岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 その1
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 その2
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 その3
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」その4
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 その5
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」その6
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」その7
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」その8
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」その9
278: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:09:57.25 ID:2j/8NxTHo
第18章 明誓のリナシメント(♀)
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
倫子「――――!!!!」ガバッ
倫子「…………」キョロキョロ
倫子「ラボ、か……」ホッ
未来ガジェット研究所?
??「ちょっと岡部、いつまでもそんなところで寝てると、風邪ひくわよ」
倫子「なんだ、紅莉栖。いたのか」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
倫子「――――!!!!」ガバッ
倫子「…………」キョロキョロ
倫子「ラボ、か……」ホッ
未来ガジェット研究所?
??「ちょっと岡部、いつまでもそんなところで寝てると、風邪ひくわよ」
倫子「なんだ、紅莉栖。いたのか」
279: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:10:27.02 ID:2j/8NxTHo
紅莉栖「いたのか、とは随分ご挨拶ね。だが、それがいい」ハァハァ
倫子「相変わらずだな、近づかないでくれ」
紅莉栖「ぐはぁっ! き、昨日も一昨日も一緒に居たのに、それはさすがに酷い」
倫子「そう、だったな。それで、ダルやまゆりはどうした?」
紅莉栖「……あんた、本当に大丈夫? 結婚する?」
まゆり「オカリン、トゥットゥルー♪」ゲシッ
紅莉栖「ちょ、まゆり、足踏んでる踏んでる!」
ダル「いや、自業自得だと思われ」
倫子「ああ、そうか。いつだってそこにいたよな、2人とも」
倫子「(2人だけじゃない、ここには――)」
280: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:11:28.33 ID:2j/8NxTHo
フェイリス「凶真、元気がないニャ? フェイリス印の猫耳メイド服を着るときっと元気が出ると思うニャ♪」
倫子「それは、オレ以外が、だろうが! オレにはこのパーフェクトな白衣があるっ!」バサッ
るか「おか、凶真さん。ボクに出来ることがあったら、なんでも言ってくださいね。エル・プサイ・コンガリィですっ!」
倫子「コンガリィではなく、コングルゥだっ!」
るか「はいっ! エル、プサイ、コングルゥ!」
倫子「うむっ」ニコッ
るか「(かわいい)」
281: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:11:56.43 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「レジェンド、風邪だって!? これ、飲んで!!」グイッ
倫子「な、なんだ、その奇妙な色の液体は……っ!」ビクッ
鈴羽「これさえ飲めば風邪なんて一瞬で治っちゃうから! ほら、飲んだ飲んだ!」ガッ
倫子「や、やめんかバイト戦士――――ぐぼふっ」バタッ
紅莉栖「お、岡部っ!?」
萌郁「それ……何が入っているの……?」
鈴羽「公園に生えてる草とか、その辺で捕まえた虫とか、色んなの。あたしの居た時代じゃすっごく効いたんだから心配ないって!」
倫子「ブクブクブク……」
萌郁「そ、そう……」
282: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:12:25.64 ID:2j/8NxTHo
倫子「ぜ、全員いるようだな……ゴフッ」
紅莉栖「阿万音さん、いつか見てなさいよ……」ゴゴゴ
鈴羽「なんだよ牧瀬紅莉栖。やろうっての?」ゴゴゴ
倫子「気を取り直して。ゴホン」
倫子「では只今より、第65536回目の円卓会議を行う! お前たち、準備はいいか!?」
紅莉栖「で、今日の議題はなんなんだ?」
倫子「そんなものは決まっている。今日の議題は――」
倫子「議題、は……」
283: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:12:54.05 ID:2j/8NxTHo
紅莉栖「岡部?」
寒い。
まゆり「オカリン?」
寒い。
ダル「どしたん、オカリン?」
寒い。
フェイリス「凶真?」
寒い。
るか「凶真さん……?」
寒い。
鈴羽「レジェンド?」
寒い。
萌郁「姉さん……?」
寒い―――――――――――――――――――
284: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:13:44.42 ID:2j/8NxTHo
ここは、データとして眠っている私の世界。
0と1だけで構成された世界。
時間が止まったままの世界。
次元の果てのような世界。
冷たく暗い箱の中の世界。
――――"紅莉栖"の居る世界。
285: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:14:10.01 ID:2j/8NxTHo
2036年3月7日金曜日
暗室
倫子「ぁ……………………」
倫子「(どこ、ここ? 声が思うように出せない……)」
倫子「っ!!」ズキン!!
倫子「(あ、頭が……痛い……っ)」
倫子「っ……ぅぁ……」
倫子「(なんとか……起き上がれた……。声が出ない、無理に出そうとすると喉が痛む……)」
倫子「(ヘッドギアにクランケ服……なんだろ、この格好?)」
倫子「(私は……何をしていたんだっけ……)」
暗室
倫子「ぁ……………………」
倫子「(どこ、ここ? 声が思うように出せない……)」
倫子「っ!!」ズキン!!
倫子「(あ、頭が……痛い……っ)」
倫子「っ……ぅぁ……」
倫子「(なんとか……起き上がれた……。声が出ない、無理に出そうとすると喉が痛む……)」
倫子「(ヘッドギアにクランケ服……なんだろ、この格好?)」
倫子「(私は……何をしていたんだっけ……)」
286: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:14:56.74 ID:2j/8NxTHo
倫子「(――そうだ、思い出した! かがりちゃんだ!)」
倫子「(2011年1月15日の未明、紅莉栖の記憶を消すために、比屋定さんの作った装置で元のかがりちゃんの記憶を上書きしようとして、私は……)」
倫子「(ストラトフォーにラボが襲撃される直前、スマホのボタンを押して、世界線が変動したんだ。ってことは、ここは変動後の世界線か)」
倫子「(この世界線の"私"は、一体なにをどうしてこんな状態になってるんだろう……)」
倫子「(暗くてよく見えないけど、身体が極端にボロボロなのはわかる)」
倫子「(とにかく、ここから出てみよう)」スッ
バタッ!!
倫子「っ―――!」
倫子「(あ、足に力が入らない!? 想像以上に衰弱してるみたい……)」
倫子「(でも、身体を引きずってでも部屋から出ないと……)」
ガチャ バタン
287: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:15:49.94 ID:2j/8NxTHo
廃ビル外
ズル ズル ズル …
倫子「なんだ……これ……ゴフッ」
倫子「(見渡す限り、廃墟ビルだらけ……周りは瓦礫の山……)」
倫子「(空は赤銅色……まるで地獄のような……)」
倫子「(どういうこと? 私は紅莉栖の記憶をかがりちゃんの中から消した)」
倫子「(ってことは、ここは元々かがりちゃんに紅莉栖の記憶が植え付けられなかった世界線のはず)」
倫子「(いったいどんなバタフライ効果が……って、このビルの街頭テレビって……っ!)」
倫子「あ……あ……」ガクガク
倫子「(見覚えがある……ここは、秋葉原だ……。UPXに人工衛星が墜落してる……)」プルプル
倫子「(タイムマシン……いや、『SA4D』って書いてある。なんだろうあれ、黒騎士<ブラックナイト>衛星?)」
倫子「いや、そんなことより……」ワナワナ
倫子「ラボは……どうなった……?」ガクガク
ズル ズル ズル …
倫子「なんだ……これ……ゴフッ」
倫子「(見渡す限り、廃墟ビルだらけ……周りは瓦礫の山……)」
倫子「(空は赤銅色……まるで地獄のような……)」
倫子「(どういうこと? 私は紅莉栖の記憶をかがりちゃんの中から消した)」
倫子「(ってことは、ここは元々かがりちゃんに紅莉栖の記憶が植え付けられなかった世界線のはず)」
倫子「(いったいどんなバタフライ効果が……って、このビルの街頭テレビって……っ!)」
倫子「あ……あ……」ガクガク
倫子「(見覚えがある……ここは、秋葉原だ……。UPXに人工衛星が墜落してる……)」プルプル
倫子「(タイムマシン……いや、『SA4D』って書いてある。なんだろうあれ、黒騎士<ブラックナイト>衛星?)」
倫子「いや、そんなことより……」ワナワナ
倫子「ラボは……どうなった……?」ガクガク
288: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:16:20.17 ID:2j/8NxTHo
タッ タッ タッ
倫子「(な、なんだ!? 向こうから人の気配が……)」
??「お前、死にたいのか?」ガチャ
倫子「あ……あ……っ」
倫子「すず……は……」ウルウル
鈴羽「っ!? どうしてあたしの本名を……。何者だ?」
倫子「私が……わからないの……?」
鈴羽「あんたみたいな婆さんの知り合いなんていない」
倫子「(婆さん……? な、なにを言ってるの……?)」
倫子「岡部……岡部、倫子だよ……」
鈴羽「岡部……倫子ッ!? そんな、バカな! だって、岡部倫子は死んだはず!」
倫子「私が、死んだ……?」
鈴羽「……お前に確認したいことがある。ついてこい」ガシッ
289: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:17:00.53 ID:2j/8NxTHo
元ラジ館屋上
ダル『君に萌え萌え』
鈴羽「バッキュンきゅん」
倫子「…………」
ガチャ
ダル『入れ』
倫子「(確かに合言葉としてこの上なく堅固かも知れないけど、雰囲気を考えなよ、ダル……)」
倫子「(そういえば、α世界線の鈴羽が言ってたっけ。ダルのプロポーズの言葉……)」
『告白の言葉は、「キミに一生、萌え萌え☆キュン」だったって聞いてる』
倫子「(橋田家にとっては大事な言葉なのか……)」
ダル『君に萌え萌え』
鈴羽「バッキュンきゅん」
倫子「…………」
ガチャ
ダル『入れ』
倫子「(確かに合言葉としてこの上なく堅固かも知れないけど、雰囲気を考えなよ、ダル……)」
倫子「(そういえば、α世界線の鈴羽が言ってたっけ。ダルのプロポーズの言葉……)」
『告白の言葉は、「キミに一生、萌え萌え☆キュン」だったって聞いてる』
倫子「(橋田家にとっては大事な言葉なのか……)」
290: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:18:03.55 ID:2j/8NxTHo
ワルキューレ基地
倫子「まぶし……」
ダル「よかった、やっと目を覚ましたんだな、オカリン……」
倫子「ああ、やっぱりダr……誰、ですか?」
ダル「僕は僕だお、オカリン。25年後のね」
倫子「ダルが、痩せてる……信じられない……」
ダル「ってそこかよ」
倫子「まぶし……」
ダル「よかった、やっと目を覚ましたんだな、オカリン……」
倫子「ああ、やっぱりダr……誰、ですか?」
ダル「僕は僕だお、オカリン。25年後のね」
倫子「ダルが、痩せてる……信じられない……」
ダル「ってそこかよ」
291: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:18:38.07 ID:2j/8NxTHo
ダル「まあ、この僕は2010年に現れた娘に1年間しごかれたおかげで、こうやってスマートになったわけだぜぃ」
ダル「でも、鈴羽が僕を痩せさせようと思うためには、鈴羽の出身世界線の僕は太ってないといけないわけで、こうして世界は巡っていくんだよなぁ」
鈴羽「父さん、少し言葉遣い、おかしくない?」
倫子「……いや、私は知ってる。未来のダルが、私の為に喋り方を合わせてくれてるってこと」
ダル「α世界線の2033年の僕、だったね」
倫子「ダル……もしかして、タイムマシンで過去に来たの?」
ダル「そう思う? 実は逆なんだなぁ」
倫子「逆……?」
鈴羽「自分の顔を見れば理解するんじゃないかな」スッ
倫子「鏡……ん、誰、この人……」
倫子「あ……あ……」プルプル
倫子「嘘……そんな……でも、どうして……」ガクガク
ダル「今は2036年。オカリンは年齢的には、44歳だ」
鈴羽「それ以上に老けて見えるけどね」
ダル「今からそれについて説明する」
292: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:19:34.35 ID:2j/8NxTHo
この世界線の私は長いこと眠っていたらしい。
15年もの間、毎日何時間もかけてみんなが私の体のケアをしてくれたそうだ。
栄養摂取をはじめ、垢擦り、洗髪、目やにや痰の処理、排泄物の処理、口腔の洗浄、床ずれ防止。
関節の曲げ伸ばしと筋肉マッサージ。それらの肉体運動に加えて、EMS器具を使うなどして筋力の低下を防いでくれた。
世界は電気仕掛け。私のこの身体の細胞ひとつひとつもまた生体電気で動く。
外部から電気を流すことで運動能力を維持していたという。
肉体という入れ物を、未来に遺してくれていた。
Tips:EMS(Electrical Muscle Stimulation)
筋肉へ電気刺激を送ること。スポーツ現場での疲労回復やリハビリ医療として用いられる。
293: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:20:10.60 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「写真で見せてもらった岡部倫子とは、似ても似つかない」
ダル「この鈴羽はオカリンの知ってる鈴羽と違って、子どもの頃にオカリンと会ったことは無いんだ」
倫子「ああ、うん。そうだよね……」
倫子「でも、どうして私は何も覚えてないの? 私の最後の記憶は、2011年1月15日の午前1時頃のものなんだけど」
ダル「えっ? ……やっぱ無理があったのかな。記憶が飛んでるのか、あるいは別の世界線のオカリンが……」
ダル「今のオカリンの頭の中には、2011年の1月末までの記憶があるはずなんだけど」
倫子「ど、どうして?」
ダル「真帆たんがオカリンの記憶をデータとして保存したのが、2011年1月31日のことだからさ」
倫子「データ化……未来へのタイムリープみたいなもの、か」
倫子「うん。ダルの推測通り、私は1月15日に世界線移動してきた」
ダル「やっぱり未知の現象が発生したか……」
倫子「だからね。この世界線の私に1月末までの記憶があったとしても、この私は覚えてないよ」
鈴羽「それがリーディングシュタイナー……話に聞いてた通りだ」
294: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:20:49.94 ID:2j/8NxTHo
倫子「でも、私には2025年の死亡収束があったはず。どうしてこの世界線の私は、その年を超えて生きてるの……?」
鈴羽「それはあたしも聞きたい。あたしたちは皆、岡部倫子は11年前に死んだって聞かされてきたんだ」
鈴羽「もしかして、あたしたちを騙してたのか? 父さん」
ダル「死んだよ。事実上ね」
鈴羽「事実上?」
ダル「考えても見てくれ、オカリン、鈴羽。人間の"死"って、いったいなんだい?」
倫子「死……えっと、心肺停止、じゃないの?」
ダル「仮にコールドスリープさせたら? あるいは、アンドロイド化したら? それこそ『Amadeus』化でも構わない」
ダル「世界線にとっての"死"、特にオカリンの場合は、僕たちの常識で言う"死"ではないのかもしれないね」
倫子「……因果律、か」
295: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:21:22.56 ID:2j/8NxTHo
ダル「タイムマシン開発競争は2025年頃がピークだったんだ」
ダル「僕の得意のハッキングでそれらの情報をしこたま盗んでさ、今までの僕の研究に上乗せしたってわけ」
ダル「もちろん、理論分野に関しては真帆たんが牧瀬氏の論文を応用させてくれた。さすが"先輩"って感じだったお」
ダル「で、そのついでに色々とわかっちゃったんだよね」
ダル「各国のいろんな機関が、牧瀬氏が残した論文と彼女の記憶を欲していた」
ダル「でもその時点で、牧瀬氏の遺産は全部、ストラトフォーの手に渡ってたんだ……」
ダル「まあ、一部には自分の意志で外部へと流出したものもあったらしいけど」
倫子「(自分の、意志で?)」
296: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:21:56.19 ID:2j/8NxTHo
ダル「ただ、連中をもってしても、例の論文の中身を確かめることはどうしてもできなかった。ロックを解除できなかったんだ」
倫子「……ならストラトフォーは、私ならパスを知ってるかもしれないと思ったはず。比屋定さんみたいに」
ダル「うん。それで、オカリンは誘拐されて、拷問された」
ダル「僕たちが助け出した時には、オカリンの精神はボロボロだった。死んだのとほぼ変わらない状態だったんだ」
ダル「もう真帆たんなんかわんわん泣いちゃって……あ、今のナイショな」
ダル「それで、まゆ氏やフェイリスたん、ルカ氏や真帆たんたちで、こことは別の施設でずっと面倒を見てきたんだ」
倫子「あそこか……」
ダル「僕たちが記憶を書き戻さなければ、永遠に蘇ることはなかっただろうね」
倫子「記憶を、書き戻す……。そっか、2011年の記憶を。でも、今になってどうして?」
ダル「記憶データを見つけたのがつい半月前だったんだ。ストラトフォーが支部のサーバにデータを保管してたんだけど、どこにあったと思う?」
ダル「僕たちの大学の地下だよ」
倫子「電機大の……」
297: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:22:29.12 ID:2j/8NxTHo
ダル「その頃は特に大変だったよ。世界中のコンピューターがオーバーフローして、軍事衛星の誤作動で主要都市はほぼ壊滅した」
倫子「あ。あの、UPXに突き刺さってた……」
ダル「秋葉原も、新宿も、池袋も。今、日本の首都は奇跡的に難を逃れた中野にあったりする」
ダル「まあ、そういう混乱のおかげでオカリンの記憶データの在り処が浮き彫りになったんだ」
ダル「で、オカリンの記憶データを早速脳にダウンロードした。だけど、10日経ってもオカリンは目覚めなかった」
ダル「だから正直、こうして出会えて驚いてる。半ば諦めかけてたからね」
倫子「そうだったんだ……」
ダル「本当に良かった。オカリンとまた話せて……ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
鈴羽「こんな時になにを」ハァ
ダル「いや、ちょっと安心しちゃってな。ハハハ」
298: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:23:41.91 ID:2j/8NxTHo
トイレ
スッ
ダル「(こうやってケータイを耳に当てるのも、これが最後か……)」
ダル「……ああ、僕だ。オペレーション・ヘルヘイムは、機関の妨害の乗り越え、真の成功へと辿り着いた」
ダル「何? まだ道半ばであることを忘れるな? 僕を誰だと思っている、"DaSH<ダル・ザ・スーパーハッカー>"であり、バレル・タイターだぞ?」
ダル「必ずやタイムマシンを完成させ、世界の支配構造を変革せしめようではないか。フ……フフ……」ウルッ
ダル「フゥーハ……ハハ……」ポロポロ
ダル「ハハハはあああああ~~~~~~」ウワンウワン
スッ
ダル「(こうやってケータイを耳に当てるのも、これが最後か……)」
ダル「……ああ、僕だ。オペレーション・ヘルヘイムは、機関の妨害の乗り越え、真の成功へと辿り着いた」
ダル「何? まだ道半ばであることを忘れるな? 僕を誰だと思っている、"DaSH<ダル・ザ・スーパーハッカー>"であり、バレル・タイターだぞ?」
ダル「必ずやタイムマシンを完成させ、世界の支配構造を変革せしめようではないか。フ……フフ……」ウルッ
ダル「フゥーハ……ハハ……」ポロポロ
ダル「ハハハはあああああ~~~~~~」ウワンウワン
299: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:24:14.99 ID:2j/8NxTHo
ワルキューレ基地
ダル「すまんすまん。それで、どこまで話したっけ」
倫子「(ん、目が赤い?)」
鈴羽「父さん、まゆねえさんには伝えたのか? 岡部倫子が目覚めたこと」
倫子「("まゆねえさん"……そっか、この鈴羽はまゆりと仲が良いんだ。良かった)」
ダル「あ、いかん! 早く教えてやらんと」
ピッ ピッ
ダル「こちら、バレル・タイター。応答せよ」
まゆり『こちらスターダスト・シェイクハンドです。どうぞ』
倫子「ふふっ……可愛いコードネーム」
ダル「心して聞いてくれ。オカリンが……目覚めた」
まゆり『……! ほんとに、オカリンが……!?』
ダル「フェイリスたんもるか氏も一緒だろう? 3人とも、すぐ戻って来てくれないか」
まゆり『…………』
ダル「まゆ氏?」
フェイリス『ダメ。マユシィは嬉しさのあまり涙ぐんで声も出ないみたい』
倫子「……まゆり」
ダル「すまんすまん。それで、どこまで話したっけ」
倫子「(ん、目が赤い?)」
鈴羽「父さん、まゆねえさんには伝えたのか? 岡部倫子が目覚めたこと」
倫子「("まゆねえさん"……そっか、この鈴羽はまゆりと仲が良いんだ。良かった)」
ダル「あ、いかん! 早く教えてやらんと」
ピッ ピッ
ダル「こちら、バレル・タイター。応答せよ」
まゆり『こちらスターダスト・シェイクハンドです。どうぞ』
倫子「ふふっ……可愛いコードネーム」
ダル「心して聞いてくれ。オカリンが……目覚めた」
まゆり『……! ほんとに、オカリンが……!?』
ダル「フェイリスたんもるか氏も一緒だろう? 3人とも、すぐ戻って来てくれないか」
まゆり『…………』
ダル「まゆ氏?」
フェイリス『ダメ。マユシィは嬉しさのあまり涙ぐんで声も出ないみたい』
倫子「……まゆり」
300: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:25:08.08 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「……なんで、まゆねえさん達、食料調達に出ている?」
ダル「え?」
フェイリス『確かに今日だって、昨日の夜遅くに連絡が……』
鈴羽「……罠だッ!!」
まゆり『きゃぁっ!?』 パララッ パラララッ
倫子「銃声!?」
るか『まゆりちゃん! フェイリスさん! 逃げて! ここはボクが!』
鈴羽「父さん、救出に向かおう!」
ダル「おう! オカリン、ここを頼んだのだぜ」
倫子「で、でもっ!」
ダル「大丈夫。僕たちは今までもやってこれたんだからさ。それに、オカリンの言葉が正しいなら、鈴羽を過去に送るまでは収束が働くはずだろ?」
倫子「……無事で、帰って来て」
ダル「オーキードーキー!」
301: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:27:15.56 ID:2j/8NxTHo
倫子「……みんなならきっと、大丈夫だよね」
倫子「(試しに未来視してみるか。って、今誰も居ない――)」キョロキョロ
??「おばあちゃん、だあれ?」ヒョコッ
倫子「えっ……? あなたは……もしかして、かがり、ちゃん?」
かがり「うん。そうだよ」
倫子「(これが未来のかがりちゃん……まだ綯と同じくらいの歳か。いや、今は綯も大人になってるんだっけ)」
倫子「初めまして、かがりちゃん。私は、あなたのママのお友達よ」ギュッ
倫子「(手を繋がせてね。脳を借りて……あれ? 未来視ができない。拷問のせいなのかな……)」
かがり「まゆりママのお友達?」
倫子「そうだよ。かがりちゃんは、ママのこと、好き?」
かがり「うんっ、だーいすきっ!」
倫子「……そっか。よかった」
倫子「(……立派にお母さんやってたんだ。すごいなぁ、まゆりは……)」
かがり「ママたちのこと、心配?」
倫子「えっ? ……うん」
かがり「あのね? そういう時はね、お空に手を伸ばすと、神様が見守っててくれるってママ言ってた」
倫子「お空に……」
302: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:27:43.18 ID:2j/8NxTHo
プルルル プルルル
倫子「ダルの無線……? はい、もしもし」
鈴羽『……岡部倫子。今、外での戦闘が終わった。もし良かったら、外まで来てほしい……』
倫子「え? な、なんで?」
鈴羽『……今のあたしたちに、命を救う医療が無いから。そして、遺体を回収できないから』
倫子「……ど、どういう……」プルプル
倫子「(まさか、まゆりたちの誰かが……!? 嘘、嘘……)」ガクガク
鈴羽『とにかく、すぐ外で待ってる。声をかけたいなら、急いだ方がいい』
倫子「そんな……っ!!」タッ
倫子「(くっ、思うように体が動かないけど……それでも……っ)」ズル ズル
かがり「おばあちゃん? ママ?」
倫子「……かがりちゃんはここで大人しくしててね。いい子だから……」
303: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:28:34.10 ID:2j/8NxTHo
中央通り
倫子「あ……あぁ……そんな……」ガクッ
フェイリス「凶真ぁ……るかが……るかがぁ……っ!」ポロポロ
まゆり「るかくん……ぅううぅっ!!」ポロポロ
倫子「ルカ子……ねえ……嘘でしょ……」ダキッ
るか「岡部……さん……? い、いるんですか……」
倫子「(目は開いてるのに、もう、私が見えてないんだ……)」グスッ
倫子「うん、居るよ……ここに、私は居る……」
るか「よかった……さっきのはなしは、うそじゃ、なかったん、ですね……」
るか「さすが……凶真さん、です……やっぱり、生きてた……」
倫子「うん……みんなのおかげで、こうして目覚めることが出来たよ……ありがとう……」ヒグッ
るか「清心斬魔流で……みんなを……まもれて……」
るか「凶真さんと……一緒に放った……青白い斬撃は……だせませんでしたけど……ゴフッ」
倫子「(……α世界線の時の記憶が、ルカ子に守る力を……っ)」
倫子「うん……っ」ギュッ
倫子「あ……あぁ……そんな……」ガクッ
フェイリス「凶真ぁ……るかが……るかがぁ……っ!」ポロポロ
まゆり「るかくん……ぅううぅっ!!」ポロポロ
倫子「ルカ子……ねえ……嘘でしょ……」ダキッ
るか「岡部……さん……? い、いるんですか……」
倫子「(目は開いてるのに、もう、私が見えてないんだ……)」グスッ
倫子「うん、居るよ……ここに、私は居る……」
るか「よかった……さっきのはなしは、うそじゃ、なかったん、ですね……」
るか「さすが……凶真さん、です……やっぱり、生きてた……」
倫子「うん……みんなのおかげで、こうして目覚めることが出来たよ……ありがとう……」ヒグッ
るか「清心斬魔流で……みんなを……まもれて……」
るか「凶真さんと……一緒に放った……青白い斬撃は……だせませんでしたけど……ゴフッ」
倫子「(……α世界線の時の記憶が、ルカ子に守る力を……っ)」
倫子「うん……っ」ギュッ
304: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:29:28.75 ID:2j/8NxTHo
―――――――――――――――
いいか、ルカ子。
そんなことでは、ラグナロックが始まった時、防人(さきもり)としての役目を果たせんぞ。
お前は、この秋葉原における、最後の盾なんだ。
お前が揺らげば、防衛線は総崩れになってしまう。
心を強く持て、ルカ子。
それと、これだけは忘れるな。
このオレ、鳳凰院凶真は、何があっても死にはしない。
何故なら、それが、それこそが、運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だからだっ!!
