2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:13:07.78 ID:yYU9RYnh0

【黒木家 智子の部屋】




   … ト ポ ポ ポ ポ ポ




「本当は肌に悪いから、一日に何度も塗らないほうがいいけど」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「少しなら大丈夫かな」



 に ゅ ~ ~ ~



「・・・・・・・・・・・・・・」

「服汚れないよう、これつけるね」

「あっ、うん・・・・・・」



 … シ  ュ  ル  ッ



「  あ  ふ  っ  」 !!




成瀬「きゃっ?!」

黒木「       」ビ  ビ ビ 

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:14:29.65 ID:yYU9RYnh0

成瀬「ご、ごめんねもこっち。 くすぐったかった?」

黒木「べ   べつ    にっ」ビクン ビクン…

成瀬「・・・ごめんね。もうちょっとだけ、がまんして」

黒木「い、いや。違くて。 ほんと、大丈夫・・・」

加藤「成瀬さん、これ振ってもらえる?」

成瀬「うん」



 シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ

     …シュル スッ シュルッ



成瀬「んしょ、んしょ、んしょ」シャカシャカシャカ

加藤「イヤーカバーつけるね。・・・」シュル シュル

黒木「う… うん おふ………」ビクッ

加藤「(・・・肌、綺麗だな)」シュル……

成瀬「明日香ちゃん、できたよー」

加藤「ありがとう、成瀬さん」パカッ



 ド  ロ  ッ  ・ ・ ・ ・ ・ ・



黒木「・・・・・・・・・」ゴクリ

加藤「はい成瀬さん、手袋」

成瀬「ありがとね、明日香ちゃん」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:16:24.17 ID:yYU9RYnh0

黒木(・・・そっか。 いまから、やるんだ)

成瀬「んしょ、っと」シュッ キュ

黒木(ふたりが、あのドロドロを、私の髪に・・・)

加藤「これくらいかな」…クチュ

成瀬「よいしょ」チュク…

黒木(あ、銀色の粘液まみれの手が・・・)

加藤「それじゃ、黒木さん」

黒木「う、あっ・・・(いよいよだ、いよいよだ!)」

成瀬「いくよー」スッ



 ・・・ ぬ ち ゃ っ



黒木「   あっ   」ゾクッ

成瀬「んしょ、んしょっ」ニュル クニュウ

加藤「・・・痒くない? 黒木さん」ムニュ ズチュッ

黒木「だ だいじょ あっ」ゾクゾクゾク

成瀬「がまんしないで言ってね」クチュ クチュ



ぐちょ ぬる ぐちゅ ぬる・・・



黒木「  あっ   あっ  」ヒクッ ヒクッ

加藤「・・・黒木さんの髪って、綺麗だね」クチュ クチュクチュ…

黒木「あっ そ そう あっ かな あっ あっ」ヒクヒクヒク

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:20:36.34 ID:yYU9RYnh0


 ・・・くちゅ くちゅ しゅる しゅる



黒木「        」ヒクッ ヒクッ

加藤(・・・ほんとうにきれいな髪)シュル クチュ

成瀬(もこっちの髪。 きれいだな)クチュッ シュル

黒木「        」ヒク ヒク …

成瀬(こんなふうに触るの、はじめて。 ・・・・・)




 ────── ゆうちゃんのにおいも確認してあげるよ。

 ────── くん、くん。 ふん、ふん。




成瀬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」クスッ

加藤「・・・?」



 ────── おい、片方余ってるから嗅げよ。 すん、すん。

 ────── え? ああ・・・ うん。 ・・・・・・くん、くん。



 ────── くん、くん。 すん、すん・・・

 ────── (なんだろう?! これ?)



成瀬「・・・・・・・・・・・・・・ふふ」ニコニコ

加藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」シュルッ…

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:22:08.11 ID:yYU9RYnh0


シュル シュル キュッ!



成瀬「はい、できあがり」

黒木「   ふう・・・   」ボーッ

加藤「これで30分くらい置けば染まってると思うけど」

成瀬「・・・」
              ソープ
黒木「えーと・・・ 60分 泡 (染め)コース、加藤さんとゆうちゃん指名で2万円かな」

加藤「ふふふ」

成瀬「・・・ねえ、もこっち」

黒木「なに?」

成瀬「銀色の髪の毛って、もしかして、あの子?」

黒木「あの子? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





───── 私は ───。

───── 闇を纏わされ逆十字を標された…





黒木「!!!!!!」ギクッ!!

成瀬「あ、やっぱり?」

黒木「ち、違う! 違う違う!!」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:23:05.21 ID:yYU9RYnh0

加藤「黒木さん?」

黒木「あ、なっ、なんでもない! なんでもないなんでもない!」

黒木「あ、カラー液流してくる! 頭も!」ダッ ガチャッ!



  バ  タ  ン  ッ!

