1: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 21:54:02.10 ID:kHME1Oay0
- 明朝 Pの家 -

   カタカタ  カタカタ  カタカタ  ッターン

P「ふぅ……。やっとここまで終わった……」

P「んーっ! 最初はこんな量を捌くなんて無理だと思ったけど……人間やればできるもんなんだなぁ」 ハーッ

P「これも全てあのスタミナドリンクのお陰だな。市販の栄養ドリンクより数百倍効能があるじゃないか」

P「オリジナル配合のスタドリって聞いて、最初は半信半疑だったけども……」

P「いやぁ、科学の発展ってすごいんだな。一口飲めば眠気も疲れも吹き飛ぶんだから」

P「あの薬のおかげで、この1ヶ月ほぼ眠らずに全力で仕事に打ち込めたし、スタドリ様様だ」

P「しかし、おかげでスタミナドリンクの在庫もあと少し。買おうにも入荷待ちで買えない状態」

P「その上、体重も思いっきり減って、顔もかなりやつれてしまった……。ま、副作用として割り切るしかないか」

P「んー。やっぱ栄養ドリンクだけじゃあ必要栄養素全て補えなかったのかな」

P「とりあえず付け焼刃だろうけど、トマトジュースでも飲んで少しでも栄養つけておくか」 ゴクッゴクッ

P「ぷはっ。さて、今日も一日頑張るぞー!」 ガチャッ

2: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:00:42.06 ID:kHME1Oay0
- 事務所 -

P「おはようございます」 ガチャッ

小鳥「あ、おはようございます。……今日も顔色が悪いみたいですけど、本当に大丈夫なんですか?」

P「えぇ。まったく辛くは無いです。それもまだスタドリの効果が続いてるからでしょうけどね」

小鳥「えーっと、強力な滋養強壮のお薬でしたっけ」

P「えぇ。知り合いのプロデューサーから教えて貰ったんです。一口飲めば丸一日戦える特製スタドリだそうで」

小鳥「そこまでいくと逆に変な副作用とかがありそうで怖いですね……」

P「あぁ、それがですね。副作用という訳ではないんですが、効果が切れると反動でずっと眠り込んでしまうみたいですね」

小鳥「えっ。ずっと眠るって……どれくらいの期間を?」

P「さぁ……。知人曰く、飲み続けた分に比例して長くなるって言ってましたし……1週間くらいですかね?」

小鳥「1週間って……それって大丈夫なんですか?」

P「大丈夫じゃないですねー。普通なら業務破綻しますので、ここ一番って時のみに使用するらしいです」

5: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:07:30.10 ID:kHME1Oay0
小鳥「そのここ一番が、今のタイミングですか」

P「えぇ。例の企画。例えその仕事量がいくら膨大でも、絶対に実現させたかったですし……」

P「その後なら、今のところスケジュールに余裕があるでしょう? なので少しくらい休暇取っても平気かなぁ、と」

小鳥「まぁ、確かに今期は例の大型ライブ以降は特に何も予定はありませんからね」

P「えぇ。なので、ここ1ヵ月は死ぬ気で頑張って、その後の1週間はのんびり眠らせてもらうことにしたんです」

P「有給もかなり貯まってましたしね。丁度いい消化機会ですよ」 ハッハッハ

小鳥「なんという社畜脳……。本当にお疲れ様です」 ペコリ

高木「ん、おはよう! 何だキミたち。今日も随分と早いんだねぇ」 ガチャリ

小鳥「あ、社長おはようございます」

P「おはようございます。どうですか社長、例の企画については」

高木「うん、全面的にOKが出たよ。予定通り箱も押さえられてるし、これも全てキミの働きっぷりのお陰だよ」

P「ありがとうございますッ!」

6: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:13:38.40 ID:kHME1Oay0
高木「しかし流石に顔色が悪いねぇ。出来ればすぐにでも休暇を与えてやりたいんだが……」

P「いえ、前にも申した通り、一度服用すれば寝てようが働いていようが結果は同じですから。是非働かせてください」

高木「うぅむ。キミがそういうのならこちらとしても助かるのだが、ね……」 チラッ

小鳥「えぇ。何だかんだ言いましても、その様子じゃ、やはりお身体が心配です。一度病院で見てもらっては?」

高木「そうだね。それなら行動は早い方がいい。今日の午後からでも病院に行ってきなさい」

P「はぁ。ですが残っている仕事は……」

高木「その顔で外回りに出すわけにはいかんだろうし、仕事より君の身体が最優先事項だ」

小鳥「そうですよ。プロデューサーさん、ここ1ヵ月くらいでびっくりする位やつれているんですよ?」

高木「万が一ということもあるしね。なに、君の仕事っぷりのお陰で少しは余裕がある。遠慮せずに行ってきなさい」

P「は、はあ。ありがとうございます。では一応午前の業務が終わりましたら、行ってきます」

8: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:25:02.20 ID:kHME1Oay0
高木「うむ、頼むよ。それと、出来ればキミの口からアイドルたち説明も頼むよ」

P「はい? 説明……ですか?」

小鳥「えぇ。ここ最近、プロデューサーさんは事務ばかりで気付かなかったかもしれませんが……」

小鳥「あの子たち、ものすごくプロデューサーさんの容体を気にしてたんです」

P「えっ、あいつらが?」

高木「うむ。水瀬くんや如月くんに至っては、私に直談判してくるくらいでね」

高木「キミに休暇を与えてくれ、休ませてあげてくれ。さもなくばストライキも辞さない、とね」

高木「つまる話、彼女らに酷く心配を掛けてしまっている状態なんだよ」

P「そうでしたか。あの子たちが俺のことを……」

高木「うむ。キミが慕われている証拠だよ」

小鳥「うふふっ。とりあえず、心配はちゃーんと解いてあげておいてくださいね」

P「は、はい。分かりました!」

9: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:33:57.53 ID:kHME1Oay0
高木「あぁ、それとだね!」

P「はい? まだ何か?」

高木「こういった手前、ついでの小間使いのようで心苦しいのだが……」

高木「例のパソコンの件。業者から連絡があったようだ。帰りにでも回収しに行ってくれないかね?」

P「あぁ、やっと結果が出ましたか。ええ、それはまったく構いませんよ」

高木「それじゃあ頼んだよ。最悪買いかえになるかもしれんが、その時は経費から――」

               ガチャリ

貴音「おはようございます」

千早「おはようございます。……あっ、プロデューサー」

           ワー ワー         オハヨー           ハイサーイ!
                アレ プロデューサー キョウ モ ハヤイ デスネ!


高木「おっと、皆おはよう。……まぁ、この話はまた後ほどにね。では失礼」 スタスタ

P「あ、はい。……みんなおはよう。それじゃあ今日のスケジュールを言っていくぞー。まずは――」

10: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:41:58.03 ID:kHME1Oay0
- 午後 総合病院 -

P「~~♪」 ブーン

P「――っと、ふぅ……。やっとついたか」 キッ

P「双子の病院に行きにくいって社長に言ったらここの紹介状貰ったけれど……」

P「でっかい病院だなぁ。どれだけ交友関係広いんだ、あの人」

P「内科、外科、消化器科、耳鼻科……。うわ、ホスピスまであるのか、ここ」

P「こんな立派な病院に寝不足人間が診断受けに行くって……なんだか場違いで恥ずかしいなぁ」

P「ま、ここで悩んだって仕方ないか。早いとこ診断終わらせてパソコン回収しに行かなきゃ」 ウーンッ!!

