─第4話─


ラウラ「─ッ!!がはッ!!」ドサッ

ラウラ(わ…私は……悪い夢でも見ているのか…?)

ラウラ(あの取り巻き二人に制裁を与えていたら……矢車の奴が飛び込んで来て…)

ラウラ(一瞬…ほんの一瞬のうちに、私は……)

矢車「………」

ラウラ(矢車…想……貴様、一体何を…!?)

矢車「………」ギッ

ラウラ「うっ…!」ゾワッ

ラウラ(これは…奴の…殺気…?)

ラウラ(……殺される…のか…私が?)

ラウラ(な…何故だ……
    私が…こんな……こんなッ!)


矢車「……消えろ、ラウラ…」カシャ


──RIDER JUMP!──



372: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/06(金) 00:02:01.98 ID:MHjpVuNDO

~数時間前 アリーナにて~


千冬「これより、IS実機を用いた実習訓練を行う」

矢車「………」ヒリヒリ…

千冬「訓練を始める前に、矢車」

矢車「あっ?」

千冬「お前には、自分の専用機ではなく訓練機を用いて授業を受けてもらう」

矢車「何…?」

千冬「お前のキックホッパーは良くも悪くも特殊なISだ。
   カリキュラムに合わせて授業を進める為にも、
   お前には、従来の訓練機を使って授業を受けてもらう必要がある」

矢車「……成る程、な…」

千冬「分かったのなら、とっとと更衣室に行って専用のスーツに着替えてこい」

矢車「……はぁー…面倒な」スタスタ

───

ザッザッザッ…

矢車(ISスーツ着用)「……着替えて来たぞ、担任」

生徒「ちょッ!矢車くん筋肉凄ッ!!」
生徒「いつもはあのコートに隠れてて分かりづらかったけど…」
生徒「マッチョ!ムッキムキンニク!!」


千冬「よし。早速だが矢車、そこにある待機中の訓練機を起動させてみせろ」

矢車「……はぁー…」スタスタ

箒「………」

矢車「………」スッ…

キュイーン

矢車(IS装備)「これで良いのか?担任」

千冬「……あぁ、上出来だ」

箒「……ちゃんと、起動出来たか…」

矢車「あっ?」

箒「あっ、いや…お前のキックホッパーは、通常のISとは全く異なる外見をしているからな。
  何というか…今になって始めて、お前がISを動かせるという事実が実感出来たというか…」

矢車「………」

セシリア「キックホッパーとは又違った、凛々しい御姿…
     これはこれで素敵ですわ!お兄様!」

セシリア(……何よりも、その逞しいお兄様の肉体が露になるのが…
     全く…素晴らしいですわ…)ジュルリ…

シャル「……セシリア、目が怖いよ…」

矢車「………」


381: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/07(土) 22:31:30.40 ID:X8CK0twDO

~昼休み~

鈴「へぇ~。まさかアンタが地獄兄妹の仲間入りをするだなんてねぇ…」ズルズルズル

セシリア「人は見かけによらずとは、正にこの事ですわ」ズルズルズル

シャル「えへへ…」ズルズルズル

箒「………」

鈴「でも…アンタみたいな明るい奴でも入れるって事は、地獄兄妹の入団基準って案外緩いんじゃないの?」

矢車「見くびるな。シャルルの抱えている闇は、お前達二人が抱えている闇とは比べ物にならない程に、深い…」

鈴「私達のよりも凄い闇って…マジ?」チラッ

シャル「あ、あはは…」

鈴「……そんな風には全然見えないんだけど」

矢車「なら、よく目を凝らして覗いてみろ。コイツの瞳の奥を…」

シャル「えっ!?」

鈴「ん~どれどれ…」ジィー

セシリア「失礼しますわ…」ジィー

シャル「あ…うん」

シャル(何かもう…慣れたな、コレ)


383: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/08(日) 02:22:10.59 ID:Wg/Q4zVDO

矢車「……どうだ?見えたか?」

鈴「ふ~ん、成る程…
  …って、分かる訳ないでしょーが!!」

矢車「………」

セシリア「ふ、フンッ!やはり貴女はその程度…」

鈴「何よセシリア!アンタには見えたって言うの!?」

セシリア「も…勿論見えましたわッ!彼の心の奥底に眠る暗闇が、この目でハッキリと!!」

鈴「へぇ~。じゃあシャルルの抱えている闇って、一体どんな感じなのよ?言ってみなさいよ」

セシリア「えッ!ええっと…それは…」チラッ

シャル「んっ?」

セシリア「……シャ、シャルルさんの瞳からは…
     グランドで…ダークネスで…それでいて、エクストリームな闇が見えますわッ!」

シャル「えっ?」

矢車「……全然違う」

セシリア「えぇッ!?」

鈴「なーんだ、結局アンタにも見えてなかったんじゃない」

セシリア「お…お黙りなさい!
     い、今のはちょっと…シャルルさんの闇の感覚を、読み間違えただけですわ…」

鈴「ふーん…どーだか」

セシリア「なッ!わたくしを疑っているのですか鈴さん!?
     いいですか!?わたくしは地獄兄妹におけるナンバー2!長女なのですよ!!」

鈴「いつからアンタがナンバー2になったのよ!
  この知ったかニワカ闇ッ!」

セシリア「に…ニワカ闇ですってェーッ!!」ムッキー!

ガヤガヤガヤ…


箒「………」

箒(楽しそうだな、皆…)

388: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/09(月) 03:12:17.77 ID:/i5dt4pDO

箒(……結局、想のヤツをクラス代表に仕立て上げたところで、変わる事など何もなかった…
  いや…想に感化された連中がいる分、状況はむしろ悪化したと言える…)

箒(……思えばコイツは昔っから、周りへの影響力が人一倍強い奴だったな…)

箒(皆をまとめ上げるのが上手くて、それでいて面倒見も良くて、リーダー気質で…
  そんな想だったからこそ、私は……)

箒(……だが…)チラッ

矢車「………」

箒(今の想は、違う…。
  あの頃のアイツの面影は、もう完全に消え失せている…)

箒(やはり…無理なのか?陰鬱で根暗な今の想を、私のよく知るあの矢車想に戻すのは…)


箒「……何でなんだ」


箒(私はただ、あの明るかった頃のアイツに戻って欲しいだけなのに…)


405: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/15(日) 03:09:42.69 ID:3hQTtM8DO

鈴「どうしたのよ箒?さっきから黙り決め込んで、ムスッとしちゃってさ」

箒「別に…何でもない」モグモグ

鈴「……もしかしてアンタ、拗ねてんの?」

箒「何?」

セシリア「まさか箒さん……自分一人だけが地獄兄妹の一員でないという事に、疎外感を感じて…?」

箒「そ、そんなんじゃない!私はただ…」

シャル「気にする事ないよ箒。
    地獄兄妹の一員じゃなくたって、箒が僕達の友達である事に何ら変わりはないんだから」

鈴「そうそう。アンタはこの面子の中での貴重な常識人なんだから
  むしろ、居てくれなきゃ困るくらいよ」

箒「そ…そうか」

セシリア「貴重な常識人…。まるでわたくし達の中にはマトモな人間が全く居ないと、
     そう言いたげな言い種ですわね…」

鈴「……アンタ、地獄兄妹なんてこっ恥ずかしい事やってる私らが、
  マトモな連中だとでも思ってんの?」

セシリア「えッ!わたくし達がマトモじゃないですって!?」

鈴「……今まで自覚なかったの?アンタが一番アレだってのに」

セシリア「なッ!何を仰っているのですか鈴さん!?
     もう!お兄様もこの人に何とか言ってあげて下さいな!」

矢車「……まぁ確かに、マトモではないよな…俺達」

セシリア「そ…そんなぁ…。お兄様まで…」

箒「………」


413: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/24(火) 01:52:27.80 ID:zZz0QEADO

~職員室~

山田「け、警視総監がこの学園にですか!?」

千冬「あぁ。今回行われる学年別個人トーナメントの視察に訪れるらしい」

山田「……でも、何でまた日本警察のトップである人が、IS学園で行われる大会の視察を…?」

千冬「……何でもその警視総監、ISに大変な関心…もとい興味を持っているらしくてな」

千冬「今回の件の発端も、警視総監自らの個人的な動機が原因らしい」

山田「こ…個人的な動機、ですか?」

千冬「……ニワカには信じられない話だが、そういう事だ」

山田「そ…そうなんですか…」

千冬「……全く、日本警察の頭ともあろう人間が…
   一学園の校内で行われる大会を観るためだけに、遠路はるばるわざわざ訪れに来るなど…
   正直、暇を持て余しているとしか思えんな…」

山田「は、はぁ…」

千冬(全く、一体何を考えているのだ?この警視総監…
   加賀美陸という人物は…)



428: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/30(月) 01:37:03.05 ID:wcex2XADO

~放課後 校内のとある廊下にて~


シャル「あっ、箒!」トテトテトテ

箒「ん?シャルルか。
  ……お前、今朝着て来た地獄スタイルの服装はどうした?」

シャル「えへへ…織斑先生に没収されちゃった」

箒「……そうか、やはりな…」

シャル「箒はこれから特訓?」

箒「あぁ。学年別個人トーナメントまであまり日がないからな。
  ……想の奴は?」

シャル「あぁ。お兄ちゃんなら、先に部屋に帰ってるって」

箒「……そうか」

箒(お兄ちゃん、か…)

箒「……なぁ、シャルル…」

シャル「んっ?」

箒「人の良いお前の事だ。
  無理をしてまで、アイツの起こす奇行にわざわざ付き合ってやっているのは分かるが…
  アイツのバカげたおふざけに、お前が一々付き合ってやる必要は無いんだぞ?」

シャル「えっ…?」

箒「そう、お前は無理をしている筈だ。
  でなければ…お前のような真面目な奴が、今朝のようなふざけた真似をする訳が…」



429: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/30(月) 03:20:42.27 ID:wcex2XADO

シャル「……ふざけてなんか、いないよ…」

箒「……何?」

シャル「確かに…今の箒からしてみれば、
    想の…お兄ちゃんのやっている事は、単なるバカげた行動にしか見えないかもしれない…」

シャル「けれどッ!お兄ちゃん自身はふざけているつもりなんて決して無いんだ!
    お兄ちゃんはいつだって本気で、自分の居るべき居場所…地獄について考えているんだ!」

シャル「……そう、だからこそお兄ちゃんは
    僕が抱えている心の闇にだって、真正面から向き合ってくれたんだ…」

箒「……お前の、心の闇だと?」

シャル「……詳しい事は、まだ何も言えないけれど…」


───

矢車『俺も…お前と同じ地獄を、共に味わう…
   お前の受けた苦しみも、痛みも、悲しみも…俺が一緒になって背負ってやる』

矢車『だから…お前はもう、独りじゃない』

───


シャル「でも、今僕がこうしてここに居られるのは、全てはお兄ちゃんのお陰なんだ。
    それだけは、間違いなく言える事だよ」



431: ◆4cmyCM./Qw 2014/06/30(月) 10:52:48.54 ID:wcex2XADO

箒「……シャルル、お前…」

シャル「……ごめんね、箒。僕の心の闇だとか何だとか…
    そんな事いきなり言われても、訳分かんないよね…」

箒「………」

シャル「でも…いつかきっと、箒にも話をするから…
    僕の過去についても、僕が抱える心の闇についても…
    全て、何もかも…」

シャル「そして…そんな僕を心の底から心配してくれた、お兄ちゃんの事についても…」

シャル「その話を聞いてくれればきっと、箒だって分かってくれる筈だから。
    お兄ちゃんの…地獄兄妹のやっている事は、決してバカげた事なんかじゃないって」

箒「……そうか」

シャル「………」

箒「それなら、良いんだがな……」クルッ

スタスタ…

シャル「箒……」


箒(私には理解出来ないんだ…。今のアイツが、一体何を考えているのか…)

箒(なまじ…あの優しかった頃の想を知っているからこそ、それは尚更…)



439: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/05(土) 02:00:40.37 ID:K/J7QSPDO

~アリーナ~

鈴「おっ、どうやら私が一番乗りのようね」スタスタ

鈴(ラッキー。あの小うるさいセシリアが居ないのは有り難…)

セシリア「残念でしたわねぇッ!!」ズイッ

鈴「うわッ!ビックリした!!」

セシリア「一足遅かったようですわね、鈴さん!
     アリーナへの一番乗りはこのわたくし!セシリア・オルコットですわッ!」バーン!

鈴「……はいはい分かった。分かったから…少し、黙っててくれる?頼むから…」

セシリア「なッ!何ですかそのあからさまに不快感を露にした態度はッ!?
     それが目上の者に対して向ける態度ですかッ!?」

鈴「だぁーれぇーがぁー目上の者ですってェーッ!?」

セシリア「誰って…このわたくしに決まってるじゃありませんかッ!!」

鈴「ハァー!?まーた性懲りもなく偉そーな事言ってッ!!
  アンタ、さっきシャルルの闇を見抜けなかったばっかりな癖に!よくもまぁそんな偉そうな事が言えるわねッ!!」

セシリア「あ…あの時はッ!たまたま、調子が悪かっただけですわ……」

鈴「ほーらッ!まーたそうやって言い訳する!
  ハナっから何も見えてないんだから、調子が悪いも何も無いんでしょーがッ!」

セシリア「グッ!そ…そう言う鈴さんだって、人の事をとやかく言える立場ですか!?」

鈴「はぁ?私はアンタみたいに知ったかぶりなんかしないわよ?」

セシリア「そう言う事を言っているのではありません!もっと根本的な問題の話をしているのですッ!
     ズバリ聞きますが鈴さん!あなた、本当に心の内に闇を抱えているのですか!?」


442: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/06(日) 22:20:19.29 ID:50HDIStDO

鈴「えっ?」

セシリア「話によれば鈴さんッ!あなたはお兄様との勝負に負けたその罰ゲームとして、地獄兄妹に入団したというではありませんか!」

鈴「それは…そうだけど…」

セシリア「そんな成り行きで地獄兄妹に入団したあなたが、それ相応の闇を持っているだなんて…
     わたくし、とてもそうだとは思えませんわッ!」

鈴「ば…馬鹿にしないでよッ!私だって…心の中に闇の一つや二つ抱えているわよッ!」

セシリア「ほぉ~…なら、聞かせてみて下さいな。
     あなたの抱えている“心の闇”とやらをッ!」


鈴「……えーっと…。親が最近、離婚した」

セシリア「……そ、それはお気の毒に…」

鈴「久しぶりに会った幼なじみが、何か別人みたいにグレてた」

セシリア「………」

鈴「ひとりだけクラスが違うから出番に恵まれな…」

セシリア「わッ!分かりました!!分かりましたからッ!!」



445: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/06(日) 23:31:08.76 ID:50HDIStDO

鈴「どう?これでもまだ文句言うつもり?」

セシリア「……ま、まぁ…。あなたの心の中にも、それ相応の闇は存在するようですわね…
     まぁ…良いでしょう。地獄兄妹のメンバーの中でも……補欠としてならッ!
     一応、認めてあげてもよろしいですわ」フフン

鈴「ハァーッ!補欠ゥ!?」

セシリア「不服なのですか?良いじゃないですか。補欠も立派な地獄兄妹の一員ですわよ」

鈴「あーもうッ!またそうやって上から目線で物を言う!」

鈴「アンタのそのエゴイストでいつも上から目線で細かいことにいちいちうるさい
  空気の読めない朴念仁な性格、どうにかならない訳ッ!?」

セシリア「なッ!わたくしがエゴイストでいつも上から目線で細かいことにいちいちうるさい空気の読めない朴念仁ですってェーッ!」

鈴「実際そうでしょーがッ!いつもいつも態度ばっかデカくてッ!偉そーに振る舞ってッ!」

セシリア「何をッ!わたくしが偉そうな態度を振る舞う事の、一体何が悪いと言うのですか!?」

鈴「ハァッ!?」

セシリア「地獄兄妹の実質的なナンバー2、長女たるこのわたくしが!
    補欠の分際たるあなたに上から目線で物事を言うのは、むしろ当然の事ですわッ!!」

鈴「ハァーッ!何言ってんのよッ!?アンタ、地獄兄妹としての実力はからっきしの癖にッ!
  アンタなんかよりも想との付き合いがずっと長い私の方が、地獄兄妹のナンバー2によっぽど相応しいわよッ!」

セシリア「付き合いの長さ…?ハンッ!そんなもの関係ありませんわッ!
     地獄兄妹のナンバー2はこのわたくし!セシリア・オルコットを置いて他なりませんッ!
     それはもはや、変えようのない事実なのですッ!」

鈴「……へぇー、そこまで言い張る…?
  なら…どっちが真に地獄兄妹の二番手に相応しいのか、今ここで決めようじゃないのッ!」キュイーン

(鈴、IS展開)

セシリア「決闘ですか…良いでしょうッ!受けて立ちますわ!」キュイーン

(セシリア、IS展開)

鈴「でやぁぁぁッ!!」

セシリア「ハアァァァッ!!」

449: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/07(月) 02:25:56.70 ID:1oNUROSDO

ドゴォーンッ!

