白雪姫の世界 お城 城内の隠し部屋


赤鬼「…それでだな、鬼は風邪や喉の具合が優れない時はこの薬草を飲むんだ、解熱と喉の病に効く。どこの家でも乾燥させたものを備蓄している」

猛毒の魔女「ふむふむ、鬼にとっては常備薬というわけか。この薬は人間に効果があるのか?」

赤鬼「うーむ…それが難しいところでな、人間が飲むと解熱の効果しか得られねぇんだ。喉の具合には効果がねぇのさ、これは最近知ったんだがな」

猛毒の魔女「なるほど、種族によって得られる効能が違うか…。お前から教わる薬学は私の知らないものばかりだ、実に勉強になる。感謝するよ」メモメモ

赤鬼「そう言ってもらえりゃあ教える甲斐があるってもんだが…だが『薬学』なんて大げさだ。オイラは薬の専門ってわけじゃねぇんだ、薬の知識なんかたかが知れてるぞ?」

猛毒の魔女「何を言っているか。お前にはもういくつか鬼の薬について教わったが、それだけ知っていれば素人としては上出来だ」

赤鬼「そうはいうがなぁ、故郷の集落で年寄りから教わったもんばっかりで専門的なもんじゃねぇんだ」

赤鬼「元々集落の身内だけで使う為に教わったもんだったから、魔女のあんたに教えるような立派なもんでもねぇんだが…」

猛毒の魔女「異国の、それも異種族の薬学というだけで私には学ぶ価値がある。知識の大小は関係ない、未知の薬に出会えるだけで十分だ」

猛毒の魔女「まぁ、お前が私に薬に関する知識を教えないというのなら好きにするがいい。その代わり、お前との約束も無かった事にしてしまうぞ?」

赤鬼「待て待て、別に教えるのが嫌ってんじゃねぇよ。あんたには魔法を打ち消す薬を譲って貰わないと困るんだ、ラプンツェルって娘がその薬を待ってる。約束は守ってくれ」

猛毒の魔女「もちろん、お前が知識の出し惜しみをしないのならば約束通り魔法を打ち消す薬を譲ろう」

赤鬼「ああ、頼む。…しかし、あんたは猛毒の魔女なんて呼ばれているのに薬の知識を得たいだなんて、変わっている魔女だなぁ…」

猛毒の魔女「何もおかしい事などあるまい。優れた薬も使い方を誤れば毒となり、毒であっても治療に役立てる事もできる。毒と薬は表裏一体…そこに線引きなど無いのさ」

347: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:11:17 ID:sqG
猛毒の魔女「さて、無駄話が過ぎた。さぁ、お前が持つ鬼の薬の知識…余すことなく教えて貰おうか」

赤鬼「それは構わないがなぁ、あんたは少し休憩したらどうだ?飯も食わずに調べ事ばかりして、身体を壊すぞ?」

猛毒の魔女「食事を摂る時間など勿体無い。『猛毒』の二つ名を冠する以上、私は誰よりも毒に詳しく薬に精通していなければならないからな…誰よりもだ」

赤鬼「知識があるだのないだの、他人と張りあうような事じゃないだろうに…」

猛毒の魔女「いいや、私にとっては最も重要なのだ。さぁ、答えよ魔法の鏡!この世で最も『猛毒』の二つ名にふさわしいのは誰だ?我に教えよ!」

魔法の鏡「それはもちろんご主人様ですよ。リンゴの状 を変化させず強力な毒物を混入させるなど誰にもできませんから、『猛毒』の魔女って呼び名はドンピシャだと思いますよ」

猛毒の魔女「そうか…だが、薬学に関してはどうだ?私は薬の知識においても世界で一番優れているのか?」

魔法の鏡「あー…毒だけじゃなくて薬全体っていうカテゴリでみると四番目くらいですかねー。でも先週は九番目でしたから五位もランクアップしてるじゃないですか、やりましたね!」

猛毒の魔女「それでも四番目か…暗殺しようにも三つも毒りんごを用意するのはさすがに大変だ、あれは案外魔力を消費するからな」

魔法の鏡「でもそんなご主人様に朗報ですよ!赤鬼さんに鬼の薬の知識を全て教われば…なんと!二位になれます!」テッテレー

猛毒の魔女「なんと…!赤鬼よ、聞いたな?急いでお前の知識を全て我に授けよ!二位にさえなれれば一位の輩に毒りんごを送るだけで全て解決する…!」ガタッ

赤鬼「待て待て!毒りんごで解決しようとするんじゃない、オイラに教えられる事はきっちり教えるから滅多な真似するんじゃない」

ガチャッ

赤ずきん「……ただいま。今、毒りんごがどうとか聞こえたけど…あなたたち何の話してるのよ」ハァ…

348: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:12:49 ID:sqG
赤鬼「おう、おかえり。いや、この魔女が競ってる相手を毒リンゴで殺そうとしてたからなぁ、流石に止めなきゃなんねぇと思ってな」

猛毒の魔女「結果を得る為に己を磨くのは当然、それでも越えられる奴が居ればならば殺してしまうのが手っ取り早い…フッフッフ、そうだろう?」

赤鬼「あんたなぁ…白雪姫にも同じ事して酷い目に会うんだろ?対抗心も程々にしかねぇと身がもたねぇぞ。なぁ、そうだろ赤ずきん?」

赤ずきん「……まぁ、そうね」フゥ…

赤鬼「どうした、ため息なんかついて…確かお前は剣術の修行に出た桃太郎の様子を見る為に【蛙の王子】の世界に出かけていたんだよな?」

赤ずきん「えぇ、慣れない異国だからなにか困りごとがあるかもしれないと思ってね。ハインリヒさんは一度火が付くと止められないし、様子を見に行ってたのよ」

赤ずきん「体裁を保つのが得意な半面、気心知れた相手でなければ些細な相談事も出来ないでしょうしね、桃太郎は」

赤鬼「まっ、確かにそうだ。それでお前がため息ついてるってことは、何か問題があったのか?まさかとは思うが向こうの世界の連中に歓迎されてねぇとかか…?」

赤ずきん「むしろ逆ね。なんでも隣国からの敵襲をほぼ一人で追い返したらしくて、すっかり国の英雄だったわよ」

赤鬼「どこの国でも英雄扱いたぁ、あいつも心の休まる間がねぇな。しかし、歓迎されてるんなら何が問題なんだ?」

人魚姫の声「それがさ、ちょーっと見ない間に新しい仲間ができたっぽいよ?『日ノ本の猛獣使い』なーんてって呼んでる人も居たかんねー」

赤鬼「お前、声がしないと思ったらやっぱり赤ずきんと一緒に行ってたのか…しかし猛獣使いってどういうことだ?犬も猿もキジも猛獣というには違わねぇか?」

人魚姫の声「違うってば、昔からいるおともじゃなくてさ。えーっと、桃太郎が乗ってた猛獣の名前…ねぇ赤ずきん、あの陸の獣なんていうんだっけ?」

赤ずきん「ライオンよ」

赤鬼「ライオンってお前…いやいや、ライオンだっつってもドロシーと一緒にいたあの臆病なライオンじゃあねぇんだろ?いくらなんでも、まさかなぁ?」

赤ずきん「そのまさかだから頭を抱えているのよ…」ハァ…

349: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:14:16 ID:sqG
赤鬼「待て待て!そりゃあまずいだろ、そのライオンがドロシーの仲間だってこと桃太郎は知ってるんだろ?」

赤ずきん「えぇ、もちろん。わかった上でライオンと行動を共にしているようよ、随分と仲良さそうに見えたわ」

人魚姫の声「兵士達も話してたしさ、戦場でも息がぴったりだったってさ。それに素出してたかんね。桃太郎」

赤鬼「素を出してたとなると、桃太郎はライオンの事をそれ相応に信用してるって事か…。言っちゃ悪いが罠じゃねぇのか?ドロシーもアリスもえげつないからな…」

赤ずきん「私も同じ考えよ。だから追い払おうとしてマスケットを向けたけど…桃太郎に咎められてしまったわ」フゥ…

人魚姫の声「『我が友に武器を向けるというのならば、拙者とて刃を抜く事に躊躇せぬ。それが例え、赤ずきん…お前であってもだ』」キリッ

人魚姫の声「とか言ってたからねー、ヘタレだったりキリッとしたり忙しいよね、桃太郎はさー」ヘラヘラ

赤鬼「とはいえいくつもの修羅場を越えてきた男だ、あいつも考え無しにライオンと行動を共にしているわけじゃないんだろうが…」

人魚姫の声「でも赤ずきんが睨みつけたら『い、いや…確かに悪い事してたかも知れないけども、根は悪い人じゃないって言うか…いや人じゃないけど…』って言ってたけどね、チョービビってたんですけど」ヘラヘラ

赤ずきん「やめて頂戴、それじゃ私が恐い女に聞こえるじゃないの。大体、あなたは何でもペラペラ言うから…私が恥ずかしい思いをするはめになるのよ」

人魚姫の声「まーだ赤ずきんの秘密ばらした事根に持ってんのー?いーじゃん、別に恥ずかしい事じゃないんだしさー」ヘラヘラ

赤ずきん「…とにかく赤鬼、そういう事なの。結局桃太郎はライオンと行動を共にするって聞かないし、まぁ気になる事もあったから戻ってきたけど…」

赤鬼「とりあえず、キモオタに伝えた方がよさそうだな。確かおはなしウォッチに通信するには強く念じりゃいいんだったか…」

赤ずきん「そうね……でもどうやら、こちらから連絡する必要はなさそうよ」

ピクッ

キモオタの声「赤ずきん殿ーwww赤鬼殿www今、いいでござるかwww」

350: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:15:54 ID:sqG
赤ずきん「…なんだか凄まじくぴったりなタイミングで連絡が来たわね」

赤鬼「オイラ達の会話、どっかで聞いてたんじゃねぇのか…?」

キモオタの声「ちょwww人を盗聴マンのように呼ぶのはやめていただきたいwww偶然偶然wwwもしやお主らも我輩になにやら用事があったのでござるかなwww」コポォ

猛毒の魔女「通信会話の魔法か。しかし二人とも随分と空に語りかけることが多いな。二人だけに声の聞こえる空気の精霊と赤鬼だけに聞こえる鬼神とやらの声、それにこの通信会話……」

魔法の鏡「事情を知らない人から見たら独り言が多すぎてヤバい奴等にしか見えませんけどね、二人とも外見からして目立ちますし」

赤ずきん「私達の事はいいから、まずはあなたの要件を聞くわ。何か私達に協力してほしい事があるんでしょう?」

キモオタの声「流石は赤ずきん殿話が早いwww確認でござるけど、今二人が居る世界は【白雪姫】の世界でござるよね?」

赤鬼「ああ、そうだ。【シンデレラ】の魔法使いに頼まれてな、魔法薬に精通してる猛毒の魔女…この世界の魔女に『魔法を打ち消す薬』を作って貰うように」

赤ずきん「私は会った事がないけれど、【ラプンツェル】の主人公が弱体の魔法を掛けられて困ってるって聞いたから。同じおとぎ話の主人公同士、助けない理由は無いものね」

キモオタの声「なるほどwwwそれは御苦労でござるな、ラプンツェル殿もきっと感謝してるでござるよwww」

赤ずきん「それで、用件は何?私達の居場所を確認する為だけに連絡をしたわけじゃないでしょう?」

キモオタに声「ああ、えっとでござるな…。ティンカーベル殿、予想通り二人とも【白雪姫】の世界にいたでござるけど、どうするでござるか…?」ヒソヒソ

ティンカーベルの声「うーん…事情を話さずに魔法の鏡だけ借りれないかな?私は人の事言えないけど、赤ずきんにドロシーの事言うのやめといた方が…」ヒソヒソ

赤ずきん「あら、なんの内緒話かしら?それに今、ドロシー…って聞こえたわよ、ティンク?」キッ

ティンカーベルの声「み、耳良いよね赤ずきん…」アワアワ

351: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:17:46 ID:sqG
赤ずきん「あなた達もドロシーについて新しい情報を手に入れたのかしら?それなら早く聞かせてほしいものね」

キモオタの声「ティンカーベル殿、もう隠す事に意味などなさそうでござるし…」

ティンカーベルの声「そうだね…。あのね赤ずきん、二人が協力してもらってる【白雪姫】の魔女って、魔法の鏡持ってるよね?何でも答えてくれる魔法の鏡」

赤ずきん「魔法の鏡…?ええ、持っているわね。というか、今その魔女の所にいるから魔法の鏡ならすぐ隣にあるけれど」

魔法の鏡「居るって言って欲しいですね赤ずきんさん。ある…なんてまるで私をモノのように扱うのは、ねぇ?」

猛毒の魔女「自我を持っているとは言ってもお前は私の魔法具…モノであることに変わりは無いのだぞ?」クックック

魔法の鏡「いやいやいや、こうして自我を持っているのならひとつの人格としてカウントして欲しいですよー」

赤ずきん「…で、魔法の鏡がどうしたの?」

ティンカーベルの声「ちょっと魔法の鏡に聞いてみたい事があって…。だから魔女にお願いして欲しいんだよ、その鏡を貸して欲しいって頼んで欲しいの」

赤鬼「なるほどな、そういう事なら任せとけ。なぁ、猛毒の魔女。オイラ達の連れが魔法の鏡を貸して欲しいらしいんだ。頼めないか?」

猛毒の魔女「気軽に言うがな赤鬼、魔法の鏡は私にとっても【白雪姫】にとっても大切な存在だ、おいそれと貸しだすわけにはいかないな。これは私の宝であり、私が唯一心の内を語る事の出来る話相手なのだからな」

魔法の鏡「マジですかご主人様…!私の事をそんな風に思ってくれてたなんて、超絶感動しましたよ…!」

猛毒の魔女「だが…先ほど会話の相手の名をティンカーベルと呼んでいたな?その名は既に消滅した【ピーターパン】の妖精の名だろう?」

猛毒の魔女「妖精の粉は貴重な素材。それは希少な薬の材料になる。妖精の粉をいくらか分けると約束できるのならばこんな鏡でよければいくらでも貸すと伝えてくれ、赤ずきん」

魔法の鏡「えっ…ちょっとさっきの感動なんなんですかそれ……」

352: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:19:05 ID:sqG
赤ずきん「ティンク、妖精の粉と引き換えならば貸しても構わないそうよ」

ティンカーベルの声「本当っ?うんうん、いいよいいよ。私にとっては妖精の粉なんてほっとけばいくらでも出てくるから、それでいいなら助かるよ」

キモオタの声「ほっとけばいくらでも出てくるとかwwwまるで耳クソと同じでござr

バチーン

赤鬼(なんか向こうで凄い音聞こえたが…)

赤ずきん「猛毒の魔女、交渉成立よ」

猛毒の魔女「それは喜ばしい。ほら、適当にその辺の布に包んで持っていくがいい。一応、割れないよう注意するようにな」

魔法の鏡「えぇぇ……適当に包めって……一応って……」ブツブツ

赤鬼「おう、じゃあオイラが包んでおくぞ。こう言うのは得意だからな」クルクルキュッキュ

赤ずきん「きっと急いでいるのよね?今からそっちへ向かうわ、ねぇティンク、場所は何処?」

ティンカーベルの声「えっとー…【かぐや姫】の世界、翁の屋敷の近くだよ」

赤ずきん「ええ、わかったわ。早速向かうわよ、赤鬼、人魚姫」スッ

人魚姫の声「オッケーオッケー!【かぐや姫】の世界にはどんなアクセサリーに出会えるか超楽しみなんですけどー」ワクワク

赤鬼「という事だ、すまんが…少し出てくるから鬼の薬の話は帰ってからにしてくれるか」

猛毒の魔女「むぅ…しかし妖精の粉が手に入るのならば仕方あるまい、少々ならば我慢するか。その間に頼まれていた薬をこしらえておこう」

魔法の鏡「その辺の布で包んだだけって……私の存在意義って……」ブツブツ


ヒュンッ

353: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:21:31 ID:sqG
かぐや姫の世界 竹取の翁の屋敷の近く

ヒュンッ

人魚姫の声「おーっ!ここが【かぐや姫】の世界!海底と違うのは当然だけどさ、なんだか私の世界の陸上とも違う感じでワクワクしちゃうんですけどー!」ワクワク

赤鬼「確かこの世界も日ノ本が舞台だったな、オイラにとっちゃあ懐かしい風景だな。しかし…でかい建物が多いな、貴族の敷地か…?」

赤ずきん「二人とも、観光に来たわけじゃないのよ?キモオタ達にすぐに会えればいいのだけど…」キョロキョロ

ティンカーベル「あっ、赤ずきんと赤鬼だ。おーい、こっちこっち。ありがとうねすぐに来てくれてー」

赤鬼「おう、ティンク!元気そうだなといいたいところだが…なんだかちょっと元気とは言い難いみたいだな?」

ティンカーベル「あはは、まぁね…ちょっと色々あってさー」

赤ずきん「ねぇ、キモオタは一緒じゃないの?さっきは声が聞こえていたのに」

ティンカーベル「そこに転がってるのがそうだよ。私の妖精の粉の事馬鹿にした罰だよ」フンッ

人魚姫の声「へぇー、日ノ本のトドはこんなところにまで這い上がってくるんだね。海は遠いみたいなのに超ビックリー」ヘラヘラ

赤鬼「いや、人魚姫。そいつはトドじゃない」

赤ずきん「トd…キモオタ、起きなさい」

キモオタ「お、おぉ…二人とも来ていたのでありますな……というか赤ずきん殿、今トドって言いかけt」

赤ずきん「気のせいよ。それよりも聞かせて頂戴、何故あなた達が魔法の鏡を欲したのか。どんな質問をするつもりなのか」

354: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:23:26 ID:sqG
・・・

赤鬼「待て待て!ドロシーのあの性格はアリスの魔法具で変化させられていただけで悪事を働いていたのは操られていただけ…だって言うのか?」

ティンカーベル「本人が言うにはね…だから魔法の鏡で本当か嘘なのかをはっきりさせたいんだ。絶対に真実しか言わない鏡が判断してくれたら、私も納得できるかもだから」

キモオタ「今までに得た情報と照らし合わせると限りなく真実のようなのでござるが…。ただ確実な情報が欲しいでござるから魔法の鏡をお借りしようとなったのでござるwww」

赤鬼「ちょ、ちょっと待ってくれ!なんなんだ今日は、信じられないことばっかり聞かされて…どうすりゃいいんだ。あいつに罪を働く気は無かったってことか?」

人魚姫の声「うんうんそっかそっか、なるほどー……うんっ!わかんない!私はよくわかんないから黙っとこっかなー」ヘラヘラ

赤鬼「…あぁ、そうしてくれ。ドロシーは赤ずきんにとって宿敵だ、こいつにとってドロシーの件は相当繊細な問題だからな…」ヒソヒソ

鬼神『フン。人間如きに何故気を使う?そもそもどんな理由があろうと、気に食わない相手を殺す事になんら問題は無い』

赤鬼「久しぶりに喋ったと思ったらお前はまた…話がややこしくなるから黙っててくれ…!」ヒソヒソ

赤ずきん「……」

ティンカーベル「ねぇ、赤ずきん。私達って同じだよね…二人ともドロシーに大切なおとぎ話を消されちゃったじゃない?」

赤ずきん「そうね、私の【赤ずきん】も【ピーターパン】もドロシー達が消滅させた。そこに悪意が無くても、それは事実ね」

ティンカーベル「私さ…どうしたらいいかわかんないよ。ピーターパン達の事考えたら絶対に認めたくないし許せない。でも、もしドロシーが言ってる事が本当だったら…っても少し思うし…
でもやっぱり私は認めたくないんだ……だってきっとみんな苦しい思いして消えちゃったし…」

ティンカーベル「ねぇ、赤ずきんは…どうする?やっぱりどんな事情があっても絶対に許さない?それとも、魔法具のせいだから仕方ないねってなる?納得、できる?」

赤ずきん「私…。私は……」

赤ずきん「……。ねぇ、キモオタ」

キモオタ「…なんでござるかな?」

赤ずきん「私達を案内してちょうだい。ドロシーの元へ…そのかぐや姫の屋敷にね。まずはそこで魔法の鏡を使ってみましょう。話はそれからよ」

355: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:25:25 ID:sqG
かぐや姫の世界 竹取の翁の屋敷


キモオタ「かぐや殿www悟空殿www玉龍殿にドロシー殿もwww先ほどは申し訳なかったでござるwww」コポォ

玉龍「いいッス!いいッス!玉龍ちゃん達全然気にしてないッスから!ノープロブレムッスよー!料理冷めちゃったッスけど、また来ると信じて片付けてなかったんスよ」アハハハ

悟空「なんでオメェが仕切ってんだ玉龍…。いやまぁ、気にする事じゃねぇってのはその通りなんだがよ、俺達もティンクには悪ぃ事したなって…なぁ?」

ティンカーベル「かぐやも悟空も…あと玉龍も、ごめん。私、もう取り乱さないから」

かぐや「ううん、私達も少し強引だったみたいね。あなたの気持ちには配慮したつもりだったんだけど」

ティンカーベル「いいよ、かぐやや悟空が私を無理やり納得させようとしたんじゃないってのはわかってるからさ。でも、私にとってはやっぱり簡単な問題じゃないんだ」

悟空「だろうな、俺にもわかるが自分の世界が奪われるってのは…いや、仲間や家族が奪われるってのはそう簡単には納得いかねぇもんだ」

悟空「…で、お前等が連れてきたそこの鬼と頭巾の嬢ちゃんもドロシーに世界を消されちまった口か?」

赤鬼「名乗りが遅れてすまん、赤鬼だ。オイラの世界はまだ消えちゃいない、消されちまったのはこっちの娘だ」

赤ずきん「赤ずきんと呼んでちょうだい。孫悟空といったわね…あなたが言うように、そこのドロシーに世界を消されてしまった一人よ」

ドロシー「あ、あの…赤ずきんちゃんには【人魚姫】の世界で酷い事しちゃって…その……ごめんなs」

赤ずきん「あら、おかしいわね。私があなたに酷い事をされたのは【人魚姫】の世界だけじゃないわよ?あなたの悪事がその世界だけのもののように言うのはずるいんじゃない?」

ドロシー「……ごめんなさい」ビクビク

赤鬼「おい、赤ずきん…お前の気持ちはよくわかるぞ、だが正直見てられねぇ…やめてやってくれ」

赤ずきん「……そうね、私はドロシーに悪 を付きに来たわけじゃないもの。赤鬼、魔法の鏡を出してちょうだい」

356: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:27:36 ID:sqG
赤鬼「ああ、わかった…この辺に掛けりゃあいいか?」スッ ガサゴソ

魔法の鏡「ちょ、赤鬼さん。そのでっぱりに引っかけるつもりならやめときましょ、安定しそうにないんで。それならまだ立てかけて貰った方がいいですよ。無理して床に落ちたりしたら私は文字通り木っ端みじんですからね?」

スッ

かぐや「自我を持つ鏡が登場するおとぎ話はいくつかあるけれど…あなたは【白雪姫】の魔法の鏡ね?」

魔法の鏡「どーも、アジアンビューティーな娘さん。えーっと、私が呼ばれた理由、ざっくり聞いてましたけど…まぁ何でも聞いてくださいな、きっちり真実答えるんで」

玉龍「で、どうするつもりなんすか?この鏡に質問するンスよね?意味あるんスかねぇ…ドロシーの言葉は真実ッスよ?」

キモオタ「まぁまぁ、まずはこの魔法の鏡殿にドロシー殿の言葉が真実かどうか尋ねるでござる」

キモオタ「我輩もほぼ確定で真実だとは思うでござるが……必ず真実を伝える魔法の鏡殿の言葉なら、二人も気持ちの整理が多少は付きやすいかと」

赤鬼「今まで敵対関係にあったドロシーに急に今までは操られてただけでした。って言われても、二人の心情としてはそう簡単には信じられないだろうからなぁ」

悟空「しかしよぉ、この魔法具で真偽がハッキリしたところでこの先どうするかを決めるのは二人だぜ?さすがにドロシーを攻撃するってなら俺達も黙って見てるわけにゃあいかねぇぜ?」

キモオタ「その点は大丈夫でござろう。二人とも…突然ドロシー殿を襲ったりはしないでござろう。もし仮にそうなったとしても、我々が止めるでござるよ」

ドロシー「……」オドオド

魔法の鏡「こっちは準備万端なんで、いつでもどうぞ。なんなら場を和ませる為にこの部屋で一番きれいな女の子決めちゃいます?」

ティンカーベル「ねぇ、赤ずきん…悪いんだけど、私聞くのなんかヤダ。赤ずきん、聞いてくれない?」

赤ずきん「ええ…いいわよ。それじゃあ教えて頂戴、魔法の鏡。ドロシーの言葉は…アリスの魔法具で性格を変化させられていただけというのは真実なの?」

魔法の鏡「……まぁ、なんていうかティンカーベルさんと赤ずきんさんには受け入れがたいとは思うんですけど……結果を言うとすれば、真実ですねこれ」

魔法の鏡「ドロシーさんはアリスさんの魔法具によって利用されてただけ。ドロシーさん自身には悪意は全然なかったようですね」

357: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:29:14 ID:sqG
ティンカーベル「……」

赤ずきん「……」

キモオタ「これで、ハッキリしましたな。ドロシー殿の言葉は真実であると」

ティンカーベル「そっか……そうなんだ……ピーターパン達、なんて思うかな……」

赤ずきん「……っ」ギュッ

ドロシー「あ、あの…二人とも、今まで本当にごm」

かぐや「ドロシー、今はやめておきましょ」スッ

ドロシー「……はい」

人魚姫の声「えっと、赤鬼…?なんでこんなお葬式みたいなムードになってんの…?さすがの私もこれはちょっと、盛り上げられないっていうか…」ヒソヒソ

赤鬼「…いいんだよ、盛り上げなくても。真実が分かった事で、二人とも怒りの矛先を向ける事に躊躇しちまってるんだ。今まではドロシーを倒す為だけに努力していたんだからな」ヒソヒソ

玉龍「もーっ!みんな暗いっすよー!この玉龍ちゃんがセクシーダンスでも踊っt」ムググ

悟空「…黙ってろ」

ティンカーベル「えっと…どうしよっか、キモオタ…?」

魔法の鏡「えーっと、ちょっといいですかね?本当は聞かれてない事まで教えるのは私の仕事じゃないんですけど。まぁ余計な事を一言だけ言うとしたら…」

魔法の鏡「ドロシーさんが二人に対して感じている罪悪感は間違いなく本物です、何としても罪を償いたいという思いに嘘やごまかしはないですよ」

358: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:31:11 ID:sqG
ティンカーベル「……魔法の鏡が言うんなら、本当なんだよね。それ」

魔法の鏡「嘘はつきませんよ、私は。ドロシーさんは心の底から悔やんでいます、二人を傷付けた事を…いえ、多くの世界を消した事を」

赤ずきん「それは真実なのね?」

魔法の鏡「ええ、私はそもそも嘘を語れないんですよ。私は自我がありますけど、そういう風に設定された魔法具ですからね、そこは逆らえません」

赤ずきん「……そう、わかったわ」フー…

赤ずきん「赤鬼、人魚姫。私の用事はすんだわ、帰りましょうか。魔女が待っているでしょうしね」スッ

赤鬼「お、おう…」

人魚姫の声「うん、でももういいわけ?」

ティンカーベル「待ってよ赤ずきん!本当にいいの?お婆ちゃんや猟師さんや、村の人たちが死んじゃったのはドロシー達のせいなんだよ?それを…わざとじゃないからって赤ずきんは納得できるの…?」

赤ずきん「……納得は出来ないわね」

ティンカーベル「だったら…なんで許せるの!?私だって理解は出来るけど、やっぱり納得するのには時間がかかりそうだもん…」

キモオタ「ティンカーベル殿…」

赤ずきん「……ドロシーはアリスに利用されていた。自我とは関係なく、悪事を働いていた」

赤ずきん「それを知ってしまったら…私はこれ以上ドロシーを責められないわ」

赤ずきん「私の大切な友人達も…一歩間違えれば、ドロシーと同じ道をたどっていたでしょうからね」

359: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:38:38 ID:i7R
ティンカーベル「それって…どういうこと?」

キモオタ「我輩には何となくわかりますな、赤鬼殿の…鬼神病の件でござろう?」

赤ずきん「…そうよ。赤鬼は病気のせいで鬼神の人格を植え付けられたでしょう?」

赤ずきん「鬼神化した赤鬼は、仲良くなりたかった村の人たちを襲った。結果として私達が居たから被害は建物だけで済んだけど…一歩間違えば多くの人を殺して【泣いた赤鬼】も消えていた」

赤鬼「…確かに、お前達が居なけりゃあオイラは自分の意思とは関係ないところで暴れちまってただろうな……」

赤ずきん「それに人魚姫もね…彼女自身が拒んでいたから大事にはならなかったけれど、人魚王は言葉巧みに娘達を利用して兵器にしていた」

赤ずきん「嘘の情報で憎しみを煽って、捻じ曲げた真実を信じさせて……知らず知らずのうちに罪の無い人間を殺させていた。事実彼女の姉は多くの人間を殺めているしね」

赤ずきん「人魚姫が結局そうなる事は無かったけれど、あの汚い王の策略でディーヴァになっていても不思議じゃなかった、少し間違えば罪の無い人間を殺す立場にいた」

人魚姫の声「まぁ…ね。私は絶対にそんなことしたくないけど、結局姉ちゃん達は兵器として利用されてたわけだし…可能性はゼロっては言いきれないか…」

赤ずきん「ティンク。私だってね、お婆ちゃんやママ、猟師さんの事を考えたら…どうしても怒りを鎮められないわ」

赤ずきん「でも…赤鬼も人魚姫も一歩間違えれば…ううん、ほんの少しのはずみでドロシーと同じ道をたどっていたのかもしれない」

赤ずきん「だとすれば……私にはもう、ドロシーを責められない」

赤ずきん「アリスに利用されたドロシーも、病に冒された赤鬼も、王に利用されかけた人魚姫も…結果として利用されたか、利用されずに済んだかだけの違いだけ…」

赤ずきん「ここでドロシーを撃ち殺す事は出来るかもしれないけれど、それは…私にはできないわ」

赤ずきん「二人が一歩間違えて罪を犯しても赤鬼や人魚姫を責めるなんて私にはできないでしょうし、そんな事したくないのよ」

360: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/07(月)00:42:01 ID:i7R
今日はここまでです

うまくまとまらなかった…もう少し先まで一気に書きたかったけど
続きは次回、きりわるくて申し訳ない
あと舌切りは赤ずきんのお婆ちゃんが聞かせたっていう名前だけの登場ですね

ここまでに出たおとぎ話紹介
【蛙の王子】
我儘で感じ悪いお姫様と小さな蛙のおとぎ話。
グリム童話のひとつ。姫が泉に落とした鞠を拾ってくる代わりに友達になって欲しいと頼む蛙、姫様は蛙を利用して鞠を拾います
約束なんか守るつもりの無い姫様でしたが、蛙との約束でも守るべきだと王様に叱られて嫌々蛙と過ごす事になります
蛙に対して思いっきり嫌悪感を向ける姫様でしたが、実は蛙の正体は……

