前回 杉下右京「10万3000冊の魔道書ですか…興味深いですねぇ」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:25:03.18 ID:c5DJAEwL0
右京「僕としたことが…ついつい自分の趣味にお金を使い過ぎてしまいました」

インデックス「うきょう」

右京「はい?」

インデックス「それだけお金があったらなにが出来た?」

右京「そうですねぇ…色々出来たでしょうねぇ」

インデックス「…………」ジーッ

右京「おやおや、何を見ているのでしょうか?」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:26:34.90 ID:c5DJAEwL0
右京「君、アイスを食べたいのですか?」

インデックス「うきょう!わたしは一言たりとも暑い、辛い、バテたなんて言ってないんだよ!」

インデックス「まして、他人のお金を使いたいと考えたこともないし」

インデックス「結論としてアイスが食べたいなんて微塵も思ってない!」

右京「つまり、暑くて辛くてバテたので僕のお金でアイスを食べたい…ということでしょうか?」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:27:48.40 ID:c5DJAEwL0
インデックス「うきょう!…ちなみに私は修行中の身だから一切の嗜好品の摂取は禁じられてるんだよ!」

右京「確かに、修道女の中には自身にそういった戒律を課する場合が多いと聞きます。止めておいた方がいいかも知れませんねぇ」

インデックス「た、確かに禁じられてはいるけれども!しかし、あくまで修行中の身なので完全なる振る舞いを見せることはまだまだ難しかったり難しくなかったり!」

右京「おやおや」

インデックス「この場合、誤って口の中にアイスが放り込まれる可能性も無きにしもあらずなんだよ、うきょう!」

右京「ええ、確かにそういった可能性はゼロではありませんねぇ。でしたら、そうならないように僕も協力しますよ」

インデックス「うきょう!」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:29:08.50 ID:c5DJAEwL0
インデックスを連れて、某有名アイス販売店を訪れた右京であったが、
生憎と店は臨時休業であった。

右京たちは仕方なく、近所のファーストフード店にて妥協する。


インデックス「シェイク♪シェイク♪」

右京「臨時休業とはついていませんでしたねぇ」

インデックス「うきょう!こっちだよ!」

???「…………」

右京「おやおや、巫女装束の女性がテーブルに突っ伏してますねぇ」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:30:14.94 ID:c5DJAEwL0
右京「もしもし…何処かお体の具合でも悪いのでしょうか?」

???「う~ん…」

右京「お気づきになられましたか?」

???「く…」

右京「何処か苦しいのでしたら、救急車をお呼びいたしましょうか?」

???「食い倒れた…」

右京「はい?」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:31:11.61 ID:c5DJAEwL0
右京「そちらにある包み紙の山から推測するに、食い倒れた…とはハンバーガーを食べ過ぎたということでよろしいでしょうか?」

???「1個100円のハンバーガー…お徳用のクーポンがたくさんあったから、取り敢えず30個程頼んでみたり」

右京「そうでしたか。30個のハンバーガーを食べたともなれば、苦しくなってしまうのも無理はありませんねぇ。何故、そんなに食べたのでしょうか?」

???「やけ食い…」

右京「やけ食い…ですか」

???「帰りの電車賃600円。全財産500円。買い過ぎ、無計画。だから…やけ食い」

右京「電車賃をどなたかにお借りすることは出来なかったのでしょうか?」

???「おぉー…それは、いい案」ジーッ

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:32:12.53 ID:c5DJAEwL0
右京「僕に期待の眼差しを向けられても困ってしまいますねぇ…。お貸ししたいのは山々なのですが、生憎と今は手持ちがもう無いんですよ」

???「100円…無理?」

右京「申し訳ございません」

???「チッ、たかが100円も貸せないだなんて」ボソッ

右京「何か仰いましたか?」

???「別に」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:33:01.74 ID:c5DJAEwL0
インデックス「ふーん。この街の巫女さんは人にお金をたかるんだね」