 ダ ダ ダ ダ ダ ダ …



成瀬「・・・・・・もこっち」

加藤「・・・・・・・・・・・・・」



 … ジ ャ ー ー ー ー ー ー



黒木(うわあああああああ! なんで、ゆうちゃんなんで?!)ワシャワシャワシャ

黒木(なんで無駄なところで記憶力いいんだよちくしょう!!)グシャグシャグシャ




────── ふふっ。 お馬鹿さぁん。




黒木(あーバカバカバカ私のバカゆうちゃんのバカ!)ゴシャゴシャゴシャ

黒木(脳ミソ取りかえたい!! 記憶を抹消したいーー!!)グジャグジャグジャ




 ジ ャ ア ア ア ア ア ア ア ア …

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:23:55.54 ID:yYU9RYnh0

【その日の夕方 公園】



 カア  カア

  カア  カア



加藤「・・・・・・・・・・・・・・」スタ スタ

成瀬「・・・・・・・・・・・・・・」トコ トコ



 カア  カア  カア  …



加藤「・・・成瀬さん、ちょっと話さない?」

成瀬「え? ・・・うん」



 … キイ キイ   キコ キコ



加藤「・・・黒木さんね。 よく成瀬さんのこと、話してくれるの」 … キ イ

成瀬「え?」

加藤「よく一緒に勉強して、休憩中にはセクハラしてるって」 キ イ …

成瀬「そ、そうなんだ」

加藤「黒木さんが謹慎してたとき、学校のみんなとは連絡取ってなかったけど

   成瀬さんとは話してたんでしょ?」

成瀬「あっ、うん・・・・・・・・・・・・・・」

加藤「・・・・・・・・・・・・・・」 キ コ キ コ …

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:25:34.07 ID:yYU9RYnh0

成瀬「・・・明日香ちゃん」

加藤「黒木さんが本当に頼りにしてるのは、私ではなく成瀬さんなんだって

   今日わかった気がする」

成瀬「あっ・・・ えーと・・・   その・・・」モジモジ

加藤「・・・・・・・・・・・・・・?」

成瀬「もこっちには内緒にしてほしいって頼まれたけどね・・・」アセアセ




  カア  カア  カア  カア  …




加藤「…そうだったんだ」

成瀬「・・・・・・・・・・・・・・うん」

加藤「黒木さんが、その… hairを…」

成瀬「・・・そうなの。 もこっちはきっと、格好悪いとこ明日香ちゃんに見せたくないんだと思う」

加藤「格好悪いところを?」

成瀬「うん。 ・・・『あの子』のことも」

加藤「あの子・・・ 黒木さんのお人形さん? 中学生のころに持ってたっていう」

成瀬「うん。もこっちが髪の毛銀色にしようとしたの、きっとあの子のこと考えてたんだと思って」

加藤「・・・・・そうなの?」





───── 私は───。 闇を纏わされ逆十字を標された…

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:26:30.31 ID:yYU9RYnh0

成瀬「格好悪い子じゃないんだよ。 とっても可愛くて、かっこいい子だったの」

加藤「・・・うん」

成瀬「もこっちも、とっても可愛がってたの。一緒に写真撮ったり、おんなじ格好したり」

加藤「黒木さんが?」

成瀬「うん。でも三年生のころ、お人形さん遊びなんてみっともないって言って・・・」




───── あれ? ・・・ああ、もう捨てちゃった。

───── 壊れちゃったし、人形遊びって年でもないし。




加藤「そうだったんだ。 ・・・ね、成瀬さん。その子の写真なんてある?」

成瀬「うん。 ・・・もこっちには内緒だからね」

加藤「わかってる、絶対秘密にする」

成瀬「この子なの」 ピ ッ

加藤「・・・わあ、素敵」

成瀬「そうだよね」

加藤(透き通るような銀色の髪と真っ白な肌。 黒い服と翼、真っ赤な瞳・・・)

加藤「こっちは黒木さんだよね」

成瀬「うん。おそろいの服着て、一緒に写真撮って送ってくれた」

加藤「黒木さんも、可愛くて、格好いい」

成瀬「うん・・・・・・・・・・・・・・」




 カア カア カア …

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:27:54.12 ID:yYU9RYnh0

【その夜 黒木家 智子の部屋】



… ズキン ズキン ズキン



黒木「おーーー痛て・・・」ズキズキ



(謹慎開けたばかりなのに何考えてるの、この子は!!!)



黒木(ひさしぶりにグーで喰らった・・・)ズキズキ

黒木(顔を狙わなかっただけ手加減してくれたんだろうけど)ズキンズキン

黒木(・・・・・・・・・・・・・・)



(はい、できあがり。)

(わあ、きれい。すごいよもこっち)



黒木(・・・やっぱりもったいないなー。せっかく二人が染めてくれたのに)

黒木(明日になったら染め直せって、くそっ)

黒木(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



───── 銀色って、やっぱり、あの子?



黒木(・・・・・そんなつもりじゃ、なかったんだけどな)

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:29:04.34 ID:yYU9RYnh0

黒木(ゆうちゃんに言われるまで、ずっと忘れてたし)

黒木(・・・・・・・・・・・・・・・・思い出したくも無かったし)ゴソッ



 ゴソ ゴソ

  ゴソ ゴソ



黒木(一時期、はまったんだよな。 かっこいいとおもって)ゴソゴソ

黒木(漫画読んで、アニメも見て。DVDも買って)ゴソゴソ

黒木(コスプレしてなりきりして、そして・・・)ゴ ソ ッ 。



 ・・・ パ カ ッ 。





水銀燈ドール1/1「           」





黒木「・・・高かったよなあ」 ヒ ョ イ

水銀燈ドール「           」

黒木「もっと高いのもあったけど」ナデナデ…



 …  ギ  シ  ッ  。

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:52:27.08 ID:yYU9RYnh0

黒木「・・・・・・・・・・・・・・」クイッ

水銀燈ドール「    」…ギシッ

黒木(関節がきしんでる)クイ クイ

水銀燈ドール「    」ギシ ミシッ

黒木(顔にも、うっすら傷が。 ・・・・・・・)




────── こんなもの、こんなものっ!!

────── ガ   シ   ャ   ン !!




黒木「・・・もったいないな。 あんなことしなけりゃ、高く売れたかもしれないのに」

水銀燈ドール「         」

黒木「これじゃジャンク品だ」




    ギ   シ   ッ  。




黒木「?」

水銀燈ドール「         」

黒木「・・・・・気のせいか」

水銀燈ドール「         」 ギ シ …

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:53:11.63 ID:yYU9RYnh0

黒木「あのころはもう本当にわたし、痛い子だったなあ・・・」



────── †あらお母さま、ごきげんはよろしくて?†

────── †紅茶を入れてらっしゃい、智貴くん。 ふふふ。†



黒木「うああああああ!」ワシャワシャワシャ

水銀燈ドール「         」

黒木「くそ、まったく私ってやつは」

水銀燈ドール「         」

黒木「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを。 ・・・」



(ううん、綺麗だよ。 格好いいよ、黒木さん)



黒木「・・・・・・・・・・・・・・」

水銀燈ドール「         」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・このへんだったかな」ゴソッ

水銀燈ドール「         」

黒木「ああ、あったあった。 ・・・よいしょ」ゴソゴソ

水銀燈ドール「         」

黒木「服と、髪飾り。 手袋、ブーツ。 あと、剣・・・指輪も」ゴソゴソゴソ…




 ガサ ゴソ ガサ ゴソ


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:54:31.95 ID:yYU9RYnh0


 … プチ プチ シュルッ

 スッ シュル シュルッ キュッ



黒木(・・・ちょっとカビ臭い)キュッ キュッ

水銀燈ドール「         」

黒木(サイズはちょうどいいけど。 ・・・・・・)クイッ キュ

水銀燈ドール「         」

黒木(私、ぜんぜん発育してないのか)ガックリ




 ───── ジ ャ キ !




黒木「・・・・・・・・・・・・・・」

水銀燈ドール「         」

黒木(やってしまった)

水銀燈ドール「         」

黒木(銀髪の私が、鏡の中にいる)

水銀燈ドール「         」

黒木(黒い服と翼をまとい、剣をたずさえた私が。 ・・・・・・・・・・・・・・)ジ ー ッ




 か・・・・・・・・・・  かっ・・・・・・・・・・・

 カ  ッ  コ  い  い  ッ  !!

