──





『えぇーっ!? ダイヤ、スクールアイドルやるって本気!?』

『もちろん、冗談で言ってるつもりはありませんわ』

『でも、アイドルなんて興味なかったじゃん! それにこの学校にそんな部活は……』

『申請すればいいでしょう』

『申請って、部を立ち上げるってこと?』

『ええまあ、きちんと活動できるということを証明すれば問題ないでしょうし』

『無茶言うなあもう……』

3: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:22:48.91 ID:ey7FUO/S

入学式も終わって

いよいよ辺境での新しい学校生活がスタートしようとしていたその矢先に

ふと、私の耳に偶然入ってきたのがそんな会話だった


スクールアイドル、聞いたことがある

確かここ日本ではかなりポピュラーなアイドル活動で、希望者も年々増加しているほどの流行りぶり

特に女子高生の間では話題に事欠かない、と言っても大袈裟ではないくらいの一大ジャンル

私もあまりその手のものに詳しくはないけど、それくらいは分かる


でも……

4: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:23:58.90 ID:ey7FUO/S
『無茶などではありませんわ、とにかくやると言ったらやりますから』

『一人で?』

『いけませんか?』

『それは流石に無理があるでしょ、ただでさえ素人なのに』

『私も手伝うよ』

『いや、それは……』

『遠慮しないの』

5: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:25:01.46 ID:ey7FUO/S

さっきも言ったようにこんな辺境でド田舎の、しかも廃校することが既に決まっているこの学校でスクールアイドルなんて

何なのあの子、賢そうで実はバカだったりするの?

けどその場のノリで言ってるようにも見えないし、寧ろ気軽に入る部活にしては真剣すぎるくらい

うーん、よく分からないわねあの堅物ちゃん

……少し興味が出てきた

6: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:25:29.74 ID:ey7FUO/S
『でもどうするの? 活動の証明っていったらライブは絶対やらなくちゃだし』

『そのためには曲を作らないといけないわけじゃん、ダイヤ作曲出来るの?』

『えっと、それは……』

『ふーん、まあいっか。それは追々い考えれば』


真面目なくせに準備不足で気合い空回りの堅物ちゃんに

のほほんとしてるお気楽で能天気そうな、発育上等ポニーテールちゃん

フフッ……中々いいじゃない。

7: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:26:06.96 ID:ey7FUO/S
『ちょっと失礼』ムニッ

『……はい?』

『え……ちょっ、はあ!?』

『うーん、思った通り素晴らしい感触』フニフニ

『な、ななないきなり何やってんの!?』

『大きいのは見て分かったから、次は弾力を確かめたくて』モミモミ

『しっかも、なんで続けてるの!! ちょっと……ぁん……っ……いい加減に、離れて!!』

『あらら、ざーんねん』

8: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:26:44.80 ID:ey7FUO/S
『こ、こんなもの少しどころではないでしょう! 失礼が過ぎますわ!』

『しかもほぼ初対面の方にこの対応!! あり得ません!!』

『通報! 今すぐ通報してこれ!! 犯罪だよ犯罪!!』

『大袈裟ねえ、ただのスキンシップじゃない』

『『どこが!!!』』

『まあまあ落ち着いて、それよりさっきの話聞いてたんだけど』

『あなた達、スクールアイドルやるんですって?』

『! は、はい一応……』

『サラッと流さないでよ……私これでも被害者なんだけど』

『ねえその話、私も混ぜてくれない?』

9: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:27:26.29 ID:ey7FUO/S
『なっ……!?』

『はあ!?』

『二人より三人のほうが申請も通りやすいと思うわよ』

『そ、それは……』

『だ、ダメ! 駄目駄目ダメダメだよダイヤ!! そんな口車に乗っちゃ駄目だってば!』

『こ、こんな挨拶代わりに人の を   だくような変 を入れるなんて!! 私は断固反対!』

『この子絶対アレだよ! あの……ローアングルからスカートの中身撮影するのが目的だったりするやつだよ!!』

『酷い言われようね、流石にそこまで下衆い考え持ってないわよ』

『どの口が!!』

10: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:28:09.41 ID:ey7FUO/S
『あ、そうそう。ちなみに私、音楽には少し自信があってね……作曲だったかしら?』

『『!!』』

『もしそのことでお困りのようなら、私のスキルで助けてあげることも出来ますけども?』

『作曲……』

『うぁーっ…痛いところを……』

『お返事いただける?』

11: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:28:55.11 ID:ey7FUO/S
『……分かりましたわ。歓迎します』

『イッエーイ♪ 話が分かるー♪』

『ダイヤ!! 本当にいいわけ!?』

『仕方がないでしょう、背に腹は代えられません』

『よろしくね~大と……微、いや中くらい?』

『ダイヤと果南! 胸のサイズで呼ぶのやめてくれる!?』

『Sorry sorry 私は小原鞠莉。あなたのマリーって感じで親しみを込めて呼んでね』

『嫌です』

『無理』

『つれないわねえ、まあいいわ』

12: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:29:26.87 ID:ey7FUO/S
『とにかく善は急げ! 早速申請しに行くわよー!』

『あの、その前に』

『ん?』

『何故鞠莉さんは、私たちと一緒にスクールアイドルをやろうと思ったんですか?』

『なにその面接みたいな質問』

『そうね、面白そうだから』

『はい?』

『私、退屈な生活って嫌いなのよ』

『だから、あなた達といると退屈しなさそうだなーって。ね♪』

13: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:30:04.64 ID:ey7FUO/S

そう、私には分かる

これは絶対面白いやつだ

少なくとも、この雄大な自然の景色を眺めるだけの日々とはサヨナラ出来るしね


ふふっ、それにしても

まさかこんな変な考えを持っている子が同学年にいるなんて、私はツイてる


卒業までに何かスケールの大きいことをやりたいとは思っていたけど

これなら、楽しめそうだ

14: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:30:33.54 ID:ey7FUO/S
『あっ、そういえば名前はあるの?』

『名前?』

『ほら、スクールアイドルグループの名前』

『ああ、あれね……どうなのダイヤ』

『ええ勿論決めていますわ。グループの名前は───』

『Aqoursです』

『!』

『へえ~……』


いいじゃない。


15: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:31:09.18 ID:ey7FUO/S
「鞠莉さん……鞠莉さん……っ」

鞠莉「……うぅん……?」

ルビィ「あっ起きた、大丈夫?」

鞠莉「ん、平気……寝ちゃってたのね私」フワァ

ルビィ「今日はあったかいからねぇ」

鞠莉「練習は?」

ルビィ「もう終わったよ」

鞠莉「そう、ごめんなさい。明日はちゃんと出るから」

ルビィ「たまには休んでもいいと思うけど」

鞠莉「なら今日のがそれってことで」

16: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:31:38.12 ID:ey7FUO/S
ルビィ「分かった。あまり無茶しないでね」

鞠莉「オッケーオッケー」

ルビィ「それじゃ私ももう帰るから、また明日ね」

鞠莉「ばーいルビィ」


バタンッ


鞠莉「……ふぅ」

鞠莉「卒業まで、ね」

鞠莉「分からないもんだわ、ホント」

17: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:32:36.97 ID:ey7FUO/S


──   ルビィ「片割れのジュエル」 イタリア編   ──


18: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:33:29.30 ID:ey7FUO/S



浦の星女学院、体育館


鞠莉「はい! それじゃあ今日はここまで!」パンッ

鞠莉「練習終わり! ルビィ締めお願い」

ルビィ「ありがとうございました!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

「よーし、各自ストレッチ入ってー」

19: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:34:03.82 ID:ey7FUO/S
グッグッ

善子「……しっかし新年度に入ってから増えたわよねー」ノビー

善子「他校とのっ合同練習」

花丸「そうだねえ」グイ

花丸「やっぱり知名度があるのとないのとじゃ全然違うんだなあって」

善子「去年はそのツテを探すのにも必死だったからね」

20: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:34:33.39 ID:ey7FUO/S
鞠莉「確かにそれもあると思うけど、一番は学校でしょうね」

善子「学校? なんで」

ルビィ「今年は私たち三年生だけになって、人も減ったし、部活もかなりなくなったでしょ?」

善子「ああ、運動部は見事に全滅したわよね。人数不足で」

善子「今残っているのなんて文芸部と、私たちスクールアイドル部くらいだし」

鞠莉「イエース、つまり人がいない分よりたくさんのスペースを使えるってこと」

鞠莉「ほら普通の学校だと部活ごとに体育館とかグラウンドの使用時間が決められてるでしょ?」

花丸「うん、あと場所を半分に分けたりとか」

鞠莉「でもここはその心配がない、だから都合さえ合えばいつでもどこでも練習可能ってわけ」

21: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:35:15.88 ID:ey7FUO/S
善子「成程、うちは他の学校よりも楽に選べるってことね。まさか新入生が入ってこないことにこんなメリットがあるとは」

ルビィ「うん、見方によってはそんな悪いことばかりじゃないよ」

鞠莉「そうそう、善子と花丸も毎日ピアノや図書館ひとり占め出来ていいでしょ?」

善子・花丸「そこは元から人来ないから」

鞠莉「あー、そう」

22: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:35:46.57 ID:ey7FUO/S
……


善子「そういえば、そろそろGWに入るけど今年はどうするの?」

ルビィ「今年は内浦と沼津でライブをやるつもり、休みでいっぱい人が来るだろうから街をアピールするチャンスだし」

鞠莉「東京とかと違って、ここはスクールアイドル人口少ないからねえ。そういう地道な活動もしっかりしていかないと」

花丸「内浦のことを知らない人ってまだたくさんいるもんね」

鞠莉「それに今そんなにがっつかなくても、時が来れば派手なのは勝手に向こうからやってくるわよ」

善子「フェスライブのこと?」

鞠莉「あー、まあ。うん、そんな感じね」

ルビィ・花丸「?」

善子(やけに歯切れ悪いわね、珍しい)

23: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:36:17.54 ID:ey7FUO/S
鞠莉「とにかく! 今は私たちに出来ることをやっていきましょ」

鞠莉「継続は力なりって言うしね」

鞠莉「さ、今日はこのあたりでお開きにしましょ。続きはまた明日ね」

三人「はーい」

鞠莉「お疲れー」

25: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:36:54.70 ID:ey7FUO/S
ルビィ「うーん、帰る前にランニングでもしていこうかな」

花丸「だったらマルも付き合うよ、善子ちゃんは?」

善子「私は梨子の家でピアノ練習してく、今日早いみたいだし」

ルビィ「分かった、またね」

善子「ええ」

鞠莉「……」

26: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:37:26.30 ID:ey7FUO/S


梨子の家


梨子母「あら善子ちゃんいらっしゃい」

善子「こんにちわ、梨子さんいますか?」

梨子母「ええ帰ってきてるわよ、今お友達と一緒に部屋にいるわ」

梨子母「上がっていって」

善子「はい。お邪魔します」

善子(お友達って曜かしら? それとも千歌?)

善子(でも梨子のお母さんって二人のこと名前で呼んでたような)

27: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:38:40.36 ID:ey7FUO/S


梨子の部屋


善子「……」

「へー上手ー! しかも美人さんだから凄い絵になるねー!」

梨子「そ、そうかな」

「もう1曲! もう1曲頼むよ!」

曜「ていうか、さっきから近くない?」

「そんなことないと思うけどなー、曜ちゃん気にしすぎじゃない?」

28: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:39:10.41 ID:ey7FUO/S
「ねえ梨子ちゃん早く!」

曜「むっ、梨子ちゃん無理にやらなくていいからね」

「曜ちゃん意地悪だねー、嫉妬かなー?」

「独占欲はほどほどにしといた方がいいよ」

曜「独占欲う!?」

梨子「え、えーっと……」

29: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:39:45.30 ID:ey7FUO/S
善子「……  られですか?」

曜「ちっが……そんなわけないでしょ!! 勝手に破局させないでよ!!」バッ

曜「……ってあれ善子ちゃん、来てたんだ」

善子「ピアノ教えてもらおうと思って、そしたらなんか、あの」

善子「アレな現場を見てしまったっていうか」

曜「違うから! これ本当に違うから! ねえ梨子ちゃん!」

梨子「うん、この人はその……そういうのじゃなくて」

「そうそう。僕が梨子ちゃんの部屋が気になるって言ったから、連れてきてもらっただけだよ」

「なにせ遂に出来た曜ちゃんのガールフレンドだし」

30: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:40:13.41 ID:ey7FUO/S
善子「はあ、そういうこと」

善子(僕っ子……)

「君は確か善子ちゃんでしょ? Aqoursの。君の話も二人から聞いてるよちゃんと」

「あ、千歌ちゃんも入れたら三人か」

善子「どうも、で? どちら様なのあなたは。多分私とは初対面だと思うんだけど」

31: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:40:43.57 ID:ey7FUO/S
曜「ああごめん、紹介が遅れたね」

曜「こちら、私の従姉妹の月ちゃん」

梨子「大学先で知り合ったの」

善子「従姉妹?」

月「初めまして、渡辺月です。よーろしくー♪」ケイレイ

善子「ああ従姉妹。なるほど」

曜「どこで納得してるの善子ちゃん」

32: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:41:35.13 ID:ey7FUO/S
善子「──統廃合?」

月「そう、その浦の星女学院の合併先が僕のいた静真高等学校ってわけ」

月「まあ浦の星はまだ君たちがいるから潰れていないけども、新入生自体は去年から取ってないでしょ?」

月「その子たちの受け入れ先って言ったら分かりやすいかな」

曜「善子ちゃんは聞いたことあるんじゃない? 静真高校」

善子「まあね、中学のときに進学先の候補で見たことあるから名前は知ってるわよ」

33: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:42:08.20 ID:ey7FUO/S
曜「月ちゃん。善子ちゃんはね、私と同じで沼津出身なの」

月「へえ! じゃあ何でこっちに来なかったの?」

月「曜ちゃんは千歌ちゃんと一緒の高校がいいって理由だったけど、君の場合はどんな?」

曜「ちょっと月ちゃん!」

梨子「曜ちゃんらしいね」フフッ

善子「私? 部活が強いから」

曜・月「え?」

34: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:42:40.77 ID:ey7FUO/S
善子「静真って全国行き決めてる部活がいくつもあるくらいの強豪校でしょ」

善子「そんなところに入ったら、気楽な高校生活なんて送れないじゃない」

善子「どの部活も上を目指してるだろうからすごい意識高そうだし」

月「ああ、それは私も生徒会長やってたからよく分かるよ」

月「確かに学校全体がそんな感じで、中途半端はお断りって雰囲気だったね」

善子「でしょう? だから進学先は浦の星にしたのよ」

善子「あそこはそっちと違って、のほほんとしてるからね」

曜「そんな理由だったんだ……」

月「成程ねえ……」

35: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:43:10.39 ID:ey7FUO/S
月「しかし、それにしてもだよ。まさか全国レベルのスクールアイドルからそんな言葉が出てくるとは」

月「結構予想外だよ、僕の友達や先輩後輩に君のファンだって言う子がかなりいるんだけどさ」

月「その子たちが今の発言聞いたら、目を見開くくらいビックリするだろうね」

善子「流石にそこまではないでしょ、オーバーすぎよ」

善子「それに中学のときはそうだったってだけの話だし」

善子「当時は本当に、スクールアイドルになるつもりなんてこれっぽっちも無かったのよ」

月「ふーん」

善子「そこの二人もそう」クイッ

月「え!? そうなの!?」

36: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:43:39.70 ID:ey7FUO/S
曜「あ、あはは……確かに」

梨子「私たちもやりたいからって理由で入ったわけじゃなかったね……」

善子「しかも入った理由も全員バラバラだしね」

善子(というか、純粋にスクールアイドルやりたいって動機があったの……よくよく考えたら千歌とルビィくらいしかいないんじゃないの?)

月「はあー、数奇な巡り合わせもあったもんだ」

月「ねえ、君たちってもしかしてスクールアイドルの中でもかなり変わってるグループなんじゃない?」

善子「かもしれないわね」

37: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:44:14.99 ID:ey7FUO/S
月「いいねえそういうの、僕ももっと早くに知っていたら」

月「そっちに流れていたかもしれないなあ」

善子「それはやめておいたほうがいいわ」スッ

月「どうして?」

善子「超ギスギスしてたから、雰囲気悪いなんてもんじゃなかったわよ」

月「……仲、良さそうに見えるけど?」

善子「今は、ね」ポロン♪

38: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:44:47.80 ID:ey7FUO/S
月「今は……?」チラッ

曜「黙秘権行使しまーす」

梨子「そこは……うん。あまり深入りしないでもらえると助かるかな」

月「……君たちって本当に変わってるんだねー」

善子「否定はしないわ」

梨子「色々あったからね」

曜「全部終わって落ち着いたらそのうち話すよ」

39: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:45:18.61 ID:ey7FUO/S
月「っていうか、善子ちゃんもピアノ上手いね!?」

善子「梨子に習ってから半年は経ってるしね」

月「へえ! 梨子ちゃんピアノ教えてるんだ!」

梨子「うん、作曲のことでちょっとね」

善子(どこがちょっとなのよ)

曜「鞠莉ちゃんから引き継ぐようにって頼まれてたからそれで教えることになったの」

月「ああ、継承的な」

40: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:45:45.56 ID:ey7FUO/S
善子「あっそうだ鞠莉といえば……ねえ梨子」

梨子「なに?」

善子「最近鞠莉から何か聞いたりしてない?」

梨子「何かって?」

善子「その、スクールアイドルのイベントのこととか」

梨子「特になかったと思うけど、どうかしたの?」

善子「いや、今日ね……GWの活動についてちょっと話してたんだけどさ」

善子「その中で気になることがあって」

42: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:46:19.73 ID:ey7FUO/S
善子「時間が来れば勝手に派手なのは来るーだの」

曜「それフェスライブのことじゃないの?」

善子「私も言った。けどその返事が歯切れ悪くて、濁されたっていうか」

曜「あの鞠莉ちゃんが? 珍しいね」

善子「だから何か聞いてないかなってさ、思ったんだけど」

梨子「ごめんね、やっぱり心当たりないかな」

善子「そう」

曜「でも本人がそのうちって言ってるんだから気長に待てばいいんじゃない?」

善子「それもそうね」

43: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/01(日) 11:47:11.06 ID:ey7FUO/S


─理事長室


鞠莉「…………」

鞠莉「……フゥー」トントン

鞠莉「まあ私に関しては近いうちに来るだろうなとは思ってたけど」

鞠莉「まさかこちらもご検討中とはね」ヒラヒラ

鞠莉「…………海外、か」

47: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:51:32.32 ID:u1VIUBd2

それから二週間後……


会場


ルビィ・花丸・善子「はじめてを数えたら その先にあるのはなんだろう?」

ルビィ・花丸・善子「キミと見たいな!」

ルビィ・花丸・善子「はじめてを数えたら その先にあるのは さらなる」

ルビィ・花丸・善子「夢かもね  ・・・わかんないけどっ」

48: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:52:06.64 ID:u1VIUBd2
ルビィ・花丸・善子「ありがとうございました!!」


ワーーーー!!

パチパチパチパチ!!


月「おーっ!! いいねー元気だねー!」パチパチ

千歌「いいぞー! ルビィちゃーん!」

曜「3人ともちょっと見ない間にまた上手くなってるね」

梨子「うん、息も相変わらずピッタリ」

49: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:52:35.15 ID:u1VIUBd2
鞠莉「congratulation! みんなお疲れさまー!」

鞠莉「今回のライブも大盛況だったわよ!」

花丸「えへへっありがとう」

善子「宣伝のおかげか、意外と人も集まってたしね」

ルビィ「うん、上手くいってよかった」

50: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:53:07.47 ID:u1VIUBd2
月「だよねー、内浦ってこんなに人がいたんだって思っちゃったくらいだし」スタスタ

花丸「あっ月ちゃんずらー」

月「こんにちー」

千歌「ちわーっす!」シュバッ

鞠莉「千歌っちは相変わらず元気ねえ」

51: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:53:44.12 ID:u1VIUBd2
月「でも本当見に来てよかったよ! 今日でGWは終わりだけどさ、次もまたやるんでしょ? ライブ」

ルビィ「そうだね、他にも色々イベントとかで呼ばれたりするから」

月「そっかそっか! じゃあ次も楽しみにしてるよ!」

月「いやー今まであんまり知らなかったのが勿体ないのなんのって!」

ルビィ「あ、ありがとうございます」

52: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:54:16.26 ID:u1VIUBd2
梨子「すっかりハマったみたいだね、月ちゃんも」

曜「だねー」

花丸「コミュニケーション能力の高さに曜ちゃんの親戚味を感じるずら」ズズッ

千歌「せやねー」センベイウマシ

花丸「ねー」ウマウマ

善子「あんたが一番コミュお化けでしょ千歌」

53: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:54:46.27 ID:u1VIUBd2
曜「それにしてもイベントかあ……Aqoursって地元では結構な有名人になったから引っ張りだこなんじゃない?」

曜「スケジュールとか大丈夫なの?」

鞠莉「ええ、その辺りはちゃーんと管理してるわよ」

曜「おぉ、流石」

ルビィ「それに私たちのは理亞ちゃんたちに比べたら、余裕があるほうだと思うしね」

善子「確かに」

54: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:55:15.90 ID:u1VIUBd2
月「理亞ちゃんってあれだっけ……あの、今年優勝したグループの子だっけ?」

曜「そうそうSaint Snowのリーダーやってる」

千歌「ラブライブ連続優勝だもんねー、注目されないほうがおかしいよ」

花丸「練習やライブに加えて取材とかで大忙しだって、理亞ちゃん言ってたもんね」

善子「ええ、少しは落ち着いたのかしら」

鞠莉「いや、まだまだかかるでしょ」

曜「今や最も知名度の高いスクールアイドルだからね」

55: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:55:48.65 ID:u1VIUBd2
月「そんなに凄いんだ!」

ルビィ「凄いよ。でも私たちも負けてられない」

ルビィ「言ったから、次は勝つって」タンッ

梨子「どこ行くの?」

善子「練習でしょ、私たちも付き合うわ」

花丸「じゃあマルたちはこれで。みんなバイバイ、今日は来てくれて本当にありがとうずら」

タッタッタ……

月「行っちゃった……」

56: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:56:20.79 ID:u1VIUBd2
千歌「遊びじゃないからねーラブライブは」

月「おぉ格言!」

梨子「それ受け売り」

曜「地味にアレンジしてるけどね」

月「あ、そうなの」

千歌「あー! ばらさないでよ!」

鞠莉「懐かしいわね、言われた時は結構ショッキングだったわ」

千歌「あははっホントホント! でもさ」

57: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:56:56.70 ID:u1VIUBd2
「「「???」」」

千歌「私たちの中で一人だけ、それを言われる前から分かっていたのがルビィちゃんなんだよね」

千歌「で、理亞ちゃんもそのことに気付いていた。だからかもしれないけど」

千歌「あの二人の関係ってちょっと変わってるなーって、最近思うようになったの」

鞠莉「……そうね。友達といえば友達なんでしょうけど」

鞠莉「それだけじゃ言い表せない何かがある。っていうのは分かるわ」

鞠莉「それもある意味、魅力の一つかもしれないわね」

58: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:57:23.91 ID:u1VIUBd2
鞠莉(彼女たち二人の……だから私も根拠なく漠然と思うことがある)

鞠莉(いつの間にか、期待してしまう)

鞠莉(また何かやってくれるんじゃないんだろうかって……ね)

鞠莉(……いや、そうなってほしいだけなのかしら)

千歌「鞠莉ちゃん?」

鞠莉「あーごめん、何でもないのよ」

梨子「……?」

59: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:57:55.32 ID:u1VIUBd2


─更に1ヶ月後……

6月中旬


函館聖泉女子高等学院

体育館


タン  タタンッ

コーチ「ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー! こらそこサボるなー!」

「すみません!」

タンッ  キュキュッ

コーチ「はいラストもう1セット!」

理亞「ふう……っ……」

60: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:58:32.99 ID:u1VIUBd2
コーチ「──よし一旦休憩! 次10分後ー!」

コーチ「水分きちんと取っておけよー」

「「「はーーーーーいっっっす!!」」」

黒髪「あはは……すっごい嫌そうな顔で返事するね皆」

理亞「返事が良くなっただけでも成長したと思うけど」

茶髪「確かに、練習きつくて辞めた子もいたからね~」

黒髪「まあ残った子たちだけにしても、本当に」

黒髪「よくこんな大所帯になったもんだよ……30、だっけ今の部員」

理亞「34人」

61: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:59:10.28 ID:u1VIUBd2
茶髪「去年の今頃なんて、私たち3人しかいなかったのにねー」

黒髪「前年度との比較がえげつない」

茶髪「ほんとそれ」

コーチ「……ん? ああはい、今休憩中ですけど……はい……ええ!?」

黒髪・茶髪「?」

コーチ「え、それ……本当ですか!? 今こっちに来て……マジすか!?」

コーチ「……あーすみませんつい。待ってください今呼んできますので」

黒髪「コーチが狼狽えてるとか、珍しいね」

茶髪「うん、なんだろ。超有名な芸能人が来てるとか?」

黒髪「いやいやまさか」

62: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 18:59:40.95 ID:u1VIUBd2
コーチ「そのまさかだよ」

黒髪・茶髪「コーチぃ!!?」バッ

コーチ「お前たち今日はもう練習上がっていいぞ」

黒髪「え?」

茶髪「どうしてですか?」

コーチ「Saint Snowにお話ししたい人がいるんだと」

理亞「また取材ですか?」

コーチ「いや」

コーチ「もっとやべーのが来てる」タラッ

理亞・黒髪・茶髪(やべーの……?)

