1: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:27:16.49 ID:xibKfDOX0
恋「……、……」

かのん「恋ちゃんっ」

恋「かのんさんっ。おはようございます」

かのん「おはよー。恋ちゃんは今日も元気だね」



恋「……かのんさんは、あまり調子が良くないようですね。何かありましたか?」

かのん「うー……それなんだけどさ」



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2: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:28:48.30 ID:xibKfDOX0
恋「夢、ですか」

かのん「そうなの!今更あの時の夢なんて見て、憂鬱になってさ。月曜日からこんなでもう最悪」

かのん「はぁーあ。恋ちゃぁん……」ギュウ

恋「わ……ここで寝ないでくださいね?」

かのん「えぇー、いいじゃん。ちょっとくらいさぁ」

恋「もう……」ナデナデ

かのん「んー……」グリグリ



かのん「はぁ~、恋ちゃん分だぁ……」

恋「れ、れんちゃんぶん……とは」

かのん「恋ちゃん分を補充するとさー、不思議と元気が出てくるんだよねぇ」

恋「……それは良かったです」


3: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:29:26.26 ID:xibKfDOX0
恋「もしかして、あまり眠れていないとか」

かのん「うん……いつもより早く目が覚めちゃってさ。あんな夢見た後じゃ、すぐには寝付けないよ」

恋「……せめて、あと30分寝ていた方が良かったのでは?」

かのん「それも考えたんだけどさ。30分寝るよりも、いつも通り30分早く来て恋ちゃん分を補充した方が元気出るかなーって」



恋「もう……ちゃんと寝ないといけませんよ?」

かのん「うー……恋ちゃんを抱き枕にしていいなら考える……」

恋「だ、抱き枕……」

かのん「だめ……?」

恋「……いいですけど」

かのん「やったっ」


4: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:29:57.48 ID:xibKfDOX0
恋「……、……」ギュ

かのん「♪」スリスリ

恋「あの、いつまで続けるんです……?」

かのん「ずっとかなぁ」

恋「そろそろ人通りも多くなる時間なので、その……」

かのん「やだ」

恋「えっ」

かのん「やーだっ」



恋「あ、あの……見られかねないので……」

かのん「やだもん」

恋「もう……見られても知りませんからね?」

かのん「~♪」ギュ


5: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:30:28.98 ID:xibKfDOX0
かのん「んぅー……恋ちゃんすきぃ……」

恋「私もすきですよー」

かのん「えへへぇ……」

恋(いつもなら『なんか軽い』とでも言いそうなものを……)



かのん「もう恋ちゃんがいないとだめになっちゃった……ねー恋ちゃん、結婚しよ?」

恋「け、結婚……!?」

かのん「結婚してさー、ずっと一緒にこうしてるの。すっごくきもちいーよ?」

恋「……っ、やっぱり眠いんじゃないですか?」

かのん「そーお?」


6: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:31:01.91 ID:xibKfDOX0
恋「……やっぱり。眠い時の声ですよね、それ」

かのん「そっかなー?いつも恋ちゃんとこうしてると、頭がぽわぽわーってしてくるの」

恋「眠気ですよ、きっと。……少し、眠りませんか?」

かのん「いいの?」

恋「時間になったら起こしますが。それまでなら」

かのん「えっへへー……恋ちゃん抱き枕~っ」

恋「そういえば、そんなことを言っていましたね……」



恋「……あの、聞いてもいいですか?今朝の夢の話について」

かのん「んー?」

恋「もちろん、思い出したくないならいいのですが」

かのん「あー、それね……ここの入試のときのこと、夢に見てさ」

かのん「言ってたっけ?実技試験で歌えなくて、音楽科に落ちたって話」

恋「軽くは聞いていたかもしれませんね」

恋(気になって、後から先生に聞いて回りましたから。……こんなこと、かのんさんには絶対言えませんが)


7: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:31:38.47 ID:xibKfDOX0
かのん「あの時は人前で歌うのがほんと無理でさ。もし歌えてたら、今頃恋ちゃんと同じクラスだったのかなぁ」

恋「どうでしょうか」

かのん「なんかね、思っちゃった。あの時から私、少しでも変われたのかなって」

かのん「環境が変わっただけで、私自身は変われてないんじゃないかって……」

恋(東京大会の課題の時のこと、気にしているのでしょうか)



かのん「変われたとか変われてないとか、それ自体はいいんだ。……また歌えなくなることだけは、絶対イヤなの」

かのん「こうして歌っていられる日々が、あとどれだけ続くのかな……」


8: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:32:13.36 ID:xibKfDOX0
恋「……変われていますよ、ちゃんと」

かのん「……、恋ちゃん」

恋「あなたが信じられないのなら、私が代わりに信じます。もう入試の時のあなたからは、変われているんだと」

恋「それに、あの時だって……あんなにも素晴らしい歌を、聞かせてくれたではありませんか」

かのん「そうかな……」

恋「……それでは、物足りませんか?」

かのん「……ううん、充分過ぎるくらい」

恋「なら、もう大丈夫です」



かのん「……ごめんね?なんか、暗い話して」

恋「構いませんよ。掘り返したのは私です」

恋「それに……私は歌えないあなたを知りませんが、その頃からあなたに惹かれていたんですから」

かのん「恋ちゃん……」


9: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:33:01.36 ID:xibKfDOX0
恋「こんな話を知っていますか?月というものは、自らは光らないそうです」

