1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:24:19.25 ID:Jfub/D0B0
千秋「過度な期待はしないでください」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:26:22.07 ID:Jfub/D0B0
夏奈「はむっ」モグモグ

千秋「……」

夏奈「あははは」

千秋「……」

夏奈「ん? なんだい、チアキ? 心なしかいつもより悲しい目をしているよ」

千秋「いや。いいから自然体でいてくれ」

夏奈「そう? わかった」

千秋「……」

夏奈「あははは。む? お菓子がなくなったな。チアキ、新しいの取ってくれない?」

千秋「はい、どうぞ」

夏奈「ありがとう」

千秋「……」

夏奈「あははは」モグモグ

千秋「なぁ、カナ。自分の姿について疑問を抱いたことはないか?」

夏奈「あははは……。え?」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:27:57.30 ID:Jfub/D0B0
千秋「どうだ? 疑問を持ったことはあるか?」

夏奈「どーいうことだ? 私は今のままで結構満足してるけど」

千秋「そうか。なら、いいんだが」

夏奈「そう?」

千秋「学校から帰ってくるなり寝転がり、スナック菓子を食べながら漫画読む自分に満足しているのなら、私はもう何も言わないよ。好きにするといい」

夏奈「心なしか哀れんでない?」

千秋「ないよ。悲しんでるだけだよ」

夏奈「問題文の中に悲しくなるような物語でも書かれていたのかい?」

千秋「ないよ。ただ哀れな姉の将来が悲しい物語になると思うとね、私の目も自然と潤んでしまうんだ」

夏奈「ケンカしたいなら、そういいなよ。喜んで買うから」

千秋「売ってないよ。さぁ、カナ。誰が見ても駄目な生活に戻るといい」

夏奈「黙って聞いてればなんだ、この野郎!!」ガバッ

千秋「……」ゴンッ

夏奈「あんっ」

千秋「スナック菓子によって香ばしくなった手で触れようとするな」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:29:56.68 ID:Jfub/D0B0
夏奈「なんだよぉー!? なにするんだぁー!! 文句があるならはっきり言いなさいよ!!」

千秋「言ってもいいのか? かなりマイルドにしているんだけど」

夏奈「じゃあ、言うな」

千秋「わかった」

夏奈「で、チアキは私をどうしたいわけだ?」

千秋「どうしたいというのはないな。ただ、お前には立派になってほしいだけなんだ」

夏奈「私は既に十分立派だと思うが」

千秋「どの辺りが?」

夏奈「いや……顔?」

千秋「ふんっ」ドガッ

夏奈「あんっ。――ふじおかを投げるなよ」

千秋「顔ってお前、確かにいいけどさ」

夏奈「おい。真面目に褒めるなよ。なんか言った私が恥ずかしいだろ」

千秋「いや、カナはその辺りを歩いている女子中学生よりは可愛いよ。ティーン雑誌の読者モデルになっていてもいいほどに可愛いと思うよ」

夏奈「もうやめろってばぁ!! 私がわるかったよぉ!!」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:31:46.97 ID:Jfub/D0B0
千秋「何を恥ずかしがるところがある。寧ろ、カナの自慢できる唯一のポイントじゃないか。もっと無い胸を張ったほうがいいぞー」

夏奈「チアキ、ケンカしたいだけ?」

千秋「そうじゃない。カナにはもっときちんと生きて欲しいんだ。私の姉として」

夏奈「まるで今の私が外に出せないほどダメな姉みたいだね」

千秋「はっきりいうとそうなる」

夏奈「マイルドはどうなった!?」

千秋「お前もすぐにハルカ姉さまと同じ高校になる。高校生になればお前は……まぁ、そのまま何もせずに――」

夏奈「お前!! いい加減にしろぉ!! なんでチアキの中で私は何もしてない奴になってるんだぁー!!」

千秋「なら訊くが、将来の夢とかあるのか?」

夏奈「金持ち」

千秋「それは夢じゃないもの。願望だもの」

夏奈「そんなのお前にだってないだろ?」

千秋「あるぞ。いい中学に行くこと」

夏奈「叶うといいね」

千秋「ありがとう」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:33:57.13 ID:Jfub/D0B0
夏奈「だが、確かに将来の夢は重要かもしれないな。今まで軽視していたが」

千秋「そうでしょう、そうでしょう」

夏奈「うーん……。そういえば、小学校の卒業アルバムの後ろのほうに将来の夢をテーマにした作文が掲載されていたはずだ」

千秋「2年前ぐらいのことを想い出せないのか」

夏奈「ちょっと探してこよう」

千秋「……」

夏奈「――チアキ!!」

千秋「見つけたか」

夏奈「懐かしい漫画が出てきた!!」

千秋「真面目にやれよ」ドガッ

夏奈「あんっ。だって、見つけたから……」

千秋「お前は本当にダメな奴だな。ハルカ姉さまの爪の垢でも煎じて飲めばいい」

夏奈「お腹壊すぞ」

千秋「真面目に答えるなよ」

夏奈「わかったよ。探してくる……」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:35:47.58 ID:Jfub/D0B0
千秋「……」

夏奈「チアキ様!! チアキ様!!」

千秋「なんじゃ、騒々しい。今度はどんな漫画が見つかったんだ?」

夏奈「チアキの作文が出てきた」

千秋「ぁえ? 何故だ?」

夏奈「これはチアキが小学校1年生ぐらいのときに書いた作文だな。私が書いた覚えはないから」

千秋「なんだと?」

夏奈「将来の夢について赤裸々に語られている」

千秋「まて。私に見せろ」

夏奈「えーと……。何々……魔法少女になり――」

千秋「よむなよーぅ!!!」ゴンッ

夏奈「いたっ」

千秋「なんだよ!! 私はそんな幼稚な夢を語った覚えはないぞ!!」

夏奈「でも、チアキが幼稚なときのやつだから」

千秋「だまれっ!!」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:37:41.91 ID:Jfub/D0B0
夏奈「いいじゃないか、チアキ。中々、可愛いぞ」

