『1か月後_シン・リーン古代遺跡』


壁画の写し絵製本作業完了しました!

年代毎に並べ替えは良いじゃろうな?

確認をお願いします

どれどれ…ふ~む…


情報屋「魔女?もう一冊複製をお願いしたいのだけれど…」

魔女「主も携行するのじゃな?」

情報屋「そう…私は壁画の出所を調査したいの」

魔女「材質で割り出すのかえ?」

情報屋「そうよ…キ・カイに戻れば壁画のベースになった石が何処で産出されたのか分かるわ」

魔女「全部調べるのかえ?すべてバラバラの様じゃが…」

情報屋「調べる事でどの地域で壁画が彫られたのか特定出来るから…」

魔女「よかろう…これ学者よ!急ぎでもう一冊複製させるのじゃ」

学者「分かりました…」ペコ

魔女「…しかしこの壁画すべてよそから運んで集めて居ったとはのぅ…」

情報屋「先人の魔術師達が世界中の壁画を集めさせたのよ…偉業だわ」

魔女「残りの壁画は何処にありそうか目星は付かんか?」

情報屋「やっぱり南の大陸かと…確証は無いけれど」


タッタッタ


女海賊「魔女!!宝物庫でこんなんあったんだけどこの金槌何??」スッ

魔女「それはこの遺跡で発見された呪われた装備じゃ…調査の為に一応残しておいたのじゃが…」

女海賊「これ欲しいんだけど…」

魔女「魔人の金槌と言ってな…量子転移のエンチャントに失敗した武器じゃ…呪いが主を支配してしまうぞよ?」

女海賊「私さ…剣とかあんま上手く使えないんだ…金槌なら得意なんだよ」

魔女「使っても良いが依存せぬ様にな?」

女海賊「依存?なんで?」

魔女「破壊力は絶大じゃろうが夢を見るのじゃ…まぁそれで主の心が少しでも癒えるのであれば使うても良い」

女海賊「夢?」ブンブン


---ママ?ママってカリスマなの?---


女海賊「ハッ…」

魔女「コレ!危ないで振り回すでない!!」

女海賊「未来の声が…」

魔女「それが夢じゃ…依存せぬ様にな?」ノソノソ

536: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:53:16.87 ID:c2KZAoSz0
『城の中庭』


チュン チュン ピヨ


女海賊「おいダンゴムシ!敵が来たぞ…丸まれ」コロコロ

女海賊「ワーム出て来い…囮で走れ!」ニョロニョロ

女海賊「スズメバチ部隊!攻撃の準備だ」ブーン


バサバサ パク!


女海賊「ぁぁワーム!!あんた足遅すぎなんだよ…」

女海賊「スズメバチ!ワームを助けろ!!」ブーン


ノソノソ


魔女「上手い事虫を操るのぅ?」

女海賊「ハッ!!ヤベ…見られた」

魔女「恥ずかしがる事は無いぞよ?」

女海賊「あのさ魔女…私に魔法教えてよ」

魔女「前にも言ったが主は魔力1じゃ…適性が無い」

女海賊「魔力1って事は在るって事じゃん…なんか無いの?」

魔女「虫使いの才はある様じゃで虫を詳しく勉強すれば使いこなせるやも知れぬ」

女海賊「何を勉強すれば良い?」

魔女「触媒に何を使うじゃとか…虫が何を好むじゃとか色々じゃ」

女海賊「触媒って何よ?」

魔女「未来はどんぐりや種を沢山持って居ったじゃろう?」

女海賊「どんぐり…」

魔女「うむ…植物の種は命そのものなのじゃ…そこから様々な虫が生まれる」

女海賊「私にも出来る?」

魔女「成長魔法が使えぬ故…大きな虫を生むことは出来ぬ…小さな虫なら使えるじゃろうのぅ」

女海賊「小さな虫って?」

魔女「未来が使って居った線虫じゃな…ワームの一種じゃ」

女海賊「その触媒がどんぐりなんだね?」

魔女「主は虫と話せる用じゃから聞いて見るが良い…わらわは虫の声が聞こえぬで何とも言えん」

女海賊「そっか…未来は虫に聞いて育ったのか…」

魔女「主は未来の心を真似て居ったのじゃな?」

女海賊「見ないで…大人になって虫と遊ぶなんて恥ずかしいから」

魔女「ほうか?ではわらわは見ぬ様にしとる…」ノソノソ

537: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:53:54.61 ID:c2KZAoSz0
『ルイーダの酒場』


ドゥルルン~♪


盗賊「よう!!待ったか?」

商人「今来た所さ…戦利品売れたよ?」ジャラリ

盗賊「おーし!!分け前は半分お前にヤル!!これで美味い酒に又ありつける」

商人「今日は何を狩ってきたのかな?」

盗賊「例のごとくスノーゴートだ…アレが一番楽なんだ」

商人「角は?」

盗賊「あるぞ…」ゴトリ

商人「肉と毛皮はもう売った感じかな?」

盗賊「狩りのへたくそな奴にやった…まぁ角だけありゃ良いだろ」

商人「これ薬に出来ればもっと高く売れるんだ」

盗賊「そらメンドクセェな…錬金術なんか俺ぁ勉強する気無ぇ」

商人「勉強してみるかなぁ…」

盗賊「ところでちっと面白い噂聞いたんだ…」

商人「何だい?」

盗賊「港町の方で髭男爵って奴が腕利きの冒険者募集してんだとよ」

商人「髭男爵…公爵の手下か…」

盗賊「なんでも外海を冒険するらしい」

商人「帰って来れないじゃ無いか」

盗賊「帰ってくりゃ英雄だわな」

商人「行き先が知りたいね」

盗賊「だな?」

商人「それよりもう公爵が動き始めてるっていう事だよね」

盗賊「よー分からんが貴族の資産は全部海賊に持ってかれてんだろ?もう死に体じゃ無いのか?」

商人「情報が無いから何とも言えないなぁ」

盗賊「シン・リーンは貴族の影響力がほとんど無いから情報も入って来無ぇ」

商人「だね?平和な国だよ…」

盗賊「狩り資源が多いから冒険者には打ってつけだが…」



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538: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:54:22.32 ID:c2KZAoSz0
盗賊「しかし一か月も俺らほったらかしで壁画の調査まだ終わらんのか?」

商人「なんか新しい発見が沢山あったみたいだよ?」

盗賊「お前はもう飽きたんだよな?」

商人「ここの古代遺跡はキ・カイの遺跡と違って僕はあんまり興味無いんだ」

盗賊「お宝は発掘し尽くした感じだしな…俺も行く気が無い」


タッタッタ ガチャリ


情報屋「はぁはぁ…やっぱりここに居たわね」

盗賊「おぉ!!今お前等の話してた所よ…まぁ座れや」

情報屋「女海賊はここに来て無い?」

盗賊「んあ?見て無ぇぞ?」

情報屋「城に居無いのよ…何処か行っちゃったみたいで」

盗賊「アイツは飛空艇の隠し場所知らん筈だから何処にも行けんと思うが?」

情報屋「何処に行ったのかしら…」

盗賊「飛空艇置きっぱなしでどっか行くとは思えんからその内帰って来るんじゃ無ぇか?」


ドロボーーー!!


盗賊「んん?」

商人「街道の方だね…ひょっとしたら女海賊かも」

盗賊「行ってみっか」スタ

539: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:54:48.41 ID:c2KZAoSz0
『街道』


ザワザワ

ったくあの女…こんな大量に盗む奴が居るか!!


盗賊「何の騒ぎだ?」

雑貨屋「売り物の種をごっそり盗んだ女が居るんだ…」

商人「種?ハハ…どれくらいの被害?」

雑貨屋「銀貨10枚程度か…そんな事よりごっそり行かれたのが納得いかん」

盗賊「丁度スノーゴートの角が要らんかったんだ…これで許してやってくれ」ポイ

雑貨屋「おぉ!!?そら済まんな…あんたらあの女の知り合いか?」

盗賊「分からんが連れに手癖の悪いのが居てな…どっちの方向に逃げてったんだ?」

雑貨屋「門の外だな…追憶の森方面だ」

盗賊「なぬ!?外に出たってか…イエティが居るじゃ無ぇか」

雑貨屋「まぁ俺は知らん…角は頂くから衛兵には言わんでおく」

盗賊「そら助かる」

雑貨屋「種を盗む奴なんか初めてだ…変な女も要るもんだ」

商人「どうする?追う?」

盗賊「追うしか無いだろ…イエティなんか一人で相手出来ん」

情報屋「私も武器持って来るわ」

盗賊「待て待て…お前等が一緒だと足手まといになる…俺が一人の方が良い」

情報屋「大丈夫?」

盗賊「まぁ酒場で酒でも飲んでろ…じゃ行って来るな」タッタッタ

540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:55:17.02 ID:c2KZAoSz0
『1時間後_ルイーダの酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「あ!帰って来た…女海賊は見つかった?」

盗賊「だめだぁ…ハイディングして逃げてる奴なんか見つけられっこ無ぇ」

情報屋「心配ね…」

商人「その毛皮はどうしたの?」

盗賊「これか?イエティの変死体を見つけたから剥いで来たんだ」

商人「変死体?」

盗賊「頭から内臓まで何かでくり抜かれた感じで倒れてた…まぁ儲かったわヌハハ」

商人「女海賊では無さそうだね…使うとしたら爆弾…」

盗賊「うむ…てかアイツ貝殻持って無いのか?」

情報屋「あ…忘れてた…魔女に相談してみるわ」

商人「それで?壁画の調査の方はどうなの?まだ掛かりそう?」

情報屋「調べられる事は全部調べて今は手詰まりな感じね…一度キ・カイに戻りたいわ」

盗賊「俺も船が置きっぱなしなんだよな…」

商人「新しく分かった事を教えてよ」

情報屋「あまり驚く様な事は無いわ…未来君の足取りが段々分かって来たって感じね」

商人「すごいじゃ無いか」

情報屋「足取りと言っても確定したのが年代だけね…場所の特定がまだなのよ」

商人「場所?壁画を見れば大体分かりそうな気もするけどなぁ…森とか砂漠とか…」

情報屋「あの壁画には後の人が未来君の壁画を真似て付け足した壁画がいくつも有ったのよ」

商人「ええ?歴史の捏造?」

情報屋「歴史なのか予言なのか分からないけれど捏造された物も混ざっているの」


未来君が彫った壁画には必ず月と暦が彫られて居るの

そして壁画の主役は虫を持った人物…未来君ね

その壁画は石の材質がバラバラでどの地域の石なのかまだ分からない


商人「じゃぁ未来君の壁画だけでまとめると違った解釈になりそうだね」

情報屋「そうよ?勇者が魔王になると言う様な表現は後に付け加えられた捏造ね…未来君はもっと別の物を見てた」

商人「大した発見じゃ無いか!別の物って何?」

情報屋「オークよ…オークに何かを見てたみたい」

商人「じゃぁやっぱり南の大陸か」

情報屋「未来君の壁画だけを写した書物を今複製して貰って居る所なの…それだけ見ると未来君がどんな道を歩んだのか分かる」

盗賊「ほ~ん…ちっと興味出て来たぞ?」

情報屋「出来たら見せてあげる」



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541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:55:46.96 ID:c2KZAoSz0
ドゥルルン~♪


吟遊詩人「神の住む国ニルヤカナヤ~♪死者の魂が~帰る安住の理想郷~♪オホツガグラに呼ばれ~♪」


盗賊「あの吟遊詩人はすっかりここに定着した様だな?」グビ

情報屋「女王のお気に入りだそうよ?」

盗賊「お前は酒飲まんのか?俺が払ってやるが…」

情報屋「お酒は遠慮しておくわ…」

盗賊「詰まんねぇなぁ…おい商人!代わりにお前が飲め」

商人「朝まで付き合わされるのはもうゴメンだよ」


吟遊詩人「皆さんお揃いで…」


盗賊「よう!兄ちゃん!!稼いでっか?」

吟遊詩人「お陰様で…ところで皆さんに最近のホットな話題をと思いまして…」

盗賊「ほう?何よ?」

吟遊詩人「髭男爵が冒険者を募っているのは御存じで?」

盗賊「噂で聞いたぐらいだな…外海を航海するとか聞いたが?」

吟遊詩人「その行き先がさっき僕が歌って居たニルヤカナヤなんですよ」

情報屋「ニルヤカナヤ…もしかしてニライカナイでは無くて?」

吟遊詩人「今の言葉だとそうなるのでしょうかね?」

盗賊「何が在るのか知ってるか?」

吟遊詩人「それがホットな話題なんです…黄金が眠って居るとか」

盗賊「なんだ只の黄金か…あんま興味無ぇなぁ…」

吟遊詩人「ハハそうでしたか…今冒険者たちはその噂で持ちきりな物だったので」

商人「場所は分かってるのかな?海図とか航路が分からないと帰って来れない」

吟遊詩人「さぁ?僕は伝説の諸事詩しか知らないでの何とも…」

情報屋「昔フィン・イッシュは黄金郷と呼ばれて居たけど黄金を何処かに隠したと言う伝説は知ってる」

商人「じゃぁそのニルヤカナヤに隠したっていう可能性は在りそうだ」

盗賊「黄金なんか手に入れてもなぁ…」グビ

情報屋「あれ?そういえば未来君の壁画に黄金らしき物が記されて…」

盗賊「なぬ!?」

商人「おっとぉ!!?」

吟遊詩人「諸事詩では黄金の他に時の砂で時間を巻き戻すというフレーズもあるんですよ」

商人「時間を巻き戻す…帰ろうとしたとも解釈出来るな…」

情報屋「ちょっと…城に戻って壁画を見直してくる」スック タッタッタ

盗賊「おい吟遊詩人…もうちっと詳しく教えてくれ」

吟遊詩人「あぁ良かった!皆さんに興味を持ってもらえて…」


542: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:56:13.25 ID:c2KZAoSz0
『翌日_宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「戻ったぜ?」

商人「…どうだった?良い情報聞けたかな?」

盗賊「いや…他の冒険者にいろいろ聞いてみたが吟遊詩人から聞いた以上の話は聞けなかった」

商人「残念だな…僕もフィン・イッシュ沖の地図を探して見たけど見当たらなかった」

盗賊「航路が分からんと船じゃ行けん…飛空艇で行くにしても目標物が無いとな…」

商人「大体の場所じゃダメだよね?」

盗賊「海がメチャクチャ広いから遭難するのがオチだ…なんとか海図探してぇ」

商人「ホムンクルスが居ればなぁ…」


トントン


商人「お?誰か来た…」

魔女「入っても良いか?」ガチャリ

盗賊「返事する前に入ってんじゃ無ぇか…」

商人「あれ?魔女イメチェンしたの?」

魔女「変装じゃ…公爵に姿を見られて居るでな」

盗賊「まぁ入れ」

魔女「うむ…」ノソノソ

商人「どうしたの?」

魔女「女海賊が見当たらぬ…狭間に入って居る様じゃで貝殻も千里眼も通じぬのじゃ」

盗賊「まだ帰って無ぇのか…」

魔女「こちらにも来て居らぬという事は…わらわの塔へ行ったやも知れんのぅ」

盗賊「お?そういや追憶の森の向こうだっけか」

魔女「公爵に見られて居るでわらわの塔にはしばらく行かん様にして居ったのじゃがのぅ…」

商人「狭間に入る入り口は知られているの?」

魔女「分からぬ…」

盗賊「まぁ俺が行ってちっと見て来るわ」

魔女「頼む…わらわは下手に動いて見つかりとうない」

543: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:56:45.18 ID:c2KZAoSz0
『追憶の森』


フワフワ ドッスン


盗賊「商人!先に降りてくれ!俺ぁ飛空艇ハイディングさせてから行く」

商人「うわぁ…足元ビタビタだ」ベチャベチャ


スゥ


盗賊「場所覚えてっか?」

商人「大体ね…こっちだよ」ビタビタ

盗賊「雪の上歩け」

商人「この辺まで冒険者は狩りに来るのかな?…これ足跡じゃないか?」

盗賊「泥じゃ足跡かどうか分からん」

商人「待って!やっぱり何か居る…見てあそこの木の下」ユビサシ

盗賊「…うお!!死体じゃ無ぇか」

商人「随分傷んでる…」

盗賊「警戒しろ…戦利品無いか確認する」サクサク

商人「イエティが出るんだっけ…」キョロ

盗賊「一応俺が毒牙のナイフ持ってから足止めは出来る…おぉコイツ金持ってやがる」ガサゴソ

商人「こんな所まで一人で来る事無いよね?」

盗賊「うむ…こいつが食われてる間に他の奴らは逃げたんだろ…割と良い武器持ってんぞ?」ポイ

商人「おっとっと…」パス

盗賊「そいつはククリナイフってんだ…お前に丁度良い…腰にぶら下げとけ」

商人「早く行こう…なんか襲われそうで落ち着かない」

盗賊「だな?あとはゴミだから置いてく…行こう」サクサク

544: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:57:17.16 ID:c2KZAoSz0
『魔女の塔』


ブーン


盗賊「ぬぁぁぁ何でこんなにハチが居んのよ」バサバサ

商人「ミツバチだね…花があるから集まってるのかな?」


ミツバチ集まれ!

よしよしハチミツはこんなもんで良い

褒美に女王バチ増やして良いぞ

おいワーム!ちゃんと掃除しろよ!

へそのゴマやんないぞ?


盗賊「居た居た…アイツ何やってんだ?」

商人「お~い!!女海賊!!」

女海賊「ヤベ…見つかった!!」ダダ ピューーー

盗賊「なんで逃げんだよ!!おい待て!!」

女海賊「あんた達何しに来たのさ…私修行中なんだよ」

盗賊「なぬ?修行?…お前今虫と遊んでただろ」

女海賊「遊んでる訳じゃ無ぇし」

商人「ハハ…まぁ無事で良かったよ…魔女が心配してるんだ」

盗賊「ひょっとしてお前虫使いになろうとしてんのか?」

女海賊「何さ!!悪い?」

盗賊「いや関心してんだ…お前が魔術師とはな…」

女海賊「ムフ…ハチミツ食ってく?」チラ

盗賊「おぉちっと味見させてくれ」

女海賊「おし!ちっと休憩すっかぁ…こっち来なよ」

盗賊「お前勝手に魔女の塔使ってんのか?」スタ

女海賊「バレなきゃ良いんだよ」

商人「う~ん…君は考えが単純なんだね…直ぐにバレるよ」

女海賊「元に戻せば別にイーじゃん…文句言うなら帰って!」

盗賊「おい商人!従っとけ」

545: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:57:47.89 ID:c2KZAoSz0
『魔女の部屋』


ザワザワ カサカサ


盗賊「…なんつかー…まぁ綺麗っちゃ綺麗なんだが同居人が虫ってのがよ…」

女海賊「今育ててんの!!ホレ…ハチミツ!」ポイ

盗賊「おわっ…壺ごとかよ」ペロリ

女海賊「どう?」

盗賊「こりゃ美味い!商人!舐めて見ろ」

商人「すごいな…高く売れるよ」ペロ

女海賊「塔の周りにしか花が咲いて無いからそんだけしか作れなかった」

盗賊「壺一つありゃ十分じゃ無ぇか」

女海賊「樹液も集めてんだ…こっちは一杯有る」

商人「君はハチミツ一本で生きて行けるだけ稼げると思うよ…うんうん美味しい!」

女海賊「ほんで何しに来たの?もしかして連れ戻しに来た?」

商人「そういう訳じゃ無いよ…魔女が心配してるから様子を見に来たのさ」

女海賊「魔女が妖精に教えて貰えって言ったんだよ…迷惑掛かんない様に離れた所で笛吹いてんじゃん」

商人「あぁなるほど…妖精の笛を吹くために魔女の塔に来たのか…」

盗賊「魔女の心配はお前の命だ…どうやら魔女を狙って刺客が来てる様だ」

商人「やっぱりさっきの死体は刺客?」

盗賊「ククリナイフ使うなんざそれしか考えられん」

女海賊「あー…そいえば4~5人来たから虫使って追い返したんだ」

商人「マズいね…又来そうだ」

女海賊「アラクネーけし掛けたら逃げてくくらいショボイ相手だよ…気にしなくて良いんじゃない?」

盗賊「アラクネーまで居るんか」

女海賊「この辺は結構沢山巣があるみたい」

商人「それじゃぁ魔女の塔はアラクネーに守らせておけば良いね」

盗賊「ここに居ると面倒が起きちまうから戻った方が良い」

女海賊「う~ん…どうすっかなぁ…ハチミツもう集まんないし一回帰るかぁ…」

商人「事情を魔女に話した方が良さそうだよ」

女海賊「おけおけ!修行は一旦中止!行こっか」スック

546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:58:23.77 ID:c2KZAoSz0
『追憶の森』


ベチャベチャ


女海賊「私さぁ樹皮を集めてから戻るから先に帰ってよ」

盗賊「お前一人じゃ危ないだろ」

女海賊「大丈夫だって!アラクネー連れてたらイエティも襲って来ないから」

商人「ええ!?アラクネー何処に居るの?」

女海賊「鞄の中…育ててるんだよ」

盗賊「ちっこいアラクネーでも襲って来んのか?」

女海賊「なんかイエティ逃げてくよ?」

商人「毒が怖いのかもね」

盗賊「いやしかしだな…一人で森を歩かせる訳にイカン」

女海賊「あんたら一緒だと邪魔なの!妖精の笛使えないから…」

商人「ハハ…なるほどね…何か有っても笛吹けば良い訳ね」

女海賊「そういう事…虫は眠らないからずっと私のターンな訳」

盗賊「もしかしてよ?こないだイエティの変死体を見つけたんだがお前の仕業か?」

女海賊「そうそう!!この魔人の金槌を試してみたんだ」スチャ

盗賊「そら只の金槌じゃ無いのか?」

女海賊「私も使ってビックリさ…叩いた所が消えて無くなるんだよ」

盗賊「それで死体がくり抜かれた感じになってたんだな?」

女海賊「妖精の笛とこの魔人の金槌あれば何に襲われても余裕!!」

盗賊「アラクネーと言い…その武器と言い…お前は反則ばっか使う」

女海賊「分かったらハイハイ…あっち行った!!」

盗賊「おい商人!!飛空艇戻るぞ!!」

女海賊「私お腹空いてるから後で飯代お願い…ルイーダの酒場に行ってるから」

盗賊「へいへい…」スタ

547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:59:00.12 ID:c2KZAoSz0
『ルイーダの酒場』


ドゥルルン♪


バニー「はぁい!!お一人さまですか?」

女海賊「んぁぁ…連れが2人居るんだけど…まだ来て無いなぁ」

バニー「お席空いてますよ?ぞうぞ~ウフフ」

女海賊「まぁ良いや…私お腹減ってるんだ…何か持って来てよ」

バニー「お代は先に頂きまぁ~す」

女海賊「お金は連れの2人が持ってるのさ…なんだあいつ等遅っそいなぁ…」ブツブツ


吟遊詩人「お久しぶりです!!」


女海賊「お!!良い所に来た!!食事したいんだけどお金持って無いのさ」

吟遊詩人「それなら僕がリュートのお礼として御馳走しますよ」

女海賊「ラッキー!!適当にお願い」

吟遊詩人「バニーさん…彼女にはお世話になったんだ…これで何か持って来てあげて」ジャラリ

バニー「はぁ~い!!ウフフ」

吟遊詩人「今から僕が演奏するからゆっくり食事を楽しんで下さい」


ドゥルルン♪

吟遊詩人「かつての英雄♪赤い瞳の王~♪えにし森から馬を駆ってやって来た~♪」

吟遊詩人「メデューサの血を英雄は求む♪来たる来たるは黒の騎士~♪邪なるものは滅び去る時~♪」


女海賊「ふ~ん…時の王のおっさんの歌か…」

バニー「どうぞ~お食事をお持ちしましたぁ~」

女海賊「何日振りのまともな食事だろ…頂きマンモス~」パクパク

548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 15:59:31.41 ID:c2KZAoSz0

ヒソヒソ ヒソヒソ

おい見ろ…あの女は魔女の塔に居た奴じゃ無ぇか?

何!?塔の魔女か…どうする?街の中じゃ魔術師がウロウロしてる

麻痺毒だ…動けなくなった所をさらうぞ


女海賊「あの2人遅っそいなぁ…」モグモグ

怪しい男「これは美しい美女…席をご一緒しても?」

女海賊「んぁ?あんた誰?」ムシャ

怪しい男「通りすがりの冒険者さ…貴方のような人にピッタリな話をと思ってねフフ」

女海賊「悪いけど私あんたに興味無いから…シッシ!!」


ヒュン チクリ!


女海賊「痛った!!誰!!」ガタン

怪しい男「こ…これは毒針…一体誰が!?」ニヤ

女海賊「あったま来た!!」ゴソゴソ

怪しい男「動くと毒が回ってしまいますよ?」

女海賊「うっさいなアンタ!!どっから撃って来たか見て無いの?」キョロ

怪しい男「これは吹き矢…角度的に向こうの方から…」---毒効かんのか?この女は---

女海賊「あっちか…」ダダ


ヒュン チクリ!


女海賊「くっそ!!どっから撃って来てんのよ!!」ドタドタ

バニー「どうかされましたか?」

女海賊「なんか吹き矢撃たれてんだって…痛ったいなぁ」

バニー「え!?この酒場で騒ぎを起こされますと大変な事に…」

怪しい男「ささ…こちらの方へ」グイ

女海賊「何すんだよ!あんたに興味無いって言ってんじゃん」

怪しい男「毒の手当てをしますので横に…」

女海賊「あぁぁもうメンドクセェ!!」


ピ~ヒョロロ


バニー「吟遊詩人の演奏中に他の楽器はダメよ~ん」

女海賊「ハイハイゴメンね…」ズカズカ

怪しい男「おかしいな…強い麻痺毒の筈なのに」

女海賊「はぁ?なんであんたがそんな事知ってんの?」フラ


ドタリ ドタリ ドタ ドタ


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549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:00:00.20 ID:c2KZAoSz0
『少し後』


パクパク モグモグ


盗賊「なんだこりゃ…どうなってんのよ」

商人「君一人で食事してるの?」

女海賊「なんか暗殺されそうだったから眠らせた」ムシャムシャ

商人「…これは衛兵呼んだ方が良いね」

女海賊「そこでぶっ倒れてる怪しい男と…吹き矢持ってる奴が刺客…そいつら牢に入れて喋らせれば良い」モグ

盗賊「お前は平気なんだよな?」

女海賊「毒針で撃たれた」

盗賊「なんで無事なのよ…」

女海賊「毒食べる虫が体の中に居るから」モグ

商人「ハハ何でも有りだね…君は」

女海賊「ふぅぅお腹落ち着いたぁ」ゲフー

商人「とりあえず魔術師呼んで事情を話して置く」


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550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:00:27.07 ID:c2KZAoSz0
『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「…やっと納得してもらえたよ」

盗賊「騒ぎになってっか?」

商人「うん…みんな寝てるだけだから困惑してた」

盗賊「女海賊どうする?夜は城に出入り出来んだろ?」

女海賊「無理…てかあいつ等魔女狙ってんだよね?人相全然違うのになんで私狙ってんの?」

商人「魔術師は変性魔法で姿変えるのが認知されてるから状況判断なんだろうね」

女海賊「魔女の塔に行ったのがマズかったのか…」

商人「シン・リーンは何か有ると刑が重いから暗殺なんか無いと思ってたけどね…」

盗賊「魔女の独裁国家だもんなヌハハ」

商人「魔女の影武者って誰がやってるのか知ってる?」

女海賊「王女3人共誰かが化けてるね…誰なのか謎」

商人「塔の魔女が誰なのかも一般に知られて無いのはやっぱ幻惑されてるよね…なんか怖いなこの国」

盗賊「統制がきっちりされてるから悪が蔓延らん…そらそれで良いと思うぞ?」

商人「…それで女海賊は一晩ここに泊って行く訳だから面白い話を聞かせてあげよう」

女海賊「ん?何?」

商人「ニルヤカナヤという理想郷の話さ…」

女海賊「興味無い」

商人「聞いて…未来君が関わってる可能性がありそうなんだ」

女海賊「え!!?何処に有んの?」

商人「壁画に黄金らしき物が記されていたと情報屋が言ってたんだ…その黄金の行き先がニルヤカナヤの可能性があるのさ」

女海賊「ええと…黄金が描かれて居るのは相当昔の壁画…年代いつだっけな」

商人「情報屋がそれを知って壁画を見直すと言ってた」

女海賊「明日聞いてみる」

商人「それでそのニルヤカナヤには時間を巻き戻す時の砂という物があるらしい…つまり未来君は現代に帰ろうとした可能性があるのさ」

女海賊「じゃぁ何で帰って来ないのさ」

商人「失敗したんだろうね」

女海賊「そんなん今見つけても意味無いじゃん」

商人「ある…君はきっとこの時の砂が欲しい筈だ」

女海賊「私が時間を巻き戻す…そういう事か」

商人「兎に角…秘密は知りたいよね?」

女海賊「場所は?」

商人「フィン・イッシュ沖…外海の向こう側さ」

女海賊「よっし!!」

盗賊「待て待て…詳しい場所が分からん上に帰って来た奴が居ない…簡単に行ける場所じゃ無ぇ」

女海賊「行く方法見つけりゃ良いんでしょ?ホムちゃん起こせば座標だって分かる」

商人「そういう事だよ…先にホムンクルスを目覚めさせれば可能性はある」

女海賊「おけおけ!明日行こう」

盗賊「まずは魔女に相談だな?勝手に出て行く訳にも行くめぇ」

551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:00:57.67 ID:c2KZAoSz0
『翌日_シン・リーン城』


カクカク シカジカ


女海賊「…て訳でホムちゃん目覚めさせに行って来る」

魔女「ちと待てい…南の大陸にはわらわも行きたいのじゃ」

女海賊「ほんじゃ行く準備してよ」

魔女「壁画の製本作業がもう少し掛かるのじゃ」

女海賊「う~ん…じゃぁ飛空艇の改造に魔女付き合って!」

魔女「わらわが何を出来ると言うのじゃ?」

女海賊「飛空艇の木材を虫が食っちゃうんだよ…だから木材を樹脂に変性させて欲しいのさ」

魔女「ムム?樹脂に変性できると何故主が知って居る?」

女海賊「妖精に聞いたんだ…樹脂なら食わないって」

魔女「よかろう…その代わり製本が済むまで大人しくして居るのじゃぞ?」

女海賊「おけおけ…これで飛空艇の中で虫を育てられる」」

魔女「飛空艇を虫の巣窟にするのかえ?」

女海賊「そうそう!光の石もあるから植物も育てられる」

魔女「なるほどのぅ…土を入れて虫に耕させる訳じゃな」

女海賊「じゃ行こっか!」スタ


552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:01:26.26 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


トンテンカン ゴソゴソ


盗賊「いよー女海賊!!物資買い付けて来たぜ?」

女海賊「まだ入れないで!今改造中…そこ置いといて」ゴソゴソ

盗賊「これ以上改造する所なんか無いんじゃ無ぇか?」

女海賊「虫の巣にすんだよ」

盗賊「アラクネーだけじゃ足りんってか…」

女海賊「寝床はちゃんと用意しとくからアッチ行ってて」

盗賊「へいへい…」スタ


-------------


商人「魔女は見物かい?」

魔女「うむ…女海賊が虫に憑りつかれて居らんか心配でのぅ」

商人「虫が憑りつく?」

魔女「虫ばかりと会話して居ると俗世から離れて行ってしまうでの…内に籠らねば良いが」

商人「あぁなるほど…未来君がそんな感じだったか」

魔女「悪くは無いが見て居て可哀そうでのぅ…」

商人「…ところで捕らえた刺客の3人はどうなったの?」

魔女「尋問が終わって釈放する所じゃ」

商人「釈放?そんなんで良いの?」

魔女「塔の魔女を暗殺したと思い込ませたのじゃ…これで収まれば良いが…」

商人「泳がせて帰らせるのか…暗殺を計画してるのはやっぱり公爵?」

魔女「公爵が指示して居るのじゃろうが…実際に計画したのは他の者じゃろうな」

商人「誰?」

魔女「冒険者ギルドで賞金首になっとった様じゃ」

商人「えっと…支持団体沢山あるね…商人ギルドも支持団体の一つだ」

魔女「下っ端じゃで尋問しても意味が無いのじゃよ」

商人「商人ギルドの伝手で調べられるかもしれない」

魔女「それは助かる…今のままでは女海賊は動き辛かろう」

商人「女海賊?姿を変えてる様に思われてる?」

魔女「うむ…本当はもう一人居ったらしいが行方が分からん」

商人「まぁ魔女へのタゲが逸れて良かったと言えば良かったんだけど…」

魔女「しばらく様子見じゃな」


------------

553: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:01:57.73 ID:c2KZAoSz0
タッタッタ


情報屋「魔女!!時の砂についてもう一度見解を聞きたいの」

魔女「何度も言うがその様な物は存在出来ぬ」

情報屋「この古文書には時間の巻き戻りの事が少し書かれて居るわ?見て…」

魔女「どれどれ…ふぅむ…確かに巻き戻りがあったかのように書かれて居るな」ヨミヨミ

商人「存在出来ないってどういう意味?」

魔女「時間が巻き戻るのではなく次元を超える事は出来るじゃろうな」

商人「その人だけ超える訳か」

魔女「有るとすれば量子転移が封じられた何かじゃ…祈りの指輪がそれにあたる」

情報屋「砂では無いという事?」

魔女「じゃろうのぅ…砂銀であれば可能かも知れんがわざわざ砂銀に封じる理由が分からぬ」

商人「古代魔術で出来る可能性は?」

魔女「ムム…時空の魔方陣が解明されて居らぬ故何とも言えぬのぅ」

情報屋「やっぱり魔女の見解は時の砂という物は無いという事ね?在っても祈りの指輪の様な何か…」

魔女「そうじゃ」

商人「ねぇ…こんなのはどうかな?」


仮に砂時計の中身に砂銀を詰め込んだとしよう

そこに量子転移をエンチャントしたとしたら

どのくらいの数の砂銀が成功するかな?


魔女「やったことが無いで何とも言えぬが幾千の砂銀の粒のいくつかは成功するやも知れん」

商人「失敗した砂銀はどうなる?」

魔女「呪われた砂銀になるじゃろう…夢を見る砂じゃな」


未来君はそれで夢を見ようとして居ないかな?

夢を思い出す為にそれを作って居無いか?


