5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 01:56:58.20 ID:JawB+Swh0
「あんたは何やってんのよ!」

(――――――違う)

「わかってないわね!」

(―――――――――こんなのじゃない)

「だいたいそんなだからあんたは―――」

(―――あたしは―――――こんなことを―――――――――)



「この、バカキョン!」



(――――――――――違う!!!)

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 01:58:42.41 ID:JawB+Swh0
~放課後、SOS団部室~



キョン「…あいつは、休みだそうだぞ」

古泉「ええ、こちらでも把握しています」

キョン「…そうか」

   「それでも部室には集まってるあたり、もう習性ってやつだな」

古泉「…こちらでは…体調不良が原因と伺いましたが」

キョン「毎度のことながら情報が早いな。どっから仕入れて…んのかは聞きたくもないな。
    担任の言うことじゃそういうことらしい。本当かどうかは定かじゃないがな」

みくる「涼宮さん…大丈夫でしょうか…」

キョン「なに、アイツのことですから。すぐに出てきてまた騒ぎ始めますよ」

古泉「だと、良いのですが…」

長門「…いつも通りなら」

キョン「そうだなぁ…」

   「…いつも通りなら…な」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:00:52.47 ID:JawB+Swh0
キョン「俺が…悪かったのかね?」

みくる「…」

長門「…」

古泉「…」

  「…僕の口からは、何とも…申し上げづらいところです。申し訳ありませんが」

キョン「いや…意図するところはわかったからいい。立場もあるんだろ」

古泉「お察しいただけたら、こちらも幸いです」

キョン「俺の状態も察して欲しいところなんだが…まぁ仕方ないんだろうけど」

古泉「…ご迷惑をおかけします」

キョン「お前が謝ることでもねえよ。関係者ではあってもお前はハルヒの代理人じゃねえだろ」

古泉「…」



キョン「はぁ…」

   「やれやれ、どうしたもんかね」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:04:59.87 ID:JawB+Swh0
~前日放課後、SOS団部室~

ガチャ

キョン「う~っす、遅れてすまんな…」

ハルヒ「おっっっっっっっっそいわよキョン!あんたは何やってんのよ!」

キョン「だからすまんって…岡部の呼び出しだよ、呼ばれてたのはお前も見てたろうが。
    もとは小さな用事だったんだが、成績やらなんやらのことで長くなってな…」

ハルヒ「そんなどうでもいいような話のために遅れたの?
    あんたは岡部の小言とSOS団のどっちが大事なのよ!?」

キョン「俺だってあんなもんいつまでも聞きたかなかったよ…
    でもな、担任に呼ばれて行ってるんだ、途中でほっぽり出してくるわけにもいかんだろ?」

ハルヒ「わかってないわね!そうやって無駄に過ごした時間は戻らないのよ!
    団活にあてるべき時間をつまんない小言に割いても、取り戻すことはできないの!」

キョン「ヘーへー…」

   (せっかくテストも終わったってのに、こっちはこっちで小言か…)

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:11:21.15 ID:JawB+Swh0
キョン「しかし、やってるのはお茶飲んで将棋やらオセロやらやってるだけだぞ。
    それで取り戻すのなんのったってなぁ…」

ハルヒ「…そんなことだからあんたは万年ヒラ団員その一なのよ!
    団として時間を過ごすことの意義をわかってないわ!」

キョン(俺を平団員に決定してんのはお前だろハルヒよ…)

   (にしても、今日はいつもにも増して噛み付くな…どうしたってんだ一体)

   「お前だって、パソコンいじってるか朝比奈さんにちょっかいかけてるぐらいじゃないか」

ハルヒ「あんたみたいにぼーっと過ごしてるわけじゃないわ!
    あたしはあたしでいろいろ考えなくちゃいけないことがあるのよ、団長としてね!」

キョン「そーですかそーですか…そりゃ大層なこって」

ハルヒ「…あんただって、SOS団の一員なんだから…」

   「わかりなさいよ、それくらい!」

キョン「あーすまんね、俺には団長様の高尚なお考えは理解に及びそうもないね…」

   「とにかく…今日は今日で残りはいつもどおりだ。とりあえず荷物をおいて座らせちゃくれんか」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:16:48.42 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「こ…」プルプル

キョン「…ん?」

ハルヒ「この…」プルプルプル

キョン「は…ハルヒ?」



ハルヒ「この、バカキョン!!!」

バンッ ダダダダ…

キョン「お、おい!ハルヒ!お前どうし…」

   「…行っちまった…」



キョン(あいつ…泣いてなかったか?気のせいか…?)

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:18:43.54 ID:JawB+Swh0
さるってどれぐらいで食らうの?見ててわかる人いたら教えて

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:26:22.55 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~

キョン「結局ハルヒは戻ってこずじまい、荷物も上着もそのまんま…」

   「で、今日は休みと…」

長門「実際に体調不良で欠席しているということも考えられる…
   でも、昨日の涼宮ハルヒの状態を考えれば因果関係が存在する可能性の方が高い」

古泉「でしょうね。涼宮さんにしてはああいったことは珍しいのですが…」

みくる「どうしちゃったんでしょうね、涼宮さん…」

キョン「…」

   (確かに、昨日のあいつの様子は変だったよな……
    いつもだったら適当に流して終わるような話に、やたらと噛み付いて…
    虫の居所が悪い事ってのはあるもんだろうが、それで飛び出して休みまでするか?)

   「…わかんねーな…」

古泉「…」

  「端で見ている限りでは、あなたの涼宮さんへの応対に問題があったと言えなくもありません。
   しかし、あの程度のやりとりであれば日常的に繰り返されているもの…」

長門「何らかの理由があると考えるのが妥当。現状では把握できていないけど」

キョン「…だろうな」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:27:15.06 ID:JawB+Swh0
>>12
ありがと
隙を見てよそで糞レスしてくる

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:34:14.51 ID:JawB+Swh0
キョン「まぁ…今とやかく言ってもどうにもならないんだろ?実際」

古泉「そうなりますね。そこまで大きな実害は出ていないからまだマシ、と言えなくもありませんが…」

長門「今後どのような拡大を見せるかが予想できない」

古泉「ええ。現に昨晩から現在まで、非常に小規模な閉鎖空間の発生が何度か確認されています。
   僕まで招集されるような規模ではありませんが、涼宮さんの精神状態次第では、いつ大規模なものが発生するとも限りませんので…」

キョン「出来る限り早急に手を打つのが吉、ってわけか」

古泉「機関としてもそうしておきたいところです」

キョン「そっちの都合は別にしてもそうしておきたいね。
    ハルヒを不機嫌なままにしといても、誰も得することにはなりゃしないだろ」

古泉「まだ100%というわけではないにしても、責任の一端があなたにあるということもお忘れなく」

キョン「うっ…わかってるよそれぐらいは。
    とにかく明日だ…ハルヒが来ないことにゃどうにもならん」

長門「明日も欠席するという可能性もある。その場合は?」

キョン「…そんときゃそんときだ。続けて休むような事態ならそれはそれでまた考えるさ」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:40:31.37 ID:JawB+Swh0
―校門―

古泉「では、また明日。何かあれば僕の方から連絡いたしますので」

みくる「私は私で涼宮さんに連絡をとってみます」

長門「そちらで何かあれば連絡して…助力は惜しまない」

キョン「ああ、よろしく」

   「それじゃ、また明日な」



キョン(―――雪、か…)

   (昨日の今日でこれだけクソ寒いんだ、コートなしじゃ風邪も引くか…)

   (…ハァ)

   (どうしちまったのかね、うちの団長様は…)

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:45:06.45 ID:JawB+Swh0
―深夜―

カチャカチャカチャカチャ

キョン「出ろよ…今度こそ出ろよ…」

パパラパーパパパラパパー ザクッザクッ

キョン「っだー!また大宝玉出なかった!俺はあと何回ナズチを殺しゃいいんだ!」

   「…はぁーあ」ポイ

   「…」

   (そろそろ日付も変わるか…結局何の音沙汰もなかったな)

   (なんにせよ明日には備えなきゃな…寝るか)ゴソゴソ



prrrrrrrrrrr

キョン「っうおぉ!びっくりした!」

   「この時間ってことは…やっぱり古泉か。どうしたってんだ一体」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:53:12.22 ID:JawB+Swh0
ピッ

キョン「もしもし古泉か、どうしたこんな時間に。なんかあったか?」

古泉「あったも何もありません、大アリです!!」

キョン「うおぉ、またびっくりした。いきなり大きな声を出すんじゃない」

古泉「失礼しました、緊急事態でして。
   こちらもあまり時間を取っていられないので手短に用件だけをお伝えしますよ」

  「つい今しがた、閉鎖空間の発生が報告されました。
   規模としては最近では…と言うより今までの中でもトップクラスのサイズです」

キョン「!!」

   「…聞くまでもないが…ハルヒか」

古泉「ええ。何が彼女にそこまでさせているのかはわかりませんが…
   涼宮さんの精神に相当なストレスが掛かっているのは明らかです」

キョン「…昨日の今日でそんな状態なのかよ…」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 02:59:33.13 ID:JawB+Swh0
キョン「原因については何かわかってるのか?」

古泉「いえ、こちらでもまだ掴めていませんが…」

  「原因がなんであれ、僕ももう行かなければいけません。
   詳しいことについては、事が済んだらまた明日お話しします。僕が無事であればの話ですが」

キョン「縁起でもないことを言うな。無事に戻れよ」

古泉「ふふ、僕もできるだけのことはします」

  「では、また!」

プツッ



キョン(古泉………ハルヒ………)

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:03:07.86 ID:JawB+Swh0
prrrrrrrr

キョン(! 何だ…今度は…)

   (発信元は…長門?)

ピッ

キョン「もしもし、長門か、お前はどうした?」

長門「手短に説明する。涼宮ハルヒを中心として、空間の歪みなど情報爆発の予兆を確認」

キョン「情報爆発って…おい、まさか…!」

長門「そう。涼宮ハルヒによって「改変」が行われようとしている」

キョン「ついさっき古泉からも連絡があってな…閉鎖空間ができてるとは聞いてたが…
    改変って、どういう事になるかはわからないのか?」

長門「現段階での予測は不能。どのような改変が行われるかも、その規模も」

キョン(なんてこった…もういつかの年末みたいなのは勘弁してくれよ…!)

