──





『はい、では次に……黒澤さん、お願い』

ルビィ『は、はいっ!』ガタッ

ルビィ『あ、あの……』

ルビィ『ええっと……その……』チラッ

花丸『……?』

ルビィ『ルビィの、将来の夢は……』

3: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:54:54.04 ID:oPW+2Axn

ルビィ『今日の授業、先生もみんなもビックリしてたね』

花丸『え?』

ルビィ『花丸ちゃんの将来の夢』

花丸『あぁ~、そんなに変だったかな?』

ルビィ『ううん、ちっとも。でもみんなは花丸ちゃんのことあんまりよく知らないから』

ルビィ『意外だって思ったんじゃないかなあ、花丸ちゃんが綺麗なお嫁さんになりたいって聞いて』

花丸『そっか、そうだよね』

花丸『マルからすれば昔からずっと、変わってない夢なんだけど』アハハ

ルビィ『……うん』

4: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:55:28.74 ID:oPW+2Axn
花丸『ルビィちゃんはマルに比べて立派だったよね』

ルビィ『え?』

花丸『将来の夢。ほら、いつか黒澤家を継ぎたいって』

ルビィ『あ……ううん、アレ本当は…違うの』

花丸『違う?』

ルビィ『ルビィ、本当はアイドルに……なりたくて』

ルビィ『でも、自信がなかったから……言えなくて』

花丸『…………』

5: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:55:59.29 ID:oPW+2Axn
ルビィ『それに、もっと言うと』

花丸『?』

ルビィ『分からなかったの、本当にアイドルがルビィの夢で合ってるのか』

ルビィ『ルビィが本当になりたいものなのかが』

ルビィ『たまにね、思っちゃうの。アイドルのことは大好きだけど』

ルビィ『なんか、好きだからそのまま言ってるだけのような気がして』

花丸『モヤモヤするってこと?』

ルビィ『えっと……多分』

ルビィ『へ、変だよね? ルビィ、ちょっとおかしいのかも……』

花丸『別に、いいんじゃないかなあ』

ルビィ『……ほんと?』

6: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:56:53.62 ID:oPW+2Axn
花丸『ばっちゃんが言ってた、大人になってから夢が出来る人も世の中にはたくさんいるんだって』

花丸『だから今なりたいものがなくても、それだけで駄目なんてことないんじゃないかな』

ルビィ『……』

花丸『今は好きなものがあれば、それだけでいいと思うよ』

ルビィ『……うん、ありがとう。花丸ちゃん』

花丸『どういたしまして。さ、早くお家に帰るずら』

ルビィ『うん』

ルビィ(……言われたからじゃなくて、好きだからってだけでもなくて)

ルビィ(何か、多分もっと違う何かがあって……それが)

ルビィ(本当になりたいものに、なるのかな)


私の夢って……一体なんなんだろう


ルビィ『見つかったら、いいなぁ……』

7: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:57:44.88 ID:oPW+2Axn


──   ルビィ「片割れのジュエル」 3年生編   ──


8: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:58:34.80 ID:oPW+2Axn


────10月中旬


月「はーい、それじゃあみんな準備出来た?」

月「いくよ、せーのっ!」

「「「浦の星女学院の皆さん! ようこそ!」」」

「「「静真高等学校へ!!!」」」

ルビィ「~~~~っ!! よ……!」

「よろしくお願いしまーーすっ!!」

月「あははっこちらこそ! みんなでいい学校祭にしようね!」

ルビィ「はい! 静真の皆さんのためにも、浦の星一同……精一杯頑張らせていただきます!!」

月「いいねー、やる気100パーセント。それに……」

9: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:59:12.19 ID:oPW+2Axn
「ねえ、うちのクラスでやる出し物についてなんだけど……」

「なになに? へえー面白そう!」

「出費もう少し抑えたいんだけど、材料で何か代わりになるものとかないかな?」

「あっそれなら浦女のほうにもう使ってないやつあったから持ってこようか?」

「ありがとう! 助かるー!」

「きゃー! 善子ちゃん!! 本当にうちの学校に善子ちゃんが!!」

「花丸せんぱーい! こっち見てー!」

「あー! 今しか先輩呼び出来ないからって!! ずるいわよ!」

月「こっちとしてもいい刺激になっているみたいだし、いやー自分でいうのもなんだけど」

月「我ながら良い提案をしたものだねえー、静真と浦の星の合同学校祭企画!」

鞠莉「ええ、本当にお手柄というか、頭が上がらないというか」

10: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 12:59:52.70 ID:oPW+2Axn
月「あっ鞠莉ちゃん。いやいや、流石に学校責任者に頭を下げられる程じゃないと思うけど」

鞠莉「そんなことないわよ、学生時代の思い出とかを考えるとこれでも足りないくらい」

月「ふーん、それってみんなあっち側の生活に退屈してたってこと?」

鞠莉「つまらないっていうより物足りないって感じかしら。自分たちと他を比べての話ね?」

鞠莉「確かに私たちは浦の星に思い入れがあるし、そのために出来る限りのことはやってきたつもりだけど」

鞠莉「それでも学校行事になると、どうしても人の少なさで物寂しくなっちゃうっていうのはあったから」

月「……そっか」

鞠莉「だから最後のイベントがこんなに賑やかなものになってくれたのは、理事長としては感謝の気持ちでいっぱいだわ」

鞠莉「何だかんだ言ったって、やっぱり皆には楽しい思い出作ってもらいたいもの」

鞠莉「だから改めてありがとうね月。学校側に今回のこと掛け合ってくれて」

月「どういたしまして。と、言いたいところだけど実は僕もこの結果にはちょっと驚いてるんだよね」

11: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:00:22.17 ID:oPW+2Axn
鞠莉「そうなの?」

月「まあ、いっても僕はもう卒業した身だし、もしかしたら話を通すの難しいかもなあってね、考えてたところはあるんだけどさ」

月「それもどうやら杞憂だったみたい。今思えば当然だけどね」

鞠莉「どうして?」

月「だって、あのAqoursがうちに…それも一般枠じゃなく学校関係者として参加してくれるんだよ?」

月「今をときめく高校生からすれば、こんなに願ったり叶ったりな状況はないでしょ!」ニコ

12: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:01:01.69 ID:oPW+2Axn

ルビィ「そうそう、それでね、この部分は装飾控えめにして……どう?」

「ほんとだ! 前よりスッキリして見やすい!」

ルビィ「一番初めにどこを見せたいのか、そこを意識するだけでも結構違うでしょ」

「ですね! わータメになるなあ、流石Aqoursの衣装担当! 尊敬します!」

ルビィ「あ、ありがとう。そんなに褒められると照れちゃうな……」アハハ

「いえ、マジの意見なので! あ、それとずっと気になっていたんですけど」

ルビィ「なに?」

「ルビィさん髪型変えたんですね! ミディアムストレート!」

13: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:01:41.91 ID:oPW+2Axn
ルビィ「うん、昔の髪型に戻してみようかなあって。変だったかな?」

「いえ、全然!!」

「今までのツーサイドアップも可愛くて良かったけど、今はちょっと大人っぽいっていうか……とにかく素敵です!」

ルビィ「そっか、そう言われると嬉しいなぁ」フフッ

ルビィ「じゃあ私そろそろ他のところに行ってくるから、またね」

「はい、ありがとうございました!」

14: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:02:12.17 ID:oPW+2Axn
ルビィ「二人ともお待たせ」

善子「遅かったわね、何してたの?」

ルビィ「ちょっと衣装のことで盛り上がっちゃって」

善子「へえ、良かったじゃない」

ルビィ「うん。そっちは順調?」

花丸「今メニューの試作を一通り作り終えたところ。ルビィちゃんも食べてみる?」

ルビィ「いいの!?」パァッ

「はい是非! よかったら感想も!」

ルビィ「じゃあ……あむ……ん、おいひい」

15: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:02:46.40 ID:oPW+2Axn
善子「で、味わってるところ悪いんだけどルビィちょっと相談」

ルビィ「ん?」モグモグ

善子「学校祭のスケジュールで最後に、浦女のほうで私たちがライブすることになってるでしょ?」

ルビィ「あるけど、それが?」ペロッ

善子「後で許可を貰いには行くんだけど、三人でやるライブとは別にやりたいことがあるのよね」

ルビィ「善子ちゃんが?」

善子「そう、私が。で、その内容っていうのが」

善子「ソロライブ開こうと思って、私たちの。理由としてはまあ、なんていうか……」ポリポリ

善子「私も今しか出来ない思い出作りに、混ざりたくなっちゃったのよ」ニコ

16: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:03:49.16 ID:oPW+2Axn
ルビィ「そうなんだ……じゃあ今から段取り決めておかないとね」クス

花丸「あの、それなら」

ルビィ・善子「?」

花丸「セットリストを作るのはマルにやらせてほしいんだけど」

善子「いいけど…」

ルビィ「花丸ちゃんが?」

花丸「マルもこの機会に色々挑戦してみたいの」

ルビィ「わかった。ならそっちは花丸ちゃんに任せる、何か分からないことがあったら聞いて」

花丸「ありがとうルビィちゃん!」

17: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:04:36.03 ID:oPW+2Axn

ワイワイ

善子「ん? ……ごめん二人とも、私ちょっと抜けるわね」ガタッ

ルビィ「え、うん」

善子「ねえ、あなた達もしかして……」

「はい? あーっ善子ちゃんだ!」

「久しぶりだねー!」

善子「ほんと中学ぶりね、元気にしてた?」

「まあまあ元気ってところかなー、そっちは……聞くまでもないよね」

「いつの間にかすっごい有名人になっちゃったからねー」

善子「最初に部に入ったときは、まさかここまで来るとは思わなかったけどね」

「「へえ~……」」

善子「嘘じゃないわよ?」

「分かってるって」

18: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:05:18.12 ID:oPW+2Axn
善子「私のことより二人はどうなの? 何か部活とかに入ってたりは」

「そうそう! それ話そうと思ってたの!」

「私たち善子ちゃんに影響されて音楽やってみたいなって!」

善子「やってるの?」

「うん、軽音楽部! 自分で言うのもだけど二年以上やってるし結構自信あるよ」

善子「いいわね、楽しそうで」

善子「でもそういうことなら丁度いいかも」

「え?」

善子「実はさっきルビィ達とライブのことで話し合ってて、それでね」

善子「もしあなた達が良ければなんだけど、私たちと一緒に演奏とか」

「えー! いいじゃんそれ絶対楽しいやつ!」

「私も賛成!」

善子「本当!? ありがとう!」

19: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:06:07.97 ID:oPW+2Axn
ルビィ「善子ちゃんの知り合いかな? 凄く仲良さそうだし、花丸ちゃん知ってる?」

花丸「中学の同級生だと思う。ルビィちゃんが来る前ちょっと話に出てきて…多分あの人たちがそうなんじゃないかな」

ルビィ「そっか、私たちとは中学校別だったもんね」

ルビィ「でも、なんていうか……」

花丸「ルビィちゃん?」

ルビィ「善子ちゃんも変わったなぁって、だって」

ルビィ「私たちが初めて会った頃の善子ちゃんなら、自分から声をかけに行ったりしないと思うから」

花丸「あ、確かにそうかも」

ルビィ「あの頃はあの頃で、こっちが話しかけたら答えてくれるとは思うけどね」

花丸「それも分かるずら、善子ちゃん真面目だから」

20: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:06:56.39 ID:oPW+2Axn
「ルビィー!花丸ー! ちょっと来てー!」

花丸「だからあんなに張り切ってるのかなあ、今しか出来ないことを全力で楽しむために」

ルビィ「だけじゃないと思うよ? ただ単純に、嬉しいんだと思う」

ルビィ「さっき善子ちゃんが言ったみたいに、こんなにたくさんの人が集まって、協力して」

ルビィ「自分たちだけの学校祭を作り上げる。そこに混ざることが出来るのが」

花丸「そっか…今までもおっきなイベントはあったけど、学校関係のものっていうか……皆と一緒に何かやるってなかったもんね」

花丸「しかも協力してくれるところが自分に縁のあるところで、そこに中学時代の知り合いがいるなら尚更……」

ルビィ「うん、きっと」

21: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:07:42.82 ID:oPW+2Axn
「何もたもたしてるのよ! 早く来なさいよー!」

ルビィ「あはは、もう行かないと善子ちゃんに怒られちゃうね。いこっか」ガタッ

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「?」

花丸「善子ちゃん、スクールアイドルに誘って良かったね」ニコ

ルビィ「! うんっ!!」

22: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:08:30.03 ID:oPW+2Axn


そして……学校祭当日


月「おーい、こっちこっち!」

梨子「わあ、すごい人の集まりね……」

千歌「ねえ月ちゃん、静真に入ったときも思ったけど普段からこんなにたくさんの人が来るの?」

月「まさか、ここまでの規模は僕も初めてだよ」

曜「模擬店もどこも気合い入ってたよね、思わず全部寄っていっちゃいそうになったし」チュー

千歌「ね、お金足りなくなりそう」ズゾゾッ

23: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:09:07.57 ID:oPW+2Axn
梨子「体育館はもう少し先にあるんだよね?」

月「うん、でもこの時間帯は例のステージのおかげでさっきの比じゃないくらい来場者で溢れてるから」

月「はぐれないように、手でも繋ごうか」スッ

梨子「え、うん」スッ

パシッ

曜「それは私がやるので、月ちゃんどうぞご心配なく」ニコ

月「あっちゃーまた失敗」

曜「全く油断も隙もない……梨子ちゃんも、いくら月ちゃんと仲良くなったからって」

梨子「ふふっ、ごめんね。次は気を付けるから」ギュッ

曜「もう、またそれ……梨子ちゃん絶対私のことからかってるよね?」

梨子「そう?」

曜「そうだよ」

24: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:09:56.18 ID:oPW+2Axn

スタスタ

千歌「月ちゃーん、ちょっかい出すにしてもほどほどにしておいた方がいいんじゃない?」

千歌「仲良しなのはいいことだけど」

月「えー、でもあれが僕なりのスキンシップなんだけどなあ」

千歌「…月ちゃん、そんなに梨子ちゃんのことが好きになったの?」

月「まあね、今の僕の好きは曜ちゃんと梨子ちゃんの半々で出来てるようなもんだから」

月「だからそうやって何でも急に割り込んできた彼女は、僕にとってはすっごーく嫌な女なんだ。それに嫌い半分好き半分って面白くない?」

月「そういう意味でも目が離せないんだよね。こんなに誰かを深くまで知りたいって思ったのは初めてなくらい」

月「それに曜ちゃんも、意外な一面たっぷり見せてくれるしね。正直今が一番充実してる」

千歌「……」ボケーッ

月「さ、僕たちも二人に追い付かないと。行こう千歌ちゃん」タッ

千歌「…………やっぱり従姉妹っていうだけあって、似てる。というか……」

千歌「梨子ちゃん、魔性の女すぎ……」

25: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:10:50.36 ID:oPW+2Axn

体育館


キャーーー!!


千歌「うわっ凄い歓声……もしかしてもう始まってたり?」

曜「してる」

千歌「ですよねー」

梨子「けど、まだそんなには時間が経ってないみたいよ、ほら。今歌ってるのが一曲目だから」

千歌「うーん、ならオッケーなのかな? ……あ! アレ!」

善子「この退屈セカイを渡るには 力を合わせなきゃ駄目よ」

千歌「おー! トップバッターは善子ちゃんですかー! いいねー!」

26: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:11:29.15 ID:oPW+2Axn
曜「なんか善子ちゃん、心なしかいつもより活き活きしてるように見える」

月「そうなの?」

梨子「うん、私もそんな風に見えるな……なんでだろ」

千歌「そんなの決まってるじゃん! 静真の学校祭が楽しいからだよ!」

梨子「ふふっ、千歌ちゃんはシンプルな分説得力あるわよね」

月「しかも静真のってちゃんと入れるあたりが分かってますなあ」

27: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:12:14.27 ID:oPW+2Axn
善子「じゃあ次! 二曲目いくわよ!」

ワッ

曜「……ほんと、凄いスクールアイドルになったよね」

月「えー、曜ちゃん今更それ言っちゃうの?」

曜「いや、人気とかの話じゃなくてさ」

曜「入部したときは……ううん、入部した後もルビィちゃんのためにって気持ちでずっとやってきたのに」

曜「今の善子ちゃんは誰かを理由にしないで、本当に好きでやってるんだなっていうのがこのライブ見て分かるし」

曜「だから成長を感じちゃってつい……ね」

千歌「まーた曜ちゃんが保護者みたいなこと言ってる」

梨子「私たちの中では善子ちゃんと一番付き合いがあるの曜ちゃんだものね」

28: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:12:53.81 ID:oPW+2Axn


ーー♪


千歌「でも今の話でいうなら、花丸ちゃんもそうかなあ」

梨子「花丸ちゃんが?」

千歌「最近鞠莉ちゃんから三人の進路のこととか、色々聞いたんだけど」

月「千歌ちゃんは相変わらず鞠莉ちゃんと仲いいねー」

千歌「マブダチですから! でね、最初に花丸ちゃんの進路聞いたときはビックリしたんだけど……でも」

花丸「だけど笑顔で明日の ちょっとしたお楽しみ考えてたら」

千歌「今の花丸ちゃん見たら、なんか分かる気がして」

29: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:13:52.06 ID:oPW+2Axn
月「へえー、結局どんな進路だったの?」

千歌「それは秘密!」

月「ええズルい! 自分は根掘り葉掘り聞く癖に!」

曜「あ、それは確かにある」

梨子「否定できないわね」

千歌「まさかの庇う人ゼロ!?」

梨子「だって……ねえ?」

曜「うん」

千歌「な、なにもそんな冷たい目で見なくても……大丈夫だってうん」

月「なにが」

千歌「卒業すれば嫌でも分かると思うから」

曜「意味深なこと言ってるけど、それ割と普通なんじゃ……」

千歌「うっ!」

30: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:14:34.42 ID:oPW+2Axn
梨子「卒業……か、確かに」

ルビィ『梨子ちゃん、ちょっといい?』

ダイヤ『貴女には伝えておこうと思いまして、私たちのこと』

ルビィ『梨子ちゃんあのね、私たち……』

梨子「そこで全部ハッキリするのかもね」

千歌「ほら、梨子ちゃんもこう言ってるし!」

曜・月「それならまあ」

千歌「なにこの落差」

31: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:15:20.76 ID:oPW+2Axn
梨子(多分全てが終わった後、私はあの姉妹に対して何もしてあげられないのかもしれない)

梨子(それでも)

花丸「ではラスト! ルビィちゃん!」

ルビィ「よろしくお願いします!!」ペコリ

梨子(今を見届けるくらいは出来る。だから)フリフリ

梨子「今はただ、気にせず応援すれば十分だと思うよ」

千歌「だよね! さっすが梨子ちゃん!」

梨子「当然でしょ? なにせ私……」

梨子「姉ですから」ニコ

32: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:16:17.90 ID:oPW+2Axn

ルビィ「……」

ルビィ(すごい)

ルビィ(こんなに大勢の人が来てくれて、そんな学校祭を……浦の星のみんなと静真高校のみんなで作り上げて)

ルビィ(Aqoursだけじゃ絶対に見られない景色がここにはあって……ああ、なんだろう)

ルビィ(今、とっても嬉しいなあ……私、浦の星に来て本当に良かった)

ルビィ(みんなに会えて本当に良かった)

ルビィ(だからこそ、次は絶対に優勝するよ。ラブライブ)

ルビィ「……」スゥー


記録とか、名誉とかじゃなくて

浦の星にとって一番の思い出を、私自身の手で残したいから


33: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:18:10.48 ID:oPW+2Axn


それから月日は流れ……12月

クリスマス、の少し前


34: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/15(土) 13:19:22.70 ID:oPW+2Axn

理亞「…………」

聖良「お待たせいたしました。どうぞ」

ここあ「おー! 美味そうーっ!」

矢澤母「ほんと、いいわねえ。ちょっと懐かしさのある感じ」

虎太郎「いただきます」

こころ「あ! 理亞さん戻ってきてたんですね! お邪魔してます!」

にこ「げっ……」

理亞「……なんでここにいるんですか」


辺り一面、真っ白に覆われた銀世界の中

最初で最後の雪物語が今、始まろうとしていた


41: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:45:35.13 ID:uldC97Yl


話は少し前に遡り……一週間前


42: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:47:22.46 ID:uldC97Yl

果南「クリスマスライブ?」

聖良「ええ、函館の方で。理亞からお誘いがありまして」

果南「理亞ちゃんから、それって去年と似たような感じのやつ?」

聖良「そうですね、以前と違うところと言えば今回のライブは北海道にいるスクールアイドルがメインといったところでしょうか」

ダイヤ「地元の方々で盛り上げるということですね、当日現地に赴けないのは残念ではありますが……」

果南「だね、私たち休み取れないし……配信はやるんだよね?」

聖良「はい、動画のほうでも視聴は可能なはずですよ」

果南「ならそっちで我慢するしかないね、ダイヤ」

ダイヤ「ええ、聖良さんは私たちのことはお気になさらず楽しんできてください」

聖良「もちろん、そのつもりですよ」

聖良「理亞にとっても、恐らくこのイベントが自分を思う存分表現できる……最後のライブになるでしょうから」

43: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:48:14.16 ID:uldC97Yl
善子「へえ、クリスマスライブねえ」

鞠莉「そう、今回は内浦と沼津の地元ライブを行う予定よ」

善子「はー成程、少しでも多く観光客を呼ぼうって魂胆ね」

鞠莉「That's right あちこち旅行するのもいいけど、故郷のこともちゃんと考えないとね」

花丸「思えば去年の夏から今年の夏まで他のイベントで大忙しだったもんね」

ルビィ「私は鞠莉さんに賛成。最後のイベントくらいは私たちが大好きなこの場所でやりたい」

鞠莉「二人もそれでオッケー?」

花丸「オッケーずら」

善子「寧ろ断る理由なんてないでしょ、オッケーよ」

鞠莉「決まりね! じゃあ今のうちにクリスマス用の曲、用意しておいてね」

44: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:49:10.86 ID:uldC97Yl
善子「そうだ、クリスマスライブといえば……向こうもやるのよね」

ルビィ「理亞ちゃん?」

善子「そうSaint Snow最後のライブだって触れ込みでさ、凄い注目されてるじゃない」

花丸「最後? 今回ので終わりにするってこと? ラブライブは?」

善子「それ以外でって意味でしょ? それでもここでやめちゃうんだとは思うけど」

鞠莉「ねえ、ルビィは何か気付いてることとかないの?」

ルビィ「私は……理亞ちゃんの言いたいこと、なんとなく分かる気がする」

45: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:50:00.85 ID:uldC97Yl
ルビィ「えっとね、多分だけどここ。今年も聖良さんが参加して新旧のSaint Snowが揃うって書いてあるでしょ?」

鞠莉「ええ、そうね」

ルビィ「去年はSaint Aqours Snowとしてのサプライズ枠だったから叶うことはなかったけど、今回は違う」

ルビィ「高校時代、理亞ちゃんと一緒にやってきたスクールアイドルの一人として聖良さんは参加して……それこそが理亞ちゃんが本当にやりたかったことなんだと思う」

鞠莉「聖良と二人だけでもう一度ってこと?」

ルビィ「それもあるけど、一番知ってほしいのはきっと」

ルビィ「これが鹿角理亞の集大成だってことなんじゃないかな」

ルビィ「二人で活動してた時も、三人で活動していた時も」

ルビィ「ここにくるまで積み重ねてきた経験とか応援してくれた北海道の人たちとか……その全てが理亞ちゃんにとっては大切なもので」

ルビィ「それを全部詰め込んだのが、このライブだと思うから」

46: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:51:10.67 ID:uldC97Yl


そして現在に至り……


ここあ「なので! そんな集大成のライブに現地参加出来るなんてもう嬉しさ爆発といいますか!」

こころ「はい! 私たちは幸せ者です!」

理亞「……そこに気付けるって、あなた達やっぱり鋭いのね」

こころあ「ファンですから!!」

理亞「それもう聞き飽きた」

にこ「ちょっと、私の妹たちを蔑ろにするつもり?」

理亞「誰もそうは言ってないでしょう」

にこ「どうだか」

矢澤母「あら、ずいぶんと仲がいいのねあなた達」

にこ・理亞「誰が!」

矢澤母「ふふっ、ほら」

理亞「……あ、ごめんなさい。つい……」

矢澤母「いいのよ、それより……あなたが噂の理亞ちゃん?」

47: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:52:11.33 ID:uldC97Yl
理亞「は、はい。どういう噂かは存じ上げませんが、多分その理亞で合ってます」

矢澤母「こころとここあ憧れのスクールアイドルで、しかも今一番有名なスクールアイドルなんでしょ? あなた」

理亞「あの二人がそう言ったんですか?」

矢澤母「いいえ、私はにこから聞いたのよ」

理亞「え?」

にこ「言ってない」

理亞「……」

矢澤母「うふふっ、まあとにかく……鹿角理亞さん」

矢澤母「いつも娘たちがお世話になっております」ペコリ

矢澤母「これからもあの子たちのこと、よろしくお願いね」ニコ

理亞「あ、はい。こちらこそ…よろしくお願いします」

にこ「相変わらずなにその返事」

理亞「……」ムッ

48: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:53:41.93 ID:uldC97Yl
矢澤母「ごめんね、これでもあなたのこと結構気にしてるのよ?」

にこ「してない」

理亞「私もそう思います」

矢澤母「あなた達……話で聞いてたよりもずっと面白いわねえ」クスクス

にこ・理亞「…………」


ここあ「聖良さん聖良さん! ちょっとお聞きしたいことが!!」

こころ「当時の理亞さんとのスクドル活動について詳しいお話を!!」

虎太郎「すみません、おかわりいいですか」

聖良「かしこまりました。少々お待ちくださいね」ニコ

49: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/18(火) 06:55:02.42 ID:uldC97Yl
理亞「相変わらずさわが……賑やかなご家族ですね」

にこ「ちょっと今騒がしいって言おうとしたでしょ」

理亞「……それはそうと、にこさん」

にこ「露骨に話を逸らしにきたわね」

理亞「どうしてあなた達が北海道に来てるんですか? まだ理由を聞いていなかったので」

にこ「ああそれね。まあ簡潔に、分かりやすく伝えると……」

『おめでとうございます! 特賞! 3泊4日一家温泉旅行が当たりましたー!!』カランカラン!!

