リンク「こんな格好で外に出たら絶対ミドにいじめられる……」

サリア「ほら、行くよ！　皆に見せに行くんだから」

リンク「や、やめて！　やだああああ」

サリア「言うことを聞きなさい！」ｸﾞｲｸﾞｲ

リンク「うっぐすっ……」

女の子１「きゃーかわいいー！」

女の子２「なでなでしてあげちゃう！」

リンク「恥ずかしいよ……」

サリア「これでリンクも大人気ね！」

リンク「僕、男の子なのに……」

――

リンク「…………ひっく」

サリア「男の子ならどんな格好でも堂々としていなさい！」

リンク（自分が女装させたくせに……）

サリア「ちょっと用があるからここで待っててね。勝手にどっかに行ったりしちゃ駄目よ？」

リンク（こんな格好で一人でいるなんて耐えられないよ……）

ミド「おーい妖精無しー！　随分女に人気だったじゃねーか」

取り巻き１「ん？　こいつスカート履いてやがる」

リンク「……」

ミド「コキリ族として半人前なだけじゃなく男としても半人前なのかよ」

取り巻き２「チビには女の格好がお似合いなんだよなｗｗｗ」

リンク「…………」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

サリア「こらー！　何してるのー！」

ミド「げっ」

サリア「リンクはまだ五歳なのよ！？　大勢で取り囲んで恥ずかしくないの！？」

ミド「い、いや、別にいじめてたわけじゃなくて……な？　おまえら」

サリア「リンク涙目じゃない！　どうせまた意地悪してたんでしょ！？」

リンク（涙目なのはミドに絡まれる前からだよ……）

サリア「もう二度と私のリンクに近づかないで！」

ミド「わ、悪かったよ……おまえら帰るぞ！」

ミド（何が『私の』だよこんちくしょおおおおおおおおおおおおおおお）

サリア「もう大丈夫だからね」

リンク「…………」

サリア「ミドが何をしてきても、サリアがちゃんと守ってあげるからね！」

リンク（僕とサリアが仲良くしてたら余計にミドがいじめてくるの、サリアも気付いてるはずなのに）

リンク（守ってくれるどころか、いじめを酷くしてるだけじゃないか）

リンク「サリアのいじわる！　サリアなんてだいっきらいだああああああああああああ」ﾀﾞｯ

サリア「リンク？　リンクー！」

リンク「こんな森もう出てってやるー！」

サリア「そっちに行っちゃだめ！　待って！」

リンク「うわあああああああ」

リンク「……くすん」

リンク「あれ？　ここ……どこだろ……？」

リンク「コキリの森より暗いし、方向が全然わからない……」

リンク「……」

リンク「もう戻るつもりはないんだから、とにかく進もう」

リンク（笛の音……？）

スタルキッド「お前、妖精の子か？」

スタルキッド「と思ったけど、お前、妖精いないんだな」

リンク「……ほっといてよ」

スタルキッド「……なーんだ、男の子か」

リンク「そうだよ！　無理矢理こんな格好をさせられてるんだよ！」

スタルキッド「男のくせにスカートとか災難すぎるぜっヒヒッ」

リンク「…………」

リンク「誰？　何でこんな暗い森の中にいるの？」

スタルキッド「お前こそ」

リンク「……家出してきたんだ」

スタルキッド「ならオイラと一緒だなっヒヒッ」

リンク「そうなの？」

スタルキッド「家出してずっとここにいるんだ」

リンク「そっか。おうちに帰らなくったって、暮らしていけるんだね」

リンク「そうだよね、誰もいなくたって、木の実もあるし……」

スタルキッド「トモダチになろうぜ」

リンク「友達？　いいよ。よろしく。僕、リンク」

スタルキッド「オイラは……名前なんて忘れちまった。スタルキッドって呼んでくれ」



サリア「リンクー！　リンクー！？　どこー！？」

女の子１「リンクー！」

ミド「何で俺までアイツを探しに来なきゃならないんだよ……」

サリア「あんたのせいでしょ！」

取り巻き１（それはちょっと違うんじゃ）

サリア「あの子はまだ迷いの森の道を全然覚えてないから……」

