1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 03:37:25.42 ID:QM7+qv9r0
沙紀「プロデューサーさん、来てくれたんっすか」

夕美「私もいるよー」

沙紀「夕美、お疲れっす」

夕美「疲れるような事してないよ。それより凄いね、線路下のトンネルがこんなに明るくなってる」

沙紀「まだまだ途中っすけどね」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 03:43:29.83 ID:QM7+qv9r0
夕美「完成が待ち遠しいよ」

沙紀「楽しみにしてて欲しいっす」

P「俺も楽しみにしてるからな」

沙紀「プロデューサーさんには本当に感謝してるっす。こんな場所を見つけて貰って」

P「市にちょっと訊いて、ストリートアートが出来る場所を教えて貰っただけだよ」

沙紀「それでもありがとうっす。落書きがない綺麗な場所は久しぶりだから、アタシのアート魂の炎はメラメラっす」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 03:47:55.67 ID:QM7+qv9r0
P「その魂の影響か。結構赤色が多いのは」

沙紀「そうっす。下書きや完成図なんて野暮野暮。その場の気持ちで描いてこそストリートアートっす」

夕美「ううん? ねえ、沙紀ちゃん、これって花?」

沙紀「よくわかったっすね」

夕美「私だよ?」

沙紀「なるほど、納得っす」

夕美「でしょ? でも、これってなんだろ?」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 03:53:30.82 ID:QM7+qv9r0
P「夕美でも知らない花なのか?」

夕美「似た花ならいくつかあるけど、候補が多過ぎてはっきりと断言は出来ないかな」

沙紀「そりゃそうっすよ。その花にモデルなんてないんっすから」

P「って事は、沙紀オリジナルの花ってわけか」

沙紀「世界で一つだけの花っす」

P「イケメン事務所に殴られそうだな。俺が」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 03:59:06.24 ID:QM7+qv9r0
夕美「絵心ある人はいいなぁ。自分だけの花をいっぱい咲かせられて」

沙紀「簡単っすよ?」

夕美「むむっ、それは私に対する挑発だね!」

沙紀「いや、そんなつもりはないっすけど……夕美もなにか描かないっすか?」

夕美「ううん、いいよ。私、本当に絵のセンスないから邪魔になると思うし」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:04:43.50 ID:QM7+qv9r0
沙紀「アタシも絵が上手いわけじゃないっすよ」
沙紀「由愛みたいに綺麗な風景は描けないし、蘭子や比奈みたいな絵も無理っす」

P「スタイルって言うか、方向性が違うもんな」

沙紀「そういう事っす」

夕美「じゃあ、沙紀ちゃんはどんな感じで絵を描いてるの?」

沙紀「慣れと勢いと、あとは適当っす」

夕美「大胆だね」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:10:18.02 ID:QM7+qv9r0
沙紀「全体的なバランスの繊細さは必要だと思うけど、そんなもんじゃないっすかね?」

P「その大胆さがあってこそ、こういう絵が生まれるんだろうな」

沙紀「アタシは好きに描いてるだけっすから、絵の評価は見る人にお任せっす」
沙紀「それで、夕美もやってみないっすか? 楽しいっすよ?」

夕美「うーん、どうしよう」

P「少しでもやってみたいと思うなら、やって損はないぞ」

夕美「……うん、じゃあ私にも少しやらせて、沙紀ちゃん」

沙紀「そうこなくっちゃ。予備で持って来た服を貸すっす。私服が塗料で汚れちゃうから」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:16:11.79 ID:QM7+qv9r0
夕美「じゃあ、ちょっと着替えて来るね。事務所が近くだから、すぐ戻るよ」

沙紀「待ってるっす。これが着替えっす」

夕美「ありがと!」

P「俺はどうすっかな」

夕美「プロデューサーさんはここで待ってて。沙紀ちゃん一人残したら可哀想だよ」

P「なら、そうするよ」

沙紀「寂しがるような歳じゃないっすけどね、アタシは」

夕美「また後でね、プロデューサーさん、沙紀ちゃん」

P「ああ」

沙紀「待ってるっす」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:21:45.84 ID:QM7+qv9r0
P「夕美が見つけた花って、よく見るとそれなりに散らばってるな。お気に入りなのか?」

沙紀「ここで初めて描いた物っすけど、お気に入りと言えばそうっすね」

P「そうなんだ」

沙紀「ただ、ここ以外で描く事はもうないっすけどね」

P「なんで? 絵とかには疎いけど、綺麗に描けてると思うぞ」

沙紀「個人的な理由っす」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:26:32.21 ID:QM7+qv9r0
P「あれか。一度描いた絵は二度と描かない主義とか」

沙紀「そんなところっすね。ところで、なにかリクエストはないっすか?」

P「おっ、なにか描いてくれるのか?」

沙紀「描けそうならやってみるっす」

P「じゃあ沙紀の自画像」

沙紀「却下っす」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:32:49.80 ID:QM7+qv9r0
P「即答だなぁ」

沙紀「なにが悲しくて自分を描かないといけないんっすか、恥ずかしい」

P「なら、俺と夕美もセットで」

沙紀「二人だけならいいっすけど、アタシは遠慮したいっす」

P「どうしてもダメか?」

沙紀「むしろ、なんでアタシを描かせたがってるんっすか」

P「ほら、以前はともかく、アイドルになってからは初めてのストリートアートだろ? 誰が描いたかはっきりさせないと」

沙紀「それで自分描くって、かなり痛い子っすよ」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:38:26.34 ID:QM7+qv9r0
P「よし、なら俺が描く!」