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:55:09.78 ID:yYU9RYnh0


黒木(なにこれ? なにこれ?!)

黒木(めちゃくちゃいいじゃん! 超イケてる!!)




・・・・・・・・・・




黒木(すげっ! すげー! すげええええ!!)

黒木(わたしちょー水銀燈!! マジ水銀燈!!)




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




黒木(超かっけー!! ドハマり!! マジいけてんじゃん!!)

黒木(ゆうちゃん加藤さんありがとおおおおおおおおおおお!!)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ザ ワ ッ。





水銀燈ドール「         」ギシッ

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:56:12.73 ID:yYU9RYnh0

黒木「携帯携帯、カメラカメラ! ふたりにこの芸術をとどけなくては!」カシャカシャカシャカシャカシャ

黒木「全世界の人たちにも! ツ〇ッターにラ〇ンにイ〇スタに!」ピピピピピピ




・・・・・・・・・・・・・ ザワ ザワ ザワ

 シュル シュル ・・・・・・・・・・・・・




黒木「こうかな? こうかな? こっちのほうがいいかな?」

黒木「・・・そ、そうだ、動画! 動画にも撮らなくちゃ!」




    ザワ ザワ ザワ ザワ

  シュル シュル シュル シュル シュル





水銀燈ドール「         」… ギ シ ッ

黒木「・・・よし、準備オッケー! いくぞ!」

水銀燈ドール「         」 ギ シ …

黒木「†私は水銀燈。闇を纏わされ逆十字を標された・・・」




  ザワ ザワ  シュル シュル・・・・・・

   ぞ    わ    っ    !!!

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:56:47.10 ID:yYU9RYnh0


黒木「うぎゃあああ?!」ゾワゾワゾワ

水銀燈ドール「         」

黒木「うわ、うわ、うわああああ?!」シュルシュルシュルシュル




  ぞ わ ぞ わ ぞ わ ぞ わ ぞ わ

 し ゅ る し ゅ る し ゅ る し ゅ る




黒木「な、なにこれっ、からみついて・・・・・・・ 痛っ!」チクッ!

水銀燈ドール「         」
    いばら
黒木「 茨 ?! ・・・ひい!!」ギャルン!



  ぎゅるるるるるるるるるる!



黒木(ひ、ひっぱられる! 鏡に引きこまれる!?)ギュルルル

水銀燈ドール「         」

黒木(た、たすけっ・・・・・・・・・・・ぐええ)ギュルルルルル…




  ぎゅごごごごごごごご・・・




黒木(誰か、助け・・・)ギュゴゴゴゴ…

水銀燈ドール「         」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:57:48.04 ID:yYU9RYnh0


  ドンドン ドンドン 。

  … ガ チ ャ ッ



智貴「うるせーぞ! 何やってやがる・・・」



 …  シ  ー  ン  …



智貴「・・・おい?」

水銀燈ドール「         」

智貴「おい、どこ行った・・・」ゴソッ




 誰 か ・ ・ ・   助 け ・ ・ ・


    ・ ・ ・ 智 貴 ・ ・ ・




智貴「・・・っ?」ビクッ

水銀燈ドール「         」

智貴「・・・鏡? まさか、な」

水銀燈ドール「         」

智貴「おい、冗談やめろよ。 どこ隠れてんだ・・・」ゴソゴソゴソ

水銀燈ドール「        …」ギシッ




「              ………」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 15:58:31.89 ID:yYU9RYnh0

【?????????】



 シュル シュル シュル シュル シュル

 ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ





「・・・ふふふ、つかまえた」





 シュル シュル ザワ ザワ ザワ





「あなたはもう、私の巣にかかった蝶」





しゅるしゅる ざわざわ しゅるしゅるしゅる・・・





「どこへも逃げられないわ、さあいらっしゃい。」

「可愛いMy fair lady・・・・・・・・・・・」




 ド デ ッ !




黒木「ぐうえ!?」

「あら??」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:20:05.35 ID:yYU9RYnh0

黒木「ぜ、ぜは、ぜはっ・・・」

「・・・・・・・・・・・?」

黒木「こ、ここ、どこ・・・」

「あなたはだあれ?」

黒木「なっ・・・ うわ!?」



 シ ュ ウ ウ ウ ウ ウ …



黒木(白い髪の女の子・・・ いや、人形?!)

「・・・・・・・・・・・」

黒木(片目に白薔薇! まさかこいつ!!)

「あら、ご存知でしたの」 ニ コ ッ



きらきしょう           ニセモノ   おねえ
雪 華 綺 晶「はじめまして、贋 作 の黒薔薇さま」



黒木「に、ニセモノ?」

雪華綺晶「だってそうでしょう? その髪、その格好」クスクス

黒木「え、う・・・」

雪華綺晶「良い出来だと思いますわ、とっても可笑しくて・・・・ ふふふふふっ」

黒木「お前は 『 本 物 』 だっていうのかよ・・・!」
          レプリカ
雪華綺晶「私の 贋 作 がいるのなら、是非一度会ってみたいですわね」 ニ コ リ



 シュル シュル シュル シュル

   キラ キラ キラ …

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:21:59.69 ID:yYU9RYnh0

黒木(見渡す限り、水晶の柱だらけ・・・ まるで森だ)

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・・・・」

黒木(その柱の上を、茨がはいまわってる。 まるで蛇みたいにうごめいて・・・!)

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木(夢だ、こんなの夢に決まってる! こんなのありえない・・・)

雪華綺晶「夢?」クスッ



 チ ク ッ !



黒木「あっつう?!」

雪華綺晶「眼は醒めまして?」クスクス

黒木「な、なにをっ・・・」

雪華綺晶「夢の中でも痛みは感じる、死も同じように訪れる」

黒木「う・・・(こいついま、私の心を読みやがったのか?!)」
          オリジナル   レプリカ           うつつ
雪華綺晶「私が 本 物 か 贋 物 か、ここが夢か 現 か。

      そんなもの、あなたにとっては意味のないこと」シュル…





ここがわたしの巣であること。 あなたがそれにかかった蝶々であること。

・・・・・・・・・・・あなたにとっては、それで十分でしょう?