魔女「なんじゃと!?…」

情報屋「商人…あなたビックリ発想するのね」

魔女「ふぅむ…確かに夢を自分の物に出来るやも知れんのぅ…」

商人「結果論だけどそれで少しだけ次元を飛んでしまうと言うのは?」

魔女「なるほど有り得そうじゃ」

情報屋「ちょっと待って!!この古文書の年代と黄金郷の年代が一致する!!」

商人「つまりこうだね…未来君は第3者と一緒に行動してたんだ…見て居た人が書いたんだよ」

554: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:02:23.88 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


ノソノソ


魔女「女海賊は居るかえ?」

女海賊「お!!魔女良い所に来た」

魔女「何じゃ?飛空艇の改造は終わったんか?」

女海賊「まぁ入ってよ…」グイ

魔女「ほう?もう植物が芽を出しよるんか」

女海賊「魔女の塔の花を植えたのさ…ここでハチミツ作れる」

魔女「ハチミツは完全栄養食じゃで飛空艇で作れるのは良いのう」

女海賊「これで長期間補給無しで飛べる」

魔女「主はもう外海へ出る気で居るのじゃな」

女海賊「外海だけじゃ無いよ…オーク領も補給なんか出来ないさ」

魔女「ふむ…今壁画の製本作業が終わって主に持って来たのじゃ…ホレ」バサ

女海賊「おぉ!!」パラパラ

魔女「未来が彫った壁画のみ年代毎に並べて居る…それを完成させるのが主の役目じゃな」

女海賊「よっし!!やる気出て来た…月まで行くぞ!」

魔女「どうやって行くか考えて居るんか?」

女海賊「ホムちゃん頼みさ…どう計算しても地球の重力振り切るエネルギーが足りない」

魔女「重力の魔方陣が解明されれば問題を解決できるやも知れぬ…やる事が多いのぅ」

女海賊「一個一個解決するさ」

魔女「さて…準備は整ったで行くとするかのぅ」

女海賊「おっけ!!盗賊と商人連れて来る…魔女は情報屋お願い」

魔女「うむ…飛空艇で待って居るでのぅ…」

555: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:02:49.24 ID:c2KZAoSz0
『宿屋』


ガチャリ バタン


女海賊「なんで宿屋でゴロゴロしてんだよ!探したんだぞ!!」

盗賊「入って来ていきなりなんだ!」

女海賊「ルイーダの酒場が無くなってんじゃん!!」

商人「あ…それ例の事件で改装するらしいよ?なんか女王が独自の冒険者ギルド作るんだってさ」

盗賊「別所に有った冒険者ギルドを無理やり閉鎖させたみたいだぜ?」

女海賊「ほーん…まぁ関係無いや…もう行くぞ!」

盗賊「その言葉を待ってたぜ?退屈してたんだ」

女海賊「とりあえず今日中に港町行く」

商人「おー墓参りに行けるじゃ無いか」

女海賊「盗賊!今晩髭男爵の船から海図盗んで」

盗賊「なぬ!?」

女海賊「あんたならチョチョイノチョイでしょ?」

盗賊「偵察も無しにいきなりか…」

女海賊「とりあえずユートピア行くから速攻用意して」

盗賊「おっし!!じゃぁまぁ行くか」スック

556: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:03:19.50 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


ウロウロ


情報屋「あ…戻って来た」

女海賊「ん?何してんの?」

情報屋「虫が沢山居るから入り辛くて…」

女海賊「無害だよ…何も悪いことしないから入って」グイ

情報屋「…魔女は平気なの?」ビクビク

魔女「慣れればどうという事は無いぞよ?」

盗賊「うはぁ…サソリも要るじゃ無ぇか…」

女海賊「そいつ毒無いから…暗くなった時の明かりだよ」

盗賊「そういや夜中サソリは光るな?」

女海賊「そそ…樽の上に置いといて目印にするんだ」

商人「…お邪魔しま~す」コソコソ

女海賊「そんなビビんなくて大丈夫だって!!」

商人「いやぁ…流石に…これどのくらい種類居るの?」

女海賊「ほんなん分かる訳無いじゃん…沢山居る」

商人「僕は何処で横になったら?」

女海賊「何処でも良いよ!虫の方が勝手に避けるから」

商人「踏ん付けそうだなぁ…」

女海賊「踏まれる方が悪いんだって…気にしないでくつろいで?ほんじゃ球皮膨らませるよ?」


シュゴーーーー フワリ


女海賊「お?やっぱ随分軽くなってんな…」

魔女「樹脂は木材より質量が軽いでのぅ」

女海賊「もっと荷を乗せられるんか…」

盗賊「さ~て!!俺は虫共とくつろぐぞ!!」ドター

商人「まぁ5人だけだと随分広いね」

情報屋「ハチの巣まである…怖い」

女海賊「これから毎日ハチミツ食べられるよ」

盗賊「おぉそうだ!ハチミツが美味いのよ…情報屋も舐めて見ろ」

女海賊「よーし!!進路南!!目標海!!しゅっぱーつ!!」グイ 


シュゴーーーー バサバサ

557: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:03:51.18 ID:c2KZAoSz0
『ユートピア』


フワフワ ドッスン


女海賊「はい降りた降りたぁ!!」

商人「さっそく墓参りに行って来るよ」スタ

情報屋「私も行くわ…報告しなきゃいけない事があるから…」スタ

女海賊「盗賊は海図盗んできて!」

盗賊「お前も停船してる船の数見ただろう?どれが髭男爵の船かも分からんのだぞ?」

女海賊「はぁ?ほんなん一隻づつ海図奪ってくりゃ良いじゃん」

盗賊「あのな?簡単に言うが偵察も何もしないで盗むなんざ出来っこ無ぇ」

女海賊「どんくらい掛かる?」

盗賊「とりあえず今晩は酒場で情報収集だ」

女海賊「まぁしょうがないかぁ…」

盗賊「停船してる船の多くはセントラルの軍船なのよ…下手に動くと掴まるのがオチ…お前も勝手にウロウロすんな?」

女海賊「私は望遠鏡で覗くさ」

魔女「わらわが変性魔法で姿を変えても良いぞ?」

女海賊「この美貌を変えようっての?ムリムリこれ以上美人にはなれないから」

魔女「嫌ならまぁ良いがわらわは酒場で一杯飲みたいのじゃ」

女海賊「行ってくりゃ良いじゃん」

魔女「これ盗賊!主がエスコートせよ」

盗賊「お…おう!しかしな…子供の恰好じゃさすがにマズいぞ」

魔女「変性魔法!」グングン

盗賊「おう!それで良い…しばらくその格好で居てくれ」

魔女「女海賊や…着替えを借りるぞよ」

558: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:04:23.12 ID:c2KZAoSz0
『墓』


商人「…」人

情報屋「…」人


スタスタ


女海賊「…」ウメウメ

商人「花を植えてるの?」

女海賊「魔女の塔に生えてた花だよ…もう直ぐ春だからさ」

商人「母さん喜ぶな」

女海賊「盗賊と魔女は酒場行ったんだけどあなたは行かなくて良いの?」

商人「盗賊に付き合うと朝まで飲まされるからさ…明日市場に行って相場だけ少し見たいかな」

情報屋「町に随分人が出て居そうね」

商人「そうだね…なんで急に人が増えたんだろう」

女海賊「情報屋も酒場で飲んで来て良いよ」

情報屋「私はお酒を控えているの」

女海賊「あぁそっか赤ちゃん出来たんだっけ」

情報屋「ちょっと女海賊!!」

商人「えええ!?まさか盗賊の?」

情報屋「女盗賊にその報告に来たのよ…盗賊には黙って置いて?」

商人「なんでさ?言えば良いじゃ無いか」

女海賊「纏わりつかれるのがメンドクサイんだってさ」

情報屋「それもあるけど本当は盗賊の心の中に女盗賊が住んで居るから気を使って居るのよ」

商人「なるほど…大人の事情って訳か」

女海賊「よっし!ハチミツ使った栄養料理でも作るか!!」

商人「君が作ると何でも山賊焼きになる…料理は情報屋に任せておいた方が良い」

情報屋「フフ私が作るわ?ハチミツもちゃんと食べてみたかったし」

559: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:05:00.22 ID:c2KZAoSz0
『海が見えるあばら家』


グツグツ ジュワー


情報屋「さぁ出来たわ…どうぞ食べて?」

女海賊「私達は後で良いんだよ…あんたが栄養付けないと意味無い」

情報屋「フフ沢山あるわ?」

商人「やっぱハチミツ使うと肉が柔らかいね…」ハフハフ

情報屋「少しだけで随分違う料理になるわ」パク モグ

商人「ハチミツは何にでも使えるから本当に重宝する…」ムシャムシャ

女海賊「むふふ…そんな言われるともっと作りたくなるじゃん…むふふふ」

商人「女海賊はミツバチを使役するのが一番得意なの?」

女海賊「さぁどうかな?好きで育ててるだけだから…冬でも育つんだよ」

商人「魔女の塔でやってた修行ってどんな事を?」

女海賊「私成長魔法ってのが使えないから小さい虫で何が出来るのか研究してたんだ」

商人「それで何か居た?」

女海賊「ワーム以外ちゃんと育てないと何も出来ない事が分かった」

商人「それで飛空艇で色々育ててるんだね」

女海賊「でもワームも色々出来るんだよ…毒を吐かせたり物を腐らせたり」

商人「へぇ?スゴイな…立派な魔術師じゃ無いか」

女海賊「むふふ…試しに使って見る?」

商人「いやいや毒は勘弁してよ」

女海賊「毒を食らうワームだよ…線虫って言うの」

商人「ん?それって未来君が使って居たという?」

女海賊「うん…これだけは私も使えるんだ…行くよ?線虫!」ニョロ

商人「ハハ小さいな…見るのもやっとだ」

女海賊「行け線虫!毒を食らって来い!」ニョロニョロ

商人「え!?ちょちょ…うわぁぁ目の中に入って…」ゴシゴシ

女海賊「毒食べるだけだから大丈夫!情報屋もやる?」

情報屋「いや…私は遠慮しておくわ」ゾゾゾ

女海賊「毒食べるから妊婦さんには良いのさ…線虫!行け!」ニョロリ

情報屋「ちょ…いやぁぁぁ…」バタバタ


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560: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:05:28.29 ID:c2KZAoSz0
商人「…ふむふむ君がカバンの中に入れてるアラクネーが魔物除けの役割してるのか」

女海賊「アラクネーの毒が一番厄介だからね」

商人「麻痺毒だったっけ」

女海賊「あとアリが数が揃うと一番強いかも」

商人「飛空艇でアリは育てて居ないね?」

女海賊「増えると他の虫を全部食べちゃうからさ…そんだけ強いんだよ」

商人「虫にも色々バランスがあるんだね」

女海賊「成長魔法使えたらもっと色々試せるんだけどなぁ…」

商人「そういう杖とかあれば補えるのかもね」

女海賊「魔女にお願いしたんだけど使ったらダメだって言われたのさ」

商人「え?なんで?」

女海賊「間違って人に使うと老化させちゃうからだって」

商人「あぁぁなるほど…間違えると死人が出そうだ」

情報屋「危ないわね…お腹の赤ちゃんに掛かってしまうとお腹が破裂するわ」

商人「知能はそのままで大人になってしまったらどんなに不幸か…」

女海賊「まぁ良いや!線虫で我慢しとく」

情報屋「その魔法は何も犠牲にしない所が良いわね」


561: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:05:56.53 ID:c2KZAoSz0
『深夜』


ガチャリ ギー


盗賊「帰ったぜ?」

情報屋「あら?あまり飲んで居無いのね?」

魔女「酒場は海賊共が溢れておってな…座る場所なぞ無かったわい」

商人「もしかして貴族の資産を奪って来た海賊達?」

盗賊「そうよ…豪遊していやがる」

商人「豪遊する程女の人居たっけ?」

魔女「前任の領主…片足の領事じゃが移民の政策をしておったらしいのじゃ」

商人「じゃぁ移民が今になって増えてるのか」

魔女「移民と言うても何処からか集めた奴隷じゃ…奴隷を買い入れる政策をして居ったのじゃ」

盗賊「ほんで海賊共はセントラル行くよりも港町の方に女が多いもんだから集まってる訳よ」

商人「お金が欲しい人と女を買いたい人が集中したか…互いに利があるね」

盗賊「まぁそういうこった…こりゃこれからどんどん人増えるぞ?」

魔女「母上が心配して居ったのが急激に人が増えて統制が効かんくなるのを心配して居る」

商人「今の領主は?」

魔女「魔術院から派遣されておるが…一旦移民の受け入れをしておるでその流れを継続しとる」

商人「人が増えるのは良い事だよね」

魔女「うむ…荒れなければ良いがのぅ…」

女海賊「ほんで髭男爵の船はどれなのか分かったん?」

盗賊「髭男爵はとっくの昔にどっか行ったってよ」

女海賊「ええ!?冒険者募ってるって話は?」

盗賊「外海を冒険するより金持ってる海賊相手にした方が手っ取り早く金入るだろ?だから冒険者が集まらん訳よ」

商人「ハハ海賊共に追い払われた訳だ」

盗賊「そういうこった…わざわざ危ない外海行く奴なんざそう居らん」

女海賊「海図無いと私等も行けないじゃん」

商人「髭男爵の行先は分からないの?」

盗賊「さぁな?キ・カイかフィン・イッシュだろ?どうせ…」

女海賊「停船してるセントラルの軍船は何?」

盗賊「元々ハジ・マリ聖堂を攻め立ててた連中だ…黒の同胞の後ろ盾失って行き先未定なんだと思う」

魔女「元老院による内紛が原因じゃで帰れとも言えんのじゃよ…しばらくゴタ付くじゃろうな」

商人「資金源が断たれてしまったから軍から離脱する人も出そうだ」

盗賊「もう出てるぞ?脱走兵がそこら中に潜んでるらしい」

商人「セントラルは縮小免れないね…貴族が力失っちゃってるもんな…」

魔女「公爵次第じゃな…変化の杖を持って居るでどうとでも立ち回れる筈じゃ」

商人「シン・リーンの女王に化けられたらどうする?」

魔女「母上が今どんな姿をして居るか誰も知らん筈じゃ…無理じゃな」

商人「魔術師に囲まれてる訳か…それは関わらない方が良いね」

562: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:06:26.88 ID:c2KZAoSz0
『翌日_飛空艇』


フワフワ


女海賊「はい乗った乗ったぁ!!」

魔女「あばら家にアラクネーを忘れておるぞよ?」ノソノソ

女海賊「あのアラクネーはもう直ぐ卵産むんだよ…増えすぎると困るから置いて行く」

魔女「ではあばら家を守らせると良かろう」

女海賊「そだね…次来た時どんだけ増えてるか楽しみだ」

盗賊「俺ん家だぞ?大丈夫なんだろうな?」

女海賊「他人に勝手に使われるより良いんじゃね?クモの巣なんか後で掃除すりゃなんてことない」

盗賊「そうじゃ無くてな…俺が帰って来た時アラクネーに襲われるのを心配してんだ」

女海賊「あんたも虫使いになりゃ良いじゃん…アラクネーなんか一番言う事聞く」

盗賊「虫と話なんか出来無ぇって…俺だけ襲わない様に言い聞かせておけ」

魔女「アラクネーは退治しようとさえしなければ大丈夫じゃ」

盗賊「ほう?一緒に住めって訳か」

女海賊「はいはい…もう行くから早く乗って」グイ


シュゴーーーー フワフワ

563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:07:03.85 ID:c2KZAoSz0
『上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「よしよし風捕まえた…安定飛行に入る」ハイディング!

商人「ここから君の島まで5日くらいかな?」

女海賊「もうちょい早く到着すると思う…そうそう魔女!例の魔石頂戴」

魔女「ふむ…わらわには不要じゃ」ポイ

商人「結構大きな魔石だね…属性は?」

魔女「風じゃ…女海賊は風の魔石で飛空艇を改造したいらしいのじゃ」

盗賊「まだ何かやるつもりなんか…」

女海賊「今から作業すっから話しかけないで」

盗賊「へいへい…」

情報屋「それじゃ皆居るから壁画の調査で分かった事を話しておくわ…」

商人「それ聞きたかったんだ」

情報屋「未来君の足取り…壁画には一定の法則があって…」


過去に飛ぶのはおよそ700年の定間隔で飛んでいる様なの

700年前…1400年前…2100年前…

そして飛んだ場所はその場所を維持して飛んだと思われる

つまり剣士と未来君が一番最初に飛んだ場所はシャ・バクダの付近…当時は森だった

法則と外れる壁画もあって…それは1700年前

その後2400年前…3100年前と又法則通りに壁画が残されてる

どうしてそういう事が起きているかと言うと

恐らく時の砂で一度未来へ戻ろうと試みたと思われる…

それが2100年前…この時に400年分だけ未来に飛んだ

それで壁画の年代の説明がすべて辻褄が合う

この未来に飛んだであろう年代に黄金郷の伝説が一致する訳


商人「3100年前から先は?」

情報屋「見つかっていないのよ…その先は恐らく南の大陸だと思うわ」

魔女「各壁画の石の材質はキ・カイへ戻れば分かるのじゃな?」

情報屋「そう…今の所分かっているのは700年前のシャ・バクダと1700年前のシン・リーンだけ…足取りの特定が出来ない」

盗賊「女海賊は冒険の書で未来の足取りを見てるんだろ?場所分からんのか?」

情報屋「冒険の書で見たのは動く絵だけだったらしいわ…その絵がどの場所なのか分からないって…」

商人「そういう事か…文字なら分かるかもしれないのにね」

情報屋「とりあえず1400年前の壁画がどの地域の石なのかが分かればシャ・バクダから何処へ向かったのか分かるのよ」

魔女「実際の歴史と擦り合わせればどの程度関与したのかも推測出来そうじゃ」

商人「ちょっと僕も考察してみたいな…壁画を記した書物見せてよ」

情報屋「ビックリ発想を期待するわ」パサ

564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:07:38.04 ID:c2KZAoSz0
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商人「ふ~む…良く見るとこの鍵爪を付けてる人物は多分僕だな…」

盗賊「俺は居ないか?」

商人「居るよ…鍵開けの達人として描かれてる…未来君にはそう見えてるんだ」

魔女「わらわは分かりやすいのう…三角帽子じゃ」

商人「隕石を落としてる姿…これが後の人に予言だと解釈されたんだ」

魔女「わらわの師匠が落とした隕石に話がすり替わった訳じゃな…」

商人「これさ…必ずホムンクルス…というか精霊に関わってるからもしかすると精霊を目覚めさせ回ったのは未来君かもね」

情報屋「きっとそうね…だからホムンクルスが眠って居た遺跡には未来君の痕跡が残って居るかもしれない」

女海賊「ハッ!!そういえばハテノ村の遺跡には遺物が沢山合った…」

盗賊「あそこは噴火してもう近付けんだろ」

女海賊「噴火が収まったらもう一回行けば良いじゃん」

盗賊「まぁあそこは大当たりだったからな…謎の部品がまだ沢山在った」

情報屋「やっぱり探すのはホムンクルスが眠る遺跡の様ね…そういう場所の上に文明が栄えるし…」

商人「キ・カイにもきっと在る筈だよね?」

情報屋「あそこはずっと昔に扉が開けられてもう風化してしまっているわ」

商人「壁画は残って無いの?石は風化しにくい」

情報屋「私の知る限り無いわ…シン・リーンに運ばれたのかも知れない」

商人「…なるほど」



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565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:08:07.47 ID:c2KZAoSz0
女海賊「線虫!土のなかの毒を食ってこい!」ニョロリン

魔女「ふむ…主はその術のみで良さそうじゃ」

女海賊「これしか使えないよ」

魔女「わらわはのぅ…虫使いはその術だけで良いと思うて居る…その術は何も害が無いでの」

女海賊「害?」

魔女「魔術は害が付き物なのじゃ…よって掟によって縛る必要があるのじゃがその術は好きに使うて良い」

女海賊「掟って何さ?」

魔女「私利私欲で使うてはならぬとか様々じゃな…そうじゃ一つ守ってもらわねばならぬのが…その術で金儲けをしてはならぬ」

女海賊「金儲けね…そんなん考えて無かったわ」

魔女「なら良いが…金儲けで使うて居るのをわらわに知られてしまった場合記憶を消すでの?覚悟せい」

女海賊「ねぇそれよりさ…この線虫は毒を食う以外に何か出来ない?」

魔女「それで十分じゃろう…人を蝕む毒を食らえば闇に侵された心も晴れるやも知れぬ」

情報屋「線虫を掛けて貰ってから体調がすごく良いわ?」

魔女「じゃろうな?エリクサーと同等の癒し効果もあるでのぅ」

女海賊「え?マジ?」

魔女「主は気付かんかったんか?傷が直ぐに癒えるぞよ?」

女海賊「あ!!そういや毒針刺されても直ぐに治ったわ…」

魔女「そういう事じゃ…他に代替できる魔法が無い故…虫使いはその術だけでも十分じゃ」

情報屋「虫使いの他の術ってどういう術が?」

魔女「虫を使った破壊術など色々じゃな…変わった術では虫の知らせという術で他人の思考を読む事も出来る…幻術の類じゃ」

女海賊「あ!!虫の知らせって分かるぞ!!敵が近いのを虫が教えてくれる」

魔女「ふうむ…主は魔力を使わずして声を聞けるのじゃな…ドワーフにはそもそも適性が在るのやも知れんのぅ」

女海賊「お姉は金属と会話出来るんだよ」

魔女「会話とな?」

女海賊「金属は地面と繋がってるらしい」

魔女「なる程のぅ…それも虫の声じゃ…大地の声とは虫の事なのじゃよ」

女海賊「へぇ?」

魔女「ドワーフにもエルフと似た感性がある様じゃのぅ」

566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:08:50.04 ID:c2KZAoSz0
『数日後』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「そろそろ到着じゃ無ぇか?目標物が無いからよー分からんな」

女海賊「このまま真っ直ぐで良い」

盗賊「海しか見えんが何で分かるのよ?」

女海賊「ミツバチが花の有る方向知ってんのさ」

盗賊「なる…そういやミツバチは羅針盤の代わりになるんだっけか…」

女海賊「私の島には花が一杯咲いてんのさ…又ハチミツ増えるぞ!」

盗賊「そうそうお前の島にはハチミツ酒があったな?早く飲みてぇ」

女海賊「パパ居るかなぁ…」

盗賊「海賊王の爺か…普段何やってんのよ?」

女海賊「開拓が趣味なんだよ…あちこちの島を開拓して拠点作ってる」

盗賊「それがドワーフの国なんか?領土が良く分からんのだが…」

女海賊「海は全部ワイのもんやとか言ってるじゃん?」

盗賊「ヌハハそら無理だろ…海はデカすぎる」

女海賊「でも本人はそう言ってるから」



『名もなき島』


フワフワ ドッスン


女海賊「パパ居ないやぁ…」ショボン

盗賊「俺ぁちっと村の方行ってハチミツ酒飲んでくる」

魔女「わらわも行くぞよ?港町では飲みそびれたでのぅ…」

盗賊「おぉ来い来い!」

女海賊「ほんじゃ私等遺跡の中に居るから」

商人「ホムンクルスの部品まで案内してよ」

女海賊「おけおけ!階段あるから情報屋は足元気を付けて」スタ

情報屋「ゆっくり付いて行くから大丈夫よ」スタ


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567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:13:33.87 ID:c2KZAoSz0
『古代遺跡』


ズズズ


女海賊「この本棚の裏に隠し部屋あるんだ…奥にホムちゃんの部品があるよ」

商人「おぉぉぉ…ガラス容器に臓器が…」スタタ

情報屋「初めてホムンクルスを目覚めさせた時に一緒に有った臓器ね」

女海賊「そうそう…全部揃ってるかも分かんないんだよ」

情報屋「私も器具をもう一度調査してみるわ…」キョロ

商人「なるほど超高度AIユニットも一緒に沈んでる…これが組み合わさるんだな?」

情報屋「機械は動くの?」

女海賊「動かし方分かんない…色々調べたんだけどどうやっても動かないのさ」

商人「よし!!僕が解明するぞ!!」

女海賊「任せた…私は部屋に戻って横になって来る」スタ

情報屋「商人?これ下手に触ると二度と動かなくなるかも知れないわ?」

商人「うん…分かってる」

情報屋「他に分解しても良いサンプルが有れば良いのに…」

商人「ハテノ村には行けないとしてキ・カイには同じ様な物無いのかな?」

情報屋「遺跡の発掘現場に行けば有るかもしれない…」

商人「まずそっちが先かもね…アテは無いかな?」

情報屋「戻って聞いてみない事には何とも…」

商人「パット見どこも傷んで居ない…エネルギーが供給されれば動きそうなんだけどなぁ…」

情報屋「分解しないと何処がエネルギー供給する場所なのかも特定出来ないわ」

商人「慌てないで一回キ・カイに戻った方が良さそうだね」

情報屋「そうね…一応器具類を全部スケッチしておくわ」

商人「僕は寸法を測るよ…兎に角今はあまり触らない様にしよう」

568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:14:37.03 ID:c2KZAoSz0
『小舟の有る入り江』


ザザー ザブン


盗賊「なんだ女海賊か…一人で何してんのよ」ヨタヨタ

女海賊「月見てんだよ!!放っといて」

盗賊「酒場が閉まっちまったんだ…お前もハチミツ酒飲むか?」ポイ

女海賊「フン!」プイ

盗賊「まぁそうカリカリすんな…どうせ涙も枯れて黄昏てんだろ?」

女海賊「うっさいな!」グビ

盗賊「ここは剣士と未来との思い出の場所なんだろ?まぁ気持ちは分かる…」

女海賊「この寂しさを未来も抱えてたと思ったら泣けないんだ…」

盗賊「孤児ってのはよ?皆そんな感じな訳よ…それに気付けたお前はある意味幸せだと思え」

女海賊「私が幸せ…」

盗賊「人間てのはな?そんな寂しさの中で小さな愛を見つけて紡いで行く…そういう奴が生き残って来たんだよ」

女海賊「なんであんたがそんな事知ってんだよ」

盗賊「俺も孤児だったからな?勘で分かるんだ…未来はそういう世界を大事にした」

女海賊「未来が…」

盗賊「そうだ…剣士と未来は俺達にそういう世界を残して旅立ったのよ」

女海賊「分かった様な事言って!」

盗賊「お前はどう感じるんだ?この世界を…」

女海賊「私は剣士と未来が居ない世界が真底寂しい…」

盗賊「前だけ見て進んでみろ…その先に小さな光がある…それはきっと愛だ」

569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:15:21.01 ID:c2KZAoSz0
女海賊「愛…」

盗賊「そうやって紡ぐんだよ…それが人間なんだ」

女海賊「フン!マシな事言ったつもり?」

盗賊「未来の壁画見ただろ?アイツは苦しみを描き残しちゃ居無ぇ…楽しかった思い出を描き残してる」

女海賊「…」

盗賊「俺らが思うより案外楽しく過ごしてんだ…そう思い悩むな?」

女海賊「悪いけどあんたにはホレないよ!」

盗賊「ヌハハそんなつもりは無ぇよ…お前にゃ有り余る光が有るから陰らん様に励ましに来ただけだ」

女海賊「あのさ…一個意見が聞きたいんだ…私から剣士と未来を奪ったのって魔王だと思う?」

盗賊「そうだな…間違い無く魔王だ」

女海賊「どうやってぶっ倒せば良い?」

盗賊「俺はな?昔から思ってる事があんのよ…魔王をぶっ倒す方法は孤児を救う事だってな」

女海賊「孤児…」

盗賊「まぁ俺は俺なりに魔王と戦ってる訳よ?…言い変えりゃ影の勇者か?ヌハハ」

女海賊「孤児ねぇ…そういや一杯居るな…」

盗賊「皆寂しさ抱えててな…誰にも愛されず悪党になっちまう奴も居る訳よ…見てらんなくてな」

女海賊「あんたはどうなのさ?孤児だったんでしょ?」

盗賊「俺は光を見た…だからこう思えるんだ…お前にゃ闇を照らす光の素質がある…例えば光るサソリ」

女海賊「ええ!?サソリ?」

盗賊「そうよ…たったそんだけ教えてやるだけで光を見る事も在るんだ…なんつーかそうやって闇を抜け出すのよ」

女海賊「それが愛?」

盗賊「愛の一つだろう…光るサソリを追った先にきっと何かを見つける…同類と出会ったりな?」

女海賊「分かった…それ希望だ」

盗賊「かもな?お前はそれを失わない様にな?」

女海賊「知ってるさ…私にとっての希望は…月」

盗賊「そうそう…それで良い…真っ直ぐ行けばその内何か見つける…きっとそれは愛なんだ」

女海賊「あんた言ってる事意味わかんない事ばっかだけど…なんか真理を突いて来るな…」

盗賊「まぁ年の功…勘だ勘!!愛を語れるほど経験豊富じゃないが…何となくそう感じる」

女海賊「参考にしとくわ…」グビ

570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:15:54.80 ID:c2KZAoSz0
『翌日_飛空艇』


コケーー!!コッコッコ!!


盗賊「ぬぁぁぁうるせぇな!!寝れ無ぇじゃんけ!!」ゴロリ

女海賊「もう朝なんだよ!!」ゲシゲシ

盗賊「お前ニワトリ積んで行く気なんか?」

女海賊「悪い!?卵食べたく無いの?」

盗賊「うるさくて敵わん…」グター

女海賊「おいニワトリ!!あんたの寝床は今日から此処だよ…ワーム食っても良いけど種は食うな!!分かったか!?」

盗賊「おいおいマジかよ…家畜小屋にする気か?」

女海賊「うっさいな!補給無しで飛べる工夫してんだから文句言わないで」

盗賊「だったら酒作れる様にしろや」

女海賊「酒かぁ…ハチミツ酒作ってみるかぁ…ハチミツ勿体ないんだよなぁ」ブツブツ

盗賊「栄養が無くなる訳じゃあるめぇ?むしろ発酵して栄養増えるだろ?」

女海賊「てかあんた自分でヤレよ!」


ノソノソ


魔女「朝から騒がしいのぅ…もう出立するんかえ?」

女海賊「魔女も飛空艇に乗っといて…なんか急いでキ・カイに戻りたいんだってさ」

魔女「くつろぐ間も無いのじゃな」

女海賊「ホムちゃん組み立てる方法分かんないからキ・カイで調べるらしい」

盗賊「そら良い…俺ぁこの島が退屈でよ…お宝の匂いが何処にも無ぇ」

女海賊「退屈で悪かったね!!」

盗賊「畑しか無ぇからやる事無い訳よ」

女海賊「じゃぁハチミツ積むの手伝って!!あんたの酒に変わるんだから」

盗賊「うげ…」

魔女「口は災いの元じゃのぅ…」ノソノソ

女海賊「壺に移し替えてるから全部積んで!!」

盗賊「へいへい…」

571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:16:29.08 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


シュゴーーー バサバサ


商人「…それでキ・カイに戻ったら役割分担するんだ」


僕は商人ギルドの伝手を使ってホムンクルスの組み立て方を調べる

情報屋は壁画の出所について調べる

女海賊と盗賊…そして魔女はオーク領に侵入して残りの壁画を探す

拠点は商人ギルド…飛空艇の隠し場所は港の倉庫を使って良い


盗賊「オーク領で壁画の有りそうな目星は無いんか?」

商人「それは女海賊の方が詳しい…行った事ある様だから」

魔女「オーク領に勝手に侵入出来るんかいな?」

盗賊「オークはエルフと同じでハイディング見破って来るだろ?」

女海賊「そだね…かなり危ない…でも魔女の睡眠魔法と私の妖精の笛で眠らせながら行けば大丈夫だと思う」

盗賊「場所は分かってんのか?」

女海賊「虱潰しさ…前行ったときは睡眠使えなかったからしっかり調査出来て無いんだ」

商人「…という訳でしばらくそんな感じで情報を集めよう」

女海賊「行くのは火山灰の降らない西側から順に回る感じかな」

盗賊「西オークと東オークとか在るんだっけか…」

女海賊「もっと南の方だと赤い肌のオークとかも居て訳分かんないんだ…そっちの方が遺跡沢山在って怪しい」

情報屋「オークは肌の色で部族の違いがあるそうよ?」

女海賊「色んなのが居るから良く分かんない…敵か味方かもさっぱりさ」

魔女「茶色のオークが野良オークじゃと聞いたぞよ?エルフの森に居ったのも茶色のオークじゃったな」

盗賊「野良でも危無ぇじゃ無ぇか…人間見たら追いかけて来んぞ?」

女海賊「まぁそういう危険があるから探索は慎重に行くしかないよ」

魔女「睡眠魔法用の触媒を多めに用意せねばならん様じゃな」

商人「物資の調達は僕に任せて…何でも揃えてあげる」

女海賊「そうそう…種をいろんな奴仕入れて欲しい」

商人「お安い御用だよ…買い付けておくから折を見て取りに来れば良い」

魔女「ふうむ…長旅になりそうじゃのぅ」

盗賊「虱潰しってのがぁ…しょうがないんだが…」


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572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:17:04.98 ID:c2KZAoSz0
『キ・カイ_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

はい並んで並んで~競売は向こう側ね~


商人「やあ!繁盛してそうだね」

娘「あ!!商人に盗賊!!いつ帰って来たの?」

盗賊「よう?子供達は元気か?」

娘「元気!元気!!てか今忙しいから大部屋の方行っててよ」

商人「ハハそうさせて貰う」

娘「商人宛てに書簡が沢山来てるんだ…全部読んでおいて」

商人「分かったよ…何処に?」

娘「後で持って行かせる…とりあえず邪魔だから大部屋行っといて




『大部屋』


ガチャリ バタン


情報屋「早速だけど私は知り合いの学者を訪ねに行って来るわ」

商人「一息ついて行けば良いのに…」

女海賊「私もオーク領までちっと行って来る…なんか落ち着かない」

盗賊「待て待て…酒を仕入れて行くぞ」

女海賊「先に飛空艇行っとくから早く荷物積んで」

商人「まぁ一旦行動指針決めたから即行動した方が良いかぁ」

女海賊「早い所ホムちゃん組み立てる方法解明しないとクビにすんよ?」

商人「厳しいな…出来るだけ早くやるさ」

魔女「わらわは触媒を仕入れてから飛空艇へ戻るで先に行って居れ」

女海賊「はいはい…わたし待てない性格だから早くして」イラ

魔女「主は鉛を仕入れるとか言うて居らんかったか?」

女海賊「あああああああ!!忘れてた…鉛無いと弾作れないんだった…」ダダ ピュー

商人「女海賊はお金持ってるのかな?」

魔女「毎度毎度じゃが…世話の焼ける女じゃ…」ノソ

盗賊「そうそう…古代金貨あるからよ?これで孤児院の支援も頼めるか?」ジャラリ

商人「おぉ!!シャ・バクダの古代金貨…資金調達に丁度良い」

盗賊「俺は行っちまうからお前に頼んだ」

商人「分かったよ…孤児達を支援できるように計らう」

盗賊「じゃ行って来るな?」タッタ

魔女「これ盗賊や待てい!!わらわを置いて行くで無い」

盗賊「ヌハハ悪い悪りぃ…どっかの国の姫って事を忘れてたわ…大人の体じゃ背負えんが?」

魔女「背負えとは言うて居らぬ…勝手に置いて行くなと言うて居るのじゃ」

盗賊「まぁ良いや!俺が後から付いて行きゃ良いんだろ?」

魔女「ううむ…主にはちぃと分からせる必要がある様じゃな…」

盗賊「わーったわーーた!!ほい行くぞ」グイ


573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:17:43.87 ID:c2KZAoSz0
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商人「さて…皆居なくなったし…僕も仕事するか…」


ガチャリ バタン


娘「あれ?爺ぃはどっか行った?」

商人「皆忙しいのさ…書簡は持って来た?」

娘「なんだよ…お土産有ると思ってたのにさ」

商人「ハハ在るよホラ?古代金貨さ」

娘「え!?うおぉぉぉぉ!!こんなに?」

商人「換金出来るかい?半分は君達が使っても良い」

娘「マジ?マジ?これめっちゃ高く売れるよ?」

商人「残りの半分でキ・カイの孤児院を支援…やって貰えるかな?」

娘「私等の兄弟増やすんだね?」

商人「まぁそうなるのかな」

娘「孤児院も良いけどチカガイにも子供達の集まりが在るんだ」

商人「へぇ?」

娘「私の子供がそこのギャングに入っててさ…病気持ってるけど商人にそっくりな子が居るんだよ」

商人「そういう子にも支援しよう」

娘「この古代金貨は爺ぃから?」

商人「良く分かるね」

娘「爺ぃのお金の使い道は酒か孤児院って決まってる…よしよしこれだけ有れば」ジャラジャラ

商人「頼むよ…それで書簡は?」

娘「おっと!!忘れてた…」ドサドサ

商人「沢山あるねぇ…」

娘「多分商談だよ…何回も商人尋ねに来てるんだ」

商人「誰だろう?」

娘「知らない!私戻って古代金貨競売に掛けて来る!じゃね」ノシ スタタ

商人「…差出人が書いてないな…誰だろう?」ヨミヨミ


レート介入の見返りに古文書か…

僕が古代遺跡を探している事を知って居る人物だな

随分前の書簡だ…何通も来てるという事は余程レートに介入したいんだな

ふむ…品目は魔石…それから麻薬…


商人「キ・カイ側の人間なのか…それともセントラル側なのか…どちらにしてもお金が大きく動く」

商人「慎重に決めないと僕も只じゃ済まないぞ…」


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574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:18:24.41 ID:c2KZAoSz0
『数か月後_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

おぉぉ又魔石の値段が下がってる…買いだ買い!!

硫黄は値上がり続けてもう手が出んわい

麻薬は目ん玉飛び出るぐらい高いな…もう趣向品は出回らんぞ



女海賊「…これ鑑定頼める?」

娘「あ!!女海賊…今回は収穫在ったん?」

女海賊「まぁね?それ買い取って欲しいんだけど」

娘「琥珀かぁ…こんなに沢山オーク領で採れるの?」

女海賊「簡単じゃ無いけどね」

娘「珍しい物だから競売の方が良いよ」

女海賊「ほんじゃそれで頼むよ…分け前は半分持ってて良いから」

娘「りょ!!」ビシ

女海賊「情報屋は何処に居るか知らない?」

娘「隠し部屋で商人と一緒だよ…見つからない様に階段居りて行って」ギギー

女海賊「サンキュ!!」ハイディング スゥ

575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:19:04.49 ID:c2KZAoSz0
『隠し部屋』


ヒソヒソ

これがサンプルの石板よ…壊さない様にお願い

エネルギーが入ればこれが光るんだね?

光ると言うか絵が浮かび上がるそうよ

なるほど…つまり女海賊の遺跡も同じ訳か…

エネルギー次第ね…私は手に入れられない


トントン


女海賊「私…壁画見つけたんだ…ここ開けて?」

商人「今開ける…」ゴソゴソ ガチャリ

情報屋「やっと見つけたのね?何処で?」

女海賊「ずっと南の方の青いオークが居る所さ…持って帰るのは無理だから書物に写して来た…見て?」バサ

情報屋「…これは4500年前ね…何コレ?飛空艇が描いてあるじゃない?」

女海賊「似てるね…でもそれはオークの乗り物っぽいよ」

商人「ええ?オークに高度な物を作る技術が在ったという事かい?」

女海賊「良く写しを見て…宇宙から来たっぽい…この乗り物で月に行けるって事さ」

情報屋「オークは宇宙からの外来種…新説ね」

女海賊「それからオークの旗印も持って来たんだ…見て」バサ

商人「あれ?それ君が良く使うダンゴムシじゃ無いか…」

女海賊「私もビックリさ…未来が残したのに間違い無いよ」

情報屋「未来君はオークの起源に関わって居る可能性があるのね」

商人「他には?遺跡とか無かったの?」

女海賊「有った…でもずっと昔に開封されてグズグズに風化してた…ホムちゃんの石造も在ったよ」

情報屋「キ・カイの遺跡と同じ状態という事ね…」

女海賊「石の器の中に横たわったホムちゃんの石造に向かってオーク達がお祈りしてたさ」

情報屋「それがきっとウンディーネ本人よ…4500年前といえばウンディーネの時代」

女海賊「めちゃくちゃデカイオークが一杯居てさ…危ないからもう行きたくない」

商人「聞いた事あるな…オークロードっていう奴だ…槍とか石を投げて来るらしい」

女海賊「それそれ!それで魔女がやられて瀕死なんだ」

商人「ええええええ!!?それを先に言ってよ…魔女は平気なのかい?」

女海賊「線虫で癒してるから死ぬことは無い…失血で気を失ってるだけだよ」

商人「魔女は失血に弱いね」

女海賊「元々体が弱いのさ…そのくせ粘るから失血で倒れるんだよ」

情報屋「盗賊は?」

女海賊「飛空艇で魔女の看病だよ…下手に動かさないで寝かせておいた方が良いって…」

情報屋「そう…」

女海賊「もうお腹隠し切れないじゃない?」チラリ

情報屋「フフ大丈夫よ!あの人鈍感だから」


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576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:19:33.47 ID:c2KZAoSz0
女海賊「…それで壁画の年代とか判明した?」

情報屋「そうね…1400年前の壁画はフィン・イッシュに有る花崗岩と判明したわ」

商人「700年に飛空艇とか無い筈だから徒歩でフィン・イッシュに向かったと思われるよ」

女海賊「その後は?」

情報屋「サンゴを含む石灰岩なの…場所の特定が出来ないけれど恐らくフィン・イッシュ外海に出たと思われるわ」

商人「内海にはサンゴが無いからね…外海側の何処かとしか言えないらしい」

女海賊「フィン・イッシュは何回も行ってんじゃん!何処を調べれば良いのさ」

商人「女王に事情を話して遺跡とか知らないか聞いてみるだね」

女海賊「まぁオーク領も飽きたし…一回フィン・イッシュ行って見るかぁ…」

商人「それから君に紹介したい人が居るんだ?」

女海賊「誰?付き合うのメンドクサイ人は遠慮する」

商人「おいで!?」

機械の犬「ワン!」トコトコ

女海賊「え!?もしかしてホムちゃん?」

商人「正解!壊れた機械の犬を直してホムンクルスの器にしたんだ」

女海賊「え?え?こんなんで良いの?」

機械の犬「ワン!ワン!」フリフリ

商人「意思は伝わるよ…ちゃんと疎通も出来る」

女海賊「どうやってお話するのさ」

商人「フフお話してごらん?イエスかノーの2択とそれ以外にも微妙な反応もあるんだよ」

女海賊「連れて行って良いの?」

商人「ちゃんと帰って来るならね?」

女海賊「ホムちゃんこっちおいで?」

機械の犬「ワン!ワン!」トコトコ

女海賊「おおおおおおおお!!来るじゃん!!ホムちゃんと話したい事一杯あったのさ」ナデナデ

機械の犬「ワン!」フリフリ

女海賊「そっか尻尾も動くか…他に何が出来るん?」

商人「お座りとか色々さ…君の話し相手になれば良い…ホムンクルスも部屋の中で閉じこもるより楽しい筈」

女海賊「おけおけ!ちっと散歩行こう」タッタッタ


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577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:20:05.59 ID:c2KZAoSz0

情報屋「商人?壁画の写しを見て?」

商人「何か分かるかな?」

情報屋「やっぱり年代を追うごとに情報量が減ってる…この頃にはもう私達の記憶は無さそう」

商人「見たまんまを描いて居るのだろうね」

情報屋「この壁画に描かれて居るのは4500年前では無くそこに飛ぶ以前の事…つまり3800年前の出来事」

商人「地軸が移動した後の世界か…」

情報屋「そのまま描いてあるから当時の予言として扱われた可能性が高いわ」

商人「あれあれ?よくよく見ると色々おかしいね…途中から虫を持った人物が居なくなる」

情報屋「そう…彫り方がとても雑になってる…他の人が手を加えたかもしれない」

商人「う~んこの壁画の考察は慎重に言葉を選ばないと女海賊が怒りそうだ」

情報屋「やっぱりそう思う?」

商人「オークの地で最後を迎えたとは言えないな」

情報屋「私の考察はこうよ…3800年前に未来君は最後を迎えてる…この壁画を残したのは剣士だと思うわ」

商人「未来君の記憶では無く剣士の体験を描いている?それで雑になって居ると?」

情報屋「途中から虫を持った人物が居なくなるのはそれを表して居ると思う…良く見て?視点が虫を持た人物中心じゃない」

商人「剣士がこの壁画を残したとしてその動機はどう考える?」

情報屋「純粋に予言ね…地軸の移動で激変する事を伝え残したかった」

商人「まてまて剣士は記憶を保持していた訳か…それが勇者の眼が持つ特殊性」

情報屋「きっとそうね…剣士が選んだ次元と言えば良いのかしら?」

商人「なるほど…この後は剣士の行先と言う事になるか…」

情報屋「まだ考察の話だから女海賊には伏せておきましょう」

578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:20:55.86 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


スヤスヤ zzz


女海賊「どう?まだ目を覚まさない?」

盗賊「交代に戻って来たんか?」

女海賊「まぁね?見て!!ホムちゃんだよ」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「なぬ!!?そいつん中に復活させたんか?」

女海賊「そうらしい」

盗賊「マジかよ…話出来るんか?」

女海賊「結構通じるさ…ワンとかクゥ~ンだけだけど」

盗賊「ヌハハ通じりゃどうでも良いわな」

女海賊「私飛空艇でホムちゃんと話するからあんた酒飲んで来て良いよ」

盗賊「おう!そうさせてもらう」スック

女海賊「フィン・イッシュに行く事になりそうだから適当に物資補給しといて」

盗賊「なんで又フィン・イッシュに戻んのよ?」

女海賊「未来が最初に向かったのはフィン・イッシュらしい…女王に何か無いか聞きに行くのさ」

盗賊「お!?俺一つ知ってんぞ?」

女海賊「何さ?」

盗賊「リザードマンの巣窟になってんだがよ…祭事に使う祠ってのが合ってな?多分そこが遺跡なんだよ」

女海賊「そういやなんかそんな事言ってたなぁ…クサナギの剣を使うとか?」

盗賊「フィン・イッシュの大事な場所らしいから俺はしっかり調べて無いのよ」

女海賊「ほんじゃ行先はそこだなぁ」

盗賊「まぁ焦んな?俺は酒場に行ってちっと遊んで来る」

女海賊「情報屋の所には行かないの?」

盗賊「アイツ最近付き合い悪くてよ…全然酒飲ま無ぇんだ」

女海賊「ほ~ん…」シラー

盗賊「丁度こっから月も見えるからお前も退屈せんだろ?」

女海賊「お!!それそれ!!ホムちゃん私さぁ…月に行きたいんだよ…なんとかなんない?」

機械の犬「クゥ~ン」

盗賊「じゃ行って来るな?」ダダ


光る隕石のやつ…えーと何だっけ…何とかミサイル

あれに乗って月まで行けない?

