2: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:39:59.35 ID:u5PMZNjMO
美城「…」

ちひろ「…」

美城「…座りたまえ」

ちひろ「は、はい」

美城「…少し待っていたまえ」

ちひろ「?」

美城「…」ガラッ

ちひろ「…?」

美城「…」ゴソゴソ

ちひろ「…あの、何か…?」

美城「…」スッ

ちひろ「あ、あの…」

美城「…」ゴトッ

ちひろ「…それは…」

美城「…単刀直入に聞こう」ペリペリ

ちひろ「…」

美城「これのデザインを担当したのは、君かな?」コト
no title


ちひろ「…」

3: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:40:49.70 ID:u5PMZNjMO
美城「どうかな?」

ちひろ「えっと…それは…確か、何年か前にグループ内でアイディアを募って、採用されたものだと聞いています」

美城「とすると…君も私もまだこの会社にいない頃…か」

ちひろ「えっと…それが、どうかされましたか?」

美城「…君は、これを何の苦もなく開ける事が出来るか?」

ちひろ「え?」

美城「この蓋を、君の手で開ける事が出来るかと聞いている」

ちひろ「は、はい…毎日ではありませんが、それなりに飲んでるので…」

美城「…ならば、やってみたまえ」スッ

ちひろ「は、はい…」スッ

美城「…」

ちひろ「…」グッ

美城「…」

ちひろ「……」

美城「…」

ちひろ「…イタッ」パキュッ

美城「待ちたまえ」

4: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:41:58.13 ID:u5PMZNjMO
ちひろ「どうされましたか?」

美城「開けた瞬間、君は何と言った?」

ちひろ「…?何か言いましたか?」

美城「微かだが、痛いと言っていなかったかな?」

ちひろ「そんな…今まで何回も飲んでるのに今更痛いだなんてあるわけないじゃないですか」

美城「ふむ…」

ちひろ「あ…これって…」

美城「…まあ、君が飲めばいい」

ちひろ「あ、じゃあ…いただきます…」コク

美城「…」

ちひろ「…ぷはっ」

美城「…」

ちひろ「…イッタ…」

美城「待ちたまえ」

5: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:43:08.15 ID:u5PMZNjMO
ちひろ「どうかされましたか?」

美城「痛いと言っていなかったかね?」

ちひろ「痛い…いえ、特には…」

美城「痛い…と、君の口から確かに聞こえたのだが」

ちひろ「…あ!」

美城「む…」

ちひろ「これ、これが痛かったんですよ。これ…」

美城「ふむ。君も分かってくれたようだな」

ちひろ「この瓶の蓋開けた時の瓶に残った下半分の金具ですよね。こういうの瓶だと結構ありますからね…」

美城「違う」

6: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:44:13.18 ID:u5PMZNjMO
ちひろ「?」

美城「確かに便の蓋を勢い良く開けると切れ目の入った蓋と下の金具は分離する。中途半端に尖ったそれは確かに痛いかもしれない」

ちひろ「ええ。ですからそれのことかと…」

美城「だが考えてみたまえ。そのドリンクにはもう一つ、痛がるかもしれない箇所がある」

ちひろ「痛がる…」

美城「分かるだろう?蓋を開けずとも、デザインを見れば…」

ちひろ「…あ!」

美城「…そういうことだ」

ちひろ「これですね!分離した蓋の切れ目の部分!」

美城「ン゛ン゛」

7: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:44:52.03 ID:u5PMZNjMO
ちひろ「どうされたんですか?」

美城「…千川君。君はパニックホラーを観たことはあるかな?」

ちひろ「いえ…専務はあるんですか?」

美城「あくまで知識の幅を広げるためだが、観たことはある。その中にトゲのついたボールを手で鷲掴むシーンがあるのだが…」

ちひろ「は、はあ…」

美城「想像出来るかな?トゲが無数に生えたボールを手で掴むんだ」

ちひろ「うっ……想像しただけで痛いですね…」

美城「うむ。私もやろうとは思わない」

ちひろ「…でも、それとこのドリンクには何か関係が?」

美城「…」

ちひろ「…うーん…」

美城「…この際だ、はっきり言おう」

ちひろ「はい?」

美城「その星型の蓋だ」

8: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:45:43.81 ID:u5PMZNjMO
ちひろ「この蓋自体が、危ないと…」

美城「そうだ。私もそれは何度か購入したが、どうにも蓋を開ける時、その星が手のひらに食い込んでくる」

ちひろ「…」

美城「ちなみに、私だけではない。このドリンクを薬局やコンビニで買った一般人からもクレームを受けた」

ちひろ「そ、そうだったんですか…」

美城「むしろ何故今まで疑問を持たなかったのか気になるが、これは由々しき問題だ」

ちひろ「はあ…」

美城「早急にデザインを直しなさい。以上だ」

ちひろ「うーん…」

美城「どうした?」

ちひろ「いえ、でも346プロダクション内ではそういったことは…」

美城「…このドリンクの使用頻度が一番高いのは?」

ちひろ「?」

9: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:46:23.10 ID:u5PMZNjMO
武内P「お呼びでしょうか」

