1: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 21:45:46.06 ID:TPEYPk1k
時系列:アニガサキ2期放送前
―――――――――――――――――――――――――――

カチッ

カチッ

カチッ

ポーン

>完了しました

3: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 21:49:57.07 ID:TPEYPk1k

「あ〜やっと放課後だよ!」

「同好会に行かないと〜。早く迎えに来てくれないかな〜!」

「それにしても幼馴染だから一緒に部室まで行くには常識、って本当なのかなぁ?」

「でも、それだけ私のことを大事にしてくれているってことだよね!やっぱり歩夢h」

ギギッ
ザ――――

「?」

「今めまいがしたような……」

「寝不足……?は否定できないけど、でもこれから同好会だし休んでいるヒマはないよね!!」

「今日もみんなのサポート頑張るぞー!!」

6: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 21:54:23.40 ID:TPEYPk1k

歩夢「うん、また明日ね〜」

バイバーイ

歩夢「さて、私も同好会行かないと」

スタスタ

歩夢「……」

歩夢「あれ?私今どこに向かっているんだっけ?」

歩夢「私はあの子を迎えに……」

歩夢「あの子……」

歩夢「幼馴染の……」

パタリ

歩夢「」

9: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 21:58:26.86 ID:TPEYPk1k
――ダメだ……あの子の名前が思い出せない。名前どころか……顔も……教室すらも。

歩夢「あの子って……誰?」

歩夢「そんなっ……私があの子のことを忘れるはずなんてない!!」

――きっと、ちょっと私がおかしいだけ……

歩夢「忘れちゃうなんて……おかしすぎるよ……」

歩夢「なんで……なんでよッ!!」ポロポロ

歩夢「うわああああっ!!!」

歩夢「どうして……」

――いつも一緒だった。幼馴染の。私の部屋の隣に住んでいる……

歩夢「ここまで思い出せるのにっ!肝心なところが全然思い出せない!!なんでよ!!」



歩夢「こんなのおかしいよ……」

11: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:01:55.36 ID:TPEYPk1k
歩夢「そうだ! スマホを見ればあの子の名前がわかるはずだよねっ!」

歩夢「でも、こんなの幼馴染失格だよね」グスン

歩夢「えっと……」ポチポチ

名前:Unknown

歩夢「え……」

歩夢「何で消えているの……?」

歩夢「あっでもトーク履歴は残ってる。」

歩夢「これを遡れば……」

12: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:05:29.87 ID:TPEYPk1k
――――――――――――――――
歩夢『おはよ〜!起きてる?』

Unknown 『今起きた〜』

歩夢『寝不足?』

邨仙粋繧ィ繝ゥ繝シ縺ォ繧医j繝??繧ソ縺ッ蜑企勁縺輔l縺セ縺励◆縲
邨仙粋繧ィ繝ゥ繝シ縺ォ繧医j繝??繧ソ縺ッ蜑企勁縺輔l縺セ縺励◆縲

Unknown 『まぁ好きなことだからね!』

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邨仙粋繧ィ繝ゥ繝シ縺ォ繧医j繝??繧ソ縺ッ蜑企勁縺輔l縺セ縺励◆縲

邨仙粋繧ィ繝ゥ繝シ縺ォ繧医j繝??繧ソ縺ッ蜑企勁縺輔l縺セ縺励◆縲

Unknown 『今行くよ〜』

――――――――――――――――

15: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:08:40.36 ID:TPEYPk1k
歩夢「何これ……」

――所々メッセージが消えてる。

――というかこの不気味な文字はなんなの!?

――いたずらにしては趣味が悪すぎるよ……




――でも流石に同好会に行けば思い出せるはず!

歩夢「ごめんね、……」

歩夢「そっか……私は名前すらも呼べないんだね」

歩夢「私って最低だよ……ぐすっ」

17: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:12:41.79 ID:TPEYPk1k

「あれ?私なんてぼーっとしてたんだっけ?」

「そうだ!迎えにきてくれる歩夢w」

ギギッ
ザ――――

「っん?まただ」

「いつも目眩なんてないのに」

「早く歩夢k」

ギギッ
ザ――――

「本当に今日はダメっぽい」

「歩夢n」

ギギッ
ザ――――

「連絡しないと…」

「スマホスマホ……あった!えっと」ポチポチ

ギギッ
ザ――――

「ウッ……めまいだけじゃなくて頭痛も……」

「目の奥が針で刺されたみたいに痛いよ……」

18: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:16:36.08 ID:TPEYPk1k
「早く部室に行って歩夢n」

ギギッ
ザ――――

――もしかして歩夢がキーワード?

「……」

「…………」

「……………………」

――何も起こらない。

――それじゃあ

「歩夢!」

ギギッ
ザ――――

――この立ち眩み……。

――それに、耳もキーンとなる……

――やっぱり私が歩夢って言葉がキーワードだ……。

――でも、どうして?

――まぁ、歩夢に会えば解決するかな?

――もうこんな時間だ……。今日は迎えに来てくれないみたいだし、今日は一人で部室に行こー!

20: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:20:25.63 ID:TPEYPk1k

歩夢「とうとう思い出せないまま部室に着いちゃった。」

歩夢「でも、みんなには心配かけられないよねっ!」

歩夢「笑顔笑顔……」ニコニコ...

ガラガラ

歩夢「みんな、お疲れ様~」

かすみ「歩夢先輩!おっそーい!」

歩夢「ごめんごめん!ちょっと教室で時間かかっちゃって。」

かすみ「宿題忘れて先生に怒られていたんですかぁ?」

愛「歩夢が宿題を忘れるわけがないでしょ!かすかすじゃあるまいし。」

かすみ「かすかすじゃなくて、かすみんですっ!」

21: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:23:27.48 ID:TPEYPk1k
愛「あれっ?歩夢、大丈夫?」

歩夢「えっ?」

愛「いや、なんか目が腫れているからさ。もしかして悲しいことがあったのかなって。」

愛「もちろん言いたくないことだったら言わなくていいんだけどさ。」

――みんなの心配そうな視線が集まる。

――本当にやさしいな……

――思わず心が揺れ動く

歩夢「ちょっとね……私病気かもしれないの。」ウツムキ

かすみ「えっ?」

愛「歩夢!どういうこと!?」

歩夢「私、さっきからあの子の事を思い出せないの!!」

愛「あの子……?」

22: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:27:52.64 ID:TPEYPk1k
彼方「もしかしてあの子って……」

しずく「でも、歩夢さんに限ってそんなわけは」

せつ菜「聞きにくいのですが、誰の事なのですか?あの方の事ではないでしょうけど……」

歩夢「私の幼馴染の……あの子……」

エマ「幼馴染のって、だって子の同好会のメンバーで……」

果林「えっと……、あれ?私も思い出せないかもしれないわ……」

彼方「まったく……果林ちゃんはおっちょこちょいなんだから。えっと、……あれ……?」

璃奈「私も……思い出せない……たしかに同好会のメンバーで……大切な先輩だったのに……」

愛「歩夢の幼馴染で、2年生で、この同好会のメンバーで……」

愛「確かにあの子はいたはずなのに……」

せつ菜「思い出せないというより……すっぽり記憶が抜け落ちているような感覚です……」

歩夢「そんな……、みんなも……?」

24: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:30:51.40 ID:TPEYPk1k
愛「わっ私、同好会以外の愛トモにも聞いてみるよ!」

璃奈「私はパソコンを調べてみる。何が情報が残っているかもしれない。」

エマ「同好会のノートとか見てみるよ!」

――その後、同好会のみんなであの子の痕跡を探したんだけど、

――結局、新しい情報は何も見つからなかった。

25: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:34:59.50 ID:TPEYPk1k
エマ「みんな、いったん座らない?おいしいお茶を入れるよ!」

愛「そんなことをしている暇はないよ!!」

せつ菜「そうですっ!あともう少し、あともう少しなんです!!」

歩夢「どこなの……あの子はどこにいるの!!!???」ポムポム

歩夢「あの子がいなくなったら……あの子……なんて私は名前すら読んであげられないのぉ!!!???」ポムポム

――私の心が不安と焦りで押しつぶされそうになった時、

――エマさんがそっと抱きしめてくれた。

エマ「大丈夫、きっとだいじょうぶだよ!」

エマ「ほら、落ち着いて。」

――エマさんは私にハンカチを貸してくれた。

――もう流れる涙なんてないのに。

――でも、フカフカなハンカチを手に持っているだけで少し落ち着けたかも。

彼方「ちょっと、休憩しよっか。」

果林「そうね、私たちも少し落ち着いた方がいいわね。」

――みんなが椅子に座る。

26: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:37:49.75 ID:TPEYPk1k
歩夢「あのっ……もう大丈夫です。ありがとうございます……」

エマ「本当に?」

歩夢「はい、だいぶ落ち着きましたから。」

――そう言って私はエマさんから離れた。

――離れ際、私は気が付いてしまいました。エマさんの手の震えに。

――きっとエマさんもあの子を忘れてしまう恐怖に怯えていたと思う。

――それでもそれを隠して私を落ち着かせてくれていたんだ……

27: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:42:06.48 ID:TPEYPk1k

「なんか一人で同好会の部室に行くの久しぶりだな~」

「こんなの先々月の24日に歩夢g」

ギギッ
ザ――――

――そうだ、忘れてた。『歩夢』って言っちゃ駄目だったんだ。

――先々月の24日に歩夢が風邪で学校を休んだ時以来だな~

――やっぱり歩夢がいないと寂しいよ~

――さて、やっと同好会の部室だ。なんか一人だと遠く感じる。

ガラガラ

「みんなお疲れ様~」

シーン

「あれ?誰もいないの?」

「そういえば……」

ガラガラ

「部室棟自体誰もいない……」

「みんなどこに消えちゃったの……?」

28: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:46:06.60 ID:TPEYPk1k

――エマさんと彼方さんがお茶を出してくれたけど、全然味が分からないよ……。

愛「えっと、愛さんは愛トモのみんなに聞いてみたんだけど全然情報が集まらなかったよ……」

愛「確かにマネージャーはいた気はするけど、顔も名前も思い出せないってさ。」

しずく「私たちも部室の隅から隅まで探しましたが、手掛かりになるようなものは何もありませんでした……」

彼方「手掛かりになりそうなページがごっそり抜け落ちていたよ……」

彼方「異様に薄いノートとかもあった。」

かすみ「でも、誰かがページを破ったり切った形跡もないんです!」

果林「逆に、私たちが彼女について覚えている部分の記述は残っていたわ。」

果林「この同好会にマネージャーがいたことだったり、その彼女がSIF運営の中心人物だったことだったり。」

30: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:48:44.74 ID:TPEYPk1k
せつ菜「私も生徒会室に行ってすべての学科の生徒名簿を確認しましたが、あの方の名前は見つかりませんでした。」