にこ「…というわけ」

理亞「簡潔で分かりやすい説明ありがとうございます」

矢澤母「凄かったわよね、あの時のこころとここあのリアクション」

にこ「あまりにもテンションが高いものだから逆に冷静になれたわよね」

理亞(なんとなく想像がついてしまうのが嫌だ)

52: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:24:39.94 ID:cQ5LdVpJ
にこ「それよりママいいの? もう2時回ってるけど」

矢澤母「あらいけない、観光する時間が無くなっちゃうわ」

矢澤母「私は行くけど、ここに残る人いるー?」

虎太郎「僕はお母さんに付いてく、今日は天気もいいし、外の方が気持ちいい」

ここあ「はいはーい! 私も行くー!」

こころ「理亞さんの地元! つまり聖地! 行かないなんて選択肢ないわ!」

矢澤母「にこは?」

にこ「私はやめとく」

理亞「えっ」

にこ「なによ、文句あるの?」

理亞「いえ、別に?」

聖良「……」ウーン

53: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:25:28.42 ID:cQ5LdVpJ
ここあ「なんだ姉ちゃん行かないのー?」

こころ「きっとトップアイドル同士でしか話せないことがあるのよ」

ここあ「なるほど、納得!」

虎太郎「相変わらず凄いねその思考回路」

矢澤母「じゃあにこ以外の全員ね、すみませんお会計を」

聖良「お預かりします……すみません、先程の観光のことですが」

矢澤母「? はい」

聖良「宜しければ私がご案内しましょうか?」

理亞「ちょっ、姉様!?」

矢澤母「いいの? なら、お願いしちゃおうかしら」

ここあ「わっはー! 聖良さんのガイド付きとかやばっ!!」

こころ「もう感動で泣きそうです……!」

54: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:26:20.78 ID:cQ5LdVpJ
聖良「ふふっ、では皆さんこちらへ。理亞、しばらくお店頼むわね」

理亞「……まあ、慣れてるからいいけど」

虎太郎「しゅっぱーつ」

ここあ「おお、こたも案外ノッてるじゃん」

虎太郎「それなり」

こころ「虎太郎、嬉しいならもっと笑えばいいのに。せっかく可愛い顔してるんだから」

虎太郎「別に二人ほどじゃないし、あとその可愛いって評価がもうやだ」

ここあ「なんだよー、一番姉ちゃんに似てるのに贅沢なやつめ」

虎太郎「昔の話でしょ、今は多分……違うし」

こころ「手鏡あるけど、見る?」

虎太郎「…やめとく」

聖良「皆さん仲が宜しいんですね」

矢澤母「ええ、いつもあんな感じなの」

55: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:27:09.69 ID:cQ5LdVpJ


シーーーン……


にこ「ねえ」

理亞「なんですか」

にこ「私客なんだけど、もてなしなさいよ」

理亞「誰もいなくなった途端これですか……まさかとは思いますけど普段のストレスを解消するためにここに残ったわけじゃないですよね?」

にこ「んなわけないでしょ、私がそんな嫌味ったらしい女に見える?」

理亞「見えますね」

にこ「あんただって人のこと言えないじゃないの! 失礼ねほんとに!」

理亞「にこさんが態度を改めないからでしょう!?」

にこ「はあ!? あんたが態度を変えるほうが先でしょ!!」

56: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:27:53.98 ID:cQ5LdVpJ
理亞「嫌です! というかどうしてそうなるんですか! 勝手なことばかり言わないでください!」

にこ「少しは可愛げのあるところ見せなさいってだけでしょ!? ただでさえあんた生意気なんだから!」

理亞「なまっ……! にこさん、あなたという人はどうしてそう……!!」

にこ「理亞、言っとくけどあんた口に出す前に思いっきり顔に出てんのよ。だから余計に感じ悪いってなるわけ。分かる?」

理亞「理解しかねますね、あなたの難癖では? というよりご自分のことでは?」

にこ「へえー人の指摘をそういう風に切り捨てるわけ、実はあんたの心って氷より冷たいんじゃないの?」

にこ・理亞「~~~~っ……!!」バチバチ

57: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:28:54.90 ID:cQ5LdVpJ
理亞「ふんっ……それで、結局何の用でここに残ったんですか」

にこ「別に? ただ…一応聞いておこうと思ってね、現時点でのラブライブ優勝最有力候補の考えってやつを」

理亞「!」

にこ「一応、ね。今年度のラブライブ…あんたはどう見てるの?」

理亞「どう……とは?」

にこ「その肩に背負ってるものは重いか、軽いか、どっちなのって聞いてるのよ」

にこ「連覇したから三度目も楽勝? それともプレッシャーに圧し潰されそう?」

理亞「……」

にこ「どうなの」

理亞「どちらとも言えませんね」

58: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:30:13.78 ID:cQ5LdVpJ
にこ「ふうん、詳しく聞こうじゃない」

理亞「まず連覇したから余裕だろうという結論になるのがおかしいです。それはつまり、私たちが決勝に進むのは至極当然だと言ってるようなものじゃないですか」

にこ「実際決勝まで残ってるじゃない、今回も」

理亞「結果としてそうなったというだけです。そもそも前提として」

理亞「スクールアイドル人口が増え続けているこの状況で勝ち進んでいくのは、たとえ前回優勝者であったとしても容易ではありません」

理亞「実力者であったとしてもほんの僅かな、些細なことをきっかけに振り落とされてしまう可能性だってある」

理亞「それはにこさんだってよくご存じのはずです」

にこ「……で、二つ目は?」

59: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 10:31:12.73 ID:cQ5LdVpJ
理亞「プレッシャーを、感じていないと言えば嘘になります」

理亞「周囲からの期待が重荷に変わることは、今だってありますし……たまに揺さぶられることもある」

理亞「今年は最後だから尚更そう感じてしまうのかも……それでも」

理亞「今の私には支えてくれる仲間がいるから、支えたい友達がいるから……私は大丈夫」

にこ「……一人じゃないからって?」

理亞「はい」

にこ「…………」

理亞「だから答えはこうです、緊張なんてあって当たり前、連覇に拘るつもりもない」

理亞「いつだって私の目標は、みんなが憧れる最高のステージ……ラブライブの優勝」

理亞「それさえ叶えば、肩書きなんてどうでもいいです」

にこ「そう、なかなかいい答えね。及第点ってところかしら」

理亞「また偉そうに」

にこ「にこはあなたの大先輩よ、偉くて当然」

理亞「…………」

にこ「本気の冷めた目で見るのやめなさいよ」

60: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:12:06.87 ID:cQ5LdVpJ
理亞「はあ……それにしても」

にこ「今のため息は何よ、今のため息は」

理亞「まず聞いてくださいよ」

理亞「先程のにこさんのお母さんの発言には少し驚かされました」

理亞「高圧的ではありますけど、毎回私のことを正当に評価してくれますよね。にこさんは」

にこ「なーに勘違いしてるのか知らないけど、ママは私たちと違ってそんなにアイドル詳しくないんだから」

にこ「ちゃんと事実を事実として伝えないとライブが楽しめないじゃない」

理亞「あれ、言ってなかったんじゃないんですか?」

にこ「……性格悪っ」

理亞「その言葉、そっくりそのままお返しします」

61: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:14:19.34 ID:cQ5LdVpJ
にこ「とにかく、ママはSaint Snowのライブ見るの初めてなんだから期待を裏切ったら承知しないわよ」

理亞「もちろん全力でやらせていただきますよ。いい人ですし、来てくれた以上は満足してもらいたいですからね」

にこ「あっそ、流石に今のは愚問だったかしらね」

理亞「ただ、にこさんのお母さんを見て一つ、どうしても気になることがあって」

にこ「? 何よ、気になることって」

理亞「いえ…ライブとは全く関係のないことなんですが……にこさんのお母さんって美人ですよね?」

にこ「まあ綺麗っちゃ綺麗ね」

理亞「それに顔立ちも家族全員そっくりですよね?」

にこ「そうね。っていうかさっきから質問がわけわかんないんだけど」

理亞「じゃあ、質問をやめて正直な感想を言ってもいいですか?」

にこ「…絶対失礼なことなんでしょうけど言ってみなさい」

62: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:15:06.30 ID:cQ5LdVpJ
理亞「なんというか、あの二人を見ても感じていたことなんですが」

理亞「にこさんって、顔以外はご家族とあまり似てらっしゃらないんですね。その、スタイルの良さとか」

にこ「ここに来ていっそう舐めた口きくようになったわね、あんた」

理亞「これは嫌味でなく純粋な疑問なんですが、どうしてにこさんだけ"そう"なんですか?」

にこ「貧相!? 貧相って言った今!?」ガタッ

理亞「言ってませんよ!」

にこ「どっちにしろ同じでしょ!? あんたが言いたいことなんて!!」

63: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:17:16.68 ID:cQ5LdVpJ
にこ「あーもう我慢の限界だわ!! ちょっと表に出なさい!」

理亞「待ってください! いつ我慢したっていうんですかにこさんが!!」

にこ「今この瞬間まで耐えてたっつーの! あんたとの会話で溜まるストレスに!」

理亞「自分から残っておいて私のせいにするんですか!? 大人げないにも程があるでしょあなた!!」

にこ「ほんっとムカつく~!!」

理亞「そっちだって!!」

ガララッ

ここあ「理亞さーん!姉ちゃーん!お土産買ってきたよー!」

こころ「お姉様お姉様! やっぱり北海道の冬は違います! 真っ白な雪が凄く雰囲気に合っていて……あれ?」

ここあ「二人とも、何して……」

にこ・理亞「にっこにっこにー! あなたのハートににこにこにー!」

にこ・理亞「笑顔届ける矢澤にこにこ~! 冬空も~……にこっ!!」

64: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:18:49.73 ID:cQ5LdVpJ
ここあ「おぉーーーっ!! すっごい息ピッタリ!!」パチパチパチパチ!!!

こころ「理亞さんも! 完璧にマスターしたんですね! 流石です!!」パチパチパチパチ!!!

ここあ「家で特訓させた甲斐があったね、こころ!」

こころ「ええここあ! やっぱりお姉様と理亞さんは凄い!!」

キャッキャ

聖良「り、理亞……変わった、わね」

矢澤母「あらあら、やっぱり仲が良いのねー」

虎太郎「……変人」ボソッ

65: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:20:51.62 ID:cQ5LdVpJ
にこ(な、なんとか誤魔化せたわね……)

理亞(流石にあんな姿を二人に見られるわけにはいきませんからね)

にこ(癪だけど同感。こころたちの気持ちを踏みにじるのだけは断固阻止しないと……私たちにだけピュアすぎるのよあの子たち)

理亞(それはにこさんが彼女たちの前でだけずっといい恰好をしてきたからでは?)

にこ(理亞のほうこそ変に格好つけてきたんじゃないの? 先輩だからって見栄張って)

理亞(はあ!?)

にこ(なによ!)

ここあ「姉ちゃん、理亞さん! もう一回!」

こころ「もう一回だけお願いします!!」

にこ・理亞「にっこにっこにー!」

虎太郎(面倒くさい人たち)

66: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/20(木) 18:28:55.64 ID:cQ5LdVpJ
ここまでです

71: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:46:26.22 ID:hWravDLA


翌日


函館聖泉女子高等学院

体育館





理亞「ふぅ……今の曲で一通り終わったみたいね。それじゃあ」

理亞「そこまで! 二人ともお疲れ」

黒髪「ねえ理亞ちゃん! 今のリハーサルこれまでで一番良くなかった!?」

茶髪「わかる! 本番でも全然通用しそうな感じしたよね!」

理亞「そうね、私も今のは良かったと思う」

理亞「実際にライブが終わるまで気は抜けないけど、これなら変に気後れすることもないんじゃない?」

黒髪「よかったぁ~…聖良さんに見劣りしたらどうしようかと思ってたからさー」

茶髪「私もー。去年のクリスマスや合宿の指導で分かったけどやっぱりあの人凄いもん」

理亞「別にそこまで気にすることないのに」

72: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:47:03.83 ID:hWravDLA
黒髪「いやいや理亞ちゃんはそうかもしれないけどさ」

茶髪「私たちからすれば二人は年季が違うし、まだ敵わないかも~……とか」

理亞「……ちょっと」キッ

黒髪(あ、やば……)

理亞「あなた達、今からそんな後ろ向きでどうするの」

茶髪(う、もしかしてさっきので理亞ちゃん怒らせちゃった……?)

理亞「……はぁーっ、どうして二人とも姉様と比べるの」

理亞「それじゃ何も知らない外野の人と変わらない、お願いだからもっと自信を持って」

理亞「それともラブライブで優勝出来たのは全部私のおかげとか言うつもり? 冗談じゃないわよ」

黒髪・茶髪「……ごめん」

73: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:47:33.78 ID:hWravDLA
理亞「……確かに姉様は凄い。だけど私は」

理亞「今の二人が姉様に劣っているとは思わない」

黒髪・茶髪「!!」

理亞「寧ろ尊敬してるの、弱音を吐いても妥協せずにずっと頑張ってきたのを……私は知ってるから」

理亞「それを沢山の人たちに知ってほしいの、証明したいの」

理亞「姉様も二人も、私にとっては同じくらい凄い人なんだって」

理亞「だってそうじゃなかったら今ここに……Saint Snowにいられるわけがないでしょ」

理亞「私はこのグループをワンマンチームにしたことも、するつもりだってないし……あなた達がいないと駄目なの」

黒髪・茶髪「…………」

理亞「だから……って」

黒髪・茶髪「」ボロボロ

理亞「ちょ……え、なんで急に泣いてるの!?」

74: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:48:03.91 ID:hWravDLA
黒髪「だって……」ポロポロ

理亞「もしかして、その……少しきつく言い過ぎたとか」

茶髪「ううん、それはいつも通りだから…」グスッ

理亞「い、いや、それはそれで複雑だけど……」

黒髪「だって、理亞ちゃんが私たちのことをそんな風に思ってくれてたの……知らなかったから、嬉しくて……」

茶髪「私たち…今でも心のどこかで、理亞ちゃんにとっての聖良さんになれないんじゃないかとか……思ってたから」

理亞(この二人そんなこと考え……いや、これまでのことを考えると、そうなるのも仕方ないかも……しれない)

75: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:48:38.20 ID:hWravDLA
にこ『自分の功績を客観的に分析するくらいのことはしなさいよ』

理亞(腹が立つけどその通りだ……悔しい、よりによってあの人から学びを得るなんて)

理亞「……だったらもう大丈夫でしょ? 私の思いは伝わったんだし」

理亞「二人はさっさとその考え捨てて、堂々とすること。いい?」

茶髪「ほらまたきつい言い方してる」

理亞「うっ……ご、ごめん」

黒髪「でも……ふふっ、それが理亞ちゃんだもんね」

茶髪「なら私たちも理亞ちゃんに倣って、自信満々でいきますか」

理亞「私?」

76: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:49:14.89 ID:hWravDLA
黒髪「そりゃあ理亞ちゃんは私たちの憧れだからね!」

理亞「同級生でしょ」

茶髪「同級生でも!」

理亞「……全く、どうして今になって次から次へと……慕われるのは、慣れてないのに」ボソッ

黒髪「どうしたの理亞ちゃん、何か言った?」

理亞「なんでもない、帰る」

理亞「姉様とも合わせておかないといけないし」

黒髪「そっか、頑張ってね!」

茶髪「私たちも明日に向けて気合い入れるから!」

理亞「……うん」クス

理亞「期待してる」

77: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:50:00.83 ID:hWravDLA

ここあ「えーっ! じゃあ聖良さん、東京のほうにスマホ忘れてきちゃったんですか?」

聖良「はい、お恥ずかしいことに……ついうっかりしまして」

にこ「意外、あなたそこら辺しっかりしてそうなのに」

ここあ「ねー」

聖良「おそらく気の緩みだと思います。まあその、色々あったので」

ここあ「でも聖良さんにもそんな一面があるなんて、なんだか親近感出ますね!」

こころ「そうね、ちょっと身近に感じられた気分」

ここあ「理亞さんはまだちょっと隙がないもんなー、そこがかっこいいんだけど」

78: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:50:46.12 ID:hWravDLA
聖良「ふふっ、お二人は本当に理亞のことを慕っているのですね」

こころあ「はい! それはもう!」

聖良(……そっか、今の理亞には一緒に支えてくれる仲間も、大事に思ってくれる友達も、尊敬してくれる後輩もいるのね)

聖良(それに……)チラッ

にこ「? ……なに? 私の顔に何かついてる?」

聖良「……いいえ、私も姉として負けないように頑張らなければと思っていただけですから」

にこ「ふーん」

ここあ「あっ! 噂をすれば!」

こころ「理亞さーん! こんにちはー!」

79: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:51:16.39 ID:hWravDLA
理亞「あなた達また来てたの……」

こころ「聖良さんともっとお話がしたいなと思いまして!」

ここあ「あとここの店の料理は美味しいですからね!」

理亞「それは、ありがとう」

にこ「ほらこころ、ここあ、いい加減に戻るわよ」

ここあ「えーっ」

こころ「お姉様、まだ全然時間に余裕ありますよ? もうちょっとだけなら……」

にこ「駄目よ」

80: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:52:03.72 ID:hWravDLA
理亞「…ちょっとにこさん、私が来た途端に帰るっていうのもあんまりじゃないですか?」

ここあ「お、理亞さん良いこと言う!」

にこ「はあ? あんた今から聖良とリハやるんじゃないの? 出来るの、私たちがいて」

理亞「!」

ここあ「あ、成程そういうことね!」

こころ「流石お姉様! そのことにすぐ気付けるなんて!」

にこ「分かったら早く帰るわよ、邪魔したわね」

ここあ「はーい、理亞さんまた明日!」

こころ「クリスマスライブで待ってますね! 応援しますから!」

81: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:52:41.38 ID:hWravDLA
理亞「……」

聖良「いい人ね、にこさん」

理亞「違う、いい人ではない」

理亞「ただ、スクールアイドルに対して真剣なだけ」

聖良「そうかしら? 私はそれだけじゃないと思うけど」

理亞「私は思わない、それより……早く始めよう」

理亞「せっかくの時間が無駄になる」

聖良「…そうね、私もSaint Snowの一員として頑張らないといけないもの」クス

理亞「うん、でもその笑いはなに」

聖良「なんでもないのよ、なんでも」

82: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:53:43.98 ID:hWravDLA


========





聖良「……はぁっ、だいぶ掴めてきたわね」

理亞「姉様、そろそろ二人での練習は終わりにしよう。もう遅い」

聖良「もう? まだちょっと、納得いかないところがあるんだけど」

理亞「なら明日早めに起きてまた合わせればいい、今でもほとんど完成してるし、それで十分間に合うでしょ」

聖良「そうね。でももう少しだけ…一人でやってみるわ」

聖良「今のうちに感覚染みつかせておかないと」

理亞(……まあ姉様なら、無理しないだろうし大丈夫か)

理亞「わかった。じゃあ私先に休んでるね」

聖良「ええ、おやすみなさい」

聖良「……」フゥーッ


タンッ  タンッ  タタンッ


……





83: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:54:45.64 ID:hWravDLA


そして

12月24日、当日


早朝


理亞「姉様、姉様?」ユサユサ

聖良「…………」

理亞「起きない……はあーっ、だから言ったのに」

理亞「まだ時間あるから、いいんだけど」

「ごめんくださーい!」

「理亞ちゃーん! いますかー?」

理亞「! この声……」スタスタ

84: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:55:26.59 ID:hWravDLA

ガラッ

理亞「あなた達……」

黒髪「あっ、おはよう理亞ちゃん」

理亞「おはよう。早いのね」

茶髪「うん、ごめんね……こんな早い時間から押しかけるのは、迷惑かもとは思ったんだけど」

理亞「それは大丈夫だけど……何かあったの?」

黒髪「本番前にちょっと合わせておきたいなって」

茶髪「あとは体を動かしてちょっとは緊張をほぐしたいっていうか」

黒髪「そうそう、なんか練習しておかないと落ち着かないんだよね……部活に染まりすぎたのかも」アハハ

85: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:55:54.62 ID:hWravDLA
理亞「……まあ、二年間ずっと私のメニューに付いてきた二人なら、特別変でもないかもしれないけど」

理亞(本当に、最初の頃と比べて変わったわね……)

茶髪「だめかな?」

理亞「ううん、私も練習のために早起きしたから。一緒にやりましょう」

茶髪「やった!」

黒髪「ほらね、やっぱり理亞ちゃんは理亞ちゃんでしょ?」

茶髪「だね」

理亞「それどういう意味?」

黒髪・茶髪「真剣ってこと!」

理亞「……そう」フフッ

86: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:56:43.84 ID:hWravDLA

ここあ「くぅー! ついに来たねライブ当日!」

こころ「ああもう、今からドキドキするわ…!」

こころあ「Saint Snowのラストクリスマス!!」

キャッキャ

矢澤母「じゃあお母さん、理亞ちゃんのお店に挨拶しに行ってくるから。にこお願いね」

にこ「わかってる。ママこそ集合時間に遅れないでよ? すぐ話すのに夢中になるんだから」

矢澤母「はいはい分かりました。何かあったら連絡して……ああそれと」

にこ「?」

矢澤母「もしかしたら今日、荒れるかもしれないって天気予報で言ってたから気を付けてね」

虎太郎「……」

87: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:57:13.23 ID:hWravDLA
にこ「え? こんなに晴れてるのに? 雪だって降ってないじゃない」

矢澤母「今はそうだけど、絶対に無いとも言い切れないでしょ?」

にこ「……まあ、一応頭には入れておくけど」

矢澤母「頼むわね。さてと、そろそろ」

虎太郎「ねえお母さん、その前にあと一つだけいい?」

虎太郎「ホテルのカードキー、借りたいんだけど」

にこ「虎太郎?」

矢澤母「いいけど、忘れ物?」

虎太郎「…………どうだろう」

虎太郎「多分、念のため」

88: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:58:02.47 ID:hWravDLA


────それから少し経って

昼過ぎ


聖良「…………うぅん」モゾッ

聖良「時計……もうこんな時間? じゃあ皆とっくに出た、のかしら」ボーッ

聖良「私も、早く支度しないと……」

ズキッ

聖良「! ぃた……頭が、くらくらする」

聖良(それに、なんだか)

聖良「体も、熱い……ような……」フラ…

ガンッ!