???「私、巫女さんではない」

右京「巫女装束を身に着けているのに、巫女ではない…興味深いですねぇ」

???「私、魔法使い」

右京「はい?」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:33:52.00 ID:c5DJAEwL0
インデックス「魔法使い~?魔法使いって何!?曖昧なこと言ってないで専門と学派と(ryを名乗るんだよ!このお馬鹿!」

???「ん?」

インデックス「大体その格好をしているなら東洋の占星術師とか名乗るくらいのホラを吹かなきゃダメなんだよ!」

???「じゃあ、それ」

インデックス「ムキー!!」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:34:36.99 ID:c5DJAEwL0
カツカツ

スーツの男「…………」

???「…………」スッ

スーツの男「…………」

???「あと100円」

スーツの男「…………」サッ

右京「おや、この方々はあなたのお知り合いなのでしょうか?」

???「塾の先生」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:36:12.14 ID:c5DJAEwL0
右京「塾の先生でしたか。塾の先生が一生徒のためにわざわざこんな場所へ…それもこんなに大勢で来るんですねぇ」

???&スーツの男「…………」テクテク

右京「あ、もう一つだけ、よろしいでしょうか?」

???「?」

右京「その塾の名前をお聞かせ願えませんでしょうか?」

???「……三沢塾」

右京「三沢塾…ですか。どうも有難うございます」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:37:36.26 ID:c5DJAEwL0
巫女装束の少女とスーツ姿の男たちが店を出てから数分後、右京たちも店を出る。


右京「彼女…不思議な方でしたねぇ」

インデックス「うきょうー!」

右京「はい、何でしょうか?」

インデックス「ねえ、見てー!ねえ!!」

右京「おや、捨て猫ですか」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:39:16.61 ID:c5DJAEwL0
捨て猫「ニャー」

右京「如何なる理由があったとしてもペットとして飼っていた動物を路上に捨てるのは関心しません。それに動物遺棄は動物愛護法27条によって犯罪行為となっていますからねぇ」

インデックス「うきょうー。ねえ…」

右京「取り敢えず保健所へ連絡し、保護して貰いましょう」ピッ

インデックス&捨て猫「!?」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:43:12.29 ID:c5DJAEwL0
捨て猫「ニャッ」バッ

インデックス「あ」

右京「おや、何処かへ行ってしまいましたねぇ」

インデックス「うきょうのせい!」スタスタ

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:45:33.13 ID:c5DJAEwL0
インデックス「ジャパニーズシャミセンは猫の皮を剥いで作ってるんでしょ?この国は猫に酷いことばかり!」

右京「三味線に猫の皮を使用していたのは大分昔の話ですねぇ。今では犬の皮を使用している場合が多いそうですよ」

インデックス「で、でも…。ん?何だろ?」

右京「どうかしましたか?」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:46:27.48 ID:c5DJAEwL0
インデックス「…近くで魔力の流れが束ねられてる。属性は土、色彩は緑、この式は…ルーン?」

右京「ルーン…ルーン文字のことであれば、ゲルマン語の表記に用いられた文字体系でスカンジナビア語やゴート語が源で『神秘』『儀』などを意味する。それがどうかしたのでしょうか?」

インデックス「誰かが魔方陣を仕掛けているっぽい!うきょうは先に帰ってて」タッタッタッ

右京「おやおや、行ってしまいましたか」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:46:57.59 ID:c5DJAEwL0
右京「…周囲の雰囲気が急に変わりましたねぇ」

???「知っている筈だよ」

右京「おや、あなたは確か…」

ステイル「人払いのルーンだよ」

右京「なるほど…以前神裂さんが使用したものと同じようなものでしょうか?」

ステイル「久し振りだねえ、杉下右京」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:47:47.67 ID:c5DJAEwL0
右京「あなたのことは神裂さんから伺いました」