鈴「えッ!?」

セシリア「ほ、砲撃ッ!?何処から!?」クルッ


ラウラ(IS展開中)「………」


セシリア「……ラウラ・ボーデヴィッヒ…。あなたでしたか…」

鈴「何よ、随分と物騒な挨拶の仕方じゃない。
  アンタも私達の仲間に入りたいっていうの?」

ラウラ「……仲間に、だと?フッ…
    お前達のような虫けら共と馴れ合うなど、考えただけでも虫酸が走るわ…」

鈴「……安心して、今のは冗談だから。
  アンタみたいないけ好かない奴が、地獄兄妹の仲間入りをするだなんて…
  そんなの、こっちから願い下げよ」

セシリア「今回ばかりは、鈴さんの意見に同感ですわ」

ラウラ「……地獄兄妹、か…。狂人、矢車想に感化された、愚か者共の集まり…」

セシリア「……何ですって?」ピクッ

ラウラ「全く、哀れな連中だ…。揃いも揃ってあんなクズに惹かれるとは…」

鈴「……想が、クズですって?」ピクッ

ラウラ「あぁ、何度でも言ってやるさ。
    矢車想…奴は生きるに値しないこの世のクズ……害を振り撒く毒虫だ」

鈴「─ッ!!アンタに想の何が分かるって言うのよッ!」

セシリア「今、お兄様を笑いましたわねぇーッ!!」

ラウラ「………」

鈴「待ってなさいよッ!その減らず口、二度と叩けないようにしてやるッ!」

セシリア「鈴さんッ!ここは一先ず協力といきましょう!」

鈴「えぇッ!二人であのジャガイモ農家をブッ飛ばすわよッ!」グワッ

セシリア「だぁッ!」グワッ

ラウラ「フッ……」



453: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/07(月) 22:56:41.19 ID:1oNUROSDO


~アリーナ客席~

ガヤガヤ…

箒(何の騒ぎだ?アリーナの前に人だかりが…)

生徒「第3アリーナで決闘だって!?」
生徒「えぇ!何でも、中国の代表候補生とイギリスの代表候補生が、二人がかりでドイツの専用機持ちの子とやり合ってるらしいよ!」

ガヤガヤ…


シャル「えっ!?」

箒「何ッ?」

箒(中国の代表候補生とイギリスの代表候補生…鈴とセシリアの事か!?
  だとすると、相手のドイツの専用機持ちと言うのは、まさか…)

シャル「あっ!箒ッ!あれ!!」


454: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/07(月) 23:39:52.72 ID:1oNUROSDO

───

鈴「こンのッ!」バシュバシュバシュ

ラウラ「フッ……」スッ

バシバシィ…

鈴「なッ!私の龍咆がッ!?」

セシリア「受け止められた!?」


箒「な…何だあれは!?龍咆の動きを止めた!?」

シャル「……あれはもしかして…AIC!?」

箒「AIC…?」

シャル「うん…。アクティブ・イナーシャル・キャンセラー、略してAIC。
    有効範囲に入った対象を任意で停止させる事の出来る、一種の慣性停止能力を用いた兵器だよ」

箒「対象を任意で停止させるだと…?そんな代物が…」


455: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/07(月) 23:43:40.26 ID:1oNUROSDO

鈴「あーもうッ!鬱陶しいわねぇ!ソレッ!」バシュバシュバシュ

鈴(何とか…隙を作らないとッ!)

ラウラ「無駄だ…」スッ

バシバシィ…

鈴「チィッ!」

ラウラ「何て無様な射撃だ…。私が直々に、手本を見せてやるッ!」ガチャ

ズドン!ズドンッ!

鈴「なッ!」

鈴(マズいッ!直撃コースッ!?)

ドゴアッ!ドゴアッ!

鈴「わぁッ!」

セシリア「鈴さんッ!」

ラウラ「人の事を心配している暇が…」ヒュンヒュンヒュン

セシリア(これは…ワイヤー!?いつの間にッ!?)

ラウラ「あると思うなッ!」ヒュンッ!

グルグルグル

ガシィッ!

セシリア「しまったッ!絡まっ…」

ラウラ「はあッ!」ブンッ!

セシリア「きゃッ!」ブワッ

ズドーンッ!


箒「なッ!セシリアが地面に叩き落とされたッ!」

箒(鈴とセシリアの二人がかりだと言うのに…まるで一方的じゃないかッ!)

シャル「ほ…箒ッ!僕、お兄ちゃん呼んでくるよッ!」ダッ

箒「あッ!おいシャルル!」

シャル(お兄ちゃんなら…お兄ちゃんならきっと、何とかしてくれる筈ッ!)

ダッダッダッダッダッ…


458: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/08(火) 00:30:49.27 ID:zsc7lCfDO

ラウラ「フン…。イギリスと中国の第3世代機も、所詮はこの程度か…」

鈴「……な…舐めんじゃないわよッ!」

セシリア「まだまだ…勝負はこれからですわッ!」

ラウラ「ほぉ…。まだ立ち上がってみせるか。散々痛め付けてやったというのに…
    矢車の奴を詰られた事が、よっぽど気に食わなかったようだな…」

鈴「少しは黙れってのッ!」グワッ

セシリア「はぁッ!」グワッ

ラウラ「性懲りもなくまだ向かって来るか…
    良いだろう、完膚無きまでに叩き潰してやるッ!」



460: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/08(火) 01:51:56.98 ID:zsc7lCfDO

───

ダッダッダッダッダッ…

シャル「ハァ…ッ!ハァ…ッ!ハァ…ッ!」ダッダッダッ


~矢車さんの部屋~

シャル「お兄ちゃんッ!!」バターン!

矢車「……どうしたシャルロット?そんなに慌てて…」

シャル(あっ、ちゃんとシャルロットって呼んでくれた……。じゃなくてッ!)

シャル「た…大変なんだ……。セシリアと、鈴が…!」ゼェ…ゼェ…

矢車「何…?」


───


シャル「箒ーッ!お兄ちゃん連れて来たよーッ!」ダッダッダッ

矢車「………」スタスタスタ…

箒「想ッ!シャルル!」

シャル「箒、状況は!?」

箒「あぁ、最悪だッ!あれを見ろッ!」

シャル「えっ…?」

矢車「あっ?」クルッ



462: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/08(火) 02:11:56.24 ID:zsc7lCfDO


鈴「がッ!」ドサッ

セシリア「ぐッ!」ドサッ

ラウラ「どうした?まだシールド・エネルギーは残っている筈だぞ?」ガシッ

セシリア「うぐッ!」グイッ
セシリア(く…首が…)

ググググ…

鈴「せ…セシリ…」

ラウラ「フン…」ゲシッ

鈴「がッ!」

ラウラ「最もそれも…大して残ってはいないようだがな」グググ…

鈴「ぐぅ…ッ!」

セシリア「鈴…さん…」

ラウラ「まぁ…私も鬼ではない。
    大人しく私の出す条件を呑むと言うのであれば…
    貴様らを、この苦痛から解放してやっても良い」

鈴「何…を…?」

ラウラ「何、簡単な話だ……
    地獄兄妹の一味を辞め、今後一切、矢車の奴に関わらないと誓え」

鈴「は…ハァー…?だ…誰が…アンタの言う事なんか……」

セシリア「そう…ですわ……
    あなたは…地獄兄妹の……お兄様と私達との絆を…些か侮り過ぎですわ…」

ラウラ「……そうか、よく分かった…
    お前達、よっぽど痛い目に合いたいようだなッ!」ゲシィッ!

鈴「うぐッ!」



464: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/08(火) 02:35:01.81 ID:zsc7lCfDO

シャル「マズいよッ!もうシールド・エネルギーは少しも残っていない筈なのに!」

箒「これ以上は危険だ!最悪の場合…あの二人の命に関わるぞッ!」

矢車「……命に、関わる?」ピクッ

シャル「お兄ちゃんお願いッ!鈴とセシリアを助け…」

矢車「………」

シャル「……お兄ちゃん?」


───


矢車(……死ぬ?)


─『俺は…兄貴も知らない暗闇を知ってしまった…』─


矢車(俺の、相棒が…?)


─『連れて行って欲しかったけどさ…。俺はもう、一生この暗闇から出れないよ……』─


矢車(また…?)



─『サヨナラだ…兄貴』─



───


鈴「がは…ッ!」ドサッ

セシリア「グッ!」ドサッ

ラウラ(……この、虫けら風情が…)

ラウラ「フフッ…」


466: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/08(火) 03:17:54.01 ID:zsc7lCfDO


プツーン…


矢車「笑うなァァァァァアアアッ!!!」


箒「なッ!?」ビクッ!

シャル「ひッ!?」ビクッ!


カシャ

──HENSHIN──

矢車「らァッ!!」ダッ

バリーン!


箒「なッ!想ッ!」

箒(アリーナの遮断シールドを突き破って、無理矢理中に突入しただと!?)


───

ラウラ「うッ!」ゾワッ

ラウラ(何だッ!?この異様な感覚はッ!?)クルッ

ビューンッ!

ラウラ(なッ!何かがこっちに突っ込んで来るッ!?)

ラウラ「クッ!」バッ

ドゴアァッ!

ラウラ「………」スタッ

ラウラ(咄嗟に避けてはみせたが、何だアレは…?場外からの爆撃か?)

モクモクモク…

ラウラ(チッ、粉塵が邪魔で判別が出来ん…)

モク…モク…

ラウラ「─ッ!」ピクッ

ラウラ(いや違うッ!あれは爆撃などではないッ!あれはッ!)



矢車「………」

──CHANGE! KICK HOPPER!──



ラウラ「矢車…想ッ!」ギリッ

鈴「そ……想……」ガクッ

セシリア「お……兄さ……」ガクッ

矢車「………」

ラウラ「……フン、親玉の御出座しと言う訳か?
    かわいい妹達が痛ぶられるのを見て、居ても立っても居られなくなったという…」

矢車「黙れ」カチャ


── CLOCK UP ──



472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/08(火) 16:50:59.09 ID:gJzcclpE0


─第4話─


ラウラ「─ッ!!がはッ!!」ドサッ

ラウラ(わ…私は……悪い夢でも見ているのか…?)

ラウラ(あの取り巻き二人に制裁を与えていたら……矢車の奴が飛び込んで来て…)

ラウラ(一瞬…ほんの一瞬のうちに、私は……)

矢車「………」

ラウラ(矢車…想……貴様、一体何を…!?)

矢車「………」ギッ

ラウラ「うっ…!」ゾワッ

ラウラ(これは…奴の…殺気…?)

ラウラ(……殺される…のか…私が?)

ラウラ(な…何故だ……
    私が…こんな……こんなッ!)


矢車「……消えろ、ラウラ…」カシャ


──RIDER JUMP!──


484: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/09(水) 00:02:51.18 ID:+XO2n3aDO


── CLOCK OVER ──


バチ!バチバチバチバチィーッ!

ラウラ「がァッ!!?」ブワッ

ドグワシャアー!

矢車「………」

(ラウラ、IS強制解除)



シャル「えっ…?えッ!?」

箒「な…何が起こったんだッ!?
  一瞬の内に…ラウラの奴が吹き飛ばされて……はッ!」

箒(この状況は、あの時の……
  鈴を狙った未確認機が突然爆発した、あの時の状況と…同じ!?)


ラウラ「─ッ!!がはッ!!」ドサッ

矢車「………」


シャル「……何だか良く分からないけど…
    ISが強制解除されて、ラウラはもう戦えないし…
    とりあえずは、これで一安心だね!」

箒「……おい、シャルル。想の奴、何か様子が変だぞ…?」

シャル「えっ…?」クルッ



矢車「……消えろ、ラウラ…」カシャ


──RIDER JUMP!──


シャル「えッ!!?」

箒「なッ!?何をするつもりだッ!?」

箒(まさかアイツ…生身の状態のラウラに、ライダーキックを食らわすつもりかッ!?)

箒「バカな真似はよせ!想ッ!相手はISが解除された生身の人間なんだぞッ!」


矢車「………」ググッ…

ピコ…ピコ…ピコ


箒「あのバカッ!完全に頭に血が上ってるッ!!」

シャル「お兄ちゃん止めてッ!そんな事したらラウラが…ラウラが死んじゃうよ!」


ラウラ「うぐッ!」ズキッ

ラウラ(身体が…痛んで……動けな…)

矢車「………」

ピコ…ピコ…ピコ


シャル「お兄ちゃん駄目ッ!!」

箒「止めろッ!想ーッ!!」


495: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/10(木) 00:36:38.37 ID:8L4bi0KDO

ガシッ

千冬(IS部分展開)「………」グッ

矢車「……担任…」

ピコ…ピコ…ピコ

千冬「その辺にしておけ。殺す気か?」

矢車「………」

ラウラ(……教…官…)バタッ

矢車「……はぁー…」カシャ

ブォーン…

(矢車、変身解除)

千冬「矢車、これは一体どういう事だ?お前達とラウラとの間に何が…」

矢車「………」クルッ

スタスタスタ…

千冬「………」

千冬(……まぁ、コイツに聞くだけ無駄か…)



496: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/10(木) 00:55:32.90 ID:8L4bi0KDO

スタスタ

矢車「………」ピタッ

鈴「…そ…想……」

セシリア「…お兄…さま……」

矢車「……鈴、セシリア…」

鈴「……み…みっともないとこ、見せちゃったわね……」

矢車「………」

セシリア「ふ…二人がかりでこの有り様とは……面目ありません…。
     わたくし達……地獄兄妹のいい面汚しですわ……」

矢車「……はぁー…」

鈴「………」

セシリア「………」

矢車「相変わらずの減らず口だな。お前ら…」

セシリア「えっ…」

鈴「…な……何よ…!こっちはアンタがいらぬ心配をしないようにと、痛いの我慢して気丈に振る舞っ…」

矢車「………」ガシッ

ダキッ

セシリア「……えっ?」

鈴「……えっ?」

矢車「………」ギュッ

セシリア「えっ…えっ!?」

鈴「ちょ、ちょっと!想!?」

矢車「……無事で…良かった…」ギュッ…

鈴「……あの、想…?」カァー…

セシリア「お…お兄様…?」カァー…

矢車「………」

矢車(……良かった。本当に…)

鈴(……怪我の功名…かな?)