クゥ~ン

一人乗りに改造するとかなんか方法有りそうじゃん?

クゥ~ン

じゃ2個連結するとかさ?

クゥ~ン

いや私も考えたんだよ…重力振り切るだけの加速をどうやって得るとかさ…

てか宇宙って空気無いんだよね?

ワン!

どうやって推進するんだろ?推進しないと重力に引っ張られっぱなしなんだよなぁ…

それ以前にどうやって息するかも課題だな…

579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:21:29.35 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


う~ん


魔女「…」パチクリ

女海賊「お!?起きた!!」

魔女「どうなったんじゃ?又主に救われたんかいのぅ?」ハテ?

女海賊「線虫間に合ってセーフ!!」

魔女「あまり覚えて居らんのじゃが…」

女海賊「デカいオークの投槍がぶっ刺さったのさ」

魔女「…そうじゃった…まさかあの距離で当てて来るとは思わなんだ」

女海賊「睡眠魔法も妖精の笛も届かない場所から投槍とかオークを舐めてたわ…あいつ等賢い」

魔女「うむ…しかし無事で良かったわい」

女海賊「ほんでちゃんと魔方陣の書かれた呪符はゲットしてきたよ」ファサ

魔女「そうじゃそうじゃ…わらわの目的はソレじゃ」

女海賊「その呪符で何か分かるん?」

魔女「研究したいのじゃ…これは古代魔術じゃでのぅ」

女海賊「なんで壁画と一緒に在ったんだろね?」

魔女「さぁのぅ…それも意味が在るのやも知れぬ…わらわは研究の為に書物を取りにフィン・イッシュへ行きたいのじゃが…」

女海賊「おけおけ!丁度フィン・イッシュに行こうとしてたんだ」

魔女「その前に肉を食らわん事にはどうやら血が足りん様じゃ…」クラクラ

女海賊「ハチミツスープあるけど居る?」

魔女「頂こう…」


ヨッコラ ドスン


盗賊「お?魔女は目ぇ覚ましたんだな?」

魔女「主がわらわを担いで逃げたのじゃな?」

盗賊「そうよ…まぁえらい血が出たな?掃除が大変だったぜ」

魔女「そら済まんかったのぅ」

盗賊「今リンゴ買って来た所だ…ちっと食うと良い」ポイ

魔女「うむ…果物が食いたかった所じゃ」ガブリ シャクシャク

女海賊「もう飛んで良い感じ?」

盗賊「ちょい待て!もう一つ樽があるんだ…それとこれは商人から貰って来たお前のおもちゃだ」ポイ

女海賊「おもちゃ?」パス

盗賊「なんかな?集光レンズらしいぞ?インドラの銃で使えないかってよ?」

女海賊「おお!!ほんじゃ長い砲身要らなくなるな…邪魔だったんだよ持ち歩きに」

盗賊「もう一樽積むからちょい待っててくれ」ダダ



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580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:22:02.16 ID:c2KZAoSz0
カチャカチャ


魔女「早速改造かいな?」

女海賊「持ち運びが楽になりそうだかんね…」

魔女「ミスリルの筒が勿体無いのぅ」

女海賊「これはこれで何か作れるな…そうだ笛が作れる」

魔女「それは良い案じゃ…2つ程作れそうじゃな」

女海賊「どうせフィン・イッシュに到着するまで暇になるからミスリルの横笛作ってみるわ」

魔女「わらわは横笛を吹けるのじゃぞ?」

女海賊「マジ?」

魔女「どんな音が出るのか楽しみじゃのぅ」

女海賊「てか笛の吹き方教えてよ…妖精の笛吹く時やってみるからさ」

魔女「よかろう…虫との会話も弾むじゃろうしのぅ」

女海賊「え?虫が何の関係あんのさ」

魔女「虫使いはのぅ…笛を使って遠くの虫を呼ぶのじゃ」

女海賊「マジか…笛でそんな事出来んのかよ」

魔女「妖精の笛も原理は同じじゃと思う」

女海賊「虫が眠らせてるのか…てか妖精か…」

魔女「ほんでいつ作るのじゃ?」

女海賊「あぁ今作るさ…ちょい待って」

581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:22:33.71 ID:c2KZAoSz0
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ヨッコラ ドッスン


盗賊「お前等何やってんだ?」

女海賊「笛作ってんだよ」シュッシュ ガリガリ

魔女「穴の大きさと位置は妖精の笛と完全に一致するようにせい」

女海賊「わーってるって」カリカリ

盗賊「フィン・イッシュ行くんじゃ無かったのか?」

女海賊「今手が離せないから飛空艇の操作お願い!…適当に飛んどいて」シュッシュ ガリガリ

盗賊「ヘイヘイ…忘れもん無いな?」

女海賊「うっさいな!!早く行けよ」カリカリ

盗賊「魔女!肉も買って来たぜ?食うか?」

魔女「おぉ気が利くのぅ」

盗賊「なんで又急に笛なんか作る事になってんだ?」

魔女「細かい事は良いでは無いか…ミスリル銀の笛の音を主も聞いてみとう無いか?」

盗賊「興味無ぇな…笛は笛だろ?」

魔女「主は凡人じゃのぅ…」

盗賊「凡人で構わん…飛空艇飛ばすぞ?」グイ


シュゴーーーー フワフワ

582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:23:04.13 ID:c2KZAoSz0
『上空』


トゥルルン♪ トゥルル~♪


盗賊「ほーーー変わった音の鳴る笛になったな」

女海賊「なんか私が吹くとこんな音なんだよ…」


ヒョロロン♪ ヒョロロ~♪


魔女「吹き方にコツが在るのじゃ…慣れるまで練習せい」

盗賊「なるほど魔女の音の方が聞いて疲れにくい…これが差か」

女海賊「なんでだろうなぁ…」ピーヒャララ

盗賊「その笛はミスリルで作ってっからやっぱ魔除けの効果あるんか?」

魔女「じゃろうのぅ」

女海賊「ミスリル銀って何がエンチャント出来るん?」

魔女「銀じゃで光属性なのじゃが…」

女海賊「退魔のエンチャントで効果倍増したりしない?」

魔女「さぁのぅ?意味が無い気もするが…」

盗賊「照明魔法で光らせるってのはどうよ?道具として便利になるぞ?」

魔女「エンチャントするならその方が良さそうじゃな…薄っすら光る程度でランプの代わりになるでのぅ」

女海賊「よーし!ちょい先に装飾すっからエンチャントは後でお願い」

583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:23:34.15 ID:c2KZAoSz0
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魔女「照明魔法!」シュワー

盗賊「ほーーこりゃ良い!薄っすら光るぐらいが明かりにゃ丁度良いわ…欲しくなって来るじゃ無ぇか」

魔女「しかし良い笛が完成したな?装飾と言い音色と言い…」

女海賊「魔女に一個あげるよ」

魔女「嬉しいのぅ…魔力を使わずして退魔効果とは…」

盗賊「退魔の効果ってよ?悪霊退散とかか?」

魔女「うむ…レイスやゴーストを寄せ付けぬ…ガーゴイルにも効果が在るじゃろうな」

盗賊「俺も欲しいんだが…」

女海賊「練習終わったら私のヤルよ…妖精の笛持ってっから」

魔女「盗賊も笛を吹くんかえ?」

盗賊「俺は明かりが欲しい訳よ…イザって時に退魔で吹くってのも有りだな」

魔女「ふむ…只の筒をこの様に細工し直せる技術は大した物じゃ」

盗賊「だな?売りゃ相当高値が付く筈だ」

女海賊「おいおい売るなよ!」

盗賊「ヌハハ売ったらの話よ…ミスリル銀の楽器なんかそうお目に掛かれんもんな」

魔女「じゃな…しかし美しい笛じゃ…見ていて飽きんわ」

女海賊「おーし!!練習すっぞ!!」ヒョロロー

盗賊「…」ニヤ


そうよ光ってのはそういう感じな訳よ…その先にきっと何か待ってる

584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:24:14.71 ID:c2KZAoSz0
『フィン・イッシュ_墓地』


フワフワ ドッスン


盗賊「こっちは南の大陸と違って夏か…まぁ過ごしやすそうだ」

魔女「わらわは早速城の書庫へ行くぞよ」ノソ

女海賊「付いて行きゃ女王に会えるよね?」

魔女「付いて参れ…盗賊は人相が悪いで顔を隠すのじゃ」

盗賊「もう顔パスじゃ無ぇのか?」

魔女「主を知らぬ衛兵も居るじゃろう…面倒が起きてはいかんでのぅ」

盗賊「なんだかなぁ…俺はいつまで立っても損な役回りなんだよなぁ…」ブツブツ

魔女「素行が悪いのが問題じゃ…まず歩き方をなんとかせい」

盗賊「やっぱ俺には城は合わんな…酒場に行ってるからそっちはそっちで上手くやってくれ」ダダ

魔女「しょうがない奴じゃ…これ女海賊や…行くぞよ」ノソノソ



『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

おい酒が無ぇぞ!!もう一本持って来い!!

一本入りまぁ~す!ウフフ…お代はお先に

金は在るんだウヒヒ…今度こそパフパフをだな?

いやぁ~ん…


バニー「いらっしゃいませ~お一人様ぁ?」フリフリ

盗賊「一人なんだがこりゃ座れそうに無いな…」

バニー「立ち飲みで良かったらカウンターへどうぞ~」

盗賊「しゃぁねぇな…ワイン一本ボトルで頼む」ジャラリ

バニー「一本入りまぁ~す!…チップも頂くわよん」

盗賊「昼間だってのに盛況だな?」

バニー「お金持ちの海賊様がいらっしゃってますのでウフフ」

盗賊「あっちもこっちも海賊だな…」

バニー「ワインお持ちしましたぁ~ごゆっくり」ゴトン

盗賊「おぉありがとよ…」グビ プハァ

585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:24:47.28 ID:c2KZAoSz0
マスター「お客さんはどちらから?」


盗賊「んん?俺か?」

マスター「はい…」

盗賊「キ・カイから来たんだ…なんでだ?」

マスター「傭兵の募集が在るのですよ…このチラシをご覧ください」パサ

盗賊「なんだ一杯あんな…リザードマン退治にシーサー退治…んん?船乗りも募集してんのか」

マスター「あぁその船乗りの募集は止めて置いた方が良いかと…なんでも外海へ出るとか」

盗賊「ほう?俺知ってんぞ?髭男爵だろ?」

マスター「髭男爵?違いますね…有名な探検家らしいです」

盗賊「ほーん…このチラシ貰って良いか?」

マスター「どうぞどうぞ…もし傭兵に参加されるのでしたらこのチラシを見たと行って貰えれば報酬が入る仕組みになっていまして」

盗賊「なるほどな?まぁ考えとくわ」

マスター「是非…」

盗賊「しかしこんだけ客が入ってりゃ儲かってウハウハだろ?」

マスター「いやいやそうでも無いのですよ…酒類の仕入れが海賊から高値で買わされていましてね」

盗賊「なんだお互い様って訳か」

マスター「一番儲かっているのは遊女屋でしょうか」

盗賊「ほーん…こりゃ孤児院が増えちまうな」

マスター「全くです…良いのか悪いのか…」

盗賊「ちっと仕事の急用を思い出した…又来るな?」スタ

マスター「又のご来店を…」ペコ

586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:25:22.40 ID:c2KZAoSz0
『日暮れ_酒場』


ザワザワ ドタドタ

おい!!俺らの船もヤバいぞ!!

いつまで飲んでんだクソが!!船が何処かの賊にやられてる!!行くぞ!!


マスター「いらっしゃいませ…お二人様ですか?」

女海賊「んーーーー連れを探してんだけどさぁ…」

魔女「ここで待って居れば来るのでは無いか?」

マスター「飲んで行かれますか?丁度お席が空きました」

女海賊「魔女?気球待たせても良いんかな?」

魔女「仕方ないじゃろう…これ!ハチミツ酒は在るかいな?」

マスター「あいにく切らして居まして…エール酒は如何でしょう?」

女海賊「おけおけそれで良いよ…魔女お金持ってる?」

魔女「うむ…」ジャラリ

マスター「確かに…少々お待ちください」

女海賊「カウンターで良っか…」

魔女「この騒ぎは何じゃろうのぅ?」

マスター「どうも港に停船してある海賊船が軒並み火事になっているらしいです」

魔女「海賊が狙われて居るとな?」

マスター「さぁ?詳しい話は聞いて居りませんので」

女海賊「まぁ良いじゃん?私等には関係無いし…てか盗賊何処行ったんかな?」

マスター「お二人は吟遊詩人様で?」

女海賊「え?そんな風に見える?」

マスター「笛が覗いて居ますので…もしかしたらと思いまして」

女海賊「お?今お客さんあんま居ないから魔女吹いてみたら?」

魔女「恥ずかしゅうて吹けんわ!」

マスター「構いませんよ?楽器の演奏はどなたでも歓迎なのです」

女海賊「良いじゃん!私も勉強すっからさ!!」

魔女「一曲だけじゃぞ?」シブシブ

マスター「サービスで軽いお食事をお出しします」

女海賊「やったね!」


トゥルルン♪ トゥルル~♪


マスター「おぉ…音色が特殊な笛なのですね」

587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:25:53.81 ID:c2KZAoSz0
女海賊「私が作った笛なんだ…良い音色っしょ?」

マスター「ふぅむ…あの方は何処かで見たような…」

女海賊「気のせい気のせい…わたし等そんな有名人じゃないから」


タッタッタ


盗賊「笛の音がすると思ったら此処に来てたんか!」

女海賊「お!!探してたんだよ…何処行ってたのさ」

盗賊「ちっと金稼ぎにな?」

マスター「お知り合いでしたか…席が空きましたのでどうぞ」

盗賊「悪りぃな?俺ワイン忘れて行っただろ?まだ在るか?」

マスター「御座います…どうぞ」キュポン

盗賊「喉渇いてたんだ…」グビグビ プハァ

女海賊「なんかさぁ…女王は出産で城には居ないんだってさ」

盗賊「なぬ?何処行ったんだよ?」

女海賊「教えてくんないんだよ」

盗賊「俺は遺跡の場所分かるから勝手に行っちまうか」

女海賊「魔物の巣窟になってるらしい…」

盗賊「どうせリザードマンだろ?んなもん追い払えば良い」

女海賊「そういう訳にも行かない事情が在るんだってさ…詳しい話は近衛侍がしてくれる事になってんだ」

盗賊「いつよ?」

女海賊「今すぐだよ…だからあんたを探しにここまで来たんだって」

盗賊「なんだよ酒飲む時間無いのか」ゴク

女海賊「半日自由な時間在ったじゃん何してたんだよ」

盗賊「あぁ…孤児院が増えない様に色々とな?」

女海賊「まぁ良いや…魔女の演奏終わったら行くよ」

盗賊「へいへい…」

588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:26:28.90 ID:c2KZAoSz0
『街道』


ザワザワ ガヤガヤ

見て?船が燃えて居るわ?

なんだなんだ?海戦が始まってんのかぁ?


ドカーン!


魔女「こりゃえらいこっちゃな…火薬に火が回っとるんか」

女海賊「何か始まっちゃってるな」

魔女「わらわ達も混乱に巻き込まれそうじゃ」

盗賊「ほんで俺ら何処行く訳よ?」

女海賊「近衛侍が王族の気球で待ってんのさ」

盗賊「女王の所に連れて行ってくれる訳だな?」

女海賊「なんか教えてくんないんだよ…行けば分かるよ」

盗賊「まぁ…簡単に女王の行き先が分からん辺り警備はしっかりしてんだな」

魔女「じゃろうのぅ…忍びに囲われて居るでな」

589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:26:59.48 ID:c2KZAoSz0
『王族の気球』


ノソノソ


魔女「近衛侍や…待たせたのぅ」

近衛侍「いえ滅相も無い…ささご乗船を」スッ

盗賊「いよぅ近衛侍…女王の居る所まで連れて行ってくれるんだろう?」

近衛侍「しばしご辛抱を…忍び!加減を…」

盗賊「なぬ?2人隠れて居たんか…」

忍び「御免…影縫い!」

魔女「ムム!これは闇の術…」

忍び「目隠しの術!」

盗賊「こりゃどういう事よ?目隠しと拘束か?」グググ

魔女「妖術師が居ったのか…」

近衛侍「ご心配なさるな…忍びの里へご案内する為の決まりごと故…ご辛抱なされい」

盗賊「ほーーさすが忍びだな」

近衛侍「さてそのままお聞きになられよ…」


女王様は御子の出産の為忍びの隠れ里にて静養中にござる

隠れ里にご案内出来るのは本来近親者のみ

しかし世話になった恩人を帰したとなれば女王様の面目を潰してしまう故に

無礼とは存じておりますがこの様な方法でご案内致す次第

どうか隠れ里の事は他言されぬ様お願い致しまする


魔女「良い良い構わぬ…正直わらわはこの様な出迎えでちと心が躍って居る」

近衛侍「それは結構…」

魔女「ふぅむ…わらわの塔もこの様にすべきじゃな…良い経験になったわい」

盗賊「なるほど…魔女の塔に案内されてる感じな訳か」

魔女「して妖術師はいかなる術を使いこなすのじゃ?」

近衛侍「ハハご勘弁を…」

魔女「おぉ済まなんだ…軽々しく話せる訳では無いじゃろう」

女海賊「これ魔女ん所より厳格な感じなんだね?」

魔女「うむ…感心じゃ…魔術師も本来こうあるべきじゃな」

女海賊「魔女が目立ち過ぎってのが悪い気がするな」

魔女「ふむ…反省じゃな…わらわの師匠も同じ様な事を言って居ったわい」

盗賊「忍びの一族が妖術使うってーと…シン・リーンの魔術師並みにヤバイってこったな?」

魔女「じゃな?しかも力を誇示して居らぬ所が威厳たる証じゃ」


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590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:27:31.23 ID:c2KZAoSz0
魔女「ほう?リザードマンもシーサーも妖術によって使役されておるとな?」

近衛侍「すべてでは御座らぬが隠れ里へ人が近寄らぬ様にする為の事」

盗賊「酒場で討伐隊の募集が掛かってたぜ?」

近衛侍「ワッハッハそれは民を訓練する為に女王様がご提案されたクエストですな」

盗賊「なんだマッチポンプか…報酬も国が出すのか」

近衛兵「そうやって冒険者を募って経済を回しているのでござるよ」

盗賊「じゃぁ俺らに全部追い払われたら困る訳だな」

近衛兵「特に魔女様に暴れられては隠れ里をも被害を被りますので…」

女海賊「そうだよ!隕石ポンポン落として森を破壊しまくるんだよ」

魔女「狙って森を破壊した訳では無いぞよ?ゴーレムを倒す為じゃ…」

女海賊「魔女の魔法は被害がデカ過ぎなのさ」

魔女「主の爆弾も大概じゃと思うが…」

女海賊「私はもうウラン結晶の爆弾は止めたから」

盗賊「なんでよ?お前の十八番だろ?」

女海賊「あの爆弾から毒が出るじゃん?未来はそれを無くすために一人で毒を集めたんだ…」

魔女「そうじゃな…あの爆弾は使わぬ方が良かろうのぅ」

盗賊「そうか…お前は未来が毒を集めにゃならんくなった原因に自分も含まれてると思って居た訳か」

女海賊「もう言わないで…何も知らなかった私が馬鹿だったんだ」



--------------


近衛侍「そろそろ到着しまする…揺れます故ご注意を」


ドスン ズザザー


盗賊「まだ目が見えんのだが…」

近衛侍「忍び!解除を」

忍び「解術!」

魔女「ほう?これは闇の術とは違うのぅ…何故視覚を急に失うのか」

女海賊「あれ?目の中に線虫が居るぞ?」ゴシゴシ

魔女「むむ…線虫を操り何かさせて居るんか?」

女海賊「そんな事出来んの?」

魔女「線虫は寄生虫の一種じゃで視覚を司る神経を休ませる事なぞ出来るやも知れんな…」

女海賊「おぉ!!それ応用したら何でも出来そうじゃん?」

魔女「それがいわゆる幻術なのじゃが…」

近衛侍「魔女様には敵いませんなぁ…忍びの術は他言しませぬ様に…」

魔女「済まん済まん…それで?隠れ里は何処じゃ?」

近衛侍「ここから見えて居ります赤い鳥居を登った先に御座いまする…天狗が導きます故後を付いて行かれよ」

盗賊「おぉ!!空飛んでんじゃ無ぇか…」

近衛侍「身軽なだけの事…あれも忍びなのです」

女海賊「おっし!付いて行こうか」スタ

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:28:01.17 ID:c2KZAoSz0
『赤い鳥居』


ノソノソ


魔女「ふむ…ここは狭間の中じゃな…いつの間に狭間に入ったのじゃろうか」

盗賊「だから迷わん様に鳥居が続いてんだな?」

魔女「天狗が潜らぬ鳥居は通ってはならん様じゃ…さすが工夫されて居るのぅ」

女海賊「案内無しだと辿り着けないんだ」

盗賊「天狗の他にもこっちの様子を伺ってる奴らが居るぜ?」

魔女「ふむ…何故セントラル王が認められんのか分かったわい…忍びから見てセントラル王は中身がペラペラなんじゃな」

盗賊「ヌハハだろうな?単純脳筋バカっぽいもんな?」

女海賊「なんだろうね?この感じ…積み上げられた歴史って感じ?」

魔女「じゃろうな?忍びの歴史を詳しくは知らぬが相当古くから存在して居ったそうな」

盗賊「お?天狗がどっか行ったぜ?」

魔女「到着じゃろう…」ノソノソ




『隠れ里』


チュンチュン ピヨ


女王「お待ちしておりました…」

盗賊「おぉ!!嬢ちゃん!!もう動いて良いのか?」

女王「軽い散歩程度でしたら大丈夫な様です」

魔女「無事に生まれた様で良かったわい…御子の性はどちらじゃ?」

女王「男の子でした…皆喜んでおります」

魔女「ほうか良かったのぅ…」

女王「産屋の方にはご案内出来ませんので屋敷の方へどうぞ…」

592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:28:37.61 ID:c2KZAoSz0
『屋敷』


カッコーン チョロチョロ


魔女「これは又風流な庭園じゃな…」

女王「ここでお寛ぎください」

盗賊「俺らあんまり長居する気は無いんだ」

女王「どういったご用件で尋ねて来られたのでしょう?」

魔女「話は長くなるのじゃが…わらわ達は勇者らの足取りを追っておってな?」

女王「はい…」

魔女「どうやら700年前にこの地へ来て居る様なのじゃ」

女王「700年前?」ハテ?

盗賊「簡単に言うとな?祭事に使う祠があんだろ?…そこを調べたいんだよ」

女王「龍神を奉る祠の事ですね?」

魔女「壁画の話から聞かせた方が良さそうじゃな…実はのぅ…シン・リーンで発掘された壁画は…」


カクカク シカジカ

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魔女「…という訳でフィン・イッシュに有った壁画がシン・リーンへ持ち込まれた様なのじゃ」

女海賊「これが壁画を写した書物だよ」パラパラ

女王「ハッ!!龍神も描かれて居ますね…」

魔女「なぬ!?」

女王「眼の沢山あるヘビの様な生き物は龍神様です」

女海賊「ワームじゃ無いのか…」

女王「祠を守っていたと言われる龍神が居なくなった謎が解けるかも知れませんね」

女海賊「それっていつの話?」

女王「700年前にフィン・イッシュを流る川に姿を変えたと言い伝えられて居ます」

女海賊「時期がピッタリ合うね…その後何処に行ったのか調べたいのさ」

女王「祠で何か分かるのであれば調査しても構いませんよ?…只何も怪しい物は見当たりませんが…」

盗賊「祠の中をちっと見た事が在るんだが一番奥に祭壇があったろ?」

女王「そうですね…それ以外には石造がいくつかある位しか…」

盗賊「そこを調べたいんだ」

女王「私は行く事が出来ませんので忍びのくノ一に案内させましょう」

盗賊「そら助かる」

女王「リザードマンも多く潜んで居ますので警護に近衛侍も連れて行くと良いでしょう」

魔女「早速じゃが日が落ちる前に調べる寄って主は静養して居るのじゃ」

女王「…体調が万全なら私もご一緒したかったです」

女海賊「何か有ったら全部教えてあげるよ」

女王「はい…お願いします…ずっと横になって居ると退屈な物でして…」

盗賊「じゃぁ行って来るな?」スック


593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:29:13.94 ID:c2KZAoSz0
『林道』


サラサラ サラサラ


くノ一「この小川を少し下った先が祭事の祠です」

盗賊「この辺りはキノコだらけだな」

くノ一「毒キノコですので食さない様に…」

盗賊「ポーションの材料になるんだろ?」

くノ一「忍びでは古来より万能薬の材料として使って居ます」

魔女「古来からとな?確かホムンクルスが物性値からポーションに変換出来る事を見つけたのじゃがな…」

女海賊「剣士か未来が伝えた可能性あるね」

魔女「ふむ…」

くノ一「我ら忍びの始祖…一角仙人から伝わったと…」

魔女「一角仙人…そうじゃな何かの書物で読んだのぅ」

くノ一「仙人には沢山の逸話が残って居ます…妖術を操り魔物を退けたなど…」

盗賊「まぁ俺らはその謎が知りたい訳よ…だから今から祠を調べに行く訳だ」

近衛侍「祭事の祠にどういう秘密が有ると見込んで居られる?」」

盗賊「開かずの扉が在る筈なんだ…」

近衛侍「扉…そういえば祭壇の奥壁に装飾が在りましたな

盗賊「多分それだ…そいつを俺が開けるのよ」

近衛侍「いやはや楽しみになって来ましたなぁワッハッハ」

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:29:49.37 ID:c2KZAoSz0
『祭事の祠』


ピチョン ポタ


女海賊「入り口が大分風化しているけど古代遺跡に間違い無いね」

くノ一「奥に祭壇があります…ついて来て下さい」スタ

魔女「並んでいる石造は何なのじゃ?」

近衛侍「それは農業の神を奉った石造にござる…林道にも随所に…」

女海賊「祭壇ってコレ?」

盗賊「おぉコレか!このどす黒い器はなんだ?」

くノ一「龍神への贄として捧げる男性の血を入れる器です…古来からの慣わしです」

魔女「龍神に血とな?」

くノ一「龍神と言っても色々な龍神が居るのです…中には血を好む龍神も居ます」

盗賊「ほ~ん…で?この祭壇の奥にある装飾…ビンゴだなキ・カイの扉と一緒だ…」

近衛侍「これが扉だったとは…」

盗賊「開けるのに2時間ぐらい掛かるんだ…ちっと暇になるぞ?」

女海賊「近くに温泉あるって言ってたじゃん?私ちっと入りたいんだよ」

魔女「わらわも行きたいのぅ」

くノ一「案内しましょう」

近衛侍「では警護はお任せあれ…」



『2時間後』


ホクホク


魔女「主はどれだけ水浴びしとらんかったんじゃ?髪の色が変わって居るでは無いか」ホクホク

女海賊「水浴びは寒いから嫌なのさ…体は虫に掃除させてたんだよ」

魔女「なんちゅう汚い女じゃろうのぅ…」

女海賊「うっさいなぁ今綺麗にしたから良いじゃん!」

盗賊「ぬぁぁ待ちくたびれたぜ…扉空いたぞ」

魔女「おぉ待って居ったか…済まんのぅ」ノソノソ

近衛侍「まだ中へは?」

盗賊「入って無ぇよ…何か盗んだと思われたく無いからな」

女海賊「ホムちゃん居たりしてね?」

盗賊「かもな?魔女!照明魔法を頼む!」

魔女「なぬ?主はエンチャントされた笛を持って居ろうが」

盗賊「んん?どうやって使うんよ」

魔女「振れば光るのじゃ…使うてみぃ」

盗賊「こうか?」フリフリ ピカー

魔女「便利じゃろう?」

盗賊「先に使い方説明してくれよ…めちゃくちゃ便利じゃ無ぇか」

女海賊「ほんじゃお先ぃ!」スタタ

595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:30:19.76 ID:c2KZAoSz0
『古代遺跡』


シーーン


くノ一「ガラス容器にテーブル…食器まで…これは一体」

女海賊「いつもの古代遺跡とほとんど同じだね…」

盗賊「ホムンクルスは居無い様だな?」

女海賊「ん?何だコレ?食器にしちゃデカい…それとこっちの宝石みたいな奴は何だろう?」

盗賊「ほーーそりゃ鏡だな…ほんでこっちは瑪瑙だ…しかし又デカイな」

女海賊「魔女?コレ何だか分かる?」

魔女「巨大な瑪瑙とな?…まさか八尺瓊勾玉ではあるまいな?」

女海賊「なんそれ?」

魔女「シャ・バクダが覇権を握って居った時代にシン・リーンから奪われた宝具なのじゃが…」

女海賊「でかい魔石みたいな物?」

魔女「王を選ぶと言われて居ったそうな…持ち帰って調べる必要があるのう」

女海賊「こっちの鏡は?」

魔女「分からぬ…ここに隠して居ったのじゃからそれなりの理由が有りそうじゃが…」

盗賊「おい!足元見ろよ…これは退魔の方陣じゃ無いのか?」

魔女「なぬ?退魔の方陣じゃと?」

女海賊「本当だ…それ私も組めるよ」

魔女「ではここ数十年で誰ぞ此処に入ったという事じゃ…退魔の方陣はわらわの師匠が発見した方陣じゃでな」

女海賊「剣士か未来じゃないの?」

魔女「どちらにも教えて居らぬのじゃが…」

盗賊「女海賊!!来てみろ…こりゃビンゴだぜ?爆弾を作った形跡があるぞ…」

女海賊「え!!?何処?」

盗賊「食器だと思ってたがこれはお前が火薬を作る時に使うすり鉢じゃ無いのか?」

女海賊「やっぱりここで過ごしたんだね…」

盗賊「散らかってんのは巻紙だろ?…こっちの容器は硫黄と砂鉄を入れるのに使ったんじゃ無いのか?」

女海賊「そう…私が教えた通り」プルプル

盗賊「食器の数からすると2人以外にも仲間が居た様だな?上手く生き延びた証拠だ」

魔女「では退魔の方陣も知って居ったとな?」

盗賊「だろうな?これをやってるって事は100日の闇も在ったのかも知れん」

魔女「そうじゃ忍びにはその様な記録を残した書物は残って居らぬのか?」

くノ一「一角仙人の逸話を残した巻物なら隠れ里に有ります」

魔女「それじゃな…一角仙人とは剣士か未来のどちらかじゃな」

盗賊「どうする?戻るにゃまだ早いが…」

女海賊「私はもうちょっと調べたい」

盗賊「ほんじゃ俺はデカイ瑪瑙と鏡を隠れ里に運んで来るわ…くノ一!先導してもらって良いか?」

くノ一「分かりました…」シュタタ


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596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:31:03.26 ID:c2KZAoSz0
魔女「何か見つかったかえ?」

女海賊「色々ね…種とか骨を細工した物とか」

魔女「しばらく住んで居ったのじゃな?」

女海賊「少なくても4~5人…本当は祠の入り口にも扉が在った筈さ…そっちは風化してもう無いけど」

魔女「ではここは寝床という訳か」

女海賊「かな?多分エリクサーが入る石の器の中で横になったんだと思う」

魔女「ホムンクルスは居らんかったんじゃろうか?」

女海賊「どうだろ?6つあるガラス容器が全部空だからね…その当時居たのかも知れない」

魔女「髪の毛なぞ落ちては居らんか?」

女海賊「探したけど一つも落ちて無いさ…ワームが掃除しちゃうんだよ」

魔女「髪の毛でも有れば幻術で当時の夢でも見れたかも知れんのにのぅ…」

女海賊「え?何それ?遺品で夢を見れるん?」

魔女「うむ…体の一部分が在れば夢を見せる事が出来るのじゃ…少しだけじゃがな」

女海賊「なーんも残って無いや…残る手掛かりは一角仙人の巻物だね」

魔女「次の行き先が分かれば良いがな…」

女海賊「まぁでも…多分外海の方だよね…未来の残した地図もフィン・イッシュの外海を記した物だったし」

魔女「外海が黒塗りされて居った様じゃが?」

女海賊「何か隠したのかもね…それか穴が開いてるとか」

魔女「海に穴かいな…」

女海賊「空を飛ぶ分には関係無さそうだからちっと行って見るかな」

魔女「何故黒塗りにしたのか気になるが…」

女海賊「もうここじゃ何も見つけられないから隠れ里に戻ろっか」

魔女「そうじゃな…」

近衛侍「先導致しまする」スック

597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:32:20.49 ID:c2KZAoSz0
『林道』


シュタタ シュタ


近衛侍「む!!何事…」キョロ

魔女「忍びが慌ただしい様じゃのぅ?」

近衛侍「またもやヒハシの群れが来ている様でござるな…」

魔女「ヒハシ?」

近衛侍「失礼…ガーゴイルの事を忍びの間ではヒハシと呼んで居るのです」

女海賊「群れってどんくらい?」

近衛侍「10匹程度でしょうかのぅ…」キョロ

女海賊「おっし!!インドラの銃・改を試す時が来たぞ」スチャ

近衛侍「空飛ぶ魔物を追い払うのは簡単ではありませんぞ?」

魔女「林の中で視界が悪うては魔法も撃てんのぅ…わらわは回復に回った方が良さそうじゃ」

女海賊「てかミスリルの笛で追い払えない?」

魔女「何処に居るのか分からんでは無いか」

近衛侍「林の切れ目から空を良く見ていて下され…大抵は空を旋回して居りまする」

女海賊「居た居た!2匹見える」スチャ

魔女「何処じゃ?」

女海賊「インドラの銃の先…今望遠鏡で見定めてる」

魔女「遠いのぅ…ここから当たるんかいな?」

女海賊「照準のテストだよ…」シュン!

近衛侍「!!?今のは?」

女海賊「今一発撃った…照準のズレ代分かったから次当たるよ」

魔女「わらわは何も見えんかったが…」

女海賊「望遠鏡で覗いてると光の残像が良く見える…行くよ?」


シュン!


女海賊「当たった!!」

魔女「なんじゃ地味じゃのぅ…」

女海賊「光が貫通したっぽい…あのガーゴイル落ちるよ」

魔女「焼かねばならんな…」

女海賊「移動しよっか!」スタタ

598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:33:19.29 ID:c2KZAoSz0
『隠れ里』


ピィィィィィ!!


魔女「こちらは無事な様じゃな?」

盗賊「おぉ!!帰って来たか…この笛のお陰でガーゴイルはこっちに近付いては来ん」

魔女「笛を使うとは機転が利いた様のぅ…」

女海賊「何匹居んの?」

盗賊「分からんな…俺が見た感じ4~5匹なんだが林で良く見えん」

魔女「林に入られると厄介じゃな」

盗賊「降りて来たガーゴイルは忍びに任せても良さそうだ…空飛んでる奴が何も出来なくてよ」

女海賊「インドラの銃で減らして行くしか無いね…」チャキ

盗賊「やっぱさっき一匹落としたのはお前だったか」

女海賊「なんか破裂しなくなって地味な感じになっちゃたんだ」

盗賊「倒せりゃ良いだろ」

女海賊「おっし!捕捉…2匹落とすよ?」シュン! シュン!

魔女「ではわらわは燃やしに行くかのぅ…」ノソノソ

盗賊「ヌハハマジで地味な攻撃になったな?」

女海賊「貫通しちゃってるんだよね」

盗賊「てことは直線上なら何匹も行けるってこったな?」

女海賊「お?それ良いね」

盗賊「そうそう重なる事は無さそうだがなw」

女海賊「なんで破裂しなくなったんだろ…集光してる光が細すぎるんかなぁ…」カチャカチャ

盗賊「さっき落としたガーゴイルは拳ぐらいの穴が開いてたぞ?一応破裂してんじゃ無ぇか?」

女海賊「マジ?一点集中で破裂の規模が小さいだけなんか…威力は十分そうだな」

盗賊「まぁ反則武器には違いないわな」


--------------

599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:34:07.87 ID:c2KZAoSz0
シュン! シュン!