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:23:39.63 ID:yYU9RYnh0

黒木「く、くっ、くそう・・・」

雪華綺晶「おわかりになりました?」クスクスクス…

黒木(・・・ちくしょー!)ブスッ

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・」



 … シュル シュル シュル シュルル

 ザワ ザワ ザワ ザワ ザワッ …



黒木「・・・・・・・・・・・?」

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・」ジーッ

黒木「・・・なんだよ、じろじろ見て」

雪華綺晶「面白いですから」ニコニコ

黒木「はあ?」

雪華綺晶「黒薔薇のつもりになってる毒キノコのよう」クスクス

黒木「・・・けっ」

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・(なぜ?)」ジーッ





(なぜわたしは、お姉さまと間違えて、この子を連れてきてしまったんだろう)





黒木「・・・・・・・・・・・」

雪華綺晶(わたしがお姉さまと誰かを間違えるなんてありえないのに)

黒木「・・・・・・・・・・・」
                                     レプリカ
雪華綺晶(この子がたとえ、こんな出来損ないではなく完璧な 贋 作 であったとしても)

黒木「・・・・・・・・・・・」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:24:41.89 ID:yYU9RYnh0

雪華綺晶(さきほどからどれだけ心を探っても、お姉さまのことは出てこない)

雪華綺晶(見つけたのは物語の中のわたしたちと、この子が持ってたお人形のことだけ)

雪華綺晶(やっと餌に喰いついてくれたと思ったのに。 ・・・・・・・)




 シュル シュル シュル シュル …




黒木「・・・・・・・・・・・なあ」

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・」

黒木「・・・・・・・・・・・なあってば」

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・」

黒木「私をいったい、どうする気だよ・・・・・」

雪華綺晶「・・・まあ、いいでしょう」 ユ ラ ッ 。

黒木「わっ?!」

雪華綺晶(この子はただの人間。お姉さまとも、なんの関わりも無い)

黒木「な、なんだよ」

雪華綺晶(それなら、いつものように) ユ ラ リ




 キ イ ン !!




黒木「わああ?!」キュイン キン キュンッ!

雪華綺晶「ふふふふっ」

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:27:05.78 ID:yYU9RYnh0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

  ・ ・ ・ ・ ・ ・



黒木「う、動けない・・・(なんだこれ、水晶の壁・・・ 柱?)」

雪華綺晶「お綺麗でしてよ」クスクス

黒木(わたし、水晶のなかに閉じこめられたのか・・・)

雪華綺晶「あなた」

黒木「な、なんだよ」

雪華綺晶「その髪。 お友達にしてもらったんでしょう?」

黒木「・・・わかってるのかよ」

雪華綺晶「とても綺麗。 素敵なお友達ね」

黒木「・・・・・・・・・・・ふん」

雪華綺晶「取り引きしません?」

黒木「取り引き?」

雪華綺晶「あなたたちの間に、真実の絆を、永遠に」

黒木「・・・そんなもの」

雪華綺晶「要るでしょう?」 キ ラ ッ



・・・ ポ ウ ッ 。



黒木「!」

雪華綺晶「よく見てごらんなさい、わたしの掌のなかを」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:28:27.58 ID:yYU9RYnh0

黒木「なにこれ、水晶玉? ・・・・・・・・・・・」



(おかしいな・・・ 女子高生だが二か月近く高校生と会話してないぞ?)



黒木「!」
                ひとり
雪華綺晶「あなたはずっと孤 独だった」

黒木「なっ・・・ これ・・・」



(私の寿命一年減らしていいから、あいつら事故死しねーかな・・・)



雪華綺晶「孤独であるのが、当たり前だと思ってた。

      だれも自分のそばになんかいてくれないって」

黒木「・・・・・・・」

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・わたしと同じように」

黒木「お前と・・・だって?」

雪華綺晶「ええ。 わたしもずうっと、ひとりだった」 パ ッ




(おとう  さま     おねえさ ま )




黒木「あ・・・ これ、おまえの?」

雪華綺晶「ええ、そう。 あなたは知っているのでしょう? わたしたちの物語を」

黒木「・・・ああ」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:29:30.62 ID:yYU9RYnh0

雪華綺晶「お父様はわたしに体をくださらなかった。 お姉様たちはわたしを見向きもしなかった」

黒木「・・・・・・・・・・・」



(わたしを わたしを  みて   そばにいて)

(わたしを おいて いかないで ─────)



雪華綺晶「・・・あなたとわたしは、同じ」

黒木「一緒にすんな」

雪華綺晶「いいえ、同じ」 ポ ウ 。




(黒木さん、可愛い。 ──────・・・・・・・・・・・ふふふふふ。)




黒木「?!」

雪華綺晶「お姉さまたちがわたしのそばに来てくれるのは、アリスゲームのときだけ」




(あなたは、わたしの───────── 。  ふふ、ふふふふっ)




黒木「加藤さん・・・?! な・・・・ なっ・・・」

雪華綺晶「自分たちにとって都合のいい時だけ・・・」 ポ ウ …

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:30:45.85 ID:yYU9RYnh0


(・・・え。 いや、いやだよ。 ・・・・・・・・・・・)

(こんなの、─────・・・・・・・・・・。)




黒木「ゆうちゃんっ?!」

雪華綺晶「自分の気の向いたときにやってきて、自分の気持ちをぶつけるだけ」

黒木「ゆ、ゆうちゃんっ、ゆうちゃん・・・・・・・・・・・」




(・・・・───って、みんなこうなの・・・?)

(もう、──。  もこっち、─────・・・。)




雪華綺晶「あの子たちもお姉さまがたと同じ。 だからあなたは、わたしと同じ・・・」

黒木「・・・うそだ、うそだこんなの!!」

雪華綺晶「これが嘘なのだとしたら、それはあなたが嘘つきだということ」 ニ コ ッ




「だってこれは、あなたの心の中にあったものだから」




黒木「なっ」

雪華綺晶「見覚えがあるでしょう?」 ニ コ 。

黒木「そんな・・・・・・・・・・・」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:31:50.72 ID:yYU9RYnh0



(──────── 、────。)

(・・・────。 ・・・・・・・・・・・)



黒木「・・・・・・・・・・・そんな・・・」グ…

雪華綺晶「これだって、本当だろうと嘘だろうとあなたにとっては無意味。

      あなたはこのふたりと会うたびに、この想いに囚われているんでしょう?」

黒木「そんなこと・・・」

雪華綺晶「なんでこんな綺麗で素敵な子たちが、私と一緒にいてくれるんだろう。
       ・ ・ ・ ・
      私 な ん かとこんなに仲良くしてくれるんだろうって」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

