2: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:01:43.65 ID:KJpxSOXf
きな子「いただきますっす~。あー………むっ」パクッ

きな子「ん~っ♪」ンマンマ

かのん「おはよー」ガチャ

きな子「あ、かのん先輩!おはようございますっす!」

かのん「きな子ちゃん早いね。まだ誰も来てないでしょ?」

きな子「はい、きな子が一番乗りだったっす。朝早くに起きるのが癖になっちゃって、二度寝するのももったいないのでそのまま部室に来るようにしてるんすよ」

かのん「そっかそっか、無理しないでね」

きな子「はいっす!」モグモグ… っ1本大満足ボー

3: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:03:51.26 ID:KJpxSOXf
かのん「あれ、おやつ?」

きな子「あはは、かのん先輩ってば。いくらきな子でもこんなに早くからおやつは食べないっす、朝ごはんっすよ~」

かのん「……朝ごはん?それが?」ピク

きな子「? そうっすけど」モグ…

かのん「……………」

きな子「かのん先輩?」

かのん「ダーーーーーメっ!!」

きな子「ぅええっ!?な、なにがっすか!?」

4: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:06:28.76 ID:KJpxSOXf
かのん「そんなのは朝ごはんにならないよ!いつもそんなの食べてるの!?」

きな子「は、はい… その、手軽なんで…」

かのん「手軽とかで考えちゃダメ、朝ごはんは栄養第一なんだよ!」

きな子「で、でも、千砂都先輩も『こんなにまんまるでしかも手軽に食べられるなんて、たこ焼きは偉いね~』っていつも…」

かのん「ちぃちゃんのあれは99%丸なの!申し訳程度に適当な理由つけ加えてるだけだから真に受けちゃダメ!」

きな子「そ、そうなんすね」

6: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:08:59.66 ID:KJpxSOXf
かのん「きな子ちゃん、こっちでは一人暮らしだよね」

きな子「そうっすね」

かのん「ってことは、食事はみんな自分一人で管理してるんだ」

きな子「そう、っすね」

かのん「偉いね」ヨシヨシ

きな子「えへへ、えらいっす~♪」

かのん「でもそんなの食べて満足してるんだったら心配だよ、北海道のお母さん達にも申し訳が立たない!」

きな子「なぜかのん先輩がきな子の家族に申し訳を!?」

かのん「…よし」

かのん「きな子ちゃん、今週の土曜日は朝からうちに来て。朝7時!」

きな子「は… はいっす!!」ビシッ

*

7: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:11:04.87 ID:KJpxSOXf
土曜日、朝7時…


きな子 ウロチョロ…

きな子 (言われるがままに来たけど、ここ、かのん先輩のおうちでもあるんだよね。さすがに朝7時から呼び鈴鳴らすのは気が引けるかも…)

きな子 (っていうかお店の看板は『CLOSED』だし、呼び鈴みたいなのないし)

きな子 (裏とかに回って玄関の呼び鈴を…?裏口、裏口はどこ…) キョロキョロ

かのん「あ!」

きな子「!?」ビクッ

かのん「ごめんごめん、もう着いてたんだ。すぐ行くから待っててね!」

きな子「かのん先輩!?かのん先輩の声がするのに姿が見当たらないっす!」キョロキョロ

きな子 (…あっ かのん先輩のお部屋、二階…!) ハッ

9: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:13:38.59 ID:KJpxSOXf
かのん「ごめんね、待たせちゃった?」

きな子「いえ、着いたばっかりっす」

かのん「よかった。着いたよって連絡くれたらよかったのに」っスマホ

きな子「………そ、その発想はなかったっす…!」ガーン…

かのん「あはは、きな子ちゃんらしいね。この辺、座ってて」トン

きな子「し、失礼しまーす…」ソロ…

10: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:15:24.19 ID:KJpxSOXf
かのん「きな子ちゃん、コーヒー飲める?」

きな子「は、はいっ!」

きな子「き、きな子はトーキョーのハイブランドガールなので、無糖でもブラックでもストレートでもっ、どんなコーヒーでも飲めるっす!!」

かのん「…」

かのん「ふふ。アレルギーとかない?」

きな子「それは本当にないっす。エビもカニもタマゴも小麦も牛乳もラッカセイも蕎麦も、なんでも食べられるっすよ!」

かのん「さすがだね」フフ

11: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:17:42.53 ID:KJpxSOXf
かのん「もうこっちの生活には慣れた?」

きな子「ど、どうっすかね~… 人が多い中を歩くのは未だに慣れない感じっす…」

きな子「でもこの間、一人で竹下通りを端から端まで歩けたんすよ!」

かのん「わっ、すごいね!怖くなかった?」

きな子「怖かったっす…… 何度かのん先輩に電話しようかと思って立ち止まったことか…」

かのん「遠慮せずに呼んでくれてよかったのに。気になるお店とかあった?」

12: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:19:45.56 ID:KJpxSOXf
きな子「ありました!きな子の顔くらい大きな綿あめがあって、みんなそれを買ってたんす!こう、虹みたいにキラキラしたやつなんすけど、あれが天下の原宿なんすねぇ…」ポワ