美城「やはり君だったか」

武内P「千川さんからお話は聞きましたが、今のところ特に支障は…」

美城「…ならば、開けてみたまえ」

武内P「…これをですか?」

美城「ああ」

武内P「は、はあ…」スッ

美城「…」

武内P「…」

美城「…」

武内P「…イッ」パキュ

美城「待ちたまえ」

10: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:47:17.37 ID:u5PMZNjMO
武内P「どうされましたか?」

美城「開ける瞬間、君は何と言った?」

武内P「…?」

美城「…もういい。手を出しなさい」

武内P「は、はあ…」スッ

美城「…」

武内P「どうかされましたか?」

美城「…」

武内P「あの…」

美城「(手のひらにマメが5つ…!?)」

武内P「…?」

美城「ふむ…」キュポ

武内P「…!?あの…専務…!?」

美城「…」カキカキ

武内P「!?」

美城「…これは、何だ?」

武内P「…」

美城「君の手のひらのマメに線を引いてみたが、これは…」

武内P「…」

美城「見た所、星型だ。これはどう考えてもスタミナドリンクの蓋を開け過ぎた事によるものではないのか?」

武内P「そ、それは…」

美城「…いや、その前に君は仕事に打ち込み過ぎだ。こういうものに頼って何とかなるのは今の内だけだ」

武内P「も、申し訳ありません…」

美城「…話を戻そう。いい加減認めたまえ」

武内P「…」

美城「このドリンクのデザインには問題がある。君の手を見てもそれは一目瞭然だ」

武内P「そ、それは…」

美城「ちなみに、代替案がある。この星を縦にするのではなく、蓋に印刷する」

武内P「…」

美城「そうすれば先のように痛みを感じることはないだろう」

11: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:48:23.92 ID:u5PMZNjMO
武内P「お待ち下さい」

美城「どうした?」

武内P「流石に、判断を急ぎ過ぎではありませんか?」

美城「どうした?」

武内P「確かにこのデザインでは蓋を開ける時に不便かもしれません…」

美城「どうした?」

武内P「ですが、これを私達だけで決めるのは…」

美城「ドリンクの蓋を変えるだけだ。これを販売中止にするとは言っていない」

武内P「…」

美城「…一体どうした?」

今西「失礼するよ」

武内P「…部長…」

美城「今西部長。おはようございます」

今西「ああ、おはよう。…おや?一体どうしたのかね?こんなに空のスタミナドリンクを並べて…」

美城「今しがた、そのデザインについて変更をしたいと思ったものですから」

今西「おやおや…」

美城「見栄えはしやすいかもしれませんが、不便だとクレームを頂きましたので…」

今西「そうかね?……ふむ」パキュ

美城「!?」

今西「うーん……慣れが必要だからかねぇ」

美城「慣れ・・・?」

12: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:49:27.64 ID:u5PMZNjMO
今西「ああ。これを開けるのにはコツがいるんだ」

美城「今まさにそれを不便だと言ったのですが」

今西「こうね…手のひらで掴むのではなく、指でつまんで回すんだ」

美城「開け方にマニュアルのある栄養ドリンクなど聞いたことがありませんが」

今西「…とは言っても……ああ!美城君は外国に行っていたからねぇ」

美城「…?」

武内P「成る程…ならば知らないのも…」

美城「どういうことだ?」

今西「ああ。実はだね…」

美城「…」

武内P「…そのデザインを決めたのは……現会長なんです」

美城「…」

今西「…」

武内P「…」



美城「なん……………だと?」

13: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:50:25.54 ID:u5PMZNjMO
瑞樹「あら。このチーズ鱈美味しいわね」ムシャムシャ

早苗「でしょ?」ムシャムシャ

楓「私、あれ好きでした。あのメキシコっぽいチップスの…」ムシャムシャ

早苗「メキシコっぽい…?」

美優「…ドンタコスですか?」

楓「それ!それです!」

早苗「あー…そんなんあったわねぇ」

瑞樹「ちょっと酸っぱかった記憶があるわね」

早苗「酸っぱい?…いや味なんか覚えてないわよ」

瑞樹「本当よ。今度食べてみなさいよ」

早苗「あれ最近見ないけど?」

楓「見ませんねぇ。密かに食べてたのに」

美優「…あら?346のニュース…」

瑞樹「えっ?」

早苗「えっ?」

楓「え?」

美優「…」

『本日、346系列の会社、346○○が生産、販売しているスタミナドリンクという商品に新しく注意書きが追加されることになりました』

瑞樹「…」

『星型の蓋が特徴的なこのスタミナドリンクですが、「蓋を開ける時に手のひらに痛みを感じる」とのクレームを受け、新たに『蓋を開ける際は、手のひらで掴まずに指でつまんで開けて下さい』という説明書きを載せる事にしたとのことです』

早苗「…」

『これを受け、現在販売されているスタミナドリンクには商品の棚に説明書きを載せておくことで対応してくとのことです…』

楓「…」

『尚、デザインの変更につきましては『現在、検討中』とのことでした』

美優「…」






4人「(………何これ………)」

14: ◆GWARj2QOL2 2016/06/07(火) 19:50:53.71 ID:u5PMZNjMO
終わります

引用元: 美城「今回君を呼んだのには理由がある」ちひろ「はあ…」