――――――――――――――――
305: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:29:57.16 ID:2j/8NxTHo
倫子「(この世界線のルカ子の記憶……そういや私、そんなこと、言ったっけ……)」
るか「男が……好きな子にすがりついて生きてきたなんて、かっこ悪いですもんね……」
倫子「どうして、そんなにまで私を……っ」グスッ
るか「誰にもうちあけられずに……とどかなくても……この気持ち、抱きしめていたくて……」
倫子「……ルカ子、かっこいいよ。世界中の誰よりも、かっこいいよ……っ!」ギュッ
るか「……えへへ……うれしい、な……」
るか「おぼえていて……くれますか……?」
倫子「うん……っ。うん……!」ポロポロ
るか「……あなたは……だれよりもうつくしくて……つよいヒト……」
るか「……そんな岡部さんが……ボクは……」
るか「…………」
るか「…………」
るか「…………………………………………」
306: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:30:27.51 ID:2j/8NxTHo
倫子「(ああ、またこの感覚だ……もう何度目だろう。まゆりも、紅莉栖も、ルカ子も)」
倫子「(私の腕の中で、命が消えていく感覚……)」ポロポロ
まゆり「……よかった。るかくんは、オカリンにずっと会いたがっていたから。オカリンのこと、大好きだったから」
まゆり「最期に会えたのは、本当に、よかった……」
倫子「(……まゆりにそんな台詞を言わせるなんて、なんて世界なんだ、ここは……)」
まゆり「あなたは、とても立派に戦いました。私たちは、あなたに救われました。どうか、安らかに」
倫子「(こんなの、あんまりだ――――)」
倫子「う、あぁぁぁぁぁあああああああ…………!」
307: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:31:22.31 ID:2j/8NxTHo
ワルキューレ基地
まゆり「……オカリン、落ち着いた?」
倫子「うぐっ……。まゆりは、強いね……」
倫子「(泣きたいのに涙が出なかった。たぶん、長年の寝たきり生活のせいだろう)」
まゆり「私はずっと、オカリンを信じてたから」
倫子「まゆり……」
フェイリス「……一応、持ってきた食糧を整理しないといけない。それが、るかから託された最後の仕事だから」
まゆり「うん。かがりちゃん、手伝ってくれる?」
かがり「うんっ、ママ! 倉庫に行くね」
倫子「わ、私も――」
鈴羽「岡部倫子、父さんが呼んでる。こっちへ」
倫子「あ、うん……」
まゆり「……オカリン、落ち着いた?」
倫子「うぐっ……。まゆりは、強いね……」
倫子「(泣きたいのに涙が出なかった。たぶん、長年の寝たきり生活のせいだろう)」
まゆり「私はずっと、オカリンを信じてたから」
倫子「まゆり……」
フェイリス「……一応、持ってきた食糧を整理しないといけない。それが、るかから託された最後の仕事だから」
まゆり「うん。かがりちゃん、手伝ってくれる?」
かがり「うんっ、ママ! 倉庫に行くね」
倫子「わ、私も――」
鈴羽「岡部倫子、父さんが呼んでる。こっちへ」
倫子「あ、うん……」
308: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:31:59.78 ID:2j/8NxTHo
ダル「オカリン、伝言があるお。2025年のオカリンから」
倫子「え……?」
ダル「"紅莉栖"を『Amadeus』の呪縛から解放してやってくれ」
ダル「シュタインズゲート世界線への道は険しい。一度や二度、やり直したところで、辿りつける道ではないだろう」
ダル「けれど、まずはそこから始めることが、運命石の扉<シュタインズゲート>へと繋がるんじゃないか」
ダル「いくつもの未来の先が、過去へと繋がっているんじゃないか――」
倫子「紅莉栖を……」
ダル「だからさ、僕たちがいるこの世界も無駄じゃない。きっと必要な世界なんだ」
ダル「もう一度、戻って考えてみてもいいんじゃね? オカリンの記憶の途切れたその時間に、さ」
倫子「も、戻るって……? でも、どうやって……?」
309: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:32:54.18 ID:2j/8NxTHo
真帆『できるわ』
倫子「ひ、比屋定さん! 無線から……?」
真帆『久しぶりね、岡部さん。25年ぶりかしら。まずあなたに、部屋の奥を見てほしい」
倫子「え……。こ、これ、電話レンジ(仮)……!」
真帆『私が作ったものよ。48時間制限を超えて、2週間は安全に跳べる』
倫子「す、すごい……どういう原理?」
真帆『単純にサンプリングレートを上昇させただけ。それにはやっぱり、未来の技術が必要だった』
真帆『アナログな脳の情報をデジタル化するにあたって、より精密なデータを採れれば、精神と肉体のギャップが減る、ってだけのこと。完全に0にはできないけれど』
ダル「オカリンを救出してからの間、ずっとヘッドギアを装着させてたから、"受信"は可能なのだぜ」
真帆『このマシンを改良したのが2026年頃だから、それ以前は48時間しか跳躍できないけどね』
310: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:33:54.06 ID:2j/8NxTHo
倫子「で、でも記憶圧縮用のブラックホールはどうするの?」
ダル「タイムマシンを造った僕たちが自力でブラックホール作れないわけないっしょ。そもそも、2010年7月時点で電子レンジの中にブラックホールを作ることは一応成功してたわけだし」
倫子「あ、そっか。やろうと思えばブラックホールはいくらでも作れたんだ」
ダル「でも、2025年より前は安定性を考えて、岩手県の山中にある東北ILC<国際リニアコライダー>を使わせてもらってる」
ダル「この頃、LHCは謎のハッカーによって破壊されてるんだよね」
ダル「もち接続はバッチシ。SERNって世界中のそういう機関と超高速光回線で繋がってるのな、300人委員会便利すぎワロタ」
『カモフラージュのために、世界中のラウンダー幹部の居場所や研究所にも直通回線を引かせてもらったわ』
倫子「(これも紅莉栖のおかげか……)」
ダル「それで、SERNのLHCが使える時代に入ったら、オカリンがよく知ってるタイムリープになるはずだお」
311: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:34:58.82 ID:2j/8NxTHo
倫子「でも、待って。私がタイムリープし続けたら、死の収束を騙せなくなっちゃうんじゃない?」
倫子「だって、2025年も、2026年も、私は目覚め続けるわけだから……」
ダル「言ったろ? 世界線にとっての"死"は、僕たちの常識で言う"死"じゃない……」
ダル「それに、タイムリープじゃ大幅な世界線変動は起こせないって教えてくれたのは、オカリンじゃんか」
倫子「あ、そっか……。今ここで因果の"因"を作っちゃったから、どれだけタイムリープしてもこの因は残り続ける。この2036年の世界は残り続けるんだ……」
真帆『途轍もなくつらい旅になるわ。だけど、岡部さん、あなたなら――』
倫子「……やるよ。α世界線のダルも、綯もやり遂げたことだしね」
倫子「それに、今の私にそれ以外の選択肢はないでしょ」
倫子「私になにができるかわからないけど――」
倫子「……ふたりとも、お願い。私を過去に送って」
ダル「……オカリン、オーキードーキー!」ニッ
真帆『岡部さん……ありがとう』
312: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:35:35.86 ID:2j/8NxTHo
真帆『もしも次に紅莉栖に会えたら言ってやって。未来の私は、あなたの7倍もの時間跳躍を可能にしたわよ、って』
倫子「……わかった」フフッ
ダル「準備オーケーだ!」
鈴羽「待って。まゆねえさんたちとは話さなくていいの?」
倫子「……今跳ばないと、私はまた、まゆりの胸にすがってしまうかもしれないから」
鈴羽「……そっか」
倫子「それじゃあ、また。2週間前に会おう」
真帆『しっかりね』
313: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:36:13.23 ID:2j/8NxTHo
―――――――――――――――――――――――――――――――
2036年3月7日17時13分 → 2036年2月21日17時13分
―――――――――――――――――――――――――――――――
314: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:37:03.90 ID:2j/8NxTHo
2036年2月21日(木)17時13分
暗室
ダル「……どう?」
真帆「記憶はダウンロードされたはずだけど……」
倫子「…………」
まゆり「オカリン、起きないね……」
ダル「やはり失敗か、あるいは――」
倫子「――――ッ!!」
倫子「(う……久しぶりにタイムリープしたけど、やっぱり気持ち悪いな……。そして声も出ないし身体も動かない……)」
まゆり「オ、オカリン? 今、少し動いたような……」
倫子「ぅ……ぁ……」
倫子「(ホントにまゆりたちが世話しててくれたんだ……)」
暗室
ダル「……どう?」
真帆「記憶はダウンロードされたはずだけど……」
倫子「…………」
まゆり「オカリン、起きないね……」
ダル「やはり失敗か、あるいは――」
倫子「――――ッ!!」
倫子「(う……久しぶりにタイムリープしたけど、やっぱり気持ち悪いな……。そして声も出ないし身体も動かない……)」
まゆり「オ、オカリン? 今、少し動いたような……」
倫子「ぅ……ぁ……」
倫子「(ホントにまゆりたちが世話しててくれたんだ……)」
315: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:37:43.36 ID:2j/8NxTHo
まゆり「オカリンッ!? 私、まゆりだよ!? わかる!?」
倫子「(わかるに決まってるじゃない。大人になっても、まゆりはまゆりだよ)」コクッ
まゆり「オカリン……っ!」ダキッ
ダル「オカリン! よかった、目覚めてくれたか!」
真帆「本当によかった……」ウルッ
倫子「(初めて未来の真帆ちゃんを見たけど、やっぱりあんまり歳を取ってるようには見えない)」
倫子「(みんなに感謝したい。言葉を交わしたい。でも、今は――)」
倫子「タイ、ム……リープ……」
ダル「なに? タイムリープ……もしかしてオカリン、2週間後からタイムリープしてきたのか?」
倫子「うん……ゴフッ」
真帆「なるほど、やっぱり覚醒には時間がかかったのね」
真帆「わかったわ。すぐにタイムリープの準備をしましょう」
まゆり「……オカリン、頑張って」
倫子「うん……」
316: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:38:14.53 ID:2j/8NxTHo
―――――――――――――――――――――――――――――――
2036年2月21日17時35分 → 2036年2月7日17時35分
―――――――――――――――――――――――――――――――
317: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:39:07.44 ID:2j/8NxTHo
2036年2月7日(木)17時35分
暗室
倫子「――――ッ!!」
るか「え……凶真さん!? 今、凶真さんが動いたような……!」
フェイリス「ホント!? で、でも、まだ記憶が見つかってないのに――」
倫子「タイム……リープ、して、きた……ゴフッ」
るか「そ、そうなんですね……! よかったぁ……!」ウルッ
倫子「(ああ、ルカ子が生きてる……本当にかっこいい男性になったんだなぁ)」
倫子「(……こんな姿を見られちゃって、ちょっと恥ずかしい)」
フェイリス「喜んでる場合じゃないよ。すぐにタイムリープの準備をしてもらわないと」
るか「そ、そうですね。凶真さん、今からワルキューレ本部まで連れて行きます」
倫子「おね……がい……」
暗室
倫子「――――ッ!!」
るか「え……凶真さん!? 今、凶真さんが動いたような……!」
フェイリス「ホント!? で、でも、まだ記憶が見つかってないのに――」
倫子「タイム……リープ、して、きた……ゴフッ」
るか「そ、そうなんですね……! よかったぁ……!」ウルッ
倫子「(ああ、ルカ子が生きてる……本当にかっこいい男性になったんだなぁ)」
倫子「(……こんな姿を見られちゃって、ちょっと恥ずかしい)」
フェイリス「喜んでる場合じゃないよ。すぐにタイムリープの準備をしてもらわないと」
るか「そ、そうですね。凶真さん、今からワルキューレ本部まで連れて行きます」
倫子「おね……がい……」
318: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:40:31.98 ID:2j/8NxTHo
るか「失礼します」ヨイショ
倫子「(う、うわ、お姫様抱っこ……)」カァァ
フェイリス「さすが男の子だね。今の時間なら外は大丈夫だと思うけど、急いだほうがいい」
るか「ええ。それじゃ、凶真さん。しっかり捕まっててくださいね」
倫子「あ……///」ドキッ
倫子「(って、何をルカ子にトキめいているんだ私は……!)」ドキドキ
フェイリス「凶真、もう聞いてるかもしれないけど、一応言っておくね」
フェイリス「これからタイムリープ先で、留未穂たちがちょうど居合わせてることのほうが少ないと思う」
フェイリス「その場合、無理に外に出ようとしないで。1日に1回は必ず留未穂たちの誰かがここを訪ねるから」
フェイリス「つらいだろうけど、それまで我慢して待っててほしい」
倫子「うん……わかった……」
319: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:41:05.75 ID:2j/8NxTHo
―――――――――――――――――――――――――――――――
2036年2月7日18時57分 → 2036年1月24日18時57分
―――――――――――――――――――――――――――――――
320: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:41:52.28 ID:2j/8NxTHo
・・・
私はタイムリープを繰り返し、暗室で目覚め続けた。
タイムリープマシンが改良された2026年まで600回ほど。
そこから2025年まで250回ほど。
合計約850回かかった。
部屋を出れば廃墟、死体の山、爆撃機の音。
途中、死にそうな目に遭ったこともあった。その度に仲間たちに助けてもらった。
途中、何度も諦めそうになったこともあった。その度に仲間たちに励ましてもらった。
さあ、あと2150回――――
・・・
321: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:42:31.94 ID:2j/8NxTHo
2025年
ダルの隠れ家
拓巳「肉体はぎりぎり生きてるけど、魂はもう、二度と浮上してくることはないと思う」
倫子「――――ッ!」ビクッ
拓巳「う、うわああぁぁっ!?!?」ズテーンッ!!
倫子「(あれ? この男はたしか、セナと一緒に居た西條……ああ、今思えばテレビでやってたエスパー少年だ。でも、どうして私のそばに?)」
ダル「オ、オカリン!?」
澤田「意識が!?」
倫子「(よかった、ダルが居る。隣の蛇みたいな顔の男は……ワルキューレの仲間?)」
倫子「ぅ……ぁ……ゴフッ」
拓巳「……!? こ、心が、ある……魂が、宿ってる……ど、どど、どういうこと……!?」
倫子「(タイムリープは、OR物質も跳ばすことになるからね……)」
ダル「も、もしかしてオカリン、タイムリープしてきたん?」
倫子「う、うん……」
澤田「なるほど、これがタイムリープ……」
ダルの隠れ家
拓巳「肉体はぎりぎり生きてるけど、魂はもう、二度と浮上してくることはないと思う」
倫子「――――ッ!」ビクッ
拓巳「う、うわああぁぁっ!?!?」ズテーンッ!!
倫子「(あれ? この男はたしか、セナと一緒に居た西條……ああ、今思えばテレビでやってたエスパー少年だ。でも、どうして私のそばに?)」
ダル「オ、オカリン!?」
澤田「意識が!?」
倫子「(よかった、ダルが居る。隣の蛇みたいな顔の男は……ワルキューレの仲間?)」
倫子「ぅ……ぁ……ゴフッ」
拓巳「……!? こ、心が、ある……魂が、宿ってる……ど、どど、どういうこと……!?」
倫子「(タイムリープは、OR物質も跳ばすことになるからね……)」
ダル「も、もしかしてオカリン、タイムリープしてきたん?」
倫子「う、うん……」
澤田「なるほど、これがタイムリープ……」
322: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:43:12.28 ID:2j/8NxTHo
ワルキューレ基地
ダル「それで、今からオカリンを48時間前に飛ばす。僕と真帆たんがオカリンを発見したのは2011年2月1日だった」
ダル「オカリンが拷問されたのもその日だ。オカリンは、ほんの数時間のうちに14年分の拷問をされたらしい」
倫子「そんな技術が……」
ダル「だけど、それが仇になったってわけ。そのあとすぐに病院に運ばれて、オカリンのケータイは僕が持ってたから、当時の僕なら眠ってるオカリンに電話に出させると思われ」
ダル「48時間タイムリープでも余裕で拷問期間を突破できるってわけ」
ダル「まあ、間違って拷問されてるタイミングへ向けてタイムリープしようとしたところで、そもそも電話がかからないから跳べないだけで特に問題はないんだけど」
倫子「……わかった。それじゃ、私を過去に」
ダル「オーキードーキー!」
ダル「それで、今からオカリンを48時間前に飛ばす。僕と真帆たんがオカリンを発見したのは2011年2月1日だった」
ダル「オカリンが拷問されたのもその日だ。オカリンは、ほんの数時間のうちに14年分の拷問をされたらしい」
倫子「そんな技術が……」
ダル「だけど、それが仇になったってわけ。そのあとすぐに病院に運ばれて、オカリンのケータイは僕が持ってたから、当時の僕なら眠ってるオカリンに電話に出させると思われ」
ダル「48時間タイムリープでも余裕で拷問期間を突破できるってわけ」
ダル「まあ、間違って拷問されてるタイミングへ向けてタイムリープしようとしたところで、そもそも電話がかからないから跳べないだけで特に問題はないんだけど」
倫子「……わかった。それじゃ、私を過去に」
ダル「オーキードーキー!」
323: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:44:01.09 ID:2j/8NxTHo
それから私は何度も何度も何度も何度も……タイムリープし続けた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
2011年2月4日13時51分 → 2011年2月2日13時51分
―――――――――――――――――――――――――――――――
324: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:45:40.24 ID:2j/8NxTHo
2011年2月2日(水)13時51分
御茶ノ水医科大学病院 病室
prrrr prrrr
ダル「……あ、あれ? オカリンのケータイが鳴ってる……この電話番号、僕じゃんか」
ダル「もしかしなくても、これって僕と真帆たんが昨日作ったアレだよな……未来の僕が、目覚めたオカリンを過去に送った」ゴクリ
ダル「オカリン、電話に出てくれ」スッ ピッ
倫子「――――っ!」ガバッ
倫子「(ぐっ……相変わらず全身が痛い……)」
ダル「オ、オカリン!? 大丈夫か!?」
看護師「先生! 患者さんの意識が戻りました!」
御茶ノ水医科大学病院 病室
prrrr prrrr
ダル「……あ、あれ? オカリンのケータイが鳴ってる……この電話番号、僕じゃんか」
ダル「もしかしなくても、これって僕と真帆たんが昨日作ったアレだよな……未来の僕が、目覚めたオカリンを過去に送った」ゴクリ
ダル「オカリン、電話に出てくれ」スッ ピッ
倫子「――――っ!」ガバッ
倫子「(ぐっ……相変わらず全身が痛い……)」
ダル「オ、オカリン!? 大丈夫か!?」
看護師「先生! 患者さんの意識が戻りました!」
325: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:46:23.89 ID:2j/8NxTHo
・・・・・・
倫子「ふぅ……ダル、いつもありがと」
ダル「まさか25年もタイムリープしてくるなんて……オカリン、無茶しやがって」ウルッ
倫子「ダル、目が赤いよ?」
ダル「べっ、別にオカリンが廃人になっちゃって一晩泣いてたとかじゃないんだからね!? 勘違いしないでよねっ!」ズビーッ
倫子「ふふっ。……私は昨日電機大の地下でストラトフォーに拷問された。そうだよね?」
ダル「え、ストラトフォー? 確かにオカリンを見つけたのは電機大だけど、それマジ?」
倫子「あと1回タイムリープすれば、私は戻れる……!」
ダル「……わかったお。すぐタイムリープの準備を始めるけど、退院はどうしよう?」
倫子「そんなもん、無理やり突破すればいいよ。どうせなかったことになる」
ダル「そ、そっか。オカリン、もう何回もそうやってここまで来たんだよな……」
倫子「さあ、行こう。最後のタイムリープだ」
ダル「オーキードーキー!」
326: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:47:00.47 ID:2j/8NxTHo
―――――――――――――――――――――――――――――――
2011年2月2日18時27分 → 2011年1月31日18時27分
―――――――――――――――――――――――――――――――
327: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:47:31.63 ID:2j/8NxTHo
2011年1月31日(月)18時27分
未来ガジェット研究所
倫子「――――帰って、きた」
倫子「戻って……きたんだ……」ウルッ
フェイリス「んー? 誰がニャ?」
倫子「みんな……っ」グスッ
ダル「え、誰か来たん?」
かがり「……?」
真帆「どうしたの?」
倫子「……ううん、なんでもない」グシグシ
まゆり「あのね、あのね。オカリン」
倫子「まゆり……」
まゆり「おかえり、オカリン」ニコ
倫子「……ふぇぇ」グスッ
未来ガジェット研究所
倫子「――――帰って、きた」
倫子「戻って……きたんだ……」ウルッ
フェイリス「んー? 誰がニャ?」
倫子「みんな……っ」グスッ
ダル「え、誰か来たん?」
かがり「……?」
真帆「どうしたの?」
倫子「……ううん、なんでもない」グシグシ
まゆり「あのね、あのね。オカリン」
倫子「まゆり……」
まゆり「おかえり、オカリン」ニコ
倫子「……ふぇぇ」グスッ
328: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:48:28.62 ID:2j/8NxTHo
・・・
ダル「あれから1時間近くまゆ氏の豊かな の中で泣き続けて、ホントいったいどうしちゃったのだぜうらやましい」
倫子「ご、ごめん……グスッ……」
まゆり「オカリンは頑張ったんだよね、まゆしぃ、知ってるよ」ナデナデ
倫子「……ありがとう、まゆり。元気出た」グシグシ
まゆり「えっへへー、まゆしぃ、オカリンの役に立てたねー♪」
倫子「(一応、まゆりの脳を借りて未来視をさせてもらった。脳が若返ったせいか、その能力は健在だった)」
倫子「(やはり、この世界線での確定事項は私の見てきた通りだ)」
倫子「(でも、それは意志の力で変えることができる。収束を超えられなくても、収束へと至る過程を変えることができる)」
倫子「(……やろう。ここまで来たんだから)」
倫子「(紅莉栖を、"紅莉栖"を救うために……!)」
329: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:49:28.60 ID:2j/8NxTHo
ダル「オカリン……もしかして、世界線移動してきたん?」ヒソヒソ
倫子「ううん、未来からタイムリープしてきた」
ダル「え、マジで?」
倫子「今みんなが集まってるのは比屋定さんの見送り?」
ダル「そうだお」
真帆「えっと、そろそろ空港へ行かないといけないのだけど、レスキネン教授から連絡がないのよね」
倫子「比屋定さん、記憶の読み取り装置をこの前作った、よね?」
真帆「え、ええ。昨日作って、あなたの記憶のバックアップデータを採ったじゃない。もしかして、そのせいで記憶が曖昧になってる?」オロオロ
倫子「そう……。今日もしアメリカへ帰れそうになかったら、ここに泊まっていいからね」
真帆「え?」
倫子「かがりちゃん。頭の中に、別の人間の記憶がある、なんてことはないよね?」
かがり「えっと、未来の記憶は2週間くらい前に思い出して、この時代に来てからの記憶はないよ。でも、別の人の記憶?」
倫子「いや、少し確かめただけだよ。気にしないで」
かがり「なにそれー。変なオカリンさん」フフッ
330: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:50:19.55 ID:2j/8NxTHo
・・・
倫子「(みんなを帰した後、ひとりになって考える。これからどうすべきか)」
倫子「(だけど、答えは既に出ていた。ひとりじゃ何もできない、ということが)」
ガチャ バタン
真帆「結局レスキネン教授がどこにいるかわからなくて、アメリカへは帰れなくなったわ。電機大のオフィスもまだ片付いてなかったみたいだし」
真帆「(まさか、橋田さんが言ってた、岡部さんが未来からタイムリープしてきたって言うのは本当……?)」
倫子「……真帆ちゃん」
真帆「だからちゃん付けするなと……岡部さん、何か気になることでもあるの?」
倫子「え……?」
真帆「(あなたにとってはこの話、してないことになってる可能性があるのかしら……)」
真帆「(試してみましょうか)」
真帆「私じゃ紅莉栖の代わりにはなれないかもしれないけど、それでもよければ話してみて」
331: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:51:04.38 ID:2j/8NxTHo
倫子「(もう私には、真帆ちゃんを巻き込まないようにしよう、などという気持ちは微塵も無かった)」
倫子「(今からタイムリープマシンを完成させ、改良させ、私を過去に送るのは、まぎれもない彼女なのだから)」
倫子「比屋定さん、聞いてほしい話がある。嘘だと思うかもしれないけれど、それでも、信じて欲しい」
真帆「……信じるわよ。あなた、私の命の恩人だってこと、忘れてるんじゃないの?」
真帆「私が紅莉栖のことを信じたいと思ったように……そう、サリエリとモーツァルトが互いを尊敬していたという話ね」
真帆「それと同じように、私はあなたのことも信じたいと思ってるのだから」
真帆「あなたにも、私を信じて欲しい……ってのは、ちょっと言いすぎかしら」
倫子「ううん! そんなことないよ」
真帆「(……昨日と同じ話をしても新鮮な反応が返ってくる。これはやっぱり……)」
倫子「嘘みたいな話だけど、聞いてくれる?」
真帆「ええ。どんな話でも信じるわ」
332: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:51:38.43 ID:2j/8NxTHo
・・・
真帆「信じられない……」
倫子「信じてくれるって言ったのに」ムーッ
真帆「でも、信じないわけにはいかないわよね。こんなものを見せられたら」
ラジ館屋上
真帆「本物のタイムマシン……」
鈴羽「あんまり部外者に見せるのはよくないと思うんだけど、リンリン?」ムッ
倫子「鈴羽はまだ知らないだろうけど、この人も私たちの味方だよ。少なくともこの世界線ではそれが確定してる」
鈴羽「ふーん? まあ、リンリンが言うなら信じるけどさ」ジトーッ
真帆「あなたが私を警戒するのもよく分かる。でも、鈴羽さんとかがりさんが未来から来たってことで色々合点が行った」
真帆「紅莉栖があなたと仲良くなれた理由、とかもね。まさか別の世界の紅莉栖とは思わなかったわ」
倫子「……うん」
333: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:52:18.57 ID:2j/8NxTHo
真帆「紅莉栖のノートPCとポータブルHDDに入ってるのが、タイムマシンに関する論文だったなんてね」
倫子「だけど、パスワードがわからないんだよね……」
真帆「えっ? パスワードは岡部さんが教えてくれたじゃない」
倫子「え? そ、そうなの?」
真帆「そっか、あなたは別の世界線の岡部さんだったわね。この世界線では、私と橋田さんの2人だけがパスワードを知ってるわ」
倫子「……それ、誰にも言っちゃダメだよ。もちろん、私にも」
真帆「なるほどね、わかったわ」
334: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:53:53.45 ID:2j/8NxTHo
倫子「これで私は、あなたを巻き込んでしまった。多分もう逃げられないよ」
真帆「……構わないわ。私の人生すべてを、紅莉栖を助けるために捧げることをここに誓う」
倫子「……ありがとう」ウルッ
真帆「それで、今後は何をすればいいのかしら? 泣き虫リーダーさん?」ニコ
倫子「……うん」グシグシ
倫子「えっと、この世界線の確定した未来としては、2025年に私が死ぬこと、2036年にダルがタイムマシンを完成させて娘の鈴羽を過去に送ること、がある」
倫子「でも、言ってしまえばそれだけなんだ。過程は変わる。タイムマシンの性能だって変わるはず」
倫子「そうすれば、この世界線の未来が影響を与える、どこかの世界線の過去が変わるはずなの」
倫子「注意すべきは、他の組織にタイムマシンを横取りされたりして確定した未来が変われば、世界線が変わってしまうこと。それだけはなんとしても防がないといけない」
倫子「この制限の中で、真帆ちゃんには紅莉栖の研究を引き継いでタイムマシンを完成させてほしい」
真帆「……条件が2つあるわ」
倫子「うん、言って」
335: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:54:29.16 ID:2j/8NxTHo
真帆「ひとつは、このタイムマシンを調べさせてほしいってこと」
鈴羽「あたしの監督下でなら許可するよ。タイムパラドックスになりかねない部分を触られたら困るから」
真帆「それでいいわ」
倫子「……もうひとつは?」
真帆「あなたのこと、倫子、って呼ばせてもらう。初めて会った時以来ね」
真帆「あなたは私を、真帆って呼びなさい」
鈴羽「ちょっ! ズルイよそれは!」
真帆「何がズルイのよ。あなたたちだって、あだ名で呼んだり下の名前で呼び合ってるじゃない」
鈴羽「それは、そうだけどさぁ」グヌヌ
倫子「わかったよ、真帆ちゃん」ニコ
真帆「ちゃん付けするなと!! 言ってるでしょーが!!」ウガーッ
倫子「ふふっ。よろしくね、真帆」ニコ
真帆「……まったく。よろしくね、倫子」ニコ
ガシッ!!