89: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:58:37.21 ID:hWravDLA
聖良「……痛ぅ……なに、足も……?」

聖良「はあっ……はあ……んくっ」

聖良(あ、れ……私、もしかして……)

聖良(……だけど)

聖良「いか、ないと」ヨロッ

聖良「……みん、な……まっ、て」

聖良「……り……あ…………」


ドサッ


90: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 13:59:31.22 ID:hWravDLA

矢澤母「あれ、おかしいわね……誰もいないのかしら?」

矢澤母「閉店、でも昨日聞いた限りだと中に聖良ちゃんがいるはずだし……」ウーン

矢澤母「それに、戸は開いてるのよね……すみませーん、聖良ちゃん? いる?」

矢澤母「少し気になったから入っちゃったんだけど、迷惑なら今すぐ出て…………!?」

聖良「」

矢澤母「ちょっと聖良ちゃんどうしたの!? 大丈夫!? しっかりして!」

矢澤母「聖良ちゃんっ!!」


ブーッ  ブーッ


─ 着信 にこ ─


91: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:00:07.52 ID:hWravDLA
にこ「……」

虎太郎「どうだった?」

にこ「反応なし。全く、今日はライブが始まるまではみんなでお店回りって決めてたのに」

虎太郎「お母さんがこういうのに遅れるのって珍しいよね」

虎太郎「理亞さんたちのお店への挨拶ってそんなに長くなるものなのかな」

にこ「大方世間話に花を咲かせて盛り上がっているのよ、こっちに気付きもしないで」フンッ

虎太郎「なに拗ねてるの」

にこ「拗ねてないわよ! もういいわ、私たちだけ先に行きましょ」

虎太郎「はいはい」

にこ「ああもう、本当に何やってるんだか」

92: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:00:40.50 ID:hWravDLA
聖良「はぁ……はぁ……っ……」

矢澤母「! 凄い熱……! すぐに寝かさないと」グイッ

矢澤母「あとは冷やすものとお薬を……ちょっと待っててね買いに行ってくるから」

聖良「……ま、待って…ください」

矢澤母「! 聖良ちゃん」

聖良「その、奥の棚に……ある程度、揃っています……それを」

矢澤母「分かったわ、だから大人しくしていて」

ガタッ

矢澤母「はいお薬。まずはそれを飲んで、ゆっくりね」

聖良「はい……」ゴクッ

93: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:01:23.53 ID:hWravDLA


…………


矢澤母「どう? 具合は」

聖良「……少しだけ、気が楽になりました」

聖良「ありがとうございます」

矢澤母「そう、よかったわ」ホッ

聖良「すみません……お客様なのに、こんな」ケホッ

矢澤母「気にしないで。それより聖良ちゃん、お家の人はいつ帰ってくるの?」

聖良「夕方には、おそらく戻ってくるかと。家で配信を見ると言っていましたし」

矢澤母「夕方……厳しいわね、間に合うかしら」

聖良「いえ、矢澤さんは私のことは気にせず……会場に向かってください」

矢澤母「…聖良ちゃんはどうするの」

聖良「私も、後で追います」

94: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:01:50.09 ID:hWravDLA
矢澤母「無茶よ! その体で! まだ完全に治ってないのよ!」

聖良「分かってます! それに…こうなったのも全部、私の甘さが招いたことだということも……!」

聖良「油断、ここに来てからずっと油断……! 私は嬉しさのあまりつい浮かれて……そのせいで!」

聖良「こんな、体調管理すら碌に出来ていなかったなんて、自分の意識の低さに腸が煮えくり返りそうです! しかも……!」

聖良「そのうえでなお無理をするというのだから、今の私は愚劣を極めているのでしょう……」

聖良「こんなに自分自身を不甲斐ないと感じたのは、生まれて初めてです……っ!!」

矢澤母「聖良ちゃん……」

95: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:02:33.88 ID:hWravDLA
聖良「参加者の方々、そして観客の皆様に罵られても仕方ありません、ですが……!」

聖良「それでも、行かないと…! 今回のライブだけは絶対に……失敗で終わらせたくない……!!」

矢澤母「……なら尚更、私がついていないと駄目ね」

聖良「そんなっ大丈夫です!」

ガシッ

聖良「っ!?」

矢澤母「いいから言うことを聞きなさい。いい? 聖良ちゃんは時間いっぱいまで休んで少しでも回復すること」

矢澤母「移動の問題なら私がタクシーでもなんでも呼んでどうにかするから。分かった?」

聖良「でも……」

矢澤母「分かったわね?」

聖良「……すみません、お手数を、お掛けします」

96: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:03:18.16 ID:hWravDLA

にこ「……ねえ、私たちとっくに会場着いてるんだけど」ピクピク

虎太郎「いよいよ来なかったね、お母さん」

にこ「……なんか流石にここまでくると、ちょっと勘繰りたくなるわね」

にこ「虎太郎、何か心当たりとか……」

ブーッ  ブーッ

にこ「?」

虎太郎「にこにー着信、お母さんからじゃない?」

にこ「……みたいね、散々待たせて、文句言ってやるわ」スッ

97: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:03:48.07 ID:hWravDLA
にこ「もしもし? ママ何やってるのよ! もう入場始まって……? いやライブまではまだ時間あるけど……」

にこ「───!? わかった、私から言っておく」

ここあ「あれ、ねえなんか……ちょっと曇ってきてない?」

虎太郎「!」

こころ「そうね、雪も降ってきたし……あれ、お姉様?」

にこ「」ダッ

ここあ「ちょっ、姉ちゃん急にどうしたの!!」

にこ「いいからついてきなさい! 急いで!」

98: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:04:16.58 ID:hWravDLA
こころ「何かあったのかしら? ここあ、とにかく私たちも……」

虎太郎「」クルッ

ここあ「えっ、こた!? どこ行くの姉ちゃんあっちだって!!」

虎太郎「野暮用! すぐ戻るから!!」タッタッタ

ここあ「ーーっなんなの!? あっちもこっちもいきなり!」

こころ「ここあ早く! お姉様見失っちゃう!」

ここあ「分かってるよ! もう!」ダッ

99: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:04:54.88 ID:hWravDLA


会場、控え室


黒髪「理亞ちゃん、友達から雪が結構降ってきたって」

茶髪「もしかしたら今日の予報通りになっちゃうかも」

理亞「そう、まだ来てない人たちは大丈夫かしら」

黒髪「出発は当初の予定通りみたいだけど、ちょっと厳しいかもしれないね……」

理亞「……まだ開演まで時間はある、ぎりぎりまで待とう」

茶髪「うん」

100: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:05:48.29 ID:hWravDLA

バンッ!

にこ「理亞! いるんでしょ!?」

理亞「え、にこさん……!?」

黒髪「ちょ、ええっ!? にこさんって」

茶髪「あのμ'sの矢澤にこさん!?」

「え、うそ?」

「本物……?」

ザワザワ……

理亞「なっ、こんなところまで来て何やってるんですか! ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」

にこ「聖良が倒れた!!」

理亞「──!?」

にこ「十分関係あるでしょ! これで!」

101: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:07:29.03 ID:hWravDLA
理亞「姉様が、倒れたって……じゃあ、今日の朝起きなかったのって……!」

にこ「聖良の容態だけど、ひとまずは大丈夫。ママが看病してるから今はだいぶ楽になってるって」

にこ「もう少し休ませたら会場に連れていくみたいよ、聖良がそう頼んだらしいわ」

理亞「そう、ですか……すみません、助かりました。後でにこさんのお母さんにもお礼を」

にこ「何安心しきってるのよ、まだ大事に至らなかったってだけなのよ、あんた外見た!?」

にこ「そんな呑気なこと言ってられる状況じゃないわよこれ!」

理亞「まさか……」

にこ「…さっきよりもっと酷くなってるのよ、雪が」

102: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:08:00.17 ID:hWravDLA
こころ「お姉様! 言われた通り周りの様子見てきました!」

ここあ「やばいよ! 道路めっちゃ混んでる! 信号青になっても全然進まないし!」

にこ「やっぱり……」

理亞「! 参加者を乗せたバスは!?」

黒髪「そ、それが……」

茶髪「この大雪で渋滞していて間に合いそうにないって……今」

理亞「はあ!!?」

黒髪・茶髪「!!」ビクッ

理亞「!……あ……ごめん」

103: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:09:33.00 ID:hWravDLA
理亞「……予定していた時間より遅れるってだけで、会場には向かってるのよね?」

黒髪「う、うん。速報でそんなに長く雪は続かないって出てるから…事故とかそういう大きな問題にはならないと思うけど」

茶髪「それでもここから到着するのに一時間はかかるかもしれないらしくて……」

理亞「一時間……っ……もう少しで始まるっていうのに……!!」

理亞(それにこの調子だと……姉様も……)

理亞「今いるのは私たち三人と……他グループ三組。まだ半分しか集まってない……しかも」

理亞「序盤を担当するグループが全部渋滞に捕まって……何よこれ、なんでっ……!」

こころあ「理亞さん……」

にこ「…………」

104: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:10:18.75 ID:hWravDLA
「あ、あのじゃあ今いる私たちが代わりに出て……」

「でも、その後はどうするの? もし私たちが歌い終わった後もまだ来てなかったら」

「それはっ……!」

「もうすぐ開始時間だよ!? 後のことより今なんとかするべきじゃないの!?」

黒髪「ま、待ってみんな! ちょっと落ち着いて!」

理亞(みんな焦ってる……しっかりしなさい、主催者は私だ、私がみんなをまとめないと……でもっ)

理亞「一体……どうすれば……!!」ギリッ

にこ「なに下向いてるのよ、情けない」

にこ「ちゃんと顔を上げなさい」

理亞「!!」バッ

にこ「……なんて顔してるのよ。あんたらしくもない」

105: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:11:06.12 ID:hWravDLA
理亞「……だって」

にこ「あーほんっとにもう……なんだってそうあんたは」

にこ「私に昔のことを思い出させるのよ」

理亞「え…?」

にこ「……」フーッ

にこ「こころ、ここあ! 即興!!」

こころあ「─! はい!!」タッ

「あ、ちょっと!!どこ行くの!」

こころあ「すみません失礼します!!」

理亞「にこさん……? 何を……」

にこ「理亞。前にあんたに言いそびれたことを、今教えてあげる」

106: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:12:07.15 ID:hWravDLA
にこ「いい、アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの」

にこ「ねえ理亞……今、この会場のどこに笑顔があるっていうの? ステージの向こう側で待ってる大勢のお客さんが今」

にこ「何を思っているのか……考えたことはある?」

理亞「それは……」

にこ「皆、このよく分からない状況に困惑しているんじゃないの? 不安になってるんじゃないの?」

にこ「今のあんた達と同じように」

理亞「! ……あ」

107: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:12:47.16 ID:hWravDLA
にこ「予期せぬアクシデント、それは確かにあるわよ。でもね……それで納得出来るかどうかはまた別の話」

にこ「結局はこっち側の都合を押し付けているだけでしかないんだから、向こうはわざわざ都合を合わせてくれてるっていうのによ?」

にこ「だったらあんた達もそれに見合うだけの誠意を示しなさいよ、どんなときでも、本当に真剣だって言うのなら」

にこ「たとえ不測の事態が起きてもお客様のために最善を尽くすの、それがプロっていうものでしょ? 違う?」

にこ「まあ、あんた達はスクールアイドルだから正確に言えばプロじゃないけど……でもね」

にこ「そんな屁理屈は今どうだっていいの。だってそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

にこ「やらなきゃ。ここにいるのはあなた達しかいないんだから」

にこ「全員、俯いてる余裕なんかないはずよ」

「…………」

にこ「全力で考えなさい。今、どうするべきなのかを」

にこ「心配しなくてもあんたたちが立て直すまでの時間は、私たちがちゃんと稼いであげるから」

108: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:13:24.77 ID:hWravDLA


ワーーーーッ!!


「「「!!?」」」

理亞「なに……? 歓声……ステージの方から……!?」

ここあ「いやーそうなんですよ! 私たちあの最終予選を生で見てまして!!」

こころ「雪といえばスノハレっていう人どれくらいいますかー? 宜しければ手を挙げてくださーい!!」

こころ「わ! 結構いる、やっぱりμ's 強いですねー!」

ここあ「東京であんなに雪が降るなんて珍しいから、印象に残ってる人も多いんでしょうね!」

こころ「ですねー、ですが皆さんご安心ください! 今から始まるライブもそれに負けないくらい印象深いものになりますから!」

ここあ「試しにちょっと聞いてみましょう! 今日のライブに期待してる人ー! 拍手ーーー!!」

109: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/23(日) 14:14:19.16 ID:hWravDLA


パチパチパチパチパチパチパチ!!!!


ここあ「わはーっ!凄い拍手! 皆さんありがとうございます!!」

こころ「たくさんの方が楽しみにされてるんですね! 私たちもなんです!」

理亞「あの子たち……」

にこ「大雪で開演遅れて会場冷え冷え、主役は熱で倒れて途中でリタイア? ……あり得ないでしょ」

にこ「そんなの絶対認めない、折角ここまで駆け付けに来てくれたファンを舐めるんじゃないわよ」

にこ「理亞、続けるわよね? 何が何でも持ちこたえるわよ、私たちで」

理亞「─!!」

にこ「このライブ、諦めきれないでしょうが!」

116: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:21:08.31 ID:XeYqqhh9
理亞「にこさん……」

理亞(そうだ、諦めない。ここにきて……諦めきれるわけがない!)

理亞(考えるんだ、早く、次の一手を……苦し紛れの牛歩戦術じゃなくて、ちゃんと観客の人たちを楽しませられるやり方を……!)

にこ「理亞、いつまでそうして黙ってるつもりよ」

にこ「あんた本当に分かってるの!? 私は部外者なのよ!」

理亞「!」

理亞(そうか……! いくらにこさんが発破をかけても私が締めないことには)

にこ「この空気を変えたいなら早く決断しなさい! あんたが始めたことでしょ!」

理亞(……どうしてこの人は、肝心なときに限って……!!)

理亞(だから私は、あなたのことが苦手なんだ!)

理亞(いつもは大人げなくて嫌な人なのに、いざという時だけ頼りになってしまうから!)

117: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:21:54.71 ID:XeYqqhh9
理亞「~っ!ああもう分かってます! 本当に当たりがきつい人ですねあなたは!」

にこ「だからあんたに言われたくないのよ! 調子取り戻したんならさっさと私の妹たちにいいとこ見せに行きなさい!」

理亞「実力的に心配いらなくても待ってるだろうからって!?」

にこ「そういうこと! ちゃんと分かってるじゃないの!」

黒髪(あれ、なんか怒ってるように見えるけど……理亞ちゃんもしかして、落ち着き取り戻した?)

茶髪(ていうかいがみ合いながらしっかり意思疎通出来てるのも……色々意外というか)

理亞「黒髪、茶髪! ぼさっとしてないで二人ともこっち来て! 計画を伝える!」

黒髪・茶髪「は、はい!」

118: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:22:50.33 ID:XeYqqhh9
理亞「いい? まずトップバッターは私たちが出る、観客のボルテージを上げるためにも盛り上がる曲を二つ、続けて歌うから」

理亞「みんなはその間に出る順番とリストを作り直して、いい?」

「わ、わかった!」

理亞「曲が終わった後、私がしばらくMCに回る」

理亞「そうしたら二人は今ステージにいるあの姉妹と一緒にここへ戻ってみんなと最終調整」

理亞「そこで決まったもので進行するから、判断は慎重かつ迅速に。途中でグループが戻ってきたら状況に応じて適宜判断」

理亞「臨機応変に対応していくわ。とにかく、上手くいくかどうかは別として最低でもここまでは絶対にやっておいて」

「…………!!」コクッ

理亞「お願いね。このライブを成功させるには私だけじゃない……みんなの力が必要だから」

黒髪「ねえ理亞ちゃん、何をするかは分かったけど、向こうにいるこころちゃん達にはどう伝える?」

理亞「彼女たちへの合図は私が送る。大丈夫、あの二人なら絶対私の意図を理解してくれるはず」

茶髪「オッケー、じゃあ私たちは早く準備の方に移らないとね」

理亞「ええ、始めるわよ」

119: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:23:37.65 ID:XeYqqhh9

理亞「…………」コソッ

理亞(横目で気付ける場所は大体この辺り、あとは……二人が察してアクションを起こすように促す)

理亞「……」フゥーッ

理亞(……考えるんだ)

理亞(まずは彼女たちがどんなタイプのスクールアイドルなのか、もう一度分析して)

ツバサ『常日頃から"撮られる"ことを意識していない限り、ああはならないでしょうね』

理亞(そう、合宿で出会った時からコンセプトは変わらず一貫している)

理亞(人一倍アイドル意識の強いあの姉妹は、常にどう見られるかを想定して動いている。それに)

理亞(さっきの二つ返事からも分かることだけどあの子たち、純粋ながらも頭の回転が非常に速い)

理亞(次に自分たちがどうするべきかを瞬時に察知して、即座に行動に移せる感じ)

理亞(つまり、そのことに長けたあの子たちが今ここで一番反応しやすいのは)

理亞(二人が温めている会場の空気とは真逆の……明確な敵意!)キッ

120: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:24:27.44 ID:XeYqqhh9

こころ(! この後ろからのプレッシャー……理亞さん? でも、今この状況で?)

ここあ(だとしたら考えられるのは、何か私たちに伝えたいことがあるってことなの? だって)

こころあ(そうじゃなかったら、わざわざ私たちに刺すような視線を向けたりしない)

こころ「えーではここで私、矢澤こころと矢澤ここあについて一つ」

こころ「日々スクールアイドル活動をしている私たちですが、ライブを披露するための一式は、二人で一緒に作り上げることが多いです」

ここあ「衣装に振り付け、作曲も二人で考えますし……あ、でも」

ここあ「作詞に関してはテーマ毎で完全に分けたりしますね、たとえば私は応援系の歌詞を作るのは得意なんですけど」

ここあ「ラブソング、恋愛系についてはこころのほうに任せっきりで」チラッ

こころ「(了解)そうなんですよ、ここあったら女子高生だっていうのにそれ系になるとてんで疎くて……」

121: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:25:35.95 ID:XeYqqhh9
こころ「それで私が担当してるんですけど、たまに思い浮かばなくなることもあったりで……割と苦労してるといいますか」

ここあ「分かる分かる、得意分野でもなかなか上手くいかないときあるよねー」

こころ「ただ、そういうときは色々やってみたりするんですよね雰囲気づくりとか、形から入る…みたいな、よく言うじゃない?」

ここあ「へえ~、雰囲気づくりってどんな?」

こころ「そうねえ実際にやったものだと……今ここが帰り道だとしてね?」クルッ

理亞(来た…っ!)

こころ「こうやって歩いて行って……」スタスタ

理亞(あと二分、間は10秒。その後チェンジ、私上がりのあなた達下がり、今からまとめに入って)スッスッス

こころ「! ……で、不意にちょっと寂し気な表情をして振り返ってみるとか」

オォー……

122: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/26(水) 22:26:14.17 ID:XeYqqhh9
ここあ「おおー今のはなかなか…皆さんもグッときたみたいですよ?」

こころ「あ、あはは……流石にプライベートの一部分を公開するのはちょっと恥ずかしいですね……」テレッ

ここあ「そっちかい。それでやってみて何か手応えとかは?」

こころ「ええ、二分くらい続けてたらピンと思い浮かんで、そこからは結構スラスラと書けたわね」

こころ「別のパターンのものも思いついたからノート変えてね、上下巻みたいな感じでまとめて」

ここあ「凝ってるなあー」

理亞(……正直、まだ認識が甘かったのかもしれない)

理亞(凄いわね、この子たち)

125: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:03:18.67 ID:gz/2WDIP
黒髪「理亞ちゃん! こっちはいつでも行けるよ!」

理亞「私のほうも問題ない! 二分後に出るからそれまでここで待機!」

茶髪「理亞ちゃんはどうするの?」

理亞「あと一つ、やりそびれたことがある! 大丈夫、すぐ終わる!」タッ

理亞「にこさん!!」ブンッ

にこ「何よこれ」パシッ

理亞「餞別です」

理亞「行くときは、それ使ってください」

にこ「……ふん、まあ及第点ってところね」

理亞「……」フッ

理亞「では行ってきます」

126: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:04:18.90 ID:gz/2WDIP
理亞「お待たせ、二人とも行こう」

黒髪・茶髪「うん」

理亞「あの子たちが上げに上げたハードル、軽く飛び越えましょう」

理亞(それがあの子たちに対して、私が今出来ること)

ここあ「さあ皆さん! お待たせ致しましたいよいよここからライブSTARTです!」

こころ「トップバッターを務めるのは……やはりこのスクールアイドル!」

こころあ「Saint Snowーーー!!」


キャーーー!!


127: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:05:10.67 ID:gz/2WDIP

「闇に飲み込まれて」

「DROPOUT!? 置き去りのpassion」

「予想外situation……!」


にこ「始まったみたいね」

ここあ「姉ちゃんただいま!」

こころ「進行役、なんとか上手く出来ました!」

にこ「ええ、流石私の自慢の妹たちね。よくやったわ」ナデナデ

こころあ「えへへ……」

にこ「でもまだ気を抜いちゃ駄目、私たちにはまだ大仕事が残っているんだから」

こころ「はい! ……ん、私たち?」

ここあ「姉ちゃんも何かやるの?」

にこ「……ええ、理亞からの指示よ」

にこ「ったくしょうがないわねえ、本当に手間がかかるんだから」フンッ

128: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:06:01.72 ID:gz/2WDIP

理亞『そうだ、最後に一つ。ちょっといいですか?』

理亞『にこさん、あなたさっき自分のことを部外者だと言ってましたが』

理亞『まさかご自身の妹だけに役目を押し付けて、自分は気ままにライブ観賞……なんてことはしないですよね?』

理亞『それに、私たちにあれだけご高説を振り撒いたんですから当然その指標になるくらいの覚悟は、出来ているんでしょう?』

理亞『にこさんのことだから』

にこ『ずいぶんと強気じゃない、何が言いたいわけ?』

理亞『最後まで協力してください、あなたの力が必要です』

にこ『……内容、さっさと言いなさいよ。時間ないんだから』

理亞『ライブの最後の締めは当初の予定通り、私と姉様の二人で行う予定です』

理亞『にこさんは私たちの前座をお願いします』

『!!!』

129: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:06:36.19 ID:gz/2WDIP
理亞『終盤で会場を最高に盛り上げるためにも、これ以上の適役はありません』

にこ『前座ねえ…あんた、私に喧嘩売ってるわけ?』

理亞『いつものことでしょう、だから本気で潰しにきてくれても構いません』

理亞『最後に観客全員の心があなたのものになるというのなら、それは私たちが至らなかったというだけなので』

にこ『……いいじゃない、そのお願い聞き入れてあげるわ。ただし』

にこ『これっきりだからね。そして私が引き受ける以上、失敗でも成功でもない』

にこ『大成功で終わらせなかったら、絶対に許さないから』

理亞『元よりそのつもりです』

にこ『あー生意気、いくらなんでも調子に乗りすぎでしょ……でも』

にこ『その方があんたらしいわ』

130: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:07:24.86 ID:gz/2WDIP
こころ「お姉様が……」

ここあ「理亞さんの前座やるの!? すっごー!!」

にこ「ええ、そのためにも歌いだすまでのフリはこころ達に任せたいの」

こころ「成程! 曲の途中、ここ一番ってところでお姉様にバトンタッチすればいいんですね!」

ここあ「つまり私たちも前座の一部を任されるってこと!? やっば!」

にこ「まあそういうこと、欲を言えばステージ用の衣装も欲しかったところだけど」

ここあ「あー私たちが理亞さんに見せようと思って持ってきたやつ?」

こころ「でも荷物は全部ホテルの部屋に……」

ガチャ!

虎太郎「あるよ、衣装!」

こころ「虎太郎!? どうしてここに!」

ここあ「いやそれより衣装あるって、こたどういうこと!?」

131: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:08:03.87 ID:gz/2WDIP
虎太郎「野暮用あるって言ったでしょ…っ…ホテルに戻って取ってきたんだよ……」ハァハァ

虎太郎「この様子だと、丁度いいタイミングだったっぽい……間に合ってよかった」

にこ「取ってきたって、虎太郎……あんたまさか、ここまでの流れを全部読んでたっていうの!?」

にこ「最初からこうなることを見越して……だからあのときママからカードキーを!?」

虎太郎「そんなわけないでしょ…っ…超能力者じゃないんだから……」ハァ

虎太郎「ただ、雪が降ったときのために重ね着取ってきた方がいいと思って……そしたらっ」

虎太郎「途中でメッセージ来て、大体状況わかって……にこにーは控え室にいるっていうしっ、だから」

虎太郎「皆の分、ちゃんと全部持ってきたよ…っ…! にこにーなら絶対、こうするよね…!?」

にこ「虎太郎……」

虎太郎「ほんと、アイドルのことになると、熱くなりすぎるんだから」

132: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:08:45.46 ID:gz/2WDIP
にこ「……ありがと。流石私の家族、みんな立派に成長して」

にこ「虎太郎も。あんた今、最高にかっこいいわよ」

虎太郎「……可愛いじゃなくてよかった」

にこ「は?」

虎太郎「別に。っていうかにこにー」

虎太郎「ちゃんと楽しませてよね、僕も観客の一人なんだから」

にこ「当然。私が今まで虎太郎を裏切ったことが一度でもある?」

虎太郎「ない」

にこ「でしょ? あんたがするお願いでにこにーに出来ないことなんてないんだから」

虎太郎「ならいいや、じゃあ僕は戻るね。三人とも頑張って」

虎太郎「……あ、そうだ忘れるところだった。にこにー髪留め」ゴソゴソ

にこ「大丈夫、いらないわ」

虎太郎「なんで?」

にこ「もう持ってるから」キュッ

133: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:09:29.28 ID:gz/2WDIP


…………


聖良(開演からすでに一時間以上……天気も道路も、だいぶ落ち着いてきたわね)

聖良(理亞……いいえ、何を心配しているの)

聖良(あの子なら絶対に大丈夫、上手くやってる。問題は私のほう)

聖良(私が皆を心配させてるんだ。早く辿りつかないと……全部台無しになる前に!)

矢澤母「見えたわ聖良ちゃん! 会場!」

聖良「!」

矢澤母「それとにこから連絡! メンバーはもう全員集まってあとは聖良ちゃんだけ! もう少しで終盤に入るって!」

134: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:10:12.78 ID:gz/2WDIP
聖良「とすれば、今から行けばまだっ!」

矢澤母「間に合うわね、具合は?」

聖良「大丈夫です!」

矢澤母「走っていける!?」

聖良「問題ありません!」

矢澤母「よし、じゃあ行ってきなさい!」

聖良「はい! ありがとうございました!」ガチャ

聖良「タクシー代は後で絶対に返しますから!!」タッ

矢澤母「もう、そんなのいいのに……って言いたいところだけど」

矢澤母「予想以上に出費が痛かったわねえ……精算お願いします」

135: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:11:21.04 ID:gz/2WDIP

────


バンッ!!