セシリア(し…幸せですわぁ…)デレデレ

矢車「………」


シャル「……お兄ちゃん…」

シャル(やっぱり、お兄ちゃんも怖かったんだ…
    大切な相棒を、また失ってしまうのが…)

514: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/16(水) 01:48:02.31 ID:+DQXQamDO

~保健室~

千冬「全く聞いて呆れたぞ…。たかが喧嘩にISを持ち出すとは…」

セシリア「それは…その……」

鈴「す…すいませんでした…」

千冬「特にラウラ。お前の仕出かした事は、決して褒められた事ではない。
   ISが解除された相手を必要以上に痛め付けるなど…言語道断だ」

ラウラ「……申し訳、御座いません…」

ラウラ(クッ!!)ギロッ

矢車「………」

千冬「……言っておくが、お前が矢車の奴を責めるのはお門違いだからな。
   少々やり過ぎたとは言え…矢車はあくまでも、止めに入っただけだ。
   今回ばかりは…行き過ぎた行動に出たお前に非がある」

ラウラ「……は…はい…」

ラウラ(グッ…!)ギリッ

千冬「ところで、お前達のISの破損状況についてだが…山田先生」

山田「えぇ。オルコットさんと凰さんのISは、ダメージレベルがCを越えています。
   今回行われる学年別トーナメントへの参加は、難しいでしょう…」

鈴「えぇーッ!」

セシリア「そ…そんなぁー…」

セシリア(わたくしの勇姿を…お兄様に見てもらうチャンスが…)

ラウラ「……私の機体は?」

山田「ボーデヴィッヒさんのISは…受けたダメージは相当なものですが、
   それでも凰さんとオルコットさんのIS程、損傷は酷くありませんでした。
   暫く修復に専念すれば、トーナメントの開催までには十分に間に合います」

ラウラ「……そう、ですか…」

ラウラ(よし、これで矢車の奴に…仕返しが出来る!)

516: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/16(水) 02:07:27.41 ID:+DQXQamDO

千冬「それと、私の方から一つ報告がある」

矢車「報告…?」

千冬「今回開催される学年別トーナメントの件についてだが…
   大会参加者は、二人組のチームによる参加を必須とする」

箒「……チーム、ですか?」

千冬「あぁ。チーム決めは各自自由に行っても良いが、
   当日までに相手が決まらなかった場合、チーム決めは抽選によって行われる事になっている。
   お前達も、抽選で相方を決められるのが嫌なら、今の内に誰と組むのか検討しておけ」

矢車「………」

セシリア「わたくしと鈴さんが大会に出られないとなると…
     お兄様とのペアは、必然的にシャルルさんという事になりますわね」

シャル「えっ?僕?」

鈴「当たり前じゃないの。
  コイツが地獄兄妹以外の連中と、ペアなんか組む訳ないじゃん」

矢車「………」

鈴「それとも何?アンタ、想以外に組みたい奴でもいんの?」

シャル「いや、僕は全然問題無いんだけど…」チラッ

箒「………」

シャル「ほ、箒は…」

箒「構わん。どうせ想の奴だって、地獄兄妹の面子でチームを組みたいに決まっている」

シャル「そ…そうなの?お兄ちゃん…?」

矢車「……言った筈だ。シャルル…
   俺達は、永遠に一緒だってな…」

鈴(むっ…)ピクッ

セシリア(何ですって…?)ピクッ

シャル「あっ、うん…」

箒「………」

箒(……ほれ見ろ。やっぱり私の存在など、ハナから眼中に無いではないか…)


527: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/19(土) 19:38:47.64 ID:xNC6QQADO

~暫くして~

鈴「あ~あ…。私とセシリアだけ出場停止かぁ…
  せっかく今まで訓練してきたのに…」

箒「命が助かっただけでも有り難いと思え。
  あのままやられていたら、お前達も今頃どうなっていた事か…」

鈴「……二人がかりであのザマとは、ねぇ…。流石にヘコむわ…」

セシリア「本当に…面目無いですわ…」

鈴「……でもまぁ…大口叩いた割に、想相手には手も足も出せなかったわよね。
  今、カーテン閉めきって熟睡中のお隣さんは…」

ラウラ「………」ガサッ

鈴「さぞや悔しいでしょうねぇ~。自分が毛嫌いしている相手にコテンパンにやられるだなんて…」

シャル「ちょっと鈴…!聞こえちゃうよ…」

鈴「嫌味ってヤツは、聞こえるように言わなきゃ意味ないのよ」

ラウラ「……クッ!」ピキピキ

シャル「で…でも良かった。二人とも、本当に無事で…」

セシリア「あの時…お兄様がわたくし達を助けてくれたお陰ですわ」

矢車「………」

鈴「しっかしビックリしたわ。想ってば、あのラウラの事をあっという間に倒しちゃうんだもの」

セシリア「えぇ。正に一瞬の出来事でしたわ…
     一体ラウラさんの身に何が起こったのか…
     わたくしには、皆目見当が付きませんでした…」

鈴「……想、アンタあの時一体何をしたって言うのよ…?
  1秒足らずで相手をノックアウトしちゃうだなんて…
  セシリアの言う通り、一瞬過ぎて何が何だかよく分からなかったわ」

矢車「………」

シャル「……お兄ちゃん、もしかしてアレが…」

矢車「……あぁ、クロックアップだ…」

セシリア「……クロックアップ…。お兄様が以前仰っていた、マスクドライダーシステムとやらの標準装備…」

鈴「クロックアップねぇ…。前に聞きそびれてた事だけど、それって具体的にどんな能力なのよ?」

矢車「……はぁー…説明するのが面倒だ…」

箒「バカッ!面倒臭がらずにちゃんと説明しろ!」

矢車「……はぁー…」


551: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/21(月) 21:49:25.90 ID:TIYvenGDO

矢車「……クロックアップ…。キックホッパーの内部に流れるタキオン粒子を操作し、
   使用者の周囲の時間の流れを変える…。まぁ…言ってみれば、高速移動能力の一種だ。
   別の時間流に乗り移るというその特性上、使用者は使用者以外の時間流にいる物体の動きを
   全て、スローモーションで体感する事が出来る」

シャル「スローモーション…?」

矢車「あぁ…。使用者からして見れば、飛び交う弾丸は停止しているに等しいスピードで見え、
   降りしきる雨は、その雨粒の一粒一粒が空中で静止しているかのように見える、と言う訳だ…」

鈴「……何ソレ、反則過ぎじゃん…」

シャル「……そ…そんな凄い機能が、キックホッパーに内蔵されていただなんて…」

箒「……以前、アリーナに乱入して来た未確認機が、鈴にターゲットを切り替えた瞬間に突然爆発したという事があったが…
  あの時にも、お前はそのクロックアップとやらを使ったのか?」

矢車「……あぁ」

箒「そうか、やはりな…」

鈴「クロックアップ、ねぇ…。そんなチート兵器が元から装備されてるんなら、出し惜しみなんかせずにもっとバンバン使えば良かったのに。
  アンタ、何で今までそう頑なに使おうとしなかった訳?」

矢車「……強大な力による圧倒的な勝利…。そんなもの、今の俺にはあまりにも眩し過ぎる…
   ただ、それだけの事だ…」

鈴「……何と言うか、いかにもアンタらしいって感じの理由ね…」


572: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/24(木) 09:56:42.08 ID:KsgBCBjDO

セシリア「クロックアップ…素晴らしい能力ですわ!正に、鬼に金棒ではありませんかッ!!
     それさえあれば学年別トーナメントでの優勝は確実!
     ラウラさんに勝つ事だって朝飯前ですわね!お兄様ッ!」

矢車「………」

セシリア「……お兄様?」

矢車「……クロックアップは、使わない」

セシリア「えっ!?」

シャル「そんな…どうして…?」

矢車「クロックアップは全てを置き去りにする…
   そう、聞こえる筈の心の声もな…」

シャル「心の声…それって、もしかしてラウラの…?」

矢車「……俺がラウラに勝ったところで…アイツが俺と交わした口約束を、そう律儀に守るとは限らない。
   ならば…俺が奴の本心を探るために取る方法は、一つだけだ…」

セシリア「その方法とは、一体…?」

矢車「……戦いを通して、ラウラの心の叫びを感じ取る。
   それ以外に、ラウラの心の闇の正体を知る術は…無い」

鈴「……つまりそれって、拳と拳で語り合うって事?」

矢車「……まぁ、そう言う事になるな…」

鈴「ふーん…。なんだか、アンタらしくない感じのやり方ね」

矢車「……アイツが口を割らない以上、他に方法は無い…
   アイツの心に真正面から向き合い、その内に秘められた全てをさらけ出させる…
   その為にも…クロックアップを使用し、一撃で勝負を決めてしまっては意味がない。
   だから…クロックアップは、使わない…」

ラウラ「─ッ!!」バサッ

ガシャー!

ラウラ「矢車想ッ!貴様ッ!!一体どれだけ私の事をコケにすれば気が済むのだッ!?」

箒「ラウラ!?」

ラウラ「私の心の闇とやらを探るために、ワザと手を抜くだと!?人を嘗めるのも大概にしろッ!!」

シャル「ラウラ!そんなに興奮したら傷に障るよ!」

ラウラ「うるさいッ!取り巻き風情が私に意見するなッ!…うッ!」ズキッ

鈴「アンタねぇ!シャルルはアンタの事心配して言ってやってんのに、何よその態度は!?」

ラウラ「黙れ!黙れッ!」

矢車「………」


577: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/24(木) 23:36:09.22 ID:KsgBCBjDO

ラウラ「矢車想ッ!貴様に一体何が分かると言うのだッ!?
    貴様ごときに…この私の一体何がッ!?」

矢車「……あぁ、何も分からないさ…。俺は…お前の過去につて何も知らない…
   だからこそ俺は、お前の心に直接問い質す必要がある。
   お前の心の闇の正体を…。お前の心に色濃く残る、キズ跡の真実を…」

ラウラ「─ッ!!ふざけるなァーッ!!」

矢車「………」

ラウラ「私は決してッ!貴様なんぞに心を開いたりなどしない!!
    教官を…織斑教官を苦しませた、貴様などにッ!!」ダッ

シャル「あっ!ラウラッ!」


ダッダッダッダッダッ…


箒「出て行ったか…」

鈴「ほっときなさいよ、あんな奴」

シャル「で、でも…。怪我だってしてるのに…」

鈴「心配しなくても大丈夫よ。私らと違って大した怪我じゃないんだから」

セシリア「そうですわ!あんな人…相手をするだけ無駄ですわッ!」

鈴「……想、アンタもアンタよ。
  何であんな奴の事なんかを、そんなに気に掛ける訳?」

矢車「……別に、深い意味はない。単に…アイツの抱えている心の闇に、興味があるだけだ…」

鈴「興味、ねぇ…」

シャル「………」


586: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/27(日) 03:18:36.82 ID:0reT3W5DO

~矢車さんの部屋~

矢車「ほら、茶だ…」コトッ

シャル「………」

矢車「シャルロット…?」

シャル「……お兄ちゃん、あのさ…
    本当の事を、話してくれる…?」

矢車「……何?」

シャル「お兄ちゃんが、ラウラの事をあんなにまで気に掛ける理由…
    あの子の闇に興味があるって言うお兄ちゃんの話も、嘘ではないんだろうけど…
    理由は、それだけじゃないんでしょ?」

矢車「………」

シャル「お兄ちゃん、本当はラウラの事を助けてあげたいって…そう思ってるんじゃないの?
    心を閉ざして、何もかもを諦めていた僕にそうしてくれたように…
    ラウラの心に手を差し伸べて、救ってあげようと…」

矢車「………」

シャルル「お兄ちゃん…?」

矢車「……今のラウラは、あの頃のアイツによく似ている」

シャル「アイツ…?」

矢車「地位も名誉も…何もかもを失い、絶望の縁に立ち…
   それでも尚、かつての栄光を諦めきれずに
   それを取り戻そうと必死に藻掻いていた頃の、アイツに…」

シャル(アイツって、まさか…)

シャル「……それって、影山さんのこと?」

矢車「……あぁ…」

シャル(影山さん…。僕がお兄ちゃんと出会うずっと前に亡くなったっていう、
    お兄ちゃんの、昔の相棒…)


587: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/27(日) 13:15:54.31 ID:0reT3W5DO

シャル「……そっか、そうだったんだ…
    だからラウラの事がほっとけなかったんだね。お兄ちゃん」

矢車「……かもな…」

シャル「……ちょっと、安心したよ」

矢車「あっ?」

シャル「何て言うか…いかにもお兄ちゃんらしいって感じの理由でさ」

シャル(やっぱり、お兄ちゃんは優しいんだ…)

矢車「……はぁー…」ズズッ…


592: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/28(月) 10:10:48.76 ID:AKxH9jgDO

~トーナメント開催当日 校門にて~

ブォーン…キィーッ

運転手「到着です。警視総監」

加賀美陸「うん。ご苦労様」ガチャ

スタッ

加賀美陸「ここが、IS学園か…」

───

千冬「ようこそおいで下さいました。加賀美陸警視総監」ペコッ

千冬「わたくし、1年1組担任の…」

加賀美陸「織斑千冬さん…だよね?あなたの話は、常ずね伺っているよ」

千冬「………」

加賀美陸「君も、色々と大変だったみたいだね…」

千冬「は…?」

加賀美陸「………」ヌッ

加賀美陸「……白騎士事件の時は…」ボソッ

千冬「─ッ!??」ビクッ!

加賀美陸「………」

千冬(こ…この男ッ!)

加賀美陸「織斑先生。ちょっと、お願いしたい事があるんだけど…」



618: ◆4cmyCM./Qw 2014/07/31(木) 00:05:09.62 ID:4inXP4UDO

~アリーナ~

ワイワイ ガヤガヤ…

シャル「す…凄い数の観客だね!」

箒「あぁ。企業のスカウト、各国の視察等で、学園外から来客者が大勢来ているからな」

矢車「………」

箒(……今の想には、興味の無い話か…)

シャル「あっ!大会の抽選が発表されるよ!」

矢車「……来たか」

バンッ!

シャル「えッ!」

箒「こ…これはッ!?」

箒(ラウラと私がペアだとッ!?しかも対戦相手は…)

矢車「………」

箒(……想と、シャルルのチーム…)

───

ラウラ「ほう…これは好都合だ。待つ手間が省ける」

ラウラ(……この数日間、私はクロックアップに対抗する術を模索してきた…)

ラウラ(いくら矢車本人の口から“クロックアップは使わない”と宣言されたところで…所詮は口約束。
    何時、奴がその口約束を破ってきても可笑しくはない…!)

ラウラ(何百、何千通りもの対抗策を考え、シミュレートを重ねてきた…)

ラウラ(全ては、そう…打倒、矢車想の為にッ!)



654: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/04(月) 08:25:02.96 ID:xo0FYKaDO

千冬「おい、矢車」

矢車「あっ?」クルッ

千冬「お前に客人が来ている。至急、応接室に向かえ」

矢車「……客人?」

箒「もう直ぐ試合が始まると言うのに…。何故今になって…?」

シャル「後にしてもらえないんですか?それ」

千冬「多忙の身故に、今すぐにでも会いたいと言うそうだ…。加賀美警視総監は」

矢車「……何?」ピクッ

箒「け…警視総監ッ!?」

箒(警視総監と言えば、日本警察のトップに位置する人間…
  そんな人物が、何故想と面会を…?)

箒(警視総監…警察……はッ!!)

箒「想ッ!まさかお前ッ!」

矢車「あっ?」

箒(ま…まさか想に限って…。いや、それならば全てに合点がいく!)

箒(想がこんなにまでやさぐれてしまった事にも…
  コイツが、自分の過去について私に語りたがらない理由もッ!)

箒「それだけは…それだけはないと思っていたのにッ!」

シャル「ほ…箒?」

箒「想ッ!お前が…お前がッ!」

矢車「………」

箒「前科持ちだったなんてッ!」

矢車「……は?」

シャル「えッ!?」


箒「お前と警察との接点なんて…それ以外に思い付くかッ!
  恐らくその警視総監は…想がちゃんと更正出来たかどうかを確認するために面会をッ!」

シャル「え、えぇッ!?」

矢車「箒、お前な…」

シャル「お…お兄ちゃんッ!どんな過去があっても、僕はお兄ちゃんの事を見捨てたりなんかしないからね!」

矢車「……お前らなァ…」

千冬「……勘違いするな。別にコイツは前科持ちでも何でも無い」

箒「……えっ?」

千冬「警視総監とは、単に個人的な付き合いのある古い知り合いと言うだけだ」

箒「……よ…良かった…。私はてっきり…」

矢車「………」


660: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/04(月) 16:22:13.29 ID:xo0FYKaDO

千冬「……という訳で、矢車。何時までも客人を待たせている訳にもいかん。直ぐに応接室へ向かえ」

矢車「はぁー…」スッ

スタスタ…

シャル「箒。僕達は先にアリーナの方へ行こう」

箒「………」

シャル「……箒?」

箒(個人的な付き合い…。それはそれで気になる話ではあるな…)

箒(……もしかしたらその警視総監…想の過去に一体何があったのか、知っている事があるのかもしれん…)

箒(……よし!)

