1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:46:55.46 ID:jT3sWCsl0
男「つまらない」
友「え?」
男「毎日がつまらない」
友「……」
男「……つまらない」
友「お前がそういう時は決まってなんか辛いことがあった時だよな。どうした?」
男「……ゲーセン行こ」
友「今から? いいよ」
モブ「おーい、今日の総合で先生が言ってた、女への寄せ書きの紙、
みんな書いとけよー。明日の放課後には委員長が集めるからなー」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362840415
友「え?」
男「毎日がつまらない」
友「……」
男「……つまらない」
友「お前がそういう時は決まってなんか辛いことがあった時だよな。どうした?」
男「……ゲーセン行こ」
友「今から? いいよ」
モブ「おーい、今日の総合で先生が言ってた、女への寄せ書きの紙、
みんな書いとけよー。明日の放課後には委員長が集めるからなー」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362840415
2: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:50:49.77 ID:jT3sWCslo
ビッチ「はあ?」
DQN「メンドクセーなー」
ヲタ「書いたってどうせ学校来ないでござるwwwww」
モブ2「俺たちもうすぐクラス替えだしいいじゃーん、ほっといたら」
友「そういやあれ、俺たちまだ書いてないな。書いていく?」
男「明日でいいだろ、行くぞ」
友「お、おう……」
DQN「メンドクセーなー」
ヲタ「書いたってどうせ学校来ないでござるwwwww」
モブ2「俺たちもうすぐクラス替えだしいいじゃーん、ほっといたら」
友「そういやあれ、俺たちまだ書いてないな。書いていく?」
男「明日でいいだろ、行くぞ」
友「お、おう……」
3: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:52:39.67 ID:jT3sWCslo
ゲームセンター
友「何する? 格ゲーでもするか?」
男「UFOキャッチャー……」
友「お前これ苦手だろ」
男「金渡すから取ってくれ」
友「俺はお前の彼女かwww お前ホント女々しいな。まあそれ知ってて友達やってんだけどな」
男「ずっと欲しかったのがあるんだ」
友「ん? どれ?」
男「あのアザラシのぬいぐるみ」
友「OK,とってやる」
ピコピコ ウィーン ガタッ ピロリロピロピロ……
友「やった、かかったぞ! ってありゃ、これとなりのクマのぬいぐるみだ」
男「アザラシ取って」
友「しゃあねえな」
友「何する? 格ゲーでもするか?」
男「UFOキャッチャー……」
友「お前これ苦手だろ」
男「金渡すから取ってくれ」
友「俺はお前の彼女かwww お前ホント女々しいな。まあそれ知ってて友達やってんだけどな」
男「ずっと欲しかったのがあるんだ」
友「ん? どれ?」
男「あのアザラシのぬいぐるみ」
友「OK,とってやる」
ピコピコ ウィーン ガタッ ピロリロピロピロ……
友「やった、かかったぞ! ってありゃ、これとなりのクマのぬいぐるみだ」
男「アザラシ取って」
友「しゃあねえな」
4: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:55:08.27 ID:jT3sWCslo
ピコピコ ウィーン ガタッ ピロリロピロピロ……
友「ほれ」
男「! あ、ありがとう! お前のUFOキャッチャーのうでは天才的だな」
友「俺はあのひよこのやつが欲しいな、やるか」
男「クマのやついらねえからやるぞ」
友「俺はひよこがいいの! 自分で持っとけよ、それ」
男「誰かにあげるかな……」
友「んで? 俺に愚痴りたいことがあんだろ? どこで聞こうか、男の家は?」
男「アル中の親が暴れてる家でいいならいいけど」
友「そういやそうだったな……。お前の悩みってのもそれ関係?」
男「うん」
友「俺んち来る?」
男「悪いな、邪魔させてもらう」
5: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:58:04.86 ID:jT3sWCslo
友の家
友「で、親がどうしたって?」
男「親に殴られた」
友「ええっ、いつ? 目立った傷は見当たらないけど……」
男「一ヶ月前」
友「だいぶ前だな、冬休み中じゃん。それ誰にも相談できなかったのか」
男「うん」
友「なんで殴られたの?」
男「小テストの結果が悪くて、それ見せたら殴られた」
友「お母さん酔ってたのか」
男「うん、昼間から飲んでやがった」
友「何か言われた?」
男「次はないって。次は[ピーーー]って」
友「……それヤバくね? 先生に相談したほうがいいんじゃないか? つーかしなきゃダメだろ、このままだと殺されちまう」
友「で、親がどうしたって?」
男「親に殴られた」
友「ええっ、いつ? 目立った傷は見当たらないけど……」
男「一ヶ月前」
友「だいぶ前だな、冬休み中じゃん。それ誰にも相談できなかったのか」
男「うん」
友「なんで殴られたの?」
男「小テストの結果が悪くて、それ見せたら殴られた」
友「お母さん酔ってたのか」
男「うん、昼間から飲んでやがった」
友「何か言われた?」
男「次はないって。次は[ピーーー]って」
友「……それヤバくね? 先生に相談したほうがいいんじゃないか? つーかしなきゃダメだろ、このままだと殺されちまう」
6: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:01:28.64 ID:G0y2+vWJo
男「……き」
友「き?」
男「九点だったんだ! 十点満点のテストで!」ガタッ
友「お、おい……」
男「そんなにおかしいかよ! 一点ぐらい誰にでもミスあるだろ! 自分は昼から飲んどいて、息子には完璧主義の押し付けってか!