赤ずきんが一人旅をしていた時に訪れたおとぎ話、消滅しかけていたところを赤ずきんが防いでいます
王子とはその時に出会い、自分のおとぎ話を助けてくれた赤ずきんにとても感謝しているようです
赤ずきんの旅を何かとバックアップしてくれているようです

かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

382: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:11:18 ID:QrI
赤ずきん「例えばの話だけど…私がここで憎しみに駆られてドロシーを撃ち殺したとしましょう。あるいはあなたが殺したと仮定しても良いわ」

ティンカーベル「…うん」

赤ずきん「私もあなたもずっとドロシーに復讐する事を考えて来たんだもの、殺してしまえば少しは恨みも晴れるでしょう。だけど……きっとそれだけよ」フルフル

ティンカーベル「……」

赤ずきん「彼女を殺しても何も変わらない、ただの自己満足」

赤ずきん「だってそうでしょう?自分の意思で悪事を働いていたのなたともかく、ドロシーは利用されていただけ…彼女が死んでも全ての元凶であるアリスは痛くも痒くもない」

ティンカーベル「…そうだね。例えドロシーをやっつけても、アリスはこの先も平気な顔しておとぎ話を消していくんだ」

赤ずきん「今回ハッキリした事は…おとぎ話を消滅させていた事もあちこちから魔法具を集めていた事も多くの人を殺した事も、その意思の全てはアリスにあるという事」

赤ずきん「ティンク。それを知ってしまった以上…私達が恨むべきはもうドロシーじゃない。摘み取るべき悪意は誰の心に根を張っているのか…見極めなければならないわ」

赤ずきん「操られていた彼女はナイフでしかない。そのナイフを振るうのも悪意を込めるのも道具を使う者の意思よ。この意味、解るでしょう…ティンク」

ティンカーベル「……。ねぇ、ドロシー」フワフワ

ドロシー「は、はいっ!な、なにかな…?」ドキドキ

ティンカーベル「あんたはアリスに利用されて、魔法の靴も取り上げられて仲間とも離れ離れにされて…性格まで捻じ曲げられてさ…酷い目にあってるよね」

ティンカーベル「そんなアリスの事。どう思ってるの?」

384: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:15:42 ID:QrI
ドロシー「え、えっと…アリスちゃんの事をどう思っているか?私が…?」

ティンカーベル「うん、あんたがどう思ってるか聞かせてよ。言っとくけど嘘ついてもばれるからね、魔法の鏡が居るんだから」

ドロシー「嘘なんか…つかないよ。魔法の鏡が居なくったって、そんなこと…」

ティンカーベル「じゃあ答えてよ、あいつのことどう思ってるの?」

ドロシー「……元々ね私達は旅の仲間だったの。竜巻に巻き込まれた私はエムおばさんが待ってるカンザスに帰る為、かかしは知恵を貰う為、ブリキは心を入れて貰う為、ライオンは勇気を貰う為…それぞれの願いを叶えて貰う為に大魔法使いだって呼ばれるオズ陛下の所へ旅をしてた」

ドロシー「アリスちゃんとはその旅の途中で出会ったの。かかしの事も馬鹿にしないし、ブリキにも優しい、ライオンの事も励ましてくれる優しい娘で…」

ドロシー「私より少し年上なだけなのに優しさも知識も勇気もあって、とても頼れる仲間だった。彼女のアドバイスに従っていれば、どんな困難も乗り越えられたから」

キモオタ「しかしそれはアリス殿が【オズの魔法使い】の筋書きを知っていたから、どう動けば最善なのかを知っていただけなのでござろうな……」

ドロシー「今思えば、そうだったんだよね…。でもその時はそんなこと知らないから、きっとアリスちゃんの思惑通り私達はみんな彼女の事を信用して…大切な仲間だと思ってた」

ドロシー「でも、今は違うよ。だから……ううん、いろんな世界やたくさんの人たちを傷付けた私に、こんな事を言う資格は無いんだけど……でも……」

ティンカーベル「いいよ、怒らないから言ってみてよ。あんたがどう思ってるか、本当の気持ちが聞きたいんだよ」

ドロシー「……。私は、アリスちゃんを許せない。私がまんまと良いように利用された事は、私が間抜けだったから…だからそれはいいの」

ドロシー「でも、優しいライオンに罪の無い人を襲わせた事や人を傷付ける為に知恵を使わされたかかし…」

ドロシー「利用されてる私の事を誰より気づかってくれた優しいブリキの心を踏みにじった事は……許せない」

ティンカーベル「……」

ドロシー「私は、大切な友達を傷付けたアリスちゃんが許せない。そして、それに気がつかずに利用されたままだった私自身の事も…許せない」

385: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:20:14 ID:QrI
玉龍「いやいやいや!あんたは魔法具で精神に干渉されてたんスから、気がつかないのは仕方ないッス。なにもあんたは悪くn」モゴモゴ

孫悟空「黙ってろって、内気なあいつの事だ、相当勇気出して口にしてんだろうからよぉ」ヒソヒソ

ドロシー「…でも、今の私には何もできない。魔法の靴も奪われて、仲間とも離れ離れになって…今はかぐやさんの付き人をしながら、傷つけてしまった人たちにどう償いをするか考えているけど…」

ドロシー「それも結局、何も案が浮かばないまま…時間だけが過ぎて行って…」

ティンカーベル「あんたも被害者だっていうのは認めるよ。でも利用されただけだから…本当は悪いなんて思って無いんじゃない?操られたから仕方ないじゃんって、内心思ってるんじゃないの?違う?」

キモオタ「ちょ、ちょ…いくらなんでもそんな言い方をする事はないでござろうティンカーベル殿」

ティンカーベル「ごめんキモオタ、私はドロシーに聞いてるの。だからドロシーが答えて」フイッ

ドロシー「…全然思っていないって言ったら嘘になる。なんでアリスちゃんに騙されてただけなのにこんな辛い思いをしなきゃなんないのって気持ちは…ある。ごめん…」

ティンカーベル「……」

ドロシー「でも、償いをしたいっていう気持ちに嘘はこれっぽっちも無いよ。消しちゃった世界や殺しちゃった人たちに私の事情は関係ないもん」

ドロシー「私に悪意があろうとなかろうと、利用されていようといまいと…被害を受けた人たちに酷い事をしたのは事実だから。だから私は…必ず償いをする、私はそう思うの」

魔法の鏡「あのー、ティンカーベルさん?彼女の言葉に嘘や偽りは一切…」

ティンカーベル「うん…それくらいは私にだってわかるよ。ドロシー、あんたの本音は解ったよ。ちゃんと嘘つかないで喋ってくれたね」スィーッ

ドロシー「赤ずきんさんはああ言ってくれたけど、ティンカーベルちゃんにとって私は憎むべき相手だから…正直で居る事も償いの一つかなって…」

387: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:24:37 ID:QrI
ティンカーベル「…全然駄目だよ、そんなんじゃ償いになんかなるわけないじゃん」フイッ

キモオタ「ティンカーベル殿!お主の気持ちは解るでござるけどさすがに…!」

ティンカーベル「私にいくら謝っても気を使っても償いなんかにならないよ。あんたが…ドロシーが本当に悪いって思ってるなら…ピーターパンに謝って欲しいな」

ドロシー「で、でも、ピーターパンさんはもう……」

ティンカーベル「大丈夫だよ。私ね、【アラビアンナイト】のシェヘラザードと約束してるんだ」

ティンカーベル「アリスを倒してこの事件が全部片付いたら魔法のランプを貸してくれるって約束。だから、アリスを何とか出来たら…【ピーターパン】は元通りにできるんだよ」

ドロシー「魔法のランプって魔人が願いを叶えてくれるっていう…それって本当?もしそれが本当なら……!」

ティンカーベル「本当だよ。ドロシーがホントの事喋ってくれたのに、私が嘘なんかつくわけないでしょ」プリプリ

ティンカーベル「それにドロシーがみんなに償いをしたいっていう気持ちは解ったよ、だからシェヘラザードにお願いしてドロシーにも魔法のランプを貸してあげるように頼んであげる」

ドロシー「え、えっと…それは凄く嬉しいけど、でも私にそんな資格…」

ティンカーベル「わたしがいいっていってるからいーの!そうすればドロシーが消しちゃった世界を元通りに出来るじゃん、それでその世界の人が許してくれるかどうかは解らないけど…でも、償いは出来るでしょ?」

ティンカーベル「私は、なんていうか…素直じゃないから、今もいろいろ言っちゃったけど…ドロシーが本当に悪いって思ってるならさ、その償いってやつ…手助けしてあげなくもないよ」フイッ

ドロシー「ティンカーベルちゃん…!」ジワッ

388: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:29:26 ID:QrI
ティンカーベル「だから、ドロシーは償いの為にアリスを止めなきゃなんだよ。それで、私達の目的もアリスを倒す事だから…目的は一緒なわけでしょ?」

ティンカーベル「だから…あれだよ、ほら…さっきは慣れ慣れしくするなって言っちゃったけど…私の事、ティンクでいいよ」ボソボソ

ドロシー「…っ!うん、うん…!一緒にアリスちゃんの事、止めようね!ティンクちゃん…!」ポロポロ

ティンカーベル「もーっ!なんでそんなボロボロ泣くのさー!赤ずきん、ハンカチ貸してあげてよもぉー!」

赤ずきん「ええ。ほら、使いなさい」スッ

ドロシー「えぐえぐっ、二人とも…私、酷いことしたのになんでこんなに優しくしてくれて…」ボロボロ

赤ずきん「私があなたを憎んでいたのは貴方に悪意があると思っていたからよ。それとも、どんな理由があろうと聞きいれて貰えないほど私達は意地の悪い連中だと思っていたのかしら?」クスクス

ティンカーベル「…うん、これでいいんだよね。ピーターパン…。ちゃんとアリス倒してみんなの仇は取るからさ、もうちょっと待っててよね」ボソッ

キモオタ「何か言いましたかなwwwティンカーベル殿www」

ティンカーベル「ううん、何でもないよ。あーあ、ピーターパンの仇打ち出来ると思ったのに残念だなぁー、私のスリングショットが火を吹くと思ったのになぁー」プイッ

キモオタ「ドゥフフwwwまたそんな強がりをwwwしっかし、あれだけキレていたでござるのにティンカーベル殿は優しいですなぁwww若干ツンデレ入ってましたがなwww」コポォ

ティンカーベル「ちゃ、茶化さないでよ!これでも、結構頑張って心の整理付けてるんだからね…」ゴニョゴニョ

キモオタ「ドゥフフwwwそうでござろうな、まぁ…我輩も、お主等が復讐心に支配されてしまう姿など見たくなかったでござるし、良かったでござるよwww」

ティンカーベル「…キモオタ。言っとくけど、うっかりアリスに捕まって邪悪なキモオタになって他のおとぎ話消したりしないでよね!」

キモオタ「大丈夫でござるよwwwそれに例えそうなったとしてもティンカーベル殿や赤ずきん殿は助けてくれるでござろう?www」

ティンカーベル「そんなの聞かなくても解るでしょ!もう、そういうのは黙っておいた方がかっこいいんだよっ!」プンス

389: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:33:12 ID:QrI
玉龍「いやーっ、女子同士の友情に玉龍ちゃん感動しちゃったッスよ!ドロシーも良かったじゃないっスか!ひとつ目的ができたんスから!」

ドロシー「う、うん。でも今のままじゃ私何もできないから…その目標の為にどうするか考えなくちゃ。折角声かけてくれたのに、足手まといは嫌だから…」

孫悟空「焦る事ねぇんだじっくり考えりゃいい、戦いの知識が必要なら協力してやれっから頼りゃいい。しかし残念だぜ、オメェが男だったら俺が棒術でも教えてやれたけどなぁ」ハハハ

玉龍「男だったら……棒術…っ!?それって卑 n」ガタッ

孫悟空「違ぇよ。座ってろお前」

かぐや「二人とも、ありがとうね。内心、穏やかじゃなかったでしょうけど…あなた達の言葉でドロシーは相当救われたはずよ。変わって礼を言うわ」

ティンカーベル「いいよ、そんなの…私も結構酷い事言っちゃったわけだし…」

赤ずきん「まぁ、その辺りはお互い様のような気もするけどね。私も礼を言われるような事はしていないわ」

かぐや「そうかしら?事実を知っても受け入れる事ってなかなか難しい事よ、その年齢でそれができるなんて…相当苦労したのね赤ずきんちゃん」フフッ

赤ずきん「なんてことないわ。身近にドロシーと同じ境遇になる可能性のある仲間が二人も居た、それだけのことよ」

かぐや「うふふ、謙遜しなくても良いじゃない。赤ずきんちゃん、赤鬼さん。そして見えないけれど…人魚姫さんも居るのよね?あなた達の膳もすぐに用意して貰うからどうかゆっくりしていって」ウフフ

人魚姫の声「日ノ本の食べ物!陸地って場所によって食べ物違うから超面白いよね、海中は大体海草とかだけど。あぁー!食べられないのがすっごい残念なんですけどー!」

赤鬼「久々に日ノ本の食べ物にありつけるってのは魅力的だが…あまり長居もしていられねぇんだ。折角の誘いを断っちまって悪いんだが…」

かぐや「あら、そう?それは残念ね」

赤ずきん「猛毒の魔女も待っているしね。それに他にすべきこともあるし、食事はまたの機会に誘ってもらえると嬉しいわ」

390: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:36:13 ID:QrI
かぐや「えぇ、それなら次の機会に誘わせてもらうわね」ウフフ

赤ずきん「ええ、是非。あぁ、キモオタにティンク…あなた達はしばらくここにいるんでしょう?何か新しい情報が手に入ったら教えて頂戴ね」

キモオタ「モチのロンですぞwwwまたおはなしウォッチで連絡させていただきますぞwww」

赤ずきん「あぁ…それと、ドロシー。実はね、私はついさっきあなたの友人のライオンに会ったのよ」

ドロシー「ライオンに…!?あのこ私よりもずっと臆病なところあるから辛い思いしてなかったらいいけど…!あの、ライオンは何処に?」ガタッ

赤ずきん「【蛙の王子】の世界よ。たまたま滞在している桃太郎と知り合ったらしくてね。私は二言三言会話した程度だけど、元気そうだったわよ」

ドロシー「元気そうならよかった…。でも、私に付き合って悪い事をたくさんさせちゃったから酷い目にあったりしてたら…」ビクビク

赤ずきん「少なくとも歓迎されていたわよ?あの様子だと桃太郎としばらく行動を共にするんじゃない?『ドロシーちゃんの為に強くなりたい』…なんて言っていたしね」

ドロシー「争い苦手なのに…私の為になんて…」

赤ずきん「会いたいのなら行ってみたらどう?まぁ、その辺りは貴方に任せるわ」

孫悟空「もう行っちまうか、この世界じゃ日ノ本の鬼なんざなかなか会えねぇから手合わせ願いたかったがなぁ」ハハハ

赤鬼「いや、オイラは鬼だが戦いよりは茶を煎れている方g」

鬼神『待て、何故断る?その者は伸縮自在の武器を持つ上に不老不死なのだろう?その上神々を打ち殺す胆力まである。我を出せ!その様な強敵と戦う好機を逃すなどあり得ん』

赤鬼「あり得んのはお前だよ。なんであいつ等が穏便に話を済ませたのに関係ないところで争うんだよ…」

鬼神『強敵と戦う事に理由など必要か?否、理由など無用』

赤鬼「赤ずきん、人魚姫それじゃあ帰るとするか。また何か協力してほしけりゃ遠慮なく呼んでくれ」シュルシュルキュッキュ

スタスタスタ

鬼神『青二才め…!裸の王といい神殺しの猿人といい…強敵を目の前にして何も出来ぬとは口惜しい…!』ギリッ

391: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:40:46 ID:QrI
かぐや姫の世界 屋敷の外

人魚姫の声「でも意外だったなー。赤ずきんはいっつもドロシー殺すドロシー殺す言ってたから、絶対に許さないと思ってたんですけどー?」

赤ずきん「そんな事言ってないわよ。まぁ恨んではいたけれど…言ったでしょ、私は恨む対象を間違えていただけよ」

赤鬼「まぁ、オイラも人魚姫と同意見だな。正直、ドロシーに悪意が無くてもマスケットを抜くとは思ったぞ」ガハハ

赤ずきん「あなた達のイメージなんなのよ…どれだけ気性が荒い女なのかしらね、私は」フゥ

魔法の鏡「いや、でもまぁ赤ずきんさんは正直気性荒い方ですよね」

赤ずきん「赤鬼、その鏡私が持ってあげましょうか?もしかしたら落としてしまうかもしれないけれど、事故なら猛毒の魔女も許してくれるでしょう」

魔法の鏡「ちょ、やめてくださいよ人の命が掛かってるんですよ!」

赤ずきん「冗談よ」フイッ

人魚姫の声「でもさぁ、赤ずきんがドロシーに優しくして挙げられたのって…言ってみれば、私や赤鬼の境遇を近くで見てたからだよねー?」

赤鬼「あぁ…あれなぁ、そう考えりゃオイラも人魚姫もドロシーの事は人ごとじゃねぇ訳だしな…」

赤ずきん「ただでさえ種族の違いで悩んでるのに、流石にあなた達が周囲に恨まれて疎まれて…なんて考えたくも無いわ。ドロシーを否定すれば、あなた達を否定する事になるしね」

魔法の鏡「いやー、気性は荒いけど赤ずきんさんは本当に優しいですよね。その優しさをもっと前面に出せばもっとモテますよ!ツンを隠してデレを前面に出すんですよ!」

赤ずきん「…赤鬼、やっぱり私が持つわね。叩きつけない様には気を付けるから」

魔法の鏡「フォローしたのに!?というか叩きつけって言っちゃってるじゃないですか!渡しては駄目ですよ赤鬼さん、あなただけが頼りなんですよ!」

赤鬼「はっはっは…赤ずきんは大人なんだか子供なんだかわかんねぇなぁ」アハハ

人魚姫の声「まっ、私はどっちの赤ずきんもスキだけどねー」ヘラヘラ

・・・

392: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:45:07 ID:QrI
かぐや姫の世界 竹取の翁の屋敷

孫悟空「しっかし残念だったぜ、あの赤鬼って野郎…戦いは好まないみたいに言ってたが、ありゃあ相当な力を隠し持ってるぜ」

キモオタ「流石は孫悟空殿www手合わせをしたわけじゃないのに解るんですかなwww」

孫悟空「まぁな。戦ってばかりいるとな、相手の力量が見えてくるもんだぜ。だがあいつは妙だったな、なんつぅか一人の鬼だってのに複数の力が織り交ざってるって感じだったぜ」

ティンカーベル「まぁ、赤鬼の場合間違いじゃないけどね!っていうかみんなでご飯食べられたらよかったのにねー」

ドロシー「赤ずきんちゃんと、色々お話をしたかったけど…忙しいみたいだから仕方がないよね」

かぐや「そうね、それにドロシーは目的は決まっても手段が決まってないのだからそれもどうにかしなければね」ウフフ

ドロシー「でも戦う姿なんか自分でも想像できないし…かといって悟空さんみたいに妖術が使えるわけでもかぐやさんみたいな魔法も、玉龍ちゃんみたいに変化も出来ないし…」

キモオタ「なんなら肉体改造のパイオニアを紹介しますかな?www実は我輩の友人の少年も、今その王の元に行っているのでござるよwww」

ティンカーベル「ちょ、駄目だよ!なんで女の子に筋肉付けるタイプの鍛錬を紹介するの!?」

ドロシー「キモオタさんの気持ちは嬉しいんですけど…きっと筋肉付かないと思います。実家でもあんまり力仕事とか苦手だったし…」

ティンカーベル「ほらー!いらない心配させちゃったじゃん!人に鍛錬勧める前にデリカシーを学んで欲しいよ!」

キモオタ「前々から思っていたでござるがティンカーベル殿は我輩にだけ辛辣でござるよねwwwもしかして嫌われてるのでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「違うよ。友達だからこそ言ってるんだよ」フイッ

ドロシー「でも…それじゃあ私はどうすれば…」

玉龍「悩む事はないんスよ。女の子の役目は可愛くあること、それに尽きるッス」ドヤァ

孫悟空「うるせぇよお前…っつぅかその顔やめろ」

393: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:49:59 ID:QrI
かぐや「身体を鍛えられないなら知識面ね。戦いが激化すれば治療は必ず必要になるもの、専門的じゃなくても処置の方法を知っているだけでも随分違うわよ?」

ドロシー「包帯巻いたりとか…薬の知識とか…?」

かぐや「ええ、何も戦うだけが協力じゃないでしょう?臆病なあなたならまずは辛いの痛いのを治したいって思うでしょ?」ウフフ

ドロシー「うん、確かに…それなら私も頑張れそう…」

孫悟空「治療できるやつってのは重宝するからな。うちはお師匠や沙悟浄がもっぱらその担当だったな」

キモオタ「そういえば仲間で思い出したでござるけど、ドロシー殿…ライオン殿の元には行かないのでござるか?」

ドロシー「えっと…本当はすぐにでも行きたい、行きたいけど…今みんなに会っちゃうと甘えちゃいそうだから、もう少し我慢しようかなって…」

ティンカーベル「別にいんじゃない?友達が一緒の方が励みになったりしない?」

ドロシー「うーん…それにきっとブリキは私が戦いに協力する事反対するし…。ライオンが無事ならブリキもかかしもきっとうまくやってると思うから…今は会わないでおくの」

ドロシー「きっとみんなも…離れ離れでも、それぞれ頑張ってるはずだから」

かぐや「そうだろうね、ドロシーも早速頑張らないといけないわね。頑張っている友達に負けないように」フフッ

ドロシー「はいっ、また迷惑かけちゃいますけど…いろいろ教えてくださいね、かぐやさん」ペコッ

キモオタ「ドゥフフwwwしっかし、こっちバージョンのドロシー殿はしおらしくてかわゆすなぁwww」コポォ

ティンカーベル「っていうかさ、私も赤ずきんももうドロシーを責めるつもり無いけど……」

ティンカーベル「悟空もかぐやも玉龍も…なんだかドロシーに優しいっていうか…とっても理解がある感じだよね、なんか理由あるの?」

394: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:53:36 ID:QrI
キモオタ「どうしたでござるかwwwそんな事言いだしてwww」

ティンカーベル「別にいいんだよ?ただなんとなーく、気になっちゃってさ」

ティンカーベル「ドロシーが利用されてたとはいえ悪いことさせられてたって事は知ってたわけでしょ?そしたらちょっとくらい警戒してもおかしくないと思って」

ティンカーベル「ほら、特に悟空もかぐやも別のおとぎ話の奴のせいで酷い目に会ってたわけだし…ほらあの名前が覚えにくい奴!カンパンみたいな名前のやつ!」

キモオタ「カンパンってwwwそう言われば、ルンペンシュトロハイム殿に利用されていたんでござったな悟空殿は…玉龍殿も捕まって、かぐや殿も人質に…確かに警戒してもおかしくないですぞ」

玉龍「あの乙女に対してデリカシーの無いチビッスよね?確かそいつの名前、ルンルンしゅらしゅしゅしゅじゃなかったッスか?」

孫悟空「ルンペンシュティルツヒェンな。お前ら忘れんじゃねぇよ!あいつの名前を覚えてる事が唯一の対策だってのに…」

ドロシー「でも、私も気になります。なんでかぐやさん達は私にこんなに優しくしてくれるのか…」

かぐや「…そうねぇ、別に隠すような事でも無いし行っても構わないのだけどね。あなたが気を使うかもと思ってね」クスクス

ドロシー「じゃあやっぱり何か理由があるって事ですか…?」

孫悟空「俺もかぐやも玉龍もな、共通点があるんだよ」

キモオタ「共通点でござるかwwwそれは一体www」

かぐや「過去に大きな罪を犯して…今はその償いをしているのよ。私も、悟空達もね」

ドロシー「罪…私、知らなかった…助けて貰ってるばっかりで…」

かぐや「もう、そんな事気にしないの。だから償いをしようとしてる…罪と向き合おうとしているドロシーの事を他人事だと思えなかったのよ」ウフフ

395: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:57:44 ID:QrI
ティンカーベル「罪を犯した…っていうけどさ、誰だって罪ぐらい犯すんじゃない?私だってこの間キモオタの分のプリン…あ、お菓子ね。それ黙って食べたし」

キモオタ「ちょwwwあれやっぱりお主だったでござるかwwwうっかり食べて忘れたと思っていたでござるのにwww」コポォ

孫悟空「あのなぁ…そんな些細な罪じゃねぇんだよ。菓子を食ったの食ってないだのと一緒にされてもなぁ…」

キモオタ「良ければ何をしでかしてしまったのか教えて貰えますかな?いや、言いたくなければ良いのでござるけど…」

孫悟空「いや、俺の場合は【西遊記】で師匠と旅をしている理由その物だしな、隠す理由なんざねぇよ」

ドロシー「悟空さん優しいのに、どんな事を…」ドキドキ

孫悟空「細かく話すと長くなっちまうんだが…まぁ、俺も昔は相当な暴れ者だったんだよ。すぐに暴力をい振るって気にいらなけりゃあ殺してたんだ」

孫悟空「あんまりやりたい放題やっちまったせいで、天界の連中に目を付けられちまったんだがな。俺は天界でも天界人相手に大立ち回り。数え切れないほど殺しちまった」

孫悟空「俺の武器…如意棒もな、元々は竜宮って所の宝物だったんだが。それを強引に奪っちまった、まぁ盗品だな」

ティンカーベル「粗暴な見た目そのまんまって感じだねぇ…」

孫悟空「結局、業を煮やした天界人はお釈迦様に頼んで俺を封じる事にした。そっからは数百年山の下敷きよ。そこで師匠…三蔵法師と出会って、無理矢理償いの旅をさせられた」

キモオタ「ちょwww無理矢理ってお主結局償うつもりなんかさらさらないでござるなそれwww」

孫悟空「その時はな…だがまぁ、いやいやでもお師匠と旅をするうちに少しずつ考えが変わって来てな。天竺まで、このお師匠について償いの旅をするって決心がついたんだ」

孫悟空「結局はアリスによって消されちまったから俺の償いは途中なんだがな」

かぐや「その割には今も随分粗暴だと思うわよ?」クスクス

孫悟空「うるせぇよ。これでもかなり丸くなった方なんだよ」

396: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)00:59:00 ID:QrI
玉龍「そうッスねぇ、初めて会った時はセンパイかなり乱暴だったッスからねぇ…玉龍ちゃんもボコボコにされたッスよ。まぁ今思えば…それが恋の始まりッスね」

ドロシー「そ、そうなんだ…わたしにはちょっと理解出来ないけどそういう恋愛も…」

孫悟空「始まってねぇしドロシーはそいつの言う事鵜呑みにすんな」

ティンカーベル「でも玉龍ちゃんに手を上げたっていうのは本当なんでしょ?それは酷いよ!女の子に乱暴するなんてサイッテー!」

キモオタ「男の風上にも置けないっですなwww」

孫悟空「お前らなぁ…言おう言おうと思っていたけどよぉ、こいつは龍は龍でも竜王の子。言わば龍の世界の王族、そしてそこの皇子だぞ?」

キモオタ「皇子…?っていうことは玉龍殿お主…」

玉龍「フッフッフ…そうなんスよ?こう見えて王族のお姫様ッスよ~?」

孫悟空「姫じゃねぇ。皇子だろうが、誤魔化すな」

ドロシー「ってことは男の子って事じゃないですか…!えっ、なんで言ってくれないんですかかぐやさん!玉龍ちゃんの前で着替えとかしちゃって…あわわわ」

かぐや「あら、別に良いじゃない?玉龍は女の子の姿なんだし、悟空にしか興味ないわよ?」ウフフ

ティンカーベル「うわぁ…悟空男なのに……」ヒキヒキ

孫悟空「なんで俺がおかしいみたいになんだよ!こいつだこいつ!」

キモオタ「玉龍殿は男の娘だったとwwwしかしなぜそのような少女の姿をwww」

玉龍「そりゃあ可愛い方が良いッスからね!っていうか別に性別なんて些細なことッスよー。股間に如意棒があるかないか、それだけの事ッスよ」ヘラヘラ

孫悟空「おい!その例え二度と使うんじゃねぇぞ!」バンッ

397: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)01:02:24 ID:QrI
玉龍「ちなみに玉龍ちゃんもお師匠様について償いの旅をしてたんスよ!」

ドロシー「玉龍ちゃんは…何をしたの?」

玉龍「ちょっと嫌な事があったもんッスから、はずみでお父様の王宮を丸焼きにしてやったッス」アハハ

キモオタ「ちょwww軽々しく言っておりますが八つ当たりの放火ではござらんかwww」コポォ

玉龍「その時にお父様が大切にしてる龍族の宝物の龍玉まで燃えちゃったんスよ。それでもうお父様ブチ切れで…いやーっ、大変だったッス」ケラケラ

かぐや「いつ聞いてもいっそ清々しい程の八つ当たりね」クスクス

ティンカーベル「何か個人的には悟空よりずっと反省すべきだと思うけど」

玉龍「あはは。若さゆえの過ちッスよ~…そんで結局死刑になったんスけどね」

孫悟空「軽く言う事じゃねぇだろ…。まぁ、そこを助けて貰ってお師匠の馬として天竺への旅の手助けをする事になったんだったな?」

玉龍「そうッス!さっすがセンパイ!うちの事はなんでも知っててくれるんスね!玉龍感激ッスよ~」スリスリ

孫悟空「いや、俺そこにいただろ。まだお師匠と二人旅の時、腹を空かせたお前がお師匠の馬を食っちまってよぉ…お師匠ビビって大変だったんだぜ、お前逃げるし」

玉龍「懐かしいっすね!まぁ、お父様には悪かったなとは思ってるッス。でもそのおかげでお師匠やハゲや豚、先輩にも会えた訳ッスし…まぁ、償いはするッスけど。得るものもあったッスよ」

孫悟空「そう思えるって事はオメェもちゃんと反省してるって事か?ならいいけどよ」

玉龍「それにこんな可愛い姿で大好きなセンパイと居られるッスからね!これからもよろしくッスセンパーイ」スリスリ

ティンカーベル「うわぁ…」ヒキヒキ

孫悟空「頼むからよぉ、俺が変 みたいな目で見るのはやめてくれティンカーベル」ハァ…

398: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/14(月)01:03:55 ID:QrI
玉龍「さーって、先輩もウチも喋ったんスから!最期はかぐやの番ッスよ!」

