岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 その1

285: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 22:48:32.11 ID:Sqs4Tgixo
第4章 夢幻のホメオスタシス♀


ダル「ただいま  ~。あれ、牧瀬氏まだ居たん?」

倫子「ダル、ちょうどいいところに。これより、"過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>"を再開するっ!」パァッ

倫子「お前たちにも過去を変えるメールを送ってもらうぞ」フフッ

ダル「マジで? 下に店長まだ居るけど」

紅莉栖「夜は電話レンジ、カッコカリ、が作動しないはずでしょ」

倫子「無論、その検証も兼ねている」

倫子「(記憶継続現象が本当にオレだけに発現しているものか否かを確かめなければ……)」

倫子「(1週間前のあの現象――ドクター中鉢の記者会見や、2000年に現れたタイターの記憶が世界中から消えていた現象――も説明がつくかも知れない)」

倫子「(それはつまり、オレに特殊能力――"リーディング・シュタイナー"――があるやもしれぬということ……ふふふ)」ニヤニヤ

ダル「オカリン、にやついてるけど何かあったん?」

紅莉栖「特殊能力に目覚めそうなんだと」

ダル「あー、そういや高校の時、指ぬきグローブ集めたり、ノートに詠唱呪文書いてたりしたな……」

286: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 22:54:23.64 ID:Sqs4Tgixo

倫子「で、過去をどう変えるか、決まったか?」

紅莉栖「……私、今日は帰るね。実験結果は明日教えて。じゃ」クルッ

倫子「逃げるのか」

紅莉栖「え……はぁ!?」

ダル「突然どしたんオカリン」

倫子「ここまで来てまだタイムマシンから逃げるのかと聞いている」

倫子「愛憎相反する気持ちを同時に持ち合わせているようだが、トラウマは克服しなければいつまでも苦しめられることになるぞ」

紅莉栖「……あんたが私のためを思って言ってくれてるのはわかる。けど、けど……」

ダル「な、何の話?」

倫子「安心しろ。過去改変は一度無事に行われた。天才少女なら問題なく実行できるはずだ」

紅莉栖「……もし、私が記憶を失ったら?」

倫子「その時はオレが覚えていてやる。そしてお前に思い出させてやる」

紅莉栖「おかべぇ……///」トゥンク

紅莉栖「で、でも、そんなの、無責任で非科学的よ!」

倫子「そうだな……すまない」シュン

紅莉栖「……考えるだけ考えてみる」

287: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 22:55:43.97 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「…………」

ダル「牧瀬氏が長考に入ったっぽいから、僕の過去から変えてもおk?」

倫子「ああ、いいぞ。どんな内容だ?」

ダル「こないだのフェイリス杯の話だけど、フェイリスたんに雷ネットABでどうしても勝ちたいんだよね」

倫子「む? フェイリス株を上げたいなら負けてあげた方がいいのではないか?」

ダル「いやあ、優勝賞品のオカリン写真集の副賞のフェイリスたんの手料理が食べたくて……おっといっけね」

倫子「おいまてコラ」

紅莉栖「橋田、今なんて言った!?!?」キラキラ

倫子「お、おい、やめろ! そこに食いつくなぁ!」

ダル「うっかり口が滑ってしまったのだぜテヘペロ☆」

288: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 22:57:20.73 ID:Sqs4Tgixo

prrrrrr ピッ

フェイリス『凶真ァ! 凶真から電話くれるニャんて、フェイリス嬉しいニャ♪』

倫子「この間のフェイリス杯での優勝賞品の件なんだが」

フェイリス『……ハニャ~ン? ニャんのことかニャ? フェイリス、全然わからないニャ! それじゃ』ピッ

倫子「……黒だな」

紅莉栖「岡部写真集についてkwsk!」

ダル「えっと、小学生の頃から今に至るまでのベストショット100選を収めたコレクター垂涎の一品だお」

ダル「まあ僕は3年間ずっとリアルオカリンの隣で萌え成分を吸収してきたから、それよりも副賞のフェイリスたんの手料理が食べたいわけだが」ドヤァ

紅莉栖「このデブ、羨ましすぎる……」ギギギ

倫子「ツッコミどころが多すぎるぞ……」

倫子「まず、どうしてそんなものをフェイリスが持っている? それに、まるでオレ関連グッズが市場に出回ってるような言い方ではないか」

ダル「アウトローだから元締めの許可がないと参加できないマーケットだお」

紅莉栖「フェイリスさんにお近づきにならなきゃ……!」

倫子「支配構造を破壊してやるぅ!! うわぁん!!」

289: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:00:44.47 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「なんとしても橋田をフェイリスさんに勝たせるわよ……ウフフ」ジュルリ

倫子「なんとしてもダルをフェイリスに勝たせなければ……」ゴゴゴ

ダル「おうふ……2人とも僕よりやる気満々になっちゃったお」

倫子「早く準備をしろ、ダル!」

ダル「あいあいさー! 『フェイリス杯 敵の配置は VL V VL VLL』、これでバッチリだお!」

倫子「よしっ、早速送信だっ!」

バチバチバチッ……

倫子「ヒッ……この放電現象が出たという事は……"現在"が、変わっていない?」

ダル「過去、変わった?」

倫子「ちょっと待て! ダルも覚えているんだな?」

ダル「は? なにを」

倫子「今Dメールを送ったことをだぁ!」

紅莉栖「覚えてるに決まって……あ、そうか。過去が変わったなら、この記憶があるのはおかしい」

ダル「……僕がフェイリスたんに勝った記憶はないお。ショボーン」

紅莉栖「結局フェイリスさんのストラテジーのほうが一枚上手だった、ってことね」

倫子「ぐぬぬ……これではオレのプライバシーが守られないではないかぁ!」

290: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:02:07.48 ID:Sqs4Tgixo

ダル「僕が勝つまで何度でも試すお!」

紅莉栖「必勝法なんて本当にあるのかしら……」

倫子「ん、待てよ? 別にダルが勝つ必要はないんじゃ……」

倫子「過去のオレに『フェイリス杯 優勝賞品は オレの写真』と送るだけであの時のオレは探りを入れるはず……ッ!」

倫子「もちろん送信先は、萌郁をラボメンに加えたタイミングだっ! そのままフェイリスを問いただせばいい!」

倫子「(本当はダルの過去を変える実験をしたかったが、この際背に腹は代えられぬ!)」

紅莉栖「でもフェイリス杯やってる時、私と岡部はIBN5100を神社から運んでたのよね……」

ダル「じゃ、それ送ってみるお」

倫子「ああ、よろしく頼む」

ダル「ポチっとな」

291: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:02:35.12 ID:Sqs4Tgixo

―――――――――――――――――――
    0.51015  →  0.50329
―――――――――――――――――――

292: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:04:51.79 ID:Sqs4Tgixo

倫子「(ぐっ……またこの気持ち悪さか。だがこれはつまり、成功した、ということか?)」

紅莉栖「だ、だいじょうぶ? 突然具合悪そうにして……救急車呼ぶ?」

倫子「……もう大丈夫だ。頭痛も治まった」

紅莉栖「で、でも……脳疾患系だったら緊急の可能性もあるし……」

倫子「心配しすぎだ。ラボメンを置いて鳳凰院凶真が倒れるわけないだろう」

ダル「それで、どう? 過去変わった?」

倫子「なにっ? やはり失敗したか。この目眩は成功とは関係ないのか……?」

ダル「失敗かー。どうあがいても僕はフェイリスたんに勝てないのかお! ふざくんな!」

倫子「……む? 今のDメールはフェイリスに勝つためのメールではなかったはずだが」

紅莉栖「えっと、岡部の記憶ではどんなメールを送ったことになってるの?」

倫子「なんだと……? これは、ひょっとするとひょっとして……」

293: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:05:49.92 ID:Sqs4Tgixo

prrrr ピッ

フェイリス『凶真ァ! 凶真から電話くれるニャんて、フェイリス嬉しいニャ♪』

倫子「さっきも電話しただろう?」

フェイリス『ハニャ? ニャんのことかニャ?』

倫子「(やはり過去が変わっている……?)」

倫子「まあいい。それで、フェイリス杯の優勝賞品についてなんだが」

フェイリス『あ、あれは本当に悪かったニャ~。凶真ァ、そろそろ許してほしいニャ!』

倫子「……オレはお前から写真集を取り上げた、そうだな?」

フェイリス『黒服たちに頼んで10年かけて集めた至高の一品だったのにぃ……』

倫子「10年前からお前はオレのことをストーカーしていたのか。軽く衝撃の真実だな、引くぞ」

フェイリス『ニ゛ャーッ!? 凶真ァ、なんでもするから嫌いにならないで欲しいニャ! 前世より課された天命に従わされてしまったせいなのニャ!』

倫子「盗撮を棚に上げて何を……というか、そんなものをなぜ賞品にした」

フェイリス『もっちろん誰にも譲る気はなかったニャ! 事実、フェイリス杯はフェイリスの優勝だったのニャ!』

倫子「(ダルは勝てなかった……ここは変わっていないのか)」

294: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:06:58.94 ID:Sqs4Tgixo

倫子「(その後、過去改変が成功した旨を紅莉栖とダルに説明した)」

紅莉栖「ってことは、今写真集は岡部の手元にあるのね!? どこ!? どこにあるのぉ!?」ハァハァ

倫子「ええい、うっとおしい! というか、このオレにはそんな記憶はないのだ。わかるわけないだろ」

紅莉栖「忘れない能力っていうか、それ、思い出せない能力なんじゃないの? つっかえないわねー」

倫子「ぐぅっ!!」グサッ

ダル「牧瀬氏、容赦ねえっす」

倫子「言うようになったではないかぁ、助手ぅ……ククク」

紅莉栖「いつまでも下手に出てる私じゃないわよ? 私が居ないと研究が進まないことをわかってもらってるみたいだからね」フフン

倫子「弱みを握ったつもりか、貴様……いずれ鳳凰院凶真に盾ついたことを後悔させてやろう。覚悟しておくがいいっ!」

紅莉栖「……岡部の身体や脳に異変があるのは、私イヤだから」

倫子「ん? 何か言ったか?」

紅莉栖「ううん、なんでも」

295: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:08:21.50 ID:Sqs4Tgixo

倫子「(この後も実験を続けたが放電現象は起きなかった。夜の7時がタイムリミットらしい)」

紅莉栖「昨日からこのマシンの仕組みについて考えてたんだけど……」

紅莉栖「電子レンジ単体じゃブラックホールは作れない。何かが干渉して電子を注入してきているのは間違いない」

倫子「"なにか"とは、なんだ」

紅莉栖「……ごめん、そこまではわからない。ホテルで考えてみる」

ダル「牧瀬氏、今日はラボに泊まらないん? 僕は帰るけど」

紅莉栖「……と、泊まってもいい? 岡部?」

倫子「むしろオレはセレブなホテルでゆっくり風呂に入って体を休めてみたいがな」

紅莉栖「えっと……じゃぁ、来る?」

倫子「いいのか?」

紅莉栖「全然いいけど。料金は私が払うし」

ダル「うほっ。妄想が捗りますなぁ」

倫子「……やはり、やめておこう」

紅莉栖「な、なんで!?」

倫子「お前にこれ以上貸しを作っては、なにで脅されるかわかったもんじゃない。それに今オレの手持ちは5000円しかない」

ダル「うはwww 牧瀬氏信用なさすぎwww」

紅莉栖「ぐ……ぐはぁ」orz

296: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:12:45.53 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「フェイリスさんが金で岡部を堕とそうとした気持ちがわかるわ。ってかそれでどうやってここの家賃払ってるのよ」

倫子「無論、家賃代や水道光熱費代は別に取ってある。手を付けるなよ」

紅莉栖「つけないわよ。むしろ無利子で援助したいくらい」

紅莉栖「私、結構研究費降りてきてるんだけど、そんなに使い道がないのよね」

倫子「なんともうらやましい……が、そんなことでセレセブになびくオレではないわっ!」

ダル「オカリンは夏休みになるまで必死でバイトしてお金溜めてたんだお」

倫子「言うなぁ!」

ダル「たしか、棚卸や映画館の半券もぎり、ティッシュ配りとかしてたっけ」

紅莉栖「へー、意外ね。でも、それって10万も溜まってないんじゃない?」

倫子「……正直、金がヤバイ」

紅莉栖「今日ホテルに泊まってくれるなら金銭的援助をしてもいいけど?」

ダル「それって援助交s」

倫子「……ッ! ダルぅ、助けてくれぇ!」グスン

ダル「プライドが金になると思えばいんじゃね? つか、牧瀬氏なら大丈夫っしょ」

倫子「裏切り者ぉ!! うわぁん!!」

297: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:14:28.86 ID:Sqs4Tgixo
御茶ノ水 ローズホテル東京


倫子「結局ホイホイついてきてしまった……屈辱だ……」

紅莉栖「待ってもらってごめん。片付いたから、どうぞ入って」ガチャ

紅莉栖「(ついに倫子ちゃんを部屋に連れ込むことに成功した……! ワクワクしてきたぞっ!)」

倫子「想像していたほどではないが、いい部屋だな」

倫子「シャワー借りるぞ。変なことするなよ」

紅莉栖「わかってるわよ。ゆっくりお風呂につかって、日ごろの疲れを落としなさい」

紅莉栖「(無理無理無理ッ! 変なことしない自信がないッ!!)」

紅莉栖「お、落ち着け牧瀬紅莉栖……素数を数えるんだ……だがしかし……」

シャー

紅莉栖「壁越しに聞こえるシャワーの音ッ! 正直、たまりません……ハァハァ」

298: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:15:38.73 ID:Sqs4Tgixo

倫子「ふわぁ、すっごく気持ち良かった……。足が伸ばせる湯船は最高だな!」ポカポカ

倫子「って、どうしたクリスティーナ? ぼーっとしているが」

紅莉栖「別に、なんでもないわ」ツヤツヤ

倫子「……まあいい。ほら、次はお前がシャワー浴びてこい」

紅莉栖「その台詞だけで3杯はイケるわね……」

倫子「はよ行け! この絶倫百合女が!」

紅莉栖「今までで一番ひどいっ!?」


倫子「まったく、いちいち疲れるやつだな。オレはベッドで寝かせてもらおう」

トスッ

倫子「……シーツが湿っている?」

299: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:17:49.22 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「お待たせ。遅くなってごめん、髪乾かすのに時間がかかっちゃって」

紅莉栖「(倫子ちゃんの残り湯で第2回戦に突入してしまうとは……失敗したわ)」

倫子「別に待ってなどいない。助手が風呂をあがるまでに寝込むつもりが間に合わなかったか……」

紅莉栖「それで、その、私もそろそろ寝ようと思うのだけど……」モジモジ

倫子「ああ。オレはベッドで寝るから貴様は床で寝ろ」

紅莉栖「はぁっ!?」

倫子「もし寝ているオレに触れたり、写真でも撮ろうものならお前とは絶交する。この条件が飲めないならオレはラボに帰る」

紅莉栖「ちょ……。ううん、わかった。それでいいわ」

紅莉栖「(私ってラボメンなのに、こんなに信用されてなかったんだ……)」グスン

倫子「……と言おうと思っていたが、今後の助手の活躍を期待して大目に見てやろう。何よりこの部屋の主はお前だしな」

紅莉栖「ふぇ?」

倫子「ほら、こっちに来い」

紅莉栖「おかべぇ……!」ウルウル

倫子「か、勘違いするなぁ! 単にベッドで寝るのを許可しただけで、変なことしたら即通報するからなっ!」アセアセ

300: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:19:12.84 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「(うほほぉーっ、まさかの同衾! くんかくんか、スーハースーハー!)」

紅莉栖「(岡部は向こう向いちゃって背中しか見えないけど……うなじのラインがたまらんっ!)」ハァハァ

倫子「静かにしろ。息を吹きかけるな、こそばゆい」

紅莉栖「ご、ごめん……」

倫子「……なあ、本当にオレでよかったのか」

紅莉栖「えっ?」

倫子「オレみたいな……その、痛い子が友達で、お前は満足なのか?」

紅莉栖「……私のいるアメリカの研究所って結構殺伐としてるのよね」

倫子「む?」

紅莉栖「それに比べて、あんたのラボは幼稚だけど……居心地がいい」

紅莉栖「あんたが作ってる空気に浸かってるとね……なつかしさっていうのかな。私に幸せなホームがあった頃を思い出すの」

倫子「ホーム、か……」

301: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:20:24.52 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「そう言えば岡部はどうしてラボを作ったの?」

倫子「電機大にダルと共に行くことは前々から決めていたからな。自分で非公認サークルを立ち上げたまでだ」

紅莉栖「(既にあるサークルに入っても、岡部にはいずれ自分の居場所がなくなる不安があった、ってところかしら)」

紅莉栖「でも、どうして大檜山ビルに?」

倫子「……いいだろう。たまには昔話に洒落込むとするか。そう、あれは今から半年前のこと―――」



~~~~~


倫子「店主! 店主はいるか!」

天王寺「俺が店主だが、なんだい嬢ちゃん?」

倫子「表の張り紙を見てきたのだが、このビルの2階が貸し出し中というのは本当か? 賃料応相談というのも?」

天王寺「まあな」

倫子「ならば貸しては貰えないだろうか。もちろん出せる限りは出す」

天王寺「いくらだ? ほれ、電卓だ」

倫子「……こんなものでどうだろうか」スッ

天王寺「喧嘩売りに来たのか?」

倫子「い、いや、そういうわけでは……」

天王寺「だったら相場を学んでこい。いくら綺麗なツラした姉ちゃんだからって、社会を舐めちゃいけねえな」

倫子「くっ……そこをなんとか! オレは、このビルが気に入った! 風情というか、時代を生き抜いてきた空気感というか!」

倫子「実にすばらしい佇まいだ! このビル以外に我がラボはありえない!」

天王寺「ラボ? お前さん、研究者か何かか?」

倫子「ククク……我が名は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぁ!」

天王寺「帰れ」

倫子「岡部倫子です……」


~~~~~


302: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:22:44.98 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「それであそこを貸してもらうことになったのね」

倫子「いや、断られた」

紅莉栖「えっ?」

倫子「丁度その頃、別の人間があそこを借りようとしていたらしくてな……オレは必死にミスターブラウンに訴えたのだ」



~~~~~


倫子「待ってくれ! 話はまだ終わっていない!」

天王寺「向こうさんとは契約手前まで行きかけてるんだよ。お前さんと違っておかしな言動も無いしな」

天王寺「ハッキリ言って勝負にならねえ。お前さんみたいな文無しに貸す可能性は1%もねえんだよ」

倫子「そこをなんとか! 居場所が……居場所が、必要なんだ!」

天王寺「そんなの俺の知ったことか」

倫子「オレはどうしてもラボを作らなければならないんだ!」

天王寺「オイオイ、なんで俺が学生のサークル遊びに付き合わなきゃならねえんだ。カンベンしてくれ」

天王寺「大体、金がねえなら郊外に行きゃいいだろ。ここじゃなくたっていいはずだ」

倫子「ダメなんだ! この秋葉原でなければっ!」

天王寺「大声出すな。なぜこの街にこだわる?」

倫子「ここにはすべてがあるからだ。新しい物も古い物もすべてな」

倫子「この秋葉原には最先端の文化だけでなく、時代に取り残されたロストテクノロジーが眠っている!」

倫子「常人にはガラクタにしか見えない遺物。だがその中にこそ、偉大な発明の元がある!」

倫子「本流とは常にマスコミや広告会社の陰謀にまみれているもの。亜流から本流を生み出すことこそが、この鳳凰院凶真の目的!」

倫子「混沌に溢れた秋葉原こそ我が故郷なのだ! ふぅーはははぁ!」

天王寺「……お前さん、ブラウン管に興味はあるか?」

倫子「ブラウン管? フン、微塵もないな」

天王寺「なにィ?」

倫子「……いや、あります。あることにしました」

天王寺「そうか。なら今から一杯やりにいくか」

倫子「なっ!? 年端もいかない少女に酒を飲ませ、酔ったところを襲うつもりかこの卑劣漢め!」

天王寺「嫌ならいいんだ、嫌なら」

倫子「お酌致しますので、はい……」


~~~~~


303: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:24:33.79 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「(あのクソハゲダルマ、倫子ちゃんを飲みに連れて行くなんて……羨ましいっ!!)」

倫子「まあ、飲みに連れて行かれはしたが奴の苦労話を聞くだけだった。オレを見てると死んだ嫁さんを思い出すんだと」

倫子「綴さん……ミスターブラウンが運命の人と出会ったのは、まだ相手が大学生の頃だったそうだ。偶然にも電大生でな、オレの先輩ってわけだ」

紅莉栖「えっ……じゃぁ、綯ちゃんのお母さんって……」

倫子「綯を産んだと同時に亡くなったらしい」

紅莉栖「そう……だったの……」

倫子「部屋を借りてからはミスターブラウンに頼まれて綯と遊ぶこともあったが……綯のタックルは痛い。受け止められるのはまゆりくらいだろう」

紅莉栖「まゆりって結構基礎体力あるわよね」

倫子「あいつは小さい頃から足が早くてな。食べても太らない、アスリート体質なんだよ」

紅莉栖「(こうして岡部とベッドの中で話してると、修学旅行の夜みたいで楽しいな……一度も行ったことないけど)」フフッ

304: ◆/CNkusgt9A 2015/11/14(土) 23:26:07.39 ID:Sqs4Tgixo

紅莉栖「橋田に聞いたけど、最初のうちはまゆりだけがラボメンだったんでしょ?」

倫子「そうなのだ……あいつ、オレがラボに誘った当初は全く乗り気ではなかった」

倫子「5月過ぎにメイクイーンとラボが近所であることが判明したことでラボメンに加入することになったが」

紅莉栖「(橋田なりに岡部の大学生活を見守った結果なのかも知れないわね)」

倫子「……オレは、友達が欲しかっただけなのかもしれないな」

紅莉栖「私も……そうなのかな」

紅莉栖「まだ出会って1週間なのに、まるで何かの力に引き寄せられるように私たちは近づいていった……」

倫子「その何かとは、まさしくタイムマシンだろうな」

紅莉栖「……岡部の、力になりたい」

倫子「ああ、期待しているぞ。さあ、そろそろ未来へと旅立とうではないか」

紅莉栖「ふふ、そうね。日付をひとつ進めましょうか」

倫子「おやすみ、クリスティーナ」

紅莉栖「……おやすみ、岡部」

311: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:14:55.89 ID:9lnzvTlvo
2010年8月4日 
未来ガジェット研究所


倫子「(朝起きると助手がオレに抱き着く形でよだれを垂らしながら『倫子ちゃん、ぺ  ろー』などと寝言をほざいていたのでオレは無言で退室した)」

まゆり「オカリンだけずるいなー、クリスちゃんとお泊り会するなんてー」

倫子「 的な危機さえなければ大歓迎なんだがな……」

まゆり「はい、ラーメン缶だよー。朝ごはんにどぞー♪」

倫子「おお、ご苦労まゆりっ!」

キキーッ!!

