1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:49:39.91 ID:e/SYm3JCo
男「これ食べてからね」ムシャムシャ

悪魔「はぁ」

男「あなたもなにか食べます?ほらメニュー」

悪魔「いえ、わたしは」

男「そうでふか」ムシャムシャ

男「けぷっ……ふぅ、お腹いっぱい。コーヒーおいしい」ズズズッ

悪魔「そろそろいいですか?」

男「はいはいどうぞ」

悪魔「こほん、では、本日はご利用いただき……」

男「要件だけ手短にお願いします」

悪魔「……はい」

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:51:07.93 ID:e/SYm3JCo
悪魔「……改めまして、わたしと契約いただければ、願いを3つまで叶えてさしあげることができます」

悪魔「しかしその代償として、死後の魂を頂戴します」

男「願いってなんでもいいんですか?」

悪魔「叶えられない願いもございます」

男「例えば?」

悪魔「代表的なのは願いを増やすこと。ほかには不死とか。死んでもらわなくては死後の魂を頂けませんので」

男「なるほどなぁ」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:52:19.96 ID:e/SYm3JCo
男「んじゃお金。お金をください」

悪魔「お金ですか。人気な願いですね。具体的な金額等指定はございますか?」

男「えぇっと、ちょっとまって……あー、3349円、ってそんなに食べたのか……」

悪魔「え、あの……」

男「ん?3349円、日本円です。ダメですか?」

悪魔「……それくらいでしたら」

男「おー、ぴったり。悪魔って本物なんですね」

悪魔「わたしは偽物など見たことがありません」

男「それにちゃんとお札と硬貨混合。ぜんぶ一円玉で出てきたらどうしようかと思いましたよ」

悪魔「ははは」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:52:53.27 ID:e/SYm3JCo
悪魔「しかし、本当にこんなことでよかったのですか?」

男「え?なんかダメでした?」

悪魔「いえ、とにかく1つ目の願いは承りました。2つ目の願いはいかがいたしましょうか」

男「じゃあ次は……これ飲んでくれます?お腹いっぱいで飲みきれないんですよ。飲みさしだけど、まぁお気になさらず」

悪魔「いただきます」ズズズッ

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:53:25.54 ID:e/SYm3JCo
悪魔「それでは最後の願いですが」

男「そうですね……んじゃ、僕を殺してください」

悪魔「……それはできません」

男「なんでです?なんでも叶えるんでしょう?」

悪魔「そういうルールなんです」

男「契約者を直接殺すことはできない。と、そういうことですね?」

悪魔「さようでございます」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:53:58.15 ID:e/SYm3JCo
悪魔「なにか他にやりたいことはありませんか?なんでもいいんですよ。例えばタバコとか」

男「喘息なんです」

悪魔「お酒は」

男「下戸でして」

悪魔「食べたいものは」

男「今食べましたよ」

悪魔「でしたら……でしたら女性などいかがでしょう」

男「女性かぁ……あぁ、いいかも」

悪魔「お望みの女性を手配しますよ?」

男「んじゃ、ちょっとまって、スマホスマホ……」ガサゴソ

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:54:29.98 ID:e/SYm3JCo
男「先に聞いときたいんですが、死人でも呼んでいただけますか?」

悪魔「亡くなられているのですか?」

男「えぇ、5日ほど前に。ダメですか?」

悪魔「いえ、構いません」

男「あ、この人です」スッ

悪魔「ちなみにこの女性とはどういったご関係で?」

男「彼女なんですよ。いや、元彼女かな?とにかく大切な人です」

悪魔「愛していらしたんですね」

男「はい、彼女は僕の天使です」

悪魔「……少々お待ちください」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:55:52.97 ID:e/SYm3JCo
悪魔「……申し訳ありません、この方に関してはお呼び出しできません」

男「なぜ?」

悪魔「お話できません」

男「すでに悪魔と契約しているから?」

悪魔「!」

男「そしてその悪魔とは、あなたではありませんか?」

悪魔「そ、それは……」

男「あぁ、ですよね。だと思ったんですよ、まったく……」

悪魔「なぜ……」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:56:53.84 ID:e/SYm3JCo
男「僕ね、半月前まで病気だったんです。所謂不治の病というやつで、死ぬ直前だった」

