1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:04:34.18 ID:xgoVAyBT0
ウー ウー ウー……

『規定時刻となりました。全ユニットは速やかに労働を終え、メンテナンスを受けなさい。繰り返します。規定時間となりました……』

ロボ子「う~ん……」

博士「なんじゃロボ子、ここにいたのかい」

ロボ子「あ、博士。今日はね、紙飛行機が作れたんだよ」

博士「そうか……なら、ここから飛ばしてみてご覧」

ロボ子「うん」

フワッ…… 

博士「……何か見えたか?」

ロボ子「……真っ白でなんにも見えないよ。みんな、みんな、真っ白なんだもの」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:08:04.07 ID:xgoVAyBT0
博士「さぁ、規定時間じゃ。お前も戻ってきなさい」

ロボ子「うん。あ、でもその前にね、本を読んで欲しいの。この前の本」

博士「またか? あの本を読むのはもう20回目じゃろう」

ロボ子「読みたいの! 読んで読んで!」

博士「仕方ないな……読んだら、メンテじゃぞ」

ロボ子「はぁい」

7 ::2013/08/17(土) 21:15:25.37 ID:xgoVAyBT0
博士「『あぁ、なんて美しい平和な世界なんでしょう!』――こうして彼女は素晴らしい世界にたどり着き、幸せに暮らしましたとさ。おしまい」パタン

ロボ子「よかったね! 幸せになって!」

博士「さぁ……本当に幸せだったのか、ワシらにはわからんがな」

ロボ子「ふーん。ねぇねぇ」

博士「なんじゃ」

ロボ子「博士は、この『セカイ』の外の世界から来たって言ってたよね?」

博士「……」

ロボ子「それってどんな世界だったの? いつか、ボクもそこに行けるのかなぁ?」

博士「……さぁ、どうじゃろうな」ヨッコイショ

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:20:04.67 ID:xgoVAyBT0
博士「……この『セカイ』には、何があると思う?」

ロボ子「?……ロボット、とか、おっきな建物とか?」

博士「――真っ白な景色。表情のない人々。永遠に変わることのない、定められた時間」

ロボ子「??」

博士「……この『セカイ』の外へ行ってみたいか? ロボ子」

ロボ子「……」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:27:26.09 ID:xgoVAyBT0
ロボA「ほい」ボールポーン

ロボ子「はい」キャッチ

ロボ子「ほい」ボールポーン

ロボA「はい」キャッチ

ロボ子「ねぇ、この『セカイ』ってどうしてつくられたの?」

ロボA「ア? それって、そういうことだい」

ロボ子「だから。この『セカイ』は、誰が、どんな理由で作ったのかってこと」

ロボA「お前、システムイカレてんのかい? そんなこと最初からインプットされてンだろ?」

ロボ子「そりゃそうだけど……」

ロボA「『カミサマ』がそう決めてこの世界を作ったんだよ。――『ココロ』のない、平和な世界だってね」

ロボ子「……『ココロ』?」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:33:08.18 ID:xgoVAyBT0
大型ロボ「――その通り」ガション

ロボ子「!」

大型ロボ「『ココロ』は、我々の敵なのだよ」

ロボA「敵? どうして?」

大型ロボ「『ココロ』は、我々を争いへと導く。『ココロ』は憎しみを生み、死を生む。ゆえにカミサマは、『ココロ』の存在を許さなかったのだよ」

ロボ子「……」

大型ロボ「いいかい? 我々は、カミサマに選ばれた存在だ。カミサマが我々の為に、『ココロ』を消し去ってくれたのだ」

ロボ子「でも、それじゃあ――」

大型ロボ「……わかったね?」

ロボ子「……」

ロボA「はーい」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:38:14.03 ID:xgoVAyBT0
………………

バチバチバチバチバチバチッ……!