かすみ「ここまで手掛かりなしですか……」

せつ菜「いえ、収穫はありましたよ!手掛かりと言えるかは微妙ですが……」

歩夢「何か見つかったのっ!!?」

せつ菜「えっと、この同好会の同好会申請書をもう一度見返してみたんです。」

せつ菜「これはコピーですが、この部分を見てください。」

31: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:52:32.90 ID:TPEYPk1k
―――――――――――――――――――――――――――――――
部長 ■
―――――――――――――――――――――――――――――――

かすみ「なにこれ?」

しずく「記号…ですよね?、これ。」

彼方「最初からこうなっていた……わけじゃないよね?」

せつ菜「同好会申請書は生徒会がチェックしますから、提出時にこうなっていれば当然再提出になると思います。」

愛「ということは、提出後にこうなったってこと?」

かすみ「あれ?そもそもこの同好会部長って誰でしたっけ?」

しずく「最初はせつ菜さんでしたが……あの騒動の後確か変更になりましたよね?」

エマ「えっと……あれは確か歩夢ちゃんが入ったあたりだったと思うけど……」

璃奈「また記憶の混濁が……」

せつ菜「もしかしてあの方だったのでしょうか?」

愛「まぁ、可能性は考えられるよね。」

せつ菜「それから、この欄も見てください。」

33: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:55:47.66 ID:TPEYPk1k
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.会員名簿
本部活動(または同好会)に所属する生徒は以下の通りである。

2年(普通) 優木せつ菜
1年(普通) 中須かすみ
3年(国際交流) エマ・ヴェルデ
3年(普通) 近江彼方
1年(国際交流) 桜坂しずく
2年 (普通) 上原歩夢
2年 (■)  ■
2年 (情報) 宮下愛
1年 (情報) 天王寺璃奈
3年 (ライフデザイン) 朝霞果林
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――

34: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/29(金) 22:58:48.81 ID:TPEYPk1k
歩夢「また変な記号に置き換わってる……」

愛「それに、最後も変な記号が付いていない?なんなの、これ?」

果林「まぁ、今気にするべきは歩夢と愛の間よね。」

彼方「入部順に書かれているから、この黒の四角形はあの子の事なんだよね……たぶん」

46: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/30(土) 21:41:43.45 ID:lJFQ7KMk
歩夢「そっそういえば!」

彼方「どうしたの?」

歩夢「変な記号で思い出したんだけど……、これ見てくれる?」スマホスッ

邨仙粋繧ィ繝ゥ繝シ縺ォ繧医j繝??繧ソ縺ッ蜑企勁縺輔l縺セ縺励◆縲

かすみ「ななな、なんですかぁ?これ〜」

彼方「記号よりこっちの方が不気味かも……」

しずく「それっ!私も先輩とのメッセージがそうなっていました!」

愛「私も見てみるっ……本当だ……」

果林「手がかりになりそうな部分だけが綺麗さっぱり抜けているわね。」

愛「りなりーさ、これって……」

璃奈「うん、文字化けだと思う。」

かすみ「もじ……ばけ?」

47: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/30(土) 21:45:49.44 ID:lJFQ7KMk
璃奈「コンピュータって0と1で情報を通信しているって知ってる?」

かすみ「聞いたことくらいなら……」

璃奈「だから、日本語、というより文字をそのまま通信することはできないの。」

愛「保存するときもそうだね。」

璃奈「だから、言葉を0と1に変換する必要がある。」

璃奈「だから、もし私が今喋っている言葉を文字として保存しようとすると、日本語として保存しているように見えて実は0と1の文字列が保存されていることになる。」

愛「私たちが見ている文章は保存したゼロイチの数字を再変換して戻しているってわけ。」

璃奈「そう。そして通信するときも同じ。一旦日本語をゼロイチに変換して、そのゼロイチを通信で送受信して、受け手側でゼロイチを日本語に再変換している。」

しずく「それがこの変な文字列とどう関係があるのですか?」

璃奈「問題はこの変換方法が複数種類あるということ。」

かすみ「何が問題なの?」

48: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/30(土) 21:48:22.27 ID:lJFQ7KMk
璃奈「例えば私が『あ』を0001だと思ってかすみちゃんに渡す。」

璃奈「でも、かすみちゃんは『お』を0001とするルールに従って生活していたらどう?」

かすみ「あっ、うまく伝わらない!」

璃奈「そう。」

愛「この文字化けっていうのは変換方法が変換側と再変換側で違っている時に起こる現象なんだよ。」

璃奈「でも普通はメッセージアプリの中で文字化けなんて起きない。

かすみ「でもなんか外国語みたいだね!」

しずく「どういうこと?」

49: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/30(土) 21:51:22.70 ID:lJFQ7KMk
かすみ「ほら、同じアルファベットを使っているのに違う言語だと全然読めないな〜みたいなことあるじゃん?」

かすみ「だから、同じ数字でも読み方が違うから読み取れないってちょっとそれっぽいなって。」

しずく「?」

かすみ「え?わからない?」

しずく「言いたいことはわかるけど、かすみさんは英語も読めないでしょ?」

かすみ「ぐぬぬ……国際交流学科め……」

璃奈「でも、この文字化けは解決のヒントになるかも。」

愛「一旦これ解読してみない?もしかしたらできないかもしれないけど。」

璃奈「そうだね。」スマホポチポチ

かすみ「あれ?パソコン使わないの?」

璃奈「実は……」

璃奈「パソコンが使えなくなってた。」

50: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/04/30(土) 21:55:13.69 ID:lJFQ7KMk

「なんで誰もいなくなっちゃったんだろう…?」

「まぁ、時間が経てばそのうち誰かしら来るよね」

「まぁ、私一人じゃどうにもならないし、とりあえずみんなが来るまで休んでいようかな」

「zzz」

55: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:27:41.05 ID:S37ygxez

一同「パソコンが使えない!?」

璃奈「その話はあとで詳しくする。」

璃奈「とにかく今は文字化けを解読してみる。」

愛「なんか見たことある化け方だから復元できそうだけど……」

かすみ「でも、これ全部同じ文字列ってことは……」

かすみ「きっと実際に送った文章は出てこないですよね……」

歩夢「たしかに……。」

歩夢「それでもっ!何かに手がかりにはなるはずだよっ!」

かすみ「そうですね……。水を差すようなこと言ってすみません。」

歩夢「そんなっ、かすみちゃんだって真剣に考えてくれているんだから、悪く思わないで!」

璃奈「できたっ!」

>結合エラーにより■■■タは削除されました■

56: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:31:35.17 ID:S37ygxez
歩夢「どういうこと?」

璃奈「正直わからない……」

璃奈「何かを結合した時に問題が起こってメッセージが削除された……」

せつ菜「もしかして。…その、何かが結合された時に問題が起こったからあの方の記憶がなくなってしまったのでしょうか……」

璃奈「その可能性は高いと思う。」

しずく「でも……何を結合したのかがわからないとなんとも言えないですよね……」

愛「これは……すぐには答えが出なさそうだね。」

かすみ「それで……パソコンが使えなくなったってどういうこと?」

璃奈「私物のパソコンは使えるんだけど、この同好会のパソコンだけがどうしても動かない。」

歩夢「動かないって?」

璃奈「起動すらしない。」

愛「どこか壊れちゃった?」

57: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:34:38.22 ID:S37ygxez
璃奈「いや、起動しないという表現は違ったかも。これを見て。」電源ボタンポチー

>例外がスローされました

璃奈「この文字が画面に出力されて、それ以上動かない。」

璃奈「だから本体の故障とかではないと思う。」

璃奈「正直、私の発明品をつなげられるのはこのパソコンだけだから、これが動かなくなるのは痛い。」

愛「例外……」

かすみ「例外って何ですか?」

璃奈「プログラムの言葉で、簡単に言うとエラーみたいな感じ。」

しずく「またエラーですか……」

彼方「どうやら私たちの周りで何かが起きていることは間違えないみたいだね……」

璃奈「否定はできない。」

一同「…………」

59: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:38:24.72 ID:S37ygxez
一同「…………」