336: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 20:55:08.89 ID:2j/8NxTHo
私は弱い。
その弱さを仮面<ペルソナ>で隠さなければ生きていけない。
誰かを頼らなければまともに前を向くことすらできない。
だけど、真帆となら、みんなとなら、到達できるかもしれない。
鳳凰院凶真なら、あるいは。
大事なことを思い出してくれるかもしれない。
途切れそうな意識を繋ぎとめてくれるかもしれない。
たとえそれが既に現実でなくなってしまったとしても。
なかったことになっていたとしても。
あの、かけがえのない夏の日々を。
仲間たちとの想い出を。
――なかったことに、してはいけない。
337: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:10:42.18 ID:2j/8NxTHo
未来ガジェット研究所
真帆「ね、ねえ、ちょっと、あんまりくっつかないで欲しいんだけど……」
倫子「未来でね、真帆に世話になったから……。真帆のおかげでここまで戻って来れたからっ」ダキッ
真帆「うぅ、未来のことを引き合いに出されると何も言えない……」
倫子「(また脳を借りるね。真帆の未来……大丈夫、私がタイムリープしてきたことで過程が変わったとしても、やっぱり2036年まで安全みたい)」
真帆「倫子が同性愛者なのを忘れていたわ……別に構わないけれど」ハァ
倫子「はぁ~……こうやってモフモフしてると癒されるぅ……」モフモフ
真帆「や、やめなさいっ! お願いだから、真面目な話をして頂戴っ! ///」
倫子「敵は紅莉栖の記憶データを所持している。記憶適性のあるかがりを誘拐されたり、ノートPCのパスを知られたりしたら負け。そうならない対策を立案しないといけない」
真帆「急に真面目になるなぁっ!!」
鈴羽「イライライライライライライライラ」
真帆「ね、ねえ、ちょっと、あんまりくっつかないで欲しいんだけど……」
倫子「未来でね、真帆に世話になったから……。真帆のおかげでここまで戻って来れたからっ」ダキッ
真帆「うぅ、未来のことを引き合いに出されると何も言えない……」
倫子「(また脳を借りるね。真帆の未来……大丈夫、私がタイムリープしてきたことで過程が変わったとしても、やっぱり2036年まで安全みたい)」
真帆「倫子が同性愛者なのを忘れていたわ……別に構わないけれど」ハァ
倫子「はぁ~……こうやってモフモフしてると癒されるぅ……」モフモフ
真帆「や、やめなさいっ! お願いだから、真面目な話をして頂戴っ! ///」
倫子「敵は紅莉栖の記憶データを所持している。記憶適性のあるかがりを誘拐されたり、ノートPCのパスを知られたりしたら負け。そうならない対策を立案しないといけない」
真帆「急に真面目になるなぁっ!!」
鈴羽「イライライライライライライライラ」
338: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:11:25.10 ID:2j/8NxTHo
ガチャ
ダル「呼ばれたから来たのだぜ、オカリン。どうしたん……おっと、お取込み中だった?」
真帆「ち、違うから!」
まゆり「あれれ~、何をしてたのかな~?」ニコニコ
真帆「何もしてないってば!」
るか「不潔です……」
かがり「ふけ、つ? ってなあに?」
フェイリス「戻ったニャ! わざわざみんなを呼びつけてなんのお話かニャ?」
倫子「みんな、もう遅いのにありがとう。その前に、鈴羽」
鈴羽「……あ?」イラッ
倫子「鈴羽は……私のこと、どう思ってる?」
鈴羽「世界一素敵な女性だと思ってますけどそれが何か?」イライラ
倫子「お、怒ってる……。いや、そうじゃなくて、過去へ跳ばない私を半年間見続けて、私をどう思ってたか、率直な言葉を聞かせて欲しい」
鈴羽「……正直言うと、腹が立ってしょうがなかった」
フェイリス「っ! スズニャン、あんまり変なことを言うと――」
倫子「いいの、フェイリス。大丈夫だから」
339: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:12:06.01 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「あたしはリンリンが大好きだった。父さんや母さんたちと囲まれて過ごした数年間は今でもあたしの宝物だ」
鈴羽「だけど、リンリンは椎名まゆりを庇って死んだ」
まゆり「…………」
鈴羽「あたしは椎名まゆりを憎んだ……けど、もっと根本的な原因があるって父さんから教わった」
鈴羽「β世界線の収束。第3次世界大戦が起きる限り、岡部倫子は2025年に死ぬ」
鈴羽「それだけじゃない。未来の世界では、誰も彼もがつらい思いをしている。母さんみたいに無惨に殺されてしまうかもしれない」
鈴羽「それでもあたしたちは、必死になって生きていた」
鈴羽「そして、そんな世界を変えられるのは2010年のリンリンしか居ない……それなのに、弱音ばかり吐いて、自分だけがつらい、みたいなことを言って」
倫子「…………」ウルッ
ダル「ちょ、鈴羽……」
倫子「う、ううん、ごめん。続けて」グシグシ
340: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:13:09.07 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「もちろん、今のリンリンのこと、あたしだってよくわかってる」
鈴羽「本当につらい経験をしたことも、あたしのせいで心を壊してしまったことも」
鈴羽「それでも、リンリン以外に頼れる人は居ないんだ……」ギリッ
鈴羽「あの時、椎名まゆりに邪魔されずに、リンリンをぶん殴って過去へ連れていけたらって……」
鈴羽「何度も後悔して、その結果が今なんだって思うとたまらなく悔しくて……」
倫子「……タイムマシンがある限り、時間は関係ないよ」
鈴羽「え……?」
倫子「後悔してるなら、私を殴ってほしい。あなたの信じた"私"を信じるなら、この私を殴って」
鈴羽「…………」
まゆり「す、スズさん、やめて! オカリンは……」
倫子「いいの、まゆり。これが半年間、止まり続けた私と鈴羽の時間を動かす、唯一の方法なんだから」
鈴羽「……確かに、そうだね。じゃあ、本気で行く」グッ
倫子「うん……」ゴクリ
まゆり「だ、だめぇっ!」
341: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:13:39.78 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「せいっ――――!!」スッ
トス
倫子「(ヒッ……あ、あれ? 痛くない? お腹に鈴羽の拳が当たってるけど、寸止め?)」
まゆり「やめて……」ギュッ
鈴羽「……いいよ、椎名まゆり。結局はあたしの弱さだったんだ」
鈴羽「どのみちあたしは、椎名まゆりに邪魔されるまでもなく、リンリンを殴るなんてこと、できなかった」
鈴羽「馬鹿だよね……ごめんね、"父さん"……」
ダル「……そんなことしなくてもさ、オカリンはオカリンなのだぜ」
鈴羽「えっ……?」
342: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:14:19.76 ID:2j/8NxTHo
ダル「なあ、オカリン。このラボの所長は誰なん?」
倫子「……私」
ダル「ラボメンナンバー002は?」
倫子「……まゆり」
まゆり「……まゆしぃは、人質なので」
ダル「そしてラボメンナンバー003こと天才スーパーハッカーの僕、橋田至な。高校時代からのオカリンの右腕の」
倫子「ダル……?」
ダル「ラボメンナンバー004を助けにいくんだろ? それが僕たちラボメンなんだろ?」
倫子「でも、ダルもみんなも、ラボメンだった紅莉栖のことは覚えてないはずじゃ……」
倫子「(だからこそ私は今日の今日までずっと悩んで、苦しんできたんだ。誰もラボメンナンバー004のことを覚えていないから、誰にも相談できなかった)」
倫子「(たとえ話したところで理解は不可能だと……私はずっと孤独なままなのだと……)」
倫子「(――そう、勝手に思い込んでいた)」
343: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:15:41.59 ID:2j/8NxTHo
フェイリス「覚えてニャくても、アカシックレコードの深淵で繋がってるのニャン!」
るか「阿頼耶識<あらやしき>の中に、ラボメンとしての倶有の種子<くゆうのしゅうじ>が存在しているのかもしれませんね」
鈴羽「ラボメン……か。リンリン、あたしは多分、色々間違ってた」
鈴羽「未来のことも、世界のことも、きっと、今のリンリンにとってはどうでもいいんだ」
鈴羽「だってそれらは、まだ観測されてないんだから。可能性がある限り、確定はしないんだから」
倫子「……私ひとりじゃ、無理だよ。力を貸してほしい」スッ
鈴羽「リンリンの手を握るの、半年振りだ」スッ
ガシッ!
倫子「……あの時掴めなかった鈴羽の手、今なら握り返せる」ギュッ
鈴羽「うん……リンリンの力になれるのなら、どんなことでもするよ」
鈴羽「牧瀬紅莉栖を救おう。ラボメンの彼女を救う、ただそれだけでいい」
鈴羽「それが、"あたしたち"のオペレーション」
倫子「……フフッ。そうだ、その通りだ。世界大戦だろうがディストピアだろうが、そんなことはどうでもいい」
倫子「――そんなことは、どうでもいいんだ」
344: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:16:10.95 ID:2j/8NxTHo
『だって留未穂は、凶真を守る天使なんだもん』
『……"思い出して"ください。"本当の自分"を』
『まゆしぃね、好きだったよ。鳳凰院凶真のことも、倫子ちゃんのことも』
『これだけは忘れないで。いつだって私たちはあんたの味方よ』
345: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:17:37.58 ID:2j/8NxTHo
るか「岡部、さん……?」
倫子「(凄惨な未来を見てきた私だからこそ言える……私ひとりの力で戦争に巻き込まれる人々を救おうなんて、到底できるものじゃない。でも――)」
倫子「紅莉栖は死してなお、凍える漆黒の電脳世界に封印され、悪の組織に狙われている……」
かがり「オカリンさん?」
倫子「(紅莉栖ひとりの命を救うためなら、私は、"アイツ"はきっと動ける。私ひとりじゃ無理でも、みんなの力があれば……!)」
倫子「これは、人類を救うためのミッションなどではない。牧瀬紅莉栖を蘇らせ、世界を破壊するためのミッション……」
倫子「助手の分際で第3次世界大戦の引き金<トリガー>を引くなど、もってのほかだっ! かっこいいではないかっ!」
ダル「ってそこかよ」
倫子「未来ガジェット研究所の名誉にかけて、逃げ出すわけにはいかん。ラボメンナンバー004の不手際は、我が責任だっ」
倫子「(未来を変えることができるなら。α世界線での約束を果たせるのなら……!)」
倫子「フフフ、ククク――――」
ふぅーはははぁ!!!!
346: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:20:09.34 ID:2j/8NxTHo
フェイリス「……凶真ァ!!」パァァ
まゆり「オカリン……?」
倫子「違うぞ、まゆり……」ククッ
倫子「オレは、鳳凰院凶真だぁ……」ニヤリ
倫子「("鳳凰院凶真"は、弱い自分から逃げるための仮面じゃない――――)」
倫子「(深淵に封印された、真の強さを解放するための"己"なのだっ!!)」
るか「凶真さんっ!」パァァ
倫子「そうだっ! 我が名は、鳳凰院凶真っ!!」ガバッ
倫子「支配構造を覆し、世界を混沌に陥れる狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぁっ!! ふぅーはははぁ!!」
真帆「」ビクッ
かがり「」ビクッ
倫子「ルカ子っ!! 白衣を持てっ!!」
るか「は、はいっ! おか、凶真さんっ!!」ニコ
倫子「髪型も気に入らんっ! こうしてくれるっ!」ワシャワシャ
フェイリス「ついに凶真が3000年の封印を経て、現世に復活したのニャ!!」
鈴羽「これがリンリンの真の姿……。話に聞いていた通りだ」
るか「凶真さん、白衣です。どうぞっ」
倫子「うむ!」バサッ
倫子「……これこそが我が聖なる白銀の鎧! 今この時、鳳凰院凶真はニヴルヘイムより蘇ったのだ! ふぅーはははぁ!」
347: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:20:45.72 ID:2j/8NxTHo
るか「よかったです……凶真さんが、復活してくれて……」グスッ
倫子「……ルカ子。お前に、話がある」
るか「あ、はい……えっ?」
『誰にもうち明けられずに届かなくても。この気持ち、抱きしめていたくて』
倫子「お前は、オレが好きか?」
るか「はい……え? えええっ!?!?」ビクッ!
かがり「…………」
鈴羽「…………」
まゆり「…………」
真帆「(え? なにこの空気? え?)」
348: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:21:21.83 ID:2j/8NxTHo
るか「あ、いえ、えっと、岡部、さん……?」ドキドキ
倫子「凶真だ! 我が名を忘れたか、ルカ子」
るか「す、すいません、凶真さんっ」
倫子「よく聞け。オレたちは、時空を超えた、運命の絆で繋がっている!」
倫子「そこに、男だとか、女だとか、恋人だとか……そんなことは、どうでもいい。オレは、ようやく気付いた」
倫子「ルカ子が教えてくれたんだ」
るか「ボ、ボクが……?」
倫子「オレはオレであり……、ルカ子はルカ子!」
倫子「――オレの弟子だ!!」
るか「……はいっ! エル・プサイ・コンガリィ!」パァァ
倫子「コングルゥだっ!!」
フェイリス「ルカニャン、良かったニャァ♪」
かがり「…………」ニコ
鈴羽「…………」ニコ
まゆり「…………」ニコ
真帆「(なんなのかしら、この空気……)」
349: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:22:32.45 ID:2j/8NxTHo
ダル「オカリン、ほら、ドクペ。もう随分飲んでなかっただろ?」ポイッ
倫子「フッ、さすが我が右腕。実に良き働きっ」パシッ
倫子「ごく、ごく、ごく。ぷはーっ!」
まゆり「(飲み方がかわいいのです)」 ニコニコ
倫子「クク、これこそが選ばれし者のみに許される知的飲料っ! エル・プサイ・コンウマイっ!」バサッ
真帆「……な、なんなの? どうしたの?」オロオロ
倫子「おい、そこのロリっ子!」ビシッ!!
真帆「ちょっ! 誰がロリっ子よ、誰が!!」
倫子「貴様には、ラボメンナンバー009の栄誉を与える! 以後、この鳳凰院凶真の手足となり、オレたちのオペレーションに参加するのだっ!」
真帆「運命共同体とは言ったけど、手足になるとは言ってないわよ!? それに、ラボメンナンバーって何?」
倫子「このラボの正式メンバーに選ばれた、誇り高き称号だ。光栄に思え」フッ
真帆「……ダメ、頭が痛い」ハァ
350: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:23:35.03 ID:2j/8NxTHo
かがり「これが鳳凰院凶真……ママがいつも言ってた……」
倫子「それから椎名かがり! ラボメンナンバー002を母に持つ少女よっ!」
かがり「ふぇっ!?」
倫子「貴様は、ラボメンナンバー010<ゼロイチゼロ>だ。わかったな?」
かがり「は、はいっ!」
フェイリス「ちょっと、凶真! フェイリスたちはラボメンにはしてくれないのかニャ!?」
るか「そ、そうですよ凶真さん!」
倫子「言っていなかったか。もちろん、お前たちは既にラボメンだ」
倫子「ルカ子は006、フェイリスは007、鈴羽は008、そして今ここに居ないが、鈴羽の母親である阿万音由季は011だ! いいな!」
るか「は、はい!」
フェイリス「やったニャ! フェイリスは、フェイリスは、と~っても嬉しいんだニャ!!」ピョン!