倫子「む。このブレーキ音は、バイト戦士のMTBか」


 鈴羽<「やっほー! おはよー!」


倫子「窓を開けると下からもよく声が聞こえるな」

まゆり「スズさんだぁ! トゥットゥルー♪」


 鈴羽<「鳳凰院凶真ー! タイターはなんか言ってたー?」


倫子「(今更誤魔化そうとしてるつもりらしいが、開口一番その話題とは、問うに落ちず語るに落ちたな)」フッ

312: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:17:31.97 ID:9lnzvTlvo

まゆり「あー、クリスちゃんだー!」

倫子「なにっ!? ただでさえあいつはオレが無言退室したことで不機嫌なはずっ」

倫子「そんなあいつが今バイト戦士と出会ったら……」ガタガタ


 鈴羽「…………」

 紅莉栖「……言いたいことがあるならハッキリ言えば」

 鈴羽「ぐっ……収束さえなければ殺すのに……」ボソボソ


倫子「(一瞬つかみ合いになるかと思ったが、二言三言交わしただけだった)」

ガチャ

まゆり「クリスちゃん、トゥットゥルー♪ 昨日はお楽しみでしたねー?」

紅莉栖「どこで覚えたのそんな言葉……グッモーニン、まゆり」

倫子「思いのほか機嫌が良さそうだな。なにか良いことでもあったのか?」

紅莉栖「えっ? 昨日の夜のこと、忘れちゃったの? 岡部の温もりを思い出しただけでも……えへへぇ」トロォ

倫子「そ、そうか。それでお前が満足ならいいが……」

まゆり「お泊り会でなにかあったのかなー、オカリン?」ズイッ

倫子「ひぃっ!? 顔が笑ってないぞぉ! 怖いからやめてくれぇ!」

紅莉栖「安心して、まゆり。一緒の布団で寝たけど、別に何もなかったわ」

まゆり「よかったー♪ もしオカリンにいたずらしてたら、まゆしぃは……ううん、なんでもないよー♪」

倫子「人質にどうこう言われる筋合いはないがなっ!」

紅莉栖「(まゆりも結構ヤンデレなのかしら……)」

313: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:18:13.49 ID:9lnzvTlvo

倫子「しかし、バイト戦士はどうしてクリスティーナに突っかかるんだろうな」

ダル「そんなの、牧瀬氏の人気に嫉妬してるに決まってんじゃんJK」

まゆり「ダルくん、トゥットゥルー♪」

ダル「本来ならあたしがラボメンナンバー004になって、楽しくみんなと青春する予定だったのに、キーッ! 悔しい! みたいな」

紅莉栖「仮にそうだとしたら死んでも004の座は渡さないわ。岡部から貰った大切な番号だもん」

倫子「いい心がけだ、助手。ラボメンナンバーは数千万円というレートで違法トレードされるほどのシロモノだからな」フゥン

ダル「(実は裏マーケットでフェイリスたんが血眼になってラボメンナンバーを手に入れようとしているなんて言えない……)」

まゆり「みんな仲良くしてるほうがまゆしぃはいいなー」

314: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:18:57.82 ID:9lnzvTlvo

倫子「それで、助手。変える過去は決まったか?」

紅莉栖「それなんだけど……私が今このラボにいる確率って、奇跡的なものだと思うの」

ダル「それは激同。サイエンス誌に載った若き天才が目の前に居るって、よくよく考えなくてもすごいことだお」

紅莉栖「だからね、どんな些細な過去を変えたとしても、私はこのラボのラボメンじゃなくなってしまう可能性がゼロとは言い切れない」

倫子「ふむ……。一理ある」

まゆり「まゆしぃもね、クリスちゃんがラボメンじゃなくなっちゃったら、いやだよー」

紅莉栖「私も絶対イヤ。日本に来てようやく見つけた私の居場所だもの、この現在を変えるなんて、私はできない」

倫子「……わかった。助手は過去を変えなくていい」

紅莉栖「ありがと、岡部」

倫子「となると、残されたのは……」

ダル「……」

紅莉栖「……」

まゆり「えー? まゆしぃ?」

315: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:19:55.82 ID:9lnzvTlvo

倫子「いいか、まゆり。現在はまだ8号機の実験段階だ、制御下にあるとは言い難い」

倫子「ゆえに目下改変すべきは直近の過去であり、些細なことに限定している」

まゆり「……おばあちゃんが生きてた頃、まゆしぃはケータイ電話持ってないから大丈夫だよー」

倫子「そうだ、このラーメン缶を使おう。『今日はおでん缶が食べたい気分だなー』とメールするのだ」

まゆり「あー! それならすごくいいかも! 今日もね、自動販売機の前で10分くらい迷っちゃったんだよーえへへー」

紅莉栖「(アホの子かわいい)」

倫子「助手、今まゆりのことを"アホかわいい"と思っただろう」

紅莉栖「ふぇっ!?」

まゆり「クリスちゃん、まゆしぃのこと、アホだと思ってるのかなー?」ショボーン

紅莉栖「お、思ってないわよ!? まゆりと会話する時は難しい単語を使わないようにしようとかこれっぽっちも考えてないから!!」

ダル「Oh……」

316: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:21:04.15 ID:9lnzvTlvo

ダル「1時間前にメールを送るとなると、マシン作動時間が1秒しかないから放電現象は起きませんでしたワロス」

倫子「ぐぬぬ……。これではいつまでたっても検証ができないっ!」

紅莉栖「岡部以外の過去改変で岡部の記憶がどうなるか、という点について、よね」

倫子「こうなったらラボメンナンバー005を出動させるしかなさそうだな」

紅莉栖「005?……ああ、桐生さんか。そう言えばラボメンだったわね」

倫子「お前。ひどいこと言ってるの、自覚してるか?」

紅莉栖「えっ?……あっ。ご、ごめん」

倫子「オレに謝られても困る。まあ、7年も友達が居なかったやつに人の気持ちを考えろというのも酷な話かも知れんな」

紅莉栖「うぅ……人として恥ずかしい……」

まゆり「だいじょうぶだよー、クリスちゃん。クリスちゃんは良い子だよー?」ナデナデ

紅莉栖「まゆりぃ……ふぇぇ……」

倫子「とにかく、指圧師に過去を変えさせるぞっ!」

317: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:22:04.99 ID:9lnzvTlvo

倫子「メールで呼び出したから、今に来るだろう」

倫子「(受信履歴を見たところ、どういうわけか8月3日以降の萌郁からのメールは削除されていた……記憶には無いが、オレが消したのか?)」

ガチャ

萌郁「…………」

まゆり「トゥットゥルー、萌郁さん♪ あれー、元気ないよー? だいじょーぶ?」

倫子「指圧師はいつも無表情だろう」

倫子「萌郁よ。ラボメンとしての働き、期待しているぞっ」

萌郁「わかった……」

紅莉栖「送信するDメールの内容は、過去が変わったかすぐわかるような、それでいてシンプルなものが好ましいわ」

萌郁「過去を変える、メール……?」

倫子「もう忘れたのか? というか、お前はロト6のメールを送信……あ、そうか。この記憶はオレにしかないものだったな」

紅莉栖「なに岡部、まだ桐生さんに電話レンジの……カッコカリの機能の説明をしてなかったの?」

倫子「あー、どうやらそうらしい。記憶があったりなかったり、ややこしいな……」

萌郁「…………」

318: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:23:20.26 ID:9lnzvTlvo

倫子「(萌郁に簡単に"過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>"の概要について説明し、今までのDメール実験の成功例と失敗例を伝えた)」

萌郁「…………」ポチポチ

ピロリン♪

倫子「どれどれ? 『4日前にケータイの機種変したの。でもやっぱり変えない方がよかったなって思い始めて…… 萌郁』」

倫子「閃光の指圧師<シャイニング・フィンガー>は実に有能だなっ! まさにラボメンの鑑っ!」パァッ

紅莉栖「なるほど、良い案だと思うわ。桐生さんが今持ってるケータイが別のモノになれば過去が変わったことになる」

ダル「おっ、それって先月出たばっかの『GG01』じゃん! 最新機種だよ、今品薄でどこ行っても入荷待ちだけど、よく手に入ったなぁ」

萌郁「…………」

紅莉栖「それじゃ、早速実験の準備するわよ」

ダル「ブラウン店長になんか言われたらどうするん?」

倫子「ふぅーはははぁ! あんなハゲチクリン、おそるるに足らんわぁ!」

ダル「(まあ、あの人だったら許してくれるかもな)」

319: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:24:38.95 ID:9lnzvTlvo

倫子「指圧師よ、メールの準備はいいか?」

萌郁「…………」コクッ

倫子「電話レンジ(仮)、起動ッ!!」

バチバチバチバチッ

倫子「放電現象っ! よし、今だ、萌郁っ! 送信ボタンを押せ!」

萌郁「…………」ポチッ

・・・チーン

倫子「あ、あれ……なにも、起こらない……?」

ダル「どう? 過去変わった?」

紅莉栖「ケータイの機種は……変わってない、わね」

倫子「どういうことだ? どうして過去が変わらなかった?」

萌郁「……私、あの時、最新機種に惹かれてたから、無視、したのかも」

ダル「あー、確かにそれはわかる。どんなに@ちゃんの評判がクソのゲームでも自分が気に入ったものだったら買わずには居られない」

紅莉栖「それに未来から来た変なメールだし、桐生さんなら信用するに値しないと判断したのかも」

倫子「くそぅ、結局失敗か……はぁ」

320: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:26:25.09 ID:9lnzvTlvo

萌郁「私は仕事があるから、これで……」

倫子「そうなのか? 忙しいところ悪かったな。ヒマができたら遊びに来い」

萌郁「…………」

ガチャ バタン

倫子「ふむ、しかしまたどうして失敗してしまったのか……」

紅莉栖「どうして成功しないか、じゃなくて、どうして失敗したか、か。逆に、成功した時の状況を再現してみたら?」

倫子「……ぐあああっ!! オ、オレの左眼、魔眼"リーディング・シュタイナー"があぁぁっ!!」ガクッ

まゆり「オカリン、大丈夫……?」オロオロ

倫子「ダメだ、まゆり、オレに近づくな……今のオレは、お前を傷つけてしまうやもしれぬ……ぐぅっ!!」

ダル「釣り、乙」

紅莉栖「そ、そうよね……もう、冗談でもやめてよ。心配するじゃない」

倫子「再現しろと言ったのは助手ではないかー」プンスコ

紅莉栖「それに、シュタインズゲートもそうだけど、リーディングシュタイナーとかいうドイツ語と英語の組み合わせ、意味不明なんですけど」プークスクス

倫子「ぬうう……貴様、いよいよその生意気な本性を現し始めたな……」グギギ

321: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:27:09.63 ID:9lnzvTlvo
大檜山ビル前


倫子「(結局電話レンジ(仮)の使用限界である夜7時までに芳しい成果は得られなかった)」

紅莉栖「それで、岡部。今日もホテルに来る?」

倫子「いや、今日は1人にさせてくれ。オレが外に出たのはお前らの見送りだ」

ダル「1人残ったラボでよからぬことを……はぁはぁ」

紅莉栖&倫子「「HE  禁止!」」

まゆり「まゆしぃもクリスちゃんとお泊り会したいなー」

紅莉栖「大歓迎よ、まゆり」

まゆり「でもねー、きっとお父さんが許してくれないのです」

倫子「まゆりの親父は過保護だからな」

322: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:27:46.54 ID:9lnzvTlvo

ダル「そんじゃまた」

紅莉栖「バァイ」

まゆり「バイバーイ♪」

倫子「……まゆりは、帰らないのか?」

まゆり「…………」

倫子「(と思ったら例のクセ――"星屑との握手<スターダスト・シェイクハンド>"――か。夜空に片手を伸ばしている)」

まゆり「あっ、流れ星……ねぇ、オカリン」

倫子「願い事はしたか? 今の一瞬では3回唱えるのは難しいか」

まゆり「……オカリンって、小学生の頃、すごい熱を出して1か月くらい寝込んだことがあったよね」

倫子「何を突然……。99年の年末から2000年の元旦にかけて、40度近い熱が1か月も続いた、らしいな。親から聞いた話だが」

まゆり「そっか。オカリン、意識がもうろうとしてて記憶にないんだっけ」

323: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:29:26.00 ID:9lnzvTlvo

まゆり「あのときね、まゆしぃはオカリンが死んじゃうんじゃないかって思って、すごく怖かったんだよー」

まゆり「だからね、おばあちゃんと一緒に、お空に祈ってたの。"オカリン死なないで"って」

倫子「ククク。このオレ、鳳凰院凶真が死ぬはずがないだろう!」

まゆり「そっか、オカリンはすごいねー」ニコニコ

まゆり「でもね、あの時……大晦日の日、流れ星がピューって流れたの。今みたいに」

まゆり「オカリン死なないで、オカリン死なないで、オカリン死なないで……って」

まゆり「次の日、年が明けた頃にね、オカリンは熱が下がって目を覚ましたのです」

まゆり「つまりまゆしぃは、オカリンの命の恩人なんだよーえへへー」

倫子「……そうか。それもまた運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択。ククク」

まゆり「違うよー、まゆしぃのおかげだってばー」

倫子「それも含めて運命だったのだろう。オレとお前は、前世からの宿縁によって相利共生の存在となっているのだっ!」

まゆり「そうだったのー? なんだかすごいねー♪」

324: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:32:30.36 ID:9lnzvTlvo

まゆり「ねぇねぇ。熱が下がったときね、オカリンはこんなことを言ったんだけど、覚えてる?」

まゆり「急に見ているものがグニャグニャしてきて、立っていられなくてふらふらして、身体がビクってなった、って」

倫子「ビ、ビクってなどいないわっ!」

まゆり「るかくんが宝くじを持ってきた時も、さっきのオカリンの……釣り? の時も、そんな感じだったよ」

まゆり「オカリン、本当に大丈夫? 熱出てない?」

倫子「案ずるな。なにも心配ない」フッ

倫子「(あの熱から目覚めて、最初に目にしたのはまゆりの泣き顔だった)」

倫子「(言われてみればリーディング・シュタイナーの時の目眩や気持ち悪さの感じととても良く似ていた気がする……)」

倫子「そうか。この魔眼は、まさにあの時この身に宿ったのだな……! ふぅーはははぁ!」

倫子「やはり特殊能力を得るには修行が必要! どの少年漫画でもそうなっているっ!」

倫子「1か月高熱を出し続けるという苦行に打ち勝ったオレは、魔眼を手に入れたのだっ! すべて辻褄が合う!」

倫子「……だが、オレにその記憶は無い。もしかして、ここ最近のオレの記憶同様、過去が変わったせいで記憶を思い出せないでいるのか?」

倫子「例えば、元々99年末にオレが熱を出さなかった世界線――自称未来人の単語を使うのは憚られるが――において、2010年のオレが電話レンジ(仮)を発明し……」

倫子「99年末へとなんらかの情報を送ることによってオレに原因不明の病を引き起こさせた……無論、目的は魔眼発動のため」

倫子「(いや、そうとは限らない。仮にあの高熱でオレが死亡していたとしたら……というか、医者には死んで当然と言われたらしい)」

倫子「(オレの死の後、何者かがオレを蘇らせるために過去を変え、魔眼はその副産物だったとしたら……まあ、さすがに妄想しすぎか)」

倫子「ククク……世界の支配構造を破壊するのも、時間の問題だなぁ! ふぅーはははぁ!」

まゆり「オ、オカリン、夜に大声出すとご近所さん迷惑だよー」アタフタ

325: ◆/CNkusgt9A 2015/11/15(日) 21:35:32.78 ID:9lnzvTlvo

・・・


その日、ラボのソファで寝たオレは、変な夢を見た。

紅莉栖が開発室に立っている。X68kのターミナルを呼び出し、タイマー指定をしている。

なぜか、テレビのリモコンを持っている。

気が付けば、オレの頭にはアルパカマンというゲームのヘッドセットが装着されていた。

『問題。岡部を救うために祈りを捧げたまゆりが岡部を救ったとする。ここから導き出される論理的帰結とは、どんなのもの?』

準備を終えた紅莉栖は、肩越しに変なことを聞いてきた。

『①まゆりは岡部を助けることができた ②岡部を助けたのでまゆりは死ぬ ③岡部が助かったとは限らない』

そしてマシンが起動した。

『答えは③。現実は非情よね』

『じゃあね、岡部。世界線を超えようと、時間を遡ろうと、これだけは忘れないで』

『いつだって私たちはあんたの――』

『味方よ――』

333: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:51:37.30 ID:zM6IpGU1o
2010年8月5日木曜日
未来ガジェット研究所


るか「あ、あの、タイムマシンを使わせてくださいっ!」

倫子「……それは、むしろ願ってもない申し出だが、突然どうした?」

まゆり「るかくん、コスプレしに来てくれたんじゃなかったの……?」

るか「ごめんねまゆりちゃん。あの、岡部さん。ボク、どうしても試してみたいことがあって……」

倫子「凶真だ」

るか「あぁっ! す、すいません、おか――凶真さん」シュン

倫子「まったく、世話の焼ける弟子だな」フフッ

るか「(わふっ///)」

紅莉栖「しかしながら、こうしてみるとやっぱり漆原さんって……キュート、よね」ジュルリ

るか「え、え? えぇっ!?」

ダル「そろそろ牧瀬氏の 癖にも慣れてきた件」

倫子「出たな万年発 レ 。だが、お前は1つ重大な過ちを犯している」

紅莉栖「な、なにがよ? 漆原さんがかわいいってことは揺るぎない正義でしょーが」

倫子「まあいい。それで、ルカ子よ。己の望みをその言霊に乗せ、解き放てっ!」

るか「その……ボク……っ!」



るか「――女の子になりたいんですっ!!」



紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「"What's?"」

334: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:52:45.63 ID:zM6IpGU1o

るか「ボク、自分の顔、あんまり好きじゃなくて……」

るか「だから、もし女の子になれれば、少しは自信が出るかなって、昔から思っていたんです……」

倫子「ルカ子がそのような悩みを抱えていたとは……。気付いてやれなくてすまない。師匠失格だな」

るか「そ、そんな! おか――凶真さんは悪くありませんっ! ボクがこんな容姿なのが悪いんです……」グスッ

倫子「そんなわけない。ありのままのお前でいいのだ、否定はできない」ナデナデ

倫子「だが、同時にオレは、オレたちは、お前の望みも否定しないっ!」

るか「(きゅん///)」

紅莉栖「彼女はナニを言っているの」

倫子「クリスティーナ。たまにはその邪念で曇った双眸を磨いたらどうだ」

紅莉栖「……どういうことよ」

倫子「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」

紅莉栖「……カエサル。というか、それを紹介した日本人の言葉ね」

倫子「貴様の、"かわいい女の子と接点を持ちたい~♪"という邪念によって、ルカ子がかわいい女の子であると心から信じてしまう……脳の認識を誤らせているのだっ!」

紅莉栖「嘘よ……嘘だと言って……」

倫子「さあ、ひざまずけっ! 己の愚かさを後悔しろっ!」

倫子「そして最近オレに対して上から目線になりつつあることを反省しろぉっ!!」

倫子「―――ルカ子は、おぉとぉこぉだぁぁぁぁっ!!!」

紅莉栖「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」ダバーッ!

ダル「ちょ! 血を吐くほどとか」

まゆり「わー、タオルタオル……」

335: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:54:58.28 ID:zM6IpGU1o

倫子「まあ。オレだって男っぽく振る舞ってる女だ。女らしい男が居ても今更驚くことはないだろう」

紅莉栖「いや、それは何か違う気がする……」

紅莉栖「その理屈で行くと、岡部も男になりたかったりするの?」

倫子「オレの場合はこうでもしてないと理性を保てない人間どもが多いというだけで、男になりたいとはならない」

ダル「もはや厨二病こじらせてるだけっしょ」

倫子「う、うるさいぞっ! 厨二病で悪いかぁ!」

紅莉栖「(かわいい)」

倫子「だが、ルカ子の場合は違う。なんというか……ルカ子は素の状態で既に女なのだ」

紅莉栖「見た目も中身も女の子より女の子らしい……。水泳の授業の時とか、どうしてるの?」

るか「体育の先生にはお話を伝えていて、いつも見学させてもらってます」

ダル「ちな制服はどっちを?」

るか「えっ? も、もちろん学ランです」

紅莉栖「……学校でいじめられたりしてない?」

るか「……いえ、そんなことはないですけど」

まゆり「るかくんはねー、学校では人気者なんだよー♪」

倫子「ルカ子はまゆりと同じ私立花浅葱大学付属学園の2年生だ。同級生ってやつだな」

紅莉栖「(もしかしなくても、まゆりさんが彼女――彼を守ってるのかしら)」

336: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:57:14.26 ID:zM6IpGU1o

倫子「電話レンジ(仮)は我がラボの最重要機密事項。それを使う以上、お前はラボメンとならなければならないっ」

るか「あ、あの、ボク、このラボのメンバーに……ずっとなりたいって思っていたんです……」ウルウル

倫子「ラボメンナンバー006よ。以後、ラボに忠誠を誓い、ラボの発展のために全力を尽くせっ!」

まゆり「わーい! るかくんがラボメンだー♪」

ダル「(これはフェイリスたん憤死案件だ罠)」

倫子「しかし、性別を変えるほどの過去改変となると、どうすればいいか……」

紅莉栖「お肉をたくさん食べれば男の子を、野菜をたくさん食べれば女の子を産めるっている俗説があるらしい」

ダル「ソースは?」

紅莉栖「@ちゃ……インターネット」

ダル「そういう返しをするとは……おぬし、やるな……」

倫子「実に怪しい俗説。だが、それがいい。ククク、マッドな実験は大賛成だ」

るか「まっど……ですか。ちょっと怖いです」

紅莉栖「大丈夫よ、過去にメールを送るだけだから」

紅莉栖「えっと……この場合、漆原さんのお母さんが妊娠中の時期にDメールを送るのね」

倫子「さすが実験大好きっ娘。もう具体的な思案をしているとは」

ダル「ちょい待ち。るか氏のお母さん、その頃ケータイ持ってるん?」

倫子「あっ」

紅莉栖「はっ」

337: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:58:37.24 ID:zM6IpGU1o

倫子「ルカ子は1993年8月生まれ。ということは、1992年年末頃にメールを送らねばなるまい」

ダル「えっと……ググったら、携帯電話が日本に普及するのは96年っぽい。メール機能が実装されるのはさらに遅いかも」

るか「え……ダメ、なんですか……」ウルウル

倫子「……こういう時にぴったりな、オレの師匠の至言がある」

るか「師匠の、師匠……?」

倫子「諦めたら、そこで試合終了ですよ」

紅莉栖「安西先生ェ……」

ダル「おお、スラダンで思い付いたけど、ポケベルならるか氏の母上も持ってるかも」

紅莉栖「ああ、あのヤンデレソングね」


・・・


るか「ただいま戻りました。お母さん、ポケベルを持ってました。番号も聞いてきました」

まゆり「わぁー! よかったね、るかくーん♪」

ダル「技術的には多分問題ない。当時のポケベル文字に変換すればおk」

るか「ええと……『やさいたべるとげんきなこをうめる』、でどうでしょうか」

紅莉栖「濁点が文字数になっちゃうから『やさいくうとげんきなこをうめる』にして、これを変換すると『*2*281311223134524040322512502137493』ね」

倫子「ルカ子。ケータイの送信ボタンを押すのは、お前自身だ」

るか「はいっ……」

倫子「タイマーは『154152#』……よーし、起動っ!」



バチバチバチバチッ



るか「……えいっ!」

338: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 13:59:39.64 ID:zM6IpGU1o

―――――――――――――――――――
    0.50329  →  0.46903
―――――――――――――――――――

339: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:00:53.64 ID:zM6IpGU1o

倫子「ぐぅ……っ! また……またこの目眩か。ということは、成功……?」

倫子「(ルカ子は女になったのか?)」

るか「あの、岡部さん。大丈夫ですか?」

倫子「凶真だ」

るか「えっ。あっ! ご、ごめんなさいおか――凶真、さん」

倫子「ふーむ……」ジロジロ

るか「そ、そんなに見つめないでください……照れちゃいます……」

倫子「(見た目は全く変わってない。胸なんか、これで女の子だとすればぺったんこを通り越してまな板クリフだ)」

倫子「(自慢じゃないが、オレの    は助手よりはある。バストサイズが下がればいいと思ったことは一度もないが、今回ばかりはルカ子に分けてやりたい気分になる)」

倫子「実験は失敗か……」

まゆり「しっぱいって、なにがー?」

倫子「なにって、今まさに過去を変える実験を―――ああ、そうか。過去が変わったから記憶がないのか」

倫子「(おそらく、ポケベルにメッセージを送ることでなんらかの事象が変わり、先ほどの実験をしないバタフライ効果が生まれた)」

倫子「(例えば、ルカ子が女になったためにそもそも性別転換を思いつかなくなった……)」

倫子「(ん? だったら過去改変に成功しているのか?)」

340: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:01:40.99 ID:zM6IpGU1o

るか「それじゃ、ボクは帰りますね。まゆりちゃん、またね」

まゆり「今度こそコスを着てねー! ばいばーい♪」

ガチャ

倫子「(本人は帰ってしまった。周りに聞いてみるか)」

倫子「助手。ルカ子は女か?」

紅莉栖「へっ?……ちょ、ちょっと突然ナニ聞いてんのよ! 自分で聞いたらいいじゃない///」

倫子「(このアホ、また何かス  な勘違いをしているな)」

倫子「まゆり。ルカ子は女か?」

まゆり「うーん? るかちゃんはねー、まだ誰とも付き合ってないよー?」

倫子「(日本語って難しいな……)」

倫子「おいダル。ルカ子の性別は女か? 生物学的な意味で」

ダル「おいおい、オカリン。あんなにかわいい子が女の子のわけがないだろ常考」

倫子「(話にならん)」

341: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:05:09.24 ID:zM6IpGU1o
メイクイーン+ニャン2


倫子「(ダルが突然『フェイリスたん成分を充電しに行かなくては!』、などとほざいたので渋々ついていくことにした)」

倫子「なあダル。Dメールについてなんだが……もっと送り手側がコントロールできるような装置にしたいと思う」

ダル「うーん、いくら僕でもそういう改造は思いつかないっつーか」

倫子「まるで運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択によって、オレたちが過去を自在に改変できないかのようだ……ええい!」