女海賊「おっし!!これで飛んでる奴全部落とした」

盗賊「しかしなんでガーゴイルが群れてるんだ?」

女海賊「この辺の林は狭間の中じゃん?ちゃんと退魔の方陣を組んでないんじゃないの?」

盗賊「一匹二匹ならそれも分かるが群れって事はどっかで集まってるだろ」

女海賊「深い狭間がどっかに有るって事か…」

盗賊「まぁここは忍びが何人も居るから修行には丁度良いのかも知れんが…」


ノソノソ


魔女「女海賊の言う通り何処ぞに深い狭間が放置されて居る様じゃな」

盗賊「おう魔女!林の方はどうよ?」

魔女「忍びが走り回って居るが大丈夫じゃろう…」

女海賊「これ放って置いて良いの?」

魔女「良くは無いが他国の地じゃであまり口出し出来んのぅ…忍びで対処出来るのであれば魔除けとしての利用価値もあるじゃろうからな」

盗賊「リザードマンとかと一緒って訳か」

魔女「うむ…誰ぞが不用意に隠れ里へ近づかぬ様に利用すると言うのも悪い策では無い」

女海賊「ガーゴイルって使役出来ないの?」

魔女「本来使い魔の一種じゃで闇の使い手であれば使役も可能じゃな」

盗賊「あんまり関わってバランス崩すのもイカンという訳か」

魔女「うむ…近衛侍の口調から察するに大した問題では無い様じゃ…それよりインドラの銃の事じゃが」

女海賊「ん?何?」

魔女「空へ向けて撃つ分には良いじゃろうが何かに当たる様な使い方は危険が有りそうじゃ」

女海賊「え?マジ?」

魔女「小型ではあるがインドラの矢には違いない様じゃぞ?どの様な仕組みになって居る?」

女海賊「集光レンズで散乱光を1ミリ位の光の束に変えてるっぽい」

魔女「笛の径から察するに今までは10ミリ程度の散乱光だった訳じゃな?」

女海賊「うん」

魔女「間違って暴発せぬ様に何か細工をしておくのじゃ…足元に発射してしまうと爆発するぞよ?」

女海賊「その点大丈夫!安全装置は完璧だから…連射出来ないけど」

600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:35:21.15 ID:c2KZAoSz0
『屋敷』


メラメラ パチ


近衛侍「女王様は産屋の方でお休みになられた…今宵はこの屋敷にてお寛ぎください」

魔女「一角仙人の巻物は拝見出来ぬか?」

近衛侍「ヒハシの騒動で忍び達が出払っている故…もうしばらくお待ちを」

盗賊「はぁぁぁなんか退屈だなぁ…酒か何か無いのか?」

近衛侍「ワッハッハ…そう言うと思いましてな?濁酒をお持ちしたのですわ」

盗賊「おぉ!!珍しい酒だな?米という穀物を使うんだっけか…」

近衛侍「さぁさぁ魔女殿も女海賊殿も一杯飲んでみてくだされ」トクトク

魔女「変わった酒じゃな?」

盗賊「俺にもくれ」

近衛侍「つまみも用意して来ましたので一緒にご堪能あれ」トクトク

盗賊「どれどれ…」グビグビ プハァ

近衛侍「如何ですかな?」

盗賊「こりゃ甘い!!だが飲み口はスッキリしてんな?」

近衛侍「某はこの濁酒で一杯やるのが楽しみでしてな?」グビ

魔女「ふむ…なんと濃ゆい酒か…」

盗賊「食い物が恋しくなる酒だ」

近衛侍「何を食しても不思議と合う酒なのですよワッハッハ」グビ

女海賊「なんか白いドロドロで気持ち悪いなぁ…うげぇ」ゴク

盗賊「ガキにはこの美味さが分からんだろう…いやぁ久々に酒っちゅう酒にありつけた」グビグビ

女海賊「甘すぎなんだよ…」


シュタタ スタ

601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:35:56.41 ID:c2KZAoSz0
盗賊「おぉ!!くノ一!!もしかして巻物持って来たんか?」

くノ一「近衛侍…又濁酒を持ち込んで…」

近衛侍「客人へのもてなしの為故…勘弁されよ」

女海賊「私は酒より巻物の方に興味があるよ」

くノ一「お持ちしました…これに」パサ

魔女「これは又古い巻物じゃな…」

くノ一「2100年前の巻物も御座います…どうか損傷されぬ様にお取り扱いを…」

魔女「ふぅむ…」ヨミヨミ


一角仙人の逸話は2100年前より語られて居ります

一番新しい逸話は700年前…

いづれもその当時の厄災を不思議な妖術を用い退けた伝説に御座います


魔女「なるほどのぅ…」

女海賊「魔女!この巻物見て…未来の壁画と全く同じ絵が記されてる…」

魔女「壁画には続きが在った様じゃな」

女海賊「私これ書き写す」

魔女「そうじゃな…わらわは内容を精査するとしよう」


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602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:36:29.31 ID:c2KZAoSz0
『深夜』


んがぁぁぁ すぴーー


魔女「…まず分かった事を整理するぞよ?」


700年前に一角仙人は妖術師を引き連れて居った

おそらく剣士と未来じゃな

そしてこの国に剣術を伝え…未来は妖術と称し虫使いの術を伝えた

数年此処に滞在して居った様じゃが未踏の地を目指し行方が分からなくなって居る

次に1400年前

この時に大御神を引き連れてフィン・イッシュを建国して居る

何処ぞでホムンクルスを目覚めさせ一緒にこの地を開拓したのじゃ

その時に退治したのが善女龍王…姿はメデューサかラミアの様じゃがリリスじゃったのかも知れぬ

そして2100年前

黄金郷として栄えて居ったこの国は疫病により滅亡の危機にあった

そこに現れた一角仙人は疫病を忽ち癒し

疫病の元となっていた作物を変え稲作を伝えたそうじゃ


魔女「歴史を逆行しているが…剣士と未来の足取りはこの様な感じじゃな」

女海賊「逆から読み解くと訳わかんなくなっちゃうけど…壁画の続きも大体そんな感じかな」

魔女「700年前に未踏の地を目指したらしいが壁画から何か読み取れんか?」

女海賊「外海のど真ん中にチェリーの木が描かれているくらい」

魔女「そこは未踏の地なんか?」

女海賊「どうだろ?北極とか南極じゃないから行けない事は無いと思う」

魔女「誰も行った事が無いという意味では未踏の地なのやも知れんのう」

女海賊「ニルヤカナヤだっけな?そういうのは書かれて居ない?」

魔女「善女龍王の出所がそこじゃな…ニルヤカナヤより海を越えてこの地で男の血を求めたらしい」

女海賊「黄金が無くなったとかいう逸話は無いの?」

魔女「それは書かれて居らんのぅ…一角仙人とは違う話なのかもわからん」

女海賊「まぁ次行く場所がいまいち特定出来ないね…どうすっかな」

魔女「チェリーの木を探しに行くかえ?」

女海賊「大まかな地図だから探せるかどうかも微妙なんだけど…」

魔女「ミツバチに案内させれば行けるのでは無いか?」

女海賊「お?おぉ!!ソレだ!!」



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603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:36:57.86 ID:c2KZAoSz0
近衛侍「ほう?ニルヤカナヤをご存じとは」

女海賊「おっさんなんか知ってんの?」

近衛侍「近年ではニライカナイと呼ばれておりましてな…死者の集う理想郷があると言われております」

女海賊「なんか聞いた話と違うんだけど…黄金が運ばれたとかそういう話じゃないの?」

近衛侍「確かに遥か昔この国は黄金郷と呼ばれて居た時代は在った様ですな…ニライカナイに運ばれたと言うのは本当ですかな?」

魔女「分からぬ…ニライカナイに有ると言われる時の砂を記した文書と時代が一致するだけじゃ」

近衛侍「ほぉぉ時の砂までご存じで有ったとは…」

魔女「この地にその様な伝説が伝わって居るのじゃな?」

近衛侍「ある漁民が亀に乗り竜宮へ行った伝説ですな…時を超え…それを巻き戻す砂…それが時の砂という物との事」

魔女「竜宮はニライカナイに有るという事か…」

近衛侍「如何にも…まぁ伝説の話ですがなワッハッハ」

女海賊「その場所知らない?」

近衛侍「死すれば分かると言われて居りますが…」

女海賊「なんだよ分かんないのかよ」

魔女「ふぅむ…死者が集うと言うのも気になる話じゃな…何故じゃろうのぅ?」

604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:37:27.31 ID:c2KZAoSz0
『翌朝』


サーーーー シトシト


盗賊「雨かよ…どうする?」

女海賊「戻るに決まってんじゃん!飛空艇でニライカナイ探しに行く」

魔女「雨に打たれるのは億劫じゃな…」

近衛侍「雨が上がるまで御ゆるりとしていては如何か?」

女海賊「知りたい事知ったらもう此処に居る理由無いのさ…」

魔女「主は相変わらず落ち着かんのぅ」

女海賊「魔女もここに居たって魔方陣の研究出来ないじゃん?」

魔女「そうじゃが昨日の今日でもう出立とは女王に何と思われるか…」

女海賊「大丈夫だって…そんな事最初から知ってるよ」

盗賊「ヌハハその通りだな…いつもすぐ居なくなるしなw」

女海賊「私はもう外海に出たいからさ…魔女どうする?城の書庫行く?それとも飛空艇に乗る?」

魔女「一度主と逸れると次にいつ合流出来るか分からんな…書物があれば飛空艇でも構わん…」

女海賊「ほんじゃちゃっちゃと書物乗せて外海出るよ」

魔女「ヤレヤレじゃ…」ノソリ

近衛侍「では某が王族の気球で城までお届け致す」

女海賊「女王にはよろしく言っといて?又遊びに来るってさ!」

近衛侍「しかと承りました」

盗賊「ほんじゃ行くかぁ」スック


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605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:38:04.07 ID:c2KZAoSz0
『城』


フワフワ ドッスン


近衛侍「ささ皆様方…到着致しました」

女海賊「おっし!私飛空艇に戻ってるからさ…魔女は書物持って来てよ」

魔女「うむ…これ盗賊!主は書物を運ぶのを手伝え」

盗賊「へいへい…」

女海賊「なんか城がバタついてんじゃない?」

近衛侍「その様ですな?某は事情を聞いて参りますのでこれにて…」ペコリ

魔女「では書物庫へ行くかのぅ」ノソノソ



『飛空艇』


タッタッタ


女海賊「ホムちゃん待った?」

機械の犬「クゥ~ン」トコトコ

女海賊「ごめんよ直ぐに戻るつもりだったんだけどさぁ」

機械の犬「ワン!ワン!」トコトコ

女海賊「ん?何かあった?」スタ

機械の犬「ワン!」フリフリ


コケーーッ コッコ


女海賊「おぉ!!卵産んでんじゃん!!」

機械の犬「ワン!」ヒョコ

女海賊「アハハ!ホムちゃんが温めてるんだ?」

女海賊「よーし!良い物作ったげる…」コネコネ

機械の犬「??」フリフリ

女海賊「懐炉だよ…これホムちゃんのお腹の中に入れとくからさ…これで暖まる筈」パカ ポイ

機械の犬「ワン!」

女海賊「そうだ…硫黄とか買っとかないとな…お金何処に置いてたっけ?」

機械の犬「ワンワン!」ココホレ

女海賊「あれ?何だコレ?なんでこんなに一杯お宝積んでんだ?…まぁ良いや!ちっと金貨持ってこ」ジャラリ

機械の犬「ワン!」ヒョコ

女海賊「ほんじゃちっと買い物行って来るから待ってて!」スタタ

606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:38:54.19 ID:c2KZAoSz0
『1時間後』


ヨッコラ ドスン


盗賊「あれ?女海賊は何処行ったんだ?」

魔女「飛空艇で待つと言うて居ったのにな?」

機械の犬「クゥ~ン…」トコトコ

魔女「まぁ良い…わらわは書物で調べ事をして居るでもう話しかけるで無いぞ?」

盗賊「探しに行くと行き違いになりそうだな…まぁ球皮でも膨らませておくか」シュゴーー


タッタッタ


女海賊「お!?戻って来た?」

盗賊「おぉ今戻った所よ…何してたんだ?」

女海賊「買い物だよ…てか町の方が大騒ぎなんだけどさ」

盗賊「海賊が騒いでんだろ?」

女海賊「なんで知ってんのさ?」

盗賊「そんなこったろうと思ってな?」

女海賊「聞いて聞いて!!なんか白狼の盗賊団が出たって騒いでんだよ」

盗賊「ヌハハ…まぁ俺の仕業よ」

女海賊「なんだそれで飛空艇にお宝乗ってたのか」

盗賊「まぁ殆ど町でバラ撒いたんだがな?」

女海賊「海賊の船襲ったのあんただね?」

盗賊「まぁな?」

女海賊「まぁ良いや…ちっと金貨使わせて貰ったよ」

盗賊「あぁ好きに使え」

女海賊「魔石も在ったな…これが在ればホムちゃんのお腹温められる」

盗賊「何する気よ?」

女海賊「ホムちゃんが卵温めてんだよ」

盗賊「卵?ニワトリのか?」

女海賊「別に良いじゃん!」

盗賊「ヌハハゆで卵にせん様にな?」

女海賊「なんか楽しみになって来た!!生まれたらホム子って名付けよう!!」

盗賊「う~む…センスの欠片も無いが…」

女海賊「うっさいな!!もう飛空艇飛ばすからどいて!!」

盗賊「へいへい…」


シュゴーーーー フワフワ

607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:39:32.93 ID:c2KZAoSz0
『外海上空』


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「とりあえず進路は西!!」

盗賊「まともな地図も海図も無いんだが大丈夫か?」

女海賊「このまま明日の夜明けまで飛んでそっからミツバチに案内させりゃ良いんじゃない?」

盗賊「まぁ食い物には困らん様だから良いっちゃ良いわな…水だけ上手く雨水に有り着けりゃ良い」

女海賊「てかさ?なんで皆外海出るの避けるん?」

盗賊「誰も帰って来ないからだろう」

女海賊「そもそもなんでそんな事になる?やっぱ海に穴が開いてんのかな?」

盗賊「さぁな?てか俺らも戻れんかも知れんぞ?」

女海賊「引き返せば良いだけだから信じらんないんだよね…戻るのなんか簡単じゃん」

盗賊「みんなそう言いながら帰って来ない訳よ」

女海賊「まぁ良いや…ちっと作り物するから飛空艇の操舵変わって」

盗賊「おう!…何作るんだ?」

女海賊「ミスリルの筒がまだ少し余ってるからホムちゃん用の笛作る」

盗賊「機械の犬じゃ吹けんだろ」

女海賊「魔石あったじゃん?風の魔石で音が出る様に細工する」

盗賊「なるほど…」

女海賊「これでホムちゃんの表現も一つ増えるんだよ」トンテンカン グリグリ


ピィィィ


女海賊「音が出る様にするのなんか簡単なんだ…これに風の魔石を嵌めて…」カチャカチャ

盗賊「犬笛って奴だな」

女海賊「そそ!こいつに嚙みつけば音が出るのさ」

女海賊「ホムちゃんおいで!これ骨だと思って噛みついてみて?」

機械の犬「ワン!」トコトコ ハム

女海賊「もうちょい強く噛める?」


ピィィィ


女海賊「おけおけ!!よっし…骨の形にもうちょい加工する」ガリガリ シュッシュ

盗賊「ヌハハこれで立派な番犬になれるな?」

女海賊「一応魔除けの効果あるからね」

608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:40:09.27 ID:c2KZAoSz0
『翌朝』


コケーーッ コッコッコ


盗賊「ふがっ…おおぅ寝ちまった様だ」ゴシゴシ

女海賊「ふぁぁぁぁ…う~ん」ノビー

盗賊「まだ暗いな」

女海賊「結構飛んだね?風で流されてない?」

盗賊「んん?ありゃ?いつの間に北に向かってんだ?」

女海賊「風向き安定してないのか…縦帆張り替えるわ」スック

盗賊「いや待て…羅針盤が変な方向差してるかも知れん」

女海賊「その羅針盤今まで狂った事無いよ」

盗賊「やっぱおかしい…針が一定方向を差さん」

女海賊「ちょいデッキ上がる」ダダ パカ


ビュゥゥゥゥ


女海賊「あれ?狭間ん中入ってんじゃん!!リリースしてよ」

盗賊「アダマンタイト触って無いぞ?」

女海賊「ええ!?」

盗賊「ちょい俺も外見る」ダダ

女海賊「ヤバヤバ…これすんごい深い狭間に入ってるわ…真後ろ見て」

盗賊「ぐはぁぁ…大量のレイスに追っかけられてんじゃ無ぇか」

女海賊「ちょい高度下げよう」グイ

盗賊「なるほど…外海に出て誰も帰って来ないのは狭間に迷っちまうんだ」

女海賊「そういう事ね…未来が描いた黒塗りは狭間の事だったのか」

盗賊「ガーゴイルの群れはここから飛んできてるんだよ…てか俺らも危ないぞ?」

女海賊「操舵やって!!私正面見とく」

盗賊「おう!このまま真っ直ぐ行くんか?早い所ミツバチ出してくれ」

女海賊「ミツバチ出て来い!近くのチェリーまで案内しろ!」ブーン

盗賊「おいおい方向分かん無ぇぞ?」

女海賊「探してんだよ!適当に行ってミツバチ反応するの待って」

盗賊「ちぃ大丈夫なんか?」

女海賊「レイスは近寄れないと思うけどガーゴイルにぶち当たられたらヤバいかも」

盗賊「しっかり前見といてくれ」

女海賊「そうそう当たるもんじゃ無いけど…」

609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:40:52.69 ID:c2KZAoSz0
『狭間』


シュン!


ガーゴイル「グエェェェェ…」ヒュゥゥ

女海賊「インドラの銃はリロード時間が長くてこれ以上キツイ…」

盗賊「もっと高度下げんとイカンな…」グイ

女海賊「デリンジャーは近距離じゃないと当たんないからなぁ…」

盗賊「機械の犬に笛を吹かせろ」

女海賊「ホムちゃん!!笛お願い!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ


ピィィィィ


魔女「ううん…騒がしいのぅ…何事じゃ?」ムクリ

女海賊「あ!魔女起きた?なんか狭間の深い所に入っちゃったみたいでガーゴイルが飛んで来るのさ」

魔女「海上で狭間とな?」

盗賊「インドラの銃じゃリロードが間に合わん…魔女も魔法で迎撃を頼む」

魔女「飛んで居る敵には中々当たらんのじゃが…」

女海賊「よしよし…笛のお陰で横から近づいて来なくなった…魔女!正面だけ狙って」

魔女「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

盗賊「そうそう弾幕張れば近寄って来んだろう…魔石あるから上手く使ってくれい」

女海賊「魔女!これ火の魔石!」ポイ

魔女「これで触媒の無駄遣いをせんで良くなったわい…火炎魔法!」ゴゥ


--------------


盗賊「ミツバチの向きが安定しないんだが…」グイ バサバサ

女海賊「ちゃんと示す方向に飛空艇を進めてよ」

魔女「下を見よ!!海面が見えて居るぞよ?」

盗賊「おっと危無ぇ!着水しちまう所だった」グイ シュゴー フワフワ

女海賊「高度低いとガーゴイルの数も減るね…この高度維持で進もう」

盗賊「レイスに追われるんじゃ普通の船じゃ航海出来んわな…」

女海賊「ちっと後ろのレイス掃除してみる」

盗賊「おうヤレヤレィ!!まとめて倒してみろ」

女海賊「どんだけ一気に倒せるかな…」シュン!

盗賊「ダハハ地味な攻撃だ」

女海賊「何匹に当たったか分かんないや」

魔女「エネルギーの無駄じゃで止めて置け…レイスは際限なく湧くでの?」

610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:41:43.82 ID:c2KZAoSz0
『謎の構造物』


シュゴーーーー


盗賊「おい!!女海賊!!光の石で正面照らせ!!」

女海賊「こっちぁ忙しいんだよ!!魔法で何とかして!!」シュン ガチャコン

魔女「忙しいのぅ…照明魔法!」ピカー

盗賊「なんだありゃ…」

女海賊「対象見っけた?」

盗賊「ちっと揺れるぜ?」グイ


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょちょちょ…海面スレスレってあんた分かってんの!!?」ヨロ

盗賊「魔女!!もっと照明魔法頼む」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

盗賊「こりゃ船の墓場だ…海底の何かに引っかかって動けなくなった様だ…」

女海賊「岩礁か何か?」キョロ

盗賊「分からんが海面からいくつも塔らしい建造物が突き出てる…海底にもそれがあるんだろう」

魔女「古代遺跡じゃな」

女海賊「ビンゴだね!!近くに降りられそうな場所無い?」

盗賊「ミツバチの示す方向で良いんだよな?」

魔女「これ盗賊や…座礁した船の年代とか分からんのかいな?わらわはあのような船を見た事が無いでのぅ…」

盗賊「いや俺でも分かるのはごく一部だ…しかし狭間の中でこんだけ傷んでるって事は相当年代もんだぜ?」

女海賊「ちょい左方向見て!!あれってクラーケンの触手じゃね?」

盗賊「なぬ!?」

女海賊「ほら?イボイボと先っぽの形…」

魔女「たまげたのぅ…ここはクラーケンの巣やもしれんな」

盗賊「石化していやがる…」

女海賊「やば…ピーンと来たぞ」

盗賊「おいおいマジか…こんな所に流れて来てるってか?」

魔女「リリス…」ボソ

女海賊「クラーケンが運んで来たって考えた方が良さそうだね」

盗賊「こりゃ探索もラクじゃ無さそうだ」

女海賊「海底探索する訳じゃないさ…リリスは誰も近寄らないこの海域に封じられてた方が良さそう」

魔女「うむ…そうじゃな」

盗賊「まぁ良い…アレは放置しておくとして陸地を探すぞ」

女海賊「てかガーゴイル撃ち落すのに忙しいんだ!!あんたが上手い事探して」

611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:42:30.02 ID:c2KZAoSz0
『恐らく翌日』


シュン!! グェェェェ


女海賊「ふぅ…リロード出来るまで休憩」ヨッコラ

魔女「また同じ沈没船が見えて来たぞよ?」

盗賊「ぬぁぁぁ分かってる!!ありゃ俺の目印なんだ」

魔女「完全に迷って居るのぅ…」

盗賊「ミツバチがアテにならん訳よ…途中で反転するんだ」

女海賊「着水してみる?」

盗賊「浸水するだろうが!…舵も無いから方向定まらん」

女海賊「大昔には気球なんか無かったって考えたら入り口は海面ギリギリだと思うんだよね」

盗賊「んなこたぁ分かってる!!」

女海賊「ほんじゃもうちょい高度下げれば良いじゃん」

盗賊「波に引っかかったらこんな気球なんざ一瞬でひっくり返るぞ?」

女海賊「操舵は私がやるから帆の調節だけあんたがやって」

盗賊「ケッ!!やってみろ!!」

女海賊「おっし!!マジでギリギリ飛ぶから哨戒頼むね」グイ


ザブン バシャバシャ


盗賊「それ以上下げるな!!」

女海賊「おけおけ!!大波のタイミングで高度上げるからしっかり見てて!!」

魔女「ヒヤヒヤじゃな…」

盗賊「魔女!!船底のクロスボウ撃つ穴をなんとか塞げられ無ぇか?」

魔女「氷結魔法!」ピキピキ カキーン

盗賊「よっし!あとは浸水しなきゃしばらく持ちそうだな」

女海賊「おっ!?おっ!?…ちょ…」

盗賊「んん?明るくなった…狭間を抜けたか?」

女海賊「いきなり島が現れた…」

魔女「ふむ…狭間の中に結界を張って居ったか…わらわの塔やエルフの森と同じじゃ」

盗賊「通りで見つからない訳だ」

女海賊「結果オーライ!!名も無き島と同じくらいの大きさだよ」

盗賊「見ろ!!入り江に船が停船してる!!誰か居そうだ」

女海賊「おっけ!!行ってみよ」

612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:43:04.74 ID:c2KZAoSz0
『ニライカナイ_入り江』


フワフワ ドッスン


盗賊「おっし!!俺はあの船をちっと見て来る」スック

女海賊「帆が無さそうだけどキ・カイの船かな?」

盗賊「さぁな?お前等2人は周囲を警戒しててくれ…直ぐに戻る」ダダ

女海賊「警戒っつってもさぁ…」キョロ

魔女「この島は主の名もなき島にそっくりじゃのぅ…入り江と言い…丘に生えた樹木と言い…」

女海賊「そだね…朽ちた小舟まである」

魔女「魔物の気配は無さそうじゃが…」

女海賊「飛空艇で空から見た方が色々分かり易そうだなぁ…」

魔女「それはイカンな…どこまでが結界の領域内か分からぬ故…飛ばぬ方が良かろう」

女海賊「まぁ徒歩で探索するかぁ…狭間の中ならゆっくり探索出来そうだ」

魔女「わらわの塔と同じじゃと良いがな?」

女海賊「あのさ?結界って方陣組むのにお札とかそういうの必要だよね?」

魔女「うむ…察するに触媒にあたる銀なぞを海中に沈めて居るのじゃと思う」

女海賊「なる…」

魔女「境界を探すのは無理じゃろうな」

女海賊「私もちっと周り見て来るからさ…魔女もその辺探索しといて」

魔女「わらわはちと休みたいのじゃ…魔法を使い過ぎたからのぅ」

女海賊「おけおけ!ほんじゃ適当に火でも起しといて」

魔女「うむ…遠くに行くで無いぞ?」

女海賊「分かってるって!!ほんじゃちっと行って来る」ピューー

613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:43:33.79 ID:c2KZAoSz0
『30分後』


メラメラ パチ


盗賊「戻ったぜ?」ドサ ガラガラ

魔女「なんじゃそのガラクタは?」

盗賊「あの船の中に有った物だ…どうやら古代の船だぞありゃ」

魔女「動くのかいな?」

盗賊「さぁな?どうやって動かすのかもさっぱり分からん」

魔女「物色してきたという事は誰も居りそうに無いという事か?」

盗賊「うむ…放置されてどれくらい経ってるのかも分からん…狭間ん中じゃ色んな物が腐り難いだろうからな」


ピヨピヨ ピヨピヨ


機械の犬「ワンワン!」トコトコ

盗賊「お!?卵が還ったか」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「食うのはもうちっとデカくなってからが良さそうだ」

魔女「主という奴は…」

盗賊「ぬはは冗談だよ!!さぁて…折角火を起こしたんだから何か焼いて食うか」

魔女「わらわの分も頼むぞよ…ちと横になるで」

盗賊「貝が居ないか見て来るわ」ダダ


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614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:44:18.15 ID:c2KZAoSz0
ジュゥゥゥ


盗賊「しかしアイツ帰りが遅いが大丈夫か?」モグモグ

魔女「心配には及ばぬ…わらわが眼を見て居るでな?」パク モグ

盗賊「何かあるか?」

魔女「朽ちた集落じゃな…過去に人が住まって居った様じゃ」

盗賊「ほう…そら俺らも行った方が良さそうだ」

魔女「慌てんでもよかろう…主もしばらく寝て居らんのじゃから少し休め」

盗賊「そうだな…ここも魔女の塔の様にそうそう魔物は入って来ないんだろ?」

魔女「入り口が海じゃ…何が入って来るのやら…」

盗賊「ヌハハ食ったし寝るわ!」

魔女「うむ…」コックリ

615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:45:03.52 ID:c2KZAoSz0
『しばらく後』


スタスタ


女海賊「あ!!やべ…ここまで妖精の笛聞こえてたんか…」

魔女「…」コックリ コックリ

盗賊「んがががが…」スピー

女海賊「まいったなぁ…起きるまで足止めかぁ」


ピヨピヨ


女海賊「お!?ホムちゃんヒヨコ生まれたんだ!!」

機械の犬「ワン!」フリフリ

魔女「ぅぅん…」パチ

女海賊「あ!!あれ?魔女起きるの早くね?」

魔女「うたた寝してしもうた様じゃな…」

女海賊「妖精の笛聞こえた感じじゃ無さげ?」

魔女「むむ?妖精の笛なぞに何故頼らねばイカンかったのじゃ?何か居ったのかいな?」

女海賊「石化したっぽいゴーレムが居てさ…もしかしたら動くかもって思ってね」

魔女「石化…ゴーレム…」

女海賊「あと書物見つけて来た…わたし読めないから解読ヨロ」ポイ

魔女「書物を発見したとはな…朽ちた集落に有ったんか?」ヨミヨミ

女海賊「他にもまだ在ったさ…読めそうなの拾って来た」

魔女「…これは1000年以上昔の古文書じゃ…しかもシン・リーンに伝わって居るルーン文字」

女海賊「何書いてんの?」

魔女「年代が分からぬのじゃが魔王島の伝説が書かれて居る」ヨミヨミ

女海賊「もしかしてこの島って当時の魔王島だったり?」

魔女「丘の向こうには集落の他に何かあるんか?」

女海賊「遺跡が在ったよ…一人じゃ危なさそうだから戻って来た所さ」

魔女「ゴーレムは2体か?古文書にはそう記されて居るが…」

女海賊「おお!!やっぱそうか…もう一体の方は真っ二つになって崩れてた」

魔女「どうやらわらわ達はエライ所に来てる居る様じゃ…」

女海賊「後さ…そこら中に石造が転がってんだよ」

魔女「…」

女海賊「魔女が今腰掛けてる石もそうなんじゃね?」

魔女「なんと!!?」スック

女海賊「ほら?元々は立ってたんだけど倒れて割れちゃってんだよ…」

魔女「わらわはちと書物を読む故…主も食事を済ませてちと休むが良い」

女海賊「おっけ!ちっとお腹空いてた所だった」

魔女「わらわに話しかけるなや?」ブツブツ

616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:46:09.83 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


ザザー ザブン


盗賊「ふが?…んぁぁぁぁ良く寝た」ノビー

女海賊「くっそ!!部品が足りない…」カチャカチャ

盗賊「ぃょぅ…戻ってたんか」

女海賊「これ他に部品無いの?」

盗賊「全部持って来た筈だぞ?もうあの船ん中は空っぽだ」

女海賊「こんな細かい部品は機材が無いと代替品作れないなぁ…ちぃ」

盗賊「何なんだそりゃ?」

女海賊「機械式の時計だよ…振り子が動けば永久に動く筈」

盗賊「ほーん…」ハナホジー ポイ

女海賊「諦めっかぁぁ」ポイ

盗賊「あの船には行ったか?」

女海賊「当たり前じゃん」

盗賊「動かし方分からんか?持って帰りたいんだが…」

女海賊「残念だけど動力源が外されてるっぽい…多分古代遺跡動かす奴と同じだと思う」

盗賊「商人が探してるって奴か」

女海賊「多分ね…」

盗賊「あの船はよ…形から察するに海の中潜る船だと思うんだわ」

女海賊「ハッ!!そういう事か…」

盗賊「んぁ?自己完結すんなや…何よ?」

女海賊「竜宮って海の中に有るとか言ってたじゃん?あの船に乗って行くんじゃね?」

盗賊「って事は俺らに竜宮は探せんって事だな…ヌフフ直すしか無い様だ」ニヤリ

女海賊「無理過ぎる…部品が色々外されてて何が何だか分かんない」

盗賊「う~む…まぁそれは良いとしてだ…島の探索はどうする?」

女海賊「昨日書物を見つけて来てさ…魔女が解読してるんだけど…」

盗賊「何処行ったんよ?」

女海賊「飛空艇の中だよ…話しかけるなってさ」

盗賊「ほんじゃ俺らだけで行ってみっか?」

女海賊「そうもいかないんだ…どうもこの島は魔王島らしい」

盗賊「なぬ!?どういう事よ?」

女海賊「ゴーレムとか居て下手に探索してるとヤバイかも」

盗賊「マジか…」

女海賊「てか石化しちゃってるんだけどね…石化の原因も良く分かんないから下手に行くとミイラ取りがなんとかって奴」

盗賊「エリクサー全部置いて来ちまったな…」

女海賊「もう小瓶で少ししか無いよ」

盗賊「魔女待ちか…まぁゴロゴロしてても鈍るだけだからちっと動く準備だけしとく」スック

女海賊「何すんの?」

盗賊「丸腰で探索行く訳じゃあるめぇ?」

女海賊「あぁそういう事ね…ほんじゃ私も準備すっかぁ」スック

617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:47:02.12 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


ブツブツ なるほど一致しておる…


盗賊「寝ずに書物読んでんのか?」

女海賊「シーーーーッ話しかけんなって言われてんだよ!!」

盗賊「ちっとぐらい良いだろ」

魔女「おぉ良い所に来たのぅ…これ女海賊や…他の書物がある場所まで案内せい」

女海賊「お!?解読終わった?」

魔女「一通りは読み終わったが他の書物も気になってのぅ」

女海賊「なんか分かった?」

魔女「この古文書は時の王の時代の事が書かれて居ってな…メデューサの首をどの様に撥ねたかが記されておる」

女海賊「メデューサ?リリスじゃなくて?」

魔女「その当時はメデューサと呼ばれて居ったんじゃな…そしてこの島でメデューサを討伐しておる」

女海賊「なる…ほんで今は海に沈んでる訳か」

魔女「うむ…そしてな?この古文書は後に書かれた伝記なのじゃ…」

魔女「時の王の時代からシャ・バクダ朝の時代までの空白を埋める手掛かりになる」

盗賊「歴史の事はさっぱり分からん」

魔女「話はこうじゃ…」


時の王の時代からシャ・バクダ朝までを記した書物は殆ど残って居らん故に歴史は空白だったのじゃが

何故その様な事が起こるのか?…答えは夢食いじゃ

当時の魔王は祈りの指輪を用い世界中の夢を食らって居った

夢は人の記憶による所が大きい…よって夢を食われた者は知らぬ内にそれまでの記憶を喪失する…


魔女「そうやって歴史の一部が伝わらなんだのじゃ…」

女海賊「じゃぁなんでその書物は残ってんの?」

魔女「さぁのぅ?わらわが思うに時の砂のお陰やも知れぬ」

女海賊「時の砂で思い出す?」

魔女「分からぬ…じゃから何でも良いから他の書物を調べたいのじゃ」

盗賊「おいおい話が随分逸れたみたいなんだが…当時の魔王っていつの時代よ?」

魔女「確かでは無いが700年前か1400年前か…それとも1700年前か…それなら辻褄が合いそうなのじゃ」

盗賊「そういやシャ・バクダの時代もはっきりとした書物が残って無いって情報屋が言ってたな…」

魔女「歴史の欠落が起きるのは魔王が原因じゃろうな」

女海賊「じゃぁ私達の記憶もいつの間に無くなってる?」

魔女「否定は出来ん…わらわは極力書物に書き記しては居る」

女海賊「なんか分かって来たぞ…私が忘れっぽいのはそのせいか」

盗賊「いやいやお前は元々興味無い事は覚え無ぇから…」

魔女「もう行く準備は出来て居るのか?」

女海賊「そんな遠く無いから準備は軽くでおけ!…行こうか」

618: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:47:40.11 ID:c2KZAoSz0
『朽ちた集落』


チュン チュン ピヨ


盗賊「なんつかー…朽ち果てた廃村だが穏やかな雰囲気だ」

女海賊「これさぁ…狭間の中で何年このままだと思う?」

魔女「さぁのぅ…」ノソノソ

盗賊「そこら中にある石は石化した住人か?」

女海賊「多分ね…でも全部傷んでる」

盗賊「こりゃここで戦闘があった証拠だ…石化してる恰好がおかしい」

魔女「うむむ…魔王島に何故集落があるのじゃろうか…」

盗賊「そら調査の為だろ…事が済んだ後の魔王島を後の奴らが調査の為に住んだ訳だ」

魔女「どうにか年代が分かれば良いが…」

女海賊「魔女!あの建屋に本が散らばってたんだ」グイ

魔女「これ引っ張るな…ゆっくりで良い」ノソノソ



『朽ちた建屋』


ガサガサ


女海賊「魔女?この紙の切れ端はどう?」

魔女「パピルスの一部か…同じ様な物があれば集めるのじゃ」

盗賊「くぁぁぁ何も無ぇな…壺なんざ要らんし…」

魔女「主はいつの時代の壺か分からんのか?」

盗賊「んん?シャ・バクダの紋様だから400~700年前って所か?」

魔女「ますます時代が分からぬ…時の王の時代とどういう接点を持つのか…」ブツブツ

女海賊「壺ん中何か入って無いの?」

盗賊「灰だよ灰!!なんもありゃし無ぇ…」サラサラ

魔女「壺に灰とな…死霊術師が居ったという訳か」

女海賊「やっぱシン・リーン所縁の物が多い感じ?」

魔女「うむ…石板の調査に来て居ったのやも知れん」

女海賊「ソレソレ!!わたしはそれを探したい!!」

魔女「ここでは手掛かりが少ないで遺跡の方に行って見るとするかいな」

盗賊「そらキタ!!待ってたぜ?その言葉を!!」

女海賊「もうちょい先に石化したゴーレムがあんのさ…その向こう側に遺跡があるっぽい」

619: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:48:52.99 ID:c2KZAoSz0
『遺跡へと続く丘』


女海賊「ほらコレ…やっぱ石化したゴーレムだよね?」

魔女「ゴーレムは元々石じゃで石化かどうかは断定出来んのぅ」

盗賊「動き出さんだろうな?」

女海賊「妖精の笛吹いても動かないさ」

盗賊「どうやって動いてたんだろうな?」

女海賊「もしかしてこいつも例のウラン結晶のやつかな」

盗賊「有り得る…動かんのは動力が無いからかも知れん」

女海賊「ほんでこのゴーレム超えたら見晴らし良くなって向こうに遺跡が見えるよ…こっち」


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盗賊「ちょい待て…こりゃぁ大戦の跡地じゃ無ぇか…見てみろ!あの池は隕石か何かが落ちた痕だ…」

女海賊「なるほど…それで地形がボコボコなのか」

魔女「…」ボーゼン

盗賊「あの遺跡…丸くくり抜かれてる断面はなんだ?明らかに不自然だ」

魔女「量子転移の痕跡じゃ…あの場所で何かを消し去って居る」

女海賊「量子転移ってあんなんなるの?」

魔女「主が持つ魔人の金槌も範囲は狭いが同じ様に空間を消し去るのじゃぞ」

女海賊「ちょい待ち…未来が持って行った破壊の剣ってやつ…あれも同じだったよね?」

魔女「うむ…つまりゴーレムの片割れを真っ二つに切ったのは未来の可能性が高い」

女海賊「やっぱりか…やっぱここに魔王倒しに来てたんだね」

魔女「倒しに来たのか…それとも祈りの指輪で魔王を集めて葬ったのかは分からん」

盗賊「なるほどな…それであの量子転移の痕跡か」

魔女「驚くのは量子転移だけでは無いのぅ…奴らは隕石を落とす事は出来ん筈じゃ…つまりシン・リーンの魔術師も絡んでおる」

盗賊「時の王の時代は魔法の黎明期だったんだろ?同行しててもおかしく無い」

魔女「そうなのじゃが時代が合わんのじゃよ…何故にこうも時代がバラバラなのか」

盗賊「やっぱ情報屋を連れて来るべきだったな」

女海賊「ほんなん後で考えれば良いさ…さっさと手掛かり探しに行くよ」ピューー

620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:49:54.56 ID:c2KZAoSz0
『古代遺跡』