かぐや「そうねぇ…私の話、正直聞いていて気持ちの良いものじゃないしなぁ…」

孫悟空「いや、別に喋りたくねぇならいう必要はねぇからな。かぐや」

ティンカーベル「うん、そうだよね。そうだけど…かぐやって確か月の民なんだよね?そんなかぐやがこの地球にいる理由も気になるし、ぶっちゃけ知りたいよね」

キモオタ「ちょwww完全な興味本位wwwまぁ、同意しますがなwwwかぐや殿のような方が罪を犯すなどwww想像できませんぞwww」

ドロシー「私は…かぐやさんが喋りたくないなら、あの大丈夫ですけど…ちょっぴり気になります」

かぐや「ふふっ、いいのよ。別に隠すつもりなんか無いし。でも何処から話すべきかしら」

かぐや「私の罪がなんなのか話す前に…あるおとぎ話の存在を知って貰わなければね」

キモオタ「ほう、なにやら別のおとぎ話が係わっているのでござるかなwww」

かぐや「ええ、私の罪は…ネロという少年に気付かされたの」

ティンカーベル「ネロ…?聞いたことないけど、もう消滅しちゃってるのかな…?」

かぐや「うん、消滅してるわね」

かぐや「【フランダースの犬】というおとぎ話。主人公のネロが犯罪の濡れ衣を着せられ、大好きなお爺ちゃんと死に別れ…努力が報われないまま、死んでいく…そんな内容よ」

キモオタ「なんというか…もうあらすじだけで悲惨というか。そのおとぎ話はもしや【マッチ売りの少女】と同じ、辛い結末の……」

かぐや「……」

ドタドタドタ

女中「かぐや様…!お逃げください!」

かぐや「騒がしいですね。何事でしょうか…?」

女中「なにやら村の方に見慣れぬ襲撃者が現れたとかで…!何でも異国のかぶりものを頭にのせているようで、その…なんともうしますか…」

かぐや「いかがしました…?」

女中「その襲撃者は…男のようなのですが、言動が女性じみているというか気色悪い風貌のようでして……とにかく危険です!お逃げください!」

427: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:17:49 ID:Sre
ティンカーベル「気色悪い襲撃者…?」チラッ

キモオタ「ちょwwwなんでこっち見るのでござるかwww我輩ではないですぞwww」コポォ

玉龍「ちょっといいッスか?さっき見慣れない襲撃者って言ってたっすけど…村を襲ったのはいつもの連中じゃないんスか?」

女中「は、はい。伝え聞いた話では恐らく異国の者だろうということで…いつものならず者達では無いようです」

玉龍「そッスか、そうなるとウチとセンパイは村に急いだ方がいいかもッスね。あいつらならともかく、素性も力量も解らないよそ者相手だとのんびりしてられないッスよ?」

ティンカーベル「いつもの…って、この辺りの村はそんなによく襲われるの?」

かぐや「えぇ、お恥ずかしながら…この辺りはまだあまり治安が良いとはいえません、貧しい暮らしをしている方々も多く…時折村を襲うならず者が村はずれに根城を構えている始末でして…」

キモオタ「この時代ならば当然と言えば当然でござるか、貧富の差も激しいでしょうしな。しかし、悟空殿にかかればならず者など一捻りでござろうwww」

孫悟空「おうよ、前に俺がとっちめてやってからそいつらは随分大人しくなったぜ。だがな、今回はそいつらじゃねぇ余所者だってぇと厄介だな」

かぐや「異国の襲撃者…いいえ、襲撃者の正体は異世界の民であると考えるべきでございましょう」

キモオタ「異世界の…。それはつまり…別のおとぎ話からの襲撃者だという事でござるな?」

孫悟空「可能性としちゃあアリスの一派と考えるのが普通だな。だが今は何が起きてもおかしくない状況だ、実際見てみねぇ事にはなんとも言えねぇ、とにかく村に急ぐしかねぇな」

かぐや「そうですね…悟空と玉龍は一足先に村へお願いいたします。私もキモオタ様達と共に参りますので」

女中「お待ちください!相手は得体の知れぬ襲撃者!かぐや様がその身を危険に晒すなどいけませぬ!どうかお逃げを…そうでなければ私、旦那様にあわせる顔が御座いませぬ!」

かぐや「あわせる顔が無い…とはどういう意味でしょうか?お爺様はどうなさったのですか?もちろん、既に安全な場所へお逃げになられたのでしょう?」

女中「…いえ、逃げてなどおりませぬ。旦那様は何本もの竹槍を抱え、お一人で村の方へ駆けて行かれました……!」

428: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:19:51 ID:Sre
かぐや「お、お爺様が一人で村へ向かった…?どうして…そんな事を…っ!」

女中「村に襲撃者が現れた事をお伝えした途端…『村で食い止めなければそやつはかぐやに危害を加えるかもしれん』と…。止める間も無く出て行かれまして…」

かぐや「止める間が無くても止めるべきでしょう…!相手は得体の知れない異国の…異世界の人間、どんな恐ろしい力を持っているかも解らないのよ!?」バッ

女中「し、しかし…私の制止も振り切られてしまい…。それにかぐや様の身の安全を第一に避難を誘導するように命じられましたので…」

かぐや「どうして…!あなた、どうしてお爺様を止めなかったの!?お爺様にもしもの事があったら…私は、私は…!」グイッ

女中「うぐぐ…も、申し訳ございません。ですがどうか、どうかお放しください…!」グググ

ドロシー「だ、だめですかぐやさん…!女中さんは何も悪くないです!うぅ…こんな風に感情的になるかぐやさん初めて見ました…い、いつものように冷静になってください…」オドオド

ティンカーベル「そうだよ!かぐや、落ち付こうよ!その人に当たったってどうにもならないってば!」

かぐや「…そうですね、失礼しました。あなたももうお逃げなさい、悟空に任せておけば私の身に危険など及ぶはずもありませんから」

女中「は、はい…!では悟空様、よろしくお願いいたします…。で、では私もこれで失礼いたします!」スタスタスタ

ドロシー「かぐやさん……」

かぐや「……村へ急ぎましょう、お爺様の事が心配よ」スッ

ドロシー「驚きました…かぐやさんがあんな風に取り乱すなんて…」

キモオタ「それだけ翁殿が大切なのでござろう。しかし、本当に相手がアリス殿の仲間ならば急がねばなりませんぞ!」

孫悟空「ったくあのジジィ…!戦いは俺に任せとけって言ったってのに無茶しやがって!ここは俺が先に行ってジジィを…」

玉龍「待つッス!スピードだけならウチのが早いッス、ウチが先に行ってジーさんを止めるッスよ!だから悟空はかぐや達と一緒にくるッス!」

429: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:23:57 ID:Sre
孫悟空「確かに村まで駆けるだけってならオメェのが早ぇな。よしっ、ここはオメェに任せるぜ玉龍!」

玉龍「任せるッスよ!姿は違えどウチは龍ッス、瞬く間にジーさんに追いついて見せるッスよぉー!」シュバッ

かぐや「私も先に村へ行くわね……悟空、キモオタ君達を村へ案内してあげて。玉龍ちゃんは確かに素早いけれど、私の方が彼女よりずっと早く村に着けるから」スッ

コォォォォォ

ティンカーベル「わわっ、何あれ…!かぐやの身体が光に包まれていくよ!?」

ドロシー「私、かぐやさんに聞いた事があります…!月の民は自分の姿を光や影に変える事が出来るって…!」

キモオタ「つい忘れておりましたがかぐや殿も月の民…光となれば文字通り光速で移動ができるという事でござるか!」

孫悟空「こいつは毎度毎度…かぐや!お前が焦っちまうのも解るが、村人がまだ残ってたらどうすんだ!?お前が持つ月の民の能力がバレりゃ面倒な事になる!」

かぐや「その時はその時でしょう、今は何よりもお爺様と村の人たちを助ける事を優先すべきでしょう。正体がバレて私の立場が悪くなったとしてもそんな事は些細な事よ」コォォォ

孫悟空「落ち着け馬鹿野郎!テメェの立場が危うくなりゃあ【かぐや姫】だって消えちまうかもしれねぇんだぞ!?テメェはもっと冷静に物事を考えられる女だろうが!」ズイッ

キモオタ「ちょ、悟空殿!お主こそ落ち着くでござるよ、それにかぐや殿も冷静になるべきですぞ、お二方ともほら深呼吸をしてですな…」スーハー

孫悟空「かぐや!一時の感情の高ぶりで自らに課した使命を投げ出すってのか!?テメェの償いってのは感情で左右されるその程度のもんなのか!あぁ?」バンッ

かぐや「そんなこと聞かないで、当然違うわ。私は罪を償う為に【かぐや姫】を結末に導かなきゃならない、でも…だからといって育ててくれたお爺様やお婆様を見捨てるなんて出来ないわ」シュゥゥゥ

孫悟空「だったらもっとあいつを信じろ、玉龍はベタベタしてきやがるし心底ふざけた野郎だが実力は本物だ。あいつのおかげで俺達一行は救われたことだってあんだ」

孫悟空「お前がバーさんやジジィを何より大切にしてるのは知ってるぜ、だからこそ冷静さを欠いて【かぐや姫】を消しちまうなんざしてほしくねぇ。
それにな、あいつを信頼してんなら光になんざならなくともお前自身の足で追いかけりゃあ十分だ。焦る事なんざねぇんだよ、冷静になれかぐや」

かぐや「…確かにここで焦って【かぐや姫】が消えてしまえば本末転倒ね。それは解ってるわ、解っているけど…それでも私はお爺様の事が心配でたまらないのよ」

孫悟空「安心しろ、あいつは必ずジジィを救って襲撃者を食い止めてるだろうよ。なにしろあいつは俺の後輩、高僧・三蔵法師の供の一人だ。さて、俺達も後を追うぞ」

430: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:25:32 ID:Sre
かぐや姫の世界 村へ続く道

・・・

タッタッタッタ

孫悟空「よぉし!もうじき村が見えてくるはずだ、急ぐぞテメェ等!」ヒュヒュヒュッ

かぐや「キモオタ君、ティンクちゃん。襲撃を受けているという村はこっちよ。はぐれずについて来ているわね?」タッタッタ

ティンカーベル「ほらほら!キモオタ急いで急いで!」フワフワ

キモオタ「ちょ、ティンカーベル殿はともかくかぐや殿も悟空殿も走るの速いでござるよ!我輩、ついて行くのが精一杯ですぞ!」ゼェゼェ

ドロシー「あ、あのっ…悟空さん、抱えて貰っちゃってすいません…。私、走るの早くないしそれに体重だって重いから…大変ですよね」

孫悟空「気にすんな、お前なんざ軽いもんよ。つーか、女って奴はどーして身体の重さなんざ気にするんだ?ある程度重い方が攻撃の威力も増すし安定するってのに…」

キモオタ「女子とはそういうもんでござるよwwwというかドロシー殿で重かったら我輩なんかもうマジでヤバい体重ですぞwww」ゼェゼェ

ティンカーベル「もーっ!無駄口叩いてないで急ぐよ!もたもたしたら翁も玉龍も危ないんだからね!しんどいならおはなしサイリウムで早く走れるようになればいいじゃん!」

キモオタ「もう使ってますぞwww簡単に言うでござるがこれ結構細かい速度調整がむずかしいのでござるよwww道路も舗装されていないでござるしwww」

孫悟空「ったく、男がこんぐらいの距離走った程度で何弱音吐いてやがんだ」

かぐや「…ここまで誰ともすれ違っていない…村の人たちはもう逃げ切ったのかしら、それとも…」ブツブツ

ドロシー「かぐやさん、お爺さんの事も不安なはずなのに村の人たちの事も心配してる…」

孫悟空「考え込むなかぐや、逆に死体も怪我人も転がって無ぇんだからいい方だと考えりゃいい。それにジジィもお前残して死ぬなんざ考えはねぇだろうしな」

かぐや「そうは言うけれどね悟空…。お爺様、近頃腰痛が辛いって言っていたから腰痛が悪化して動けなくなったりしていなければいいけど…」

431: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:28:06 ID:Sre
キモオタ「それにしてもwwwかぐや殿は冷静なお姉さんタイプだと思っておりましたがwww翁殿が絡むと途端にポンコツになりますなぁwww」

ティンカーベル「キモオタ!ポンコツとかそういう言い方するの良くないでしょ!家族の事が心配なのは当たり前じゃん!」

キモオタ「申し訳ないwww悪い意味では無くwww良い意味でのポンコツですぞ、ポンコツ可愛いとかいうでござろうwww」コポォ

ティンカーベル「それ言うの一部の人だけだよ…かぐやごめんね?キモオタは自分がポンコツな事を棚に上げてこう言う事言うけど、多分悪気はないから許してあげてね?」

キモオタ「ティンカーベル殿も大概のような気がするでござるけどwwwともあれ気に障ってしまったなら謝るでござる、我輩失言多いので勘弁願いたいwww」コポォ

かぐや「いいのよ、確かに私はお爺様やお婆様が絡むと判断が甘くなってしまいがちだから。それは自覚してるのだけどね…」

孫悟空「まっ、今に始まった事じゃねぇんだよ。ジジィは無茶するしかぐやは二人の事になるとすぐ感情的になる、それ見てバーさんはオロオロするわで…」

ドロシー「私はかぐやさんと出会って日が浅いから、かぐやさんのあんな姿…初めて見ました。普段は冷静で優しいから…ちょっぴり意外です」

かぐや「あら、がっかりしちゃった?頼れるお姉さんだと思ってたのに正直がっかりって感じかしら?」フフッ

ドロシー「あっ、そんなことないです!あのっ、むしろ家族の為に感情的になれるって、すごく家族の事を大切にしているからだと思いますし…!」

ドロシー「それに私も…仲間の事になるとついカッとなっちゃう事、ありますから…」ゴニョゴニョ

キモオタ「ほうwwwドロシー殿のような内気ガールがカッとなるとかwwwいわゆるギャップ萌えという奴ですなwww」

ドロシー「ぎゃっぷもえ…?あのっ、それってどういう……?」

ティンカーベル「妄言だから気にしなくても良いよ!それよりさかぐやさっき言ってたじゃん?【かぐや姫】を結末に導く事が償いだって、あれどーいう意味?」

キモオタ「そう言えばかぐや殿の罪とやらも、タイミング悪く聞きそびれてしまいましたしな…確かに気になりますなwww」

かぐや「今話してもきっと村に着くまでに終わらないから、お爺様を救ってから全てを話すわね。ただ、端的に言うと私の罪は…」



かぐや「多くのおとぎ話の世界を消滅させて、数え切れない程罪の無い人たちを殺した事よ」

432: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:31:43 ID:Sre
ティンカーベル「えぇっ!?おとぎ話の世界消しちゃったって…それって元々の【かぐや姫】の筋書きじゃないよね!?」

かぐや「そうね。私は月に住んでいる時から自分がおとぎ話の住人だと自覚していたしおとぎ話の事情を知っていたから、物語の筋書きとは関係なく私の意思で犯した罪よ」

キモオタ「ファッ!?ちょ、ちょっと待っていただきたい!それは所謂、アリス殿と同じように自分の目的の為に他の世界を…?」

かぐや「えぇ、あの時の私は…自分の考えを正しいと思い込んでいたから、それを実行に移す為に多くの人を犠牲にしておとぎ話を消した。幸か不幸か、それだけの能力があったから」

ドロシー「そ、それって…私と同じ……!だからかぐやさんは私に良くしてくれたんですね…」

かぐや「間違ってはいないわね、それだけではないけれど。でもねドロシーあなたの罪と私の罪は同じようで全く違うわ」

ドロシー「それってどういうことですか…?」

かぐや「あなたは精神を操作されていたから無自覚で罪を犯していた。けれど私は自分の意思で行動していたの、これは大きな違いよ」

ドロシー「あのっ、こんなこと聞いていいのか解らないですけど…なんで、かぐやさんはそんな事を…?」

かぐや「…あの頃の私はきっと神様にでもなったつもりで居たんでしょうね」

ドロシー「神様…ですか?」

かぐや「えぇ、月の王の娘に生まれて不自由無く育って周囲はちやほやして私にひれ伏す…その上、私は月の民が持つ能力をとてもうまく扱えた。だから驕っていたのね、誰よりも優れているって勘違いしていたのよ」

キモオタ「ほう…それはまた今の姿からは想像もできないですな」

かぐや「驕っていた私はある時、一つの結論にたどり着いたのよ。世間知らずの姫が不完全な知識で紡いだ、見当違いの真実。ただあの頃の私の心にあった正義はただ一つ」

かぐや「理不尽な世界から、おとぎ話の住人を救済する事」

433: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:33:21 ID:Sre
ドロシー「理不尽な世界…辛かったり悲しい結末のおとぎ話から主人公を救う為に、おとぎ話を消したって事…ですか?」

かぐや「そうよ。そんな理不尽な結末でもその世界を消滅させれば、苦しい運命や悲しい結末から解放できる。そう信じていたのよ、あの頃の私はね」

キモオタ「……っ」

孫悟空「おとぎ話は何も幸せな展開ばかりじゃねぇ。自業自得で罰を受けたり不幸になる物語もあるが、まったく罪の無い奴が理不尽な目に会う話だってある」

孫悟空「キモオタ、お前もいろんなおとぎ話の世界を旅したってなら覚えがあるだろ?」

キモオタ「覚えがあるも何も…我輩とティンカーベル殿は以前その件で相当悩む事になりましたからな。それに同様の考えを持っていた少年を一人知っているでござるし…」

ティンカーベル「うん、私達の場合は【マッチ売りの少女】だったんだけどね…」

孫悟空「あのおとぎ話か…ありゃあ相当に悲惨な内容だな」

かぐや「そうね、数多く存在するおとぎ話の中でも間違いなく理不尽さ悲惨さでは群を抜くわね」

キモオタ「我輩もなんとかマッチ売り殿を救う手立てを考えたのでござるけど、結末を大きく変えればおとぎ話が消滅してしまう故…八方ふさがりでしてな…」

ティンカーベル「うん…おとぎ話を消してでもマッチ売りちゃんを救おうって考えもあったっけ…その時のかぐやと同じだね」

かぐや「それでもあなた達はおとぎ話を消さなかった。きっと大切な事にすぐに気がつけたのね。でも私は違ったの、あの頃は悟空とも玉龍とも出会ってなかったから孤独だったものね」

かぐや「自分だけしか信じなかった。おとぎ話を消された主人公は私に感謝しているとすら思っていたもの。それは全て、自分に都合のいい考えにすぎなかったのだけどね」

キモオタ「……」

かぐや「…村が見えてきたわ。この続きは全てが終わってからね、今はお爺様を救って襲撃者を追い払う事…その方が優先よ」

・・・

434: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:35:37 ID:Sre

かぐや姫の世界 襲われた集落

???「あら~?もうおしまいなのぉ?威勢のいいお爺ちゃんだから少しは出来るのかと思ったら、とんだ期待はずれだったわねぇ」ブホホ

竹取の翁「ゼェゼェ…なんじゃあやつは…何が起きておる…。貴様、ただの人間ではないな…?」ゼェゼェ

???「そうねぇ~、それはアタシよりもあなたの方が確信もてるんじゃな~い?アタシにそこまでぼろぼろにされたんですものね~?」ブホホ

竹取の翁「ゼェゼェ…この…化け物めがァ!」ビュオッ

???「んもう、乙女を相手に化け物だなんて失礼しちゃうわねっ!そんなデリカシーの無さじゃ、娘に嫌われちゃうわよ~?」

???「まぁいいわっ、そんなデリカシーの無いお爺ちゃんに…乙女の吐息、お見舞いしちゃうっ!」スゥゥゥゥッ

竹取の翁「また例の突風か…!」ググッ

ビュオオオオォォォォッ

竹取の翁「ぬっ、ぬぐうぅっ!」ビュオォォォ

ガシャーン

???「もう無理しない方がいいんじゃな~い?お爺ちゃん良く頑張った方よぉ?あなたのせいで他の村人には逃げられちゃったしねぇ~」

竹取の翁「させん…貴様の好きにはさせんぞ……!貴様のような族を野放しにしておけば、いずれかぐやも傷付くことになる…それだけは命に変えてもやらせはせぬ」グググッ

435: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:37:54 ID:Sre
???「その娘ラヴなところ、嫌いじゃないわよ~?でもお爺ちゃんの望みとアタシ達の目的は合い入れる事ができないのよねぇ、最終的にはかぐやちゃんには消えて貰わなきゃだしねぇ?」ブホホ

竹取の翁「……っ!」

???「血気盛んなメンズは好みなんだけどねぇ~、流石にその年齢じゃ魔法薬の実験にも使えそうにないしそろそろ楽にしてあげようかしらね…!」スゥゥゥゥッ

ザッ

???「っ!? アタシに近づくのは誰かしらぁ!?」ヒュッ

玉龍「チッ、しくじったッスか…!」ヒュッ

ズバッ

???「ちょ、なになになに~!?いきなり斬りかかってくるなんて、あんた何者なのぉ~?」スタッ

玉龍「あー、これあとでセンパイに怒られる奴ッスね…背後取れてたのにギリギリ気付かれたッスか…」

???「ちょーっと勘弁してよぉ~、いくらアタシが可愛いからって背後からそっと近寄るなんて…趣味悪いわよぉ?」バッ

玉龍「趣味悪い顔面の奴に言われたくないッス」

???「まぁ…まぁまぁ!乙女の顔面を悪く言うなんて許せないっ…!」

竹取の翁「龍の小僧か…悪いがあとは任せるぞ…。かぐやは逃げおおせたか?」

玉龍「こんな時までかぐやかぐや…まったく、ジーさんはそろそろ娘離れするべきッスよ?あとウチはレディっす、小僧はやめるッスよ」

436: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:40:01 ID:Sre
???「龍…?あぁ、話は聞いているわよ~?あなたも女の子に憧れるメンズでしょぉ?うふふ、アタシとおーんなじ。今の事は水に流してあげるから仲良くしましょ?」チュッ

玉龍「あんた、この世界の人間じゃないッスよね?一体何者ッスか?」

帽子屋「あらやだぁ!アタシったら名乗り遅れちゃったわね、【不思議の国のアリス】から来た帽子屋よ。マッドハッターって呼ぶ人も居るわね、あなたも好きに呼んで頂戴~」ブホホ

玉龍「そうッスか、気色の悪い襲撃者っていうから何かと思ったッスけど…まぁ、これは納得のキモさッスね。予想以上のキモイおっさんが出て来てびっくりしてるッスよ」

帽子屋「あらぁ…?あなただってメンズでしょう?人の事言えないじゃない、あなたもアタシも男の娘…本当は同類同士で争うなんて嫌なのよねぇ~。だからやめましょ?」

玉龍「ウチも同類同士で争うのは嫌っすよ、例え如意棒がついてても可愛ければ女の子だと思ってるッスから」

帽子屋「ほらっ!アタシも同意見よ!可愛い子を傷付けるなんてナンセンスよねっ!」

玉龍「そッスね。だからウチはあんたを斬りつける事に躊躇する必要が無くて安心してるッスよ」ヒュッ

帽子屋「あら…それって、どういうことかしらぁ…!!」スゥゥゥゥッ

竹取の翁「小僧、気を付けろ…あの男、口から突風を吐きだす…!この村の悲惨なあり様も、あの突風にやられたんじゃ…!」

玉龍「だから小僧じゃ…っていうか早く逃げて欲しいッスよ。正直、ジーさんを庇いながら戦える相手じゃないッス、アレ」ヒョイッ

帽子屋「余所見なんかしてて避けられるほど…私が吐く乙女の吐息は甘くないわよぉぉっ!!」

ビュオオオォォォォッ!!

437: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:42:49 ID:Sre
玉龍「これはヤバい奴っすね…受けるのは諦めるッス!」ヒョイッ

ベキベキベキーッ!!

帽子屋「流石は龍の皇子ねぇ!身軽さには自信ありって感じかしらぁ~?」ブホホ

玉龍「木造とはいえ家を吹き飛ばすとは恐ろしいッスね。こりゃ復興が大変ッス…次はもっと丈夫な建物にするよう言っておくっすかね」

帽子屋「ブホホッ!海底の魔女が作った魔法薬で手に入れたこの能力は元々家を吹き飛ばす為のものだもの!乙女の吐息を防ぎたいっていうのなら…」

スゥゥゥゥゥッ!!

帽子屋「丈夫なレンガの家でも造る事ねぇー!!」ビュォォォォォッ!!

玉龍「魔法薬…。なるほどッス、大体どういう事か読めたッスよ…厄介な魔女がそっちに味方してるんスね」ヒョイッ

帽子屋「あらあらあらぁー?大きな口を叩いた割には逃げの一手ってかんじねぇー?それじゃさっきのお爺ちゃんといっしょよぉ~?」ブホホ

玉龍「いいんスよ、ウチの役目はジーさんを逃がす事なんすから。不意打ちで倒せればラッキーって思ってたッスけどね」

帽子屋「やぁだぁ~、アタシの事随分と舐めてかかってるのねぇ?玉龍ちゃん?ちょーっと心外よ、アタシ【不思議の国のアリス】では結構な重要キャラよ~?あんたと違ってね~」ビュッ

玉龍「突風が適わないと解って接近戦に持ち込むッスか?いいッスよ、ウチもその方が自信ありッス!」ビュッ

帽子屋「あらあら!随分な自信ねぇ?まさかあんたのほうから間合いに飛び込んでくとはねぇ~」ヒュッ

玉龍「突風を出すには大きく息を吸う必要があるみたいッスけど、近づいてしまえばそれも止める事が出来るッス!それに…隙だらけッスよ、オッサン!」

ザシュッ

438: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:44:53 ID:Sre
ズバッ!!

玉龍「手ごたえありッス…!」

ボタボタッ…

帽子屋「あら、これは随分とキクわねぇ…流石、龍の爪の鋭さは伝説以上ねぇ~…危うく意識トンじゃうくらいよぉ?」ブホホ

玉龍「強がりはやめるッスよ。今は女の子の姿だっていってもこの爪の鋭さは本来のものッスかr」

ガシッ

帽子屋「捕まえたわよ~?可愛い可愛い玉龍ちゃん…?」ブホホ

玉龍「な、なんスかこいつ…!これじゃまるで斬りつけられるのを解って近づいt」ゾワッ

ブチッ

玉龍「っ!?」ババッ

帽子屋「やぁだぁ!今更距離を取ったってダメよぉ~?痛みは無いでしょうけど、見てごらんなさいなあなたのみ・ぎ・う・で♪」

玉龍「み、右腕だけ元から無かったようになってるッス……!?」

帽子屋「ブホッホホホ!!玉龍ちゃんの右腕、いただいちゃったわよぉ~!」ブホホホ

玉龍「なっ…なんスかこれ…?引きちぎったにしても傷一つ痛み一つないなんてどうかしてるッス……っ!」

帽子屋「ブホホ!これでもう自慢の龍の爪は左側だけになっちゃったわねぇ?」

439: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/21(月)00:49:42 ID:Sre
玉龍「…魔法薬ッスか!ひとつだけじゃないなんて気付きそうなもんッスのに…!」クッ

帽子屋「ブホホホッ!動揺してる隙に乙女の吐息、いくわよぉ…!」スゥゥゥゥッ

玉龍「させないッス!ウチにはまだ左腕があるッス!こっちで切り裂いてやれば…!」ヒュッ

帽子屋「あらぁ?いいのぉ?私が今度は左腕を狙ってるって、気がついてるんじゃない…?」

玉龍「……っ!」ババッ

帽子屋「やだぁ!ビビらないでよー、あからさまに距離を取るのね玉龍ちゃん!そうよねぇ?両腕もがれたら戦う事が出来なくなるものねぇ?」

玉龍「……困ったッスね。武器なんか【孫悟空】の世界に置いてきたッス…先輩早く来て欲しいッスよ…」ボソッ

帽子屋「あらあら八方ふさがりねぇ?ちょーっとトラウマになっちゃったかしらぁ?悪い事しちゃったわねぇ~?」

玉龍「そう思ってるなら返して欲しいッスよ。ウチの予想があってれば、あんたのその魔法薬はもいだものをくっつけることも出来るンスよね?」

帽子屋「あらぁ、察しが良いのね!でも駄目よぉ、また斬りかかられちゃあ堪らないものぉ~」

帽子屋「でもそうねぇせっかく痛み無くもげるんだから…せめてもの償いに別のモノをもいであげましょうか?あなたについてる如意棒とかねぇ?より女の子に近くなれるわよぉ?」ブホホ

玉龍「……。それは遠慮しておくッス。それと……もうその例え使わない方がいいッスよ」

帽子屋「あらぁ?あなたもさっき使ってたじゃないの、結構的確な例えだと思うのに。使っちゃダメなのぉ?」ブホホ

玉龍「金輪際使わない方がいいッス。その例えをめっちゃ嫌う人が、ようやく到着したみたいっすからね」

帽子屋「はぁ?それってどういう…。……!?」

ビュバッ!!

帽子屋「突然背後から棍棒が…!?あ、あらやだ…も、もしかしてこの武器…」

ゴゴゴゴゴ

孫悟空「どいつもこいつを俺の武器を卑 なもんに例えやがって…!」ザッ


孫悟空「覚悟しろよお前等、もう二度とそんな戯言口にできねぇように痛めつけてやらぁ!!馬鹿共をぶちのめせ!穿て、如意棒ォォォォ!!」

470: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:18:33 ID:3g5
ヒュオッ ゴシャアアァァ!!