せつ菜「これは……」

果林「正直……」

彼方「悔しいけど……」

エマ「難しすぎるよ……」

しずく「何が起こっているのか状況すらつかめないです……」

歩夢「どうしたら……どうしたらあの子は戻ってくるの……?」

~間~

璃奈「みんな、ちょっと提案があるんだけど。」

60: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:41:53.85 ID:S37ygxez

「あれ?ちょっと寝ちゃった……」

「外が真っ暗だ!そんなに寝てた気はしないけど……」

「早く帰らないとっ!みんなもう帰っちゃったのかな?」

「もう!起こしてくれてもいいじゃん!!」

ドアガラガラ

「えっ?」

――目の前には広大に広がる闇があった。

――『あった』、というより『何も無い』という表現の方が正しいのかもしれない。

――虚、そして無。

スタスタッ

――思わず後ずさる。

「えっ……。」

――思わず絶句。二の句が出てこない。

「まさか外もっ!」

――私が夜だと勘違いした形式は、闇そのものだった。

「どうして……」

――私は何も考えず部室のドアを閉め、窓のカーテンも閉めた。

「きっと夢だよね……」

――本当に夢だったらいいのに。

――どうなっちゃうの……私……

62: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:45:22.56 ID:S37ygxez

璃奈「いったんみんなの記憶を整理してみない?」

愛「たしかに。」

せつ菜「少し気になっていることがあるのですが……」

せつ菜「どうして私たちはあの方のことを『完全には』忘れていないのでしょうか……」

愛「しかも、抜け落ちている部分はみんな同じ……」

璃奈「これは、もしかすると、もしかして、」

璃奈「覚えていること以上に、忘れてしまっていることのほうが重要かもしれない。」

しずく「でも……」

彼方「自分たちが何を忘れているかを知るって相当難しくない?」

璃奈「うん。でも、頑張るしかない。」

63: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:48:29.05 ID:S37ygxez
――こうして私たちは自分たちが覚えていること・忘れていることについて話し合うことになった。

愛「とりあえずこんな感じかな?」

――――――――――――――――――――
■覚えていること
・Xは歩夢の幼馴染
・Xは2年生
・Xは同好会のメンバー
・Xは歩夢と一緒の時期に同好会に参加
・XはSIFの際に運営として活躍した。

□覚えていないこと
・Xの名前
・Xの学科・クラス
・この同好会の部長

※X=あの子
――――――――――――――――――――

愛「ほかに何か思いつくことはある?」

64: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:51:29.32 ID:S37ygxez
彼方「やっぱり何かとっかかりがないと難しいね。」

せつ菜「では、近々の大きなイベントとしてSIFについて考えてみるのはどうでしょうか?」

愛「えっと……私たちが一曲ずつ歌って……」

果林「あれ?どこで歌ったかしら。」

かすみ「も~、また果林先輩方向音痴ですか?そんなの……、あれ?」

しずく「私も覚えていないです……。それに……。」

璃奈「何を歌ったんだっけ……。」

歩夢「曲……曲って……、だれが作っていたんだっけ……?」

せつ菜「……」

66: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:55:01.93 ID:S37ygxez
エマ「誰が私たちの曲を作ってくれたかなんて、普通私たちが忘れるわけがないよね。」

彼方「つまり、これも記憶が消されているのか~」

かすみ「それに、SIFで何を歌ったか、というよりもあのイベント自体の詳細が思い出せません。」

しずく「でも、私たちはどうして作曲者は覚えていないのに曲自体は覚えているのでしょうか……」

璃奈「確かに気になる。」

せつ菜「真実への手掛かりとなるのでしょうか……?」

歩夢「ううう……」

愛「でも、なんとなくデータは集まってきたんじゃない?」

愛「今日はもう遅いし、精神的なショックもあるだろうからひとまず休んだほうがいいと思う。」

彼方「そうだね……でも家でも忘れていること、というより、知らないはずがないのに私が知らないことがないか考えてみるよ。」

果林「そうね。私も考えてみるわ。」

67: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 22:59:03.33 ID:S37ygxez
歩夢「あっ……」

せつ菜「歩夢さん、どうしました?」

歩夢「忘れていたんだけど、あの子の家は私の家の隣だから、家に行けば何か手掛かりがあるかも!」

かすみ「お~!なんか進展の予感ですね♪」

歩夢「そうと決まったら早く帰らない……と……」

愛「歩夢?」

歩夢「あれ……私の家って……」

歩夢「どこだっけ……?」

69: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:02:19.97 ID:S37ygxez

キョロキョロ

「あんなところにかすみんBOXがある!」

「やっぱりあの独特な見た目に癒されるよね~」ナデナデ

シュッ

「あれ……かすみんBOXが消えちゃった?」

キョロキョロ

「どこかに移動した感じでもないし……」

「なんかこの世界不気味だよ~!!!」

70: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:06:10.39 ID:S37ygxez
スタスタ

「この書類は……」

パッ

「これも……」

シーン

「この書類は大丈夫なんだ……」

「触ると消えるものモノと消えないモノがある……?」

「それだったら、あまりモノに触らない方がいいのかな?」

「まぁ、こんな不思議なことが起こるなんて、原因はきっとあれだよね?」

72: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:08:50.05 ID:S37ygxez

一同「えっ?」

かすみ「歩夢先輩、住んでるところも忘れちゃったんですか~?!」

歩夢「えっと……多分……うん。思い出せないや……」

愛「歩夢はあの子の隣に住んでいたんだよね?」

歩夢「うん……」

愛「あの子の住所の記憶と結びついているから歩夢の家も忘れちゃったんじゃない?」

璃奈「それはあると思う。」

璃奈「歩夢さん、定期券とかは?」

歩夢「えっと……全部■で塗りつぶされてる……」

璃奈「やっぱりあの子に関する記憶が部分的に消されている。」

73: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:13:00.26 ID:S37ygxez
璃奈「どうして住所は忘れて、隣という記憶は残っているんだろう……」

愛「もう少しあの子の家のことで思い出せることはない?」

歩夢「えっと……一緒に登校して、」

一同「知ってる。」

歩夢「帰るときも一緒で……」

一同「知ってる。」

歩夢「も~!からかわないでよ!!」プンスカ

歩夢「いつも朝はベランダ越しに会って……」

かすみ「先輩とは部屋も隣同士だったんですか?」

歩夢「そうそう!いつもあの子は寝坊しがちだからいつも電話してあげてね!」

歩夢「そしたらベランダに出てくるからおはようって挨拶してたんだ!」

せつ菜「なんだか……歩夢さんののろけ話を聞かされている気分ですね……」

74: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:16:37.96 ID:S37ygxez
璃奈「なるほど。」

璃奈「ちなみに先輩の部屋は歩夢さんからみて右側?左側?」

歩夢「えっと……」

璃奈「ここまで日常生活の記憶が残っているのに、部屋がどっち側だったかを覚えていない。でも隣同士だったことは覚えている。」

璃奈「覚えていることと覚えていないことの差が分かればわかるほど謎が深まる。」

璃奈「璃奈ちゃんボード「完全にショート」」

果林「親御さんに連絡してみたらどうかしら。自分の家を忘れたって言ったら驚かれるかもしれないけれど。」

璃奈「いや、やめた方がいいかもしれない。」

彼方「どういうこと?」

75: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:18:30.86 ID:S37ygxez
璃奈「歩夢さんが親御さんに家を聞くことで歩夢さんは先輩の家を知ることになる。でも、たぶんそれは許されない。」

璃奈「多分歩夢さんが家の場所を聞いた瞬間に親御さんも家の場所を忘れてしまうかもしれない。もしくはすでに忘れてしまっているかも……」

彼方「歩夢ちゃん、親御さんから連絡は来ている?」

歩夢「いえ……特には来ていないです。」

愛「じゃあまだ歩夢パパやママには影響は出ていないのかな?」

璃奈「もしよかったら今日は私の家に泊まって欲しい。」

歩夢「え、いいの!?」

璃奈「大丈夫。多分今日も親は出張だから気を使わなくて大丈夫。」

歩夢「ありがとう、璃奈ちゃん。でもほんとにいいの?」

璃奈「私も一人だと寂しいから。」

歩夢「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな……?」

77: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/01(日) 23:20:17.44 ID:S37ygxez

「きっと璃奈ちゃんの発明の影響だよねっ!」

「だから、いつかは元の世界に戻れるはず!!」

「璃奈ちゃんが発明品で失敗するわけないもん……」

「きっと……」

「じゃなくてっ!絶対大丈夫だよねっ!!」

「……」

「ちょっと疲れちゃった……」

「あとどれくらいで元の世界に戻れるのかな……」

――意味もなく部屋の中をぐるぐると歩き回ってしまう。

「大丈夫……だよね……?」

89: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 21:50:45.39 ID:4ArivdgB

歩夢「璃奈ちゃん、本当にありがとうね?」

璃奈「そんな、気を使わないで。」

――話し合いの後、私たちは解散することになった。

――あまりに衝撃的な出来事だったから少し休憩が必要だろうって。

璃奈「歩夢さん、ゆりかもめ乗る?それとも歩いていく?」

歩夢「せっかくだから乗ろうかな。」

――あの子とは良く歩いて家まで帰った気がするけれど、今日はちょっとそんな気分じゃないや。」

歩夢「今思い出したんだけど、私の家は頑張れば歩いて帰れるくらいのところだったと思う。」

璃奈「お台場、有明、東雲……もしかしたら豊洲……。」

璃奈「残念だけど手当たり次第に探すのは無理そう……。徒歩で行ける範囲があまりにも広すぎる。」

歩夢「そうだよね……」

90: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 21:56:11.27 ID:4ArivdgB
璃奈「あっ、歩夢さん。モノレール来たよ。」

――その後少しだけモノレールに揺られ、璃奈ちゃんの家へ。

――私の家もこんなおっきなマンションだったら探しようがないよね……

スマホピッ

璃奈「どうぞ。」

歩夢「お邪魔します」

璃奈「入ってすぐのこの部屋が私の部屋。奥がリビング。自由に使って。」

歩夢「ありがとう!」

璃奈「歩夢さんは一度来たことあるよね。」

歩夢「うん、璃奈ちゃんのジョイポリスライブの時だよね。」

璃奈「恥ずかしい……。でも、あの時は来てくれて嬉しかった。」

92: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:00:17.37 ID:4ArivdgB
璃奈「今日はその恩返しができたらいいなって思う。心が休まるはずはないけど……それでも歩夢さんの相談相手くらいにはなりたい。」

