「3! 2! 1! せーのっ!」

パン! パン! パパンッ!!

「あけましておめでとーっ!!! そして」

「誕生日おめでとう! お姉ちゃん!」

「おめでとうダイヤ!」

「ダイヤちゃんおめでとう!!」

「みんな、ありがとう!」

「えへへ!これ見てお姉ちゃん!私ねマルちゃんと二人で──」


………

……


4: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:34:17.28 ID:NxzY4v/W
ダイヤ「………ん」パチ

「あ、起きてしまいましたか」

ダイヤ「……いつから?」

「今帰ってきたばかりですよ」

ダイヤ「…起こしてくれても良かったのに、手伝いくらいさせてください」

「たまにはいいでしょう、それに随分気持ちよさそうに眠っていたので」

5: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:34:59.74 ID:NxzY4v/W
ダイヤ「……」

「いい夢見れました?」

ダイヤ「……そうですわね」

ダイヤ「多分、私が今も望んでいたものなんじゃないかと」

ダイヤ「そんな気がしました」

6: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:35:46.65 ID:NxzY4v/W
「……」

ダイヤ「……今年はどうなんでしょうね」

「冬溶けの時期なんですよ、今は」

ダイヤ「だといいのですけど」

ダイヤ「……二年目、になるんですよね」

「あの子の話ですか?」

ダイヤ「ええ、切っても切り離せない話ですから」

ダイヤ「どちらにとっても…ね」

7: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:36:32.44 ID:NxzY4v/W


──内浦

浦の星女学院


「─以上が各部活動の報告書になります」

鞠莉「はーいお疲れ様生徒会長」

梨子「その呼び方はやめて欲しいんですけど」

鞠莉「あらごめんなさい、なんか懐かしくなって」

梨子「……まあ、別にいいんですけど」

鞠莉「それより梨子のほうこそ、そろそろ敬語やめたりしないの?」

梨子「無理です、理事長ですよ? 先生ですよ?」

鞠莉「お堅いわねー真面目ちゃん。だから推薦したっていうのもあるんだけど」

8: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:37:07.00 ID:NxzY4v/W
鞠莉「でも本当よく引き受けてくれたわよね」

梨子「色々思うところがあったので、それに……」

鞠莉「それに?」

梨子「…やっぱり何でもないです」

鞠莉「ふーん、怪しいわねぇ」

9: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:37:45.63 ID:NxzY4v/W
梨子「と、とにかく! これで今日の私の仕事は終わりですから! 失礼します!」

鞠莉「あ、じゃあ私も」

梨子「今日は理事長の仕事に専念するんでしょう!? 忘れたんですか!」

鞠莉「冗談よ冗談、みんなによろしくねーチャオー♪」ヒラヒラ

梨子「全くもう…」

10: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:38:32.68 ID:NxzY4v/W


バタン


鞠莉「……」フーム

鞠莉「さてさて……来たぞ学年ど真ん中」

鞠莉「いよいよシーズン2の始まりねえ…」

鞠莉「これからこの環境がどう変わっていくのか、またはずっと変わらないまま同じものが繰り返されるのか」

鞠莉「全員が気になるこの節目、一体どうなるのかしらね…」

鞠莉「スーパースターは」

梨子「今はルビィちゃんたちの話でしょ!!? アニメのことは置いてくださいよ!」バンッ

鞠莉「あら、梨子は虹ヶ咲のほうが気になるのかしら? 放映順はこちらの方が先だものね」

梨子「ああもう! いいから早く仕事に入りなさい!」

11: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:39:17.17 ID:NxzY4v/W


ワーギャー


曜「今日もいいように遊ばれてるね梨子ちゃん」

千歌「鞠莉ちゃんも鞠莉ちゃんで好きだからなーああいうの」

千歌「ま、それが息抜きになるなら別にいい気はするけど」

曜「両立って大変だからね」

曜「梨子ちゃんもそれ分かってるから、付き合ってるのかな」

千歌「半分本気の感じもするけどね」

曜「まあ確かに」

12: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:39:58.34 ID:NxzY4v/W


ガチャ


梨子「はぁーっ……」

千歌「お、戻ってきたお疲れー」

梨子「うん、本当に疲れた」

曜「これから練習だけど大丈夫?」

梨子「大丈夫だよ、いつものことだから」

梨子「気にしてくれてありがとう。曜ちゃん」ニコ

曜「……一応お水は取っといた方がいいと思うよ」

13: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:40:41.79 ID:NxzY4v/W
梨子「そうする、じゃあ行きましょうか」

スタスタ

千歌「……なんというか」ジーッ

曜「…なに」

千歌「この光景も見慣れてきましたなあ」

曜「だってさぁ……不意にくるんだもん」

14: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:41:18.97 ID:NxzY4v/W
千歌「いい加減慣れたら?」

曜「それが出来たら苦労しないってば…」

千歌「はー生徒会長からのギャップってやつですか」

千歌「もー梨子ちゃんのことになると駄目っダメだね曜ちゃんは」

曜「返す言葉もありません」

15: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:41:56.94 ID:NxzY4v/W
千歌「ああそうだ梨子ちゃんといえばさー」

曜「うん」

千歌「生徒会長になってから声大きくなったと思わない?」

曜「うーんどうだろう、言われてみればだけど」

「二人とも何やってるのー、早く部室に行くわよー!」

千歌「ほらね」

曜「あはは……確かにそうかも」

16: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:42:30.38 ID:NxzY4v/W





花丸「あっ来た。梨子さんお疲れさまずら」ペラ

梨子「ううん、ごめんね遅れちゃって……ルビィちゃんと善子ちゃんは?」

花丸「ランニング、もうすぐ帰ってくるはずだよ」

千歌「そっか、じゃあ戻ってきたら少し時間置いてそれから練習かな」

曜「だね……っと噂をすれば」

善子「あれ、もしかしてもう終わってた?」

曜「ううん、さっき来たところだよ」

17: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:43:15.71 ID:NxzY4v/W
ルビィ「梨子さんお疲れさま」

梨子「ルビィちゃんもね、タオル使う?」

ルビィ「うん、ありがとう」

善子「今日も練習よね?」

千歌「そだよ、今日のメニューはねー……」

18: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:43:47.98 ID:NxzY4v/W
花丸「……ふう」パタン


拝啓、アオちゃんへ

今は四月の中頃、マルたちは高校二年生になりました。

もうすでに廃校が確定しているこの学校、どうやらマルたちの代が最後のようで

新しく入ってきた一年生は一人もいませんでした。

それが少しだけ寂しかったりしたんだけど

何とか前を向いて毎日を過ごせていると思います。

19: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:44:28.55 ID:NxzY4v/W
スクールアイドル部のほうも、去年よりだいぶ雰囲気はよくなって

みんなの口数も増えてきたような感じがします。

ただ、それは前の三年生──果南さんとダイヤさんがここからいなくなったからっていうのも理由にあって

正直手放しには喜べない、複雑な気分です。

そんな中鞠莉さんだけは残って理事長を続行、その上なんとスクールアイドル部の顧問にまでなってしまいました

本人が言うには「この学校においての決定権は全て私にあるから問題nothing!」だそうで

ここまで来るともはや暴君だとマルは思います。心強いけど

でも仕事とか、大丈夫なのかなあ……?

20: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:45:23.61 ID:NxzY4v/W
Aqoursのリーダーは前と変わらずに千歌ちゃんが

副リーダー的な立ち位置は曜ちゃんがやっています。

梨子さんは鞠莉さんからの推薦で生徒会長に就任。

今はスクールアイドルと両立しながらで傍から見ていても忙しそうです。

どうして梨子さんが引き受けたのか、それは分からないけど

鞠莉さんとのやり取りは満更でもなさそうで

なんかそういうところもダイヤさんに似てきたなあと思う今日この頃です。

21: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:46:02.30 ID:NxzY4v/W
ルビィちゃんはいつも通り自分に課した目標を淡々とこなしていく毎日を送っているけど

最近は他愛のない会話もしてくれるようになって、ホッとしています。

それでもまだまだ遠いけど

なんとかマルと善子ちゃんの二人で歩み寄っていけたらいいなあって。

「花丸」

何かきっかけさえあればいいんだけど、ルビィちゃんが気になるような、惹きつけられるような何かが……

「花丸ってば!」

22: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:46:29.55 ID:NxzY4v/W
花丸「え?」

善子「あんたいつまでそこでボーっとしてるのよ」

善子「もう練習始まってるわよ」

花丸「わわっご、ごめん! すぐ行くずら!」

23: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:47:06.93 ID:NxzY4v/W
とにかく、今のマルたちはそんな日々を過ごしています。

まだそれぞれ抱えているものは色々あるけど

なんだかんだで充実した学生生活を送っているので

どうか心配せずにマルたちを見守っていてください。

また何かあったら教えるね。


─貴女の国木田花丸より


24: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:47:44.44 ID:NxzY4v/W


──   ルビィ「片割れのジュエル」 フェスライブ編   ──


25: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:48:40.30 ID:NxzY4v/W





曜「はいそこまで! 梨子ちゃん音楽止めて!」

カチッ

曜「フウーッ…みんなお疲れさま! どうだったかな」

善子「どうも何も、かなりしんどかったんだけど…」

花丸「マルも……」

千歌「でも凄いよ! 今の楽曲メドレー形式でやったダンス練習」

千歌「みんな全曲ミスなしで踊れてたじゃん!!」

梨子「前やったときは疲労で振り付けを間違えたり、タイミングが遅れたりしてたからね、自分のことなんだけど……」

26: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:49:12.39 ID:NxzY4v/W
曜「それだけ体に染みついてきたってことなんだよ!」

千歌「継続は力なりってやつだね!」

曜「そうそう!」

ルビィ「……」フゥ

梨子「ルビィちゃんも大丈夫? お水いる?」

ルビィ「うん、ありがとう梨子さん」

27: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:49:54.40 ID:NxzY4v/W
花丸「そういえば今も普通に話せるくらいには」

善子「息は整ってるわね、確かに」

千歌「うん! 花丸ちゃんも善子ちゃんもかなり良くなってきてるよ!」

曜「うんうん! これなら次のラブライブ結構いけるかも!」

ルビィ「……」

ルビィ「あの」

千歌「ん? どしたのルビィちゃん」

ルビィ「それは、多分無理なんじゃないかな」

28: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:50:27.09 ID:NxzY4v/W


─理事長室


鞠莉「……」カキカキ

鞠莉「……はぁ、少し休憩にしましょ」

鞠莉「さてさて、窓の外から見る景色はーっと」

鞠莉「おー今日も元気にやってるわねー運動部の皆さんは」

鞠莉「千歌っち達は今、ストレッチでもやってるのかしら」

29: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:51:14.55 ID:NxzY4v/W
鞠莉「…………」

鞠莉(去年と比べれば、地力は着々とついてきてる……チームワークにまだちょーっとだけ問題があるけど)

鞠莉(それさえ除けば実力的には十分、通用するとは思う)

鞠莉(贔屓目なしに見てもね、ただ……)

鞠莉「今のAqoursには決定的に足りないものがあるのよねえ……」ハァー

鞠莉「ルビィはもしかしたら、気付いてるかもだけど」

30: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:51:55.73 ID:NxzY4v/W
善子「……経験?」

ルビィ「うん」

善子「前の三年生が抜けて6人体制になったとか、そういう話じゃなくて?」

ルビィ「それもあるけど、ルビィたちにはライブの経験値が全く無いの」

千歌「ふーむ経験ですか」

曜「えっ、でもライブならそれなりにやってきたし、PVだって」

千歌「いやいや曜ちゃん、それはどうかな?」

31: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:52:26.58 ID:NxzY4v/W
曜「なんで?」

千歌「だってアレ結局身内の集まりじゃん、来る人達も私たちの知ってる人ばっかりだし、やり慣れてるっていうか」

千歌「自分たちのホームって感じしない?」

曜「それは、確かにあるかも」

花丸「じゃあ、PVのほうは?」

善子「PVはそれ以前の問題じゃない? まず土台が違うし」

花丸「というと?」

32: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:52:59.52 ID:NxzY4v/W
善子「何回も撮りなおして上手くいったものをまた編集してネットに上げるPVと」

善子「生の一発勝負でやるライブじゃ感覚も違ってくるって話」

善子「前者は納得いくまでやり直せるけど、こっちはそうもいかないからね」

善子「どっちもやったことあるから、あんたも何となく分かるでしょ?」

花丸「うん、でも善子ちゃん詳しいんだね」

善子「前に生放送配信で大恥かいたことあったから。ま、今話してる経験ってやつ?」

花丸「あーご愁傷様」

善子「そんな軽く流すように言うんじゃないわよ」

33: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:53:34.40 ID:NxzY4v/W
梨子「つまり、話をまとめると」

花丸「初めての会場や知らない人たちの前でライブをやったことが全然ないから」

花丸「それが経験の無さに繋がるってこと?」

ルビィ「うん」

曜「なるほどねえ、でも他所って言っても」

千歌「難しいところだよね、それはさ」

34: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:54:14.41 ID:NxzY4v/W
千歌「私達なーんにも当てがないんだもん」

曜「ねー」

千歌「観光客が来てくれたらいいけどそもそも内浦なんて何もないからそんな人集まらないしー!!」ウガー

曜「どうせアニメやドラマ効果でやってきたとしても一時的なもので口コミとか移住とか期待出来ないしー!!」

善子「そこ二人ネガティブキャンペーンやめなさい」

千歌「違うよ! せめて何々スタジオジャパンとか! そーゆーのあれば良かったのにって話だよ!」

曜「分かる! 私も気軽にオリンピックの会場とか行きたかった!」

花丸「煩悩が漏れ出ているずら……」

ルビィ「あと話が脱線しているような…」

梨子「…………」

35: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:54:59.83 ID:NxzY4v/W
梨子「──という話が昨日あったんですけど」

鞠莉「ふーん、そんなことがねえ。ちなみに最初に言ったのは誰?」

梨子「ルビィちゃんです」

鞠莉「あーやっぱり」

梨子「分かってたんですか」

鞠莉「薄々は。今でもそういうのに一番詳しいのはあの子だし」

36: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:55:32.83 ID:NxzY4v/W
梨子「鞠莉さんはそのことで何か考えてたんですか?」

鞠莉「前から検討はしていたんだけど、結構行き詰ってるのが現状ね」

梨子「原因は?」

鞠莉「えーそれ聞いちゃう? 言いにくいことなんだけど」

梨子「構いません」

鞠莉「…去年の東京のライブ大会0票とラブライブの一次予選敗退、からの活動休止」

梨子「!」

鞠莉「これが今になってかなり効いてきてる」

37: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:56:06.62 ID:NxzY4v/W
鞠莉「強豪とか、古くからある学校は、昔からの関係性や強くなるために必要なこととして」

鞠莉「縁のある他校と合同練習や合宿を行ったりするんだけど」

鞠莉「その他の学校とご縁を結ぶ機会が得られなかったのよ、うちは」

鞠莉「それが何でかって言ったら、さっき言った」

梨子「振るわない実績、ですか」

鞠莉「まあ、そういうことになるわね」

38: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:56:42.27 ID:NxzY4v/W
鞠莉「結果を出せてないから声なんて勿論かからない」

鞠莉「そうじゃなくてもやる気や情熱、つまるところスクールアイドルに本気であれば」

鞠莉「同志が目を付けてくれてっていうチャンスはあったかもしれないけど」

梨子「…Aqoursは活動を自粛」

鞠莉「That's right おかげでそっち方面も望み薄」

鞠莉「私が留学した際の休止も含めて二回、事情を知らない人たちからすれば」

鞠莉「何かあるたびに活動をやめる不真面目なグループだと思われてもおかしくない」

鞠莉「ぶっちゃけそれも間違ってないし」

40: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:57:15.14 ID:NxzY4v/W
梨子「……ごめんなさい」

鞠莉「責めてるわけじゃないわよ、それにさっきも言ったでしょ留学した件も含めてだって」

鞠莉「つまり原因の一端は私にもあるわけ、というか戦犯挙げようと思ったらキリがないわよ」

鞠莉「誰かしらやらかしているんだから、そうなってる以上これはAqours全体の問題なの」

鞠莉「分かったら切り替えなさい」

梨子「はい」

鞠莉「ん、それでよし」

42: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:57:51.59 ID:NxzY4v/W
梨子「でも実際のところどうすればいいんでしょう?」

鞠莉「他に考えられる線は一応、知り合いの知り合い紹介パターンかしらね」

梨子「? 自分たちの知り合いから他学校の関係者、若しくはそれに縁のある人を紹介してもらうってことですか?」

鞠莉「ええ、そんな感じ」

鞠莉「でもここではそれもキツイのよねえ」

梨子「どうして?」

鞠莉「村社会気味っていうのもあってか、そういった余所との繋がりが薄いのよ」

梨子「ああそっか、そうですよね」

43: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:58:28.31 ID:NxzY4v/W
鞠莉「顔見知りなら千歌っちや曜がたっくさん抱えてるとは思うけどねー」ハァ

梨子「じゃあ、部活のOBとかは?」

鞠莉「ん?」

梨子「ほら部活動をしていた人たちなら、まだ他校と関わっている可能性があると思うんですけど」

鞠莉「確かに、でも最近卒業した人たちの中でそんな子は」

鞠莉「いなかった……ような……」

鞠莉「…………ん?」

44: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:59:04.05 ID:NxzY4v/W
梨子「あの、何か心当たりでも「それだーーーーーーーーー!!!!」

梨子「なっ……んですかいきなり大声出して!!」

鞠莉「何で今まで気付かなかったのよもう! あー灯台下暗し!!」

梨子「ちょっ、勝手に話を進めないで教えてくださいよ!」

鞠莉「と来れば…即行動以外の選択肢無し!!」

45: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 19:59:55.40 ID:NxzY4v/W
鞠莉「ちょっと出てくるわ! 後お願い!」

梨子「だからっ人の話聞いて!」

鞠莉「梨子!」

梨子「なんですか!」

鞠莉「グッジョブ!」ビシッ


バタン


梨子「……なんなのもう~っ…!」

46: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:00:36.68 ID:NxzY4v/W


─それから二週間後


千歌「よーし今日の練習はここまで!」

曜「みんなお疲れさまー!」

善子「ルビィ、今日は残って練習でしょ」

ルビィ「え、うん」

善子「付き合うわよ、花丸はどうするの?」

花丸「ごめん、今日は先に帰るね」

善子「ん、分かっ……」

「ちょっと待ったああああああああ!!」

鞠莉「全員! まだ帰らない! 集合っ!!」

47: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:01:10.83 ID:NxzY4v/W
千歌「おー鞠莉ちゃん久しぶり! 最近全然見ないからどうしたのかと思ったよー!」

鞠莉「千歌っちおひさ~♪ 下準備に少し手間取ってね」

曜「下準備って?」

鞠莉「それは後のお楽しみ、そんなことよりも」

鞠莉「えー! 来週からゴールデンウィークに入るわけだけど千歌っち!」

千歌「はい!」

鞠莉「Aqoursの活動予定は!?」

48: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:01:47.36 ID:NxzY4v/W
千歌「んー、一応いつも通りの練習組んで、余った時間で衣装とか撮影とか」

鞠莉「そう、何もないのね!」

善子「話聞いてた?」

鞠莉「そんな何の予定もないあなた達にいいニュースを持ってきたわ!」

善子「ねえ顧問」

鞠莉「というわけで! みんなもちろん行くわよね!」

梨子「話の持っていき方が強引すぎる……というか」

花丸「えーと、行くってどこに?」

鞠莉「ズバリ! 北海道!!」

49: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:02:28.66 ID:NxzY4v/W
善子「はあ? 何でまたそんな北の果てまでわざわざ……」

鞠莉「昨年度のラブライブ優勝者、鹿角聖良と鹿角理亞」

ルビィ「──っ!」

鞠莉「その鹿角理亞がしっかりと引き継いだ新生Saint Snowのライブに」

鞠莉「なんと私たち招待されましたー!」

「招待ぃ!?」

鞠莉「そ、ご招待♪」

50: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:03:20.18 ID:NxzY4v/W
鞠莉「しかもそれだけじゃないわよ」

花丸「まだあるの!?」

鞠莉「あなた達にはそこでライブを披露してもらうから」

曜「私たちも!?」

鞠莉「そういう条件なのよ」

梨子(鞠莉さん、心当たりあったんだ)

梨子(でもSaint Snowの知り合いって……ううん、まさかね)

51: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:03:52.34 ID:NxzY4v/W
鞠莉「どうどう!? ちゃんと顧問っぽいことしてるでしょ!」

梨子「いや、してますけども」

曜「えっどんな手使ったの…?」

鞠莉「そんな窺わなくても正規ルートよ正規ルート」

鞠莉「ちょーっとツテを使っただけで」

花丸「すごく怪しいずら…」

52: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:04:21.57 ID:NxzY4v/W
ルビィ「けど……行きたいです」

ルビィ「私、行ってみたい」

千歌「…私も見てみたい、ライブ」

千歌「それにやってみたい、そこで!」

花丸・梨子「ルビィちゃん…」

曜「千歌ちゃんも…」

千歌「だってこんなチャンス滅多にないでしょ!」

ルビィ「大会以外で優勝チームのライブが見られるなんて機会、そうそうないから」

千歌・ルビィ「それを逃すなんてもったいない!!(です)」

53: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:04:53.46 ID:NxzY4v/W


ポン

ルビィ「! 善子ちゃん」

善子「いいじゃない、向こうももうそんなに寒くはないでしょ」フッ

善子「行くわ、私も」

鞠莉「他のみんなは?」

「……」

鞠莉「……決まりね」ニッ

54: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:05:35.09 ID:NxzY4v/W
鞠莉「じゃあリーダー! ビシッとよろしく!」