P「えーっと、入口は、と……」 スタスタ...

11: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 22:51:37.15 ID:kHME1Oay0
- 同時刻 移動中車内 -

伊織「ふぅ……。今日の仕事も思った以上に疲れちゃったわ」

伊織「来週末には超ビックイベントがあるって聞いてるし……。もう何なのよ! この過密スケジュール!」

伊織「こんなんじゃ、イベント迎える前に過労で倒れちゃうわよ、もうっ!」 ムキーッ!

伊織「……」

伊織「過労、と言えばアイツ……。大丈夫なのかしらね。今日も顔色が全然優れてなかったみたいだし……」

伊織「声や表情的には全然明るかったけど、なんか気になるわね……」

伊織「……んもうっ! 何で私がアイツなんかの心配しなきゃいけないのよ!」

伊織「仮にもプロデューサーなら、自分の体調管理くらいしっかりして――あら?」

伊織「あの病院の前にいるのって……プロデューサーかしら?」

伊織「心なしか暗い表情してたけど、一体……」

             ブロロロロロ....             ブオーン

.

13: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:01:42.05 ID:kHME1Oay0
- 夕方 事務所-

P「ただいま戻りましたー」

小鳥「あら、プロデューサーさん、おかえりなさい。別に直帰しても良かったのに」

律子「話は聞いてますよ、プロデューサー殿。あんまり無茶はしないでくださいね」

P「あぁ、うん。一応結果も出たし、早いところ報告に行かなきゃなって思ってさ。社長は?」

律子「その様子だと、大丈夫みたいですね。社長なら外出中ですけど、もうすぐ帰られるかと思いますよ」

P「おう、サンキュ。じゃあ少しここで待っておくか」

真美「おっつかれ→! ……って、お? 兄ちゃんじゃ→ん!」 ガチャリ

亜美「あ、本当だ。兄ちゃ→ん! 顔色悪いけど大丈夫かー?」 ガバッ

律子「コラ、あんたたち! 本当にプロデューサー殿を心配しているのなら、あんまり無茶させるんじゃないの!」

亜美「それもそうだね。兄ちゃん、体調大丈夫なの? なんかゾンビみたいになってるYO?」 ヒョコッ

P「ゾンビってお前らなぁ……。まぁ、別に何ともないぞ。見かけはこんなだけどな」

真美「って、大丈夫なんか→い!」 グリグリ

P「って、コラ、真美! あんまり頭をグワングワン揺らすんじゃない!」

14: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:10:18.52 ID:kHME1Oay0
小鳥「ふふ。亜美ちゃんも真美ちゃんも、プロデューサーが心配なんですよ」

P「これのどこが心配してる行動なんですかねぇ……」 グワングワン

真美「そうだYO→! これは真美なりの疲労回復マッサージなのだ→!」 グリグリ

亜美「んふふっ。どうだ、兄ちゃん。気分は?」 グワングワン

P「気分は……すこぶる悪いぞ」

亜美「えっ」

P「お前ら頭を集中的に揺らしすぎだ。なんか変に酔ったんだ。ううっ、なんか吐きそう」 ウウッ

真美「げげっ。それはごめんよ兄ちゃん」

律子「まったく、この子たちは……。あぁ、プロデューサー殿。吐くなら手洗い場でお願いしますよ!」

P「ちょっとお前ら俺の扱いがぞんざい過ぎやしないかねぇ……。とりあえずトイレ行ってくる」 ガサッ

16: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:17:32.27 ID:kHME1Oay0
小鳥「? プロデューサーさん、それは?」

P「え? あぁ、これは病院から貰った栄養剤です」

P「流石にスタドリだけじゃ栄養が足らなかったみたいで、こいつも一緒に飲んできます。それじゃ」 ガチャリ

律子「ふぅ……」 チラッ

亜美「……」

真美「……」

律子「……そんな顔しないでいいわよ。プロデューサーは大丈夫だから」

真美「……本当に? ひどい病気とかじゃないの?」 ジッ

亜美「兄ちゃん、亜美たちの前だけ、元気に振舞ってるとかじゃないの?」 ジッ

小鳥「大丈夫ですよ。ふふっ。そんなに心配だったなら、素直にプロデューサーさんに聞けば良かったのに」 クスクス

真美「だってそれはっ! ……もし、兄ちゃんにはぐらかされたり……」 グスッ

亜美「実は酷い病気だったって言われたら……。そう考えたら……すごく、怖く……なって……」 ヒック エッグ

18: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:24:10.37 ID:kHME1Oay0
律子「あーあー。泣かなくていいの。ちゃんと説明するから」

亜美「本当に……。本当に兄ちゃん、大丈夫なの? 死んじゃったりしない?」 エグエグ

真美「嘘だったら嫌だよ? 絶対に、絶対に兄ちゃん大丈夫なんだよね?」 グスグス

律子「ええ、大丈夫よ。見た目はあんなだけど、その実大したことないんだから」

小鳥「診断結果は聞いてないので分かりませんが、あの様子だと栄養以外は問題なさそうでしたしね」

律子「そうですね。ま、明日プロデューサー本人から直接説明があるだろうけど……」

律子「まずは先にあんたたちの不安を取り除いておいてあげるわ」

律子「だから二人とも、その泣き顔。プロデューサーが戻ってくる前に何とかしなさいよ?」 ヤレヤレ

亜美「うぅ……。うわーん!」 ガバッ

真美「びええぇぇぇんっ」 ガバッ

小鳥「ふふふ。真美ちゃん、亜美ちゃんの貴重な泣き顔シーンゲットピヨ……」 カシャッ...

律子「小鳥さん?」 ギロッ

小鳥「いえ、何でも」

20: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:33:12.97 ID:kHME1Oay0
- 手洗い場 -

P「うぅ、気持ち悪い……。容赦なくガンガン揺らすんだからなぁ……。本当に俺の心配してるのか?」 ヨロッ...

P「あー、ヤベ。これは吐き気が凄い。本格的に酔ったみたいだ……」

P「うぅ、薬飲んで吐くのは堪忍したいところだが……うっ」 ゲェッ !! ゲホッ!! ゲホッ!!

P「……オエッ。やべ、トマトジュース吐いちまった……」 ケホッ

P「これしか胃に入ってなかったからかな。まぁいいや。とりあえず薬を飲んでおくか」 ガサガサ...

P「……」 ガサッ  パキッ   ゴクリ

P「っあー……。でも胃の中にトマトジュースしか入ってなかったってのはマズいな。明日からは何か食べよう……」

                       ガタッ

P「ん? あれ、伊織か?」

伊織「……」

P「すまんすまん。扉開けっ放しだったか。見苦しいところ見せてしまったな」

伊織「そ、そんなことよりアンタ今……」 ワナワナ

21: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:45:15.73 ID:kHME1Oay0
P「どうした伊織。様子が――」

高木「やあ水瀬くん。ここに立ってどうしたのかね? ……っと、おや? キミ、戻っていたのかね!」

P「あ、社長! えぇ。診断も早めに終わったことですし、例の結果の次第も伝えなくてはと思いまして」

高木「おお、そうかね! では私の部屋で話そう。では水瀬くん、失礼するよ」 スタスタ

P「じゃあな伊織。帰るのなら気をつけて帰れよ」 ポン

伊織「あ、ちょっ……! 待ちなさいよ!」

                       バタンッ

伊織「な、何なのよ……。一体」 ギリッ

伊織「なんでアイツ、血を吐いて……。それに変な薬だって飲んで……」

伊織「もしかして、大変な病気だったの? ちょっとした体調不良じゃないの?」 ヨロッ...