千秋「お前の夢はどうなったんだ。私の叶わなかった夢はどうでもいいでしょ」

夏奈「何故、そんなことをいう? まだわからないだろ。チアキ、夢を諦めるな!!」

千秋「私は現実を知っている。もう何も言うな」

夏奈「今で言うならプリキュアだな!」

千秋「言うなって言ってるだろー!!」

夏奈「さぁ、チアキ!! 日曜日は早起きだ!!」

千秋「もうそんなのみてないよ」

夏奈「夢のない奴だなぁ」

千秋「いや。もう将来の夢の方向性がズレてきてるぞ」

夏奈「勇気りんりん、直球勝負!! キュアマーチっ!! さあ、チアキ!! ご一緒に!! スマイルプリキュア!!」

千秋「いや、知らないから。やらないから」

夏奈「そうだ。これをハルカに見せてみよう。きっと喜ぶぞ」

千秋「何を考えている!! やめろぉ!! バカ野郎!!!」

夏奈「ハルカはまだかなぁー?」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:40:04.39 ID:Jfub/D0B0
千秋「返せ!! 返せー!!」

夏奈「将来の夢は重要だっていっただろー?」

千秋「その夢は重要じゃないよ!! ゴミ箱行きだよ!!」

夏奈「だが、可愛い妹が切実に願ったことだ。無碍にはできん!」

千秋「無碍にしろよー!!」

春香「ただいまー」

夏奈「おー!! ハルカぁー!!」テテテッ

千秋「あー!! まて、こらー!!」

春香「え?」

夏奈「おかえりー!!」ギュッ

春香「カ、カナ? どうしたの?」

夏奈「ハルカ、これ読んでみてよ」

春香「え?」

千秋「あー!! ハルカ姉さまぁ!! それは読まないでください!!」

春香「魔法少女になりたい……?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:41:45.53 ID:Jfub/D0B0
千秋「うわぁー!!!」

春香「わぁ、懐かしい。カナの作文じゃない」

夏奈「え?」

千秋「え?」

春香「そーそー。カナってばアニメを見ては「私もいつか魔法使いたいっ!」って言ってたんだよね」

夏奈「ハ、ハルカ……。それ、チアキのでしょ? 私、そんなの書いた覚えないんだけど……」

春香「ううん。これはカナのよ」

夏奈「……」

春香「昔はよくカナに付き合わされてたっけ。カナの考えた魔法とかを使って魔法少女ごっこをよくしてたよね」

夏奈「あ、あの……ハルカ……もう……」

春香「私は確か、電気を使う中学生の役だったのよね。びりびりーってよく言わされてたなぁ」

夏奈「あぁ……」

千秋「キュアマーチっ」

夏奈「やめてよぉ!!!」


おしまい。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:43:52.02 ID:Jfub/D0B0
春香「カナ、またトイレの電気つけっぱなしにしてたでしょ?」

夏奈「え? そうだっけ?」

春香「電気代もバカにならないんだから、きちんと消しておいてね」

夏奈「はぁーい」

千秋「トイレの電気もお前のようにバカ野郎になれたらいいのになぁ」

夏奈「電気の分際で私になろうとはおこがましいね」

千秋「まぁ、人の役に立つほうは電気だがな」

夏奈「なんだと!?」

千秋「いや、どう考えてもそうだろう?」

夏奈「……そうだな」

千秋「素直だな」

春香「お願いよ、カナ?」

夏奈「分かってるってばぁ」

春香「今月もギリギリなんだからね」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:45:10.44 ID:Jfub/D0B0
夏奈「でも、ハルカだって電気をつけたまま寝てるときあるじゃないか。リビングとかで」

春香「リビングは別にいいでしょ。みんながいるんだし」

夏奈「いや、結構あるよ。私とチアキがいないときとか」

春香「そう?」

夏奈「テレビもつけっぱなし、電気もつけっぱなし、ついでにこたつもつけっぱなし。電気代は上がりっぱなしだ」

春香「うぅ……」

夏奈「ほら、ハルカも南家のエンゲル係数に貢献してるでしょ?」

千秋「エンゲル係数の意味を調べて来い。それはカナが貢献している」

春香「そうか……。確かにカナの言うとおりかもね。私も気をつけないと……」

夏奈「ああ、そうだ。気をつけたほうがいいよ」

千秋「なんでお前が我が家の大黒柱みたいな態度になってんだよ、バカ野郎」

春香「なら、関係ないところの電気は極力つけないようにしないとね」

夏奈「例えば?」

春香「リビングの電気をつければ、キッチンの電気はつけなくていいと思うの」

夏奈「ほぉー。キッチンの灯りをリビングの電気で兼ねようという作戦か。悪くないかもね」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:47:26.64 ID:Jfub/D0B0
春香「でしょ? ちょっとやってみましょうか」

夏奈「おう」

春香「まずは、キッチンの電気を消して……」パチンッ

夏奈「どうだ、ハルカ。料理はできそうか?」

春香「うーん……。見えるには見えるけど、食材を切るときとか危ないわね」

夏奈「そうか。切るときは自分の体で光を遮ってしまうのか」

春香「やっぱり、料理をするときぐらいは電気をつけたほうがいいかしら?」

千秋「ハルカ姉さまの調理時間を考えれば、さほど問題ではありません。それよりも調理中はリビングの電気を消したほうがいいと思います」

夏奈「何を言ってるんだ、チアキ!!! それは間違っているぞ!!」

千秋「何故だ、魔法少女」

夏奈「魔法少女っていうな。いいか、夕食の時間に家族が集まる場所であるリビングに光がないなんて、貧しい家庭みたいでしょー?」

千秋「節約しようって話なのに貧しいも何も……」

夏奈「ここはリビングの灯火を絶やすことなく、キッチンで安心安全に調理する方法を模索するべきだっ!!」

千秋「おいおい」

春香「でも、どうするの? 実際、かなり危ないけど」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:48:32.70 ID:Jfub/D0B0
夏奈「コンロの火を灯火にしてみるっていうのは?」

春香「コンロの? えーと……」カチッ

夏奈「どうだ? 明るくなったでしょ?」

春香「うーん……微妙……。綺麗だけど」

千秋(綺麗なのですか、ハルカ姉さま)