ステイル「まさか、本国へ強制送還されるとは思わなかったよ」

右京「君がちゃんと事情を話していれば、そんな目に遭うことも無かったと思いますがねぇ」

ステイル「くっ!!…いちいち一言が余計なんだよ!!ぶっ殺すぞ!!」

右京「!?」

ボワッ

ピキーン

右京「…いきなり攻撃とは、やはり穏やかではありませんねぇ」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:48:24.84 ID:c5DJAEwL0
ステイル「そうだよ、その顔。僕たちの関係はこういうものだろう」

右京「君のやったことは、障害未遂。立派な犯罪ですよ」

ステイル「おお、怖いねえ。じゃあ、捕まる前に用件を言うよ。…三沢塾って進学予備校の名前は知っているかな?」

右京「三沢塾…ええ、先程そのような塾があると、とある方から伺いました」

ステイル「そこに1人の女の子が監禁されている」

右京「監禁…ですか」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:48:56.94 ID:c5DJAEwL0
ステイルは三沢塾には1人の少女が監禁されていること。
その少女は吸血殺し(ディープブラッド)という存在であること。
そして現在、その三沢塾が魔術師(正確にはチューリッヒ学派の錬金術師)に乗っ取られていることを話した。

ステイル「僕はこれから三沢塾に特攻をかけて、その吸血殺しを連れ出さないと不味い状況にある」

右京「そのことをわざわざこうして僕に話すということは、僕もそれに付き合わないといけないということでしょうか?」

ステイル「物分りがいいね。ま、拒否権は無いと思うよ。断れば、君の側にいるインデックスは回収という方向になるから」

右京「なるほど。僕はある意味では彼女の裏切りを阻止するための監視役。僕が従わなければその効果も無くなってしまいますからねぇ」

ステイル「選ぶのは君だ」スタスタ

右京「あ、一つよろしいでしょうか?」

ステイル「…何だい?」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:49:44.08 ID:c5DJAEwL0
右京「その監禁されている少女ですが…もしかして巫女装束に長い黒髪の少女ではないですか?」

ステイル「…よく分かったな。これが彼女の写真だ」

右京「拝見いたします」

ステイル「姫神秋沙という名前だそうだ」

右京「…なるほど、これで全てが繋がりました」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:52:18.77 ID:c5DJAEwL0
ステイルと分かれた右京は、一先ず自分の部屋へと戻る。
暫くして、インデックスが帰宅してきた。

【右京の部屋】

インデックス「ただいまー」

右京「おや、君。そのお腹どうしましたか?」

インデックス「うん、実は…」

捨て猫「ニャー」

右京「おやおや、連れて来てしまいましたか。困りましたねぇ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:53:10.47 ID:c5DJAEwL0
捨て猫「ニャー」バッ

インデックス「あ、スフィンクス!」

右京「仕方ありませんが、保健所へ連絡を…」ピッ

インデックス「うきょう、この服は歩く教会って言うんだよ」

右京「はい?」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:53:57.58 ID:c5DJAEwL0
インデックス「教会は迷える子羊に無償で救いの手を差し伸べるのです」

インデックス「よって、路頭に迷ったスフィンクスは教会の手で保護しました。アーメン」

右京「法律上、捨て猫は遺失物です。それを拾い、飼うことは遺失物横領罪であり、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金となってしまいますねぇ」

インデックス「…………」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:59:08.54 ID:c5DJAEwL0
インデックス「スフィンクスは教会が匿うって決めたんだよ!!」

右京「仮にここで飼うとしても、まず保健所へ預け、里親に応募するという手順を踏まなければなりません。それが規則です」

インデックス「うきょうー!」

右京「…インデックスさん。僕は飼ってはいけない、とは一言も言っていませんよ?」

インデックス「え?」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 00:59:58.95 ID:c5DJAEwL0
右京「飼うには然るべき手順が必要である…そう言っているだけです」