帽子屋「もう、そんなに怒る事ないじゃないのぉ~!悟空ちゃんって下ネタダメ系?外見はワイルドなのに案外ピュアなのねぇ~?」ヒラリッ

スタッ

帽子屋「人は見かけによらないってよく言うけど、妖怪も例外じゃないみたいねぇ~?」ブホホ

孫悟空「さぁどうだか知らねぇが…だが外見どおり戦闘には自信ありだ、見かけ倒しなんかじゃねぇから覚悟しやがれぇ!」ビュバッ

帽子屋「ちょっ、危ないじゃないの!んもぉっ!今のギリギリだったわよぉ!?アタシの帽子は売り物なんだから扱いには注意しt」スッ

ビュオッ

帽子屋「やだぁ、人の話聞きなさいよ悟空ちゃんってばぁ!」

孫悟空「ほう、手負いだってのに如意棒の一撃を二度もかわすたぁなかなかやるじゃねぇか!しかしテメェ随分ふざけた格好だな。テメェ男だろ?どうして女物の服を着てやがんだ…?」

帽子屋「乙女が女物の洋服着るのなんか当たり前よぉ!おかしなこと言うのねぇ悟空ちゃんっ」ブホホ

孫悟空「……俺の連れが似たような事言ってのを思い出したぜ」バッ

帽子屋「ぶほほっ、安心して頂戴っ!可憐な姿を利用して攻撃の手を止めさせようだなんて姑息な事、考えてないわよぉ~?」

孫悟空「可憐だぁ?どの口が言ってんだ、どっちかってぇとテメェの外見は俺が【西遊記】で相手にしてきた妖怪共のそれに近いぜ?」

帽子屋「やだぁ言うわねぇ悟空ちゃん!でも【西遊記】の主人公がその妖怪に二度も攻撃を避けられちゃうようじゃ、おとぎ話として成り立たないんじゃあなーい?」

孫悟空「はっ、テメェこそ言うじゃねぇか…!テメェ、名は?」

帽子屋「ぶほほっ。【不思議の国のアリス】の帽子屋よ。あなたを待っていたわよ悟空ちゃん…!」

471: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:20:49 ID:3g5
孫悟空「やっぱり【不思議の国のアリス】のメンツか。しかし、俺を待っていただぁ?そいつぁどういう…」

帽子屋「ぶふふっ、悟空ちゃんが【かぐや姫】の世界にいるって事はアリスちゃんから聞いていたのよっ、それで彼女に頼まれたのよねぇ~」

帽子屋「アリスちゃんの目的を達成する上で、おとぎ話最強と言われるあなたはジャマなのよ~!ぶほほっ、流石に紅瓢はもう通用しないでしょうし…だからアタシが来たのよぉ」

孫悟空「なるほど、紅瓢で俺を溶かすのに失敗しちまったから今度はテメェが俺を始末しに来たって訳か。はっ、俺ぁアリスに随分と嫌われてやがるな」クックック

帽子屋「んふふっ、裏を返せば悟空ちゃんの事を認めているのよぉ~。放置しておけば必ず脅威になるってね、アタシとしては大好きなアリスちゃんの障害になるモノは取り除きたいじゃない?」

帽子屋「だから【西遊記】のおとぎ話が消滅したように、悟空ちゃんにも完全に消滅して貰わなきゃねぇ~」ンフフ

孫悟空「どうやらデケェ口を叩くだけの自信はあるみてぇだな…そして実力も兼ね備えている、テメェの面構えを見りゃあ解る。面白ぇ…!久々に全力で如意棒を振るう事ができそうだなぁ!」ググッ

玉龍「センパイ!待つッス…帽子屋に安易に近づいたら危険ッスよ!」

孫悟空「あぁ、解ってる。お前のその右腕…こいつにやられたんだな?」

玉龍「そうッス…!そいつは魔法具を使って別のおとぎ話の能力を手に入れているんス!薬がいくつあるかはわかんないスけど、ウチが知っている能力は二つッス!」

玉龍「ひとつは大息を吐きだして建物すら吹き飛ばす【三匹のこぶた】の狼の能力ッス!そしてもう一つは身体の一部をもぎ取って付けたり外したりできる能力ッス…!」

孫悟空「その能力には聞き覚えがあるぜ。確か随分昔に別世界の事も勉強しろってお師匠に聞かされた日ノ本のおとぎ話にそんな能力を持つ鬼が出てきたよなぁ?」

玉龍「そうッス!ジーさんのこぶをもぎ取った鬼の能力…【こぶとり爺さん】の鬼の能力ッスよ!」

帽子屋「んふふっ、二人とも案外博識ねぇ~?もちろんその魔法具の効果はまだ続いているけれど、悟空ちゃん相手に素手で挑むのは流石に無茶かしらねぇ?」

帽子屋「悟空ちゃんは如意棒を使って戦うんですものっ!だからアタシも武器…使わせて貰っちゃうわよぉ?」ンフフ

472: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:24:48 ID:3g5
玉龍「武器なんか持っていたッスか…!じゃあウチの時に素手で相手をしたのは、龍の爪を確実にもぎ取る為だったッスね…!」

帽子屋「ぶふふぉっ、そうよぉ?悟空ちゃんもジャマだけど…玉龍ちゃんも危険視されているのよぉ?なんてったって龍ですものねぇ!一目おかれてるんだから喜びなさぁい」クネクネ

玉龍「お前みたいな姑息な奴に一目置かれても嬉しくなんか無いッス!」ムッ

帽子屋「ぶほほっ、そんなに怒らないでよぉ?いくらアタシ達でも龍を相手にするのは避けたいものねぇ、だから女の子状 の時に龍の爪ごと腕をもいだのよぉ!」ブホホホ

帽子屋「女の子状 で戦う時に玉龍ちゃんは爪で戦う為に腕だけ龍に戻すって聞いていたのよぉ。例え片腕だけでももげれば戦力を削げるでしょぉ?ふふっ、うまくいって良かったわ~」ンフフ

玉龍「ぐぅ…悔しいッス…!ウチはまんまとあいつの策に乗せられてたんスね…!武器なんか持っているようには見えなかったッスのに…!」ギリッ

帽子屋「小さくしてバッグに入れていたのよぉ。【不思議の国のアリス】にはサイズを変化させる魔法具がたくさんあるのっ!だからこんな風に小瓶の液体を武器に垂らしてやれば…」ピチョーン

ヒュオ シャキーン

帽子屋「さぁてっ!そろそろ覚悟してもらうわよ悟空ちゃん?いくらあなたが強くてもこの死神の鎌に刈り取る事の出来ない命なんて無いんですものぉ~!」ビュオッ

孫悟空「大鎌か。そいつぁ…なんともテメェらしい道具じゃねぇか」

帽子屋「んふふっ、それってどういう意味かしらねぇ~?とあるおとぎ話かの死神から奪ったものだけどお気に入りなのよこれぇ」ンフフ

孫悟空「さぁな。掛かって来な、テメェが魔法薬を使おうと大鎌を振り回そうと俺は全力でお前を倒すだけだぜぇ!」ググッ

帽子屋「んふふっ、望むところよぉ!死神の鎌の切れ味…じっくり味わせてあげちゃうわぁ!!」バッ

473: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:28:36 ID:3g5
ヒュン

孫悟空「待たせたな如意棒!さぁテメェの出番だ、俺と存分に暴れようじゃねぇか!ぜぇぇぇああぁぁっ!!」ビュオンビュオンッ

帽子屋「んふふっ、さぁ魂さえも切り離すその鋭利な刃で…全てを刈り取りなさい!」ヒュオッ

ガキィィンッ

帽子屋「あらっ意外ねぇ!アタシの鎌にかかれば如意棒なんて真っ二つだと思っていたのに、随分と丈夫な武器じゃないのぉ!」ババッ

孫悟空「意外はこっちのセリフだぜぇ、如意棒の一撃を刃で受けていながら刃こぼれひとつねぇとは…流石は死神の鎌ってところかぁ!」ババッ

帽子屋「やぁだぁ、自分の武器を褒められるのって嬉しいわねぇ!嬉しくなっちゃうわぁ~」

孫悟空「はっ、テメェの武器だぁ?どこの死神から奪ったか知らねぇが、盗んできた大鎌振り回してよくそんな事が言えるぜ!」

帽子屋「ぶほほっ、そうだったわねぇ!でもその如意棒だって無理矢理奪ったものよねぇ?人の事とやかく言えないわよぉ、強奪犯さぁん?」ブホホ

孫悟空「ハッハッハァ!違ぇねぇ!だったら武器についてとやかく言うのはもうヤメだぁ!」ヒュオッ

ビュオッ ガキィィンッ

帽子屋「あら、今のは危なかったわねぇっ!伸縮自在って厄介ねぇ…距離感が掴みにくくて戦いづらいわぁ~!」ビュオッ

ヒュン ズバッ

孫悟空「抜かせぇ!そもそもが大鎌なんてもん武器にするには向いてねぇ、そんなもん好き好んで使ってる時点で戦いにくいに決まってんだろうがぁ!」ビュオッ

帽子屋「ぶほほっ、でも素敵じゃなぁい?アタシは悟空ちゃんみたいに勝負に勝てればいいって考えじゃないのよぉ!」

孫悟空「あぁ?」

帽子屋「強いのは当たり前よっ、それに加えていかに美しく魅せる戦いができるかどうか…それがアタシのスタイルなのよぉ~!」ブホホ

474: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:31:32 ID:3g5
孫悟空「今まで戦ってきた奴らもなにかしら戦いへの信念は持ってたけどよぉ、テメェの考えだけは理解できねぇなぁ!」ビュオッ

帽子屋「あら残念っ、でも今回は悟空ちゃんを始末するっていう目的があるんだものねっ!そっち優先にしなくちゃねぇ」

孫悟空「はっ!悪ぃが易々と始末される俺じゃねぇ、早いうちに帰ってアリスにどんな言い訳するか考えた方がいいんじゃあねぇかぁ?」ビュバッ

ヒュオッ ガキーン 

タンッ ギギギッ

玉龍「なんなんスかこれは…!どうしてあいつはセンパイと互角に戦えるッスか!?」

玉龍「魔法薬の能力は使っていないッス…あの死神の鎌自体にも特別な能力がある風には見えないッス…それなのに!」

帽子屋「ぶほほっ、よく見抜いたわねぇ。さっきアタシの事おちょくったのは忘れてあげようかしらねぇ」

玉龍「【不思議の国のアリス】の帽子屋は戦ったりしないッス!それなのにそんなに強いなんて絶対に何かズルイ手段を使っているんス!」

帽子屋「やぁだ、心外ねぇ…なにもしてないわよ。それに玉龍ちゃんの言う通りこの鎌はただの鎌…魔法具でも何でもないのよぉ。だったらどうしてアタシが悟空ちゃんと対等に戦えるか…」

玉龍「…?」

帽子屋「ルイスちゃんがそう望んだからよぉ。だからアタシはこんなに強いのよ、強くなくちゃ…アリスちゃんを護れないからねぇ?」

玉龍「ルイス?お前、何を言ってるんスか……?」

ビュオッ

孫悟空「余裕そうじゃねぇか…テメェなぁに余所見してやがんだぁ!」ガキィン

帽子屋「あら危ない…っと、でもいつまでも悟空ちゃんと遊んでいるわけにもいかないのよねぇ。どうしようかしらねぇ…あまり他の魔法具は使いたくないけれど、避け続けるのも限界かしらねぇ」スッ

「ドゥフフwwwならばこの我輩が戦いに終止符を打つとしましょうかなwww」

475: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:33:43 ID:3g5

帽子屋「あらぁ…?『我輩』って一人称に気持ちの悪い笑い方、もしかして…あんたがキモオタねぇ?」

キモオタ「いかにもwwwお主がこの村を襲った真犯人で……。……っ!?」

帽子屋「ええ、そうよぉ。キモオタちゃんの話はアリスちゃんからたくさん聞いているわよ~?とんでもない邪魔者だってねぇ、ついでに始末しt」

キモオタ「ティンカーベル殿!ティンカーベル殿!ちょ、早くこっち来るでござるよ!」

ティンカーベル「もぉ…ちょっと待ってよ!何をそんなに……あっ……!」

キモオタ「驚愕でござろう?我輩も目を疑いましたぞ、何と言う事でござるか…こんな事が……!」

帽子屋「随分驚くわねぇ…?あぁ、これだけ建物が吹き飛ばされていたらビックリもしちゃうわよねぇ!そうよ、これはぜんぶ私が魔法薬で吹き飛b」


キモオタ「オカマがwww鎌をwww構えてるwww」ドゥフコポォ
ティンカーベル「オカマが鎌を構えてるーーー!!」ケラケラケラ

帽子屋「……っ」

孫悟空「お前等…思ってても口に出すんじゃねぇよ。俺も玉龍も同じ事思ってんだよ」

キモオタ「そんな事言われてもwwwちょwww真面目な場でござるしと言うの我慢しようと思ったでござるがwwwムwwwリwww」

ティンカーベル「あははははっ、なにあれ!ツッコミ待ちだよ絶対!あははは!」

帽子屋「んふふっ、出会い頭に挑発なんてウワサどおりねぇ!キモオタちゃんは挑発やブラフを仕掛けたり、かまをかけるのが得意なんだって聞いt」

キモオタ「ぶっふぉwwwか ま を か け る wwwwってwwwたたみかけて来ましたぞwww」

ティンカーベル「あははっ!だっ、だめ…おなか痛い…!」ヒーヒー

帽子屋「……」イラッ

476: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:36:09 ID:3g5
帽子屋「アリスちゃんの言う通りだったわねぇ、キモオタちゃんは随分と癇に障るメンズだわぁ…!」

キモオタ「よく言われるでござるwww」

帽子屋「ぶほほっ、よく言われるって相当ねぇ!悟空ちゃんを始末したら次はキモオタちゃんにオシオキしてあげるわねぇ!覚悟しt」

孫悟空「おおっと!忘れちまった訳じゃねぇだろ?そんな台詞は俺を倒してから吐くんだなぁ!」ビュオッ

帽子屋「んふふっ…そうだったわねぇ!いいわぁ、まずは集中して悟空ちゃんを虐めちゃいましょっ!さぁさっきの続きよぉ…!!」ビュオッ

孫悟空「へっ!いくぜぇ…ぜりゃああぁぁ!!」バシュッ

ビュバッ ガキーン ガキーン
シュ ヒュヒュン ギギギ ズバッ

ティンカーベル「おぉ…流石悟空、あんなに重そうな如意棒びゅんびゅん振り回してる。やっぱり強いんだねぇ…」

玉龍「当たり前ッス!センパイは誰よりも強いんスから!今回は相手もなかなかみたいッスけど…最後には先輩が勝つに決まっているッス!」

キモオタ「玉龍殿の悟空殿ラブは凄まじいですなwwwしかし、おとぎ話最強と呼ばれているのは伊達では無いのでござるなぁ」

ティンカーベル「でもあのオカマも凄いよね、悟空の攻撃を全部かわして……あっ」

ティンカーベル「攻撃を全部カマしてるんだもんね!」ドヤァ

キモオタ「いやwwwわざわざ言いなおしてドヤ顔するほどうまくはないですぞwwwそれに『あっ』って言っちゃダメでござろうwww」

ティンカーベル「えー…でもなんでオカマなのに鎌を武器にしたのかな?絶対からかわれるのわかるじゃん?」

キモオタ「そりゃあれでござろう、かまってちゃんなのでござるよwwwカマだけにwww」

ティンカーベル「うーん…二点かなぁ。キモオタも人の事言えないじゃん!」アハハ

帽子屋「……」イライラ

477: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:41:15 ID:3g5
帽子屋(なんなのあの子達ぃ!アタシにわざわざ聞こえるようにカマカマって…!集中できないじゃないの…!)イライラ

ビッ

帽子屋「……っ!」

孫悟空「おっ、避け損じたぁ危ねぇなぁ?どうしたぁ、集中を乱すような事でもあったのかぁ?」

帽子屋「んふふっ、なんでもないわよぉ!」ビュバッ

ビュオッ ガキーンガキーン!!

キモオタ「ところでティンカーベル殿はオカマキャラと言えば誰が好きでござるか?」

ティンカーベル「ボン・クレーかな。ワンピースの」

キモオタ「ほうwww鉄板ですなwwwしっかし、バトル漫画のオカマキャラって総じて強いでござるよねwwwあれなんででござるかなwww」

ティンカーベル「なんでかなぁ…でもオカマキャラってキャラ立つから敵でも後で味方になったりするよね!」

キモオタ「あるあるwwwそれで味方になったらクッソ弱くなるのでござるよwwwあの現象やめていただきたいwww」

ティンカーベル「……ねぇねぇ!もしあの帽子屋が後々味方になったらどうする?漫画とかみたいにさ!」

キモオタ「ちょwwwないでござろうwwwそれに我輩にも選ぶ権利はありますぞwwwもっとイケメンか可愛いほうがwww」

ティンカーベル「えー…キモオタの顔も帽子屋の顔も似たようなレベルなのに良くそんな事言えるよー」ヘラヘラ

帽子屋「!?」

478: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/12/29(火)00:46:47 ID:3g5
キモオタ「ちょwww冗談でも言っていいものと悪いものがありますぞwww我輩の方がまだイケると思いますぞwww」コポォ

ティンカーベル「うーん…玉龍ちゃんはどーおもう?」

玉龍「センパイが一番イケメンッスね」

ティンカーベル「うん、言うと思ったよ!そうじゃなくて…キモオタと帽子屋のビジュアルってそんなに違いないよねって話だよ!」

キモオタ「ちょwww我輩の顔面偏差値が帽子屋殿と同レベルですとwwwそれは聞き捨てなr」

帽子屋「聞き捨てならないはアタシの台詞よぉぉぉぉ!!!!!!」カッ

帽子屋「さっきから聞こえてんのよアンタ達ィ!アタシが真剣に戦ってる側でペラペラふざけたことばっかり抜かして…!」

帽子屋「アタシのルックスがそこの豚と同レベルですって!?目ん玉腐ってるんじゃないn

孫悟空「ったく、気はのらねぇが…戦闘中に気を取られちまったテメェもテメェだぜ?」

帽子屋「あ、あらやだ…しまっt」

ビュオッ ドゴシャアアアアアア

玉龍「おぉ!センパイの一撃が決まったッス!瓦礫に突っ込んでいったッスよぉ!」

孫悟空「キモオタ、ティンク…テメェ等、いっつもそんな戦い方してんのか?あんまり褒められたもんじゃねぇぞ」

玉龍「あっ…もしかして挑発だったんスか!?普通に雑談してると思ったッス!」

キモオタ「なんででござるかwwwしかし、流石はアリス殿の一派ですな、かかるまで時間がかかったでござるwww」

ティンカーベル「それでも私達のトーク術の前になすすべもなかったみたいだけどね」ドヤァ

495: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:11:58 ID:etm
ティンカーベル「悟空でも簡単に倒せなかった相手なのにちょっと煽るだけで隙を作っちゃうなんて、私達って実は結構凄いんじゃない!?」ヘラヘラ

キモオタ「確かにそうですなwww我輩もティンカーベル殿も確実に煽り力がアップしてますぞwwwアリス殿の一派など恐るるに足りませんなwww」コポォ

孫悟空「……」

玉龍「いやーっ、すごいッスよ二人とも!ウチ等も言葉での駆け引きはするッスけど、あんな容易くあいつを逆上させるなんてなかなかやるッスね!」

キモオタ「ドゥフフwww外見を貶すとブチキレるのはオカマキャラの常でござるからなwww」

ティンカーベル「しかも私達打ち合わせとかしてないからね!私とキモオタも結構息があってるよね!これならアリスも楽勝かも!」

玉龍「何においても仲間と連携が取れてるってのは有利ッスからねー、二人は本当n」

孫悟空「そこまでだ玉龍。あんまり褒めるんじゃねぇ、こいつ等の為になんねぇ」

玉龍「そうッスか…?確かにウチやセンパイが同じようにやったらお師匠はきっと怒るッスけど…二人は守護者じゃないし別に良いんじゃないスか?」

ティンカーベル「えーっ?悟空は何でそんな事言うの?実際、私達がうまく煽ったおかげで隙ができたんじゃん!褒めてくれても良いくらいだよ!」

孫悟空「そりゃあ確かに助かったぜ?帽子屋は俺と渡り合えるだけの実力があった、オメェ等が隙を作ったおかげで一撃入れる事ができたのは事実だ。だがやっぱり感心しねぇ、今後はこういう戦い方はやめとけ」

キモオタ「ちょwww悟空殿は硬いでござるなwwwブラフや煽りは卑怯とでもいうつもりですかな?www勝てばよかろうなのでござるよwww」コポォ

孫悟空「行為自体は咎めねぇ、俺だって必要なら煽りもする、命の取り合いに卑怯もクソもねぇんだ。だがオメェ等の場合は実力が伴ってねぇのに挑発だのブラフだのかますだろ?それが良くねぇ…いや危ねぇ」

ティンカーベル「えーっ?危なくなんか無いよ、今までずっとこれで何とかなってきたもんねっ!ねっ、キモオタ!」

キモオタ「そうですぞwww我輩は煽りとブラフに定評のあるキモオタでござるからwww」

496: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:13:44 ID:etm
孫悟空「…俺は大勢の妖怪共の相手をしてきたから解るけどよ、戦い方ってもんは大きく分けて二つある、計算して戦う奴と本能のまま直感で戦う奴だ」

ティンカーベル「あー、確かにそういうのってあるかもね!桃太郎とかは計算するタイプで悟空は直感タイプだ!」

孫悟空「帽子屋は見たところ…冷静に状況を判断して勝利を手にする計算タイプだ。だからこそ変身される前に玉龍を弱体化させたり、遠近に対応した魔法薬を準備してんだ」

孫悟空「あいつは美しさの為なんて言ってたが、戦闘に不向きな大鎌なんて使ってんのも目立つ武器に目を向けさせる目的があんだろうな。大息を吐くにしろ相手を掴むにしろ、相手の一瞬の隙を付けばいいんだからな」

玉龍「そう考えるとあいつの行動は全て勝つ為に計算されていたって訳ッスか…」

孫悟空「冷静で居られる奴ってのは本来挑発なんかに易々と乗らねぇもんだ。今回は…余程キモオタと同じ程度の顔面だって言われたのが耐えられなかったんだろうな」

キモオタ「ちょwww冷静さを欠くほど嫌だったのでござるかwwwいやそれを狙って煽ったのには違いないでござるがwww」

孫悟空「まぁ確かに相手の突かれたくない部分をうまく突いたとは思うぜ。だが、同じ方法が直感タイプの奴に通じるかってぇとそうもいかねぇ」

孫悟空「逆上して自滅する奴もそりゃあいるだろうがな、怒りや気持ちの高ぶりをそのまま殺意に変えてうまいこと手綱を引く奴ってのも結構いる、しかもそういう奴は相当な強者ってのが多い」

ティンカーベル「悟空はさ、煽りなんてしてると相手の心を乱すどころか怒らせるだけになって不利になっちゃう事もあるよって言いたいの?」

孫悟空「平たく言えばそうだな、逆上した相手を押さえつけるだけの実力がありゃあいいが…無けりゃあ自分の首を絞めるだけだ、テメェ等のやってる事は思っている以上に危険を伴う戦略だって事だ」

キモオタ「ムムム…悟空殿の言う事ももっともですな。しかし…」

孫悟空「要は実戦経験が浅いうちにやる戦略じゃねぇって事だ。事実、あいつをぶっ飛ばしたことでテメェ等はすっかり気を抜いているだろうが…」

ガラガラッ ムクッ

孫悟空「あれだけの手慣れが吹き飛ばされたくらいでくたばる訳がねぇ。解ったんなら、今度は口先だけじゃなく武器を構えやがれ。…戦闘はまだ終わっちゃいねぇんだぜ」

497: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:15:58 ID:etm
ガラガラッ

帽子屋「聞いてたわよぉ~…んふふっ、自分も大概だったくせにキモオタちゃん達には説教するのねぇ~」

孫悟空「説教じゃねぇ、忠告だ。これからテメェという強者と戦うんだ、調子になんざのってりゃ一撃入れるのがせいぜい…テメェを倒すにゃ驕りなんざ足枷にしかならねぇからなぁ!」

帽子屋「あら、強者だなんて照れちゃうわねぇ!でもまいったわねぇ…この帽子は商品なのにすっかりボロボロ。もう売り物にはならないわぁ~」

孫悟空「さぁ気ぃ抜くなよ。あぁ見えて俺と渡り合えるだけの実力者だ、それにもうあいつにゃ安っぽいブラフだの挑発だの通用しねぇと思え」

帽子屋「ぶほほっ、そう警戒しないのぉ。そういえばキモオタちゃんとティンクちゃんはああいうの得意だったわよねぇ~、アタシったらつい乗せられちゃったわぁ~」スッ

ティンカーベル「あいつ…!思いっきり瓦礫に突っ込んだはずなのにふっつーに立ちあがってきた…!痛くないの!?」

玉龍「…そりゃそうッスよね、あれくらいでくたばる程度の奴ならとっくにセンパイに倒されてるッス」

キモオタ「しかし…妙ですぞ、あの者…先ほどは手負いだったはずでござるのに今は傷付いている様子がほとんどないでござるよ!?治癒の魔法かあるいは…」

ティンカーベル「もしかして、傷を癒す魔法具とか持ってるのかも!」

帽子屋「んふふっ、こんなに解り易い死神の鎌を持ってるのにわかんないのねぇ…ちょっと勉強不足かもねぇ~」

孫悟空「おい、キモオタ。さっき聞きそびれちまったが…かぐやとドロシーはどうした?」ボソッ

キモオタ「二人は翁殿を安全な場所まで送り届けると言ってましたぞ、後ほど向かうと言っていたでござる」ヒソヒソ

孫悟空「そうか、わかったぜ。あいつ等が来るまでにケリを付けねぇとな」ヒソヒソ

帽子屋「ぶほほっ、メンズが二人して何の相談かしらぁ?ヒソヒソ話は気になっちゃうじゃないのぉ~!」

ヒュオッ

帽子屋「ぶほほっ、私も混ぜて貰うわよぉ!それとも乙女に聞かれちゃ困る話かしらぁ~?」ヒュッ

498: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:19:21 ID:etm
帽子屋「さっきあれだけ侮辱してくれたんだもの!まずはキモオタちゃんをスライスベーコンにしてあげちゃうわよぉ!」ビュオッ

キモオタ「ぶひゃ!?あ、あからさまに標的にされてしまいましたぞ!?」

ティンカーベル「悟空が言った通りだ!挑発したはいいけどすぐ倒せなかったから怒りを買っちゃってるよ!」

孫悟空「だから言っただろうが!厚切りチャーシューになりたくねぇなら防げ!それか避けやがれ!」

キモオタ「ぶひいぃぃぃっ!あんな大鎌喰らったらひとたまりもありませんぞぉ!?」

帽子屋「ぶほほっ!キモオタちゃんが死んじゃえばもうそんな醜い姿と同類扱いされる事もないものねぇ!覚悟しなさぁい!」ズバッ

キモオタ「ぶ、ぶひぃぃっ!?お、おはなしサイリウムを…!い、いや助けていただきたいですぞ悟空殿ォ!」

孫悟空「ったく、今までどれだけ運が良かったんだテメェは!仕方ねぇ、伸びやがれ如意棒!」ビュオッ

キモオタ「おぶっ」ドスッ ズサー

帽子屋「あらあらぁ、如意棒で突き飛ばして攻撃を防いであげるなんて優しいのねぇ~悟空ちゃん」

孫悟空「キモオタァ!テメェを庇いながらじゃ攻勢に移れねぇ!そのサイリウムとかいう魔法具で何とかしやがれ!そんくらいできんだろぉ!」

キモオタ「し、しっかしあれ!あの大鎌に切り裂かれたらヤバいですぞ!?」

孫悟空「見た目にビビんじゃねぇ!大鎌じゃなく帽子屋を見ろ!大鎌は振りかぶった後にゃ軌道を変えにくい、どこを攻撃してくるかは読みやすいって事だ!目ぇそらすな!」

帽子屋「ぶほほっ、あんなに怯えた子ブタちゃんにアドバイスなんかしても無駄だと思うけれどねぇ!」ググッ

玉龍「あいつ容赦無いッス…!片腕じゃ調子でないッスけど…ここはウチが加勢に…!」

ティンカーベル「玉龍ちゃんは無理しないで、キモオタなら大丈夫だよ!それに今は…私達が入っていかない方がよさそうだよ!」

499: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:21:08 ID:etm
帽子屋「ティンクちゃんはキモオタちゃんを信頼してるのねぇ!でも…それももうおしまいよ、真っ二つになっちゃいなさいキモオタちゃん!」ズバッ

キモオタ「ぶひぃぃぃっ!!お断りですぞぉぉぉ!!」フリフリッ

おはなしサイリウム「コード認識完了『孫悟空』 武器モード『如意棒』への形状変化を実行」

ガキィィンッ!

孫悟空「俺の如意棒にも変化させられるのか、やるじゃねぇかキモオタァ!」

キモオタ「悟空殿のようにうまく扱えないでござるが、確かに大鎌の軌道さえ解れば防ぐだけなら容易いですな!」

帽子屋「あらぁ!素敵!それが噂に聞く魔法具ねぇ!ひとつで色々な魔法が使えるなんてなんだかずるいわねぇ!」

キモオタ「我輩が今までに得た絆がなせるわざですぞwwwさぁ攻勢に移りますぞwww悟空殿www」ドスドスドス

孫悟空「おうよ!いくぜぇっ…伸びろッ如意棒!!」ビュババッ

帽子屋「如意棒が二本もあるなんて分が悪いなんてもんじゃないわねぇ…!」ガキーン

孫悟空「チッ、そう言うわりにゃあ容易く受けやがって…!」

キモオタ「悟空殿はそのまま攻撃の手を休めないでいただきたい!さぁ帽子屋殿、我輩の如意棒の一撃を食らって立っていられますかな?伸びてくだされwww如意棒www」コポォ

スカーッ

玉龍「なんかでかい口叩いた割には盛大に外してるッスー!?」

帽子屋「ぶほほっ!どんなに強力な武器でも持ち主がクソだと意味ないわねぇ!思いっきり私をはずしてるじゃないのぉ!ぶほほっ!」

キモオタ「…ドゥフフwww一見すると帽子屋殿を外して頭上に伸びた如意棒…しかし、これこそ我輩の計算通りですぞ…!」



キモオタ「このままお主を叩きつぶしますぞwww我輩が命じて『太く』なった如意棒が頭上から降り注げばお主は逃げの一手でござろうwww」

500: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:24:01 ID:etm
帽子屋「太く…ですってぇ!?」バッ

キモオタ「如意棒!柱のように太くなって…帽子屋殿を叩きつぶすでござるよぉ!!」

帽子屋「逃げたりしちゃ悟空ちゃんにいい的にされちゃうわっ!ここは大鎌でなんとか受け流すしかないわねっ…!来なさいっ!」ババッ

シーン

帽子屋「……?」

孫悟空「んなことだろうと思ったぜキモオタァ!」ビュバッ

帽子屋「うぐっ…!痛いじゃないの悟空ちゃん…!それよりなんなのぉ!?キモオタちゃんの如意棒は太くなるんじゃ…あなたまさか、また…!」ハッ

キモオタ「お察しの通りwww如意棒を外した事をごまかす為のブラフでござるwww」ドヤァ

帽子屋「ぶほほっ!アタシも学習しないわねぇ…でも狙われてるのがわかって私を騙そうなんて良い根性してるじゃないのぉ!嫌いじゃないわよそういうのぉ!」

孫悟空「まったくだぜ、普通はあんな風に忠告されちまったら使わないようにするもんだがなぁ」クックックッ

キモオタ「悟空殿の忠告はありがたいでござるが、やはりブラフ煽りあってこその我輩だと思うのでござるwwwもちろん、危険な事も承知なので使いどころは選ぶ故www」

孫悟空「まっ、戦い方なんざ人それぞれだ。危ねぇって事さえわかって使ってんならあとはテメェの好きにすりゃあいい、その方がうまく戦えるってなら尚更な!」

帽子屋「んふふっ、もうキモオタちゃんの口車には乗らないわよぉ!今度こそ大鎌の切れ味を体感して貰わなくちゃねぇ!」ババッ

キモオタ「ややっ!あからさまに距離をとりましたぞ!ここは我輩の如意棒で今度こそ…」

孫悟空「いや、こっちも距離をとるぞ!あいつが距離を取ったってこたぁ…大息で吹き飛ばすつもりだ!玉龍!ティンク!巻き込まれねぇように注意しやがれ!」

帽子屋「ぶほほっ、この距離ならあんた達まとめて吹き飛ばせちゃうわよぉ…!」スゥゥゥッ

501: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:26:32 ID:etm
キモオタ「大息ですと?まさかこの辺り一帯の家もその大息とやらに?」

玉龍「そうッス!息継ぎが始まっちゃったッス、巻き込まれないうちに逃げるッスよ!あの大息はレンガの家でもなけりゃあ防げないッス!」

キモオタ「なるほどwwwならば、逃げる必要はないですな」クルッ

ティンカーベル「そうだね!私達が逃げちゃったらその隙にあいつが他の村とか襲いに行くかもだしね」

孫悟空「あぁ?何か手があるってぇんだな?」

帽子屋「んふふっ!いまからお家でも立てるっていうのかしらぁ!?乙女の吐息は生半可な建物じゃ防げないわよぉ!?」スウゥゥゥッ

ビュオォォォォォォッ!

