事務所


早苗「今日は事務所の掃除ね。普段からこまめに掃除してたら大掃除しなくて済むから」

光「だがうちの事務所は綺麗な方だと思うんだが……」

早苗「見えないところに汚れは溜まるものなのよ。ほら、まずはＰ君のデスクを見てごらん」


ｺﾞﾁｬｧ…


光「書類の山が出来てるな」

早苗「１００人以上を１人でプロデュースしてたら仕方ないのかもしれないけどね。まずはここを整理するわよ。書類の種類を分けてファイルに綴じる。いい？」

光「ああ！」

早苗「これは契約書。これはスケジュールね」

光「すごい量だな……。まったく減った気がしない」

早苗「Ｐ君も暇を見付けたら片付ければいいのにねぇ。まあ暇なんかないだろうけど」

光「ずっと走り回ってるからな」

早苗「だからこうしてあたしたちが掃除してるんだけどね。契約書、履歴書、婚姻届、契約書」

光「……ん？」

早苗「待った。なんか紛れてたわね」

光「なんだこれ？　和久井さんの名前が書かれてるぞ？」

留美「あら、そんなところにあったのね。ずっと探してたのよ」

早苗「留美ちゃん、こんなのＰ君のデスクに置いてちゃダメよ？　うっかり判子押したらどうするの」

留美「ごめんなさい。そうなった場合は責任を取るわ」

早苗「そうならないように注意して。これ警告９回目よ？」

留美「人間だもの。失敗くらいあるわ」

早苗「前も同じこと言ってたわね。まあいいわ、次は気を付けなさいよ」

留美「善処するわ」

早苗「またあったらマイナス１０Ｐで掃除するからね」

留美「怖い怖い。あまり怒ると小皺が増えるわよ。それじゃ、掃除される前に撤退しましょう」ﾊﾟﾀﾝ


光「」ﾊﾗﾊﾗ

光「や、やっぱり本物の掃除風景は凄まじいな……」

早苗「まだ今日は可愛い方よ。前にＰ君ち乗り込んで実印探してたし」

光「和久井さんの印象が変わりそうだ……」

早苗「掃除屋やってたら日常茶飯事よ。ほら、次は光ちゃんが片付けてみよっか」

光「何をすればいいんだ？」





輝子「フヒ……」ﾜﾗﾜﾗ

乃々「……」

早苗「デスクの下に隠れてる子たちの除去」

光「任された！」ﾌﾞﾁﾌﾞﾁ


ﾏｲﾌﾚｴｪｪｴﾝｽﾞ!!　ﾑｰﾘｨｰ…

早苗「よし、上も下も片付いたし次に行きましょうか」

光「次はどこだ？」

早苗「男トイレよ。Ｐ君と社長しか使ってないから掃除が行き届いてないからね」

光「確かに普段はアタシらが入ることはないもんな」ｶﾞﾁｬ

早苗「あら、思ったより清潔ね。まるで誰かが掃除したみたい」

光「早苗さんじゃないならＰか社長じゃないか？」

早苗「あの２人はそんな綺麗好きじゃないのよ。大方この持ち主でしょ」ｶﾞｼｯ

光「ああ……」





早苗「亜里沙ちゃん、トイレにウサコ忘れてたわよ」

亜里沙「あら？」

亜里沙「やだわたしったら。ごめんねウサコちゃん」

ウサコ「ひどいウサー。大事にしないと怒るウサよー」

亜里沙「ごめんなさいってば」

ウサコ「仕方ないウサね。今回だけ許してあげるウサ」

亜里沙「ありがとうウサコちゃん♪　大好きよ」

ウサコ「照れるからよすウサー！　あ、ほら、もうすぐお仕事の時間ウサ」

亜里沙「あらほんと。急いで支度しなくちゃ。それじゃあね、早苗さん。光ちゃん」





早苗「ウサコちゃんの中に仕込んでる小型カメラは置いていこっか」

亜里沙「チッ……」

早苗「亜里沙ちゃんマイナス６Ｐ……と」ﾒﾓﾒﾓ

光「なにそのメモ帳」

早苗「んー？　誰が何回ルールを破ったか記載してるのよ。マイナス１０Ｐで懲罰房(レッスン場)行き」

光「最近事務所のレッスン場が使用出来ない理由はそれか……」

