1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:46:55.46 ID:jT3sWCsl0
男「つまらない」

友「え?」

男「毎日がつまらない」

友「……」

男「……つまらない」

友「お前がそういう時は決まってなんか辛いことがあった時だよな。どうした?」

男「……ゲーセン行こ」

友「今から? いいよ」


モブ「おーい、今日の総合で先生が言ってた、女への寄せ書きの紙、
みんな書いとけよー。明日の放課後には委員長が集めるからなー」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362840415

2: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:50:49.77 ID:jT3sWCslo
ビッチ「はあ?」

DQN「メンドクセーなー」

ヲタ「書いたってどうせ学校来ないでござるwwwww」

モブ2「俺たちもうすぐクラス替えだしいいじゃーん、ほっといたら」

友「そういやあれ、俺たちまだ書いてないな。書いていく?」

男「明日でいいだろ、行くぞ」

友「お、おう……」

3: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:52:39.67 ID:jT3sWCslo
ゲームセンター

友「何する? 格ゲーでもするか?」

男「UFOキャッチャー……」

友「お前これ苦手だろ」

男「金渡すから取ってくれ」

友「俺はお前の彼女かwww お前ホント女々しいな。まあそれ知ってて友達やってんだけどな」

男「ずっと欲しかったのがあるんだ」

友「ん? どれ?」

男「あのアザラシのぬいぐるみ」

友「OK,とってやる」

ピコピコ ウィーン ガタッ ピロリロピロピロ……

友「やった、かかったぞ! ってありゃ、これとなりのクマのぬいぐるみだ」

男「アザラシ取って」

友「しゃあねえな」

4: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:55:08.27 ID:jT3sWCslo

ピコピコ ウィーン ガタッ ピロリロピロピロ……

友「ほれ」

男「! あ、ありがとう! お前のUFOキャッチャーのうでは天才的だな」

友「俺はあのひよこのやつが欲しいな、やるか」

男「クマのやついらねえからやるぞ」

友「俺はひよこがいいの! 自分で持っとけよ、それ」

男「誰かにあげるかな……」

友「んで? 俺に愚痴りたいことがあんだろ? どこで聞こうか、男の家は?」

男「アル中の親が暴れてる家でいいならいいけど」

友「そういやそうだったな……。お前の悩みってのもそれ関係?」

男「うん」

友「俺んち来る?」

男「悪いな、邪魔させてもらう」

5: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/09(土) 23:58:04.86 ID:jT3sWCslo
友の家

友「で、親がどうしたって?」

男「親に殴られた」

友「ええっ、いつ? 目立った傷は見当たらないけど……」

男「一ヶ月前」

友「だいぶ前だな、冬休み中じゃん。それ誰にも相談できなかったのか」

男「うん」

友「なんで殴られたの?」

男「小テストの結果が悪くて、それ見せたら殴られた」

友「お母さん酔ってたのか」

男「うん、昼間から飲んでやがった」

友「何か言われた?」

男「次はないって。次は[ピーーー]って」

友「……それヤバくね? 先生に相談したほうがいいんじゃないか? つーかしなきゃダメだろ、このままだと殺されちまう」



6: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:01:28.64 ID:G0y2+vWJo
男「……き」

友「き?」

男「九点だったんだ! 十点満点のテストで!」ガタッ

友「お、おい……」

男「そんなにおかしいかよ! 一点ぐらい誰にでもミスあるだろ! 自分は昼から飲んどいて、息子には完璧主義の押し付けってか!
  ふざけんなよおおおおおおお!!!!」


友「わかった、わかったから落ち着け! とにかく座れ」

男「はあ、はあ……ごめん」

友「……」

7: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:03:19.16 ID:G0y2+vWJo

友(男。十六歳、高2。 母親と二人暮らし。父は、男が十二歳の時に離婚。今は別の家庭を持っているらしい)

友(離婚の原因は母の不倫。父は親権を取ろうとしたが失敗。離婚後、母は酒をよく飲むようになり、その一年後から虐待が始まった)