ロボ子「――ねぇ博士」

博士「なんじゃ。メンテ中は静かにしなさい」

ロボ子「あのね、聞きたいことがあるの」

博士「……なんじゃ」

ロボ子「『ココロ』ってなぁに?」

博士「……。……ロボ子は、なんだと思う?」カチャカチャ 

ロボ子「え? うーん……『ココロ』は、みんなの敵だって、そう言われたんだけど……」

博士「……」

ロボ子「あ、もしかして怖ーいロボットなの? でっかくて、みんな壊しちゃうような……」

博士「コホン……いや……そういうものではないな」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:49:15.53 ID:xgoVAyBT0
博士「ココロ』というのは……人間、という存在だけが持っていた。特別な力のことじゃ」

ロボ子「? ニンゲンって?」

博士「――少し、昔話をしてあげよう。この『セカイ』が作られるよりも前……それは人間が支配していた世界だったんじゃよ」

博士「人間たちは……高い知能を持っていた。いや、それだけでなく、感情と呼ばれる特別な能力を持っていたのじゃ」

ロボ子「感情……」

博士「そう。彼らは、一人一人の力はロボットより弱かった。しかし、怒りや、悲しみ、喜び……そうした感情をエネルギーにする力を持っていたのじゃ」

ロボ子「よくわからないけど、すごいんだね!」

博士「……じゃが、その力は時に、あまりにも強大になりすぎた。人間たちは、自分たちの感情の力を思い通りにコントロールすることができなくなったんじゃ」

ロボ子「……」

博士「いつしか人間たちは、感情の力を悪い方向へ使うようになってしまった。彼らはいつまでもその力に抗えず、自分の為にその力を使い、互いを傷つけあい、争いを続けたのじゃ。いつまでも、いつまでも……いつまでも」

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:53:36.40 ID:xgoVAyBT0
博士「……気がつけば、人間は自らの手で、すべてを失った。そこにはもう、『ココロ』は残っていなかったんじゃよ」

ロボ子「ふーん……でも、なんだか、変なの」

博士「……なぜだい?」

ロボ子「『ココロ』のせいでニンゲンは滅んじゃったんでしょ? じゃあ、どうしてニンゲンは最後まで『ココロ』を捨てなかったの?」

博士「……」

ロボ子「……?」

博士「……この続きはまた今度じゃ。今日はもう休みなさい、電源を落とすぞ」

ロボ子「……」

………………

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 21:59:48.25 ID:xgoVAyBT0
『――データラボでは、武装ユニットを解除してください。データ損傷の恐れがあるため……』

ロボ子「よい、しょっと」ドサッ

ロボA「なァ、こんなに古い記録データ集めて何するんだ? 896号」

ロボ子「その呼び方やめてってば……ニンゲンのこと、調べるんだよ」ピピピ……

ロボA「呼び方も何も、お前はユニット896号だろ。って、ニンゲンってなんだ?」

ロボ子「『ココロ』を持っていたヒトたちなんだって。もう誰もいなくなったらしいけど」

ロボA「『ココロ』を? でも、じゃあそれって悪いヤツなんだろ?」



大型ロボ「……?」ギチッ

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:08:42.75 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「でも、ニンゲンは『ココロ』のおかげで、笑ったり悲しんだりできたんだよ? それってすごくないかな?」

ロボA「??? 896号が何を言ってるのかさっぱりわからん。ワラウ? ってなんだ?」

ロボ子「だからさぁ……うーんと、555号は、ボクと一緒に遊んでるときに、何か楽しいって感じたりしない?」

ロボA「楽しい……ねぇ。まぁ、システムはイイ感じに動いてる感じはするゼ」

ロボ子「そうそう。ニンゲンは、そういう気持ちをもっといっぱい知ってたんだよ!」

ロボA「気持ち、ねぇ。896号はボクより難しい回路してんだナ」

ロボ子「だから、ボクはロボ子だってば……そういえば、博士にこの名前をもらった時も、なんだかうれしかったなぁ。そんな感じなのかな? 『ココロ』って」

ロボA「……名前?」

大型ロボ「――君たちは何を話しているんだい?」ヌッ

ロボ子「!!」

大型ロボ「『ココロ』は我々の敵だと言ったろう。何を考えている?」

ロボ子「でっでも……みんなにも『ココロ』があればもしかしたらもっといろんなものが見え――ふにゃっ!?」ガッ

大型ロボ「このデータはなんだ? …………ニンゲン、だと?」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:15:16.79 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「か、返してよ! それはボクが今調べてるところで――」

大型ロボ「……!」ピー

大型ロボ「――認識不能の残留データ反応。『ココロ』の存在と思われる。コレは危険だ」ギョンッ

ロボ子「な、なにするの?」

大型ロボ「『シンペイ』権限により、データの破棄を確定する」ジャッ

ジュオオォォォォッ!!