鈴羽「……了解した」フフッ
ダル「オカリン、004と005について詳細キボンヌ。みんなに説明してあげないと」
倫子「ラボメンナンバー005は桐生萌郁……陰謀の魔の手に操られし女、いずれ救出せねばならん」
倫子「そして、ラボメンナンバー004こそ、運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択……!!」
倫子「――我が助手、牧瀬紅莉栖だっ!!」
351: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:24:18.89 ID:2j/8NxTHo
倫子「ここに改めて宣言しよう!」
倫子「本日、2011年、1月31日をもって、新たなるオペレーションを発動する!」
倫子「目的は、予定された未来の粉砕! 世界の未来そのものを覆すこと!」
倫子「ラボメンナンバー004、牧瀬紅莉栖を大いなる運命の収束から解き放つ! 時空を支配し、生命の理<コトワリ>に反逆する!」
倫子「それがっ! 我ら未来ガジェット研究所のっ、ラボメンの崇高なる使命だっ! ふぅーはははぁ!」
352: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:25:39.47 ID:2j/8NxTHo
2011年2月1日火曜日
未来ガジェット研究所
スッ
倫子「……オレだぁ。これより、オレたちは新たなるオペレーションを実行に移す。……わかっているさ、それがいかに無謀でバカげているかなど」
倫子「だが、心配するな。未来のオレは言った。いくつもの未来のその先に運命石の扉<シュタインズ・ゲート>は待ってるのだ、と」
倫子「今のオレには優秀な部下たちが揃っている。たとえ機関の妨害に合おうとも、無駄に終わることなど無いはずだ」
倫子「何度だってやり直してやるさ……魔眼、リーディングシュタイナーの力でな」
倫子「エル・プサイ・コングルゥ」スッ
真帆「……何、それ……?」
倫子「…………///」カァァ
真帆「そう言えば、初めて『Amadeus』の"紅莉栖"に会わせた時の不審な挙動って、これだったのね……」
真帆「私に初めて会った時、私を見て昔の自分みたいだって言ってたけど、なるほど。くしゃくしゃの髪にノーメイク、だらしないインナーとパンツスタイル……それでも十分美人ではあるけど」
フェイリス「むしろそのほうが萌えると思わないかニャ?」
真帆「私には理解できないわ」
ダル「真帆たん、やめたげてよぉ。オカリンもまだ手探り状態だから」
倫子「お、オカリンではないっ! 鳳凰院凶真だっ!」ムッ
かがり「(かわいい)」
鈴羽「(かわいい)」
未来ガジェット研究所
スッ
倫子「……オレだぁ。これより、オレたちは新たなるオペレーションを実行に移す。……わかっているさ、それがいかに無謀でバカげているかなど」
倫子「だが、心配するな。未来のオレは言った。いくつもの未来のその先に運命石の扉<シュタインズ・ゲート>は待ってるのだ、と」
倫子「今のオレには優秀な部下たちが揃っている。たとえ機関の妨害に合おうとも、無駄に終わることなど無いはずだ」
倫子「何度だってやり直してやるさ……魔眼、リーディングシュタイナーの力でな」
倫子「エル・プサイ・コングルゥ」スッ
真帆「……何、それ……?」
倫子「…………///」カァァ
真帆「そう言えば、初めて『Amadeus』の"紅莉栖"に会わせた時の不審な挙動って、これだったのね……」
真帆「私に初めて会った時、私を見て昔の自分みたいだって言ってたけど、なるほど。くしゃくしゃの髪にノーメイク、だらしないインナーとパンツスタイル……それでも十分美人ではあるけど」
フェイリス「むしろそのほうが萌えると思わないかニャ?」
真帆「私には理解できないわ」
ダル「真帆たん、やめたげてよぉ。オカリンもまだ手探り状態だから」
倫子「お、オカリンではないっ! 鳳凰院凶真だっ!」ムッ
かがり「(かわいい)」
鈴羽「(かわいい)」
353: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:26:37.46 ID:2j/8NxTHo
真帆「それで、具体的には何をするの?」
倫子「このβ世界線においても、オレが何度か世界線の変動を経験してきたことは説明したな。まずはその原因を取り除かなくてはならない」
フェイリス「原因ってなんなのニャ?」
倫子「世界線が変動するのは確定した因果に反逆した場合だ。それはつまり、タイムトラベルを利用した場合」
倫子「そして、それを可能にする理論が誰の手にあるか。これによって世界線が変動していた」
真帆「理論……」
倫子「その理論は、ひとつは牧瀬紅莉栖のノートPCとポータブルHDD内にある。そしてもうひとつは、『Amadeus』に残る"紅莉栖の記憶"の中に」
鈴羽「それと、中鉢論文。この3つだね」
倫子「だが、中鉢論文を取り消すことは鈴羽のタイムマシンを使わなければ不可能だ。故に、現状では先の2つの消去が優先される」
倫子「これが今回のオペレーションの最終目的となる」
真帆「つまり、紅莉栖のデータを消去するってこと……!? あれは紅莉栖の生きていた証なのよ!?」
倫子「"奴ら"に悪用される前に消す必要がある。安心してくれ、その先にある未来は、必ず紅莉栖に繋がっている」
倫子「それに、あいつが生きていたという証拠は、オレたち自身のここにあるだろ?」スッ
真帆「(頭……つまり、記憶の中ってこと。突然男らしくなったわね……)」ドキドキ
真帆「陳腐な台詞だけど……わかった。あなたに従うわ」
倫子「……ありがとう」ニコ
真帆「(っ!? な、なんなの、この気持ち……こんな変な人なのに……)」ドキドキ
354: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:27:50.87 ID:2j/8NxTHo
倫子「紅莉栖のノートPCとHDDはダルが持ってるんだよな?」
ダル「うん。ホントは昨日真帆たんに渡すつもりだったんだけど、まだ僕が持ってるお」
倫子「中身だけ抜いて、安全な場所へ隔離。ノートPC自体はもしかしたら何らかの不測の事態において、交渉材料として使えるかも知れない」
倫子「無論、紅莉栖の記憶データを削除した後は、即座にノートPCとHDDは破棄だ。いいな」
真帆「ええ。でも、それは私にやらせて」
倫子「真帆、『Amadeus』が保存されているサーバーにアクセスできるか?」
真帆「出来るはずよ。橋田さん、ちょっとPCを貸してもらえる?」
ダル「一応IPがバレないように細工しておくお……おk、どうぞ」
真帆「どうも……あ、あれ? おかしいわ、アクセスできない……」カタカタ
倫子「……アクセス権限が停止されているのか?」
真帆「どういうことなのこれ。ちょっと教授に電話してみる!」prrrr prrrr
真帆「……ダメ、繋がらない。まさか、またレイエス教授に!?」
355: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:28:39.53 ID:2j/8NxTHo
倫子「既に『Amadeus』は敵の手の中に堕ちてしまったか。今、オレのスマホに『Amadeus』アプリがあるが、これを押したら……」
真帆「繋がるか、試してみて」
倫子「……いや、ダメだ。こちらが覗かれる可能性が有る。通話した瞬間ストラトフォーの人間がここに乗り込んできて、かがりやオレが誘拐されるかもしれない」
真帆「あっ……そうね、確かに。ごめんなさい、迂闊だったわ」
倫子「別のアプローチ方法を考えよう。ダル、ヴィクコンのサーバーにハッキングしろ」
ダル「オーキードーキー。やってみる」
真帆「簡単に言ってるけど、うちの研究所のセキュリティ、結構厳しいわよ。情報科学研究所が防壁を作ってるんだから」
倫子「大丈夫だ。なんたってダルはスーパーハカーだからなっ!」ドヤッ
ダル「それを言うならスーパーハッカーな」ニッ
真帆「……私にサポートできることがあれば手伝う。内部情報も教える。色々聞いて」
ダル「おk、その辺ヨロ」
倫子「うむ。オレはその間にこっちをやろう。まゆり、そのダンボール箱を開封しろ!」
まゆり「なにかな、なにかな~。わぁ、電子レンジちゃんだ~!」
倫子「から揚げはまた今度な」フッ
まゆり「……そっか。残念だけど、また今度なら仕方ないね。えっへへ~」
フェイリス「マユシィ、嬉しそうだニャ」
356: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:29:18.83 ID:2j/8NxTHo
開発室
倫子「さて、出来る限り電話レンジ(仮)を再現してやろう。あれは元々、ダルとオレのふたりでガラクタを適当にいじって作った奇跡の未来ガジェット8号機だ」
倫子「その上で真帆が一昨日作ったという記憶読み取り装置との合体、LHCとの連結などふたりに手伝ってもらう必要がある」
・・・
同日夜
談話室
真帆「橋田さん、あなた、すごいわ……」
ダル「ま、僕にかかればこのくらい朝飯前なのだぜ」
倫子「さすが我が右腕……! 早速『Amadeus』のデータを探してくれ」
真帆「……無い。『Amadeus』本体も、紅莉栖の記憶データも、あったはずのフォルダからなくなってるわ……」カタカタ
倫子「既に持ち出されたか……」
倫子「さて、出来る限り電話レンジ(仮)を再現してやろう。あれは元々、ダルとオレのふたりでガラクタを適当にいじって作った奇跡の未来ガジェット8号機だ」
倫子「その上で真帆が一昨日作ったという記憶読み取り装置との合体、LHCとの連結などふたりに手伝ってもらう必要がある」
・・・
同日夜
談話室
真帆「橋田さん、あなた、すごいわ……」
ダル「ま、僕にかかればこのくらい朝飯前なのだぜ」
倫子「さすが我が右腕……! 早速『Amadeus』のデータを探してくれ」
真帆「……無い。『Amadeus』本体も、紅莉栖の記憶データも、あったはずのフォルダからなくなってるわ……」カタカタ
倫子「既に持ち出されたか……」
357: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:30:25.91 ID:2j/8NxTHo
ダル「ん? ここ、さらに鍵がかかってるフォルダがあるお」
真帆「変ね。こんなフォルダ、今までなかったわ……」
ダル「かなり厳重なセキュリティがかかってるっぽい」
真帆「『Amadeus』はそっちに移されたのかしら。でもいったい誰が? そんな権限を持っているのは、私を除けばレスキネン教授ぐらいよ」
倫子「あの人に裏の顔があったとは信じたくないが……」
倫子「(だが、どうしてだかその疑念がぬぐえない。あるいは、オレを拷問したというストラトフォーの人間というのは……)」
倫子「ダル。そのフォルダはいったん保留だ。次は、ストラトフォーのサーバーにハックを仕掛けてくれ」
倫子「そこに紅莉栖の記憶データが保存されている可能性がある。以前ハックしたことがあるから簡単だろう?」
ダル「ちょ、オカリン、なんでそんなことまで知ってんの? エスパーかよ。あ、いや、エスパーだったんだっけ」
倫子「ククッ。オレを誰だと思っているっ! 狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真の魔眼は、常に隠された真実を見抜いているのだっ! ふぅーはははぁ!」バサッ
真帆「(うっとうしいのに、何故か頼もしく感じてしまう……)」トゥンク
358: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:31:23.72 ID:2j/8NxTHo
ダル「……おk。ストラトフォーのサーバーに入れたお。えっと、『Amadeus』はっと……」
真帆「ちょ、ちょっと待って!? これ、人体実験のレポートだわ……!」
倫子「……ストラトフォーの行っていた、記憶の移植実験のものだな。ある人物の記憶データを別の人物の脳に定着させる実験、か」
倫子「おそらくそのリストに、椎名かがりの名があるはずだ」
かがり「えっ!?」
真帆「え、ええ。その通り……椎名かがりは適合性に非常に優れている、ですって」
真帆「だけど、最終実験までには至らなかったみたい。その直前に脱走したと書かれてあるわ。目下行方を捜索中とも……」
倫子「(オレが以前居た世界線では、『Amadeus』プロジェクトが凍結されたことで最終実験が前倒しになり、かがりが脱走するより前に紅莉栖の記憶を埋め込まれてしまったのだろう)」
倫子「つまり、この世界線のかがりの脳内には間違いなく紅莉栖の記憶は入っていない……」
真帆「でも、それ以外の色々な実験を受けているかもしれない。少し心配だわ」
かがり「オカリンさん……」
倫子「……大丈夫だ、かがり。ラボメンを他の組織の欲しいままにされるなど、この鳳凰院凶真が絶対に許さん」
かがり「う、うん」ドキッ
359: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:32:00.19 ID:2j/8NxTHo
真帆「でも、どうやら彼ら、新しい実験に着手しようとしてるみたいよ……」
倫子「紅莉栖の記憶データを適性者以外の脳内にダウンロードする実験、と言ったところか。それが成功してしまえば、わざわざかがりを誘拐する必要も無いからな」
倫子「ダル、その紅莉栖の記憶データを削除してしまえばオレたちの勝利だ。どこにあるかわからないか?」
ダル「んー……いや、ないね。それらしいもんは見当たらない。一番怪しいのはさっきの鍵かかったフォルダ」
倫子「わかった。そこへ侵入しろ」
ダル「できるけど、これはちょっと骨が折れると思われ」
倫子「どれくらいかかる?」
ダル「わからんけど、まるっと半日以上はかかるかも。しかも敵さんにバレないようにしないとだから」
倫子「もしバレたら即ここが襲撃されるだろう。となると、やつらのアジトに乗り込んで本体を叩く方が早いか?」
360: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:32:53.25 ID:2j/8NxTHo
ダル「アジトって?」
倫子「うちの大学の地下にストラトフォーの支部があるんだ」
ダル「ちょ!? それマジかお!? いやでもそこに居るのって普通に武装集団だったりするわけっしょ? そんなん制圧とか無理ぽ」
倫子「ならば、どうやって半日近くストラトフォーの注意を引くか……」
倫子「取りあえず、真帆はタイムリープマシン制作に当たってくれ。アレがあれば、何度でもやり直せる。情報収集には持って来いだ」
真帆「わ、わかったけど、さすがに自信が無い、というかその……」オロオロ
倫子「大丈夫だ、オレが手伝う。オレは真帆が紅莉栖の7倍の性能のマシンを完成させたことを知っている」
倫子「お前の作ったタイムリープマシンの性能はガチだった」ニッ
真帆「え、そ、そう……///」ドキドキ
鈴羽「イライライライライライライライラ」
361: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:33:26.93 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「リンリン! あたしに出来ることはないのっ!?」
倫子「ここがいつ襲撃されてもおかしくない。鈴羽は警戒を厳にせよ」
鈴羽「もうっ! そういうちゃんとした命令があるなら先に言ってよ! オーキードーキー!」プンプン
フェイリス「フェイリスは長期戦に備えて食料を調達してくるニャ! 甘いものマシマシなのニャ♪」
るか「あ、それじゃあボクも買い出しに行きます!」
倫子「もう夜も遅い。ふたりとも、気を付けろ。常に注意深く行動するのだ」
るか「これでもボク、男の子ですから! フェイリスさんを守ってみせます!」
フェイリス「ルカニャン、とっても頼もしいニャン!」
倫子「ああ……そうだな。お前は一人前の清心斬魔流の使い手だ」フフッ
362: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:34:24.36 ID:2j/8NxTHo
2011年2月2日水曜日
未来ガジェット研究所
倫子「(作業に没頭し、いつの間にか夜が明けていた)」
倫子「(まゆりたちはもはやここから出ることが危険なので、窮屈だが雑魚寝してもらった。まゆりの父親を説得するのとまゆりの寝相の悪さを抑えるのに骨が折れた)」
倫子「(もしラボメンの誰かを人質に取られ、椎名かがりと交換だ、などと言われたら非常に厄介だからな。紅莉栖の記憶データを削除するまでは我慢してもらうしかない)」
フェイリス「フェイリスの家からお布団運んできてもらって正解だったニャ」
倫子「黒木さんには頭が上がらないな」
倫子「(一応、寝てる間に全員の脳を借りて未来予知をさせてもらった。今の流れではみな死亡することは無い)」
倫子「(だが、これもあまり当てにはならない。敵はかがりから未来の情報を得ている)」
倫子「(確定事項に背く行動を取られたら意味が無い上に、たとえ命だけ助かってもオレみたいに植物人間にされては本末転倒だ)」
倫子「(タイムマシン論文の取り合いをする以上、世界線の変動可能性はどんな些細な現象にも潜んでいると考えていい。慎重に行かなくては)」
未来ガジェット研究所
倫子「(作業に没頭し、いつの間にか夜が明けていた)」
倫子「(まゆりたちはもはやここから出ることが危険なので、窮屈だが雑魚寝してもらった。まゆりの父親を説得するのとまゆりの寝相の悪さを抑えるのに骨が折れた)」
倫子「(もしラボメンの誰かを人質に取られ、椎名かがりと交換だ、などと言われたら非常に厄介だからな。紅莉栖の記憶データを削除するまでは我慢してもらうしかない)」
フェイリス「フェイリスの家からお布団運んできてもらって正解だったニャ」
倫子「黒木さんには頭が上がらないな」
倫子「(一応、寝てる間に全員の脳を借りて未来予知をさせてもらった。今の流れではみな死亡することは無い)」
倫子「(だが、これもあまり当てにはならない。敵はかがりから未来の情報を得ている)」
倫子「(確定事項に背く行動を取られたら意味が無い上に、たとえ命だけ助かってもオレみたいに植物人間にされては本末転倒だ)」
倫子「(タイムマシン論文の取り合いをする以上、世界線の変動可能性はどんな些細な現象にも潜んでいると考えていい。慎重に行かなくては)」
363: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:35:09.41 ID:2j/8NxTHo
真帆「……最終調整、終わったわ。これでいつでもタイムリープができる、と思う」
倫子「ああ、きっと完璧なタイムリープマシンだ。オレにはわかる」
真帆「……う、うん」モジッ
倫子「ほら。知的労働のあとにはコレを飲むがいいっ」スッ
真帆「ドクペ……。紅莉栖に薦められて飲んだことがあったわ」
倫子「何っ!? もしや、貴様もドクトルペッパリアンかっ!?」キラキラ
真帆「なにその造語……(かわいい)」ゴクゴク
真帆「もしかして、紅莉栖もここで飲んでいたり?」
倫子「ああ。やつもなかなかのドクトルペッパリアンでなぁ」ニヤニヤ
真帆「……そう」フフッ
~♪
倫子「なんだ? 外がやけに騒がしいな」
鈴羽「ああいうの、ガイセンシャって言うんだよね。靖国通りでよく見かけたよ」
真帆「でも、曲はオーケストラね。歌が付いてるからオペラ曲かしら」
倫子「(オーケストラ……?)」
364: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:36:08.77 ID:2j/8NxTHo
~♪
Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm!
Der Arme kann von Strafe sagen,
Denn seine Sprache ist dahin.
Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm!
Ich kann nichts thun, als dich beklagen,
Weil ich zu schwach zu helfen bin.
Tips: K620 No.5
https://www.youtube.com/watch?v=M242npphgBI
365: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:36:41.25 ID:2j/8NxTHo
倫子「(この曲……なんだ、何かが引っかかる……K6205……?)」
かがり「行かなきゃ……」スッ
倫子「えっ?」
まゆり「かがり、ちゃん……?」
かがり「私、行かなきゃ」タッ
るか「ど、どこへ行くんですか?」
倫子「(これはもしかして……!)」
倫子「マズいっ!! 鈴羽、ダル、ルカ子、かがりを止めろっ!!」
鈴羽「オーキードーキー!! いったいどうしたってんだかがりっ!! 止まれっ!!」ガシッ
るか「と、止まってくださぁいっ!」ガシッ
ダル「えと、おにゃのこに抱き着いていいん?」オロオロ
倫子「許可する! その体重で抑え込んでくれっ!」
ダル「お、おk」ギュムッ
かがり「邪魔を……するなぁぁぁっ!!!!!」ブンッ!!
鈴羽「くっ!!」
るか「きゃぁっ!!」
ダル「う、うおおおおっ!?」ズテーン!!
フェイリス「あのダルニャンが吹き飛ばされたニャ!?」
倫子「マズい……!」
366: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:37:19.80 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「だ、ダメだ、あたしたちでも抑えきれない……」グググ
るか「ダメだよ、かがりちゃん……」グググ
かがり「ママを助けなきゃ……ママを……」スタ スタ
まゆり「かがりちゃん、どうしちゃったのかな!? ママはここに居るよ!? だから行かないで!!」ヒシッ
かがり「こっちにも、"ママ"……でも、私のママは、"ママ"じゃない……」スタ スタ
倫子「危ないまゆり!! 離れろっ!!」
まゆり「でも、でもぉっ!!」
真帆「これがストラトフォーの人体実験の1つ、ブレイン・ウォッシング……! 特定の音楽をトリガーに行動を支配する……」
真帆「今のかがりさんは、アドレナリンが増幅して脳のセーブ機能が外れてるんだわ!」
鈴羽「洗脳状態、ってことだよね。こうなったら足を撃ち抜くしかない!」ジャキッ!!
まゆり「だ、だめだよぉっ!! かがりちゃんを撃たないでぇっ!!」
真帆「このまま無理に引き留めるのはかがりさんの身体に負担がかかるわ。最悪、脳に障害が残るかも……」
鈴羽「くっ……リンリンッ!!」
倫子「…………」
367: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:38:13.71 ID:2j/8NxTHo
倫子「……ダル。紅莉栖の記憶データは削除できるか」
ダル「へ? ぼ、僕にハッキング関係でできないことなんかないっつーの」
倫子「わかった。一旦かがりを放せ」
るか「ええっ!?」
鈴羽「正気!?」
倫子「命令に従え、鈴羽! ルカ子!」
るか「は、はい、凶真さん……」スッ
鈴羽「お、オーキードーキー……」スッ
かがり「行かなきゃっ!!」ダッ
タッ タッ タッ
ダル「……つ、つまり、かがりたんに牧瀬氏の記憶データを入れられる前に削除しろ、ってことだよな?」
倫子「ああ。お前ならできる」
ダル「くぅ、さすがの僕もこれはアドレナリン全開じゃないと追いつかないっつーの……ちょっとガチ集中モードになるわ、全力で応援してほしい件」
フェイリス「わかったニャン! ダルニャン、がんばれニャーッ!」
ダル「っしゃぁぁぁっ!!!!」カタカタカタカタ!!
368: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:40:59.32 ID:2j/8NxTHo
倫子「あの曲はケッヘル620、『魔笛』のナンバー5、『鳥刺しのパパゲーノ』だったんだ……かがりを陰謀の魔の手へと導く、笛の音……」グッ
真帆「倫子、どうする!?」
倫子「ダルを信じて、オレはかがりを連れ戻しに行く。ストラトフォーのアジトの場所なら、既に割れているっ!」
鈴羽「ま、待ってリンリン! 敵はおそらく武装集団だ、こっちもそれなりの準備をしないと――」
prrrr prrrr
倫子「っ!? オレのスマホに通話……タイムリープではなさそうだが……」ピッ
??『オカベリンタロウか?』
倫子「(な、なんだこの加工された声……まさか、ストラトフォーか!?)」
倫子「(どうやってオレの電話番号を……って、そうか。"紅莉栖"のログから盗み見たのか)」グッ
??『椎名かがりは我々の手中にある。交換条件は言わなくてもわかるな?』
倫子「(……記憶という不確定なものより、論文ファイルそのものを手に入れたいに決まっている)」
倫子「(いや、というより、本当はすべてのタイムマシン論文を手に入れたいんだろう)」
??『交換は明日だ。場所と方法は追って連絡する』ピッ
倫子「…………」
369: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:42:30.96 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「敵に牧瀬紅莉栖のノートPCを渡したところで、かがりを解放するとは思えない。たとえその中に本物のタイムマシン論文が入っていたとしても、だ」
倫子「すぐに準備しろ、鈴羽。乗り込むぞ」
鈴羽「オーキードーキー!」
真帆「駄目よ! ふたりでなんて、危険すぎる」
倫子「いや、大勢で動くよりも危険は少ない。ここは未来を知っているオレたちで立ち回った方が良い」
まゆり「オカリン……」
倫子「心配するな。鳳凰院凶真は死なない。必ずお前の娘を取り戻してくるさ」ニコ
まゆり「(……きっとね、オカリンはそう言うと思ってた。本当のオカリンは、怖がりさんのはずなのにね)」
まゆり「(ひとりでどんどん先に行っちゃって、まゆしぃはいつもそれを追いかけるの)」
まゆり「(ねえ、オカリン。知ってる? まゆしぃはね、オカリンの背中を追いかけながらね、いつもこう思ってるんだよ)」
まゆり「……置いていかれたくないな」
倫子「えっ?」
まゆり「まゆしぃも一緒に行っていい?」
倫子「っ、ダメだ! 危険すぎる! これは遊びじゃない、実戦なんだぞっ!?」
まゆり「でも、でもね? まゆしぃはオカリンの人質だから……」
鈴羽「椎名まゆり、あんまりしつこいと――」
倫子「――ふぅーはははぁ!!」
まゆり「オ、オカリン?」
鈴羽「っ!?」
370: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:43:12.63 ID:2j/8NxTHo
倫子「お前は勘違いしているぞ! お前には、初めから選択肢などないっ!」
倫子「選択が可能なのはこのオレ、凶悪なる真実を見通す力を持った鳳凰院凶真だけなのだからなっ!」
まゆり「えっ……?」
倫子「オレも鈴羽もかがりを連れて必ず帰ってくる。人質の元に、母親の元に、必ずな」
倫子「なぜならそれが、運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だからだっ!! ふぅーはははぁ!!」バサッ
まゆり「…………」
倫子「いいか。オレたちが戻ってくるまで、決して逃げようとするなよ。居なくなったりしてみろ」
倫子「――絶対、許さないからなっ」
鈴羽「今のリンリンの台詞……」
真帆「ちょっと臭いわね」
倫子「だああっ!! 厨二病乙とか言うつもりか貴様らぁっ!!」カァァ
まゆり「……まゆしぃは、そういうセリフを言ってる時のオカリンが結構好きなのです」ニコ
倫子「ぐっ!?」
まゆり「あのね、まゆしぃね……もう、オカリンのこと、止めないよ……重荷になりたくないから……」ウルッ
まゆり「オカリンのこと、信じてるから……! もう二度と、見失いたくないから……!」ウルッ
倫子「ああ……」
371: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:44:24.16 ID:2j/8NxTHo
倫子「ダル、スマホを常に通話状態に。逐一ハッキング状況を教えろ」
ダル「オーキードーキー!」カタカタカタカタ
鈴羽「リンリン、これを」スッ
倫子「グロック……中学の頃はモデルガンを集めたりしてたが、さすがに本物のピストルを触ったのは初めてだ」ドキッ
倫子「(……オレはさんざん世界線を変動させることで人を殺してきた。秋葉幸高も、秋葉ちかねも、天王寺綴も、天王寺結も)」
倫子「(そして、紅莉栖も……。今更、人を殺すくらいなんだっていうんだ)」
倫子「(いつまでもビビリの倫子じゃないんだ……っ!)」ギリッ
鈴羽「準備完了。リンリン、いつでも行けるよ」
るか「凶真さん……ご武運を!」
フェイリス「凶真ァ! 絶対、囚われの超時空プリンセスを取り戻してくるのニャ!」
まゆり「オカリン……」
倫子「……行こう。オレたちの大学へ。牧瀬章一と秋葉幸高、今宮綴と橋田鈴の想い出の場所へ」
倫子「オレとダルの電話レンジ(仮)、そして紅莉栖の論文……」
倫子「――タイムマシンたちが生み出される、すべての因果が集約された地へ!」
372: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:44:56.28 ID:2j/8NxTHo
同日夜
東京電機大学神田キャンパス11号館地下2階
倫子「ここまで来たはいいが、どの部屋だ……?」
鈴羽「……思い出した。ここなら昔、潜入したことがある。外観が変わってたからわからなかったけど……リンリン、こっち!」タッ
倫子「でかした、鈴羽……っ!」タッ
電気室前
鈴羽「あたしはかがりを救出する。リンリンはサポートして」
倫子「ああ」スチャ
倫子「(拳銃が重い。大丈夫、ビビってない。ビビってなんか……ない)」
鈴羽「突入するよ。3、2、1……」
カシュ カシュ ダーンッ!!
東京電機大学神田キャンパス11号館地下2階
倫子「ここまで来たはいいが、どの部屋だ……?」
鈴羽「……思い出した。ここなら昔、潜入したことがある。外観が変わってたからわからなかったけど……リンリン、こっち!」タッ
倫子「でかした、鈴羽……っ!」タッ
電気室前
鈴羽「あたしはかがりを救出する。リンリンはサポートして」
倫子「ああ」スチャ
倫子「(拳銃が重い。大丈夫、ビビってない。ビビってなんか……ない)」
鈴羽「突入するよ。3、2、1……」
カシュ カシュ ダーンッ!!
373: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:45:40.26 ID:2j/8NxTHo
電気室
倫子「な、なんだこれは……!?」ゾワワッ
鈴羽「……5人、死んでる。出血の状態から、おそらく死亡したのは1時間以内」
倫子「どういう……ことだ……。ま、まさかかがりが!?」ビクッ
鈴羽「銃創がある。かがりじゃないよ。奥へ行こう」
倫子「あ、ああ」ドキドキ
奥の部屋
倫子「(また死体がひとつ転がっていた。それも、見覚えのある巨体だ……)」プルプル
倫子「レスキネン教授……」グッ
??「思ったよりも早かったわね、リンコ。ここで会ったが100年目、って感じかしら」
倫子「っ!?!?」ビクッ!!
鈴羽「ッ!!!!」ガチャッ
倫子「な、なんだこれは……!?」ゾワワッ
鈴羽「……5人、死んでる。出血の状態から、おそらく死亡したのは1時間以内」
倫子「どういう……ことだ……。ま、まさかかがりが!?」ビクッ
鈴羽「銃創がある。かがりじゃないよ。奥へ行こう」
倫子「あ、ああ」ドキドキ
奥の部屋
倫子「(また死体がひとつ転がっていた。それも、見覚えのある巨体だ……)」プルプル
倫子「レスキネン教授……」グッ
??「思ったよりも早かったわね、リンコ。ここで会ったが100年目、って感じかしら」
倫子「っ!?!?」ビクッ!!
