1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/17(水) 22:32:30.65 ID:tjcLd06M0
ちゃぶ台と座布団があるだけの、狭い部屋。

クロコダイル「妙なところに来ちまった……」ガチャッ…

クロコダイン「ここはいったい……?」ガチャッ…

クロコダイル「…………」

クロコダイン「…………」

クロコダイル「なんだお前は?」

クロコダイン「人に名を尋ねる時は、自分から名乗るのが礼儀ではないか?」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 22:38:39.83 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「クハハハ、まさか畜生に礼儀を説かれるとは……」

クロコダイル「おれも落ちたもんだ……」

クロコダイル「実際のところ、おれはお前なんざに興味はねェ」

クロコダイル「あるのはここがどこで、どうやったら出られるかってことだけだ」

クロコダイル「いきなりわけの分からねェ光に包まれて」

クロコダイル「気づいたらこの部屋に通じるドアの前にいた」

クロコダイル「周囲の壁はなにをどうしようが、壊せやしねェ」

クロコダイル「……で、どうやったら出られる?」

クロコダイル「この場でお前をブチ殺せば出られるのか?」

クロコダイン「そんなことはオレにも分からん」

クロコダイン「オレとて友人と酒盛りをしようとしていたら」

クロコダイン「お前と同じように光に包まれてしまったのだからな」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 22:43:40.79 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「つまり、お前にも出る方法は分からねェと」

クロコダイン「ああ」

クロコダイン「期待にそえなくてすまないがな」

クロコダイン「少なくともオレとお前が敵対する意味は、全くないはずだ」

クロコダイル「クハハハハ……!」

クロコダイン「?」

クロコダイル「悪いがおれは、他人を信用するってのができねェ性分でな」

クロコダイル「初対面の奴に腹割って話させるにゃ、やはり“拷問”が一番だ」ヒュルルッ

クロコダイル「砂嵐(サーブルス)」

ビュアアアッ!

クロコダイン「ぐわああああっ!」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 22:48:36.24 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「グオオッ……!?」ミシミシ…

クロコダイン「なんだ、これは……砂の竜巻!?」ミシミシ…

ビュオアァァ……!

クロコダイル「能力は鍛えれば鍛えるほど強くなる」

クロコダイル「この狭い部屋で使える技は限られるが──」

クロコダイル「数百人はふっ飛ばせる砂嵐を、凝縮してお前にまとわせたんだ」

クロコダイル「こうなったらもう、たとえ巨人だろうが動けやしねェ」

クロコダイル「安心しろ。お前の図体なら死にゃあしねェだろうよ、多分」

クロコダイル「さて、お前が知ってることを洗いざらい吐いてもらおうか」

クロコダイル「これ以上、砂嵐の中で苦痛にもがきたくなきゃな」

クロコダイン「グ、グオオッ……」ググッ…

クロコダイル「!?」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 22:53:42.90 ID:tjcLd06M0
ビュオァァァ……!

クロコダイン「ウオオッ……!」ググ…

クロコダイル「ま、まさか……」

クロコダイン「グフフッ……やるではないか!」

クロコダイン「オレも長く生きているが、こんな技を喰らったのは初めてだ!」

クロコダイン「だがオレとて、いやしくも獣王と呼ばれた身!」

クロコダイン「これしきで音を上げるようなヤワな鍛え方はしておらんわァ!」

クロコダイン「グオオオオッ!」ムキムキッ

ブオァッ!

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 22:59:46.51 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「ぐ……!」

クロコダイル「まさか、馬鹿力だけで砂嵐(サーブルス)を弾き飛ばすとは……」

クロコダイン「いや……なかなかの技だったぞ」ゼェゼェ…

クロコダイン「大魔王バーンが滅びた後も、レベルを上げていなければ」

クロコダイン「オレは今も竜巻の中で、もがいておっただろう」

クロコダイル「ふん……図に乗るなよ」

クロコダイル「動きを封じるのが難しいんなら」

クロコダイル「四肢のどれかでも斬って、大人しくさせりゃあいい」

クロコダイル「砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)!」

ザンッ!

