…………
…………………
………………………
…遠くから声が聞こえる
この体のだるさはなんだ?
何かに体を揺さぶられている
今まで何をしていたのかを思い出そうとし、直ぐに状況を理解した
ボクは本を読むことに早々に飽きて眠ってしまったらしい
となると、この声とボクの体の揺れは…
女「そろそろ閉めますから起きてください」
あの受付に座っていた不愛想な女が、ボクを起こそうと声をかけてくれていた
剣「……悪い、すぐに出る」
女「起きられましたか。では、即刻立ち去って下さい」
剣「……ああ」
機械的な冷たい声に背中を押され、ボクは直ぐにその場を去った
ボクはあまり本を読むのが向いていないのかもしれないな
しかし、彼女の為にもこの本を読破しておきたい気もする
あの場所は静かでいい場所であることは確かだ
ただでさ集中して読めないのだから、図書館の方がいくらか捗るだろう
449: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 21:56:24.35 ID:QChfVUHSo
名前:浅間孝介(アサマ コウスケ)
年齢:13
性別:男性
【外面】
明るく自分に正直な少年。言いたい事を言わずにはいられない性質を持ち、物怖じしない
【内面】
未明
【詳細設定】
身長167cm
さっぱりとした短い黒髪と、濃い青の瞳が印象的な少年
爽やかな性格であり、非常にキッパリとしたものの見方をしている
バスケットボールを愛するスポーツ少年
庄内葉月と山田千紗とは幼稚園以来の長い付き合いであり腐れ縁とも言える仲
意外な事に友達は少ない
451: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 22:11:47.15 ID:QChfVUHSo
夕方
受付の女に起こされ、ボンヤリとしたままの頭で玄関口まで歩いてきた
剣「………」
ここまで来たところで、漸く何か違和感に気付く
今朝から感じていたモノと同じ違和感
振り返っても周りを見渡しても人影一つ見当たらない
何かがあるはずなのだが、何かが分からないもどかしい状 だ
周囲を警戒しながら傘を取り出して外に出た
剣「……チッ…一体なんだ?」
外へ出てみてもじっとりとした背中に感じる重みは変わらない
マスコミに追われていた時はこういった視線もよくある事だったのだが、これはマスコミの類ではないだろう
コツッ
小さな音に即座に振り向いた
音の主は意外にも近くすぐ隣に居た
図書館の受付をしていた居たあの女だ
仕事を終えて、これから帰るのだろう
傘を差そうと少し視線を下げたその瞬間―――
まるで差し出された首を両断する処刑台かの如く、女の上から鋭利な何かが降ってきていた
ボクは咄嗟に女を庇おうと手を伸ばした―――
コンマ判定
1-3 最悪は何とか免れた
4-7 何とか庇う事に成功した
8、9 華麗に救出に成功した
0 最悪の結末
運動素質 +3
直下コンマ
453: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 22:31:27.13 ID:QChfVUHSo
コンマ判定:6+3 余裕の救出
ボクは即座に女の首を胸に抱き体を引き寄せる、更に片腕を使って急所を完全に覆い隠す
もう片方の手には傘を持っているのが幸いした
そのまま傘で落下物の軌道を大きくずらした
すさまじい音を立て傘を引き裂きながら地面に落ちる落下物
こんなものが首に落ちていたらと思うとゾッとする
女「っ!?な、何をするんですか!」
剣「怪我はないな?、足元に気をつけろよ」
女は突然の事 に動揺している
暴れられると厄介なので解放してやる
女はふらつく足取りで、周囲を見回して状況を把握しようとしていた
女「これは一体…降って来たんですよね…これが……」
改めて落下物を確認する
それはガラスであった
重々しい厚みを携えた、鈍重な刃物のようなガラス
今立っている場所は玄関の庇の真下
空から降って来たとしても、その庇を突き抜けてくるなんてまずありえないだろう
454: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 22:42:32.17 ID:QChfVUHSo
剣「……下手をすれば骨ごと持っていかれていたな」
冷静に自らの無事に安堵する
このガラスの事は非常に気がかりだが、現状で全く説明がつかないのでは仕方ない
何かは分からないが、何かがあったからこうなったんだろう
取りあえずはそれで納得しておくことにした
女「…もしかして、私を庇ってくださったのですか?」
剣「もしかしなくともその通りだ。ボクが隣に居てよかったな」
女「ありがとうございました。戸倉剣、あなたに命を救われました」
女は深々と礼をする
機械的なまでにキッチリとしたその対応にやや面食らう
女「何かお礼をして差し上げたいのですが」
剣「気にするなボクが勝手にやったこと……と、言いたいところだったんだがな」
ボクの手にはかつて傘だった残骸
外は未だに降りやまぬ雨
傘の代わりとなるものが欲しいところだった
剣「本当に礼をしてくれるのなら、犠牲になったボクの傘の代わりが欲しい」
女「それでしたら…」
1、『家までお送りいたします』
2、『この傘を差し上げます』
安価↓1
456: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 22:54:28.89 ID:QChfVUHSo
>>455採用:1
女「家までお送りいたします」
予想の斜め上の答えが返って来た
どこかで傘を買ってきてくれるくらいでよかったのだが…
剣「正気か?ボクの家は―――の方面だぞ?」
女「それなら尚更都合がいいですね。私もその方面なので」
剣「……一つの傘に一緒に入る事になるぞ?」
女「抵抗がありますか?でしたらこれを差し上げます」
そう言って持っている傘を突き出してくる
流石にそれは貰えない
剣「…なんというか、そういう押しの強さは血のつながりを感じるな」
女「!…弟の事を知ってるんですか?」
剣「……はぁ、歩きながら話をしてやる」
ボロボロに破壊された傘を鞄にしまい直してから、孝介の姉の差す傘の中に入って歩き出した
457: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 23:07:01.08 ID:QChfVUHSo
夜
今日初めて会った女と相合傘をするという罰ゲームのような時間を抜けて、自宅に帰り着く
あの女の名前は『浅間花月(アサマ カヅキ)』というらしい
バカ真面目で機械的と思えるくらいにお硬い性格の女だった
軟派な弟と似ていないようで、妙な既視感を感じさせる辺り流石は姉弟だ
帰り道の間、注意深く周囲を確認したがそれ以上不可解な事は起こらなかった
結局あのガラスの事は何もわからなかった
たまの偶然だったのか、はたまた仕組まれた悲劇だったのか…
そういえば帰っている時には妙な気配はなくなっていた
この気配とあの事件
無関係ではない気はするが…何をどう調べればいいのだろうか?
知ってそうな奴も、関係がありそうなやつもあまり思い浮かばないな
ボクはゴロンと布団に寝転がった
1、誰かに連絡を取る
2、誰かから連絡が来る
3、外を徘徊する
4、自由安価
安価↓1
460: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 23:10:27.38 ID:QChfVUHSo
>>458採用:1
誰と連絡を取るか…
1、鹿島弥生
2、柘榴花あや
3、シンシア・パーシヴァル
4、近衛鈴鹿
5、日比乃明日香
6、山田千紗
7、庄内葉月
8、浅間孝介
9、浅間花月
安価↓1
462: ◆7m3grp2dM2 2016/11/26(土) 23:20:59.84 ID:QChfVUHSo
>>461採用:1
自分の身に起こったあの事件
彼女も巻き込まれてはいないだろうか?
ボクは心配になって
『無事か?』
と送ってしまった
帰って来た返事は当然
『何の事?』
だった
ボクは自分の身に起きた事を簡潔に説明し、変わったことが無かったかを聞いた
『特に何も変わったことは無かったよ。剣君の言う妙な気配も全然感じなかった』
『私が鈍いだけかもだけど…』
そう、返答が返って来た
恐らく本当に何もなかったのだろう
『無事ならいいんだ。少し、気にかけておけ。何かあれば必ず助ける』
『剣君にそう言って貰えるなら安心だね』
そうしてやり取りを終えた
今回の件に彼女は全くの無関係らしい
その事が何よりボクの心の荷を下ろしてくれた
また何事も無ければそれでいいんだが……
ボクは不安な心持のまま眠りについたのだった
465: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 22:21:08.99 ID:LFtURhVqo
九日目・朝
何事も無く朝を過ごす
そういえば昨日のあのガラス片、先生に報告とかしなかったがどう処理されたのだろう?
まあ、いいか…怪我人も出ていないしな
精々片付ける人が大変だなというだけだ
そろそろ学校に行こうか……
1、早くに出た
2、普通に出た
3、遅くに出た
安価↓1
467: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 22:26:40.03 ID:LFtURhVqo
>>466採用:3
いつもより遅くに家を出た
この前は遅刻してしまったが、今回はギリギリ遅刻せずとも済みそうだ
余裕を持ってゆっくりと歩く
歩いていると、見知った顔を見つけた
1、鹿島弥生
2、柘榴花あや
3、山田千紗
安価↓1
470: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 22:39:45.33 ID:LFtURhVqo
>>468採用:1
ゆっくりと歩くボクよりもさらに歩みの遅い後ろ姿
見間違うはずもない、ボクの思い人鹿島弥生その人だった
何時も見かけないと思っていたが、こんな時間に登校しているとは
ボクはすぐに駆けよって声をかけた
剣「おはよう弥生」
弥生「ん?んぅ…つるぎくん…おはよ………はぅ……」
抑揚の無い声で噛み殺し切れていない欠伸を吐き出し、目を擦っている
剣「眠たいのか?夜更かしでもしたか?」
弥生「…………うん」
イマイチ気の入っていない返事
確実に半分くらい意識は眠っているだろう
弥生「…普段はね…もっと早いんだけど…今日は明日香の部活が無いから………こんな時間に…」
剣「そうだったのか…」
彼女はうつらうつらとした様子だが、一応はコミュニケーションをとる意思はあるらしい
フワフワとした足取りと受け答えの彼女を介護しながら、ボク達は学校へと歩みを進めた
471: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 22:55:24.95 ID:LFtURhVqo
休み時間
※強制イベント
ギリギリ遅刻せずに教室に着き、一時限目が終わった休み時間
何者かが教室に駆け込んできた
それは猛烈な勢いでボクに近づいて手を取った
あや「とととと戸倉君!!体は平気!?大丈夫!?怖い事なかった!?」
剣「なんなんだいきなり…」
またこの女かとウンザリしてしまったが、いつもと少し違う事を感じ取った
ボクに媚びを売るのではなく、真剣にボクの身を案じている様子だった
あや「け、今朝玄関でのこと知ってね、だ、大丈夫かなって。戸倉君怪我とかしてないかなって…」
剣「待て、何故あの玄関の件にボクが関わっていることを知ってる?」
あや「うえぇ!?あ、そそそれは……」
目線を泳がせ指先を遊ばせはじめる
誰の目から見ても分かる。何かを隠している
玄関の件は『ガラスが投げ込まれた』と騒ぎになっていたが、悪戯の類と判断されており、アレが原因で怪我をしそうになったという話は持ち上がっていない
ボクが関わっていたという事も全く知られていなかったことだ
それなのにこの女はボクの心配をしていた
ボクの身に何かが起こったことを知っていたのだ
実際怪我をしそうになったのはあの図書館の女なのだから尚更おかしい
あや「あ、ええと…ああ!ゴメンね戸倉君次の授業があってね!無事ならよかったの!じゃあね!!」
剣「あ!待ッ……」
引き留めようとしたが次の授業まで時間がないのも事実
次の機会に問い詰める事にしよう…
472: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 22:57:25.48 ID:LFtURhVqo
昼休み
昼食を食べる時間だ
さて、どうするか……
1、教室で食べる
2、食堂に向かう
3、中庭に向かう
4、誰かを食事に誘う
5、直ぐに食べ終えてどこかに行く
6、自由安価
安価↓1
475: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 23:01:12.32 ID:LFtURhVqo
>>473採用:4
誰を誘うか…
1、鹿島弥生
2、柘榴花あや
3、シンシア・パーシヴァル
4、近衛鈴鹿
5、日比乃明日香
6、山田千紗
7、庄内葉月
8、浅間孝介
9、浅間花月
安価↓1
477: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 23:21:01.24 ID:LFtURhVqo
>>476採用:1
ボクは鹿島弥生を昼食に誘った
ボクが向かった先は屋上へと続く階段
屋上は閉鎖されているため、滅多に人が足を踏み入れない場所と聞いている
彼女は一人で食べるときはいつもここで食べるらしい
二人並んで会談に腰かけ、食事を始める
誰も足を踏み入れないと聞いていたから汚いイメージだったが、きれいに掃除されており埃も目立たない程度だ
剣「しかし意外だな、てっきり明日香も居るものだと思っていた」
弥生「明日香は部活動の友達がたくさん居るから。あの輪にはちょっと入れないかな…」
剣「そういう理由があったのか」
成程確かに彼女はそう言った体育会系の輪は苦手とするところだろう
弥生「…もしかして明日香が一緒が良かった?」
剣「バカな事を、そんなはずないだろう」
弥生「だってなんか…いきなり仲良くなってるし……明日香は駄目なんだからね」
剣「ふふっ…嫉妬しているのか?」
少し拗ねたような顔を見せる彼女に思わず笑ってしまう
こうして明確に自分の敵意を向けられたのは初めてだったが、可愛いと思ってしまった
こういう事も言ってくれるようになったのは打ち解けてきた証だろう
剣「ボクが好きなのは弥生だけだ。ずっとそう言ってるだろう?」
弥生「う、うん……改めて言われるとなんだか恥ずかしいね」
彼女は照れ隠しのように顔を逸らしてサンドイッチを頬張り始めた
ボクもそれに倣い食事を始めた
478: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 23:29:28.18 ID:LFtURhVqo
剣「今日の食事は控えめなんだな」
今日の彼女の昼食はサンドイッチ二つだけ
バイキングの時の半分以下の量だった
弥生「そうかな?いつもこれくらいだよ?」
剣「何を言うか…バイキングの時の画像を見せてやろうか?」
弥生「あ、あの時はたくさん食べないといけないときだっただけ。これくらいでも十分だよ」
剣「そういうものなのか?」
弥生「うん。食べるのは好きだけど、毎度あの量はちょっとお金の問題がね……」
そう言いながらお腹を撫でる
どうやらお小遣いの問題でその食事らしい
あれだけ食べるのだ、ちょっと物足りないのだろう
その様子を微笑ましく思いながら食事を進めた
折角だ、何か話そう
1、好きな食べ物の話
2、お弁当の話
3、日比乃明日香の話
4、自由安価
安価↓1
481: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 23:48:06.66 ID:LFtURhVqo
>>479採用:2
早々に食べ終わりちびちびとイチゴ牛乳を飲んでいる弥生が、興味深げにボクの弁当を見ている
剣「食べたいのか?」
弥生「あ、ううん。そうじゃなくて、そのお弁当もしかして剣君の手作り?」
剣「いや、妹だ。このお弁当は毎日お互いのモノを作りあってる」
弥生「へぇ…妹さん10歳くらいだっけ?えらいなぁ…」
剣「弥生は弁当を作ったりしないんだな」
弥生「う~ん…挑戦しようとは思ったんだけど私朝弱くて…」
剣「ああ…そうだろうな……」
思い出されるのは今朝の光景
あんな寝ぼけた状 で料理なんてさせたくない
剣「弥生にだったら特別に作ってやってもいいぞ」
弥生「えっ!?嬉しいけど…どうしよう……どんなお返しすればいいかな?」
剣「お返しか……」
食べてもらうことが何よりのお返しだが、何を要求しようか…
1、何でもお願いを一つ聞く権利
2、鹿島弥生の手作り料理
3、キス
4、自由安価
安価↓1
483: ◆7m3grp2dM2 2016/11/27(日) 23:59:56.82 ID:LFtURhVqo
>>482採用:2
剣「…そうだな、じゃあ弥生も料理を作って欲しい」
弥生「え?そんなのでいいの?私大したことないよ?」
剣「それはボクが決めることだ。弥生の料理はボクの手作りお弁当と同程度以上の価値がある」
弥生「そ、そっか…じゃ、じゃあいつ作ってくれる?」
剣「明日でいいか?弥生のお返しはいつでもいい。弁当でも菓子でもなんでも好きなタイミングで渡せばいい」
弥生「うん、分かった。頑張るね」
剣「ボクの手料理なんてそうそう食べられるものじゃない。期待して待つといい」
それからアレルギーや好き嫌いの話を聞き、お弁当の構想に話を膨らませた
※明日の昼の行動が固定化されます
484: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 00:08:10.00 ID:70+O873Yo
放課後
全ての授業が終わり自由の時間がやって来た
さて、どうするか……
と考えていたころスマホに連絡が来る
『正面玄関で待ってるよ(^◇^)』
と明日香から連絡が来る
今日は約束の日だった
あの意味深な奴隷の事も気になるが、約束を破るわけにはいかない
ボクは明日香の待つ正面玄関へと向かった
明日香「あ!おーい!こっちこっち!!」
剣「わざわざ大声で呼ぶな」
明日香「だって楽しみなんだもん!何処に行くか決めてる?」
剣「一応はな」
明日香「よ~し!じゃあ行こう!直ぐ行こう!!」
剣「なっ!手を引くな!案内するのはボクだぞ!!」
興奮気味な明日香に引きずられながら、ボク達は目的の場所へと向かった…
???判定
5以下で……
直下コンマ
486: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 00:27:14.01 ID:70+O873Yo
コンマ判定:6 爆弾回避
電車に乗ってやってきたのは少し遠くの大型デパート
母に連れてこられ、あの惨めな女に服を選ばせた場所
かなり幅広く色々なお店があるのと、この前来たばかりなのでどんな服があったか覚えているのが理由だ
剣「よし、まずはこの店だな」
明日香「う、うん…」
明日香は生唾を飲み込み、ボクの手を握って来た
剣「……この手はなんだ、さっさと離せ」
明日香「ああ…ごめんごめん。なんだか緊張しちゃって…」
ボクの手を掴んだのは無意識だったらしい
恐らくこういった店に足を踏み入れたことも無いのだろう
コイツの私服は確実に全身ユ○クロだった
悪いとは言わないが、地味な印象は拭えない
ボクが考えてきたこの女のコーディネートは…
1、ミニスカートを主軸とした華やかな印象の女性的な装い
2、ボクの趣味に近いゴシックパンク
3、まさかのゴスロリ
4、ロングスリットのトップスが主軸の少し大人っぽい色気のある装い
安価↓1
488: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 00:42:47.94 ID:70+O873Yo
>>487採用:2
明日香「…こ、こういうのって何て言うんだっけ?」
剣「ゴシックパンク。この店はどちらかと言えばパンクファッションの方が近いが…如何せん定義が曖昧だからな」
明日香を連れてきたのはボクの愛用品が多くあるゴシック・パンクファッションの店
服以外の小物が充実しており、見て楽しい店でもある
剣「ボクがこの前着てきたのはロリィタ寄りのゴシックだが、どちらかと言えばこっちの方が普段来ている趣味に近いな」
明日香「う、うん…正直用語ごとの違いが全く分かんないけど、この前着てたのとは系統が違うのはなんとなくわかる」
剣「いくつかアタリをつけている。持って来るから適当に見ていろ、気に入ったのがあったら言え」
明日香「ええ!?ボク一人にしないでよ!」
結局明日香はボクが選んでいる際も腰が引けた犬のようにビクビクとボクの傍に居た
489: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 00:54:10.16 ID:70+O873Yo
選び終わると、早速試着させてみた
剣「……終わったか?」
明日香「お、終わったけど…」
剣「開けるぞ」
明日香「ええ!?待って――」
制止を聞かずにカーテンを開け放つ
着替えと宙なんてことは無く、しっかりと着替え終わっていた
剣「うん、いいんじゃないか?やはりボクのセンスは一級品だな」
カジュアルな黒いシャツに白いネクタイ
赤いチェックのプリーツスカートに、白と黒のボーダーのニーソックス
ベタな感じだがいい纏まりだ
アームカバーもどれか見繕ってやってもいいかもしれない
ソックスも何か別のモノを取ってこようか……
明日香「す、スカート短くないかい?み、見えてない?」
剣「見えるわけあるか。見えたとしたらどれだけ腰の上で履いているという話になるぞ」
明日香「な、何か女の子っぽく無い?ボクそっちのズボンが良いな…」
剣「それはメンズだ。女の子らしくてどんな問題がある」
明日香「う、ううぅ…」
どうやら慣れない感覚に戸惑っているようだ
490: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 01:08:49.41 ID:70+O873Yo
明日香「ボク、スカートとか私服で履いた事ないよ?」
剣「ならこれから履け。そんな意識だからあんな男のような服装センスになるんだ」
明日香「た、頼んだのはボクだけどさ…ここまでしてくれなくたっていいんだよ?」
羞恥からか後ろ向きな発言が目立つ
ボクのセンスが否定されているようで非常に腹立たしい
剣「ボクの隣に居ても浮かない服装にすると約束してやる。大人しく着せられろ」
明日香「き、キミの隣!?」
剣「何を驚いている。そういう会話の流れで服を選びに来たんだろう?」
明日香「い、いや…確かに…そうだったけど。そ、その言い方じゃまるで……」
明日香は何事かをもごもごと口ごもる
何に照れているのか分からないが、黙って着せられる気になったようだった
剣「アームカバーどっちがいい?こういうタイプもあるが…」
明日香「その、つけるから似合ってる方教えて貰えないかな?」
着ることに対する抵抗も薄くなったらしい
剣「それでもいいが、どういう自分になるかのイメージくらいはしておけ。一人でも買いに来られるようにな」
それ以降は幾らか乗り気になった明日香を存分に着せ替え人形にしてやった
自分の服しか選んだことが無かったが、中々に楽しい時間だった
491: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 01:23:42.58 ID:70+O873Yo
大きな袋を大事そうに抱える明日香と帰路につく
最終的にボクが見繕った全身一式と、靴を買った
この女は学校指定のローファー以外、スニーカーしか持っていなかったらしい
靴下は3種類買って、次の服を選びやすくした
明日香「全然意識したこと無かったけど、服って高いね……女子は大変だ…」
剣「お前の場合は靴も買ったからな。ただ、服に関してはそんな物だ」
明日香「あはは…今まで安さで選んでたから尚更ね…」
そう、バツの悪そうに笑う
明日香「でも、よかったの?靴下とか奢って貰っちゃったけど」
剣「まあそれくらいならな。ボクも中々楽しめたのでその礼だ」
明日香「そっか、ふふっ…どちらかと言えば君の方が本気だったしね」
剣「お前はどうだ?これで少しはお洒落に興味が持てたか?」
明日香「う~ん……うん、キミに選んでもらえて本当に良かった」
そう、微妙にずれた答えが返って来た
恐らくまたボクに付き合って欲しいから微妙に答えをぼかしたのだろう
剣「………はぁ、まあ次があったとして暇だったら付き合ってやらんことも無い」
明日香「本当に!?また、絶対だよ!!」
買い物に来る前の興奮を取り戻した明日香のテンションに振り回されながら帰ったのだった……
492: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 01:26:40.24 ID:70+O873Yo
夜
ゴロゴロと自室でゆったりと過ごす
思い返してみれば、今日は昨日のような妙な感覚が無かったな
あの気配の事も含めて、あの奴隷には話を聞いておかなければな
さて、寝るまでにまだ時間があるが……
1、妹と過ごす
2、母と過ごす
3、誰かに連絡を取る
4、夜の町に足を運ぶ
5、自由安価
安価↓1
494: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 01:36:46.58 ID:70+O873Yo
>>493採用:1
そろそろ寝てしまおうかと電気に手を伸ばしたとき
コンコン
と控えめなノックが鳴る
母はノックなんてしないのでこれは卯月だ
剣「どうした?」
卯月「お兄様…」
パジャマに着替え、抱き枕を抱きしめて寝る準備万端と言った様子だ
にも拘らず不機嫌そうに眉をしかめている
卯月「…一緒に寝て?」
剣「はぁ…だから言っただろ。寝れなくなるから別のを見ろと…」
卯月「だってぇ……」
甘えた声でぐずる
卯月は先ほどまでテレビでやっていた心霊特集を見ていた
毎度のように、ああいった番組を見てはボクか母に添い寝をねだるのだ
母はまだ帰ってきていないので、母と寝ろとも言えない
さて……
1、仕方がないので一緒に寝てやる
2、寝るまでは一緒に居てやる
3、甘やかさない。一人で寝ろと追い払う
安価↓1
496: ◆7m3grp2dM2 2016/11/28(月) 01:51:28.94 ID:70+O873Yo
