クリームヒルト&西行寺幽々子「ちょっと本気出す」 霊夢「やめなさい」 その1
クリームヒルト&西行寺幽々子「ちょっと本気出す」 霊夢「やめなさい」 その2
505: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:31:17.48 ID:ksixEzXJ0
―――――――― 【救済の魔女と無縁塚突入隊】 @ 無縁塚 ――――――――
クリームヒルト「……ティロ・フィナーレ」
アリスがソレに気付いた時、全てが手遅れになっていた。
いつの間にか内懐に潜り込んでいたクリームヒルトが、回避不可能な至近距離で大砲にも似た銃を構えていたのだ。
アリス「なっ!? 零距離射撃っ!?……きゃああっ!?」
杏子「っ!? アリス!?」
砲撃をもろに受け、その場に崩れ落ちるアリスを見て、杏子は思わず声をあげる。
撃墜されたアリスに気をとられ、視線を逸らした杏子に、すかさず魔理沙の怒号が飛ぶ。
魔理沙「バカっ! よそ見すんな! 次はお前が狙われるぞ!!」
そう叫ぶ魔理沙自身も圧倒的な弾幕を相手にしていた。
アリスが墜ち、お燐もゾンビフェアリーの数が少なくなっていた為、牽制し続けることが、難しくなったからだ。
それでも魔理沙は、これまでの経験と培ってきた技能とで、この難局に挑んだが、それでも限界は訪れた。
魔理沙「っ!? ヤバい、囲まれた!?」
気が付いた時には無数のマスケット銃が、その銃口を魔理沙に向けていた。
この時、杏子はクリームヒルトを挟んだ反対側に、お燐は後方の離れたところに居て、魔理沙の援護が出来ない状態だった。
お燐「魔理沙! 一旦引きな!」
魔理沙(それが出来たら苦労はないぜ……)
お燐の絶叫にも似た声を背中に受けつつ、魔理沙はやけに冷静な思考で、向けられた銃が火を噴くのを見ていた。
放たれた弾幕は、魔理沙を撃ち抜くべく、四方八方から襲い掛かってきて……、次の瞬間、別の方向から飛んできた銃撃により相殺された。
魔理沙「っ!?」
マミ「どうにか間に合ったわね。加勢するわ」
金髪のドリルロールをなびかせて、魔理沙の前に立ったマミを見て、魔理沙は目を見張る。
魔理沙「マミ!? 早苗の援護はどうなったんだ!?」
マミ「暁美さんの厄祓いは終わったわ。 今は暁美さんを連れて後方に下がっているところよ」
護衛役はお役御免、って訳、と言いつつウィンクをしてみせるマミに、魔理沙は苦笑する。
いくら援護射撃役に徹していたとは言え、マミの魔法少女装束は煤と硝煙でたっぷり燻されていた。
余裕があるとはお世辞にも言えた状態ではない。
それでも最前線に飛び込んできた辺り、やはり性分なのだろう。
救いようのないバカが居たもんだと、魔理沙は思ったが、それは自分自身も同じなので代わって別の言葉をかける。
魔理沙「助かったぜマミ。 この一件にカタがついたら取って置きの一杯を奢るぜ」
マミ「あら、嬉しいわ。 でも、そう言うことはケリがついてからにして頂戴。 じゃないと……」
言いかけたマミは魔力のリボンを一閃して、魔理沙の背後の弾幕を打ち消し、魔理沙は八卦炉で、マミの背後に現れた槍の弾幕を吹っ飛ばす。
マミ「変なフラグが立っちゃうじゃない」
魔理沙「だな、流石に私も、そいつは勘弁だ」
クリームヒルト「……ティロ・フィナーレ」
アリスがソレに気付いた時、全てが手遅れになっていた。
いつの間にか内懐に潜り込んでいたクリームヒルトが、回避不可能な至近距離で大砲にも似た銃を構えていたのだ。
アリス「なっ!? 零距離射撃っ!?……きゃああっ!?」
杏子「っ!? アリス!?」
砲撃をもろに受け、その場に崩れ落ちるアリスを見て、杏子は思わず声をあげる。
撃墜されたアリスに気をとられ、視線を逸らした杏子に、すかさず魔理沙の怒号が飛ぶ。
魔理沙「バカっ! よそ見すんな! 次はお前が狙われるぞ!!」
そう叫ぶ魔理沙自身も圧倒的な弾幕を相手にしていた。
アリスが墜ち、お燐もゾンビフェアリーの数が少なくなっていた為、牽制し続けることが、難しくなったからだ。
それでも魔理沙は、これまでの経験と培ってきた技能とで、この難局に挑んだが、それでも限界は訪れた。
魔理沙「っ!? ヤバい、囲まれた!?」
気が付いた時には無数のマスケット銃が、その銃口を魔理沙に向けていた。
この時、杏子はクリームヒルトを挟んだ反対側に、お燐は後方の離れたところに居て、魔理沙の援護が出来ない状態だった。
お燐「魔理沙! 一旦引きな!」
魔理沙(それが出来たら苦労はないぜ……)
お燐の絶叫にも似た声を背中に受けつつ、魔理沙はやけに冷静な思考で、向けられた銃が火を噴くのを見ていた。
放たれた弾幕は、魔理沙を撃ち抜くべく、四方八方から襲い掛かってきて……、次の瞬間、別の方向から飛んできた銃撃により相殺された。
魔理沙「っ!?」
マミ「どうにか間に合ったわね。加勢するわ」
金髪のドリルロールをなびかせて、魔理沙の前に立ったマミを見て、魔理沙は目を見張る。
魔理沙「マミ!? 早苗の援護はどうなったんだ!?」
マミ「暁美さんの厄祓いは終わったわ。 今は暁美さんを連れて後方に下がっているところよ」
護衛役はお役御免、って訳、と言いつつウィンクをしてみせるマミに、魔理沙は苦笑する。
いくら援護射撃役に徹していたとは言え、マミの魔法少女装束は煤と硝煙でたっぷり燻されていた。
余裕があるとはお世辞にも言えた状態ではない。
それでも最前線に飛び込んできた辺り、やはり性分なのだろう。
救いようのないバカが居たもんだと、魔理沙は思ったが、それは自分自身も同じなので代わって別の言葉をかける。
魔理沙「助かったぜマミ。 この一件にカタがついたら取って置きの一杯を奢るぜ」
マミ「あら、嬉しいわ。 でも、そう言うことはケリがついてからにして頂戴。 じゃないと……」
言いかけたマミは魔力のリボンを一閃して、魔理沙の背後の弾幕を打ち消し、魔理沙は八卦炉で、マミの背後に現れた槍の弾幕を吹っ飛ばす。
マミ「変なフラグが立っちゃうじゃない」
魔理沙「だな、流石に私も、そいつは勘弁だ」
506: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:37:57.78 ID:ksixEzXJ0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
早苗「ふぅ、ここまで来れば一安心ですかね……」
無縁塚を離れて、再思の道まで戻ってきた早苗は、そこで一旦息をついた。
背負っているほむらを落とさないように地面に軟着陸すると、そこで一旦、ほむらを地面に降ろす。
早苗「だいぶ苦戦してるみたいですね……。 これは私も加勢した方が……」
ほむら「わ、私も……」
無縁塚の方を見やりつつ、早苗が険しい表情をしていると、ほむらがよろけながらも腰をあげる。
早苗「ちょっ、ダメですよほむらさん! まだほむらさんの身体は……」
ほむら「まどかは……、私に助けを求めてきたの。 寂しい、って……、救って欲しい、って……」
声をあげる早苗に構わず、ほむらは立ち上がる。
早苗の言う通り、身体に力は入らず、立ち上がるだけでも膝がガクガクと震える。
それでも自力で立ち上がったほむらは、真剣な顔で無縁塚を、クリームヒルトがいる方を見据える。
ほむら「私はまだ、まどかに答えを言ってない。 貴女の居場所は間違いなくあるんだ、って伝えられてない!
だから私は戻らないといけない。 戻って伝えないと、まどかを本当に救う事は出来ないの」
早苗「ほむらさん……、でも……」
???「そのくらいにしておきなさい、守矢の巫女……」
尚も言葉をかけようとした早苗だか、それは背後から聞こえた声によって遮られた。
見ると、幽々子が丁度、再思の道の入り口に降り立ったところだった。
早苗が今にも出かかった言葉を呑み込んだのを確認すると、幽々子はほむらに向き直る。
幽々子「貴女がクリームヒルトちゃんが話していた、暁美ほむらさんね?
私は亡霊の西行寺幽々子。 クリームヒルトちゃんたちとは、色々と良くしてもらってるわ」
もしかしたら、話は聞いているかも知れないけど……、と言う幽々子に、ほむらは小さく頷く。
クリームヒルトを知るきっかけとなった新聞でも読んだし、クリームヒルト自身からもその話は聞いている。
早苗「ふぅ、ここまで来れば一安心ですかね……」
無縁塚を離れて、再思の道まで戻ってきた早苗は、そこで一旦息をついた。
背負っているほむらを落とさないように地面に軟着陸すると、そこで一旦、ほむらを地面に降ろす。
早苗「だいぶ苦戦してるみたいですね……。 これは私も加勢した方が……」
ほむら「わ、私も……」
無縁塚の方を見やりつつ、早苗が険しい表情をしていると、ほむらがよろけながらも腰をあげる。
早苗「ちょっ、ダメですよほむらさん! まだほむらさんの身体は……」
ほむら「まどかは……、私に助けを求めてきたの。 寂しい、って……、救って欲しい、って……」
声をあげる早苗に構わず、ほむらは立ち上がる。
早苗の言う通り、身体に力は入らず、立ち上がるだけでも膝がガクガクと震える。
それでも自力で立ち上がったほむらは、真剣な顔で無縁塚を、クリームヒルトがいる方を見据える。
ほむら「私はまだ、まどかに答えを言ってない。 貴女の居場所は間違いなくあるんだ、って伝えられてない!
だから私は戻らないといけない。 戻って伝えないと、まどかを本当に救う事は出来ないの」
早苗「ほむらさん……、でも……」
???「そのくらいにしておきなさい、守矢の巫女……」
尚も言葉をかけようとした早苗だか、それは背後から聞こえた声によって遮られた。
見ると、幽々子が丁度、再思の道の入り口に降り立ったところだった。
早苗が今にも出かかった言葉を呑み込んだのを確認すると、幽々子はほむらに向き直る。
幽々子「貴女がクリームヒルトちゃんが話していた、暁美ほむらさんね?
私は亡霊の西行寺幽々子。 クリームヒルトちゃんたちとは、色々と良くしてもらってるわ」
もしかしたら、話は聞いているかも知れないけど……、と言う幽々子に、ほむらは小さく頷く。
クリームヒルトを知るきっかけとなった新聞でも読んだし、クリームヒルト自身からもその話は聞いている。
507: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:40:22.08 ID:ksixEzXJ0
幽々子「あつかましい話だとは思うし、無責任な事だとは重々承知してるつもりだけど、私からもお願いさせて欲しいの。
クリームヒルトちゃんを助けてあげて……。 今のあの子を救えるのは貴女しか居ないの」
静かな声ではあったが、それだけにその言葉は重かった。
早苗は幽々子の心中を察して唇を噛み、ほむらは幽々子の視線を真正面から受け止めて……、やがて大きく頷いた。
ほむら「最初から私はそのつもりよ。 だってあの子は、私の大切な……、大切な友達なんですもの……」
幽々子「ありがとう、私の我が儘にしっかりと答えてくれて……。 でも、その言葉を言うのはここじゃないわ」
真っ直ぐな瞳で、そう答えたほむらに、幽々子はそう言うと小さく微笑んで見せた。
幽々子「行きましょう。 クリームヒルトちゃんを本当の意味で助けに……」
早苗「でもどうするんです? 先程までの様子ですと、いくらほむらさんの言葉でも、そう簡単に届くとは思えませんよ」
厄のせいも相まって、随分と盲目的になっていたクリームヒルトの姿を思い出しながら、早苗が懸念を漏らす。
別の声がその場に割り込んできたのは、ちょうどその時だった。
???「それなら私に考えがあるわ」
早苗「っ!? 紫さん!?」
いつの間にか現れた、スキマ妖怪の八雲紫に早苗は思わず声をあげる。
対する幽々子は表情ひとつ変えることなく、長年の親友に問う。
幽々子「考えって、何をする気かしら? 紫……」
紫「ちょっとした茶番よ。 気付けにぴったりな、ちょっと刺激の強いヤツをね……」
紫は悪戯を提案するような、胡散臭い笑みを浮かべると、自身の案を話し始めた。
508: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:45:20.73 ID:ksixEzXJ0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方、無縁塚の戦いも、展開が劇的に動こうとしていた。
クリームヒルト優勢のまま、魔理沙以下、四人で戦線を支えると言う構図は、霊夢と共にある人物が降り立った事で、様相が一変してしまったのだ。
マミ「か、鹿目さんが……、二人?」
クリームヒルトとマミたちの間に立つように降り立った人影は、相対するクリームヒルトとよく似た、桃色の髪の少女だった。
夢で見た姿と寸分違わぬその少女を見て、杏子はこれ以上ないくらい目を見開く。
杏子「アイツは……! アタシが夢で見た……」
お燐「夢って、さっきお姉さんが話してたヤツかい? それじゃあ……」
マミ「あれが“円環の理”になった、私たちの世界の鹿目さん、なの?」
口々に呟きながら、マミたちは対峙する二人の少女を見た。
“円環の理”こと鹿目まどかが現れた途端、クリームヒルトは弾幕を撃つことを止めていた。
飛び交う弾幕で騒がしかった辺りは、一転して静寂に包まれており、それが却って気味の悪い雰囲気を醸し出していた。
まどか「…………」
まどかをじっと見据えたまま、動かないクリームヒルトを見て、まどかは思案する。
実はこの現場で、一番戸惑っていたのが、他ならぬまどかだった。
まどかはマミたちがクリームヒルトと戦っているのを見て、反射的に戦場に介入したのだが、割り込んだ後になってその違和感に気付いたのだ。
まどか(おかしい。確か、魔女・クリームヒルトは救済の魔女だった筈。
こんな回りくどい戦いなんかしなくても、能力を発動させちゃえば、ううん、能力を使わずとも一秒と経たずに戦いは終わってる筈なのに……)
が、マミたちの様子を見るに、戦いはかなりの持久戦で、無防備に倒れている少女に止めを刺さないなど、不可解な点が多い。
能力が発動出来ないのかとも思ったが、まどかの“救済”は意図して発動する分には可能であり、クリームヒルトのソレが出来ないとは思えない。
そんなまどかの戸惑いを察したのか、霊夢が疑問に答える。
霊夢「別におかしなところは何一つないわ。 クリームヒルトは幻想郷でのルールに則って魔理沙たちと一戦交えてただけなんですもの」
まどか「ルール?」
霊夢「そうよ。 危ういバランスで成り立ってる幻想郷での、唯一にして絶対のルール。
そのルールを守るぐらいの良心は、まだあの子の中に残ってた、って事。 厄なんて言う憎しみの塊に侵されてしまった後でもね」
まどか「…………」
霊夢の言葉を聞いて、まどかは再度、クリームヒルトの方を見た。
背後でこちらを見守っているマミたちも相当だったが、クリームヒルトの方も良く見るとあちこち小さい傷や、煤まみれであり、
戦いが決して一方的な虐殺や蹂躙ではなかった事を如実に物語っていた。
むしろ、傷の具合だけを見るなら、クリームヒルトの方が嬲られていたと思えるほどだ。
一方、無縁塚の戦いも、展開が劇的に動こうとしていた。
クリームヒルト優勢のまま、魔理沙以下、四人で戦線を支えると言う構図は、霊夢と共にある人物が降り立った事で、様相が一変してしまったのだ。
マミ「か、鹿目さんが……、二人?」
クリームヒルトとマミたちの間に立つように降り立った人影は、相対するクリームヒルトとよく似た、桃色の髪の少女だった。
夢で見た姿と寸分違わぬその少女を見て、杏子はこれ以上ないくらい目を見開く。
杏子「アイツは……! アタシが夢で見た……」
お燐「夢って、さっきお姉さんが話してたヤツかい? それじゃあ……」
マミ「あれが“円環の理”になった、私たちの世界の鹿目さん、なの?」
口々に呟きながら、マミたちは対峙する二人の少女を見た。
“円環の理”こと鹿目まどかが現れた途端、クリームヒルトは弾幕を撃つことを止めていた。
飛び交う弾幕で騒がしかった辺りは、一転して静寂に包まれており、それが却って気味の悪い雰囲気を醸し出していた。
まどか「…………」
まどかをじっと見据えたまま、動かないクリームヒルトを見て、まどかは思案する。
実はこの現場で、一番戸惑っていたのが、他ならぬまどかだった。
まどかはマミたちがクリームヒルトと戦っているのを見て、反射的に戦場に介入したのだが、割り込んだ後になってその違和感に気付いたのだ。
まどか(おかしい。確か、魔女・クリームヒルトは救済の魔女だった筈。
こんな回りくどい戦いなんかしなくても、能力を発動させちゃえば、ううん、能力を使わずとも一秒と経たずに戦いは終わってる筈なのに……)
が、マミたちの様子を見るに、戦いはかなりの持久戦で、無防備に倒れている少女に止めを刺さないなど、不可解な点が多い。
能力が発動出来ないのかとも思ったが、まどかの“救済”は意図して発動する分には可能であり、クリームヒルトのソレが出来ないとは思えない。
そんなまどかの戸惑いを察したのか、霊夢が疑問に答える。
霊夢「別におかしなところは何一つないわ。 クリームヒルトは幻想郷でのルールに則って魔理沙たちと一戦交えてただけなんですもの」
まどか「ルール?」
霊夢「そうよ。 危ういバランスで成り立ってる幻想郷での、唯一にして絶対のルール。
そのルールを守るぐらいの良心は、まだあの子の中に残ってた、って事。 厄なんて言う憎しみの塊に侵されてしまった後でもね」
まどか「…………」
霊夢の言葉を聞いて、まどかは再度、クリームヒルトの方を見た。
背後でこちらを見守っているマミたちも相当だったが、クリームヒルトの方も良く見るとあちこち小さい傷や、煤まみれであり、
戦いが決して一方的な虐殺や蹂躙ではなかった事を如実に物語っていた。
むしろ、傷の具合だけを見るなら、クリームヒルトの方が嬲られていたと思えるほどだ。
509: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:49:13.03 ID:ksixEzXJ0
まどか(これが、最悪の魔女なの? これじゃあ、まるで……)
クリームヒルトの姿を見て、まどかの中に様々な疑問が湧き出して来る。
そんなまどかをじっと見守っていた霊夢は、次の瞬間、魔理沙に声をかけられ振り返る。
魔理沙「なぁ霊夢、お前、クリームヒルトに何かしたのか?」
霊夢「? 別に何もしてないけど……、なんでそんなこと聞くのよ?」
魔理沙「いや、クリームヒルトのヤツが急に弾幕を撃つのを止めたからさ、お前が厄を祓ったのかな、と……」
厄を抑え込んでも居ないのに、クリームヒルトが正気に戻るわけないだろう? と言う魔理沙の言葉に、霊夢は今更ながら疑念を抱く。
クリームヒルトが攻撃を止めたのは、まどかが来たからだ、と考えて深く考えなかったが、良く考えてみると、まどかが何らかの力を使っている様子はない。
となると、攻撃を控えて、いや抑えているのは他ならないクリームヒルトの意思と言う事になる訳で……。
霊夢の中で疑念が、悪寒になり、その悪寒は、間も無く現実のものとなった。
クリームヒルト「……い、……まえ……なく……て……」
消えそうなほどの小声をクリームヒルトが漏らしたのは、ちょうどその時だった。
声が良く聞き取れなかった上、クリームヒルトが俯き気味に立っていた為、表情を読む事も出来ず、まどかは顔をしかめる。
まどか「?」
クリームヒルトは震え出した手を、もう片方の手で押さえながら、今度ははっきりとした口調で言う。
クリームヒルト「お願い、私の前から居なくなって……、じゃないと私、もう抑えきれな……」
霊夢「っ!?厄が強くなってる!? アンタ、今すぐそこから離れなさい!」
霊夢がクリームヒルトの異変に気が付いた時には、既に手遅れになっていた。
クリームヒルトは魔力の弓を現出させると、爆発的な魔力でもって矢を作り出し、まどかたち目掛けて放ったのだ。
輝弓 『フィニトラ・フレティア』
わき腹を魔力の弓が掠め、まどかがその場に倒れるのを見ながら、霊夢は激しい後悔と自信への憤りに唇を噛んだ。
直後、辺りは閃光に包まれ、霊夢たちは思わず目を瞑る。
霊夢(そうよ、あの子は最初っからそういう子だったじゃない! なんで気が付かなかったの!? 博麗霊夢っ!)
クリームヒルトは他人を傷つけるくらいなら、自分で抱え込んで抑えようとする傾向がある。
それは魔女異変の時もそうだったし、今回の件でもそうだった。
510: 東方焔環神 2011/12/17(土) 10:56:49.67 ID:ksixEzXJ0
それだけ優しい子なのだが、それはその抑えが利かなくなると一気に爆発する危険性があるということでもある。
クリームヒルトが弾幕を撃つのを止めたのは、厄が抑え込まれた訳ではなく、嫉妬の対象であるまどかが現れた事で、
残された良心と、厄に煽られた嫉妬心とが、最後のせめぎあいをしていたからだったのだ。
そして、今、残された良心と言う最後のダムも決壊した。
こうなってしまっては、あとは嫉妬心に任せるまま、憎しみに堕ちていくのみになってしまう。
霊夢「っ! ダメよ、クリームヒルト! それ以上は……」
閃光が納まった時、クリームヒルトは倒れたまどかの目の前まで来ていた。
倒れたまま、こちらを見上げてくるまどかを、光のない瞳で見下ろしながらクリームヒルトは、呟くように言う。
クリームヒルト「私は貴女が羨ましかった……。 ほむらちゃんを、みんなを救えた貴女が……」
口から漏れだすのは、これまで隠して、抑えてきた、本心。
それは全てを救ってみせた、自分とは違う自分に抱いた羨望。
クリームヒルト「私は何一つ守れなかった。 マミさんも、杏子ちゃんも、さやかちゃんも!
私の為に頑張ってくれたほむらちゃんだって裏切って、しまいには世界中の人を巻き込んで!
私は、私自身の手で、全てを壊しちゃったの!」
それは、それらを手に入れるどころか、自ら壊してしまった事への罪悪感。
クリームヒルト「こんな私だもん、そんな資格はない、って言うのは良く分かってる。
でも、それでも、ほむらちゃんはこんな私の事も覚えていてくれたの!
外の世界から、完全に忘れ去られた私にもまだきちんと覚えている人(居場所)があるんだ、ってそう思わせてくれたの」
後悔と卑下に苛まれた少女に、それはどれほどの救いとなったのであろう。
全てを失い、ゼロからのやり直しを覚悟していたクリームヒルトにとって、まさしくそれは最後の希望だったに違いない。
クリームヒルト「私は怖いの、私の居場所が無くなるのが……、貴女と言う存在に書き換えられて、完全に消えちゃうのが!」
クリームヒルトの瞳から、光る雫が零れ落ち、頬を伝う。
最後の希望すら奪われてしまうのではないかと言う不安が、強くあろうと、やり直そうと決意した少女を、こんなにも弱くしてしまったのだ。
クリームヒルト「お願いだから、私から最後の居場所を盗らないで! そこに居て良いんだよ、って認めてよ!」
まどか「…………」
まどかはなにも言うことが出来なかった。
目の前で涙ながらに叫ぶ“魔女・クリームヒルト”も、自分自身と同じ、“少女・鹿目まどか”なのだと気付いてしまったから。
そこに居たのは、世界を滅ぼした最悪の魔女ではなく、自分の居場所を守りたいと真摯に願う一人の少女だった。
ただ一度、間違ってしまっただけで、居場所を失ってしまった悲しい少女が、そこに居た。
まどか(あはは、これじゃあ恨まれちゃっても、仕方ないよね……)
まどかがなにも出来ずに居ると、クリームヒルトは持っていた弓を構えた。
そのままなにも言わずに魔力の矢を生成し、鏃をまどかへと向ける。
クリームヒルトの纏う厄の気配が一気に強くなり、その表情が憎悪に染まる。
それと同時に極めて濃い穢れが二人の周囲を取り囲み、霊夢ですら近寄れなくなってしまう。
クリームヒルト「それじゃ、死んでね」
まどか「っ!?」
クリームヒルトがゆっくりと弓を引き絞り、まどかが目を瞑ったその時の事だった。
鋭い声と共にその人物がその場に割り込んだのは……
???「やめなさい!」
聞きなれた声に、よく見知った姿に、クリームヒルトは目を見張る。
まどかがゆっくりと顔を上げると、クリームヒルトの前に立ちふさがるように、まどかを庇うように、一人の女性がその場に立っているのが見えた。
そこに居たのは、クリームヒルトが幻想郷で最初に出会った相手であり、幻想郷での居場所を作ってくれた亡霊、西行寺幽々子だった。
511: 東方焔環神 2011/12/17(土) 11:05:16.54 ID:ksixEzXJ0
幽々子「やめなさい、それ以上は絶対にしちゃダメよ。 クリームヒルトちゃん」
いつも見せる友への優しい笑顔ではなく、どこまでも真剣な幽々子の眼差しに、クリームヒルトは一瞬たじろぐ。
が、すぐに冷徹な笑みを浮かべると、低い声で幽々子に問いかける。
クリームヒルト「なに? 幽々子さんも私の邪魔をするの?