聖良「理亞! 皆さん! 大変申し訳ありません!!」

聖良「鹿角聖良、ただいま到着しました!!」

黒髪「あ、聖良さん!」

茶髪「良かった……間に合って」

理亞「全然良くない。姉様、今回のことでみんなにどれだけ迷惑かけたか分かってるの?」

聖良「……言い訳はしない。この始末はステージの上でつけるわ」

聖良「それが出来ない私なら、もうSaint Snowを名乗る価値もない」

聖良「Saint Snowに、私の居場所はいらない」

「「…………」」

理亞「すぐに着替えて、今ギリギリだから」

136: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:12:43.30 ID:gz/2WDIP
聖良「ええ、分かったわ」

理亞「それと姉様に言っておくことが。アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない」

理亞「笑顔にさせる仕事だから」

聖良「!」

理亞「今日はみんな、それを一番に考えてステージに立ってる」

理亞「姉様もちゃんとそのことを胸に刻んでおいて」

理亞「私も、楽しみにしてるんだから」フッ

聖良「……そうね」フフッ

聖良「私も今このときを、とても楽しみにしていたわ」

聖良「だから会場の人たちにも響かせましょう、私たちのこの想いを。この歌を……全力で!」

137: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:13:37.80 ID:gz/2WDIP

~♪

パパパッ

こころ(! 照明の色が紫とピンクの交互)

ここあ(ということは……!)

にこ「間に合ったみたいね、全く…遅れて登場にもほどがあるっての」

にこ(こころ、ここあ、頼むわよ)


こころあ「~~♪」

ここあ(そんじゃま、いっちょやりますか! せっかく姉ちゃんを立てるなら)

こころ(次歌うのは、そっと何かを感じさせる予感)

138: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:14:08.58 ID:gz/2WDIP

こころあ「近づいた足音 君ならいいのに」

こころあ「違うって 違うって 知ってるけど」

こころあ「寄り添って 歩いて みたいこの気持ち」

こころあ「受け取って 受け取って 欲しくなる」

にこ「……文句なし、どころか百点満点」

にこ「もしかしたら今日のMVPはあんた達かもしれないわね。こころ、ここあ」

139: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:14:43.07 ID:gz/2WDIP
こころ「駈け出したら 冷たさに ふるえながらも」

ここあ「冬がくれた予感 きっと来る君が」

こころ「熱くなるほっぺたと 胸の鼓動が」

ここあ「そんな冬の予感 恋は愛を呼ぶ」

こころ「好きになった あの日思って」

こころ「涙出そう」

140: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:15:09.83 ID:gz/2WDIP
こころ「駈け出したら 冷たさに ふるえながらも」

ここあ「冬がくれた予感 きっと来る君が」

こころ「遠くから 私へと 手を振る誰か」

ここあ「そんな冬の予感 恋は愛を呼ぶ」

こころあ「あれはきっと 君が急いで」

こころあ「こっちへ向かうところね」

141: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:16:00.36 ID:gz/2WDIP

こころあ「近づいた足音 君の足音が」

こころあ「まっすぐ 私へ 駆けてくる」

こころあ「寄り添って 歩いて みたいこの気持ち」

こころあ「おんなじ 気持ちで 駆けてくる」



こころあ「」スッ


シャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャン……


にこ「届けて 切なさには」

にこ「名前をつけようか"Snow halation"」

142: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:16:45.10 ID:gz/2WDIP

にこ「想いが重なるまで 待てずに」

にこ「悔しいけど好きって純情」

にこ「微熱の中 ためらってもダメだね」

にこ「飛び込む勇気に賛成」

にこ「まもなく Start!!」





理亞「……White town」

理亞「Come on!」

理亞・聖良「Don’t stop dreaming!!」

理亞・聖良「始まれ!この場所から 全てが」

理亞・聖良「始まれ!この場所から 始まれ」

「Wao!!」

143: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:17:15.12 ID:gz/2WDIP
理亞「本当は気づいてる どんな夢も止められない そう」

理亞「夢へと向かってく 転んでも立ち上がれよ」

理亞「今日は 今日の 自分を頑張ったから」

理亞「もう悔やまない 笑い飛ばすんだ Welcome new mind」

聖良「雪舞う大空が 透き通る朝が White town」

理亞「元気になれるよ Snow dance snow dream dance」

聖良「真っ白な息が 歌になった時」

理亞「君へきっと 届くと感じてる」

144: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:18:00.93 ID:gz/2WDIP

聖良「冷たい街から 熱い熱い Beat magic」

聖良「生まれて 抱きしめる」

理亞・聖良「氷の心を」


「Don’t stop dreaming」


145: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:18:58.72 ID:gz/2WDIP

「We love music」

聖良「いつもいつも」

「We love music」

理亞「踊りたがる Hu!」

「We love music」

聖良「他にはない」

「We love music」

理亞・聖良「情熱は music!!」

146: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:19:38.25 ID:gz/2WDIP

「始まれ!この場所から 全てが」

「輝いて……」

こころ「……すごい」

ここあ「うん……私たち、まだ全然」

ここあ「理亞さんのこと、知らなかったんだな……」

にこ(……ふん。なーにが観客の心が私のものになるならよ)

にこ「ほんっと、腹立つ」クス

147: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:20:21.38 ID:gz/2WDIP
「We love music」

聖良「いつかいつか」

「We love music」

理亞「君に会える Hu!」

「We love music」

聖良「自由な未来へ」

「We love music」

理亞・聖良「情熱は music!!」

「We love music」

聖良「自由な未来へ」

「We love music」

理亞・聖良「出会えるよ 出会えるよ」

理亞・聖良「情熱は music!!」

148: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:20:58.49 ID:gz/2WDIP

理亞・聖良「始まれ!この場所から 全てが」

聖良「輝いて」

理亞・聖良「始まれ!この場所から 始まれ」

聖良「Ah! 何度でも」

理亞「Come on! Come on!」

聖良「輝いて」

理亞「We love music」


「 Come on! 」


149: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:21:44.59 ID:gz/2WDIP

理亞・聖良「はぁっ……はぁっ……ありがとうございました!!」

ワーーーーッ!!

矢澤母「きゃー! 見た今の!? 凄かったわね! ね!? 虎太郎!」ギューッ!

虎太郎「ん、凄かった。姉ちゃんも、にこにーも、理亞さんたちも」

虎太郎「でもそれはそれとして苦しい……離れて」

パチパチパチパチ!!!

理亞「……あ、やった」

理亞「ちゃんと全部……終わらせて、喜んでもらえた」

聖良「ええ、良かったです……本当に」ホッ

150: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:22:40.06 ID:gz/2WDIP
にこ「理亞」クイッ

理亞「─! 皆さん本日は寒い中お越しいただき誠にありがとうございました!」

理亞「途中、突然の悪天候にも見舞われましたが、皆様の辛抱強く暖かい声援のおかげで」

理亞「我々一同、なんとか今回のライブをやりきることが出来ました!」

理亞「改めてお礼申し上げます。今日は本当に……」

理亞・聖良「ありがとうございました!!」


パチパチパチパチ!!!


にこ「締めくくりの挨拶としては、まだちょっと硬いわね……でもまあ」

にこ「合格点くらいなら、あげてもいいかもね」

151: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:23:25.00 ID:gz/2WDIP


……そして、時間は過ぎていき

翌日


理亞「じゃあ……そろそろ帰るのね、あなた達」

ここあ「はい! いやーまさか二日目も参加させてもらえるなんて予想外でした!」

理亞「思った以上に反響があったから。私としても、あなたたちのパフォーマンスは間近で見ておきたいと思ってたし」

こころ「恐縮です! 私たちもこの二日間のライブはいい経験になりました!」

こころ「ありがとうございました!」

聖良「いえいえ、こちらこそあなた達のお母さんには随分とお世話になりました」

聖良「また来てくださいね、次は目一杯おもてなしさせていただきますから」

矢澤母「あらそう? それは楽しみね」フフッ

152: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:24:22.50 ID:gz/2WDIP
理亞「はい、歓迎します。にこさんも」

理亞「席は空けておきますから」

にこ「……」

虎太郎「にこにー」

にこ「…言っとくけど、もう冬はごめんだからね私は」

にこ「誘うなら別の季節にしてちょうだい」

理亞「分かりました、考えておきます」

虎太郎「じゃあ僕からも最後に一言」

153: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/28(金) 02:25:24.18 ID:gz/2WDIP

虎太郎「鹿角理亞さん、僕たち家族はあなたのことを応援しています」

理亞「!」

にこ「んなっ」

虎太郎「ので、これからもどうぞよろしくお願いします」ペコリ

こころあ「よろしくお願いしまーす!」

にこ「ちょっと虎太郎! あんたねえ!」

虎太郎「なに?」

にこ「~~っ……! ああもう! なんでもないわよ!」

虎太郎「」グッ

聖良・矢澤母「ふふっ」クスクス

理亞「あなた達…………うん」

理亞「ありがとう」


─── Saint Snow ラストクリスマスライブ、終了 ───



158: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:37:33.07 ID:/coe/ayJ


約一ヶ月半後……

2月10日


─和菓子屋穂むら


穂乃果・雪穂「ありがとうございましたー!」

穂乃果「最近増えてきたねー、お客さん」

雪穂「まあバレンタインも近いからね」

穂乃果「和菓子チョコって意外と需要あるんだねー! 私は普通のチョコレートのほうが好きだけど」

雪穂「もうちょっと和菓子屋の娘って自覚持とうよお姉ちゃん……」

159: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:38:28.20 ID:/coe/ayJ
穂乃果「ねえ、雪穂は誰かにあげる予定とかないの? バレンタイン」

雪穂「あるけどいつも通りだよ? 友達とか、大学の後輩の子とか……あ、でも」

雪穂「今年はルビィちゃんにもあげようかなって思ってる」

穂乃果「ルビィちゃんかあ、確かルビィちゃんって今高3だったよね」

雪穂「そうだけど」

穂乃果「じゃあ次が最後なんだねーラブライブ、去年は残念だったけど……」

穂乃果「今年はどんなライブをするのか楽しみだね! 雪穂!」

160: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:38:55.77 ID:/coe/ayJ
雪穂「そうだね、それにルビイちゃんだけじゃない。Aqoursにとってもラブライブは今回ので」

雪穂「最後の大会に……ん? 最後?」

雪穂「あれ、そういえばルビィちゃんの学校って確か……」

雪穂「…………」フム

雪穂「ねえお姉ちゃん、ちょっといい?」

穂乃果「ん~? なーに雪穂ー?」

雪穂「協力してほしいことがあるんだけど」スッ

161: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:39:50.64 ID:/coe/ayJ


バレンタイン当日

浦の星女学院、校門前


善子「……鞠莉から連絡貰って学校に来てみれば、なにこれ、どういうこと…?」

Aqours並びに浦の星女学院の皆様へ

ルビィ「学校中が、お花で一杯……」

ラブライブ出場を祝しまして、ファン一同より

花丸「……綺麗ずら……」

162: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:40:28.22 ID:/coe/ayJ
鞠莉「ビックリした?」

ルビィ「鞠莉さん、これって一体……」

鞠莉「数日前に連絡があってね、あなたのよく知る人から」

鞠莉「なんとか形にして残しておきたかったんですって。ルビィが卒業する前に」

鞠莉「私たちにとっていい思い出を一つでも多くって。粋よね」

鞠莉「本当に幸せ者よこの学校は、もうすぐその役目を終えるっていうのに」

鞠莉「まだこんなにも愛されているんだから」

ルビィ「あの、それって……!」

163: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:41:19.43 ID:/coe/ayJ

「ルビィちゃん」

ルビィ「!」

雪穂「あはは、来ちゃった」

雪穂「花束どうだった? 気に入ってくれた? まあちょっと急ではあったけど……」

雪穂「思い入れのある学校に何もないのは、寂しいもんね」

ルビィ「雪穂さん……っ!」タッ

ダキッ

雪穂「わわっ、ちょっとルビィちゃん?」

ルビィ「……」ギュウッ

雪穂「……ちょっと二人でお話しよっか」クスッ

雪穂「何かおすすめの場所とかある? 正直言うと移動で少し疲れちゃって」

ルビィ「あ、それならあっちの方に……」スタスタ

164: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:42:00.83 ID:/coe/ayJ
善子「行っちゃった……ルビィ、あの子ほんとによく懐いてるのね」

花丸「マルたちにもよく話してくれるし、ルビィちゃん、雪穂さんのこと大好きなんだね」

鞠莉「やっぱり合宿の頃からお世話になってるからなのかしら?」

「えー、でもどっちかっていうと雪穂の方から世話を焼いてるような気がするなあ」

「私から見たら絶対に雪穂のほうがルビィちゃんのこと好きだよ」

善子「そうなの? パッと見た感じだとあまりそういう風には……って!」

花丸「ええ!? 穂乃果さん!?」

穂乃果「こんにちはー! 私もついてきちゃいましたー!」

鞠莉「これはまた……千歌っちがここにいたらハイテンション間違いなしね」

穂乃果「そうそう! 私その千歌ちゃんに用があったの!」

「???」

穂乃果「旅館やってるんでしょ!? 一回入ってみたかったんだー千歌ちゃん家の温泉!」エヘヘッ

165: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:42:34.83 ID:/coe/ayJ

カポーン

雪穂「ふう……気持ちいいなあ……」

雪穂「温泉に入るなんて久しぶりかも、ルビィちゃんは?」

ルビィ「私も最近はあんまり」

雪穂「そっか、じゃあ一緒だね」

ルビィ「はい」

166: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:47:57.30 ID:/coe/ayJ
ルビィ「あの」

雪穂「ん~?」

ルビィ「お花、ありがとうございました」

雪穂「ああうん、どういたしまして」

ルビィ「でも、あんなにたくさん……どうやって集めたんですか?」

雪穂「ファン一同って書いてあったでしょ? バレンタインっていうこともあったからさ」

雪穂「当日Aqoursに贈り物をしようとしていたファンの子たちに声かけてたの。私とお姉ちゃんで」

雪穂「前にルビィちゃんから浦の星が廃校になるって聞いてたから、それならこういうのはどう? ってね」

雪穂「私のほうから提案した。でも提案しただけで実際にあれだけ集まったのはみんなのおかげだよ」

ルビィ・雪穂「私自身はそんなに大したことしてないって」

雪穂「!」

ルビィ「ですよね?」

雪穂「……そんな分かりやすいかな、私」ポリポリ

ルビィ「雪穂さん、すぐ謙遜するから」

167: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:49:07.43 ID:/coe/ayJ
雪穂「ふふっ、そうかもね」

ルビィ「そうだ、私イタリアのほうで亜里沙さんに会いました!」

雪穂「知ってる。亜里沙、向こうでちゃんとやってた?」

ルビィ「はい! 優しくて、いい人で、とっても頼りになって」

ルビィ「私も色々相談に乗ってもらって、おかげで悩み事も解決出来ましたし、亜里沙さんにはとっても感謝してます!」

雪穂「へえ、大絶賛だね」

ルビィ「あと、綺麗な人だったけどしっかり者だって言われて喜んでたのが可愛かったです!」

雪穂「亜里沙は絵里さんのこと尊敬してるからねー、余計そうなるんだと思う」

雪穂「そういうところはルビィちゃんとちょっと似てるよね」

ルビィ「私と亜里沙さんが、ですか?」

雪穂「うん、あとちゃんと大人っぽくなってるのに、どこか顔に幼さが残ってる感じとか」

ルビィ「それは…褒めてるんですか?」

雪穂「褒めてる褒めてる」

168: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:50:09.63 ID:/coe/ayJ
ルビィ「雪穂さんは最近何やってたんですか?」

雪穂「基本的にはお店の手伝い。大学はもうやることほとんど終わったから」

雪穂「他にあるとすれば……運営のお手伝いくらいかな」

雪穂「まあでもここ数日は、流石にお店の方が忙しかったけど」

ルビィ「大学は今年で卒業するんですよね? 雪穂さん4年生だから」

雪穂「うん、ルビィちゃん達と一緒だね。最後」

ルビィ「はい」

169: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:51:20.38 ID:/coe/ayJ
雪穂「ルビィちゃん、ラブライブのほうはどう? 勝てる見込みとかある?」

ルビィ「難しいと思います、みんな凄いから。でも」

ルビィ「絶対負けません」

雪穂「いいね。その目、あの合宿の頃を思い出すよ」

雪穂「ねえルビィちゃん、意気込みついでに一つ聞いてもいいかな?」

ルビィ「なんですか?」

雪穂「ルビィちゃんはさ、どうして優勝したいの?」

ルビィ「……一つじゃなくてもいいですか?」

雪穂「あはは、あの時とおんなじだね! いいよ」

雪穂「それって私に嘘つきたくないってことだもんね」

170: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:52:23.12 ID:/coe/ayJ
ルビィ「スクールアイドルが大好きで、その頂点を決めるラブライブで一番になりたいから」

ルビィ「負けたくないから、理亞ちゃん達にリベンジしたいから、千歌ちゃん達に想いを託されたから」

ルビィ「学校のみんなの期待に応えたいから、浦の星の思い出を私の手で作り上げたいから。そして」

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃんと一緒に最高の舞台に立って、最高の景色を見て……笑い合いたいから」

雪穂「…………」

ルビィ「だから優勝したいです。ラブライブで優勝したい」

ルビィ「たとえどんなに我がままだって言われても、私はその全てが欲しいし」

ルビィ「全部じゃないと嫌だから」

雪穂「相変わらず正直に言うね。うん、いいんじゃないかな」

雪穂「私は好きだよ、ルビィちゃんのそういうところ」

雪穂「それは間違いなく、ルビィちゃんの強さになってるから」

171: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:53:30.16 ID:/coe/ayJ
ルビィ「でも、私一人じゃここまで来れませんでした」

ルビィ「みんながいたから……」

雪穂「そうかもね、でもねルビィちゃん……私はこうも思うの」

雪穂「確かにみんなの支えがあったからルビィちゃん達はここまで来れたんだろうし、前を向くことが出来たんだろうけど」

雪穂「それは逆も同じ。みんなに応援されたからってだけじゃ絶対ここまでたどり着けない」

雪穂「ルビィちゃん達自身に強さがあったから、今のみんながいるんだろうなって」

雪穂「目標のために努力して、期待に応えてきた。いつだって全力で、誰かのために……ときには自分のために歌ったこともある」

雪穂「そんなあなた達だからあの舞台に立てた。それに、何よりも」

雪穂「どんなに打ちのめされても、何回だって立ち上がって、何度だってその頂に手を伸ばして」

雪穂「また走り出す、走り続ける。そんなの、誰にでも出来ることじゃないよ」

172: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:54:19.03 ID:/coe/ayJ
ルビィ「雪穂さん……」

雪穂「もっと自分を評価してもいいんじゃない? 私はこんなに凄いんだぞー! ってね」フフッ

ルビィ「はい!」

雪穂「それにしても、理亞ちゃんにリベンジかあ」

ルビィ「はい! 次は絶対に負けません!」

雪穂「……インフェルノフェニックス」

ルビィ「え?」

雪穂「ほら、フェスでの最終楽曲のイメージで、ダイヤちゃんとのコンビ名でもあったやつ」

雪穂「今のルビィちゃんにピッタリじゃない?」

173: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:55:08.92 ID:/coe/ayJ
ルビィ「私の……」

雪穂「あなたの、その何度でも燃え上がる不死鳥のような情熱は」

雪穂「燦然と輝きを放つ雪の結晶すら、溶かすのかもしれないね」

ルビィ(雪を溶かす、情熱……)

雪穂「なんてね、そろそろ上がろうか。ルビィちゃん何飲みたい? 奢るよ」

ルビィ「じゃあ私、フルーツ牛乳がいいです!」

ルビィ「あと卓球やりませんか!? 一緒に!」

雪穂「いいね、手加減しないよ!」

174: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:56:08.18 ID:/coe/ayJ

スパアンッ!

千歌「決まったー! だっしゃーーーー!!」

穂乃果「あーっ! ゲーム取られたー!!」

千歌「これで2-2! 振り出しですよ穂乃果さん!」

穂乃果「やるねー千歌ちゃん! でも次は私がゲーム取るんだから!」

雪穂「……何やってるのお姉ちゃん」

穂乃果「何って卓球だよ! 千歌ちゃんと勝負してるんだー、5ゲームズマッチ!!」

雪穂「ちなみに聞くけど、その勝負何回目?」

穂乃果「今7回目! なかなか決着付かなくってさー!」

千歌「シーソーゲームですもんね!」

雪穂「通りで汗すごいと思った」

ルビィ「みんな考えることは同じですね」

175: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:56:47.72 ID:/coe/ayJ
穂乃果「え? なにルビィちゃん達も卓球やりたいの?」

ルビィ「えっと、温泉上がりに雪穂さんとやりたいなあって思って」

穂乃果「温泉……あーっ!そうだよ温泉だよ!」

穂乃果「勝負に夢中ですっかり忘れてた! 私温泉に入りたくてここ来たんだった!」

千歌「ええ!? そうだったんですか!?」

穂乃果「そうなんだよ! 汗かいたし千歌ちゃん今から一緒に入らない!?」

千歌「いいですね! お背中お流しします!」

穂乃果「おぉー……一度は言われてみたかった台詞! じゃあ私の次は千歌ちゃんね! 私もやってあげるから!」

千歌「いいんですか!?」

穂乃果「もちろん!」

千歌「やったーーーー!!」

176: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:57:29.39 ID:/coe/ayJ
雪穂「ちょっとちょっと! 話早く進みすぎてついていけないんだけど! 卓球はどうするのさお姉ちゃん!」

雪穂「まだ勝負の途中なんでしょ!? 続けなくていいの!?」

穂乃果「代理でやっといて!」

雪穂「代理って!」

千歌「ルビィちゃん私のもお願い! 選手代理!」

ルビィ「ち、千歌ちゃんまで…」

穂乃果「それじゃあ千歌ちゃん!」

千歌「はい穂乃果さん!」

穂乃果・千歌「レッツゴーー!!」

177: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:58:21.37 ID:/coe/ayJ
雪穂「……ああもう、お姉ちゃんってばほんとに……!」

ルビィ「あははっ……でも勝負するのに変わりはないし」

ルビィ「代理で戦うの、結構面白そうですよ」

雪穂「ルビィちゃん、意外と切り替え早いよね……」

ルビィ「そうだ、せっかくだから何か賭けませんか? 負けた方はアイスを奢るとか」

雪穂「えーっと、それってつまり…?」

ルビィ「私が負けたら千歌ちゃん、雪穂さんが負けたら穂乃果さんの負担で」

雪穂「どっちが勝っても私たちノーダメージじゃん」

ルビィ「だって私たち、あくまで代理ですから」

雪穂「なのに勝手に賭けるんだ、あははっ! 図太いねえルビィちゃん! でも」

雪穂「その提案のった!」ニッ

178: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 20:59:36.94 ID:/coe/ayJ


========


穂乃果「うぅ……ひどい、温泉入ってスッキリしたと思ったらいきなり全員分のアイス買わされるなんて……」シクシク

雪穂「しょうがないじゃん、負けちゃったんだから」

ルビィ「ごちそうさまでした」

千歌「穂乃果さんのお金で食べるアイスは格別でした!」

穂乃果「それ全然フォローになってないよ千歌ちゃん……」

179: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 21:00:22.86 ID:/coe/ayJ
ルビィ「雪穂さんたちはこれからどうするんですか?」

雪穂「家に帰るよ、お土産も買ったことだし」

雪穂「あんまり長居すると向こうも大変だろうから」

穂乃果「もしかしたら、もうとっくに大変になってたりして」

雪穂「あるかもね。まあそういうわけだから私たちはそろそろ行くよ」

ルビィ「はい、今日は内浦に来てくれて本当にありがとうございました!」

ルビィ「雪穂さんに会えて、すっごく楽しかったです!」ニコ

雪穂「私も。また会場で会おうね、ルビィちゃんのこと一生懸命応援するから」

180: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 21:01:05.49 ID:/coe/ayJ
穂乃果「さよーならー! また遊びにくるねー!」

千歌「はーーい!! 是非また来てくださーい! 待ってまーーす!!」

穂乃果「よーし、なんだかやる気出てきた! 帰ったらお店の手伝いうんと頑張らなくっちゃ!」

雪穂「そうだね、それに次は私たちが店番してお父さんとお母さんを労わないと」

穂乃果「えー折角なら家族全員で行こうよー、十千万」

雪穂「だーめ、まずはお父さんとお母さんが先」

穂乃果「けち、アイスも私に奢らせるし」

雪穂「私に代理任せたからでしょ」

穂乃果「む~っ……まさかルビィちゃんがあんな提案をするなんて」

雪穂「面白いよね」

穂乃果「うん。でも……いけないんだー雪穂ー」

雪穂「? なにが?」

181: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 21:02:39.65 ID:/coe/ayJ
穂乃果「だって雪穂って合宿で指導者やってたんでしょー? たくさんのスクールアイドルをツバサさんと一緒に教えてたんでしょ?」