夏奈「そっかぁ。あ、なら、冷蔵庫の明るさを追加してみるってどうだ?」

春香「冷蔵庫ねぇ……」ガチャ

夏奈「どうだ? こんどこそいいでしょう?」

春香「うーん……夜中につまみ食いしているのを思い出すから、個人的にはちょっと……」

千秋(つまみ食いをしたことがあるんですね、ハルカ姉さま)

夏奈「なら、もうないな。どうすることもできん!!」

春香「そうだ。いい方法があるわっ」

夏奈「え? なになに?」

春香「ビリビリー」

夏奈「それやめてよぉ!! 私の顔が真っ赤に灯るだろぉ!!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:50:05.37 ID:Jfub/D0B0
春香「あ、ごめんごめん。懐かしくなって」ナデナデ

夏奈「ハルカのいじわるぅ……」

春香「やっぱり、チアキの言うとおり、リビングの電気は消して、キッチンの電気をつけましょうか」

千秋「それがいいです。ハルカ姉さま」

春香「なら、そうしましょう」

夏奈「でも、ハルカの料理を待っている間、私たちは暗闇のリビングで待つわけだろ?」

千秋「それが何か問題か?」

夏奈「いや。チアキ、暗いリビングってこういうのだぞ」パチンッ

千秋「おい。急に消すな、バカ野郎」

春香「カナ。早く点けなさい」

千秋「カナ、ふざけるな。早くリビングに光をもたらせ。何も見えないだろ」

春香「カナー? おこる――」

千秋「ハルカ姉さま? どうしたのですか? ハルカ姉さま!?」

千秋「……あれ? ハルカ姉さま……? カナ……? どうしたんだ……?」

千秋「あれ……あれ……? 誰か……おーい……」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:51:23.64 ID:Jfub/D0B0
千秋「ハルカ姉さま……? カナ……? あれ……どこにいるんだぁ……?」

千秋「おい……おい……もういいよ……。やめてくれ……」

「リビングに光はいらないんだろぉ?」

千秋「うわぁぁぁ!?!? だれだぁ!? どこにいるぅ!?」

「リビングの主だぁ……!!」

千秋「うわぁぁん!!! なんだよぉー!!!」

「お前の冷め切った意見の所為で、私はオバケになってしまったんだぁ」

千秋「ごめんなさい! ごめんなさい!! リビングには光が必要です!!」

「うわっはっはっはっは。もう遅い。お前もリビングのオバケにしやるぅ」

千秋「うわぁーん!!!」

春香「カナー。そこまで」パチンッ

千秋「……あ?」ウルウル

夏奈「あ……。や、やぁ、千秋。どうだ、リビングが暗いと怖いだろ?」

千秋「この……バカ野郎ー!!!」ゴンッ

春香「はぁ……。急に口を塞ぐから驚いたでしょ、カナ?」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:52:45.07 ID:Jfub/D0B0
夏奈「いたた……。だって、リビングが暗いと何か気持ちまで落ち込みそうだから……」

千秋「こっちはトラウマものだぁー!! この!! この!!」バシッバシッ

夏奈「いたっ! あたっ! ごめんよ、チアキぃー」

春香「チアキ、大丈夫だから。リビングのオバケなんていないわ」

千秋「ハルカ姉さまぁー!! 私は別にオバケなんて怖くないですけどー!!」ギュッ

春香「よしよし。カナ、謝りなさい」

夏奈「もう謝ったよぉ」

春香「もう一度」

夏奈「……ごめん、チアキ」

千秋「……」

夏奈「ごめんってばぁー」

千秋「バカ野郎」

夏奈「なんだよぉー!!」

春香「とりあえず、現状維持でいきましょうか。早く寝ることを心がければいいだけだしね」

千秋「はい。分かりました、ハルカ姉さま」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:53:53.18 ID:Jfub/D0B0
春香「――そろそろ、寝ましょうか」

千秋「はい。そうですね。節約です」

夏奈「まだ早くないかぁ?」

春香「早く寝れば、それだけ早起きもできるでしょ?」

千秋「そうだぞ、バカ野郎」

夏奈「まだ怒ってるのか?」

千秋「ふんっ」

春香「ほらほら、ケンカはダメ」

夏奈「ハルカもこういってることだし、そろそろ水に流さないか?」

千秋「お前が仕切るなよ」

夏奈「なんだよぉー、ちょっと悪ふざけが過ぎただけだろぉー」

千秋「お前が言うなよ」

夏奈「ごめんっていってるでしょぉー!?」

千秋「しるかぁー!!」

春香「やめなさいってば」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:54:49.13 ID:Jfub/D0B0
春香「よし。予習はこれぐらいでいいかな?」

春香(歯を磨いて、寝ないとね。明日の朝ごはんはどうしようかな……)

春香「……」スタスタ

春香「あら? もー、トイレの電気が点けっぱなしじゃない。カナったら、あれだけ言ったのに」

春香「……」パチンッ

「うわぁぁぁぁ!!!!!!」

春香「きゃぁ!?」ビクッ

「誰だぁ!! 光をうばったのはぁ!?!」

春香(トイレのオバケが出た!?)

「チアキかぁ!? チアキなんだろー!?」

春香「ち、ちがいます……チアキは関係ありませんからぁ……」ガクガク

「光を返せー!! トイレを灯せー!!」

春香「今は節約してますからぁ……電気代がバカにならなくてぇ……」ブルブル

千秋(ん? ハルカ姉さまは何をやっているんだろう……? トイレの前でカナと遊んでいるのだろうか?)