長門「今からの対処も不可能。どのような結果になるかはわからないけど、覚悟して」

キョン「覚悟ったってお前、しかしだな…!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:08:43.00 ID:JawB+Swh0
長門「…来る」

キョン「!!」

長門「あなたの無事を願う」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



キョン「………」

   「…?」

   「…長門?聞こえるか」

長門「聞こえている。あなたは?」

キョン「ああ、聞こえてる。
    …一体どうなったんだ?何と言うか…何一つとして変わった感じはしないんだが」

長門「改変は確かに行われている。時空震の発生は感知できているから、間違いない」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:15:13.80 ID:JawB+Swh0
キョン「何がどうなったのかわからないのか?」

長門「現段階では、どのような改変が行われたのかを詳細に知ることはできない」

  「でも、少なくとも私自身とその周辺一帯に改変の痕跡は見られない。
   あなたに改変が及んでいる上で、あなたがそれに気づいていないだけなのか、あるいは…」

キョン「あるいは?」

長門「改変自体が局地的な、非常に狭い範囲で行われていることが考えられる。
   少なくとも、この一帯に反応がないことを考えれば、全世界レベルでの改変ではない」

キョン「どこかしら知らないところで何かとんでもないことが起こってるかもってわけか。
    今現在何も感じない分だけ余計に怖い話だな…」

長門「わたしはこれから改変の調査を始める…
   念のためバックアップも稼動させて精査に努め、明日涼宮ハルヒ本人と接触するまでには結論を出したい」

キョン(バックアップ…)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:20:12.71 ID:JawB+Swh0
キョン「俺には何かできることは?」

長門「今のところ特にない。
   詳細が判明次第わたしから連絡を入れるので、それを待ってくれればいい」

キョン「了解した。すまんな長門、手間をかける」

長門「問題ない。では、また」

キョン「ああ、じゃあな」

プツッ



キョン(改めて見てみても…特にこれといって変わったことはないよな…)

   (長門の言う通り気付いてないだけなのかもしれんが…)

   (古泉のこともあるし、とりあえず俺だけお休みなさいってわけにもなぁ…)

   (………)

   (…)

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:23:19.92 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チュンチュン チュンチュン

キョン妹「キョンくーん!朝…あれ、キョンくん起きてる」

キョン「ああ、おはよう…」

キョン妹「ご飯できてるって、お母さんが」

キョン「ああ、ありがとうな…俺は準備があるからお前もご飯食べてきなさい」

キョン妹「はーい!」



キョン(結局…どっちからも連絡来ないまま朝かよ…)

   (多少寝はしたけど居眠り程度…きついが…さすがに行かないわけにもいかんか…)

   (あ~…)

   (参った…)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:26:59.88 ID:JawB+Swh0
キョン「いってきま~す…」

   (いつもより随分早いが…まぁいいか、学校で少し寝れば…)

   (あのアホみたいな坂をこの体で登るのは…考えたくないな…)



ブロロロロロロ キキィッ

キョン(…タクシー?)

   (周りには誰も…)

ガチャッ

キョン「え、あの…ドア開けられても、俺、止めた覚えはないんですけど…」

???「なくて結構、こちらの都合で止まっただけですので」

キョン「!? あんた…」

新川「話は道中、古泉からさせましょう。まずはお乗りください」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:28:52.35 ID:JawB+Swh0
―車中―

古泉「すみません、連絡が滞りまして。こちらも手が込んでいまして」

キョン「驚きはしたが、構わねえよ。それよりまぁ、何事もなかったようでよかった」

古泉「お気遣いをどうも。規模に反して被害が微細だったのは、こちらとしてもありがたい限りです」

  「早速ですが…本題に入りましょう。昨晩の閉鎖空間でのことです」

キョン「そうだ、結局どうなったんだ?」

古泉「あなたとの電話を切ってから現場に急行しましたが…到着からさほど経たずに消滅しました。
   規模に反して時間はかかりませんでしたよ」

キョン「…最大規模だって話だったのにか?神人の数が少なかったとかか?」

古泉「いいえ、神人の数、大きさ、空間の広さ…どれも最大級です。
   しかし…それは何の問題にもなりませんでした」

  「むしろ問題は…質の方です」

キョン「質?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:30:58.78 ID:JawB+Swh0
キョン「―――――同士討ちだぁ?」

古泉「…ええ。昨晩の閉鎖空間で行われていたのは、神人同士の殴り合いでした」

  「今までにも、複数体現れた際には互いの手足が接触する程度のことはありましたが…」

  「互いに、明らかな攻撃行為を行っていたのは…今回が初めてです」

キョン「わけがわからんな…なんだってそんなことになってたんだ?」

古泉「それがわかればあなたへお報せするのが遅れることもなかったんですが…
   現場も上も、今までにない事態に戸惑っているのが現状です」

キョン「まぁ、そりゃそうだわな」

古泉「戦闘自体は、こちらが無理に割り込むまでもなく神人同士で潰し合いをしてくれているわけですから。
   結局、機を見て攻撃、止めを刺す程度で済んだので、大人数の動員以外は大した手間ではなかったんですが…」

  「むしろその後の対応の方に追われていまして。涼宮さん本人の状態も含め、現在も状況の観察は続いています

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:34:27.07 ID:JawB+Swh0
キョン「そうだ。お前の周りとかハルヒに、何か目に見える変化ってなかったか?」

古泉「変化…ですか?具体的にはどういった…?」

キョン「何でもいい。普段と違うことなら何でもだ」

古泉「…僕に関しては、特別何も無いとしか言えません。涼宮さんに関しても、今のところ報告すべきことは…
   わかっていることは、昨日は実際に風邪をひいて休んでいた、という程度です」

キョン「そうか…(改変されてないのか気付いてないだけか…どっちともつかないか…)
    いや、実は長門がな…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



古泉「つまり…昨晩の電話の後に、規模内容ともに不明の改変が行われたと?」

キョン「長門の言葉通りならな。あいつの言うことだからまず間違ってはいないだろう」

古泉「…上に報告すべきことが増えてしまいましたね。また忙しくなりそうです。
   近辺の調査も、そのことを前提に行うように依頼しておきます」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:39:00.14 ID:JawB+Swh0
古泉「しかし、神人の同士討ちに謎の改変…急激に事態がややこしくなっていますね…」

キョン「確かに、わけのわからんことだらけだからな…」

   「特に改変の方に関しちゃ、今までを振り返ればとんでもないことばっかりだ…」

古泉「できるならば、大事ではないことを望みたいのですが」

キョン「そりゃこっちも同じだ。慣れたっちゃ慣れたが、そうそう大事件ばっかりじゃたまらんからな。
    時間巻き戻したり世界を作り替えたりっていうような大掛かりなもんじゃないらしいから、少しは安心だが…」

古泉「念のため、警戒は強めておきましょう。できることは多くはないかもしれませんが、何も無いよりはマシです」

キョン「頼むぜ…」



新川「お二方、そろそろ到着です」

キョン「ありがとうございます、送ってもらっちゃって」

新川「事のついでだから、と言っては何ですが…まぁお気になさらず。では、お気をつけて」

古泉「後のことはお願いします」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:45:02.46 ID:JawB+Swh0
―教室―

キョン(まだ誰も来てない…か)

   (流石に車じゃ早すぎたな…むしろそうじゃなくても早めに家出たってのに…)

   (…ま、疲れた体で歩かずに済んだんだ、よしとするか)

   (せっかくだし、HRが始まるまでは休ませてもらうとするかね)

zzZ… zzZ…



「―ョン――――――なさいよ――――――――」

キョン(………?)

「―――キョン!起きなさいよ、キョン!」

キョン「ん…あ…?ふぁ…あ~………何だぁ?」

ハルヒ「やっと起きたわね。珍しく早く来てると思ったら寝てるなんて、相変わらずねあんたは」

キョン「(ジャーンジャーンジャーン)げえっ、ハルヒ!」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:46:25.16 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「げえって何よ、人の顔見て」

キョン「い、いや…起きていきなり人がいたんで驚いてな…」

   (色々あったばかりだ、そりゃ驚くわ。起きていきなり睡眠不足の当事者の顔だからな…)

ハルヒ「そ、ならいいけど」

キョン「お前こそ随分早いじゃないか、どうしたんだ」

ハルヒ「部室に置きっぱなしだった荷物取りに行こうと思って早く出ようとしたら、親が送ってくれたのよ。
    昨日の今日で病み上がりだから、心配だって。もう大丈夫だって言ってんのに」

キョン「ああ、そういや体調不良だってな。もう大丈夫なのか?」

ハルヒ「見ての通りよ。ピンピンしてるわ」

キョン(まぁたしかに、いつも通りのハルヒに見えるんだが…一応聞いてはおくか)

   「お前が休むなんて珍しいからな。どっか変わったとことかないか?」

ハルヒ「ないわよ、何にも。でもまぁ、心配してくれてたんならありがとね。嬉しいじゃない」

キョン「ああ、変わりなければいいんだ、気にせんでくれ………」



キョン「……………ん?」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 03:51:27.97 ID:JawB+Swh0
キョン「ハルヒ…お前、今なんて言った?」

ハルヒ「え?何が?」

キョン「お前が今言った言葉を俺にもう一度言ってみてくれ」

ハルヒ「何よ、心配してくれたならありがとうって言っただけじゃない。何かおかしい?」

キョン「いや、おかしくない、おかしくないんだが、いや、おかしいのか?」

ハルヒ「何言ってんのよキョン。あたしよりあんたが大丈夫?
    クマできてるし、なんか随分と疲れた顔してるわよ、朝だってのに」

キョン「昨日あんまり寝てなかったせいか…俺は少し疲れてるみたいだ…」

ハルヒ「またゲームかなんかやってたんでしょ?ほどほどにしとかないと体壊すわよ?
    それであんたが休んだりしてもこっちも寂しいからね、体は大事にしなさいよ」

キョン「ハルヒお前…まだ風邪が治りきってないんじゃないか?
    今からでも遅くない、岡部には俺が言っておくから休め、な」

ハルヒ「見ての通り元気って言ったでしょ、だから変なのはあんたよ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:00:39.46 ID:JawB+Swh0
キョン(何だ…何なんだ今日のハルヒは…おかしいぞ!)

