1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 19:53:18.83 ID:h2QH8LMp0
P「弱小もいいところだぞ」

千夏「そうね、杏ちゃんが少し売れてきたくらいかしら」

千秋「変な話ね」

杏「杏の負担が減るならなんでもしてくれー」

P「じゃあ疲れないように体力強化増やすな」

杏「最低」

美由紀「あはは……その人はいつ来るの?」

P「もう少ししたら杏に参加依頼が来てるイベントあるから、そこで顔合わせだ」

杏「やだ、働きたくない」

P「そんな事言うのか……へー?」

杏「ぐ……」

千秋「仕事があるだけマシなものよ?」

千夏「私達は雌伏の時ってヤツかしらね、上手く稼いで来なさいな」

杏「飴くれるなら頑張るよ」

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 19:58:04.28 ID:h2QH8LMp0
千秋(……安っ)

P「よし、じゃあ打ち合わせに行くぞ」

杏「動きたくないー」

P「肩車してやろうか?」

杏「本当!? ……じゃなくて、やだ」

P「じゃあ歩け」

杏「仕方ないね、歩くよ」

P「じゃあ出てくる、後は頼む」

千秋「わかったわ」

千夏「行ってらっしゃい」

美由紀「いってらっしゃーい!」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:03:47.08 ID:h2QH8LMp0
打ち合わせ先

P「さて、今回のコンセプトの【だらだら妖精】についてですが……」

「ええ、杏ちゃんにお願いしたいので……合っているとは思いますが」

杏「だらだら?」

P「そうですね、この上なく合っていると思いますよ」

「それともう一方同時企画がありまして、杏ちゃんの事務所の子という形でSプロの子を一人入れたいのです」

P「それでレンタル移籍ですか……解せませんね」

「Sプロというのが最近下降気味でして……閉鎖のウワサもあります」

杏「ふーん? それで杏たちの事務所に入れておいて、閉鎖したらしたでそのまま本移籍ってわけ?」

「よ、要領いいんですね……」

杏「まぁね」

P「Sプロってうちより大手だった気がしたのですが……」

「どこにでも経営難の波という物は押し寄せてきます、Sプロの最近の下降具合は尋常ではありません」

P「アイドルが路頭に迷わない為の保険……ですね」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:08:13.76 ID:h2QH8LMp0
「お二人とも理解が早くて助かります、今回は杏ちゃんと……その子の二人の企画になります」

P「わかりました、その子は今日はこちらには?」

「来ていません……Sプロは社長が変わってからというもの、方針がガラリと変わってしまったようでして」

P「なるほど……杏、質問あるか?」

杏「無いよ」

P「それでは、今日は失礼します。 撮影よろしくお願いしますね」

「はい、お気をつけて」

P「お疲れ様でした」

杏「おつー」

P「こら」

杏「……おつかれさままでした」

8: 社長が変わる→代わる 2013/03/19(火) 20:13:34.22 ID:h2QH8LMp0
P「……どう思う?」

杏「知らないよ、兄貴が決めたことでしょ」

P「そういう意味じゃない」

杏「まあいいじゃん、帰ろうよ」

P「肩車で?」

杏「恥ずかしいからいい」

P「はいはい」

杏「あ、飴買ってよ飴」

P「へー、サルミアッキだってさ」

杏「おいしくないやつじゃん」

P「そうなのか?」

杏「飴は一通り試したからね」

P「流石飴大臣」

杏「へへん」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:18:08.63 ID:h2QH8LMp0
事務所

P「只今戻りました」

杏「もごもごもご」

P「おい、だから二ついっぺんに食うなっつったろ」

杏「もぐぁふぁあいでひょ」

P「……何言ってるかわからん」

美由紀「おかえりー!」

千夏「お帰りなさい」

千秋「お帰りなさい……浮かない顔してるわね」

P「ああ、移籍の話しなんだけどな」

千夏「あら、納得の行かない部分があるのかしら?」

P「そんなところ」

千秋「私達には、話してもらえないのかしら?」

P「茶でも淹れてくる、それから聞いてくれ」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:24:38.53 ID:h2QH8LMp0
―――――