箒「シャルル、お前は先にアリーナへ行っててくれ。私は野暮用を思い出した」

シャル「えっ!?」

箒「心配するな。直ぐに戻る…」ダッ

シャル「あっ!ちょっと箒ッ!?」

ダッダッダッ…


662: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/05(火) 10:45:20.12 ID:5+vHuswDO

スタスタ…

矢車「………」ピタッ

~応接室~

矢車(ここか…)

矢車「………」ガチャ

バタンッ

箒「………」ヌッ

箒(……盗み聞きなど、武士として恥ずべき行為だが…)スタ…スタ…

箒(致し方あるまい。アイツの…想の過去を知るためだ)ピタッ


───

バタンッ

矢車「………」


加賀美陸「久しぶりだね……矢車くん」


矢車「加賀美、陸…」


677: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/10(日) 01:46:39.11 ID:3iCywxZDO

矢車「加賀美陸……。仮面ライダーガタック、加賀美新の実の父親であり、ZECTの元総監…
   いいよなァー…アンタは。ZECTが崩壊した後も、表の顔である警視総監の立場に甘んじる事が出来て…」

加賀美陸「………」

矢車「俺は全てを失って、このザマだ…
   たった一人の相棒も守れずに…惨めに生き続けて…」


箒(……全てを、失った?)


加賀美陸「……影山くんの件は、残念だったね…」

矢車「………」

加賀美陸「しかし、分からないなぁ…」

矢車「……あっ?」

加賀美陸「いや、失敬…。闇の住人を自負する今の君にとって、この学園はあまりにも似つかわしくない場所であるというのに…
     何故、矢車くんはこの学園に入学して来たのか?と、疑問に思ってね…」

矢車「………」

加賀美陸「君がISを起動させたという点は、さして驚く事ではなかったけれども…
     君がこのIS学園で学園生活を送っていると聞いた時は、流石の私もビックリしたよ」


箒(なッ!?“さして驚く事ではなかった”だと!?
  想は…男の身でありながらもISを動かせる、例外的な存在であるというのに!
  やはりこの警視総監…想の過去について、何か重要な事を知っているッ!)


685: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/10(日) 23:46:58.09 ID:3iCywxZDO

矢車「……アンタには分からないだろうな…
   光に満ち溢れたこの学園に潜む、ドス黒い影の部分を…」

加賀美陸「……フフッ、成る程ね…
     君には、君なりの考えがあって、この学園に入学して来た…という訳か…」

矢車「……アンタ、こんな与太話をするためだけに、わざわざ俺を呼び出したのか?」

加賀美陸「あぁ、ごめんごめん。話が逸れてしまったね…
     では、本題に移ろうか」

矢車「………」


箒「………」ゴクリッ…


加賀美陸「矢車くん。私が君を呼び出したのは、他でもない。
     ある問いに対する、君の意見を聞くためなんだ…」

矢車「……意見?」

加賀美陸「ISは、はたしてワームの脅威に対抗し得る兵器であるのか否か。
     その是非についての意見を、ね…」



703: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/13(水) 10:40:42.03 ID:PIW0I+JDO

箒(ゼクト?ワーム?……この二人、一体さっきから何の話をしているんだ…?)


矢車「………」

加賀美陸「君の言いたい事は、分かるよ…
     ワームは既に、ZECTを始めとしたライダー達の手によって滅ぼされたというのに、何故今更…とね」

加賀美陸「しかし…ワームは一匹残らず全滅したと、本当にそう言い切れるかな…?」

矢車「何…?」

加賀美陸「ワームの擬態能力は完璧なものだ。一度人間の姿へ擬態されてしまったら最後、それを看破するのは非常に難しい…
     ワームに対抗出来る唯一の組織であるZECTが崩壊した今となっては、それを見破る術は…無いに等しいとも言える。
     仮に…運よく生き残ったワーム達が、擬態能力を利用してその身を隠し
     今も尚…人類への逆襲を虎視眈々と企てていたとしても…何ら不思議な話ではない。
     そうは…思わないかね?」

矢車「……ワームの生き残りが、今もまだ存在している…ってか?」

加賀美陸「……断言は出来ないけれど、その可能性は…否定出来ないね」


709: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/13(水) 15:21:06.85 ID:PIW0I+JDO

矢車「………」

加賀美陸「……出来る事なら、かつてのようにZECTの力を用いて
     ワームの残党についての大規模な捜索を行いたいところだけど…。今となっては、それも叶わないしね…」

加賀美陸「……となれば、今の私に出来る事は一つしかない…」

矢車「………」

加賀美陸「来るべきワーム残党との決戦の日に備え、可能な限りの戦力を確保する事だよ。
     新たなマスクドライダーシステムを開発する事が出来ない今となっては、
     現存する兵器の中から、その代用となる代物を探し出すしか…方法はないけどね」

矢車「……今回の視察は、その代用品を見つけ出すための視察だった…って訳か?」

加賀美陸「……そう。今の私は警視総監としての立場ではなく、
     ネイティブの傀儡でありながらも…ZECTを創設し、人類の存亡を掛けて戦った一人の男として、この場に立っている」

矢車「………」

加賀美陸「だからこそ、私には見極める必要があるのだよ…
     元ZECT兵器開発部所属…篠ノ之束博士が、マスクドライダーシステムの技術を盗用し完成させた…
     このISと言う名の超兵器が、如何なる力を秘めているのか…。その真価を…ね」


736: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/18(月) 23:55:14.91 ID:c+AMfeuDO


箒「何ッ!?」ビクッ!

箒(ISが…盗んだ技術を元に開発されていただと!?)


矢車「……“ちょこっと参考にしただけ”とか言ってたがな…あの女」

加賀美陸「……フフッ、成る程。彼女らしい言い分だね…
     しかし技術面から見ても、ISがマスクドライダーシステムに限りなく近い存在である事は事実…
     それ故に…この学園の誰もが、キックホッパーの事をISだと信じて疑わないでいる」

矢車「………」

加賀美陸「君が男の身でありながもISを扱えるという事にも、それは少なからず関係しているだろうね。
     ゼクターの資格者であるが故の、体質的な問題なのか…。それとも、篠ノ之博士が何らかのプログラムを意図的に組み込んだのか…
     その真意は、定かではないけれど…」

矢車「………」

加賀美陸「……まぁ、ブラックボックスの固まりであるマスクドライダーシステムの技術、その全てを把握する事は
     流石の彼女にも、出来なかったようだけどね…」


740: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/19(火) 00:54:42.91 ID:HJxnhbSDO


箒(キックホッパーがISでない!?マスクドライダーシステム!!?
  何なんだ……想とこの警視総監は、一体何を隠しているんだッ!?)


加賀美陸「さて、話を元に戻すとして…君はどう思っているのかな?
     対ワーム兵器としての、ISの是非について…」

矢車「………」

加賀美陸「……と、その答えを聞く前に…」チラッ


箒「………」


加賀美陸「……ドアの向こうの君」


箒「えッ!?」ビクッ!


加賀美陸「そろそろ…出て来てもいいんじゃないかな?」


箒(ば…バレてたッ!?)


矢車「………」スタスタ

ガチャ

箒「わッ!」

矢車「……箒、お前…」

加賀美陸(んっ?箒…?)ピクッ


箒「……あ、あの…想…」

矢車「……はぁー…」スタスタスタ…

加賀美陸「……あれ?矢車くん、何処へ行く気だい?」

矢車「……ISの事なら、俺なんかよりもこの女の方がよっぽど詳しい。
   ISについて知りたいのなら、この女から聞けばいい…」スタスタ

加賀美陸「……困るなぁ…。私はゼクターの資格者たる君の意見が聞きたかったんだけど…」

矢車「………」クルッ

バタンッ!

箒「あっ!おい想ッ!」

加賀美陸「………」

加賀美陸(全く…彼らしいと言えば、彼らしいね…)


743: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/19(火) 02:32:10.28 ID:HJxnhbSDO

箒「あっ!おい想ッ!」

加賀美陸「……君はもしかして、篠ノ之博士の妹さんの…」

箒「えっ?」

加賀美陸「篠ノ之、箒さん…?」

箒「……えぇ。姉の事をご存知で?」

加賀美陸「うん。よーく知ってるよ…。彼女は昔、私の管轄する組織の下で、技術者として働いていたからね」

加賀美陸「その当時は矢車くんも、随分と彼女のお世話になっていたようでね…」

箒「そ、想がッ!?」

加賀美陸「………」

箒(ま…間違いないッ!この人は、私の知らない想の過去を知っているッ!)

箒「け…警視総監殿ッ!」

加賀美陸「んっ?」

箒(ゼクトについて、マスクドライダーシステムについて、気になる事は山ほどあるが…
   私が一番知りたい事は、依然として変わらない…!)

箒「教えて下さい!何故、矢車想はあんなにまでやさぐれてしまったのですかッ!?」


766: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/22(金) 10:05:10.99 ID:5EsFAJIDO

加賀美陸「………」

箒「貴方なら知っている筈ですッ!想の身に何が起こったのか…
  何故アイツが、地獄の住人を自称するような奇人になってしまったのかをッ!」

加賀美陸「……そう言えば、君と矢車くんは幼なじみ同士だったね。
     矢車くんからは、何も聞かされていないの?」

箒「……はい。何一つ…」

加賀美陸「……そっか」

箒「………」

加賀美陸「君からしてみれば、さぞやショッキングな出来事だったろうね…
     親しかった友人が、別人のように様変わりしていたのだから…」

箒「……アイツは、本当に変わってしまいました…
  私の知ってる矢車想は、もっと社交的で、リーダーシップがあって、仲間想いで…」

箒「……尊敬出来る奴でした」

加賀美陸「………」

箒「しかし、今の想は違います…。かつての面影は微塵も無くなり、外見も内面も……別人のように変わり果ててしまいました…
  少なくとも、一年前まではそうではなかったようなのですが…」

加賀美陸「………」

箒「……もしかして、先程の二人の会話の内容と
  想がああなってしまった事とは、何か関係があるのでは!?」

加賀美陸「……さぁ?どうだろうね…」

箒「なッ!教えて下さい警視総監ッ!私はどうしても知りたいのです!いや、知る必要がありますッ!
  想があんな風になってしまった原因を知るためにも!
  アイツを……あの頃の矢車想に戻すためにも!!だからッ!!」


767: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/22(金) 20:21:00.03 ID:5EsFAJIDO


加賀美陸「……オリオンとサソリ、だったかな?」

箒「……は?」

加賀美陸「海神ポセイドンの息子オリオンは、腕の立つ猟師であったが、
     その傲慢な性格が災いし…女神ヘーラーの怒りに触れてしまった。
     そして…女神ヘーラーはオリオンの下に毒サソリを使わせ、オリオンを亡き者にしたという…」

箒「……仰ってる意味が、よく分からないのですが…」

加賀美陸「………」スッ

スタスタ…

箒「……?」

加賀美陸「矢車くんも又ッ!」ズイッ

箒「ひッ!?」ビクッ!

加賀美陸「……己の傲慢さによってその身を滅ぼした戦士の一人、という事だよ…」

箒「……身を滅ぼした、戦士…?」

加賀美陸「………最も、彼が刺されたのはサソリではなく、“蜂”だけどね…」

箒「は……ハチ?」


ピンポンパンポーン

《──間もなく、学生別トーナメント開催のお時間です。出場選手は至急、第3アリーナに集合して下さい。繰り返します──》


加賀美陸「……どうやら、時間が来てしまったようだね…」

箒「えっ!?あ…あのッ!」

加賀美陸「心配する事はないよ。君にも何れ、全ての真実を知る日が必ず来る…」

加賀美陸「そう…君が“選ばれし者”ならば、ね…」

箒(……選ばれし、者…?)

加賀美陸「さて、私も観覧席の方へ行くとしよう…
     健闘を祈るよ、篠ノ之さん」

箒「は…はぁ…」

加賀美陸「それでは、さよなら…」スタスタ…

バタンッ

箒「………」

箒(……手掛かりを掴むどころか、尚更謎が増えただけだった…)



788: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/30(土) 14:01:54.54 ID:REA/OlEDO


矢車「………」スタスタ

矢車「……ただいま、シャルロット…」

シャル「あっ!お帰りなさい、お兄ちゃん!試合始まっちゃうよ?」

矢車「……あぁ…」スタスタ

───

矢車「………」パカッ

ピョーン ピョーン ピョーン

パシッ

矢車「変身…」カシャ

──HENSHIN──

キュイキュイキュイーン

──CHANGE! KICK HOPPER!──

シャル「よし!」キュイーン

(シャル、IS展開)

シャル「行こう、お兄ちゃん!」ブワッ

矢車「あぁ…」ダッ



789: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/30(土) 14:05:14.68 ID:REA/OlEDO

~アリーナ~

ラウラ「……始める前に確認しておくが」

矢車「………」

ラウラ「お前と交わした交換条件…よもや、忘れたとは言わせまいぞ」

矢車「……あぁ、分かってる。お前に負けたら、俺は…大人しくこの学園を去る」

シャル「……お兄ちゃん…」

箒「………」

ラウラ「フン…二言は無いぞ、矢車」

矢車「………」

シャル「お兄ちゃん…ここは先ず、二人がかりでラウラを…」

矢車「………」スッ

シャル「……お兄ちゃん?」

矢車「手を出すな。ラウラの相手は、俺一人でやる…」

シャル「えッ!?」

矢車「………」

シャル「そんな!無茶だよッ!だってラウラにはAICが!」

矢車「……聞こえなかったのか?シャルル」

矢車「ラウラの相手は、俺がやる」

シャル「……お兄ちゃん…」

矢車「………」

シャル「……分かった。僕、お兄ちゃんを信じるよ」

矢車「………」

シャル「だから…絶対に勝とうね!お兄ちゃんッ!」

矢車「……あぁ…」


790: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/30(土) 15:04:15.03 ID:REA/OlEDO

~モニタールーム~

山田「いよいよですね…。矢車くん達と、ラウラさん達との試合…」

千冬「あぁ…」

加賀美陸「……これは、随分と面白い対戦カードが揃ったね…」ヌッ

山田「えッ!?加賀美警視総監ッ!?」ビクッ

加賀美陸「やぁ…」

山田「どど…どういう事ですかッ!?ここは関係者以外立ち入り禁止の筈ですよ!?」

加賀美陸「いやね…折角の矢車くんの晴れ舞台だから、特等席で見たいと思ってね。
     織斑先生に、無理言ってお願いしたんだよ…」

加賀美陸(……観覧席で見ているだけじゃ分からない情報も、
     ここに居れば、全て知る事が出来るからね…)

山田「えッ!?本当ですか織斑先生!?」

千冬「……まあな…」

山田(そんな…あの規律に厳しい織斑先生が、どうして…?)

千冬「………」

加賀美陸「……白騎士事件……」ボソッ

千冬「─ッ!!」ビクッ!

加賀美陸「……フフッ、無理言ってごめんね。織斑先生…」

千冬「…グッ!」プルプル…


803: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 04:40:50.80 ID:C1G+Oe5DO

ブー

『試合開始』

シャル「箒ッ!君の相手はこの僕だよ!」ブワッ

ズダダダダッ!

箒「何ッ!?」

ドガガガガンッ!