>>495採用:1
剣「……はぁ…分かった。ボクも今から寝る」
卯月「やったぁ!お兄ちゃん大好き!!」
ボクの首に抱き付く妹を抱きかかえながら布団をもう一式用意し、電気を消した
布団に入ったその直後、もぞもぞと何かがボクの体に縋りつく
剣「…これでは布団をもう一式敷いた意味がないだろ」
卯月「卯月はお兄ちゃんと寝たいの!」
剣「やれやれ……この調子で独り立ち出来るのか…」
卯月「どうして?ずっと一緒に居ればいいのに」
卯月は純粋な瞳で此方を見る
本当に疑問だという顔だ
剣「まだ早いが、いつかはそうなる。そうしないといけなくなる」
卯月「どうして?やだよ…卯月、お兄ちゃんもママも大好きだもん……一番大事だもん…」
目の前の温もりを離すまいと卯月は服を強くつかみ、胸に顔を埋めてきた
剣「………」
ボクは妹の髪と背中を優しく撫でた
まだ、まだこの子にはこの話は早かったかもしれないな
それでもいつか、嫌でも別れて暮らす日が来るだろう
せめてその日までは、こうやって甘えさせてもいいかもしれないな
卯月が吐息を立てるまで、ボクはずっと優しく抱きしめて安心させてあげた
※九日目終了
503: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 21:44:32.98 ID:Vn9GeAfZo
名前:浅間花月(アサマ カヅキ)
年齢:17
性別:女性
【外面】
バカがつくほど真面目。論理的であり合理的であり誰に対しても平等に接する
【内面】
未明
【詳細設定】
身長157cm
重みのある黒髪の三つ編み、無機質な紫色の瞳が特徴的な女性
非常に素直な受け答えをする性格で、歯に衣着せなず物怖じしない
また、非常に押しの強い一面を持つ
弟が一人いるが、普段からあまり会話もしない。仲が悪いわけではないがよくはない
図書委員であり日常の大半を図書館で過ごす
504: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 21:50:16.95 ID:Vn9GeAfZo
そろそろルート固定の選択肢に突入するので、色んな子にちょっかいをかけておくといいかもしれない(ダイレクトマーケティング)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
十日目・朝
安らかな寝息をたてている卯月を起こす
卯月に抱き締められ続け、ボクの服は涎と皺でくちゃくちゃになっていた
やはり独り立ちさせる練習が必要な気がするな
そんな事を考えながら朝の準備をする…
1、早めに家を出る
2、普通に出る
3、遅めに出る
安価↓1
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
十日目・朝
安らかな寝息をたてている卯月を起こす
卯月に抱き締められ続け、ボクの服は涎と皺でくちゃくちゃになっていた
やはり独り立ちさせる練習が必要な気がするな
そんな事を考えながら朝の準備をする…
1、早めに家を出る
2、普通に出る
3、遅めに出る
安価↓1
506: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 21:57:36.34 ID:Vn9GeAfZo
>>505採用:1
普段よりも数段早く家を出る
人もまばらで校庭からは部活動にいそしむ人々の声が聞こえる
……昔はボクもあの輪の中に居たな
ほんの少し滲んだ心の靄を振り払い、校内を探索した……
1、陸上部の練習を眺める
2、中庭の噴水で涼む
3、なんとなく旧音楽室に行ってみる
安価↓1
508: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 22:11:29.88 ID:Vn9GeAfZo
>>507採用:3
何となく旧音楽室へと足を運ぶ
昨日の朝、鹿島弥生が言っていたことを覚えていたからだ
そして予想通り、彼女は居た
剣「やっぱり居るんだな」
弥生「えっ?剣君」
彼女はボクの来訪を予想していなかったからなのか、呆けた顔をしている
ボクは適当に椅子を持ってきて彼女の隣に腰かけた
剣「また見ていたのか?」
弥生「うん。こうして居るのが好きだから」
彼女の視線の先には日比乃明日香が居た
健康的な汗を流し高く空を舞う明日香
彼女はその光景をうっとりと見つめている
ボクは彼女と話をすることにした……
1、明日香が好きな理由
2、明日香に告白はしないのか、またはしたことがあるのか聞く
3、ボクの友達の話
安価↓1
510: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 22:29:54.42 ID:Vn9GeAfZo
>>509採用:1
日比乃明日香
ボクの恋敵であるあの女
どういう因果か服を選んでやったり一緒に遊びに行ったこともあるが恋敵だ
陸上部に所属していて活動種目は高跳び
ボクが陸上部に居た時、あまり名前を聞いた覚えがないから一線級というほどの選手ではないんだろう
正確は控えめで謙虚だが、それ以上に自分の感情に素直
喜怒哀楽の感情が豊かで、感情で体を動かしているといってもいい
友達想いで気遣い上手、その上呆れるほどのお人好し
それがボクが今まであの女と接してきての印象だ
総じて悪い奴ではないが、なぜ弥生があの女の事が好きなのかは知らない事だった
なので、直接聞いてみた
弥生「ええっ!?あ、明日香が好きな理由?」
弥生「う、う~ん……色々ある気はするけど…」
彼女は少し照れていたが、嬉しそうに明日香との話をしてくれた
511: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 22:46:22.65 ID:Vn9GeAfZo
弥生「私と明日香が幼馴染だって話はしたかな?」
剣「ああ、知っている」
弥生「幼稚園も一緒でね、家も近くって、昔っから一緒に遊んでた」
弥生「何をするにも一緒で、居ないと寂しくて泣いちゃうくらいだった」
弥生「昔っから私は今と全然変わらなくって、誰かから話しかけてもらえないとずっと一人で居るような子だった」
弥生「明日香は私と違って自分から人の手を引っ張ってくれる人だった」
弥生「明日香はね凄いんだ。勉強も運動も私より出来るし、人に慕われる魅力があって、何より優しかった」
弥生「困ってる人に率先して話しかけて、自分から損な役回りを請け負ってた」
弥生「それに何より、誰かのために立ち向かえる人なの」
弥生「恐怖に震える誰かの手を握ってくれる」
弥生「人の痛みに…人のために、怒ってくれる人なんだ」
弥生「誰かが痛みに泣いていても、見て見ぬふりしかしなかった私とは真逆な人」
弥生「明日香はね…私の中の王子様。私の中のカッコイイっていう情景には、全部明日香が居る」
弥生「ずっとずっと好き…今も昔も……一番好き」
512: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 22:58:17.53 ID:Vn9GeAfZo
弥生「あはは……ゴメン、気持ち悪いよね。明日香は女の子なのに王子様って…」
彼女そう言って表情を暗くした
鹿島弥生と日比乃明日香の間には、そう簡単に超えられそうもない強い時間の繋がりがあった
弥生は人との関わりをなるべく作らない人間だ
受け答えはするけれど、友達は殆どいない
特に、人からの接触を嫌う性質を持っている
そんな中で、日比乃明日香は特別な存在だ
血のつながりの無い人間でありながら、肉親よりも濃い時間を二人は過ごしてきたのだ
少なくとも、弥生の中では
彼女にとって、彼女の思い出は明日香との思い出
彼女の中には明日香しか居ないのだ
恋は盲目とはよく言ったものだ
鹿島弥生の口から、幼少期の思い出を聞けば明日香との話しか返ってこないだろう
二人の間には、ボクでは埋められない決定的な差があることを理解した
513: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 23:12:44.13 ID:Vn9GeAfZo
しかし、付け入る穴が無いわけではない
まず一つは彼女自身の口から発せられた自己嫌悪
同性同士であるという壁に、彼女は今一つ踏み切れない感情を抱えている
恐らくだが、日比乃明日香には同性愛の気が全くないのだろう
だからこそ、思い人への想いを伝えるのを躊躇してしまうんだろう
もう一つは彼女の今までの経験出だ
盲目が故に明日香以外の人間に性の意識を見出したことが無い
相当に骨が折れることは承知だが、上手くいけば異性への関心を引き出せるかもしれない
その二点
上手く利用できればいいのだが……
弥生「…剣君もちょっと引いちゃったんじゃない?」
彼女はボクの顔色を窺うように訊ねた
さて、どう答えるか……
1、正直引いた
2、愛に性別は関係ない
3、人を好きになれば誰しもそんな思いを抱くモノ
安価↓1
515: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 23:26:00.26 ID:Vn9GeAfZo
>>514採用:3
剣「人を好きになれば誰しもそんな思いを抱いてしまうモノだ」
まるで熟練の恋愛相談窓口であるかのように、自信満々に答えてやる
因みにボクは一週間前、初恋を経験したばかりだ
なんと言う説得力なのだろう
弥生「そ、そうなの?」
彼女は純粋にもボクの言ったことを真に受けている
剣「ああ、きっとボクも程度の違いはあれどキミに幻想を抱いているんだと思う」
この言葉は半分本音だ
今のボクでは彼女の全てが美しく思えるから
弥生「そっか…恋って怖いなぁ…」
剣「ああ、だからそう自己を貶めるな」
弥生「ふふふっ…慰められちゃった。でも、いいの?私の背中を押してくれてるよ?」
彼女は悪戯っぽく笑って見せた
ボクはその言葉で漸く気づいたのだが、彼女の心象を悪くするよりはいいだろう
………たぶん
516: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 23:28:56.04 ID:Vn9GeAfZo
昼休み
朝から彼女と話が出来、とても気分よく授業を受けられた
…あまり頭の中には入っていないが気にしない
さて、昼食はどこで食べるか…
1、教室で食べる
2、食堂に向かう
3、中庭に行く
4、誰かを誘う
5、すぐに食べ終わり、別の行動を起こす
6、誰かに誘われる
安価↓1
520: ◆7m3grp2dM2 2016/11/29(火) 23:39:02.04 ID:Vn9GeAfZo
>>518その通りでした!!
というわけで昼の行動は書き直しです
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昼休み
ボクは意気揚々と階段を上っていた
理由は当然彼女に会うため
剣「待たせたな!」
弥生「いらっしゃい剣君。待ってたよ」
彼女は笑顔でボクを迎えてくれた
今日は普段よりも2時間も早く起きていたのだ
理由は当然、彼女へのお弁当を作るためだ
昨夜の時点で幾らか下準備はしていたが、それでも気がせいて早くに起きだしたのだ
その為か普段よりも早く学校に来てしまったが、それも結果を見れば正解だった
ボクは自信を持って、彼女にお弁当を手渡した
521: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:01:09.04 ID:JY8y9GcLo
剣「ふふふ、きっと驚くに違いない。ボクの料理は一級品だからな」
弥生「ふへへぇ…楽しみだなぁ…」
彼女は蕩けた声で緩み切った笑顔を見せる
剣「開けてみろ」
弥生「それじゃあ…いただきます」
彼女は丁寧に手を合わせ、ボクのお弁当の包みを解いた
彼女の好みは完全に把握している
そう、肉だ
お弁当な事もあってか、冷めても味も見た目も問題のないモノを選んだ
弥生「お肉だぁ…!」
剣「ふふん、食べてみろ。さらに驚くぞ」
彼女は大きく口を開け、自信作のハンバーグを頬張った
522: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:11:24.67 ID:JY8y9GcLo
弥生「うん…うん!!」
彼女は目を見開いて、瞳の奥を輝かせている
言葉にはしなくとも、全身でその喜びを表現してくれていた
弥生「美味しい…!美味しいよ剣君!!」
剣「ふふんっ…当然だな。何せこのボクの料理なんだから」
弥生「剣君って料理もできるんだね!」
剣「ボクのセンスをもってすれば当然だ」
弥生「本当にすっごく美味しい!明日香が作ってくれたハンバーグと同じくらい美味しいよ!!」
剣「そうだろうそうだろう……………ん?」
今何か、とても聞き捨てならない言葉を聞いた気がする
弥生「明日香が作る料理以上に美味しいものなんてないと思ってたけど、それに並ぶくらい美味しい」
剣「ん?んん?ボクの料理が…あの女と同格?」
弥生「うん、明日香って料理も上手なんだ。でも、本当に凄いと思うよ!」
彼女の言葉から純粋な尊敬の念を感じる
『明日香と同じ』とは彼女にとって最大級の賛辞の言葉なのだ
それは分かっているのだが…納得はできない
悪魔でボクに立ちふさがるか…日比乃明日香!!
改めてその存在の驚異を思い知ったボクだった
523: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:18:09.59 ID:JY8y9GcLo
弥生「ご馳走様でした。本当に幸せな時間だった。ありがとう剣君」
剣「これくらい安いものだ。ボクならいつでも弥生の為に作ってやろう」
弥生「あはは、毎日は流石に悪いよ。…ちょっといいなって思うけどね」
あの明日香と同格に語られたことに不満はあるが、彼女は心の底から喜んでくれていた
それだけで収穫は十分すぎる
弥生「それでね、お礼の事なんだけど…ちょっと時間をくれないかな?」
剣「ほう?理由は?」
弥生「こんなに美味しいもの作って貰っちゃったから、私も頑張ろうと思って。その練習をしたいんだ」
弥生「此処まで上手にはできないと思うけど、剣君にお弁当を作ってあげたい」
剣「楽しみにしているぞ。ただ、作ってくるときは予め知らせてくれ、妹に言わないといけないんでな」
弥生「ああ、そうだよね。お弁当二つになっちゃったら困るもんね。分かったよ」
そう約束を交わし、彼女と時間の許す限り雑談をして過ごした
524: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:21:36.13 ID:JY8y9GcLo
放課後
どんよりとして曇った天気だが、今すぐ雨が降ると言ったことは無さそうだ
さて、放課後をどう過ごすか……
1、旧音楽室に向かう
2、服飾研究部の部室を覗く
3、図書館に足を運ぶ
4、柘榴花あやを探す
5、陸上部に顔を出す
6、学校を出て町をぶらつく
7、自由安価
安価↓1
526: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:41:35.66 ID:JY8y9GcLo
>>525採用:4
いい加減遅くなってしまったが、あの件について柘榴花あやを問いただすとしよう
連絡先を知っていることを思い出し『会って話がしたい』と送ると、即座に『校舎裏で待ってます』と返って来た
女は言っていた通り、校舎裏で待っていた
わざわざ人気が感じられない場所に呼び出したという事は、何か事情があるのだろう
あや「と、戸倉君!あの…」
剣「御託はいい、本題から話をさせてもらう。お前、何を知っている?」
普段ボクを見る熱っぽい眼に影が差す
視線を外しかなり躊躇っているようだが、話し始めた
あや「……私、呪いにかかってるんです」
剣「…ふざけるのは止めろ。正直に話せ」
あや「ほ、本当なんです!嘘じゃないの!私は呪いにかかってるの!!」
剣「チッ…仮にそうだとして何故ボクに被害が出る?あのガラスの事も、お前が原因なんだな?」
あや「わ、わた、私…の所為だけど…私がやったんじゃなくて呪いが原因なの!」
どうやら真実を語る気はないらしい
呪いなんて馬鹿馬鹿しいもの、あるはずもない
大方ボクへの恨みか、下らない独占欲か何かだろう
前々から病んでいるとは思っていたが、こうして行動に起こされるとボクも黙っていられない
あや「ごめんなさいごめんなさい!わ、私が悪いんです…私なんかが居たから……私なんかが…」
女は涙を浮かべ髪を振り乱している
527: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 00:52:18.73 ID:JY8y9GcLo
女の様子は必死そのもので、狂ったようにも見えるが正常であるようにも見える
呪い?
普通に考えてただの方便だろう
ただ、万が一億が一にも本当に呪いだったら?
いや、信じるに値しない
少し心が揺らぎかけたが、オカルトを真に受けるボクではない
あや「あ、あのあの…えっと…」
剣「これ以上呪いを信じろだというなら、ボクから聞きたいことはもうない」
あや「ほ、本当なの…信じて……くれませんか?」
柘榴花あやは消え入りそうな声で、ボクを見上げた
これは重要な選択な気がする
慎重に言葉を選ぼう……
1、『本当に呪いでボクを…ボクの周りの人間に危害を加えるなら、二度とボクに付きまとうな』
2、『バカな話だが……一応は聞いてやる』
安価↓3までで多数決
532: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 01:07:40.00 ID:JY8y9GcLo
多数決:1
剣「……分かった。信じよう」
あや「あ、ありがと―――」
剣「だから、二度とボクに付きまとうな」
ボクの言葉に光を取り戻したあやを、即座に突き放す
剣「呪いとやらがボクに迷惑をかけてるんだろう?ボクだけならまだいいが、あの時は無関係な隣人が被害にあったんだぞ」
ボクの言葉には明確な怒りが込められていた
どんな理由があったにせよ、あんな事は許されない
原因が分かっているなら尚更だ
あや「わ、私それ…知らない…」
剣「だからなんだ、知らない人ならいいのか?ボクじゃなければ死んでもいいのか?」
あや「ち、ちがっ…」
剣「お前に呪いがかかっていようが知ったことではない。ボクに関係の無いところで勝手に呪われていろ」
剣「ボクの為を想うのなら、金輪際、二度とボクに付きまとうな」
そう、言い切った
534: ◆7m3grp2dM2 2016/11/30(水) 01:24:09.17 ID:JY8y9GcLo
ボクの言葉に押し黙っていたあやは、突然笑い始めた
あや「あはっ!ふふっ!あはははははは!!」
涙を流しながら、吐き出すように笑っている
あや「そうだねっ…!そうだねっ…!戸倉君の言う通りだ……私なんかが夢を見ちゃってたから、『またあの時にみたいに』迷惑かけちゃった」
剣「また…?」
あや「ほんのちょっとの時間だったけど、戸倉君の事を思うと心が軽くなったの」
あや「自分の罪から、許された様な気がしてた」
あや「でも…まだ許されてなかった。私…戸倉君にだけは嫌われたくないから」
あや「こんな私と、最後に話をしてくれてありがとう」
剣「待て!その言い方はなんだ!何をする気だ―――」
あや「こう言えば呪いは私を狙ってくれるはず……」
あや「私、自分の事が『好き』」
ボクの制止の言葉に被さるように女は言った
いや、ボクにこれ以上何も言わせないために言ったのだろう
女が言葉を言った直後、巨大なガラス片が女の体を貫いていた
腹を突き破り中身が開かれていく
女の体は不自然なまでに宙に浮き、壁に叩きつけられて磔にされていた
どんな理論でも説明のつかない『異常』がそこにはあった
何一つ信じられないその光景に、ボクはただ膝をつく
ああ、あの言葉は…この女にとって最後のSOSだったのだ
磔にされた女の顔はどこか安らかで、満足げに微笑んでいるようにさえ見えた
※柘榴花あやルートが消滅しました
※戸倉剣の異常素質が成長しました。(1→3)
540: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 20:50:08.42 ID:SlI45SFqo
そろそろ再開の前に、素質について補足の説明をしたいと思います
運動素質
高ければ高いほど体を使う行動が追加され、肉体的に無茶が出来ます
体を張る選択肢で殆ど下手を打ちません(誰かを助けるなど)
逆に素質が低いほど選択肢に体を張った選択肢が減り、無茶をした時のリスクが甚大です
今回で言うと、浅賀花月を助けようとした時剣君は素質が高いので最悪の事 でも助けることができました
勉強素質
高ければ高いほど計画的な思考になり慎重な選択肢が増えます
あらゆる行動面においてリスクを減らせます
逆に素質が低いと行き当たりばったりな行動が増え、リスクを背負った選択肢が増えます
今回で言うと、明らかな異常を確認しているのにそれを明らかにしようとする選択誘導が少なかったです
感性素質
高ければ高いほど人の評価が確かなものになります
人の変化に聡くなり、会話の選択肢にはずれが少なくなります。更に他者と仲良くなりやすく、他者の心に触れる選択肢で下手を打ちにくいです
逆に素質が低いと他者の内面を察する描写が減り、気持ちのすれ違いなどが多くなります
今回で言うと、剣君は素質が高いので自分の恋心は本気であると、本来猜疑心の強い鹿島弥生に伝わっています
異常素質
高ければ高いほど異常に対処できるようになります
また下手をうっても何とかなりやすいです。所謂ご都合主義的な主人公補正の強さを表しています
逆に素質が低いほど異常を受け入れず、下手をうってしまったときに致命的なものとなりやすいです
今回で言うと、柘榴花あやの告白の件で地雷を完全に踏み抜いたときに致命的な結果となりました
541: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 20:58:20.92 ID:SlI45SFqo
素質の面で今回の主人公戸倉剣を評価するなら
『人の気持ちを理解してくれて、颯爽とピンチを助けてくれる王子様だが、致命的なまでに空気が読めず、主人公補正が殆どない』
ですね
>>539でご指摘された通り>>527の選択肢は柘榴花あやルートの固定選択肢だと勘違いさせてしまっていたかもしれません
あの選択肢はルート消滅回避の是非を問う選択肢でした
初見殺しとして設計したのは事実ですが、初死亡選択肢のチュートリアルだったと思って頂いて最安価を取りたいと思います
このまま進んでも大丈夫ではあるんですが、剣君の心には深いトラウマが残った状 での進行となります
では、多数決です
1、そのまま進行
2、ロードして【2、『バカな話だが……一応は聞いてやる』】を選択する
安価↓3まで
545: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 21:21:37.00 ID:SlI45SFqo
多数決:2、ロードして再開
では、ここから本編です
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
剣「……………」
あや「あ、うぅ……」
ボクの沈黙にあやは今にも泣きそうな顔でソワソワとしている
『呪い』…『呪い』と来たか……
正直、全く信憑性の無い話題だ
ボクとそれ以外の人間と話すときの強い二面性のある性格、病的なまでのボクへの執着
この発言と来れば役満で精神病患者だ
…が、本当にこの女が嘘を言っているようには見えない
人を見る目にはかなりの自信がある、人の嘘や誤魔化しを見抜くのは得意だ
この女の様子は『信じてもらえないことを承知の告白』
何かに追い詰められるような、ボクに追いすがってくるようなそんな声色
剣「………あまり馬鹿馬鹿しい話だ」
あや「うぅ…そう…だよね……」
剣「ああ、バカな話だ。だが……一応は聞いてやる」
ボクが折れてやることにした
オカルトなんてありえないと分かっているが、原因の何かをこの女は知っているのだろう
それは明らかにしておくべきだと思う
あや「つ、づるぎぐうぅん!!ありがとう!!!」
ボクの言葉に柘榴花あやは涙を流してボクの胸に顔をこすりつけてくる
相変わらず汚い泣き顔だが、まあ正しい選択をしたと思う
546: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 21:36:46.31 ID:SlI45SFqo
いくら経っても離れないため、強引に引き剥がしハンカチで顔を拭ってやった
そして何とか落ち着かせることに成功した
あや「さ、さささっきは勢い余って名前で呼んでご、ごめんね」
剣「それよりも人の服を汚したことを謝れ。いや謝らんでもいいからサッサと話せ」
話が脇道にそれそうなことを察し、強引にあやに話をさせる
あや「え、えっと…『呪い』の話だよね」
剣「ああ。そもそも『呪い』とは何だ?悪魔にでも憑かれているというのか」
あや「……それは、私も分からない事ばっかりだけど。確かな事があるの…えと…えっと……うぅん…」
あやは顔を赤く染め、口を尖らしてもじもじとし始めた
剣「何を口ごもっている。お前以外に誰が説明してくれる?さっさと言え」
あや「………あ、あの…わ、私の大好きなものに不幸が降りかかるの。それが『呪い』」
それが口ごもっていた原因らしい
コイツの恋心などとうに察していたから何とも思わない
あや「それと…もう一つあってね……それが、その…す、好きなモノの事を思って『好き』って口にすると……恐ろしい事が起こるの」
あや「お、一昨日の私はね…と、と戸倉君を想いながら…口に出ちゃってたみたいで…」
成程、言い淀んでいた理由の本命はこっちだな
『一昨日あなたの事を妄想していて好きって言いました』なんてことを告白をさせるとは、とんだ羞恥 だ
547: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 21:45:31.85 ID:SlI45SFqo
あや「本当にごめんなさい!!私なんかがおこがましい事を口にして本当にごめんなさい!!」
剣「いや、迷惑をかけたことを謝れ。ボクがいなければ死人が出ていたぞ」
あや「ボクがいなければって…アレ?戸倉君が危ない目にあったんじゃないの?」
剣「その時偶然隣りに居た女の上にあのガラス片が落ちてきた」
あや「そんな…事…別の誰かまで傷つけるなんて……今まで無かったはずなのに…」
柘榴花あやはその事実にかなりショックを受けているようだ