友(その頃から男は人間不信に。自分の殻に閉じこもってしまった。同時に、女々しくもなった)

友(ついには死の危険、か……)

8: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:06:15.10 ID:G0y2+vWJo

友「大丈夫、俺がお前を守ってやる」

男「と、友……」ウルッ

友「何かあったら我慢せずに俺に言え。あんまりやばそうだったら
俺が警察呼ぶぐらいまではしてやる」

男「ありがどおおおぉぉぉぉぉぉ」ダキッ

友「くっつくな!」ガバッ

9: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:09:30.92 ID:G0y2+vWJo

女の家

女「……」

女母「ねえ、女ちゃん、私、女ちゃんと話がしたいの。
部屋に入れてくれない?」

女「……今更なんなの」

女母「え?」

女「どーせ、あれでしょ? 『もうそろそろ二年も終わる頃だから、学校に行ったらどう?
  出席日数も危ういんじゃない?』」

女「とか言いに来たんでしょ」

女母「そ、それは……」

女「でも残念でした。出席日数を気にする以前に、勉強が追いつかないの。
もうみんなと二年近く離れてる。授業も、全然わかんない」

女母「でも、女ちゃんは頭いいじゃない! 中学の時はほら、よく満点なんかとってきて……」

女「うるっせーよ!」バンッ!

女母「!」ビクッ

10: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:16:07.78 ID:G0y2+vWJo

友の家

男「だが、まあ身を守るためには、満点を取る必要があるんだ」

友「お、おう……」

男「でも、最近授業に集中できない」

友「死の恐怖から?」

男「いや……」

友「なんだよ、優等生のお前が勉強に集中できないなんて珍しい」

男「好きな人が……できたんだ」

友「え? ええっ!? 恋愛に疎いお前が、好きな人だって?」

男「ああ」

友「それって、女子だよな……?」

男「当たり前だ!」

友「……で? 誰だよ」

男「女さん……だ……」

友「えっ……?」

11: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:21:19.63 ID:G0y2+vWJo

女の家

女「二年も離れてるっつったろ! どーやって満点なんか取るんだ!?
  え?」バキッドカッ

女母「お、女ちゃん……」

女「なあ!? どーやったら満点取れるんだよ!なあ!教えろよ……」ジワ

女母「わ、私が悪かったのよね!! そうよね!女ちゃん、ごめん! お母さん謝るから! 
   だからこれ以上暴れないで……」

女「なあ! なあ! 誰か……教えてよ……」ポロポロ


女「どうやったら満点取れるんだよ……」

12: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:23:54.02 ID:G0y2+vWJo

友の家

友「ちょ、ちょっと待てよ! 女って二年間不登校してるあの女だろ!?
  学校に来てない人を、どうやって好きになったんだ?」

男「見たんだ……ゲーセンでカーゲームしてたの」

友「ゲーセンって今日いったあそこ? 女も外に出てたんだな。
  ていうかよく女の顔覚えてたな、入学式の後数回会っただけだろ?」

男「綺麗だったから……」

友「まさかお前……一目惚れ?」

男「……」コクッ

友「なるほどな……」

男「俺、女の家知ってんだ」

友「へ?」

男「ゲーセンから出てきた女の、あとをつけた」

友「お前それ……ストーカーじゃん……」

男「だから……」

友「だから?」

男「……寄せ書きは、俺が届ける」

14: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:26:45.25 ID:G0y2+vWJo

友(なるほど)

友(放課後、寄せ書きを書かなかったのはただの照れ隠しか)

友(面白い展開だな)