おしまい。

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 14:58:10.47 ID:Jfub/D0B0
内田「おじゃましまーす!!」

吉野「お邪魔します」

千秋「来たか」

夏奈「よう! また来たのか」

内田「またっていわないでよぉー!!」

吉野「でも、確かに私たち申し訳ないぐらいチアキの家に来るもんね」

夏奈「いや、吉野は大丈夫だ。きちんとお客様としてのわきまえが出来ているから」

吉野「そう?」

夏奈「できていないのは……」

内田「私なの?」

夏奈「自覚はあるのか?」

内田「でも、チアキがいいよって言うから」

千秋「お前、私が許可しなくても来るじゃないか。何を言っている」

内田「そ、そうだっけ? 自覚がないや」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:00:16.64 ID:Jfub/D0B0
千秋「始末におえないとは内田のことだったか」

内田「え? そうなの? 一応、ありがとう」

千秋「いえいえ、どういたしまして」

夏奈「内田。お前、私の家によく来るけど、もうやることないよな?」

内田「そんなことないよ。いっぱいあるよ」

夏奈「よし。なら、私の家でできることを列挙してみなさい」

内田「え? えーと……オセロでしょ……トランプでしょ……すごろくでしょ……。それから……えーと……」

千秋「今のところ、誰の家でもできることだな」

夏奈「加えていつもやっていることだな」

内田「じゃあ、カナちゃん!! この家で出来ることを教えてよ!! 私はお客様なんだからぁ!!」

夏奈「お客様にしては頭が高いな!! もっと言い方があるんじゃないのか!?」

内田「お客様なんだもん!! 丁重に扱ってよぉ!!」

千秋「お客様がそれを言ったらダメじゃないか?」

吉野「カナちゃん、何か新しい遊びでも思いついたの?」

夏奈「え? いや別に」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:02:27.97 ID:Jfub/D0B0
内田「カナちゃんも何も考えてないんじゃない」

夏奈「よーし、ならオセロでもするか?」

内田「いいよー」

千秋「いいのかよ」

吉野「でも、新しい遊びを開拓するのも面白いかもね」

夏奈「よくいった、吉野。その通りだ。そろそろ私たちも一皮剥けるときが来たんだよ」

内田「一皮剥けるってどうやれば剥けるの?」

夏奈「それを今から考えるんだ、内田」

内田「おぉー」

千秋(またバカ野郎たちが何かを始めるのか……)

夏奈「さて、内田。ここで重要なのは一皮剥けるとどうなるかだ」

内田「どうなるの?」

夏奈「ここにみかんがあるだろ? みかんの皮を剥くとどうなる?」

内田「美味しいです」

夏奈「その通りだ」モグモグ

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:03:49.82 ID:Jfub/D0B0
内田「でも、これはちょっとすっぱいかも」モグモグ

夏奈「内田。しかし、それだけじゃないぞ。皮を剥くことによって、新しい一面が現れる。これが最も重要だ」

内田「新しい一面ですか」

夏奈「そう。男が可愛い女の子になるようにな」

内田「つまりどういうことでしょう?」

夏奈「変身だ」

内田「変身?」

千秋「よう、魔法少女」

夏奈「それ、禁止な」

内田「カナちゃん、どう変身したらいいの?」

夏奈「そこなんだよな……。一体、どうすれば、変身できるのかまだ分からない」

吉野「カナちゃんの考える変身ってどんなの?」

夏奈「そうだな。なんか、こう、キラキラしてて……ヒラヒラしてて……」

千秋「よっ、魔法少女」

夏奈「やめろっていってるでしょー!!!」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:09:34.97 ID:Jfub/D0B0
吉野「魔法少女ってどういう意味なの?」

夏奈「別に意味はないよ」

吉野「そうなんだ」

内田「カナちゃん、魔法少女になるのは難しいと思うんだけど。ほら、妖精の力とかを借りなきゃいけないし」

夏奈「ああ、そうだな。だから、魔法少女になるのは無理なんだ、内田」

内田「選ばれないといけないもんね」

吉野「それにしても新しい遊びが変身かぁ。理由はあるの?」

夏奈「チアキがこの前、今のままでいいのかと私に訊いてきたんだよ」

千秋「別に魔法少女になれとはいってないぞ」

夏奈「ならないよ! いい加減、魔法少女から離れなさいよ」

内田「でもでも、魔法少女も可愛いと思うよ!」

夏奈「内田。お前は魔法少女に興味があるのか?」

内田「可愛くない? ね、吉野。可愛いよね?」

吉野「うん。可愛いと思うよ」

夏奈「ふぅん……。内田ぐらいの年齢でも魔法少女は普通に受け入れられているのか……」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:13:56.72 ID:Jfub/D0B0
内田「どうかしたの、カナちゃん?」

夏奈「なら、なってみるか?」

内田「え?」

夏奈「いっそのこと、魔法少女になってみるか?」

内田「なれるの?」

夏奈「よし、こっちにこい」

内田「契約とかするのー?」

吉野「内田って、ああいうところあるよねぇ」

千秋「そうだな」

吉野「チアキ、カナちゃんに言ってた魔法少女ってどういうことなの?」

千秋「ああ。昔、カナが将来の夢で魔法少女になりたいというのがあったんだ」

吉野「へぇー。そうなんだ……」

千秋「どうした?」

吉野「ううん。なんでもない」

千秋「……?」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:23:26.93 ID:Jfub/D0B0
夏奈「いけー!! 魔法メイド少女ウチダ!!」

内田「これ、メイド服きただけだよ!! 魔法っぽくないよ!!」

夏奈「今はそれしかないんだ。我慢しろ」

内田「もっとフワフワでヒラヒラした服がいいです、ご主人様」

夏奈「今度、トウマに作ってもらうって。今はそれで魔法少女になりきるんだ」

内田「でもぉ……」

吉野「カナちゃん、カナちゃん」

夏奈「どうした、吉野?」

吉野「カナちゃんは魔法少女にならないの?」

夏奈「私はもうそんな歳ではないからな」

内田「私だってそうだよ!!」

吉野「そうなんだ。将来の夢とかで魔法少女になりたいって思ったりしなかったの?」

夏奈「え……? あ、あるわけ、ないだろ。何を言ってるんだ、吉野」

吉野「そうなんだ。カナちゃん、妙に張り切ってるから好きなのかなって思っちゃった」

夏奈(なんだ、この感じ……。まるで見えない凶器で脅されているような……)

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:29:27.56 ID:Jfub/D0B0
吉野「そっかぁ。興味ないんだ……」

夏奈「吉野は興味あるのか?」

吉野「可愛いと思うけど」

夏奈「そうか」

吉野「最近のえっと……プ……プリ、なんだっけ?」

夏奈「プリキュアだろ」

吉野「良く知ってるね、カナちゃん。好きなの?」

夏奈「い、いや。新聞のテレビ欄とかで見ただけだが」

吉野「へぇ、そっかそっか」

夏奈(吉野め……。確実に私の過去を千秋から聞いたな……!!)