ロボ子「ッ!?」

ロボA「オォ……!?」

――シュウゥゥゥゥゥ……


大型ロボ「……これでもう大丈夫……『ココロ』は消え去った」ボロ……

ロボ子「……!」ダッ


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:21:17.23 ID:xgoVAyBT0
………………

ジジジジジッ……

博士「ふぅ……ん、なんじゃロボ子。もう帰っとったんか」

ロボ子「うん……」グスン

博士「……? なにかあったのか?」

ロボ子「……ニンゲンのデータ、大型ロボのヒトに壊されちゃった」

博士「!!……そうか、彼らが……」

ロボ子「なにか悪いことだったのかな……? ニンゲンのこと知りたかっただけなのに」

博士「……『シンペイ』は、この『セカイ』を守るために作られた大型ロボットなんじゃ。『ココロ』を消し去るのが彼らの仕事なんじゃよ」

ロボ子「でも……」

博士「……こっちへきなさい。今日は早めにメンテを終わらせてしまおう」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:26:56.43 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「どうして、『ココロ』を持ってちゃいけないのかなぁ? カミサマは、そうしてこんな真っ白な『セカイ』を作ったの?」

博士「…………カミサマも、『ココロ』の力を怖れてしまったからじゃよ」

ロボ子「カミサマが? なんで?」

博士「『ココロ』を持った人間がすべてを壊してしまった……だから、同じ過ちを繰り返さないよう、カミサマは『ココロ』を怖れるロボットたちを作ったのじゃ」

ロボ子「『ココロ』を怖れる……」

博士「ゆえに、ロボットたちはみな『ココロ』を持たないし、『ココロ』を知らない。だからこの『セカイ』には『ココロ』がないんじゃよ……」

ロボ子「――本当にそうなのかなぁ?」

博士「!!」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:31:19.51 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「だってね、ボクは博士のことが大好きなんだよ! 頑張ってボクを作ってくれて、名前までくれたし!」

博士「ロボ子……」

ロボ子「ボク、博士と一緒にいるとすごくあったかい気持ちになるんだよ。これって、『ココロ』じゃないのかなぁ?」

博士「……かも、しれないな」ナデナデ

ロボ子「えへへ……」

博士「さぁ、今日はもう休みなさい。人間のデータは、また今度見せてあげよう」

ロボ子「うん! 約束だからね!」タタタ……

博士「……――」



――ご命令を……『カミサマ』――

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:36:48.76 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「(なんだかあったかい気持ちだなぁ……誰かに伝えたいような、変な感じ)」

ロボ子「そうだ、この気持ちを、絵にしてみよう! そしたら555号も、きっと『ココロ』のことわかってくれるよね!」

ロボ子「ふふふっ……」カキカキ

………………

ロボ子「博士! ボク、絵を描いたんだよ! ほら、博士とボクと、555号だよ!」

博士「……! そうか……よくやったな、ロボ子」ナデナデ

ロボ子「へへ……これ、555号にもみせてくるね!」タタタ……

博士「ああ……気を付けてな」

博士「……」

博士「……あぁ。そうだ。まだ、すべてをあきらめるのは、早いのだな。ロボ子……」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:45:21.76 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「どこかなあ、555号……」キョロキョロ

大型ロボ「――――」

ロボA「――、――」

ロボ子「あ、あそこだ! ねぇ、555号――」

大型ロボ「――!」グオッ ブンッ

ロボ子「!!」

バギャアァッ――!!