千歌「よおーし! 行くぞ北の大地ーーーーー!!」

千歌「そこで私たちは! えーっと……」

千歌「…とにかく行くぞーーーーー!!」

「おぉーーーー!!」

善子「勢い任せ感がありありと出てるわね」

曜「でもこの感じ、ちょっと久しぶりかも」

花丸「うん、確かに」

55: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:06:05.88 ID:NxzY4v/W
善子「楽しみね、北海道」

ルビィ「うん」

ルビィ「……あのね善子ちゃん」

善子「なに」

ルビィ「その、さっきはありがとう」

善子「ばか、そんなことで一々言ってたらキリないわよ」

善子(それに、当たり前でしょ…ルビィは気付いてないかもしれないけど)

善子(貴女からやりたいなんて言葉を聞くの、久しぶりだったんだから)

56: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:06:36.18 ID:NxzY4v/W
善子「気負いすぎないで軽く受け止めるくらいでいいのよ」

ルビィ「…そうかもね」クス

善子「!」

善子(作り笑い、じゃないわよね。今の)

ルビィ「どうしたの?」

善子「ううん……なんでも」

57: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:07:16.07 ID:NxzY4v/W


ワイノワイノ


鞠莉「Ohいいわねえ、いつもよりすこーしだけ、賑わっていて」

梨子「……」

鞠莉「あら、どうしたのかしら梨子」

梨子「鞠莉さんもしかして、こうなること見越してたんじゃ」

鞠莉「まさか、そんなわけないでしょ」

58: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:07:51.53 ID:NxzY4v/W
鞠莉「ただ、やれることはやっておかないとね」

梨子「ここにいるなら、ですか」

鞠莉「そゆこと、さあこれからまた忙しくなるわよ生徒会長さん♪」

梨子「……望むところですよ先生」ニヤ

鞠莉「梨子、あなた悪そうな顔出来たのね」

梨子「ほっといてください」

59: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:08:45.83 ID:NxzY4v/W


─東京


ピロンッ


果南「ん、鞠莉からラインだ……お?」

ダイヤ「どうかしましたか、何か変な文章でもきましたか?」

果南「いや、来週Aqoursが北海道に行くって」

ダイヤ「北海道って、あの人は何を考えてるんですか」

果南「なんでもSaint Snowのライブ見に行くとか」

ダイヤ「それは…大丈夫なんでしょうか?」

果南「どうだろう、そこは難しいところだけど」

「でも面白そうじゃないですか?」

60: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:09:41.74 ID:NxzY4v/W
果南「面白そうって、そちらさんの妹も絡んでるんだよ?」

聖良「フフッ、だからこそですよ」

聖良「あの子にもいい刺激になると思いますし」

ダイヤ(ああ成程、あのとき鞠莉さんからかかってきた電話の意図がようやく分かりましたわ)

ダイヤ(しかし……)

果南「上手い方向に転べばいいんだけどね」

聖良「心配ありませんよ、人を見る目がありますから理亞には」

聖良「彼女たちが真剣ならあの子もそれに応えるはずです」ズズ

61: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:10:21.47 ID:NxzY4v/W
果南「はいはいその節はどうもお世話になりました」

聖良「いえいえこちらこそ」

果南「案外図太いよね聖良は」

聖良「果南さんほどではないですけどね」

ダイヤ「……」

果南「どしたのダイヤ」

ダイヤ「いえ、最初の頃より随分仲良くなったなと思いまして」

62: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:10:49.14 ID:NxzY4v/W
果南「まあ、そうなのかな」

聖良「そうなんじゃないですか?……あ、これ飲みます?」

ダイヤ「…いただきますわ」

ダイヤ「……ふぅー」ズズ

ダイヤ(北海道、ね)

63: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/29(火) 20:11:38.76 ID:NxzY4v/W
ダイヤ(ルビィは大丈夫かしら)

聖良「やっぱり心配ですよね」コソッ

ダイヤ「!」

聖良「手回ししておきながら言うのもアレですけど」

聖良「いくつになっても、妹だもの」

ダイヤ「……ええ」クスッ

69: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:02:35.43 ID:8V9sNoZ0


数日後…


キーンコーンカーンコーン


千歌「終わったー!」

「明日から五連休だねー!」

「何して遊ぼうか?」

「私はねー! 家でテレビ三昧!」

梨子「みんな盛り上がってるわね」

曜「ゴールデンウィークなんて大体そんなもんだと思うよ」

70: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:03:14.51 ID:8V9sNoZ0
「千歌ー! 千歌たちは予定空いてる? 一緒に映画とか行かない?」

千歌「ごめん! 私達もう埋まってて行けないんだよー!」パンッ

「そっかー残念…」

「ねえ、何するの?」

千歌「旅行に行くんだ!」

梨子「違うでしょ」

71: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:03:47.92 ID:8V9sNoZ0
千歌「えーちょっとくらいいいじゃん」

梨子「駄目です」

千歌「ちょっとのちょっとも?」

梨子「ちょっとのちょっとも、リーダーがそんなのだと示しがつかないよ?」

千歌「う~…曜ちゃ~ん」

曜「ま、まあまあ。それは着いてからまた考えればいいじゃん、ね?」

72: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:04:23.41 ID:8V9sNoZ0
千歌「はーい分かったよ」

梨子「全く、曜ちゃんは千歌ちゃんに甘いんだから」

曜「あ、あはは…」

「よく分からないけど、なんか楽しそうだね」

千歌「うん! 今から行くんだと思うと楽しみでしょうがないよ!!」

梨子(千歌ちゃん、そんなに行きたいんだ)

曜(やっぱり…ただ単純にスクールアイドルが好きなんだよね千歌ちゃんは)

曜(初めて自分が夢中になれるものを見つけて、だから)

千歌「何てったって今年は旅館の手伝いをしなくていいんだからね!!」ニカッ

千歌「くぅーっ! 自由って素晴らしいー!!」

曜・梨子(あ、そっちね……)

73: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:05:01.72 ID:8V9sNoZ0
善子「ふう、やっと放課後ね。今日はなんか長かったような気がしたわ」

ルビィ「そうかな」

善子「何よ、ずっとそわそわしてたくせに」

ルビィ「そんなことないけど」

善子「あるわよ」

ルビィ「ない」

善子「ある」

花丸「別にどっちでもいいような」

善子・ルビィ「よくない」ズイッ

花丸「あ、そうですか」ヒキ

74: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:05:29.52 ID:8V9sNoZ0
花丸「で、でも放課後すぐ飛行機に乗って北海道へ行くなんてちょっと不思議な感じだよね」

善子「なんで?」

花丸「だって修学旅行とかでも普通は朝からだし」

善子「ああ、そういうことね」

ルビィ「理亞さんのライブはGW一日目からだから今日までに向こうへ着く必要があるの」

善子「……」

ルビィ「なに?」

善子「いや、別に」

善子「さ、私たちも早く行きましょ。もうみんな集まってるかもしれないし」

ルビィ「? うん」

75: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:06:03.85 ID:8V9sNoZ0


──


鞠莉「はーい全員集まったわね、じゃあ予定通り今から空港行くわよー」

鞠莉「到着は夜の7時くらい、その後は明日に備えてホテルですぐ…」

千歌「……」ジーッ

鞠莉「……9時までなら自由行動でいいわよ」ハァ

千歌「やったー!」

善子「流石は末っ子ね」

曜「ははっ私もそう思うよ」

76: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:06:55.00 ID:8V9sNoZ0
千歌「いやー飛行機なんて久々に乗ったよー、もう何年前かな?」

鞠莉「千歌っち、機内では静かにね」

千歌「はーい」

花丸「……」ホワー

善子「窓からの景色ってそんなに珍しいものだったかしら」

花丸「マル、飛行機に乗るの初めてだから」

善子「ああ、そういえばそうだったわね」

77: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:07:22.77 ID:8V9sNoZ0
善子「ルビィはどうなの?」

ルビィ「私も乗ったことないよ」

善子「ふーん、そう」

ルビィ「うん」ペラッ

花丸(うーん、平常運転……)

78: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:07:53.18 ID:8V9sNoZ0
曜「梨子ちゃんはどうなの?」

梨子「え?」

曜「ほら、東京からこっちに来たときとかさ」

梨子「ううん、私たち新幹線で来たから飛行機には」

曜「あ、そうなんだ」

梨子「……」

曜「梨子ちゃん大丈夫? 気分でも悪い?」

梨子「大丈夫、ただちょっと、眠たくて……」ウトウト

79: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:08:50.71 ID:8V9sNoZ0
梨子「」コテン

曜「ちょ、梨子ちゃん?」

梨子「……」スゥースゥー

曜「寝ちゃった、疲れてたのかな」ポンポン

曜(っていうか、顔近い……うわ、睫毛長いし髪サラサラだし)

鞠莉(ここのところ忙しかったものね、梨子はまだ会長になって間もないし)

鞠莉(色々溜まってたのかしらね、まあそれよりも……)

千歌「おお、あそこから青春のムードが!」

鞠莉「千歌っち駄目よ騒がしくしたら、ちゃんと大人しく見ていないと」ニヤニヤ

千歌「はいはーい了解」ニヤニヤ

クスクス  カワイイー

曜(なにこの生殺し状態)

梨子「……うぅん…」スヤ

80: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:09:23.92 ID:8V9sNoZ0


─札幌


千歌「着いたー!」

鞠莉「とりあえずホテルにチェックインして、荷物を置きましょう」

鞠莉「あとは時間まで各自自由でいいから」

千歌「はーい」

梨子「曜ちゃんごめんね、なんか迷惑かけちゃったみたいで」

曜「いや、私は大丈夫だから! 気にしなくていいよホントに!」

梨子「うーん、じゃあお詫びっていうのもなんだけど。今日は曜ちゃんに付き合うことにしようかな」

梨子「どこでもいいよ制服でもアミューズメントでも」

曜「本当!? えっと、じゃあまずはね……」

81: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:09:50.44 ID:8V9sNoZ0
花丸「千歌ちゃん、あれってもしかしてテレビ塔かな?」ユビサシ

千歌「おお! 生で見るの初めて!」

千歌「テレビ塔から見る景色って夜だと凄い綺麗なんだよね!?」

千歌「よーし花丸ちゃん、あそこ行こうか!」グイ

花丸「え、ちょっと……ずらぁーーー!!」

鞠莉「ちょっとあなた達ー! 時間のことちゃんと分かって……って、はあ」

鞠莉「善子」

善子「ん?」

鞠莉「お目付け役、GO 延長は一時間までなら良しとします」

善子「了解、全く甘いわね鞠莉も」スタスタ

82: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:10:48.77 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「ふぅー、さてと」

鞠莉「貴女はどうするの? ルビィ」

鞠莉「私と温泉で裸の付き合いでもする? なーんて」

ルビィ「いいですよ」

鞠莉「いいの!?」

ルビィ「汗かいてたし、それに」

ルビィ「梨子さんだけじゃなくて鞠莉さんも疲れてるでしょ」

鞠莉「!」

ルビィ「だからこういう時くらい、少しはゆっくりしてもいいんじゃないかなって」

鞠莉「……よく見てるのね、ルビィって」

鞠莉(まあ、だからこそ追い詰められて…今こうなってるわけだけど)ジッ

83: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:11:24.77 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「あの、どうしたんですか?」

鞠莉「どうもしてないわよ、私は」

ルビィ「?」

鞠莉「ただルビィが可愛すぎるってだけよ!」ガバッ

ルビィ「わわっ」ムギュ

鞠莉「さー行きましょ行きましょ! 北海道といえば温泉!」

鞠莉「ちゃんといいとこ取ってるんだから! レッツRelaxー!」

ルビィ「鞠莉ふぁん、抱きつきながら連れてかないでくだふぁい……」

84: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:12:06.04 ID:8V9sNoZ0





カポーン


ルビィ「なんか、空いてますね」

鞠莉「この時間帯なら夕食をとってる人もいるだろうし、何より今日は平日だから」

鞠莉「お客さん自体そんなにいないんじゃないかしら、明日からは混むだろうけど」

ルビィ「ラッキーってこと?」

鞠莉「そゆこと善は急げってやつね……あっつ」チャプ

鞠莉「ああでもいい……生き返る気分だわ~……」

ルビィ(もうだらしない顔になってる…)

85: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:12:35.51 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「ルビィもほら早く、いい湯加減よ~」

ルビィ「あ、うん」トテトテ

ドンッ

ルビィ「え?」

「痛っ……」

ルビィ「ご、ごめんなさい! あの、大丈夫ですか?」

「平気です、こっちもちょっと余所見していて……って」

「あなた……」

ルビィ「え、もしかして…」

鞠莉「あら?」

理亞「何でこんなところにいるの」

86: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:13:05.75 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「何でって、呼ばれたから来たのよ私達」

理亞「そういう意味じゃない」

鞠莉「別に狙ってこのホテルを選んだわけじゃないわ、単なる偶然。本当よ?」

理亞「……」

鞠莉「まあそんなことは置いといて一緒に入りましょうよ」

鞠莉「いつまでもそこにボーっと立っていると冷えちゃうわよ?」

鞠莉「それとも、一人でいるほうが心地よかったり?」

理亞「……入るくらい、別に構わないけど」ムッ

鞠莉「いらっしゃーい、ほらルビィも」テマネキ

ルビィ「は、はい」

87: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:13:36.81 ID:8V9sNoZ0


カポーン


鞠莉「フンフフ~ン♪」

理亞「……」

ルビィ「……」

ルビィ(何か話したほうがいいのかな)チラッ

理亞「…なに?」

ルビィ「な、なんでもない」

ルビィ(なんか、凄いことになっちゃったなあ…)

88: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:14:16.57 ID:8V9sNoZ0
理亞「……ハア」

鞠莉「随分お疲れみたいね」

理亞「別に、あなたには関係ない」

鞠莉「そうつれないこと言わないで、ね? 少しだけでいいから」

理亞「…明日のライブに向けて、リハーサルをやってたから。それだけ」

理亞「あと乗り物で移動するのは、歩くより疲れる」

鞠莉「へえ、ストイックなのね」

理亞「これくらい普通、そっちがだらしないだけ」

ルビィ「そんなこと」ムッ

鞠莉「メリハリが効いてるのが私たちの特徴なのよ、やるときはやってるわ」

89: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:15:38.25 ID:8V9sNoZ0
理亞「そんなこと言って明日のライブが大したことなかったら、承知しないから」

ルビィ「ならないけど」

理亞「どうだか」

ルビィ「絶対にならないもん、今度は失敗しない」

理亞「真剣にやっていればね」

理亞・ルビィ「……」

鞠莉「心配ないわよ、みんな張り切ってたから。それに」

鞠莉「私のお願いを聞いてくれた人の期待を裏切るわけにはいかないものねえ」

90: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:16:13.76 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「え?」

理亞「それは、あなたが何度もしつこく頼みにきたからだし、あと姉様に言われたからで」

理亞「私は期待なんてしていない」

鞠莉「そんなこと言いながら、ちゃんと話は学校側に通してくれたじゃない~私知ってるのよ?」

鞠莉「いつもムスッとしてて喧嘩腰でそれでいて話し方もキッツいのに可愛いとこあるわよね~♪」

理亞「急にくっ付いてこないで! あとどうしてそのこと知ってるの、また姉様?」

ルビィ(悪口をサラッと言われたことは気にしてないんだ…)

鞠莉「私これでも理事長兼スクールアイドル部顧問なのよ、事実確認くらいはするわ」

91: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:16:41.67 ID:8V9sNoZ0
理亞「……なんで姉様はこんな人を気にいったんだろう」

鞠莉「あら、私は特に気に入られてないわよ? それは多分別の人」

ルビィ「?」

理亞「はあ?」

鞠莉「ま、女の勘だけどね」

理亞「…何言ってるのか分からないけど、とにかく私はもう上がるから。のぼせるのも嫌だし」ザバッ

理亞「明日も早いから」

鞠莉「そう、付き合ってくれてありがとう」

鞠莉「次もよろしくね」

理亞「……ふん」

92: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:17:14.25 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「…行っちゃった」

鞠莉「ええ」

ルビィ「……理亞さんって」

鞠莉「うん?」

ルビィ「やっぱりあの大会のときから私たちの評価、変わってないのかな」

鞠莉「かもね」

ルビィ「……」

鞠莉「余計なことは考えない、目の前のことに全力で取り組む。ベストを尽くす」

93: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:18:51.98 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「!」

鞠莉「結局私たちが今出来ることって、それくらいなんじゃない?」

ルビィ「…うん」

鞠莉「フフッ、でもルビィがムキになってくれたの私はちょっと嬉しかったけどね」

鞠莉「やっぱりみんなのこと、ちゃんと好きなんだなって」

ルビィ「なんで? それって普通のこと、じゃないんですか?」

鞠莉「…そうね、変なこと言っちゃったわ。今のは忘れて」

鞠莉「あと、私たちもそろそろ出ましょうか……ちょっと、頭がくらっとしてきたわ」

ルビィ「鞠莉さん……浸かりすぎです」

94: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:19:34.13 ID:8V9sNoZ0





千歌「いやー絶景でしたなー!」

花丸「本当に綺麗だったね、もう一回行きたいって思うくらい」

曜「あー満足した! いっぱい汗もかいたしスッキリしたよー!」

梨子「フフッ、曜ちゃんずっとはしゃいでたから見てるこっちまで楽しくなっちゃった」

善子「ま、ここのところ練習続きだったからね。私もいい息抜きになったわ」

95: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:20:02.67 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「なんだ、結構早く帰ってきたのね」

ルビィ「おかえりなさい」

千歌「ただいまー! 私だって時間くらいちゃんと守るよ」

千歌「それとはいこれチーズケーキ!」

鞠莉「千歌っち気が利くじゃない」

千歌「まあね!」フフン

花丸「提案したのは善子ちゃんずら」

千歌「う……でも買おうって言ったのは私だし!」

善子「どっちでもよくない? それ」

96: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:20:47.91 ID:8V9sNoZ0
曜「鞠莉ちゃんたちは私達が帰ってくるまで何やってたの?」

鞠莉「温泉でルビィといちゃついてたわ」

善子「は?」ピク

梨子「ん?」ニコ

鞠莉「はい嘘です、超絶ジョーク」

ルビィ「でも一緒に入ったのは本当だよ」

ルビィ「気持ち良かったし、善子ちゃんたちもいってきたら?」

97: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:21:19.09 ID:8V9sNoZ0
曜「うーんでもまだ空いてるかなー?」

鞠莉「今の時間だとゆっくりはできないかもね」

千歌「不味いじゃん! 少しでもゆっくりするために急がなくちゃ!」

梨子「何それ、おかしいわね」クス

善子「言いたいことは分かるんだけどね」

花丸「それじゃあ行ってくるね二人とも」

鞠莉「いってらっしゃーい。あ、そうそう」

鞠莉「戻ってきたらみんなに重要な話するから、もう少しだけ起きててちょうだいね」

「? はーい」

98: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:22:08.21 ID:8V9sNoZ0


バタン


鞠莉「また二人っきりになっちゃったわね」

ルビィ「そうだね」

鞠莉「ん~、それにしても美味しそうねえ…ルビィはどう?」

ルビィ「今日はいいです、それより」

ルビィ「鞠莉さんに聞きたいことがあるの」

鞠莉「何かしら?」

ルビィ「聖良さんとのこと、気に入られてるとかどうとかって」

鞠莉「ああ、そういえばあったわねそんな話が」

ルビィ「あの、鞠莉さんはどうやって聖良さんと連絡とか協力して貰うことが出来たの?」

99: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:23:07.59 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「気になる?」

ルビィ「うん、だって聖良さんとも色々あったから」

鞠莉「確かに、なんでって思うわよね」

鞠莉「なら千歌っちたちが戻ってくる前にパパッと話しちゃいましょうか」パクッ

鞠莉「先に結論から言うと、私が梨子とライブのことで話し合ってたとき」

鞠莉「その流れで果南とダイヤが聖良と一緒に住んでたことを思い出した、いや気が付いたのよ」

鞠莉「それでちょっとダイヤにお願いして連絡先教えてもらって、その後は本人に直談判して無事協力を得られたって感じね」

鞠莉「以上、私が聖良と関わったきっかけおしまい」

100: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:24:29.28 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「お姉ちゃんからって……ううん、そんなことより」

ルビィ「お姉ちゃんって今果南さんや聖良さんと一緒に住んでるの!!?」

鞠莉「ルビィは何も聞かされていなかったの?」

ルビィ「上京するとだけ」

鞠莉「成程ね、あまり近況は家族に伝えていないと」

鞠莉「まあ私も果南経由でそれを知ったから、とりわけ話すことでもないと思ったのかしら」

鞠莉(ルビィに関していえば、梨子とのこともあるんだろうけど)

101: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:25:07.46 ID:8V9sNoZ0
ルビィ「お姉ちゃん、あまり自分のこと話さないから」

ルビィ「でもビックリしたぁ……果南さんはともかく聖良さんとなんて」

鞠莉「そうよねー私も最初気になってたから分かるわよその気持ち」

ルビィ「! じゃあ鞠莉さんは知ってるの!? どうしてそうなったのか!」

鞠莉「ええ、聖良から直接聞いたわよ」

ルビィ「あのっその話私にも教えてくれませ……んむっ」

鞠莉「ちゃんと話すから、それ食べてちょっと落ち着きなさい」

ルビィ「……」モグモグ

鞠莉「いい子ね、さて最初から話すとなるとそうね……」

鞠莉「聖良が言うには、三月の終わり頃……ある日バッタリとその女の子に出会ったそうな──」

102: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:25:41.93 ID:8V9sNoZ0
聖良『そうですね、あれは三月の終わり頃のことです』

