1: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 21:36:13.363 ID:A0VbuDK+0
とある前線基地


執務室。


大和「………………………………」ドキドキ…


…………

大和「…………うん」すっ

こんこん…

 

3: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 21:44:04.335 ID:A0VbuDK+0
?「はい」


大和「やっ大和です。あの中におられるのは提督ですか?」


提督「ん?大和か?ああ、そうだ俺だよ」


大和「そうですか…あの提督……」

提督「ん?どうした?」



大和「その…そちらに失礼させて頂いてもよろしいでしょうか?」


提督「ああ。いいぞ。入ってこい」


大和「有難う御座います。失礼します」

がちゃ…

 

 

5: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 21:57:12.710 ID:A0VbuDK+0
提督「どうした大和?こんな時間に」

大和「いえ…入渠から上がってお休みしようとして、執務室(ここ)の前を通っていた時に、たまたまここの扉の隙間からあかりが漏れているのが見えて、それで……」

提督「そうか…」ふむ


提督(ん?たしか…コイツの寝室は入渠ドッグからここを通ると、遠回りになるんだが……)

提督「まぁいいか……」

大和「え?どうかなされました?」

提督「い、いや何でもねえ」

大和「それならいいのですが……」
 
 
 

8: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 22:11:20.086 ID:A0VbuDK+0
大和「それで提督……提督はまだお休みになられてなかったのですか?」

提督「見ればわかるだろ?」

大和「そっそうですね!はは…私ったら何を言ってるんでしょうね?/////」

提督「そんな事は知らんよ。でもまぁいいだろ。それで何か俺に聞きたい事でもあるのか?」

大和「あっ…いえ……提督、このところ夜はずっとここで執務をされている様で……」

提督「ああ。ここは比較的規模の小さい前線基地なのはお前も知っていると思うが、その割に重要な資材や情報を結構管理していてな……」

大和「…………」

提督「その事務処理がまた結構な量でな。それで曲がりなりにもこの基地の責任者である俺が、こんな時間までその管理事務をしてるって訳だ」

大和「そうですか。それは本当にご苦労様です」

提督「まったくだよ。正直、俺はこんな事務作業は好きじゃねぇしな」はぁ

大和「……でもそれでしたら…旗…秘書艦である私や、提督付き執務艦である鳥海をお使いになられないのですか?あっそう言えば鳥海は?」

 

9: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 22:23:30.854 ID:A0VbuDK+0
提督「いや…さあな。今頃もう寝てるんじゃないのか?」

大和「えっ?提督がこんな時間まで、ご執務をなさっているのに……まったくあの娘は……」

提督「いや、鳥海にはここのところ、ずっと俺の執務を手伝ってもらっててな……流石にたまには休ませてやらんといかんしな」

大和「そうでしたか……では今日は、鳥海はお休みを頂いて、それで提督は御一人でご執務をされて、いつもより大変なんですね?」にま

提督「まぁそう言うこったな。他の提督たちも自分の仕事で手一杯みてぇみたいだしな……」

大和「……………」にまにま


提督(しかし…何でそんな事言いながら、どことなく嬉しそうな表情(かお)してんだ?コイツは)


大和(…………よしっ)


大和「そうだ!」
ぽん


 

10: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 22:30:09.784 ID:A0VbuDK+0
提督「?」

大和「そういう事でしたら、僭越ながら今日は鳥海に代わって私、大和が提督のお手伝いをさせて頂きます。宜しいですか?」

提督「いや…お前も、もう寝る時間だろ?それにここの艦隊での最高の戦力であるお前にこんな事を―――――」

ずいっ
大和「私だって提督の秘書艦です。それにこの程度で、私がどうにかなると…その程度の艦娘だと思われているのですか?」

提督「お…おう。そうだな……ああ分かったよ、じゃあ頼む手伝ってくれねぇか?大和」


大和「はい。了解しました提督!宜しくお願いします!!」にこっ


 

12: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 22:39:45.080 ID:A0VbuDK+0
―――――――


大和「ふー。これで今日の分はお終いですか?」

提督「ああ。これで終いだ。助かったよ大和。お蔭で随分と仕事が捗った。だが、すまんなこんな時間まで」

大和「いいえ。これも秘書艦である私のお仕事ですから、当然の事です。ですから、これからはいつでも気兼ねなく私にお申し付けくださいね」

提督「そうか…それは頼もしいな。それじゃあ、また頼ませてもらうかな」

大和「はい!」

提督「…………」ふむ…

大和「?」


提督「――――――そうだ大和。これから寝る前に一杯やろうと思うんだが、お前も付き合わねぇか?」

 