   (おかしいのか?いやおかしくはない、これでおかしくはないハズなんだが…)

   (これが世間一般に言うところの普通だとしても、あれはハルヒじゃない!)

   (あのハルヒが…心配してくれてありがとう?いないと寂しいから体は大事にしろ?そんなバカな!)

   (長門よ、お前の言ってた改変ってこれのことか!?そうだな!?そうじゃなきゃ説明がつかんぞ!)

キョン「~~~~~~~~~~~~~~っ…」

ハルヒ「大丈夫なの?いきなり頭抱えたりして。あんたの方こそホントに休んだ方がいいんじゃない?」

キョン「いや、大丈夫だ…ちょっとめまいがしたような…気がしただけだ、うん。気にしないでくれ」

ハルヒ「あたしは部室行って荷物取ってくるけど、調子悪いなら保健室行って来なさいよ?」ガラガラ

キョン「ああ…お気遣いどうも」

ハルヒ「あ、それから」

キョン「ん?」

ハルヒ「一昨日のアレ…悪かったわね。あたしの方も色々言い過ぎたわ、謝る。それだけ。じゃあね」



キョン「…どうなってやがる…」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:05:21.58 ID:JawB+Swh0
カチャ ピッピッピッピッピ prrrrrrrrr

古泉『もしもし』

キョン「古泉か、俺だ、報告することができた。ハルヒが変だ。あいつ普通じゃねえ」

古泉『落ち着いてください、涼宮さんがどうしたんですか』

キョン「今さっき俺のあとからあいつが教室に来てな。軽く話したんだが、普通じゃないんだよ」

古泉『要領を得ませんね…一体どこがどう変だと言うんですか?』

キョン「聞いて驚けよ。あいつ、俺が体調は大丈夫なのか聞いたら「心配してくれてありがとう」だと。
    その上俺の体調の心配までして、おまけに俺が休むと寂しいとか言ったんだよ。
    極めつけは教室を出ていく時に「一昨日のことはごめん」と来たもんだ。
    これが普通の人間ならなんてこともないのかもしれんが…相手はハルヒだぞ。これが異常じゃなくて何だ」

古泉『ハハハハハ、愛されてますね、羨ましい限りで。では僕はこれで』

キョン「待て!冗談じゃねえんだって!一切の嘘偽りも自慢するつもりもない!どうするんだよこれ!」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:10:32.57 ID:JawB+Swh0
古泉『冗談はさておき…確かに涼宮さんにしては考えられない言動ですね』

キョン「お前だってそう思うだろ?その場で聞いてた俺はもっと信じられない気分だったぞ」

古泉『やはり…改変による変化と見るのが妥当でしょうね』

キョン「そうとしか考えられん。一日二日で人間の人格があんなふうに変わったら怖いわ」

古泉『僕はまだ涼宮さんと直接接触したわけではないので、何とも言えない部分はありますが…
   涼宮さんは今どこに?』

キョン「部室に荷物取りに行ってる。すぐに戻ってくるだろうから、お前と会って話す時間はなさそうなんだが…」

古泉『できるなら休み時間か昼休み、遅くても放課後には会うことになります。それまで…」

キョン「ハルヒのご機嫌に気を付けてくれ、だろ?わかってる。こっちでもできる限り気を使うさ」

古泉『お察しありがとうございます。
   仮に改変によるものだとしても、涼宮さんの変化がどういったものなのかはまだ詳細は掴めていません。
   出来る限り慎重にお願いします』

キョン「わかった。また何かあれば可能な限り知らせる。じゃあな」

古泉『それでは』

プツッ ツーツーツー

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:13:16.76 ID:JawB+Swh0
キョン(とりあえずは放課後まで様子見か…どうなることやら…)

   (長門からの連絡もないままだしな…俺にどうにかしろってのもきつい話だが…今更か)

   (とにかく団活が始まって全員集まるまでが俺の領分か…)

   (できるだけのことはしてみるけどな…)

   (とはいえ、何をどうすりゃいいんだか。現状がわからんのに解決策も何もなぁ…)



ハルヒ「なに難しい顔してんのよ?」

キョン「うおぁあ!い、いきなり目の前に顔を出すんじゃない!驚くだろうが!」

ハルヒ「話しかけても返事しなかったから。何か考えてたの?あんた」

キョン「大したことじゃないさ…まぁ色々…今日の昼飯のこととかだよ」

ハルヒ「昼飯って…まだ朝のHRも始まってないうちからお昼のこと考えてるわけ?」

キョン「悪かったな。俺みたいな勤勉と無縁の人間には、午前中の楽しみなんて昼飯ぐらいしかないんだよ」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:21:19.56 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「昼ねぇ…」

   「…そうだ!」

キョン「なんだ?また何かおかしなことでも思いついたか?」

ハルヒ「別におかしくもなんともないわよ。
    今日のお昼、天気も良さそうだしあたしと二人で食べない?屋上あたりで」

キョン「へぁ?」

ハルヒ「へぁって…どっから声出してんのよそれ」

キョン「気にするな…それよりなんだって?俺がお前と…屋上で飯?」

ハルヒ「そうよ。嫌?」

キョン「嫌ってことはないが、なんでまた…」

ハルヒ「別に谷口や国木田とご飯食べるのにだって理由はないでしょ?あたしとあんたがご飯食べるのに特別な理由がいる?」

キョン「ないっちゃないが…ないな、うん…」

ハルヒ「じゃあ決まりね!あたしは日直の用事あるから、それが終わったら屋上ね!」

キョン(釈然としないようなそうでもないような…ホントに何なんだ今日のハルヒは…)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:24:13.60 ID:JawB+Swh0
国木田「おはよう、キョン。今日は早いね」

キョン「おう、おはようさん」

国木田「キョン、なんか疲れた顔してるね。またゲーム?」

キョン「お前もハルヒと同じことを…いや、少しモンハンをな…」

国木田「まだ宝玉集めてたの?アブソなんてロマン武器だって言ったのに…」

キョン「いや、どうしても使ってみたくてな…しかしだいたいライトボウガンにあんなもん5個もよこせってのが間違いで…」



ハルヒ(…)ムスッ

国木田「ねぇ、なんか涼宮さん、いきなりものすごく不機嫌そうな顔でこっち見てるんだけど…邪魔だった?」ヒソヒソ

キョン「さっきまでは上機嫌に見えたんだが…わからん。
    いやな、今日は昨日の熱のせいかどっかおかしいんだ、そっとしといてやってくれ」ヒソヒソ

国木田「と、とにかく、僕は割って入らない方が良さそうだね…」ヒソヒソ

キョン「…気を遣わせてしまったらすまん」ヒソヒソ


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:28:45.89 ID:JawB+Swh0
キョン「お、おいハルヒ、いきなりどうした。そんな仏頂面で」

ハルヒ「…別にー」

キョン「別にってこたないだろ、さっきまで機嫌良さそうだったじゃないか」

ハルヒ「だってさ」

   「せっかく早めの時間にきて話ができたのに、あんた国木田と話しててあたしに構ってくれないんだもん」

キョン「え、いや、その、なに?なんだって?」

ハルヒ「せっかく珍しく朝早くから顔合わせてるんだから、もうちょっと構ってくれたっていいじゃない」

国木田「…」

キョン「やめろ国木田、そんな目で見るな!ハルヒ、一体どうした!」

ハルヒ「どうもしてないわよ。キョンのケチー」

キョン「誰がケチか!そんなに期待されたって朝っぱらからどうしろって…国木田、ニヤニヤするな!誤解だ!お前は誤解している!」

国木田「僕は何も聞いてないよ、何も。詳しい話はまた今度きかせてもらうよ」ニヤニヤ

   「…谷口がなんて言うかなぁ?」ボソッ

キョン「なんだ今の不穏な発言は!違うんだ!だから違うんだよ!」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:31:34.85 ID:JawB+Swh0
キョン「あぁ…どうしてこんなことに…」

ハルヒ「ほっときなさいよ。それより、今度の休みなんだけどね…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~

―1限授業中―

キョン(結局HR始まるまで放してもらえなかった…授業が始まって安心するなんて初めてだぞ…)

   (しかし、一体なんだってんだ?いつものトゲトゲした態度が今日になってこの有様…)

   (この変わりようじゃ改変ってことに間違いはないだろうが、なんでこんな…)

   (やたら構ってほしがったり妙に優しかったり…悪い気はしないでもないが逆に気味が悪い)

   (なんだかもう…俺の方がどうにかなっちまいそうだよ、まったく)

ぐにぐにぐに

キョン「ええい、俺の耳をいじるなハルヒ!」

ハルヒ「いいじゃないの、減るもんじゃなし」

キョン(誰かこの生き物を何とかしてくれ…)

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:37:18.49 ID:JawB+Swh0
―昼休み―

キョン「ちょっと部室に忘れ物があるんでな…用が済んだら行くから…」

ハルヒ「それじゃ、あたしは行ってくるから、後で屋上ね!絶対だからね!」

キョン「あーわかったわかった、後でな…」

バタバタバタ



キョン「…」

カチャ ピピピピ prrrrrrrrrrrr



キョン「古泉か!部室だ!今すぐ部室だ!大至急だ!話は後でする!」プツッ



古泉「これは…なかなか重症のようですね」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:38:08.29 ID:JawB+Swh0
―部室―

ガチャッ バタン

キョン「先に来てたか、古泉…に、長門!それに朝比奈さんも…」

古泉「事態が事態ですからね。事前に連絡しておいて、あなたからの電話のあとで部室にお呼びしました」

みくる「あの、私よくわからないんですけど、なんだか大変な事になってるみたいで…」

キョン「ええ、まぁ、昨日の夜から現在にかけて色々と…後で話しますよ」

   「長門は…その後どうだった?連絡はなかったけど、大丈夫か?」

長門「久しぶりの改変ということを受けて、細部に到るまで調査をしていたら遅くなってしまった。ごめんなさい」

  「でもおそらくこれ以上は必要ないと思われるレベルまで精査が済んでいる」

キョン「気にしないでくれ。手間をかけてすまんな」



古泉「ではさっそくですが…僕はある程度お聞きしましたが、現状はどうなっています?」

キョン「口に出してもむずがゆくなりそうな話だがな…」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:41:43.60 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン「とまぁ、そんな具合でこの後屋上だ」