ふむ、どうやら本当に浅賀花月の事は知らないようだ
だからこそ、『呪い』の性質である好きなモノのボクに危害を加えたと思って謝って来たのだろう
剣「うむ、辻褄は合うな」
あや「し、信じてくれるんですね!」
剣「その話が真実だと仮定するなら、だ。『呪い』なんて証明できないモノ、信じられるか」
そう、一蹴した
548: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 21:55:53.46 ID:SlI45SFqo
しかしこの女は何かを握りしめ、決意のこもった声で言った
あや「…じゃ、じゃあ…今から証明するね。それで、信じてくれるよね?」
剣「ほう?やってみろ」
あやは握りしめていた筆箱を慈しむように撫で、大きく宙に放る
あや「今までありがとうね。『好き』だよ」
そう言った瞬間
突如、虚空からガラス片が湧き出て放られた筆箱を貫いた
明らかに不自然な軌道を描き、筆箱は中身をぶちまけながら壁に突き刺さる
あや「こ、これで信じてもらえない…かな?」
剣「……………信じたくは…無いな」
『異常』
正にその一言の光景だった
あらゆる現象が論理で説明がつかない
あの光景の全てが『呪い』の話の真実を雄弁に語っていた
ぶちまけられた筆箱の中身をせこせこと拾うあやを手伝いながら、まだ目の前で起こったことが信じきれずにいた
※柘榴花あやルートの消滅を回避しました
※異常に触れ、異常素質が変化しました(異常素質:1→2)
549: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 22:01:17.85 ID:SlI45SFqo
情報が追加されました
名前:柘榴花 あや(ザクロバナ アヤ)
年齢:16
性別:女性
【外面】
無口でそっけない。友達は非常に少なく、交流を持とうともしない
【内面】
異常なまでに戸倉剣に陶酔している
愛したものが壊れてしまうという呪いに怯えて生きている
【異常】
柘榴花あやは呪いに憑かれていた
決して幸せになれない呪い
彼女が愛を囁くたびに愛する者は壊されてしまう
それに一切の悪意はなくただの現象であった
彼女に巣食う『???』の呪い
550: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 22:17:27.33 ID:SlI45SFqo
夜
あれから『一応は信じてやる』と伝え、頭の中を整理するために別れて家に帰った
『呪い』
オカルトなんてこの世には存在しないと強く信じていたが、ああして目の前で見せられると信じないわけにもいかないだろう
あの女の様子から、何かの手品というわけでもなさそうだった
そもそも、あの女に手品なんて出来そうにも無い
しかし一つ意外だったのは、あの女は純粋な想いでボクを好いていたという事だ
確かに闇を抱えてはいたが、メンヘラやサイコパスの類では無さそうだ
その事だけは少し、見直したといってもいい
柘榴花あやの事を考えていた矢先、あの女から連絡が来る
『今はまだ決心がついていないけど、どうしても告白したいことがあります。金曜日の夜○×公園で会えませんか?』
先ほどあんな話をした後というのに、まだ何かを告白したいらしい
特に予定も無かったためボクは『分かった』と短く返信をした
…恐らく、とても大事な用事なのだろう
約束をした以上は破らないようにしよう
※十三日目の夜の行動が固定されました
551: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 22:23:23.36 ID:SlI45SFqo
インフォメーションの訂正
正しくは十二日目の夜でした
十二日目の夜はルート固定の決定日となります
それまでにあんまり絡んでいないシンシアとか千紗ちゃんとかと交流してどんな子か知って欲しいかもしれない(願望)
まあ別に二週目とかもあるので気にしなくてもいいといえばいいんですけどね
では十一日目開始です
552: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 22:26:52.54 ID:SlI45SFqo
の前に、十日目の夜の行動の続きです
さっきからガバガバ過ぎない?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜
さて、寝るには早い
何かをするとしよう………
1、夜の町に顔を出す
2、妹と過ごす
3、母親と過ごす
4、自由安価
安価↓1
554: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 22:45:47.75 ID:SlI45SFqo
>>553採用:3
夜遅くに帰ってきた母の晩酌に付き合う
美紗綾「卯月ちゃん、よく眠れてる?一人で怖がってなぁい?」
剣「よく眠っているよ。寧ろアイツには早く独り立ちさせる練習をさせたいくらいだ」
美紗綾「あらあら、冷たいのね。ママは…もうちょっと一緒に寝ててあげたかったな…」
遠い目をしながらコップの縁を指でなぞる
母はボク達二人を養うために、昔から遅くまで働いていた
昔から妹と一緒に寝てあげたり、一緒にお風呂に入ったり、世話をしてあげるのはボクだった
お弁当だって毎日ボクが作っていたし、それを真似して卯月も弁当を作ってくれるようになった
剣「そうは言っても一人で寝ると言い始めたのは卯月だぞ?」
美紗綾「きっと…ママに遠慮してるんじゃないかしら?……寂しい思いさせちゃってるわ」
剣「どうだろうな。少なくともボクの眼には母さんの方が寂しがっているように見える」
美紗綾「ダメね…私ママなのに……」
酒を飲むと昔からこんな感じではあったが、今日は一層悲観的だ
もしかすると、本当に寂しがっているのかもしれない
家族で男はボクだけだ、せめてボクだけでも母の支えになってやらないとな
1、ボクも飲み物とおつまみを新たに用意して、長話に付き合う
2、気分だけでも暗くならないように明るい話をし続ける
3、抱きしめて、甘えさせる
安価↓1
556: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:01:18.97 ID:SlI45SFqo
>>555採用:1
エプロンを着て台所に立つ
剣「何か食べたいものはないか?今日は暫く付き合ってやる」
美紗綾「あら、いいの?遅刻しちゃわない?」
剣「大丈夫だ。遠慮するな、愚痴くらいいくらでも付き合う」
美紗綾「……ありがとう。じゃあ…あのコールドチキンが食べたいわ」
剣「ふむ、それなら余りがあるからソースを作るだけか…ちょっと待ってろ」
冷蔵していたチキンを確認し、複数のソース作りに取り掛かった
美紗綾「…うふふっ…剣ちゃんは嫌がるかもしれないけど、剣ちゃんの背中…あの人みたい」
剣「………今はボクが居る。アイツの事はもういいだろ」
美紗綾「うん…だから、ゴメンね」
母はどこか甘えたような声でボクに謝った
『あの人』とはボクの父だった男の事
ボクの母はきっと『馬鹿な女』なのだろう
子供が出来たから捨てられたのに、あんな屑男の事を今でも愛しているのだから
もしボクがあの男に似ているというのなら、非常に不名誉だけど…母の心の隙間を埋められるなら、あの男の代わりになってやってもいいかもしれない
ボクはお茶を飲みながら母の話に付き合った
相当鬱憤を溜めていたらしく、吐き出されるままに客や上司の愚痴を喋り続けた
557: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:05:06.93 ID:SlI45SFqo
十一日目・朝
あれから倒れるように寝た母を寝室まで担ぎ、片付けをしようとしたのだが眠気には勝てずソファで眠てしまっていた
体勢が悪かったのか、体の節々が凝り固まっていた
軽くストレッチをしながら片づけをして、朝食の準備を始める
今日は……
1、早めに学校に行く
2、普通の時間に出る
3、遅めに出た
安価↓1
559: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:11:11.40 ID:SlI45SFqo
>>558採用:2
普通の時間に家を出た
少し夜更かしをしてしまったせいか大きく欠伸をする
授業中は寝てしまう事だろう
誰かに肩を叩かれる、振り返ると……
1、柘榴花あや
2、近衛鈴鹿
3、山田千紗
安価↓1
563: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:23:09.56 ID:SlI45SFqo
>>560採用:2
鈴鹿「おはよう剣ちゃん♪」
ボクの肩を叩いたのは変 女だった
この前の事を反省したのか、左側から話しかけてきた
これが右側だったら迷わず腕を捻りあげ、組み伏せていた事だろう
鈴鹿「欠伸なんかしちゃって、夜更かしでもしちゃったのかしら?」
剣「…はぁ、お前には関係ないだろう」
鈴鹿「えぇ~、私と剣ちゃんの仲じゃない!最近は部室にも足を運んでくれないし…」
剣「もう取引なんてほとんど必要ないしな」
鈴鹿「そうかしら?ちょっと弥生の事、甘く見てるんじゃない?」
剣「お前の知るところじゃない。順調も順調だ」
鈴鹿「ふふふ…それなら、いいんだけど…ね」
剣「……ふん」
いちいち発言に含みを持たせなければ気が済まない女らしい
隣に居るのだし、話くらいはしよう…
1、弥生と友達の理由を聞く
2、鈴鹿の趣味の話
3、また悪戯を仕掛けてみる
安価↓1
566: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:55:35.56 ID:SlI45SFqo
>>564採用:2
依然として見えないままの鈴鹿の内面
どこかにとっかかりは無いモノかと、少し突っ込んだ質問をしてみる
剣「…お前ってレズなんだったよな?」
鈴鹿「そうだけど、それがどうかしたの?」
剣「何か理由でもあるのか?」
鈴鹿「好きになったものに理由なんてあるかしら?好きだから好き、それだけよ」
剣「少し質問を変えるか。男は嫌いか?」
鈴鹿「…あらあら、どうしたの?今日は私に興味津々ね」
一瞬、返答に間があった
ほんの少しだが、確かな動揺を垣間見せていた
剣「はぐらかすのか?それは肯定と同意だぞ」
鈴鹿「もう、意地悪ね。男の人だからって無暗に嫌いじゃないわよ?」
剣「それが答えか?」
鈴鹿「ええ」
剣「………成程な、ボクはどうだ?お前にとって、ボクは嫌いか?」
鈴鹿「もしかして好きって言わせたいの?言ってあげるわよ、だ~い好き♪」
鈴鹿「だって剣ちゃん可愛いじゃない!可愛いは正義なの!!」
剣「ぐっ!お前、離せ!」
ほんの少し動揺を引き出せたが、最終的にいつもの通りに奴の勢いに飲まれてしまった
しかし、一つだけ収穫もあった
この女の趣味は…男が関係していそうだ
この女からは妙に鹿島弥生のそれとは違った匂いがする
どちらが本物かは、まだ判断はつかないが
567: ◆7m3grp2dM2 2016/12/01(木) 23:59:40.07 ID:SlI45SFqo
情報が追加されました
名前:近衛 鈴鹿(コノエ スズカ)
年齢:16
性別:女性
【外面】
友達想いで照れ屋。人懐っこく優しい
【内面】
真性のレズビアン?
何かを隠しているような気がする…
ついでに追加し忘れていた情報も
名前:戸倉 美紗綾(トグラ ミサヤ)
年齢:32
性別:女性
【外面】
退廃的な色気を放つ。子供たちの為なら全てを敵に回しても構わないほどの子煩悩
性格としては奥ゆかしくも無邪気な面を覗かせる
【内面】
深く子供を愛している
未だに自分を捨てた男の事が心に残っている
568: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 00:14:00.82 ID:nzXq0fPTo
休み時間
※強制イベント
……ふと、目を覚ます
いつの間にか授業中に眠ってしまっていたようだ
次の授業を確認すると、体育となっていた
既に教室には人が居ない
体育館の更衣室に行ったのだろう
ボクも行くとしよう……と席を立った時、人がもう一人いることに気付いた
机に突っ伏すような恰好の女
アレは確か奴隷2の方だな
自分の両耳を塞ぐという妙な格好だが、ボクと同じく寝ていたのだろう、仕方なく女を起こしてやる
剣「おい」
千紗「ひゃわぁっ!」
女は余程驚いたのか飛び上がって数歩後ずさった
千紗「つ、剣様…」
剣「更衣室に急げ、遅刻にされるぞ」
千紗「あ、あはは!ウチちょっと風邪気味だからサボりなわけよ。剣様こそ早く行った方がいいよ」
剣「む、そうか。じゃあな」
千紗「うんっ!じゃねー」
千紗はいつもより弱弱しい笑顔でボクに手を振る
確かに少し震えていたような気がしたが……風邪気味だというなら仕方ないな
ボクは廊下の窓から飛び降りて近道をしながら体育館に向かった
569: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 00:28:49.42 ID:nzXq0fPTo
昼休み
※強制イベント
学校生活の中で最も長い休み時間
多くの生徒が束の間の休息を満喫するこの時間
ボクとて例外ではない……のだが―――
剣「これは……流石にまずいな…」
わなわなと震える手に握られているのは先日の小テストの用紙
なんと、10点満点のテストで1点という結果であった
中間テストもほとんど赤点、部活動をやめてスポーツ特待生では無いボクにこの成績は許されないだろう
剣「…勉強…しないと駄目だな」
シンシア「無様ですわね」
剣「……何時からいた」
いつの間にかシンシア…基、惨めな女がボクの小テストの結果を覗き込んでいた
シンシア「このような成績で私に惨めな女などとよくも言えましたわね。戸倉剣」
剣「ぐぬぬ…」
流石にこれは返す言葉も無い
シンシアはむふーと鼻を鳴らし、高飛車に笑う
シンシア「そろそろ期末テストも近づいてまいりますし、私がお勉強を教えてあげましょうか?下々の貴方に、慈悲を与えて差し上げてもよろしくってよ?」
剣「……」
非常に屈辱だが、魅力的な提案ではあった
この女、こんな 度だが勉強はできる。常に上位5名の中に名を連ねている
非常に屈辱だが、本当に勉強はしないとまずいだろう。成績をあげなければ部活に入るしかこの学校に居られないかもしれない
さて……
1、背に腹は代えられない。素直に提案を受け入れる
2、この女だけは無理だ。絶対に屈したりしない
3、与えられるだけは癪だ。取引をする
安価↓1
571: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 00:41:17.34 ID:nzXq0fPTo
>>570採用:3
剣「部活動をやめた以上勉強はしないといけないからな…」
シンシア「でしたら――」
剣「だが、その提案に条件がある。ボクもお前の苦手を手伝ってやろう」
シンシア「―!分かりましたわ、そっちの方が対等ですわね!!」
ボクの発言に目を輝かせて興奮している
かなり調子に乗っているようだな
剣「言っておくがボクがお前に歩み寄ってやっているだけだぞ」
シンシア「ふふん、負け犬の遠吠えですわね。可愛らしい囀りですわ」
剣「チッ…で、何が欲しい?友達か?奴隷なら紹介してやるぞ」
シンシア「要りませんわ!!ごほん…では、貴方の得意な運動を教えてくださらない?」
剣「なんだ、意外に普通だな」
シンシア「私、なんでも持ってますもの。貴方から搾り取れそうなものなんてそれくらいですわ」
剣「相変わらず一言多い女だな……」
相変わらずの性格の悪さにボクは溜息を吐く
何はともあれ、シンシアと契約を結んだ
シンシア「では、一緒に食事でもしながらお勉強しましょうか?」
剣「そうだな………」
1、付き合う事にする
2、今はやめておく
安価↓1
573: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 00:54:12.30 ID:nzXq0fPTo
>>572採用:2
剣「今はやめておく」
シンシア「そうですか。いつでも、この私シンシア・パーシヴァルを頼りになさって下さいね。私たちは対等な関係なのですから」
誘いを断られたというのにやたらと気分良さそうに去って行った
鬱陶しい女ではあるが、今のボクには必要だ
さて、何処で昼食を食べるか…
1、教室
2、食堂
3、中庭
4、屋上階段
5、誰かに誘われる
安価↓1
575: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 01:04:08.74 ID:nzXq0fPTo
>>574採用:5
誰かから連絡が来る
食事の誘いのようだ
送ってきたのは……
1、日比乃明日香
2、山田千紗
3、浅賀孝介
安価↓1
578: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 01:12:11.99 ID:nzXq0fPTo
>>576採用:1
と、いうところで今日の更新はここまでです
ではでは、お付き合いいただきありがとうございました
582: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 21:35:20.37 ID:nzXq0fPTo
連絡があったのは日比乃明日香だった
『弥生と鈴鹿と一緒に居るんだけど来ない?』との事だった
弥生が居るならばと即座に『行く』と返答した
高等部1-A
日比乃明日香の在籍する教室らしい
上級生たちの奇異の眼を感じながらも、4人で食事を始めた
明日香「こうして4人で席を囲むのはあの時以来だね」
明日香は嬉しそうに笑みを絶やさない
昼食は弁当で、恐らく自分で作ったものなのだろう
弥生がボクと同じくらい上手だと言っていたが、ボクの方が美味いに決まっている
だが少なくとも見た目だけは、中々美味しそうだと思えた
弥生はボクに向けられている他の人の視線が気になっているのか、居心地悪そうにしており口数少ない
見られているのは自分ではないと分かっていても気になるのだろう
鈴鹿「ねえ明日香、それ一口頂戴」
明日香「ええ?仕方ないなぁ…ほら、口開けて」
鈴鹿「あ~ん♪うん!やっぱり明日香のお弁当は美味しいわねぇ~」
この女は相変わらずマイペースで明日香に甘えていた
ボクも特に普段と変わらず食事を始めた…
1、明日香に話しかける
2、弥生に話しかける
3、鈴鹿に話しかける
安価↓1
584: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:01:59.68 ID:nzXq0fPTo
>>583採用:3
隣で食事をしている変 女の事で少し気になっていることがあった
剣「お前、教室此処だったのか?」
鈴鹿「え?私の教室は2-Dよ?」
剣「…そう、ボクもお前は一学年弥生より上だと認識していた。だったらどうしてお前のカバンがそこにあるんだ?」
鈴鹿の足元には学校指定のいつも持ち歩いている鞄
この女の食事は弁当ではなく、購買で買ってきたと思われるサンドイッチだった
わざわざ自分のカバンをここに持ち運んでくる理由が気になっていたのだ
明日香「ああ~なんかね、鈴鹿どこ行っても自分のカバンは持ち歩いてるんだよ。癖じゃない?」
剣「…中身は何が入っている?」
鈴鹿「普通に勉強道具と化粧道具、あとお裁縫の道具だけよ」
剣「ふ~ん…」
それ以上追及することなく会話を交えながら食事をつづけた
しかし、鈴鹿がそっと自分のカバンを自分の足元に寄せて、ボクから遠ざけたことを見逃しては居なかった
どうやらあの鞄の中身は、あの女にとってよっぽど大事なものらしい
585: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:06:41.31 ID:nzXq0fPTo
放課後
全ての授業が終わり、放課後の時間となった
風邪気味だと語っていた千紗は友人に軽く挨拶を交わしながら、足早に教室を出て行った
誰かと話をしていないと落ち着かないと語っていたあの女にしては珍しい様子が、少し気になっていた
さて……
1、千紗の後を追いかける
2、旧音楽室に向かう
3、服飾研究部に向かう
4、シンシアと勉強をする
5、陸上部に顔を出す
6、図書館に向かう
7、柘榴花あやの『呪い』が関係していると思われる事を調べる
安価↓1
587: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:15:55.54 ID:nzXq0fPTo
>>586採用:3
服飾研究部の部室を訪ねる
鈴鹿「あ、いらっしゃい。ごめんなさいね、ちょっと今手が離せないの」
鈴鹿はミシンを扱っているようで、此方にチラリと視線を向けただけですぐに作業を再開していた
何だか初めて服飾研究部らしい姿を見た気がする
今まではただのコスプレ同好会だったからな
……いや、あれもコスプレ衣装だったらコスプレ同好会の延長線なだけだな
やはりというか、予想したように鈴鹿は自分のカバンを足元に隠すように置いてある
……今ならあの鞄の中身を見ることができるかもしれない
しかし、確実に強い反発を見せるはずだ
さて………
1、作業を見学する
2、服と化粧について話す
3、鞄の中身を探る
安価↓1
589: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:29:52.73 ID:nzXq0fPTo
>>588採用:2
適当に椅子を持ってきて、女の隣に座る
こうして間近でミシンを使って何かを作っているのを見るのは、家庭科の授業以来だ
剣「…今更だが、お前は服が好きなのか?」
鈴鹿「そうね。だって無くてはならないモノでしょう?服を着ないと外を歩けないじゃない」
剣「ふふっ、そういう理由か?」
鈴鹿「あらあら、私に笑ってくれるなんて珍しい」
剣「お前がおかしな返答をするからだ。好きな理由を話せばいいだろう?それとも、外を歩けるから好きとでもいうのか?」
鈴鹿「…ふふふ、そうね。多分私は着飾るのが好きなんじゃないかしら」
鈴鹿「素敵なかわいい服と、お洒落に化粧をして外を歩く。綺麗な自分を見てもらう」
鈴鹿「それが女の子だけに許された幸せだと思うのよ」
剣「……成程な」
作業に集中しながらもボクの質問に真面目に答えた
集中をしていて気がそれていたのか、普段の鉄壁の外面ではなく、ほんの少し柔らかい内面に触れられたような気がした
590: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:35:30.68 ID:nzXq0fPTo
情報が追加されました
名前:近衛 鈴鹿(コノエ スズカ)
年齢:16
性別:女性
【外面】
友達想いで照れ屋。人懐っこく優しい
【内面】
真性のレズビアン?
着飾ることを好み、それを見てもらう事が幸せだと語る
まだまだ何かを隠しているような気がする…
591: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:39:00.45 ID:nzXq0fPTo
夜
夕食も食べ終え、卯月とテレビを眺めている
卯月はうつらうつらとしており、そろそろ寝かしてやったほうがよさそうだ
少し早いような気もしたが、居間で寝られると困るため布団に誘導してやった
母はまだ帰ってきていない
これからどうするか……
1、夜の街を歩く
2、誰かと連絡を取る
3、自由安価
安価↓1
593: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:44:43.97 ID:nzXq0fPTo
>>592採用:2
誰に連絡を取ろうか……
1、鹿島弥生
2、柘榴花あや
3、シンシア・パーシヴァル
4、近衛鈴鹿
5、日比乃明日香
6、山田千紗
7、庄内葉月
8、浅賀孝介
9、浅賀花月
安価↓1
595: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 22:56:34.42 ID:nzXq0fPTo
>>594採用:1
……こんな時間に電話をしても平気だろうか?
不安になりながらも、鹿島弥生に電話をかけた
弥生『もしもし?どうしたの?』
剣「いや…今平気か?」
弥生『何か大事な用事?電話なんて初めてだよね?』
剣「ただ声を聴きたくなっただけだ。…迷惑じゃないか?」
弥生『…ううん、平気。じゃあちょっと話そうか』
弥生の返答にホッとする
我ながらこんな事をするなんて珍しい
何か用事があるわけでもなく、話しておかなければならないことがあったわけではない
ただ、彼女が恋しくなったのだ
今日の昼にあったばかりだというのにな
ボクは彼女と話をする
1、恋について
2、世間話
3、勉強の話
4、近衛鈴鹿について
安価↓1
597: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 23:08:58.26 ID:nzXq0fPTo
>>596採用:4
学校の話をしていて、ふと気になったことを訊ねた
剣「あの変 女の事なんだが」
弥生『鈴鹿がどうしたの?』
剣「どうやって知り合ったんだ?アイツとも幼馴染か?」
弥生『ううん、幼馴染じゃあないよ。出会ったのは…中学かな』
弥生『…どうやって友達になったんだっけ…鈴鹿の方から話しかけてくれたと思う。服飾研究部に誘われたけど断ったんだよね。それが始まりかな』
剣「そこからよく友達になれたモノだ」
弥生『無理やり連れてかれたりしたけど、よく遊ぶようになってね。ちょっとずつ仲良くなれた感じかな』
弥生『……そう言えば鈴鹿何処に住んでるのか知らないなぁ。一度も遊びに行ったことない』
剣「…アイツ、そういう個人情報のガードが堅いな」
弥生『まあ、緩いよりは全然いいと思うな。最近怖いこと多いし…』
剣「それもそうだ。弥生はちょっと危なっかしいからな」
弥生『む。私だって知らない人に話しかけられたら逃げる位するからね』
剣「ふふっ、それはそれでどうなんだ」
そんな事を長い間話し合った
598: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 23:12:55.86 ID:nzXq0fPTo
深夜
※強制イベント
随分と長い間鹿島弥生と話をしてしまった
日付も変わり、夜も深まったころ
遠くの方で何かの声がした
明らかに普通ではない感覚
何かが壊れるような音と、甲高い猫の悲鳴
頭のおかしい輩が暴れでもしているんだろうか?