吉野「ふふ……」

内田「吉野、どうして笑ってるの?」

吉野「え? 別になんでもないよ」

内田「そうなんだ。でも、なんだが楽しそうだけど」

吉野「そんなことないよ」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:36:28.04 ID:Jfub/D0B0
夏奈(くっ……。吉野に知られた時点で、私は既に鳥かごの鳥も同然だ。もう私は吉野によって生かされているようなものだ)

夏奈(チアキめ……。絶対に許さん……!!)

吉野「カナちゃん、どうしたの?」

夏奈「……」

夏奈(待てよ。ここでチアキと吉野の思惑に乗ってやるのも癪だな……。なんか気に食わない)

夏奈(では、どうする。どうしたら、この窮地を抜けることができるのか……)

内田「カナちゃん、やっぱりメイド服着ただけじゃ魔法少女がない気がするよ」

夏奈「そうか?」

内田「もっとキラキラしてないとダメだし、奇抜なファッションじゃないと」

夏奈「まぁ、そうかもしれないな」

吉野「カナちゃん、魔法少女の服装について詳しいんだね」

夏奈「……!」

吉野「うふふ……」

夏奈(くそ、吉野め……。楽しんでるな……!!)

内田「リリカルな感じもしないし……。やっぱりピンクを基調にしないとダメじゃないかな?」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:42:54.17 ID:Jfub/D0B0
夏奈(楽しむ……。そうか。その手があったか)

夏奈「ふふふ……。吉野、甘いな」

吉野「え?」

夏奈「私が開き直れば、どうする?」

吉野「どういうこと?」

夏奈「私は影に怯えるような生活は真っ平だ!! それならいっそのこと開き直ってやる!!」

吉野「カナちゃん? どうしたの?」

夏奈「内田!! 耳をかせ!!」

内田「はい、どーぞ」

夏奈「あのな……」

内田「ふんふん……。ええ? カナちゃん……それするの……?」

夏奈「ああ。やる!! このままチアキの手の平で転がされてたまるか!! むしろ、奴を転がしてやるんだ!!」

内田「よくわからないけど、カナちゃんがやるなら」

夏奈「よぉーし!! いくぞぉ!!」

内田「おぉー!!」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 15:49:17.13 ID:Jfub/D0B0
夏奈「チアキ!!」

千秋「なんだ、バカ野郎」

夏奈「魔法少女カナ!!!」

内田「魔法メイド少女ユカ!!」

千秋「……」

夏奈「ふたりは、ミナキュア!!!」

内田「いえーい!!」

千秋「……お前、ついに夢を叶えたのか」

夏奈「ふふふ。ここまで吹っ切った私に怖いものは――」

吉野「……」カシャ

夏奈「なに!?」

吉野「いい写真撮れちゃった。ありがとう、カナちゃん、内田」

夏奈「や、やめろぉ!!」

千秋「ところで内田。どうしてユカなんだ?」

内田「え!?」
            おしまい。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:01:01.90 ID:Jfub/D0B0
冬馬「おーい、きたぞー」

春香「いらっしゃい、トウマ」

冬馬「カナー、吉野に言われて作ってきたけど」

夏奈「何を……?」

冬馬「魔法少女の衣装だよ。聞いてなかったのか?」

夏奈「……」

冬馬「あ、あれ? カナ、どうしたんだよ。着たかったんじゃないのか?」

千秋「よかったなぁ、カナ。どんどん夢が叶っていくぞ」

夏奈「もうやめろ……」

冬馬「ほら、カナ。着てみろよ」

夏奈「トウマがきればいいだろぉー!!」

冬馬「なんでオレがきなきゃいけないんだよぉ」

夏奈「きろよぉー!! うぇぇぇん!!!」

冬馬「な、何があったんだ?」

春香「実は……」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:07:01.83 ID:Jfub/D0B0
冬馬「そうか……。魔法少女が夢だったのか。すげーな。きっとなれるぞ!」

夏奈「言うなっていってるでしょー!!」

千秋「トウマの作ってきた衣装さえあれば大丈夫だな」

夏奈「私を弄ることは許さない」

冬馬「でも、そこまで落ち込むほどのことなのか?」

夏奈「なんだと?」

冬馬「だって、昔の夢なんだろ? 今もそう思ってるなら別だけどさぁ」

夏奈「私の過去を誰か食べてくれないかな……」

春香「カナの場合、今思い返すと痛々しいから」

千秋「おへそで茶が湧く」

夏奈「もう一回、言ってみろぉ!!!」グニッグニッ

千秋「やみぇりょぉ……!!!」

冬馬「カナ、気にするなよ。今更、恥ずかしい過去が判明したからって、パワーバランスに変化はないだろ?」

夏奈「どーいう意味だ?」

冬馬「カナはハルカにもチアキにも弱いからなぁ」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:13:35.74 ID:Jfub/D0B0
夏奈「弱いってなんだ?」

冬馬「ハルカには権力で負け、チアキには頭脳で負け。カナが勝っているところってないだろ? あと、オレには力で負けてるしな」

夏奈「この野郎!! 下手に出ていればいい気になりやがってぇ!!!」

冬馬「いつカナが下手にでたんだよ!!」

夏奈「今から年上の恐ろしさを教えてやろう……!!」

冬馬「なんだ、やる気か!! おりゃぁー!!!」ドガッ

夏奈「あぐっ!!」

冬馬「どーだ、この野郎」

夏奈「いたい……」

千秋「カナは本当に弱いな」

夏奈「なんだよぉ!! おまえらぁ!! 姉を苛めて楽しいのかぁ!?」

千秋「姉として優れている点をあげてみろ」

夏奈「ぐっ……。ハルカからもなんかいってよぉ!! 私の魅力をビシっと!!」

春香「……」

夏奈「ハルカぁ!! なんかいってよぉ!! おねがいだからぁ!!」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:20:36.31 ID:Jfub/D0B0
冬馬「改めて考えると、カナの魅力ってどこなんだろうな?」