キモオタ「なるほどwwwならば…愛娘への過保護が生み出した塔ならば、余裕で防げますなwww」

フリフリッ

おはなしサイリウム「コード認識完了『ラプンツェル』 魔法発現状 へ移行……モード『tower』」

ズモモモモッ

玉龍「壁…いや、塔ッスかこれ!?いきなり塔が現れたッスよ!?」

孫悟空「大息なんざものともしねぇ頑丈な塔…ラプ公が住んでたっていう塔か…!」

キモオタ「そうですぞwwwラプンツェル殿との絆が生み出す魔法は強固な塔を具現化する魔法www母の愛が詰まったこの塔を崩す事など不可能ですぞwww」

ティンカーベル「でも塔が出る魔法でよかったよね。ラプンツェルみたいにキモオタの髪がぶわーって伸びたらキモキモオタになるし」

キモオタ「ならんでござるよwwwさらさらロングになろうとも我輩のキモさは一律でござるwww」コポォ

502: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:30:18 ID:etm
シュウゥゥ

玉龍「塔が消えたッス!」

キモオタ「これでその乙女のwww吐息wwwとやらは攻略しましたぞwww」

帽子屋「なぁに笑ってんのよっ!んふふっ、でも困ったわねぇ~…乙女の吐息が防がれちゃったわ~」

孫悟空「そいつぁおかしいな俺にゃあちっともテメェが困ってるようには見えねぇんだよ!」

帽子屋「困ってるわよぉ?思ったよりもキモオタちゃんが出来る男だったからねぇ~…ここで殺せたらそうしようと思ったけれど、予定変更ねっ!ちょっと戦いはお休みしましょうか」

孫悟空「あぁっ!?敵を目の前にして武器を下すような奴が居ると思ってんのかぁ!?」ググッ

キモオタ「待つでござるよ悟空殿!あの者には我輩も聞きたい事があるでござる」

孫悟空「んなもんあいつをぶちのめしてからでいいだろうが!」

帽子屋「んふふっ、ぶちのめせないかもしれないから今聞こうっていう事よねぇ?キモオタちゃんの考えは」

キモオタ「そういうわけではないでござるが…正直、合点がいかないのでござるよ。不自然と言うか…何か企んでいるというか…」

ティンカーベル「それは私も思ってた。キモオタがいいたいのはアレでしょ?あのオカマが……」

帽子屋「んふっ、『どうして悟空ちゃんと渡り合えるほどの力を持つアタシが、今までおとぎ話の世界を襲うのに加担しなかったか』…よねぇ?」ンフフ

キモオタ「その通りでござるよ。ドロシー殿を切り捨てたから帽子屋殿が代わりに…とは思えませんしな、それほどの力があるのに使わない理由はないでござるし」

帽子屋「おとぎ話は筋道から大きくそれると消滅する…アタシって【不思議の国のアリス】じゃ結構重要なポジション任されてんのよぉ、アタシが不在だと消えちゃうの」

ティンカーベル「っていう事はもしかして…【不思議の国のアリス】のおとぎ話はもう…結末を迎えたって事なの!?」

帽子屋「ついほんの少し前にね。代役を務めたミチルちゃんは良くやってくれたわよねっ、これでようやく【不思議の国のアリス】の住人は自由に動けるって訳よぉ~」

503: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:32:28 ID:etm
帽子屋「これで【不思議の国のアリス】が消える事は無いものねっ、アタシも女王様も三月ウサギちゃんも…もちろんアリスちゃんもこれからは自由に動けるのよっ!」

帽子屋「これを機にアリスちゃんは一気に目標を果たそうとしてるのっ!アリスちゃん、そしてルイスちゃんのためにもねぇ~」

キモオタ「我々にとっては厄介な事になってしまったというわけでござるな…今まででも厄介だったアリス殿が本気を出すとは…」

玉龍「っていうことはあんたがこの世界に来たのも、アリスの目的を果たす為って言う事ッスよね!」

帽子屋「まぁそうよねぇ、さっきも言ったけれど悟空ちゃんの戦闘力は敵にするには厄介だから始末したいのよね~…それにかぐやちゃんもね」

孫悟空「やっぱりかぐやの事も狙ってやがったか…!」

ティンカーベル「かぐやも?もしかしてかぐやを人質にとって悟空を…」

帽子屋「違うわよぉ!あんな人間凶器を人質を取るなんてしないわよっ、かぐやちゃんは戦闘力こそ低いけど…あの娘がもつ月の民の能力は脅威の一言よぉ~?」

キモオタ「確か…光の速さで移動出来るとかでしたかな?」

帽子屋「んふふっ、そんなのはおまけ程度の能力よぉ~。あなたたちかぐやちゃんの能力の恐さを知らないのねぇ?あの娘は何を考えてるんだか今はその能力を使わないようにしてるみたいだけど…」

帽子屋「あの娘がその気になれば、一帯を更地にするなんてたやすいのにねぇ?その能力を使って大勢の人間を殺してきたみたいだし?」クスクス

孫悟空「おいテメェ何処で聞いたかしらねぇが…あいつは自分の罪を償おうとしてんだ。水を差すような真似をするってなら…俺は黙っちゃいねぇぞ」

帽子屋「まぁ恐いっ!まぁいいわっ、アタシ達の目的は悟空ちゃんとかぐやちゃんの始末の他にもあるものねっ!」

504: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:36:54 ID:etm
ティンカーベル「別の目的?隠さないで教えてよね!」

帽子屋「んふふ、いいわよぉ!かくすつもりなんか無いわよぉ、もう一つの目的はこのおとぎ話に伝わる宝物…『龍玉』よぉ!」

キモオタ「玉龍殿のこと…ですかな?」

玉龍「違うッスよ!『龍玉』ってのは龍がもつ宝玉の事ッス!ウチにとっちゃそうでもないッスけど…人間からしちゃあ至高のお宝扱いッス」

帽子屋「調べさせて貰ったけど、その龍玉はかぐやちゃんが持ってるのよねぇ?その魔法具…ぜひとも欲しいのよぉ!」

キモオタ「この村を襲ったのも、悟空殿やかぐや殿をおびき寄せて始末し龍玉を奪う為だったでござるか!」

帽子屋「そんなところねぇ。【アラジンと魔法のランプ】の結界を破るにはもう少し魔法具が居るのよねぇっ、だから龍玉が欲しいのよぉ!」

孫悟空「ありゃあかぐやにとっても大切なもんだ。例えそうでなくてもテメェのような輩には勿体ねぇ代物だ、渡すつもりはねぇぜ」

帽子屋「あら残念っ、でも手に入るまで私はしばらくこの辺りに滞在しようかしらねっ!必要なら他の村だって襲うわよぉ~?」クスクス

孫悟空「んなこと出来ると思ってんのかぁ?確かにテメェの実力は本物みてぇだが…俺はお前を逃すつもりはねぇぜ?」

帽子屋「ぶほほっ、悪いんだけどアタシも捕まるつもりはないのよねぇ…でもねぇ、私にも奥の手はあるのよぉ?」ゴソゴソ

ティンカーベル「奥の手…!まだほかにも魔法具とかあるって事!?」

スッ

帽子屋「そうよぉ、例えばこの魔法具とかねぇ~。さてこれなぁにかしら?ぶほほほっ!キモオタちゃんには簡単なクイズかしらぁ?」

キモオタ「そ、その魔法具は…マッチ売り殿の…!」

帽子屋「大当たりよぉ~。【マッチ売りの少女】の幻覚を見せるマッチ…もうあなたたちにもおなじみよねぇ?」ブホホ

505: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:40:10 ID:etm
帽子屋「精神に直接影響を与える幻覚…どんな魔法具を手にしたってこんなに使い勝手のいい魔法具は他にないわよぉ~」

キモオタ「お主等はまだそのマッチを…!やめるでござるよ!そのマッチはその様な事に使うものではないでござる!」

孫悟空「幻覚を見せるマッチだぁ…?そんなもんで俺を倒そうってぇのか?随分と舐められたもんだぜ」

帽子屋「あらぁ?アタシが悟空ちゃんの弱点…知らないとでも思ったのかしらぁ?」

玉龍「センパイの弱点って…そんなのあり得ないッス!だってもうお師匠様は…!」

帽子屋「んふふっ、このマッチの幻覚は視覚だけを騙すんじゃないの。精神に干渉するのよねぇ」

帽子屋「だから私達が知らなくても記憶の中にいる悟空ちゃんを叱るお師匠様の姿を映し出す事は可能なのよぉ?んふふっ、それが悟空ちゃん唯一にして最大の弱点だものねぇ~?」

孫悟空「……帽子屋、テメェ!」ギロッ

帽子屋「んふふっ、お師匠様…三蔵法師の唱える経にかかれば、手のつけられない暴れ猿のあなたでもたちまち大人しくなるのよね、頭にはめられた緊箍児の呪縛のせいでねっ!」

帽子屋「経を唱えるお師匠様の姿…たとえそれが幻覚でも悟空ちゃんにとっては耐え難い痛みを与えるわよぉ?」

ティンカーベル「魔法具を使って悟空の弱点を突くなんてずるい!見た目はキモオタと同じくらいキモイけどあんたはほんとにわるいやつだよね!」プンス

帽子屋「あらあらぁ、随分ねぇ?ティンクちゃん、言っておくけどアタシは知っているのは悟空ちゃんの弱点だけじゃない…あなたの弱点だって知ってるのよぉ?」

ティンカーベル「……。はっ、はぁ!?そんなの、弱点とかそんなの私にはないもんねっ!」

帽子屋「ぶほほっ、強がっちゃって可愛いわねぇティンクちゃん!それだったら…今ここで、試してみましょうかぁ?」ンフフ

ティンカーベル「……っ!や、やめて…!」ビクッ

キモオタ「ティンカーベル殿…?」

帽子屋「アタシはマッチを一本こするだけで悟空ちゃんを潰せるし、ほんの一言口を開くだけでティンクちゃんを消せる…んふふっ、弱点がはっきりしてる子達は大変ねぇ!」ブホホ

506: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/04(月)00:44:45 ID:etm
今日はここまでです

次回更新は明日の予定です

魔女の立ち位置について聞きたいとあったのでこのssでの魔女について(長いのでスルー可)

このssに登場する魔女には二種類いて
・元のおとぎ話で『魔女』とされている人物
 魔法使い、ゴーテル、海底の魔女など
・元のおとぎ話では明言されてはいないけどなにやら普通の人間では無い人物
 赤ずきんのお婆ちゃん(寝たきりの老婆を狼が出るような森の中で一人で住ませるとは思えない→人里離れて暮らす理由がある→魔女では?という解釈)
 雪の女王(確か魔女と明言はされていませんでしたが、原作でもしていた冷気吸収や氷結はどうみても魔女ですよね)
この二種類に分かれます、後者は私の解釈であり事実ではないので注意です

魔女と言っても普通の人間と同じく得手不得手があり善の魔女も悪の魔女もいます
作中でも触れていますがシンデレラの魔法使いや雪の女王のように無償で他人の為に魔法を使うのは少数派で、対価と引き換えに魔法を行使するというのが基本的な魔女の姿です
キモオタに協力的なゴーテルも愛娘であるラプンツェルの為に魔法を行使している部分が強く、猛毒の魔女も赤ずきん達に対価を要求しています
それが色濃く出ているのが海底の魔女で、彼女は他の魔女よりも強力な魔法薬を扱えるとても優秀な魔女ですが決して自分に利益の無い魔法を使う事はしません
海底の魔女にとって魔法具・魔法薬は『商品』なので対価さえ受け取ればどんな相手にでも売り渡しますし、それが危険と解っていても作り出します

現実世界の人間から見れば魔女ってどのおとぎ話にも居るよなってなるけど、おとぎ話の世界においては差異はありますが魔女とは貴重な存在であり畏怖すべき存在でもあります
変わり者も多いのでアリスの行動を知っていながら傍観している魔女も多いです



かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

512: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:04:19 ID:Ert
帽子屋「私がその気になれば…今ここで二人とも始末する事が出来ちゃうのよぉ?ぶほほほっ!」

帽子屋「もうあまりあなた達だけに時間をかけるのもアレだし、そろそろケリをつけちゃってm」

孫悟空「オラァッ!ベラベラと手の内明かしてどういうつもりだテメェ!!」ビュオンッ

帽子屋「んもぉっ、まだ話してる途中だったのよぉ?さっきもそうだったけど、あんまりガツガツしちゃだm」ヒラッ

ドゴシャアッ!

孫悟空「何を企んでやがるテメェ…!本当に俺を始末するつもりならハナっからそのマッチを使やぁいいはずだ!……何か裏があるな!?」ビュオッ ゴシャッ!!

帽子屋「あら危ないっ!んふふっ、あからさまに腕狙って来たわねぇ?でもこのマッチはまだ私の手の中にあr…きゃあっ!」ズバーッ

玉龍「お師匠様の幻覚?そんなウチ等の事馬鹿にしたような真似、させないッスよ…?」ギロリ

帽子屋「あら…随分とスパイシーな瞳を向けるようになっちゃってぇ!大好きなセンパイのピンチでようやく本気って感じかしらぁ?」ダラダラ

孫悟空「おい!テメェ右腕持っていかれてんだろ!無茶するんじゃねぇ!」

玉龍「断るッス。ウチはまだ先輩と一緒にいたいんス、それにウチはまだ天竺への旅を諦めたわけじゃないんスよ?」

孫悟空「玉龍…!」

帽子屋「んふふっ、随分と悟空ちゃんに入れ込んでるじゃないのぉ。ワイルドなところは認めるけど、そこまでする価値がある男ぉ?んふふっ」

玉龍「愚問ッスね。センパイはいずれ天竺へたどり着いて、神様になる存在ッス。お前のような姑息な商人とはそもそもの格が違うんスよ」

帽子屋「あらあらぁ!神様とは大きく出たわねぇ玉龍ちゃん!今にも私に始末されちゃいそうなのにぃ?」

玉龍「ぐだぐだ言ってないでできるもんならやってみろッス。センパイが苦労してるのにいつまでも見てるだけのウチじゃ無いッスよ!」

513: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:06:27 ID:Ert
帽子屋「ならどうするのぉ?右腕は無いけど龍に変化しちゃぅ?やってみなさいな、きっとキモオタちゃん達まで潰しちゃうわよぉ?」

玉龍「本来の姿に戻れなくてもお前を食い止めるくらいできるッスよ。左腕と両足、尻尾だけ龍に戻せば十分ッスよ…中途半端な変化解除は体力使うッスけど、センパイの為ッス。グッと堪えるッスよ」ズズズッ

帽子屋「あらやぁだ、片腕だけならまだしもそこまで龍に戻っちゃうと…皮膚も鱗っぽさ丸出しだし、可愛い女の子なのに台無しよぉ?ぶほほっ、女の子は美肌よねぇやっぱり!」

玉龍「お前に女の子の可愛さなんか語って欲しくないッスね、おっさん」フフッ

帽子屋「言うわねぇ…!玉龍ちゃんにもそんな事言う資格は無いはずよぉ?」バッ

ピョンッ

玉龍「…センパイ、ここはウチに任せて逃げて欲しいッス。マッチの炎さえ見なければ幻覚にはかからない筈ッスから…せめてセンパイとキモオタ達だけでも逃げるッス」

孫悟空「…あぁ?」

玉龍「元々お師匠が逃がしてくれたおかげでウチの命は【西遊記】で散らずに済んだんス、センパイの為に使えるのなら…本望ッス!さぁ、行くッスよ!」

孫悟空「……うるせぇ」ゴンッ

帽子屋「!?」

玉龍「っ!?なんで殴るんスか!?そんな事より早く逃g」

孫悟空「何が『まだセンパイと居たい』だ。気色悪いわテメェ!冗談は格好だけにしとけ変 がァ!」

514: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:09:26 ID:Ert

玉龍「こんな時になんでそんなこと言うんスか!?ウチはセンパイを守護者として尊敬してて…」

孫悟空「何が尊敬してるだ、俺ぁんな立派なもんじゃねぇ!だがなぁ…もう仲間を見捨てるなんざ二度としねぇって決めたんだよ!絶対になぁ!」

玉龍「センパイ…!まだ【西遊記】でお師匠様達を置いて来てしまった事気にして…」

孫悟空「おい帽子屋ァ!ウチの連れがごちゃごちゃ言ってたが俺が相手してやらぁ!こいつを見捨てるわけにゃいかねぇんでなぁ!」ババッ

帽子屋「あらあらぁ、結局悟空ちゃんが向かってくるのねぇ!このマッチ奪えるものなら奪ってみなさいなっ!んふふっ!」

孫悟空「さぁて、そんじゃあさっさと片付けちまわねぇとな…弟弟子が尊敬してくれてるってのに、良いところの一つも見せらんねぇのはダセェからなぁ!」ババッ

玉龍「センパイ!そういう事ならせめて加勢はさせて欲しいッス!ウチとしてもセンパイに良いところ見せたいッスからね!」

孫悟空「へっ、下手に気張って!足ぃ引っ張るんじゃねぇぞ!」

帽子屋「んふふっ、美しい弟子同士の絆って奴かしらねっ!でもぉ…私の敵じゃないわよぉ!」

ビュオオォォッ!!  ガキィィンッ!!

ババッ ビュオッ 

キモオタ「悟空殿も玉龍殿も何と言う気迫…!しかしそれをものともしない帽子屋殿の動き…一筋縄でいきそうにないですな…!」

キモオタ「ここは我輩も加勢したいところでござる…しかし……」

ティンカーベル「……」ビクビク

キモオタ「ティンカーベル殿…何故そんなに怯えているのでござるか……?」

515: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:13:19 ID:Ert

ティンカーベル「……知ってた。あいつ、あいつら…知ってたよ……!」

キモオタ「知ってたとは……あの帽子屋殿が言っていたティンカーベル殿の弱点とやらの件でござるか…?」

ティンカーベル「…うん、【ピーターパン】の世界に来ていたならもしかしたらアリス達は知ってるかもって思ってたけど…」

ティンカーベル「でも、いままで何度も顔を合わせてきたのに、そんな素振り見せなかったから…知らないんだと思い込んでた……でも、あいつら知ってたんだ…!」ブルブル

キモオタ「落ち着くでござるよ、いつものお主は何処に言ったでござるかwwwティンカーベル殿の弱点をあの者達が知っていたとしても、それを防ぐ事は出来るでござろう?」

ティンカーベル「…無駄だよ。もう、私の命はあいつ等に握られちゃってる!ううん、きっとずっと知ってたんだ…私はあいつ等に生かされてるだけだったんだよ!」

キモオタ「命を握られてるとは大げさ…な訳ではなさそうですな、お主の様子を見ていると…」

ティンカーベル「……」

キモオタ「しかし無駄などと言わずに、その弱点とやらの事話して欲しいでござる。何か力になれるかもしれませんぞ、我輩」

ティンカーベル「……前にさ【ラプンツェル】の世界で話したこと覚えてる?」

キモオタ「【ラプンツェル】の世界で話した事と言うと、確か…」

ティンカーベル「私達【ピーターパン】の妖精がどうやって生まれるか…ラプンツェルと三人でお話してるとき、教えたよね?」

516: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:17:07 ID:Ert
キモオタ「そうでしたな、我輩もちろん覚えておりますぞ!」

キモオタ「ティンカーベル殿達【ピーターパン】の妖精は、人間の赤ちゃんが生まれて初めて笑った時に、その笑顔から生まれるのでしたな?」

ティンカーベル「うん、そうだよ。良く覚えてたね、何でもない会話だったのに」

キモオタ「印象に残っておりましたからなwwwしかし何度聞いてもファンタジーですなぁwww」コポォ

ティンカーベル「そうかも、私は赤ちゃんの穢れの無い無垢な心から生まれるの。だからちっちゃな子供には私の事が見えるんだ、まだ信じる心を持ってくれてるからね」

キモオタ「しかし大人はほとんど妖精の姿を見る事が出来ないのでしたな…我輩はレアケースというわけでござるな」

ティンカーベル「うん、どんな子供も成長していつかは大人になるからね。その間にいろんな事を知るんだよ、イジメとかズルとかウソとか、あとはニコニコしてる人が本当は悪い人かもしれないとか…」

ティンカーベル「現実世界だったらあれだよ、仮面ライダーの中には普通のおじさんが入ってるとか、サンタクロースは本当は居ないとか…そういう現実を知って、ちょっとずつ無垢な心は失われていっちゃう」

ティンカーベル「そうするとね、子供のころは見えた私達妖精の事も居ないって思いこんじゃうんだ。ライダーやサンタが作り話だってのと同じで妖精の事も作り話って思っちゃう。そしたらもう、わたしの事は見えない」

キモオタ「しかし、それはあくまで普段ティンカーベル殿の事が見えるか見えないかの話であって、それがティンカーベル殿の弱点となんの関連が…」

ティンカーベル「妖精は無垢な心と一緒に生まれるんだよ?だったら…無垢な心が完全に死んじゃったら、どうなるかわかる?」

キモオタ「……っ!?いやいやいや、ちょっと今変なこと想像してしまいましたぞwwwいくらなんでもwwwそれはwww」

ティンカーベル「……妖精はね、人間が無垢な心を完全に失った時。存在を否定されると姿を維持できなくなっちゃうの」



ティンカーベル「『妖精なんかいない!』…って口にするだけで、そのたった一言だけで私は消えちゃうんだ」

517: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:19:35 ID:Ert
キモオタ「なんという…!そんな話、いままでに一度も…!」

ティンカーベル「あっ、違うよ!?キモオタを信じてなかったとかじゃなくて…私もあまり人にいいたい事じゃないから、黙ってたの。ごめんね」

キモオタ「そんな事は気にする事では無いですぞ!しかし言ってくだされば…!もしうっかり我輩がその…口に出してしまうかも知れなかったでござるのに!」

ティンカーベル「いやいや、それはないって信じてたからね。キモオタが私の存在を否定したりしないでしょ?」

キモオタ「まぁ、それは…そうでござるけど…」

ティンカーベル「だから、それを知ってる帽子屋もアリスも…私をいつでも殺せたはずなんだよ、でもそれをしなかっただけ」

キモオタ「普段近くにいすぎる故に忘れがちでござるが、ティンカーベル殿も魔力を持った存在。その為アリス殿も手を出さないとかかもしれませんな…」

ティンカーベル「そうかもしれないね。でも、どっちにしてもさ…私はもう、こうして喋ってる間にも殺されちゃうかもしれないって事だよ…」

キモオタ「ティンカーベル殿…何と言っていいか、我輩何でもしますぞ!言ってくだされ!」

ティンカーベル「……。もーっ、ごめんごめん!暗くしちゃったら駄目だよね!もう落ち込んでもどうにもならないし!」

ティンカーベル「こうなったらさ!私をここまで生かした事を後悔させてやるくらいの気持ちで行こう!うんうん!そーしよそーしよ!」ヘラヘラ

キモオタ「ぶぉっふぉwww確かにそうですなwww目にもの見せてやりますぞwww」コポォ

タッタッタッタッ

ティンカーベル「あっ、ドロシーとかぐや来たよ!まだ帽子屋倒せてないんだから、私達だけサボってちゃ怒られる!急げー!」ピューッ

キモオタ「……ティンカーベル殿」

518: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:20:48 ID:Ert
ティンカーベル「かぐやっ!ドロシー!こっちだよ!はやくはやく!」

ドロシー「あっ、よかった…!ティンクちゃんとキモオタさんは無事みたいです、かぐやさん!」

かぐや「そうね、二人の実力は話にしか聞いていなかったから少し不安だったけれど、無事なら一安心ね」

キモオタ「我々は無事でござるが…。いや、それよりも竹取の翁殿は大丈夫でござるか?」

かぐや「ええ、お爺様は屋敷まで送り届けたわ。戻ると言ったら引きとめられてしまってね…心苦しいけれど、振り払って来たの」

キモオタ「翁殿としてはかぐや殿を危険な場に送りだすなどありえんでござろうしな…」

かぐや「それよりも…キモオタ君、今の状況を説明してくれる?悟空と玉龍が戦っている相手は…?」

キモオタ「【不思議の国のアリス】の帽子屋のようでござる。腕をもぐ魔法薬に大息を吐きだす魔法薬、死神の鎌やなにやら傷を癒す魔法具か魔法…さらには幻覚を見せるマッチまで…」

ティンカーベル「帽子屋の奴がね、そのマッチで悟空にお師匠様の幻覚を見せて動けなくしようとしてんの!」

かぐや「…その幻覚を見せるマッチで、経を唱える三蔵様を映し出すつもりね。悟空はまだ旅の途中、緊箍児をはめられたままだもの」

ドロシー「幻覚を見せるマッチ……!」ビクッ

かぐや「ドロシー?マッチがどうかしたの?」

ドロシー「そのマッチは…私が【マッチ売りの少女】でマッチ売りちゃんを騙して手に入れていた魔法具で…その…それをアリスちゃんが帽子屋さんに…!」

かぐや「あなたがその魔法具を調達していた、と言うわけね?」

ドロシー「はい…だから、いま悟空さんや玉龍ちゃんが帽子屋さんと戦っているのはわたしの責任で…!あの、そのっ…!」オドオド

519: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:22:37 ID:Ert
ドロシー「えっと、帽子屋さんはアリスちゃんの世界の中でも一番強くて…魔法具の管理をしていたんです、だからマッチや他の魔法具も持ってて、それで…あと、えっと…!」

キモオタ「ちょwww戦いを目の当たりにして焦る気持ちはわかるでござるがドロシー殿www落ち着いてあの者について話してくだされ、何か帽子屋殿打倒の手掛かりになるやも知れませんぞwww」

ドロシー「あの…きっと期待に添えられるような情報は…無いです。ただ、私はその、物凄く…帽子屋さんの事苦手で…」

ドロシー「帽子屋さんは…答えの無いなぞなぞだしてきたり、飲みきってないのにお茶を注いで来たり…その、ちょっと、ちょっとおかしな人で…あと…」

ティンカーベル「なにそれ…見た目以上にxxxxだね…あっ、でもマッドハッターって呼び名もあるんだっけ…そう考えれば当然なのかも」

キモオタ「むむむ…とにかく、ドロシー殿は今、戦う事が出来ないのでござるよね?我々は悟空殿に加勢する故、かぐや殿はドロシー殿を…」

ガキーンッ! ババッ スタッ

帽子屋「…あらぁ!?そこにいるのってもしかして、ううん、もしかしなくてもぉ…かぐやちゃんとドロシーちゃんじゃないのぉ?」ンフフ

ドロシー「ひっ、あ、あの…こんにちは……」ビクッ

帽子屋「んふふっ、以前の凶悪ドロシーちゃんとは随分違う対応ねぇ?前みたいに開口一番『くたばれxxxxオカマ』とか言わないの?ぶほほっ」

ドロシー「すいませんすいません!違うんです、あれは私が言ったんじゃなくて…あっ、私が言ったには違いないんですけど、私じゃない私で…あのっ…!」

かぐや「落ち着きなさいドロシー。彼は全てを知っているはずよ、その上で貴方をおちょくっているのよ。相手にしないの」

ドロシー「あっ…はい、すいません…」

帽子屋「あなたの事も待っていたのよぉ!それにかぐやちゃんもねぇ!」ブホホ

520: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:24:57 ID:Ert
孫悟空「だからよぉ…テメェは俺達を舐めてんのかぁ!?戦闘中に余所見だのありえねぇんだよぉ!ぜぇいっ!」

ビュバッ!