―――



P「……ってことなんだよ」

千秋「……不思議な話ね」

P「だろ? なんでわざわざ杏の企画に合わせてきたのかもわからん」

美由紀「?」

P「美由紀にはまだ難しい話だな、はは」

美由紀「ちょっとわかんない……」

千夏「アナタくらいの年でわかる話じゃないわねこれは」

千秋「それで?」

P「ん?」

千秋「貴方自身はどう思ってるのかしら」

P「……正直、わからん」

千秋「となると私達に出来る事はなさそうね」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:29:09.80 ID:h2QH8LMp0
P「怪しんでても仕方ないしな」

千夏「そうね、入ってくる子にも失礼でしょうし」

美由紀「お話終わったの?」

P「ああ、終わりだ」

美由紀「杏さん寝ちゃったよ?」

杏「ぐーがー」

P「起きろこの馬鹿!」

杏「いだだだだだ、つねることないしょ」

P「飴食ったまま寝たら喉に詰まるだろうが」

千秋「そのまま死んでもいいならそうしてなさい」

杏「死んだら飴食べられないもんね、起きる」

P「お前の世界は飴を中心に回ってるのか?」

杏「そだよ」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:34:25.59 ID:h2QH8LMp0
撮影当日

P「おはようございます」

杏「まーす」

「おはようございます、今日は宜しくお願いしますね」

P「ええ、こちらこそ」

「それでは、合同企画+レンタル移籍になる子を紹介しますね」

P「はい、わかりました」

??「……」

「この子です」

P「宜しくお願いします、移籍先になるSGプロのPです」

??「……宜しくお願いします……」

P「失礼ですが、お名前は?」

「そうでしたね、【だらだら妖精】と合同で【旋律の精霊】という企画を担当します、梅木音葉ちゃんです」

音葉「……はい」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:40:30.23 ID:h2QH8LMp0
P「音葉……さんですか、このちっこいのは【だらだら妖精】を担当する双葉杏です」

杏「あい」

P「……お前な」

杏「双葉杏、飴くれるっていうから企画やるよ」

音葉「……飴……?」

P「ああ、気にしないで下さい」

音葉「あの……」

P「何でしょう?」

音葉「折角事務所にお邪魔になりますので……敬語は止めていただきたいと……」

P「ん、それならいいけど……」

杏「……」

P「何だ?」

17: >>16 こまえけぇこたぁ(ry 2013/03/19(火) 20:46:55.45 ID:h2QH8LMp0
杏「女垂らしだね」

音葉「え……」

P「滅多なこと言うな馬鹿、じゃあ撮影宜しくな」

音葉「はい……それでは楽屋で着替えてきます……」

P「はい」

杏「……」

P「お前と全く逆だな」

杏「何が」

P「全部」

杏「髪の色は似てたよ」

P「大人しくて大人びててスタイルいいじゃん」

杏「……」

P「蹴るな、着替えてこい」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:52:24.43 ID:h2QH8LMp0
杏「兄貴は?」

P「職場ではプロデューサーと呼べっての、俺は先方とスタッフさんに挨拶してるから」

杏「へー、音葉をナンパするんじゃなくて?」

P「随分つっかかってくるな、しないっての」

杏「飴は?」

P「終わったらな」

杏「今くれるんじゃないの? 嘘つき!」

P「誰もいつ飴をやるかなんて言ってないぞ」

杏「」

P「さっさと行かないと運ぶぞ」

杏「この鬼プロデューサーめ!」

P「褒めるなよ、照れる」

杏「……行ってくる」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:58:03.08 ID:h2QH8LMp0
P「お疲れ様」