歩夢「璃奈ちゃん……」ジーン

璃奈「はわわ……歩夢さん泣かないで。」

璃奈「はいこれティッシュ。」

歩夢「ありがとう!本当に嬉しくて……、ありがとう……」

歩夢「あの子のためにも頑張らないとね!」

璃奈「うん。璃奈ちゃんボード「ファイト!」」

璃奈「でも、」チラッ

璃奈「歩夢さんが身体を壊したら何もならない。食事だけでもとったほうがいいと思う。」

93: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:04:19.66 ID:4ArivdgB
歩夢「璃奈ちゃんは優しいね……。でもごめんなさい。今食欲がないの。」

璃奈「それじゃあお風呂だけでも。いったんリラックスしたほうがいい。」

璃奈「歩夢さん、部室に来た時からずっと今までに見たことない顔している。」

璃奈「抱え込んじゃう気持ちもわかるけど、それで歩夢さんが倒れちゃったらもっと大変。」

歩夢「璃奈ちゃん……」

璃奈「いろいろ場所をさがしたり、考え事をしたり、頭も体も想像以上に疲れ切っている。」

歩夢「でも早くあの子のことを思い出さないと!もしかしたら今すごく危険な目に合っているかもしれないのに……」

璃奈「歩夢さんが疲れをとっている間に私が今日分かったことをまとめておくから大丈夫。」

璃奈「歩夢さん今日随分汗かいていたし、そんな状態で先輩と再会したくないでしょ?」

94: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:08:30.59 ID:4ArivdgB
歩夢「でも私は……」

璃奈「……」

歩夢「……」

歩夢「うん、そうだね。ちょっと休憩は必要かもしれない。」

歩夢「私、自分のこと全く分かっていないね。今日もエマさんに諭されたし……」

璃奈「必死になる気持ちもわかる。大切な幼馴染だもん。」

璃奈「さっきスイッチ入れたから、もうお風呂沸いていると思う。場所はわかる?」

歩夢「多分大丈夫。」

璃奈「着替えは置いておくから。」

歩夢「何から何まで、本当にありがとう。」

95: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:19:17.82 ID:4ArivdgB
スタスタ
ヌギヌギ
シャワー
ゴシゴシ

――なんか、人の家のお風呂って不思議な感じ。

――あの子の家のお風呂にも入ったのかな?

――……

――また思い出せないや。

――大切な思い出のはずなのに。

――大切なピースが抜け落ちている。

――それも、どのピースが抜け落ちているかわからないなんて……

――辛すぎるよ……

「うっ……」

「ひっく……」

「うぅぅ……」

「ぐすっ……」








璃奈「歩夢さん?」

96: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:23:33.91 ID:4ArivdgB
歩夢「りりり、璃奈ちゃん!?」

璃奈「急に開けてごめんなさい……でも、歩夢さん泣いてたから……」

歩夢「泣いてないよ!泣いてないよ?」

璃奈「」ジー

歩夢「……」

璃奈「歩夢さん……お願いだから無理をしないでほしい。」

璃奈「お願いだから一人で背負い込まないでほしい。」

歩夢「ごめんね……カッコ悪いところ見せちゃって……」

璃奈「うんん、カッコ悪くなんてない。」

璃奈「……」ジー

璃奈「歩夢さん、ちょっと待ってて。」

ガチャ

98: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:27:05.42 ID:4ArivdgB
――数秒後

璃奈「歩夢さん、入るよ。」

歩夢「ええっ!?」

璃奈「なんで璃奈ちゃんも服脱いでるの?」

璃奈「私も一緒に入るから?」

歩夢「ななななんで!?」

璃奈「ここは私の家だから。」

歩夢「えぇ……」

璃奈「それに、」

璃奈「歩夢さん、また1人で泣いちゃいそうだったし。」

歩夢「璃奈ちゃん……」

璃奈「とりあえず背中洗ってあげるね。」

99: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:31:17.79 ID:4ArivdgB
〜間〜

ゴシゴシ

歩夢「……」

ゴシゴシ

歩夢「……」

ゴシゴシ

歩夢「……」

璃奈「お湯、かけるね。」

歩夢「あ、うん。ありがとう……ございます……」

ジャー

――なんか、すごく安心する。

――昔お母さんとお風呂に入っていた時のような。

――思わず、また涙がこぼれちゃう。

――ここがお風呂場で良かった。

100: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:37:21.11 ID:4ArivdgB
璃奈「じゃあ湯舟入ってて。私も体洗うから。」

歩夢「もー、璃奈ちゃんは水臭いな~」

璃奈「えっ?」

歩夢「はい、ここ座って。私が洗ってあげる。」

璃奈「恥ずかしい……」

歩夢「勝手にお風呂に入ってきたのは誰かな?」

璃奈「……」

――璃奈ちゃんは観念したようにバスチェアに座る。

――少しくらい、お礼をさせてください。

101: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:41:17.00 ID:4ArivdgB
歩夢「なんか……これはこれで恥ずかしいね///」

璃奈「うん……」

――その後、私たちは二人で浴槽に入った。

――でも、ちょっと恥ずかしいからお互い背中合わせで。

――背中が触れ合っている分、お互いの息遣いが手に取るようにわかる。

――璃奈ちゃん……呼吸が浅くなってる。

――きっと勇気を振り絞って入ってきてくれたんだろうな……

――本当にやさしい後輩だ……

璃奈「歩夢さん!」

歩夢「どうしたの?」

102: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:45:39.80 ID:4ArivdgB
璃奈「私……先輩の事をいつか完全に忘れちゃうんじゃないかって……とても怖い。」

璃奈「今この瞬間も、記憶がどんどん抜け落ちていっているんじゃないかって怖くなる。」

歩夢「それは私もだよ……」

璃奈「いやっ、たとえ私が忘れても歩夢さんは絶対に覚えている!」ガバッ

――璃奈ちゃんが身体ごと私の方を向く。

璃奈「だから……もし私が先輩がいたことすら疑い始めたら、思いっきり殴ってほしい。」

歩夢「殴る!?」

璃奈「煮るなり焼くなり好きにしていい。」

歩夢「璃奈ちゃんの中の私のイメージって……」

璃奈「とにかく、私を目覚めさせてほしい。」

歩夢「璃奈ちゃん……」

104: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:49:51.21 ID:4ArivdgB
――背中越しで璃奈ちゃんの声が震えている。

璃奈「歩夢さんと比べたらごくごく短い期間で……」

璃奈「小さい頃からの幼馴染で、会って数ヶ月の私達とは積み重ねてきた時間が違いすぎるけれど……」

璃奈「それでも解決したい。救い出したいって気持ちは一緒だから。」

璃奈「先輩は私にとっても大切な人。」

璃奈「絶対に助け出す。」

璃奈「だから、一人で抱え込まないでほしい。」

璃奈「つらい気持ちも、泣きたい気持ちも。」

106: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:55:16.47 ID:4ArivdgB
――あの子がいなくなってから数時間。

――ずっと張りつめていた緊張の糸が完全に切れた気がした。

――気づけば私も振り向き、璃奈ちゃんを抱きしめていた。

歩夢「璃奈ぢゃん……」

歩夢「ありがどぉ……ほんっ当にありがどおぉ……」

璃奈「歩夢さん。私も、頑張るから。」

璃奈「絶対にあきらめないから。」

107: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/03(火) 22:57:29.33 ID:4ArivdgB
――璃奈ちゃんが私の体にしがみつく。

――とても小さな体だけど、今の私にとっては全身を優しさで包んでくれる女神さまのように思えた。

――璃奈ちゃんのおかげで、思いっきり泣くことができた。

――悲しいという気持ち。不安な気持ち。恐怖心。

――取り乱さないようにみんなの前では無理やり取り繕っていたけど、

――でも、多分もう限界だったと思う。

――そんな時、璃奈ちゃんが私の心を開放してくれた。

璃奈「だいじょうぶ、大丈夫だよ、歩夢さん。」

――本当に、かっこ悪い先輩だよ。

――でも、もう少しだけ甘えさせてね。

――そしたら、私、また、頑張れるから。

115: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:32:42.61 ID:MTShqnNv
――
―――
――――
璃奈「さて。」

歩夢「うん。」

――さっきのお風呂での出来事を思い出すと少し気まずい。

――でも、すっきりしたし、璃奈ちゃんの気持ちも知ることができた。

――あの子の事をあんなに大切に思ってくれる人が私以外にもいる。

――それだけで途方もなく嬉しかった。

璃奈「今の状況をまとめると……」

116: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:35:18.75 ID:MTShqnNv
【璃奈ちゃんメモ】
覚えていることと覚えていないことがある!

◎覚えていること!
 先輩は歩夢先輩の幼馴染
 先輩は2年生
 先輩は歩夢先輩と一緒の時期に同好会に参加した
 先輩はSIFの時にSIFの運営として活躍した
 先輩は歩夢先輩の隣の部屋に住んでいた
 先輩と歩夢先輩の家は学校から徒歩圏内(ただし、頑張れば)
 普段は定期券を使っていた
 
◎覚えていないこと……
 先輩の名前
 先輩の学科・クラス
 この同好会の部長
 私たちの曲の作詞・作曲者

117: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:37:53.20 ID:MTShqnNv
歩夢「あと、あの子はピアノが上手だった!」

璃奈「確かに。だったら音楽科……いや、思い出せない。」

歩夢「うーん……」

ピロン

璃奈「あっ、みんなから連絡が来ている。」

歩夢「どれどれ?」

璃奈「えっと……」

――――――――――――――――――――――――

なんか、あの子がどこか遠くに行っていた気がしなくもないの。夏ごろに……


合宿って……どこへ行ったのかしら……


変な話、同好会の部員ってこの10人だけじゃなかった気がするんだけど……
愛さん考えすぎておかしくなっちゃったかな~?


