1: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 02:52:44.77 ID:QHJrcHE50
深夜食堂風艦これSSです
艦娘の口調や深夜食堂的雰囲気が崩れてるかもしれませんが
よければどうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479491564

2: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 02:54:36.16 ID:QHJrcHE50
1日が終わり人々が家路へと急ぐ頃、俺の1日は始まる。

メニューは豚汁定食とビールと日本酒だけ。あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよってのが俺の営業方針さ。

営業時間は夜12時から朝7時頃まで。人は「深夜食堂」って言ってるよ。


客が来るかって? それが結構来るんだよ。


ガラガラ
川内「マスター!もう開いてる?」

神通「お邪魔します」

マスター「おう、いらっしゃい」


 この子は川内ちゃん、最近毎日のように来る子だ。
 もう1人は…


川内「今日は妹の神通を連れてきたんだけど…」

マスター「妹さんだったのか」

神通「味のある落ち着いたお店ですね」

マスター「なに、古いだけさ」

 
マスター「さて…ご注文は?」


3: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 02:56:26.14 ID:QHJrcHE50

神通「メニューは…豚汁定食、ビール、日本酒…これだけ…ですか?」

川内「頼んだら大体なんでも作ってくれるから」

神通「そうですか…うーん…なんでもいいと言われると…」

川内「じゃあ私が頼んでいい?」

神通「お願いします、姉さん」


川内「そうだなあ…いつものお茶漬けできる?」

マスター「あれでいいのかい?」

川内「うん!…ああその前に熱燗ね!」

マスター「あいよ」

4: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 02:59:18.72 ID:QHJrcHE50

コトッ
マスター「はい、お待ち」

神通「ありがとうございます」

川内「じゃあ飲もっか」



神通「最近、夜鎮守府で騒いでないと思ってたらここに来てたんですか」

川内「気まぐれに外を散歩してたらたまたま見つけてね」

神通「…マスターさん、姉がご迷惑お掛けしてないですか?」

マスター「いつもはそこの隅の席で静かに飲んでるよ」

神通「…本当ですか?」

川内「本当だよ!マスター嘘つくように見える?」

神通「ならいいですけど」

神通「夜な夜な鎮守府の外に出歩いてると聞いてついて来ましたが
   大丈夫なようですね」

川内「こう見えても分別はあるから」

神通「でしたら夜は静かにしてください」

川内「それとこれとは話が別!
   夜はテンション上がっちゃうの!」


 見た目の割に落ち着いた雰囲気の子だと思ってたが
 妹といる時は見た目相応の女の子って感じだな


6: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 03:02:43.12 ID:QHJrcHE50

川内「ふぅ、…マスター、お茶漬けはー?」

マスター「もうすぐできる」

神通「先程からお出汁のいい香りがしてますね…
   もしかして出汁茶漬けですか?」

川内「そ!ま、一味違うけどね」


コトッ
マスター「…はい、五目出汁茶漬けだ」

川内「うーん、これだよこれ!
   いただきまーす!」

神通「いただきます」

川内「何回食べても飽きないな~これは」

神通「具にもお出汁が染み込んでておいしいです」

川内「カレーもいいけどこれもいいよね~」


 この嬢ちゃんに豚汁に使う具でなにか酒の〆をって言われて作ったこれ
 他の客にも出すことがあるが好評だ

 

7: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 03:08:16.71 ID:QHJrcHE50

川内「ごちそうさま!マスター!」

神通「ごちそうさまでした」

マスター「お粗末さん」

川内「今日は私のおごりね」

神通「いいんですか?」

川内「いいって、いいって、私夜戦主義だから」

神通「意味が分かりませんが…」

川内「また来るよ、マスター」

マスター「待ってるよ」

 カウンターに2000円を置いて二人は帰っていった
 ガラガラ…と音を立てて戸が開いて閉まり、また静かになった
 神通ちゃんは丁寧に一礼していった

8: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 03:10:07.74 ID:QHJrcHE50

~数日後~


ガラガラ
マスター「いらっしゃい、おや…」

神通「お邪魔します」

マスター「今日はお一人さんかい」

神通「はい」

神通「私も時々夜戦主義になってみようかと思って」

マスター「常連さんが増えるのは歓迎さ」

マスター「…ご注文は?」

神通「では、ビールと…“いつもの”で」


マスター「…あいよ!」


第一話 「お茶漬け」

9: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/19(土) 03:11:41.58 ID:QHJrcHE50
お読みいただきありがとうございました
初めてのSSゆえ大変拙い文章かもしれません
数日おきにあと数人登場させるつもりです