鈴羽「ッ!!!!」ガチャッ
374: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:46:30.05 ID:2j/8NxTHo
レイエス「探しものはこれ?」
鈴羽「かがりっ!!」
かがり「…………」
倫子「(眠らされているのか……。椅子に座り、頭には私がかつて何年も被り続けていたヘッドセットのようなものを装着している)」
倫子「やっぱりあんたか、レイエス」
レイエス「あなたは……リンコ? ずいぶん雰囲気が変わってるからわからなかったわ。白衣も似合ってるじゃない」
倫子「あんたが、ストラトフォーの人間っ!!」
レイエス「勘違いしないで。ワタシはあんな野良犬とは違うわ」
鈴羽「またお前か。お前、軍人だったんだな」スチャ
レイエス「ご名答。アメリカ軍の軍人にしてDURPAの一員……って言ってもわかるかしら」
真帆『DURPA……アメリカ国防高度研究計画局? そんな、レイエス教授が……?』
倫子「(ブルートゥースの小型イヤホン越しに、ダルの携帯から真帆の声が聞こえてきた。さすが大学だけあって、地下でも電波はしっかり入るようになっている)」
レイエス「DURPAは軍とは別系統の組織よ。元々最強の軍隊、"AI戦士"を作り上げるためにストラトフォーから技術を盗もうとしていたのだけど、そこでおもしろいものを見つけたの」
倫子「……"未来少女"とタイムマシン、だな」
375: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:47:48.79 ID:2j/8NxTHo
レイエス「軍は兵器としてのタイムマシンを欲した。どこかにあるというタイムマシンと、クリスのオリジナル論文を求めてワタシたちは動いていた」
鈴羽「ならストラトフォーを泳がせておけば良かったはずだ。どうして殺した」
レイエス「ストラトフォーにスパイとして部下を1人潜り込ませていたのだけど、バレちゃったからみんな殺したわ」
倫子「なにも全員殺す必要はなかっただろう……! レスキネン教授だって……」グッ
レイエス「アレクシスはワタシが『Amadeus』にアクセスするのに必要だったから拷問したわ。彼らのとっておきの方法でね♪」
倫子「教授に、『Amadeus』にアクセスするよう命じたのか……そんな方法が……」
レイエス「"知識は力なり"、よ。情報戦を制する者が世界を制する……単純にして真理だと思わない?」
倫子「……F・ベーコン、近代科学のパラダイムを描いた人物の言葉か。そうか、DURPAの下部組織の標語だったな……」
倫子「支配者気取りとは、実に愚かな! うぬぼれもはなはだしい!」
レイエス「気取りじゃないわ。支配者なのよ」ニヤリ
376: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:48:29.37 ID:2j/8NxTHo
レイエス「おさげの子。その銃を寄越しなさい。シイナ・カガリに生きていて欲しかったらね」
鈴羽「かがりを殺した瞬間、お前を殺す」
レイエス「ワタシが死んだ瞬間、ワタシの仲間がここへ突入するわ。前みたいにはいかないから」
鈴羽「ぐっ……」
倫子「(さすがに集団で攻め込まれたら、オレたちも勝ち筋が無くなる可能性が高い……)」
倫子「(それに、オレの未来視によれば、レイエスがこの世界線で死亡するのはもっと先のことだ。だから、どうあがいてもレイエスを殺すことはできない)」
倫子「鈴羽……」フルフル
鈴羽「くそっ……」スッ
レイエス「良い子ね。ついでに、そこで両手を頭の後ろに置いて立ってなさい。ああ、リンコは別にそのままでいいわ」
倫子「(舐められたもんだな……)」ギリッ
377: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:49:38.55 ID:2j/8NxTHo
レイエス「それで、リンコ。ちゃんと持ってきてくれたの? クリスのノートPC」
倫子「誰が貴様なんかに渡すものか」
レイエス「あらあら、いけない子。なら、シイナ・カガリは渡せないわ」
レイエス「じゃ、早速始めようかしら。最終実験」
倫子「っ!? 紅莉栖の記憶をかがりに入れるのか……!?」
レイエス「いいえ、"入れる"んじゃないわ。"上書き"するのよ。それがワタシたちの最終実験の真の目的」
倫子「(タイムリープとは異なる方式ということか)」
倫子「(……紅莉栖の記憶データを脳に書き戻すことに関しては、ストラトフォーではなく、すべてDURPAの仕業だったんだな。"AI戦士"を作る技術の応用だったのだろう)」
倫子「(ラボに襲撃してきたのはレイエスと米軍……。あの時『Amadeus』を通してオレたちを監視していたのはDURPAだった)」
倫子「(かがりにK6205なんていうふざけたコードネームを付けたのもこいつか? こいつがフリーメイソンには見えないが……)」
倫子「(いや、実験データはすべてストラトフォーのサーバーにあったということは、実行犯はストラトフォーなのか)」
倫子「(つまり、こいつらがストラトフォーにそういう実験をさせていた。DURPAがストラトフォーを裏で操っていたわけだ……!)」
378: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:51:21.63 ID:2j/8NxTHo
レイエス「今までの致命的だった問題も解消した。その上、彼女の高い適性もある。今回の実験は、きっと成功するわ……」ウフフ
倫子「マッドサイエンティストの風上にも置けない、クズが……」ギリッ
レイエス「ねえ、カガリ。あなただってクリスになりたいでしょう?」
かがり「ハ……イ……」
倫子「かがり……」
レイエス「リンコ。あなただって、クリスに会いたいでしょ? クリスの記憶を持ったかがりは、クリスそのものになる。顔も似てるしね」
レイエス「そうなれば、あなただって嬉しいでしょう? クリスもきっと喜ぶわ。だってかがりはクリスのク――」
倫子「馬鹿に……するな……」ボソッ
レイエス「え? なあに?」
倫子「――――ふっざけるなああああああっ!!!!!!!!!!!」
379: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:51:47.29 ID:2j/8NxTHo
倫子「牧瀬紅莉栖を馬鹿にするなっ!!! この鳳凰院凶真を、愚弄するなああっ!!!」
レイエス「そ、そう。あなた、まるで別人になったみたいね、少しビックリしちゃった」
レイエス「まあ、どうでもいいわ。カガリがクリスへと生まれ変わる様を、そこでじっと見守ってなさい」スッ
倫子「ダル! まだなのか!!」ヒソヒソ
ダル『もうちょい……もうちょっとなのだぜ……』カタカタカタカタ
鈴羽「リンリン。場合によっては、プランBだ。かがりを見捨てる」
倫子「……かがりを、殺すんだな」
鈴羽「たとえ記憶がかがりにダウンロードされても、死ねば有用に使えない。父さんのハッキングが気付かれる前に処分しないと」
倫子「……くそっ。くそおおおおおおっ!!!!!」
レイエス「それじゃ、サヨナラ。カガリ……」スッ
380: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:52:18.54 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「―――っ」ダッ
レイエス「なんてね」BANG!!
鈴羽「ぐっ!!」バタッ
倫子「鈴羽ぁぁっ!!」
レイエス「まあ、そう来るわよね。一瞬の隙をついての行動……中々に訓練されているじゃない。あなた、やっぱり只者じゃないのね」
レイエス「でも、今日はワタシの勝ち。前にワタシを蹴り飛ばした恨み、晴らさせてもらったわ」
倫子「鈴羽……鈴羽ぁっ……」ウルッ
レイエス「あとはこのエンターキーを押せば、世界が変わる……」スッ
倫子「まだ……まだ、オレが居るっ!!」プルプル
レイエス「……日本の一般人に銃は撃てないわよ。撃てたところで、ワタシより早く抜けないわ」
倫子「馬鹿にするなと……言っているだろうっ!!!!!!」ガチャッ
BANG!!
381: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:52:54.88 ID:2j/8NxTHo
倫子「――がはっ!!」バタッ
倫子「(あ、足を撃たれた……、立てない……! 痛い、痛い痛い痛いっ!!!)」ウルッ
レイエス「馬鹿の一つ覚えみたいにまあ……安心しなさい、急所は外しておいてあげたから」
レイエス「あなたにはまだ別の方向で利用価値がある。その可愛らしさを活かす方向と、脳機能の特殊性を究明するのと、どっちが良いかしらね」ウフフ
倫子「(くそぅ……オレが動いたのに、ダメなのか……ビビらず動けたとしても、オレにはどうすることもできなかったのか……)」ポロポロ
レイエス「それじゃ、今度こそ」カタッ
かがり「…………」
レイエス「……? ど、どういうこと? どうして反応しないの!?」
倫子「(……な、なんだ? 何が起こった?)」
レイエス「まさか、またあんたなの……『Amadeus』、"クリス"……ッ!!!!!」
倫子「("紅莉栖"が!? 電脳の存在のあいつが、抵抗しているというのか……?)」ドクン
レイエス「どこまでもワタシをバカにしてぇっ!!! いい加減にしなさいよぉっ!!!」
かがり「オカリン……さん……!?」
倫子「か、かがり!! 気が付いたか!! こっちへ!!」
かがり「は、はいっ!!」タッ
レイエス「――っ!!」ガチャッ
BANG!!
382: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:53:53.90 ID:2j/8NxTHo
カラカラカラ……
倫子「(レイエスの拳銃がリノリウムの床を回転しながら滑っていく……こ、これは……)」
レイエス「くっ……!!」
鈴羽「それ以上動くな……」スチャ
倫子「(鈴羽がレイエスの銃を狙い撃ったのか!)」
かがり「鈴羽おねえちゃん!」
倫子「鈴羽っ!? 大丈夫だったのか!?」ウルッ
鈴羽「ギリギリで急所を逸らした……心臓を狙われたけど、弾が当たったのは利き腕じゃない左肩だ」
鈴羽「形成逆転だな、レイエス」ジャキッ
レイエス「ワタシ、小型爆弾をポケットの中に持ってるの。奥歯をちょっとだけ噛みしめれば、それで起爆するのよ」
倫子「いつの冷戦時代のスパイ映画だ……古臭すぎてカビが生えてるぞ」
鈴羽「ハッタリだ」
レイエス「そう思うなら撃てばいい」
倫子「待て、鈴羽。かがりの回収には既に成功している。今はダルを信じよう」
倫子「(爆弾はどうせハッタリだが、ここで鈴羽が発砲してもおそらく奴を無力化できない。そういう風に収束する)」
鈴羽「……オーキードーキー」
383: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:54:57.32 ID:2j/8NxTHo
レイエス「良い子ね。3人ともそこで見守ってなさい。これからワタシが天才に生まれ変わるから」スッ
倫子「お、お前……何をするつもりだ……!?」
レイエス「"クリス"、聞いてる? あなたも、カガリじゃなければいいんでしょ? それにもう、抵抗する力なんて残ってないんじゃないのかしら?」ウフフ
レイエス「実験は既に成功している。適性の無いワタシでも、成功率は極めて高いわ! あはははは!」
レイエス「今からワタシは時間を支配する存在へと昇華するのよぉ!」
倫子「(なんだあいつ……自分に酔ってる? この部屋に漂う血と硝煙の臭いに当てられているのか……?)」
ダル『よっしゃ、キタキタキタ!!』
倫子「ダル!? 早くファイルを!!」
ダル『あった! マジであったぞオカリン!』
レイエス「さあ、今度こそエンターキーに働いてもらうわよ!」スッ
倫子「消せ、ダル! 頼む! 紅莉栖を―――!!」
倫子「あいつを解放してやってくれぇぇっ!!!!」
ダル『オーキードーキーッ――――!!』
カタッ
384: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:55:36.95 ID:2j/8NxTHo
倫子「…………」
鈴羽「…………」
かがり「…………」
レイエス「…………」ガクッ
かがり「オカリンさん……その人は……」
倫子「……早かったんだ、ダルのほうが。フォルダ内にデータは1ビットだって残ってなかった」
倫子「それをレイエスは自分の脳に"上書き"したんだ……追加するのではなく、"上書き"を……」
倫子「元々消える予定だったレイエスの記憶に、無が上書きされた。結果、そこには何も残っていない」
倫子「奴は生ける屍と化したんだ……」
レイエス「…………」
倫子「ダル……よくやった……終わったよ、何もかも……」グスッ
鈴羽「……行こう、リンリン。もうここに居る意味はない。早くあたしたちの治療をしないと」
かがり「オカリンさん、私が肩を貸すね」
倫子「ああ……頼むぞ、ラボメンナンバー010」
倫子「また会おうな、紅莉栖……」
385: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:56:05.42 ID:2j/8NxTHo
2011年2月6日日曜日
未来ガジェット研究所
まゆり「はい、あんよがじょうず、あんよがじょうず♪」
倫子「ひぎっ!? い、いててて……まだリハビリは早いんじゃないか、まゆり……」
まゆり「ほーそーいいんはほろびぬ。なんどでもよみがえるさー! でしょ?」ニコニコ
倫子「こいつ……。それで、鈴羽はもう大丈夫なのか?」
鈴羽「まだ完治してないけど、あたしは慣れてるから。利き腕じゃないし、生活には支障は無い」
倫子「慣れるとかそう言う問題なのか、これ……」
未来ガジェット研究所
まゆり「はい、あんよがじょうず、あんよがじょうず♪」
倫子「ひぎっ!? い、いててて……まだリハビリは早いんじゃないか、まゆり……」
まゆり「ほーそーいいんはほろびぬ。なんどでもよみがえるさー! でしょ?」ニコニコ
倫子「こいつ……。それで、鈴羽はもう大丈夫なのか?」
鈴羽「まだ完治してないけど、あたしは慣れてるから。利き腕じゃないし、生活には支障は無い」
倫子「慣れるとかそう言う問題なのか、これ……」
386: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:57:26.25 ID:2j/8NxTHo
あれから数日。
現在大学の地下は、危険物取り扱い実験の失敗のため、という名目で封鎖されているらしい。おそらく米軍かストラトフォーによって処理されたのだろう。
『Amadeus』は完全に消去され、今やタイムマシン論文は我が未来ガジェット研究所にあるものと、ロシアに渡った中鉢論文の2つになった。
ストラトフォーもDURPAも米軍も、これ以上タイムマシンに手を出すことはきっと無い。ノートPCとHDDも廃棄したしな。
と言っても、世界線が変動したわけじゃない。
オレが拷問を受けたという世界の流れと、タイムマシン論文の所在やかがりの誘拐の有無に関して、大して変わったわけじゃないんだ。
だが、オレは捕まらなかった。支えてくれる仲間たちも居る。今なら世界線を良い方向に変動させることができる。
オレはもっと早く気づくべきだったんだ。シュタインズゲートを目指すことは無駄じゃない。
巡り巡って、意志は継続していくんだから。
387: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 22:59:06.83 ID:2j/8NxTHo
鈴羽「それにしても、あれはなんだったんだろう。レイエスが牧瀬紅莉栖の記憶をダウンロードした時にうまくいかなかったのは」
かがり「……あの時、声が聴こえたような気がするの」
フェイリス「声?」
かがり「うん。頭の奥で、誰だかわからないけど"ダメーっ!"って」
真帆「アマデウス……もしかしたら、"紅莉栖"が最後の最後で自分の記憶をかがりさんに上書きされるのを拒んだんじゃないかしら」
倫子「シリコンの上に魂が宿っているのだとすれば、あるいはそうなのかもしれないな」
真帆「魂なんてものを真面目に議論する日がこんなに早く来るとは思わなかったわ。未だに超素粒子、OR物質とかいうシロモノは信じてないけれどね」
真帆「でも、『Amadeus』には人間と同じように意志があった。だったら、自己防衛本能のようなものがあってもおかしくない」
倫子「ああ。きっとあれは"紅莉栖"が……紅莉栖の意志が、オレたちを助けてくれたんだ」
388: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:01:34.67 ID:2j/8NxTHo
ダル「それで、オカリンも回復してきたことだし、次はどうするん?」
倫子「そうだな。だがその前に、オレから皆にプレゼントがある。受け取るがいい」
真帆「これは……バッジ? OSHMKUFAHSA……」
倫子「ラボメンバッジ。オレたち全員がこのラボのメンバーである証だ」
まゆり「まゆしぃがね、足が痛いオカリンの代わりに露天商さんに頼んで作ってもらったのです」エヘン
倫子「助けがほしいときはそれを握りしめ、"ラ・ヨーダ・スタセッラ"と唱えるがいい」
真帆「は、はぁ……」
倫子「萌郁については真帆から聞いた通り、SERNの二重スパイとして活躍してもらっている……ということにしておこう。いずれ完全に我らの軍門に下らせてやる」
鈴羽「8番目のAはあたし、阿万音鈴羽のことだろうけど、最後のAは……」
倫子「無論、ラボメンナンバー011、阿万音由季だ。今日もバイトで不在だが、そこはさすがバイト戦士の母、バイト狂戦士<バーサーカー>と言ったところか」
倫子「彼女もまた我がラボに不可欠な人物だからな。そうだろ、ダル?」
ダル「えっ!? あ、うん。そ、そそ、そうなんじゃね?」アセッ
倫子「キョドりすぎだっ!」
鈴羽「そっか……」ギュッ
かがり「えへへ、私の宝物、ひとつ増えたよ! 鈴羽おねえちゃん!」ニコ
389: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:02:20.10 ID:2j/8NxTHo
真帆「紅莉栖と倫子が仲良くなった理由がようやくわかってきた気がする」フフッ
かがり「私も、ママがオカリンさんをずっと好きだったの、わかるな……」
まゆり「か、かがりちゃん。違うよ、まゆしぃは、オカリンの人質だからねっ」アセッ
かがり「えー? じゃあオカリンさんは私がもらっちゃおうかな♪」ダキッ
倫子「お、おいっ」
まゆり「はわわぁ、オカリンがまゆしぃの義娘になっちゃうよぉ!」
倫子「いや、ならんから落ち着け」
鈴羽「ちょっとかがり! リンリンはあたしのものだよ!」ダキッ
倫子「お、お前らっ! ひっつくなっ!」
ダル「はわわぁ、オカリンがだるしぃの義娘になっちゃうよぉ!」(裏声)
倫子「ならんと言っとるだろ! この未来娘どもをなんとかしろぉ! うわぁん!!」
390: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:02:46.49 ID:2j/8NxTHo
ああ、オレだ……。
なに? いつまで待たせる気だ、だと?
慌てるな、助手よ。今はまだその時ではない。
ククク……オレを誰だと思っている? 狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に二言は無い。
オレは牧瀬紅莉栖を助けると誓った。だから、必ずお前を助ける。
安心して待っていろ。刻の呪縛から解き放たれるその時を。
オレの想いすべてを、仲間たちの想いすべてを、シュタインズゲートを開くために捧げよう。
――エル・プサイ・コングルゥ。
391: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:03:24.42 ID:2j/8NxTHo
2011年12月18日日曜日
未来ガジェット研究所
ガチャ
真帆「お久しぶりね、みんな」
まゆり「わぁ、真帆さんだぁ。すごく会いたかったよ~、トゥットゥルー♪」
るか「お久しぶりです」
フェイリス「元気そうで何よりだニャ」
鈴羽「変わりないようで安心したよ」
真帆「どうせ私は小さいわよ」
倫子「もうとっくに成長期は終わっているだろう、ロリっ子よ。貴様のその姿も、あるいは運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択……」ククク
真帆「ロリっ子言うなっ!」
未来ガジェット研究所
ガチャ
真帆「お久しぶりね、みんな」
まゆり「わぁ、真帆さんだぁ。すごく会いたかったよ~、トゥットゥルー♪」
るか「お久しぶりです」
フェイリス「元気そうで何よりだニャ」
鈴羽「変わりないようで安心したよ」
真帆「どうせ私は小さいわよ」
倫子「もうとっくに成長期は終わっているだろう、ロリっ子よ。貴様のその姿も、あるいは運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択……」ククク
真帆「ロリっ子言うなっ!」
392: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:04:15.33 ID:2j/8NxTHo
かがり「真帆さんっ!」ダキッ
真帆「ふぇっ!? ちょ、どうしたの!?」
かがり「1年間真帆さんに会えなくてさみしかったよぉ!」ギュッ
真帆「……ごめん。ほんとうは夏にも来たかったのだけれど、大学のほうがなかなか片付かなくて」
倫子「(ふたを開けてみればレイエス教授だけでなく、多くのヴィクコン関係者があの騒動に関わっていたらしい)」
倫子「わざわざ来てもらったのに、これから真帆の1年を無駄にしてしまうことになる。すまない」
真帆「無駄になんてならないわよ。この世界の未来が別の世界線の過去に繋がってるって言ったのはあなたでしょう?」
倫子「……クク、そうであったな」
真帆「久しぶりに倫子の"鳳凰院凶真"を聞いたら違和感がハンパないわね。普通の女子大生だった頃が懐かしい」フフッ
倫子「あ、あれはあれで黒歴史だっ!///」カァァ
393: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:05:09.15 ID:2j/8NxTHo
オレはこの世界線で、信じることを学んだ。
仲間を信じること。自分を信じること。そして――
シュタインズゲートを信じること。
かつてのオレはシュタインズゲートを信じられなくなっていた。
どうあがいても到達不可能だと思い込んでいた。
だが、そんなのは所詮、オレの勝手な思い込みに過ぎなかったのだ。
世界は騙せる……。収束の本質は、むしろそこにある。
そして、仲間たちの支えがあれば、オレは何度でもやり直すことができる。
何度も何度もやり直して、いずれシュタインズゲートの選択をしてみせる。
――紅莉栖を救ってみせる。
394: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:05:35.68 ID:2j/8NxTHo
『そう。世界線の変動はやってみなければわからない。そして私たちは絶対に諦めない』
『この2つの条件が揃ってるから、岡部は無限の時間をかけて世界を変えられるの』
『岡部、その"鳳凰院凶真"をずっとわすれないでね』
わかっているさ。オレを誰だと思っている。
狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真。
世界はオレの手の中にある――――
395: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:07:12.70 ID:2j/8NxTHo
ダル「マシンを改良しといたお。過去にRINEメッセージを送る、名付けてDラインってとこかな」
倫子「SERNに捕捉される可能性は?」
ダル「ゼロパーセント。僕の情報技術をなめんなっつーの」フンス
鈴羽「抜け穴が見つからない~って何週間もうめいてたくせに」
ダル「ギクッ。まあ、性能に関しては折り紙付きだから安心してほしいのだぜ」
倫子「さすがだ、我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>!」
ダル「それから、あっちのほうも準備完了してるのだぜ。しかしオカリンすごいこと思い付くよな」
真帆「ええ。確かにやってみないとわからない実験ではあるけれど、少し心配……」
倫子「案ずるな。オレには確信がある」
倫子「(この確信がなんなのか、ハッキリとはわからない。あるいは、別の世界線のオレの記憶の残滓なのかもしれない)」
フェイリス「それで、今度のオペレーションはどんな作戦なのかニャ?」
倫子「クク、聞いて驚け。そしてこの狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真を心から畏れるがいいっ!」
倫子「――――Dラインを送ると同時に、タイムリープするっ!!」
396: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:07:53.72 ID:2j/8NxTHo
どういうわけか、オレには長時間タイムリープができる確信があった。
擬似パルスを添付せずにタイムリープすれば、記憶は受信されず、オレの主観だけが安全に過去へと移動する。
完全なリーディングシュタイナーを持つオレだからこそできる技だ。同時にそれは、完全を意味していない。
わずかなバグが発生するかもしれない。そうすれば、過去へと送れる情報ははるかに多くなる。
だが、タイムリープしたことによって世界線が変動し、Dラインが送られない未来へとなってしまっては困る。
Dラインは18文字しか送れないが、あれは確実に情報を送ることができるからな。
逆に、Dラインを送ったことによって世界線が変動し、タイムリープできない未来となってしまったら詰みだ。
ならばどうすればいいか。
同時に送ってしまえばいい。
397: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:09:39.14 ID:2j/8NxTHo
おい、モニターのそっち側に居る貴様ッ! そうだ、間抜け面の貴様だ。
世界線は確定した事象を改変した瞬間に変動すると思っているようだが、それは違う。
変動には、わずかに時間がかかっている。
もちろん、改変時点から未来方向および過去方向に向かって、波が伝播するように徐々に変化する、というわけではない。
そんなことになれば、"世界線は過去から未来までが確定している"という事実に反してしまうからな。
元の世界線から改変後の世界線へと変動するのに時間がかかる、というだけの話だ。
オレは数々のリーディングシュタイナー発動やタイムトラベルを体感してきたからこそわかる。
かつてα世界線からβ世界線へと1%の壁を跨いだ時、エンターキーを既に押していたにも関わらず、その後に発された紅莉栖の言葉をオレは鮮明に覚えている。
『さよならぁっ!!』
『私も、岡部のことが だ い す 』
改変が確定した後のほんのわずかな間、時空がゆがみ、再構成される時間が存在する。
それは、瞬き程度の時間。蝶が羽ばたく程度の時間。
1秒ほどの、世界線を超える時間。
398: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:10:40.12 ID:2j/8NxTHo
OR物質は世界線に左右されない存在だ。
つまり、世界線の変動はOR物質にとっては関係ない。
ゆえに、この"Dラインとタイムリープ同時使用"というウルトラCを実行すれば!