63: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:00:13.23 ID:u1VIUBd2


カツン  カツン


ザワザワザワッ!!


「へえー結構広いのね、この学校の体育館!」

「綺麗だし、床の質もいい。練習にはかなりうってつけの場所ね」

「凄く整ってる、外の空気もおいしいし、いいわねえ北海道」

理亞「な、ぁ……っ!」

ツバサ「……あっ、いたいた理亞ちゃん久しぶり! 元気にしてた?」

理亞「ツバッ、ツバサさん!!?」

黒髪・茶髪(ホントにやべーの来てるうううううぅぅぅぅ!!!?)

64: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:01:01.26 ID:u1VIUBd2


ツバサ「ごめんなさいね、急に押しかけるようなことして」

理亞「いえ、その、大丈夫です。驚きましたけど」

ツバサ「そう?」

理亞「はい。学校側としてもツバサさんのご来訪はとても喜ばしいことかと」

黒髪・茶髪(外のギャラリー凄いことになってるしね……)

ツバサ「なら良かった」ニコ

((((ちょーーー美人…………))))

65: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:01:34.32 ID:u1VIUBd2
ツバサ「理亞ちゃんは最近どう? 部活動のこととか」

ツバサ「新入部員たくさん来たんじゃない?」

理亞「ええまあ、はい。でも指導者の方がいるので特に問題はないです」

ツバサ「ああ、さっき見たあのコーチの人ね」

理亞「はい、去年の夏にお世話になって……それから続けてもらっています」

ツバサ「ふーん、なるほど」

66: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:02:02.36 ID:u1VIUBd2
理亞「あの、ツバサさん」

ツバサ「ん?」

理亞「どうして函館の方までわざわざ?」

ツバサ「出演している番組のロケーションでこっちに来ることになってね、北海道の特集って言えばいいのかしら」

ツバサ「それで一週間ほど滞在しているのよ」

ツバサ「あっ、ちなみに内容はまだオンエアされてないからこのことは内緒にしてね」

理亞「はい、約束します」

67: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:02:36.66 ID:u1VIUBd2
ツバサ「ありがとう、さて話を戻すけど」

ツバサ「今日はその仕事のオフで自由だし、場所的にもそんなに時間はかからないかなってことで、こちらの学校に立ち寄らせてもらったの」

ツバサ「本当は電話で伝える予定だったんだけど、直接会って話したほうが印象もだいぶ変わるだろうし」

ツバサ「丁度いい機会かもって」

理亞「成程、それでその話って一体」

68: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:03:07.45 ID:u1VIUBd2
ツバサ「理亞ちゃんは去年の夏に行った合宿のこと、覚えてるわよね」

理亞「スクールアイドル選抜強化合宿ですよね、もちろん覚えています」

理亞「大変お世話になりましたから」

ツバサ「あらお上手ね、今から話すのはその合宿のことについてなんだけど」

ツバサ「まず結論から言うわね」

ツバサ「Saint Snowの皆さん、私はあなた達3人にその合宿の指導をお願いしたいのよ」

理亞・黒髪・茶髪「!!?」

69: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:03:33.28 ID:u1VIUBd2
理亞「すみませんツバサさん、指導……ですか? 私たちが?」

ツバサ「ええ。でもこのままじゃ意味が分からないと思うから」

ツバサ「順を追って説明していきましょうか」

ツバサ「元々合宿の件についてはラブライブ決勝の少し前くらいから、委員会で話をしてはいたの」

ツバサ「去年行ったものは好評だったし、結果も出せてたからまたやってみてもいいんじゃないかなってね」

ツバサ「それで今度は少しハードルを低くして、参加人数も増やす方針として事を進めていたんだけど」

ツバサ「ちょっと問題があって」

70: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:04:38.85 ID:u1VIUBd2
理亞「問題ですか?」

ツバサ「去年は初日から最後まで私が総責任者としてずっとみんなの監督を務めていたでしょ?」

理亞「はい」

ツバサ「でもスクールアイドル育成のためとはいえ、流石に毎年この忙しい時期にそんな長期間休まれたら困る!」

ツバサ「……って色んなところから釘を刺されちゃってね」

黒髪「えーっと、つまり……」

茶髪「指導側が不足していると?」

ツバサ「いいえ、人数自体は足りているわ。代理の人もね」

ツバサ「私も、全日参加ではないとはいえ一応講師陣にはいるしね」

71: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:05:19.27 ID:u1VIUBd2
ツバサ「だからその問題も既に解決済み。といったところで本題」

ツバサ「じゃあどうしてあなた達をわざわざ勧誘したのかってことだけど」

ツバサ「別の視点から教えるのも必要かもしれないって思ったの」

理亞「視点とは?」

ツバサ「簡単に言うと私たちみたいなOGだけじゃなくて現役で活動しているスクールアイドルも来てくれたほうが」

ツバサ「生徒にとってはいい刺激になるんじゃないかってこと」

ツバサ「同世代だからこそ、学べるものも色々とあるでしょうし」

ツバサ「名実ともに現スクールアイドルの頂点であるあなた達なら、誰も文句を言うことはないでしょう?」

72: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:05:49.00 ID:u1VIUBd2
黒髪・茶髪「……」

理亞「……ツバサさんは」

ツバサ「うん?」

理亞「常に"次"のことを考えているんですね」

ツバサ「そうねー、フフッ……誰の影響なのかしらね」

ツバサ「まあそれも何かの縁あってのものだし、だからこそ」

ツバサ「こういった機会は大事にしたいと思ってる」

ツバサ「というわけで、どうかしら?」

73: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:06:20.36 ID:u1VIUBd2
理亞「やります、やらせてください」

ツバサ「あなた達二人は?」

黒髪「私たちも同じ意見です」

茶髪「是非お願いします」

ツバサ「決まりね、そうそうさっきは指導なんて固い言い方しちゃったけど」

ツバサ「そこまで多くを求めるつもりはないから安心して」

ツバサ「立ち位置的に言うとそうね……私たちが教員とするとあなた達は教育実習生みたいなものだから」

理亞「わかりました」

74: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:06:58.59 ID:u1VIUBd2
ツバサ「ああ、それとね。合宿まであと1ヶ月もあるからまだ確定ってわけじゃないんだけど」

ツバサ「今年は今年で、また面白い子たちが来るの」

黒髪「面白い子……」

茶髪「たち?」

ツバサ「ええ。彼女たちに関しては、理亞ちゃんも知ってるはずよ」

理亞「? あの、それはどういう」

ツバサ「フフッ、まあその日になれば分かるわ」

ツバサ「当日までのお楽しみってことで」

理亞(この人、こういうの多いわよね)

75: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:07:46.36 ID:u1VIUBd2
ツバサ「さてと、話も終わったしそろそろ行かなくちゃ。あまり待たせすぎるとまた英玲奈とあんじゅに怒られるし」

ツバサ「今日はありがとうね。わざわざ話に付き合ってくれて」

理亞「いえ、こちらこそ」

ツバサ「それじゃお邪魔しました、練習頑張ってね」

ツバサ「あと、周りにいるみんなもね」ヒラヒラ

「「「!! はいっ!! ありがとうございます!!!」」」

ツバサ「それと、私がここに来たことは内緒にね」シーッ

全員「~~~~っ!!!」

ツバサ「では、さようなら」

76: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/02(月) 19:09:22.91 ID:u1VIUBd2
スタスタ……

英玲奈「用事は済んだのか?」

ツバサ「ええ、上手いこと進んでくれて助かったわ」

あんじゅ「それならいいんだけど……」

ツバサ「どうかした?」


キャーーーーーー!!  ヤバイヤバイヤバイ!!!


あんじゅ「あの狂喜乱舞の様は一体なにかと思って」

英玲奈「ここからでも聞こえてくるな」

ツバサ「さあ……?」

79: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:52:01.03 ID:WBoP0sPX

そして、順調にそれぞれの時間が経過していき……7月下旬

~夏休み開始~


ワイワイガヤガヤ


善子「これはまた……」

花丸「大勢集まったずらねえ……」

鞠莉「ふっふっふ、それもそのはず……なぜなら今年は」

鞠莉「合!同!合!宿! ですもの!!」ババン

ルビィ「あはは、賑やかだねぇ」

80: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:52:41.67 ID:WBoP0sPX
さゆり「ルビィちゃんおはおはーっ!」

蘭花「ニーハオ! 元気にしてたアルかー!? クゥクゥと寝てる場合じゃないアル!」

さゆり「そうだよ! 今この瞬間こそギャラクシー!!」

あきる「開始早々そんなテンション上げて大丈夫なの、疲れない?」

姫乃「天気がいいと気分が上がることってありますから……」

81: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:53:10.93 ID:WBoP0sPX
パンパンッ

鞠莉「はいはい、一回落ち着いて。内容のほう説明するわよー」

鞠莉「いい? 今回の合宿は全員で練習するのもそうだけど、個人のレベルアップにも力を入れていくわよ」

ルビィ「歌とダンスレッスンは勿論、他にも衣装作りとか曲作りとかあと作詞もだね」

ルビィ「それらの伸ばしたい項目を選んで、集まった人同士でスキルアップを目指す感じ」

鞠莉「具体的な例を挙げるなら、去年ルビィとあきるとさゆりがやってた指導ローテーションのようなものね」

鞠莉「とはいえ今ここで初めて教わるものとかは所詮付け焼刃だから、大会あたりでは役に立たないかもしれないけど」

鞠莉「これまでとは違ったインスピレーションを貰うっていうのは、大事よね」

82: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:53:48.07 ID:WBoP0sPX
鞠莉「あと! 近くにこーんな綺麗な海があるっていうのはかなりのメリットよ!」

花丸「どうして?」

鞠莉「遊べる……じゃなかった、開放的な気分になるからね!」

鞠莉「インドアって別に悪いことじゃないけど、中に引きこもりすぎると悪い影響を及ぼしちゃうもの」

鞠莉「室内で作業に没頭するときとか特に」

善子「それは分からなくはないわね」

鞠莉「流石インドア代表! 説得力がダンチね!」フーッ!

善子「喧嘩売ってるなら買うけど?」ピクピク

ルビィ・花丸「どうどう……」

83: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:54:20.45 ID:WBoP0sPX
鞠莉「とにかく! 貴重な合同合宿! このチャンスを無駄にしないためにも」

鞠莉「やりたいことを積極的に取り組んでいきましょう!」

鞠莉「そしてそれらを通して、ルビィ!」

ルビィ「うん。技術を学ぶのではなく」

ルビィ「活かすことを、学ぶ!」

鞠莉「Exactly! その通りでございます!」

あきる(ふーん成程ね、だから)

さゆり(個人のレベルアップってことか。面白いね)

鞠莉「さあー! それでは張り切っていきましょー!!」

「「「おーーーーーっ!!!」」」

84: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:54:50.75 ID:WBoP0sPX

一方その頃

東京


ピロン


果南「おー、やってるねー元気そうでなにより」

ダイヤ「……なんか、ごちゃっとしていますわね」

果南「合同合宿だからね、人数増えたらこんなもんじゃない?」

ダイヤ「そうかもしれませんけど」

果南「まあまあいいじゃん、さてお昼お昼」

85: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:55:21.86 ID:WBoP0sPX
果南「いやー聖良のご飯くらいだよ毎日楽しみに出来るものって」フフーン♪

ダイヤ(完全に餌付けされてますわね果南さん)

果南「今日のメニューは何かなーっと……あれ? ない」

果南「ない」

果南「……」

果南「ダイヤ、私の分食べたでしょ」

ダイヤ「人を勝手に大食い認定するのやめてもらっていいですか」

86: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:56:00.95 ID:WBoP0sPX
果南「えー、ならどうして無いのさ」

ダイヤ「はあ……昼食なら今日は作れないって聖良さんが言っていたでしょう」

果南「あ……しまったすっかり忘れてた、仕方ないなあ……そしたら久々にカップ麺でも食べようかなーんっと」

ダイヤ「不摂生」

果南「分かってないなあダイヤは、だから美味しく感じるのさ」

ダイヤ「…………」ジッ

果南「ん、んんっ……まあその考えは置いとくとして、私買い物行ってくるけどダイヤも行く?」

ダイヤ「いいえ、私は留守番しています」

果南「了解。じゃあちょっと行ってくるよ」ガチャ

バタン

ダイヤ「……」スッスッ

87: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:56:36.32 ID:WBoP0sPX


聖良:すみませんちょっと

聖良:どうしましょう

聖良:来てしまいました

聖良:ああもうすぐ近くに!

聖良:今から会います

聖良:本当に会います

聖良:あ


ダイヤ「……はあ」

ダイヤ「全く、どこもかしこも……」

88: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:57:08.46 ID:WBoP0sPX



聖良「…………」

「えーでは続きましてー……」

聖良(私はっ私は今、とんでもない光景を目にしている……っ!!)

「はい、それでは特別講師枠の紹介です」

「まずはA-RISEの皆さんから。ツバサさん、英玲奈さん、そしてあんじゅさんの三人です」

英玲奈・あんじゅ「」ペコリ

ツバサ「よろしくね」ヒラヒラ

聖良(私の、私のすぐ隣にあの……A-RISEがいるなんてーーーーっ!!)

89: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:57:47.73 ID:WBoP0sPX
ザワザワ キャッキャ

「はい静かに、抑えて抑えて」

「彼女たちには初日を含め計二日、参加していただくこととなりました」

「滅多にない貴重な機会です、無駄にしないように」

「続いて鹿角聖良さん」

聖良(夢じゃない夢じゃないこれは夢じゃない、ああ近くで見ると本当に……オーラといえばいいのかあとなんか良い匂いする)

「聖良さん?」

理亞「姉様、あいさつ」ヒソ

聖良「え、ええはい!!」

聖良「か、鹿角聖良でしゅ! 今回委員会様からのご厚意により参加することになった次第であります!!」

90: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:58:36.23 ID:WBoP0sPX
聖良(噛んだ!!)

英玲奈(でしゅ……?)

あんじゅ(あります……?)

理亞「姉様……」

聖良(しまった緊張でつい……一番肝心なあいさつでこんなみっともないところを見せてしまうなんて……)チラッ

ツバサ「ぷっ、あはは! 聖良ちゃんって真面目な子だと思っていたけど、案外可愛いところあるのね!」ニコ

聖良「」

聖良(ありがとう、私の舌)

「あ、あのーそろそろ……」

理亞「そうですね、もう放っておきましょう」

91: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 04:59:06.03 ID:WBoP0sPX
「は、はは……最後に、現役スクールアイドルからSaint Snowの皆さんです」

理亞・黒髪・茶髪「よろしくお願いします」

「以上が今回の合宿の特別講師陣になります、拍手」

パチパチパチパチ!

「次に全生徒の軽い紹介を、まず初めに……」

92: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:00:05.35 ID:WBoP0sPX


……




「──はいそれじゃあ最後、手短に」

「はい!」

「待ってましたー!」

スクッ

ツバサ「きたわね」

聖良「! 彼女たちってまさか」

理亞「……そういうこと」ボソッ

理亞(ツバサさんが言ってたのはコレね)

93: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:00:33.97 ID:WBoP0sPX
こころ「皆さん初めまして、音ノ木坂学院から来ました矢澤こころと」

ここあ「矢澤ここあです! よろしくお願いしまーす!」

黒髪(各学校一人に対して、この合宿で唯一の二人参加)

茶髪(あの矢澤にこの妹とその確かなアイドル性で、今年から話題を集めている)

黒髪・茶髪(音ノ木坂学院期待の一年生コンビ、人呼んで──)

聖良・理亞(新星ツインズ、矢澤姉妹)

ツバサ「うーん、いいわねえ次世代」

英玲奈・あんじゅ「ツバサ、声漏れてるぞ(わよ)」

94: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:01:24.66 ID:WBoP0sPX
こころあ「」ジッ

黒髪(? こっちを、いや……)

茶髪(理亞ちゃんの方を見てる……?)

こころあ「」ニコッ

理亞「?」

「では紹介も終わったことですし、これから練習の方に移りたいと思います」

「最初は全体で。グループの組み合わせ等の人数分けは明日から行う予定です」

「まずはダンスレッスンから、はい距離とって!」

「「「よろしくお願いします!!!」」」

95: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:02:02.31 ID:WBoP0sPX


タンタン タタンッ


英玲奈「ほぉ、初めて見るがみんななかなかいいな」

あんじゅ「ええ、まあ私たちも前から気になってはいたんだけど」

あんじゅ「去年は二週間以上も休んだ誰かさんのフォローでそれどころじゃなかったものね」

ツバサ「うっ」グサ

英玲奈「だな」

ツバサ「そ、それよりほら! 気になってるなら指導の方に入りましょうよ!」

ツバサ「私たちはここにいられる時間も少ないわけだし!」

96: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:02:28.37 ID:WBoP0sPX
英玲奈「ふむ、確かに」

あんじゅ「それもそうね」

ツバサ「ね、いいですよね?」

「え? ええ、そうですねそろそろ」

ツバサ「はい決まり、いきましょう二人とも」

97: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:03:04.79 ID:WBoP0sPX
ツバサ「ちょっと貴女、いいかしら」

「ひゃ、ひゃい!」

イイナー  コッチコナイカナー

理亞「……あんなツバサさん初めて見た」

黒髪「というかツバサさんに対してあんなこと言える人がまずそんなにいないもんね」

茶髪「指導もだけどこういうのもレア感あっていいわー」

聖良(激しく同意したい)

理亞(また変なこと考えてるわね姉様……まあいいか)

98: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:04:08.49 ID:WBoP0sPX
理亞「私たちも行こう」

黒髪「うん、そうだね」

こころあ「」ジーッ

理亞(さっきからすごいこっち見てくるし)

理亞(一応初対面のはずなんだけど)

理亞「……じゃあ、私あの二人見てくるから」

茶髪「了解、私たちは向こういってるね」

理亞「お願い」

99: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:04:34.58 ID:WBoP0sPX
こころあ「よろしくお願いします」

理亞「うん、よろしく」

こころ「理亞さんに指導してもらえるなんて光栄です」

ここあ「ここに参加するって聞いてからずっと楽しみにしてたんですよ」

理亞「それは、ありがとう」

100: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:05:15.04 ID:WBoP0sPX
理亞「…………」

理亞「あの、ちょっといい?」

こころあ「? はい」

理亞「一応聞いておきたいんだけど、どうして私? 普通はA-RISEとかだと思うけど」

ここあ「あははっそんなの簡単ですよ! 私たちがSaint Snowのファンだからです!」

こころ「特に、理亞さんのね」

理亞「はあ……!?」

こころあ「♪」フフン

101: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:05:51.64 ID:WBoP0sPX
─それから数日後


内浦


善子「だからここをこうして……」

さゆり「いやいや、これならこうした方が良いと……」

姫乃「ああ成程そういうアプローチもあるんですね」

花丸「うん、たまには空想そのものをテーマにするのもいいかなと思って」

102: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:06:19.63 ID:WBoP0sPX
トントンッ

千歌・蘭花「行きます!(行くアル!)」バッ

タタンッ トンッ

グルン

蘭花「バク転バク宙交差!!」ヒュンッ!

千歌「海外のMVとか全然商品の紹介になってないCMでよくあるやつ!」シュタンッ!