14: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 02:45:10.77 ID://tiGfuo0
1日が終わり人々が家路へと急ぐ頃、俺の1日は始まる。

メニューは豚汁定食とビールと日本酒だけ。あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよってのが俺の営業方針さ。

営業時間は夜12時から朝7時頃まで。人は「深夜食堂」って言ってるよ。


客が来るかって? それが結構来るんだよ。


ガラガラ
マスター「いらっしゃい」

長門「久しいな、マスター」


 この子は長門、何年か前からの馴染みの客だ
 近所の鎮守府で、艦娘を束ね提督を補佐する“秘書艦”ってのをやってるらしい
 最近は忙しいのか来てなかったが…


ビスマルク「…“深夜食堂”ね」


 確か…ビスマルクっていったか
 初めてここに来た時は片言だった嬢ちゃんだ


長門「なんだ知っていたのか」

ビスマルク「…提督とかに連れられて何度かね」

長門「そうだったのか、…ビールでいいか?」

ビスマルク「…ええ」

長門「マスター、ビールを」

マスター「あいよ」


 ん?あの人影は…まあいいか


15: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 02:48:13.49 ID://tiGfuo0


~数時間前 執務室~

コンコン
提督「どうぞ」

ガチャ
ビスマルク「失礼するわ」

提督「ビスマルクか、どうした」

ビスマルク「…私を第一艦隊から外してほしいの」

提督「…理由を聞こうか」

ビスマルク「ここ一カ月の戦闘記録を見れば分かるでしょ?
      撃っても当たらない、そのくせ出撃の度に大破して帰ってくる。
      せっかく改装設計図まで使ってもらったのに…
      こういうの…“ゴクツブシ”って言ったかしら?」

提督「戦闘任務に支障が出ているという報告は上がっていない」

ビスマルク「でも!改二のある金剛たちの方が第一艦隊にふさわしいと…!」

提督「下がれ」

ビスマルク「Admiral!」

提督「下がれと言っている」

ビスマルク「っ…、ふん!失礼するわ!」

16: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 02:49:41.18 ID://tiGfuo0

コトッ
マスター「はい、お待ち」

長門「ありがとう」

長門「では、乾杯といこうか」

ビスマルク「何に乾杯するの?、…そんな気分じゃないわ」

長門「…それもそうか」

 
 少し険悪な雰囲気だ
 あいつの“予約”はそういうことだったのか


17: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 02:52:12.80 ID://tiGfuo0


~数時間前 戦艦寮廊下~

ビスマルク「(どうして!戦果を挙げられてない私なんて…
       主力の第一艦隊から外されてもおかしくないのに!)」

ビスマルク「(足を引っ張るだけなんて…そんなのイヤ…)」

長門「浮かない顔をしているな」

ビスマルク「!(そうだ!長門に頼めば…)」

ビスマルク「長門!お願いがあるの!」

長門「なんだ?」



長門「お前を第一艦隊から外すように私から…?」

ビスマルク「旗艦として思うところはあるでしょ?…最近の私について」

長門「ならば執務室へ行こう、艦隊編成の最終決定権は提督にある」

ビスマルク「…分かったわ」

18: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 02:54:52.66 ID://tiGfuo0


