1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 00:40:34.13 ID:Pr8jqBhO0
姉・妹「行ってきまーす!」
母「行ってらっしゃい、気をつけるのよ」
姉・妹「はーい!」
なにをするのも一緒だった
着る服も色違いのお揃いだし、髪型も同じ
入る部活も委員会もなにもかも
夕飯の時にトイレって席を立つタイミングまで一緒だった時はさすがに笑ったな
そういう時、みんなは言う
「さすが、双子だね」
だから私たちは自慢気にこう返してた
「「だてに一卵性双生児やってないよ!」」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 00:48:49.48 ID:Pr8jqBhO0
人間の染色体は46本らしい
生殖のさいに父方と母方のそれぞれ半分ずつを継承して生まれるのが私たち人間
一卵性双生児はその46本の組み合わせがすべて等しい
だから私たちはDNA的に見ればまったくの同一人物
人格というものを形作る要素として先天的なものと後天的なものがあると思うけど、生活のすべてを共有する私たちはまさに同一人物そのものだった
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 00:53:37.71 ID:Pr8jqBhO0
みんなは私たちが同じ行動をとると決まって喜んだ
私たちも得意になって双子アピールをしてた
小さい私たちにとって、2人一緒であることはアイデンティティそのものだった
なのに
…いつからだろう、もっと私という個人を見てほしくなったのは
いつからだろう、私と同じ、あるいは限りなく近い人間がいることにわずらわしさを感じるようになったのは
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:03:02.09 ID:Pr8jqBhO0
きっかけなんてない
気づけばそう感じてた
中学にあがってからの私たちは衝突が増えていた
この前はお揃いの服に嫌気がさして、わざと共通じゃない友達と服を買いに行った
そしてお姉ちゃんと友達と遊ぶ日にその服を着ていった
お姉ちゃんはお母さんが買って来た服を着てたけど、私は雑誌に載ってたオシャレな服
お姉ちゃんの悲しそうな顔が、余計に私の優越感を高めてくれた
なのにお姉ちゃんったら、私が買った服の色違いをいつの間にか買ってたの
「これでお揃いだね」だって
ばっかみたい
だから言ってやった
「気持ち悪い」って
そのあとのお姉ちゃんの泣きそうな顔にはさすがに罪悪感を覚えたけど、気持ち悪いのは事実だし仕方ない
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:12:11.19 ID:Pr8jqBhO0
思えばお姉ちゃんは、私より生まれたのが数秒早いだけなのにいつもお姉ちゃんヅラをする
私たちは中学でバレーボール部に入っていた
2人ともそこそこ背は高いから、レギュラー入りはしていた
でもこの前事件が起きた
私たちはポジションは共にレフトだった
ポジションが同じということは、対角にいるということ
つまり、片方が前衛ならもう片方は後衛になる
このことが事件を呼んでしまう
バレーボールは後衛の選手がアタックラインよりも前でスパイクを撃ってはいけない
お姉ちゃんは前衛だったのに、主審が後衛と間違えてジャッジミス、お姉ちゃんのスパイクは決まったのに、敵に点が入ってしまった
多分、私が撃ったと勘違いしたんだと思う
顔が一緒だから間違われても仕方ない…
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:19:19.67 ID:Pr8jqBhO0
バレーボールは流れのスポーツだ
一つ悪いことがあると、ドミノ倒しのようにミスを誘発してしまう
私たちのチームは調子に乗りやすいチームのため、ノッてる時は強いけど、落ち込んでる時はとことん弱い
要するに、試合は負けた
みんないい人だから私たちは責められなかったけど、やっぱり罪悪感はある
お姉ちゃんにそのことで相談しようとした矢先だった
お姉ちゃんのポジションが変わった
本人の強い希望らしい
転職先はライト
本来は左利きの選手が務める難しいポジションだ
当然、お姉ちゃんはレギュラー落ちしてしまった
なのに本人は「ダサいお姉ちゃんでごめんね」なんて笑ってる
なによ、お姉ちゃんぶっちゃって
なんで私に相談もなしにそんなことになってるのよ
わけわかんない
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:25:08.93 ID:Pr8jqBhO0