14: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 22:50:13.159 ID:A0VbuDK+0
大和「えっ!?」

すっ
提督「これなんだけどな、本部からちょっといい酒が送られてきてな……いや、もう寝たかったら別に無理に付き合わんでもいいn――――」

大和「いいえ!!ぜひご一緒にお付き合いさせて下さい!!!!」ずいっ!!

提督「お…おう」

提督(いつになく凄い剣幕だな……)


大和「ちょっと待ってて下さいね!」


 

16: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 23:02:02.770 ID:A0VbuDK+0
ゴト…

提督「!?」

大和「こんな事もあろうかと作っていた大和煮です」

提督「そ…そうか。しかしかなり量だなこりゃ……」

大和「いいじゃないですか?ささ、どうぞ召し上がって下さい」

提督「そうだな…じゃあ、さっそく頂くとするかな……」すっ

大和「はい」すっ

大和「どうぞ」

提督「おお済まんな」
ぱく

提督「……ん。旨い。相変らず料理上手だな大和」

大和「いえ!そんな事は……でも喜んで下さって嬉しいです」はにかみ

大和「お酒ももう一献いかがですか?」すっ

提督「おっ。すまんな」すっ
とくとく
くいっ


 

18: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 23:14:18.595 ID:A0VbuDK+0
提督「ふー料理も酒も旨くて最高だな」ははは

大和「ふふ…そうですね」

提督「でも、大和の作った大和煮か……こりゃまるでお前を喰ってるみてぇだな」

大和「えっ!?」どきっ

提督「あっスマン、おかしな事言っちまったな……はは、もう酔いが廻っちまったかな?まったく齢は取りたくねぇもんだ」

大和「……………………」

提督「ん?どうした大和?黙りこくったりなんかして」

大和「あ…いえ……」


大和「…………料理だけじゃなくて、いつでも私自身も食べて下さってもいいのに……」ぼそ…


提督「ん?何か言ったか大和?」

大和「いっいえ!何でもありません!!!!//////////」ぶんぶん

提督「そうか……ならいいんだが。おっそうだ俺の世話ばっかしてねえで、お前も飲め」すっ

大和「あっありがとう御座います……///////」

 

20: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 23:24:46.340 ID:A0VbuDK+0
――――――。


提督「――――だから、この基地の規模や戦力に比べて、所有する情報や資材が重要過ぎるんだよ。幾らお前がいるとはいえ、こんなの敵が本気で襲撃してきたら一溜りも―――――」

大和「…………」

提督「済まん。酔ったせいかつい愚痴を溢しちまったな……いや俺の悪い癖だ」

大和「いいえ。提督が随分とご苦労をなさっておられるのは分っているつもりですから。私で良ければ、何だってお話をお聞かせ下さい」

提督「そうか。ありがとうな、さすが俺が見込んだ秘書艦だ」


大和「はい」にこ

 

24: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 23:40:33.240 ID:A0VbuDK+0
提督「――――――もう一口……ってもう終わっちまったのか。あんなにあったってのに」

大和「うっ。す…済みません……艦娘一の超低燃費の大資材喰らいで……」しゅん…

提督「ま…まぁしょうがねえ。その分、実際にお前はそれだけの戦果を挙げているしな」

大和「でも……」

提督「お前は我が軍一の艦娘――――だと俺は思ってるよ」

大和「提督……」じーん

提督「本来ならお前はこんな処じゃなく本b―――――」

大和「提督―――――――」

大和「もう少し飲みませんか?すぐにおつまみを持ってきますから」

提督「そうだな」


大和「はい。少々お待ち下さいね」
すっ

 

27: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/05(火) 23:51:54.611 ID:A0VbuDK+0
――――――