千秋「皆無といっても過言ではない」

夏奈「言い過ぎにもほどがあるだろ」

春香「あ、でも。カナは一番可愛いわよ」

夏奈「え? そう?」

千秋「なにせ、流行の魔法少女だしな」

夏奈「もういいよ……。みんな嫌いだ……」

春香「ああ、ほら。でも、カナには藤岡くんがいるじゃない」

夏奈「藤岡ぁ? あいつがどんな強みになるんだ?」

春香「なるわよぉ。ねえ?」

冬馬「そうだな。藤岡はカナの言うことなら素直に聞くもんな。そこは正直、羨ましい」

千秋「そうなのか?」

冬馬「だって、オレが嫌だっていっても結構強引にサッカーの練習へ連れて行かれるし」

千秋「それはお前も半分は好きで行ってるだけじゃないのか」

夏奈「そうか、そうか。確かに私には藤岡という駒がいたな。お前たちにはない武器だ」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:29:34.01 ID:Jfub/D0B0
千秋「藤岡を武器扱いとは、随分なご身分だな」

冬馬「他人の力をアテにしてる時点でカナっていう人間が出てるな」

千秋「うむ」

夏奈「おやおや、ご両人。私にそんな口をきいてもいいんですか? 武器を使うぞ?」

千秋「なに?」

夏奈「私が藤岡に一言「チアキを膝の上に座らせるな」と言えばどうなるか……。賢いチアキならわかるよなぁ?」

千秋「なぁ……!!」

夏奈「トウマ。まだ藤岡には男だと思われているんだろ? 私が一言「トウマは可愛い女の子だ」と言えばどうなるか……。活発なトウマならわかるだろぉ?」

冬馬「お、おい!! 卑怯だぞ!! カナ!!」

夏奈「これでどちらが上かはっきりしたな。チアキ、トウマ。お前たちは私に逆らえない!!」

冬馬「くっそ……!! 藤岡の存在だけで……こんなにも……!!」

夏奈「私を見下そうなんてあと10年は早いね」

千秋「……カナ。お前は大きな見落としをしているぞ」

夏奈「見落とし? ふっ。藤岡に勝る駒など持っていないチアキに発言権はないぞ」

千秋「それはどうかな……」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:35:44.71 ID:Jfub/D0B0
夏奈「なんだ、その不敵な笑みは……」

千秋「ハルカ姉さまぁ!! カナになんとか言ってやってください!!」ギュッ

春香「わ、私?」

夏奈「チアキ!! それは反則だろ!?」

冬馬「ハルカぁ。オレからもたのむよぉ」ギュッ

春香「えーと……」

夏奈「トウマまで!! ハルカ。ハルカは可愛い妹を差別したりしないよな?」

春香「カナ?」

夏奈「ハルカ……」

春香「チアキたちが嫌がってるから、やめなさい」

夏奈「あぁ……」ガクッ

春香「あと、トウマが作ってきたこの衣装、着てみてくれない?」

夏奈「やだよ!!」

春香「どうして? きっと似合うわよ。カナは一番可愛いんだし」

夏奈「そ、そうか? って、煽てたって私は着ないからな!!」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:43:01.20 ID:Jfub/D0B0
千秋「きーろっ、きーろっ」

冬馬「折角、作ってきたんだぜ? 着てくれよ」

夏奈「散々バカにされて着るわけないだろ!!」

千秋「カナ。お前は何度、私にバカ野郎と言われたか数えているのか?」

夏奈「なにがいいたい?」

千秋「もう数えるのもバカらしいぐらいにカナはバカ野郎と言われているわけだから、もうバカにされたからって理由は通じないんだ」

夏奈「お前、たまに妙な理屈をこねてくるけど、それで説得できるとでも思っているのか?」

千秋「まぁ、バカだし」

夏奈「もう我慢ならんっ!!! 成敗してくれるぅ!!!」

千秋「こっちにくるな」ゴンッ

夏奈「あんっ」

冬馬「カナ、チアキにも力で負けるのか……」

夏奈「うるさいよ!!」

春香「ねえ、カナ。お願いだから、着てみて」

夏奈「誰がきるかぁー!!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:50:23.36 ID:Jfub/D0B0
千秋「カナは怒ってしまいましたね。ハルカ姉さま」

春香「着て欲しかったのに……」

冬馬「なんだよ。これ作るの案外時間かかったんだぜ?」

春香「ごめんね、トウマ」

夏奈「……ふん」

千秋「でも、この衣装はよく出来てるな」

冬馬「まぁな。吉野と話し合って、カナに似合うように作ったからな」

春香「そうなの?」

冬馬「魔法少女をイメージしたっていうよりは、カナが魔法少女になったらをイメージして作ったからな」

千秋「割ときちんと考えているんだな」

冬馬「工作をするときは作り始める前のイメージが一番大事だからな」

春香「なら、この衣装はカナ以外が着ると違和感がでるのね」

冬馬「そういうことになるな」

春香「尚更、カナに着て欲しいなぁ……」

夏奈「……きるもんか」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 16:56:50.95 ID:Jfub/D0B0
春香「なら、こうしましょうか。ねえ、カナ。この衣装を着てくれたら、冷凍庫にある高いアイス全部食べていいから」

夏奈「私は子供じゃないぞ!! アイスなんかでつられるかぁー!!!」

春香「あら? じゃあ、いらないの?」

夏奈「いるよ!! でもそんなことでいちいち釣られてたら私の威厳がなくなっちゃうんだよ!!」

千秋「もう欠片も残ってないと思うが」

夏奈「なんだと!?」

春香「あの店のプリンもつけるわ」

夏奈「……」

春香「今日と明日の晩御飯はカナの好きなものにするから」

夏奈「……」

春香「ね? カナ?」

夏奈「明後日もだ!!」

春香「よしっ、決まりね」

夏奈「服をよこせ、冬馬!!」

冬馬「おう!! ほらよ!!」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:03:47.56 ID:Jfub/D0B0
夏奈「――とうっ!! 魔法少女ミナミカナ!! けんざんっ!!」