私とほむらちゃんを引き裂こうとするなら、相手が幽々子さんでも容赦しないよ」
幽々子「あら? そんなつもりは無いわ。 馬に蹴られるのは嫌だもの。
でもね、妬みや厄なんていう低俗なモノに憑かれて、一時の激情で間違った道に進もうとしている親友を見過せる程、私は薄情者じゃないの」
クリームヒルトのそんな言葉を聞いても、幽々子は動じなかった。
逆に、周囲で見ている者がすくんでしまう様な、有無を言わさぬ眼力でもって、クリームヒルトを射抜く。
クリームヒルト「どうしてもやめるつもりは無いんだね?」
幽々子「当然よ。 クリームヒルトちゃんは純真で傷つきやすい子なの。 これ以上、クリームヒルトちゃんが傷つく前に、止めさせてもらうわ」
クリームヒルト「交渉決裂だね。 それじゃあ……」
クリームヒルト&幽々子『ちょっとだけ、本気だすよ(わ)』
霊夢「ちょっ、やめなさい二人とも! アンタたちが本気なんか出したらどうなると思ってるの!? 本当に殺しあうつもり!?」
殆ど同時に、殆ど同じ言葉をクリームヒルトと幽々子が呟いたのを見て、霊夢が声を上げる。
だが、両者とも、引き下がるつもりは一切無かった。
幽々子は、それでも尚、飛び込んでこようとする霊夢を手で制する。
幽々子「止めないで頂戴、博麗の巫女。
クリームヒルトちゃんは私にとって妹みたいな存在なの。 だからこそ、取り返しのつかなくなる前に止めたいのよ。
こればっかりは他の誰かに任せる気も、このまま引き下がる気も無いわ」
幽々子の言葉が終わると、クリームヒルトは無言でスペルへと魔力を込め始める。
幽々子もまた、霊力を手にしたスペルへと練り込んでいく。
そして……
クリームヒルト「行くよ、幽々子さん……」
幽々子「ええ、いつでもいいわよ」
クリームヒルト&幽々子「「勝負っ!」」
『西行寺無余涅槃』
『幸ばかりの天への誘い』
ほむら「やめてえええええええええぇぇぇぇっ!!」
それはクリームヒルトたちが同時にスペルを発動した、そのときの事だった。
そんな絶叫と共にクリームヒルトと幽々子の間にほむらが飛び込んできて……、その身体を、両者の放った弾幕が貫いた。
518: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:19:24.94 ID:+Qld3n350
――――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女】 @ 無縁塚 ―――――――――
クリームヒルト「!!?」
幽々子「えっ? あっ、暁美さん!?」
ほむら「かはっ……」
私たちの弾幕の直撃を受け、傷だらけになったほむらちゃんの身体がその場に崩れ落ちるのを、私はただ見ていることしか出来なかった。
何が起こったのか理解するよりも早く、私は全身から一気に血の気が引くのを感じた。
それと同時に、私の全身を支配していた熱のようなモノが一気に消えうせて、冷酷な事実が私を現実に引き戻した。
クリームヒルト「っ!? ほ、ほむらちゃん!?」
その事実を認識すると同時に、私は持っていたスペルを全部その場に投げ捨てて、ほむらちゃんのもとに駆け寄っていた。
クリームヒルト「ほむらちゃん! しっかりして!」
ほむら「……まどか、貴女……! 良かった。 正気に戻ったのね……」
涙ながらに私がほむらちゃんを抱きかかえると、ほむらちゃんは心の底から安心したと言うように微笑んでみせる。
クリームヒルト「なんで、どうしてこんな事したの!?」
ほむら「どうして? 決まってるじゃない、貴女の事が大切だからよ……。
他ならない、今、私の目の前にいる貴女の事がね……。 この気持ちに関しては概念のまどかも関係ないわ」
クリームヒルト「うっ……うぅっ、ごめんほむらちゃん。 私、勝手に勘違いして、早とちりして……、ほむらちゃんの事まで疑って……」
急速に滲む私の視界の中で、ほむらちゃんはゆっくりと首を横に振る。
ほむら「良いのよ。 貴女は厄のせいで嫌な夢を見ていただけ、それだけなんだから……」
クリームヒルト「ううん、それは違うよ。 あれも私の一部、私の心の弱い部分が作り出した、私自身なの」
ほむら「あら、なら嬉しいわ……」
クリームヒルト「?」
ほむらちゃんの言った言葉の意味が理解出来ずにいると、ほむらちゃんはちょっと意地悪げな笑みを浮かべて、私に問い掛ける。
クリームヒルト「!!?」
幽々子「えっ? あっ、暁美さん!?」
ほむら「かはっ……」
私たちの弾幕の直撃を受け、傷だらけになったほむらちゃんの身体がその場に崩れ落ちるのを、私はただ見ていることしか出来なかった。
何が起こったのか理解するよりも早く、私は全身から一気に血の気が引くのを感じた。
それと同時に、私の全身を支配していた熱のようなモノが一気に消えうせて、冷酷な事実が私を現実に引き戻した。
クリームヒルト「っ!? ほ、ほむらちゃん!?」
その事実を認識すると同時に、私は持っていたスペルを全部その場に投げ捨てて、ほむらちゃんのもとに駆け寄っていた。
クリームヒルト「ほむらちゃん! しっかりして!」
ほむら「……まどか、貴女……! 良かった。 正気に戻ったのね……」
涙ながらに私がほむらちゃんを抱きかかえると、ほむらちゃんは心の底から安心したと言うように微笑んでみせる。
クリームヒルト「なんで、どうしてこんな事したの!?」
ほむら「どうして? 決まってるじゃない、貴女の事が大切だからよ……。
他ならない、今、私の目の前にいる貴女の事がね……。 この気持ちに関しては概念のまどかも関係ないわ」
クリームヒルト「うっ……うぅっ、ごめんほむらちゃん。 私、勝手に勘違いして、早とちりして……、ほむらちゃんの事まで疑って……」
急速に滲む私の視界の中で、ほむらちゃんはゆっくりと首を横に振る。
ほむら「良いのよ。 貴女は厄のせいで嫌な夢を見ていただけ、それだけなんだから……」
クリームヒルト「ううん、それは違うよ。 あれも私の一部、私の心の弱い部分が作り出した、私自身なの」
ほむら「あら、なら嬉しいわ……」
クリームヒルト「?」
ほむらちゃんの言った言葉の意味が理解出来ずにいると、ほむらちゃんはちょっと意地悪げな笑みを浮かべて、私に問い掛ける。
519: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:25:25.83 ID:+Qld3n350
ほむら「だって、私といつまでも一緒に居るって言う、あの言葉もまどかの本心なのでしょう?」
クリームヒルト「ほむらちゃん……」
ほむら「お願いまどか……、笑って……。 笑って、私に笑顔を見せて頂戴……」
クリームヒルト「うん……、うん……」
力の無い笑顔で懇願するほむらちゃんに応えて、私は笑顔を作る。
涙は止められなかったけど、出来る限りの笑顔を、ほむらちゃんへと向ける。
私の笑顔を見たほむらちゃんは優しく微笑むと……
ほむら「ふふっ……、やっぱりまどかは……笑顔がよく似合っ…………(ガクッ」
そのまま動かなくなってしまった。
クリームヒルト「ほむらちゃん!? ほむらちゃん、しっかりして! ほむらちゃああああぁぁぁん!」
ほむら「…………」
まどか「そん……な……」
安らかな顔のまま、ぐったりして動かないほむらちゃんの身体を、私は半ば取り乱しながら揺さぶり続ける。
概念の私ですら呆然と見ているだけしか出来ない状況に、私の恐慌状態が限度を超えかけて……、
そこに、何処からともなく現れた早苗さんが割り込んで来て、ほむらちゃんに話しかけた。
早苗「えー、空気読めとか言われそうですけど、……ほむらさん、そろそろ洒落じゃ済まなくなるので起きてください(デコピン」
ほむら「あいたっ!?」
クリームヒルト「へ? ほむら……ちゃん?」
早苗さんのデコピンを受けてほむらちゃんが飛び起きると言う事態に、私は自分の目を疑った。
呆然としている私の前で、早苗さんはほむらちゃんにソウルジェムを差し出しつつ、怒ったような口調で叱りつける。
早苗「それくらい我慢してください。 当初の手筈を無視して、無茶やった罰です。 あと、コレ返しますね」
ほむら「だって、殺しあう、なんて物騒な言葉を聞いたら、いてもたっても居られなかったのよ。
本当にそんな雰囲気だったし、それに、被弾しても大丈夫だ、って聞いてたから……」
でも案外痛くて一瞬、本当に死んだかと思ったわ、とほむらちゃんが呟くと、早苗さんが当然だと言うように肩をすくめる。
早苗「それはそうですよ。 紫さんが弄ったのはあくまで当たり判定と、死属性防御だけですからね。
あそこまでもろに弾幕に突っ込むことなんか想定してないと思いますし……」
クリームヒルト「あ……、えっ? 当たり判定……?」
幽々子「ごめんなさいね、クリームヒルトちゃん、吃驚させちゃったわよね? 実は暁美さんはね、紫に頼んで、味噌っかす状態になっていたのよ」
クリームヒルト「味噌っかす……?」
幽々子さんの言葉に私が鸚鵡返しに呟くと、早苗さんが困ったような笑顔で頷いてみせる。
520: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:32:21.54 ID:+Qld3n350
早苗「ええ、幽々子さんの弾幕で、ギリギリまで追い込んで、そこに説得役のほむらさんが介入する、って手筈だったんですけど……」
そう言うと早苗さんは“当初の手筈”について一通り話してくれた。
どうやらほむらちゃんが突っ込んできたのは、最初から織り込み済みだったようで、万が一への対策も、色々と行っていたらしい。
ほむら「私が我慢出来なくて、少し早く飛び出しちゃったのよ……」
早苗「紫さんのことだからほむらさんが飛び出しちゃった場合も想定内……、と言うかむしろ筋書き通りだったりして……」
幽々子「可能性としては高いわね。 紫の案にしてはやけに温いな、と思ってたのよ。 私まで騙すなんて……、後でお話する必要があるわね」
すまなさそうに目を伏せるほむらちゃんや、疲れたような顔をする幽々子さんたちの言葉を聞いて、私はようやく何が起きていたのかを理解した。
紫さんの能力を使えば、例え見た目の上で弾幕の直撃を受けても、弾幕を受けていないことにすることが出来てしまうわけで……、
クリームヒルト「それじゃあ、ほむらちゃんはなんともないの?」
ほむら「ええ、当たった時には本当に痛かったけど……、まどかたちに心配をかけた罰ね……」
私の漏らした呟きに、ほむらちゃんたちが頷くのを見て、私は心底ほっとした。
心底ほっとして、そしてひとしきり安堵すると、私の中にそれらとは違う、別の感情が芽生え始める。 それは……
クリームヒルト「…………ほむらちゃん、幽々子さん、早苗さん、ちょっとお話があるんだけど、とりあえず正座してくれないかな?」
声を出した私自身が驚くぐらい低い声が私の口から飛び出して、ほむらちゃんたちの身体がピクリと震える。
ゆっくりと私の方を向いたほむらちゃんと幽々子さんと早苗さんの表情は、明らかに引きつっていた。
ほむら「ま、まどか? 顔がなんだか怖いのだけど……、落ち着いて、ね?」
幽々子「そうよクリームヒルトちゃん、想定外だったとは言え、万事丸く収まったんだから良いじゃない」
早苗「わ、私は反対しましたよ? いくらなんでも危険すぎる、って……。 でも、紫さんの案ならどうにかなるかなー、と……」
幽々子「ちょっ、守矢の巫女!? その言葉は火に油よ!」
三人はどうにかこの場を取り繕って、私を宥めようとしていたけど、私の怒りは収まらない。
私は、最後の抵抗を試みるほむらちゃんたちに、はっきりとした口調でその言葉を叩き付けた。
クリームヒルト「 せ い ざ !! 」
ほむゆゆ早苗「「「はい……」」」
521: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:39:14.49 ID:+Qld3n350
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
正座をさせたほむらたちに、先程の身体を張りすぎたドッキリまがいの件について、クリームヒルトがお説教を始めてから数分が経っていた。
まどかが、そんな悪戯を叱る姉のようなクリームヒルトの姿を見ていると、まどかの隣にスキマが現れ、そこから紫が顔を出す。
紫「どうだった? この世界での魔女を実際に見た感想は?」
不敵な笑みを浮かべながら尋ねてくる紫に、まどかはクリームヒルトたちから視線を外すことなく答える。
まどか「私、今まで魔女は魔法少女を救うために消さなきゃいけない存在だ、って思ってました。
でも、本当は違ったんですね。 魔女も、魔法少女と同じように救われなくちゃいけない存在だったんですね……」
紫「貴女がそう勘違いしてしまったのは仕方がないことよ。 貴女たちにとってはそれが常識だったんですもの……。
ましてや、願い事をした時の貴女は普通の人間だったのでしょう? その時点でアレ以上の答えを出すのは不可能に近いわ。
貴女は、貴女がやれるだけの事をやったの。 悔やむ事なんて何一つとしてないのよ……」
まどか「でも……」
尚も言葉を続けようとするまどかを紫は手で制した。
振り向いたまどかに、紫は穏やかに微笑んでみせながら、首を横に振る。
紫「霊夢の言ったことなら気にする必要はないわ。
妖怪との共存が当たり前な霊夢と貴女たちとじゃ、価値観が違い過ぎるのよ。 一つの参考意見として気に留めておいて貰えるだけで充分……」
それは世辞でも慰めでもない、紫の本心だった。
妖怪や怨念が一般的な存在ではない現代の外の世界に於いて、魔女と言う存在はかつての妖怪と同じ様に、食うか食われるかの相手であり、
そこに遠慮や相互理解が入り込む余地が殆どないというのは、妖怪の賢者である紫自身が良く分かっている。
同じ妖怪としては、消滅ではなく浄化と言う手段を用いて欲しい所ではあるが、生死の境でそれを要求するのは酷だろう。
紫は言葉を一旦区切ると、脇へと目線を送る。
ほむらたちがお説教を受けていると言う珍しい光景に、マミたち魔法少女や、意識を取り戻したアリスを含む幻想郷の住人たちが、
クリームヒルトたちのもとに集まって来ているのが、視線の先に見えた。
紫「……でもそうね、敢えて言わせてもらうなら、これからの行動で見せて頂戴」
まどか「これから?」
紫「ええ、魔女がどういう存在なのかを正確に理解した今の貴女なら、出せるでしょう? 皆を救って、影で泣く者が一人として出ない、本当の正解を……」
紫の言葉に、まどかも再度、クリームヒルトたちの方を見た。
お説教を受けている三人も、周りで見守っている霊夢やマミたちも、小言を続けるクリームヒルトも、みんな笑顔を浮かべていた。
それは苦笑だったり、呆れ混じりの笑みだったり、様々ではあったが、それでも、皆が笑っていた。
その光景を見て、まどかもふっと微笑むと、力強く頷いた。
まどか「…………はい。 紫さん、色々とお手数をお掛けしますけど、お願いします。 “私”たちの事……」
紫「その点も気にする必要はないわ。 だって幻想郷は……」
「全てを受け入れる土地、ですもの……」
正座をさせたほむらたちに、先程の身体を張りすぎたドッキリまがいの件について、クリームヒルトがお説教を始めてから数分が経っていた。
まどかが、そんな悪戯を叱る姉のようなクリームヒルトの姿を見ていると、まどかの隣にスキマが現れ、そこから紫が顔を出す。
紫「どうだった? この世界での魔女を実際に見た感想は?」
不敵な笑みを浮かべながら尋ねてくる紫に、まどかはクリームヒルトたちから視線を外すことなく答える。
まどか「私、今まで魔女は魔法少女を救うために消さなきゃいけない存在だ、って思ってました。
でも、本当は違ったんですね。 魔女も、魔法少女と同じように救われなくちゃいけない存在だったんですね……」
紫「貴女がそう勘違いしてしまったのは仕方がないことよ。 貴女たちにとってはそれが常識だったんですもの……。
ましてや、願い事をした時の貴女は普通の人間だったのでしょう? その時点でアレ以上の答えを出すのは不可能に近いわ。
貴女は、貴女がやれるだけの事をやったの。 悔やむ事なんて何一つとしてないのよ……」
まどか「でも……」
尚も言葉を続けようとするまどかを紫は手で制した。
振り向いたまどかに、紫は穏やかに微笑んでみせながら、首を横に振る。
紫「霊夢の言ったことなら気にする必要はないわ。
妖怪との共存が当たり前な霊夢と貴女たちとじゃ、価値観が違い過ぎるのよ。 一つの参考意見として気に留めておいて貰えるだけで充分……」
それは世辞でも慰めでもない、紫の本心だった。
妖怪や怨念が一般的な存在ではない現代の外の世界に於いて、魔女と言う存在はかつての妖怪と同じ様に、食うか食われるかの相手であり、
そこに遠慮や相互理解が入り込む余地が殆どないというのは、妖怪の賢者である紫自身が良く分かっている。
同じ妖怪としては、消滅ではなく浄化と言う手段を用いて欲しい所ではあるが、生死の境でそれを要求するのは酷だろう。
紫は言葉を一旦区切ると、脇へと目線を送る。
ほむらたちがお説教を受けていると言う珍しい光景に、マミたち魔法少女や、意識を取り戻したアリスを含む幻想郷の住人たちが、
クリームヒルトたちのもとに集まって来ているのが、視線の先に見えた。
紫「……でもそうね、敢えて言わせてもらうなら、これからの行動で見せて頂戴」
まどか「これから?」
紫「ええ、魔女がどういう存在なのかを正確に理解した今の貴女なら、出せるでしょう? 皆を救って、影で泣く者が一人として出ない、本当の正解を……」
紫の言葉に、まどかも再度、クリームヒルトたちの方を見た。
お説教を受けている三人も、周りで見守っている霊夢やマミたちも、小言を続けるクリームヒルトも、みんな笑顔を浮かべていた。
それは苦笑だったり、呆れ混じりの笑みだったり、様々ではあったが、それでも、皆が笑っていた。
その光景を見て、まどかもふっと微笑むと、力強く頷いた。
まどか「…………はい。 紫さん、色々とお手数をお掛けしますけど、お願いします。 “私”たちの事……」
紫「その点も気にする必要はないわ。 だって幻想郷は……」
「全てを受け入れる土地、ですもの……」
522: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:41:19.31 ID:+Qld3n350
まどか「全てを受け入れる、ですか……。 いいですね、そう言うの……」
紫「あら、結構大変よ。 癖の多いヤツばっかり集まるんですもの」
まぁ、それが楽しいのだけどね、と言って微笑む紫。
そんな紫を見て、まどかは声音を真面目なものに変えて、声をかける。
まどか「ところで紫さん」
紫「なにかしら?」
まどか「さっきのほむらちゃんの一件、私も本当に驚いたんですよ。 それこそ心臓が止まっちゃうんじゃないかと思うほど……」
先ほどのクリームヒルトと同じくらい、いや、それ以上に低い声でそう呟きながら、まどかが紫の肩をしっかりと掴む。
紫の顔がいつになく引きつったものになり、まどかから思わず目を逸らす。
まどか「あっちの“私”がそうだったように、私にとってもほむらちゃんは大切な友達なの。
だから、あっちの“私”の気持ちはよーく、分かるんだ……。 ちょっと二人で、弾幕戦(お話し)しませんか? 八雲紫さん?」
この後、円環の神さまと、妖怪の賢者による一大弾幕戦が勃発し、無縁塚が今度こそ焦土と化すのだが、
まぁ、蛇足にしかならないので省かせてもらおう。
523: 1 2011/12/18(日) 20:43:20.99 ID:+Qld3n350
以下、推奨BGM
『KAZE NO KIOKU』(サークル:SOUND HOLIC アルバム:風-KAZE- より)
http://www.youtube.com/watch?v=1J0TfSmsm-U
『KAZE NO KIOKU』(サークル:SOUND HOLIC アルバム:風-KAZE- より)
http://www.youtube.com/watch?v=1J0TfSmsm-U
524: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:49:35.07 ID:+Qld3n350
―――――――――――――― その後 ―――――――――――――――――
――――――――― 【救済の魔女と幻想の住人】 @ 寺子屋前 ―――――――――
ワルプルギス「あっ、お姉ちゃんおはよー! ……あれ?」
パトリシア「あら、クリームヒルトじゃない……、って、どうしたの? その髪形?」
朝、寺子屋の前でばったり出くわしたワルプルギスとパトリシアは、クリームヒルトの姿を見るなり首を傾げる。
二つの赤いリボンと、ショートのツインテールが特徴的だったその髪型が、いつの間にかショートポニーになっていたからだ。
クリームヒルト「おはよう、二人とも……。 これ? ちょっと変えてみたんだ、似合うかな?」
パトリシア「似合ってるとは思うわ。 でもホントにどうしたの? まさか色恋沙汰とか?」
ベッタベタな勘違いをしてみせるパトリシアに、クリームヒルトは手と首を振って、慌てて訂正する。
クリームヒルト「そ、そんなのじゃないよ! ……ちょっとリボンをね、友達に貸しちゃったんだ」
パトリシア「友達に? オクタヴィアか、西行寺さん?」
クリームヒルト「うぅん、ちょっと遠くに住んでる、私の大切なお友達……」
クリームヒルトはそう呟くと、遠くを見るような目をしながら、ふっと微笑んだ。
何の話なのか、パトリシアが見当を付けかねていると、それまで話を聞いていたワルプルギスが、思い出したように呟く。
ワルプルギス「ん~、それってもしかしてほむらおねえちゃ……もがっ!?」
クリームヒルト「さ~て、ワルプルギスちゃん、学校に行こうね~」
言いかけたワルプルギスの口をクリームヒルトは手で塞ぐと、寺子屋へと押し込むようにその背中を押しはじめる。
パトリシア「何この慌てっぷり……、って言うかほむら、って……」
文「詳しく聞きたいですか?」
パトリシア「うわあっ!? びっくりした……、誰かと思ったら、鴉天狗の新聞屋じゃない……」
あからさまな態度にパトリシアが訝しげな顔をしていると、いつの間に現れたのか文が顔を出してくる。
文「あやや、これは失礼しました。 で、お話の方ですけど、まずはこの定期講読の契約書にサインを……」
クリームヒルト「文さん? 一体何をしてるんですか?」
文「何ってそれはクリームヒルトさんの話をダシに新聞の契約を……って、クリームヒルトさん!?」
言いかけた文は、にこやかに笑っているクリームヒルトに気が付き、思わず後ずさる。
顔をひきつらせる文に対し、クリームヒルトは笑顔を浮かべたまま文に詰め寄る。
クリームヒルト「おかしいなぁ、あの時、あの場所には私とほむらちゃんしか居なかった筈なんだけど……、どうして文さんが知ってるんです?」
幽々子さんや概念の私だって席を外してたのになぁ~、と呟くクリームヒルトに、文の顔が瞬く間に蒼くなる。
実はあの時、文は連絡役を早々に済ませた後、少し離れた場所で、隠れてずっと覗いて居たのだが、今この場で、そんな事が言える訳がない。
文「クリームヒルトさん、これには深い事情がありましてね……、とりあえずまずは私の話を……」
クリームヒルト「うん、それ無理」
クリームヒルトは一言で切って捨てると、魔力弾を生成し、それを文目掛けて解き放つ。
因果 『タイム・リピーター』
――――――――― 【救済の魔女と幻想の住人】 @ 寺子屋前 ―――――――――
ワルプルギス「あっ、お姉ちゃんおはよー! ……あれ?」
パトリシア「あら、クリームヒルトじゃない……、って、どうしたの? その髪形?」
朝、寺子屋の前でばったり出くわしたワルプルギスとパトリシアは、クリームヒルトの姿を見るなり首を傾げる。
二つの赤いリボンと、ショートのツインテールが特徴的だったその髪型が、いつの間にかショートポニーになっていたからだ。
クリームヒルト「おはよう、二人とも……。 これ? ちょっと変えてみたんだ、似合うかな?」
パトリシア「似合ってるとは思うわ。 でもホントにどうしたの? まさか色恋沙汰とか?」
ベッタベタな勘違いをしてみせるパトリシアに、クリームヒルトは手と首を振って、慌てて訂正する。
クリームヒルト「そ、そんなのじゃないよ! ……ちょっとリボンをね、友達に貸しちゃったんだ」
パトリシア「友達に? オクタヴィアか、西行寺さん?」
クリームヒルト「うぅん、ちょっと遠くに住んでる、私の大切なお友達……」
クリームヒルトはそう呟くと、遠くを見るような目をしながら、ふっと微笑んだ。
何の話なのか、パトリシアが見当を付けかねていると、それまで話を聞いていたワルプルギスが、思い出したように呟く。
ワルプルギス「ん~、それってもしかしてほむらおねえちゃ……もがっ!?」
クリームヒルト「さ~て、ワルプルギスちゃん、学校に行こうね~」
言いかけたワルプルギスの口をクリームヒルトは手で塞ぐと、寺子屋へと押し込むようにその背中を押しはじめる。
パトリシア「何この慌てっぷり……、って言うかほむら、って……」
文「詳しく聞きたいですか?」
パトリシア「うわあっ!? びっくりした……、誰かと思ったら、鴉天狗の新聞屋じゃない……」
あからさまな態度にパトリシアが訝しげな顔をしていると、いつの間に現れたのか文が顔を出してくる。
文「あやや、これは失礼しました。 で、お話の方ですけど、まずはこの定期講読の契約書にサインを……」
クリームヒルト「文さん? 一体何をしてるんですか?」
文「何ってそれはクリームヒルトさんの話をダシに新聞の契約を……って、クリームヒルトさん!?」
言いかけた文は、にこやかに笑っているクリームヒルトに気が付き、思わず後ずさる。
顔をひきつらせる文に対し、クリームヒルトは笑顔を浮かべたまま文に詰め寄る。
クリームヒルト「おかしいなぁ、あの時、あの場所には私とほむらちゃんしか居なかった筈なんだけど……、どうして文さんが知ってるんです?」
幽々子さんや概念の私だって席を外してたのになぁ~、と呟くクリームヒルトに、文の顔が瞬く間に蒼くなる。
実はあの時、文は連絡役を早々に済ませた後、少し離れた場所で、隠れてずっと覗いて居たのだが、今この場で、そんな事が言える訳がない。
文「クリームヒルトさん、これには深い事情がありましてね……、とりあえずまずは私の話を……」
クリームヒルト「うん、それ無理」
クリームヒルトは一言で切って捨てると、魔力弾を生成し、それを文目掛けて解き放つ。
因果 『タイム・リピーター』
525: 東方焔環神 2011/12/18(日) 20:53:33.61 ID:+Qld3n350
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
突如響いた爆発音に目をやると、寺子屋の方から噴煙が上がっているのが見えた。
魔理沙「なんだ? またやってるのかアイツらは……、懲りないヤツらだな……」
人里近くで営業していた屋台で夜通し飲んでいた魔理沙は、八目鰻を頬張りながら眉をひそめた。
魔理沙の言葉に、隣で一緒に飲んでいたオクタヴィアが、心底呆れた表情でツッコミを入れる。
オクタヴィア「アンタも他人の事を言える立場じゃないでしょ? またアリスの家でやらかしたそうじゃない」
今度はドアだっけ? と、オクタヴィアが尋ねると、魔理沙は乾いた笑いを漏らす。
ひとしきり笑ってから、魔理沙は酒をあおると、空を見上げながら呟いた。
魔理沙「今頃アイツら、何してるんだろうな……」
ミスティア「…………」
誰の事なのか魔理沙は言わなかったし、ミスティアも何も言わなかったが、それでもなんの事なのか察したオクタヴィアは、同じように空を見上げる。
思い出すのは、再会の約束だけを残して、盆の終わりと共に外へと帰って行った仲間たちの姿。
オクタヴィア「元気でやってるんじゃないかな。 暫くこっちに来る気はない、って言ってたし……」
魔理沙「それでお前は、寂しくないのか?」
オクタヴィア「寂しくない、って言ったら嘘になるけど、あたしにはクリームヒルトたちが居るし、それに……」
魔理沙「?」
オクタヴィア「アンタたちも居てくれるんでしょ?」
オクタヴィアの言葉に魔理沙は一瞬だけ、ぽかんと口を開けたままオクタヴィアを見て……、それから口元をつり上げた。
魔理沙「言うようになったな、お前も……。 それじゃ、外で頑張ってるアイツらの為に……」
そう言ってコップを差し出してくる魔理沙の意図を察し、オクタヴィアも自身のコップを手に取った。
オクタヴィアのコップに注がれているのは烏龍茶なのだか、この際それはどうでも良いだろう。
オクタ&魔理沙「「……乾杯」」
突如響いた爆発音に目をやると、寺子屋の方から噴煙が上がっているのが見えた。
魔理沙「なんだ? またやってるのかアイツらは……、懲りないヤツらだな……」
人里近くで営業していた屋台で夜通し飲んでいた魔理沙は、八目鰻を頬張りながら眉をひそめた。
魔理沙の言葉に、隣で一緒に飲んでいたオクタヴィアが、心底呆れた表情でツッコミを入れる。
オクタヴィア「アンタも他人の事を言える立場じゃないでしょ? またアリスの家でやらかしたそうじゃない」
今度はドアだっけ? と、オクタヴィアが尋ねると、魔理沙は乾いた笑いを漏らす。
ひとしきり笑ってから、魔理沙は酒をあおると、空を見上げながら呟いた。
魔理沙「今頃アイツら、何してるんだろうな……」
ミスティア「…………」
誰の事なのか魔理沙は言わなかったし、ミスティアも何も言わなかったが、それでもなんの事なのか察したオクタヴィアは、同じように空を見上げる。
思い出すのは、再会の約束だけを残して、盆の終わりと共に外へと帰って行った仲間たちの姿。
オクタヴィア「元気でやってるんじゃないかな。 暫くこっちに来る気はない、って言ってたし……」
魔理沙「それでお前は、寂しくないのか?」
オクタヴィア「寂しくない、って言ったら嘘になるけど、あたしにはクリームヒルトたちが居るし、それに……」
魔理沙「?」
オクタヴィア「アンタたちも居てくれるんでしょ?」
オクタヴィアの言葉に魔理沙は一瞬だけ、ぽかんと口を開けたままオクタヴィアを見て……、それから口元をつり上げた。
魔理沙「言うようになったな、お前も……。 それじゃ、外で頑張ってるアイツらの為に……」
そう言ってコップを差し出してくる魔理沙の意図を察し、オクタヴィアも自身のコップを手に取った。
オクタヴィアのコップに注がれているのは烏龍茶なのだか、この際それはどうでも良いだろう。
オクタ&魔理沙「「……乾杯」」
527: 東方焔環神 2011/12/18(日) 21:00:09.74 ID:+Qld3n350
――――――――― 【焔の魔法少女】 @ 外の世界・見滝原市市街 ―――――――――
キュゥべえ「おや? ほむら、髪型を変えたんだね」
キュゥべえにしては珍しく、他愛ないと言うか雑談染みた言葉を漏らしたのは、
いつも通り魔獣狩りに現れたほむらが、いつもと違う姿でやって来た日の事だった。
ほむら「ちょっとね……、色々あったのよ……」
冷めた口調で素っ気なく返事をしていると、先に来てほむらを待っていた杏子が物珍しそうに身を乗り出してくる。
杏子「へー、リボン増やしてツインテールにしたのか……。 似合ってるじゃん」
ほむら「ありがと、お世辞でも嬉しいわ」
杏子「バーカ、誰がお前にお世辞なんか使うかよ。 人の好意は素直に受け取っておくもんだぞ」
互いに苦笑しながら、そんなやり取りをしていると、キュゥべえに聞かれない為だろう、幾分か声のトーンを落としたマミが、ほむらの耳元で囁く。
マミ「ところで暁美さん、その増えた方のリボンってもしかして……」
ほむら「これ? そうよ、あっちの“まどか”から預かったリボンよ。 御守り代わりにつけておこうと思ってね……」
杏子「おいおい、再会した時に返すんだろ、それ? 無くしたりするなよ?」
話を聞いてひそひそ話に加わった杏子に、ほむらは当然だと言うように頷いてみせる。
ほむら「誰が無くすものですか、肌身離さず持って歩くつもりよ」
胸を張らんばかりの勢いで、ほむらが宣言すると、少し憂鬱そうな顔をしたマミが、小さなため息をつく。
マミ「はぁ、妬けちゃうわねぇ……。 そんな一生モノの友達、一人でいいから欲しいわ」
ほむら「マミ、貴女は何を言っているの?」
杏子「だな、今のは聞き捨てならねーな」
マミ「?」
訝しげな表情をしたほむらたちに一斉に反論され、マミは思わず首を傾げる。
訳が分からないと言いたげなマミの態度に、今度はほむらたちがため息をついた。
ほむら「少なくとも私たちは、マミも同じくらい大切な友達だと思っているのだけど……? ねぇ?」
杏子「アタシらの片思いだったようだな。 ほむら、今夜一杯付き合ってくれよ」
ほむら「やけ酒ね。しょうがないから付き合ってあげる。 マミに嫌われちゃった者同士、朝まで飲みましょう」
呆れ顔から一転、意地悪げな笑みを浮かべつつ、わざとらしい慰め合いをし始めるほむらたちに、マミは顔を真っ赤にすると、声を張り上げた。
マミ「ちょっと!暁美さんも佐倉さんも意地が悪いわよ! それと、二人とも飲酒はダメよ。あっちじゃないんだからね!」
そのまま、コント染みたじゃれ合いを開始する見滝原の魔法少女たち。
そんな彼女たちの姿を見て、完全に茅の外に追い出されてしまったキュゥべえがぼやきとも愚痴ともとれる呟きを、ため息と共に漏らした。
キュゥべえ「やれやれ、お盆の行方不明騒動の後から増えた変な言動のせいで、今日も僕だけ置いてきぼりとか、まったく訳が分からないよ」
キュゥべえ「おや? ほむら、髪型を変えたんだね」
キュゥべえにしては珍しく、他愛ないと言うか雑談染みた言葉を漏らしたのは、
いつも通り魔獣狩りに現れたほむらが、いつもと違う姿でやって来た日の事だった。
ほむら「ちょっとね……、色々あったのよ……」
冷めた口調で素っ気なく返事をしていると、先に来てほむらを待っていた杏子が物珍しそうに身を乗り出してくる。
杏子「へー、リボン増やしてツインテールにしたのか……。 似合ってるじゃん」
ほむら「ありがと、お世辞でも嬉しいわ」
杏子「バーカ、誰がお前にお世辞なんか使うかよ。 人の好意は素直に受け取っておくもんだぞ」
互いに苦笑しながら、そんなやり取りをしていると、キュゥべえに聞かれない為だろう、幾分か声のトーンを落としたマミが、ほむらの耳元で囁く。
マミ「ところで暁美さん、その増えた方のリボンってもしかして……」
ほむら「これ? そうよ、あっちの“まどか”から預かったリボンよ。 御守り代わりにつけておこうと思ってね……」
杏子「おいおい、再会した時に返すんだろ、それ? 無くしたりするなよ?」
話を聞いてひそひそ話に加わった杏子に、ほむらは当然だと言うように頷いてみせる。
ほむら「誰が無くすものですか、肌身離さず持って歩くつもりよ」
胸を張らんばかりの勢いで、ほむらが宣言すると、少し憂鬱そうな顔をしたマミが、小さなため息をつく。
マミ「はぁ、妬けちゃうわねぇ……。 そんな一生モノの友達、一人でいいから欲しいわ」
ほむら「マミ、貴女は何を言っているの?」
杏子「だな、今のは聞き捨てならねーな」
マミ「?」
訝しげな表情をしたほむらたちに一斉に反論され、マミは思わず首を傾げる。
訳が分からないと言いたげなマミの態度に、今度はほむらたちがため息をついた。
ほむら「少なくとも私たちは、マミも同じくらい大切な友達だと思っているのだけど……? ねぇ?」
杏子「アタシらの片思いだったようだな。 ほむら、今夜一杯付き合ってくれよ」
ほむら「やけ酒ね。しょうがないから付き合ってあげる。 マミに嫌われちゃった者同士、朝まで飲みましょう」
呆れ顔から一転、意地悪げな笑みを浮かべつつ、わざとらしい慰め合いをし始めるほむらたちに、マミは顔を真っ赤にすると、声を張り上げた。
マミ「ちょっと!暁美さんも佐倉さんも意地が悪いわよ! それと、二人とも飲酒はダメよ。あっちじゃないんだからね!」
そのまま、コント染みたじゃれ合いを開始する見滝原の魔法少女たち。
そんな彼女たちの姿を見て、完全に茅の外に追い出されてしまったキュゥべえがぼやきとも愚痴ともとれる呟きを、ため息と共に漏らした。
キュゥべえ「やれやれ、お盆の行方不明騒動の後から増えた変な言動のせいで、今日も僕だけ置いてきぼりとか、まったく訳が分からないよ」
528: 東方焔環神 2011/12/18(日) 21:02:49.51 ID:+Qld3n350
まどか、そっちで元気にやってるかしら?
さやかや、幽々子さんたちがついててくれてるとは思うけど、少し心配です。
私たちが、幻想(そっち)に行くその日まで、少し寂しいかも知れないけど、それまでさやかたちと待っててね。
私たちの方は相変わらず魔法少女として人知れず戦う毎日を送っているわ。
マミや杏子たちも元気でやってるから心配しないでね。 もちろん、私も元気よ。
と言うか、あの一件で、私も含めて良い意味で使命感が湧いたようで、みんな張り切りすぎて困るくらい。
マミたちは一番乗り気なのは私だ、なんて言うけど、決してそんな事はないわ……たぶん……いえ、きっと!