私がこんなことを言うのも変ですが……







今の生徒会長って……誰でしたっけ?

――――――――――――――――――――――――

119: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:40:14.44 ID:MTShqnNv
歩夢「確かに……」

歩夢「知っていることの事のはずなのに、何一つ思い出せない……」

ピロン

歩夢「あっ続きだ。」

――――――――――――――――――――――――

生徒会長って、せつ菜……じゃなくて菜々でしょ?

いえ、確かに同好会発足時はそうだったのですが……今はそれに自信が無いというか……

確かに私もそこの記憶は曖昧です。

いや、今も中川先輩だと私は思います。

121: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:42:52.07 ID:MTShqnNv
あのっ……あの子はピアノ弾けたよね?

それは覚えてる。

うーん……ごめん、それは自信ないかも。

確かに弾いていたような……そうでないような……

せつ菜ちゃんは音楽室で聞いたことあるよね?

はい、覚えてますよ!でも皆さんも知っているはずですが……

――――――――――――――――――――――――

122: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:45:22.14 ID:MTShqnNv
璃奈「……」

歩夢「璃奈ちゃん、これって……」

璃奈「今までは誰かが覚えていることは全員が覚えていた。」

璃奈「でも、なぜか食い違うようになった。」

璃奈「ただ単に、今まで確認した『覚えていること』がたまたま一致していただけかもしれない。」

璃奈「もしくは……」

璃奈「覚えていることすら忘れ始めている。」

歩夢「そんな……」

123: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:47:56.88 ID:MTShqnNv
璃奈「覚えていること、忘れていること……」

璃奈「結合……」

璃奈「記憶……」

璃奈「エラー……」

璃奈「もし……矛盾があったら……」

璃奈「変化を最小にするためには……」

璃奈「いや……まさか……」

歩夢「っ何か思いついたのっ!?」

璃奈「いや……あまりにも非科学的。」

歩夢「非科学的でもトンデモでもなんでもいい!少しでも可能性があるなら試すべきだよ!」

璃奈「歩夢さん……」

125: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:50:22.95 ID:MTShqnNv
璃奈「覚えていること、忘れていること……」

璃奈「結合……」

璃奈「記憶……」

璃奈「エラー……」

璃奈「もし……矛盾があったら……」

璃奈「変化を最小にするためには……」

璃奈「いや……まさか……」

歩夢「っ何か思いついたのっ!?」

璃奈「いや……あまりにも非科学的。」

歩夢「非科学的でもトンデモでもなんでもいい!少しでも可能性があるなら試すべきだよ!」

璃奈「歩夢さん……」

126: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:52:49.54 ID:MTShqnNv
璃奈「じゃあ、一つ質問させて。」

璃奈「歩夢さんは先輩の事が好き?」

歩夢「大好きだよ。この世界の何よりも。」

璃奈「じゃあもう一つ。」

璃奈「もし別の世界で先輩と会っても、好きになってたと思う?」

歩夢「もちろん。」

璃奈「……」

璃奈「今の歩夢さんの答えで心が決まった。」

璃奈「もしかしたら頓珍漢な予想かもしれないけど、」

璃奈「それでも自分を信じてみる。」

歩夢「私も璃奈ちゃんを信じるよ!」

歩夢「それで、私は何をすればいい?」

127: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:55:17.86 ID:MTShqnNv
璃奈「とりあえず部室に急ごうっ!」

歩夢「今からっ?」

璃奈「もしかすると……明日の朝だと手遅れかもしれない。」

歩夢「行こう。」

璃奈「うん。」

――マンションのエレベーターの待ち時間が何分にも、何時間にも感じる。

璃奈「もうこの時間だとモノレール動いてない。」

歩夢「あっ……、うん。走ろう。」

――私と璃奈ちゃんはエレベーターが1階に着くなり学校へ向けて走り出した。

128: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 21:57:44.57 ID:MTShqnNv
璃奈「この時間だとお巡りさんに見つかると補導されちゃう。」

歩夢「そしたら全力で逃げる!」

璃奈「璃奈ちゃんボード「あとで問題になっても知らないぞ」」

歩夢「あの子さえ助けられれば、その後なんてどうでもいいよ。」

璃奈「いつもの歩夢さんで安心した。」

歩夢「それってどういうこと~!?」

――思いっきり走りながらでも会話ができる。

――いつもの練習がこんなところで役に立つなんて。

129: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:00:20.59 ID:MTShqnNv
歩夢「それで、璃奈ちゃんの推理聞かせてもらってもいい?」

璃奈「えっとね、」

璃奈「もし2つの世界が別々にあったとする。」

璃奈「そこには両方に歩夢さんが居るし、両方に私がいる。」

歩夢「うん。」

璃奈「お互いの世界の歩夢さんや私はちょっと差があるもののほとんど同じだったとする。」

歩夢「それで?」

璃奈「そして、先輩だけは少し特殊で、その差が大きかったとする。」

璃奈「なんでその差が大きくなったかはわからない。でも、性格とか言動が違っていたとする。」

璃奈「……名前や容姿すらも。」

131: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:02:45.52 ID:MTShqnNv
璃奈「そして、ある時、その二つの世界が足し合わさって1つになったとする。」

歩夢「そんなことがあるの!?」

璃奈「わからない……完全に科学の範囲を超えている。」

璃奈「でも、ありえなくはないと思う。」

歩夢「どういうこと?」

璃奈「歩夢さんはシュレディンガーの猫って知ってる?」

歩夢「ゲームの中で聞いたことはあるよ。」

歩夢「あっ、というか璃奈ちゃん、学校ってこの時間は入れるの?」

璃奈「普通に入るのは無理。」

歩夢「今から許可取るの?」

璃奈「そんな時間はない。だから無理やり入る。」

歩夢「セキュリティとかあるんじゃないの?」

璃奈「南棟にいつもカギが壊れている窓がある。ちょっと遠回りだけどそこから入る。」

歩夢「なんで知っているの……?」

132: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:08:10.67 ID:MTShqnNv
璃奈「で、猫の話に戻るけど、どんな話かっていうのは知ってる?」

歩夢「箱の中に猫と毒を入れておいて、箱を開けるまでは猫が生きているか死んでいるかわからないってやつだっけ?」

璃奈「まぁ、大体そんな感じ。今大切なのは細かい内容じゃなくて、」

璃奈『猫が死ぬか生きるかは箱を開けた瞬間に確定する』

璃奈「という考え方。これが量子力学の面白いところ。」

歩夢「量子力学って聞いたことはあるけど、そんな変な考え方をするの?」

璃奈「そう。考え方というか、こう考えないと現象が説明できない。」

璃奈「でも、どういうメカニズムでこんなことが起こっているかが説明できていない。」

歩夢「えぇ……」

璃奈「これの説明が何個か考えられていて、その一つが多世界解釈。」

133: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:10:47.64 ID:MTShqnNv
歩夢「多世界解釈?」

璃奈「そう。箱を開けた瞬間に、猫が生きている世界と猫が死んでいる世界に分かれるっていう考え方。」

歩夢「そんな、世界が分かれちゃったら気が付くんじゃないの?」

璃奈「私が箱を開けて、猫が生きていたらその瞬間に『猫が生きている方の世界』に入っちゃうから、『猫が死んでいる方の世界』の事は見ることも感じることもできない。」

歩夢「うーん……」

歩夢「で、この話が今回の件とどう関係があるの?」

歩夢「あと、方向はこっちでいい?」

璃奈「うん、そっちの海の方から南棟に向かう。」

歩夢「分かった!」

134: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:13:15.91 ID:MTShqnNv
璃奈「多世界解釈には問題点がいくつかあって、その一つが世界が分離しすぎちゃうこと。」

歩夢「どういうこと?」

璃奈「例えば歩夢さんには無数の可能性が存在する。」

璃奈「例えば1秒後に止まる可能性も、もっと走るペースを上げる可能性も、」

璃奈「あるいは転んじゃう可能性もある。」

璃奈「私にも、次の交差点を直進する可能性も、右に曲がる可能性も、左に曲がる可能性がある。」

璃奈「多世界解釈は、その可能性の数だけ世界が分岐する。」

璃奈「歩夢さんだけ、私だけでも可能性があるのに、それが世界、いや、宇宙で考えうる限りの可能性の数だけ世界が分岐する。」

歩夢「それってすごい数の世界が作られることにならない?」

136: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:15:54.58 ID:MTShqnNv
璃奈「そう。無限個の世界が分岐によって作られる。でも、そんな大量の世界は存在できないんじゃないかって言われてる。」

歩夢「じゃあ、その考え方は間違っているってこと?」

璃奈「そうとも言い切れない。もしこの問題を解決するような、分岐した世界の数が無限にならないような仕組みがあるかもしれない。」

歩夢「もしかして……」

璃奈「また仮定にすぎないけど。」

璃奈「はぁ……はぁ……」

璃奈「さすがに話しながら学校まで走るのはつらい……」

璃奈「でも、やっと着いた。」

歩夢「ここが……例の窓?」

璃奈「うん。」

ガラガラ

137: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:18:13.75 ID:MTShqnNv
歩夢「入ったら絶対先生に怒られちゃうね。」

璃奈「学校の敷地に入った時点でもうだめ。」

歩夢「確かに。」

歩夢「あー、これで先生にバレちゃったら推薦取れないだろうな~。」

璃奈「そんな笑顔で言われても……」

歩夢「さぁ、あの子を救いに行くよっ!」

璃奈「うん。」

138: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:20:50.50 ID:MTShqnNv
――
―――
――――

