2: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:16:08.19 ID:T1fOhCsM
澁谷家、夜――

ありあ「お姉ちゃんさあ、余計なお世話を承知で言うけど、可可さんのことちゃんと褒めてる?」

かのん「えっ?」

ありあ「可可さんはお姉ちゃんのことすっごい褒めてくれるけど、お姉ちゃんはちゃんとお返ししてるのかってこと」

かのん「ええっと、それは…」

3: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:17:04.50 ID:h9NJeBvP
ありあ「口にしてないけど思ってる、はダメだからね」

かのん「ダメなの!?」

ありあ「当たり前じゃん!どんなに心の中で思っていても、ちゃんと言葉にしないと伝わらないよ。自分だけもらってばっかりで、それでいいの?」

かのん「あ…」

4: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:18:06.58 ID:XFjWrX+B
……………………………………

かのん『私の歌を大好きって言ってくれる人がいて、一緒に歌いたいって言ってくれてる人がいて…なのに、本当にいいの?』

かのん『私、歌が好きだ!』

……………………………………

6: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:19:08.13 ID:BhCXQaF2
かのん「…そっか、そうだよね。大事なこと、だよね」

ありあ「わかってくれた?」

かのん「うん、私、やってみる!」

ありあ「可可さん、きっと喜ぶよ!」

7: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:23:36.93 ID:2c3TDZg4
……………………………………

翌朝――

かのん「可可ちゃーん!」

可可「あっ、かのん!」

かのん「おはよう!」

可可「はい、おはようございマス!」

かのん(可可ちゃん、今日も元気いっぱいだ。ううっ、ちゃんと言えるかな)

8: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:24:55.22 ID:fE/Z6Zu1
可可「かのんは今日もキラキラしてますね!」

かのん「あははっ、なにそれ」

可可「笑った顔がとっても素敵で、可愛らしいということデス!」

かのん(うぐっ、タイミングを探るつもりが、先を越されちゃった!?)

9: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:26:03.57 ID:lpIfFXcy
可可「本当のことなのですよ?かのんと一緒だと、可可、毎日が楽しいデス!」

かのん(さらに追撃まで!さすが可可ちゃん、照れや屈託が全くない…私も迷ってなんていられない!)

可可「という訳で、今日も仲良く元気よく行きましょう!」

かのん(伝えるんだ…ありのまま、今の私の気持ちを!)

10: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:28:05.66 ID:8XpkCBI9
かのん「く、可可ちゃんっ!」

可可「はい?」

かのん「実はね、その…伝えたいことがあるんだ!」

可可「可可に、ですか?」

11: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:29:10.97 ID:D4fdppJV
かのん「うん!私ね、可可ちゃんのことが大好きだよ!」

可可「…ふぇっ!?」

かのん(やった、ちゃんと言えた!)

可可「えっ、ええっ…!?」

12: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:30:59.33 ID:4/ROmA8s
かのん(あれ、思ったより反応薄い?喜んでくれてる感じじゃないし、むしろ戸惑っているような)

可可(大好きって…かのんが、かのんが、可可のことを…!?)

かのん(私が言い慣れないせいで、うまく伝わらなかったのかな。何度も練習してきたのに…)

可可(いや、いやいや。告白なんて、いくらなんでも突然過ぎます。登校中ですし、きっと可可の聞き間違えか勘違いで…と、とにかくなんて言ったのか、確かめなければ)

13: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:31:42.17 ID:4/ROmA8s
可可「か、かのん」

かのん「うん?」

可可「すみません、さっき言ったこと、もう一度言ってもらえますか?可可、よく聞き取れなくて」

かのん(あ、やっぱり聞こえてなかったんだ。次はもっとはっきり、大きな声で…!)

14: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:32:49.83 ID:4/ROmA8s
可可「!?」

かのん「着こなし上手だし、すごくお洒落さんだよね。制服もよく似合ってて、可愛いよ!」

可可「~っ!?!?」

かのん「あ、あとね。可可ちゃんは私の歌が好きだって言ってくれるけど、私も可可ちゃん歌ってるの、すごく好きなんだ!

15: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:33:45.22 ID:XlD7A/WC
可可「!!」

かのん「透き通った綺麗な歌声で、ステージ上でもひときわ輝いてる。一緒に歌ってると一番側で聴けるから、私だけの特等席だなー、なんて思ってるんだ!」

可可「はわ、はわわわわ…!」

かのん「なんて、普段思ってることばかりだけど、改めて言葉にするとちょっと恥ずかしいね、えへへっ」

16: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:34:55.20 ID:NTfil+Ny
可可「普段から、普段から可可のことをそんな風に…!」

かのん「うん!いつだってすごいなって思ってる。可可ちゃんの決意と行動力と笑顔に、私は支えてもらってるんだ!」

可可「!」

かのん「だからさ、これからもずっと一緒によろしくね!」

可可「ず、ずっと一緒…あぅ…!」

17: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:36:04.33 ID:/bTpQM+p
かのん(思い返せば、可可ちゃんはいつももっと沢山の言葉を、私にかけてくれていたんだよね。これを機に、私ももっとお返ししなきゃだ!)

可可(た、大変なことになりました、どうしましょう…)

かのん(そんな風に思える自分になれたのも、可可ちゃんが私の手を引いて、新しい始まりを教えてくれたからなんだから!)

可可(か、かのんに、告白されてしまいマシタ…!)