ふざけんなよおおおおおおお!!!!」
友「わかった、わかったから落ち着け! とにかく座れ」
男「はあ、はあ……ごめん」
友「……」
友「き?」
男「九点だったんだ! 十点満点のテストで!」ガタッ
友「お、おい……」
男「そんなにおかしいかよ! 一点ぐらい誰にでもミスあるだろ! 自分は昼から飲んどいて、息子には完璧主義の押し付けってか!
ふざけんなよおおおおおおお!!!!」
友「わかった、わかったから落ち着け! とにかく座れ」
男「はあ、はあ……ごめん」
友「……」
7: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:03:19.16 ID:G0y2+vWJo
友(男。十六歳、高2。 母親と二人暮らし。父は、男が十二歳の時に離婚。今は別の家庭を持っているらしい)
友(離婚の原因は母の不倫。父は親権を取ろうとしたが失敗。離婚後、母は酒をよく飲むようになり、その一年後から虐待が始まった)
友(その頃から男は人間不信に。自分の殻に閉じこもってしまった。同時に、女々しくもなった)
友(ついには死の危険、か……)
8: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:06:15.10 ID:G0y2+vWJo
友「大丈夫、俺がお前を守ってやる」
男「と、友……」ウルッ
友「何かあったら我慢せずに俺に言え。あんまりやばそうだったら
俺が警察呼ぶぐらいまではしてやる」
男「ありがどおおおぉぉぉぉぉぉ」ダキッ
友「くっつくな!」ガバッ
9: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:09:30.92 ID:G0y2+vWJo
女の家
女「……」
女母「ねえ、女ちゃん、私、女ちゃんと話がしたいの。
部屋に入れてくれない?」
女「……今更なんなの」
女母「え?」
女「どーせ、あれでしょ? 『もうそろそろ二年も終わる頃だから、学校に行ったらどう?
出席日数も危ういんじゃない?』」
女「とか言いに来たんでしょ」
女母「そ、それは……」
女「でも残念でした。出席日数を気にする以前に、勉強が追いつかないの。
もうみんなと二年近く離れてる。授業も、全然わかんない」
女母「でも、女ちゃんは頭いいじゃない! 中学の時はほら、よく満点なんかとってきて……」
女「うるっせーよ!」バンッ!
女母「!」ビクッ
10: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:16:07.78 ID:G0y2+vWJo
友の家
男「だが、まあ身を守るためには、満点を取る必要があるんだ」
友「お、おう……」
男「でも、最近授業に集中できない」
友「死の恐怖から?」
男「いや……」
友「なんだよ、優等生のお前が勉強に集中できないなんて珍しい」
男「好きな人が……できたんだ」
友「え? ええっ!? 恋愛に疎いお前が、好きな人だって?」
男「ああ」
友「それって、女子だよな……?」
男「当たり前だ!」
友「……で? 誰だよ」
男「女さん……だ……」
友「えっ……?」
11: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:21:19.63 ID:G0y2+vWJo
女の家
女「二年も離れてるっつったろ! どーやって満点なんか取るんだ!?