雪穂「そうだけど?」

穂乃果「なのにルビイちゃん一人だけ特別扱いで応援するなんて、いけないんだー」

穂乃果「他の子に言いつけちゃおーっと」フッフッフ

雪穂「なんで? 普通じゃん」

穂乃果「え? あれ?」

雪穂「普通だよ、私にとってルビィちゃんは別に生徒でも後輩でもないんだから。だって」

亜里沙『ねえ、どうして雪穂はそんなにルビィちゃんのことを気に掛けるの?』

雪穂「──だって友達だもん。友達を応援するのなんて当たり前じゃん」ニコ

182: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/29(土) 21:04:04.34 ID:/coe/ayJ
最後の人物相関図。

no title

186: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/30(日) 13:25:42.64 ID:WAj1cuRK
千歌「いやー楽しかったなー! まさか今日穂乃果さんたちがこっちに来るなんてね!」

ルビィ「うん、ビックリした」

千歌「わざわざ激励しに来てくれたんでしょ? 頑張らなくっちゃね!」

千歌「それこそ決勝ではSaint Snowに負けないくらいの強い曲で勝負して、そして今度こそ!」

ルビィ「うーん……強い曲、かぁ」

千歌「あれ、もしかして私の予想と違った?」

ルビィ「違うというか、なんて言えばいいんだろう」

ルビィ「多分千歌ちゃんが思ってる強い曲っていうのはSaint Snowが披露するような会場を盛り上げる系のものでしょ?」

187: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/30(日) 13:27:05.26 ID:WAj1cuRK
千歌「えっとまあ、そうだね。イメージとしてはそんな感じ」

ルビィ「だったら私たちの曲はそんなに強くないんじゃないかな」

ルビィ「それに理亞ちゃん達のような凄みも、きっとない」

千歌「えっ……!? それじゃあ」

ルビィ「でももし、強いっていう言葉が人の心を動かすって意味なら」

ルビィ「Aqoursにとってはどんな曲よりも、この歌が一番合ってるんじゃないかって」

ルビィ「そう思うの。それがきっと、私たちらしいってことなんだ」

千歌「私たち、らしさ……」

ルビィ「うん。千歌ちゃん、私は……ううん、私たちは今までずっと」

ルビィ「そうやって前に進んできたんだよ」

188: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/10/30(日) 13:28:25.06 ID:WAj1cuRK


そして……遂に

3月1日


ラブライブ決勝、当日


191: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:52:40.26 ID:oQvKJ1e2


アキバドーム入口


善子「……戻ってきたわね、東京! アキバドーム!」

鞠莉「ええ、一年ぶりね」

花丸「次こそは絶対に……」

ルビィ「優勝、リベンジ!」

果南「お、みんな気合入ってるねー」

花丸「果南ちゃん!」ハグッ

果南「あははっ花丸ちゃん久しぶり! しばらく会わないうちに積極的になったね!」

鞠莉「ダイヤと聖良は一緒じゃないのね」

果南「聖良は理亞ちゃんの見送りに行った。ダイヤは……」

果南「ちょっと意外な人物に捕まってる」

192: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:53:15.46 ID:oQvKJ1e2

ダイヤ「着きましたわ、こちらです」

絵里「案内ありがとうダイヤ、おかげで迷わずに済んだわ」

ダイヤ「……お二人とも、とても迷うようには見えませんでしたけど」

絵里「いいじゃない折角の機会なんだから。ダイヤったらあれから私に全然連絡くれないんだもの」

ダイヤ「それは、すみません」

亜里沙「お姉ちゃん、あんまりダイヤちゃんに意地悪したらダメだよ?」

絵里「ふふっ、ごめんなさい。ついね」

193: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:53:51.97 ID:oQvKJ1e2
ダイヤ「会場で待ち合わせている人がいると聞きましたが、穂乃果さんたちのことですか?」

絵里「ええ、あなたも挨拶していく?」

ダイヤ「いいえ、久しぶりの再会に水を差すわけにもいきませんし、何より」

ダイヤ「私は私で早くあの子たちの激励に行きたいので」

絵里「そう、それじゃあここでお別れね」

絵里「ルビィちゃん達によろしく伝えておいて」

亜里沙「私の分もお願いしていいかな?」

ダイヤ「もちろん、きっとルビィも喜びますわ。ではまた」

194: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:54:48.59 ID:oQvKJ1e2
穂乃果「おーーい! えーーりちゃーーん!!」タッタッタ

絵里「穂乃果!」

ダキッ

穂乃果「会いたかったよー絵里ちゃーん!」

絵里「私も、久しぶりね!」

亜里沙「雪穂ーーっ!」ギュウッ

雪穂「ちょっと亜里沙、苦しいよ…!」

にこ「元気ねえあんたたち」

絵里「にこ! あなたも来てたの!?」

穂乃果「さっきそこでバッタリ会って! ね、にこちゃん!」

にこ「こっち目がけて思いっきり走ってきたのをバッタリと言っていいのかしら」

穂乃果「いいじゃん別に!」

絵里「あははっ穂乃果は本当に相変わらずね! なんだか安心したわ」

195: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:56:20.72 ID:oQvKJ1e2
絵里「にこも。よく考えたらあなたがここに来てないなんてあり得ないものね」

にこ「そういう絵里だってラブライブを見るためにわざわざ海外から戻ってきたんでしょ?」

絵里「そうね、偶然関りを持ったというか……ちょっと目の離せない子たちと知り合いになっちゃったから」

絵里「どうしても気になってこっちに来ちゃったわ。変かしら?」

にこ「全然そんなことないけど、いいんじゃない?」

にこ「Aqoursでしょ? 絵里が気にしてるスクールアイドルって、さっきも話していたみたいだし」

絵里「ええ、にこは気に掛けてるスクールアイドルとかいないの?」

にこ「私も絵里と同じよAqoursの……」

穂乃果「にこちゃんはSaint Snowだよね! Saint Snowの理亞ちゃん!」

にこ「」

196: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 06:58:48.64 ID:oQvKJ1e2
絵里「Saint Snowって確かラブライブを二連覇してるっていうグループよね、噂には聞いていたけど……にこはそこがお気に入りなの?」

にこ「違う」

穂乃果「家族総出で応援してるんだよね!」

絵里「へえー」

にこ「ほ~~の~~か~~っ……!?」ムニーッ

穂乃果「ふぁ、ふぁって虎太郎くんが言ってたんだもん……!」

絵里「いいじゃない、あなた達一家全員に認められるなんて滅多にないんだし。凄いじゃないその理亞って子」

にこ「だから私は応援なんてしてないっての! 全くどこも勝手に決めつけて!」

絵里「そうなの?」

にこ「そうよ!」

197: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/01(火) 07:00:01.39 ID:oQvKJ1e2
穂乃果「にこちゃん、もうちょっと大人になろうよ……」

にこ「穂乃果は黙ってなさい!」

穂乃果「ひぃっ!」

にこ「私が理亞の応援? 冗談じゃないわよ! だーれがあんな反抗的で生意気で失礼極まりない子の応援になんか」

絵里「ふふっ」

にこ「なに笑ってるのよ!!」

絵里「だって……今のスクールアイドルであなたにそこまで言わせる子がいるだなんて、思わなかったものだから」クスクス

穂乃果「ねー、あのにこちゃんが」

にこ「あんたたちは実物を見てないからそんなことが言えるのよ!」

穂乃果「そうかなあ?」

にこ「そうよ! 私からすれば理亞なんてアイドルのアの字しか知らないようなひよっこなんだから!」

にこ「心構えなんて以ての外! 保証出来るものなんてせいぜい実力くらいのものよ!」

絵里「……ぷっ、あははは! にこ、ちょっと待ってなにそれ……ふふっ」

穂乃果「にこちゃん、それ普通に認めてるよね……っ……」プルプル

にこ「だから笑ってるんじゃないわよ!!」

205: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:48:27.86 ID:+1mHIapW
亜里沙「お姉ちゃん、嬉しそうだね」

雪穂「実際に会うのは久々だもん、そうなるのも仕方ないって」

雪穂「お姉ちゃんと絵里さんが顔合わせるのって、卒業した亜里沙を迎えに来た日以来だし」

亜里沙「そっか……そうだよね」

雪穂「亜里沙」

亜里沙「なあに?」

雪穂「おかえり」

亜里沙「……うん、ただいま」

206: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:48:56.38 ID:+1mHIapW
雪穂「亜里沙も応援しにきたの?」

亜里沙「うん、ルビィちゃんの。雪穂が言ってた通りいい子だったよ」

雪穂「でしょ? 私の自慢の友達だからね」

亜里沙「あっ出た。友達」フフッ

雪穂「えっ、なに? そんな変だった?」

亜里沙「ううん。でも雪穂、それならルビィちゃんに会いに行かなくていいの?」

亜里沙「あんなに気にしてたのに」

雪穂「いいってば、今は亜里沙や絵里さんたちといる時間の方が大事だし……それに」

雪穂「言いたいことは、もう言ってきたから」

207: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:50:16.09 ID:+1mHIapW

理亞「…………」

ここあ「理亞さんこんにちは! 今日は絶好のライブ日和ですね!!」

こころ「お二人も元気そうで安心しました! 今日は頑張ってくださいね!」

黒髪「あ、ありがとう」

茶髪「こころちゃん達も相変わらず元気そうで……」

理亞「あなた達、本当にどこにでも出てくるわね……」

聖良「理亞。せっかく来てくれたんだから」

理亞「そうだけど」

ここあ「大丈夫ですよ! 理亞さんは元からこんな感じですから!」

こころ「はい! お姉様も言ってました、理亞さんは不器用すぎるから私たちがフォローしてあげなさいと!」

黒髪・茶髪「ぶふぉっ!!」

理亞「……へえ」ギロッ

黒髪・茶髪「…………ん、んんっ!」ゴホン

208: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:51:04.43 ID:+1mHIapW
聖良「ま、まあ理亞……にこさんも気を遣って言っているのだから……ふふっ」

理亞「…ふーん、確かに恋愛やらなんやらで浮かれた結果スマホ忘れて無理に練習続けて本番当日に倒れた姉を見たら」

理亞「そう思うのも仕方ないのかもね、不甲斐なさ過ぎて」

聖良「うぐっ」グサグサグサッ

理亞「ふんっ、とにかくあなた達……にこさんに言っておいて」

こころあ「何をですか?」

理亞「私は不器用だからステージの上でしか答えられない」

理亞「言いたいことがあるならライブが終わった後に聞くってね」

こころあ「…………か」

こころあ「かっこいいーーーーーーーーーっっっ!!!!」キラキラ

209: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:51:40.01 ID:+1mHIapW
理亞「あの、ちょっと待ってなんでそうなるの」

ここあ「今の! 王者っぽくてめっちゃかっこよかったです!!」

こころ「威風堂々とした理亞さん、素敵です!」

理亞「……もはや私が何を言っても称賛しそうね」

黒髪「いやーどうだろう、さっきの言葉は確かに風格みたいなものが滲んでたし」

理亞「そうなの?」

茶髪「ま、理亞ちゃんそういうとこあるから」

聖良「それだけトップとしての振る舞いが身に付いてきたということですよ」

210: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:52:17.61 ID:+1mHIapW
虎太郎「あ、やっぱりここにいた。姉ちゃんたちすぐ理亞さんのところに行くんだから」

虎太郎「にこにー呼んでるよ、もう時間だからって」

ここあ「おー、こたご苦労!」

こころ「それでは私たちはこの辺りで失礼しますね!」

虎太郎「優勝、期待してます」

スタスタ

理亞「……相変わらず嵐のような家族ね、でも」

理亞「悪くない。あの子たちといると、不思議と落ち着けるから」フッ

211: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:52:56.21 ID:+1mHIapW


────


果南「さてと、もう時間みたいだし私たちも行く?」

ダイヤ「そうですわね。ルビィ」

ルビィ「なに?」

ダイヤ「私の方からクドクドというのは野暮でしょうから、一言だけ」

ダイヤ「悔いの残らないように。以上」

ルビィ「……お姉ちゃんらしいね」

ルビィ「うん、わかった」

212: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:53:47.64 ID:+1mHIapW
善子「果南は何か言いたいこととかないの?」

果南「私? うーん、個人としてはないかなあ」

果南「だってほら、同じことばかり聞かされるのもあれだしさ」

善子「身も蓋もないことを……」

果南「それにさ、そういうのはこの場で一番相応しい人が言ってこそ。でしょ?」チラッ

鞠莉「……」

善子「なるほどね、流石付き合いが長いだけあるわ」

果南「というわけだから私たちは先に行くよ。鞠莉、あとよろしく」

ダイヤ「花丸さん、あの子もきっと見守ってくれています」

ダイヤ「精一杯、やってくださいまし」

花丸「もちろん!」ニコ

ダイヤ「……一家全員、楽しみにしていますわ。それでは」

213: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:54:49.42 ID:+1mHIapW
鞠莉「で、残るは私だけと」

ルビィ・善子・花丸「…………」ジーッ

鞠莉「ワーオ熱い視線、まいっちゃうわね」

鞠莉「マリーここにきてまさかのモテ期到来!? ……なーんてね、ちゃんと分かってるわよ」

鞠莉「ただ、本当の本当に最後だから、ちょっとね」

鞠莉「そうね、これは顧問として……ううん仲間として私の方から贈らせてもらおうかしら」

鞠莉「三年間あなた達の頑張りをずっと見てきた私だからこそ言えることっていうのもあるし」

鞠莉「でもそう考えるとほんと、三人とも長い付き合いになったわよね」

鞠莉「それこそ同い年のあの二人とはまた違う居心地の良さを感じたわ。本当に、楽しかった」

善子「鞠莉……」

鞠莉「ルビィ、善子、花丸。よく聞きなさい」

214: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:55:56.63 ID:+1mHIapW
鞠莉「あなた達は強いわ。間違いなくこれまで続けてきた歴代Aqoursの中でも今のあなた達が一番……強い」

鞠莉「何故か分かる? まあ、たとえ分かっていたとしても聞いてほしいんだけど」

鞠莉「それはね……Aqoursの中であなた達だけが、途中で始めたり、辞めることもなく」

鞠莉「最初から最後まで活動し続けたから。たとえ後輩が入ってこなくても、頼りになる先輩がいなくなっても」

鞠莉「三年間ずっと気持ちで負けずにやれることをやってきて、自分たちに出来ることを増やしてきたから」

鞠莉「曲げないこと、成し遂げること……それが大事なことだと知っていても私たちはそれを徹頭徹尾実行することは出来なかった」

鞠莉「でも、あなたたちは違う。それが……それこそが」

鞠莉「私たちが持ってない、手に入れられなかった強さだ。あなた達三人しか持ってない強さなのよ」

215: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:56:35.65 ID:+1mHIapW
鞠莉「花丸、あなたは大人しいように見えて実のところ誰よりも真っ直ぐだったわよね」

鞠莉「あなたのそのスクールアイドルに限らず実直なところは、想いの力というものを何よりも体現してると思うし」

鞠莉「いつか報われると私は信じているわ」

鞠莉「善子、あなたはいつも周りのことを考えて行動、発言してくれていたわね」

鞠莉「誰かが無茶な提案や突拍子もないことを言ってもそれを良い落としどころに持っていけるのは」

鞠莉「それをフォローしてくれる人がいるから。たとえそれで自分の影が薄くなろうともね」

鞠莉「あなたのそういうところ、皆が頼りにしてるのよ?」

鞠莉「そして最後にルビィ、あなたはスクールアイドルを通して誰よりも繋がりの輪を広げていったわね」

鞠莉「この三年間、ルビィがいなかったら出来なかった縁がどれだけあるか」

鞠莉「人との繋がり……その大切さは孤独という苦境から立ち上がったあなただからこそ、より身に染みて分かるのよね」

鞠莉「そんなルビィにしか出来ないこと、伝えられないことが必ずある。あなたは今までそれを色んなやり方で表現してきたけど」

鞠莉「次は一体、どんな形で私たちに教えてくれるのかしらね?」

鞠莉「きっと皆がその瞬間を待ってる。もう誰もルビィから目を逸らすことはないでしょう」

216: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 16:57:32.53 ID:+1mHIapW

鞠莉「ありのままの自分で、最後までらしくありなさい。大丈夫」

鞠莉「私が保証する。だから」

鞠莉「思いっきりやってきなさい!!」

ルビィ・善子・花丸「はい!!」

ルビィ「よし、行こうみんな!」

ルビィ「いくよ! Aqoursーーーー!!」


「サーーンシャイーーーーン!!」


217: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:39:36.65 ID:+1mHIapW


観客席


千歌「あっ来た来た! 鞠莉ちゃんこっちこっちー!」

鞠莉「お待たせー♪ 今の時間は?」

梨子「もう少しで開会式と挨拶が始まるって」

鞠莉「そう」

曜「どうだった? 善子ちゃん達」

鞠莉「バッチリ、何も心配いらないわ」

鞠莉「堪能させてもらいましょ」

218: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:40:20.13 ID:+1mHIapW
「さあ皆さんお待たせいたしました! これよりラブライブ決勝戦を開始いたします!」

「まず初めに開会のご挨拶ですが……今回は特例として」

「歴代初、ラブライブ連覇を成し遂げたSaint Snowの鹿角理亞さん!」

「彼女の意気込みで今大会の幕開けをしたいと思います!」

英玲奈「ほう、なかなか粋なことをするな」

あんじゅ「それでいて挑戦的ね、誰にとってもこの挨拶はプレッシャーになるわ」

ツバサ「ええ、それにしても完全に取って代わられちゃったわね」

ツバサ「もう私の出る幕、ないかもしれないわ」

穂乃果「ツバサさん、もしかして寂しいとか?」

ツバサ「少しね」

219: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:40:47.79 ID:+1mHIapW
「では理亞さん、お願いします!」

理亞「はい」

理亞「先程、私に対して連覇という言葉が取り上げられましたが、それはあくまでこの大会が始まる前の話です」

理亞「ここから先はその評価がどう転んでもおかしくありません、何故ならここにいる全員が優勝する可能性をもってこの場に立っているからです。しかし」

理亞「そのうえで敢えてここで宣言しましょう、この高校生活最後のラブライブ、今回も私が優勝を獲ると。勝つのは私達だと」

理亞「そして……ルビィ! 来なさい!」

「……?」

ザワザワ…… エッ ナニ

善子「ご指名よ、ルビィ」

花丸「いってらっしゃい」

ルビィ「うん」ツカツカ

220: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:41:25.79 ID:+1mHIapW
穂乃果「? どうしたんだろう二人とも」

ツバサ「さあ……」

理亞「……」スゥーッ

理亞「ツバサさん! 聞こえますか!!」

ツバサ「────!?」

理亞「私たち、遂にここまで来ました!」

ルビィ「あのとき私たちと約束したこと、まだ覚えてますか!」

理亞「ツバサさんが残した課題、それを果たしに来ました! 今日、この最高の舞台で私たちは!」

ルビィ「誰が見ても良かったって言われるくらいのライブをやって! それで!」

理亞「ツバサさん!」

ルビィ「穂乃果さん!」

ルビィ・理亞「あなたの背中に追い付いて、追い越します!!」

穂乃果・ツバサ「!」

理亞「私たちからは以上です、ありがとうございました」ペコリ

221: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:42:02.52 ID:+1mHIapW
「え、えーっと……色々と凄まじい意気込みでしたが……」

雪穂「いいぞー!ルビィちゃーん!理亞ちゃーん!お姉ちゃんなんて引きずりおろしちゃえ!」

穂乃果「あーっ!ひっどい雪穂!! でも私からも頑張れー!!」

ワッ!!

「なんと会場大盛り上がりでございます! これも自他共に認める王者だからこそ為せる世代交代宣言ですね!」

「果たして本当にその伝説を塗り替えることが出来るのでしょうか!?ますます面白くなってまいりました!」

ツバサ「…………」

英玲奈「どうやらお前の考えは杞憂だったみたいだな、ツバサ」

あんじゅ「愛されてるわねえ、ツバサ先生は」

ツバサ「……はあ、あの二人、まさかここにきてまた問題児に戻るなんてね」

英玲奈・あんじゅ「?」

ツバサ「だってあんなこと言われたら、中立の立場でいられなくなりそうじゃない」

ツバサ「全く、あの子たちは本当に……」

ツバサ「厄介な生徒なんだから」クスッ

222: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 17:59:48.32 ID:+1mHIapW

「さて、それではここで今一度ルールの方を確認させていただきます!」

「今回も例に漏れず順位付けは審査員による得点と観客の皆様の投票、その両方で決定します!」

「つまりそれは審査員の方々の評価でグループ同士に差がつかなかった場合、皆様の一票が勝敗を左右するということ!」

月「へえ、これは僕たち静真勢も他人事じゃないね」

「スクールアイドルとして、より多くの人の心を掴んだ者が栄えあるその称号を手にすることが出来るのです!」

絵里「にこはどうするの? 投票」

にこ「それはあそこにいるスクールアイドル次第よ。だから面白いんじゃないの」

絵里「ふふっ、そうね」

穂乃果「ん~~っ! ワクワクしてきた!!」

「さあ心の準備は整いましたか? それでは早速参りましょう!」

「Love Live! ミュージックスタート!」

223: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:00:29.65 ID:+1mHIapW


ーー♪


茶髪「始まったね、理亞ちゃん」

理亞「ええ」

黒髪「残念だったね、最後から二番目で。理亞ちゃん大トリが良かったんでしょ?」

理亞「そうね、叶うことならラスト私たちの曲を見せつけて、そのまま優勝したかったけど」

黒髪「派手だなあ」

理亞「別にいい。最後の出番がAqoursになったところで私たちのやることは変わらないから」

茶髪「だね、いつもの私たちでいけば全然大丈夫」

理亞「そういうこと。やるわよ二人とも」ポン

理亞「Saint Snow一番のライブを」

黒髪・茶髪「うん!!」

224: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:03:16.88 ID:+1mHIapW
「さあ、いよいよ残すところあと二組となりました!」

「しかもこのグループの両リーダー、先程自分たちが世代を変えると豪語し賑わせた二人です!」

「これは最後まで目が離せませんね!」

虎太郎「すごい煽られてるね、実況の人に」

にこ「当たり前でしょ、あんなこと言ったんだから」

にこ「でもまあ、それだけの覚悟で臨んでるってことなんだし。別にいいと思うけど……それに」

にこ(あんたに限って口だけとか、あり得ないものね)

「それではいきましょうSaint Snowの皆さんです! お願いします!」

理亞「」ザッ

聖良「……見せつけてあげなさい理亞」

聖良「あなたが今まで積み上げてきた、全てを!」

225: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:04:40.68 ID:+1mHIapW
ーーーーーーーー





理亞「きっとひとりじゃない 夢の中へ Go!! 」

理亞「迷いながら Ready? 」

「 Go! 」

絵里「! 成程ね、これは確かに……」

亜里沙「凄いね……」

226: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:05:53.62 ID:+1mHIapW
「やっとね 気がついたみたい? あなたの中の消えない光」

理亞「That's right!」

「どこへ行っても それは希望という名の羽だから」

理亞「 Fly high 」

「強さを求めたら 弱さも受け入れてみようよ」

理亞「 My fault! 」

絵里「ねえにこ、あなた前から知ってたのよね? 彼女のこともっと詳しく……」

虎太郎「待ってください絵里さん、静かに」

絵里「虎太郎くん?」

「余裕がない心じゃ 夢は遠ざかるのかも」

理亞「さあ 生まれ変わろう!」

227: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:07:21.24 ID:+1mHIapW
理亞「新しくなれ 古い殻を破って進め」

理亞「できるね できるよ 次の場所へ Dash! 」

にこ・こころあ「…………」

虎太郎「今は集中させてあげてください」

虎太郎「三人とも黙るときは、滅多にない本気のやつなので」

絵里「……なんだ、やっぱり気に入ってるんじゃない」

虎太郎「それはそれとして気に入らないのも本当ですけどね」

絵里「なんだか面倒くさくなったわね、にこ」

虎太郎「安心してください、理亞さんのときだけですから」

黒髪「もっと」  理亞「踊りたい」

茶髪「もっと」  理亞「踊りたい」

「 Let's dance dance 」  理亞「 yeah! yeah! 」

「止まらないよ Dance!! 」

228: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:07:57.22 ID:+1mHIapW
黒髪・茶髪「 Believe 」  理亞「 Believe 」

黒髪・茶髪「 again 」  理亞「 again 」

「すべてを抱きしめながら」

黒髪・茶髪「 Believe 」  理亞「 Believe 」

黒髪・茶髪「 again 」  理亞「 again 」

「また始まるんだ」

理亞「 Shout my song! 」

229: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:08:39.22 ID:+1mHIapW
ダイヤ「……流石、と言わざるを得ませんわね」

鞠莉「ちょっと聖良、理亞また実力上げたんじゃないの?」

聖良「ええまあ、見てほしい人が増えたものですから」

「本気だって言わなくって きっと伝わるよ」

理亞「何度でも熱くなれ 自由になれ」

黒髪・茶髪「 Believe 」  理亞「 Believe 」

黒髪・茶髪「 again 」  理亞「 again 」

「また始まるんだ Yeah!! 」 理亞「 Yeah Yeah 」

「 Ah 冒険は終わらないよ Let's go 」

理亞「 3, 2, 1, 」  「 Go! 」

230: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:09:48.95 ID:+1mHIapW


ワーーーーッ!!  パチパチパチパチ!!!