とにかく、最近のお姉ちゃんは癇に障ってばっかり
私がそっけない態度でいるから、最近はすっかり会話もなくなってきた
そんなある日、お姉ちゃんが風邪をひいた
しかも日頃の疲れからかこじらせてしまって、もう3日も学校を休んでる
今日は休日だから、まあ仕方なーく看病している
これで移ったりしたらサイアクだけど
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:31:49.01 ID:Pr8jqBhO0
妹「…入るよ」
姉「どうぞー」
妹「……」ガチャ
姉「あ、おかゆ?つくってくれたんだ、ありがとう」
妹「…別に。おかーさんが作れってうるさかっただけだし」
姉「素直じゃないんだから、妹は」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:35:47.11 ID:Pr8jqBhO0
妹「…どうかな」
姉「ん、おいしいよ。真心こもってるからかな?」
妹「こめてない!」
姉「もう。…でも妹と普通にしゃべるのって久しぶりだよね。最近かまってくれなかったから寂しかったんだぞー?」
姉「風邪に感謝、かな」
妹「早く治してね」
姉「どーゆー意味よう!?」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:42:19.78 ID:Pr8jqBhO0
姉「…ここ数日の部活はどう?」
妹「絶好調だよ、私。昨日初めて納得のいくストレート撃てたんだ。気持ち良かったなあ」
姉「すごいね!さすが次期エース!」
妹「……」
違う
お姉ちゃんの方がうまい
私よりも、新しくレフトに入ったあの子よりも
…お姉ちゃんにもあの気持ち良さ、味わってほしかったなあ
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:51:53.57 ID:Pr8jqBhO0
姉「私も、妹と同じコートで戦えるように頑張らないと!」
妹「…嫌味?」
姉「え?」
妹「私よりうまいクセに」
姉「そんな、妹の方が…」
妹「そんなはずない。私が一番わかってる。チームのためには、私が外れた方が良かったのに。なに余計なことしてるの?」
姉「余計な…!?」
妹「なにさ、数秒生まれたのが早いからってお姉ちゃんぶっちゃって!そんなのただの自己満だよ!」
姉「……」
妹「…そーゆーの、すっごくうざいから」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 01:55:30.98 ID:Pr8jqBhO0
バタン!
妹「はぁ…はぁ」
また言っちゃった…
お姉ちゃんに、ひどいこと
でも、お姉ちゃんがお姉ちゃんぶるからいけないんだ
私は悪くない
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:01:19.61 ID:Pr8jqBhO0
…ぴこぴこ
母「ちょっと、妹!ゲームばっかしてないで!勉強はいいの?」
妹「あとでー」
母「あんたそんなんじゃ、おばあちゃんになっても勉強しないでしょ」
妹「うるさいなぁー。いまいいトコなのに」
母「そんなだから姉より成績悪いのよ」
妹「お姉ちゃんは関係ないでしょ!?」
母「あ、そうそう、ちょっと姉の様子見てきなさい。まあだいぶ休んでるし大丈夫だと思うけど」
妹「えぇーじゃあ勉強するー」
母「夕飯食べたくないの?」
妹「あーもう!様子見ればいいんでしょ!わかったよもう」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:08:03.99 ID:Pr8jqBhO0
はぁ…
あんなこと言ったばっかなのに、気まずいったらないよ
少しはおかーさんも空気読んでよね
こんこん
妹「お姉ちゃーん?」
…返事なし
寝てるかシカトか
妹「入るよー」ガチャ
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:13:08.08 ID:Pr8jqBhO0
姉「うーん」ゴロン
妹「寝てるだけじゃん」
姉「うー」
妹「あれ、なんか顔赤い?一応体温計った方がいいよね」
妹「ちょいとお脇拝借」ゴソゴソ
妹「38度!?た、大変!水まくらもらって来るね!」ドタドタ
姉「ん…」
姉「妹…?」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:19:48.01 ID:Pr8jqBhO0
まさか、ここに来てぶり返すなんて…!
病は気からって言うし、ひょっとして、私のせい…?
私がひどいこと言ったから?