千歌・蘭花「はい!」

月「おー! 本当だ! 本当にどこかのCMで見たことあるよこんな感じのやつ!」パチパチ

梨子「なんで合宿に混ざってこんなことやってるんだろう……」

曜「しかもこれ練習じゃないよね」

鞠莉「まあいいじゃない盛り上がって!」

103: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:06:46.93 ID:WBoP0sPX


ワイワイ


あきる「だんだんいい雰囲気になってきたわね、元から悪かったわけでもないけど」

あきる「みんな打ち解けてきたって感じ」

ルビィ「そうだね、私もそう思う」

あきる「合宿も残り半分か。ねえ、ルビィは合宿が終わった後フェスライブに参加するのよね?」

ルビィ「え? うん、そのつもりだけど」

あきる「今年はどれでやるつもりなの? やっぱりトリオ?」

ルビィ「えーっと、どうだろう……最初はそうしようかなって思っていたんだけど」

104: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:07:17.86 ID:WBoP0sPX
あきる「違うの?」

ルビィ「うん。ちょっと迷ってて、これはただの私のワガママなんだけど」

ルビィ「今、トリオで理亞ちゃんたちと当たりたくないんだ。だから」

あきる「ああ、そういうこと」

あきる「ならさ、今回は私たちと組んでみる?」

ルビィ「いいの?」

あきる「もちろんよ、詳しいことはみんなで話すとしてまずは……」

さゆり「おっ、なになにフェスの話? それは丁度いいねーグッドタイミング」ヒョコッ

105: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:07:54.54 ID:WBoP0sPX
ルビィ「あ、さゆりちゃん」

あきる「丁度いいって何が?」

さゆり「んー、さっき瑞希から連絡あったんだけどね」

さゆり「ちょっと相談したいことがあるんだよ、そのフェスについて」

ルビィ「何かあったの?」

さゆり「うん、前々からそれとなく言われてたことなんだけどさ」

さゆり「今年はいつもより深刻みたいでね……余りもの問題」

ルビィ「! みんなを集めたほうがいいね」

あきる「ええ、多分私たちにとってもこれは他人事じゃないと思うから」

106: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:08:58.02 ID:WBoP0sPX
鞠莉「──ふむふむ、つまり」

鞠莉「組み合わせの自由度が高いために、個人の要望次第では組み合わせで余ってしまう人もいるわけと」

さゆり「はい、大まかに言うと」

あきる「例えばグループが5人だったとして、普通はそのままグループ部門で参加するか、デュオとトリオ1組ずつで分けると思うけど」

あきる「どうしてもこの人とデュオでやりたいって子が数人いた場合、デュオ2組で1人余ってしまう……そんな構図が出来上がるわけね」

千歌「はいはい! 私それなったことあります去年!!」

千歌「経験者いますよーここに!」

梨子「千歌ちゃん……」

曜「ここぞとばかりに…」

107: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:09:23.90 ID:WBoP0sPX
姫乃「今まであったパターンとしては来年のない3年生が最後だからと、特別仲のいいメンバーとの組み合わせを希望することが多かったんですけど」

さゆり「今年はどうもそれ以外の要素も強くてね、おそらくきっかけは去年のデュオ部門」

さゆり「あれで自分も新しいことに挑戦したい! って感化された人が増えたみたいで」

蘭花「あーそれ私もよく聞くネ」

月「いやでも、そうなること自体は別に悪いっていうわけじゃ……ないよね?」

108: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:09:55.95 ID:WBoP0sPX
鞠莉「確かにね、寧ろ良いことだと言っていいわ。だけど」

ルビィ「その結果、誰かを優先して遠慮することで1人になっちゃう人も増えるのが問題なんだよね」

花丸「……」ウーン

花丸「ねえルビィちゃん」

花丸「マル、ずっと気になってたことがあるんだけど」

ルビィ「なに? 花丸ちゃん」

花丸「どうしてフェスライブにはソロ部門がないのかなって」

花丸「ソロライブを開くスクールアイドルって特別珍しくもないだろうし、ちょっと変だなって」

109: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:10:24.76 ID:WBoP0sPX
ルビィ「人数的に無理があるからだよ、ほらフェスライブって会場でライブをやってポイントを集めるでしょ?」

花丸「うん」

ルビィ「もしソロ部門を導入してしまうと、1人ずつライブを行うことになるから他の子のライブ時間が足りなくなるんだよ」

あきる「単純な枠数よね、仮に6人グループでチームを分けた場合」

あきる「デュオなら3枠、トリオなら2枠、もしくは分けずにそのままグループで参加なら1枠で済むけど」

あきる「これが全員ソロで参加ということになってしまうとそれだけで6枠も取ってしまう」

あきる「で、それが積み重なっていくと膨大な数になって対応しきれなくなるのよ」

ルビィ「ただでさえスクールアイドル人口は増えているしね」

花丸「納得ずら、難しいんだねえ……」

110: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:10:53.24 ID:WBoP0sPX
善子「ていうか2人用と3人用がある時点でだいぶ良心的でしょ」

善子「どこかのフェスと違って、確実に4人揃えない限り2人以上でもチームとして参加することは出来ませんなんてふざけた仕様でもないしね」

千歌「確かに! あれと比べると全然マシだよね」

善子「全くよ。フレンド一覧で満員ですとかなってるの見ると、煽ってるのかって思うし本当腹立つ」

千歌「分かる分かる、見せつけられてる感じっていうの? すごいするよねー」

千歌「たまに皆と時間合わなくて1人になったときとかさあー……」

梨子「2人ともやめなさい! 話脱線してるから!」

曜「あとその仕様もう改善したから! これ以上責めるのはやめてあげて!」

花丸(善子ちゃん闇深いずら……)

111: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:11:25.74 ID:WBoP0sPX
あきる「あ、あー……今の話はよく分からないけど」

さゆり「まあつまり、1人だけ参加出来ないとこんな感想を抱く子もいるかもしれないってわけで」

曜・梨子(流石にここまではいかないと思う)

さゆり「どうしたものかなと。それに実は私の学校にもそんな子がいるし」

千歌「そうだなあー、何か代わりになるものがあればいいんだけど」

千歌「去年私がやった特訓みたいに」

月「え? でもそのフェスって一年に一回しかやらないんだよね?」

月「それに代わるものとなると、相当大きななにかが必要なんじゃないかな」

112: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:11:59.82 ID:WBoP0sPX
曜「何かって?」

月「例えばだけど、フェスじゃなくてこっちを選んで良かったって思えるようなもの……とか?」

善子「それこそ千歌が代表例よね、参加しないで特訓したからこそラブライブ最終予選でロンバクの成果が出たわけだし」

千歌「そうそう! 私が言いたいのはそれ!」

梨子「でも例に出すにはちょっと特殊よね千歌ちゃんのは、もっとスクールアイドルみんなに当て嵌まるような」

千歌「うーん、だったらやっぱりライブじゃない?」

鞠莉「この期間でやるフェスよりも充実感のあるライブって想像つかないけど」

姫乃「それも人によるでしょうし」

ルビィ「…………」

113: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:12:48.61 ID:WBoP0sPX
ルビィ(余って、バラバラで、でもみんなが満足出来るようなもの……)

善子「ねえ一回色々と絞ってみない? こんなの条件多すぎて無理ゲーに見えてくるんだけど」

ルビィ「…………あるかも」

善子「ほらルビィもあるって言ってるし取り敢えず……って」

善子「あるの!!?」

花丸「本当!? ルビィちゃん!」

ルビィ「うん、一つだけ思いついたの」

ルビィ「あのね…………」

114: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:13:28.72 ID:WBoP0sPX


その頃

選抜強化合宿、体育館


ワンツースリーフォー!  ワンツースリーフォー!


「はいリズム崩さないで、疲れてきても姿勢保って!」パンパンッ

「そこ足バタつかせない! そっちは腕のしなり落ちてる!」

「きちんと先の先まで意識して!」

「「「はい!!」」」

「よしラストもう一周いくよ!」

115: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:13:56.61 ID:WBoP0sPX
「アーーーー…………♪……うーん上手くいかない…」

英玲奈「少しいいか?」トンッ

「え、英玲奈さん!?」ピン

英玲奈「そのままの状態を維持しろ、もう少し胸を張って」

英玲奈「顎を引いて、肩を下げて……よし、ちょっと歌ってみてくれ」

「あ、アー♪アーー♪……あれ、少し楽になった?」

英玲奈「姿勢が低くなっていたから直した」

英玲奈「発声において姿勢はとても重要だ、常に心掛けておくように」

「はい! ありがとうございます!」

116: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:14:24.27 ID:WBoP0sPX
あんじゅ「あなた重心ズレてるわね、手はここ、足はこう」

「おぉ……」

あんじゅ「ね、さっきより良く見えるようになったでしょ?」

「は、はい」

あんじゅ「あなたスタイルいいんだから、ポーズ適当にしちゃうと勿体ないわよ」

「気をつけます!」

117: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:14:57.45 ID:WBoP0sPX
ツバサ「二人ともやってるわねー」

黒髪「少し力が入りすぎてるね、もうちょっとリラックスして……」

茶髪「うん、いいね。あとはそれを最後まで安定させて……」

ツバサ「それに、理亞ちゃんたちの方もだんだん指導が慣れてきたんじゃない?」

理亞「はい、なんとかですけど」

ツバサ「で、彼女たちはどう? 理亞ちゃんから見て」

こころあ「…………」キュッキュ

118: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:15:23.07 ID:WBoP0sPX
理亞「そうですね、歌やダンスは高水準とはいえまだ発展途上の段階だと思います」

ツバサ「うん」

理亞「ですが」

こころ「はい!」ビシッ

ここあ「はい!」キメッ

理亞「映像映えするようなあのポージングの数々は、非常に洗練されていますね」

ツバサ「ええ、常日頃から"撮られる"ことを意識していない限り、ああはならないでしょうね」

聖良「スクールアイドルというよりかは本来のアイドル意識のほうが強い、といった感じでしょうか?」

ツバサ「かもしれないわね」

理亞「姉様、いつの間に……」

119: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:15:53.57 ID:WBoP0sPX



「では今日の練習はここまで! 各自ストレッチの後、解散!」

「「「ありがとうございました!!」」」

ツバサ「そういえば理亞ちゃん、あと3日後にはフェスライブが始まるけど」

ツバサ「今年はどの部門で参加する予定なのかしら」

理亞「グループです」

ツバサ「へえ、理由を聞いてもいい?」

理亞「今年入部した新入生の実力を確かめるためというのもありますけど」

理亞「私個人としてもトリオは避けたいと思っていました」

120: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:16:22.75 ID:WBoP0sPX
理亞「全員で楽しむためのイベントとはいえ真剣勝負に変わりはない」

理亞「だから、ここで決着をつけるようなことはしたくなかったんです」

聖良「決勝で会おうぜ! というやつね」

聖良(漫画喫茶で果南さんと一緒に読んだ少年漫画にあったやつ……!)

理亞「うん、まあ……そんなところ」

理亞(また変な知識身に付けてる……)

ツバサ「そっか、頑張ってね」クスクス

ツバサ(となると、ルビィちゃんの出方も気になるわね)

ツバサ(向こうはどう動くのかしら)

121: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:16:54.98 ID:WBoP0sPX

それから3日後……

8月1日


コーチ「よーし、前々から話していた通りだが参加グループはこの組み合わせでいく」

コーチ「あと! 折角東京のほうに招かれたんだからな! 時間の無駄遣いすんなよー!」

コーチ「それと迷惑行為もなー!」

「「「はーい!!」」」

コーチ「ったく本当に分かってんだか……」

コーチ「お前たち、先導頼むぞ……私はちょっと挨拶回ってくる」

理亞・黒髪・茶髪「はい」

122: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:17:25.36 ID:WBoP0sPX
茶髪「う~……リーダーとか初めてだから緊張……」

黒髪「ま、これも今後のためと思って割り切るしかないわね」

理亞「…………」スッスッ

茶髪「は~い……って理亞ちゃんさっきから何してるの?」

理亞「いや、参加者の名前一覧を見てるんだけど」

理亞「ルビィ…どころかAqours全員の名前がどこにも載ってないのよ」

黒髪「本当に?」

理亞「ええ」

123: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:18:03.99 ID:WBoP0sPX
理亞(しかも、それだけじゃない)

理亞(姫乃、蘭花の二人の名前も見当たらない)

理亞(……そういえば合同合宿がどうって、なら偶然じゃない……?)

理亞(けど、だとしてもわざわざ参加しない理由って一体……)

黒髪「理亞ちゃん、考えごとしている中悪いけど私たちもそろそろ移動しないと」

理亞「ああうん、ごめん」

理亞「行こうか」

124: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:18:41.09 ID:WBoP0sPX


~~♪ ~~♪


『はい、もしもし』

ツバサ「もしもし雪穂ちゃん? ちょっといいかしら」

『ええまあ構いませんけど』

ツバサ「さっき理亞ちゃんに聞いて確認してみたんだけど、フェスの参加者一覧の……うん、そこにね」

ツバサ「ルビィちゃんたちの名前が載ってないんだけど、雪穂ちゃん何か知らないかなって」

『ああそのことですか、知ってますよ』

『今ちょうどそれでバタバタしているところでして』

125: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:19:21.64 ID:WBoP0sPX
ツバサ「もしかして、何かあったの?」

ツバサ「電話越しからも聞こえてくるのを考えると、随分その……賑やかなところにいる気がするんだけど」

『どうあがいても賑わってしまう人がいますからね』

ツバサ「ん? ねえ雪穂ちゃん、それってまさか」

『ええはい、大体察しはついてると思いますけど……』

126: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/03(火) 05:20:12.67 ID:WBoP0sPX


ザワザワ  ザワザワザワッ……


雪穂「……私いま、そのお守をしている最中なんですよね」


カツンカツン


穂乃果「おー! 集まってるねー!!」

穂乃果「だよねだよね! 面白そうだもんね!」

穂乃果「よーしそれじゃあ景気づけにまず私から一発!」

穂乃果「折角の一大イベント、出られないなんて悔しいよー!」

穂乃果「そんなことを思っている後輩スクールアイドルみんなのために」

穂乃果「はっ!!」ブンッ


クルクルクル   パシッ!


穂乃果「高坂穂乃果、動きます!!」


132: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:12:26.61 ID:t08A6QoS
 

──遡ること3日前……


善子「スクールアイドルを一ヶ所に集めてライブをやるぅ!?」

ルビィ「うん、フェス最終日に全部のライブが終わった後出来ないかなって」ピッ

善子「いや、いやいやちょっと待ちなさい……なんかサラッと言ってるけどねルビィ」

善子「それは無理があるんじゃないの? 大体どうやって集めるっていうのよ」

ルビィ「私たちがみんなに事情を説明して、そのあと当日に来てもらえば問題ないよ」

善子「移動費用とかどうするのよそれ」

ルビィ「…………」ジッ

鞠莉「オッケー出します、出しますとも」

善子「鞠莉! 金づるみたいな扱いになってるけどいいの!?」

133: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:13:13.48 ID:t08A6QoS
鞠莉「適材適所というやつよ、実際まず初めにそこを抑えておかないと話にならないしね」

ルビィ「ありがとう鞠莉さん」

鞠莉「で、問題は場所よね。今の時点でも結構な人数が集まりそうだし」

花丸「会場……はフェスで使うもんね」

善子「何よりステージにそこまで収まりきらないでしょ」

ルビィ「うん、私もそう思う。だから会場を使うつもりはないよ」

千歌「じゃあどこでやるの?」

ルビィ「外。つまり路上ライブだよ」

134: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:13:49.37 ID:t08A6QoS
善子「それって、秋葉原全部使ってライブやるってこと?」

ルビィ「うん」

千歌「! あールビィちゃんのやりたいこと何となく分かってきたかも私」

梨子「でも、だとしたら余計に使用許可とか取るの難しいんじゃ……」

ルビィ「そうだね、だからこそ」

ルビィ「協力が必要なんです。お願いします雪穂さん」

『…………』

135: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:14:18.84 ID:t08A6QoS
曜「雪穂さんって……え!?」

善子「ちょ……いつの間に!?」

『……まあいきなり電話がかかってきて、その上こんな話を黙って聞かされるんだから少し驚いたけどね』

『ルビィちゃん随分強かになったんじゃないの?』

ルビィ「えへへ、ごめんなさい」

『ふふっ、いいけどね別に。事情は大体察しがつくし』

『要は、場所の確保のためにも上の人たちを説得できるくらいの人材が欲しいんでしょ? 平たく言えばコネかな』

ルビィ「はい」

136: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:14:54.09 ID:t08A6QoS
『あははっ素直だね、でも今回に関していえば私を頼ったのは大正解だよ』

『だって私は知らないからね』

『ラブライブの運営や委員会と繋がりがあって、スクールアイドルにも理解があって、それなりに暇で、フットワークも軽く』

『その上リーダーシップとカリスマ性に溢れみんなを引っ張ることの出来る……そんな、これ以上ない助っ人を』

『私は他に知らないもん』

『いやーそこまで言われると照れちゃうなー!』

「「「!!!?」」」

『んなあ!!?』

137: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:15:21.66 ID:t08A6QoS
ルビィ「穂乃果さん!」

『おっこんにちはー! ルビィちゃん久しぶりー! 元気だったー?』

『話は聞いたよー、そういうことなら私に任せて!!』

『……追加で面白そうなことにすぐ食いつく単細胞お馬鹿っていうのも入れといて』

『酷い! 酷いよ雪穂! あんまりすぎるよ!』

『人の会話勝手に聞いて割り込んでおきながら何言ってるの! お姉ちゃんこれで2回目だよ!!』

『偶然だし別にいいじゃんそれくらい!』

『よくない!』

138: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:15:50.59 ID:t08A6QoS
『大丈夫誰にも言わないから!』

『お姉ちゃんに知られてる時点で私の中ではもう終わってるんだって!』

ルビィ「えーっと、雪穂さん? 穂乃果さん?」

『ごめんルビィちゃん今からちょっと家族会議やるから! 詳しいことはまた後で!』

『あ、そうだルビィちゃんたちがいるところって内浦だったよね? 近いうちにそっちに行くからそのときはよろしくねー!』

ルビィ「! はい!」

『いやー楽しみだなー!』

『いいからお姉ちゃんちょっとこっち来て! じゃあまたねルビィちゃん!』

139: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:16:22.81 ID:t08A6QoS
 
プツン


「「「…………」」」シーン

ルビィ「……というわけで」

ルビィ「穂乃果さんが協力してくれることになりました」

千歌「え……?」

全員「「「ええええええええええええぇぇぇぇ!!!??」」」


──


140: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:16:55.09 ID:t08A6QoS
曜「いやー、最初に聞いたときは耳を疑ったけど」

梨子「うん、まさか本当に」

千歌「穂乃果さんが……あのμ'sの穂乃果さんが……!」

千歌「浦の星に来てるなんてーーーーーー!!!」

千歌「凄いよ! 奇跡だよ!!」

キャーキャー!  ホノカサーン!

穂乃果「どうもどうもー!」ブンブン

鞠莉「壇上ひとり占め……」

141: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:17:22.50 ID:t08A6QoS
雪穂「うわぁ、分かりやすく調子乗ってるなあ」

ルビィ「あの、雪穂さん」

雪穂「ん?」

ルビィ「この度は本当にありがとうございます」ペコリ

雪穂「あははっそこまで畏まらなくてもいいよ。私としてもこれは丁度いい機会だと思ってたから」

善子「そうなんですか?」

雪穂「うん。前々からソロ部門が無いことで起きる問題については指摘されていたから」

花丸「そういえばさゆりちゃんたちも同じことを言っていたような……」

雪穂「でもこの時期は運営委員会もスクールアイドルも両方忙しいからね、なかなか腰を上げる気にはなれなかったんだよ」

雪穂「けど」

142: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:17:50.43 ID:t08A6QoS
穂乃果「よーしそれじゃあ本題に入ろうか!」

穂乃果「鞠莉ちゃん先生説明よろしく!」ビシッ

雪穂「そんな中みんなが声をあげて、どうすればいいのか考えて、そして行動に移した」

雪穂「だから私もお姉ちゃんも、今ここにいる」

雪穂(これまでに培ってきた自主性と、それに伴う行動力)

雪穂「傍から見れば唐突なことかもしれないけどさ、ちゃーんと繋がっているんだよね」

ルビィ・花丸・善子「???」

雪穂「ううんこっちの話。とにかく」

雪穂「ルビィちゃんたちが気にする必要はないよ、大丈夫」

雪穂「きっと何とかなるよ、今回もね」ニコッ

143: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:18:25.67 ID:t08A6QoS
 
それからしばらく経って……


中国地方


善子「すみません、○○学校の方々でお間違いないですか?」

曜「路上ライブの件についてやってきましたー!」ヨーソロー!

「キャーー!! Aqoursの善子ちゃんと曜ちゃん! 本物だー!」

「も、もしよろしければサインの方を……」

善子「勿論、でも話しながらね」

144: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:18:55.11 ID:t08A6QoS

鞠莉『はーい説明始めるわよ、皆よく聞いてね』

鞠莉『まずはざっとおさらいから』

鞠莉『私たちの目的はフェス最終日、その最後の時間にフェス参加者以外のスクールアイドルを集めて路上ライブを行うこと』

鞠莉『つまり今日を含めた6日間のうちに、それを達成しなければいけないわけね』

145: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:19:21.64 ID:t08A6QoS

四国地方

梨子「……以上が大まかな流れです」

「成程ー、分かりました! こちらからも是非参加させてください!」

花丸「あ、ありがとうございます!」

梨子「よろしくお願いします!」

146: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:19:53.66 ID:t08A6QoS

梨子『問題は日数ですよね。フェスは去年と違って7日間の開催に戻ったから、悠長にしている暇はないですし』

曜『それにプラスで全国各地を回らなくちゃだから凄く大変じゃない?』

鞠莉『そう、2人の言った通りとにかく時間が惜しい』

穂乃果『だからその辺もちゃんと考えてきたよ! 雪穂ー!』

雪穂『はいはい分かってますってば』ツカツカ

147: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:20:25.43 ID:t08A6QoS

雪穂『じゃあここからは私のほうから話させてもらうね』

雪穂『みんな聞いたとおりだと思うけど、この条件はとても困難なもの』

雪穂『だからこそ、より効率的に行動する必要があるので……っと、はい』カタカタ タンッ

ピロン

全員『?』チラッ

雪穂『今送ったものは参加していない子の学校をリストアップしたものだよ』

雪穂『ここにくるまでの3日間にあらかじめ作っておいたの』

雪穂『そういうのあればちょっとは楽になるでしょ?』

さゆり『おぉ~……』

あきる『流石雪穂さん』

148: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:20:53.07 ID:t08A6QoS

東北地方

さゆり「うん……うん。□□高校もオッケーね、了解~」

さゆり「じゃあまたねー、はーい」

瑞希「これで50校目と……」チェック

さゆり「いいペースだねー。さてと、ルビィちゃんたちのほうはどうかな?」

149: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:21:23.02 ID:t08A6QoS

雪穂『みんなにはそれを頼りに動いてほしい、各地向かう人数は少数で出来るだけスムーズに』

雪穂『善子ちゃんと曜ちゃんは中国地方、梨子ちゃんと花丸ちゃんには四国』

雪穂『さゆりちゃん瑞希ちゃんは東北、あきるちゃん姫乃ちゃん蘭花ちゃんるうちゃんは北海道』

雪穂『後のみんなは九州と、ここに残ってルビィちゃんと一緒に衣装製作に取り掛かって』

雪穂『状況の確認はこまめに取ること、こっちへの報告も忘れずにね』

150: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:22:11.35 ID:t08A6QoS
ルビィ「雪穂さん、衣装の方ちょうど半分終わりました」

雪穂「うんお疲れ、いい感じに進んでるね。向こうも順調みたいだし」

雪穂「となると後はお姉ちゃんが許可を貰ってくれば、大体大丈夫かなー」カタカタ

ルビィ「それは?」

雪穂「事務処理。鞠莉ちゃんが手配してくれた交通機関への誘導とか、各関係者へ提出するための書類整理とかその他諸々」カタカタ タン

雪穂「あとは協力申請とかかな~もっと人手が欲しいし、ルビィちゃんたちも大変でしょ?」カキカキ

雪穂「あーでもそれならお礼も用意しなくちゃか、今のうちに人数分の在庫確保したほうがいいのかな」ウーン

ルビィ「……あの、本当にありがとうございます。何から何まで」

雪穂「いいよ。やりたくてやってることだし」

雪穂「それにお姉ちゃんが私に事務業務を一任してくれてるからこれだけ出来てるわけで、私自身はそんなに大したことしてないって」

151: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:22:50.90 ID:t08A6QoS
ルビィ「そんなことないです」

ルビィ「私たちのところにも鞠莉さんがいるから分かるけど」

ルビィ「何かをするためには準備が必要で、それを自分たちの代わりにやってくれる人がいるから」

ルビィ「支えてくれる人がいるから、前だけ向いて頑張ることが出来るんだってこと」

ルビィ「私は、雪穂さんのこと尊敬しています」

ルビィ「穂乃果さんの妹とかスクールアイドルの先輩だからとか、そういうのじゃなくて」

152: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:23:33.63 ID:t08A6QoS
雪穂「……そっか」

雪穂「ねえルビィちゃん」

ルビィ「はい」

雪穂「人にはそれぞれ役割っていうのがあってさ、主役だけじゃ成り立たないっていうのは多分みんな知ってることだと思うんだよね」

雪穂「それでもどうしても輝いてるほうに目がいっちゃってさ、カッコいいから仕方ないんだけど」

雪穂「私もそうだし、でも……今みたいに好きな子から面と向かって褒められるなら」

雪穂「脇役っていうのも悪くないね」ニッ

153: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:24:44.58 ID:t08A6QoS


片や、場面は変わって東京


穂乃果「─では次に、こちらが今集まるであろうスクールアイドルの目安です」

「ふむ、これで確定とみなしていいんですね?」

穂乃果「はい。多少人数が上下する可能性もありますが、そこまで数値が大幅に揺れることはないでしょうし問題ないと思います」

「分かりました。では次に時間帯の指定ですが」

穂乃果「あっ、そのことなんですけど一つ提案があってですね」

「なんでしょうか」

穂乃果「フェスで使用する会場がありますよね? あそこと連携して……」

154: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:25:11.08 ID:t08A6QoS
千歌「……うわぁ、なんだか凄く意外な一面」

