79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:27:41.48 ID:17Loxj9w0
ロック「……なんでだ?」

バラライカ「言い方が悪かったようね。今のは質問じゃなく、命令」

ロック「おいおい、俺の冴えない頭でもわかるように説明して欲しいな」

バラライカ「ロック、貴方何か勘違いしてない?」

ロック「えっ?」

バラライカ「私は言ったわよ、青空も泣き出す位わかりやすくね」

ロック「いや、まだ何も聞いてな――」

バラライカ「私の家に来いというのは、命令だって」

ロック「……わかりました」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:31:37.05 ID:17Loxj9w0
バラライカ「良い子ねロック。“イエス”が得意なのはヤポンスキだからかしら?」

ロック「あんたにかかれば、誰だって首を縦に振るようになるさ」

バラライカ「あら、そう?」

ロック「さもなきゃ、頷く頭が首ごと無くなるからね」

バラライカ「フフ、良くわかってるじゃない」

ロック「それで? 何時に行けば良いんだ?」

バラライカ「そうね……夕食時に来て頂戴」

ロック「まるで、メインディッシュの食材にでもなった気分だよ」



バラライカ「察しが良いわね」



ロック「……何?」


82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:37:11.26 ID:17Loxj9w0
ロック「笑えない冗談はよしてくれないか?」

バラライカ「焼き加減はミディアムレアがお勧めよ」

ロック「……!?」



バラライカ「冗談よ。真面目なのは良い事だけど、その反応は失礼ね」



ロック「……ほっ。……焼ける所か、凍り付いちまう所だった」

バラライカ「ああ、でも食材は洗ってきて貰おうかしら。迷うわね」

ロック「どういう意味だ? まさか、一緒に料理でもしようって訳じゃないだろ?」

バラライカ「ええ。料理をするのは私で、食べるのも、食べられるのも貴方よロック」

ロック「何を言ってるんだ……?」

バラライカ「“そういう事”よロック」


85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:43:30.24 ID:17Loxj9w0
バラライカ「いいわ、19時頃に迎えを寄越すから」

ロック「そりゃあ随分気が利いてるな」

バラライカ「ええ、途中で貴方が逃げ出さないようにね」

ロック「……はは、何をされるのか不安になってきたよ」

バラライカ「安心しなさい。“とてもとても素敵な事が起きる”だけだから」

ロック「……」

バラライカ「それじゃ、後でね」

ロック「……食材洗いはどうすりゃ良いんだい?」

バラライカ「しなくて良いわ。貴方は、“そのまま何もせずに来れば良い”の」

ロック「服装の指定は?」

バラライカ「そうねぇ……」



バラライカ「――リボンでもつけて来る?」



ロック「……遠慮しとくよ。それじゃ、まるでくだらない……本当にくだらない冗談だ」


88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:50:20.26 ID:17Loxj9w0
     ・    ・    ・



ロック「バラライカの迎えが来るまで、あと一時間か」



ロック「……一体、何をされるんだろうな」



ロック「ダッチに相談しようと思ったんだけど居ないし、

    ベニーもパーツの買出しに行くって……」



ロック「……やれやれ、俺は“どうされちまう”んだろうな」



コンコン!



ロック「開いて――」



ガチャッ!



ロック「――るぞ。……って、レヴィ、返事位は待てないのか?」

レヴィ「ロック、あたしを犬っころと同じに言うなよ」

ロック「そうだな、確かに犬は待つから同じじゃない」


90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 15:54:21.77 ID:17Loxj9w0
ロック「何の用だ?」

レヴィ「おいおい、随分とつれない言い方をするじゃねぇか」

ロック「生憎だけど、俺はもう“吊られてる”状態なんだ」

レヴィ「そりゃどういう意味だ?」

ロック「いや……気にしないでくれ。俺が気にしたくないから」

レヴィ「なんだよ、シケた顔してんな」

ロック「そう見えるんなら、そうなんだろうな……はは」

レヴィ「丁度良い、そんな“くだらない事”は酒と一緒に飲み干して出しちまえ、な?」

ロック「いや、ちょっと先約がある。悪いな」



レヴィ「……先約?」


94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:01:56.75 ID:17Loxj9w0
レヴィ「おいおいロック、まさかアタシの誘いを断る気じゃないよな?」