伊織「でも普通、内蔵に異常がないとあんな量の血なんて吐かないし……まさか命にかかわる病気……!?」

伊織「そんな……嘘よ。嘘、嘘……」 ブツブツ

伊織「……」

伊織「……そうだ。アイツ、診断結果が何とか言ってたわね」

伊織「それが、昼に見た病院の診断結果なら……。確かめなきゃ」 ダッ

22: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/26(日) 23:51:28.64 ID:kHME1Oay0
-社長の部屋-

P「――と、言う訳で心身共に異常なし。強いて言えば、栄養が足りてなかったくらいですか」

高木「うむ、それは何よりだ。これからも体調管理はしっかりして、健康に気をつけてくれたまえ」

P「はい! ありがとうございます! あ、それとですね。パソコンも結果を聞いてきました」

高木「ん? おぉ、そうだったね。頼んでおいて忘れていたよ。……で、どうだったかね」

P「はい。律子のと小鳥さんのは大丈夫でした。今日から元通りに使えます」

高木「あぁ、それはよかった。それで……キミのはどうだったのかね?」

P「えぇ、それですが……」

24: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:03:39.46 ID:0YTebKes0
- 社長の部屋 外 -

伊織「ん、んん……。やっぱ扉が厚くて聞き取りにくいわね……」 ゴソゴソ

伊織「でも、確かめなきゃ……。もし本当にアイツが病気なら――」

高木「……で……キミの……どうだった……ね?」

P「えぇ、……れですが……」

伊織「社長とアイツの声! 一体どんなことを話して――」

P「ダメだったみ……です。……の話では、もう手遅れだと」

伊織「!!!!!!」

高木「そんな! キミ……は貴重な……が……るのだろうに。本……に手の施……はないのかね?!」

P「えぇ。残念な……とに。とても悪質……ウイルスが原因と……とで、もう……」

高木「……んな。もう……なのかね?」

P「……一応、応急処……ようなことはして……いました。ですが……もって……週間でしょうとのことでした」

P「覚悟はし……た。無茶をし続け……いずれこうな……とは分かってい……とです」

伊織「嘘……嘘よ……」 ガクガク

25: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:13:36.92 ID:0YTebKes0
-社長の部屋-

P「まぁ、バックアップは万全ですしね。新しいのに買い換えましょう」

高木「まぁ……。パソコンには故障が付きものだからね。仕方ないか」

高木「とりあえず、新しいパソコンが来るまでは、そのパソコンで持ちこたえてくれ」

高木「ただし、外部接続禁止。USBも禁止だ。データの書き換えは手動で行ってくれたまえ」

P「ええ、了解です。外回りに出られない分は、ここで頑張りますよ!」 ガチャッ

高木「すまんね。本当は今日くらいはゆっくりさせてあげたかったのだがね」

P「平気です。それにこれは私が望んでやってることです。最後までやらせてくださいよ! っと、あれ、伊織?」 ガチャリ

伊織「!!」 ダッ

P「なんだ、社長室の前で突っ立ってて……。用でもあったのかな?」

高木「どうかしたのかね?」

P「え? あぁいえ。伊織が社長の部屋の前に立っていまして。何故かどこか走って行っちゃいましたけど」

高木「ふむ? 何かあったんだろうかね?」

P「さぁ……?」

27: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:22:09.32 ID:0YTebKes0
- 夜 伊織の部屋 -

伊織「何なのよ……。あの吐血に薬……ウイルスが原因で手遅れって……」 ブツブツ...

伊織「私の聞き間違いじゃないの……? 見間違いじゃないの……?」

伊織「ねえ、シャルル。絶対そうよね? 私の勘違いなのよね?」

伊織「アイツが……もって数週間の命だなんて……。冗談か何かなのよね?」

伊織「嘘なのよね? 何かの間違いなのよね?」

伊織「ただただ、私が激しい勘違いをしているだけで、アイツは明日も、明後日も、その先もずーっと……」 ジワッ

伊織「ずっと、私と一緒にいてくれるわよね?」

伊織「そうよね? そうなんだよね? ねえ!」

伊織「そうだと言ってよ……っ。言ってよ、シャルル……っ!」 グスッ グスッ

伊織「……」 クスン

伊織「…………明日、確かめなきゃ。アイツに直接聞いてみなきゃ……」

伊織「それまでは絶対に、信じてやるもんですかっ……!」 ギュウッ

29: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:36:25.81 ID:0YTebKes0
- 翌朝 事務所 -

P「おはようございます」

律子「あ、プロデューサー。おはようございます」

P「おう。今日は千早に響の送迎と、雪歩と真への付き添い。午後からあずささんの撮影現場だな」

律子「ええ、お願いします。それと彼女らへの説明、ちゃんとしといてくださいね」

P「分かってるよ。じゃ、俺は千早と響を迎えに行ってくるから」

律子「あと、あんまり顔出しちゃだめですよー。その顔、病人のそれなんですからね」

P「わーってるって。じゃ、律子も今日は頑張れよー」 バタン

律子「はいはい……っと」

小鳥「なんだかあの顔であのテンションってちょっと不思議ですよね」

律子「そうですね。見た目は本当に衰弱極まった感じなのに……。やっぱ送迎も全部私たちがした方が――」

小鳥「人手が足りない以上仕方ないです。最低限の顔出しで済む仕事はプロデューサーさん自ら――あら?」

伊織「おはよう……」 ギィッ...

律子「伊織じゃないの。どうしたの? 今日はオフのはずでしょう?」

30: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:45:31.13 ID:0YTebKes0
伊織「ねぇ、アイツは……? 今日は休みなの?」 キョロキョロ

律子「『アイツ』……? もしかしてプロデューサー殿のこと?」

小鳥「彼なら先ほど入れ違いに響ちゃんと千早ちゃんを迎えに出かけて行きましたけど……」

伊織「そう……。まだ、アイツは働いてるのね」 フラフラ...