聖良『その日漫画喫茶にいた私は、会計を済ませようと席を立ったんです』

聖良『そうしたらそこで偶然……』

鞠莉『ちょ、ちょっと待って、ネカフェにいたの貴女!?』

聖良『色々事情がありまして、それはまた後で説明します』

鞠莉『そ、そう…分かったわ』

鞠莉(全然想像つかないんだけど)

103: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:26:17.95 ID:8V9sNoZ0
聖良『続けますね、会計を済ませようとしたらそこで果南さんと会いまして』

鞠莉『果南と? ダイヤは?』

聖良『そのときは一緒にいなかったみたいです』

鞠莉(まあダイヤも行かなさそうだしね、そういうところ)

聖良『私としては何故この人がここにいるんだろうと思ったのですが』

聖良『それは彼女も同じだったみたいで……』

104: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:26:56.99 ID:8V9sNoZ0
聖良「……え?」

果南「ん? あれ、Saint Snowのお姉さんの方じゃん」

聖良「聖良です」

果南「そうそう聖良だった、何でこんなところにいるの」

聖良「貴女のほうこそ」

果南「私は暇つぶしで…」

聖良「ああその前に会計を済ませてもいいですか、後が閊えますので」

果南「しっかりしてるなあ」

105: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:27:32.41 ID:8V9sNoZ0
聖良「終わりました」

果南「うん。で、何でこんなところにいるの?」

聖良「いたら悪いんですか」

果南「違う違う、そんなイメージ無かったから意外ってだけ」

果南「それに聖良って確か道民じゃなかったっけ?」

聖良「よく知ってますね、上京してきたんです」

聖良「行きたい大学があって」

果南「へえ偶然、私たちもそうなの」

聖良「たち?」

果南「うん、私今ダイヤと一緒に暮らしてるんだ。ルームシェアってやつ?」

106: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:28:13.53 ID:8V9sNoZ0
果南「そっちは一人暮らし?」

聖良「……ええ、まあ」

果南「? なんか歯切れ悪いけど」

聖良「それは……その…でもこんなこと、言っていいのかどうか」

果南「何を迷ってるのか知らないけど、言ってみなよちゃんと聞くから」

聖良「……あのですね」

果南「うん」

聖良「実はそれ、まだ決まっていないというか……」

聖良「そのためのお金が無くなったというか…」

果南「……何それ、どういうこと?」

107: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:28:45.65 ID:8V9sNoZ0
果南「──財布を盗まれたぁっ!!?」

聖良「静かに! 声が大きいです!」

果南「そんなこと言ったって……え、なんで?」

聖良「数日前に厄介な人に後をつけられたことがありまして」

果南「ストーカー?」

聖良「はい、本人はファンだと言い張ってましたけどね」

聖良「私も東京の土地にあまり慣れていなかったから、人気のないところまで追い詰められてしまって」

果南「……どうなったの」

聖良「近くにいた人が警察に連絡してくれたみたいで何とか助かりました」

108: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:29:17.74 ID:8V9sNoZ0
果南「良かったじゃん。それにしても有名人っていうのも考えものだね」

聖良「いえ、そこで終わればよかったんですけど」

果南「ん?」

聖良「そのストーカーに迫られて気を取られている間に、別の人物に…その」

聖良「財布を抜き取られてしまって」

果南「……いやいや、そんな別の悪事が上手いこと連携するわけが」

聖良「逮捕された後分かったことなんですけど、その二人グルだったみたいです」

果南「……ああ、そういうことね」

聖良「お金はついでで身体が目的だったみたいですけど」

109: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:29:51.53 ID:8V9sNoZ0
果南「ふーん、そうなの」

果南(まあ確かに顔整ってるし、スタイルいいからなあー)ジッ

聖良「……こういう話したあとに人の身体ジロジロ見ます?」

果南「あ、ごめん…しかし踏んだり蹴ったりだね。その後どうなったの」

聖良「財布は帰ってきたんですけど、お金が全部……」

聖良「それにその日はお部屋を借りようと思っていて、敷金礼金用の費用を入れていたから……」

果南「うわ」

果南(なんか、思ってた以上に深刻な話じゃないこれ……?)

110: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:30:22.80 ID:8V9sNoZ0
果南「あれ……じゃあもしかしてここに来てた理由って」

聖良「……蓄えに余裕がないのでここで何とか凌ごうと」

果南「で、でもさ、今は学生のために敷金礼金ゼロの物件だってあるわけじゃん。そこ行けば」

聖良「全部埋まってました、この時期は倍率が高いらしくて」

果南「まあ、それは……そうだよね」

聖良「はい……」

果南・聖良「……」

111: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:30:50.01 ID:8V9sNoZ0
果南「……えーっと、そうだ家族とかに連絡は?」

聖良「出来ませんよ、入学金とか住むためのお金とか…色々援助してもらったのに」

聖良「その上まだ迷惑をかけるなんて……」

果南「出来ないってそんなこと言ってる場合じゃないでしょ、事情が事情なんだし」

果南「四月になったら大学だって行くんでしょ、そのときになってまでまだそんな生活続けてみなよ」

果南「みんなの憧れから一転、ただの笑いものだよ」

聖良「でもっ!」

果南「…………」

112: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:31:18.11 ID:8V9sNoZ0

…いい加減にしなよ本当に、さっきから分かったようなことばかりさあ!

あの子が、ダイヤがこれまでどれだけ苦労してきたか見てもいないくせにっ!!

そっちだって梨子ちゃんがどんなに辛い思いをしているかなんて考えたこともないでしょ!!

……っ……なんでそうなの

…がっかりだよ、一番最初に私に付き合ってくれた二人がそんなこと言うなんて

白黒はっきりつける前に少しは頭冷やせ!このバカっ!!


果南「……はぁー」

聖良「な、なんですか」

113: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:31:50.63 ID:8V9sNoZ0
果南「いいや、言っても聞かない頑固者っていうのは……どうしてこんなに面倒くさいのかってね」

果南「今の聖良を見て思った」

果南(千歌、大変だったんだろうな……)

聖良「なっ…! じゃあどうしろって言うんですか!」

果南「だから言ってるでしょ、家族に助けてもらいなよ」

果南「迷惑かけたくないって気持ちは分かるけどさ」

聖良「それが出来ないからっ「でもまあ」

果南「ご両親に頼ることがどうしても嫌っていうなら、聖良」

果南「私たちのところに来なよ」

聖良「…………え?」

114: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:32:19.66 ID:8V9sNoZ0
聖良「あの、それ、どういう」

果南「だから、一緒に住もうって言ってるの」スッ

聖良「ちょ、ちょっと待ってください……だってそんな」

果南「あーもしもしダイヤ? 今日大家さんいたっけ、ちょっと相談したいことがあってさ」

果南「新しい人来るから、まだ部屋一つ空いてたよね? 大丈夫かなって」

聖良「そんなこといきなり決めて、あの」

果南「誰って? あれ、聖良。そうSaint Snowの、うん」

果南「とりあえず今からそっち連れてくから、じゃあね」

115: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:32:57.87 ID:8V9sNoZ0
果南「よし」

聖良「よしじゃないでしょう!?」

果南「なんか問題でもあるの?」

聖良「それは……その」

聖良「だって…私、あなた達に対して……結構突き放した態度を取っていたのに」

果南「あぁーそれね」

聖良「何、考えてるんですか」

果南「だってほっとけないじゃん、今だって相当弱ってるし」

果南「でもとか、だってとかさ。いいでしょ別に」

果南「私がそうしたいって思ったんだから」

116: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:33:42.65 ID:8V9sNoZ0
聖良「果南さん……」

果南「あっ今名前呼んだね、松浦さんじゃないんだ」

聖良「っ!」

果南「名前呼びに変わったってことはつまり、前より親しくなりたいと思ってるってことだよね」

果南「イコール、聖良も受け入れてるってことだ」ニコ

聖良「な、なんですかその滅茶苦茶な理屈!!」

果南「いいからほら、早く行かないとダイヤに怒られる」ギュッ

聖良「つ、掴まなくても一人で歩けますからっ!」

果南「あ、そう?」

聖良「……全く」


……




117: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:34:16.44 ID:8V9sNoZ0
鞠莉『──成程ねえ、それで今に至ると』

聖良『はい、おかげ様で本当に助かりました』

鞠莉『果南も助かってるみたいよ、貴女の料理は美味しいって』

聖良『……私が来るまではレトルトばかりでしたからね、ダイヤさんも総菜で済ませていましたし』

聖良『不健康な生活はよくありませんから』

鞠莉『ふーん。ま、二人が元気そうで安心したわ』

鞠莉『教えてくれてありがとね、聖良』

118: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:34:51.28 ID:8V9sNoZ0
聖良『いえ、こちらの方こそ』

聖良『……あの』

鞠莉『ん~?』

聖良『二人から色々と事情は聞きました』

鞠莉『!』

聖良『私は…大会で言ったことは間違っていないと今でも思っていますし、後悔もしていないけれど』

聖良『それでも、あなた達のことを少し、誤解していたのかもしれません』

聖良『ごめんなさい』

119: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:35:31.80 ID:8V9sNoZ0
鞠莉『いいのよ、別に』

聖良『…ありがとうございます。ライブ、頑張ってくださいね』

鞠莉『ええ、この機会無駄にはしないわ』

聖良『フフッ、そうですね』

聖良『……あと』

鞠莉『まだ何かあった?』

聖良『いえ、大したことではないんですけど』

鞠莉『?』

120: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:35:59.28 ID:8V9sNoZ0
聖良『その、果南さんって、思っていたよりずっと……』

聖良『いい人、ですよね』

鞠莉『………………ん?』

聖良『……失礼します』


鞠莉『……切れちゃった』

鞠莉『…………ふーん』

121: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:36:35.78 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「──というわけ」

千歌「はえーそんなことあったんだ。聖良さん可愛そうー」

曜「でも良かったよね、なんとか上手くいったみたいで」

梨子「そうね、でもなんで一つだけ部屋が空いてたんだろう」

鞠莉「あーそれ多分借りるときに私用に取っておいたやつよ」

鞠莉「卒業するとき誘われたし、こっちでやることあるから断ったけど」

善子「成程、しかしあっちもあっちで色々あったのね」

花丸「東京って恐ろしいところずら…」

善子「全部が全部そういうところじゃないから」

ルビィ「いつの間にかみんな戻ってきちゃいましたね」

鞠莉「ちょっとお話し長かったかしら?」

122: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:37:09.72 ID:8V9sNoZ0
千歌「そうだよ、お話しといえば!」

千歌「鞠莉ちゃん私たちに大事な話があるって!」

曜「ああ言ってた言ってた、温泉と聖良さん達の話に夢中ですっかり忘れてたよ」

曜「それで一体何なの? その重要な話って」

鞠莉「ライブ巡りの内容について話しておこうと思ってね」

善子「ライブ巡り? 何よそれ」

123: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:37:44.19 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「明日から始まる五日間のGW中に北海道の各地を回ってライブを行うの」

鞠莉「アーティストの全国ツアーとかあるでしょ? あれの縮小版だと思ってくれていいわ」

善子「いやちょっと待って! GWまるまる使うの!?」

曜「それに私たちは招待されただけで、その条件としてこっちもライブをやるって話じゃ」

鞠莉「だから合ってるじゃない」

鞠莉「Saint Snowを含むスクールアイドルたちのライブツアーに招待されて」

鞠莉「あなた達もそれに参加、一緒にライブを披露してもらうってね」

善子「最初の説明で肝心なところが欠けすぎてるでしょ! そこまでコンパクトにまとめなくていいわ!!」

124: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:38:13.82 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「で、やる場所なんだけど」

善子「聞きなさいよ少しは!」

花丸「まあまあ善子ちゃん」

鞠莉「一日目は札幌、岩見沢。二日目は富良野から旭川」

鞠莉「三日目で稚内に行って、四日目は北見から釧路へ」

鞠莉「最終日にまた札幌に戻って、そこで解散ってところかしら」

千歌「はえーそんなに回るんだー!」

梨子・ルビィ(交通費とかどうなるんだろう………)

125: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:38:57.31 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「今のうちに釘を刺しておくけど、のんびり観光出来るとか思っちゃ駄目よ」

鞠莉「一日のほとんどは移動、ライブ、休息に使うからね。特に三日目の稚内」

千歌「でもさ、飛行機使えば早いんじゃないの?」

鞠莉「確かに北海道には空港が多いけど、実は道内同士で行き来できる空港ってそんなにはないのよ」

千歌「え、そうなの!?」

鞠莉「ええ、しかも新千歳と函館空港以外は日頃から便もそんなに出ていない」

鞠莉「各所に置いてあるのはどちらかと言えば、道外から旅行にくる県民のためで」

鞠莉「市から市への移動はもっぱら車かバス、それかJRを使うのがスタンダードかしらね」

「へえ~」

鞠莉「是非、今後の北海道旅行の参考にしてね♪」

126: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:39:31.82 ID:8V9sNoZ0
鞠莉「次にライブなんだけど、持ち時間は一組30分あたりの計2~3時間」

鞠莉「楽曲は新規でも既存の曲でも自由、なんなら他のアーティストのカバーでもいいわ」

善子「そこら辺は結構緩いのね」

鞠莉「ただし、あなた達には全会場で必ず一曲、未経験の初めてやる楽曲を披露してもらいます」

「!?」

鞠莉「そのための曲は既にリストアップしてるから安心してちょうだい、勿論振り付けの映像付きよ」

127: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:40:06.36 ID:8V9sNoZ0
梨子「えーと、つまり……移動中や他のグループがライブをやっている間にこれを覚えて、本番で歌って踊れと…?」

梨子(下準備って言ってたのも、多分このことよね……)

鞠莉「ご名答、流石は梨子ね」

ルビィ「…それって、予想外の事態にも対応できるようにってことですか?」

鞠莉「そっちも流石、要は適応力を試したいの」

鞠莉「あなた達が知らない場所で、やったことのない振り付けで、どこまで出来るのか」

128: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:40:38.13 ID:8V9sNoZ0
曜「そう言われても……」

花丸「うん…」

善子「……」

千歌「やってみればいいんじゃない?」

曜「千歌ちゃん?」

千歌「何でもやってみなくちゃ、どうなるかなんて分からないよ」

千歌「寧ろラブライブを目指している私たちがこんなことで一々怖じ気づいてどうする!! なんちゃって」

鞠莉「……」クス

129: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:41:12.78 ID:8V9sNoZ0
曜「…そうだね、よーしやるぞー!」

善子「考え方を変えれば、ここで今までとは違った糧が得られるってことだしね」

花丸「うん、いい方向に考えたほうがいいよね」

鞠莉「よし、固まったわね。じゃあ皆、とにかくこれだけは頭の中にいれておいて」

鞠莉「どんな形であれ、乗り切ること。以上!」

「はい!」

鞠莉「さ、話も終わったことだしそろそろ電気消すわよー」

鞠莉「おやすみー」

「おやすみ」

ピッ


……



130: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/30(水) 19:41:47.71 ID:8V9sNoZ0
現在の人物相関図。

no title

134: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:50:20.81 ID:32IawpxW


─翌日、GW1日目


ワイワイ ガヤガヤ


曜「うわー、結構人いるなあ…」

千歌「流石ラブライブ優勝チームって感じだね」

善子「それより自分たちの心配しなさいよ、今日しっかり出来るかどうかでその後の結果も変わってくるんだから」

千歌「う……」

曜「確かに…」

ルビィ「そうだね、でもそこまで気にすることでもないと思うよ」

善子「何でそう思うのよ?」

ルビィ「いつも通りの皆でいるほうが上手くいきそうな気がするから、かなぁ」

135: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:51:07.36 ID:32IawpxW
善子「ふーん。何にせよ私は気を抜くつもりはないから安心しなさい」

ルビィ「うん、私も信じてる」

花丸「善子ちゃんはこういうとき真面目だよね」

善子「ほっといて」

鞠莉「はい皆お話しはそこまで、そろそろ移動するわよ」

梨子「札幌公演の私たちの出番は二番目、始まってすぐだから」

梨子「勢いをそのまま、ううんもっと盛り上げるためにも頑張ろうね」

千歌「おー!」

136: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:51:45.37 ID:32IawpxW


会場、控え裏


「ありがとうございました!!」

ワー!!

「続いては……」

千歌「きたね、よしみんな行こう!」

千歌「みなさん初めまして! スクールアイドルAqoursです!」

「よろしくお願いします!!」

理亞「……」

137: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:52:21.65 ID:32IawpxW


ーーー♪  ~~♪♪


茶髪「うわぁ、やっぱり動きのキレいいなあ」

黒髪「だよね、正直Aqoursって言われてるほど悪くないんじゃないかなって私は思うんだけど」

茶髪「でも活動休止とかあったからねー」

黒髪「それね」

理亞「別に、そんなの関係ない」

茶髪「え?」

理亞「……」

黒髪「あ、あのー理亞ちゃ……理亞さん?」

138: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:52:53.45 ID:32IawpxW
理亞「あの人達が今まで何をしていようが、それはどうでもいい」

理亞「この場を盛り上げてくれるなら、結果を出せるなら、私は構わない」

黒髪「い、いやでも」

茶髪「理亞ちゃんが一番こき下ろしてたような……」

理亞「……ライブに私情を持ち込むな、姉様があの人達に言った言葉よ」

理亞「仮に私がどう思っていようとここに立った以上は、口に出すことじゃない」

黒髪・茶髪「……」

理亞「言っておくけど私はまだAqoursのことがあまり好きじゃないしむしろ嫌い、それでも」

理亞「来てくれた人たちを満足させられるなら、それに越したことはないわ」

理亞「そのための、北海道ライブなんだからね」

139: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:53:27.24 ID:32IawpxW
黒髪・茶髪「理亞ちゃん……」

理亞「無駄話は終わり、そろそろ準備しよう」

理亞「次は私たちの番でしょ」

黒髪「え? ……あー! いつの間にかもう終わろうとしてる!」

茶髪「それに何か自分たちのじゃない曲踊ってるし! もっと見とけばよかったー!」

理亞「そうでもないわよアレは、多分即興だろうし」

「ありがとうございましたー!!」

パチパチパチパチ!!


理亞「別に、ウケてたからいいけど」スタスタ

140: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:54:17.10 ID:32IawpxW
そして……


千歌「うう、疲れたー……でも」

千歌「1日目、なんとか終わったよー! みんなお疲れ!」

梨子「千歌ちゃんもね」

曜「なんかあっという間だったような、長かったような」

曜「ライブはいざ自分たちの出番が来たときは無我夢中でやってたけど、観客の人たちにはどう見えてたんだろう」

「好評だったんじゃないかしら? 少なくとも私の見た限りでは文句を言ってる人はいなかったわね」

千歌「あ、鞠莉ちゃん!」

鞠莉「みんなお疲れさま。良かったわよー! 特に花丸」

花丸「マル?」

鞠莉「最初から最後まで安定していて、とてもいいパフォーマンスだったわ」

141: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:54:50.80 ID:32IawpxW
曜「へえー! 花丸ちゃん凄いじゃん!」

千歌「やるねー花丸ちゃん!」

花丸「そ、そうかな」エヘヘ

善子「なんか意外ね、こういうので花丸が褒められるなんて」

ルビィ「でも、分かる気がするなぁ」

善子「?」

ルビィ「花丸ちゃん物覚えがいいから、自分の知らない曲や振り付けでも私たちよりは身に付けるのが早いんだと思う」

善子「まあ私も、あの子の記憶力がいいのは知ってたけどさ」

善子「でも入部したての頃は全然だったじゃない」

142: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:55:20.28 ID:32IawpxW
ルビィ「そのときは体力もついてなかったし、スクールアイドル自体にも慣れていなかったからね」

ルビィ「でもこの一年でそれも克服してきて、動きもどんどん良くなって」

ルビィ「前よりずっと、余裕ができたんだよ」

ルビィ「花丸ちゃんは気付いてないかもしれないけどね」

善子「……」

善子(やっぱりこの子は、スクールアイドルのことになると普段よりも活き活きしてるように見える)

善子(実際みんな、ルビィの言葉を今でも頼りにしてるし…私だってその知識を信頼してる)

善子(花丸も、元々自分にあった良さがここにきて芽吹きはじめた)

善子(二人とも、誰かの役に立っているっていうのに)

143: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:55:58.16 ID:32IawpxW
千歌「じゃあ初めての曲をやるときはさ! 花丸ちゃん中心で展開していかない!?」

曜「いいね! 次からはそうしようよ!」

曜「そっちのほうがもっと上手くいきそうだし!」

梨子「フフッ、花丸ちゃん大抜擢ね」

花丸「ええーっ!? そ、そんな…今までどおり千歌ちゃんが……」

千歌「いいからいいから!」

善子(なのに私だけまだ、何もない)

善子(何も出来ていない、ルビィのためとか言っておいてそれすら…っ…)

ルビィ「どうかしたの?」

善子「……いや、何でもないわ」

ルビィ「…なら、いいんだけど」

144: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:56:29.81 ID:32IawpxW
鞠莉「さ、次の宿泊場所に移動しましょ。明日も早いわよー!」

ルビィ「だって、行こう善子ちゃん」

善子「そうね」

善子(今はまだ、いいか。まずこっちに専念しなくちゃね)

千歌「よーし、この調子で2日目も頑張るぞー!……ん?」

ルビィ「あ」

「今日は来ていただいて本当にありがとうございました」

理亞「いえ、こちらのほうこそ。お忙しい中お越しいただいて」

「Saint Snowのライブ! すっごい楽しかった! 他のスクールアイドルの人たちも!!」

145: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:57:02.10 ID:32IawpxW
理亞「ありがとう」

「ねえねえ握手してー!」

理亞「あ、握手?」

千歌・ルビィ「……」

千歌「ルビィちゃん、気になるの?」

ルビィ「千歌さんだって」

千歌「いやー私は多分ルビィちゃんとは目的が違うと思うよ」

146: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:57:36.97 ID:32IawpxW
ルビィ「え?」

千歌「対抗心とか、そんな目で見てるわけじゃないし」

ルビィ「…そう見えるの?」

千歌「ちょっとだけね」

ルビィ「じゃあ千歌さんは、どうしてなんですか?」

千歌「ん?そーだなぁ…なんというか、理亞ちゃんってさ……」

梨子「千歌ちゃん、ルビィちゃん何してるの?早く来ないと置いてかれるわよ」

千歌「あっごめん! すぐ行く!」

千歌「ほら、ルビィちゃんも。続きはまた今度ね」

ルビィ「う、うん」

147: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:58:12.17 ID:32IawpxW


GW2日目


曜「アクアリウムで~♪」

イエー!!