玉龍「ウチの友達に手ぇ出したら八つ裂きッスよぉ!」ズバ

帽子屋「んふふっ、二人とも口ばっかりじゃないのぉ~。私はこの通りピンピンしてるわよぉ!」

玉龍「ぐぬぬ…!折角、ウチが斬りつけてもセンパイが叩きつけてもすぐに立ちあがってくるッス!」

孫悟空「あの野郎…妙な植物を口にしながら戦ってやがる、おそらくあれが傷をいやす魔法具だ…クソッ!キリがねぇ!」

帽子屋「んふふっ、落ち込まなくていいわよぉ?あなた達は良くやったわよ、マッチを擦る間も無いほどの連撃は効いたわぁ~。でもアタシのが一枚上手だったわねぇ?」

かぐや「二人とも、遅れてごめんなさいね。思ったよりも、あの帽子屋という男は強いようね。悟空が易々と倒せないんですもの」

孫悟空「んな事直球で言うんじゃねぇよ。俺だって結構な衝撃なんだぜ?押される事はねぇがのらりくらりと避けちゃあ回復なんざ小賢しい…!」

かぐや「いいわ、二人とも少し休んでてちょうだい」

スッ

かぐや「…私が彼の相手をするから」スッ

帽子屋「あらぁ!光栄ねぇ、かぐやちゃんは月の民の能力が使えるんですものね!どんなものなのか見ておきたいわぁ~」

かぐや「うふふっ、あなたが思ってるほど美しいものじゃないと思うわよ?」スッ

玉龍「待つッス!待つッス!かぐやは月の民の能力はなるべく使わないように暮らしたいって言ってたッスよ!?」

孫悟空「玉龍の言うとおりだぜ、テメェはその月の民の能力で戦う事を避けてきた。いまここでその禁を自ら破る必要なんぞねぇだろ」

521: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/05(火)00:30:31 ID:Ert
かぐや「悟空と玉龍ちゃんが束になっても倒す事が出来ないのなら、もう私が月の民の力を使うしかないわ」スッ

孫悟空「そう言われちまったら立場がねぇな…悪ぃ」

かぐや「ごめんなさいね、そんなつもりで言ったんじゃないの。二人のおかげでお爺様は逃げる事が出来たのだし、それに…この村を襲った事は許せないのは私も同じなのよ」

帽子屋「んふふっ、あんな立派な屋敷に住んでるくらいなんだからこんな村の連中なんてどうでもいいんじゃないのぉ?かぐやちゃんって優しいのねぇ~」ンフフッ

かぐや「自分のおとぎ話の世界に住む人たちの幸せを願う事がそんなに特別とは思えないけどね、優しくなんか無いわよ私は」

帽子屋「そうねぇ、優しいっていうよりも甘いって感じかしらぁ?ねぇ、ドロシーちゃん?」

ドロシー「えっ、あのっ…なんで私…」ビクッ

帽子屋「かぐやちゃんの優しさ、あなたは良く知ってるでしょぉ?だって、普通は助けたりしないわよぉ?あんたみたいな悪人をねぇ?」

ドロシー「…うぅっ」

ティンカーベル「そんないい方無いでしょ!私も赤ずきんもドロシーのやってきた事はもう責めない事にしたんだよ!だってドロシーは操られてただけだもんね!」

キモオタ「そうですぞwwwドロシー殿は操られてつられていただけでござる!故にこれからは我々の味方として共にアリス殿打倒を目指すのでござる!」

帽子屋「あぁらあらあら、すっかりキモオタちゃん側ね。アリスちゃんがあなたの事を切り捨てたとはいえ…そうも容易く裏切るとはねぇ~」

ドロシー「う、裏切りだなんて…!私は、ただ今までやってきた事の償いを…償いたくて!」

帽子屋「償い?ぶほほほっ、笑わせないで欲しいわねぇ~!かぐやちゃんやティンクちゃん、赤ずきんちゃん達が優しく許してくれたからってあなた勘違いしてなぁい?」

帽子屋「あなたがどれだけ償おうと、優しく接してくれる人が居ようと、善行を積み上げようと真実は変わらないのよぉ!あなたはもう善人にはなれない」

帽子屋「誰がどう思おうがあなたはおとぎ話の世界を消滅していった、悪人なのよぉ?それは今後も決して変わる事の無い事よぉ?」

帽子屋「他人の幸せを奪ったドロシーちゃんが、優しい人たちに囲まれて幸せに暮らすなんて望んじゃ駄目よぉ?無理な話なんだからねぇ~」ンフフ

帽子屋「一度罪を犯した物は死ぬまで犯罪者、そんな奴に普通の生活なんか訪れないわよぉ?んふふっ」

535: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:24:05 ID:l2l
ドロシー「そ、そうかもしれませんけど……でも……!私は……」

帽子屋「調べさせて貰ったわよぉ?あなた、今はかぐやちゃんの身の回りの手伝いをしながら暮らしてるんですってねぇ?」

ドロシー「そんなこと…どうして知って……」

帽子屋「んふふっ、ナイショよ。それよりもドロシーちゃん、あなたこの世界の人たちに随分良くして貰ってるそうじゃなぁい?かぐやちゃんや悟空ちゃんの人望のおかげかしらねぇ」

帽子屋「村の人たちやかぐやちゃん家のお爺ちゃんお婆ちゃんに女中の人たちも…余所者のあなたに親切にしてくれてるみたいじゃない?」

ドロシー「…そうです。最初は村の人に異国人だって理由で追われたりもしましたけど、今はその誤解も解けて…ううん、かぐやさん達がその誤解を解いてくれて…」

帽子屋「優しい人たちに囲まれて、それなりに幸せに暮らしてるのねぇ。でも納得よぉ、素のドロシーちゃんはオドオドしてて小動物みたいで可愛らしいし護ってあげたくなっちゃうものぉ~」

帽子屋「あなたが悪人だって知らなきゃ見た目に騙されちゃうのも仕方ないわねぇ。こぉんな可愛い娘が数え切れないほどの世界や人々を消しちゃったなんて思わないものねぇ」クスクス

ドロシー「わ、私は騙してるわけじゃないです…た、確かに私の罪の事は言ってませんけど…でも、それは……!」

帽子屋「どうして言わないのかしらぁ?言っちゃったら絶対に嫌われてしまうからぁ?」

ドロシー「……」

帽子屋「んふふっ、もうドロシーちゃんも解ってるんじゃなぁ~い!罪人だって知れたらどうなるかなんて、考えるまでも無いものねぇ」

帽子屋「でもダメよぉ。自分にとって都合が悪いからって、罪を隠し続けるなんて…誠実じゃないわよぉ?」

536: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:27:46 ID:l2l

ドロシー「自分に都合の良いようにするなんて、そんなつもりは…ないです…。私が罪の無い人たちを苦しめたのは事実だから……でも、だからこそ、私は……償いをしたいんです、だから…」

帽子屋「そんなことしてどうなるのぉ?償いなんて所詮は自己満足よぉ?」

帽子屋「ティンクちゃんや赤ずきんちゃんが許してくれたら消した世界は元に戻るのぉ?アリスちゃんを倒せば殺した人たちは蘇るのかしらぁ?…ぶほほっ、今更あなたが何をしても元通りになんかならないわよぉ?」

ドロシー「……で、でも」ジワッ

帽子屋「良い事教えてあげるわドロシーちゃん、世間はねぇティンクちゃんや赤ずきんちゃんみたいに甘くないの。あなたの罪を誰も許してくれない、何処に行こうとドロシーちゃんは誰かに恨まれ続けるのよぉ!んほh」

孫悟空「黙って聞いてりゃ…ガキを追いつめて泣かせるたぁ随分と良い趣味してんなぁ!あぁっ!?」ビュバッ

ガキィィンッ!!

帽子屋「んふふっ、私はドロシーちゃんとお話してるのよぉ悟空ちゃん?邪魔しないで欲しいわぁ~」

孫悟空「なぁにが『お話』だぁ!?こんなもん一方的な攻撃じゃねぇか!おいドロシー!こいつの言う事なんざ気にする必要ねぇぞ!」

ドロシー「……うぅ、ひっく……は、はい…」ボロボロ

帽子屋「あらあらぁ、そうやってドロシーちゃんを甘やかして。現実から目を背けさせてなんになるのぉ?この子の為にならないわよぉ?んほほっ」

孫悟空「テメェがやってる事はこいつの為になるってぇのか?どうも不可解だな…テメェの目的は俺とかぐやを始末する事のはずだ。どうしてドロシーを追いつめる必要があんだ?あぁ?」

帽子屋「ドロシーちゃんはアタシ達にとっては裏切り者だからよ~?他に意味なんて無いわぁ、ぶほほっ」

537: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:31:46 ID:l2l
ティンカーベル「裏切り者って…!ドロシーがおとぎ話を消してたのはアリスに利用されてたからでしょ!悪いのはあんたたちじゃん!」

玉龍「そうッスよ!自分達の事を棚に上げてドロシーだけ責めるのは卑怯ッス!」

帽子屋「んふふっ、好きに言いなさぁい。アタシは痛くもかゆくもないわよぉ?んふふっ」バッ

孫悟空「あの野郎…!のらりくらりと……!」

キモオタ「しかしあれですなぁ、帽子屋殿は随分とドロシー殿を責めるのでござるな?」

帽子屋「まぁねぇ、あらなぁに?あんたも悟空ちゃんみたいに不可解だとか言うつもりぃ?んふふっ」

キモオタ「いやwww別にwwwそんな事はないでござるけどwwwただ…」

キモオタ「おとぎ話を消したドロシー殿を悪人だと蔑むのならばwwwアリス殿も悪人と言う事になりますぞwwwそこに問題はないのでござるか?www」コポォ

帽子屋「んふふっ、アリスちゃんを悪人扱いすればアタシが逆上するとでも思ったかしらぁ?」クスクス

キモオタ「いやwwwそんなに簡単ではないでござろうwwwただの純粋な疑問でござるwww」

帽子屋「んふふっ、確かに今のアリスちゃんは罪人ね。でもそんなの、彼女の願いの前では些細なことなのよぉ」

帽子屋「アリスちゃんの願いはもうすぐ成就するの。くだらない現実世界も、馬鹿馬鹿しいおとぎ話の世界も全て消滅するのよぉ」

キモオタ「現実世界の消滅…それはアリス殿本人も言っておりましたな」

帽子屋「ルイスちゃんとアリスちゃんが望む世界。【不思議の国のアリス】だけを残して不要な世界は全て消え去る…そうすれば、アリスちゃんがどんな罪を犯したとしてもそれを責める人なんていないわよぉ~」

538: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:33:42 ID:l2l
キモオタ「お主に教えていただきたい、アリス殿は何故現実世界を消そうとするのでござるか…?」

キモオタ「【不思議の国のアリス】はおとぎ話離れの激しい現実世界でも圧倒的に高い知名度を持っているでござる、忘れ去られておとぎ話の世界が消滅するというシステムに乗っ取るならば、決して消える事の無い安全圏のはず」

キモオタ「自分の世界が危険にさらされてアリス殿が腹を立てるなら納得でござるが、そんな心配も無いというのに…アリス殿は何故、現実世界の消滅など…」

帽子屋「そうねぇ、知っているけれど…アタシがキモオタちゃんに話したところで、アリスちゃんの気持ちは一ミリも理解出来ないでしょうね」

帽子屋「ただ、現実世界の連中は…アリスちゃんからとても大切なものを奪ったわ」

キモオタ「とても大切なもの…?それは一体…?」

帽子屋「だぁめ。アタシが勝手に話しちゃうのもおかしな話だもの、アリスちゃんに直接聞きなさいな。まぁ、ただ…」

帽子屋「キモオタちゃんは現実世界の人間。だったら良く知ってるんじゃなぁい?」

キモオタ「知っているとは、何をでござるか?」

帽子屋「現実世界がどれだけ残酷で救いの無いクソみたいな世界かって事をねぇ」

キモオタ「クソってwwwまた随分な言いようでござるな。しかし、否定が出来ないというのがまた…困りましたなwww」

ティンカーベル「否定しなきゃ!あんな奴に現実世界を馬鹿にされたままでいいの!?現実世界素敵じゃん!ほら…あれだよ、なんかあるでしょ!」

キモオタ「説得力がwwwでも実際クソな部分が目立っているのも事実でござるしなwww」

帽子屋「ぶほほっ、キモオタちゃんは正直ねぇ!」

539: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:37:39 ID:l2l

帽子屋「まぁ、なんだって構わないけれどねぇ。アタシの目的は悟空ちゃんとかぐやちゃんを始末すること、それとかぐやちゃんの持つ龍玉を手に入れること…んふっ」

帽子屋「ねぇねぇ、かぐやちゃん?さっきから黙ってるけどアタシの話聞いてるぅ?」

かぐや「…ええ、聞いてるわよ」

帽子屋「それはよかったわぁ、アタシ無視されてるのかと思っちゃったわよ~!」

かぐや「それは余計な心配をかけちゃったわね。安心していいわ、あなたを無視するつもりなんか無いから」

帽子屋「あらそぉ?でも意外だわぁ、アタシ調べによるとかぐやちゃんは随分ドロシーちゃんを可愛がってるみたいだから、アタシがドロシーちゃんを攻めれば一番に庇うと思ったのにねぇ、んふふっ!」

かぐや「…ドロシー、少し厳しい事を言うわよ。覚悟なさい」

ドロシー「……はい」

かぐや「帽子屋君、あなたはさっき散々ドロシーを責めたわね。世間は罪を簡単には許してくれないとか、恨まれ続けるとか…あげくには泣かせまでしてね」

帽子屋「そうねぇ、でも現実や世間はドロシーちゃんが思っているよりもずっとずっと厳しい。それは事実よねぇ?かぐやちゃんもそう思うでしょぉ?」

かぐや「……ええ、まぁそうね。償って容易く罪が消えるほど甘くはないわね」

キモオタ「ちょwww肯定wwwしたwww」コポォ

ティンカーベル「もぉ!かぐやもキモオタも何なの!?あのキモいオカマの言う事に同意したりしちゃダメでしょ!」

ドロシー「かぐやさん…?」ポロポロ

540: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:40:12 ID:l2l
かぐや「泣かないでドロシー。確かに帽子屋の言う事は少し過剰すぎる、だけど正論な部分だってあるわ」

ドロシー「……」ヒックヒック

かぐや「罪を償いたいというあなたの気持ち、私は立派だと思う。それを応援する事に私はなにも惜しまないわ。でもね…この先、あなたが罪を償っていく中で出会う人たちは味方ばかりじゃないの」

かぐや「中にはあなたの罪を許せず糾弾する者、噂に流されて面白がってあなたを責める者もいるかもしれないわ。彼の言うように」

帽子屋「んほほっ!かぐやちゃんはなかなかわかってるじゃなぁい!そうよねぇ、甘やかすだけじゃ駄目よねぇ~?」

ドロシー「……うぅ、ひっく……じゃあ、私はもう…どうすればいいのか……わかんないです、かぐやさん……」グスングスン

かぐや「でもねドロシー、あなたはこの先辛い思いや苦しい思いをするかもしれないけれど…それを含めての償いよ。それは耐えなきゃ駄目、わかるわね?」

ドロシー「……はい、わかります」

かぐや「そう、良い子ね。でも安心しなさい、あなたを苦しめる人だけじゃないわ。ドロシーに協力してくれる人はきっと大勢居る、あなたの友達もそうだし、私もそうよ?」

かぐや「帽子屋はティンクちゃんや赤ずきんちゃんの事を甘いなんて言ったけれど、私はそうは思わないわ。少なくとも彼女達はあなたを理解してくれた、あなたの味方よ」

ドロシー「……はい。なんだか、ちょっぴり、安心しました……」

ティンカーベル「ねぇねぇキモオタ。かぐやはいきなり何言いだすかと思ったけど…大丈夫だったね」ヒソヒソ

キモオタ「まぁ確かに帽子屋殿の言葉は一理ありましたからな、それを伝えつつ励ますとは流石の一言ですなwww」ヒソヒソ

541: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:43:21 ID:l2l
帽子屋「あらあらぁ…なんなのぉ?かぐやちゃんはキチンとドロシーちゃんに厳しくできると思ったら結局甘やかすのねぇ?」

かぐや「あなたにはお礼を言わないとね、帽子屋君?」

帽子屋「あらぁ?アタシなにかしたぁ?」

かぐや「あなたが厳しい言葉をドロシーに吐いたおかげで、彼女も少し現実を知ることができたでしょう。言い過ぎだったとは思うけど、彼女の成長にはつながったわ」

かぐや「この先どうしても彼女は厳しい現実を目の当たりにする…いつかは自分の事を攻め立てる者と出会うことになる。その予行練習にはなったでしょう」

ドロシー「かぐやさん、そこまで考えて……」

帽子屋「んふふっ、やっぱりアタシがドロシーちゃんを責めてるのに口出ししなかったのはワザとだったってわけねぇ?まんまとやられたわぁ」

かぐや「ええ、そうよ。もしかして、利用されたみたいで頭に来てる…そんな感じかしら?」

帽子屋「んふふっ、別に気にしてないわよぉ?その程度で腹を立てるほど心が狭いわけでも無いものねぇ?」

かぐや「そう、よかったわ。けれどね、とても心の狭い私は違うわ……今、とても頭に来ているのよ」

帽子屋「あらぁ?どうしてぇ?アタシには感謝してるんでしょぉ?」クスクス

かぐや「ええ。だけどね…私は案外自分勝手な女なのよ、それに割り切る事が苦手なの。例えあなたの暴言がドロシーの経験につながったとしても…」



かぐや「あなたがドロシーを泣かせた事は、大目に見る事が出来ないわ」フワッ

542: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:46:45 ID:l2l

帽子屋「んふふっ、どうやら月の民の能力を見る事が出来そうね…願ったりかなったりだわぁ~!」

かぐや「見るだけで満足なの?そんな事言わず、身体で感じなさい。最後まで着いてこれるか疑問だけれどね」フフッ

フワフワ

ドロシー「か、かぐやさん…!?どうして宙に浮いて…!?」

かぐや「忘れたの?私はこの星の人間じゃない、月に済む人間…月の民なの。それより……悟空、ドロシーをお願い」

孫悟空「ああ、解った。だが…すまねぇ、オメェはこの能力使いたくねぇはずなのになぁ…」

かぐや「気にしないで。大切な友人の為に使うのなら、命を護る為、尊厳を護る為に使うのなら何の抵抗も無いもの」

帽子屋「んふふっ!なぁにおしゃべりしてるのかしらぁ!?折角かぐやちゃんの能力を見る事が出来るんだから、外野は邪魔しないで欲しいわねぇ!」

ジャキッ

帽子屋「ぶほほっ!アタシ自慢の鎌で、スライスかぐやちゃんにしてあげるわぁ!!」

ティンカーベル「帽子屋の奴…また大鎌構えて…!かぐやが危ないよ!なんの武器も持ってないのに…!」

キモオタ「かぐや殿!危ないですぞぉぉぉ!!」

543: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:50:39 ID:l2l
玉龍「心配いらないッスよ二人とも。それより、絶対にかぐやに近づいちゃダメッスよ?」

ティンカーベル「本当に大丈夫!?素手で大鎌相手にするなんて…絶対無理でしょ!」

キモオタ「我々はかぐや殿月の民の能力を知らないでござるから不安しかないのでござるが……」

ドロシー「私も…その能力の事はあまり教わってないから……」

孫悟空「まぁ、見てな」

帽子屋「んふふっ、随分余裕そうじゃない!?そろそろ避けないとまずいわよぉ?」ヒュッ

かぐや「……」スッ

帽子屋「あらあらぁ?手なんか差し出してどういうつもりかしr……!?」グググッ

キモオタ「なんですと!?帽子屋殿の身体が見えない力によって押さえつけられているような…!」

ドゴシャアアァ

帽子屋「ごはっ…!なん、なの…!?このアタシが地面にたたきつけられるなんて…!」

かぐや「あら、まだ意識を失ってないなんて驚いたわね。そんなに加減してなかったつもりだけど…でもそういう事なら」スッ

グググッ メキメキメキ

帽子屋「ぬぐあぁっ…!なんなの…抗えないほどの巨大な力で地面に押し付けられて……!これが月の民の能力なのぉ!?」メキメキメキ

544: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/10(日)00:53:41 ID:l2l
かぐや「本当はこんな盗賊のような事をするのは嫌だけど、あなたはとても強いから…その力をさらに高める魔法具は取り上げさせてもらうわね」スッ

フワッ フワフワ

ティンカーベル「あっ!あの重そうな大鎌がひとりでに宙に浮いたよ!?」

ドロシー「それと…一緒に宙に浮いてるあれは、薬草…かな?」

玉龍「あいつの傷がたちどころに回復していたのはあの薬草のせいッスね…!それを取り上げるとはナイスかぐやッス!」

帽子屋「あ、アタシの身体は地面にめり込んだまま自由が利かないのに…魔法具だけ浮かせるなんて……!」

かぐや「悟空、悪いけれどこの大鎌と薬草…お願いできる?」スィーッ

孫悟空「おう、任せときな」パシッ

帽子屋「私の自由を奪ったうえ、魔法具まで取り上げるなんてかぐやちゃんの事舐めてたわねぇ…!あんた、やっぱりただ者じゃないわ、こんな事が出来るなんてねぇ!」ググググ

かぐや「この星の人たちにとって、私は宇宙人だからこれくらいはね。それにこの能力が使えなきゃ、余所の惑星に降り立つなんてできないわ…危険だもの」クスクス

キモオタ「もしかかぐや殿…月の民の能力とは…重力操作でござるか!?」

かぐや「だけ、ではないけれど…これも月の民の能力の一つよ、キモオタ君」クスクス

553: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:17:43 ID:ClV
帽子屋「んふふぅ…まいったわねぇ…まったく想定外よぉこれは……」ギギギッ

かぐや「悟空と玉龍にしかこの能力は見せた事がなかったのだけど。これであなた達にひとつ情報を与える事になってしまったかもね」フフッ

ティンカーベル「すごい!悟空と玉龍が二人がかりでも止められなかった帽子屋をあんなに簡単に動けなくしちゃうなんて!」

キモオタ「加えて大鎌と魔法具まで取り上げるとは…もしかすると月の民は戦闘民族なのかもしれませんなwwwスーパーカグヤ人www」コポォ

ティンカーベル「でも本当にそんくらいの強さだよねぇ…ぶっちゃけ悟空の『おとぎ話最強』ってなんなんだろうね。名前負けだよね」プークスクス

玉龍「それは聞き捨てならないッスね!悟空センパイは間違いなく最強ッスよ!」フーッ!

ティンカーベル「えーっ…でもかぐやの方が強いし…ねぇ?キモオタ?」

キモオタ「ちょwww我輩を巻き込まないでいただきたいwww」

孫悟空「やめろ玉龍、んなこたぁどうでもいいじゃねぇか。帽子屋を止められたんだからよぉ」

玉龍「よくないッス!いいッスか?そりゃかぐやの月の民の能力は規格外ッスけど、戦えるだけの筋力とか無いッスからね!?不老不死だとか高い身体能力とか物凄い腕力とかその上妖術使える事とか総合的に考えればセンパイの圧勝ッス!」

玉龍「それにあの帽子屋は強いスけど、たくさんの魔法具で強化してようやくあのレベルッス!悟空センパイが持ってる如意棒も確かに魔法具ッスけど、あんなのただの伸びる棒ッスからね?その辺り考えるとセンパイは圧倒的n」

孫悟空「やめろっつってんだろがみっともねぇ!つぅかただの伸びる棒じゃねぇよ!テメェは俺を持ちあげたいのか落としてぇのかどっちだ!」

玉龍「持ち上げてなんか無いッスよ!だってセンパイが一番強いのは事実ッスから!それなのにティンクが…!」

ティンカーベル「わ、わかったよ…悟空が一番で良いから…」ヒキヒキ

554: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:19:53 ID:ClV
玉龍「解ってくれたみたいッスね!センパイ!これでセンパイの面目は保たれたッスよ!」スリスリ

孫悟空「んなこたぁどうでもいいが…おい、帽子屋」

帽子屋「あらぁ…何か用かしら悟空ちゃん?アタシ今、呼吸をするのすらしんどいんだけどぉ…?」ググググ

孫悟空「かぐやの重力操作でテメェには普段の何倍もの重力がのしかかってんだ。そりゃあキツイだろうよ」

帽子屋「なんだか自分の手柄のように言うのねぇ?悟空ちゃんはアタシを倒す事が出来なかったくせに良く言うわよぉ~、女の子のかぐやちゃんの方が強いなんて悟空ちゃん情けなぁい」クスクス

孫悟空「否定しねぇよ、最強だのなんだの持て囃されちゃいるがまだまだ鍛錬の必要ありって事だ。少なくともテメェのような実力者が居る限りなぁ」

帽子屋「んふふっ、褒めてくれてるのよね?例え嫌味でも嬉しいわぁ」ンフフ

孫悟空「嫌味なんかじゃねぇさ、テメェの実力は認めざるを得ねぇ。だから俺としちゃあテメェにトドメを刺して起きてぇ所だが……」

ティンカーベル「えっ!?ちょ、ちょっと待ってなにその言い方!トドメ刺さないの!?」

キモオタ「息の根を止める必要はないでござるが捕えるべきではござらんか?」

ドロシー「命を奪うのは私も反対です…でも、帽子屋さんは放っておくにはその、危険すぎます…」

帽子屋「んふふっ、悟空ちゃん大ブーイングじゃないのぉ。そりゃそうよねぇ、折角捕まえたアタシをみすみす逃がすつもりぃ?」

孫悟空「それを決めるのはかぐやだ。テメェを捕えたのはかぐやだからな、俺には決定権なんかねぇよ。おい、かぐやどうすんだ?」

かぐや「そうね、私は……」スッ

555: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:23:02 ID:ClV
かぐや「みんなは納得できないかもしれない。けれど私は彼を解放するわ」

ティンカーベル「なんで!?村まで壊されて玉龍は怪我だってしたのになんで…!」

キモオタ「ティンカーベル殿、かぐや殿にも考えがあってのこと。ここは見守るでござるよ」

かぐや「…どうかしら帽子屋君、あなたに掛かっている重力は元に戻っているはずよ」

帽子屋「ええ、確かにもう自由に動けるわねぇ……でも驚いたわぁ、本当に私を逃がすつもりぃ?」ムクッ

かぐや「そのつもりよ。まだ相手をして欲しいって言うなら応じるけど、普段の倍以上の重力を浴びたあなたは見た目以上に消耗しているはず…それでもいいのならね」

帽子屋「やめておくわぁ。あなたがこんな事をする意図は解らないけど、大鎌も死神の薬草も奪われてしまったし…今日の所は大人しく引くとしましょ」

かぐや「そうね、その判断はとても懸命だと思うわ」

帽子屋「だけどねぇ、かぐやちゃん?アタシは見逃して貰ったなんて思わないわよぉ?これに恩を感じてあなた達に下るなんて期待しないでよぉ?」

帽子屋「アタシはアリスちゃん以外の下には絶対につかないわ。彼女を護る事がアタシの使命だもの、ルイスちゃんが与えてくれた使命よぉ」

かぐや「そう。安心して、恩を売るつもりはないわ。だけど村を壊したことや玉龍やドロシーを傷付けた事は反省してちょうだい」

帽子屋「んふふっ、かぐやちゃんこそよくよく反省することねぇ…戦いにおいて敵を逃がす事がどれだけ愚かなことなのか、しっかりとねぇ」クスクス

かぐや「あなたとは…また会う事になると思うけれど、村を襲うなんてまどろっこしい事しないで次は直接私を襲いなさい」

かぐや「私の能力は重力を操るだけじゃない。村を襲うなんて事に戦力を裂いて、それで勝てる相手じゃないって解ったでしょう?」

帽子屋「んほほっ、確かに今は勝てないわねぇ。でも次はキチンと対策をして来るから、次会うのが楽しみねぇ~?」ブホホッ

スッ

557: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:26:10 ID:ClV
玉龍「消えたッス…!世界移動の手段も隠し持っていたみたいッスね、一人でこの世界に来ていたって事ッスか…」

ドロシー「ほ、本当に別の世界にいどうしたのかな?もしかしたら、姿だけ消してまだ近くに潜んでいるとかかもしれないです…」

孫悟空「そりゃあねぇだろ、最後までヘラヘラしてやがったからそうは見えねぇかもしれねぇけど、相当ダメージを受けてるはずだぜ」

孫悟空「余裕そうに構えちゃいたが、ありゃあもう戦える状 じゃねぇよ。頼みの綱の回復の魔法具もこっちにあるしな」

キモオタ「玉龍殿の右腕もその魔法具があればなんとかなるのではござらんか?試してみる価値ありですぞwww」

玉龍「元に戻るならそれに越した事はないッスけど…でも正体のよくわからない魔法具を使うのは躊躇するッスねぇ…」

キモオタ「確かにwwwならば我輩の友人におとぎ話に詳しい者がいるでござるからその者に聞いてみるというのはwww」

かぐや「それは名案ね、治せるのなら早く腕を治した方がいいわね。村の復興には人手がたくさん必要になるだろうから」

孫悟空「そうだな、とにかくこんなところで立ち話してても始まらねぇ。俺と玉龍が住処にしてる小屋が近ぇ、話はそこでするとしようぜ」

玉龍「それがいいッスね!かぐやん家みたいにごちそうはないッスけど、柿くらいなら出せるッス!」

キモオタ「ほうwww我輩はもっぱら肉派でござるが、たまに食べるとフルーツも上手いでござるからなwww早速向かうでござるよwww」

スタスタ

かぐや「ふふっ、キモオタ君、随分とお腹が空いているのかしら?…ほら、ティンクちゃんも行きましょう」

ティンカーベル「…うん、わかった」

558: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:29:08 ID:ClV

かぐや姫の世界 悟空達の小屋

・・・

キモオタ「柿うまいでござるwww柿うまいでござるwww」バクバクムシャムシャ

ドロシー「キモオタさん、物凄く食べるんですね…あっ、たくさん食べるのは良い事ですよね」アワアワ

キモオタ「頑張って戦った後は甘いものが食べたくなるというものwwwドロシー殿も遠慮せずにいただくでござるよwww」

ドロシー「あっ、はい、いただきます…」カプッ

ティンカーベル「私もキモオタも、結局何にもしてないようなもんだったけどね」モグモグ

キモオタ「ちょwwwそれはそれwww何もしなくても腹は減るのでござるwww結局夕飯食べ損ねましたしな我々www」

玉龍「じーさん達はキモオタ達の為にごちそう用意してたみたいッスけど、屋敷のみんなも逃げて行ったッスからねー。もうごちそうは諦めて柿を食うッスよ」スッ

ドロシー「あっ…そういえば翁さんや村のみんなは避難したままなんでしたね、帽子屋さん居なくなったって伝えなくてもいいんですか?」

かぐや「伝えた方がいいのは確かだけど、伝えたところですぐに村に帰れる状 ではないから…。復興となれば悟空も忙しくなってこうして落ち着いて話す時間を取ることも難しくなりそうだから」

孫悟空「今回、帽子屋が村を襲った件で話しておくべき事は多いしな。この世界がおとぎ話だって知らねぇ奴等になんて説明するかも考えなきゃなんねぇし」

孫悟空「それに巻き込まれただけのキモオタ達をいつまでも引き留めるわけにもいかねぇしな。まぁ、大事な事だけ話したら俺と玉龍で避難先に行ってくるぜ」

キモオタ「我々の事なら気になさらずともよいというのにwwwしかしそういう事ならば早いところ柿を平らげて本題に入りますかなwww」

559: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:31:53 ID:ClV
孫悟空「あー、その前にだな…玉龍。テメェに言っておくことがある」

玉龍「何ッスかセンパイ?もしかして、今回頑張ったご褒美ッスか!?ご褒美ッスか!?褒めてくれるんスか?」ワクワク

孫悟空「なんで褒めて貰う気マンマンなんだテメェは。だがジジィが死なずに済んだのは村に急いでくれたお前のおかげだ。よくやった、偉いぜ玉龍」ガシガシ

玉龍「いやぁー、その後は結果残せなかったッスけどね…でもしっかり頑張ったッスよ玉龍ちゃんは」テレテレ

孫悟空「それと、あれだ…テメェの右腕がそうなっちまったのは俺の到着が遅れたからだ、すまん」

玉龍「もー何言ってんスかセンパイ!これはウチが帽子屋を甘く見た結果ッス!先輩は悪くないッスよ!」

孫悟空「未知の敵相手にお前一人行かせたのは軽率だった。帽子屋から奪った薬草で治りゃ良いが、駄目だとしても俺は必ずお前の右腕を戻してやる、だから許してくれ」

玉龍「ウチは別に気にしてないッスけどセンパイがそう言うならお願いするッス!それじゃあもしも、右腕が元に戻らないなんて事があれば責任とってセンパイの嫁にして貰うッスよー!約束ッス!」

孫悟空「いや、流石にそれはねぇ。気色わりぃ」

玉龍「なんなんスかそれ!?口だけッスか!?口だけ大聖ッスか!?」ギャーギャー

孫悟空「斉天大聖みたいに呼ぶんじゃねぇ。あとはかぐやにも詫びなきゃならねぇな、悪かったな…あの能力を使わせる事になっちまって」

かぐや「いいのよ、気にしないで。むしろ私はあなた達に礼をしなきゃね、傷付いてまで帽子屋君を相手に戦ってくれたこと感謝してる」

キモオタ「いやーwwwこういう関係はいいですなぁwww親しい仲だからこそキチンと謝罪して感謝すべきは感謝する、大切なことですぞwwwティンカーベル殿www」チラッ

ティンカーベル「なんで私に言うの!?それじゃ私はキチンとできてないみたいじゃん!」バンバン

キモオタ「そういうわけではwwwただもう少し我輩への暴言を抑えて優しくしてくれてm…ちょ痛い痛いwww叩かないでいただきたいwww」

560: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:33:42 ID:ClV
ドロシー「うふふっ、キモオタさんとティンクちゃんは仲がすごく良くて羨ましい…」

キモオタ「そんなことないのでござるよwww我輩は家主なのに蔑ろにされがちでござるし、最近特に口が悪くて困ってますぞwww気も短いからすぐに腹を立てるでござるしwww」