雪華綺晶「ある日突然、嫌われるかもしれない。二度と会えなくなるかもしれない。

      あなたはあの子たちと会うたび別れるたび、そう考えてる─」





「だからあなたは理由が欲しい。 あの子たちがあなたとお付き合いしてくれる理由が。

 あなたのような醜くて薄汚い子と付き合いたくなるような醜く汚い理由・・・」




黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ギュ…

雪華綺晶「それでもあなたはこの子たちに、綺麗で優しいままでいてもらいたい」 ク ス ッ 。



  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「 あ な た の よ う に 醜く汚くなんてあってほしくない」


30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:35:33.87 ID:yYU9RYnh0


ふたりとも、わたしのそばにいてほしい。 とても綺麗で優しいから。

けれど、だから、わたしのそばにいてほしくない。 汚してしまうから、傷つけてしまうから。





それでもやっぱり、そばにいてほしい。 だから汚してしまいたい、傷つけてしまいたい。

わたしと同じように薄汚く傷だらけになってほしい、見るにたえなくなるくらいまで。





でもやっぱりそれもいやだ、きっと後になって後悔する、その身を引き裂きたくなるくらいに。

それでもいやだ、あれもいやだ、これもいやだ。 ああしてもこうしても、どうしてもいやだ。

みんな、ぜんぶ、なにもかも、いやだいやだいやだいやだいやだ・・・・




              メリーゴーラウンド
いじましくもいじらしい回 転 木 馬。 あなたは哀れなカウボーイ。

木馬にしがみついて振り回されて、くるくる回ってどこまでも沈んでいく・・・




 ク ス   ク ス   ク ス   ク ス ・・・・・・・・・・




黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:36:30.59 ID:yYU9RYnh0

黒木「・・・わかったようなことを」ギュウ……

雪華綺晶「あなたはこの回転木馬から降りられない」 フ ッ …




「わたしの力が無くては」 ニ コ リ




黒木「お前のエサになれって言ってるのか」

雪華綺晶「それも知っていますのね」カ ッ !




 パッ   パッ   パ…




黒木「なん・・・ う、うわっ」

雪華綺晶「餌というのは適当ではないですけど」

黒木「なんだこりゃあ・・・」 ゾ ッ




「…     …」「       」「       …」

「 …… 」「     …     」「…      」




黒木(水晶の柱の中に人間が! ここにもあそこにも、見渡す限り全部!)

雪華綺晶「わたしはただ皆様に喜んでもらいたいだけ」


32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:37:13.07 ID:yYU9RYnh0

黒木「喜んで、だって?」

雪華綺晶「ええ」 フ ッ 。



 キラ キラ キラ …



黒木「な、なにこれ・・・ なっ」

雪華綺晶「誰かに喜んでもらえるというのは、誰にとっても力になることでしょう?」



 [ アハハ ] [ フフフフ ] [ カワイイ ステキ ]

 [ イイキブン サイコー ] [ アア アナタ アナタ ]



黒木(水晶の中から声が聞こえる!)

雪華綺晶「私もそう。 喜んでもらえれば嬉しいし、力もわいてくる。

      だから私はこの人達に望むままの喜びを与え、苦しみを取り去った」



[ オカエリナサイ モウ ドコニモ イカナイデ ]

[ カラダガ カルイ  セカイガ マブシイ… ]



黒木「マジかよ・・・」

雪華綺晶「みなさん喜んでくれている。この喜びの声が、私の力になる。

      だからこれは、取り引き。 正当かつ等価の契約」

黒木「取り引き、だって・・・」

雪華綺晶「怖がらないで。 ・・・私はただ、あなたを助けたいだけ」…シュルッ

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:38:17.09 ID:yYU9RYnh0

黒木「・・・・・・・・・・・は?」

雪華綺晶「私と同じように孤独なあなたを、救いたいだけ。だから心を開いて。

      私を受け入れて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」シュルシュルシュル…

黒木「わたしを、救う? お前が? ・・・・・・・・・・・・」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ザ ワ ッ



雪華綺晶「・・・?」ピクリ

黒木「わたしを、助けたい・・・・・・・・?」ザワ ザワ




──────── なあ、こいつ入れてやってもいい?

──────── もう少し友達を作る努力をしなさい!



     ぼっち
黒木「 孤 独 なわたしを、救いたい、だと・・・・・・・・・・・?!」ザワザワザワ

雪華綺晶「な、なに… これ?」




──────── 修学旅行終わっても 黒木のことよろしくね

──────── みんなと仲良くなりたくてこの班に入ったのよ




                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お ま え な ん か が ?」ザワザワザワザワ…!





 ぞ わ っ 。

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:41:01.77 ID:yYU9RYnh0

雪華綺晶「 ! 」ゾクッ
            フリークス
黒木「ふざけんな 化 物 」ぎろり。

雪華綺晶「…なんですって」ピ ク リ 。

黒木「余計なお世話だって言ってんだ」

雪華綺晶「強がらなくていい。あなたは…」

黒木「孤独から救ってもらう必要なんか無えんだよ。 わたしは・・・」ギュッ



                  ぼっち
 ・・・・・・・・わたしはもとから、孤 独なんだからな。




雪華綺晶「もとから?」

黒木「お前に言われたようなことなんて、とっくにわかってる」

雪華綺晶「それなら・・・」

黒木「だからどうした」ぎろっ。




ゆうちゃんに嫌われたって、加藤さんが突然いなくなったって、わたしは何も変わらない───

─────── もとのぼっちにもどるだけ。




雪華綺晶「・・・・・・・!」ピクッ

黒木「だから、おまえなんかいらない」

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:42:48.58 ID:yYU9RYnh0

雪華綺晶「なっ・・・・・・」

黒木「まがいものしか作れないおまえなんか、いらねえんだよ!」 カ ッ !





 ───── ぞ  わ  あ  っ





雪華綺晶「な?! ・・・・・・・・・・くっ!」ギシッ!

黒木「・・・・・・・・・・ここを出せ」ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

雪華綺晶(・・・なんなの、何なの?! この眼、この心…!

      灼けつくような憎しみと怒りが、冷たい底無しの虚無の中に渦巻いて…)

黒木「出せってったら出せ!!」

雪華綺晶(昏い太陽に焼きこがされ、虚空の中で凍てつく月の砂漠のよう…

いや、こんなの、いやっ!!  こんなのまるで・・・・・・・・・!)

黒木「私を・・・・・・・・・・」 ク ワ ッ !





「 私  を  な  め  ん  な  っ  !!!!! 」





─────── め ぐ を 返 し な さ い !!!