黒髪「盛り上がってるねー」

茶髪「いいよねー恋アク」

「曜ちゃーん!!」

茶髪「もう固定ファンも出来てるし」

黒髪「曜さんは出来るでしょ、前からかなりの人気だったしね」

茶髪「まあね」

148: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:58:47.89 ID:32IawpxW
理亞「あなたたち、妙にAqoursに詳しいわよね」

黒髪「ま、まあ…」

茶髪「ライバル校の情報を集めるのも大切なことですし?」

黒髪・茶髪(い、以前ファンだったなんて言えない……)

理亞(以前ファンだったのね)

149: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:59:19.98 ID:32IawpxW


ー♪


黒髪「あれ、また他のカバー曲やるんだ」

茶髪「それにセンター変わってるね、昨日はリーダーがあそこにいたのに」

理亞「おかしなことでもない、昨日一番ズレていなかったのは彼女、今もそう」

理亞「だからあの子をセンターに配置するのは、理にかなってる」

黒髪(……なんだかんだで)

茶髪(よく見てるのよね…)

理亞「なに?」

黒髪・茶髪「何でもない何でもない」

150: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 18:59:55.66 ID:32IawpxW
千歌「ありがとうございましたー!!」

「ありがとうございました!!」

パチパチパチパチ!!

千歌「ふぅー2日目もなんとか乗り切ったね」

鞠莉「お疲れ、今回も上々の出来だったわよ」

曜「うん。今日は昨日よりもその感覚が分かるようになってきたよ」

曜「会場がワッと盛り上がるあの感じが、グワッッて直接来たような!」

151: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:00:33.50 ID:32IawpxW
千歌「分かる! そこにバーンっていってビシッと決めたら!」

千歌「ストーンってハマって気持ちいいんだよね!」

善子「理解しようにも擬音が多すぎて」

花丸「何を言ってるのかさっぱりずら」

梨子「ま、まあまあ……気持ちだけでも汲み取ってあげて」

「あ、あの! ちょっといいですか?」

152: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:01:02.22 ID:32IawpxW
鞠莉「はーい、何かごようかしら?」

「その……今日のライブでファンになりました!サインください!」バッ

曜「え? 私?」

鞠莉「今日のステージは曜が目立ってたものね」

千歌「さっすが曜ちゃん! もう現地のファン獲得かー!」

曜「えへへっ嬉しいなー! それくらいお安い御用だよー!」

「あ、ありがとうございます!!」

153: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:01:35.37 ID:32IawpxW
梨子「やっぱり凄いね、曜ちゃんは」

千歌「梨子ちゃんとしては複雑な心境ですかな?」

梨子「どうして? ファンが増えるのはいいことじゃない」

千歌「…どう思う、鞠莉ちゃん」ヒソ

鞠莉「そうねえ」

梨子「……」

鞠莉「割といい感じかもしれないわよ」

千歌「そうかなあ……ってあれ?」

154: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:02:02.97 ID:32IawpxW
「素晴らしいライブでした! 来てよかったです!」

理亞「ありがとうございます、次も機会があったら開催する予定なのでそのときは」

「はい!是非!!」

千歌「ほえー、ここでもなんだ」

曜「おーい千歌ちゃん! 終わったから戻ろうって鞠莉ちゃんがー!」

千歌「はいはーい!! 今行きまーす!」

155: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:02:34.96 ID:32IawpxW


GW3日目


鞠莉「よし、3日目も無事終了っと……」サラサラ

鞠莉「それにしても……」チラッ

曜・梨子「……」スゥースゥー

ルビィ・花丸「……」ムニャ

鞠莉「今日の大半はほとんど移動、分かってはいたけど」

鞠莉「それでも長時間のバスでの移動は、やっぱり退屈よねえ……」フワァー

156: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:03:19.32 ID:32IawpxW
千歌「……」

『こんな遠いところまで来てもらえるなんて、感激です!』

『応援してます!』

千歌(今日も、やってた)

善子「珍しいわね、いつも騒がしい貴女が物思いに耽っているなんて」

千歌「酷いなあ善子ちゃん、いくらなんでもそんな言い方はないよー」

善子「何かあったの?」

千歌「んっとね、別に嫌なことがあったわけじゃないんだけどさ」

千歌「ちょっとね、考えごと」

善子「私も、少しだけ」

157: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:03:49.16 ID:32IawpxW
千歌「善子ちゃんはいっつも何か考えてるもんね」

善子「いつもってわけじゃないわよ」

千歌「そう?」

善子「そうよ」

千歌「……悩み事があるならさ、相談しなよ」

善子「!」

千歌「別に私じゃなくてもいいからさ」

158: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:04:32.89 ID:32IawpxW
善子「顔に出てた?」

千歌「なんかルビィちゃんと似たようなこと言ってるなあ、少しだけね」

善子「……考えとく」

千歌「まあ善子ちゃんは私にそんなこと言われる筋合いないと思うけどね」

善子「そうね」

千歌「即答!? そこは建前でもそんなことないわよとか言うものじゃないの!」

善子「喧しいわね、ちょっと静かになっていたかと思えば結局これよ」

159: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:05:17.69 ID:32IawpxW
千歌「ああ酷い! 善子ちゃんのせいなのに私に全部押し付けるような言い方して!」

善子「元々の習性について言っただけで押し付けてはないでしょ!」

千歌「習性ってなに! すごい失礼だよそれ!」

千歌「仮にも私先輩! リーダー!! もう少し敬う姿勢を持ちなさい!」

善子「普段無礼講気取っておいてこういうときだけ先輩面するの!?」

千歌「切り替え自由だもん!」

善子「そんなスイッチ捨ててしまえ!」

鞠莉「ちょっとあなたたち、元気なのはいいけどもう少し大人しくしなさい」

鞠莉「ここバスの中よ」

千歌・善子「はい、ごめんなさい」

160: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:05:59.60 ID:32IawpxW


GW4日目


釧路


「以上を持ちまして、本日のライブは終了になります!」

「ありがとうございました!!」

ワーーー!!

「では最後に、締めくくりとしてSaint Snowの鹿角理亞さんから!」

「理亞さん、どうぞ!!」

キャーー!!  リーーーアチャーーーン!!  コッチミテー!


理亞(やりづらい……こういう空気、苦手)

161: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:06:30.82 ID:32IawpxW
理亞「え……っと、今回の北海道ライブツアーはこの釧路が最後になりましたが」

理亞「みなさん楽しんでいただけたでしょうか」

オーーーーーーー!!

理亞「今年からは姉の聖良に代わり、私が引き継ぐ形となりました」

理亞「鹿角聖良のファンだったという人も大勢いたかと思います。そのうえでこのGWという限られた期間の中で」

理亞「忙しくもお越しくださった皆様には感謝しかありません」

理亞「そして複数の会場のどこで何を披露するべきなのか、どうすれば盛り上がる構成になるのか」

理亞「私たちを含むスクールアイドル全員が考えを凝らした結果」

理亞「こうして成功に繋がったことを、大変喜ばしく……」


……


162: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:07:06.89 ID:32IawpxW





鞠莉「えーでは! 北海道ライブツアーでの成功を祝しまして!!」

「かんぱーい!!」

カランッ

千歌「んぐ……んぐ……ぷはーっ! 生き返るー!」

曜「焼肉最高ー!」ハムッ

ルビィ「美味しいね、花丸ちゃん」パクッ

花丸「うん、マル、幸せずらぁ……」モグモグ

鞠莉「どんどん食べていいわよー! 満足するまでいっちゃって!」

鞠莉「頑張った皆に私からのご褒美デース!!」

163: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:07:57.18 ID:32IawpxW
鞠莉「あ、すみませーん! これとこれ追加で!」

カシコマリマシタ

善子・梨子「……」

鞠莉「ほらそこ二人! もっと食べなさい!!」

善子「いや自分のペースでいいわよ」

梨子「食べ過ぎると後が怖そうだしね」

鞠莉「いいからほら! 野菜だけじゃなくお肉! ほら!」

千歌「そーだそーだ! ご飯ももっといけー!」

鞠莉「あんまり食べないとこっちのお肉もつかないわよ!」

善子「セクハラやめて」

梨子「猥褻です」

164: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:08:38.75 ID:32IawpxW


ワイワイ


曜「あはは、また絡まれてる」

ルビィ「でも二人とももっと食べたほうがいいっていうのは分かるなぁ、たまに心配になるもん」

曜「それは異論なし、ルビィちゃんはバランスよく食べるねー」

ルビィ「ずっとそういう取り方してきたから」

曜「食事もしっかりしてそうだもんね、黒澤家って」

ルビィ「うん」

曜「栄養管理がちゃんと出来てるのって羨ましいなあ、でも」

花丸「……」パクパクモグモグ

曜「花丸ちゃんみたいに美味しいものを幸せそうに食べるっていうのも、ある意味理想かもしれないね」

ルビィ「ですね」

165: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:09:19.91 ID:32IawpxW
善子「いやあれは食べ過ぎでしょ、消化スピードどうなってんのよ」

ルビィ「あれ、善子ちゃんこっち来たの?」

善子「逃げてきた」

曜「え、ということは……」

梨子「も、もう限界……」

曜「わー! 梨子ちゃん大丈夫!? 二人ともやりすぎだよこれ!!」

千歌・鞠莉「いやーつい」

曜「ついじゃないから!!」

166: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:09:55.57 ID:32IawpxW
善子「ほんと、毎日よく飽きないわよねあの人達」フフッ

善子「ルビィはどう? ちゃんと楽しんでる?」

ルビィ「うん、楽しいよ」

善子「心ここにあらずって顔してるわよ」

ルビィ「! やっぱり善子ちゃんには敵わないね」

ルビィ「……あのね。ここに来る前、理亞さんと少し話してて」

167: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:10:31.78 ID:32IawpxW


──


理亞「ふう……」

黒髪「お疲れさま、理亞ちゃん」

茶髪「最後の挨拶も問題なく出来てたよ」

理亞「ええ、無事に終われてよかった」

ルビィ「あの! 理亞さん……」

黒髪「あれ?」

茶髪「ルビィちゃんだ。Aqoursの」

168: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:11:14.47 ID:32IawpxW
理亞「……」

理亞「二人とも、先行ってて」

黒髪・茶髪「う、うん」スタスタ

理亞「で、なに? 私忙しいんだけど」

ルビィ「えと、まずはね、私たちを招待してくれたことに改めてお礼したいなと思って」

ルビィ「今回は、参加させてくれてありがとうございました」ペコ

理亞「そんなこと? それならさっきあなた達の顧問にも同じこと言われたんだけど」

ルビィ「私からも直接、言いたくて」

169: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:11:47.61 ID:32IawpxW
理亞「…他は?」

ルビィ「ライブ、凄かった……前に見たときよりずっと」

理亞「当然でしょ、言いたいことはそれだけ?」

ルビィ「え、うん」

理亞「何それ、馬鹿馬鹿しい」

ルビィ「そんな言い方……」

理亞「あれだけ私に煽られて、それでもここまでやって来て」

理亞「なのに、わざわざすることがお礼と褒めるだけ……あなた、私たちも負けないって宣戦布告すら出来ないわけ?」

ルビィ「!」

理亞「さっき話に出した顧問は言ってたわよ、あなたと違って私に堂々とね」

170: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:12:23.61 ID:32IawpxW
理亞「まだ去年の大会のときの方が威勢があったんじゃないの?」

ルビィ「それは……」

理亞「……ならこっちが宣言の手本を見せてあげる」

ルビィ「え?」

理亞「黒澤ルビィ、あなた今年の夏にある特別な行事を知ってる? 言っておくけどオリンピックじゃない」

ルビィ「ラブライブ!サマーフェスティバル2020のことだよね」

171: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:13:01.60 ID:32IawpxW
理亞「流石にそれくらいは知ってるのね」

ルビィ「認可が下りた全国の会場で各地のスクールアイドルがデュオ、トリオ、グループの三つの中から参加したい項目を選んで」

ルビィ「開催期間中、各部門で競いあうお祭り型のイベント…通称フェスライブ」

理亞「そう、今年のフェスは東京オリンピックの開催もあって去年よりずっと規模が大きい、開催期間もいつもの二倍」

理亞「ラブライブの大会を除けば、それこそ今年一ってくらいには盛り上がるスクールアイドル夏の祭典」

理亞「あなたたちは去年参加していなかったみたいだけど」

ルビィ「……」

理亞「今年も私は、デュオで参加するつもり。そしてそこでトップを取る」

ルビィ「!」

172: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:13:33.57 ID:32IawpxW
理亞「北海道の人たちはもう私たちのことを認めてくれている、だから今度は全国の人たちに」

理亞「姉様がいなくても、私はやっていけるっていうことをこのフェスで証明してみせる」

理亞「あなたたちが大人しく、のらりくらりとしている間にね」

ルビィ「─!」カチン

ルビィ「そんなことないっ!! 私たちだって!」

理亞「だったらそっちも証明すればいい、今度こそ参加して成果を上げてみればいい」

理亞「けど私は、仮に同じ舞台に立ったとしても」

理亞「意志の弱いあなたなんかに負けるつもりはないし、そのイメージすら微塵も湧いてこないけどね」

173: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:14:11.23 ID:32IawpxW
ルビィ「~~~~ッ!!」

理亞「それだけは言っておくから、さよなら」


スタスタ


ルビィ「……」

ルビィ「…………るよ」

意志の弱いあなたなんかに

ルビィ「わかってるんだよ……そんなの……」ギュゥ


──


174: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:15:08.55 ID:32IawpxW
ルビィ「─そこで言われたこと、ちょっとモヤっとしてたんだ」

善子「そっか……ねえルビィ」

ルビィ「なに?」

善子「明日帰ったらさ、久しぶりに私とデートしない?」

ルビィ「え? いいけど」

善子「私もね、今少し悩んでることがあってスッキリしてないのよ」

善子「でも貴女と一緒に全然関係ないこと思いっきりやって、楽しめたら」

善子「それだけで、また頑張れそうな気がするから」

175: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:16:00.74 ID:32IawpxW
ルビィ「…そうだね、私も」

ルビィ「善子ちゃんと一緒に買い物とか行きたい」

善子「じゃあ決まりね」

ルビィ「うん、楽しみにしてる」

花丸「ふぅー、ごちそうさまずら」

ルビィ「はい、お粗末さまでした」

善子「口のご飯粒、ちゃんと取りなさいよ」

千歌「あ、ちなみに今のごちそうさまはご飯の完食と二人のイチャイチャを見たのをかけた……」

梨子「説明しなくて、いいから…」

曜「梨子ちゃん無理しないで」

177: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/03/31(木) 19:24:20.39 ID:32IawpxW
補足

黒髪と茶髪って誰?という方のために説明しておきます
彼女たち2人はアニメラブライブサンシャイン2期9話にて登場した理亞のクラスメイトです


片方の髪の色は言ってしまえば茶ではありませんが
表記の都合上そうさせてもらっています

180: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:47:53.29 ID:6iDRsQEH


そしてGW5日目、最終日


曜「戻ってきたねー! 久々の新千歳!」

梨子「久々って言っても、まだ四日しか経ってないんだけどね」

鞠莉「それだけ濃密な時間だったってことよ、それも今日で終わりになっちゃうけど」

鞠莉「ねえ出発までまだ時間があるから、今のうちに色々回ってきたら?」

善子「そうね、今までそんな余裕なかったし」

ルビィ「クラスのみんなにお土産買っていこうよ」

181: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:48:23.57 ID:6iDRsQEH
千歌「ねえ鞠莉ちゃん、ちょっといいかな」

鞠莉「どうしたの千歌っち」

千歌「お願いしたいことがあって」

千歌「私、帰る前に函館に寄りたいんだ」

鞠莉「函館に?」

千歌「確かめたいことがあるの」

鞠莉「……いいわよ、私も同行するわ」

鞠莉「とりあえず私たちの分はキャンセル入れて、他の四人は梨子に任せておけば大丈夫でしょう」

千歌「ありがとう鞠莉ちゃん!」

182: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:48:59.12 ID:6iDRsQEH


─函館


鞠莉「で、千歌っちの確かめたいことって何?」

千歌「それは……」

ワーーー!!

鞠莉「? なにかしら」

千歌「ライブだ、Saint Snowの」

183: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:49:33.40 ID:6iDRsQEH
鞠莉「あら本当、よくやるわねツアー自体はもう終わったっていうのに」

千歌「……」

「ありがとうございました!」

アンコール! アンコール!

千歌「……鞠莉ちゃん、あれだよ」

鞠莉「なにが?」

千歌「私が確かめたかったこと」

千歌「ありがとう鞠莉ちゃん、おかげでハッキリ分かったよ」

184: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:50:10.44 ID:6iDRsQEH
千歌「……私、内浦の人たちに恩返ししたい」

鞠莉「What's? どうしたのいきなり」

千歌「今回のライブツアーとさっきの理亞ちゃんたちのライブを見て、思ったんだ」

千歌「私たち、あまり内浦の人たちに感謝とかしていなかったんじゃないかなって」

千歌「北海道に行く前も、何もないとか、人が集まらないとか、結局身内だとか」

千歌「そんな、自分たちのことしか考えていないようなこと言ってた」

鞠莉「……そうね、今思えば私も」

鞠莉「Aqoursの発展のためとはいえ、失礼なことを口にしていたかもしれないわ」

185: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:50:42.88 ID:6iDRsQEH
千歌「理亞ちゃんたちが来た時の地方の人たちの反応、私…ずっと見てたんだけどね」

千歌「皆嬉しそうで、本当に心待ちにしていたのが分かって……」

千歌「理亞ちゃんもその人たちの期待に全力で応えようとしてるのが伝わって、本当に凄いなって思った」

千歌「ただ単に優勝したからってだけじゃないんだ、理亞ちゃんは……いや聖良さんも」

千歌「この場所を、北海道のことを、大切に想っているから」

千歌「だからこんなに、応援してくれる人がいるんだよね」

明日のライブが大したことなかったら、承知しないから

鞠莉「……」

186: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:51:24.29 ID:6iDRsQEH
千歌「PVを作ろう、私たちがメインじゃない」

千歌「内浦の良さを知ってもらうためのPVを」

千歌「他のどんなことよりも、私は今それが一番やりたい」

鞠莉「……賛成、皆にも伝えましょうか。勿論帰ってからじゃなくて」

千歌・鞠莉「今すぐ!」

千歌「だよね!」ニコッ!