倫子「この鳳凰院凶真ともあろう女が、簡単に諦めたりなどしてたまるものかっ!」

倫子「この魔眼リーディング・シュタイナーを駆使し、必ずや完ぺきなタイムマシンを創り出し、時空の覇者となり、世界の支配構造を破壊する……」

倫子「それが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだからなっ! ふぅーはははぁ!」

ダル「倫子ちゃんが楽しそうでなによりです」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

フェイリス「タイムマシン!?」

倫子「ハッ!?」

342: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:06:22.41 ID:zM6IpGU1o

倫子「しまった、声がでかすぎたか……オレとしたことが」

フェイリス「大丈夫ニャ。この店に集うご主人様たちは、みーんな訓練されてるのニャ」

フェイリス「外部に凶真の秘密を漏らすような卑劣な人間は1人もいないニャ!」

客A「もちろんだお!」

客B「倫子ちゃんは僕たちが守るお!」

倫子「だから倫子ちゃん言うなぁ!」

フェイリス「アイスコーヒーとアイスティーとねこまんま、お待たせしましたニャン♪」

フェイリス「ミルクとガムシロは入れますかニャン?」

倫子「断る」

フェイリス「そんな凶真には、全部入れちゃうニャ~。まぜまぜ~、まぜまぜ~。にゃんにゃん♪」

ダル「出たー! フェイリスたんの秘技、"目を見て混ぜ混ぜ"だー!」

倫子「……オレのグッズの闇市場があると聞いたのだが」

フェイリス「ニ゛ャ゛ッ!?」

ガッチャーン!! バシャー

倫子「うわぁ!? オ、オレの白衣があっ!?」

マッキー・ニャンニャン「お嬢様、大丈夫ですか!」

リサリサ・ニャンニャン「今お拭きします!」

フェイリス「ハニャニャ……」

343: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:09:37.00 ID:zM6IpGU1o

ダル「結果メイド服を着ることになったオカリンであった」

倫子「茶色く汚れたシャツと白衣は洗濯するしかなかったからな……仕方がないとはいえ恥ずかしいぞ……」

倫子「というか、なぜオレのサイズにピッタリのメイド服が用意されている」

フェイリス「それはもちろん、凶真がいつメイドさんになりたいって思ってもいいようにニャ!」

倫子「…………」ゾワワッ

ダル「チェキ1枚いいですか?」

フェイリス「猫耳をつけてくれないのは残念ニャけど、とってもカワイイニャン♪」

倫子「元はと言えば貴様のせいではないかぁ……っ! このダメイドがぁっ!」

フェイリス「きょ、凶真が突然変なこと言うから悪いのニャ」

倫子「ネタは上がっているんだ。ダルから聞いたぞ」

フェイリス「……ダルニャン。信じてたのに、ウニャァ……」

ダル「ちょ! 僕、一言もオカリンにブラックマーケットの件は言ってないお! 誓うお!」

倫子「そうか、過去が改変されてダルから聞くことは無くなったのか……。だが、リーディング・シュタイナーは真実を見通すっ!」

倫子「とにかく、どういうことか説明しろぉ!」

フェイリス「それは出来ない約束ニャ」

倫子「そもそもあの写真集だって、どうしてオレが小学生の頃からの写真をお前が撮影できたのだ」

倫子「知り合ったのは今年になってからだろう」

フェイリス「黙秘権を発動するニャ!」

倫子「……オレの服、ちゃんと洗って返すんだよな?」

フェイリス「……も、もちろんニャ」

倫子「おいィ!? なんだいまの間はっ!? うわぁん!!」

344: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:11:38.61 ID:zM6IpGU1o

フェイリス「その秘密を教えてあげるかわりに、フェイリスにもタイムマシンについて教えてほしいニャ!」

倫子「どこまでもふてぶてしいやつめ。教えるわけがなかろう」

フェイリス「ダルニャーン♪」

ダル「実はメールを過去に送れるすげえマシンを作ったんだお。主に僕が。過去改変も小規模ながら成功してるっぽい」

倫子「貴様ぁっ! あっさり色香に惑わされおって……っ!」プルプル

ダル「ごめんオカリン、フェイリスたんの可愛さは正義だから」

倫子「まあ、フェイリスにはIBN5100の居処を教えてもらった恩がある……」

フェイリス「フェイリスにもタイムマシンを使わせてもらえないかニャー」

ダル「ま、僕の権限で使わせてあげてもいいお」

フェイリス「ホントかニャ! ダルニャン、だーいすきニャ♪」ダキッ

ダル「うへうへ」

バンッ!!

倫子「……帰るッ!! 勝手にしていろ、バカどもがッ!!」ダッ

345: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:13:51.88 ID:zM6IpGU1o
未来ガジェット研究所


倫子「クソっ、クソっ、クソぉぉっ……! ダルのやつ、軽率な行動を取りおって……うぅ……」ウルウル

まゆり「うわー! オカリンがメイド服だー♪ もしかして、コスしてみたくなった?」キラキラ

倫子「断じて否っ! フェイリスにコーヒーをぶっかけられて仕方なく着ているだけだっ! 今すぐ着替えるっ!」プンスコ

まゆり「オカリン、なんだか怒ってる? なにかあった?」

倫子「ダルのやつがフェイリスにタイムマシンの情報を漏えいさせたのだ。鼻の下を伸ばしきってな!」ヌギヌギ

まゆり「そっかー。ダルくんらしいなー」

まゆり「でもね? だからって、ダルくんがオカリンのことを嫌いになっちゃったってわけじゃないと思うよ?」

倫子「は? ……別に奴に嫌われようが一向に構わん」

まゆり「まゆしぃたちは、オカリンの味方だよー」


『これだけは忘れないで。いつだって私たちはあんたの味方よ』


倫子「(……なんだ今の既視感<デジャヴ>は。リーディング・シュタイナー、ではなさそうだが……)」

まゆり「オカリン?」

倫子「クックック……バカなことを言うな。ラボメンは鳳凰院凶真の策略によって操られているに過ぎないのだからな! ふぅーはははぁ!」

まゆり「まゆしぃは操られてないよー?」

倫子「む、そうだった。お前はオレが呼んでもいないのにラボに参加してくれた……」

倫子「あの時のまゆりは女神に見えたぞ。ガチで」

まゆり「まゆしぃはオカリンの人質なのでー。えっへへー」

346: ◆/CNkusgt9A 2015/11/19(木) 14:18:02.05 ID:zM6IpGU1o

倫子「やっぱり白衣が落ち着くな……。助手の白衣、今日は借りさせてもらおう」

倫子「まゆり。くれぐれも助手にこの白衣をオレが着たことを言うなよ?」

まゆり「クリスちゃんはHE  さんだからねー。わかったよー」

まゆり「ねぇねぇオカリン。オカリンは、これからもまゆしぃのこと、人質にしておいてくれる?」

倫子「お前は人質のままでいたいのか?」

まゆり「うーん……。えへへ、居たいかもー♪」

倫子「まったく。とんだドM娘に育ってしまったものだな」

まゆり「まゆしぃはHE  さんじゃないよー?」

倫子「そんなんだと嫁の貰い手がなくなるぞ?」

まゆり「じゃあ、まゆしぃはオカリンのお嫁さんになるしかないねー♪」

倫子「そのためにはどっちかが性転換しなければならんな。少なくとも、2010年の日本では」

倫子「オレが男だったら今以上に痛い奴になっていそうだ」ククッ

まゆり「男の子のオカリンかぁ。きっとモテモテでイケメンなんだろうなー」

倫子「(こいつ。一見何も考えていないようで、落ち込んでいたオレを励ましてくれていたのか……)」

倫子「昼はまだか? 今日はおごってやろう」

まゆり「えー! いいのー? あのね、まゆしぃはキッチン・ジローのメンチカツがいいなー」

倫子「ああ。お安い御用だ」

まゆり「わーい。オカリン大好きー♪ まゆしぃはとっても幸せだよー」

倫子「(しかし、"オレが男だったら"か)」

倫子「(そしたらまゆりとは男女関係になっているだろうし、ダルのHE  にいちいち怒ったりしないだろう)」

倫子「(助手は……オレに興味を持たなくなるかもな。うむ、やはり今のままが一番だ)」

倫子「ほら、いくぞ。まゆり」

まゆり「うん!」

351: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 22:59:02.78 ID:qu2SHL7Ro
大檜山ビル前


倫子「(まゆりにカレーをおごり駅まで送ったあと、ラボに帰ってくると店先に小動物ことシスターブラウンが居た)」

綯「あっ……凶真、おねえちゃん……」

倫子「1人で何をしている。バイトはいないのか?」

綯「中に居ます……」

倫子「そうか。それで? オレになにか用か?」

綯「えっと……あの……」モジモジ

倫子「ん? なんだ?」

綯「わ、私にも……その……」

綯「タ、タイムマシン、使わせてくださいっ!」

倫子「……え?」

352: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 22:59:40.18 ID:qu2SHL7Ro
未来ガジェット研究所


綯「ごめんなさい……。2階のお話が、下にも聞こえてきてて」

倫子「あー、そのことは構わない。むしろいつもうるさくして申し訳ないと店長に伝えてくれ」

倫子「(床に穴も開いてるしな……。実際ほとんど聞こえているのだろう)」

倫子「それで。本気で言っているのか?」

綯「は、はい。どうしても変えたい過去があるんです」

倫子「その歳で思い悩むとは……。で、一体なんなのだ、それは」

倫子「表では話しにくいことだというから、ラボに入れてやったが……」

倫子「(このラボには未来ガジェットが転がっている。子どものオモチャにされたらたまったもんじゃない)」

倫子「(あんまりこの子をここに入れたくはないんだが……)」

綯「あの……、その……」

綯「お、お母さんを、生き返らせてほしいんです……」

倫子「な……」

倫子「(想像以上だった……)」

353: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:01:25.88 ID:qu2SHL7Ro

綯「お父さん、酔っぱらって帰って来た時、たまに言うんです」

綯「『俺はあいつを見捨てたんだ、守ることができたのに』って」

綯「お父さんは、お母さんは私を産んで死んじゃったって言ってたけど」

綯「たぶん……違うと思うんです。お父さんの寝言とか聞いても、そうは思えなくて」

倫子「どんな寝言だ?」

綯「えっと、にんむをやらなければ……とか、です」

倫子「(任務?)」

倫子「ふむ。しかし、奴の性格からしてそれらの言葉は額面通りに受け取るべきではないな」

倫子「何か事故ではあったのだろう。だが、守ることができた、ということは、対策をしていれば対処できる類のものだったのか……?」

倫子「(つまり、ミスターブラウンは綴さんが死ぬ危険にあることを知っていた?)」

綯「いつもお父さん、私の顔を見ながら遠い目をしていて」

綯「たぶん、お母さんの面影を見てるんだと思うんです」

倫子「察しの良い子どもだな……。いや、こういうのは子どものほうが勘が鋭いのか」

綯「だから、お父さんのためにも、お母さんを生き返らせてほしいんですっ!」

倫子「(断りにくいな……)」

354: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:03:00.57 ID:qu2SHL7Ro

倫子「確かに試す価値はある」

倫子「だが、死んだ人間を蘇らせるなど、因果律に対する反逆、創造主に対する冒涜ではないのか……」

倫子「冒涜……ククク。実にマッドではないかぁ」

倫子「このオレ、鳳凰院凶真こそ、亡者を現世に顕現せし者っ!」

倫子「よく聞け、シスターブラウンッ! 貴様はその齢にして、悪魔に魂を売るのだぁ……」ニタリ

綯「ひっ……で、でも、お父さんはいつも、お前はラボのメンバーにはなるなって言ってるので……」

倫子「あのハゲ頭め、ラボメンを何だと思ってるのだ。だがまあ怒らせたら怖いしな……」

倫子「貴様はラボメンにならなくていい。今回は特別だぞ?」

綯「は、はい!」パァァ

倫子「そうとなればさっそく文面を考えるぞっ!」

綯「はいっ!」キラキラ

355: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:04:28.41 ID:qu2SHL7Ro

倫子「『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が死ぬ!』……。シスターブラウンの情報からだと、こんなところか」

綯「すいません……お力になれず……」

倫子「いちいち謝るな。それで、綴さんが亡くなったのはいつだ?」

綯「えっと、2001年の10月22日です。でも、メールは2000年の5月18日に送ってください」

倫子「なにか確信があるのか?」

綯「たぶん……。うちのお仏壇にいる、もう1人の人の命日なんですけど」

倫子「もう1人の人……」

綯「それから、これがお父さんのメールアドレスです」

倫子「店長がアドレスをここ10年間のうちに1度でも変えていたらアウトだが、コロコロ変えるような人間には見えないな」

綯「私が生まれる前からお仕事でも使ってたって言ってたので、たぶん変えてないと思います」

倫子「2000年に届く時間は……よし、マシンの準備もできた」

倫子「あとは放電現象中にお前の手でその送信ボタンを押すだけだ」

綯「はい……」ゴクリ

倫子「マシンを起動するぞ……」ポチッ

電話レンジ「……」シーン

倫子「あ、あれ? 起動しない?」ポチポチポチ

綯「え……」

356: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:07:24.05 ID:qu2SHL7Ro

倫子「うーむ、どうやら内部パーツのどれかがイッたらしい。クソ、これだからワゴン品は!」

倫子「(ちなみに電子レンジ本体はごみ置き場から拾ってきたものだ。中身の電子部品はほとんど魔改造したが)」

倫子「しかしここはダルの領域だ。オレはあいつがコレにどんな改造を施したかよくわかっていないから直せん」

倫子「ダルか……。正直、今日はあいつに会いたくないんだよな……」

綯「……す、すいません。あの……」

倫子「どうした? 綯」

綯「あっ///」ドキッ

倫子「……む?」

綯「あ、いえ、その……ごめんなさい。やっぱり、もう少し、考えさせてもらってもいいですか……」

倫子「……そうか」ホッ

倫子「無論、構わん。お前が本当にどうしたいのか、よく考えてみると良い」

倫子「(この子も大人への階段を上っているところなのかもしれないな)」フッ

倫子「オレたちはお前の手伝いをすることはできる。だが、行動を選択するのは己自身でなくてはならぬ!」

綯「は、はい」

倫子「送りたくなったらいつでも言えよ」ニコッ

綯「はいっ!」

357: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:08:09.03 ID:qu2SHL7Ro
大檜山ビル前


倫子「(小動物を未来人バイトの元へ送り返そうと階下に来たはいいが、なぜかクリスティーナが店先のベンチに座っていた)」

倫子「どうしてラボに入らない? ん、誰かと電話……?」


紅莉栖「なによそれ……。日本に呼びつけておいて今更そんな―――」

紅莉栖「……そう。結局、会うつもりなんかなかったんでしょ」グスッ

紅莉栖「いったいなにがしたかったのよ? それすら教えてくれな―――」


紅莉栖「あっ、岡部……」

倫子「お、おう」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「……ッ!!」ダッ

倫子「あ、おいっ!」

綯「……お姉ちゃん、行っちゃった」

倫子「泣いていたようだが……。まさか向こうの彼氏か? いやいや、あいつはレ だから彼女か」

倫子「だがあいつにパートナーがいるようには思えない……。となると、例の親父さんか」

倫子「ほら。綯はもうお店に戻れ」

綯「うん。凶真お姉ちゃん、今日はありがとう、ございました」ペコリ

倫子「フッ。オレは感謝されるようなことをした覚えはないがな」

綯「えへへ……」

358: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:09:49.04 ID:qu2SHL7Ro
未来ガジェット研究所


紅莉栖「…………」

倫子「で、結局ラボに戻って来たか。……どうした」

紅莉栖「わ、私はっ! 別に、泣いてなんかないからなっ!」

倫子「なぜそこで強がる。まあ、お前がそういうならそうなんだろう」

倫子「目が赤いのも、ゴミが入ったんだろう?」

紅莉栖「……。今日のことは忘れて。気にしないで」

倫子「ホントにお前は構ってちゃんだな」

倫子「どう考えてもその台詞は、私の悩みを聞いてほしいの~にしか聞こえんぞ」

紅莉栖「うっ……。そ、そんなこと、ないからな」

倫子「いいか、クリスティーナ。話さなくていいから黙って聞け」

倫子「お前が困っているならば、オレは、オレたちは全力で解決に協力する」

紅莉栖「え……」

倫子「1人で強がって抱え込んでいるより、弱音を吐きたいときは吐いてしまえ。オレたちはそれを拒絶したりしない」

紅莉栖「なんで……」

倫子「お前が、ラボメンナンバー004だからだ」

紅莉栖「岡部……」ジュン

359: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:10:28.15 ID:qu2SHL7Ro

紅莉栖「ごめん……。なんだか、今日は気が立ってて……」

倫子「無理に今話せとは言わない。お前が落ち着いた時、話す準備ができた時でいい」

紅莉栖「うん……。あ、あのさ、岡部」

倫子「なんだ?」

紅莉栖「今日、ラボに泊まっていっていい?」

倫子「心細いのか?」

紅莉栖「そ、そんなこと……ある、かも」

倫子「だったら御茶ノ水のホテルで―――」

紅莉栖「だ、だめ! 私は、ラボがいい!」

倫子「む? なら別に構わんが」

紅莉栖「ホ、ホント!? ありがと……」

倫子「……なあ、紅莉栖。もしオレが男だったらお前は、オレに心を開いてくれただろうか」

紅莉栖「えっ?」

倫子「あ、いや、なんでもない。忘れてくれ」

360: ◆/CNkusgt9A 2015/11/20(金) 23:11:42.52 ID:qu2SHL7Ro

その夜、ソファーで眠った紅莉栖は、やはりというべきか、夢の中でも泣いていた。

なんだかんだでこいつは、まだ自分のことについてほとんど話していない。

それは、強い自分を創るために必要なことだったのだろう。

他人に自分をさらけ出さない。

それこそが、こいつが生きてきた環境で生み出した、生きるすべだったはずだ。

だが、ここは違う。このラボは違う。

心から信頼してもいい仲間の集まりだ。

オレが望んだのだから、そうなるべきなのだ。

……早くこいつに、オレのことを信頼してもらわねばな。


365: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:22:54.86 ID:XXCCD2jmo
2010年8月7日土曜日
未来ガジェット研究所


倫子「諸君。土曜日なのにご苦労。本日もマッドに研究していくぞっ!」

ダル「…………」

倫子「(普段ならダルは、『そんなことより、昨夜はお楽しみでしたね、についてkwsk。百合厨の僕としては牧瀬氏が受けの展開キボン』などと言い出すところだが)」

倫子「(オレのよそよそしい態度が伝播してしまったのだろう。若干気まずそうにしている)」

倫子「(こんなことではいけない。機関によるラボメンの切り崩し工作がどこから始まるかわからないのだからな)」

紅莉栖「おいピザ。話は聞いたわよ」ギロッ

紅莉栖「あんた、倫子ちゃんを差し置いて猫耳メイドにうつつを抜かしてたんですって?」イライラ

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

ダル「おうふ……。正直すまんかった」

倫子「ふん。誠意が見えんな」

倫子「貴様、この美女揃いのラボに居て、自分が世間的にどれだけ羨ましい存在かわかっていないようだなぁ?」

ダル「ぐはぁ! い、いや? 僕だってわかってるのだぜ?」

倫子「貴様のその幸せな日々は、誰のおかげで導かれたのだ。言ってみろ」

ダル「ほ、鳳凰院凶真さんのおかげです、ハイィ……」

倫子「む。よろしいっ」ニコッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「(かわいい)」

倫子「次は無いからな。まゆり、ハサミ閉まっていいぞ」

まゆり「はーい」チョキチョキ

ダル「オーキードーキー……」

366: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:25:02.43 ID:XXCCD2jmo

まゆり「でもでもー、ダルくんはね、本当はとってもオカリンのこと大好きなんだと思うなー」

ダル「ちょ、まゆ氏!?」

倫子「こいつがぁ? そもそも、恋愛感情を持たぬよう命じたのはこのオレだぞ」

まゆり「ううん、そうじゃなくてね、相棒としてだよー♪」

倫子「だが、ラボに誘ってすぐラボに参加しないような薄情者だぞ?」

まゆり「それはねー、オカリンがね、ダルくんが居なくてもしっかりやっていけるかどうか見てたって、ダルくん言ってたよー?」

倫子「な……に……」

ダル「あ、いや……。なんつか、ごめんお、オカリン」

ダル「大学入って、僕みたいなのとつるんでたらオカリンの株が下がっちゃうんじゃないかと思ってさ……」

倫子「そうだったのか……」

倫子「…………」

倫子「まったく、このラボはバカばかりだな」フフッ

ダル「いやあ」

倫子「褒めてないっ!」

紅莉栖「……あれ。私もバカ認定されたっ!?」

まゆり「クリスちゃんは、オカリンバカなんだよー」ニコニコ

紅莉栖「ならばよし」

367: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:27:26.12 ID:XXCCD2jmo

・・・

カチャカチャカチャカチャ

倫子「どうだ? 直ったか?」

ダル「さすがにジャンクパーツだとピンキリあるよな。ちょっと良いやつに変えておいたお」

倫子「資金の出処は?」

紅莉栖「私よ。このくらいは出資させて。一晩泊めてもらったしね」

倫子「……まあいいだろう。さて、マシンも直ったところで話を進めよう」

倫子「昨日ダルには話したが、これまでの一連の実験結果を見て、気付いたことがあるっ!」

倫子「Dメールには、不確定要素が強すぎるということだ」

倫子「そこで、今回諸君に集まってもらったのは他でもない。本日の円卓会議の議題は――」

倫子「Dメールではなく、SERNと同じように物理的タイムトラベルという方法を模索したい件について、だっ!」

ダル「(もはや誰も円卓会議についてツッコミを入れないのな)」

紅莉栖「うーん……私たちに本当にそんなことできるのかしら」

ダル「SERNだって未だに成功してないわけですしおすし」

倫子「科学者たるもの、諦めてはならない。それに、我らはすでにDメールという、人類史上初の快挙を達成した実績がある」

紅莉栖「でも、未だにリフターの代替物も解明できてないし」

倫子「それが解明できればいいのだろう?」

紅莉栖「他にも、局所場指定問題がある」

倫子「いやちょっと待て。Dメールは局所場指定をしていないにもかかわらずちゃんと届いている」

紅莉栖「……言われてみれば」

倫子「そうかっ! ここに問題解決の糸口があると見たっ!」パァッ

368: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:28:06.74 ID:XXCCD2jmo

ダル「でもさ、Dメールじゃ36バイト+αのデータ量しか送れないじゃん」

紅莉栖「物理的なタイムトラベルは夢のまた夢ね。データが送れるだけでもすごいわよ」

倫子「むむむ……どうすれば……」

紅莉栖「前から思ってたけど、電話レンジカッコカリをしかるべき研究機関に持ち込んで、専門家に委ねればね」

紅莉栖「適切な頭脳と設備、資金によって本格的な開発が進むんじゃないかしら」

倫子「……もし公表すれば、"機関"のヤツらに気付かれてしまう」

紅莉栖「そんな居もしないものを引き合いに出さないで」

ダル「まあ、SERNに知られるのはまずい罠。ハッキングの足はついてないけど、SERNが極秘でやってる研究をバラすようなもんだし」

紅莉栖「あ、そっか……。ホント、世界は欺瞞で満ち溢れているわね……」

まゆり「なんだか怖いね……」

倫子「それに。これが何よりも問題なのだが……」

倫子「公表してしまったら、もうラボでタイムマシンを使えなくなってしまうではないかぁ!」

紅莉栖「――ハッ! 私のアイデンティティがなくなる!?」

ダル「そこかよ」

369: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:29:34.29 ID:XXCCD2jmo

倫子「そう言えばダルよ。SERNについて調べは進んだか?」

ダル「一応やってるけど、これと言った成果はナス」

倫子「そうか……」シュン

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「そ言えば、今SERNは実験の真っ最中みたいで、LHCがフル稼働してんだよね」

ダル「こっそり使わせてもらえないかなーって準備してみたり」

紅莉栖「嘘っ!? スーパーハカー、恐ろしい子……!」

倫子「クリスティーナ改めネラーよ。この状況をどうみる?」

紅莉栖「ち、違うっ! 私はネラーじゃないっ!」

倫子「ID真っ赤に――」

紅莉栖「してないっ!! ……ハッ」

倫子「煽り耐性ゼロだなぁ、ククク。それで、ダル。IBN5100の解析は順調か?」

紅莉栖「スルー安定ですかぁ!?」ビェェ

ダル「は? なんのこと?」

倫子「例の擬似スタンドアロンデータべースを暴くべく、プログラミング解析をしろと言っただろう」

ダル「ああ、それは無理って言ったじゃん」

倫子「……なぜだ?」

ダル「なぜって、IBN5100が無いからっしょ常考」

倫子「……んん?」

370: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:31:37.56 ID:XXCCD2jmo

倫子「IBN5100はオレとそこの助手が手に入れてきただろう」

ダル「へ? いつよ」

紅莉栖「えっと……そんな記憶、ないけど」

倫子「バカな!? だって、開発室のダンボール箱に――」

倫子「……無い。ダンボール箱も、IBN5100も、無い……?」

倫子「ここに置いてあったのにっ……なくなっちゃったよぉ……」ウルウル

まゆり「だ、だいじょうぶ、オカリン……?」

紅莉栖「えっと……?」オロオロ

倫子「疑問符を浮かべるなぁ!!」

倫子「お前達もよく知っているだろう!? フェイリスから託され、ルカ子の神社に奉納されていた、伝説のレトロPCだっ!!」

ダル「神社に奉納とか、妄想乙なんだが」

紅莉栖「もしかしてまた白昼夢、いえ、日常的非病的乖離症状……?」

紅莉栖「岡部、ちょっと休んだ方がいいわ」

倫子「なぁっ……なぜ、記憶がないのだ……」ワナワナ

まゆり「また記憶がなくなっちゃったの?」

倫子「また……? そ、そうか。一連の過去改変で、現在が改変されている可能性……」

371: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:34:41.19 ID:XXCCD2jmo

To 桐生萌郁
Sub 至急確認
オレはIBN5100を手に入れ
たはずなんだが、何か知っ
ているか?