果南「穂乃果さんってあんなにちゃんと話せたんだね」

ダイヤ「二人とも失礼ですわよ」

千歌「いやー穂乃果さんが真面目に話してるところ見たことなかったからつい」

果南「ていうかなんで私たち呼ばれたんだろうね、言われるがままついてきちゃったけど」

千歌「さあ……」

155: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:25:42.53 ID:t08A6QoS
「成程、ではすぐに取り掛かりましょうか。時間も限られていますから」

穂乃果「よろしくお願いします!」

穂乃果「」グッ

果南「おお、上手くいったみたい」

ダイヤ「…………ん?」

穂乃果「」チョイチョイ

ダイヤ「何やら呼ばれていませんか?」

千歌「なんだろ、はーい」スタスタ

156: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:26:15.12 ID:t08A6QoS
千歌「どうしたんですか? 一体」

穂乃果「最後にちゃんと紹介しておかないとね、いやー危うく忘れるところだったよー」

千歌・ダイヤ・果南「???」

「成程、ではそちらの方々が」

穂乃果「はい」

ポンッ

穂乃果「ラストを締めくくる主役の皆さんです」フフン

千歌「…………へ?」

157: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:26:54.40 ID:t08A6QoS


────


理亞「…………」

ここあ「どーしたんですか、そんな顔して」ヒョコッ

理亞「別に、最後までよく分からないままだったなって」

こころ「ルビィさん達のことですか?」

理亞「うん」

こころ「そうですね、何かやってる雰囲気みたいなものは感じ取れるんですけど皆秘密にしているせいか、それ以上のことはさっぱり」

ここあ「おかげでもう6日目終了、私たちの出番終わっちゃったもんねー」

理亞「惜しかったわね、11位でしょ?」

ここあ「そうなんですよ! ギリギリ最終ステージに残れなくて!」

理亞(1年生同士のデュオでそこまでいけるだけでも大したものだと思うけど)

158: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:27:25.09 ID:t08A6QoS
こころ「理亞さんたちの方も残念でしたよね」

理亞「グループ部門15位だったこと? まあそこまで甘くないことは覚悟していたけど、確かに悔しいわね」

理亞「でも私にも後輩たちにもいい経験になったと思うから、それはそれで構わない」

ここあ(割り切ってるなー)

こころ「では明日は一緒に観戦ですね」

理亞「どうして一緒に行動すること前提なの」

ここあ「まあまあいいじゃないですか! 合宿で教えてもらった縁もありますし!」

理亞「はあ、いや別に構わないけど」

こころ「フフッ、約束ですよ?」

159: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:28:00.28 ID:t08A6QoS
ここあ「………あっそうだ!」

理亞「どうしたの」

ここあ「理亞さん理亞さん! 折角なんでこのまま私たちの家のほうにも立ち寄っていってくださいよ!」

理亞「えっ、なんで」

こころ「それは良い考えねここあ! ちょうどお世話になったお礼もしたいと思っていたし!」

理亞「いやちょっと待って、それに言うほどお世話してない」

ここあ「さあそうと決まれば!」

こころ「行きましょう理亞さん! こっちです!」

こころあ「さあさあさあ!」グイグイ

理亞「聞いてって」

160: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:28:27.43 ID:t08A6QoS
こころあ「フンフンフーン♪」スタスタ

理亞(会話が一方的すぎる……半ば強制的に連れられたし)ズルズル

理亞(…………でも、矢澤にこの自宅は確かに少し気になる)ズルズル

理亞(もしかしたら本人に会える可能性だって、あるかもしれないし)ズルズル


理亞「…………」


理亞「ねえ」

こころあ「はい?」

理亞「行くから流石に自分のペースで歩かせて」

161: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:29:07.19 ID:t08A6QoS


……


こころ「こっちです」ツカツカ

理亞「マンションに住んでたのね」

ここあ「はい、あーそれと、ここからはパパラッチに気をつけてくださいね。どこにカメラが潜んでいるか分かったもんじゃありませんから」

理亞「何言ってるの?」

こころ「理亞さんもプライベートを勝手に撮られるのは困るでしょ?」

理亞「だから何の話をしてるの」

こころ「アイドルの心構えの話ですよ」

ここあ「まあ私たちは小さい頃から鍛えられていますから、これくらい全然余裕ですけどね!」

理亞(……もうやめておこう、どんな返答でも私と彼女たちの間にズレが生じる気がする)

162: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:30:00.90 ID:t08A6QoS
こころ「着きましたよ。ここが私たちの自宅です」

理亞「ここが……」

ここあ「姉ちゃんただいまー」ガチャ


「おかえり、こころはどうしたの?」

ここあ「お客さんと一緒にいるー」

「ふーん、お客さんねえ……友達じゃなくて?」

ここあ「凄い人、合宿でお世話になったんだー」

「はあ? でもそういうことなら一応挨拶はしておかないとね」

163: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:31:07.67 ID:t08A6QoS


ガチャ


理亞「!!」

こころ「あ、お姉様」

にこ「どうもうちの妹たちがお世話になっております。姉の矢澤にこです…………って」

にこ「げっ…嘘でしょ、よりにもよって……」

理亞「?」

にこ「…………」

にこ「こころ、先に上がって料理並べておいて。もう出来てるから」

こころ「分かりました」トテテッ

164: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:32:22.27 ID:t08A6QoS
にこ「その前にちゃんと手洗いなさいよー……さてと」

理亞「あ、あの……初めまして、鹿角──」

にこ「鹿角理亞でしょ、知ってるわよ嫌でも」

理亞「え?」

にこ「はあ…………まあ上がっていけば? ここまで来ておいて帰すのもなんだし」

理亞「あ、はい。お邪魔します」

にこ「どうぞごゆっくり」

理亞(なんか……あまり歓迎されてない?)チラッ

にこ「…………」ハァ

165: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:33:15.54 ID:t08A6QoS




にこ「いただきます」

こころあ「いただきまーす!」

理亞「い、いただきます」

パクッ

理亞「! 美味しいですね。とても」

理亞「特にご飯とお味噌汁。味噌汁はダシがよく効いていますね、それでいて主張しすぎていない具も多すぎず少なすぎずの絶妙なバランスですし」

理亞「お米は……これどこ産の使っているんですか? ハリとツヤが素晴らしいですね、粘りは控えめですけどその分歯ごたえがあって噛むほどしっかりとした甘みを感じられる、かなり良質なものとみました」

ここあ「おぉ~」パチパチ

こころ「理亞さんお詳しいんですね」

にこ「……味噌汁はそんなに大したものじゃないわよ、いつも作ってるから慣れてるだけで」

にこ「お米のほうは、あれね……知り合いがよく送ってくるのよ。毎回わざわざ品種変えてさ、食べてみてくださいって」

にこ「だから別に取り寄せてるわけじゃないわよ、今月のお米がたまたまそれだったの」

166: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:34:55.89 ID:t08A6QoS
にこ「そんなことより……何あんた、うちに食レポでもしにきたの?」

理亞「あ、いえそういうわけでは……すみませんつい」

にこ「冗談よ、職業柄言わずにはいられなかったって感じでしょ」

にこ「流石は甘味処の娘ってところかしら」ズズッ

理亞「どうして知ってるんですか?」

にこ「スクールアイドルマガジン2019の10月号で特集組んでたときに情報載ってたからね」

にこ「受け答えしていたのはもっぱら姉の聖良のほうだったけど、もしかして覚えてないの?」

理亞「いえ、記憶は確かにあるんですけどそこまで詳しくは」

にこ「ふーん、あっそ」

167: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:35:48.97 ID:t08A6QoS
ここあ「なんなら持ってきましょうか? 私たちのバイブル!」

理亞「は? バイブル?」

にこ「私が後で見せるからいいわ、その前に二人ともお風呂入っちゃって」

ここあ「はーい」

こころ「ちょっと! 私が先でしょ!」

ここあ「早い者勝ちだし!」


ドタバタドタバタ


理亞「あの……」

にこ「ああ悪いわね、先に入らせちゃって」スクッ

理亞「構いませんというか、そこまでお世話になるつもりは─」

にこ「でもあの子たちは泊める気満々よ」カチャカチャ

ジャー…

理亞「…………」

にこ「嫌なら私が説得するけど」ゴシゴシ

168: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/04(水) 17:36:22.14 ID:t08A6QoS
理亞「違います、ただ……」

にこ「ただ?」

理亞「にこさんはどうなのかなと」

にこ「ああそういうことね、いいわよいいわよ話さえ聞いてくれれば」キュッキュッ

理亞「いいですよ、私としても是非お聞きしたいところですから」

理亞「にこさんのお話し、俄然興味が出てきましたので。ええ本当に」

にこ「あー生意気、あんたのその態度見てると昔を思い出すわ」

理亞「対応が対応なので」

にこ「へえ~? その度胸"だけ"は買ってあげるわ」ピク

理亞「張るだけの胸はありますので"一応"は」ピクピク

にこ「なに?」

理亞「いいえ? なにも?」

理亞・にこ「…………」


理亞・にこ(思ってた以上に印象悪いわね)


171: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:20:56.15 ID:enc4bCv0
にこ「……ふん、取り敢えず触れないでおいてあげるわ今は」

にこ「ちょっとそこで待ってなさい、そのバイブルとやらを持ってくるから」

理亞「ありがとうございます」

スタスタ

にこ「全く、なんでこんな子に懐いてるんだか」ボソッ

172: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:21:57.56 ID:enc4bCv0


バタン


理亞「……はあー、やっと行ってくれた。なんか解放された気分、空気が張り付いて仕方がなかったし」

理亞「何がそんなに気に入らないんだろう、特になにかした覚えないんだけど」

理亞(……それにしても)チラッ

理亞「凄い量のアイドル雑誌。メジャーなものからマイナーまで」

理亞「よくこんなに揃えられるというか……こっちはダビングしたDVD? 10年前って……」

理亞「A-RISE結成インタビュー!!? そんなものあったの!? 嘘!?」

理亞(み、見たい……)

「人様の私物を勝手に漁るとは、どこぞの勇者並みに胆が据わってるじゃない」

「目の付け所は悪くないと思うけど」

理亞「! ごっごめんなさい!!」

173: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:22:44.70 ID:enc4bCv0
にこ「ほら、持ってきたわよ例のバイブル」

理亞「ボロボロですね」

にこ「これでも大切に保管しているのよ」

理亞「あの、にこさん。けどこれ少し可笑しいと思うんですが」

にこ「なにが?」

理亞「だってこの時期…10月号って私たちまだラブライブ優勝していないですし」

にこ「私の妹たちはその前からあんたたちを注目してたってだけの話でしょ」

理亞「え?」

にこ「この記事はね、フェスライブデュオ部門優勝と東京ライブ大会1位について書かれているものなの」

理亞「!」

174: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:23:24.01 ID:enc4bCv0
にこ「当時はかなり衝撃的だったらしいわよ、こころもここあも」ペラッ

にこ「丁度自分たちのスタイルについて悩んでいた頃だったから特にね」

理亞「スタイル?」

にこ「スクールアイドルとして2人組でやっていくのか、それともグループで活動するのか」

にこ「あの子たちは超絶私リスペクトだからμ'sのような多人数グループにも憧れがあったわけ」

理亞「そういうの自分で言いますか」

にこ「うるさいわね。だからどう進んでいこうか迷っていたのよ、どっちをやるべきなのかって」

にこ「で、そんなところへ現れたのがSaint Snowだったの」

にこ「二人組で、しかも姉妹でのスクールアイドル。それが頂点を取ったのよ、気にならないわけないじゃない」

理亞「…………」

にこ「おかげであの子たちの道筋は決定的なものになった、私たちも姉妹でやっていこうってね」

にこ「こころとここあに明確な目標を示してくれたこと、それについては私も感謝してるわ、どうもありがとう」

175: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:23:52.77 ID:enc4bCv0
理亞「いえ、私はそんな……」

理亞「……物のついでに、一つ聞いてもいいですか」

にこ「ん?」

理亞「どうして私なんですか? あの二人はどうして姉様じゃなくて私に」

にこ「……あんたそれ本気で言ってるの?」

理亞「はい」

にこ「嘘でしょもう……自分の立場を理解出来てないのか、ただのシスコンなのか分からないわね」

理亞「シスッ……!」

176: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:24:22.60 ID:enc4bCv0
にこ「あのねえ、実力がどうとか個人でのリスペクトについてどうこう言うつもりはないけど、自分の功績を客観的に分析するくらいのことはしなさいよ」

にこ「フェスライブデュオ部門2年連続優勝、ラブライブも同様2年連続優勝。歴代でも個人でこんな記録を打ち立てたスクールアイドルなんていないから」

にこ「こんなの怪物でしょ、控えめに言っても」

にこ「それに、同じ妹としても鹿角理亞って人間に対して思うところはあるんじゃない?」

理亞「そういう、ものなんでしょうか」

にこ「理亞。あなたって意外に謙虚よね、もっと自意識過剰かと思ってたけど」

理亞「なんで毎回余計な一言付け加えるんですか、わざとですか」

にこ「あんたに言われたくないんだけど」

177: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:24:56.13 ID:enc4bCv0
にこ「とにかく、あの子たちがあんたを気にいってるのはつまりそういうことなの」

にこ「Saint Snowは姉の鹿角聖良あってこそ。そういった評価を実力で覆したあんただから惚れこんだってわけ」

理亞「……そっか、だからあの子たち私のファンだって」

にこ「言われたの?」

理亞「初めの挨拶で」

にこ「ふうん……」

理亞「何か言いたそうですね」

にこ「別に。ただ私が昔A-RISEを追っていたのと同じように、妹たちにもそういう意味で憧れるものが出来たんだって、改めて思っただけよ」

にこ「新しい時代の流れっていうのかしら、それを肌で実感させられた感じ」

理亞「新しい時代、ですか……でも」

178: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:25:34.65 ID:enc4bCv0
にこ「なによ?」

理亞「にこさんはもっと早く気付いていそうなものかと思っていましたが、アイドルの事情に詳しいですし」

にこ「もちろん勘付いてはいたわよ当然でしょ。けど、直接会うまで認めたくないじゃない」

にこ「あんたがその"中心"だって」

理亞「……またそれですか」

にこ「そうよ、悪い?」

理亞「少なくとも理由も分からずに敵意を向けられるというのは、あまり気分のいいものではありませんね」

にこ「私あんたのことはまだよく知らないけど、その発言がブーメランになってることくらいは分かるわよ」

理亞「うっ……い、今はにこさんについて言ってるんです!」

理亞「大体なんなんですかさっきから! 大人げがない! 他のあなたと同じ世代の方々はみんな、にこさんと違って友好的だったっていうのに!」

にこ「……」ムッ

理亞「私の何がそんなに気に入らないっていうんですか!」

179: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:26:26.05 ID:enc4bCv0
にこ「……い、言ってくれるじゃない」

にこ「じゃあ私も言わせてもらうけどねえ! こっちからすればまず納得しろってのが無理な話なのよ!」

理亞「だから何が!」

にこ「あんたが私の知ってる色んな人たちから目をかけられてるってところがよ!」

にこ「こころやここあどころか、あのツバサまで!」

理亞「はあ!? 意味が分かりません! にこさんさっき私の功績がどうとか言ってたでしょう!」

にこ「実績以外が気に食わないって言ってんの! わっからないの!?」

にこ「あんたはとにかく可愛げが無さすぎる!!」

理亞「なん……っですかそのくだらない理由は! あなた本当に大人ですか!?」

にこ「くだらないですって!? くだらないどころか一番大事なところでしょうが!」

にこ「いい!? そもそもアイドルっていうのは──「ただいまー」

にこ・理亞「!」

虎太郎「えーっと……取り込み中?」

180: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:27:06.27 ID:enc4bCv0
にこ「虎太郎、今日は遅かったのね」

虎太郎「部活長引いた」

にこ「そう、お疲れ」

理亞「ご家族ですか?」

にこ「一番下の弟」

虎太郎「どうも」

理亞「ど、どうも」

にこ「虎太郎。こっちにいるのは理亞、こころとここあが合宿でお世話になった人」

にこ「今日うちで泊まることになってるから」

虎太郎「理亞? …………ああ、成程。なんか大体分かった」

理亞「?」

181: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:27:51.81 ID:enc4bCv0


ガラッ


ここあ「時間かかっちゃってすいませーん!」

こころ「今あがりましたー!」

にこ「二人とも服はちゃんと着なさい」

ここあ「やばっ急いでたからつい……あれ、こた帰ってきてたの?」

虎太郎「ついさっき」

こころ「あっ理亞さん! お待たせしましたお風呂どうぞ!」

理亞「いや私は」

虎太郎「入ってきたらどうですか、疲れたでしょう色々」

虎太郎「にこに……姉はこちらで宥めておくので」

こころあ「?」

にこ「ちょっとそれどういう意味」

182: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:28:18.02 ID:enc4bCv0
理亞「……じゃあ、お言葉に甘えて」

ガラッ

ここあ「うーん、よく分かんないけど取りあえず部屋に戻って待ってよーか」

こころ「そうね、見せたいものもいっぱいあるし」

にこ「だからってあまり遅くまで起きるんじゃないわよー」

こころあ「はーい」スタスタ


ガチャッ  バタン


にこ「お腹空いたでしょ、もう冷めてるから温めなおすわ」

虎太郎「いいよ、自分でやる。それより……にこにーさあ」

183: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:28:59.15 ID:enc4bCv0
にこ「な、なによ」

虎太郎「理亞さんにきついこと言ってたんじゃないの」

にこ「そっそんなことないわよ、あれはそう! アイドル談議に花を咲かせてたの」

虎太郎「その割にはちっとも楽しそうに見えなかったけど」

虎太郎「だから分かった。あぁにこにーやっちゃったんだなーって、違う?」

にこ「ぐぬぬ……」

虎太郎「当たりっぽい」

にこ「…………はあ、分かったわよ。私が悪かったわよ」

虎太郎「それ本人に言えば?」

にこ「……しっかし、まさかよりによって虎太郎に見抜かれるなんてね」

虎太郎「理亞さんに限って言えば、姉ちゃんたちより僕のほうがそこら辺詳しいし」イタダキマス

にこ「こころ達の前で悪く言うのは流石に出来ないもの。だって理亞に憧れてるのよ?」

184: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:29:29.50 ID:enc4bCv0
虎太郎「だからって、いないときに悪く言うのも違うと思うけど」パクッ

にこ「う、それは」

虎太郎「言うにしても程々にしておけばいいのに、アイドルのことになると熱くなりすぎるんだから」モグモグ

にこ「……あんたはその年で達観しすぎね」

虎太郎「アイドルに限っていえば、僕以外誰もしっかりしてくれる人いないし」ズズッ

にこ「……」メソラシ

虎太郎「で、何言ったの」コトン

にこ「……可愛げがなさすぎて気に食わないって」

虎太郎「うわぁ」

185: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:29:56.85 ID:enc4bCv0
にこ「し、仕方ないでしょ! 本当のことなんだから!」

虎太郎「だからってさあ」

にこ「ほーら! あんただって認めてるじゃない!」

にこ「第一あの子はアイドルだって自覚がなさすぎるのよ!」

にこ「雑誌記事や動画のインタビューでいっつも「あ、はい」だとか!「はあ」だとか適当な返事ばかりして! 何あれやる気あんの!!?」

にこ「仮にクールキャラでいくとしても! 限度ってものがあるでしょ!」

にこ「英玲奈を見習いなさいよ英玲奈を! 何がA-RISEに憧れてるよ! まっったく参考に出来ていないし!」

にこ「ツバサに指導してもらっておきながらアレって……ほんっともう……なんなの!!」

虎太郎(また始まった)

186: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:30:34.74 ID:enc4bCv0
にこ「私だったら断然対抗馬であるAqoursのルビィちゃんを推すけどね!」

にこ「なのにあの二人ときたらここ最近は毎日のように理亞さん理亞さん理亞さんって……」

にこ「あんな奴のどこがいいわけ!? あんな……無愛想にも程がある子のどこが!!」

にこ「私なんて初対面にも関わらず失礼な態度をとられたのよ! ていうかここに来てからずっとそう!」

にこ「目上の人に対する敬意ってものがないわけ!?」

虎太郎「それはにこにーが悪いんじゃないの」

にこ「ぬわんですってぇ~!!?」

187: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:31:03.93 ID:enc4bCv0


========


理亞「……………………」

にこ「没収! 虎太郎あんた今日アイス抜きだから!」

虎太郎「ちょっと待った! それはない!」

こころ「にっこにっこにー! にっこにっこにー!」

ここあ「あー理亞さん! 理亞さんもやりますか? 日課なんです私たちの!」

こころ「あなたのハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこ~!」

にこ「あむっ……あら意外とイケるわねこれ」

虎太郎「あーーーーーっっ!! にこにぃーーーーー!!!」

こころあ「にこにーって覚えてラブにこっ!!」


理亞(なにこの騒がしい家庭)


188: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:31:45.88 ID:enc4bCv0
ここあ「さあさあ理亞さん!」

理亞「に、にっこにっこにー……」

にこ・虎太郎・こころあ「「「「全っっっ然ちがう!!!!!」」」」

理亞「」

虎太郎「振り付けが雑、動きも中途半端、初めから既にアピール不足」

こころ「手はこう! 指の先までしっかりと!」

ここあ「ぴょんって跳ねるんですよぴょんって! 腕もちゃんと伸ばして!」

にこ「もう駄目、全部だめ。まるでお話しにならないわね」

こころ「さあ理亞さんもう一回!」


理亞(ああ、なんだろう……私は)

理亞(今まで会った中で一番面倒な人たちと関わってしまったのかもしれない)

理亞「に……にっこにっこにー!」

「「「「違う!! やり直し!!!」」」」


……



189: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:32:28.74 ID:enc4bCv0

─翌日


フェスライブ最終会場


虎太郎「ふわぁ~……」

にこ「ほら虎太郎、しゃんとしなさい」

虎太郎「ちょっと無理、眠たい。結局昨日は一晩中やってたし」

にこ「体力ないわねー、隣を見てみなさいよ」

ここあ「おぉ~! 流石上位勢、レベルたっか!」

こころ「参考になるわね、ちゃんとメモしておかないと」カキカキ

理亞「ああ、うん。そうね」

190: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:33:19.47 ID:enc4bCv0
にこ「同じ条件でもあっちは元気いっぱいよ」

虎太郎「いや、一人当て嵌まってないよね」

にこ「あれは別にいいの」フン

虎太郎「……大人げな」

にこ「あ、あんたまで言うわけ!?」


ワアアアアアアアアアア!!!


虎太郎「ん? 次で最後?」

にこ「みたいね。まあ悪くはなかったけどやっぱり去年と比べるとどうしても物足りないところあるわね」

にこ「去年の理亞とルビィちゃんのデュオ並みのものがそんなに早く出てくるわけないって分かってるんだけどね」

にこ「アレは良すぎたもの。ライブパフォーマンスだけじゃない、そこに至るまでのドラマも完璧だった」

にこ「鹿角理亞と黒澤ルビィ。あのコンビはデュオの中でも歴代最高といっても過言ではないわ」

虎太郎(だからそれ本人に言えばいいのに)

191: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:33:53.10 ID:enc4bCv0
「ありがとうございました!」

パチパチパチパチ!!