律子「ちょっ! 伊織! ……行っちゃった。何だったのかしら?」

小鳥「なんだか様子が変でしたし、もしかしてプロデューサーさんの心配をして……?」

律子「……ありえるわね。今すぐ追いついて事情を説明しにいくべきかしら」

小鳥「うーん。そうですね。それが一番――」

春香「おはようございます。あの……今、伊織ちゃんと擦れ違ったんですけど、どうしちゃったんですか?」 ガチャッ

律子「あぁ、春香。おはよ。伊織と擦れ違ったのね。どこに行くか見てた?」

春香「さぁ……? 止めてあった車に乗っちゃって、どこに行ったかまでは……」

律子「そう。ま、それじゃあ仕方ないかな。後はプロデューサー殿に任せますか」

31: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:48:09.09 ID:0YTebKes0
春香「あの、プロデューサーさんがどうかしたんですか?」

律子「ん?」

春香「伊織ちゃんの様子も変だったし、もしかして……」

律子「はぁ……。本当に愛されてるわねー、ウチのプロデューサー殿は」

小鳥「安心して、春香ちゃん。プロデューサーさんのことについては何もないから」

春香「でも……」

律子「とりあえず説明するわ。本当に大したことないの。実はね……」

33: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 00:57:37.54 ID:0YTebKes0
P「――と、いうことなんですよ。心配おかけしてすいません」 ペコリ

あずさ「んもうっ! 本当に心配したんですからね。これからは事前に説明くらいください!」

P「いや、ハハハ。こんな副作用があるとは思わなかったし、こうなると知ってたら反対されると思いまして」

あずさ「当たり前です! もう……。それで、プロデューサーさん。他の子たちには……?」

P「えぇ、一応ですが、昨日と今日とでほぼ全員にちゃんと伝えましたよ。後は伊織に説明するだけです」

あずさ「そうですか……。なら安心です。伊織ちゃんにもちゃんと伝えておいてくださいね?」

P「当然です。いや、実のところ、事情説明を怠っていたことについて罪悪感がいっぱいなんですよ」

あずさ「あらあら。泣いちゃった子でもいましたか?」

P「えっ。よく分かりましたね。ええ、響ややよいには泣かれるし、真や千早にはポカポカ叩かれるしで大変でしたよ」

あずさ「それくらいは罰としてしゃんと受け止めてくださいね」

P「ええ。本当に心に沁みました」

あずさ「でもお陰で、今日こそゆっくり寝られそうです。それではおやすみなさい、プロデューサーさん」 ウフフ

P「はい。あずささんもおやすみなさい」 ガチャッ   ブーン...

35: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 01:11:16.17 ID:0YTebKes0
P「時々マジで悔しがり、子供相手に本気出す~♪ っとぉ」 ブーン

P「……ん? 俺の家の前に誰かいるな。誰だろ……」

P「って、伊織?! お前そこで何してるんだ!」 キッ

伊織「あ、プロデューサー……」

P「どうしたんだ、こんな時間にこんな場所で。家の人心配してるだろう?」

伊織「別に。パパには許可貰ってきたから。それに新堂たちも近くで待機させてるわ」

P「そうか。それならいいが……。って、そうじゃない! どうしたんだ一体。何か用でもあったのか?」

伊織「用? 用ね……。それはアンタからあるんじゃないの? 私に言うことが」

P「お前に……? あっ! そうだ。昨日お前帰っちゃったから、明日にしようと思ってたんだがな。実は――」

伊織「知ってるわよ。あんたの身体のことでしょ? どうしてそうなったのかも知ってるわ」

P「え? あれ、そうなのか。律子から既に聞いたのか?」

伊織「いいえ。昨日、悪いとは思ってたけどアンタと社長の会話を耳にしてたの」

P「え? あ、そうなのか……。まいったな、あそこの扉薄いからなぁ……」

伊織「ふんっ。本当に秘密にしたかったら、もう少し小さな声で話すことね」

37: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 01:23:03.91 ID:0YTebKes0
P「ま、でもそういうことだ、伊織。だから気に病む必要は無――」

伊織「本当なの?」

P「え?」

伊織「聞いたのよ。アンタに残されてる時間。あと数週間だって。本当なの?」

P「残されてる時間……? あぁ。そういうことか。変な言い方するなぁ。でもまぁ、そうだよ。あと1週間と少し程度だな」

伊織「っ!!!」

P「正確に言えばお前らのライブが終わった前後あたりくらいまでかな。医者と相談して決めたんだ」

伊織「え、待ってよ……。そんな……。じょ、冗談とか嘘とかじゃないの?」 プルプル

P「冗談? 何がだ?」 キョトン

伊織「その1週間と少しって……。いや、そもそもアンタがもう――」

P「? いや。俺が意識を保てる限界がこれくらいだって医師から言われたし、嘘とかじゃあないけど――」

伊織「っ! 嘘よ! そんな訳ないわ! 冗談はやめてよ!」

P「うわっ! と、コラ伊織。声が大きいぞ! 夜なんだからもう少し声のトーン落として……」

40: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 01:40:14.09 ID:0YTebKes0
伊織「そんなの嘘よ! どうせ栄養とって少し寝れば回復するわよ! 性質の悪い冗談はやめて!」

P「いや、栄養とって少し寝ればって……。無茶言うなよ。少しは落ち付け、な?」 ヨシヨシ

伊織「そうだ。疲れてるのなら、明日から数週間休暇取ってゆっくり休みなさいよ。そうよ、それが一番いいわ」

P「あのな、伊織。お前が心配してくれるのは嬉しいが、こればっかりは仕方ないんだ。副作用のようなものでさ」

伊織「じゃ、じゃあ……。じゃあせめて今日くらいはゆっくり眠りなさいよ。仕事も止めて」

P「えっとな、今休んでしまったら、多分そのまま病院に直行して、もう目覚めない。だから却下だ」

伊織「馬鹿なこと言わないで! そう言って無理して本当に身体壊して死んじゃったらどうするのよ!」

P「伊織……」

伊織「だから、ね? 明日からゆっくり休みなさいよ。その代わり、ライブが終わった後も、ずっと一緒に――」

P「伊織!」

伊織「っ!」 ビクッ

41: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 01:49:36.30 ID:0YTebKes0
P「お前が心配してくれてるのは分かる。だが大丈夫だから。だから、最後までやらせてくれないか?」

伊織「……」

P「どうせ結末は同じなら、俺は最後までこのプロジェクトを成し遂げたいんだ」

伊織「結末は一緒だなんて……言わないでよ……」 ジワッ

P「……あのライブはな、伊織。俺が、こんな風になってでもやり遂げたかった……そう。夢みたいなものなんだ」

P「お前たちが努力をして勝ちとったトップアイドルの名に相応しい舞台を用意して、お前たちを迎える」

P「そしてお前たちが、そのステージの上でキラキラと輝いて、いろんな人に夢を見せて――」

P「舞台袖でいい。ホールの隅でもいい。俺はその様子をしっかり見届けてから……」

P「それから……ゆっくり、眠りたいんだ」

伊織「……っ」 グスッ ヒック

P「分かってくれるな? 伊織」

43: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 01:55:35.76 ID:0YTebKes0
伊織「……他の子たちには……。どう、説明するのよ……っ」 グスッ

P「あぁ。実はな、もう伝えてあるんだ。俺から直接ちゃんと説明したよ」

伊織「! あ、あの子たちにも言ったの? 全部っ」

P「そりゃそうさ。当たり前だろ。俺はお前たちのプロデューサーなんだからさ」

P「そりゃ泣かれもしたし、殴られもしたけど……。でもみんな、ちゃんと分かってくれたよ」

伊織「……アンタは馬鹿よ」 ヒック

P「そうだな。今回の一件でよーく、身に沁みたよ」

伊織「大馬鹿よ。殴られても、怒鳴られても、仕方ないくらいの大馬鹿者よ……」 グシグシ

P「ん……。まぁ、そうだな」 ポリポリ

伊織「……」

P「……」

伊織「……本当なのね」

P「ん?」

伊織「アンタの言ってたこと。全部、本当なのね?」

45: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:05:02.73 ID:0YTebKes0
P「そうだよ。だから、お前たちは別に気に病む必要はない。どうか明日からは、いつも通りに接してくれ」