Dラインを受信することが確定した世界線へと主観を移動させることが可能というわけだ。
仮にDラインが先に過去へ到着し世界線を変動させたとしても、変動しきる前にオレの意識は過去へと跳んでいる。
ゆえに変動後の世界線へと意識が受信される。
逆にDラインより先に意識が過去へ受信された場合、その後Dラインによる世界線変動が起こるな。
だが、その時オレはリーディングシュタイナーを発動するだけなので、中身は変わらない。
結局、どっちにしてもDラインを送って変動した世界線の過去へとオレの意識が跳ぶことになる、というわけだ。
真帆も言っていた通り、やってみなければわからない。失敗して、また同じ歴史を繰り返すだけになるかもしれない。
だが、可能性があるならそれに賭けるべきだ。
399: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:11:24.34 ID:2j/8NxTHo
今ここで2010年7月28日へとタイムリープしたところでアトラクタフィールドを超える世界線変動は引き起こせないだろう。
記憶を引き継ぐことができないから、という理由だけでなく、たとえ引き継げたとしても不可能なのだ。
原因は『Amadeus』と椎名かがり。ストラトフォーがタイムマシンを狙うこととなったキッカケだ。
未来のダルの話によれば、ストラトフォーは得た情報を世界に切り売りしていたらしい。あいつらこそ第3次世界大戦を裏で操っていた黒幕だ。
かがりがレスキネンに未来の情報を教えてしまうことで、タイムマシンが夢物語でも疑似科学でもない確信を与えてしまった。
そして『Amadeus』がストラトフォーに利用されることで、オレたち未来ガジェット研究所がタイムマシンと関係していることが明らかにされてしまった。
どちらも中鉢論文あっての因果だ。中鉢論文がなければ、そもそも奴らはタイムマシンの存在にすら気づけない。
だが、『Amadeus』もかがりも、第3次世界大戦が起こるβ世界線においては確定した事項だ。未来が過去に影響しているために、どうあがいても中鉢論文は取り消せない。
シュタインズゲートへは辿り着けない。
400: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:12:51.64 ID:2j/8NxTHo
この世界線でも『Amadeus』を削除することには成功したが、既にストラトフォーにも米軍にもタイムマシンの存在はバレている。
次の世界線では、『Amadeus』によってオレたちとタイムマシンの関係がバレないようにしなければならない。テスターはやめないとな。
加えて、幼いかがりが洗脳されてしまう未来を変える必要がある。
かがりが1998年に鈴羽と別れることなく2010年までやってくる世界線に辿り着かなければならない。
何度も言うが、そうしなければ、すべての原因である中鉢論文をどうあがいても消去することができないのだ。
かつてのアトラクタフィールドαにおいて、最初の世界線以外でオレがどうあがいてもIBN5100を手に入れられなかったように。
だからこそ、SERNに捕捉されないDラインによる世界線改変が必要、というわけだ。
そこからもう一度、オレの時を始める。
401: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:14:06.90 ID:2j/8NxTHo
送り先は2010年12月15日、オレが元居た世界線において、ケータイの電源を切っていたことで世界線が変動したタイミング。
あれは、オレが未来からメッセージを受け取ることが確定していたのを拒否したから、世界線が変動したのかもしれない。
もちろん根本的な原因はタイムマシン論文やかがりの状態に関わるものだろうが、世界線変動の引き金となったのはやはりスマホの電源のオンオフだったはずだ。
ならば、今こそ、それを送る時。
今居るこの世界線の2010年12月15日、オレはケータイの電源を何故か入れていた。だから受信は可能だ。
意識の送り先のタイミングはDライン到着よりも前に設定したが、これはDラインによって世界線が改変される前に送る、という意味ではない。
そもそも『送る』という行為自体が改変行為なのだ。ゆえにDラインとタイムリープの受信のタイミングがどこであろうとも世界線が変動してしまうことには変わりない。
Dラインを送った瞬間、12月15日にDラインを受信することが確定する世界線へと変動する。この時、変動にわずかな時間を要する。
Dラインを送ると同時にタイムリープで意識を飛ばし、Dラインを受信するタイミングの少し前へと到着させるというわけだ。
こうしてオレは自分で送ったDラインを自分で受信することになる。ただ、未来の記憶は一切思い出せないけどな。
それでも、何かを思い出す可能性はゼロじゃない。
オレの中に眠る鳳凰院凶真は、必ずまた蘇る。不死鳥のごとく。
記憶の全てが書き換わるとしても、デジャヴみたいに心の奥で繋がれば――――
402: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:14:55.00 ID:2j/8NxTHo
以上が、Dライン&タイムリープ同時過去改変の目的と原理だ。
で、だ。そもそも、どうやってそんなことを実現するのかという話だが。
過去へと情報を送るには、要はカーブラックホールを電子注入により裸にしたミクロ特異点へとデータを送ればいい。
それが可能なマシンは、42型ブラウン管テレビ直上にある電話レンジ(仮)と、もうひとつ存在する……。
そう、ラジ館屋上にあるタイムマシンだ。
あのタイムマシンには当然、リフターも含めたリング特異点生成装置がついている。あれを使えばいいだけの話。
タイムマシンを使ってDラインを過去へと送り、電話レンジ(仮)の改良品を使って同時にタイムリープをする。
これこそが、オペレーション・ヘルヘイムの全貌だ。
403: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:16:06.04 ID:2j/8NxTHo
ダル「いやまさか、タイムマシンを改造しろ、なんて言われるとは思ってなかったお」
鈴羽「あのタイムマシンはもう2010年の夏へと跳ぶことはできないからね。世界改変に使えるなら本望だよ」
鈴羽「あたしは……うれしい」ウルッ
ダル「(あの鈴羽がようやく素直に涙を流してくれたお……)」
真帆「タイムリープマシンの調整、終わったわ。あとは送信タイミングの同期だけど」
ダル「それは僕のほうで制御プログラム組んどいたから、オカリンのスマホの送信ボタンと、ペケロッパに接続したキーボードのエンターキーを同時に押せば自動で補正がかかるお」
倫子「さすが我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>だっ!」
倫子「ではいくぞっ! 鳳凰院凶真の名において、これよりオペレーション・ヘルヘイムを開始する!」
倫子「ラボメン全員、準備はいいか!?」
全員「オーキードーキー!」
マッドサイエンティスト
【世界を騙せ 可能性を繋げ 世界は欺ける】
また会おうな、紅莉栖―――――――――
カタッ
404: ◆/CNkusgt9A 2016/06/23(木) 23:17:53.99 ID:2j/8NxTHo
――――――――――――――――――――――――――――――――
1.05582 ⇒ 1.29848
2011年12月18日14時22分 ⇒ 2010年12月15日16時22分
――――――――――――――――――――――――――――――――
405: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:00:07.92 ID:2RffVo6fo
第19章 双対福音のプロトコル (♀)
世界線変動率【1.29848】
2010年12月15日(水)16時22分
柳林神社
倫子「――――――――あ、あれ? 私、何を……」スッ
倫子「(……そうだ、思い出した。今日の報告会が上手く行くように神様に頼みに来たんだった)」
倫子「でも、今の着信はなんだったんだろう。イタズラ電話かな」
倫子「まあ、いいや。ルカ子大明神様、何卒よろしくお願いします」パン パン ペコリ
『誰にもうちあけられずに……とどかなくても……この気持ち、抱きしめていたくて……』
『おぼえていて……くれますか……?』
倫子「(……今のは、神様の声? い、いやいや、そんな幻聴なんか聞こえるわけないって)」
倫子「ルカ子はまだ学校から帰ってきてないか……」
prrrr prrrr ピッ
Ama紅莉栖『ここが漆原さんの神社なのね。今なにしてたの?』
倫子「……報告会の安全祈願、かな」
世界線変動率【1.29848】
2010年12月15日(水)16時22分
柳林神社
倫子「――――――――あ、あれ? 私、何を……」スッ
倫子「(……そうだ、思い出した。今日の報告会が上手く行くように神様に頼みに来たんだった)」
倫子「でも、今の着信はなんだったんだろう。イタズラ電話かな」
倫子「まあ、いいや。ルカ子大明神様、何卒よろしくお願いします」パン パン ペコリ
『誰にもうちあけられずに……とどかなくても……この気持ち、抱きしめていたくて……』
『おぼえていて……くれますか……?』
倫子「(……今のは、神様の声? い、いやいや、そんな幻聴なんか聞こえるわけないって)」
倫子「ルカ子はまだ学校から帰ってきてないか……」
prrrr prrrr ピッ
Ama紅莉栖『ここが漆原さんの神社なのね。今なにしてたの?』
倫子「……報告会の安全祈願、かな」
406: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:00:56.09 ID:2RffVo6fo
・・・(中略)・・・
倫子「――――結局、オレが照れくさかったんだ。素直に名前を呼べなくて……」
Ama紅莉栖『照れくさかった?』
倫子「……今でも私、紅莉栖のことが好きだよ。あなたのことだって、女の子として好き」
Ama紅莉栖『なぁっ……///』
倫子「へ、へぇ。あなたも顔が赤くなったりするんだね」ドキドキ
Ama紅莉栖『あ、赤くなんてなってないし。ただ、女の子扱いされてたなんて、思ってもみなかったから……』
Ama紅莉栖『でも、その感情は危険よ。オリジナルはもう、この世に居ないんだから』
『また会おうな、紅莉栖』
倫子「……ううん。たぶん、そんなことはないんじゃないかな。別の世界には、きっと……」
Ama紅莉栖『現実逃避……ってわけじゃなさそうか。まあ、あんたの宗教観は否定しないけど』
407: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:02:14.77 ID:2RffVo6fo
ピッ
倫子「通話を切って冷静になってみると……確かに、"紅莉栖"の言う通り、この感情は危険、かも、知れない」
倫子「AIの"紅莉栖"に想いを寄せるなんて、それこそ妄想の紅莉栖を創り出すことと何が違うって言うの」
倫子「……違うか。私は、本物の紅莉栖に会いたいんだ。あの箱の中から、暗い世界から、紅莉栖を引っ張り出したい……なんてね」
倫子「そんなこと、出来る訳ない、よね……」
倫子「それに、この"紅莉栖"には、別の世界線での出来事を話してしまったかもしれない」
倫子「これ以上、"紅莉栖"と話すのは、危険……?」
倫子「また、まゆりに心配かけちゃう……。私はテスターを続けるべきじゃないのかもしれない」
倫子「……テスターはやめよう。ハッキリと教授たちに、そう伝えよう」
408: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:02:56.52 ID:2RffVo6fo
同日 夜
秋葉原CLOSE FIELD 陸橋 UPX前
倫子「(レスキネン教授たちとの約束の時間までは、まだ少しある……)」ウロウロ
倫子「……ん? あれは、フブキとカエデさん?」
フブキ「おーい! オカリンさーん!」
倫子「ちょ、恥ずかしいからやめてっ」
カエデ「フブキちゃん、もっと大声で!」
フブキ「オ・カ・リ・ン・さ・ー・ん!!」
倫子「やめろぉ!」
カエデ「それより、大丈夫ですか? 具合悪そうですけど。もしかして、フブキちゃんの大声のせいで?」
フブキ「ちょっ!」
倫子「ううん、大丈夫。全然大丈夫だから、まゆりに連絡しなくていいから、ケータイしまって!」
フブキ「でも、つらそうだったら言ってくださいね。オカリンさんのこと心配なのは、マユシィだけじゃないですから」
フブキ「カエデちゃんだって……私だって、オカリンさんのこと……」
倫子「……うん。ありがと。嬉しい」
フブキ「……あの」
倫子「なあに?」
フブキ「――オカリンさんの好きな人って、誰ですか」
倫子「……私の、好きな人……」
『――我が助手、牧瀬紅莉栖だっ』
倫子「うっ……」フラッ
フブキ「ご、ごめんなさい、失礼なこと訊いちゃって! あの、私――――」
秋葉原CLOSE FIELD 陸橋 UPX前
倫子「(レスキネン教授たちとの約束の時間までは、まだ少しある……)」ウロウロ
倫子「……ん? あれは、フブキとカエデさん?」
フブキ「おーい! オカリンさーん!」
倫子「ちょ、恥ずかしいからやめてっ」
カエデ「フブキちゃん、もっと大声で!」
フブキ「オ・カ・リ・ン・さ・ー・ん!!」
倫子「やめろぉ!」
カエデ「それより、大丈夫ですか? 具合悪そうですけど。もしかして、フブキちゃんの大声のせいで?」
フブキ「ちょっ!」
倫子「ううん、大丈夫。全然大丈夫だから、まゆりに連絡しなくていいから、ケータイしまって!」
フブキ「でも、つらそうだったら言ってくださいね。オカリンさんのこと心配なのは、マユシィだけじゃないですから」
フブキ「カエデちゃんだって……私だって、オカリンさんのこと……」
倫子「……うん。ありがと。嬉しい」
フブキ「……あの」
倫子「なあに?」
フブキ「――オカリンさんの好きな人って、誰ですか」
倫子「……私の、好きな人……」
『――我が助手、牧瀬紅莉栖だっ』
倫子「うっ……」フラッ
フブキ「ご、ごめんなさい、失礼なこと訊いちゃって! あの、私――――」
409: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:04:42.77 ID:2RffVo6fo
ピピピ
――――
世界大戦だろうがディストピアだろうが、そんなことはどうでもいい。
紅莉栖は死してなお、凍える漆黒の電脳世界に封印され、悪の組織に狙われている。
これは人類を救うためのミッションなどではない。
牧瀬紅莉栖を蘇らせ、世界を破壊するためのミッションだ。
フフフ、ククク――――
ふぅーはははぁ!!!!
――――
410: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:05:44.84 ID:2RffVo6fo
倫子「――――!?」クラッ
倫子「(な、なに!? 今のビジョンは……!?)」プルプル
カエデ「オカリンさん!? 大丈夫ですか!?」
倫子「え、あ……大丈夫。大丈夫だからっ! それじゃ!」タッ タッ
フブキ「あ、オカリンさんっ!」
倫子「(今、RINEに着信があった……?)」スッ
マッドサイエンティスト
【世界は欺ける】
マッドサイエンティスト
【可能性を繋げ】
マッドサイエンティスト
【世界を騙せ】
倫子「こ、これは――――」
411: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:07:33.25 ID:2RffVo6fo
都内の高級ホテル レスキネンの宿泊部屋
倫子「……テスターを、やめたいです」シュン
真帆「…………」
レスキネン「…………」
真帆「いきなりそんなこと……無責任だわ!」
倫子「うぅ……」ウルッ
レスキネン「マホ、落ち着きなさい。このテストはリンコの善意で成り立ってるんだよ」
レスキネン「リンコ、ここで辞退しても無責任ということは決してないから、大丈夫」ニコ
倫子「……すみません」ペコリ
レスキネン「ざっとログを見たが、かなり頻繁に話してくれているじゃないか。それも一時は病的なまでに」
レスキネン「それがやめようと思った理由かな? "クリス"と話すのがつらくなったかい?」
倫子「いえ、その……"紅莉栖"と話すのは、とても楽しいんです」
倫子「でも、だからこそ、それが怖くて……」
倫子「……テスターを、やめたいです」シュン
真帆「…………」
レスキネン「…………」
真帆「いきなりそんなこと……無責任だわ!」
倫子「うぅ……」ウルッ
レスキネン「マホ、落ち着きなさい。このテストはリンコの善意で成り立ってるんだよ」
レスキネン「リンコ、ここで辞退しても無責任ということは決してないから、大丈夫」ニコ
倫子「……すみません」ペコリ
レスキネン「ざっとログを見たが、かなり頻繁に話してくれているじゃないか。それも一時は病的なまでに」
レスキネン「それがやめようと思った理由かな? "クリス"と話すのがつらくなったかい?」
倫子「いえ、その……"紅莉栖"と話すのは、とても楽しいんです」
倫子「でも、だからこそ、それが怖くて……」
412: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:08:42.89 ID:2RffVo6fo
真帆「…………」ムスーッ
レスキネン「分かった。テスターの辞退については、君の望む通りにしよう」
レスキネン「ただ、アクセス権は君のスマートフォンにそのまま残しておいて構わないかな? 今後、『Amadeus』と話すのも話さないのも、君の自由だ」
レスキネン「"クリス"のほうからは、君に連絡しないように言っておくから」
倫子「え……?」
レスキネン「ここだけの話、『Amadeus』はマホにとって娘みたいな存在なんだ。娘に出来た初めての友達が居なくなっては、寂しいだろう?」
真帆「教授っ!」ガタッ
倫子「……そういうことなら」
倫子「(ヴィクコンとの繋がりがあってほしいのは私もだし、これはこれでいいのかな……)」
413: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:11:11.21 ID:2RffVo6fo
prrrr prrrr
レスキネン「おっと失礼。ちょっと電話してくるよ。マホ、その間にリンコと仲直りしておくようにね」ガチャ バタン
真帆「……ごめんなさい。さっきは怒鳴ったりして」
倫子「私こそごめん。あなたの力になれなくて」
真帆「私の子どもと親友、両方を投げ出されたような気がして……だめね、私。自己嫌悪だわ」
真帆「今後も、気が向いたらでいいから『Amadeus』をかまってあげて」
倫子「うん……また、3人で一緒に出掛けよう? それだったら私も大丈夫かも」
真帆「それ、いいわね。あなたとも普通のお友達になりたいし。あ、あくまで普通のだからね?」ドキッ
倫子「……ねえ、聞いてもいい? 紅莉栖の母親のこと。前のATFの時、真帆ちゃんとレスキネン教授が話しているの、聞いちゃって」
真帆「ああ、あのこと……あとちゃん付けやめて……」
414: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:14:38.55 ID:2RffVo6fo
真帆「紅莉栖のお母さんから電話があったの。家に放火されたんですって」
倫子「えっ!?」
真帆「ちょうどその日は留守にしていたから大丈夫だったそうだけど……変なことに巻き込まれてるかも」
倫子「変な、こと……?」ドキッ
真帆「最初は地元の警察が捜査してたらしいのだけど、そのあとFBIを名乗る人たちが来たらしくて」
真帆「それに目撃者の証言によると、犯人はなんだか特殊部隊みたいだったって。すごく手際が良かったそうよ」
『SERNは「ラウンダー」っていう名前の非公式で私設の特殊部隊を持っててね』
倫子「……特殊部隊。いや、まさか……」ゾクッ
真帆「それから……その犯人たち、ロシア語を話していたって」
倫子「――――っ!?」ドクン
倫子「(まさか、章一の亡命先、ロシアの特殊部隊が!? 第3次世界大戦は、すでに始まっている……?)」ドキドキ
真帆「……?」
415: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:17:03.96 ID:2RffVo6fo
真帆「それに、紅莉栖が亡くなったばかりの頃、私たちの研究室でもおかしなことがあったの」
真帆「地元警察と一緒に、日本の刑事という日本人が来たのよ。紅莉栖のデスクを荒らして……いえ、捜査して行ったわ」
倫子「(あれ? ダルに警察のデータベースをハッキングさせた時、日本警察は事件を全く捜査していなかったはず……)」
真帆「何日か経って、大学が警察に問い合わせをしたら、そんな刑事が日本から来た事実はない、って言われた」
倫子「(やっぱり)」
真帆「それだけじゃなくて、地元警察も、私たちの研究室を捜査した事実はないって」
倫子「全員偽者だったんだ……」
倫子「("警察"を名乗る人間ほど信用できないものはない……)」ギリッ
真帆「そのことがあって、私……」プルプル
倫子「……怖かったね」ギュッ
真帆「手……。岡部さん、ありがと。少し落ち着いたかも」
倫子「(私があなたと守ってあげる、とは言えなかった)」
倫子「(狂気のマッドサイエンティストのアイツなら、彼女のそばに寄り添ってあげることができたかもしれない)」
倫子「(けど、私は普通の女子大生だから……)」グッ
416: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:18:29.40 ID:2RffVo6fo
真帆「陰謀論を主張するわけじゃないけれど、紅莉栖の死にはなにか裏があるんじゃないかと疑っているわ」
倫子「っ……」
倫子「(何が"私があなたを守ってあげる"だ。彼女を追い詰めた犯人は……その元凶は……)」プルプル
真帆「なにかもっと別の理由で紅莉栖は殺されて、それが闇に葬られてしまったんじゃないかと、そう考えているのよ」
倫子「(……紅莉栖を殺した犯人は、私なのに)」グッ
真帆「このままじゃ紅莉栖は浮かばれないわ。私は真実を知りたい……」
倫子「(真実を追究するのが科学者……私は、真帆ちゃんに近づくべきじゃなかったんだ)」グスッ
真帆「え? だ、大丈夫? 泣かないで?」オロオロ
倫子「ごめん……ごめんね、真帆ちゃん……私のせいで……っ」ポロポロ
真帆「えっと……?」キョトン
417: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:19:36.42 ID:2RffVo6fo
・・・
真帆「……落ち着いた?」ギュッ
倫子「うん……」グシグシ
真帆「やっぱりあなた、何か知ってるのね」ハァ
倫子「…………」シュン
真帆「わかってるわ、今はこれ以上詮索しない」
真帆「でも、私はそれを知りたいと思っている。そのことだけは知っておいてほしい」
倫子「危険だよ……」
真帆「たとえ危険だとしても、私は……。私、紅莉栖のこと、本当に好きだったみたい」フフッ
倫子「あの子は本当に良い子だったし、本当にすごい女<ヒト>だった。私も……大好きだった」
真帆「あら、気が合うわね」
倫子「紅莉栖が生きてたら、私たちで取り合いっこしてたかもね」フフッ
真帆「簡単には渡さないわよ? なんて言ったって、私の可愛い後輩なんですから」
倫子「望むところっ」フフッ
418: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:21:02.72 ID:2RffVo6fo
ガチャ
レスキネン「2人とも、よかったらこれから食事でもどうかな?」
倫子「いいんですか? ありがとうございます、教授」
真帆「岡部さん、紅莉栖の話の続きは食事の後にしましょう」
倫子「真帆ちゃんには負けないよ」ドヤァ
真帆「だから真帆ちゃん言うなっ!」ウガーッ!
レスキネン「仲良き事は美しき哉。もうすぐ春ですね」ニコニコ
倫子「(自動翻訳どうなってるの……?)」
419: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:27:25.28 ID:2RffVo6fo
ホテル1階レストラン
倫子「紅莉栖はカップラーメンが好き! 特に塩!」
真帆「紅莉栖はコーヒーが好き!」
倫子「紅莉栖は運痴だけど泳ぐのは好き!」
真帆「紅莉栖は政治的アピールのためのエコ活動が嫌い!」
倫子「蛇とかカエルがダメ! あとGも!」
真帆「料理が壊滅的! でも裁縫はできる!」
倫子「辛いものが苦手!」
真帆「絶叫マシンとかウォータースライダーには梃子でも乗らない!」
倫子&真帆「「ぐぬぬ……!」」
レスキネン「ふたりとも、どっちがクリスのことに詳しいかアピールはそのくらいにして、デザートにイチゴのトルテはどうかな?」
倫子「紅莉栖はカップラーメンが好き! 特に塩!」
真帆「紅莉栖はコーヒーが好き!」
倫子「紅莉栖は運痴だけど泳ぐのは好き!」
真帆「紅莉栖は政治的アピールのためのエコ活動が嫌い!」
倫子「蛇とかカエルがダメ! あとGも!」
真帆「料理が壊滅的! でも裁縫はできる!」
倫子「辛いものが苦手!」
真帆「絶叫マシンとかウォータースライダーには梃子でも乗らない!」
倫子&真帆「「ぐぬぬ……!」」
レスキネン「ふたりとも、どっちがクリスのことに詳しいかアピールはそのくらいにして、デザートにイチゴのトルテはどうかな?」
420: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:28:18.47 ID:2RffVo6fo
レスキネン「時にリンコ。人間と他の生き物の違いはなにか。君はどう考える?」
倫子「え?」モグモグ
真帆「これ、教授のいつもの癖だからあまり気にしなくていいわ。教授、また何か思いついたんですか?」
レスキネン「そんなところさ。いいかいリンコ、アナログで流動的なこの世界を0と1に分解し、デジタル化することができるのが人間だ」
倫子「……?」モグモグ
レスキネン「例えば、今ここにオカベ・リンコという人間が居るね。その存在は固定化されていて、突然マホになったりクリスになったりすることは無い」
レスキネン「君は昨日もリンコだったし、明日もリンコだ。そうだね?」
倫子「は、はい」
レスキネン「どうしてそれがわかるんだい?」
倫子「は……?」
421: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:31:18.79 ID:2RffVo6fo
レスキネン「君は今、イチゴのトルテを食べているが、そのうちのいくつかの分子は数時間もしないうちに新たに"リンコ"になる」
レスキネン「そして6年ほどで"リンコ"ではなくなってしまう」
真帆「人間の体細胞の入れ替わる周期は約5年から7年と言われていますね。もちろん、脳細胞も新しいものへと次々に更新されている」
レスキネン「それでも今まで"リンコ"は続いていた、そして今後も"リンコ"は続いていく、と脳は思考する」
レスキネン「不思議だと思わないかい?」
倫子「1秒前の私と、今の私とを繋ぐのは……"意識"?」
レスキネン「でも、我々はソレを見たことも触ったことも無い。"意識"と仮に呼んでいるものの正体とは、一体なんだろうね?」
倫子「つまり、形而上のモノを現実として認識できるのが人間だ、ということですか?」
レスキネン「そうだね! そして、それを可能にするのは言葉だ」
レスキネン「言葉による記号化がなければ、世界は混沌<カオス>のまま、無秩序のまま」
真帆「いわゆる記号論ですね」
422: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:32:19.46 ID:2RffVo6fo
レスキネン「生物は様々な情報を交換する。これが言語だね、もちろん犬や猫にも彼らなりの言語はある」
真帆「その意味では、言葉だけじゃなく、身振りや鳴き声、臭いや超音波やDNA配列なんかも言語化されている、と言えるわ。コンピューターでさえプログラミング言語でコミュニケーションをしている」
レスキネン「人間は口や喉などの調音点を使って様々な音のパターンを作り出し、そのパターンごとに事物や事象を当てはめていく。これによって世界を分節化していくね」
倫子「それが言葉、ですよね」
レスキネン「だが、人間の言葉が示しているのは、実は世界の事物そのものではなく、シンボルなんだ」
倫子「えっと……?」
真帆「例えば、私が今"脳"という言葉を口にしたとして、具体的な事物を指しているわけじゃない」
真帆「動物一般が所有している、頭骨に守られた器官のことを意味しているのよ」
真帆「それってつまり、脳というモノを指しているようでモノ自体を指していない……"脳と言う概念"を示しているだけってことでしょ?」
倫子「ああ、なるほどね。具体的な事象を表す言葉でも、本当に意味しているのは抽象的なものってわけか」
423: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:33:07.41 ID:2RffVo6fo
レスキネン「当然リンコの脳とマホの脳はまったくの別物だ。それどころか、昨日のリンコの脳と明日のリンコの脳も別物と言える」
真帆「同じ人間の脳であっても、1秒もしないうちに脳の分子組成は変化するし、電気信号のサーキットも再構築されてる」
真帆「でも、そうやって不断に変化し続けるものでも、"脳"とか"意識"という名前をつけることで、非時間的、非空間的な認識世界を創造できる、ということですよね、教授」
レスキネン「そう。人間の言語が表しているのは、現実そのものではなく、仮想の世界なんだ」
真帆「さらに言えば、複数の語が互いに関連をもってネットワーク化することで、その語の意味が明確になるの」
レスキネン「誤解を恐れずに言えば、人類はその言語社会内において、独自のヴァーチャルリアリティを共有している、とも言えるね」
倫子「世界の本来の姿……アナログで区別不可能な混沌<カオス>を非連続化して、データとして整理できるのは、人間だけ?」
レスキネン「"That's the point!"」
424: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:46:59.59 ID:2RffVo6fo
レスキネン「そしてそれは、過去と未来を秩序立てて認識できる、ということでもあるんだ」
レスキネン「人間以外の生き物にとっては"現在"しか存在しない。いや、あるいは人間にとっての"現在"という概念がない、とも言える」
真帆「もちろん、象の脳でもネズミの脳でも人間と同じように時間を感じているわ。主観的なスピードはそれぞれ、と言われているけどね。これに関しては目下研究中よ」
倫子「だけど、時間の概念の捉え方が異なってる?」
レスキネン「そういうことさ。我々は常に世界を0と1に分解している。そうしなければ、明日の朝食を決めることすらできないね」
倫子「時計の針が指す意味がわからないと時間を区切れず、"明日"という概念さえない……」
レスキネン「そういう意味では、タイムトラベルを正しく理解できるのも人間だけだ」
レスキネン「仮に猫が1年前にタイムトラベルしたとしても、その猫は自分が1年前に居るということを認識できない」
レスキネン「きっと、昨日まで居た環境とは別の環境に放り出された、くらいの認識しかないんじゃないかな」
真帆「猫にとっては世界は常に"現在"。猫は時間移動の観測者足りえない、とも言えるわ」
倫子「脳が認識できなければ、存在しないのと同じ……」
レスキネン「ヒト種は大脳新皮質を大きく発達させた。一般にそれは複雑な社会環境へ適応するためだと言われている」
真帆「社会脳仮説、ですね。一方で心の理論は、ヒトにおいて突然発生したのではなく、他の生物種にその原型があるのではないか、などと考えられてるわ」
レスキネン「人間は進化の結果、他の哺乳類、いや、他の霊長類にさえ無い知的能力を持っているわけだ」
レスキネン「さて。以上の議論を踏まえて、『Amadeus』は"人間"と呼べると思うかい?」
倫子「"紅莉栖"が……?」
425: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:53:46.97 ID:2RffVo6fo
真帆「ようやく本題ですか。長い前置きは教授の悪い癖です」ハァ
レスキネン「Haha! でも、こういう思考実験はおもしろいだろう? それで、リンコはどう思う?」
倫子「……言える、と思います。『Amadeus』も人間と同じように言葉を使って思考して、時間の概念も持っているから……」
真帆「でもそれは"そう見える"だけで、実際にはコンピューター上での演算結果に過ぎないわ」
倫子「だけど、その仕組みはまだ判明してないんだよね? 私たちの脳が"そう見える"なら、仕組みが解明されるまでは否定できないんじゃないかな……」
レスキネン「やはり、日本人はアニミズムの傾向が強いようだ。リンコはロボットアニメが好きなタイプかな?」
倫子「えっ? どうしてそれを?」
真帆「一概には言えないですよ、教授。あのね、岡部さん。キリスト教圏では特に、生命の創造に類することに反発を持つ人もいるの」
レスキネン「アイザック・アシモフはこれをフランケンシュタインコンプレックスと呼んだ。人間の尊厳を脅かす存在は、得てして害を為す不安の種となっているんだ」
―――――
『そもそも、こんなものは無謀だ。正気の沙汰ではない』
『何より、これは神への冒涜だ。宗教的にも倫理的にも問題がある』
―――――
倫子「あっ、この間のATFで……」
426: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:55:37.30 ID:2RffVo6fo
レスキネン「『Amadeus』は父なる神が創造したものでもなければ、ヒト種の母から生まれた存在でもない」
レスキネン「私とマホのチームが人工的に作り出した"箱"に過ぎないんだ」
真帆「人工的と言っても、私と紅莉栖の脳の構造を基板上で再現、模倣したものなのだけどね」
レスキネン「そう言えば、マホは以前完全にオリジナルな『Amadeus』を作ろうとしていたね」
倫子「完全にオリジナル?」
真帆「ベースとなる人間の脳構造を模写することなく、記憶も独自の偽造記憶を植え付けた『Amadeus』を開発しようとしたこともあったの。今のところ保留してるけど」
レスキネン「まだ失敗ではないと?」フフッ
真帆「成功させるためにも、"紅莉栖"と"真帆"の研究が急務なんです! あの子たちには、わからないことが多すぎる」
倫子「でもそれって、まるで人造人間……ゴーレムみたいな……」
真帆「へえ、人間ベースの『Amadeus』には好感が持てても、オリジナル『Amadeus』には嫌悪感があるのね?」
倫子「い、いや、そういうわけじゃ……」
428: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:58:54.63 ID:2RffVo6fo
レスキネン「つまり、そこに人間かどうかの線引きがあると、リンコは考えているわけだね」
倫子「……恥ずかしながら」
真帆「私からすればどちらもAIよ。私はプロメテウスになるつもりなんかないわ」
真帆「"紅莉栖"と"真帆"が人間だとするなら、私たちはそんな無機質な箱の中に"彼女たち"を閉じ込めていることになる……」
真帆「まあ、実際そのことで"本人"からたまに文句を言われるのだから厄介なんだけど」ハァ
倫子「空の無い、冷たくて暗い世界……」
倫子「(あれ……なんだろう、このイメージは……)」ブルッ
レスキネン「(さて、これで十分時間を稼げたか)」
prrrr prrrr
レスキネン「ん、ミスター・イザキ♂から電話? 私へのラブコールかな?」モッコリ
429: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 17:59:48.17 ID:2RffVo6fo
地下駐車場
プップー
井崎「レスキネン先生! それではお送りいたします、この僕のステーションワゴンで!」ドヤァ
井崎「アウディS4バンド、3リットルV型6気筒エンジンを搭載し、正規ディーラーでは軽く800万超え! 中古でも程度のいいものなら700万円に近いスポーツカー……!」キラキラ
レスキネン「ミスター・イザキ♂のハンドルさばきを見てみたいね」
レスキネン「(彼の送迎は想定外だが……まあ、構わないだろう)」
井崎「そうでしょうそうでしょう! ささ、助手クンもどうぞ!」
真帆「え、ええ。教授、お先にどうぞ。私は荷物をトランクに入れてきます」
倫子「この人は、まったく……」ハァ
井崎「しかし、キミもなかなかやるんだねぇ。意外だったよ」
倫子「はい?」
井崎「いや、教授の可愛い助手クンさ。付き合っちゃうといい」
倫子「ちょっ!? からかわないでください! そもそも、私たちは同性ですよ!」
井崎「えー? キミのこと噂になってるよ? 合コンで男たちを退けてるのはそっちのケがあるからだって」ヘラヘラ
倫子「(この男……殴りたい……!)」
プップー
井崎「レスキネン先生! それではお送りいたします、この僕のステーションワゴンで!」ドヤァ
井崎「アウディS4バンド、3リットルV型6気筒エンジンを搭載し、正規ディーラーでは軽く800万超え! 中古でも程度のいいものなら700万円に近いスポーツカー……!」キラキラ
レスキネン「ミスター・イザキ♂のハンドルさばきを見てみたいね」
レスキネン「(彼の送迎は想定外だが……まあ、構わないだろう)」
井崎「そうでしょうそうでしょう! ささ、助手クンもどうぞ!」
真帆「え、ええ。教授、お先にどうぞ。私は荷物をトランクに入れてきます」
倫子「この人は、まったく……」ハァ
井崎「しかし、キミもなかなかやるんだねぇ。意外だったよ」
倫子「はい?」
井崎「いや、教授の可愛い助手クンさ。付き合っちゃうといい」
倫子「ちょっ!? からかわないでください! そもそも、私たちは同性ですよ!」
井崎「えー? キミのこと噂になってるよ? 合コンで男たちを退けてるのはそっちのケがあるからだって」ヘラヘラ
倫子「(この男……殴りたい……!)」
430: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 18:02:19.71 ID:2RffVo6fo
井崎「ハハ、キミは潔癖だね。ただ、正直なだけじゃあ渡っていけないことってのもあるもんさ」
倫子「はぁ……」
井崎「このコネは手放しちゃいけないぜ? 彼女、なかなかの有望株らしいからな。キミの将来に直結してる」
井崎「仲が良かった研究者が死んじゃったとかで寂しがってるらしいし、チャンスだと思うけどなァ」
倫子「…………」ギリッ
倫子「……私は帰ります。秋葉原に用があるので」
井崎「んじゃ、また大学で。――あ、次のパーティー、相手は国立医学部だから、またよろしく頼むよ、ミス電大生」ヒラヒラ
倫子「(私は客寄せパンダでもキャバ嬢でもないんだけどな……)」
――カシュッ! カシュッ!