虎太郎「でも、良かったよね今年も」

にこ「…まあね」

ツバサ「──以上を持ちましてラブライブ!サマーフェスティバル2021を終了させていただきます。と、言いたいところですがその前に……」

理亞「ん?」

ツバサ「こちらの画面をご覧ください」

パッ

理亞「……ルビィ?」

ツバサ「さて、今画面には大勢のスクールアイドルたちが映っていますが、一体彼女たちは何をしているのでしょうか? 現場の方に話を聞いてみましょう」

ツバサ「中継の高坂穂乃果さーん!」

穂乃果『はーい高坂穂乃果でーす! 皆さんフェスは楽しんでいただけましたかー!?』ブンブン

にこ「え、何やってるのあの子」

192: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:34:20.01 ID:enc4bCv0
穂乃果『現在私たちはですねー、そんな皆さんにもっと盛り上がってほしくてここに集まっているわけです!』

ツバサ「というと?」ニヤリ

穂乃果『はい! 今からここにいる全員でスペシャルライブを行います!』

にこ「!」

ザワザワ

穂乃果『そしてその中心となるスクールアイドルは……じゃん! Aqoursの皆さんでーす!!』

理亞「…9人揃ってる」

穂乃果『さあ! 前置きはこれくらいにしてそろそろ始めましょう!』


穂乃果『それでは皆さん聞いてください! 私たちの……スクールアイドルみんなの歌を!!』

193: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:34:47.71 ID:enc4bCv0
ーーーーーーーー





ダイヤ・ルビィ・果南「楽しいね こんな夢」

ダイヤ・ルビィ・果南「えがおで 喜び歌おうよ それが始まりの合図」

花丸・梨子・鞠莉「一歩ずつ 君から一歩ずつ」

花丸・梨子・鞠莉「僕から どこかへ行きたい心のステップ」

千歌・曜・善子「受け止めてあげるここで 最初は少しためらっても」

千歌・曜・善子「受け止める場所があるって」

千歌・曜・善子「もっともっと知ってほしくなるよ…なるよ!」

194: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:35:33.75 ID:enc4bCv0


「SUNNY DAY SONG SUNNY DAY SONG」

「高く跳びあがれ」


ここあ「わっはー! 懐かしい!」

こころ「いいなあ、私たちも混ざりたい」

虎太郎「……」トントントントン

にこ「虎太郎はもっとリアクション大きくてもいいんじゃない?」

虎太郎「……べつに、そんなんじゃないし」

にこ「まったく…誰に似たんだか」クスッ

虎太郎「にこにー」

にこ「後で覚えておきなさいよ」

195: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:36:14.96 ID:enc4bCv0
にこ(それにしても)

「自分から手を伸ばしたら」

にこ(本当にあんたは変わらないわね、穂乃果)

「もっともっと面白くなるよ…なるよ!」

196: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:36:51.92 ID:enc4bCv0
にこ(流石に提案までしたかどうかは、分からないけど)

理亞「……」

理亞「なんていうか」

こころあ「?」

理亞「流石ね、ルビィ」

こころ「ああ、そうですね」

ここあ「ダンスとか今じゃ一番上手いですもんね」

理亞「ううん、そうじゃなくて」

こころ「え?」

理亞「変わらないのに同じじゃないっていうのは、他の人が思っている以上に凄いことよね」

ここあ(どういう意味だろ?)ヒソヒソ

こころ(さあ……?)

197: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:37:19.07 ID:enc4bCv0
──




千歌『ええ!? 私たちが代表でやるんですか!?』

穂乃果『うん、他の皆もいいって言ってたよ?』

千歌『おぉ~~~……!!』

果南『いやいやでも』

穂乃果『うん?』

ダイヤ『その、折角穂乃果さんがいるというのに……それは差し出がましいといいますか』

果南『ね』

198: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:37:58.34 ID:enc4bCv0
穂乃果『……ふ~ん』

千歌『えー! 二人とも何それ! こんなチャンス滅多にないのに!!』

千歌『大体! この曲ってμ'sのものとかそういうのじゃないし!! 本人や皆がいいって言ってくれてるんだからいいじゃん!』

穂乃果『おぉ~、ガンガンいくねー千歌ちゃん』

千歌『もちろんですよ! 寧ろなんで二人が乗り気じゃないのか分からないですもん!』

穂乃果『まあまあ、二人とも大人なんだよー。やりたくないんじゃなくて私に遠慮してるだけで』

穂乃果『でもやりたいんだったら、やってみていいと私は思うけどなあ……それに』

ポンッ

穂乃果『譲りすぎるのってあんまりよくないと思うよ、自分にも』

果南・ダイヤ『──!』

199: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:38:33.57 ID:enc4bCv0
千歌『穂乃果さんの言う通りだよ! ね!? やろう!』

千歌『私この9人で一緒にやりたい!!』

ダイヤ『……千歌さん』

果南『そうだね』

千歌『当然穂乃果さんとも!』

穂乃果『ふふっ、いいよ』

穂乃果『みんなで伝えよう、スクールアイドルの素晴らしさを!』

『はいっ!!』

200: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:39:01.16 ID:enc4bCv0
千歌「SUNNY DAY LIFE」

穂乃果「SUNNY DAY LIFE」

千歌・穂乃果「輝きになろう」

梨子・果南「なんて言える今の気分を分け合えば」


千歌(ああ 楽しい)

千歌(すっっごく楽しい)


穂乃果「SUNNY DAY LIFE SUNNY DAY LIFE」

千歌「君も踊り出す…Ah!」

201: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:40:03.71 ID:enc4bCv0

ルビィ(…………凄いなぁ)


「SUNNY DAY SONG」

「SUNNY DAY SONG 高く跳びあがれ」

「どんなことも乗り越えられる気がするよ」


花丸(こんなにたくさんの人がいるのに、ただ楽しく踊ってるだけなのに)


「SUNNY DAY SONG」

「SUNNY DAY SONG 口ずさむ時は」

「明日への期待がふくらんでいい気持ち」


善子(みんなの息がピッタリと合わさっているのが 分かるなんて 伝わってくるなんて)


SUNNY DAY Wow! Sun power!


202: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:40:32.54 ID:enc4bCv0

───♪


穂乃果「……以上! 現場から高坂穂乃果でした!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

ワッ!!

キャーーーー!!  オオオーーーー!!

ツバサ「穂乃果さんありがとう! おかげで今年もまた一段と素晴らしいフェスになりました!」

ツバサ「会場の皆さん今一度彼女たちに盛大な拍手をお願い致します!」

パチパチパチパチ!!!

ツバサ「それでは以上を持ちまして、今回のラブライブ!サマーフェスティバル2021を終了とさせて頂きます」

ツバサ「ご来場の皆様、参加者のスクールアイドルの皆様、今日は本当にありがとうございました!」

ツバサ「また来年、この会場でお会いしましょう! さようなら!」


ワーーーーーッ!

203: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:40:59.40 ID:enc4bCv0
にこ「…………」クルッ

虎太郎「にこにー?」

にこ「帰るわよ、また見返したくなったから」

虎太郎「はいはい」

にこ「こころー! ここあー! いつまでそっちにいるの! さっさと帰って研究するわよ!」

虎太郎「物は言いようだね」

にこ「あんただけ見せないわよ」

虎太郎「…さてと、先に帰って掃除でもしておこうっと」

204: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:41:35.94 ID:enc4bCv0


ケンキュウスルワヨー!


理亞「……ふーん」

こころ「おお、流石お姉様……!」

ここあ「もうそんなことまで考えてるなんて!」

理亞「いや、多分二人が思っているのとは違うと思うけど」

ここあ「こうしちゃいられない! すぐに帰らないと!」

こころ「その後はライブね! もう体がうずいて仕方ないっていうか!」

ここあ「よしきた!」

理亞「ねえ私の話聞いてる?」

ここあ「じゃあそういうわけなんで理亞さん! 私たちそろそろ行きますね!」

こころ「今日は付き合っていただきありがとうございました! では!」

205: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:42:15.20 ID:enc4bCv0
タタタタッ……

理亞「ちょっと! ……なんであんなに落ち着きがないんだか」

理亞「はあ……疲れた。昨日も今日も、本当に疲れた」

理亞「…………」

スッ

理亞「……もしもし、ごめん今日は一緒に見に行けなくて。今どこにいるの?」

理亞「うん、うん。分かった、私もそっちに行くから待ってて」

理亞「そう、二人ともやるでしょ? 練習」クス

206: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:42:54.61 ID:enc4bCv0





穂乃果「大成功ー! やったねみんな!」ピース!

千歌「イエーイ! 路上ライブ最高ー!」

曜「千歌ちゃんとしては穂乃果さんと一緒に歌えたことのほうが大きそうだけどね」

梨子「フフッ、確かにそうかも」

さゆり「うわあー、なんかものすごい達成感」

あきる「ここ数日大変だったものね、でもだからこそ充実してるっていうか、本当に気持ちいい」

姫乃「そうですね、理亞さん私たちのこと見ていてくれたかなあ」

蘭花「さっきメール送ったら良かったって返ってきたから大丈夫ネ!」

姫乃「早いですね!?」

207: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:43:22.31 ID:enc4bCv0
鞠莉「…………」

果南「ん、どうしたの鞠莉。こんなときに黙っちゃって」

ダイヤ「らしくありませんわね」

鞠莉「そっちこそ何でスッキリした顔してるのよ、千歌っちから聞いたわよ~? あなた達あまり乗り気じゃなかったらしいじゃない」

果南「い、いやそれは」

ダイヤ「何といいますか」

鞠莉「ま、あまり深くは聞かないけど。楽しむことができたならそれに越したことはないし」

鞠莉「私もベリーベリーエキサイティングだったもの! ……ただ」

果南・ダイヤ「?」

鞠莉「あの子はいつも私たちに新しい体験をさせてくれるのねって、考えてただけ」

208: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:43:51.96 ID:enc4bCv0


ワイワイ キャッキャ


ルビィ(みんな凄く喜んでる)

ルビィ「よかったぁ……」ホッ

善子「緊張してたんでしょ、ライブじゃなくてこのイベント自体に」

ルビィ「えへへっ、まあね」

善子「無理もないわね、発案者はルビィだしそれにこんな大規模なものになると」

花丸「でも上手くいって良かったね」

善子「ええ」

花丸「……あのね、マル最近よく思うんだ。スクールアイドルってこんなに楽しいものなんだって」

209: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:44:28.46 ID:enc4bCv0
善子「いまさら?」

花丸「いまさら」

ルビィ「でも花丸ちゃんの気持ち、私もちょっと分かるかも」

花丸「ルビィちゃんならそう言ってくれると思ったずら!」

花丸「今日のこともね、すごくドキドキしたんだあ」

花丸「ああ、まだマルの知らないことがたくさんあるんだなって」

花丸「本とは違う、文字だけじゃ表現しきれない興奮とか、面白さとか」

花丸「今のライブで伝わってきて……だから、本当に今更だけど」

花丸「アイドルって素敵だよね!」

ルビィ「うん!」

210: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:45:03.62 ID:enc4bCv0
善子「へえ意外、あんたの口からそんな言葉が出てくるなんて」

花丸「そんなに変かなあ」

善子「いや変っていうほどのものじゃないけど」

善子(花丸はアイドルじゃなくてスクールアイドルが好きなんだと思っていたから)

善子(そういう人って結構いるでしょ、でも)

善子「アイドルねえ……」

211: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:45:39.58 ID:enc4bCv0
花丸「えへへっ」

善子(彼女のことといい……もしかしたら花丸は)

善子(自分とは全く縁のない、未知のものに強く惹かれるのかもしれないわね)


宝石に加工される前の、光る原石のような

右も左も分からない世界の中、ひときわ輝く何かに────


善子「……なんて、いくらなんでも詩的すぎよね、花丸じゃないんだから」

ルビィ「善子ちゃん、どうかしたの?」

花丸「マルのこと呼んだ?」

善子「ううん、なんでもないのよ」

212: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:46:10.01 ID:enc4bCv0
月「わー凄い凄い凄い! 凄いよみんな感動だよー!」

聖良「月さん語彙力が……」

雪穂「あははっ、いいんじゃない? それだけ喜んでもらえたってわけだし」

聖良「確かにそういう見方も出来ますが」

雪穂「実際聖良ちゃんはどうだった?」

聖良「素晴らしかったと思います」

雪穂「ね」

聖良「それにしても、よく出来ましたよねこのライブ。話を伺ったときは実現させるのは難しいと思っていましたが」

213: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:46:41.08 ID:enc4bCv0
雪穂「そうだね。今回は上手くいったけど来年以降もこれが続けられるとは思えないし」

聖良「ですよね……」

雪穂「でも、前例は出来た」

聖良「前例ですか?」

雪穂「うん、誰もやったことがないこととか、そういうのって皆あまり手が出せないんじゃないかなと思うけど」

雪穂「過去にこんなことがあったんだって事実があるとさ、それだけで出来るかもしれないって気になってくるでしょ?」

雪穂「少なくとも私はそういうタイプだから」

聖良「そうですね、事実ルビィさんもμ'sの皆さんが先にやっていたからこれを思いついたわけですし」

雪穂「うん、だからきっと大丈夫。まだ全部の問題が解決したわけじゃないけど」

雪穂「これを機にフェスライブはまた変わっていくはず、いや、お姉ちゃんたちと一緒に変えていってみせるよ」

214: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:47:15.89 ID:enc4bCv0
聖良「そのときは私も協力します」

雪穂「ありがとう。そういえば聖良ちゃんはさ、一緒に踊らなくて良かったの?」

聖良「いいんです。今回は私が入らないほうが締まると思いましたから」

聖良「メインを引っ張るのはAqoursの皆さんですし」

雪穂「ふうん……ねえ聖良ちゃん」

聖良「はい」

雪穂「あなたも、譲ってる人?」

聖良「え?」

雪穂「ううん何でもない、ちょっと聞いてみただけ。それじゃあね」

聖良「あの、雪穂さん! ……どういう意味かしら?」

215: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:47:45.64 ID:enc4bCv0
千歌「ねえねえ鞠莉ちゃん! この後お祝いしようよお祝い! SDS記念!」

鞠莉「いいわねー! パーッといきましょうパーッと!」

善子「すぐ祝いたがるわよね貴女たち」

鞠莉「いいじゃない! 今日が終わったらまた忙しい日々が待ってるんだから!」

鞠莉「今くらいは全力で楽しまないと!」

果南「鞠莉が言うと説得力すごいね」

梨子「私たちとは一日の密度が違いますからね」

梨子(でも)チラッ

鞠莉「スイーツバイキングいきましょスイーツバイキング!」

曜「いいねー!」

梨子(本当にそれだけなのかな?)

216: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/05(木) 06:48:54.75 ID:enc4bCv0

それから数日後……


とある建物


「はい、はい……分かりました、すぐそちらの方へ伺います」

「はい、ではまた後程……失礼します」

「お仕事?」

「ええ。面白そうだけど、ちょっと厄介でもありそうなやつね」

「あと長くなりそう。まあ行ってみれば分かるわよ」

「行ってみればって、私も行くの?」

絵里「そうよ、出発の準備して亜里沙」

絵里「せっかくのご招待、お相手を長く待たせるわけにはいかないものね」フフッ

220: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:34:13.43 ID:KJlK741l

──同時間帯、東京…羽田空港国際線ターミナル


果南「……あのー、私たちちょっと前に別れたばかりのはずだったんだけど」

鞠莉「ええ」

果南「なんでまた集まってるの?」

鞠莉「ちゃんと伝えたじゃない、海外行くからって」

果南「情報それだけしかないじゃん!」

ダイヤ「何故私たちまでついていく必要があるのですか、旅行ならお一人で行けばいいでしょう」

鞠莉「そうね、私も本当はそうしたかったんだけど」

梨子「やっぱり何かあったんですか」

鞠莉「詳しいことは現地で話すわ、だからお願い」

鞠莉「私のためにちょっと一緒に巻き込まれて」

221: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:35:01.66 ID:KJlK741l
果南「……仕方ないなあ、一肌脱ぎますか」

ダイヤ「休みはまだありますしね」

鞠莉「二人ならそう言ってくれると思ったわ! ベリーベリーThanks!!」

ダイヤ「ですが私たちはともかくルビィたちは」

鞠莉「理事長権限でどうにでもなるわよそれくらい」

果南「ねえ、それ本当に程々にしといたほうがいいと思うよ」

鞠莉「これで最後だから! ね!」

果南「全く……で、千歌たちは」

222: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:35:34.16 ID:KJlK741l
千歌「海外! イタリア! おーーー!!」

曜「イタリアといったらやっぱりカラビニエリの軍服だよね!」

果南「あれなら心配いらないね」

月「いやー逆に心配になるかな僕は、普段はともかくとしてこの時期のイタリアはちょっと……」

果南「ん? どういうこと?」

月「まあ着いてみれば分かりますよ、ところで本当に僕も一緒に来てよかったんですか? 旅費まで支払ってもらっちゃって」

鞠莉「詳しい人が一人でも多くいてくれたほうがこっちも心強いからね、期待してるわよ♪」

月「成程、契約金というわけですな」

鞠莉「いいわねそれ、採用で」

ダイヤ・梨子「生々しいからやめてください」

223: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:36:01.60 ID:KJlK741l
鞠莉「さてと、それじゃあそろそろ行くわよ!」

鞠莉「レッツゴー イタリーアー!」

千歌・曜「いっえーーい!!」

善子「はい、私ヴェネツィア行きたい」

ルビィ「花丸ちゃんは?」

花丸「ヴェローナかなあ、あのロミオとジュリエットの舞台となっている場所……一度でいいから見てみたかったんだあ……」ウットリ

果南「私はアクアパッツァ、本場の味ともなるとすっごい美味しいんだろうなあ」

ダイヤ「ちょっと果南さん」

梨子「じゃ、じゃあ私はフィレンツェ……」

ダイヤ「梨子さんまで……はあ、先行きが不安ですわ」

ダイヤ「来て早々、痛い目に遭わなければいいのですが」

224: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:36:40.15 ID:KJlK741l

そして……

イタリア、ミラノ


千歌「着いたー! 着いたよイタリアのー! どこ?」

月「ミラノ」

千歌「ミラノー!」

梨子「わあ、凄く綺麗……まるで中世にタイムスリップしたみたい」

鞠莉「さあ着いて早速で悪いけどまずは」

千歌「まずは腹ごしらえだよね! 私もうお腹ペコペコだよー!」

曜「よーしどっちが早くお店見つけられるか競争だー!」

果南「いいね、乗った」グッグッ

225: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:37:25.53 ID:KJlK741l

「いくよー! よーい……ドン!!」


ダダダダッ


鞠莉「ちょっとあなた達!」

月「あちゃー……」

ダイヤ「追うしかなさそうですわね」

鞠莉「全くもう……少しくらいは落ち着いてほしいものね」

ダイヤ「焚きつけたのは鞠莉さんでしょう」

鞠莉「そうでした」テヘペロ

226: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:37:59.02 ID:KJlK741l
ルビィ「……うーん」

善子「どうしたのルビィ」

ルビィ「えっとね、何か人が少ないなあと思って」

善子「ん、そうね。言われてみれば確かに」

月「……あーっと、実はそのことなんだけど」

ルビィ・善子「?」

227: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:38:28.06 ID:KJlK741l
千歌「あっ見つけた! 多分あれだよね!?」

千歌「やったー! 私一番乗り! って」

千歌「…………あれ?」

曜「どうしたの千歌ちゃん」

千歌「なんか張り紙貼ってある」

果南「本当だ、読めないけど」

月「長期休暇を取ったので、しばらくの間当店は閉店とさせていただきます」ヒョコッ

千歌「えー閉店!?」

果南「まあ仕方ないね、ここは諦めて次の店に」

月「無理ですよ」

228: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:38:57.31 ID:KJlK741l
果南「無理? 何が?」

月「外食自体が。恐らく閉店してるのはここだけじゃないですし」

千歌「うっそだー! 流石にいくつか探せば開いてるお店くらい見つかるよ」

鞠莉「って思うでしょ? ところがどっこい本当のことなのよ」スタスタ

曜「そんなことあるの?」

鞠莉「なら、観光がてら試しに色々回ってみましょうか、百聞は一見に如かずってね」

鞠莉「あと勝手に飛び出すの禁止」

千歌・曜・果南「ごめんなさい」

229: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:39:30.92 ID:KJlK741l


……


曜「ない」


……


果南「ない」


……


千歌「ほんっっとうに何にもない!!」

千歌「人も車も全然いないし! なんで!? あと暑すぎ!」

善子「ちょっと言わないでよ、気にしないようにしてたのに……」

230: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:40:07.17 ID:KJlK741l
月「でもまさしくその通りなんだよ、この猛暑が続くせいで地元の住民たちはみんな8月になると長期休暇を取って海や山にバカンスをしに行っちゃうんだ」

月「で、その結果がこちら。いやあこうして見るのは久々だなあ~」ハハハ…

千歌「そんなあ~、月ちゃんなんで最初に言ってくれなかったの」

月「せっかくの楽しい雰囲気に水を差したら悪いかなって。ごめんね」

千歌「う……」

梨子「千歌ちゃん、これに懲りたらあまり浮かれすぎないように」

千歌「……はい」

梨子「曜ちゃんもね」ジトッ

曜「」ビクッ

曜「い、イエッサー!」

月(これは曜ちゃん、尻に敷かれるだろうな)

231: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:40:35.92 ID:KJlK741l
鞠莉「……うん、ようやく落ち着いたみたいね」

鞠莉「それじゃあ早く目的地へ急ぎましょう、そろそろ暑さでバテそうなのが何人かいるし」

ダイヤ「こちらを、凝視しながら、言わないで、もらえますか」

花丸「運動以外で、こんなに汗が出たの、初めてかも、しれないずら」

果南「二人ともしっかり、ほら私につかまって」ガシッ

ルビィ「もう少し我慢してね、それで鞠莉さん、私たちどこに行けばいいの?」

鞠莉「私の別荘。安心してそんなに遠くはないから」

鞠莉「それで、そこでご飯でも食べながらゆっくりお話しでもしましょうか」

鞠莉「今回のことについて色々と……ね」

232: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:41:10.31 ID:KJlK741l





鞠莉「では、いただきます」

「「「いただきまーす!!」」」

カチャカチャ

千歌「んぐっ……ん、、おいしいーっ!!」

ダイヤ「本当、絶品ですわね」

果南「専属の料理人とか、あむっ……普通いないからねえ」

曜「冷房も効いてて快適だし!」

善子「上級の生活ここに見たりって感じね」

花丸「う~ん、生き返るずら~……」

ルビィ「デザート……!」ワァ

鞠莉「気にいってもらえたようで何よりだわ」

233: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:41:50.02 ID:KJlK741l
梨子「それで鞠莉さん、今回イタリアに来た経緯のことですけど」

鞠莉「そうね。とは言ってもどこから話せばいいのやら……」

鞠莉「うーん……じゃあまずはあなた達を連れてきた理由から」

鞠莉「初めにざっくり言うと、海外の方から直々にご指名があったのよね」

善子「私たちに?」

鞠莉「私のDaddy…パパの親友の娘さんがね、近頃スクールアイドルに興味を示してるらしくて」

鞠莉「それで相談を持ちかけられたみたいなの、何か当てはないかって」

月「ああ、それでAqoursに話が来たってわけか」

234: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:42:19.46 ID:KJlK741l
鞠莉「そうそう、娘である私がスクールアイドル部の顧問をやっているって話をしたらどんどん事が進んじゃってね」

鞠莉「パパの方も相手が親友かつ仕事のお得意様でもあったから無下にも出来ないってことで」

鞠莉「それでこっちに白羽の矢が立ってしまったというわけよ」

ダイヤ(良い意味と悪い意味、どちらで言っているのやら)ヒソヒソ

果南(両方に一票)

鞠莉「でも急に来た話ってわけじゃないのよ? これでも結構引き伸ばしてもらったんだから」

梨子「保留にしていたってことですか?」

鞠莉「ええ。パパがね、どうしても9人じゃないと駄目だって言うから」

善子(……なんか可笑しくない? それ)