187: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:52:02.25 ID:6iDRsQEH





曜「たっだいまー!!」

むつ「おかえり! どうだった北海道?」

曜「最高だったよ! ね、梨子ちゃん!」

梨子「うん、すごく楽しかった」

よしみ「いいなあー私たちも行きたかったなあー」

いつき「ねー」

曜「あははっ! それでね急なんだけど」

梨子「皆に協力してほしいことがあるの」

曜・梨子「PV撮影で!」

よいつむ「???」

188: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:52:40.59 ID:6iDRsQEH
善子「全く、久々のデートだっていうのに」

ルビィ「ね、衣装はこんな感じのがいいかなぁ?」

善子「それだと地味じゃない?」

ルビィ「うーん、じゃあ他に良さそうなものは……」エーット…

善子(まさかPVで使う衣装選びに来るなんて、楽しいからいいんだけど)

ルビィ「善子ちゃん?」

善子「ほら早く決めるわよ、そんな調子じゃ先にお店が閉まるわ」

善子(それに)

ルビィ「えへへ、そうだね」

善子(ちょっとずつだけど、笑うようになってきたしね)ホホエミ

189: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:53:12.84 ID:6iDRsQEH
花丸「──っていう感じかなあ、GWであったことは」

花丸「それでね今は千歌ちゃんから連絡来て、内浦の人たちにも協力をお願いしながら」

花丸「PV作りの準備に取り掛かっているところずら」

『休む間もありませんわね』

花丸「うん、でもみんな楽しそうだよ。もちろんマルも」

『そうですか』

『ありがとうございます花丸さん、毎回こうして教えてくださって』

『鞠莉さんは忙しい身ですし、近況を聞けるのが貴女くらいしかいなくて』

190: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:53:59.27 ID:6iDRsQEH
花丸「ううん、気にしないで。マルは全然迷惑じゃないから」

『そう言ってもらえるとこちらとしても助かりますわ』

花丸「また何かあったら教えるね」

『はい、ではまた』

花丸「よし、マルも頑張らなくちゃ」

花丸「でもその前にこっちの方を済ませないとね」スッ


── 黒澤家之墓 ──


花丸「ただいま、アオちゃん」

191: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:54:36.43 ID:6iDRsQEH


それから二週間後……


ブーッ ブーッ

理亞「姉様から……もしもし」

『もしもし理亞? Aqoursの新しいPVはもう見た?』

理亞「見たけど」

『そう、流石に早いわね』

理亞「別にそんなことない、普通」

192: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:55:48.72 ID:6iDRsQEH
『なら、そのPVを見た人たちの評価は?』

理亞「それも確認した、どこも高く評価してる」

『まだまだ伸びるわよ、あれは』

理亞「……」

『肝心のAqoursが映っている時間はとても少なくて、映像のほとんどが内浦の魅力や景色で構成されてる』

『そういうの最近あまり見なかったから、余計目立ったのはあるかもね』

『でも私は、あのPVを見てもっと好きになったわね今のAqoursのことが』

『そんな感じの人、他にもたくさんいるんじゃないかしら』

193: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:56:18.04 ID:6iDRsQEH
『理亞、あなたはどう思う?』

理亞「そうね……まあ」

理亞「認めてあげなくもない」

『相変わらず厳しいのね』

理亞「姉様があの人たちに甘いの」

『それは否定できないわね、でも仕方ないでしょ』

194: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:56:47.85 ID:6iDRsQEH
『彼女たちには期待してるもの、あなたのライバルとして』

理亞「ライバル?」

『ええ』


理亞「……」カチッ

~♪

ルビィ『気持ちだけ…ほかになにもない?』

理亞「……ふん」

理亞「なればいいけど、本当になれるものなら」

195: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:57:17.82 ID:6iDRsQEH
鞠莉「みんなー! 朗報よー!」

鞠莉「ついに私たちのPVが急上昇ランク! 一位取ったわよ!!」

鞠莉「SNSでも大量拡散! 内浦の公式サイトのアクセスも凄い伸びだって!!」

千歌「お…」

曜「おお……」

千歌・曜「おおおおおおおおおおお!!!??」

千歌・曜「ぃ…やっっったーーーーーー!!」ダキツキ

ルビィ「ち、千歌さん、曜さん……苦しいです…」

善子・花丸「よしっ!!」ハイタッチ

196: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:57:47.64 ID:6iDRsQEH
梨子「よかった、本当に」

鞠莉「梨子は少し不安だった?」

梨子「そういうわけじゃないんですけど」

鞠莉「冗談よ」

梨子「またそうやって……」

197: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:58:33.47 ID:6iDRsQEH
鞠莉「夢で夜空を照らしたい、か……いい曲よね。本当に」

梨子「ありがとうございます。とは言っても私の功績なんてほとんどないようなものですけど」

梨子「私はただ、皆の気持ちを形にしただけですから」

鞠莉「それだけでも十分凄いのよ」

梨子「そうでしょうか」フフッ

梨子「…今回は、思っていた以上にいい収穫になったんじゃないですか?」

198: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 17:59:13.12 ID:6iDRsQEH
鞠莉「ええ、最初は経験を増やすため、成長のためって目的があったけど」

鞠莉「それよりも大事な、地元の人たちのことを考える気持ち」

梨子「はい、私たちが日々費やしていく時間の中で忘れかけていた大切なもの」

梨子「それをこの前のGWを通じて思い出させてもらいました」

鞠莉「改めてダイヤや聖良たちに感謝しなきゃね」

鞠莉「私にとってもあなた達にとっても、それぞれが自分自身のことを見つめなおすいい機会になったわ」

鞠莉「それに初めて、6人全員の気持ちが一つになった歌を歌えたと思わない?」

梨子「…っ……はい!」

鞠莉「いい笑顔ね、素敵よ」

199: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:00:00.99 ID:6iDRsQEH
千歌「よーし、この調子でもっと頑張っていこー!」

「おー!」

ルビィ(私も、練習頑張らなくちゃ)

ルビィ「ねえ善子ちゃん」

善子「ん?」

ルビィ「あのね、この後自主練しようと思ってるんだけど」

善子「……ふーん」

善子「ちょうどよかった、私もそのことでルビィに言いたいことがあったのよ」

200: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:00:29.11 ID:6iDRsQEH
ルビィ「え?」

善子「ルビィ、悪いけど私はしばらく貴女の練習には付き合えないから」

善子「ちょっとやることが出来たの」

善子「練習するなら一人か、他の人を誘ってちょうだい」

ルビィ「そ、そっか……分かったよ」

ルビィ「今までありがとうね、練習に付き合ってくれて」

善子「いいのよ別に、私が勝手にやってただけなんだし。じゃあね」

ルビィ「あ、うん……」

201: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:01:10.46 ID:6iDRsQEH
梨子「ルビィちゃん、どうかしたの?」

ルビィ「えっと…善子ちゃんを練習に誘おうとしたんだけど、しばらく一緒にはやらないって断られちゃって」

梨子「そっか、善子ちゃんが」

梨子「なら私が練習に付き合うわよ」

ルビィ「いいの?」

梨子「ルビィちゃんがよければだけど」

ルビィ「もちろん、嬉しいです」

梨子「よろしくね、そうだ終わったらケーキ食べに行きましょう。私のおごりで」

ルビィ「いいの!? ありがとう梨子さん!」

梨子「PVも上手くいったし久しぶりにルビィちゃんと二人だけになれたんだもの、景気よくいかないとね」ニコ

202: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:01:55.71 ID:6iDRsQEH
善子(梨子が一緒にやるんだ……なら大丈夫そうね)

曜「あれ、善子ちゃん今日は練習いいの?」

善子「いいえやるわよ」

曜「そうなの? でもルビィちゃんの姿が見えないけど」

善子「今日から別々でやるからね、私も相手を探しに来たところ」

曜「へえ~善子ちゃんのご指名は一体誰に「貴女よ」

善子「曜、私の練習に付き合ってくれない?」

曜「……私?」キョトン

203: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:02:26.30 ID:6iDRsQEH
鞠莉(それぞれが自分を見つめなおし、また新しく動き始めた)

ルビィ「」

鞠莉(片方は成長)

善子「」

鞠莉(もう片方は変化を求めて)

鞠莉(そのお互いの行動がこれからどんな形で交わっていくのか、誰にも分かりはしないけど)

204: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:03:11.51 ID:6iDRsQEH
千歌「花丸ちゃんラスト10本! 頑張れー!」

花丸「な、なんでマルいきなり走らされてるずら……」

千歌「私たちもなんかやったほうがいいと思って」

鞠莉「フフッ……全く、どこもかしこも」

鞠莉「羨ましくなるような青春かましてくれちゃって」

鞠莉(あなた達はそれでいい。迷っても、悩んでも、進み続けなさい)

千歌「おーい! 鞠莉ちゃんもこっち来なよー!」

鞠莉「いいわよ私は」

鞠莉「ちゃんとここで見てるから、ね」

205: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:03:53.78 ID:6iDRsQEH


─6月


東京


ダイヤ「はい、はい……そうですか。ええこっちも変わらず」

ダイヤ「え? ええ、そのつもりですけど……成程、分かりましたわ」

ダイヤ「こちらも楽しみにしています」

ダイヤ「はい、ルビィにもよろしく伝えておいてください……ではまた」

果南「花丸ちゃんから?」

ダイヤ「ええ、5月以降Aqoursは順調に一歩ずつ進んでいると」

ダイヤ「最近は他の学校とも一緒に練習を行ったりしているそうですわ」

果南「へえー、皆頑張ってるんだね」

206: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:04:27.73 ID:6iDRsQEH
果南「ねえダイヤ、夏休み入ったら向こうに帰るんでしょ?」

ダイヤ「それはもちろん」

果南「千歌たちにも顔見せに行こうよ、話したいこともあるし」

ダイヤ「そのことなんですけど、顔見せ程度では終わらないかもしれませんわよ」

果南「どういうこと?」

ダイヤ「先ほどの電話で夏休み合宿の協力を私たちにしてほしいと、鞠莉さんから言伝があったみたいで」

果南「あーそうか合宿ね、すっかり忘れてた」

聖良「忘れてるのはそれだけですか?」

207: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:05:01.10 ID:6iDRsQEH
果南「え?」

聖良「お昼ご飯、もう出来てますよ」

果南「本当だ、ごめんすぐ食べる」

聖良「全く、わざわざもう一回作ったっていうのに」

果南「ごめんって、美味しいよ聖良」

聖良「はあ……あ、そうだダイヤさん」

ダイヤ「何でしょう?」

聖良「先ほどAqoursのみなさんが合宿を行うと聞きましたけど」

聖良「こっちにもそのことで面白い話が来ていますよ」

ダイヤ・果南「?」

208: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:05:30.32 ID:6iDRsQEH
千歌「はい! 今日の練習はここまで!!」

「お疲れー!」


ーー♪ ♪♪♪


鞠莉「ん? 電話……ダイヤから?」

鞠莉「ハーイお電話どうも貴女のマリーでーす! あ、そういうのいらない?」

鞠莉「え? ええまだ皆いるわよ、今ちょうど練習が終わったところで」

「??」

鞠莉「ちょっと待って、皆にも聞こえるようにするから」

スッ

鞠莉「全員こっち来て、ダイヤから何か話があるみたい」

209: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:06:00.87 ID:6iDRsQEH
千歌「おおー! ダイヤさん久しぶりー! 元気だった!?」

『はい、千歌さんもお変わりないようで』

ルビィ「お姉ちゃん、大学の方はどう?」

『心配しなくても大丈夫よ、ルビィこそちゃんとしてる?』

ルビィ「うん、なんとか」

『そう、梨子さんもこの子の面倒を見てくれてありがとうございます』

『花丸さんから話は聞いていますわ、最近はよくルビィの練習に付き合ってくれているとか』

梨子「そんな、お礼を言われるほどのことじゃないです」

210: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:06:49.17 ID:6iDRsQEH
鞠莉「ダイヤ、そろそろ」

『そうですわね、世間話もいいですけど流石に本題に入りましょうか』

『さて、それでまずは一つ確認しておきたいことがあるのですが』

『皆さんは夏休み期間に行われるスクールアイドル選抜強化合宿のことをご存知でしょうか?』

曜「うん、鞠莉ちゃんから聞いたから知ってるよ」

曜「全国から各校1人ずつ選ばれた、計30人のスクールアイドル達で来月末の7月25日から」

曜「8月10日にまで渡る17日間!東京の体育館で行われる、超!長期合宿のことだよね!」

『ちょうが一つ多い気がしますが……まあそれで合っています』

211: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:07:27.71 ID:6iDRsQEH
善子「光栄なことにAqoursもその30校のうちの1つに入ってるのよね」

花丸「でもまだメンバーの誰が選ばれるのか、分かってないずら」

梨子「向こうの決定を待つしかないからね、こっちからは決められないし」

『ええ、本来はそのはずなんですけど』

梨子「え?」

鞠莉「なに、もしかして違うの?」

『はい、今回話したかったのはその誰が選ばれるかの件についてです』

212: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:08:17.38 ID:6iDRsQEH
『手短に話しましょうか、これは聖良さんから伺ったのですけど』

『彼女は合宿メンバー推薦者の内の一人に入ってるんです』

千歌「嘘! 聖良さん凄い!」

善子「でも考えてみれば聖良って前年度のラブライブ優勝者だし、当然っちゃ当然よね」

鞠莉「えっと、つまり私たちで合宿に行かせたい人を話し合いで決めて…その子を聖良に頼んで推薦してもらうってこと?」

『いいえ、その逆ですわ』

鞠莉「逆?」

『聖良さんが推薦したいAqoursのメンバーは既に決まっています』

『ただ、その最終的な判断はあなた達にも分かってもらえた上でしたいと、私はそう彼女から頼まれたんです』

213: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:08:54.15 ID:6iDRsQEH
千歌「聖良さんからの推薦……」ゴクリ

曜「一体誰が……」

梨子・善子「……」

『ではその推薦された人物を今から伝えますわね』

『……』

『ルビィ、貴女──』

『この合宿に参加してみる気はない?』

「!!」


ルビィ「え……私?」

214: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:09:46.44 ID:6iDRsQEH
花丸「わあ…ルビィちゃん凄いずらあ!!」

千歌「おめでとー!!」

鞠莉「congratulationルビィ!!」

ルビィ「で、でも……皆はいいの?」

ルビィ「それに夏休みにやるAqoursの合宿だって」

梨子「大丈夫よ、そっちは私たちに任せて」

善子「ルビィ、貴女がそんなこと気にする必要ないわよ」

善子「私はルビィの意見を尊重するわ、だから自分の気持ちに正直になって」

215: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:10:20.82 ID:6iDRsQEH
千歌「行ってきなよルビィちゃん!」

曜「私たちもこっちで頑張るからさ!」

ルビィ「善子ちゃん、みんな……」

ルビィ「…いく、行かせて」

『分かったわ。じゃあ向こうにもそう通しておくわね』

鞠莉「ならご両親の許可も必要よね、長期遠征になるわけだし」

鞠莉「ここは顧問として、私から黒澤の方に説明を…「いい」

216: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:10:58.52 ID:6iDRsQEH
鞠莉「え?」

ルビィ「いいよ、やらなくて」

ルビィ「全部自分で言うから」

鞠莉「…わかったわ、余計なことはしない」ニコ

鞠莉「というわけだから、そっちもよろしくね~ダイヤ♪」

『え、ええ…了解しました。ではまた』

鞠莉「チャオー」

217: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:11:33.51 ID:6iDRsQEH
ルビィ「私が、東京の合宿に……」

ルビィ(行くんだ、行けるんだ……!)

花丸「ルビィちゃん、嬉しそうだね」

善子「それはそうでしょ、こんな機会そうそうあるものじゃないし」

善子「ルビィにとっては私たちより尚更、興味が強かったんだから」

千歌「んーでもさ、どうして聖良さんはルビィちゃんを選んだんだろうね?」

曜「確かに、何か理由でもあるのかな?」

鞠莉「いいじゃないどっちでも、とにかく今はあの子を応援してあげましょう」

梨子「そうですね」

鞠莉「さ、私たちも来月に向けて気を引き締めていくわよー!」

「おーーー!!」

218: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:13:08.56 ID:6iDRsQEH


そして一ヶ月後……7月下旬


千歌「きっったーーーー!! 遂に来たよー! このときが!!」

曜「待ちに待った夏休み!! 突入であります!」ヨーソロー!

梨子「二人とも朝から元気ね……昨日あんなに夜更かししたのに」フワァ

善子「でもちゃんと集合時間には間に合うのね」

梨子「初日から遅刻は駄目でしょう」

善子「まあね」

花丸「あ、鞠莉さんが来たよ」

219: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:13:52.97 ID:6iDRsQEH
鞠莉「お待たせ、みんな集まってるわね」

鞠莉「さて、分かってると思うけど今日から夏休み」

鞠莉「そして記念すべき合宿の一日目! ということで」

鞠莉「あなた達をサポートしてくれるスペシャルゲストをご紹介するわ! さあさあご覧あれ!」

果南「や、みんな久しぶり」

ダイヤ「鞠莉さん、なんですかその前振りは」

千歌「おー! 生果南ちゃんに生ダイヤさん!」

梨子「千歌ちゃん言い方」

善子「こうして直接会うのは本当に久々ね」

曜「あれ、待ってその後ろにもう一人誰か……あ!」

聖良「お久しぶりです皆さん、私もこっちに来てしまいました」

220: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:14:22.57 ID:6iDRsQEH
花丸「せ、聖良さんずら!」

聖良「今回は私も皆さんの合宿に協力させてもらうことになりました」

聖良「よろしくお願いします」

千歌「こちらこそ! 聖良さんが来てくれるなんてすっごく心強いです!!」

曜「でもSaint Snowの方はいいんですか?」

聖良「もちろん一度北海道の方にも顔を出しには行きますけど、あちらには優秀なコーチもいますし基本はこっちを手伝うつもりです」

聖良「それに理亞には私よりももっと適任な人がいますから、心配いりませんよ」

千歌・曜「?」

221: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:14:58.86 ID:6iDRsQEH
ダイヤ「……」キョロキョロ

ダイヤ「ルビィは、いないみたいね」

梨子「ルビィちゃんならもう東京に行きましたよ」

ダイヤ「!」

梨子「昨日空港でみんなで見送ってきましたから」

ダイヤ「そうですか……」

梨子「多分、心配いらないと思いますよ」

ダイヤ「え?」

梨子「不安そうな表情じゃなかったので」クス

ダイヤ「梨子さん……」

梨子「きっと今頃、向こうで頑張っていますよ」

222: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:15:36.27 ID:6iDRsQEH


─東京


ルビィ「……」

ルビィ「ど、どうしよう……迷っちゃった」

ルビィ「ちゃんと地図を見ながら向かってるはずなのに……」

ルビィ「なんで東京ってこんなに複雑なのかなぁ……?」

ルビィ「えっと、とにかく何か目印を探して……あれ?」

理亞「……」ウロウロ

223: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:16:15.18 ID:6iDRsQEH
ルビィ「あの」ポン

理亞「ひっ!!?」バッ

ルビィ「やっぱり理亞さんだよね?」

理亞「黒澤ルビィ……っ…いきなりどういうつもり?」ギロ

ルビィ「ご、ごめんなさい、驚かせるつもりはなくて」

理亞「もういい、それより……なんでこんなところにあなたがいるの」

ルビィ「私はその、合宿に呼ばれて」

理亞「何、あなたも?」

ルビィ「じゃあ理亞さんも? ……ってそれはそうだよね、呼ばれないわけないもん」

224: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:16:57.39 ID:6iDRsQEH
ルビィ「でもそれならなんでここに? ……もしかして」

理亞「私は迷ってなんかない!!」

ルビィ「まだ何も言ってないけど」

理亞「……あ」

ルビィ「……えーっと、理亞さん」

理亞「なに」

ルビィ「一緒に行かない? もしかしたらそっちの方が早く着くかもしれないし」

理亞「……仕方ないわね」

225: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:17:30.61 ID:6iDRsQEH


……


ルビィ「で、ここを右に曲がって…」

理亞「違う、ここは真っ直ぐ」

ルビィ「いや右だよ」

理亞「だから真っ直ぐだって」

ルビィ「さっきもそれで間違えたじゃん!」

理亞「今度は合ってる! 真っ直ぐに進んで!」

ルビィ「ううん駄目! 曲がるから!」

理亞「ちょっと!」

226: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:18:07.19 ID:6iDRsQEH
ルビィ「……あ、あれ?」

理亞「だから言ったでしょ! 真っ直ぐ行きなさいって!」

理亞「何やってるの! 急がないと私たち合宿に遅れるのよ!!」

ルビィ「ま、まだ時間あるもん!」

理亞「だったらさっさとして!」

ルビィ「分かってるよ!」

227: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:18:48.84 ID:6iDRsQEH
そして数十分後……


バタバタバタ!


ルビィ「ここで本当に合ってるんだよね!?」

理亞「さっき見た! 間違いない!」

理亞「やっとたどり着いた!!」

228: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:19:37.39 ID:6iDRsQEH
ルビィ「でもまずいよ! 完全に遅刻しちゃってるよ!」

ルビィ「絶対もうみんな集まってるよねぇ!?」

理亞「当たり前! 初日に遅刻なんて考えられない!!」

理亞「あなたのせいで五分も遅れたでしょ!!」

ルビィ「理亞さんだって迷ってたくせに!!」

理亞「見えた! 多分あの扉!」


バンッ


ルビィ・理亞「すみません! 遅刻してしまいました!!」

229: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:20:20.72 ID:6iDRsQEH


シーーーン……


ルビィ・理亞「……?」


理亞(おかしい…遅刻してきたのは私たちだけなのに、これだけ静まり返ってるのに)

ルビィ(誰も私たちのこと見てない、注目されてないの?)