インデックス「…じゃあスフィンクスを飼っていいの?」

右京「ええ、手順さえちゃんと踏めば、特に反対する理由はありませんねぇ」

インデックス「…分かったよ、うきょう」

右京「分かって頂けて良かったです」

インデックス「ん?何処行くの?」

右京「…すぐに戻ります」

インデックス「いってらっしゃーい」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:02:07.23 ID:c5DJAEwL0
右京「…おや、何をしているんですか?」

ステイル「あの子の護衛に魔女狩りの王(イノケンティウス)を置いていこうと思ってね」

右京「そうですか。随分と過保護なんですねぇ」

ステイル「悪いか?」

右京「いいえ。僕も彼女を1人置いて行くのには不安がありましたので、寧ろ助かったと思っていますよ」

ステイル「これでよし…じゃあ行くぞ」

右京「ええ、行きましょうか」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:02:50.72 ID:c5DJAEwL0
【三沢塾】

右京「ここが三沢塾ですか」

ステイル「強力な結界になっている」

右京「例の錬金術師の仕業なのでしょうか?」

ステイル「そう。アウレオルス=イザード…かのパラケルススの末裔さ」

右京「パラケルスス…本名テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム。ルネサンス初期のスイスの医師で錬金術師の人物ですね」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:03:40.18 ID:c5DJAEwL0
ステイル「…錬金術師には究極的な目的が存在する」

右京「世界の全てをシミュレートする…といったところでしょうか?」

ステイル「もし、頭の中に思い描いたものを現実世界に引っ張り出せたらどうなると思う?」

右京「そうですねぇ。そんなことが可能だとしたら、恐らく僕らは手も足も出ないでしょうねぇ」

ステイル「じゃあ、ここでお留守番するかい?」

右京「そのつもりならば、最初からここへは来ていませんよ」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:06:15.73 ID:c5DJAEwL0
ガーッ

右京「…中は至って普通に見えますねぇ」

ステイル「表向きはただの進学予備校だからね」

とうとう三沢塾内部へと入った右京たち。
その時、柱にもたれかかる血塗れの甲冑を発見する。

右京「!!あれは…」

ステイル「ん?ああ、あれは君には珍しいものかも知れないね」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:11:24.25 ID:c5DJAEwL0
右京「…亡くなっているようですね」

ステイル「そりゃ僕たちは戦争している途中だからね。こういうこともある」

右京「妙ですねぇ…これだけ目立つ場所に死体があるというのに、誰一人騒いでる様子がありません」

ステイル「僕らが居るのは言わばコインの表と裏。裏の世界の事情に表の人間が気づくことは無い」

右京「なるほど。ここが強力な結界になっている…とはそういったことでしたか」

ステイル「恐らく君のその右手でもこの結界を破ることは出来ないだろうね。魔術の核を潰さない限り、この結界を破ることは出来ない。核そのものは結界の外にあるんだろうけどね」

右京「そうですか。それでは致し方ありませんねぇ」

ステイル「…どうやら、戦う理由が増えたみたいだ」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:14:34.19 ID:c5DJAEwL0
右京「…………」ピッ

ステイル「…何しているんだい?」

右京「この結界の中から外へ連絡を取ることが出来ないのか、もう一度試してみたいと思いまして」

ステイル「…好きにするといい」

ガチャ

インデックス「あ、あの…」

ピッ

右京「どうやら通じるみたいですねぇ」

ステイル「…………」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:16:55.06 ID:c5DJAEwL0
カツカツ

ステイル「しかし、科学宗教ってのは初めてだけど至って普通だね」

右京「普通、とは?」

ステイル「てっきり教祖様の写真でも飾ってるのかと思ったよ」

右京「表向きは普通の進学予備校ということですからねぇ。そうあからさまなことはしないと思いますよ」

生徒たち「…………」

右京「おや?」

ステイル「不味いかな…」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:22:54.21 ID:c5DJAEwL0
右京「本来、干渉し得ない彼らが僕たちに気が付いている。これは明らかにおかしいですねぇ」