クロコダイン「グアアッ……!」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:05:00.85 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「グゥゥ……砂に剣のような切れ味を持たせるとは!」シュウゥ…

クロコダイル「なんだと!?」

クロコダイル(直撃したのに、あの程度のダメージとは──)

クロコダイル「不死身か、てめェ……!」ギリッ

クロコダイン「不死身などではない」

クロコダイン「もし不死身であったなら、オレはさっきの竜巻で動けなくなり」

クロコダイン「あるいは今の砂の刃で手か足を失っていただろう」

クロコダイン「人間も怪物(モンスター)も、いずれは死ぬ」

クロコダイン「だからこそ、生けとし生ける者は精一杯、己を高めるのだ!」

クロコダイン「このオレも! これほどの技を持つお前も!」

クロコダイン「そう──閃光のように!」

クロコダイル「わけの分からねェことを……!」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:09:31.01 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「オレとて武人のはしくれ!」

クロコダイン「理由のない闘いというのは好まんが」

クロコダイン「闘いを挑まれたなら、全力を以って応えるのみ!」

クロコダイン「ぬおおおおっ!」ムキムキ…

クロコダイン「グオオオオッ!」ボンッ

クロコダイル(腕の太さが、倍加した!?)

クロコダイル(なにをするつもりだ、このワニ!?)

クロコダイン「平和な世でも磨き続けたオレの得意技だ!」

クロコダイン「獣王会心撃ッ!」

ギュオオオオオッ!

クロコダイル「!?」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:13:46.30 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「ちいっ!」サラサラ…

ズオォォォンッ!

クロコダイル「くぅっ……!」サラサラ…

クロコダイル(砂化せずまともに喰らってたら、ヤバかったかもな……!)

クロコダイン「むっ!?」

クロコダイン(砂嵐や砂刃を作るだけでなく、自らも砂と化すことができるのか!)

クロコダイン「どうやら、ただの人間ではないようだな!」

クロコダイル「口をきくワニがなにほざいてやがる……」サラ…

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:17:53.00 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「獣王会心撃では、自在に砂となれるお前には効果が薄いようだ」

クロコダイン「ならば!」

クロコダイン「格闘による直接攻撃あるのみ!」

クロコダイル「バカが……」

クロコダイル「なにをどうやったら、そんな結論に至るか理解できねェ」

クロコダイル「てめェ、よく頭が悪いっていわれねェか?」

クロコダイン「おお、よく分かったな! いわれるどころか、自覚すらしている!」

クロコダイル「救えねェなァ……」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:22:38.94 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「いくぞぉっ!」

クロコダイル「フン、俺は自然(ロギア)系能力者……」

クロコダイル「馬鹿力じゃおれを殴れやしねェよ」サラサラ…

ブオンッ! ブウンッ! ブオンッ!

クロコダイン(くっ……まるで手応えがない!)

クロコダイン「ならばッ!」ブンッ

クロコダイル「何度もいわせんな……。馬鹿力じゃおれを殴ぺ」

ドゴォッ!

クロコダイル「ぐおっ……!?」ドザァッ

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:27:45.10 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「な、なぜだ……!? なんで殴れた!?」

クロコダイル「てめェからは“覇気”を感じなかったぞ!」

クロコダイン「覇気?」

クロコダイン「なんのことか分からんが、オレの拳には“闘気”がこもっている!」

クロコダイン「正直なところ拳が通じるのか不安だったが」

クロコダイン「闘気が通った拳であれば、どうにか通じるようだな!」

クロコダイル「闘気……!?」

クロコダイル(馬鹿力に加え、遠距離攻撃、覇気に似た攻撃手段も備えてやがる!)