音葉「ありがとうございました……」

杏「じゃーねー」

P「杏」

杏「……今日はありがとうございました」

「撮影も順調で助かりました、第三者の私が言うのも何ですが……音葉ちゃんを宜しくお願いします」

P「ええ、預かっている身ですからね」

音葉「それでは私はこれで……」

P「ちょっと待った」

音葉「……なんでしょう?」

P「帰る前に事務所寄って行こうか」

音葉「……わかりました……」

杏「プロデューサー、飴飴」

P「はいよ」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:03:27.03 ID:h2QH8LMp0
音葉「……飴、ですか」

P「うん、餌代わり」

杏「うまうま♪」

P「一つ食べる?」

音葉「……いえ……」

P「喉が渇いてるなら舐めた方がいいぞ」

音葉「……そうですか……では……」

杏「~♪」

P「さ、ここが事務所だ」

音葉「……はい……」

P「只今戻りました」

杏「おっすおっすばっちし」

P「お前わざとやってるだろ」

杏「さあね」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:09:44.98 ID:h2QH8LMp0
千秋「お帰りなさい、あら……その子が?」

P「ああ、今日付けでSプロからレンタル移籍した梅木音葉ちゃんだ」

音葉「梅木音葉です……期間は決まってませんが……よろしくおねがいします……」

千夏「相川千夏よ、よろしく」

千秋「黒川千秋」

美由紀「音葉さん! 柳瀬美由紀だよ! よろしくね!」

音葉「皆さん……素敵な旋律を奏でていますね……」

美由紀「……?」

音葉「心地よい……例えるなら……川のせせらぎのよう……」

杏「……兄貴」

P「何だよ」

杏「どうしてクセのある人ばかり集めるの?」

千秋「貴女がそれを言うのかしら」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:16:46.71 ID:h2QH8LMp0
千夏「美由紀より小さいじゃない」

杏「兄貴! みんなが杏をいじめるんだ!」

P「うるさいと仕舞うぞ、あとプロデューサーって呼べっての」

音葉「……お兄さん……?」

P「あー、こいつ従妹なんだ」

千夏「あら、そうだったの?」

千秋「そういえば千夏さんには説明してなかったわ」

P「頼むぞおい」

千秋「悪かったわね」

P「職場ではプロデューサーと呼ばせるように言ってるんだがなあ……」

杏「いいじゃん、兄貴は兄貴だもん」

P「はいはい、そしたら簡単な自己紹介をしてもらうかな」

音葉「……わかりました……」

千夏「はい、コーヒーよ」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:23:02.43 ID:h2QH8LMp0
音葉「……ありがとうございます……梅木音葉といいます」

音葉「Sプロ所属ですが……研修という形でレンタル移籍してこちらでお世話になります……」

音葉「趣味は……ピアノ、森林浴で……出身は……北海道です……」

P「何ぃ!?」

音葉「……あの……?」

杏「あーあ……」

千夏「またなのね」

千秋「また……北海道なのね」

音葉「……皆さんは……」

美由紀「みーんな北海道なんだよ!」

音葉「これも一種の……運命かもしれませんね……」

千夏「運命ね……素敵じゃない」

千秋「偶然じゃないのかしら」

千夏「運命なんて偶然と似たようなものよ」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:28:24.82 ID:h2QH8LMp0
音葉「……運命……いえ……奇跡でしょうか……」

P「ま、まあなんにせよ宜しく」

音葉「……はい……」

ぴりりりり

音葉「電話が……失礼します……」

P「あ、うん」

ばたん

美由紀「音葉さん、背が高いね!」

千秋「そうね、スタイルもいいみたいだし……誰かさんとは正反対ね」

杏「……うっさい、もう兄貴に言われた」

千夏「なんだ、もう言われてたの」

P「言いたくもなるだろ」

杏「ふん……」

美由紀「仲良くなれるかなぁ」

千夏「大丈夫よ、きっと」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:33:27.16 ID:h2QH8LMp0
レッスン中