こころ「……すごい……凄い凄い凄い! 流石Saint Snow! 流石理亞さん!」

ここあ「めっっっちゃヤバかった!! 今のライブ!!」

にこ「まあ、過去最高ではあったんじゃない?」

絵里「あれはどうなの虎太郎くん」

虎太郎「いつも通りですね、大人げないだけで基本贔屓はしませんから」

絵里「そう。確かに今のライブは凄かったし、にこがそれくらい褒めるのも頷けるわね」

絵里「ただ、彼女たちが上げたこのハードル……飛び越えるにはちょっと高いわよ」

雪穂「…………」クスッ

亜里沙「? どうしたの雪穂、急に笑ったりして」

雪穂「え、ああごめんごめん! ちょっと思い出しちゃってさ」

雪穂「あの時と似てるなーって」

亜里沙「???」

雪穂「心配しなくても大丈夫だよ、ルビィちゃん達なら」

231: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:10:27.31 ID:+1mHIapW
ルビィ「理亞ちゃん達、やっぱり凄いね」

善子「ええ、だけど」

花丸「マルたちなら絶対大丈夫ずら」

花丸「だって、マルたちの気持ちが込められたこの歌が……みんなの想いが詰まったこの曲があるから」

花丸「だから絶対届くって信じてるの」

善子「あんたねえ、私の言いたいこと全部言うのやめなさいよ」

花丸「えへへっ、ごめんねつい」

善子「全く……ルビィ!」

ルビィ「なに? 善子ちゃん」

232: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:11:08.36 ID:+1mHIapW
善子「……」スゥー

善子「ありがとうね、私をスクールアイドルに誘ってくれて。それと」

善子「私と出会ってくれて、ありがとう」

ルビィ「!」

善子「よし、本当に言いたいこと終わり!」

ルビィ「じゃあ私からも……」

花丸「なら歌ってルビィちゃん! マルたちはそれで十分だよ!」

善子「ええ! そこで思いっきり吐き出してくればいい!」

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃん……」

善子「行くわよラストライブ!」

ルビィ「……うん!!」

「さあ最後の一組! Aqoursの登場だーーーー!!」

ルビィ・善子・花丸「よろしくお願いします!!」

233: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:11:55.99 ID:+1mHIapW

「キラリ!」

「ときめきが生まれたんだと」

「気がついたワケは 目のまえのキミだってことさ」

千歌「─!」

ララララーララー♪  ララララーララー♪

果南「え、うそっルビイちゃんたち決勝の曲あれにしたの? なんで!?」

梨子「はい、優勝を目指すならこれより他にもっと相応しい曲があるはずなのに……それこそ」

千歌「……いや、これでいい。いいんだよ梨子ちゃん、果南ちゃん」

梨子・果南「え?」

曜「千歌ちゃん?」

234: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:12:56.03 ID:+1mHIapW

「 "やってみたい" 」

善子「動きだした心は まだ迷いをかかえて揺れているよ」

花丸「それでもスタートしたのは」

ルビィ・善子・花丸「運命かな」

ルビィ「気持ちがつながりそうなんだ」

千歌「決勝とか、優勝に相応しいとか、そういうのじゃない」

千歌「これがAqoursにとってのアンサーソングなんだ……スクールアイドルみんなへの」

千歌「ううん違う……ここにいる全員に向けて、ルビィちゃんが、ルビィちゃんたちが」

千歌「今届けたいメッセージなんだ! 響かせたい歌なんだ! そしてそれがっ……!」

千歌「私たちらしいってことなんだ……きっと……!」ポロポロ

235: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:13:34.88 ID:+1mHIapW
善子「知らないことばかり なにもかもが」

「どうしたらいいの?」

ルビィ『みんなの傍にいていいなら! なんでっ!!』

ルビィ『誰も私に大丈夫って言ってくれないの!!』

善子(そうよね、そんなあなただから)

花丸「それでも期待で足が軽いよ」

「ジャンプだ!」

ルビィ「温度差なんていつか消しちゃえってね」

善子(きっと今、誰よりも綺麗に輝けるのよね)

ルビィ「元気だよ 元気をだしていくよ」

236: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:14:27.43 ID:+1mHIapW

ルビィ「キラリ!」

「ときめきが生まれたんだと」

善子・花丸「気がついたときに」 ルビィ「いたんだよ」 

「目のまえにキミがいた」

「キラリ! あつくなる自分見つけたよ」

ルビィ「このひかりは」 

「きれいだよね」

ルビィ「もっとキラリ」

「まぶしい希望」

ルビィ「ダイスキがあれば」

ルビィ・善子・花丸「ダイジョウブさ」

237: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:15:24.63 ID:+1mHIapW


パチ……パチパチ

パチパチパチパチ!!


果南「はは……確かにこれは、私たちが間違っていたかもね」

梨子「そうですね、私もちょっと対抗することしか考えていなかったかも」

曜「でも普通はそうなるよ、みんなそのつもりで来てるんだし、去年の私達だってそうだった」

曜「自分たちが進化した姿を見せることが、最高のライブに繋がるんだって」

鞠莉「だけどあの三人は、その考えとは真逆の原点に立ち返った」

鞠莉「初心に振り返ったうえで、ちゃんとそれを見落とさなかった」

鞠莉「そして聴かせた、勝つためだけじゃなくて自分たちが本当に伝えたい歌を」

鞠莉「あの子たちらしいわね」

ダイヤ(……お母様、お父様、見ていますか)

ダイヤ(もう、ルビィは何でも出来るのですわ)

ダイヤ(なんでも……!)

238: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:16:26.60 ID:+1mHIapW
穂乃果「」パチパチパチパチ!

穂乃果「……初めは」

ツバサ「?」

穂乃果「初めはみんな同じで、やってみなくちゃ始まらなくって」

穂乃果「頑張っても頑張っても上手くいかない日があったり、好きってだけじゃどうしようもないことだってたくさんやってくるけど」

穂乃果「その度に、辛くなったり……苦しくなったりするけど」

ツバサ「…………」

穂乃果「それでも思い出しちゃうんだ。大好きって気持ちを」

穂乃果「そして、忘れかけたその気持ちが背中を押してくれるの」

穂乃果「今みたいに、もう一度やってみようって」

ツバサ「大好きがあれば大丈夫……か」

穂乃果「素敵だね。なんか……羨ましいや」

239: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:18:00.41 ID:+1mHIapW

「これにて全グループのライブが終了いたしました!!」

「スクールアイドルの皆さん、ありがとうございました! そしてお疲れ様です!」

「観客、及びライブ視聴者の投票も……ただいま、集計が取れたとの報告が入りました!」

「なので、この後はみなさまお待ちかね! 結果発表の時間でございます!」

「まず6位までの順位を一気にご紹介! こちらになります!」

「そしてここからが5位から1位までの発表になります! 一つずついきますよー!」

「5位……! 4位……! 3位……!!」

穂乃果「……あとはAqoursとSaint Snowだけ」

にこ「やっぱりこの二組が残ったわね」

絵里「どっち、どっちが勝つの」

雪穂・亜里沙「……っ」ゴクリ

ダイヤ(ルビィ……)

聖良(理亞……)

「2位!……いえ、これは同時に発表させていただきます!」

240: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:19:09.35 ID:+1mHIapW

「2022年、ラブライブ決勝戦!」

「その結果は────!!」

ツバサ「…………」

『浦の星女学院二年生! 黒澤ルビィ!』

『函館聖泉女子高等学院二年生! 鹿角理亞!』

『よろしくお願いします!!』

ツバサ(いつか、考えたことがある)

ツバサ(伝説とは何か、栄光とは何だ、そして)


今もなお支配することのできない、この溢れんばかりの感情は

どうして、自分だけでは生み出すことの出来ないものなんだと


241: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:20:15.20 ID:+1mHIapW


不思議だった、知りたかった。

これほどまでに自分を熱くさせるものを、私は

何故、こんなにも言葉にすることが出来ないのか

それが何より、悔しかったから。

だけど……ああ、そうか

今わかった

出来なかったんじゃない、したくなかったんだ

どうしてもそれ以外の何かで、伝えたかった

私の心の内を……感動を、教えてくれる誰かを

私はずっと、待ってたんだ


242: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:21:20.50 ID:+1mHIapW

ツバサ「ねえ、二人は知らないわよね……私が、どれだけ」

ツバサ「どれだけこの時を待ち望んでいたか、なんて」

ツゥー

英玲奈「─!?」

あんじゅ「ツバサ……!?」

ツバサ「本当に教えられていたのは……私だってことも」

「2位! 準優勝は……Saint Snowーーー!!」

理亞「!!」

花丸「え……?」

善子「それって、もしかして……もしかしてっ……!!」

「よって優勝は!!」

ツバサ「二人ともありがとう。そして本当に……」

ツバサ「おめでとう」

「今回のラブライブを制したグループは!!」

ルビィ「~~~~っ……!!!」

「スクールアイドル……Aqoursーーーーーーっ!!!」

243: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:22:43.34 ID:+1mHIapW


ワアアアアアァァァァァァ!!!


花丸「や……やった、の……ほんとうに……?」

善子「私たちが……優勝……!?」

ルビィ「うんっ……うん!!」ダキッ

ルビィ「やったんだよ、わたしたち……! やっと……やっと!」ギュウッ

ルビィ「優勝したんだ!!」

善子「る、るびぃっ……」

花丸「ルビィちゃ……」

ルビィ・善子・花丸「うぅ……っああああぁぁぁ!!」

244: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:23:28.96 ID:+1mHIapW
曜「す…ごい、ほんとうに……ほんとうに……!!」

梨子「あくあが、ゆうしょうっ……!」

千歌「わああああああ!! ルビィちゃーーーーん!!!」

「1位Aqoursと2位Saint Snow……この両グループは終盤まで評価は全く同じ! 同着だったのです! しかし!」

「最後の最後、視聴者の投票によって結果が覆りました! その差僅か一票!」

「たった一人の傾きが! 勝利の女神を振り向かせたーーーっ!!」

果南「一票差って……すごいな……」グスッ

ダイヤ「ええ、でもそれは……確かに誰かに届いたということです」

ダイヤ「あの子たちの……想いが……」

245: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:24:21.34 ID:+1mHIapW

鞠莉「…………」

私は続けるわよ、ここで成し遂げるまではね

鞠莉「もう、いいわよね」

鞠莉「私たちは成し遂げたんだって、奇跡を起こしたんだって」

鞠莉「そう言っても……いいのよね?」

鞠莉「……長かった、本当に……」

鞠莉「ながっ……」

鞠莉「……っ……うぅ」

鞠莉「ああああぁぁぁ!!わああああああああん!!」ボロボロ

246: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:25:34.40 ID:+1mHIapW


「アンコール! アンコール!」


ルビィ・善子・花丸「─!」

「アンコール! アンコール!」

千歌「……あははっ、そういえば確かに!」ゴシゴシ

曜「あったよね、大事なやつ!」

千歌・曜「せーのっ! アンコール!」

果南「鞠莉、私たちも!」

鞠莉「ぐすっ……ええ!」

鞠莉・果南「アンコール!」

247: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:26:21.80 ID:+1mHIapW

梨子「ダイヤさん、いきましょう!」

ダイヤ「ええ!」

ダイヤ・梨子「アンコール!」

聖良「……どうやら今年は私たちの番みたいですね、理亞」

聖良「アンコール!」

月「アンコール!」

雪穂・亜里沙「アンコール!」

穂乃果・ツバサ「アンコール!」

248: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:26:55.86 ID:+1mHIapW


アンコール! アンコール!


ルビィ「みんな……」

「ルビィ」

ルビィ「理亞ちゃん…」

理亞「……」フッ

理亞「アンコール!」

黒髪・茶髪「! …アンコール!!」

249: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:27:44.30 ID:+1mHIapW
花丸「ぅ……」ジワ

善子「貴女たち……」

理亞「早く行って、みんなが待ってる」

ルビィ「理亞ちゃん…っ」

理亞「ここから先はあなた達だけのステージ」

理亞「自分のやりたいことを、やってきなさいよ」

ルビィ「……っ……うん!!」

ルビィ「ありがとう理亞ちゃん、私……ライバルが理亞ちゃんで良かった!!」

理亞「お互い様でしょ。さあ、早く」

善子「……ええ!」

花丸「ずらっ!!」

ルビィ「行こうみんな!! もう一度!」

ルビィ「あの夢のステージへ!!」

250: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:29:14.27 ID:+1mHIapW


「ハジマリとオワリの 線など引けないよ」

「いつの間にか また始まる」

「いいな いいな そういうコトにしよう」

「ハジマリ、ロード?」

「ハジマ…リロード!」

251: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:29:57.25 ID:+1mHIapW

善子「モノ足りコト足り ないないだった」

花丸「それならばならば増やしましょう」

「えいっ」

千歌「……なんか懐かしくなるね、この曲聴いてると」

千歌「今までのこととか色々思い出しそうになる」

梨子「……そうね」フフッ

ルビィ「おっとっとっ 大正解 出会ってしまった」

「ひとりじゃないない」

252: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:30:27.42 ID:+1mHIapW

善子「フワっとお叱り謙虚にキャッチ」

善子「したらばタラリと涙が」

「うえーん」

曜「でもそれは、ちゃんと積み重ねてきたってことなんだ」

果南「うん。今までの道を辿れるのは、しっかりと足跡を残してきたから」

善子「おっとっとっと 大失敗」

善子「色んな意味で成長しなきゃ」

253: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:31:10.77 ID:+1mHIapW

ルビィ「何がしたいかな」

善子・花丸「さあね?」

ルビィ「欲張ってみよう!」

ルビィ「一気に叶う夢などないさ」

雪穂「……あなたらしいね。ルビィちゃん」

善子「ハラハラ」  「 Ha! 」

花丸「ムネムネ」  「 Fu! 」

ルビィ「バクバク」  「 Ho! 」

ルビィ・善子・花丸「一歩ずつ近づいて」

254: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:31:56.12 ID:+1mHIapW

「どこから始まった?」   「サンシャインマイロード」

「思い出探るけど」   「サンシャインマイロード」

「あの時かなあの時かも? 心当たりたくさんあった」

鞠莉「そして一人で歩いてきたと思っていた道には」

鞠莉「いつの間にか違う誰かの足跡がたくさんあって!」

「ハジマリとオワリの」   「サンシャインマイロード」

「線など引けないよ」   「サンシャインマイロード」

「いつの間にかまた始まる」

「だから だから」  「 Hey! Hey! 」

「やめられない」   「やめないよ」

255: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:32:37.65 ID:+1mHIapW


「駆け抜けたがる僕らはどこへ」

「ゴー!イースト? ゴー!ウェスト?」


ダイヤ「初めて出会う人、敵だった人、全ての縁を大切にして」

ダイヤ「決して手離さなかったあの子だから……今、この景色がある」

聖良「……そうですね」

聖良「こちらの実力が劣っていたわけではない、パフォーマンスが決め手になったわけでもない」

聖良「ただ、彼女たちの方がほんの少しだけ──誰かに愛されていた」

聖良「あの場で歌うことを望まれていた。私はそう思います」

聖良「そしてそれが……人を笑顔にするアイドルにおいて一番大事なことだということも、私たちは知っている」

聖良「完敗です。悔しいけれど……この場所に立ち会えたことを誇らしく思います」

聖良「おめでとう……Aqoursの皆さん」

256: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/06(日) 18:33:35.14 ID:+1mHIapW


善子「ハジマリとオワリの 線など引けないよ」

花丸「終わりは始まりで クルリとひとまわり」

ルビィ「いつの間にか また始まる」

「ハジマリロード?」


ルビィ・善子・花丸「リロード!」


263: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:21:26.00 ID:6Xw8TMt7


─そして


ワイワイガヤガヤ


鞠莉「えーっそれでは! Aqoursのラブライブ優勝を祝しまして!」

「カンパーイっ!!」

善子「いや、ていうかいつにも増して大人数……14人って」

絵里「本当に私たちも来て良かったの?」

ダイヤ「ええ、賑やかな食卓が好きな方ですから。それに」

ルビィ「私も一度、皆さんと一緒にお食事してみたかったんです」

亜里沙「なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

月「あはは、鞠莉ちゃんには頭上がらないなあ本当に」

穂乃果「いやー、もしかしたら私たちも初めてかもしれないよね! こんなにたくさんの人とご飯食べるなんて!」

穂乃果「あっでも新年のお餅があったか!」

雪穂「あれはまた別だと思うけど……」

264: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:22:08.98 ID:6Xw8TMt7
絵里「そうだわ。ダイヤ、折角なんだからこの機会にみんなに話してあげたら? あなたの今後のこと」

ダイヤ「成程、そうですわね……分かりました」

ダイヤ「皆さん、少し宜しいでしょうか?」

千歌「ん? なーにダイヤさん」

ダイヤ「二年ほど先の話になるのですが……私、大学を卒業後は絵里さんの下に就こうかと思っています」

ダイヤ「なので黒澤家は継ぎません。その役目は」

ルビィ「私、黒澤ルビィが果たすことになりました」

曜「え、ということはルビィちゃん……」

ルビィ「うん、それが最終的に決めた私の答え」

ルビィ「私が将来なりたい自分になるために選んだ……私の進むべき道です」

265: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:23:03.43 ID:6Xw8TMt7


────


タッタッタ

タッタッタッタ……


理亞「……いつまでそうやって追いかけてくるつもり?」タッタッタ

こころ「はあっ、理亞さんの……気が済むまでです……っ……」

理亞「また分かったように」

ここあ「じゃあ少しは立ち止まって……私たちの話聞いてくださいよっ……」

理亞「なんでそうなるの」

ここあ「理亞さんが私たちから離れようとするからじゃないですか……!」

266: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:23:42.55 ID:6Xw8TMt7
理亞「あなた達に構ってる余裕なんてなかったから……なのに」

理亞「気晴らしのランニングにまで付いてきて、そのうえ私の気が済むまで?」

理亞「色々勝手というか……あなた達」

理亞「察しがいいくせにどうしてこういう時だけ空気を読んでくれないの」

こころあ「」ピタッ

こころあ「…………ごめんなさい」

理亞(自覚あり……か)

理亞「だけど、そういう真っ直ぐすぎるところは嫌いじゃない」タンッ

こころあ「!」

理亞「話せば、そのために来たんでしょ?」クルッ

267: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:24:23.52 ID:6Xw8TMt7
こころ「さっきの、ラブライブ決勝戦」

ここあ「理亞さんが優勝すると、思ってました」

理亞「何を言うかと思えば……まあ大方そんなところだろうとは思っていたけど」

ここあ「っ! そんな簡単に流さないでくださいよ!」

こころ「ちょっとここあ!」

こころ「だって! 私たちは本気でそう思ってて! だから投票もSaint Snowに迷わず入れたのに!」

理亞「でも私たちは負けた。優勝したのはAqoursのほう」

理亞「それが間違ってるって言いたいの?」

ここあ「ち、違いますよ! そういうのじゃなくて!」

ここあ「ただ、信じられないってだけで……!」

268: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:25:03.50 ID:6Xw8TMt7
ここあ「確かにAqoursのライブも良かったけど! だけど……!」

ここあ「理亞さんのほうが絶対凄かった! こころだってそう思うでしょ!?」

こころ「それはっ……」

理亞「正直に言えば? 私は否定しない」

こころ「……私も、思ってます」

理亞「そこで本当に言うあたり、やっぱり姉妹よねあなたたち」

理亞「今までが素直すぎたから誤魔化しきれないっていうのもあるんだろうけど」

ここあ「……だって、納得出来ないっていうか……」

こころ「あのライブを見たとき私たち本当に……!!」

理亞「…………」

理亞「なら、今考えてみて」

269: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:25:40.99 ID:6Xw8TMt7
ここあ「えっ……?」

理亞「どうしてSaint Snowが負けたのか、どうしてAqoursが勝てたのか……それを個人の感情論じゃなく」

理亞「客観的に判断して、あなたたちなりに分析した意見を、私に言ってみて」

こころ「──!」

ここあ「……負けた理由を私たちに言わせるんですか」

理亞「私が言っても腑に落ちないでしょ、自分たちが認めないから」

ここあ「だからって、少しきつくないですか」

理亞「出来ないの?」

ここあ「そういう問題じゃっ……!!」

こころ「私が考えるに、今回のラブライブ大会にお越ししてくださった観客の皆様……配信の視聴者も含めてですが」

こころ「それらは大きく分けて、二通りのパターンがあったかと思われます」

ここあ「ちょっとこころ!?」

270: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:26:46.47 ID:6Xw8TMt7
こころ「お姉様たちμ'sの活躍以降、大きな広がりや底上げがされているスクールアイドル界隈ですが」

こころ「ここ近年になってまた大きな盛り上がりを見せ始めました。その影響もあってか会場には新規参入の方も大勢来たわけですが」

こころ「重要なのはその人たちが一体何を求めているのか、というところですよね。それがひいては自分たちへの投票に繋がるわけですから」

理亞「それで?」

こころ「ここあ、続き」

ここあ「っ……つまりその観客たちが求めていたものがさっき言ったパターンのことで、今年は特にそれが偏っていたように見えました」

ここあ「だから今回に限っていえばその要素が各スクールアイドルの支持、その勝敗を大きく左右していたんじゃないかと、思います」

ここあ「そして二分化の内情ですが、まず一つ目に当たるのがレベルの高いライブを観に来た層ですね」

ここあ「話題に取り上げられてるからこそ、どんな凄いライブをやるのだろうかと期待していた人たちがこの層ですね」

ここあ「次に二つ目。これは……純粋にスクールアイドルそのものに興味を持っている層」

ここあ「重要なのはこっちのほうで、レベルの高いライブと言っても決勝に残っている以上、程度の差はあれ全員がその条件を満たしていますし」

ここあ「はっきり言って、そこまで大きな差はつかない。だけど……」

こころ「Aqoursは全グループの中で唯一スクールアイドルの根本になっているものを示しました。結果」

こころ「それが二つ目の方々の支持を大きく得られることに成功し、見事優勝を果たした」

こころ「理屈で説明するなら……そんなところでしょうか」

理亞「……大したものね、本当に」

271: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:28:39.78 ID:6Xw8TMt7
こころ「……あの、どうしてそこまで認めさせようとするんですか。あなたが負けたっていう……事実を」

理亞「…………」

理亞「強くなってほしいから」

理亞「私のよく知る人物はずっとそうだった。夢以前に苦い現実を味わっていて、勝利に届かなくても、負けても、それを受け止める強さがあった」

理亞「彼女が勝利を手に入れたのは、歌唱力とかダンスの上手さとか、そういう表面上のものだけじゃない理由も確実にある」

理亞「まずはそれを理解しなさい。そしてそのうえで」

理亞「現実を受け入れて乗り越えるの、それが出来ない人は決して強くなれないから」

こころあ「…………」

272: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:31:22.47 ID:6Xw8TMt7
理亞「大丈夫、あなたたちはもう知っている」

理亞「心の底から勝ちたいという気持ちを、負けた悔しさを、そのうえで勝敗だけにこだわらず」

理亞「スクールアイドルを楽しむことの大切さを、自分の中の大好きを」

理亞「もうちゃんと分かってる、誰に教えられるわけでもなく」

理亞「その目で見て、学んで、だからここまで来たんでしょ?」

理亞「充分すぎるくらい優秀よ。一年のときの私よりずっと、ねえ、私が言ってる意味……わかる?」

理亞「あなたたちには素質があるの、自分たちが思っている以上にね。そしてラブライブで負けた私は、もう王者でも何でもない」

理亞「あなたたちが目指してたSaint Snowの鹿角理亞は、もういないの」

273: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:32:17.58 ID:6Xw8TMt7
こころあ「…………」

理亞「けど、それでもまだ私のことを慕っているっていうのなら……憧れてるっていうのなら」

理亞「こころ、ここあ」

こころあ「!」

理亞「今度はあなたたちが私をラブライブに連れていって」

こころ「……っ……うぅ」

ここあ「……あぁ……っ」

理亞「返事は?」

こころあ「……はいっ!!」ポロポロ

理亞「…………」フッ

理亞「私は先に行くけど、いつか必ず追い付いてきなさい」クルッ

理亞「またね、待ってるから」

274: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:33:13.19 ID:6Xw8TMt7


========


聖良「おかえりなさい。遅かったのね」

理亞「ちょっと放っておけなかったから」

聖良「そう」

理亞「あの人達はいないの?」

聖良「打ち上げだって、だから今いるのは私だけ。あとは……」

黒髪「えーっと、どうも……」

茶髪「去年に引き続きお呼ばれしちゃいました……」

理亞「いや、いい。寧ろ安心した」

275: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:33:59.30 ID:6Xw8TMt7
理亞「ご飯、冷めてない?」