ロック「すまない、どうしてもはずせない用事なんだ」

レヴィ「仕事か? プライベートか? それによっちゃ、“はずれない弾が飛び出す”事になる」

ロック「……プライベートだ」

レヴィ「……オーケイ、ロック。お前はアタシの誘いよりも優先する“ワタクシ事”があるって訳だ」



――チャキッ



ロック「待て、レヴィ!」

レヴィ「随分とシャレた恰好をしてるじゃねえか。そいつが真っ赤になったら、さぞかし愉快だろうなぁ」

ロック「落ち着けって! 冷静になってくれ!」

レヴィ「落ち着け? 落ち着くのはロック、お前の方さ」



レヴィ「冷静になれば、“優先すべき相手”ってのがわかるよな、ロック?」


96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:08:22.86 ID:17Loxj9w0
レヴィ「普段はしないような恰好をして会うのは、どれだけ良い女なんだろうな」

ロック「いいから、その物騒な物をしまってくれって……!」

レヴィ「ははっ、やっぱり女か。……相手が教会のクソビッチだったら三発、それ以外なら一発で勘弁してやるよ」

ロック「……どっちにしろ関係ないじゃないか。むしろ、“弾が出る前に死にそうだ”」

レヴィ「冥土の土産に聞いといてやるよ。相手は誰だ?」



ロック「……バラライカだ」



レヴィ「あん? な、何だって?」

ロック「バラライカ、だ」

レヴィ「……随分変わった名前だな。アタシの記憶じゃ、一人しか心当たりがない」

ロック「奇遇だな。俺も一人しか知らないよ」


99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:17:27.51 ID:17Loxj9w0
レヴィ「ロック、そいつは何の冗談だ? どうして姉御とお前が“仲良くプライベートで会う”んだ?」

ロック「さあね。俺だって、“とても丁寧にお誘いを受けた”だけだからわからない」

レヴィ「仕事じゃねえんだな? それか、何かヤバい事でもやったのか?」

ロック「仕事じゃないし、俺がバラライカに呼び出される様な悪党に見えるか?」

レヴィ「……」

ロック「“そういう事だ。だから、後から入ったお前の誘いは断らざるを得ない”」

レヴィ「まあな。姉御の私的な誘いを断るなんて奴は、このロアナプラに“いられない”」

ロック「だろ?」

レヴィ「うっし! そうとわかりゃ話が早い!」

ロック「……“何の話”だ?」



レヴィ「アタシも付いて行くってことさ。“そういう話”だよ」


102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:25:35.75 ID:17Loxj9w0
ロック「おいおい、本気か?」

レヴィ「本気さ。まさか、アタシが冗談を言えるような人間だと思ってたのか?」

ロック「そりゃあな。“銃を撃ったら弾が出るってのと同じ位”思ってた」

レヴィ「……何だよロック。まるでアタシに付いて来て欲しくないみたいな言い方じゃないか」

ロック「いや、そうじゃない」

レヴィ「なら、どういう事だよ」

ロック「……いや、な? どうやら迎えが来るみたいなんだ」

レヴィ「カボチャの馬車が来るのか? まるでシンデレラだな」

ロック「バラライカの事だから、銃弾もはじき返す鋼鉄の馬車を寄越してくれそうだけどね」


103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:32:22.69 ID:17Loxj9w0
レヴィ「構いやしねえよ。“馬車なら一人乗客が増えた所で平気”だろ」

ロック「でもなぁ……う~ん」

レヴィ「ロック、お前は今ひとつ状況がわかってねえみたいだな」

ロック「えっ?」

レヴィ「アタシがその気になりゃ、“今すぐにでも真っ赤なパンプキンパイが床にブチ撒けられる”んだぜ?」

ロック「……食べ物を粗末にするのは良くないな。……は~っ……やれやれだよ、本当に」

レヴィ「助かったよ、お前のおかげで“悪い子にならずに済んだ”」ニッコニッコ

ロック「あと30分で迎えが来る。準備しとけよ」

レヴィ「準備? そんな大層なもんなのか?」

ロック「バラライカが言ってたのさ」



ロック「『リボンでもつけて来る?』……ってな」


106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:42:38.42 ID:17Loxj9w0
     ・    ・    ・