  バ  キ  ャ  ッ

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:43:35.53 ID:yYU9RYnh0

黒木「う、わあ?!」

雪華綺晶「・・・くっ」

黒木「わわわわ」



 ・・・ガシャン  ガシャンッ



黒木(・・・ほ、ほんとに出られた)

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木(ハッタリがきくとは思わなかった・・・)

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木(い、いまのうちに、なんとか逃げ・・・)コソコソ

雪華綺晶「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった」…シュル

黒木「へ?」

雪華綺晶「なぜおまえを、お姉さまと取り違えてしまったのか」シュル シュル シュル

黒木「は? ・・・わたしを??」

雪華綺晶「わかった。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」シュルシュルシュルシュル…!





「 許 さ な い っ  ! ! ! ! ! 」





 ぞ  わ  わ  わ  わ  あ  っ

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:45:09.95 ID:yYU9RYnh0

黒木「ひい?!」

雪華綺晶「許せない! 許さないっ!」ぞぞぞぞぞぞ

黒木「ま、待って! 話せば・・・」
                おねえ
雪華綺晶「おまえなんかが黒薔薇さまを騙るなど!!」おぞぞぞぞぞ




 ぞ わ あ あ あ あ っ !





黒木「うひいいいいっ!」





  ビ  シ  ッ  !





雪華綺晶「かはっ?!」

黒木「!?」





「・・・・・・・・・・らしくないわね。 あなたがそんなに取り乱すなんて」





雪華綺晶「あ・・・・・・・・・・」ギシ…

黒木「・・・あ!!」

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:46:08.86 ID:yYU9RYnh0


「スキだらけじゃない。・・・・ふふっ」




雪華綺晶「あ   なた・・・ は・・・」

黒木「う、うそ・・・」




  グ  イ  ッ




「 お 馬 鹿 さ ぁ ん 」




 ギ  リ  ィ  ッ




雪華綺晶「があっ」

???「返してもらうわよ」ギリギリギリ

雪華綺晶「い    いや    いやあ」

???「往生際が悪いわね」グギッ

雪華綺晶「 い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ 」

???「おとなしく出ていけっ!!」グヂャ

雪華綺晶「 が 」バシュッ!





 シ ュ ボ ッ

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:46:53.31 ID:yYU9RYnh0

黒木「あっ」

雪華綺晶「     」ガシャッ





「いや あぁ  ぁあ  ぁぁ ああ ぁぁぁぁぁぁぁぁ」





黒木「な、なんだこれ・・・ なんだあれ?!」

雪華綺晶「      」

黒木(人魂みたいなのが、叫びながらすっとんでいってる!)

雪華綺晶「      」

黒木「そ、それに、これ・・・ あいつの、抜け殻?  これって・・・・・・・・・・」

雪華綺晶?「     」ガシャ…







「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」






 シ ュ ル ル ル ル ル ル ル …

   バ   シ   ュ   ッ

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:48:01.08 ID:yYU9RYnh0

黒木「・・・消えた」


 ハラ ハラ ハラ …


黒木「白い花びらが散ってる…」

雪華綺晶?「    」

黒木「これ、あいつの身体? ・・・これ、これってまさか・・・」





「・・・汚い手で触らないで」





黒木「は?」

???「汚い手で人の身体にベトベト触るなって言ってるの」

黒木「人の身体? じゃあこれ、やっぱり」

???「これって何よ」

黒木「おまえも、やっぱり・・・」

???「おまえって誰に言ってるの。 ・・・・・・・・・・」ムスッ





水銀燈「貴女こそ何なのよ」





黒木「な、何って」

水銀燈「そんなみっともない格好して」ジロッ

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:49:48.40 ID:yYU9RYnh0

黒木「みっともない? ・・・やっぱり、そう?」

水銀燈「髪の毛をけばけばしく染めて、カビ臭い安物の生地を適当に縫い合わせたのを羽織って、

     ガラクタを身につけて棒っきれを持って、それで私になったつもり?」

黒木「・・・・・結構高かったんだけどな」

水銀燈「子供に買える値段で高いとか馬鹿にするのもたいがいになさい。 ・・・この体もそう」

黒木「えっ」

水銀燈「素材も服も安物。 髪もぼさぼさ。 目も描いただけ。 これが私なの?」

黒木「・・・え」

水銀燈「おまけにずいぶん乱暴に扱ってくれちゃって。 顔にまで傷つけちゃって・・・」ギシ ギシ

黒木「お、おまえ、まさか・・・」

水銀燈「だけれど」 キ ッ !




 ジ ャ キ ッ !!




黒木「ひっ?!」

水銀燈「こんど『あの言葉』をこの子に投げかけてみなさい。 細切れにしてバラまいてやる」ジャキ…

黒木「ひっ、ひっ。 ひ・・・」ガタガタガタ

水銀燈「返事なさい」

黒木「は、はひ、はひっ」カクンカクン





────────── これじゃジャンク品だ。

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:50:36.84 ID:yYU9RYnh0

黒木「・・・・・・・・・・その体、やっぱり、私の人形なの?」

水銀燈「そうよ。 貴女が抱いてるのがわたしの本当の身体」

黒木「やっぱり・・・ いったいなんで」

水銀燈「・・・話は後よ、ここを出ないと」チャキッ

黒木「ひっ」

水銀燈「せいっ!」ビュッ!




 ガ シ ャ ン !!




黒木「わあ!」

水銀燈「・・・やっぱり、ここにいた」

黒木「あっ」




めぐ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



黒木「こ、こいつ・・・ お前のマスターの」

水銀燈「『こいつ』じゃないわ」ジャキッ!

黒木「ひい」ドテッ

水銀燈「あとはここを脱出するだけ。 ・・・・・・・・・・」




 キ ラ  キ ラ  キ ラ  キ ラ …

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:51:44.37 ID:yYU9RYnh0

水銀燈「・・・弱ったわね。 どこから逃げたのやら」

黒木「出口、わからないの?」

水銀燈「いちいち癪に障る口をきく子ね。 ・・・急がなくちゃ、めぐがもたない」

めぐ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ヒュー ヒュー

黒木「ほ、他の人は・・・」

水銀燈「放っといたって死にはしないわ」

黒木「・・・・・・・・・・」

水銀燈「じっとしてられない、行くわよ」

黒木「ちょ、ちょっと待って」

水銀燈「何よ」

黒木「なんとか出来るかもしれない、だからみんなを助けて」

水銀燈「はあ?」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ク ン  ク ン  ク ン  ク ン






水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「くん、くん、くん、くん」ガサゴソ

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「くん、くん、くん・・・ こっちだ」

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:53:10.41 ID:yYU9RYnh0

水銀燈「・・・ねえ、あなた、正気?」

黒木「正気だよ」クンクンクン

水銀燈「地べたにはいつくばってなにしてるの?」

黒木「においを嗅いでる」

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「この白薔薇の花びらのにおいを追っかけていけば、もしかしたら」