伊織「それが……あんたの望みなのね?」 グスン

P「ん?」

伊織「……いいわっ。ならその通りにしてあげる! 明日からはいつもの伊織ちゃんよ!」

P「おう、その意気だ! そのままライブまで気を抜くんじゃないぞ!」

伊織「ふんっ。私を誰だと思ってるのよ。今をときめくスーパーアイドル伊織ちゃんよ! その程度へっちゃらよ!」 フンスッ

P「うんうん。それなら良かった。さ、それじゃあ遅いから今日は帰りなさい。迎えはあるんだろう?」

伊織「ええ。向こうに待たせて……。あ、いえ。ちょっと待って」

P「? どうかしたか?」

伊織「……え、えっと。新堂たちは先に帰らせたわ。今日はアンタが私を送っていきなさいよ」

P「は? え? でもお前、別に連絡してる風でもなかったじゃないか」

伊織「むきーっ! 細かいことはいいの! いいからアンタは私とドライブすればいいんだから!」 ペシペシ

P「えーっと……。わ、分かったよ。じゃあ乗りな?」

伊織「分かればいいのよ」 ニヒヒッ

             バタン         ブオォォォォォォォ....
.

47: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:19:10.16 ID:0YTebKes0
- 車内 -

伊織「……夜景、綺麗ね」

P「そうか? 家の明かりとか街灯とか……全部普通に見えるんだけどなぁ」

伊織「いいえ、とても綺麗よ。何だか、生きてるって感じがする」

P「ふぅん? やけに感傷的じゃないか」

伊織「……そういう日もあるのよ。ねぇ、プロデューサー」

P「ん? どうした」

伊織「これから、私の送迎はアンタに任せてもいいかしら」

P「んー……。どうだろうなぁ。実は明日以降はいつ意識が飛んでもおかしくないってことで、運転は禁止されてるんだ」

P「だから……すまんな。事故に合わせる訳にもいかんし、約束はできそうにない」

伊織「……そう。そうよね」 シュン...

P「あー……。その代わり、提案があるんだが……」

伊織「?」

P「今日は、少し遠回りして帰ろうか。夜景ドライブだ」

伊織「! にひひっ! アンタにしては気が利くじゃないっ」 パァッ

48: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:25:18.22 ID:0YTebKes0
- 伊織邸前 -

P「ここまででいいか?」

伊織「ええ、助かったわ。今日のお誘いは、なかなか良かったわよ」

P「ははぁー。それは至極恐悦……」 ペコー

伊織「……何の真似? その仕草、まったく似合ってないわよ」

P「あれ、そうか? 結構うまくできたと思ってるんだが……」

伊織「まぁいいわ。それじゃあ、また明日ね」

P「ん。じゃあな、伊織。おやすみ」 バタン

伊織「ええ。おやすみ」

                ブオン              ブオオォォォォォォォ....

伊織「……おやすみなさい、プロデューサー。また、明日ね」

.

49: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:31:29.29 ID:0YTebKes0
- P車内 -

P「あー、疲れた。なんだか伊織、かなり様子が変だったけど……」

P「やっぱ見た目がコレじゃあ心配するってことなのかな。気をつけないと」

P「それとも栄養が足りてないって言われたのを、栄養失調みたいに深刻に捉えちまったのかな?」

P「んー……。まぁいいや。とりあえずこれでアイドル全員に説明完了ーっ! と」

P「後は帰ってからシャワー浴びて、残りの仕事文を片づけてしまうかな」 フンフフーン♪

P「……あれ。そういえば俺、社長室ではスタドリのこと話してなかったよな? 話した内容は診断結果のみ」

P「じゃあ伊織の奴、俺の他の部分はどこで聞いたんだろ?」

P「……」 ウーン

P「……ま、いっか」

51: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:40:12.62 ID:0YTebKes0
- 数日後 ライブ前日 -

P「さて……いよいよ、明日だな」

律子「そうですね。やっとここまで来た! って感じです」

やよい「うっうー……。とっても緊張します……」

響「大丈夫だぞー。これまでの練習通りにやれば、絶対に大成功さ!」

P「そうだ。失敗するか成功するかなんて気に揉む必要はないんだ」

P「お前たちが考えるべきことは、練習と同じ演技をするか、しないかだけだ」

雪歩「練習と同じ演技……」

P「そうだ。成功するかしないかは、練習の地点で既に決まってい……っと」 ヨロッ

伊織「!!!」 ダッ

小鳥「だ、大丈夫ですか、プロデューサーさん!」

P「だ、大丈夫です。少し意識がクラッとしただけで……小鳥さん、ありがとうございます。伊織も、ありがとな」

伊織「べ、別に大したことじゃないわよ。ここで倒れられても困るってだけよ!」

あずさ「あらあら」 ウフフフ

律子「……と、とりあえず。今日はここで解散よ! ゆっくり英気を養って、明日に備えなさい!」

52: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:46:13.36 ID:0YTebKes0
- ホテル ロビー -

小鳥「では、私はこれで。プロデューサーさんも無理しないでくださいね」

P「えぇ、ありがとうございます。私の代わりに送ってもらい、ありがとうございます」

小鳥「全然大丈夫ですよー。それじゃあ、私はこれで……」 スタスタスタ...

P「ふぅ……。やっと明日か。長かったようで短かったような……」

伊織「あら、プロデューサー。こんなところにいたのね」

P「ん? 伊織か。いや何。小鳥さんを見送りに出てたんだ。伊織こそどうしたんだ?」

伊織「どうもこうもないわ。ちょっと夜風に当たろうと出てきただけよ」

P「そうか。外は冷たいぞ? 外套貸そうか?」

伊織「別にいいわ。でもそうね。代わりにアンタが付き合いなさいよ」

P「俺が?」

伊織「ええ」

P「まぁ……別にいいけども」 スタスタ

53: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 02:52:05.52 ID:0YTebKes0
- 夜 シーサイド -

P「うぅっ。やっぱ寒いなー……。もうほとんど冬だもんな」 ブルブル

伊織「そうね。すごく寒いわ……。こんなことならマフラーの一つでも持ってくればよかったかも」 キョロキョロ

P「ん……。どうした伊織。そんなキョロキョロして」

伊織「……ここら辺、誰もいないのね」

P「こんなクソ寒い中に水辺を歩くのは俺らくらいだろうしな。それにここら一帯は関係者貸し切り状態なんだ」

伊織「そう。それは朗報だわ。……よいしょっと」 モコモコ

P「ん? おぉっと。何だ、コートの中に潜り込んできたりして。そんなにコート欲しいなら貸すぞ?」

伊織「別にいいわよ。このままで」 ポフン

P「このまま……ねぇ。何か他の誰かに見られたら、かなーりマズい場面なんだが」

伊織「別に誰も見てやしないわよ」

P「そうか?」

伊織「そうよ」

55: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:00:45.41 ID:0YTebKes0
伊織「……暖かい」