みくる「ひゃあぁぁ…涼宮さん…」

長門「ユニーク」

古泉「改めて…普段の涼宮さんからすれば考えにくい言動ですね…」

キョン「普段のあいつを知ってる人間なら誰だってそう思う。俺だってそう思う。
    こりゃどう考えたって改変の影響だとしか思えないんだが…」

   「長門、その辺はどうだ?何かわかったか?」

長門「改変が行われた対象は既に判明している。時空震の範囲その他様々な要素から推測して、ほぼ間違いない」

古泉「長門さん、その範囲、対象というのは…」



長門「昨晩涼宮ハルヒによって行われた改変の対象は、涼宮ハルヒ本人の存在、その一つのみ」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:44:46.60 ID:JawB+Swh0
キョン「ハルヒの…存在?」

みくる「涼宮さんを…涼宮さんが改変したっていうことですか?」

長門「…」コクリ

古泉「自分の存在を自分の願望によって書き換えてしまった、と…」

キョン「じゃあ…今あいつが妙な事になってるのは、あいつ自身が望んだ結果ってことか?」

長門「強いフラストレーションと、それに伴ったそれとは反対の願望。それが今回の引き金」

古泉「その点に関しては今まで通りといえば今まで通りですね」

キョン「そりゃそうだが…」

みくる「で、でも、どうしてそんなことに…」

古泉「…おおよその見当はつかなくもありません」

  「…閉鎖空間です」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:47:20.75 ID:JawB+Swh0
キョン「閉鎖空間って…昨日のあれか?」

古泉「ええ。僕はいいましたね?神人と神人が争う姿が見られたと…」

  「あなたとの言い争い、同士討ちをする神人、自分自身のみを対象にした改変…」

  「このピースが集まれば、自ずと形が見えてくるはずです」

キョン「まさか、あいつに限ってとは思うが…」

古泉「前にも言いましたが、涼宮さんはああ見えて中身は常識的です。
   確かに色々と超越した考えをお持ちのところはありますが…人並みに考え、悩みもするのが自然でしょう」

キョン「それじゃ、あいつは…」

   「自己嫌悪で…自分自身を改変しちまったってのか?」

古泉「今はそうとしか考えられません。言い争いに至るまでの不機嫌にはそれはそれで原因があるのでしょうが…
   改変自体の理由としてはこれが一番妥当な推測かと。
   心悩ます事件のあとに折しも体調不良…心を弱らせ己を責める材料としては十分だったはずです」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:52:33.87 ID:JawB+Swh0
キョン「しかし、悩んで自己嫌悪した結果としてなんでああなるんだ…俺にはさっぱりわからんぞ。
    自分から謝ったり素直に礼を言ったり…いや、いいことではあるんだが…筋が通らん。
    何をどう願ったらあんなに俺にベタベタするようになるんだよ…」

みくる「…えっと、キョンくん、その…」

古泉「それは…念のために聞きますが、本気でおっしゃっているんですね?」

長門「?」

キョン「本気も何も、わからんもんはわからん。
    ただ「優しくなりたい」とか思ったんだとしても、ああはならんだろうしなぁ…」

みくる(キョンくん…さすがにここまでくると…)

古泉(涼宮さんが悩む理由もわからないでもないですね…おいたわしや)

キョン「な、なんだ二人して、そんな可哀想なものを見るような目で!」

長門「ユニーク」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 04:53:52.77 ID:JawB+Swh0
みくる「涼宮さんは…自分に素直になりたかったんだと思うんです」

キョン「素直に?あいつが?」

みくる「二日前…キョンくんと喧嘩して、きついことを言っちゃったでしょう?
    涼宮さんだって、あんな風に言いたかったわけじゃなかったと思うんです。
    言い方がきつくなっちゃって、色々思いつめちゃったんじゃないかって…」

古泉「すべてが偽りだったとは言いませんが、表現としてねじ曲げられた…
   彼女の心を素直に表した言葉でない部分もあったと思います」

キョン「それぐらいはさすがに俺でもわかるが…
    だからって自分で自分を書き換えちまうほどのことかよ…」

古泉「それだけ思い詰めていたということでしょう」

キョン「なんてこったよ…」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:00:55.32 ID:JawB+Swh0
キョン「情けない話だが…どうしたらいいかわからん」

古泉「言い方は悪いかもしれませんが、今回の改変は規模自体は小さい。今は静観して様子をみるのが正解かと。
   今日の団活での様子を見て、また考えるべきこともあるでしょう」

キョン「ああ…」

みくる「キョンくん、元気出してください。
    涼宮さんが色々悩んでたとしても…全部キョンくんが悪いなんてことはないですから」

長門「打つ手が無いわけではない、可能性はいくらでもある」

古泉「ええ。それに、こと涼宮さんの心の問題となれば、一番力になれるのはあなただと僕は思っています。
   解決を求めるのであれば、あなたにしっかりしていただかなければ」

キョン「そうだな…」

   「とりあえず行ってくる。もうハルヒも用事は済んでるだろうし、待たせると後が怖いからな」

ガチャ バタン



古泉「…大丈夫でしょうか」

みくる「…大丈夫ですよ、きっと」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:02:05.79 ID:JawB+Swh0
―屋上―

ガチャ

キョン(う~、天気がいいとは言っても流石にこの時期は寒いな…)

   (ハルヒは…どこだ?)

バッ

ハルヒ「遅いっ!5分は待ったわよ!」

キョン「ぅおお、びっくりした!脅かすな、心臓に悪い!」

ハルヒ「まったく、すぐ来なさいっていったのに」

キョン「悪い、探してたものがなかなか見つからなくてな」

ハルヒ「まぁいいわ、お腹すいたしさっさと食べましょ」

キョン「時間くっちまったしな、そうしよう」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:04:07.30 ID:JawB+Swh0
キョン(ハルヒとこうやって顔突き合わせて、しかも屋上なんかで弁当食ってるのも、なんだか不思議な感じだな…)

   (こいつとの付き合いももう2年近くなるんだが…まだまだ新鮮味ってのはあるもんだ)

   (…それを言ったら今日のこいつの様子ほど新鮮なものもないか。やれやれ)

ハルヒ「キョンのお弁当、それってお母さんが作ってるのよね」

キョン「俺にできると思うか?」

ハルヒ「思わないわね、全く。わかってて聞いてる。
    こうして見てみるときれいね。なんかかわいいし」

キョン「妹のも一緒に作ってるからな。あいつはこういうのが好きだから、俺のもどうしてもこうなるんだろ」

ハルヒ「やっぱりあれね、毎日作って慣れてる人にはなかなか適わないもんね。熟練の技だわ」

キョン「お前のは…自分で作ってんのか?」

ハルヒ「昨日昼間寝てたから、早く目が覚めたのよ。それで今日はね。普段はそんなにやらないわ」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:06:46.51 ID:JawB+Swh0
キョン「ほー…そっちだってきれいなもんじゃないか。こっちは見慣れてる分どうも感動がない」

ハルヒ「そりゃ、やるからには彩りとかもこだわってるからね。それなりのものにはしたいし」

キョン「隣の芝はってやつだろ?俺にはお前のの方が綺麗に見える気もするが」

ハルヒ「え、そ、そう?」

キョン「そんなに気になるなら…ほれ、なんか適当に食うか?」スッ

ハルヒ「それじゃあ…玉子焼きもらうわよ、こっちにも玉子焼きあるし」パク

キョン「玉子焼きくらべか…やっぱ味付けってのは違うもんかね」パク



モグモグモグモグ

ハルヒ「キョンのうちって卵焼き甘くするのね。なんか意外」

キョン「やっぱり妹が好きなもんでな。お前がネギ出汁巻きってのも意外だな…」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:09:27.30 ID:JawB+Swh0
キョン「で、どうだ。うちの玉子焼きは。俺が作ったわけじゃないけどな」

ハルヒ「おいしいわよ。甘いのは嫌いじゃないし。で…あたしのはどうなの?」

キョン「うん…うまいな。俺は甘いのよりはこっちの方が好きかもしれん」

ハルヒ「ほんと!?」

キョン「ああ、塩気も丁度いいしな。こりゃうまいぞ」

ハルヒ「ありがと。そう言ってもらえると嬉しい」ニコッ

キョン(ドキッ)(うっ…くそ、かわいいなこいつめ。いい笑顔しやがって…)

   (普段なら「あたしが作ったんだから当然でしょ?」とか言いそうなもんだが)

   (…でも、古泉たちが言うことが本当なら…これがこいつの心の中なのか)

   (こいつ…こんな風に思ってたんだな)

ハルヒ「何よ?人の顔じーっと見ちゃって」

キョン「あ、いやすまん、何でもない。あんまりうまかったんでな」

ハルヒ「あんまり手放しで褒められても照れるからね、やめてよ///」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:13:15.26 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「そんなに気に入ったんならもう一個食べる?あんたが良ければあげるわよ」

キョン「いいのか?じゃあもらうか」

ハルヒ「わかった。じゃ、はい」スッ



キョン「…ハルヒ、知らないのかもしれんが箸から箸にモノを渡すのは縁起も行儀も悪いんだぞ」

ハルヒ「知ってるわよそんなこと。だから、はい」スッ

キョン「だから、って…知ってるなら」

ハルヒ「だから、口開けなさいって、ほら」



キョン「…………は?」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:15:54.06 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「? いるんでしょ?口開けなさいって。いらないの?」

キョン「いや、いるけどな、その…なんだ…あの…」

   (ここに来てなんだこれは!不意打ちにもほどがあるぞ!なんでこんなに同様してるんだ俺は恥ずかしい!)

   (どうすりゃいいんだ俺は!ここで阿呆みたいに口開けたら負けのような…いや勝ちか?勝ち組なのか!?)