春香「わー。かわいい、かわいい」

冬馬「やっぱ、似合うな」

千秋「……」パチパチ

夏奈「明日の晩御飯はハンバークだぞっ♪」

春香「オッケー」

千秋「決め台詞みたいに言うなよ」

夏奈「もう写真でもなんでも撮ればいいだろぉー!! 私を縛るものはもうないんだから!!!」

冬馬「カナって自分からじゃないと照れるんだな」

千秋「ああ。主導権を握られるのは好きじゃないみたいだが、ハルカ姉さまの前ではそれもできない」

冬馬「やっぱり、ハルカは強いなぁ」

千秋「ああ。ハルカ姉さまに勝る者はいない」

春香「カナー、こっち向いて。一枚、撮るから」

夏奈「もう好きにしたらいいよ!! 好きなだけ撮ればいいよ!! 今ならタダだー!!」

千秋「一皮剥けたな、カナ」
                  おしまい。

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:14:39.29 ID:Jfub/D0B0
千秋「先日、うちに魔法少女が誕生したんだ」

マコ「なんだそれ?」

吉野「写真はあるの?」

千秋「ああ。ハルカ姉さまが激写した。これだ」

内田「わぁ、可愛い。カナちゃんってこういうのもいけるんだ」

冬馬「まぁ、衣装がよかったからな」

マコ「チアキ!! これのハルカさんバージョンはないのか!?」

千秋「生憎とカナだけだ」

マコ「そっかぁ……」

内田「いいなぁー。私もこういう衣装きてみたいなぁー」

冬馬「なんだよ、内田も着たかったのか?」

内田「うん。可愛いから」

冬馬「なら、作ってきてやろうか?」

内田「え? いいの!?」

冬馬「おう。時間はかかるけど、それほど難しいものじゃないしな」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:21:21.49 ID:Jfub/D0B0
夏奈「……聞き捨てならないな」

内田「カナちゃん。どうしたの?」

夏奈「トウマ。この際、みんなで魔法少女にならないか?」

冬馬「みんなって?」

夏奈「ここにいる全員に決まっているだろう?」

千秋「何故そうなる?」

夏奈「いいじゃないか。何か不都合でもあるのか、チアキ?」

千秋「いや、着る必要がない」

夏奈「私にも無かったはずだ」

千秋「いや、それは……。お前にはそれだけの容姿があったからで……」

夏奈「おっと!! ここにいる面子で魔法少女に相応しくない奴がいるかい!? 内田も吉野もトウマもマコちゃんも、そしてチアキもみんな可愛いじゃないか!!!」

千秋「な……」

内田「そ、そんなはっきり……」

マコ「カナ……まさかオレまで……?」

夏奈「全員で魔法少女になればいいじゃない!! そもそもこの広い世界に魔法少女が一人だけって不自然だろぉ!?」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:27:31.42 ID:Jfub/D0B0
千秋「なんで、お前が仕切ってんだよ」

夏奈「魔法少女の基盤を作ったのはこの私だ。つまり、大黒柱だ。大黒柱に逆らうのか、チアキ?」

千秋「いや、どうしてそうなる?」

夏奈「ハルカ的ポジションにいる私には、誰も逆らえないわけだ」

千秋「勝手にハルカ姉さまの椅子に座ろうとするなよ」

冬馬「でも、オレはこういうのに興味がないんだけどなぁ」

マコ「オレも……あまり……」

吉野「……」

内田「私は着たいけど……」

夏奈「よぉーし。トウマ、人数分作ってくるんだ!!」

冬馬「マジで? 一週間ぐらいかかるぞ?」

千秋「一週間でできるのか?」

夏奈「やるんだ。トウマ。みんなでやれば恥ずかしくないだろ。木を隠すなら森の中だ!!」

千秋「独活の大木が何をいってやがる」

夏奈「なんとでも言え。もう私を止められる奴はいないぞ。この魔法少女界ではな」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:33:00.96 ID:Jfub/D0B0
千秋「やーい、独活の大木」

夏奈「誰が何度でも言えといった!?」

冬馬「みんなで着るっていってもなぁ」

吉野「恥ずかしいよね」

マコ「うんうん」

夏奈「マコちゃん。ハルカは私の魔法少女姿を見て大変大喜びだったんだ。私よりも可愛いマコちゃんが魔法少女になればハルカはどうなるか……」

マコ「トウマ!! オレも魔法少女になるぞ!!」

冬馬「ほ、本気か?」

マコ「ハルカさんが喜ぶならオレは何でもするぞ!! 親譲りの気立ての良さがあるからぁ!!」

冬馬「お、おう……。わかった」

夏奈「吉野も着てくれよ」

吉野「えー。でも……」

夏奈「吉野。耳をかしてくれ」

吉野「なに?」

夏奈「実はな……」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:38:17.16 ID:Jfub/D0B0
吉野「……トウマ。私の分もお願い」

冬馬「吉野まで!? 何を言われたんだよ!?」

吉野「別になにもー」

夏奈「さぁ、ここまで賛成派が多数だな!! チアキ、トウマ!! もうやるしかないんじゃないか!?」

千秋「やるわけないだろ、バカ野郎」

夏奈「……チアキ、後ろを見てから決めるんだな」

千秋「なに?」

春香「……」ワクワク

千秋(ハ、ハルカ姉さま……。まさか、期待しているのですか……。私が魔法少女になることを……)

夏奈「どうする、チアキぃ?」

千秋(初めからこうするつもりだったのか……!! ハルカ姉さまを使うなんて……!!)