ティンカーベル「そんなの言いがかりだよ!私は気が短くなんか無いもん!いい加減な事言ってると怒るからね!」プンス

キモオタ「言ったそばからお主はwww」コポォ

ティンカーベル「もぉー私達の事なんかどうでもいいんだよ!それより私が聞きたいのはなんでかぐやは帽子屋を逃がしちゃったの?って事だよ!」

ドロシー「あっ、それは私も気になってました…かぐやさんのことだからきっと考えがあってだと思うけれど…」

ティンカーベル「でしょ?折角捕まえたのにあんな危険な奴を逃がすなんて…どうせまたすぐに悪さするよ!納得が行かないよ!危なすぎるもん!」

かぐや「確かに、ティンクちゃんが言うようにまた悪さをすると思うわ。私や悟空を始末できてないもの、きっと襲いに来るわね」

ティンカーベル「襲いに来るって解ってるのになんで逃がすの?まさか罪を償って反省してくれるかもしれないなんて思って帽子屋を逃がしたんじゃないよね?だとしたら甘過ぎるよ!」

かぐや「…正直なところ、そういう気持ちは少なからずあるわね。私がそうであるように例えどんな悪さをしても人はやり直せる…あれだけ暴れて悪さした帽子屋君だって罪を償えばまたやり直せると私は思ってるわ」

ティンカーベル「むむぅ…その考えは立派だけど……でも!」

かぐや「大丈夫よティンクちゃん、帽子屋君を逃がした理由はそれだけじゃないから」

キモオタ「別に理由があると?我輩、帽子屋殿を逃がしたのはてっきりかぐや殿の優しさかとwww」

かぐや「ふふっ、流石におとぎ話の危機だというのにそんな勝手はできないわよ。考えてみてくれる?ここで私達が帽子屋君を捕らえたらどうなるかしら?」

561: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:35:29 ID:ClV

キモオタ「むむっ、そうですなぁ…我々が帽子屋殿を捕えて監禁するでござる…そうすれば帽子屋殿が戻ってこないとアリス殿側は騒ぎになるでござる、それで…」

ティンカーベル「あんなに強い帽子屋を見捨てるなんて思えないから…アリスが取り返しに来るんじゃない?」

かぐや「今のアリスちゃんはドロシーの魔法の靴を履いているし、強さの方向性は帽子屋君とは違うと思うけれどそれでも…私達は苦戦を強いられるはず」

かぐや「それに帽子屋君を捕えたりすればアリスちゃんから標的にされるわ。私や悟空はともかく、キモオタ君達やドロシーまで標的にされてしまう」

キモオタ「我輩やティンカーベル殿は既に標的にされてる感ありますがなwwwしかし、ドロシー殿は違いますなwww今の所彼女の標的ではないでござるwww」

ドロシー「で、でも私はアリスちゃんに用済みだと言ってこの世界に飛ばされたんですよ?きっと私の事も始末するつもりなんです…」

ティンカーベル「そーかな?だったらすぐに殺すと思うよ?なんていうか、その、きっと…別に居ても居なくても一緒だと思ったから別の世界に飛ばしたんだと思うし…」

ドロシー「うぅ…居ても居なくても一緒……」ズーン

ティンカーベル「ち、違うよ!そういう意味じゃなくて…!キモオタァ!私の代わりに説明してよぉ!」クルッ

キモオタ「要するにwwwアリス殿はドロシー殿を敵に回しても脅威ではないと判断したわけでござるな。だからそこ殺さずに敢えて別の世界に一人で飛ばすことでドロシー殿に苦労させようと思ったのではwww
身よりの無い少女が人並みに暮らすのが難しいのは何処でも同じでござろうし…ひとつの嫌がらせですなwww」

ティンカーベル「そういうこと!」フンス

キモオタ「しかし、大切な仲間である帽子屋殿に手を出したとなれば話は別でござる。かぐや殿はドロシー殿を可愛がっているでござるし、見せしめに命を奪う…などいかにもやりそうな感じでござろう?」

ドロシー「た、確かにそうです…!」

孫悟空「帽子屋の口ぶりじゃあ…アリスとは随分硬い絆があるようだったからな。大切な仲間が捕えられりゃ誰だって本気で相手を憎むし、全力で奪還に向かうだろうよ」

562: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:39:50 ID:ClV

かぐや「それに彼を逃がしたところで、他のおとぎ話に危険が及ぶ事はないでしょう。彼は目的を達成していないから、準備が整えばまたこの世界に来るはず」

かぐや「私の能力について知られてしまったし、またこの辺りの村を襲うかもしれないけど…でも、それは私や悟空や玉龍でも防ぐ事は出来る」

かぐや「別の世界に行っているあなた達や現実世界の事まで護りきる事は出来ないから…だから今回は彼を逃したの」

キモオタ「なるほど、どっちに転んでも自体が好転しないなら被害を抑えられそうな方を…ということですなwww」

ドロシー「で、でもそれじゃ私達は良くてもかぐやさん達が…」

かぐや「大丈夫よ、彼らも対策をして来るでしょうけど私達だって迎え撃つ準備は出来る。条件は対等よ」フフッ

孫悟空「あぁ、今度は準備を整えてあいつ等を歓迎してやらねぇとなぁ!」

玉龍「ウチもやられっぱなしじゃ嫌ッスからね!そうと決まればキモオタ!さっき話していた友人とやらにあの薬草の事聞いて欲しいッス!」

キモオタ「わかりましたぞwww」

ティンカーベル「えっと、あの大鎌と薬草…確か帽子屋言ってたよね『死神の鎌』だって、あと『死神の薬草』とも言ってた!」

キモオタ「恐らく、別のおとぎ話から奪って来た魔法具でござるから、それらが登場するおとぎ話がないかどうか聞けば、その正体がわかるやもしれませんぞwww」

ティンカーベル「それじゃ、やっぱり司書さんに聞く感じ?」

キモオタ「そうですぞwwwそれに司書殿にはもうひとつ聞いておきたい事があるのでござるよ、とにかくおはなしウォッチで話し掛けてみるでござるwww」コポォ

563: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:43:40 ID:ClV
・・・

司書の声「…その鎌と薬草はグリム童話のひとつ、【死神の名付け親】の魔法具ですね」

司書の声「そのおとぎ話の中では鎌に特別な力はありませんけど、薬草の方は死の至るような病ですら癒す効果があります。このおとぎ話の主人公はその薬草を使って名医になるんですけど…とにかく傷を癒す魔法具だと思ってもらえばいいです」

キモオタ「流石司書殿wwwやはりお主に連絡してよかったでござるwww」

司書の声「いえいえそんな…死神が持っている傷を癒す薬草と言えばこのおとぎ話ですから。現実世界では既に消滅しているおとぎ話ですから間違いないと思いますよ」

玉龍「それで、この魔法具を使えばもがれた腕も治るんスかね?」

司書の声「どうでしょうか…でもその帽子屋さんが【こぶとり爺さん】の鬼の能力で腕をもいだとなると、もがれた腕は生きているはずですから傷を癒すという行為に当たるかどうか…」

玉龍「なるほどッス…なんだか期待はできそうにないッスね。まぁ、戻らなかったら戻らなかったでセンパイの嫁にして貰うッスから問題ないスけど」

孫悟空「しねぇよ、妙なところで食い下がんじゃねぇ」

司書の声「ふふっ…でもその魔法具は病でも傷でも癒す事は出来ますから有用なものではありますよ」

キモオタ「なるほどwww玉龍殿の腕を治せなさそうなのは残念でござるが、便利なものを手に入れた事には違いないでござるなwww」

孫悟空「キモオタの魔法具もすげぇがこの女もすげぇな…僅かな情報からどのおとぎ話の魔法具なのか検討をつけるたぁただ者じゃねぇ」ヒソヒソ

かぐや「【キジも鳴かずば】のお千代ちゃんと言っていたけれど…彼女ほどの辛い思いをした娘が現実世界で夢をかなえる為に頑張ってるなんて、偉いわね」

564: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:45:40 ID:ClV
ティンカーベル「いやー、凄く助かっちゃったよ!ありがとうね司書さん!」

司書の声「いえいえ、お礼を言わないといけないのはこっちの方です。聞きました、ヘンゼルの為に色々としてくれたんですよね?」

キモオタ「我々がした事などたかが知れているでござるwwwヘンゼル殿が向かった【裸の王様】の世界は治安もいいでござるし、なにより裸王殿が立派で親切な方故、ご安心をwww」

司書の声「ふふっ、キモオタさんがヘンゼルの為に勧めてくれた行き先ですから危険なはずはないと…私は信じていましたけどね。だから心配してません」フフッ

キモオタ「おおっとwwwこれは司書殿にフラグ立ちましたかなwww」コポォ

司書の声「? えっと、他に何かありますか?キモオタさん?」

キモオタ「ちょっと待っていただきたいwwwもうひとつ聞きたい事があるのでござるwww」

ドロシー「えっと、聞きたい事って…なんなんですか?キモオタさん?」

キモオタ「帽子屋殿、会話の中にアリス殿の為…と何度か口に出しておりましたが、その度にとある名前を出していたでござろう?」

玉龍「言っていたッスね!アリスを護るのは自分の使命だと、そしてそれを与えたのがえっと…ルイスだったッスか?」

ティンカーベル「ルイス…ルイス…?どっかで聞いたような見たような気がするけど…」

キモオタ「我輩も聞き覚えがあるのでござるが曖昧でしてなwwwしかし、司書殿に聞けば何者なのかはっきりするでござるよwww」

キモオタ「司書殿。帽子屋殿がしきりに『ルイス』という名前を口にしていたでござる。アリス殿を護るのはルイス殿から与えられた使命だとも言っていたようで…」

キモオタ「その者…『ルイス』とは何者なのか、解りますかな?」

565: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/12(火)00:48:16 ID:ClV
司書の声「ルイス…帽子屋さんがその名を口にしたんですね?」

キモオタ「そうでござる。【不思議の国のアリス】にその様な登場人物が居たとは記憶していないでござるし…別のおとぎ話の登場人物ですかな?」

司書の声「……」

キモオタ「司書殿?流石の司書殿でも見当がつかないですかな?」

司書の声「いいえ、アリスさんに関係する人物でルイスという名なら間違いなくそれは……ルイス・キャロルのことですね」

キモオタ「ルイス・キャロル…一体、何者ですかな?」

司書の声「1800年代のイギリスに住んでいた男性で……【不思議の国のアリス】の作者です」

キモオタ「なんですと…アリス殿のおとぎ話の作者…!通りでなんか聞いたことあると思ったのでござるよ!」

ティンカーベル「作者…だから帽子屋は言ってたんだね、アリスを護る事がルイス…作者から与えられた使命だって。作者に生み出された存在だからそう考えれば使命かも…」

司書の声「でも、それは少し不思議ですね。【不思議の国のアリス】で確かにアリスさんは様々なトラブルに巻き込まれ、大変な目にもあいますけど…」

司書の声「おとぎ話の中での帽子屋さんはアリスさんの味方ではありません。と言っても敵と言うわけでもないですけど」

キモオタ「確かにそうでござったな、と言うか基本あの物語に敵も味方も無いでござるしな」

司書の声「作者が登場人物に与えた役割を使命と言うのなら、ルイス・キャロスが帽子屋さんに与えた使命は狂ったお茶会でアリスさんを小馬鹿にすることと裁判で証言をする事…」

司書の声「作中でアリスさんを護るなんて事は一切しません。帽子屋さんがアリスさんを護る事が使命だというのなら…」



司書の声「それは【不思議の国のアリス】のストーリーの中では無いどこかで……帽子屋さんがルイス・キャロルから与えられた使命。という事になりますね」

578: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:27:02 ID:ADc
キモオタ「むむっ…しかし妙ですぞ。【不思議の国のアリス】の作者ルイス・キャロル殿が帽子屋殿にアリス殿を護るよう命じたというのが事実として…」

キモオタ「ルイス殿は一体何からアリス殿を護ろうとしたのでござろうか?」

玉龍「そりゃ…おとぎ話に出てくる悪い奴からアリスを護ってくれっていう意味じゃないッスか?」

孫悟空「考えてもみろ、作者は【不思議の国のアリス】を生み出した張本人だぞ?物語の中に敵を作るも味方を作るも作者の自由だ、当然アリスに降りかかる危機だって自分で取り除けるだろ?」

ティンカーベル「それじゃあさ、【不思議の国のアリス】が消滅しないようにして欲しいってお願いかな?」

かぐや「それなら『アリスを護るのが使命』じゃなく『【不思議の国のアリス】を護るのが使命』になるんじゃないかしら?」

ティンカーベル「そっか、確かにそうだね。だったらうーん…わかんないよ、作者のルイスは何からアリスを護りたかったんだろう?」

司書の声「うーん、そこまでは私にもちょっと見当がつかないですね…」

ドロシー「あ、あの…ちょっといいですか?その、ルイスさんの事なんですけど…」

キモオタ「おぉ、これはうっかりしてましたな…!ドロシー殿はアリス殿と共に行動をしていたのでござった、何か知っているでござるな!?」

ドロシー「あの…そんな期待して貰うような事でも無いんですけど、私が【不思議の国のアリス】の世界に居た時のことなんですけど…」

ドロシー「えっと、その作者さんの名前を口にしていたのは帽子屋さんだけじゃないんです。あの世界のほとんどの人たちがそのルイスさんの事を知っていて、会話の中にもよくその名前が出て来てました」

ティンカーベル「えっ!?じゃあ【不思議の国のアリス】の登場人物のほとんどが作者の存在や名前まで知ってるって事!?」

ドロシー「はっ、はい。帽子屋さんも白ウサギさんもハートの女王様も三月ウサギさんも…事あるごとにルイスさんの名前を出してました。でも、あの世界で一番ルイスさんの名前を口にしていたのはきっと…アリスちゃんです」

579: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:30:08 ID:ADc
キモオタ「多くの登場人物が作者の存在を認知しているなど…そのようなおとぎ話、今までに一度も見た事がありませんぞ!?」

ティンカーベル「だよね…おとぎ話とは言っても事情を知らない人たちにとっては現実なわけだし」

司書の声「そうですね、でも私はアリスさん達が作者の存在とその名前をどういう経緯で知る事になったのかが気になります」

司書の声「雪の女王様やヘンゼルは自分のおとぎ話を生み出した作者について知っていましたけど、それは現実世界に渡ったりそこから手に入れた文献で知ったからですからね、初めから知っていたわけではないでしょうし…」

かぐや「初めから知っていたわけではないとしたら、ルイスが【不思議の国のアリス】の世界へ渡ったか…あるいはアリスが現実世界に渡ってそこで知ったか、そうなるわね」

キモオタ「そう考えるのが自然でござる。しかし…以前、現実世界で会ったアリス殿はこう言っていたでござる…『こんな世界に来たくなかった』と」

玉龍「それじゃあアリスが現実世界に来たのはその時が初めてって感じッスかね?酷い世界だって聞いていたから『こんな世界に来たくなかった』って事ッスよね?」

孫悟空「そうとも限らねぇぞ?以前現実世界で酷い目にあったからもう二度と『こんな世界には来たくなかった』って事かもしれねぇ。その言葉だけで判断するのは難しいだろうな」

キモオタ「でも少なくともアリス殿はルイス殿と面識があったと考えてもいいと思うでござるよ、見ず知らずの他人や文献のみで得た情報ならばそこまでルイス殿にこだわるとも思えんでござるし」

ドロシー「あの、私にもそこまでは解らないです、ルイスさんの事を詳しく聞いた事はなかったですから…でもルイスさんの名前を口にする時のアリスちゃんはなんだか嬉しそうで愛おしげで…そしてどこか決意に満ちている感じがしてました」

ドロシー「きっとアリスちゃんにとってすごく特別な人なんだなって思いました…だからアリスちゃんの願いと言うか目的って、ルイスさんが関係しているんじゃないかって私は思うんです」

キモオタ「ドロシー殿の話を聞いた感じだと、おそらくそうでござろうな…その経緯や理由は全く分からんでござるけど」

ティンカーベル「でもさぁ…何があったのか知らないけどさ、作者ってそんなに特別なものなのかな?」

ティンカーベル「【ピーターパン】にも作者は居るんだろうけど…なんだか私はピンとこないよ。ウェンディと空を飛んだりフックと戦ったりするお話だし、きっとドキドキワクワクが好きな人なんだろうなぁ…くらいの感想しかないもん」

580: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:32:01 ID:ADc
玉龍「まぁ…ぶっちゃけそんなもんッスよね。よく知らないあった事も無い奴を慕う理由があるわけないッスから…あっ!でもウチを女の子にしなかったのは失敗だったって伝えてやりt」

孫悟空「まぁ今だから言うが、俺は作者の事を恨んでた時期もあるぜ?師匠から俺の住んでた世界がおとぎ話だって聞かされてしばらくの間な」

玉龍「えぇっ!?そうなんスか!?よく暴れなかったッスね?その時はまだ今よりもずっとガラ悪かったッスのに…」

孫悟空「うるせぇよ、もう昔の話だ。納得がいかなかったんだな、何百年も封印されたり緊箍児なんてもんを頭に巻かれたり人使いの荒い師匠に付き合ったりさせられてな、そして思ったもんだ」

孫悟空「【西遊記】を生み出した作者の野郎が俺に試練を与えたせいで苦労する羽目になっちまってんじゃねぇかふざけんな!ってな」

司書の声「事情は違いますけど、自分の…というよりグレーテルの恵まれない境遇への憤りを作者に向けたヘンゼルと少し似てますね…彼もまた作者を憎悪していましたから」

孫悟空「あぁ、あいつもそんな事言ってたっけなぁ…でもまぁ、文句言ってもどうにもならねぇ。師匠と共に天竺への旅を続けて行くうちにそんなことはどうでもよくなっちまった」

孫悟空「作者が決めたもんだろうとなんだろうと、俺の運命には違いねぇんだ。他人に文句言う間があるんなら少しでも強くなった方が良いって思ったしな」

かぐや「なんだか悟空らしい考え方ね」フフッ

孫悟空「まあなんだ、話がそれちまったが…要は俺達おとぎ話の住人にとっちゃ余程特別な事情でも無い限り作者を好く理由なんかねぇって事だ」

キモオタ「そしてアリス殿は世界を敵に回すほどの騒動を起こしてでも叶えたい願いがある…それがルイス殿関連だとすれば二人の間にはただならぬ絆があるという事でござるな」

ティンカーベル「うーん、やっぱわかんないなぁ…いくら仲の良いキモオタやピーターパンの為だとしても、私そこまでしないと思うよ?っていうか他の世界を消してでも手に入れたい事なんてある?」

キモオタ「逆に言えばアリス殿にとってその目的は世界を破壊してでも叶えたいもの…という事でござる、どっちにしろ皆目見当つきませんがな」

司書の声「うーん…アリスさんとルイス・キャロスの関係が鍵なんでしょうか?【不思議の国のアリス】はその成り立ちも特殊ですから、そのあたりも関係しているのかもしれませんね…」

582: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:34:45 ID:ADc
玉龍「成り立ちが特殊?それってどういう事ッスか?」

司書の声「えーっとですね、どう説明しましょう…まず前提として【不思議の国のアリス】はルイス・キャロルによる創作童話です、ここはいいですか?」

ティンカーベル「うんうん、ずっと昔から伝えられてるおとぎ話じゃなくて作者がちゃんと存在しててその人が生み出したおとぎ話って事だよね?」

司書の声「そうですね【雪の女王】や【マッチ売りの少女】…ドロシーさんの【オズの魔法使い】もこの創作童話に分類されます」

司書の声「創作童話は基本的に童話作家が読み手を意識して作る作品です。生み出された経緯やそこにどんな思いが込められているかという話は別として、創作童話に共通する部分がひとつあります」

司書の声「それは大勢の読み手を想定しているという事です。自分の作品を世に出して、たくさんの人に読んで貰うことを前提としている…プロの作家さんの作品だから当然と言えばそうなんですけど」

キモオタ「作家ならば世に評価される物語を生み出してなんぼでござるからなwww」

司書の声「でも【不思議の国のアリス】は例外なんです。このおとぎ話は不特定多数の読者の為じゃなく、元を辿ればただ一人の少女の為に作られたおはなしだったんです」

ティンカーベル「へぇー、たったひとりの女の子の為に作られただなんてなんだか贅沢な話だね」

司書の声「きっかけはなんてことないものだったようですけどね、ルイス・キャロルにはとても親しくしている少女がいたんですが、彼女にせがまれて即興で作った物語が元になってると聞いています」

司書の声「ある時、彼は手作りの本を一冊、その少女に送りました。内容は少女にせがまれて作った即興の物語をまとめたおはなし…後の【不思議の国のアリス】です」

キモオタ「なるほど…初めはあくまで個人的な贈り物だったというわけでござるか」

司書の声「そうですね。でもそのおはなしはあまりによく出来ていて、やがて正式に出版される事になりました。あとはキモオタさんも知っているように世界で愛されるおとぎ話になったというわけです」

キモオタ「現実世界ではおとぎ話離れが進んでいるというのにその人気たるや凄まじいですからな。アリス殿、どんなソシャゲにも大体出てくるでござるしな…ディズニー映画のグッズとか本屋で見るでござるし…我々としては複雑でござるが、人気である事に違いはあるまいwww」

583: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:36:16 ID:ADc
司書の声「そうですね…【不思議の国のアリス】はうちの図書館でも人気高いです、他の作家へ与えた影響も大きいと聞いていますから」

ピルルルルッ

司書の声「…あっ、ごめんなさいキモオタさん。仕事の電話が掛かってきてしまって…こんな時間に何なのかな…」

キモオタ「おおwww長々と時間を取らせてしまい申し訳ありませんでしたなwwwおかげで色々と知ることができて助かったでござるwww」コポォ

司書の声「いえ、私には戦う力がありませんからこういった手助けしかできませんけど。必要ならばいつだってお手伝いしますから、遠慮無く言って下さいね。それでは、また」

キモオタ「わかりましたぞwwwそれではまたwww」

ピッ

孫悟空「しっかしテメェの仲間は大したもんだな、おとぎ話の内容どころかどうやって出来たとかそんなことまで知ってるなんてな」

かぐや「私達おとぎ話の住人も別のおとぎ話を知識として知っている事はあっても、成り立ちや作者の事は現実世界でないと知りようがないものね」

キモオタ「お千代殿こと司書殿は現実世界とおとぎ話の世界、両方の視点から物語を見る事のできる特殊な立場でござるからなwww知識面ではシェヘラザード殿と並んで頼れるインテリタイプの仲間なのでござるww」ドヤァ

ティンカーベル「でもアリスは変わってるって思ってたけどさ、まさかおとぎ話までちょっと特別な感じだったなんてね」

キモオタ「アリス殿のおかれた状況や気持ちが理解出来れば、彼女の行動の意図にもたどり着けると思ったでござるけど…確かに情報は増えたでござるが、その反面謎も増えてしまった感ありますなぁ」

ドロシー「ルイスさんの存在やアリスちゃんのおとぎ話の成立はわかったんですけど…でも、アリスちゃんの真意はやっぱりわかんないですね…」

ティンカーベル「うん、それにアリスにとって作者がどれだけ大切なのかわかんないけどさ、あいつがやってる事はやっぱり理解出来ないよ…」

かぐや「でも、理解出来ない事やわからない事だけじゃないわ。私達にはわかっている事もある、そうよね?」

584: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:39:25 ID:ADc
孫悟空「ああ、帽子屋がこの世界に来た目的…だな?」

玉龍「帽子屋は自分で語っていたッスからね!あいつの目的のひとつは悟空センパイとかぐやを始末することッス!」

キモオタ「悟空殿もかぐや殿も方向性は違うでござるけど戦闘においてスペック高いでござるからなwww」コポォ

ティンカーベル「格闘メチャクチャ強い悟空と重力操作できるかぐやが一緒にいるとかもうチートだよ!早めに倒しておきたいってのもわかるもん」

玉龍「その上可愛い玉龍ちゃんもいるッスからね。それでそしてもう一つの目的は…それはかぐやが持つ龍玉だったッスよね?」

孫悟空「ああ、そう帽子屋が言ってやがったな。んなこと知ってるって事ぁ俺達の事どこかで覗き見てたんだ、気色悪ぃ奴だぜ」

ドロシー「うぅ…嫌ですねそれ…。でも龍玉って確か…【かぐや姫】のおとぎ話にも出てくるとても貴重な宝物ですよね?」

ティンカーベル「あれでしょ?かぐやが求婚してきた男の人に持って来いっ!って無茶振りした五種類の宝物のひとつ!」

かぐや「そうね、でも未来の私はきっと無理難題を言って諦めて貰おうとしただけよ?それを無茶振りだなんて人聞きが悪いわ」ウフフ

キモオタ「いや、おとぎ話史上稀に見る無茶振りでござるよwwwしかし、あれは求婚者をそれとなく断る為のお題故、本来手に入る事の無いレアアイテムでござろう?その様なものをどうやって…」

玉龍「フッフッフ…ウチのあまりの可愛さに忘れちゃったッスか!?龍玉は龍の持つ宝玉ッス!ここに一匹頼れる龍がいる事を忘れては困るッスよ!」ドヤァ

ティンカーベル「そっか!龍の宝物なんだもん、玉龍になら簡単に手に入れる事ができるよねっ!」

玉龍「そうッスね!ちょっと雲の上を数日間飛んで百何匹かの龍に声をかけてようやく龍玉を生成できる龍を見つけてお願いしただけッスからね!」

キモオタ「ちょwww難易度クッソ高いwwwそんなもん要求された求婚者が可哀そうですなwww」コポォ

かぐや「ふふっ、もう求婚者の事は良いわよ。これがその龍玉よ」スッ

ピカピカ

キモオタ「おおwwwこれはふつくしいwwwしっかしボーリング玉みたいなの想像しておりましたがピンポン玉サイズでござるなwww」

ティンカーベル「帽子屋はこれを狙ってるわけかぁ…手に入れるのが難しいレアな宝物だしね。それで、この魔法具は何ができるの?」

585: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:41:59 ID:ADc
かぐや「魔法具…?この龍玉が?」

ティンカーベル「うん!そうなんでしょ?特別な力が備わってるに決まってるよ、なんかこう…七つ集めたら龍が願いを叶えてくれるとか!」

キモオタ「つっwwwかっwwwもっwwwうっwwwぜっwwwドwwwラwwwゴwwwンwwwボwwwーwwwルwww」コポォ

かぐや「あなた達の世界には龍玉を集めるとそんな事が起きるって伝説でもあるの?そんな話は初めて聞いたけれど…どうなの?玉龍?」

玉龍「いや、これはただの綺麗な玉ッス。魔力は相当な量が込められてるッスけど、不思議な力なんて宿って無いッスよ?」

ティンカーベル「えぇーっ!?そうなの!?見かけ倒しじゃん!」

玉龍「なんてこと言うんスか!綺麗なだけでもいいじゃないッスか!何にでも不思議な力が宿ってると思ったら大間違いッスよ!」

ティンカーベル「そ、そうだけど!でもレアアイテムだっていうから期待しちゃうのも無理ないじゃん!」

孫悟空「まぁ気持ちは解らんでもねぇがな。おおかた龍玉を伝説でしか聞いた事の無い奴らもティンクと同じように考えたんだろうな」

かぐや「龍玉には願いを叶える力がある…なんて言い伝えもあるくらいだから」

キモオタ「なるほど…しかし、玉龍殿は何故そのような代物をかぐや殿に贈ったのでござるか?」

玉龍「まぁ日ごろのお礼って感じッスかね。かぐやって結構貴族から贈り物とか貰うんスよ、まぁご機嫌取りの贈り物がほとんどッスけど…」

玉龍「で、その贈り物の中に結構可愛い服とか装飾品とかあるんスよね!ウチ、変化したりとかで着物破く事もあるッスからよく譲って貰ってるンスよー、だからそのお礼ッス」

キモオタ「ちょwww思ったよりwww軽い理由でしたなwww」コポォ

玉龍「まぁ、お守り代わりッスよ。ウチら龍なら手に入れるのも難しくないッスからねー」

玉龍「それに願いが叶うっていうのは言い伝えッスけど。もしも本当に叶ったりしたら…素敵じゃないッスか!そういう期待もちょっぴりあるッス!」

586: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:46:36 ID:ADc
かぐや「世間ではこの龍玉は値が付けられないほどの宝物だけど、私にとっては友達から貰った大切なお護り。宝物って事に違いはないけれど、ね」

かぐや「でも帽子屋君達がこの龍玉を狙っているのは、これに含まれる魔力に目をつけたからでしょうね」

キモオタ「恐らくそうですな、アリス殿達は魔力を集めて【アラジンと魔法のランプ】の結界を破るつもりでござるからね。故に邪魔者の排除と魔力の強奪を目的としてるわけですな」

ドロシー「私がアリスちゃんの所にいた時も、他のおとぎ話を襲う理由は大抵同じでした…敵になりそうな相手を倒しておくこと、それと魔力や魔法具の確保…」

キモオタ「【不思議の国のアリス】が結末を迎えて帽子屋も動けるようになったから本気出すみたいに言ってたっけ、だから遂に強敵の悟空やかぐやの所に来たんだね!」

孫悟空「ああ、だが……俺達を倒すって目的も龍玉を奪うって目的も、俺にはどうも表向きの理由にしか見えねぇんだよな」

キモオタ「…というと?どういうことでござるかな?」

孫悟空「俺とかぐやが邪魔だってのは事実だろう、龍玉だって手に入れたいはずだ。だが、さっき帽子屋と戦っている時も感じたが…どうもひっかかる部分が多い」

玉龍「センパイも感じてたッスか。ウチも引っ掛かってる部分あるんスよね…例えば、そう、そもそも村を襲った事ッスね」

ティンカーベル「それはあれでしょ?村を襲えば悟空やかぐやをおびき寄せると思ったんでしょ?実際、二人とも村に駆け付けたわけだしさ」

孫悟空「おびき寄せるって発想がそもそも不自然なんだよティンク。いいか?帽子屋はアリスの邪魔になりそうな俺達を殺したいんだぞ?」

ティンカーベル「わかってるって、だから三人をおびき寄せてまとめて殺そうとしたんでしょ?」

キモオタ「…いや、殺そうとしているのなら尚更強敵を三人一度に相手するのはおかしいのでござるよ」

ドロシー「確かにそうです…!村を襲ったりすれば三人とも来ちゃう可能性が高いです…!」

かぐや「そうなってしまえば殺せる可能性は減るわね、帽子屋君は一人で来ていたみたいだし。だったら一人ずつ始末する方が確実ね」

ティンカーベル「…っ!それじゃあ本当は三人を殺すつもりはなかったって事!?」

587: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:48:56 ID:ADc
孫悟空「今の所は殺すつもりがない…ってとこだろうな」

玉龍「帽子屋は【こぶとり爺さん】の鬼の力を持っていたッス。それならウチら三人が別の場所にいる時を狙ってすれ違いざまに攻撃する方がずっと確実で簡単ッス」

キモオタ「それに気が付けないような者共ではござらんし、意図したものでござろうな…」

孫悟空「それにドロシーをやたら責めたててたが…あれもどうも引っかかる」

ドロシー「わ、私を責めてた事ですか…?」

孫悟空「ああそうだ。ドロシーを追いつめることであいつ等は何を得られるってんだ?」

ドロシー「わかんないですけど…私の事を虐めて楽しんでたとか…」

かぐや「あの時、あの場に到着したのはドロシーと私…どんな能力を持っているか解らない私を前にして、そんなことするかしら…?」

キモオタ「普通ならかぐや殿の方を警戒するでござるよね。戦う事が出来ないドロシー殿の方を構うというのは確かに不自然でござる」

ティンカーベル「…ねぇ、悟空はどう考えてる?帽子屋には何か別の目標があるって思う?」

孫悟空「そうだな…これは俺が今までの戦いで得た経験っつうか勘みてぇなもんだがな」

孫悟空「帽子屋は俺達の目を自分に向けようとしてるってところじゃねぇか?」

ティンカーベル「どゆこと?帽子屋は構ってちゃんだったって事?」

キモオタ「ちょwwwそういう意味ではないでござろうwww自分に注意をひきつけているってことでござるよね?悟空殿?」

588: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:52:00 ID:ADc
孫悟空「ああそうだな。村を襲う事も、ドロシーを責め立てる事も俺やかぐやの怒りを買うって点じゃ共通してっからな」