早苗「あんまり酷い子は独房(早苗宅)に入ってもらってるけどね。見たい？」

光「もう少しタフな神経になったらお邪魔させてもらうよ……」

早苗「そ。じゃあ次はシャワー室にいこっか。もちろん男性用の方」

光「承知した！」

早苗「Ｐ君、最近はここで済ませてるらしいから水垢とかひどいかも」

光「Ｐの家にも風呂くらいあるだろう」

早苗「養殖場になってたからね、きのこの。この前掃除したから多少はマシになってるはずだけど」

光「Ｐも災難だな」ｶﾞﾁｬ

輝子「フヒ……」ﾊﾞｯ

早苗「どいて。入れないじゃない」

輝子「こ、ここから先は行かせない……」

早苗「どかないならお掃除するわよ？」

輝子「フ、フヒ……。だ、だめ……、トモダチ守らなきゃ……。ど、どうしても通るというなら…………ゴオオォォオオオトゥゥウウウヘエエェェエエエルッ！」

早苗「うるさい」

輝子「あ……スイマセン……」

早苗「きのこっのーこーのこ元気な子」ﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

光「えりんーぎまいたけぶなしめじ」ﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

きらり「ワルい子は向こうに連れてくゆー☆」


ﾉｵｫｫｵﾏｲﾌﾚｴｴｪｪｴｴﾝｽﾞ!


早苗「デスク下に飽きたらず新しい繁殖所作ってたとはね」ﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

光「あのあくなき執念が違う方向に向かえばいいんだけどな」ｷｭｯｷｭｯ

早苗「あれで自分を曲げないタイプだから難しいだろなー」ｷｭｯｷｭｯ

光「秋でもないのにこうもきのこ狩りすることになるとは」ｷｭｯｷｭｯ

早苗「貴重な経験だと割り切るしかないわね。よしっ、掃除完了」

光「待って早苗さん。これ取れない」ｷｭｯｷｭｯ

早苗「ああ、それは無理。あたしでも掃除出来ない頑固な汚れだから」

光「早苗さんでも無理なら誰も除去出来ないな……」

早苗「うーん……」





いつでも 見守ってます


早苗「歌鈴ちゃんか持ち主の小梅ちゃんなら取れるかも」

光「血文字とか殺人現場さながらなんだが」

早苗「ここで普通に髪や身体洗ってるＰ君も凄いわよね」

光「精神が図太いとかいう問題じゃない気がしてきた」

早苗「仕事以外には無頓着なのよ、きっと」

早苗「それじゃ、次は会議室ね」

光「そこもするのか？」

早苗「意外なところに汚れはある。今までで分かんなかった？」

光「それは重々分かったつもりだが、さすがに会議室は……」ｶﾞﾁｬ





ちひろ「次の商品はプロデューサーの上着！　しかも今朝仕入れたばかりの一級品です！　１０００ｍｃから！」

智絵里「１５００……」ｵｽﾞｵｽﾞ

未央「甘い！　２０００！」

凛「１万」

未央「」

桃華「５万ですわ」

凛「１０万」

巴「１１万じゃ」

未央「」



光「……」ﾊﾟﾀﾝ

早苗「あいちゃんときらりちゃんと真奈美ちゃん呼んできて。大掃除しなきゃダメみたいだし」

光「あいわかった……」

　………
　　…


早苗「殲滅戦よ。参加者は懲罰房行きで主催と犬は独房行きね」

あい「彼女たちの辞書に懲りるという文字はないのだろうか」

きらり「あるならきらりたち用済みだゆー☆」

真奈美「そういうことだな」

光「あれ、アタシも入ってる？」

早苗「新入りだからって仕事放棄は許さないわよ。じゃあカウント」

真奈美「３、２、１」ﾊﾞﾀﾝ!

