1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:17:57.08 ID:SX/Rd4evP
ガラッ

望「みなさん、お集まりいただきありがとうございます」

望「これより、『さよなら絶望先生』の一周忌を行いたいと思います」

奈美「あれからもう一年も経つんですね」

望「そう、去年の今日連載が終わって、丸一年が経ちました……」

望「みなさん、よくぞ忘れずに集まってくれました…!先生ちょっと感激です」うるっ

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:20:00.22 ID:SX/Rd4evP
あびる「いや、実は普通に忘れてたんだけど」

望「え」

晴美「千里が全員に連絡網を回してて……」

芽留「……」ずいっ

件名:[絶望先生 一周忌のお知らせ] 本文:[謹啓 向暑の候 皆様におかれましては...]


千里「忌み事は、きっちりと済ませないといけませんから。」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:22:52.11 ID:SX/Rd4evP
望「なるほど、忘れていましたか……しかしそれも仕方のないことです」

望「一年という歳月があれば色々変わるものです」

望「一年もあれば、タロとジロ以外全滅します!」

望「一年もあれば、猛勉強して東大に受かれます!」

望「一年もあれば、ジオン公国もジオン共和国になります!」


望「一年あれば、アニメが始まって終わって、円盤も余裕で出揃います!」

あびる「ちょっと危なかったけどね、一時期発売日未定になったりして」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:24:59.45 ID:SX/Rd4evP
望「そう、それでえーと、一年も経つと……」


千里「…ん?もしかして先生、話の転がし方を忘れているんじゃ……」

望「そ、そんなことはありません!何年経とうともしっかり覚えています!」

望「決して『登場人物多いなぁ』とか『羅列ネタ考えるの面倒だなぁ』とか思ってませんから!」

千里「思ってるよね、絶対。」

望「そんなことはありません!私はちゃんと諸々覚えています!!」
・カラオケの十八番の曲の番号
・きゃりーぱみゅぱみゅの本名
・くまぇり
・目と目が合った時
・手と手が触れ合った時
・暖かい温もりの中で目覚めた朝

奈美「何それ、どうでもいい事ばっかじゃん!」

望「ええっ!どうでもいい事ですか?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:27:10.79 ID:SX/Rd4evP
まとい「本人にとって大事なことでも、他人からすれば他愛もないことだったりしますよね」

望「まぁ、そういうものだったりはしますが……」


まとい「人間の脳には容量(キャパシティ)があります」

まとい「限界を超えた所で新しいモノを入れるには、古いモノを捨てざるを得ません」

千里「はぁ。」

望「要するに、余計なことを覚えてしまったせいで、大事なことを忘れているかもしれないのですね」

望「ちょうど私が話の転がし方を忘れているように!」

奈美「やっぱり忘れてるんじゃん!」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:29:34.02 ID:SX/Rd4evP
千里「確かに、余計なことを覚えて大事なことを忘れている人っていますよね。」

千里「アニメや漫画を邪な目で見ることを覚えて、正しい見方を忘れる人とか。」じーっ


晴美「な!?だ、誰を見て言っている!?」


望「いや、あなたでしょう」

晴美「邪などではない!こっちが正しい!リヴァ×エレが正しい!!」

あびる「正しくはないでしょう」

晴美「あ、でもエル×アドとアド×エルのどちらが正しいのかはまだ決めかねています」

あびる「だから、どっちも正しくはないでしょう」


望「話の転がし方忘れついでに、とりあえず街へ繰り出しましょう」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:32:16.37 ID:SX/Rd4evP
麻菜実「♪」

望「おや、大草さん。お買い物ですか」

麻菜実「えぇ、たまにはちゃんとした料理でも作ろうかと思って」

麻菜実「えーと、卵と牛乳と……」てくてく


肉屋『焼肉バイキングで食~べ放題~♪』

魚屋『赤身中トロ大トロマグロ~♪』

ゲーセン『お米!お米米!』


麻菜実「お肉とマグロと…ってあれ?」

麻菜実「何を買うつもりだったのか忘れてしまいました!」

奈美「あぁ……あるよね、耳当たりのいいフレーズを無意味に覚えちゃう事」

麻菜実「しょうがないので、いつも通り惣菜を買って帰ります」

望「おいおい」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:35:19.34 ID:SX/Rd4evP
男「」ふらぁっ