……なにか酷く危険な予感がする
1、気になって外に出る
2、ボクには関係ない事だろう
安価↓1
600: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 23:31:03.54 ID:nzXq0fPTo
>>599採用:1
ボクとは無関係な事なのだろう
そう分かっていても、ボクは確かめずにいられなかった
適当に上着を羽織って外に飛び出す
外では小雨が降っていた
物音が聞こえた方向に駆ける
アテがあるわけではない
勘を頼りにボクはそれを探し回った
コンマ判定
7以上で成功
運動素質 +3
直下コンマ
602: ◆7m3grp2dM2 2016/12/02(金) 23:47:47.63 ID:nzXq0fPTo
コンマ判定:7+3 成功
………見つけた
街灯の光さえ届かない入り組んだ路地の奥
そこに、ボクが探していた者の正体が居た
………しかし、もう遅かったのかもしれない
荒い息を吐く銀髪の少女
泥にまみれた汚らしい格好で、雨の冷たさから身を守るようにその体を縮めている
その少女が体を放りだしているのはゴミの山の上
その手の中にはピクリとも動かない猫を抱いていた
少女の足元では、血を流す大型犬が少女の足の傷を舐めていた
明らかに普通ではないその光景
まるで、何かから逃げてきたかのようなその惨状
ボクが関わってしまってもいいのだろうか…
1、少女に声をかける
2、何も見なかったことにする
安価↓1
604: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 00:18:26.77 ID:KZo+nmIIo
>>603採用:1
きっとボクの及び知らぬ『異常』が関わっているのだろう
ボクに解決できる問題とも思えない
……だが、見なかったことには出来ない
剣「おい」
ボクは少女に声をかけた
声に反応し、少女は首をもたげてぶれる視線を寄越した
大型犬は体を震わせながらも少女を庇うように前に出て、ボクに敵意を露わにしている
少女「…だれ…ですか?」
剣「妙な音を聞いた気がして、ここにたどり着いた。怪我をしているな、何があった?」
少女「なんでも…ありませんから。早く…立ち去った方がいいです……」
少女「お願い…します……関わらないでください…」
剣「…そう言われてもだな。救急車は呼ばない方がいいか?水とか包帯は必要ないのか?」
少女「………………」
少女はぐったりとした様子で何も言わなくなってしまった
寝ているのか死んでいるのか判断がつかないが、犬がいる所為で近寄るのが難しそうだ
ボクは一度その場を引き返し、コンビニで水と缶詰を買ってきて少女たちが居る傍に置いておいた
せめてこれくらいはしておかないと、気が休まらない
ただの自己満足ではあったが、見て見ぬふりをするよりずっといい
そう自分に言い聞かせ帰ったのだった
※???ルートの消滅を回避
605: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 00:22:08.96 ID:KZo+nmIIo
十二日目・朝
いつも通りの目覚めを迎えた
あれから昨日の夜に出会った少女の事が気になっていたが、少なくとも少女が路地裏のゴミの上で死んでいたというニュースは入ってきていない
生きてはいるのだと思う
ほんの少しだけ安心し、いつもの気持ちに切り替えるのだった
1、早くに家を出る
2、普通に家を出る
3、寄り道をして学校に行く
安価↓1
607: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 00:37:57.91 ID:KZo+nmIIo
>>606採用:1、早くに家を出る
と、言う所で今日の更新はここまでです
ついに登場しました隠しヒロイン
出現条件は『山田千紗から逃げ惑う美少女の噂を聞く』でした
夜の町に出歩けば高確率で遭遇しましたが、一度も出歩かなかったので割と唐突な出会いになってしまいました
彼女のルートはルート固定の前段階で色々フラグたてとかないといけなかったのですが、全部取れてないですね
まあ、出番に恵まれなかった隠しヒロインなんてこんなものなのです
ではでは、お付き合いいただきありがとうございました
608: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 21:34:23.43 ID:KZo+nmIIo
そろそろ再開です
609: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 21:39:30.95 ID:KZo+nmIIo
今日は早くに学校に着いた
昨日の深夜から降り続く雨がしとしとと空気を重たくしている
いつもより一段と人の少ない校内を歩く
1、何かのいい匂いがする…
2、教室に一人の人影
安価↓1
611: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 21:52:57.77 ID:KZo+nmIIo
>>610採用:2
適当に校内を歩いて、自分の教室に戻って来た
そこには不自然な人影が一つ
ボクの席の隣の席で、柘榴花あやが虚空に向かって話しかけている
こういう行動をしているから、ボクに頭のおかしい奴だと思われるんだ
あや「そ、それでね……」
剣「おい」
あや「あひぃっ!?と、とと戸倉君?ど、どうしたの?」
剣「それはボクの台詞だ。一体誰に喋りかけている?呪いとお喋りができるのか?」
あや「え、えとえと……も、妄想してました」
剣「こんな朝早くから無人の教室で好きな人の机相手に妄想会話か。呆れたな、そんな奴初めて見たぞ」
あや「ご、ごめんなさいごめんなさい!気持ち悪いよね!本当にごめんね!!」
目尻に涙を蓄えブンブンと頭を振って謝罪の言葉を繰り返す
気持ちいいくらいにボクの望んだ反応を見せてくれるな
苛めがいがあるのはいい事だ
いや、気持ち悪いとも思うが
612: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 22:02:57.25 ID:KZo+nmIIo
あや「で、でも…これくらいじゃないと、自分の気持ちを表面に出しちゃいけないから…」
剣「……」
好きなモノに『好き』と言ってはいけない『呪い』
好きなモノを想うだけで、それに不幸が降りかかってしまう『呪い』
好きなものを好きだと言えないというのは、どういう辛さなのだろう?
この女が今まで抱えてきた悲しみは、どれほどのモノなのだろう?
いつも、何時もこの女は『私なんかが』と謝罪の気持ちを口にする
それは恐らく、『自分が好きになったせいで壊れてしまったものがたくさんあるから』だろう
この女が引き金ではあるが、この女の所為ではない筈だ
そう思えば、この女へ慈悲の気持ちが芽生えるが…
剣「だが、それは止めろ。気持ち悪い」
あや「は、はい……」
剣「…妄想で話すより、現実で話す方がいいだろ?」
あや「と、戸倉君!!」
剣「やれやれ……」
目を輝かせて一層どもり始める女の話に付き合ってやることにした
1、妄想の話
2、過去の話
3、『呪い』の話
安価↓1
614: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 22:33:28.86 ID:KZo+nmIIo
>>613採用:2
剣「お前のその『呪い』は一体何時からなんだ?」
あや「えと…多分だけど、小学校2年生の頃からだったと思う」
あや「お父さんとお母さんが死んじゃったのが、その時だから」
剣「……そうか、そんな昔からか」
あや「中学に上がるまではお婆ちゃんがお世話してくれて、今は一人で暮らしてる」
あや「お父さんもお母さんも、ウサギさんも、お婆ちゃんまで…私の呪いで死んじゃった」
あや「…いい加減、何かを好きになる事…諦めないと駄目だよね」
俯いて話していた顔が、一層暗くなる
十年近く、この女はそんな厄介な『呪い』と付き合って生きてきたのだという
『何かを好きになることを諦めるないと』とは、なんと悲しい言葉なのだろう
もしボクがこの女だったら何度鹿島弥生を殺している事だろう
…それほどまでに、好きという言葉と感情は制御の利かないモノだ
そんな『異常』に悩む女に、なんとフォローしてやればいいのか分からず、ボクは話を聞き続けた
615: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 22:37:42.99 ID:KZo+nmIIo
昼休み
生徒たちは騒がしく思い思いに活動を始めている
昨日、風邪気味だと言っていた千紗は普段と変わらず快活に笑っていた
どうやら体調は良くなったらしい
さて、どこで昼食を食べようか……
1、教室
2、食堂
3、屋上階段
4、お誘いが来る
安価↓1
617: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 22:50:51.23 ID:KZo+nmIIo
>>616採用:3
鹿島弥生がいつも一人で昼食を食べるという屋上階段へとやって来た
弥生「ん、剣君。いらっしゃい」
剣「隣、座るぞ」
弥生「どうぞどうぞ」
彼女の隣に座り、お弁当の包みを開いた
今日の彼女はというと、お弁当を持参していた
剣「その弁当、手作りか?」
弥生「うん!明日香が作ってくれたんだ!」
剣「………そうか」
ボクがお弁当を作って来た時よりもうれしそうな声だが、きっと気のせいだろう
おのれ明日香、ボクに対抗するつもりか
剣「また、ボクも作ってやる」
弥生「本当に?あ、でもその前に私のお礼が先だよね」
弥生と話ながら食事をする
1、特別と普通の話
2、家族の話
3、告白の話
安価↓1
619: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 23:16:04.05 ID:KZo+nmIIo
>>618採用:1
弥生「剣君はさ、普通の友達は居ないの?」
剣「普通の友達とは何だ?」
弥生「ああえっと…私以外の友達、誰か居ないの?」
剣「居ないな」
弥生「そ、そうなんだ…」
剣「突然どうした?」
弥生「いや、えっと…私は友達全然作ろうとしてないし、コミュ症だし、居なくて当然だけど」
弥生「剣君は頼りになるし、私みたいに地味で目立たないわけでもない。だから、こうして良く私と居ることが不思議だなって」
剣「簡単な事だ。ボクにとっての一人の友達は特別な存在なだけ。普通の友達なんて居ない」
弥生「そ、そっか…」
剣「弥生にとってはどうだ?ボクは特別か?それとも、普通の友達か?」
弥生「………ちょっと、分からない。男の友達なんて一人しかいないから、そういう意味では特別かも」
色んなことをして、ともに色んな事を話してきたが、どうやらまだ彼女の中でボクは特別ではないらしい
何をすることが彼女の特別につながるんだろう?
今までとは少し別の角度から、彼女の事を知るべきなのかもしれない……
620: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 23:19:43.59 ID:KZo+nmIIo
放課後
今日一日の半分が終わり、雨も上がった
さて、これからどうするか……
1、シンシアと勉強をする
2、図書館に向かう
3、昨夜、銀髪の少女が倒れていた場所に行ってみる
4、陸上部に顔を出す
5、すぐに帰ることにする
6、自由安価
安価↓1
622: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 23:35:47.75 ID:KZo+nmIIo
>>621採用:1
『勉強をするから付き合え』と連絡を入れると、程なくして『教室で待っています』と返事が返って来た
さすがに電子上の文面ではアイツもお嬢様言葉ではないらしい
そういうわけで、一学年上のシンシアの教室、中等部3-Bに来ていた
シンシアの机を使い、ボクの隣でシンシアが椅子に座っているという構図だ
何故かシンシアは眼鏡をかけていた
剣「お前、目も悪くなったのか?」
シンシア「まるで元から何処かが悪いと言いたげですわね!!」
剣「性格と性根」
シンシア「そっくりそのままお返しいたしますわ!!ゴホン…眼鏡をかけていると、教えている側の雰囲気が出来るでしょう?私が上であるという雰囲気づくりの為ですわ」
剣「…お前、形から入るタイプなんだな」
シンシア「いいから始めますわよ。何から始めます?」
剣「では数学からだ」
そうして、シンシアに付きっきりで勉強を教えてもらう
623: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 23:48:15.68 ID:KZo+nmIIo
……始まったのだが
シンシア「…あ、貴方…九九くらいは出来ますわよね?」
剣「バカにするな、それくらいできて当然だ」
シンシア「…7×8=?」
剣「56」
シンシア「…う~ん…どうしてそう答えられるのに、ここでは間違っていますの?」
剣「んん?ああ、本当だ…おかしいな」
シンシア「……貴方、理解力はそれなりにはあるようですけど、ニアミスが多過ぎですわ」
剣「あ、待て分かったぞ。ここ8と書いてるのではなく6と書いている。つまり、合っている」
シンシア「よく分かりました。貴方はまず字のお勉強からですわね。本人すら読み間違えるなんて丸つけすら困難ですわ」
剣「今更そんな勉強か……」
シンシア「文句を言いいませんの。私のお手本通りに真似て字を書いていってくださいね」
剣「むむむ……」
勉強の進捗は中々に困難を極めていた
624: ◆7m3grp2dM2 2016/12/03(土) 23:59:17.99 ID:KZo+nmIIo
剣「あー止めだ止めだ!!」
鉛筆を放り投げてぐったりと椅子の腰掛に背中を預けて仰け反る
目標の半分くらいまでは進んだが、これ以上続けるのは非常に苦痛を伴うと判断した
剣「思うに、ボクのこれからの人生に数学なんて必要ないだろう」
シンシア「テストでいい点を取るためのお勉強なんですから、関係大ありですわ」
剣「むぅ…ボクは数学関係の仕事につかないと約束してやろう。だからテストを免除してくれないか?」
シンシア「貴方の都合なんて知ったことではありませんわ。もう……ちょっと休憩を挟みますわね」
ボクはその一言を聞いて安心して大きく伸びをした
そうやってボクがうだうだとしている間も、この女は参考書を開いてボクの勉強計画を考えている
まさか、ここまで真剣にやってくれるとは思っても居なかった
我ながら相当ダメな生徒だと思うが、投げ出さずに良く教えてくれていると思う
剣「…お前…」
1、『勉強好きなのか?』
2、『誰かにモノを教えるのが好きなのか?』
3、『ボクが好きなのか?』
安価↓1
626: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:13:06.67 ID:VoPOMTAHo
>>625採用:2
剣「誰かにモノを教えるのが好きなのか?」
シンシア「いえ別に、面倒くさいと思いますわ。わざわざ人の教養のために時間を割くなどと、バカらしい」
剣「…そう見えんがな」
シンシア「………きっと、貴方だからですわ」
シンシア「貴方にまた『惨めな女』と詰られない為にも、手は抜けませんわ」
真剣な顔つきで参考書の無いようにメモを張り付けながら、そう答えた
ボクが普段から呼ぶ『惨めな女』という呼称を、相当気にしているらしい
まあ、一番嫌がりそうな呼び方だと思っているからそう呼んでるんだしな
剣「…お前にとって、ボクはよっぽど特別なんだな」
シンシア「はぁ!?思いあがらないで下さいまし!だ、誰が貴方の事なんか!!」
剣「ボクはそこいらに蔓延る有象無象とは一線を画す存在だしな。意識されて当然か」
シンシア「……そんな驕り高ぶった発言は、一次方程式を完璧に解いてからにして下さいまし。再開しますわよ」
剣「よし来い。下校時間までに終わらせるぞ」
ボク達は勉強を再開した
627: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:19:28.98 ID:VoPOMTAHo
夜
※強制イベント
結局あれから下校時間いっぱいまで勉強は続いた
まだ完璧とは程遠いが、一通りは頭に入ったように思う
先生の授業よりもよっぽど身に着いたような気がする
ボク自身も、アイツに馬鹿にされるのが気に食わないから本気で理解しようとしたからだろう
やはり授業中に寝るのは良くないな
などと当然の事を想いながら、ある場所に向かっていた
向かった先はある公園
大事な話があると柘榴花あやに呼び出された場所だった
628: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:27:56.99 ID:VoPOMTAHo
その公園のブランコに、あやは居た
剣「待たせたか?」
あや「あ、ううん!全然大丈夫だよ!き、来てくれてありがとうね」
取り敢えず、ボクも彼女の隣に座った
こうしてブランコに座るのなんて何時振りだろうか?
剣「で、話とは何だ?」
あや「あ、うん………」
長い沈黙の後、あやは語りだす
あや「……あのね、私…の気持ち。戸倉君は…もう気づいてる…よね?」
剣「ああ」
あや「だ、だだよね。……私の『呪い』このままだと、戸倉君にもっと迷惑かけちゃう」
あや「だから、その前に…諦めたいと思ってるの」
いつになく真剣な目で、真っ直ぐにボクを見る
人の顔色を窺うような媚も、控えめな躊躇いも見えない、決意のこもった眼だった
629: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:36:55.00 ID:VoPOMTAHo
あや「私は、もう人を好きになったりしない」
あや「その為にも、告白したいと思ってるの」
あや「…………私を、思いっきり振ってくれませんか?」
剣「……それが、ボクに話したかった事か?」
あや「う、うん。引き受けて…貰える?」
剣「いいぞ」
ボクは快諾した
いつかはこの女にとって決着をつけないといけない事なのだ
とても辛い決断だっただろう
しかし、それしか『呪い』を終わらせる方法がないというのなら…付き合ってやるべきだろう
あや「あ、ありがとう!えへへ…変なお願い、引き受けてくれてありがとうね」
あやは何度か深呼吸をし、告白の準備を始めていた
630: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:42:42.45 ID:VoPOMTAHo
深呼吸を終えて、漸く告白しようとしたとき何かを思いついたような顔をする
あや「……その前にさ、戸倉君には好きな人っているの?」
剣「は?」
あや「あ、えと…居るならでいいんだよ?き、き聞いておいた方が心のけじめがつけられる気がして」
剣「………」
ボクの好きな人…か
今思えば、初恋を経験して2週間ほど
色々な人と新たな交流を始めた
気にも留めていなかった奴隷同然だった他人の心を知り、ボクの中にも確かな変化が生まれてきていた
あや「気になってる人とか…」
気になっている人
そのフレーズで真っ先に思い浮かんだ人物は…………
631: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 00:53:27.46 ID:VoPOMTAHo
というわけで、ルート固定選択肢でございます
今から本日の20:00までを投票受付時間といたします
一人一票まででお願いいたします
最多得票のキャラのルートに今後固定されます
選択肢に居ないキャラは、残念ですがフラグが足りずにルートへ行けないキャラです
では、投票開始です
次回更新をお待ちください
1、鹿島弥生
2、柘榴花あや
3、シンシア・パーシヴァル
4、近衛鈴鹿
5、日比乃明日香
6、山田千紗
7、銀髪の女
8、戸倉卯月
9、戸倉美紗綾
安価↓から20:00まで
653: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 20:22:57.02 ID:VoPOMTAHo
ではでは、投票終了でございます
結果発表です
鹿島弥生 11票
柘榴花あや 1票
シンシア 1票
近衛鈴鹿 7票
日比乃明日香1票
計21票
と、いうわけで鹿島弥生ルートに決定となりました
予想を遥かに超える投票数、本当にありがとうございました!!
鹿島さん以外は割とばらけるだろうなと思っていたのですが、蓋を開けてみれば鈴鹿と一騎打ちでしたね
ここまで鈴鹿が人気だったのは本気で予想外でした
では、もう暫くしてから更新再開です
少々お待ちください
654: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 21:24:58.70 ID:VoPOMTAHo
剣「…鹿島弥生だ」
彼女の名前が自然と思い浮かんだ
ボクにとっての初恋の人で、未だにその気持ちに変わりはない
あや「…そっか。うん、そんな気がしてたよ」
あやはそれ以上は何も言わなかった
今から恋を諦めようとする女の前で、諦めきれない恋の話をするのは、流石にキツ過ぎる
あや「…じゃあ言うね」
深く深く息を吐き、強く目をつぶって頭を下げた
あや「ずっとずっと、キミの事を想っていました。私と、付き合ってください!!」
剣「悪いがその気持ちに答えられない。ボクにも、想い人が居るんでな」
あや「に、二番目でもいいの」
剣「そういう問題か?」
返答の決まりきった茶番と思っていたが、何故かあやは食い下がって来た
やはり、そう簡単に割り切れるものでもないのだろう
655: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 21:37:44.74 ID:VoPOMTAHo
ここは、心を鬼にして強く突き放してやるべきか
剣「……もう二度と顔を見せるな。会うと辛くなるだけだ」
あや「と、戸倉君…」
剣「ボクはお前の事なんて知らない。『呪い』何て言うのもボクの知らない事だ」
剣「ずっと、ボクに付きまとう鬱陶しい女だと思っていた」
剣「ボクは、お前が嫌いだ」
声もあげず柘榴花あやは大粒の涙を流し続けた
その姿に、酷く胸が痛んだ
だが、優しい言葉はもっとこの女を苦しめるだけだ
ボクにとっても決別すべき事なんだ
そう自分に言い聞かせ、痛いほどに拳を握る
そのまま背を向けて、ボクは公園を去った
あや「…ありがとう……」
ボクの背中にかけられた言葉に振り返りそうになる気持ちを抑え込み、ボクは振り切るように走った
ああ…これも恋なんだな
誰かを想う幸せだけが恋ではないんだ
自らの切なる想いが行き場を無くして消えてしまうのも、恋の一つの終わり方なんだ
ボクも一歩間違えば、あの場で涙を流す立場になるのかもしれないんだな
……それでもボクは、諦められないだろう
自らの決意を更に硬いものとし、ボクはただ前を見て走った
656: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 21:51:29.43 ID:VoPOMTAHo
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あら、お弁当の準備?明日ピクニックでも行くの?」
「ううん、違うけど。いつかお弁当を食べてもらうから、その練習」
その夜、私は――鹿島弥生は料理の練習をしていた
剣君との約束を果たすためだ
あんなに美味しいものを貰ったんだ、私だって頑張らなきゃ
今日の明日香のお弁当だって、明日香にお手本を作ってもらったんだ
……自分で楽しみ過ぎて、あんまり勉強にはならなかったけど
「あ、もしかして言ってた男友達?弥生もやっと色を知るお年頃になったのね」
お母さんはにやにやと私を囃し立てる
どうしてこう、このお年頃の女性はそういう話が大好きなんだろう
「ち、違うって剣君はただの友達なんだから。ただの……」
そう自分で弁明して、違和感に動きが止まる
ただの友達に、普通こうしてお弁当を作ってあげたりするんだろうか?
「ま、頑張りなさいな」
オホホとお母さんは楽しそうに居間に戻っていった
657: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 22:07:52.33 ID:VoPOMTAHo
母がいなくなったキッチンで、私一人立っている
何してるんだろう私
こんなに張り切って本まで買って、お弁当箱まで買って、エプロンまで用意してる
私、こんな事する子じゃなかったよね
…明日香にだって、お弁当なんて作ってあげた事ないじゃない
私…もしかして剣君の事が――――
瞬間、痛みが奔る
胸が痛む
頭が痛む
心が痛む
体が締め付けられるような切ない痛みが私を襲う
これは心の痛みだ
それは違うと否定する、心の叫びだ
だっておかしいじゃないか
私は明日香が好きなんだ
明日香とは昔からずっと一緒で
明日香から私は全てを貰って来た
私の幸せは全部、明日香から貰ったものだ
誰よりも長く明日香と一緒に居た
私の中で一番大切な人
658: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 22:26:54.99 ID:VoPOMTAHo
男の子になんて興味なかった
怖くて、五月蠅くて、強引で、乱暴で
良いところなんて一つも無い
他人になんて興味なかった
平気で嘘をついて、人を傷つけて笑って、人の痛みに鈍感で
誰もが皆、自分の事ばかりだ
明日香は違う
優しくて、温和で、嘘をついて人を騙したりなんかしない
人の痛みを理解してくれて、誰かのために手を差し伸べてくれる人だ
剣君は
男の子だし、怖いところもあって、強引だ
だけど……強い痛みを抱えてて、それを悟られないように強がっている
強引だけど優しくて、男の子なのになんだか可愛いところがある
口調も怖いけど、その裏には私への気遣いが感じられる
ジクジクと何かが内から滲んでいる
何かが分からない気持ち悪さが、私の心を今までにないモノへと変えようとしていた
嫌だ嫌だ嫌だ
私は明日香が好きなんだ
あれだけの時間一緒に居て、ずっと想ってきたじゃないか
だから、明日香が一番好きであるべきなんだ
私は胸の痛みに吐き気を堪えながら、エプロンを脱いで道具を片付け始めていた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
659: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 22:41:44.43 ID:VoPOMTAHo
十三日・朝
一週間ぶりの休みの日
生活習慣の癖が抜けず、いつものように朝早く起きる
朝ごはんを用意し、寝ぼけた目で朝のニュースを眺める
どれもこれも興味の無い芸能情報ばかり
しかし、一つ興味の湧くモノもあった
剣「恋人の日…」
今日、6月12日
ヨーロッパでは恋人の日とも言うらしい
六月の花嫁なんて言葉もある通り、6月はそういう話題に事欠かない
テレビではウエディングドレスや、式場の宣伝なんかをしていた
今まで全く興味の無かったことだが、もし彼女と…なんてことを考えてしまう
何時の間にやら、すっかりボクの心は彼女に染められてしまっている
ボクはウエディングドレス姿の鹿島弥生を想像し、ニヤニヤとしながらこれからの予定を考えた…
1、適当に外を散歩する
2、家事を手伝う
3、誰かに連絡を取る
安価↓
661: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 22:50:14.12 ID:VoPOMTAHo
>>660採用:1
特に予定も決めてなかったので、特に予定も無く外に出た
外はまさに青天で、気持ちのいい涼風が拭いていた
偶には散歩をするのもいいだろうと、ボクは当てもなく歩いた
イベント判定
5以上で誰かと会う
直下コンマ
663: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 23:02:57.81 ID:VoPOMTAHo
コンマ判定:6
かれこれ一時間近く歩いていた
随分と遠いところまで来てしまったような気がする
一体ここはどの辺りなんだろうか?