スタスタ


盗賊「こりゃ既に盗掘済みだな…ちぃ」

魔女「えらい荒れようじゃ…瓦礫をどうにか出来んもんか」

女海賊「私が魔人の金槌で消して行くからなんか手掛かり探して」

盗賊「待て待て…下手に消して行くと崩れるかも知れんぞ?生き埋めは御免だ」

魔女「これ!!ここを見よ…灯篭じゃ」

女海賊「お!?何だコレ?銀製じゃん」

魔女「こういう事じゃ…照明魔法!」ピカー

女海賊「良く見るとあちこちに同じのがある」

魔女「うむ…誰ぞ人が出入りして居った証拠じゃ…しかも魔術師じゃな」

女海賊「未来が此処に住んでた?」

魔女「良く考えてみぃ…700年前にどうにかこの島に辿り着いたとして量子転移でさらに700年時空を飛んだ場合…」

魔女「乗って来た船は無い筈じゃ…ここで生活するしか無かったのでは無いか?」

盗賊「おぉ!!そうだな…自前で作るか誰か来るのを待つしか無ぇ」

女海賊「でもさ?量子転移で必ず時空飛ぶって訳でも無いじゃん?」

魔女「ふうむ…そうじゃな」

女海賊「まぁ銀の灯篭をわざわざ作るくらいの期間は滞在してた可能性は高そうだね」

盗賊「てかなんで銀なんか使うんだ?」

魔女「触媒が不要になるでラクなのじゃよ」

女海賊「普段いる場所に明かりが欲しいだろうから手掛かり有るとしたらこの辺だね」

魔女「うむ…灯篭の周辺を探すと良かろう」

盗賊「おし手分けして探索すっぞ!!俺は北側見て来る…女海賊は土手沿いに向こうだ」

女海賊「これ時間掛かりそうだね…わたし飛空艇をこっちに持ってくるわ」

魔女「うむ…そうじゃな…ベースはこちらに有った方が良かろう」

盗賊「分かった…ほんじゃ定期的にこの場所に集合で良いな?」

女海賊「おけおけ!」ピュー


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621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:50:32.48 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


フワフワ ドッスン


女海賊「ホムちゃん降りて良いよ!!」

機械の犬「ワンワン!」トコトコ

女海賊「魔女どう!?何か見つかった?」

魔女「盗賊が地下に降りる階段を見つけて探索に行きよったわい」

女海賊「おーソレだね」

魔女「予想はして居ったが遺跡の本体はやはり地下じゃな」

女海賊「魔女は何してんの?」

魔女「見つけたパピルスを読んで居る…指示書の切れ端じゃ」

女海賊「お?時代分かりそう?」

魔女「失踪した暁の使徒を捜索しとった様じゃな…時代は1700年前…つまり時の王の時代じゃ」

女海賊「暁の使徒?誰それ?」

魔女「シン・リーンに戻って調べにゃ分からんのぅ…少し聞いた事がある程度しか知らぬ」

女海賊「まぁあんま関係無さそうだ…ほんで私も地下の方行ってみたい…どっち?」

魔女「向こうの灯篭の脇じゃと言うて居った…わらわはここで待つ故行ってみよ」

女海賊「ホムちゃん一緒に行こうか!!おいで!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ

622: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:51:36.67 ID:c2KZAoSz0
『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「ちっと休憩だ!!」ダダ ドター

魔女「女海賊とは会わなんだか?」

盗賊「途中で分かれたっきりだ…その内戻ってくんだろ」

魔女「まぁ良い…しばらくここに滞在する事になりそうじゃでの」

盗賊「だな?地下の遺跡が広すぎる」

魔女「書物の類は見つけて居らぬか?」

盗賊「書物は無ぇな…武具類と石造ばっかだ…ほらよ!」ポイ カラーン

魔女「むむ…その刀身は」

盗賊「オリハルコンだ…多分シン・リーンで見つけたエクスカリバーと同じ物…」

魔女「いくつもあるのかえ?」

盗賊「わんさかな?つまりその当時の通常兵装な訳よ…今の時代より随分進んでたって事だ」

魔女「やはり時の王が兵を率いてこの島に滞在して居ったか」

盗賊「伝説通りか?」

魔女「不死の力を得た後に国を捨てたのじゃ…理由は諸説あるのじゃが…」

盗賊「ほんでな?そういうお宝が持って行かれて無いって事はその時代以降に盗掘には遭って無い訳よ」

魔女「ふむ…この遺跡は1700年前のままか…では何故700年ほど前のシャ・バクダの壺が有ったのじゃろうな?」

盗賊「未来達が持ち込んだとすれば辻褄が合う」

魔女「なるほどのぅ…壺に入れた灰はもしかすると種だったのやも知れんな」

盗賊「まぁ…まだまだ色々発掘できるだろうから…ちょい休んだら又行って来るわ」

魔女「古代の遺物は無いんか?」

盗賊「俺も探してんだけどよ…当時の時の王が全部持って行ったんじゃ無ぇかと思ってる」

魔女「ふむ…辻褄が合うのぅ…錬金の器具しかり重力炉の出所は此処じゃったか…」

盗賊「まぁお宝探しは俺に任せておけ…そうそう!!地図書くから紙とペン持って行くぜ?」

魔女「好きにせい」

623: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:52:24.82 ID:c2KZAoSz0
『半日後』


ガラガラ ドサー


魔女「主は全部持って帰るつもりか?」

盗賊「オリハルコンの武器は価値高いだろ…持って帰るに決まってんじゃ無ぇか」

魔女「わらわは書物を探せと言うた筈じゃが…」

盗賊「読める状態の書物なんざそうそう無い!剣の柄が腐り落ちるぐらいなんだからな」

魔女「むむぅ…壁画に書き残す未来が如何に優秀か…」

盗賊「ところで女海賊はまだ帰って来んのか?」

魔女「壁画を見つけて泣きながら書き写して居る」

盗賊「お!!マジか!!何処だか分かるか?」

魔女「主が行って居る奥の方では無い」

盗賊「手前だったか…ちっと行って来る」

魔女「待てい!!気が収まるまでそっとしておいてやれ」

盗賊「俺も壁画を見てみたいんだがよぅ…」

魔女「わらわも同じじゃ…我慢せい」

盗賊「しゃー無ぇ…酒でも飲んで待つか…」

魔女「そうじゃ主に頼みがある…チェリーの木を探して実を採って来ては貰えんか?」

盗賊「ぐはぁ…マジかよ」

魔女「ちと体調がおかしいのじゃ…魔力が回復せぬ」

盗賊「チェリー食えば良くなるってか?」

魔女「正確には生きた実から魔力を得るのじゃ」

盗賊「まぁ良いや…探索がてら採って来てやる」

魔女「うむ…よろしく頼む」

624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:53:21.08 ID:c2KZAoSz0
『森』


サワサワ


盗賊「こりゃ木を登らんと収穫出来んな…」

盗賊「しゃーねぇ上まで登れば見晴らしも良いか…よっ」ヨジヨジ

盗賊「枝ごと落としちまうか…」ブン スパ スパ

盗賊「ほぉぉぉ島の全景が見えて中々良い…結界の外側は海にしか見えんのだな…」

盗賊「ふむふむ…なるほどあの入り江以外に船が取り着けそうな場所は無さそうか」

盗賊「待てよ?この島はもしかして人口の浮島か?てかこの島自体がくそデカイ船なんじゃ無ぇか?」

盗賊「…」


そういや遺跡の地下は水が張ってそれ以上降りられなくなってた…

それが海面だったとすると水が張ってる説明も付く

つまり遺跡の本体は海の下に沈んでる…

だから潜水する船が必要な訳だ


盗賊「なるほどな…竜宮の正体が分かって来たぜ?」

盗賊「遺跡の天井がやたら高いのは空気を溜める浮袋って訳だ」

盗賊「んん?なんだありゃ?…赤潮か?」

盗賊「いや赤潮が起きるほど海の温度は高くない…まさかリリスの血が流れ出て…」


”ちと体調がおかしいのじゃ…”


盗賊「石化か!!こりゃやべぇ!!」


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625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:54:19.59 ID:c2KZAoSz0
『焚火』


ダダダ ズザザー


盗賊「魔女!!無事か?」

魔女「何を慌てて居る…チェリーは収穫出来たか?」

盗賊「あ…いや…悪りぃ置いて来ちまった」

魔女「手ぶらで帰って来るとは何事じゃ…取りに戻れ」

盗賊「ここに来る途中で石化したクラーケン居ただろ?俺らも石化したりしないよな?」

魔女「可能性は否定出来ぬが体の中に線虫が住んで居るから黒死病には掛からんと思うがのぅ」

盗賊「あぁそうだった…忘れてたわヌハハ」---思い過ごしか---

魔女「早ようチェリーを採って来い」

盗賊「わーった!わーった!」スタ



『しばらく後』


ムシャ ムシャ モグ


盗賊「チェリー食いながら酒ってのも中々の組み合わせだ」グビ

魔女「やる気が出て来たかの?」モグ

盗賊「ちっと休んだらもっかい探索行って来るわ」

魔女「わらわはちと横になって居るでな?」

盗賊「そんな体調悪いんか?」

魔女「動けぬ程では無い…魔力が回復せぬのが不可解なだけじゃ」

盗賊「いつからよ?」

魔女「結界に入ってからかのぅ…もしくは貝を食ろうた後からやも知れぬ」

盗賊「てかここはどんな結界張ってるのか分からんのか?」

魔女「分からぬ…魔除けの類じゃろうが悪い結界では無いのぅ」

盗賊「俺は何も感じん…至って普通だ」

魔女「気にせぬでも良かろう…それ程魔法が必要には思えぬしな?」

盗賊「まぁ大丈夫ならそれで良いんだ」

魔女「さて…飛空艇で横になって居るで書物を探して来い」ノソリ

盗賊「へいへい…」


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626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:55:21.66 ID:c2KZAoSz0
『壁画のある部屋』


グスン カキカキ


盗賊「んぁぁぁここに居たか…探したんだぞ」

女海賊「邪魔しないで…」カキカキ

盗賊「壁画見つけたんだな?」

女海賊「見りゃ分かるっしょ…」カキカキ

盗賊「遺品とか無いのか?…ってありゃ?白骨が…」

女海賊「…」ギロ

盗賊「こりゃエルフの骨だ…金髪…どういう状況よ」

女海賊「…」プルプル グググ

盗賊「待て待て…連れの可能性が高そうだ…骨はこの一体だけか?」

女海賊「フン!」カキカキ

盗賊「てか随分デカイエルフだな…もしかするとハイエルフと一緒に行動してたのかもな」

女海賊「そこの銀食器…飛空艇に積んどいて」カキカキ

盗賊「銀…やっぱ未来が作ったんか?」

女海賊「作り方…私が教えたの」

盗賊「なる…確定って訳か」

女海賊「…」カキカキ

盗賊「見た所…随分長い間ここを使ってたみたいだな」

女海賊「此処見て…石板に記されてる」

盗賊「んん?こりゃ海図か?」

女海賊「リヴァイアサンを探して未踏の地を何回も行き来してんだよ」

盗賊「次の足取りだな?」

女海賊「壁画写し終わったら北に向かう」

盗賊「おいおい此処のお宝探索はどうすんのよ?」

女海賊「この壁画以上のお宝なんて無いさ」

盗賊「マジかよ…俺はもうちっと探索したいんだが…」

女海賊「写し終わるまでに終わらして」カキカキ

盗賊「くぁぁぁ…とりあえず食器持って行けば良いんだな?」

女海賊「終わったらもう行くから…魔女にそう伝えて」

盗賊「こりゃ休んでる暇無ぇな…」ダダダ

627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:56:28.79 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


ガラガラ ドサー


魔女「zzz…」スゥ

盗賊「寝てるか…まぁ体は大丈夫そうだな…」


ズズーン グラリ


盗賊「!!?なんだ?」キョロ

魔女「ええぃウルサイのぅ…」モソリ

盗賊「起こしちまったか?横になってろ…何が有ったのか見て来る」ダダ

魔女「何かが体の上に乗って居る…どかせよ」

盗賊「何寝ぼけてんだよ…っておい!!まさか…動けない訳じゃ無いだろうな?」

魔女「しもうた…動けぬ」

盗賊「ぬぁぁぁだから言ってたんだ…このエリクサー飲め」クィ

魔女「むぐっ…」ゴクリ

盗賊「おっし!これで一先ず石化は何とかなるだろう…」

魔女「まずいのぅ…わらわはリリスの血を浴びて石化を一度経験して居る…エリクサーでは止まらぬやもしれぬ」

盗賊「何ぃ!!」

魔女「今回は血なぞ浴びて居らぬが…」

盗賊「貝だ!!貝を食っちまったな!?大量の血を吸い込んでたんじゃ無ぇか?」

魔女「それでは主もマズかろう…」

盗賊「やべぇな…事情を女海賊に話してくる…俺らが石化してもアイツならエリクサー仕入れてなんとかしてくれる」

魔女「主も残りのエリクサーを飲んでおくのじゃ」

盗賊「今ので最後だ!!てか魔法で止められんのか!?」

魔女「無理じゃな…」

盗賊「ぐはぁ…肝心な時に役立たずか!まぁ良い…女海賊の所に行って来る」ダダダ

628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:57:17.97 ID:c2KZAoSz0
『壁画のある部屋』


タッタッタ


盗賊「女海賊!!緊急事態だ!!」ダダダ

機械の犬「クゥ~ン」オロオロ

女海賊「…」グゥ スピー

盗賊「ぬぁぁぁマジか…おい!ホムンクルス!!女海賊は貝を食ったんか?」

機械の犬「ワン!」

盗賊「クソがぁ!!俺が背負って行くからホムンクルスは壁画の写しを咥えて持って来てくれ」

機械の犬「ワン!」パク

盗賊「行くぞ!!よっこら…」ドッシリ

女海賊「ふがっ?」zzz

盗賊「フガじゃ無ぇ!!女のクセになんでこんなに重いんだこいつは…」ヨタヨタ

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「その壁画の写しを落とすんじゃ無ぇぞ?そいつはこいつの命だ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「ほんで良く聞いてくれ…俺らが全員石化した場合最後に残ってるのはホムンクルス…お前だけだ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「後は分かるな?どうにかしてフィン・イッシュ女王の所か商人の所に運んでくれ」

機械の犬「…」ピタ

盗賊「まぁ今の所まだ俺は動ける…石化しちまう前に早く飛空艇で脱出するぞ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「しかし石化したクラーケン発見した時点で用心しとくべきだった…抜かった」


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629: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:58:19.27 ID:c2KZAoSz0
『飛空艇』


どるぁぁぁ ドサリ


盗賊「はぁはぁ…魔女!!動けるか?」

魔女「動かぬ…女海賊も動けぬのか?」

盗賊「寝ちまった様だ…どうやら貝も食ってる」

魔女「吐き出させよ」

盗賊「もう遅いだろ」

魔女「何もせぬより良い…わらわの口にも酒を流し込め」

盗賊「ちっと待て…ここを脱出した後だ…ホムンクルス!!乗れぇ!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ

盗賊「ホムンクルス!!操作を良く見とけよ?最後はお前が頼りだ」グイ


シュゴーーーーーー フワフワ


魔女「主はホムンクルスに最後を任せる気かえ?機械の犬に操舵しろと言うておるか?」

盗賊「それしか無いだろ…知恵使ってなんとかしろやい!!」

魔女「これホムンクルス…主に出来ると思うか?」

機械の犬「クゥ~ン」シュン

魔女「無理じゃと言うて居るが?」

盗賊「うるせぇ!やるんだよ!!…どわっ…マジか!!」

魔女「んん?何か起きとるんか?」

盗賊「入り江でクラーケンが暴れていやがる…さっきの揺れはクラーケンだ」

魔女「リリスは見えぬか?」

盗賊「分からん…血が海を漂ってる」

魔女「これで本真に誰も近づけぬ様になったのぅ」

盗賊「むむ…暗くなって来たぞ?結界から出る」

魔女「ガーゴイルに注意せい」

盗賊「言われんでも分かってる!!どっちに行くか分からんが兎に角全速で飛ぶ」グイ


シュゴーーーーーー バサバサ

630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 16:59:13.74 ID:c2KZAoSz0
『狭間_上空』


ガチャガチャ


盗賊「よし…インドラの銃は前方に固定だ」

機械の犬「クゥ~ン」オロオロ

盗賊「使い方は分かるな?前方に居る敵だけ倒せば直撃は避けられる…試しに撃ってみろ」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「うむ…そうだ…尻尾で引き金引きゃ行ける」


シュン!


盗賊「リロードの仕方は知ってるな?」

機械の犬「ワン!」トコトコ ガチャコン

盗賊「魔女!!どうだ?動けるようになったか?」

魔女「…」スゥ…

盗賊「ちぃぃ…ダメか…やっぱ体が小さいと石化には弱いみたいだな」

女海賊「むにゃ…」スヤ

盗賊「俺は石化が遅いのか…それとも奇跡的に免れてんのか…まぁとりあえず動けるから良いかヌハハ」

盗賊「ほんで進路が良く分からんのをどうするか…待てよ?ミツバチの向く方向の逆行けば出られるかも知れんな」

盗賊「おし!!進路変更…」グイ 


シュゴーーーーーー バサバサ


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631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:00:10.95 ID:c2KZAoSz0
『数年後_ルイーダの酒場』


ドゥルルン♪


バニー「はぁ~い!!冒険者の集う酒場へようこそ~」

アサシン「…」ギロ

バニー「あら?お兄さん…パーティーをお探しでしたらカウンターの方へ~ウフフ」フリフリ

狼女「あ!!アサシンこっちこっち!!」

アサシン「…」スタスタ

狼女「どうだった?千里眼で探して貰えた?」

アサシン「無駄足だ…千里眼でも行方を追えんらしい」

狼女「政治の話は?」

アサシン「シン・リーンは外海調査に一切関わって居無い様だ…戦争もどの国にも汲みする気は無いとの事」

狼女「完全中立か…」

アサシン「当然だな…領地が接して居ないのだから」

狼女「こっち側にはクリーチャーも攻めて来て無さそうだしねぇ…ラクだなぁこっちは」

アサシン「しかし…魔女不在では公爵の変化を見破れん…奴が裏で手引きしているのは間違い無いだろうに」

狼女「シン・リーン女王にも化けてたり…なんてね」

アサシン「…」

狼女「それでこれからどうする?セントラルに戻る?」

アサシン「私はセントラルを経由してフィン・イッシュへ向かう…お前は港町から商船に乗ってキ・カイへ向かえ」

狼女「え…別行動すんの?」

アサシン「リカオン…子供では無いだろう?…一人で商人の所へ行って情報を交換してくるのだ」

狼女「再集合は何処?海士島?」

アサシン「うむ…海士島で良い」スック

狼女「ちょっと…もう行く気?」

アサシン「私は忙しいのだ…直ぐに定期便に乗らねば1日無駄に過ごす事になる」

狼女「ぶぅぅ…」

アサシン「では上手くやれ…」ノシ


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632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:00:55.67 ID:c2KZAoSz0
『…その頃_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

はいはい買い取りあっち!!

競売はこっち!!

商船の受付は列に並んで~~

ワイワイ ガヤガヤ


影武者「戻ったよ…誰か訪ねて来ていないかい?」

娘「あ…又役所から人が来てた…不在って伝えたら出直すってさ」

影武者「分かったよ」

娘「取引は上手く行った?」

影武者「うん…纏まったお金が必要になるから用意しておいて貰えるかな?」

娘「どんくらい?」

影武者「500金貨さ」

娘「私財で…だよね?」

影武者「そうだよ…ギルドの資金は手を付けない」

娘「何の取引だったの?」

影武者「言う訳無いじゃ無いか…フフ」

娘「フン!!シッシッ…邪魔だからアッチ行って」

影武者「下に居るから…用があったら呼んで」スタ

633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:01:49.57 ID:c2KZAoSz0
『隠し部屋』


トントン


影武者「開けゴマ…」


カチャン


影武者「入ります…」ガチャリ ギー

商人「買い取れたかい?」

影武者「はい…500金貨で交渉成立しました」

商人「いつ受け取れそうだい?」

影武者「次の出兵時に地下街8番で一台停止させるとの事」

商人「分かったよ…ギャング達に奪わせるのは少し危ないけど…出来るね?」

影武者「大丈夫です…そのままギャング達の隠れ家に移送させます」

商人「…こんな時に盗賊が居てくれれば助かるのにさ…」

影武者「私では不足ですか?」

商人「あぁゴメンそういう意味じゃない…君は僕の大事な影武者だから危険に晒したく無いだけさ」

影武者「他の衛兵も買収済みなので問題無いかと」

商人「流石だね…でもそう言うのが危険なんだよ」

影武者「…」

商人「まぁ任せるよ」

影武者「ありがとうございます…今日も役所から闇商人を訪ねて来てた様ですが…」

商人「何か感づかれてるかも知れないねぇ…」

影武者「官僚を調べている件ですね?」

商人「一旦期間を置こうか…今は動くキラーマシンを調べるのに注力しよう」

影武者「ブラフは任せて貰って良いですか?」

商人「足が付かない様に頼むね」

影武者「はい…」


トントン

634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:02:26.36 ID:c2KZAoSz0
商人「シーッ…」

情報屋「私よ…」

商人「…」

情報屋「あぁ忘れてた…開けゴマ…」

商人「…」ニヤ


カチャリ ギー


影武者「…では僕は仕事に戻ります」ペコ

情報屋「あら?密談中だったかしら?」スタ

商人「やぁ…直接来るなんてどうしたんだい?」

情報屋「外海で難破船を拿捕したという情報が入ったのよ」

商人「それはいつの話?」

情報屋「拿捕した難破船を引いて今軍用の港に入っているらしいわ」

商人「難破船ねぇ…飛空艇だったら飛んで行く所なんだけどなぁ…」

情報屋「政府がわざわざキ・カイまで引っ張って来たのよ?何か有ると思わない?」

商人「君は何処まで入れるのかな?」

情報屋「分からない…学術調査の依頼があればもしかすると…っていう感じよ」

商人「只の難破船に学術調査する事なんか無いでしょ」

情報屋「とりあえず政府用の連絡通路までなら許可証が有るわ?そこから荷下ろしが見られるかもしれない」

商人「なんだ見られる場所まで行けるなら先に言ってよ…行こう!」

情報屋「フフ…」

635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:02:54.64 ID:c2KZAoSz0
『連絡通路』


衛兵「ここから先は軍用だ!!帰れ帰れ」


情報屋「事情を知って居る人はやっぱりここまで見に来てる様ね…」

商人「みんな学者かな?」

情報屋「大体そうよ…あなたは顔を見せない様に」

商人「分かってるさ…」

情報屋「荷下ろしは始まって居そう?」

商人「あれ?なんでキラーマシンで包囲してるんだろう…」

情報屋「ほら…やっぱり何か乗せて居るのよ」

商人「割と程度の良いコグ船…あれで外海を航海してたのか…スゴイな」

情報屋「なかなか荷下ろしが始まらないわね」イラ

商人「誰かを待ってるみたいだな」

情報屋「あなた望遠鏡持って居ない?」

商人「あるよ…」ポイ

情報屋「誰を待ってるのか…」

商人「ハハ積み荷じゃ無くて人を見るのか」

情報屋「キ・カイ軍船の船長らしい人物が手に何か書物を持って居るわ」

商人「見せて」グイ

情報屋「気になるわね」

商人「本当だ…どうしてわざわざ待って居るのか…」

情報屋「偉い人が大勢来そうね」

商人「こりゃ時間掛かりそうだなぁ…」

636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:03:52.14 ID:c2KZAoSz0
『1時間後』


情報屋「政府高官が何人も来て居るわ…よほどの積荷よ」

商人「…」ジー

情報屋「どうしたの?無言で…」

商人「いや機械化の大臣があの書物を受け取ったんだ…どうしてかなと思ってさ」

情報屋「軍の司令が手を上げたわよ…何か始まりそう」

商人「キラーマシンが動いた…」

情報屋「あれ?いつの間に軍船が退避始めてる…どうして?」

商人「本当だねぇ…なんか変だねぇ」

情報屋「積み荷はもしかしてリリスとか?」

商人「まさか…いや待てよ…偶然釣り上げたなんて可能性は在るかもしれないなぁ」

情報屋「キラーマシンの後方に何かの兵器を構えてる」

商人「この感じはとんでもない魔物を積んでると考えるべきか…捕らえるつもりだな?」

情報屋「リリスだったとするとキ・カイが全滅しかねない」

商人「直ぐに逃げられる準備はあるよ…まずは状況しっかり見ておかないとね…あ!!荷室を開けようとしてる!!」

情報屋「…」ゴクリ

商人「望遠鏡で見える?」

情報屋「何かしら…リリスでは無さそう」

商人「動かないね」

情報屋「キラーマシンが鎖を持って荷室に入って…」


ドーン バリバリ

637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:04:24.94 ID:c2KZAoSz0
商人「うわ!!船が大きく揺れてる…中に居るのは何だ?」

情報屋「見えた!!大きなウミヘビ…サーペントみたいな魔物」

商人「なんだ…ただのシーサーペントか…がっかりだよ」

情報屋「でも大きいわ?」

商人「サーペントなんか捕獲しても何にもならない…待って損した…帰ろう」


バシュン バシュン


商人「ハハ攻城用のバリスタ撃ってる…そんなに捕獲したいか」

情報屋「ウミヘビが光り始めた…何?」

商人「もう良いよ…帰ろ…」クルリ


ビビビビビ チュドーン ドカーーーン!!


商人「え!!?」

情報屋「商人!!伏せて!!」ガバ

商人「何が起きた?」キョロ

情報屋「軍港の弾薬が一気に爆発したのよ…ここまで破片が飛んでくるかもしれない」

商人「そんな…誰が?」キョロ

情報屋「私は見てた…あのウミヘビが稲妻出したの」

商人「まさか…そんなサーペントは聞いた事が無い」


ピカーーーー チュドーーーン


商人「ちょ…海で爆発!?どうなってる?」

情報屋「そっちじゃない…兵隊が兵器で反撃してる…」


ピカーーーー チュドーーーン


商人「イ…インドラの銃を使っている…のか?」

情報屋「マズそうね…避難しましょう」グイ

638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:05:06.54 ID:c2KZAoSz0
『街道』


ガヤガヤ ザワザワ

軍港の方で何か起きてる様だ

見ろ!!煙が上がって居るぞ

海上でも爆発してるぞ

衛兵!!どうなってんだぁぁ!!

ガヤガヤ ザワザワ


情報屋「はぁはぁ…あなた…逃げる用意は有るって言ったわね?準備しておいて」

商人「有るには有る…でもまだその時じゃ無いと思うな」

情報屋「あの魔物は伝説のリヴァイアサンよ…あんな魔物をキ・カイの軍隊が捕獲出来るとは思えない」

商人「リヴァイアサン…外海からここまで連れて来た…話が都合良すぎだけど…」

情報屋「どういう理由か分からないけれど海で最強なのは間違い無いわ」

商人「待って…ここは陸だよ」

情報屋「陸…」

商人「そうさ…リヴァイアサンが陸に上がった話も聞いた事が無い」

情報屋「そ…そうね…落ち着きましょうか」

商人「子供達を避難させる準備は進めて置くさ…それよりもっと情報が欲しい」

情報屋「情報…」

商人「リヴァイアサンだとしたら学術調査で君が調査出来る事も有るかもしれない」

情報屋「私にリヴァイアサンの調査をしろと?」

商人「それもあるけど書物の方さ…研究には必要になりそうだろう?」

情報屋「分かったわ…」

商人「君の息子の事は心配しなくて良い…避難が必要なら最優先してあげるさ」

情報屋「…」

商人「言う事を聞いてくれれば…の話だけど」

情報屋「あの子私の言う事は全然聞いてくれなくて…」

商人「僕の影武者の言う事はちゃんと聞くんだよ…大丈夫…任せて」

情報屋「…」

商人「フフ子育ても悩みが多そうだ」

情報屋「私は学舎に戻るわ…あの子の事頼むわね」タッタッタ

639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:05:38.30 ID:c2KZAoSz0
『数日後_地下街8番』


ピチョン ピチョン


影武者「…こっちです」スタスタ

商人「ここは封鎖されて以降誰も入って来ないかい?」キョロ

影武者「はい…チカテツ街道から裏道が通じてるのもあって隠れるには良い場所になりました」

商人「政府がこの区画を封鎖した目的は何だと思う?」

影武者「ギャング達の誘導…」

商人「分かって要るじゃ無いか…監視されて居る事は頭に入れて置いた方が良い」

影武者「裏を返せば利用できると言う事です」

商人「早い所分解済ませないと軍が回収に来るな…急ごう」

影武者「そうですね」タッタッタ



『隠し通路』


影武者「到着しました…確認してください」

商人「おぉ…これがキラーマシン改か…」ジロジロ

影武者「約束通り分解が済んだ後の残りはギャングで部品取りしても良いですね?」

商人「約束は守るさ…僕は頭部にあるAIユニットを回収したいだけだよ」

影武者「軍が回収に来るまで約2時間ほどの余裕が稼げていると思います」

商人「上出来…」カチャカチャ

影武者「その他の部品取りもありますので出来るだけ手短にお願いします」

商人「頭部以外の部品取りはもう始めてしまって良いよ」

影武者「許可が出ました…出て来ても良い様です」


ヒソヒソ コソコソ


商人「なかなか統率のとれたギャング達だねぇ…良し…取れた」カチャカチャ

影武者「もう終わったのですね?」

商人「僕はこの頭部を持って帰るとするよ…後は好きにして良い」

影武者「では帰路をご案内します」

商人「大丈夫さ…一人で帰れる…その方が色々都合が良い」

影武者「そうですか…では私は別件の取引に向かいます」

商人「わざわざ案内してくれて助かったよ…気を付けて」ノシ

640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:06:18.24 ID:c2KZAoSz0
『ジャンク屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


店主「いらっしゃ…キシシシ又何か持ち込みかい?」

商人「まぁね?良い物が回収出来たら又買い取り頼むよ」

店主「今度はどんな機械かねぇ…」

商人「秘密さ…奥の作業台使っても良いかな?」

店主「タダじゃ無いよ…ウヒヒヒ」

商人「分かってるさ…」チャリン

店主「毎度ぉぉ~分かってるねぇぇぇ」

商人「じゃぁ作業台借りるね」スタ




『作業台』


カチャカチャ


商人「さてさて…」


発信機が付いて居るとしたらこの頭部だ…

ここならジャンク屋に売られたと偽装出来る

さっさとAIユニットだけ外したい

これでどうしてキラーマシンが量産出来るのか謎が解ける…

最悪の結果にはなりません様に…


商人「…」カチャカチャ

商人「……」ピタ

商人「………」ググググ


ドン!! ガラガラ!!


店主「散らかさんでクレやぁぁ!!何しとんじゃぁぁ!!」

商人「…」ギロリ

店主「何をバラしてるか知らんがもう貸さんぞぃ?」

商人「分解ミスした…んだ…分かるだろう?」

店主「器具は元の場所に戻さんとダメダ~メ…分かるぅ?」

商人「良く分からない発信機と取り出した魔石置いて行くよ…これで勘弁して」

店主「うほほほ…見せてみぃぃな」

商人「ここに置いておく…又来るよ」タッタッタ


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641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:07:26.34 ID:c2KZAoSz0
『1か月後_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

又レートの変更かよ…

これじゃぁ個人売買した方が良いじゃ無ぇか


娘「関税引き上げられてこうするしか無いの~ゴメンね~」

客「こりゃ戦争の影響かね?」

娘「う~ん…海の向こうとは戦争して居ないんだけどねぇ…」

客「密輸ルートの案内はして居ないんか?」

娘「ダメダメそう言うのはギルドで扱って無いから」

客「ケッ…商売上がったりだ」



『隠し部屋』


影武者「…奴隷貿易禁止法に孤児の移送が引っかかるそうで1人当たり200金貨の罰金が発生するそうです」

商人「フフ政府はどうしても孤児を移送させたく無い様だ」ギラリ

影武者「主な商船の取引にも軒並み関税が掛けられて…」

商人「分かって居るよ…僕に脅しを掛けているのさ」

影武者「重税で困るのは民だと言うのに…」

商人「僕はもう絶対に孤児たちをキ・カイ政府の下で働かせる様な事はしないと決めたんだ」

影武者「そろそろ理由を教えてはくれませんか?」

商人「君は知らなくて良い…」

影武者「孤児院の子供達も自立して働きたいと不満を漏らしています…」

商人「なんとか諫めてよ」

影武者「…」

商人「今回商船に乗せた孤児たちの罰金は支払うとして…」

影武者「はい…」

商人「海賊に孤児院を襲わせる計画はどうなってる?」

影武者「海賊王の娘に取り次ぐと言ったきり連絡が途絶えて居ます」

商人「うむぅ…遅くなると資金が持たないなぁ…」

影武者「盗賊ギルドの力を借りるのはどうでしょう?」

商人「そうだなぁ…僕が動くしか無いか…海士島まで行って盗賊ギルドにコンタクトしてみる」

影武者「はい…留守中の事はお任せください」


642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:08:18.97 ID:c2KZAoSz0
『商人ギルド受付』


ガヤガヤ ガヤガヤ

だからぁ!!密輸の斡旋なんか商人ギルドでは扱ってないの!!

文句あるならキ・カイ政府の方に言って!!おわかり?


商人「ハハ大分混乱している様だね?」

娘「商人!!もうずっとこんな感じ…どっか行くの?」

商人「ちょっと海士島まで用事が出来たんだ…次の商船はいつ出るかな?」

娘「今荷入れしてるから早く行かないと乗りそびれるよ…1時間で出港すると思う」

商人「うわ…走って行かないと」

娘「ちょっと待って…あんたに会いたいって人が来てたんだけど影武者さん通さないとマズいと思って帰って貰ったんだ」

商人「そうだね…影武者に対応してもらってよ」

娘「分かった…じゃぁ気を付けて」

商人「因みに又役所の人かい?」

娘「背の高い女の人だよ…リカオンって言えば分かるとか言ってたけど知ってる?」

商人「リカオン!?…何処に行ったか分かるかい?」

娘「聞いてないよ…宿屋か酒場じゃないの?」

商人「あぁ…ナイスタイミングだ!!ちょっと探して来る」ダダ


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643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:09:07.35 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいませ…」

商人「ワインお願い…」キョロ

マスター「かしこまりました…どなたかお探しですか?」

商人「まぁね?背の高い女の人なんだけど…見てないかな?」

マスター「まさか先ほど大暴れしたお客様のお連れ様では無いでしょうね?」ギロ

商人「え?どういう事?」


くそぅ!!あんの 売 …逃げられちまった

血ぃ出てんぞ?大丈夫か?

噛みつきやがったんだ…くっそ!金払ってコレかよ


マスター「お客様…他のお客様が居りますのでそういったお話は奥の方で…」

野郎「おぉ騒がして済まんな…今日はツイて無ぇ」

商人「…」アゼン

マスター「…とまぁこの様な感じなのですよ…ワインをどうぞ」コトリ

商人「あ…ありがとう」チャリン

マスター「悪い 婦が沢山居りますのでご注意を…」

商人「探し人かも知れないから一応追ってみるよ」グビ

マスター「もう行かれますか?」

商人「又来るかもしれない…ありがとう」ダダ

644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:10:16.58 ID:c2KZAoSz0
『露店』


お客さん!お目が高い…黒死病に良く聞く妙薬なんですよ

これいくらするの?ハァハァ…

お高いですよ?…って…あああああああああ!!

ちょちょちょ…一気に飲む奴があるかぁぁぁ!!