クロコダイル(やれやれ……腰をすえてかからにゃならねェらしい……)


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:31:53.60 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「いいだろう、ワニ野郎……」

クロコダイル「砂の能力の真髄……“乾き”の恐怖を味わわせてやろう」

クロコダイル「おれの“右手”でな」スッ…

クロコダイン「来い!」チャポン…

クロコダイン(ん、オレの鎧の中になにか入っている……)チャポン…

クロコダイン(こ、これは!? ──そ、そういえば!)

クロコダイン「ちょっと待ってくれ!」

クロコダイル「あァ?」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:37:59.92 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「ここまでやり合っておいて、今さら“待った”もねェだろう」

クロコダイン「それはそうなのだが──」

クロコダイン「これ以上闘うと、まちがいなくビンが割れてしまうのでな」

クロコダイル「ビン?」

クロコダイン「ああ」

クロコダイン「今まで無事だったのが不思議なぐらいだ」スッ…

クロコダイン「ここに酒が一本ある」ドンッ

クロコダイン「どうだ、ここらで酒でも飲まんか?」ニカッ

クロコダイル「ふざけてんのか、てめェ……!」

クロコダイル「────!」ハッ


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:42:54.42 ID:tjcLd06M0
白ひげ『グララララ……!』

白ひげ『そういや、こないだ戦利品でいい酒を手に入れた』

白ひげ『どうだ、ここら辺にして酒でも飲まねェか』

白ひげ『ワニ小僧』ニヤッ



クロコダイル「…………」

クロコダイン(やはり無理か……?)

クロコダイル「ちっ、お前のおかげでイヤな野郎を思い出しちまった……」

クロコダイル「気が削がれた」

クロコダイル「戦闘中断だ」

クロコダイン「おう!」ニヤッ

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:49:37.07 ID:tjcLd06M0
クロコダイン「それにしても、オレたちをここに閉じ込めたヤツは気が利かん!」

クロコダイン「湯のみではなく、グラスを用意してくれればよかったものを!」トクトク…

クロコダイル「何に入れようと酒の味は変わらねェよ」

クロコダイン「グッハッハッハッ! それはそうだな!」トクトク…

クロコダイン「…………」グビッ

クロコダイル「…………」グビッ

クロコダイン「……っぷはぁっ!」

クロコダイル「フン……」


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/17(水) 23:53:42.65 ID:tjcLd06M0
クロコダイル「てめェがどこのだれかは分からねェが」

クロコダイル「これが安酒だってこたァ分かる」

クロコダイル「どんな国だろうが海だろうが、高い酒の味、安い酒の味ってのは」

クロコダイル「不思議と似通ってくるもんだ」

クロコダイン「口に合わなかったか?」

クロコダイル「……マズイとはいってねェ」

クロコダイン「…………」グビッ

クロコダイル「…………」グビッ

クロコダイン「…………」プハァッ

クロコダイル「…………」フゥ…


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:00:20.24 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「ところでお前、なんで酒なんか持っていやがったんだ」

クロコダイン「最初に話しただろう」

クロコダイン「オレは友と酒盛りをするところだった、と」

クロコダイル「そんなもんを、ここで飲んじまっていいのか?」

クロコダイン「あれ以上闘って、飲まずに台無しにするよりはマシだろう?」グビッ

クロコダイル「ちげぇねェ……」グビッ

クロコダイン「…………」

クロコダイン「ところで、オレの名前はクロコダインという」

クロコダイン「元々は魔王軍に属していたが、今は人間のために働いている」

クロコダイン「お前の名前は?」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:06:59.48 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「……おれの名はクロコダイル。海賊をやってる」

クロコダイン「クロコダイル……おお、オレと名前がずいぶん似ているな!」

クロコダイン「しかし、砂を操る力を持ちながら海賊とは、難儀な道だな」

クロコダイル「うるせェよ」

クロコダイル「ところでお前、さっきから平和な世だの、元は魔王軍だのといってたが」

クロコダイル「今はもう、闘ってはいねェのか」

クロコダイン「ああ、鍛錬は怠っていないがな」

クロコダイル「野心はねェのか」

クロコダイン「野心?」

クロコダイン「あったとも」

クロコダイン「だからこそ、オレはかつてとんでもない過ちを犯した……」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:12:09.91 ID:8oJQZUNx0
クロコダイン「かつてオレは、魔王軍の六大団長の一人に数えられていた」

