リン「そ、それは……あれよあれ！！」

ヘクトル「『あれ』？ なんだよ『あれ』って」

リン「……ほら！！ オスティアの人で行ってないのあんただけじゃない！！ だから私が連れてってあげるって言ってんのよ！！」

ヘクトル「別に初詣なんて行かなくてもいいだろ、めんどくせえ」

リン「そんなこと言ってたらバチが当たるわよ！！」

オズイン「そうですよヘクトル様」

マシュー「若様、俺も面倒くさかったですけどなんとか行ったんですから」

ヘクトル「お前らまで言うのかよ……」

リン「ほら、行きましょう」

ヘクトル「……ったく、しょうがねえな。 さっさと行って終わらそうぜ」

リン「……」グッ！

ヘクトル「おい、何ガッツポーズしてんだよ」

リン「な、なんでもないわよ！！」

リン「……あっ！！」

ヘクトル「なんだよ」

リン「まだ着物着てなかったわ！！」

ヘクトル「着物ぉ？ そんな物着る必要あんのかよ」

リン「あるわよ、女の子なら必需品よ」

ヘクトル「へえ……じゃあさっさと着てくれよ、早く終わらせたいからよ」

リン「更衣室借りていいかしら？」

ヘクトル「おう」










リン「着替えたわよ」

ヘクトル「……うおっ！？ お、お前……すげえな……」

リン「な、なに……？」

ヘクトル「全然似合わねえな、違和感がすげーぜ」

リン「……」

ヘクトル「……ん？ なんだよ？」

リン「……なんでもないわよ」

ヘクトル「……？ お前、たまに俺と話してると不機嫌になるよな」

リン「……誰かさんの所為でね」

ヘクトル「？？？」

リン「ていうか……ヘクトルは着替えないの？」

ヘクトル「俺か？ 別に着替えねえよ。 この鎧で十分だ」

リン「初詣に鎧って……」

ヘクトル「それでどこの神社に行くんだよ？」

リン「エリウッドの城よ」

ヘクトル「は！？ 城！？ 神社じゃねえじゃねえか！！」

リン「エリウッドが正月限定で城を神社にアレンジしたのよ」

ヘクトル「へぇ……すげえなあいつ」

リン「さっさと行きましょう」

ヘクトル「おう」

エリウッド「見ろニニアン！！ 人がいっぱい来てるぞ！！」

ニニアン「そうですね……エリウッド様」

エリウッド「これだけ人が来てくれると神社に改装した甲斐があったな」

ニニアン「はい……行列を見てるとなんだか私も嬉しくなってきました」

エリウッド「ん……？」

ニニアン「エリウッド様……？」

エリウッド「あそこにいるのはもしや……」

ヘクトル「……おい、この列並ばねえといけねーのか？」

リン「勿論よ」

ヘクトル「めんどくせえな……斧で一気になぎはらいてえ」

リン「ちょっと！ 候弟が言っていい台詞じゃないわよ！」

ヘクトル「あー……悪かった……ちょっと言い過ぎたかもな」

リン「だいたいヘクトルはいっつも何も考えないで失言ばっかり……」ガミガミ

ヘクトル（うるせえ……）

リン「ヘクトル……罰よ」

ヘクトル「は？ 罰？」

リン「……私と手を繋ぎなさい」

ヘクトル「……ん？ 手を繋ぐことのどこが罰ゲームなんだよ？」

リン「そ、それは……つまり手を繋ぐってことは逃げられないってことよ！！///」

ヘクトル「あー……なるほどな」

ヘクトル（これ以上抵抗したら何が起こるか分かんねえからな……）

ヘクトル「分かった……ほらよ」

ガシッ

リン「！！！」

リン（な、何この手……凄いあったかい）

リン（手を繋いでるだけなのに……体ごと包まれてる感覚……）

リン（……）

リン（ずっとこうしていたい……///）

ヘクトル「……おい、何ボーッとしてんだよ？」