狼女「ぷはぁぁぁぁ…あぁ癒される」ウットリ

店主「お客さん!!金貨持ってるんでしょうね!!」

狼女「これでお願い」ジャラジャラ

店主「…ひぃふぅみぃ…これじゃ足りない!!」

狼女「そんな堅い事言わないでさぁ…もう意識失いそうだったんだよ」

店主「何を言ってるんだ!!頭おかしいのか?衛兵呼ぶぞ!!」

狼女「それで持ってる金貨全部なんだ…ゴメン!悪気は無かった」

店主「ぐぬぬこっちも生活掛かってるんだ!きっちり払って貰わないと…」


タッタッタ


商人「あぁ待った待った…僕が残りを支払うよ」ジャラリ

店主「あ!!商人ギルドの受付の兄さん…このお客さん困った人なんだ」

商人「その様だね…まぁ僕に免じて勘弁してあげて」

店主「まぁそういう事なら…」

狼女「アレ?アレ?…商人?」クンクン

狼女「匂いが違う…誰?」

商人「まぁまぁ…君は騒動を起こしそうだから取り合えず一緒に来て」グイ

狼女「ちょっと待って…あんた誰?…私忙しいんだ」

商人「忙しそうには見えないよ…ここは目立っちゃうから向こう行って話そう」グイ

645: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:11:01.31 ID:c2KZAoSz0
『路地裏』


ファサ


商人「ほら?この顔に見覚えがあるだろう?」

狼女「商人!!探してたんだ…何処にも匂いが無いから居ないのかと思った」

商人「ハハ君は匂いで人を見分けるのか」

狼女「もしかしてアサシンと同じ病気?」

商人「まぁ…そういう事になるかな…不死者になってしまったよ」

狼女「兎に角見つかって良かった…もうお金も無くてどうしようかと思ってたんだ」

商人「いつこっちに来たんだい?」

狼女「昨日だよ…ずっと匂いを探してて疲れたよ」

商人「その様子だと宿屋も無いね?」

狼女「商人をアテにしてたのさ…」

商人「分かった…商人ギルドの建屋に空室があるから今日はそこで休むと良い」

狼女「良かったぁぁぁ」ホッ

646: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:12:01.33 ID:c2KZAoSz0
『商人ギルド_大部屋』


ガチャリ バタン


商人「ちょっと散らかってるけど好きに使って良いよ」

狼女「この部屋…一人で使ってるの?」

商人「今はね?どうして?」

狼女「知った匂いが残ってる…盗賊…女海賊…魔女…他にも」

商人「良く分かるねぇ」

狼女「今何処に居るか教えて」

商人「それは僕も知りたい」

狼女「隠しても無駄…だって匂いが残ってるし」

商人「う~ん…ここに来てたのはもう何年も前だよ…僕も行方を捜してるんだ」

狼女「困ったなぁ…アサシンが機嫌を損ねる」

商人「察するにアサシンのお使いでこっちに来たんだね?」

狼女「そうよ…公爵の変化が見破れなくて政治的に追い詰められてる…これで理解出来る?」

商人「う~ん…盗賊ギルドは今どんな感じ?あまり情報が流れて来なくてさ」


シャ・バクダは寒冷化で住みづらくなって盗賊ギルドは撤収

拠点をセントラルに移したものの支持母体がフィン・イッシュだという事が何処からかリークして監視が厳しくなった

貴族達は資金の面から盗賊ギルドとは縁を切れず裏で繋がりを持ったまま

貴族同士の押し引きの裏で私達が暗躍する立場ね


647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:13:12.05 ID:c2KZAoSz0
商人「昔と変わり無しって事か…」

狼女「アサシンは公爵の暗殺に躍起になっているけれど中々尻尾を掴まえられなくてね…」

商人「君は匂いで見分けられないのかい?」

狼女「匂いも丸ごと変化してるからダメなの」

商人「なるほどね…政治的に追い詰められてるって言うのは?」

狼女「海洋で覇権を持ってる海賊達の半数が豪族を名乗ってセントラル側に付いて居るのよ」

商人「それは知ってる」

狼女「フィン・イッシュは海軍力を大幅に縮小したから海ではセントラルに勝てない」

商人「専守防衛の立場を変えて無きゃあまり関係無いんじゃない?」

狼女「外海が無ければそうね…でもセントラルは外海に進出しようとしてる」

商人「外海に拠点を作られると2方面から攻められる?」

狼女「そう…そして外海に遠征しているのが公爵の下に居る髭男爵」

商人「北の大陸の戦争はまだまだ長引くという事か…」

狼女「外海進出を各国が競っている状況よ…フィン・イッシュはもう出遅れている」

商人「ちょっと待って…政治的な話から逸れてるよ」

狼女「盗賊ギルドの支持母体がフィン・イッシュ…内海と外海の両方を抑えられた時点で資金は全部抑えられたも同じ」

商人「そこはキ・カイと貿易協定を結べば…」

狼女「フフ…さて公爵は何処に居ると思う?」

商人「なるほど…全部公爵にコントロールされてるのか」

狼女「だから変化を見破れるかも知れない魔女の協力が欲しいの…シン・リーンからの協力の件もね」

商人「残念だけど魔女とはいくら貝殻を使っても連絡が取れないんだ…女戦士が知ってたりしないかな?」

狼女「幽霊船は簡単に連絡取れなくって…」

商人「ハハ僕の方も同じだ」

狼女「ねぇ?今日一晩休んだら海士島に戻るからお金頂戴」

商人「頂戴?君はハッキリ物事を言うんだね…まぁ帰るお金は融通しても良いけどもう少しゆっくりしたら良いじゃない」

狼女「アサシンと待ち合わせてるんだ…遅れたりすると置いてきぼり食らうんだよ」

商人「それは切実だねぇ…実はさ…僕も君にちょっとお願いが有るんだよ」

狼女「何?貸しを作ったままじゃ気持ち悪いから聞いてあげるよ」

648: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:14:26.66 ID:c2KZAoSz0
『作戦』


商人「君はウェアウルフに変身が出来るよね?」

狼女「ま…まぁ…」

商人「結論から言うとウェアウルフになって街で大暴れして欲しいんだ」

狼女「死人が出るよ?」

商人「そこはほどほどにやって貰うとして…その目的は混乱に乗じて孤児たちを商船で移送したいんだ」

狼女「孤児?なんで?何処に移送?」

商人「まぁ色々有ってね…兎に角孤児たちをフィン・イッシュで保護して欲しいんだよ」

狼女「暴れるのは簡単だけど…元の姿に戻るときに問題が…」

商人「裸で寝てしまうんでしょ?そこは何とかする」

狼女「う~ん…」

商人「キ・カイの地上で暴れるとみんな地下の方に避難を始める筈なんだ…その間に孤児たちを船に乗せる」

狼女「私はその後どうするの?」

商人「波戸場にコンテナを用意しておくから最後にその中で寝てしまって良い…船に積んでそのまま出港さ」

狼女「なるほど簡単そうね」

商人「今はオークとの戦争でキラーマシンの数も少ないから中々出てこない筈」

狼女「誰も食べないなら1時間くらいで元に戻っちゃう…それまでに避難終わるかな?」

商人「短いな…殺さない程度に生き血を啜るとか…もう少し時間稼げないかい?」

狼女「生き血…ぅぅぅ」ジュルリ

商人「どうにかして2時間くらい稼いで…あとは何とかする」

狼女「分かった…やる!!」グルル

商人「フフ君は分かりやすいな…興奮してるな?」

狼女「いつやる?今日?」

商人「船の手配が必要になる…明日の夕方でどう?」

649: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:15:54.08 ID:c2KZAoSz0
『夜』


ガチャリ バタン


影武者「お連れしました…」

商人「手間を取らせたね」

影武者「いえ…」

商人「ガレオン級の商船は手配出来そうかい?」

影武者「丁度物流が滞っていたのでなんとかなりました」

商人「それを聞いて安心した」

影武者「…では失礼します」ペコリ


スタスタ ガチャリ バタン


情報屋「話は影武者に聞いたわ…わざわざ孤児達を移送する理由が良く分からないけれど…」

商人「孤児たちを守る為さ」

情報屋「守る?割と安全だわ?」

商人「孤児を引き取った里親が誰なのか…」

情報屋「何度も言うけれど政府は開示してくれないの…でも幸せに暮らしてるって…」

商人「本当かい?」ギロリ

情報屋「どうしたの?そんな怖い顔をして?」

商人「君には本当の事を教えておこうかな」

情報屋「あなたあの子たちの行先知って居るの?」

商人「ズバリ言うよ…脳だけ摘出されてキラーマシン改に搭載されてる」

情報屋「え!!?」

商人「キラーマシン改が量産された時期と推定台数…孤児院から引き取られた子供たちの数がほぼ一緒さ」

情報屋「そんな…」ボーゼン

商人「10歳前後の子供の脳が一番機械化に適合するという研究調書も入手した…これは偶然だと思うかい?」

情報屋「証拠は?…」

商人「あるよ…僕の隠し部屋にね…孤児院に居た子供たちの誰かの脳だ」


タッタッタ…

650: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:16:55.55 ID:c2KZAoSz0
商人「ハッ!!…ぁぁぁしまった声が大きかった…影武者に聞かれたな」

情報屋「信じられない…」

商人「これも教えて置いてあげる…君の息子は1年前から言う事を聞かなくなったね?」

情報屋「…」

商人「仲良くしてた孤児院の子供が政府に引き取られた後からだ…恐らく何か知ってる…だからギャングに居るんだよ」

情報屋「商人や私から距離を置くようになったのはそのせい?」

商人「先月キラーマシン改を確保するのを手伝ってくれたのはギャング達だよ…そこに君の子も居た」

情報屋「あの子…」

商人「彼は盗賊の血を引いてる…察するに一人で友達の行先を確かめて色々知ったのさ」

情報屋「まだ8歳の子供なのに…」

商人「まぁ…そういう事情で僕はもう孤児たちを政府の好きな様にはさせないつもりだよ」


ムクリ シュタッ


狼女「グルルルル…」

商人「なんだ起きてたのか」

情報屋「リカオンさんお久しぶり…」

狼女「キラーマシンもぶっ壊して頭を持って帰って来れば良いんだね?」

商人「あぁぁ残念だけどキ・カイに残ってるのは旧式なんだ…新型はみんな戦地に行ってる筈」

狼女「なんかすっごくイライラする…」

商人「その分明日大暴れしてよ」

651: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:18:31.54 ID:c2KZAoSz0
『隠し部屋』


うぅぅ…ぅぅぅ…


影武者「うっ…くぅぅぅ…」ギュゥゥゥ

商人「影武者…気持ちは分かる…でも変な考えは起こさない様に」

影武者「は…はい…」ポロポロ

商人「まさか僕達が孤児たちを売っている立場になって居たなんてね…僕も腹が収まらない」グググ

情報屋「この事実を知って居る人はどの位居るの?」

商人「さぁね?少なくとも君の息子はある程度知ってる筈…だから大人の言う事を一切聞かなくなった」

情報屋「私があの子の友達を政府に売っていると思われて居たのね…」

商人「…」

商人「影武者…君はギャング達へのパイプ役として重要な立ち位置になっているのは自覚してるね?」

影武者「はい…」

商人「孤児院が無くなった後に政府はどう動くか予測出来るかい?」

影武者「ギャングの子供を拉致…」

情報屋「ちょっと待って…地下で生活してるギャング達も一緒に移送しましょう…ガレオン船なら乗れる筈…」

商人「それは多分無理さ…彼らは大人と戦ってるんだ…言う事聞く訳無い」

情報屋「無理やりにでも…」

商人「ダメだよそれでは…彼らの事をもっと尊重しなきゃダメだ」

情報屋「放置してるとギャングの子供達もキラーマシンにされてしまう…そんなの放って置けない」

商人「影武者…君がキーマンになる…僕のお金は自由に使って貰って構わない…分かるね?」

情報屋「どうする気?」

商人「戦うんだよ…自分の身は自分で守れる様に武器と…場所と…資金を上手く支援出来れば良い」

情報屋「まだ子供なのよ?」

商人「そんなだから君の息子は離れて行ってしまったんだ…認めてあげよう」

情報屋「…」

商人「影武者…君に掛かってる…上手くギャング達を導いてあげるんだ」

影武者「分かりました…」

商人「そうそう…くれぐれもキラーマシン改から友達を救う様な動きはさせない様に」

影武者「…」グググ

商人「その役は僕達大人がキッチリと片を付ける…それまで我慢するんだ」

影武者「はい…」

652: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:19:58.06 ID:c2KZAoSz0
『商人ギルド_屋上』


ヒュゥゥゥ… ヒラヒラ


情報屋「…」

商人「冷えると思ったら…雪か」

情報屋「商人…横にならなくて?」

商人「フッ…分かって居るだろう?」

情報屋「あ…ゴメン…不死者だったわね」

商人「君の方こそ真実を知って堪えたかい?」

情報屋「そうね…私が子供達の手を引いて政府に引き渡したんだもの…里親が誰なのかしっかり確認もしないで…」

商人「済んだ話さ…考えるだけ心がすり減るから無駄だよ」

情報屋「もう取り返しが付かない…あの子に説明する顔も無いわ」ギュゥ

商人「!?それは?…もしかして君の息子から貰った物?」

情報屋「そう…良く笑う優しい子だったの」

商人「そっか…そうそう影武者から聞いた話なんだけど…ギャングの子供達の構成…聞きたい?」

情報屋「教えて?」


リーダーはハーフオークの女の子…姉御って呼ばれてるらしい

その下に悪ガキが何人かいて君の息子はその一人さ

小さいのに絶対負けを認めなくてリーダーに一目置かれてる様だよ

ギャングの中ではちゃんと役割が決まってて

偵察役、囮役、実行役…僕らが思うよりずっと賢くてちゃんと組織になってる


情報屋「沢山仲間が居るのね?」

商人「フフ…まぁそうだよ」

情報屋「ねぇ商人?…私は母親失格だったかな?」

商人「良い母親がどんななのか僕は良く分からないなぁ…う~ん愛って何なのか知った時に母親を想う」

情報屋「想う?」

商人「うん…離別でもそれを許容した愛に気付く時がある」

情報屋「難しい事言うのね」

商人「僕の場合母さんが死んだ時に母さんが残した言葉や想いが愛だったことに気付いた…それが良い母親なのかなってさ」

情報屋「私はあの子に何か残せてるかしら…」

商人「ちゃんと通じてると思うな…愛ってそういう物だと思う」

情報屋「少し心が落ち着いたわ…ありがとう」

653: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:20:53.54 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


情報屋は事が起きるまで孤児院で待機して欲しい

子供達を避難させるルートは外壁を沿って商船まで直行だ

影武者は娘達と一緒に地下の商人ギルド支店の方に避難

僕はこれから軍隊が動きにくい様に色々工作してくる…


情報屋「荷物をまとめて船に積みたいのだけれど…」

商人「騒ぎが起きるのは夕方さ…それまでに間に合うなら先に商船に荷物を載せて構わない」

狼女「私は夕方まで待機?」

商人「君は一緒に来てもらう…工作に君が引っかからない様にあらかじめ教えておきたい」

狼女「工作ってどんな?」

商人「罠だよ…橋げたが落ちるとかロープに絡まるとか…」

狼女「なるほど…確かにそういうの苦手かもしれない」

商人「じゃぁ最後に影武者…僕はしばらく留守にするからその間君が闇商人だ…後は頼む」

影武者「わかりました」

情報屋「これでもう夜まで顔を合わさない?」

商人「そうなるね」

情報屋「分かったわ…」

商人「じゃぁ狼女…行こう」タッタッタ


--------------


情報屋「影武者さん?お願いがあるのだけれど…」

影武者「何かな?」

情報屋「手紙を書くから私の息子に渡して欲しいの」

影武者「構わないよ」

情報屋「少し待ってて…」

影武者「商人ギルドのカウンターに居るから書き終わったら持って来て」

情報屋「フフ…あなた商人の前でも同じように喋れば良いのに」

影武者「一応主従関係は守っているのさ」

654: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:21:31.04 ID:c2KZAoSz0
『街路』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「僕は普段から逃走用に色々罠を張ってるんだよ…それを教えて置く」

狼女「へぇ?」


ここの石は踏むと落ちる…

この井戸は向こう側に繋がってる…

この樽を落とすと下まで転がって爆発する仕組みさ


狼女「これあちこちに有るの?」

商人「そうだよ」

狼女「どのくらいの衛兵が出て来る見込み?」

商人「直ぐに出て来るのは10人程度さ…武装も大した事無い」

狼女「軍隊は?」

商人「キラーマシンは足が遅いから君なら楽勝だよ…問題は特殊な兵器を持った人間」

狼女「特殊というと?」

商人「女海賊が持ってたインドラの銃を知ってるかい?」

狼女「話には聞いた…それを使って来るという事?」

商人「…かも知れない」

狼女「音とか匂いに特徴は?」

商人「う~ん…説明出来ないな…兎に角見た事の無い爆発が起きたらマズイと思った方が良い」

狼女「夜に遠距離攻撃が私に当たるとは思えないけどね」

商人「お!?そうか…明かりを消して置けば良いんだね?」

狼女「それならずっと私のターン」

商人「ランプに水を入れて置くだけの簡単な仕事だ…今からやる」


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655: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:21:56.68 ID:c2KZAoSz0
『日暮れ_商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「密航者…まだ来無ぇんだが…」

商人「そろそろだよ…出航の準備始めて良いよ」

船乗り「お前等ぁぁぁ!!碇を上げておけぇぇ」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ!!」


ピーーーーーーー


船乗り「んんん?街の方が何か騒がしいな?」

商人「ハハどうしたんだろうね?」

船乗り「暗くなってきて良く見えんな…」

野郎共「コンテナが一つ荷入れ終わっていやせんがまだ入れんで良いんすか?」

商人「あぁぁ入れるタイミングは僕が言うからもう少し待って」

船乗り「俺らは何も知らんかったで通る荷なんだろうな?」

商人「大丈夫さ…今まで商人ギルドが手配した物にマズイ物なんか有った事無いでしょ?」

船乗り「まぁそうだな…金は貰ってる訳だから文句は言うめぇ」




『数分後_隣の大型船』


ドタドタ ドタドタ


豪族の男「お前等ぁ!!仕事だぁ!!武器持って集まれ!!」

ごろつき「おうよ!!」スラーン

豪族の男「害獣駆逐を装って軍隊の武器かっぱらうぞ」

ごろつき「噂のやつだな?」

豪族の男「アレをセントラルに持って行きゃ領地分与間違い無ぇ…来い!!」ダダダ

ごろつき「うぉぉぉぉ」ドタドタ


656: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:22:37.03 ID:c2KZAoSz0
『商船』


ギシギシ


商人「…」---伏兵か…これはゴチャゴチャになる---

船乗り「街で何が起こってんだ?」キョロ


ドーン パラパラ


船乗り「うぉ!!何だぁ?」

商人「ちぃぃ…暗くてどうなってるか分からないな」

船乗り「早い所出港しないと船が巻き込まれそうだ…」


タッタッタ


情報屋「商人!!作戦変更よ!!はぁはぁ…」

商人「情報屋!!どういう事だい?」

情報屋「何処かに睡眠魔法を使う人が紛れててリカオンが苦戦してるの…ハァハァ」

商人「なんだって!!?」ダダ

情報屋「自分に噛みつきながらなんとか戦ってる…リカオンを撤退させないと」

商人「子供達は?」

情報屋「もう直ぐ此処に来るわ」

商人「睡眠魔法…僕は寝ない…僕が行って来る」

情報屋「街道の井戸の辺り…行ってあげて」

商人「キラーマシンは出てる?」

情報屋「まだ出てない…でもクロスボウが飛び回っているから気を付けて」

商人「こっちは君に任せる」ダダダ

情報屋「任せて」

657: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:23:19.71 ID:c2KZAoSz0
『街道』


路地裏をくまなく探せぇ!!

屋根に上っているかも知れん!!


商人「…この辺で隠れるとしたら井戸だ…」ブツブツ

兵隊「おいお前!!この辺に魔物が潜んで居るから避難しろぉ!!」

商人「あぁ…連れを探しているんだ」

兵隊「状況を分かって居ないのかお前は!!」グイ

商人「隠れれば良いんだね?放して欲しい」

兵隊「分かったらサッサと行くんだ」

商人「井戸の中に…」スタ

兵隊「そこから動くな!?」

商人「うん…」



『井戸の奥』


グルルル フゥ…フゥ


商人「やっぱり此処に居たか…エリクサーがある…一口飲んで」クイ

ウェアウルフ「話が違う…魔法使うなんて」フラフラ

商人「刺さったボルト抜くよ?」

ウェアウルフ「自分で抜ける…」ズボ ダラダラ

商人「出血酷いな」

ウェアウルフ「もっとエリクサー頂戴…正気失うかも」

商人「飲ませにくいな…元の姿に戻れる?」

ウェアウルフ「寝てしまって良いの?」

商人「大丈夫…背負って行くよ」

‬ウェアウルフ「分かった…ちょっと寝る…失血で気持ち悪い」グター

商人「こんな風に体が変化して行くのか…すごいな」

ウェアウルフ「…」グッタリ

商人「さて…よっこら…アレ?割と軽いな」

商人「なんだエルフとかドワーフとは違うのか」ヨタヨタ

ウェアウルフ「グルル…」ブシュー

商人「動かすと血が出てしまうか…先に止血しよう」グイ グイ ギュー

商人「流石に裸のまま背負って行くのもマズいな…仕方ない」ファサ

商人「さぁ急いで此処を離れよう…」ヨタヨタ

658: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:24:04.33 ID:c2KZAoSz0
『街道』


倒れている者を建屋の中に引きずり入れろぉ!!

こっちはダメだぁ!!火の手が回る


商人「…」ヨタヨタ

兵隊「お前!!隠れて居ろと言っただろう!!」

商人「連れを手当しないと死んでしまう…行かせて」ヨタヨタ

兵隊「怪我をしているのか?」

商人「商船に行けば薬と船医が居る筈…だから行かせて」ヨタヨタ

兵隊「そ…そうか…後ろは見張っててやる!!急いで行け!!」


ピーーーーーーーー 敵襲! 敵襲!


兵隊「ええい!!向こうか!!おいお前!!走れ!!」

商人「分かってるさ…」ヨタヨタ

兵隊「ちぃぃぃ手間のかかる奴だ…ハッ!!お…お前…その顔は」

商人「白狼の一味の人相書きに似てる?ハハ良く言われるんだ…でも違うよ」

兵隊「そ…そうか」タジ

商人「今はそんな事話してる場合じゃ無い…僕は連れを助けたいから行かせて貰う」ヨタヨタ

兵隊「早く行け!!」

商人「気にかけて貰って悪いね…じゃぁ」ヨタヨタ

659: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:24:51.99 ID:c2KZAoSz0
『商船』


ザブン ギシギシ


情報屋「商人!!無事ね?」タッタッタ

商人「うん…出航しよう」ヨッコラ

情報屋「船乗りさん船を出して!!行先は海士島経由でフィン・イッシュ」

船乗り「おうよ!!お前等ぁぁぁ!!帆を張れぇぇ」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ!!」

商人「リカオンに手当てが必要だ…船医を呼んで」

情報屋「ダメ…普通の体では無いから私達で対処しないといけない」

商人「そうなんだ?」

情報屋「犬に玉ねぎを食べさせてはいけないのと同じよ…私達とは違うの」

商人「なるほど…エリクサーがあと少ししか無いんだけど」

情報屋「大丈夫…私の血を飲ませれば良くなる筈だから」

商人「あぁそういう事か…皆から少しづつ血を分けて貰えば良いか」


ドーン 


情報屋「爆発?兵隊達は何と戦って?」

商人「豪族がどさくさに略奪を画策してる様なんだ…僕達にしたら都合が良い」

情報屋「そう…」トーイメ

商人「ギャングの事が心配かい?」

情報屋「きっと大丈夫…そうよね?」

商人「一人じゃ無いから」

情報屋「そうね…さて!!私達も仲間を助けましょう!!針と糸を用意してもらって?」

商人「貰って来るよ」スック

660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:25:25.61 ID:c2KZAoSz0
『埠頭の外れ』


ザブン ザザー


オークの子「会わなくて良かったのかい?」

悪ガキ「…」ジー

オークの子「まぁ良いや…帰るよ」

悪ガキ「…」スチャ

オークの子「ん?どうしたんだよそのダガー」

悪ガキ「形見だって母さんが残して行った」

オークの子「形見?誰の?」

悪ガキ「父さん」

オークの子「父さんが誰なのか教えてくれたのか?」

悪ガキ「うん…母さんは行方不明の父さんを探しに行ったんだ」

オークの子「へぇ?…で?どこのどいつ?」

悪ガキ「秘密だよ」

オークの子「もったいぶんなよ!」

悪ガキ「秘密にするって約束なんだ」

オークの子「フン!!帰るよ」

悪ガキ「僕の道…母さんの道…次はいつ交わるかな…」

オークの子「    が恋しいか?」

悪ガキ「そんなんじゃねぇ!!」

オークの子「小さい子が待ってんだ!!早く帰るよ!!」グイ

悪ガキ「…」ジー


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661: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:26:15.23 ID:c2KZAoSz0
『商船_客室』


ユラ~ ギシギシ


商人「リカオンに悪い事したな…傷の縫い目…治るかな?」

情報屋「どうかしら?顔じゃ無かったのが幸いね」

商人「…これ使ってよ」スッ

情報屋「賢者の石ね…丁度良かった」

商人「それにしてもキ・カイに魔術師が居たなんて…侮ってた」

情報屋「黒の同胞がまだ紛れているのかも…」

商人「公爵が化けている可能性は考えて居たんだ…特に機械化の大臣が怪しい」

情報屋「もしかすると変化の杖以外にまどろみの杖を持って居るのかも知れない」

商人「杖か…なるほど」

情報屋「さて…治療は終わり」スック

商人「まぁ無事に出港出来てとりあえず結果オーライか」

情報屋「商人に見てもらいたい資料が有るのだけれど」

商人「何かな?」

情報屋「例のリヴァイアサンを乗せて来た船の航海日誌の件よ」

商人「おぉ!!それも調査出来たんだね」

情報屋「軍の重要機密だったけれど少しづつ写したのよ」

商人「見たいな…」

情報屋「待って…持ってくるから」タッタ


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662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:27:01.50 ID:c2KZAoSz0
バサッ


商人「これは4000年前の地軸変動以前の世界地図だね?」

情報屋「印が打ってある場所が古代遺跡のある場所よ…大体そこに新しい国が出来上がってる」

商人「これが関係する?」

情報屋「この地図に未来君の壁画から読み取ったフィン・イッシュ沖の地図を追加するとこうなる…」カキカキ

商人「ふむ…外海は巨大な海だ」

情報屋「そして航海日誌にも海図が記されて居て…そこから読み取るとこの場所…」

商人「島?」

情報屋「地図をひっくり返して現在の地図と比較してみるとその島は未踏の地に位置する」

商人「北極圏か…じゃぁリヴァイアサンはそこから連れて来たのか」

情報屋「そうなるわね…そしてそこに古代遺跡が在るらしいのよ」

商人「なるほど分かったぞ!この間キ・カイの軍船が船団組んで出て行ったのはソコを目指してるのか」

情報屋「きっとそうよ」

商人「まさか君はそこに行こうとしてる?」

情報屋「魔女達も其処に行ったのかと…」

商人「僕達だけじゃ無理だろうなぁ…女戦士の幽霊船ならもしかすると行けるかもしれないけれど…」

情報屋「まだ情報があるの…未来君の壁画とフィン・イッシュに伝わる龍神伝説から鑑みて未来君も其処に行ってる筈」

商人「ふむ…でも外海をどうやって移動してたんだろう?」

情報屋「クジラに乗った画が有るでしょう?」

商人「ハハクジラに乗って外海を自由に移動して居た?真似は出来ないなぁ」

情報屋「まだ情報を沢山まとめてあるのよ…これも見て」パサ

商人「ちょっと待った…ゆっくり一つづつ見て行く」


コレハアレデ…アレハコレデ…


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663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:37:07.66 ID:c2KZAoSz0
『1時間後』


2100年前に初めて時の王と出会う…その後時の王は永遠の命を得て世界を平定

未来君はこの時現代へ戻る事を試みて400年遡った

そして今から1700年前に時の王と再会を果たす

でも魔王を葬る為に量子転移を使い又時空を飛んでしまった…行き先は2400年前

一方…時の王は未来君が過去に戻ってしまった事を知らず再度再開を待ち続けた

次に会ったのは1400年前…でも未来君には何の事か分からない


情報屋「生きた時間が交差し続けた事ですれ違いが起きたのね…」

商人「なるほど…今の仮説通りに進んだとすると全部辻褄が合うのか」

情報屋「この仮説を前提に考えると未来君は時の王が言ってた暁の使徒よ…時の王の話と完全に一致するわ」

商人「つまり暁の使徒の行先を追えば良いのか」

情報屋「シン・リーンには暁の使徒を安置している墓所があるらしいのよ」

商人「じゃぁ魔女に話を聞かないとね」

情報屋「まず魔女を探さないといけない」

商人「外海調査の件でフィン・イッシュが他の国に出遅れているらしい…女王に協力をお願いしてみるかな」

情報屋「その言葉が聞きたかったわ」

商人「でもどうして何年も行方不明になって居ると思う?」

情報屋「伝説が本当だったとすると時の砂を使ってしまったのかも知れない…」

商人「未来君と同じなら何百年も未来じゃないと見つからないのかもねぇ…」

664: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:38:05.91 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


フムフム…


情報屋「まだ私の調書を読んで居るの?」

商人「うん…もっと早くこの情報が知りたかったなぁ」

情報屋「どの部分?」

商人「全部さ…特にキ・カイ周辺で新しく発見された古代遺跡の件」

情報屋「あら?知って居るかと思っていたわ」

商人「ホムンクルスを蘇らせる為のエネルギーを探していると言ってたじゃないか」

情報屋「言い出さないから何か考えがあるのかと…」

商人「まぁ…場所が分かったとして探しに行けるかどうか分からないんだけどさ…盗賊が居たらなぁ…」

情報屋「あの人…直ぐに戻ると言って居たのに…」

商人「この間見たインドラの銃はどうせ遺跡から発見された物だよね」

情報屋「きっとそうね…軍の最高機密だから私は知らなかった」

商人「他のホムンクルスとか発見されてるかも知れないなぁ」

情報屋「あら?ホムンクルスの生体が残されている数はホムンクルスが把握して居たのでは?」

商人「あ…そうだったね…キ・カイ周辺には無いと言ってたか」

情報屋「生体の部品ならもしかしたら発掘されて居るかもしれないわね」

商人「だとすると事情を知ってる僕達の方が先を行ってるか」

情報屋「そうそう…例のインドラの銃」

商人「ん?」

情報屋「女海賊が持って居る物と原理が違うと思うわ」

商人「どうして?」

情報屋「発射された光が眼で追えるから高密度の光では無いと思う…多分高密度の電気とかプラズマの類ね」

商人「あぁぁぁそう言えばそうだね…インドラの光は発射が見えない」

情報屋「それでも兵器としては驚異になる」

商人「ハハーン…分かったぞ」

情報屋「??」ハテ?

商人「リヴァイアサンを捕獲したかった理由だよ…高密度のエネルギー源が欲しかったのかなと」

情報屋「捕獲出来たとしても扱えるとは思えない…逃げられて良かったと思うわ」

商人「ふむふむ…キ・カイの弱点はエネルギーだな…魔石流通を握れば僕の勝ちか」

情報屋「関税が上がったのでは?」

商人「そうだね…流通が縮小する…自業自得さ」

665: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:38:43.61 ID:c2KZAoSz0
『甲板』


ザブ~ン ユラ~


情報屋「大丈夫?歩ける?」

狼女「風に当たりたい…おえっ」ウップ

商人「あ!!体は平気?」

狼女「誰の血か知らないけど腐った血を飲んじゃった…おぇぇぇぇ」ウゲー

情報屋「抜いた血じゃダメだったのね…」

商人「生き血じゃ無いとダメか…困ったね」

情報屋「なんだか随分瘦せた気が…」

狼女「そういう体質」

商人「ゴメンね無理させちゃって」

狼女「丁度アサシンから痩せろと言われてたんだ…今を維持する」

商人「あと一口エリクサーあるよ…要るかい?」

狼女「要る…頂戴」

商人「海士島に到着したら又買い入れてあげるよ」ポイ

狼女「私どのくらい寝てた?」

商人「1日くらい?まぁ海士島まではまだまだ掛かるからゆっくり休むと良いさ」

狼女「!!?」クンクン

商人「ん?何か匂う?」

狼女「なんだろうこの感じ…下に何か居る気がする」シュタタ


船乗り「で…出たぁぁ…あわわわ…ク…クラーケンやぁぁ!!」アタフタ


情報屋「ええ!!?」ダダ

商人「ちょ…」ダダ

情報屋「船の下に大きな影…」

狼女「これ沈没の危機?」

情報屋「分かったわ…クラーケンは様子を見てる…孤児の中にハーフオークが居るから」

商人「そういう事か…じゃぁ逆に安全かも知れない」

情報屋「昔にもこんな事有ったわね…船乗りさん慌てなくて大丈夫!襲って来ないから」

船乗り「慌てるも何もどうする事も出来んわい!!」

商人「去るのを待つだね…」


ザブ~ン ギシギシ

おぉぉぉデカイ

襲って来んのんかぁ?


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666: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:39:27.26 ID:c2KZAoSz0
『船首』


ユラ~ ザブ~ン


狼女「ヒマ…」

商人「顔色良くなったね」

狼女「何してるの?」

商人「貝殻聞いてるのさ」

狼女「その貝殻は魔女と会話出来ると言う奴?」

商人「そうだよ」

狼女「何か聞こえる?」

商人「波の音…それからカサカサ動くカニの足音かな?」

狼女「アサシンも同じ事言ってたよ…本当に会話出来るの?」

商人「繋がってる筈…だったんだけど今はもう…」

狼女「魔女としか繋がらないと言うのがダメダメだね」

商人「まぁ…そういう貝殻だからさ…仕方ない」

狼女「私耳も良く聞こえるんだ…貸して」

商人「良いよ…海に落とさないでね」ポイ

狼女「どれどれ…」パス

商人「どう?」

狼女「ふむ…波の音…」


海流が早くてぶつかり合う海…

貝が呼吸する音が無いから寒い海…

カサカサする足音は8本足…それは何匹も居る

あ…他にも虫の羽音がする…ミツバチの羽音


商人「ちょっと待った…それって飛空艇の中だな…8本足はアラクネーだ」

狼女「匂いは届かないみたい…」クンクン

商人「何処の海なのか特定出来ないかい?」

狼女「ヒマだからもう少し聞いてみる」


うっすら浅い雪が遠くの音を消してる…

葉っぱのこすれる音が無いから木や植物は殆ど生えて居ない

直ぐ近くに音を遮る大きな建物の様な物がある…なんだろう?複雑な形

667: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:40:19.49 ID:c2KZAoSz0
『居室』


ガチャリ バタン


情報屋「どうしたの?何か有った?」

商人「魔女の居場所が分かるかもしれない…地図借りるよ」パサ

情報屋「急にどういう事?」

商人「耳の良いリカオンに貝殻の音を聴いてもらったら色々分かった事が有る」

情報屋「魔女と通じてるの?」

商人「結論から言う…どうやら飛空艇は海岸の何処かで漂着してる」

情報屋「そんな…」

商人「女海賊は飛空艇を必ず狭間に隠す筈なんだ…それをやってない…つまり何処かに漂着してる」

情報屋「それって3人共既に…」

商人「考えたく無いけど貝殻から聞こえる音からそう読み取れるんだ」

情報屋「波の音がすると言うのは…」

商人「何年も前からその状態のままなのさ…てっきり貝殻を何処かに落としたのかと思ってた」

情報屋「どうして波の音から飛空艇があると分かるの?」

商人「僕がカニの足音だと思ってた音はどうやらアラクネーなのさ…ミツバチの羽音も聞こえるらしい」

情報屋「あぁ…なんかザワつく…あの人がもう死んでるなんて考えたく無い」

商人「地図…借りて行くよ」

情報屋「私も行くわ」


668: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:40:50.14 ID:c2KZAoSz0
『船首』


カキカキ


商人「んぁぁ…音だけの情報で場所の特定なんか出来る訳無いか」

狼女「季節が変わればもう少し違った音も聞こえるかもしれないよ」

情報屋「そこは大陸だとか島だとか…そういうのは判断できないの?」

狼女「生き物の音がもう少し聞こえればもしかしたら判断出来るかも」

商人「今分かるのは恐らく南の大陸の何処か…北の大陸は雪が深いから」

情報屋「外海の側だともっと分からないわね」

商人「海に落ちて漂着したと考えるとある程度絞られる…」

情報屋「船乗りさんにも意見を聞いて来るわ…地図持っていくわね」タッタッタ

狼女「貝殻の音を聞いてるのは心地良い…良い暇つぶしだよ」

商人「なにか気付いたら又教えて」



『船長室』


海図をやすやす人に見せる物では無いんだが…


船乗り「ほーう?その地図は外海の側まで陸地を描いて居るのか…ふむ」

情報屋「交換条件でどう?」

船乗り「よし分かった!!貸してみろ…俺が知って居る範囲で海流を書き込んでやる」

情報屋「助かるわ…」

船乗り「季節によって変わるんだが…」

情報屋「全部知りたいわ」

船乗り「地図一枚では書き表せんな」

情報屋「じゃぁ新しく海図を起こすわ」

船乗り「それが良い…出来たら又持って来てくれ」

情報屋「分かったわ」

船乗り「それから今日は海が時化るから船室の中に入る様に伝えてくれ…測量の邪魔になるから船首に出るなともな」

情報屋「あぁ…邪魔になって居たのね…伝えておくわ」

669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:42:12.23 ID:c2KZAoSz0
『居室』


ユラ~~リ ギシギシ


情報屋「商人仕事よ…この地図に描き込み切れないから同じものを複製するの」

商人「また地味な仕事を…」

情報屋「製図はあなた得意でしょう?」

商人「道具を何も持って来てないんだけどなぁ…」

情報屋「海流が書き込めるだけの簡単な地図で良いわ」

商人「1枚で良い?」

情報屋「季節によって変わるらしいから何枚か必要になると思うわ」

商人「まぁ何もやる事無かった所だし…書くかぁ…」

情報屋「お願いね…私はリカオンの気付きをもう少しまとめてみるから」


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670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:42:45.28 ID:c2KZAoSz0
『数日後』


情報屋「海士島に到着したら子供達は一回船を降ろしても良いのね?」

商人「2日間停泊する予定だからそれまでに戻れば良いかな」

情報屋「暖かいから外で夜を明かしても良さそう」

商人「まぁ危ないから寝るのは船が良いでしょ」

情報屋「まとめて休める場所があれば良いのに…」

商人「教会があるけど他の人も沢山居るからねぇ…」

情報屋「リカオンはどうする予定?」

狼女「酒場に盗賊ギルドの連絡員が居るから状況聞いてから決める」

情報屋「連絡員は誰?」

商人「ハハ君はキ・カイで研究しっぱなしだから知らないのか」

情報屋「商人は知って居るの?」

商人「女狐だよ」

情報屋「あぁぁ…お金にガメツイ彼女が連絡員…フフ」

商人「向いてると思うけどね…良く世話になってる」

狼女「今はセントラルよりも海士島の方が情報集まるんだよ」

商人「だろうね?航海で必ず補給に寄る場所だしね」

情報屋「アサシンも海士島に来るのよね?」

狼女「その筈だけど…」

商人「アサシンは何しに来るんだろう?」

狼女「私が魔女の情報掴んでくる想定なんだと思う」

商人「一応掴んでいるじゃないか」

狼女「次の行き先が絞られて居ないのが…」

情報屋「限られた情報で絞り込むのは限界が有るわ…虱潰しに調べるしか無いわね」

商人「僕達は高速で移動する手段を持って居ないのがねぇ…」

情報屋「女戦士と連絡が取れれば良いのに」

商人「アレ?そういえば幽霊船が目撃されてる場所って…」

狼女「フィン・イッシュ沖の外海に出る海峡付近とか…ドワーフの国領の島々とか…」

商人「もしかして飛空艇がどこかに漂着してるのを僕達よりも先に気付いてたりしないか?」

情報屋「ありえるわ…」

671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:43:19.90 ID:c2KZAoSz0
『海士島』


ガコン ガコ


船乗り「お前等ぁぁ!!碇を降ろせぇぇぇ!!」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ」ガラガラガラ

船乗り「降りて良いぞぉ!!」


わ~い ウキャキャ

大きい子は小さい子の手を繋いでゆっくり降りて…

銀貨は一人1枚づつ…好きな物買って良いわ


商人「僕は少し物資調達してから酒場に行くけれど…君はどうする?」

情報屋「私は子供達を遠くから監視しておくわ」

商人「夜は船に戻って横になる…それで良いね?」

情報屋「わかったわ…何か有ったら船に戻るから」

商人「じゃぁリカオン!!一緒に行こう…君はお金を持って居ないよね」

狼女「エ…エリクサー欲しい…喉が渇いた」


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『露店』


ワイワイ ガヤガヤ


狼女「あれ商人?あんた歩き方おかしくないか?」

商人「あぁコレね…足の骨が折れてるんだよ」ヒョコヒョコ

狼女「痛みが無いから無理をしても気付かないんだね」

商人「うん…エリクサーじゃ治らないのさ」

狼女「その体も不便だね」

商人「まぁ少しゾンビみたいな歩き方だけどそれ程不自由は無い」

狼女「そういえばアサシンは体傷めない様に注意してると言ってたな」

商人「僕は元々骨が細いからねぇ…もう少しマシな体だと良かったよ」


雑貨屋「黒死病に効く名薬は要らんかね~?」


商人「お!?エリクサーは有るかな?」

雑貨屋「ほほーエリクサーをお求めとは…ちぃと値が張りますが?」

商人「産地は何処かな?」

雑貨屋「セントラル産でさぁ!」

商人「じゃぁ仕入れは1瓶10金貨だね…いくらで売るの?」

雑貨屋「う…お客さん人が悪いなぁ」

商人「ハハ冗談だよ15金貨で頼むよ」ジャラリ

雑貨屋「むむむ…仕方ない」

商人「ありがとね…リカオン?飲んで良いよ」ポイ

狼女「大事に飲むよ」チビリ ゴク

商人「寒冷化で大分高騰してる…でもこれでも安い方さ」

672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:44:04.40 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいま…せ」

商人「やぁ!!久しぶり」

狼女「…」チラリ

マスター「奥の部屋へどうぞ…」

商人「いやカウンターで良いよ…空いてるじゃない」

マスター「いえ奥へ…」グイ

狼女「…」シラーー

商人「え?まぁ良いや…さっき付いたばっかりなんだ」

マスター「…」ギロリ グイ

商人「ハハ…参ったな」



『奥の部屋』


ガチャリ バタン


マスター(あなた堂々と店に入って来るってどういう神経してるの!!)ヒソ

商人(マズかった?)