~数時間前 執務室~

コンコン
提督「どうぞ」

ガチャ
長門「失礼する」

ビスマルク「…」

提督「艦隊編成についてか?」

長門「察しが良いな」

提督「現状の編成を変更するつもりはない」

ビスマルク「…どうして?今の私は第一艦隊にふさわしくない!
      役に立たないのにその栄誉にしがみつくつもりはないわ!」

長門「ビスマルク!」

ビスマルク「“能力に基づいた合理的な編成”をするんじゃなかったの!?
      お情けで第一艦隊に組み込んでもらうのを望むほど私は…!」

提督「出撃する艦隊については最善の編成を行っている」

ビスマルク「……もういいわ」
バタン

長門「おい待て!」

提督「長門…あの時のことを思い出さないか?」

長門「…!、私が秘書艦になる直前ごろのことか?」

提督「今度はお前があそこに連れていってやってくれないか」

提督「それと…これを渡してくれ」

長門「これは…、いいだろう引き受けた」

提督「ありがとう」



トゥルルルル…トゥルルルル…ガチャ
提督「もしもし、マスター?…最近忙しくてね、申し訳ない
   …頼みがあってね」

19: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:11:51.83 ID://tiGfuo0

ビスマルク「それで…どうしてここに?
      ただ飲みに来たワケじゃないでしょう」

長門「私から話をしようと思ってな」

ビスマルク「…何も聞く気はないわ」

長門「ならばこれは私の独り言だ」

長門「…以前、一カ月程出撃しても敵を撃破できず
   帰投しては高速修復材の世話になることが続いた」

ビスマルク「!」

長門「秘書艦に指名されたのはそんな頃だった」

長門「私にはふさわしくないと、当時秘書艦だった伊勢にも、提督にも言った」

長門「でも取り合ってもらえなかった」

ビスマルク「…」

長門「今のお前と似たような状態で」

長門「ここに初めて来たのは秘書艦に正式に任命される直前だった」


 そういえば初めて来た時の長門も…
 今のビスマルクのように、疲れて、自信を失っているように見えたな


20: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:13:39.18 ID://tiGfuo0


~数年前 めしや~

ガラガラ
マスター「いらっしゃい」

伊勢「ビールと、つまみにアレお願い!」

マスター「あいよ」


長門「…なぜこのような所へ?」

伊勢「飲みニケーションってやつよ!座った座った」

長門「はぁ…」


コトッ
マスター「はい、お待ち」

長門「タコさんウィンナー!…ゴホン、失礼しました」

伊勢「ふふ…ささ、飲も!かんぱ~い」

長門「…乾杯」

21: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:14:43.09 ID://tiGfuo0

長門「秘書艦辞退の件考えて頂けませんか」

伊勢「まだ踏ん切りがつかない?」

長門「…はい、今の状態ではとても…」

伊勢「最近不調なのは分かるよ、でも…」
   あたしは適任だと思ってる」

伊勢「訓練では抜群の成績を叩きだしてる、真面目で優秀だけど優しさがある
   今や皆の憧れの的、あの厳しい古参の加賀ですらあなたのことは認めてるんだから」

長門「ですが実戦では…」

伊勢「悪いことばかり気にしてちゃ良くなるものもならないよ」

長門「…」

伊勢「あたしだって出撃でボロボロの時が続くことあるよ
   でもそんな時こそ、最高の自分をイメージする
   そして…前を向く
   ま、提督の受け売りだけどね」

22: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:16:51.45 ID://tiGfuo0

ビスマルク「最高の自分…」

長門「これを見ろ」


 そう言って渡したのは封のされていない茶封筒だった
 

ビスマルク「これは戦艦の訓練記録…?」

長門「そうだ、お前は実戦では振るっていないかもしれないが
   訓練における砲撃命中率、回避行動等で第二次改装された金剛型を凌ぐ成績を出している」

長門「…もう一つある」

ビスマルク「これは…改造計画書!どうして…」

長門「お前の艤装をもう一度精密に解析した結果、より強力な改装を施すと共に
   補助的ながら雷撃能力を付与できることが分かったらしい」

長門「これは一カ月程前から提督の指示で行われていたことだ」

ビスマルク「この二つを渡すことがここに来た目的…?」

長門「いや…そろそろ入ってきたらどうだ?
   