リン「！！ い、今私ボーッとしてた！？」

ヘクトル「おう……しっかし中々進まねえな……」

リン（まだ進まない……てことは長い間ヘクトルと手を繋げる！！）

リン（やった！！）

ヘクトル「……」

ヘクトル（なんでこいつニヤニヤしてんだ……？）

ヘクトル（……！！ ま、まさか……『ヘクトルが長蛇の列でイライラしている、ザマーみろ』とか思ってんのか！？）

ヘクトル「……」

ヘクトル「……お前本当ドSだな」

リン「！！？」

リン「やっと私達の番ね」

ヘクトル「えーと……あの箱に金いれりゃいいのか？」

リン「ええ」

チャリン！！

リン「……」パンパン

リン（今年こそは……ヘクトルと……ヘ、ヘクトルと……）

リン（……ってなんで私は心の中でも言うのを恥ずかしがってるのよ！？）

ヘクトル「……」パンパン

ヘクトル（全種類の斧コンプリート全種類の斧コンプリート全種類の斧コンプリート全種類の斧コンプリート）

エリウッド「やっぱり君達だったか」

リン「エリウッド……それにニニアンも」

ニニアン「リン様……着物姿、とても似合ってます」

リン「ほ、本当！？ ありがとう！！ そういうニニアンとエリウッドも似合ってるわ！！」

エリウッド「ありがとうリンディス……それに比べてヘクトル……君は新年早々戦争でも始める気か？」

ヘクトル「はぁ？ めんどくせえから着替えてねぇだけだよ」

リン「……そういえばヘクトルが鎧以外を着ているところを見たことがないわ」

エリウッド「なにせヘクトルは私服を持ってないからね」

ヘクトル「そんなもん着たら防御力減るじゃねえか」

エリウッド「……本当に戦闘馬鹿なんだな、君は」

リン「……」

リン（そういう所が好きなんだけどね）

エリウッド「そういえばヘクトルは何をお願いしたんだ？」

ヘクトル「決まってんだろ、全種類の斧が集まるように願ったんだよ」

エリウッド「はは……ヘクトルらしいな」

ヘクトル「そういうお前らは何願ったんだよ？」

エリウッド「僕かい？ そりゃ勿論ニニアンと幸せな一年になれますよう願ったさ」

ニニアン「わ、私も……エリウッド様と共に無病息災を……」

リン「相変わらずラブラブね……」

リン（……羨ましいわ）

エリウッド「リンディスは？」

リン「わ、私！？ 私は……その……」

ニニアン「……リン様？」

リン「リ、リメイク！！ 烈火の剣のリメイクを願ったのよ！！ 封印の剣とセットで！！」

エリウッド（この慌てぶりはヘクトルのことだな……）

エリウッド（……そうだ！！）

エリウッド「ヘクトル……斧が欲しいかい？」

ヘクトル「ん？ なんだよ急に」

エリウッド「実はね……知り合いから新種の斧を一つもらったんだよ」

ヘクトル「！！？ マジか！？ くれ！！」

エリウッド「ただし、あげるには条件がある」

ヘクトル「条件！？ なんだよ、斧のためだったらなんでもするぜ！！」

エリウッド「……リンディスとキスをしろ」

ヘクトル・リン「！！！？」

ニニアン「エ、エリウッド様……？」

リン「ちょっとエリウッド！！ 何よその条件！！」

ヘクトル「なんで俺がリンとキスしなきゃいけねーんだよ！！ 俺はごめんだぜ！！」

リン「わ、私もよ！///」

エリウッド「ヘクトル、斧のためだったらなんでもするんだろ？」

ヘクトル「いや、そうは言ったけどよぉ……」

エリウッド「なんだ、君の野望はそれだけで諦める程度のものだったのか」

ヘクトル「なっ……！！」

エリウッド「それじゃあ斧が集まらなくて当たり前だなぁ〜」