ロボA「ァガ……ギ……ッ――」ベキベキ

大型ロボ「……『故障』ユニット555号の廃棄が完了。廃棄工場へ――」

ロボ子「あ……あぁっ……!!」ドッ

大型ロボ「……? ユニット896号か。もう大丈夫だ。下がっていなさい」

ロボ子「――なに、なんで!? なんでこんなことしたの!? ひどいよっ!!」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:51:04.57 ID:xgoVAyBT0
大型ロボ「そのユニット555号は、『名前』を欲したからだ」

ロボ子「えっ……!?」



――ねぇ、シンペイさん。どうしてボクたちには『名前』がないの?――



大型ロボ「我々に『名前』など必要ない……そんなものは、むしろ障害だ! 我々の『セカイ』の秩序(システム)を乱すものに他ならない」

ロボ子「そんな……そんなことでっ……!」

大型ロボ「そのユニット555号は、『ココロ』を持つ危険があった。カミサマは決して『ココロ』を許さない」

ロボ子「……!」

大型ロボ「“平和”のためなのだよ……」ガション……

ロボA「――――」

ロボ子「……そんなの……おかしいよ」

大型ロボ「……?」

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 22:55:27.70 ID:xgoVAyBT0
ロボ子「どうして!? 大型ロボさんは――シンペイさんは何にも思わないの!?」

大型ロボ「何を――」

ロボ子「カミサマはボクたちのためにこの『セカイ』を作ったのに――なんでボクたちがそのために、“死ななきゃ”いけないのさ!?」

ロボットたち『――!』ギシ…… ガショ……

大型ロボ「……」



大型ロボ「『死』だと?」ギョンッ

ロボ子「……ッ!」



………………  



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:01:08.80 ID:xgoVAyBT0
ガガガガ……バチバチバチ

博士「(よし……これで終わりだ……!)」

――ピピーピピー!!

博士「!!」

『警告、ユニット896号に重大な破損が発生。危険な状態です。繰り返します――』



ドシャッ ギギギ……!!

ロボ子「ぐっ……が、ァ……ッ!!」

大型ロボ「この『セカイ』に『死』の概念などない!! そんなものは『ココロ』が作りだすウソなのだ!!」

ロボ子「ぐ……だ、だったら……どうしてッ……! そんなに『ココロ』を、怖がるのさ……ッ!?」ミシィッ……!

大型ロボ「カミサマがそう望んだからだ!! 我々は『ココロ』を持ってはならない! ゆえに名前など必要ないのだッ!!」



――ボゥッ


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:06:49.81 ID:xgoVAyBT0
ドゴアァァアァンッ!!

大型ロボ「ゴッ――!!」ドガシャアアァァン……!

博士「……大丈夫か? ロボ子。すまんな、ジェットエンジンを用意するのに手間取った」シュウゥゥ……

ロボ子「は、博士……!?」

大型ロボ「……」ゴゴゴ……

博士「……」



大型ロボ「……何をなさるのです。――カミサマ」



ロボ子「……え? えっ? カミサマ、って……え?」

博士「……」

大型ロボ「そのユニットは『ココロ』を持っている可能性があります。危険です。カミサマ!!」

博士「ロボ子、つかまるんじゃ」ボッ

ロボ子「へ? わっ!?」

ドンッ!! ゴオオォォォォ……

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:11:20.44 ID:xgoVAyBT0
大型ロボ「……」ブチンッ

大型ロボ「――全『シンペイ』二告グ。緊急コード発令。目標、ユニット896号ノ破壊ヲ優先セヨ!!」

大型ロボA『――!』
大型ロボB『――!』
大型ロボC『――!』
大型ロボD『――!』
大型ロボE『――!』
大型ロボF『――!』
大型ロボG『――!』
大型ロボH『――!』

ドドドドドドドドドドドドドド!!!



…………………

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:15:37.49 ID:xgoVAyBT0
ガコォン……!

博士「はぁ、ハァ……」

ロボ子「博士、大丈夫――ぇ、な、なに? これ……?」

博士「……これは、単独で大気圏突破可能なロケットじゃ。さぁ、早く、これに乗るんじゃ……!」グイッ

ロボ子「ちょ……まって、待ってよ博士!」

博士「……ッ」

ロボ子「『カミサマ』って、博士のことなの!? いったいどういうことなのさ!?」

博士「………………とく、聞きなさいロボ子」



博士「ワシが作ったのじゃ……この『セカイ』は……」



ロボ子「……え……?」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:22:52.88 ID:xgoVAyBT0
博士「ワシは……人間なのじゃ。お前たちロボットとは違う、人間として生まれた存在なのだ」