杏「ドレミレドー」

美由紀「みふぁそふぁみー」

音葉「……美由紀ちゃん……」

美由紀「なーに?」

音葉「半音ずれてるから……もう少し高く……」

美由紀「はーい!」

千秋「……」

杏「……ふーん」

千秋「……絶対音感かしら」

音葉「もう一度……やってみましょう……」

美由紀「みふぁそふぁみー」

音葉「ふふ……可愛らしい……旋律……」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:38:20.51 ID:h2QH8LMp0
千秋「~~~~♪」

音葉「あの……」

千秋「間違っていたかしら」

音葉「……いえ……音が……とがりすぎです……」

千秋「尖りすぎ?」

音葉「……上手く説明できませんが……音に力を入れすぎです……旋律が台無しになってしまいます……」

千秋「貴方になにが……!」

千夏「ムキにならないの」

千秋「音に力を入れすぎ……ね」

音葉「……ごめんなさい……出すぎた真似を……」

千夏「いいのよ、アナタには後で少し聞きたい事があるわ」

杏「杏も一つあるかな」

音葉「……では……休憩の時に……お話します……」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:44:33.68 ID:h2QH8LMp0
休憩

美由紀「はい、音葉さん!」

音葉「……ありがとう……」

千夏「早速で悪いけど……アナタ、絶対音感なのかしら」

杏「それだけじゃ説明つかないんだよね、音が尖るとか」

千秋「個人の歌い方の範疇を逸脱してたから、注意されたのかしら」

音葉「……共感覚、というものを知っていますか……?」

杏「共感覚? 五感が他と連動するっていうやつ?」

音葉「……はい……」

千秋「共感覚持ちってわけなのね……」

音葉「……私の場合は……聴覚と視覚が連動して……音の流れを見ることができます……」

千夏「千秋の時はどうして注意を?」

音葉「……必要以上に力を入れすぎて……旋律を壊してしまっていました……それでは台無しです……」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:53:08.02 ID:h2QH8LMp0
千秋「……そう」

音葉「……ごめんなさい……」

千秋「いえ、謝ることでもないのだけど……それにしても、会った事無いかしら」

音葉「……いえ……多分……」

千秋「苗字梅木だったわね……梅木……梅木……」

千夏「ああなったら解決するまで長いから放っておきましょう」

音葉「……はい……」

杏「でも、共感覚だけじゃないよね」

音葉「……杏ちゃん……?」

杏「絶対音感、持ってる」

音葉「……うん……持ってるよ……」

美由紀「絶対音感ってなに?」

千夏「音階を必ず当てられるってことよ、例えば鍵盤でドを引いたらドと答えられるの」

美由紀「すごーい!」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 21:59:24.42 ID:h2QH8LMp0
音葉「両親がクラシック奏者なので……」

千秋「クラシック……梅木……わかったわ!」

杏「千秋うっさーい」

千秋「パーティー会場で演奏していた夫婦が梅木だったわ、その娘かしら?」

音葉「多分……ですが……」

千夏「意外な繋がりってあるものね」

千秋「本当ね」

音葉「……やはり、運命……でしょう……」

杏「運命に従ってだらけようよ」

千秋「だめよ」

杏「引っ張るなー!」

美由紀「後半がんばろー!」

音葉「……やはり……運命……」

千夏「……?」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:07:23.40 ID:h2QH8LMp0
しばらくして

P「大きい仕事だ」

杏「えー」

P「やる気ねーなおい」

杏「だって千秋やちなっちゃんやみゆきちだって仕事最近増えてきたじゃん、私は休むよ」

P「残念、お前メイン」

杏「断る!」

P「それでな、もう二人出せるんだが……音葉、やってみるか?」

音葉「……私ですか……?」

P「ああ、バックアップばかりだったからな、もう出てもいいだろう」

音葉「……それでは……お願いします……」

P「よし、じゃああと一人は……美由紀!」

美由紀「わーい! 頑張るよ!」

P「いい子だ」

美由紀「えへへー」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:12:58.58 ID:h2QH8LMp0
杏「……飴くれたらやる」