箒「─ッ!!くッ!」


ラウラ「ほぉ…。てっきり、二人がかりで私に挑んで来るのかと思っていたが…
    どうやら、一対一の真っ向勝負がお望みのようだな…」

ラウラ(何のつもりかは知らないが…これは好都合だッ!)ガチャ

矢車(……来る)ダッ

ラウラ「食らえ矢車ッ!」ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!

矢車「………」タンッ タンッ ピョーン

ドゴォ! ドゴォ! ドゴォ!

ラウラ(チッ!相変わらず猪口才な…)

ラウラ(だが、これで良い…。奴のISは射撃武器が一切装備されていない、肉弾戦のみという仕様だ。
    このまま一定の距離を保ちつつ、遠距離からの攻撃に徹していれば、奴からの反撃の恐れはない…)

ラウラ(警戒すべきは“クロックアップ”だ…。あの力は、強力過ぎる…!
    無策で挑めば、前回の二の舞になる事は必至……だがッ!)

ラウラ「今の私には秘策があるッ!」ヒュンヒュンヒュンヒュン


804: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 04:54:56.11 ID:C1G+Oe5DO

矢車「何…?」

矢車(これは…ワイヤー?)

ラウラ(先ず、ワイヤーブレードを矢車の周囲に展開する)

ヒュンヒュンヒュンヒュン…


山田「ラウラさんのISから放たれたワイヤーが、矢車くんの周りを取り囲んで…」


ラウラ(ワイヤーは主に相手を拘束し、動きを封じ込めるために使われるが
    今回は、ワイヤーそのものを武器として利用する!)

ヒュン…ヒュン…ヒュン…ヒュン…

矢車(ワイヤーを、鞭のようにしならせて…)


加賀美陸「成る程、ね…」


ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!


山田「矢車くんの下に、振り払われた無数のワイヤーがッ!」


矢車「……はぁー…」タンッ タンッ

ドゴァ! ドゴァ! ドゴァ! ドゴァ!

ラウラ(外したか…まぁ良い。この攻撃は、ちょこまかと走り回る奴の動きを足止めするための、牽制にしか過ぎない…)

ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!

矢車(……はぁー、まだ追って来るのか…)タンッ タンッ ピョーン

ラウラ(矢車の周囲に展開された無数のワイヤーブレードは、絶えず奴に攻撃を与える。
    地走とジャンプしか移動方法のない矢車のISでは、四方八方から繰り出されるワイヤーブレードの波状攻撃を回避するのにも限度がある。
    必然的に、奴が進む事の出来るルートは一定のルートに限定される…)

ラウラ「そこに透かさずッ!」ズドンッ!ズドンッ!

矢車「チッ…セヤッ!」ブンッ ブンッ

バシィ!バシィ!

ドゴォーンッ! ドゴォーンッ!

ラウラ(フンッ、蹴りで捌いてみせたか…。しかし…その行動は裏を返せば、防御に徹する事しか出来ず
    満足に身動きが取れないという証拠ッ!)

805: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 05:09:32.69 ID:C1G+Oe5DO

矢車(……面倒だ、一旦ラウラから距離を取るか…)タンッ ピョーン

ラウラ(フッ…読めるぞ!貴様の退路ッ!!)

ラウラ「逃げようとしても無駄だッ!」ズドンッ!ズドンッ!

矢車「……チッ」ブンッ ブンッ

バシィ! ドゴォーンッ! バシィ! ドゴォーンッ!

ラウラ(ワイヤーブレードの回避に専念するあまり、奴は進行ルートを先読みして放たれたレールカノンまでには気が回らず、直撃コースに入ってしまう。
    砲弾を捌けている今の内はまだ良い…。しかし、そんな急場凌ぎの芸当など…長く持つ筈がない。直ぐに限界が来るだろう!)

ラウラ(……だが、矢車の事だ…。いずれ、この一方的な展開に痺れを切らし、
    クロックアップを使って来るに違いない…)

ラウラ(しかし、ワイヤーブレードの波状攻撃によって退路を限定された今の状況では、奴の進めるルートはたかが知れている…
    いくら矢車が超スピードで動けようとも…私が奴の進行ルートを未然に予測している以上、
    それらを先読みし、反撃のためにこちらに接近して来た矢車を、AICの停止結界に封じ込める事は容易い…
    いくら機動力に優れているキックホッパーと言えど、その動きさえ封じ込めてしまえばこちらのもの!勝ったも同然だッ!)

809: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 08:01:14.00 ID:C1G+Oe5DO

加賀美陸(……と、今の彼女は考えているところだろうね…)

加賀美陸「……うん。理に叶った戦法ではあるね…」

加賀美陸(自らの運動エネルギーが加わる事により、衝突の際に受けるダメージが増幅してしまう高速移動中の者にとっては、
     通常ならダメージの低い只のワイヤー鞭打ち攻撃ですらも、致命傷になり得てしまう。
     それ故に、高速移動を行う者はワイヤーの展開されていないルートを選ぶしかないが…
     それらの進行ルートが彼女に先読みされている以上、飛び交う弾丸すらも停止させる
     強力な停止結界を発生させるという、AICとやらに動きを止められてしまうのは…確実。
     そうなってしまったら、もう勝負は決まったも同然…)

加賀美陸(……だけど彼女は、クロックアップという能力が通常の高速移動とは
     根本的な面で違っているという点を、見落としているようだね…)


810: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 08:23:17.32 ID:C1G+Oe5DO

加賀美陸(クロックアップは足を速くする能力ではない…
     タキオン粒子を操作し、通常の時間軸から離れた別の時間軸に干渉、それに乗り移る能力である。
     使用者そのものが別の時間軸に乗り移っている以上、通常の高速移動とは違い、使用者に加速による負荷は掛からない。
     いかに彼女が大量のワイヤーを振るって進路を塞いだとしても、クロックアップの使用者は難なくそれを掻い潜る事が出来るだろう…)

加賀美陸(それに…相手はあの矢車くんだ。
     彼が相手では、小手先だけの彼女のクロックアップ対策など、いとも簡単に看破されてしまうだろうね…)

加賀美陸(もし矢車くんがクロックアップを使用してしまえば、勝敗は…一瞬の内に決してしまうだろう)

加賀美陸(……もっとも、今の矢車くんにクロックアップを使う気があれば、の話だけどね…)


817: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 19:18:05.26 ID:C1G+Oe5DO

矢車(はぁー…鬱陶しい…)

矢車「ライダーキック…」カシャカシャ

──RIDER KICK!──

矢車「セェヤッ!」ブンッ

ラウラ「おっと!」クイッ

バッ

矢車(……チッ、ワイヤーを巻き戻したか…)

ラウラ「フン、無駄な足掻きを…」シュルシュルシュル…

矢車「………」

ラウラ「全く、お前も馬鹿な男だ…
    出し惜しみなどせず、もっと有効にクロックアップを使えば
    今のこの状況も、少しはマシになるというのに…」

矢車「……言った筈だ。お前の心の叫びを聞くためにも、クロックアップは使わないってな…」

ラウラ「……貴様…」ヒュンヒュンヒュンヒュン

矢車「………」

ラウラ「何時までも減らず口をッ!」ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!

矢車「………」ダッ

ラウラ「逃がすかァーッ!」ガチャ

ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!

矢車(……周りのワイヤーが邪魔で、身動きが取りづらい…
   砲弾は、全て捌くしかないか…)

矢車「セヤッ!ハァ!ラァ!」ブンッ ブンッ ブンッ

バシィ!バシィ!バシィ!

ビューン!

矢車(……チッ、最後の1発は捌ききれないか…。ガードで凌ぐ…)グッ

ドゴォーンッ!

矢車「クッ…!」ドサッ

ラウラ(よし!命中だッ!!)グッ


819: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 23:47:52.28 ID:C1G+Oe5DO


箒「なッ!想ッ!!」

箒(想が…直撃を食らったッ!?)

シャル「人の心配をしてる暇なんかないよ!箒ッ!」ブワンッ

箒「何ッ!」

箒(シャルルの奴、いつの間に私の懐に!?)

シャル(ブレッド・スライサーで、直に切り裂くッ!)

シャル「だあッ!」ブンッ!
箒「─ッ!シャルル!?」ブンッ!

ガキィーン!

シャル「ぐっ…!」グググググ…

シャル(鍔迫り合い、か…!)

箒「シャルルお前ッ!想の奴が心配じゃないのか!?
  アイツは…ラウラに負けたらこの学園から出て行くと言っているのだぞッ!!」グググググ…

シャル「あぁ!僕だって心配だよッ!お兄ちゃんの事が!」ググッ

シャル「お兄ちゃんがラウラに負けたら、この学園から居なくなっちゃうだなんて…
    考えただけでも、怖くて怖くてたまらないよ…!」

シャル「ずっと一緒にいてくれるって、約束してくれたのに…それなのに…」ググッ

箒(……シャルル、お前…)


820: ◆4cmyCM./Qw 2014/08/31(日) 23:55:28.45 ID:C1G+Oe5DO

シャル「でもッ!!」グイッ!

箒「うッ!」ググッ…

箒(な…何てパワーだ…!)

シャル「お兄ちゃんは“絶対に勝つ”って、僕に約束してくれたんだッ!!」

箒「な…何…?」

シャル「お兄ちゃんは、何もかも諦めていた僕に手を差し伸べてくれた!
    地獄兄妹の一員として、こんなどうしようもない僕の事を受け入れてくれた!だからッ!!」ググッ

カキーン!

箒(なッ!刀が弾かれ─)

シャル「だから僕はッ!お兄ちゃんの事を最後まで信じ抜くって、決めたんだァーッ!!」ガシャ

箒(しまッ!)

シャル「シールド・ピアースッ!だぁッ!」ガチャ


ドゴァッ!ドゴァッ!ドゴァッ!ドォゴワァーッ!!


箒「──ッ!!がハァッ!!」ブワッ

ドグワシャーッ!

シャル「………」

箒「くっ……」キュイーン

(箒、IS強制解除)

箒(……私の負け、か…)

シャル「……ごめんね、箒」

シャル(さぁ、次はお兄ちゃんの番だよ)

シャル(……絶対に…絶対に勝ってね!お兄ちゃん!)


823: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/01(月) 23:59:59.63 ID:knJYfjNDO

───

矢車「………」ムクッ

ラウラ「ほぅ…。流石に1発だけではくたばらないか…」

矢車「………」

ラウラ「……まぁいい。貴様のISが朽ちるまで、何発でも食らわせてやるッ!」

矢車「………」ダッ

ラウラ「逃げる気か。惨めだな…
    最も…ワイヤーブレードの波状攻撃から逃れる術はないがなッ!」

矢車「………」スッ タンッ ピョーン

ラウラ「逃げてようとしても、無駄だッ!」ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!

ラウラ(手に取るように分かるぞ!貴様の退路ッ!)

矢車「………」


826: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 08:40:34.77 ID:B3Khv6aDO


矢車(……あの大砲、発射の度にいちいちバカデカい薬莢を排出する必要があるのか…
   薬莢が、あたり一面に転がっている…)

矢車「………」


ラウラ(さぁ…どうする矢車?痺れを切らしてクロックアップを使って来るか?
    それとも…苛立ちのあまり頭に血が上り、我武者羅に突っ込んで来るか?
    どちらにしろ…近接戦闘しか能のない奴は、私に接近する必要がある。
    奴が接近して来たところですかさずAICを使えば…私に負ける道理はないッ!)


827: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 08:54:50.63 ID:B3Khv6aDO


矢車「………」ピタッ

ラウラ(動きを止めた?諦めたという事か…?)

ラウラ(……いや、奴にクロックアップという切り札がある以上、油断は出来ない…!)

ラウラ「攻め方は変えないぞ!先ずはワイヤーブレードで、貴様の退路を断つッ!」

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

矢車「………」

ラウラ(さぁ!もう後はないぞッ!
    クロックアップを使うか、大人しく砲弾の餌食となるか…
    二つに一つだッ!さぁ…選べッ!矢車想ッ!!)ガチャ

矢車「……甘いな、ラウラ…」ゴロ…


箒(……何だ?あの想の足下に転がっている物体は…?)


矢車「………」スッ


箒(あれは……まさかッ!)


矢車「ライダーキック…!」カシャカシャ

──RIDER KICK!──


矢車「ハァッ!」ブンッ

バゴーンッ!

ラウラ(何ッ!?)

ビューン!

ラウラ(何だ!?何かがこちらに高速で突っ込んで来るッ!?)

ビューン!

ラウラ(馬鹿なッ!キックホッパーに射撃武器は装備されていない筈だッ!!
    奴は一体何を発射したんだッ!?)

ビューンッ!

ラウラ(避けられないッ!ここはAICで防ぐしか…!)

ラウラ「くッ!」バッ

バシィ!

ラウラ(─ッ!!これは、レールカノンの薬莢ッ!?)


828: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 09:26:48.88 ID:B3Khv6aDO


加賀美陸「流石だね、矢車くん…」

加賀美陸(ライダーキックのパワー+タキオン粒子を上乗せして放たれた薬莢…
    “ただ蹴り飛ばしただけ”の薬莢にしか過ぎないが、その威力は絶大。まともに当たれば致命傷にもなり得る。
     AICで動きを止めなければ、ボーデヴィッヒさんも今頃危なかっただろうね…)


矢車「………」ズザザッ!

ラウラ「なッ!?」


加賀美陸(……最も、彼にとってあの攻撃は単なる“足止め”にしか過ぎなかったようだけど…)


829: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 10:24:05.48 ID:B3Khv6aDO


ラウラ(しまったッ!!薬莢に気を取られている隙に矢車に背後を…)

矢車「………」ゲシッ

矢車(足は、添えるだけで良い…)カシャ


──RIDER JUMP!──


ラウラ「なッ!?」

ドシューンッ!!

ラウラ「わあああぁぁぁぁぁぁッ!!!?」ビューン


箒「なッ!ラウラが一瞬の内に吹き飛ばされた!?」

箒(ライダージャンプを…地面ではなくラウラに向けて放ったのか!?)


ビューン…

ドゴアァーン!!

ラウラ「がぁッ!!」


シャル「ラウラがアリーナの壁面に叩き付けられた!」


ラウラ「うっ…」パラパラ…

ラウラ(不味い…!身体が壁にめり込んで、身動きが取れな…)

ラウラ「ハッ!」

矢車「………」ブワッ


山田「跳躍した矢車くんが、ライダーキックの姿勢に!」


矢車(……決めるぞ、ラウラ…)

矢車「ライダーキック…!」カシャ

──RIDER KICK!──

矢車「ゼァーッ!」ブワンッ

ドゴォーッ!

ラウラ「──ッ!!がァーッ!!」バチバチィ

矢車(……連続だ…)カシャ

ドンッ!

矢車「ゼャーッ!」ブワンッ

ドゴォッ!ドゴォッ!ドゴォッ!ドゴォッ!ドゴォーッ!


837: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 18:47:42.34 ID:B3Khv6aDO


───

ラウラ(負ける…のか?この私が…あんな奴に…?)


千冬『“苦悶に満ちた日々を送っている”だと?
   私は別に、今の環境に不満など感じてはいない』


ラウラ(何を仰っているのですか教官?矢車想は、あなたの事を苦しめる憎き敵…
    そう…倒すべき敵ではありませんか…!)


千冬『それに…問題児の面倒を見るというのも、存外悪いものではない』


ラウラ(……それなのに、何故なのですか?何故あなたは…)


千冬『手に余るバカであればある程、それだけ叩き概がある…と言う事だ』


ラウラ(……そんなに笑顔で…)


ラウラ(──ッ!!憎いッ!私は奴が…矢車が憎いッ!!)

ラウラ(教官の事を散々苦しめておきながら、教官に許されているアイツが憎いッ!)


──《願うか?汝、力を求めるか?》──


ラウラ(力……そうだ、力だッ!私は力が欲しい!!
    奴を倒せるだけの力!それが欲しいッ!!)

ラウラ(矢車想に制裁を!奴に裁きの鉄槌をッ!!)