倫子「(あいつならIBN5100の居場所を常に気にしていたはずだ。何か知っているかもしれない)」ピッ

紅莉栖「バタフライ効果。どれかのDメールがIBN5100の存在に影響を与えた……」ブツブツ

倫子「おおっ! オレの話を信じてくれるのだなっ!」ウルウル

紅莉栖「(か、かわいい!)」

紅莉栖「でも、これまでのDメールはどれも些細なものばかり。とても影響を与えるとは思えない」

まゆり「ひとつは、ロト6のメールだよね。送ったところは見てないけど、着信履歴はあったもんね」

紅莉栖「あと、私が死んでた云々ってメールか」

ダル「桐生氏のメールは失敗だったんだっけ」

倫子「いや、まだある! その他に、フェイリス杯メール、ルカ子の性別改変メール……」

紅莉栖「でも、そう主張できるのは岡部の主観だけなのよね」

倫子「だから言っているだろぉ! オレだけがリーディングシュタイナーを保持しているのだとっ!」ウルウル

紅莉栖「ぐはぁ! この、罪悪感……」

紅莉栖「ごめん、言い方が悪かった。岡部の現実を疑ってるわけじゃないの、それだけは信じて」

倫子「お、おう……グスッ……」

紅莉栖「(お持ち帰りしたい……)」ウヘヘ

372: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:36:46.03 ID:XXCCD2jmo

紅莉栖「さっき、漆原さんとフェイリスさんの名前が出たわね。2人にも確認取ったら?」

倫子「あ、ああ。やってみよう」

prrrrr

るか『はい。岡部さん、こんにちは』

倫子「ルカ子。IBN5100について聞きたい」

るか『え? あいびー……?』

倫子「柳林神社に、9年ほど前に小学生のフェイリスが預けたレトロなパソコンのことだ。知っているな?」

るか『……あ、はい』

倫子「覚えていたか! オレはあれをお前の父上から預かった、そうだな!?」

るか『え……? そんなはずは、ないと思います……』

倫子「なに……? だが、IBN5100が神社にあったのは事実なんだな? 今もあるのか?」

るか『…………』

倫子「(なんだ? なにを言いよどんでいるんだ、ルカ子は)」

るか『ごめんなさい、岡部さん……。ボク、わかりません……』

倫子「そうか……わかった。あとで神社に確認しに行く」ピッ

倫子「次はフェイリスだな。本当はあいつにオレの電話番号もアドレスも教えたくなかったのだが、泣きつかれて渋々教えたことがあった」

倫子「それがここで役に立つとは……」prrrrr

373: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:38:13.46 ID:XXCCD2jmo

ピッ

倫子「オレだ」

フェイリス『凶真! その、昨日はダルニャンに悪いことしちゃったニャ。怒ってるニャ?』

倫子「いや、そのことはもうどうでもいい。それより、どうしても聞きたいことがある」

倫子「お前は昔、柳林神社にレトロPCを奉納した。それに間違いはないな?」

フェイリス『そうだニャ。IBN5100って名前だったって知ったのは最近ニャけど』

倫子「(やはり神社に確認しにいかなくては……)」

倫子「(そういえばフェイリスはレトロPCマニアだった。神社のIBN5100以外でも構わないのだから、ほかのIBN5100について聞いてみよう)」

倫子「お前はたしかアキバに強いネットワークを持っているだろう? 今アキバにあるIBN5100を探してもらえないだろうか」

フェイリス『探してもいいけど、条件があるニャ』

倫子「取引を持ち掛けるつもりか……。まあいい。それで、条件とはなんだ?」

フェイリス『じゃあ、これからフェイリスのおうちまで来てほしいのニャ。場所は……』

374: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:41:36.56 ID:XXCCD2jmo
中央通り


倫子「で、お前らはどうしてもついてくるのだな」

まゆり「だってね、まゆしぃはフェリスちゃんのおうち、遊びに行ったことないんだもん」エヘヘ

紅莉栖「私もブラックマーケットに参加したい……じゃなくて、あの子かわいいから……でもなかった、えっと、えっと」アセアセ

倫子「ドン引きだぞ」

紅莉栖「ぐはぁ!」

倫子「(ダルは置いて来た。昨日の罪を償ってもらうため、今日は1日フェイリス禁止にしたのだ)」


倫子「(途中、柳林神社に寄り、ルカパパに話を聞いた)」

―――
栄輔(ルカパパ)「おや、鳳凰院くん。今日は天気がいいですね、こんな日はきっと巫女服が似合いますよ」

まゆり「えっへへー、オカリンは何を着ても似合うと思うのです♪」

紅莉栖「岡部の巫女服姿……ハァハァ」ジュルリ

倫子「おい、やめろ! 服を脱がそうとするな! アーッ!」
―――

倫子「(……ともかく、IBN5100はどういうわけか神社のどこにもなかった)」


倫子「ん? あそこに居るのは……指圧師ではないか! おーい、指圧師ー!」

まゆり「あー、萌郁さんだー」

紅莉栖「いつ見ても綺麗な人よね。岡部と並んだら直視できないわ」

萌郁「あいびーえぬ……ない……(どうして見つからないのー!><。 )」

倫子「閃光の指圧師<シャイニングフィンガー>、聞こえていないのか?」

萌郁「……どこかに、あるはず……じゃないと、おかしい……FBが……(死にたいよぉ……ふぇぇ……)」

倫子「桐生萌郁っ!」

萌郁「あっ……岡部姉さん……!(メールの返事ができないくらいパニクってたよぉ><。 )」

倫子「(その表情は少し和らいだ……ように思えたが)」

倫子「ね、”姉さん”!?」

375: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:44:46.46 ID:XXCCD2jmo

倫子「……まあいい。なあ萌郁、ラボにあったIBN5100を知らないか」

倫子「貸し出すのは2週間ほど待ってほしいと言ったはずなんだが」

倫子「オレはお前が持って行ったとは思いたくない。仲間だからな……」

萌郁「IBN5100、見つけたの!?」ガシッ

紅莉栖「キマシ!」

倫子「ヒィッ! 急に肩をつかむなぁ!」ガクガク

倫子「い、いや、見つけたはずが、今日になって失くなっていたのだっ!」

萌郁「……っ!!」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『きちんと説明してほしい。IBN5100をどこで見つけたの? 萌郁』……このようすだと、本当に知らないようだな」

倫子「……すまない、指圧師よ。オレは、ラボメンであるお前を、仲間を、疑ってしまった……」

萌郁「……? IBN5100は、姉さんと一緒に見つける約束……(またいつものお芝居だったのかな(´・ω・`) )」

倫子「(そうか。そういう記憶、というか歴史になっているのか)」

倫子「もちろんだ。共に真実に辿り着くぞ、萌郁っ!」

萌郁「うん……(IBN5100、一緒に見つけようね(^^♪ )」

376: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:47:32.93 ID:XXCCD2jmo
秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


まゆり「リアル執事さんだー……」

黒木「ようこそおいで下さいました。鳳凰院凶真様と、そのお友達の皆さま」

フェイリス「ニャニャ? マユシィとクーニャンも来たのかニャン?」

紅莉栖「くーにゃん? 私のことか……」ハァ

フェイリス「……クーニャンって、この間メイクイーンで会ったのが初めまして、ニャ?」ジーッ

紅莉栖「うん? そうですよ。私、7年ぶりに日本に帰ってきたので」

紅莉栖「(こんな可愛らしい子に見つめられると……ウフフ)」

フェイリス「フェイリスに敬語はいらないニャン♪」

紅莉栖「あっ……うん、わかったわ!」

紅莉栖「でもなんだろう、こんな感じの家に一度来たことがある、ような気が……」

倫子「既視感<デジャヴ>だな。あるいは、別世界の記憶を受信しているのかもしれない」

フェイリス「ニャニャ!? クーニャンは前世でフェイリスの母星、チンチラ星の住人だったのニャ!?」

まゆり「えー、そうなの? クリスちゃんはすごいニャー♪」

紅莉栖「厨二病世界に巻き込まないでぇ!」

377: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:49:43.42 ID:XXCCD2jmo

倫子「しかしこの豪邸……フェイリスが金持ちなのは知ってはいたが、一体何者だ?」

フェイリス「実は、この辺の土地は元々、秋葉家のものだったのニャ」

紅莉栖「なん……だと……」

まゆり「そっかー、だから秋葉さんなんだねー」

フェイリス「ちなみに、フェイリスはアキバの都市開発計画にも結構な発言力を持ってるニャン」

フェイリス「アキバの各ショップに萌え文化を積極的に導入するようお願いしたのは、フェイリスなのニャ」

フェイリス「でもでもー、これは内緒の話ニャ。みんなにはこれまで通りフェイリスラブの大ファンとして接してほしいニャ♪」

倫子「この2人は知らんが、オレは貴様のファンなどではないっ!」

フェイリス「ニャニャ! まさか、前世からの宿縁を背負う永遠のライバルだとでも言うのかニャ!?」

倫子「違うっ! オレは、フェイリスの友達だっ!」

フェイリス「ニャ……」

倫子「たとえ権力者だろうが大地主だろうが、そんなことでオレたちの絆は変わらんっ!」

まゆり「まゆしぃもフェリスちゃんのお友達だよー! えっへへー♪」

紅莉栖「じゃ、じゃあ、私も……///」

倫子「クリスティーナの下心が手に取るようにわかるな……」

フェイリス「……さすが凶真。フェイリスの弱いところを的確に突いてくるニャァ」

フェイリス「これまでいろんな人と会ったけど、"秋葉の跡取り"って話すと、みんなフェイリスをフェイリスとして見てくれなくなるのニャ」

倫子「(そんな理由でこいつ、友達が少ないのか……。金持ちの家に生まれるというのも考え物だな)」

378: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:52:50.84 ID:XXCCD2jmo

倫子「しかし広い家だな。マンションなのに、何部屋あるんだ?」

まゆり「このお部屋はなんのお部屋ー?」

フェイリス「そこを開けてはならないニャ。犬耳が生える呪いがかかっているのニャ!」

倫子「レトロPCの部屋……か。父親が集めていた、とか言っていたな」

フェイリス「PCだけじゃなくて、古い家電なんかもコレクションされてるのニャ♪」

まゆり「えぇー? じゃあーこっちの、壁と同じ色になってるお部屋は?」

フェイリス「ニャ……ニャニャ!? マユシィ、なんでそこに部屋があるってわかったニャ!?」

フェイリス「ダメニャ!! そこは絶対開けちゃダメニャ!!」キシャー

フェイリス「10年に及ぶ凶真関連のコレクション……は、入ってなんかいないニャ?」アセアセ

紅莉栖「フェイリスさんっ!! 私、あなたにどうしてもお願いがあるんですっ!!」ガバッ

フェイリス「ニャァ!? クーニャン、土下座はやめるニャァ!」

まゆり「あ、オカリン、こっちにふかふかベッドがあるよー♪」

倫子「(都合のいいことにフェイリスの珍しい狼狽ぶりと助手の暴走ぶりはオレの耳には入らなかった)」

379: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 20:58:10.35 ID:XXCCD2jmo

倫子「それでフェイリスよ、IBN5100を探す代わりの交換条件とはなんだ?」

フェイリス「フェイリスからの条件は――」

フェイリス「タイムマシンを使わせてほしいニャ」

倫子「そう言えばそんなことを言っていたな……」

倫子「タイムマシンは我がラボにおける最重要機密事項だ。どうしても使いたいと言うならば、ラボメンになってもらう必要があるが?」

フェイリス「えっ……そ、それホントッ!?」ギュッ

倫子「うおっ!? 急に手をつかむな……」

フェイリス「ラ、ラボ、ラボメ……フェイリスが、ラボメン……」ワナワナ

フェイリス「ウニャアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」

倫子「ヒィッ!?」ビクッ

紅莉栖「!?」

まゆり「!?」

フェイリス「我が生涯に、一片の悔い無し、ニャ……」バタッ

倫子「い、意味がわからんぞ。おい、フェイリス。……フェイリス?」

倫子「……返事がない。ただの屍のようだ」

紅莉栖「フェイリスさーん!! 帰って来てーっ!!」

380: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:00:46.43 ID:XXCCD2jmo

フェイリス「タイムマシンが使える上にラボメンにしてくれる……こんな幸せなことがあるニャんて、想像もしてなかったニャ」

倫子「なんだ、フェイリスもラボメンになりたかったのか。そうならそうと早く言ってくれればよかったのに」

フェイリス「ニャニャニャ!? フェイリスからの協力は一切拒否するって言ったのは凶真ニャ!」

フェイリス「あの時フェイリスは、サイコエリアの第4層にまで及ぶ深い深ーい傷を負ってしまったのニャ……」

倫子「あ、あれは、お前が莫大な資金提供の代わりにオレを1日召使いにするなどと言いだしたせいだっ!」

フェイリス「召使いじゃなくてメイドだって言ったニャ!」

倫子「同じだろうがっ!!」

紅莉栖「ちょっと、ストップ! 話が進まないじゃない!」

倫子「ともかくだな! フェイリスをラボメンナンバー007に認定するっ!」

フェイリス「勝った!! 第3部完ッ!! ニャ!!」

紅莉栖「話を終わらせないでぇ!!」

381: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:04:35.34 ID:XXCCD2jmo

倫子「そう言えば、フェイリスはさっきの握手までオレの身体に触れたことは一度もなかったな」

倫子「お前の仕事ぶりからして、他人とすぐ物理的に接触するのはクセのようなものだと思っていたが」

フェイリス「実はマーケット参加者には血の盟約が交わされているんだニャ」

倫子「……知りたいような、知りたくないような」

フェイリス「第359条。鳳凰院凶真に自ら肉体的接触をしてはいけない。但し、鳳凰院凶真から触ってきた場合は除く」

倫子「…………」ゾワワァ

紅莉栖「でも、フェイリスさんはさっき触ったわよね? この場合、どうなるの?」

フェイリス「ペナルティが課されるのニャ。その内容はMM<マーケットマスター>によってダイスが振られるんニャけど、今回は代理投擲による――」

倫子「……も、もういい。聞いたオレがバカだった」

倫子「(第359条ってなんだ!? 何条まであるんだ!? MMってなんだよ!? 何人が参加してるんだ!?)」ガタガタ

まゆり「オカリン、手が震えてるよ? だいじょうぶ?」ギュッ

倫子「おお、まゆり……! お前のこの小さな両手がこんなに頼もしく思ったのは初めてだ……!」

382: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:06:59.96 ID:XXCCD2jmo

紅莉栖「話をタイムマシンに戻すけど、実際フェイリス様……じゃなかった、フェイリスさんが実験を手伝ってくれたらもっとデータが取れるわね」

倫子「そうだなっ! 貴様は実験台なのだぞ、大人しくするがいいっ!」

倫子「すべては運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択っ! ふぅーははは!」

紅莉栖「若干やけになってるわね……そんな岡部も素敵だけど」

倫子「それで、説明は受け終わったのか?」

フェイリス「クーニャンにバッチリ教えてもらったニャ♪」

紅莉栖「ラボに残ってる橋田とも電話繋がってる。今準備中よ」

ダル『2000年4月3日午前8時へはっと……はーい、電話レンジはオッケーだお』

倫子「了解だ。フェイリス、メールの内容を教えるのだ」

フェイリス「そ、それはその……」

フェイリス「は、恥ずかしいニャ! 企業秘密だニャン!」

倫子「…………」

倫子「……いい加減、オレも堪忍袋の緒が切れそうだ」イラッ

倫子「貴様ぁっ! オレがどれだけお前の悪行の数々を見逃してやっていると思っているんだっ!」

フェイリス「なに言ってるニャ! これは交換条件だニャ! そっちがそう言うなら、IBN5100の話はなかったことにするニャ!」

倫子「ぐぬぬ……この猫娘が……っ!」

フェイリス「だてに会社運営をやってないのニャ……ッ!」

紅莉栖「実際訴えられたら負けるわよね、フェイリスさんって……」

383: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:08:35.85 ID:XXCCD2jmo

倫子「秋葉留未穂。お前に、ラボメンとして、そして1人の友人として問いたい」

フェイリス「ニャゥッ!? そ、それは卑怯だニャァ……」

倫子「恥ずかしいとはいえ、オレに言えないほどなのか。そんなにオレを信用していないのか?」

フェイリス「凶真は誰よりも信頼しているニャ。だけど……」

倫子「正直に話せ。オレは嘘が嫌いだ」

倫子「今のお前は、お前を利用しようとして近づいてくるような汚い人間どもと同じだぞ」

フェイリス「――っ!!」

紅莉栖「ちょっと岡部、少し言い過ぎじゃ……」

まゆり「オカリン……フェリスちゃん……」オロオロ

フェイリス「……わかったニャ。正直に話すニャ」

フェイリス「――パパを、助けたいのニャ」

倫子「パパさんを?」

384: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:10:43.83 ID:XXCCD2jmo

フェイリス「パパは10年前、飛行機事故で死んじゃったのニャ」

紅莉栖「飛行機事故……? それだったら有名な事故のはずよね」

フェイリス「ううん、死んだのは、乗客乗員合わせてもパパだけだったんだニャ」

倫子「なんだと!? そんなバカなことって起こり得るのか!?」

紅莉栖「私は岡部みたいな陰謀論者じゃないけど、さすがになにかあるんじゃないかと疑っちゃうレベルね……」

フェイリス「ちょうど90年代後半から2000年にかけては、パパの会社はITバブルに乗っかっていた頃だったのニャ」

フェイリス「90年代前半はバブル崩壊やメキシコ通貨危機の影響で業績が悪化してたから、その躍進はめまぐるしいものだったんだニャ」

倫子「あまりに目立った成長だったため、ライバル企業から刺客を送られ、事故に見せかけた暗殺……」

紅莉栖「そうと決まったわけじゃないけど、事実関係はもっと洗うべきね。警察は?」

フェイリス「警察はハナから事故として断定してたのニャ」

倫子「国家権力を丸め込むのは陰謀の基本だ。くそっ、10年も前では調べようが……」

倫子「……そうか。そのためのDメールかっ!」

385: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:12:25.74 ID:XXCCD2jmo

倫子「お前の父上を飛行機に乗らせないようにする。そういうことだな? フェイリス」

フェイリス「さっすが凶真! そういうことだニャ」

倫子「Dメール送信で父上が亡くならなければ事故……」

倫子「それでも亡くなっていれば間違いなく暗殺……。まさかDメールにこんな使い方ができるとはな」

紅莉栖「でも待って! それって、死者を蘇らせることになるのよ?」

紅莉栖「冗談じゃなく、どんな事態を引き起こすかわからない」

紅莉栖「世界の因果が崩壊して、文字通り宇宙が破滅するかもしれないのよ! もっと慎重になるべき」

倫子「だが、真実の究明にはこれしかないのも事実だ」

倫子「それに、オレはリーディングシュタイナーを発動させることで改変前後を比較できる」

倫子「お前は科学者として、事実をうやむやにすることを良しとするのか?」

倫子「フェイリスの父上の死を、闇に葬っても良いというのか?」

紅莉栖「それとこれとは……ああもう、お願いだから時間をちょうだい!」

まゆり「うーん……まゆしぃには難しくてなんだかわからないけど、時間をかければ答えが出るのかなー?」

紅莉栖「それは……」

フェイリス「……ダルニャン。聞こえているニャ? 今すぐスイッチを押してほしいニャ」

ダル『オーキードーキー。放電現象、始まったお』

紅莉栖「ちょっと!!」

フェイリス「クーニャン、ごめんニャ。でも、フェイリスは可能性に賭けるしかないんだニャ」ポチッ

386: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:13:37.18 ID:XXCCD2jmo

―――――――――――――――――――
    0.46903  →  0.40923
―――――――――――――――――――

387: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:15:37.84 ID:XXCCD2jmo

倫子「……また、この目眩か」

倫子「さて、世界よ。変貌を遂げたその姿を現すがいい……!」チラッ


紅莉栖「ふむん、そんな戦術もあるのね。興味深いわ」

まゆり「あわわー、またウイルスカード?」

フェイリス「またフェイリスの勝ちだニャン♪」

まゆり「”待った”はだめかニャー?」

フェイリス「フェイリスの真似してもダメニャ♪」


倫子「呑気に雷ネットABで遊びおって。それより、フェイリスの父上は……」キョロキョロ


フェイリス「今度の公式大会では絶対に優勝するってパパに約束したニャ! その日までは誰にも負けられないニャ!」

倫子「……公式大会? パパに約束? ということは、お前のパパ上は生きているのだなっ!?」

倫子「(今まで一度も公式大会に出たことがなかったフェイリスが、パパさんが生きていることで変わった……?)」

フェイリス「ニャ? ……どういう意味ニャ。事と次第によってはぁ~……」

紅莉栖「岡部のその、人を勝手に殺す癖はあんまり慣れないな……」

倫子「あ、いや、そうではなく……」

初老の男性「失礼。留未穂、ちょっといいかな」

フェイリス「あ、パパ!」

倫子「あの人が、パパさん……!」

388: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:17:23.89 ID:XXCCD2jmo

倫子「(父上は黄泉の国より舞い戻った……実験は成功したのだっ!)」

倫子「ついにオレは、神の禁忌を破ってしまった……ククク、ふぅーははは!」

紅莉栖「いつにもまして突然ね……なにか良いことでもあった?」

倫子「(そうか。この世界の歴史では、パパさんは10年間生きているのだから下手な発言はできないな……)」

倫子「いやなに。父と娘の仲が良さそうで嬉しいだけだ」

紅莉栖「……そうね。私もちょっとうらやましい」

フェイリス「ごめんニャ。フェイリス、これからパパと出掛けなきゃいけなくなっちゃったニャ」

まゆり「それじゃー、まゆしぃたちはこれでバイバイさせてもらうね」

紅莉栖「今日は来れてよかったわ。ちょっとした奇跡よね」

倫子「む? 何がだ?」

幸高(パパ)「紅莉栖ちゃん、またいつでも遊びに来るといい。留未穂も喜ぶよ」

フェイリス「もうパパ~。それじゃ、お見送りするニャ!」

389: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:18:10.99 ID:XXCCD2jmo
中央通り