――30分後



レヴィ「時間通りか。さすが姉御の使いだな」

ロック「わざわざご苦労様。ちょっと客が増えるけど、その車なら平気そうだ」



使い「……話では、ラグーン商会のヤポンスキを連れて来いという事だったが」



レヴィ「おいおい、アタシは仲間外れかい?

    それとも、その車は日本のコミックみたいに二人乗り用だって言うつもりか?」

使い「お前は連れて来いと言われていないだけだ」

レヴィ「まあ、気にするな。早くしないと姉御を待たせる事になっちまう」

使い「おい! 勝手に乗る――」



ジャカッ!



使い「!?」

レヴィ「アタシは気にするな、って言ったんだぜ。

    それとも、アタシとロックの二人乗りに変えちまうかい?」

ロック「……おいおい」


107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 16:51:49.11 ID:17Loxj9w0
ロック「……まあ、そういう訳だから頼むよ」

使い「どういう訳だ!?」

ロック「“コイツは俺の言う事なんか聞きゃしない”って事さ。困ったことにね」

レヴィ「さすがロック、良くわかってるじゃねえか」



ロック「そりゃな。分ってなかったら、“今頃俺はここに立ってられない”」



使い「……っ!?」

レヴィ「ここまでロックが説明してくれてるんだ。

    “教えられた事を守れないようじゃ、先生にキツイお仕置きをされちまう”ぜ、リトル・マウス」

ロック「さすがに俺も、“カボチャの馬車の手綱を握るのは慣れてない”から、

    言う通りにした方がいいぞ。というか、してくれ。……厄介事は勘弁だ」

使い「……わかった。乗れ」



レヴィ「“乗ってください”だろ。なあ、シンデレラ?」

ロック「俺がかぶるのは灰じゃなくて、お前の“しでかす事のとばっちり”になりそうだよ」


110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:00:08.78 ID:17Loxj9w0
     ・    ・    ・



バラライカ「……」



レヴィ「よお、どうした姉御。“そんなにシケたツラ、らしくないぜ”」

バラライカ「一つ聞くわ。レヴィ、どうして貴方がここに?」

レヴィ「なに、ちょいとばかし酒を飲もうと思ったらここに辿り着いただけさ」

バラライカ「……ロック?」

ロック「基本的に、俺には“拒否権ってものが存在しないみたい”なんだ」

バラライカ「……なんとなくだけど分ったわ。そこのお前、ご苦労だった」



使い「はっ!」



バラライカ「とりあえず下がって良いぞ。“帰って、ゆっくり休むと良い”」



使い「ありがとうございます! 失礼します!」



…バタンッ!


112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:08:35.51 ID:17Loxj9w0
レヴィ「ここが姉御の自宅か。ホテル・モスクワの大幹部様にしちゃ、やけに普通だな」

バラライカ「くつろぐ空間というのは、何も豪華なだけじゃないって事よ」

ロック「ああ、なんとなくわかるな。俺も“いつも通される部屋よりここの方が落ち着く”」

バラライカ「とりあえずソファに座っておいて。ちょっと電話してくるから」

ロック「わかった」

レヴィ「おいおい、客を招いておいて用事を残してたのかい?」

バラライカ「ええ」



バラライカ「“ちょっと急用が出来たのよ。今さっきね”」



レヴィ「ふ~ん。そいつぁ災難だったな」

バラライカ「そうね、私もそう思うわ。“ホント、気の毒よね”」


114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:16:45.36 ID:17Loxj9w0
ロック「……なあ、レヴィ」