   (そもそも自分に正直になった結果がこれって…これがお前の望みか?望みなのかハルヒぃぃぃ!?)




キョン(……………)

   「…あー」カパ

ハルヒ「はい、どうぞ」

モグモグ

ハルヒ「お味は?」

キョン「…うまい」

ハルヒ「でしょ?」ニコッ

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:16:38.78 ID:JawB+Swh0
キョン(結局いろいろ食わされてしまったが…味なんてわかるか。あんな風にされちゃ何だってうまいっての)

   「…ごちそうさん」

ハルヒ「はい、お粗末さま」

   「ご飯も食べたし、日差しもいいと少し眠くなるわね」

キョン「ちっとばかり肌寒いけどな。まぁ陽に当たってたから出たばっかりの時よりはいくらか…ふぁあ」

ハルヒ「大欠伸して…だらしないわねあんた」

キョン「勘弁してくれ、あんまりねてないもんで…ぁあぁぁあ、ふわ」

ハルヒ「虫歯」

キョン「やめんか」

ハルヒ「まだ時間はあるし、しばらく休んでく?」

キョン「…そうだな」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:17:30.66 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「ほっとくとそのまま寝ちゃいそうね、あんた」

キョン「あー…今の状態なら無理でもないかもしれん」

ハルヒ「眠いんなら少し寝てたら?授業始まるまでには起こしてあげるわよ」

キョン「…そりゃありがたいんだが…いいのか?お前だって寒かろうよ」

ハルヒ「平気よ。天気だっていいし、一応冬服だしね」

キョン「そう言ってもらえるんなら、お言葉に甘えるとするかね。団長様のご厚意だ」

ハルヒ「そういうこと。気を遣ってもらえるうちに甘えときなさい」



ハルヒ「それじゃ、ここ」ポンポン

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 05:19:49.86 ID:JawB+Swh0
キョン「…あのなハルヒ、言わんとすることはわからんでもないが、いや、わかりたくないというか…」

   「とにかく、な…?」

ハルヒ「…(ニコッ)」ポンポン

キョン「うっ…(その顔は反則だぞお前…)」

ハルヒ「ほら、滅多に無いわよ?団長様の膝枕なんて」

キョン「お前には、なんだ、恥じらいとかそういうものは…」

ハルヒ「誰も来てないわよ、あんたとあたしだけじゃない。この時間から屋上に来る奴なんて滅多にいないし」

キョン「人がいなけりゃいいってもんじゃ…大体その、お前は…いいのか?それで!」

ハルヒ「…? いいわよ別に。キョンだし」



キョン(………だあああぁぁぁああぁぁぁぁぁ!)プツッ

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:01:34.10 ID:JawB+Swh0
バサッ

ハルヒ「…ブレザー…なによこれ?」

キョン「…着るか羽織るかしとけ、病み上がりだろ」

ハルヒ「でもそれじゃあんたが寒いでしょ、あんたが着てなさいよ」

キョン「いいんだよ俺は、言うほど寒くもねえから。膝貸す代金だとでも思って受け取っとけ」

   「じゃ、お言葉通りお邪魔するぞ」

ボスッ

ハルヒ「んっ…」

キョン(っっっっっこれはっ…想像以上の罪な感触…っ!)

ハルヒ「ふふふ…感想は?」

キョン「………やらかい」

ハルヒ「バーカ」クスッ

キョン「…うっさいわ///」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:07:06.85 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン(zzZ… zzZ…)

ハルヒ「ほんとに寝ちゃってるわね」

   「…無防備な寝顔しちゃって」

   「ほっぺいじったら起きるかしら」グニグニ

キョン「む、ぐ、ふがっ… …(スースー)」

ハルヒ「起きない、か…」

   「………」

   「…ちょっとなら…いいわよね」

   「卵焼きと膝の…利子よ、利子」

   「起きてるなら今のうちに言いなさいよ…///」



チュッ



キョン(…さっきので起きてましたとは死んでも言えんな…)

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:12:34.01 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン(zzZ… …はっ)

ハルヒ「あ、起きたわね」

キョン「…ふあ…結構寝ちまったのか…授業まであとどれくらいだ?」

ハルヒ「さぁ…そろそろ5限終わるんじゃない?」

キョン「なっ…おま、起こすって…!」

ハルヒ「あんたがあんまりいい顔で寝てるもんだから、つい」

キョン「いや、ついったって、お前…」

ハルヒ「ごめんね、ね?」ペロッ

キョン「(…ハァ)…始まっちまったもんはしょうがない、6限だけ行くしかないか…小言は覚悟しよう」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:16:58.51 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「じゃ、あたし先に行ってるわね。保健室に行ってたとでも言っとくわ」

キョン「俺は…まぁいい、言い訳は後で考えよう」

ハルヒ「はいこれ、おかげで暖かかったわよ。ありがとね」

キョン「どういたしまして。ほれ、早く行け」

ハルヒ「また教室でね!」

キョン「その後部室でな、小言が長引かなきゃだが」

ハルヒ「じゃ!」

タタタタタ…



クシュンッ

キョン「…やっぱ寒かったな」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:19:09.55 ID:JawB+Swh0
―放課後、SOS団部室―

キョン「う~す…」

   「おぉ、みんなもう揃ってるのか…ハルヒ以外だけど」

みくる「あ、今お茶淹れますね~」

キョン「あ、ありがとうございます」

古泉「ずいぶん遅い到着でしたね…なにかご用事が?」

キョン「ちょっとばかし担任に捕まって小言を食らってたんだが…途中から面倒なくらい熱く語られてな…
    面倒ではあったが聞いてたらこのザマだ」

古泉「それはお気の毒です…屋上での寝過ごした一件ですか?」

キョン「ブフゥっ!」

みくる「ひゃぁあぁ、キョンくん汚いですぅ」

キョン「す、すみません朝比奈さん…古泉、なんでお前がそのことを…!」

古泉「技術の進歩というのは並々ならぬものでして…ほら、例えば望遠鏡ですとか」

キョン「お、ま、え、は…」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:20:48.21 ID:JawB+Swh0
古泉「悪く思わないでください、事態が事態ですから…監視も必要なんですよ」

キョン「忘れろ、いいな、お前が見たものは事が終息したら何もかも忘れろ、いいな」

古泉「んっふ、善処はしますよ」

キョン「言葉に反して顔からNOが読み取れるのが余計にムカつくな…」

みくる「キョンくん、屋上で何かあったんですか?」

キョン「聞かないでください朝比奈さん、俺にとっては思い出した…くない出来事です」

古泉「…まんざらでもなさそうに見えましたが?」

キョン「やかましい、それ以上突っ込むな」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:24:52.96 ID:JawB+Swh0
バンッ

ハルヒ「おっ待たせー!ごめんね、遅くなっちゃって!」

キョン「お前が遅いなんてのも珍しいな、なんかの用事か?」

ハルヒ「休んでる間に返されてたテストの受け取りとかよ。大したことじゃなかったんだけどね」

   「それよりキョン、岡部に色々言われたんじゃないの?大丈夫だった?」

古泉「!」

みくる「!」

長門「…」

キョン「まぁ、時間はかかったが特別大したことは言われてない。ちょっと小言食った程度だ」

ハルヒ「それならよかったわ。あたしのせいで面倒になっても悪いしね」

古泉(これはこれは…)

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 06:27:56.70 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「さて、じゃあ今日の活動を始めなきゃね!休んでた分もやることやらなきゃ!」

古泉「今日は何をなさるので?」

ハルヒ「あたしが前々から練りに練っていた企画、クリスマスパーティーの準備予定を発表よ!」

キョン「気が早い…って程でもないか。割ともうすぐだしな」

ハルヒ「去年にも増して盛大にやらないとね!せっかくのイベント事だもの!」

キョン「また俺に一発芸やれなんて言うんじゃないだろうな…」

ハルヒ「それはそれで面白そうだけどね…あたしはあたしで色々考えてあるのよ!」

   「それに…あたしはもちろんだけど、なによりみんなに楽しんでほしいしね」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 07:01:13.40 ID:JawB+Swh0
ごめんまたさるだった



ハルヒ「そのためには、みんなで準備してみんなで騒がないとね。あたし一人で盛り上がっても仕方ないもの」

   「みんなが楽しいと思ってくれたら、それが団長のあたしにとっても一番楽しいから」

みくる「涼宮さん…」

古泉「…ありがたいお言葉ですね」

ハルヒ「…? 何変な顔してんの?」

古泉「いえ、何でもありません。それより、計画の続きを…」

ハルヒ「そうだったわね。えーと、まず料理はまた鍋をやりたいと思ってるわ!特製のやつね!
    それから、去年のみくるちゃんのサンタが可愛かったから、今年も見たいわね。
    有希にも着てもらってもいいわ。きっとちっちゃくてかわいいわよ!
    それから飾り付けなんだけど…」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 07:02:52.46 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

―帰り道―

ハルヒ「うーん、いくら考えても足りないくらい楽しみだわ、クリスマス!」

キョン「はしゃぐのはいいが、エネルギー使いすぎで直前に体壊したりするなよ?」

ハルヒ「心配要らないわ、そんなにしょっちゅう体を壊すほどヤワにはできてないもの!」

   「ふふふふ、有希もみくるちゃんのミニスカサンタ、かわいいわよ~」

長門「…サンタ…」

キョン「まったく、元気なことだ」

古泉「結構なことですよ」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 07:05:54.80 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハルヒ「じゃ、また明日ね!」

長門「…また明日」

みくる「それじゃあ、また」

古泉「では、僕もここで」

キョン「おう、じゃあな」



古泉「今後については、長門さん、朝比奈さんも含めて話します。指定通りにお会いしましょう」ボソボソ

キョン「わかった、また後でな」ボソボソ

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 07:12:37.06 ID:JawB+Swh0
―午後七時前、光陽園駅前公園―