倫子「(結局、例の飛行機事故は天文学的な可能性で起こった事故だった、というわけだ)」

倫子「(ググってみたら、10年前の事故は死者0人となっていた。パパさんは飛行機に乗らなかったのだ)」

倫子「(狂気のマッドサイエンティストであるオレが蘇らせたわけだが……そのことを改変後の世界で吹聴しても意味がないだろうな)」

倫子「(あいつの幸せそうな顔が見れただけでも良しとしよう……)」

倫子「ところで、クリスティーナ。フェイリスのパパさんと仲良さげだったが、なにかあったのか?」

紅莉栖「えっ? あったもなにも、こっちがビックリよ。って、岡部も話聞いてたでしょ?」

倫子「……秋葉原の全景を見下すのに忙しくて聞いてなかった」

紅莉栖「……はぁ。えっと、私と留未穂ちゃん、じゃなかった、フェイリスが幼馴染だった、って話よ」

倫子「へぇー、そうだったのか」

倫子「…………」

倫子「…………」

倫子「は、はぁ!?!?!?」

390: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:20:04.51 ID:XXCCD2jmo

紅莉栖「だ、大丈夫よ! それでも岡部が私の一番の友達、だから///」

倫子「いやいや! そんなことを心配してるわけではなくだなぁ!?」

倫子「どういうことだ!? なんの因果でそんなことになった!?」

倫子「(これも過去改変の影響か!? パパさんが生きていることで2人は幼馴染になってしまったというのか!?)」

紅莉栖「なんの因果って、私のパパとフェイリスのパパが大学の同期で親友なのよ」

倫子「なるほど、それで娘同士も自然に仲が良くなり、と。……衝撃の事実だ」

紅莉栖「向こうは源氏名だったから、パパさんに会うまで思い出せなかったけどね」

倫子「源氏名てお前……」

紅莉栖「7年ぶりに会えた友達……ふふ、私、日本に戻って来て良かった」ニコ

倫子「な……。ま、まあ、お前が喜んでいるようなら、別にいい」

紅莉栖「ん? 岡部は何もしてないでしょーが」

倫子「はぁ!? あのな、誰のおかげで……。あ、いや、なんでもない」

倫子「(記憶が失われるというのは、厄介だな……)」

紅莉栖「(もしかして……私とフェイリスの仲を妬いてる!?!?!?)」

紅莉栖「岡部はかわいいなーもう♪」ダキッ

倫子「ふわぁ!? って、お前、ブラックマーケットの血の盟約はどうしたのだ!? 入ったのだろう、貴様も!」

紅莉栖「……また設定? はいはい、厨二病乙~♪」ギュッ

倫子「やめろ、離せぇ! 暑苦しいっ!」ジタバタ

倫子「(こいつ、結局フェイリスの闇市場には参加しなかったのか? ……まあ、それならそれでいいが)」

倫子「……って、あれ? まゆりは?」

紅莉栖「あれっ? ……あ、あんなところに」

391: ◆/CNkusgt9A 2015/11/22(日) 21:21:42.21 ID:XXCCD2jmo

倫子「おーい、まゆり。どうしたんだ?」

まゆり「あ、オカリーン。あのね、まゆしぃはこれからおうちに帰るんだけど、中野に寄って行こうと思って」

倫子「(沈黙の直帰<スニーキング・フェードアウト>が発動したか。まったく心配させる)」

倫子「そもそも中野に何の用があるというのだ」

まゆり「あのね、昨日出た『哀ソード』の同人誌を買いに行くのです」

倫子「またまゆりはよくわからんことを。同人誌だったらそこに『とらのあな』があるではない……か……」

倫子「(あ、あれ? たしかにここ、アニメイトの隣だったと思うのだが……)」

倫子「(アニメイトも無い。というか、こんなところに電器店などあったか?)」

紅莉栖「岡部? どうしたの? 結婚する?」

まゆり「とらのあななんてアキバにないよー。だからまゆしぃは中野まで行くのです」

倫子「ないって……そんな、まさか。いや、それしか考えられない……っ」



倫子「――バタフライ、エフェクトッ!!」

397: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:45:24.35 ID:xVh1B71ho

倫子「――ないっ、ないっ、ないっ!!」ハァッ、ハァッ

倫子「まんだらけも、ラムタラも、ゲーマーズも……」ハァッ、ハァッ

倫子「メイクイーン+ニャン2までも……」ハァッ、ハァッ

まゆり「オカリン、突然どうしたのー?」タッタッタッ

倫子「まゆり。お前、メイクイーンで働いていたよな?」

まゆり「ジャガイモさん?」

倫子「じゃなくて、お前のバイト先だよ!」

まゆり「まゆしぃがバイトしてるのは『ルモアンヌ』だよ?」

倫子「……普通の喫茶店か。名前は知っている」

紅莉栖「この前萌郁さんをラボメンにした時、一緒に行ったじゃない。まゆりのウェイトレス姿、ステキだったわよ」

まゆり「えっへへー。ありがとー、クリスちゃん♪」

倫子「(まさかまゆりのバイト先まで変わってしまうなんて……)」

倫子「(原因はなんとなくわかる。フェイリスはアキバの都市開発に萌えを導入した張本人だった)」

倫子「(父上が生存することによってここ10年間の都市計画そのものが変化してしまった、ということだろう)」

倫子「(オレが……、このオレが、街をひとつ変えてしまった?)」ガクガク

倫子「(いや、誰の記憶にもないのだから、オレが責められることもないが……)」ブルブル

紅莉栖「岡部……?」

398: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:46:14.66 ID:xVh1B71ho
秋葉原某所


萌郁「どうしてFBは……あんなことを……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3日前(萌郁の記憶)
8月5日木曜日


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


To FB
Sub IBN5100
ごめんなさい……
例のIBN5100だけど、
まったく情報がつかめな
いの。


ピロリン♪

萌郁「っ!」ピッ


From FB
Sub Re:IBN5100
報告ありがとう。IBN5
100の件はしばらく置い
ておくわ。
実はM4には別の任務を
お願いしたいの。
未来ガジェット研究所って
組織について調べて。
できれば潜入して監視をお
願いしたいんだけど大丈夫
かしら?
危険な任務だから無理にと
は言わないわ。


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


To FB
Sub IBN5100
私は大丈夫。
任せて。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



399: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:47:40.04 ID:xVh1B71ho
2010年8月8日日曜日
中央通り


prrrr

倫子「(変わり果てた秋葉原を散策していたら助手からメールがきた)」


From 助手
Sub ここにいること
どうして私はここにいるの
? どこで歯車は狂ったの
? 運命の女神様は本当に
いるの? 岡部、私を巻き
込んだ責任取りなさいよね
。私は貴女を信じてる。


倫子「謎ポエムをよこしおって……。牧瀬紅莉栖の憂鬱、アニメ化決定だな」ピッ

prrrr

倫子「またか……。連投レスとは、半年ROMっていろ!」ピッ


From patghqwskm@ninesixpbb.ne.jp
Sub
姉さんのこと見てるよ(≧▽≦)
▼添付画像アリ


倫子「なんだ、これ……?」

倫子「(なにしてるんだ指圧師。なんだこのアドレス?)」

倫子「(それにこの添付画像……、赤いゼリー?)」

倫子「冗談はやめてIBN5100を捜索しろ……と。普通に返事をしておこう」ピッ

倫子「帰りにゼリーでも買って帰るか」

400: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:51:27.85 ID:xVh1B71ho
未来ガジェット研究所


倫子「盆休みの日曜だというのに、男遊びの1つもしてないのかお前たちは。ほら、安売りのゼリー買ってきたぞ」

まゆり「オカリン、おかえりーん。わーい、ゼリーだぁ♪」

るか「お邪魔してます、おか……凶真さん」

萌郁「…………(お邪魔してるよー(≧▽≦) )」

紅莉栖「それはブーメランでしょ。私とデートする?」

倫子「フン、オレは俗世と違って男に興味などないが、女とイチャつく趣味もない」

紅莉栖「……それとなく暗示をかけて……いっそのこと開頭して洗脳……」ブツブツ

倫子「というか、指圧師よ来ていたのか。IBN5100は見つかったか?」

萌郁「IBN5100は……ひとまず中断……」

倫子「ほう? あんなに必死に欲していたのにか」

倫子「(これも過去改変の影響か?)」

倫子「それで、ラボメンガールズたちで何を話していたのだ?」

紅莉栖「複数形のsと”たち”で意味がかぶってる」クスクス

倫子「いちいち揚げ足を取るなぁ!」ウルウル

紅莉栖「(今日のかわいい、いただきました)」

萌郁「…………(えっとねー。色々あってね? )」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『岡部姉さんのステキなところについて語り合ってたよ(^^♪ 萌郁』……まあ、楽しそうでなによりだ。うん」

まゆり「メロン味のゼリー、おいしいのです♪」モグモグ

401: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:54:41.27 ID:xVh1B71ho

紅莉栖「まゆりはいいわね、いくら食べても太らなくて」モグモグ

まゆり「そんなことないよー」

るか「牧瀬さん、スレンダーですよね」

紅莉栖「そ、そうかしら。ありがと」

まゆり「萌郁さんもね、スタイル抜群だからコスプレ映えすると思うなー」

萌郁「…………」ポチポチポチ

ピロリン♪

まゆり「あれ? 萌郁さんからメールだー。えっと、『コスプレは恥ずかしいなぁ(/ω\) 写真を撮る方だったら得意だよ! 萌郁』」

まゆり「ホントー! じゃあ、今度のコミマ、一緒に行こうよー!」

倫子「随分打ち解けたようだな」フッ

萌郁「…………」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『みんな優しい人で良かった(^^♪ だけど、今まで友達なんて居たことないから、こんな接し方でいいのかわからないよ。 萌郁』」

倫子「いいんじゃないか? わからないなりにそれが正解なんだと思うぞ」

萌郁「…………(いいこと言うなぁ。さすが私の姉さん!)」


紅莉栖「こんなこと言うのも変なんだけど、私と桐生さんってどこか似ている気がするのよね」ヒソヒソ

倫子「ほう、珍しいことを言う」

紅莉栖「承認欲求が人一倍強いくせに孤独になりたがって、その上自分のホームを探してる」

倫子「自分で言うか、それ」

紅莉栖「か、観察の結果よ! 客観的な分析のもとに導出された解であって、変な意味は……」

倫子「はいはい」フフッ

402: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:56:03.09 ID:xVh1B71ho

倫子「それで? まゆりとルカ子はなにを読んでいるんだ?」

まゆり「昨日中野でね、チェックしてなかったサークルさんの"月華の刃"の新作が置いてあって、つい買っちゃったのです」

るか「原作は知らないですけど、衣装にこだわりがあって、見ていて面白いです」

倫子「……これ、BLじゃないか。ルカ子よ、お前……」

るか「えっ? えっと、びーえる、って、なんでしょうか……?」

紅莉栖「月華は単純にカップリングじゃ語れないわよ。琴たんの活躍は燃える。萌えるじゃなくて燃える、ね」

倫子「おいクリ腐ティーナ。貴様、百合厨から対極の存在へとクラスチェンジしたのか?」

紅莉栖「クリフ……っ!? その呼び方はやめてぇ!! 別に私は百合厨でも腐女子でもないからなぁ!?」

倫子「黙れこのクソレ 万年発 百合腐女子っ! あまつさえオレを腐界へと導こうという腹積もりらしいがそうはいかんっ!」

紅莉栖「じゃあ逆に聞くけど、まゆりがBL本読んでるのはOKなの!?」

まゆり「オカリンもねぇ、読み始めたらきっとハマると思うのです♪」

倫子「まゆりは健全な腐女子だから問題ない」

紅莉栖「どういう……ことなの……」ガクッ

403: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 21:57:29.83 ID:xVh1B71ho

まゆり「そうだぁ! コミマが終わったら、ラボメンのみんなで一緒に海に行こうよー!」

紅莉栖「……まゆり、グッドアイデア」タラタラ

倫子「鼻血を拭け、バカモノ」

紅莉栖「私、水に浮かんでる感覚って好きなのよね。久しぶりに行きたいなー、海」チラッチラッ

倫子「(こいつ……)」

紅莉栖「いいじゃない、海。一緒に行きましょうよ」

倫子「HE  が居なければオレだって諸手を挙げて賛成なんだがな」

紅莉栖「もしかして鳳凰院ちゃん、臀部の蒙古斑が見られたくないんでちゅかー?」ニヤニヤ

倫子「ちゃん付けするなぁ! というか、ネラークリスのネット弁慶さを抽出したような煽り文句はやめるのだ……っ!」ウルウル

紅莉栖「ご、ごめん。ってか、私は岡部と海に行きたいっ!」

倫子「もちろんダルもラボメンだから連れて行くぞ」

紅莉栖「HE  は不要」

倫子「萌郁やフェイリス、まゆりと 比べすることになるが構わないか?」

紅莉栖「ちちっ!? ……か、構わない。岡部の水着姿が見れるなら全然構わない」ギリギリ

倫子「(歯ぎしりをするほどか……)」

まゆり「ひん   は正義だよ、クリスちゃん。るかちゃん」

倫子「おいおい、ルカ子を引き合いに出してやるなよ。男と比べるのはさすがに“絶壁<クリフ>”ティーナが可哀想そうだろ」

紅莉栖「えっ」

まゆり「えっ」

るか「…………」

萌郁「…………」

倫子「あ、あれ……?」

405: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:04:41.30 ID:xVh1B71ho

紅莉栖「……ごめん。私、岡部のこと大好きだけど、さすがに怒らせて」

紅莉栖「あんたは“男”って言われてもいいかもしれないけどね、胸の話でそれは無いと思うわ」

まゆり「そうだよ、オカリン。そういうこと言うの、まゆしぃは好きじゃないな……」

るか「…………」グスッ

倫子「百合スティーナよ。お前が現実から目をそむけたくなるのもわかる。だがな――」

紅莉栖「岡部ッ!!」キッ

倫子「ヒッ!?」ビクッ

紅莉栖「私を変な呼び方で呼ぶのは構わない。でもね、他人を傷つける冗談を言うのは……」

紅莉栖「サイテーよ」

倫子「な……なにを怒っている……」ワナワナ

紅莉栖「謝りなさいッ! 今すぐ、漆原さんに謝りなさい!」

倫子「やめてよ……なんで私に怒るの……」ウルウル

倫子「わた……オ、オレは、真実しか言ってな――」

るか「いいんですっ」

るか「ボク……岡部さんに、そういう風に見られてたんですね」ウルッ

倫子「お前まで何を言っているっ! お前は男だよなぁ!? そうだよなぁ!?」

紅莉栖「ッ!!」



バシッ!



倫子「え……」ジンジン

倫子「(なにが起きた……? 助手に、ビンタされた……!?)」

406: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:07:03.90 ID:xVh1B71ho

倫子「うぇ……ひぐっ……」ウルウル

るか「ま、牧瀬さん!?」

まゆり「クリスちゃん……」

紅莉栖「あっ……ご、ごめん、岡部……」オロオロ

倫子「謝るなら最初からするなぁ……うぅ……」グスッ

紅莉栖「私の信じた貴女が、ひどい人になるのが耐えられなかった……」

紅莉栖「それに、同じ女として許せなかった……」

倫子「…………」

倫子「……だが、顔を叩かれたおかげで冷静さを取り戻せたようだ」

倫子「つまりは、ルカ子は女として生まれ変わっていた――」

倫子「あのポケベルへのDメールによって16年の歴史が塗り替わった、ということだな」

紅莉栖「えっ……? それじゃあ……」

倫子「Dメール実験が成功した場合、記憶を引き継げるのはリーディングシュタイナーを持つオレだけ」

るか「えっと……?」

倫子「今のお前達には信じられないかもしれないが、漆原るかは8月5日までは本当に男だったのだ」

紅莉栖「……そんなっ!? し、信じられないけどその可能性も否定できなうわあああああああああ!!!!!!!!」

407: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:12:18.05 ID:xVh1B71ho

倫子「(性別を変えるような過去改変はどのように実行されたか、そして男性だった頃のルカ子の状況を説明した)」

紅莉栖「死んで詫びるわ!!! 死んで詫びるわ!!!」ゴツッ!ゴツッ!

萌郁「土下座しながら……床に頭突き……(痛そうだなぁ>< )」

倫子「オレが虚言妄想の類をまき散らしている可能性も否定できないのだから仕方ない」

倫子「それに、ルカ子が男だったという方が信じられない。女よりも女らしかったからな」

るか「よくわかりません……」

まゆり「まゆしぃにはちんぷんかんぷんだよー。オカリンは嘘をついてないってこと?」

紅莉栖「状況証拠はいくつもあるし、なにより岡部があんなひどい嘘を言うなんて信じられない!」

紅莉栖「それに漆原さんのお母さんに確認すればいいだけの話よ! 過去改変の結果だけは改変後の世界にも残り続けるんだから!」

るか「そ、そうなんですか? 今からお母さんに電話してみます」ピッ

紅莉栖「あなたがお腹の中にいる頃に、ポケベルに変なメッセージが来なかったか聞いてみて!」

倫子「たしか、『やさいくうとげんきなこをうめる』だったか」

るか「……はい、うん、わかった。それじゃ」ピッ

るか「お母さん、たしかにそういうメッセージを受信してました。それで野菜をたくさん食べたそうです」

るか「でも、ボク、頭がこんがらがって……、どうしたらいいんでしょう……」グスッ

倫子「……お前にとっては女として生きてきた16年間のほうが現実なのだ。複雑に考える必要は無い」

るか「で、でも……」

倫子「大丈夫だ。たとえ何があろうとルカ子はルカ子、オレの大事な弟子だ」

るか「はいぃ……(きゅん///)」

ゴツッ!ゴツッ!

まゆり「クリスちゃん、そろそろやめた方が……」

紅莉栖「こ゛め゛ん゛ね゛お゛か゛へ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!!!」ゴツッ!ゴツッ!

萌郁「おでこから血が出てる……(写真撮っちゃお!)」パシャ

ガチャ

鈴羽「たいへんっ! 2階がドンドンうるさいからって店長怒ってるよ! 何やってんの!」

倫子「何ィ!? 今すぐ謝りに行くっ! 助手は自傷行為を直ちにやめなさいっ!」

紅莉栖「迷惑ばっかりかけてごべんねぇぇぇ!!!!」ビェェェ

408: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:14:26.02 ID:xVh1B71ho
大檜山ビル前


倫子「(なんとかミスターブラウン氏には弁明させてもらえた……が)」

倫子「なんだが気疲れしてしまったな……」

鈴羽「だったらさ、一緒にサイクリングでもしない? 今日みたいに天気のいい日は気分がスカッとするよ」

倫子「そう言えば、なんだかバイト戦士も元気無さそうだな。なにかあったのか?」

倫子「(いつもならもっと助手と喧嘩したり、わけのわからん面倒事を起こしそうなもんだが)」

鈴羽「えっ? ……あはは、さすが鳳凰院凶真。まあ、そんなところ」

倫子「前にケータイで調べていた事件のことか?」

鈴羽「あー、あれね。うん、容疑者は見つけたんだけど、事件の情報が全然見つからなくてさ」

倫子「というか、チャリは1台しかないではないか」

鈴羽「2人乗りすればいいじゃん。もちろん、あたしが漕ぐよ」

倫子「ミスターブラウンがこっちを見ているぞ?」

鈴羽「ちょっと待ってて……許可取ってきた。ほら、行こう!」

倫子「あ、おい、ちょっと!」

409: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:15:16.25 ID:xVh1B71ho
UPX前


倫子「思いのほか筋肉質なのだな」

鈴羽「まーね。戦士だもん」キーコキーコ

倫子「(今オレは鈴羽の肩をつかみ、背後に立つ形で2人乗りしているわけだが、肩甲骨の下のあたりなんかはキュッと引き締まっている)」

倫子「(特筆すべきはヒップだ。女のオレでさえその形と感触に惹かれてしまう)」

鈴羽「あんまり触られるとくすぐったいな、あはは」キーコキーコ

倫子「す、すまん! 決してHE  的な意味ではなくだなっ!」アセッ

鈴羽「わかってるって。レジェンドは最期まで純潔を守り抜いたしね」

倫子「またその話か。なんなんだ、それ」

鈴羽「あたしさ、東京に来たのは10日前が初めてなんだよね」

倫子「未来から来たのが、という意味か?」

鈴羽「あっ、あの辺座ろうよ。ちょっと自転車停めてくるね」

倫子「(まともに会話できない……)」

410: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:17:41.71 ID:xVh1B71ho

鈴羽「あたしね、父さんを"そうさく"するためにここに来たんだ」

倫子「そうさく……ソウサク……捜索、か。初耳だな」

鈴羽「もう何年も会ってなくて。この街にいるのは分かってるんだけど」

倫子「(こいつ、そのために過去へタイムトラベルを……? そう言えば2000年に現れた方のタイターも1998年から家族と暮らした、などと言っていたな)」

倫子「アテはあるのか」

鈴羽「……明日、チャンスがあるんだ。ある場所に現れるかもしれなくて」

倫子「(なんだか刑事ドラマのヒロインみたいなことを言い出したぞ。もしかしてこいつの父親、組織に追われる反逆者か何かなのか?)」

鈴羽「明日会えなかったら諦める。あたしはこの街を出るよ」

倫子「不安なのだな」

鈴羽「……なんていうかさ。曇りガラスの向こうをのぞいてるみたいに、自分で自分の心がよく見えないんだ」

倫子「わかるぞ、その気持ち。たった1人で誰かを探すなど、さぞ心細いだろうな」

倫子「(まゆりの心を取り戻すまでの半年間、オレの心は毎日が雨だった……)」

倫子「相談する相手を探したが、身近にいる人間で頼りになりそうなのがオレしかいなかった。そんなところか」

鈴羽「そんな消去法じゃないよ! あたしは、鳳凰院凶真だからこそ……話したんだ……」

倫子「だが残念だったな。オレは狂気のマッドサイエンティストっ!」

倫子「貴様のような心にスキマのある女など、都合のいい実験台でしかないのだぁ。ククク」ニヤリ

鈴羽「実験台……って?」

倫子「無論、Dメールだ。オレたちのラボが開発した栄光であり、人類の夢だ」

411: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:18:57.88 ID:xVh1B71ho

鈴羽「どういうこと?」

倫子「何、難しい話ではない。時間的過去の話であるならば、蒸発する前の父親に『娘を置いていくな』とDメールを送ればいい」

倫子「さすれば辛い記憶を忘却の彼方に置き去りにし、仲睦まじく触れ合う父子の姿がそこにあろう」

鈴羽「……やっぱりキミはレジェンド、鳳凰院凶真だね。父さんから聞いた通りだ」

倫子「ん? なんだって?」

鈴羽「ううん。なんかちょっとだけ、楽になったかも」

鈴羽「でもごめん。父さんのケータイの番号もメルアドも知らないんだ」

倫子「…………そう、か。力になれなくてすまないな」シュン

倫子「(Dメールは万能ではない。フェイリスの件でオレは天狗になっていたのかも知れないな……)」

鈴羽「そんな! キミが心配してくれて本当にうれしかったよ!」アタフタ

倫子「し、心配などしていないっ。勘違いするなっ」プイッ

鈴羽「(あれ? なんだろうこの気持ち……。レジェンドとしての尊敬以上の、なにか……)」トゥンク

倫子「早いところ、あのマシンを改良していかねばな」ハァ

鈴羽「……だったら、あたしからひとつ忠告」

倫子「む?」

鈴羽「牧瀬紅莉栖は仲間から外した方がいい」

倫子「……またそれか」

412: ◆/CNkusgt9A 2015/11/23(月) 22:22:43.49 ID:xVh1B71ho

鈴羽「(こんなに居心地がいいんだね、キミのとなりって)」

鈴羽「(牧瀬紅莉栖がここに居たがる理由もわかる気がする。あたしだって本当は……)」

鈴羽「(でも甘えてちゃダメだ。あたしにはあたしの使命がある)」

鈴羽「(……鳳凰院凶真とは、距離を置かないと)」

鈴羽「さてと、30分休憩ももうおしまい。そろそろ帰らないと、また店長に怒られちゃう」

倫子「……明日は、父親と会えても会えなくてもラボに来い」

鈴羽「なんで?」

倫子「言っただろう? お前の傷心を利用して、Dメール実験を行うとなっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「あはは。マッドサイエンティストにしては美人すぎるかな」

倫子「オレにとっては侮辱の言葉だが……。まあ、悪い気はしないな」フッ

鈴羽「もし父さんと会えたら行くよ。じゃあね」

鈴羽「(じゃあね……あたしの、鳳凰院凶真……)」

ガチャ シャー

倫子「(そう言うと鈴羽は自転車に乗って行ってしまった……って!)」

倫子「ちょっと待ってぇ! オレも乗せていけよぉ! うわぁん!」

418: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:27:25.73 ID:wPUX3QcLo

・・・


『オカリン、死んじゃやだよぅ……!』
『オカリン、死なないで……』


頭の中でまゆりの声がする。それも二重に。

片方の声は今よりも幼い、多分小学生だった頃の声。
もう片方は、今よりも歳をとったような落ち着いた声だ。

姿は見えない。何も見えない。
オレは宇宙空間のような暗黒の中に立っていた。


『それでもあなたは行くのね……岡部を救うために……』


これは、誰の声だ? 助手か?