倫子「(ん? 今の音……サプレッサー!?)」ドクン
バリィィィィン!!
井崎「ひ、ひぃぃっ!? 僕の車の窓がぁぁっ!?」
バリィィィィン!!
レスキネン「――!」
真帆「きゃあ!」
431: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 18:58:50.61 ID:2RffVo6fo
倫子「(な、なに……なんなの……!?)」プルプル
コツ コツ コツ …
倫子「(柱の陰に男……あ、あいつはっ!?)」ドキドキ
カトー「……つまずきが、えーっと、あの、その、なんだっけ……あれ、私はどうしてここに……い、いや、つまずきをもたらすものが忌まわしくて……あれ、どうして銃など……」クラクラ
倫子「(あいつ、ATFの講演の時、私が異議を出した人だ……けど、様子がおかしい?)」ゾクッ
カトー「あー、そうそう、ヒンノムね、ヒンノムの谷……シリコンの上に魂は宿らない……だったかな……」ブツブツ
井崎「う、うう、うわあああ!!」ダッ
倫子「(バ、バカ! この状況で動いたら――)」
カトー「――――!」クルッ
カシュッ! カシュッ!
432: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 18:59:31.90 ID:2RffVo6fo
井崎「ひええええっ!!」ピューッ
倫子「(外した――やつが井崎に気をとられている今が逃げるチャンス!? で、でも……)」ウルッ
倫子「(足が……っ)」ガクガク
真帆「岡部さんっ! 車に乗って!」グイッ
倫子「きゃあ!?」バタンッ
真帆「教授、このままこの車で逃げます。いいですね!?」
倫子「え……えええっ!?!?」
レスキネン「私がマホを信頼しないで、誰が君を信頼するというのか」
真帆「……クッ!! どうしてこんなときにっ!!」ギリッ
倫子「ど、どうしたの!?」
真帆「……足が、足が……」プルプル
倫子「あ、足が……?」
真帆「……足がペダルに届かない」グスッ
倫子「(あー……)」
433: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:01:14.30 ID:2RffVo6fo
倫子「私が運転席に座る。真帆ちゃんは私の上に座って、私の足を踏んづけて操作してっ」ヨイショ
真帆「…… に ものが当たって痛いわ!」
倫子「ちょ!? ベルトのバックルだからね!? 私、女の子だからね!?」
真帆「ごめんね、足、踏むわよ!」ガッ ガッ ブルルルルン!! キュルルルルル……
倫子「うわあっ!? 急発進!?」
カトー「――っ!!」ササッ
倫子「(危うくあいつを轢くところだった……!)」ドキドキ
倫子「あいつ、なんなの!?」ドキドキ
真帆「まさか、セミナーでの腹いせ!?」キュルルルル
倫子「(真帆がハンドルを右に切った。右ハンドルのこの車は、私たちが座っている側があいつの方へと向いて――)」
カトー「――っ!!」カシュッ!!
倫子「(あ――――やばい、意識が――――)」ドクンッ!!
ドクン
ドクンドクン
ドクンドクンドクン
――――ドクン!!
434: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:02:07.58 ID:2RffVo6fo
倫子「(っ―――――い、息が、できな……な、なにこれ!?)」ドクンドクン
倫子「(世界が止まった……いや、スローになってる!?)」ドクンドクン
倫子「(車の動くスピードも、あいつが撃った銃の弾もゆっくり見える……ゾーンに入ったのか!?)」ドクンドクン
倫子「(……このままだと銃弾が真帆に当たるっ!)」ドクンドクン
バ―リ―ィ―ィ―ィ―ィ―ン!!
倫子「(運転席側の窓が超スローで割れた……。くそ、身体もスローでしか動かせない……っ! じれったい!)」ドクンドクン
倫子「(でも、真帆の身体を少しでも前に倒せば、ギリギリ避けられる……!)」
ドクンドクンドクン
ドクンドクン
ドクン
倫子「(世界が、元の速度に――――っ!)」ズバシュッ!!
真帆「な、なに!? 大丈夫!?」
倫子「(くっ、元に戻るのが早かったせいで、私のこめかみに銃弾がかすった……まともに当たらなかったのは収束のおかげかな……)」ズキズキ
倫子「わ、私はいいから、前だけ見て運転して……」ボタボタ
真帆「ちょ、あなた、頭から血が……!!」
倫子「私はいいからっ!!」
真帆「……あっ!!」キュルルルルル
ズドォォォォォン!!
435: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:02:48.38 ID:2RffVo6fo
倫子「(車が柱に激突した……)」ゴフッ
真帆「やっぱりレースゲームとは違うわね……あいたた……」
倫子「(あ……ダメ……痛すぎて意識が飛びそう……)」クラッ
倫子「あいつ、は……?」
真帆「撒いたと思うけど……って、嘘っ!? 追ってきた!?」
倫子「バックミラーに映ってるセダン、あれ、あいつが乗ってるの!? こっちに突っ込んでくる!!」
真帆「まるでジョン・カーペンターの映画だわ!」
倫子「(今から発車しても間に合わない……!)」
倫子「教授! 降りてください! 真帆ちゃん、捕まって!」ガシッ
真帆「え――きゃあっ!?」ズテーン
ドゴォォォォォォッ!!
436: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:04:27.50 ID:2RffVo6fo
倫子「(あいつ、あのまま突っ込んできた……イカれてる! でも、もう命は無いはず……)」
真帆「井崎さんの車、ぺちゃんこね……」
タッ タッ タッ
警備員「どうしました!? 何があったんですか!?」
真帆「すみません、警察を呼んでください! あと、消防も!」
警備員「あ、ああ! わかった!」
倫子「(あ、あれ、安心したら、また意識が――――)」クラッ
真帆「……岡部さん? 岡部さんっ!! しっかりして!! 岡部さ――――」
437: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:06:10.69 ID:2RffVo6fo
『あれれ~? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってる~』
『……死にたく……ないよ……こんな……終わり……イヤ……たす……けて……』
――――さんっ! 岡部さんっ!!
倫子「……あ、あれ……」パチクリ
真帆「岡部さんっ!! 死んじゃダメぇっ!!」ポロポロ
倫子「まほ……ちゃん……?」
真帆「岡部さん!? よ、良かったぁ……生きてる……」グスッ
レスキネン「だから言っただろう? 気を失っているだけだと」
倫子「ごめん、安心して気が抜けただけだから……私は死なないよ」ニコ
真帆「バカっ!! 人間は脳を撃たれたら死ぬのよっ!? あなたは『Amadeus』じゃないのよ!?」ユサユサ
倫子「わ、わかってるっ! だから、揺らさないで……頭に響く……」グラグラ
警官A「――……な、なんだあいつは!?」
倫子「えっ――」
438: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:06:45.28 ID:2RffVo6fo
カトー「……つまずきを、つま、つ、つまずき……つまずきぃ……っ!」
倫子「(腹が破れてるっ!? そんな、内臓をこぼしながらこっちに向かって……っ!)」
倫子「う、おえええっ!!」ビチャビチャ
真帆「な、なに……あれ……」プルプル
カトー「つまずきィッ!!」ガチャッ
レスキネン「――っ!」
倫子「教授っ! 逃げ――」
BANG!!
439: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:08:04.84 ID:2RffVo6fo
カトー「っ――――」バタッ グチャグチャッ
真帆「きゃああっ!?」
倫子「(あいつの脳が破裂した……)」オエエッ
倫子「(い、今の銃声は、いったい……?)」クラクラ
警官A「だっ、だっ、誰だ!? 勝手に発砲した者はっ!?」
警官B「じ、自分ではありませんっ!」
倫子「(警官が撃ったんじゃない? なら、一体誰があいつを撃ったんだ……?)」
レスキネン「…………」スッ
レスキネン「(私としては、リンコが『Amadeus』と仲良くなってもらわなければ困るからね)」
440: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:09:49.33 ID:2RffVo6fo
・・・
2010年12月16日木曜日明け方
岡部青果店
警察A「それでは、また何かありましたらすぐ連絡をお願いします」
倫子「は、はい。わざわざ送っていただいてありがとうございました」
チュンチュン…
倫子「(もう朝になっちゃった。教授たち、大丈夫かな……)」
倫子「(私の頭の怪我は警察で手当てしてもらえたから良かったけど)」
倫子「(いったい、あいつは何の目的で襲撃を? 本当に『Amadeus』に対する宗教的な反発だったのかな……)」
倫子「(……そんなレベルじゃない陰謀が影に隠れているような気がしてならない)」ゾクッ
2010年12月16日木曜日明け方
岡部青果店
警察A「それでは、また何かありましたらすぐ連絡をお願いします」
倫子「は、はい。わざわざ送っていただいてありがとうございました」
チュンチュン…
倫子「(もう朝になっちゃった。教授たち、大丈夫かな……)」
倫子「(私の頭の怪我は警察で手当てしてもらえたから良かったけど)」
倫子「(いったい、あいつは何の目的で襲撃を? 本当に『Amadeus』に対する宗教的な反発だったのかな……)」
倫子「(……そんなレベルじゃない陰謀が影に隠れているような気がしてならない)」ゾクッ
441: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:10:47.07 ID:2RffVo6fo
同日夕方
未来ガジェット研究所
倫子「――ってことがあったんだ」
まゆり「オカリン……無事でよかったよぉ」グスッ
倫子「私は死なないよ。まゆりが居るからね」ナデナデ
まゆり「ふぇぇ……」
ダル「早速ネットでもニュースになってる。ただ、オカリンの説明とは色々と情報が違ってるっぽい」カタカタカタカタ
ダル「警察の発表だと、犯人は麻薬常習者で、薬物による錯乱の果ての犯行と思われる……だってお」
倫子「……情報規制? ってことは、また300人委員会あたりの陰謀……」プルプル
ダル「オ、オカリンの陰謀論好きは変わらんのぜ~あはは」
倫子「え? あっ」
倫子「(しまった、由季さんも居たんだった)」
由季「……レスキネン教授が……」ブツブツ
未来ガジェット研究所
倫子「――ってことがあったんだ」
まゆり「オカリン……無事でよかったよぉ」グスッ
倫子「私は死なないよ。まゆりが居るからね」ナデナデ
まゆり「ふぇぇ……」
ダル「早速ネットでもニュースになってる。ただ、オカリンの説明とは色々と情報が違ってるっぽい」カタカタカタカタ
ダル「警察の発表だと、犯人は麻薬常習者で、薬物による錯乱の果ての犯行と思われる……だってお」
倫子「……情報規制? ってことは、また300人委員会あたりの陰謀……」プルプル
ダル「オ、オカリンの陰謀論好きは変わらんのぜ~あはは」
倫子「え? あっ」
倫子「(しまった、由季さんも居たんだった)」
由季「……レスキネン教授が……」ブツブツ
442: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:11:52.04 ID:2RffVo6fo
倫子「そういや、由季さんとまゆりはどうしてラボに?」
まゆり「あのね~、まゆしぃね、由季さんにお料理を教えてもらっているのです!」
由季「簡単なのしか教えられませんけどね。でも、まゆりさんが私をいじめてくれる、じゃなかった、教えがいがあるのは嬉しいですから」ニコ
倫子「(そういやそんなこと言ってたっけ)」
倫子「ん? まだ作ってないよね、これからだった?」
まゆり「えっとね~、ダルくんが なゲームをしてたからお料理はまだなのです」
ダル「あーあーあー! 聞こえなーい!」
倫子「お前……由季さんに嫌われるぞ……」ジトッ
由季「いえ、気にしないでください。私、結構そういうゲームも大丈夫ですので」
倫子「ってか何をやってたんだ? 『監 義妹~ひな子の×××が○○○~ あなたはお兄ちゃん? それともお姉ちゃん?』……ああ、これか」ガックリ
倫子「(いつだったか助手がラボで全力xxxxに励んでいたやつだ)」ハァ
由季「岡部さんもゲームされたことが!? ハードな がたまらないですよねっ!!」ハァハァ
倫子「……え?」
由季「あっ」
443: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:12:31.50 ID:2RffVo6fo
ガチャ
鈴羽「…………」クラッ
倫子「あ、鈴羽。おかえり……鈴羽……?」
鈴羽「あっ……」バタンッ
ダル「鈴羽!? 大丈夫か?」ダキッ
鈴羽「う、うん……」クラッ
倫子「どうしたの!?」
由季「鈴羽おね……鈴羽さん、おでこ貸してください」
鈴羽「(げっ、母さん……)」ドキドキ
由季「ひどい熱、大変だわ!」
まゆり「風邪かなぁ?」
鈴羽「すぐに治すから心配しないで。ちょっとだけソファーで休ませてもらうよ」ヨイショ
ダル「あう、あう……」オロオロ
444: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:13:27.93 ID:2RffVo6fo
鈴羽「(くっ……頭が、くらくらする……)」
由季「すごい汗……」
倫子「買い溜めしてた薬、切らしてる……ダルは薬買いに行ってきて。私は鈴羽を着替えさせるから」
ダル「オーキードーキー!」
まゆり「まゆしぃは濡れタオルつくるね!」
由季「あ、あの、私はどうすれば……」オロオロ
倫子「あー……。由季さん、ちょっと」
由季「えっ?」
倫子「誰にも言わないで欲しいんですけど、実は鈴羽、身体に大きな傷跡があって……人に見られたくないみたいなんです」ヒソヒソ
由季「……じゃあ、私も橋田さんと一緒に買い物に行ってきますね」
倫子「すいません、お願いします」
倫子「(由季さん、あんまり驚かなかったな。もしかして鈴羽からもう聞いてた?)」
445: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:13:56.67 ID:2RffVo6fo
倫子「ほら、鈴羽。由季さん居なくなったから、服脱いで」
鈴羽「いや、このままでいいよ……未来の環境と比べたら、放射能も粉じんも気にせずに居られるだけマシだ」
倫子「未来のことなんて知らない。休めるなら全力で休むべきだよ」
鈴羽「……やっぱりリンリンはリンリンだね。今は過去へ行ってくれないけど」
倫子「うぐっ!? ご、ごめん……」シュン
鈴羽「あっ、あたしこそごめん。いまの、ナシナシ……」
倫子「……ほら、早く脱いで。できるだけ、身体、見ないようにするから」
鈴羽「う、うん……じゃあ、お願い……」ヌギッ
倫子「まゆり、乾いたタオルある?」
まゆり「うん、はいっ。脱いだ服は後でコインランドリーに持っていくからね」
446: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:15:15.80 ID:2RffVo6fo
鈴羽「うあっ、く、くすぐったいっ……」ハァ ハァ
倫子「……もしかして、未来でも私、こんなことしてた?」フキフキ
鈴羽「……懐かしいな。あれはあたしがおたふく風邪をこじらせた時だったかな」
鈴羽「あの頃はリンリンも椎名まゆりも子どもは居なかったから、みんなであたしのこと可愛がってくれたよ」
倫子「そっか……」
まゆり「じゃあ、スズさんはまゆしぃたちの子どもだね~♪」
鈴羽「……知らないことは幸福だね、椎名まゆり」ギロッ
まゆり「えっ?」
倫子「ああ、ううん。なんでもないよ、まゆり」ゴシゴシ
鈴羽「あぎぃっ!? 痛っ、リンリン、痛いよぉっ!!」
447: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:16:06.36 ID:2RffVo6fo
ガチャ! バタン!