生徒A「熾天の翼は輝く光…」

生徒B「輝く光は罪を暴く純白…」

ステイル「自動の警報か」

右京「ええ、ここは速やかにこの場を離れた方がよろしいかと」

ダッ

ステイル「あ、おい、ちょっと待て!」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:23:40.43 ID:c5DJAEwL0
ステイル「おい、逃げんな!」

右京「…彼らは恐らく、例の錬金術師に操られていると考えられます。そして、彼らは何やら術式のような言葉を呟いていました。もし僕の考えが正しければ、彼ら全員に何かしらの魔法を使わせようとしたのでしょう」

ステイル「驚いたな…君のご推察通りだよ。あれはグレゴリオの聖歌隊。レプリカだけどね」

右京「彼ら一人一人から何か光のようなものが発せられているのを確認出来ました。もしその一つ一つが襲い掛かってくるのでしたら、とても僕の右手だけでは防ぎ切れはしないでしょうねぇ」

ステイル「グレゴリオの聖歌隊は大勢の人間を同時に操らないと使用できない。そのシンクロの鍵さえ破壊出来れば…」

右京「取り敢えず、二手に別れましょう」

ステイル「分かった」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:29:20.57 ID:c5DJAEwL0
ステイルと別れた右京の前に1人の女性とが立ちはだかる。


右京「おや?」

生徒C「罪を罰するは炎(ry」

ピシッ

右京「!!」

生徒C「暴力は死の(ry」

右京「君、それ以上はお止めなさい!!」

生徒C「!!」バタン

右京「危ない!!」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:30:17.34 ID:c5DJAEwL0
力尽き、倒れる少女を抱える右京の周りを無数の光球が囲む。
次の瞬間、右京へ襲い掛かると思われた光球は次々と地面へ落ち、消えて行った。

不思議に思う右京の背後に一人の少女が立っていた。

右京「君は…」

???「…………」

右京「君は…姫神秋沙さんですね?」

姫神「…………」コクッ

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:30:57.54 ID:c5DJAEwL0
ステイル「…それにしても、あの錬金術師も歪んだものだ」

一方、ステイルはシンクロの鍵を発見し、その排除を行っていた。

ステイル「血路とは他人ではなく、己を切り開いて作るものだろうに」

???「自然…グレゴリオルレプリカを使えば何処に潜んでいようが核の下へおびき寄せることが出来ると思っていた」

???「当然…侵入者は2人だった筈だが?」

???「厳然…貴様の使い魔はグレゴリオルレプリカに飲まれたか」

ステイル「…生憎とあれは相当しぶといみたいでね。で、僕を招き寄せるとはどういうつもりかな?錬金術師アウレオルス=イザード」

アウレオルス「フッ…」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:32:22.05 ID:c5DJAEwL0
姫神「…この子は手当てすれば平気。皮膚を裂かれ、毛細血管が傷付いただけ。動脈を切られたらこれでは済まない」

右京「随分とお詳しいみたいですが…何か医療の心得でも?」

姫神「血の流れについてなら、私は人より詳しい」

右京「そうでしたか。取り敢えず彼女には応急処置を施しましたが、なるべく早く医者に見せた方がよろしいですねぇ」

姫神「それはいい」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:33:53.11 ID:c5DJAEwL0
右京「一つ、伺ってもよろしいでしょうか?」

姫神「何?」

右京「姫神さん。あなた、実は監禁などされていないのでありませんか?」

姫神「…どうしてそう思うの?」

右京「ファーストフードでのことが僕には引っ掛かってました…。もしあなたが監禁されていて、それでここから逃げ出したにしては随分と落ち着いていました」

右京「そして、あなたを連れ戻しに来た連中に対しても抵抗や脅える素振りなどなく、当たり前のように接し、更には彼らと共に行ってしまいました」

右京「つまり、あなたにとってここへ戻るということは苦では無かった。ならば、監禁ではなく、自分の意思でここにいる可能性が高い。僕はそう思いました」

姫神「…………」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:36:49.48 ID:c5DJAEwL0
姫神「…私には目的がある」