P「やるも何もないけどな」

杏「兄貴はどうして杏を甘やかしてくれないんだろうね」

千秋「どうして私に聞くのよ……」

杏「甘やかせー!」

P「なんだ一緒に風呂にでも入ればいいか?」

杏「それでもいいよ」

P「良い訳あるかアホ」

杏「やっぱ冷たい」

千夏「自分のせいじゃないかしら」

P「3社合同で9人、大仕事になりそうだが……S社からもアイドル出るんだよな」

音葉「……え……?」

P「ま、いいか……頼んだぞ3人共」

音葉「……はい……」

杏「……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:22:02.82 ID:h2QH8LMp0
P宅

P「んー……」

杏「何してんの?」

P「いやな、最近どうも仕事の量が増えないんだ」

杏「休めるからいいじゃん」

P「何言ってるんだ……不自然なんだよ」

杏「不自然?」

P「ああ、S社が持ち直してきたのはいいとして……S社との共同企画が異常に増えてる」

杏「S社って、音葉のいるところだよね?」

P「一応今はこっちだけどな」

杏「ふーん?」

P「まさか……な」

杏「……まさかね」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:27:03.24 ID:h2QH8LMp0
ハロウィンパーティー後

P「3人共お疲れ」

杏「吊るされてるだけだったから楽だけどね」

美由紀「くまさんとがおー!ってしてきたよ!」

音葉「……Pさん……」

P「どした?」

音葉「……私……上手く馴染めてたでしょうか……」

P「大丈夫だよ」

音葉「……それなら……良いです……」

ぴりりりりり

P「ちょっと済まんな……はい……はい……え……」

杏「……様子が変だね」

美由紀「びっくりしてるね、どうしたのかな」

P「……はぁ……」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:33:51.07 ID:h2QH8LMp0
美由紀「プロデューサーさん、どうしたの?」

P「S社からだよ」

杏「……で?」

P「音葉、移籍今日までだってさ」

音葉「……そうですか……」

美由紀「音葉さん、S社に帰っちゃうの?」

P「ああ、そういうことだ」

杏「ふーん」

P「帰りに何か食べて帰るか、送別会代わりだ」

美由紀「千夏さんと千秋さんは?」

P「帰ったら深夜になるからな、こっちで食べていかないといけないし……明日報告するよ」

美由紀「そっかぁ……寂しいね」

P「そうだな、でもこれも運命だ」

音葉「……そう……ですね……」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:40:58.99 ID:h2QH8LMp0
次の日

千秋「……そう……」

千夏「急な話ね」

P「ああ、残念だけどな」

美由紀「音葉さんいないの寂しいよ……」

千夏「期限が切れてしまったのなら仕方ないわね」

千秋「送別会でもしてあげられたら良かったのだけど……」

P「ま、同じアイドルだしその内仕事で会うと思うぞ」

千秋「連絡先を交換しておいて良かったわ」

杏「いつの間にそんな社交的にいたたたたた」

千秋「余計なことを言うのはこの口かしら……?」

美由紀「もー、何してるの!」

P「……」

千夏「……すこし、心配ね」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:45:55.69 ID:h2QH8LMp0
―――――

―――



P「今日も疲れたな」

杏「本当だよ、早く寝たい」

美由紀「お風呂入らないとだめだよ?」

杏「お風呂くらい入らなくても……入る、入るから」

美由紀「あれ? ドアの前に誰かいるよ?」

P「本当だな……音葉じゃないか」

音葉「……こんばんは……」

杏「……どうして、ここにいるの?」

音葉「……お話があります……千秋さんたちも呼んでいただけますか?」

P「わかった、入ってくれ」

美由紀「千秋さんにお電話するね!」

P「頼んだ」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 22:51:17.50 ID:h2QH8LMp0
千秋「……」