河川敷としか分からないな
微妙に迷子になりかけていた時…
明日香「アレ?剣君?」
剣「ん、お前か」
赤いジャージ姿の日比乃明日香
恐らくジョギングでもしていたのだろう、となればこの女が住む辺りまで歩いて来てしまったのだろうか?
明日香「散歩かい?家ここら辺りなの?」
剣「いや――の方だ」
明日香「えっ!?もしかしてそこから歩いてきたの!?電車でも20分はかかるんじゃないかな……」
剣「随分と遠いところまで来てしまったな」
此処であったのも何かの縁と、明日香と話をすることにした
664: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 23:12:05.02 ID:VoPOMTAHo
明日香「そういえば、最近よく弥生から剣君の話ばかり聞くよ」
剣「ほう?どんな事を言ってるんだ?」
明日香「う~ん…色々あるけど、お礼がしたいって張り切ってた。料理の勉強かなり頑張ってるみたい」
剣「そうなのか」
こうして他人から弥生の様子を聞くというのは中々新鮮な気持ちだった
あまり知りえない情報だからだ
明日香「それにしても弥生がねぇ…昔からだと考えられないな」
剣「昔…か」
一度、弥生から弥生の過去を聞いたことがあった
それら全て明日香との思い出だった
逆に明日香から見た弥生とはどういった存在なのだろう?
明日香から見た弥生の姿はどう映っているのだろう?
気になって訊ねてみた
665: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 23:36:15.46 ID:VoPOMTAHo
明日香「昔、ね。あはは…あんまり今と変わらないけど、弥生は泣き虫なんだ。こういうと怒られるけどね」
明日香「幼稚園児くらいの年の子供でさ、誰かが怪我をしていると、それを見ただけで泣いちゃう子居なかったかな?」
剣「…思い出せないな」
明日香「そっか…えっとね、血とかを見ると『痛いだろうな』って思うよね?幼い子供っていうのはすっごく心が敏感で、その想像で泣いちゃうことがあるんだ」
明日香「人の痛みに共感して涙を流す。弥生は今でもそんな、剥き身の肌のような感性を持っているんだ」
弥生のあの純情さを明日香はそう表現していた
とても危ういという意味を含んだそれは、ボクでは見えていなかった見え方だった
明日香「君とはすぐに仲良くなれてるけど、それって凄い事なんだ」
明日香「あの子は…人の心に殊更敏感だ」
明日香「嘘をつけば直ぐに見透かされる。下心があれば決して目を合わせない。人に触れられるなんて絶対に許さない」
明日香「あの子は…今でも心は子供のままなんだと思う。でも、体と頭だけは大人になってしまった」
明日香「周りの環境もガラリと変わってきて、弥生はその中で取り残されている」
明日香「だからかな、ちょっとボクに頼りっきりなところがある」
666: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 23:49:44.85 ID:VoPOMTAHo
明日香「だからね、君は弥生にとって…とっっても特別だ」
明日香「男の人とあんなに打ち解けて話してるのなんて、初めて見た。弥生ってお父さんともお話できない位なんだよ?」
明日香「臆病で怖がりで、ちょっと思い込みが激しいところもあって、妙な所で頑固だ」
明日香「そんなあの子が、キミに触れようとしている」
明日香「恐る恐るだけど、確かに君に手を伸ばしている」
明日香「だから、優しくしてあげてね。ってちょっと話がずれちゃったかな」
そう締めくくり、明日香は照れたように笑った
剣「お前は…なんだか弥生の保護者みたいだな」
明日香「あはは!よく言われる。だってあの子、一人だと危なっかしいんだもん。ボクがついてあげないと転んで泣いちゃうよ」
剣「つまり、これからボクが転ばないように手を引いてあげればいいんだろ?」
明日香「強く引っ張ると怖がっちゃうからね。あの子を泣かすと、許さないから」
冗談半分でそんな事を言い合った
本当に偶然の出会いだったが、とても重要な話が聞けた有意義な時間だった
667: ◆7m3grp2dM2 2016/12/04(日) 23:57:43.93 ID:VoPOMTAHo
昼
明日香に付き合って一緒にジョギングをした
久しぶりの走り込みで少々疲れたが、懐かしい気分に浸れた
まあ、また陸上部になる気はないが
ただ運動をするというのは悪くない
勉強をするよりはよっぽど自分に向いているだろう
もう少し明日香に付き合ってもいいが……
1、明日香の練習に付き合う
2、別れて家に帰る
3、別れて静かな場所へと向かう
安価↓
669: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 00:10:27.06 ID:oeUPrglto
>>668採用:3
明日香と別れることにした
あまり人が居ない静かな場所を求めて歩いた
辿り着いたのはとある公園
そこにある遊具はベンチと砂場とブランコだけ
小さくて寂しい場所だった
通りがけに大きな公園も見つけており、そこにはたくさんの子供がいた
人目につかないこの小さな公園は、色んな人から忘れられた場所なのだろう
ボクはベンチに座り、ふとあるモノを思い出した
読みかけの本だ
鹿島弥生から勧められた本
まだ初めの方だけで、全然読んでいない
さて……
1、本の続きを読む
2、思いっきりブランコをこいで遊ぶ
3、誰か人が居るような……
安価↓
672: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 00:20:15.99 ID:oeUPrglto
>>670採用:1
…彼女を知るためにも、読んだ方がいいような気がするな
ボクは一応持ってきておいた本を読み始めた
本を読むのは苦手なんだがな…
そう思いながらも読み始めると、徐々に登場人物の事が分かり始め、読みやすくなったような感覚に陥る
ボクは初めて読んだときの眠気をすっかり忘れ、熱中して読み進めた
………
…………
……………
………………
剣「……ふぅ…終わった……」
いつの間にかすっかりと空が赤く染まり、夕方になっていた
一気に読み終えた疲れもあったが、これ以上此処に居ると夜までに家が帰れなくなるため帰路に着いた
673: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 00:43:38.47 ID:oeUPrglto
帰りながら、読んだ本の内容の事を思い出す
ザックリと全容を説明するなら
『女でありながら女の子に恋をしてしまった主人公が、その事に悩みながらも、一途な恋を成就させて、その先の幸せを組み上げていく』
そんなお話だ
正に青春というような、爽やかな読了感のある内容だった
同じく片思いをする身として、中々に共感できる部分が多くあった
どこまで踏み込んでいいのか
好きという自分の想いが相手の迷惑になってないか
結ばれたその先に幸せはあるのか
色々な事を考えさせてくれた
最も印象的だったのは、初恋の相手から告白されたシーンだ
恋をされたから、私も恋をしてしまった。と語っていた
真っ直ぐで一途な、初心な想いが報われる瞬間というのは、とても美しいもののように思えた
そのような感情が芽生えたのも、ボクが恋をしたからに他ならないだろう
全く驚きだ、ボクにもこんな純情な感情が残っていたなんて
ボクの恋も彼女たちのように、美しく報われたいものだ
674: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 00:48:22.50 ID:oeUPrglto
夜
何とか夕飯前には間に合い、家族全員で夕食を食べた
ゆっくりだらだらとした時間を過ごす
本を読み終わったことだし、彼女に感想くらい伝えた方がいいかもしれない
それとも明日あって実際に話そうか
さて……
1、妹と過ごす
2、母親と過ごす
3、鹿島弥生に本の感想を贈る
4、鹿島弥生に明日の予定を聞く
安価↓1
676: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 01:00:41.32 ID:oeUPrglto
>>675採用:3
読み終わった本の感想を文章として弥生に送った
随分と時間が経った後
『読んでくれてありがとう。他のも読みたくなった?』
と返って来たので
『おススメがあるなら』
と返した
また暫くして
『明日、一緒に本屋さんに行きませんか?』
と返って来た
ボクは即座に『行く』と返事をし、デートの約束を取り付けたのだった
こうした共通の話題が出来るというのはやはり強みだな
ほんの内容も、中々面白かったしな
それに明日は多分、明日香も鈴鹿も来ないだろう
ボクは明日を楽しみにしながら、ねむりについたのだった
677: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 01:06:36.22 ID:oeUPrglto
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日、私は一歩も外に出なかった
昨日の夜の事を反省していたのだ
何を馬鹿な事を想い悩んでいたのだろうと思う
お礼なのだから好きとか好きじゃないとか関係ないじゃないか、と思い至ったのだ
ぐちぐちと悩んで、私はバカだった
剣君は大切な友達だ
あんなに美味しいお弁当も作ってもらった
お礼をしなきゃ友達じゃない
そう自らを奮起させていた時、誰かから連絡が入った
相手は剣君だった
内容は一週間前、あの古本屋さんで私がお勧めしたあの本だった
あまり本は好きじゃないと言っていたけど、ちゃんと読んでしかも感想まで送ってくれた
剣君は私と違って律儀で誠実でいい人だなぁ、と改めて実感してしまう
お礼を蔑ろにしようとしていた私とは大違いだ
678: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 01:14:28.95 ID:oeUPrglto
『読んでくれたんだね』
と送ろうとして指が止まる
…少し淡白すぎるかな
『私もその本大好きなんだ。特に~~とか――――』
と長々と打ち始めて、気恥ずかしくなって文章を消してしまった
私みたいなオタクじゃないんだから、こんなディープな百合話は退かれる
ど、どどどうするのが普通なのかな?
普通の男友達へのメールの返信何てしたことが無い
いや、そもそも友達とこういうメールを送り合ったことが無い
私と同じくらい百合話が出来る鈴鹿になら、気兼ねなくこういう話もできるけれど
男の子も、あんな女の子の甘酸っぱい恋愛話を読んで楽しいのかな?
自分であの本を薦めておいて、こんな事まで思う始末
大いに悩んだ結果
『読んでくれてありがとう。他のも読みたくなった?』
と、探りを入れるような文章になってしまった
679: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 01:23:42.40 ID:oeUPrglto
『おススメがあるなら』
と剣君からはすぐに返事が返って来た
剣君は毎度毎度メールの返信が早くて、悩んだ末にあの短い文章な事がちょっと申し訳ない気分になる
私は悩みながらも
『明日、一緒に本屋さんに行きませんか?』
と送ってしまった
『もしよかったら』とか相手の予定の事を聞く文字を入れ忘れたことに気付き、激しく悶絶した
何か私厚かましくないかな?無神経じゃないかな?もっと丁寧な文章にするべきだったかな…
と悩む間もなく
『行く』
と即座に返信が帰って来た
悩まずに返信をくれたという事は、喜んでくれている、剣君も乗り気だという事でいいのだろうか?
私はそのことに安堵し、同時にとても嬉しい気分になった
それから、待ち合わせの事などを剣君に連絡した
680: ◆7m3grp2dM2 2016/12/05(月) 01:32:39.21 ID:oeUPrglto
私はそわそわと落ち着きなくベットで寝返りを打っていた
やっぱり趣味の話が出来る友達が増えるのはとても嬉しい事だと思う
明日香は、女の子同士はあんまり好きじゃないみたいだったし
明日の服とかどうしようか?
どんな本をお薦めしようかなぁ
ついでにご飯とかも食べられれば――――
そんな事を考えていた時、ふとなんだか恋する乙女みたいだななんて思ってしまった
メールの返信にあれだけ苦心したり、返ってきた言葉に一喜一憂したり
こうして明日の事を楽しみにしてたり
……というか、明日のこれは…『デート』では?
私、男の子をデートに誘っちゃった?
意識した瞬間、ガーッと体内が熱くなる感覚があった
いやいやいや
私全然そんなつもりなかったし、結果的にデートみたいな構図なだけだし
私は一体誰に言い訳をしているんだろう?
友達を遊びに誘うのはおかしい事じゃない、普通の事じゃないか
でも、剣君はデートと思ってるかもしれない
………どうしよう
私は散々迷った挙句
「あ、もしもし鈴鹿?」
友達の力を借りるのだった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
686: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 21:37:20.28 ID:ZCL4hofoo
十四日目・朝
ボクはいつもより数段早く起き、準備を整えていた
今日こそは鹿島弥生とデートだ
前回はボクの空回りだったが、今日こそは違うだろう
本を見て回るなんてボクには全く縁のない事だと思っていたが、奇妙な縁もあるモノだ
家事仕事は全て終わらしてある
手伝わされて遅れるなんてことをしたくなかったからだ
さて……
1、着ていく服を見繕う
2、デートのイメトレ
3、母にアドバイスをもらう
安価↓1
688: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 21:51:33.98 ID:ZCL4hofoo
>>687採用:3
服の着脱を繰り返し、鏡の前でポーズをとる
……よし、これで行こう
美紗綾「あらあら、今日はとっても気合が入っているわね」
剣「今日はデートだからな」
美紗綾「まあまあまあ!どんな子なの?」
剣「それはもう――写真があったな。えっと…この人だ」
カメラのアルバムから先週遊びに行った時の写真を見せた
今考えてみれば、デートの経験なんてボクには無い
上手くできる自信はあるが、一応女性の意見も聞いておこう
美紗綾「えっ?デートのアドバイス…そうねぇ、ちゃんと話を聞いてあげることかしら」
剣「それは普段からできている気がする」
美紗綾「そう?聞くだけじゃダメよ。相槌もうって、ちゃんとどんなことをして欲しいか察してあげるのよ」
美紗綾「例えば、『結構歩いたね』って相手が言ったら?」
剣「…」
1、『少し疲れたな』と同意する
2、『疲れたか?どこかで休むか?』と聞く
3、『近くの喫茶店に入ろう』と誘う
安価↓1
690: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 22:02:20.91 ID:ZCL4hofoo
>>689採用:3
剣「ボクなら『近くの喫茶店に入ろう』と誘うかな」
美紗綾「うん!いいわね、合格!」
パチパチと手を叩いて喜んでくれる
何がそんなに嬉しいのだろうか
美紗綾「これで相手の好みに合わせたお店選びが出来たら100点満点!でも意識し過ぎてちょっと遠くまで歩くようじゃ本末転倒だから、臨機応変に」
剣「それくらい大丈夫だ。ボクはそういうのは得意だからな」
美紗綾「うふふ、そうよね。やっぱり男の子なんだし、自分からリードしてあげてね」
美紗綾「…あ、でも相手の子年上よね。あんまり手馴れてる風だとウケが悪いかも……程々に隙を見せてね」
剣「……それは難しい注文だな」
あまり身になった気はしないが母からアドバイスをもらった
気遣い…気を付けておこう
691: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 22:11:48.81 ID:ZCL4hofoo
昼
先週と同じ駅、同じ待ち合わせ場所
今日は先週とは違ってラフな服装だった
ハーフパンツに黒のニーソックス、パーカーといった装い
先週は我ながら気合を入れ過ぎた格好だったからな、これくらいの方が地味目な印象の彼女も馴染みやすいだろう
集合時間の約30分前
少々早いが、こんなものだろう
それから程なくして、今着いたよと彼女から連絡が入った
彼女の姿を探して辺りを見回す
コンマ判定
0-2 ???
3-7 鹿島弥生…と?
8,9 鹿島弥生
直下コンマ
693: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 22:27:13.96 ID:ZCL4hofoo
コンマ判定:9
弥生「お、お待たせ」
照れの混じったか細い声がボクを呼ぶ
ボクは、目を奪われた
いやボクだけじゃない
その場にいるほとんどの人間が目を奪われたことだろう
目線を隠す重たい前髪は綺麗に整えられ、その奥に潜んでいた美しい瞳を覗かせている
長い後ろ髪もシュシュで一つに纏められ、肩口から艶めかしくウェーブを描きながら胸元に流れている
何より目を惹くのはその服装
紺色のサマードレスから覗かせる腕と足の肌色が非常に眩しい
鹿島弥生の穢れを知らない白い肌が惜しげも無く外界に晒されていた
靴はピンヒールサンダルだったが、少し歩きにくそうだった
先週見た姿とは比べ物にならない位、『気合が入ってる』そんな服装だった
愕然とする
己の要らぬ気遣いと、自らの服の選択に
これでは彼女の隣にいては浮いてしまう
694: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 22:38:28.12 ID:ZCL4hofoo
剣「ボクは…なんて愚かな…」
弥生「ど、どうしたの?やっぱり変かな…色々と慣れないことしてるし…」
そう言われて改めてマジマジと見ると、その顔には薄く化粧が施されていた
慣れないという割にはとても上手だ
……いや、上手過ぎるな
これは普段からしていないと出来ない
やり方を知っていないと出来ない筈だ
つまり――
剣「あの変 女の入れ知恵か」
弥生「うん。全身、鈴鹿に貸してもらった服なんだ。お化粧も…恥ずかしながら鈴鹿に」
弥生「…鈴鹿はこっちの方がいいって言ってたけど、似合う…かな?」
弥生は自信なさげにボクに訊ねてきた
確かに、普段と大きく印象が違う装いだ
尚更ボクも先週のような気合を入れた服装で来るのだったと猛省する
さて、なんと答えるか……
1、『普段の方が好きだな』
2、『あの女、センスだけは一流だな』
3、『とても素敵だ。可愛いよ』
安価↓1
696: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 22:53:43.14 ID:ZCL4hofoo
>>695採用:3
剣「とても素敵だ。可愛いよ」
なんと言うべきか迷ったが、今の気持ちを素直に伝えた
弥生「あ、ありがと…」
弥生は困ったように視線を漂わせ、髪の毛を指で弄っている
剣「ただ、あの変 女には訂正させておかねばならん事があるな」
弥生「え?」
剣「『こっちの方がいい』ではなく、『その姿も素敵だ』とな」
剣「こうして装いを新たにした弥生も素敵だが、そもそも普段から素敵だ。良い悪いなんてなく、良いしかない」
弥生「それは褒め過ぎじゃないかな」
と弥生は強張っていた表情をやんわりと崩し、くすくすと笑った
ボクと話をして、少しは緊張がほぐれたようだ
弥生「えっと、じゃあ行こうか」
剣「ああ。何処に向かうんだ?」
弥生「えっとねまずは……」
ボクは弥生に連れられ、目的の場所まで向かった
697: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 23:07:21.56 ID:ZCL4hofoo
弥生に連れてこられたのは大型書店
向かったコーナーは小説ではなく、漫画の置いてある場所だった
弥生「剣君、あんまり本を読まないって言ってたし、こっちの方が読みやすいかなって」
との事らしい
漫画も全く読まないと伝えると『どうやって日常を過ごしてるの!?』と大層驚かれてしまった
そんなに珍しい事なのだろうか
最近は女性同士の恋愛物(百合というらしい)の漫画も多く世に出ているらしい
なんと百合専門の漫画雑誌もあるらしく、案外広く認知されているジャンルのようだ
世相的に、同性愛者に優しくなってきているのかもしれない
まあ、ボクにはイマイチ興味の湧かない話ではあるが
あの小説だって内容が良かったから好きなだけだ
女性同士の同性愛だから好きなわけではない
ただ、普段よりも饒舌にやや興奮気味に作品の事を語る鹿島弥生は可愛かった
彼女があまりに嬉しそうに話をするからか、ボクもちょっとだけ読んでみたいなという気になった
そんなこんなで
見事ボクは彼女のマーケティングに負け、数冊の漫画を買ってしまったのだった
698: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 23:21:11.98 ID:ZCL4hofoo
時刻はおおよそ15時頃
ボク達は喫茶店で軽い食事をとっていた
弥生「ゴメンね…私の趣味に付き合わせて。私ばっかり喋ってたし…」
剣「いや、ボクも楽しかったぞ。今まで全く触れたことの無い事だからな」
弥生「そ、そう?私に言われていやいやじゃなく?」
剣「ああ。興味が無かったら買わないさ」
弥生「そっか…そっか。うん、なら安心した」
そんな会話をしていると、注文していたケーキセットが運ばれてきた
剣「肉じゃないんだな」
弥生「うふふ、流石に私もこんな時までお肉食べないよ。……気になってたけど」
相変わらず口も表情も嘘をつけない彼女だった
ボクは一口、カップに口をつけた……
1、弥生の趣味の話
2、ボクの趣味の話
3、服の話
安価↓1
700: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 23:43:03.74 ID:ZCL4hofoo
>>699採用:1
剣「弥生は普段から、こういった漫画や本を読んでいるのか?」
弥生「うん、そうだよ。アニメ見たり漫画読んだりゲームしたり。それ以外の娯楽、知らないくらい」
剣「そうか、だからボクが漫画も本も読まないと聞いて驚いたのか」
漫画も本も世代に関係なく広く親しまれる娯楽だ
寧ろボクのような人間の方が珍しいのかもしれない
剣「昔からこういった内容の話が好きなのか?」
弥生「う~ん…意識したことないけど、そうなのかも」
弥生「少年漫画も、少女漫画もそんなに区別なく読んできたつもりだったんだけどね」
弥生「明日香は今でも少年漫画ばっかり読んでるけど」
剣「やはりそうなんだな…」
こうして話してみると、お互いに共通の趣味が全くないな
本当に…奇妙な縁で出会たモノだ
少し、踏み込んだ話も聞いてみる
1、明日香に告白しない理由
2、もう一度告白してみる
3、ボクも女の方が良かったかと聞いてみる
安価↓1
702: ◆7m3grp2dM2 2016/12/06(火) 23:58:27.06 ID:ZCL4hofoo
>>701採用:3
剣「ボクも女の方が良かったか?」
弥生「それ…は……」
彼女は困ったように眉を下げる
彼女にとって、性別はとても重要な意味を持つのだろう
趣味からも、女性に性意識が向いていることは明らかだ
明日香も言っていた、弥生は父親と話す事すらできないと
だからボクは特別なのだと
だが、だからこそこの問題は明らかにしておかなければならないだろう
彼女は『女性が好き』なのか『男性が嫌い』なのか
どちらもという線も濃厚だが
感情判定
0-3 女の子の方が良かったと思う
4-6 女の子の方がいいけど…
7-9 悩みの根元
好感度 +2
直下コンマ
704: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 00:18:09.66 ID:y9pj/OUxo
コンマ判定:3+2
弥生「先に謝っておくね。ゴメン、すっごく失礼な事を言うと思う」
弥生「女の子の方が良かったなって思うよ」
ハッキリとそう告げられた
覚悟はしていたが、やはり心に来るものがる
弥生「―――そう思うんだけどね。剣君の事、男の人だと思う」
弥生「男の人だけど…嫌じゃないなって思うんだ」
彼女は苦し気にそう告げた
ボクにとっては嬉しい言葉だったが、彼女にとってはそうではないらしい
恐らくだけど、彼女は『男性が苦手』という意識が先行しているような気がする
どこか頑ななまで、ボクを好きになることを嫌がっているように見える
ボク自身を嫌っているわけではない
寧ろ逆で、ボクを魅力的に感じることに罪悪感めいたものを感じているのではないだろうか?
剣「…空気を悪くしたな。すまなかった」
弥生「ううん…私の方こそ…」
少し気まずくなりながらも、ボクは彼女の内面の大事な所に触れられた気がした
705: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 00:20:31.98 ID:y9pj/OUxo
情報が追加されました
名前:鹿島弥生(カシマ ヤヨイ)
年齢:16
性別:女性
【外面】
普段は一人で居ることが多い。表情に乏しいが、話しかけると明るく人懐っこい人柄だと分かる程度に素直。嘘がつけない
【内面】
純粋で繊細な感性を持つ
ボクを意識することに、何か罪の意識を感じてしまっているようだ
706: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 00:28:10.13 ID:y9pj/OUxo
夕方
思っていたよりも長い間、喫茶店で話をしていた
少し気まずくなっていた空気もすっかり元通りになり、駅まで話をしながら歩いたのだった
弥生「…もう、今日はお別れだね」
剣「早いな」
弥生「私もそう思う」
雑踏の中立ち止まり、夕焼けを見ながら別れを惜しむ
弥生「じゃあ…私はここで」
彼女は手を振ってボクに別れを告げようとしている
ボクは、その背中をただ見送るだけでいいのだろうか?