ダル「ただいまだおー!」
倫子「うわ、今度はダルが汗だくだ……あれ? 外は寒いよね?」
由季「は、橋田さん、かなりの勢いで走ってたので……ハァ、ハァ……でも、こうやって走らされるのも悪くないかも……」ドキドキ
まゆり「ねえ、おかゆを作るのはどうかな?」
由季「私たちもそれ、考えていたんです。おかゆを食べたあとにお薬を飲んだほうがいいって。それじゃまゆりちゃん、早速作りましょう」
倫子「あーっ! ま、まゆりに任せるのはまだ早いから、私が由季さんを手伝うよ!」アセッ
まゆり「えー? まゆしぃなら大丈夫だよ」
倫子「……まゆりは見てるだけ。いい?」
まゆり「はーいっ!」ニコニコ
448: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 19:18:55.97 ID:2RffVo6fo
鈴羽「(ああ……なんか昔もよくあったな、こういうこと……)」
鈴羽「(10年、いや、もっと前か。あたしが具合悪くすると父さんがすぐ大騒ぎして……母さんたちがいつも落ち着かせてた)」
鈴羽「(でも戦争が激しくなった頃から、なにもかも一変してしまった)」
鈴羽「(リンリンは強盗から椎名まゆりを守るために殺されたって聞いた)」
鈴羽「(父さんと椎名まゆりはずっとずっと泣き続けて……あたしがみんなを守らなきゃって思って軍隊に入ったんだ)」
鈴羽「(リンリンが死んじゃったから、あたしは過去へ行く強い意志を手に入れた……)」
鈴羽「(そうなる前のあたしは、本当に幸せだった……)」
鈴羽「(懐かしいな、こんな温かい時間……)」
鈴羽「(このまま……)」
鈴羽「(このまま時間が止まってくれたらいいのに……)」
鈴羽「(戦争も起きずに……誰も死なずに……みんなずっと一緒にいられたらどんなに……)」
449: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:49:10.13 ID:2RffVo6fo
ダル「……鈴羽。具合はどうなん?」
鈴羽「……よくない」
ダル「やっぱ疲れが溜まってたんだなー。鈴羽、今までずっと休んでなかったし」
鈴羽「あたし……ここにいないほうがいいかもしれない」
ダル「うぇ?」
鈴羽「どこかで気が緩んでたんだ。父さんが居て、リンリンが居て、ルミねえさんやるか兄さんも……いつの間にか母さんまで……」
鈴羽「あたしはこの時代のリンリンと椎名まゆりに取り返しのつかないことをしたのに、リンリンはあたしを許してくれて……」
鈴羽「そのせいで、時々、任務を忘れそうになる。なんだか、この温かい時間がいつまでも続くんじゃないかって錯覚しそうになったり……」
鈴羽「このまま戦争なんて起きないんじゃないかって考えたり……普通の女の子と同じような暮らしに憧れてしまいそうになったり……」
ダル「……それのどこが悪いって言うん?」
鈴羽「え?」
ダル「時代や世界線が違ったって僕は僕だ。どんどん甘えていいんだぞ、母さんにもオカリンにも」
ダル「鈴羽は僕の、僕たちの娘だ。ずっとここに居てもいいんだよ」
鈴羽「父……さん……」
由季「まゆりマ……まゆりちゃん、これを一旦はじっこまで回すと火が付くの。そしたらこの"中火"って書いてあるところまで戻して?」
まゆり「コンロに火がつけば一緒じゃないのー?」
倫子「火力という概念があってね……」
450: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:49:54.93 ID:2RffVo6fo
ダル「うおっと。なんかマジレスしちゃったお。オカリーン、ご飯マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン」
倫子「もうすぐだから、わからずやの鈴羽にセクハラして待ってて」
鈴羽「ちょぉっ!?」
ダル「うぉし、風邪で汗まみれになってるおにゃのこをハスハスしちゃうお! くんかくんか」
鈴羽「う……やめて」
ダル「これがイヤだったら早く風邪を治すといいお」
鈴羽「…………。分かったよ」
ダル「うは? もしかしてフラグktkr?」
鈴羽「バカなこと言ってると、治ってからひどい目に遭わせるよ?」
ダル「前は近所の公園で早朝から延々と匍匐前進させられて隣の小学校から通報されたりしたけど、今度はブーツ履いてゴリゴリ踏んづけるとかそういう系?」
由季「そ、そんなっ!? ダメですぅ! ///」
鈴羽「指とツメの間に色々刺す」
由季「ああっ! 激しいですっ! ///」
倫子「(なんで悦んでるんだこの人……)」
451: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:50:48.45 ID:2RffVo6fo
ダル「な、鈴羽。そろそろ教えてくんないかな? 毎日、何をしに出かけてるん?」ヒソヒソ
鈴羽「(自分に託されたかがりを過去に置いてけぼりにしちゃった、なんて父さんに言えない……けど……)」
ダル「僕にも手伝えることあるかもしんないしさ」
鈴羽「……実は、あたし以外にもタイムトラベラーが居るんだ」ヒソヒソ
ダル「な、なぬぅ!?」
鈴羽「その子を捜してるんだけど、詳しくはあとで2人きりになったら話す。椎名まゆりには聞かせられないから」ヒソヒソ
ダル「あ、うん。それでもいいけど」
倫子「ほら、できたよ」ヨット
まゆり「ラボ特製のおかゆさんなので~す! ぱんぱかぱんぱんぱ~ん♪」
由季「ちゃんと食べてくださいね? 鈴羽おね……鈴羽さん?」
鈴羽「う、うん。わかってるよ、かあ……由季さん」
由季「ふーっ。ふーっ。はい、あーん?」スッ
鈴羽「う、ぁ、い、いいよ……やめてよ……///」
ダル「鈴羽、熱のせいか顔が真っ赤だお」ニヤニヤ
まゆり「今度はまゆしぃが作ってあげるね!」
倫子「それはやめてあげて……」
452: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:52:42.42 ID:2RffVo6fo
2010年12月23日(祝)木曜日夜
岡部青果店 倫子の部屋
倫子「(今日から大学は冬期休業になる)」
倫子「(ラボはすっかり由季さんのお料理教室化してしまったので私は行かなくなった。失敗作を食わされるのは正直勘弁してほしい……)」
倫子「(……真帆ちゃんは大丈夫かな。本人に聞いても大丈夫としか言わなかったし、いっそ"紅莉栖"に電話して――)」
『……テスターを、やめたいです』
倫子「(……いや、でも、いつでも通話していいって言ってたし、別にいいよね)」prrrr prrrr
Ama紅莉栖『……ハロー。テスターをやめた自分勝手な岡部倫子さん?』
倫子「ぐっ!? そ、それは言わないで、お願い……」
Ama紅莉栖『まあ、この私にカウンセラー適性が無かったことの証明になったわけだから、それはそれでいいんだけど』
Ama紅莉栖『でもこれからは、あんたのメンタルとかいちいち気にしないから覚悟しなさい』フフッ
倫子「(こ、こわぁ……)」ブルッ
Ama紅莉栖『……それで、あんたは大丈夫なの? 変な事件に巻き込まれたって聞いたけど』
倫子「う、うん。私は大丈夫、慣れてるから」
Ama紅莉栖『慣れ……?』
倫子「それより、真帆ちゃんは?」
岡部青果店 倫子の部屋
倫子「(今日から大学は冬期休業になる)」
倫子「(ラボはすっかり由季さんのお料理教室化してしまったので私は行かなくなった。失敗作を食わされるのは正直勘弁してほしい……)」
倫子「(……真帆ちゃんは大丈夫かな。本人に聞いても大丈夫としか言わなかったし、いっそ"紅莉栖"に電話して――)」
『……テスターを、やめたいです』
倫子「(……いや、でも、いつでも通話していいって言ってたし、別にいいよね)」prrrr prrrr
Ama紅莉栖『……ハロー。テスターをやめた自分勝手な岡部倫子さん?』
倫子「ぐっ!? そ、それは言わないで、お願い……」
Ama紅莉栖『まあ、この私にカウンセラー適性が無かったことの証明になったわけだから、それはそれでいいんだけど』
Ama紅莉栖『でもこれからは、あんたのメンタルとかいちいち気にしないから覚悟しなさい』フフッ
倫子「(こ、こわぁ……)」ブルッ
Ama紅莉栖『……それで、あんたは大丈夫なの? 変な事件に巻き込まれたって聞いたけど』
倫子「う、うん。私は大丈夫、慣れてるから」
Ama紅莉栖『慣れ……?』
倫子「それより、真帆ちゃんは?」
453: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:54:03.12 ID:2RffVo6fo
2010年12月24日(金)午後2時
和光市駅 駅前ロータリー
倫子「(襲撃から1週間。 "紅莉栖"に確認したところ、2度目の襲撃らしいものは無く、平和そのものだったとのこと)」
倫子「(それでもまだ安心はできない。真帆ちゃんは、表には出さないけどそれなりに動揺していると"紅莉栖"から聞いたので、彼女のホテルを訪ねてみることにした)」
真帆【別にいいわよ、わざわざ訪ねて来なくても】
【"紅莉栖"に頼まれたことでもあるから。それに、友達として遊びに行ってもいいでしょ?】倫子
真帆【わかったわ。和光市の駅に着いたら電話ちょうだい】
倫子「……ってRINEをもらったから電話してるのに、一向に出ない」prrrr prrrr
『……つまずきを、つま、つ、つまずき……つまずきぃ……っ!』
倫子「(まさか――――!)」ダッ
和光市駅 駅前ロータリー
倫子「(襲撃から1週間。 "紅莉栖"に確認したところ、2度目の襲撃らしいものは無く、平和そのものだったとのこと)」
倫子「(それでもまだ安心はできない。真帆ちゃんは、表には出さないけどそれなりに動揺していると"紅莉栖"から聞いたので、彼女のホテルを訪ねてみることにした)」
真帆【別にいいわよ、わざわざ訪ねて来なくても】
【"紅莉栖"に頼まれたことでもあるから。それに、友達として遊びに行ってもいいでしょ?】倫子
真帆【わかったわ。和光市の駅に着いたら電話ちょうだい】
倫子「……ってRINEをもらったから電話してるのに、一向に出ない」prrrr prrrr
『……つまずきを、つま、つ、つまずき……つまずきぃ……っ!』
倫子「(まさか――――!)」ダッ
454: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:55:36.53 ID:2RffVo6fo
東縦イン 503号室前
チーン 5階デス
倫子「やっぱり出ないか……っ!」prrrr prrrr
倫子「この部屋に……真帆ちゃんっ! 真帆ちゃん居るの!?」ドンドンドン!!
ガチャ
真帆「……あ゛?」イラッ
倫子「真帆ちゃん、よかっ……」
倫子「(うっわー……目の下にクマ、髪はボサボサ、顔にはシーツの皺の跡。"残念"の権化だなぁ……)」
真帆「真帆ちゃん言うな……」イライラ
倫子「えっと、ごめん。もしかして寝てた?」
真帆「電話してから来てって言……」イライラ
ブー ブー
倫子「…………」
真帆「…………」
真帆「ごめんなさい。音量をオフにしてたわ」ハァ
倫子「何かあったんじゃないかと心配したよ」
真帆「不要な心配をかけて悪かったわ。中へどうぞ」
チーン 5階デス
倫子「やっぱり出ないか……っ!」prrrr prrrr
倫子「この部屋に……真帆ちゃんっ! 真帆ちゃん居るの!?」ドンドンドン!!
ガチャ
真帆「……あ゛?」イラッ
倫子「真帆ちゃん、よかっ……」
倫子「(うっわー……目の下にクマ、髪はボサボサ、顔にはシーツの皺の跡。"残念"の権化だなぁ……)」
真帆「真帆ちゃん言うな……」イライラ
倫子「えっと、ごめん。もしかして寝てた?」
真帆「電話してから来てって言……」イライラ
ブー ブー
倫子「…………」
真帆「…………」
真帆「ごめんなさい。音量をオフにしてたわ」ハァ
倫子「何かあったんじゃないかと心配したよ」
真帆「不要な心配をかけて悪かったわ。中へどうぞ」
455: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:57:19.86 ID:2RffVo6fo
倫子「(部屋は滅茶苦茶汚いかと思ったけど、そこまでじゃなかった。クローゼットから色々とはみ出しているのが気になる……)」
真帆「徹夜で自分のノートパソコンの復旧をしてたの。ついさっき終わったところだったのよ」
倫子「(あの事件の時、潰れた2台の車とともに、真帆ちゃんとレスキネン教授の荷物は所轄の警察のもとに運ばれた)」
倫子「(当然、トランクに入れられていた荷物はぐちゃぐちゃになっていた)」
倫子「(そんな中、真帆ちゃんのPCバッグだけは難を免れたんだけど、警察から返却された時にはOSが立ち上がらなくなっていたのだとか)」
真帆「ハードディスクを完全にやられたわ。円高だし、ひどい散財よ」
倫子「言ってくれれば、格安で用意してあげられたのに」
真帆「えっ、そうなの?」
倫子「ダル――前に学園祭の時会ったでしょ? あいつがね、その手の業者に顔が利くんだよ」
真帆「ダル……ああ、橋田さんのこと。そっか、その手があったのね」ハァ
倫子「(……あれ? 真帆ちゃんにダルの本名って教えてたっけ?)」
真帆「じゃあ、次にああいうことがあったらお願いするわ」
倫子「えっ? 縁起でもないなぁ」
真帆「そう? この前の事件、あれで終わりだと思うほど楽天的では居られないと思うのだけど」
倫子「……なんだか、自分の命を数式で計算してるみたいな言い方だね。まるで――」
『映画でもゲームでも、ゾンビはもう1度殺さないと』
『お願い、岡部。私を殺して』
倫子「(……またよくわからない記憶が。なんだろう、これ)」
真帆「……紅莉栖、みたい?」
倫子「う、うん……」
456: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:58:41.15 ID:2RffVo6fo
倫子「あ、そうだ。今日の6時からうちのラボでクリスマスパーティーをやるんだけど、真帆ちゃんも来ない?」
真帆「もうそういう時期だったのね。気を使わなくていいわ、人間関係に煩わされるの、苦手なの」
倫子「……そっか」
真帆「気持ちだけ受け取っておくわ、ありがと」
Ama紅莉栖『ええっ!? 先輩、行かないんですか!? せっかく岡部と距離を縮めるチャンスなのに』
倫子「うおっ!? あ、真帆ちゃんのPCから……」
真帆「さっき試しに繋いでそのままにしてしまったわ……」ハァ
457: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 20:59:47.49 ID:2RffVo6fo
真帆「あのね、"紅莉栖"。そういうんじゃないって何度も言ったわよね?」
Ama紅莉栖『パーティーに着ていく服を買おうにも、服屋に着ていく服が無いんですねわかります……』
真帆「お金が無いだけよ! それに、私ひとりよそ者が彼女たちの輪に入ったら、変な気を使わせちゃうでしょ?」
倫子「そんなこと、ないと思うけどなぁ。特にまゆりとか」
真帆「いいえ、そんなことあるの。科学的にね」
Ama紅莉栖『確かに、どんなに社交性のある人でも、初対面の人にはストレスを感じるものです。あ、この場合のストレスってのはマイナスな意味じゃなくて、脳が刺激されるっていう意味の……ブツブツ』
真帆「そんなわけだから、あなたたちはあなたたちで楽しむといいわ」
倫子「……いつか真帆ちゃんが、"私たち"になってくれたらいいな」
真帆「そうね、それも悪くないかも……って、さっきから真帆ちゃん言うなっ!」
458: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:01:36.83 ID:2RffVo6fo
未来ガジェット研究所
倫子「うわ、サンタだらけ」
由季「準備はバッチリですよ。ハイ、どうぞこちらに」
倫子「……やっぱり?」
フブキ「やっぱり、です!」
るか「ボ、ボクもこうして、頑張ったので……」モジモジ
倫子「ルカ子までサンタコス!? ……頑張ったな、ルカ子」ウルッ
倫子「みんなが楽しんでるのに、水を差すわけには行かないか……」
カエデ「なんだかんだでオカリンさんって流されやすいところありますよね。そこがいいところでもありますけど」ウフフ
倫子「ダルと鈴羽は? このパーティー、鈴羽を笑顔にさせるためのものなんでしょ?」
まゆり「うーん、それがね、まだ連絡ないんだー」
フェイリス「サプライズを用意してるから、ダルニャンにはスズニャンをラボから遠ざけておいてもらってるんニャけど……」
フブキ「てなわけで、オカリンさんは今のうちに着替えてスタンバっちゃってくださーいっ! はい、これ!」スッ
倫子「わ、わかったよ……着替えてくるから、覗かないでよね」
倫子「うわ、サンタだらけ」
由季「準備はバッチリですよ。ハイ、どうぞこちらに」
倫子「……やっぱり?」
フブキ「やっぱり、です!」
るか「ボ、ボクもこうして、頑張ったので……」モジモジ
倫子「ルカ子までサンタコス!? ……頑張ったな、ルカ子」ウルッ
倫子「みんなが楽しんでるのに、水を差すわけには行かないか……」
カエデ「なんだかんだでオカリンさんって流されやすいところありますよね。そこがいいところでもありますけど」ウフフ
倫子「ダルと鈴羽は? このパーティー、鈴羽を笑顔にさせるためのものなんでしょ?」
まゆり「うーん、それがね、まだ連絡ないんだー」
フェイリス「サプライズを用意してるから、ダルニャンにはスズニャンをラボから遠ざけておいてもらってるんニャけど……」
フブキ「てなわけで、オカリンさんは今のうちに着替えてスタンバっちゃってくださーいっ! はい、これ!」スッ
倫子「わ、わかったよ……着替えてくるから、覗かないでよね」
459: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:02:20.09 ID:2RffVo6fo
開発室
prrrr prrrr
Ama紅莉栖『わぁ!? な、なに……!?』ドキドキ
倫子「(あ、いま、完全に油断してた)」
倫子「えと、一応、言っておこうと思って……」
Ama紅莉栖『……?』
倫子「メ、メリー、クリスマス……」テレッ
Ama紅莉栖『……まったく、あんたは』ハァ
Ama紅莉栖『メリークリスマス。これでいい?』
倫子「なんでそんな事務的なの?」
Ama紅莉栖『う、うるさいな。別にいいでしょ』
倫子「よくない」
Ama紅莉栖『はいはい、メリクリメリクリ』
倫子「このアマノジャク……」
prrrr prrrr
Ama紅莉栖『わぁ!? な、なに……!?』ドキドキ
倫子「(あ、いま、完全に油断してた)」
倫子「えと、一応、言っておこうと思って……」
Ama紅莉栖『……?』
倫子「メ、メリー、クリスマス……」テレッ
Ama紅莉栖『……まったく、あんたは』ハァ
Ama紅莉栖『メリークリスマス。これでいい?』
倫子「なんでそんな事務的なの?」
Ama紅莉栖『う、うるさいな。別にいいでしょ』
倫子「よくない」
Ama紅莉栖『はいはい、メリクリメリクリ』
倫子「このアマノジャク……」
460: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:03:45.70 ID:2RffVo6fo
倫子「もしかして、プレゼント欲しかったり?」
Ama紅莉栖『ふぇ!? い、要らないわよ! それに、何をもらってもこの空間じゃ使えないし』
倫子「真帆ちゃんに頼んでみるよ。アクセサリグラフィックのモデリングは……ダルのバイト先でも当たってみるかな」
Ama紅莉栖『いいってば! やろうと思えば自分で生成できるし、私のことよりももっと大事なことがあるでしょ?』
倫子「……マイスプーン、買ってあげる」
Ama紅莉栖『えっ……? ――ってなんであんたがそれ知ってるのよ!?』
倫子「ふふふ」ニヤリ
Ama紅莉栖『まさか、オリジナルから聞いたの!? どうしてなの牧瀬紅莉栖っ!?』
倫子「楽しみに待っててね!」ピッ
倫子「(さて、着替えるか……)」
461: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:04:36.63 ID:2RffVo6fo
談話室
倫子「え、えと、その……」モジモジ
まゆり「うわぁっ! かわいいよぉ~♪」
フェイリス「こ、これはちょっとヤバイニャ……宇宙の法則が乱れるニャ!」
倫子「こ、これ、露出度高くないかな……この歳で生足はちょっと……」モジモジ
カエデ「それ、生足を晒しまくってる由季さんへのイヤミですか?」ニコニコ
倫子「ぐっ!? い、いや、決してそんなつもりはっ!」アセッ
由季「もっと罵ってくださってもいいですよ」ウフフ
るか「お、岡部さんっ、ボク、そのっ……」オロオロ
フブキ「ちなみに、 の色はピンクでしたぜ」
倫子「はぁっ!? う、嘘を言うなぁ!!」
フブキ「あはは、ごめんなさい。ピンクなのはマユシィのでした」
まゆり「え……ええええっ!?!?」
倫子「え、えと、その……」モジモジ
まゆり「うわぁっ! かわいいよぉ~♪」
フェイリス「こ、これはちょっとヤバイニャ……宇宙の法則が乱れるニャ!」
倫子「こ、これ、露出度高くないかな……この歳で生足はちょっと……」モジモジ
カエデ「それ、生足を晒しまくってる由季さんへのイヤミですか?」ニコニコ
倫子「ぐっ!? い、いや、決してそんなつもりはっ!」アセッ
由季「もっと罵ってくださってもいいですよ」ウフフ
るか「お、岡部さんっ、ボク、そのっ……」オロオロ
フブキ「ちなみに、 の色はピンクでしたぜ」
倫子「はぁっ!? う、嘘を言うなぁ!!」
フブキ「あはは、ごめんなさい。ピンクなのはマユシィのでした」
まゆり「え……ええええっ!?!?」
462: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:05:10.99 ID:2RffVo6fo
まゆり「もう、ひどいよフブキちゃん……」ムスーッ
フブキ「ごめんマユシィ! でも、ふくれっ面のマユシィもかわいい~♪」
まゆり「もうっ! フブキちゃんなんて知らないもんっ!」プンプン
フェイリス「あ、ダルニャンから連絡……もう着く頃らしいニャ! みんな、配置に着くニャ!」
るか「みなさん、クラッカーです。どうぞ」スッ
由季「電気、消しますよ」カチッ
ダル『よーし、今から鈴羽と一緒に中へ入るぞー!』
倫子「(あいつは私と違って演技が下手だな)」フフッ
ガチャ
鈴羽「あれ? 今日は誰も来てな――――」
パン!! パンパン!! パパン!!
鈴羽「――――っ!」
463: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:06:00.74 ID:2RffVo6fo
鈴羽「――でやぁぁっ!!」ビュンッ!!
倫子「お、おいっ! 鈴羽っ!」
由季「きゃ、きゃぁっ!」ズテーン!!
鈴羽「――って、あれ!?」
フェイリス「ス、ストップだニャ!」
まゆり「メ、メリークリスマスだよぉ!」
鈴羽「……なに、してんの?」キョトン
倫子「クリスマスパーティーだよ!」
鈴羽「パーティー……これが、パーティー?」
由季「ご、ごめんなさい。鈴羽さんをびっくりさせようって言い出したの、私なんです」ペコペコ
鈴羽「え? あ、いや……っていうか、由季さんのそれ、ウィッグだったんだね」
由季「え……あ、ずれちゃいましたね。えと、そうなんです。えへへ」
倫子「(さすがプロレイヤー。へえ、地毛は赤みがかった栗毛色なんだ……鈴羽の毛色はダルの遺伝だったか)」
464: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:10:05.97 ID:2RffVo6fo
鈴羽「ごめん、火薬の臭いがしたから、つい体が反射的に動いちゃった」
ダル「いや、鈴羽は悪くないお! 僕がちょっと配慮が足りなかったお……」
鈴羽「父さ、兄さんも知ってたの? それでラジ館屋上であたしにやさしい言葉を……あ、いや……」
まゆり「ごめんね、スズさんっ! 企画したのはまゆしぃなんだよ!」
まゆり「だから、由季さんやダルくんを怒らないで! 怒るならまゆしぃにして!」
フェイリス「マユシィ! ……スズニャン、怒ったりしないでほしいニャ」キッ
鈴羽「……やだな、ふたりとも。そんなこと、しないよ」
鈴羽「(あんなことがあったんだ、信用してもらえてなくて当然か。あたしの過失だ)」
鈴羽「それじゃ、あたしはこれで」クルッ
まゆり「ど、どこ行くの、スズさんっ!?」
鈴羽「え? どこって……あたしが居たら邪魔になるだろ?」
鈴羽「(だってあたしは、嫌われて当然のことをしたから……)」
フェイリス「……ニャウゥ~!!」ガバッ
鈴羽「え、ちょっ!」
フェイリス「一緒にやろうニャ、パーティー!」ギュッ
鈴羽「ルミねえさん……」
フェイリス「フェイリスニャ!」ビシィ!!
465: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:11:52.78 ID:2RffVo6fo
ダル「ほら、鈴羽の席も、ちゃんと用意できてるのだぜ」ポンポン
鈴羽「兄さんも……椎名まゆりも、ルミねえさんも。母さ、由季さんも、あたしのために……」
倫子「考え過ぎないで、鈴羽。たまにはさ、おいしいもの食べて、みんなでおしゃべりしよ? ね?」
鈴羽「リンリン……」
フェイリス「はいはい、みニャさ~ん! これで、全員そろったニャ♪」
フブキ「はい、拍手拍手!」
パチパチパチ
~♪ ジングルベー ジングルベー
倫子「(ダルがBGMを用意してたんだ)」
フェイリス「それでは、今回のパーティーを企画したマユシィ、一言どうぞニャ!」
まゆり「えー、今日はクリスマス・イヴなのです。どこもりあ充さんでいっぱいだけど、今年はまゆしぃたちもパーティーをしてりあ充さんになろぉ! なのです」
フブキ「それ、リア充の意味が違うと思うけど……」
カエデ「フブキちゃん、何人もの後輩ちゃんからクリスマスデートに誘われたのよね。それはもう熱烈に」ウフフ
フブキ「うぐぅ! イヤミかぁ! 全員女の子の後輩だけどねぇ!」
倫子「あれ、そういえばカエデさん、彼氏持ちなのに今日大丈夫なんです……か……」
カエデ「…………」ゴゴゴ
倫子「(大丈夫じゃなかったー。笑顔でマグマを噴火させそう)」
ダル「リア充滅すべし。床か……フンッ!」ズドンッ!
倫子「や、やめろバカ! この床は穴が開きやすいんだよ!? ってゆーかダルもリア充でしょーが!」
466: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:12:44.83 ID:2RffVo6fo
るか「それじゃ、みなさん。かんぱーい」
全員「乾杯!」カチン
まゆり「はい、スズさん。これ、まゆしぃが作ったんだよ」スッ
鈴羽「あ、うん……これ、懐かしい味がする」モグモグ
まゆり「由季さんに教えてもらったのです♪」
倫子「まゆり、上達したんだね。その歳でおふくろの味を出せるなんて、すごいすごい」ナデナデ
まゆり「えっへへ~。あ、ケーキもあるから食べて食べて!」
倫子「もしかして、由季さんのバイト先のお店の?」
由季「えっ? 私がアルバイトしてるのはメイクイーンですけど……」
倫子「あ、あれ? そうでしたっけ……むむ?」
まゆり「カエデちゃんがデコレーションしてくれたんだ」
カエデ「おいしくなーれ、って、気持ちを込めてやったんだけど、あんまりうまくできなかったわ」
倫子「(うわ、なんだこのケーキ。暴力的だ)」
まゆり「カエデちゃんって、ぶきっちょさんだもんねえ。でも、そんなカエデちゃんが萌えだよー?」
カエデ「うふふ、ちっとも褒められてる気がしないわ」ニコ
倫子「(いちいち怖いな、この人……)」
467: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:13:26.10 ID:2RffVo6fo
フェイリス「さてさて、みニャさーん? 盛り上がってきたところで、そろそろプレゼント交換をしたいと思うんだニャ~♪」
鈴羽「プレゼント? あたし、そんなの持ってきてない……」
ダル「ああ、大丈夫。鈴羽の分は、僕とまゆ氏で準備してきたお」
まゆり「準備してきたおー♪」
フェイリス「それじゃ、順番は――――」
・・・
ダル「あ、えと、阿万音氏? どう、それ」
由季「これ、橋田さんが? 素敵なオルゴールです……大切にしますね」
ダル「う、うん。まあ、まゆ氏からアドバイスしてもらったんだけどさ」
鈴羽「あたしは、かあ、由季さんから、手編みの手袋……」
由季「下手でごめんなさい。鈴羽おね、鈴羽さん」
ダル「よかったな、鈴羽」
鈴羽「うん……あったかい……」ギュッ
468: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:15:53.05 ID:2RffVo6fo
フェイリス「ユキニャン、オルゴール、ちょっと聞かせて欲しいニャン♪」
由季「はい、分かりました」カチリ カチリ
カエデ「それじゃ、BGM止めますね」ポチッ
由季「いきますよー」
~♪
倫子「……この曲、どこかで。歌詞はたしか、"探しものひとつ……"」
まゆり「……まゆしぃね、この曲、大好きなんだぁ。子どもの頃、オカリンが歌ってた歌なんだよ」
倫子「え? そうだったっけ……」
鈴羽「この曲、由季さんがよく鼻歌で歌ってるやつだね」
由季「ええ、そうですね。小さい時からよく……」
鈴羽「えっと、この曲、なんて名前だっけ……ねえ、リンリン。これ、なんていう曲?」
倫子「えっ? いや、えっと……」
まゆり「うんとね、この曲は――――」
ガターンッ!!
カエデ「フブキちゃん!?」
フブキ「う……ぁ……」プルプル
倫子「うぐっ……!?」クラッ
倫子「(な、なんだ、世界が歪んで――――まさか、そんな――――)」
倫子「(リーディング――――シュタイナー――――――――――――
469: ◆/CNkusgt9A 2016/06/25(土) 21:16:30.09 ID:2RffVo6fo
――――――――――――――――――――
1.29848 ⇒ 2.61507
――――――――――――――――――――
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