千夏「……」

杏「……」

美由紀「……?」

P「……話してくれ」

音葉「……はい……先ず謝らせてください……ごめんなさい……」

千秋「ちょっと、急にそんなこと言われても……」

千夏「話が見えてこないわ」

音葉「……私は……S社からのスパイです……」

P「……」

杏「……やっぱり」

美由紀「すぱい?」

P「敵の情報を探る、エージェントみたいなものだよ」

美由紀「ふーん……?」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:03:35.42 ID:h2QH8LMp0
音葉「……S社は社長が代わってから……全てが代わりました……」

音葉「……現状売れている一部のアイドルのみを露出させ……私のような売れていない組を他のプロダクションに……」

音葉「……そしてPCから情報を抜き出し、持って来させようとしてたのです……」

P「それでスケジュールが把握されて、一緒の企画に売り込むわけか」

音葉「はい……レンタル移籍させていると伝えれば……仲の良い企業ということになりますから……」

千秋「貴女のほかにも、スパイはいたというの?」

音葉「S社以下の規模のプロダクションには……殆ど……ですね……」

千夏「S社も思い切ったことをしたものね」

音葉「……はい……それで……私はSGプロに来ました……」

音葉「……期限までデータを集め……最終的にはS社のアイドルと復帰する……といわれてました……」

音葉「ですが……私は……PC内部のデータだけは持っていけませんでした……」

美由紀「迷惑がかかるから?」

音葉「……杏ちゃんのせい……いえ、おかげです……」

杏「……」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:10:59.39 ID:h2QH8LMp0
P「杏が何かしたのか」

杏「シャットダウンした後のPCを12時間以内に起動した場合、杏しかわからないパスコードを入力させるようにしただけだよ」

千夏「……気付いてた?」

杏「兄貴が家出ぼやいてたからね」

音葉「……杏ちゃんが帰り際にPCを触っていたので……もしかしたらと……」

P「で、謝る為にここに来たのか?」

音葉「いえ、それだけではありません……」

千秋「スパイした上にまだ何かあるっていうの?」

音葉「……内部データを盗み出せなかったので……SGプロに被害は出ていません……」

音葉「……データを盗まれたプロダクションは……いづれ吸収合併されることになると思います……」

P「汚い真似を……」

音葉「……そしてスパイに使ったアイドルは……用済みに……」

千夏「クビ、かしら」

美由紀「音葉さん、クビに……?」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:18:06.35 ID:h2QH8LMp0
音葉「はい……所詮使い捨ての売れないアイドル……替えはいくらでも利くのでしょう……」

音葉「事務所も寮も追い出されたので……帰ろうと思います……」

千秋「北海道に、かしら」

音葉「……それが許されるのなら……ですが……」

P「その判断は自分でだな」

音葉「……皆さんにはお詫びと、S社に対しての警告をしておきたかったので……せめてもの恩返しです……」

千夏「……ここでの日々は楽しかったかしら?」

音葉「……素晴らしい日々でした……とても、楽しかったです……」

P「そう思ってくれてよかったよ」

音葉「……はい……それでは……また会うことがあれば……」

美由紀「音葉さん……」

音葉「……さようなら……」



杏「ふざけないで」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:23:44.18 ID:h2QH8LMp0
音葉「……杏ちゃん……?」

杏「何? スパイ活動して吸収合併までさせようとしてたのに、謝ってそれで終わり?」

音葉「……」

杏「クビになった? そんなこと言ってしれっとアイドル活動してるんじゃないの?」

杏「信用しろっていうんだ? 信用できないよね」

音葉「……言われても……仕方ありません」

杏「反省すれば終わりなんだ、そんなことないよね」

千秋「ちょっと、一体何を」

杏「兄貴、音葉を返らせちゃだめだよ」

P「……! そうだな、帰らせるわけにはいかなくなった」

音葉「……そんな……」

杏「S社と連絡取らないように、監視役もいるね」

P「監視役か……一人暮らしの人のほうがいいよな?」

千秋「二人とも何を言ってるの?」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:29:43.45 ID:h2QH8LMp0
杏「そうだね、千秋なんてどう?」