夏奈「さぁ、チアキ。答えは!?」

千秋「……やるよ。やればいいんだろぉー」

夏奈「よしよし。トウマ、あとはお前だけだぞ?」

冬馬「えー? んー……まぁ、みんながやるっていうなら……やってみるか……」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:44:00.75 ID:Jfub/D0B0
夏奈「よーし。決まったな。トウマ、大変だろうけどがんばってほしい」

冬馬「ああ、わかった」

内田「ねえ、ねえ。トウマ。私はピンクでおねがい」

冬馬「内田はピンクか。わかった」

内田「わーい。ピンクだ、ピンクー」

夏奈「ふふふ……」

千秋「お前、何か企んでないか?」

夏奈「企んでねーよぉ。大黒柱を疑うのか?」

千秋「お前が大黒柱って時点で色々と問題がある気がするよ」

夏奈「だが、大黒柱に逆らうことは不可能だ。残念だったな」

千秋「この……!!」

冬馬「他にもリクエストあるかー?」

吉野「じゃあ、私は黒で」

マコ「オレは赤がいい!!」

冬馬「吉野が黒で……マコちゃんが赤か……。オレは青でいいかな……」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:51:05.81 ID:Jfub/D0B0
冬馬「それじゃあ、一週間ぐらい時間を貰うからな。あと、材料も貰うからな」

夏奈「いいよ、いいよ。持ってけ、持ってけ」

冬馬「うーん……どんなデザインにしようかなぁ……」

内田「ねーねー、決め台詞とかいるよね、やっぱり!!」

マコ「決め台詞かぁ。特撮ヒーローみたいな感じか?」

内田「よくわかんないけど、多分そんな感じだよ」

千秋「おい。なんとなくで決めていいことか、それは?」

吉野「……」

春香「トウマ、私もデザインに協力したいんだけど」

冬馬「おう。そのほうがオレも嬉しい」

夏奈(よしよし……このままいけば……)

千秋(カナのやつ、絶対何か企んでる……)

夏奈「どうした、チアキ? ハルカの期待を裏切ることはしないよなぁ?」

千秋「ぐっ……」

夏奈「ふふふ……」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 17:55:49.20 ID:Jfub/D0B0
夏奈「――さて、あれから一週間がたったけど。トウマ、出来上がったのか?」

冬馬「おう。出来たぜ」

春香「もうすごく可愛いのができたわ」

千秋(ハルカ姉さまがすごく嬉しそうだ。これでは着ないわけにはいかない)

夏奈「そうかそうか。それはよかった」

冬馬「今から着るか?」

夏奈「いや、明日にしよう」

春香「えー? 今日でもいいじゃない」

夏奈「内田と吉野とマコちゃんが来ていないからな」

千秋「呼べば来ると思うぞ?」

夏奈「急に呼ぶのは酷だろう。少なくとも吉野とマコちゃんはノリ気じゃなかったからな」

冬馬「え? そうだったか?」

千秋「マコちゃんはノリノリだっただろ」

夏奈「そんなことねーよぉ。とにかく、明日な、明日」

春香「残念……」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 18:00:47.42 ID:Jfub/D0B0
夏奈「――さぁ、みんな、用意はいいかい?」

内田「うん。ばっちりだよ、カナちゃん!!」

冬馬「はぁ……。まぁ、ハルカに見せるだけだし、いいか……」

マコ「待っていてください、ハルカさんっ。今、オレの晴れ姿を!!」

吉野「……」

千秋「あれ、吉野。なんで、カメラを持っているんだ?」

吉野「記念に残しておきたくて」

千秋「記念?」

吉野「うん。きっと決定的瞬間が撮れると思うから」

千秋「なんだと? それはどういう……」

夏奈「さぁー、いくぞ。セリフは頭に入っているな!?」

内田「ばっちりぃ!!」

マコ「任せろ!! カナ!! 立派な魔法少女になってみせるよ!!」

夏奈「マコちゃんはもう立派な少女だもの」

内田「マコちゃんが一番可愛いもの」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 18:08:31.23 ID:Jfub/D0B0
夏奈「よし。扉をあけるぞ!! 一斉にいけよ、お前らぁ!!」

内田「おー!!」

千秋「なんか嫌な予感がする」

夏奈「でやー!!」ガチャッ

内田「魅惑の桃色魔法少女!! ウチダっ!!」

吉野「疑惑の黒色魔法少女、ヨシノ」

マコ「蠱惑の赤色魔法少女!! マコっ!!!」

冬馬「眩惑の青色魔法少女、トウマっ!!」

夏奈「煽惑の緑色魔法少女!! カナっ!!」

千秋「当惑の黄色魔法少女、チア――」

春香「わぁ、みんな可愛い」

藤岡「トウマも魔法少女になってるのか」

ケイコ「……」

リコ「……」パチパチ

千秋「な……な……な……!!」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 18:14:45.98 ID:Jfub/D0B0
冬馬「なんで、藤岡が……!!! カナァー!!!」

千秋「なんだよ!! これはなんだよぉー!!」

夏奈「どうだ、藤岡?」

藤岡「うん。みんな可愛いよ」

冬馬「うわぁぁー!!!」ダダダッ

千秋「うぉーい!! トウマ!! 私も気持ちは同じだぁー!! 一人でいくなぁー!!」テテテッ

吉野「赤面トウマとれちゃった……」

ケイコ「カナ……。これを見せたかったの?」

夏奈「うん」

リコ「すごい、すごい」

マコ「どーでしたか、ハルカさん!!」

春香「うん。可愛いわよ」

マコ「やったぁー!! ハルカさんに褒められたぁー!!!」

内田「藤岡君、撮ってもいいよー」

藤岡「ごめん、カメラ持ってきてないから」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/18(月) 18:20:00.80 ID:Jfub/D0B0
夏奈「どーだ、恥ずかしいだろ。チアキ。想定外の人間に見られるのは」

千秋「……トウマ。洗面所に行ってバケツを持ってきてくれ。二つあるから」

冬馬「わかった」

夏奈「私の苦しみを思い知ったか。チアキー」

千秋「カナ。お前は大黒柱だったな」

夏奈「そうだが?」

千秋「大黒柱とはその名のとおり、一家を支える柱だ。それはどんなことがあっても折れてはいけない柱なんだ」

夏奈「何がいいたい?」

冬馬「チアキー、持ってきたぞー。一応、水も入れといたけど」

千秋「気が利くな。トウマ。ほら、カナ。バケツを持つんだ」

夏奈「ん? これでどうするんだ?」

千秋「立ってろ」

夏奈「……あの……これ……辛いけど……?」プルプル

千秋「大黒柱だろ? 立ってろ」

夏奈「あ、ごめんなさい……。調子に乗りました」
                               おしまい。

引用元: 千秋「この物語は、南家三姉妹の平凡な日常を淡々と描くものです」