かのん「……月は太陽の光を受けて光っている、光の受け方によって満ち欠けを繰り返す……だっけ」

恋「はい。一面では月は自ら光ることが出来ず、太陽に頼り切りであるとも言えます」

恋「それでも、夜空に輝く月は確かに美しいもの。時に太陽すらも超えるほどに……」

かのん「……」



恋「皆があなたを空に光る太陽のようだと言うでしょう。でも私は、それだけではないことを知っている」

恋「人間は誰しも、太陽にはなれないのかもしれません。暗くもあり、明るくもある……それでもあなたは、光っていたいと願う」


10: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:33:41.89 ID:xibKfDOX0
かのん「月がずっと光っていたいって思うことは、無謀なのかな」

恋「そんなことはありませんよ」

かのん「でも、太陽がいないと光ることも出来ないのに」

恋「確かに月は、太陽がいないと光れませんが……その光は、昼間にも届いているんですよ」

恋「昼間に光る月など、見向きもされないかもしれません。それでも、確かに光っている」



恋「太陽だって、夜には隠れてしまいます。ある意味で太陽と月は、表裏一体とも捉えられます」

恋「あなたは……昼間も夜も、光る月。昼間には見向きもされなくたって、私たちは確かに見ています」

恋「それすらも、太陽が必要だと言うのなら……私が、あなたを照らす太陽でありたい」


11: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:34:58.33 ID:xibKfDOX0
かのん「……ふふ。恋ちゃんって、もしかして結構な詩人?」

恋「……思い返したら、自分が少し恥ずかしくなってきました」



かのん「そういうところ、かわいいなぁ。……そっか。気付けなかっただけで、ちゃんと光れていたんだ」

恋「ええ。私は、昼間も光るあなたを見ていますから」

かのん「何せ、照らしてる張本人だもんねー」

恋「それは忘れてくださいっ」


12: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:35:58.51 ID:xibKfDOX0
恋「もう……ほら、早く横になって」

かのん「わわっ」

恋「大丈夫。きっと、いい夢が見れますよ」

かのん「……ほんと?」

恋「ええ」ナデナデ

かのん「ん……信じる……」



かのん「……ねぇ、恋ちゃん?」

恋「どうしましたか?」

かのん「こういう私は、イヤじゃない?」

恋「……何を言い出すかと思えば」

かのん「だって、こんな暗いし……いっぱい心配かけちゃったし……」


13: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:36:27.10 ID:xibKfDOX0
恋「……そんなことありませんよ。どんなあなたでも、私はきっと好きになります」

恋「だって……入学したてのあの時から、既に私は惹かれていたんですから」



恋「変わりゆく中でも、あなたの変わらないところ。それが私を惹きつけたんです」

かのん「変わらないところ……」

恋「かのんさんは、どこまで変わってもかのんさんだということですよ」

かのん「んー……わかんない……」

恋「……ふふ。それでいいんです」

かのん「恋ちゃんがいいなら、いっかなぁ」


14: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:36:55.20 ID:xibKfDOX0
かのん「ね、ね」

恋「今度はなんですか?」

かのん「いつかさ、絶対……結婚しようね」

恋「……っ、その話まだ続いてたんですか……?」

かのん「それでいつか、みんなの前で言うんだ。葉月かのんですって。……えへへっ」



かのん「恋ちゃんはどっちがいーい?澁谷恋って言いたい?」

恋「もう……変なこと言ってないで、早く寝てくださいっ」

かのん「はぁーい」


15: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:37:28.70 ID:xibKfDOX0
かのん「ん~……」

恋「……また何か?」

かのん「そんなすぐには眠れないよー」

恋「先程はすぐにでも寝てしまいそうでしたのに」

かのん「なんかさ……恋ちゃんとお話してたくて」

恋「またお昼に出来ますよ」

かのん「でも……」



恋「……もう」ギュ

かのん「ぁ……」

恋「大丈夫。ちゃんとここにいますから」ナデナデ

かのん「……ほんと?」

恋「ええ」


16: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:37:55.69 ID:xibKfDOX0
恋「それでも、まだ不安だと言うのなら。そうですね……」

かのん「恋ちゃん……?んぅ!?」

恋「ん、ちゅ……」

かのん「んーっ、んー……!」ギュ



かのん「……ぷぁ」

恋「……ふふ。こういうのは、どうでしょう」

かのん「はぁ、はぁ……もう一回ちょうだい?」

恋「あなたが望むなら、何度でも。ん……」


17: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:38:44.65 ID:xibKfDOX0
かのん「……ね、恋ちゃん。お願いがあるの」

恋「かのんさんのお願いなら、なんだって」

かのん「……私のこと、ずっと離さないって約束して。すきって、言って……?」

恋「……これで、いいですか?」ギュ

かのん「もっと。強く……」

恋「こう、ですか」

かのん「そう、そんな感じ……」



恋「大丈夫。ずっと、側にいますから……」

恋「すき。すきです、かのんさん」

かのん「……えへへ。私も恋ちゃんがすき、だよー……」

恋「……、……かのんさん」

かのん「すー、すー……」


18: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:39:31.70 ID:xibKfDOX0
恋(不安、揺らぎ……例え夢であっても、かのんさんに悲しい顔をしてほしくはない)

恋(私がいることで、かのんさんが安心出来るのなら……離れたりなんて、しませんから)



恋「……眠りから覚めたら、寝覚めにまた口づけを。だから今は、おやすみなさい」


19: ◆bncJ1ovdPY 2022/04/29(金) 15:42:18.56 ID:xibKfDOX0
おわり

以下、繋がってるかもしれないかのれん過去作



かのん「たまには甘えても」恋「いいですか?」 


かのん「甘えんぼスイッチ」恋「そんなのありませんっ」 





引用元: 恋「あなたと幸せ」かのん「癒しのひととき」