P「そうだな、千秋の家に住まわせるか」

千秋「何で私が……!」

杏「でも千秋一人じゃ心配だよね」

P「千夏、一人暮らしじゃないと嫌か?」

千夏「……いえ、別に同居でも平気よ」

P「よし、千秋のマンションは広いからな」

千秋「え、え?」

杏「音葉にはちなっちゃんと千秋の監視がつくから」

音葉「……はい……」

P「日中何をしてるかわかんなくなるのも嫌だな」

杏「そうだね、いっそアイドルに復帰してもらう?」

P「それがいいな、監視しやすいようにユニット組むか」

美由紀「ユニット? わーい!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:35:05.15 ID:h2QH8LMp0
P「この秘密を知ってるのはここにいる5人だからな」

千夏「皆偶然にも北海道出身よね」

千秋「そういうこと……この5人でユニットを組むのかしら?」

P「ああ、丁度いいだろ? なあ音葉」

音葉「……はい……はい……!」

P「あーあ、泣くなっての」

音葉「……ありがとう……ございます……!」

P「音葉の資料は残ったままだから、特に審査もいらんしな」

杏「そだね、もう寝ようよ」

P「よし解散! 音葉の荷物は随時千秋の家に送るようにしておけよ」

音葉「わかり……ました……」

美由紀「音葉さん、これからも一緒に頑張ろうね!」

音葉「……うん……!」

美由紀「えへへー」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:40:29.02 ID:h2QH8LMp0
P「今日から千秋の家に泊まるんだぞ」

音葉「……わかりました……」

千夏「お邪魔しました、今日は私も千秋の家に泊まるわ」

千秋「本当に3人で住むのかしら……」

杏「マジだよ」

P「マジだ」

千夏「ええ、当然よね」

千秋「全く……Pさんの頼みなら断れないわね」

P「助かる」

杏「したっけ、また明日ね」

音葉「杏ちゃん」

杏「なに」

音葉「……ありがとう……」

杏「杏はなにもしてないよ」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:45:36.68 ID:h2QH8LMp0
P「さ、帰った帰った」

千秋「ご飯を買って帰らないと足りないわ」

音葉「……不器用なので……料理は出来ません……」

千夏「仕方ないわね、お惣菜にしましょう」

美由紀「おやすみー!」

ばたん

P「……いつから気付いてた」

杏「最初からだよ、疑ってただけだけどね」

P「そうか」

杏「うん」

美由紀「杏さーん! お風呂入ろうよー」

杏「はいはい」

P「……不器用なのは誰なんだろうな、なあ……杏」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:50:29.97 ID:h2QH8LMp0
音葉「……お邪魔します……」

千秋「布団足りるかしら……千夏さんは悪いけどソファでお願い」

千夏「ええ、一晩くらいなら平気よ」

千秋「荷物置いたらご飯にしましょう、おなか空いちゃったわ」

千夏「そうね」

かしゅっ

千秋「ちょっと、お酒飲むの?」

千夏「ええ、大人だもの」

千秋「私はあまり……」

千夏「……音葉」

音葉「……はい」

千夏「皆許してるわよ」

音葉「……はい……」

千秋「少しだけ飲もうかしら、貴女は?」

音葉「未成年です……」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 23:56:58.92 ID:h2QH8LMp0
千夏「そうだったわね」

千秋「年下に思えないのはなぜかしら……」

千夏「子供っぽいから仕方ないわね」

千秋「誰がですって?」

千夏「さあ、誰がでしょうね」

音葉「ふふ……」

千夏「あら、やっと笑ったわね」

千秋「さ、乾杯でもしましょうか」

音葉「……音頭は……私が……」

千夏「じゃあお願い」

音葉「……私の……いえ……私達の……新たな出発に……」

「「「……乾杯!」」」


おわり

引用元: モバP「こんな事務所にレンタル移籍?」