   …提督」

ビスマルク「えっ」

23: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:18:30.23 ID://tiGfuo0

ガラガラ
提督「バレていたか」

長門「バレバレだ」


 やっぱりあの人影はこいつだったか


提督「マスター」

マスター「あいよ」

ビスマルク「ど、どうしてここに…」

提督「俺はシュニッツェルを食べに来ただけさ」

ビスマルク「…!」

ビスマルク「(思い出した…こっちに来て日本の戦艦たちとの実力差に驚いて…
       プライドを砕かれて…やさぐれていた時に…)」

ビスマルク「(提督が初めてここに連れてきて…食べさせてくれたのは…)」

コトッ
マスター「はい、お待ち…カツレツだ」

提督「シュニッツェルと言ってくれ」

マスター「横文字は苦手なんだ」

提督「はは…、いただきます」

ビスマルク「…」

提督「どうした?冷めるぞ」

ビスマルク「え、えぇ…」

24: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:19:54.58 ID://tiGfuo0

提督「ごちそうさま
   二人の分も…釣りは要らないよ」


 そう言ってカウンターに3000円置いて帰っていった
 結局あいつはカツレツ…シュニッツェル食いに来ただけだった


長門「…本当に食べに来ただけか」

ビスマルク「いえ…伝わったわ、提督の気持ち
      もう…大丈夫」

長門「強くなったな」

ビスマルク「当たり前じゃない、もうあの頃の私とは違う…
      良いのよ?もっと褒めても」


 どうやら…丸く収まったみたいだな
 

25: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/21(月) 03:20:52.28 ID://tiGfuo0


~一カ月後 めしや~

伊勢「ビス子の調子が戻って改装後の慣熟も順調だけど
   何かしてあげたの?」

長門「私は、何も」

伊勢「どうせ提督が全部持ってんたんでしょうね~」

長門「(全てお見通しか)」

伊勢「それにしても変わんないよね~
   タコさんウィンナー大好きなの」

長門「これが私にとっての…シュニッツェルですから」

伊勢「…なるほどね」


第二話 「シュニッツェル」

34: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:05:54.75 ID:QAREcusU0
♪キミガハイータシローイイーキガイマユックーリカゼニノッテ
深夜食堂、始まります

36: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:07:33.53 ID:QAREcusU0
1日が終わり人々が家路へと急ぐ頃、俺の1日は始まる。

メニューは豚汁定食とビールと日本酒だけ。あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよってのが俺の営業方針さ。

営業時間は夜12時から朝7時頃まで。人は「深夜食堂」って言ってるよ。


客が来るかって? それが結構来るんだよ。

ガラガラ
瑞鶴「…ビールと、いつもの」

マスター「……あいよ」

葛城「瑞鶴先輩、ここが行きつけのお店なんですか?」

瑞鶴「ま、まあね」

葛城「すごいです!なんか大人って感じです!」

瑞鶴「そう?」

葛城「はい!」


 瑞鶴ちゃんは常連さん…ってわけじゃない
 実は前に一回しか来たことがないんだ
 だから“いつもの”と言われても分からないんだけどな

 だけど…どうやら連れの嬢ちゃんが“初めてできた後輩”みたいだ
 なんか見繕ってあげないとな


37: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:09:10.47 ID:QAREcusU0


~数日前~

ガラガラ
マスター「いらっしゃい」

瑞鶴「…メニュー、本当にあれだけ?」

マスター「食べたいもの言ってくれりゃあ、できるもんなら作るよ」

瑞鶴「うーん、じゃあ…卵焼き、うちの子よりおいしいのを」

マスター「…あいよ」 



コトッ
マスター「はい、卵焼きだ」

マスター「…何か飲むかい?」

瑞鶴「お酒、頼まなきゃいけないの?」

マスター「あ、いや…皆飲んでくから、つい癖でね」

瑞鶴「ふーん、…いただきます」



瑞鶴「あの…」

マスター「ん?」

瑞鶴「今度…初めてできた後輩、連れてきてもいい?」

マスター「構わないけど…どんな子なんだい?」

瑞鶴「葛城っていって…私のこと、“憧れの先輩”って言ってくれる子でね
   だから、ちょっとイイとこ見せたくて」

39: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:10:31.01 ID:QAREcusU0

コトッ
マスター「はい、お待ち…卵焼きだ」

葛城「いただきます!…う~ん、甘くておいしいです!」

瑞鶴「ビール飲む?」

葛城「一杯だけ…苦いの苦手で」

瑞鶴「注いであげる」

葛城「あ、ありがとうございます」

瑞鶴「じゃあ、乾杯ね」

葛城「はい!…うう、やっぱり苦いです…」

瑞鶴「……」


 平気な顔してるつもりだろうが…
 実は瑞鶴ちゃんもビール苦手なんじゃないのかい?