女の子２「サリアと一緒に２、３回森の聖域まで行ったくらいだものね」

サリア「もしこのまま迷って帰ってこられなかったら、リンクはスタルキッドになっちゃう」

サリア「どうしよう……絶対に見つけなくちゃ」





リンク「あはははは！」

スタルキッド「～～～♪」

サリア「リンク！？　ここにいたのね！」

リンク「さ、サリア……」

サリア「リンク、ここに居ちゃだめ！　一緒に帰るのよ」

リンク「やだ！　僕もうワンピースなんて着たくない！」

サリア「迷いの森で迷ったらスタルキッドになっちゃうのよ！」

リンク「え？」

スタルキッド「ねえ、もっと一緒に遊ぼうよ」

リンク「……僕はここでずっとスタルキッドと一緒に遊ぶんだ！　邪魔しないで！」

サリア「リンク……」

サリア「ずっとここにいたら、もう二度とコキリの森で皆と一緒に暮らせなくなっちゃうんだよ？」

サリア「真っ黒な身体になって、今のリンクとは似ても似つかなくなっちゃうの」

サリア「サリアはそんなの嫌だよ」

リンク「……女の子の格好をさせられるくらいならスタルキッドになった方がずっと幸せだよ！」

サリア「いいかげんにしなさい！」

サリア「……女の子の格好をさせたのは悪かったわ。ごめんね、あんまりにもリンクがかわいいから」

リンク「……」

サリア「お願い、一緒に帰ろう？　デクの樹サマも心配してるよ」

サリア「皆も一生懸命リンクを探してるから……ね？」

リンク「……ぇり、たい……」

リンク「やっぱり、帰りたい……」

サリア「良かった……」

サリア「おうちに帰ったら、おいしい木の実スープを作ってあげるからね」

スタルキッド「帰っちゃうの？　ずっと一緒にいるって言ったのに」

リンク「……ごめん。また、会いに来るから」

スタルキッド「許さない……逃がさない」

スタルキッド「オイラ達友達……でしょ……？」

リンク「ごめんね」

サリア「さ、行くよ」

スタルキッド「……っ！」ﾊﾟｼｭ

サリア「きゃっ！」

リンク「スタルキッド！？」

スタルキッド「……」

サリア「逃げるよ！」ﾀﾞﾀﾞｯ

サリア「大変……追いかけてきてる！」

ファド「サリア？　リンクが見つかったのね！」

サリア「逃げて！」

リンク「……」

サリア「スタルキッドは寂しがりな分友達に依存しやすいから、付き合い方が難しいの」

リンク「コキリ族とは違う種族なの？」

サリア「……魔物だよ」

スタルキッド「ねえ、待ってよ……トモダチ……トモダチ……」

リンク「でも、でも悪い奴じゃ」

サリア「あの吹き矢を見たでしょ？」

サリア「敵だと判断した相手には、あいつら容赦しないのよ」

ミド「俺が退治してやるよ！」

サリア「だめ！　……可哀想な子なんだから」



サリア「もうすぐ出口よ！」

リンク「……」


スタルキッド「ねえ」

スタルキッド「オイラ、ズボン脱いだよ」

スタルキッド「これでリンクとおそろいのスカート姿だよ」

スタルキッド「ねえ、トモダチに……なってよ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

リンク「スタルキッド、そこまで僕のことを……」

サリア「……」

スタルキッド「矢を吹いたことは謝るよ……ねえ、お願い……行かないで……」

リンク「……また来るって、約束するよ」

リンク「僕達はずっとトモダチだ。住むところが違うから、一日中一緒にはいられないけど」

リンク「僕達はスカートを履いてる仲間同士なんだ！」

大人リンク「その日以来、俺は自分から進んでスカートだけを着用するようになったんだ」

ナビィ「そ、そう」

大人リンク「白タイツを履いてるのは、実はサリアの趣味なんだけどな」

ナビィ「……」

大人リンク「このワンピースにベルト姿は俺達の友情の証」

大人リンク「迷いの森に行った時も、ズボンを履いてないスタルキッドだけは攻撃してこなかっただろ？」

大人リンク「きっと俺のことを覚えてくれていたんだろうな」

ナビィ（良い……話……？）


END