キョン「早いな…俺が最後なのはいつも通りか、待たせてすまない」

長門「問題ない」

みくる「こんばんは、キョンくん」

古泉「お待ちしてましたよ」

キョン「流石に夜だと厚着でも寒いな…場所は屋内に指定すればよかったか」

   「ここが一番わかりやすいかと思ったんだが、失敗だったかな」

古泉「いいえ、お気になさらず」

  「それより、早速ですが…話に入りましょう」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:02:33.74 ID:JawB+Swh0
古泉「涼宮さんの状態には…正直言って驚きました」

  「ある程度の予想は出来ていたのですが…やはり実際に本人を見て、その言葉を聞くと…衝撃ですね」

  「元の人格はそのまま残して、表現の変化一つでここまでの威力とは」

みくる「私も…涼宮さん、思ってることがそのまま出ると…なんて言うか…」

キョン「こう…普段とは別の逆らい難さがあるんですよ」

みくる「わかります…」

   「それに…かわいい///」

キョン「…否定はしません」

   「でも、このままってわけにもいかないんです」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:13:44.44 ID:JawB+Swh0
キョン「古泉…あれは、ハルヒ自身が望んだ結果なんだよな?」

古泉「ええ、昼間にも申し上げた通り…」

長門「あなたとの口論、それによる自己嫌悪、加えて以前から内在していたフラストレーション、それらの総合的な作用」

古泉「様々な欲求不満の結果として、涼宮さんが望んだひとつの形です」

  「ネガティブな原因ではありますが、願望の実現と言えなくはありません」

キョン「あいつが…望んだ形か」

古泉「ええ、繰り返すようですが、あくまでネガティブな形ではありますが」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:21:23.78 ID:JawB+Swh0
キョン「古泉、朝比奈さん、長門…」

   「ハルヒは…」

   「俺のことが…好き、なんだよな…多分」



古泉「…」

みくる「…」

長門「…わたしには、有機生命体の恋愛感情というものは詳しくはわからない。
   ただ、涼宮ハルヒからあなたに対して向けられている感情は、何か特例的なものであるように思われる」

みくる「うん…あとは…」

古泉「今日一日の涼宮さんを見て、ご自分で判断いただければ…」

キョン「やっぱり…そうなるんだよな」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:26:59.36 ID:JawB+Swh0
キョン「今のあいつは…そういうのも含めて、思ったことや感情が、そのまま外に出てる」

   「別にそれで悪いことっていうのは、今日一日過ごしてみてそんなになかったと思うし…」

   「正直、あいつにベタベタされて、悪い気はしないどころか舞い上がってる自分もいた」

   「今思うと、鼻の下伸ばしてみっともない限りだったんだけどな」

   「とにかく…ハルヒが自分を変えちまって、それに甘んじようとしてた部分があった」

   「情けない話だ」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:28:58.08 ID:JawB+Swh0
キョン「でも、あいつにとってそれは…本当に俺たちに見せたかったものなのかと思ってな」

古泉「…」

キョン「何でもこなすようで、変なとこで融通利かないからな、ハルヒは」

   「素直になったらなったで、片っ端から全部表に出しちまってるけど…」

   「誰だって、わかってほしいようで知られたくない、そんなことはあるもんだろ」

   「それに、いくらあいつが願ったからって、俺の方ばっかり何でも知っちまうのは、やっぱりフェアじゃねえよ」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:32:36.54 ID:JawB+Swh0
キョン「だから俺は…ハルヒの気持ちは、「いつものハルヒ」に任せたい」

   「あいつ自身が望んだ変化だとしても、やっぱり、俺にとっての涼宮ハルヒはあの口が悪くてすぐ無茶を言うハルヒだ」

   「改変なんて抜きのハルヒに、本人の望んだだけの感情で接してほしいんだ」

みくる「キョンくん…」

キョン「教えてほしい…俺はどうしたらいい?」

   「どうしたら…ハルヒを元に戻すことができる?」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:36:24.72 ID:JawB+Swh0
古泉「…話はわかりました」

  「…昼間お話ししたことは覚えていますか?」

キョン「今回の原因のことか」

古泉「ええ…涼宮さんが今回の改変を引き起こすに至った原因…
   一つは、あなたと言い争い、きつい言葉を投げたことに対する自己嫌悪」

  「そしてもう一つ…」

長門「あなたと口論を行うまでに、涼宮ハルヒは大きなフラストレーションを内包していたことが推測出来る」

みくる「涼宮さん、すごくカリカリしてましたよね。それも原因の一つじゃないかって」

キョン「確かに、俺と話しててどこか機嫌悪そうだったな。
    受け答え自体はいつもやってるようなことだったのに、妙に噛み付いて、突然へそを曲げて…」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:41:49.99 ID:JawB+Swh0
古泉「問題はそこです」

  「涼宮さんが、そこまで苛立っていた原因はなんなのか」

  「あなたのちょっとした言葉にも過敏になるほどの理由があるはずなんです」

長門「それほど大きな精神状態の変調であれば、今回の改変にもある程度影響しているものと思われる」

キョン「つまり、逆を言えば…」

古泉「ええ。その理由と、素直にならなければという切迫した心…
   その二つを解消できれば、涼宮さんを元に戻すことができるかもしれません」

みくる「色々思いつめてしまったのが原因だったら…それをほぐして安心させてあげれば、きっと」

古泉「そして…」

  「僕たちの中でそれができるのは、間違いなくあなただけです」

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 15:48:58.29 ID:JawB+Swh0
みくる「涼宮さんは、多分キョンくんが思ってるよりずっと、キョンくんのこと頼りにしてます」

   「私たちのことも大切に思ってくれてるけど、でも、キョンくんはもっと特別」

   「だから…」

古泉「改変の引き金を引くことにできたのはあなただけ…そして、その逆ができるのもあなただけです」

  「機関が言う「神」としての涼宮さんの、ではなく…涼宮ハルヒという一人の人間の「鍵」であるあなたに…」

  「全てを託します」

長門「可能な限りの支援は行う」



キョン「…すまない」

   「…それと、ありがとう」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 16:37:20.94 ID:JawB+Swh0
古泉「とはいえ…正直なところ、その「もうひとつの要因」が何だったのか…今は見当もつかない状態です」

  「自己嫌悪の方は閉鎖空間の異常などから想像がつきましたが…こちらはさっぱりで」

みくる「キョンくんが来るまでは、特別そんなにイライラしてるようには見えなかったんですけど…」

キョン「それを考えると、俺が原因になってると考えた方がいいのかもしれませんね…」

長門「その可能性もある。でも、そこまでの確実性はない」

キョン「しかし、そうじゃないとしたらさらにわからんぞ。どうしてあいつは…」

古泉「こればかりは何とも言いようがありません。判断材料が少なすぎます」

キョン「今のままじゃどうにもならないってわけか…」

古泉「残念ながら…」

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 16:38:04.72 ID:JawB+Swh0
キョン「やっぱり…それに関しちゃハルヒ本人から読み取るしかないのか」

古泉「そうなるかと。それも…恐らくはあなたに託す事になりますが…よろしいですか?」

キョン「自信はないが、やるだけやってみないことにはな。請け負うさ」

みくる「お願いします、キョンくん」

キョン「完璧ってわけじゃありませんけど、ハルヒの扱いには慣れてるつもりです。
    もし何かあれば、助けを求めるかもしれませんけど…」

長門「その時には、最大限協力する」

キョン「そう言ってもらえると助かるよ」

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 16:52:45.63 ID:JawB+Swh0
キョン「それじゃあ…今日できることはここまでか」

古泉「ええ、昼間と似たような結論にはなりますが…涼宮さんの様子を見て、そこから対応を練るべきかと」

キョン「何、自分が何をしたらいいかがわかった分だけ大きな進歩だ。助かったよ」



キョン「それじゃ、明日もあるし今日はもう帰るわ。
    色々、頭ん中でまとめとかないといけないこともあるしな」

古泉「重ね重ね、よろしくお願いします」

みくる「帰り道に気を付けてくださいね」

キョン「ええ、じゃ、また明日」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 16:55:47.28 ID:JawB+Swh0
長門「待って」

キョン「ん?」

長門「あなたの体に…平常時を一定以上上回るレベルの発熱と発汗が見られる」

  「…体調に異常は?」

キョン「ああ、大したこっちゃない。今日は色々ありすぎて疲れてるのかもしれん」

長門「そう…」

キョン「長門も帰りに気を付けろ…って言うまでもないか、お前なら」

   「それじゃ、またな」

長門「…」コクリ

140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:00:57.67 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン(…さて、長門にはああ言ったが…)

   (こりゃ、結構やばいな)

   (寝不足で、薄着のまま寒空の下で居眠りしてちゃそりゃそうか…)

   (………ま、ありゃしょうがねえか)



キョン「ただいまー…」

キョン妹「おかえりキョンくーん!」

    「…キョンくんどうしたの?汗すごいよ?」

キョン「いや…ちょっと疲れただけだ。構わなくていいからお前は早く寝なさい」

キョン妹「大丈夫?」

キョン「ああ、大丈夫だ。俺はもう寝るから、お袋に夕飯はいらないって言っといてくれ」

キョン妹「うん…」

    「そうだ、お母さん明日出かけるんだって。よくわかんないけど「ほーじ」だって」

キョン「あいよ…」

141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:04:39.21 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン(…あー…本格的に頭いてえな…きつい)

   (考えてみるとか言ったはいいものの…頭なんか回らんぞこりゃ)

   (…体調不良で頭も不調ってのは、こんなに良くないもんか…)

   (ハルヒも…こんな感じだったのかね…)

   (あーくそ…どうすりゃいい…どうすりゃ…)

   (………ちくしょう)

143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:06:02.34 ID:JawB+Swh0
―翌朝、キョン自室―

ピピッ ピピッ

キョン(38度…5分か…)

   (こりゃ…さすがに無理か。行こうとしてもぶっ倒れるのがオチだろうしな…)

   (こんな時に限ってお袋は不在…一人か。余計に厳しいぞ…)

   (肝心なときにこのザマか…任せろとか言っといってカッコつかんな…)ゲホッ

   (大人しくしてるしか…ないのか)

ガチャ

キョン妹「キョンくーん、行ってくるねー!寝てなきゃだめだよー!」

キョン「あー、わかった、寝てるからお前は早く行ってきなさい」

キョン妹「いってきまーす!」

キョン(あいつの元気を分けてほしいもんだ…まったく)

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:13:15.59 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~

チッ チッ チッ チッ チッ

キョン(時計の音だけやたらと気になるな…)

   (まだ…昼前にもならないか…)

   (…どうにもならないんだろうが…あー、どうすりゃいいんだか…)



ピンポーン

キョン(チャイム…宅急便か何かか?)