鞠莉「時間の都合とか色々あるでしょ」

千歌「ふーん、けどなんで鞠莉ちゃんのお父さんはそんなに9人にこだわるんだろう」

鞠莉「さあ。私にも分からないわ」

235: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:43:04.04 ID:KJlK741l
果南「で、他には?」

鞠莉「他って?」

ダイヤ「たったそれだけの理由ならそこまで鞠莉さんが渋ることはないでしょう」

果南「実際その手の話が舞い込んできたら、鞠莉なら即全員連れていきそうじゃん」

花丸「確かに」

善子「普通にあり得るわね」

鞠莉「その信頼のされ方なんか嫌なんですけど」

鞠莉「しかも当たってるのが余計にね……はあ」

果南「…何があったのさ、鞠莉」

鞠莉「……ただのスクールアイドルとしてのお誘いじゃないの」

鞠莉「私の家庭の事情も入ってるのよ、所謂個人の問題ってやつ」

236: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:43:56.91 ID:KJlK741l
ダイヤ「家庭の事情? 鞠莉さん、それは一体どういう」

「そこから先は私たちが説明しよう」

全員「!!」

鞠莉「……随分早かったのね、パパ、ママ」

鞠莉父「久しぶりだな、鞠莉」

千歌「え!? あの人が鞠莉ちゃんのお父さんなの!? 若っ!!」

曜「もしかして鞠莉ちゃんのご両親ってお父さんのほうが年下なの!?」

梨子「ちょっと二人とも! 初対面の人に向かって失礼でしょ!」

鞠莉父「いいや私は40後半だが」

千歌・曜「ええっ!?」

月「すご!! マクシミリアン・ジーナスみたい!!」

鞠莉父「今どきの女学生にしては古い喩えだな、私としては嬉しい喩え方だが」

月「いやあ、つい」ハハハ…

鞠莉「貴女たち、一応シリアスな場面なんだけどここ」

237: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:44:36.05 ID:KJlK741l
鞠莉母「貴方ももう少し気を引き締めてください」

鞠莉父「ああ、分かっているさ」

鞠莉父「今回鞠莉にここへ来てもらったのは他でもない、鞠莉自身の将来のことについてだ」

ダイヤ「将来?」

鞠莉父「ああ、前から小原家を継ぐための準備として縁談の話を持ちかけているのだが、これが中々煮え切らなくてね」

鞠莉父「そろそろ決めるべきだと思っていたところなんだよ」

果南「! 縁談って……」

千歌「───結婚!? 鞠莉ちゃん結婚するの!?」

鞠莉「Wait パパが言ったじゃない、そういう話が来てるってだけよ。私はまだそんなつもり……」

鞠莉母「Shut Up! いい加減にしなさい鞠莉」

鞠莉「……ママ」

238: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:45:30.49 ID:KJlK741l
鞠莉母「あなたはいつもそう! こっちの高校を蹴ったときも! 卒業したときも! 我が儘ばかり言って!」

鞠莉父「特に浦の星に戻った時だな、海外で取れる資格だけ取ったらはいサヨナラとは……いやはやあれは傑作だったな、実に合理的だ」クックッ

鞠莉母「貴方!!」

鞠莉父「大丈夫、分かっているとも」

鞠莉母「~~っ……とにかく! これまでパパに言われてグッとこらえてきましたが私はもう我慢の限界デス!」

鞠莉母「さっさとこちらに戻ってきて受け入れなさい! 鞠莉!」

鞠莉「い、嫌よ! 私にはまだやることが残ってる!」

鞠莉父「ああ、そうだろうな」

鞠莉母「だから!! どっちの味方をするんデスか!!?」

鞠莉父「それを決めるためにここに来ているんだろうが、違うか?」

鞠莉母「くっ……!」

鞠莉父「鞠莉、お前も分かっているよな」

鞠莉「……はい」

239: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:46:24.83 ID:KJlK741l
鞠莉父「さて、長くなってしまったが本題に入ろうか。つまり我々の言っている家庭の事情が絡んでいるというのはだね」

鞠莉父「その縁談の有無を、君たちに委ねるという意味だ」

ダイヤ「私たちに、ですか」

鞠莉父「そうだ、私たちが君たちに出す条件……それをクリアすれば縁談の話は見送ろう、とは言っても早いか遅いかの違いでしかないが」

鞠莉父「少なくとも鞠莉の意思を尊重することは約束しよう、今後強制的にこういった話は持ちかけないとね」

果南「……それで、その条件は?」

鞠莉父「鞠莉から聞いたとは思うから事情は割愛するとして、彼には今から10日後ここでライブを行うという旨をすでに伝えている」

鞠莉父「観客も大勢集めて賑やかなものにするとね、ただ──」

鞠莉父「私自身は人を集める気など微塵もないし、君たちを手伝うつもりも更々ないが」

「!!?」

240: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:47:06.25 ID:KJlK741l
鞠莉父「つまりこうだ、その10日後に行われるライブまでに君たちが自分の力だけで観客を集め、尚且つそのライブも成功を収めること」

鞠莉父「それが私の出す条件だ、出来ないなら今後鞠莉は私たちの言うことに従ってもらう」

「…………」

鞠莉父「お前もそれでいいよな?」

鞠莉母「……いいでしょう」

月「……あのー、ちょっと」

鞠莉父「ん?」

月「話が決まりつつあるところ聞くのもなんですけど、少し気になったので。いいですか?」

鞠莉父「構わないが」

月「僕はまあ、部外者って立ち位置なのでよく分からないんですが……そもそも、どうしてAqoursのみんなにそんな大事なことを任せるんですか?」

241: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:47:51.56 ID:KJlK741l
鞠莉父「……私は昔から何かあるたびに鞠莉と約束をしていてね」

鞠莉父「好きなこと、やりたいもの、習い事、学校、進路……まあ色々だ」

月「はあ」

鞠莉父「そして常にこう言ってきた、ちゃんとやるなら好きにすればいい。と」

鞠莉父「中途半端で終わらせずに、きちんとやり遂げれば私は何も言わない……事実私の言いつけを守って鞠莉はこれまでちゃんとやってきた」

鞠莉父「だから文句も特にはなかった。ママとは度々、衝突していたがね」

鞠莉・母「…………」

242: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:48:33.87 ID:KJlK741l
鞠莉父「高校生になってからもそうだ、スクールアイドルをやりたいからと海外の卒業を突っぱねた」

鞠莉父「そのときにした約束はこうだ、絶対優勝してみせるからお願い。私は容認した」

果南・ダイヤ「……」

鞠莉父「卒業後にした約束は、今度こそ優勝して浦の星に名を残す、だからもう少し待って欲しい」

鞠莉父「この時点でどうかと思ったが社会経験を積ませるのも大事なことではあったからな、それも良しとした」

千歌・曜・梨子「……」

鞠莉父「そうやって鞠莉は浦の星に留まり続けた、優勝という甘美な言葉を使ってね。もちろん気軽に言っているわけではないというのはこちらも理解している」

ルビィ・善子・花丸「……」

鞠莉父「だが実際はどうだ、そこまで豪語しても尚、何も成し遂げられていないじゃないか」

鞠莉父「浦の星に戻ってから一度ならず二度までも、これはちゃんとしていると言えるのか?」

243: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:56:09.91 ID:KJlK741l
鞠莉父「なあ鞠莉、どうなんだ?」

鞠莉「…………」

千歌「ま、待ってください! 前の大会で優勝出来なかったのは私が失敗したからで! その……鞠莉ちゃんのせいなんかじゃ」

鞠莉父「成程、では君は自分以外の子がそうなったとき、今と同じようなことが言えるというんだな?」

鞠莉父「優勝を逃したのはこの子が失敗したからで私のせいじゃない、私は悪くないのだと」

鞠莉父「その立場に自分自身がなったとき、君は仲間を庇うことなく赤の他人に事実としてそれを公言出来ると?」

千歌「それはっ……」

鞠莉父「どうなのかな?」

千歌「……出来ません」

鞠莉父「ならば、先程の君の言葉に説得力はないな」

鞠莉父「個人の話で済むならそれも構わん、だが鞠莉がAqoursで優勝すると言っている以上、君たちは決して無関係ではない」

鞠莉父「これはいわばツケだ、鞠莉が今まで破ってきた約束のな」

244: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:57:34.52 ID:KJlK741l
鞠莉父「鞠莉は出来ることなら君たちを巻き込みたくなかったと言っているが、私から言わせれば浦の星に戻る約束をしたときから既に巻き込んでいるのに」

鞠莉父「なにを今更といった感じだ、それが嫌なら初めからそんなことを言うな」

鞠莉父「自分一人ではなく、全員一丸となって取り組まなければ成し遂げられない目標を」

鞠莉父「将来の駆け引き材料に使うからこうなるんだ。教えたはずだ、重要な物事ほどきちんと考えたうえで判断しろと」

鞠莉「はい……」

鞠莉父「自己責任と連帯責任の区別くらいつけなさい、それがこの事態を招いたお前の失態だ」

鞠莉「ごめん、なさい……みんな」

果南「鞠莉……」

ダイヤ「鞠莉さん……」

245: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 05:59:11.21 ID:KJlK741l
鞠莉母「だから私はずっと言ってきたのデス、こんなくだらないことはさっさとやめてこちらに戻ってくるべきだと」

ルビィ「─!」

鞠莉「……くだらないって、スクールアイドルのことを言ってるの?」

鞠莉母「だったら?」

鞠莉「スクールアイドルはくだらなくなんてないわ!」

鞠莉母「この有り様を見てまだそんなことが言えるのデスか! あなたがスクールアイドルをやり始めてから、何一ついい事などなかったではありませんか!」

鞠莉「それを決めるのはママじゃない!!」

鞠莉父「お前でもないよ鞠莉、ただどうしても主張したいのであれば」

ルビィ「結果を出せばいい」

246: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:02:52.08 ID:KJlK741l
「!!」

ルビィ「ちゃんとした成果を上げて証明すればいい、スクールアイドルは素晴らしいものだって」

鞠莉父「その通り。君はなかなか物分かりがいいな」

ルビィ「前にも似たようなことを言われた経験があるので」

鞠莉父「そうか。ふむ……いい目だ、胆力がある」

鞠莉父「さて、周りにいる君たちの意見も聞こうか」

ダイヤ「その条件、受け入れますわ」

果南「やるよ鞠莉、私たちだってここまで言われて黙って引き下がるなんて出来ないよ」

鞠莉「ダイヤ、果南……みんな」

鞠莉父「どうやらお前の友達は全員覚悟が出来たようだな」

鞠莉「私も決めたわパパ、絶対にパパたちを認めさせてみせるって」

鞠莉父「それは私との約束と捉えていいんだな」ギロ

「──!!」ゾクッ

鞠莉「っ……いいわよ」

247: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:03:29.41 ID:KJlK741l
鞠莉父「…………」

鞠莉「…………」

鞠莉父「……もう反故にしてくれるなよ。行くぞ」

鞠莉母「ちょっと貴方! ……もう!」

ガチャッ

月「どうぞ」スッ

鞠莉父「すまないね」

月「いえいえ」


バタンッ

248: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:04:13.67 ID:KJlK741l


……シーーン


千歌「…………はぁーっ」

千歌「最後、めちゃくちゃ怖かったぁ~……」ヘタリ

ダイヤ「同感ですわね」ヒヤリ

果南「ちょっと待ってなんか気が抜けたら腰が……立て、立てない」

鞠莉「……ぷっ、アハハ! 何よそれ果南~っ! 恰好悪いわねー!」

果南「はあ!?」

鞠莉「あははははっ!! ……ふぅー」

鞠莉「ありがとうね、みんな」

249: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:05:51.99 ID:KJlK741l
曜「それで、大見栄きったのはいいけど……これからどうしよっか?」

梨子「まず前提としてお客さんを集めないといけないわけだけど、こんな状況だしね」

果南「これといった手掛かりもないしなあ」

千歌「……そうだ! 鞠莉ちゃんや月ちゃんはイタリアに住んでたことがあるんでしょ!?」

鞠莉「え、ええ」

月「あるけど」

千歌「じゃあこんなとき街の人たちがどこに行ってるのかとか知ってるんじゃない!?」

花丸「なるほど~、千歌ちゃん頭いいずらー!」

千歌「ふふん、まあね!」ドヤ

250: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:06:22.64 ID:KJlK741l
千歌「ね、ね、どうなの!?」

鞠莉「どうなのって聞かれても……えーっと、海とか?」

月「山……とか?」

千歌「それさっきも聞いたよ! そうじゃなくて、具体的な場所とか!」

月「ごめん流石にそこまでは……バカンスっていっても行く場所とかみんな結構疎らだと思うし」

鞠莉「その年によって変わることもあるのよね、全員が全員毎年同じところへ行くわけでもないでしょ?」

千歌「そっか……いい考えだと思ったんだけどなあ~」

251: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:07:06.37 ID:KJlK741l
善子「結局しらみつぶしに探すしかないってことね」

ルビィ「うん、だけど……」

花丸「それだと時間がいくらあっても足りないずら……」

ハァーッ……

ダイヤ「……あの、ちょっと」スッ

鞠莉「なに? ダイヤ」

ダイヤ「このまま悩んでいても埒が明きませんし、一度ライブを行う場所へ行ってみるというのはどうでしょうか」

果南「私それ賛成。一回目を通しておくのも悪くないし、気晴らしにも丁度いいんじゃないかな」

鞠莉「確かにそうね、現状行き詰ってるだけだし……うん。そうしましょうか」

鞠莉「みんな付いてきて、案内するわ」

252: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:07:36.16 ID:KJlK741l



スペイン広場


鞠莉「着いたわ、ここがパパが指定したステージよ」

千歌「うわぁー、すっごー! 大きいー!」

果南「しかし広いねー、ここなら確かに大勢集まっても全く問題なさそう」

曜「でもここローマだよね? なんでスペイン広場って名前なんだろう」

月「ああ、なんでもスペイン大使館が近くにあるからって理由でそうなったらしいよ。そこのスペイン階段もね」

梨子「そんな単純な理由なの!?」

月「はははっ、名前の由来もたまには深い理由がなくたっていいんじゃない?」

梨子「そうかなあ」

月「そうそう!」

曜「……」ジーッ

253: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:08:06.11 ID:KJlK741l
月「ん、どうしたの曜ちゃん? ……ははーん、さてはまた僕に嫉妬かな?」ニコニコ

曜「ううん別にそうじゃないけど、ただ」

月「ただ?」

曜「……いや、何でもないや。私の思い違いかもしれないし」

月「えー、そんなこと言われたらますます気になっちゃうよ」

曜「本当になんでもないから大丈夫だよ」チラ

梨子「?」

月「ふーん。ならいっか」

254: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:08:47.11 ID:KJlK741l
花丸「……」ウーン

ダイヤ「花丸さん、どうしたのですか? ここに着くなりずっと考え込んでいるみたいですが」

花丸「あ、ダイヤさん。えっとね、この場所沼津の海岸にある石階段に少し似てるかもって」

ダイヤ「そ、そうでしょうか?」

花丸「なんとなくそんな感じがするだけずら」クスッ

ダイヤ「ま、まあ私たちには馴染み深い場所ですからねあそこは。接点を見つけるというのも悪くはないのかもしれませんわ」

花丸「うん、そうだね」

花丸「……」

ダイヤ「……考え事はそれだけですか?」

255: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:09:17.68 ID:KJlK741l
花丸「ううん。ダイヤさんは鋭いなあ」

花丸「懐かしいなって思ったから、だからちょっとだけ思い出してたんだ」

花丸「もうすぐお盆だしね」

ダイヤ「!」

花丸「初めてだよ、お参りを放ってまで何か自分に出来ることをしたいって思ったのは」

ダイヤ「でも今年のは鞠莉さんが……」

花丸「それだけじゃないよ」

花丸「やってみたいの、マル自身も」

ダイヤ「花丸さん……」

256: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:09:50.69 ID:KJlK741l
花丸「ルビィちゃんも善子ちゃんもそれはきっと同じだと思う」ヨイショ

花丸「あとは、どうやって乗り越えるかだけずら」

花丸「アオちゃんにも、土産話たくさん用意しないといけないもんね」フフッ

花丸「さーて、頑張るずらー」


スタスタ


ダイヤ「…………」

ダイヤ(……知らなかった、花丸さんがそんな風に考えていたなんて)

ダイヤ(私はてっきり、あの子に会いに行けないことを悔やんでいるのかとばかり……去年の今ですら、彼女はそれを欠かすことはなかったもの)

ダイヤ(だけど)

257: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:10:25.39 ID:KJlK741l


初めてだよ、お参りを放ってまで何か自分に出来ることをしたいって思ったのは

やってみたいの、マル自身も


ダイヤ(違った。彼女は私が想像しているものなんかよりもずっと先を見ていた)

ダイヤ(先へ進もうとしている、そしてそれは……)

ダイヤ(花丸さんだけじゃ、ない)

258: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:10:52.36 ID:KJlK741l


一度サファイアちゃんに挨拶しておきたくて。それと……

どうしても貴女に会いたかったんです、ダイヤさん


ダイヤ(梨子さんも)


私、次のラブライブ決勝で新しいパフォーマンスを決めたいの

だから果南ちゃん、お願い。私にバク宙を教えてください


ダイヤ(千歌さんも)


私は、あなたと戦ってみたい……同じ舞台で


ダイヤ(善子さんも…………それが自分にとって大きな壁でも向き合って)

ダイヤ(ルビィなんて、あの子が一番困難を乗り越えて成長していて、今でも)

ダイヤ(じゃあ───)



私は?


私は一体、何をしたというの?



259: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:11:35.23 ID:KJlK741l
ダイヤ「……っ……」ギュゥ

果南「…………ダイヤ?」

ザッ

「あらあらどうしたのこんな場所でそんな深刻な顔して、可愛い顔が台無しよ?」

ダイヤ「えっ?」

「フフッ、こんにちは大和撫子さん」

ダイヤ「こ、こんにちは」

ダイヤ(言葉が通じる……えらく流暢な喋りだけど、日本人かしら?)

果南(あの人、なんかどっかで見たことあるような……せめてサングラス取ってくれればまだ分かりそうなもんだけど)ウーン

260: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:12:03.57 ID:KJlK741l
「ねえ聞きたいのだけど、小原鞠莉さん御一行ってあなた達のことで合ってる?」

ダイヤ「え、ええ。そうですけど」

「やっぱり! よかったあ、やっと見つかったわ」

「亜里沙ー! こっち来てー!」

ダイヤ「あの、失礼ですがあなたは一体……「あああぁーーーーーーーっ!!!」

ダイヤ「」ビクッ

「ん?」フリムキ

261: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/06(金) 06:12:34.56 ID:KJlK741l
ルビィ「あ、あ、あなたは……ま、まさか……」

千歌「もももももしかして、もしかしてですけど」

ルビィ・千歌「み……μ'sのっ……!!」

ダイヤ「!?」バッ

「あら、この見た目でも気付いてくれる人がいるなんて」

スッ

絵里「私もまだまだ捨てたものじゃないわね」

「え、エリーチカーーーーーーー!!?」

ダイヤ(こ、この人が……!?)

絵里「あらためてよろしくね、大和撫子さん」ニコ

266: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:07:49.11 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「──スクールアイドル委員会、国際支部……」

「「「支部長ーーー!!?」」」

絵里「ええ、それが私の今の肩書き。ちょっと堅苦しいけどね」フフッ

梨子「あの、因みに活動内容とかは伺っても……」

絵里「いいわよ。私たちの仕事は主に海外に対するスクールアイドルの広報活動」

絵里「そうね、スクールアイドルの宣伝担当くらいに思ってくれたらいいわ」

千歌「えっと、じゃあ亜里沙さんも?」

亜里沙「うん、私はそのお姉ちゃんのサポートってところかな」

267: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:08:36.84 ID:82oyQ5xb
曜「絵里さんのサポートっていうことは……実質副長的な立ち位置ってことですか?」

千歌「つまり組織のツートップ!?」ズイッ

亜里沙「待って待って、私はそんなに偉くないよ」

月「そうなんですか?」

絵里「私のほうからお願いしてるのよ、亜里沙がいてくれたほうが私も色々とやりやすいから」

千歌「ほえー……」

絵里「納得してくれた?」

千歌「は、はい! それはもちろん!」ピシッ

梨子「もう、恥ずかしい……」

268: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:09:35.75 ID:82oyQ5xb
絵里「なら話の続きに戻らせてもらうけど、そうそう活動内容のことだったわね」

絵里「他にあるとすれば……あとは生徒への勧誘、とかかしら」

絵里「Y.G国際学園って知ってる? あそこの入学希望者選考を受け持ったりしているわ」

ルビィ「蘭花ちゃんがいる学校……!」

絵里「あら、知り合いがいるの?」

ルビィ「は、はい! 2年生のときに選抜強化合宿で知り合って」

絵里「ああツバサの! なるほど、そっちでも上手い具合に溶け込めてるということね」

絵里「交流が順調に進んでそうで何よりだわ、これからもうちの学校と懇意にしてあげてね」ニコッ

ルビィ「い、いえこちらの方こそ! これからもよろしくお願いします!」

絵里「ええ、よろしくね」

269: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:10:17.02 ID:82oyQ5xb
絵里「さてと、自己紹介はこれくらいで十分かしら?」

ダイヤ「大丈夫です。ありがとうございました」

絵里「そっちのあなたも?」

月「はい。いやーすみません、なにせ僕はまだ歴がちょっと浅いものでして……」タハハ

絵里「いいのよ、新規の人が増えるのもこちらとしては嬉しい限りだから」

月「助かります……だけど、そんな凄い人がどうしてまた」

鞠莉「私のところに?」

絵里「仕事よ、貴女たちの手伝いをしてほしいって直接頼まれたの」

鞠莉「頼まれた? 一体誰にですか?」

絵里「それは企業秘密」

鞠莉「…………」

270: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:10:52.91 ID:82oyQ5xb
絵里「心配しなくても怪しい人物じゃないわ、個人的にその人とはちょっと縁があってね」

絵里「仕事の関係で日頃お世話になってる人なの、だから断る理由も特になかったし」

絵里「それに私としても、今回の件はスクールアイドルの良さをより広めるために重要なことだと思ったから」

絵里「その協力の申し出を受けて、ここまで来たというわけ」

鞠莉(…………)フム

梨子「鞠莉さん?」

鞠莉「なんでもないわ、続けましょう」

271: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:11:24.57 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「私たちの手伝いということは、つまりライブのことも」

絵里「ええ、聞いているわよ。かなり厄介な条件をつけられたみたいね」

亜里沙「この殆ど人がいなくなってる閑古状態のイタリアで、お客さんを集めないといけない」

亜里沙「内容を聞いたときはビックリしちゃった、すごく難しいと思うもん」

絵里「うん。私たちが来た時の状況を考えるに、今まさに四苦八苦している感じ」

ダイヤ「……仰る通りです、あてもないので何から手をつければいいのか全員で考えていたところでして」

絵里「それでこのスペイン広場に来たと、成程ね」

絵里「そういうことなら、早速お役に立てそうじゃない? ねえ亜里沙」

亜里沙「うふふっ。だね、お姉ちゃん」

「???」

272: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:11:57.65 ID:82oyQ5xb
絵里「亜里沙、あれお願い」