レヴィ「どうしたよロック。こっぴどく怒られそうなガキみたいなツラして」

ロック「気のせいかもしれないんだが、なんだかバラライカ怒ってないか」ヒソヒソ

レヴィ「あん? なんでだよ」

ロック「いや、なんとなくなんだけど……“どうにも嫌な感じがするんだ”」

レヴィ「そりゃロック、お前が何かしたんだろ。

    もしかしたら、呼び出したのも姉御の機嫌が悪くなるような事が理由だったのかもな」ニヤニヤ

ロック「他人事みたいに言うなよな……」



レヴィ「それにしても、なんだが美味そうな匂いがしねえか?」

ロック「鼻をひくつかせるなよ。まるでハラペコの狼みたいだ」

レヴィ「冴えない例えだな。まあ、犬よばわりしなかった事だけは褒めてやるよ。

    ……あのクソメイドを思い出すからな」

ロック「勝手に思い出してるじゃないか……」


116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:23:13.48 ID:17Loxj9w0
バラライカ「待たせたわね」



レヴィ「早かったじゃねえか。そんなに簡単な用事だったのかい?」

バラライカ「ええ、そうね。“簡単な用事は、電話一本で済ませられるわ”」



     ・    ・    ・



使い「……ふぅ、どうなることかと思ったが、なんとか大丈夫だったな。

   それにしても、ラグーン商会のあの女……気にいらねえ」



使い「……まあ良い、無事に帰れた事だし、熱いシャワーでもあびて忘れ――」



――ドォオオオン!!



     ・    ・    ・





ロック「ちょっと聞きたいんだけど、この匂いは?」

バラライカ「あら、気付いた? 今日の夕食よ。

     “用事も済ませた”ことだし、多少はマシな気分で食べられるわ」



ロック・レヴィ「……?」


119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:37:19.28 ID:17Loxj9w0
     ・    ・    ・



レヴィ「おおっ、こいつはすげえな!」

ロック「ピロシキに、ビーフストロガノフ。ロシア料理のオンパレードだな」

バラライカ「ヤポンスキは、ボルシチよりもストロガノフの方が好みらしいわね」

ロック「そうだなぁ……確かにそうかもしれない」

レヴィ「アタシはどっちもいけるぜ」



バラライカ「聞いてないわよ」



レヴィ「なんだよ、冷たいじゃねえか。料理の方は熱々なのによ」

バラライカ「ロック、おかわりもあるから遠慮しないで良いわよ」

ロック「ああ、わかった。……もしかして、コレって?」

バラライカ「“もしかして”は、失礼な聞き方だとは思わない? ロック」

ロック「……すみません」



レヴィ「……アタシはおかわりしちゃいけないのかい?」ボソッ


121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:46:22.70 ID:17Loxj9w0
ロック「それじゃあ、いただきます」

バラライカ「めしあがれ」

ロック「……ん、これは……」

バラライカ「どう?」

ロック「……はは、下手な事を言ったら、“これ以上食べられなくなりそうだ”」

バラライカ「正直に言って良いわよ。けれど、“貴方は賢いわよね、ロック”?」

ロック「脅かさないでくれよ。せっかくの料理の味がわからなくなりそうだ」

バラライカ「……」ジーッ

ロック「うん、美味いよ。嘘は言ってない。“嘘なんてついたら、舌がなくなっちまうからね”」

バラライカ「そう……良かったわ」ホッコリ



レヴィ「姉御、おかわり!」



バラライカ「……」

レヴィ「おいロック、肉は食わねえのか? アタシが貰ってやるから感謝しろよ!」

ロック「お、おい、よせっての!」


126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:57:37.41 ID:17Loxj9w0
バラライカ「鍋はキッチンにあるわ」

レヴィ「そうかい、じゃあちょっと行って来る」

バラライカ「ごゆっくり。“温め直した方が美味しいから、頼めるかしら”?」

レヴィ「お安い御用よ。なあ、ロック」

ロック「……それは、俺がやれって事か?」

レヴィ「物分りが良いな。アタシは今食事中なんだ、席を立つのはマナー違反だろ?」

ロック「俺だって食事中だぞ」

レヴィ「おいおいロック、アタシが“お願い”してるんだぜ?」



バラライカ「レヴィ、キッチンの上の棚に上等な酒が入ってるわよ」



レヴィ「! それを早く言ってくれよ姉御! ロック、残念だがお前の出番はナシだ」

ロック「良かったよ。“俺はシャイだから、舞台にあがるのは遠慮したいからね”」

レヴィ「へへっ! “酔っちまえばオペラ歌手だってそこらで騒ぎ出すぜ”」



ガタッ



レヴィ「行って来る。グラスは二つで良いよな」

ロック「レヴィ~……」



バラライカ「……」グッ!