え?」バキッドカッ
女母「お、女ちゃん……」
女「なあ!? どーやったら満点取れるんだよ!なあ!教えろよ……」ジワ
女母「わ、私が悪かったのよね!! そうよね!女ちゃん、ごめん! お母さん謝るから!
だからこれ以上暴れないで……」
女「なあ! なあ! 誰か……教えてよ……」ポロポロ
女「どうやったら満点取れるんだよ……」
12: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:23:54.02 ID:G0y2+vWJo
友の家
友「ちょ、ちょっと待てよ! 女って二年間不登校してるあの女だろ!?
学校に来てない人を、どうやって好きになったんだ?」
男「見たんだ……ゲーセンでカーゲームしてたの」
友「ゲーセンって今日いったあそこ? 女も外に出てたんだな。
ていうかよく女の顔覚えてたな、入学式の後数回会っただけだろ?」
男「綺麗だったから……」
友「まさかお前……一目惚れ?」
男「……」コクッ
友「なるほどな……」
男「俺、女の家知ってんだ」
友「へ?」
男「ゲーセンから出てきた女の、あとをつけた」
友「お前それ……ストーカーじゃん……」
男「だから……」
友「だから?」
男「……寄せ書きは、俺が届ける」
14: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:26:45.25 ID:G0y2+vWJo
友(なるほど)
友(放課後、寄せ書きを書かなかったのはただの照れ隠しか)
友(面白い展開だな)
男「あ」
友「どうした?」
男「ゲーセンで財布落とした」
友「ええ!? やべえじゃん、急いで取りに行かなきゃ」
男「もう暗いし、友はいいよ」
友「そ、そうか? 気をつけてな」
男「ああ。今日はありがとう」
15: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:28:18.91 ID:G0y2+vWJo
女「……ゲーセン行ってくる」
女母「へ」
女「ゲーセン行くっつってんだろ! どけ!」ガチャ トタタ
女母「女ちゃん……いつからこんなに口が悪くなったの……? 私、どうすればいいの……」
16: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:30:35.67 ID:G0y2+vWJo
女「ゲーセン行くって言って飛び出してきたけど、特にやろうと思ってるゲームないしなあ……。
帰ろうかな」
担任「~♪」
女「げ! あれ担任じゃん!」
担任「おう! 女じゃないか! どうした、こんなとこで」
女「先生には関係ないじゃん!」
担任「そういうわけでもないんだぞ? みんなお前のこと心配してるよ」
女「どうだか……。行ったところで勉強おっつかないし」
担任「それは困ったなあ……」
女「先生ってなんの教科だったっけ?」
担任「え? おまえ、忘れたのか? 担任の教科を」
女「しょーがないじゃん、毎学期の始めにしか来ないんだから」
担任「それでも先生は、女の顔ちゃんと覚えてたぞ」
女「!」
17: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:32:50.26 ID:G0y2+vWJo
担任「先生の教科は数学だ。そして、これが成績にお困りの女様に用意したプリントだ!」ジャーン
女「これ……本当に私のために……?」
担任「嘘だ」
女「なっ!?」
担任「そもそも女とここであったのも偶然だ。これは一年生の補習組のプリントの余りだ。かなり簡単にしてある。
文字と計算の所からだ。一度、やってみるのもいいんじゃないか?」
女「うん、ありがとう……」ギュ
担任「何だ、やけに素直だな。ま、俺が言いたかったのはそれだけだ。じゃな! 寄り道するなよ!」
女「ふん! 先生の言うことなんか聞いてやらないもんね! ゲーセン行ってやる!」
担任「ハハッ、体に気をつけろよ」テクテク
女「先生、本当にありがとう……」
担任(女……お前なら、大丈夫だ)
18: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:34:30.52 ID:G0y2+vWJo
女「最初の問題やってみようかな。」
『次の方程式を解け
(1) -4x=-16』
女「xを求めるんだよね? どっちもマイナスだから、答えもマイナス! x=-4!」
女「……あれ?」
19: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:36:11.13 ID:G0y2+vWJo
ゲームセンター
女(先生に対する反抗心でゲーセンまできたけど)
女(特にやりたいゲームがない。……あれ? 財布が落ちてる)スッ
女(男物だ、どうしよう。ここの店員に言ったら保管してもらえるの? それとも直接交番?)