理亞(普通悪目立ちするはずなのに……全員、一体どこを見て……)

ルビィ(こんなに黙ってるんだろう……)

ルビィ・理亞「……!!?」

230: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:20:53.05 ID:6iDRsQEH
「あら、駄目よ初日から遅刻なんてしたら」

「今来た二人が最後みたいですね、これで全員集まりました」

「そう、じゃあそろそろ自己紹介といきましょうか」

理亞「う、うそ……なんで、こんな人が……ここに」

ルビィ「ほ、ほんとうに……本物……なの……?」

ツバサ「はい、今回この合宿の総責任者を務めることになりました」

ツバサ「元スクールアイドルA-RISEの、綺羅ツバサです。それと」

雪穂「その補佐を任されました高坂雪穂です。どうも」

231: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/01(金) 18:21:31.80 ID:6iDRsQEH
ツバサ「さて、こちらの自己紹介も終わったことだし、まず私から一言みんなに」

ツバサ「今回開かれたこの合宿は当然、あなた達のために用意されたものだけど」

ツバサ「私自身もここで過ごすひと夏の時間を有意義なものにしたいと思ってるわ、お互いにいい思い出を作りましょう」

ツバサ「勿論手抜きは一切しないから全員心して取り組むように」



ツバサ「そういうわけでこれからよろしくね、次世代スクールアイドル諸君!!」

234: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:19:56.30 ID:kCp06doH
「「「……………………」」」

ツバサ「……あら?」

ツバサ「ねえ雪穂ちゃん、なんか皆の反応が薄い…というより全くない気がするのだけど」

ツバサ「私の気のせいかしら」

雪穂「だから言ったじゃないですか、名前くらい公表しましょうって」ハァ

雪穂「あれは反応がないんじゃなくてビックリしすぎて固まってるだけですよ」

235: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:20:35.66 ID:kCp06doH
ツバサ「そうなの? 確かにサプライズ目的ではあったけど、まさか私もここまでとは思っていなかったわ」

雪穂「ご自分の知名度をもっとよく考えてください! 何の説明も無しにツバサさんがここに来て、しかも総責任者だなんて聞かされたら!」

雪穂「どんなスクールアイドルでも絶対! あんな感じになるんですって!!」

ツバサ「へえ、そこまで評価してもらえるなんて嬉しいわね」

雪穂「ツバサさん!」

ツバサ「フフッごめんなさい、以後気をつけることにするわ」

236: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:21:08.76 ID:kCp06doH
雪穂「もう……で、どうするんですかこの状況」

ツバサ「そうね、いつまでもガチガチに固まってもらわれても困るし」

ツバサ「……」

ツバサ「よし、こうしましょう」

パンッ

ツバサ「今からランニングを始めるわ! とりあえずこの体育館を10周するから私たちについてきて!」

雪穂「ええ!? 10周も!?」

ツバサ「緊張をほぐすにはまず体から、それにみんな忘れてるかもしれないけど」

ツバサ「この合宿はもうすでに始まっているのよ」

「!」

ツバサ「あなた達の自己紹介は終わった後にやってもらうから、初めはとにかくこの空気に出来るだけ慣れること!」

ツバサ「さ、動いて動いて! 雪穂ちゃんも!」

237: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:21:36.12 ID:kCp06doH





鞠莉「はい、じゃあ練習を始める前に改めて皆に確認しておくわね」

鞠莉「ズバリ、今の私たちの目標は何かしら? 千歌っち」

千歌「そんなの決まってるよ! 夏にやるフェスライブでいい結果を出すこと!」

千歌「いや! 目指すは断トツのトップ!!」

善子「また大きく出たわね」

鞠莉「いいじゃない、それくらい熱意があったほうが運営側も喜ぶわよきっと」

鞠莉「さて、今千歌っちが言った通り、私たちは8月から開催されるフェスライブに向けて」

鞠莉「この合宿を行うことにしたわけだけど、聖良」

聖良「はい、早速ですがまずは前回未参加の皆さんのために」

聖良「フェスライブの具体的な説明からしていきたいと思います」

238: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:22:16.16 ID:kCp06doH
聖良「フェスライブ、正式名称はラブライブ!サマーフェスティバル2020」

聖良「スクールアイドルなら誰でも参加することが出来る、夏の一大イベント。ファンの間ではフェスと呼ばれることもありますね」

聖良「内容は至ってシンプル、参加者全員が各会場でライブを披露しポイントを集めて」

聖良「その合計数で優劣を決める、たったそれだけです」

聖良「開催期間は8月1日から8月15日までの15日間になります、本来は一週間で終わる予定なのですが」

聖良「今年はオリンピックの開催もあり、こちらももっと盛り上げようという委員会の計らいの元、特別に通常の2倍の長さでやることになりました」

善子「ねえ聖良、ちょっと質問いいかしら?」

聖良「どうぞ」

善子「さっきポイントの合計数で結果を決めるって言ってたけど」

善子「そのポイントはどうやって集めればいいの?」

239: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:22:54.77 ID:kCp06doH
聖良「このイベントでは各会場にいる審査員の方と来場者、それとライブビューイング等で見ている視聴者さんがライブを評価する形になります」

聖良「評価基準は大まかに言えば、どれだけ会場を沸かせられたか、自分たちを満足させることが出来たか、この二点ですね」

聖良「もちろん技術やパフォーマンスも評価の対象にはなりますけど、なんといってもお祭りですから」

聖良「ラブライブ大会程の厳しい目線ではあまり見られないというわけです、まあそれはともかくとして」

聖良「その方々が参加者のライブを評価した結果、それが点数という形で表れ」

聖良「各参加者は表示された分のポイントを獲得できる。というのが一連の流れです」

240: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:23:33.64 ID:kCp06doH
聖良「そしてここからが重要なんですが、ライブを行うごとにそのポイントはどんどん積み重なっていくんです」

聖良「例えば1回目のライブで5000、2回目で6000のポイントを取った場合、累計の11000がその参加者の持ちポイントになります」

花丸「成程ずら、ということは」

花丸「会場のライブで最高点を出した人が必ずしも一番になれるってわけじゃないんだね」

聖良「そうなりますね、有利ではあるというだけで」

241: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:24:11.87 ID:kCp06doH
聖良「繰り返し言いますが、順位を付けてはいるものの本来これはお祭り用のイベント、全員で楽しむための企画なんです」

聖良「だからこそのポイント累計方式、実力至上主義ではなくどれだけ多くの人を楽しませたか、ここではそれが全て」

聖良「トップを目指すなら、まずはそのことをよく頭に入れておいてくださいね」

千歌「わっかりました!」ビシッ!

曜「しっかりと胸に刻んでおくであります!」ケイレイ!

聖良「フフッ、善子さんも今ので大丈夫ですか?」

善子「ええ、説明してくれてありがと」

聖良「はい。では最後に参加する方法ですけど」

242: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:24:45.63 ID:kCp06doH
聖良「このイベントには三つの参加項目があります、一つは2人組みのデュオ、二つ目は3人組のトリオ」

聖良「最後に4人以上で参加するグループ、このどれかを選択してエントリーすることになります」

聖良「一応補足しておくと原則スクールアイドルであり、条件さえ満たしていれば、他校のメンバーとも組むことが可能です」

聖良「ふぅ……説明はこんな感じでいいでしょうか」

鞠莉「バッチリ♪ ありがとう聖良」

243: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:25:23.65 ID:kCp06doH
鞠莉「さあ概要を理解してもらったところで、次は肝心のどの部門で参加するのか」

鞠莉「ここについて話していきたいんだけど」

鞠莉「実は私、そのことでちょっと考えていることがあるのよ」

聖良「いつもの皆さんなら6人で活動しているので、私はグループで参加するのが望ましいと思いますし」

聖良「そう提案したんですけど」

鞠莉「せっかくのお祭りなのよ、上を目指すのはいいけどだからっていつもと同じじゃつまらないじゃない?」

鞠莉「この機を逃すべからず! 普段ともっと違うことやりましょうよ!」

聖良「と、あなた達の顧問から熱い要望がありまして」

244: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:26:13.40 ID:kCp06doH
善子「…なんか、北海道のときも思ったけど」

梨子「鞠莉さんってそういうの好きね……」

千歌「いいじゃんそれ! 楽しそうー!」

鞠莉「でしょう!? 千歌っちならそう言ってくれると思ったわ!!」グッ

善子「そしてここぞとばかりに乗っかる我らがリーダー」

梨子「ま、まあそのおかげでここまで来られた部分もあるから…」

果南(あ、なんだろう今の一言で)

ダイヤ(梨子さんの苦労を察せたような気がしますわ……)

245: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:26:42.53 ID:kCp06doH
聖良「と、いうわけなのでその目的に合わせた練習スケジュールを組みました」

聖良「基礎トレーニングに遠泳、砂浜ダッシュを追加して」

聖良「その後はひたすら二人三人でのライブ練習です」

鞠莉「誰とでも、どの組み合わせでも息が合うように」

鞠莉「ひたすら練習で補って、体に沁み込ませてもらうわよ」

鞠莉「そうやってお互いを知り、理解し、支え合う」

鞠莉「それがひいてはチームの団結力向上につながる、と私は思っているわ」

鞠莉「それに、6人体制になってからはグループの練習ばかりだったし、こういうのは新鮮に感じるんじゃないかしら?」

246: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:27:17.18 ID:kCp06doH
善子「言われてみれば」

花丸「確かに……」

曜「うん、いいと思う!」

梨子「きっと前の合宿よりハードになると思うけど、でも」

千歌「絶対にやる価値があるよ!」

鞠莉「よし決まり! そうと決まれば早速始めるわよ!!」

鞠莉「夏の合宿! スタート!!」ピーッ

「おーーーーっ!!」

247: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:27:57.66 ID:kCp06doH
聖良「では最初のメニューは……」

鞠莉「頑張ってね、みんな」

果南・ダイヤ「……」

鞠莉「あら、二人ともどうしたの?」

ダイヤ「いえ、なんというかその」

果南「想像以上に顧問らしいことしてて度肝を抜かれたって感じ」

ダイヤ「ええ、話は聞いていましたけど実際にその様子を見るのは初めてでしたから余計に」

鞠莉「失礼しちゃうわね、私をなんだと思っているのかしら」

248: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:28:33.93 ID:kCp06doH
果南「そうだね、鞠莉はいつでも真剣に向き合ってるってこと、少し抜けてたかも」

ダイヤ「私たちもまだまだですわね」

鞠莉「分かればよろしい、ほら二人にもやってもらうことが沢山あるんだから」

鞠莉「いつまでも見る専決めこませないわよ!」

果南「オッケー、任せてよ」

ダイヤ「頼りにしてますわよ、先生」

鞠莉「ofcourse! 大船に乗ったつもりでいなさい!」

249: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:29:26.30 ID:kCp06doH





タンッ

ツバサ「はいランニング終わり、みんなお疲れさま!」

ツバサ「よくついてこられたわね、流石はここに選ばれたスクールアイドルってところかしら?」

「はあ……はあ……っ……あ、ありがとうございました…」

雪穂「流石はこっちの台詞ですよ、あれだけ速いペースで走っていたのに汗一つかいていないなんて」フゥーーッ

ツバサ「雪穂ちゃんも少し息が乱れてるだけって凄いわよ」

雪穂「そうでしょうか?」

250: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:29:56.31 ID:kCp06doH
理亞「はぁ…やっぱりツバサさん……凄い」

ルビィ「うん……そうだね…っ」

雪穂「私以外にもちらほらいますよ、そんな子が」

ツバサ「へえ……」

パンパンッ

ツバサ「みんなそのままでいいから聞いて! 今から少し休憩を取るわ!」

ツバサ「全員その間にしっかり息を整えておいてね、終わったら自己紹介に入ってもらうから」

ツバサ「そろそろあなた達のことも知りたいし、それに」

ツバサ「最初は緊張で動けなかったかもしれないけど、今はそんなことないわよね?」

「はい!!」

ツバサ「うん、よろしい」ニコ

雪穂「では10分間の休憩に入ります、水分を補給したい人はあちらにドリンクが用意されてるので……」

251: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:31:02.18 ID:kCp06doH


……


「青藍高校から来ました、篠宮あきるです」

「藤黄学園出身、綾小路姫乃です。よろしくお願いします」

「東雲学院からやってきた吉川瑞希です!」

「紫苑女学院、兵藤さゆりといいます」

「千歳橋高校……多々良るう…です」

「Y.G国際学園の蘭花アル、よろしくネ」


ツバサ「今ので最後?」

雪穂「ですね、これで30人分全員きっちり終わりました」

252: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:31:43.77 ID:kCp06doH
ツバサ「分かったわ、なら次は……うん」

ツバサ「じゃあ次! 二人一組のペアを作ってもらうわ!」

ツバサ「名前を覚えるためっていうのもあるけど、基本ここにいるのはそれぞれが別の学校からやってきた生徒たち」

ツバサ「全く知らない相手と一緒に練習するというのは、それだけでいい経験になるわ」

ツバサ「この機会に学べるものは全て学びなさい!」

ツバサ「それと、合宿中は殆どその組んだペア同士で行動してもらうから」

ツバサ「そのことも視野に入れた状態で、慎重に選んでね」

雪穂「では皆で話し合って、各自組み合わせを決めてください」

253: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:32:32.06 ID:kCp06doH


カクカク…  シカジカ…


理亞(この中から、一人……)

ルビィ(ちゃんと考えなくちゃ……)

ツバサ「あ、そこの二人は入ったら駄目よ」

ルビィ・理亞「っ!!?」

ツバサ「遅刻したペナルティ、あなた達は他のみんながペアを決めるまでこっちで待っててもらうから」

ルビィ・理亞「え……」

ルビィ(ちょっと待って……それってつまり……)

理亞(必然的に、私はこの子と……)

ルビィ・理亞(ペアになるってこと……!?)

254: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:33:05.60 ID:kCp06doH
ツバサ「全員組み終わったわね、じゃあ今日はここまで!」

雪穂「いいんですか? まだ午後の2時過ぎですよ」

ツバサ「いいのよ、今日は元々顔見せで終わるつもりだったし」

ツバサ「みんなもこの後は自由にしてもらって構わないわ」

ツバサ「ただし、明日からは本格的に練習を始めるからそのつもりでね」

ツバサ「以上、解散!」

「「「ありがとうございました!!」」」

255: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:33:36.56 ID:kCp06doH
ルビィ「……」

理亞「……」

ルビィ「……なっちゃったね、ペア」

理亞「そうね」

理亞「……一つだけ言っておくけど」

ルビィ「うん」

理亞「足だけは引っ張らないでね」

ルビィ「っ…なんでそういう言い方ばっかりするかなぁ!」

理亞「そういう言い方しないと分からなさそうだから」

ルビィ「そんなことないもん!」

理亞「あるわよ!」

256: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:34:23.63 ID:kCp06doH
雪穂「向こう、なんか言い合ってますけど」

ツバサ「まあ文句はあるでしょうね、半ば強制的に決められたものだから」

ツバサ「でもそれはあの二人の自業自得、割り切ってもらうしかないわ」

ツバサ「罰も与えずに、なんて他の子に示しがつかないもの」

雪穂「それは、そうかもしれませんけど」

ツバサ「時には厳しく律することも大事よ、それより雪穂ちゃん生徒たちの資料持ってる?」

ツバサ「もう一度目を通しておきたくて」

雪穂「はい、それならこっちに」

257: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:34:52.89 ID:kCp06doH
ルビィ「……あっ」

理亞「今度はどうしたのよ」

ルビィ「ツバサさんと雪穂さん、行っちゃう」

理亞「それが?」

ルビィ「まだちゃんと謝ってない、追いかけて謝らなくちゃ遅刻したこと」

理亞「……正直、意見が合うのは気に食わないけど」

理亞「あなたの言う通りね」

理亞「行くわよ」

ルビィ「うん」

258: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:35:27.13 ID:kCp06doH
ツバサ「で、明日からの予定なんだけど……」

「あの!!」

ツバサ・雪穂「ん?」

理亞「今回はこの合宿に呼んでいただき、ありがとうございます!」

ルビィ「それと遅刻して、申し訳ありませんでした!」

ルビィ「改めまして浦の星女学院二年生! 黒澤ルビィ!」

理亞「函館聖泉女子高等学院二年生! 鹿角理亞!」

ルビィ・理亞「これからよろしくお願いします!!」

259: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:36:11.63 ID:kCp06doH
雪穂「あ、はい。よろしくね」

ツバサ「いいわね、確かに遅刻はしたけど……礼儀正しい子は好きよ」

理亞「ちょっと、合わせないでくれる? 声が被って邪魔なんだけど」キッ

ルビィ「そっちこそ、私が先に言おうとしたんだよ?」ムッ

理亞「はあ?」

ルビィ「なに?」

雪穂(ま、また喧嘩?)

雪穂(なにこの二人組……凄い不安になるんだけど)

260: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:36:47.79 ID:kCp06doH
ツバサ(へえ、お互いが敵視している…言うなればライバル同士のコンビってやつかしら?)

ツバサ(この感じを見るに互いにパートナーとしては相性が悪い、というか最低ラインだと思うけど……)

ツバサ(どっちも基礎能力は上々、向上心も申し分なし)

ツバサ(うん。折角なんだし、一組くらいこんな組み合わせがあってもいいかも)

ツバサ「あははっ! この合宿、思ったより楽しくなりそうね」

雪穂「笑ってる場合ですか!?」

ツバサ「大丈夫よ雪穂ちゃん、あの二人きっと上手くいくから。根拠はないけどね」クスクス

雪穂(こっちも不安になってきたよもう~……)

261: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:37:18.44 ID:kCp06doH
─宿泊施設、食堂


ワイワイ  ガヤガヤ…


ルビィ「……はあ」

理亞『いい? 黒澤ルビィ』

理亞『私はもっと上にいくために、更に高いところを目指すためにこの合宿に来たの』

理亞『しかも指導してくれる人があのA-RISEのツバサさんなら尚更……私はこのチャンスを逃すわけにはいかない』

ルビィ『そんなの私だってそうだよ、理亞さんだけじゃない』

理亞『あっそう、とにかくあなたが何をしようが勝手だけど』

理亞『私の邪魔だけはしないでね』

ルビィ『また…っ…! 私たち一応ペアなんだよ!! いつまでもそんなこと言ってる場合じゃ……!』

理亞『……じゃあ明日ね』

ルビィ『待ってよ理亞さん!!』

262: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:37:51.38 ID:kCp06doH
ルビィ「どうしたらいいんだろう……」

カチャ

ルビィ「ごちそうさまでした」テアワセ

ルビィ(時間は、まだ6時前……外も明るいし)チラッ

ルビィ(……ちょっと走っていこうかな、でもその前に)

ルビィ「荷物置いていかないと」ヨイショ

263: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:38:42.68 ID:kCp06doH


─205号室


ルビィ「今日からこの部屋で寝泊まりするんだよね」

コンコン

「はーい、あっもしかしてあなたが3人目?」

ルビィ「え?」

「ここの部屋の住人」

ルビィ「えっと、うん」

「やっぱり、入って入って」

264: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:39:31.33 ID:kCp06doH
「荷物の置き場所はそっちね」

ルビィ「よいしょっと……」ドサッ

「で、寝室があっち。あとこれ部屋のカードキーね。無くさないように気をつけて」ハイ

ルビィ「ありがとう」

さゆり「ルビィちゃん、だったよね名前。私は兵藤さゆり、よろしくね」

ルビィ「うん、よろしくさゆりさん」

さゆり「さん付けじゃなくてもいいよ、あと向こうにいるのが」

ルビィ「あきるさん?」

あきる「ん、よろしく」

265: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:40:34.32 ID:kCp06doH
さゆり「もう名前覚えてるんだ」

ルビィ「えっと、ここに来たスクールアイドルの名前は全員知ってるよ」

あきる「へえ凄いわね」

さゆり「私はまだ半分も……みんな雑誌とかSNSの記事とかで見たことはあるんだけど」

あきる「私もそんな感じ」

ルビィ「そうなんだ」

266: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:41:17.53 ID:kCp06doH
さゆり「だから部屋も3人で使うのかな、名前覚えるために」

あきる「協力っていうのもあるんじゃない? ツバサさんも言ってたでしょ学べるものは学べって」

あきる「それって何も、練習だけに限らないと思うし」

さゆり「そっか……やっぱり選抜合宿っていうだけあって色々考えられてるんだね、施設もすごい充実してるし」

さゆり「そうだ、ツバサさんっていえば今日来たときは本当に心臓飛び出そうで……」

あきる「本当にね、多分あれ以上の衝撃は高校にいるうちは絶対出てこないと思うわ」

ルビィ「うん、私もすごくビックリしちゃったよ」

ルビィ(よかったぁ、二人ともいい人そうで)

ルビィ(理亞さんと同じ部屋だったりしたら、また喧嘩になってたと思うし……)

ルビィ(明日からはまた一緒だけど……)ハァー

さゆり・あきる「?」

267: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:42:11.39 ID:kCp06doH


─合宿2日目


ツバサ「ワンツー、ワンツー、はいお互いに動き合わせて!」

ツバサ「次全体でサイド! リズム上げながらいくわよ!」

ツバサ「ワンツーアップダウン! そこ! ワンテンポ遅れてる! そっちは出だしが早い!」

ツバサ「基本ステップこそ重要よ! それがきちんと出来ているかそうでないかで」

ツバサ「ダンスの完成度にはっきりとした違いが現れる! 初歩だからといって侮らないこと!!」

「はい!」

ツバサ「最後! ステップターン! ワンツースリーフォー!」


……


268: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:42:42.65 ID:kCp06doH
雪穂「次ペア練習入ります、昨日作った組に分かれて」

ツバサ「まずはこっちで用意した振り付けで踊ってもらうわ、息が合うようになってきたら今度は自分たちで振り付け考えて練習してみて」

ツバサ「では始め!」

♪  ─♪

雪穂「これってUTXから持ってきたものなんですか」

ツバサ「ええ、ちょっとお願いして」

雪穂「ペアは右から見て回っていった方がいいですかね?」

ツバサ「やりやすい形で構わないわよ、私もそうするから」

ツバサ「さてと、まずは……」

269: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:43:17.68 ID:kCp06doH
あきる「取りあえずひと通り踊ってみたけど、どう思う?」

姫乃「はい、いい感じに出来ていたと思います」

ツバサ「そうね、ちぐはぐしている風にも見えなかったし、そのまま続けていって問題ないかも」

ツバサ「あと言うことがあるとするなら、そっちのあきるちゃん」

あきる「!」

ツバサ「あなたは身体が柔らかくて、それを活かした動きは見ていて美しく感じるけれど」

ツバサ「そのせいか、他の人よりも腕や足を伸ばしすぎる傾向があるわね」

ツバサ「パートナーのことを考えるともう少し控えめにしたほうが結果的に映えると思うわよ」

ツバサ「次はそこを意識してやってみて」

あきる「は、はい! ありがとうございます!」

270: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:43:51.92 ID:kCp06doH
雪穂「姫乃ちゃんの方は一つ一つの動作は完璧なんだけど、ゆっくりすぎるかな」