早苗「掃除屋だ！　大人しくお縄にかかれ！」

ちひろ「ちっ」ｻｻｯ

凛「下着仕入れたんだ。もうここに用はない」ｶﾞｼｬｰﾝ

未央「え？　え！？　あ、ちょ。りーん！？」

早苗「２階から飛び降りるとは……。窓ガラス代は弁償させないと」

光「早苗さん感心してないで助けて！」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

巴「討ち入りたぁええ根性しとるやないか……！」ｸﾞｸﾞｯ…

きらり「きらりんぱわー☆(物理)」

未央「ごふっ！？」

あい「傷付けたくはないんだ。大人しく投降してくれるね？」

智絵里「」ｺｸｺｸ
桃華「」ｺｸｺｸ

早苗「掃除屋なら１人でなんとかしなさい、先輩見習って」

光「そこまでの戦闘力はまだ備わってないぞ！？」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

真奈美「いつの間に隠し扉なんか作ったのかな。すまん早苗くん、逃げられた」

早苗「証拠品も綺麗に片付けての逃走かぁ。暗黒側に堕ちてなければいい掃除屋になれたでしょうに……」

きらり「わんちゃんどうすゆー？」

早苗「別働隊の友紀ちゃんに任せよっか。連絡入れとく」

あい「この子たちは懲罰房行きでいいのかい？」

智絵里「うぅ……」
桃華「いつかお父様に……」
未央「」

早苗「反省してない子もいるみたいだし連れてっといて。あとで内面のお掃除するから」

あい「了解」

光「おーい！？」ｸﾞｸﾞ…

　
　………
　　…


凛宅


ﾊﾞﾀﾝ

凛「ふう……。ここまで逃げたらもう一安心だね。ちひろさんが参加者名簿を見せる訳ないし、あとはシラをきればなんとかなる。ふふ、でもこの下着のためならこんなの苦にもならないよ。とりあえず匂い嗅いで舐めて……ふふ」ｶﾞﾁｬ





友紀「フレー！　フレー！　キャーッツ！」

凛「」

友紀「ん？　あ、お邪魔してるよー」

凛「え、か、鍵……掛けてたのにどうして……」

友紀「そこ」ﾁｮｲﾁｮｲ

凛「え？」


窓ｽｶｰﾝ


凛「」

友紀「バットは万能なんだよ」



ﾏｹﾅｲ､ﾜﾀｼﾊｧ!

早苗「うんうん、お疲れ様。じゃああたしの家に送っといて。はーい」ﾋﾟｯ

光「」ｾﾞｪｾﾞｪ…

早苗「だらしない！　と普段なら言うとこだけど初日だもんね。お疲れ様」

光「そ、掃除屋がここまでハードだとは……」

早苗「これでも今日はマシな方よ？　強敵のまゆちゃんと千枝ちゃんはＰくんとお仕事に行ってるし」

光「これでか……」

早苗「まあまあ。あとはＰ君用の仮眠室で終わりだから、あと少し頑張りなさい」

光「まだあるのか！？」

早苗「まあ仮眠室は基本的に楽だから心配しないで」

光「楽の基準が分からなくなってきてるんだが……」

早苗「いや本当だって」ｶﾞﾁｬ





ありす「んっ……」ｽﾝｽﾝ

加蓮「はぁ……Ｐさんの匂いでいっぱい……」ｽﾝｽﾝ

響子「また脱ぎ散らかして……、畳まなきゃ……」ｽﾝｽﾝ



早苗「警戒心無くなってる子たちを縛るだけの簡単なお仕事だから」

光「アタシこの事務所の悪をナメすぎてたんだなって、今更になって思い知らされたよ……」

　………
　　…


早苗「じゃあ今日はここまで。明日からもビシビシ鍛えていくから覚悟してね？」

光「ああ……、これも一人前の掃除屋。しいてはヒーローになるためだもんな。よろしくお願いします！」

早苗「うんうん、元気でよろしい。それじゃあ、あたしは捕まえた子たちをシメ――説教しなきゃいけないから。じゃあね」

光「お疲れ様でした！」



掃除屋に休まる暇などない。
例え見返りが無くても洗浄し続けなければならない。
だが負けるな早苗一同！
いつか報われるその日まで！





光「疲れた……。ん？　Ｐのロッカーが開いてる……？」

？「……なんですか。ボクは忙しいんですから用が無いなら閉めていって下さい」ｽﾝｽﾝ

光「……掃除屋でーす」

？「！？」



おわり