18: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:36:52.96 ID:/bTpQM+p
……………………………………

練習後――

かのん「今日はみんな、それぞれ予定があるんだっけ?」

可可「そ、そうなのデス。やむを得ず、致し方なく、のっぴきならない理由で!」

すみれ「右に同じよ」

恋「し、下の如く!」

千砂都「上も然り!」

19: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:37:41.23 ID:/bTpQM+p
かのん「そっか。それじゃ、またね!ういっすー!」

チクレス「ういっすー!」

タッタッタ…

千砂都「…行ったね」

20: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:39:04.76 ID:3QteJwoW
可可「うあぁぁ~…」

恋「だ、大丈夫ですか?」

可可「どうにもこうにも、気が休まりませんデシタぁ…」

すみれ「まあ、あれだけ熱烈アプローチされたらね」

21: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:39:59.87 ID:J6i8Kxcc
……………………………………

かのん『可可ちゃんの字って綺麗だよね。それに、書くのも話すのもどんどん上手くなってるよ!』

かのん『はい、あーん。美味しい?よかったぁ、えへへっ、いつもお裾分けしてくれるお礼だよ!』

かのん『写真撮ろっか!二人で一緒に!ほらほら、もっと近くに寄らなきゃ収まらないよ』

かのん『今のダンス良かったね!いつも苦手にしてたパートも最高に決まってた!』

かのん『可可ちゃん、可可ちゃんっ!』

……………………………………

22: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:41:11.46 ID:OlCfw3kF
千砂都「文字どおりの猛攻撃、だったよね」

すみれ「ずっとかのんのターン。可可はもじもじさせられっぱなしで、なかなか珍しい光景だったわ。明日は雪でも降るのかしら」

可可「うう…」

すみれ「…ちょっと。言い返してこないと調子狂うじゃない」

23: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:41:53.24 ID:Yj0Hi8Qx
千砂都「まあまあ。只事じゃないってことだけは確かだね」

恋「可可さん、かのんさんと何かあったのですか?」

可可「じ、実は――」

24: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:42:45.67 ID:DLEYqDwD
――――――――

恋「こ、告白!?」

可可「はい…朝に会った時、可可のことが大好きって言ってくれて…」

千砂都「わあ、勝負に出たね、かのんちゃん!」

すみれ「なるほど…可可」

25: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:44:05.41 ID:bogtv6+V
可可「…?」

すみれ「さっきは茶化したりなんかして、ごめん」

可可「や、やめてクダサイ、調子が狂いマス…うう~、思い出したら顔から火が出てしまいそうデス…」

千砂都「こんなに照れ照れな可可ちゃんを見るの、初めてだね」

26: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:44:53.45 ID:7RfQpoZc
恋「すみれさん、すみれさん」

すみれ「ん?」

恋「その、告白とかって、登校中にするものなのですか…?」

すみれ「私に聞かないでよ、人それぞれでしょ。それで、可可はなんて答えたの?」

27: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:46:54.38 ID:7Cxpk6/W
可可「えっ?」

すみれ「返事よ、告白の返事」

可可「いや、そ、その」

千砂都「もしかして、してないの?」

28: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:48:12.29 ID:1NK3CiVV
可可「だ、だって、あまりに急なことで…可可、びっくりしすぎて、かのんに何も…」

恋「可可さん…」

可可「どうしたら、可可は一体どうしたら…」

すみれ「…悩むなと言うのも無責任かもしれないけど、そんなに難しいことかしら」

29: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:50:14.64 ID:Q4ozmhrn
可可「え…」

すみれ「かのんは真正面から気持ちを伝えてくれたのでしょ。可可はその時どう思ったの?向かい合って何を感じたの?」

可可「可可がどう思ったか、何を感じたか…?」

すみれ「頭で考えすぎるのではなく、ありのまま、自分自身に素直な気持ちでいることが大事なんじゃない?いつもの可可らしく、そして今日のかのんがそうしてくれたように」

30: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:51:38.33 ID:QHEVgzFu
可可「ありのまま、素直に…」

すみれ「そうすれば、自ずと道は決まるはずよ」

可可「ありのままの素直な気持ち…かのんみたいに…可可は、可可は!」

千砂都「いい顔してる、心は決まったみたいだね」

31: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:53:37.20 ID:x0/0ucUD
可可「かのんに会いに行きます。会って、気持ちの全てをぶつけてきます」

恋「頑張ってください。私たちみんな、可可さんを応援しています」

千砂都「ファイト!」

すみれ「その意気よ、頑張りなさい」

可可「みんな、ありがとう!行ってきます!」

タッタッタ…

32: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:54:39.54 ID:rzOQLNSq
すみれ「ふぅ。やれやれ、手がかかることで」

千砂都「もしかして、焚きつけちゃったかな?」

すみれ「ちょっとヒントをあげただけよ。可可が自分の心で答えを見つけ出したことに、変わりはないわ」

千砂都「だね。後は信じて見守るだけ、か」

33: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:55:50.85 ID:9BOygS4i
恋「ですが、きっと一筋縄ではいきませんよ?かのんさんと可可さん、揃いも揃って朴念仁なのですから」

千砂都「あははっ。言うねぇ、恋ちゃんも」

すみれ「ふふっ。それじゃ、私たちは朗報を待つとしましょうか。どこかでお茶でも飲みながら、ね」

千砂都「さんせーい!」恋「はいっ!」

34: ◆2XUM89JJWNIX (もみじ饅頭) 2022/02/17(木) 20:58:23.84 ID:by8a1oUy
……………………………………

かのん(ど、どうしよう、どうしよう)

朱に染まる頬と潤んだ瞳。唇は僅かに震えている。決意と切なさが入り混じったような、初めて見る可可ちゃんの表情――

可可「もう一度、言います」

鼓動、耳の熱さ、眼差し。

可可「可可は…私は!かのんのことが、大好きですっ!」

かのん(私、く、可可ちゃんに、告白されちゃった…!)



終わり

引用元: 可可「か、かのんに、告白されてしまいマシタ…!」