彼女の意思を優先させることが一番大事だろうか?
ボクの事をもっと見て欲しい
彼女の傍に寄り添っていたい
ボクは、どうするべきだろうか?
とても重要な選択のような気がする………
1、『またな』とその背中を見送った
2、ボクはもう一度、彼女に告白した
3、堪らず彼女の手を握った
安価↓3までで最も2桁コンマの数値が高いものを採用
710: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 00:49:08.34 ID:y9pj/OUxo
>>707採用:3
気付けば体が動いていた
ボクは彼女の手を握っていた
弥生「えっ!?剣君…どうしたの?」
彼女は突然の事に驚き目を丸くしている
しかし、驚いているのはボクも同じだった
全く計画してない、突発的な行動だった
剣「い、いや…あの…べ…つに……」
本当に何かあったわけではないんだ
弥生「そ、そう?いきなり手を握られたから、ビックリしちゃうよ」
ただ、このまま君を見送りたくなくて
握られた手を離したくなくて
剣「ボクは…弥生が好きだ…」
理由にもなっていない理由で彼女を引き留めようとした
711: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 00:58:09.62 ID:y9pj/OUxo
あまりにも幼稚な子供のような発言
母に甘えるか幼子のような言葉に、ボクは酷く赤面した
剣「ち、ちがっ!今のは違う!」
剣「えっと…お前の背中が…寂しそうだったから。そう、だから手を握ってしまった」
彼女に嘘は見抜かれるとすかに言われた矢先に、この体たらく
しかし、体面上誤魔化さずにも居られなかった
彼女にカッコ悪いところを見て欲しくなかった
だって彼女の前ではいつだってカッコよく、頼りになる男でありたかったから
彼女に頼られる存在で居たかったから
剣「大丈夫か?寂しくないか?一人で平気か?」
全ての言葉が自らに突き刺さる
ずくずくとあるはずの無い右目が疼いていた
今までで感じた事の無い疼きだ
胸が騒いでいた
恋しい愛しいと甘えた叫びを訴えていた
それでもボクは、何とか普段のボクのように彼女に振る舞った
712: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 01:07:47.67 ID:y9pj/OUxo
剣「良かったら一緒に帰ってやっても―――」
そこまで言って、ボクは息を飲んだ
彼女の顔がすぐ近くにあった
チュッ
と聞き覚えの無い音が響いた
右目だった
眼帯の上だった
肌にも触れていない口づけだった
だというのに、ボクの体は茹で上がったように真っ赤に染まった
破裂しそうなほど心臓が暴れる
締め付けるような切ない疼きが絶え間なく右目を突き刺す
弥生「……またね」
彼女はそれだけ言うと、握られていた手を放して背中を向けて去って行った
何時かの時を思い出す背中
何時かの時と同じ――いや、それ以上に燃え上がる情熱を感じながら
剣「…いたい……」
ボクは温もりを思い出すように右目を撫でたのだった
713: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 01:20:09.45 ID:y9pj/OUxo
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
弥生「もう、今日はお別れだね」
その時の私は、本来の目的も忘れてどこか上の空だった
剣君に楽しんでもらうための今日の書店巡りは、早々に話題のタネを吐き出し尽し、結局最後は剣君頼りで話をしていた
剣君と二人一緒に居ても恥ずかしくないようにと鈴鹿に頼み込んでもらったコーディネートも、何だか空回りだったし
だけど一応は剣君と趣味を共有しようとゆう本来の目的も、達成されたのかもしれない
本当に色々とあったんだけど、今は別の事で頭がいっぱいだった
『ボクも女の方が良かったか』
先週の時もそうだった
彼は時々、こうして私の心の弱い部分をじっと見つめる
見定めるように、観察するように、私の心を暴こうとする
どれだけ言い訳しても、私は剣君に惹かれつつあった
だけどそれは恋愛感情ではない、恋愛感情であっては『いけない』のだ
初めて接する異性だから、そのような錯覚してしまっているだけなんだ
だから私はあの時『女の子の方が良かった』と言ったのだ
彼が女の子だったら、こんな葛藤はしなくてよかっただろうから
714: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 01:30:20.64 ID:y9pj/OUxo
弥生「じゃあ、私はここで…」
私はそう言って彼と別れた
そこで、別れておきたかった
これ以上傍にいると、本当にどうにかなってしまいそうだったから
だが、私の事を知ってか知らずか
彼は私を引き留めた
本当にその行動には驚かされた
人と肌を触れ合わせるなんて、意図的にずっと避けてきたことだったから
剣「い、いや…あの…べ…つに……」
伝わる、伝わってくる
彼自身の動揺が指先から伝わってきていた
私の手を掴んだ彼の両手は、震えていたから
だからだろう
剣「ボクは…弥生が好きだ…」
その言葉に一切の混じりけの無い愛を感じた
蕩けるようなその声は、甘く切なくほろ苦く
心安らぐ響でありながら、恐れの混じった音だった
あらゆる意味を孕んだ彼の真っ直ぐな『恋』がその言葉には込められていた
715: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 01:36:37.43 ID:y9pj/OUxo
剣「ち、ちがっ!今のは違う!」
剣「えっと…お前の背中が…寂しそうだったから。そう、だから手を握ってしまった」
彼は赤面しながらそんな事を言う
何て、なんて卑怯なんだろうか
狡猾さや、計算高さを一切窺わせない子供の言い訳
幼さすら感じさせる彼の姿に胸が苦しくなる
剣「大丈夫か?寂しくないか?一人で平気か?」
私に言い聞かせているその言葉を、そのまま彼に言ってみたくなった
きっと彼はもっともっと顔を赤くするだろう
イケナイ気持ちが沸き上がる
今まで持ったことも無い、悪い私が目を覚ます
剣「良かったら一緒に帰ってやっても―――」
こんな事しちゃいけない
そんな事をするべきではない
それは最低の行為だ
彼に対しても、私に対しても裏切りの行為だ
だけど、止められなかった
溢れだす悪戯心のままに、私は彼の右目にキスをした
716: ◆7m3grp2dM2 2016/12/07(水) 01:45:47.63 ID:y9pj/OUxo
彼は動きを静止し、弾けるように一層顔を赤くした
その姿に、私の心は堪らない充足感で満たされる
なんて愛おしいのだろう?
なんて愛くるしいのだろう?
卑怯なまでに、愛らしい
もっと見て見たいと首をもたげる悪い私の心を、寸でのところで食い止めた
弥生「……またね」
何とか声を絞り出し、私はその場を逃げ出した
帰りの電車に揺られ、激しい罪悪感に襲われた
悪戯心で、彼に期待をさせてしまった
私は彼の純粋で真っ直ぐな恋心を弄んだのだ
弥生「最低だ…私…」
己を嫌悪した
なんと醜いのだろうか
己の欲望のままに、彼の恋を玩具のように扱ったのだ
彼の愛に応える気などないというのに
胸の奥で突き刺すような痛みが奔った
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
721: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 21:40:52.25 ID:/NJArgwPo
夜
その日の夜、ボクは夢心地とでも言ったような気分だった
まるで現実感が無かった
足は雲を踏みしめるように不確かで
頭の中は会話を成り立たせる余裕が無いくらいにオーバーヒートしていた
それでも流石に時間が経てば、頭も冷やされてきて冷静な判断能力も戻って来た
しかし、しかしこの場合はどう思うべきか
己の情けない行動に恥じ入るべきか
彼女からキスをしてもらったことに歓喜するべきか
複雑な心境で、ボクはうんうん唸っていた
1、妹と過ごす
2、母と過ごす
3、鹿島弥生に連絡を取る
4、鈴鹿から連絡…?
5、買ってきた漫画を読む
安価↓1
723: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 21:56:49.05 ID:/NJArgwPo
>>722採用:3
どうしても彼女と話をしたくなり、ボクは彼女に電話をした
しかし、彼女が電話に出ない
風呂でも入っているんだろうと、ボクは諦めることにした
それから程なくして、電話の呼び出し音が鳴る
発信元は鹿島弥生
ボクはすぐに電話に出た
剣「もしもし?弥生だな」
弥生「…うん、あの…なに?」
剣「なに…とは、別に用というほどのモノじゃない」
電話越しから聞こえる弥生の声には力が無い
少し気になりながらも話を続ける
剣「今日の事――」
『楽しかった』と伝えようとしたその声が遮られる
弥生「ごめんなさい。私……ゴメン、ちょっと話せる気分じゃないんだ」
剣「えっ?大丈夫か?」
弥生「………本当にゴメンね」
その言葉を最後に一方的に電話を切られた
どういう事だろうか?
ボクと別れた後に、何かあったのだろうか?
弥生のあまりに普通じゃない様子に一抹の不安を覚えながら、ボクは眠りにつくのだった
724: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 22:02:40.02 ID:/NJArgwPo
十五日目・朝
甘い一時を過ごした二人きりのデートから、たった一夜でその浮ついた心は萎んで閉まっていた
明らかに不自然な彼女の様子
やはり別れ際の出来事が問題だったんだろうか?
それとも、ボクの知らぬところで何かあったのか?
……ただの体調不良なら、それでいいんだが
ボクは普段通りに朝の支度をして…
1、早くに学校に向かった
2、普通に学校に向かった
3、遅くに家を出た
安価↓1
726: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 22:11:08.72 ID:/NJArgwPo
>>725採用:1
ボクは早くに学校に向かった
校庭からは運動部の元気な掛け声が聞こえてくる
…弥生はあの場所に居るだろうか?
1、旧音楽室に向かう
2、陸上部に顔を出す
3、中庭に行く
安価↓1
728: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 22:31:25.15 ID:/NJArgwPo
>>727採用:1
旧音楽室の扉を開く
そこにはいつも通り窓際で外を眺めている弥生の姿があった
その姿にホッと胸を撫で下ろした
此処に居なければ本格的に心配になっていたところだ
彼女はボクの姿にビクッと肩を震わせたが、直ぐに視線を外に移した
剣「おはよう、弥生」
弥生「…おはよう剣君」
ボクはいつものように彼女の隣の椅子に腰かける
彼女はどこか落ち着かない様子で、そっとボクと距離をとった
普段とどこか違う様子を感じながらも、ボクはいつものように会話を試みた
1、昨日の電話の話
2、昨日のデートの話
3、今の様子の話
4、自由安価
安価↓1
730: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 22:47:15.91 ID:/NJArgwPo
>>729採用:3
剣「………」
先ほどから何度話しかけてみても反応が薄い
反応はあるのだが、普段よりも素っ気無い返事だ
今まで彼女と接してきて、このような反応をされたのは初めてだった
剣「なあ弥生。体調、悪いのか?」
弥生「…そんな事ないよ」
剣「いや、明らかに普通じゃない。いつもと違う」
弥生「…いつもとって何?私達、出会ってまだ二週間くらいだよね」
やはりだ、今の弥生からは苛立ちのような感情が強く出ている
何とは分からないが、どうにも虫の居所が悪い様だ
剣「……邪魔をしたな」
これ以上居ても心証を悪くするだけだと判断したボクは、一先ずその場を去ることにした
弥生「あっ…ッ……」
ボクが立ち上がって背を向けた時、彼女の苦しげな声が聞こえた
振り返った時にはもう此方を見ておらず、外に視線を向けていた
……本当に、どうしたというのだろうか?
731: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 22:50:39.20 ID:/NJArgwPo
昼
あれから悶々とした思いを抱えながら、授業を聞き流した
こんな状況でまともに授業なんて聞いていられない
彼女…鹿島弥生が不機嫌な理由
ボクにあるのだろうか?
だとすれば……思い当たる節は、昨日の別れ際のやり取りくらいだ
しかしあの時彼女は『またね』と言っていた
キスをしたのも彼女からだった
傷つけたようには思えなかったのだが……
一先ずボクは昼食をとることにした
1、屋上に続く階段へ行く
2、教室で食べる
3、食堂に向かう
安価↓1
733: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 23:00:21.98 ID:/NJArgwPo
>>732採用:3
今日は食堂で食べることにした
何処の席に座ろうかと思案していた時、誰かに声をかけられた…
1、近衛鈴鹿
2、浅賀孝介
安価↓1
735: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 23:10:20.88 ID:/NJArgwPo
>>734採用:1
鈴鹿「ちょっとちょっと、そこのお嬢さん。お隣りへどうぞ」
剣「………」
声をかけてきたのは変 女こと近衛鈴鹿
特に断る理由も無かったため、ボクは大人しくその席に座った
鈴鹿「今日は弥生と一緒じゃないの?」
剣「…いつも一緒に居るわけではない」
鈴鹿「あら、そうなの?」
女はニコニコと普段以上に楽しそうに笑っている
非常に不愉快極まりないが、この女は弥生の事で何かを知っていそうだ
……さて
1、今日の彼女の様子の事を話す
2、昨日、夕方以降の様子を知らないか聞く
3、彼方から話題を振って来るのを待つ
安価↓1
737: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 23:28:38.77 ID:/NJArgwPo
>>736採用:2
剣「……昨日、ボクと弥生がデートをしたのは知っているか?」
鈴鹿「ええ知ってるわよ」
剣「夕方の五時頃に分かれたんだが、それ以降の様子を何か知らないか?」
鈴鹿「勿論知ってるわよ。弥生に服を貸したのは私だし、弥生と会って話もしたわ」
やはりというか、予想通りこの女は何か事情を知っていそうだった
剣「何か、変わったことは無かったか?」
鈴鹿「それはもうビックリしたわ、あの子とっても落ち込んでた」
剣「落ち込んでいた……怒っていたとかではないのか?」
鈴鹿「あら?あの子を怒らせた自覚でもあるの?」
剣「いいから質問に答えろ」
鈴鹿「そうねぇ……怒っていたとも言えるわね」
剣「……ふむ…」
落ち込んでいながら、怒っていたとも取れる様子
……なんとも難しいな、彼女は何を気に病んでいるんだ
738: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 23:42:34.02 ID:/NJArgwPo
剣「何か、その…ボクの事を言っていなかったか?」
鈴鹿「例えば?」
剣「………分からん。はぁ…この際白状してやるが、ボクはどうやら彼女を傷つけてしまっているらしい」
剣「人の気持ちには聡いつもりだったが、こと恋愛においてはボクも初心者だ。イマイチ確信が持てない」
剣「なので、お前に情報を貰いたい」
そう、恥を忍んでこの女に打ち明けた
意固地になって彼女との接し方を間違う方が恐ろしいと考えた結果だ
鈴鹿「う~ん…そう言われても、私も何でも知ってるわけじゃないのよ?」
剣「昨日、何があったのかは知らないのか?」
鈴鹿「ええ全然。でも、あの子がどういう感情を抱いているか、なんとなく察してるわ」
剣「よし、教えろ」
鈴鹿「ダメよ、こういう事はアナタが理解してあげなさい。そうじゃないと、今後苦労し続けるわよ」
鈴鹿「…剣ちゃんはあまりにも簡単に弥生と仲良くなれちゃったから、『仲良くない弥生』の事何も知らないのよね。だから、今とっても困ってる」
剣「仲良くない弥生…か」
鈴鹿「ま、これが恋愛よ剣ちゃん。本当にどうしようもなくなった時だけ、私に相談しに来てね」
ボクの現状を打ち明けた甲斐なく、この女から大した情報は得られなかった
そもそもこの女はボクと弥生が親密になるのを反対しているんだった、間を取り持とうとしてくれなくて当然か
結局何も解決せず、ボクは味のしないご飯を食べ終えたのだった
739: ◆7m3grp2dM2 2016/12/09(金) 23:53:27.75 ID:/NJArgwPo
放課後
この日一日、ボクはずっと彼女の事に頭を悩ませていた
仲良くない弥生の事を知らないから、なんて言われてもよく分からない
仲良くなろうと必死だったし、今までの彼女からも否定的で拒絶されるような意識をされたことも少ない
初めて会った時だって、彼女からボクに寄り添ってくれた
突然告白をした時も、真剣に答えをくれた
仲良くなってからも、正直に自分の事を話してくれていたように思える
彼女と簡単に仲良くなれた事
明日香からも凄い事なんだと言われた。だから特別だと明日香はボクに期待をしている様だった
鈴鹿からも同じ感想を抱かれたようだったけど、それが問題だと指摘された
……だから、少なくとも今まで心を通わせ合えていなかったわけではない筈だ
仲が良くなりすぎた……それが問題なのか?
しかし、もしそうだったとしたらどうするべきなんだ?
距離をとるべきなのか?
むしろ目を背けずに向き合うべきなのか?
彼女を傷つけない為にはどうするべきなんだ?
とても重要な選択のような気がする……
1、一度距離を置いて、彼女の事を遠くから知ろうとしてみる
2、ここで距離をとるのは悪手だ。正面から彼女と向き合う
3、………違うな、傷ついてでも彼女の事を知るべきだ
安価↓1
741: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 00:14:09.07 ID:tDya4LU7o
>>740採用:2
……ここで距離をとってしまえば、疎遠になってしまうような気がする
押して駄目ならとも言うが、ここはもっと押すべきだとボクは思う
ここで目を背けないことが、お互いが傷つかない最善手だろう
そう決めたボクは早速彼女に会いに行くことにした
彼女はいつもの通りなら、旧音楽室に居ることだろう
………きっとこれは間違った選択肢じゃない
ボクは逸る気持ちを押さえ、早足で旧音楽室に向かった
※バッドエンドが消滅しました
742: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 00:23:38.99 ID:tDya4LU7o
旧音楽室の中をそっと覗くと、彼女は変わらずそこに居た
しかし彼女は外を見ながらもその表情が暗い
その視線の先には明日香が、彼女の思い人が居るはずのなのに、その顔つきに熱が無い
それほどまでに、彼女の中にも何か変化があったのだろう
普段通りじゃなくなるくらい彼女に影響が及んでいるのだ
今までも、時折ボクをドキリとさせる仕草を自然とする人だったけど
昨日の別れ際のあの行動は、今までとは比較にならないような『好意』を示す行動だったように思う
……だから、昨日のボクの行動も今の現状も、悪い方に進んでいるとは思いたくない
ボクは軽く呼吸を整えて、扉を開いた
彼女はボクを見ると、一層その表情を暗く落として立ち上がった
鞄を提げて此方に歩いてきている
帰るつもりなのだろう
ボクが来たから
ボクは……
1、落ち着いて『帰るのか』と声をかけた
2、頭を下げて謝罪をした
3、『話をしたいんだ』と彼女の行く手を遮った
安価↓1
744: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 00:41:15.19 ID:tDya4LU7o
>>743採用:1
ボクは軽く息を吐き、落ち着いて声をかけた
剣「なんだ、帰るのか?」
努めて冷静に、普段通りに
彼女を安心させるようにそう言った
弥生「……うん。ゴメンね」
剣「何故ボクに謝る?謝られる理由があったか?それとも、その謝罪はボクに向けられたものではないのか?」
弥生「ッ……帰るから」
今の彼女の様子はとても苦しそうだった
何か我慢しているような、抑圧されているかのような、彼女らしくない不自由さを感じさせる
剣「ボクに何かあるのなら言うべきだ。そのままで居る方が不健康だと思うぞ」
剣「ボクは逃げない。弥生になんと言われても、ボクは弥生が好きなままだ」
剣「だから…ボクを見て。そんなに辛そうな顔をしないでほしい」
ボクなりに彼女を傷つけないような言い回しを選んだ
明日香に言われた通り、強く手を引かないようにそっと手を差し伸べた
そんな振る舞いを意識した
弥生「………」
感情判定
0-3 抑圧
4-6 暴走
7-9 ???
直下コンマ
746: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 01:04:50.96 ID:tDya4LU7o
コンマ判定:1 抑圧
弥生「……そうだよね、ゴメン。私が悪いんだ」
彼女は視線を逸らし、そう言った
彼女はまた謝罪を口にした
剣「…違う。そうじゃない」
ボクはそんな事を言って欲しかったんじゃない
ボクを気遣わなくたっていいと、そう伝えたんだ
弥生「昨日の今日で、私…変だったよね。ゴメンね」
剣「謝らなくていい…!」
彼女の逃げるような 度に苛立ち、語気を荒げてしまう
弥生「明日からは…普通になるから。今日は…ごめん」
剣「謝るな!……どうして嘘を吐くんだ。どうして、ボクから逃げる?」
怒鳴りつけそうになる気持ちを必死で抑え、彼女に問う
弥生「……嘘なんてついてないよ。私、嘘つけないし」
そうして、彼女はとうとう振り返ることなく旧音楽室を去って行った
最後の最後のまで彼女らしくない言葉で、まるで今までの交流などなかったかのように凍った表情のままだった
だけど、彼女の心情を察せないほどのボクではない
彼女は己の感情の発露を抑圧し続けていた
怒り、悲しみ、苦しみ、喜び
何かは分からないけれど、彼女はあんな言葉とは別にボクに言いたいことがあったはずだ
だけど、ボクは彼女から内面を引き出せなかった
それが全ての結果だった
747: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 01:14:41.86 ID:tDya4LU7o
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
剣「なんだ、帰るのか?」
彼は努めて冷静にそう言っていた
その直前に、深呼吸をしていたことを私は知っていた
彼は何処までも真っ直ぐだ
恐れも知らず、私に向き合おうとする
だけど、今の私が普通ではないように今の彼も無理をしている様だった
剣「ボクに何かあるのなら言うべきだ。そのままで居る方が不健康だと思うぞ」
言葉の一つ一つから、私への気遣いのような物が見える
剣「ボクは逃げない。弥生になんと言われても、ボクは弥生が好きなままだ」
言葉の一つ一つが、演技がかったような優しさだ
剣「だから…ボクを見て。そんなに辛そうな顔をしないでほしい」
彼の言葉の全てが、吟味して厳選された私を優しく包む言葉だ
彼らしくも無い、気遣いの塊の言葉
今までの純粋な優しさとは違う、私の心を探ろうとする下心の見えた優しさだった
748: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 01:27:57.44 ID:tDya4LU7o
だから私も、彼を気遣った
実際の所、彼が心を痛めているのは全て私の身勝手なわけだし
だから私は謝った
私が悪いから
私が君に無用な気を遣わせてしまっているから
私が君を君らしさから遠ざけてしまったから
私が謝るたびに、彼は言葉に屈辱を滲ませる
爆発しそうになっている彼自身の言葉を、彼は何とか飲み込んでいる様子だった
そうさせてしまっている自分に、更に罪悪感を募らせる
本当に、私は最低だ
私という存在は彼を不幸にしかしていない
彼の初恋を奪い
彼の恋心を弄び
そして、彼らしさすら捻じ曲げてしまった
やっぱり、彼の近くに居過ぎてしまったのかな
弥生「……嘘なんてついてないよ。私、嘘つけないし」
その言葉を別れとし、私は彼に背を向けた
彼を想ってのその嘘は、どうしてか私の胸を締め付けた
吐き出せない感情に圧し潰されるように、私の心は鈍痛に悲鳴を上げていた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
749: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 01:35:36.64 ID:tDya4LU7o
夜
その日の夜は、晩御飯が喉を通らなかった
上手くいかないもどかしさと、優しさが彼女をより傷つける結果になってしまったことに、酷く苛立っていた
彼女と向き合う、という選択は間違いではなかったように思う
しかし、その後の選択を少し謝ってしまったのかもしれない
彼女から本音を引き出そうとしているのに、ボク自身が己の言葉を抑圧してしまっていた
もっと、自分の思いの丈を素直に吐き出すべきだった
らしくなく落ち着き払って、明日香の真似ごとをしてしまっていた
それが失敗の原因だろう
過ぎてしまったものは仕方がない、運が悪かったと諦めるしかない
必要なのは、次取り返せるかどうかだ
さて、どうするか……
1、妹に相談
2、母に相談
3、他の誰かに相談
4、考えても仕方がない、寝る
5、自由安価
安価↓1
751: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 01:47:13.66 ID:tDya4LU7o
>>750採用:3、他の誰かに相談
相談相手、誰がいいだろうか?
やはり鈴鹿か…それとも、一番弥生の事を知っている明日香か?
いっそ何も知らない相手に聞いてみるのもいいかもしれない
…例えば、山田千紗。あの女は色々人の話を聞くのが得意だ。こういった相談事もよく受けているだろう
他の候補と言えば……あやに聞くのは少々残酷か
シンシアも…あまり頼りになりそうもない
孝介はどうだろうか?
………こいつも微妙そうだな
さて、誰に相談する?