女(いや、見なかったことにしてそのへんに……)
男「そっ、その財布俺のなんですぅ~!!!!」
女「!」
男「よ、良かったぁ盗られてなくて……どうもホントにありがっ……!」
女「男くん……」
男「お、女……?」
20: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:39:30.37 ID:G0y2+vWJo
男「女、どうしたのこんな時間に」
女「男くんも、私のこと覚えててくれたんだ……」
男「へ?」
女「何でもない。よかったね、財布」
男「女も、ここよく来るの?」
女「まあね」
男「そ、そうなんだ……」
女(会話が続かない……。そうだ!)
21: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:41:25.20 ID:G0y2+vWJo
女「さっきそこで担任と会ってさ~」
男「へ? 先生と会ったの?」
女「なんかプリントとか渡されて、ホント迷惑。しかも超簡単なとこで間違うし」
男「どれどれ……ああ、本当だ、符号の問題だね」
女「カッコ悪い」
男「はは、まあ逆に考えればややこしくないね、マイナスとマイナスをかけたら、」ピリリリリリリ
男「おっとごめん、メールだ」
From:母
message:早く帰って飯作れゴミが
男「……ごめん、もう行かなきゃ」
女「う、うん」
男「じゃあ、また学校で」
女「……じゃあ、また学校で……」
22: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:44:25.42 ID:G0y2+vWJo
男の家
男「ただいま」
男母「おせーぞ! ゴミ野郎!」
男「はいはい」
男母「何がはいはいだ! てめえのせいで私がどれだけ
大変な目にあってきたかわかってんのカァ!」スッ
男「ちょっ……ビール瓶危ないって!」
男母「ゴチャゴチャゴチャゴチャうるせええぇんだよおおおぉぉぉぉ!!!」バリーン
男「うわっ」
男母「はあ、はあ、男、大丈夫~? ごめんね、痛かったぁ~?
お母さんもう二度としないから、許してぇ~」
男「……飯作る」
男(女……俺の家庭はこんななんだぜ……)
23: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:45:47.47 ID:G0y2+vWJo
女の家
女(眠れない)ゴソゴソ
女父「ただいま」
女母「あなた! 遅かったわね」
女父「また負けた」
女母「負けたって、まさか……」
女父「パチンコだよ!」
女母「そんな! もう賭け事はしないって約束したじゃあありませんか!」
女父「うるさい! 会社の借金を返すには博打しかないんだよ! こうなったら……」
女父「女に稼いでもらう……」
女「!」
女(男くん……私の家庭はこんななの……)
24: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:47:51.13 ID:G0y2+vWJo
男の家・自室
ピリリリリリリ
男「はい、もしもし」
男父「おう! 男か! 久しぶりだなあ、元気してたか?」
男「いいや」
男父「……母さんとは……どうだ? 仲良くやってるか?」
男「……っ」
男父「どうした、男?」
25: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:49:36.80 ID:G0y2+vWJo
男「……ああ、仲良くやってるよ。だから父さんは……心配すんな。今は別の奥さんと子供がいるんだろ?」
男父「おお! そうか! それは良かった。そうなんだよ、実はもうあんまり男に連絡できないんだ。すまん」
男「わかってるよ。じゃあ」
男父「ま、お前ももう一人前の男だ。大人の世界では……ドロドロとした……
そのぉ、まぁ、そういうのがあるんだ。わかってくれ」
男「ああ、じゃあ」プツッ ツーツーツーツー
男(大人の世界……ねぇ……)
男「くだらねぇ」
男「あれ? 熱っぽい……?」ポー
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/10(日) 00:53:32.31 ID:G0y2+vWJo
女の家・自室
女「ストリップショー?」
女父「そう。歌って踊りながら服を脱げばいいだけだ。簡単だろう?
それにお金を払ってくれるオトコの人たちがいるんだ。うちの生活も少しは楽になるぞ、
お前が頑張ってくれれば、な」
女「ふざけないで! 私が、汚いカネなんかで動くような安っぽい女に見える!?
そんなのするくらいなら、死んだほうがまだましよ!」
女父「お前に決定権はない。全て俺が決める、俺のために」スクッ スタタ
女「……っ」
女父「あ」ピタッ
女父「一つ言っといてやろう」クルッ
女父「お前、安っぽい女だぞ?」
女「い、」
女「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
27: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:55:37.47 ID:G0y2+vWJo
翌日 男の家・自室
男(38.0℃)
男(高熱だ)
男(普通なら学校を休む)
男(だが)
男(俺は今日、女の家に寄せ書きを届けなくちゃいけない)
男(それに)
男(俺は大事なメッセージを書いてない!)