眼下に広がる暗闇の先に、いくつかの光点が観測できる。
それはきっと過去からの光。
地球で観測できる星の輝きは何十年、何百年も過去のものだと、助手は言っていた。


『私は行きます。彼を救う可能性が、彼がそこへたどり着く可能性が1%でもあるなら』


なんなのだこの声は……幻聴か? それにしてはやけにリアルだな……


『だから、信じて待っていてください。必ず、今ここへ届けます』

『――何千年も過去にある、お星さまの祈りを』

419: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:30:29.98 ID:wPUX3QcLo
2010年8月9日月曜日
未来ガジェット研究所


倫子「これより作戦名『エルドフリームニル』の概要について説明するっ」ドヤァ

まゆり「わー」パチパチ

るか「わ、わー」パチパチ

萌郁「……(わー(≧▽≦) )」

倫子「(ラボメン全員に召集をかけたのだが、フェイリスは忙しいらしく連絡が取れなかった。大会の準備か?)」

倫子「(そしてあのダルだが、"用事があるからパス"というふざけたことを言ってきた)」

紅莉栖「話は聞かせてもらったわ。要は阿万音さんを元気づけるためのパーティーをやろう、ってことよね」

倫子「ぐっ、たしかにそうだが、オレに仕切らせろよぅ」グヌヌ

倫子「(日に日に態度が委員長タイプになってきたな……バイト戦士が危惧していた事態はこれだったのか……)」

紅莉栖「あの人がお父さんを探してたなんて知らなかった。私を目の敵にしている理由は判然としないけど……」

紅莉栖「そういう事なら話は別。岡部の作戦に協力するわ」

倫子「バイト戦士のこと、苦手じゃなかったのか」

紅莉栖「大丈夫よ、私って人に嫌われるの慣れてるから」

倫子「(……やはり父親にも嫌われているのか)」

420: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:32:20.32 ID:wPUX3QcLo

るか「あの、阿万音さんって、阿万音鈴羽さんのことですか?」

倫子「ほう、ルカ子に面識があったとはな」

るか「はい。昨晩、本殿の軒下で野宿されてまして……」

倫子「の、野宿だと!?」

紅莉栖「嘘でしょ!?」

るか「え、えと、うちの父が今朝方に野良猫と喧嘩している阿万音さんを見つけて、朝餉とお風呂を提供しまして……」

倫子「あの未来人、まともに現代の金が無いからといって根なし草だったとは……」

倫子「ん? ルカ子の父上が、お風呂を貸した……?」

るか「ご想像の通り、今頃阿万音さんは巫女装束です」シュン

倫子「……鈴羽のパパがオタ趣味に理解のある人であることを祈ろう」ハァ

倫子「本当はバイト戦士の側にいて励ましてやりたいところだが、親子水入らずの方がいいだろうと思ってな」

倫子「お前たちっ! ラボメンガールズの女子力をいかんなく発揮し、宴会の準備をするのだっ!」

紅莉栖「じゃあ、私は岡部と買い出しに行くわ。まゆりと漆原さんは今ある材料で料理を始めてて。桐生さんはこの辺の掃除をお願い」

倫子「だから勝手に仕切るなぁ!」

421: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:34:41.39 ID:wPUX3QcLo
ヨドダシカメラ周辺


紅莉栖「……この前のこと、謝る。本当にごめんなさい」

倫子「なんだ藪から棒に。ビンタのことなら昨日許したと言っただろう」

紅莉栖「……私の事、嫌になったらいつでもラボから追い出していいからね」

倫子「馬鹿にするなよ」

倫子「たとえオレがIQ170の灰色の脳細胞を持つ狂気のマッドサイエンティストとは言え、1人でできることに限界があることは自覚している」

倫子「電話レンジ(仮)がいい例だ。お前の協力があってこそと言えよう」

紅莉栖「それは、そうかもしれないけど……」

倫子「貴様。オレが鈴羽に肩入れしているから、鈴羽に嫌われている自分はお払い箱になるとでも妄想してしまったんだろう」

紅莉栖「そんなわけ……ある、けど」

倫子「まったくもって発想がいじめられっ子のソレだな。逆留学中の高校生活で友達の1人や2人居なかったのか?」

紅莉栖「……みんな私にビビって話しかけてすらこなかったわよ」

倫子「ククク。世界は残酷だなぁ、ボッチティーナ?」

紅莉栖「もはや跡形がない件について……」

倫子「だが、オレたちはもはや外に漏らしてはならない秘密を共有しているのだ。よって貴様をラボから追い出すわけにはいかない」

倫子「くだらん被害妄想などドブに捨てて、オレに忠誠を誓っていればいいのだっ!」

紅莉栖「じゃ、じゃあ私も岡部の人質に……」テレッ

倫子「いや、あの、それはちょっと……」

422: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:38:44.69 ID:wPUX3QcLo

紅莉栖「あれ? あそこにいるの、橋田?」

倫子「なっ!? 見つけたぞダル!」

ダル「えっ? あっ――」ダッ

倫子「なぜ逃げる! 待てィ!」ガシッ

ダル「ぐぇっ」

倫子「お前、オレの召集に応じないとはどういうつもりだ」ゴゴゴ

ダル「用事があるって言ってんじゃん……」

紅莉栖「岡部より大事な用ってどんな用事よ!」

倫子「そーだそーだ」

ダル「オフ会……」

紅莉栖「死刑」

ダル「いや、ちょっと聞いてくれよぅ――」

倫子「鈴羽のことを、なんとも思わないのか」

ダル「あの自称タイターの未来っ娘にも関係あるオフ会なんだけど――」

紅莉栖「あんた以外に男はいない美少女だらけのハーレムパーティーと、ムサいオッサンどもの酒飲み。さあ、選択権を持つのはあんたよ」ヒソヒソ

ダル「(え、フェイリスたんもいるん!? オカリンの手前、フェイリスたんのことは口に出せないけど……)」

ダル「……僕はオフ会を諦めるぞぉぉぉ!」

倫子「おおっ! それでこそ我が右腕だぁ!」パァァッ

紅莉栖「(この笑顔で今日も生きていける)」グッ

423: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:40:55.54 ID:wPUX3QcLo
未来ガジェット研究所


ダル「フェイリスたんが居ない……ガクッ」

紅莉栖「あんたが勝手に勘違いしたんでしょ」

ダル「ふざけんなよぉ、せっかくのタイムマシンオフ会だったのに……」

倫子「タイムマシンオフ会だと!? くっ、なぜ先にそれを言わないのだ。オレも行きたい……っ!」

紅莉栖「はいはいまた今度ね」

ダル「ってか、ラボ散らかりすぎじゃね?」

紅莉栖「なにこれ!? えっと、桐生さん!?」

桐生「…………」ピロリン♪

倫子「『片付けるつもりが逆に散らかしちゃうことってあるよね☆ 萌郁』……もういい、オレがやるから代わりに料理を手伝ってやれ」

萌郁「私、カップ麺しか……作れない……」シュン

倫子「わかった、とりあえず指圧師は待機……ん? なにか変な臭いがしないか?」

紅莉栖「橋田の汗臭かしら。岡部に移るからあっち行きなさいよ」シッシッ

ダル「想像を絶する悲しみが僕を襲った」

るか「す、すみません……っ。たぶん、まゆりちゃんのお料理の臭い、だと思います……」

倫子「……まゆりに包丁を持たせたのかっ!?」

倫子「家庭科の授業の時も、バレンタインの時も、まゆりに包丁を持たせてはならなかったというのにっ!」

まゆり「もう。まゆしぃはいつまでも子どもじゃないよ、オカリン?」グサッグサッ

倫子「ヒィッ! 代われ、オレが料理するからっ!」

紅莉栖「あ、私も手伝うわ! えっと、卵を電話レンジカッコカリに入れて――」

倫子「やめろぉぉぉぉぉっ!! うわぁぁぁん!!」

424: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:43:58.49 ID:wPUX3QcLo
トントントントン カチッ ジュージュー

倫子「……ルカ子、それをこっちに渡してくれ」

るか「は、はい、凶真さん! えへへ……」


ダル「結局オカリンとルカ氏2人で料理することになった件」

紅莉栖「岡部が料理女子だったとは……うぬぅ……」

まゆり「オカリンは昔からお料理上手なんだよー。おかーさんに鍛えられたんだって」

萌郁「岡部さんのお母さん……美人そう……」

まゆり「オカリンはおかーさん似なんだよー。おかーさんもモデルさんみたいにスラッとしてるのです」

紅莉栖「お父さんは?」

ダル「昭和の頑固親父って感じ。オカリンと一緒にいるところを見られた時は、僕半殺しにされたお」

紅莉栖「そりゃ、美人の娘が橋田と歩いてたら誰だってそうするわよ」

まゆり「オカリンね、お父さんから愛され過ぎちゃって、それであんまり家に帰りたくないみたいなの……。なんだかさみしいな……」

紅莉栖「そんな理由でラボに寝泊まりしてたの。お年頃だものねぇ」ウフフ


倫子「(あいつら……勝手なことばかり話しおって……)」トントントントン

るか「(岡部さんとの共同作業……えへへ……)」トントントントン

425: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:47:16.66 ID:wPUX3QcLo
カチッ カチッ カチッ カチッ (秒針の音)


倫子「……遅いっ!」

ダル「料理冷めちゃったお……」

まゆり「お外、真っ暗だねぇ……」

萌郁「女子高生組は……そろそろ帰らないと……」

prrrr

倫子「む? 鈴羽からメール――ッ!!」


『さよなら』


倫子「(ヤツめ、父親とは会えなかったのか! そしてそのまま秋葉原を離れるつもりだな……っ!)」

倫子「そんなことは、この鳳凰院凶真が許さん……! あいつは実験台なのだから!」ダッ

紅莉栖「あ、ちょっと岡部! ……もう! 私たちも追うわよ!」

ダル「お、おう!」

426: ◆/CNkusgt9A 2015/11/27(金) 21:48:34.26 ID:wPUX3QcLo
NR秋葉原駅前


倫子「はぁっ……はぁっ……。どこだ、どこにいる……」

倫子「(ルカ子によればあいつは今上下紅白の派手な格好をしているはずだ、探せばすぐに……居たっ!)」

鈴羽「ぐすっ……ひぐっ……」

倫子「そこのバイト巫女っ!」

鈴羽「っ!?」ダッ

倫子「あ、おい! ちょっと待てっ!」ダッ

倫子「(……あいつは、未来から来たかはともかく、オレを信頼してくれた)」タッタッ

倫子「(だったら、せめてものことをすべきだろうが!)」タッタッ

ポツ、ポツ……

倫子「こんな時に雨っ! バイト巫女め、あの格好ですばしっこく走り回るとは……!」

倫子「だ、だめだ、体力が……。くそ、こんなことならまゆりと毎朝ジョギングしておくんだった……」ハァハァ

倫子「今更過去を後悔しても仕方ない、か。過去を、後悔……」

紅莉栖「見つけた! もう、いつも1人で飛び出して……岡部?」

ダル「ふぃ~、やっと追いついたのだぜ……って、オカリン?」

倫子「……ククク。その手があったか。いや、これこそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択……っ!」

倫子「明日12時、電話レンジ(仮)を起動させ、今日のオレにメールを送ればいいっ!」

倫子「『何があっても鈴羽を尾行しろ』となっ! ふぅーはははぁ! はぁ、はぁ……」ゼェゼェ

432: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:48:18.75 ID:13cm5L15o
2010年8月10日火曜日
未来ガジェット研究所



―――――――――――――――――――
    0.40923 → 0.33871
―――――――――――――――――――



倫子「……この目眩。Dメールは正しく送信され、過去を変えたようだな」

倫子「鈴羽。鈴羽はどうなった?」キョロキョロ

鈴羽「……zzz」

倫子「ソファーで寝ていたか」ホッ

倫子「(ホームレスであることを知ったオレたちがこいつを帰さなかった、というわけだな)」

倫子「おい起きろバイト戦士。もう昼だぞ。あと服を着ろ」

倫子(どういうわけかこいつはスポブラにスパッツの状態で寝ていた。許しすぎだろ……)

鈴羽「んー……夜中まで騒いだの、久しぶりだから眠いよ。ふわぁ……」

倫子「……オレはお前を尾行し、"最後の晩餐"へと連行した。そうだな」

鈴羽「椎名まゆりの腹筋ナデナデ攻撃には参ったなぁ。でも、漆原るかのカレーは極上だった! 母さんのカレーよりおいしかったよ」ニコニコ

鈴羽「予定が狂っちゃったけど、タイムマシンオフ会よりは楽しかった、かな」

倫子「ちょ、ちょっと待て。タイムマシンオフ会!? それが父親が現れるかもしれない場所だったのか!?」

鈴羽「そうだって昨日説明したじゃん。鳳凰院凶真は忘れっぽい?」

倫子「い、いや、きっと昨日の料理に記憶破壊系の毒が盛られていたのだろう――ハッ」

倫子「(しまった! こいつには冗談が通じないんだった!)」

鈴羽「毒!? もしかして牧瀬紅莉栖が……なんて、ちょっと前のあたしなら身構えただろうけどさ」

倫子「……助手と和解したのか?」

鈴羽「キミたちのラボ、なんかいいね。みんな仲がよくて、いつも楽しそうで……」

鈴羽「あんなに心地いい時間は、生まれて初めてだったよ」

倫子「(意外にこいつは暗い青春時代を送ってきたのかも知れない……。父親の蒸発と関係があるのか?)」

433: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:50:39.65 ID:13cm5L15o

鈴羽「いやあ、漆原るかがあたしのジャージを持ってきてくれて助かったよ」

倫子「(なぜかソファーには巫女服がキレイに折りたたまれて置いてあった)」

倫子「それで、約束通り、お前には実験台になってもらう。実験はいずれ行う」

倫子「そして電話レンジ(仮)は我がラボの最高機密だ。外部情報保護の観点からして、お前にはラボメンになってもらう」

鈴羽「……いいの? あたしみたいな末端が、ワルキューレの神話時代のメンバーになっても……」

倫子「言葉の意味はわからんが、いやでもなってもらうぞ。お前は今日から、ラボメンナンバー08だっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「……うぅ……ぐすっ……」

倫子「ど、どうした? 急にしゃがみこんだりして……」オロオロ

鈴羽「……えへへ。ありがとう、ございます……」

倫子「同い年なのに敬語はやめろ。それで、どうするんだ」

鈴羽「うん。もうちょっとだけ、父さんを捜索してみるよ」

倫子「ラボメンの悩みはラボの悩みだ。オレたちも協力しよう。なにか手掛かりは無いのか?」

鈴羽「……あたしの父さんは『タイター』って名乗ってる」

倫子「なるほど。それで父親を炙り出すためにジョン・タイターを名乗っていたのか」

鈴羽「そうそ……ええっ!? いや、違うってば!」

倫子「となると、貴様の父親は2000年に現れたタイターの可能性があるな。お前、見るからに日本人だが、ハーフなのか?」

鈴羽「い、いや、父さんも日本人だと思うけど……」

434: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:51:57.01 ID:13cm5L15o

倫子「お前の話を整理すると、我が未来ガジェット研究所の後身にあたるワルキューレとかいう反社会組織の創設メンバーの1人がパパタイターなのだな?」

鈴羽「違うって言ってるのに」

倫子「さんざんオレをワルキューレの女騎士扱いしておいて今更何を言うのだ、未来人ジョン・タイターよ」

鈴羽「ぐっ……あ、あのさ」

倫子「なんだ?」

鈴羽「その……仮に、だよ? あたしが未来人だったとして、鳳凰院凶真はあたしを、軽蔑、したりしない、かな?」

倫子「それはまたよくわからん心配だな。むしろオレなら未来人とコンタクトを取れる状況に対し、慎重になりながらも狡猾に利用してやるぞ、ククク」

鈴羽「……私欲のために、過去に必要以上に干渉する行為を、見逃してくれる?」

倫子「私欲、か。だが、お前は気付いていないだろうが、その欲望こそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだよ」

鈴羽「う、うん?」

倫子「貴様の行動はオレの掌の上で弄ばれているということだっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「……あはは、さすが鳳凰院凶真。なんか1人で心配してたのがバカみたい」

倫子「ようやく未来人であることを認めるのか?」

鈴羽「それとこれとは別だってば」フフッ

倫子「生意気なやつめ」ムッ

435: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:54:15.21 ID:13cm5L15o

倫子「お前が2036年から来た未来人だとすると、パパタイターの正体はダルしか考えられない……オレは基本的に男が嫌いだからな」

倫子「創設メンバーに居るとなると他にアテがない。無論、将来的に知り合う人間である可能性もゼロではないが」

鈴羽「ダルって、橋田至、だよね?」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「HAHAHA! あのHE  に娘だとぉ? あいつは一生魔法使いに決まっているっ!」

鈴羽「あたしの父さんはもっと痩せてたよ。もう、悪い冗談はやめてよね」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「だが確かにダルはタイムマシンオフ会に参加していた……オレの妨害が無ければ、だが」

鈴羽「橋田至の特徴、母さんからの情報とも一致する」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「ちょ、ちょっと確認してみるか?」ガクガク

鈴羽「にわかには信じられないよ……」ブルブル

436: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:56:16.82 ID:13cm5L15o

ダル「な~ん? 急に呼び出したりしてー。フェイリスたんの雷ネット特訓で忙しかったのにー」

倫子「それが、だな……」

鈴羽「あ、あはは……///」テレッ

ダル「あれ、阿万音氏。どったの? 顔赤いお」

鈴羽「ふぇっ!? い、いや、それが、その……」

倫子「お前も知っている通り、鈴羽は2036年からやってきた未来人ジョン・タイターでな」

ダル「っていう"設定"っしょ?」

鈴羽「信じて貰えないとは思うけど、本当なんだよ」

倫子「正直オレも信じられん……が、我がラボがタイムマシンを開発する運命であるならば、それもまた必然」

ダル「いやいや。阿万音氏を否定するわけじゃないけど、ホントに未来人なん? 証拠は?」

鈴羽「……ラジ館に突き刺さってる人工衛星。あれ、あたしの乗ってきたタイムマシン」

ダル「オウフ……」

倫子「マジか……」

437: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:57:10.05 ID:13cm5L15o

倫子「お前には昨晩話したと思うが、鈴羽は未来で会えなくなった親父にこの時代で会おうとしている」

鈴羽「あのタイムマシンを作ったのはあたしの父さんなんだ」

倫子「その稀代のメカニックが我がラボのメンバーである可能性が高いらしいのだ」

ダル「なんだか僕たちのタイムマシン研究で阿万音氏の人生がとんでもないことになってる希ガス」

鈴羽「そんなことないよ。感謝してもしきれない……。あたしが生きる意味そのものだからね」

ダル「で? 阿万音氏のお父さんって誰なん?」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

ダル「え、何? なんで僕を見るん? ……あっ」

ダル「ラボに男って僕しかいないじゃん……」

鈴羽「父さん……?」

ダル「……つ、つつ、つまりどういうことだってばよ!?」

438: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 14:59:20.53 ID:13cm5L15o

倫子「栗毛色のくせ毛は父親譲りだったのか」

鈴羽「匂いも……。うん。あたしが小さい時の記憶、そのままかも」

ダル「うほっ、こんな可愛い子に匂いをかがれるとか……って、普段なら喜んでたはずなんだけどなぁ」

鈴羽「ご、ごめん。迷惑だった、よね」

ダル「あっーと……驚きはしたけど、迷惑なんかじゃないお」

ダル「むしろ未来の娘がこんなにかわいい娘と知って、僕、大勝利っつーか」ポリポリ

倫子「HE  は自重しろよ?」

ダル「わ、わかってるっつの。さすがに血を分けた娘に妄想とかしないお……てかできないお……」

鈴羽「あ、あはは……」

ダル「あの、1つだけ聞いていい?」

鈴羽「う、うん。なに?」

ダル「母さんかわいかった? ロリ顔で背が小さくて巨 ってのをキボン」

倫子「わかってないではないかぁ! このHE  !」ゲシッ ゲシッ

ダル「お尻を蹴られるのは我々の業界ではご褒美ですっ!」

鈴羽「あははっ。それはナイショにしとく」

439: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 15:00:56.30 ID:13cm5L15o

ダル「……思ったんだけどさ、阿万音氏の話を聞く限りじゃ、未来の僕って親失格じゃね?」

倫子「ディストピアがどんなものかは知らんが、父親としては最低だな」

鈴羽「な、なに言ってるのさ! あたしは別に父さんのことを恨んだりしてないよ、それどころか尊敬してる」

鈴羽「世界の支配構造を塗り替えるための、唯一の希望を残してくれたんだから」

鈴羽「父さんが世界を見捨ててあたしに優しくしてたら、それこそ軽蔑してたよ」

倫子「…………」

ダル「…………」

鈴羽「それに初代女騎士の数々の伝説を後世に残してくれたしね! ワルキューレの精神的支柱だったよ、鳳凰院凶真の伝説は!」

倫子「お前の仕業だったのか」ギロッ

ダル「まだやってないってばよ……」

440: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 15:02:37.48 ID:13cm5L15o

倫子「……なあ、ダルよ」

ダル「オカリンが言いたいことはだいたい予想できるんだな、これが」

倫子「せっかくの親子の再会なのだ。水入らずで遊んで来たらどうだ?」

ダル「それって、阿万音氏とデートしてこいってことですねわかります!」

倫子「家族サービスと言え、バカモノッ」

ダル「いやあ、ぶっちゃけ同い年だし」

鈴羽「デ、デート……」モジモジ

倫子「バイトは休め。店長にはオレから言っておく」

ダル「えっと……アキバでも散歩する?」

鈴羽「い、いいの? ホントに?」

倫子「今のアキバには萌えショップも無いしな。親父のHE  度も下がるだろうし、いいんじゃないか」

鈴羽「あたしも、父さんたちが見てきた景色を見たい……かな」

ダル「そうと決まれば、父さんがんばっちゃうお!」

倫子「ああ、行ってこいっ!」ニコッ

441: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:30:08.98 ID:13cm5L15o
第5章 時空境界のドグマ♀


そこに広がっていたのは一面の荒野だった。
空は絶望色に染まり、雲は凍えるほど寒々しく漂っている。

そこから生命の残滓を感じることはできない。

……また変な夢か。最近多いな。疲れてるのか?


『オカリン、見ーつけた♪』


まゆりか。どうしてそんなところにいるんだ?
どうして、そんな、岩の上なんかに。


『ここはね、7000万年前の地球だよ』

『オカリンは、陰謀に巻き込まれて、タイムマシンでここに送られちゃったんだー』


ほう? それはまた、トンデモ話だな。


『まゆしぃはね、オカリンを追いかけて、たくさん、たっくさん、たーっくさんの世界線の、すべてのオカリンを探し続けてきたのです』


ということは、お前はオレの知ってるまゆりじゃないのか……


『でね、オカリンもまゆしぃも、ここで死んじゃうと思う』


でも、お前がそばに居てくれてよかった。まゆりはオレの人質だからな。


『きっと、7000万年後の秋葉原にいる、オカリンとまゆしぃまで、意志は連続していくんだって思うな』


ああ、それか。知ってる。
だって、その結論を導き出したのは他でもない――"あいつ"なんだから。


『だから、大丈夫だよ♪』


そうだな。後のことはすべて……




――"岡部倫太郎"に任せよう。




442: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:31:31.03 ID:13cm5L15o

倫子「……午睡を貪ってしまったか。ふわぁ……」

倫子「(今頃橋田親子はうまくやってるだろうか……)」

まゆり「はぁー、まゆしぃも『うーぱ』とお友達になりたいなー」

倫子「また雷ネット翔のDVDを見てるのか、まゆり。お前、今年で何歳だ?」

まゆり「んー? まゆしぃは2月生まれの遅生まれだから、まだ16歳だよー?」

倫子「そろそろ大人の色気の1つでも出さないと、男の子にモテないぞ」

まゆり「オカリンはまゆしぃに彼氏ができてほしいのー?」

倫子「そりゃ、そうだろ。お前だって女の子なんだ、人並みの幸せはあってもいいんじゃないか」

まゆり「でもでもー、まゆしぃは今こうしてラボに居ることが幸せだよー♪」

倫子「……まゆり。ケータイが鳴ってるぞ」

まゆり「え? あ、ホントだ。トゥットゥルー♪ フェリスちゃん、おはよーニャン♪」

まゆり「きょうまー? オカリンに替わりたいのー?」チラッ

倫子「絶対に、ノウッ!」

443: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:32:35.03 ID:13cm5L15o

倫子「フェイリスのIBN5100探しは難航している、との連絡だったか」

ガチャ

ダル「ただいまー。ふぃー、やっぱ昼間に出歩くのは自殺行為だ罠」

鈴羽「もう、父さんはだらしないなー。おじゃましまーす」

まゆり「あーっ! スズさんにダルくん! おかえりー♪」

鈴羽「椎名まゆり、ちぃーっす」

倫子「それで、どうだった?」

鈴羽「うん……こんな素敵な時間を過ごせるとは思ってもなかった。鳳凰院凶真には頭が上がらないよ」

ダル「いやあ、周りの非リアどもの羨望のまなざしがたまらんかったっす」ムッハー

倫子「決してお前はリア充ではないがな」

鈴羽「あたし的には父さんがリア充? になってもらわないと困るんだけどね」

まゆり「ダルくんのお嫁さんかー。どんな人なんだろー」

倫子「案外まゆりだったりしてな」

まゆり「えっ? え、えぇーっ!? そうなの、スズさん?」

鈴羽「あー、これは言ってもいいのかなぁ」

ダル「な、なぬぅ!? マジで僕のリアル嫁がまゆ氏なん!?」

倫子「仮にそうだとしたらオレがダルを全力で更生させねばな」フッ

鈴羽「それ、あたしも手伝うよ。まずは痩せないとね」

ダル「い、いや、運動とか勘弁だお……」

まゆり「オカリーン……」

444: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:33:32.51 ID:13cm5L15o

倫子「今日も泊まっていくか? それとも新小岩の橋田家に……いや、それはちょっとまずいか」

鈴羽「さすがにあたしのお婆ちゃんやお爺ちゃんにまで迷惑かけられないよ」

倫子「せっかく未来人がラボに参加したのだ、マシン開発に協力してくれるとありがたいのだがな」

鈴羽「タイムパラドックスにならない程度なら手伝うよ。物資の買い出しとかさ」

ダル「うおっ、なんじゃこりゃ」

倫子「どうした? SERNのデータになにかあったか?」

ダル「ええと、今、SERNのroot権ゲットしようと色々調べてて……」

ダル「なぜかこのビルからSERNまでの直通の光回線が通ってる。1本じゃなくて、束になってるっぽい」

倫子「ほう? それってすごいのか?」

ダル「こっからフランスのSERNまで物理的に光ケーブルが直接繋がってるんだお! しかもむちゃくちゃ速い!」

倫子「……どういうことだ」

ダル「SERN以外にこんなことできる存在、無いはずだけど」

鈴羽「SERNの罠、かもね」

ダル「ってことは、SERNはとっくに僕たちの存在に気付いてる……?」

倫子「な、なんだとっ!?」ガタッ

445: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:35:00.43 ID:13cm5L15o

倫子「いや、待て待て。その回線はオレたちがテナントとして入る前から繋がっているはずだっ! ラボとは直接の関係がない……」

鈴羽「あるいは、未来のSERNが、自分たちのタイムマシンを使ってこのビルに直通回線を引いたとか」

倫子「未来だとぉ!? ラボが未来から監視されていると言うのかっ!?」ワナワナ

鈴羽「実際ここは反体制組織の母体だからね。監視対象になってなきゃおかしい」

ダル「でも、この回線はなんのためにあるん?」

鈴羽「それは……わからない」

倫子「れ、れれ、冷静に考えろ。お、落ち着くのだお前たち……っ!」ガクガク

まゆり「オカリン、大丈夫だよ。落ち着いて」ギュッ

倫子「……そうだ、冷静になれ。光回線を埋め込むことが歴史的に可能になるのは西暦何年だ?」

ダル「今ググるお……えっと、2001年がブロードバンド元年って呼ばれてる。FTTH<光ファイバー>が使えるようになるのは早くて2000年頃だお」

鈴羽「SERNがLHCでゼリーマン実験を始めたのが今から9年前だから、その頃だろうね」

倫子「ならばミスターブラウンが知っているはずだ。奴はたしか2000年6月にこのビルのオーナーになったと言っていた」

倫子「回線取り付け工事をオーナーに隠れて行うなど無理に決まっている」

鈴羽「……わかった。あたしが密偵として店長から情報を聞き出してくる」タッ

倫子「頼んだぞ、ラボメンナンバー008っ!」

446: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:36:35.94 ID:13cm5L15o

まゆり「スズさん、大丈夫かな……」

倫子「(今更ながらあのバカ正直な未来人に密偵を任せたのは失敗だった気がしてきた)」ダラダラ

紅莉栖「……阿万音さん、行った?」

倫子「なぜ開発室に隠れていたのだ、コミュ障ティーナよ」

紅莉栖「だ、だって、せっかくお父さんと会えたのに、私のせいで気分を害させたら申し訳ないと思って……」

倫子「……あいつから聞いた話だが、鈴羽は未来のお前を暗殺しようとしたそうだ」

紅莉栖「うん……橋田から電話で聞いた……」

ダル「ほとんど脅迫だった件」

倫子「だが鈴羽はお前を殺せなかった。そしてそのせいで鈴羽の仲間はたくさん殺された……と、あいつは思っている」

紅莉栖「阿万音さんの中では、私の存在が仲間の死に繋がっている、ってことよね。わかってる」

紅莉栖「でも未来の私がSERNで研究してるってところがどうしても納得できない!」

紅莉栖「それに、未来からもたらされたこの情報によって私の選択が変わる場合、世界線が変動する可能性だってある」

紅莉栖「私の意志で収束を突破する可能性よ」

倫子「もうアトラクタフィールド理論を理解しているのか、さすが天才HE  少女」

紅莉栖「なんで私が岡部の敵対組織で研究しなきゃならないのよぉぉぉ!!!!! 倫子ちゃんと離れたくないよぉぉぉ!!!!!!」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