男「あ」

友「どうした?」

男「ゲーセンで財布落とした」

友「ええ!? やべえじゃん、急いで取りに行かなきゃ」

男「もう暗いし、友はいいよ」

友「そ、そうか? 気をつけてな」

男「ああ。今日はありがとう」



15: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:28:18.91 ID:G0y2+vWJo

女「……ゲーセン行ってくる」

女母「へ」

女「ゲーセン行くっつってんだろ! どけ!」ガチャ トタタ

女母「女ちゃん……いつからこんなに口が悪くなったの……? 私、どうすればいいの……」

16: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:30:35.67 ID:G0y2+vWJo

女「ゲーセン行くって言って飛び出してきたけど、特にやろうと思ってるゲームないしなあ……。
  帰ろうかな」

担任「~♪」

女「げ! あれ担任じゃん!」

担任「おう! 女じゃないか! どうした、こんなとこで」

女「先生には関係ないじゃん!」

担任「そういうわけでもないんだぞ? みんなお前のこと心配してるよ」

女「どうだか……。行ったところで勉強おっつかないし」

担任「それは困ったなあ……」

女「先生ってなんの教科だったっけ?」

担任「え? おまえ、忘れたのか? 担任の教科を」

女「しょーがないじゃん、毎学期の始めにしか来ないんだから」

担任「それでも先生は、女の顔ちゃんと覚えてたぞ」

女「!」

17: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:32:50.26 ID:G0y2+vWJo

担任「先生の教科は数学だ。そして、これが成績にお困りの女様に用意したプリントだ!」ジャーン

女「これ……本当に私のために……?」

担任「嘘だ」

女「なっ!?」

担任「そもそも女とここであったのも偶然だ。これは一年生の補習組のプリントの余りだ。かなり簡単にしてある。
    文字と計算の所からだ。一度、やってみるのもいいんじゃないか?」

女「うん、ありがとう……」ギュ

担任「何だ、やけに素直だな。ま、俺が言いたかったのはそれだけだ。じゃな! 寄り道するなよ!」

女「ふん! 先生の言うことなんか聞いてやらないもんね! ゲーセン行ってやる!」

担任「ハハッ、体に気をつけろよ」テクテク

女「先生、本当にありがとう……」


担任(女……お前なら、大丈夫だ)

18: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:34:30.52 ID:G0y2+vWJo

女「最初の問題やってみようかな。」

   
   『次の方程式を解け

(1) -4x=-16』

女「xを求めるんだよね? どっちもマイナスだから、答えもマイナス! x=-4!」

女「……あれ?」

19: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:36:11.13 ID:G0y2+vWJo

ゲームセンター

女(先生に対する反抗心でゲーセンまできたけど)

女(特にやりたいゲームがない。……あれ? 財布が落ちてる)スッ

女(男物だ、どうしよう。ここの店員に言ったら保管してもらえるの? それとも直接交番?)

女(いや、見なかったことにしてそのへんに……)

男「そっ、その財布俺のなんですぅ~!!!!」

女「!」

男「よ、良かったぁ盗られてなくて……どうもホントにありがっ……!」

女「男くん……」

男「お、女……?」

20: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:39:30.37 ID:G0y2+vWJo

男「女、どうしたのこんな時間に」

女「男くんも、私のこと覚えててくれたんだ……」

男「へ?」

女「何でもない。よかったね、財布」

男「女も、ここよく来るの?」

女「まあね」

男「そ、そうなんだ……」

女(会話が続かない……。そうだ!)