聖良「大丈夫よ、温め直したところだから」

理亞「そう」

聖良「さ、召し上がれ」

理亞「……いただきます」

黒髪・茶髪「いただきます」

パク  モグモグ

理亞「……美味しい」

理亞「……去年のルビィも、こんな気持ちだったのかな」

聖良「そうかもしれないわね」

276: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:35:31.32 ID:6Xw8TMt7
理亞「さっきは偉そうに言ったけど、正直私もまだ全部は受け止めきれてない」

理亞「全身全霊をかけて挑んだ勝負で負けたのは、初めてだったから」

「…………」

理亞「でもどこか、スッキリしている自分もいて……何か、解放されたような」

理亞「だから、終わったとき一緒に泣けなくて、悪かったと思ってる。ごめん」

黒髪「理亞ちゃん、ちょっと私たちのこと舐めてない? これでも私たち、理亞ちゃんとは二年以上付き合ってきたんだよ?」

茶髪「そうそう、私たちが涙もろいだけで。わざわざ見せてくれなくったってちゃんと伝わってるって」

理亞「……ありがと」

黒髪「それより4人分って結構な量ですよね、一人で作るの大変だったんじゃないですか?」

聖良「いえ、慣れてますから。それに手伝ってくれる人もいたので」

茶髪「へえー、これだけテキパキ作れてしかも美味しいなんて憧れちゃうなあ」

理亞「……」ズズッ

理亞「───!!」

277: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:36:12.49 ID:6Xw8TMt7
聖良「美味しいわよね、そのお味噌汁。作り方教えてもらえば良かったわ」

理亞「…………」ズズッ

黒髪「理亞ちゃん?」

理亞「……っ……」ポロポロ

茶髪「えっ、ちょ……どうしたの突然!?」

理亞「なんでもない……っ……あと姉様は別に教わらなくていい」

理亞「私これ、嫌いだから」

聖良「そう、ならやめておくわ」

理亞「」ズズッ……コトン

理亞「おかわり」スッ

聖良「はいはい」

278: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:37:18.19 ID:6Xw8TMt7


─翌日、矢澤家


虎太郎「ねえにこにー、にこにーってば」

にこ「うるさいわねえ、チャンネルなら変えないわよ。今いいところなんだから」

虎太郎「そうじゃなくてはい、にこにー宛て」ピラッ

にこ「何よこれ、ファンレター?」

虎太郎「絶対違うと思う」

にこ「少しは配慮しなさいよ」

虎太郎「意味合いが違う、これ理亞さんからの手紙だから」

にこ「はあ? なんであんたが持ってるのよ」

虎太郎「さっき会った時渡してくれって頼まれた」

にこ「いい度胸ね、私の弟を使いっ走りにするなんて」

虎太郎「半分はにこにーのせいなんだけど」

にこ「何か言った?」

虎太郎「いや別に」

279: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:38:15.52 ID:6Xw8TMt7
にこ「ふんっ……しかし手紙ねえ、どうせ碌なの書いてないんでしょ」

にこ「理亞のことだから」カサッ

量が少なかったです

ごちそうさまでした。 理亞

にこ「…………」

虎太郎「どうだった?」

にこ「ん」ズイッ

虎太郎「あー、成程ね」

にこ「ほらね、私の言ったとおりでしょ、生意気なのよあの子」

280: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:39:16.32 ID:6Xw8TMt7
虎太郎「良かったねにこにー、理亞さん元気になって」

にこ「別に? っていうか逆に疲れたわ私は」ハアーッ

にこ「ほんと、手間のかかる子がいると苦労するというか」

にこ「……」

にこ「虎太郎、私ちょっと息抜きに出てくるから留守番お願いね」

虎太郎「はーい。いってらっしゃい」

バタンッ

虎太郎「…………全く」カサッ

昼には出るのでもし用があるなら午前中にお願いします(小文字)

虎太郎「素直じゃないんだから、どっちも」

281: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:39:56.57 ID:6Xw8TMt7
理亞「……」スタスタ

にこ「ねえ! ちょっと!」

理亞「!」ピタッ

にこ「そこの私をリスペクトしたツインテール女子!」

理亞「……」

スタスタ

にこ「……Saint Snowの鹿角理亞!」

クルッ

理亞「あ、にこさんでしたか。こんなところで会うなんて偶然ですね」

にこ(露骨っ……)ピクピク

にこ「…そうね、クリスマスといいここまで偶然が重なるともはや奇跡的だわ、もしかして運命だったりして」

理亞「出会って早々、鳥肌が立つようなことを言わないでもらえますか?」

にこ「雪女のくせになに生温いこと言ってんのよ。この程度の耐性もないわけ?」

理亞「はあ!? 誰が雪女ですか!」

にこ「あんた以外に誰がいるってのよ!」

282: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:40:39.36 ID:6Xw8TMt7
理亞「ふん、こんな日まで嫌味なんて本当に大人げない人ですね」

にこ「先に吹っ掛けてきたのはそっちでしょ、そのくせしてこの言い様なんだから全くとんだ面の皮の厚さだわ」

にこ「でもまあ、それだけ喧しいなら曇ることもなさそうね」

にこ「憑きものも落ちたみたいだし」

理亞「! そうですね、おかげさまで」

にこ「ご飯、食べたんでしょ?」

理亞「はい」

にこ「どうだったわけ」

理亞「美味しかったですよ」

にこ「あっそ。まあ当然よね」

理亞「にこさんの作った料理ですし、不味いことはないでしょう」

にこ「何よ、やけに素直じゃない」

理亞「私、にこさんほど捻くれてはいないので」

にこ「あんたどこまでいっても可愛くないわね」

283: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:41:22.39 ID:6Xw8TMt7
理亞「あの、虎太郎くんから聞きました。にこさんが私のことを褒めていたって」

にこ「あの子は、また余計なことを……!」

理亞「けれど私は、その言葉に応えるほどの成果をあげることが出来ませんでした」

にこ「…………」

理亞「だからその、すみ……「謝るんじゃないわよ」

理亞「!」

にこ「そういうのはね、自分が納得のいかないものを観客に見せてしまったときに言うものなのよ」

にこ「理亞、あんたが一番分かってるでしょ。昨日の自分たちのライブがどれほど良かったか、どれだけ素晴らしかったのか」

理亞「……」

にこ「だから謝る必要なんてない、寧ろ堂々としていなさい」

にこ「いつもみたいに生意気なあんたらしく、ね」

理亞「……相変わらずですね、にこさんは」

理亞「中身も、あと外見も」ジッ

にこ「相変わらずなのはどっちよ、腹立つわね」

284: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/10(木) 05:42:11.19 ID:6Xw8TMt7
にこ「でもまあいいわ、今日だけは特別に許してあげる」

理亞「珍しいですね、さっきのもそうですけど」

理亞「にこさんが私に対して直接褒めてくれるだなんて」

にこ「当たり前でしょ。だってもしそこまでのものじゃなかったら」

にこ「私があんたなんかに票を入れるわけないんだから」

理亞「──!!」

にこ「何よ?」

理亞「……いえ」

理亞「ありがとうございました」

理亞「きっと一生、自慢できると思います!」ニコ

にこ「……やっとアイドルらしい笑顔を見せたわね」

にこ「そう、それでいいのよ」クス

290: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:37:21.86 ID:Ayj125qi


それから2日後……


3月4日

浦の星女学院


ガラガラ……

善子「まーだやってる」

花丸「あ、善子ちゃん」ペラッ

善子「いくら卒業式が始まるまでは自由にしていいって鞠莉に言われたからって自由すぎでしょ」

花丸「じゃあそのペンキの跡はなに?」

善子「別にあんただけに言ったわけじゃないし」

花丸「そっか」

善子「何読んでるの?」

花丸「なんてことない普通の文庫本だよ」

善子「ふーん、特に意味とかはないんだ」ペラペラペラ……

花丸「ここで過ごす時間も最後になるからねえ」

花丸「なくても居たかったってだけだよ」

291: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:38:35.43 ID:Ayj125qi
善子「最後、か……そういえばだけど」

花丸「ん?」

善子「学校生活って括りだと花丸が一番私との付き合い長かったのよね」

花丸「ああ~、ルビィちゃんは合宿で東京に行ってたりしてたもんね」

善子「まあだからってわけでもないけど、その」

善子「三年間、一緒にやってこれたのがあんたで良かったわ」

花丸「……お互い、助けたことも助けられたこともあったよね」パタン

花丸「もし、一番最初に出会ったのがアオちゃんじゃなくて善子ちゃんで、善子ちゃんがルビィちゃんのことを好きにならなかったら」

花丸「マルたち、もっと違う関係になってたのかな」

292: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:39:38.41 ID:Ayj125qi
善子「何よ、らしくもないもしもの話をしちゃって」

花丸「ごめん、これっきりだよ。でもそれくらい善子ちゃんはマルの中で特別なお友達だから」

善子「まあ、言われて悪い気はしなかったけどね」

花丸「ルビィちゃんが悲しむよ?」

善子「あんたが言うな」

花丸「あ、それもそうだね」

善子「あのねえ……ぷっ」

善子・花丸「ふふっ……あはははははは!!」

善子「さてと、それじゃあ迎えにいきますか」

花丸「うん、主役がいないと物語は始まりも終わりも出来ないもんね」

293: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:40:42.14 ID:Ayj125qi

ルビィ「…………」ポーン♪

鞠莉「押すだけじゃなくて弾いてみればいいのに」

ルビィ「鞠莉さん、ううん私は弾けないから」

鞠莉「でも興味はあるみたいね」

ルビィ「ずっと前からね、いいなぁって思ってたから」

ルビィ「あんな風に弾くことが出来たらって」

鞠莉「……なら、教えてもらったら?」クスッ

ルビィ「え?」

294: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:41:31.29 ID:Ayj125qi
善子「全く、そんな風に思ってたなら言いなさいっての」

善子「だいぶ我がままになったかと思ったら変なところで気を遣うんだから」

ルビィ「善子ちゃん」

花丸「マルも聞いてみたいな、ルビィちゃんのピアノ」

ルビィ「花丸ちゃんも」

鞠莉「迷う必要ないんじゃない? これが正真正銘、ここで弾けるラストチャンスなんだから」

善子「それに心配しなくても大丈夫だと思うわよ?」

善子「だってあなた、あの梨子の妹なんだから」

ルビィ「そうだね……じゃあ、お願いします」クスッ

~♪  ~~♪

295: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:42:17.08 ID:Ayj125qi


========


鞠莉「……次に卒業生の答辞と卒業証書の授与に移りたいと思います」

鞠莉「それでは卒業生代表黒澤ルビィ、前へ」

ルビィ「はい」

ルビィ「本日はご多用のところ私たちの卒業のためにご臨席くださいました皆さまへ心より感謝申し上げます」

ルビィ「思い起こせばこの三年間、様々な出来事が起こりましたが」

ルビィ「それも廃校といった特別な事情をもったこの学校だからこそ起こり得た運命なのではないかと」

ルビィ「私は今になって思うのです」

善子「…………」

ルビィ「確かに、何かを失うというのは恐ろしいことだと思います」

花丸「…………」

296: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:44:05.23 ID:Ayj125qi
ルビィ「しかし、だからこそその日々の中で得た経験や教訓……なにより」

ルビィ「築き上げた信頼、そして絆は私たち自身を更に大きく成長させてくれた。より高いところまで飛ばしてくれた」

ルビィ「その翼こそが何物にも代えがたい財産であり、この浦の星女学院が私たちに与えてくれたものだと」

ルビィ「私はそう信じています」

ルビィ「これから私たちが輝いていくために、輝き続けるために」

ルビィ「この翼で明るい未来へと羽ばたいていきたいです」

ルビィ「この学校のように精一杯、一生懸命に、どこまでも」

ルビィ「浦の星に刻まれた数々の素晴らしい歴史、その最後の一幕を飾られることを誇りに思い、答辞とさせていただきます」

ルビィ「卒業生代表、黒澤ルビィ」

鞠莉「……本当に立派になっちゃって」

鞠莉「私も、今この瞬間に巡り合わせたことを誇りに思うわ」

鞠莉「きっと、いつまでも……卒業おめでとう!」

パチパチパチパチ!!


……



297: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:45:00.98 ID:Ayj125qi

善子「終わったわね、卒業式」

花丸「うん。あとはこの門を閉めるだけ、それでこの学校とはさようなら」

ルビィ「閉めるのは、みんなで一緒にやろう。せーのっ」

ガラガラ

ガラガラガラ

ルビィ「…………」ピタッ

鞠莉「……ルビィ? どうしたのよ」

ルビィ「……私なりに最後、この学校をどうしようかって色々考えたけど」

ルビィ「やっぱり最後は鞠莉さんに終わらせてほしいなと思って」

鞠莉「私……?」

善子「賛成。ここに一番思い入れがあるのは他でもない鞠莉でしょ」

花丸「異論無しずら」

298: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:45:34.02 ID:Ayj125qi
ルビィ「みんなもそれでいいよね?」

「「「もちろん!」」」

鞠莉「あなた達……」

ルビィ「鞠莉さん、これが私たちの感謝の気持ちです」

ルビィ「5年間、本当にお疲れ様でした!!」

「「「お疲れ様でした!!」」」

鞠莉「……全くもう、姉妹ともどもやってくれるんだから」

鞠莉「5年、ね……振り返ってみると随分濃い体験をしてきたものだわ」

鞠莉「初めはこんなことになるなんて思いもしなかったのにね」

鞠莉(そう、あの時は……だけど)

299: すみません<<290の前が抜けていました(もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:48:20.65 ID:Ayj125qi


────


ツバサ「もう行くのね?」

ルビィ「はい」

ツバサ「そう……来年からスクールアイドルとしてのあなた達の姿を見られなくなるのは少し寂しいけど」

ツバサ「この二年間、本当に楽しかったわ。今までお疲れ様」

ルビィ「いえ、こちらこそ!」

300: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:49:09.94 ID:Ayj125qi
穂乃果「ルビィちゃん、次来るときは一緒にライブ見ようね!」

ルビィ「あ、それなら私μ'sのライブ映像がいいです!」

穂乃果「おーいいねー! 賛成!」

ルビィ「雪穂さんも!」

雪穂「もちろん、ルビィちゃんから見たμ'sがどんな感じなのか色々教えてほしいな」

ルビィ「はい! それじゃあ改めまして……」

ルビィ「今まで長い間、本当にお世話になりました!!」ペコリ

「「「ありがとうございました!!」」」

301: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:50:24.57 ID:Ayj125qi
穂乃果「行っちゃった。あーあ本当に終わっちゃったんだねえAqoursとSaint Snow……」

穂乃果「ツバサさんも言ってたけど寂しくなるね」

にこ「なにしんみりしてるのよ、別にあの二組がいなくなったからってラブライブが盛り下がるわけじゃないのよ?」

穂乃果「えー、にこちゃんは寂しくないの?」

にこ「託された側は後ろを向いてる暇なんてないのよ、そして私はそれを見届けなくちゃいけないの」

にこ「これから忙しくなるわよ、次世代の波はもう来ているんだから」

ツバサ「ふふっ、そうかもしれないわね」

絵里「へえ、にこがそこまで言うってことはもう目を付けてるスクールアイドルがいるのね?」ニヤニヤ

にこ「当然、次は音ノ木坂が返り咲く一年になるわよ。目にもの見せてやるんだから」

ツバサ「あら、言ってくれるじゃない。次も決勝の切符はUTXが頂くわよ」

穂乃果「あははっ! 確かにこれからも楽しいことが起こりそうだねー!」

穂乃果「いやースクールアイドルはまだまだ終わりそうにもないや!!」

302: ここから298の続きになります(もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:52:13.43 ID:Ayj125qi


────

──


ダイヤ『え? 私がスクールアイドルを始めた理由、ですか?』

ダイヤ『……そうですわね、鞠莉さんにはそろそろ、話しておくべきなのでしょう』

ダイヤ『鞠莉さん、私には……どうしても成し遂げたいことがあるのです』

ダイヤ『ええ、そのためにこの活動を始めたと言っても過言ではないくらい……でも』

ダイヤ『最近は……そうですね、それとはまた別に』

ダイヤ『鞠莉さんと果南さん、二人とこうして一緒に過ごす時間も』

ダイヤ『案外悪くないのかもしれないと、そう思えてきましたの』

ダイヤ『前よりちょっとだけ、楽しくなってきましたから』

303: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:53:17.36 ID:Ayj125qi

梨子『あ、やっぱり! もうー鞠莉さんまたこんなに仕事抱えて!』

梨子『私も手伝うって言ったのに……今に倒れますよ!』

曜『まあまあ梨子ちゃん……鞠莉ちゃん、これ運べばいいんだよね? 私も一緒にやるよ!』

曜『それとドリンク! 喉渇いたでしょ? はいどうぞ』

梨子『はい座って座って! この仕事は私と曜ちゃんがやりますから、鞠莉さんはそこで休んでいること!』

梨子『いいですか? ぜっっったいに! 動かないでくださいね!!』

曜『観念した方がいいよ鞠莉ちゃん。こういう時の梨子ちゃん、結構頑固なんだから』

梨子『曜ちゃんっ!』

曜『ご、ごめん梨子ちゃん……つい』

304: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:54:00.25 ID:Ayj125qi

果南『やっほー鞠莉。ちょっとお願いが……そうなんだよ、いつもの。一応まだ時間早いからとは言ったんだけどさ』

果南『千歌ってばいつになく張り切ってて……私も気持ちわかるから説得し辛いというか、そのまま押し切られちゃって』

千歌『まーりちゃん! 特訓やるから体育館貸してー!!』

果南『ね? 朝からずっとこんな調子。参るよ、ほんと』

千歌『だってみんな頑張ってるから私も負けてられないなーって! それに』

千歌『自分でもちょっとずつ良くなってきてるのが分かって、なんか……ワクワクするの!』

千歌『だから今よりもっと上手くなって! それで! 全員ビックリさせてやるんだ!』

千歌『えへへっ鞠莉ちゃんにもいつか見せたいなー! 特訓の成果!!』

果南『ふふっ……じゃあ鍵も貰ったことだし、早速やろっか千歌』

千歌「おー! 鞠莉ちゃんありがとー! またねーっ!!』

305: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:54:42.71 ID:Ayj125qi

ルビィ『あ、来た来た! 鞠莉さんこっちー!』

善子『今日は久々に仕事がないんですって? ようやく放課後付き合ってもらえるのね』

花丸『マルたち今日のために色々考えてたんだあ、どこに行こうかなって。それで決めたのが……』

ルビィ『洋服店!』

善子『ゲーセン!』

花丸『本屋さん!』

ルビィ・善子・花丸『……え?』

306: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:55:15.82 ID:Ayj125qi
善子『いやいやちょっと待ちなさいよ、それあんたたちが行きたいところでしょ!』

ルビィ『違うもん! 鞠莉さんと一緒に行くから意味があるんだもん! それにそういう善子ちゃんだって!』

善子『普段から仕事に追われている人こそ! こういうストレス発散の機会を与えるべきなのよ!』

花丸『だったらカフェスペースがある本屋さんのほうがゆっくり出来てリラックスになるよ!』

善子『いいやゲーセン!』

ルビィ『お洋服だって!』

花丸『本屋さんずら!』

ルビィ・善子・花丸『~~~~っ!! 鞠莉(さん)!!』

ルビィ・善子・花丸『どれにするの!!?』

307: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/12(土) 14:56:18.18 ID:Ayj125qi

鞠莉「…………」クスッ

鞠莉「今なら胸を張って言える、ここに来て良かった。ってね」ス…

ガラガラガラ……ガンッ

鞠莉「……浦の星女学院生徒一同、整列!!」

ザザッ

鞠莉「只今をもって本校、浦の星女学院を廃校及び閉校いたします!」

鞠莉「長い間本当に……ありがとうございました!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

鞠莉(ありがとう。そしてさようなら。私の───)

鞠莉(青春の日々よ)

311: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:11:35.20 ID:iBWeu1+9


その夜……

内浦、海岸通り


ザッザッ


ルビィ「善子ちゃん、今日は月が綺麗だねぇ」

善子「そうね、今日の満月はやけにはっきり見えるわ」

善子「……良かったの? 花丸と一緒にいなくて」

ルビィ「いいよ。私は善子ちゃんと一緒にいたかったし、それに」

ルビィ「やっと訪れたその瞬間に私が立ち会うのは、やっぱり違うよ」

ルビィ「あの時間は、彼女と過ごした皆だけのものだと思うから」

ルビィ「私の夢のことももう話したしね。だからもういいの」

善子「そう……ならここからは、私とルビィの最後の時間になるのね」

善子「私たち、今日で別れるんだから」

ルビィ「……うん」

312: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:12:54.87 ID:iBWeu1+9

花丸「…………」

ダイヤ「やはりここにいましたか」

花丸「ダイヤさん。それに……小父さんと小母さんまで」

ダイヤ「今日は大事な日ですからね。高校卒業の日、そして」

ダイヤ「あなたの18回目のお誕生日」

花丸「みんなも覚えてたんだ……ってそれはそうだよね」

ダイヤ「忘れたくても忘れられませんわよ、あの子が……サファイアがどれだけこの日を待ち望んでいたことか私たちが一番よく知ってますもの」

黒澤父「ああ、高校卒業したら結婚するというのは散々聞かされたことだからな」

黒澤母「その大人の定義をサファイアに教えたのはあなたですよ?」

黒澤父「まあ、確かにそうなんだが……」

黒澤父「花丸さん、よくここまで娘を支えてくれたね。ありがとう」

黒澤母「あなたのおかげでサファイアも、とても満足していると思いますわ」

ダイヤ「それも得意げに、どう!?私のマルちゃん凄いでしょ!ってね」

花丸「ふふっ、言いそうだねアオちゃんなら」

313: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:13:32.25 ID:iBWeu1+9
黒澤母「花丸さんも進路はもうお決まりに?」

花丸「はい、どうしようかって何回も迷ったけど」

花丸「やってみたいって気持ちには敵わなくて、それに」

花丸「何かに挑戦する人がどれほどキラキラ輝いているかは、もう知っているので」

黒澤母「そうですか」クスッ

花丸「はい。全部スクールアイドルを通して学んだことです」

黒澤父「うちのルビィも言ってたよ、自分の将来を私たちに語ったときにね」

黒澤父「もっとも、その将来像を初めに聞いたときは流石に面食らったがね」

黒澤母「ええ……全く、あの子はいつから」

黒澤母「あんなに無茶苦茶言う子になったのかしらね」フフッ

314: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:14:15.88 ID:iBWeu1+9

黒澤母『そんな顔をしてわざわざ家へ帰ってきたということは』

黒澤父『何かあったのか?』

『はい』

ダイヤ・ルビィ『お話しがあります』

黒澤母『……成程』

黒澤父『言ってみなさい』

ダイヤ『私は……実家を継がないと決めました』

黒澤母『──!!』

315: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:14:43.16 ID:iBWeu1+9
ダイヤ『自分自身を見つめなおすためにも大学を卒業した後、ある方の下に師事し見聞を広めようと思っています』

黒澤父『絶縁覚悟でか?』

ダイヤ『はい。そのつもりで本日お伝えに参りました』

黒澤父『そうか。自分で決めたことなんだな』

ダイヤ『ええ、もう言い訳の材料は用意しておりません』

ダイヤ『全ては私が決めたこと。そこだけは一点の曇りもございません』

316: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:15:33.48 ID:iBWeu1+9
黒澤母『ダイヤ……』

黒澤父『……いいだろう』

黒澤母『いいってあなた! では後継ぎは……』

ルビィ『私がやる』

黒澤母『! ル、ルビィが……? でもルビィには』

ルビィ『アイドルならやらないよ。高校でもうおしまいにする』

317: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:16:17.43 ID:iBWeu1+9
黒澤母『それって』

黒澤父『成程な……しかしルビィ、ダイヤ。今一度だけ言っておくぞ』

黒澤父『その選択に、お前たちは後悔しないんだな?』

ダイヤ『』コクリ

黒澤父『お前はどうなんだ、ルビィ』

黒澤母『……』

ルビィ『……その返事の前に言っておきたいことがあるの』

ルビィ『お父さん、お母さん、私ね──』

ルビィ『夢が出来たの』

318: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:16:47.92 ID:iBWeu1+9
ルビィ『やっと見つけた、なりたいものがある。でもその前に皆に恩返ししたいと思ったの』

ルビィ『今まで私を助けてくれた人、大切な人……友達、家族。みんなに』

黒澤父『だから黒澤家を継ぐことにしたと?』

ルビィ『うん、その為にアイドルが足枷になるっていうならスッパリ切ろうとも思った』

ルビィ『だからアイドルはやらないって決めたの。少なくとも今はね』

黒澤母『……今?』

319: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:17:41.48 ID:iBWeu1+9
ルビィ『でもいつか、その恩返しが全部終わったら』

ルビィ『私はアイドルになるよ。そしてここからも離れない、黒澤家は継ぎ続ける』

黒澤父・母『!?』

ダイヤ『……はぁ!? ルビィあなた、私には黒澤家を継ぐとしか言ってなかったじゃない!』

黒澤母『そ、それに第一そんなことが本当に出来るとは……!』

黒澤父『ルビィ……少し甘く見ているんじゃないのか、世の中を』

ルビィ『だから? それに、そう思ってるならそれが実現出来るようにみんな私に協力してよ』

『『『!!!??』』』

ルビィ『だって私は絶対にやめないし、諦めるつもりもないもん。やりたいことはどんなことでもやりたいし』

ルビィ『なりたいと思ったものには全部なる! たとえどんなに時間がかかっても、どんなに無理って言われても! それでも!』

ルビィ『死ぬまで夢を追い続ける! 追い続けられる人でいたい! それが私の夢だから!』

320: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:18:45.56 ID:iBWeu1+9

花丸「そんなこと言ったんだルビィちゃん」

花丸(そっか、だからあの時善子ちゃんは)