亜里沙「うん、みんなちょっと見てほしいものがあるの」ガサッ

善子「これって、周辺の地図ですか?」

花丸「色んなところにマルが付いてるけど……」

絵里「そのチェックされている場所は、今年のバカンスの影響で盛況している宿泊施設をピックアップしたものよ」

絵里「あなた達に会う前に二人でちょっと調べてきたの」

ルビィ「!! じゃあ」

曜「ここに行けば、たくさんの人に会えるってことだよね!」

千歌「おぉーっ! 凄い! 凄いです絵里さん亜里沙さん!」

花丸「これなら何とかなりそうな気がしてきたずら!」

果南「だね、いやあこの情報だけでもかなりありがたいよ」

273: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:13:08.25 ID:82oyQ5xb
梨子「問題があるとすれば、場所ごとに結構な距離があるってところですね」

ダイヤ「ですわね。これを全員で回るとなると、それだけで時間を食ってしまう」

鞠莉「確かにね……」

絵里「なら、どうするのかしら?」

ダイヤ「…………」

ダイヤ「絵里さんに一つ聞きたいことがあるのですが」

絵里「なに?」

ダイヤ「今回のライブ、絵里さんなら観客数の目安はどの程度あれば十分だと思われますか?」

絵里「そうね、広場の面積や所詮個人で楽しむものとして考えると」

絵里「300……あたりが妥当な数字じゃないかしら」

274: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:13:53.97 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「ありがとうございます、参考にさせて頂きますわ」

絵里「いいの? 私一人の意見だけ鵜呑みにしちゃっても」

ダイヤ「貴女はスクールアイドルの経験だけではなく、仕事上ライブの手配等にも携わっているのではないかと先程の話を聞いて思いました」

ダイヤ「ならば、この場において誰よりも信頼に値するのは絵里さんの発言ではないかとそう考えた次第です」

絵里「へえ」

ダイヤ「ですが私たちの方からも一応。鞠莉さんはこれについてどう見ます?」

鞠莉「私も絵里さんと同意見ね、観客の数はそれくらいで事足りると思うわ」

鞠莉「増やし過ぎてもギュウギュウで窮屈だろうし」

ダイヤ「そうですか、分かりましたわ」

ダイヤ「……では以上のことを踏まえたうえで私から提案があるのですが」

275: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:14:28.74 ID:82oyQ5xb
ダイヤ・鞠莉「人数を分けましょう」

ダイヤ「! 鞠莉さん」

鞠莉「まあ、自然とそうなるわよね」

梨子「人数を分けるというのはつまり、各手に別れてそれぞれの目的地で人を集めてくると?」

ダイヤ「そうなりますわね」

果南「確かに現状それが一番効率的ではあるね、割り振りはどうするの?」

ダイヤ「担当する人数的にも3組が望ましいと思います」

善子「各グループ100人ずつってことね、了解」

曜「あとはどういう分け方にするかだけど」

276: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:15:08.33 ID:82oyQ5xb
亜里沙「それなら、ライブをやりやすい組み合わせのほうが私はいいと思うな」

絵里「そうね、前提としてライブを見てもらうために集まって欲しいわけだから」

絵里「まずはあなた達の実力がどの程度のものなのか、知ってもらう必要があるわ」

絵里「ここは日本と違って、あなた達もそこまで有名ではないでしょうし」

果南「ただ触れ込むだけじゃ集客は見込めないってことですね……」

善子「そうなってくると現実的に可能になってくるのは」

花丸「学年毎で分ける、とかかなあ」ウーン

千歌・ルビィ「……ユニット」

「え?」

千歌「! だよね!? やっぱりルビィちゃんもそう思うよね!」

ルビィ「うん、曲の数的にも相性でも、それが一番いいんじゃないかな」

ルビィ「どう? お姉ちゃん」

277: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:15:38.19 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「私は異論ありませんわ、皆さんは?」

「…………」

絵里「答えはまとまったみたいね」

ダイヤ「はい、おかげさまで」

絵里「なら私たちの方も、ちゃんとそっちに合わせて決めておかないとね」

ダイヤ「と言いますと?」

絵里「ガイド役、必要でしょ? それに現地の人と話せる通訳者もね」

月「あっ! そういうことなら僕もお手伝いしますよ!」

絵里「あら助かるわね、じゃあ私たち3人で話し合いましょうか」

278: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:16:29.28 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「では一旦話はここまでにして」

絵里「ええ、続きはまた明日。今日はお疲れさま、えーっと」

ダイヤ「黒澤ダイヤですわ。以後お見知りおきを」

絵里「ダイヤね、しっかり覚えておくわ」

絵里「今度はお互いにもっと色々と打ち明けられたらいいわね」クスッ

ダイヤ「? はい」

絵里「さ、行きましょうか」

亜里沙「うん」

月「はい! みんなーまた明日ね!」フリフリ

279: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:16:57.24 ID:82oyQ5xb
ダイヤ「…………ひとまず終わりましたわね」ハァ

果南「お疲れさま、流石こういうときのダイヤは頼りになるよ」

鞠莉「ええ、おかげで話も順調に進んだしね」

ダイヤ「だといいのですけど」

果南「……」

鞠莉「またまたそんなこと言っちゃって!」

ダイヤ「くっつかないでください鞠莉さん! 暑苦しい!」

280: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:17:25.82 ID:82oyQ5xb
曜「よーし、そうと決まれば私たちも一回振り付けのほう確認しないとだね!」

千歌「うん、いやーワクワクしてきたねー!」

ルビィ「私も。千歌ちゃんたちと3人でやるの久しぶりだもん」


善子「私たちも一通り見直しておかないとね、音合わせないとだし」

梨子「そういうことならちょっと待ってて、今鞠莉さん引き連れてくるから」

善子「言い方もう少し穏やかにならないの」


花丸「……」

花丸(ダイヤさんと果南さん、何かあったのかな?)

281: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:18:16.84 ID:82oyQ5xb


─その夜


月「じゃあ僕はこの辺で、二人ともおやすみなさい」

亜里沙「はーい」

絵里「おやすみなさい」

ガチャッ  バタン

絵里「ふう、それにしても意外とすんなり決まったわね」

亜里沙「二人とも違うユニットを指名したからね、私はどこでもよかったから特に言うことはないんだけど」

絵里「そうなの? 亜里沙は気になってる子とかいなかった?」スッスッ

亜里沙「あんまりかなあ、皆いい子だと思うし」

亜里沙「ところでお姉ちゃん何してるの? お電話?」

絵里「ええ、ちょっと。久し振りに話したい相手がいて」

282: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:18:59.10 ID:82oyQ5xb
雪穂「……ふわぁ~……あー、今日もあっついなぁ……」モゾモゾ

雪穂「これじゃ寝ようにも寝られないよ、よくお姉ちゃんこんな状態で快眠出来るよね」

雪穂「はあ~ぁ、顔洗ってこよー「あーーーーーーっっ!!!」

雪穂「」ビクッ

雪穂「もうちょっと何なのお姉ちゃん! 朝っぱらから!」ガチャッ

穂乃果「ぅ絵里ちゃん! 亜里沙ちゃんも!」

雪穂「亜里沙!?」

穂乃果「あ、雪穂おはよー」

283: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:19:43.85 ID:82oyQ5xb
絵里「穂乃果! 久しぶりね……ってあははっ! 穂乃果寝ぐせ凄いことになってるわよ!」

『今起きたばっかりだもん!』

『亜里沙!』

亜里沙「雪穂ー、久しぶりだねー」フリフリ

『本当だよもう、今どこにいるの? そっちは夜みたいだけど』

亜里沙「今はね、イタリアにいるの。お姉ちゃんの仕事のお手伝いでね』

『へー! 絵里ちゃんそっちで何やってるの?』

絵里「いつもと同じよ、海外でスクールアイドルを広めるお仕事」

『そうなんだ! じゃあさ! ライブとかやったりするの!?』

絵里「うん、やるわよ」

『ねえ誰がやるの!? 私も見たい!』

『無茶言わないでよお姉ちゃん……』

284: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:20:26.81 ID:82oyQ5xb
絵里「Aqours。穂乃果たちは日本にいるから聞いたことあるんじゃないかしら」

『えー! ルビィちゃんたちがライブやるの!? 本当に!』

『っていうか、いつの間にイタリアの方に』

絵里「向こうにもいくつかの事情があってね、それより穂乃果に雪穂ちゃんも、あの子たちのこと知ってるの?」

『知ってるも何も、私たち一緒にライブやった仲だもんね!』

『私は合宿の指導等でたまたま縁がありまして』

亜里沙「ハラショー……」

絵里「本当に? ねえ、その話気になるからもうちょっと詳しく聞かせてくれないかしら」

『もちろんだよ! あのね……』

285: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:21:02.37 ID:82oyQ5xb
絵里「──ふ~ん。私の知らない間にそんなことがあったなんてね」

絵里「ラブライブのほうも、今になってまた面白くなってきているみたいだし、穂乃果が羨ましいわ」

『うん、毎年見ていて飽きないよ!』

亜里沙「雪穂もここ最近は凄く忙しかったんだねー、お疲れさま」

『私は別に、ツバサさんやルビィちゃんたちと比べたら大したことしてないってば』

亜里沙「そうかなあ?」

286: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:21:36.83 ID:82oyQ5xb
『絵里ちゃんたちの話もビックリしたよ! ねえ雪穂』

『うん、人集めは明日からって言いましたよね? その、大丈夫なんですか?』

絵里「それは分からないわ。私たちも出来るだけサポートするつもりだけど、結局は彼女たち次第だもの」

絵里「でもね雪穂ちゃん、明日からのことも含めて私は結構楽しみにしてるのよ?」

『え?』

絵里「彼女たちのライブを見るの、私は初めてだから」

『あ! そっかー。えへへっそれは楽しみだねー』

『でも今の話を聞いてるとなんか思い出すね、私たちも海外でライブをやったこと』

絵里「……ええ、懐かしいわ」フフッ

287: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:22:08.88 ID:82oyQ5xb
『お姉ちゃん、そろそろ店番に行かないと。今日はお姉ちゃんが当番でしょ?』

『えーもうそんな時間!? もっと絵里ちゃんとお話ししたかったのにー!』

『文句言わないの! ……すみません、そういうわけなので』

絵里「分かったわ。穂乃果、お仕事頑張ってね」

『嫌だよー、雪穂代わってよー……』

『お姉ちゃん!』

『うぅ……分かったよもう……』

『全くもう……あ、そうだ亜里沙』

亜里沙「ん?」

『後でまた亜里沙にかけ直してもいいかな?』

亜里沙「いいけど?」

『ありがとう、それじゃあ絵里さん失礼します』

288: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:22:43.08 ID:82oyQ5xb
絵里「ええ、また」

プツン

亜里沙「じゃあ私ちょっと出てくるね」

絵里「いいけど、あまり遅くならないようにね?」

亜里沙「うん、分かった」


バタン


絵里「…………ふふっ、本当に変わらないわね」

絵里「久しぶりに顔も見られて安心したし…………あ"」

絵里「通話時間がこんなに…………しまったわね、亜里沙を送ったそばからすぐ連れ帰るのも気が引けるし」

絵里「明日の行動に支障が出なければいいけど……本当、楽しい時間はあっという間ってよく言ったものよね」ハァーッ

289: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:23:38.86 ID:82oyQ5xb


─翌日


亜里沙「ふわぁ~……」

ルビィ「亜里沙さん眠たそうですね」

亜里沙「うん、昨日雪穂と長く話すぎちゃって……」ゴシゴシ

ルビィ「雪穂さんと?」

絵里(……やっぱり止めておくべきだったかしら)

ダイヤ「絵里さん? どうかしましたか?」

絵里「いいのよ気にしないで。それより皆も集まったことだしそろそろ始めましょうか」

ダイヤ「はい」

290: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:24:10.36 ID:82oyQ5xb
絵里「じゃあ今回の手筈だけど、昨日ダイヤが話した通りAqoursには3つのユニットに分かれて観客を集めてもらうことになるわ」

絵里「ノルマは各グループ100人、そして私たちが指定する場所だけど」

亜里沙「シャロンはランペドゥーザ島、アゼリアはカプリ島、ギルキスはサルデーニャ島に行ってもらいます」

絵里「どれも世界的に有名な観光スポットよ。だからというのもなんだけど少しくらいなら満喫したっていいんじゃないかしら」

絵里「勿論やるべきこともやりつつね、でも遊ぶことだって大事だもの。でしょ?」

千歌「わぁー! すっごい楽しみ……!」

梨子「こんな機会滅多にないもんね、私もちょっとドキドキしてる、かも」

曜「あははっやっぱり梨子ちゃんもそうだよね! 私も!」

花丸「多分みんな期待してたずら。ね、善子ちゃん」

善子「なんで私に向かって言うのよ」

花丸「さあ~?」

291: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:24:41.57 ID:82oyQ5xb
絵里「さてと、それじゃあ最後にあなた達に付くガイド役を発表するわね」

絵里「まず、シャロンには亜里沙が」

亜里沙「よろしくね」ニコ

千歌・曜「よろしくお願いしまーす!」

亜里沙「ふふっ♪」ジーッ

ルビィ「?」

292: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:25:14.12 ID:82oyQ5xb
絵里「ギルキスには月が」

月「やるからには精一杯務めさせていただきます、梨子お嬢様」ペコリ

梨子「何それ、変な月ちゃん」クスクス

月「やってみると意外とハマるよ、英雄騎士の真似事っていうのも」

絵里「そして、アゼリアには私が付くことになったわ」

ダイヤ「絵里さんが私たちのところへ、ですか」

果南「これは心強いね」

花丸「それに大人のお姉さんって感じがするずら~……格好いいなあ」

絵里「そ、それは褒めすぎよ……」

ダイヤ(照れてる……こういった称賛にはあまり慣れていないのかしら?)

293: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:25:44.48 ID:82oyQ5xb
絵里「というわけで、以上で説明の方を終わらせてもらうわ」

絵里「ここからはいよいよ別行動、みんなしっかりね」

「はい!」

鞠莉「さあ行くわよ! 目指せ300人! 目指せライブ大成功!」

スッ

鞠莉「頼むわよリーダー!」

ルビィ「うんっ頑張ろうみんな!」

ルビィ「Aqoursーーーー!!」

「サーーンシャイーーーーン!!」

亜里沙・月「おぉ~……」

絵里「……ふふっ! 成程、穂乃果が気にかけるわけね。そっくりだもの」

ダイヤ「」

絵里「あの子も、ね」



──  ユニットミッション スタート!  ──



294: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/07(土) 02:26:54.15 ID:82oyQ5xb
現在の人物相関図。

no title

298: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:05:53.58 ID:sfLQV5nw


√ Guilty Kiss


サルデーニャ島 アルゲーロ空港


梨子「へえ、ここがサルデーニャ島かあ……」

善子「意外と早く着いたわね」

月「離島とはいっても一応国内だからね、飛行機使えばこんなものだよ」

鞠莉「ほら3人とも、いつまでもそこで立ち話してないで早く外に出ましょ!」ウズウズ

月「ですねー、僕もここに来るのは初めてですし」

善子(なんだかんだで鞠莉も結構楽しみにしてるのね)ヒソヒソ

梨子(みたいだね)

299: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:06:20.96 ID:sfLQV5nw
梨子「わぁ~~……外はこんな風になってるんだ」

善子「この街並みも映画とかでよく見るわね! ここがそうだったの!」

月「港町アルゲーロはイタリアで最も美しい街として知られているからね! ロケとかでもよく使われるんだよ」

善子「へえ~……」

鞠莉「私たちが今歩いてる旧市街地とかは特にそうよね」

梨子「当たり前かもしれないけど、こうして見ると私たちの街とは全然違いますね」

梨子「街並みの景色もそうだけど並んでいる建物とか」

善子「ミラノやローマとはまたちょっと違うわよね」

月「この街はスペインの影響を強く受けているからね、ゴシック建築とかその辺りの」

300: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:06:57.90 ID:sfLQV5nw
梨子「そうなの? イタリアだからルネサンス様式だと勝手に思っていたんだけど」

月「お、梨子ちゃん詳しいね! そういうのに興味あるの?」

梨子「ピアノやってたからかな、芸術関連は結構好きなの」

月「そうなんだ! じゃあさ、こんな話はどうかな?」

月「アルゲーロは別名サンゴの街とも呼ばれていてね、ほら丁度あそこに……」


スタスタ


善子「…………」

鞠莉「どうしたのよ善子」

善子「え、鞠莉は逆にあれ見て何とも思わないわけ?」

鞠莉「あれとは?」

善子「貴女がしらばっくれるのは無理があるわよ、出歯亀筆頭なんだから」

鞠莉「酷い言いぐさねー傷ついちゃうわ」

301: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:07:27.45 ID:sfLQV5nw
善子「ちょっと曜ほんとに  られるんじゃないのこれ」

鞠莉「気にしすぎよ、私は特にそんな危機感ないけど?」

善子「どうしてよ」

鞠莉「だって私のレーダーが反応しないもの」

善子「えらく高機能なレーダーね、そこまで判別できるの」

鞠莉「まあ結局のところは勘だから、合ってるかは知らないけどね」

善子「どっちなのよ」

302: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:07:56.70 ID:sfLQV5nw
鞠莉「……ただ」

善子「ただ?」

鞠莉「月が梨子目当てにギルキスを選んだのは間違いないと思うのよね」

鞠莉「というか、3人ともそれぞれ何か思惑があるような」

善子「それこそ考えすぎじゃないの」

鞠莉「……そうかも、じゃあ話を変えて次に私たちが行く場所についてちょっといいかしら」

善子「ええ」

303: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:08:43.32 ID:sfLQV5nw
鞠莉「この近くにビーチがあるの、ラペローザビーチっていうんだけど。そこで情報収集兼リラックスするわよ」

善子「ビーチね、確かにそこなら人も多そうだからいいとは思うけど。水着はどうするの? 私持ってきてないんだけど、まさか買うの?」

鞠莉「勿論、でも大丈夫よ必要経費としてパパたちに支払ってもらうから、好きなもの選んでも問題nothing!」

善子「…………」

鞠莉「あ、梨子たちにも水着のこと言っておかないと、早く行きましょう善子」

善子「……今対立しておきながら言うことじゃないけど、貴女のお父さんって割と苦労してそうよね」

304: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:09:17.20 ID:sfLQV5nw


その頃、店内


梨子「わあ、店中赤色でいっぱいだね。これ全部サンゴで出来てるの?」

月「みたいだね。いやーこんなにたくさんだと目移りしちゃうね」

梨子「ハンドメイドが多いのかな? 値段も結構お手頃なのが多いね」

梨子「何かお土産に買っていこうかな、このブレスレットとかルビィちゃんとダイヤさんに似合いそうだし」

梨子「……あっ! 月ちゃん見て、サンゴじゃないアクセサリーもあったよ。ほら」

月「ん、まあ装飾店だもんね、そりゃあサンゴ以外にもいくつかあったって可笑しくないか」

梨子「このネックレス綺麗だなあ、水色だし曜ちゃんにピッタリかも」

月「!」

梨子「さっき見たのとこれにしようかな……ねえ月ちゃんはどう思う?」

305: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:09:45.08 ID:sfLQV5nw
月「……」

梨子「月ちゃん?」

月「……あぁ、いやいや。梨子ちゃんが決めたものなら曜ちゃんはなんだって喜ぶんじゃないかな」

月「それに僕なんかより彼女である梨子ちゃんのほうが曜ちゃんの好みはよく分かってるでしょ?」ニコ

梨子「……そっか」

梨子「じゃあ買ってくるからちょっと待っててね」

306: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:10:14.32 ID:sfLQV5nw
月「了解ー。って梨子ちゃん言葉分からないでしょ、付いてくよ」

梨子「支払いくらいは流石に出来るわよ?」

月「いいからいいから、買うものはそれで全部?」

梨子「……ううん、折角だからもう一つだけ買っておこうかな」

月「ふーん、自分用? それとも誰かに贈るの?」

梨子「秘密です」

月「そっかー、それは残念だねー」アハハ

梨子「……なるほどね」ボソッ

梨子(曜ちゃんが気にしていたのってそういうこと)

月「なに?」

梨子「ううん、別に」

307: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:10:40.12 ID:sfLQV5nw
「梨子ー! 月ー!」

梨子「先に行きすぎちゃったみたいだね、戻ろっか」

月「え、うん」

梨子「どうしたんですか鞠莉さん、水着? そういえば確かに必要かも」スタスタ

梨子「ってちょっとなんてもの例に出してるんですか!? そ、そんな過激なもの着ませんからね!!」



月「……さてと、僕も行きますかね」

月「でないとこっちを選んだ意味がないからねー、さあレッツヨーソロー! ってね」スタスタ

308: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:11:13.55 ID:sfLQV5nw


─ ラペローザビーチ


ワイワイガヤガヤ


月「おーいるいるー、人がわんさか」

善子「ええ、ようやく夏っぽい光景を目にした気分だわ」

鞠莉「やっぱり夏といえば海だものねー!」

善子「で、月先生。ここはどういう場所なの?」

月「一言でいうならイタリアの超人気ビーチだね、島の中で最も美しいとされていて毎年世界中から観光客がここへやってくるんだ」

月「特に家族連れやセレブの人が多い印象かな、理由は色々あると思うんだけどやっぱり一番なのは」ザッザッ

月「安心できるってところかな、試しに君たちも入ってみなよ」ピチャ

梨子「わ、あったかい」チャプチャプ

善子「それにあんまり深くないわね、尖ったものとかもないし動きやすいっていうか」

309: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:11:44.81 ID:sfLQV5nw
鞠莉「ここは緩やかに水深が下がっていくのよね、加えて波も小さい。だから急に溺れるなんて心配もいらないし」

鞠莉「インフラ整備も充実してる、こんなに快適で気持ちのいい場所はそうそうないわよ」

善子「成程ね、人気なわけだわ」

「What! Mary! Isn't you!」

月・梨子・善子「?」

鞠莉「Oh! Long time no see! What have you been up to?」

「Yeah, You're getting more and more beautiful」

鞠莉「As always, you have a way with words!」

310: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:12:13.49 ID:sfLQV5nw
善子「え、誰? 鞠莉の知り合い?」

鞠莉「まあね、パーティーの交流とかでよく会ってるのよ。最近はご無沙汰だったけど」

梨子「ということは……」

善子「さっき話に出ていた……セレブ?」

鞠莉「セレブ」

善子・梨子(ですよねー)

「Who is that persons?」

鞠莉「My friends でも丁度いいわ、ライブの件で何か協力してもらえないか私のほうから話してみる」

鞠莉「あなた達はゆっくりしてていいわよ~ Let's go over there」

311: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:12:54.41 ID:sfLQV5nw
梨子「行っちゃった……」

月「う~ん、ありがたいけど僕たちだけのんびりするっていうのも何か気が引けちゃうね」

善子「そうならないためにも何かしら役割引っさげて戻ってくるわよ、あの人のことだから」

梨子「ふふっ、そうかもね」

善子「それに、今でも出来ることはあるわよ。例えばライブの選曲とかね」

梨子「何を歌うかによって印象も変わってくるもんね」

善子「そういうこと。というわけで月先生、引き続き情報提供よろしく」

月「あははっよしきた! その役目確かに承ったよ」

312: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:13:38.67 ID:sfLQV5nw


そして……




ビーチホテルの一室


鞠莉「はぁ~~~っ、極楽かな極楽かな」ボフンッ

善子「だらしないわねえ、さっき夕食取ったばかりでしょ」

鞠莉「いいのよ誰も見てないんだし、今日はずっと歩きっぱなし喋りっぱなしで疲れたのよ」

善子「それはお疲れさま」

鞠莉「ノンノン、礼には及ばないわ。明日からはあなた達にもちゃーんと働いてもらうからね」

善子「ピアノの演奏でしょ、分かってるわよ」

善子「私が前座で梨子が本命、クラシックは私も簡単なものなら一通り弾けるし。まあなんとかやってみせるわ」

313: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:14:11.42 ID:sfLQV5nw
鞠莉「頼むわよ、上手くいけばいい感じのステージを用意してもらえるんだから」

善子「はいはい、本当たいした交渉人よ鞠莉は」

鞠莉「キャリアが違うもの」

善子「ごもっとも」

善子「…………つらくないの?」

鞠莉「What? なにが?」

善子「顧問……いや、理事長になって戻ってきてから、こういうこと数え切れないくらいあったんでしょ?」

善子「やめたくなったりとか、しなかったのかなって」

鞠莉「なったわよ~、なりすぎていっそ全部投げ出したくなったこともあったわね~」

314: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:14:57.16 ID:sfLQV5nw
善子「……じゃあ、なんで続けたの?」

鞠莉「出会ってから今まで、ずっとルビィの側に居続けた善子なら分かるんじゃないの?」

善子「……」

鞠莉「放っておけなかったからよ」

善子「……そう」

鞠莉「うん。そう」

鞠莉「善子はどうしてそんなこと聞いたの?」

善子「別に。今くらいしか聞く機会ないと思ったから、それだけ」

鞠莉「ふ~ん、満足した?」

善子「それなり」

鞠莉「十分じゃないのね、残念」

315: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:15:24.12 ID:sfLQV5nw
善子「満たされないわよそんなんじゃ……だから」

善子「鞠莉」

鞠莉「な~に?」

善子「明日のピアノ、貴女もちゃんと聴いていってね」

善子「私、頑張るから」

鞠莉「…………はいはい」クスッ

316: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:15:52.30 ID:sfLQV5nw


─翌日

ホテル バルコニー


カッカッ


善子「…………」ペコリ

ストン

善子「」スッ

~~♪ ~♪♪

オォー……

鞠莉「うーん、いい音色ね」

月「お洒落ですよね~、ビーチの夜景を眺めながらクラシック音楽に包まれるなんて」

月「余りにも普段の自分と浮世離れしていて、なんだか不思議な気分ですよ」

317: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:16:23.77 ID:sfLQV5nw
鞠莉「あら月先生、接待はもう終わったの?」

月「ええ大体は。それよりその呼び方は僕としてはちょっと……むず痒いといいますか」

鞠莉「なら月もさん付けと敬語禁止。梨子は言っても聞かんぼさんだから、せめて貴女くらいはね」

月「……わかったよ鞠莉ちゃん」

鞠莉「うん、それでよし」

月「で、その梨子ちゃんは今どこに?」

鞠莉「コーディネート中、でもそろそろ出てくると思うわよ。ほら噂をすれば」

スッ

梨子「…………」

月「…綺麗だなあ」

鞠莉「なに、見惚れちゃった?」

月「さてさて、どうでしょう」

318: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:16:54.00 ID:sfLQV5nw
善子「」……トン♪

善子「ありがとうございました」ペコリ

鞠莉「善子ー! ブラボー!」パチパチ!