マスター(あなたじゃない…そっちの狼女の方!)

狼女(ゴメゴメ…もう騒ぎ起こさないから)

商人(こっちの酒場でも何か起こしてるんだ…ハハ)

マスター(まだあの豪族海士島でうろついて居るから変装するとか少し気を使って!)

商人(まぁまぁ…そんなに長居するつもりは無いから勘弁してよ)

マスター(商人…この狼女はね…必ず酒場で揉め事起こすバカ女なのよ)

狼女「バカ女って何ヨ!!」ガタン

商人「ちょちょちょ…今揉め事起こさないって言ったばかりじゃ無いか」

狼女「フン!!」

商人「とりあえず何か飲もうか」

狼女「コブラ酒!!タンブラー2つ!!」プン

マスター「…」アゼン

商人「ハハ…まぁそれで良いや」

マスター「呆れた…」

狼女「ルールでしょう?」ニヤ

マスター「ぐぬぬ…後でお持ちします!!」スタ


ガチャリ バタン!!

673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:44:42.99 ID:c2KZAoSz0
商人「怒ってるみたいだけど大丈夫?」

狼女「私も怒ってる」

商人「さっきのやり取りって何かの合図だよね?コブラ酒とか」

狼女「2人を保護しろっていう意味…女狐は私達2人を保護しなきゃいけない」

商人「なるほど…」

狼女「外ブラついてみる?」ニヤ

商人「まぁまぁ…大人しくして居ようか」---揉め事が起きる訳だ---


ヤレヤレ…


--------------


ガヤガヤ ウハハハハ


狼女「ふ~ん…」

商人「ん?何?」

狼女「私は耳が良く聞こえるって言ったでしょう?」

商人「もしかして酒場で誰かが話してる内容が聞こえてる?」

狼女「そうよ…良い噂が聞こえて来た」

商人「気になるじゃ無いか…教えてよ」

狼女「幽霊船が近くで目撃されて居るらしい」

商人「おぉ!!」

狼女「もしかすると補給で海士島に来るかもしれない」

商人「う~ん…入れ違いになってしまいそうだ」

狼女「私はアサシンが来るまで海士島に残らなければならないから…会えたら事情を話して置く」

商人「いや…子供達さえ良ければ急いでフィン・イッシュに行く必要も無いんだ」

狼女「良い事思いついた!!子供達の人数分タンブラーを頼むのよ!!どう?」

商人「え!!?そんな事出来るのかい?匿う場所とか…食事代も掛るし手間だって」

狼女「あの女狐はね…お金を沢山貯め込んで居るのよ…何に使うか知らないけれど」

商人「…」

狼女「む…何か知ってる顔…」

商人「実は孤児院に送り主不明の寄付金が届いて来るんだ…もしかしてと思ってね」

狼女「まさか…あの女が寄付なんて」

商人「ふむふむ…よし…子供達の人数分タンブラーを頼んでみよう」

狼女「アハハあの女どんな顔するかな?盗賊ギルドで美人ナンバーワンが…ウフフフ」

商人「嫉妬かい?実力は君がナンバーワンだと思うんだけどなぁ」



ガチャリ バタン

674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:45:19.90 ID:c2KZAoSz0
マスター「コブラ酒をどうぞ…」ポイ

狼女「あぶっ…」パス

マスター「はい…タンブラーはここに」ドン!!

商人「??」---メモ書き?---


”深夜に醸造蔵の裏で待つ”


マスター「ではごゆっくり」ギロリ

狼女「あぁぁちょっと待って!!タンブラー追加」ニヤ

マスター「いくつご入用でしょう?」シラー

狼女「30個」

マスター「なっ…」プルプル ググググ

狼女「…」ニコニコ

商人「まぁ…もういい加減にしなよ…マスターちょっと耳貸して…実はね」


ヒソヒソ ヒソヒソ

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675: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:46:04.42 ID:c2KZAoSz0
『商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「もう帰って来たのか?」

商人「なかなか落ち着ける場所も無くてねぇ…」

船乗り「だろうな?豪族が幅を利かせて落ち着いて酒も飲めん」

商人「船の方がよほど落ち着く」

船乗り「掃除が済んだ所だから適当に甲板で休むと良い」

商人「そうするよ」

狼女「商人?お金頂戴」

商人「え?何に使うの?」

狼女「どうも顔を隠しておかないと自由に行動出来ないみたいだから…」

商人「フードが欲しいんだ?」

狼女「着替えも変えたい…血の汚れが落ちなくてさ…匂いが気になるんだ」

商人「ハハ匂い?鼻が利くとやっぱり気になるのか」

狼女「自分の血は臭くて気持ち悪いんだよ」

商人「そんなもんかねぇ?まぁ良いや…これだけ有れば足りるよね」ジャラリ

狼女「ありぃ!!ちょと買い物行って来る」シュタタ

商人「なかなかお金の掛かる子だ…アサシンが単独行動させたいのが分かる」

狼女「うるさいなぁ!!聞こえてるよ!!」クルリ

商人「小言も言えないか…」

676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:47:02.50 ID:c2KZAoSz0
『夜』


ザザー ザブン


情報屋「ふぅ…やっと子供達寝たわ」

商人「面倒見…大変だったね」

情報屋「大きな子が殆どやってくれるけれど迷子になる子がどうしても居てね」

商人「みんな楽しめていたかい?」

情報屋「そうね…お金無くしたり色々あったけれど」

商人「ハハ精々30銀貨でしょ?僕は今日だけで30金貨ほど使ったよ…」

情報屋「エリクサーを買ったのでしょう?仕方ないわ」

商人「まぁリカオンを危険に晒した事を思えば安いか」

狼女「ああ!!そうだ…睡眠魔法を使った人」

商人「見たのかい?」

狼女「無詠唱だったんだよ…いきなり周りの人がフラフラ倒れて…」

情報屋「それはまどろみの杖で間違いなさそうね…」

商人「やっぱり公爵の線が強いね」

狼女「これアサシンに報告する重要な情報になりそう」

商人「変化の杖で姿を変えながら割と能動的に動いている感じだね」

狼女「多分…日数から考えて明日くらいに此処に来ててもおかしくない」

商人「…という事は子供達を人目に晒すのは僕達の行動を晒しているのと同じだなぁ」

情報屋「本当に厄介ね…」

商人「そこら辺も今晩女狐に話してみる」

情報屋「今晩?どういう話に?」

商人「彼女はセントラル側の諜報員という立場になっててね…簡単に情報交換出来ないのさ」

情報屋「酒場じゃない場所で会う訳ね」

商人「うん…どうもリカオンと相性も悪いみたいでね…まだ話を聞き出せてない」

狼女「あっちが私の事下に見てるんだよ!!」

商人「まぁまぁまぁ…実力は君の方が上なのは分かってる…耳も鼻も利くし戦闘もこなす」

狼女「…」

商人「2人が噛み合えばベストなんだけどね」

情報屋「私も会いに行って良いかしら?」

商人「僕とリカオンで会う話になっていたんだけど…どうかな?」

狼女「別に良いんじゃない?見知った顔なんだし」

情報屋「あぁ…やっぱり止めて置くわ…人数多いと他に怪しむ人が出て来るかもしれない」

商人「そうかい?」

情報屋「私も盗賊ギルドに居たから分かるのよ…予定変更されると面倒事に発展しやすいの」

商人「そうなんだ?まぁ…話は後で全部教えてあげるよ」

情報屋「わかったわ」


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677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:48:11.81 ID:c2KZAoSz0
『深夜_醸造蔵の裏』


ゴトン


女狐「入って…」

商人「こんな所に隠し通路か…」

狼女「へぇ?上手く隠してる」

女狐「…」ギロ

商人「リカオンは初めて来たのか…」

狼女「ここは初めて…」

商人「なるほどね…こういう場所が複数有るという事か」

女狐「無駄口は止めて…早速本題…どうして孤児院の子供達を連れて来ているの?」

商人「うん…キ・カイに居ては危険だからだよ」

女狐「盗賊ギルドは託児所では無い…ギルドに利益が生まれる訳でもない…活動の妨げになるのは分かるでしょう?」

商人「お願いしているのはギルドでは無く君にお願いしているんだ」

女狐「状況分からないの?私は諜報員として此処に居るわ…子供の面倒なんか見れる訳無いでしょう」

商人「本当は僕がフィン・イッシュの女王に嘆願するつもりだったんだ」

女狐「それが一番良い」

商人「状況が変わってね…近くに幽霊船が来ている様だから海士島で待って見ようかと」

女狐「それとこれと話が別よ…あなたが面倒を見れば済む話」

商人「乗って来た船が明後日出港してしまうんだ」

女狐「他の船で行けば良いでしょう?」

商人「そうもいかない…公爵が追ってきた場合子供達を連れ歩いて動くと目立ってしまう」

女狐「公爵?どうして公爵が関係して?」

商人「初めから話さないと通じない様だね…」


678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:49:28.23 ID:c2KZAoSz0
キ・カイではねここ数年でキラーマシン改を量産しているんだ

その頭部に孤児院の子供から摘出した脳を搭載してる…孤児院の子供なら居なくなっても誰も文句言わないからラクなんだよ

僕は子供達を守る為にキ・カイの孤児院から子供達を逃がしている所なのさ

でもキ・カイは子供の移送を阻もうとしている

その最中キ・カイ政府の中に公爵が潜んで居る事を突き止めた

万が一公爵が姿を変えて海士島に来た場合…簡単に僕達の行動がバレてしまう


商人「もしも子供の誰かに化けられた場合は全員見殺しにしないと僕らは逃げられない…」

女狐「子供達がキラーマシン改にされてるなんて…本当にそんな事が…」

商人「証拠はある…」

女狐「今までどのくらいの子供達が犠牲に?」ワナワナ

商人「50人は超えると思われる」

女狐「そんな…」ガク

商人「やっぱり君だね?孤児院への送り主不明の寄付は」

女狐「詮索しないで…」

商人「分かった聞かないよ…子供達を保護したい一方で幽霊船に乗る女戦士と接触する機会を不意にしたくない」

商人「だから君に協力をお願いしているのさ」

女狐「わ…分かったわ…何とかする」

商人「ほっ…良かったよ君に相談して」

女狐「乗って来た商船が出港するのは明後日ね?」

商人「うん」

女狐「どうにか密偵の仕事をフィン・イッシュに作って私が向こうの孤児院まで送り届ける」

商人「助かる」

女狐「その代わりあなたの署名で書き物を頼むわ」

商人「え?何だい?」

女狐「キ・カイから大量の硫黄をフィン・イッシュに密輸してる証拠となる書簡よ…闇商人の署名で」

商人「ほほーなるほどね?それを調べる目的を作る訳か…賢い」

狼女「ふ~ん」チラリ

女狐「…」ギロ

女狐「ただこういうブラフを流してる事はフィン・イッシュ女王へ説明しておかないと後で問題になるわ」

商人「分かってるよ…戦争が終わらない原因になるね」

女狐「分かったら書簡を用意して」

679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:50:18.63 ID:c2KZAoSz0
『翌日_商船』


ザブン ギシギシ


商人「…という訳で女狐に子供達の移送をお願いした」

情報屋「じゃぁ私達は船を降りて宿屋住まいね?」

商人「当分そうなるかな…今リカオンが宿屋に行ってくれてる」

情報屋「わたしは子供達に説明してくるわ…あと荷物もまとめなきゃ」

商人「まぁまだ間があるしゆっくりで…」

情報屋「幽霊船の件はその後情報無し?」

商人「女狐が言うには酒類の大量発注があったらしい…もしかするとそれが補給なのかも知れないって」

情報屋「海上で荷の載せ替えをするのね」

商人「また鼻が利くリカオン頼みになってしまう…酒の匂いを追う感じだよ」

情報屋「その輸送している船に忍び込むつもり?」

商人「んんん~もし違った場合を考えるとリスク高いなぁ…」

情報屋「行動癖を考えると…女戦士は幽霊船から降りると考え難いわね…海士島には降りない」

商人「うん…動いてるのはきっとローグなんだろうけど行動が読めないねぇ」

情報屋「必ず酒場に寄るタイプでも無いものね…」

商人「補給ねぇ…水…食料…大砲は乗せて居ないから火薬は要らない…う~ん」

情報屋「大量の酒類という情報だけで幽霊船と結びつけるのも危険よね…」

商人「下手に動くのもマズいか」

情報屋「情報を流布して誘って見ると言うのは?」

商人「ふむ…確認しに来たくなる情報…」

情報屋「白狼の盗賊は?」

商人「ダメだよ…偽物が多くて釣りにならない」

情報屋「なにか私達だけが知って居る事…」

商人「よし…漂着した飛空艇の回収作業できる人を募集してみよう」

情報屋「名案ね!!もし女戦士も探して居るとしたら食いつく可能性が高いわ」

680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:51:13.93 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」チラ

情報屋「どうも…」ニコ

商人「今日は公募のお願いに来たんだ」

マスター「え?あ…どんな内容でしょう?」

商人「漂着した大型気球の回収とアラクネーの退治…報酬は10金貨」

マスター「公募でその報酬は…」

商人「安すぎるのは承知さ…チラシを配らさせてもらって良いかい?」

マスター「どうぞ…飲み物はどうされますか?」

商人「じゃぁ一杯飲んで行くかな…エール2つ頼むよ」ジャラリ

マスター「お待ちください」スタ

情報屋「カウンターで良い?」

マスター「お好きな場所でどうぞ」

商人「マスター…何か面白い話は無いかな?」

マスター「噂ではセントラルの大艦隊が外海調査に向かっているそうです」チラリ

商人「へぇ?戦争はほったらかしなんだ?」

マスター「さぁ?どうなんでしょう…」コトリ

商人「外海には何があるんだろうね?」

マスター「ここだけの話…古代の兵器が眠って居るとか」

商人「おぉ!!どこらへんなのか知ってる?」

マスター「私は噂だけしか知りませんので…エールをどうぞ」コトリ

商人「あぁ…ありがとう…じゃぁ乾杯しようか」

情報屋「ウフフ…」

商人「じゃぁお互いの成功を祈って…乾杯!」チン

マスター「…」チラリ

情報屋「…」ニコ

681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:52:02.95 ID:c2KZAoSz0
『広場』


ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「女狐はあの仕事が向いて居そうね」

商人「うん…さりげなく周囲に情報渡してコントロールしてるんだ…さすがだよ」

情報屋「私はあまり酒場に行く事は無いけれど…盗賊が酒場に入り浸ったのはこういう情報のやり取りだったのね」

商人「だろうね…騒ぎながらいろいろ諜報を兼ねてるんだ」


シュタタ シュタタ


狼女「おーい!!お金お金!!」

情報屋「あら?人込みなのに良く私達を見つけたわね?」

狼女「匂いですぐに分かる…宿屋は先払いなんだ…お金頂戴」

商人「いくら?」

狼女「2人部屋を1週間で4金貨」

商人「お?安いね」ジャラリ

狼女「食事無しだけどね…船から荷物移動しちゃって良いよ」

情報屋「じゃぁ子供達にお別れの挨拶して荷物持って来るわ」

商人「僕は先に宿屋に行っておこうかな…リカオン案内して」

狼女「付いて来て…」

682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:52:47.65 ID:c2KZAoSz0
『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「へぇ?良い部屋じゃ無いか」

狼女「アサシンの息が掛かった宿屋なんだよ…この部屋だけ特別」

商人「なるほど…ここで待ち合わせてる訳か…それで安いという事ね」

狼女「水浴びしてくるから適当に過ごしてて」

商人「分かったよ…買い物して情報屋でも迎えに行って来る」

狼女「じゃ…」ノシ


--------------


商人「さて…チラシでも撒いて来るか」スタ

商人「んん?」


ヒソヒソ ヒソヒソ

…あぁ予定変更だ…

硫黄が既にフィン・イッシュに入って居るとなると後方から大砲で不意打ち食らう可能性がある

船団に合流するのは今回は止めだ

代わりに幽霊船が近くまで補給に来ているらしいから機を伺うぞ

あと一発当てりゃ今度こそ落とせる…仲間集めて来い


商人「…」---豪族か…幽霊船も苦戦している様だ---

商人「…」---さすがに大砲が無いと厳しいか---

683: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:53:44.80 ID:c2KZAoSz0
『夕方_商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「…そうか…ここで降りるか」

情報屋「代わりの人が1人乗る筈だからよろしくお願いします」

船乗り「まぁ金は既に貰ってる訳だからフィン・イッシュまでは責任もって移送する」


スタスタ


商人「情報屋!迎えに来たよ」

情報屋「あら?気を使わなくて良かったのに」

船乗り「代わりの人はいつ来るんだ?」

商人「深夜になると思う」

船乗り「日の出前には出港するから早めに乗る様に伝えてくれ」

商人「わかったよ」

情報屋「なんだか他の船も出港して行ってる様ね」

商人「豪族の船だよ…なんだかゴタゴタしてるねぇ」

情報屋「慌てて出港しているみたい」

商人「幽霊船を追ってるらしい」

情報屋「そう…」

商人「まぁ豪族が出て行けば少しは静かになるさ」

情報屋「商船が巻き込まれなければ良いけど…」

船乗り「だから日の出前に出港したいんだ…連絡頼むな?」

商人「子供達とお別れは済んだかい?」

情報屋「うん…もう行けるわ」

商人「じゃぁ宿屋に案内する」スタ

684: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:55:09.11 ID:c2KZAoSz0
『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「ここだよ…割と良い部屋なんだ」

情報屋「ハッ!!リカオン!!どうしたのよ!!」

狼女「グルルル…グゥ」zzz

商人「裸…水浸し…」

情報屋「怪我はして居なさそう…これ海水だわ」フキフキ

商人「さっき豪族の船がゴタゴタして居たよね…もしかして…」

情報屋「一人で?何の為に?」

商人「いや…宿屋の外で豪族の話声が聞こえててさ…幽霊船を待ち伏せるって」

情報屋「それを聞いて一人で襲いに?」

商人「何か持って居ないかい?」

情報屋「ああ!!海図と宝石がベッドに…鍵もある」

商人「ビンゴだね…盗んで船室に鍵掛けてるんだ」

情報屋「さすがね…」

商人「あの船はギャラック船で舵が船室にあるタイプだ…鍵を掛けられると操舵出来ない」

情報屋「しばらく戻って来れないのね」

商人「頑丈なのが仇になってるね…しばらく風に流されて海図も無いから目視で帰ってくるしか…」

情報屋「夜に目視って…」

商人「こういう行動力はスゴイね…ウルフだから泳ぎも得意な訳か…海図は何が記されてる?」

情報屋「インクが海水で流れてしまって…乾かせば記した跡が残って居るかもしれない」

商人「それは明日が楽しみだ」

685: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:56:38.16 ID:c2KZAoSz0
『窓』


ヒュゥゥゥ


商人「ふ~ん…ここから隣の建屋の屋根に通じてるのか」

情報屋「夜寒くなるから閉めて置いて」

商人「船着き場も良く見えるよ」

情報屋「女狐さんはまだ商船に乗って居ない?」

商人「どうかな?」

情報屋「なんか少し心配」

商人「公募のチラシを配るのもあるし…酒場にもう一度行って見るよ」

情報屋「私はリカオンが起きるまで待機かな…」

商人「水浴びにでも行って来たら?」

情報屋「そうね…」

商人「もしリカオンが起きたら酒場にでも遊びにおいで」

情報屋「分かったわ…」

商人「じゃぁ行って来る」スタ

686: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:57:10.94 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ポロロン~♪


バニー「いらっしゃぁ~い…お一人?」

商人「あれ?いつものマスターは?」

バニー「しばらくお休みなのぉ」

商人「そうかい…カウンター座るよ」

バニー「どぞん」

バーテン「お飲み物は?」

商人「ワインかな」

バーテン「お食事はどうされます?」

商人「食事は良いや」

バーテン「かしこまりました…」

商人「公募してるんだけど…何か反応聞いてない?」

バーテン「アラクネー退治の公募でしたか?」

商人「うん…」

バーテン「今の所何も…豪族の皆さんは既にお金持ちですから興味が無さそうでした」

商人「ハハ…まぁそうだよね」

バーテン「海士島に観える方は長期滞在しませんので公募は厳しいかと…ワインをどうぞ」コトリ


ドヤドヤ ガヤガヤ

おぉぉ空いてる空いてる

いらしゃぁぁ~い!!団体様はこちらへ~

何でも良いから酒と女を見繕ってくれぇ

はぁ~い!!


商人「忙しくなりそうだね」

バーテン「お陰様で…」イソイソ

商人「僕にはお構いなく…噂話でも聞いて楽しんでるよ」

687: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 17:57:52.31 ID:c2KZAoSz0
『翌朝_宿屋』


ガチャリ バタン


商人「2人共おはよう…食事を持って来たよ」ドサ

情報屋「あら?朝帰りにしては気が利くわね」

商人「僕は眠れないから…リカオン?新鮮な肉を仕入れて来たよ」

狼女「お!?」シュタタ

商人「丁度今さっき屠畜場で解体された肉さ」

狼女「あんまり食べ過ぎると直ぐに太っちゃうんだけど…ありがとう」ガブリ モグ

情報屋「かわいい顔してなかなかワイルドな…」

商人「エルフも生魚とか頭からかぶりつくらしい」

情報屋「私は…パンとチーズね」モグ

商人「女狐は予定通り商船に乗って出港したよ」

情報屋「知ってるわ」

商人「見てたのかい?」

狼女「匂いと声で分かるんだ」モグモグ

商人「へぇ…ここからでも感知出来るのか」

狼女「あの女…隠し子を孤児院に預けてたんだね」

商人「まぁそんな事だろうとは思ってたさ…船に乗っていたのかな?」

狼女「さぁ?そこまでは分かんないよ」

情報屋「誰だったのかしら…なんだか責任を感じてしまう」

商人「孤児院に送られて来た寄付金の他に車椅子もあった…足の不自由な男の子が居たな」

情報屋「分かった!!その子なら学舎の書物管理で働いているわ…もう立派な大人」

商人「教えてあげられれば良かった」

情報屋「…だとすると随分若い時に産んだ子なのね」

商人「なるほどね…人それぞれ色々あるのかぁ」

情報屋「リカオンもそろそろ良い人を見つけないと…」

狼女「ゲフッ…ゴホゴホ」ガブ モグ

商人「さて!!僕は市場歩いて相場調べに行って来る」

情報屋「待って…私も行くわ…リカオンの着替えも新調しなきゃいけないし」

商人「買ったばかりじゃ無いか…」

狼女「変態して破れた」モグ

商人「脱いでからに変身すれば良いのに…」

狼女「裸で走り回るって言うの?」

商人「まぁ良いや…買いに行こう」

688: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:00:06.15 ID:c2KZAoSz0
『数日後_宿屋』


カクカク シカジカ…


セントラルとフィン・イッシュの国境では沿岸部を中心に領地を巡って小競り合いが継続中だ

停戦の交渉も豪族が第三者を偽って漁村を襲撃して制圧し

セントラル側に有利な立場で中立化しようとして停戦は白紙…泥沼だよ

外海調査の件では協力関係を作ろうとして居るが

フィン・イッシュの港をセントラルの軍船が行き来する事を認める訳には行かず

海上でも緊張した状態が続いているのだ

ここに来てのキ・カイ海軍の介入…交渉事で誰が公爵なのか見極められない現状

動きを悟られたくない隠れの忍び達は里に籠ったまま身動きできない


アサシン「…これが政治的に不利となっている実態なのだ」

商人「公爵のせいでイニシアチブが取れない訳か」

アサシン「私に化けて女王に要らぬ吹き込みをする可能性もある…女王は動けんのだよ」

情報屋「では今は盗賊ギルドが裏で政治判断する材料となる工作をしている状況なのね?」

アサシン「うむ…ただ我々の内側にも公爵が入り込む可能性を考えると信頼できる者意外とは話も出来ない」

商人「状況察した…女狐がガード堅かった理由も分かった」

アサシン「彼女は優秀だ…商人と情報屋をここに止めて置く判断も良い選択」

狼女「アサシンこれからどうするの?」

アサシン「魔女の発見が最優先…その為に女戦士と合流を果たそう」

商人「そうだね…今みんな集合しかけているんだから分かれない方が良い」

アサシン「盗賊ギルドの指示系はアヌビスに一任しているからしばらくは私も同行する…それで…幽霊船とは接触出来そうか?」

商人「公募の詳しい話を聞きたいという人物が今晩酒場に僕を訪ねて来るらしい」

アサシン「フフ…そういう役はローグか」

商人「当たりならそうなる…楽しみだよ」

アサシン「ところでリカオンの働きはどうだ?剣士並みの働きが出来るだろう?」

商人「ある意味剣士より優れている所は在るね…」

アサシン「リカオン…褒められて居るぞ?」

狼女「分かり切った事を言われてもね…」ルン

アサシン「さて情報屋…先ほど話に合った外海の地図とやらを見せて貰おうか」

情報屋「これよ…」パサ

689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:00:45.65 ID:c2KZAoSz0
アサシン「ふむ…外海調査に向かっている船団は海峡を越えて未踏の地を目指しているか…遠いな」

情報屋「この地図はセントラルに属するコグ船から発見された物でセントラルは既に未踏の地に到達してると見て良いわ」

アサシン「海軍の要所にするには遠すぎる…我々は思い違いをして居た様だな」

商人「もっとフィン・イッシュ寄りだと思って居たんだ?」

アサシン「そうだ…外海から背後を突かれる事を警戒して居たのだが…」

商人「キ・カイの軍船もそこを目指している様だよ」

アサシン「古代の兵器…う~む」

商人「フィン・イッシュは外海調査に出遅れてると聞いたけど?」

アサシン「海軍力が無いに等しい…軍船はすべて輸送船へと姿を変えたのだ」

狼女「オーク達に与えた船も何処か行っちゃったしね」

商人「オーク?」

アサシン「フィン・イッシュで領地を与えられたオークの事だ…ゲームチェンジャーになると思って居たのだが…」

商人「オークが船を操るなんて初めて聞いたな…ゲームチェンジャーってどういう意味?」

アサシン「どういう訳かオークはクラーケンを操るのだ」

商人「あーーそういう事ね…クラーケンがオークを守ってる感じになる訳ね」

アサシン「海上での抑止になってくれると期待して居たが宛てが外れた」

商人「船で逃げられたんだ?」

アサシン「分からん…オークの自治領を行き来しているらしいが何せ言語が違うからコミュニケーションが謀れん」

狼女「敵意は無いみたい」

アサシン「…それで?魔女達も未踏の地を目指したと見て良いのか?」

情報屋「恐らく…地図を見ながら歴史の説明からして行くわ…」


カクカク シカジカ…

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690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:01:45.84 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ザワザワ ヒソヒソ

おい見ろ…あの女は海賊王の娘じゃ無いのか?

何ぃ!!

やべぇ隠れろ…2人…いや3人か

ど…どうする?ヤルか?


女戦士「店の修理代だ…取って置け」ドサ ジャラ

バニー「えっと…いらっしゃいませ?」

女戦士「誰も入れるな…」ボソ

海賊1「へい…」

海賊2「がってん…」


ダダダッ 


女戦士「何か言ったか裏切者め…」スチャ

豪族1「なっ…くそう!!」タジ

女戦士「フンッ!!」ブン スパ

豪族1「ぎゃぁぁぁ…腕が!!腕が!!」ブシュー ボタボタ

豪族2「いきなりとは卑怯な…」


グサッ ズブズブ


豪族2「うぐぅ…ぐぐぐ」ブシュー

女戦士「さぁて?次は誰だ?」ツカツカ

豪族1「血が…血がぁ」バタバタ

女戦士「今からこの酒場は私の貸しきりだ…文句ある者は前に出ろ」


ひぃぃぃぃ…人殺しぃ…

いやぁぁ!!

キャーーー

ドタドタ バタバタ


海賊1「この豪族はどうしやしょう?」

女戦士「反吐が出る…海にでも捨てて来い」

海賊1「へい!!邪魔だゴルァ!!さっさと立ちやがれ!!」グイ

豪族1「がぁぁ…海賊王の娘がぁぁ!!」ヨロ

海賊2「お前もだ…」グイ

豪族2「げふっ…ゴホゴホ」ヨロ

女戦士「さて…ミルクだ…ミルクをよこせ」ジャラリ

バーテン「は…は…はい…ただいま…」ガクブル


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691: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:03:00.17 ID:c2KZAoSz0
『人だかり』


ザワザワ ザワザワ

海賊が酒場を占拠したらしい…

中に押し入った豪族達が逃げ出してる

傭兵は何処に行ったの?

海賊の側について中で暴れて居るって


商人「これはどういう事だ?」タジ

アサシン「また派手な登場だな…どうやら女戦士本人が来ている様だ」

商人「これじゃ酒場に入り難いじゃないか」


ドカーン ドーン


情報屋「船着き場!!豪族の船で爆発よ!!」

狼女「アサシン…これどうする?」

アサシン「ひとまず様子見か…海賊が豪族を襲っている形の様だ」

商人「幽霊船が見当たらない…」キョロ

アサシン「うむ…気球も見当たらん」



『酒場』


ゴクゴク プハァ


バーテン「ミルクのお代わりは…どうしましょう?」

女戦士「アルコール抜きの飲み物は何がある?」

バーテン「フレッシュジュースでしたら…」ガクブル

女戦士「フフ…私は恐ろしいか?」

バーテン「いえ…あの…手が勝手に震えて…申し訳ありません」ブルブル

女戦士「この公募のチラシを配って居た者を知って居るか?」パサ

バーテン「はい…毎晩今お座りの席に来て居りました」

女戦士「そうか…連れて来い」スラーン

バーテン「はははは…はい只今!!」ダダダ


692: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:04:15.47 ID:c2KZAoSz0
『人だかり』


誰かぁ!!手当を!!

止血剤を持って来てくれぇ!!

ロープだ!!ロープを使って根元を縛れ!!


商人「四肢を切り落として無力化…容赦ないな」

アサシン「これぐらいやらないと恐怖心を植え付けられないのだよ…吊るされないだけまだぬるい」

情報屋「あ!!酒場のバーテンさんが出て来たわ」


バーテン「ひぃぃぃぃ…」ヨタヨタ


商人「待って!!」グイ

バーテン「あ…あなたは…」

商人「酒場の中はどうなって居るの?」

バーテン「あなたを探して来いと言われて僕だけ逃げて来られました…もう…戻りたくない」ガクガク

商人「僕だけ中に入れそうかな?」

バーテン「裏口からカウンター脇には入れますが…行かない方が良いです」

商人「裏口は何処?」

バーテン「探してください…僕は関わりたくない」ヨタヨタ

狼女「商人!!こっち!!」シュタタ

商人「アサシン!!僕だけ中に入ってみる…僕は不死者だ」

アサシン「クックック…ついでにワインも頼む」

商人「フフやってみる」タッタ



『裏口』


ガチャリ ギー


商人「リカオンはアサシンの所に戻って」

狼女「いえ…ここで待つ…用が済んだらここから出て来て」

商人「心配してくれているのかい?」

狼女「海賊は正面突破で出て行く筈…危ないのは向こうの方だよ」

商人「なるほど…」

狼女「情報屋はアサシンが付いて居るから大丈夫」

商人「分かった…なるべく早く済ませる」スタ

693: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:05:19.12 ID:c2KZAoSz0
『酒場カウンター』


スタスタ


商人「やぁ…久しぶりだね」

女戦士「…」ギロ

海賊1「頭ぁ!!こいつは!?」ドドド

女戦士「待て…撤収の準備だ」

海賊1「へい!!」

商人「驚かないね?君を待ってたのさ」

女戦士「商人…1人ではあるまい?」

商人「4人だよ…アサシンと情報屋…そしてリカオン」

女戦士「北から2番目の商船に今すぐ乗るんだ…これを持って行け」ポイ

商人「記章…」パス


女戦士「撤収だ!!豪族の船を奪って逃げる…来い!!」ツカツカ


海賊共「がってん!」ドドド

商船「ハハ…ここじゃ何も話せないか」ソローリ




『広場』


ザワザワ ザワザワ

酒場の占拠は囮だった様だ…

見ろ!!豪族の船が奪われて動き出した

一般人に怪我人は居ないかぁ!!?


アサシン「ふむ…見事な統率…倍以上の豪族をいとも簡単にあしらうとは…」

狼女「アサシン!戻って来たよ」シュタ

商人「女戦士からの伝言だよ…今すぐ北から2番目の商船に乗れだってさ」

アサシン「んん?帆を開き始めて居るでは無いか」

商人「急ごう!!情報屋!!荷物まとめて行くよ」

情報屋「なんだか急展開ね…」イソイソ

アサシン「あの統率に合わせる為だ…急ごう」ダダ

694: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:06:09.38 ID:c2KZAoSz0
『商船』


碇を上げろぉぉ!!


商人「待って待って!!あと4人乗る」

船乗り「ダメだぁ!!この船は既に定員一杯だべぇ!!」

商人「これを見て!!」スッ

船乗り「ムム…」

船乗り「早く飛び乗れぇ!!」

狼女「先に行く!!」シュタタ ピョン シュタ

情報屋「ちょっと…私じゃ届かない」

狼女「ロープ投げるから掴まって!!…引き上げる」ポイ シュルシュル

情報屋「荷物が濡れてしまう…」

アサシン「私が持つ」グイ

情報屋「濡らさないでね?」

アサシン「リカオン!!手を!!」ダダダ ピョン

狼女「おととと…」ガシ

商人「情報屋?一緒に飛び込もう…行くよ?」ピョン


ドブン ボチャーン


狼女「そのまま掴まってて!!」エッホ エッホ

情報屋「ギリギリセーフね…」

商人「こんな感じがまたしばらく続きそうだ…」

695: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:07:41.30 ID:c2KZAoSz0
『甲板』


ビチャビチャ…


船乗り「あんたらこの船が何なのか知ってるんだべな?」

商人「アハハなんだそういう事か…船員は皆ドワーフかな?」

船乗り「わかっとりゃ良い…」

情報屋「背格好が…ハーフドワーフだけなのね?」

船乗り「海士島で差別されてしまうもんでな?」

商人「この船に乗れと言われて乗ったは良いけど…何処に向かってる?」

船乗り「行先はドワーフ領だべ…途中で荷の積み替えがあるんやが」

アサシン「幽霊船だな?」

船乗り「察しの通りだべさ…明け方になるで今晩は荷室で休むと良い」

商人「やっと女戦士と合流出来る」

船乗り「あんたらは娘さんの仲間なんやな?」

商人「まぁね…海賊王は元気かな?」

船乗り「そらもう世界中駆け回っておるべさ」

商人「もしかして漂流した飛空艇を探している?」

船乗り「もう何年も探して…」


あらららら?あららら?