まとい「ん、あれは某居酒屋の従業員」


男「休みの日でも出勤するのです…!」

男「会社に奉仕するのです…!」

望「余計な理念を教育された上、何か人間として大事なことを忘れているような」

男「」ぱたっ

あびる「あ、倒れた」


望「……さ、次行きましょう」

奈美「倒れたのスルーかよ!」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:38:25.50 ID:SX/Rd4evP
望「教育といえば、小学校の英語や、中学校のダンス必修化ってどうなんでしょうか」

望「国語や道徳さえ未熟なうちから英語を覚える意味は果たしてあるのか!」

望「ダンス必修って、他にもっと覚えるべき事があるのでは!?」


望「…などといった意見が散見されていましたね」

奈美「えぇ!?今のは先生の意見じゃないの?」

望「私自身は、別にどーでもいいというのが本音です」


マ太郎「いいジャナイカ、英語やダンスなら」

マ太郎「マリアの国、子供に銃の使い方を教えてたヨ。それに比べたら平和ジャナイカ」


望「…まぁ、確かにその通りですね」

千里「そこと比べるの間違ってない?」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:41:00.08 ID:SX/Rd4evP
まとい「おや…?向こうで左翼団体が演説しているみたいです」
千里「え!どこどこ!?」

晴美「食いつくの早っ!」


外国人「日本にされた不当な仕打ちの数々を、我々はしっかり覚えている!謝罪セヨ!賠償セヨ!」

奈美「うわぁ、なんか面倒臭そう」

望「これはどうでもいい事では片付けられませんが……」

あびる「こういう人達って『不当な仕打ち』だけ覚えてるよね。補償や技術与えたこと忘れて」


望「そ、それでも我々は謝罪をし続けなければいけないのです」

あびる「何その棒読み」

千里「何、その言わされてる感。」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:43:29.01 ID:SX/Rd4evP
奈美「……あ、ハンバーガー屋さんだ。ちょっと寄ってもいいですか?」

ウィーン

店員「いらっしゃいませー」

奈美「あ、そうか。メニューないんだったっけ。じゃあアレとアレと……」

チーン
奈美「うわっ!高っ!?」

ウィーン

奈美「……メニュー取り払った上、ハンバーガーが120円って!チーズバーガーが150円って!!」

奈美「値上げの仕方を覚えて客の需要を忘れてます!!」

望「それでも、売上高はやや上がったらしいですよ」

奈美「完全に不意打ちです!」


あびる「ハンバーガーずっと半額って何だったんだろうか」

望「一体何年前の話をしているんですか」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:46:27.20 ID:SX/Rd4evP
望「とにかくみなさん、余計なことを覚えて大事なことを忘れています!!」

・ネトゲの楽しさを覚えて仕事を忘れたり
・タイピングを覚えて漢字を忘れたり
・スマホを覚えてパカパカ感を忘れたり
・化粧を覚えて少女の心を忘れたり
・こんにゃくを覚えて右手を忘れたり
・歌ってみるのを覚えて性欲を抑えるのを忘れたり
・女生徒の味を覚えて教育的理念を忘れたり
・金の味を覚えて政治的理念を忘れたり
・金の味を覚えて宗教的理念を忘れたり
・キャラの可愛さに頼るのを覚えて社会派を忘れたまんが家は
 作家いじりや下ネタを思い出しました

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:48:35.08 ID:SX/Rd4evP
晴美「ん、そういえば千里少しおとなしくない?」

晴美「こういう話題のときって『私は全てきっちり覚えている!』とか言いそうなのに」

奈美「あぁ、確かに言いそう」

千里「そう言いたいのは山々なんだけど……私の中に、はっきりしない記憶があって」

望「はっきりしない記憶?」

千里「えぇ、何か肝心なことを忘れているような気がしてイライラするの!」


あびる「そういえば、私も何か忘れている気が」

晴美「私も、記憶がところどころ抜けている気がする」

奈美「え?みんなもそうなの?」


千里「あぁもう!どうにかして思い出せないかしら!」
 
あびる「それならいい場所があるよ」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:50:41.31 ID:SX/Rd4evP
―――