447: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:37:55.52 ID:13cm5L15o

ダル「でもさ、この直通回線のおかげでLHCをこのPCから使えるようになったお」

倫子「SERNはここに人間をぶち込んでいたのか……。逆に人間を36バイトまで圧縮すれば通れたのにな」

ダル「そんなんできるわけないじゃん。オカリン、さすがの妄想力」

紅莉栖「……いえ、それなら、もしかしたら――」

紅莉栖「できるかもしれない」

倫子「…………」

ダル「いやいや、牧瀬氏。さすがによいしょしすぎっつーか」

紅莉栖「LHCが使える……人間一人分のデータの超圧縮……タイムトラベル……っ!!」

倫子「いい具合にマッドだな。ちょっと怖い」

まゆり「クリスちゃんはホンモノだよね……」

紅莉栖「つまりね、LHCのブラックホールをデータの圧縮に使うのよ」

紅莉栖「ブラックホールってのは、つまり素粒子の高速衝突だから、3.24TBくらいだったらDメール送信可能なレベルまで超圧縮できる」

倫子「ま、待て待て。そもそもどうやって人間をデータ化するのだ」

紅莉栖「あら? 私の論文、読んでないの?」

倫子「あ、ああ。あれな。もちろん読んだぞ! オレがお前の論文を読んでないわけないだろーハハハ」

まゆり「オカリンはね、英語が苦手なのです」

倫子「……すいません読めませんでした努力はしたんです」ウルッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「えっと、『側頭葉に蓄積された記憶に関する神経パルス信号の解析』、ってやつ?」

紅莉栖「そうそれ。つまりね――」

紅莉栖「――人間の"記憶"をデータ化して、過去へ送るのよ」

448: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:40:54.98 ID:13cm5L15o

・・・

倫子「……だいたいわかった。つまり、人間の記憶をVR技術を用いて光信号として抽出、バイナリデータ化」

倫子「一方、神経パルス信号をクリスティーナの研究チームが開発したソフトを使ってデータ化」

倫子「これら記憶データと神経パルス信号データをLHCのミニブラックホールを利用して超圧縮」

倫子「高速回線を通じて電話レンジ(仮)内に発生するカー・ブラックホールのリング特異点を通過させ――」

倫子「過去の自分に"通話"する」

倫子「過去の自分が通話に出ることで、電磁波化されたデータが脳に直接侵入し、記憶を"思い出す"……」

紅莉栖「ポイントは、送るのは"記憶"だけってこと。人格や意識についてはこれに含まれない」

ダル「えっと、ソフトだけ入れ替えてハードそのまんま、ってことでおk? ジーコサッカーを非公認ゲーム化する的な?」

紅莉栖「その例えはわからんが、あくまでも被通話者は未来の記憶を"思い出す"だけってこと」

紅莉栖「ある意味、未来予知ができるようになる、と言えるかも」

倫子「デメリットは」

紅莉栖「意識は送れないから、Dメールと同じようになるかもしれない。つまり、自分が過去へ跳ぶんじゃなくて、再構成された世界を現在時刻で認識する、ってこと」

倫子(再構成前の世界を覚えているのはリーディングシュタイナーを持つオレだけ、ということか)

紅莉栖「それから、小学生の頃の自分に現在の記憶を転送した場合、記憶と肉体のギャップのせいで精神的な障害が起きるかもしれない」

ダル「強くてニューゲーム、は限界があるってことですね」

紅莉栖「それに、通話に出る人物が同一人物じゃないと電気信号がマッチングせずに弾かれてしまうかも」

倫子「脳の電気信号には個体識別機能があるのか」

紅莉栖「どんな結果になるかはわからない。人類初の試みだもの」

倫子「人類初……ククク。甘美な響きではないかぁ」ニヤリ

ダル「あっ」

紅莉栖「あっ」

まゆり「はじまったねー」

倫子「ククク、ふぅーはははぁ!」

倫子「オレだぁ。すべての点が1本の線で繋がった。……ああ、計画はこれより最終段階に入る。無論、『現在を司る女神』作戦<オペレーション・ベルダンディ>のことだ」

倫子「案ずるな。うまくやってみせるさ。今のオレたちは無敵だ。エル・プサイ・コングルゥ!」

449: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:43:19.95 ID:13cm5L15o

・・・

倫子「(あのあと鈴羽がブラウン管工房から戻ってきたが収穫は無かった。ミスターブラウンには回線工事の記憶など無い、とのことだ)」

倫子「(その後、鈴羽は漆原家こと柳林神社で寝泊まりすることになった。ルカパパの温情、と言えば聞こえはいいが……)」ゾワワァ

倫子「それで、助手はともかくとして、まゆりは帰らないのか? 早く帰らないとおじさんが心配するぞ」

まゆり「あのねぇ、まゆしぃもクリスちゃんたちの話を理解しようとしてみたんだけど……まゆしぃには難しい話だったよ。えへへ」

倫子「まあ、そうだろうな。正直オレもすべてを理解しているとは言い難い」

まゆり「まぶしいなぁ……」

倫子「む? どういう意味だ?」

まゆり「オカリンもクリスちゃんもダルくんも、キラキラ輝いてて……」

まゆり「クリスちゃんがラボメンになってね、なんだかラボの空気がビシッと引き締まった気がするんだー」

倫子「最初のうちはオレにこびへつらうだけのHE  だったが、今では委員長キャラを全面的に売ってるからな」

紅莉栖『そんなことないからぁ!』

倫子「(開発室から助手が悲痛な声を上げているがスルーしてやろう)」

まゆり「……まゆしぃももっと頭がよかったら、オカリンの役に立てたのかな」

倫子「……役に立っているに決まっている」

まゆり「うん……ねぇ、オカリン」

倫子「なんだ」

まゆり「まゆしぃは、これからもここに居てもいいのかな……」

倫子「くだらんことを。お前はオレの人質なのだ。どこへも行かせんっ」

倫子「無論、お前に恋人ができたなら応援してやる。ただし、オレに必ず紹介しろよ?」

まゆり「……うん。ありがと、オカリン」

450: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:46:12.77 ID:13cm5L15o

倫子「……まゆりは帰ったが、お前は帰らないのか」

紅莉栖「マシン開発のため、よ。あと岡部の人質であるまゆりが羨ましい」

倫子「まゆりはノーマルだ。それにあいつはお前の才能をうらやんでいるようだが?」

紅莉栖「才能なんかあったって……ううん、過去は否定しないけど」

紅莉栖「ねえ、岡部。まったく関係ない相談、していい?」

紅莉栖「この前、言ってくれたでしょ? いつでも相談しろって」

倫子「……ようやく話す気になったか」

紅莉栖「私って、父親に嫌われてるのよね……」

倫子「この前の電話か」

紅莉栖「父は物理学者なんだけど、私は小難しい話を聞かされるのが大好きな子どもだった」

紅莉栖「父の話をなんとか理解したくて、小さい頃から物理学の本を読みまくったわ。父の論文も必死で解読した」

倫子「それを有言実行してしまえるポテンシャルが天才たる所以だろうな……」

紅莉栖「その論文について議論できるレベルにまでなったのが小学生の高学年になってから」

紅莉栖「父と物理学の話をできるのが嬉しくて、楽しくて」

紅莉栖「そしていつも私が論破して終わってた」

倫子「それは嫌われる。間違いなく嫌われる。オレだったらノイローゼになってる」

451: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 19:48:46.53 ID:13cm5L15o

紅莉栖「忘れもしない、私が11歳の誕生日の日。父はうちを出ていったわ」

紅莉栖「それがショックで一時期は登校拒否にまでなりかけて……」

倫子「(メンがヘラってきたな……)」

紅莉栖「その頃ね、留未穂ちゃんの……フェイリスの友達が海外留学を勧めてくれてね。挑戦してみよう、ってことになったの」

倫子「フェイリスの友達?」

紅莉栖「友達って言っても、フェイリスは見守ってるだけ、とかなんとか言ってたけど……」

紅莉栖「とっても可愛い女の子だったわ。長くてキレイな髪で、目鼻立ちも整ってて」

倫子「ほう。さぞかし先見の明を持った子だったのだろう」

紅莉栖「そうね。今思えば、あの子には感謝しても感謝しきれないかも」

倫子「それで、父親には会ったのか?」

紅莉栖「ううん……この前の電話でね、"会いに来るな"って怒鳴られた……」グスッ

倫子「わかった。一緒に会いに行こう」

紅莉栖「……ふぇ?」

倫子「いつがいいか……そうだな。電話レンジ(仮)の改良が終わってから、夏休みが終わる前に行こう」

紅莉栖「い、いやいや、さすがにそんな迷惑かけられないって!」

倫子「お前はオレの助手だ。助手の悩みはオレの悩みだ」

紅莉栖「映画版ジャイアニズム……」

倫子「……まあ、普段のオレが嫌なら普通の格好をしていってもいい。それなりに化粧もしてやろう」

紅莉栖「えっ……」

紅莉栖「(女の子モード全開のオシャレな倫子ちゃんに会えるぜひゃっほうぅぅっ!!」

倫子「途中から声に出てるぞ……」

453: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:11:14.82 ID:13cm5L15o
2010年8月11日水曜日
ラジオセンター


倫子「(助手のテンションが上がりまくったせいで昨日は寝不足だ……)」ウトウト

まゆり「オカリン、寝なくてだいじょうぶ?」

倫子「今はこの紅莉栖に指定されたパーツのお使いが先決だ。なに、タイムリープマシンが完成してしまえば、この眠気も吹きと……ぶ……」ウトウト

まゆり「はわわ、もう、ころんじゃうよ、オカリーン」ダキッ

ppppp

倫子「んー? 助手からメールか。追加の買い出し命令か?」


From 助手
Sub 予定
新幹線と深夜バスどっちがいい
?私としては一緒に駅弁食べる
のも、席を並べて夜を明かすの
も捨てがたくて……( *´艸`)
もちろん交通費は私が出すわ。
ただママにバレたら殺されるw


倫子「(完全に浮ついているな……)」

倫子「(『お前が夢にまで見た修学旅行みたいで楽しいのはわかるが単芝は許さん』、と)」ピッ

倫子「ああ……ダメだ、睡魔が……」フラッ

まゆり「オカリン? オ、オカリン! オカリ――――――

454: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:13:23.14 ID:13cm5L15o
ハイツホワイト202号室


倫子「……ん……ふゎぁ、まゆり? あれ、ここは、どこだ……?」

萌郁「……おは、よう。姉さん……(ほっぺぷにぷにだったなー(≧▽≦) )」

倫子「え? ぬぅわぁ!? あ、あれ!? なんで指圧師が!?」

萌郁「ここ……私の家……(連れ込んでしまった(^^♪ )」

倫子「は……? なんだか、昭和臭のするアパートだな……」

萌郁「道端で……眠ってた、から……(椎名さんと会ってビックリしたよー)」

倫子「あ、ああ。そうだったのか。まゆりは?」

萌郁「友達に……コスを渡すって……(まゆりさんって友達多いなぁ)」

倫子「そ、そうか。すまないな、厄介になって」

萌郁「いい……(姉さんの力になれた、かな)」

倫子「……む? それよりもお前。なんだか顔色が悪いぞ?」

萌郁「っ! ……寝不足」

倫子「なんだ、お前もか。ほら、布団が空いたぞ。今度は萌郁が眠るといい」

萌郁「…………」

455: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:14:47.35 ID:13cm5L15o

ピロリン♪

倫子「『タイムマシンはどうなった? 破棄した? 萌郁』……ああ、今は研究の第二段階だ」

萌郁「第二、段階……?」

倫子「記憶を過去へ跳ばす、タイムリープについて実験をしよう、というところなのだ」

萌郁「…………」ピッピッ

ピロリン♪

倫子「『危険だから絶対やめた方がいいよ! 姉さんに何かあったら私いやだな>< 萌郁』、フッ、何を心配している」

倫子「オレは狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぞ? マッドな実験こそ世界を混沌にする―――」

ピロリン♪

倫子「ぐぅ、途中でメールを送るな。えー、『お願いだから実験を中止して! 萌郁』……? お前……」

萌郁「……っ!」ガシッ

倫子「ぐっ!? い、痛いぞ、萌郁……。手を、腕から離せ……」

萌郁「約束……してくれたら……離す……」ギュゥ

倫子「……それはできない」

萌郁「どう……して……」

456: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:15:57.73 ID:13cm5L15o

倫子「信じられないだろうが、実は今、我がラボが将来的に開発することになるタイムマシンに乗って過去へ跳んできた未来人が居る」

萌郁「……?」

倫子「つまりだ。ここでどうあがこうと、オレたちはタイムマシン研究をする運命にある、ということだ。もはや神にも止めることはできない」

萌郁「……じょう、だん……?」

倫子「アトラクタフィールド理論でいう収束、という現象らしい。オレもすべて理解しているわけではないが……」

萌郁「そん……な……」ガクッ

倫子「お、おい!? あからさまに体調が良くないぞ、指圧師! とにかく寝ろ、な?」

萌郁「ねえ、さん……えふ、びー……」ガクガク

倫子「ほら、布団をかけておこう。鍵は閉めた後ポストに入れておくぞ?」

萌郁「ごめんなさい……ごめんなさい……」

倫子「……ゆっくり休め、萌郁」



バタン



457: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:19:07.80 ID:13cm5L15o
未来ガジェット研究所



倫子「…………」


PC『お姉ちゃん、恥ずかしいよぉ……』


紅莉栖「えへへぇ、いいよぉ、私にすべてをさらけ出しなさぁい……」カチカチ


PC『ひな子、変になっちゃいそう……』


紅莉栖「か、かわいすぐるっ……! たまらんすぐるっ……!」カチカチ


PC『そ、そこは……ひゃっ……あ……』


紅莉栖「ひな子たんペ  ロ! ひな子たんペ  ロ! ひなっ……」カチ…

倫子「…………」


PC『ぁ……んっ…んぁ…あっ…ぁ…あっんっ…』


紅莉栖「…………」

倫子「…………」


PC『えへへぇ、お姉ちゃん、だいす』ブチッ


紅莉栖「……どう見てもxxxxです本当にありがとうございました」

倫子「……ネラー語でごまかすあたり真性だな……というかごまかせてないぞ……」

紅莉栖「鬱だ……orz」

倫子「ダルのゲームはホテルへ持って帰っていいから。な?」

紅莉栖「う゛ぅっ……ぐすっ……ひぐっ……うぇぇっ……」

458: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:24:47.74 ID:13cm5L15o

倫子「(その後、泣き喚く助手をなんとかなだめすかしたオレは買ってきたパーツを使ってマシンの改良に取り掛かった)」

まゆり「ただいまー。オカリン、もう元気になった?」

倫子「ああ、指圧師には世話になった」

まゆり「オカリンが倒れてすぐ萌郁さんが通りかかってね。助けてもらったのです」

倫子「フブキちゃんへコスを渡せたか?」

まゆり「うん! フブキちゃん喜んでくれたよー」

まゆり「でもねー、るかちゃんの分も作らないとだから、今日はね、まゆしぃもコス作りのためにラボに泊まるのです」

紅莉栖「女子会って感じでいいわね。そういや橋田は?」

倫子「あいつは今日も鈴羽とぶらぶらデートをしてると思ったんだが、どうやら緊急でバイトが入ったらしい」

紅莉栖「へー。バイトやってたんだ」

倫子「詳しくは聞いても教えてくれないのだ。日本経済を裏で操るため、スーパーハカーとしての辣腕を振るっていることだろう、ククク」

グー

まゆり「えへへ、お腹すいちゃったのです……恥ずかしいなぁ」

倫子「もうそんな時間か。どれ、オレが買い出しに行ってこよう。2人は作業していろ」

紅莉栖「いってらっしゃーい」

459: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:29:03.58 ID:13cm5L15o
裏通り


倫子「おでん缶と、カップ麺。あとプラスチックフォーク、で良かったよな……」

ppppp

倫子「ん? 追加注文か?」ピッ


From patghqwskm@ninesixpbb.ne.jp
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お前は知りすぎた。
▼添付画像アリ


倫子「また萌郁か……? って、な、なんだ、この画像……!?」ゾワワァ

倫子「なま……くび……う、うおぇぇっ!!」ビチャビチャ

倫子「はぁ……はぁ……、いったい、どういう……っ!」


  ・・・

  萌郁『SERNは「ラウンダー」っていう名前の非公式で私設の特殊部隊を持っててね』

  鈴羽『SERNの罠、かもね』

  萌郁『お願いだから実験を中止して!』

  ・・・


倫子「そんな……ウソ、だろ……!? 萌郁のケータイが、乗っ取られた……!?」ワナワナ

倫子「警察……いや、公表できない話が多すぎる。それに警察なんかが解決できるレベルの問題じゃない……」ガクガク

倫子「お、落ち着け……冷静になれ、鳳凰院凶真。きっと何かの間違いだ、大丈夫だって」プルプル

倫子「……今、ラボは、女子2人きり、だ」ゾワワァ

倫子「――まゆりっ!! 紅莉栖っ!!」ダッ

460: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:31:01.23 ID:13cm5L15o
未来ガジェット研究所


ガチャ バタン!!

倫子「はぁっ……はぁっ……。よ、よかった、ラボは無事だ、誰も居ない……」

シャー……

倫子「だ、誰も居ない……? まゆりは? 紅莉栖は?」

シャー……

倫子「2人はどこへ……この音は、シャワー音?」

シャー……

倫子「(その時、オレの脳裏にはヒッチコックの映画、サイコのワンシーンが浮かんでいた)」ガクガク

シャー……

倫子「(排水溝へ流れる鮮血……見開かれた瞳……)」ダッ



倫子「――おい! 大丈夫か!」ガチャ



紅莉栖「きゃぁ! って、なんだ岡部か」シャー

まゆり「どうしたの、オカリン?」シャー

倫子「あ、いや、なんでもない。オレの思い過ごしだった……ハッ!?」

461: ◆/CNkusgt9A 2015/12/01(火) 21:32:48.80 ID:13cm5L15o

倫子「き、き、き、貴様ぁっ!? さっきの今で、まゆりと一緒にシャワーだとぉ!?」

紅莉栖「ギクッ」

倫子「大丈夫か、まゆりっ! 何も変なことされてないかっ!?」ペタペタ

まゆり「えっ? だいじょうぶだよ?」

倫子「そうか、なら良かった……」ホッ

倫子「おいHE  少女。どういうことか説明しろ」ギロッ

紅莉栖「い、いや、これは私からじゃなく、まゆりからの提案であってだな……」

まゆり「時間短縮で作業効率アップなのです♪」

倫子「ほう……では貴様は、そのまゆりの豊満なバストとヒップに欲 など一切してない、と言い張るのだな?」

紅莉栖「あ、当たり前でしょ! まゆりは友だちよ!?」

紅莉栖「触りたいなーとか、揉みたいなーとか、顔をうずめたいなーとか、ペ  ロしたいなーとか、これっぽっちも思ってなんかないんだからな!」

倫子「ダウト」

まゆり「……すぐお洋服着るね。まゆしぃは悲しいのです」

紅莉栖「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」ビチャビチャ

倫子「(オレの妄想通り、排水溝へと鮮血が流れることになろうとは思いも寄らなかった……)」

467: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:25:26.16 ID:MMXxl+Feo
2010年8月13日金曜日
未来ガジェット研究所


それからほぼ丸2日間。
紅莉栖とまゆりは、ラボにこもりっきりだった。

例の脅迫めいたメールについて、ダルと鈴羽に相談しておいた。
が、SERNにはどうやらバレてないとのこと。

萌郁に聞いてもわからないの一点張りだった。
おそらく萌郁を装ってオレにメールした人物がいるのだろう。

誰が。一体。なんのために。

あの2通のメールはなんだか気味が悪くなったので削除してしまった。

ラジ館のタイムマシンを観察することは紅莉栖と鈴羽に止められた。
タイムパラドックスが発生する可能性がある、とのことだ。

それに、仮にSERNがオレをマークしているとすれば、オレがあそこへ向かうのは危険すぎる。

結局、リフターの代わりとなっている"なにか"については、自力で調べなければならない、ということだ。

468: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:26:43.85 ID:MMXxl+Feo

倫子「なあ助手。お前がHE  になったのはいつからだ?」

倫子「(さしものこいつでも生まれてから、ということは無いだろう)」

紅莉栖「HE  じゃないと何度言えば……と反論したいところだけど、今となっては論破できそうにない」シュン

倫子「親父が家に居た頃はお父さんっ子だったのだろう? その後のショックで……とかか?」

紅莉栖「前に話したわよね? フェイリスの友達のこと」

倫子「あ、ああ」

紅莉栖「なんていうか、本当にあの子、絵に描いたような美少女だったのよ」

紅莉栖「衝撃だった。こんな可愛い子が現実世界に居るんだ、って驚いたわ」

紅莉栖「その子に自分の身の上話を打ち明けて、私はドキドキしてた。夢のようだった」

紅莉栖「それをフェイリスがね、きっと紅莉栖ちゃんはその子に恋しちゃったんだよ、って言ってくれて……」

倫子「……女の子に目覚めた、か」

紅莉栖「……アメリカに行っても友達なんてできなかったから、寂しい時は彼女を思い出してた」

ダル「そして自分を慰めていたわけですねわかります」

紅莉栖「まあ、その子ももう立派な女性になってるんでしょうけど。向こうも私のことなんか覚えているわけないし」

まゆり「なんだかさみしいね……」

倫子「その少女のせいで助手はHE  になってしまったのか。罪作りな少女だな」

469: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:28:19.14 ID:MMXxl+Feo

紅莉栖「それで、最終調整のために電話レンジカッコカリを動かしたいんだけど」

倫子「……つまり、敵地に乗り込み死ね、というのだな」

ダル「やっぱ店長のご機嫌取れるのはオカリンしか居ないお」

まゆり「オカリン、死んじゃやだよー?」

倫子「この鳳凰院凶真、不死鳥の如く蘇ってみせようっ!」ダッ



ブラウン管工房



鈴羽「おーっす、鳳凰院凶真」

綯「凶真おねえちゃん! いらっしゃーい!」ドスッ

倫子「ふごっ!? タ、タックルはやめろ……」

天王寺「おう、岡部か。たまには俺も上の連中と混ぜろよ、若い女と話してみてえ」

綯「お父さん……」(※真顔)

天王寺「ち、違うぞ綯! 顧客獲得のためにだなぁ!」アセッ

倫子「(シスターブラウンの真顔は無表情すぎて怖いんだよな……)」

470: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:29:32.50 ID:MMXxl+Feo

TV『髪切った?』

倫子「それで、バイト戦士。首尾はどうだ?」

鈴羽「え? ああ、うん。父さんには色々案内してもらった。さすがに今日はバイトするよ」

天王寺「おお、そういや見つかったらしいじゃねえか。岡部もたまにはやるな」

倫子「ふん。この鳳凰院凶真にかかれば、失せ人の1人や2人発見するなど朝飯前ですよ」

綯「凶真おねえちゃん、すっごーい!」キラキラ

倫子「いや、まあ、あはは……」


グラグラグラッ……


綯「きゃっ!」ダキッ

倫子「あ、あいつら! 勝手に実験を……っ!」

天王寺「おいコラ! 揺らすなって何度言ったら分かんだ? 若い娘だろうが俺は容赦しねえぞ!」

倫子「ヒィッ! ぼ、暴力反対ですよ! それにこれは、人類史を塗り替える偉大な実験であって――」

TV『一旦CMでーす』

鈴羽「もう! テレビ消すよ!」ピッ

ブツンッ!