璃奈「防犯センサーがあるから、ちょっと遠回りしないといけない。ついてきて。」

歩夢「なんで璃奈ちゃん、センサーの場所知ってるの……?」

璃奈「さっきの話の続きだけど……」

璃奈「もし世界の数が多くなりすぎないように世界同士で結合が行われているとしたら。」

璃奈「その結合は似ている世界同士で行われるものだとしたら。」

璃奈「もし、その中に先輩のような違いが大きい存在が混じっていたら。」

歩夢「どうなっちゃうの……?」

139: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:23:43.15 ID:MTShqnNv
璃奈「物理学では、この世の中は変化を嫌う方向に進むと言われている。」

璃奈「宇宙で動いているボールは動き続けるし、止まっているボールは止まり続ける。」

璃奈「発電所も、この変化を嫌う性質を使って発電してる。」

璃奈「もし結合するときに矛盾が起こったら……」

璃奈「きっと整合性が取れるようにうまく事実と記憶が操作されると思う。」

歩夢「でも……」

璃奈「そう。全く整合性が取れていない。『何かが起こっている』ことに気が付く時点で整合していない。」

璃奈「だから、たぶん結合した2つの世界の先輩があまりにも異なる人間だったんだと思う。」

璃奈「だから結合に失敗した。」

140: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:26:14.98 ID:MTShqnNv
歩夢「つまり、私たちが忘れている部分は2つの世界線で食い違っていた部分ってこと?」

璃奈「おそらくそういう事だと思う。」

璃奈「逆に、覚えていた部分は2つの世界線で同じだった部分だと思う。」

璃奈「でも、私たちがこの変化に気が付いているという時点で矛盾が発生している。」

璃奈「だから、世界はこの矛盾を解消する方向に動いている。」

歩夢「それって……」

璃奈「うん……」

璃奈「覚えている記憶の消失。」

歩夢「……」

142: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:29:35.18 ID:MTShqnNv
璃奈「だから早く部室に来た。」

歩夢「あの子を救う方法は……」

璃奈「わからない……でもやれるだけのことはやる。」

ガラガラ

璃奈「やっと部室に着いた。」

歩夢「ちょっと整理させて……」

歩夢「合わさった世界のあの子はこっちの世界のあのことは名前が違って……」

璃奈「歩夢さんと幼馴染で……」

歩夢「隣に住んでいて……」

璃奈「でも左右が逆で……」

歩夢「こっちの世界の私たちとは別の場所に住んでいて……」

璃奈「容姿も学科もクラスも違って……」

歩夢「同好会のメンバーで……」

歩夢「きっとスクールアイドルが大好きで」

歩夢「私が大好きな子。」

歩夢「そんな子が幼馴染の可能性もあったってことか……」

144: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:32:19.55 ID:MTShqnNv
歩夢「あっ、だからあの時璃奈ちゃん私にあんな変な質問したの?」

璃奈「そう。歩夢さんだったらどの世界線でも先輩みたいな幼馴染を好きになっていたはず。」

璃奈「だから、歩夢さんがこの質問の答えに自信が無いようだったらこの仮説は取り下げてた。」

歩夢「それで、今あの子はどうなってるの!?」

璃奈「きっと結合後のこの世界から切り離された、別の空間にいると思う。」

歩夢「別の空間!?」

璃奈「そう、いわば矛盾だらけの場所。」

145: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:34:43.06 ID:MTShqnNv
璃奈「結合でうまくいかなかった記憶や物体がそこに集まっていると思う。」

歩夢「そんなっ!」

璃奈「パソコンが動かなくなったのも、データの本体がその空間に飛ばされた可能性がある。」

璃奈「ところどころ文字化けしていたのも、きっと異なる世界を無理やりくっつけたからだと思う。それこそ文字コードが違ったんじゃないかな。」

璃奈「あのメッセージもその空間に飛ばされて、エラー文だけが文字化けして残った。」

璃奈「きっとあのエラー文もそのうちなくなると思う。」

璃奈「整合性が取れない矛盾は全部一か所に集められて……」

璃奈「……」

璃奈「ゆくゆくは……」

146: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:36:57.26 ID:MTShqnNv
歩夢「そんなの絶対に許せない。」

歩夢「必ずあの子を救い出して見せる。」

歩夢「そんな宇宙の都合であの子が居なくなるなんてありえない。」

歩夢「どうしたらっ、どうしたら……」

璃奈「先輩は同好会中心の生活をしていた。」

璃奈「だからあっちの世界との矛盾も同好会、特にこの部室に沢山あったはず。」

璃奈「だから、きっと切り離された空間もこの場所に近いはず。」

璃奈「先輩と歩夢先輩をつなぐような、何かアイテムはない?」

璃奈「たとえ違う世界線でも一緒に持っていそうな、ぬいぐるみとか、キーホルダーとか、」

歩夢「そんな都合のいいものなんて……」

147: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:39:26.98 ID:MTShqnNv
歩夢「あっ……」

歩夢「ゆりかもめに乗るかもしれないからって、持ってきてたんだ……」

歩夢「結局終電終わってたけど……」

歩夢「これ……、お揃いのパスケース……」

歩夢「あの子とお揃いのものにしたくて買ったパスケース。」

歩夢「とってもデザインが好きで……きっと違う世界の私も気に入ってあの子にプレゼントしているはず……!」

歩夢「これだったら……!」

璃奈「それが空間をつなぐカギになるかもしれない。」

璃奈「歩夢さん、それを握りしめて先輩に念を送って……!」

璃奈「うまくいくかはわからないけど……。」

歩夢「それでもっ!」

歩夢「それでも可能性が1%でも……いや、0%でないなら私はあきらめないよ!」

148: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:42:10.10 ID:MTShqnNv

(歩夢……歩夢……)

――あれから何時間たったかわからない。」

――携帯の電池はとっくになくなっていた。

――そもそも電波がつながらなかったから何の役にも立たなかったけど。

「私、どうなっちゃうんだろう……」

――不思議と眠くならなかった。

――それに食欲もない。

――それが生きている実感をなくした。恐怖だった。

149: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:44:36.80 ID:MTShqnNv
ギュッ

(歩夢ぅ……助けてよ……)

(はやく家に帰りたいよぉ……)

(はぁ……)

(最後にもう一度、歩夢の卵焼き食べたかったなぁ……)

――部室にあった歩夢とのつながりを感じられるものはすべて消えてしまった。

――私に残っているのは……鞄についていたこのパスケースだけ。

――このパスケースが無くなったら、何を心のよりどころにすればいいんだろう……

――強く握り直す。

――……助けて……!

150: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:47:25.74 ID:MTShqnNv

「――……助けて……!」

歩夢「あの子に届いて!」

「あれ?声が聞こえる……」

「ははは……とうとう幻聴まで……」

歩夢「璃奈ちゃんっ!?」

璃奈「……信じられない……こんなうまくいくなんて……」

「あれ?幻聴じゃない!?」

歩夢「うん、そうだよ!聞こえる?歩夢だよ!」

「歩夢っ!」

「イタッ」

151: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:50:13.95 ID:MTShqnNv
歩夢「大丈夫!?」

「ぐずっ……良かった……。もうどうなることかと……」ポロポロ

「声、ちゃんと聞こえるよ……」

璃奈「私の声は聞こえる?」

「聞こえてる!聞こえてるよ!」

璃奈「良かった。」

歩夢「どこか具合悪いところある?」

「大丈夫だよ……今はとにかく誰かと会話できることが嬉しすぎて……涙が止まらないよ……」

歩夢「でもさっき痛いって……」

「あぁ、それはね……」

「なんかよくわからないんだけど、歩夢っイタッ」

「大丈夫っ!?」

152: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/04(水) 22:52:33.05 ID:MTShqnNv
「って、名前を呼ぶとなんかめまいと頭痛が一瞬あるんだよね。」

歩夢「もう私の名前は無理して呼ばなくていいから!」

「大丈夫大丈夫、そんなにひどい症状じゃないから。」

――あの子は嘘ばっかり。

――さっきよりも明らかに声の元気がなくなってる。

歩夢「とにかく、私の事は『歩夢』以外の呼び方で呼んでね!わかった!?」

「もー心配しすぎだって~」

「それで璃奈ちゃん、今私はどうなっているの?」

璃奈「えっと……それはね……」

~間~
~間~
~間~

璃奈「という事だと思う。科学では全然説明できないけど、今私とあなたが話せていることが一番の証明だと思う。」

「なるほど……」

169: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:13:00.26 ID:P0gsDygI
璃奈「それで、あなたに一つお願いがある。」

「なにかな?」

璃奈「さっきも説明した通り、たぶんパソコンのデータはそっちの空間に飛ばされている。」

璃奈「矛盾があまりにも多くて、うまく整合できなかったんだと思う。」

「うん。」

璃奈「今パソコンはそっちの空間にある?」

「あるよ!」

璃奈「そのパソコンの電源を入れてほしい。」

「お安い御用だよ!えっと……」ポチポチ

「はい、起動したよ!」

歩夢「璃奈ちゃん見てっ!」

璃奈「ありがとう。こっちのパソコンも起動した!」

璃奈「これで何とかなるかも……!」

「璃奈ちゃんのこと信じてるから!」

璃奈「絶対にあなたを助け出してみせる……」

171: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:16:24.70 ID:P0gsDygI
「そういえば今気が付いたけど、名前を忘れているから『あなた』呼びなんだね。」

璃奈「そういうこと。名前を忘れるなんて本当に最低。」

歩夢「私も……まさかあなたの名前を忘れるなんて……」

「いやいや、あ……じゃなくて、あゆぴょんも璃奈ちゃんも悪くないよ。」

歩夢「あゆぴょん?」

「だって名前で呼んじゃダメって……」

歩夢「今回だけだからね?」

「わかったわかった!」

「私の名前は高咲侑……」

ザザッツ

ザザザッツ

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

歩夢「えっ……」

172: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:19:36.80 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

――よくドラマやアニメで失った気多くが走馬灯のように一気に戻る描写がある。

――脳に大量の情報が流れ込んでくる。

――一つ一つの記憶が鮮明で……

――忘れていたことが不思議なくらい

――侑ちゃん……

――侑ちゃんっ!!