かのん「じゃあそれ今度一緒に食べてみちゃおっか」

きな子「え………えええっ!そんなっきな子にはまだ、まだ、早いっす!畏れ多いっす!!」

かのん「そうかな?もうきな子ちゃんだって東京の人なんだから、挑戦してみていいんじゃないかな」

きな子「そ、そうでしょうか…」

かのん「うんうん。じゃー決まりっ、行こうね!」

きな子「か… かしこまりっす!」

13: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:22:28.05 ID:KJpxSOXf
きな子「ところで、かのん先輩はさっきから忙しなくなにしてるんすか?」

かのん「え?なにって、朝ごはんの用意だよ」

きな子「ああ、それは失礼したっす!こんなに早くから押しかけちゃって、朝ごはんまだだったんすね」ペコペコ

かのん「あはは、こんなに早くから来てって言ったの私だよ。それに私だけ先に食べちゃうわけないでしょ」

きな子「そうでしたっすね~」ヘヘ

かのん「まさかきな子ちゃんってば朝ごはん食べてきてないよね?」

きな子「はい、食べずに来るように言われたのでその通りにしました!牛乳の一杯も飲んできてないっす!」

かのん「げっ、飲み物も飲まずに来ちゃったの!?それはごめん!」

きな子「っすぅ?」

14: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:24:19.69 ID:KJpxSOXf
かのん「それじゃ先に飲み物だけ出しちゃおうかな」

かのん「はい、どうぞ」っカップ コト…

きな子「わあ…!頂いていいんすか!?」パァ

かのん「もちろん。そのために呼んだんだもん。むしろ飲み物まで我慢させちゃっててごめんね」

きな子「とんでもないっす!あれ、でもこのコーヒー、カップの半分くらいしか入ってないんすね。エスプレッソってやつっすか!?」

かのん「ふふふ、うちのカフェオレはエスプレッソじゃないんだよ。半分しか入ってないのは、まだ完成してないから」

かのん「跳ねちゃうかもしれないから、あんまり近づかないでね」っポット ス…

コポポポ…

きな子「わあ~………!!」

15: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:26:39.31 ID:KJpxSOXf
きな子「牛乳がコーヒーに溶け合っていって、とってもキレイっす…!」

かのん「はい、これで完成。私特製のカフェオレだよ。まだ熱いから気をつけてね」

きな子「はわぁ… こんな素敵な飲み物を頂いてしまってもいいものなんすか…」

かのん「そんなにたいしたものじゃないよ~。普段より浅煎りにしたし牛乳も多めに入れたから、コーヒーがニガテでも飲みやすいと思うよ」

きな子「!?」

きな子「き、きな子は別にコーヒー……」

かのん ニコッ

きな子「…いただきますっす…」クピ…

16: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:28:44.06 ID:KJpxSOXf
きな子「……ん!おいしい…!」

かのん「ほんと?よかった」

きな子「ほんとっす、おいしいっす!」

かのん「おかわりできる分もあるからたくさん飲んでね」

きな子「うぅ、こういうときコーヒーの味が~とかミルク感が~とか言えたらカッコいいんすけど…」

かのん「そんなの気にしないで。美味しいって、その一言が一番嬉しいんだから」

かのん「朝ごはんもそろそろできるからね」

きな子「ありがとうっす………ん!?」

17: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:30:56.10 ID:KJpxSOXf
きな子「かのん先輩!?」

かのん「うん、なに?」

きな子「きな子に朝ごはん作ってくださってるんすか!?」

かのん「えっ今さら!?そうだけど!?」

きな子「ど、どうしてそんな!」

かのん「それはきな子ちゃんにきちんとしたものを食べてほしいから… え、今までそれわかってなかったの?」

きな子「もしかしてきな子が今日呼ばれたのって、そのためっすか!?」

かのん「そうだよ!?」

18: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:33:27.27 ID:KJpxSOXf
きな子「………」パクパク…

かのん「…」

かのん「あ、そろそろいい感じかな」

きな子「っすぅ!?」ガーンッ

きな子「そんな… 普段からお世話になってるばっかりか、ごはんのことで心配かけて、しかもお休みの日に朝ごはんまで作ってもらっちゃうなんて……」

かのん「いいのいいの、私がお節介でやってることなんだから。さ、もうできるからね」

グゥゥ…

きな子「!!?」///

きな子「……メニューはなんすか…?」

かのん「今日のメニューはね」ニッ

19: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:35:57.43 ID:KJpxSOXf
フレンチトースト テテーン!