貴女から預かったリボンはあっちのまどかのリボンと一緒に、御守り代わりとして使わせてもらってるわ。
二つのリボンを使うために髪型を少し変えたら、事情を知らないキュゥべえに色恋沙汰かと疑われてしまったけど、私としては結構気に入ってるの。
返す頃には少し煤けてしまうかもだけど、約束だけは必ず守るから、見守っていてくれると嬉しいわ。
マミの攻撃が、弾幕戦を意識したモノになったとか、杏子が千歳ゆま、って言う女の子をつれ歩くようになったとか、
色々と話は尽きないのだけど、それらは全部、そっちに行った時の土産話にさせて頂戴。
書き足りない事ばかりなのだけど、今回はこのぐらいで失礼させてもらうわね。
次に会うその日まで、元気でね、まどか。
現世からいつも祈ってます。
暁美ほむらより、私の大切な親友のまどかへ
529: 東方焔環神 2011/12/18(日) 21:06:42.99 ID:+Qld3n350
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
原作
東方project
魔法少女まどか☆マギカ
出演
クリームヒルト・グレートヒェン
西行寺幽々子
博麗霊夢 霧雨魔理沙
東風谷早苗 アリス・マーガトロイド
十六夜咲夜 パチュリー・ノーレッジ
射命丸文 聖白蓮
オクタヴィア シャルロッテ
エリー ゲルトルート
パトリシア イザベル
ギーゼラ エルザマリア
ロベルタ ワルプルギス
暁美ほむら
巴マミ 佐倉杏子
キュゥべえ
美樹さやか(平行世界) 佐倉杏子(平行世界)
魂魄妖夢 上白沢慧音
犬走椛 姫海藤はたて
八坂神奈子 洩矢諏訪子
秋穣子 秋静葉
レミリア・スカーレット 紅美鈴
蓬莱山輝夜 八意永琳
小悪魔 稗田阿求
火焔猫燐 ミスティア・ローレライ
鍵山雛 水橋パルスィ
古明地さとり 多々良小傘
サニーミルク ルナチャイルド
スターサファイア ゾンビフェアリー
八雲紫
鹿目まどか
東方円鹿目・東方焔環神 総合イメージ曲
『コネクト』
(魔法少女まどか☆マギカ OPテーマ)
東方円鹿目 東方パートイメージ曲
『色は匂へど散りぬるを』
(幽閉サテライト)
東方円鹿目・東方焔環神 エンディングイメージ曲
『KAZE NO KIOKU』
(SOUND HOLIC)
参考文献・画像
公式サイト(魔女図鑑)
ピクシブ百科事典
東方元ネタWiki
スペシャルサンクス
弾幕案を投稿して下さった皆さま
本作品を読んで下さった皆さま
原作
東方project
魔法少女まどか☆マギカ
出演
クリームヒルト・グレートヒェン
西行寺幽々子
博麗霊夢 霧雨魔理沙
東風谷早苗 アリス・マーガトロイド
十六夜咲夜 パチュリー・ノーレッジ
射命丸文 聖白蓮
オクタヴィア シャルロッテ
エリー ゲルトルート
パトリシア イザベル
ギーゼラ エルザマリア
ロベルタ ワルプルギス
暁美ほむら
巴マミ 佐倉杏子
キュゥべえ
美樹さやか(平行世界) 佐倉杏子(平行世界)
魂魄妖夢 上白沢慧音
犬走椛 姫海藤はたて
八坂神奈子 洩矢諏訪子
秋穣子 秋静葉
レミリア・スカーレット 紅美鈴
蓬莱山輝夜 八意永琳
小悪魔 稗田阿求
火焔猫燐 ミスティア・ローレライ
鍵山雛 水橋パルスィ
古明地さとり 多々良小傘
サニーミルク ルナチャイルド
スターサファイア ゾンビフェアリー
八雲紫
鹿目まどか
東方円鹿目・東方焔環神 総合イメージ曲
『コネクト』
(魔法少女まどか☆マギカ OPテーマ)
東方円鹿目 東方パートイメージ曲
『色は匂へど散りぬるを』
(幽閉サテライト)
東方円鹿目・東方焔環神 エンディングイメージ曲
『KAZE NO KIOKU』
(SOUND HOLIC)
参考文献・画像
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弾幕案を投稿して下さった皆さま
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530: 東方焔環神 2011/12/18(日) 21:09:44.91 ID:+Qld3n350
―――――――――――――― 十数年後、幻想郷・白玉楼 ――――――――――――――
「こんにちは~」
「あら、いらっしゃい。 ごめんなさいね、急に呼んじゃって」
「いえ、大丈夫ですから……、それで幽々子さん、話って言うのは……」
「ああ、それはね、ちょっと会わせたい人が居るのよ」
「会わせたい人?」
「ええ、貴女の大切な、“お友達”よ……」
「私の大切なお友達、って、まさか……!」
「ええ、そのまさかよ。 久しぶりね、まどか……」
「ほむらちゃん!? ……そっか、とうとうこっちに来ちゃったんだね」
「ええ、だから、あの時の約束、果たしに来たわ」
「ちゃんと覚えててくれたんだね……」
「勿論よ。 一時たりとも忘れた事なんて無いわ。 まどかとの大切な約束だもの」
「ティヒヒ、ありがとう……。 でもほむらちゃん、一つだけ訂正させて、私はまどかじゃなくてクリームヒルトだよ?」
「あら、それなら私も訂正させてもらうわ。 だって私は暁美ほむらじゃなくて……」
―――――――――――――――― 同じ頃、円環の理 ――――――――――――――――
ほむら「今頃、魔女の“私”はあっちのまどかと会ってる頃かしら?」
まどか「気になる?」
ほむら「気にならない、と言ったらウソになるわね。 約束がちゃんと果たせたのか、とか結構色々と……」
まどか「紫さんに頼めば見に行けるよ、行ってみる?」
ほむら「う~ん、今は止めておくわ。 あっちの私とまどかに、水を差しそうで悪いし……、それに……」
まどか「?」
ほむら「貴女とも、積もる話はたくさんあるしね……」
まどか「てぃひひ、そうだね。 それじゃあ私、お茶を用意するね」
ほむら「それならマミやさやかや杏子たちも呼びましょう。 みんなでテーブルを囲んで……ね?」
まどか「……うん! そうだね、ほむらちゃん!」
< 東方焔環神 完 >
「こんにちは~」
「あら、いらっしゃい。 ごめんなさいね、急に呼んじゃって」
「いえ、大丈夫ですから……、それで幽々子さん、話って言うのは……」
「ああ、それはね、ちょっと会わせたい人が居るのよ」
「会わせたい人?」
「ええ、貴女の大切な、“お友達”よ……」
「私の大切なお友達、って、まさか……!」
「ええ、そのまさかよ。 久しぶりね、まどか……」
「ほむらちゃん!? ……そっか、とうとうこっちに来ちゃったんだね」
「ええ、だから、あの時の約束、果たしに来たわ」
「ちゃんと覚えててくれたんだね……」
「勿論よ。 一時たりとも忘れた事なんて無いわ。 まどかとの大切な約束だもの」
「ティヒヒ、ありがとう……。 でもほむらちゃん、一つだけ訂正させて、私はまどかじゃなくてクリームヒルトだよ?」
「あら、それなら私も訂正させてもらうわ。 だって私は暁美ほむらじゃなくて……」
―――――――――――――――― 同じ頃、円環の理 ――――――――――――――――
ほむら「今頃、魔女の“私”はあっちのまどかと会ってる頃かしら?」
まどか「気になる?」
ほむら「気にならない、と言ったらウソになるわね。 約束がちゃんと果たせたのか、とか結構色々と……」
まどか「紫さんに頼めば見に行けるよ、行ってみる?」
ほむら「う~ん、今は止めておくわ。 あっちの私とまどかに、水を差しそうで悪いし……、それに……」
まどか「?」
ほむら「貴女とも、積もる話はたくさんあるしね……」
まどか「てぃひひ、そうだね。 それじゃあ私、お茶を用意するね」
ほむら「それならマミやさやかや杏子たちも呼びましょう。 みんなでテーブルを囲んで……ね?」
まどか「……うん! そうだね、ほむらちゃん!」
< 東方焔環神 完 >
532: 1 2011/12/18(日) 21:26:45.79 ID:+Qld3n350
クリームヒルト・グレートヒェン/鹿目まどか
本作を通しての主人公
クリームヒルトとは名乗っているけど、実際は間違いなく鹿目まどかその人。
この物語は、一度すべてを失ったまどかが、幻想郷でそれらを取り戻すお話です。
今の居場所と、共に生きてくれる友達を円鹿目で、失ったと思った友達と居場所を焔環神で、
それぞれ手にした彼女に幸多い未来が末永く続くことを祈りたいと思います。
その立場上、何度か泣かせてしまった上、焔環神のクライマックスではあんな事をさせてしまいましたが、
正直、私の良心がマッハで擦り切れるかと思いましたよ。ええ、SG真っ黒になるかと本気で……
その分、最後は可能な限り幸せにしてあげたつもりです。
良かったね、まどっち!
西行寺幽々子
本作に於ける総合MVP
助演優秀賞を差し上げるなら間違いなくこの方です。
円鹿目での導入役から、親友ポジション、焔環神では少ないながらも要所要所で決めてくれました。
お陰でオクタヴィアちゃんが割りを食った印象も……
やけにクリームヒルトを気に入ったゆゆ様ですが、無意識の内に生前の自分と重ねて見ていた、と言う裏設定があったりします。
まあ、ゆゆ様の意思と人徳によるものが多いんですけどね……
扇を片手に微笑みながら、いつまでもクリームヒルトたちを見守っていくことでしょう。
頼みましたよ、ゆゆ様
博麗霊夢
円鹿目東方パート主役兼、焔環神助演
今回の霊夢さんはひたすら博麗の巫女に徹してもらっています。
人と妖怪の調停役として、時には人の立場から、またある時には妖怪の立場から、物事を解決に導く存在として動きました。
お陰でかなり真面目な霊夢さんとなり、まど神さまには随分と手厳しい物言いをしたりと、汚れ役もさせてしまいましたが、
普段はいつも通りの霊夢さんをしてますのでご安心を
私の個人的お気に入りは対エルザマリア戦の決着の場面です。
書いてて惚れ惚れしました。 その代わり思いっきり難産だったけどw
霧雨魔理沙
円鹿目東方パート主役兼焔環神助演。
『魔女と魔法使い』がテーマだった第一部に於ける中心人物。
開幕からエクストラまで、彼女らしい勢いで話を引っ張ってくれました。
エクストラの対ロベルタ戦は私の中でも屈指のお気に入りです。
焔環神ではどちらかと言えばトラブルメーカーの印象が強いですが、
決めるときはバッチリ決めている辺り流石の主人公、と言った感じでしょうか。
東風谷早苗
円鹿目及び焔環神助演
幻想入りの先輩であり、クリームヒルトたちのよき理解者として活躍させてもらいました。
たぶん、霊夢さんや魔理沙よりも直接関わる率が高くなってると思います。
特にまどマギキャラが増えた焔環神ではその傾向が強く出ていたかと、
外の世界の事や、お年頃の中高生など、色々な意味で共感できる珍しい東方キャラだと思います。
それだけに霊夢さんや魔理沙ほど、突き抜けた対応が出来ない、と言うジレンマもある訳ですが……
霊夢さん同様、随分と真面目な早苗さんになりましたが、所々ではっちゃけてみせたのは流石だと思います。
余談ですが、早苗さんが主役な前作が無ければこの作品は無かったので、リアルな意味での功労者は彼女です。
533: 1 2011/12/18(日) 21:28:40.30 ID:+Qld3n350
アリス・マーガトロイド
円鹿目及び焔環神助演
突っ込み役から、推理・解説役まで幅広い役割をこなしてくれた縁の下の力持ちです。
円鹿目ではシャルロッテと関わり、焔環神ではマミと絡みました。
合わせようとか狙ったわけではなく、この辺は完全にイメージで出したキャスティングですし、
実際書いていて、いい感じに混ざっていたような気がしますので、マミシャルとは相性が良かったようです。
焔環神で唯一、ピチュってますが、円鹿目と焔環神の両方で撃墜ゼロなのは魔理沙ぐらい(しかもマミの補助アリ)なので脅威の生存率なんですよ。
パチュリー・ノーレッジ
円鹿目助演及び同作エクストラステージ準主役
まずは名前を間違えてゴメンなさい。 本作における私の最大の後悔です。
円鹿目序盤では(筆が)動かない事に定評のあるパッチェさんでしたが、
その代わりエリーと組んだエクストラステージではこっちが心配になるほど動き回ってくれました。
同じ紅魔館パートの咲夜さんがどちらかと言えばシメを担当してましたので、これには助かりました。
焔環神では出番がありませんでしたが、エリー辺りと地下図書館で駄弁っていたのでしょう。
うん、と言うかあのおまけパートが、焔環神の裏パートだったんだよ!(AA略
射命丸文
円鹿目及び焔環神助演
東方パート序章から、焔環神後日談パートまで、お騒がせな情報屋として暗躍してくれました。
彼女が居なかったら、ここまで話は進まなかったと思います。
ぶっちゃけて言うと最強の便利キャ……(ピチューン
ちなみに焔環神に於けるクリームヒルトとほむらの約束を、二人以外で唯一知ってる人です。
この約束が気になる方は “\射命丸!/\射命丸!/\射命丸!/” と書き込むとご覧に……(円環の理
534: 1 2011/12/18(日) 21:34:02.00 ID:+Qld3n350
暁美ほむら
焔環神主役
円鹿目では出番なしでしたが、焔環神ではそのタイトル通り、主役として頑張ってくれました。
間違いなく焔環神で一番身体を張ってた人です。
徒歩移動に生身飛行、拉致監禁、魔女化寸前にラストの特攻……、うん、どこのアクションヒロインだお前。
実は投下が途絶えた時期、書いたけど没になった展開が幾つかあって、その中の一つに、
『ほむらのソウルジェムだけある理由で穢れが溜まりやすくて、魔女化しラスボスになる』
と言うトンデモ展開があったりします。
結局当初の着地点(本作のエピローグ)にもっていけなくなるので没になりましたが、幾つかの伏線ごと没ったのは痛かったなぁ……
(具体的には幻想入りの理由とか、旧地獄で拾われた理由とか、最初期に張ったモノばかり……)
まあ、あのラストは気に入ってますので、幸せに終われたのでヨシとしてます。
ほむほむの魔女の名前は……、皆さまのご想像にお任せします。
オクタヴィア/美樹さやか
円鹿目及び焔環神助演
円鹿目ではクリームヒルト以外では唯一のまどマギ正規キャラとして、幻想入りの苦悩とか色々と担ってくれました。
ゆゆ様の項目でも述べましたが、親友兼相談役ポジションを持っていかれた形となってしまった為、
かなり割を食ってしまいましたが、焔環神では杏子との絡みで、それなりに前に出せたと思います。
杏子の夢とか、鰻屋仮店舗の場面は、個人的に良く書けたと思ってたり、
円鹿目でちょこっと触れましたけど、このオクタヴィアちゃん、恭介くんへの未練は結構残ってます。
それだけに、焔環神で『円環の理』について触れる場面では結構痛々しく思いつつ書いてました。
本編では書けなかったけど、早苗さん辺りとその辺の事で意気投合してそうだなー
巴マミ
焔環神助演
焔環神に於ける癒しパート担当です。
アリスと絡んだ時点では推理役担当にする予定だったのに、どうしてこうなったェ……
と言うかシャルロッテの登場があんなだった時点で、終わってたような気もします。
外の常識に囚われて推理役が出来ないのなら、マミシャルに癒されるしかないじゃない!
……はい、取り乱しました。
まどマギでは先輩キャラでしたが、東方キャラに混じると年下の一人になると言うジレンマを抱えた彼女ですが、
それでも杏子やオクタヴィアの前では頼りになるお姉さんであり続けました。
弾幕戦に影響を受けたマミさんが、現世でどんな技を編み出し、どんな名前をつけたのか、気になりますねー
おぜう様と同レベル……ではないと思う。 たぶん……
佐倉杏子
焔環神助演
焔環神での幻想郷探求パート担当です。
ミスティアと共に色々と巡りながら、雛さまと絡んで、『穢れと厄』と言うキーワードを掘り下げたり、
オクタヴィアの過去を夢で見て、まど神さまや平行世界の存在を比較的早く実感したりと、話を深くする上で活躍しました。
弾幕戦なんか二度とやらない! と言いつつ、最終決戦には一番槍で突っ込んで行っているあたり、流石杏子ちゃんマジ聖女!って感じです。
ちなみに本作に於いて、一回たりともマトモな飛行を経験してません。
この杏子ちゃんは高所恐怖症になってもいいと思います。 うん、書いたの俺なんだけどね……。
そうそう、ミスティアとの絡みが、自分でも驚くほどしっくり来たのが意外でした。
屋台で鰻を食わせても、焼かせても似合うとか、やっぱりこの子放浪娘だ(ピチューン
鹿目まどか(まど神さま)
焔環神助演
焔環神に於ける実質的ラスボスです。 この人にいかにして認められるかが、焔環神最大の焦点でした。
『非常識の世界・幻想郷』が焔環神のテーマでしたので、現世側の常識の権化として動いてもらいました。
『まど神の救済=魔法少女と魔女(穢れた部分)を分離して魔法少女を救済』
としてしまった本作では、ある意味、一番つらい役を押し付けてしまった人でもあります。
霊夢さんにだいぶきつい事を言われましたが、そもそも前提としている立ち位置が全く異なりますので、
幻想郷という現世の中の異世界っぷりが、あの辺りで強調できていれば幸いかと。
霊夢さんがきつかった代わりに、外の世界もそれなりに把握しているゆかりんがフォローに回りました。
エピローグを除く、本編終了後ではゆかりんと結託して真の救済に精力を注いでいるのですが、それはまあ別のお話、と言う事で……
焔環神主役
円鹿目では出番なしでしたが、焔環神ではそのタイトル通り、主役として頑張ってくれました。
間違いなく焔環神で一番身体を張ってた人です。
徒歩移動に生身飛行、拉致監禁、魔女化寸前にラストの特攻……、うん、どこのアクションヒロインだお前。
実は投下が途絶えた時期、書いたけど没になった展開が幾つかあって、その中の一つに、
『ほむらのソウルジェムだけある理由で穢れが溜まりやすくて、魔女化しラスボスになる』
と言うトンデモ展開があったりします。
結局当初の着地点(本作のエピローグ)にもっていけなくなるので没になりましたが、幾つかの伏線ごと没ったのは痛かったなぁ……
(具体的には幻想入りの理由とか、旧地獄で拾われた理由とか、最初期に張ったモノばかり……)
まあ、あのラストは気に入ってますので、幸せに終われたのでヨシとしてます。
ほむほむの魔女の名前は……、皆さまのご想像にお任せします。
オクタヴィア/美樹さやか
円鹿目及び焔環神助演
円鹿目ではクリームヒルト以外では唯一のまどマギ正規キャラとして、幻想入りの苦悩とか色々と担ってくれました。
ゆゆ様の項目でも述べましたが、親友兼相談役ポジションを持っていかれた形となってしまった為、
かなり割を食ってしまいましたが、焔環神では杏子との絡みで、それなりに前に出せたと思います。
杏子の夢とか、鰻屋仮店舗の場面は、個人的に良く書けたと思ってたり、
円鹿目でちょこっと触れましたけど、このオクタヴィアちゃん、恭介くんへの未練は結構残ってます。
それだけに、焔環神で『円環の理』について触れる場面では結構痛々しく思いつつ書いてました。
本編では書けなかったけど、早苗さん辺りとその辺の事で意気投合してそうだなー
巴マミ
焔環神助演
焔環神に於ける癒しパート担当です。
アリスと絡んだ時点では推理役担当にする予定だったのに、どうしてこうなったェ……
と言うかシャルロッテの登場があんなだった時点で、終わってたような気もします。
外の常識に囚われて推理役が出来ないのなら、マミシャルに癒されるしかないじゃない!
……はい、取り乱しました。
まどマギでは先輩キャラでしたが、東方キャラに混じると年下の一人になると言うジレンマを抱えた彼女ですが、
それでも杏子やオクタヴィアの前では頼りになるお姉さんであり続けました。
弾幕戦に影響を受けたマミさんが、現世でどんな技を編み出し、どんな名前をつけたのか、気になりますねー
おぜう様と同レベル……ではないと思う。 たぶん……
佐倉杏子
焔環神助演
焔環神での幻想郷探求パート担当です。
ミスティアと共に色々と巡りながら、雛さまと絡んで、『穢れと厄』と言うキーワードを掘り下げたり、
オクタヴィアの過去を夢で見て、まど神さまや平行世界の存在を比較的早く実感したりと、話を深くする上で活躍しました。
弾幕戦なんか二度とやらない! と言いつつ、最終決戦には一番槍で突っ込んで行っているあたり、流石杏子ちゃんマジ聖女!って感じです。
ちなみに本作に於いて、一回たりともマトモな飛行を経験してません。
この杏子ちゃんは高所恐怖症になってもいいと思います。 うん、書いたの俺なんだけどね……。
そうそう、ミスティアとの絡みが、自分でも驚くほどしっくり来たのが意外でした。
屋台で鰻を食わせても、焼かせても似合うとか、やっぱりこの子放浪娘だ(ピチューン
鹿目まどか(まど神さま)
焔環神助演
焔環神に於ける実質的ラスボスです。 この人にいかにして認められるかが、焔環神最大の焦点でした。
『非常識の世界・幻想郷』が焔環神のテーマでしたので、現世側の常識の権化として動いてもらいました。
『まど神の救済=魔法少女と魔女(穢れた部分)を分離して魔法少女を救済』
としてしまった本作では、ある意味、一番つらい役を押し付けてしまった人でもあります。
霊夢さんにだいぶきつい事を言われましたが、そもそも前提としている立ち位置が全く異なりますので、
幻想郷という現世の中の異世界っぷりが、あの辺りで強調できていれば幸いかと。
霊夢さんがきつかった代わりに、外の世界もそれなりに把握しているゆかりんがフォローに回りました。
エピローグを除く、本編終了後ではゆかりんと結託して真の救済に精力を注いでいるのですが、それはまあ別のお話、と言う事で……
550: 1@ ~小ネタというか告知的ななにか~ 2011/12/22(木) 19:53:45.99 ID:fbZlKovx0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
早苗「群馬県M市在住、ティロティロさんから頂きました」
Q) この作品には、クリームヒルトとまど神さまの二人の鹿目さんが登場しますが、見分け方を教えて下さい。
早苗「髪が長くて白衣の方がまど神さまで、魔法少女のカッコなのが……えっ? 文面的な意味ですか?」
~ しばらくお待ち下さい ~
早苗「えっと、笑い方が片仮名なのがクリームヒルトさんで、平仮名なのがまど神さま、だそうです!」
早苗「以上、お便りコーナーでしたー!」
早苗「群馬県M市在住、ティロティロさんから頂きました」
Q) この作品には、クリームヒルトとまど神さまの二人の鹿目さんが登場しますが、見分け方を教えて下さい。
早苗「髪が長くて白衣の方がまど神さまで、魔法少女のカッコなのが……えっ? 文面的な意味ですか?」
~ しばらくお待ち下さい ~
早苗「えっと、笑い方が片仮名なのがクリームヒルトさんで、平仮名なのがまど神さま、だそうです!」
早苗「以上、お便りコーナーでしたー!」
559: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 18:38:38.30 ID:7dUMxn9J0
彼岸花や秋桜が咲き誇り、人々が待ち望む稔りの季節も近くなった頃の事。
円環の神さまと妖怪の賢者の手により、幻想の仲間入りを果たす魔女が、ポツリポツリと増える様になった幻想郷。
とは言え、何か大きな変化があったかと言えばそうではなく、
しいて言えば、新たな住人を自陣営に取り込もうと一部有力者が精を出すようになったぐらいで、
幻想郷の住人は相変わらず平穏な日々を過ごしていた。
だがしかし、平穏過ぎる日々は、そんな状況を退屈だと思う者も、幻想郷の内外に生み出してしまう訳で……、
これは色々とひと段落がついた幻想郷やその外で、暇を持て余したモノたちの、
賑やかで、楽しくて、ちょっとはた迷惑な、
思いつきがもたらした、暇人による暇つぶしの物語である。
第一部・『東方円鹿目』 と、第二部・『東方焔環神』 に続く、ボーナストラック的な第三部
~東方魔戯歌伝~
201X年1X月 連載開始
560: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 18:47:39.84 ID:7dUMxn9J0
――――――――――――――― 初秋のある日 ―――――――――――――――
―――――――― 【救済の魔女と水棲の技師 @ 妖怪の山・渓谷】 ――――――――
暑い昼下がりであっても、涼しい場所として知られる妖怪の山の渓流。
だが、今に限って言えば、そこはアツい場所だと言えた。
???「お前のお手並み、拝見させてもらうぞ!」
河童 『のびーるアーム』
青色の髪をツーサイドアップにして、髪の色と同じ、青色の服を纏った少女――河城にとりが、スペルを宣言する。
スペル発動と同時に、放射状のレーザーが放たれ、そのうちの一部がこちら目掛けて飛んでくる。
クリームヒルト「っ!? 速いっ!?」
放たれたレーザーの速さに、ピンク色の髪をショートポニーで纏めた少女――クリームヒルトは、驚きつつもその身を翻す。
身体を、川面ギリギリまで降下させ、レーザーの切っ先をかわす。
流れる渓流の岩に当たり、跳ねた水飛沫が髪や服を濡らすが、構っている余裕は無い。
直撃を回避したレーザーは減衰することなく、クリームヒルトの頭上で網を張っているし、
なにより第二撃と言うべき高速弾幕を、にとりが放つのを見ていたからだ。
クリームヒルト(来るっ! ……どうしよう、迎撃する? ううん、ダメ。
このレーザーの網がある内は武器を作ってる余裕なんて無い! それなら……)
反撃は危険と判断したクリームヒルトは襲い来る弾幕に対し、川面ギリギリの高度を維持したまま、身体を傾けて斜線をずらす。
狙いの付けにくい水面ギリギリに居た事もあって、弾幕の精度はお世辞にも精密とは言えない。
外れ弾が起こす水柱の中を掻い潜りながら、クリームヒルトはレーザーの網の薄い所へと素早く移動する。
レーザーと弾幕を回避だけで捌くクリームヒルトを見て、にとりが感心したように口笛を吹く。
にとり「咄嗟の判断にしてはやるな、お前! 上空に逃げてたら今ごろ弾幕の餌食だったぞ。
守矢の所の巫女が相手をしてやって欲しい、って頼んできた時は、どんなものかと思ったけど、少なくとも退屈はしないで済みそうだよ」
クリームヒルト「私もこの三ヶ月、練習だけはしっかりやってきたつもりだからね。 そう言って貰えると嬉しいよ!」
今の会話で少しだけ、にとりの意識がそれた為だろう、レーザーの網の減衰と、弾幕の切り替わりによる途切れ目とが、上手い具合に重なり、
クリームヒルトはそのタイミングにあわせて武器を作り出す。
にとりとの距離や、武器の特性を考えると、マスケット銃を選択するのが一番のように思えたが、ここは牽制ではなく、
素早く強烈な一撃を加えて、にとりの体勢を崩し、一気に反撃に出るべきだと判断し、クリームヒルトは魔力の弓を現出させる。
輝弓 『フィニトラ・フレティア』
すぐさま矢をつがえ、込められるだけの魔力を込めて、矢を放つ。
一瞬とは言え、クリームヒルトにより爆発的な魔力を込められた光の矢は、水面を切り裂くように飛びつつ、にとりに襲い掛かる。
―――――――― 【救済の魔女と水棲の技師 @ 妖怪の山・渓谷】 ――――――――
暑い昼下がりであっても、涼しい場所として知られる妖怪の山の渓流。
だが、今に限って言えば、そこはアツい場所だと言えた。
???「お前のお手並み、拝見させてもらうぞ!」
河童 『のびーるアーム』
青色の髪をツーサイドアップにして、髪の色と同じ、青色の服を纏った少女――河城にとりが、スペルを宣言する。
スペル発動と同時に、放射状のレーザーが放たれ、そのうちの一部がこちら目掛けて飛んでくる。
クリームヒルト「っ!? 速いっ!?」
放たれたレーザーの速さに、ピンク色の髪をショートポニーで纏めた少女――クリームヒルトは、驚きつつもその身を翻す。
身体を、川面ギリギリまで降下させ、レーザーの切っ先をかわす。
流れる渓流の岩に当たり、跳ねた水飛沫が髪や服を濡らすが、構っている余裕は無い。
直撃を回避したレーザーは減衰することなく、クリームヒルトの頭上で網を張っているし、
なにより第二撃と言うべき高速弾幕を、にとりが放つのを見ていたからだ。
クリームヒルト(来るっ! ……どうしよう、迎撃する? ううん、ダメ。
このレーザーの網がある内は武器を作ってる余裕なんて無い! それなら……)
反撃は危険と判断したクリームヒルトは襲い来る弾幕に対し、川面ギリギリの高度を維持したまま、身体を傾けて斜線をずらす。
狙いの付けにくい水面ギリギリに居た事もあって、弾幕の精度はお世辞にも精密とは言えない。
外れ弾が起こす水柱の中を掻い潜りながら、クリームヒルトはレーザーの網の薄い所へと素早く移動する。
レーザーと弾幕を回避だけで捌くクリームヒルトを見て、にとりが感心したように口笛を吹く。
にとり「咄嗟の判断にしてはやるな、お前! 上空に逃げてたら今ごろ弾幕の餌食だったぞ。
守矢の所の巫女が相手をしてやって欲しい、って頼んできた時は、どんなものかと思ったけど、少なくとも退屈はしないで済みそうだよ」
クリームヒルト「私もこの三ヶ月、練習だけはしっかりやってきたつもりだからね。 そう言って貰えると嬉しいよ!」
今の会話で少しだけ、にとりの意識がそれた為だろう、レーザーの網の減衰と、弾幕の切り替わりによる途切れ目とが、上手い具合に重なり、
クリームヒルトはそのタイミングにあわせて武器を作り出す。
にとりとの距離や、武器の特性を考えると、マスケット銃を選択するのが一番のように思えたが、ここは牽制ではなく、
素早く強烈な一撃を加えて、にとりの体勢を崩し、一気に反撃に出るべきだと判断し、クリームヒルトは魔力の弓を現出させる。
輝弓 『フィニトラ・フレティア』
すぐさま矢をつがえ、込められるだけの魔力を込めて、矢を放つ。
一瞬とは言え、クリームヒルトにより爆発的な魔力を込められた光の矢は、水面を切り裂くように飛びつつ、にとりに襲い掛かる。
561: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 18:51:15.78 ID:7dUMxn9J0
にとり「ひゅい!?」
瞬間的に、ここまで強烈な反撃スペルを撃たれるとは思っていなかったのだろう、にとりは飛んでくる矢の大きさに、
思わず目を丸くしながら、それでも動転する事なく川面へと身を投げる事で、その矢を回避する。
矢はにとりではなく、にとりが跳ね上げた水柱だけを撃ち抜いて、後方へと抜けていく。
???「ああっ! 惜しいっ! 惜しいですよ、クリームヒルトさん!」
???「クリームヒルト! そこだ! やっちゃえっ!」
あと一歩の所で、惜しくもかわされた事に、川岸から観戦していた巫女と人魚の魔女――東風谷早苗とオクタヴィアが揃って声を上げる。
クリームヒルト「ティヒヒ、よーし、この調子で……」
にとり「行かせると思ったら大間違いだぞ! 魔女っ子!」
恩師の一人である早苗と、親友のオクタヴィアからかけられた言葉に、クリームヒルトが思わず笑みをこぼしたその時だった。
渓流の水が突如として盛り上がったかと思うと、次の瞬間には弾幕を伴う巨大な波となって、下流のクリームヒルト目掛け雪崩れ込んで来たのだ。
水符 『河童のフラッシュフラッド』
にとり「ひとたび暴れだした濁流の恐ろしさ、この弾幕で味わうといい!」
クリームヒルト「っ!?」
全てを呑み込まんとする鉄砲水を前に、クリームヒルトは動転しそうな気持ちを抑えながら、思考をフル回転させる。
川面付近にこのまま居続けるのはもってのほかだが、上空も安全とは言えない。
鉄砲水と連動するように放たれた弾幕が、上空を覆い尽くすべく、向かってきているからだ。
クリームヒルト(ここにいるのもダメ、上空もダメ……。 下に逃げようにも、下は川だし……、って、川?)
そこまで考えて、クリームヒルトは今しがた、にとりがどうやって矢を避けたのかを思い出す。
水面より上でやり合っていたし、鉄砲水の威力に驚いた事もあって、無意識のうちに選択肢から除外していたが、水の中に潜ってはいけないと言うルールは無い。
クリームヒルト「やるしかない、よね……」
河童のにとりと違って、クリームヒルトの衣装は普通の服だ。
水の中にダイブすればずぶ濡れになる事は避けられないが、今はなりふり構っていられる状況ではない。
クリームヒルトは意を決すると、鉄砲水が押し寄せるまさに直前に川へと飛び込む。
水面近くにいては、鉄砲水に巻き込まれるので、そのまま川底まで一気に潜り込み、波の影響を最小限に止める。
562: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 18:55:07.90 ID:7dUMxn9J0
オクタヴィア「よーし、さすがあたしの嫁! ナイスプレ…………」
早苗「ああっ!? クリームヒルトさん、それはマズイです!」
オクタヴィア「……え?」
水の中に逃げる事で、弾幕を回避したことに歓声をあげかけたオクタヴィアは、早苗が真逆の非難を漏らしたことに目を丸する。
何故そんなことを言うのか分からず、ぽかんとしていると早苗が表情を強張らせたまま言う、
早苗「にとりさんは水を操る能力を持つ河童ですよ? 水中戦が一番の十八番なんです。
人魚のオクタヴィアさんならまだしも、クリームヒルトさんでは分が悪すぎるんですよ……」
にとり「ふっふっふ、守矢の巫女は流石に分かってるじゃないか……、だけどもう遅いよ。 この勝負、貰ったぁ!」
このときを待っていたと言わんばかりに、仁王立ちになって腕を組んだにとりがにやりと邪悪な笑みを浮かべる。
にとりは、川底に居るであろうクリームヒルトに告げるようにそう言うと、懐から一枚のカードを取り出す。
にとり「私相手に水中戦を選んだ愚を後悔するんだな! 私の必殺スペルを受けてみろ!」
漂溺 『光り輝く水底のトラウマ』
早苗「って、にとりさん! それルナティックですよ! ルナティック!!」
発動したスペルを見て、すぐさま異変に気が付いた早苗が、大声でにとりに呼びかける。
早苗に言われ手の中のカードを見たにとりは、今更ながら自身が犯したミスに気が付き、それまでの悪役面が一転して蒼白になる。
にとり「え? あっ!ごめん! 調子乗ってたら間違えた!?」
オクタヴィア「間違えたで済む問題!? ってかこのスペル、ホントに洒落にならないって!」
発動したスペルにより、水面下に無数に放たれた弾幕を見て、オクタヴィアは上ずった声を上げる。
この弾幕を空中より抵抗の多い水中でかわし切るのは、人魚であるオクタヴィアでも難しいと思えた。
オクタヴィア「何やってんの河童っ子! 早くクリームヒルトを助けに……」
早苗「……いえ、ちょっと待ってください」
オクタヴィア「早苗も何言ってるの!? クリームヒルトが溺れても良いって言う訳?」
早苗「良く見てくださいオクタヴィアさん、クリームヒルトさんは、まだ勝負を捨ててませんよ」
563: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:00:58.09 ID:7dUMxn9J0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方、渦中のクリームヒルトはそのスペルを文字通り水底から見る羽目となった。
水と共に波打つ弾幕が、水中に潜ったクリームヒルトの周囲を取り囲む。
水底から見える川面の輝きと、弾幕の光弾の輝きとが混じって、どちらが上で、どちらが下なのかすら分からなくなってしまう。
クリームヒルト「っ!? かはっ……」
上下感覚を失うと言う事態に、流石のクリームヒルトも動揺を隠し切ることが出来ず、思わず水を飲んでしまう。
水を飲むと同時に、口内に溜めておいた息が漏れ出し、一気に息が苦しくなる。
クリームヒルト(まずい! このままじゃ私、溺れちゃう……)
息苦しさで霞みかけた視界の中に、自らの口から漏れた息が、気泡となって上へと上っていく。
その様を最初はぼんやりと見ていたクリームヒルトだったが、次の瞬間、あることに気が付き、目を見張る。
クリームヒルト(気泡が上っていく、って事は水面はあっちなんだ!)