シーン……


471: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:30:45.05 ID:MMXxl+Feo

綯「……はぅ」

天王寺「……な、なんだ?」

鈴羽「あ、あれ? 揺れが止まった?」

倫子「そ、そんなバカな! リモコンを貸せ!」ピッ

TV『明日来てくれるかな? いいとも~』


グラグラグラッ……


倫子「これは……ク、ククク、ふぅーはははぁ!」

鈴羽「どしたの?」

倫子「見つけたっ! ついに見つけたぞぉ! これぞ間違いなくリフターの代替物だっ!」ピョンピョン

綯「わ、わーい!」ピョンピョン

天王寺「お、おい! ただでさえ揺れてるのに暴れるな! あぁー!? 俺のブラウン管ちゃんがぁ!?」ガチャーン

472: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:34:27.68 ID:MMXxl+Feo
未来ガジェット研究所


倫子「クリスティーナ。オレは今ここで予言しよう。3分後、お前はこのオレの偉大さに気付き尊敬の念を抱くとなぁ!」キラキラ

紅莉栖「鳳凰院様は天才であられます……だから"あのこと"は秘密にしといてぇ!」ヒシッ

倫子「ええい、いちいち抱きつくなっ!」

ダル「んお? あのことって? あ、そう言えば僕の  ゲが1つ見当たらないんだけどオカリ――」

倫子「女の秘密だ、貴様は口を挟むな」ギロッ

ダル「え、なんで僕怒られてるん」

倫子「それと助手よ、勘違いするな。そんなことではなく――」

倫子「42型ブラウン管テレビが、リフターの代わりとしての役割を果たしているっ!!」ドヤァ

ダル「マジで?」

倫子「どうだぁ。驚いて声も出ないかぁ?」ドヤァ

紅莉栖「……ちょっと待って、今計算する……」クルッ

倫子「あ、おい……」

紅莉栖「高電界から出る電子ビームの運動量……リング特異点へ与える影響……」カキカキ

倫子「…………」グスッ

まゆり「だいじょうぶだよ、オカリン。クリスちゃんはオカリンのこと大好きだよ?」ナデナデ

473: ◆/CNkusgt9A 2015/12/03(木) 03:36:07.14 ID:MMXxl+Feo

紅莉栖「岡部の言う通りだったわ! 岡部すごい! 尊敬する!」アセッ

倫子「いいもん……別に。あんたはずっと計算式でもいじってればいいじゃない……」イジイジ

ダル「(女言葉に戻ってる……そんなにショックだったのかお)」

紅莉栖「でもホントに奇跡的な偶然ね。42型を設置してくれた店長さんに感謝しないと」

倫子「偶然だとぉ? ククク、違うな、間違っているぞクリスティーナ!」

倫子「すべては運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だっ!」

紅莉栖「……そ、そうねっ! その、シュタインズゲートすごいっ!」

倫子「そうであろう、そうであろう?」ニヤニヤ

ダル「牧瀬氏、もういっそのこと常識をかなぐり捨ててオカリン儲になっちゃえばいいのに」

まゆり「クリスちゃんは科学者さんだもんねー」

紅莉栖「"岡部のおかげ"でタイムリープマシンは99%完成したと言ってもいいわ」

倫子「いよいよだな……」ゴクリ

紅莉栖「このラボの、夢だものね。タイムマシンは」

倫子「夢、か」

倫子「そうだ。そのためにオレたちはこれまで努力を重ね、そしてこれからも挑み続けるのだ」

まゆり「よかったねー、オカリン♪」

倫子「オレはっ! 世界の支配構造を混沌に陥れっ! 時空の支配者となるのだっ! ふぅーはははぁ!」

ダル「オカリンが楽しそうでなによりです」

紅莉栖「激同」フフッ

478: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:49:05.65 ID:B1gYbIKuo

・・・

まゆり「できたー♪」

倫子「ルカ子コス、完成したのか?」

まゆり「うん。クリスちゃんより先にできたよー。競争してたんだー」

紅莉栖「負けたわ。でも、こっちももう終わりよ」

ダル「はい、完成」b

倫子「……そうか。ご苦労」

紅莉栖「…………」

ダル「…………」

まゆり「み、みんな、どうしたのー?」

紅莉栖「私たち、ひょっとすると、とんでもないもの作っちゃったかもしれない……」

倫子「ど、どうする?」

ダル「どうするって、何が」

倫子「タイムリープマシンの扱いについて、だ」

紅莉栖「…………」

倫子「実験大好きっ娘のお前は実験したくてたまらないだろう」

紅莉栖「岡部は? 鳳凰院ちゃんじゃなくて、倫子ちゃんの意見が聞きたい」

倫子「だからちゃん付けするなと……。オレも実験してみたくはある、が……」

倫子「……だれがタイムリープするんだ?」

479: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:50:03.13 ID:B1gYbIKuo

倫子「もし仮にオレが1時間前へタイムリープしたとして――」

倫子「フラクタル化によりスカスカになった記憶データがオレの脳にぶち込まれるかもしれない」

倫子「それは一種の記憶喪失と同じ状態になるのではないか……」ガクガク

紅莉栖「わ、私が跳ぶわっ! 倫子ちゃんに怖い思いをさせたくないっ!」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

ダル「なんの解決にもなってなくね?」

紅莉栖「結局のところ、実験しないとどうなるかなんてわかんないのよ」

紅莉栖「最終的には、"意識はどこにある"という問題に行きつく」

ダル「うは。それって、魂とか宗教の分野じゃん」

紅莉栖「だ、だから、岡部が実験したいなら、わ、私の脳を使って……。元々私が言い出したマシンだし……」プルプル

倫子「…………」

倫子「実験は、中止だ」

倫子「タイムリープマシンは、しかるべき研究機関に託そう。そして、世間に公表する」

ダル「ほっ」

紅莉栖「岡部……」ジュン

まゆり「ねえ、それならみんなで完成パーティーをしようよー!」

倫子「そうだな。内輪で宴会をやる分にはいいだろう。いざ、開発評議会っ!」

ダル「僕もうお腹ペコペコだお~」

紅莉栖「いいわね、それ。今まで根詰めっぱなしだったし、パーッと行きたいわ」

480: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:51:22.65 ID:B1gYbIKuo
ブラウン管工房


倫子『実験は中止だ』

倫子『タイムリープマシンは、しかるべき研究機関に託そう。そして、世間に公表する』


天王寺「……なんだってまあ、指令書通りに物事が運んじまうんだろうな」

天王寺「運命なんてもんは信じたくねえけどよ」ポチポチ


To M4
Sub 元気にしてた?
今日の夜、実行部隊に未来
ガジェット研究所を襲撃さ
せるわ。
すでに実行部隊は秋葉原に
入っているわ。作戦開始ま
でに昌平橋ガード下の公衆
トイレ前で合流してちょう
だい。


天王寺「綯……、綴……、鈴さん……」

天王寺「仕方ねえよなあ。仕方ねえんだよ」

天王寺「これ以上、失うわけにはいかねえよなぁ……」

481: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:53:00.82 ID:B1gYbIKuo
未来ガジェット研究所


prrrr prrrr

紅莉栖「あ、ごめん。私だわ。ちょっと電話出てくる。ママかな?」タッ

倫子「ここで出ても構わんのだが……。ちゃんと開発室のカーテンを閉めるところがいかにも助手らしい」

ダル「じゃ、僕はピザの予約しとくお」

まゆり「まゆしぃはるかちゃんとフェリスちゃんを呼びに行ってくるねー」

倫子「ついでにバイト戦士も頼む。指圧師にはオレからメールしておこう」

紅莉栖「…………」

倫子「早かったな助手。それじゃ、オレたちは買い出しにでも……クリスティーナ? どうした?」

紅莉栖「……ほかべぇ!!」ダキッ

倫子「ふおっ!?」

ダル「百合展開キタコレ!」

倫子「ちょ、どうした突然……って、お前、泣いているの、か?」

紅莉栖「……グスッ」

倫子「(よほどのことを母親に言われたのか? これは青森に行ってからも一波乱ありそうだな……)」

まゆり「クリスちゃん、大丈夫?」ナデナデ

紅莉栖「まゆり……まゆり……っ」ウルウル

倫子「ほら、いつまでもめそめそしているでないぞっ! ラボメンとしての本分を忘れるなっ!」

482: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:54:16.71 ID:B1gYbIKuo

倫子「で、だ。メンバーも全員集合したところで、また晩餐を作ろうと思うわけだが」

ダル「いやー、ホント僕って勝ち組だよな。マジリア充の最先端っつーか?」

倫子「貴様は二酸化炭素だけ吸引して酸素でも吐いていろ」

るか「そ、それは難しいですね……」

紅莉栖「ごめん。私、外の空気吸ってくる」

鈴羽「その方がいいよ。牧瀬紅莉栖の料理って激マズだから」

紅莉栖「う、うん……」

鈴羽「……調子狂うなぁ」ポリポリ

倫子「まあ、助手はカレーにパインをぶち込むような典型的メシマズ女子だからな。英断と言える」

鈴羽「調理器具の準備終わったよ。お、桐生萌郁も手が空いてるなら手伝ってくんない?」

萌郁「カレー……作るの?」

フェイリス「ニャハハ。みんなでパーティーするのにカレーはもってこいニャ!」

ダル「フェイリスたんがキッチンに!? みwなwぎwっwてwきwたw」

フェイリス「ダルニャンはちょっとダイエットした方がいいから、フェイリスの手料理はおあずけニャーン♪」

ダル「鈴羽ごめんなぁ。もしかしたら父さん、フェイリスたんと結婚できないかも……」

鈴羽「あたしの母さんはフェイリスじゃないから安心して」

ダル「ぐふぅ!!」

萌郁「……(やっぱりみんなと居ると楽しいな(≧▽≦) )」

萌郁「……私、牧瀬さん探してくる」

倫子「ん? ああ、頼んだぞ。ラボメンナンバー005」

483: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:55:38.01 ID:B1gYbIKuo
大檜山ビル前のベンチ


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


To FB
Sub
彼らにはSERNに反抗出
来る戦力はない。
殺してしまう必要はないと
おもう_


萌郁「……(こんなメール、送れない)」


To FB
Sub
了解


prrrr prrrr


萌郁「……!!」


To M4
Sub 確認しておくわ
万が一にもないって信じて
るけど、裏切ろうなんて思
ってないでしょうね?
ラボの人たちだって、いつ
かあなたを見捨てるかもし
れないわよ?
昔の自分には戻りたくない
でしょう?
私はすぐ側であなたを見て
いるわ。


萌郁「(私……どうすれば……)」

カランコロンカラーン

紅莉栖「はい、店長さん。それでよろしくお願いします。それじゃ」

萌郁「っ!?」

紅莉栖「あら、萌郁さん……顔色悪いわね……」

萌郁「な、なんでも……っ、ない……」

紅莉栖「あいつなら、なんて言うかな……」

萌郁「……?」

紅莉栖「もしも、桐生さんがつらい目に遭ってるなら、私たちラボメンは必ず力になる」

萌郁「…………」

紅莉栖「たとえ今の世界線では相談できなくても……ううん、早くラボに戻りましょう?」

484: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 21:56:59.54 ID:B1gYbIKuo
未来ガジェット研究所


まゆり「ねぇねぇるかちゃん。まゆしぃが作ったコス、試着してみない?」

るか「え、ええっ!? まゆりちゃん、それ、作っちゃったの? は、恥ずかしいよ……」

倫子「まだルカ子に約束を取り付けていなかったのか。まゆりめ、意外と策士だな」

まゆり「"かわいいは正義"なのに。オカリンもクリスちゃんもかわいいよぉ~♪」

紅莉栖「え……。あ、うん……」

倫子「クリスティーナよ。放心していては"機関"につけ入れられるぞっ!」

紅莉栖「うん……そうなのよね、わかってる……」

ダル「ついに牧瀬氏がオカリンの厨二に同調してきた件」

フェイリス「ニャニャ!? ついにクーニャンもこちら側の勢力に……!」

倫子「嬉しいようで嬉しくないな、これ……」

鈴羽「牧瀬紅莉栖、大丈夫? 調子悪いの?」

紅莉栖「う、ううん。別に大丈夫よ、気にしないで」

鈴羽「そう……?」

倫子「(この2人、というか鈴羽の助手に対する意識は改められたようだな。ダルのおかげか)」

485: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:00:14.09 ID:B1gYbIKuo

TV『"爆破テロ予告で山手線、総武線、京浜東北線の前線が運転見合わせ"』

鈴羽「テロ?」

ダル「うお、全部アキバ通ってんじゃん。まゆ氏帰れないんじゃね?」

まゆり「本当だー。お家に電話しなくちゃー」

フェイリス「秋葉原でテロなんて、このアキバの守護天使であるフェイリスが天地神明に誓って許さないのニャ!」

萌郁「…………」プルプル

るか「桐生さん? そ、そうですよね。怖いですよね。ボクも怖いです」

鈴羽「……鳳凰院凶真。1つ聞かせて。タイムリープマシンは完成してるんだよね?」

倫子「あ、ああ。そのための開発評議会だ」

鈴羽「あたし、用事思い出したからちょっと出かけてくる」タッ

紅莉栖「スズちゃん……」

ダル「ちょ、我が愛しのラブリーマイドーターをちゃん付けしていいのは僕だけだお」

倫子「打ち解けたと思ったらすぐこれだ。助手の魔の手から娘を守ってやれ、パパ」

ダル「うおっ、オカリンのパパ呼びも捨てがたい……ハァハァ」

倫子「鈴羽の母親になるつもりは、ないっ!」



バァン!!



??「動くな!」

486: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:02:53.81 ID:B1gYbIKuo

オレは完全に油断し切っていた。

その警告はいくらでもあったはずなのに。

こうして仲間たちと和気藹々とする中に、あろうことか"鳳凰院凶真"を置き忘れてしまっていた――


ダル「えっ、ちょ……!?」

るか「銃!?」

倫子「(あれはAK-47、アーカーヨンナナ。カラシニコフと呼ばれる旧ソ連のアサルトライフルだ。モデルガンのような軽さは感じられない)」

倫子「(オレはミリオタではないが、中二の時、自衛手段をネットで色々調べていた延長で知っている)」

倫子「(この時のオレには、目の前の光景がどこか現実離れした、映画のワンシーンのように感じられた)」

ラウンダーA「手を挙げて全員一列に並べ」

ラウンダーB「早くしろ!」

ラウンダーC「タイムマシンはどこだ。渡せば危害は加えない」

倫子「やめて……やめてよ……」

倫子「私から、奪わないで……」

ダル「オ、オカリン、取りあえず手を挙げて!」

萌郁「……っ!」

紅莉栖「…………」スタスタ

ダル「ちょ、牧瀬氏!? どこ行くん!?」

ラウンダーC「う、動くんじゃねえ!!」

ラウンダーA「待て。この人が指令書にあった……」

ラウンダーB「なんだと? ってことは、あんた、FBなのか?」

萌郁「えっ―――」

487: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:07:46.55 ID:B1gYbIKuo

紅莉栖「300人委員会序列持ち、ZプログラムのSERN主任研究員……、牧瀬紅莉栖32歳」

紅莉栖「計画通り、私の意識は2034年からタイムリープしてきた」

紅莉栖「この時代の人格としてはFBでいいわ。2010年のラウンダーのみなさん、改めましてよろしくね」

倫子「(外人部隊と握手を交わす紅莉栖。え、なんだ? 今、なんて言った――)」

萌郁「えふ……びー……っ!!」ダキッ

紅莉栖「スパイご苦労様。あなたにはつらい思いをさせてしまったわね」ナデナデ

倫子「(スパイ? いや、それより300人委員会って……)」

萌郁「FBっ!! 牧瀬さんが、FBっ!! 私を、見ててくれたぁ……」ウルウル

紅莉栖「(――――――)」ヒソヒソ

萌郁「……? わかり、ました……」

紅莉栖「さて、今から32秒後にテロリスト阿万音鈴羽が玄関から現れる。あんたたち、彼女を生け捕りにしなさい」

紅莉栖「側頭葉を解剖した上でラジ館のタイムマシンに乗せて1975年へ跳んでもらうわ」

ラウンダーA「了解、FB!」

倫子「(だめだ……まったく理解が追い付かない……こいつらは、一体何をやっているんだ?)」

488: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:12:39.01 ID:B1gYbIKuo

カラカラカラ……

ラウンダーB「なんだ!? スモークか!?」

ラウンダーC「いや、違う……ケータイ?」

倫子「(あれは……鈴羽のケータイか? なんで部屋に投げ込まれ――)」

ガチャ!

鈴羽「ハッ!」

ラウンダーA「ぐあっ!」

鈴羽「借りるよっ!」パララッ! パララッ!

ラウンダーB「ぐふっ!?」バタッ

ラウンダーC「うおあっ!」バタッ

萌郁「動かないで、テロリスト」ジャキッ

ダル「桐生氏まで!?」

鈴羽「桐生萌郁っ!? どうして――ぐっ!」バタッ

ラウンダーA「クソガキが、舐めた真似しやがって!」

フェイリス「ス、スズニャンが爆破テロのテロリスト!?」

ダル「そんな……、なにかの間違いだお!」

萌郁「私は……M4。SERNの、ラウンダー」

倫子「SERN……!? ラウンダー、だと!? 助手、どういうことだ説明しろっ!」

紅莉栖「口で説明するよりも、実際に見せた方が早いかもね」


      『牧瀬紅莉栖には気を付けて』


倫子「お、お前、何を言って――」

紅莉栖「今から3分54秒後……、椎名まゆりは絶命する」

489: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:16:07.35 ID:B1gYbIKuo

ラウンダーB「これがSERNの力か……間近で見るのは初めてだ」

ラウンダーC「えげつねえことしやがる……」

ラウンダーA「俺は2回目だ。あれはたしか9年前……現場には居られなかったが、身籠った女がゼリーマンとして処分されたと聞く」

紅莉栖「漆原るか、秋葉留未穂。今すぐここから退室しなさい。まゆりが死ぬわよ」

るか「そんなぁっ!! まゆりちゃんっ!!」

フェイリス「……ルカニャン、今は言う事を聞くニャ」

フェイリス「紅莉栖ちゃん……私は、貴女を信じてるよ……」

紅莉栖「…………」

倫子「ちょ、ちょっと待て! 状況を整理させろ! ええと、どこから話をすれば……っ!」

まゆり「まゆしぃが、ぜつめい? ぜつめいって……絶体絶命の絶命?」

紅莉栖「死因はおそらく心臓発作。まゆりが死ぬ根本的な原因は、阿万音鈴羽。あんたのせいよ」

鈴羽「牧瀬……、マキセ、クリスゥゥゥゥアアアアアアッ!!!!!!!」

紅莉栖「そいつは殺せないから撃っていいわ」

ラウンダーA「大人しくしろ!」バァン!

鈴羽「ギャァッ!!!」

ダル「や、やめろ、やめてくれぇ!!」

紅莉栖「阿万音鈴羽の乗ったタイムマシンが2010年7月、そして1975年6月に現れることでこの世界線は因果が円環状に閉じてる」

倫子「なんの……話だ……」

紅莉栖「世界を救うために作ったタイムマシンが、ディストピアの大黒柱になってるんだから、笑っちゃうわね」

紅莉栖「あんたのおかげよ、橋田至」

鈴羽「父さんを……父さんをバカにするなぁっ!!! ぐっ!!!」

ダル「鈴羽ぁっ! 大声出しちゃだめだぁっ!」

紅莉栖「まゆり、そろそろ息が苦しくなってくるんじゃない?」

まゆり「え――――カハッ」

倫子「ま、まゆりっ!?」ダキッ

490: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:17:22.13 ID:B1gYbIKuo

倫子「嘘よ……こんな、こんなバカなことが……っ!!」

まゆり「オカ……リン……」

倫子「なんでよ……なにがどうなってんのよ、誰か説明してよぉ!!!」

倫子「冗談でしょ、全部演技なんでしょ!? ねえ!?」

紅莉栖「世界は欺瞞で満ち溢れてる。常に警戒を怠ってはいけない。誰の言葉だったかしらね」

倫子「……コノヤロウッ!!」ギロッ

まゆり「……いやだよ……死にたくないよ……」

倫子「まゆりっ!! そんな、ダメだ、逝くな!! おいっ!!!!!」

紅莉栖「橋田至を連行して。こいつも今は死なないから何してもいいわよ」

ラウンダーA「了解、FB!」バァン!

ダル「ぐはぁっ!」バタッ

鈴羽「父さんっ!!!」

紅莉栖「最後に岡部倫子……。お前は今から人体実験させてもらうわ。そこのマシンでね」

倫子「まゆりっ!! まゆりぃぃっぃっ!!!」

紅莉栖「あんたたち、後は私に任せて、とっとと仕事しなさい」

ラウンダーC「……マッドサイエンティストめ」

ラウンダーB「黙ってこのデブを運べ」

491: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:19:52.26 ID:B1gYbIKuo

倫子「まゆりっ!! まゆ、ゴホッ、ま゛ゆ゛り゛ぃぃぃぃっ!!!!!」ポロポロ

まゆり「…………」

倫子「そ、そうだ、きゅうきゅうしゃ! いますぐきゅうきゅうしゃをよべ、じょしゅ!」

紅莉栖「椎名まゆりは予定通り死亡。ねえ、鳳凰院凶真。こんなの否定したい?」

倫子「き、きさま、なにをいってるんだ、さっきから、おい……」プルプル

紅莉栖「ちょっと刺激が強すぎたかしら。簡単な話よ。これは夢なの」

倫子「ゆ、ゆめ……?」ガクガク

紅莉栖「そう。だから、あんたは夢から目が覚めれば元の世界に戻っている」

紅莉栖「今頃本当はラボメンみんなで楽しくパーティーをしている頃合いでしょう?」

倫子「そ、そうだ、かいはつひょうぎかいを……はは、そうだよ、おいしそうなカレーだって、そこに……」フラフラ

倫子「血の……臭い……」ゾワワァ

紅莉栖「ほら、愛しの倫子ちゃん。こっちにおいで」ヨイショ

倫子「じょしゅ……たす、けて……」ヨロヨロ

紅莉栖「はい、ヘッドギアかぶって。そうそう、良い子ね。ケータイ借りるわよ」

紅莉栖「……(本物のFBはスズちゃんが殺した。どこかに盗聴器。42型点灯済み。マシンは完璧)」ヒソヒソ

倫子「え――――」

紅莉栖「さようなら、岡部倫子」

紅莉栖「……ごめんね」ピッ



バチバチバチバチッ!!

492: ◆/CNkusgt9A 2015/12/04(金) 22:26:37.94 ID:B1gYbIKuo



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2010年8月13日19時56分 → 2010年8月13日16時56分

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