考えすぎだよね
妹「お姉ちゃん、起きて」
姉「さっき妹が来たとき、起きちゃった」
妹「お姉ちゃんすごい熱なんだよ。ほら、水まくら」
姉「ありがとう。私これ大好き」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:21:18.76 ID:Pr8jqBhO0
妹「じゃ、私はこれで」
姉「待って!」
妹「?」
姉「寂しいの…。そばにいて、くれない?」
妹「……」
妹「いい、けど」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:23:35.35 ID:Pr8jqBhO0
妹「……」
姉「……」
姉「ねえ、妹」
妹「んー?」
姉「私のこと、嫌いになっちゃった?」
妹「なに言ってんの」
姉「だって、最近妹つめたいし…」
妹「……」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:27:48.68 ID:Pr8jqBhO0
妹「なに?熱出てセンチメンタルになってる?」
姉「ねえ…私と服がお揃いなんて、恥ずかしいかな」
妹「……」
姉「答えてよぉ…!私、なにか怒らせることしちゃった?」
…またひどいこと言ったら、お姉ちゃんの風邪悪化するかな
それは嫌だな
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:33:36.76 ID:Pr8jqBhO0
妹「…嫌いじゃないよ。…だ、大好き、だよ///」
…うう、なんの罰ゲームよこれ
姉「ほんとに!?」
妹「ほんとに」
姉「えへへ」
妹「…これまでのこと、気にしないで。私がただ、勝手に腐ってただけだから」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 02:39:59.79 ID:Pr8jqBhO0
…そうだ。私の方がひねくれてたんだ
双子だから土台は同じはずなのに、勉強もバレーも私よりできるお姉ちゃん
私はそんなお姉ちゃんに真っ向から勝とうとせずに、勝手にコンプレックス抱いて腐ってたんだ
お姉ちゃんに目に見える形の物で勝てないからって、オシャレしてみたり私個人を見てって言ったり…
全部ぜんぶ、私だったんだ
身勝手でずるい私が、優しいお姉ちゃんを傷つけた
妹「ごめんね、お姉ちゃん」
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 07:48:38.91 ID:Pr8jqBhO0
妹「私、お姉ちゃんのこと大好きだから」
姉「ふふっ、私も」
妹「ま、真顔で返さないでよ!ゾワッてしたよ!」
姉「私のフェロモンにやられちゃった?」
妹「じょーだんきつい」
姉「えぇー」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 07:53:08.00 ID:Pr8jqBhO0
妹「ねえ、お姉ちゃん。私いま欲しい服あるんだ。今度、買うの…付き合って」
姉「…!!」パアア
姉「喜んでっ!お揃いの買おうね」
妹「いや…お揃いはどうだろう」
姉「えー」
妹「…気が向いたら、ね」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 07:59:30.00 ID:Pr8jqBhO0
姉「……」スヤスヤ
妹「…はぁ。気持ち良さそうな寝顔」
妹「大好き、なんて」
確かに大好きだけどさ…めちゃくちゃ恥ずかしい
妹「…お姉ちゃん」
私とまったく同じなはずの、寝顔
なのになんだか、鏡で見るそれよりも優しい印象を受ける
妹「少しずつ、私は私に、お姉ちゃんはお姉ちゃんになってきてるのかな」
土台は同じ
なのになんでお姉ちゃんはこんなに優しいんだろう
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 08:05:33.98 ID:Pr8jqBhO0
妹「…お姉ちゃん」
顔を覗きこむ
なんだか上気したお姉ちゃんは色っぽい
妹「…私たちは対等な関係だよね」
だったら私だけお姉ちゃん呼びなんておかしいよね
妹「…姉」
多分生まれて初めてお姉ちゃんの名前を呼ぶ
呼んだ瞬間、甘い痺れのようなものが心臓から全身に広がった
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 08:08:39.75 ID:Pr8jqBhO0
妹「…!姉っ!」
その響きを咀嚼するようにもう一度
その甘い痺れは麻薬的で、もっともっと恥ずかしいことをしたくなってしまう
妹「姉…可愛い」
ぴりぴりくる
目の前にはお姉ちゃんの色っぽいくちびるが
そしてつい、私は…
ちゅっ
その唇を奪っていた
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 08:13:40.61 ID:Pr8jqBhO0
姉「っ!」パチリ
妹「あ」
姉「っ!?!?」ガバ
妹「わああああっ!?」
姉「きゃああああああっ!!」
姉「な、な、な…!?」
妹「お、お姉ちゃん、これはその、えーっと!」
妹「お、お大事にいい!!」ガチャッバタン
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 08:17:47.13 ID:Pr8jqBhO0
ー数日後ー
姉「あんなことするから風邪がうつるんだよ」
妹「めんぼくない…」ゲホ
姉「その、なんであんなことしたの?」
妹「…わかんない」
姉「もう、妹は」
妹「…///」モゾモゾ
姉「妹、こっち向いて?」
妹「?」クル
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/27(木) 08:21:54.75 ID:Pr8jqBhO0
ちゅっ
妹「っ!?」
姉「えへへ、おかえし」
妹「~っ!///」
双子の私たちは、同一人物からそれぞれ別個の人間になろうとしている
そんな私たちの関係はどうなっていくのだろう
とりあえず、いま私の顔が赤いのは、熱のせいなんだ
甘い期待で頭を埋め尽くしながら、私は眠りについた
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