男「なのにある日、突然すっかり健康になってしまったんです」

男「それだけなら奇跡で終わった。しかしそうもいかなかった」

男「僕の病気はそっくり彼女に移っていたんです」

男「元々治す方法の無かった病気ですし、彼女もなぜか覚悟が決まっているようで、長くは保ちませんでした」

男「僕にはずっと謎だった。なぜ彼女に病気が移ったのか」

男「今日、あなたと会って確信しました。あれも悪魔の仕業だったんですね?」

悪魔「……」

男「悪魔の願いというのは、得てして契約者の意図せぬ形で叶うものですからね」

男「おそらく彼女は僕の病気を治すことを願い、その代償に自ら病気を引き受けてしまったのでしょう」

悪魔「……」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:57:25.82 ID:e/SYm3JCo
男「となると気になることも出てきます。彼女の叶えた3つの願いのうち、1つが僕の病気を治すことなら、残りの2つはなんなんでしょう」

悪魔「他者の契約内容をお教えすることはできません」

男「守秘義務というやつですか。では、当ててみせましょう」

男「慎重な彼女のことです。きっと1つ目の願いはあなたが本物かどうか確かめるために使ったはず」

男「そして残り2つのうち1つは、僕の病気を治すこと」

男「最後の1つ。彼女は僕があなたと契約し、望みを叶えることを願ったのではないですか?」

悪魔「……」

男「沈黙は肯定と受け取りますが?」

悪魔「……」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:58:23.74 ID:e/SYm3JCo
男「そうとわかれば僕の願いはただひとつ。この命を彼女に返したい」

悪魔「……」

男「僕自身がどうなろうと構わない。この命は本来彼女のもの。それを彼女に返すだけのことです」

悪魔「……」

男「それに僕はね、今日死ぬつもりだったんですよ。この食事も最後の晩餐のつもりだったんです」

男「あ、今こんなファミレスで?って思いませんでした?」

男「ここは彼女と初めてデートした時に来た思い出の場所なんです。付き合いたての頃はお互い高校生でお金もありませんでしたから」

男「というわけで、僕の願い、叶えてくださいますか?」

男「僕が願いを叶えなくては、彼女の魂も手に入らない。だって彼女の最後の願いは僕が願いを叶えることだから、でしょ?」

悪魔「……」

悪魔「……」

悪魔「……」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2022/08/29(月) 13:59:30.66 ID:e/SYm3JCo
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女「ふぅ、うまくいったみたいね」

悪魔「はい。あなたの言った通り、彼は思い込みの激しい方のようで」

女「昔からそうよ」

悪魔「勝手に契約内容を曲解して、契約者の意図せぬ形で願いが叶うと信じて疑いませんでした」

女「そういう人なのよ」

悪魔「あなたの1つ目の願いについても勘違いしたままでした」

女「だと思った」

悪魔「そしてあなたの言った通り、自らの命を犠牲にあなたを蘇らせました」

女「でしょうね」

悪魔「1つ目の願いで彼の体を不治の病に犯し」

悪魔「2つ目の願いでその病を自らの体に移し」

悪魔「最後の願いで彼とわたしを契約させる」

悪魔「こんなに回りくどいことはありません。素直に彼を殺してくれと願っていただければそうしましたのに」

女「彼が死ぬだけじゃダメだったのよ。彼の身内も彼とおんなじだもの。毎年命日に手を合わせに行くような人生、私はまっぴらごめんなのよ」

悪魔「彼があなたを蘇らせなかった場合、どうしていたのですか?」

女「そんなことありえないわ。だって彼は私を愛していたもの」

悪魔「彼が自らの命を犠牲にしない方法を選んだ場合、どうしていたのですか?」

女「そんなことありえないわ。だって彼はひどい英雄症候群だもの。そういう所が嫌いなのよね」

悪魔「さようですか……」

女「とにかくこれで私は自由の身。死んだら魂は自由にして頂戴。んじゃね」

悪魔「まったく……」

悪魔「……」

悪魔「……あなたは悪魔のような人だ」

おわり

引用元: 悪魔「それでは契約内容の確認です」男「ちょっと待って」モグモグ