雪穂「細部に拘りすぎるあまり、速さについていけてないというか」

雪穂「これじゃダンスというよりは所作かも……いや、それは流石に言いすぎだよね」ウーン

雪穂「えっと…とにかく動き自体に全く問題はないから、あとはそれをいかにスムーズに繋げられるかだね」

雪穂「焦る必要はないから段階を決めて、それに合わせて少しずつ早くしていこうか」

姫乃「はい、やってみます!」

271: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:44:29.37 ID:kCp06doH
雪穂「瑞希ちゃんは動きのキレがいいね、特に足」

雪穂「でもちょっとバタついてる印象、元気があるぶん張り切りすぎてるのかな?」

雪穂「もう少しリラックスしながらやってみて、それだけでも変わると思うから」

瑞希「分かりました!」

「何やってるのよ! また同じところでミスして!!」

雪穂「!」ビクッ

雪穂「ま、まさか……」

272: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:45:02.06 ID:kCp06doH
理亞「だから! 手を大きく出し過ぎなの!! みっともない!」

ルビィ「そっちこそ前に出すぎだよ! 今は横に並んで踊るところでしょ!」

理亞「あなたの入りが遅いんでしょ!」

ルビィ「理亞さんが早いんだよ! ペース無視してやるから!」

雪穂(やっぱりあの二人だあ……)

理亞「合わせられないのを私のせいにしないで!」

ルビィ「それはこっちの台詞だよ!」

ツバサ「うん、二人の意見はどっちも正しいわね」スッ

理亞「!」

ルビィ「ツバサさん」

273: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:45:43.42 ID:kCp06doH
ツバサ「ルビィちゃんは少し振りが大袈裟だし、理亞ちゃんも次を急ぎすぎて落ち着きのない印象を受けるわ」

ツバサ「あなた達は間違っていない、それに」

ツバサ「二人ともお互いのことをよく見ていて、そのうえしっかりと問題点を理解して指摘出来ている」

ツバサ「素晴らしいことだと思うわ。ペア同士の練習ではとても大事なことだし、それが初めのうちから出来ているというのもね」

ツバサ「ただ、二人とも互いのよくないところを見つけようとするあまり、最初の頃よりずっと動きが乱れてるわよ」

ルビィ・理亞「─!」

274: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:46:31.09 ID:kCp06doH
ツバサ「隣に気を取られすぎて自分の状態を客観視することを忘れないように」

ツバサ「相手に求めておきながら当の私はグズグズです。なんてなったら元も子もないわよ」

ツバサ「揚げ足取りも程々にね」

ルビィ・理亞「ごめんなさい……」

ツバサ「とは言ったけど基本的にやっていることは間違っていないわ、だからこそ自分の持つ姿勢を疎かにしては駄目。いい?」

ルビィ「はい……」

理亞「気をつけます……」

ツバサ「よし、じゃあ私は行くわね」


ツバサ「そこ少し止まって……あなたは身体の向きね、下半身に比べて上半身が……」

275: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:47:10.67 ID:kCp06doH
ルビィ・理亞「……」

理亞「……次、初めから通しでやるわよ」

ルビィ「うん」

雪穂(なんとか納まった…のかな、また言い合いそうではあるけど)

「すみませーん! 雪穂さんちょっといいですか!」

雪穂「! ごめん、すぐ行くね!」


……


276: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:47:51.34 ID:kCp06doH


─208号室


姫乃「はぁ……今日の練習は厳しかったですね」

姫乃「これが毎日続くんだから、気を引き締めていかないと」

蘭花「そのためには体力回復が大事アルね、この小籠包で元気だすネ」

姫乃「えーっと……流石にもう大丈夫かな…」

蘭花「そうアルか?」

理亞「……」ガタ

277: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:48:29.07 ID:kCp06doH
姫乃「あれ、理亞さんどこに行くんですか?」

理亞「練習」

姫乃「今からですか!?」

理亞「うん、別に帰ってくるまで起きてる必要ないから」

姫乃「わ、分かりました気をつけてくださいね」

蘭花「理亞、これ差し入れアル中華まんネ。お腹が空いたら食べるネ」

理亞「ありがと、じゃあ行ってくる」

278: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:48:59.70 ID:kCp06doH
姫乃「いってらっしゃい……凄いなあ」

蘭花「理亞は練習熱心ネ」ゴロゴロ

姫乃「そうですね、でも……」

蘭花「?」

姫乃「ちょっと焦ってるようにも見えるっていうか……気のせいかもしれませんけど」

蘭花「緊張アルか?」

姫乃「どうでしょうか…」

279: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:49:38.98 ID:kCp06doH
現在の人物相関図。

no title

281: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/02(土) 05:56:59.17 ID:kCp06doH
補足

虹ヶ咲のアニメで姫乃は知ってるけど、さゆりとかあきるって誰?という方のために説明します
彼女たちはスマホ用ゲームアプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』に転入生として登場するキャラクターです

参考画像はこちら

篠宮あきる
no title

綾小路姫乃
no title

吉川瑞希
no title

兵藤さゆり
no title

多々良るう
no title

蘭花
no title

287: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:48:32.01 ID:xHuDCHv4


─合宿3日目


浦の星女学院、体育館


果南「曜、本気でいくよ!!」スッ

曜「よっしゃこーーーーーい!!」

聖良「果南さんナイスサーブ!」

果南「……」フワッ

タッ  タッ タッ ヒュンッ ズバンッ!

梨子「ジャ、ジャンプサーブ!?」

善子「これだから体育会系は……」

千歌「曜ちゃん!!」

288: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:49:03.81 ID:xHuDCHv4
曜「っ……ここだ!!」ダンッ

フワッ

善子「おぉ、上がった」

曜「よぉし!」グッ

果南「流石だねー曜」

花丸「曜ちゃんナイスレシーブ!」

千歌「花丸ちゃんトス!」

花丸「お願い千歌ちゃん!!」トンッ

千歌「まっかせな……さい!!」スパァンッ!!

ドン!   ピーッ

千歌「決まったー!! ナイストス花丸ちゃん!」

289: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:49:32.59 ID:xHuDCHv4
ダイヤ「くっ……すみません、間に合いませんでした」

果南「ドンマイドンマイ」ポン

聖良「切り替えていきましょう」

梨子「これでまた同点、一進一退って感じだね」

梨子「やっぱり曜ちゃんが入ると安心感が違うなあ」

善子「まあそれは別にいいんだけど」

梨子「え?」

善子「なんで私たちわざわざ体育館まで借りて、3対3のバレーなんかやってるわけ?」

梨子「なんでって、最初に鞠莉さんが言ってたじゃない」

梨子「チームの連携と反射神経を鍛えるためだって」

290: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:50:08.05 ID:xHuDCHv4
ダイヤ「鞠莉さん、交代お願いします」

鞠莉「待ってましたー、後は私に任せてゆっくり休んでねダイヤ♪」

善子「その鞠莉が楽しそうにしてるのが何とも言えないのよ」

梨子「うん、言いたいことは分かるけど」

梨子「でもほら、鞠莉さんもたまには体を動かしたいんだろうし…基本デスクワークだからあの人」

梨子「それに交代制でも結構きついでしょ、これ」

善子「まあね、練習だろうがスポーツの試合はやっぱり侮れないわ」

曜「善子ちゃーん! 代わってー!」

善子「出番が回ってきたみたいね、行ってくるわ」

梨子「頑張ってね善子ちゃん」

291: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:51:17.72 ID:xHuDCHv4
曜「ふぅ、あー楽しかった! 早く次の出番来ないかなー!」

梨子「大活躍だったね曜ちゃん、これドリンク」

曜「ありがと梨子ちゃん」

梨子「その様子だと、まだまだ物足りなさそうだね」

曜「うん! 果南ちゃんたちとスポーツするなんて久々だからさー!」

曜「つい熱が入るっていうか!!」

梨子「そっか」フフッ

292: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:51:49.48 ID:xHuDCHv4
鞠莉「オーライオーライ!! 聖良!」

聖良「ここは……ストレート!!」バシン!

ピッ

鞠莉「得点ゲットー!! グッジョブ聖良!」

善子「っ……ごめん! 取り損ねた!」

千歌「オッケー、惜しかったよ!」

花丸「次切り替えるずら!」


梨子「でも凄いよね、曜ちゃんは」

曜「なにが?」

梨子「もうどの組み合わせでも上手くいってて」

293: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:52:32.92 ID:xHuDCHv4
梨子「幼馴染みの千歌ちゃんはもちろん、この前から一緒に練習を始めた善子ちゃん」

梨子「今は花丸ちゃんとも良くなってきてるし」

曜「……」

梨子「千歌ちゃんもだけど曜ちゃんも明るくて話しかけやすいから、みんなも自然と声を掛けちゃうんだろうね」

曜「…梨子ちゃんは?」

梨子「私? 私はまだ千歌ちゃんくらいしか自信を持って息が合うとは……」

曜「そうじゃなくて」

梨子「?」

曜「私と梨子ちゃんは、上手くいってるように思えない?」ズイッ

294: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:53:05.99 ID:xHuDCHv4
梨子「曜ちゃん…?」

曜「……」ジッ

梨子「え、えーっと……それは上手くいってるとは思うよ、私も」

曜「誰より?」

梨子「だ、誰よりって?」

曜「だから千歌ちゃんと組んでるときの私や、梨子ちゃんが千歌ちゃんと組んでいるときより上手くいってると思う?」

梨子「……それは」

曜「何か足りないところがあるなら言って、直すから」

295: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:54:08.76 ID:xHuDCHv4
梨子「ねえ、どうしてそんなに拘るの?」

曜「だって……私は梨子ちゃんと一番「おーーーーい!!」

曜・梨子「!!」

千歌「梨子ちゃん! 次私とチェンジー!!」

梨子「順番回ってきたみたいだから、行くね」

曜「あ、うん……いってらっしゃい」

千歌「……あれ? なんかお邪魔だった?」

曜「いいよ気にしなくて」ハァ

296: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:54:50.84 ID:xHuDCHv4

ピーーーーッ!!


聖良「─そこまで! 今日はここまでにしましょう! みなさんお疲れ様でした」

「お疲れ様でした!!」

鞠莉「それじゃあ各自ストレッチに入って」

「はーい!」

むつ「ひゃーこんな遅くまでよくやるなぁ」

ダイヤ「すみません、片付けの手伝いを頼んでしまって」

いつき「いえいえお気になさらず!」

よしみ「このくらいなら全然協力しますから」

297: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:55:30.60 ID:xHuDCHv4

キュキュッ


むつ「よっ……と、汗で滑るなー」

千歌「あーごめん、時々拭いてたんだけど」

梨子「そういえば最後やってなかったわね」

いつき「いいよ、じゃあ片付けの前にモップ掛けからやろうか」

よしみ「了解ー」

むつ(ていうか時々モップ掛けて綺麗にしておきながらこれって……しかも朝から使ってたんだよね)

むつ(休みとはいえどんだけやってたんだか……でも)

298: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:56:33.02 ID:xHuDCHv4
曜「果南ちゃんさー本気出し過ぎでしょ! 駄目だよあれは!」

千歌「そうだよ! 繋げて連携取るのが目的なのに取れそうにないスパイクバンバン打ってどうするのさ!」

果南「あははっ気合いが入ってつい」

ダイヤ「鞠莉さんは少し体力が落ちたのではありませんか? ちゃんと運動をしていますの?」

鞠莉「あら、ダイヤには言われたくないわね誰よりも早くへばってたクセに」

ダイヤ「なんですって!?」

花丸「どうどう、ダイヤさん落ち着くずら」

むつ(なんか楽しそうだ)クス

299: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:57:03.28 ID:xHuDCHv4
善子「曜、今日泊まりに行ってもいい? 踊りのことで話したいことがあるんだけど」

曜「いいよー! このまま一緒に帰ろうか!」

千歌「じゃあ私と梨子ちゃんも私の部屋で作戦会議なのだ!」

梨子「作戦って何のこと言ってるの……普通に作曲とかでしょ」

千歌「こういう言葉使ってみたくて」

梨子「もう……」

300: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:57:42.97 ID:xHuDCHv4
聖良「……」

果南「どしたの聖良」

聖良「内浦に来たときから思っていたんですけど」

果南「うん」

聖良「話に聞いていた割には皆さん意外といい関係を築けていますよね」

果南「もっとギスギスしてると思った?」

聖良「……はい、正直なところ」

果南「まあそうだよね、流石にそこまではいかなくてももっと気まずさはあっても可笑しくないとか、そんな風に聖良が考えるのは分かるよ」

果南「実際私たちが卒業後にここから出ていかなくて今もずっと居座っていたら、そうなっていたかもしれないし」

301: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:58:12.78 ID:xHuDCHv4
聖良「……気を遣わせてしまうかもしれないから?」

果南「うん、だから私たちは大学に進学する際上京することを決めた」

果南「一度そこから離れることで変わることや分かることがあるかもしれないから」

果南「…って言いだしたのはダイヤなんだけどね」

聖良「……」

果南「それは良い風に言うなら改善のための行動、悪く言えば逃げの一手。正直上手くいったかどうかはまだ不安なところあるけど」

果南「こうしてみんなの様子を見てると、一度離れて良かったんだなって思うよ」

聖良「そうですか」

果南「特に千歌と曜は私に対して前と同じように接してくれるのがすごくありがたいよ、本人はそこまで考えてないのが尚更ね」アハハ

302: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:58:44.11 ID:xHuDCHv4
聖良「私は良かったと思いますよ、皆さんの雰囲気を見てもその選択が間違っているという気はしません」

果南「そっか、ありがとう聖良」

聖良「本当のことを言っただけですから……それに」

ギュッ

果南「?」

聖良「ダイヤさんたちが東京に来てくれたから、私はあなたに出会うことが出来ました」

聖良「こうして一緒にいることも……そのおかげなんですよ」

果南「ん、まあそうだね。それも良いことか確かに」

果南「でもどうしたの急に手なんか握ってきて」

聖良「いいえ、なんでも」

303: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 21:59:26.58 ID:xHuDCHv4
鞠莉(うーん、やっぱり聖良って……)

聖良「では私もそろそろ帰りますね、鞠莉さん今日もお世話になります」

鞠莉「ええ、鍵を渡しておくから先に行ってて、私はここの戸締りしないといけないから」

聖良「分かりました」

果南「送っていこうか?」

聖良「いえ、一人で……やっぱりお願いしてもいいですか」

果南「いいよ。ダイヤ、花丸ちゃんまた明日ね」

花丸「うん、また明日」フリフリ

ダイヤ「お気を付けて」

304: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:00:03.80 ID:xHuDCHv4
鞠莉(でも聖良、分かってるの? 貴女が好意を向けてる相手はもうとっくに)

鞠莉(いや、でもその相手は相手でまた……)

花丸「仲良しなんだね、果南さんと聖良さんって」

ダイヤ「そうですわね、まさかあそこまで親しくなるとは」

ダイヤ「もし去年の二人に今の様子を見せてあげたらどんな反応をするんでしょうか」

花丸「きっと信じられないって顔するんだろうなあ」

ダイヤ「フフッ、容易に想像できますわね」

鞠莉(これなのよね……ああ)

鞠莉「……鈍感系グループこっわ」

花丸「鞠莉さん、今何か言った?」

鞠莉「気のせいデース♪」

305: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:00:48.47 ID:xHuDCHv4


スタスタ


聖良「一緒に来てもらっていうのもなんですけど、本当に良かったんですか」

果南「なにが」

聖良「ダイヤさんと一緒にいなくて」

果南「ああ、いいよ別に。四六時中付きまとうのも違う気がするし」

聖良「それは私に対する当てつけですか?」

果南「そんなこと言ってないじゃん」

聖良「冗談ですよ」

果南「だったら真顔で言わないでほしいな」

306: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:02:00.20 ID:xHuDCHv4
果南「あとはそう、花丸ちゃんと一緒にいたいのかもしれないし」

聖良「花丸さんですか……一途ですよね、彼女は」

果南「そうだね、だからダイヤも何も言わないんだろうな」

果南「多分、この気持ちが花丸ちゃんの邪魔になったらいけないとかそんな理由で」

果南「別にそのことでとやかく言うつもりはないけどさ、複雑だよ。私としては」

聖良「……ブレなさすぎるんですよ、あなた達は」

果南「はは、耳が痛いね本当にその通りでさ」

聖良(でもきっと、この3人のそんなところが人を惹きつけるんでしょうね)

307: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:02:27.20 ID:xHuDCHv4
聖良「ねえ、果南さん」スッ

果南「うん?」

聖良「この花、なんだか分かりますか?」

果南「え? アザレアでしょ知ってるよ、私たちのユニット名の元になったものだし」

聖良「では花言葉は?」

果南「…なんだっけ?」

聖良「白いアザレアの花言葉はあなたに愛されて幸せ」

308: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:03:19.50 ID:xHuDCHv4
聖良「面白いですよね、その花の名前を冠しておきながら」

聖良「当の本人たちは自分が愛されてることに気が付いていないのだから」

果南「気が付いてない……? 花丸ちゃんがダイヤで、ダイヤが……ははっ成程そういう意味か! 上手いこと言うね聖良は」

果南「となるとその例外になるのは私だけかな」

聖良「……」ハァー

果南「え、なに?」

聖良「ほら、そういうことなんですよ」

309: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:03:50.61 ID:xHuDCHv4
果南「だからなにが」

聖良「何でもありませんよ、ばか」クルッ

聖良「ばーかばーか」スタスタ

果南「はあ!? ちょっと、何その子供みたいな悪口!」タッ

聖良「別についてこなくていいですよ、もう着きますし」

果南「いいや付いていくね! 私も今日はそっち泊まるし!」

聖良「なっ、聞いていませんよそんなの!」

310: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:04:28.15 ID:xHuDCHv4
果南「今決めたもん、とりあえずまずはその馬鹿って言葉取り消してもらうから」

聖良「貴女のほうが子供じゃないですか!」

果南「なんてね。いや冗談だよ、冗談」

聖良「じょっ……はあ!?」

果南「あースッキリした、あっでも泊まるのは本当だから」

果南「早く来ないと置いてくよ……もしもし鞠莉? 今日泊まるから部屋貸してー」

聖良「…………くだらなすぎでしょう、もう」クス

聖良「待ってください果南さん、そんなに急がないで」

311: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/03(日) 22:05:06.10 ID:xHuDCHv4
鞠莉「…そう、うん分かったわ……はーい了解。それじゃね」

鞠莉「はあ…………そういうところよ、果南」スッ





ピロン

ダイヤ「失礼、ラインですわね……鞠莉さんから?」

花丸「マルも見ていい?」

ダイヤ「どうぞ」

鞠莉 宿泊客に女たらし1名追加されましたー

花丸「……どういう意味ずら?」

ダイヤ「さあ……」

314: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:08:13.98 ID:bbeoGlma


─合宿4日目


ツバサ「今日は午後からグループ練習を行うわよ! 5人1組!」

ツバサ「この練習では私たちは口出ししないから、どこをどうすればいいのかはグループ内で意見を出し合って決めること!」

ツバサ「で、練習の最後には1組ずつライブを披露してもらうから、時間も上手く有効活用しないと間に合わなくなるからね」

ツバサ「そこも踏まえた上でライブの発表までに相手の得意分野と自分の役割」

ツバサ「一人ずつ伝えて、頭に入れて、全員で考えながらフォーメーション決めないと上手くいかないわよ!」

ツバサ「コミュニケーションしっかりね!」

「「「はい!!」」」

ツバサ「始めっ!!」

315: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:08:48.44 ID:bbeoGlma
「どうする?」

ルビィ「私たちの曲はアップテンポで動きが多いから、センターは一番動きのキレがある人にするのがいいと思う」

ルビィ「この中でいうなら瑞希さんか蘭花さん」

蘭花「私アルか?」

「成程確かに」

姫乃「でも私は曲のイメージ的に瑞希さんの方がいいと思います」

ルビィ「そうだね、確かにそっちの方が合ってるかも」

「じゃあセンターは瑞希ちゃんで、他はダンスどうする?」

316: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:09:23.93 ID:bbeoGlma
ルビィ「サビはセンターのために余白を多めに取って、それ以外は横に並んだり時折前に出たり」

ルビィ「くらいの比率がいいんじゃないかな」

姫乃「そうなると息の合わせはサビ前が最も重要になってきますね」

蘭花「曲が始まる前の位置はどうするネ?」

瑞希「それにサビ前もそうだけど、入ってからも肝心じゃない?」

瑞希「寧ろ注目される分そこが……」

ルビィ「だったら時間までに特にやっておくことはサビ付近の練習……まずは一回通して……」

317: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:09:54.77 ID:bbeoGlma
理亞「パターンをいくつか決めたほうがいい、合わせやすい簡単なやつを」

さゆり「でもそれだと味気なくなるんじゃない?」

理亞「あくまで曲の一部分だけ、それにその振り付けを合図にすれば」

理亞「動きも切り替えやすくなるはず」

あきる「確かに全員に同じポーズをさせるのは、統一感が出ていいかもしれないわね」

るう「ポーズは足を上げたりするより…腕や手を上げるほうが多分いいですよね」

理亞「私たちの曲だと、そこまで走り回ったり跳ねたりする必要がないから」

理亞「手の動きで印象付けるのは正しいと思う」

318: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:10:24.41 ID:bbeoGlma
「練習はどこを重点的にやろうか?」