右京「目的…ですか」

姫神「ここでないと出来ない目的…。違う、錬金術師がいなければ不可能な目的というのが正解」

右京「頭の中に思い描いたものを現実世界に引っ張り出す…」

姫神「…………」

右京「姫神さん。あなたがここへ留まる理由とは、吸血殺しが関係しているのではないでしょうか?」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:40:46.15 ID:c5DJAEwL0
姫神「吸血鬼…どんな生き物だか知ってる?」

右京「生憎と本物にお目に掛かったことは無いですねぇ」

姫神「何も変わらない…私たちと」

姫神「誰かの為に笑い、行動出来る…そんな人たち」

姫神「でも、私の血は甘い匂いでそんな人たちを招き寄せ、例外なく殺し尽くしてしまう」

右京「…………」

姫神「学園都市に来ても、この血を取り除く方法は無かった。もう私は誰も殺したくない。誰かを殺すくらいなら、私は自分を殺してみせると決めたから」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:44:45.83 ID:c5DJAEwL0
右京「殺したくないのであれば、何故あなたは外出などしたのでしょうか?」

姫神「簡単。私が結界の中にいると吸血鬼を招くことが出来ないから。アウレオルスは吸血鬼を求めている」

右京「…つまり、こういうことでしょうか?アウレオルスという男に吸血鬼殺しを何とかして貰う代わりに、あなた自らが囮となって吸血鬼を招き寄せている」

姫神「アウレオルスは言った。吸血鬼を傷付けないと。救いたい人がいると。その為に吸血鬼の力が必要だと。そう、約束した」

右京「果たしてそうでしょうか?」

姫神「え?」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:47:14.04 ID:c5DJAEwL0
右京「アウレオルスは既にそこにいる罪無き少女を傷付けています。そんな彼の言うことが信用に値するとは僕にはとても思えません」

姫神「…………」

コツコツ

アウレオルス「必然…」

右京「…あなたがアウレオルス=イザードですか?」

アウレオルス「当然…如何にも」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 01:52:43.29 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「完全…仔細ない。すぐそちらへ向かおう」

ヒュン

右京「おやおや」

アウレオルス「当然…疑問は湧いて出るだろうが答える義務は無し」

右京「なるほど、それが“思い描いたことを現実に引っ張り出す”その答えですか」

アウレオルス「!?」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:02:24.40 ID:c5DJAEwL0
右京「『すぐそちらへ向かう』あなたはそう言った直後に本当にこちらへやって来ました。ステイルさんから頂いた情報と合わせれば、今の現象がその力によるものだというのは想像に難くありません」

アウレオルス(な、何だこいつは?一目見ただけで力に気付くだと?)

アウレオルス(お、落ち着け。1体1ならば私の方が有利…!)

アウレオルス「…私の力に気付いたようだが、それならば分かるだろう?お前では私に敵わぬことが」

右京「果たしてそうでしょうか?」

アウレオルス「!?」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:06:36.11 ID:c5DJAEwL0
右京「もし仮にあなたが本当に何でも出来るのであれば、彼女を利用して吸血鬼を捕らえる必要はありません。自ら願えばいいのですから」

右京「しかし、あなたはそれをしなかった。いや、『出来なかった』」

アウレオルス「な!?」

右京「ここからは僕の推測なのですが、恐らくその力は自分が少しでも疑念を抱くと効力が大きく損なわれるのでは無いでしょうか?」

右京「あなたは吸血鬼という存在に疑念を抱いていた…だから、吸血鬼をその力で呼び寄せることが出来なかった」

右京「つまり、あなたのその力は何でも出来るように思えて、実はとても扱いづらい代物なのですよ」

アウレオルス「…………」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:33:36.57 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「くっ…」サッ