前の投下、トリップ忘れてました
28: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:58:08.11 ID:G0y2+vWJo
同日 放課後 学校
委員長「もうこの寄せ書きにメッセージを書く人はいませんね? 持っていくよ」
友「くそ、なんで来ねえんだよ、男……」
委員長「さて、全員書いたかなっと……んなわけないよね、半分は真っ白だ!」
友「ぐっ……」
委員長「僕も含め、ほとんどの人が『学校に来てください』などの月並みなメッセージ」
委員長「友だけが少し違うメッセージを書いているが、所詮みんなと同じメッセージ
になるのを計算して避けたに過ぎない」
友「……」
委員長「おや? 何か言いたげですね、友」
友「……ちげーよ」
29: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:00:37.80 ID:G0y2+vWJo
友「俺は計算とかじゃなくて、書きたいことを書いただけだ!」
委員長「どうだか……」
友「お前は、この寄せ書きを、その程度にしか考えてなかったのか?」
委員長「ハッ!『その程度』だって? こんな紙一枚に、『どの程度』の力があると言うんですかぁ?」
委員長「まさか君は、こんなもので本当に彼女が学校に来ると思っているのかね?」
友「来る!(男が書けば、だが……)」
委員長「まぁ~ったく、そんなにお友達ごっこが楽しいですか? 彼女が来たところで、
なんになるというんです? 我々も、彼女も、お互いに関係を持とうとはしない。
全く、面倒なもんですよ。こんな無意味なものを、届けなくてはならないとはね」
30: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:03:24.90 ID:G0y2+vWJo
友「無意味なんかじゃない……」
委員長「え?」
友「俺たちの、女に来てほしいっていう想いは、無意味なんかじゃないっ」
委員長「……」
友「それを届けるのはお前じゃないし、そんな資格もない」
委員長「……」
友「おまえがとどけねえんなら、俺がもらっていく」パシッ
委員長「……お好きになさい……」
31: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:04:50.76 ID:G0y2+vWJo
校門前
友「男が来ない……まさか本当に殺されたのか!? だとしたら……警察、いや、まずは学校の先生に……」
友「……男に、電話しよう」
プルルルル
友(病欠なら、あいつの口から女の家の場所を聞いて届けることができる……)プルルルル
友(寝てるなら、たたき起こせばいい。あいつにメッセージを書かせることも、届けさせることもできる)
プルルルル
友(でも、もしもうあいつがこの世にいなかったら……俺はあいつの声を聞くことも――)
32: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:06:45.87 ID:G0y2+vWJo
『おかけになった電話番号は、現在、電源が入っていないか、電波の届かない所に――』
友「ま、まさか……そ、そんな……」ガクッ
男「よ、よう、友……」ゼエゼエ
33: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:08:11.62 ID:G0y2+vWJo
友「お、男! 良かった! 生きてた!」
男「ごめん、風邪ひいた」ズピー
友「そんな体で大丈夫なのか?」
男「大丈夫だ、いける、届ける」
友「……女が、この寄せ書きを待ってる」
男「友、ペン貸して」
友「なんて書くんだ?」
男「だいぶ余ってんな」
友「その分、お前がたっぶり書ける」
男「たっぷり書かない」
友「え?」
男「俺が書きたいのは、簡単なことだ」
34: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:09:50.41 ID:G0y2+vWJo
女の家
男「……」ピンポーン
女母「もう少し! もう少しだけ待ってください!」
男「?」
女母「お金のあてができました! もう少し……もう少しだけ待ってください!」
男「……なんのことですか?」
女母「え?」
男「私は、女さんと同じクラスの男です。女さんに会いたくて来ました」
女母「もしかして……女ちゃんのお友達……?」
男「ええ。まあ」
女母「ごめんなさい、今おうちにあげられないの。女を呼んでくるから、そこで待っててもらえる?」
男「はい、わかりました」
女母(ふん、無駄よ。外に出ないわ、あの子は)
35: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:11:33.91 ID:G0y2+vWJo
女母「女ちゃん、男って子が会いたいって」
女「男くんが?」
女母「入ってもいい?」
女「いいよ」
女母「!……おじゃまします」ガチャ
女「顔をちゃんと見るのは、久しぶり」
女母「……何してたの?」
女「勉強。数学の」
女母「まあ! 女ちゃん……」
女「お母さん、私男くんに会ってくる」