きな子「ほわぁぁあ………!!!」

かのん「フレンチトーストでーす!」

きな子「こっ、こ、これっ、食べていいんすかぁ!?」

かのん「もー、当たり前でしょ。きな子ちゃんが食べてくれないんだったら私が貰っちゃうからね」

きな子「だ、だめっす!食べるっす!」

かのん「甘さは控えめにしてあるから、お好みでハチミツかけてね」トン

きな子「こっちのはなんすか!?」

かのん「焼きりんごのコンポートとバニラアイスだよ。あ、シナモンとかニガテじゃなかった?」

きな子「大好きっす!」

かのん「ふふ」

20: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:39:06.74 ID:KJpxSOXf
かのん「おとなり失礼っ」スッ

かのん「冷めないうちに食べちゃお。いただきまーす」

きな子「い、いただきますっす!」

かのん「うん、美味しい!」

きな子 パク… モグ…

きな子「んんんっおいひぃいっすぅう~~♡」

きな子「ほっぺた落ちてなくなっちゃいそうっす~」

かのん「あはは、きな子ちゃん、ほんとに落ちちゃいそうなカオになってるよ」

きな子「それくらいおいしいんすよぉ、勝手にほっぺたがゆるんじゃって~♡」

21: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:40:34.69 ID:KJpxSOXf
かのん「家族以外に振る舞うの初めてだから、そう言ってもらえてよかった」

きな子「そうなんすか!?きな子はてっきりお店の看板メニューかと…!」

かのん「もう、おおげさだなぁ」アハハ

かのん「あ、ハチミツ借りるね」ヒョイ

かのん「~♪」

きな子 パクッ モグモグ…

きな子 (全然おおげさなんかじゃないのにな…) モグモグ…

22: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:42:37.57 ID:KJpxSOXf
きな子「ごちそうさまでした!」

かのん「お粗末様でした」

きな子「とんでもないっす!こんなに美味しいフレンチトーストは初めて食べたっす」

かのん「そんな風に言ってもらえたら作ったかいがあるよ。でもきな子ちゃん、パン焼くの好きなんだよね?だったらもっと美味しいフレンチトーストが自分で作れちゃうよ」

きな子「それは… そうかもしれないっすけど…」

きな子「きな子がどれだけ美味しいフレンチトーストを作っても、かのん先輩のフレンチトーストには敵わないんす!」

かのん「あはは、なにそれ~」

23: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:45:07.76 ID:KJpxSOXf
かのん「ね、きな子ちゃん。美味しい朝ごはんをしっかり食べたら、それだけでいい一日が始まるような気がしない?」

きな子「…しますっす」コク

かのん「そうだよね」

かのん「朝は少しでも長く寝たいとか、手軽なもので済ませたいとか、そう思っちゃう気持ちってよくわかるんだ」

かのん「でもほんの少し手間をかけるだけで素敵な一日を送れちゃうとしたら、それってすっごくいいと思うの!」

きな子「…はい!きな子もそう思うっす!」グッ

きな子「かのん先輩、ありがとうございましたっす!」ペコッ

かのん「どう致しまして。明日から一人でもしっかり朝ごはん食べてね」

きな子「肝に銘じるっす!」

24: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:48:49.20 ID:KJpxSOXf
きな子「…」

かのん「きな子ちゃん?」

きな子「…朝ごはんが大事なのはわかったし、しっかり食べていい一日を始めたい気持ちもあるんすけど」

きな子 (今日がこんなに素敵なのは、かのん先輩と一緒だったから。私一人じゃ、どんなに豪華で美味しい朝ごはんを食べたって──)

かのん「もう、きな子ちゃんってば。今からいい一日を始めようとしてるのに、そんな淋しそうなカオはなしだよ」ムニ

きな子「…っすぅ…」

かのん「うちのお店、土曜日は朝8時からなんだ」

きな子「そう、なんすね」

かのん「でも喫茶かのんだったら7時からやれるから」

かのん「またいつでも食べにおいでよ──ね」

きな子「!」パァァ

きな子「はいっす!!」

*

25: 名無しで叶える物語(しうまい) 2022/09/28(水) 22:52:02.74 ID:KJpxSOXf
きな子「──ってことがあったんすよ」ホワ

四季「………ふうん」

メイ「へー、そりゃよかったな」ムス…

夏美「朝7時にかのん先輩の家に行くって、それ何時起きですの?寝起きドッキリでもやらないと採算不釣り合い、私は勘弁ですの~」手ヒラヒラ

きな子「あれ、みんななんで興味なさそうなんすか!?美味しい朝ごはんでいい一日を~~……!」


次の日…


かのん「おはよう!わ、一年生みんな早いね──」

四季「おはようございます」モグモグ… っ1本大満足ボー

メイ「か、かのん先輩だって充分早いだろ」モグモグ… っ1本大満足ボー

夏美「…」モグモグ… っ1本大満足ボー

かのん「──みんな!!!???」ガガーーンッッ


おしまい

引用元: 【SS】きな子「美味しい朝ごはん」