右京「鍼ですか…恐らくそれを用いることで不安を消し、思考を固めてるのでしょうねぇ」

アウレオルス「お、お前は一体何なんだ!?ことごとくこちらを看破して!!」

右京「僕はただの『人』ですよ。それ以上でも、それ以下でもありません」

アウレオルス「お、お、おのれ!!」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:38:15.95 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「ち、窒息しろ!!」

右京「!!」

突如、息の出来なくなった右京は思わず喉に右手をやった。

ピキーン

アウレオルス「な!?」

右京「…どうやら、僕の右手はあなたの力にも通用するみたいですよ?」

アウレオルス「不完全!ま、まさか、そんな!?」

右京「あなたは今、疑念を抱いています。本当に僕を殺せるのか?」

アウレオルス「ひ、ひぃ!!」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:43:01.35 ID:c5DJAEwL0
右京「アウレオルス=イザード。今すぐこんなことは止め、彼女を解放すべきです」

アウレオルス「唖然…!!み、認めない。こんなの認めないぞ!!」

右京「お認めなさあああああい!!」プルプル

アウレオルス「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

ガクッ

右京「…あなたの負けです、アウレオルス=イザード」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:51:29.57 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「茫然…何故、私はお前に負けたのだ?黄金練成(アルス=マグナ) を得た、この私が…」

右京「姫神さんからあなたが吸血鬼を集めているという話を聞いた時、僕はあなたには付け込む隙があると確信しました」

アウレオルス「…………」

右京「吸血鬼の力を望んでいるのに、その吸血鬼の存在を信じることが出来ない。信じ抜くことの出来ないあなたの心の弱さを現していると思いませんか?」

姫神「アウレオルス…」

右京「…良ければお聞かせ下さい。あなたは何故、吸血鬼を集めていたのか?」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 02:57:24.09 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「依然…救いたい人間がいた」

右京「それはどなたのことでしょうか?」

アウレオルス「10万3000冊の魔道書…禁書目録」

右京「インデックスさんのことでしたか。つまり、あなたは…」

アウレオルス「当然…かつてその子の側にいた」

右京「彼女を救うためにやっていたのですね?」

アウレオルス「…………」コクッ

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:06:59.11 ID:c5DJAEwL0
右京「もしや、あなたは彼女の記憶を吸血鬼の脳へ移そうと考えていたのではありませんか?」

アウレオルス「必然。永遠に生きる吸血鬼であれば、10万3000冊の魔道書を記憶し続けることは容易」

右京「…………」

アウレオルス「必然。人の身では10万3000冊の魔道書を記憶したまま生き続ければ、1年ごとの記憶消去は必定。それならば、人ならざる者に…」

右京「そもそも人の脳は構造上、記憶を消去しなければ生き続けられないなんてことはありません」

アウレオルス「え?」

右京「あなたも神裂さんたちと同様、誤った知識に惑わされた被害者ということでしょうねぇ」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:12:08.52 ID:c5DJAEwL0
右京「もしや、あなたは記憶の移植に失敗した場合はインデックスさん自身を吸血鬼にしようと考えていたのではありませんか?」

アウレオルス「当然!それが彼女のためだと信じて…」

右京「あなたは愚かです」

アウレオルス「!?」

右京「あなたは自らの手で愛する者を失ってしまうところだったんですよ?」

アウレオルス「ち、違う!」

右京「違いません。彼女が…インデックスさんがそんなことを少しでも望みましたか?」

アウレオルス「そ、それは…」

右京「あなたはあなたの願望を押し付けただけに過ぎません。彼女の気持ちなど、少しも考えていないのではありませんか?」

アウレオルス「…………」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:16:42.43 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「彼女は…今?」

