姉妹達がキラキラと表情を変える


「貴方の人形達が色とりどりの表情をみせていますよ・・・
 まるで人間のようだ・・」

「人形・・・・」
ギィ・・ギィ・・と椅子を揺らし、つぶやく

「いったいどのお嬢さんが貴方を一番に想い、会いにくるのでしょう?
 他の姉妹達を壊して・・・・くくくく・・・」

「・・・・・あの子達に会いたい・・」

「いずれ会えますよ、誰か一人には・・」


ゆっくりと時は流れる。
人形師は待ち続ける

彼の言う究極の少女に逢える日を





143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:14:54.85 ID:IV+hZ5ac0







「ねぇ、ローゼン。貴方にとって究極の少女ってどんなもの?」

「は?」
急な質問に少し意味がわからなかった

「え・・と・・好みのタイプってことかい?ホーリエ?」

「まぁ、そういうことね。」

「ふん!きっとローゼンのことですからべラボーに理想が高いですよ。
 村一番の人気者のアリスみたいな女ですよ」

「興味あるわねぇ」

「ねぇねぇローゼンおしえてーっ」


「そうだなぁ・・・・・」

144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 00:15:29.90 ID:IV+hZ5ac0





「・・・・・ずっと一緒にいてくれるひとかなぁ」



「僕は・・・みんなと、ずっと一緒に入れたらいいなぁ



ずっとずっと・・・・・・」









           おわり

207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 10:50:25.08 ID:IV+hZ5ac0

真っ暗なnのフィールド
長いピンクの髪の少女がいた

帽子ウサギから
雪華綺晶と名づけられ、父親のことを聞かされた



雪華綺晶はからっぽだった
お父様がどんな人なのかまったくわからないし
実際自分自身スカスカで実体がなかった


209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 10:54:51.24 ID:IV+hZ5ac0

それでも、これは子の本能なのだろうか

「お父様に会いたい・・・」

「・・・・・くくく・・・それでは他の6人が邪魔ですねぇ・・・」

「・・・壊せば・・・いいのでしょう・・?」
 みんな・・・みんな・・・」


白いイバラが真っ黒な世界にゆっくりと広がっていった


雪華綺晶が真紅たちの前に現れるずっとずっと前のことである・・・


211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 11:01:14.55 ID:IV+hZ5ac0


平野の一本道
いつも笑い声が絶えないこの道に

今日はけたたましい泣き声が響いていた

「ぶええーーーーん」

「うるさいですぅ!いちいち泣くなです」

「大丈夫?ベリーベル?
 スィドリーム君が変な罠作るからベリーベルが転んだんだろ
 ベリーベルに謝りなよ」

「な・・・なんですとぉ・・」

「ばかみたぁい」

「ち・・・チビチビに謝るなんて死んでもごめんですぅ!!」

「ぶええええええん!!」


213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 11:07:00.60 ID:IV+hZ5ac0
やれやれという風にローゼンがベリーベルを抱きかかえ
スィドリームの前に座った


「・・・スィドリーム君は美しい薔薇だ」

「なっ・・・・!!こんなところで愛の告白なんて・・・
 やめるですぅ・・・・」

「違うのだわ」

「ホーリエもメイメイも、ピチカートもレンピカも
ベリーベルも皆、美しい薔薇なんだ」


「君達が持つ棘は人を傷つけたり、不幸にするためのものじゃない
 誰か、大切な人を守るためのものだ」

「これは・・・いけないことだよ?スィドリーム?」

「・・・・・はい・・・ですぅ・・」


にっこりとローゼンは笑った

214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/06/28(土) 11:09:23.16 ID:IV+hZ5ac0

「はい。じゃあ、仲直り」

「ぅゆ・・・・」

「・・・・・・・すまんかったです・・・ベリーベル」

「・・・・・・・・・・・ふっーーん!なの!!」

「・・・・・・・ッ!!このチビチビーーーーーーッ!!」



平野の一本道
小さな木の家の前
いつも通り、笑い声が響いた




引用元: 「ねぇ、ローゼン。貴方にとって究極の少女ってどんなもの?」