パチパチパチパチ!!!

善子「…………ふぅー。あとお願いね」

梨子「ええ、お疲れさま」

梨子「」ペコリ

ストン

梨子「よろしくね」スッ


ポロン♪


319: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:17:22.31 ID:sfLQV5nw


♪  ~~♪# ♪****♪


月「!」

鞠莉「お疲れさま善子。とても良かったわよ」

善子「ありがとう。だけど、やっぱり梨子には敵わないわね」

善子「さっきと空気が変わった」

月「……」

鞠莉「みんなピアノの方じゃなくて梨子に夢中になってるものね、ねえ月?」

月「ええまあ、ちょっと約束したもので」

鞠莉「約束?」

月「うん、昨日の夜に」

320: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:17:49.92 ID:sfLQV5nw
鞠莉「な~に? 昨日いなくなったと思ってたらやっぱり逢引してたの」

月「誤解を招く言い方だなあ、別にそういうのじゃないよ」

善子「じゃあどういうのよ」

月「あれ、善子ちゃんも意外と食いついてくるんだね?」

善子「個人的に曜と梨子には結構お世話になってるから、仮に何かあったとしたら見過ごせないのよ」

月「そっか。でもね、善子ちゃんが心配しているようなことにはなってないから大丈夫だよ、本当に」

月「寧ろ、仲良くしなくていいって言われたからねー僕。あはははっ」

321: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:18:16.00 ID:sfLQV5nw
善子「仲良くしなくていいって……嘘でしょ?」

鞠莉「あの梨子が?」

月「って思うよね? 僕も聞いたときはビックリしたよ、だけど……なんでだろうね」

ポロン♪

梨子「…………」ペコリ

パチパチパチパチ!!!

月「少し、納得しちゃったんだよなあ」ジッ

梨子「!」

梨子「えへへっ」フリフリ

月「……ふふっ」テヲフリ

善子・鞠莉「???」

月(曜ちゃんが彼女に惹かれた、その理由に)

322: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:18:44.53 ID:sfLQV5nw

そして……

Guilty Kiss ライブ当日


ザワザワ  キャッキャ


月「はーいライブ視聴枠はこちらでーす。」

ゾロゾロ……

月「いやぁ結構人が集まったねー。うん、案内はこれくらいでいいかな」

月「そろそろ時間だし……撮り遅れる前に僕もビデオカメラの用意しないと」ヨイショ

月「向こうはもういつでも準備OKみたいだしね」

323: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:19:17.99 ID:sfLQV5nw

──




3日前、夜


梨子「凄いねこのホテル、屋外プールまであるんだ」

月「いい開放感だよね。すごく気持ちいいや」スイー

梨子「泳ぐのもいいけど風邪引かないようにね、夏っていってももう夜なんだから」

月「心配性だね梨子ちゃんは、でもこれくらい大丈夫だよ」スイスイ

梨子「そう? 無理してない?」

月「してないよー」バシャバシャ

梨子「私と話してるときも?」

ピタッ

月「……んー? それどういう意味かな? 梨子ちゃん」ニコ

324: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:19:49.55 ID:sfLQV5nw
梨子「別に全部が全部そうだとまで言うつもりはないけど」

梨子「月ちゃん、無理して私と仲良くしようとしているんじゃないかなって思って」

梨子「こっちに来てからは特に」

月「……えーまさか、そんなつもり全然なかったんだけどなあー」ニコニコ

梨子「やっぱり従姉妹だけあって似てるわね、そうやって愛想笑いで誤魔化そうとするところとか」

月「!」

梨子「いつかの曜ちゃんを見ているみたい」

325: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:20:19.20 ID:sfLQV5nw
梨子「少し気になってたの、どうして私ばかりに構うんだろうって」

梨子「でも月ちゃんと一緒にいるうちにそれも段々分かってきたの、私が曜ちゃんの彼女だからでしょ?」

梨子「だから自分も上手く関係を築かなくちゃって、そう思って私に近付いた。違う?」

月「……勘違いじゃないかな」

梨子「このままだとそうかもしれないね」

月「…………」ハァーッ


ザパッ


月「なら、どうしてそんなに踏み込んでくるの。そっとしておいてよ」

月「それとも、僕のやっていることってそんなに間違ってる?」

326: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:20:53.79 ID:sfLQV5nw
梨子「私は、ただ月ちゃんの本音が聞きたいだけだよ」

梨子「私の前で取り繕っていない、本当の月ちゃんが知りたいだけ」

月「……」

梨子「ねえ月ちゃん」

梨子「……私ね、前に大嫌いだったって言われたことあるの。誰だと思う?」

月「……さあ、皆目見当もつかないね」

梨子「曜ちゃん」

月「!? えっ……?」

梨子「まあその後すぐ嘘だって言ってくれたんだけどね、ただの嫉妬だって」

梨子「でも本当は、嫌いの感情も少しは入っていたんじゃないかなって、今ではそう思ってる」

327: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:21:28.43 ID:sfLQV5nw
月「嫉妬……曜ちゃんが、梨子ちゃんに?」

梨子「今まで千歌ちゃんとずっと一緒にいたのは自分なのに私に取られたってね」

月「それって……」

梨子「同じじゃない? 今の私たちの立場と」

月「!」

梨子「だから分かるよ、月ちゃんが私に向けている笑顔が嘘かどうかくらい」

月「……そこまで気付いておきながら、その続きをわざわざ僕に言わせるの? 君を否定するかもしれない言葉を、僕に?」

梨子「うん」

月「怖いとか、思わないの?」

328: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:22:01.18 ID:sfLQV5nw
梨子「怖いよ。慣れようと思っても、そう上手くはいかないし」

梨子「自分が予想している以上に傷つくことだってあるから」

月「それならこのままで──「でも」

梨子「それでも私は貴女のことが知りたい、友達として」

梨子「貴女のこと、もっとちゃんと知りたいの」

梨子「それに、私は月ちゃんなら大丈夫だって信じてるから……だって」

梨子「曜ちゃんの従姉妹だもん……だから、ね。お願い」

梨子「月ちゃんも私のこと、信じて」

月「……はあ、全く……敵わないなあ」

329: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:22:35.17 ID:sfLQV5nw
月「そうだよ、全部梨子ちゃんの言った通り。僕がこのグループ分けでわざわざGuilty Kissを選んだのも」

月「イタリアに来てから梨子ちゃんにばかり絡んでいたのも、俗に言う"いい関係"になろうとしてたから」

月「あとは、曜ちゃんにも僕と同じ気持ちを少しでも味わってほしいっていう黒い部分もほんのちょっとだけね」

梨子「うん」

月「まあそりゃね、違う高校通ってたんだから僕の知らないことの一つや二つあって当然だとは思うよ」

月「それに僕は相手が千歌ちゃんなら納得してたんだ、曜ちゃんは昔から千歌ちゃんにべったりだったから」

梨子「そうだよね」

330: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:23:01.60 ID:sfLQV5nw
月「なのに相手は君だった。正直、気に入らなかった」

月「でもそれを表に出すわけにはいかないでしょ? だからさ、なるべく早く馴染もうとしたんだよ」

月「手ごたえも自分としては悪くなかったと思うしね、梨子ちゃんはどうだった?」

梨子「うん、私も月ちゃんは良い人だなってずっと思ってたよ」

月「でしょ? ところがだよ、今日になって僕のその努力を水の泡にするようなこと言ってくれちゃって」

月「そもそも取り繕うのも、その為に無理をするのも、僕はそれがベストだと思ってやっていたのにね?」

月「そこにずけずけと入り込んで本音を聞かせてっていうのはさあ、我が儘が過ぎるんじゃないかな?」

月「まさか君がそんなに嫌な人だったとはね、予想外だったよ」

梨子「…………」

331: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:23:42.43 ID:sfLQV5nw
月「でも」

月「おかげでこうして打ち明けることが出来た、腹の底で溜まっていたものを全部ね」ニコッ

月「吐きだしたら結構スッキリするもんだ、胸のつっかえが取れたような気分だよ」

梨子「そう、良かった」

月「梨子ちゃんも僕に言いたいことがあるなら言っていいんだよ」

梨子「私? そうだね、じゃあ月ちゃんこっち来て」

月「? いいけど」ペタペタ

332: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:24:12.88 ID:sfLQV5nw
梨子「はいこれ、私から」

月「! これって昨日のお土産の……僕にあげるものだったの?」

梨子「うん、言葉で伝えるのもいいと思うけど」

梨子「それだけじゃ足りないかなって、月ちゃんも私もまだまだお互いに知らないことがたくさんあるから」

梨子「だから、それを押し退けて無理に仲良くする必要なんてないと思うの私は」スタスタ

梨子「今日はその一歩目」

月「梨子ちゃん……」

梨子「だから月ちゃん」

クルッ

月「!」

梨子「ちゃんと見ていてね、私のこと」フフッ


──




333: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:24:41.44 ID:sfLQV5nw


……


ブーーーーーッ

「Everyone, welcome to guilty space」

「I knock knock your heart!!」


月「とくと見せてもらうよ梨子ちゃん、僕のまだ知らない」

月「君の姿ってものをさ」

334: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:25:45.07 ID:sfLQV5nw


ーーーーーーーー




梨子「最近変わりはじめてるって」

(New Romantic Sailors!)

梨子「やっと気づいてきたよね君も」

善子「セカイはいくつもあるんだ」

善子「見えないセカイがあるんだ」

335: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:26:21.44 ID:sfLQV5nw
善子・梨子・鞠莉「どんな冒険がしたい? だんだん速く」

鞠莉「時を超えそうな Hyper drive」

善子・梨子・鞠莉「始まるんだなって高まって」

鞠莉「手を握っちゃおうかな」


月「おぉ、やっぱり凄いなー…」

336: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:27:01.24 ID:sfLQV5nw

鞠莉「 ヨハネ♪ 」

ヨハネ「 ギラン 」

ヨハネ「 マリー? 」

マリー「 Oh, yes 」

ヨハネ・マリー「 リリー 召喚! 」

梨子「 Yes! 」

リリー「喰らえ! 梨子ちゃんレーザービーーーーーーーーーム!!」


月「! あっはははははははははは!!!」

337: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:27:37.40 ID:sfLQV5nw

ヨハネ・リリー・マリー「もっと冒険がしたい! ぐんぐん遠ざかる」

リリー「見慣れた街の Laser beam」

ヨハネ・リリー・マリー「戻らないよって囁いて」

マリー「肩抱いちゃおうかな」

ヨハネ・リリー・マリー「冒険がしたい 前例ないから」

ヨハネ「燃え上がるよ好奇心」

ヨハネ・リリー・マリー「だから君と 君と行きたい」

ヨハネ・リリー・マリー「白い彗星 黒い雪舞う中で踊ろう」


New Romantic Sailors, Sailors!

New Romantic Sailors, Sailors!


338: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/08(日) 09:28:08.38 ID:sfLQV5nw


ワーーーーーッ!


月「…………ああもう、本当にズルいなあ」

月「毎回僕の予想を裏切ってくれるなんてさ」

月「本当に……ズルくて、身勝手で」テヲアゲ

梨子「!」フリフリ

月「嫌な女だよ、君は」ニコッ



──  Guilty Kiss ミッション達成!  ──



342: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:44:29.35 ID:F69/I4ME


√ CYaRon!


ランペドゥーザ島  空港


千歌「おぉー! 着いたー!」

曜「いやーそれにしても凄かったね! 飛行機からの景色!」

千歌「ね! もう島の周り全部海だし、その海もなんていうかこうすっごいキラキラしてたし!」

千歌「おかげで眠気が吹っ飛んじゃったよー!」

曜「分かる! 分かるよ千歌ちゃん!」グッ

曜「私もね、ここに行くって決まったときから気になってる場所があって!」

千歌「そうなの? それってどこ!?」

343: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:45:17.93 ID:F69/I4ME


キャッキャ


ルビィ「でも、まさか島があんなに小さいだなんて思いませんでした」

ルビィ「地図で見たときからちょこんとあっただけだけど、実際に見てみると本当に……」

亜里沙「ランペドゥーザ島の面積は20k平米、みんなの知ってる内浦よりも小さいからね」フワァ~…

亜里沙「まさに、神秘の島って感じだね」

ルビィ「亜里沙さん、おはようございます」ニコ

亜里沙「うん。ごめんね移動中に寝ちゃって」

ルビィ「いえ、全然平気ですから。私も色々考えごとしていましたし」

亜里沙「ありがとう、そう言ってもらえると私としては助かるよ」

344: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:46:01.87 ID:F69/I4ME
ルビィ「とりあえずこれからどうしましょうか?」

亜里沙「今日のところは自由にしていいんじゃないかな、向こうはもうそのつもりだろうし」

亜里沙「ルビィちゃんも色々見て回りたいでしょ?」

ルビィ「それは……そうですけど、でも」

亜里沙「ん?」

ルビィ「少しくらいは人数集めのこと、考えたほうがいいのかなあって」

亜里沙「うん、そっちも確かに大事だよね」

ルビィ「私、早くなんとかしたいんです」

亜里沙「どうして?」

ルビィ「鞠莉さんには、助けられてばかりだから」

ルビィ「こんなときくらいは力になってあげたいんです」

345: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:46:38.33 ID:F69/I4ME
亜里沙「……ふふっ、そっか」

亜里沙「でも大丈夫、人集めのことなら私に任せて。その辺りはちゃんと考えてきてるから」

亜里沙「だからルビィちゃんたちはお客さんを喜ばせることだけに集中して」

亜里沙「どうすれば集まった人たちの期待に応えられるようなライブが出来るのかを3人で話し合って、ね?」

ルビィ「は、はい。わかりました」

亜里沙「うん、じゃあ千歌ちゃんと曜ちゃんにも今言ったこと伝えておいてね」

ルビィ「……」ボーッ

亜里沙「? どうしたの?」

ルビィ「えっと、ごめんなさい少し意外だなって」

346: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:47:23.76 ID:F69/I4ME
ルビィ「私、最初に会ったとき亜里沙さんのこと、ふんわりとした優しそうな人だと思っていて」

ルビィ「雪穂さんも『亜里沙は天然でちょっとボケてるところがあるからね』って言ってましたし」

亜里沙「え~!? 雪穂そんなこと言ってたの!? それを言うなら雪穂だって口うるさい真面目ちゃんだよ!」

ルビィ「あはは……でも今の亜里沙さんはなんか鞠莉さんみたいだなぁって」

亜里沙「そうなの?」

ルビィ「はい」

亜里沙「そっかあ、もしそうだとしたら……ちょっと嬉しいかな」クスッ

ルビィ「え?」

亜里沙「私もしっかりしてきたんだなあって自信がつくから」

亜里沙「お姉ちゃんのこと手伝いたいって思っていても、そういうのはなかなか自分では分かりにくくて……」エヘヘ

ルビィ(…………)

347: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:48:12.29 ID:F69/I4ME
亜里沙「あ、そろそろ私たちも行かないと。二人ともそんなに離れてないから大丈夫だと思うけど……出来るだけみんな一緒にいないとね」

亜里沙「行こうルビィちゃん」

ルビィ「……」

亜里沙「ルビィちゃん?」

ルビィ「! あ……はいっ今行きます」

亜里沙「……」


ギュッ

348: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:48:43.58 ID:F69/I4ME
ルビィ「!? あ、あの」

亜里沙「手を繋げばボーっとしてても大丈夫でしょ?」

ルビィ「ご、ごめんなさい」

亜里沙「あのねルビィちゃん、何か話したいことがあるならまた後で聞くよ?」

亜里沙「だって私、そのためにここにいるんだから」

ルビィ「え?」

亜里沙「ふふっ」ニコニコ

349: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:49:44.90 ID:F69/I4ME


一方その頃


千歌「おーーーっ!! 飛んでる! ほんとに飛んでる!! なにこれ凄い!」

曜「いやー! 一度でいいからこのフライングボート乗ってみたかったんだよねー!」

千歌「確か、水の透明度? それがとっても高いからこうなるんだっけ?」

曜「そうそう!」

千歌「でも本当……海にいるのに空にいるみたいに感じるって凄すぎるよ!」

曜「ね! パンフレットで見たときからここは絶対行くって決めてたんだー!」

曜「実はちょっと憧れてたんだよね、こんな綺麗な海でクルージングするの」

千歌「ふーん、だからツアーじゃなくてわざわざレンタルしたんだ? 私はどっちでもいいけど!」

曜「んー……それもあるんだけど、ツアーだとほら。すぐ戻れないからさ」

曜「あんまり離れるとルビィちゃんや亜里沙さんに心配かけちゃうし」

千歌「あーそれもそうだね、うっかり…」

350: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:50:25.14 ID:F69/I4ME


ザザー


千歌「……なんだか懐かしいなあ、前はこうしてよく二人で一緒に海を見てたっけ」

曜「あったね、そんなことも」

千歌「小っちゃい頃なんてさ毎日のようにボートに乗って」

千歌「曜ちゃんは免許取りたいー!ってそればっかり言って」

曜「あはは、あの時の私うるさかったよね」

351: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:50:59.93 ID:F69/I4ME
千歌「高1のときなんて資格の勉強で遊んでくれないときあったし」ムスーッ

曜「で、でもそのおかげで今また2人でのんびり出来てるわけだし」

千歌「そうだけどさあ……」

曜「それにしてもよく覚えてるね千歌ちゃん」

千歌「ん-そうだねー、きっと覚えやすかったんだと思う」

千歌「あのときの私、それしかなかったから」

352: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:51:36.43 ID:F69/I4ME
曜「千歌ちゃん……」

千歌「特になりたいものもなくて、やりたいこともなくて」

千歌「曜ちゃんや果南ちゃん、学校の友達と一緒に楽しく遊んでればそれでいっかなーとか考えながら中学まで適当に過ごしてて」

千歌「高校入ったら何かやってやる! って思って色々やってみたけど……これだ! ってものが見つからなくてさー」

千歌「もしかしたら一生このままなのかも、とか何回もなっちゃうくらいそれまでの私ってなんにもなかったんだよねー」アハハ

曜「……」

千歌「私、ちょっとは変われたのかな」

曜「……変わったよ、変わった」

353: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:52:08.44 ID:F69/I4ME
千歌「本当に?」

曜「うん、前よりずっと素敵な女性になった」

千歌「えー何それ、そんな口説き文句みたいなこと言わないでよ」

曜「大目に見てよ、それに本当のことだし」

千歌「全くもう、曜ちゃんは相変わらずっていうか」

千歌「ま、そんな曜ちゃんだから信じられるんだけどね……帰ったら試しにちょっと男の人誘ってみようかな」

曜「それは絶対にやめて」

354: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:52:36.81 ID:F69/I4ME
千歌「かーほーごー」

曜「良い人見つけてほしいだけだってば」

千歌「見つけても文句言うくせに」

曜「う……」

千歌「もーほんと過保護だよねー」

曜「だ、だって千歌ちゃんの場合はそれが将来を決める大事なものになるかもしれないわけだし……!」

千歌「言ってることお父さんじゃん」

355: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:53:11.66 ID:F69/I4ME
千歌「でも、将来かあ……確かにそうかも」

千歌「鞠莉ちゃんだって今そのことで揉めてるわけだし」

曜「そうだよ、簡単に決めていいことじゃないんだってば」

千歌「ふ~ん、だとしても私は鞠莉ちゃんほど深刻でもないと思うけど、それに……」

千歌(多分だけど鞠莉ちゃんはもう──)

曜「それに、なに?」

千歌「うーんやっぱいいや! そんなことよりさ、そろそろ戻ろうよ!」

千歌「ほら、ルビィちゃんから連絡きてるし!」

曜「あっ本当だ。なになに……ホテル前で集合ね、了解であります!」

356: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:53:45.39 ID:F69/I4ME
曜「ではでは全速前進ヨーソロー!」

千歌「ヨーソロー!」

ザザーッ!

曜「そういえばさっきのでちょっと思ったんだけど」

千歌「んー?」

曜「ルビィちゃんって将来……どうするんだろうね?」

曜「なんだかんだで来年卒業だし、そうなったらスクールアイドルはもう──」

千歌「……」

曜「やっぱり悩んでるのかな、色々と」

357: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/05/09(月) 00:54:34.52 ID:F69/I4ME
千歌「……もしそうだとしてもさ、私たちのやることはきっと変わらないよ」

曜「え?」

千歌「ルビィちゃんがこの先どんな道を選んだとしても、全力で応援するだけだよ。何があったって私たちはルビィちゃんの……Aqoursの味方だから!」

曜「……やっぱり千歌ちゃんかっこよくなったよね」クスッ

千歌「あーまたそういうこと言うー! ていうか褒めるならせめてかっこいいじゃなくて可愛いって言ってほしいんですけど?」

曜「ごめんごめん……って千歌ちゃんそんな願望あったの!?」

千歌「し、失礼な! 私だって一応ごく普通の女の子なんですけど!!」

曜「そ、そうだよね……だけど男の人と付き合うのはやっぱりまだ早いというか……」

千歌「だから過保護!!」


ワイワイ……

ザザーッ