128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 17:59:12.17 ID:17Loxj9w0
一服


132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 18:16:41.09 ID:17Loxj9w0
バラライカ「ねえロック?」

ロック「モグモグ……ん?」

バラライカ「ああ、食べながらで良いわ。首を振るだけでいいから」

ロック「?……モグモグ」



バラライカ「ロック。貴方、童貞?」



ロック!?……ゴホッ! ゴホ!」

バラライカ「あらあら、大丈夫? “まるで銃弾を打ち込まれたような反応じゃない”」

ロック「なっ――何をいきなり!?」

バラライカ「納得したわ。“完全に理解した”」

ロック「な……何を」



バラライカ「貴方がレヴィを連れてきた事をよ」


134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 18:26:08.64 ID:17Loxj9w0
バラライカ「元々穏便に事を済ませるつもりはなかったけれど、

     “どうやら荒事になりそうもないわね”」

ロック「バラライカ……俺は、ここに“惨めな思いをさせられにノコノコ来たのかい”?」

バラライカ「そうじゃないわ。結果的にそうなってしまっただけ」

ロック「……」

バラライカ「貴方、結構鬱陶しい落ち込み方をするのね。いざという時は肝が据わってるのに」



ロック「……そりゃあ、誰だって“思ってもいない時に銃弾が打ち込まれたら驚くさ”」

バラライカ「それはここでは通用しないわ。“いつ弾が飛んでくるか分らないもの”」



ロック「おかしいな。“今の弾は明らかに流れ弾じゃあなかった”」

バラライカ「勿論よ。“流れ弾が急所に当たるなんて不運はあり得ないのよ”」



ロック「“急所に当たるような歩き方をしてた奴が間抜け”ってことかい?」

バラライカ「その通りよロック。“世の中っていうのは、そういう風に出来てるの”」


136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 18:35:20.53 ID:17Loxj9w0
バラライカ「私はてっきり、レヴィと  てると思ったんだけどね」

ロック「いや、俺とアイツは……」

バラライカ「いいわロック。“その先の情報は、何の価値もない”から」

ロック「……」

バラライカ「机の上のそれ、レヴィのタバコよね?」

ロック「ああ、うん……」

バラライカ「レヴィは、“ラッキー・ストライクなのにブルズアイではないみたいね”」

ロック「?」

バラライカ「ロック」

ロック「……何だ?」



バラライカ「今日、泊まっていかない?」



ロック「!?」


138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 18:42:31.84 ID:17Loxj9w0
バラライカ「さすがにここまで言ったら、“賢い貴方なら全部わかるわよね”」

ロック「……!?」



バラライカ「ホテル・モスクワ――私は、“やる時はやるの”。知ってるでしょう?」

ロック「あ……う……」



バラライカ「その私が、今の言葉を言った意味。わからないとは言わせないわ」

ロック「……もし、言ったら?」



バラライカ「あら、“そう言った場合の結果は、貴方にはもう関係なくなる事じゃない”」

ロック「――!?」



バラライカ「さあ、返事は?」

ロック「……」



ロック「お……俺は……」

バラライカ「……」



ロック「と――」



ガラッ!