21: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:41:25.20 ID:G0y2+vWJo

女「さっきそこで担任と会ってさ~」

男「へ? 先生と会ったの?」

女「なんかプリントとか渡されて、ホント迷惑。しかも超簡単なとこで間違うし」

男「どれどれ……ああ、本当だ、符号の問題だね」

女「カッコ悪い」

男「はは、まあ逆に考えればややこしくないね、マイナスとマイナスをかけたら、」ピリリリリリリ

男「おっとごめん、メールだ」


From:母
message:早く帰って飯作れゴミが


男「……ごめん、もう行かなきゃ」

女「う、うん」

男「じゃあ、また学校で」

女「……じゃあ、また学校で……」

22: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:44:25.42 ID:G0y2+vWJo

男の家

男「ただいま」

男母「おせーぞ! ゴミ野郎!」

男「はいはい」

男母「何がはいはいだ! てめえのせいで私がどれだけ
   大変な目にあってきたかわかってんのカァ!」スッ

男「ちょっ……ビール瓶危ないって!」

男母「ゴチャゴチャゴチャゴチャうるせええぇんだよおおおぉぉぉぉ!!!」バリーン

男「うわっ」

男母「はあ、はあ、男、大丈夫~? ごめんね、痛かったぁ~? 
   お母さんもう二度としないから、許してぇ~」

男「……飯作る」


男(女……俺の家庭はこんななんだぜ……)

23: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:45:47.47 ID:G0y2+vWJo

女の家

女(眠れない)ゴソゴソ


女父「ただいま」

女母「あなた! 遅かったわね」

女父「また負けた」

女母「負けたって、まさか……」

女父「パチンコだよ!」

女母「そんな! もう賭け事はしないって約束したじゃあありませんか!」

女父「うるさい! 会社の借金を返すには博打しかないんだよ! こうなったら……」


女父「女に稼いでもらう……」


女「!」

女(男くん……私の家庭はこんななの……)

24: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:47:51.13 ID:G0y2+vWJo

男の家・自室

ピリリリリリリ
男「はい、もしもし」

男父「おう! 男か! 久しぶりだなあ、元気してたか?」

男「いいや」

男父「……母さんとは……どうだ? 仲良くやってるか?」

男「……っ」

男父「どうした、男?」

25: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:49:36.80 ID:G0y2+vWJo

男「……ああ、仲良くやってるよ。だから父さんは……心配すんな。今は別の奥さんと子供がいるんだろ?」

男父「おお! そうか! それは良かった。そうなんだよ、実はもうあんまり男に連絡できないんだ。すまん」

男「わかってるよ。じゃあ」

男父「ま、お前ももう一人前の男だ。大人の世界では……ドロドロとした……
   そのぉ、まぁ、そういうのがあるんだ。わかってくれ」

男「ああ、じゃあ」プツッ ツーツーツーツー

男(大人の世界……ねぇ……)


男「くだらねぇ」

男「あれ? 熱っぽい……?」ポー

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/10(日) 00:53:32.31 ID:G0y2+vWJo

女の家・自室

女「ストリップショー?」

女父「そう。歌って踊りながら服を脱げばいいだけだ。簡単だろう?
    それにお金を払ってくれるオトコの人たちがいるんだ。うちの生活も少しは楽になるぞ、
    お前が頑張ってくれれば、な」

女「ふざけないで! 私が、汚いカネなんかで動くような安っぽい女に見える!? 
  そんなのするくらいなら、死んだほうがまだましよ!」

女父「お前に決定権はない。全て俺が決める、俺のために」スクッ スタタ

女「……っ」

女父「あ」ピタッ

女父「一つ言っといてやろう」クルッ

女父「お前、安っぽい女だぞ?」

女「い、」

女「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

27: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:55:37.47 ID:G0y2+vWJo

翌日 男の家・自室


男(38.0℃)

男(高熱だ)

男(普通なら学校を休む)

男(だが)

男(俺は今日、女の家に寄せ書きを届けなくちゃいけない)

男(それに)

男(俺は大事なメッセージを書いてない!)


前の投下、トリップ忘れてました

28: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 00:58:08.11 ID:G0y2+vWJo