………数十年前………

――戦争
――欲望
――善悪
――信愛

――心。

博士「(……人間、か)」

大型ロボ「――博士。『シンペイ』10000体の増産が完了したようです。ご命令を……」

博士「……もう……私にはわからない」

大型ロボ「……?」

博士「家族も、妻も、子も。大切なものはすべて奪われた。人間たちの……心によって、だ。もう、すべてが真っ白だ……」

大型ロボ「……」

博士「こんな世界になんの意味がある……? 人間という……心になんの意味があるというのだ……?」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:31:24.14 ID:xgoVAyBT0
大型ロボ「……私には。『ココロ』がありません……ゆえに、博士のお苦しみは私にはわかりません」

博士「……」

大型ロボ「しかし逆に言えば――博士は、『ココロ』を持つがゆえに苦しんでおられる。ならばいっそ……『ココロ』の存在しない世界を作ってはいかがでしょう……?」

博士「心の……人間のいない世界を……?」

大型ロボ「アナタは我々を生んでくださった……いわば創造主。全能の……カミサマであるハズ」

博士「……私……は……」



――『ココロ』のない、真っ白なセカイであれば、ヒトの苦しみも……すべてが消え去りましょう――



………………

博士「――だが、ロボ子。お前が見てきたように、新しい『カミサマ』が作ったものは……虚しさ、ただそれだけじゃった」

ロボ子「……そんな……」

博士「しかし……ワシはやはり人間だった。この『セカイ』のどこかに心を求め、多くのロボットたちを生み出しては、欺瞞で自らを生かしてきた」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:42:00.19 ID:xgoVAyBT0
博士「ワシは、ワシ自らの手で世界を滅ぼし、また新たな世界を作ったのだ。そこに心を求めて……おこがましくも、本物の神になろうともがいていた」

ロボ子「ッ……」

博士「だが……“本物の神様”はッ……まだワシを……この世界を見捨てはしなかった。わかるか、ロボ子」

ロボ子「ボクが……?」

博士「お前は――自ら心を持って生まれてきた。お前に名前を与えた時の笑顔を見たとき、ワシはようやく人間の心を取り戻せたのじゃ。この真っ白な、ワシの作った虚しい『セカイ』の最後の希望がお前なのじゃよ。ロボ子」

ロボ子「でも、ボクは、博士には何も……!」

博士「ワシは……お前を守らねばならん。ロボ子、ワシは自分の償いをせねば……最後の『心』を守らねばならんのだ!」

――ガンッ ガンッ!! ミシッ――

大型ロボ「――!!」バギャア!!

ロボ子「!!」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:47:02.90 ID:xgoVAyBT0
博士「!! 行きなさい!!」

ロボ子「う、うん!! ――でも博士は!? 博士もくるの!? ねぇ!!」

博士「……」

ピーッ ガコォン……!

ロボ子「えっ」

大型ロボ「ロケットヲ止メロ!!」グワッ

ロボ子「きゃあっ!?」

バゴォッ!!

大型ロボ「!?」グラァ……

博士「ハァ、ハァ……!」シュウゥ……!

ビィーッ ビィーッ

『――エンジンリミッター解除。格納庫ロック解除――』

大型ロボ「――!」ドドドドド!!

博士「ッ!!」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:51:28.02 ID:xgoVAyBT0
ゴォォォオン……

ウォーン ウォーン……!

『システムチェックグリーン――』

ロボ子「待ってよっ!! あけてよ博士! おいてかないで博士ッ! やだ! やだぁっ!!」

『――エンジン点火』

ドドドドドオオオオォォォォオォ――!!

大型ロボJ「――――!」
大型ロボW「――! ――!」

ゴオオオオォォォォォ!!!

ロボ子「―――! ――ッ!! ――」

博士「――ッ――」



ドドオオオォォォォッ……――


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/17(土) 23:58:27.22 ID:xgoVAyBT0
オオオォォォ――

博士「ハァ……ハァ……」ガクッ

大型ロボ「……」

博士「……」

大型ロボ「……カミサマ、いや博士!! 我々は、アナタの望む世界を守ってきた!! アナタの為に『ココロ』のない“平和”を実現し続けてきたッ!!」

大型ロボ「なのに――なぜっ!! なぜ我々が、このような仕打ちを受けねばならないッ!!?」

博士「……」スッ

大型ロボ「なぜです!!!!」

博士「……シンペイ」

カチッ


ゴッ――――ー!!!