ヘクトル「言ってくれるじゃねえか……いいぜ！！ キスしてやるよ！！」

リン「嘘！！？」

エリウッド（流石単細胞、操りやすい）

ニニアン「エリウッド様……一体何が目的なんですか？」

エリウッド「リンディスにちょっとした新年早々のご褒美さ」

ヘクトル「おい、さっさと始めるぞ」

リン「ちょ、ちょちょちょちょっと待って！！ ……エリウッド！！！」

エリウッド「なんだい？」

リン「ほ、本当に……しなきゃいけないの？」

エリウッド「勿論、ヘクトルがキスするって言ってんだから当たり前じゃないか」

リン「そ、そんな……」

エリウッド「君もしたいんだろう？」ボソッ

リン「！！！」

エリウッド「君がなかなかヘクトルに攻めないから僕がこうして助け船を出したんだ」ボソボソ

リン「わ、私のために……？」ボソボソ

エリウッド「ああ」ボソボソ

ヘクトル「何話してんだよ？」

リン「な、なんでもないわ！！」

ヘクトル「ほら、早く顔こっちむけろよ」

リン「！？ ま、待って！！ 心の準備が……」

チュウウ

リン「！！！！///」

エリウッド「大胆だな」

ニニアン「そうですね……」

ヘクトル「ほらよ、終わったぜ。 エリウッド、さっさと斧くれよ」

エリウッド「ま、待て！！ リンディスの様子が……」

ヘクトル「ん？」

リン「……私は……まだ……ミノル……」バタッ

ニニアン「リン様が一瞬で死んでしまいました！！」

ヘクトル「はぁ！？」

エリウッド「……いや、気絶のようだ。 きずぐすりをあげれば回復するだろう」









リン「……っは！！」

エリウッド「目が覚めたかい？」

リン「……！！ ヘ、ヘクトルは！？」

ヘクトル「おう、俺がどうした？」

リン「……馬鹿」

ヘクトル「は？」

リン「いきなりすぎるのよ！！ ちょっとは準備させなさい！！///」

ヘクトル「しょうがねえだろ！！ 斧のためだったんだからよ！！」

リン「そうやってまた斧で言い訳して！！///」

ヘクトル「だーもう！！ うるせえなお前は！！」

リン「それで……か、感想はどうだったのよ？」

ヘクトル「は？」

リン「わ、私とキスして……どう思ったのよ？」

ヘクトル「ああ……なんかすげー柔らかくて気持ちよかったな……つーかお前綺麗な唇してんな」

リン「！！！！」

ヘクトル「俺、キスしたことねーから全然分かんなかったけどよ、女の唇ってそういうもんなのか？」

リン「し、知らないわよ馬鹿！！///」

ヘクトル「はぁ！？」

ニニアン「そういえばエリウッド様……うちに新しい斧なんてあったでしょうか？」

エリウッド「いや、ない」

ニニアン「！！？ で、でもさっきは……」

エリウッド「これを見てくれニニアン」

ニニアン「それは……3DS？」

エリウッド「ああ、『本当はチャージアックスのことでしたー』っていうオチだったんだけどこのままじゃ殺されそうだね……」

エリウッド「……マーカス！！ 新種の斧を探してくれ！！」

マーカス「はっ！！」

エリウッド「先のことを考えないで発言するもんじゃないな……」

ニニアン「そうですね……」

ヘクトル「馬鹿しか言えねえのかよ！！」

リン「それ以外も言えるわよ！！」

ニニアン「今年もお二人はあんな感じになるんでしょうか……」

エリウッド「そうだな……僕の勘では二人が年内に付き合い始める確率は50%かな」

エルバート「因みにエリウッドがニニアンと別れて私とニニアンが結婚する確率は100%だ」

エリウッド「0%です、父上」ザシュ

エルバート「ぐわっ！！」

〜終わり〜