右京「…ご安心下さい。彼女は…インデックスさんは僕が救いました」

アウレオルス「!?」

右京「彼女を蝕む魔術を消し、今はもう1年ごとに記憶を失う必要が無くなっています」

アウレオルス「そう…か」

右京「あなたは取り返しのつかないことをするところでした」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:23:26.89 ID:c5DJAEwL0
アウレオルス「憮然…私は今まで一体何を…」

右京「あなたはこの塾に通う罪無き生徒たちを操り、傷まで負わせました。そして、1階の死体…あなたのやったことは決して許されることではありません」

アウレオルス「…………」

右京「あなたはまず、自分が犯した罪を反省し、そして償わなければなりません。全てはそれからです」

アウレオルス「…………」コクッ

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:27:29.16 ID:c5DJAEwL0
右京に完全に屈服したアウレオルスは本国へと送還されることになった。
その後の彼の行方を知るものはいない。

そして…。


【花の里】

幸子「あらあら、今回も大変だったんですね杉下さん」

インデックス「ぶー、何か蚊帳の外だったんだよ」

右京「良いではありませんか。あなたの身に危険が及ばなくて」

インデックス「いきなり電話してきて、すぐに切るし…本当に勝手なんだよ!ねー、スフィンクス」

スフィンクス「ニャー」

右京「おやおや、連れて来てしまいましたか、すみませんねぇ、幸子さん」

幸子「いえいえ、いいんですよ。他ならぬ杉下さんですから」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:29:57.91 ID:c5DJAEwL0
インデックス「ちゃんと、『さとおや』に応募して、スフィンクスを引き取ったんだよ!だから、もう文句は言わないよね?」

右京「ええ、言いませんよ」

インデックス「良かったね、スフィンクス!」

スフィンクス「ニャー」

幸子「それで、その姫神さんとはその後?」

右京「ええ、一度だけお会いいたしました」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:34:11.85 ID:c5DJAEwL0
【回想】

姫神「ねえ…」

右京「はい、何でしょうか?」

姫神「どうして私を?どうして、私の為に?たった一度、ファーストフードの店で会っただけなのに…」

右京「気になったら、とことん調べないと気が済まない性質でして…僕の悪い癖。それに…」

姫神「それに?」

右京「人を助けるのに、理由など必要ないじゃありませんか」

姫神「!」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:37:06.34 ID:c5DJAEwL0
右京「彼女…教会で預かることになったそうですねぇ」

インデックス「うん、それがあいさにとって一番だと思うんだよ」

右京「僕もそう思いますよ。幸子さん、そろそろお茶漬けを」

幸子「わざびたっぷりですね?」

右京「はい」

幸子「待ってて下さいね」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:40:55.53 ID:c5DJAEwL0
インデックス「ねー、うきょう。その『わさび』って何?」

右京「君にはちょっと早いかも知れませんねぇ」

インデックス「む!子供扱いしないで欲しいんだよ!」

右京「おや?子供扱いはしないで欲しいのですか。この後、あのアイスの店に立ち寄ろうと思ったのですが、それはよしておきましょうか」

インデックス「!!…で、でも、私は修行中の身。つまり、ある意味では子供と言って差し支え無いんだよ」

右京「そう言えば、修行中でしたねぇ。やはり止めておきましょうか」

インデックス「ム~~~~、うきょうは意地悪なんだよ!!」

右京「おやおや」

幸子「あらあら」

インデックス「ムキーーーーー!!」




108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15(金) 03:43:44.08 ID:c5DJAEwL0
【おまけ】

ステイル「…僕は一体、何をしようとしていたんだろう?」

ポツン

ステイル「何故、僕は公園でブランコに乗っているんだろう?」

アンチスキルI「不審人物の情報はこちらですか?」

住人「はい!」

アンチスキルS「先輩、あいつこの間の奴ですよ!!」

アンチスキルM「また来やがったのか」

アンチスキルI「こりねえ奴だ。おい、しょっぴくぞ!!」

ステイル「僕は一体…」




引用元: 杉下右京「三沢塾…ですか」