1、近衛鈴鹿
2、日比乃明日香
3、山田千紗
4、柘榴花あや
5、シンシア・パーシヴァル
6、浅賀孝介
安価↓1
753: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 02:02:31.48 ID:tDya4LU7o
>>752採用:2
悩んだ末に、明日香に相談することにした
ボクは明日香に電話をかける
明日香「電話なんて珍しいね。いや、初めてかな」
剣「そうだな、初めてだ。……実は弥生の事で話がある」
そうして放課後の出来事を話した
明日香「…そう、あの弥生が嘘を」
剣「……お前のように振る舞ったのが仇となったらしい」
明日香「う~ん…そっか、正直ボクもそんな弥生見た事ないよ。あの子は嘘を言う子じゃない」
剣「避けられている原因は、恐らく仲良くなってしまったからだ……と思う」
明日香「………」
明日香はグッと押し黙る
真剣に考えてくれているようだ
754: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 02:14:07.36 ID:tDya4LU7o
暫くして、明日香は答えを出したようだ
明日香「どういう状況かは分かったよ。でも、ボクにもアドバイスが難しい。何せそんなこと一度も無かったからね」
明日香「優しくしてあげてねって言ったけど、多分今のままだともっと弥生から引いてしまうだろうね。だから、ボクのあの時河川敷で言った言葉を撤回するよ」
明日香「弥生がそこまで自分が変わることに恐れを抱いているとは思わなかった」
明日香「もし君が本気なら、弥生を無理やりにでも引っ張り上げるしかない。……でも、確実に弥生の心は痛みに叫び声をあげると思うよ」
明日香「剣君が今向き合おうとしているのは、そういう話だ」
そう明日香はボクに伝えた
恐らく、それしかないのだろう
ボクは彼女の意識を無理やり変えようとしているのだ
今、彼女は傷つくことを恐れて逃げている。その手を無理やり引っ掴んで引っ張り上げるのだ
抵抗を受けて当然だ
自分でも言ったはずだ
ボクは弥生の恋心を蹂躙するつもりだと
まさかそれが、こんなにも難しい事だと思わなかった
755: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 02:30:48.50 ID:tDya4LU7o
明日香「…正直な話、ボクは弥生に無理して変わって欲しくないと思ってる。それだけ、弥生の心は純粋で綺麗だ」
明日香「でも、それは無粋な親心だよね。綺麗なモノに綺麗なままで居ろなんてただのエゴさ」
明日香「剣君の言う、弥生の心を振り向かせたいっていうのも酷いエゴだ」
明日香「弥生自身の頑固さもこれもエゴだと思う。彼女の心なんだけどね」
明日香「だからさ、折れた方が負けなんだよ。言い方を変えれば、惚れさせれば勝ちなんだ」
明日香「うん、つまり…頑張るしかないって感じ」
明日香「以上、恋愛初心者からの全く身にならないアドバイスでした。ちょっとは力になれたかな?」
最後の最後で茶化すような言い回しで明日香は締めくくった
結論は出た
彼女の心をへし折る気持ちで惚れさせるしかない
結局のところ、どういう状況だろうが恋愛事の決着はこれしかないらしい
剣「……大分助かった。ありがとう」
明日香「ええっ!?剣君が感謝なんて珍しいね」
剣「…ふんっ、ボクも相当気が参っていたらしい。らしくない事を言ったな」
明日香「いやいや全然。素直に感謝できるのはいい事だよ」
剣「長話に付き合わせたな。おやすみ」
明日香「うん、おやすみなさい」
そうして電話を終えたのだった
760: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 22:09:45.06 ID:tDya4LU7o
十六日・朝
目を覚ます
いつものように朝の支度をしている
昨日の夜と比べて幾分も心が余裕を取り戻していた
日比乃明日香、アイツと話をしたおかげだろう
こればかりは素直に感謝しておこう
やることは決まった
多少強引でも、ボクの方に振り向かせる
それしか決着はつけられない
外では雨が降っていた
今日一日は降り続くらしい
ボクは……
1、早くに学校に向かった
2、普通に学校に向かった
3、遅くに家を出た
安価↓1
762: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 22:21:04.28 ID:tDya4LU7o
>>761採用:3
昨日と違い、遅くに家を出た
先週はこの時間帯で鹿島弥生を見つけたのだが、見つからない
そうそう同じ時間に出くわすわけではないらしい
少し残念に思いながらも、遅刻ギリギリの時間帯の通学路を歩く
千紗「あ、剣様!おっはよう!」
剣「…ん、お前か」
声をかけてきたのはいつもの奴隷その4
コイツは何時もこの遅刻ギリギリの時間帯らしい
二人傘を並べて同じ歩幅で歩く
…何か話そうか
1、人との上手な話し方
2、人との仲直りの仕方
3、恋愛話
安価↓1
764: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 22:41:21.11 ID:tDya4LU7o
>>763採用:3
剣「…なあ、お前は恋とかしたことあるか?」
千紗「はぇ…?は!?う、ウチ!?無い無い無い!全然ないよ!!」
そういう話に慣れていそうだと思って話を振ったのだが、予想外なまでに否定をされた
こんななりだが、結構初心なのかもしれない
千紗「あ~…でも、ちょっと撤回。今好きな人はいないって感じ」
剣「ふ~ん、恋をする予定でもあるのか?」
千紗「あはは~…いい人が居ればね~」
剣「なんだか意外だな、恋人の一人や二人いそうな感じだと思ったが、存外生娘か?」
千紗「居ても普通一人だけっしょ?ウチは結構ガード硬い感じなんで、純潔を保った乙女なんですぅ!」
剣「お前なら、寧ろ一人二人たぶらかしている方が魅力が出そうなものだが」
千紗「剣様の中でウチのイメージどうなってるん?」
765: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 22:49:48.42 ID:tDya4LU7o
少し脱線しそうになりながらも恋愛の話をする
千紗「剣様はさ、好きない人居るんだよね?高等部の…」
剣「鹿島弥生だ」
千紗「そうそう、その先輩。剣様はさ、一度告白断られたのにまだ好きなの?」
剣「おかしなことを言う。一度フラれたくらいで何故好きじゃなくなる?」
千紗「いやぁ普通はさ、遠慮とかショックとかでもうその話題に触れたくないなって感じになるじゃん」
剣「そこいらの凡百ならばな。ボクは違う」
千紗「な~る……納得だわ」
千紗はボクの返答に得心が言ったとばかりに大きく頷く
千紗「…でもさ、周りの眼とか気にならない?」
剣「気にならんな。所詮一時の話題よ、想像以上に人は他者を見てはいないさ」
千紗「そっか…そういうものか……やっぱり剣様は強いかも」
剣「ふっ…今更だな」
そんな事を話しながら、仲良く遅刻したのだった
766: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 22:55:27.59 ID:tDya4LU7o
昼休み
特に何事も無く午前の授業を終える
未だに外では雨が降り続いている
この様子だと予報通り夜まで降り続きそうだ
さて、昼食はどこで食べようか?
1、屋上階段
2、食堂
3、教室
4、誰かを誘う
安価↓1
768: ◆7m3grp2dM2 2016/12/10(土) 23:41:10.85 ID:tDya4LU7o
>>767採用:1、屋上階段
今日はちょっと人の集まりが良くないようなので、更新はここまでとします
明日も21時頃には再開すると思います
では、お付き合いいただきありがとうございました
770: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 21:54:00.72 ID:brs6x+Tdo
ボクは屋上階段に向かった
いつも弥生が一人でご飯を食べている場所
しかし、そこに彼女は居なかった
ボクが来ると思っていたからだろう
実際ボク自身、彼女がいるとやって来たのだから
普段通りの私に戻ると言っていたが、そう簡単に割り切れるものでもなかった
そういうことなのだろう
ボクは仕方なく一人で食事をする
ここはとても寂しい気持ちになる場所だった
いつもは彼女と喋っていて意識したことは無かったが、下からは多くの生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる
この場所で、ボクは一人だ
あの場所にボクの居場所はない
そう感じさせるような、学校生活と切り離された空間だった
彼女は何を思ってここで一人で食べていたのだろう?
彼女は決して孤独では無い筈なのに、何故か孤独を善しとする
それほどに、他者との関わりを恐れているというのだろうか?
ボクは彼女の事を想いながら、一人で食事をとった
771: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 21:56:51.98 ID:brs6x+Tdo
放課後
漸く待ちに待った時間がやって来た
彼女と…弥生と話をしよう
彼女を振り向かせるためにも絶対に今日会わないといけない
外ではまだ雨がザンザンと降り続いている…
1、旧音楽室に向かう
2、弥生の教室に向かう
3、玄関に先回りする
安価↓1
774: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 22:10:29.66 ID:brs6x+Tdo
>>772採用:3
今日は雨で陸上部も外で練習をしない
彼女は真っ直ぐ此処に向かってくるだろう
そう思ってボクは玄関前で待ち伏せをしていた
しかし、いくら待っても彼女はやってこない
どういう事だろう?
来ていない…ということは無い筈だ
ボクはやや罪悪感を覚えながら、彼女の靴箱を確認する
そこには一組のローファー
彼女はまだ学校内に居るという証明だ
部活動もしていない彼女がまだ学校に残っているのはどうしてだろう?
何か…あったのだろうか?
ボクは……
1、もう少し待つことにした
2、旧音楽室に向かった
3、服飾研究部の部室に向かった
安価↓1
776: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 22:23:23.86 ID:brs6x+Tdo
>>775採用:3
妙な胸騒ぎを感じ、ボクはある場所に向かった
勢いよく扉を開け放つ
鈴鹿「ひゃっ!あ、あら剣ちゃん、どうしたの?」
そこは服飾研究部の部室
突然の来訪に部内にざわめきが広がっていた
他の部員なんて居たのかという驚きもあるがそれはいいい
用があるのは鈴鹿だ
剣「お前、弥生が何処に居るのか知らないか?」
鈴鹿「そうねぇ…帰ったんじゃないかしら?」
剣「そうじゃないからお前に聞いてるんだ!」
鈴鹿「ちょっと待ちなさい!私、本当に分からないわよ?」
『嘘を吐くな』と詰め寄ろうとするが、鈴鹿の真剣なまなざしに嘘ではないと強く感じる
しかし、ならば何処に…
剣「…邪魔をしたな」
ボクは部室を出て、何処に行くべきか考える
鈴鹿ならば何か知っているはずと思っていたが、的外れだったようだ
あの鈴鹿にも把握できていない弥生の今の心の状
何処で、何をしているんだ?
考えれば考えるほど、彼女の居そうな場所が分からない
ボクにとって、彼女との思い出の場所なんて一つしかない……
ボクは――
1、もう一度玄関に戻った
2、旧音楽室に向かった
安価↓1
778: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 22:42:58.28 ID:brs6x+Tdo
>>777
旧音楽室
まさかまさかと思いながら、その場所に向かう
彼女は語っていた、その場所が好きだと
想い人の姿を時を忘れてずっと眺めているため、ただそれだけの場所
此処に居ると明日香が見つけてくれるんだと、彼女は照れくさそうに笑っていた
そう、だから彼女が今日そこに居る理由はないんだ
外は雨が降っている
日比乃明日香の姿は見えない
そこに居る理由なんて無い筈なんだ
だけど、彼女は居た
誰も居ない筈の、雨降る外を眺めていた
蛍光灯の光も無い薄暗い部屋の中で、彼女はまるでそうあることが自然体であるかのように、外をじっと眺めていた
彼女の隣には、誰も使っていない無人の椅子が一つ
どんな思いで彼女は外を見ているのだろう?
どんな思いで彼女はここに居るのだろう?
分からない
分からないけどボクは、迷わずに扉に手をかけた
779: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 22:56:53.75 ID:brs6x+Tdo
剣「……どうして、此処に居るんだ」
ボクの呼びかけで漸く、彼女はボクの方を見た
弥生「分かんないや、でも…自然と此処に座ってた」
彼女は困り眉で力なく笑う
ボクは彼女の隣に座る
彼女の隣にある椅子は、ボクしか使わない、ボク専用の椅子だから
普段のように談笑を交えるわけでもなく、お互いが無言で外を見る
音を立てて地面をうつ土砂降りの雨は、薄暗い部屋の中をより深く内側へと追いやる
外には出れない、と言われている様だった
雨音以外、音も光も無い空間で二人きり
不思議と良い心地だった
それは、何度もこの空間を二人きりで過ごしたからだろう
たった数回にわたる逢瀬だった
それでも、ボクにとっては学園生活の中で最も濃い時間を過ごした場所だ
彼女はどうなのだろう?
彼女はきっと、この場所で長い時間を過ごしたはずだ
彼女だけの、彼女の為の空間だったこの場所に、ボクという異物が入り込んでしまっている
それでも彼女は、変わらずに此処に居続けている
780: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 23:02:44.90 ID:brs6x+Tdo
ただの自惚れだろうとも思う
だけど、それ以外の理由も考えられなかった
彼女は言っていた
『此処に居ると見つけてくれる』と
彼女も知っているはずだ
今日、此処で待っていても明日香は見つけてくれないと
それならば、誰を待って此処に居たのだ?
迷った果てにボクが彼女をここで見つけた様に
彼女もまた、迷った果てにここでボクを待っていたように思える
きっと、これが最後のチャンスだ
此処で失敗をすると、二度とボク達の関係が発展しないだろう
とても重要な選択だ
ボクは――――
1、彼女にもう一度告白した
2、いつも話をするように、彼女に話しかけた
3、彼女の手を握った
安価↓3までで最も2桁コンマの高いものを採用
784: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 23:21:13.88 ID:brs6x+Tdo
>>782採用:3
恐る恐る彼女の手に触れた
彼女の指先は震えていた
だけど、逃げようとはしなかった
ゆっくりと彼女の手を握る
ボクと同じくらい大きさの彼女の手は、困惑してしまいそうなほど柔らかい
同じ用途に使われるに身体の一部と言われても信じられないくらいに、壊れてしまいそうという印象を抱いた
彼女の手はしっとりと冷たい
しかし、こうして握っていると徐々に熱が伝わって来た
痛みを覚えるほどに人の気持ちに敏感な彼女
ボクの心はどれだけ伝わっているだろう?
言葉だけでは上手く伝えられなかった
取り繕った言葉では、彼女の内面を見ることすら叶わなかった
だからボクは――彼女の手をボクの右目に触らせた
785: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 23:33:16.43 ID:brs6x+Tdo
この右目はボクの痛みの証だ
一生消えない、ボクの傷だ
体が動かなくなるほどの痛みに毎日のように襲われていた
だけど、弥生に会ってから痛みは遠のいていったんだ
今ならわかる、ボクの心はずっと此処にあった
今までは苦しみと憎しみに壊れそうだった
ずっとずっと抱え込んでいた
誰もが斉しく、ボクの敵だと思えた
弥生は違った
一目見た時から、弥生だけはそう見えなかった
ボクはあっけなく恋に落ちたんだ
恋をして、ボクは痛みから救われた
知ってほしい
ボクはこんなにも弥生が好きなんだと
弥生という存在が、ボクにとってどれほど大きいものなのかを
伝われと強く念じながら、ボクは彼女をジッと見つめた
786: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 23:46:51.16 ID:brs6x+Tdo
彼女は無言でボクの眼帯を親指で撫でる
剣「…弥生…キミを想うと、時折右目が疼くんだ」
剣「だけど、それは苦しみじゃなくて。悦びだ」
剣「悦びの痛みだ」
それはきっと、キミも知らなかった心の痛み
ボクだけが抱えていた心の痛みだ
ボクの心に触れている彼女は、辛そうに眉をしかめている
剣「…弥生は…何が辛いんだ?」
剣「ボクと一緒に居ることは、キミにとって辛い事か?」
剣「ボクは…ボクはこんなにも――君といるだけで嬉しい」
右目の疼きと共に、それは形となって表れた
涙だ
悦びの涙
君といるだけで沸き起こる悦びの結晶
幼い子供のように無邪気に、ボクの右目から溢れていた
787: ◆7m3grp2dM2 2016/12/11(日) 23:56:10.69 ID:brs6x+Tdo
剣「こんなにもボクは狂わされてしまっている」
剣「四六時中、君の事ばかりだ」
剣「君に恋をしてしまってから、ボクはこんなにも変わってしまった」
ボクは自分から誰かのために何かをする人間ではなかった
頼られれば応えてやるだけだった
だけど、今はキミの為に何かをしたいと強く願っている
君に振り向いてもらうためには何でもしようと決意している
心を通わせられる人間なんて、母と妹だけだった
それ以外の交流なんて必要ないと思っていた
だけど、今はこんなにもキミと繋がりたいと思っている
人と心を通じ合わせたいと切に祈っている
剣「だから…だから、ボクはいつまでもキミに言おう」
剣「キミが心の底からボクを嫌いになってしまうまで」
剣「好きだ。キミをボクのモノにしたい」
これがボクの答え
一切の偽りの無い、ボクの心の内の全てだ
彼女は一層辛そうに、顔を背けた……
感情判定
5以上で心を開く
選択肢 +5
直下コンマ
789: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 00:12:56.12 ID:IfukZD9Mo
コンマ判定:7+5 成功
長い長い沈黙
全ての音が雨に圧し潰されてしまったのだろうかと思ってしまうほどの静寂
不意に、音が蘇る
弥生「…私もね…剣君を想うたびに、心が痛いんだ」
彼女もまた涙を流す
ボクの痛みに響き合うように、ボクの心に呼応するように
弥生「でも…それはね、剣君の痛みとは違うんだよ」
弥生「私はもっと卑怯で、ズルくて、浅ましい…」
弥生「剣君を好きになるたび、苦しいの」
弥生「剣君を好きになればなるほど、私はその想いに答えるわけにはいかないって思うの」
吐き出す、吐き出す
今まで誰にも見せてこなかった彼女の本性を…
790: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 00:33:33.71 ID:IfukZD9Mo
弥生「だって私、こんなにも剣君に惹かれているのに…明日香が好きなままなんだよ?」
それが、彼女を苦しめていた原因だった
弥生「剣君を好きになるたびに、心が痛い」
弥生「だって裏切らないといけないんだよ?」
弥生「剣君の想いが本物であるほど、純粋であるほど、私は苦しい」
弥生「ずっと心に決めてたの。剣君の事が好きだから、大切だから…酷い事なんてしたくないって」
弥生「なのに、私…剣君に期待させるような事しちゃった」
弥生「剣君の恋心を裏切るって決めたのに!答えられないなって思ってたのに!」
弥生「酷いよね…あの日の夜、剣君からの電話ね…一度は怖くて取れなかっただけなの」
弥生「勇気を出して電話返したとき、剣君の嬉しそうな声が…苦しかった」
弥生「ああ…私は酷い事をしてるって思い知った」
たったそれだけの事を、彼女は気に病んでいた
791: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 00:43:23.63 ID:IfukZD9Mo
弥生「剣君の、真っ直ぐで純粋な『好き』を聞くたびに心がキュッとなってた」
弥生「初めて…男の人を好きになり始めてた」
弥生「私…知らなかったの、自分がこんなにも簡単に人を好きになってしまうなんて」
弥生「私ダメな人なんだよ。私の心には芯が無いんだよ」
弥生「ずっと一途のつもりだった。明日香だけが大事な人だった」
弥生「だけど、だけど…ほんの数週間だけの付き合いの剣君の事が、明日香と同じくらい好き…!」
弥生「こんな平気で心変わりしてしまうような私は、剣君の恋の相手に相応しくないよぅ…」
それが彼女の告白だった
ずっと溜め込んでいた、彼女の心の内側だった
その中身は驚くほどに幼稚で、生まれたての赤ん坊のように『無垢』だった
ああ、本当に彼女の根っこは純情なままだ
『恋』に『愛』に幼い夢を見ていたんだ
恋とは一途であるべきで
愛とは変わらぬものであるべき
そんな前提が、彼女の心を苦しめていた
変わってしまいそうな自分に、異常なほどの恐れを彼女は抱いていたのだ
792: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 00:58:00.85 ID:IfukZD9Mo
本当の本当に、最後まで日比乃明日香という存在がボクの恋敵らしい
もし明日香がいなければ、ボク達は何の障害も無く恋に落ちていただろう
だけど、明日香がいたから弥生の幼い心は今の形を保っていたのだと思う
姿かたちは大人なのに、どこまでも幼く無垢なその心
そんな彼女にボクは恋をしたんだ
だから、恋敵には…恨み言よりも感謝をしよう
彼女は怯えている
変わってしまいそうな自分に
彼女はずっと怯えていた
変わりゆく沢山ものに
彼女はずっと子供の時と同じ時を過ごしている
だから、彼女は一人屋上に続く階段に居た
彼女は一人、この場所に居た
馴染めない世界に、彼女は一人取り残されていた
皮肉にも、明日香という存在が彼女の心の平静を保っていたが
明日香という存在が、彼女に楔を打ち込んでいたのだ
だが、だが今は違う
今際の際
今にも壊れてしまいそうな彼女の心は、寸でのところ形を保っている
明日香が一番大事だという想いが、彼女を何とか保たせている
触れれば忽ち崩れ去る
あまりにも不安定で繊細な心
ボクの行動一つで、容易にどちらにでも落ちよう
ボクは――――
1、ボクのエゴを通した
2、彼女のエゴを優先させた
安価↓1
794: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 01:15:56.48 ID:IfukZD9Mo
>>793採用:1
剣「…そうか、そうだったんだな」
弥生「剣君も…私に失望したかな?好きになった相手が、こんな女で…」
剣「いや――――都合がいい」
弥生「――――――――――ッ!!!」
握っていた彼女の腕を強く引く
何かを言おうとした彼女の唇を、自らの唇で塞いだ
壊してしまおう、壊してしまおう
今にも落ちてしまいそうだというのなら、此方に引きずり込んでやろう
明日香ではなく
ボクを一番にしてやろう
彼女の肩を優しく掴む
彼女は抵抗するようにボクの胸を押すが、その力はあまりにも弱弱しい
795: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 01:25:03.30 ID:IfukZD9Mo
長い間キスをしていた
時間なんて計っていないが、きっともう一度同じ時間が繰り返されれば夜迎えてしまうだろう
そんなバカみたいな錯覚を覚えるほど、その時間は深く濃い時間だった
弥生「んっ…あっ――」
唇を離したとき、銀色の愛の糸が伸びる
彼女の口からは切なげな、甘い声が漏れていた
彼女は羞恥に顔を真っ赤に染め上げて、狼狽するように視線を泳がせる
剣「好きだ弥生」
弥生「やっ…やめてよ…」
彼女はむずかる様に顔を逸らす
ボクはずいっと顔を近づける
剣「好き、大好きだ」
弥生「ん…やだ…」
顔を赤くしながらも、眉を八の字に顰め今にも泣いてしまいそうだ
それでも攻め手を緩めない
剣「嫌か?ボクの事…嫌いか?」
ボクの問いに彼女は深く押し黙り……
感情判定
5以上で……
直下コンマ
797: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 01:57:12.42 ID:IfukZD9Mo
コンマ判定:4
彼女は力なく首を振った
それは、どちらともとれる行動
ボクを拒絶しているようでもあるし、『嫌いか』の問いに違うと言っているようでもある
剣「…ボクはキミが好きだ。き、キスなんて始めてだった」
剣「弥生は…まだ怖いか?自分の気持ちに…整理がつかないか?」
弥生はコクリと頷く
剣「…そうだな、簡単に決めきれるものでもないか」
剣「……これが、ボクに出来る全てだ」
剣「ボクは今、とてもひどい事をしたぞ。弥生が思い悩んでいた事よりもっとひどい事だ」
剣「想い人が居ると知っている女に、無理やりキスをした。嫌われたっておかしくない」
剣「それでもボクは後悔していないぞ。キミに嫌われることが何よりも恐ろしかった…だけど、それ以上にボクの事を好きになって欲しかったから」
剣「だって…ボクはどうしようも無く君に恋をしているから」
それがボクのエゴだった
弥生がどう思っていようとも変えられない、自分の気持ちだ
798: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 02:07:15.97 ID:IfukZD9Mo
彼女は顔を伏せ、何も言わない
もうこれ以上は良い答えを望めないな
そう思い、ボクは立ち上がった
そう、立ち上がった時―――同時に彼女も立ち上がった
想像以上に強い力に引っ張られ、ボクは彼女に抱き締められていた
予想していなかった事 に、ボクは狼狽えてしまう
剣「ど、どどうした?」
弥生「………」
剣「な、なぜ抱きしめる?」
弥生「…分かんない」
剣「………」
弥生「……分かんないよ…全部全部」
彼女はまた苦しみながら涙を流していた
自らの痛みを表現するように、ボクを抱きしめる腕に力がこもった
799: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 02:16:19.58 ID:IfukZD9Mo
弥生「剣君が私が好きな理由も…私にキスした理由も…私がどんな感情を抱いたのかも分かんないよ…!」
弥生「…でも、剣君が悲しそうな顔で立ち上がった時は…なんとかしなきゃって思った」
弥生「私…欲張りだ……あんな曖昧な答えを出しておきながら、行かないでって思った」
弥生「教えてよ剣君…私…どっちの方が大事なのかな?」
弥生「何をすれば……この気持ちに決着がつくの…?」
涙を流す彼女の目尻を指で拭う
確かに、ボクは彼女の心を壊すことには成功した
だけどその結果はボクに落ちるのではなく、もっと複雑な感情を抱かせる要因になってしまった
彼女自身にすら、最早その心の形を把握できなくなってしまっている
これはきっと、彼女自身が決めなければならない事だろう
どうしようもできないボクは、ただ抱きしめる彼女の背中を撫でるしかなかった
800: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 02:17:01.28 ID:IfukZD9Mo
と、言う所で今日の更新はここまでです
まだもう少し長い放課後は続きます
では、夜遅くまでお付き合いいただきありがとうございました
802: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 21:47:12.39 ID:IfukZD9Mo
そろそろ再開です
803: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 21:52:56.93 ID:IfukZD9Mo
情報が追加されました
名前:鹿島弥生(カシマ ヤヨイ)
年齢:16
性別:女性
【外面】
普段は一人で居ることが多い。表情に乏しいが、話しかけると明るく人懐っこい人柄だと分かる程度に素直。嘘がつけない
【内面】
純粋で繊細な感性を持つ
人の心に敏感で、嘘や裏切りを何よりも嫌う
彼女の本性は真っ白な無垢。まるで生まれたての赤ん坊の肌のように傷つきやすく、物語の中のような甘い夢を子供のように信じている
【異常】
変わる事への恐れ
子供のままの心
彼女は幼い頃、仲の良かった男の子がいた
彼女はその男の子に嘘をつかれたことに涙した
その男の子は言った『そのくらいの事で泣くなよ、お前は嘘つかないのかよ』と
彼女は困惑した。嘘はいけない事だと言われてたから、一度も嘘なんて吐いたことが無かった
さも当然のことのように言う男の子の事が怖かった
彼女はそこで初めて自覚した。自分だけが他の人と違うんだと
裏切りに涙を流す彼女に、日比乃明日香は言った
『弥生はそのままでいいんだよ。弥生は無理に変わらなくていいんだ』
彼女はその言葉に確かに救われた
だが、その言葉がずっと彼女を縛っていたことに、本人すらも気づいていない
804: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 22:09:49.63 ID:IfukZD9Mo
放課後
彼女の体は震えている
ボクは優しく宥めるように、彼女の体を撫で続けている
伝えたい自分の事は伝えきった
ボクの痛みを伝えた、悦びを伝えた、言葉だけじゃない行動で最大限の愛を示した
それでも、それでもまだ足りないのだ
彼女に残った最後の箍は、『罪悪感』だろう
ボクを好きになることに戸惑いを捨てきれない
今までとは別の人を好きになることを、裏切りだと彼女は考えている
それはまだ愛を伝えたわけでもない幼馴染の明日香に向けてのモノでもあり
今までその想いを抱き続けた自分へのモノでもある
彼女の心の綻びを解かなくては
彼女にとって、納得できる答えを
まだ気づいていないかもしれない、彼女の心のありか
そのカギは……
1、此処に居た理由
2、孤独になろうとする行動
3、明日香への想い
安価↓1
806: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 22:21:50.36 ID:IfukZD9Mo
>>805採用:2
孤独になろうとする行動
それを口にしかけて、寸でのところで飲み込む
彼女は孤独になろうとしていたわけではない
彼女は孤独だったのだ
馴染めない周囲から逃げるために一人になろうとしていた
幼い子供と同じ時を過ごす彼女は、周りと同じ精神では居られなかった
変化を許容できなかった
だからこそ、彼女は一人で居ようとし続けたはずだ
そこに、彼女の心を解き明かすカギはあるのか?
