侑「うん？誰からだろう」

しずく：あなたの事を心からお慕いしています。

侑「しずくちゃんか。えっと…」

高咲侑：う〜ん。ちょっとありきたりかなぁ。

侑「さてと…」

ピロリン

しずく：愛してます。世界中の誰よりも。

侑「う〜ん…どこかで聞いた事ある様なセリフだなぁ」

高咲侑：良いと思うんだけど。私がヒロインだったらどこかで聞いた様なセリフじゃなくて不器用でもいいから自分の言葉で言って欲しいかなぁ。

侑「しずくちゃんも大変だなぁ。自分で脚本まで考えるなんて」

ピロリン

しずく「あっ、侑先輩。相変わらず返信早いなぁ」

高咲侑：良いと思うんだけど。私がヒロインだったらどこかで聞いた様なセリフじゃなくて不器用でもいいから自分の言葉で言って欲しいかなぁ。

しずく「自分の言葉で。自分の言葉…私が主人公だったらなんて言う？私が主人公だったら…きっと…」

侑「……しずくちゃんに送ってからもう1時間経つけど…来ないなぁ。悩んじゃったかな？」

ピロリン

侑「あっ、しずくちゃんかな？」

歩夢：し

侑「歩夢？し？」

侑「え？何？しって何？」

ピロリン

歩夢：ず

侑「ず？え？ず？何これ？し、ず…何？しず…しずく？なんて…ね」

その日は歩夢からもしずくちゃんからも連絡が来る事はなかった。

歩夢「あっ！侑ちゃんおはよう」

侑「おはよう。あの…昨日のLINEって何だったのかな？その後返事したのに返って来ないし…気になっちゃってさ」

歩夢「LINE？あ〜…ふふっ。そんな事より侑ちゃん、ちゃんと音楽の授業についていけてる？」

侑「え？あぁ…うん。まあ…なんとかね」

歩夢「そっか。まあ、いいや。行こ」

侑「うん。そうだね」





歩夢「それでね。昨日は従兄弟の子が来てて一日遊んであげてたんだ」

侑「そうなんだね」

歩夢「今の子ってね、ちっちゃい頃からスマホでゲームしたりするんだよね」

侑「そうなの？」

歩夢「うん。私のスマホでゲームするんだって言うから貸してあげてたんだけど。色々な所触るから大変で。愛ちゃんにも変なメッセージ送っちゃったりしてね」

侑「あ〜そう言う事かぁ。なるほどね」

歩夢「なるほど？」

侑「ううん。じゃあ、歩夢お姉ちゃんも大変だったね」

歩夢「あはは。まあ、子供のやる事だし。仕方ないよね」

侑「そうだね。って事は従兄弟ちゃんは昨日は泊まってったの？」

歩夢「え？夕方には…帰ったよ」

侑「そうなの？えっ…でも、だってさ…」

しずく「お〜い」

侑「ん？」

歩夢「あっ！！」

しずく「侑先輩！歩夢さん！おはようございます」

侑「おはよう」

歩夢「おはよう！！しずくちゃん！！今日も良い天気だね」

しずく「はい！でも、午後から雨に降るらしいですよ」

侑「え？そうなの？傘持って来なかったや」

しずく「そしたら私の傘に入れてあげちゃいますよ。私の傘少し大きいので」

侑「じゃえ、お言葉にあ…」

歩夢「今日は珍しいね！こんな所で会うなんて。あれ？もしかして登校中にしずくちゃんと会うのって初めてかも？」

しずく「そう言えばそうかも。今日は少し寝坊しちゃったから」

歩夢「え〜そうなの？しずくちゃんも寝坊なんてするんだね。意外だなぁ」

しずく「昨日は夜更かししちゃって」

歩夢「夜更かし……そうなんだぁ」

しずく「え…はい…」

歩夢「もしかして、良い人が出来たとか？」

しずく「へ？ま、まさか。そんな訳ないじゃないですか」

歩夢「あはは。そうだよねぇ」

侑「あのさ…しずくちゃん」

歩夢「あっ、二人共。もう、こんな時間。お喋りしてる場合じゃないよ」

しずく「え？あっ、本当！」

歩夢「ほら、二人共走るよ」

侑「う、うん」

キーンコーンカーンコーン。

「高咲。ちょっと」

侑「はい」

「今日一日、なんだか授業に身が入って無かった様に見えましたが？ただでさえ、あなたは編入生で他の生徒より遅れて授業に参加してるのですから」

侑「はい…以後、気を付けます」

「よろしく頼みますよ」