同日 放課後 学校

委員長「もうこの寄せ書きにメッセージを書く人はいませんね? 持っていくよ」

友「くそ、なんで来ねえんだよ、男……」

委員長「さて、全員書いたかなっと……んなわけないよね、半分は真っ白だ!」

友「ぐっ……」

委員長「僕も含め、ほとんどの人が『学校に来てください』などの月並みなメッセージ」

委員長「友だけが少し違うメッセージを書いているが、所詮みんなと同じメッセージ
     になるのを計算して避けたに過ぎない」

友「……」

委員長「おや? 何か言いたげですね、友」

友「……ちげーよ」

29: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:00:37.80 ID:G0y2+vWJo

友「俺は計算とかじゃなくて、書きたいことを書いただけだ!」

委員長「どうだか……」

友「お前は、この寄せ書きを、その程度にしか考えてなかったのか?」

委員長「ハッ!『その程度』だって? こんな紙一枚に、『どの程度』の力があると言うんですかぁ?」

委員長「まさか君は、こんなもので本当に彼女が学校に来ると思っているのかね?」

友「来る!(男が書けば、だが……)」

委員長「まぁ~ったく、そんなにお友達ごっこが楽しいですか? 彼女が来たところで、

     なんになるというんです? 我々も、彼女も、お互いに関係を持とうとはしない。

     全く、面倒なもんですよ。こんな無意味なものを、届けなくてはならないとはね」

30: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:03:24.90 ID:G0y2+vWJo

友「無意味なんかじゃない……」

委員長「え?」

友「俺たちの、女に来てほしいっていう想いは、無意味なんかじゃないっ」

委員長「……」

友「それを届けるのはお前じゃないし、そんな資格もない」

委員長「……」

友「おまえがとどけねえんなら、俺がもらっていく」パシッ

委員長「……お好きになさい……」

31: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:04:50.76 ID:G0y2+vWJo

校門前

友「男が来ない……まさか本当に殺されたのか!? だとしたら……警察、いや、まずは学校の先生に……」

友「……男に、電話しよう」
プルルルル

友(病欠なら、あいつの口から女の家の場所を聞いて届けることができる……)プルルルル

友(寝てるなら、たたき起こせばいい。あいつにメッセージを書かせることも、届けさせることもできる)
プルルルル

友(でも、もしもうあいつがこの世にいなかったら……俺はあいつの声を聞くことも――)

32: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:06:45.87 ID:G0y2+vWJo

『おかけになった電話番号は、現在、電源が入っていないか、電波の届かない所に――』



友「ま、まさか……そ、そんな……」ガクッ















男「よ、よう、友……」ゼエゼエ

33: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:08:11.62 ID:G0y2+vWJo

友「お、男! 良かった! 生きてた!」

男「ごめん、風邪ひいた」ズピー

友「そんな体で大丈夫なのか?」

男「大丈夫だ、いける、届ける」

友「……女が、この寄せ書きを待ってる」

男「友、ペン貸して」

友「なんて書くんだ?」

男「だいぶ余ってんな」

友「その分、お前がたっぶり書ける」

男「たっぷり書かない」

友「え?」

男「俺が書きたいのは、簡単なことだ」

34: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:09:50.41 ID:G0y2+vWJo

女の家

男「……」ピンポーン

女母「もう少し! もう少しだけ待ってください!」

男「?」

女母「お金のあてができました! もう少し……もう少しだけ待ってください!」

男「……なんのことですか?」

女母「え?」

男「私は、女さんと同じクラスの男です。女さんに会いたくて来ました」

女母「もしかして……女ちゃんのお友達……?」

男「ええ。まあ」

女母「ごめんなさい、今おうちにあげられないの。女を呼んでくるから、そこで待っててもらえる?」

男「はい、わかりました」

女母(ふん、無駄よ。外に出ないわ、あの子は)

35: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:11:33.91 ID:G0y2+vWJo

女母「女ちゃん、男って子が会いたいって」

女「男くんが?」

女母「入ってもいい?」

女「いいよ」

女母「!……おじゃまします」ガチャ

女「顔をちゃんと見るのは、久しぶり」

女母「……何してたの?」

女「勉強。数学の」

女母「まあ! 女ちゃん……」

女「お母さん、私男くんに会ってくる」

女母「行ってらっしゃい」

女「……ありがとう」

36: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:12:49.69 ID:G0y2+vWJo

ガチャ
女「……」

男「お、女!」アセアセ

女「何の用?」

男「あ、あの……渡したいものがあって……」



友「……」ガサッ

37: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:13:57.24 ID:G0y2+vWJo

男「これ……」スッ

女「なに、これ……」

男「クラスのみんなが、女へ書いたんだ」

女(と、言っても数人……やっぱりね、こんなものよ)