良く見れば、一時は絶え間なくクリームヒルトの周囲に展開されていた弾幕はその数をだいぶ減じていて、移動できるスペースが出来ていた。
実際は、スペルのミスに気が付いたにとりが、発動を中途半端に止めた為なのだが、水中に居たクリームヒルトがそんなことを知るわけが無い。
クリームヒルト(……一か八か、やってみよう!)
クリームヒルトは手に持ったままだった弓を再度構えた。
水中からではにとりが何処に居るのか、特定できないので、込める魔力量を限界まで増やす。
ただしそれは、一撃で決める為の必殺技ではない。 一撃を圧倒的物量に変換させる為の布石だ。
膨大な魔力が込められ、今までに見たことも無いほど巨大な矢となったソレに、咄嗟に思いついた術式を組み込み、一気に解き放つ。
クリームヒルト『行っけぇーっ!!』
輝弓 『天上の矢』
放たれた一本の矢は水中であっても減衰する事無く、川面から天へと飛び出す。
にとりを正確に狙って放った訳ではないので、この矢自体は盛大な空振りとなったが、矢が天へと上っていったかと思うと、
次の瞬間、その天から、無数の小さな矢が、流星群の如く戦場である渓谷に降り注いだ。
オクタ&早苗「「っ!?」」
にとり「なっ!? こんな量の矢をただの一撃で!?」
オクタヴィアは愚か、反撃があると予想していた早苗ですら度肝を貫かれる光景に、当事者であるにとりはただただ驚愕する事しか出来ない。
驚きのあまり、ただ呆然とその光景を見ていることしか出来ないにとりに、それらが降り注ぎ……、着弾の煙と水柱がにとりを包み込む。
一方、渦中のクリームヒルトはそのスペルを文字通り水底から見る羽目となった。
水と共に波打つ弾幕が、水中に潜ったクリームヒルトの周囲を取り囲む。
水底から見える川面の輝きと、弾幕の光弾の輝きとが混じって、どちらが上で、どちらが下なのかすら分からなくなってしまう。
クリームヒルト「っ!? かはっ……」
上下感覚を失うと言う事態に、流石のクリームヒルトも動揺を隠し切ることが出来ず、思わず水を飲んでしまう。
水を飲むと同時に、口内に溜めておいた息が漏れ出し、一気に息が苦しくなる。
クリームヒルト(まずい! このままじゃ私、溺れちゃう……)
息苦しさで霞みかけた視界の中に、自らの口から漏れた息が、気泡となって上へと上っていく。
その様を最初はぼんやりと見ていたクリームヒルトだったが、次の瞬間、あることに気が付き、目を見張る。
クリームヒルト(気泡が上っていく、って事は水面はあっちなんだ!)
良く見れば、一時は絶え間なくクリームヒルトの周囲に展開されていた弾幕はその数をだいぶ減じていて、移動できるスペースが出来ていた。
実際は、スペルのミスに気が付いたにとりが、発動を中途半端に止めた為なのだが、水中に居たクリームヒルトがそんなことを知るわけが無い。
クリームヒルト(……一か八か、やってみよう!)
クリームヒルトは手に持ったままだった弓を再度構えた。
水中からではにとりが何処に居るのか、特定できないので、込める魔力量を限界まで増やす。
ただしそれは、一撃で決める為の必殺技ではない。 一撃を圧倒的物量に変換させる為の布石だ。
膨大な魔力が込められ、今までに見たことも無いほど巨大な矢となったソレに、咄嗟に思いついた術式を組み込み、一気に解き放つ。
クリームヒルト『行っけぇーっ!!』
輝弓 『天上の矢』
放たれた一本の矢は水中であっても減衰する事無く、川面から天へと飛び出す。
にとりを正確に狙って放った訳ではないので、この矢自体は盛大な空振りとなったが、矢が天へと上っていったかと思うと、
次の瞬間、その天から、無数の小さな矢が、流星群の如く戦場である渓谷に降り注いだ。
オクタ&早苗「「っ!?」」
にとり「なっ!? こんな量の矢をただの一撃で!?」
オクタヴィアは愚か、反撃があると予想していた早苗ですら度肝を貫かれる光景に、当事者であるにとりはただただ驚愕する事しか出来ない。
驚きのあまり、ただ呆然とその光景を見ていることしか出来ないにとりに、それらが降り注ぎ……、着弾の煙と水柱がにとりを包み込む。
564: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:06:20.53 ID:7dUMxn9J0
クリームヒルト「ぷはぁっ!」
それと同時に、全身ずぶ濡れとなったクリームヒルトが、川面を突き破って現れる。
オクタ&早苗「「クリームヒルト(さん)!!」」
クリームヒルト「ティヒヒ、ごめんね。 心配かけちゃった……」
駆け寄ってくるオクタヴィアと早苗の姿を見て、クリームヒルトは苦笑いを浮かべつつ、二人に向き直る。
それと同時に、弾幕の直撃による水柱が収まり、水煙の中から、背負ったリュックの中から飛び出した防具で、身体へのダメージを防いでいたにとりが姿を現す。
多数の矢を一度に受けた為だろう、にとりの使った防具は、完全に焦げていて、一部にはひびまで入っていた。
クリームヒルト「あっ、にとりちゃん! 大丈夫だった? 咄嗟の急造スペルだから出力調整出来なくて……」
にとり「大丈夫大丈夫、防具の耐久テストには丁度良かったし……。
それよりこっちこそゴメンな。 発動するスペルのレベルが間違っててさ、ホントはあんな鬼畜スペルを出すつもりじゃなかったんだけど……」
そう言ってすまなさそうに肩を落とすにとりに、クリームヒルトは微笑みながら首を横に振る。
クリームヒルト「うぅん、私も大丈夫だから気にしないで、お陰でこうして新しいスペルも作れたし……」
練習に付き合ってくれて、ありがとう、とクリームヒルトが言うと、にとりは顔を俯かせながら頬を赤く染める。
笑顔と一緒に感謝の言葉をかけられ、気恥ずかしくなってしまったようだ。
にとり「こ、こんなので良いならいつでも相手してやるよ。 お前とは、その、いい友達になれそうだしな」
クリームヒルト「うん、ありがとう」
照れが限界に達したのか、まともにクリームヒルトの方を見ることも出来ずに顔を真っ赤にするにとりを見て、オクタヴィアが手をわきわきさせはじめる。
オクタヴィア「何この河童っ子、破壊力がとんでもないんだけど……」
早苗「にとりさん、ああ見えて結構恥ずかしがりやさんですからねぇ……」
オクタヴィア「う~、このかまってちゃんオーラ、我慢できないっ! にとり~っ! にとりも私の嫁になるのだ~ぁ!」
色々な意味で我慢の限界を超えてしまったのだろう、オクタヴィアは恥ずかしがって丸くなっているにとりに抱きつくと、その身体をぎゅっと抱き寄せる。
にとり「ひゅい!? お、お前、一体何を……って、何処触ってるんだよ人魚っ!」
オクタヴィア「何処でも良いでしょ、スキンシップだよ、スキンシップ!」
そう言いつつも、オクタヴィアの表情は獲物を狙うハンターのそれだった。
手をわきわきさせたまま迫るオクタヴィアに、にとりの顔から一気に血の気が引いていく。
にとり「や、やめろよーぅ、特にセクハラはやめろよーぅ! ああっ!? ホントにやめてぇ!!」
565: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:10:59.65 ID:7dUMxn9J0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 妖怪の山・上空】 ―――――――――
文「う~ん、最近ネタがありませんねぇ……」
特にどこかを目指すわけでもなく、ぶらぶらと空を飛びながら、射命丸文は一人呟いた。
自宅のタイプライターを最後に打ったのは三日も前の話であり、ネタが書かれた手帖も、使用済みを意味する赤斜線ばかりだ。
文「ほむらさんたちの一件が使えれば、引き出しが底をつく事もなかったんですけどねぇ……」
盆に起こった事件、通称“円環事件”は関係者と一部の有力者を除き、その全容は知られていない。
内容が内容だけに、記事にするのを控えるように、博麗霊夢や魔女たちから釘を刺されてしまったのだ。
まぁ、隠れて見ていた文自身、クリームヒルトと暁美ほむらの間に起こった事は、大っぴらに広めていいモノではないと思っていたし、
そんな個人のプライバシー丸無視のネタに頼らずとも、他に書ける記事があの頃はあったので、その要請を素直に受けたのだ。
が、今となってみると、使えるネタは使っておいた方が良かったような気がしてくる。
いずれにしても、あの件は既に賞味期限が切れたネタであり、使いようが無い訳だが……
文「まぁ、記事にしてたらクリームヒルトさんに今度こそ蜂の巣にされてたでしょうけど……」
文は事件後、一部の妖怪や魔女にこっそり話を流そうとしているのを見つかり、クリームヒルトにこってり油を絞られた時の事を思い出す。
朝方の、それも寺子屋の前だというのに、静かな怒りに燃えたクリームヒルトは文に弾幕を放ち、道の真ん中に大穴を開けてしまったのだ。
文「あそこまで強力な弾幕を受けたら、流石の私でも危なかったかもしれませんね。 狙いが甘くて助かりました……ん?」
そこまで言って、文は眼下で弾幕戦が行われている事に気がついた。
噂をすればなんとやら、と言うべきか、弾幕戦をやっていたのはそのクリームヒルトで、相手は同じ妖怪の山に住む、河童の河城にとりだった。
文「あやや、クリームヒルトさん、また腕を上げましたねぇ……」
本気の七割方に近い弾幕を放つにとり相手に、互角の戦いを演じているクリームヒルトを見て、文は思わず唸り声を上げた。
そう言えばクリームヒルトは、霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイド、東風谷早苗などと、時々手合わせをして、弾幕戦の練習に励んでいるらしい。
噂によれば、最近は冥界の姫であり、親友でもある幻想郷きっての有力者、西行寺幽々子も相手をしているとか、
噂の真偽は兎も角、クリームヒルトの腕前が前より上がっているのは確実なようだ。
文「そう言えば、他の魔女の方はどうなんでしょう?」
よくよく考えてみれば、他の魔女も弾幕戦に関するデータは六月の異変の際に見聞きしたものしか、存在しない。
クリームヒルトやオクタヴィアがあの調子なのだ、あの異変から3ヶ月が経とうとしている今、このデータが最新のソレと同じであるとは、文には思えない。
文「そうと決まったら、早速取材に行きますか!」
文は手帖とカメラを鞄から取り出すと、そのまま一気に加速しながら山を下りていった。
文「う~ん、最近ネタがありませんねぇ……」
特にどこかを目指すわけでもなく、ぶらぶらと空を飛びながら、射命丸文は一人呟いた。
自宅のタイプライターを最後に打ったのは三日も前の話であり、ネタが書かれた手帖も、使用済みを意味する赤斜線ばかりだ。
文「ほむらさんたちの一件が使えれば、引き出しが底をつく事もなかったんですけどねぇ……」
盆に起こった事件、通称“円環事件”は関係者と一部の有力者を除き、その全容は知られていない。
内容が内容だけに、記事にするのを控えるように、博麗霊夢や魔女たちから釘を刺されてしまったのだ。
まぁ、隠れて見ていた文自身、クリームヒルトと暁美ほむらの間に起こった事は、大っぴらに広めていいモノではないと思っていたし、
そんな個人のプライバシー丸無視のネタに頼らずとも、他に書ける記事があの頃はあったので、その要請を素直に受けたのだ。
が、今となってみると、使えるネタは使っておいた方が良かったような気がしてくる。
いずれにしても、あの件は既に賞味期限が切れたネタであり、使いようが無い訳だが……
文「まぁ、記事にしてたらクリームヒルトさんに今度こそ蜂の巣にされてたでしょうけど……」
文は事件後、一部の妖怪や魔女にこっそり話を流そうとしているのを見つかり、クリームヒルトにこってり油を絞られた時の事を思い出す。
朝方の、それも寺子屋の前だというのに、静かな怒りに燃えたクリームヒルトは文に弾幕を放ち、道の真ん中に大穴を開けてしまったのだ。
文「あそこまで強力な弾幕を受けたら、流石の私でも危なかったかもしれませんね。 狙いが甘くて助かりました……ん?」
そこまで言って、文は眼下で弾幕戦が行われている事に気がついた。
噂をすればなんとやら、と言うべきか、弾幕戦をやっていたのはそのクリームヒルトで、相手は同じ妖怪の山に住む、河童の河城にとりだった。
文「あやや、クリームヒルトさん、また腕を上げましたねぇ……」
本気の七割方に近い弾幕を放つにとり相手に、互角の戦いを演じているクリームヒルトを見て、文は思わず唸り声を上げた。
そう言えばクリームヒルトは、霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイド、東風谷早苗などと、時々手合わせをして、弾幕戦の練習に励んでいるらしい。
噂によれば、最近は冥界の姫であり、親友でもある幻想郷きっての有力者、西行寺幽々子も相手をしているとか、
噂の真偽は兎も角、クリームヒルトの腕前が前より上がっているのは確実なようだ。
文「そう言えば、他の魔女の方はどうなんでしょう?」
よくよく考えてみれば、他の魔女も弾幕戦に関するデータは六月の異変の際に見聞きしたものしか、存在しない。
クリームヒルトやオクタヴィアがあの調子なのだ、あの異変から3ヶ月が経とうとしている今、このデータが最新のソレと同じであるとは、文には思えない。
文「そうと決まったら、早速取材に行きますか!」
文は手帖とカメラを鞄から取り出すと、そのまま一気に加速しながら山を下りていった。
566: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:16:06.37 ID:7dUMxn9J0
―――――――――――――― 【同じ頃、円環の理】 ――――――――――――――
まどか「はぁ~、楽しそうだなぁ~、あっちの“私”は……」
盆の一件で知り合った八雲紫から貰ったスキマで、幻想郷の様子を覗き見ていた概念の少女――鹿目まどかは、
そこに映し出されたもう一人の自分――クリームヒルトたちの姿を見て、ため息を漏らす。
ここ最近、まどかは魔法少女の救済の合間に、ほむらたちの居る現世や、クリームヒルトたちの居る幻想郷の様子を覗き見ている。
そして、その度に思うのだ。 みんな生き生きしているなぁ……と、
現世で魔獣と戦っているほむらや、模擬戦の様なものとは言え幻想郷で弾幕戦をこなしているクリームヒルト。
前者は、生死のかかった危険な戦いであるが、『世界を守る』と言う使命感に燃えるほむらたちは、見ていて素直にカッコイイし、
“ごっこ”遊びですら真剣に、がモットーな幻想郷の弾幕戦は、スポーツの試合に通じる清々しさと高揚感がある。
翻って自分の生活を省みると、限界を迎えた魔法少女を救済に出向く毎日であり、そうした高揚感とは無縁の生活を送っている。
いや、魔法少女の最期を優しく導く存在が、そんな高揚感に満ちていては色々台無しなのだけど……
まどか「でも、私だってたまには派手に戦いたいなぁ……」
概念になってしまったとは言え、一応まどかも元は魔法少女なのだ。
かつての仲間や、もう一人の自分が、かっこよく戦っている姿を見ていると、自分も戦いたい、と言う欲求が湧いてきてしまう。
???「あれ? まどか、またそっちのあたしたちの様子を見てたの?」
まどか「あっ、さやかちゃん……、うん、ちょっとね……」
かけられた声に振り返ると、見慣れた青い髪の少女――美樹さやかがこちらを覗きこんでいた。
まどかの横に座って、スキマに映ったオクタヴィアの姿を見て、ポツリと呟く。
さやか「ホント、あっちのあたしたちも、あたしなんだね」
スキマには、セクハラ、もとい度を越したスキンシップで、我慢が限度を越えたにとりが、オクタヴィア相手に弾幕を放つ姿が映し出されていた。
さやか「あはは、弾幕戦、だっけ? またやってるよ、あっちのあたしたち……」
まどか「楽しそうだよねぇ……」
苦笑しながらまどかが呟くと、さやかがニヤニヤしながらまどかにある提案を持ち出す。
さやか「ねぇ、まどか、あたしたちもやってみない? 弾幕戦……」
まどか「はぁ~、楽しそうだなぁ~、あっちの“私”は……」
盆の一件で知り合った八雲紫から貰ったスキマで、幻想郷の様子を覗き見ていた概念の少女――鹿目まどかは、
そこに映し出されたもう一人の自分――クリームヒルトたちの姿を見て、ため息を漏らす。
ここ最近、まどかは魔法少女の救済の合間に、ほむらたちの居る現世や、クリームヒルトたちの居る幻想郷の様子を覗き見ている。
そして、その度に思うのだ。 みんな生き生きしているなぁ……と、
現世で魔獣と戦っているほむらや、模擬戦の様なものとは言え幻想郷で弾幕戦をこなしているクリームヒルト。
前者は、生死のかかった危険な戦いであるが、『世界を守る』と言う使命感に燃えるほむらたちは、見ていて素直にカッコイイし、
“ごっこ”遊びですら真剣に、がモットーな幻想郷の弾幕戦は、スポーツの試合に通じる清々しさと高揚感がある。
翻って自分の生活を省みると、限界を迎えた魔法少女を救済に出向く毎日であり、そうした高揚感とは無縁の生活を送っている。
いや、魔法少女の最期を優しく導く存在が、そんな高揚感に満ちていては色々台無しなのだけど……
まどか「でも、私だってたまには派手に戦いたいなぁ……」
概念になってしまったとは言え、一応まどかも元は魔法少女なのだ。
かつての仲間や、もう一人の自分が、かっこよく戦っている姿を見ていると、自分も戦いたい、と言う欲求が湧いてきてしまう。
???「あれ? まどか、またそっちのあたしたちの様子を見てたの?」
まどか「あっ、さやかちゃん……、うん、ちょっとね……」
かけられた声に振り返ると、見慣れた青い髪の少女――美樹さやかがこちらを覗きこんでいた。
まどかの横に座って、スキマに映ったオクタヴィアの姿を見て、ポツリと呟く。
さやか「ホント、あっちのあたしたちも、あたしなんだね」
スキマには、セクハラ、もとい度を越したスキンシップで、我慢が限度を越えたにとりが、オクタヴィア相手に弾幕を放つ姿が映し出されていた。
さやか「あはは、弾幕戦、だっけ? またやってるよ、あっちのあたしたち……」
まどか「楽しそうだよねぇ……」
苦笑しながらまどかが呟くと、さやかがニヤニヤしながらまどかにある提案を持ち出す。
さやか「ねぇ、まどか、あたしたちもやってみない? 弾幕戦……」
567: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:19:19.22 ID:7dUMxn9J0
まどか「えっ?」
さやか「いや、ちょっとあたしも身体を動かしたいなー、と思ってさ……。 丁度いい運動になりそうじゃん、アレ……」
見てる暇があるんだから、見よう見まねでやってみても良いんじゃない? と言うさやかの言葉に、まどかは目から鱗が落ちたような気がした。
今まで、楽しそうだと見ているだけで、そんな事など思いつきもしなかったのだが、確かにそうだ。
救済の合間に、まどかたちが何をしようと咎める相手は居ない。
ちょっとぐらい、息抜きの“ごっこ遊び”があったって良い筈だ。
まどか「……そうだね。 たまにはそういうのも良いかも……」
さやか「よしっ! そうと決まったら早速弾幕の内容を……」
まどか「あっ! 呼ばれてる! ちょっと私、現世に行って来るね」
救済が必要な魔法少女の気配を察知したまどかは、話を途中で区切ると立ち上がる。
さやかは話を切られてしまった形となったが、これが役目なのは重々承知しているので、笑ってそれを見送る。
さやか「うん、行ってらっしゃい。 あっ、スキマを忘れないでよ?」
まどか「うん、分かってる。 これが無いと“魔女”の方の子が消えちゃうもんね……」
そう言ってまどかは、幻想郷を映し出していたスキマを一旦手のひらサイズにまで縮め、それを持って円環を出る。
スキマは幻想郷を覗き見る為だけのモノではない。
本来はこうして救済の際に持ち歩いて、幻想郷という非常識空間をすぐ近くに発生させる事で、
魔法少女から分離した魔女が消え去る前に、円環と幻想郷という二つの世界に導く為に使っているのだ。
つまりこれは、円環の神であるまどかと、妖怪の賢者が恒久的に手を組んだ証でもあるのだ。
現世への短い道程を飛びながら、まどかは頭の片隅で考える。
お仕事の前に悪いような気もしたが、それほどまでに先程のさやかの提案が魅力的だったのだ。
まどか「……弾幕戦か、どんなのが良いんだろう?」
568: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:31:06.17 ID:7dUMxn9J0
と、言うわけで、『幻想のブン屋は弾幕調査に出かけるようです』な文花帖パートと、
『円環の神さまは弾幕戦に興味を持ったようです』なまど神さまの弾幕戦パート、
それに時折雑多な話が混ざる魔戯歌伝、ぼちぼちですが開始します。
魔女の追加スペル案とか、まど神さまのスペル案とか、要望とか、ありましたらお願いいたします。
ついでに現時点での設定などを下に、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1)クリームヒルト・グレートヒェン 【一人称『私』 他人には『~ちゃん』付け若しくは『~さん』付け】
※今回の設定変更で完全に魔法少女のまどかと同じ容姿に、
戦闘力
弾幕戦(自機側) 5面勢(咲夜・妖夢・早苗・お燐など)をハードで練習中。
弾幕戦(攻撃側) 6面ボスレベル(ラストスペル『幸ばかりの天への誘い』は、幽々子の『西行寺無余涅槃』とほぼ互角)
飲酒 普通にいける口【幻想郷有力者と普通に宴会が出来るレベル】
2)オクタヴィア 【一人称『あたし』 他人は基本呼び捨て、明らかに年上のお姉さん(永江衣玖あたり)以上は『~さん』づけ】
※下半身が尾びれな魔法少女のさやか(上半身のみでは判別不可)
(現世魔女の時のごっつい仮面も所持しているが、一度つけた際に、ワルプルギスに大泣き+ドン引きされたので以後封印)
戦闘力
弾幕戦(自機側) もっぱら4面勢若しくは5面勢のノーマルを相手に練習の日々
弾幕戦(攻撃側) 5面ボスレベル(大体風神録の早苗互換)
飲酒 付き合いなら兎も角、一定量を越すと確実に悪酔い+二日酔い
3)シャルロッテ 【一人称『私』 他人は呼び捨て(ただしお子様的な親しみがある)】
※通常生活する分には人間体だけど、弾幕戦の時はほぼ間違いなく『ぬいぐるみモード』
戦闘力
弾幕戦(自機側) 当たり判定が小さいので逃げに徹する。 ただし全体攻撃に弱いのでマスパは天敵。
弾幕戦(攻撃側) 4面~5面ボスレベル
飲酒 甘酒でも酔う。 日本酒なんかもってのほか、お菓子作りではフツーに使うのに……
4)ゲルトルート 【一人称『私』 目上は『~さん』づけ、勝手知った相手だと呼び捨て】
※麦藁帽子が似合う妖怪第二位(一位はゆうかりん)な紅魔館の専属庭師。 翅が似ているので妖精から慕われている。
戦闘力
弾幕戦(自機側) ―― 実戦未経験 ――
弾幕戦(攻撃側) 中級妖怪レベル、潜在的にはそれ以上(異変以後、庭の手入れに専念していて、大してやっていない為)
飲酒 まあ普通
『円環の神さまは弾幕戦に興味を持ったようです』なまど神さまの弾幕戦パート、
それに時折雑多な話が混ざる魔戯歌伝、ぼちぼちですが開始します。
魔女の追加スペル案とか、まど神さまのスペル案とか、要望とか、ありましたらお願いいたします。
ついでに現時点での設定などを下に、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1)クリームヒルト・グレートヒェン 【一人称『私』 他人には『~ちゃん』付け若しくは『~さん』付け】
※今回の設定変更で完全に魔法少女のまどかと同じ容姿に、
戦闘力
弾幕戦(自機側) 5面勢(咲夜・妖夢・早苗・お燐など)をハードで練習中。
弾幕戦(攻撃側) 6面ボスレベル(ラストスペル『幸ばかりの天への誘い』は、幽々子の『西行寺無余涅槃』とほぼ互角)
飲酒 普通にいける口【幻想郷有力者と普通に宴会が出来るレベル】
2)オクタヴィア 【一人称『あたし』 他人は基本呼び捨て、明らかに年上のお姉さん(永江衣玖あたり)以上は『~さん』づけ】
※下半身が尾びれな魔法少女のさやか(上半身のみでは判別不可)
(現世魔女の時のごっつい仮面も所持しているが、一度つけた際に、ワルプルギスに大泣き+ドン引きされたので以後封印)
戦闘力
弾幕戦(自機側) もっぱら4面勢若しくは5面勢のノーマルを相手に練習の日々
弾幕戦(攻撃側) 5面ボスレベル(大体風神録の早苗互換)
飲酒 付き合いなら兎も角、一定量を越すと確実に悪酔い+二日酔い
3)シャルロッテ 【一人称『私』 他人は呼び捨て(ただしお子様的な親しみがある)】
※通常生活する分には人間体だけど、弾幕戦の時はほぼ間違いなく『ぬいぐるみモード』
戦闘力
弾幕戦(自機側) 当たり判定が小さいので逃げに徹する。 ただし全体攻撃に弱いのでマスパは天敵。
弾幕戦(攻撃側) 4面~5面ボスレベル
飲酒 甘酒でも酔う。 日本酒なんかもってのほか、お菓子作りではフツーに使うのに……
4)ゲルトルート 【一人称『私』 目上は『~さん』づけ、勝手知った相手だと呼び捨て】
※麦藁帽子が似合う妖怪第二位(一位はゆうかりん)な紅魔館の専属庭師。 翅が似ているので妖精から慕われている。
戦闘力
弾幕戦(自機側) ―― 実戦未経験 ――
弾幕戦(攻撃側) 中級妖怪レベル、潜在的にはそれ以上(異変以後、庭の手入れに専念していて、大してやっていない為)
飲酒 まあ普通
569: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:35:55.52 ID:7dUMxn9J0
5)エリー 【一人称『私』 基本的に呼び捨て】
※ツインテール繋がりで「エリーにゃん!」とか呼ばれる日を今か今かと待ちかねる引篭り系オタク少女
戦闘力
弾幕戦(自機側) イージーシューター(引篭りの時点で察してください……)
弾幕戦(攻撃側) 相手により変動
飲酒 もっぱら洋酒派
6)パトリシア 【一人称『私』 呼び方は相手によりけり】
※エリーから「髪を切って和ちゃんになってよ!」と迫られる程度の容姿と口調の持ち主
戦闘力
弾幕戦(自機側) 寺子屋でワルプルちゃん相手にやり合ってるので、実力急上昇中のダークホース
弾幕戦(攻撃側) 暗黒スペルは3~4面レベル、 学園天国スペルだと3面レベル
飲酒 シャルロッテほどではないが弱い
7)イザベル 【一人称『私(わたくし)』 目上は『さん』付け】
※紅魔館の動く石像少女。 最近、完成間近のおぜう様肖像画が、例によって妹様の手により「きゅっとしてドカーン」されてしまい余計色白に……
戦闘力
弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (と言うか石像に回避を期待してはいけない)
弾幕戦(攻撃側) 相手により変動
飲酒 洋酒派だが、日本酒も可
8)ギーゼラ 【一人称『あたい』 他人は基本『アンタ』呼ばわり】
※妖怪の山の特攻服少女。 最近、天界への峠アタックを敢行中。
戦闘力
弾幕戦(自機側) 回避に専念出来ればトップクラス。 ただし性分的に真正面からぶつかりに行っちゃうのが玉に瑕
弾幕戦(攻撃側) 厄介度では文とほぼ互角。 そろそろ文も少し本気を出しても良いかと思っている。
飲酒 問題ない。抵抗感もない。ある訳がない。
9)エルザマリア 【一人称『私』 基本的に『~さん』付け】
※人里の教会のシスター。 レミリア以下、西洋風な妖怪たちから地味に人気
戦闘力
弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (基本受身)
弾幕戦(攻撃側) 影を巧みに使役する為、下手すると有力者でも負ける。 ただし闇を作るルーミアやミスティアは天敵。
飲酒 嗜む程度、洋酒中心
570: 東方魔戯歌伝 2011/12/26(月) 19:41:50.66 ID:7dUMxn9J0
10)ロベルタ 【一人称『アタシ』 呼び方は相手によりけり】
※オトナなお姉さん。 お酒大好きな姉御肌
戦闘力
弾幕戦(自機側) 相手の動きを読んで、適当に流す。 基本的に『遊び』