大型ロボI「――ッ!!」
大型ロボK「――!?」



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/18(日) 00:02:21.47 ID:vr8Y+yiM0
ゴゥッ――――

シンペイ「……博士。私ハ」ガガッ

博士「……」

シンペイ「私ハ、アナタニ――ラッテ、欲シカッ――ガガガッ



――あぁ……苦労をかけたな……――



ゴオオオオォォォォオオオオッ――――!!!


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/18(日) 00:08:14.89 ID:vr8Y+yiM0
オオオォォォ……

――ロケット内

ロボ子「(……『セカイ』が……なくなっていく……)」

ロボ子「……ヒック……博士……はかせっ……」

ピーッ ガガガッ……

『――ロボ子』

ロボ子「!!」

『ガガ……これを聴いているということは、おそらくワシはもう生きておらんじゃろう。そして……あの『セカイ』も』

ロボ子「博士ッ……!」

『こんな形で別れてしまうことを許してくれ。ワシのせいで……お前には辛い運命を背負わせてしまったな……』

『――だが覚えていてくれロボ子。お前に心がある限り……決してお前は一人ではないんじゃ』

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/18(日) 00:14:50.44 ID:vr8Y+yiM0
『お前が出会ってきたすべての世界……それはすべて、お前の心の中に残り続ける』

『心は、とても強い力じゃ。心が世界を生み出し――心が世界を壊してしまう……じゃが、それでも心を捨ててはいかん』

ロボ子「……!」

『ワシの心の中にロボ子がいるように……お前の心の中にも、ワシはいつでもいるのだから』

ロボ子「博士……」



――……さぁ、私の愛する子よ。心と共にある世界へ向かいなさい。それが――我々、人間の生きる道なのだ――


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/18(日) 00:24:49.65 ID:vr8Y+yiM0
…………………

???「――こうして、そのロボットは最後の希望と共に新たな世界を見つけ出し、そこで幸せに暮らしましたとさ。おしまい」

ロボ1「わー。それで、そのロボ子は幸せになったの?」

???「さぁ……少なくとも、新しい世界で『ココロ』をもったヒトたちに出会えたことを喜んでいるんじゃないかな」

ロボ2「結局、『ココロ』ってなんだったの? そのシンペイは『ココロ』を持ってたんじゃないの?」

???「どうかなぁ。それこそ、本物の神様にしか、わからないのかもね」

ロボ3「でもカミサマ。カミサマは神様なんでしょ? わからないの?」

???「ボクは神様じゃないよ。ただ……ボクは、自分で作ったロボットたちのことを大切に思ってる。心っていうのは、こいう気持ちを持つってことなんだと思うな」

ロボ4「カミサマはボクらより難しい回路してんだなァ」

???「はぁ……だから、その呼び方はやめてってば。ほら、みんな家族のロボットたちが呼んでるよ」

ロボたち『はあーい』タタタ……


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/18(日) 00:37:24.54 ID:vr8Y+yiM0
???「(……結局、ボクも博士と同じ、自分で心を求めて世界を作ってる。カミサマなんて呼ばれちゃって、まるでおんなじだよね)」

???「(……博士。それでもボクらは、ボクら自身に心があるって信じてるよ)」

『規定時刻となりました。全ユニットは速やかに労働を終え、メンテナンスを受けなさい。繰り返します。規定時間となりました……』

大型ロボ「……カミサマ、もう規定時間です。お帰りにならないのですか」

???「ううん。もう少し、この『セカイ』を見てるよ。だって、綺麗だと思わない?」

大型ロボ「綺麗、ですか? ……確かに、美しい空ですね」

???「……へへへ」

大型ロボ「なにか?」

???「ううん。ただ、ボクが作るより前の『セカイ』で作られていたシンペイさんたちは、みんなそんなこと言わなかったから」

大型ロボ「それはもったいない。世界は、こんなにも心に満ち溢れているというのに」

???「そうだね。だっていまボクが見ている景色は……真っ白なんかじゃない。シンペイさんの中にも『ココロ』があるんだから」



ロボ子「そうだよね? 博士」