クロコダイン「人間たちを滅亡させ、武人としての名誉を高めることこそ」

クロコダイン「我が使命だと信じていた!」

クロコダイン「だが、オレは野心ゆえ目先の勝利に心を奪われ──」

クロコダイン「卑劣極まる戦法に走り、“勇者”と呼ばれる少年たちに敗れ去った……」

クロコダイン「そしてオレは彼らの勇気や友情、絆といったものに心を打たれ」

クロコダイン「微力ながら、人間たちの味方につくことにしたのだ」

クロコダイン「やがて激しい闘いの末、大魔王は勇者によって討たれ──」

クロコダイン「今オレは、人間や怪物(モンスター)たちと楽しくやっているよ」

クロコダイル「クッ……」

クロコダイル「クハハハハハハ……!」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:18:03.92 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「今の話、聞こえはいいが」

クロコダイル「ようするにガキに負けて、地位も名誉も失って、怖気づき」

クロコダイル「野心を捨てちまったってだけの話だ……!」

クロコダイル「卑劣な戦法? 結構なことじゃねェか」

クロコダイル「およそ強さを誇示して生きる者にとって、勝利はなによりも優先される」

クロコダイル「勝たなきゃなにも始まらねェ……!」

クロコダイル「そんなことをいちいち気にしてるから、てめェは無様に敗れたのさ」

クロコダイル「世界を手中にでも収めようって軍団の一翼を担ってた男が」

クロコダイル「ガキに敗れ、全てを失い、今や酒盛りがせいぜいの楽しみとはな……」

クロコダイル「他人事ながら笑える話だ……!」

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:22:49.44 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「クハハハハ……クロコダイン」

クロコダイル「今を楽しくやっている、なんて自分を慰めちゃいるが」

クロコダイル「しょせんお前は、しがない負け犬だ」

クロコダイン「フフッ……なんといわれようとも、オレはそうは思わん」

クロコダイル「なんだと?」

クロコダイン「オレは男の価値というのは──」

クロコダイン「どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まると思っている」

クロコダイル「…………」


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:30:31.62 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「まったくてめェみたいのを見てると、“傷”がウズいてしかたねェ!」

クロコダイル「過去へのこだわりを捨てる!?」

クロコダイル「クハハ……捨ててどうなる!」

クロコダイル「捨てようが忘れようが、過去ってのはどうにもならねェもんだ!」

クロコダイル「一度恥を晒せば、死ぬまで笑われ、蔑まれる!」

クロコダイル「過去のこだわりを捨てるなんてのは」

クロコダイル「てめェの“戦歴”から目を逸らす、負け犬の論理……!」

クロコダイル「おれもかつては“力”を欲し、ある国を乗っ取ろうとした……」

クロコダイル「だが、ある小僧どもにしてやられ、全てを失った……!」

クロコダイル「この手で殺すと決めてたジジイも、くたばって勝ち逃げしやがった!」

クロコダイル「一度泥にまみれたヤツは、もう金メダリストにゃなれねェのさ!」

クロコダイル「それが“世界”ってもんだ!」

クロコダイル「過去を捨てようが何しようがな!」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:36:57.25 ID:8oJQZUNx0
クロコダイン「いいじゃないか!」

クロコダイル「!」

クロコダイン「笑われようが、蔑まれようが、泥にまみれようが──」

クロコダイン「恥をとりつくろって、過去の栄光や汚点にとらわれ生きるより……」

クロコダイン「皆に笑われ、泥まみれになりながら己なりの金メダルを目指す!」

クロコダイン「その方がずっと美しい!」

クロコダイン「もしそれが負け犬というのなら、オレは喜んで負け犬の人生を選ぶ!」

クロコダイル「…………!」

クロコダイン「それを気づかせてくれたのが……オレを打ち破った少年たちだ」

クロコダイル(泥まみれで……金メダルを目指す、か)