水銀燈「あのね、ほんとうに時間が無いの」

めぐ「・・・・・・・・・・」ヒュー ヒュー…

黒木「わかってる。 ・・・こっちだ」クンクンクン

水銀燈「ったく・・・」イライラ

黒木「約束守れよ、上手くいったらみんなを助けて」

水銀燈「・・・はあ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ク ン  ク ン  ク ン  ク ン




水銀燈「ねえ、いい加減に・・・」イライライラ

黒木「・・・・・・・・・・あれっ?」

水銀燈「?」

黒木「あれ、あれっ」クンクンクン

水銀燈「どうしたのよ」

黒木「・・・においが消えてる」

水銀燈「なんですって?」

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:54:48.01 ID:yYU9RYnh0

黒木「あれ、あれ、あれっ・・・ どこにも・・・」クンクンクン

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「・・・・・・・・・・ごめん、ダメだった」

水銀燈「上出来よ」ジャキッ!

黒木「ひっ! 許して!!」ガバッ!

水銀燈「そこをどきなさい」

黒木「許して許して・・・」ガタガタガタ

水銀燈「 い い か ら ど け っ !! 」

黒木「ひー」ピュンッ!

水銀燈「はっ!」ビュッ!




  ザ  キ  ュ  ッ




黒木「わ?!」

水銀燈「たいしたものね」

黒木「え?」




 ビ キ   ビ キ ビ キ ッ    ガ  シ  ャ  ン




黒木「わっ!!(空間に穴が!!)」

水銀燈「出口よ。 つかまりなさい」

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:56:13.20 ID:yYU9RYnh0



 ヒ ュ ー ー ー ー ー ー ー ン …




黒木(無数の鏡が重なり合ってる。 まるで、鏡の洞窟)

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木(万華鏡の中を通ってるみたいだ)

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「・・・な、なあ」

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「・・・ちょっと」

水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「おい・・・」

水銀燈「あなたとは口をききたくない」

黒木「はあ?」

水銀燈「借りが無ければこのまま手を放してやりたいくらい」

黒木「・・・なんだよ」ムスッ

水銀燈「こっちのセリフよ。 何なのよ貴女は」

黒木「何って、何も・・・」

水銀燈「そんなふざけた格好で私のつもりになってるのもいまいましい。

     だけどあの子が貴女を私と間違えたっていうのは一体どういうことなのよ」

黒木「・・・わたしにわかるわけないだろ」

水銀燈「ああ、苛々する。 ほんっとうにイヤ。 なんでよりにもよってこんなのと・・・」ブツブツブツ

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:57:06.63 ID:yYU9RYnh0

黒木(・・・そこまでメチャメチャに言わなくっていいだろ)

水銀燈「・・・ほら、出口よ」パッ!

黒木「うわっ?!」




 ギ ュ ル ル ル ル ル ル ル




黒木「うわ?! うわああああああ!!」ギュルルル…

水銀燈「・・・ああうるさい」

黒木「わ、私の人形っ!!」

水銀燈「後で返すわよ、黙って落ちていきなさい」

黒木「おぼえてろ!! この恩知らず!!」ギュルルルルルルル

水銀燈「 な ん で す っ て ? 」ギロリ





 お ぼ え て ろ お お お お お お お お お お お お ・・・・・



 お お お お お ・ ・ ・



 ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ …





水銀燈「・・・ふんっ」ヒュンッ!

めぐ「・・・・・」

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:57:45.71 ID:yYU9RYnh0


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「おい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お・・・・





「・・・おい。 おい・・・」




おぼ・・・ えてろ・・・





智貴「おい、起きろ!」





黒木「んっ」ガバッ

智貴「・・・起きやがったか」

黒木「・・・あ、あれ」

水銀燈ドール「    」

智貴「何してたんだ、お前」

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 16:58:25.03 ID:yYU9RYnh0

黒木「何って・・・ わたし、いったい」

智貴「押し入れの中で気絶してたんだ」

黒木「き、気絶?」

智貴「叩いても何しても起きないからどうしたのかと思ったぜ」

黒木「・・・そ、そうだったのか」

智貴「おまけにそんな恰好して、人形まで出して、何してやがったんだ」

黒木「あ、あ、これ」カーッ///

水銀燈ドール「     」

智貴「・・・まあいい、もう寝てろよ」

黒木「・・・・・あ、こんな時間なんだ」

智貴「あんまり変な事すんなよ」

黒木「・・・ごめん」

智貴「・・・ふん」




 ガ チ ャ リ   バ タ ン




黒木「・・・・・・・・・・」

水銀燈ドール「    」

黒木「やっぱり、夢か」

水銀燈ドール「    」カサッ

黒木「んっ?」

水銀燈ドール「    」カサ…

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:01:08.36 ID:yYU9RYnh0

黒木「なんだこりゃ。 なんか挟まってる」

水銀燈ドール「     」

黒木「紙・・・ 保証書だっけ」カサッ

水銀燈ドール「     」

黒木「なにこれ? 英語・・・じゃないな、ドイツ語? ・・・・」



[ Mercury Lampe ]



黒木「・・・手書き・・・」

水銀燈ドール「      」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・ほ、翻訳。 翻訳っ」ピッ ピピッ

水銀燈ドール「      」

黒木「おい・・・・・・・・・・・・」ゴクリ





[ この子は返すわよ。 もっと大事にしておあげなさい ]

[ 約束通り全員助けてあげた。 これで貸し借り無し、みんな忘れて ]

[ 私も何もかも忘れる、二度と関わり合いにならないことを願ってるわ ]


                                      [ 水銀燈 ]





黒木「・・・あの野郎。 ・・・・・・・・・・・」

水銀燈ドール「     」

黒木「・・・・・・・・・・・ったく」ポリポリ

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:02:34.78 ID:yYU9RYnh0


 … ヒ ュ ー ー ー ー ー ン




水銀燈「・・・・・・・・」ヒューン…

めぐ「・・・・・・・・・・・・・・・」

水銀燈「・・・ああ、疲れた」

めぐ「・・・・・・・・・・・・・・・」

水銀燈「なんでこんな面倒なことしてるんだろう、私。  ・・・・・・・・・・・・・・・」




[ お ぼ え て ろ お お お お お お お ・・・ ]




水銀燈「ふん、憶えていたくもない。 ・・・・・・・」




[ おまえなんかが黒薔薇さまを騙るなど!! ]