女母「行ってらっしゃい」
女「……ありがとう」
36: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:12:49.69 ID:G0y2+vWJo
ガチャ
女「……」
男「お、女!」アセアセ
女「何の用?」
男「あ、あの……渡したいものがあって……」
友「……」ガサッ
37: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:13:57.24 ID:G0y2+vWJo
男「これ……」スッ
女「なに、これ……」
男「クラスのみんなが、女へ書いたんだ」
女(と、言っても数人……やっぱりね、こんなものよ)
委員長『学校に来てください、みんな待っています』
ヲタ『学校に来るでござるwwww』
モブ『学校来いよ!』
モブ2『元気出せよ!』
女子『学校おいでよ、楽しいよ!』
女(メッセージも、月並みなものばっか)
ビッチ『学校来ないでなにやってんの? ひきこもりって楽しい?wwww』
女「……っ」
38: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:16:53.99 ID:G0y2+vWJo
女「私の父はさ」
男「うん?」
女「ABCコーポレーションの社長なの」
男「ええっ、ABCコーポレーションってあの!? 大ヒット商品を数々生み出したっていう……
でも最近、名前聞かないな」
女「事業に失敗して、倒産したの」
男「えっ」
女「それから毎日、借金取りに追われる日々」
男「女母さんが言ってたのは、そういう……でも、あてが出来たって」
女「私が体を売るの」
男「体を売るって……まさか」
女「ストリップショーだって。おさわり禁止らしいけど、なんせ非合法のとこだからね、
どうなるかはわからない」
男「そ、そんな……」
女「襲われるかもね」ハハッ
男「そんなこと……させない」
女「ねえ、もう少し聞いてもらっていい?」
39: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:19:28.26 ID:G0y2+vWJo
女「私の持ち物は、当時まだ『お嬢様時代』のものだった」
「カバン、筆箱、身につけるもの……とっくに私は『お嬢様』なんかじゃなかったのに」
「ビッチたちはそれを欲しがった」
「私の持ち物は全て、ビッチたちに取られた」
「それだけじゃない」
「暴言と暴力を浴びせてくるようになった」
「私はすぐに不登校になった」
「……私って安っぽい女」
「そして、この寄せ書きも」
「私、こんなんじゃ学校に行かないよ?」
40: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:20:43.17 ID:G0y2+vWJo
男「最後まで読んでよ」
女「……」
友『焦らなくていい。学校来れるようになるまで俺たちは待ってる。
学校来たら男と俺と三人で飯でも食おうぜ!』
女「友くん……」
友「……」グッ
41: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:22:19.04 ID:G0y2+vWJo
男「最後は俺のメッセージ」
男『好きだ』
女「へっ!?」
男「女……俺、お前のことが好きだ」
女「え? ほ、ホントに……?」
男「本気だ。付き合ってくれ」
女「こんな、安っぽい女でいいの?」
男「女は、安っぽくなんかない」
女「……」ウルッ
42: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:23:29.81 ID:G0y2+vWJo
男「これあげる」
女「なに、これ?」
男「クマのぬいぐるみ」
女「いいの?」
男「うん」
女「ありがとう……ホントにありがとう……」ポロポロ
43: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:24:40.78 ID:G0y2+vWJo
男「なあ、女」
女「なに?」
男「マイナスとマイナスをかけたらプラスになるんだよ」
女「うん」
男「それって俺たちも一緒じゃないか?」
44: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:25:57.29 ID:G0y2+vWJo
男「虐待」
女「不登校」
男「家庭崩壊」
女「いじめ」
男「殺されるかもしれない」
女「身体を、傷つけられるかもしれない」
男「もし、幸せを数値で計れるなら」
女「私たちは、間違いなくマイナス」
男「でも、マイナスどうしをかければ」
女「プラスになる」
男「俺たちの未来も」
女「きっと、輝く――」
男「そんな夢を見ても、いいじゃないか」
45: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:27:13.37 ID:G0y2+vWJo
女「手、つなごう」
男「ん」ギュ
女「……大好き」
完
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。