商人「ローグ!!この船に乗ってたのか!!」

狼女「む!!あんた誰?匂いが違う」クンクン

ローグ「何言ってるんすか…あっしですよあっし!!」

アサシン「済まん…リカオンの鼻は信用している」ズイ スチャ

ローグ「ちょちょちょ…匂いが違うって何なんすかね?」

商人「ローグももしかして不死者に?」

ローグ「ええ?あっしは生身の人間でやんす」

狼女「おかしいな…匂いを覚え違ったのかな」クンクン

ローグ「あっしは偽物じゃ無いですぜ?酒樽で匂いが染みついちまったかも知れやせんね」

商人「あ…もしかして大量のお酒がこの船に乗ってる?」

ローグ「積み荷は殆ど酒でやんすね…なんで知ってるんすか?」

情報屋「例の大量の酒を発注してたのはこの船だった訳ね…当たらずとも遠からずって所ね」

狼女「お酒の匂いか…」

696: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:08:21.26 ID:c2KZAoSz0
ローグ「いやいやそれにしても皆さん久しぶりっすねぇ…どうして又お揃いで?」

商人「まぁ色々有ってさ…幽霊船を追ってたらこの船に乗る様に言われてギリギリ乗り込んだ所さ」

ローグ「頭には会いやしたかね?」

商人「一言話しただけさ」

ローグ「頭は姉さん探すのに必死なんすよ」

商人「やっぱりそうだったんだね…僕達も少し情報を持ってるんだ」

ローグ「そら助かるっす…中々見つからんもんで機嫌が悪いの何の…」

商人「状況が知りたいんだけどさ…」

ローグ「海賊王と頭が手分けして世界中の浜辺を見回ってる感じっすね…そっちの情報はどんななんすか?」

情報屋「説明するわ…」


リカオンが貝殻の音から聞き分けられた情報が…

海流のぶつかる寒い海…うっすら雪が積もって植物が一切生えて居ない浜辺…近くに大きな建造物…

世界地図からそういう場所の候補地を割り出したのがこの地図よ


情報屋「内海に墜落したと仮定すると海流から漂着しそうな場所が…記を付けて居る付近ね」

ローグ「ほーーーーこらスゴイっすね」

商人「世界中の浜辺を見て回ってるなら消去法で候補地はどんどん消せるよね?」

ローグ「へい…あっしが知ってる限り消していきやすぜ?」カキカキ

情報屋「おぉ…これで北半球では無いという事が確定ね」

ローグ「ドワーフ領は全部調べたんで残るは南の大陸…地庄炉村村の周辺っすね」

商人「おぉ!!そこまで限定出来れば探せそうだ」

ローグ「ただあの辺は岩礁が多くて何隻も海賊船が座礁してるんす…なんで後回しになってるんすよ」

アサシン「しかし次の行先はこれで絞り込めた訳だ」

ローグ「まぁ甲板じゃ海風に当たっちまいやすんで荷室の方で話やしょう…ついて来て下せぇ」

697: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:09:16.95 ID:c2KZAoSz0
『荷室』


ユラ~リ ギギー


狼女「うぅ匂いで酔いそう…」

商人「醸造樽ばっかりだ…」

ローグ「ドワーフは皆酒好きなもんすから」

アサシン「商人!ワインは持って来たか?」

商人「一本だけね…」ポイ

ローグ「ところで皆さん…未来君の予言はどうなりやしたかね?」

商人「殆ど手つかずだよ…飛空艇無しでは名もなき島にすら行けない」

情報屋「予言通りなら後数年…魔女もオークの呪術を探しに行った切り不明になってしまって…」

ローグ「やっぱそんな感じなんすね」

商人「そっちは?」

ローグ「ドワーフの国で移民を促しては居るんすが土着した人は中々動かんすね」

商人「キーマンの女海賊と魔女…盗賊まで居なくなってしまって手詰まりさ」

情報屋「私は色々進展があったわ?歴史の事もほぼほぼ解明したし地軸の移動の件もおおよそ原因が推定出来た」

ローグ「やっぱり予言通り避けられない感じなんすね?」

商人「原因?その話は聞いて無いな」

情報屋「魔王とかそういう類の物では無いのよ…天文学的な事」


シャ・バクダ遺跡で発見された冒険の書と言う物…

これに記されて居た事が事実だったと仮定して…歴史の殆どが辻褄の合う形で符合したわ

4000年以上前…現在よりも遥かに高度な文明でも避けられなかった天災が地軸の移動

それは約4000年周期で太陽系を周回する黒色惑星の影響だと冒険の書で知った

黒色惑星がこの地球に近付くと何が起こるかというと…

質量の重たい北極か南極を重力で引っ張り…丁度駒の回転の様に赤道上で安定させてしまう…

つまり4000年毎に大きな災害をもたらす地軸の移動が起きてしまうのは避けられない事なの


商人「どうにも出来ないという事だね…」

情報屋「でもね?先の文明が滅んだ原因は天災がすべてでは無かった…」


滅んだ原因は人災…人間同士の戦争で汚染された空気が原因で子孫を残せなくなった事が原因なのよ

これは未来君が言って居た光る隕石から出る毒…放射能の事

剣士と未来君はこの世界を滅びから救うために放射能を集めて量子転移で消し去った

…これは私達の歴史…忘れてはいけない歴史

698: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:10:31.54 ID:c2KZAoSz0
アサシン「クックック…」

情報屋「可笑しい?どうして笑うの?」

アサシン「結局は勇者の犠牲の元私達は生き永らえた…そしてまだ一人勇者が残って居るぞ?何故だ?」

商人「希望が残ってる…そう考えようよ」

アサシン「私達の歴史は今言った避けられない問題の他に…魔王と精霊の戦いが複雑に絡み合っているのだ」

情報屋「そうね…だから私はもっと探求した…」

アサシン「ほう?なにか秘密を掴んだのか?」

情報屋「それは本当の勇者が誰だったのか…私達は何処に向かえば良いのか」


私達が知る歴史の中で最も世界に影響を与えた英雄は時の王よ…

その功績は数知れない…世界を平定し…災いの種となるアーティファクトを封じ

精霊の守護者として魔王と戦い…過去何度も魔王を退けた

そんな彼の右腕として働いて居たのが暁の使徒…未来君よ

時の王を導き…精霊を復活させ…時代を創って来た未来君は

その行きついた先で眠りについて復活の時を待ってる

それを信じていた時の王は長い年月でその記憶を少しづつ失い

失望した果てにシャ・バクダで夢幻に還った


アサシン「未来は戻って来ると?」

情報屋「私はそう考えてる…きっと女海賊もそれを信じてる」

アサシン「未来が還って来たとして魔王をどうする?」

情報屋「わからない…でも彼の名は未来…私達の未来…暁の使徒…それは新しく登る光…それこそ未来だと私は思う」

アサシン「クックック…思い出したぞ…私もこのような与太話をして飽きれられた事が有る…こういう事か」

情報屋「失礼ね…与太話では無いわ…歴史の時系列で全部説明出来る…これを見て」パサ

アサシン「…」


アンナコト コンナコト コウナッテ アアナッテ

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699: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:11:33.22 ID:c2KZAoSz0
『朝』


…そう!時の王は2000年も前から暁の使徒が未来と過去を行き来してる事を知ってた


情報屋「それですべて説明が付く…シンリーンの壁画を集めたのも彼…時の砂の伝説を残したのも彼」

アサシン「むぅ…ここまで調べ尽くしているか」

情報屋「暁の使徒が安置されて居るのは恐らくシン・リーンの何処かに有る暁の墓所」

商人「僕達が目指すのは外海では無くシン・リーンか」

情報屋「過去に未来君が外海を中心に活動して居たのは間違いなさそう…でもそこは通過点」

商人「思うにホムンクルスを探し求めた感じだね」

情報屋「きっとそうよ…だから今行っても古代の兵器くらいしか収穫が無いと思う」


ガコン ゴツン


狼女「むにゃ?…グルル」zzz

ローグ「はいはい皆さ~ん!!荷物移し替えるんで移動してくださいな」

商人「あっという間に朝か…随分話し込んだ」ヨッコラ

ローグ「頭が待っていやすぜ?」

アサシン「さぁリカオン!!起きろ!!」

狼女「…」パチ

商人「情報屋!行こうか…手を」グイ

情報屋「あいたたた…腰が…」ヨッコラ

700: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:12:48.37 ID:c2KZAoSz0
『幽霊船』


ギシギシ


女戦士「物資を急いで運び入れろ!10分で終わらせるんだ!!」

海賊共「へい!!」ドドドド

商人「うわ…ボロボロじゃないか」

アサシン「歴戦の船と言い変えるべきでは無いか?…久しいな女戦士」スタ

女戦士「船長室へ来い…ローグは物資の積み替えを終わらせてからだ」ツカツカ

ローグ「扱いが雑でやんすぅ…」

女戦士「…」ギロ

ローグ「へいへい…すぐ終わらせて行くでやんす」ダッシュ ドドド

女戦士「入れ…」ツカツカ



『船長室』


ガチャリ バタン


商人「随分急いで積み替えをやるんだね」

女戦士「見られてしまっては向こうの商船が無事では済まんからな」

商人「やっと合流出来た…全然連絡出来ないから…」

女戦士「ほとんど陸に降りる事が無い物でな…それで…本題だ」

情報屋「飛空艇の行方ね?…これが地図よ…南の大陸の地庄炉村付近」パサ

女戦士「どの様に調べた?」

情報屋「リカオンの耳と船乗りから得た海流の情報…その他色々ね」

女戦士「ふむ…確かにその近辺はまだ行って居ない…しかしマズいな…この船では海流に流されてロクに調査出来ん」

商人「え?どういう事?」

女戦士「縦帆が戦闘で傷んでしまってな…逆風を航海出来ないのだ」

アサシン「船体も随分砲弾を撃ち込まれた様だ…修理出来ないのか?」

女戦士「木材を調達出来ない…マストが折れていないのが救いだ」

商人「じゃぁ近くまで行って気球で上から行くのは?」

女戦士「そうだな…ひとまず地庄炉村へ行ってヤクを使った陸路という手もある」

商人「地庄炉村は麻の産地…もしかすると帆を張り替える布が入手出来るかも知れない」

女戦士「ほう?…という事はロープも手に入るな」

商人「決まりだね?地庄炉村を目指そう」

女戦士「分かった…詳しい話は後だ…今は商船から離脱するのを急ぐとする」

商人「僕達はここで?」

女戦士「好きにしろ…勝手は知って居るだろう?」ツカツカ


監視!!他の船は居ないな!?

離船したら狭間に入る!!レイスに備えろ

701: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:14:12.59 ID:c2KZAoSz0
『甲板』


ユラ~ ザブ~ン


女戦士「面舵維持!!そのまま7時方向に回頭しろ」

海賊共「がってん!!」フンフン

女戦士「狭間に入る…ハイディング」スゥ


タッタッタ


商人「レイスに備えるってどういう事だい?」

女戦士「戦闘で魔方陣に欠けが発生したのだ…部分的にレイスが入って来る」

商人「僕は退魔の方陣を知ってる…もう一度方陣を組むから援護して」

女戦士「それは助かる…手すりが崩落しているから海には落ちるな?」

アサシン「クックック…これは又忙しい船だ」

女戦士「通常の航路から外れてしまえば狭間から出てもそれほど危険は無い…それまでは辛抱」

アサシン「一度船をしっかり修理した方がよかろう」

女戦士「海賊のアジトに寄港しても木材が無いでは修理も出来ん…戻るだけ無駄なのだ」

アサシン「ずっとこの状況か?」

女戦士「何度も言わせるな…航路から外れれば少しは休める」

アサシン「見た所大砲は移動式が1門…後はクロスボウか」

女戦士「何が言いたい?武器の不足は承知…海戦では逃げの一択だ」

アサシン「こう実情を知ってしまうとさもしいな…今や幽霊船は伝説になろうと言うのに」

女戦士「フフギリギリを戦い渡って何が悪い?それとも高性能な兵器を使いこなしてるとでも思って居たか?

アサシン「済まんな…フィン・イッシュも同様にギリギリの状況…幽霊船が加われば状況打破出来ると思って居たが…」

女戦士「…」ジロ

アサシン「こちらも同じ状況なのを見て私の浅はかな考えを反省している」

女戦士「さてアサシン…お前が私に会いに来たのは飛空艇の捜索の件だけではあるまい?」

アサシン「そうだ…ただ考えが変わった」

女戦士「貧相な装備を見てか?」

アサシン「いや…セントラルの狙いはフィン・イッシュ攻略では無さそうだと分かったからだ」

女戦士「何の話だ?」

アサシン「まぁ航路を外れて落ち着いてから話す」

702: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:16:05.01 ID:c2KZAoSz0
『海原』


リリース スゥ


女戦士「よし休息だ!!各自ゆっくり休め!!」


ザブ~ン ユラ~


女戦士「ふぅ…」

商人「結局レイスは出なかったじゃない」

女戦士「いつも出て来る訳では無い…魔方陣は修復出来たか?」

商人「初めから引き直してる…もう少し」トンテンカン

情報屋「よく見るとこの船はあちこち傷んで居るわね…」

女戦士「手すりには寄りかかるな?」

商人「戦って居る相手は裏切った豪族かい?」

女戦士「豪族だけならどれほどラクか」

商人「正規軍とも戦って居るんだ」

女戦士「逃げるだけだがな」

商人「そうそう…船体の穴…砲弾の着弾痕が見当たらない…何でやられたの?」

女戦士「キ・カイの軍船から飛んで来た光線弾だ」

商人「軍船でも実用してるのか…それじゃ勝てないな」

女戦士「あれは古代の兵器なのか?」

商人「そうだよ…多分新しい古代遺跡から最近発見された物だ」

アサシン「話に割入る…古代の兵器をキ・カイが既に実用している?」

商人「うん…セントラルもキ・カイも外海調査に躍起になってるのはきっとその兵器の存在が原因さ」

アサシン「道理で外海調査の協力を求めて来た訳だ…その時点で既にフィン・イッシュなぞ眼中に無い」

商人「流れからするとセントラルとキ・カイが衝突する感じだね」

女戦士「今のままではキ・カイの圧勝に終わる」

商人「インドラの銃みたいなものだしね」

女戦士「いや…射程は大砲より短い様だ…ただ大砲よりも圧倒的に命中精度が高い」

商人「なるほどね…」

情報屋「未踏の地に先行しているのはセントラルの方だから直ぐに使えればキ・カイも危ないわね」

商人「どちらも公爵の影がちらついて居るのが気になるけど」

情報屋「そうね…公爵の手下の髭男爵…それからキ・カイ海軍も公爵が絡んでる」

商人「まぁそっちは勝手にやってて貰うとして僕達は先ず飛空艇を探さないと」

女戦士「飛空艇の場所が分かったとして3人の安否が心配だ…」

商人「時の砂を使って未来に飛んでしまった可能性もあるらしい」

女戦士「時の砂?何なのだそれは?」

商人「時間を巻き戻すという伝説があるんだ…それが外海のニライカナイという場所にあるらしい」

女戦士「巻き戻す?それでは過去に行くのではないか?」

商人「詳細不明なんだよ…でも状況的に時の砂を使った可能性は否めない」

女戦士「…ともあれ無事であるという可能性が聞けただけで少し心が落ち着く」


703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:17:19.98 ID:c2KZAoSz0
『数日後』


ガハハハハ…


海賊1「お前が噂に聞く闇商人だとは恐れ入った」

海賊2「がってん俺らは姫様の従士」


女戦士「今何と言った?」ギロ


海賊2「口が滑ったでがんす…」

商人「2人は純血のドワーフだったんだね…道理で体格が良い訳だ」

ローグ「あっしの立場がでやんすねぇ…なーんか軽んじられてるんすが…一応立場的には騎士なんす」

情報屋「ローグが騎士?ウフフ」

ローグ「へい…従士より格が上の筈なんすがどーも雑用ばかり回ってくるでやんすよ」

女戦士「雑用?最も重要な事を頼んでいるつもりだがな?船の補修は終わったのか?」

ローグ「あイヤイヤ…海賊達が楽しそうに会話してるもんでツイ…」

女戦士「補修が済んだら船体に刺さっている矢を回収して再利用に回せ」

ローグ「トホホ…ゴラ海賊共ぉぉ!!船体の補修急ぐでやんすぅぅ!!」

海賊共「へ~い!!」ドドド


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商人「なるほど…海賊の本来の強さは海戦じゃなくて白兵戦なのか…なんか分かって来たぞ」

女戦士「懐に入ってからの制圧力…大砲は懐に入られない為の道具に過ぎん」

商人「つまり無敗なのはハイディングで一気に懐に入るから白兵戦で勝ってるんだね」

女戦士「ハイディングだけでは無いがな…私が得意とするのは陽動だ…私自身が囮となる」

商人「この間の酒場占領だね」

アサシン「弓で額を撃ち抜かれない様にな?」

女戦士「フフ気を付けて居るつもりだ」

704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:17:59.30 ID:c2KZAoSz0
『地庄炉村_近くの小島』


碇を降ろせぇ!! ガラガラ


女戦士「ローグ!!気球の準備だ…商人とリカオン…それからアサシンの4人は地所炉村で物資調達を頼む」

女戦士「幽霊船は狭間に入って待機する…しばらく休憩だ!!小島に降りたい者は小舟を使って構わん」


情報屋「船に乗っていた方が暖かそうね‥」

女戦士「私は降りる気なぞそもそも無い」

情報屋「湯を沸かして水浴びをすると言ったら?」

女戦士「ム…ふむ…良いな」

情報屋「雪を集めて沸かすだけの簡単な仕事よ」

女戦士「従士2人!!私と同行しろ…島に降りて簡易風呂を作る…来い!」

海賊共「へ~い!!」ドドド



『地庄炉村』


ザワザワ

気球で誰ぞ来よったぞ

ありゃ商人が乗っとるんじゃろうか?

4人居るな?


婆「お前さん方は何処から来たのじゃ?キ・カイかえ?」

商人「あ…こんにちは…近くの商船から物資調達に来たんだ」

婆「商船?何処にも見えんが…なぜ船着き場を使わんのじゃ?」

ローグ「あいやいや…大型な商船なもんで岩礁が怖くて近づけんのでやんす」

男「婆さん!こいつら2人武器を携帯してる!近づくな?」

ローグ「襲う気は無いんで安心して下せぇ…ほんで布とロープを仕入れに来たんすが…」

男「布…ロープ?」ヒソヒソ

婆「麻の産地じゃと知って居ったのじゃろうな…お前さん方は何を売るのじゃ?」

商人「ええと…酒類と小麦…それから薬かな」

男「小麦!!じゃぁ北の大陸からの商船か」

婆「丁度キ・カイからの商隊が来ん様になって困っとった所じゃで良い取引が出来そうじゃな」

商人「ローグ?一度船に戻って荷を持って来てもらえるかな?…多分芋とか肉と交換出来そうだ」

ローグ「分かりやした…」

男「ちょいと俺は村の皆に話してくる」

婆「こっちじゃ…村の広場まで案内するぞい」

705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:18:45.89 ID:c2KZAoSz0
『広場』


婆「ここらに露店が集まっとるんやが村の衆しか居らんでこの通りじゃ」

商人「おぉ!!石炭があるじゃ無いか…食材も船に乗って無い物が多い」

狼女「キ・カイより随分安いね?」キョロ

商人「そりゃそうだよ…これが適正な値段さ」キョロ

狼女「ナッツがすごく安い…買って!」

アサシン「…」シラー

商人「ん?僕が?」

狼女「そうだよ…今お金持ってるの商人じゃない」

商人「ハハまぁそうだね」チラリ

アサシン「…」シラー


フワフワ ドッスン


ローグ「適当に物資持って来やしたぜ?」

商人「丁度良かった!!ここで商売始めよう」

ローグ「へ~い!!はいはい寄ってらっしゃ見てらっしゃい…珍しい物沢山あるでやんすぅ!!」


ザワザワ ザワザワ

おい!!何処からか商人が来てる様だ

小麦が売ってるらしいわ

魔石もあるらしいぞ


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706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:19:19.60 ID:c2KZAoSz0
『気球の露店』


ワイワイ ワイワイ


商人「アクセサリー類をそんなに安く売って良いのかい?」

ローグ「どうせあっしらには要らんもんなんで良いっす…代わりに麻布が安く手に入れば良いでやんす」

商人「ハハなるほど値切る為の先行投資か」

アサシン「石炭は大目に買っても良いんだな?」

商人「うん…箱毎買ってしまえば少しだけど木材も入手できる」

アサシン「では買い入れて気球に積んでしまうぞ」

商人「どんどん買ってお金を回そう…お金が入れば村人も購入意欲が湧く筈」

狼女「魔石とブタを交換したいって言われてるんだけどどうしよう?」

商人「良いじゃない?生きたブタは君の好物だよね」

狼女「やった!!」

商人「アサシン!!オーガの牙がすごく安いんだ…全部仕入れてよ」

アサシン「ふむ…仕入れる品目を紙に書いてくれないか?」

商人「麻布…皮…糸…それからロープ…全部買い占めるかんじで良い」

アサシン「分かった…どんどん仕入れるから気球での運搬はローグに任せる」

ローグ「へ~い!!」


ワイワイ ワイワイ


707: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:20:04.54 ID:c2KZAoSz0
『小島_キャンプ』


メラメラ パチ


女戦士「樽に湯を少し足せ!ゆっくりだぞ?」チャポン

海賊1「へい!!」ドスドス

情報屋「ふぅぅ…雪の中で樽のお風呂…最高ね」チャプ

女戦士「フフ…私が風呂好きな事は知って居たのか?」

情報屋「綺麗好きな事は知って居たから…女海賊とは正反対」

女戦士「世話の焼ける妹だった…」トーイメ

情報屋「ドワーフの寿命はどのくらいあるの?」

女戦士「寿命?なぜその様な事を…」

情報屋「ほら?私は老いて来てる…あなたはまだ綺麗なまま…」

女戦士「そんな事か…純血のドワーフなら400年ぐらいだそうだ…私は混血だからいくつまで生きるか…」

情報屋「羨ましいわ…」

女戦士「済まんな…見せびらかすつもりは無い」

情報屋「ひとつ気付いてしまった…」

女戦士「んん?」

情報屋「精霊がエルフやドワーフを生んで人間よりも長い寿命を与えた理由…」

女戦士「何だ?」

情報屋「はるか昔…およそ4000年前の人間の寿命は20年くらいだった」

女戦士「混血させて伸ばそうとしたと言うか?」

情報屋「きっとそうよ…ただ出生率が問題だったみたいね」

女戦士「人間に純血と言う概念は無さそうだな?」

情報屋「もう失われたのね…少なからずエルフの血が混ざってると思うわ」

女戦士「エルフか…」

情報屋「嫌い?」

女戦士「嫌いと言う訳では無いが感情を読み取れなくてな…苦手と言うべきか」

情報屋「あ!!又気球が船の方へ…」

女戦士「本当だな…どうやら物資調達が上手く行っているらしい」

情報屋「どうする?もう戻る?」

女戦士「折角良い気持ちになった所だ…私もしばらく休む」

情報屋「そうね…ずっと気を張って居たものね」


チャプン モクモク

708: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:20:43.82 ID:c2KZAoSz0
『地庄炉村_洞穴の宿屋』


ピチョン ポタ


商人「へぇ?変わった宿屋だなぁ…」キョロ

婆「ここらは木材が無いで穴の中に住まいを作っておるんじゃ」

男「手前が酒場になってる…寝床は奥の方を使ってくれ」

商人「お客さんは僕達だけかい?」

婆「そうじゃ…酒場には村の自警団の者が来るけぇ喧嘩せん様にな?」

商人「リカオン!!喧嘩したらダメだよ!!」

アサシン「フフ…」

狼女「あら?問題児みたいな言い方…」

婆「ごゆるりと休むが良い…ではのぅ」ノソリ


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ローグ「今乾かしてる布と皮は明日の朝持って来てくれる話になりやした…」

商人「うん…やっぱり布は手間が掛るだけ有ってそこそこの値段するね」

ローグ「お金無くなっちまいやしたか?」

商人「結構使ったけど収穫も大きいよね…まぁトントンだね」

ローグ「地庄炉村もちーっと潤ったと思いやす」

商人「ハハ…アクセサリーはまぁサービスか」

アサシン「全部豪族から奪った物か?」

ローグ「そーっすね…豪族は女を買う為にアクセサリーを沢山持ってるんすよ…あっしらには全く必要ないでやんす」

商人「おかげで随分節約出来たさ」


ドヤドヤ ゾロゾロ

おい見ろ!あの気球の商人達だ

女も来てるぜ?おっと…睨まれた

709: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:21:30.95 ID:c2KZAoSz0
若者1「隣…失礼するよ」

若者2「酒場が狭いもんでね…おいオヤジ!!いつもの頼む」

爺「んぁぁ…今日は金払ってけよ」

若者1「商人さん達は何処から来たんだい?」

商人「北の方さ…商船が沖に待機してる」

若者1「この村は見ての通り…さもしい村でさ…商人さん達が来ると少し活気が出るんだ」

商人「その様だね…名産の布が上手に売れればもっと発展出来るのにね」

若者1「キ・カイから商隊がなかなか来なくなってねぇ」

商人「どうしてだろう?こっちに関税はかからない筈だけどな…」

若者1「道中の魔物が影響してるらしい…」

商人「オーガかな?」

若者1「分からないけど魔物に襲われたという噂が広まったのが商隊が少なくなった原因に思う」

商人「魔物討伐隊とか組んで退治しないのかい?」

若者1「近場はやってる…ただ遠いと中々行けなくてね」


若者2「あああああ!!俺のナッツ!!勝手に…」


商人「ん?」

狼女「…」モグモグ

若者2「ちょっと…それ俺の食い物なんだが…」

狼女「何?」シラー モグモグ

若者2「口が動いてるだろ!!俺のナッツ食ったな?」

商人「あたたた…ナッツもう一皿頼むから勘弁…」

ローグ「あっしも仲間に入って良いっすかね?」ニヤニヤ

商人「あ…いや…」

ローグ「ああああ!!あれは何だ!!?ま…まさか!!」ユビサシ

若者1「んん?」キョロ

ローグ「ふむ…見間違いでやんす…」モグモグ

狼女「…」モグモグ

若者1「ちょっと…あんたら何なの?俺のナッツは?」タジ

710: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:22:26.12 ID:c2KZAoSz0
『酒場』


ウハハハハ…


婆「なんや騒がしい思うたら仲良うしとる様やな?」ノソノソ

爺「婆さんも一杯飲んで行くんかや?」

婆「蒸かした芋を持って来たんじゃが…」


狼女「…」ピン!! バチッ!!

若者1「痛てっ!!ナッツを無駄にするなぁぁ」

狼女「無駄にしてるのはあんただよ…食べれば済む」ピン!! バチッ!!

若者2「姉ちゃんこっちに頼む…あーんぐり」

狼女「…」ピン!! パク!!

若者2「ストラーイク!!」モグモグ


婆「お前さん達…蒸かした芋を持って来たが食うか?」

ローグ「ぉお?ナッツだけじゃ物足りなかった所なんすよ」

婆「そうじゃろそうじゃろう…」

狼女「!!?」クンクン スック

若者1「姉ちゃんもう一回俺にも頼む」

狼女「…」シュタタ キョロ

アサシン「ん?リカオンどうした?」

狼女「何か臭う…西の方角」クンクン


ガタガタガタ ブモモー ゲヒゲヒ


若者1「荷車の音だ…外で何か有ったな?」ダダ

711: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:23:08.54 ID:c2KZAoSz0
『ヤクの荷車』


ブモモモー ガフガフ


馭者「たたた…助けてくれぇ」

若者1「どうした!!何が有った!?」

馭者「直ぐそこでオーガに襲われて…」ゴクリ

子供「パパ?大丈夫?」

馭者「こら!!隠れて居なさい」グイ

若者1「オーガ退治は任せろ…誰か!!手当してやってくれぇ!!」ダダ

若者2「いつも通りだな?行こう!!」ダダ


狼女「何か訳がありそう…どうしよう?」

商人「ひとまず父親の方を手当してあげようか」

ローグ「怪我を見せてくだせぇ…出血はどんな感じでやんすか?」

馭者「わたしの怪我は大した事無い…家内の方を見て欲しい」

女「うぅぅ…」

ローグ「応急手当はあっしがやりやす…商人さん薬草とちょっとだけエリクサー頼みやす」

商人「え…あ…わかった」タッタ


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712: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:23:53.83 ID:c2KZAoSz0
『宿屋』


よっこらせっと…


ローグ「ひとまず落ち着きやしたね?」

商人「命の危険は無さそうで安心したね…」

ローグ「どうやらキ・カイから逃れて来たらしいんすが…こら同じ様な人が増えるかも知れんすね」

商人「うん…」

ローグ「キ・カイで何が起きてるんすか?」

商人「話せば長いんだけど…10歳前後の子供を戦争に利用しようとしているのさ」

ローグ「戦力にならんと思うんすが…」

商人「キラーマシンにしてしまうんだよ…10歳前後が一番適合するらしい」

ローグ「まじっすか…そら許せんでやんす」

商人「子供の兵役を可能にする法案が可決してしまう前に逃げて来たのは正解だと思う」

ローグ「ここに逃げて来ても同じキ・カイの領地っすよね?」

商人「そうだね…キ・カイで丁度良い子供が居なくなればこちらに来るのも時間の問題…」

ローグ「そんな狂った法案が簡単に可決するとは思えんのでやんすが…」

アサシン「公爵なら可能だ…」

商人「オークとの戦争で思った様に戦果が出て居ないんだ…キラーマシンは何年も前から増産してる」

ローグ「なんでオークを攻め立てているでやんすか?」

商人「さぁね?どうせ古代遺跡とかそういう奴だよ」

アサシン「やはり公爵を野放しには出来んという事だ」

商人「孤児たちを逃すだけじゃ問題は解決しないか…」

狼女「ねぇ…良い話が聞こえて来た」

商人「ん?何かな?」

狼女「地庄炉村に来る道中で浜辺に大きな骨を見たらしい」

商人「大きな骨?」

狼女「その周辺は朽ちた馬車が沢山放棄されて居て…恐ろしくて急いで通過したとか」

商人「良い話じゃないの?」

狼女「私が貝殻で聞いた音は…近くに大きな建造物…多分大きな骨だったんだと思う」

商人「おおお!!詳しい場所は聞こえないかい?」

狼女「ちょっと待って…今聞き耳立ててるから」

713: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:25:03.32 ID:c2KZAoSz0
『翌日_貨物用気球』


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁぁ!!飛空艇の場所がほぼ特定出来やした…やっぱりここから西の方角っす」

女戦士「方角と距離は合わせて言えと何度言えば分かる」

ローグ「ええと…馬車で10日程…なもんで船ならえーと…」

女戦士「気球を使って先行して探してこい…幽霊船は縦帆が無いから直行は出来ん」

ローグ「もし見つけたらここまで吊って来る感じっすかね?」

女戦士「他に方法はあるか?」

ローグ「遠すぎるっす…途中で落としちまう可能性がありやす」

女戦士「では正確な場所を教えろ…近くの沖まで移動しておいてやる」

ローグ「海図に場所を記して置きやす…」ダダ

商人「捜索に行く人員はどうする?」

女戦士「アラクネーは不死者を襲うと思うか?」

アサシン「フフ…それなら私と商人が適任だな…生身では毒が厄介だ」

女戦士「分かった…気球の操舵はローグ…飛空艇の回収作業は商人とアサシンで行け」

狼女「私は?」

女戦士「気球を出来るだけ軽くしたい…身軽なリカオンは縦帆の修理に回って欲しい」

狼女「…」シュン

714: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:25:44.10 ID:c2KZAoSz0
『甲板』


ザブン ギシギシ


情報屋「フフ連れて行って貰えなくて拗ねているの?」ヌイヌイ

狼女「悪い?」ヌイヌイ

情報屋「アラクネーの麻痺毒は強力だから仕方ないわね」

狼女「布を縫い合わせる作業は地味で退屈」ヌイヌイ

情報屋「これも大事な仕事だと思うわ?早く仕上げないと船を動かせないのだし」


女戦士「碇を上げろ!!一旦沖へ出る!!進路11時!!」


情報屋「出港ね…急いで縫わないと」アセ

女戦士「リカオン!マストに上がれるな?指示通りロープを掛けろ」

狼女「え!?私?」

女戦士「人出が足りんのだ…早くロープを持って上に上がってくれ」

狼女「ロープを上に?ってこれめちゃくちゃ重いじゃない…」

女戦士「つべこべ言わず持って上に上がれ!!」


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715: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:26:40.15 ID:c2KZAoSz0
『翌日_貨物用気球』


フワフワ バサバサ


ローグ「水も何も積んで無いもんで喉がカラカラっす…」

アサシン「ワインならあるぞ?」

ローグ「一口頂きやす…」グビ プハァ

アサシン「どうだ?不死者の気分は」

ローグ「ワインが格別美味いっすねぇ…」

商人「ローグ!!見つけた!!巨大な骨…なんの骨だ?」

ローグ「情報通りっすね…高度下げやす」グイ

アサシン「ふむ…あの大きさからするとクジラだな」

商人「クジラ…そうだ未来君の壁画にもクジラが書かれていた…関連するのか?」

ローグ「幽霊船の居場所が分からんのですが…」

アサシン「ひとまず私が先に降りて状況を見て来る」

ローグ「クジラの上で待機っすね?」

アサシン「うむ…」



『クジラの骨_上空』


フワフワ バサバサ


商人「見えた!!間違いない飛空艇の船体が見える」

ローグ「球皮も帆も無くなっていやすね…」

商人「そうか…船体は魔女が樹脂に変性させたから傷まずに残ってるんだ…」

ローグ「な~んか見たく無い物を見ちまいそうで…」

アサシン「ロープを降ろして先に降りるぞ?」シュルシュル

ローグ「アサシンさんロープを何かに結んで下せぇ…気球が安定しやす」

アサシン「分かった…」

商人「ちょっと待った!遠くにオーガがうろついてる…3体くらいだ」

アサシン「クックック…オーガが不死者を襲うと言うか?食う所が無い」

商人「この辺りはオーガが居るから人が通らなかったんだ…不幸中の幸いか」

アサシン「では降下する…」シュルシュル シュタ

商人「僕も降りようかな…」

ローグ「ちっと待って下せぇ…アラクネーが出て来やした」

商人「え!?」

ローグ「中型が3体…小さいのは一杯居やすねぇ…」

商人「お見合いしてるね…」

ローグ「戦闘にはならん感じっすかね?」

商人「大丈夫そうだ…僕も降りて来る」シュルシュル

ローグ「あああああ!!ちょ…あっしだけ置いてきぼり…」

716: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:27:47.96 ID:c2KZAoSz0
『クジラの骨_埋まった飛空艇』


シュルシュル シュタ


アサシン「商人も降りて来たか…どうやら大型のアラクネーは居ない様だ」

商人「襲って来ない?」

アサシン「うむ…しかし毒は持って居る筈」

商人「なるほど…だからオーガも近づかないんだね」

アサシン「飛空艇は少し掘り出す必要がありそうだな…入り口が埋まっている」

商人「中を覗いて…ああ!!中はクモの巣になってる…」

アサシン「難儀しそうだ…」

商人「でも見える…石化してるよ!!横たわっているのが魔女…四つん這いなのが女海賊」

アサシン「盗賊は居ないのか?」

商人「どうなってるんだ?酒の瓶を持ったまま石化してる‥」

アサシン「クックック…状況が読めんのだが3人共無事の確認は出来た訳だ」

商人「クモの巣がクッションになったお陰でどこも欠けて無い…よしよし」

アサシン「さぁどうする?」

商人「アサシンは飛空艇の隅にバランスよくロープを掛けて行って…僕は周りを掘り起こす」

アサシン「アラクネーが暴れなければ良いが…」

商人「暴れたって不死者に何も出来ないよね…完全無視で」

717: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:29:21.39 ID:c2KZAoSz0
『埋まった飛空艇』


ザック ザック


商人「おーい!!気球で少し持ち上げてぇぇ!!」

ローグ「あいさー!!」


グググ ズズズズ


商人「少し横にぃぃ!!」

ローグ「へ~い!!」ズズズズ

商人「今の状態で待機ぃぃ!!」

ローグ「はいなー!!」

商人「さて…余分な砂を落としてこのまま運びたい所だけど…」

アサシン「商人…見てみろ」ユビサシ

商人「ハッ!!ホムンクルス…」

アサシン「この機械の犬はホムンクルスなのか?」

商人「そうさ…僕が機械の犬にホムンクルスの超高度AIを搭載したんだ…」

アサシン「どう見る?クジラとどうやって意思疎通したと思う?なぜクジラに抱かれている?」

商人「犬笛が首にぶら下がって…そうか音だ…音を使ってクジラの言葉を発する事が出来たんだ」

アサシン「つまりクジラに飛空艇を守って貰った訳か」

商人「そうだね…でもホムンクルスの超高度AIは数年でエネルギー切れを起こした」

アサシン「クジラは友人が死んだと思ったわけだな?…そして抱いたまま此処に…」

アサシン「私はな…どうも海の生物と何かの縁を感じる…不思議なのだがこの状況に強く心を打たれる」

商人「これ明らかに死んでも守ると言う姿だよね?」

アサシン「うむ…」

商人「未来君の壁画に描かれて居たクジラ…もしかして数百年を超えた再会だったのかもね」

アサシン「海の中にも語り継がれない物語がある…そういう事か…」

商人「なんか弔いが必要に思えて来た」

アサシン「海に返すか?」

商人「どうすれば弔えるだろう…命を懸けて守ったのだからずっと一緒にした方が良い気もする…」

アサシン「私達の仲間に加えるのはどうだ?」

商人「え?どうやって?」

アサシン「守って貰うのだ…死しても尚守る…本望では無いだろうか…」

商人「骨を持って帰って材料にするのか…悪い案じゃない」

アサシン「お前もホムンクルスをここに置いて行く気も無いのだろう?なら一緒に連れて行くべきだ」

商人「ふむ…そうだね…よし!クジラの骨も残さず全部運ぼう」

718: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:30:24.73 ID:c2KZAoSz0
『幽霊船_船首』


ユラ~リ ギシ


海賊「オーライ…オーライ」


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁぁぁ!!小舟を岸に付けて下せぇ!!」

女戦士「なに?どういう事だ?」

ローグ「他にも資材を大量に運びたいんす!!」

女戦士「回収した飛空艇以外にも何かあるのか?」

ローグ「木材の代わりになるクジラの骨でやんすぅぅ!!」

女戦士「ふむ…小舟を降ろすから気球で引っ張って行け…今は人手が足りん」

ローグ「分かりやしたぁぁ!!小舟にロープ括りつけて下せぇ!!」

女戦士「小舟を降ろせぇ!!」

海賊「へ~い!!」ドタドタ


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女戦士「よく飛空艇を回収してくれたな…」ツカツカ

商人「3人共石化して居るけど無事だよ…エリクサー有ったよね?」

女戦士「樽に半分ほど残って居る…足りれば良いが」

商人「あと飛空艇の中がアラクネーの巣になってるから気を付けて」

女戦士「それは厄介だ…」

商人「君は虫を使えないのかな?」

女戦士「使役したことなど無い」

商人「魔女がいつだったか言って居たんだ…ドワーフにはそもそも適性が有るかもしれないってね」

女戦士「私は虫と話した事なぞ無いのだ」

商人「金属とか石の声は虫の声らしいよ?」

女戦士「…」ジロ

商人「あぁゴメン君の秘密なのかもしれない」

女戦士「…」


”怖い…怖い…怖い…怖い…”


女戦士「フフこの落ち着かない感じはそういう事だったか…」

商人「僕には良く分からない」

女戦士「飛空艇に誰も近づけるな!!」

海賊「へ~い!!」ドタドタ

719: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:31:19.43 ID:c2KZAoSz0
『月夜』


ユラ~リ ギシ


情報屋「飛空艇はあのまま放置なの?」

女戦士「アラクネーが落ち着くまでは手が出せん…巣を守っているだけだから落ち着くまでそっとしておく」

情報屋「あなたも虫の声が?」

女戦士「この場合聞こえると言えば良いか?」

情報屋「フフ…あなたも導かれし者かぁ…」

女戦士「導き?」

情報屋「大地の声…虫の声…きっとそれは大いなる神の声」

女戦士「どうした?非科学的な事を言うとは情報屋らしくない」

情報屋「私は歴史を紐解いて少し分かった気がする…神が…いえ精霊があなた達に何を与えたのか」

女戦士「ドワーフの血の話か?」

情報屋「それもあるけれど…私は今大地の声と言ったでしょう?」

女戦士「ふむ…」

情報屋「それはエルフが言う森の声と同じ様に大地が持つ大いなる意思…それが聞こえるあなた達は勇者と言い変えて良いと思うの」

女戦士「大地の精霊と言えばノームと聞くが…」

情報屋「きっとその当時のホムンクルス本人」

女戦士「ふぅむ…大地の声か…意識した事は無かったのだが改めて聞くとその様な気がしないでも無いな」

情報屋「ねぇ?不思議だと思わない?虫があなたの妹を守ってる…大地の加護では無いの?」

女戦士「大地の加護…」ブルリ

情報屋「私は神の意思の真理に近づけててワクワクが止まらないわ」

女戦士「今何かに触った気がする…鳥肌が立った」

情報屋「神を理解したのよ…真理に触れたの」

720: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/06/18(土) 18:31:49.72 ID:c2KZAoSz0
『翌日』


フワフワ ドッスン


ローグ「み…水を…枯れちまいやす…」ヨタヨタ

女戦士「物資はすべて積み終わったか?」

アサシン「今ので最後だ…出航して構わん」

女戦士「ご苦労!ローグ…後で褒美をやる」

ローグ「姉さんは…無事っすか?」

女戦士「今はまだ飛空艇に入れん…アラクネーを荒立てるな?」

ローグ「そーっすか…あっしは水分補給してちぃと休みやす…」ヨタヨタ


女戦士「碇を上げて帆を張れぇ!!西進して一度基地へ返る!!」


海賊共「へ~い!!」ドタドタ

アサシン「…」グビ ゴクリ

女戦士「どうした?浮かない顔をして居るぞ?」

アサシン「そう見えるか?」

女戦士「失恋でもしたかのような顔をしている」

アサシン「フフ…クジラに愛を見せつけられたのだ」

女戦士「お前が愛を語るとはな…」

アサシン「気にするな…何でも無い」


ザブ~ン ユラ~リ


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 時の砂編

   完