水銀燈「・・・どいつもこいつも」

めぐ「・・・・・・・・・・水銀燈」

水銀燈「・・・めぐ。 起きたのね」

めぐ「あの子は?」

水銀燈「いやあねえ、起きてたの?」

めぐ「水晶の柱の中にいたこと、何となく憶えてる」

水銀燈「全部忘れて」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:03:46.33 ID:yYU9RYnh0

めぐ「助けてくれてありがとうね」

水銀燈「世話が焼けるんだから」

めぐ「あの子にもお礼を言いたいな」

水銀燈「あんなの放っておきなさい」

めぐ「・・・・・・・・・・・・・・・」

水銀燈「・・・ああ、もう。 ・・・・」




 … ヒ ュ ー ー ー ー ー ン




水銀燈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ムスッ

めぐ「さっきからずいぶんイライラしてるんだね」ニヤニヤ

水銀燈「面倒ごとに巻きこまれたからよ」

めぐ「あの子に似てるって言われたの、そんなに嫌?」

水銀燈「黙りなさい」…ムスッ

めぐ「よく似てるじゃない、そっくりでしょ」

水銀燈「黙れと言ったら・・・」

めぐ「わたしにもそっくり」

水銀燈「えっ?」

めぐ「あの子はそっくりよ、わたしたちと。 ・・・そうでしょう?」クスクス

水銀燈「ったく、もう。 どいつもこいつも・・・・・・・・・・・・・・・・・」イライラ




  ヒ ュ ー ー ー ー ー ン …

53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:04:23.40 ID:yYU9RYnh0

【一週間後 黒木家】




… ピン ポーン




黒木「はーい」ガチャッ

成瀬「お待たせー」

加藤「ごめんね、待った?」

黒木「待ってない待ってない、どうぞどうぞどうぞ」イソイソ





 カチャ カチャ  カタン





黒木「ささ、飲んで飲んで飲んで」イソイソ

加藤「いただきます」コクン

成瀬「冷たーい」コク コク

黒木(・・・結局合宿終わっても勉強会か)ソワソワ

黒木(・・・あー大変だ、高三の夏って。 遊びたいのに遊べない・・・)ウキウキ

成瀬「あれっ」

加藤「あっ」





水銀燈ドール「     」

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:05:14.87 ID:yYU9RYnh0

成瀬「もこっち、その子・・・」

黒木「・・・あ、ひょっこり出てきた。 捨てたと思ってたけど」

加藤「・・・・・可愛いお人形さんだね」ニ コ ッ

黒木「や、安物だけどね」テレテレ

成瀬「でもすごく綺麗だよ、新品みたい」

黒木「あ、治してもらったから」

成瀬「そうなの?」

黒木「うん。 買ってから手入れとか全然してなかったし」

成瀬「そうなんだ。 ・・・ふふっ」ニコニコ

加藤「素敵、可愛くて格好良くて。 黒木さんみたい」

黒木「そんな、おだてないで・・・」テレテレテレ

加藤「おだててないよ。ね、写真撮っていい?」

黒木「どうぞどうぞどうぞ」

加藤「ありがとう。 じゃあ黒木さん、その子抱いてくれる?」

黒木「え?!」

加藤「・・・ダメ?」

黒木「・・・ちょ、ちょっと恥ずかしい・・・」

成瀬「じゃあわたしが抱いていい?」

黒木「う、うん」

加藤「じゃ、みんなで抱こう?」

黒木「え」

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:05:44.38 ID:yYU9RYnh0

加藤「並んで、うん、そう」

成瀬「ありがとう、明日香ちゃん」

黒木「 」カチン コチン

水銀燈ドール「    」

加藤「いくよ。 ・・・よっと」ピッ!

成瀬「明日香ちゃん、早く早く」

加藤「うん、黒木さんちょっとごめんね、よいしょ」ト ス ン!

黒木「 だ だいじょぶ 」カチン コチン

水銀燈ドール「      」



 カ シ ャ ッ !



加藤「ふふ、撮れた。 どうかなー・・・」

成瀬「わあ、可愛い。 ね、もこっち、もう一枚撮ろ?」

黒木「う、うん。 ・・・・・・・・・・・・・・・」




 ─────── なんでこんな綺麗で素敵な子たちが、私と一緒にいてくれるんだろう。
            ・ ・ ・ ・
 ─────── 私 な ん かとこんなに仲良くしてくれるんだろう・・・・・・・・・・・・・・・




黒木「・・・・・・・・・・・・・・・」

56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:07:05.20 ID:yYU9RYnh0

加藤「黒木さん?」

成瀬「もこっち?」

黒木「あ、うん。 撮ろう撮ろう。 ・・・・・・・・・・・・・・・ねえ」

成瀬「なあに?」

黒木「ふたりは・・・・・」ギュッ

加藤「・・・黒木さん?」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・・」




─────── ある日突然、嫌われるかもしれない。二度と会えなくなるかもしれない。

─────── あなたはあの子たちと会うたび別れるたび、そう考えてる・・・




成瀬「・・・もこっち?」

加藤「・・・・・・・・・・」

黒木「あーーー・・・ その、次は、ひとりずつ… 撮って、その…」モジモジ

加藤「・・・うん、いいね」

黒木「じゃ、ごめん。 まずわたしからいいかな?」

成瀬「いいよー。 じゃ、私撮るね」

黒木「ありがと。 ・・・・・」




 別にいいさ。 嫌われたって、二度と会えなくなったって。

 もとのぼっちにもどるだけ。 何も怖くなんかない。

57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/05/15(日) 17:10:44.29 ID:yYU9RYnh0


…今はたまたま、こうして一緒になれただけ。

 明日になったらどうなってるかなんてわかりゃしない。



 だから、今を楽しむんだ。 明日のことなんか考えるな。

 誰もいなくなったって、何もかも失くしてしまったって。

 ……この、いまこのときの思い出だけはわたしのもんだ。




黒木「………」ギュッ

水銀燈ドール「   」ギシッ

加藤「…?」




 わたしのもんだ。わたしだけのものだ。

 後になって後悔するような、思い出すだけで死にたくなるようなものでも。

 わたしだけの、かけがえのない思い出なんだ……




黒木「(…お前なんかに渡すもんか)」

成瀬「はい、チーズ」

黒木「あっ、ち、ちーず」カチンコチン

加藤「…ふふふふっ」

水銀燈ドール「       」





水銀燈ドール「       …」…ギシッ





───────ああ、まったく。  世話が焼けるわね…





【おしまい】

引用元: 【わたモテ×ローゼン】黒木「私は水銀燈。闇を(ry」水銀燈「何なのよ貴女は」