クロコダイル(一瞬“麦わら”を連想した……バカかおれは)

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:43:40.51 ID:8oJQZUNx0
クロコダイン「それに……なにもオレは野心を捨てたわけではないぞ?」

クロコダイル「ほう?」

クロコダイン「なんたってオレはまだ独り身」

クロコダイン「これから、可愛い嫁を探さねばならんからな!」

クロコダイン「グッハッハッハッハ……!」

クロコダイル「ちっ、真剣に聞いて損した……」

クロコダイン「ハハハ、すまんな。最後の最後で締まらなかったようだ」

クロコダイン「おっと、酒ももうなくなってしまったか」ピチョン…

クロコダイル「フン、もう十分酔った……」

クロコダイル「ワニの戯れ言に耳を傾けちまうぐらいにな」

すると──

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:48:40.41 ID:8oJQZUNx0
ガチャッ……

神「おめでとう」

クロコダイル(ドアが……)

クロコダイン(開いた……)

クロコダイル「……何者だ?」

クロコダイン「お前も、オレたちのように光に包まれてここに来たのか?」

神「私は……神だ」

クロコダイル(コイツが……神?)

クロコダイン(神だと……!?)

神「君たちをこの部屋に呼び寄せた、張本人だ」

神「なお、君たちの世界で語り継がれる神とは“別物”と理解しておいてくれ」

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:53:47.11 ID:9ENA3ux20
神「私だ」

クロコダイル「お前だったのか」

クロコダイン「また騙されたな」

クロコダイル「全く気付かなかったぞ」

クロコダイン「暇を持て余した」

クロコダイル「神々の」

神・クロコダイル・ン「遊び」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 00:54:34.01 ID:8oJQZUNx0
神「君ら二人は、もう十分心を通わせ合った」

神「よってこのドアの外にある出口から、それぞれの世界に戻ってよい」

神「なお、この空間では時間は完全停止しているので」

神「不在中の心配などはしなくてよい」

クロコダイル「いきなり出てきて何を抜かすかと思いきや……」

クロコダイル「死にてェらしい……!」シュルル…

クロコダイン「落ちつけ、クロコダイル」

クロコダイン「神よ、いったい何故、我々二人をここに呼び寄せたのだ?」

神「神とは、常に世界に刺激を与える義務がある」

神「よって時折こうやって、全く異なる世界に生きる者二名を選別し」

神「交流させることで、異なる世界同士にわずかながら絆を結ばせるのだ」

クロコダイル「下らねェ……」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:00:00.15 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「今すぐにでも、てめェをブチ殺してやりてえが──」

クロコダイル「クロコダインとやり合ったばかりで、しかも酒も入ってる」

クロコダイル「ここは大人しく戻ってやる。命拾いしたな」

クロコダイン「フッ……そうだな」

クロコダイン「オレも久しぶりに、骨のある相手と闘うことができて満足している」

クロコダイン「神よ、ありがとう……!」

神「なに、礼をいわれるようなことではない」

神「互いの世界に戻ったら、二度と会うことはないかもしれんが」

神「君たちがこの部屋で培ったものを、決して忘れないで欲しい」

クロコダイル「……ところで最後に聞いておきたいんだが」

クロコダイル「神、なんでお前はおれら二人を選んだ?」

クロコダイン「そうだな。オレもそれが気になっていた」

神「理由は簡単だ」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:05:40.10 ID:8oJQZUNx0
神「だってさ──」

神「クロコダイルとクロコダインって名前似すぎじゃん!」

クロコダイル「…………」

クロコダイン「…………」

クロコダイル「砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)ッ!」ズバァッ

クロコダイン「獣王会心撃ッ!」ギュオオオッ



神「まったく!」

神「いい人生だった!!!」ドン!