黒澤母「あまり驚かないのですね」

花丸「今のルビィちゃんならそれくらい言っても不思議じゃありませんから」

ダイヤ「そうですか、やはりあなた達はお互いに分かり合っているのですね」

花丸「マルの場合は時間がかかりすぎたけどね」

ダイヤ「それでもですわ。時に花丸さん、話は少し戻りますが」

ダイヤ「貴女、卒業したらどうするつもりですか?」

花丸「そういえば、ダイヤさんには入学する前にも同じようなこと聞かれたっけ」

花丸「あのときははぐらかしちゃったけど、今は自信をもって言えるよ」

花丸「マルはアイドルになりたいんだって」

321: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:19:32.25 ID:iBWeu1+9
「…………」

花丸「マルはルビィちゃんみたいにあれもこれもなんて出来ないし」

花丸「昔から特別可愛いって言われたこともなくて、アイドルの知識だってたくさん持ってるわけじゃないけど」

花丸「あんな風に、みんなが驚くぐらい急速に成長したりすることも出来ないけど」

花丸「それでも……やってみたいって思ったから、やるよ。マルも」

花丸「何かを想い続ける気持ちなら、絶対に誰にも負けないから」

花丸「アオちゃん、遅くなってごめんね。でも決めたよ」

花丸「マル、頑張るからね。途中で挫けそうになっても、折れそうになっても最後までやりきってみせるから」

花丸「ルビィちゃん、善子ちゃんと一緒にやったスクールアイドルみたいに。だから安心して」

花丸「どんなときだって、大好きがあれば……」

「ダイスキがあればダイジョウブ!」

「だもんね!」

花丸「───!?」バッ

322: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:20:16.87 ID:iBWeu1+9
「もう、そんなにビックリすることないのに」

花丸「えっ、あ、あれ?」

ダイヤ「お母様、お父様、いま……」

黒澤父「……ああ、いやしかしこれは」

黒澤母「一体どういう……」

花丸「アオ、ちゃん……? なんで……」

花丸「本当に、そこに、いるの? 嘘じゃない……?」

「えーひどーい! マルちゃん私の声もう忘れちゃったのー?」

「本物に決まってるじゃん! ほ・ん・も・の!」

323: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:20:58.24 ID:iBWeu1+9
黒澤母「じょ、冗談でしょう……いくらなんでも非科学的すぎます」

ダイヤ「それこそ、夢でもない限り……」

「あー駄目だなー、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも! それ悪い癖だよ」

「なんでもかんでも理由付けようとしてさ、ほんっと頭硬いんだから」

「いいじゃん別に、奇跡の一つや二つあったってさ」

「私の愛が、大好きって気持ちが、奇跡を呼び起こした」

「もう10年以上もずーっとマルちゃんのこと見てきたんだもん、今日くらいそんなことがあったってバチ当たらないってば!」

「ねーマルちゃん?」

花丸「……アオちゃん。ライブ」

「ん?」

花丸「マルのライブ、ちゃんと見てくれた……?」

324: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:21:48.06 ID:iBWeu1+9
「もちろん! 見ていたよ、ずっと」

「だって私、マルちゃんの一番のファンなんだから!」

花丸「!!」

「それにお姉ちゃんが作ったAqoursも私だーいすき!!」

ダイヤ「─! あ……」


ただ、彼女たちの方がほんの少しだけ──誰かに愛されていた


ダイヤ(もし、もしも、本当に奇跡があるとして……それが)

ダイヤ(あの瞬間もそうだったのだと、願ってもいいのなら……っ)

「私の大好きな二人がいるのに、応援しないなんてありえないよ」

ダイヤ「……間違って、なかった……」

ダイヤ「私が……私たちが…やってきたことはっ、ぜんぶ、むだなんかじゃなかった…!!」ポロポロ

325: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:22:42.57 ID:iBWeu1+9
「もう泣かないでよお姉ちゃん、折角の美人が台無しになっちゃうよ?」

「でも、それだけ今まで頑張ってくれたってことなんだよね。私のために」

「ありがとうねお姉ちゃん。ずっと言葉に出来なかったけど……私すっごく嬉しかった!」

ダイヤ「」ポロポロ

「お父さんも、いつも私の我がまま聞いてくれてありがとう」

「私がいっつも楽しいこと出来たのお父さんのおかげだもんね! あと結婚認めてくれるよね!?」

黒澤父「…………ああ、お前の好きなようにしなさい」

「お母さんは私のお話を真っ先に聞いてくれたよね」

「私ね、お姉ちゃんやお父さんが私の言うことに反対してもお母さんならきっと大丈夫だって、そう思ってた」

「もっとたくさんお喋りしたかったなあー! お母さんからもっと色んなこと教えてほしかった!」

黒澤母「……っ……わたしも……!」ポロポロ

326: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:23:18.08 ID:iBWeu1+9
「最後に、マルちゃん」

花丸「……うん」

「マルちゃんはえーっと……言いたいことたくさんありすぎて逆に話すの難しいなあー」

「でもやっぱり、うん……まずはこれだよね」

「私との約束、守ってくれてありがとう」

「私のことを忘れないでくれて、愛し続けてくれて……ありがとう」

「マルちゃんが私のこと、ずっと想っていてくれたから……きっと」

「私は今、ここにいられるんだよね」

花丸「……アオちゃん」

「なあに?」

327: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:24:28.90 ID:iBWeu1+9
花丸「マルのお話、ちゃんと聞いてくれてた?」

「聞いてたよ」

花丸「学校のことも、ルビィちゃんのことも、善子ちゃんのことも」

花丸「スクールアイドルのことも、夏休みにあったことも、クリスマスのことも」

花丸「イタリアのことも、ラブライブのことも……マルが」

花丸「マルがどれだけ、アオちゃんに会いたいと思っていたのかも……全部、聞いてくれてた?」

「うん、ちゃんと全部覚えてるよ!」

花丸「……そっ、か……そう、だったんだ」

花丸「だったら、マルはずっと……勘違いをしていたんだね」

328: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:25:56.34 ID:iBWeu1+9


名前のような生き方をしたいと思った。

その花に与えられた言葉のように、それを体現できる自分であれたらと


誰かへ贈るものとは別に、ずっと自分の胸の内に秘めていたものがある

いつだったか、貴女へ渡すことを躊躇ったピンク色のチューリップ

「愛の芽生え」「誠実な愛」

その言葉を揺らぐことなく、貫き続けられるように

彼女にいつまでも愛を与えられるような、そんな存在になれたらと……あの日そう思った。

でも……それは間違いだった

329: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:27:35.92 ID:iBWeu1+9


皆から愛されてるアオちゃんなら分かるけど

違う。


なんでアオちゃんに会えないの

違う。


会わせてよ

ちがうんだ。そうじゃなかった

本当はいつもそばにいたんだ


いなくなっても愛していこうと決めた、なのに

どうして

どうして今まで、気付かなかったんだろう


アオちゃんじゃない、本当に愛されていたのは

マルのほうだったんだ


花丸「最初に出会ったときから、ずっと……ずっと!!」

330: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:28:32.37 ID:iBWeu1+9
「マルちゃん」

「私、これからもずっとマルちゃんのこと応援し続けるからね」

「アイドルになっても、アイドルをやめても、たとえどこか遠くに行ってしまったとしても」

「私はマルちゃんの始まりと終わりを、いつまでも見守っているから」

花丸「うん……うんっ!!」

花丸「マル頑張るよ! 今よりもずっと!ずっとずっと!!」

花丸「たくさん頑張って!いつかトップアイドルになって!そして!」

花丸「黒澤家に相応しい人間になってみせるから!!」

「……じゃあ、ここからまたスタートだね」

331: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:29:47.45 ID:iBWeu1+9

「ねえ、歌ってよマルちゃん」

花丸「歌うの? 今から?」

「大丈夫!だって今日はこんなにまあるいお月様が出てるんだもん!」

花丸「……そうだね」クスッ

花丸「それじゃあ、一曲だけ」

花丸「~~♪」


「やっぱり綺麗な声だなあ……ふふっ」


「卒業おめでとう。マルちゃん」

332: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:30:45.88 ID:iBWeu1+9

善子「生涯死ぬまで夢を追い続けられる人になりたい、そして」

善子「同時に誰かの夢を応援し続けられる人になりたい。ルビィは私にそう言ったわよね」

ルビィ「うん、二つ目まで言ったのは善子ちゃんだけだけど」

善子「まあ、一つ目だけでも相当無茶なこと言ってるからそれで十分あんたのヤバさは伝わると思うけど」

ルビィ「酷いなぁ善子ちゃん」

善子「あんただって自分で自分のことろくでもない女って言ってたじゃない」

ルビィ「それはそうだけど」

善子「だから私にこうお願いしたかったんでしょ? 自分の理想もだけど私の夢を叶える手伝いもしたいから」

善子「そのためにお互い成長するまで一回離れようって、一緒にいると甘えるだろうからって」

ルビィ「ふふっ、正解」

善子「マジでスパルタよね、普通そこまでする? しかもさ」

善子「それで文句言ったらどうするのって聞いたら、それでも押し通すって」

善子「あんたが一番、傍若無人極めてるじゃないの」

333: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:31:17.76 ID:iBWeu1+9
ルビィ「まあ自分でもこんな人が近くにいたら嫌だなぁって思う」

善子「自覚あるのね、でも変えるつもりは絶対にないんでしょ? 強情なんだから」

ルビィ「なんか善子ちゃん、分かりすぎて怖いね」

善子「安心しなさい、私もルビィに対してたまにそう思う時あるから」

ルビィ「そうなの?」

善子「そうよ、特に三年生に進級した後なんてそれはもう……いや、この話はいいか」

善子「今は私の話をしてるわけだし、だからねルビィ、私も考えたのよ」

善子「あなたや花丸みたいに叶えたい自分自身の夢ってものを」

334: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:32:15.72 ID:iBWeu1+9
善子「私はね、気に入らないのよ」

善子「自分から好意を示しておいて、自分から告白しておいて、なのにいざ自分の進むべき道が決まったらその瞬間はいさよならだなんて」

善子「えらい都合がいいと思わない?」

ルビィ「思う」

善子「でしょ? だから決めたのよ、それなら自分が納得出来るようにすればいいって」

善子「だってこんなに振り回されてもまだルビィのことを好きでいる私だから」

善子「そんなあなたを振り向かせたいって考えるのは自然なことでしょ?」

ルビィ「えーっと……つまり?」

善子「いつかルビィに、自分の夢よりも他人の夢よりも私を優先させること」

善子「もう二度と今みたいなことを言わせないように、ルビィにとっての一番になる」

ルビィ「!」

善子「それが私の夢」

335: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:32:57.91 ID:iBWeu1+9
ルビィ「善子ちゃん、それって……」

善子「フッ……なんていうか、別れ話の最中にプロポーズってのも変な話だけどね」

善子「でも、私も譲る気はないから」

善子「勝負よルビィ。今度はステージの上じゃない、人生を賭けた一世一代の大勝負」

善子「あなたが本当に死ぬまで夢を追い続けられたらルビィの勝ち、でもその途中で一回でも私を優先したら私の勝ち」

ルビィ「……善子ちゃんも十分ろくでもないね」ニコ

善子「それくらいならないと付き合いきれないし居続けられないのよ、今の強欲なあんたの隣にはね」

336: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:33:33.80 ID:iBWeu1+9
ルビィ「……そっか。じゃあ改めて聞くけど善子ちゃん」

ルビィ「私と今際の際まで付いてきてくれる?」

善子「当たり前、でもその前に必ず迎えに行くわ。だから」

善子「それまで精々自分磨きでもして待ってなさい」

善子「誰かの片割れなんかじゃない、この世でたった一つだけの宝石になるくらいまでね」

善子「だって宝石≪ジュエル≫っていうのは値打ちが高ければ高いほど、奪い取りたくなるものなんだから」

ルビィ「あははっ善子ちゃんの夢は私を狙う怪盗さんかあ、面白いね」

善子「で、ルビィはこの予告……どう受け取ってくれるわけ?」

337: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:34:23.95 ID:iBWeu1+9

ルビィ「そんなの、もう決まってるよ」

ルビィ「受けて立つ! それと」

善子「最後は絶対……」

ルビィ・善子「私が勝つ!!」

ルビィ・善子「…………」クスッ

善子「ありがとうルビィ。今まで楽しかったわ」

ルビィ「えへへっ私も!!」

善子「さようなら。いつか……また会う日まで」


338: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:36:10.13 ID:iBWeu1+9


そして時は過ぎ……


数年後


339: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:37:27.03 ID:iBWeu1+9


ペラッ カリカリカリ……


拝啓、アオちゃんへ

マルたちが高校を卒業してから早数年、その間に色んな事がありました

まずはあなたのお姉さん、ダイヤちゃんのことですが


亜里沙「お姉ちゃん! こっちは終わったよ!」

絵里「分かったわ、あとでそれ回しておいて! ダイヤ次の手配は!?」

ダイヤ「問題ありません! すぐに取り掛かれますわ!」

絵里「オッケー! 全く、今日はまた一段と忙しいわね……!」

ダイヤ「次に休みを取れるのはいつになるでしょうか……」

絵里「それは私たち次第ね、さあ行くわよ!」

ダイヤ「はい!」


大学を卒業後、絵里さんと一緒に海外で各地を転々としながらスクールアイドルの良さを伝えているみたいです

たまにライブもしているみたい、加えてY.G国際学園の職員としての仕事もあるとか……

ダイヤちゃんは本当に、いつになっても忙しそうだなあって思います。次はいつこっちに帰ってくるのかなあ

340: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:38:24.43 ID:iBWeu1+9


果南ちゃんは実家のダイビングショップに戻ったみたい。今はインストラクターの資格を取るために日々邁進しているそう。お店は昔より結構繁盛してるんだって。


果南「もしもし聖良? あーうん、そう。来週試験、っていうかそっちはどう?」

果南「そっかあ……やっぱりさーお互いに家がお店やってるっていうのはきついよねえ」

果南「どうしたもんか……あ、それと次はいつ会えそう?」


聖良さんとはこまめに連絡を取り合ってるようでなんとか一緒に住める方法を二人で模索しているとか

今のところはちょっと難しそうだけど、いつか実現出来たらいいよね。

341: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:39:23.31 ID:iBWeu1+9


そんな聖良さんの方はというと北海道に帰って理亞ちゃんと一緒にお店で働いています


こころ「お久しぶりです理亞さん! 本日もお綺麗ですね!」

ここあ「これお土産です! どうぞ!! 姉ちゃんのアクリルスタンドです!」

理亞「……次からはお菓子でいいわよ」

にこ「ちょっと理亞、あんた私の妹たちの厚意を無下にするわけ!?」

虎太郎「恩着せがまし」


理亞ちゃん曰く、たまにものすっごい騒がしいお客様ご一行がやってくるみたいだけど

その話をする理亞ちゃんはいつも嬉しそうで、なんとも不思議だけど微笑ましいなあって思いながら聞いてます

理亞ちゃん、普段は大人しいのにその人たちの話をする時だけよく喋るんだよね

342: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:40:17.02 ID:iBWeu1+9

千歌ちゃんは旅館の看板娘がどんどん板についてきて、今や千歌ちゃん目当てに来るお客さんがたくさんいるんだって

前はお子さんと特に仲良くしてたんだけど、最近は千歌ちゃんも大人っぽくなってきたから男の人に話しかけられる機会も凄い増えて

でもそれが恋愛に発展しているかというと……


千歌「鞠莉ちゃーん、聞いてよお、また駄目だったよー……」

鞠莉「また? お互い中々いい人見つからないわねえ」

千歌「私のはハードル高すぎるんだよ! 曜ちゃんに果南ちゃん、それに最近は梨子ちゃんまで納得させないと交際は認められないって言うんだよ!」

鞠莉「あ、じゃあそれに私も追加しといて」

千歌「やだー! 私それだと一生結婚出来ないじゃん!! 前から思ってたけどみんな私に過保護すぎだよ!」

鞠莉「千歌っちが魅力的な女性になりすぎたのが悪いのよ」

千歌「私のせいなの!? ていうかさっきは流しちゃったけど、鞠莉ちゃんまた縁談の話蹴ったんだね……」

鞠莉「なんていうかビビっとこなくて、理想が高すぎるのかしら?」

343: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:41:17.84 ID:iBWeu1+9
千歌「ちなみにどんな人がいいの?」

鞠莉「そうねえ、パパやママに負けないくらい仕事が出来て、家庭を大事に出来て、それでいて千歌っちみたいに話していて面白い人ならそれだけでいいんだけど」

千歌「へえーつまり、お金持ちになってバリバリ仕事が出来るようになった私かあ……普通にいるんじゃないそれ?」

鞠莉「やっぱり千歌っちもそう思う? でもあんまり出会わないのよねえ」

千歌・鞠莉「はぁ~、私もいい人欲しいなあ(わね)……」


鞠莉さんはイタリアでお父さんたちの仕事の手伝いをしながら、結婚相手を探す日々

でも本人的にはいい巡り合わせがないようで、度々千歌ちゃんのところへお邪魔しては二人で愚痴をこぼしているとか

二人とも、その気になっても今の自分たちが高嶺の花すぎるの気付いてないんだよね……

あの二人に見合うくらいの殿方ってなると、出会うのにはまだまだ苦労しそうずら……

344: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:42:35.02 ID:iBWeu1+9

曜ちゃんはついに念願のクルーズ客船の船長に。曜ちゃん自身の人気も相まって予定してた乗客の数がすぐ埋まっちゃうんだって

やっぱり曜ちゃんは凄いなあ……


曜「よぉーし! 今日も全速前進……ヨーソロー!」

「ヨーソロー!」

曜「そして今回はスペシャルゲスト! って言ってもいつも私の船に乗ってくれてる人なら大体分かってそうだけど……」

曜「本日の演奏会でピアニストを務める桜内梨子さんです!!」

パチパチパチパチ!!!

梨子「ふふっ、曜ちゃんもこの流れ飽きないわね」


聞くところによると、曜ちゃんの船に梨子ちゃんがいないことは殆どなくて

だから梨子ちゃんが船に来てない方が逆に珍しいんだとか

あと本当にたまにだけど、月ちゃんがからかいに来たときは船がより一層賑やかになる反面曜ちゃんは気が気じゃなくなるらしいずら

なんだかんだで曜ちゃんも結構な苦労人だよね。

345: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:43:54.69 ID:iBWeu1+9

次にマルだけど、今はある人が代表を務めているアイドル事務所にお世話になっているずら

え、一体誰がやっているのかって? それは秘密です

最近は知名度も上がってきて、メディアでの露出も増えてきました

まだまだ目指す場所は遠いけど、一歩ずつ、確実に進んでいきたいです

そして最後に、あの二人のことだけど……


「花丸ちゃーん、そろそろ出番よー!」

花丸「! はーいすぐ行きまーす!!」コトン


ガチャッ  バタン


346: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:44:26.37 ID:iBWeu1+9
「そうだ花丸ちゃん、昨日の配信すっごく好評だったわよ! ほら」

花丸「わあ……!」

「私も嬉しいわ、これからも頑張ってどんどん伸ばしていきましょうね」

花丸「はい!」

「……あ、そういえば今日はあの子もライブをやるんじゃなかった?」

「ほら、ルビィちゃん。ソロで初ライブやるって触れ込みあったじゃない」

「やる気出しすぎて、空回りしないといいんだけど」

花丸「それなら多分、大丈夫だと思いますよ」

花丸「ルビィちゃんの傍にはいつでも優秀なマネージャーがいますから」ニコ

347: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:45:08.78 ID:iBWeu1+9

善子「ルビィー! ルビィー! ったくもうこんなときにどこ行ったのよあの子は!」

善子「何かあるとすぐにどっか行くんだから! いちいち探すこっちの身にもなりなさいよ!」

善子「ほんっとにあの我がまま気ままの自由お嬢様は!」

ー♪ ー♪

善子「もしもしルビィ! あんたどこほっつき歩いてるのよ! もうすぐライブの時間だからってさっき……」

善子「は? 落とし物? 迷子? 困ってそうだったからって……」

善子「……すぐそっち行くから場所教えなさい」ハァ

善子「全く、私としたことが忘れてたわ」

善子「あの子こういうの、放っておけなかったんだった」

348: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:46:04.44 ID:iBWeu1+9

「ぐすっ……うぅ……」

「ねえ、ねえ大丈夫?」

「ぐすっ……だれ……?」

ルビィ「こんなところでどうしたの? 迷子?」

「……っ」コク

「落とし物、探してて……そしたら……」

ルビィ「そっか、お父さんやお母さんは?」

「……分からない」

ルビィ「一緒には来てたんだね、良かった。ちょっと待ってて」スッ

ルビィ「善子ちゃん? ごめんね、近くで迷子の子見つけちゃって……うん、お願い」

ルビィ「お待たせ。それで探してた落とし物は見つかったの?」

「……うん」

ルビィ「じゃあお姉さんと一緒にちょっとだけここで待ってよっか。すぐにお父さんとお母さんが来てくれるからね」ニコ

349: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:46:57.72 ID:iBWeu1+9
「……あの」

ルビィ「どうしたの?」

「その恰好、お姉ちゃんってもしかして…アイドルなの?」

ルビィ「え? ああそっか、着替えたまま出てきちゃったから」

ルビィ「そうだよ。まだ誰も私のこと知らないんだけどね」

「そうなの?」

ルビィ「うん、だからこれから知ってもらうんだ」

ルビィ「今からライブをやるんだ、あなたも見に来る?」

「……いいの?」

ルビィ「もちろん、今日のライブは誰でも大歓迎だから!」

「本当!? じゃあ絶対見に行く!」パアッ

ルビィ「ありがとう、約束だよ?」

「うん、約束!」

350: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:47:38.21 ID:iBWeu1+9
善子「あっいたいた、ルビィー! ご両親呼んできたわよー!」

「パパ!ママ!」

ルビィ「ありがとう善子ちゃん」

善子「全く、まずは一言よこしなさいよね」

ルビィ「えへへっ、ごめんなさい」

「本当にありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか」

善子「いえ、お気になさらないでください。こちらが勝手に……いや」

善子「……あの、それなら少しだけお時間を取らせてはもらえないでしょうか?」

「それは構いませんが……」

「ライブ、ライブやるんだよね!?」

善子「え? ……ルビィ、あなたねえ」

ルビィ「あ、あはは……」

351: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:48:34.44 ID:iBWeu1+9
「何かのイベントですか?」

善子「ええまあ、そんなところです」

「パパ、ママ、私このお姉ちゃんのライブ見たい! いいでしょ!?」

「この子がここまではしゃぐなんて……そんなに凄いんですか?」

善子「どうでしょうか、凄いのかどうかははっきりと答えられませんが」

善子「見て後悔しないことは間違いないですよ。ね、ルビィ」

ルビィ「はい! みんなを笑顔にさせること」

ルビィ「それが私のモットーですから!」

352: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:49:54.69 ID:iBWeu1+9


────


善子「さあ皆さん、大変お待たせいたしました。只今より」

善子「黒澤ルビィのデビューライブを始めたいと思います!」

パチパチパチパチ

善子「まずは今回の主役から一言、ルビィさんどうぞ」

ルビィ「はい。まずはわざわざこの場所まで私を観に集まってくれた皆さん、どうもありがとうございます!」

ルビィ「周りをご覧になれば分かる通り、今の私は全くの無名で」

ルビィ「今回のライブもようやく開催までこぎつけたものだしで、本当に駈け出したばかりの小さな小さな新人だけど」

ルビィ「でも、将来は超大物になる……予定です!」

ルビィ「なので! このステージにお越しくださった皆様方、そして今黒澤ルビィを知る初めましての皆さん!」

善子「……」クスッ

ルビィ「応援、よろしくお願いします!!」

善子「それではいってみましょう! まず一曲目!」


ルビィ・善子「ミュージック……スタート!!」


353: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:50:54.63 ID:iBWeu1+9


ヒュウゥゥゥ……


ペラペラペラ パタン



これでマルのお話はおしまい。だけど


私たちの物語は────まだまだ続く。


354: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 19:52:14.68 ID:iBWeu1+9


ルビィ「片割れのジュエル」


【 おわり 】


355: 家 ◆YmvLytuhUo (もんじゃ) 2022/11/13(日) 20:00:28.69 ID:iBWeu1+9

これで本当に終わりです
ここまでお付き合いくださった方々、保守支援誠にありがとうございました。
かなりの年月を要しましたが、おかげ様で無事このssを完結させることが出来ました

とても長いお話ですがこの話の中でどれか一つでも皆様の中で良かったと言われるようなものがあれば幸いです
ここまで読んでいただきありがとうございました。

引用元: ルビィ「片割れのジュエル」 3年生編【終】