理亞「いや、特別一つの部分に振り分けなくてもいい気がする」

理亞「全体的にバランスよく、まずはリズムと全員の動きを掴んでそれから」

あきる「修正は全員で合わせつつって感じね」

理亞「そうなるわ」

さゆり「了解」

るう「分かりました」

「じゃあ音楽かけるね、まずは初めからサビまででいい?」

理亞「最後までやった方がいい、次にいくとき見直しながらサビと……」

319: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:11:09.98 ID:bbeoGlma


──


カランッ


「いらっしゃいませ、二名様ですか?」

ツバサ「はい、テーブル席でもいいですか?」

「大丈夫です、こちらのお席へどうぞ」

ツバサ「ありがとうございます」

ストン

「ただいまお冷をお持ちしますね」

「どうぞ」コト

雪穂「あ、どうも」

「ご注文が決まりましたらお呼びください」

ツバサ「はい」

320: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:11:44.86 ID:bbeoGlma
ツバサ「どれも美味しそうね」パラッ

雪穂「いいんですか? ラーメンなんて食べて」

ツバサ「たまにはいいじゃない? ほら雪穂ちゃんも」

雪穂「本当だ、美味しそうですね」

ツバサ「私は味玉みそにするけど雪穂ちゃんは?」

雪穂「うーん、もやし醤油で」

ツバサ「分かったわ、すみませーん! 注文お願いします!」

321: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:12:19.77 ID:bbeoGlma
ツバサ「……」スッスッ

雪穂「何見てるんですか?」

ツバサ「今日のグループ練のライブ。見直しておこうかと思って」

雪穂「ああそれですか、良かったですよねみんな上手いこと昇華させていましたし」

ツバサ「そうね」

雪穂「特にあの二人。ルビィちゃんと理亞ちゃん」

雪穂「全体の意見を参考にしながらまとめ上げ、指示も具体的」

雪穂「どちらも率先して行動するタイプには見えなかったんですけど、人は見かけによらないものですね」

雪穂「それともそこに至るまでの経験を積んできたってことなんでしょうか」

ツバサ「さあどうかしら、でもルビィちゃんの方は初めてやる曲にしては対応が早かったから」

ツバサ「多分そこに関しては、以前培った経験が活きているのかもしれないわね」

322: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:12:57.97 ID:bbeoGlma
「お待たせしました」

ツバサ「来た」

雪穂「いい匂いですねえ……」

ツバサ・雪穂「いただきます」


ズルズル


雪穂「話戻りますけどあの二人、本命の組み合わせ以外なら優秀なんですよね」

雪穂「今日のグループ練習しかり、普段の基礎練習もきっちりこなしていますし」シャキシャキ

ツバサ「実際のこなれた様子を見るに、多分あれが本来の実力でしょうね」

ツバサ「逆にコンビが合わなさすぎる」アム

323: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:13:37.01 ID:bbeoGlma
雪穂「そうなんですよ! 他の子はどんどん息が合ってきてるのに」

雪穂「あそこだけ最初と変わらずギクシャクしてるというか」

ツバサ「雪穂ちゃんは随分気にしているのね、あの二人のこと」

雪穂「気にしてるというより目に入ってきちゃうんですよ、だって目立つじゃないですか」

雪穂「良くも悪くも」ズルズル

ツバサ「まあお互い初めてでしょうしね、一緒に練習する際あんな風に誰かと対立したり」

ツバサ「激しく言い合ったりすることは。だからそのことに戸惑いもあると思うわ」

ツバサ「今までが順風満帆だったから余計にね」ズズッ

324: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:14:19.35 ID:bbeoGlma
雪穂「どういうことですか?」

ツバサ「雪穂ちゃんは二人が所属してるグループの情報、知ってるわよね」

雪穂「はい、それはもちろん」

雪穂「ルビィちゃんが入っているスクールアイドルのグループはAqours」

雪穂「今から三年前に結成され、二度の休止を経て現在活動再開」

雪穂「少し前までは非常に評判がよくありませんでしたが、PVの件やひたむきな姿勢が評価されて」

雪穂「今は地元問わず応援してくれるファンも多いですね」

雪穂「メンバーひとり一人の個性豊かな魅力が人気を後押しした一つの要素と言われるくらいには」

雪穂「それぞれに確立した持ち味があるのもこのグループの大きな特徴だと思います」

雪穂「普段は和気あいあいとしていますが決して不真面目ではなく、練習も忘れることなく日々熱心に取り組んでいるので」

雪穂「スイッチのON/OFFをしっかり切り替えられる印象がありますね、その辺りはお姉ちゃんたちμ'sのイメージに近いかもしれません」

325: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:15:32.48 ID:bbeoGlma
雪穂「一方で理亞ちゃん。彼女がリーダーを務めているスクールアイドルSaint Snowは」

雪穂「去年聖女に理亞ちゃんが入学した際、彼女の姉鹿角聖良と共に結成」

雪穂「それまでに積み重ねてきた努力や姉妹の絆を考慮しても、僅か一年でラブライブ優勝まで上り詰めたエリート姉妹ですね」

雪穂「事実、聖良ちゃんは今回の選抜推薦者の一人なわけですし」

雪穂「理亞ちゃんも今年新しく入部してきた二人の同級生を上手く引っ張っていると聞いています」

雪穂「こちらはAqoursと違い、とにかくストイックで練習もハード」

雪穂「ただメンバーに強制はせず、あくまで自分を律するためだからと前置きするくらいには融通が利いているので」

雪穂「活動中そのことでこれといった問題は起きなかったようですね」

雪穂「しかし現メンバーである二人は実力不足を練習量で補うためにそのやり方を承諾、呑みこみの早さもあって今はだいぶついていけるようになったみたいです」

雪穂「理亞ちゃんもそんな二人を信頼した結果、去年とは違う形のSaint Snowに変えていくことを決めて」

雪穂「無事今の形に落ち着いているって感じですね」

326: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:16:00.49 ID:bbeoGlma
ツバサ「丁寧な解説ありがとう、流石は雪穂ちゃんね」

雪穂「これくらい大したことないですよ、それより」

雪穂「はあ……一気に喋ったから喉渇きました……水を」

ツバサ「そうなると思ってウーロン茶頼んでおいたわよ、はい」

雪穂「いつの間に…わざわざありがとうございます」

ツバサ「いいのよ気にしないで、私も飲みたかったから」

雪穂(本当、よく見てるよなあー……)ゴクゴク

327: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:16:32.10 ID:bbeoGlma
ツバサ「ところで、さっきの私の話と今の雪穂ちゃんの説明を振り返って、何か気になったところはない?」

雪穂「そうですね……二人とも恵まれた環境にいるってことですか?」

雪穂「特に揉めることもなくグループ内の話し合いが成立しているという意味で」

ツバサ「そう、そこなのよ。そして実は彼女たちにはもう一つ共通点があってね」

雪穂「共通点って?」

ツバサ「グループ内における発言力の強さ」

雪穂「発言力ですか? 理亞ちゃんはともかくとしてルビィちゃんが?」

328: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:17:10.05 ID:bbeoGlma
ツバサ「ええ、別に盛っているつもりはないわよ」

ツバサ「活動方針は顧問が、最終的な決定はリーダーが、そしてそこに至るまで全員で意見を出して話を進めるから、一見目立たないんだけど」

ツバサ「歌やダンスに衣装、どこを切り取ってもルビィちゃんの意見は大体話の起点か、もしくは決定における重要なファクターになっている」

ツバサ「それは何故か?」

雪穂「何故って、えーっと……ん? ちょっと待ってください」

雪穂「そういえば推薦理由にもそんな感じのことが書かれていた気がしますね……確か」

雪穂「スクールアイドルの知識に定評があり、メンバーからも一目置かれていると……だからですか?」

329: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:17:38.34 ID:bbeoGlma
ツバサ「そう。とは言え全員が彼女の指示に二つ返事で従うイエスマンだけで構成されてるわけではないし」

ツバサ「結果通らずに別の提案が採用されることもある、だけど」

ツバサ「今でもルビィちゃんの言葉には全員が期待しているし、信頼されている」

ツバサ「他を圧倒させる力強さではなく、周囲に影響を及ぼす存在感の強さ」

ツバサ「それがルビィちゃんに発言力があると言った根拠よ」

雪穂「成程……」

330: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:18:21.27 ID:bbeoGlma
ツバサ「さっき雪穂ちゃんが言ったグループ練習でのルビィちゃんへの評価も、それが基盤となって働いてたから」

ツバサ「上手くかみ合ったって感じよね、でも」

雪穂「理亞ちゃんと組む場合は別……何故なら」

雪穂「二人が意見を出す場合、お互いのスタンスが同じ方向を向いてないからどうしたって食い違うんだ」

雪穂「環境も、そこにおける立ち位置も……恐らく目指しているスクールアイドル像のベクトルすら正反対なのに」

雪穂「発言の重要性と、それに対する自負があの子たちにはあって」

雪穂「唯一そこだけは同格であり、対等」

ツバサ「正解。おまけにお互い相手を敵視しているから」

ツバサ「それで衝突するなって方が無理な話よ」

331: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:18:55.83 ID:bbeoGlma
雪穂「……あの、そこまで分かってるならなんで」

ツバサ「雪穂ちゃん、私は彼女たち二人だけの特別講師じゃないの」

ツバサ「30人のスクールアイドルを指導し、導くために開かれた合宿の総責任者なのよ」

ツバサ「肩入れしすぎるわけにはいかないわ、常に全体を通して判断しないと」

ツバサ「目立たないだけで二人の他にも上手くいっていない子はいるんだからね」

雪穂「……はい」

ツバサ「それにこういうのは外野があれこれ指図するより、どれだけ衝突してぶつかり合おうが」

ツバサ「自分たちで探し出して答えを見つけたほうがいい、どう向き合うのが正しいのか」

ツバサ「そのために自分は何をやるべきなのか、その問いに一番納得のいく答えを導き出せるのは」

ツバサ「結局彼女たちしかいないんだから」

332: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:19:31.30 ID:bbeoGlma
雪穂「そう、ですね……確かに少し特別視していたかもしれません」

ツバサ「まあもちろん行き過ぎていたら止めるし、今まで通りアドバイスもするわ」

ツバサ「ただ、肝心なところは邪魔せず見守ってあげましょうってこと」

雪穂「はい」

ツバサ「さ、そろそろ出ましょうか。先に行ってて会計済ませてくるわ」スクッ

雪穂「そんなっいいですよ! 私も出しますって!」

ツバサ「いいからいいから、すみませんお会計を……」

雪穂(うぅ、何か色々差を見せつけられたって感じだ……)

雪穂(明日からはもっときちんとしなくちゃ)

333: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:20:07.02 ID:bbeoGlma


─合宿5日目


ツバサ「はい終了! 10分休憩!」

ツバサ「で、そのまま聞いてほしいんだけど」

ツバサ「今日から合宿が始まって5日目、程度の差はあれ皆ペアでの連携が取れるようになってきたわね」

ルビィ・理亞「……」

ツバサ「なので、もう一つ先の段階へ進めた課題を出したいと思います」

雪穂「?」

ツバサ「そのコンビで一つだけでいいわ、ライブで披露出来るだけの曲、ダンス、衣装の一式を」

ツバサ「この合宿の終わりまでに完成させてほしいの、作るだけでいいわ」

ツバサ「この場で発表も披露もやらせるつもりはないから安心して」

334: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:20:38.52 ID:bbeoGlma
ルビィ(合宿で作ったものを……)

理亞(発表しないの……? なんで)

あきる「あの、質問いいですか?」テヲアゲ

ツバサ「構わないわよ、言ってみて」

あきる「どうしてその課題だけはライブを行わないんですか?」

あきる「昨日のグループ練習ではやっていましたし、それに」

あきる「合宿のメインは二人組で行うペア練習ですよね? なら」

あきる「作るだけではなくて、実際に試したほうが成果もはっきり分かるんじゃ……」

335: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:21:10.06 ID:bbeoGlma
ツバサ「いい質問ね。皆も多分なんで? って思っていたでしょうし」

ツバサ「ねえ雪穂ちゃん?」

雪穂「そうですね、わざわざ取り下げる意味が分かりません」

ツバサ「うん、合宿単体で考えるならね」

雪穂「? よく分からないんですけど」

ツバサ「これはあなた達のためだけじゃなくて私の個人的願望も入っているから、あまり良くは思われないかもしれないけど」

ツバサ「今築いているこの関係を、ここにいる場だけで完結させてほしくないのよね」

336: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:21:48.00 ID:bbeoGlma
ツバサ「当たり前だけど、この合宿が終わったらみんなそれぞれの学校に戻っていつもの生活を送ることになる」

ツバサ「その自分たちの日常に、ここで得た経験や…部屋での共同生活と練習によって深まった絆をそのまま持ち帰って欲しいの」

ツバサ「終わったからハイさよならじゃなくて、この先もずっと」

ツバサ「相談したり、協力したり、一緒に楽しんだり…そんな」

ツバサ「ライバルだけじゃない関係をね。あなた達には続けてほしいのよ」

ツバサ「それはきっと、ここでしか出来ないことの一つだから」

「……」

337: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:22:22.52 ID:bbeoGlma
ツバサ「確かにこの合宿は選ばれたスクールアイドルだけが集まって開かれている特別なもの」

ツバサ「それに対してこんなことを言うのは、矛盾しているかもしれないけれど」

ツバサ「どうかここで過ごした日々を、特別なものだと思わないでほしい」

ツバサ「ライブをやらなくていいって言ったのはそういう理由」

ツバサ「皆がやりたくなるような最高のステージで、大勢の人の前で堂々と」

ツバサ「私が教えた生徒はこんなに素晴らしいスクールアイドルなんだって胸を張れるくらいに活き活きと」

ツバサ「そして何よりあなた達が、他の誰よりも楽しめるように爛々と」

ツバサ「そんな瞬間がこの先どこかで生まれるのだとしたら、それはとても素敵なことだと思わない?」

ツバサ「だから今は、いつか来るそのときのためにとっておきなさい」

ツバサ「あなた達にはまだまだ時間があるんだから!」ニコッ

338: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:23:05.04 ID:bbeoGlma
「「「……っ……はい!!」」」

雪穂(……そうか、私たちにとっては仕事の一環でも)

雪穂(この子たちにとっては違う、これで終わりじゃないんだ)

雪穂(だから終わらせないために繋げて、そしてその輪を広げていくことを…この人は望んでいて)

雪穂「ツバサさん……なんかいいですね。それ」

ツバサ「ありがとう、雪穂ちゃんにそう言ってもらえると自信でるわね」

雪穂「やめてくださいよ、そうやって持ち上げるの」

ツバサ「フフッ、ごめんなさい」

ツバサ「さてと、いい感じに時間も経ったし休憩は終わり!」

ツバサ「練習再開するわよ! ほらテキパキ動いて!!」パンパンッ


……


339: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:23:41.17 ID:bbeoGlma
ツバサ「そこまで!」

ツバサ「今日の練習は以上、みんなお疲れさま!」

「「「お疲れさまでした!!」」」


ゾロゾロ…


理亞「……」スクッ

ルビィ「……待って理亞さん」

理亞「なに」

ルビィ「話したいことがあって、今日ツバサさんが話した課題についてなんだけど」

ルビィ「あの、理亞さんはどんな曲が作りたいのかなぁって」

ルビィ「もし何かイメージとかあるなら「やめて」

理亞「今そんなことしてる余裕ないでしょ」

340: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:24:11.00 ID:bbeoGlma
ルビィ「……あのね、理亞さんが言いたいことも分かるよ」

ルビィ「私たちまだ全然息が合っていないし、でもね」

ルビィ「作るのはそうかもしれないけど、どういうライブにしたいのか決めるくらいは出来るでしょ?」

ルビィ「まずは方向性だけでも固めて、そしたら後々楽になると思うし」

ルビィ「それがあるだけでも作業が捗るから、全部後回しにするよりはずっと……」

理亞「だから、やらないって言ってるでしょ」

理亞「やって意味のないことをやる必要なんてない、するつもりもない」

理亞「そんな時間を無駄にするようなこと私はしたくないの」

341: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:25:01.73 ID:bbeoGlma
ルビィ「──!!」

理亞「それより優先するべきなのは練習でしょ、合宿のメニューだけじゃ間に合わない足りなすぎる」

理亞「もっと増やして追いつかないと手の施しようがなくなる、それくらい差が開いてるの。あなたも分かってるはず」

理亞「真面目にやって、私たちにはもう後がないの」

理亞「これ以上他のペアに離されるわけには……」

ルビィ「いい加減にしてよっ!!」

342: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:25:35.60 ID:bbeoGlma
理亞「なっ……いきなり何? いい加減にしてって何が?」

ルビィ「なんで必要かどうかを理亞さんだけで決めるの!?」

ルビィ「それにやらない理由だって!」

ルビィ「意味がないとか無駄とか! あの話を聞いておきながらどうしてそういうこと言えるのさ!」

ルビィ「本当にやる必要がないならっ…! じゃあ何で私たちは今ここにいるの!? この合宿に来ているの!?」

ルビィ「ずっと私は分かってるみたいな顔してるけど何にも分かってない!! 分かってないよ理亞さんは!!」

ルビィ「ツバサさんの言ったこと何一つ!!」

理亞「!! ……は? 黙って聞いてれば何それ」

343: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:26:16.30 ID:bbeoGlma
雪穂「今日の練習はみんな一段と気合が入ってましたね」

ツバサ「そうね、これなら……」

ツバサ「……ん?」

雪穂「ツバサさん? どうかしたんですか……って」

雪穂「またあの二人ですか、でもまあいつもの喧嘩でしょう」

雪穂「軽く注意しに」

ツバサ「……いや、少し怪しいわね」

雪穂「え?」

ツバサ「いつもと雰囲気が違うような…」

344: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:27:01.57 ID:bbeoGlma
理亞「私だってちゃんと理解している!!でも今はそれより他にやることあるって話してるの!」

ルビィ「何も上手くいかない練習を繰り返すことが!本当に全部を無視してまでやらなくちゃいけないことなの!?」

理亞「だから!合わせなさいって言ってるでしょ!」

理亞「それが出来てないから今こうなってるんでしょうが!!」

理亞「出来てないから!やらないといけないのよ!!」

理亞「7月だって今日を入れてあと3日で終わる!それが終わればすぐにフェスライブが始まる!!」

理亞「私はそこでトップを取らないといけないんだ!もう時間がないの!これ以上私の邪魔しないでよ!!」

345: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:27:38.35 ID:bbeoGlma
ルビィ「……っ……なんでそんなに勝ちにこだわるの」

理亞「はあ!?」

ルビィ「ずっと前から思ってた! あのときも同じようなこと言ってたから!」

ルビィ「でもフェスライブは大会じゃない!お祭りでしょ!!?みんなで楽しむためのものじゃん!」

ルビィ「勝ちたいって人はいるし、競いあいだってあるけど! それでも!」

ルビィ「理亞さんみたいに勝つことだけしか頭にない人なんて絶対にいないよ!!」

理亞「っ!!」

ルビィ「どうしてそんなに焦ってまで一番を取りたいのさ!!」

346: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:28:21.11 ID:bbeoGlma
理亞「……るさい」

ルビィ「え……?」

理亞「うるさいうるさいうるさい!! 分かってるのよそんなことは!」

理亞「だけどっ!!」

グイッ

ルビィ「!?」

理亞「もう私しかいないのよ!!」

347: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:29:18.52 ID:bbeoGlma
理亞「姉様はもう卒業していない! 次は私が引っ張っていかなくちゃいけない!」

理亞「あの二人を!リーダーである私が!!」

理亞「他の皆だって注目している! 全員がSaint Snowのことを見てる!」

理亞「フェスが終われば次はラブライブの一次予選が始まる! すぐそこまで来てる!休んでる暇なんてないの!」

理亞「そのときまでに私が何とかしないと! そうしないとっ……!」

理亞「今まで姉様と積み上げてきたものが! 全部崩れるじゃない!!」

ルビィ「──!」

理亞「今が一番大事な時期なんだ!! 私がっ!!」

理亞「私がやらなくちゃ! 一体誰がやればいいのよ!!」

348: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:30:13.66 ID:bbeoGlma
ルビィ「…………」

理亞「はぁっ……はぁっ……」

「そこまでにしておきなさい」

ルビィ・理亞「!」

ツバサ「二人とも流石にやりすぎよ」

理亞「……ご」パッ

ルビィ「ごめんなさい! 私が悪いんです! つい煽るようなことを言ったから!」ペコ

理亞「……黒澤ルビィ、あなた」

ツバサ「……いいわ、今日のところは大目に見ておいてあげる」

ツバサ「ただし、二回目はないわよ。分かった?」

349: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:30:44.13 ID:bbeoGlma
ルビィ「はい」

理亞「……すみませんでした」

ツバサ「今日はもう上がってゆっくり休みなさい、二人も思うところがあるでしょうし」

ツバサ「それにオーバーワークは怪我の元になるわよ、あまり無茶しないこと」

ツバサ「ね?」ポン

理亞「……はい、失礼します」

ルビィ「お騒がせしました」

350: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/04/04(月) 19:31:15.43 ID:bbeoGlma
スタスタ……


ツバサ「……」

雪穂「ふぅー……ビックリしたあ、一時はどうなることかと思いましたよ」

ツバサ「ええ、まさか昨日言ったそばからすぐ止めることになるなんてね」ハア

ツバサ「……けど、今ので大体の事情は掴めたわね」

雪穂「……ですね」

ツバサ(今まで自分を支えてくれた姉の卒業と、そこから一人立ちしなければいけないという使命感に加えて)

ツバサ(リーダーとしての責務と前回のラブライブ優勝者であることに対する)

ツバサ(周囲からの期待とそのプレッシャー……そこから来る焦り、か)

ツバサ(重いわね……パートナーであるルビィちゃんは)

ツバサ(この厄介な現実に、どう向き合うつもりなのかしら)