弾幕戦(攻撃側) 適当に遊んであげる。 本気を出す事はないが、鬼と一緒にいる時点で察してください。
飲酒 鬼と一緒に飲めるほどの底なし
11)ワルプルギス 【一人称『私』 呼び方は『~お姉ちゃん』 ただしトランスモードに入ると色々酷い】
※宙に浮くと逆さになるドレス幼女。 寺子屋に通い始めてだいぶ安定してきた。
戦闘力
弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (と言うか自機側に回るような事が無い)
弾幕戦(攻撃側) エクストラをふつーにこなせる。 フランちゃんと戦わせてはいけません。
飲酒 飲ませるな危険
番外1)鹿目まどか(まど神さま) 【クリームヒルトと一緒】
※ご存知まど神さま。 件の一件以来、ちょくちょく覗き……もとい視察に来ている。
戦闘力
弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ―――
弾幕戦(攻撃側) エクストラぐらい(潜在的には紫にギリギリ届かないレベル)
お酒 まさかの全くダメないい子ちゃん
578: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:00:10.99 ID:7jOFW91Y0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・紅魔館】 ―――――――――
???「♪~っ ♪~っ……」
多数の薔薇が咲く、庭園の中を麦藁帽子の少女――ゲルトルートが、鼻歌交じりに歩いている。
季節は田の稲が黄金色に輝こうか、と言う時期だが、昼下がりのこの時間はまだまだ暑い。
???「ゲルトルートさ~ん」
???「おーい、ゲルトー!」
ゲルトルート「あら?」
いつも通り薔薇への水遣りに精を出していたゲルトルートは、背後から聞こえた声に顔を上げた。
振り返ると、黄緑色の髪をサイドポニーで結わえた小柄な少女――大妖精が、青い服の妖精――チルノと一緒に、地上スレスレを飛んでくるのが見えた。
ゲルトルート「大妖精にチルノじゃない、今日はどうしたの?」
水やりの手を一旦止めて、ゲルトルートは二人の妖精に問いかけると、いつもと変わらず、自信満々と言った様子で、チルノが胸を張る。
チルノ「あたいたち今、かくれんぼの最中なの!」
大妖精「で、ちょっとだけ、ここに居たいんですけど……、いいですか?」
垣根の影に隠れて、周囲の様子を伺いつつ、小声で尋ねてくる大妖精。
ゲルトルートは辺りを見回して、他に誰もいないことを確認すると、しゃがみ込んで二人と目線を合わせるようにする。
ゲルトルート「それは良いけど、垣根を壊しちゃダメよ。 あと、建物の中には入らないでね。 お嬢様たち、今寝てるから……」
チルノ「じゃあ隠れるのは良いんだね? 大ちゃん、行こっ!」
大妖精「きゃっ!? チルノちゃん、急に引っ張らないで……! あっ、ゲルトルートさーん、ありがとうございました~」
来たときと同じように垣根で身を隠しながら飛んでいくチルノたちを見送りながら、ゲルトルートはふっと微笑んだ。
蝶のような翅のおかげなのか、はたまた彼女たちが自然の化身だからなのか、ゲルトルートは妖精たちから結構慕われている。
紅魔館が妖精の多い、霧の湖から程近いこともあり、庭園整備の合間に、こんな風に訪ねてくる妖精も多い。
そんなだからだろう、最近ついたあだ名が……
文「あややや、流石、“紅薔薇のお姉さん”ですねぇ……。 ほっこりする一コマ、ありがとうございます」
シャッター音と共に聞こえた声に、ゲルトルートが空を見上げると、ちょうど真上から文が降りてくる所だった。
ゲルトルート「あら、誰かと思ったら文じゃない……。 定期講読の契約更新なら私じゃなくて咲夜さんに……」
文「いえいえ、今日はゲルトルートさんに用があって来たんですよ」
そう言って、文は簡潔に用件を伝える。
新しい弾幕開発の為に、ともっともらしい嘘をついて、記事にすることだけは伏せておく。
長く文と付き合っている在郷人相手には通らない嘘だが、来て3ヶ月のゲルトルートには気付けと言う方が酷だった。
???「♪~っ ♪~っ……」
多数の薔薇が咲く、庭園の中を麦藁帽子の少女――ゲルトルートが、鼻歌交じりに歩いている。
季節は田の稲が黄金色に輝こうか、と言う時期だが、昼下がりのこの時間はまだまだ暑い。
???「ゲルトルートさ~ん」
???「おーい、ゲルトー!」
ゲルトルート「あら?」
いつも通り薔薇への水遣りに精を出していたゲルトルートは、背後から聞こえた声に顔を上げた。
振り返ると、黄緑色の髪をサイドポニーで結わえた小柄な少女――大妖精が、青い服の妖精――チルノと一緒に、地上スレスレを飛んでくるのが見えた。
ゲルトルート「大妖精にチルノじゃない、今日はどうしたの?」
水やりの手を一旦止めて、ゲルトルートは二人の妖精に問いかけると、いつもと変わらず、自信満々と言った様子で、チルノが胸を張る。
チルノ「あたいたち今、かくれんぼの最中なの!」
大妖精「で、ちょっとだけ、ここに居たいんですけど……、いいですか?」
垣根の影に隠れて、周囲の様子を伺いつつ、小声で尋ねてくる大妖精。
ゲルトルートは辺りを見回して、他に誰もいないことを確認すると、しゃがみ込んで二人と目線を合わせるようにする。
ゲルトルート「それは良いけど、垣根を壊しちゃダメよ。 あと、建物の中には入らないでね。 お嬢様たち、今寝てるから……」
チルノ「じゃあ隠れるのは良いんだね? 大ちゃん、行こっ!」
大妖精「きゃっ!? チルノちゃん、急に引っ張らないで……! あっ、ゲルトルートさーん、ありがとうございました~」
来たときと同じように垣根で身を隠しながら飛んでいくチルノたちを見送りながら、ゲルトルートはふっと微笑んだ。
蝶のような翅のおかげなのか、はたまた彼女たちが自然の化身だからなのか、ゲルトルートは妖精たちから結構慕われている。
紅魔館が妖精の多い、霧の湖から程近いこともあり、庭園整備の合間に、こんな風に訪ねてくる妖精も多い。
そんなだからだろう、最近ついたあだ名が……
文「あややや、流石、“紅薔薇のお姉さん”ですねぇ……。 ほっこりする一コマ、ありがとうございます」
シャッター音と共に聞こえた声に、ゲルトルートが空を見上げると、ちょうど真上から文が降りてくる所だった。
ゲルトルート「あら、誰かと思ったら文じゃない……。 定期講読の契約更新なら私じゃなくて咲夜さんに……」
文「いえいえ、今日はゲルトルートさんに用があって来たんですよ」
そう言って、文は簡潔に用件を伝える。
新しい弾幕開発の為に、ともっともらしい嘘をついて、記事にすることだけは伏せておく。
長く文と付き合っている在郷人相手には通らない嘘だが、来て3ヶ月のゲルトルートには気付けと言う方が酷だった。
579: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:02:42.91 ID:7jOFW91Y0
ゲルトルート「え? 私のスペルを見せて欲しいの?」
文「ええ、色々と参考にしたいので……」
ゲルトルート「困ったわね。 私最近、弾幕戦を全然やってないのよね。 夏は庭園のお手入れが大変で……」
これだけ広いと雑草の処理だけでも一苦労で……、と言いながら苦笑するゲルトルートは、それでも愉しそうだった。
庭師人生(?)を楽しむ麦藁帽子のお姉さん、とでも称してドキュメンタリー風に記事にするのも一興かと思ったが、
そう言うネタならストックしておいても使えるので、文はなおも食い下がる。
文「そこをなんとか! なんなら異変の時の改良型とか、開発中のモノとかでも構いませんので……」
ゲルトルート「開発中ねぇ……。 あっ、そう言えば庭園のお手入れ中に思い付いた弾幕が一つあるのよね」
文「おおっ! それは絶好のスクープ……もとい、いい参考になりそうです! 早速で悪いのですが、見せて頂けませんか?」
ゲルトルート「ええ、良いわよ。 ちょっと待ってね、片付けてしまうから……」
580: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:05:59.18 ID:7jOFW91Y0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゲルトルート「久々の弾幕戦だから、肩慣らしから始めてもいいかしら?」
紅魔館屋上の時計台の前で、ゲルトルートがそう申し出てくる。
垣根を壊したくないと言うゲルトルートの希望で、ある程度の広さがあるここにやってきたのだ。
文「構いませんよ。 ゲルトルートさんに任せますので……」
ゲルトルート「ありがとう、なら最初は……」
薔薇符 『薔薇の檻』
ゲルトルートが発動したスペルは、魔女異変で彼女が魔理沙と戦った時に、最初に使ったスペルだ。
放射状に伸びる茎を模したレーザーと、伸びきった際に花開く、花弁の弾幕が特徴的な薔薇園の魔女らしいスペルなのだが……
文「あれ? ゲルトルートさん、この弾幕、ちょっと改良しました?」
ゲルトルート「ええ、花びらの弾幕を追加させてもらったわ。 他の子の弾幕を見てたら、ちょっと寂しいかな、って……」
今、文の目の前で展開している弾幕は、茎と花のみで構成される、かつてのソレではなかった。
茎のレーザーが伸びていくのと同時に、薔薇の花びらを模した弾幕がゲルトルートからばら撒かれているのだ。
ゲルトルート「改良してから使うのは今日が初めてなんだけど……、難しくしすぎたかしら?」
頬に手をやりながら、心配げに呟くゲルトルートに、文は笑ってみせながらカメラを構える。
文「いえいえ、これくらい華があった方がいいと思いますよ。 写真栄えもしますしね」
ゲルトルート「えっ?」
文「あやや、こっちの話ですよ、こっちの話。 えっと、資料用に写真を撮らせてもらいますねー」
いいわよ、と言うゲルトルートの答えを受け、文は写真を撮り始める。
当然、文はこの改良型弾幕の洗礼を受けているのだが、長年記者をやって来た文からすれば、回避しながらの写真撮影も余裕だ。
文「ほっ、はっ! とりゃっ!(パシャッパシャッパシャッ!!」
ゲルトルート「なんだろう、あんなに余裕綽々で回避されながら写真を撮られると自信がなくなってくるわ……」
そう言えば私って不信の魔女だったっけ……、などと言いながら落ち込むゲルトルートに、文は乾いた笑いを漏らしながら慰めの言葉をかける。
文「いえ、職業柄、こう言うのに慣れてるだけですから、十分難しいと思いますよ」
少なくとも見た目の可憐さでは最上級レベルです、と中途半端にフォローになってないフォローを入れながら、文は写真を撮り続ける。
ゲルトルート「久々の弾幕戦だから、肩慣らしから始めてもいいかしら?」
紅魔館屋上の時計台の前で、ゲルトルートがそう申し出てくる。
垣根を壊したくないと言うゲルトルートの希望で、ある程度の広さがあるここにやってきたのだ。
文「構いませんよ。 ゲルトルートさんに任せますので……」
ゲルトルート「ありがとう、なら最初は……」
薔薇符 『薔薇の檻』
ゲルトルートが発動したスペルは、魔女異変で彼女が魔理沙と戦った時に、最初に使ったスペルだ。
放射状に伸びる茎を模したレーザーと、伸びきった際に花開く、花弁の弾幕が特徴的な薔薇園の魔女らしいスペルなのだが……
文「あれ? ゲルトルートさん、この弾幕、ちょっと改良しました?」
ゲルトルート「ええ、花びらの弾幕を追加させてもらったわ。 他の子の弾幕を見てたら、ちょっと寂しいかな、って……」
今、文の目の前で展開している弾幕は、茎と花のみで構成される、かつてのソレではなかった。
茎のレーザーが伸びていくのと同時に、薔薇の花びらを模した弾幕がゲルトルートからばら撒かれているのだ。
ゲルトルート「改良してから使うのは今日が初めてなんだけど……、難しくしすぎたかしら?」
頬に手をやりながら、心配げに呟くゲルトルートに、文は笑ってみせながらカメラを構える。
文「いえいえ、これくらい華があった方がいいと思いますよ。 写真栄えもしますしね」
ゲルトルート「えっ?」
文「あやや、こっちの話ですよ、こっちの話。 えっと、資料用に写真を撮らせてもらいますねー」
いいわよ、と言うゲルトルートの答えを受け、文は写真を撮り始める。
当然、文はこの改良型弾幕の洗礼を受けているのだが、長年記者をやって来た文からすれば、回避しながらの写真撮影も余裕だ。
文「ほっ、はっ! とりゃっ!(パシャッパシャッパシャッ!!」
ゲルトルート「なんだろう、あんなに余裕綽々で回避されながら写真を撮られると自信がなくなってくるわ……」
そう言えば私って不信の魔女だったっけ……、などと言いながら落ち込むゲルトルートに、文は乾いた笑いを漏らしながら慰めの言葉をかける。
文「いえ、職業柄、こう言うのに慣れてるだけですから、十分難しいと思いますよ」
少なくとも見た目の可憐さでは最上級レベルです、と中途半端にフォローになってないフォローを入れながら、文は写真を撮り続ける。
581: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:11:03.04 ID:7jOFW91Y0
ゲルトルート「なんか微妙だけど、ありがとう……。 それじゃあ、腕ならしも終わったし、新作弾幕、行くわよ」
気を取り直したゲルトルートは、新たなカードを取り出すとニヤリと不敵に笑ってみせる。
なんだかんだと言って新技のお披露目なのだ、気分が盛り上がらないわけが無いだろう。
ゲルトルート「紅魔館の薔薇庭園――、私の自慢の庭園を、そのまま弾幕にしたこのスペル、本日開園よ!」
庭園 『紅薔薇の迷宮』
文「おおっ!?」
発動したスペルを見て、文は思わず歓声を上げる。
茎のレーザーが縦ではなく横向きに張り巡らされ、ソレが迷路を形作し、紅い弾幕と共に押し寄せてきたのだ。
ゲルトルート「どうかしら? 茎の弾幕を基本にして、垣根っぽく仕上げてみたのだけど……」
文「緑のレーザーで垣根を、紅の弾幕で薔薇を、それぞれ表しているんですよね? 見た目も実用性もありそうでいい感じですよ」
簡単に感想を述べつつ、文は過去の記憶などをもとに、この弾幕の構成を見極める。
文(所謂速度の遅い金閣寺、って感じですね……。 慣れてないからこのスピードですが、速さが上がると厄介ですねぇ……)
一つ前の弾幕から引き続き放たれる花びらの弾幕をかわししつつ、文はレーザーの切れ目に素早く身体を滑り込ませる。
レーザーの切れ目が比較的大きいのと、迷路の押し寄せるスピードが遅い事もあって、難易度としてはさほど高くは無い。
実はこのスピードは、“庭園をゆったり散策する光景”をテーマにすえたゲルトルートが、敢えてゆっくり気味に設定したものなのだが、
流石の文と言えど、そこまで察する事は出来なかった。
文(とは言え、このセンスは十分評価に値しますね。 魔理沙さんの評もあながち外れじゃなさそうです……)
引き続き、弾幕を写真に収めながら、文は魔女異変の際の魔理沙のゲルトルート評を思い出す。
発動タイミングなどはまるで素人だが、弾幕自体のスペルはいいセンまで行っている。 との事だったが、成る程、これならその評も納得できる。
文(あとは経験、でしょうね。 庭園の手入れで手一杯な現状では実戦経験を積め、と言う方が酷でしょうけど……)
紅魔館の庭師という立場は、幻想郷の中でも比較的、平穏無事な生活が送れる職である。
不審者対応は門番の紅美鈴やメイド長の十六夜咲夜の役目であり、厄介者である魔理沙の狙いは大体地下図書館で、庭園には見向きもしない。
仮に興味を持ったとしても、人が毎日手入れをしているモノに手を出すような真似は、流石の魔理沙と言えどもやる事はない。
唯一問題があるとすれば気まぐれな妖精ぐらいだが、見ての通りゲルトルートと妖精の関係は良好で、この点も問題とはならない。
魔女の代表役として弾幕戦をマスターせざるを得なかったクリームヒルトや、面白そうな事にちょくちょく首を突っ込みたがるオクタヴィアたちと違い、
弾幕戦をやる必要性があまり無かった、と言うのが、経験不足の原因なのでゲルトルート本人に非がある訳では無い。
ゲルトルート「あっ、しまった!?」
文「? ……っ!?」
ゲルトルートが上げた声にそちらを見た文は、すぐに何が起こったのかを悟った。
本来切れ目が出来ていなくてはならないレーザーの垣根が、切れ目の無い完全な壁として構成されてしまったのである。
今日初めて使うスペルゆえに、間違って“回避不可能”な弾幕を作ってしまったのだろう。
582: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:13:12.64 ID:7jOFW91Y0
ゲルトルート「文! 今すぐ逃げてっ!」
回避不可能な弾幕はご法度、と言う絶対のルールを侵してしまった為だろう、切羽詰った様子でゲルトルートが叫ぶ。
それに対し文は、動じる事も無くカメラを構える。 向かってくる弾幕の壁にピントをあわせ、少々の妖気を込めてシャッターを切る。
カシャッ!
ゲルトルート「えっ?」
悠長にカメラなど構えだした文に再度、忠告をしようと思っていたゲルトルートは、その瞬間、自分の目を疑った。
先程までと同じような写真撮影だと思ったのに、文が写真を撮った途端、撮られた部分の弾幕だけがごっそり姿を消したからだ。
そのままゲルトルートが呆然としていると、弾幕をすり抜けた文が苦笑しながらゲルトルートの元へとやって来る。
文「いやー、今のはちょっと焦りましたよ。 まぁ、初めてですからね、こういう事故が起こるのも仕方ないです」
ゲルトルート「……えっと、文? 今、私の見たことが正しければ、弾幕が途中で消えたような気がするんだけど……」
あまりにも不可解な事態に、ゲルトルートは慰めの言葉より、疑問への回答を文に求めた。
そこで初めてゲルトルートの様子に気が付いたのか、文は失礼しましたと言いつつ、簡単に解説をする。
ゲルトルート「それじゃあ、文はそのカメラで、弾幕を写真に収める事で、その弾幕を消す事ができる訳?」
文「消す、と言うか文字通り“写し取る”と言った方が正しいかもしれませんね。 まぁ、一種の自己防衛みたいなものです」
そう言って、文はニヤリと笑ってみせた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
文「今日はお付き合い頂き、ありがとうございました」
ゲルトルート「こっちこそ、未完成のスペルに付き合ってもらってありがとう」
文「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。 それではっ!」
軽く会釈をすると、文は次の取材対象を探す為に紅魔館を後にした。
結局、先程のスペルの発動ミスにより、ゲルトルートがこれ以上の弾幕披露を拒否した為、資料撮影の名を借りた隠密取材が出来なくなったからだ。
対するゲルトルートだが、新作スペルを事故を起こす事無く、正確に発動出来るまで練習する、と文に告げて、この日は笑顔で別れた。
ゲルトルート「さーて、お手入れの続きをしないと……、そう言えば大妖精たちのかくれんぼは終わったのかしら?」
後日、正式披露前の弾幕が、記事としてばら撒かれている事を知り、文の家に押しかける事になるのだが、この時はまだ、知る芳もなかった。
583: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:16:39.19 ID:7jOFW91Y0
―――――――――― 【円環の神さまとその親友 @ 円環の理】 ――――――――――
さやか「さて、まどかの“お仕事”がひと段落付いたところで、早速弾幕について考えてみようと思います!
と、言うわけでまずは参考資料なんかを用意してみました。 拍手~っ!」
まどか「わ~っ!! って、さやかちゃん! いつの間にそんなの用意したの!?」
分厚い装丁の本を片手に高らかに宣言するさやかに対し、まどかは思わずツッコミを入れる。
見事なノリツッコミに、さやかは待っていましたと言わんばかりに、得意げな顔で答える。
さやか「ふっふっふ、さやかちゃんの構築した裏ルートを駆使すれば、幻想郷からのお取り寄せも思いのままなのよ」
まどか「素直にスキマを使ったって言おうよ、さやかちゃん……。 で? その本は一体……?」
さやか「ん~、なんでも幻想郷の弾幕を纏めた本らしいよ。 むこうのあたしたちの弾幕も載ってるみたい」
そう言って、さやかはまどかにその本を手渡す。
洋書の様な装丁のなされたその本には、金の文字で『The Grimoire of Marisa』とタイトルが入っていた。
まどか「魔理沙……って、幻想郷の魔法使いの? ホントに取り寄せたんだね~」
さやか「だからそうだ、って言ってるでしょ。 ほらほら、早く中を見ようよ」
まだあたしも読んでないんだから、と言うさやかに急かされ、まどかは本を開く。
パラパラっとページをめくり、『種族・魔女』という項目が目に付いた辺りで、その手を止める。
さやか「おっ、コレ、魔女のまどかの弾幕じゃん」
開いたところは、ちょうどクリームヒルトの弾幕について解説しているページだった。
比較的、弾幕戦をする機会が多い為か、数ページに渡って解説が書かれている。
まどか「憧憬『ティロ・フィナーレ』、因果『タイム・リピーター』……、この辺はマミさんたちとの思い出がモチーフになった弾幕だね」
さやか「この辺は、まどかの弾幕の参考に出来そうじゃん。
あはは、あたしがモチーフの弾幕の符名が“真友”って……、いやこれは結構照れますな……」
でもちょっと大げさだなー、などど言いつつ苦笑するさやか。
そんなさやかに、まどかはにっこりと微笑みかけると、静かに首を横に振る。
まどか「うぅん、全然、大げさでもなんでもないよ。 私にとってもさやかちゃんは大切な親友だもん」
さやか「っ!? ……も、もうっ! 恥ずかしい台詞禁止っ! 話が進まないでしょ!」
さやか「さて、まどかの“お仕事”がひと段落付いたところで、早速弾幕について考えてみようと思います!
と、言うわけでまずは参考資料なんかを用意してみました。 拍手~っ!」
まどか「わ~っ!! って、さやかちゃん! いつの間にそんなの用意したの!?」
分厚い装丁の本を片手に高らかに宣言するさやかに対し、まどかは思わずツッコミを入れる。
見事なノリツッコミに、さやかは待っていましたと言わんばかりに、得意げな顔で答える。
さやか「ふっふっふ、さやかちゃんの構築した裏ルートを駆使すれば、幻想郷からのお取り寄せも思いのままなのよ」
まどか「素直にスキマを使ったって言おうよ、さやかちゃん……。 で? その本は一体……?」
さやか「ん~、なんでも幻想郷の弾幕を纏めた本らしいよ。 むこうのあたしたちの弾幕も載ってるみたい」
そう言って、さやかはまどかにその本を手渡す。
洋書の様な装丁のなされたその本には、金の文字で『The Grimoire of Marisa』とタイトルが入っていた。
まどか「魔理沙……って、幻想郷の魔法使いの? ホントに取り寄せたんだね~」
さやか「だからそうだ、って言ってるでしょ。 ほらほら、早く中を見ようよ」
まだあたしも読んでないんだから、と言うさやかに急かされ、まどかは本を開く。
パラパラっとページをめくり、『種族・魔女』という項目が目に付いた辺りで、その手を止める。
さやか「おっ、コレ、魔女のまどかの弾幕じゃん」
開いたところは、ちょうどクリームヒルトの弾幕について解説しているページだった。
比較的、弾幕戦をする機会が多い為か、数ページに渡って解説が書かれている。
まどか「憧憬『ティロ・フィナーレ』、因果『タイム・リピーター』……、この辺はマミさんたちとの思い出がモチーフになった弾幕だね」
さやか「この辺は、まどかの弾幕の参考に出来そうじゃん。
あはは、あたしがモチーフの弾幕の符名が“真友”って……、いやこれは結構照れますな……」
でもちょっと大げさだなー、などど言いつつ苦笑するさやか。
そんなさやかに、まどかはにっこりと微笑みかけると、静かに首を横に振る。
まどか「うぅん、全然、大げさでもなんでもないよ。 私にとってもさやかちゃんは大切な親友だもん」
さやか「っ!? ……も、もうっ! 恥ずかしい台詞禁止っ! 話が進まないでしょ!」
584: 東方魔戯歌伝 2011/12/30(金) 21:20:48.94 ID:7jOFW91Y0
まどか「てぃひひ、ごめんごめん、さっ、続きを読もう?」
そういってまどかは、手元の本へと目線を戻す。
そのまま何気なくページを一枚めくったまどかは、そこに書かれていた内容に、その手を止める。
さやか「ん? どうしたの……って、ああ……」
まどかの様子がおかしいことに気が付いたさやかは、そのページへと目をやり、すぐに納得した。
そのページには、ある弾幕の解説が載っていたのだ。 その弾幕は……
終焉 『新世界創造』 / 『幸ばかりの天への誘い』
さやか「魔女のまどかの呪いをそのまま弾幕にしたスペルだね。
“救済の魔女・クリームヒルト最強のスペルだが、事実上の封印状態。”だって……、魔女のまどかにとっても忘れていたい過去なんだろうね」
まどか「それは違うんじゃないかな?」
さやか「えっ?」
書かれた解説文を読んださやかが呟いた言葉を、まどかはすぐさま否定する。
まどか「忘れていたいのなら、最初からスペルになんてしないと思う。 これはむしろ、“戒め”なんじゃないかな……」
さやか「戒め……、うん、そうだね。 あたしもそう思う」
まどか「どっちにしてもこれは参考には出来ないね。 次のページ、めくっちゃうよ?」
問いかけにさやかが頷くのを見て、まどかは更にページをめくる。
早々にページをめくることになってしまったが、それでもまどかは、いまの弾幕の事が気になって仕方が無かった。
まどか(戒め、か……、魔女の私が戒めから解放されるのは、何時になるんだろう……)
こればかりは、いくら概念となったまどかであっても癒しきることなど不可能だ。
その日が来るのは、ゆりかごの様な幻想郷をもってしても長い年月が必要になるに違いない。
おそらく、幻想郷の住人や、魔女の仲間たち、そしていつの日か向こうへ行くであろうほむらたちの助けを得て、徐々に癒えるのを待つしかないのだろう。
まどか(そう言えばまだ私、魔女の私ときちんとお話し出来てないや……。 もう一度、幻想郷(むこう)に行ってみようかな……)
さやかと共に本を見ながら弾幕について色々と語り合いつつ、まどかは頭の片隅でそんなことを考えていた。
594: 1 2012/01/06(金) 16:09:46.47 ID:+HkMBDfP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
パトリシア「幻想郷在住、奇跡の巫女さんから頂いたわ」
Q) 東方×まどマギなのに、メインカプがまどマギキャラの中で完結してるのって、ぶっちゃけどーなんですか?
パトリシア「何言ってるの? ゆゆクリとか、マリオクとか、アリシャルがあるじゃない……。 実質、ほむクリやオク杏、シャルマミの下位互換だけど……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
白蓮「どうも、お久しぶりです。 円鹿目本編以来久々登場の聖白蓮です」
パトリシア「えーと、焔環神後日談以来だから、そんなに久々じゃないパトリシアです……」
白蓮「それで?その後はどうですか? 上手くやれてます?」
パトリシア「ええ、ワルプルギスがたまに愚図りますけど、最近は減りましたし……、その節は色々とありがとうございました」
白蓮「いいえ、私はただ、仏の正しい教えを説いたまでのこと、頑張ったのは貴女自身なのですから、謙遜しなくて良いんですよ」
パトリシア「いえいえ、あの時の白蓮さんの教えが無かったら、私、今でもどうしていたか……」
【以下謙遜合戦の無限ループ】
ワルプルギス「長くなりそうだから本編に行くよ!」
パトリシア「幻想郷在住、奇跡の巫女さんから頂いたわ」
Q) 東方×まどマギなのに、メインカプがまどマギキャラの中で完結してるのって、ぶっちゃけどーなんですか?