[糸色医院]

千里「命先生、私に退行催眠をかけて下さい。」

望「退行催眠?」

命「確かに退行催眠は、意識の外にあった事も思い出すことが出来ます」

命「本人が覚えていなくても、心の底ではしっかり覚えているものです」

命「実は私も、手術中に指が動かなくなった暗示を退行催眠で取り消した経験があってね」

晴美「ブラックジャックかよ」


千里「お願いします、命先生。」

命「わかった、やってみよう」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:54:00.90 ID:SX/Rd4evP
命「では手始めに……あなたは今から一年前にいます。何が見えますか?」

千里「絶海の孤島で先生を……」うつらうつら

望「なるほど、確かに一年ほど前ですね」

命「ではもう少し遡ってみましょう。何が見えますか?」

千里「例の裏山で穴を……」うつらうつら


晴美「冬二日目、少し臭いがキツく……」うつらうつら

奈美「パンケーキ屋の行列……」うつらうつら


望「何故皆さんまで催眠にかかっているんですか!」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:56:21.57 ID:SX/Rd4evP
命「まぁ、悪い事はあるまい……ではもっと遡ってみましょう。さぁ何が見えますか?」

千里「赤い燕尾服の紳士……」うらうら

命「は?」

千里「赤い燕尾服の紳士が私を連れて行く。赤い扉の向こう側へ…!」ぐわんぬわん

望「ひいっ!」

命「いけない、戻しすぎたか?」


千里「」ぎゅるんる

命「うわあ!勝手に巻き戻っていく!?」

望「木津さんだけではなく、他の皆まで様子がおかしいんですが!」

命「こうなってはしょうがない。目覚めろ!」ぱんっ!

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 22:58:48.34 ID:SX/Rd4evP
望「大丈夫ですか木津さん。それにみなさんも」

千里「うーん……」

望「思い出せなくてもいいじゃないですか。忘れてもよかった記憶なんですよきっと」


千里「……いやだなぁ先生」


望「え?」

晴美「忘れてもいい記憶なんて」
奈美「あるわけないじゃないですかぁ」

命「この口調は!?」

あびる「思い出せない事は」
まとい「心の奥深くに」
カエレ「しまっているだけなんですよぉ」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 23:00:31.80 ID:SX/Rd4evP
望「兄さん、これは一体!?」

命「退行催眠で、過去の各時間に顕現していた風浦可符香が集合してしまった!!」

望「えぇっ!?どういうことですか!?」

命「要するに『ドラえもんだらけ』みたいなものだ。退行催眠は精神のタイムトラベルだからな」

望「ちょっとよく意味が分かりません!というか一体どうすれば?」

命「何、半端に催眠が解けているだけだから、もう一度手を鳴らせば…」ぱんっ!


くたぁっ

望「大丈夫ですか皆さん!」

千里「……あれ?私たちはここで一体何を?」

奈美「ふあー、何してたんだっけ?」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 23:02:35.45 ID:SX/Rd4evP
千里「わからないけど、でもなんだろう……何か、とても懐かしい夢を見ていたような……」

さーっ


奈美「まぁいいか、お腹すいたし帰ろう」
あびる「帰ろ帰ろ」


望「……みんな、彼女の事を完全に忘れたわけじゃないんですね」

命「望、人はいつ死ぬと思う?」

望「?」


命「……人に、忘れられた時さ…!」


望「おい!」

マ太郎「ネタどころか、落とし方まで忘れたナ」

おわり

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/13(木) 23:03:29.79 ID:SX/Rd4evP
おまけ


加賀「初心を忘れずに、話の外にいました……」


霧「初心を忘れずに、ずっとこもってたよ」


望「それらは別に忘れてもいい事ですから」


おわり

引用元: 絶望先生「あれからもう一年が経ちました」