P「まあ、特製のファーコートだからな。モコモコしてて暖かいだろ」

伊織「違うわ、アンタの体温。すごく暖かいわ」

P「俺の、ねぇ……。伊織はちと冷たいな。冷え症か?」

伊織「ほっときなさいよ! ……まぁ、冷え性なのは否定しないけども」

P「……で、どうしたんだ? こんな風にしてるとか。やっぱり様子が変だぞ」

伊織「……アンタさ。さっき気を失いかけたでしょ」

P「あー、アレか。まぁ……否定できんわな。確かにちと意識が飛びかけた」

伊織「……大丈夫なの? アンタは私たちの輝く姿を見届けるんでしょ?」

P「そうだな。確かにちと危なかったが……。でも大丈夫だ。もう何ともないよ」

伊織「そう……。ならいいけど」

P「……随分とナーバスだな。もしかして、俺の心配でもしてくれてたのか?」

伊織「ばっ……! そんな訳……ない、じゃない……」

P「?」

57: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:07:00.26 ID:0YTebKes0
伊織「うぅ……っ。やっぱ寒いわ。もう戻るっ!」

P「ん、そうか。じゃあ戻るか」 ドシドシ

伊織「ちょっ……! アンタこのままで帰る気!?」

P「そうだぞー。何か変なことでもあるかー?」 ノッシノッシ

伊織「2人して同じコートの中にいる姿を見られる訳にはいかないでしょ! さっさと離れなさい!」 ゲシッ ゲシッ

P「あたた……。蹴るこたぁないじゃん。蹴るこたぁ」

伊織「うっさい! ド変態! El Hentai! 変態大人!」 ゲシゲシ

P「ふははは。変態で結構! こうなりゃ開き直ってやるわい!」 ズダダダダ

伊織「うきゃーっ!」

59: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:18:10.23 ID:0YTebKes0
- ホテル 伊織の部屋 -

伊織「まったく! あの馬鹿プロデューサー!」 ギシッ

伊織「あの変態ったら本当にスタッフさんの目の前ギリギリまであの格好で疾走したのよ!」

伊織「本当にギリギリだったんだから。もう、ホント困った奴だわ。ねー、シャルル?」 ギュッ

伊織「…………」 ピコピコ   ポスポス

伊織「でもね、シャルル。本当はね……ちょっと安心したの」

伊織「アイツが倒れかけたあの時……。本当にプロデューサーがいなくなっちゃうのかと思ったの」

伊織「すぐにアイツは立て直したんだけど、でもあの瞬間からとても不安になったの」

伊織「今見えてるプロデューサーは、狂ってしまった私が生み出した幻なんじゃないかって」

伊織「とても不安で、確かめてみたくなって……。無理やり外に誘い出して――」

伊織「……アイツの身体、暖かかったなぁ。鼓動も本当に近くで聞こえてきて……」

伊織「生きてるって……やっと実感できた」 グスッ

伊織「……ねぇ、シャルル」 ギシッ

伊織「いっそ、全部夢なら良かったのにね……」 ポロッ...

伊織「今はおやすみなさいが怖い。例え明日が栄光の日だとしても、明日なんてずっと来なければいいのに……」 グスッ

60: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:29:23.66 ID:0YTebKes0
- ライブ当日 -

P「さぁ皆。いよいよ本番だ! みんな、準備はいいか?」

春香「こ、怖いけど。頑張ります!」

千早「練習通り、ですよね?」

あずさ「やっとここまできたんですもの。歌いきってみせます」

真「足腰の調子もいいし、うぅ~! 早く踊りたいなぁ!」

雪歩「うぅ~……。き、緊張しますけど……大丈夫かなぁ」

真美「こんな時は手のひらに人って書いて……」

亜美「食べればいいんだっけ?」

貴音「……」 ガブ

やよい「あ、あのー……。貴音さん?」

響「この日のために頑張ってきたのさー。絶対成功させてやる!」

美希「ハニー。ミキのキラキラ、ちゃんと見ててよねっ!」 キラッ

律子「うん、その意気よ。皆! さ、いってらっしゃい!」

アイドル全員「ハイッ!」

61: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:35:01.33 ID:0YTebKes0
P「よし……。それじゃあ俺は舞台袖で……。ん?」 クルッ

伊織「……」 ギュッ

P「どうしたんだ、伊織? 早くいかないと開場に間に合わなくなるぞ」

伊織「……見てなさいよ」 ボソッ

P「ん? 何だって?」

伊織「この伊織ちゃんをずっと見てなさいよって言ったの!」

伊織「必ずアンタの一生に残る、最高のパフォーマンスを見せてやるんだから!」

伊織「一時たりとも目を離しちゃダメなんだからね!」 ダッ

P「おう。行っちまった……」 ポカ-ン

律子「随分と威勢がいいですね、伊織。何かあったんですか?」

P「さぁ……。昨日とか、なんかセンチメンタルっぽくなってたけど……」

律子「ま、やる気があることは良いことです。さ、プロデューサー殿。私たちもそろそろ……」

P「ん。そうだな。あいつらの最高の晴れ舞台、しかと目に焼き付けなければね」 ガタッ

62: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:45:47.35 ID:0YTebKes0
- ライブ公演中 舞台袖 -

                     ~♬
                              ~♬
                ~♬       ♪         ~♫
                      ~♫       ~♩


律子「……すごい。練習以上だわ」

P「皆、輝いてる……。すごい、すごいぞ! 皆……っ」

律子「あんな風に、人は歌えるものなのね。あれがトップアイドル……」

P「うっ……」 ヨロッ

律子「! プロデューサー殿。大丈夫ですか? 辛いようでしたら楽屋に布団を――」

P「……いや、大丈夫だ。問題ない」

律子「ですが……。無理しては本当にお身体に障ります。録画もしてますので――」

P「そんなのいらない。これは皆と共に登りつめてきた栄光の瞬間なんだ。この時を、一瞬たりとも見逃してたまるか」

P「それに、約束したしな。伊織と……。一時も目を離すなって」


伊織「~♪」

.

63: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:51:56.79 ID:0YTebKes0
P「……」

律子「……」

P「なぁ、律子」

律子「はい、何でしょうか」

P「お互い、あいつらのプロデューサーが出来て、良かったな」

律子「……そうですね。心から、そう思います」

P「……」

                         ヒュー ヒュー
              ワー ワー                キャー キャー
                      アンコール ! アンコール !
                 ヒャッハー            ワー ワー ワー

――――――――……………………

――――…………

――……

―…
.

65: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 03:59:58.01 ID:0YTebKes0
- 公演終了後 -

律子「みんな、お疲れ様! 今日のライブ、本当に良かったわ!」

真「へ、へへへっ! そうだよね、ボクも生涯最高のダンスができたと思ってるよ」

響「右に同じだぞ! でもちょっと疲れちゃった」

真美「雪ぴょんとか途中ですっごいノリノリだったもんね→」 ニヒヒ

亜美「そうそう。最初のオドオドした感じが嘘みたいに→」 ウヒヒ

雪歩「う、うぅ~っ。何万人もの前であんな……は、恥ずかしいですぅ。埋まってますぅ~!」 ザックザック

春香「ゆ、雪歩。勝手に穴開けちゃダメだよ」

千早「この日のような歌声が常日頃から出せたら……。もっと精進しないと」

貴音「私も……。今日の出来事で、更なる高みが見えた気がします。更に高く……」

あずさ「そうね。今日以上のパフォーマンスができたら、きっと最高よね」

やよい「うっうー! みんな頑張りましたー!」

伊織「そうね。今まで頑張った成果だもの。文句のつけようがないわ!」

美希「えへへっ。ハニー! ミキのキラキラ、ちゃんと見ててくれた? って、あれ? ハニーは?」 キョロキョロ

71: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 04:15:13.26 ID:0YTebKes0
伊織「!!!」 ガタッ