神「ぐわああああああーっ!!!」



85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:10:39.35 ID:8oJQZUNx0
クロコダイル「あんなのが神とは……アホらしすぎて言葉もねェ」

クロコダイン「どこかにふっ飛んでいってしまったな」

クロコダイン「ドアも開いたままだし、これで我々はいつでも帰れるのだろうが──」

クロコダイン「どうだクロコダイル、最後に一勝負せんか?」

クロコダイル「勝負?」

クロコダイン「勝っても負けても恨みなし、一発勝負だ」

クロコダイン「どうだ?」

クロコダイル「……いいだろう」

クロコダイル「このまま帰るんじゃ、アホにハメられて酒飲んだってだけだからな」

クロコダイル「ワニを一匹、血祭りに上げるくらいの土産話がねェと締まらねェ」



90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:16:21.78 ID:8oJQZUNx0
クロコダイン「クロコダイル……」

クロコダイン「最高の技でこい……!」

クロコダイル「クハハハ……安心しろ」

クロコダイル「あいにくおれに、てめェに手加減してやる義理はねェよ」

クロコダイン「フッ……いうではないか! では遠慮無用!」ググ…

クロコダイン「ぬおおおおっ!」ボンッ

クロコダイル「いくぞ」サラサラ…



クロコダイル「砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)!!!」ゴォアッ

クロコダイン「獣王激烈掌!!!」ギュオアッ

ドォォォンッ!!!

───
──



93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:23:58.78 ID:8oJQZUNx0
その後──

クロコダイン(ここは──元の世界に戻ってこれたのだな)

バダック「クロコダイン! ど、どうしたんじゃ!?」

バダック「急に傷だらけになりおったが、なにかあったのか!?」

クロコダイン(急に傷だらけ……? そうか、あの空間は時間が停止していたのだった)

クロコダイン(じいさんは、オレがいなくなったことを認識していないということか)

クロコダイン「いやなに……骨のある男とちょっと勝負をしただけだよ」

バダック「骨のある男? ダイ君のような男かね?」

クロコダイン「いやダイというよりはむしろ──」

クロコダイン「……ハドラーかな」

バダック「ハドラー!? とんだ悪党じゃな、そいつは!」

クロコダイン「それよりすまん、じいさん」

クロコダイン「オレが持ってきてた酒が、すっからかんになってしまった」

バダック「ああーっ!? 抜け駆けして先に飲みよったな!?」

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:29:38.40 ID:8oJQZUNx0
ダズ「ボス、今の一瞬でいきなり負傷して……なにがあったんです? まさか能力者?」

クロコダイル「いや、なんでもねェ。気にするな」

ダズ「分かりました」

ダズ「ところでボス。ボスと“新世界”に入ると大言吐いといて情けねえ話ですが──」

ダズ「おれは先の戦争で、大した武勲も上げられなかった」

ダズ「果たして、この先ボスの足手まといにならずに済むかどうか──」

クロコダイル「ついてこないなら来ねェでいいし、足手まといになったら捨てる」

クロコダイル「それだけのことだ、気にするな」

クロコダイル「それにな……男の価値ってもんは」

クロコダイル「どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まるもんだ、ダズ」

ダズ「……ありがとうございます、ボス」

ダズ「でもなんだか今の言葉、なんとなくボスっぽくなかったですね」

クロコダイル(やっぱりいうんじゃなかったぜ……)

───
──


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします::2013/07/18(木) 01:35:35.34 ID:8oJQZUNx0
──
───

天使「神様の容体は?」

医者天使「一応神なので、死ぬことはありませんが……」

医者天使「かなりの重傷なので、励ましの言葉でもかけてあげて下さい」

天使「……だからあれ程いったんですよ、神様」

天使「名前が似てるってだけで、人を呼び寄せるのはやめろって」

神「うぅ……天使よ」

天使「はい?」

神「愛してくれて……ありがとう!」

天使「あなたを愛してる人なんて、どこにもいませんよ」

神「ぐわああああああああーっ!!!」