ラウラ(私に……力をッ!)


839: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 19:34:42.68 ID:B3Khv6aDO

───

ドゴアァーッ!

矢車「……ん?」バッ

スタッ

矢車(……ラウラの様子が…)


ラウラ「うッ!うぅ…」モコ…モコ…モコ…

矢車「……ラウラ、お前…」


ラウラ「がッ!ア゛ア゛アァァァァアアッ!!!」ベキベキベキ



箒「なッ!?」

シャル「えッ!?」


千冬「何ッ!?」

加賀美陸「………」



ラウラ「あっ…アァ……」ボコボコボコ


矢車(ドス黒い塊が、ラウラを包んで…)


ラウラ「……あ…ア……」ボコボコボコォ…


矢車(……そうか、成る程…
   ラウラ…これがお前の…)


ボコ…ボコ…ボコ…


VTラウラ『───』グワンッ


矢車「お前の抱える心の痛みの、その化身…か」



845: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 21:26:26.35 ID:B3Khv6aDO


千冬「試合中止ッ!参加選手は速やかにピットに退避!
   山田先生、教員達を現場に急行させてくれ!」

山田「は…はい!」

加賀美陸「……織斑先生、あれは…」

千冬「警視総監殿、あたも念のため避難を…」

加賀美陸「ヴァルキリー・トレース・システム…だよね?」

千冬「─ッ!何故あなたがそれをッ!?」

加賀美陸「……オヤジのしがない無駄知識、と言ったところかな…」

千冬「む…無駄知識…ですか?」

千冬(VTシステムに関する案件は機密事項であるというのに…
   この男…一体何処からその情報を!?)

加賀美陸(……どうやらアレは、織斑先生とそのISにまつわるデータをトレースしたようだね…
     十中八九、ドイツ軍が仕組んだ事だろうけど…)

加賀美陸(……しかし、姿形をそっくりそのままコピーするだなんて、まるで…)

加賀美陸「……ワームの擬態能力のようだね…」


847: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 21:46:51.42 ID:B3Khv6aDO

───


箒「想ッ!私達もこの場から退避するぞッ!」

矢車「……退避だと?」

箒「あぁそうだ!退避命令が出た以上、ここに長居する必要はない!」

箒「それに見ろ!」


ビューン

教員1「ターゲットを確認。包囲します」
教員2「了解!」
教員3「了解!」


箒「私達が何もしなくても、事態は勝手に収拾される!
  後の事は教員の人達に任せて、私達は大人しく…」

矢車「………」カチャ


── CLOCK UP ──


850: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/06(土) 22:50:50.04 ID:B3Khv6aDO


── CLOCK OVER ──

バチ!バチバチバチバチィーッ!


教員1「──ッ!!がハッ!!」バチィーッ!
教員2「わァーッ!!」バチィーッ!
教員3「きゃッ!!」バチィーッ!

(教員達、IS強制解除)


箒「なッ!!はぁーッ!?」

プシュー…

矢車「……邪魔なんだよ…お前ら」

箒「そッ!想ッ!お前一体何を!?」

矢車「……ラウラの相手は俺がやる…そう言った筈だ。
   誰にも…手出しはさせない…」

箒「ば…馬鹿者ッ!ラウラとの試合は、とっくに中止になったのだぞッ!
  何故…今になってお前がラウラに戦いを挑む必要がある!?」

矢車「……試合なんて、ハナからどうでも良かったんだよ…」

箒「な…何ッ!?」

矢車「俺は…ラウラの心の闇の正体さえ知る事が出来れば、それで良かったんだ…
   それを探る手段が“試合”から“殺し合い”に変わったところで…関係ない。
   アイツの心に触れるまで、俺は戦いを止めるつもりはない…」

箒(…そ…想…お前……)

箒「お前…それを本気で言ってるのか…?」

矢車「……あぁ、本気だ…」


プツーン…


箒「─ッ!!いい加減にしろ矢車想ッ!!こんな状況で何を言っているんだ貴様はッ!?」

矢車「………」

箒「ラウラの心の闇だと?笑わせるなッ!!バカも休み休み言えッ!!
  いい加減迷惑なんだッ!お前の狂言癖に付き合わされるのはッ!!」

箒「周りの人間の身にもなってみろッ!!
  お前の犯す奇行に、皆がどれだけ迷惑していると思っているんだッ!?
  昔のお前はそんな単純な事も分からないほど馬鹿では無かった筈だッ!!
  それなのに…それなのに今のお前はーッ!」ブンッ

ボコォッ!


860: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/07(日) 16:33:16.66 ID:60/pqGRDO

矢車「………」

箒「はぁ゛ーッ!…はぁ゛ーッ!…はぁ゛ーッ!…」プルプル…

箒(……本当に…本当に…)

箒「……私の知ってる矢車想は、一体何処に行ってしまったんだ…」ガクッ

矢車「………」

矢車(……箒…)

箒「………」

矢車「……はぁー…」クルッ

スタスタスタ…


箒「ま…待て!想ッ!」

シャル「箒、行かせてあげて…」

箒「なッ!シャルル!お前まで一体何を!?」

シャル「お兄ちゃんは、ラウラの事を助け出そうとしているんだよ」

箒「……ラウラを、助ける…?」

シャル「そう。……僕からは上手く説明出来ないけど…
    お兄ちゃんは今、心を闇に蝕まれて苦しんでいるラウラの事を、救ってあげようとしているんだ。それで…」

箒「─ッ!!それが分からないと言っているんだッ!心の闇だとか何だとかッ!!」

箒「だいたい何故アイツはそこまでしてラウラに執着するッ!?
  アイツだって、自分がラウラから憎まれている事くらい知っている筈だ!
  前に鈴やセシリアがラウラにやられた時なんて、
  アイツは逆上して…ラウラを殺そうとしたんだぞッ!
  それなのに…それなのにどうしてッ!?そんな相手の事を助けたいだなんて思う!?」

箒「私には…私には理解出来ないッ!
  アイツの行動原理が!アイツの考えていること全てがッ!!」


867: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/07(日) 22:53:58.29 ID:60/pqGRDO

シャル「箒ッ!」ガシッ

箒「─ッ!?」

シャル「理解出来なくたって良い!今は分からなくたって良いッ!
    けどッ!これだけは信じて!」

箒「えっ…?」

シャル「今のお兄ちゃんには…人の心の痛みが分かる、優しい心があるんだって!」

箒「……優しい、心…?」

シャル「……僕は、箒のよく知る昔のお兄ちゃんが、どんな人だったかなんて知らない…」

シャル「でも!その頃のお兄ちゃんは“優しい心”を持った人だったんでしょ!?」

箒(……昔の、アイツ…)


『箒…離ればなれになっても、俺達はずっと仲間だ!』


箒「……そうだ、あの頃の想は気立てが良くて、誰よりも優しくて…。そう、良い奴だった…」

箒「だが、今の想は……」

シャル「……その優しい心は、やさぐれた今になっても何ら変わってはいないんだよ」

箒「……何?」

シャル「誰よりも人の痛みに敏感で、それを黙って見過ごせない…
    だからこそ、お兄ちゃんは何時だって放っておけなかったんだ…
    セシリアの事も、鈴の事も、僕の事も…」

シャル「そして…」クルッ


VTラウラ『───』


シャル「ラウラの事も…」

箒「………」



ザッ…

矢車「……ラウラ…」

VTラウラ『───』


箒(……想、お前…)

シャル「箒、よく見ていて。お兄ちゃんが、今やろうとしている事を…」

箒「………」

シャル「ラウラとだって…きっと分かり合ってみせるよ。
    だって、今この場で誰よりもラウラの事を心配しているのは…他でもない、お兄ちゃん自身なんだから」


886: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/10(水) 01:16:40.01 ID:d6PiGZqDO

VTラウラ『───』

矢車「……ラウラ、それがお前の答えか?
   その姿こそが…お前の真意の表れか?」

VTラウラ『───』スッ

矢車(来る……!)グッ

VTラウラ『───』ブンッ!

矢車「………」タンッ

ドゴォーンッ!

矢車(……早いな、流石に…)


───

山田「な…何て太刀筋…!」

加賀美陸(……あれが…第1回モンド・グロッソを勝ち抜いた、織斑千冬の剣技…か)

千冬「山田先生!他の教員達はまだ現場に到着しないのか!?」

山田「は…はい!こちらのアリーナへの到着まで…もう少し時間が掛かるそうです!」

千冬「急げッ!何としてでも矢車のバカを下がらせるんだ!何なら私自らが出撃して事態の収拾に!」

加賀美陸「良いじゃありませんか織斑先生。この場は矢車くんに任せてみても…」

山田「な…何をバカな事を仰っているんですかッ!?加賀美警視総監!!」

加賀美陸「大丈夫、矢車くんならきっと何とかしてくれるよ。
     それに…今彼とボーデヴィッヒさんとの間に水を刺すような真似をしたら、
     教員だろうが誰だろうが…矢車くんは容赦なく潰しに掛かって来るだろうし…」

山田「そ…そんな…」

加賀美陸「………触らぬ神に祟りなし、だよ…」


887: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/10(水) 01:24:59.60 ID:d6PiGZqDO


千冬(……はぁー…)

千冬「全くあのバカは…。山田先生」

山田「はい!」

千冬「教員達に、ピットでの待機を命じてくれ…」

山田「えっ!待機ですか!?」

千冬「……あぁ。警視総監殿の言う通り、今…あのバカは本気だ。
   本来なら、ひっ叩いてでもアイツをあの場から連れ戻して来るのが筋だが…
   教員に手を出してまでラウラとの相手を頑として譲らないという事は、
   アイツもアイツで…それ相応の覚悟があってあの場所に居るという事だ。
   ならば…アイツの気が晴れるまで、とことんラウラの相手をさせてやれば良い」

山田「し…しかし…」

千冬「無論、万が一の事態に備える必要もある。
   これ以上の戦闘続行は不可能だと私が判断した場合、
   待機中の教員達に矢車の保護とラウラの拘束を行ってもらう」

加賀美陸「……何だかそれって、矢車くんの尻拭いをさせるみたいで、教員の皆さんに申し訳ないね…」

千冬「……言い出しっぺのアンタがそれを言いますか…!」

加賀美陸「フフッ…ごめん…」

千冬(クッ!このクソオヤジがッ!!)イライラ…


888: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/10(水) 03:04:32.57 ID:d6PiGZqDO

VTラウラ『───』ブンッ!ブンッ!

矢車「………」タンッ タンッ

スカッ スカッ

VTラウラ『───』グワッ

矢車(刀を振り上げた。デカいのが来るな…)

VTラウラ『───』ブォンッ!

矢車「………」タンッ

ブワッ


ドゴォーンッ!


VTラウラ『───』

矢車「………」スタッ


加賀美陸(素早い振りだ。剣圧も凄まじい…
     しかし…矢車くんにとって避けられない攻撃ではなかったね…)


矢車(……所詮は、コピーだな…)

VTラウラ『───』

矢車「どうしたラウラ?……俺の事を叩きのめすんじゃなかったのか?
   俺の事が…心底憎いんじゃなかったのか?」

VTラウラ『───』

矢車(返事はなし、か…)

矢車「……今度は、俺から行くぞ」ダッ



889: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/10(水) 03:10:59.03 ID:d6PiGZqDO

VTラウラ『───』ブンッ!


千冬(横薙ぎの剣撃ッ!素早い一撃だッ!!)


矢車「………」グンッ

スカッ


加賀美陸「ほぅ…」

加賀美陸(既の所で、屈んで回避してみせたか…
     矢車くん、完璧に相手の太刀筋を読んでいるね…)


矢車「………」ググ…ビョンッ

グワッ!


加賀美陸(屈みの姿勢から一気に跳躍、そして…)


矢車「らァッ!!」ブンッ


千冬(跳躍と同時に飛び膝蹴りをッ!?)


ドゴォッ!

VTラウラ『───』グラッ…

矢車「ハアッ!セヤッ!!」ブンッ ブンッ

ドゴォッ! ドゴォッ!


加賀美陸(飛び膝蹴りから一転、続けざまに蹴りのラッシュ)


VTラウラ『───…』グラッ…

矢車「デヤァッ!!」ブォンッ!

ドゴォッ! ドゴォッ! ドゴォッ!

VTラウラ『───…』バチ…バチィ…


加賀美陸(これは、決まったね…)

山田「や…矢車くん…凄い…!」

千冬「……矢車の奴、相当熱が入っているな」

千冬(アイツがここまでやるとは…
   ……ラウラとの因縁があってこその力、か…)


890: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/10(水) 15:20:37.53 ID:d6PiGZqDO


矢車「その程度か…!その程度なのかラウラッ!?
   お前の抱える憎しみは!!お前の中に存在する闇の力はッ!」ブンッ ブンッ ブンッ

ドゴォッ! ドゴォッ! ドゴォーッ!

VTラウラ『───…ッ!』グッ…

プツーン…

VTラウラ『──……ヤ…グル…マ…』

矢車「………」ピタッ

矢車(……来たか)

VTラウラ『──……ヤ…グルマ…ヤグルマ…』ガクガク…

矢車「………」

VTラウラ『ヤグルマァーッ!』ブォンッ!

矢車「………」タンッ

ドゴォーッ!

VTラウラ『ヤグルマァーッ!ヤグルマァーッ!!』ブンッ!ブンッ!ブンッ!


山田「ラウラさんの動きが更に活発に!」

千冬「まさか…暴走かッ!?」

加賀美陸(……高ぶり過ぎた彼女の感情が、システムを凌駕したか…)


894: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/11(木) 09:48:17.40 ID:3wBzpkqDO


矢車(……そうだ、それで良い…
   お前の心に渦巻く感情の……その全てをさらけ出してみせろ、ラウラ…!)

VTラウラ『ヤグルマァーッ!ヤグルマァーッ!!』ブンッ!ブンッ!ブンッ!

矢車「………」タンッ ピョーン

ドゴォーンッ! ドゴォーンッ! ドゴォーンッ!

VTラウラ『ラァッ!』ブォンッ!

矢車(横薙ぎの振りか…間合いは読めている)

矢車「………」タンッ

矢車(後ろに少し下がるだけで、回避は出来る…)

VTラウラ『────』ピタッ

矢車(……何?)


千冬(途中で刀の振りを止めた…?はッ!)

千冬「マズいッ!!避けろ矢車ッ!!」


VTラウラ『ラァーッ!!』ビュンッ!


千冬(刀の振りを止めたラウラが、今度は矢車に鋭い“突き”の一撃をッ!
   さっきの横振りは、矢車に太刀筋を見誤らせるためのフェイントか!?)

千冬「矢車ーッ!」

山田「矢車くんッ!」

加賀美陸「………」


895: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/11(木) 10:55:15.47 ID:3wBzpkqDO


ブォーン!

矢車(……ライダージャンプ…)カシャ

──RIDER JUMP!──

ドシュンッ!

VTラウラ『───…ッ!?』

スカッ

千冬「なッ!」

千冬(ライダージャンプによる急速上昇を利用して、ラウラの突きを回避してみせたかッ!)

加賀美陸「……次の一撃で、勝負が決まる…」


VTラウラ『───…ッ!!』

矢車「ライダーキック…!」カシャ

──RIDER KICK!──

矢車「ゼェヤーッ!!」ブワンッ!

VTラウラ『─ッ!!ヤグルマァーッ!!』ブォンッ!


バジィィーンッ!!


千冬(矢車の放ったライダーキックと、ラウラの振るった斬撃が激突し、競り合いにッ!!)


バリバリバリバリィ!!

矢車「ハァーッ!」

グッ

矢車「ゼァーッ!!」ググッ!

VTラウラ『──ッ!!』グッ…


千冬「矢車がラウラを押し切って!」


矢車「ラウラァーッ!」グワァーッ!

ラウラ『──ッ!!?』


加賀美陸(……決まった)


バシィーッ!

ドグワァァーンッ!!