瑞鶴「ごちそうさま、千円でいい?」

マスター「ああ…お釣りは…」

瑞鶴「とっといて、…また来るから」

マスター「…そうかい、待ってるよ」

40: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:12:22.50 ID:QAREcusU0


~一週間後~

ガラガラ
マスター「いらっしゃい、…今日は一人かい?」

瑞鶴「うん」

マスター「また、ビールと、卵焼き?」

瑞鶴「ビールは…無しで」

マスター「あいよ」



コトッ
マスター「はい、お待ち」

マスター「…無理して飲んでたんだろ?あの時」

瑞鶴「…分かったの?」

マスター「この商売長いことやってると、客のことは大体分かるもんさ」

瑞鶴「……」

マスター「気持ちは分かるけどな、いつか…疲れちまうぜ」

マスター「あの子だって、飾った嬢ちゃんに憧れたわけじゃないだろう」

瑞鶴「そう…なのかな」

瑞鶴「私ね、本当に嬉しかったの、“憧れ”なんていってもらえて…
   葛城が来るまで私が一番後輩だったから…」

マスター「……」

瑞鶴「でも…なんか騙してるみたいだし
   今度また連れてくる、…あの…」

マスター「マスターって呼んだらいい」

瑞鶴「ふふっ、さーんきゅっ!、マスター」

41: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:13:56.29 ID:QAREcusU0


~数日後~

ガラガラ
マスター「いらっしゃい」

瑞鶴「…卵焼きと、なにかソフトドリンクを」

マスター「あいよ」



コトッ
マスター「卵焼きと…オレンジジュースだ」

葛城「先輩、今日はビール飲まないんですか?」

瑞鶴「実は…この前は無理して飲んでたんだ…
   私も苦いの苦手だから…」

葛城「……」

瑞鶴「来たのも二回目で、行きつけでもなんでもなかったんだ…
   葛城相手に、ちょっとかっこつけようと思って見栄張って…」

葛城「…そんなことしなくても瑞鶴先輩はかっこいいです!」

瑞鶴「…!」

葛城「訓練熱心で、空母のなかではあの加賀先輩と一、二を争うほど強い…
   そんな先輩に私は憧れたんです!」

瑞鶴「ホントに…?」

葛城「はい!」

瑞鶴「…ありがとね、葛城…ありがと…」

葛城「うわあああ、先輩泣かないでください!」


 弱いトコ見せてもついてきてくれる後輩がいるってのは幸運だ
 しっかり導いてやんな、瑞鶴ちゃん


42: ◆TJ9qoWuqvA 2016/11/24(木) 00:15:36.96 ID:QAREcusU0


~一カ月後~

伊勢「マスター、瑞鶴はここに来た?」

マスター「ああ…それがどうした?」

伊勢「な~んか、雰囲気変わったと思わない?あの子」

赤城「そうですね、加賀さんとも仲良くなったみたいです…少し」

伊勢「加賀は素直じゃないからなぁ~、…で、なにかしてあげたの?」

マスター「…俺はなんにもしてないよ、瑞鶴ちゃんが勝手に大きくなっただけさ」

伊勢「ふ~ん…ま、私のアドバイスで後輩が成長してくれるなら結構結構!
   いいんじゃない?」

マスター「もしかして…あの子にうちを紹介したのは…」

伊勢「んふふ…あ、マスター、熱燗追加で!あと…卵焼き」

マスター「…あいよ!」


第三話 「卵焼き」

引用元: 艦これ×深夜食堂