委員長『学校に来てください、みんな待っています』

ヲタ『学校に来るでござるwwww』

モブ『学校来いよ!』

モブ2『元気出せよ!』

女子『学校おいでよ、楽しいよ!』

女(メッセージも、月並みなものばっか)

ビッチ『学校来ないでなにやってんの? ひきこもりって楽しい?wwww』

女「……っ」

38: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:16:53.99 ID:G0y2+vWJo

女「私の父はさ」

男「うん?」

女「ABCコーポレーションの社長なの」

男「ええっ、ABCコーポレーションってあの!? 大ヒット商品を数々生み出したっていう……
  
  でも最近、名前聞かないな」

女「事業に失敗して、倒産したの」

男「えっ」

女「それから毎日、借金取りに追われる日々」

男「女母さんが言ってたのは、そういう……でも、あてが出来たって」

女「私が体を売るの」

男「体を売るって……まさか」

女「ストリップショーだって。おさわり禁止らしいけど、なんせ非合法のとこだからね、
  どうなるかはわからない」

男「そ、そんな……」

女「襲われるかもね」ハハッ

男「そんなこと……させない」

女「ねえ、もう少し聞いてもらっていい?」

39: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:19:28.26 ID:G0y2+vWJo

女「私の持ち物は、当時まだ『お嬢様時代』のものだった」

 「カバン、筆箱、身につけるもの……とっくに私は『お嬢様』なんかじゃなかったのに」

 「ビッチたちはそれを欲しがった」

 「私の持ち物は全て、ビッチたちに取られた」

 「それだけじゃない」

 「暴言と暴力を浴びせてくるようになった」

 「私はすぐに不登校になった」

 「……私って安っぽい女」

 「そして、この寄せ書きも」



 「私、こんなんじゃ学校に行かないよ?」

40: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:20:43.17 ID:G0y2+vWJo

男「最後まで読んでよ」

女「……」

友『焦らなくていい。学校来れるようになるまで俺たちは待ってる。
  学校来たら男と俺と三人で飯でも食おうぜ!』

女「友くん……」

友「……」グッ

41: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:22:19.04 ID:G0y2+vWJo

男「最後は俺のメッセージ」

男『好きだ』

女「へっ!?」

男「女……俺、お前のことが好きだ」

女「え? ほ、ホントに……?」

男「本気だ。付き合ってくれ」

女「こんな、安っぽい女でいいの?」

男「女は、安っぽくなんかない」

女「……」ウルッ

42: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:23:29.81 ID:G0y2+vWJo

男「これあげる」

女「なに、これ?」

男「クマのぬいぐるみ」

女「いいの?」

男「うん」

女「ありがとう……ホントにありがとう……」ポロポロ

43: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:24:40.78 ID:G0y2+vWJo

男「なあ、女」

女「なに?」

男「マイナスとマイナスをかけたらプラスになるんだよ」

女「うん」

男「それって俺たちも一緒じゃないか?」

44: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:25:57.29 ID:G0y2+vWJo

男「虐待」

女「不登校」

男「家庭崩壊」

女「いじめ」

男「殺されるかもしれない」

女「身体を、傷つけられるかもしれない」

男「もし、幸せを数値で計れるなら」

女「私たちは、間違いなくマイナス」

男「でも、マイナスどうしをかければ」

女「プラスになる」

男「俺たちの未来も」

女「きっと、輝く――」

男「そんな夢を見ても、いいじゃないか」

45: ◆J9zKsVx1xs 2013/03/10(日) 01:27:13.37 ID:G0y2+vWJo

女「手、つなごう」

男「ん」ギュ

女「……大好き」


                  完

引用元: 男「マイナスとマイナスをかけたらプラスになるんだよ」