907: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/14(日) 19:57:30.05 ID:U1hYOQ8DO


箒「なッ!爆発ッ!?」

箒(あれでは…想とラウラの身に危険がッ!)

シャル「……お兄ちゃん…」

シャル(……僕は信じてるからね、お兄ちゃん…)ギュッ

シャル「大丈夫…お兄ちゃんなら、きっと…」


メラメラ… メラメラ…


908: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/14(日) 20:06:10.15 ID:U1hYOQ8DO

───

──




矢車(……ここは、何処だ…?)



『希有遺伝子実験体C0357。お前の新たな識別名は、ラウラ・ボーデヴィッヒだ』



矢車(……これは…)



『ヴォーダン・オージェの移植…?ISとの適合性を上げるための実験だと?』



矢車(………)



『──ッ!!ふざけるなッ!私はまだ戦える!戦えるんだッ!!』



矢車(……そうか、ここは…)



『お前達の教官として本日付で配属となった、織斑千冬だ』



矢車(……ラウラの心に刻み込まれた忌まわしき過去…
   そして、織斑千冬という名の新たな光を見つけ出すまでの…その記憶の廻廊、か…)



909: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/14(日) 20:52:34.87 ID:U1hYOQ8DO

~ラウラの精神世界(アンダー・ワールド)~


ラウラ『………』

矢車『……よう、ラウラ…』

ラウラ『……矢車、か…』

矢車『……何時もの覇気はどうした?お前らしくもない…』

ラウラ『……もう、怒る気力も失せたさ…
    ……私の…完敗だ……』

矢車『………』

ラウラ『どうやら…全てお前の思惑通りに行ったようだな。
    お前の目当てであった私の心の闇の正体とやらも…無事掴む事が出来たのか?』

矢車『……あぁ。お前の心の中を覗いて、俺は全てを知った…
   お前が戦争のための道具として、人工的に造り出された存在である事も。
   ISの適合性を上げるための処置が失敗し、出来損ないの烙印を押された事も…』

矢車『……お前の中で、織斑千冬という人間が如何に大きな存在であるのかという事も…』

ラウラ『……フッ、そうか…。全て…見られたのか…』

矢車『………』

ラウラ『それで?お前は私の心の中なんぞを覗いて、一体何を感じ取った?
    そんなものを見たところで…得る物など何も無いだろうに…』

矢車『……いや、収穫はあった』

ラウラ『何…?』

矢車『お前の心の痛みに触れて、俺は…ある重要な事を知ることが出来た』

矢車『そう…お前が“俺と同じ地獄”を味わっていたって事がな…』


912: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/14(日) 22:35:52.06 ID:U1hYOQ8DO

ラウラ『同じ地獄…だと?……貴様、一体何を根拠にそんな戯言を…』

矢車『……俺はかつて、とある組織の特殊部隊の隊長として、戦いに明け暮れる日々を送っていた…』

ラウラ『……何?』

矢車『フッ…“何を訳の分からない事を言っているんだこの男”って感じの顔してんな…
   まぁいい…黙って聞いてろ』

ラウラ『………』

矢車『完全調和《パーフェクトハーモニー》……それが俺と、俺の率いる部隊の信念だった…
   チームプレーを何よりも尊重し、身勝手なスタンドプレーを許さない…。1人は部隊の為に、部隊は1人のために…
   俺の部隊は、その信念の下に集い、戦い、数多くの戦果を上げてきた…』

矢車『……どいつもこいつも…みんなキラキラしていて…
   今の俺にはあまりにも眩し過ぎる…正に光に満ち溢れた日々を送っていた…』

矢車『……何もかもが、上手く行っていた…』



──『おばあちゃんが言っていた…』──



矢車『……あの男と、出会うまでは…』



916: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/15(月) 03:28:04.90 ID:kmn1hu4DO

ラウラ『あの男…?』

矢車『……俺の持つ力と同じ力…ゼクターに選ばれた男だ…
   組織への介入を再三断り続けたその男は、組織によって危険因子とみなされ、
   遂には…組織の抹殺対象となった…』

矢車『組織の命令は絶対だ。だが、俺はその組織の命令以上に…奴に対して強い執念を燃やしていた…』

矢車『それが…俺の誤ちだった…』

ラウラ『………』

矢車『俺は、ただひたすらにその男を倒す事だけを考え…戦った。
   脇目も振らずに、奴との戦いを優先して…。部下達の存在など、この時は眼中にも無かった。
   そう…俺は奴との私闘に専念するあまり、周りの状況が見えなくなっていた。
   部下達の助けを求める声すら…俺の耳元には、何時しか届かなくなっていた…』

矢車『……気が付いた頃には、もう…全てが手遅れだった…
   俺は、部下達を見殺しにしていた…
   俺の身勝手な行動が招いた、哀れな結果がそれだった…』

ラウラ『………』

矢車『結果、俺は隊長としての地位も、名誉も、力も失い…
   信頼していた部下からも見捨てられ…組織からも、お払い箱となった…』

矢車『……そう…俺は、実験の失敗により出来損ないの烙印を押されたお前のように…
   要らない物だと罵られ、ゴミのように捨てられた…脱落者の1人だ…』


921: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/15(月) 04:15:16.15 ID:kmn1hu4DO

ラウラ『……私とお前が、同じだと…?』

矢車『………』

ラウラ『……ならば、何故私とお前でこうも違う?
    何故…お前はそれ程までに強いのだ…?』

矢車『……さぁな。俺が力を得た理由なんて…もう、とっくの昔に忘れた。覚えちゃいない…』

ラウラ『………』

矢車『だがなラウラ…これだけは、確実に言える』

矢車『力なんて、持つだけ無駄だ。
   どれ程強力な力を持っていようが、そんなもの…肝心な時にはクソの役にも立たない…』

ラウラ『……何?』

矢車『俺は…お前の言う“強さ”とやらを持っていながら…
   本当に大切なものですら、守れやしなかった…』

ラウラ『……大切な、もの…?』

矢車『……それだけではない。身に余る強大な力は、何れ…己自身を滅ぼす原因となる』

矢車『ラウラ…お前もこれ以上力を求めるのは…織斑千冬の影を追うのは止めろ』

ラウラ『……貴様…何を…』

矢車『同じ痛みを味わった者だからこそ分かる。
   お前が織斑千冬と言う名の光を求め、足掻き続けたところで…
   逆に…お前の苦しみは増すばかりだ。何も報われやしない…』

ラウラ『な…何を…!』

矢車『お前も…薄々気付いている筈だ。
   光を求めたその先にあるのは…決して自分が救われる明るい未来ではない…
   待っているのは、苦しみに満ち溢れた絶望の道…暗闇だけだってな…』



922: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/15(月) 05:19:08.41 ID:kmn1hu4DO

ラウラ『……それが…一体お前と何の関係があると言うのだ…?』

矢車『……あっ?』

ラウラ『私がどれ程苦しもうが…お前には一切関係のない話ではないか。
    いやむしろ…お前の事を憎んでいる人間が1人、そのために破滅するのかもしれないのだぞ?
    フッ…結構な事じゃないか…。お前に一々ちょっかいを出す邪魔者が居なくなるのだ。
    お前にとっては、願ったり叶ったりの話では…』

矢車『……そんな事、絶対にさせるか…』

ラウラ『えっ…?』

矢車『ラウラ、これ以上…お前を傷付けさせやしない…』

ラウラ『や…矢車…?』

矢車『お前は俺が守る。絶対に…』スッ…

ギュッ

ラウラ『─ッ!?貴様何をッ!?』

矢車『……俺を憎みたきゃ好きなだけ憎め…。何時でも相手になってやる』

ラウラ『なっ……』

矢車『だがな…もう、1人で何もかも抱え込むのは止めろ…
   お前の苦しみは…お前の心の闇は……俺が、一緒になって背負ってやる』

ラウラ『………』

矢車『お前が嫌だと言っても、俺は止めるつもりはないぞ…
   どれ程拒まれようとも…お前は、俺が……』

ラウラ『……矢車…』

矢車『……この手は、もう絶対に離さない…
   今度こそ…もう二度と……』

ラウラ『……何故だ、矢車…。何故…』

矢車『………』

ラウラ『……何故お前は…敵である私の事を…こんな…』

矢車『……さぁな…』




──

───


930: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/18(木) 15:17:25.72 ID:acAhCGlDO

~保健室~


ラウラ「ま…待て矢車ッ!」ガバッ


シーン…


ラウラ(……ここは…?)

千冬「目が覚めたか?ラウラ」

ラウラ「……織斑…教官…?……うッ!」ズキッ!

千冬「……軽い火傷と打撲だそうだ。
   あまり動くな。傷に障る」

ラウラ「……はい…」

千冬「全く…矢車の奴が機転を利かせて、即座にクロックアップとやらを使い
   お前をあの爆発の中から助け出さなければ…今頃その程度の傷では済まなかっただろう…」

ラウラ「……矢車が、私を…?」

千冬「フッ…皆が固唾を呑んで二人の安否を確認している最中、
   矢車の奴は既にお前の事を助け出していた…という訳だ」



931: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/18(木) 15:23:08.40 ID:acAhCGlDO

ラウラ「……私は…一体?」

千冬「……VTシステム。お前も聞いた事があるだろう?」

ラウラ「……研究はおろか…開発、使用、その全てが禁止されているという。あの…」

千冬「そうだ。それがお前のISに搭載されていた。
   お前の精神的な渇望、願望等と言った強い感情がトリガーとなり、そのシステムを発動させたらしい」

ラウラ「………」

千冬「……何を望んだかは、言わなくても分かる。
   何せあの時のお前は、矢車の名前を叫びながら剣を振るっていたのだからな…」

ラウラ「………」

千冬「お前は…それ程までに、アイツの事を憎んでいたのか…」

ラウラ「……はい」

千冬「ラウラ、それば“誰のための怒り”だ?」

ラウラ「えっ…?」

千冬「私のためを思って怒り、矢車に牙を向けたのだとしたら…それは、大きな間違いだ」

ラウラ「………」

千冬「前にも言った通り…私はアイツに腹を立てる時こそあれ、アイツに対して恨みの類いの感情を抱いた事など、一度もない。
   お前が私のためを思って剣を振るったのだとしたら…私にとってそれは、単なるありがた迷惑にしか過ぎない」

ラウラ「……教官…」

千冬「ラウラ・ボーデヴィッヒ。私の事を真に思い、考えているのだとしたら、
   もう二度と…矢車想に対して私怨をぶつけるのは止めろ。良いな?」

ラウラ「……はい」

千冬「………」

千冬(……意外と、聞き分けが良いな…)


933: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/19(金) 19:51:08.74 ID:TLKdHQfDO

千冬「そうか。分かれば良いのだが…」


ガチャ


千冬「んっ?」クルッ


矢車「………」


ラウラ「……矢車…」

千冬「……ノックくらいしろ、馬鹿者が…」

矢車「………」スタスタ

ラウラ「………」

矢車「……ほら」コトッ

ラウラ「……これは…?」

矢車「差し入れだ。腹、減ってるだろ?」

千冬(……麻婆豆腐?)

ラウラ「あ…あぁ…」

千冬(……フッ…)ガタッ

千冬「さて…私もそろそろ行くとしよう。
   今回の事件の後始末が、まだたんまりと残っているのでな…」

ラウラ「あっ…あの!織斑教官ッ!」

千冬「んっ?」

ラウラ「……御迷惑を、お掛けしました…」

千冬「……私よりも先に謝るべき相手が、お前の横にいるだろ?」

ラウラ「………」

千冬「それと…助けてもらった礼くらい、ちゃんと言っておけよ」クルッ

スタスタ

バタンッ


ラウラ(……教官…)


───

千冬「……はぁー…やれやれ…」

千冬(全く…矢車の奴を見つけ出したら、開口一番に説教をしてやるつもりでいたが…
   ラウラがいる手前、叱るに叱れん)

千冬「まぁ良い。矢車には、後できっちり御灸を据えてやるとしよう…」


936: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/21(日) 21:37:45.19 ID:mtNG+MFDO

───


ラウラ「……矢車…私は…その…」

矢車「……はぁー…」スチャ

ラウラ「………」

矢車「……飯、早く食わないと冷めるぞ?」

ラウラ「えっ?……あ、あぁ…」スッ

ズキッ!

ラウラ「─ッ!!」ビリッ

矢車「……傷、痛むのか?」

ラウラ「あぁ…まぁな…」

矢車「……そうか…」スッ

スクッ

矢車「ほら、口開けろ。俺が食わせてやる」

ラウラ「な…何…?」

矢車「いいから、ほら」グイッ

ラウラ「……あ、あぁ…」アー

パクッ

ラウラ「………」モグモグ…

矢車「………」

ラウラ「………」ゴクッ

矢車「………」

ラウラ「……う…美味い…!」

矢車「……そうか…」スクッ

ラウラ「………」

矢車「ほら、もう一口…」グイッ

ラウラ「……何故だ?矢車…」

矢車「あっ?」

ラウラ「……何故…私に構う…」

矢車「………」

ラウラ「私は…お前に対して様々な仕打ちを行ってきた張本人だぞ?
    お前の妹達に手を上げ……お前の事を葬る為に、VTシステムにも魂を売った人間だ…」

ラウラ「それなのに…こんな…」

矢車「………」

ラウラ「矢車…お前は私の事が憎くないのか?
    恨めしいとは…思わないのか…?」


937: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/21(日) 21:40:13.69 ID:mtNG+MFDO

矢車「……思わないな。これっぽっちも」

ラウラ「………」

矢車「逆に…俺はお前の事が、心配だった…」

ラウラ「……えっ?」

矢車「お前は…自身の心に闇を抱える身でありながら、その心の闇との向き合い方ってのを全く知らない奴だった…
   それは…下手をすれば己自身を破滅に導く可能性のある、危険な事だ…」

ラウラ「な…何をバカげた話を…」

矢車「現に、お前はあの時…」


VTラウラ『ヤグルマァーッ!ヤグルマァーッ!!』


矢車「自分自身の中に巣食う強大な闇に心を呑まれ、暴走を始めただろ?」

ラウラ「………」

矢車「……俺は、そんな危なっかしいお前の事が…ほっとけなかったんだよ…」


942: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/21(日) 22:49:31.80 ID:mtNG+MFDO


ラウラ「あ…危なっかしいだと!?貴様ッ!私を子供扱いしているのか!?」

矢車「別に…。ほれ…」スクッ

ラウラ「このッ!あむっ!」パクッ

矢車「………」

ラウラ「ふんっ!」モグモグモグ…

ゴクッ

ラウラ「………」

ラウラ(……美味しい…)


矢車「……フッ…」

ラウラ「な…何が可笑しい!?」

矢車「お前の方こそ、俺の事が憎くて憎くて仕方がないんじゃなかったのか?
   前のピリピリした警戒心は、一体何処へ行ったのか…」

ラウラ「そ…それは…だな……」

矢車「………」

ラウラ「……さっき、織斑教官に言われたのだ…
    “お前が私のためを思って剣を振るったのだとしたら…私にとってそれは、単なるありがた迷惑にしか過ぎない”…とな」

矢車「………」

ラウラ「私が教官のためを思い、良かれと思って取った行動は…
    結局のところ、あの人にとっては単なる迷惑事にしか過ぎなかった…
    なら…私が今までやってきた事は、一体何だったんだ…?
    そんな事を考えている内に、何だか…お前に対して腹を立てる事がバカらしく思えてな…」

矢車「………」

ラウラ「だが、勘違いするなよ!
    自分の気持ちの整理が付かないというだけで、私はお前を認めた訳では…」

矢車「……フッ…そうかい…」スクッ

ラウラ「むっ…!」パクッ モグモグ…


946: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/21(日) 23:46:49.81 ID:mtNG+MFDO


矢車「……ラウラ、いい顔になったな」

ラウラ「えっ…?」

矢車「………」ジッ…

ラウラ「……矢車…?」

矢車「……もっと、ちゃんと素顔を見せろ…」スッ

ラウラ「うっ…!」ピクッ

パラッ…

矢車「………」

ラウラ(……眼帯が…)

矢車「………」

ラウラ「クッ……笑いたければ、好きなだけ笑えばいい…
    お前も知っての通り、この左目は私が出来損ないである事の……その証だ…」

矢車「………」

ラウラ「………」

矢車「……笑うかよ…」スッ…

ラウラ「えっ…?」

グイッ

ピタッ

矢車「………」ジッ…

ラウラ「や…矢車…?」

矢車「……綺麗だな。お前の目…」

ラウラ「なっ…」

矢車「金色で、輝かしくて…眩し過ぎる程に…綺麗だ」

矢車(……だが、その瞳の奥には…確かに闇が宿っている…)

矢車「本当に、いい目だ…」

ラウラ「……矢車…」

矢車「ラウラ…もう二度と、何でもかんでも一人で背負い込もうとするのは止めろ。
   お前の苦しむ姿は…見ていて辛い…」

ラウラ「………」

矢車「ラウラ、俺の妹になれ」

矢車「俺に…お前の事を、守らせろ…」


948: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/21(日) 23:56:08.93 ID:mtNG+MFDO


ラウラ「なっ…!」

ラウラ(い…妹…だと?)