提督「ふー。たらふく喰ったし呑んだな……」

大和「そうですね。私も流石にお腹がいっぱいです」

提督「大和…今日はスマンかったな。秘書艦とはいえ、こんなおっさんに仕事はおろかメシまで付き合わせちまって」

大和「提督……そんな事ないですよ。いいえ、寧ろ私の方こそお付き合いさせて頂けて嬉しいです―――――」にこ

提督「嬉しい事言ってくれるねぇ。でもお前ほどの器量よしなら、他の若けえ提督たちもほっとかねぇだろうに」

大和「そんな事ありません!それに私は…私は提督の――――――」

提督「……大和」

大和「大和は提督の事を――――――」



提督「大和」


 

30: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:04:47.037 ID:97D4rAdf0
大和「…………はい……」

提督「俺が一般人との結婚はおろか、お前たち艦娘の誰ともケッコンカッコカリとやらもしてないのは知ってるよな?」

大和「…………はい」

提督「どうもケッコンカッコカリをすると色々とメリットがあるらしいんだが、それでもどうして俺がしねえのかは知らんよな?」

大和「…………はい」

提督「まぁ…正直これは他の提督や艦娘には聞かせられない話なんだが……」

大和「…………」

提督「見りゃ分かるが、俺はこれでも軍人だ。それで軍人たる者、何時、何処で戦死するとも限らねぇ」


大和「…………はい」


 

31: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:17:06.555 ID:97D4rAdf0
提督「そんな何時くたばってもおかしくない状況で、ある日、突然に家族を残して逝っちまうってのは…分っている事とはいえ、どうにも忍びない。と…俺はな…思っちまうんだよ……」

大和「…………」

提督「それはお前たち艦娘に対してだって同じ事なんだ。幾ら同じ軍籍とはいえケッコンカッコカリなんぞして、その相手を遺してとっととくたばっちまったら。と、思うとな……」


大和「提督……」

 

33: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:24:25.902 ID:97D4rAdf0
提督「まったく…腑抜けもいいところだよ。こんな情けない話、他の提督や艦娘たちに聞かれたら、覚悟の足りない小心者だとか軟弱者って言われちまうわな」はぁ…

大和「そっそんな事けっしてありません。それは提督がお優しいからです。軍の方、艦娘…そして私にも――――」

提督「大和……」

大和「そんな提督だから私は――――――いえ…何でもありません……」


提督「……そうか…済まんな気を遣わせちまって」


 

34: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:30:43.486 ID:97D4rAdf0
提督「お前には我が軍の最大の戦力として、俺も頼りにしている。だから、これからもよろしく頼む」

大和「提督…………」

提督「…………」

大和「……はい。これからも誠心誠意、艦娘―――としてお国のため軍のためこの身を捧げる所存です」

提督「いい返事だ。宜しい改めて艦娘としてこれからもよろしく頼む」

大和「はい」


提督(……済まんな…本当はお前にこんな事言わせたくねぇんだが……)


大和(提督に言われなくても私は艦娘としてお国の為に戦う所存です。でも……私は本当はそれ以上に貴方の為に―――――――)


 

36: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:41:36.553 ID:97D4rAdf0
―――


大和「―――――それでは提督。お片付けや明日の事もありますので、今日のところはこれで失礼します」すっ

提督「ああ。お休み大和」


大和「……お休みなさいませ提督」

がちゃ…
ばたん…

 

38: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 00:53:23.025 ID:97D4rAdf0
――――

執務室の扉前。


大和(提督……)
ぎゅっ…

大和(提督は恐らくは私の気持ちに気付いて、敢えてあんな事を……)

大和(そして提督はああ云うお方だから、もう私が何を言っても駄目なんだろうな……)


大和(提督は私をとても大切にして下さっている)

大和(……それは分ってる。でも―――――でもあの方は決して私の想いには応えては下さらない)

大和(それはあの方の、お優しい想いからと言うのは痛い程わかる……でも―――――――)


きゅうっ
大和(それが…その優しさが寧ろ私の心を強く締めつける―――――)


 

42: 以下、 VIPがお送りします 2016/01/06(水) 01:02:37.135 ID:97D4rAdf0
大和(ううん……それでも…それでも……いい。私は提督の御傍にさえ居られれば―――――――)

じわ…
大和(それだけで…それだけで私は―――――――――)


大和(でも――――――――)

ぽろ…

大和(提督―――――――――――――――)

ぽろぽろ…

大和(₋――――――――――――――――――でも―――――)


大和(それでも私は…私は貴方の事を―――――――)




おしまい。

 
 

引用元: 大和「まだお休みになられてなかったのですか?」