パトリシア「何言ってるの? ゆゆクリとか、マリオクとか、アリシャルがあるじゃない……。 実質、ほむクリやオク杏、シャルマミの下位互換だけど……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
白蓮「どうも、お久しぶりです。 円鹿目本編以来久々登場の聖白蓮です」
パトリシア「えーと、焔環神後日談以来だから、そんなに久々じゃないパトリシアです……」
白蓮「それで?その後はどうですか? 上手くやれてます?」
パトリシア「ええ、ワルプルギスがたまに愚図りますけど、最近は減りましたし……、その節は色々とありがとうございました」
白蓮「いいえ、私はただ、仏の正しい教えを説いたまでのこと、頑張ったのは貴女自身なのですから、謙遜しなくて良いんですよ」
パトリシア「いえいえ、あの時の白蓮さんの教えが無かったら、私、今でもどうしていたか……」
【以下謙遜合戦の無限ループ】
ワルプルギス「長くなりそうだから本編に行くよ!」
595: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:14:25.49 ID:+HkMBDfP0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・迷いの竹林】 ―――――――――
???「あ~、もうっ! 一体何処に行ったのよ!」
生い茂る竹林の中をきょろきょろと見回しながら、永遠亭の月兎、鈴仙・優曇華院・イナバはため息をついた。
ただでさえ広くて迷いやすい事で知られる竹林だ。 ここで逃げ回る相手を探すと言うのは、厄介を通り越して不可能に近い。
鈴仙「はぁ~、あの子もなんで話を聞く前に逃げちゃうかなぁ……、
ちゃんと話を聞いていればこんな事には……ん? あれは……、おーい! 文ーっ!」
岩に腰をかけて、空を見上げた鈴仙は、上空を行く見知った姿――文を見つけ、呼びかける。
鈴仙の声に気が付いたのか、文はこちらを振り向くと、くるりと方向転換をして、鈴仙の目の前に降り立つ。
文「あや? 私に何か用ですか? 鈴仙さん」
鈴仙「ちょっと聞きたいんだけど、この辺でお菓子の魔女、見なかった?」
文「シャルロッテさんですか? いいえ、見てませんが……」
どうかしたんですか? と文が問い返すと、鈴仙は顔をしかめながら事情を話し始める。
鈴仙「実はね、あの魔女ったら、お師匠様の診療中に逃げ出しちゃったのよ」
文「逃げた? それは一体、どうしてです?」
永遠亭で八意永琳の診療と言えば、大抵の事なら回復が約束されたも同然である。
わざわざ診療を受けに言ったのに、逃げ出す、と言うのはいささか理解しがたい行動だと言えた。
鈴仙「それがね……、虫歯の治療だったのよ」
文「ああ……」
げんなりした鈴仙から返ってきた答えに文は物凄く納得した。
年がら年中、甘いお菓子を作っては食べているシャルロッテの事だ、虫歯が出来ない方がおかしいと言える。
おそらく虫歯が酷くて、削るか抜歯という話にでもなったのだろう、
魔女の中では比較的お子様なシャルロッテは、脱兎の如く逃げ出したに違いない。
鈴仙「まったく、麻酔を効かせるから痛くない、って言う前に逃げるんだから……、嫌になっちゃう」
そう言って鈴仙は肩をすくめてみせる。
対する文は、色々な意味でネタに使えそうだと手帖に書きとめながら、確認するように尋ねる。
文「分かりました、見つけたら永遠亭まで連れて行けば良いんですね?」
鈴仙「お願い、そうしてもらうと助かるわ」
そう言うと、鈴仙は再び竹林内の捜索を開始し、文は空へと飛び立っていった。
???「あ~、もうっ! 一体何処に行ったのよ!」
生い茂る竹林の中をきょろきょろと見回しながら、永遠亭の月兎、鈴仙・優曇華院・イナバはため息をついた。
ただでさえ広くて迷いやすい事で知られる竹林だ。 ここで逃げ回る相手を探すと言うのは、厄介を通り越して不可能に近い。
鈴仙「はぁ~、あの子もなんで話を聞く前に逃げちゃうかなぁ……、
ちゃんと話を聞いていればこんな事には……ん? あれは……、おーい! 文ーっ!」
岩に腰をかけて、空を見上げた鈴仙は、上空を行く見知った姿――文を見つけ、呼びかける。
鈴仙の声に気が付いたのか、文はこちらを振り向くと、くるりと方向転換をして、鈴仙の目の前に降り立つ。
文「あや? 私に何か用ですか? 鈴仙さん」
鈴仙「ちょっと聞きたいんだけど、この辺でお菓子の魔女、見なかった?」
文「シャルロッテさんですか? いいえ、見てませんが……」
どうかしたんですか? と文が問い返すと、鈴仙は顔をしかめながら事情を話し始める。
鈴仙「実はね、あの魔女ったら、お師匠様の診療中に逃げ出しちゃったのよ」
文「逃げた? それは一体、どうしてです?」
永遠亭で八意永琳の診療と言えば、大抵の事なら回復が約束されたも同然である。
わざわざ診療を受けに言ったのに、逃げ出す、と言うのはいささか理解しがたい行動だと言えた。
鈴仙「それがね……、虫歯の治療だったのよ」
文「ああ……」
げんなりした鈴仙から返ってきた答えに文は物凄く納得した。
年がら年中、甘いお菓子を作っては食べているシャルロッテの事だ、虫歯が出来ない方がおかしいと言える。
おそらく虫歯が酷くて、削るか抜歯という話にでもなったのだろう、
魔女の中では比較的お子様なシャルロッテは、脱兎の如く逃げ出したに違いない。
鈴仙「まったく、麻酔を効かせるから痛くない、って言う前に逃げるんだから……、嫌になっちゃう」
そう言って鈴仙は肩をすくめてみせる。
対する文は、色々な意味でネタに使えそうだと手帖に書きとめながら、確認するように尋ねる。
文「分かりました、見つけたら永遠亭まで連れて行けば良いんですね?」
鈴仙「お願い、そうしてもらうと助かるわ」
そう言うと、鈴仙は再び竹林内の捜索を開始し、文は空へと飛び立っていった。
596: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:17:00.19 ID:+HkMBDfP0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シャルロッテ「う~、まさか魔女になってから虫歯になるなんて……、こんなの絶対おかしいよぉ……、っ!? 痛たた……」
ズキズキと痛む口元を押さえながら、お菓子の魔女・シャルロッテは竹林の中を歩いていた。
異変が起こったのは今朝の事、
いつも通り朝食代わりのお菓子を作って、食べる前に冷たい飲み物でも、と思い、牛乳を一気飲みしようとして……、その激しい痛みに襲われたのだ。
一度は気のせいかと思い、そのまま朝食を食べ、やっぱり痛みが治まらないので、永遠亭に出向いたら、
綺麗な女医のお姉さん(お姉さんと呼びなさいと言われた)に、「間違いなく虫歯ね」と断定されてしまった。
それだけでも衝撃的だったのに、女医のお姉さんはドリルやら、抜歯の道具やらを、次々と用意し始め、
そして、最後の最後に、鋭い針のついた注射器を、女医のお姉さんがやけにいい笑顔で持ってきて……、そこでシャルロッテの恐怖感は限界を超えた。
一旦、ぬいぐるみモードになって椅子の拘束から逃れたシャルロッテは、そのまま一目散に永遠亭から逃げ出し、
今はこうして、追っ手を撒くために竹林の中を逃げているのだ。
シャルロッテは、周りに人影一つ無い事を確認して、ほっとため息をつく。
シャルロッテ「ふぅ、ここまで逃げれば大丈……」
???「あや? シャルロッテさん?」
シャルロッテ「っ!!? って、文かぁ~、びっくりさせないでよ……」
安堵した途端聞こえた声に、思わずビクリとなったシャルロッテは、声の主が文である事に気が付き、胸をなでおろした。
シャルロッテ「今日はどうしたの? またネタ探し?」
文「いえ、ネタは見つかってるんですよ。 丁度いいネタが……」
そう言って、文はニヤリと口元を吊り上げる。
よほど面白いネタなのだろうかと思いつつ、シャルロッテは文に問う。
シャルロッテ「そうなの? それじゃあ早く現場に行かないと……」
文「永遠亭から逃げ出した虫歯少女が御用になる、ってネタなんですけどね」
シャルロッテ「っ!?」
文が告げた言葉に、シャルロッテは今度こそ身体を硬直させる。
文から目線を離さないよう、身構えつつ、シャルロッテは後ずさる。
シャルロッテ「う~、まさか魔女になってから虫歯になるなんて……、こんなの絶対おかしいよぉ……、っ!? 痛たた……」
ズキズキと痛む口元を押さえながら、お菓子の魔女・シャルロッテは竹林の中を歩いていた。
異変が起こったのは今朝の事、
いつも通り朝食代わりのお菓子を作って、食べる前に冷たい飲み物でも、と思い、牛乳を一気飲みしようとして……、その激しい痛みに襲われたのだ。
一度は気のせいかと思い、そのまま朝食を食べ、やっぱり痛みが治まらないので、永遠亭に出向いたら、
綺麗な女医のお姉さん(お姉さんと呼びなさいと言われた)に、「間違いなく虫歯ね」と断定されてしまった。
それだけでも衝撃的だったのに、女医のお姉さんはドリルやら、抜歯の道具やらを、次々と用意し始め、
そして、最後の最後に、鋭い針のついた注射器を、女医のお姉さんがやけにいい笑顔で持ってきて……、そこでシャルロッテの恐怖感は限界を超えた。
一旦、ぬいぐるみモードになって椅子の拘束から逃れたシャルロッテは、そのまま一目散に永遠亭から逃げ出し、
今はこうして、追っ手を撒くために竹林の中を逃げているのだ。
シャルロッテは、周りに人影一つ無い事を確認して、ほっとため息をつく。
シャルロッテ「ふぅ、ここまで逃げれば大丈……」
???「あや? シャルロッテさん?」
シャルロッテ「っ!!? って、文かぁ~、びっくりさせないでよ……」
安堵した途端聞こえた声に、思わずビクリとなったシャルロッテは、声の主が文である事に気が付き、胸をなでおろした。
シャルロッテ「今日はどうしたの? またネタ探し?」
文「いえ、ネタは見つかってるんですよ。 丁度いいネタが……」
そう言って、文はニヤリと口元を吊り上げる。
よほど面白いネタなのだろうかと思いつつ、シャルロッテは文に問う。
シャルロッテ「そうなの? それじゃあ早く現場に行かないと……」
文「永遠亭から逃げ出した虫歯少女が御用になる、ってネタなんですけどね」
シャルロッテ「っ!?」
文が告げた言葉に、シャルロッテは今度こそ身体を硬直させる。
文から目線を離さないよう、身構えつつ、シャルロッテは後ずさる。
597: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:19:20.78 ID:+HkMBDfP0
文「悪く思わないで下さいよ? これも新聞のネタの為です」
手をわきわきさせつつ、文は背中の翼を大きく広げる。
シャルロッテが逃げ出すと同時に、一気に飛びかかるつもりなのだろう。
スピード勝負になってしまえば、シャルロッテに勝ち目は無い。 それならば……
シャルロッテ「なら、そのネタは差し替えだね。 『鴉天狗の新聞屋、虫歯少女を取り逃がす』、にね!」
聖戦 『キノコたけのこウォーズ』
スピード勝負に持ち込まれるぐらいなら、とシャルロッテはスペルカードを宣言する。
弾幕戦で文を打ち負かしてしまえば、勝率ゼロ%な追いかけっこだけは回避できるからだ。
文もシャルロッテが弾幕戦を仕掛けてくる事を読んでいたのだろう。
スペル発動の直前に放たれた通常弾幕を、宙へと飛び上がる事で回避する。
文「おっと、やっぱりそうきましたか……。 ですが、こっちもスクープが掛かってますからね。 簡単に負けてはあげませんよ?」
地面から生えてくるたけのこ型のレーザーと、四方八方から生えて来るキノコ型の弾幕を避けながら、文はニヤリと笑う。
たけのこの生えるスピードは本物のたけのこの如く速く、キノコは胞子のようにふわふわとした動きで飛び回るので、共に回避が難しい。
が、それでも持ち前のスピードと反射神経で、文はこの弾幕を避け続ける。
文「それにしてもキノコとたけのこですか……、確かシャルロッテさんの弾幕はお菓子だったと思ったんですけど……」
シャルロッテ「うん、私の弾幕はお菓子だよ。 コレは外の世界のお菓子だから、文は知らないかもだけど」
文の漏らした疑問に、えへんと胸を張りながら答えるシャルロッテ。
対する文は、フムフムと頷きながら、メモや写真を取る。
文「成る程、そう言う事ですか……、幻想郷に情報すら入ってこない、って事は相当人気のお菓子なんですね」
そう言ってから文は、このたけのことキノコの弾幕から、チョコレートの匂いが漂っている事に今更ながら気が付く。
本物の竹に混じって、チョコのたけのこが生える光景は極めてシュールなのだけれど、画的には美味しいので突っ込まないでおく。
シャルロッテ「人気どころか大人気だよ。 キノコ派とたけのこ派が戦争するぐらいにね」
文「おー、こわいこわい、それはまた物騒な話ですね」
やっぱり自慢げに解説をしてみせるシャルロッテに、文はわざと怯えてみせながら相手をする。
まぁ、逆に言ってしまえば、お菓子の一つでそんな事が出来るぐらい平和である、と言うことなのだが……それは口には出さずにしまい込む。
598: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:21:52.98 ID:+HkMBDfP0
文「でも残念ですねぇ……」
その代わりに漏れるのは不敵な微笑みと、呆れ混じりの声。
シャルロッテ「?」
文「そこまで人気のある、定番のお菓子のせいなんでしょうね、この弾幕も……」
文の態度に、自慢げな態度が消えて、首をかしげるシャルロッテに、文は落ち着いた声音で、それでも冷酷な事実を、突きつける。
文「回避方法(お約束)がワンパターン過ぎて、正直片腹痛いです。 ぶっちゃけて言ってしまえば……」
「マンネリなんですよ」
シャルロッテ「がーん!」
文の告げた一言は、シャルロッテの心に深く深く突き刺さる。
弾幕戦が始まって以来、文は反撃の弾幕を一発たりとも放ってもいないのに、シャルロッテは物凄いダメージを受けたかのように、その場に崩れる。
お約束も度を越せばマンネリになる。
特に普段から新しい話題を追い求めている文たち記者には、そういう傾向が強く出る。
シャルロッテの名誉の為に言うと、この弾幕は簡単にパターンを構築出来るほど、単純なものではない。
ではないのだが、適応性の早い文から見ると、避け方の決まった、パターン弾幕に見えてしまったのだ。
シャルロッテ「うぅっ……、やっぱり市販のお菓子じゃそうなるよね……、でもまだ負けないもん! 次はコレだっ!」
調理 『スイート・三分クッキング』
シャルロッテ「たまには完成品だけじゃなくて、製作過程も見せないとね! まずは材料を用意するよ!」
そう言ってシャルロッテはありとあらゆる種類の弾幕を現出させる。
丸弾、大弾、へにょりに、レーザー……、まさしく弾幕を構成するための材料が、そこに揃っていた。
文「あやや、これは厄介そうですね……」
用意された弾幕の量を見て、文は長期戦を覚悟する。
クッキング、と言うことはあれらの材料を組み合わせたり、混ぜ合わせて様々な弾幕を作るつもりなのだろう。
そう、文は考えていたのだが……、
シャルロッテ「これらを色々とやって、完成したのがこっちだよ!」
シャルロッテが放った弾幕はケーキを模した弾幕だった。ご丁寧にもフォークの物理弾幕がついた、ショートケーキの弾幕だ。
それは別に構わない。 お菓子がモチーフであるとすぐに分かったし、シャルロッテらしい弾幕だと思う。
だと、思うのだけど……
599: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:29:29.25 ID:+HkMBDfP0
文「あの~、シャルロッテさん……、なんで最初に用意した材料を使わないんです?」
そうなのだ、シャルロッテは最初に用意した弾幕は一つたりとも使うことなく、新たに作り出した弾で、弾幕を構築したのだ。
切り崩されるケーキの弾幕にも、それらと一緒に襲い来るフォークにも、“材料”と称して用意された弾は一切使われては居ない。
弾幕への対処を抜かりなく行いつつ、文が尋ねると、シャルロッテは訳が分からないと言うように首をかしげる。
シャルロッテ「なんで、って三分でお菓子が作れる訳無いでしょ?」
三分クッキングで完成品が用意してあるのは常識だよ。とまで言ってのけるシャルロッテに、流石の文も乾いた笑いを漏らす。
文「それはそうでしょうけど……、でも出来あいのお菓子、って正直どうなんです?」
シャルロッテ「それは……、確かに自分で作ったお菓子の方が美味しいんだけど……。
自分で作るとどうしても食べたくなっちゃうから、虫歯が治るまではあまり見たくないの」
文「虫歯を治したいならどうして逃げたんです? 永琳さんに任せておけばすぐでしょう?」
腫れ上がった頬を押さえながらため息をつくシャルロッテに、文は当然の疑問を漏らす。
鈴仙にも尋ねた事だが、一応本人から言質を取っておこうと思ったからである。
シャルロッテ「だって、注射怖いんだもん……」
文「麻酔しないで歯の治療、の方がよっぽど痛いと思いますけどねぇ……」
注射器が出てきた、と言うことは間違いなく抜歯レベルの酷さだったのだろう。
おそらく永琳の事だから、シャルロッテを落ち着かせようと、にこやかに注射器を持ち出して、それが却ってシャルロッテを怖がらせてしまったのだろう。
文がそんな事を考えながら、いまだ続くインスタントなお菓子弾幕を避けていると、
涙目から一転して表情を引き締めたシャルロッテが宣言するように声を上げる。
シャルロッテ「とにかく! 私はぜったいに、注射なんてゴメンだからね! だから文にはここで負けてもらって……」
文「あー、そうしてあげたいのは山々なんですけどね。 シャルロッテさん、もう貴女は負けてるんですよ」
シャルロッテ「? 私が負けてる? 文、決着もついてないのに適当な事を……」
言わないで、と釘を刺そうとして、出来なかった。
シャルロッテの背後からやけに低い声がしたかと思うと、肩を思いっきり誰かに掴まれたからだ。
???「はい、つっかまえたっ!!!(ガシッ」
シャルロッテ「!!!?(ドッキーン!」
聞こえた声におそるおそる振り返ったシャルロッテの目に飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべたウサ耳少女――鈴仙の姿。
にこやかなのに、背筋が凍り付くようなその微笑みに、シャルロッテの顔色が瞬く間に青くなる。
鈴仙「弾幕戦で自分の位置を教えてくれるなんて随分と殊勝な心がけじゃない。 さあて、診療に戻りましょうねぇ~、お菓子の魔女さん?」
シャルロッテ「えっ、あっ……、ウソ……、そんなっ!? こんな事って……、いやああああぁぁぁぁっ!?」
断末魔のような悲鳴をあげるシャルロッテを、鈴仙は絶対零度の笑みを浮かべたまま引き摺っていく。
シャルロッテが弾幕戦をする時は、必ずと言って良いほどぬいぐるみ形態をとっているので、永遠亭から逃げ出したときの様な縄抜けは今度こそ不可能だ。
シャルロッテ「文! お願い、弾幕戦は私の負けでいいから助けて!!」
一縷の望みをかけて、シャルロッテは手足をじたばたさせながら、文へと呼びかける。
それに対し、文はシャルロッテが連行されていく様を写真に収めながら、手を振ってみせる。
文「シャルロッテさん、今回の件の記事が出来たら真っ先に届けますからね~」
シャルロッテ「文の鬼! 悪魔! パパラッチ~っ!!」
ありったけの呪詛を吐きながら、シャルロッテは永遠亭で再度、診療を受ける事となった。
結果だけを言えば、永琳の適切な処置で、シャルロッテは虫歯の苦しみから無事、解放された。
この件で懲りたのか、これまでお菓子に偏りがちだったシャルロッテの食生活が、この日以後、幾分かマトモなモノになったそうだ。
600: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:33:57.93 ID:+HkMBDfP0
―――――――― 【救済の魔女と人魚の魔女 @ クリームヒルトの家】 ――――――――
オクタヴィア「ちょっ、クリームヒルト! これ見てよ、コレ!」
クリームヒルト「うわっ!?オクタヴィアちゃん!? どうしたの、そんな慌てて?」
オクタヴィア「そんな事はどーでもいいからとにかくコレを見て!」
クリームヒルトの家に、やけに落ち着かない様子のオクタヴィアが飛び込んできたのは、ある日の昼下がりのこと。
鬼気迫るその様子に目を丸くするクリームヒルトに、オクタヴィアは一枚の紙を突きつける。
クリームヒルト「これは……、手紙?」
オクタヴィア「そ、手紙。 これが表の郵便受けに入ってたの!」
クリームヒルト「……オクタヴィアちゃん、私の家だから別に構わないけど、他所さまの家の郵便受けを勝手に覗くのはどうかと思……、って、えっ?」
さらっととんでもない事を言うオクタヴィアに、クリームヒルトは冷静なツッコミを入れつつ、手渡された手紙に目を落とす。
手紙の文面を一度見て、再度顔を上げたクリームヒルトは、真顔でオクタヴィアに尋ねる。
クリームヒルト「えっと、オクタヴィアちゃん……、これ、イタズラか何かじゃ、無いんだよね……?」
オクタヴィア「手紙に関しては正真正銘、クリームヒルトの家の郵便受けに入ってた手紙だよ。 と言うかいくらあたしでもこんな手紙は書けないって……」
疑いの目を向けるクリームヒルトに、オクタヴィアは心外だと言うように答える。
見慣れた筆跡、と言うか自分自身の筆跡と全く同じソレで書かれたその手紙の文面は、極めて簡潔なモノだった。
『一週間後ぐらいに、そっちに“お話”をしに行くつもりです。 待っててね。 鹿目まどかより』
オクタヴィア「ねぇ、クリームヒルト。 あたしの記憶が正しければ、概念のまどかの“お話”って言うのは、弾幕戦とイコール……で、良かったんだよね?」
クリームヒルト「? イコールかどうかは分からないけど、前回は確かにそうだったよ……」
神妙な面持ちで問い掛けてくるオクタヴィアに対し、クリームヒルトは小さく頷いてみせる。
その言葉で思い出すのは、盆の円環事件のシメとなった無縁塚での一コマ。
ほむらを(結果的にではあるが)囮として使った事に激怒した概念のまどかが、八雲紫と行った熾烈な“お話”と言う名の一大決戦は、
事件の舞台となったかの地が焦土になるまで止まらなかったのだ。
オクタヴィア「ちょっ、クリームヒルト! これ見てよ、コレ!」
クリームヒルト「うわっ!?オクタヴィアちゃん!? どうしたの、そんな慌てて?」
オクタヴィア「そんな事はどーでもいいからとにかくコレを見て!」
クリームヒルトの家に、やけに落ち着かない様子のオクタヴィアが飛び込んできたのは、ある日の昼下がりのこと。
鬼気迫るその様子に目を丸くするクリームヒルトに、オクタヴィアは一枚の紙を突きつける。
クリームヒルト「これは……、手紙?」
オクタヴィア「そ、手紙。 これが表の郵便受けに入ってたの!」
クリームヒルト「……オクタヴィアちゃん、私の家だから別に構わないけど、他所さまの家の郵便受けを勝手に覗くのはどうかと思……、って、えっ?」
さらっととんでもない事を言うオクタヴィアに、クリームヒルトは冷静なツッコミを入れつつ、手渡された手紙に目を落とす。
手紙の文面を一度見て、再度顔を上げたクリームヒルトは、真顔でオクタヴィアに尋ねる。
クリームヒルト「えっと、オクタヴィアちゃん……、これ、イタズラか何かじゃ、無いんだよね……?」
オクタヴィア「手紙に関しては正真正銘、クリームヒルトの家の郵便受けに入ってた手紙だよ。 と言うかいくらあたしでもこんな手紙は書けないって……」
疑いの目を向けるクリームヒルトに、オクタヴィアは心外だと言うように答える。
見慣れた筆跡、と言うか自分自身の筆跡と全く同じソレで書かれたその手紙の文面は、極めて簡潔なモノだった。
『一週間後ぐらいに、そっちに“お話”をしに行くつもりです。 待っててね。 鹿目まどかより』
オクタヴィア「ねぇ、クリームヒルト。 あたしの記憶が正しければ、概念のまどかの“お話”って言うのは、弾幕戦とイコール……で、良かったんだよね?」
クリームヒルト「? イコールかどうかは分からないけど、前回は確かにそうだったよ……」
神妙な面持ちで問い掛けてくるオクタヴィアに対し、クリームヒルトは小さく頷いてみせる。
その言葉で思い出すのは、盆の円環事件のシメとなった無縁塚での一コマ。
ほむらを(結果的にではあるが)囮として使った事に激怒した概念のまどかが、八雲紫と行った熾烈な“お話”と言う名の一大決戦は、
事件の舞台となったかの地が焦土になるまで止まらなかったのだ。
601: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:35:43.87 ID:+HkMBDfP0
クリームヒルト「え?なに? それじゃあオクタヴィアちゃんは、私がいつの間にか概念の私を怒らせるような事をしちゃった、って言うの……?」
オクタヴィア「『お話=一心不乱の弾幕戦』ならそうなんじゃない? でもそうなるとマズいかもね~、どう考えたって、勝ち目がないよ、コレ……」
心当たりがまるでないことに首をかしげるクリームヒルトの横で、オクタヴィアが捲し立てる。
その脳裏に浮かぶのは、訪れて欲しくない最悪の光景。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まど神『あなたを、殺します……』
『超すっごい概念的なスペル!』
クリームヒルト『きゃああああぁぁぁっ!?(ピチューン!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オクタヴィア「うん、どう考えてもこうなるね」
クリームヒルト「ネタが古いし、さらっと弾幕戦の域を越えてるよソレ!?
と言うかオクタヴィアちゃんの中での概念の私、ってどうなってるの!?(マドーン!」
オクタヴィア「こうなったら特訓しかないわよ、クリームヒルト! 概念のアンタすら凌駕する三倍ティロ・フィナーレを修得すればあるいは……!」
クリームヒルト「うん、完全に楽しんでるよね? 私をオモチャにして遊ぶ気マンマンだよね!?」
オクタヴィア「それじゃあ早速特訓の旅に出ようじゃないか、恭仁使い魔、召喚っ!」
遅まきながらようやくオクタヴィアの意図に気が付いたクリームヒルトだったが、その時には既に手遅れだった。
クリームヒルトの身体はオクタヴィアは使い魔数体によって拘束され、そのまま有無を言わさずに連れ出されてしまう。
オクタヴィア「まずは幽々子さん辺りに稽古をつけてもらおうかな~。 レミリアや永琳さん辺りでも良いかもだけど……」
クリームヒルト「オクタヴィアちゃんのバカぁ~っ! あとでぜったい、倍にして返してあげるからね!?」
話が引っ込みのつかない方向に向かいつつあるのをひしひしと感じつつ、
それでもクリームヒルトは意味の無い、遠吠えにしかならない声をあげる事しか出来なかった。
602: 東方魔戯歌伝 2012/01/06(金) 16:37:23.84 ID:+HkMBDfP0
―――――――――― 【円環の神さまとその親友 @ 円環の理】 ――――――――――
さやか「え? 魔女のまどか宛てに手紙を出したの?」
まどか「うん、一週間後にそっちに遊びに行く、ってね……。 だからそれまでにマスターしておかないと!」
さやか「一週間、ってまた急な……。
そう言えばまどか、まどかは一度、幻想郷で“八雲紫”、って言う妖怪相手に弾幕戦やってるんだよね? その時はどうやってやったの?」
宣言の時に使うカードを作りながら、勢い込むように言うまどかを横目に見ながら、さやかが尋ねる。
弾幕を一から作り出す、と言う話になっていたので、すっかり忘れていたのだが、まどかは既に弾幕戦を経験している筈なのだ。
さやかが質問を投げかけると同時に、カードを作るまどかの手が止まり、直後、盛大なため息がその口から漏れる。
『あ、地雷踏んだかな?』と、さやかが思っていると、まどかは顔を赤くしながら苦笑する。
まどか「てぃひひ、それが恥ずかしい話なんだけど、あの時はまだ、弾幕戦についてよく分かってなかったんだよね。
だから、取り敢えず魔力エネルギー弾を撃ち込んどけば良いかな?ぐらいにしか思ってなくて……」
さやか「あー、さじ加減を間違えて殺る気満々の全力全壊でやっちゃったのね……」
まどか「その時は、紫さんに思いっきり呆れられちゃったんだ……」
その時の事を思い出したのだろう、『ずーん』という擬音が聞こえてきそうな程、落ち込むまどか。
なんでも、一発一発に力を込めすぎて、周囲を滅茶苦茶にした上、肝心の攻撃もその戦略性の無さからあっさりとかわされてしまったらしい。
さやか「そ、それで? どんな弾幕にするかは決まったの?」
まどか「え、あっ、うん、とりあえずこんな感じにしようかな、って言うのは考えてみたよ」
暗くなりかけたムードをどうにか変えようと、さやかは話題を切り替える。
まどかも、それが分かったのか、表情をどうにか取り繕いながら、手元にあったノートをさやかに手渡す。
ノートの中には、弾幕の試案や構想が書いてあって、その中の幾つかに赤いマーカーで丸印がついていた。
採用を意味するであろう、マーカーのついた案に目を通しながら、さやかは感嘆の声を漏らす。
さやか「ふ~ん、結構いい感じなんじゃないの? で、スペル名は?」
まどか「えーと、上から、『スペシャルまどかミラクル』に、『アルティメットまどかアロー』でしょ、それと『エターナルまどかフレンズ』に、『ハイパーまどかビーム』……」
さやか「うん、ちょっと頭冷やそうか、そこのバ神さま」
そう言えば、この子のネーミングセンスは小二レベルだったっけ……、と今更ながら思い出しつつ、それでもさやかは突っ込まずには居られなかった。
さやか「え? 魔女のまどか宛てに手紙を出したの?」
まどか「うん、一週間後にそっちに遊びに行く、ってね……。 だからそれまでにマスターしておかないと!」
さやか「一週間、ってまた急な……。
そう言えばまどか、まどかは一度、幻想郷で“八雲紫”、って言う妖怪相手に弾幕戦やってるんだよね? その時はどうやってやったの?」
宣言の時に使うカードを作りながら、勢い込むように言うまどかを横目に見ながら、さやかが尋ねる。
弾幕を一から作り出す、と言う話になっていたので、すっかり忘れていたのだが、まどかは既に弾幕戦を経験している筈なのだ。
さやかが質問を投げかけると同時に、カードを作るまどかの手が止まり、直後、盛大なため息がその口から漏れる。
『あ、地雷踏んだかな?』と、さやかが思っていると、まどかは顔を赤くしながら苦笑する。
まどか「てぃひひ、それが恥ずかしい話なんだけど、あの時はまだ、弾幕戦についてよく分かってなかったんだよね。
だから、取り敢えず魔力エネルギー弾を撃ち込んどけば良いかな?ぐらいにしか思ってなくて……」
さやか「あー、さじ加減を間違えて殺る気満々の全力全壊でやっちゃったのね……」
まどか「その時は、紫さんに思いっきり呆れられちゃったんだ……」
その時の事を思い出したのだろう、『ずーん』という擬音が聞こえてきそうな程、落ち込むまどか。
なんでも、一発一発に力を込めすぎて、周囲を滅茶苦茶にした上、肝心の攻撃もその戦略性の無さからあっさりとかわされてしまったらしい。
さやか「そ、それで? どんな弾幕にするかは決まったの?」
まどか「え、あっ、うん、とりあえずこんな感じにしようかな、って言うのは考えてみたよ」
暗くなりかけたムードをどうにか変えようと、さやかは話題を切り替える。
まどかも、それが分かったのか、表情をどうにか取り繕いながら、手元にあったノートをさやかに手渡す。
ノートの中には、弾幕の試案や構想が書いてあって、その中の幾つかに赤いマーカーで丸印がついていた。
採用を意味するであろう、マーカーのついた案に目を通しながら、さやかは感嘆の声を漏らす。
さやか「ふ~ん、結構いい感じなんじゃないの? で、スペル名は?」
まどか「えーと、上から、『スペシャルまどかミラクル』に、『アルティメットまどかアロー』でしょ、それと『エターナルまどかフレンズ』に、『ハイパーまどかビーム』……」
さやか「うん、ちょっと頭冷やそうか、そこのバ神さま」
そう言えば、この子のネーミングセンスは小二レベルだったっけ……、と今更ながら思い出しつつ、それでもさやかは突っ込まずには居られなかった。
624: 1 2012/01/15(日) 11:24:18.63 ID:DuyXmRiN0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エルザマリア「群馬県M市在住、ほむほーむさんから頂きました」
Q) わた……もとい、見滝原の生存組に出番は無いんですか?
エルザマリア「えっと、少なくとも暁美さんは本編エピローグの日(十数年後)まで再度の幻想入りはしないそうですよ」
???「がーん!」 ナ、ナンダッテー!?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エルザマリア「皆さまこんにちは、エルザマリアです」
霊夢「博麗霊夢よ」
エルザマリア「早速で申し訳ないのですが霊夢さん、うちの教会に来て頂ける人間の方が少ないのですが、どうしたら良いのでしょうか?」
霊夢「それは何? 参拝客が少ないウチに喧嘩売ってるの?」
エルザマリア「いえ、そういう訳では……。 ただ、命蓮寺や守矢神社に聞いても人数的に大差が無い、と言う事なので、少し気になってしまって……」
霊夢「人里の人間からの信仰を見込んでるなら、殆ど無駄よ。 絶大な信仰を集めてるのが居るし……」
エルザマリア「? それは一体どなたなんです?」
霊夢「秋神の姉妹よ。 特に豊穣神の方ね……」
エルザマリア「ああ、そういう事ですか……」
霊夢「ご利益に釣られるんだから、現金なものよねぇ……。 だいたいあいつ等は、能力的には……」
【以下信仰についての愚痴の無限ループ】
エルザマリア「群馬県M市在住、ほむほーむさんから頂きました」
Q) わた……もとい、見滝原の生存組に出番は無いんですか?
エルザマリア「えっと、少なくとも暁美さんは本編エピローグの日(十数年後)まで再度の幻想入りはしないそうですよ」
???「がーん!」 ナ、ナンダッテー!?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エルザマリア「皆さまこんにちは、エルザマリアです」
霊夢「博麗霊夢よ」
エルザマリア「早速で申し訳ないのですが霊夢さん、うちの教会に来て頂ける人間の方が少ないのですが、どうしたら良いのでしょうか?」
霊夢「それは何? 参拝客が少ないウチに喧嘩売ってるの?」
エルザマリア「いえ、そういう訳では……。 ただ、命蓮寺や守矢神社に聞いても人数的に大差が無い、と言う事なので、少し気になってしまって……」
霊夢「人里の人間からの信仰を見込んでるなら、殆ど無駄よ。 絶大な信仰を集めてるのが居るし……」
エルザマリア「? それは一体どなたなんです?」
霊夢「秋神の姉妹よ。 特に豊穣神の方ね……」
エルザマリア「ああ、そういう事ですか……」
霊夢「ご利益に釣られるんだから、現金なものよねぇ……。 だいたいあいつ等は、能力的には……」
【以下信仰についての愚痴の無限ループ】
625: 東方魔戯歌伝 2012/01/15(日) 11:29:53.45 ID:DuyXmRiN0
――――――――― 【救済の魔女と人魚の魔女 @ 白玉楼】 ―――――――――
幽々子「行くわよ~。 『反魂蝶 ‐八分咲‐』~っ」
クリームヒルト「えっ? ちょっ、八分って私まだ五分咲きでしか練習してな……、きゃああああぁぁぁっ!!」
ちゅどーん! キャアアアアアアアアアア>
妖夢「……クリームヒルトさん、何だかんだと言いつつ腕をあげましたね」
幽々子の必殺スペルに、悲鳴をあげつつもなんとかついていこうともがくクリームヒルトを見ながら、妖夢が呟いた。
その言葉に、真横で一緒に観戦していたオクタヴィアもうんうんと頷く。
オクタヴィア「だね~。 魔力的な資質が高いとは言え、弓矢以外の得物も上手く使えるようになったしね~」
ちゅどーん! チョッ、マッ……>
剣術使いのオクタヴィアちゃんとしてはそろそろ立場が無くなってきましたよ。などと言いつつ苦笑するオクタヴィア。
口調こそ茶化してみせるようなソレだったが、その表情には若干の焦燥が滲んでいるように見えた。
少し考えてから妖夢はある提案をオクタヴィアに持ちかける。
妖夢「それなら、私の鍛練に付き合ってくれませんか?」
オクタヴィア「えっ?」
ちゅどーん! ピチューン!>
妖夢「こう見えても私、オクタヴィアさんたちが来るまでは数少ない剣客家でしたから……、
サーベルと日本刀では些か勝手が違うとは思いますが、どうですか?」
<クリームヒルトチャン,ダイジョウブ-? ナ、ナントカ~>
オクタヴィア「あたしは良いけど……、妖夢は良いの? 相手があたしなんかで?」
クリームヒルトより弱いよ? と、言葉を足すオクタヴィアに妖夢は首を横に振る。
妖夢「強い弱いは互いに斬り結んでから初めて判るモノです。 最初から決めてかかるモノではありません」
オクタヴィア「そんな事を言われちゃ、引き下がる訳にはいかないね。 よし、やろう妖夢!」
以前からの妖夢をよく知っている者なら、また悪い癖が出たと呆れる事だろう。
異変などの際に、とりあえず斬っとけ、な行動指針を採ったが為に“辻斬り妖夢”とまで言われたほど、妖夢は他者との斬り結びに拘る傾向がある。
言ってしまえば、今回もソレなのだが、生憎とオクタヴィアの知る妖夢は、平時の庭師兼従者としての妖夢であり、
また、幻想入りして最初の練習相手が妖夢だったことも手伝って、オクタヴィアは大して疑問を抱く事もなく、素直にコレを受け取ってしまった。
その結果……、
幽々子「行くわよ~。 『反魂蝶 ‐八分咲‐』~っ」
クリームヒルト「えっ? ちょっ、八分って私まだ五分咲きでしか練習してな……、きゃああああぁぁぁっ!!」
ちゅどーん! キャアアアアアアアアアア>
妖夢「……クリームヒルトさん、何だかんだと言いつつ腕をあげましたね」
幽々子の必殺スペルに、悲鳴をあげつつもなんとかついていこうともがくクリームヒルトを見ながら、妖夢が呟いた。
その言葉に、真横で一緒に観戦していたオクタヴィアもうんうんと頷く。
オクタヴィア「だね~。 魔力的な資質が高いとは言え、弓矢以外の得物も上手く使えるようになったしね~」
ちゅどーん! チョッ、マッ……>
剣術使いのオクタヴィアちゃんとしてはそろそろ立場が無くなってきましたよ。などと言いつつ苦笑するオクタヴィア。
口調こそ茶化してみせるようなソレだったが、その表情には若干の焦燥が滲んでいるように見えた。
少し考えてから妖夢はある提案をオクタヴィアに持ちかける。
妖夢「それなら、私の鍛練に付き合ってくれませんか?」
オクタヴィア「えっ?」
ちゅどーん! ピチューン!>
妖夢「こう見えても私、オクタヴィアさんたちが来るまでは数少ない剣客家でしたから……、
サーベルと日本刀では些か勝手が違うとは思いますが、どうですか?」
<クリームヒルトチャン,ダイジョウブ-? ナ、ナントカ~>
オクタヴィア「あたしは良いけど……、妖夢は良いの? 相手があたしなんかで?」
クリームヒルトより弱いよ? と、言葉を足すオクタヴィアに妖夢は首を横に振る。
妖夢「強い弱いは互いに斬り結んでから初めて判るモノです。 最初から決めてかかるモノではありません」
オクタヴィア「そんな事を言われちゃ、引き下がる訳にはいかないね。 よし、やろう妖夢!」
以前からの妖夢をよく知っている者なら、また悪い癖が出たと呆れる事だろう。
異変などの際に、とりあえず斬っとけ、な行動指針を採ったが為に“辻斬り妖夢”とまで言われたほど、妖夢は他者との斬り結びに拘る傾向がある。
言ってしまえば、今回もソレなのだが、生憎とオクタヴィアの知る妖夢は、平時の庭師兼従者としての妖夢であり、
また、幻想入りして最初の練習相手が妖夢だったことも手伝って、オクタヴィアは大して疑問を抱く事もなく、素直にコレを受け取ってしまった。
その結果……、
626: 東方魔戯歌伝 2012/01/15(日) 11:35:48.08 ID:DuyXmRiN0
クリームヒルト「えっと、アレは大丈夫、なんですか?」
幽々子「少なくともオクタヴィアちゃんは幽霊じゃないから大丈夫よ。 斬られたら物凄く痛いと思うけど……」
それってダメじゃないですか!? と倒れたまま声をあげるクリームヒルト。
物騒な返答に何とかしたいと思ったが、幽々子との弾幕戦で疲弊した身体は動いてくれそうもない。
幽々子「大丈夫よ。 妖夢も一線は越えないと思うし、あの様子ならオクタヴィアちゃんも十分対応出来そうだし……」
クリームヒルト「でも……、模擬戦で真剣、ってどうなんですか?」
幽々子「それは言わないであげて、あの子の癖、みたいなものだから……」
そう言って苦笑する幽々子の表情はどこか疲れたような感じで、クリームヒルトはそれ以上何も言えなかった。
一方、試合……いや死合の真っ只中に居るオクタヴィアは、背筋が冷える感覚を感じつつ、サーベルで妖夢の斬撃を凌いでいた。
斬撃を振り払い、一旦距離をとったところで、オクタヴィアは抱いていた疑問を妖夢にぶつける。
オクタヴィア「ちょっと! 抜き身のガチ斬り合いとは聞いてなかったんだけど!?」
妖夢「? 言いませんでした?私の鍛練に付き合って欲しい、と……」
オクタヴィア「それにしたって普通ならせいぜい模造刀でしょ!? 真剣で鍛練するヤツがどこにいるのよ!?」
妖夢「? ここに居ますが?」
オクタヴィア「~~~~っ!」
話にならないと思いつつ、オクタヴィアは数度の鍔迫り合いで刀身がボロボロになったサーベルを投げ捨てる。
いくら魔力で作り出したサーベルとは言え、斬る事に特化した、それも霊力が込められた日本刀である楼観剣や白楼剣が相手では歯が立たない。
折れたり、ぶった斬られないだけまだマシなのだが、その程度ではなんの慰めにもならない。
オクタヴィア(このまま持久戦に持ち込まれたらまず勝ち目はない! なんとかして一撃重いのをぶち込んで、形勢を引っくり返さないと!!)