レヴィ「姉御~! 皿を忘れちまったから、鍋ごと持って来たけど良かったよな?」



バラライカ「……ええ」

ロック「……ほっ」


140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 18:56:13.66 ID:17Loxj9w0
     ・    ・    ・



レヴィ「ふ~、食った食った!」

ロック「……ゴチソウサマデシタ」

レヴィ「っと、もうこんな時間じゃねえか」



バラライカ「まだ九時前よ。“夜はまだまだこれからじゃない。ねえ、ロック?”」



ロック「は、ははは……」

レヴィ「なんだロック」



レヴィ「“戻って仕事があるってのに、そんな調子が困るぜ”」



ロック「……えっ、仕事?」

レヴィ「あん? お前、ダッチから聞いてなかったのか?」

ロック「あ、ああ」

レヴィ「おいおい、“どっちが間抜けだったんだ?”」



バラライカ「……」


143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 19:03:52.21 ID:17Loxj9w0
バラライカ「レヴィ」

ロック「!?」

レヴィ「なんだい、姉御」



バラライカ「“その仕事にロックは必要なのかしら”?」

レヴィ「“ああ、コイツがキーパーソンさ。癪なことにな”」



バラライカ「“けれど、本人はその自覚がなかったみたいよ”」

レヴィ「“これから、アタシがキッチリ教育してやるさ”」



バラライカ「“貴方にそれが出来るの? 今までやってなかったんでしょう”?」

レヴィ「“なあに、ケツに火がついたとなったら、いくらウスノロでも走りだす”」



バラライカ「……そうかしら?」

レヴィ「……ああ、そうさ」



ロック「……」



ロック(……お、俺の嫌な予感って……どうしてこんなに当たるんだよ!?)


145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 19:12:15.89 ID:17Loxj9w0
バラライカ「個人的な意見を言わせて貰うとすれば、“いざとならないと走らない奴は駄目ね”」

レヴィ「ははっ、だってよロック?」

ロック「えっ、あっ、うん」



バラライカ「ロックは賢いわ。良い悪党になる」

レヴィ「そうだな。だから、“アタシらラグーン商会がキッチリ育てるさ”」

ロック「は、はは……」



バラライカ「あら、“ロックはラグーン商会に属してるだけよ? 教えるのは誰だって良い”」

レヴィ「いやいや、“拾っちまった責任ってのを取らないといけないからな”」

ロック「……う、うう」



バラライカ「責任? “ロックは何の責任もないはずよ”」

レヴィ「おいおい姉御。“責任を取るのはどっちか間違えないでくれよ”」

ロック「……」


156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 19:47:37.25 ID:17Loxj9w0
ロック「そ、そろそろ戻らないとまずいんじゃないか? なあ、レヴィ」



レヴィ「ロック、すっこんでな」

バラライカ「そうね。今は重要な話をしているから」

ロック「……それは、誰にとって重要な話なんだ?」



レヴィ・バラライカ「……」



ビシイッ!



ロック「あ、はい。俺ですよね……邪魔してすみません」



レヴィ「姉御。“ロックは帰りたがってるんだぜ? 察してやれよ”」

バラライカ「“それはどこに帰りたがってるのかしらね”」

レヴィ「……そりゃ、どういう意味だ」

バラライカ「自分で考えなさい。“もっとも、考えたくないのなら別だけど”」



ロック(……ああ、帰って布団でグッスリ眠りたい。

    こんな、“悪夢にもならない状況から抜け出したい”……!)


159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 19:57:39.92 ID:17Loxj9w0
レヴィ「“悪いが、アタシは考えるのが苦手なだけで、考えられない訳じゃない”」

バラライカ「“普段考え事をしない貴方が、いきなり答えを見つけられると思わないわ”」



ロック(でも、ここで何とかしないと……“非常にまずい事になる”!)



レヴィ「――ケンカ売ってんのかい? な、なあ……そうなんだろ、オイ……!」

バラライカ「声が震えてるわね。そもそも、私が売るケンカは貴方には買えない」



ロック(ベッドで寝るどころか、“土の下の高級ベッドで眠らなきゃならなくなるぞ”!)



レヴィ「じょ、上等だよ……! そこまで言われちゃあ“奪ってでもクソを引き受けてやる”!」

バラライカ「便利屋風情がつけあがるな」



レヴィ・バラライカ「――!」



ジャカッ!