矢車「………」

ラウラ「……それはつまり…地獄兄妹の一員になれ、という事か?」

矢車「……あぁ…」

ラウラ「……フッ…。全く、お前の言動は理解不能だ…
    自分の事を貶めようとした人間を、今度は仲間に迎え入れようとは…」

矢車「………」

ラウラ(……だが、不思議と悪い気はしないな…)

ラウラ(何でだろうな…あんなに憎かった相手なのに……)

ラウラ「……まぁ良い。……考えておこう…」

矢車「……そうか…」スクッ

ラウラ「………」

矢車「ほら、冷める前に食べろ」グイッ

ラウラ「……あぁ…」パクッ

ラウラ「………」モグモグモグ

矢車「………」

ラウラ「……やっぱり美味いな。この料理」

矢車「……そうか…」


949: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/22(月) 00:18:41.42 ID:D5jwDsnDO

~保健室のドアの前~

箒「………」チラッ

───

ラウラ「ところで…一体この料理は、何と言う料理なのだ?」

矢車「……麻婆豆腐だ…」

ラウラ「……まーぼー…トゥーフー…?」

矢車「…………」

───

箒「………」

箒(想…お前、本当にラウラと…)


シャル『ラウラとだって…きっと分かり合ってみせるよ』


箒(……シャルル、お前の言う通りだ…
  想は、大した奴だよ…。本当に…あのラウラと分かり合ってみせるだなんて…)

箒「………」

箒(だが…やはり私には分からないんだ…アイツの考えが…
  今の私には…理解出来ないんだ…)



953: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/22(月) 01:20:52.67 ID:D5jwDsnDO

~矢車さんの部屋~

ガチャ

矢車「……ただいま。シャルロット…」

シャル「お帰りなさい、お兄ちゃん!」

山田「あっ、矢車くん!丁度良いタイミングで帰って来ましたね!」

矢車「……あっ?」

シャル「山田先生が僕達に話があるんだって、今さっき来たんだ」

矢車「………」

山田「実は、お二方にとっても良い朗報があるんです!」

シャル「朗報…?」

山田「何と!男子専用の大浴場が、今日から解禁される事になりましたッ!」

シャル「えっ…えぇぇぇーッ!!?」

矢車「………」



~大浴場の脱衣場~

シャル「……お兄ちゃーん…」チラッ

ガラ~ン…

シャル(脱衣場には居ない…。先にお風呂に入ったのかな?)

シャル「………」

シャル(……良い機会だし…これからお兄ちゃんに全てを打ち明けよう…
    僕の考えを…僕が今しようとしている事を…)ヌギヌギ

シャル「お…お兄ちゃん。入るね…」ガラガラッ


~大浴場~

ガラ~ン…

シャル(……あれ?居ない?)



954: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/22(月) 02:16:26.47 ID:D5jwDsnDO

~校庭~


ザバーン!

矢車「……はぁー…」バシャ

矢車(大浴場…今の俺には眩し過ぎる)

矢車(闇の世界の住人である俺には、この“地獄ドラム缶風呂”がお似合いだ…)

矢車「……ふぅ…」ホカホカ

ラウラ「お…おい!」

矢車「んっ?」クルッ

ラウラ「……よう、矢車」

矢車「……ラウラか…」

ラウラ「……お前…こんな所で、一体何をしているんだ…?」

矢車「……見ての通りだ。風呂に入っている…」

ラウラ「そ…そうか…」

矢車「………」

ラウラ「………」

矢車「………」

ラウラ「……よし!」ヌギヌギッ

バッシャー!

ラウラ「うわッ!」ビチャビチャ

矢車「……何をしている…?」

ラウラ「な…何って…一緒に風呂に入ろうと…」

バッシャー!

ラウラ「うわッ!?」ビチャビチャ

矢車「……は?」

ラウラ「に…日本の仲睦まじい兄弟は、時折こうして一緒に風呂に入ると聞いて、それで…」


955: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/22(月) 02:29:26.91 ID:D5jwDsnDO

矢車「……兄弟?…って事は、お前…」

ラウラ「……あぁ…私は決めたぞ。矢車…」

矢車「………」

ラウラ「私は、お前の妹の一人として…お前と共に生き、お前と共に死ぬ人生を選ぶッ!」

ラウラ「そうッ!矢車想!貴様は私の兄だッ!異論は認めんッ!!」ビシィッ

矢車「……フッ…そうかい…」

ラウラ「地獄兄妹としてやるべき事は、お前から追々聞き出すとして…
    まず手始めに、お前と一緒の風呂に入るッ!」ヌギッ

バッシャー!

ラウラ「うわッ!?」ビチャビチャ

矢車「生憎だが、この地獄ドラム缶風呂は一人用だ。
   二人では、とてもじゃないが入る事は出来ん…」

ラウラ「そ…そうなのか?」

矢車「あぁ…無理だ」

ラウラ「そ…そうか、入れないのか…」シュン

矢車「………」

ラウラ「私は…生まれてこの方、“家族”と呼べる存在を知らずに生きてきた…」

矢車「………」

ラウラ「だからこそ…私は…」

矢車「……はぁー…」ザバーン

スタッ

ラウラ「……矢車…?」

矢車「……ちょっと待ってろ」
クルッ

スタスタ…


959: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/23(火) 01:32:42.20 ID:2WJVpmgDO

~数十分後~


ザバーン!

矢車「……ふぅ…」ホカホカ


ザバーン!

ラウラ「……ふぅ…」ホカホカ


矢車「どうだラウラ?湯は傷にしみないか…?」

ラウラ「あぁ、問題ない。良い湯だ…」チャポ…

矢車「……そうか…」

ラウラ「しかし…この短時間でドラム缶風呂を2つも用意するとは…
    ドラム缶なんぞ、一体何処から調達して来たのだ…?」

矢車「あぁ…これは、体育倉庫の中から拝借して来た代物だ…
   訓練に使う小道具か何からしい」

ラウラ「…成る程」



963: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/23(火) 02:28:48.66 ID:2WJVpmgDO


ラウラ「………」チャポ…

ラウラ「……星が、綺麗だな…」

矢車「……あぁ…。だが…所詮アレらは“届かぬ光”だ…」

ラウラ「………」

矢車「いくら必死に手を伸ばしても、触れる事さえ出来ない光…
   今の俺達には…あの小さな星々の瞬きでさえ、あまりにも眩し過ぎる…」

ラウラ「……分かっている…分かっているさ…」

矢車「………」

ラウラ「……だが、決して手の届かない遠い存在であったとしても、
    あの星々が…この夜空の中で美しく輝いているという事実に、何ら変わりはない…」

矢車「………」

ラウラ「……矢車、私も…もう織斑教官の影を追うのは止める」

ラウラ「例え…あの人の存在が、あの瞬く星々のように…
    触れる事さえ出来ない程の…遠い存在だったとしても…
    あの人が…私にとってのかけがえのない…大切な人であるという事実に、何ら変わりはないのだから…」

矢車「……そうか…」

ラウラ「………」チャプ…

矢車「………」

ラウラ「……そ…そう言えば!私が地獄兄妹の一員となった以上、
    これからは、お前の呼び方を地獄兄妹風に改めなければならないな…」

矢車「………」

ラウラ「よし!お前の事はこれから“兄上”と呼ぶことにしよう!
    うむ!よろしく頼むぞ!兄上ッ!」

矢車(……兄上、か…)

964: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/23(火) 03:32:34.23 ID:2WJVpmgDO

教員「こらーッ!貴方逹ーッ!!一体そこで何をしているんですかーッ!?」ダッダッダッ…


ラウラ「な…何だ?」

矢車「……チッ…もう気付かれたか…」ザバーン

ラウラ「やぐ……あ、兄上…?」

矢車「ここからズラかるぞ、ラウラ。
   あの女に捕まったら…色々と面倒な事になる…」

ラウラ「捕まる…だと?……まさか、野外での入浴行為は…禁止されていたのか!?」

矢車「……まぁな…。ほら、今更着替えてる時間なんかないぞ…
   タオルだけでも身体に巻いて、今直ぐ湯槽から出て来い。
   脱いだ服は、小脇にでも抱えていろ」ポイッ

ラウラ「あ、あぁ…」パシッ

ザバーン

ラウラ「………」マキマキ


矢車「……はぁー…」パカッ

ピョーン ピョーン ピョーン

パシッ

矢車「変身…」カシャ

──HENSHIN──

キュイキュイキュイーン

──CHANGE! KICK HOPPER!──

ラウラ「……兄上、何故変身を…?」

矢車「……これで、着替える手間が省けるだろ?」

ラウラ「な…成る程…」

矢車(……それと…)スッ…

ラウラ「えっ…?」

ヒョイ

ラウラ「な…兄上!?何故私を抱き抱えて!?」

矢車「……こっちの方が、手っ取り早く逃げられるからな…」

ラウラ「……な…成る程…」

矢車(……さて…準備は出来たな…)

矢車「……行くぜェ…ラウラ…」ググッ…

ラウラ「う…うむッ!」グッ

ラウラ(兄上となら、何処までもッ!)


教員「あッ!待ちなさーい!!」

矢車「ハァッ!!」グワッ!


ドシューンッ!!


教員「あーもうッ!また逃げられたー!!」


ピョーン…  ピョーン…

973: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/23(火) 21:43:13.82 ID:2WJVpmgDO

~アリーナ~


千冬「……はぁー…」

千冬(後始末は、滞りなく済んだか…)

千冬「………」

千冬(……出来る事なら、あの男にはもう二度と関わりたくないな…)


───


加賀美陸「今回は…私の無理難題にお付き合いいただき、誠にありがとう御座いました…
     お陰様で、とても良いものが見られましたよ…」

千冬「……いえ…今回の一件で、この学園の管理体制の甘さが露呈しました…
   このような醜態を晒す事になるとは…全くお恥ずかしい話です…」

加賀美陸「……そう…」

千冬「………」

加賀美陸「………」ヌッ

加賀美陸「……白騎士事件の件は、何も心配する事ないからね…」ボソッ

千冬「──ッ!?」ビクッ!

加賀美陸「実は…警察内部で白騎士事件の真相について知っているのは、私一人だけなんだ…」

千冬「な…何…?」

加賀美陸「心配しなくても、私はそれを口外するつもりなんてないから、ね…」

千冬「……そう…ですか…」


プッ プッ

運転手「加賀美警視総監、そろそろお時間です」

加賀美陸「……では、私はこれで…」

千冬「……はい…」

加賀美陸「……織斑先生」

千冬「……はい?」

加賀美陸「……矢車くんの事を、宜しくお願いします…」バタンッ


ブロロロー…


千冬「………」


───


975: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/23(火) 23:26:01.92 ID:2WJVpmgDO

───


千冬(……加賀美陸…。結局…あの男は何者だったのだろうか…)


prrr… prrr…

千冬「………」ピッ

千冬「……私だ…」

束『ハロー!ちーちゃーん!!』

千冬「……束…」

束『ひっさしぶりー!元気してたー!?
  もー束さんはちーちゃんに会いたくて会いたくて仕方がなくて…』

千冬「………」スッ

束『わーッ!ちょっと待ってちょっと待ってーッ!
  もしかして今電話切ろうとしてるー!?』

千冬「………」

束『お願ーい!切らないでよー!ちーちゃーんッ!
  今からすっごい大切な話があるんだからー!』

千冬「……用があるのなら、さっさと要件を言え。私も暇ではないのだぞ…」イライラ

束『いやー!ちーちゃんには“世界の真実”ってヤツを知っておいてもらおうと思ってねー!
  それを教えるために、いつも多忙な束博士が貴重な時間を使って、ちーちゃんに電話を掛けたんだよー!
  まぁちーちゃんとの通話なら、24時間いつでもウェルカムなんだけどねー!』

千冬「……世界の真実…だと?」ピクッ

束『そう!この天才博士束さんが、包み隠さず全部教えてあげるよッ!』

束『かつて…この地球上で勃発した、ZECT対ワームの戦いの歴史!』

束『マスクドライダーシステムと、ISの関係性について!』

束『……そして…マスクドライダーの一人として、ワームとの戦いに参加した、
  そーくんの…その壮絶な過去についての話も…ね』


978: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/24(水) 01:21:12.80 ID:IhBnuQ+DO


────

~篠ノ之束のラボ~


束「じゃあ!そういう事だから!
  …うん!じゃーねーちーちゃん!愛してるよー!」

プツンッ

ツー… ツー… ツー…

束「……これで良し、と…」

──「……織斑千冬に全ての真相を語るとは…一体どういうつもりだ?篠ノ之博士…」

束「別にー、深い意味はないよ」

──「………」

束「ただ…ちーちゃんは私の数少ない理解者だから、
  事情さえ分かってくれれば、きっとちーちゃんも私達に協力してくれるって思って!」

──「……協力者が増える事は、望ましい事ではあるが…」

束「………」

──「矢車の過去まで彼女に語った理由は何だ?
   他の話は兎も角…矢車の件はどう考えても知る必要のない情報だ。
   そんな取るに足りない情報を彼女に伝えて、一体お前に何の得がある…?」

束「……んー、そーくんの話をちーちゃんにしたのも、別に深い意味は無かったかなー…」

──「………」

束「ただ…全ての真実を知ったちーちゃんが、そーくんの事を説得してくれて…
  あわよくば、そーくんが私達の仲間になってくれたり…
  ……なーんて展開を、この天才束さんは期待しちゃっていたりして!」

──「……お前にとっては酷な話だが、それは期待するだけ無駄な事だと思うぞ」

束「えー!」

──「いくらこちらが事情を説明しようが…あの男が俺達に協力する事など、万に一つの可能性も無い」

──「例え人類が破滅の危機に直面したとしても…
   アイツはそれらに関わりを持たないようにと、黙りを決め込むだろう…」

──「……アイツは、そういう男だ…」

束「あーもーッ!酷いよ!天くん!
  私と箒ちゃんの幼なじみを、そんなに悪く言うだなんてーッ!
  もう!私と天くんの同盟関係も、今日限りで終わりにしちゃうよー!」

──「……その呼び方で俺を呼ぶな。篠ノ之博士…」


──「俺は天の道を往き、総てを司る男……」

──「俺の名は…」スッ…



───「天道、総司だ」───



980: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/24(水) 01:23:40.97 ID:IhBnuQ+DO





──つづく



981: ◆4cmyCM./Qw 2014/09/24(水) 01:24:59.00 ID:IhBnuQ+DO

デデーン!

次回、仮面ISキックホッパー!

矢車「……買い物に付き合え…だと?」

鈴「このままじゃアイツ…“臨海学校には行かない”って駄々こねるんじゃ…?」


風間「─ッ!あなたは…!」

加賀美新「よせッ!天道ォーッ!!」


デレー


引用元: 【続】矢車想「IS学園…今の俺には眩し過ぎる」