   (悪いが…今は起きて出られるような元気はないぞ…)



ピンポーン

キョン(またか…)

146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:17:00.85 ID:JawB+Swh0
ピンポーン

キョン(無理だっつーのに…)



ヴーッ ヴーッ

キョン(今度はメール…?)




From:涼宮ハルヒ

Sub:無題

本文:外!



キョン「…ハルヒ?」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:24:23.78 ID:JawB+Swh0
シャッ

キョン「外って、あいつ…」



ハルヒ「~!」ブンブン



キョン「いる…」

ガラッ

キョン「(ゲホゲホッ)待ってろ、今開ける!」

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:25:37.93 ID:JawB+Swh0
ガチャッ

キョン「お前…何しに来たんだよ…」

ハルヒ「何しにって、見舞い以外にあると思う?」

キョン「どうやって知ったんだ…」

ハルヒ「岡部がHRで言ってたのよ」

キョン「…学校は?」

ハルヒ「風邪をぶり返して病気早退よ」

キョン「どこがだ…」ゲホッ

ハルヒ「いいじゃない、見た感じ随分弱ってるみたいだし。大変でしょ?」

キョン「親がいたらどうするつもりだったんだ…」

ハルヒ「チャイム鳴らして上げてもらったわよ、もちろん。
    それにお母さんいないんだったら、なおさら大変じゃないの」

キョン「(ハァ…)うつるぞ…帰れ」

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:30:44.74 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「かかったばっかりだから大丈夫よ」

キョン「そういうもんじゃないだろう…第一、俺だって一応心配して」ゲホゲホッ

ハルヒ「あたしだって心配してんの。一人でいるのわかってて放って帰れないわよ」

キョン「…」

ハルヒ「…」

キョン「…わかった、上がってけよ」フラ…

ハルヒ「ほら」スッ

キョン「…?」

ハルヒ「肩、貸しなさいよ。フラフラじゃないの」

キョン「…すまん」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 17:31:49.64 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「で…熱はあるの?」

キョン「三十八度ちょっとだ…」

ハルヒ「高熱じゃないの…よく起きて歩けたわね」

キョン「お前が来たからだろうが…」

ハルヒ「悪かったわね。でも来てよかったわ、一人なんだもの」

キョン「…ありがたいとは思ってるさ」

ハルヒ「素直で結構ね。食事は?何か食べた?」

キョン「何も…こうだるいと、どうにも食欲がなくてな…」

ハルヒ「少しは食べないと、薬も飲めないし体も動かないわよ。お粥とかなら食べられそう?」

キョン「…少しなら」

ハルヒ「台所借りるけど、いい?」

キョン「すまんな」

ハルヒ「いいわよ、気にしなくて」

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:04:52.34 ID:JawB+Swh0
キョン(…)ハァ

ガチャッ

ハルヒ「はい、これ」ピトッ

キョン「(濡れタオル…)…ありがとう、気持ちいいな」

ハルヒ「これで少しは楽になるでしょ。ぬるくなったらかえてあげるから言いなさい」

   「お粥は今炊いてるから、もうすぐ出来るわよ」

キョン「(ゲホッ)何から何まですまんな…」

ハルヒ「だから、気にしなくていいわよ。あたしも原因の一部みたいなもんだし」

キョン「?」

ハルヒ「やっぱり寒かったんでしょ?昨日。あたしに上着貸して寝てたら、そりゃ風邪も引くわよ」

156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:06:48.75 ID:JawB+Swh0
キョン「…俺が勝手にやったことだ、おまえが気にするなよ」

ハルヒ「するわよ。あれで何もなきゃいいけど、実際こうやって寝込んでんだから」

キョン「…返す言葉もないな」

ハルヒ「逆にあんたが気にするんだったら、昨日あんたが言ったのと同じことでいいわよ」

キョン「ん?」

ハルヒ「上着貸した代金だとでも思って受け取っときなさい。それでいいでしょ?」

キョン「はは…あれは膝の分だろ?」

ハルヒ「あんたがしてほしければ、あれぐらいいつだってしてあげるわよ。
    だから、これは上着の分。そういうこと。あたしだって嬉しかったしね」

キョン「わかった…そういうことにしとこう」

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:14:30.29 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~

カチャ…

キョン「ふぅ…ごちそうさま。少し元気が出た」

ハルヒ「そりゃよかったわ。作った甲斐もあるってもんね。はい薬」

キョン「ん…」ゴクッ

   「…はぁ、いくらか落ち着いたな…」

ハルヒ「しばらく休んでなさいよ。寝てれば今よりは良くなるでしょ」

キョン「そうだな…ハルヒ、お前はどうするんだ?」

ハルヒ「…まだしばらくいてもいい?どうせせっかく仮病まで使ったんだし」

キョン「構わんが…俺は寝てるだけだぞ?」

ハルヒ「いいわよ、別に。もてなしてもらおうと思って来てるんじゃないんだから」

キョン「すまんな」

ハルヒ「じゃなくて」

キョン「ああ…ありがとう」

ハルヒ「よろしい」

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:18:30.60 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン「ん…」

ハルヒ「あ、目ぇ覚めた?」

キョン「ああ…俺、どれぐらい寝てたんだ?まだ明るいけど…」

ハルヒ「2,3時間ってとこよ。よく寝てたわ。具合はどう?」

キョン「おかげさまで、朝に比べたら随分良くなった。頭痛もだいぶ引いたよ」

ハルヒ「そ、よかった。念のためにもうちょっと横になっときなさい」

   「林檎、食べる?持ってきたやつ。よかったらむくけど」

キョン「ああ、もらうよ」

ハルヒ「包丁はさっき台所から借りてきたわよ。一つでいい?」

キョン「お前の分も含めて適当に頼む」

161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:23:33.93 ID:JawB+Swh0
キョン「…思い出すな」

ハルヒ「何を?」シャリシャリ

キョン「1年前のこと」

ハルヒ「! …」シャリ…

キョン「入院してたときにな、病室で…あのときは古泉だったけど、こんな風にリンゴを剥いてくれてな」

   「俺が寝てた時のこと…相変わらずのにやけ面で話してたもんだ」

ハルヒ「…そっか」シャリシャリ

キョン「そういやあの時も、お前はずっと病室にいてくれたんだよな。
    今もこうやって面倒見てもらって…いつか改めて礼をしないとな」

ハルヒ「うん…」シャリシャリ

163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:29:14.95 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「…」シャリシャリ

キョン「おまえが来てくれてよかったよ。体が弱ってる時に一人ってのは、どうしても気が滅入ってな…」

ハルヒ「…」シャリ…

キョン「…ハルヒ?」



ハルヒ「ねぇ、キョン…」コトッ

   「あんたは…あたしを置いてどこか行っちゃったりしないわよね?」

キョン「…どうしたんだ、お前…」

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:35:25.09 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「キョン…そうだって言ってよ…」

キョン「お、おい、落ち着けハルヒ。いきなりどうしたんだよ、何を言ってるのかわからんぞ」



ハルヒ「…怖かった」

キョン「…怖かった?」

ハルヒ「一年前…あんたが入院したとき」

   「声をかけても返事はしてくれないし、三日も眠ったままで」

   「キョンが死んじゃうんじゃないか、もう目を覚まさないんじゃないかって」

   「病室で横にいて、ずっと不安で…怖くて仕方なかった」

キョン「…」

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:40:38.26 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「あの時は、ちゃんと目を覚ましたけど」

   「最近になって、またこの時期になって、あのことを思い出して」

   「もしかしたら、ある日いきなり誰かがいなくなって、いつもみたいにみんなで集まれなくなっちゃうんじゃないかなんて思って」

   「み、みくるちゃんだって、も、もうすぐ、卒業、しちゃうし」ブルブル

   「あ、会えなく、なるわけじゃないけど、今のままじゃ、い、いられなくなるんだって」

   「う、ぐ、みんなで、いる時間が、なるべく欲しかった、だけ、なのに」ポロポロ

キョン「………」

ハルヒ「きょ、キョンには、キツイことばっかり、言っちゃうし」

   「その上、うぅ、一人で飛び出して、風邪まで引いて、馬鹿みたいだし」

   「あたしは、どうしてこうなんだろうって思ったら、も、もう、何もわかんなくなっちゃって」

   「不安で仕方なくなって」

   「う、あ、うぐ、うぅぅ~…」ボロボロ

キョン「ハルヒ…」

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:44:24.67 ID:JawB+Swh0
キョン(これが…こいつを追い詰めてたもの)

   (一年前の改変事件…苦労はしたけど、もう解決したことだと思ってた)

   (後処理も済ませて、過去のつじつま合わせもして、過ぎたことだと…)

   (でも…)

   (そうだよ…ハルヒは何も知らないんだ、当たり前だろ)

   (こいつにとっては、顔面蒼白になるほどショックな事件だったんだよな…)

   (俺にとっては過ぎた事でも、ハルヒはずっと、恐ろしい思い出として覚えてたんだ)

   (それが、今になってこいつを怯えさせてる)

   (…一年前、俺のことを心配しすぎたばっかりに)

   (…バカか俺は…何が扱いは慣れてるだ、何もわかってなかったじゃねえか)

169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 18:49:43.84 ID:JawB+Swh0
キョン「…ハルヒ」

グイッ

ハルヒ「え、わっ…」

ギュッ…



ハルヒ「え、ちょ、ちょっと、キョン…」

キョン「すまん」

ハルヒ「な、何、どうしたのよ」

キョン「気付いてやれなかった。お前のこと、わかってなかった」

   「気付いてやれなきゃいけなかった。お前が、それぐらいわかれって言ったときに」ギュッ

ハルヒ「…」

173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:03:09.79 ID:JawB+Swh0
キョン「大丈夫だ、俺はちゃんといる。いなくなったりしない」