本当にこの選択でいいのだろうか?
1、この選択でいい
2、旧音楽室に居た理由
3、明日香への想い
安価↓1
808: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 22:37:56.52 ID:IfukZD9Mo
>>807採用:2
剣「旧音楽室…」
思わず口をついていたこの言葉
そうだ、まだ明確になっていないモノがあった
彼女の中の無意識の答えが、ここにあるんじゃないだろうか
抱きしめられていた体を離し、彼女と改めて向き合う
剣「どうして、この場所で待っていたんだ?」
弥生「えっ?それは…何時も、放課後はここに居るから」
剣「何故だ?何故ここに来た?今日は雨だろう?」
思い出す、雨の日の事を
彼女は雨が降り始め、陸上部の練習が無いと分かるとすぐに帰っていた
朝から雨が降り続いている日は、ここに来ることも無く帰っていた
それなのに彼女は、この場所に居た
それは、無意識の行動に他ならない
いや…もしくは意図的に目を逸らしている事実か
809: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 22:59:57.54 ID:IfukZD9Mo
剣「どんな事を考えて、弥生はその場所で外を見ていたんだ?」
弥生「何…を……私……」
椅子に座り直し、彼女はもう一度外を見ていた
一向に降りやまない雨は、光を遮って外の様子をぼやけさせている
人一人いない、雨うつ校庭を彼女は見ていた
ポツリポツリと零れ始める
弥生「…なんで…放課後ここに居たんだっけ?」
弥生「ううん…朝だってここに来てたんだ」
弥生「朝から雨が降ってたって知ってたのに、ここに来てた」
徐々に、徐々に溢れはじめた言葉は流れ続ける
弥生「明日香が見えるわけじゃないのに、ずっとここに居た」
弥生「一人…何にも楽しくないのに、ここに居た」
弥生「…寂しかった……寂しかったけど、ここに居ないといけない気がしてた」
闇を映していた彼女の眼に、光が差す
困惑と混乱に囚われていた陰りが、消えていた
弥生「……此処に居ると、大好きな人に見つけて貰えるから」
彼女自身も、確信をもって答えを出した
それが、ここに居た理由だ
810: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 23:14:23.36 ID:IfukZD9Mo
弥生「…此処に居るとね…私を見つけてくれるんだ。『お、今日も居るな』って嬉しそうに手を振ってくれる」
弥生「私はね…それに手を振り返してあげるのが好きだった」
弥生「……此処に居るとね、私に会いに来てくれるんだ。廊下の足音が聞こえて、扉の前で必ず止まる」
弥生「一息呼吸を置いて、扉を開くの。『今日も居るな』って嬉しそうに笑ってくれるの」
弥生「私ね…今日はまだ来ないかなって、何時しかそれが楽しみになってた」
じんわりと、暖かい笑みを浮かべる
話す言葉も柔らかく、一つ一つ優しさを感じさせた
弥生「私…ずっと一人だった。ずっと一人で此処に居た」
弥生「大好きな人を見ているだけで、何にも寂しくなかった」
弥生「でもいつの間にか、ここに一人で居ると退屈だった」
弥生「お昼ご飯の時もそう……」
弥生「剣君が…ううん、剣君を好きになってから…一人が寂しくなっちゃってた」
弥生「そっか…そうだったんだ……いつの間にか、私変わってたんだ」
弥生「此処に居る理由……雨の日でも此処に居た理由」
弥生「剣君が私を見つけてくれるからなんだね」
『今更だ…』と照れくさそうに彼女は微笑んだ
811: ◆7m3grp2dM2 2016/12/12(月) 23:23:14.32 ID:IfukZD9Mo
この答えにたどり着くまで、何だか遠回りをしてしまっていたような気がする
だけど、最後には彼女自身の口からその答えを聞かせてくれた
ボクという存在は、彼女にとってそれほどまでに大きくなっていたのだ
知らず知らずのうちに、彼女を変えていた
ボクだけじゃなかったんだ
ボクの片思いのままじゃなかったんだ
彼女に会って話をしてきた時間は、何一つ無駄じゃなかった
彼女に薦められて読んだ小説の内容を思い出す
『恋をされたから、恋をしてしまった』と語っていたな
ボク達も正に、その通りだ
好きだと思い続け、伝え続けることに大きな意味があった
ボクが弥生に恋をしたから
弥生に恋をしてもらえたんだ
もうここまで来れば、あと一押しだけだ
ボクは―――
1、彼女にもう一度告白した
2、彼女の手をもう一度握った
安価↓1
813: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 00:03:30.13 ID:v2HhwLZ9o
>>812採用:1
剣「…思うに、弥生は…事を深刻に構え過ぎたな」
剣「いや、とても大事な事なんだぞ?だけど、もう少し考え方を柔らかくするといい」
弥生「…?」
何を知ってるのか分からないとばかりに彼女は首をかしげる
剣「弥生の悩みは、そう難しい問題じゃない」
剣「ボクが好きな事と、明日香が好きな事は両立していいんじゃないか?」
剣「ボクを好きになることは、明日香を嫌いになる事じゃない」
剣「ボクを好きだと思う気持ちと、幼馴染を大切に思う気持ちは別のモノなんじゃないか?」
剣「つまり……欲張ってもいいって事だ。ボクが許す、誰も文句は言わない」
剣「弥生の悩みは、ただそれだけの事だと…ボクは思う」
剣「だから、その上でボクは何度でも言おう」
剣「キミが好きだ。ボクの恋人になってほしい」
ボクはもう一度、彼女に告白をした
感情判定
9以上で成功
選択肢 +9
直下コンマ
815: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 00:28:57.26 ID:v2HhwLZ9o
コンマ判定:8+9 成功
弥生「……いいのかな、私…今までずっと明日香が好きだった」
弥生「そんな今更…剣君が好きだなんて言っても…本当にいいの?」
剣「いいに決まってる。そんな話をすれば、ボクは一目惚れだぞ?」
剣「弥生の事、名前すら知らない時からボクは好きだった」
剣「いいじゃないか、時間なんてもの。これから作ればいい、そうするうちにボクが一番になれればいい」
弥生「…そう…なのかな…ああ、何か分かんないな。こんな気持ち、初めてだよ…」
彼女は顔を赤くし、もじもじとしながらも此方に手を差し伸べる
弥生「もしかしたら私…初めて恋したのかも」
剣「ふふっ…今更だな」
ボクは躊躇わず伸ばされた手を取った
弥生「えへへ…うん、今更…だね」
弥生「私も…好き。大好きだよ剣君…」
どちらともなく顔が近づき、ボク達の唇は重なり合った
その間も雨はザァザァと降りやまない
小説の中のように、雨が上がって虹がかかる演出なんてしてくれやしない
でも、この雨の音がボクと弥生を引きあわせてくれた
ボクは感謝しよう、恵まれたこの偶然に
今日、雨が降っていなかったらこの結末は迎えられなかっただろうから
ボク達はまるでそんな形の彫刻であるかのように、ずっと唇を重ね合わせ続けていた
甘く幼い、蕩けるような子供の口づけだ
816: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 00:42:28.17 ID:v2HhwLZ9o
ボク達は完全下校時刻、21時を回るまでずっと旧校舎で何度も唇を重ね合わせていた
温もりを確かめ合うように指を絡ませ合い、温かな背中に手を回した
お互いの存在を確かめるように、何度も何度も名前を呼び合いながらキスをした
未だに振り続く雨の中、ボク達は帰路につく
傘と傘がぶつかり合い、先ほどまでつながりあっていた温もりが傍に居ない事がとてももどかしい
だから、ボクを傘を畳んだ
彼女の腕に絡みつき、肩に頭を乗せた
一つの傘に二人が入る、所謂相合傘という奴だ
彼女は少し驚いた顔をして、すぐに柔らかく微笑んでくれた
ボクは少し上にある彼女の顔を見る
剣「…その…迷惑じゃないか?」
弥生「全然平気。ふふっ…でも、普通は逆じゃないかな?」
剣「…今日だけ…今日だけでいい」
弥生「ううん、いいよ。いつでも甘えて」
剣「あ、甘えてなどいない!」
弥生「そお?いいと思うな、恋人同士なんだから」
弥生からボクの指に指を絡める
ボクもその温もりを離さないように、ギュッと抱き付いた
決めた
心に決めた
ボクは一生…この温もりを離しはしない。誰にも渡したりなんかしないと
降りしきる雨の中、ボク達は甘い…甘い温もりを共有し合った
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エピローグへと続く
817: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 00:53:46.96 ID:v2HhwLZ9o
エピローグ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから少し、時間は過ぎた
季節は8月、夏休みの真っただ中
ボク達はというと……
剣「う~ん…うぬぬぬ……」
弥生「補修お疲れさま。ほら、元気出して」
彼女との時間に浮かれたボクは、見事に赤点地獄に見舞われ夏休みだというのに学校で補修を受けていた
剣「くそぅ…ボクともあろう者が…こんな…こんな惨めな……!」
弥生「あはは…うん流石に赤点は駄目だよ。だから、こうして今から私の家で勉強するんでしょ?」
剣「…まぁな」
午前の補修を終えて、これからは午後の補修という奴だ
サンサンと照り付ける太陽の熱気の中、じっとりと手汗をかきながらも手を繋いで歩いていた
向かっているのは彼女…鹿島弥生の家だ
818: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 01:02:23.03 ID:v2HhwLZ9o
あれからの関係というと、何かが大きく変わったようなわけでもない気がする
朝は旧音楽室で話をして
昼は屋上階段で一緒に昼食を食べて
放課後も旧音楽室でずっと一緒に居る
寝ても覚めても、ずっと彼女と一緒だ
ただ一つ大きく変わったのは―――
弥生「ねえ剣君、こっち向いて」
剣「なん――!」
チュッ
気が付くと彼女の顔が目の前にあって、軽いリップノイズと共に離れていく
彼女は悪戯っぽく笑う
剣「飽きないな、弥生」
弥生「えへへ…うん、何だか抑えられなくって」
彼女は随分と表情が豊かになった
そして、とても積極的にスキンシップをしてくる
隙があればキスをして、隙が無くてもキスをされる
今もこうして暑い陽気の中で居ても、彼女はボクにベッタリと抱き付いてきている
擽られたり、耳を甘噛みされたり、悪戯されることも増えた
819: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 01:13:07.14 ID:v2HhwLZ9o
剣「暑いな―――」
そう言って空を見上げた時、不意に冷たいものを感じた
雨だ
空を覆う曇天は無く、太陽も出ているくらいの晴れた空
そう、通り雨というモノだった
夏の風物詩とも言える通り雨
ボクは慌てて彼女を抱きかかえ、近くのバス停で雨宿りをする
全く人が居ない、屋根だけはあるバス停
そんな空間で、雨に濡れた男と女
彼女の肌に張り付いた白いシャツが酷く艶めかしい
820: ◆7m3grp2dM2 2016/12/13(火) 01:25:31.46 ID:v2HhwLZ9o
弥生「やっ…!もう…ダメだよ」
彼女はボクの視線に気づき、その大きな膨らみを隠す
まだそういうことは恥ずかしいらしい、あんなにべったりだというのに
ボクはニヤッと笑うと彼女の両手を掴み、上にあげさせた
弥生「ええっ!?も、もう!駄目だよ!こ、こんなところで嫌だからね!!」
剣「へえ、何をされると思ったんだ?こんなところでは駄目?往来でキスをする弥生が恥ずかしがるようなこと、か?」
弥生「……んんっ!」
バツが悪そうに顔を逸らす彼女があまりにも可愛くて、ボクは彼女の唇を奪った
何度も唇を愛 をするたびに、彼女の体の力がフニャフニャと抜けていく
暑い熱に浮かされた顔、涙を湛えた瞳がボクをうっとりと見つめてくる
弥生「……も、もう…しないの?」
剣「ふふっ、欲張りだな。続きは家に着いてからにしよう」
弥生「…こんな事ばっかりしてるから、全然成績良くならないんじゃないかな」
剣「誘っておいてよく言うな。ほら、行こう」
まだぽつぽつと雨が降っていたが、ボクは彼女の手を取って屋根から体を乗り出した
この暑い日差しに負けないくらい熱いボク達には、多少濡れるくらいが丁度良い
ボクたちは走り出した
まだまだま暫くは、この熱は収まることは無いだろう
……もしかしたら、ずっと冷めない熱かもしれないけど
それはきっととても幸せな事だ
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HAPPYEND 『冷めない熱』
828: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:28:57.73 ID:VMpnn7XRo
弥生アフター
『甘えたさん』
季節は九月。残暑も無くなり、風景が秋の装いに変わり始めた今日この頃
鹿島弥生と恋人になってから、3ヶ月ほどの時間が経った
相変わらず、冷めない熱に浮かされているボクらは毎日のように一緒に居る
こうして付き合い始めてから見えてくるモノというのもあって、意外なほど飽きない関係を続けている
付き合うまで気づかなかったことだけど、彼女…鹿島弥生は―――
829: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:29:28.29 ID:VMpnn7XRo
弥生「ね、剣君」
くいくいと彼女はボクの服の袖を引く
場所はボクの住むボクの部屋
彼女はボクのベッドに寝っ転がって漫画を読んでいた
ボクは、ちゃぶ台の前に座り勉強をしていた
剣「なんだ?」
弥生「ううん、呼んだだけなんだ。えへへ…」
彼女はフニャフニャと笑いながら、漫画を再び読み始めた
ボクは『そうか』とそれだけ言って勉強を再開する
それから程なくして――
弥生「ねえねえ剣君」
剣「どうした?」
弥生「ん~♪」
と口に咥えた棒状のチョコ菓子を見せられる
ボクは一瞬かたまったが、やれやれと差し出されたそれを齧る
弥生「んふふっ、美味しいね」
剣「そうだな」
それだけを言うと、また彼女は漫画を読み始めた
830: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:30:11.31 ID:VMpnn7XRo
――――そう、彼女は『甘えた』なのだ
事あるごとに彼女はこうして甘えてくる
一緒に歩いているだけでも
弥生「剣君っ!」
とボクの頬に顔を摺り寄せてくる
一緒に話をしていても
弥生「へえ、そうなんだ」
なんて相槌を打ちながらボクの手を握ってくる
彼女のスキンシップには前振りが無い
初めの頃は戸惑い、初々しい反応を見せてしまっていたものだが今ではもう慣れてしまった
831: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:31:52.60 ID:VMpnn7XRo
嫌というわけでも、迷惑というわけでもない
寧ろとても嬉しいのだが、ふと冷静に『弥生は年上だよな…?』と思う時がある
彼女自身、一人っ子というのも関係しているのかもしれない
今まであまり家族に甘えた経験も無かったのだと思う
その揺り戻しがこのボクに対する行動なのだろう
かくいうボクはというと、根っからの兄属性
小学生の頃から妹のお世話を一手に担ってきた男だ
妹も相当甘えたがりだったためか、それの捌き方は十分に心得ている
そういう意味では、ボク達はとても相性がいいのかもしれない
832: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:32:28.06 ID:VMpnn7XRo
閑話休題
時は放課後、場所は旧音楽室
今しがた彼女が甘えただという話をした矢先だが、少し困ったことがある
弥生「………」
彼女はむっつりと黙り込み、チラチラとボクの顔色を窺っている
今日の彼女はずっとこんな様子だ
一言でいうのなら
甘えるのを我慢しているらしい
まあ、なんとなく予想は出来るが
剣「はぁ…それで、鈴鹿になんて言われたんだ?」
弥生「…!凄いなぁ剣君、やっぱり人って嘘はつけないね」
やはりというか想定通り
鈴鹿の入れ知恵が原因らしい
相変わらずアイツは余計な事しかしないな
833: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:32:56.48 ID:VMpnn7XRo
彼女から事の顛末を聞いてみると、弥生がボクとの惚気話をしていた時『それってどうなの?』と言われたのが原因らしい
弥生「やっぱり、私の方がお姉さんだし剣君を甘えさせてあげるべきだよね」
剣「別に必要に思わないが…」
弥生「ダメだよ!私ばっかりは甘えさせてもらってるから、剣君も甘えないと。ほら!」
彼女は『さあ来なさい』とばかりに両手を広げる
弥生本人の母性に反し、たわわに実った母性の象徴がこれでもかと差し向けられる
抗えない魅力が……と言いたいところだが、ボクは普通に抗う
剣「別にボク達はボク達らしい付き合い方でいいんじゃないか?いつも通りで」
弥生「う~ん…私としては、剣君に甘えて欲しいんだけど……それとも、嫌?」
剣「むむむ……」
その言い方は聊か卑怯だ
ある意味彼女の甘え文句じゃないかと思うが、それをツッコむのは野暮というモノだ
834: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:33:27.02 ID:VMpnn7XRo
無理に意地を張り続ける理由も無い
言葉に甘えようと思ったところで、体が止まる
剣「…………甘え方が分からない」
弥生「えっ?剣君も、たま~にしてくるよね?そういう感じでいいんだよ」
剣「いや確かに、言われてみれば甘えたことはあるが意識してみると…難しいな」
弥生「えっとほら……ほら…ほら………ううん、ん?確かに、難しいかも」
二人して『甘える』とはどうすれば?と頭を悩ませる
甘えるという行為はほぼほぼ無意識の行動であり、欲求を満たそうとする行動だと思う
ともすれば、そうしたいという欲求が無いボクには少し難しいものがある
彼女も、意識的に甘えるという事はあまりしてこなかったのだろう
835: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:33:56.34 ID:VMpnn7XRo
弥生「と、取り敢えず…来てみない?」
考えている最中もずっと腕を広げたままで、すこしプルプルと震えだした彼女の腕
その中に包まれてみようという結論に至った
剣「で、では行くぞ」
いざ意識して彼女に抱き締められに行くというのは、中々に恥ずかしい
恐る恐る背中に腕を回す
彼女はニッコリと優しく微笑み、ボクの頭をギュっと抱きしめた
首元に大きな膨らみが辺り、少々息苦しい
だけど彼女の体は柔らかくて汗を拭きだしそうなほど温かい
不思議だ
いつもとやってる立場が逆になっただけで、こんなにも得られるものが違うのかと
彼女に甘えられているときに感じるのは、愛しいといったような胸が切なくなる気持ちだ
今、こうして抱きしめられているボクが感じているモノは堪らない充足感。眠ってしまいそうな安心がそこにあった
836: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:34:34.27 ID:VMpnn7XRo
ボーっと顔が熱くなっていく
弥生「どうかな?私、甘えさせられてる?」
剣「た、多分……慣れてないから分からないな」
弥生「そっか…私達はそんな共通点もあったんだね」
剣「ん?どういうことだ?」
弥生「お互い、甘え慣れてないんだなって。私にとって心を剥き出しに出来るのは、剣君だけだから」
弥生「剣君…お兄ちゃんだもんね。きっとあんまり甘えられてなかったんじゃないかな」
剣「………そうかもしれないな」
思わず感心してしまった
彼女が甘え慣れていないのは想像がついていたが、ボク自身も甘え慣れていないとは思っていなかった
全く意識していなかったが、ボクは心のどこかでこうして甘えたいという欲求を抱えていたのかもしれない
思えば、無意識の行動で彼女に甘える瞬間がいくつかあった
弥生「今は私がお姉ちゃんだからね。これからも、甘えたくなったら言うんだよ?」
剣「…そう…だな」
弥生「言わなくっても、いつでも抱きしめてあげるからね」
剣「ふふっ…なんだかいつもと変わらないな」
弥生「…だね」
ボク達は笑い合い、暫くそのぬくもりを堪能し合った
ボク達はあらゆる意味で反対で、どこか似たモノ同士らしい
つまりは、とても相性がいいらしい
それ以来、彼女に抱き付かれることも多くなったが
抱きしめられることも多くなった
837: ◆7m3grp2dM2 2016/12/18(日) 17:38:46.49 ID:VMpnn7XRo
以上が、弥生アフターでした
本当はこれから二週目といきたいところだったのですが、他に書きたいものが色々できてしまったのでこのスレはここで終わりたいと思います
実験的な恋愛話オンリーの内容のスレでしたが、思ったよりうまく回せてとても楽しかったです
またいつか同じスレタイで立てる時があると思います、その時にはどうぞお付き合いくだされば幸いです
ではでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました
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