1: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:29:30 ID:CEql
P「ああ、とある雑誌の企画でな。差し支えなければ教えてくれ」

文香「ええ。構いませんよ」

P「ありがとう。それで、どんな人だったんだ?」

文香「プロデューサーさんも……知っている人ですよ」

P「えっ、それってもしかして……」

文香「はい。わたしの叔父です」

P「マジか」

2: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:36:04 ID:CEql
いつからなんだ!?」

文香「幼稚園のころには……もう好きでした」

文香「いつも優しくて……たくさん……甘えさせてくれました」

P「優しそうな叔父さんだったもんな」

文香「ええ、とても」

P「それでどうなったんだ?」

3: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:37:15 ID:CEql
文香「優しく……フッてくださいました」

P「青春の痛みってやつだなぁ」

P「ありがとう文香。良い記事になりそうだ」

文香「お役に立てたなら」

文香「…………」

4: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:40:23 ID:CEql

文香(半分だけ……嘘をつきました)

文香(確かに……優しくはフッてもらえました)

文香(でも……)

文香(私にとっては……それを受け入れるのは、易しくはなかった……)

5: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:41:10 ID:CEql
文香(私には私と瓜二つの容姿を持つ母がいます)

私の父、母、そして叔父は幼なじみ

三人はいつもいっしょでした

6: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:41:43 ID:CEql
そして、二人の兄弟はいつしか母に恋心を抱きました

母も……二人の気持ちには気付いていました

しかし……母が選んだのは父でした

自身の兄に恋した人をさらわれた叔父はどんな気持ちだったのかは……彼のみぞ知る

7: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:42:18 ID:CEql
……なんの事はない。彼が私に優しかったのは……私に母の面影を重ねていただけじゃないか

彼は……初めから一度だって私の事など見ていなかったのだ

8: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:43:23 ID:CEql
そんな彼の店で働き……私の姿を見せつけているのは、私のささやかな復讐

9: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:43:54 ID:CEql
母は19歳で結婚したそうだ。ふふ……辛かろうに

そうしていつまでも母の影だけを追っていろ

永遠に私に魅とれ続けるがいい

10: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:44:31 ID:CEql
私のドス黒くよどんだ心の闇

まったく……嫌な女も居たものですね……

11: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:45:20 ID:CEql
醜い、醜い、醜い、醜い……

私は、醜い

12: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:45:59 ID:CEql
この時からだ、私が前髪を長く伸ばすようになったのは

誰かにまっすぐ見られないように

現実から目を背けるために

嫌な事を見にくいようにするために

13: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:47:38 ID:CEql
「自分だけを見てくれる人を愛しなさい」

彼が私をフッた時の言葉を反芻する

14: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:50:00 ID:CEql
この人なら……私だけを見ていてくれるのかな?

私にも……この人を愛する時が、いつか訪れるのかな?

私がこの人を愛したら……彼は私に愛を返してくれるのかな?

15: 名無しさん@おーぷん 22/10/21(金) 15:50:33 ID:CEql
「なんて事を……思ってみたり……」ふふっ


前髪を開きながら、私はそう独り言ちた


おわり

引用元: 文香「私の初恋の相手……ですか?」