孫悟空「俺達の意識を帽子屋に向けている間に、別の場所でもっとでかい何かをしようとしている……ってとこだろうと俺は考えてるぜ」

キモオタ「他でおこなわれるもっと大きな計画から目をそむけさせる為に、帽子屋殿は敢えて自分にヘイトが集まるような行動をしたと」

ドロシー「村を襲う事も十分酷い事だと思うのに、もっと大きな計画があるなんて…」ビクビク

ティンカーベル「うーん…でもさぁ、それだったらなおさら悟空やかぐやを殺そうとしない?」

ドロシー「えっと、それってどういう意味ですか…?」

ティンカーベル「だからさ、他の場所でもっと大きな計画をしようとしてて悟空やかぐやに知られたくないっていうならもういっそのこと二人を殺した方が早くない?あいつらにとったらさ」

玉龍「あー、確かに殺してしまえば注意をひきつけるも何もないッスからねー」

ティンカーベル「でしょー?」

キモオタ「……殺せない、のだとしたらどうですかな?」

ティンカーベル「んー…でも帽子屋は間違いなく強敵だし、こっそり近づいて襲いかかられたら…」

キモオタ「そうではなく、この世界に用があるからかぐや殿を殺してこの世界が消えてしまうのは困る。とかではござらんか?例えばこの世界で何か探し物があるとか」

かぐや「良い線をいってる推理だと思う。私にはアリス側が何を探しているのか…大方察しがつくわ」

ティンカーベル「それって…もしかして、龍玉以外の宝物の事かな?龍玉に強い魔力が宿ってるなら他の宝物もきっと魔法具だったり強い魔力が宿ってたりするんじゃない!?」

589: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:54:03 ID:ADc
孫悟空「俺もキモオタと同じ考えだ。アリス側はこの世界にある魔法具・魔力の宿った道具を回収する為にあえてこのおとぎ話を消さずにいやがる」

孫悟空「その為に俺達の気を帽子屋が惹き、別の場所で他の奴が魔法具を探している…そんなところだろうな」

ティンカーベル「じゃあ玉龍や悟空が頑張って帽子屋と戦ってたのもかぐやが帽子屋を圧倒したのも全部意味無かったってこと!?」

キモオタ「意味がなかったわけではないでござろうwwwしかし、その裏では別の計画が動いていた可能性もある…ということですな」

ティンカーベル「んもぉー!なんかあいつ等の手の中で踊らされてる気がして悔しいよ!」

孫悟空「そう喚くんじゃねぇよ、俺だって頭にきてんだ。まぁアリスがこの世界に来ていながら消滅させずにいるってのは…前から気がついていたけどな」

キモオタ「そうだったんでござるか?」

孫悟空「ああ、お前も居たから見ただろ。現実世界でアリスがグレーテルの火炎魔法を防いだ事…覚えているか?」

キモオタ「覚えておりますぞ、何の魔法具を使ったのか…あるいは防御魔法でも使っていたのかわからんでござるが…」

孫悟空「ありゃあな、この【かぐや姫】のおとぎ話に登場する魔法具…火鼠の皮衣だ」

キモオタ「火鼠の皮衣…」

かぐや「火鼠の皮衣は火にくべても決して燃える事の無い魔法具よ。身にまとえば、どんな火炎の中でも熱風を浴びても平然としていられるわ」

孫悟空「このおとぎ話に登場する五つの宝物は龍玉、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、蓬莱の珠の枝、燕の生んだ子安貝…この宝物になんらかの不思議な力が宿ってると踏んで、奴等はこれを探してんだろうな」

590: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)00:57:07 ID:ADc

孫悟空「まぁ、推測にすぎないが…こんなところじゃねぇかとは思ってるぜ」

キモオタ「ならば帽子屋殿を無視してこの世界の別の場所で宝物を探している輩を攻撃するでござるか?」

かぐや「そういうわけにはいかないわ、今回は村の人たちに直接被害はなかったけど…私達の注意が引けないとなれば、次は村の人やお爺様に手を出すかもしれない」

かぐや「それだけは絶対にさせないし、許さないけれどね」

キモオタ「だったらここは帽子屋殿との戦いを続けるしかないでござるな…」

ティンカーベル「もうあれだよ!さっさと帽子屋を倒してさ!それからちゃちゃっともう一人の奴捕まえればいいんだよ!」

キモオタ「ちょwww理想ではあるでござるがwwwそれ難易度やばいでござるよwww」コポォ

ドロシー「……」

かぐや「あら、どうしたの?ドロシー?」

ドロシー「い、いえ…なんだかアリスちゃんも帽子屋さんも目的を達成する為なら手段を選ばないなって思って…恐いし、本当に悪い人たちだなって思って…」

ドロシー「でも、でも…私には悪いことするつもりなんかなかったけど、それでも私は少し前までそんな人たちの仲間だったんだなって…思っちゃって…」

かぐや「…帽子屋が言っていた事を気にしているの?」

ドロシー「……」

キモオタ「ドロシー殿…」

ドロシー「……帽子屋さんの言ってた事は間違いないなって、思います。私は今でも償いをするつもりはあるし、それを諦めたりはしないけど…でも…」



ドロシー「どれだけ償いをしても、それで許されたとしても……私はもう、前のような普通の女の子には、戻れないなって…そう、思います…」

591: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/16(土)01:01:52 ID:ADc
今日はここまでです
ルイス・キャロル含めてこのssに登場する作者のくだりはフィクションも含みます

次回、かぐやの犯した罪

かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

604: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:17:28 ID:czh
玉龍「何を落ち込んでるんスかー!あんなカマ野郎に言われたことなんか気にしなくていいんスよ!」

ティンカーベル「そうだよそうだよ!あんな奴の言うことスルーしちゃえばいいんだよ!スルー安定だよ!」

ドロシー「うん…」

キモオタ(とはいえドロシー殿…帽子屋殿に責められた事が相当心に残っているようでござるな…)

孫悟空「…無理もねぇよ、あんな風に言われちまったらな」ヒソヒソ

キモオタ「悟空殿…」ヒソヒソ

孫悟空「性格を捻じ曲げられたこいつは随分とガラが悪かったみてぇだが、本来は内気で引っ込み思案な…まぁどっちかっつうと地味な田舎小娘だ」

孫悟空「あんな風に他人に責め立てられるなんて経験無かったろうし、これから償いをしていこうって時にあんな風に言われちまったら委縮もすらぁな」

キモオタ「普通の女の子には戻れないと言っておりましたな…口には出さないだけで元の生活を取り戻したいのでござろうか…」

孫悟空「そりゃあそうじゃねぇか。こいつが【オズの魔法使い】の主人公で、仲間と冒険の旅を繰り広げたって事を差し引いても…こいつはもともと普通の小娘なんだ」

孫悟空「何事も無けりゃオズの国から帰った後ごく普通の未来が待ってただろうにな。田舎の農家娘の将来なんざ決まりきったようなもんよ、家の手伝いして年頃になったら嫁にいって子供産んで、そこそこ幸せな家庭で年老いていくってな」

キモオタ「地味でありきたりながら幸せな未来でござるが、もはや自分にとっては叶わぬ夢と…ドロシー殿はそう思っているのでござろうな。帽子屋殿が言ったように普通の生活など出来無い、どこに行こうと恨まれ続けるのだと…」

かぐや「…そんな事はないのにね」ヒソヒソ

キモオタ「かぐや殿、聞いていたのでござるか…」

606: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:19:09 ID:czh
・・・

玉龍「ほらほらドロシー!ウチが取ってきた柿を食べるッス。なんならビワもあるッスよ?食べて元気出すッス」

ティンカーベル「なんなら空飛ぶ?妖精の粉かけてあげてもいいよ!」フンス

ドロシー「あっ、うん…ありがとう、でも大丈夫だよ、平気だよ」オドオド

ドロシー(二人が私の事心配してくれてるのは…嬉しい、でも…)

ドロシー(帽子屋さんが言ってたように、私はきっと何処へ行っても恨まれるし…もう普通の生活は送れない。今はかぐやさん達が良くしてくれてるから平気なだけで…)

ドロシー(かぐやさんは私には味方だっているって言ってくれた。でも…罪人の私と一緒に居たら、私はその味方にまで迷惑をかけちゃうんじゃ……。だったら私は一人で居るべきなんじゃ…)

スッ

かぐや「ねぇ、ドロシー。今、おかしなこと…考えてない?」ニコッ

ドロシー「んふぇっ!?か、かぐやさん…おかしなことなんて…考えてないです…!」シドロモドロ

キモオタ「その割には変な声出てましたぞwwwんふぇってwww」コポォ

かぐや「帽子屋君が言ってた事気にしてるのね。でもドロシーはもう一度普通の生活を送りたい。普通の女の子に戻りたい。そうなんでしょう?」

ドロシー「……はい、いつかは昔のように争いや戦いとは無縁の生活を送りたいって思ってます。でも、帽子屋さんは言っていました…私のような罪人が普通の生活を送るなんてもう出来ないって」

かぐや「そんな事無いわ。確かに帽子屋君が言ってたように現実は厳しいし罪を償うのは容易い事じゃない、あなたを恨む人もいる。私は確かにそれを肯定したけれど、私はこうも言ったわ…あなたに協力してくれる人だっているって」

かぐや「あなたは随分帽子屋君の言葉を気にしているけど、彼は貴方にとってどんな存在なのかしら?あなたに協力してくれる味方?」

607: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:21:23 ID:czh
ドロシー「…違います。帽子屋さんは…私に協力なんかしてくれないと思います、仲間なんかじゃ…ないです」

かぐや「そうよね。だったらあんまり帽子屋君の言葉を気にする事無いのよ」

ドロシー「で、でも…」

かぐや「それでも気になるのなら、ここにいるみんなに聞いてみましょう。ドロシーは普通の生活に普通の女の子に戻りたいそうだけど…それは出来ると思う?」

玉龍「出来るに決まってるッス!そもそもドロシーは操られてただけなんスから、そんな心配することないんスよ!」

孫悟空「まぁ、時間はかかるだろうがな。やってやれねぇことなんか何もねぇよ、ドロシーのやる気次第だな」

ティンカーベル「まぁ悟空の言うとおりだよね。あと元気があれば何でもできるよ!」

キモオタ「闘魂wwwまぁ、我輩が脱オタするよりははるかにイージーでござろうなwww」

かぐや「だって、ドロシー。あなたの仲間はみんな口をそろえて、こう言っているわよ?」

ドロシー「で、でもそれはみんなが優しいから私を傷付けない為に言ってくれてて…」

かぐや「例えそうだとしても…あなたがそう望むのならみんなはあなたの手助けをしてくれるわ、必ずね」

ドロシー「それは…凄く嬉しい事です。でも、かぐやさんやみんなの言葉に私は甘えてばかりで……」

かぐや「確かに…自分に都合のいい言葉ばかり聞き入れるのは誠実とは言い難いかもしれないけれど、周りの声を全て聞き入れる必要なんかないのよ」

608: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:22:36 ID:czh
かぐや「周囲は貴方にいろんな言葉を投げかけてくるけれど、あなたの為に何かをしてくれるわけでもあなたを想ってくれているわけでもない他人の無責任な言葉を信じる必要なんか無いの」

かぐや「それよりも、あなたを心配してくれる人の言葉を信じた方がずっと良いと私は思うわよ。今までだってそうだったんじゃない?今は遠く離れていても…あなたには仲間がいる」

ドロシー「はい、私には…仲間がいます。ブリキもカカシもライオンも…今は離れているけど、でも大切な仲間です」

かぐや「だったら想像できるんじゃない?彼等に同じ質問をした時、どんな答えが返ってくるのか」

ドロシー「……きっと、みんなと同じ答えを返してくれると思います。大丈夫だよ心配しないで、普通の女の子にきっと戻れるよって…言ってくれます」

かぐや「だったら、あなたがすべき事は一つよね?それは、帽子屋君の言葉を気にして立ち止まってしまうこと?」

ドロシー「……違います。私がしないといけないのは…みんなが大丈夫って言ってくれた気持ちに答えられるように、頑張る事です」

かぐや「そうね、ドロシーは理解が早くて賢い子ね」ウフフ

ドロシー「で、でも…私に出来るでしょうか…みんなの気持ちを裏切ってしまうかも…」オドオド

キモオタ「ちょwwwドロシー殿は何事もマイナス思考がセットになってしまっておりますなwww」

ティンカーベル「失敗するかもー…とかさ、失敗してから考えればいいんだよ!とにかくやってみたらいいんだよ、話はそれからだよ!」

キモオタ「ティンカーベル殿はもうちょっと繊細に行った方がいいのではwww前向きならいいってもんじゃないですぞww」

孫悟空「まぁ、後ろ向きになってウダウダ悩んでるよりはずっといいんじゃねぇか?やってみなけりゃ始まんねぇってのは俺も同意見だぜ」

玉龍「そうッス!まずは気持ちからパーっと明るくしてしまうんス!そのまま勢いでズバーって挑戦すればいいんス!結果はついてくるッス!」

キモオタ「ちょwwwこのパーティwww脳筋率高過ぎワロタwww」コポォ

609: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:24:18 ID:czh
かぐや「ふふふっ…確かに前向きなのは良い事ね」フフッ

玉龍「なんなんスかかぐやー!人事みたいに笑ってる場合じゃないッスよ!」

かぐや「ふふっ、ごめんね。…でも少し思いだしちゃったわ、ネロの事。彼は前向きと言うのとは少し違っていたけれどね、でも決して後ろを向かない子だったわ」

ドロシー「ネロさんって…確か、村に向かう前にかぐやさんが言っていた…」

キモオタ「【フランダースの犬】というおとぎ話でしたかな?確かもう既に消滅しているとか…」

かぐや「良い機会だわ、私の過去に何があったのか…帽子屋君との戦いが終わったら話す約束をしてたわね」

孫悟空「まぁ、かぐやの過去の経験は…聞いておいて損はねぇだろうな、いやドロシーはむしろ聞くべきって感じだな」

かぐや「そうね。私もドロシーには特にしっかり聞いておいて欲しいわね」

ドロシー「私に…ですか?」

かぐや「そうよ、ネロの生き方はドロシーに知っておいて貰いたい。きっとこの先生きて行く中であなたの為になる」

ドロシー「…はい、かぐやさんが言ってくれるって事は間違いないと思いますし…。ネロさんの事も、かぐやさんに何があったのかも聞きたいです…だから、話して下さい」

かぐや「わかったわ。でも彼の話をするにはまず事の起こりから離さなければいけないわね」



かぐや「当時の月の姫…私がどんな人間だったのか。そして如何にその行動が独りよがりで愚かなものだったのか…聞いて貰うわね」

610: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:26:10 ID:czh
ずっとずっと昔

かぐや姫の世界 月の都 王宮

・・・

サッサッ

かぐや「お待たせ致しましたお父様。かぐやにございます」

月の王「はい、どうぞ。急に呼び付けてすまなかったね、入っても構わないよ」

かぐや「失礼いたします」スッ

月の王「さて、かぐや…何故、私が自ら君を呼び出したのか解るかい?」

かぐや「いえ、見当もつきませぬ」

月の王「本当にそうかい?」

かぐや「えぇ、全く心当たりがございませぬ。ですが…お父様は私に何か不満がおありなのですね?仰っていただければ至らぬ点を改めますが…」

月の王「では単刀直入に言おうか。かぐや、君はまた都へ降りて行ったね?それも護衛も付けずに一人きりで」

かぐや「はい、成すべき事がございましたので。護衛を連れなかった件については私の能力があれば必要ないと考えての事ですが…何か不都合でもございましたか?」

月の王「随分と堂々としているけれど、私は以前君にこう言いつけたはずだよ…『許可なく都へは向かわぬ事』と、忘れたわけでは無いね?」

611: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:28:44 ID:czh
かぐや「はい、覚えております」

月の王「ならば何故君は都へ向かったんだい?私との約束を反故にしてまで」

かぐや「お言葉ですがお父様。私が都へ向かったのは決して興味本位や好奇心が理由ではございません」

かぐや「一見平和に見える都にも大小様々な悪意が蠢いております、そして善良な人々を食い物にする罪人から民を護る事こそが私の使命にございます」

月の王「またそれかい…。もういい加減に君とその役目が云々の話をするのは終わりにしたいのだけどね」

かぐや「それは容易い事にございます、お父様が快く私が使命の為に動く事を了承してくださればいいのです」

月の王「そういうわけにもいかないよ。私は君の行動を肯定するつもりは一切無いんだ、何度も言っているけれど今すぐにやめなさい」

かぐや「…私が自らの役目を全う出来ていないと仰るのですか?」

月の王「出来ているいない以前の問題なのだけどね…君はいつも私達に無断で都へ降りては悪党の根城を暴いたり、罪人を退治したり…苦しい生活を送っている者を援助しているようだけど…」

月の王「そもそも…悪人を捕えるのは兵達の仕事。民が幸福に暮らせるように治世を行うのは私の仕事だ。君の役目じゃない」

かぐや「民の幸せを願うのは、姫の役目ではないと?」

月の王「そうは言わないよ。だけど君のやり方は間違っている、少なくとも今の君がすべき仕事では無いよ」メガネクイッ

かぐや「失礼を承知で言わせていただきます。私がすべき仕事ではないと仰いましたが…ならばお父様は御自分の役目を全う出来ていますか?」

月の王「我が娘ながら本当に失礼だね君は…。しかし君がそう問いかけるのなら私は当然こう答える、私は王としての役目を果たせているとね」

612: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:31:46 ID:czh
かぐや「私はそうは思いません。先ほど申し上げたように都にはいまだ多くの悪が潜んでおります、生活をする事すら苦しいと嘆く民までいる始末」

かぐや「王族の責務とは国民に安全で豊かな生活を保障する事です。悪は蔓延り民は苦しんでいるこんな状況で…どうして役目が果たせているなどと言えますでしょうか」

月の王「都の治安についても民の生活水準も私は把握しているよ。当然、それを改善する為の政策も計画している」

月の王「かぐや、君は確かに歴代の王家の中でも特に優れた能力を持っている…重力の操作、光を操る事も君の右に出る者はいない。この私でさえもだ」

月の王「そんな君の目に私は少々頼りなく映るかもしれないが、あまり父を見くびらないで欲しい。君が考えているような事は私はとうの昔には既に考えているんだよ」

かぐや「それならばなぜすぐに行動を起こさないのですか?改善の為の政策、計画があったとしてそれが成果を上げるのはいつになるのでしょう?十年後、百年後ですか?」

かぐや「民は今、この時を苦しんでいるのです。すぐさま成果を出す事の出来ない計画になど、なんの価値がありましょう」

月の王「君の主張はあまりにも現実を見ていない。ひとつ政策を立ち上げたとしてもその結果が表れるまでには時間がかかる、焦って進めるものではないんだ」

月の王「国というものは一朝一夕で理想の形になるものではないのだよかぐや」

かぐや「それは詭弁にございます。私達王族は国を作る事が責務ではありません、民が幸せに暮らせる国を作る事こそが責務なのです」

月の王「君の王族としての意識の高さや民への想いは素晴らしいものだと思うよ、しかしあまりに考えが未熟すぎる。君はもっと政治について学び知識をつけるべきだ」

かぐや「その様なものに時間を費やすのならば、悪党を一人でも多く成敗すべきでは?」

月の王「困った娘だ…かぐやよ、私が何故君に『都へ向かわないように』言いつけたかわかるかい?

613: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:35:10 ID:czh
かぐや「私は姫という立場です、故にお父様は私に大人しくしているとようにと申されるのでしょう?」

月の王「君には民を愛する気持ちが備わっている。それだけでなくその想いを形に出来るだけの能力もある…時が来れば君が姫であろうがそんな事は関係なく、政治に参加してもらって構わないと私は思っている」

月の王「しかし、今の君は未熟。そしてその能力は一級品…これはとても危険な組み合わせだ。だから君が過ちを犯さぬよう、私は都へ向かわないように言いつけた」

かぐや「私が未熟だと仰るのですか…?それは私に対する侮辱だと受け取らせていただきますが…よろしいですか?」

月の王「どうぞ。実際、君は未熟だよ。目に見えるモノしか理解できない、罪人は全て悪だと思っている…しかし、そうではないよ」

かぐや「……何を仰っているのか、理解できません」

月の王「君は先日、不正に税を徴収して私腹を肥やしている役人の存在を突き止めた。民の不満に耳を傾け、国の癌を暴いてくれた君の功績は素晴らしいものだ」

月の王「しかし、君はその役人を殺してしまったね?一言の言い訳も許さずに…」

かぐや「ええ、民の幸せを願う事が本懐のはずの役人が私腹を肥やして民を苦しめるなど言語道断です。死を持って償うべきと判断いたしました」

月の王「彼は何故悪事に手を染める事になったのか、あるいは罪を償って今後はまっとうな役人として生きていけるかもしれないなどと…考えはしなかったのかな?」

かぐや「罪を…償う…?ふふっ、おやめ下さいお父様。私達は今、真面目な話をしているのです。唐突にそのような戯れを口にするなど…思わず笑ってしまいました」クスクスクス

月の王「私はいたって真面目だよ。彼が犯した罪は許せない物だ、だがどんな罪人にでも等しく償う権利は与えるべきだと思うよ、私はね」

かぐや「お父様、これ以上の戯れはおやめ下さい。どのような理由があろうと罪人は罪人…情けをかける必要などございません」

614: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:37:28 ID:czh
月の王「…ひとつ問おうか。都の一人の男が盗みを働いたとしよう、盗んだものはほんの僅かな金銭だ。その場に居合わせたとしたらかぐやはどうする?」

かぐや「決まっております。私の重力の能力を使い、動きを封じ捕え…息の根を止めます。罪を犯せば罰を受ける事は当然です」

月の王「息の根を止める必要があるかい?人を殺したわけでも多くの人間を苦しめたわけでも無い、僅かな金銭を盗んだだけでそこまでするのかい?こんな軽い罪で」

かぐや「…信じられません、それが一国の王の言葉ですか?」ワナワナ

かぐや「それは僅かな盗みかもしれません、しかしその男は罪を犯しても許される事を覚えてしまいます。そうすればもう…どうしようもございません」

かぐや「小さな罪だからと見逃す事が、後の大きな犯罪につながると…何故わからないのです!?」

月の王「落ち着きなさい。君こそ何故わからない?彼にも何か事情があったのかもしれないよ、魔が刺すという事は誰にでもある」

月の王「何日も食べ物を口にしてなかったのかも知れないし、病気の家族の為に薬を買ってあげたかったのかもしれない」

かぐや「理由があれば罪を犯しても許されるというのですか?…私には、私には到底理解できません」

かぐや「どんな理由があろうとも、罪は罪です。償いの機会など与える必要などありません、ここでその男の息の根を止めなければ…この国は犯罪で溢れてしまいます」

月の王「…そうか、君の考えは理解したよ」

かぐや「…でしたら、私が都へ行く事を了承していただけますか?」

月の王「いや、逆だよ。君の考えは危険すぎる。君はしばらく都へは向かわないこと…これは言いつけでも約束でも無い。国王としての命令だ、いいね?」

かぐや「お父様…!私は…!」

月の王「もう一度言うよ、これは親子の約束でも父親としての言いつけでもない。国王として命令しているんだ。この意味がわかるね?
あまり君が言う事を聞かないようだとこの【かぐや姫】の存在まで危うくなってしまうそれは避けたいのだけど」

かぐや「……承知いたしました。しばらくの間、都へは向かいません」

615: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:40:17 ID:czh
かぐや姫の世界 月の都 かぐやの部屋

かぐや「理解出来ませぬ。お父様は何をお考えなのやら……」

かぐや「都へ向かわないように…など馬鹿げています。この宮殿に籠りっきりでは民の為に何かを成す事などできない…!」

かぐや「私はただ、国の為、民の為…正義の為、悪を滅ぼしたいだけだというのに何故お父様は理解して下さらないの…」

かぐや「こうしている間にも悪党は悪事を働いているかもしれない。私にはこんなところにいる時間はないというのに…」

かぐや「……」

スッ

かぐや「そうだ…別のおとぎ話の世界」ボソッ

かぐや「そうです、この世界の都へ向かう事が出来ないのなら…別のおとぎ話の世界へ向かえば良いのです!」スッ

かぐや「世界を渡る方法は…確か書庫にそれに関連した書物があったはず…それさえ出来れば、世界さえ移動してしまえば…私は正義を貫く事が出来ます」

かぐや「世界移動の力さえ身につければ、私はなんだって出来る…重力操作さえできれば敵はいない、苦しんでいる登場人物を救って悪を挫く事が出来る…!結果を残していけばお父様もきっと理解して下さる…」

かぐや「決めました、早速書庫へ向かいましょう。私は、恵まれないおとぎ話の登場人物達を救済して見せます…!」

616: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/21(木)00:43:35 ID:czh
さるかに合戦の世界 柿の木

・・・

かに「そ、そんな…!あなたは実った柿を私の代わりに取ってくださると、約束したではありませんか!」

サル「あぁーっ!?そんな約束しらねぇなァー!俺様がもいだ柿は全て俺様の物だァー!」ムシャムシャ

かに「酷い…!私を騙したんですね!?私は、子供たちの為にも食べ物を持って帰らなければいけないのに…!ああ、どうかどうかひとつで構いませんから私に分けていただけないでしょうか!」

サル「ウルセェ!折角の柿がマズくならぁ!テメェみてぇな雑魚は目障りなんだよ、消えろクソが!」

かに「うぅ…あんな猿を信じた自分が憎い…易々と他人を信じた自分が…!」グググッ

サル「ブツブツとうるせぇかにだぜ…目障りだって言ってんだろうが!そんなに喰いてぇならこの硬い柿でも食らってろ!ヒャーッハッハッハ」

ビュッ

かに「っ!?しまった…避けられないっ…!これまでか…!」

サル「ヒャーッハッハッハ!この世界は弱肉強食!弱い役は強い奴になすすべなく死んでいく運命なんだよぉー!」

ポトッ

サル「ん?なんだ…?結構本気で投げたつもりだったけどよ、柿がかにまで届かずに途中で落ちちまったぞ?投げ方間違えちまったか?まぁいい、もう一度…」

スッ ベキベキベキバキボキボキボキッ ズサーッ

サル「っ!?うごががががっ!?な、なんだこりゃあ…!急に身体が重くなっちまって…動けねぇ…!?な、なんだこのバカでかい力は…!?」グググググ

かに「!?」

スッ

かぐや「善良なかにさんを騙した挙句、命を奪うような猿には当然の報いを与えなければなりませんね。けれど、諦めもつくでしょう…あなたが言うようにこの世界は弱肉強食…」


かぐや「重力は絶対的な力…故に、それを自在に操る事の出来る私よりも強いものなんて世界のどこにも存在しませんから」

633: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/25(月)00:17:27 ID:WC2

サル「…ぐががっ!何者だテメェ…!突然しゃしゃり出て俺様にこんな事しやがって…!どういうつもりだ!?」グググググ

かぐや「私の名はかぐやと言います。彼女のような可哀そうな者を救い、あなたのような悪人を滅ぼす為に別の世界から参じました」

サル「お、俺がそいつに青柿を投げつけたからテメェが代わりに復讐するってのか!?無関係なテメェにそんな権利なんか…ぐあああぁぁっ!」ギリギリギリ

かぐや「権利ならあります…いえ、義務でしょうか。私のこの能力を使えばどんな悪人だって倒す事が出来ます、ならばその為に力を尽くす事こそ私の使命…」

かぐや「実際にあなたは…もう動く事が出来ないのではないですか?」

サル「わ、わかった!謝る!俺が悪かった!だからこの力を解いてくれ!このままじゃ身体が引きちぎれちまう!」ギリギリギリ

かぐや「謝罪を求めているわけではないのです。謝ったところであなたの罪が消える事はありません。それに不安に感じる事はありませんよ、身体が引きちぎれたりなんてしません」

スッ

かぐや「ただ…重力に耐えられずに肉体が破裂する程度です」

サル「お、おい!俺はちょっと柿を独り占めしただけじゃねぇか!そんくらいd」ググググッ

グチャッ

かに「さ、猿の身体が…こ、こっぱみじんに…!」ガタガタ

かぐや「私とした事が…醜いモノを見せてしまいましたね、申し訳ありません。しかし、この者は悪事を働いたのですから当然の末路です」

かぐや「ともあれ、悪はこのかぐやが成敗いたしました!あなたはもう辛い思いをする事はありません、それは私にとっても大変喜ばしい事です」ニコッ

634: ◆oBwZbn5S8kKC 2016/01/25(月)00:19:15 ID:WC2
かぐや「さぁ、お子さんが柿を心待ちにしているのではありませんか?甘そうなものをいくつかもいで差し上げましょう」スッ

かに「あっ、はい…すいません。私ではどうも木に登る事が出来ないので…」

かぐや「いいえ、お気になさらず。はいどうぞ、もう悪い猿に騙されたりしないようにお気を付け下さい」ニコッ

かに「あっ、はい。何から何までありがとうございます。でも……」チラッ

かぐや「…?どうか致しましたか?」

かに「いえっ、何と言いますか…助けていただいた事は非常に感謝しているのです。ですが…確かにあの猿に腹は立ちますけど、なにも殺さなくてもよかったのかな、と…」

かぐや「ふふっ、あなたはお優しい方です。でも、その優しさはどうかご家族に向けて差し上げて下さい」ニコッ

かぐや「あの猿はあなたを騙し利用し殺すつもりだったのですから、情けを駆ける必要などありません。それよりも早くお子さん達に柿を届けてあげてください。きっとお腹を空かせていることでしょう」

かに「…そ、そうですね。すいません、助けて貰ったのに失礼な事を言ってしまって…では私はこれで失礼します。ありがとうございました」ペコペコ

カサカサカサ…

かぐや「うふふっ、良い行いをして感謝の言葉を投げかけられるなんて、こんなに嬉しい事はありませんね。…おや?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

かぐや「景色が歪み木々が朽ちて行く…。なるほど…本来復讐によって殺されるはずの猿を私が殺したことでこのおとぎ話が形を保てなくなったという事ですか…」

かぐや「しかし、問題ありませんね。少なくとも彼女は殺されずに済みました、まちがいなく私は一人の善人を救う事ができたのですから」ニコニコ

かぐや「さぁ、巻き込まれないうちに別の世界へ向かいましょう。私の助けを必要としている者はまだ大勢居るのですから」スッ

ヒュンッ