侑「はい…」

歩夢「怒られちゃったみたいだね」

侑「あ、歩夢…どうしたの？」

歩夢「いつまでも部室に来ないから様子見にきたんだよ」

侑「そうなんだ。ごめん」

歩夢「人間だもん。調子の悪い日だってあるよ」

侑「…うん」

歩夢「特に夜更かしした後とか…」

侑「え？何？」

歩夢「何でもないよ。行こう、みんな待ってるから」

侑「う、うん」

ガチャ

歩夢「侑ちゃん来たよ〜」

侑「ごめんね、遅くなって」

かすみ「侑せんぱ〜い。凄い待ちました〜」ギュッ

侑「あはは。ごめんね」

歩夢「うふふ」

愛「よっ、歩夢」

歩夢「愛ちゃん。昨日はごめんね。従兄弟の子が間違えて送っちゃって」

愛「大丈夫、大丈夫。子供ってとにかく触りたがるからね」

歩夢「そう言って貰えると助かるよ」

かすみ「侑せんぱ〜い」ギュゥゥゥゥ

しずく「ほら。あまり侑先輩を困らせちゃダメだよ」

愛「あはは。かすみんってゆうゆに凄い懐いてるよね」

歩夢「侑ちゃん優しいからね」

愛「歩夢も気が気じゃないでしょ〜？大好き幼馴染取られちゃって」

歩夢「え〜まさか。そんな事ないよぉ」

愛「あはは。だよね〜冗談、冗談」

歩夢「子供のやる事だから…」ボソッ

愛「へ？何？」

歩夢「ううん。何でもないよ」

侑「さあ、そろそろ練習始めようか。ほら、かすみちゃん離して」

かすみ「遅れて来たくせに〜」

侑「じゃあ、別れて」

かすみ「打倒ショウランジュ〜！行きますよ〜」

愛「よっしゃ。じゃあ、今日もいっちょ頑張るか！」

歩夢「そうだね」

果林「愛〜行くわよ」

愛「は〜い。じゃ、歩夢もガンバ！」

歩夢「うん。愛ちゃんもガンバ！」

せつ菜「さあ！！！私達は三人で練習しますか！！！」

しずく「そうですね。一緒に練習しましょう」

歩夢「うん。そうだね」

侑「じゃあ、私は事務作業を…」

歩夢「行ってらっしゃい」

せつ菜「では、練習を」

歩夢「しずくちゃん。昨日、間違えてLINE送ってない？しずくちゃんから私にLINE来てるんだけど」

しずく「歩夢さんに？」

歩夢「うん。夜更かししたって言ってたから、もしかしたらと思って。ふふっ、しずくちゃんって結構そそっかしいんだね」

せつ菜「あの…練習は…」

しずく「そうでしたか。いくら待っても返事が来ないはずですね。でも、歩夢さんも酷いです。教えてくれればいいのに。お陰で今日は寝不足です」

歩夢「うふふ、ごめんね。侑ちゃんも寝不足で一日身が入らなかったみたいだよ。先生に怒られてた」

しずく「そうなんですか。それって私と関係あるんですか？」

歩夢「だって、侑ちゃんに送るつもりだったんでしょ？侑ちゃんも気になって昨日は眠れなかったんじゃないかなぁ？」

しずく「あれ？どうして私と侑さんがやり取りしてるって分かったんですか？」

歩夢「だって、侑先輩、大好きですって書いてあったじゃない」

しずく「あ〜そうでした。でも、誤解ですよ。侑先輩に舞台の脚本の相談をしてたんです。ちょうど告白のセリフを考えていたので」

歩夢「そうなんだね。それで、侑先輩、大好きだったんだね。登場人物の名前、侑先輩なの？」

しずく「まさか。違いますよ」

歩夢「だよね。そんな訳ないよね」

しずく「もちろんですよ。ただ、侑先輩のアドバイスを受けてそのセリフにしたんです」

歩夢「大好きって？」

しずく「はい。私が主人公だったらキザなセリフより一言大好きかなって」

歩夢「でも、しずくちゃんは主人公じゃないよね？」

しずく「そうですね。でも、ヒロインは侑先輩を参考にしたので、必然的に主人公と私の思いは重なるかなって」

歩夢「あれ？さっき侑ちゃんは関係ないって言ってなかったけ？」

しずく「侑先輩の名前を使ってないと言ったんですよ」

せつ菜「あの…えっと…落ち着いて下さい」

歩夢「落ち着いてるよ。ね？」

しずく「ふふっ、はい」

せつ菜「そうですか…穏やかには見えませんけどね…あはは…はは…」