響「あれ? 本当だ。プロデューサーがいないぞ?」 キョロキョロ

真美「トイレかなぁ?」

伊織「も、もしかして……」 ゾクッ

律子「あぁ、プロデューサー殿なら……。少し前に出ていったわよ」

春香「へ? 出ていった?」

律子「ええ。あなたたちの演技を全て見終えたくらいに限界が近くなったらしくてね」

律子「ここじゃ迷惑をかけるからって……。少し前に出ていったわ」

真「いやいやいや! そんな、危ないじゃないか! 独りで出て行かせる方が」

千早「行先は、把握してるんですか?」

律子「えぇ。確か裏にある海辺の公園ね。そこでライブの余韻にゆっくり浸りたいとか――」

伊織「っ!!」 ダッ

律子「あ、ちょっと、伊織!」

やよい「伊織ちゃん、行っちゃっいました……。凄い勢いで」

72: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 04:24:09.97 ID:0YTebKes0
あずさ「思えば最近、伊織ちゃん。様子が変だったものねぇ」

律子「聞いた話によると、プロデューサー殿となんか約束交わしてたみたいだしね」

千早「約束?」

美希「むぅっ! デコちゃんもしかして眠ったハニーに眠りのキスをしにいくつもりじゃ……っ!」

律子「美希。アンタと違って伊織はそんな不節操なことはしないわよ。大丈夫でしょ」

美希「むぅ、差別発言酷いの」

律子「信頼の差と思いなさい」

真「でも……プロデューサー、本当に放っておいていいの?」

真美「そうそう! 限界が来たのなら、車で寝かせておくのが一番だったんじゃないの→?」

律子「一応スタッフさんに手を借りて、公園のベンチまで送ってもらったし」

律子「あそこ一帯は小道具大道具置き場のための貸し切りになってるのよ」

律子「何より、独りになりたいってプロデューサー殿の希望だったからね。ま、当然後で迎えに行くわよ」

律子「とりあえず今は皆楽屋に戻って、疲れをとってきなさい。じゃ、一旦解散!」

74: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 04:30:22.42 ID:0YTebKes0
- シーサイドパーク ベンチ -

伊織「……ここに、いたのね」 ザッ

P「……伊織か? どうした、こんな場所で。皆と喜びあわなくてもいいのか?」

伊織「……隣、いい?」

P「まぁ……別にいいぞ。好きにしなさい」

伊織「よいしょっ……と。ふぅ、やっぱ寒いわね」 ハァ

P「外套、いるか?」

伊織「いらない。アンタが着てなさい。その代わり、こうすれば……」 ヨイショ...ット

P「なんだ。俺の膝は椅子じゃないぞ」

伊織「おしりが冷たいの。つべこべ言わないでよ!」 フンッ

P「やれやれ。我儘なお嬢様だな、ホント……」

76: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 04:39:20.98 ID:0YTebKes0
伊織「……」

P「……」

伊織「……疲れたわ。アンタから、何か労いの言葉はないの?」

P「ん? あー、そうだな。伊織、今日はお疲れ様。よく頑張ったな」 ナデナデ

伊織「……うん」 モジッ...

P「本当に今日は凄かった、伊織。公演前に言ってた通りだったよ。あの光景は、一生忘れられないものになった」

伊織「当たり前でしょ。なんせ、この伊織ちゃんの全力ライブですもの! あれが私たちの本当の――」

P「……」 ジーッ

伊織「……ねぇ、プロデューサー。どうかしたの?」

P「ん? いや、ね。その通りだと思ってさ。あの光景こそ、まさにお前たちの輝きそのものだったと思ってさ」 ジーッ

伊織「ちょっと。アンタどこを見つめてるの? 少し、様子が変よ?」

P「あぁ、すまんな。実はと言うと……、もう俺。もう目がほとんど見えていないんだ」

伊織「!!!」

78: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 04:50:59.31 ID:0YTebKes0
P「夜で当たりが暗いってことや、眠気がすごくて目が開けてられないってのもあるけども――」

P「こりゃあ、本格的に限界がきたみたいだなぁ……」

伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! まだまだ私、話したいことがたくさんあるんだから!」 ガバッ

P「無茶言うなよ……。正直、耳も結構遠いんだ。努力はしてるけど……これはなぁ……」 ウトウト...

伊織「ふざけんじゃないわよ! 私だって全力で頑張ったのよ!」

伊織「アンタも私たちのプロデューサーなら、これくらい気合いでなんとかしなさいよ!」 ジワッ

P「ハ……ハハ……。手厳しいなぁ、伊織は。俺も、もう少しだけもつと思ってたんだけどなぁ……」

伊織「~ッ!」 ガチャッ

P「……?」

伊織「来なさい! 今から病院に連れて行くわ! ここで諦めたりなんて、絶対にしないんだから!」 ピッピッピ...

P「病院? そんなもの、後ででいいさ。今はここにいたいんだ」

伊織「何言ってるのよ! そんなことよりも、アンタの身体の方が……」

P「伊織」

伊織「!」

P「俺を……せめて最後まで、あいつらの近くにいさせてくれ。頼むよ……」

83: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:00:21.00 ID:0YTebKes0
伊織「何よ……。何で分かってくれないのよ……」

P「いいじゃないか。それに、病院なんて寂しすぎる」

伊織「なら……。ならっ! せめて、一緒に楽屋へ行きましょう? そこなら皆の近くで――」

P「いいや、俺はここがいい」

伊織「何でよ!」

P「ここならまだ感じられるからだよ。ファンの声援、アイドルたちの歓声、スタジアムの熱気。輝くステージ……」

P「俺はもうほとんど目は見えてないけど、代わりにあの時の光景が見えるんだ」

P「お前たちが最も綺麗に輝いた瞬間の、あの光景が」

伊織「……っ」 ジワッ

P「最後まで、最後まで。あの光景を見つめながら眠っていけたら……。そう思ってここに来たんだ」

伊織「……ぅっ」 グスッ

P「ま、迷惑になるってことや、あいつらに寝顔を晒したくないってのもあるけどな」 ハハハ...

伊織「……うぅぅ……」 ヒック

84: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:08:10.41 ID:0YTebKes0
伊織「……なんで、アンタなのよ。なんでよりにもよってアンタなのよ」 ポロポロ

伊織「今まで私たちのために身を粉にして働いてきて、そしてやっと栄光を掴んだのよ」 グスン

伊織「何故、今なの? 何でアンタなの? どうして? どうして!? どうして!!」 ボロボロ

P「…………」 ウト...ウト...