   「朝比奈さんだって、卒業しちまったってお前の言う通り会えなくなるわけじゃない」

   「時間が経てば環境が変わるのは仕方ないけどな…」

   「それでも、お前から離れていったりはしないよ。古泉も、長門も」

ハルヒ「…本当に?」

キョン「ああ、本当だ。お前がそう望むんだったら、いつまででも傍にいてやれる。嘘じゃない」

ハルヒ「約束…してくれる?」

キョン「ああ。破ったら針千本でも万本でも飲んでやる。見事な一発芸にしてやるさ」

ハルヒ「…覚悟しなさいよ」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:05:56.28 ID:JawB+Swh0
キョン「それと…もう一つ」

ハルヒ「…なに?」

キョン「俺も、朝比奈さんも、長門も、古泉も…お前が不器用な奴だってのは知ってるよ」

   「いつもは自分に正直な癖に、言いたいことがまっすぐ言えなかったり、悪態ついてみたり…」

   「お前が滅茶苦茶言ったって、それが全てそのままのお前の気持ちじゃないってのは、わからなくはないさ」

ハルヒ「…うっさいわね」

キョン「いいから聞けって」

   「だから、な…自分の思うことなんて、何もかも表に出さなくたっていいんだ」

   「言いづらいこと、上手く言えないこと、あるんだったら言わなかったり遠回しだっていい」

   「お前が無理に言わなくても、お前の気持ちを汲めるようにしたい」

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:13:05.34 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「…それも、嘘じゃない?」

キョン「ああ。もしわかってなかったときには、いつもみたいに怒鳴り散らしてくれりゃいいさ」

ハルヒ「…針千本、だからね」ギュッ

キョン「万本でも十万本でもこい」



ハルヒ「キョン…」

キョン「ん?」

ハルヒ「ごめんね」

キョン「…じゃないだろ?」

ハルヒ「…ありがと」

キョン「なんてこたあねえよ、団長様のためだ」

178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:17:41.55 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「ねえ、キョン」グッ

キョン「なんだ」

ハルヒ「…わかってくれるのよね、あたしが考えてること」

キョン「出来る限りな。努力はするさ」

ハルヒ「叶えてみせてよ。今、あたしが願ってること」

キョン「今か…?急な上に難しい注文だな」

ハルヒ「…針千本」

キョン「はいはい、わかったよ…」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:25:32.67 ID:JawB+Swh0
キョン「俺の勘違いじゃなかったらいいんだけどな」


ハルヒ「…やってみりゃわかるわよ」


キョン「…いいのか?」


ハルヒ「あたしが思ってるとおりならね」


キョン「…風邪、うつるぞ///」


ハルヒ「…平気よ、かかったばっかりだから///」


キョン「…やれやれ」グイッ





…チュッ

184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:31:06.99 ID:JawB+Swh0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キョン「そろそろ夕方か…結構な時間だな」

ハルヒ「うん…そろそろ帰るわね」

キョン「玄関までくらいは送るぞ」

ハルヒ「あんた大丈夫なの?起きて歩いて…」

キョン「看病の甲斐もあってな、それぐらいならなんてことない」

ハルヒ「そう。じゃあお願いしようかしら」

186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:34:49.56 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「それじゃ、あたしは行くけど…明日までにしっかり休んで治すのよ?無理はしないこと!」

キョン「団長様の看病があったんだ、明日には綺麗さっぱり治ってるさ」

ハルヒ「そうだといいんだけど。クリスマスの準備だってあるんだから、全員いないと始まらないのよ!」

キョン「ああ、ゆっくり休んで明日から元気に登校するよ」

ハルヒ「本来ならそれが当然なの!団員の自覚を持って、しっかり団活に参加しなさいよね!」

キョン「了解了解。わかってるよ」

ハルヒ「じゃ、あしたね。ちゃんと寝てるのよ?」

キョン「ああ、また明日な」





ハルヒ「(クルッ)…来なかったら、死刑だからね!」

キョン(ああ、行くよ…死刑は嫌だからな)クスッ

187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:40:51.51 ID:JawB+Swh0
―同日、夜―

古泉『ええ…長門さんから僕にも報告がありまして。無事、改変は元の状態に戻ったそうです』

キョン「そいつはよかった。こっちも必死こいた甲斐があった」

   「終わってみればたった一日の改変か…大した事はないような気もするが、どっと疲れたな」

古泉『あなたはまだいい方ですよ。僕はこれから報告やら事後処理やらでてんてこ舞いです』

キョン「うるせえ、お前は少し苦しめ。人を覗いてニヤついてやがった罰だ」

古泉『そんなことは…んっふ、ないんですけどね』

キョン「嘘だな、間違いなく嘘だ。今度森さんか新川さんにあったらチクっとくから覚悟しとけ」

古泉『仕事のうちだったんですから勘弁してくださいよ…』

189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 19:43:54.39 ID:JawB+Swh0
古泉『しかし、何もわからなかった状態から一晩明けたら解決とは…一体どんな魔法を?』

キョン「何も大したことはしてねえよ。風邪ひいたら看病に来たから、そこで色々話しただけだ」

古泉『いつか、詳しくお聞きしたいものですね』

キョン「機会があればな」

   「…今回に限った話じゃないが…お前らの協力がなかったら解決できなかった」

   「ありがとうな、感謝してる」

古泉『お礼を言うのはこちらの方ですよ。実際解決したのはあなたですから』

  『では…まだ事務が残っていますので、そろそろこの辺で』

キョン「ああ、また明日な」

古泉『それでは』

191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:00:54.12 ID:JawB+Swh0
―翌朝、教室―

キョン「あ~、やっぱり十分に寝た日の朝ってのは違うな、体が楽でいい…よう国木田」

国木田「あ、おはようキョン。具合はもう大丈夫なの?」

キョン「ああ。一日でスッパリ治った。今は健康そのものだ」

国木田「明日から授業も半日だからね。実際いいタイミングで丸一日休んだんじゃない?」

キョン「かもしれんな。今日を乗り切ればもう楽なもんだ。テストの返却以外は、だが」

   「っと…」



ハルヒ「…」

キョン(ハルヒの奴、来てるのか。長門の話じゃ、もう元に戻ってるんだよな)

193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:20:23.54 ID:JawB+Swh0
キョン「よう、ハルヒ」

ハルヒ「あんたにしちゃ珍しく遅刻ギリギリじゃないのね」

キョン「ああ、よく眠れたんでな。健康的な朝だ」

ハルヒ「ちゃんと言いつけは守ったみたいね、いい心がけだわ」

キョン「団長様の死刑が怖かったからな、ちゃんと休んでたよ」

ハルヒ「団員たるもの、健康な体を保ってなきゃいけないのよ!本来なら風邪なんか引く事自体いけないの!」

キョン「その二日前に風邪引いて休んでたのはどこの誰だっけな」

ハルヒ「あれは元はといえばあんたが悪いんじゃない、バカキョン!」

196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:24:13.52 ID:JawB+Swh0
キョン「…ふむ」

ハルヒ「…なによ」

キョン「…いや、何でもない。ただ…」

ハルヒ「?」

キョン「なんか安心してな」

ハルヒ「…何いってんのあんた?」



キョン(改変の間の記憶や自覚症状はないのか…よくわからんが)

   (いや、まぁその方がいいのか、あいつにとっては。あんなこと思い出したらどうなるかわからんしな)

   (少し残念な気も…いやいや何を考えてるんだ俺は)

197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:31:08.06 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「何よ、変な顔しちゃって」

キョン「いや、何でもない。気の迷いだ」

ハルヒ「バッカみたい。もう一日くらい休んだ方がいいんじゃないの?」プイッ

キョン(ま…これぐらいの方がいいのか)

   (それに…俺自身が選んだことだしな)




岡部「おーい席つけー。HR始めるぞー」

199: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:33:05.70 ID:JawB+Swh0
―昼休み―

谷口「おうキョン、昼飯食おうぜー。悲惨な成績を慰め合いながらよ」

国木田「谷口、また赤点だったんだって?いい加減学習しなよ、二つの意味で」

谷口「ひでえ言いようだな。でも無駄だぜ、俺とキョンは赤点の輪廻からは抜けられないからな」

キョン「俺をお前と一緒にするんじゃない。お前は永久に赤点の畜生道にいろ」

国木田「どっちかっていうと修羅道の方がいいかもね」

谷口「言いたい放題言いやがって…」

200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:34:50.69 ID:JawB+Swh0
スッ…

ハルヒ「…」

谷口「お、涼宮…なんだよ、何か用か?」

ハルヒ「あんたに用なんかないわよ赤点」

谷口「…」

ハルヒ「これ」トン

キョン「ん?」

国木田「弁当箱…の、小さいヤツだね。タッパー?」

ハルヒ「…」スタスタスタ

谷口「…言うだけ言って行っちまった」

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:37:17.11 ID:JawB+Swh0
国木田「それ、中身は何なの?」

キョン「どれ…開けてみるか」



キョン「!!」

谷口「…なんだ?」

国木田「玉子焼き…だね。緑のは…ネギかな?」

谷口「なんだなんだ、愛妻弁当かよキョン!クリスマス前に見せつけやがって!」



ダッ

谷口「あっ、おいキョン!」

204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:39:50.33 ID:JawB+Swh0
キョン「おい、ハルヒ!」

ハルヒ「っ…」ピクッ

キョン「お前、あ、あれ…あの玉子焼き…」

ハルヒ「…甘いのより…好きなんでしょ、あんた」

キョン「!!」

ハルヒ「せっかくあたしが作ってあげたんだからね、ありがたく頂戴しなさいよ!」クルッ

キョン「…」



キョン「ハルヒ!」

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:41:47.62 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「…なによ」

キョン「今からでよければ…昼飯食わないか」

ハルヒ「!」

キョン「屋上が寒けりゃ、踊り場だっていい。どうだ?」

ハルヒ「…」



キョン「…ダメか?」



ハルヒ「………りなさいよ…」



キョン「え?」

206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/09(日) 20:43:27.73 ID:JawB+Swh0
ハルヒ「わかりなさいよ、それくらい!///」





おしまい

引用元: ハルヒ「わかりなさいよ、それぐらい!」