ロック「お、俺は……!」



レヴィ・バラライカ「……」ピタッ


160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 20:05:03.07 ID:17Loxj9w0
レヴィ「黙ってなロック。“すぐ終わる”」

バラライカ「そうね。“少しだけ待ってて頂戴”」



ロック「俺は……」



レヴィ「いいから黙ってろ。“余計な口を閉じさせたら、後でゆっくり聞いてやる”」

バラライカ「そうね。“騒がしい口は、もうすぐ動かなくなる”」



ロック「俺は!」



レヴィ・バラライカ「!?」



ロック「お、おお……おしとやかな人がタイプだな~、なんt」



レヴィ・バラライカ「あ゙あ゙ん!?」



ロック「……あと、ポニーテール」


166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 20:13:05.35 ID:17Loxj9w0
レヴィ「ぽ、ポニーテールってお前……な、何いきなり言い出すんだよ、オイ」サワッ

バラライカ「……いきなり大声を出すと驚くじゃない。あまり感心しないわね」サワッ



レヴィ「……」

バラライカ「……」



レヴィ「なあロック。“走ることが出来なくなった馬よりも、今が絶頂期の馬の方が良いよな”?」

バラライカ「“走るだけしか脳がない馬なんて、貴方はいらないわよね”?」



ロック「え、っと……は、早く帰らないと! 仕事仕事~!」



レヴィ「ちょいとここらでハッキリさせとこうや」

バラライカ「奇遇ね。私もそう思ってた所よ」



ジャカッ!



ロック「……」



ロック(……あれ? どうして俺が銃を向けられてるんだ?)


174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 20:26:46.86 ID:17Loxj9w0
レヴィ「なあ、どっちが良いんだ?」

バラライカ「答えろ」



ロック「え~っ……と……」



ロック(これって、どっちと答えても命は無いじゃないか!)



レヴィ「オーケイ、アタシはお前の事をよ~く知ってる。だから、答えは決まってるよな」

バラライカ「ロック、貴方は良い悪党になるわ。こんな所で終わるのが望みではないわよね」



ロック「ど、どっちかと……言えば……」



ロック(考えろ! 考えろ考えろ考えろ! どうすれば良い!? どうすれば両方の引き金から指をはずせる!?)



ロック(片方を選ぶんじゃ駄目なんだ! だから、だから……っ! そうか! 正解は――)



レヴィ・バラライカ「どっちだ?」



ロック「……ベニーかな、うん!」



ロック(“どちらも選ばない!”)


177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 20:36:22.92 ID:17Loxj9w0
ロック(どっちも、なんて答えじゃこの二人は納得しない。

    他のポニーテールの子を挙げても、弾が二発に増えるだけだ)



ロック(だから……これが、“最低だけど、最高の答えのはずだ”!)



レヴィ・バラライカ「……」



ロック「……あれ? なんだか、さっきより部屋の気温が下がったような……」



レヴィ「オーケイわかった、わかったよロック」

バラライカ「ごめんなさいね、さっきは少し熱くなりすぎたわ」

レヴィ「こっちこそすまねえな姉御。ちょっと、“どうかしてた”」

バラライカ「まあ、“冷静になったんだから良しとしましょ”」



ロック「な、なあ。どうして二人は和解したように見えるのに、

    銃を下ろしてくれないんだ?」


179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/22(木) 20:42:36.32 ID:17Loxj9w0
レヴィ「おいおいロック、そんなのはガキでもわかるぜ」

バラライカ「賢いかと思っていたけれど、そうでもなかったようね」



ロック「……お、おい」



レヴィ「アタシは勘違いしてたよ。お前は、チキンな訳じゃなかったんだな」

バラライカ「そういえば、冷蔵庫にチキンがあったわ。一仕事終えたら、それで一杯どう?」

レヴィ「お、いいねえ! 酒も飲んでなかったしな!」

バラライカ「そうと決まったら、早くするに越した事はないわね」



ロック「あ、あの……!」



レヴィ「悪いなロック。お前が、“そんなにxxxxされたいとは考えてなかったぜ”」

バラライカ「私も勘違いをしていたわ。ごめんなさい、そして――」



ロック「や、やめ――!?」



バラライカ「さようなら」・レヴィ「あばよ」



ドォォン――





おわり


引用元: バラライカ「ロック。今日ウチに来ない?」