沙紀「とうとうその発想に至ったんっすね。スーツ姿だから仕事中かと思って誘わなかったのに」

P「刷毛借りるなー」

沙紀「時間は大丈夫なんっすか、時間は」

P「平気平気。今日はつまらない事務処理が残ってるだけだから」

沙紀「社会人としてよく生活できるなぁ、この人」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:49:20.05 ID:QM7+qv9r0
 

P「どこに描いていい? 天井か? 任せとけ!」

沙紀「なにも言ってないのに……確かに、そこなら都合は悪くないっすけど」

P「ペンキよし、脚立の足場よし、いざ!」

沙紀(まぁ、好きにさせようかな。にしても、プロデューサーさんが夕美を連れて来るなんて……)

P「ふふふふーん♪ ――うわっ、ペンキが肩に落ちた!」

沙紀「……はぁ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:46:03.81 ID:QM7+qv9r0
――――――
――――
――


P「出来た! 会心の出来」

沙紀「早い上に普通に上手くて、しかもアタシの絵柄に合わせてるし。どんだけ器用なんっすか」

P「担当アイドルへの愛がなせる技だ。いや、業と言うべきか」

沙紀「どのワザでもいいっすけど」

24: >>20の続き 2013/02/24(日) 04:53:47.21 ID:QM7+qv9r0
P「沙紀も俺と夕美を描き終わってるじゃん。俺が沙紀一人描いてる間に」

沙紀「アタシは本職っすから」

P「アイドルを副業にしないでくれ……」

沙紀「おっと、ついうっかり。にしても、夕美は遅いっすね」

P「ゆっくり歩いても、距離的に時間はあまりかからないはずなんだけどなぁ」

沙紀「なにかあったんっすかね?」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 04:59:03.71 ID:QM7+qv9r0
P「電話して出なかったら、ちょっと様子を見て来るか」

沙紀「ペンキ塗れのスーツ姿で?」

P「誉れ高き戦場の傷跡だ。なにを恥ずべき事がある」

沙紀「プロデューサーさんはどんなキャラになりたいんっすか?」

P「冗談はともかく、心配だから電話かけてみるな」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:05:10.86 ID:QM7+qv9r0
夕美「ご、ごめんなさい! ちょっと遅くなっちゃった――って、プロデューサーさんのその姿はなに!?」

P「とか言ってる間に戻って来たな。ちなみにこの姿は、誉れ高き戦場の……」

沙紀「それはもういいっす」

P「……はい」

沙紀「夕美も気にしなくていいっす。プロデューサーさんが少しはしゃいだだけっすよ」

夕美「そうなの? あっ、壁に私がいる! プロデューサーさんに沙紀ちゃんも!」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:11:53.92 ID:QM7+qv9r0
P「沙紀は俺が描いたんだ。俺と夕美は沙紀が」

夕美「沙紀ちゃんもすごいけど、プロデューサーさんも絵が描けるんだ。沙紀ちゃんにそっくり」

P「担当アイドルへの愛が――」

沙紀「それもいいっす」

P「……ごめんなさい」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:17:10.75 ID:QM7+qv9r0
夕美「絵になるって、嬉しいけどなんかちょっと恥ずかしいな」

沙紀「それはそうと、どうしてこんなに遅くなったんっすか?」

夕美「少し調べ物をね。で、沙紀ちゃんに話があるの」

沙紀「アタシに?」

P「俺には?」

夕美「プロデューサーさんはちょっと離れたところで耳を塞いでてね、いい子だから」

P「……うん」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:23:48.38 ID:QM7+qv9r0
夕美「よし、プロデューサーさんは離れたね」

沙紀「それでなんっすか?」

夕美「ふふっ、私、気付いちゃったの」

沙紀「だから何にっすか?」

夕美「結構な数があって、プロデューサーさんの絵の胸辺りにも描かれてる花に、かな」

沙紀「……なんの事っすかね。アタシにはさっぱりっす」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:31:09.52 ID:QM7+qv9r0
夕美「赤い花。アレンジされてて少しわかり難かったから、念のために調べたよ」

沙紀「……」

夕美「センニチコウって名前に聞き覚えはある? モデルがないなんて嘘吐いちゃった沙紀ちゃん」

沙紀「参ったっす。降参っす。諸手をあげるから、それ以上は勘弁して欲しいっす」

夕美「ふふっ、沙紀ちゃんって意外と乙女さんだね。普段やライブの時はカッコいいから、印象が変わったよ」

沙紀「こう見えても女子っすからね。正直に言うと、プロデューサーさんがくれた場所は自分の中で特別にしたかったんっすよ」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/24(日) 05:38:14.74 ID:QM7+qv9r0
夕美「気持ちはわかるよ。女の子はいつも胸にコウホネの花を咲かせてるもんね」

沙紀「コウホネってのは知らないっすけど、この事プロデューサーさんには……」

夕美「もちろん、内緒にするから安心して」

沙紀「ありがとうっす」

夕美「その代わり、私もプロデューサーさんの絵に花を一輪描かせてね」

沙紀「……仕方ないっす。交渉成立っす」

夕美「やった!」

36: >>34おk 2013/02/24(日) 05:42:33.08 ID:QM7+qv9r0
沙紀「でも、せめてどんな花かは教えてほしいっす。アタシ、詳しくないっすから」

夕美「サンザシの花。意味は調べてね」

沙紀「全く、夕美には敵わないっす」

夕美「ふふっ、じゃあ、手伝って貰えるかな? 言った通り、絵の方はからっきしだから」

沙紀「むろん、最高のアートにするっす!」

夕美「頼もしいな」


P「いつまで一人でいればいいのかなぁ。カラフルなスーツが恥ずかしいよぉ……」


終わり

引用元: モバP「上手いもんだなぁ、沙紀の絵」