――侑ちゃんとのたくさんの記憶に溺れる至福の時間

――やっと……やっと侑ちゃんが私のところに戻ってきてくれた……

――でも、気が付かないうちに、異変は、起こっていた。

璃奈「侑さん!?侑さんっ!?」

歩夢「璃奈ちゃん!?どうしたの!?」

璃奈「侑さんの声が……侑さんの声がっ」



璃奈「聞こえなくなってる……」

――何度も何度も侑ちゃんに問いかけたけれど、一向に返事はなかった。

――私たちは高咲侑という人間に関する記憶を得る代わりに、彼女との通信手段を失ってしまった。

歩夢「侑ちゃんっ!返事してよっ!!」

歩夢「ねぇ、せっかく名前を呼べるようになったのにっ!こんなのってっ!こんなのって……」

歩夢「こんなのって……ないよ……」

173: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:22:44.60 ID:P0gsDygI
――
―――
――――


歩夢「侑ちゃん……侑ちゃん戻ってきてよ……」

歩夢「璃奈ぢゃん……どうすれば侑ちゃんは助けられるの……」

璃奈「すべてが想定外。」

璃奈「でも、なんとなくわかってきた。」

璃奈「侑さんは矛盾が集められた空間に飛ばされている。」

璃奈「その空間はやがて消滅する。」

璃奈「さっき状況説明したとき、侑さん言ってた。『触ったものが消えていることがある』って……」

歩夢「じゃあゆうちゃんも消え……」

歩夢「私これからどうしたらいいの……」

歩夢「こんなの・・・・・・立ち直れないよ……」

174: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:25:56.47 ID:P0gsDygI
璃奈「大丈夫。まだ侑さんは消えていない……と思う……」

璃奈「いや、消えてない!」

璃奈「だって侑さんだもん。絶対なんとかなる。」

歩夢「何その根拠のない自信……」

璃奈「今回の件は最初から根拠なんてない。」

璃奈「それでもここまでうまくやってきた。」

歩夢「確かにそうだね……!」

歩夢「私たちが諦めるわけにはいかないよねっ!」

璃奈「うん。」

175: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:29:37.77 ID:P0gsDygI
璃奈「侑さんは触って消えるものと消えないものがあると言っていた。」

璃奈「きっと触って消えるものはもう消えてなく無くなっているもの。」

歩夢「どういうこと??」

璃奈「きっと、それこそバグのようなものだと思う。」

璃奈「ゲームとかで、本来そこには存在しないアイテムの描写が残ったままの時ってあるでしょ?」

璃奈「で、自分で触ると消える。」

璃奈「本来は無いはずのアイテムデータが残ったままになってたりすることが原因なんだけど、」

璃奈「歩夢さんゲーム詳しいから分からない?」

歩夢「うーん、私、クソゲーしからやらないからな~」

歩夢「そこまで自由度の高い高度なゲームはわからないかも。」

歩夢「あっ、本来取れるはずのアイテムが取れないバグとかならあるよ!」

璃奈「それとは違うかな……」

177: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:33:07.68 ID:P0gsDygI
璃奈「でも、きっとそんな感じなんだと思う。」

璃奈「もう一つ重要な点は、侑さんの頭痛。」

璃奈「歩夢さんの名前を呼ぶと頭痛がするって言ってた。」

璃奈「これは、その呼び方自体が矛盾しているから侑さんの体に異変が起こっているんだと思う。」

歩夢「私の名前が歩夢じゃないってこと?」

璃奈「いや、そこまでの違いを孕んでいたら歩夢さんもあっちの世界に行ってる思う。」

璃奈「きっと呼び方の微々たる差。あだ名とか。」

歩夢「侑ちゃんが私の事を『歩夢』以外で呼ぶところなんて想像できないよ……」

璃奈「その矛盾を起こしても、侑さんの存在は消えなかった。」

178: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:37:16.98 ID:P0gsDygI
歩夢「消えるんだったら一瞬のはずってこと?」

璃奈「うん。侑さんがと話している時、頭痛がするたびに声が小さくなっていた。」

璃奈「私たちはてっきり元気がなくなって声量が小さくなったと思ったけど、」

璃奈「侑さんが歩夢さんの呼び方で矛盾を起こすたびに、向こうの空間との距離が遠くなったのかもしれない。」

歩夢「でも、遠くなったらまずいんじゃ……」

璃奈「うん。」

璃奈「でも、いなくならないだけラッキーかもしれない。」

璃奈「侑さんは最後に私たちに名前を教えた。」

璃奈「これが決定打になってお話しすることができないくらいこの世界とは離れてしまった。」

歩夢「油断は……できないってことだね……」

璃奈「でも絶対大丈夫。」

璃奈「絶対救い出して見せる。」

璃奈「絶対に……!」

179: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:40:47.08 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

璃奈「幸いなことに、侑さんのおかげでパソコンは使える。」

璃奈「このパソコンで空間の流れを遡ってみる。」

歩夢「そんなことできるの!?」

璃奈「例えば、今空に見える星の光は遠い昔の光って話は聞いたことある?」

歩夢「うん……すごく遠い場所にあるから、光でさえも地球に届くのまでにすごい時間がかかっちゃうんだよね?」

璃奈「そう。もし世界が結合したとすれば、結合する前と後で何らかの変化が生じるはず。」

歩夢「宇宙がくっつくなんて大イベントだもんね。」

璃奈「しかも今回は侑さんという例外が居た。そんな状況で何も影響が出ないはずがない。」

歩夢「でも、どうやってそんな変化……」

180: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:44:14.13 ID:P0gsDygI
璃奈「この装置をパソコンにつなげばある程度はわかる。」

歩夢「それなに!?」

璃奈「さっき説明した変化を観測できる装置。」

歩夢「璃奈ちゃんが作ったの!?」

歩夢「璃奈ちゃん高校生だよね!?」

歩夢「!?!?」

璃奈「とりあえず、見てみよう。」

ガチャッ
ブーン
ピピピピガーガー
リナリナリナリナリナリナ
ポムポムポムポムポムポム
ウーーーーーーーーーーーーン

璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「…………」

璃奈「出た。」

歩夢「どうだったっ?」

182: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:47:29.01 ID:P0gsDygI
カタカタカタ

璃奈「なるほど……」

璃奈「やっぱり世界が結合した跡がある。でも……、そうか……」

歩夢「でも?」

璃奈「ちょっと予想と違った。」

璃奈「私は2つの世界線が結合して1つの世界線になったと思ってたけど、」

歩夢「違ったの?」

璃奈「まぁ、違くはないんだけど、」

璃奈「正確には私たちの今までの世界線に、違う世界線が合わさってきた感じ。」

璃奈「あくまでメインは今まで私たちが居たほうの世界。」

璃奈「まぁ、どっちの世界にも私たちはいたんだけど。」

歩夢「ややこしくて頭がくらくらするよ……」

183: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:50:49.94 ID:P0gsDygI
璃奈「今の侑さんは矛盾を集める空間の中にいる。」

璃奈「侑さんが持つ矛盾は、別世界線での侑さん自身。」

璃奈「別世界の侑さんを仮に“侑”さんって呼ぶことにする。」

璃奈「今の侑さんは侑さんと“侑”さんとが重なり合った状態。」

璃奈「侑さんであり、“侑”さんでもある。」

璃奈「ただ、侑さんの世界線に”侑”さんの世界線が足された形になっているから、今は侑さんとしての性質が色濃く出ている。」

璃奈「でも、今の侑さんは侑さんではない。」

歩夢「うん……」

璃奈「侑さんを助ける方法は2つ。」

璃奈「1つは侑さんだけを助ける方法。」

璃奈「この方法を取れば、今まで通りの生活が元通りになる。」

璃奈「侑さんのクラスも学科も、住んでいる場所も、全部元通りになる。」

歩夢「でもそれって……」

184: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:54:12.02 ID:P0gsDygI
璃奈「2つ目は両方の存在を助ける方法。」

璃奈「でも、これは正直危ない。そもそも、今の侑さん(“侑”さん)は、世界が成り立たなくなるからという理由で別空間に飛ばされた存在だった。」

璃奈「それを無理やりこの世界に戻したら、どうなるかわからない。」

璃奈「周囲の記憶の混濁が激しくなるかもしれない。」

璃奈「もしかすると、歩夢さんとの関係も全く別のものになるかもしれない……」

璃奈「同好会も……続けられなくなるかもしれない……」

璃奈「だって、世界がエラーを起こして消失させちゃうくらい似て非なる人だから。」

璃奈「私は歩夢さんの判断に任せる。」

璃奈「この選択は歩夢さんにしかできない。」

璃奈「さぁ歩夢さん。」



璃奈「どっちを選ぶ?」




歩夢「……」

ギュッ

歩夢「……!!」

185: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 22:57:36.61 ID:P0gsDygI
☆★☆★☆★☆★☆★


歩夢「私の幼馴染の……あの子……」




愛「もう少しあの子の家のことで思い出せることはない?」

歩夢「えっと……一緒に登校して、」

一同「知ってる。」

歩夢「帰るときも一緒で……」

一同「知ってる。」

歩夢「も~!からかわないでよ!!」プンスカ

歩夢「いつも朝はベランダ越しに会って……」

かすみ「先輩とは部屋も隣同士だったんですか?」

歩夢「そうそう!いつもあの子は寝坊しがちだからいつも電話してあげてね!」

歩夢「そしたらベランダに出てくるからおはようって挨拶してたんだ!」

186: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:00:44.21 ID:P0gsDygI
――あの子とは良く歩いて家まで帰った気がするけれど、




璃奈「歩夢さんと比べたらごくごく短い期間で……」

璃奈「小さい頃からの幼馴染で、会って数ヶ月の私達とは積み重ねてきた時間が違いすぎるけれど……」

璃奈「それでも解決したい。救い出したいって気持ちは一緒だから。」

璃奈「先輩は私にとっても大切な人。」




璃奈「歩夢さんは先輩の事が好き?」

歩夢「大好きだよ。この世界の何よりも。」

璃奈「じゃあもう一つ。」

璃奈「もし別の世界で先輩と会っても、好きになってたと思う?」

歩夢「もちろん。」

☆★☆★☆★☆★☆★

188: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:07:29.85 ID:P0gsDygI
――侑ちゃんと話す前の私たちは、侑ちゃんと”侑”ちゃんの共通部分しか知らない……

――顔も名前も知らない子だけど……

――幼馴染で……

――スクールアイドルが大好きで……

――隣に住んでいて……

――本当の名前もわからないけど……

――私の事を支えてくれて。……

――私が大好きな“侑”ちゃん

――やっぱり他人には思えないよ……

――それで侑ちゃんとの世界が壊れたとしても……

189: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:14:02.35 ID:P0gsDygI
――いやっ、

――そんなのは許さない。

――私は強欲だから。

――あっちの世界の”侑”ちゃんも、侑ちゃんとの今までの関係も

――両方を手に入れてみせるっ!