歩夢「私思ったんだ。もしかして、しずくちゃん……間違えたんじゃなくてワザと私に送ったのかなって」

しずく「まさか。侑先輩との貴重な時間を無駄にする訳ないじゃないですか」

歩夢「そっか」

しずく「はい」

歩夢「私ね、子供がイタズラするのは仕方ないと思うの。ね？せつ菜ちゃんもそう思うよね？」

せつ菜「え？あっ……そうですね。子供する事ですからね…」

歩夢「そうだよね。しずくちゃんもそう思うでしょ？」

しずく「もちろん」

歩夢「だからね、かすみちゃんの事は笑って許そうと思うの。だって子供だもん、あの子」

しずく「優しいですね、歩夢さん」

歩夢「そんな事ないよ。これ、侑ちゃんのスマホ画面のスクショ」

しずく「………へぇ」

せつ菜「え…」

歩夢「このやり取りは…子供じゃ出来ないよね？そう思うよね、せつ菜ちゃん？あ、ちなみに相手はしずくちゃんね」

せつ菜「えっと…その…泣きそうなんですけど…私…」

しずく「どうして歩夢さんが…どうやって…」

歩夢「スマホって便利だよね。文明の利器だよね。でも、便利な物って使い方を間違えると大変な事になるんだよねぇ」

しずく「そうですね。間違えればですけど」

歩夢「うふふ。これ、なんだか分かる？」

ジョキジョキ

しずく「…！！？」

せつ菜「あ、歩夢さん…」

歩夢「ブー、時間切れ。正解はハサミでした〜。これ、すっごく切れ味が良いの。何でも切れちゃうんだ。ふふっ、間違えない様に使わなくちゃ」

ガチャ

侑「歩夢！」

歩夢「侑ちゃん…どうしたの？」

侑「いや…ライブの準備してて。ほら、ステージの飾り付けを作ってて」

歩夢「そうなんだ。ありがとう」

侑「うん。それで…ハサミあるかな？」

歩夢「あるよ。ほら」

侑「……歩夢？それ…手に持ってるのって」

歩夢「あっ、出すの間違えちゃった。これね、しずくちゃんのだよ」

侑「しずくちゃんのだよって…髪…イメチェンでもしたの？」

歩夢「あはは、そうだね。だいぶイメチェンしたよ、二人共」

侑「二人共？……二人は？」

歩夢「私ね、しずくちゃんもせつ菜ちゃんも好きだったんだよ」

侑「歩夢？」

歩夢「だから、これ以上嫌いになりたくなかったの」

侑「二人はどこ？」

歩夢「はあ…私と居るのに二人の事ばっかり」

侑「歩夢！！！変な冗談はやめて」

歩夢「何が悪いのかな？雑音が聴こえなきゃいいのかな？それとも手癖が悪いのかな〜？でも、ピアノが弾けなくなっちゃうかぁ」ジョキジョキ

侑「い…いや…」

歩夢「そっか！よそ見ばっかりするからいけないんだ!」ジョキジョキ

侑「こ…来ないで…」

歩夢「ジッとしてて。暴れると他の所に刺さっちゃう」

侑「や、やめて。歩夢…いやだ…いやだぁぁ」






歩夢「あ〜あ〜。間違えちゃった」

しずく「どうでしょうか？ホラーの脚本を考えるのは初めてなんですけど…」

侑「どうって…」

せつ菜「私…どうなったんですか？」

かすみ「怖すぎるよ！！！！」

璃菜「璃菜ちゃんボードガクブル」

ミア「ジャパニーズホラーは怖いって評判だけど…」

栞子「これはジャパニーズホラーはまた…」

歩夢「私…こんな事しないよ…」

しずく「もちろんです。ちょっと設定の参考にさせて頂いただけですので。実際には名前も変えるつもりですので」

彼方「しずくちゃん。ナマモノは取り扱い注意だよ」

愛「まあ、抜群に怖いけどね」

エマ「夢に出て来そうだよね」

ランジュ「ランジュの出番も欲しかったわ」

歩夢「え…」

栞子「しずくさん。残念ですが…生徒会としてはこれを認める訳にはいきません」

しずく「えぇ…そんなぁ」

栞子「もう少しマイルドに…と言うか身近な人物でヒューマンホラーを作るのはやめて下さい」

しずく「はい…分かりました」

侑「あはは…しずくちゃんも演劇の事になると…ね？」

愛「そうだね」

ちなみに

かすみ「ねえ、しず子」

しずく「どうしたの？」

かすみ「しず子…かすみんの事子供だと思ってるの？」

しずく「え？」

完