オクタヴィア(でもその一撃をどうやって加える? 痛覚遮断で肉を切らせて骨を断つ?
……ダメだ。妖夢相手じゃ肉どころか骨ごと持っていかれる。 そんな小手先の策じゃ通じない……!)
それならばどうしたら良いのか?
痛覚遮断による特攻が無理だとすると、他に何が使えるのか?
妖夢「さっきから防戦一方ですよ? 仕掛けてこないんですか?」
オクタヴィア「へっ、そっちこそ余裕じゃん。 いいのかな、そんなに気抜いてて?」
妖夢の挑発に皮肉で返しつつ、オクタヴィアは思考をフル回転させる。
何かアクションを起こすなら弾幕戦的な何か、と言うことになるが、近接戦主体の今、車輪弾幕や使い魔の召喚は生まれる隙が大きすぎて危険すぎる。
斬撃弾幕は使えない事はないが、それだけでは妖夢の下位互換にしかならず、打開策には程遠い。
残る弾幕は音符弾幕だが……
オクタヴィア(それこそ使い物にならないじゃん。 音じゃ大したダメージなんて……、ん? 音……?)
妖夢「っ! そこっ!!」
考え事に気をとられ、出来た隙を妖夢は見逃さなかった。
楼観剣を手早く翻し、峰でもってオクタヴィアの持っていたサーベルを弾き飛ばす。
オクタヴィア「しまっ……、っ!」
妖夢「…………決まり、ですかね?」
オクタヴィアの鼻先に楼観剣を突きつけつつ、妖夢が問いかける。
オクタヴィアの手に得物は無く、反撃に使えそうなモノは手元には無い。
627: 東方魔戯歌伝 2012/01/15(日) 11:41:32.69 ID:DuyXmRiN0
オクタヴィア「くっ……! ……?」
追い詰められて、思わず後ずさったオクタヴィアは、自身の尾びれの先に何かが当たった事に気が付き、足元に視線を送る。
そこにあったのは、さっきの鍔迫り合いの最中に投げ捨てたサーベルのうちの一本。
刀身はボロボロのままで、一合持つかどうかすら危うい一振りだったが、今はこの一振りに賭けるしかない。
妖夢「どうします? 降参ですか?」
オクタヴィア「降参? そうだね……、この悪あがきが終わったらね!」
妖夢「っ!?」
尾びれでサーベルを弾きあげ、突きつけられた楼観剣の切っ先を撫でるようにして振り払う。
ただの一合でそのサーベルは折れてしまったが、楼観剣が長剣なのも幸いして、生まれた隙にオクタヴィアは距離をとる。
妖夢が楼観剣を構えなおしている間に再び魔力でサーベルを作り出し、それを構える。
妖夢「一度は捨てた剣を再利用するとは……、ですが、偶然は二度は通用しませんよ!」
オクタヴィア「二度? 二度もやる気はこっちにも無いよ。 コレで決めてやる!」
作り出したサーベルに、音の弾幕の特性を付与する。
音の特性――、波紋に揺らぎ、直進に反射、そして何よりも……、
演舞 『剣の舞』
妖夢「なっ!?」
音の速さ、即ち音速の特性が付与された剣撃は、目で捉える事すら最早かなわない。
射命丸文ですら目で追えないほどの剣技を持つ妖夢であってもそれは同じで……、この時の妖夢はオクタヴィアの攻撃に対応する事が出来なかった。
オクタヴィアの連続斬撃をもろに受け、妖夢がその場に膝を付く。
二人の試合を固唾を呑んで見守っていたクリームヒルトはその様を見て、思わず歓喜の声を上げる。
クリームヒルト「やった!」
幽々子「相手を追い詰めた、と言う慢心があったんでしょうね。 妖夢も詰めが甘いんだから……、でも……」
そこで幽々子は言葉を一旦止め、勝利者である筈のオクタヴィアを見る。
妖夢が膝を付いたのを見て、ふっと笑顔を浮かべたオクタヴィアは……、次の瞬間、その場に崩れ落ちた。
クリームヒルト「っ!? オクタヴィアちゃん!?」
幽々子「生身で音速を超える動きをしたせいね。
スペル発動中は痛覚を遮断していたようだけど、それで身体へのダメージがなくなる訳じゃないわ」
今日の所は事実上の引き分けね。と言いつつ立ち上がった幽々子は、
先に駆け出して行ったクリームヒルトの後を追う様にして、二人の元へと向かう。
妖夢とオクタヴィア、二人の剣士が己が実力を完全に引き出せるようになった時、どのような戦いを魅せてくれるのか、その未来に思いを馳せながら……。
628: 東方魔戯歌伝 2012/01/15(日) 11:47:10.97 ID:DuyXmRiN0
――――――――――――― 【その頃、現世・見滝原】 ―――――――――――――
マミ「ふぅ、さっぱりした。 さて、もう遅いし、これを飲んだら寝ましょ……」
まどか「あっ、マミさん! 夜分遅くにお邪魔してます」
学業に魔獣退治にと、忙しい一日をお風呂上りの一杯(むろん牛乳です)でしめようとした巴マミを出迎えたのは、純白の衣を纏った女神さまだった。
マミ「ぶっ!? が、概念の鹿目さん!?」
飲みかけた牛乳を噴出しそうになって、どうにかこらえたマミは、それから遠くを見るような目でまどかを見る。
まどか「? マミさん、どうかしたんですか?」
マミ「はぁ、以外と早かったわね……。 暁美さん、佐倉さん、ゆまちゃん、ゴメンナサイ。 私、一足先に逝かなきゃいけないみたい……」
まどか「えっ?あっ!? 違いますよ!? 今日は迎えに来たとかそう言うのじゃないんです!」
その言葉に、ようやくマミが盛大な勘違いをしていることに気が付いたまどかは、慌てて訂正を加える。
まどかの慌てた様子を見て、逆に落ち着いたのか、表情を元のそれに戻しながら、マミは首をかしげる。
マミ「えっ? じゃあなんで概念の鹿目さんがウチに……? と言うか概念、って現世に顕在出来るモノなの?」
まどか「ちょっと個人的な用事がありまして……」
神さまに個人的な用事も何もあるのかしら?と一瞬思ったが、すぐに幻想郷で会った神さまの事を思いだし、納得する。
まどか「マミさんは、幻想郷のスペルカード戦、って覚えてます?」
マミ「ええ、覚えてるわ」
むしろ現在進行形で、オリジナル弾幕を考えてます。とは口が裂けても言えない。
そんな事を考えながら背中で汗を流していると、顔を紅くして俯き気味になったまどかが恥ずかしそうに言う。
まどか「実は、今度幻想郷に行くまでに、私も弾幕戦をマスターしようと思ってるんですけど、スペル名で良いのが思い浮かばなくて……」
マミ「それで、私のところに相談に?」
まどか「はい……。 さやかちゃんに、『まどかのネーミングセンスで名付けるぐらいならマミさんの方が百倍マシだ』って、言われちゃって……」
マミ「マシ、って……、美樹さんとはいつかじっくりお話しないといけないわね……」
まぁ、その“いつか”はたぶん、相当先のことになるとは思うけど……、いや、そうでなくては困るのだが……。
まどか「あはは……、それで、その、アドバイスの方なんですけど……」
マミ「う~ん、明日は学校も無いから大丈夫だけど……、とりあえずそれを見せてくれないかしら?」
おずおずと尋ねてくるまどかに、マミは手に持ったノートの開示を求めた。
盆の一件で、少し会話しただけとは言え、平行世界では自分の後輩だった子だ。
頼られて悪い気はしなかった。
まどか「は、はい……、でも、あんまり笑わないでくださいよ?」
マミ「大丈夫よ。 問題ないわ」
そう言ってノートを受け取ったマミは飲みかけだった牛乳を口元へと運ぶ。
その後、弾幕の内容よりそのネーミングセンスに思わず噴出してしまい、色々と大変なことになるのだが、
マミとまどかの名誉の為に詳しくは語らないことにする。
マミ「ふぅ、さっぱりした。 さて、もう遅いし、これを飲んだら寝ましょ……」
まどか「あっ、マミさん! 夜分遅くにお邪魔してます」
学業に魔獣退治にと、忙しい一日をお風呂上りの一杯(むろん牛乳です)でしめようとした巴マミを出迎えたのは、純白の衣を纏った女神さまだった。
マミ「ぶっ!? が、概念の鹿目さん!?」
飲みかけた牛乳を噴出しそうになって、どうにかこらえたマミは、それから遠くを見るような目でまどかを見る。
まどか「? マミさん、どうかしたんですか?」
マミ「はぁ、以外と早かったわね……。 暁美さん、佐倉さん、ゆまちゃん、ゴメンナサイ。 私、一足先に逝かなきゃいけないみたい……」
まどか「えっ?あっ!? 違いますよ!? 今日は迎えに来たとかそう言うのじゃないんです!」
その言葉に、ようやくマミが盛大な勘違いをしていることに気が付いたまどかは、慌てて訂正を加える。
まどかの慌てた様子を見て、逆に落ち着いたのか、表情を元のそれに戻しながら、マミは首をかしげる。
マミ「えっ? じゃあなんで概念の鹿目さんがウチに……? と言うか概念、って現世に顕在出来るモノなの?」
まどか「ちょっと個人的な用事がありまして……」
神さまに個人的な用事も何もあるのかしら?と一瞬思ったが、すぐに幻想郷で会った神さまの事を思いだし、納得する。
まどか「マミさんは、幻想郷のスペルカード戦、って覚えてます?」
マミ「ええ、覚えてるわ」
むしろ現在進行形で、オリジナル弾幕を考えてます。とは口が裂けても言えない。
そんな事を考えながら背中で汗を流していると、顔を紅くして俯き気味になったまどかが恥ずかしそうに言う。
まどか「実は、今度幻想郷に行くまでに、私も弾幕戦をマスターしようと思ってるんですけど、スペル名で良いのが思い浮かばなくて……」
マミ「それで、私のところに相談に?」
まどか「はい……。 さやかちゃんに、『まどかのネーミングセンスで名付けるぐらいならマミさんの方が百倍マシだ』って、言われちゃって……」
マミ「マシ、って……、美樹さんとはいつかじっくりお話しないといけないわね……」
まぁ、その“いつか”はたぶん、相当先のことになるとは思うけど……、いや、そうでなくては困るのだが……。
まどか「あはは……、それで、その、アドバイスの方なんですけど……」
マミ「う~ん、明日は学校も無いから大丈夫だけど……、とりあえずそれを見せてくれないかしら?」
おずおずと尋ねてくるまどかに、マミは手に持ったノートの開示を求めた。
盆の一件で、少し会話しただけとは言え、平行世界では自分の後輩だった子だ。
頼られて悪い気はしなかった。
まどか「は、はい……、でも、あんまり笑わないでくださいよ?」
マミ「大丈夫よ。 問題ないわ」
そう言ってノートを受け取ったマミは飲みかけだった牛乳を口元へと運ぶ。
その後、弾幕の内容よりそのネーミングセンスに思わず噴出してしまい、色々と大変なことになるのだが、
マミとまどかの名誉の為に詳しくは語らないことにする。
657: 1 2012/02/04(土) 19:25:33.69 ID:UBI/uQdp0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クリームヒルト「住所不定の契約獣さんから頂きました」
Q) 僕たち……じゃなくて、インキュベーターはなんで幻想入り、と言うかそもそも何故幻想郷を認識してないんだい?
クリームヒルト「簡単に言うと、人間界がコインの表側なら、魔法少女やキュゥべえはコインの裏側。
そして幻想郷はコインの本当の意味での『裏』、つまり中身にあたるらしいの」
クリームヒルト「コインの裏側はひっくり返せば表側になるけど、中身である幻想郷は決して表側に出てくる事は無い。だから気付かないんだって」
※コインをぶった切って、断面を出したとしてもその時点で断面は『表』になるので『裏側』は見れない。
クリームヒルト「ちなみに概念の私はそのコインを外から見たり、中身を透視することも出来る外側からの観測者、らしいよ。 すごいね!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クリームヒルト「みなさんこんにちは、なんだかんだで毎回出番のあるクリームヒルトだよ」
魔理沙「……逆に出番の無い霧雨魔理沙だ。 まぁブン屋の“すとーきんぐ”は真っ平ゴメンだがな」
クリームヒルト「あはは……、そろそろ自重して欲しいなぁ……」
魔理沙「安心しろ、アイツの辞書に“自重”なんて言葉はそもそも無い(キッパリ」
クリームヒルト「それって全然大丈夫じゃないよ!?(マドーン!?」
魔理沙「それじゃ、東方魔戯歌伝、始まりだぜ~!」
クリームヒルト「ねぇ、お願いだから流さないで!? 結構死活問題なんだよ!?」
クリームヒルト「住所不定の契約獣さんから頂きました」
Q) 僕たち……じゃなくて、インキュベーターはなんで幻想入り、と言うかそもそも何故幻想郷を認識してないんだい?
クリームヒルト「簡単に言うと、人間界がコインの表側なら、魔法少女やキュゥべえはコインの裏側。
そして幻想郷はコインの本当の意味での『裏』、つまり中身にあたるらしいの」
クリームヒルト「コインの裏側はひっくり返せば表側になるけど、中身である幻想郷は決して表側に出てくる事は無い。だから気付かないんだって」
※コインをぶった切って、断面を出したとしてもその時点で断面は『表』になるので『裏側』は見れない。
クリームヒルト「ちなみに概念の私はそのコインを外から見たり、中身を透視することも出来る外側からの観測者、らしいよ。 すごいね!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クリームヒルト「みなさんこんにちは、なんだかんだで毎回出番のあるクリームヒルトだよ」
魔理沙「……逆に出番の無い霧雨魔理沙だ。 まぁブン屋の“すとーきんぐ”は真っ平ゴメンだがな」
クリームヒルト「あはは……、そろそろ自重して欲しいなぁ……」
魔理沙「安心しろ、アイツの辞書に“自重”なんて言葉はそもそも無い(キッパリ」
クリームヒルト「それって全然大丈夫じゃないよ!?(マドーン!?」
魔理沙「それじゃ、東方魔戯歌伝、始まりだぜ~!」
クリームヒルト「ねぇ、お願いだから流さないで!? 結構死活問題なんだよ!?」
658: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:28:54.96 ID:UBI/uQdp0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・人里近くの田園】 ―――――――――
パトリシア「体育はあんまり得意じゃないんだけど……、行くわよ!」
球技「殺人ドッジボール」
ボール大の弾幕を手にしたパトリシアが、それを文目掛けて放つ。
自機狙いの弾幕とは言え、一発だけなら回避も容易、なのだが……。
パトリシア「みんな、文を挟み撃ちにするのよ!」
一度かわした弾幕をパトリシアの使い魔がキャッチし、すぐさま投げ返してくる。
背後からの殺気を感じ取り、身を投げた文の脇を、再び弾幕が掠めていく。
文「自機狙いの追跡弾、ってところですか……。 でも一対多数って卑怯すぎやしませんかね?」
外の世界の学校では定番の球技を模したとのことだが、弾幕戦故にキャッチしての反撃が出来ない為、
ルールとしては著しく回避側である文の方が不利だと言えた。
パトリシア「普通ならイジメでしょうね。 でも貴女ならコレくらい、余興にもならないでしょう?
それより、余所見なんかしてて良いの? ボールを追加するわよ」
文「真っ向勝負だったら使い魔を片っ端から撃破してるところなんですけどね。 観客に免じて今日は踊ってあげますよ」
新たなボールを生み出したパトリシアがからかうような口調で言うと、文も不敵に笑いながら宙を舞う。
そんな二人の様子を、多くの歓声が包んでいた。
弾幕戦が行われている空から地を見やれば、刈り取りが終わった後の田に座り込んで、こちらを見ている人妖たちの姿が見える。
オクタヴィア「パトリシアーっ! やっちゃえーっ!パパラッチを許すなーっ!」
はたて「そうよ! 文なんかボコボコにしちゃいなさい!」
にとり「お前ら……、私怨があるのは分かるが、妖怪の山の住人としてそれはどうなんだ?」
一対多数の戦い故に文の方が絶対的に不利なのだが、パトリシアばかりを応援する同郷人――オクタヴィアと姫海棠はたて――ににとりはげんなりする。
文の性格や立場上、敵を作りやすいタイプであるのはにとりも認めるところではあるのだが、空気と言うものを読んでもらいたい。
パトリシア「体育はあんまり得意じゃないんだけど……、行くわよ!」
球技「殺人ドッジボール」
ボール大の弾幕を手にしたパトリシアが、それを文目掛けて放つ。
自機狙いの弾幕とは言え、一発だけなら回避も容易、なのだが……。
パトリシア「みんな、文を挟み撃ちにするのよ!」
一度かわした弾幕をパトリシアの使い魔がキャッチし、すぐさま投げ返してくる。
背後からの殺気を感じ取り、身を投げた文の脇を、再び弾幕が掠めていく。
文「自機狙いの追跡弾、ってところですか……。 でも一対多数って卑怯すぎやしませんかね?」
外の世界の学校では定番の球技を模したとのことだが、弾幕戦故にキャッチしての反撃が出来ない為、
ルールとしては著しく回避側である文の方が不利だと言えた。
パトリシア「普通ならイジメでしょうね。 でも貴女ならコレくらい、余興にもならないでしょう?
それより、余所見なんかしてて良いの? ボールを追加するわよ」
文「真っ向勝負だったら使い魔を片っ端から撃破してるところなんですけどね。 観客に免じて今日は踊ってあげますよ」
新たなボールを生み出したパトリシアがからかうような口調で言うと、文も不敵に笑いながら宙を舞う。
そんな二人の様子を、多くの歓声が包んでいた。
弾幕戦が行われている空から地を見やれば、刈り取りが終わった後の田に座り込んで、こちらを見ている人妖たちの姿が見える。
オクタヴィア「パトリシアーっ! やっちゃえーっ!パパラッチを許すなーっ!」
はたて「そうよ! 文なんかボコボコにしちゃいなさい!」
にとり「お前ら……、私怨があるのは分かるが、妖怪の山の住人としてそれはどうなんだ?」
一対多数の戦い故に文の方が絶対的に不利なのだが、パトリシアばかりを応援する同郷人――オクタヴィアと姫海棠はたて――ににとりはげんなりする。
文の性格や立場上、敵を作りやすいタイプであるのはにとりも認めるところではあるのだが、空気と言うものを読んでもらいたい。
659: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:31:10.30 ID:UBI/uQdp0
ワルプルギス「パトリシアお姉ちゃんも、カラスのお姉ちゃんもガンバレ~!」
慧音「パトリシア~、分かってるとは思うが、ほどほどにしといてやれよ~」
エルザマリア「大丈夫だと思います。 文さん、どう見ても余裕綽々ですし……」
一方、上白沢慧音をはじめとする人里組はと言えば、こちらは完全に静観の構えだ。
茣蓙の上にお茶まで出して、上空での戦いは話の種、と言わんばかりの雰囲気をかもし出している。
穣子「おっ、良い匂いがすると思ったら秋冬番茶じゃん」
慧音「これはこれは穣子様、一杯如何ですか?」
穣子「良いの? じゃあお言葉に甘えて」
エルザマリア「本日の主賓ですからね。 あっ、こちらにお掛け下さい」
差し出された湯のみを受け取った穣子は、茣蓙の上に正座をすると、一息入れつつ上空を見た。
穣子「いやー、今年の演舞は随分と派手だねぇ。 こんな弾幕戦が見れるとは思って無かったよ」
いつもは人間たちの舞だからね~。と呟く穣子はこの戦いを随分と愉しんでいる様だ。
主賓がこれなら、この催しも成功といえるだろう。
季節は九月の末、今日は新米の収穫祭である。
660: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:33:13.36 ID:UBI/uQdp0
―――――――――――――― 【数日前・幻想郷某所】 ――――――――――――――
文「あや? 催しで弾幕戦の模擬戦、ですか?」
パトリシア「そうなのよ。 稲刈りが終わった後の奉納でね。演舞代わりにやることになっちゃって……」
本当は面倒だからやりたくないんだけど……、と心底面倒くさそうにため息をつくパトリシア。
相変わらずなげやりな性格は変わってないなと文が思っていると、考えを読まれたのかパトリシアがジト目で睨んできた。
パトリシア「なに? なにか言いたそうね?」
文「いえ、そんな事は……。 それで?その相手を私に、ですか?」
文の問いに気を取り直したのかパトリシアはええ、と頷く。
パトリシア「収穫の取材には来るのだろうし、それに貴女、最近私たち魔女の新作弾幕をすっぱ抜いているそうじゃない?」
文「あや? バレましたか……」
パトリシア「バレるもなにも私たちからすれば身内の情報よ。 回ってこない訳が無いじゃない」
呆れたようにパトリシアは肩をすくめてみせる。
騙し討ちですっぱ抜かれたゲルトルートを筆頭に、虫歯騒ぎと一緒にスクープされたシャルロッテ、
白玉楼内でこっそり行われていた筈なのに盗撮されていたオクタヴィアなど、被害者は増加の一途を辿っている。
つい先日も、ゲルトルートとオクタヴィアの愚痴聞きに付き合わされたばかりだ。
因みに一番の被害者は勿論クリームヒルトで、幽々子以下、幻想郷の実力者を相手にした弾幕戦の殆どをすっぱ抜かれている。
文「いや~、最近の話題提供者としてはかなり美味しいんですよねぇ~。 ガード甘いし、色々やってくれるし……」
パトリシア「だからって限度、ってものがあるわよ? 最低限、盗撮とか騙し討ちはやめなさいよ……」
文「はいはい、前向きに検討させていただきますね……」
パトリシア「ちょっ、文!?貴女真面目に聞く気な……」
霖之助「ねぇ、君たち、話をするのは構わないんだけど、冷やかしなら帰ってくれないかな?」
店先で話すだけで、商品を一向に見ようとしない二人に、この店――香霖堂店主の森近霖之助は突っ込まずには居られなかった。
文「あや? 催しで弾幕戦の模擬戦、ですか?」
パトリシア「そうなのよ。 稲刈りが終わった後の奉納でね。演舞代わりにやることになっちゃって……」
本当は面倒だからやりたくないんだけど……、と心底面倒くさそうにため息をつくパトリシア。
相変わらずなげやりな性格は変わってないなと文が思っていると、考えを読まれたのかパトリシアがジト目で睨んできた。
パトリシア「なに? なにか言いたそうね?」
文「いえ、そんな事は……。 それで?その相手を私に、ですか?」
文の問いに気を取り直したのかパトリシアはええ、と頷く。
パトリシア「収穫の取材には来るのだろうし、それに貴女、最近私たち魔女の新作弾幕をすっぱ抜いているそうじゃない?」
文「あや? バレましたか……」
パトリシア「バレるもなにも私たちからすれば身内の情報よ。 回ってこない訳が無いじゃない」
呆れたようにパトリシアは肩をすくめてみせる。
騙し討ちですっぱ抜かれたゲルトルートを筆頭に、虫歯騒ぎと一緒にスクープされたシャルロッテ、
白玉楼内でこっそり行われていた筈なのに盗撮されていたオクタヴィアなど、被害者は増加の一途を辿っている。
つい先日も、ゲルトルートとオクタヴィアの愚痴聞きに付き合わされたばかりだ。
因みに一番の被害者は勿論クリームヒルトで、幽々子以下、幻想郷の実力者を相手にした弾幕戦の殆どをすっぱ抜かれている。
文「いや~、最近の話題提供者としてはかなり美味しいんですよねぇ~。 ガード甘いし、色々やってくれるし……」
パトリシア「だからって限度、ってものがあるわよ? 最低限、盗撮とか騙し討ちはやめなさいよ……」
文「はいはい、前向きに検討させていただきますね……」
パトリシア「ちょっ、文!?貴女真面目に聞く気な……」
霖之助「ねぇ、君たち、話をするのは構わないんだけど、冷やかしなら帰ってくれないかな?」
店先で話すだけで、商品を一向に見ようとしない二人に、この店――香霖堂店主の森近霖之助は突っ込まずには居られなかった。
661: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:39:09.45 ID:UBI/uQdp0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
文「……と、こんなことがあったのが三日前の話なんですよねぇ」
パトリシア「? 何か言った? と言うか余所見している暇なんてあるの?」
LHR 『シャッフルチェンジシート』
スペル発動と同時に、周囲に規則正しく並べられた机が現れる。
机自体は障害物代わりのようで、その場に固定され、机と一緒に現れた大玉の弾幕が、机の合間を縫って、文の方に向かってくる。
文「あやや、また机を使った物理弾幕ですか。 おー、こわいこわい」
パトリシア「失礼ね! 前よりだいぶ良心的よ!」
文「机にも当たり判定がある時点で良心的とは言い難いと思いますよ?」
パトリシア「貴女ならこれくらいハンデにもならないでしょ? 最悪そのカメラで写し取れば良いんだし……」
文「……手の内を悉く読まれる、って気分悪いですねぇ」
パトリシア「言っておくけど全部貴女の身から出た錆だからね?」
文「分かってますよ。だからこそ気分が悪いんです」
これだから切れ者の相手は疲れるんだよなぁ~、とは心の中で呟く。
クリームヒルトのように素直な子や、オクタヴィアのように直情的な相手なら、手玉にとるのも容易いが、
理詰めで攻めてくる相手と真っ向から勝負するのは色々な意味で疲れる。
それにそれとは別に気になることが文にはあった。
文(収穫祭、なんていう年に一度のイベントなのに、クリームヒルトさんの姿が見えないんですよね……。
あの人の性格上、こういうイベント事には必ず参加してそうなんですけど……)
仮にも魔女の代表役を買って出ている立場だ。
こういうイベント事をすっぽかすとは思えないのだが……。
そんな文の思考も、次の瞬間、パトリシアから投げかけられた言葉に流されてしまう。
文「……と、こんなことがあったのが三日前の話なんですよねぇ」
パトリシア「? 何か言った? と言うか余所見している暇なんてあるの?」
LHR 『シャッフルチェンジシート』
スペル発動と同時に、周囲に規則正しく並べられた机が現れる。
机自体は障害物代わりのようで、その場に固定され、机と一緒に現れた大玉の弾幕が、机の合間を縫って、文の方に向かってくる。
文「あやや、また机を使った物理弾幕ですか。 おー、こわいこわい」
パトリシア「失礼ね! 前よりだいぶ良心的よ!」
文「机にも当たり判定がある時点で良心的とは言い難いと思いますよ?」
パトリシア「貴女ならこれくらいハンデにもならないでしょ? 最悪そのカメラで写し取れば良いんだし……」
文「……手の内を悉く読まれる、って気分悪いですねぇ」
パトリシア「言っておくけど全部貴女の身から出た錆だからね?」
文「分かってますよ。だからこそ気分が悪いんです」
これだから切れ者の相手は疲れるんだよなぁ~、とは心の中で呟く。
クリームヒルトのように素直な子や、オクタヴィアのように直情的な相手なら、手玉にとるのも容易いが、
理詰めで攻めてくる相手と真っ向から勝負するのは色々な意味で疲れる。
それにそれとは別に気になることが文にはあった。
文(収穫祭、なんていう年に一度のイベントなのに、クリームヒルトさんの姿が見えないんですよね……。
あの人の性格上、こういうイベント事には必ず参加してそうなんですけど……)
仮にも魔女の代表役を買って出ている立場だ。
こういうイベント事をすっぽかすとは思えないのだが……。
そんな文の思考も、次の瞬間、パトリシアから投げかけられた言葉に流されてしまう。
662: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:50:02.38 ID:UBI/uQdp0
パトリシア「文、何を考えているのか知らないけど、ホントに集中しなくていいの? 今度は机ごと動かすわよ?