――“侑”ちゃんが世界の秩序のために消されるなんて……

――そんな選択は間違えていたって……

――証明してみせるっ!

歩夢「璃奈ちゃんっ!」

歩夢「助けてほしい。」

歩夢「侑ちゃんを。」

歩夢「そして、」

歩夢「”侑”ちゃんも。」

190: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:16:47.10 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

愛「今日も朝練一番乗り~!」

ガラガラ

愛「今日もガンガン、練習頑張るよっ!」

愛「って、あれっ??りなりーに歩夢にゆうゆ、どうしちゃったの?」

璃奈「ん……?あれ?」

歩夢「えっ……ここどこっ?って、部室?え?なんで?」

侑「zzz」

歩夢「昨日は璃奈ちゃんの言えでお泊りしたはずなのに……」

歩夢「なんで学校に……?」

191: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:20:31.31 ID:P0gsDygI
愛「しかもみんな私服じゃん!着替え持ってるの?」

歩夢「えっ……急にそんなこと言われたって……」

璃奈「なんて私たち部室にいるんだろう……」

歩夢「荷物は何も持ってないよ……」

パタッ

歩夢「あっ、パスケースは持ってたんだ……」

愛「今から帰れば何とか間に合うんじゃない?」

歩夢「ちょっと、侑ちゃん!起きて!」

侑「なに……?はゆむ~?」

歩夢「ほらっ、一回帰るよ!」

侑「えぇ……なんで……?」

侑「えっ?ここ部室?なんでっ?」

璃奈「わからないけど、気が付いたらここにいた。」

侑「えっ……」

192: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:24:04.66 ID:P0gsDygI
歩夢「ほら、家に荷物取りに行くよっ……」

歩夢「ってあれ……?なんで侑ちゃん制服なの?」

侑「さぁ……?荷物もあるみたいだし私はいいかな?」

歩夢「ダメだよ!教科書とか昨日と違うでしょ!?」

侑「私置き勉してるし。」

侑「楽譜も全部タブレットに入ってるし!」

歩夢「それでもっ!」

歩夢「ほらっ、シャワーとか浴びないと!女の子なんだから!」

侑「え~、1日くらい大丈夫だよ~」

歩夢「ダメなのっ!」

194: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:27:21.43 ID:P0gsDygI
侑「そうだっ、この前つくった新曲のデータが家にあるんだった。」

侑「私もいったん家帰る!」

歩夢「もー自分の事もちょっとは大事にしてよね……」

侑「分かってるって!」

歩夢「ちゃんとシャワー浴びてから学校行くからね」ジトー

侑「分かったわかった……」

璃奈「じゃあ、私たちはいったん家に帰るね。」

愛「はいは~い。」

ガラガラ

愛「それにしても3人で部室で何してたんだ?」

愛「はぁ~、愛さんなぜか今日はすごく寝不足。」

愛「記憶が曖昧だけど、昨日夜更かししちゃったのかな……?」

愛「ちょっと仮眠でもとろうかな……」

愛「zzz……」

195: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:31:00.21 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

歩夢「それにしてもなんで私たち部室に居たんだろう?」

璃奈「昨日は確実に帰ったはず。」

侑「また璃奈ちゃんの発明のせいなんじゃないの~?」

璃奈「そんなことはない。自分の発明品の効果くらい分かってる。」

侑「まぁ、そうだよね~」

歩夢「じゃあ私たちはここでバスだから。」

璃奈「うん。じゃあまた明日……じゃないか。」

侑「またあとで?」

璃奈「ふふっ……なんか変な感じ。」

歩夢「だねっ!」

侑「じゃあ、またあとで~!」

璃奈「またあとで。」

196: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:34:26.87 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

―お互いの部屋の玄関前にて

歩夢「じゃあ、ちゃんとシャワー浴びて、着替えてから学校行くからね!」

侑「分かったって!」

歩夢「あなたが嘘つくとすぐわかるんだからね。」

侑「お~怖い。」

歩夢「じゃあ、20分後にまたここで集合ね!」

侑「歩夢ちゃんいつもしたく時間かかるのに、20分で大丈夫?」

歩夢「も~、そんなことないもん!」

198: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:37:55.53 ID:P0gsDygI
歩夢「あれ?」

侑「ん?」

歩夢「なんで今、私、侑ちゃんのこと『あなた』って呼んだんだろう?」

侑「なんで今、私、歩夢の事『歩夢ちゃん』って呼んだんだろう?」

歩夢「ふふっ……歩夢ちゃんだって。なんかかわいいかも。」

侑「あなたって、何その抽象的な呼びかた~!」

歩夢「でも、なんでだろう。全然違和感を感じなかった。」

侑「うん、むしろなんだか懐かしいというか。」

歩夢「一回もそんな呼ばれ方したことないはずなのに……」

侑「おかしいねっ!」ハハッ

歩夢「ねっ!」フフッ

侑「あっ、こんな無駄話してたら時間なくなっちゃう!」バタバタ

歩夢「も~!ぜんぜん無駄じゃないよ~!」バタバタ

199: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:41:42.38 ID:P0gsDygI
――
―――
――――

私は、今日嘘をついた。

私は、なぜ私たちが部室にいたか、知っている。

私は、今朝3人の中で一番早く起きた。

目の前には同好会のパソコン。

その時は昨日の記憶が完全に消えていて、私も混乱した。

どうして部室にいるのだろうか?

どうして私はここにいるのだろうか?

それらの疑問の答えは目の前のモニターにすべて書いてあった。

そこにはログ、つまりは昨日の自分がパソコンに対してどのような操作を行ったのかの履歴が記されていた。

私はそれを見るなり、すべてを理解した。

「これは……」

200: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:45:06.61 ID:P0gsDygI
そこには到底信じられないデータが記録されていた。

世紀の大発見どころのレベルではない。

ノーベル賞がいくつあっても足りないだろう。

手が震え、全身に鳥肌が立ち、喉がどうしようもなく乾いた。

科学者を志す人間として、胃液がこみ上げてくるほど興奮した。

ガチャガチャ
クルクル
ガチャガチャ

私はパソコンの電源を切り、音をたてないようにパソコンを分解し、データの入ったハードディスクを取り出した。

ガラッ

スタスタ

私はある部屋へと向かった。

201: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:48:28.38 ID:P0gsDygI
この学校のセキュリティの甘さはひどすぎる。

生徒を信頼しすぎている。

私は何種類かの薬品を用意し、それを大きめのビーカーになみなみ注いだ。

「私、科学者失格だ。」

私は手に持っていたハードディスクを、そのビーカーの中に落とした。

泡を出しながらハードディスクが溶けていく。

科学の世界を変えうるデータと共に。

203: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:51:44.35 ID:P0gsDygI
「これでいいんだ……」ポロポロ

「あぁ……、私、泣けたんだ……」ポロポロ

「もしこんなデータが存在したら、侑さんたちの身が危ない。」

「きっと、この同好会も続けられなくなっちゃう。」

「世界中の科学者たちの標的になっちゃう。」

「だから。こんなデータは。この世から消してしまった方がいい。」ポロポロ

「でも、私も未練がましいな……」

「科学者としての私よりも、」

「スクールアイドルとしての私たちを大切にするって、決意したのに……」ポロポロ

ハードディスクは跡形もなく溶けきった。

205: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:55:41.32 ID:P0gsDygI
これで今回この世界で起こった出来事に関するデータは誰にも復元できない。

もちろん、私にもできない。

でも、それでいいんだ。

歩夢さんにとって侑さんがこの世界の何よりも大好きなように、

私にとって虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はこの世界の何よりも大切な場所。

科学の進歩のためにこの場所が土足で踏み荒らされるのならば……

私は科学を捨てることだって厭わない。

これで今回のバグは世の中から完全に消失した。

206: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/06(金) 23:59:25.38 ID:P0gsDygI
きっと私が報告しなくとも、また別の場所で同じような出来事が起こるはずだ。

その時に誰かが世界に報告すればいい。

私が知ったことではない。



廃液を処理し、私は部室へ戻った。

歩夢さんも侑さんもぐっすり寝ている。

記憶はないけれど、精神的に相当疲れているんだと思う。

とっても幸せそうな寝顔。

この世界を守れたと考えると、少し誇らしい。

208: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2022/05/07(土) 00:02:40.82 ID:DNBkEO51
さて、私ももうひと眠りしようかな。

こうして私は眠りにつき、しばらくたって部室に来た愛さんに起こされた。

さて、今日は珍しく同好会の練習が休みの日。

同好会パソコン用の新しいハードディスクを秋葉原に買いに行こうかな。


引用元: 【SS】消失バグ