伊織「これからアンタは今まで働いた分の対価を得て」

伊織「美味しいものを食べて、綺麗なものを見て、素敵な場所を旅して……」

伊織「そうやって、めいっぱい幸せになるべきなのに! ならなきゃいけないのに!!」 ポロポロ

伊織「どうして……。どうしてなの……っ!」 ヒック エッグ

伊織「どうしてなのよおぉぉっ!!」 バン バン

P「……」

85: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:17:45.42 ID:0YTebKes0
伊織「うっ……。うぅぅぅ……」

P「伊織……。伊織はいるか?」

伊織「……!」 ヒック

P「すまんが、もう限界みたいだ。お前の姿も見えない。声も聞こえない。お前はまだそこにいるのか……?」 ウトウト

伊織「……グスッ。いるわ、プロデューサー。私はここにいるわ……」 ギュッ

P「……あぁ、伊織、そこにいるんだな?」

伊織「いるわよっ。絶対に、どこにも行きやしないわ」 グスン

P「右手、暖かいな……。なんかホッとする。優しいぬくもりって感じで……」

伊織「アンタの手も……。プロデューサーの手も、まだ温かいわ。まだ、生きてるって実感できる」 グスッ

P「……あぁ、でもひとつ、お願いがあるんだ。少し恥ずかしいけど、いいか?」

伊織「……? 何よ、プロデューサー」

P「俺が寝るまで、この手を握っていてくれないか?」

伊織「っ! そ、それくらい……いくらだって……っ」 ギュウゥッ

P「あは。ありがとう……」

86: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:27:11.34 ID:0YTebKes0
伊織「……」 グシグシ

P「(うあー、ヤベ。本格的に眠くなってきた……)」

伊織「……あんたの顔。こんな近くで見るなんて初めてね」

P「(暖かいなぁ。懐炉がわりにして伊織には申し訳ないけど。あー、こりゃたまらん)」

伊織「もう寝ちゃったの? それともまだ起きてるの?」

P「(そういや、あいつらへの労いの言葉残すの忘れてたな。まぁ、起きた後に言えばいいか)」

伊織「頬がこけてる。ちょっと目元に皺ができてる。髪に白髪が混ざってる」

P「(起きた後、何連休残ってるだろうなぁ。2日以上残ってたら、久しぶりに友達と遊びに行くか)」

伊織「……全部、私たちのために頑張ってきてくれた証拠なのよね」

P「(一応1週間休暇はあるけど、まぁ1週間丸々眠る訳じゃなさそうだし、少しは余裕あるだろ)」

伊織「辛いことも、悲しいこともたくさんあったでしょ? でも、アンタはもう頑張らなくてもいいの。休んでいいのよ」 ナデ...

P「(一応休日中も次のライブの構想とかも考えなきゃだけど……。ま、それも今は後ででいいか)」

伊織「今まで本当にありがと。ありがとね、プロデューサー」

P「(あー、クソ眠い。もう駄目だ。寝る……)」 zzz...

89: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:32:51.89 ID:0YTebKes0
伊織「ずっと私の我儘に付き合ってくれてありがと」

伊織「ずっと私たちのために奮戦してくれてありがと」

伊織「ずっと私を側で支えてくれてありがと」

伊織「そしてごめんね。私、結局これをアンタの前で言えなかった」

伊織「変なプライドが邪魔して、アンタの前じゃあまのじゃくなコトしかできなかったけど」

伊織「私、アンタのこと……」

伊織「…………」 グッ

伊織「……今まで本当にありがと。ずっと、ずっと。忘れないから……」

伊織「おやすみなさい」 チュッ....

――――――――……………………

――――…………

――……

―…
.

90: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:41:15.54 ID:0YTebKes0
- 数日後 病院 とある病室 -

春香「こんにちは! プロデューサーさんが起きたって本当ですか? ってアレ、千早ちゃん?」 ヒョコッ

P「おー、春香。おはよー。いやー、久しぶりに良く寝たわ!」 ウーン!

千早「昼ごろ目が覚めたらしくてね。私も今来たところなの」

春香「なぁんだ。それじゃあ私が一番乗りじゃないんですねー」 プスー

P「まーな。真とか響とかまっさきに飛んできたよ。後は美希とかあずささんとかも」

千早「私たちの前にもたくさん来てたみたいね」

P「まぁな。でもま、見舞ってくれるのは嬉しいけど、起きて早々ライブの感想を求められるのはちと困ったぞ」

春香「それはプロデューサーさんが感想言う間もなく力尽きて眠っちゃったからじゃないですかー」

千早「話によれば、私たちの感想攻撃から避けて、静かに眠るために外へ逃げたとか……」

P「あっ。いや、ハハハ……。そんな訳ないじゃないかー」 ハハハ...

春香「えぇっ!? それ、なんか酷くないですかぁ?」 ジトー

P「ハハ……ハ……。あー……。そ、そうだリンゴ食べるか? ほら、美味しいぞ」 ホレ

千早「話題転換が雑すぎませんか……?」

92: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 05:49:09.82 ID:0YTebKes0
- 数時間後 -

春香「うーん。響ちゃんに雪歩。美希に亜美真美。そしてやよいに律子さん、と……」

千早「何だかんだ言って、ほぼ全員来ちゃいましたね」

P「お陰で寝ぼけた頭で全員分の感想を言う羽目になっちまったがな……」

春香「あと来てないのは……伊織だけかな?」

千早「そうね。まぁいつか来るでしょうし、私たちが待つ理由もないし。とりあえず、私たちはこれで……」

P「おう。わざわざありがとなー」

春香「ハイッ! プロデューサーさんもお大事に!」 ガラララ...

千早「では、失礼します」 バタン

P「……っあー、疲れた。えーっと、そういや今日は何日だっと……」

P「うへぇ。4日間も眠ってたのか。残り休暇2日だけじゃん。これじゃあ遊びに行く暇は――」

                   ガララララ....

P「うん? 誰だろ」 チラッ

93: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 06:02:33.31 ID:0YTebKes0
伊織「……」

P「おー、伊織か。いやぁ、あの時はありがとなー。お陰で安らかに眠れたよ」

伊織「……で……が………………よ」

P「ん? 何だ伊織。何か言ったか?」

伊織「な、なんであんたが何事もなかったかのようにピンピンしてるのよ……」 プルプル

P「へ? そりゃあちゃんと寝たんだから元気にはなるさ。それくらい聞いてたろ?」

伊織「アンタ。あの時、『寝れば回復する』って言ったのを否定してたじゃない……」 ピキッ

P「『少し寝れば』な。というか企画中なのに長期間眠る訳にはいかないだろう。あれ、これ聞いてなかった?」 キョトン

伊織「聞いてないわよ!」 ドン!

P「あ、そう? そりゃすまんかった」 シレッ

伊織「そ、それに何より……あ、あの時の私の言葉を。お、おお、覚えてたら……」 ワナワナ

P「あの時の? ……あー、もしかして俺がいよいよ眠りそうになった時の――」

94: 以下、 VIPがお送りします 2014/10/27(月) 06:07:58.21 ID:0YTebKes0
伊織「むきーっ! 忘れろ! 忘れろ! 忘れなさーい!」 バシン バシン

P「痛てててっ! こ、コラ! 病院で暴れるな! ていうか落ち付けー!」

伊織「忘れろーっ! あ、あんなことを後世に伝えられる訳にはいかないわ!」 ベシベシ

P「痛たいって伊織! ていうかあんなことって何のことだよ!」

伊織「そ、そりゃあ……」

伊織「……」

伊織「……ッ!」 ボワン

P「? ど、どうした? かなり顔赤いけど、大丈夫か? 風邪か?」

伊織「う、うるさーい! アンタなんか……。アンタなんかー!」 ゲシゲシ

P「な、何でやー?!」

- fin -

引用元:  伊織「おやすみなさい」 P「ん?」