それとも丸ごと写真に収めて打ち消すつもりかしら?」
文「いやいや、私がそんな無粋な真似をするとお思いで? その程度、片手間で乗り切ってあげますよ」
パトリシア「言ったわね? その余裕も、そろそろお終いよ!」
パトリシアの号令とともに、並べられた机が、スライド式のパズルのように上下左右へと移動を開始する。
動き回る机と、飛び交う弾幕の間を縫うように飛びながら文は内心、唸り声をあげる。
文(ふむ、言うだけのことはあって難易度としては上がってますね。
凶悪っぷりはだいぶ緩和されましたけど、その辺は相手の撃墜しか考えてなかったからでしょうね)
六月の異変の際にパトリシアと対峙した時のことを思い出しながら、今回の弾幕の評を下す。
あの時の異変における魔女は大別して二種類に分かれる。
幻想入りという事態を受け入れ、早くも順応した者と、現世への未練という呪縛を抱えつつ異変に従事した者の二つだ。
パトリシアはオクタヴィアなどと同じく後者の筆頭と言える存在で、
シャルロッテやエリーなど、嬉々として異変に積極参加していた前者に比べるとだいぶ余裕のない戦いをしていた。
スペルもまた同様で、あの当時のスペルは余裕がない攻撃一辺倒な弾幕ばかりであり、記者的には面白みに欠ける弾幕ばかりであった。
まぁ後者の中でも、幽々子から適切なアドバイスを受け、じっくり自分と向き合って弾幕を作ったクリームヒルトのような魔女もいるので、
一概に真面目さんだからと言ってネタにならない、という訳ではないのだが……。
文(お祭り向けに見た目が派手で、面白いものを持ってきただけかもしれませんが、これはいい傾向ですね)
思い出し笑いと言うか、なんとも微笑ましい気分にニヤついていると、聡くも気付いたのかパトリシアが怪訝そうに眉を寄せる。
パトリシア「? 何をニヤニヤしてるのよ? 気味が悪いわね……」
文「いいえ、なんでもありませんよ。 こっちの話です」
適当に取り繕いつつ、これだから記者は辞められないと、文は思う。
最初はぎこちなかった者たちが、徐々に幻想郷の“色”に染まっていく様を見るのはやはり楽しい。
その楽しさを面白おかしく広めて、皆と共有し、茶請けのネタになる様を見るのはもっと愉しい。
聞くところによると、幻想郷の妖怪の元締めでもあるスキマ妖怪と、魔女や魔法少女と深く関わっている神様との間で、
何らかの密約が交わされたとかで、今後も新たな魔女が幻想入りしてくる可能性が高いそうだ。
文としてはそれだけネタが増えるということなので、これ以上喜ばしいことはない。
とりあえず、さしあたって今は……。
文「私の変な噂が根付かないように、たまには真面目にやってあげますかね!」
観客やパトリシアに聞こえないよう、小声でそう呟いた文は、パトリシアが繰り出す新たな弾幕の渦へと、飛び込んで行く。
文「さぁて、手加減してあげるから本気で掛かってきなさい!」
パトリシア「本当に人の神経を逆撫でするのが大好きな鴉ね! どうなっても知らないんだから!」
文の挑発に見世物の演舞であると言うのに、難易度を本気のソレに引き上げるパトリシア。
そうこなくちゃと湧き上がる興奮を抑えつつ、文はカメラを構えるのであった。
663: 東方魔戯歌伝 2012/02/04(土) 19:57:19.92 ID:UBI/uQdp0
――――――――― 【救済の魔女と紅魔の吸血鬼 @ 紅魔館】 ―――――――――
レミリア「ふ~ん、冥界の亡霊が入れ込むだけの事はあるわね。貴女、なかなかやるじゃない」
クリームヒルト「はぁ……はぁ……、あ、ありがとうございます……」
人里での収穫祭の演舞が佳境を迎えていた頃、紅魔館の中庭では土埃に塗れたクリームヒルトが汗だくになっていた。
クリームヒルトの実力を見て、後半徐々にペースアップをして言った結果、ハードまで乗り切って見せたことに、
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは気分が良いと言わんばかりに笑顔で紅茶を口に運ぶ。
レミリア「でもそうね、貴女、攻撃と回避は十分だけど、防御がなってないわ。
魔力が強いからこれまで防御の必要がなかったんでしょうけど、それじゃあこれより上に行くのは夢のまた夢よ?」
クリームヒルト「えっと、それじゃあどうしたら……」
レミリア「スカーレット家に伝わる由緒正しいカリスマ的な防御方法があるにはあるけど、貴女、知りたい?」
飲み終えた紅茶のティーカップをテーブルの上に置きつつ、レミリアは妖しく微笑む。
幻想郷での生活で言えば大先輩であるレミリアから申し出を、断る理由などあるわけもない。
クリームヒルトは紅美鈴から手渡されたタオルで、汗を拭いつつ、その言葉に頷く。
クリームヒルト「はい、是非ともお願いします!」
レミリア「ふふ、いい返事ね。 分かったわ、教えてあげるからちょっと館内(なか)までいらっしゃい」
妖しい笑みを崩すことなく立ち上がったレミリアは咲夜を連れて中庭を後にする。
その後ろに続く、クリームヒルトの姿を見送りながら、美鈴はぼやく様に呟く。
美鈴「はぁ、お嬢様ったらあんなに見栄を張っちゃって……。
よっぽど新聞屋にすっぱ抜かれるのが嫌なんでしょうね、あのしゃがみガード……」
収穫祭の演舞で、文が動けない事を知った上で、急遽クリームヒルトを呼びつけた当主に、なんとも言えない気分になりつつ、美鈴は正門へと戻っていった。
レミリア「さぁ行くわよ! 私の完璧なガード、得と拝むが良いわ!」
クリームヒルト「よろしくお願いします!」
この後、巷で『カリスマ・ガード』と呼ばれる別の意味で最強クラスの防御技が、レミリアによって披露され、
これを覚えたクリームヒルトが模擬の弾幕戦でオクタヴィアを困らせるのは、まどかが幻想郷を訪れる前日の事であった。
エリー「あのガードってさ、攻撃してるこっちがイジメてる見たいで、攻撃出来なくなっちゃうんだけど、正直ガードとしてはどうなの?」
パチュリー「攻撃を控えさせた時点で、レミィの勝ち。 つまりそういう事よ……」
エリー「ああ、やっぱりそうなんだ、あのカリスマガード……」
そんな会話もこの日、あったとか無かったとか……。
レミリア「ふ~ん、冥界の亡霊が入れ込むだけの事はあるわね。貴女、なかなかやるじゃない」
クリームヒルト「はぁ……はぁ……、あ、ありがとうございます……」
人里での収穫祭の演舞が佳境を迎えていた頃、紅魔館の中庭では土埃に塗れたクリームヒルトが汗だくになっていた。
クリームヒルトの実力を見て、後半徐々にペースアップをして言った結果、ハードまで乗り切って見せたことに、
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは気分が良いと言わんばかりに笑顔で紅茶を口に運ぶ。
レミリア「でもそうね、貴女、攻撃と回避は十分だけど、防御がなってないわ。
魔力が強いからこれまで防御の必要がなかったんでしょうけど、それじゃあこれより上に行くのは夢のまた夢よ?」
クリームヒルト「えっと、それじゃあどうしたら……」
レミリア「スカーレット家に伝わる由緒正しいカリスマ的な防御方法があるにはあるけど、貴女、知りたい?」
飲み終えた紅茶のティーカップをテーブルの上に置きつつ、レミリアは妖しく微笑む。
幻想郷での生活で言えば大先輩であるレミリアから申し出を、断る理由などあるわけもない。
クリームヒルトは紅美鈴から手渡されたタオルで、汗を拭いつつ、その言葉に頷く。
クリームヒルト「はい、是非ともお願いします!」
レミリア「ふふ、いい返事ね。 分かったわ、教えてあげるからちょっと館内(なか)までいらっしゃい」
妖しい笑みを崩すことなく立ち上がったレミリアは咲夜を連れて中庭を後にする。
その後ろに続く、クリームヒルトの姿を見送りながら、美鈴はぼやく様に呟く。
美鈴「はぁ、お嬢様ったらあんなに見栄を張っちゃって……。
よっぽど新聞屋にすっぱ抜かれるのが嫌なんでしょうね、あのしゃがみガード……」
収穫祭の演舞で、文が動けない事を知った上で、急遽クリームヒルトを呼びつけた当主に、なんとも言えない気分になりつつ、美鈴は正門へと戻っていった。
レミリア「さぁ行くわよ! 私の完璧なガード、得と拝むが良いわ!」
クリームヒルト「よろしくお願いします!」
この後、巷で『カリスマ・ガード』と呼ばれる別の意味で最強クラスの防御技が、レミリアによって披露され、
これを覚えたクリームヒルトが模擬の弾幕戦でオクタヴィアを困らせるのは、まどかが幻想郷を訪れる前日の事であった。
エリー「あのガードってさ、攻撃してるこっちがイジメてる見たいで、攻撃出来なくなっちゃうんだけど、正直ガードとしてはどうなの?」
パチュリー「攻撃を控えさせた時点で、レミィの勝ち。 つまりそういう事よ……」
エリー「ああ、やっぱりそうなんだ、あのカリスマガード……」
そんな会話もこの日、あったとか無かったとか……。
688: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:17:14.63 ID:QoZSUIIo0
―――――――― 【概念の少女と救済の魔女 @ 人里近くの田園】 ――――――――
まどか「…………なに、コレ……?」
スキマを潜り抜けて、幻想郷へとやって来たまどかは思わずそう呟かずにはいられなかった。
現地時間では一ヶ月半ほどだが、数多の世界を渡り歩く少女にとっては久々となる幻想の地は、予想外の出で立ちで少女を出迎えようとしていた。
刈り取りも終わり、休耕地となった田畑に観客席やら実況席が組まれ、張られたロープに万国旗がはためく光景は学校の体育祭を思わせる。
その中で一際目立つ大きな幟。
そこにはやたら大きな字で、『円環の理vs救済の魔女 世紀の対決』などと書かれていた。
妖怪の里だけに狐にでも化かされたのかな?とまどかが思っていると、クリームヒルトがさも当然の事だと言わんばかりの様子で答える。
クリームヒルト「なに、って会場だよ? 弾幕戦専用の特設会場」
まどか「うん、それは何となく分かるんだ。 で、一体誰と誰の弾幕戦の会場なの?」
クリームヒルト「えっ?それはもちろん私と、概念の私のに決まってるでしょ?」
あの幟の通りだよ。と言う認めたくなかった事実を突き付けられ、まどかは思わず声を荒らげる。
まどか「つまり、私と魔女の私が戦う、って事だよね? 訳が分からないよっ!?」
クリームヒルト「えっ? ……えっ?」
地団駄を踏みかねないまどかの態度と言葉に、クリームヒルトもようやく何かがおかしい事に気が付く。
とは言え、何がおかしいのかまでは分かる訳もなく、小首を傾げるだけ。
まどかは来て早々深いため息をつきつつ、どうしてこうなったのか、己の半身でもある少女に向き直った。
【少女説明中……】
クリームヒルト「それじゃあ、私たちの早とちり、って事?」
まどか「そうだよぉ! 一度和解した相手に、それも自分自身の片割れに、訳もなく殴り込みの手紙送り付けるとか、幻想郷での私の評判ってどうなってるの!?」
クリームヒルト「えっと、現世に蔓延っていた有力妖怪に匹敵する魔女を、一人で滅殺した、超絶クラスの退魔師?」
まどか「なにそれ怖い」
言ってる事としては確かにその通りなのだけど、もうちょっと言い方と言うものがあるんじゃないでしょうか……。
私だってこう見えて一応女の子なんだからね!
概念の少女は内心涙しつつ、そう思わずには居られない。
まどか「…………なに、コレ……?」
スキマを潜り抜けて、幻想郷へとやって来たまどかは思わずそう呟かずにはいられなかった。
現地時間では一ヶ月半ほどだが、数多の世界を渡り歩く少女にとっては久々となる幻想の地は、予想外の出で立ちで少女を出迎えようとしていた。
刈り取りも終わり、休耕地となった田畑に観客席やら実況席が組まれ、張られたロープに万国旗がはためく光景は学校の体育祭を思わせる。
その中で一際目立つ大きな幟。
そこにはやたら大きな字で、『円環の理vs救済の魔女 世紀の対決』などと書かれていた。
妖怪の里だけに狐にでも化かされたのかな?とまどかが思っていると、クリームヒルトがさも当然の事だと言わんばかりの様子で答える。
クリームヒルト「なに、って会場だよ? 弾幕戦専用の特設会場」
まどか「うん、それは何となく分かるんだ。 で、一体誰と誰の弾幕戦の会場なの?」
クリームヒルト「えっ?それはもちろん私と、概念の私のに決まってるでしょ?」
あの幟の通りだよ。と言う認めたくなかった事実を突き付けられ、まどかは思わず声を荒らげる。
まどか「つまり、私と魔女の私が戦う、って事だよね? 訳が分からないよっ!?」
クリームヒルト「えっ? ……えっ?」
地団駄を踏みかねないまどかの態度と言葉に、クリームヒルトもようやく何かがおかしい事に気が付く。
とは言え、何がおかしいのかまでは分かる訳もなく、小首を傾げるだけ。
まどかは来て早々深いため息をつきつつ、どうしてこうなったのか、己の半身でもある少女に向き直った。
【少女説明中……】
クリームヒルト「それじゃあ、私たちの早とちり、って事?」
まどか「そうだよぉ! 一度和解した相手に、それも自分自身の片割れに、訳もなく殴り込みの手紙送り付けるとか、幻想郷での私の評判ってどうなってるの!?」
クリームヒルト「えっと、現世に蔓延っていた有力妖怪に匹敵する魔女を、一人で滅殺した、超絶クラスの退魔師?」
まどか「なにそれ怖い」
言ってる事としては確かにその通りなのだけど、もうちょっと言い方と言うものがあるんじゃないでしょうか……。
私だってこう見えて一応女の子なんだからね!
概念の少女は内心涙しつつ、そう思わずには居られない。
689: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:22:09.41 ID:QoZSUIIo0
まどか「とにかく、私はただ単に遊びに来ただけなの! そんな勘違いで魔女の私と本気の弾幕戦なんて真っ平ごめんだよ!」
クリームヒルト「う~ん、勘違いで話を大きくしちゃったのは謝るけど、戦わない、って言うのは無理かな……」
まどか「なんで!? 勘違いでしたごめんなさい、で済むんじゃないの?」
クリームヒルト「えっとね、概念の私、落ち着いてあっちの方、見て欲しいんだ……」
まどか「あっち?」
顔をひきつらせつつ、苦笑するクリームヒルトにつられて、まどかは振り返る。
振り返ったまどかの目に飛び込んできた光景は……
文「さぁ、魔女の元締めと、現世の概念、世紀の対決だよぉ! 事前予想は五分と五分、さぁさぁ張った張ったぁ!」
神奈子「う~ん、ここは同じ神様だからね。 概念の方に拾圓賭けるよ」
早苗「じゃあ私はクリームヒルトさんに四拾伍圓、賭けますね」
まどか「賭け事の対象になってるーッ!?(ガイネーン!」
大きな配当表と、次々とかけ金を積んでいく幻想郷の住人たちの姿だった。
まどか「あっ、でも良く見ると掛け金は五円とか十円とか、結構低いから何とか……」
クリームヒルト「……幻想郷ではね、壱圓あれば食料品の買い溜めが出来るんだ……」
まどか「…………」
あんまり嬉しくない幻想郷の豆知識に、まどかは今度こそ絶句する。
膝こそ付かなかったものの、その顔色は青を通り越して白に近い。
紫「あらあら、来て早々そんな蒼くなっちゃって……、大丈夫なの?」
まどか「あっ、紫さん! お願いします、紫さんの口利きでこのイベントを無かったことに……」
渡りに船、と言わんばかりにまどかは紫にすがり付いた。
が、紫から返ってきた言葉は期待とは正反対の、出来れば聞きたくなかった事実だった。
紫「私、貴女に百円賭けてるのよ。 だからそれはダーメ」
まどか「…………」
弾幕戦に於けるまどかのレベルは、お世辞にも誉められたものではない。
素人に毛が生えた程度でしか無いことは、一度やり合った紫は重々承知している筈である。
時の流れが違うとは言え、この数週間に実戦経験を積み、自己鍛練を重ねたクリームヒルトに分があるのは分かっている筈なのだ。
そこを敢えてまどかに賭けたと言うのだから、コレはもう嫌がらせに等しい。
逃げ場を塞いで、楽しむためだけに、大金すら溝に捨ててみせたのだ。
紫「その代わりと言ってはなんだけど、補佐をつけてあげる。 それで何とかしなさい」
690: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:24:56.80 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
霊夢「で、私が呼ばれた訳?」
呼びつけられた霊夢は、不機嫌そうな顔をしていた。
前に会った時もそんな顔をしていたので、これがデフォルトなのかと、一瞬思ったが、
流石に今回に関しては呆れられても仕方がないほど間の抜けた話なので、決めつけるのは止めておく。
紫「そうよ。 貴女の神降ろしの儀で補佐してあげて欲しいの。 この子、幻想郷だと上手く出力調整出来ないみたいだから……」
霊夢「調整出来ない、って……、地底の鴉と同レベルじゃない……」
まどか「てぃひひ、現世だと常に全力しか出さないから……」
ため息をつく霊夢に、まどかは申し訳なさそうに縮こまる。
言ってしまえば、そもそも概念には手加減も何もないのだが、今更この地で、そんな常識を説いても意味がない。
一介の巫女相手に概念が頭を下げると言う、摩訶不思議な光景の脇で、何故か霊夢と一緒に呼び出された早苗が、小さく手を挙げる。
早苗「あの~、霊夢さんがまどかさんの補佐に入る理由は分かりました。 でも、それなら私はなんで呼ばれたんでしょうか?」
紫「いくらお客さまとは言え、片方だけに補佐が入ったら不公平でしょう? それに早苗は邪神の扱いには長けてるじゃない?」
後半、声のトーンを落としつつ、そう言ってのけた紫は、脇できょとんとしているクリームヒルトと、
『面白そうだから』、と言う理由で付いてきた洩矢諏訪子を横目で見やる。
紫の言葉と視線に、少々ムッとしながら早苗は声を荒げた。
早苗「クリームヒルトさんは邪神じゃありませんし、ついでに言うと諏訪子さまも正確には違います! まあ似たようなモノかもしれませんけど……」
諏訪子「っ!? 早苗っ!?」
突然の早苗の言葉に、諏訪子が一転して涙目になる。
紫の言葉を聞いていなかった諏訪子からすれば、実子同然の風祝からの邪神認定は、完全な不意討ちと言っても良い。
諏訪子「うわーん! 神奈子~っ! 早苗が、早苗があぁぁぁぁ~っ!!」
早苗「はっ!?諏訪子さま!? 今のは違……!」
早苗は今更になって自信の犯した失態に気が付いたが、既に手遅れだった。
諏訪子は脱兎の如く駆け出した後であり、早苗の弁明も届かない。
紫「それじゃ、一時間後に始めるから、それまでに打ち合わせするなり練習するなり、頑張ってね」
まどか「ねぇ、魔女の私、なんであの人が治めてるのに、幻想郷(ここ)はこんなに落ち着いてるの?」
絶対平穏無事じゃ過ごせないと思うんだけど、と小声で話しかけてくるまどかに、クリームヒルトは苦笑してみせる。
クリームヒルト「あはは……、でも良い人なんだよ、紫さんも他の皆さんも……」
色々な意味で自由奔放なのが、良い意味でも悪い意味でも幻想郷の特徴なのだと、最近実感してきたクリームヒルトはそう答えるのが精一杯だった。
霊夢「で、私が呼ばれた訳?」
呼びつけられた霊夢は、不機嫌そうな顔をしていた。
前に会った時もそんな顔をしていたので、これがデフォルトなのかと、一瞬思ったが、
流石に今回に関しては呆れられても仕方がないほど間の抜けた話なので、決めつけるのは止めておく。
紫「そうよ。 貴女の神降ろしの儀で補佐してあげて欲しいの。 この子、幻想郷だと上手く出力調整出来ないみたいだから……」
霊夢「調整出来ない、って……、地底の鴉と同レベルじゃない……」
まどか「てぃひひ、現世だと常に全力しか出さないから……」
ため息をつく霊夢に、まどかは申し訳なさそうに縮こまる。
言ってしまえば、そもそも概念には手加減も何もないのだが、今更この地で、そんな常識を説いても意味がない。
一介の巫女相手に概念が頭を下げると言う、摩訶不思議な光景の脇で、何故か霊夢と一緒に呼び出された早苗が、小さく手を挙げる。
早苗「あの~、霊夢さんがまどかさんの補佐に入る理由は分かりました。 でも、それなら私はなんで呼ばれたんでしょうか?」
紫「いくらお客さまとは言え、片方だけに補佐が入ったら不公平でしょう? それに早苗は邪神の扱いには長けてるじゃない?」
後半、声のトーンを落としつつ、そう言ってのけた紫は、脇できょとんとしているクリームヒルトと、
『面白そうだから』、と言う理由で付いてきた洩矢諏訪子を横目で見やる。
紫の言葉と視線に、少々ムッとしながら早苗は声を荒げた。
早苗「クリームヒルトさんは邪神じゃありませんし、ついでに言うと諏訪子さまも正確には違います! まあ似たようなモノかもしれませんけど……」
諏訪子「っ!? 早苗っ!?」
突然の早苗の言葉に、諏訪子が一転して涙目になる。
紫の言葉を聞いていなかった諏訪子からすれば、実子同然の風祝からの邪神認定は、完全な不意討ちと言っても良い。
諏訪子「うわーん! 神奈子~っ! 早苗が、早苗があぁぁぁぁ~っ!!」
早苗「はっ!?諏訪子さま!? 今のは違……!」
早苗は今更になって自信の犯した失態に気が付いたが、既に手遅れだった。
諏訪子は脱兎の如く駆け出した後であり、早苗の弁明も届かない。
紫「それじゃ、一時間後に始めるから、それまでに打ち合わせするなり練習するなり、頑張ってね」
まどか「ねぇ、魔女の私、なんであの人が治めてるのに、幻想郷(ここ)はこんなに落ち着いてるの?」
絶対平穏無事じゃ過ごせないと思うんだけど、と小声で話しかけてくるまどかに、クリームヒルトは苦笑してみせる。
クリームヒルト「あはは……、でも良い人なんだよ、紫さんも他の皆さんも……」
色々な意味で自由奔放なのが、良い意味でも悪い意味でも幻想郷の特徴なのだと、最近実感してきたクリームヒルトはそう答えるのが精一杯だった。
691: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:28:01.12 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
まどか「うぅ~っ、どうしてこんな事に……」
ロベルタ「ちぃーす! 失礼するよ、概念の嬢ちゃん」
控え室でまどかが一人頭を抱えていると、そんな声と共に一人の女性が入ってくる。
振り返ったまどかは女性がかつて救済した魔女の一人である事に気が付き、その顔を綻ばせる。
まどか「あっ、ロベルタさん、お久し振りです」
ロベルタ「おう、久し振り、救済以来だから……、かれこれ4ヶ月、ってところか?」
まどか「この時間軸だと、そうなるのかな? 今日はどうしたんですか?」
ロベルタ「いやなに、面白そうなイベント事をやる、って聞いたから、陣中見舞いにさ」
まどか「そんな別に良いのに……。 そちらの方は幻想郷の方ですか?」
まどかはロベルタの背後から入ってきた小学生くらいの女の子に目をやりながら尋ねる。
二本の角を生やした女の子は胸を張りつつ、その問いに答える。
萃香「おう、私は鬼の伊吹萃香。 ロベルタとは毎晩飲み明かす仲さ。 ほれ娘っ子、元気の出る茶を持ってきてやったから飲みな?」
まどか「(飲み明かす?) あっ、ありがとうございます……」
一見すると幼子に見える萃香の言葉に、まどかは妙な引っ掛かりを覚えたが、それ以上の疑問を抱く事もなく、萃香の瓢箪から注がれたお茶を一気に飲み干した。
これが、今回における最大の間違いだった事など、気付けるわけもなかった。
まどか「うぅ~っ、どうしてこんな事に……」
ロベルタ「ちぃーす! 失礼するよ、概念の嬢ちゃん」
控え室でまどかが一人頭を抱えていると、そんな声と共に一人の女性が入ってくる。
振り返ったまどかは女性がかつて救済した魔女の一人である事に気が付き、その顔を綻ばせる。
まどか「あっ、ロベルタさん、お久し振りです」
ロベルタ「おう、久し振り、救済以来だから……、かれこれ4ヶ月、ってところか?」
まどか「この時間軸だと、そうなるのかな? 今日はどうしたんですか?」
ロベルタ「いやなに、面白そうなイベント事をやる、って聞いたから、陣中見舞いにさ」
まどか「そんな別に良いのに……。 そちらの方は幻想郷の方ですか?」
まどかはロベルタの背後から入ってきた小学生くらいの女の子に目をやりながら尋ねる。
二本の角を生やした女の子は胸を張りつつ、その問いに答える。
萃香「おう、私は鬼の伊吹萃香。 ロベルタとは毎晩飲み明かす仲さ。 ほれ娘っ子、元気の出る茶を持ってきてやったから飲みな?」
まどか「(飲み明かす?) あっ、ありがとうございます……」
一見すると幼子に見える萃香の言葉に、まどかは妙な引っ掛かりを覚えたが、それ以上の疑問を抱く事もなく、萃香の瓢箪から注がれたお茶を一気に飲み干した。
これが、今回における最大の間違いだった事など、気付けるわけもなかった。
692: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:32:45.75 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
早苗「ん~、いくら弾幕戦とは言え、救済概念を発動されると厄介ですね。 対円環パワー用の護符でも作っておきましょうか?」
クリームヒルト「護符、って、作れるんですか?」
言いながら白紙の御札に筆を走らせる早苗の手元を、クリームヒルトは興味深げに覗き込む。
何を書いているのかさっばりだったが、印や文字が書かれる度に、御札の霊力が高められていくのだけは分かった。
早苗「まどかさんの円環の理を、魔女限定で作用する呪、と無理矢理解釈すればなんとか……。 たぶん、気休めですけど……」
霊夢「なんだかんだ言いつつアンタたち張り切ってるわね……。 余興みたいなモノでしょうに……」
用意されたお茶すら飲まずに打ち合わせをするクリームヒルトたちに、霊夢は呆れ混じりの視線を送る。
まどかと組むのは今日が初めてなのに、打ち合わせすら面倒臭いと切り捨てた霊夢からすると、対照的過ぎてついて行けないと言った感じだ。
早苗「なに言ってるんですか霊夢さん! やるからにはフルボッコにしたいじゃないですか(やるからには真剣にやらないと、失礼じゃないですか)!」
クリームヒルト「そうですよ。 それに『遊びだからこそ本気でやるのが幻想郷での鉄の掟』って幽々子さんも言ってましたし!」
霊夢「あー、うん、アンタもだいぶ思考があっちに染まってきてるのね……。 それと早苗、本音と建前が逆になってるわよ」
拳を握りつつ力説する二人に、霊夢は乾いた笑いを漏らす。
早苗はある意味通常運行だが、比較的マトモだと思っていたクリームヒルトの染まりっぷりには、流石の霊夢もショックが大きい。
まあ、幻想郷に於ける姉貴分が幽々子だった時点で、この事態は容易に想像できたのだが……、
霊夢(深く考えるのは止めておいた方が良いわね……)
もうこの際だから、試合まで無視しよう、と霊夢が諦めにも似た決意を抱いたその直後の事だった。
突然の爆発音と共に、大気が揺れた。
ちゅどーん!
霊さなクリ「「「!!?」」」
あまりの大音響に、護符を作る手も、湯呑みに伸びた手も、一様にして止まる。
いち早く疑問を漏らしたのは、控え室に背を向けていた早苗だ。
早苗「な、なんです!? 爆発?」
霊夢「なんか例の神様の控え室から噴煙が上がってるように見えるのは気のせいかしら?」
クリームヒルト「気のせいじゃないよ! 概念の私!大丈夫!?」
視界の隅で控え室が吹き飛ぶ様を見てしまった霊夢は頬をひきつらせ、クリームヒルトは慌てて吹き飛んだ控え室跡へと駆け寄る。
爆発と同時に起こった土煙が収まると、そこには膝をついて座り込むまどかの姿があった。
早苗「ん~、いくら弾幕戦とは言え、救済概念を発動されると厄介ですね。 対円環パワー用の護符でも作っておきましょうか?」
クリームヒルト「護符、って、作れるんですか?」
言いながら白紙の御札に筆を走らせる早苗の手元を、クリームヒルトは興味深げに覗き込む。
何を書いているのかさっばりだったが、印や文字が書かれる度に、御札の霊力が高められていくのだけは分かった。
早苗「まどかさんの円環の理を、魔女限定で作用する呪、と無理矢理解釈すればなんとか……。 たぶん、気休めですけど……」
霊夢「なんだかんだ言いつつアンタたち張り切ってるわね……。 余興みたいなモノでしょうに……」
用意されたお茶すら飲まずに打ち合わせをするクリームヒルトたちに、霊夢は呆れ混じりの視線を送る。
まどかと組むのは今日が初めてなのに、打ち合わせすら面倒臭いと切り捨てた霊夢からすると、対照的過ぎてついて行けないと言った感じだ。
早苗「なに言ってるんですか霊夢さん! やるからにはフルボッコにしたいじゃないですか(やるからには真剣にやらないと、失礼じゃないですか)!」
クリームヒルト「そうですよ。 それに『遊びだからこそ本気でやるのが幻想郷での鉄の掟』って幽々子さんも言ってましたし!」
霊夢「あー、うん、アンタもだいぶ思考があっちに染まってきてるのね……。 それと早苗、本音と建前が逆になってるわよ」
拳を握りつつ力説する二人に、霊夢は乾いた笑いを漏らす。
早苗はある意味通常運行だが、比較的マトモだと思っていたクリームヒルトの染まりっぷりには、流石の霊夢もショックが大きい。
まあ、幻想郷に於ける姉貴分が幽々子だった時点で、この事態は容易に想像できたのだが……、
霊夢(深く考えるのは止めておいた方が良いわね……)
もうこの際だから、試合まで無視しよう、と霊夢が諦めにも似た決意を抱いたその直後の事だった。
突然の爆発音と共に、大気が揺れた。
ちゅどーん!
霊さなクリ「「「!!?」」」
あまりの大音響に、護符を作る手も、湯呑みに伸びた手も、一様にして止まる。
いち早く疑問を漏らしたのは、控え室に背を向けていた早苗だ。
早苗「な、なんです!? 爆発?」
霊夢「なんか例の神様の控え室から噴煙が上がってるように見えるのは気のせいかしら?」
クリームヒルト「気のせいじゃないよ! 概念の私!大丈夫!?」
視界の隅で控え室が吹き飛ぶ様を見てしまった霊夢は頬をひきつらせ、クリームヒルトは慌てて吹き飛んだ控え室跡へと駆け寄る。
爆発と同時に起こった土煙が収まると、そこには膝をついて座り込むまどかの姿があった。
693: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:36:50.64 ID:QoZSUIIo0
まどか「…………」
クリームヒルト「? ……概念の私?」
真っ先に駆け寄ろうとしていたクリームヒルトは、沸き上がる妙な予感に思わず足を止める。
概念の少女の様子は明らかにおかしかった。 それに、この位置に居ても分かるこの匂いは……!
どうしてこうなったのか、訳こそ分からないけど、すごく、すごくイヤな予感がする!
まどか「ウェヒヒ……」
クリームヒルト「っ!?」
神創 『ラ・リスポスタ・デリヴァ』
まどかの突然のスペル宣言により、辺りは一転して戦場となる。
クリームヒルトは最初の爆発にもどうにか耐え抜いた控え室の壁の残骸の影に逃げ込み、
間も無くそこに霊夢たちも駆け込んでくる。
早苗「ちょっ、いきなり不意討ちとか随分と好戦的……、って、うわっ!? なにコレ、お酒くさっ!?」
霊夢「どーいう事かしら? 二人とも、説明してくれない?」
片や早苗は現場近くに漂う酒の臭いに敏感に反応し、片や霊夢は別の残骸に身を寄せている鬼と魔女を睨み付ける。
ロベルタ「いや、私らはあの子の緊張を解いてやろうと思ってな……?」
萃香「そう、それでちょっとこの瓢箪からお茶を出したんだけど……」
冷や汗を浮かべつつ、ロベルタは目線を逸らし、萃香は瓢箪から飲み物を注ぐジェスチャーをしてみせる。
霊夢「その瓢箪から出てきた時点でお酒でしょ!? 何やってんのよ!?」
早苗「あー、お茶割りか~。 アリかもしれませんが、萃香さんのお酒と混じった時点で色々アウトですね」
萃香の一言で全てを察した霊夢は激昂し、早苗は頭を押さえる。
二人ほどではないが、何が起こったのか、なんとなく見えてきたクリームヒルトは思わず眉をひそめる。
クリームヒルト「つまり概念の私は……?」
早苗「はい、完全に酔っぱらってますね。 それも、かなり質の悪い酔い方で……」
まどか「ウェヒヒ……、ヒック、ほらほらひくよ~!いっひゃうよ~!」
頬を紅く染め、僅かばかりの狂気さえ感じる笑みを漏らしながら、弾幕をばら蒔く概念の少女。
そこには先程まで自分の半身との弾幕戦にすら戸惑いを覚えていた優しき少女の面影は一切無い。
どうやらあの神さまは酒を飲ませてはいけない人種だったらしい。
694: 東方魔戯歌伝 2012/02/23(木) 19:39:22.75 ID:QoZSUIIo0
ロベルタ「酔いが醒めるまで暴れさせる、ってのは?」
霊夢「却下、お米以外の秋の味覚、全滅させるつもり?」
萃香「だよね~」
ロベルタの提案が間髪入れずに切り捨てられるのを見て、萃香はなんとも言えない表情を浮かべる。
今回の会場は畑作地区のすぐそばに設営されていた。
このまま暴れさせるのは、農作物への被害を考えると、看過できるものではない。
霊夢「ところでアンタたち、何か変わった事は無い?」
クリームヒルト「? 何かって……、って、あれ? なんだか身体から力が……」
霊夢に言われ、疑問を抱いた直後、クリームヒルトは身体から力が抜けていくような感覚を覚えた。
脱力感と言うか、倦怠感にも似たそれは、意識していないと分からないほど微弱だ。
それでも、力が吸われている。 と言うのは確実に言える。
霊夢「やっぱり……。 あの神様、酔った勢いで能力(ちから)が駄々漏れになってるようね。 早苗っ!」
早苗「はいどうぞ!」
まどかの救済概念が、クリームヒルトたち魔女に影響を与えている事を見抜いた霊夢は早苗に呼びかける。
早苗は、まるでこうなる事が分かっていた、とでも言うように、すぐさま一枚の御札をクリームヒルトに手渡す。
差し出されるままに御札を受け取ったクリームヒルトは、御札に触れるなり倦怠感が治まった事に目を丸くする。
クリームヒルト「これは?」
早苗「さっき言ってた対救済概念用の護符です。 “奇跡的”に人数分、ギリギリの所で作れました」
神職に就く者として、霊夢共々、まどかの神力が暴走している事をいち早く見抜いたのだろう、
早苗はまどかの能力がクリームヒルトたちに致命的な影響を与える前に、自らの能力を総動員して護符を作り上げたのだ。
早苗「ロベルタさん、萃香さん、この護符を他の魔女に! それと、誰でもいいので援軍を呼んできて下さい!」
ロベルタ「分かった。 すぐに呼んで来る」
萃香「任せたぞ、霊夢と早苗に魔女っ子!」
物陰に身を潜め、被弾を避けつつ、ロベルタたちは観客席の方に駆け出していく。
最悪の事態はコレでどうにか避けられそうだ。
霊夢「仕方がないわね……。 やるわよ!早苗、クリームヒルト!」
早苗「クリームヒルトさん、その護符は“救済概念”を遮断する抗力こそありますが、
被弾に耐えられるほど強くはありません。 くれぐれも無茶だけはしないで下さい」
クリームヒルト「分かったよ、早苗さん!」
御札や御幣、弓と言った各々の得物を構えつつ、三人は物陰を飛び出す。
これが、『神無月の御乱神事件』と呼ばれる魔女関連の事件の大トリを飾る弾幕戦の幕開けだった。
701: 1 2012/02/27(月) 22:53:45.85 ID:2/3Efwti0
ついでに小ネタ(本編とは関係ありません)
――――――――――― 【ある日の守矢神社にて】 ―――――――――――――
クリームヒルト「え? “魔女”と戦った事があるんですか?」
諏訪子「んーだいぶ昔の話だし、あの当時は単なる妖怪だと思ってたけどね~」
神奈子「ああ、諏訪の地で民に不審な死が相次いだ時期の話か……」
オクタヴィア「へー、それで、どうしたんです? 退治しちゃったんですか?」
神奈子「それがなぁ、民に手を出されて相当頭に来てたんだろうな。 呪いごと食っちまったんだよ」
クリ&オク「「え゛?」」
諏訪子「ちょっ、神奈子っ!? 食べたって意味が違うからね!? ミシャグジ様の贄にしただけだからね!?」
神奈子&早苗「「大して変わらないだろう(変わりませんよ)」」
クリ&オク「「((((;TДT))))ガクガクブルブル」」←部屋の隅まで逃げた
諏訪子「あ~、全盛期の話だし、結構弱い相手だったからね? 今はそんな事しないからそんな逃げないでよぉ(汗)」
――――――――――― 【同じ頃・現世・見滝原】 ―――――――――――――
キュゥべえ「世の中には不思議な土地があってね。 例えば隣の県の諏訪とかはなぜか最近まで魔獣の発生が少なかったんだ」
ゆま「へー、そうなんだ~」
マミ杏ほむ(((間違いなくあの神さまのせい、なんでしょうね(だろうな)……)))
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